JP2006132698A - スラスト軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】 軌道輪の表面に残留した異物の大きさの上限値を保証することにより、残留異物による摩耗量を低減してフレーキングや焼付き等の発生を抑制することができるスラスト軸受を提供する。
【解決手段】 軸方向に互いに対向する一対の軌道輪11の軌道面11a間に複数の転動体12が保持器13のポケット13aに保持された状態で周方向に転動可能に配設されたスラスト軸受10であって、軌道輪11の軌道面11a以外の面を測定面として該測定面に対して放電による発光分光分析を行うことにより、軌道輪11の表面における残留異物の平均直径を測定して、該測定値が予め設定された上限値(30μm)を超えていないことを保証する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、軸方向に互いに対向する一対の軌道輪の軌道面間に複数の転動体が保持器を介して周方向に転動可能に配設されたスラスト軸受に関し、例えばカーエアコン用コンプレッサや自動変速機用プラネタリユニットなどで使用されるスラストニードル軸受に関する。
カーエアコン用コンプレッサや自動変速機用プラネタリユニットなどでは、回転部に加わるスラスト荷重を支承する軸受として、スラストニードル軸受が使用されている。しかし、カーエアコン用コンプレッサや自動変速機用プラネタリユニットでは、自己潤滑作用の低いHCFC134aやPAG(ポリアルキレングリコール)等が冷媒あるいは作動油として用いられるため、軸受の潤滑条件が非常に厳しい環境下にある。また、これに加えて軸受の回転条件も高速から低速の広範囲に及び、さらには軸受に負荷される荷重条件についても無負荷に近い状態から5000N程度まで負荷され、運転状態によっては、これらの条件がランダムに組み合わされる。
このように潤滑条件、回転条件及び荷重条件等の厳しい環境下では、軌道輪と転動体との間に金属接触が生じるため、転動体と接触する軌道輪の軌道面や保持器のポケット内面に転動体より硬い異物(例えばバレル加工後の洗浄工程で除去されずに残存した砥粒等)が付着している場合には、軸受使用時に異物により転動体が摩耗して、軸受にフレーキングや焼付き等が発生することが懸念される。
そこで、従来においては、軌道面に付着した残留砥粒等の異物による転動体の摩耗を低減するために、軌道輪の表面に平均直径が30μmを超える異物を有しないようにしたスラストニードル軸受が提案されている。
特開2003−172346号公報
しかしながら、上記特許文献1においては、電子顕微鏡やEPMA等による観察や分析のために、異物の平均直径を測定する軌道輪を生産ラインから抜き取って試料に加工する必要があるため、異物の平均直径を測定した軌道輪を組み立てて軸受として完成させることができず、軌道輪の表面に残留した異物の大きさを保証した軸受を提供することができないという問題がある。
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、軌道輪の表面に残留した異物の大きさの上限値を保証することにより、残留異物による摩耗量を低減してフレーキングや焼付き等の発生を抑制することができるスラスト軸受を提供することにある。
1)本発明に係るスラスト軸受は、軸方向に互いに対向する一対の軌道輪の軌道面間に複数の転動体が保持器を介して周方向に転動可能に配設されたスラスト軸受であって、前記軌道輪の前記軌道面以外の面を測定面として該測定面に対して放電による発光分光分析を行うことにより、前記軌道輪の表面における残留異物の平均直径を測定し、該測定値が予め設定された上限値を超えていないことが保証されていることを特徴とする。
2)本発明に係るスラスト軸受は、前記1)記載のスラスト軸受であって、前記測定面が平坦面であることを特徴とする。
3)本発明に係るスラスト軸受は、前記1)又は2)記載のスラスト軸受であって、前記上限値が30μmであることを特徴とする。
本発明のスラスト軸受によれば、軌道輪の軌道面以外の面を測定面として該測定面に対して放電による発光分光分析を行うことにより、軌道輪の表面における残留異物の平均直径を測定して該測定値が予め設定された上限値を超えていないことが保証されているので、残留砥粒等の異物による軸受部品の摩耗量が低減されてフレーキングや焼付き等の発生を抑制することができ、これにより、カーエアコン用コンプレッサや自動変速機用プラネタリユニットなどのように潤滑条件等が厳しい条件下でも好適に使用することができるスラスト軸受を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態の一例であるスラスト針状ころ軸受を説明するための要部断面図、図2は発光分光分析装置の概略を示すブロック図、図3は軌道面および軌道面以外の面に残留した最大の異物平均直径を比較したグラフ図、図4は軌道輪に残留した最大異物平均直径と軸受の摩耗量との関係を示すグラフ図である。
本発明の一実施形態であるスラスト針状ころ軸受10は、図1に示すように、軸方向に互いに対向する一対の軌道輪11の軌道面11a間に転動体としての複数の針状ころ12が保持器13のポケット13aに保持された状態で周方向に転動可能に配設されている。
軌道輪11、針状ころ12及び保持器13はSUJ2等の金属で形成されており、保持器13は、二枚の環状板を加締め等により結合して断面矩形状の環状中空体とされ、該環状中空体の軸方向の両端面に針状ころ3を転動可能に保持するポケット13aが周方向に略等間隔で複数箇所形成されている。なお、本実施の形態においては、軌道輪11の全面において酸化アルミナ或いは炭化けい素を砥粒としたバレル加工が施されている。
そして、本実施形態では、軌道輪11の軌道面11a以外の面を測定面として、前記バレル加工後に該測定面に対して放電による発光分光分析を用いた定量測定方法(以下、PDA法という)によって軌道輪11の表面における残留異物の成分分析と平均直径の測定を同時に行ない、該測定値が軸受摩耗量を低減できる値として予め設定された上限値である30μmを超えていないことが保証されている。なお、ここで分析する元素は、硬質な異物である酸化アルミナや炭化けい素を構成する、アルミニウム及びけい素と、その比較のための鉄及び炭素である。また、ここでの異物の平均直径とは、1つの粒子の長径と短径の平均を意味している。
ここで、軌道輪11の軌道面11a以外の面を測定面とするのは、放電による発行分光分析を用いた異物の平均直径の定量測定法(PDA法)を軌道面11aに適用すれば、測定面である軌道面11aの面粗さが大きくなってしまうため、異物の平均直径を測定した軌道輪を組み立てて軸受として完成させることができなくなり、結果として、軌道輪の表面に残留した異物の大きさを保証した軸受を提供できなくなるからである。
そこで、本実施形態は、軸受に組み込まれる軌道輪の異物の評価については、上述したように、バレル加工後も軌道輪11の軌道面11a以外の面に残留している異物の平均直径を測定し、間接的に軌道輪11の軌道面11a上に残留している異物の平均直径を評価することで、異物の平均直径を測定した軌道輪を組み立てて軸受として完成させることを可能にしている。この場合、軌道輪11の軌道面11a以外の測定面は測定精度を高めるために平坦な面を選択するのが好ましい。
次に、放電による発光分光分析を用いた定量測定方法によって軌道輪に残留した異物の平均直径を測定する具体例について説明する。
測定面は、軌道輪11の軌道面11a以外のおもて面(一対の軌道輪の各軌道面の対向面)または裏面である。そして、バレル加工された軌道輪について、図2に示す発光分光分析装置を用いて軌道輪に残留した異物の分析、評価を行った。
発光分光分析装置20は、発光部21、発光スタンド22、分光部23、測光部24、インタフェイス25、データ処理部26及び端末機27を備える。
発光部21は対電極(図示せず)を備え、発光スタンド22は電極の役割を果たす測定試料又はマスタ(基準試料)を内包し、この発光部21と発光スタンド22との間の空間にはアルゴンガスなどの希ガスが充填されて不活性雰囲気が形成されている。また、分光部23は、集光レンズ28と、入口スリット29及び複数の出口スリット30を有する遮光板31と、凹面回折格子32と、複数の光電子倍増管(フォトマルチプライア)33と、油回転ポンプ34とを備えている。さらに、端末機27は、CRT、プリンタ及びキーボート等(いずれも図示せず)を備えている。
このような発光分光分析装置20において、発光部21の対電極から、発光スタンド22に保持された測定試料又はマスタに対してスパーク放電を発生させると、このスパーク放電を受けた測定試料又はマスクは、複数の元素情報を含んだ発光スペクトルと酸化物系介在物の発光スペクトルとを発光する。これらの発光スペクトルは集光レンズ28で集光されて凹面回折格子32へ照射され、照射された発光スペクトルは各元素に固有の発光スペクトルに分光された後、各光電子倍増管33へ入射される。
次いで、光電子倍増管33において、検知された発光スペクトルの強度が電流値に変換された後、測光部24及びインタフェイス25を経て、データ処理部26に伝達される。そして、データ処理部26では、伝達された情報に基づいて、異物の組成の同定を行い、この異物の平均直径が端末機27に表示される。
なお、データ処理部26には、予め発光スペクトルの強度と、異物の平均直径との関係を示す検量線を記憶させておくことで、得られた発光スペクトルの強度から異物の平均直径が算出可能となっている。
上述したように本実施形態では、軌道輪11の軌道面11a以外の面を測定面として該測定面に対して放電による発光分光分析を行うことにより、軌道輪11の表面における残留異物の平均直径を測定して該測定値が軸受摩耗量を低減できる値として予め設定された上限値である30μmを超えていないことが保証されているので、残留砥粒等の異物による軸受部品の摩耗量が低減されてフレーキングや焼付き等の発生を抑制することができ、これにより、カーエアコン用コンプレッサや自動変速機用プラネタリユニットなどのように潤滑条件等が厳しい条件下でも好適に使用することができるスラスト針状ころ軸受を提供することができる
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜な変形、改良等が可能である。例えば、上記実施形態では、軌道輪11の表面に残留した異物として酸化アルミナや炭化けい素を例示しているが、これに限定されず、例えばTi炭化物やその他の組成を持つ物質であっても本発明を適用できるのは勿論である。
また、上記実施形態では、スラスト軸受としてスラスト針状ころ軸受を例示したが、これに限定されず、転動体として円筒ころや円すいころを用いたスラストころ軸受やその他のスラスト軸受に本発明を適用してもよい。
その他、前述した実施形態において、例示した軌道輪、軌道面、転動体、保持器及び発光分光分析装置等の材質,形状,寸法,形態,数,配置個所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
次に、本発明の効果を確認するための実施例を説明する。
図3に、バレル処理を施した軌道輪について、図2の発光分光分析装置を用いて軌道面と軌道面以外の面を測定した最大異物の平均直径の関係を示す。図3において、黒丸はレース面以外の軌道輪のおもて面で測定された最大異物平均直径を示し、白丸は軌道輪の裏面で測定された最大異物平均直径を示している。なお、測定対象である軌道輪のバレル処理の時間は全て同じである。
図3より、軌道面以外の軌道輪のおもて面で確認された最大異物平均直径と軌道面で確認された最大異物平均直径は、ほぼ同じ値を示していることが判る。
同様に、軌道面の裏面で確認された最大異物平均直径と軌道面で確認された最大異物平均直径も、ほぼ同じ値を示している。即ち、軌道輪全面を均等にバレル処理した場合には、軌道面、軌道面以外の軌道輪の表面および軌道輪の裏面に各々残留する異物の最大径はほぼ同じであることが判る。
図4に、転動体の摩耗量に及ぼす軌道輪に残留した異物の最大平均直径の影響を示す。ここで、軸受の組立前に軌道輪に残留した異物の最大平均直径は、軌道面以外の軌道輪のおもて面で評価した値を示している。また、図4中の黒四角は異物が酸化アルミナ、白四角は異物が炭化けい素である。
最大異物平均直径を測定した軌道輪を組み込んだ軸受は、内径40mm、外径60mm、厚さ5mm(動定格荷重:24000N)のスラスト針状ころ軸受であり、アキシアル荷重:2000N、ラジアル荷重:0N、回転速度:2000min-1、潤滑油:白灯油(PAG=9:1)、試験時間:48時間の条件で転動体の耐摩耗性試験を実施した。そして、試験終了後に各試験軸受の転動体摩耗量を測定した。
図4において、異物が酸化アルミナであるか炭化けい素であるかにかかわらず、最大異物平均直径が30μmを超えると転動体の摩耗量が著しく大きくなることが判る。即ち、残留異物の最大平均直径が30μm以下であれば、転動体が摩耗することなく、良好な状態を維持することが判る。
以上のことから、軌道面に残留する異物の平均直径をPDA法によって評価して、そこでの最大異物平均直径が30μm以下であることを確認した後に軸受に組み込むことによって、転動体摩耗に起因するフレーキングや焼付きが生じないことを保証した軸受を提供することができる。
本発明の一実施形態であるスラスト針状ころ軸受を説明するための要部断面図である。 発光分光分析装置の概略を示すブロック図である。 軌道面および軌道面以外の面に残留した最大の異物平均直径を比較したグラフ図である。 軌道輪に残留した最大異物平均直径と軸受の摩耗量との関係を示すグラフ図である。
符号の説明
10 スラスト針状ころ軸受
11 軌道輪
11a 軌道面
12 針状ころ(転動体)
13 保持器
13a ポケット

Claims (3)

  1. 軸方向に互いに対向する一対の軌道輪の軌道面間に複数の転動体が保持器のポケットに保持された状態で周方向に転動可能に配設されたスラスト軸受であって、
    前記軌道輪の前記軌道面以外の面を測定面として該測定面に対して放電による発光分光分析を行うことにより、前記軌道輪の表面における残留異物の平均直径を測定し、該測定値が予め設定された上限値を超えていないことが保証されていることを特徴とするスラスト軸受。
  2. 前記測定面が平坦面であることを特徴とする請求項1に記載したスラスト軸受。
  3. 前記上限値が30μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載したスラスト軸受。
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JP2021115649A (ja) * 2020-01-23 2021-08-10 株式会社ジェイテクト 回転テーブル装置
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