JP2006131735A - ポリアニリン/β−1,3−グルカン複合体 - Google Patents

ポリアニリン/β−1,3−グルカン複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】 ポリアニリンを水中に高度に分散して可溶化およびファイバー化を達成させ、さらには生化学的認識能などを付与した導電性ポリアニリンを調製する技術を提供する。
【解決手段】 ポリアニリン(特にエメラルディン塩型ポリアニリン)とβ-1,3-グルカンとから成る水分散性複合体による。1本鎖にしたβ-1,3-グルカンをエメラルディン塩基型ポリアニリンと複合体化し、該複合体を水に溶解させ、生成物を酸にドープすることにより、導電性のエメラルディン塩型ポリアニリンから成るβ-1,3-グルカンとの複合体が得られる。また、官能基修飾β-1,3-グルカンを用いることにより、ポリアニリンに分子認識能などの機能性を付与することが可能である。
【選択図】 図8

Description

本発明は、ポリアニリン、特に、導電性ポリマーであるエメラルディン塩型ポリアニリンの水媒体中への高度分散を図り、さらに生化学的分子認識能などの機能性を付与するための技術に関する。
ポリアニリンはアニリンの酸化的化学重合あるいは電気化学重合により容易に合成される黒色粉末状の高分子であり、古くからアニリンブラックとして知られている。ポリアニリンは化学的安定性に優れていること、導電性の発現が通常の導電性高分子におけるように共役電子系の酸化還元によって起こるのに加えて、窒素原子へのプロトン付加という、別のメカニズムが関与していることなどから盛んに研究が行われている。
ポリアニリンは窒素原子が還元されたアミンと酸化されたイミンの2つの構造を取り得るのに加え、窒素原子のプロトン化が加わるためその分子構造は極めて複雑である。アニリンの酸化重合後はエメラルディン塩型のポリアニリンが得られるが、これをアルカリ処理するとエメラルディン塩基型となる。さらにこれを化学的もしくは電気化学的に還元するとロイコエメラルディン塩基型のポリアニリンに変換される(図1参照)。これら4種のポリアニリンの中で、エメラルディン塩型のポリアニリンのみが導電性を示す。
このような他の導電性高分子には無い、ポリアニリン固有の性質は古くから着目されてきたが、現在に至ってもその特異な性質を十分に引き出せているとは言えない。これはポリアニリンが水だけでなく有機溶媒に対しても溶解性が低いことが原因であると考えられる。さらに、ナノマテリアルとしての利用を考えた場合、ポリアニリンファイバー1本1本の機能に着目する必要があり、そのためファイバー1本を孤立分散化させる必要がある。しかし、このような観点からは研究が進行しているいとは言いがたい。
これまで、ポリアニリンを溶媒、特に水に安定に溶解させる手法が多くの研究者らによって独自に開発されてきた。例えば、水溶性高分子をポリアニリンにグラフト化する方法やカンファースルホン酸などの水溶性分子をポリアニリンとブレンドする方法,ポリアニリンをクロロ硫酸と反応させて水溶性誘導体に変化させる方法などである。ポリアニリンに水溶化性を付与することができれば、ポリアニリンに生体適合性を持たせることも可能となり、生理学的に重要な核酸やタンパク質をターゲットとしたセンシング素子など新規分野への応用が期待される。
特開平10-92220 Patrick A. McCarthy, JianyuHuang, Sze-Cheng Yang, Hsing-Lin Wang, Langmuir, 18, 259-263 (2002) 特開平10-60108
しかるに、上記文献に記載されているような方法でポリアニリンの可溶化が達成できたとしても、誘導体化による性質の変化や反応に要する手間と費用の問題などが残る。水溶化と同時にセンシング素子に必要な認識部位をポリアニリンに付与することは従来の方法では極めて困難であると考えられる。また、従来の方法で得られた生成物はナノレベルで特定の構造体を形成しているものではない。生体物質をターゲットとする場合、極めて微量の試料を感度よく検出する必要があるため、ポリアニリンファイバーをナノレベルで分散、機能化する必要がある。よって、このような材料をナノマテリアルとして利用するためにはさらなる微細加工が必要となる。
本発明の目的は、ポリアニリンの化学構造は保持したままで、水中に高度に分散し、可溶化およびファイバー化を達成し、さらには必要に応じて生化学的認識能を付与された導電性ポリアニリンを調製する技術を提供しようとするものである。
本発明者らは、天然多糖のβ-1,3-グルカンとポリアニリンを複合体化することにより如上の目的を達成し得ることを見出した。
かくして、本発明は、ポリアニリン(特にエメラルディン塩型ポリアニリン)とβ-1,3-グルカンとから成る水分散性複合体を提供するものである。さらに、本発明に従えば、そのようなポリアニリンとβ-1,3-グルカンとから成る水分散性複合体を製造する方法であって、1本鎖のβ-1,3-グルカンを含有する非プロトン性極性溶媒溶液またはアルカリ水溶液と、エメラルディン塩基型ポリアニリンを含有する非プロトン性極性溶媒溶液とを混合し、撹拌下に水を加え、さらにインキュベートすることにより、エメラルディン塩基型ポリアニリンとβ-1,3-グルカンとから成る複合体を形成させる工程を含む方法が提供される。
本発明により、市販ポリアニリンを簡単な物理的操作により、水中へ溶解および高度分散させることが可能となり、さらに生化学的認識能などを付与した導電性ポリアニリンの提供も可能となり、各種の電子産業やバイオテクノロジー分野への利用促進が期待される。
本発明において用いられるβ-1,3-グルカンとは、よく知られているように、グルコースがβ1→3グルコキシド結合により結合された多糖である。天然多糖として産出されるβ-1,3-グルカンは、水中において3重螺旋の構造体を形成している。そして、その中心部における疎水性空間は直径が1nm以下と考えられ、ポリアニリンと混合しても、そのままでは、ポリアニリンのファイバーをその空間に入れることは困難である。
しかしながら、本発明に従えば、予め非プロトン性極性溶媒またはアルカリ性水溶液に溶解させて1本鎖に解離させたβ-1,3-グルカンの溶液と、非プロトン性極性溶媒に溶解させたポリアニリンとを混合し、水を加えながら撹拌処理を行なった後、インキュベートすることにより、ポリアニリンとβ-1,3-グルカンとから成る複合体を容易に得ることができる。これは、1本鎖の状態に解離したβ-1,3-グルカンを中性の水中に入れると三重螺旋にまき戻ろうとすることは知られているが、この際、ポリアニリンが共存すると、そのポリマー(ポリアニリン)へのβ-1,3-グルカンの巻き付き・ラッピングが起こり、ポリアニリンとβ-1,3-グルカンとの複合体が形成されるためと理解される。
β-1,3-グルカンを溶解する非プロトン性極性溶媒および/またはポリアニリンを溶解する非プロトン性極性溶媒として用いられるのに特に好適な例はジメチルスルホキシド(DMSO)である。また、β-1,3-グルカンを溶解させて1本鎖に解離させる好適なアルカリ水溶液の1例は苛性ソーダ水溶液である。なお、インキュベーションは、一般に50℃前後の温度で2日間実施されるのが好ましい。
後述の実施例によっても示されるように、本発明のポリアニリン/β-1,3-グルカン複合体は、一次元配向したポリアニリン(ファイバー状ポリアニリン)をβ-1,3-グルカンがその疎水空間内に取り込み被覆している構造を呈していることが理解される。図2は、そのような本発明のポリアニリン/β-1,3-グルカン複合体の構造を模式的に示すものである。
本発明のポリアニリン/β-1,3-グルカンは、ポリアニリンに化学的な変化を起こすことなく、水分散性(水中溶解性)にきわめて優れている。すなわち、本発明の方法に従えば、特定条件下に、ポリアニリンとβ-1,3-グルカンの両成分を混合することにより、ポリアニリンの水溶化とナノレベルでの微細化(一次元配向)が容易に達成できる。
なお、β-1,3-グルカン以外の多糖類を用いる場合は、低濃度の条件下ではアミロースにポリアニリンの溶解性が若干認められるものの、溶液としての安定性およびファイバー状での分散性はほとんど認められない。また、スターチ、デキストリン、プルランについては溶解性が認められない(後述の実施例参照)。
本発明の複合体は、一般に、出発原料にエメラルディン塩基型として市販されているポリアニリンを用いて、上述した方法を適用してエメラルディン塩基型ポリアニリンとβ-1,3-グルカンの複合体として得られるが、この複合体を水性媒体中で酸性にすることによりエメラルディン塩基型ポリアニリンをエメラルディン塩型ポリアニリンにして、エメラルディン塩型ポリアニリン/β-1,3-グルカン複合体を得ることもできる。例えば、微量の塩酸を加えると、プロトンがドープされ、導電性ポリマーであるエメラルディン塩型のポリアニリン水溶液に変わる。このようなプロトンドープが複合体の形態に影響を及ぼさないことも確認されている。これらの複合体を構成するエメラルディン塩型またはエメラルディン塩基型ポリアニリンは、当該技術分野でよく知られているように、適当な還元条件下に供されることによりロイコエメラルディン塩型またはロイコエメラルディン塩基型ポリアニリンに変化し得る。
本発明で使用可能なβ-1,3-グルカンは、天然多糖として得られる各種のβ-1,3-グルカン化合物が対象となるが、特に、側鎖の約30〜50%がグルコース置換されたシゾフィラン、スクレログルカンおよびレンチナンは好適に使用可能される。側鎖にグルコース置換体を持たないβ-1,3-グルカンでも比較的分子量の低い、溶解性に富むもの、例えばカードランは使用できる。
さらに、β-1,3-グルカンには側鎖に位置選択的に種々の機能性官能基を導入することも可能であり、これによって、β-1,3-グルカンを介したポリアニリンへの機能付与も期待される。すなわち、得られた複合体はポリアニリンの導電性あるいは酸化還元活性と多糖の生体適合性などを同時に持つことになり、これまでにないバイオマテリアル、特にバイオセンサーなどへの応用も途が開ける。
本発明の特徴を以下の実施例でさらに具体的に示すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
低分子化カードランの調製 分子量120万のカードラン(Wako Pure Chemical Industries, Ltd., CAS登録番号9051-97-2)3.0gを乾燥DMF(ジメチルホルムアミド)50mlに加え、溶液を50℃に加熱し一晩かけて溶解させた。ここに、パラトルエンスルホン酸0.3gを加え加水分解反応を開始した。50℃にて加熱攪拌を行いながら、反応の進行をゲル浸透液体クロマトグラフィー(GPC)にて追跡し、目的の分子量にまで加水分解された時点で反応溶液15mlを分取した。この分取した反応溶液にメタノール200mlを加え、再沈殿操作により精製を行った。得られた白色繊維状沈殿物を乾燥させ、低分子量カードランを得た。
生成物の分子量をプルラン標準物質(Pullulan
Standard, SHOWA DENKO K.K.)を基準にGPC法で測定した。測定条件は、送液システム:日本分光、PU-1580、カラムオーブン:日本分光、CO-2060、検出器:日本分光、RI-2031、カラム:TOSOH TSK-gel α-4000、移動層:DMF、流速:0.6ml/min、温度:40℃で、その結果Mn=19,000、Mw=33,300、Mw/Mn=1.75であることがわかり、生成物は水に対して溶解性を持っていることも確認された。
カードランによるポリアニリンの溶解 表1の比率にて、以下の手順で混合を行った。まず、実施例1で得られたカードランのDMSO溶液(0.5 g/dl)とポリアニリン(Aldrichより購入、エメラルディン塩基型、Mw=10,000)のDMSO溶液(0.1g/dl)を混合し、均一溶液とした。この溶液に蒸留水を少量ずつ、溶液が均一状態を保つように攪拌しながら加えた。最終的に水は1.9ml加え、水:DMSO=95:5(v/v)(Vw(水の体積割合)=95%)とした。この溶液を50℃で2日間インキュベートした。得られた溶液を遠心管に移し、遠心分離(7000回転/分)を1時間行い、カードラン−ポリアニリン複合体を沈殿させ、未反応のカードラン、及びポリアニリンを含んだ上澄みを除去した。沈殿を水2mlに分散させ、さらに遠心分離(7000回転/分)を1時間行った。この操作を3回繰り返し、最終的にカードラン-ポリアニリン複合体の水溶液を得た。この溶液はエメラルディン塩基型ポリアニリンに特有の青色を示しており、ポリアニリンが水中に安定に分散していることが示された。
シゾフィランの調製 3重螺旋構造のシゾフィランを文献記載の定法に従って製造した。すなわち、ATCC(American Type
Culture Collection)から入手したSchizophyllum
commune. Fries(ATCC 44200)を、最小培地を用いて7日間静置培養した後、細胞成分および不溶残渣を遠心分離して得られた上清を超音波処理して分子量45万(1本鎖あたり15万)の3重螺旋シゾフィランを得た。
Gregory G.Martin, Michael F. Richardson, Gordon C. Cannon and Charles L. McCormick, Am.Chem. Soc. Polymer Prepr. 38 (1), 253-254(1997) Kengo Tabata,Wataru Ito, Takemasa Kojima, Shozo Kawabata and Akira Misaki, CarbohydrateResearch, 89, 121-135(1981)
シゾフィランによるポリアニリンの溶解 実施例3で得られシゾフィラン(図面中SPGと記している)のDMSO溶液(2.0g/dl)とポリアニリン(図面中、PANIと記している)のDMSO溶液(0.4g/dl)を混合し、均一に分散させた。この液に蒸留水を少量ずつ、攪拌しながら加えた。水は最終的に1.9ml加え、水:DMSO=95:5(v/v)(Vw=95%)とした。この液を50℃で2日間インキュベートした。得られた液を遠心管に移し、遠心分離(7000回転/分)を1時間行い、シゾフィラン・ポリアニリン複合体を沈殿させ、未反応のシゾフィラン及びポリアニリンを含んだ上澄みを除去した。沈殿物を水2mlに分散させ、さらに遠心分離(7000回転/分)を1時間行った。この操作を3回繰り返し、最後にシゾフィランとポリアニリンの複合体水溶液を得た。混合比率と最終的な分散性評価の結果を表2に示した。
比較例1
各種多糖によるポリアニリンの溶解 β-1,3-グルカンでない多糖であるアミロース(Amylose)とスターチを用い、実施例4と同一の条件で分散させた。混合比率および分散性の評価結果は表3に示した。その結果、これらの非β-1,3-グルカン多糖を使うと沈殿物を生じ、この条件ではポリアニリンを水に溶解させることはできなかった。なお、混合前の試料濃度を1/4に落として(実施例2の条件で)行うと、アミロース(160,000)に関してのみ複合体の形成と水中への溶解現象が若干認められたが、スターチおよび3重鎖のシゾフィランは低濃度条件下でも溶解能を全く示さなかった。
および比較例2
多糖−ポリアニリン複合体の顕微鏡観察 表2の条件で得られたシゾフィラン(実施例4)とアミロース(比較例1)を使った場合の複合体の性状を、AFMおよびTEM観察により比較した。AFM観察の結果は、アミロースを使った場合はファイバー状のものはほとんど観察されず、塊状であったが、シゾフィランを用いたものはファイバー状を呈していることが認められた。この結果は、TEM観察の結果とも対応している(シゾフィラン:図3a,bアミロース:図3c)。これらの結果から、シゾフィランはポリアニリンをその空間内にファイバー状に取り込み、可溶化していると結論付けられる。
および比較例3
多糖−ポリアニリン複合体の円二色性(CD)スペクトル ポリアニリンとシゾフィランが複合体を形成していることの確認をCDスペクトルを用いて行った。用いたポリアニリンのみは不斉構造を持たないためCDは不活性であるが、シゾフィランと相互作用することにより多糖由来のCDがポリアニリンに誘起されると考えられる。表2の条件で得られた複合体水溶液のCDスペクトルを図4に示す。図4よりポリアニリンの吸収領域にCDが観察された。このことはポリアニリンとシゾフィランが分子レベルで相互作用し複合体を形成していることを示す。
および比較例4
多糖−ポリアニリン複合体の紫外−可視スペクトル観察 表2の条件で得られたシゾフィラン(実施例4)とアミロース(比較例1)を使った場合の複合体の性状比較を、UVスペクトル測定で行った。図5に示すスペクトルで、600nmのピークはエメラルディン構造中のキノイド型構造に由来するピークであり、300nmのピークはベンゾノイド型に由来するピークであると帰属される。この図から、ポリアニリンが特に化学的な変化を起こすことなく多糖によって水中に安定に溶解していることを示している。
アミロース、シゾフィランのスペクトルに一見違いが無いように見えるが、シゾフィラン-ポリアニリンに由来する2つのピークはアミロース-ポリアニリンのものと比較してそれぞれ5nmほど短波長シフトしていることが確認されている。また、同様にシゾフィランを用いたサンプルではピーク強度が減少する単色効果も確認できる。これらの結果はシゾフィランの空孔中でポリアニリンファイバー同士が密に配向していることを示している。つまり、シゾフィランはアミロースに比べてより強固にポリアニリンをその疎水空間に取り込んでいることを示していると考えられる。
AtushiWatanabe, Toyoki Kunitake, J. Colloid Interface Sci., 145, 90-98 (1991)
および比較例5
多糖−ポリアニリン複合体のpH変化による安定性評価 表2の条件で得られたシゾフィラン(実施例4)とアミロース(比較例1)を使った場合の複合体のpH変化による安定性を調べた。前述したように、ポリアニリンの最も重要な構造はエメラルディン塩型のポリマーであり、エメラルディン塩基をプロトン酸でドープすることによって容易に得られることが知られている。そこで、得られた複合体の塩酸によるドープを試みた。サンプルの調製はそれぞれの水溶液2.0mlに塩酸5μlを加えて行った。塩酸ドープ直後のUVスペクトルを図6aに24時間後のスペクトルを図6bにそれぞれ示した。塩酸ドープにより溶液の色は青から緑へと変化した。UVスペクトルでは600nmのピークの消失に伴い、長波長領域に大きな、ブロード化したピークが現れた。これはドープにより生じたカチオンラジカル(ポーラロン)に由来するピークであり、複合体のドープによる異性化が通常のポリアニリンの場合と同様に可能であることが示された。そして、シゾフィラン−ポリアニリン複合体は酸性領域においても安定であるが、アミロース−ポリアニリン複合体は塩酸添加後数時間で緑色の沈殿物を生じていることが確認された。
また、24時間後のUVスペクトルは、シゾフィラン-ポリアニリン複合体では塩酸添加直後と比較してほとんど波形が変化していないのに対して、アミロース−ポリアニリン複合体では溶液にポリアニリンに由来するピークが完全に消失していた。シゾフィランーポリアニリン複合体が酸性条件下でも高い安定性を保持しているのはポリアニリンがシゾフィラン内部の疎水空間に取り込まれているためで、ポリアニリンがシゾフィランによって完全に被覆されていることによる効果であると考えられる。実際、塩酸ドープした後でも複合体はファイバー状の形態を保っていることがTEM(透過型電子顕微鏡)による観察の結果明らかとなった(図7)。一方、AFMとTEMで示したとおり、アミロースではこのような可溶化形態をとることはない。
ポリアニリンへの機能付与 ポリアニリンをシゾフィランのようなβ-1,3-グルカンによりラップすることの大きなメリットとして、化学修飾シゾフィランによってポリアニリンに様々な機能を付与できるようになることである。そこで、ポリアニリンへの機能付与と生体適合性を評価するために、マンノース修飾シゾフィランによるポリアニリンの可溶化と、得られた複合体のコンカナバリンA(ConA)親和性を評価する事にした。ConAはマンノースと特異的に相互作用する糖結合タンパク質の一種であり、複合体へのConAの結合が確認できれば化学修飾シゾフィランが未修飾のもの同様にポリアニリンを被覆することができることと、ポリアニリンにタンパク質親和性を付与できることを確認できる。この現象を視覚的に捕らえるために蛍光色素によりラベル化されたConA(FITC-ConA)を用いてサンプル調製を行い、共焦点レーザー顕微鏡での評価を行った。サンプル調製の条件は未修飾シゾフィランの場合と同様の手法で行った。
共焦点レーザー顕微鏡による観察の結果を図8に示す。図8aは蛍光像であり蛍光標識されたConAのみが見えている。一方、図8bは透過光像であり複合体の像が現れている。図8cよりこれら2つの像が完全に一致していることが分かる。これらの結果より、ConAが複合体の表面に結合していることが示された。なお、図8では、理解を容易にするため、それぞれの顕微鏡写真の像を手でなぞって描いた図を併せて示している。
以上の結果より化学修飾シゾフィランを介してポリアニリンにタンパク質認識能が付与できることが示された。また、タンパク質(ConA)はその糖結合能を失うことなく複合体表面に結合していることから、ポリアニリンをシゾフィランで被覆することにより生体適合性を付与できる。これらの結果を利用すれば、シゾフィランなどのβ-1,3-グルカンに様々な官能基を導入し、ポリアニリンと複合化すれば両者をただ混合するのみで様々な機能が付与できることになる。
以上の実施例に示されるように、本発明に従えば、ポリアニリンの水溶化、一次元配向(ファイバー化)、機能付与を同時にしかも簡便に行うことができ、今後、ナノ配線やセンサーなどポリアニリンのナノデバイスとしての応用を促進させるのに寄与するものと考えられる。
本発明により得られるポリアニリン/β-1,3-グルカン複合体は、ポリアニリンの新しい用途開発に資するものであり、特に、水溶性導電性ポリアニリンを含む複合体は、透明電極、光電変換素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、触媒、非線形光学材料、生化学的センサー素子等の分野での利用が期待される。
本発明が適用されるポリアニリンの異性体とその相互変換関係を示す。 本発明のβ-1,3-グルカン−ポリアニリン複合体の概念図を示す。 シゾフィラン−ポリアニリン複合体およびアミロース-ポリアニリン複合体のTEM像(実施例5および比較例2)を示す。 シゾフィラン−ポリアニリン複合体のCDスペクトル(実施例6および比較例3)を示す。 シゾフィラン−ポリアニリン複合体およびアミロース−ポリアニリン複合体のUVスペクトル(実施例7および比較例4)を示す。 シゾフィラン−ポリアニリン複合体およびアミロース−ポリアニリン複合体のpH変化によるUVスペクトルの安定性(実施例8および比較例5)を示す。 塩酸ドープ後のシゾフィラン−ポリアニリン複合体のTEM像(実施例8)を示す。 マンノース修飾シゾフィラン−ポリアニリン複合体がConAに結合することを示す共焦点レーザー顕微鏡像(実施例9)である。

Claims (8)

  1. ポリアニリンとβ-1,3-グルカンとから成ることを特徴とする水分散性複合体。
  2. ポリアニリンがエメラルディン塩型ポリアニリンであることを特徴とする請求項1の複合体。
  3. β-1,3-グルカンが、シゾフィラン、スクレログルカンまたはレンチナンから選ばれることを特徴とする請求項1または請求項2の複合体。
  4. β-1,3-グルカンが、カードランであることを特徴とする請求項1または請求項2の複合体。
  5. β-1,3-グルカンが側鎖に機能性官能基を有するものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの複合体。
  6. ポリアニリンとβ-1,3-グルカンとから成る水分散性複合体を製造する方法であって、
    1本鎖のβ-1,3-グルカンを含有する非プロトン性極性溶媒溶液またはアルカリ水溶液と、エメラルディン塩基型ポリアニリンを含有する非プロトン性極性溶媒溶液とを混合し、撹拌下に水を加え、さらにインキュベートすることにより、エメラルディン塩基型ポリアニリンとβ-1,3-グルカンとから成る複合体を形成させる工程を含むことを特徴とする方法。
  7. エメラルディン塩基型ポリアニリンとβ-1,3-グルカンとから成る複合体を水性媒体中で酸性にすることによりエメラルディン塩基型ポリアニリンをエメラルディン塩型ポリアニリンにする工程をさらに含むことを特徴とする請求項6の方法。
  8. 非プロトン性非極性溶媒として、ジメチルスルホキシドを用いることを特徴とする請求項6または請求項7の方法。
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