JP2006132301A - 地盤注入装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】管径を小さくして構造を単純化することにより削孔を小さくし、かつ作業性を向上させて経済性を得、さらに大深度の地盤注入や、トンネル等の長区間注入を可能にし、さらに急速施工を可能にし、かつ注入効果を確実にする。
【解決手段】本発明地盤注入装置は地盤1中に設置され、軸方向の異なる位置に複数の外管吐出口22を有する外管20と、この外管20内に遊挿され、複数の膨縮性内管パッカ27を外管吐出口22をはさむように間隔をあけて備え、さらに、内管パッカ27内にパッカ内吐出口29を有し、かつ間隔をあけて備えられた内管パッカ27間に内管吐出口30を有する内管21とを備えて構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は管径を小さくして構造を単純化することにより削孔径を小さくし、かつ作業性を向上させて経済性を得、さらに大深度の地盤注入や、トンネルの長区間注入を可能にし、かつ注入効果を確実にする地盤注入装置および方法に関する。
一般に、地盤は粒度や透水性の異なった層が互層になって形成されているため、地盤に注入管を挿入し、この注入管から注入液を通して地盤を固結する際、注入液は透水性の大きな層に逸脱してしまい、全体を均質に固結することができない。
そこで、この問題を解決する手段として図8(a)乃至(d)に示される工法が開発されている。これを詳述すると、まず、図8(a)に示されるように、地盤1をボーリングし、この中にケーシング2を挿入する。次いで、図8(b)に示されるようにケーシング2の中に外管3を挿入する。この外管3の管壁4には軸方向の異なる位置に複数の吐出口5、5・・5が所定の間隔をあけて開口され、これら吐出口5、5・・5はそれぞれゴムスリーブ6で覆われている。
さらに、ケーシング2にスリーブグラウト7を注入した後、図8(c)に示されるようにケーシング2を引き抜く。これにより外管3はスリーブグラウト7でシールされる。
次に図8(d)に示されるように先端にストレーナ8、8・・8が穿設され、この上下にパッカ9、9が配置された内管10を外管3中に挿入し、この内管10の管路を通して注入液を注入すると、注入液は矢印のようにストレーナ8ならびに上下のパッカ9、9間に形成された空間11を経て、外管3の吐出口からゴムスリーブ6を押し拡げ、スリーブグラウト7を割ってそのステージ周辺の地盤1中に浸透する。
上述図8に示される工法では注入液はスリーブグラウト7の存在により外管3に沿って上下方向に逸脱することがなく、所定の注入深度毎に確実に浸透して固結する。また、注入後、あるいは注入深度において注入が不充分な場合は、外管内で内管を上下させ、何度でも繰り返して注入できる長所を有している。また、削孔と外管埋設という工程と注入という工程のそれぞれ異なる種類の工種をそれぞれ別々に行うことができるので作業が単純化できるという作業上の利点も有している。
しかし、この工法では注入ステージ毎(一つの注入ステージ長は通常、25〜50cm)に内管10を引き上げて内管10のストレーナ8と外管3の吐出口5を対応させ、各吐出口5から注入液を繰り返して注入するため、操作が複雑化され、さらに毎分注入量が多くすると、一つの吐出口から多量の注入液が吐出するため、地盤の浸透抵抗圧力(注入圧力)が高くなり、均質な注入が不可能となる。このため、毎分注入量を少なくして、かつストレーナを出きるだけ多く、または大きくして管内抵抗を生じないようにし、低圧で注入しなくてはならない。このため注入時間が長くなって工期が長期化され、不経済となる。
また、上述の工法では内管10のパッカ9、9は硬質合成樹脂で形成されており、このような硬質パッカ9、9では注入深度が深くなると土圧によって外管が変形し、内管10の挿入あるいは引き上げが不能になる。また、パッカ9、9を軟質材料にするとパッカ効果が得られなくなる。このため、本出願人の特許第2772637号に示されるように、複数のパッカを有する内管を用いて複数の外管吐出口から同時に注入する方法も提案されているが、内管パッカとして硬質合成樹脂を使用しており、上記問題は解決されていない。
そこで、硬質パッカの代わりに特許第2814475号エアパッカを用いる工法が開発されているが、この工法ではエアパッカの管路を内管内に形成しなくてはならないので、内管の径が大きくなる。したがって、外管の径も大きくなるのみならず、外管を挿入するボーリング孔も太くなり、経済性が低下し、また、エアパッカを作動させるため、作業工程も一つ増え、施工が繁雑になる。
さらに、二重管ロッドの内管先端部にゴムの袋体を設け、外管と内管の二つの流路を通る主材と反応剤水溶液を混合させ、得られるゲル化時間の短いグラウトとゲル化時間の長いグラウトを吐出口位置を切り換えて二重管ロッドを引き上げながら注入する工法も知られている。(特公昭63−64567号公報参照。)
しかし、この方法はゲル化時間の異なるグラウトの切り換えが繁雑であり、かつ二重管ロッドを引き上げながら注入するため、ある注入深度での注入が不完全な場合、再注入して確実な注入効果を得ることは不可能である。また、多数の注入孔毎に、異なった種類の工程であるボーリング削孔工程と、注入工程を連続して行わなくてはならないため、作業の合理化が困難である。また、特開平7−71028および特開平8−226119には、注入管に袋体あるいはダンベル状の袋体からなるパッカを装着し、パッカ間の内管吐出口から外管吐出口を通して地盤に注入する工法が提案されている。しかし、いずれも袋体のパッカを膨らます流体はパッカ用の流路を通して圧入するものであって、内管吐出口から地盤中に注入される注入液の流路とは異なるものである。したがって、外管内に挿入する内管径は、それぞれ別々のパッカ用流路と注入液用流路からなるため太くなり、したがって外管を埋設するための削孔径も大きくなり、経済性と作業性の点で問題がある。
特公昭63−64567号公報 特許第2772637号 特許第2814475号 特開平7−71028号公報 特開平8−226119号公報
解決しようとする問題点は管径を小さくして構造を単純化することにより削孔径(ボーリング孔)を小さくし、かつ作業性を向上させて経済性を得、さらに大深度の地盤注入や、トンネル等の長区間注入を可能にして注入効果を確実にし、上述の公知技術に存する欠点を改良した地盤注入装置を提供することにある。
上述の課題を解決するため、本発明の地盤注入装置によれば、地盤中に設置され、軸方向の異なる位置に複数の外管吐出口を有する外管と、この外管内に遊挿され、複数の膨縮性内管パッカを前記外管吐出口をはさむように間隔をあけて備え、さらに、これら内管パッカ内にパッカ内管吐出口を有し、かつ前記間隔をあけて備えられた内管パッカ間に内管吐出口を有する内管とを備えてなることを特徴とする。
さらに、上述の課題を解決するため、本発明の地盤注入工法によれば、地盤中に設置された注入管を通して地盤中に注入液を注入する地盤注入工法において、前記注入管として、軸方向の異なる位置に複数の外管吐出口を有する外管と、この外管内に遊挿され、複数の膨縮性内管パッカを前記外管吐出口をはさむように間隔をあけて備え、さらに、これら内管パッカ内にパッカ内吐出口を有し、かつ前記間隔をあけて備えられた内管パッカ間に内管吐出口を有する内管とを備えた注入管を用い、内管流路に注入液を送液することにより、前記膨縮性内管パッカを注入液の送液圧力によって膨張して複数の内管パッカ間に外管内空間を形成するとともに、この外管内空間内に内管吐出口から注入液を吐出し、注入液を外管内空間から外管吐出口を通して地盤中に注入することを特徴とする。
本発明の地盤注入装置は内管パッカを膨張させるためのパッカ流体用管路を設けることなく、内管流路に送液される注入液の送液圧で内管パッカを膨張させ、パッカ流体用管路の設置を省略することにより内管径を小さくし、また、従来のパッカ操作を省略しながら内管を外管内に自由に移向させて所定の深度で注入し、これにより経済性ならびに作業性を得るという効果を奏する。
以下、本発明を添付図面を用いて詳述する。
図1は本発明装置の一具体例の断面図である。図2は本発明装置の他の具体例の断面図である。図3は本発明装置のさらに他の具体例の断面図である。図4は本発明のパッカ機能の原理を説明するための実験装置の説明図である。
図1において、本発明にかかる地盤注入装置Aは外管20と、内管21とから基本的に構成される。外管20は軸方向の異なる位置に複数の外管吐出口22を有し、地盤1中に形成された削孔23に挿入され、削孔壁24と外管20との間の削孔23中にシールグラウト25を填充して地盤1中に定着、設置される。外管吐出口22は図1に示されるように、ゴムスリーブ26で覆われる。このゴムスリーブは逆止弁の役をする。
内管21は外管20内に遊挿され、複数の膨縮性内管パッカ27、27・・27を締め金具28、28・・28によって外管吐出口22をはさむように間隔をあけて備える。さらに、内管21は内管パッカ27内にパッカ内吐出口29を有し、かつ間隔をあけて備えられた内管パッカ内27、27間に内管吐出口30を備える。
上述のように構成される本発明地盤注入装置Aは内管21の内管流路31に注入液を送液することにより、膨縮性内管パッカ27が注入液の送液圧力によって膨張して上下に隣接する複数の内管パッカ27、27間に外管内空間32が形成され、この外管内空間32には内管吐出口30から注入液が吐出され、注入液は外管内空間32から外管吐出口22を通し、ゴムスリーブ26を押し拡げ、かつシールグラウト25を割裂して地盤1中に所定量注入される。次いで、注入液の送流を中止するか、内管内注入液を脱液して内管内圧力を低減すると、内管パッカ27は弾力性のある膨縮性材質の復元力によってその内部の注入液を排出して内管パッカ27を収縮の後、内管21を内管吐出口30が他の外管吐出口22と合致するまで移動し、同様にして注入を繰り返す。膨縮性内管パッカ27は弾力性のある不透水性袋体であって、注入液の送液による内圧で外管内壁に密着するまで膨張し、注入液の送液を停止することにより、あるいは内管内の注入液の一部を脱液して内管内圧力を低下させることにより収縮し、これにより内管21を外管20内で移動自在とする。なお、弾力性のある不透水性袋体は筒状合成樹脂であって、パッカ内吐出口が筒状内に位置するように両端を内管に緊結して取付けられる。
図2は本発明装置Aの他の具体例を示す断面図であって、外管20は外管吐出口22をはさむように複数の外管パッカ33、33・・33を備え、外管パッカ33内に外管パッカ内吐出口34を通して固結材を、ゴムスリーブ26を押し拡げて填充し、膨張させて地盤1中に定着、設置される。そして、内管流路31に注入液を送液することにより、膨縮性内管パッカ27が図1と同様、注入液の送液圧力によって膨張して上下に隣接する複数の内管パッカ27、27間に外管内空間32が形成する。注入液はさらに、内管吐出口30から外管内空間32および外管吐出口22を通して外管外空間35に吐出され、ここから地盤1中に注入される。さらに図1と同様にして内管21を移動し、注入を繰り返す。この外管外空間35は大きな表面積を有する柱状の注入源となるので、多量の注入速度で注入しても、注入源の単位面積からの注入速度は小さいので、低圧で土粒子間注入でき、急速浸透注入が可能になる。なお、外管パッカ33は透水性袋体であって、外管パッカ33内に固結材を填充し、削孔径よりも大きな径に膨張させて土中にパッカを形成し、外管20を地盤に定着、設置する。
図3は本発明装置Aのさらに他の具体例の断面図であって、内管21が三個以上の膨縮性内管パッカ27、27・・27を備え、外管内空間32を複数形成した例である。これにより、複数の外管吐出口22、22・・22から注入液を同時に地盤1中に注入することができる。これにより、複数の注入ステージを同時に注入し得、長尺の注入区間の急速施工が可能である。
なお、本発明において、内管流路31は図5に示すように、内管21を複数本備えることにより複数本とすることもできる。この場合、各内管吐出口30、30・・30はそれぞれ異なる外管内空間32に開口するようにする。これにより、複数の注入ステージを同時に注入して長尺の注入区間の急速施工が可能であるのみならず、浸透性や強度の異なる注入材を土層の状態に合わせて注入でき、かつ主材を注入した注入ステージに反応剤を重ね合わせて注入することもでき、あるいは懸濁液を注入した領域に溶液型グラウトを重ね合わせて注入することもできる。このとき、図示しないが、複数の内管吐出口を同一の外管内空間に開口させておけば、2種類の注入液、たとえば主剤配合液(A液)と反応剤配合液(B液)が外管内空間で混合され、この混合液が外管吐出口から地盤に注入することになる。なお、複数の内管は並列管でもよく、多重管でもよい。
さらに、内管吐出口30は次の(a)乃至(c)のいずれかを満たすように形成される。
(a)内管吐出口30を細孔に形成する。この状態を図6(a)に示す。
(b)内管吐出口30を内管パッカ内吐出口29よりも細孔に形成する。この状態を図6(a)、(b)に示す。
(c)内管吐出口の面積を内管流路31の断面積よりも小さく形成する。この状態を図6(a)、(b)に示す。
なお、内管吐出口30は図6(c)に示されるように、ゴムスリーブ26などの抵抗体で覆うか、図6(d)に示されるように、逆止弁50を取り付ける。逆止弁50は例えば、内管吐出口30に外側からボール51を当てがい、このボール51をバネ52で押えつけるように構成される。また、細孔は噴射ノズルとして形成される。
なお、内管流路31には図4に示されるように、脱圧装置44を設けることができる。さらに、内管21は図7に示されるように、フレキシブルジョイントで連結して形成してもよい。図7において、図7(a)は一本の内管をフレキシブルジョイントで連結した例であり、図7(b)は複数本の内管をフレキシブルジョイントで連結した例である。
内管パッカ27は不透水性で弾力性に富んだ合成ゴムの袋体で形成される。したがって、内管パッカ27内に注入液による内圧が作用すると、内管パッカ27は膨張して外管20の内壁に密着し、パッカを形成する。しかし、注入液の送液を中止したり、あるいは注入液の圧力を図4に示すような内管流路31に設けられた脱圧装置44により減圧すると、パッカ27の弾性によって収縮し、外管20の内壁から離れる。したがって、所定ステージで所定量の注入を完了したのち、直ちに次の注入ステージに移向できる。脱圧装置44は注入ポンプより下流側にあればよく、図中の三方コック等、バルブだけでもよい。内管の加圧された注入液はバルブが開けば外部に排出されて、内管パッカは収縮する。さらに、吸水ポンプで内管内の注入液を吸い上げてしまえば、注入ステージを移向する際に、内管内の注入液が外管内に漏出するのを最小限におさえることができる。
注入深度が大きくなったり、水平方向の注入管設置長が長くなると、外管20は土圧によって変形する。したがって内管21の挿入や移動が困難になる。しかし、図7(a)、図7(b)に示されるように内管21の所定の位置に合成ゴムのホース状フレキシブルジョイント53を設けることにより、内管21は外管20の変形に対応して外管20内を移向し得る。また、内管パッカ27はゴムパッカであって、所定のステージでの注入完了時に収縮する。このため、内管21は容易に外管20内で移向できる。さらに、従来のようなエアパッカが不用なため、内管21の径を細くすることができ、この点からも外管の変形に順応する。また、本発明において、内管は硬質パイプで形成してもよいが、内管吐出口が存在する範囲よりも手前側の内管をホースで形成することにより、捲取装置つきの昇降装置で自由に外管内を移動することが可能である。
本発明に使用される注入材は内管パッカ27内でゲル化すると、パッカが機能しなくなるため、ゲル化時間が長く、かつ詰まりにくい材料が望ましい。したがって、気中のゲル化時間が土中のゲル化時間よりも長いものが良い。このような注入材は土中に注入した注入液がゲル化したあとでも、内管流路や内管パッカ中ではゲル化が生じておらず、このため所定ステージで所定量注入後、次の注入ステージに移向して注入するまで、パッカの収縮、膨張を繰り返してパッカ機能を継続することができる。この種の注入材としては、非アルカリ性水ガラスグラウト、あるいは水ガラスをイオン交換樹脂や、イオン交換膜で脱アルカリして得られた活性シリカを主材とするグラウトが挙げられる。これらのグラウトは気中で10時間以上のゲル化時間を有するが、土中では数時間のゲル化時間を保持する。したがって、これらは長時間、広範囲の注入を可能とする。また、ゲル化時間が1時間以上のアルカリ系水ガラスグラウトも用いることができる。
ここで、本発明にかかるパッカ機能の基本原理を図4を用いて説明する。図4は外管20およびその中に遊挿された内管21を備えた実験装置の説明であって、吐出バルブ37を閉じて外管20と、内管21と、内管パッカ27と、外管内空間32と、外管吐出口22とからなる本発明装置の最小単位に関して圧力の関係を説明する。
まず、内管21の内管流路31から注入液を圧力Pおよび流量Fで送液する。圧力Pは圧力計38により、流量Fは流量計39によりそれぞれ測定される。内管21と膨張性の内管パッカ27は内管パッカ内吐出口29を通じて連通しており、内管パッカ27は膨張する。この内圧は注入液の圧力Pと同じである。
一方、外管20の外管吐出口22には流量圧力調整装置40が備えられる。この装置40の圧力調整弁41を開放しておけば、外管内空間32の圧力Pは空間32が外部に開放された状態にあるから、当然Pよりも低くなる。このときの圧力および流量は流量圧力調整装置40の圧力計42および流量計43で測定される。したがって、内管21内に注入液の送液圧力が加わっている限り、内管パッカ27は膨張してパッカとして形成され、内管吐出口30から吐出された注入液は外管内空間32を経て外管吐出口22から外部に吐出される。
圧力調整弁41を徐々に閉じてその開口度を低くすると、圧力計42の圧力は上昇する(P11)。この際、送液流量Fを同一にすると、内管圧力Pは圧力Pよりも高くなる。この場合、圧力P11は地盤の浸透抵抗圧に相当する。しかし、地盤に注入が行われている限り、圧力Pは圧力P11よりも高いわけであるから、当然、内管パッカ27内圧力は圧力Pとなって、外管内空間32内の圧力P11よりも高く維持されるので注入が継続することになる。
しかるに、内管21内の注入液が内管吐出口30から出て、外管吐出22を経て地盤に注入されるまでの間に内管パッカ27が膨張し、内管パッカ27が形成される前は外管内空間32が充分に形成されないので、注入液が外管内を上下方向に移動してしまう。したがって、外管内を注入液が移動し、不特定の外管吐出口22から地盤中に注入されることになるので、所定の注入領域に注入されず、好ましくない。このため、内管吐出口30から外管内空間32に吐出される時点ですでに内管パッカ27が形成されていることが好ましい。そのためには内管21からの吐出に際して、加圧状態になっていることが好ましい。すなわち初期圧が生じていることが望ましい。
初期圧とは空気中で注入液を吐出口から吐出した時に生じる管内圧を言う。普通、1ステージ当たりの注入、すなわち、上下のパッカ間の1注入区間からの注入速度は2〜30リットル/分で行われるが、そのような注入速度に対して初期圧が0.1kgf/cm以上になるのが好ましく、その場合、内管吐出口から注入液が吐出する際に内管パッカがすでに膨張している。
初期圧として0.1kgf/cm以上の管内圧力を生じれば、パッカが外管管壁に密着する。その場合の吐出口径は0.1〜3mm程度の細孔が好ましい。実際には1ステージ当たりの注入速度に対応して一つの吐出口径と、吐出口数と、膨縮性パッカの弾力性とを適切に設計することによって初期圧を任意に設定でき、また、注入圧力に耐える強度のパッカを形成できる。したがって、本発明は以下の方法を行えることにより初期圧が容易に形成され、内管パッカを内管吐出口からの吐出よりも早く膨張しやすくすることができる。
(a)内管吐出口を噴射孔等の細孔にする。
(b)内管吐出口の面積は内管流路の断面積よりも小さい。
(c)内管パッカ内吐出口を内管吐出口よりも大きくする。
(d)内管吐出口に逆止弁を設ける。図6(d)はバネ52の力よりも内管内の注入液の圧力が大きくなってはじめて外管内空間に注入液が吐出される。
(e)内管吐出口を吐出抵抗体で覆う。図6(c)において、ゴムスリーブ26を用い、吐出口を覆っておけば、ゴムスリーブ26の弾力性に対応した内管内注入液の圧力が高まった時点で注入液が外管内空間に吐出される。
以上の基本原理に基づいて本発明は請求項に示すとおりに完成された。図4中、44は脱圧装置であって、送液バルブ45、三方コック46、吸水ポンプ47から構成される。48は排水管であり、三方コック49を備える。
図4からわかるように、注入圧力は圧力計38によって測定される。したがって、内管吐出口30から吐出された後、地盤中における注入圧力を知るには、空気中における吐出圧力を差し引いて算出すればよいことになるが、注入中における実際の圧力を知るには、外管内空間32に電気的土圧計、ストレインゲージまたは間隙水圧計のいずれかを設置して外管内空間32における注入液の液圧を計算し、その情報をリアルタイムで有線または無線により地上部の管理室に集め、その情報に基づき、注入速度や、注入圧力や、注入の中断、完了等の注入管操作を管理することにより、最適の注入を行うことができる。もちろん、同時に、内管パッカ27内にも同様の電気的土圧計や、ストレインゲージ間隙水圧計のいずれかを設け、その情報を得ることによって内管内圧力と外部浸透圧力の変動や、圧力の差の情報を得ることによって内管の吐出口の状況や外部のゲル化の状況を正確に把握して注入管理にフィードバックすることができる。
これらの計測センサーは通常、図6(d)あるいは図4の内管吐出口30の出口流路に設置することもできるが、さらに内管のパッカ間の外側壁にストレインゲージや土圧計をはりつけることもできる。もちろん、外管内側の壁面に埋め込むこともできる。そして、その情報は内管を通して、または外管に設けた溝等に沿って、有線または無線により地上に送られる。また、本発明において、隣接する二つの内管パッカ27、27をはさむ1ステージ毎に注入する場合、図4の流量計39の計測値がそのままそのステージにおける注入速度を示すことになる。一方、図3、図5に示すように、一定の注入流量を複数の注入ステージに同時に注入する場合、通常、土層が平面的に滞積している地盤を対象としており、この場合、内管吐出口の孔径に対応してその吐出量が分配されるとみなすことができる。このため、水平方向に注入する液状化防止用注入工法として本発明における多ステージ同時注入は極めて有用である。しかし、その実際を計測する場合には、図4または図6におけるそれぞれのステージの内管吐出口部分に毎分流速を計測するセンサーを設け、その計測センサーの情報を有線または無線で地上部の管理室に集めることによって各ステージの注入速度と注入量をリアルタイムで把握し、前述した注入操作にフィードバックして最適の注入管理を管理することが可能になる。
なお、流量計測センサーは定流量弁や、さらに積算流量計であって、これを図6(d)における逆止弁と内管吐出口の間の流路に設けてもよい。この場合、流量は内管に沿わせて外管内空間におさまるように設ければよい。また、積算流量計は注入が完了後、地上部に取り出して、そのステージの注入量を確認してもよく、また、有線または無線により、リアルタイムで地上部で情報を集めて記録してもよい。また、上述したように、注入圧力センサーと注入流量センサーを同時に設け、これにより、各注入ステージにおける外管内空間の注入圧力、吐出速度を把握して注入管理をすることができる。
さらに、本発明では、ボーリングロッドによる削孔の際に、孔壁保持材を含有する削孔液を用いて削孔することが望ましい。孔壁保持材としては、CMCやPVA等、高分子系材料が適している。もちろん、これらにさらにベントナイトを混入することもできる。これらは潤滑材でもあり、横方向ボーリングの際に削孔作業を容易にするのみならず、ボーリングロッドを引き抜くに当って、垂直方向の土圧が作用しても、孔壁が保持される。このため、引き抜きが容易になるのみならず、横方向の削孔壁が注入するまでに崩壊して注入が困難になるという問題を解決し、注入孔壁が高分子材の粘着力によって保持されて注入が容易になる。
上述構成からなる本発明地盤注入装置は管径を小さくして構造を単純化することにより削孔を小さくし、また、ある注入深度において注入効果が不充分な場合、繰り返し注入が可能であり、また、多数の削孔、外管の埋設工程と、注入工程をそれぞれ別々にまとめて行うことにより施工の合理化を行うことができ、したがって、作業性を向上させて経済性を得、さらに大深度の地盤注入やトンネル等の長区間注入を可能にし、かつ注入効果を確実にし、地盤注入分野での利用可能性が高い。
本発明にかかる地盤注入装置の一具体例の断面図である。 本発明にかかる地盤注入装置の他の具体例の断面図である。 本発明にかかる地盤注入装置のさらに他の具体例の断面図である。 本発明のパッカ機能の原理を説明するための実験装置の説明図である。 内管を複数本備えた装置の説明図である。 内管パッカ内吐出口と内管吐出口を表した説明図であって、大きさの関係を表す。 内管パッカ内吐出口と内管吐出口を表した説明図であって、大きさの関係を表す。 内管吐出口に覆われるゴムスリーブを表す。 内管吐出口に取りつけられた逆止弁の説明図である。 内管をフレキシブルジョイントで連結した状態の説明図である。 内管をフレキシブルジョイントで連結した状態の説明図である。 従来の装置の断面図であって、工程図を表す。 従来の装置の断面図であって、工程図を表す。 従来の装置の断面図であって、工程図を表す。 従来の装置の断面図であって、工程図を表す。
符号の説明
A 地盤注入装置
1 地盤
20 外管
21 内管
22 外管吐出口
23 削孔
24 削孔壁
25 シールグラウト
26 ゴムスリーブ
27 内管パッカ
28 締め金具
29 内管パッカ内吐出口
30 内管吐出口
31 内管流路
32 外管内空間
33 外管パッカ
34 外管パッカ内吐出口
35 外管外空間

Claims (23)

  1. 地盤中に設置され、軸方向の異なる位置に複数の外管吐出口を有する外管と、この外管内に遊挿され、複数の膨縮性内管パッカを前記外管吐出口をはさむように間隔をあけて備え、さらに、これら内管パッカ内にパッカ内吐出口を有し、かつ前記間隔をあけて備えられた内管パッカ間に内管吐出口を有する内管とを備えてなる地盤注入装置。
  2. 請求項1において、外管は地盤の削孔中にシールグラウトによって定着、設置される請求項1に記載の地盤注入装置。
  3. 請求項1において、外管は外管吐出口をはさむように複数の外管パッカを備え、該外管パッカ内に固結材を填充し、膨張させて地盤に定着、設置される請求項1に記載の地盤注入装置。
  4. 請求項3において、外管パッカは透水性袋体であって、該外管パッカ内に固結材を填充し、削孔径よりも大きな径に膨張させて土中にパッカを形成し、外管を地盤に定着、設置する請求項3に記載の地盤注入装置。
  5. 請求項1において、内管が三個以上の膨縮性内管パッカを備えることにより外管内空間を複数形成してなり、これにより複数の外管吐出口から注入液が同時に地盤中に注入される請求項1に記載の地盤注入装置。
  6. 請求項1において、内管流路を複数本設け、各内管吐出口を異なる外管内空間に開口するようにした請求項1に記載の地盤注入装置。
  7. 請求項1において、内管パッカは弾力性のある不透水性袋体であって、内圧が加われば膨張し、加圧を停止したり、減圧すると収縮する膨縮性パッカである請求項1に記載の地盤注入装置。
  8. 請求項1において、膨縮性内管パッカは弾力性のある不透水性袋体であって、注入液の送液による内圧で外管内壁に密着するまで膨張し、注入液の送液を停止することにより、あるいは内管内の注入液の一部を脱液して内管内圧力を低下させることにより収縮し、これにより内管を外管内で移動自在とする請求項1に記載の地盤注入装置。
  9. 請求項8において、弾力性のある不透水性袋体は筒状合成樹脂であって、パッカ内吐出口が筒状内に位置するように両端を内管に緊結して取付けられる請求項8に記載の地盤注入装置。
  10. 請求項1において、内管吐出口は以下の(a)乃至(c)のいずれかを満たすように形成される請求項1に記載の地盤注入装置。
    (a)内管吐出口を細孔に形成する。
    (b)内管吐出口を内管パッカ内吐出口よりも細孔に形成する。
    (c)内管吐出口の面積を内管流路の断面積よりも小さく形成する。
  11. 請求項10において、細孔は噴射ノズルとして形成される請求項10に記載の地盤注入装置。
  12. 請求項1において、内管吐出口が逆止弁を備えるか、吐出抵抗体で覆われる請求項1に記載の地盤注入装置。
  13. 請求項1において、内管流路には脱圧装置が設けられる請求項1に記載の地盤注入装置。
  14. 請求項1において、内管はフレキシブルジョイントで連結される請求項1に記載の地盤注入装置。
  15. 地盤の削孔中に設置された注入管を通して地盤中に注入液を注入する地盤注入工法において、前記注入管として、軸方向の異なる位置に複数の外管吐出口を有する外管と、この外管内に遊挿され、複数の膨縮性内管パッカを前記外管吐出口をはさむように間隔をあけて備え、さらに、これら内管パッカ内にパッカ内吐出口を有し、かつ前記間隔をあけて備えられた内管パッカ間に内管吐出口を有する内管とを備えた注入管を用い、内管流路に注入液を送液することにより、前記膨縮性内管パッカを注入液の送液圧力によって膨張して複数の内管パッカ間に外管内空間を形成するとともに、この外管内空間内に内管吐出口から注入液を吐出し、注入液を外管内空間から外管吐出口を通して地盤中に注入することを特徴とする地盤注入工法。
  16. 請求項15において、内管パッカは弾力性のある不透水性の膨縮性袋体であって、注入液の送液圧力によって膨張し、かつ注入液の送液を停止あるいは内管流路の注入液の一部または全部を脱液して内管内圧力を低下することによって収縮する請求項15に記載の地盤注入工法。
  17. 請求項15において、内管流路の注入液を一部脱液して内管内圧力を低下させ、内管パッカを収縮せしめることにより内管を外管内で移動せしめる請求項15に記載の地盤注入工法。
  18. 請求項15において、注入液として、空気中におけるゲル化時間が土中、ゲル化時間よりも長い注入液を用いる請求項15に記載の地盤注入工法。
  19. 請求項15において、注入液が非アルカリ性水ガラスグラウト、活性シリカグラウトまたはゲル化時間が1時間以内のグラウトである請求項15に記載の地盤注入工法。
  20. 請求項15において、外管内空間および/または内管パッカ内に電気的土圧計、ストレインゲージあるいは間隙水圧計のいずれかを設置して注入時の注入圧を計測するようにした請求項15に記載の地盤注入工法。
  21. 請求項20において、注入圧の情報は有線または無線で地上に集められ、注入の制御に用いられる請求項20に記載の地盤注入工法。
  22. 請求項15において、内管吐出口に流量計測センサを設け、注入時の注入速度と注入量を計測するようにした請求項15に記載の地盤注入工法。
  23. 請求項16において、削孔はボーリングロッドにより孔壁保持材を含有する削孔液を用いて行う請求項16に記載の地盤注入工法。
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