(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシステム全体の構成を示す図である。図1において、当該システムは、ユーザ管理ネットワーク1と、外部ネットワーク2とを含む。ユーザ管理ネットワーク1は、通信メディア3を介して接続される複数の端末装置100を備える。図1では、八つの端末装置100を示したが、端末装置100の数は、これに限定されるものではない。端末装置100は、通信メディア3を介して、少なくとも一つの他の端末装置100との間で、フレームを送受信する。ここでは、通信メディア3は、有線であるかのように示したが、無線であってもよい。ユーザ管理ネットワーク1によって、たとえば、映像伝送、音声伝送、Web閲覧、ファイル転送等が行われる。ユーザ管理ネットワーク1は、集中制御型ネットワーク制御方式で動作する。
図2は、端末装置100の機能的構成を示すブロック図である。図2において、端末装置100は、制御処理部101と、送受信部102と、データ記憶装置103と、外部インタフェース処理部104と、タイマ部105と、稼働モード設定部106とを備える。
制御処理部101は、端末装置100全体の動作を制御する。制御処理部101は、演算装置等を含む。
送受信部102は、通信メディア3を介して、フレームを送受信する。送受信部102には、通信帯域のみを抽出するためのフィルタ等を含む。
データ記憶装置103は、データを保持することができる記憶領域を持つ装置である。データ記憶装置103は、演算テンポラリ領域に用いられる。また、データ記憶装置103は、ダイナミックなネットワーク情報や端末情報、ネットワーク識別子等を格納する。さらに、データ記憶装置103は、制御処理部101の動作を記述したソフトウェアや端末固有の端末識別情報、ユーザ識別情報などを格納する。データ記憶装置103に格納されているソフトウェアを実行することによって、制御処理部101は、以下に説明する処理を実行し、端末装置100全体の動作を制御する。
外部インタフェース処理部104は、ホスト端末としてのネットワーク階層上位レイヤや、端末にブリッヂ機能を持たせる形態で実現する場合のイーサネット(登録商標)、無
線、同軸線、電話線など他形態プロトコルネットワークとのインタフェースを処理する。
タイマ部105は、時間をカウントする。
各端末装置100は、他の端末装置100が通信メディア3へアクセスする機会を制御する制御端末としても稼働可能であるし、また、制御端末として稼働している他の端末装置によって通信メディア3へアクセスする機会が制御される被制御端末としても稼働可能である。端末装置100が制御端末として稼働しているとき、端末装置100は、制御端末モードであるという。端末装置100が被制御端末として稼働しているとき、端末装置100は、被制御端末モードであるという。稼働モード設定部106は、端末装置100が現在制御端末モードとして稼働しているか、それとも被制御端末モードとして稼働しているかを設定する。
図3は、端末装置100の起動直後の処理を示すフローチャートである。以下、図3を参照しながら、端末装置100の起動直後の動作について説明する。なお、第1の実施形態において、制御端末は、被制御端末によるメディアアクセスの機会を提供するために、メディアアクセス制御のための情報を含むフレーム(以下、ビーコンフレームという)を、定期的にブロードキャスト送信する。また、本実施形態において形成される論理ネットワークは、ネットワーク識別子(BSSIDともいう)によって、特定される。
まず、電源が押下されると、端末装置100の制御処理部101は、起動のために必要な処理を実行する(ステップS101)。
次に、制御処理部101は、キャリアセンス処理を実行して、既存の通信の検知を試みる(ステップS102)。次に、制御処理部101は、タイマ部105を参照して、起動してから、所定の時間(TIME_INIT_WAIT時間)が経過したか否かを判断する(ステップS103)。本実施形態では、制御端末は定期的にビーコンフレームを送信することとなっているので、TIME_INIT_WAIT時間は、ビーコンフレームが送信される周期よりも長く設定されている。これによって、新たに起動した端末装置100と通信可能な他の端末装置100が起動済みであれば、当該新たに起動した端末装置100は、キャリアセンス中において、少なくともビーコンフレームを検知することができる。
ステップS103において、TIME_INIT_WAIT時間が経過していない場合、制御処理部101は、ステップS102の動作に戻る。一方、TIME_INIT_WAIT時間が経過した場合、制御処理部101は、ステップS104の動作に進む。なお、ステップS103において、制御処理部101は、一度でもビーコンフレーム、またはフレームを受信した場合、TIME_INIT_WAITを待たずにステップS104へ進んでもよい。
ステップS104において、制御処理部101は、キャリアセンス区間において、ビーコンフレームまたは他のフレームを検知したか否かを判断する。検知した場合、制御処理部101は、ステップS105の動作に進む。一方、検知していない場合、制御処理部101は、ステップS107の動作に進む。
ステップS105において、制御処理部101は、検知したフレーム(ビーコンフレームを含む)を発行した端末装置が属する論理ネットワークに参加するための、認証処理を受ける。次に、制御処理部101は、被制御端末として動作するように、稼働モード設定部106を設定する(ステップS106)。なお、制御処理部101は、主体的に、当該論理ネットワークに参加する権利があるか否かを判断した上で、参加する権利がないと判断した場合は、認証処理を受けずに終了してもよい。つまりは、端末装置が自分の参加できるネットワーク識別子を予め管理する何らかの手段を有している場合、制御処理部101は、無為に参加不可能なネットワークに対して認証要求を行わないようにしてよい。また、制御処理部101は、主体的に、当該論理ネットワークに参加したいか否かを判断した上で、参加したくない場合は認証処理を受けずに終了してもよい。つまりは、端末装置は、当該論理ネットワークに参加したい場合、ネットワークで発行されているビーコンフレーム、または一般データフレームのフレームヘッダに記載の何らかの情報(たとえば、セキュリティレベル記載領域)に基づいて、当該論理ネットワークへの参加不参加を決定する。こうした仕組みによって、制御処理部101が認証処理を受けずに主体的に論理ネットワークへの参加を自らが判断し、セキュリティ機能の確保等が可能となる。たとえば、制御処理部101は、自身が取り扱うコンテンツに要求されているセキュリティのレベルと、当該論理ネットワークでサポートされているセキュリティのレベルとを比較して、当該論理ネットワークへ参加するか否かを判断することによって、セキュリティのレベルが低い論理ネットワークへの参加を回避することができる。
ここで、ネットワークと端末とのセキュリティレベルのサポートについて、もう少し詳しく記す。図4は、セキュリティレベルの一例を示す図である。ユーザ管理ネットワークには、例えば、図4に示すようなセキュリティレベルが定義されているものとする。また、セキュリティレベルは、端末装置ごとに、端末装置の実装状態によって設定される運用可能レベル、および転送要求コンテンツ種別などに基づいて外部からの要求によって設定される要求レベル等がある。各セキュリティレベルは、それぞれ別に管理されているものとする。認証要求時において、ステップS105で発行される認証要求フレームには、端末に設定されている運用可能レベルと、要求レベルとが記載されているものとする。
図5は、ステップS105における認証処理の詳細の一例を示すフローチャートである。図5において、制御処理部101は、ステップS104で検知したビーコンフレームまたはフレームに記載されているネットワークで運用されているセキュリティレベルと、自身で設定されているセキュリティレベルとを比較して、認証要求を行う必要があるか否かを判断する(ステップS105a)。たとえば、ネットワークで運用されているセキュリティレベルが自身の運用可能レベルよりも高い場合、制御処理部101は、認証要求を行わないと判断する。なお、ネットワークで運用されているセキュリティレベルが要求レベルよりも低い場合、制御処理部101は、認証要求を行わないと判断してもよい。ここで、認証要求を行わなかった端末は、ネットワークに参加しない理由を接続アプリケーションに通知するなどしてよい。
ステップS105aにおいて認証処理を行う必要がある場合、制御処理部101は、認証要求を制御端末に送信し、認証要求が受付けられたか否かを判断する(ステップS105b)。制御端末は、認証要求端末に設定されたセキュリティレベルを解釈し、認証を受付けるか否かを判断する。認証要求が受付けられた場合、制御処理部101は、ステップS106の動作に進む。一方、認証要求が受付けられなかった場合、制御処理部101は、処理を終了する。例えば、認証要求フレームに記載の運用可能レベルが、現在ネットワークで運用しているセキュリティレベルよりも低い場合、または、現在ネットワークで運用しているセキュリティレベルと一致しない場合、当該制御端末は、認証受付を拒否する。ここで認証を拒否された端末は、拒否された理由を接続アプリケーションに通知するなどしてよい。
ステップS105aにおいて認証処理を行う必要がない場合、制御処理部101は、ネットワークへの参加不参加を判断する(ステップS105c)。参加する場合、制御処理部101は、ステップS106の動作に進む。一方、参加しない場合、制御処理部101は、処理を終了する。
ステップS107において、制御処理部101は、ユーザ、端末内のBSSID管理部、またはネットワーク上に接続されたBSSID管理端末等に対して、ネットワーク識別子の発行を許可するように要求する。次に、制御処理部101は、タイマ部105を参照して、ネットワーク識別子の発行許可を要求するための所定の時間(TIME_BSSID_WAIT時間)が経過したか否かを判断する(ステップS108)。TIME_BSSID_WAIT時間が経過していない場合、制御処理部101は、ステップS107の動作に戻る。一方、TIME_BSSID_WAIT時間が経過した場合、制御処理部101は、ステップS109の動作に進む。
なお、ここでBSSID管理端末は、ネットワーク識別子を要求する端末のセキュリティレベル(運用可能レベル、および要求レベル等)を、ネットワーク識別子の発行を許可する判断指標としてもよい。
ステップS109において、制御処理部101は、ネットワーク識別子の発行が許可されたか否かを判断する。ネットワーク識別子の発行が許可された場合、制御処理部101は、制御端末モードとして動作すべきであると認識して、制御端末として動作するように、稼働モード設定部106を設定する(ステップS110)。次に、制御処理部101は、ビーコンフレームを生成して、送受信部102に通信メディア3上にブロードキャスト送信させる(ステップS111)。このときネットワークで運用されるセキュリティレベルは、端末装置に設定された運用可能レベル、および要求レベル等であってもよいし、ステップS107において、BSSID発行端末から指定されるものであってもよい。
一方、BSSIDの発行が許可されなかった場合、制御処理部101は、停止する(ステップS112)。なお、ステップS112の後、制御処理部101は、再び、ステップS101の動作に戻ってもよい。
なお、BSSIDの発行プロセスについて、必ずしもBSSID発行端末が存在しなくてもよく、ステップS104でビーコンフレームまたはフレームが検知されない場合、制御処理部101は、ステップS110の動作へ進んで、制御端末モードに設定し、ビーコンフレームを送信してもよい。
なお、セキュリティに関する設定および判断基準は、なくてもよい。
このように、図3に示す処理を実行することによって、ユーザ管理ネットワーク1内の端末装置は、起動後、制御端末として稼働するか、被制御端末として稼働するかを決定することができる。これによって、ユーザに手を煩わせることなく、非常に簡易に、ネットワークの利用を開始することができ、ユーザにとってのメリットは大きい。
さて、図3に示す処理によって端末装置100が起動した場合、一つのユーザ管理ネットワーク1内に複数の論理ネットワークができる可能性がある点について説明する。図6は、図3に示す処理によって端末装置100が起動した場合、一つのユーザ管理ネットワーク1内に複数の論理ネットワーク1a,1bができることを説明するための図である。図6において、各端末装置を区別するために、()内にA,B,C,D,P,Q,R,Sを記載し、以下、当該アルファベットを用いて、端末装置を区別することとする。
図6において、まず、端末装置Cが起動したとする。端末装置Cは、図3に示す処理にしたがって、論理ネットワーク1aの制御端末となり、定期的にビーコンフレームを発行していたとする。その後、端末装置A,B,Dが起動したとする。そして、端末装置A,B,Dは、図3に示す処理にしたがって、端末装置Cが発行するビーコンフレームを検知し、被制御端末となる。
ここで、図6に示すように、通信メディア3上に、伝送を阻害する障害3aが発生したとする。たとえば、通信メディア3として、電灯線を用いている場合、障害3aは、電灯線通信に利用される帯域に対して、局所的に大きなノイズを発生する家電機器が近隣に接続されたことによって発生する。なお、障害3aは、電灯線の配線構造や物理的な距離等によって、結果的にフレームが到達しないといった場合も含む。
ここで、障害3aが発生している状況において、端末装置Qが起動したとする。このとき、障害3aが発生しているので、端末装置Qは、論理ネットワーク1a内で発行されるフレームを検知することができない。よって、図3に示す処理によって、端末装置Qは、自らが論理ネットワーク1bの制御端末となって、定期的にビーコンフレームを発行することとなる。その後、端末装置P,R,Sが起動し、論理ネットワーク1bの被制御端末となる。このようにして、図6に示すように、ユーザ管理ネットワーク1内に、二つの論理ネットワーク1a,1bが形成されることとなる。
ここで、各端末装置100が発行するフレームのフォーマットについて説明する。図7は、第1の実施形態におけるフレームのフォーマットの構造の一例を示す図である。
図7において、一つのフレームは、フレームヘッダ部D1と、データボディ部D2とからなる。
フレームヘッダ部D1は、アドレス領域D3と、BSSID領域D4と、セキュリティレベル記載領域D12とを含む。
アドレス領域D3は、フレームの送信元、受信先、中継先、中継元等の端末装置を識別するための端末識別情報を格納するための領域である。アドレス領域D3は、宛先端末識別子領域D8と、フレーム識別子D11とを含む。フレーム識別子D11は、送信元端末識別子領域D9と、フレームIDD10とを有する。
BSSID領域D4は、ネットワーク識別領域D5と、ユーザ識別領域D6と、ユーザ設定領域D7とを含む。
ネットワーク識別領域D5は、当該フレームを送信する端末装置が属する論理ネットワークを特定するためのネットワーク識別子を格納する領域である。ネットワーク識別子として、たとえば、最初に制御端末となった端末装置のMACアドレスや、図3に示すステップS108においてネットワーク識別子の発行が許可されたときに得られたシステムタイマ、プログラムカウンタ、当該システムタイマとプログラムカウンタ等から生成されるパラメータ等が用いられる。なお、ネットワーク識別子は、論理ネットワークを一意に特定することができる識別子であれば、上記に限られるものではない。
ユーザ識別領域D6は、ユーザを特定するためのユーザ識別子を格納する領域である。ユーザ識別子として、たとえば、ベンダから提供されるパラメータや、電話番号や住所などから一意に決定されるパラメータ、ユーザによって設定されるパラメータ等が用いられる。すなわち、ユーザ識別領域D6に格納される識別子は、ユーザ管理ネットワーク1と一対一に対応している。したがって、一つのユーザ識別子で区別される集合体の中には、複数のネットワーク識別子で区別される集合体が存在し得る。
ユーザ設定領域D7は、ユーザがネットワーク構成を意図的に設定するために用意された領域であり、ユーザ識別子で区別された集合の中に、任意にサブネットワークを設定、構築するために使用される。例えば、ユーザ設定領域D7には、Ethernet(登録商標)で定義されているVLAN−TAGに相当するようなグループ識別子が導入される。これによって、ユーザは、意図的に、端末装置をグルーピングすることができ、論理ネットワークを区切ることができる。
宛先端末識別子領域D8は、フレームの宛先となる端末装置の識別子を示す領域である。送信元端末識別子領域D9は、フレームの送信元となる端末装置の識別子を示す領域である。フレームIDD10は、フレームの識別子である。セキュリティレベル記載領域D12は、セキュリティレベルを記載するための領域である。
図6に示す例では、論理ネットワーク1aおよび論理ネットワーク1bは、同一のユーザの管理下に置かれている、すなわち、同一のユーザ管理ネットワーク1内に形成されている。したがって、論理ネットワーク1a内の端末装置100が送受信するフレームに含まれるユーザ識別子と論理ネットワーク1b内の端末装置100が送受信するフレームに含まれるユーザ識別子とは、同一である。しかし、論理ネットワーク1a内の端末装置100が送受信するフレームに含まれるネットワーク識別子と論理ネットワーク1b内の端末装置100が送受信するフレームに含まれるネットワーク識別子とは、異なる。このように、ネットワーク識別子を異ならせることによって、フレームの属する論理ネットワークが区別される。
次に、図6に示す障害3aが解消し、障害が存在しない状態に通信メディア3の伝送路状態が変化したとする。図8は、障害3aが解消したときの端末装置100の動作を説明するための図である。
障害3aが解消したとすると、論理ネットワーク1aに属する端末装置100のフレームは、範囲E1まで到達可能である。同様に、論理ネットワーク1bに属する端末装置100のフレームは、範囲E2まで到達可能である。図8に示すように、障害3aが解消されると、各論理ネットワーク内に存在する端末装置100のフレームが到達する範囲が拡大する。さらに、論理ネットワーク1aおよび論理ネットワーク1bにおいて、各制御端末は、互いに無関係にビーコンフレームを送信しているので、フレームの到達範囲が拡大することによって、フレームの衝突(コリジョン)が発生する可能性がある。したがって、コリジョンが発生しないように、論理ネットワーク1aと論理ネットワーク1bとの間で何らかの調停(干渉回避調停)を行うか、あるいは、論理ネットワーク1aと論理ネットワーク1bとを統合しなければならない。
コリジョンを検知できない通信プロトコルを用いている場合、コリジョンが発生しないように調停するために、各端末装置に対して通信メディアを占有させる時間を割り当てて、各端末装置がキャリアセンス処理せずにフレームを送信するといった調停の方式(前記のように、TDMA方式など)が用いられることが多い。もし、図8に示すような状況になった場合、論理ネットワーク1aと論理ネットワーク1bとを統合すべきでないならば、TDMA方式等を用いて、コリジョンの発生を回避するための調停が行われるべきである。
たとえば、通信メディア3として電灯線が用いられている場合、隣家間干渉のように、同じ電灯線を介して物理的に接続されている二つの論理ネットワークを統合すべきではない場合がある。なぜなら、どちらかの制御端末が世帯をまたいで端末を制御することによって、経済的な平等性を欠いたり、プライバシーを欠いたり、コンテンツ保護を欠いたりするため、セキュリティ機能を実現する必要が生じるからである。セキュリティ機能を実現するためには、複雑な認証、暗号鍵交換プロセス等を導入する必要が生じる。
本発明は、論理ネットワークの統合方法に関するものである。したがって、上述のように、論理ネットワークを統合せずに、コリジョンの発生の回避を調停する方法について、これ以上の記述は控える。
本実施形態において、論理ネットワーク1aおよび1bは、同一のユーザ管理ネットワーク1内に形成されているとしている。したがって、論理ネットワーク1aと論理ネットワーク1bとは、ユーザが敢えて論理的に区別したいネットワークで無いとするのであれば、統合すべき論理ネットワークである。
図9は、論理ネットワークを統合するときの制御端末の動作を示すフローチャートである。以下、図9を参照しながら、論理ネットワークを統合するときの制御端末の動作について説明する。
各被制御端末は、受信したフレームに含まれるネットワーク識別子が、自装置が属する論理ネットワークのネットワーク識別子と相違する場合、自装置が属する論理ネットワークの制御端末に対して、自装置が属する論理ネットワークのネットワーク識別子と相違するネットワーク識別子を含むフレームを受信した旨を通知することとする。具体的には、被制御端末は、送受信部102が受信したフレームをデータ記憶装置103に格納する。被制御端末の制御処理部101は、データ記憶装置103に格納されたフレームのフレームヘッダ部D1を参照する。参照の結果、当該フレームが一般的なデータフレームであれば、被制御端末の制御処理部101は、当該フレームを外部インタフェース処理部104に渡して、ブリッヂングなどの処理を行わせる。そして、フレームヘッダ部D1の参照の結果、ネットワーク識別子が、自装置が属する論理ネットワークのネットワーク識別子と相違するものである場合、被制御端末の制御処理部101は、制御端末に対して、その旨の通知を送受信部102に送信させる。この通知の際、被制御端末の制御処理部101は、当該フレームに含まれるBSSID領域D4の情報も合わせて制御端末に通知する。
制御端末の制御処理部101は、被制御端末から、自装置が属する制御対象の論理ネットワークのネットワーク識別子と相違するネットワーク識別子を含むフレームを受信した旨の通知、あるいは、自らが受信したフレームに含まれるネットワーク識別子が、自装置が制御する論理ネットワークのネットワーク識別子と相違するとの検知をトリガーとして、他の論理ネットワークを認知し、動作をスタートさせる(ステップS201)。このようして、制御処理部101は、稼働モード設定部106において制御端末として稼働するべきであると設定されている場合、制御対象となる論理ネットワーク以外の他の論理ネットワークからの干渉があった旨の被制御端末からの通知を受信することとなる。すなわち、制御処理部101には、稼働モード設定部106による設定が制御端末モードであったとしても、被制御端末モードであったとしても、自らの論理ネットワーク以外からの干渉を検知する(ネットワーク識別子の相違を検知する)ための干渉検知部としての機能が含まれている。制御処理部101は、被制御端末モードである場合には、制御端末に対して干渉情報を通知するための機能が含まれることとなる。制御処理部101は、被制御端末から通知された干渉情報を受信処理するための機能が含まれている。よって、制御処理部101には、稼働モード設定部106によって制御端末として稼働すると設定されている場合、制御対象となる論理ネットワーク以外の少なくとも一つの他の論理ネットワークからの干渉を認知するための干渉認知部としての機能が含まれている。なお、ここでいう干渉情報とは、受信した干渉パケットのアドレス領域D3やBSSID領域D4に含まれる情報であってもよい。なお、ステップS201において、使用される通信プロトコルによっては、他の論理ネットワークからの干渉を検出できない場合がある。他の論理ネットワークからの干渉を確実に検出するための方法については、後述する。
次に、制御端末の制御処理部101は、通知されたBSSID領域D4に含まれるユーザ識別子と自装置が属するユーザ管理ネットワーク1のユーザ識別子とが一致するか否か、あるいは、受信したフレームに含まれるユーザ識別子と自装置が属するユーザ管理ネットワーク1のユーザ識別子とが一致するか否かを判断する(ステップS202)。
ユーザ識別子が一致しない場合、制御端末の制御処理部101は、論理ネットワーク間の干渉の問題であるとして、外部の論理ネットワークとの間で調停処理する(ステップS203)。たとえば、制御端末の制御処理部101は、外部の論理ネットワークにおける制御端末に対して、データ記憶装置103に格納されている干渉通知フレームを送信する。
一方、ユーザ識別子が一致する場合、すなわち、制御対象となる論理ネットワークと他の論理ネットワークとが同一のユーザの管理下にあることを示す場合、制御端末の制御処理部101は、通知されたBSSID領域D4に含まれるユーザ設定領域D7を参照して、自装置が制御する論理ネットワークに関する設定を確認する(ステップS204)。ユーザ設定領域D4には、ユーザによって、明示的に論理ネットワークの設定に関する情報が含まれている。たとえば、論理ネットワークの設定に関する情報として、論理ネットワークの統合を許可する旨の情報や、予め登録されている端末装置のみが参加可能な論理ネットワークのネットワーク識別情報等がある。
制御端末の制御処理部101は、ステップS204で確認した内容に基づいて、論理ネットワークの統合がユーザによって許可されているか否かを判断する(ステップS205)。論理ネットワークの統合が許可されていない場合、制御端末の制御処理部101は、処理を終了する。一方、論理ネットワークの統合がユーザによって許可されている場合、制御端末の制御処理部101は、ステップS206の動作に進む。
ところで、ユーザ識別子は、ユーザ、または端末の販売代理店、またはベンダなどの手によって、データ記憶装置103に含まれる不揮発性記憶領域に記録されるものとしてよい。ユーザ識別子に記載される内容は、前に述べたとおり、ユーザの住所、電話番号、ベンダの発行するパラメータ、ユーザによる任意なパラメータ等から一意に生成されるコード(以下、ユーザ識別コードという)が用いられるとよい。この値は、端末装置のセットアップ時に、外部インタフェース処理部104に接続したパーソナルコンピュータのようなユーザインタフェースや、端末装置自体に備えるユーザインタフェース、または、送受信部に接続できるユーザインタフェースを使用して、設定および書き換えなどが行えるものであるとよい。または、この値は、たとえば、端末装置同士を何らかの方法でローカル接続し、ユーザ、端末装置の販売代理店、またはベンダが所定の操作を行うことで設定されてもよい。そして、各端末装置には、同一のユーザ識別コードが、自動的に、データ記憶装置103に含まれる該当不揮発性記憶領域に設定されるとよい。データ記憶装置103に含まれるユーザ識別コードのための記憶領域は、何らかのフレームを発行する際に参照される。ユーザ識別コードは、フレームヘッダ部のユーザ識別領域(D6)にコピーされる。また、ユーザ識別コードは、上記のような操作が行われない限り、変更されないものであるとするとよい。
また、ユーザ識別子は、ユーザ、端末の販売代理店、またはベンダなどの手によって、データ記憶装置103に含まれる不揮発性記憶領域に記録されてもよい。
ユーザ設定領域に記載される内容は、前に述べたとおり、ユーザが意図的にネットワークの論理構成を設定したい際に行う操作の結果として生成されるコード(以下、ユーザ設定コードという)であるとよい。この値は、端末のセットアップ時に、外部インタフェース処理部104に接続したパーソナルコンピュータのようなユーザインタフェースや、端末自体に備えるユーザインタフェース、または、送受信部に接続できるユーザインタフェースを使用して、設定および書き換えなどが行えるものであるとよい。または、この値は、たとえば、端末装置同士を何らかの方法でローカル接続し、ユーザ、端末装置の販売代理店、またはベンダが所定の操作を行うことで設定されてもよい。そして、各端末装置には、同一のユーザ設定コードが、自動的に、データ記憶装置103に含まれる該当不揮発性記憶領域に設定されるとよい。データ記憶装置103に含まれるユーザ設定コードのための記憶領域は、何らかのフレームを発行する際に参照される。ユーザ設定コードは、フレームヘッダ部のユーザ設定領域(D7)にコピーされる。ユーザ設定領域に記載のユーザ設定コードは、論理ネットワークで区分けするID、および、論理ネットワークの統合を許可するか否かに関する情報等を含んでいるとよい。なお、もし受信したフレームに含まれるユーザ設定コードと、データ記憶装置103に記憶されている自端末のユーザ設定コードとが一致したときのみ、端末装置の制御処理部101は、受信処理を行うと判断してもよい。これによって、ユーザ設定コードの異なるフレームの受信時には、制御処理部101は、受信後の処理を行わなくて済む。例えば、ユーザ設定コードの異なるビーコンフレームを受信した場合、制御処理部101は、ビーコンフレームに記載内容に従う必要はない。
なお、端末装置には、通常レベルの運用に支障のない所定のポリシーに基づくデフォルトのコードが、ユーザ識別コードおよび/またはユーザ設定コードとして設定されているとよい。この場合、ユーザ識別コードおよび/またはユーザ設定コードの明示的な設定がなされなかった場合、端末装置は、当該デフォルトコードを用いるようにするとよい。
ステップS206において、制御端末の制御処理部101は、統合対象の論理ネットワークに対して、統合要求フレームを生成して、送受信部102に送信させる。このとき、制御端末の制御処理部101は、同時に、ある満了値を持つようにタイマ部105を起動して、上記統合要求フレームに対する応答を待つ。統合要求フレームに対して、他の論理ネットワーク内の他の端末装置は、論理ネットワークを統合してもよいか否かを判断し、統合を許可するか否かを示す応答を当該制御端末に対して通知する。統合を許可する又は統合を許可しないの判定は、予めユーザによって設定された論理ネットワーク構成ポリシーに則ったものである。たとえば、ネットワークのセキュリティポリシーが暗号鍵の変更を許さない場合、統合は許可されないとしてよい。なお、制御端末と、他の制御端末とが直接通信できないような場合には、制御端末は、干渉情報を通知してきた被制御端末を介して、統合要求フレームを他の制御端末に中継伝送させてもよい。
次に、制御端末の制御処理部101は、統合要求フレームに対する応答が論理ネットワークの統合を許可するものであるか否かを判断する(ステップS207)。論理ネットワークの統合が許可されていない場合、制御端末の制御処理部101は、処理を終了する。一方、ネットワークの統合が許可されている場合、ステップS208の動作に進む。なお、タイマ部105における当該満了値が満たされた場合、制御端末の制御処理部101は、処理を終了する。ステップS205〜S207から分かるように、制御処理部101には、他の論理ネットワークからの干渉が検知された場合、制御対象となる論理ネットワークと他の論理ネットワークとを統合するか否かを決定する統合決定部としての機能が含まれている。
ステップS202,S204〜S205,S206〜S207は、論理ネットワークを統合するか否かを決定するための処理である。
ステップS202,S204〜S205,S206〜S207において、論理ネットワークを統合すると決定した場合、ステップS208において、制御端末の制御処理部101は、論理ネットワーク統合のための情報(以下、ネットワーク情報という)を統合相手の論理ネットワーク上の制御端末とやり取りして、統合によって新たに形成される論理ネットワークの新たな制御端末(新制御端末)を自装置とするかそれとも他の論理ネットワークにおける制御端末とするかを決定する。次に、制御端末の制御処理部101は、統合のタイミング、および統合後のネットワーク識別子を決定する(ステップS209)。なお、どちらの制御端末を統合後の制御端末とするかについては、論理ネットワーク統合要求の発行を行ったかどうか、論理ネットワーク参加端末の数、論理ネットワーク上でのトラフィック、帯域保護を行っているリンクの総帯域、ユーザ設定による優先度などに関する情報によって決定されるとよい。また、上記ネットワーク情報には、論理ネットワークへの参加端末の識別子、端末特性(設定内容や転送データの変調など)、通信状況、リンク間での暗号鍵に関する情報、保護しているリンク間での帯域調停情報、各端末間の伝送路特性などが含まれてもよい。こうした情報は、制御処理部によって収集され、データ記憶装置によって保存されている情報である。
次に、制御端末の制御処理部101は、ステップS209で決定した統合のタイミングが到来したか否かを判断する(ステップS210)。統合のタイミングが到来していない場合、制御端末の制御処理部101は、ステップS210の動作に戻る。一方、統合のタイミングが到来した場合、制御端末の制御処理部101は、統合後の稼働モードが制御端末モードであるか、それとも被制御端末モードであるかを判断する(ステップS211)。ステップS211から分かるように、制御処理部101には、制御対象となる論理ネットワークと他の論理ネットワークとの統合が決定された場合、統合によって新たに形成される論理ネットワークの制御端末を、自装置とするかそれとも他の論理ネットワークにおける制御端末とするかを決定する新制御端末決定部としての機能が含まれている。制御端末モードである場合、制御端末の制御処理部101は、その後も制御端末として動作するように稼働モード設定部106に命じる(ステップS212)。これに応じて、稼働モード設定部106は、新たに形成される論理ネットワークの制御端末として自装置が可動すると設定する。以後、当該端末装置は、統合後の論理ネットワークの制御端末として動作する。制御端末を受け継ぐ端末装置は、必要であれば、統合のタイミングで暗号鍵の再設定を行うなどして、統合後のネットワークの通信を可能とするための動作を行うとよい。
一方、被制御端末モードである場合、制御端末の制御処理部101は、被制御端末として動作するように稼働モード設定部106に命じる(ステップS213)。これに応じて、稼働モード設定部106は、新たに形成される論理ネットワークの被制御端末として自装置が可動すると設定する。以後、当該端末装置は、統合後の論理ネットワークの被制御端末として動作する。
なお、制御端末であった端末装置Cが被制御端末としてモードを変更して稼動するとき、端末装置Cは、「もともと制御端末として稼動していた」という情報、さらには、「制御端末として稼動していたときに保持していた制御情報」などを、データ記憶装置103に記録してもよい。これらの情報は、以後再び制御端末が不在になった際に、再度制御端末として起動する必要性が生じたときなどに参照される。
この際、被制御端末となった側の元制御端末が制御していた論理ネットワーク内の端末装置は、新しく制御端末となった端末が発行するビーコンフレームに従うので、統合された新しい論理ネットワーク内で滞りなく、フレームを送受信することができる。これによって、論理ネットワークが統合され、統合後もスムーズにフレームが送受信されることとなる。
図10は、図9に示す処理にしたがって、統合された論理ネットワーク全体の構成を示す図である。図10に示すように、論理ネットワークの統合によって、端末装置Qが統合後の制御端末に選択されたとする。
論理ネットワーク1aの制御端末であった端末装置Cは、被制御端末となった。図10に示すシステムでは、ユーザ管理ネットワーク1と論理ネットワークTとが一致し、ユーザ管理ネットワーク1内に端末装置が、一台の制御端末Qによって制御されることとなるので、メディアアクセスの最適な一元管理が期待できる。なお、新たな論理ネットワークTでは、論理ネットワーク1aに属していた端末装置が論理ネットワーク1bで使用していたBSSID領域D4を用いることで、全ての端末装置が同等に扱われる。
このように、第1の実施形態によれば、集中制御型のネットワークの運用のために自動的に制御端末が選定され論理ネットワークが構築されるシステムにおいて、構築された複数の論理ネットワークを、状況に応じて、統合することができる。したがって、無駄に複数の論理ネットワークが構築された場合に、伝送路の帯域資源を効率的に活用することができるようになる。複数の論理ネットワークを生じさせないようにする方法として、論理ネットワークの構築の際に、ユーザに何らかの操作を要求したり、端末装置に予め何らかの設定を施しておいたりする方法がある。しかし、いずれの方法もユーザの利便性や活用自由度を損ないかねない。しかし、本発明のように、複数の論理ネットワークが形成されて、それぞれが干渉しあう状況になったら、自動的にネットワーク統合の是非を判断し、確認の上で、ネットワークを統合し、メディアアクセス制御を一元化することとなるので、ユーザの手を何ら煩わせることなく、ネットワーク全体の最適化を図ることができる。
なお、先述のように、他の論理ネットワークからの干渉は、場合によっては、検知されない場合がある。そのため、他の論理ネットワークからの干渉を検知することができる仕組みを端末装置内に設けておくことが好ましい。
まず、他の論理ネットワークからの干渉が検知できない場合について説明する。たとえば、論理ネットワーク1aおよび1bは、ビーコンフレームを定周期的に発行し、ビーコン発行周期が互いに等しいとする。この場合において、図8の状態になったときに、たまたま論理ネットワーク1aのビーコン発行タイミングと論理ネットワーク1bのビーコン発行タイミングとが重なれば、ビーコンフレームが常にコリジョンを起こして壊されるといった事態が起きる可能性がある。図11は、ビーコンフレームにコリジョンが発生する場合のタイミングチャートの一例を示す図である。たとえば、図11に示すように、論理ネットワーク1bのビーコンフレームの発行タイミングが論理ネットワーク1aのTDMA等で予約された定常的なフレーム発行タイミングと一致してしまうと、論理ネットワーク1bのビーコンフレームは、定常的にコリジョンを起こして壊される可能性がある。このような事態は、特に、ビーコンフレームを解釈することによってメディアアクセス機会を定めているようなネットワークプロトコル下では、ネットワークシステム自体が機能しなくなってしまうという事態を招来する。このような事態が招来すると、制御端末は、他の論理ネットワークからの干渉を検知できなくなり、図9に示す動作の前提を欠くこととなる。
こうした事態を避けるための方法は、様々考えられる。
たとえば、第1に、制御端末の干渉検知部は、まずフレームを発行する前に、キャリアセンスを行って、メディアに先行フレームが発行されていないかの調査を行うとよい。これによって、先行フレームが発行されている場合、制御端末は、他の論理ネットワークからの干渉が存在すると検知することができる。なお、ここで言うフレームとは、ビーコンフレームであってもよいし、通常のフレームであってもよい。
第2に、制御端末は、自端末が属するネットワークの周期開始タイミングを、当該他のネットワークの周期開始タイミングに近づける、または一致させることによって、ビーコン自体のコリジョンを回避しやすくするような同期機構を備えているとよい。
第3に、被制御端末は、制御端末が発行するビーコンフレームを検知できない場合、所定の間、占有帯域とされている時間を過ぎてからはCSMA/CA方式でメディアアクセス可能とするか、または、全区間(たとえば、図12に示すCFP及びCPの区間)CSMA/CA方式でメディアアクセス可能とするか、または、最近受信したビーコンフレームの内容に従ってメディアアクセスを行うとよい。これにより、数回程度連続してビーコンフレームが受信できなかったとしても、ネットワーク内端末装置によるメディアアクセスは、停止しないこととなる。これにより、被制御端末は、他の論理ネットワークからの干渉を検知することができ、検知結果を制御端末に通知することができる。
第4に、ビーコンフレームの発行周期は、ある範囲内においてランダムアルゴリズム等を利用して多様性を含んだ値に設定されているとよい。この場合、制御端末は、ビーコンフレームの発行周期をランダムに変更して、ビーコンフレームを送信する。被制御端末は、ビーコンフレームの発行間隔をビーコンフレームに記載の情報から取得する。ビーコン発行間隔には、所定の時間範囲が設定されている。被制御端末は、TDMA区間として帯域を占有する期間の限定と、ビーコンフレームが検知できないと判断する時刻とを設定することが可能となる。これにより、ビーコンフレームのコリジョンが回避されるので、制御端末および/または被制御端末は、他の論理ネットワークからの干渉を検知することができる。
第5に、制御端末は、ビーコンの発行開始用スロットを設定し、ランダムバックオフ等の方法によって、ビーコンの発行タイミングの周期をずらすようにしてもよい。図12は、ビーコンの発行開始用スロットが設定され、ランダムバックオフによって、ビーコンの発行タイミングをずらすようにしたときのタイミングチャートの一例を示す図である。この場合は、ビーコンフレーム間隔は一定周期としても実現可能であるので、メディアアクセス制御機構を一定の伝送品質に保証して、かつ安定的に実現しやすいといった利点がある。
ここで、一定の周期(以下、ネットワーク周期という。また、周期の開始時刻を、ネットワークタイミングという。)で制御端末が発行するビーコンフレームによって、ネットワーク内の端末のメディアへのアクセスを制御するネットワークプロトコルが用いられる場合を考える。この場合、各端末装置は、定期的に発行されるビーコンフレームをある程度連続して受信できなかったとしても、最近受信できたビーコンフレームに記載された内容に従って、メディアアクセスを行うものとする。このようなプロトコルにおいて、複数のネットワークが干渉しあったときに、ビーコンフレームのような重要なフレームがコリジョンによって常に破壊されるような状態から脱せなくなってしまわないようにする一実現例を以下に示す。なお、以下に示すプロセスは、ネットワークの周期のはじまり(ネットワークタイミング)を、隣り合ったネットワーク間で近づける機構(以下、ネットワーク同期機構という)を実現するプロセスである。以下に示すプロセスは、ネットワークの統合に関わるプロセス、若しくは制御端末の交代に関わるプロセスとは独立して、並列に動作する。
図13は、ネットワーク同期機構におけるネットワークプロトコルを説明するための図である。ネットワーク周期(J8)の長さは、固定である。図13では、ネットワークタイミングn(J1)から、ネットワークタイミングn+2(J3)までの時間が示されている。ネットワーク周期(J8)内の時間区間は、m個のビーコンフレームコンテンションスロット(J5)からなるビーコンフレームコンテンションピリオド(J4)と、CFP(コンテンションフリーピリオド)(J6)と、コンテンションピリオド(J7)とで定義されている。
ビーコンフレームコンテンションスロットは、制御端末がビーコンを発行するタイミングをはかるための時間を定義している。ビーコンフレームコンテンションスロットは、メディアにフレームが発行されているか否かを、キャリアセンスによって検知することができる時間に基づいて決定される単位である。ビーコンフレームを発行しようとする制御端末は、ビーコンフレームコンテンションスロットを単位としてランダムバックオフを行い、ビーコンフレームを発行する。ビーコンフレームコンテンションピリオド(J4)は、ビーコンフレームコンテンションスロット(J5)m個から構成されている。しかし、制御端末は、ビーコンフレームを発行した時点で、もしくはビーコンフレームの発行を検知した時点で、それ以降のビーコンフレームコンテンションスロット(J5)を解放する。ビーコンフレームコンテンションピリオドは、最大、ビーコンフレームコンテンションスロットm個分の時間を持つが、上記のとおり可変である。
CFP(J6)は、コンテンションフリーピリオドであり、制御端末がネットワーク内の端末装置からの要求を受けて、フレームの発行を占有させる、TDMAによるアクセス方式用の期間である。CFP(J6)の最大サイズは定義されているが、上記端末装置の要求次第で、CFP(J6)のサイズは、可変である。
CP(J7)は、コンテンションピリオドであり、ネットワーク周期(J8)のうち、ビーコンコンテンションピリオド(J4)やCFP(J6)で占有された時間を引いた、時間区間である。CP(J7)において、各端末装置は、CSMA/CA方式などを用いて、コンテンションによってアクセス権を取得する。なお、ビーコンコンテンションピリオド(J4)にも、CFP(J6)にも、最大サイズが定義されているので、CP(J7)のサイズが0以下になることはない。
図13に示すような時間スケジューリングを運用すると、ビーコンフレームの発行タイミングは、ネットワークタイミングに対して、ある範囲に限定されるが、ビーコンフレームコンテンションスロット単位で、ビーコンフレームの発行タイミングにランダム性を持たせることができる。つまり、同じネットワーク周期(J1)を有するネットワーク同士が干渉状態になったとしても、常にどちらかのビーコンフレームがコリジョンによって破壊されるといった事態が起こらないように設計することが可能である。これによって、ある論理ネットワークは、隣接する他の論理ネットワークの存在を検知することができる。
図14は、ビーコンフレームの発行に関する制御端末の動作を示すフローチャートである。以下、図14を参照しながら、ビーコンフレームの発行に関する制御端末の動作について説明する。
まず、制御端末は、ネットワークタイミング(ネットワーク周期の開始時刻)の到来を終了条件とするループを実行する(ループ名:K01)。ループK01において、制御端末は、キャリアセンスを実行する(ステップS501)。次に、制御端末は、ステップS501のキャリアセンスにおいて、ビーコンフレームを検知したか否かを判断する(ステップS502)。ビーコンフレームを検知した場合、制御端末は、ステップS505の動作に進む。一方、ビーコンフレームを検知していない場合、制御端末は、ループK01の処理を継続する。
ループK01の終了条件が満たされた場合、制御端末は、ループK02の動作に進む。ループK02の終了条件は、ランダムバックオフによる発行待機時間満了である。ループK02において、ランダムバックオフによる発行待機時間は、以下のようにして決定される。ループK02が開始したら、制御端末は、ランダムバックオフを実行し、ビーコンコンテンションスロット(J5)の内、どのスロットでビーコンフレームの発行を開始するか決定する。この決定された時間がランダムバックオフによる発行待機時間である。
ループK02において、制御端末は、キャリアセンスを実行する(ステップS503)。次に、ステップS503のキャリアセンスにおいて、ビーコンフレームを検知したか否かを判断する(ステップS504)。ビーコンフレームを検知した場合、制御端末は、ステップS505の動作に進む。一方、ビーコンフレームを検知していない場合、制御端末は、ループK02の処理を継続する。なお、ステップS502及び/又はS504で検知されるフレームは、他の論理ネットワークに属する端末が発行するフレームであれば、ビーコンフレーム以外であってもよい。なお、他の論理ネットワークに属する端末装置が発行するフレームであるか否かの判断は、フレームのネットワーク識別領域(D5)を参照することによって行われるとよい。ループK02の終了条件が満たされると、制御端末は、ビーコンフレームを発行し(ステップS506)、ループK01の動作に戻る。
ステップS505において、制御端末は、ネットワークタイミングの同期処理を実行する。図15は、ネットワークタイミングの同期処理における各制御端末の動作を示すシーケンス図である。以下、図15を参照しながら、制御端末Cと制御端末Qとの間でのネットワークタイミングの同期処理を説明して、ステップS505におけるネットワークタイミングの同期処理における各制御端末の動作について理解する。
図15は、障害3aが取り除かれて、図8の状態になった直後からの時間経過を示す。制御端末Cが制御する論理ネットワーク1aのネットワークタイミングXは、L3の位置にあるとする。一方、制御端末Qが制御する論理ネットワーク1bのネットワークタイミングYは、L1の位置にあるとする。
まず、はじめにネットワークタイミングYを迎えた論理ネットワーク1bの制御端末Qは、ビーコンフレームの発行機会を伺うバックオフの後、ビーコンフレームL2を発行する。しかし、このとき、論理ネットワーク1a側で、何らかのフレームが発行されているなどして、コリジョンが生じ、論理ネットワーク1aにビーコンフレームL2が届かなかったとする。なお、このとき、論理ネットワーク1bに属する端末装置(P,R,S)の中には、コリジョンによってビーコンフレームL2を解釈できない端末装置が存在する可能性があるが、このような端末装置は、最近のビーコンフレームに記載の情報に従う機能を備えることによって、通常どおりのメディアアクセスを行うことができる。
論理ネットワーク1aの制御端末Cは、L3(ネットワークタイミングX)が訪れると、ビーコンフレームバックオフ処理によって、ビーコンフレームL4を発行する。このとき、ビーコンフレームL4が、論理ネットワーク1bに届いたものとする。なお、届いたという意味は、制御端末Qに直接ビーコンフレームL4が届いた場合に限らず、論理ネットワーク1bに属するいずれかの端末装置が届いた情報を制御端末Qに通知することによって、制御端末Qが外部ネットワークの存在を把握するといった場合も含む。
論理ネットワーク1aの存在を認知した制御端末Qは、次のネットワークタイミングを、ネットワークタイミングYとビーコンフレームL4を受信したタイミングとの時間差(L5)の1/2だけ伸ばす。つまり、論理ネットワーク1bにおいて、本来次のネットワークタイミングはL7の位置になるが、制御端末Qは、L5の1/2の時間であるL8だけ遅らせたタイミングL9の位置を、次のネットワークタイミングY’とする。このとき、制御端末Qは、L7のタイミングにおいて、ネットワークタイミングをずらす旨を通知するフレームを、論理ネットワーク1b内の端末装置に向けて発行するとよい。また、周期の終了予定時刻であったL7から補正後のネットワークタイミングY’(L9)までの時間L8における論理ネットワーク1bのメディアアクセスは、ネットワークタイミングをずらす旨を通知するフレームにおいて、指定されるものであるとよい。このように、他の論理ネットワークの検知をしてから、ネットワークタイミングを補正する一連の動作が、ステップS505における処理に対応する。
制御端末Qは、L9において補正後のネットワークタイミングを迎えると、L9を基点に通常のバックオフ処理を行い、ビーコンフレームの発行を伺う。論理ネットワーク1aの制御端末Cは、L10においてネットワークタイミングを迎え、L10を基点にバックオフを行って、ビーコンフレームL11を発行する。ここで、制御端末Qのバックオフによるキャリアセンス中に、ビーコンフレームL11の発行タイミングが到来したものとする。ビーコンフレームの発行のためのキャリアセンス中に、他のビーコンフレームL11を受信した場合、制御端末Qは、ビーコンフレームの発行を中止する。ただし、上記プロセスと同様に、制御端末Qは、別途、ネットワークタイミングL9とビーコンフレームL11を受信した時刻との差の1/2だけ遅らせるように、次のネットワークタイミングを補正する。つまり、ネットワークタイミングY’(L9)を基点としたネットワーク周期が時刻L12である場合、制御端末Qは、補正によって時刻L13にまで、ネットワークタイミングを延長する。
制御端末Qは、時刻L13を基点にしてビーコンフレーム発行のためのバックオフを行い、ビーコンフレームL15を発行する。ビーコンフレームL15は、論理ネットワーク1aのネットワークタイミングL14を基点とした端末Cによるビーコンフレームのバックオフキャリアセンス中に発行されたため、ビーコンフレームL15によって論理ネットワーク1aにはじめて論理ネットワーク1bの存在が知られる。制御端末Cの動作も、以下、制御端末Qと同様である。
以上のように制御端末を動作させることによって、二つのネットワークにおけるネットワークタイミングは、徐々に同期することとなる。そして、ビーコンフレームはバックオフ処理の後発行されるので、確実にビーコンフレームのコリジョンを発生させないような状態を保証することができる。したがって、制御端末は、他の論理ネットワークからのビーコンフレームを検知することが可能となるので、図9のステップS201に示した他の論理ネットワークからの干渉を検知する機構を提供することができる。
なお、ネットワークタイミングの補正量は、必ずしも1/2である必要はない。また、ネットワーク周期を短くすることによって、ネットワークタイミングを同期させるようにしてもよい。
なお、図7に示すフレーム構成は、一例であって、これに限定されるものではない。
なお、上記では、統合前の論理ネットワークが二つである場合について説明したが、統合前の論理ネットワークが三つの場合であっても同様にして、論理ネットワークを一つに統合することができる。具体的には、相違するネットワーク識別子を検知した制御端末は、図9に示すステップS202において、ユーザ識別子が一致する論理ネットワークが二つ以上存在すると判断した場合、ステップS204以降の動作に進んで、論理ネットワークを統合するか否かを判断する。そして、当該制御端末は、統合前の三つ以上の論理ネットワークの中から、統合後の論理ネットワークの制御端末を選び出して、論理ネットワークを統合する。
なお、上記実施形態では、制御対象となる論理ネットワークと他の論理ネットワークとが同一のユーザの管理下にあるか否かを判断するために、ユーザ識別子が一致するか否かを用いていたが(ステップS202参照)、これに限られるものではない。
なお、上記実施形態では、ネットワークの統合が他の論理ネットワークの端末装置に許可されるか否かを判断するために、統合要求フレームおよびその応答を用いることとしたが、当該他の論理ネットワークの端末装置によって統合が許可されたか否かが分かるのであれば、これに限られるものではない。
なお、上記実施形態では、論理ネットワークを統合するか否かを決定するために、ステップS202,S204〜S205,S206〜S207を全て実行することとしたが、いずれか一つの処理、すなわち、同一ユーザの管理下にあるか否かを判断する処理、ユーザによって許可されているか否かを判断する処理、または他の論理ネットワークの端末装置に許可されるか否かを判断する処理の内いずれか一つの処理が実行されて、論理ネットワークを統合するか否かが決定されてもよい。
なお、図10のように統合された後、何らかの要因によって再度障害3aのような障害が生じた場合、以下のようなプロセスに従うとよい。
旧論理ネットワーク1b側に所属していた端末装置P〜Sは、制御端末Qとの間の通信が阻害されないため、障害3aによってメディアアクセスに問題が生じることはない。
一方、旧論理ネットワーク1a側に属していた端末装置A〜Dは、障害3aの影響によって制御端末が不在の状態となってしまう。端末装置は、定期的またはある時間範囲内に発行されると期待されるビーコンフレームの発行周期よりもある程度長い期間ビーコンフレームの受信が行われなかった場合、制御端末が不在であると判断する。このように、端末装置は、制御端末が不在となっているか否かを判断するための制御端末不在判断部を備える。制御端末が不在であると判断した場合、端末装置は、図3に示すプロセスフローとほぼ同じプロセスに従うとよい。つまり、制御端末が不在であると判断した端末装置は、図3と同様に制御端末として起動するためのプロセスを経て、最初にビーコンフレームを発行した端末装置が制御端末となる。制御端末とならなかった端末装置は、図3に示すように、認証要求を行って、認証処理を受け、被制御端末として稼動する。
なお、元々制御端末であった端末装置Cが、優先的に制御端末として稼動できるようにしてもよい。これは、例えば、元々制御端末であった端末装置には、制御端末の不在を判断するための期間が短く設定されることによって実現可能である。
ここでは、障害3aのように、同じ位置で再度障害が発生した例を記したが、統合後の障害発生はこの位置に限るものではない。
以上のように、本発明に基づく方法を用いると、ネットワークの論理統合及び論理分離は、通信状態によって幾度となく実施することが可能となり、ユーザの指定や通信状況に応じて、動的に最適な論理構成を自動的に構築することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、障害の解消後、各端末装置からのフレームは、全ての端末装置まで届くこととした。第2の実施形態では、各端末装置からのフレームが全ての端末装置まで直接届かない場合における論理ネットワークの統合方法について説明する。
第2の実施形態において、システム全体の構成は、第1の実施形態と同様であるので、図1を援用することとする。また、第2の実施形態において、各端末装置の機能的構成は、第1の実施形態と同様であるので、図2を援用することとする。第2の実施形態において、各端末装置は、制御端末モードとして稼働可能であると共に、被制御端末モードとしても稼働可能である。また、各端末装置は、一度制御端末を決定したとしても、その後のネットワーク形態や伝送路状態などに応じて、論理ネットワーク内での制御端末を交代することができる機能を有しているとする。各端末装置は、図7に示すフォーマットのフレームを送受信する。各端末装置が送受信するフレームにおけるBSSID領域D4内のユーザ識別領域D6で示されるユーザ識別子は、それぞれ同一であるとする。また、ユーザ設定領域D7には、論理ネットワークの統合を禁止しない旨が設定されているものとする。
図16は、最初に形成された論理ネットワーク1cおよび1dを示す模式図である。なお、図16では、通信メディアの記載を省略している(以下同様)。図16に示すように、元々、端末装置EおよびFを備える論理ネットワーク1cと端末装置XおよびYを備える論理ネットワーク1dとが存在していたとする。端末装置Fが論理ネットワーク1cの制御端末であるとする。端末装置Xが論理ネットワーク1dの制御端末であるとする。
図17は、端末装置Gが、論理ネットワーク1cに新たに参加したときのシステム全体構成を示す模式図である。端末装置Gは、論理ネットワーク1cに属するものの、論理ネットワーク1dにおけるフレームが受信可能な位置に存在する。そのため、端末装置Gが送信したフレームは、論理ネットワーク1d内における端末装置に受信されてしまう。すなわち、論理ネットワーク間の干渉が生じてしまう。
たとえば、通信メディアとして電灯線を用いた場合、比較的大きな家屋では、通信信号の減衰によって、信号が到達し合わない位置に配置されている端末装置が存在する可能性がある。このような場合、図16に示すように、二つの論理ネットワークが形成される可能性がある。そのような状況の下、どちらの論理ネットワークとも通信可能な位置に新たに通信端末が接続された場合、図17に示すような状況が発生する。
図18は、端末装置Gが通信可能な範囲J1を示す図である。図18に示す状態において、端末装置Xは、端末装置Gが送信するフレームを受信することとなるので、論理ネットワーク1cの存在を検知することができる。しかし、被制御装置である端末装置Yは、端末装置G,E,Fが送信するフレームを受信することができないので、論理ネットワーク1cの存在を検知することはできない。したがって、隣接する論理ネットワークからの干渉を検知して、検知結果に基づいて効率的な制御を実行するができる端末装置を制御装置に設定するとすれば、端末装置Xが、論理ネットワーク1dの制御端末として最適である。したがって、制御端末は、端末装置Xからその他の端末装置に交代されることはない。
上記のような状況における端末装置Xの動作を、図9を参照しながら説明する。まず、端末装置Xの制御処理部101(以下、単に、端末装置Xという)は、端末装置Gからのフレームを受信することによって、自身が管理する論理ネットワーク1dのネットワーク識別子と異なるネットワーク識別子を含むフレームを受信したと検知する(ステップS201)。
次に、端末装置Xは、受信したフレームに含まれるユーザ識別子が自身の論理ネットワーク1dが属するユーザ管理ネットワーク1のユーザ識別子と一致するか否かを判断する(ステップS202)。ここでは、ユーザ識別子が一致することとなるので、端末装置Xは、ステップS204の動作に進む。
ステップS204において、端末装置Xは、通知されたフレームに含まれるBSSID領域D4内のユーザ設定領域D7を参照して、自装置が制御する論理ネットワークに関する設定を確認する(ステップS204)。
制御端末Xは、ステップS204で確認した内容に基づいて、論理ネットワークの統合が許可されているか否かを判断する(ステップS205)。論理ネットワークの統合が許可されていない場合、制御端末Xは、処理を終了する。一方、論理ネットワークの統合が許可されている場合、制御端末Xは、ステップS206の動作に進む。
ステップS206において、制御端末Xは、統合対象の論理ネットワークに対して、統合要求フレームを生成して、送受信部102に送信させる。このとき、制御端末Xは、同時に、ある満了値を持つようにタイマ部105を起動して、上記統合要求フレームに対する応答を待つ。
次に、制御端末Xは、統合要求フレームに対する応答が論理ネットワークの統合を許可するものであるか否かを判断する(ステップS207)。
ここで、制御端末Xからの統合要求フレームを受信することができる論理ネットワーク内の端末装置は、端末装置Gだけである。端末装置Gは、現在、制御端末として動作していないので、統合要求を拒絶する旨のフレーム(以下、拒絶フレームという)を送信する。
したがって、端末装置Xは、当該拒絶フレームに基づいて、ステップS207において、論理ネットワークの統合が許可されていないと判断し、処理を終了する。
次に、拒絶フレームを送信した後の端末装置Gの動作について説明する。端末装置Gは、隣接する論理ネットワーク1dから何らかのフレーム(ここでは、統合要求フレーム)を受信しているので、外部干渉がある旨を自身が属する論理ネットワーク1cの制御端末である端末装置Fに対して通知する。
本実施形態では、隣接する論理ネットワークからの干渉を検知している端末装置が制御端末として設定される仕組みを有しているとしているので、端末装置Fは、外部干渉が発生している事実を検知することによって、制御端末を交代すべきか否かの検討を開始する。
制御端末を交代すべきか否かを検討するにあたり、制御端末である端末装置Fは、自身が制御する論理ネットワーク1cに属する端末装置から統計情報を収集して、収集した統計情報に基づいて、制御端末として適切な端末装置を認識して、当該端末装置に対して、制御端末としての地位を交代してよい。
ここで、統計情報とは、所定の間隔における論理ネットワーク内の端末装置の通信状況を把握することができる情報である。たとえば、統計情報は、通信可能な端末の識別子、通信可能な端末数、ネットワーク識別子、フレームの発行数、フレームの受信数、検知フレーム数、フレーム再送数、受信フレーム信号レベル、およびこれらのパラメータの関連情報などである。
統計情報の収集を行う方法は、たとえば、以下のようである。
図19は、論理ネットワーク1cにおける統計情報の収集プロセスの一例を示すシーケンス図である。図19において、H1〜H4は、制御端末Fが定期的に発行するビーコンフレーム(ブロードキャスト)である。H6及びH7は、それぞれ、端末装置E及び端末装置Gが制御端末Fに対して発行する、収集した統計情報を通知する制御フレーム(統計情報通知フレーム)である。なお、図19では、ビーコンフレーム及び統計情報通知フレームのみを記載しているが、このほかにも通常データ通信フレームが、論理ネットワーク1c内においても、隣接する論理ネットワーク1dにおいても発行されているものとする。統計情報収集期間(H5)は、こうしたデータ通信フレームの検知などによって、統計情報を収集する時間期間を表す。
図20は、第2の実施形態で用いられるビーコンフレームのフォーマットの一例を示す図である。ビーコンフレームは、通常のフレームと同様にフレームヘッダ部G1と、データボディ部G2とからなる。フレームヘッダ部G1の中には、統計情報収集フラグフィールドG3が含まれている。統計情報収集フラグフィールドには、統計情報収集フラグが記載され、このフラグがTRUEであるときは、統計情報を収集するものと規定する。つまり、ビーコンフレームを受信した端末装置は、ビーコンフレームの統計情報収集フラグフィールドG3を参照して、TRUEであれば統計情報の収集を開始(または、引き続き収集)し、FALSEであれば統計情報の収集を停止(または、引き続き行わない状態を維持)する。なお、統計情報収集フラグの設定は制御端末が行うものであり、制御端末も同様に統計情報収集フラグの規定に則り、自端末での統計情報収集を行う。
図19において、H1、H4のビーコンフレームは、統計情報収集フラグがFALSEであるとする。H2、H3のビーコンフレームは、統計情報収集フラグがTRUEであるとする。よって、図19に示すように、統計情報を収集する期間はH5で示す時間期間である。ビーコンフレームH1の統計情報収集フラグフィールドG3に記載されている統計情報収集フラグはFALSEであるから、端末装置E及び端末装置Gは、統計情報の収集を行わない。ビーコンフレームH2の統計情報収集フラグフィールドG3を参照した端末装置E及び端末装置Gは、統計情報収集フラグがTRUEであることから、統計情報の収集を開始する。そして、ビーコンフレームH4を受信すると、統計情報収集フラグフィールドG3に記載されている統計情報収集フラグはFALSEであるから、端末装置E及び端末装置Gは、統計情報の収集を停止する。ここで、統計情報の収集を停止した場合、被制御端末(端末装置E、端末装置G)は収集した統計情報を含む統計情報通知フレーム(H6、H7)を生成して制御端末に向けて発行し、制御端末に収集した統計情報を通知する。
このように、制御端末Fの制御によって、論理ネットワーク1cに属する端末の統計情報は、制御端末に通知され、制御端末に集められる。
ここでは、論理ネットワーク1cにおいて、端末装置Gのみが隣接する論理ネットワーク1dの干渉を検知しているので、端末装置Gから通知される統計情報が最も外部干渉を検知していることを示すこととなる。したがって、制御端末である端末装置Fは、端末装置Gと制御端末を交代する。
しかし、端末装置Gと端末装置Eとは、直接通信できないので、端末装置Gは、端末装置Gの発行するビーコンフレーム、端末装置Eへ送信すべきフレーム、および端末装置Eから端末装置Gへ送信されてくるフレームを中継するように、端末装置Fに対して要求する。これに応じて、端末装置Fは、中継端末として稼働することとなる。中継端末も、制御端末によって通信メディアへのアクセスの機会が制御される端末であるので、被制御端末である。稼働モード設定部106は、端末装置が中継端末として稼働するか否かも設定できるものとする。
図21は、端末装置Fが中継端末として稼働し、端末装置Gが制御端末として稼働する場合のシステム全体の構成を示す模式図である。なお、図21に示す状態において、論理ネットワーク1cと論理ネットワーク1dとの間に干渉は生じているが、論理ネットワーク1c内において、これ以上制御端末は交代しないものとする。
図21に示すようなシステムが構築された場合、論理ネットワーク1dの制御端末である端末装置Xまたは論理ネットワーク1cの制御端末である端末装置Gは、外部からの干渉を検知することとなる(図9のステップS201参照)。したがって、論理ネットワーク1dの制御端末である端末装置Xまたは論理ネットワーク1cの制御端末である端末装置Gは、図9に示す動作を実行することとなる。ここでは、論理ネットワーク1dの制御端末である端末装置Xが、始めに干渉を検知し、図9に示す動作を実行することとする。
上述と同様にして、端末装置Xは、ステップS206の動作まで進み、統合要求フレームを発行する。このとき、端末装置Gは、統合を許可する旨のフレーム(以下、許可フレームという)を送信するとする。それに応じて、端末装置Xは、論理ネットワークの統合が許可されたと判断して(ステップS207のYESへの流れ)、統合相手の論理ネットワーク上の制御端末(端末装置G)と、ネットワーク情報をやり取りして、統合後の制御端末、統合のタイミング、および統合後のネットワーク識別子を決定する(ステップS208,S209)。但し、第2の実施形態では、被制御端末の中に、他の端末装置からのフレームを中継する中継端末が存在するため、ステップS208の動作は、第1の実施形態と少し異なる。
図22は、第2の実施形態におけるステップS208の動作を詳しく示すフローチャートである。以下、図22を参照しながら、第2の実施形態におけるステップS208の詳しい動作について説明する。
まず、端末装置Xは、ユーザ管理ネットワーク1内の端末装置毎に中継評価値を算出する(ステップS301)。
ここで、中継評価値について詳しく説明する。論理ネットワーク1dの制御端末である端末装置Xは、定常的に被制御端末から通信状態に関する統計情報を受け取っているものとする。そのため、端末装置Xは、論理ネットワーク1dにおける各被制御端末の通信範囲を把握している。論理ネットワーク1cの制御端末である端末装置Xは、定常的に被制御端末から通信状態に関する統計情報を受け取っているものとする。そのため、端末装置Gは、論理ネットワーク1cにおける各被制御端末の通信範囲を把握している。したがって、端末装置Xと端末装置Gとは、相互に通信することによって、論理ネットワーク1dにおける各被制御端末の通信範囲と論理ネットワーク1cにおける各被制御端末の通信範囲とを認識し、ユーザ管理ネットワーク1全体に属する被制御端末の通信可能範囲を認識することができる。なお、ここでは、各被制御端末は、通信可能な端末装置の識別子を統計情報として制御端末に通知しているものとする。
図23は、ユーザ管理ネットワーク1全体内の被制御端末の通信可能範囲を示す図である。図23において、範囲L1は、端末装置Eの通信可能範囲を示す。範囲L2は、端末装置Fの通信可能範囲を示す。範囲L3は、端末装置Gの通信可能範囲を示す。範囲L4は、端末装置Xの通信可能範囲を示す。範囲L5は、端末装置Yの通信可能範囲を示す。端末装置XおよびGは、図23に示すように、ユーザ管理ネットワーク1全体に属する被制御端末の通信可能範囲を認識することができる。なお、通信可能範囲の認識は、端末装置の識別子を対応させることによって認識されてもよい。
図24は、図22のステップS301に示す中継評価値を算出するための動作の詳細を示すフローチャートである。以下、図23および図24を参照しながら、図22のステップS301に示す中継評価値を算出するための動作の詳細について説明する。
まず、端末装置Xは、統計情報に基づいて、自身が制御する論理ネットワーク1dにおける各被制御端末の通信範囲を認識する(ステップS401)。
次に、端末装置Xは、端末装置Gと通信することによって、他の論理ネットワーク1cにおける各被制御端末の通信範囲を認識する(ステップS402)。
次に、端末装置Xは、ステップS401で認識した論理ネットワーク1dにおける各被制御端末の通信範囲とステップS402で認識した論理ネットワーク1cにおける各被制御端末の通信範囲とに基づいて、ユーザ管理ネットワーク1全体に属する被制御端末の通信可能範囲を認識する(ステップS403)。
次に、端末装置Xは、自装置の端末群番号kを0とし、中継評価値n(k)を0とする(ステップS404)。
次に、端末装置Xは、制御端末である自装置を基準端末群とする(ステップS405)。
次に、端末装置Xは、ユーザ管理ネットワーク1内の全ての端末装置について中継評価値を算出したか否かを判断する(ステップS406)。全て算出している場合、端末装置Xは、処理を終了する。一方、全て算出していない場合、端末装置Xは、論理ネットワーク1dに属しているか、それとも論理ネットワーク1cに属しているかは問わずに、基準端末群に属する端末装置が通信できる端末装置の内、中継評価値が未だ算出されていない端末装置を抽出し、端末群番号をk+1とする(ステップS407)。
次に、端末装置Xは、ステップS404において端末群番号がk+1とされた端末装置の中継評価値n(k+1)を、n(k)+1とする(ステップS408)。
次に、端末装置Xは、端末群番号がk+1の端末装置を基準端末群として、kをk+1に置き換えて(ステップS409)、ステップS406の動作に戻る。
図24に示す動作によって、ユーザ管理ネットワーク1内の全ての端末装置の中継評価値が算出される。
図22の説明に戻る。ステップS301の後、端末装置Xは、自身が統合後の論理ネットワークの制御端末となったときのネットワークの効率を示す第1のネットワーク評価値N1を算出する(ステップS302)。たとえば、ネットワーク評価値は、ユーザ管理ネットワーク1内における各端末装置の中継評価値の合計や、ユーザ管理ネットワーク1内における各端末装置の中継評価値の最大値である。
次に、端末装置Xは、統合対象となる論理ネットワーク1cの制御端末Gと通信して、制御端末Gが統合後の論理ネットワークの制御端末となったときのネットワークの効率を示す第2のネットワーク評価値N2を取得する(ステップS303)。ステップS303の動作の際、論理ネットワーク1cの制御端末である端末装置Gは、図23に示したような各端末装置の通信範囲を把握し、図24に示すフローチャートに従って各端末装置の中継評価値を計算し、当該中継評価値に基づいて、ネットワーク評価値を算出する。そして、端末装置Gは、算出したネットワーク評価値を端末装置Xに送信する。なお、端末装置Xは、ユーザ管理ネットワーク1内における全ての端末装置の通信可能範囲を認識しているので、第2のネットワーク評価値N2を算出することもできる。
次に、端末装置Xは、第1のネットワーク評価値N1と第2のネットワーク評価値N2とが一致するか否かを判断する(ステップS304)。一致する場合、端末装置Xは、自身が統合後の制御端末となると決定し、統合タイミングを決定して、端末装置Gに通知し(ステップS305)、ステップS209の動作に進む。その後、端末装置Xは、新たな論理ネットワークの制御端末として動作する(ステップS212)。
ステップS304において、第1のネットワーク評価値N1と第2のネットワーク評価値N2とが等しくない場合、端末装置Xは、第1のネットワーク評価値N1が第2のネットワーク評価値N2よりも大きいか否かを判断する(ステップS306)。第1のネットワーク評価値N1が第2のネットワーク評価値N2よりも大きい場合、端末装置Xは、ステップS305の動作に進む。一方、第1のネットワーク評価値N1が第2のネットワーク評価値N2よりも大きくない場合、端末装置Xは、端末装置Gが統合後の論理ネットワークの制御端末となるように、端末装置Gに対して通知し、自装置が統合後の論理ネットワークの中継端末として稼働すると設定するよう稼働モード設定部106に命じ(ステップS307)、ステップS209の動作に進む。これに応じて、稼働モード設定部106は、中継端末として稼働するように設定する。その後、端末装置Xは、ステップS209の以降の動作に進んで、端末装置Gが決定した統合タイミングにしたがって、被制御端末として動作する(ステップS213)。
図25および図26は、第2の実施形態において、統合後の制御端末を決定する処理の流れを具体的に説明するための図である。
図25には、端末装置Gによって算出される中継評価値が示されている。図25に示すように、端末装置Gと直接通信できる端末装置(図25では、XとF)の中継評価値は、1となっている。一つの端末装置を介して端末装置Gと通信できる端末装置(図25では、EとY)の中継評価値は、2となっている。この場合、端末装置Gは、中継評価値を合計して、第2のネットワーク評価値N2を6とする。あるいは、端末装置Gは、中継評価値の最大値を求めて、第2のネットワーク評価値N2を2とする。このように、ネットワーク評価値は、如何に短い時間でフレームが到達可能であるかを示す論理ネットワークの効率を示している。
図26には、端末装置Xによって算出される中継評価値が示されている。図26に示すように、端末装置Xと直接通信できる端末装置(図26では、GとY)の中継評価値は、1となっている。一つの端末装置を介して端末装置Xと通信できる端末装置(図26では、F)の中継評価値は、2となっている。さらに、二つの端末装置を介して端末装置Xと通信できる端末装置(図26では、E)の中継評価値は、3となっている。この場合、端末装置Xは、中継評価値を合計して第1のネットワーク評価値N1を7とする。あるいは、端末装置Xは、中継評価値の最大値を求めて、第1のネットワーク評価値N1を3とする。
図25および図26に示す例において、端末装置Xにとって、第1のネットワーク評価値N1は、7であり、第2のネットワーク評価値N2は、6である。よって、N1<N2であるので、端末装置Xは、ステップS306から“NO”への流れに進む。したがって、端末装置Xは、端末装置Gを統合後の制御端末として決定する。
端末装置Xは、端末装置Gに対して、論理ネットワーク1dの制御権を譲る。このとき、端末Xは、制御端末Gに対して、論理ネットワーク1dに関するネットワーク情報を渡すとよい。ここでいう、ネットワーク情報とは、ネットワークに帰属する端末装置の識別子や、論理ネットワーク1dで運用されていた帯域予約に関する情報等を含むとよい。その後、端末装置Xは、端末装置Gが発行するビーコンフレームや、元の論理ネットワーク1cに属していた端末装置からのフレームを元の論理ネットワーク1dに属していた端末装置へ中継する中継端末として、または、元の論理ネットワーク1dが属していた端末装置からのフレームを元の論理ネットワーク1cに属していた端末装置へ中継する中継端末として、機能する。こうした中継機能を実現するために、端末装置Xは、中継端末として、普通の被制御端末の持つ情報に加えて、こうしたネットワーク論理構成に関する情報、または、中継要求に関する情報を持つ(これらを中継情報という)。また、端末装置Xは、受信したフレームから、中継情報を参照して、リピート発行を行うべきフレームを選択する機能と、受信したフレームをリピート発行する機能とを備える。これは、端末装置Fについても同様である。
図27は、統合後の論理ネットワーク1eの構成を示す模式図である。図27に示すように、端末装置Gが制御端末となり、端末装置FおよびXが中継端末となって、一つの論理ネットワーク1eが運営される。論理ネットワーク1eのネットワーク識別子は、元の論理ネットワーク1cのネットワーク識別子と同一であるとよい。
以下に、中継装置が存在する中継システムの実現例を示す。
ネットワーク内で発行されるフレームのフォーマットは、先に記したように本例でも図20を用いることとする。すなわち、図20に示すように、フレームは、統計情報収集フィールドG3を含む。アドレス領域D3には、宛先端末識別子領域D8と、送信元端末識別子領域D9と、フレームID領域D10とが存在する。フレームID領域D10には、端末ごとに固有の発行フレームを一意に決めるIDを割り振るフレームIDが記載される。また、送信元端末識別子領域D9と、フレームID領域D10とを合わせて、フレーム識別子領域D11とする。送信元端末識別子は、ネットワーク内の端末装置を一意に決定する識別子であるから、送信元端末識別子領域D9と、フレームID領域D10とを合わせた領域に記載の識別子(フレーム識別子)は、ネットワーク内でフレームを一意に定める。なお、フレームIDは同じIDが割り振られるまでに十分な時間を要するような大きさまで取りうることができ、フレームID領域D10はこうした要求を満たすようなサイズに確保されている。
制御端末、および、中継端末に設定されている端末装置は、自分の発行するフレームが届く範囲の端末装置を把握している。これは、中継端末が設定される際、本例では前述の通り、元々制御端末であった端末装置が中継端末となるので、中継端末となる端末装置は、元のネットワークに属していた被制御端末の識別子を記憶しておき、さらに、後でネットワークに参加した端末装置の識別子を追加記憶する。これによって、中継端末となる端末装置は、中継に必要な情報(中継情報)を容易に準備することができる。
制御端末、および、中継端末は、フレームを検知した際、検知したフレームがユニキャスト、またはマルチキャストであって、かつ宛先端末識別子領域D8及び領域送信元端末識別子D9に記載の端末識別子がどちらも自分の発行するフレームが届く範囲の端末装置、または端末装置群を示す場合、中継処理を行わない。
一方、制御端末、および、中継端末は、フレームを検知した際、検知したフレームがユニキャスト、またはマルチキャストであって、かつ宛先端末識別子領域D8及び領域送信元端末識別子D9の内、どちらか一方でも、自分の発行するフレームが届く範囲外の端末装置の端末識別子、または端末装置群の識別子を示す場合、または、検知したフレームがブロードキャストである場合、中継処理を行う。
中継処理とは、フレーム識別子に対して、一回だけそのまま受信したフレームを再発行する処理である。再発行されたフレームであるか否は、フレーム識別子領域D11を参照することで判断することができる。従って、制御端末及び中継端末は、受信したフレームを一回だけ再発行するという処理を実現することができる。なお、制御端末及び中継端末は、既に再発行をしたか否かの判断を行うために、一度再発行したフレーム識別子を記憶しておく。なお、ある程度の時間、または中継処理によるフレーム再発行の数等に応じて、制御端末及び中継端末は、一度再発行したフレーム識別子の記憶を解放するとよい。
ここで記載した中継システムを構築する端末装置は、比較的小規模なネットワーク(中継段数が少ない)においては、無駄なフレーム発行をそれほど頻発することもなく、比較的容易に中継システムを構築することができる。
このように、第2の実施形態によれば、フレームの中継が必要な場合であっても、最適な端末装置が統合後の制御端末として選定された上で、論理ネットワークが統合されることとなる。したがって、ネットワーク全体の効率が向上するように、統合が行われることとなる。
なお、第2の実施形態では、端末装置Xによって、統合後の端末装置をXにするか、それともGにするか決定された。しかし、端末装置Gによって、決定されてもよい。この場合、上記と同様にして、端末装置Gが、二つのネットワーク評価値を得て、統合後の制御端末を決定するようにすればよい。
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、同一チャネルで通信を行うネットワークの統合及び干渉に関する例を述べた。第3の実施形態では、無線LAN等で用いられている、伝送帯域を複数のチャネルに分けて使用するネットワーク形態を例にとる。各端末の機能構成は、第1の実施形態と同様であるので、図2を援用する。なお、送受信部102は、周波数的に区分されたチャネルを定義して管理しており、通信に使用するチャネルに適用した送受信を行う機能を有している。第3の実施形態において、各端末装置は、制御端末モード(以下、第3の実施形態ではアクセスポイントモードと言う)と、被制御端末モード(以下、第3の実施形態ではステーションモードと言う)ととして稼動可能である。また、各端末装置は、アクセスポイントモード、ステーションモードを端末稼動中に変更する機能を有している。また、アクセスポイントは、ネットワークで使用するチャネルを変更することができ、かつ自分に帰属するステーションに対してチャネルの変更を伝える手段を有する。各端末装置は、稼動中に通信に使用するチャネルを変更できる。
図28は、第3の実施形態に係る無線ネットワークの構成の一例を示す図である。図28において、無線ネットワークn1は、無線端末J、K、及びLで構成されている。無線ネットワークn1のアクセスポイントは、無線端末Jであるとする。無線ネットワークn1の到達範囲は、w1であるとする。無線ネットワークn2は、無線端末M、N、及びOで構成されている。無線ネットワークn2のアクセスポイントは、無線端末Nであるとする。無線ネットワークn2の到達範囲は、w2であるとする。アクセスポイントである無線端末Jと無線端末Nとは、外部共用メディアHによって互いに接続されている。外部共用メディアHは、無線であってもよいし、有線メディアであってもよい。
図28において、無線ネットワークn1及びn2は、それぞれの電波到達範囲w1、w2をカバーしあっている。通例の無線ネットワークでは、伝送チャネルを周波数的に区分する仕組みになっているので、この仕組みによって、隣接ネットワークの干渉問題が回避されていた。つまり、無線ネットワークn1及びn2において、w1、w2で示すように、無線電波の到達範囲は、干渉しているように見える。しかし、アクセスポイントである無線端末J及びNは、お互いに異なる周波数帯で定義されたチャネルを使用している。そのため、干渉状態とはならない。
通例の無線プロトコルでは、2つのネットワーク間をまたぐ通信は、それぞれのアクセスポイントが外部共用メディアHを介して中継を行うことによって実現されている。しかし、無線ネットワークn1と無線ネットワークn2とを敢えて異なるネットワークとして区別する必要がないにも関わらず、無線端末J、無線端末N及び外部共用メディアHを介さなければ中継を行えないとすると、ネットワーク間の通信は、非効率的なものとなってしまう。例えば、無線端末Kから無線端末Oへの通信を行いたい場合、2つの無線端末から送信された無線電波は十分に相手の無線端末に届くので、2つの無線端末は、直接通信を行うことができる。しかし、通例の無線プロトコルでは、無線端末Kの発行するフレームは、無線端末Jに転送され、外部共用メディアHを介して、無線端末Nに渡され、無線端末Nによって無線端末Oに転送される。これは、各アクセスポイントに不要な動作を行わせてしまうだけでなく、外部共用メディアHはもちろん、無線ネットワークn1及びn2のトラフィックも無為に増大させてしまう。
こうした状況においても、本発明の適用が有効である。図29は、近隣に他の無線ネットワークの存在を検知したアクセスポイントの動作を示すフローチャートである。以下、図29を参照しながら、近隣に他の無線ネットワークの存在を検知したアクセスポイントの動作について説明する。なお、図29に示すフローチャートは、図9に示すフローチャートとほぼ同様であるので、適宜、説明を割愛する。
まず、無線ネットワークn1又はn2のアクセスポイントが、他の無線ネットワークの存在を何らかの方法によって認知すると(ステップS601)、図29のフローが開始する。ここで、アクセスポイントは、直接他の無線ネットワークで発行されるデータ転送に付随する電波を検知することによって、他の無線ネットワークの存在を検知してもよいし、他の無線ネットワークのデータ転送に付随する電波を検知したステーションが自身の帰属するアクセスポイントに対して検知した旨を通知することによって、他のネットワークの存在を検知してもよい。また、アクセスポイントは、ネットワーク内で使用しているチャネル以外のチャネルのキャリアセンスを定期的に行って、他の無線ネットワーク上の通信の有無を判断する機能を有し、かつ、BSSID領域の解釈によって、他の無線ネットワークのデータ転送を検知する機能を有することによって、他の無線ネットワークの存在を検知してもよい。
次に、他の無線ネットワークの存在を検知したアクセスポイントは、ユーザ識別子が一致するか否かを判断する(ステップS602)。ユーザ識別子が一致しない場合、アクセスポイントは、ネットワーク干渉問題として、ネットワーク干渉の対象となる検知した無線ネットワークと自身が属する無線ネットワークとの間の調停を行う(ステップS603)。一方、ユーザ識別子が一致する場合、アクセスポイントは、ステップS604の動作に進む。
ステップS604において、アクセスポイントは、ユーザ設定領域の内容及び自身が属する無線ネットワークの設定内容を確認し、確認した設定内容に基づいて、ネットワークの統合を許可するか否かを判断する(ステップS605)。ネットワークの統合を許可する場合、アクセスポイントは、統合の対象となる無線ネットワークに対して、ネットワーク統合要求を発行する(ステップS606)。次に、アクセスポイントは、ネットワーク統合要求が他の無線ネットワーク上のアクセスポイントに許可されたか否かを判断する。許可された場合、アクセスポイントは、統合後の新しいアクセスポイントを決定し(ステップS608)、ステップS609の動作に進む。
ステップS609では、アクセスポイント間の交渉によって、結合後のチャネルが決定する。統合後は、無線ネットワークn1に所属していた無線端末も、無線ネットワークn2に所属していた無線端末も同じチャネルを用いて通信を行えるようにするために、統合後のチャネルがアクセスポイント間で決定される。例えば、ステップS608で新たなアクセスポイントとして決定された無線ネットワークのチャネルが統合後のチャネルと決定されてもよいし、統合前のどちらの無線ネットワークも使用していなかったチャネルが統合後のチャネルと決定されてもよい。ただし、例えば、無線ネットワークn1に対して、無線ネットワークn2以外に、統合されないが近接している無線ネットワークn3が存在していたとする。このような場合、ステップS609で決定されるチャネルは、無線ネットワークn3が使用していないチャネルでなければならない。ステップS609での交渉において、無線ネットワークn1のアクセスポイントは、このような無線ネットワークn3の存在を、無線ネットワークn2のアクセスポイントに伝えることによって、統合後のチャネルを決定する。
ステップS609の後、アクセスポイントは、統合タイミングと、統合後のネットワーク識別子とを決定し(ステップS610)、統合タイミングが到来したか否かを判断する(ステップS611)。統合タイミングが到来した場合、アクセスポイントは、ステップS612の動作に進む。
ステップS612において、アクセスポイントは、ステップS609で決定したチャネルに、通信チャネルを変更する。変更を要する場合、アクセスポイントは、配下のステーションに対してチャネルの変更宣言を行う。また、チャネルの変更宣言を受けたステーションは、通信チャネルを指定されたチャネルに変更する。なお、統合前に使用していたチャネルと同じチャネルを使用する場合、アクセスポイントは、ステップS612では何も行わない。
その後、アクセスポイントは、統合後のモードがアクセスポイントモードであるか、ステーションモードであるかを判断し(ステップS613)、アクセスポイントモードであれば、アクセスポイントとしての動作を開始し(ステップS614)、ステーションモードであれば、ステーションとしての動作を開始する(ステップS615)。
第3の実施形態に示すように、既存無線LANのような、周波数的に複数のチャネルを使用するネットワークプロトコルにおいても、本発明を適用することができる。なお、当然、無線LANに限らず、複数のチャネルを使用するネットワークプロトコルに対して、本発明を適用することができる。
なお、上記では、統合前の論理ネットワークが二つの場合について説明したが、統合前の論理ネットワークが三つ以上の場合であっても、同様に論理ネットワークを統合することができる。具体的には、相違するネットワーク識別子を検知した制御端末は、ステップS402において、統合対象となる全ての他の論理ネットワーク内に属する端末装置の通信可能範囲を認識し、ステップS403において、ユーザ管理ネットワーク内における全ての端末装置の通信可能範囲を認識する。そして、当該制御端末は、認識した通信可能範囲に基づいて、自身が統合後の論理ネットワークの制御端末となったときのネットワーク評価値、および他の論理ネットワークにおける制御端末が統合後の論理ネットワークの制御端末となったときのネットワーク評価値を求めて、最も高いネットワーク評価値を有する制御端末を統合後の論理ネットワークの制御端末に決定する。
図30は、本発明を電灯線通信に応用したときのシステム全体の構成を示す模式図である。図30に示すシステムでは、通信メディアとして、電灯線3bを用いている。各端末装置100は、コンセントプラグ100aを有している。コンセントプラグ100aは、端末装置100の電源供給部および送受信部102に接続されている。コンセントプラグ100aは、コンセント100bに接続される。これによって、端末装置100に対して、電源が供給されると共に、送受信されるデータが入出力される。通信メディアである電灯線3bは、電流計ブレーカ2bを介して、宅外の商用電源回線2aと接続される。端末装置100には、PC、DVD、デジタルテレビ(DTV)、ハブ等が接続されている。ハブには、アクセスポイント、PC、LAN、ルータ等が接続される。アクセスポイントによって、無線LANが構成される。また、ルータの先には、インターネットが接続される。このように、本発明を電灯通信に応用することによって、家庭内やオフィス内で、複数の論理ネットワークが形成された場合、必要に応じて、自動的に論理ネットワークを統合することができ、ネットワークの効率的利用が可能となる。なお、端末装置100は、家電に内蔵されていてもよいことは言うまでもない。
なお、当然、本発明は、電灯線通信や無線に限定されるものではない。電灯線や無線以外にも、電話線、テレビアンテナ線、専用回線、さらには、屋外電力線、屋外電話線、光ファイバ線、ケーブルテレビ線、専用音声線など、デジタル通信メディアであれば、本発明は、様々なメディアに応用することができる。
なお、上述の各実施形態は、記憶装置(ROM、RAM、ハードディスク等)に格納された上述の処理手順をCPUに実行させることができるプログラムを、CPUに実行させることによっても実現できる。この場合、当該プログラムは、記録媒体を介して記憶装置内に格納された上で実行されてもよいし、記録媒体上から直接実行されてもよい。ここでの記録媒体は、ROMやRAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクメモリ、CD−ROMやDVD、BD等の光ディスク、メモリカード等の記録媒体をいう。また、ここでいう記録媒体は、電話回線や搬送路等の通信媒体も含む概念である。
なお、制御処理部101は、集積回路であるLSIとして実現されてもよい。この機能ブロックは、1チップ化されていてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されていてもよい。ここでは、LSIといったが、集積度の違いによっては、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと称呼されることもある。また、集積回路化の手法は、LSIに限られるものではなく、専用回路または汎用プロセッサで集積回路化を行ってもよい。また、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field
Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを用いてもよい。さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
なお、本発明で開示する発明は、例えば一般住宅、マンション等の隣接集合住宅、オフィス、工場、商業施設などの空間、さらには、自動車、列車、飛行機、船舶などの交通機関などで構築されるネットワークに対して、適用され得る。また、アドホックネットワークで構成された便宜上の論理ネットワークにおいても、本発明の技術によって、ネットワーク構成の最適化を行うことができる。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。