図1は、この発明の第1実施例に係る運搬車の制御装置を搭載した運搬車の側面図である。また、図2は、図1に示す運搬車の平面図である。
図1および図2において、符号10は運搬車を示す。運搬車10は、積み荷(図示せず)を積載する荷台12を備える。荷台12は、運搬車10のフレーム14の上部前方に取り付けられる。また、フレーム14の最後部には、後述するベルト式の無段変速機(CVT(Continuously Variable Transmission)。可変減速機構。以下、「CVT」という)16が取り付けられる。また、CVT16の上部には、エンジン18が搭載される。エンジン18はリコイルスタータ20を備え、操作者によって手動で始動される。
図3は、エンジン18の説明断面図である。
エンジン18は、1個の気筒(シリンダ)22を備え、その内部にピストン24が往復動自在に収容される。エンジン18の燃焼室26を臨む位置には吸気バルブ28と排気バルブ30が配置され、燃焼室26と吸気管32あるいは排気管34の間を開閉する。尚、エンジン18は、具体的にはガソリンを燃料とする空冷4サイクルの単気筒OHV型の内燃機関であり、163ccの排気量を備える。
ピストン24はクランクシャフト36に連結され、クランクシャフト36はギヤを介してカムシャフト38と連結される。また、クランクシャフト36の一端にはフライホイール40が取り付けられると共に、フライホイール40の先端側には前記したリコイルスタータ20が取り付けられる。尚、クランクシャフト36の他端には、後述する走行クラッチを介してCVT16の入力軸が連結される。
フライホイール40の内側には発電コイル(オルタネータ)42が配置され、交流電流を発電する。発電コイル42で発電された交流電流は、図示しない処理回路を介して直流電流に変換された後、ECU(後述)や点火回路(図示せず)などに動作電源として供給される。
また、吸気路32の上流にはスロットルボディ46が配置される。スロットルボディ46にはスロットルバルブ48が収容され、スロットルバルブ48はスロットルシャフトと減速ギヤ機構(共に図示せず)を介して電動モータ50(アクチュエータ。具体的には、ステッピングモータ)に接続される。また、スロットルボディ46においてスロットルバルブ48の上流側には、キャブレタ・アシー(図示せず)が設けられる。キャブレタ・アシーは、図示しない燃料タンクに接続され、スロットルバルブ48の開度に応じて吸入された空気にガソリン燃料を噴射して混合気を生成する。生成された混合気は、スロットルバルブ48、吸気路32および吸気バルブ28を通って気筒22の燃焼室26に吸入される。
電動モータ50の付近にはスロットル開度センサ(スロットル開度検出手段)52が配置され、スロットルバルブ48の開度θTH(以下「スロットル開度」という)に応じた信号を出力する。また、フライホイール40の付近には電磁ピックアップからなるクランク角センサ(エンジン回転数検出手段)54が配置され、所定クランク角度ごとにパルス信号を出力する。
図1および図2の説明に戻ると、エンジン18のクランクシャフト36(図1,2で図示せず)は、前述したように、走行クラッチ(主クラッチ)56を介してCVT16の入力軸(図1,2で図示せず)に連結される。CVT16の出力軸(図1,2で図示せず。後述)は、フレーム14に回転自在に支持されたドライブシャフト58を介して左右の駆動輪60L,60Rに連結される。
ドライブシャフト58の途中には、左右のサイドクラッチ62L,62Rが設けられる。このように、エンジン18の出力は、走行クラッチ56、CVT16、ドライブシャフト58およびサイドクラッチ62L,62Rを介して駆動輪60L,60Rに伝達される。
また、フレーム14において駆動輪60L,60Rよりも前方には、左右の遊転輪64L,64Rが取り付けられる。さらに、フレーム14において駆動輪60L,60Rと遊転輪64L,64Rの間には、転輪66L,68L,66R,68Rが左右に2個ずつ取り付けられる。
図1に示すように、右側の駆動輪60R、遊転輪64Rおよび転輪66R,68Rには、クローラベルト72Rが捲きかけられる。また、図示は省略するが、左側の駆動輪60L、遊転輪64Lおよび転輪66L,68Lにも同様にクローラベルトが捲きかけられる。即ち、エンジン18の出力によって駆動輪60L,60Rが回転させられることにより、左右のクローラベルトが回転し、よって操作者は歩行しながら運搬車10を走行させることができる。
また、図1および図2に示すように、フレーム14の後部には操作ハンドル74が取り付けられる。操作ハンドル74は、運搬車10の後ろ斜め上方に延設されると共に、その上端には操作者によって把持されるべき左右のハンドルグリップ76L,76Rが形成される。
操作ハンドル74には走行クラッチレバー78が配置される。走行クラッチレバー78は、図示しないケーブルなどを介して前記した走行クラッチ56に接続され、よって走行クラッチレバー78が操作者によって操作されることにより、走行クラッチ56が接続(結合)または切断される。
操作ハンドル74には左右の旋回レバー80L,80Rが配置される。左側の旋回レバー80Lは、図示しないケーブルなどを介して左側のサイドクラッチ62Lに接続され、よって左側の旋回レバー80Lが操作者によって操作されることにより、左側のサイドクラッチ62Lが切断される。一方、右側の旋回レバー80Rは、図示しないケーブルなどを介して右側のサイドクラッチ62Rに接続され、よって右側の旋回レバー80Rが操作者によって操作されることにより、右側のサイドクラッチ62Rが切断される。
左右のサイドクラッチ62L,62Rの一方が切断されると、左右の駆動輪60L,60Rに回転差が生じることから、運搬車10が旋回する。具体的には、左側の旋回レバー80Lを操作して左側のサイドクラッチ62Lが切断されることにより、運搬車10は左旋回する。また、右側の旋回レバー80Rを操作して右側のサイドクラッチ62Rが切断されることにより、運搬車10は右旋回する。
操作ハンドル74には車速調整レバー84が配置される。車速調整レバー84は、操作者によって操作され、操作者が所望する運搬車の速度、即ち、目標車速(例えば、高速、中速および低速など)VDが入力される。尚、この明細書において高速とは7〜10[km/h]、中速とは2〜6[km/h]、低速とは1[km/h]以下を意味する。
車速調整レバー84の付近には車速調整レバーセンサ(目標出力軸回転数出力手段)86が配置される。車速調整レバーセンサ86は、操作者によって操作された車速調整レバー84の位置、換言すれば、入力された目標車速VDに応じた信号を出力する。
操作ハンドル74には、エンジン停止スイッチ88が配置される。エンジン停止スイッチ88は、操作者によって操作されたとき、エンジン18の停止指示信号を出力する。
操作ハンドル74には、ECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)90が配置される。ECU90は、CPU,ROM,RAMおよびカウンタを備えたマイクロコンピュータからなり、各種センサからの出力が入力される。
また、CVT16の付近には、走行レバー92が配置される。走行レバー92は、CVT16の前後進切換機構(後述)に接続される。よって走行レバー92は、CVT16を操作するシフトレバーに相当し、操作者に操作されることによってCVT16を前進、後進、あるいは中立位置(ニュートラル)に動作させる。
次いで、CVT16について説明する。
図4は、CVT16の模式図である。
CVT16は、走行クラッチ56を介してエンジン18のクランクシャフト36に連結される入力軸94と、サイドクラッチ62を介して駆動輪60のドライブシャフト58に連結される出力軸96と、入力軸94と出力軸96との間に配設されたVベルト機構98と、入力軸94とドライブ側可動プーリ100に接続された前後進切換機構102とから構成される。
Vベルト機構98は、前記したドライブ側可動プーリ100と、出力軸96上に配設されたドリブン側可動プーリ104と、両プーリ間に巻掛けられたゴム製のVベルト106とからなる。ドライブ側可動プーリ100は、入力軸94上に配置された固定プーリ半体108と、この固定プーリ半体108に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体110とからなる。
可動プーリ半体110の側方には、油圧ポンプ、油路(図示せず)などからなる油圧機構(減速比変更手段)112が接続される。これにより、油圧機構112から可動プーリ半体110に対して油圧が供給され、可動プーリ半体110を軸方向に移動させるプーリ側圧が発生する。
ドリブン側可動プーリ104は、出力軸96に配置された固定プーリ半体116と、この固定プーリ半体116に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体118とからなる。
可動プーリ半体118の側方には、油圧ポンプ、油路(図示せず)などからなる油圧機構(減速比変更手段)120が接続される。これにより、油圧機構120から可動プーリ半体118に対して油圧が供給され、可動プーリ半体118を軸方向に移動させるプーリ側圧が発生する。
Vベルト機構98は上記の如く構成されるので、油圧機構112,120の動作を制御してVベルト106の滑りが発生することがない適切なプーリ側圧を設定することで、両プーリ100,120のプーリ幅を変化させることができ、Vベルト106の巻掛け半径を変化させて減速比(速度比)rを無段階に変化させることができる。
前後進切換機構102は遊星歯車機構(図示せず)などを備え、入力軸94の回転をドライブ側可動プーリ100に伝達すると共に、操作者による走行レバー92の操作に応じてドライブ側可動プーリ100に伝達される回転の方向を変更して運搬車10の前後進を切り換える。また、走行レバー92が中立位置(ニュートラル)にあるときには、エンジン18とドライブ側可動プーリ100との間の動力伝達を遮断するように制御され、よってCVT16は中立状態となる。
また、CVT16の出力軸96の付近には、回転数センサ(出力軸回転数検出手段)124が設けられる。回転数センサ124は、出力軸96が1回転するごとにパルス信号を出力する。
図5は、ECU90の動作を概略的に示すブロック図である。
図5に示す如く、スロットル開度センサ52、クランク角センサ54、車速調整レバーセンサ86および回転数センサ124の出力は、ECU90に入力される。尚、ECU90にはエンジン停止スイッチ88などの出力も入力されるが、本願の要旨と直接の関係を有しないので、図示を省略する。
ECU90は、クランク角センサ54の出力パルスをカウントしてエンジン回転数NEを検出(算出)する。
また、ECU90は、検出されたエンジン回転数NEおよびスロットル開度θTHに基づき、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NED(後述)に一致するように電動モータ50の通電指令値を算出すると共に、算出した通電指令値を電動モータ50に出力してその駆動を制御する。
このように、エンジン18は、電動モータ50、ECU90および各種センサなどからなる電子制御式のスロットル装置(電子ガバナ)によってスロットルバルブ48が開閉され、回転数NEが目標エンジン回転数NEDに制御される。
さらに、ECU90は、回転数センサ124の出力パルスをカウントして出力軸回転数NOUTを検出(算出)する。
また、ECU90は、車速調整レバーセンサ86を介して入力された目標車速VDに基づいてCVT16の目標出力軸回転数NOUTDを検出(出力)する。即ち、運搬車の車速VとCVTの出力軸回転数NOUTは比例関係にあるため、目標車速VDから目標出力軸回転数NOUTDの検出を行うことができる。
ECU90は、検出されたエンジン回転数NE、換言すれば、CVT16の入力軸回転数NINに基づき、出力軸回転数NOUTが目標出力軸回転数NOUTDに一致するように油圧機構112,120への指令値を算出すると共に、算出した指令値を油圧機構112,120に出力してその駆動を制御する。
このように、CVT16は、油圧機構112,120およびECU90によって適切なプーリ側圧が設定され、出力軸回転数NOUTが目標出力軸回転数NOUTDに一致するようにCVT16の減速比rが制御される。
次いで、図6以降を参照してこの実施例に係る運搬車の制御装置の動作、具体的には、目標エンジン回転数NEDおよびCVT16の減速比rの設定処理について説明する。
図6は、その動作を示すフローチャートの前半部分、図7はその後半部分である。図示のプログラムは、ECU90において所定の周期(例えば20[msec])ごとに実行される。
以下説明すると、先ずS10において、エンジン回転数NEを検出すると共に、検出したエンジン回転数NEをECU90のRAMに格納(保存)する。次いでS12に進み、エンジン回転数NEの検出値が所定サイクル分(例えば10サイクル分)格納されたか否か判断する。S12で否定されるときは以降の処理(S14からS78)をスキップする一方、肯定されるときはS14に進み、エンジン回転数平均値NEavgを算出する。エンジン回転数平均値NEavgは、格納した所定サイクル分(10サイクル分)のエンジン回転数NEの平均値である。
次いでS16に進み、スロットル開度θTHの現在値を検出し、S18に進んでエンジン18の出力OPを推定する。エンジン出力OPは、エンジン負荷を表す値(パラメータ)であり、エンジン回転数平均値NEavg(概略的には、エンジン回転数NE)とスロットル開度θTHとに基づいて推定される。
エンジン出力OPの推定について具体的に説明すると、この実施例にあっては、図8に示す如く、各エンジン回転数ごとにスロットル開度θTHとエンジン出力OPの関係を予め実験を通じてマップ化されてあり、検出(算出)されたエンジン回転数NE(正確には、エンジン回転数平均値NEavg)とスロットル開度θTHに基づいて検索することで、エンジン出力OPを推定するようにした。
尚、クローラベルト72L,72Rなどに作用する負荷(即ち、エンジン18の負荷)が増減してエンジン回転数NEと目標エンジン回転数NEDに偏差が生じると、ECU90は目標エンジン回転数NEDを維持するために電動モータ50を駆動してスロットル開度θTHを調節する(即ち、エンジン出力OPを調節する)ことから、エンジン出力OPを推定することは、クローラベルト72L,72Rなどに作用する負荷を推定することに相当する。
図6フローチャートの説明に戻ると、次いでS20に進み、CVT16の出力軸回転数NOUTを検出すると共に、検出した出力軸回転数NOUTをECU90のRAMに格納する。
次いでS22に進み、車速調整レバーセンサ86を介して入力された目標車速VDに基づいてCVT16の目標出力軸回転数NOUTDを検出(決定)する。
次いでS24に進み、エンジン18の目標エンジン回転数NEDが第1の目標エンジン回転数NED1(無負荷時(走行などの負荷発生作業を実行していないとき)あるいは極低負荷時の目標エンジン回転数。別言すれば、アイドル回転数。この実施例にあっては2000[rpm]とする)に設定されているか否か判断する。目標エンジン回転数NEDは、ECU90の起動時に第1の目標エンジン回転数NED1に設定されることから、ここでの判断は通常肯定される。
S24で肯定されるときは、S26に進み、推定したエンジン出力OPが第1の上昇用しきい値#OP12を上回っているか否か、換言すれば、クローラベルト72などに作用する負荷が極低負荷を上回っているか否か判断する。尚、第1の上昇用しきい値#OP12は、エンジン回転数NEが第1の目標エンジン回転数NED1であるときの全開出力(出力発生率100[%])に対し、38[%]程度の出力(具体的には、1.0[PS])に設定される。
S26で肯定されるときはS28に進み、第1の所定時間t1にわたって(継続して)エンジン出力OPが第1の上昇用しきい値#OP12を上回っているか否か判断する。尚、この判断は、S26で肯定されたときに図示しない別のプログラムでカウンタ(アップカウンタ)をスタートさせ、そのカウンタ値が第1の所定時間t1(例えば1[sec])に達したか否か確認することによって行われる。
S28で肯定されるときはS30に進み、図9に実線で示す如く、目標エンジン回転数NEDを第1の目標エンジン回転数NED1よりも上昇方向の値に設定された第2の目標エンジン回転数NED2(前記した極低負荷よりも高い低負荷時の目標エンジン回転数。この実施例にあっては、2500[rpm]とする)に変更する(上昇させる)。尚、S26で否定されるときはS28,S30をスキップすると共に、S28で否定されるときはS30をスキップして第1の目標エンジン回転数NED1を保持する。
S30で目標エンジン回転数NEDが第2の目標エンジン回転数NED2に変更されると、次回のプラグラム実行時はS24で否定されてS32に進み、目標エンジン回転数NEDが第2の目標エンジン回転数NED2に設定されているか否か判断する。S32で肯定されるとS34に進み、エンジン出力OPが第1の上昇用しきい値#OP12よりも大きい値に設定された第2の上昇用しきい値#OP23(エンジン回転数NEが第2の目標エンジン回転数NED2であるときの全開出力に対し、57[%]程度の出力(具体的には、2.0[PS]))を超えているか否か、換言すれば、クローラベルト72に作用する負荷が前記した低負荷を超えているか否か判断する。
S34で肯定されるときはS36に進み、上述したS28と同様、S34で肯定されたときにスタートされるカウンタのカウンタ値を計測し、第1の所定時間t1にわたって(継続して)エンジン出力OPが第2の上昇用しきい値#OP23を超えているか否か判断する。
S36で否定されるときは後述するS38をスキップして第2の目標エンジン回転数NED2を保持する。一方、S36で肯定されるときはS38に進み、図9に実線で示すように、目標エンジン回転数NEDを第2の目標エンジン回転数NED2よりも上昇方向の値に設定された第3の目標エンジン回転数NED3(前記した低負荷よりも高い中負荷時の目標エンジン回転数。この実施例にあっては、3000[rpm]とする)に変更する(上昇させる)。
S34で否定されたときはS40に進み、エンジン出力OPが第1の下降用しきい値#OP21を下回っているか否か、換言すれば、クローラベルト72に作用する負荷が前記した低負荷を下回っているか否か判断する。尚、第1の下降用しきい値#OP21は、第1の上昇用しきい値#OP12よりも小さい値に設定される。より詳しくは、エンジン回転数NEが第2の目標エンジン回転数NED2であるときの全開出力に対し、15[%]程度の出力(具体的には、0.5[PS])に設定される。
S40で肯定されるときはS42に進み、第2の所定時間t2にわたって(継続して)エンジン出力OPが第1の下降用しきい値#OP21を下回っているか否か判断する。尚、この判断は、S40で肯定されたときに図示しない別のプログラムでカウンタ(アップカウンタ)をスタートさせ、そのカウンタ値が第2の所定時間t2(例えば、1[sec])に達したか否か確認することによって行われる。
S42で否定されるときはS44(後述)をスキップして第2の目標エンジン回転数NED2を保持する一方、肯定されるときはS44に進み、図9に一点鎖線で示す如く、目標エンジン回転数NEDを前記した第1の目標エンジン回転数NED1に変更する(下降させる)。尚、S40で否定されるときは、上記したS42,S44をスキップして第2の目標エンジン回転数NED2を保持する。
また、S32で否定されるときはS46に進み、目標エンジン回転数NEDが第3の目標エンジン回転数NED3に設定されているか否か判断する。S46で肯定されるときは、図7フローチャートのS48からS58に進み、上述したS34からS44と同様な処理を行う。
具体的には、S48において、エンジン出力OPが第2の上昇用しきい値#OP23よりも大きい値に設定された第3の上昇用しきい値#OP34(具体的には、エンジン回転数NEが第3の目標エンジン回転数NED3であるときの全開出力に対し、72[%]程度の出力(より具体的には、3.0[PS]))を上回っているか否か、換言すれば、クローラベルト72に作用する負荷が前記した中負荷を上回っているか否か判断する。
S48で肯定されるときはS50に進み、前述したS28,S36と同様、S48で肯定されたときにスタートされるカウンタのカウンタ値が第1の所定時間t1に達したか否か、即ち、第1の所定時間t1にわたって(継続して)エンジン出力OPが第3の上昇用しきい値#OP34を上回っているか否か判断する。
S50で否定されるときはS52(後述)をスキップする、即ち、第3の目標エンジン回転数NED3を保持する。一方、S50で肯定されるときはS52に進み、図9に実線で示す如く、目標エンジン回転数NEDを第3の目標エンジン回転数NED3よりも上昇方向の値に設定された第4の目標エンジン回転数NED4に変更する(上昇させる)。尚、第4の目標エンジン回転数NED4は、前記した中負荷よりも高い高負荷時の目標エンジン回転数であり、この実施例にあっては3500[rpm]とする。
一方、S48で否定されたときはS54に進み、エンジン出力OPが第2の下降用しきい値#OP32を下回っているか否か(クローラベルト72に作用する負荷が前記した中負荷を下回っているか否か)判断する。尚、第2の下降用しきい値#OP32は、第2の上昇用しきい値#OP23よりも小さい値に設定される。より詳しくは、エンジン回転数NEが第3の目標エンジン回転数NED3であるときの全開出力に対し、36[%]程度の出力(具体的には、1.5[PS])に設定される。
S54で肯定されるときはS56に進み、第2の所定時間t2にわたって(継続して)エンジン出力OPが第2の下降用しきい値#OP32を下回っているか否か判断する。尚、この判断は、前述したS42と同様、S54で肯定されたときにカウンタをスタートさせ、そのカウンタ値が第2の所定時間t2に達したか否か確認することによって行われる。
S56で肯定されるときはS58に進み、図9に一点鎖線で示すように、目標エンジン回転数NEDを前記した第2の目標エンジン回転数NED2に変更する(下降させる)。尚、S54で否定されるときはS56,S58をスキップすると共に、S56で否定されるときはS58をスキップして第3の目標エンジン回転数NED3を保持する。
また、図6フローチャートのS46で否定されるときはS60に進み、目標エンジン回転数NEDが第4の目標エンジン回転数NED4に設定されているか否か判断する。S60で肯定されるときは、図7フローチャートのS62からS72に進み、上述したS34からS44、あるいはS48からS58と同様な処理を行う。
具体的には、S62において、エンジン出力OPが第3の上昇用しきい値#OP34よりも大きい値に設定された第4の上昇用しきい値#OP45、具体的には、エンジン回転数NEが第4の目標エンジン回転数NED4であるときの全開出力に対して86[%]程度の出力(4.0[PS])を超えているか否か、換言すれば、クローラベルト72に作用する負荷が前記した高負荷を超えているか否か判断する。
S62で肯定されるときはS64に進み、第1の所定時間t1にわたって(継続して)エンジン出力OPが第4の上昇用しきい値#OP45を超えているか否か判断する。尚、この判断も前述したS28,S36,S50と同様に、S62で肯定されたときにスタートされるカウンタのカウンタ値が第1の所定時間t1に達したか否か確認することによって行われる。
S64で否定されるときはS66(後述)をスキップする。この結果、第4の目標エンジン回転数NED4は保持される。一方、S64で肯定されるときはS66に進み、図9に実線で示すように、目標エンジン回転数NEDを第4の目標エンジン回転数NED4よりも上昇方向の値に設定された第5の目標エンジン回転数NED5に変更する(上昇させる)。尚、第5の目標エンジン回転数NED5は、前記した高負荷よりも高い極高負荷時の目標エンジン回転数であり、この実施例にあっては、最大出力発生回転数である4000[rpm]とする。
一方、S62で否定されたときはS68に進み、エンジン出力OPが第3の下降用しきい値#OP43を下回っているか否か、換言すればクローラベルト72に作用する負荷が前記した高負荷を下回っているか否か判断する。尚、第3の下降用しきい値#OP43は、第3の上昇用しきい値#OP34よりも小さい値に設定され、具体的にはエンジン回転数NEが第4の目標エンジン回転数NED4であるときの全開出力に対し、53[%]程度の出力(より具体的には、2.5[PS])に設定される。
S68で肯定されるときはS70に進み、前述したS42,S56と同様、カウンタ値を計測し、第2の所定時間t2にわたって(継続して)エンジン出力OPが第3の下降用しきい値#OP43を下回っているか否か判断する。
S70で否定されるときは後述するS72をスキップ(第4の目標エンジン回転数NED4を保持)する。一方、S70で肯定されるときはS72に進み、図9に一点鎖線で示す如く、目標エンジン回転数NEDを前記した第3の目標エンジン回転数NED3に変更する(下降させる)。尚、S68で否定されるときは、上記したS70,S72をスキップして第4の目標エンジン回転数NED4を保持する。
また、図6フローチャートのS60で否定されるとき(即ち、目標エンジン回転数NEDが第5の目標エンジン回転数NED5に設定されているとき)は図7フローチャートのS74に進み、エンジン出力OPが第4の下降用しきい値#OP54(第4の上昇用しきい値#OP45よりも小さい値。より詳しくは、エンジン回転数NEが第4の目標エンジン回転数NED4であるときの全開出力に対し、75[%]程度の出力(具体的には、3.5[PS]))を下回っているか否か、換言すれば、クローラベルト72に作用する負荷が前記した極高負荷を下回っているか否か判断する。
S74で肯定されるときはS76に進み、第2の所定時間t2にわたって(継続して)エンジン出力OPが第4の下降用しきい値#OP54を下回っているか否か判断する。尚、この判断も前述したS42,S56,S70と同様である。
S76で肯定されるときはS78に進み、図9に一点鎖線で示すように、目標エンジン回転数NEDを前記第4の目標エンジン回転数NED4に変更する(下降させる)。尚、S74で否定されるときはS76,S78の処理をスキップすると共に、S76で否定されるときはS78の処理をスキップして第5の目標エンジン回転数NED5を保持する。
上記したように、目標エンジン回転数NEDがクローラベルト72などに作用する負荷に応じて変更されると、それに伴ってエンジン回転数NEが変化するため、運搬車の車速Vも変化してしまう。しかしながら、第1実施例に係る運搬車の制御装置にあっては、以下の処理を実行することによって、運搬車の車速Vが一定となるように制御するように構成した。
具体的には、S80において検出された出力軸回転数NOUTと目標出力軸回転数NOUTDとを比較する。即ち、運搬車の現在の車速Vを示す出力軸回転数NOUTと操作者が所望する目標車速VDを示す目標出力軸回転数NOUTDとを比較する。
S80で出力軸回転数NOUTが目標出力軸回転数NOUTDより大きいとき、換言すれば、例えばS30,S38,S52およびS66において目標エンジン回転数NEDが上昇方向の値に変更されてエンジン回転数NEが上昇し、それに伴って出力軸回転数NOUTが上昇したときはS82に進み、CVT16の目標減速比rDを算出する。
目標減速比rDの算出について具体的に説明すると、図10に示すように、目標車速VDごとにエンジン回転数NEと目標減速比rDの関係を予め実験を通じてマップ化されてあり、検出されたエンジン回転数NE(正確には、エンジン回転数平均値NEavg)と目標車速VDに基づいて検索することで、目標減速比rDを算出するようにした。尚、図10において、目標車速VDとして高速、中速、低速の3種類を例示する。
図6フローチャートの説明に戻ると、次いでS84に進み、CVT16の減速比rが算出された目標減速比rDになるように油圧機構112,120の動作を制御する。従って、エンジン回転数NEが負荷に応じて変化(上昇)した場合であっても、このようにCVT16の減速比rが変更される、具体的には小さくなるので、出力軸回転数NOUTを目標出力軸回転数NOUTDに保持する、即ち、車速Vを目標車速VDに保持することができる。
一方、S80で出力軸回転数NOUTが目標出力軸回転数NOUTDより小さいとき、換言すれば、例えばS44,S58,S72およびS78において目標エンジン回転数NEDが下降方向の値に変更されてエンジン回転数NEが下降し、それに伴って出力軸回転数NOUTが下降したときはS86に進み、上述したS82と同様、CVT16の目標減速比rDを算出する。
次いでS88に進み、CVT16の減速比rが、S86で算出された目標減速比rDになるように油圧機構112,120の動作を制御する。従って、エンジン回転数NEが負荷に応じて変化(下降)した場合であっても、このようにCVT16の減速比rが変更される、具体的には大きくなるので、出力軸回転数NOUTを目標出力軸回転数NOUTDに保持する、即ち、車速Vを目標車速VDに保持することができる。
また、S80で出力軸回転数NOUTが目標出力軸回転数NOUTDと等しいとき、換言すれば、上記したS30やS44などで目標エンジン回転数NEDが変更されていないときはCVT16の減速比rを変更する必要がないので、現在の減速比rを保持してプログラムを終了する。
このように、この発明の第1実施例に係る運搬車10の制御装置にあっては、エンジン回転数NEとスロットル開度θTHに基づいて推定されたエンジン出力OPが、上昇用しきい値、具体的には第1から第4の上昇用しきい値#OP12,#OP23,#OP34,#OP45を上回ったとき、目標エンジン回転数NEDを上昇方向の値(具体的には第2から第5の目標エンジン回転数NED2,NED3,NED4,NED5)に変更するように構成した、逆にいえば、エンジン出力OPが上昇用しきい値未満のとき、目標エンジン回転数NEDを上昇方向の値に変更しない(低い値に設定された目標エンジン回転数NEDを保持する)ように構成したので、エンジン出力OPが小さいときは、エンジン回転数NEを低い値に設定することができ、よって燃料消費量や騒音を低減させることができる。
また、エンジン回転数NEをエンジン回転数調整レバーなどで調整する必要がないことから、操作を簡素化することができ、操作性および作業効率を向上させることができる。
さらに、エンジン出力(負荷)OPに応じてエンジン回転数NEを変更するようにしたので、エンジン18を低回転で運転させつつ運搬車を高速で走行させる状態で、登坂などで負荷が急激に増加した場合であっても、エンジン回転数NEが負荷に応じて増加するため、運搬車10のエンジンストールを防止することができる。
また、エンジン回転数NEに基づいて、即ち、エンジン回転数NEの変化に応じて出力軸回転数NOUTが目標出力軸回転数NOUTDとなるようにCVT16の減速比rを変更するように構成したので、操作者は、所望の速度(目標車速VD。目標出力軸回転数NOUTD)を入力するだけで、運搬車10をその速度で一定に走行させることができる。即ち、エンジン回転数NEが変化した場合、例えば登坂または降坂で負荷OPが変化してエンジン回転数NEが変化した場合であっても、CVT16の減速比rを変更することで、運搬車10を一定の速度(目標車速VD)で走行させることができる。従って、運搬車10の操作を簡素化することができ、操作性および作業効率を一層向上させることができる。
また、推定されたエンジン出力OPが上昇用しきい値よりも低く設定された下降用しきい値、具体的には第1から第4の下降用しきい値#OP21,#OP32,#OP43,#OP54を下回ったとき、目標エンジン回転数NEDを下降方向の値(具体的には第1から第4の目標エンジン回転数NED1,NED2,NED3,NED4)に変更するように構成したので、エンジン出力(負荷)OPが低減したときに速やかに目標エンジン回転数NEDを下降させることができるため、一層効果的に騒音を低減できると共に、燃費を向上させることができる。
さらに、下降用しきい値を上昇用しきい値よりも小さい値に設定した、例えば第1の上昇用しきい値#OP12が1.0[PS]であるのに対し、第1の下降用しきい値#OP21は0.5[PS]に設定したので、目標エンジン回転数NEDが頻繁に切り替わる(ハンチングが生じる)のを防止することができる。
また、推定されたエンジン出力OPが第1の所定時間t1にわたって上昇用しきい値を上回ったとき、目標エンジン回転数NEDを上昇方向の値に変更する一方、推定されたエンジン出力OPが第2の所定時間t2にわたって下降用しきい値を下回ったとき、目標エンジン回転数NEDを下降方向の値に変更するように構成したので、一時的な負荷変動によって目標エンジン回転数NEDが変更されるのを防止することができ、より一層効果的に燃料消費量や騒音を低減できる。
また、上昇用しきい値および下降用しきい値をそれぞれ複数個ずつ備えると共に、変更された目標エンジン回転数NEDに応じて上昇用しきい値および下降用しきい値を変更するように構成したので、目標エンジン回転数NEを発生負荷(エンジン出力OP)に応じたより適切な値に設定することができ、より一層効果的に燃料消費量や騒音を低減できる。
また、エンジン18が発生する最大出力を示す最大出力発生回転数、具体的には4000[rpm]を上限として目標エンジン回転数NEDを上昇方向の値に変更するように構成したので、発生負荷(エンジン出力OP)が最大のときにエンジン出力を最大にすることができ、よって作業効率をより一層向上させることができる。
以上の如く、この発明の第1実施例にあっては、少なくともエンジン(18)と積み荷を積載する荷台(12)とを備えると共に、操作者の操作に応じて前記エンジンの出力を可変減速機構(CVT16)で減速して駆動輪(60L,60R)、より具体的にはドライブシャフト(58)に連結した駆動輪に捲きかけられたクローラベルト(72L,72R)を駆動しつつ走行する運搬車(10)の制御装置において、前記エンジンのスロットルバルブ(48)を開閉するアクチュエータ(電動モータ50)と、前記エンジンの回転数(NE)を検出するエンジン回転数検出手段(クランク角センサ54。ECU90)と、前記検出されたエンジン回転数が目標エンジン回転数(NED)となるように前記アクチュエータの駆動を制御するエンジン回転数制御手段(ECU90)と、前記可変減速機構の出力軸(96)の回転数(NOUT)を検出する出力軸回転数検出手段(回転数センサ124。ECU90)と、前記スロットルバルブの開度(θTH)を検出するスロットル開度検出手段(スロットル開度センサ52)と、前記操作者の操作に応じて前記出力軸の目標出力軸回転数(NOUTD)を出力する目標出力軸回転数出力手段(車速調整レバーセンサ86。ECU90)、正確には前記操作者の操作に応じて前記運搬車の目標車速(VD)を出力する目標車速出力手段(車速調整レバーセンサ86)および前記出力された目標車速に基づいて前記出力軸の目標出力軸回転数を決定する目標出力軸回転数決定手段(ECU90)と、前記検出されたエンジン回転数とスロットル開度に基づいて前記エンジンの出力(OP)を推定するエンジン出力推定手段(ECU90)と、前記推定されたエンジン出力が上昇用しきい値(第1から第4の上昇用しきい値#OP12,#OP23,#OP34,#OP45)を上回ったとき、前記目標エンジン回転数を上昇方向の値(第2から第5の目標エンジン回転数NED2,NED3,NED4,NED5)に変更する目標エンジン回転数変更手段(ECU90)と、および前記検出されたエンジン回転数に基づいて前記検出された出力軸回転数が前記目標出力軸回転数となるように前記可変減速機構の減速比(r)を変更する減速比変更手段(油圧機構112,120。ECU90)と、を備えるように構成した。
また、前記目標エンジン回転数変更手段(ECU90)は、前記推定されたエンジン出力(OP)が前記上昇用しきい値よりも低く設定された下降用しきい値(第1から第4の下降用しきい値#OP21,#OP32,#OP43,#OP54)を下回ったとき、前記目標エンジン回転数(NED)を下降方向の値(第1から第4の目標エンジン回転数NED1,NED2,NED3,NED4)に変更するように構成した。
また、前記目標エンジン回転数変更手段(ECU90)は、前記推定されたエンジン出力(OP)が第1の所定時間(t1)継続して前記上昇用しきい値を上回ったとき、前記目標エンジン回転数(NED)を上昇方向の値に変更する一方、前記推定されたエンジン出力が第2の所定時間(t2)継続して前記下降用しきい値を下回ったとき、前記目標エンジン回転数を下降方向の値に変更するように構成した。
尚、上記において、第1の所定時間t1と第2の所定時間t2をともに1[sec]に設定したが、異なる値に設定するようにしても良い。また、目標エンジン回転数NEDを5段階に設定するようにしたが、4段階以下であっても6段階以上であっても良い。
また、目標エンジン回転数NEDや目標車速VD、所定時間t1,t2、エンジン出力OPなどの数値を具体的に示したが、その値に限られないのはいうまでもない。
また、変速機としてCVT(無段変速機)16を備える如く構成したが、それに代えて有段変速機を備える如く構成しても良い。
また、運搬車10はクローラベルト72を回転させて走行するように構成したが、それに限られるものではなく、クローラベルト72を除去すると共に、ドライブシャフト58にタイヤを接続(連結)し、そのタイヤを回転させて走行するように構成しても良い。
また、スロットルバルブ48を開閉するアクチュエータとしてステッピングモータを使用したが、DCモータやロータリーソレノイドなど、他のアクチュエータを使用するようにしても良い。