(第1の実施の形態)
以下、この発明に係る縦型ホール素子についてその第1の実施の形態を示す。
まず、図1を参照して、この実施の形態に係る縦型ホール素子の概略構造およびその動作態様について説明する。なお、この図1において、図1(a)はこのホール素子の平面構造を模式的に示す平面図、図1(b)は図1(a)のL1−L1線に沿った断面図、図1(c)は図1(a)のL2−L2線に沿った断面図である。
同図1(a)〜(c)に示されるように、このホール素子は、大きくは、例えばP型のシリコンからなる半導体層(P-sub)11と、この表面に例えばN型の導電型不純物が導入されて拡散層として形成されたN型の半導体領域(Nウェル)12とを有して構成されている。なお、前述したように、シリコン等の半導体材料は、P型からなる半導体よりもN型からなる半導体のほうが大きなキャリア移動度をもっているため、この半導体領域12の材料としては、N型の半導体材料(例えばシリコン)を用いることが望ましい。しかし、製造工程や構造上の条件等に応じてP型の半導体材料(P-層)を採用することもできる。ちなみに、この半導体領域12の不純物濃度が小さく(薄く)なるほど、同領域におけるキャリア移動度は大きくなるため、ホール素子としての感度を上げる、すなわち出力電圧として大きな電圧を得るためには、同半導体領域12の不純物濃度を小さく(薄く)することがより望ましい。
そしてこのホール素子において、上記半導体層11には、当該ホール素子を他の素子と素子分離すべく、例えばP型の拡散層(P型拡散分離壁)16が形成されている。また、上記半導体領域12の表面には、同表面の不純物濃度(N型)が選択的に高められるかたちでコンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gおよび15a〜15cが形成され、これら各コンタクト領域とそこに配設される電極(配線)との間に良好なオーミックコンタクトが形成されるようになっている。そして、そのオーミックコンタクトを形成した各電極(配線)を介して、上記コンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gおよび15a〜15cと、端子Gnd1およびGnd2、並びに端子V1、端子S、端子V2とがそれぞれ電気的に接続されることになる。ここで、上記コンタクト領域13a〜13gとコンタクト領域14a〜14gとは、過電流により自断線するヒューズF3a〜F3gおよびF4a〜F4gを備える配線材を介して、それぞれグランド電位に固定された端子Gnd1およびGnd2と電気的に接続される。この実施の形態に係る縦型ホール素子では、その一部(ヒューズ部分)を断線可能にして配設される上記配線材を備えることによって、上記コンタクト領域13a〜13gやコンタクト領域14a〜14gの中からそれぞれ所望の領域を選択してオフセット電圧を調整(補正)することができるようになっている。図2(a)および(b)に、ここで用いられるヒューズの形態の一例を示す。
このヒューズは、例えば多結晶シリコン(poly−Si)やAl(アルミニウム)等からなり、例えば図2(a)に示すように、パッド部分から除々にその幅が狭められた形態をもって、ヒューズ部分(断線部分)においてはその幅が、所望とする電流値で自断線する程度の幅に設定されている。そして、パッド部分からその電流値を超える過電流が供給されると、図2(b)に示すように、ヒューズ部分が断線するようになっている。
また、図1(a)に示すように、上記拡散層16に囲まれた領域(活性領域)においては、各拡散層によるpn接合分離を通じて、上記半導体領域12が、P型の拡散層(P型拡散分離壁)17aおよび17bを互いに隔てた領域12a〜12cに分割されている。またここで、これら領域12a〜12cは、図1(b)および(c)に示すように、基板内部においても上記拡散層17aおよび17bにより電気的に区画された空間を形成している。そして、これら領域のうちの、領域12aに上記コンタクト領域13a〜13gが、領域12bに上記コンタクト領域14a〜14gが、領域(素子領域)12cに上記コンタクト領域15a〜15cがそれぞれ形成されている。すなわち、これらコンタクト領域は、コンタクト領域15a〜15cが拡散層17aおよび17bの一方を隔てて上記コンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gの双方にそれぞれ対向するかたちで配置される。
そして、このホール素子においては、上記領域12cの基板内部に電気的に区画される空間にあって上記コンタクト領域15aおよび15cにて挟まれる空間が、いわゆる磁気検出部(ホールプレート)HPとなる。すなわち、ここに印加される磁界に応じたホール電圧が発生することになる。なおここでは、磁気検出部HPに電流を流すためのコンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gおよび15bが、ホール電圧を出力する部分であるコンタクト領域15aおよび15cに対して対称に設けられている。これにより、横方向電流(基板表面に平行に流れる電流成分)に対して生じるホール電圧が打ち消されて、検出対象とする磁界成分(基板表面に平行な磁界成分)を精度良く検出することができるようになる。また、オフセット電圧の調整(補正)を効率的に、また的確に行う上でも、こうした構造は有効である。またさらに、上記拡散層17aおよび17bが設けられていることによって、横方向(基板表面に平行な方向)への電流がこれらに阻止されることになる。すなわちこれにより、検出精度のさらなる向上が図られることになる。
このようなホール素子において、例えば、上記端子Sと端子Gnd1との間、並びに端子Sと端子Gnd2との間にそれぞれ一定の駆動電流を流すと、その電流は、基板表面に形成されたコンタクト領域15bから磁気検出部HPを通じて、コンタクト領域13a〜13g側へ、あるいはコンタクト領域14a〜14g側へとそれぞれ流れることとなる。すなわち、上記磁気検出部HPに流れる駆動電流は、同基板の表面に垂直な成分を主に含む電流となる。このため、その駆動電流を流した状態において、同基板の表面に平行な成分を含む磁界(例えば図1中に矢印Bで示される磁界)が当該ホール素子の磁気検出部HPに印加されたとすると、前述したホール効果によって、上記端子V1と端子V2との間にその磁界に応じたホール電圧が発生することとなる。したがって、それら端子V1およびV2を通じてその発生したホール電圧を検出することで、図31に示した先の計算式「VH=(RHIB/d)cosθ」に基づき検出対象とする磁界成分が、すなわち当該ホール素子に用いられる基板の表面(チップ面)に平行な磁界成分が求められることとなる。ちなみに、このホール素子では、図1中に示す寸法dが磁気検出部(ホールプレート)の厚さ(上記計算式中の「d」)に相当する。また、このホール素子において駆動電流を流す方向は任意であり、上記端子Gnd1およびGnd2を電源電位に、また端子Sをグランド電位にそれぞれ固定し、駆動電流の向きを反対にしてホール電圧の検出を行うこともできる。
次に、上記縦型ホール素子に関するオフセット電圧の調整(補正)原理について、図3を参照しつつ説明する。なお、この図3の平面図は先の図1(a)の平面図に対応するものであり、同図1(a)に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、それら要素についての重複する説明は割愛する。また、この図3において、領域12a〜12c中の破線は、基板表面の電位分布、すなわち等電位線を概念的に示すものである。また、一点鎖線による直線Pは、各ホール素子の中心(基準位置)を示すものである。
まず、図3(a)に、オフセット電圧が生じていない理想的な状態にあるホール素子の電位分布を示す。すなわちこの場合、オフセット電圧を調整する必要はない。
次に、図3(b)に、オフセット電圧が生じたときの電位分布を示す。なおここでは、製造過程(リソグラフィ工程)におけるアライメントずれにより、上記拡散層16および17aおよび17bに対し、磁気検出部HPに電流を流すためのコンタクト領域(ここでは便宜上、コンタクト領域13dおよび14dおよび15bのみを図示)が本来の位置からずれて(図の上方へ偏って)形成された場合を想定している。
このように、素子内部の電位分布にアンバランス(不平衡)が生じてオフセット電圧が発生した場合には、素子内部の電位分布を所要のかたちに調整する、すなわち元の平衡状態に近づけることで、オフセット電圧を低減させることができる。図3(c)に、このオフセット電圧の調整態様の一例を示す。すなわち、例えば他の配線材に過電流を流して各ヒューズを自断線させることによって、コンタクト領域13d、13f、14d、14fを選択してこれらを、上記磁気検出部HPに電流を流すためのコンタクト領域として用いるようにすれば、電位分布は平衡状態(対称分布)に近づき、オフセット電圧は低減されることとなる。なお、どのコンタクト領域を選択したときにどのように電位分布(あるいはオフセット電圧)が変化するかは、予め把握しておくことが望ましい。こうしておけば、例えば後工程(調整工程)として、調整対象とするホール素子のオフセット電圧を測定した後、上記把握しておいたデータに基づきその測定したオフセット電圧に応じた調整(補正)を行うことで、オフセット電圧の低減を図ることができるようになる。
このように、この実施の形態に係る縦型ホール素子によれば、配線材を適宜に断線させることで、磁気検出部HPから電流を取り出す部分として設けられたコンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gの中から適宜のものを選択してそれを、上記磁気検出部HPから電流を取り出す部分として用いることができるようになる。このため、前述のアライメントずれ等に起因して素子内部の電位分布にアンバランス(不平衡)が生じたとしても、これを適宜に補正してオフセット電圧(不平衡電圧)を好適に低減することができるようになる。また、オフセット電圧についての補正演算を行う補正回路等を備える構成にあっても、その補正分が低減されることになるため、同補正回路の回路規模の縮小化が図られることとなる。
次に、図4および図5を参照して、この実施の形態に係る縦型ホール素子の製造方法について詳述する。なお、これら各図は、先の図1(c)の断面図に対応した断面図であり、先の図1(c)に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示している。またここでは、このホール素子と共に1チップに集積化されて同素子から出力されるホール電圧信号に対して所定の信号処理を行う信号処理回路や、上記オフセット電圧に関する補正演算を行う補正回路を、当該ホール素子の周辺回路として設けた磁気センサを想定している。すなわち、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路等からなる周辺回路(回路部)と当該ホール素子(ホール素子部)とを同時に形成する場合の製造方法について説明する。
この製造に際しては、まず、図4(a)に示すように、例えば面方位「100」のP型のシリコンからなる基板(半導体層11)を用意する。そして、図4(b)に示すように、例えばフォトリソグラフィによりパターニングされた適宜のマスクを用いてその半導体層11に対して例えばリン等からなるN型不純物のイオン注入を行った後、これに適宜の熱処理を施して、N型の半導体領域12およびC12を拡散層(Nウェル)として形成する。
その後、図4(c)に示すように、例えばフォトリソグラフィによりパターニングされた適宜のマスクを用いて所望の箇所に例えば硼素(ボロン)等からなるP型不純物のイオン注入を行った後、これに適宜の熱処理を施して、P型の拡散層(Pウェル)16および17aおよび17b、並びに拡散層(Pウェル)C13を形成する。
次に、図5(a)に示す構造とすべく、例えば周知の選択酸化法により、LOCOS構造をとるフィールド酸化膜(LOCOS酸化膜)CL1を所望の箇所に選択的に形成する。そして、例えば熱酸化により、酸化シリコン等からなるゲート絶縁膜I1a〜I1cを形成した後、それらゲート絶縁膜I1a〜I1cの上に、それぞれ例えば多結晶シリコンからなるゲート電極G1a〜G1cを形成する。
次いで、例えばフォトリソグラフィによりパターニングされた適宜のマスクを用いて所望の箇所に、例えば砒素等からなるN型不純物、並びに例えば硼素(ボロン)等からなるP型不純物のイオン注入を行った後、これに適宜の熱処理を施す。こうして、図5(b)に示すように、コンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gおよび15a〜15c(ここでは便宜上、コンタクト領域13d、14d、15bのみ図示)や、ソースドレイン層C13a〜C13fが形成されることとなる。なお、ソースドレイン層C13a〜C13fについては、上記LOCOS酸化膜CL1やゲート電極G1a〜G1cをマスクとして用いて自己整合的に形成することもできる。またこの際、サイドウォールやシリサイド等の形成も必要に応じて行われる。
さらに、この上に、例えば熱CVDにより、例えばPSG(Phospho Silicate Glass)等からなる絶縁膜18を形成するとともに、同絶縁膜18を適宜パターニングして所望の箇所にコンタクトホールを形成する。そして、それらコンタクトホールを埋め込むかたちで、例えばアルミニウム等からなる配線材料を成膜するとともに、この成膜した配線材料を適宜パターニングする。こうして、図5(c)に示すように、上記コンタクト領域やソースドレイン層との間にそれぞれ良好なオーミックコンタクトを形成する配線(電極)19a〜19cおよびC19a〜C19fが形成されることとなる。そしてこれにより、先の図1に示した縦型ホール素子およびその周辺回路が完成することとなる。
以上説明したように、この実施の形態に係る縦型ホール素子によれば、以下に記載するような多くの優れた効果が得られるようになる。
(1)半導体基板の表面に、磁気検出部HPから電流を取り出す部分として、上記コンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gを設け、それらコンタクト領域の各々を、一部(ヒューズ部分)を断線可能にして配設される配線材を介してグランド電位に固定した構造とした。これにより、前述のアライメントずれ等に起因して素子内部の電位分布にアンバランス(不平衡)が生じたとしても、これを適宜に補正してオフセット電圧(不平衡電圧)を好適に低減することができるようになる。また、オフセット電圧に関する補正演算を行う補正回路を備える構成にあっても、その補正分が低減されることになるため、同補正回路の回路規模の縮小化が図られることとなる。
(2)また、このように、オフセット電圧の低減や補正回路の回路規模の縮小化が図られることは、ホール素子の歩留り向上、低コスト化にもつながり、ひいては省エネルギー化が図られるようにもなる。
(3)上記コンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gが、磁気検出部HPに電流を供給するためのグランド電位に固定される構造とした。これにより、ホール素子としての構造の複雑化を招くことなく、上記構造を実現することができるようになる。
(4)磁気検出部HPに電流を流すためのコンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gおよび15bを、ホール電圧を出力する部分であるコンタクト領域15aおよび15cに対して対称に設けるようにした。これにより、検出対象とする磁界成分を、すなわち基板表面に平行な磁界成分を精度良く検出することができるようになる。また、オフセット電圧の調整(補正)を効率的に、また的確に行う上でも、こうした構造は有効である。
(5)また、磁気検出部HPに電流を供給する部分あるいは同磁気検出部HPから電流を取り出す部分、さらにはホール電圧を出力する部分に、半導体基板の表面の不純物濃度が選択的に高められるかたちで形成されたコンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14g、並びにコンタクト領域15a〜15cを設けるようにした。これにより、電流を供給するもしくは取り出すために、あるいはホール電圧を検出するためにそれら各領域に配設される電極(配線)との間に良好なオーミックコンタクトが形成されるようになる。
(6)上記一部を断線可能にして配設される配線材として、過電流により自断線するヒューズを備えるものを採用することとした。これにより、オフセット電圧を補正すべく行われる当該配線材の断線処理をより容易に且つ適切に行うことができるようになる。
(7)当該ホール素子から出力されるホール電圧信号に対して所定の信号処理を行う信号処理回路と共々、当該縦型ホール素子を1チップに集積化して、所定の方向から印加される磁界を検出する磁気センサを構成させることで、前述した角度検出センサ等に用いて好適な磁気センサなども実現することができるようになる。
(第2の実施の形態)
図6に、この発明に係る縦型ホール素子の第2の実施の形態を示す。
以下、図6を参照して、先の第1の実施の形態との相違点を中心に、この実施の形態に係る縦型ホール素子の構造について説明する。なお、この図6の平面図も先の図1(a)の平面図に対応するものであり、同図1(a)に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、それら要素についての重複する説明は割愛する。
同図6に示されるように、この縦型ホール素子は、基本的には、図1に例示した先の第1の実施の形態の縦型ホール素子と略同様の構造を有しており、その動作態様も前述したとおりである。ただし、この実施の形態においては、上記コンタクト領域を、縦列および横列をもつ格子状に配列することとする。こうした構造によれば、それら格子状に配列された各領域につき、その各々に配設される配線材から断線すべき配線材を適宜に選択することで、素子内部の多様な電位分布にも柔軟に対応して、オフセット電圧をより好適に補正、低減することができるようになる。なお、これらコンタクト領域13および14のレイアウトはこの図6に例示するものに限られることなく、例えば図7に例示するように、上記縦列および横列をもつ格子の所望の箇所に空隙を設けたレイアウトとしても、上述の効果に準ずる効果は得られることとなる。また、これら各図においては、説明の便宜上、各コンタクト領域に配設される配線材やヒューズ等の図示を割愛している。
以上説明したように、この実施の形態に係る縦型ホール素子によれば、先の第1の実施の形態による前記(1)〜(7)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果に加え、さらに次のような効果が得られるようになる。
(8)コンタクト領域13および14を、縦列および横列をもつ格子状に配列することとした。こうした配列にすることで、オフセット電圧をより好適に補正、低減することができるようになる。
(第3の実施の形態)
図8および図9に、この発明に係る縦型ホール素子の第3の実施の形態を示す。
はじめに、図8を参照して、この実施の形態に係る縦型ホール素子の構造、より正確にはこの縦型ホール素子による磁気センサの構成について説明する。なお、この図8の平面図において、図1(a)に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、それら要素についての重複する説明は割愛する。
同図8に示すように、この実施の形態においては、互いに直交する2軸方向から印加される磁界(例えば図8中に矢印BxおよびByで示される磁界)を検出する態様で配設された、すなわち互いに直交するかたちで配設された2つの縦型ホール素子10が1チップに集積化されて磁気センサを構成している。なお、上記縦型ホール素子10は先の図1に示した構造を有する縦型ホール素子であり、ここでは便宜上、ヒューズF3a〜F3gおよびF4a〜F4g、並びに端子Gnd1およびGnd2(図1参照)等の図示を割愛している。
図9は、上記互いに直交するかたちで配設された2つの縦型ホール素子からそれぞれ出力されるホール電圧信号の出力波形VxおよびVyを示すグラフである。横軸の角度は、これらホール素子へ印加される磁界の角度を示している。
この図9のグラフからも分かるように、こうしたホール電圧信号により、より正確には例えば周辺回路として設けられた信号処理回路等を通じてこれらホール電圧信号に対して適宜の信号処理(演算処理)を施すことにより、1つの平面上の全ての方向からの磁界の検出、すなわち360°の広角度な磁界の検出が可能となる。
なお、こうして1チップに集積化される2つの縦型ホール素子については、その製造工程における各種条件のばらつき等によりそれら素子のペア性が悪化することが懸念されるため、互いの間隔をできるだけ近づけて、例えば「100μm」以内に配置させることが望ましい。こうした配置にすることで、製造工程等に起因する両者間のばらつきが抑制され、より良好なペア性が得られるようになる。
以上説明したように、この実施の形態に係る縦型ホール素子によれば、先の第1の実施の形態による前記(1)〜(7)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果に加え、さらに次のような効果が得られるようになる。
(9)互いに直交する2軸方向から印加される磁界を検出する態様で2つの縦型ホール素子10を1チップに集積化して磁気センサを構成させるようにした。これにより、360°の広角度な磁界の検出を可能とする高性能な磁気センサなども実現することができるようになる。
(第4の実施の形態)
図10に、この発明に係る縦型ホール素子の第4の実施の形態を示す。
以下、同図10を参照して、この実施の形態に係る縦型ホール素子の構造、より正確にはこの縦型ホール素子による磁気センサの構成について説明する。なお、この図10の平面図において、先の図1(a)および図32に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、それら要素についての重複する説明は割愛する。
同図10に示すように、この実施の形態においては、基板表面(チップ面)に垂直な磁界成分を検出する横型ホール素子20と共々、直交配置された2つの縦型ホール素子10が1チップに集積化されて、互いに直交する3軸方向からの磁界(例えば図10中に矢印BxおよびByおよびBzで示される磁界)を検出する3次元磁気センサを構成している。なお、上記縦型ホール素子10も先の図1に示した構造を有する縦型ホール素子であり、ここでは便宜上、上記ヒューズ等の図示を割愛している。また、上記横型ホール素子としては、先の図32に例示した構造の横型ホール素子20に限らず、適宜の横型ホール素子を採用することができる。
こうした構成の磁気センサにおいては、例えば周辺回路として設けられた信号処理回路等により上記各ホール素子から出力されるホール電圧信号に対して適宜の信号処理(演算処理)を施すことで、1つの平面上の全ての方向(2次元方向)に加え、さらにこれに直交する軸方向からの磁界(矢印Bz)の検出も可能となる。すなわち、いわゆる3次元の磁界検出が実現されることとなる。
以上説明したように、この実施の形態に係る縦型ホール素子によれば、先の第1の実施の形態による前記(1)〜(7)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果に加え、さらに次のような効果が得られるようになる。
(10)基板表面(チップ面)に垂直な磁界成分を検出する横型ホール素子20と共々、直交配置された2つの縦型ホール素子10を1チップに集積化して、互いに直交する3軸方向からの磁界を検出する3次元磁気センサを構成させるようにした。これにより、3次元の磁界検出が可能となる。
(第5の実施の形態)
図11および図12に、この発明に係る縦型ホール素子の第5の実施の形態を示す。
以下、図11および図12を参照して、先の第3の実施の形態との相違点を中心に、この実施の形態に係る縦型ホール素子の構造、より正確にはこの縦型ホール素子による磁気センサの構成について説明する。なお、これら図11および図12の平面図において、先の図1(a)に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、それら要素についての重複する説明は割愛する。
同図11に示すように、この実施の形態においても、互いに直交する2軸方向から印加される磁界を検出する態様で配設された、すなわち互いに直交するかたちで配設された2つの縦型ホール素子10(先の図1に示した構造を有する縦型ホール素子)が1チップに集積化されて磁気センサを構成している。ただし、ここでは、それら2つの縦型ホール素子10を、それぞれ同一方向に対向するかたちで形成された別の縦型ホール素子10a(これも先の図1に示した構造を有する縦型ホール素子)とペアをなすものとしている。こうした構成とすることで、互いに対向配置されてペアをなす2つの縦型ホール素子の出力電圧(ホール電圧)を平均化したり、それら縦型ホール素子の出力を切り替えたりするなどして、磁気センサとしての検出精度を高めることができるようになる。
また、図12に示すように、それら2つの縦型ホール素子10が各々形成するペアの双方を、チップとして切り出された基板の側面に対して略45°傾けて配置させることで、前述した素子外部から印加される種々の機械的な応力の影響を受けにくくなる。すなわち、それら各ホール素子のオフセット電圧が好適に低減され、磁気センサとしての検出精度がさらに高められることとなる。
以上説明したように、この実施の形態に係る縦型ホール素子によれば、先の第1もしくは第3の実施の形態による前記(1)〜(7)および(9)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果に加え、さらに次のような効果が得られるようになる。
(11)互いに直交するかたちで1チップに集積化されて磁気センサを構成する2つの縦型ホール素子10を、それぞれ同一方向に対向するかたちで形成された別の縦型ホール素子10aとペアをなすものとした。これにより、磁気センサとしての検出精度を高めることができるようになる。
(12)また、それら2つの縦型ホール素子10が各々形成するペアの双方を、チップとして切り出された基板の側面に対して略45°傾けて配置させることで、磁気センサとしての検出精度がさらに高められることとなる。
(第6の実施の形態)
図13〜図16に、この発明に係る縦型ホール素子の第6の実施の形態を示す。
はじめに、図13を参照して、この実施の形態に係る縦型ホール素子の構造、より正確にはこの縦型ホール素子による磁気センサの構成について説明する。なお、この図13の平面図において、先の図1(a)に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、それら要素についての重複する説明は割愛する。
同図13に示すように、この実施の形態においても、互いに直交する2軸方向から印加される磁界を検出する態様で配設された、すなわち互いに直交するかたちで配設された2つの縦型ホール素子10(先の図1に示した構造を有する縦型ホール素子)が1チップ(同一の基板)に集積化されて磁気センサを構成している。ただし、ここでは、それら2つの縦型ホール素子10をその基板の原子配列を等しくする結晶方位に、すなわち結晶方位(001)(または(00−1))および結晶方位(010)(または(0−10))にそれぞれ配することとしている。なおここでは、シリコンからなる基板(シリコン基板)を採用した場合を想定している。
通常、ホール素子の出力電圧(ホール電圧)は、磁気検出部HPのキャリア移動度に比例する。そして、こうしたキャリア移動度は、結晶構造(より詳しくは原子配列)に依存する傾向にある。また、前述した素子外部から印加される種々の機械的な応力に伴うピエゾ抵抗効果の影響も、同じく結晶構造に依存する傾向にある。このため、複数のホール素子を1チップ(同一の基板)に集積化する場合には、その基板のいずれの結晶方位(面方位)にそれらホール素子を配置するかが重要となる。この点、この実施の形態に係る縦型ホール素子のように、それら縦型ホール素子10を基板の原子配列を等しくする結晶方位に配することとすれば、それら縦型ホール素子10について良好なペア性が得られることとなる。すなわち、それら縦型ホール素子10に発生するホール電圧(出力電圧)や外部からの応力に応ずるピエゾ抵抗効果などについて、それらホール素子間でのばらつきが抑制されるようになり、ひいては磁気センサとしての高い検出精度が得られるようになる。
なお、シリコン基板においてその原子配列を等しくする結晶方位は、図13に例示したものに限られない。周知のように、単結晶シリコンはタイヤモンド構造(四面体構造)の材料であるため、結晶方位(001)、(00−1)、(010)、(0−10)に同様の原子配列をもつ。すなわち、例えば図14に示すように、
・上記2つの縦型ホール素子10を、結晶方位(011)または(0−1−1)、結晶方位(0−11)または(01−1)にそれぞれ配した構成。
あるいは図15に示すように、
・上記2つの縦型ホール素子10を、結晶方位(1−11)または(−11−1)、結晶方位(11−1)または(−1−11)にそれぞれ配した構成。
等々の構成としても、上述の効果と同様の効果が得られるようになる。
さらに、3つの縦型ホール素子を1チップに集積化する場合には、例えば図16に示すように、それら3つの縦型ホール素子10を、結晶方位(1−10)または(−110)、結晶方位(0−11)または(01−1)、結晶方位(10−1)または(−101)にそれぞれ配した構成とすることで、同様の効果が得られることとなる。
また、シリコン基板以外の基板を用いる場合も、1チップに集積化される2つの素子をその基板の原子配列を等しくする結晶方位に配することで、上述の効果と同様の効果を得ることができるようになる。
以上説明したように、この実施の形態に係る縦型ホール素子によれば、先の第1もしくは第3の実施の形態による前記(1)〜(7)および(9)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果に加え、さらに次のような効果が得られるようになる。
(13)1チップ(同一の基板)に集積化される複数の縦型ホール素子10を、その基板の原子配列を等しくする結晶方位に配するようにした。これにより、磁気センサとしての高い検出精度が得られるようになる。
(第7の実施の形態)
図17および図18に、この発明に係る縦型ホール素子の第7の実施の形態を示す。
以下、これら図17および図18を参照して、先の第6の実施の形態との相違点を中心に、この実施の形態に係る縦型ホール素子の構造、より正確にはこの縦型ホール素子による磁気センサの構成について説明する。なお、これら図17および図18の平面図において、先の図1(a)に示した要素と同一の要素には各々同一の符号を付して示し、それら要素についての重複する説明は割愛する。
同図17および図18に示すように、この実施の形態においても、互いに直交する2軸方向から印加される磁界を検出する態様で配設された、すなわち互いに直交するかたちで配設された2つの縦型ホール素子10(先の図1に示した構造を有する縦型ホール素子)が1チップ(同一の基板)に集積化されて磁気センサを構成している。そして、それら2つの縦型ホール素子10は、互いに隣り合うかたちで形成されるとともに、その基板の原子配列を等しくする結晶方位にそれぞれ配されている。ただし、ここでは、それら2つの縦型ホール素子10の周囲を囲繞する態様で、トレンチアイソレーションを、すなわち絶縁膜ILの埋設されたトレンチTNを設けた構造としている。これにより、前述した素子外部から印加される種々の機械的な応力の影響が緩和され、より良好なペア性が得られるようになる。なお、トレンチTNとしては、シャロートレンチ(STI)等を用いるようにしてもよい。
以上説明したように、この実施の形態に係る縦型ホール素子によれば、先の第1もしくは第3もしくは第6の実施の形態による前記(1)〜(7)および(9)および(13)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果に加え、さらに次のような効果が得られるようになる。
(14)1チップに集積化される2つの縦型ホール素子10を互いに隣り合うかたちで形成するとともに、それら2つの素子の周囲を囲繞する態様でトレンチアイソレーションを設けた構造とした。これにより、前述した素子外部から印加される種々の機械的な応力の影響が緩和され、より良好なペア性が得られるようになる。
(他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下の態様をもって実施することもできる。
・上記第3の実施の形態においては、互いに直交する2軸方向から印加される磁界を検出する態様で2つの縦型ホール素子10を1チップに集積化して磁気センサを構成させるようにしたが、この構造に限られることない。要は、異なる角度から印加される磁界を検出する態様で2つの素子を1チップに集積化して磁気センサを構成させることで足り、こうした構造であれば、第3の実施の形態による上記(9)の効果に準じた効果は得ることができる。
・上記各実施の形態の縦型ホール素子に用いられるヒューズは、先の図2に示した形態のヒューズに限られることなく、例えばダイオード等でこれを形成するようにしてもよい。
・上記各実施の形態においては、上記一部を断線可能にして配設される配線材として、過電流により自断線するヒューズを備えるものを採用することとした。しかし、これに限られることなく、例えばヒューズに代えて、レーザ等によるトリミング断線を可能とする例えばCrSiやAl(アルミニウム)等からなる薄膜抵抗を用いるようにしてもよい。またさらに、例えば外部からの信号に応じてスイッチング動作するスイッチング素子なども用いることができる。そして、こうしたスイッチング素子を採用する場合は、例えば、調整用のデータが予め記憶された適宜のメモリを適宜のデコーダを介して当該スイッチング素子に接続して、電源投入時等に上記メモリから読み出される調整用のデータに応じて同素子をスイッチング動作させるようにした構成などを採用することができる。なお、上記メモリとしては、例えばEPROMや、EEPROM、フラッシュメモリ、ROM等を採用することができる。そしてこうした構成にあっても、コンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gについて、適宜の組み合わせを選択することができるようになる。要は、少なくとも一部を一時的もしくは永続的に断線可能にして配設される配線材であれば、第1の実施の形態による上記(6)の効果と同様の効果もしくはそれに準じた効果は得ることができる。
・上記各実施の形態においては、磁気検出部HPに電流を流すためのコンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gおよび15bを、ホール電圧を出力する部分であるコンタクト領域15aおよび15cに対して対称に設けるようにした。しかし、これも必須の構成ではない。
・上記各実施の形態においては、上記領域12a〜12cを電気的に区画する分離壁として、拡散層16および17aおよび17bを用いるようにした。しかし、これに限られることなく、例えば図19に示すように、トレンチアイソレーションを、すなわち絶縁膜IL16およびIL17aおよびIL17bの埋設されたトレンチT1およびT2aおよびT2bを用いるようにしてもよい。
・また、例えば図20に示すように、上記各実施の形態において、当該ホール素子を他の素子と素子分離するために設けた拡散層16を割愛した構造としてもよい。またさらに、図21に示すように、先の図19に示した縦型ホール素子において絶縁膜IL16およびトレンチT1を割愛した構造としてもよい。このような構造によれば、ホール素子としての構造の簡素化、並びに小型化(小面積化)が図られるようになる。
・また、例えば図22に示すように、先の図19に示した縦型ホール素子について、例えば硼素(ボロン)等からなるP型不純物を導入することにより、上記トレンチT1およびT2aおよびT2bの内壁にP型の拡散領域D1を設けた構造としてもよい。ところで、半導体基板にトレンチを形成すると通常、そのトレンチの内壁にはダメージ層が形成されることとなり、そこでキャリアの再結合が生じ易くなる。この点、上記拡散領域D1を設けた構造によれば、同拡散領域D1によってこうしたキャリアの再結合が抑制され、半導体領域12のキャリア移動度は高く維持されるようになる。また、この拡散領域D1と半導体領域12との間に形成されたpn接合の空乏層が素子内部まで進入するようになるため、磁気検出部(ホールプレート)HPの厚さd(図31参照)に相当する寸法が実質的に狭められることにもなる。すなわち、こうした構造によれば、ホール素子としての高感度化が図られるようになる。またさらに、図23に示すように、こうした拡散領域D1を、先の図21に示した縦型ホール素子に対して設けることもできる。
・上記各実施の形態においては、半導体領域12を拡散層として形成するようにしたが、これに限られることはなく、例えば図24に示すような縦型ホール素子に対してもこの発明は同様に適用することができる。すなわち、上記半導体領域12に代えて、エピタキシャル成長にて形成された半導体領域E12を用いることもできる。また一般に、こうしたエピタキシャル基板を採用する場合には、同図24に示すように、埋込層BLが用いられることが多い。
・上記各実施の形態において、領域12a〜12c間に設けられた拡散層17aおよび17bを環状に形成するようにしてもよい。すなわち、例えば図25に示すように、これら拡散層17aおよび17bに代えて、トレンチアイソレーションを用いてこれを環状に設けるようにした構造なども適宜採用可能である。なおここでは、そのトレンチアイソレーションとして、絶縁膜IL17cの埋設されたトレンチT3を採用して、その内壁に上記拡散領域D1を設けた構造を例示している。
・さらに、図26あるいは図27に示すように、例えば周知の選択酸化法により、素子表面を覆うかたちでLOCOS酸化膜LS1を設けた構造や、例えば硼素(ボロン)等からなるP型不純物を導入することにより、同じく素子表面を覆うかたちでP型の導電型不純物が導入された拡散領域D2を形成した構造とすることもできる。なお、これら各図において、(b)は、(a)のL1−L1線に沿った断面図である。ところで、縦型ホール素子において、素子表面に形成される層間絶縁膜(例えば図5に示した絶縁膜18)内などには、ナトリウム(Na)などの可動イオンが存在する。このため、当該ホール素子への通電や温度変化等に伴ってこの可動イオンが動き、同素子から出力される極微小なホール電圧信号をふらつかせることがある。こうした出力電圧のふらつきは、同電圧に基づく磁界の検出に誤差を生じさせ、特に当該ホール素子を角度検出センサとして用いた場合には、そのセンサ特性の劣化は避けられず、深刻である。この点、上記の構造によれば、素子表面がLOCOS酸化膜LS1や拡散領域D2によって覆われることで保護され、上記可動イオンによる影響、すなわち検出精度の低下は抑制されるようになる。なお、拡散領域D2を設けた構造の縦型ホール素子に関しては、同拡散領域D2と半導体領域12との間に逆バイアスの電圧を印加した状態に同素子をおくことで、この電圧の印加によるpn接合付近の空乏層によって素子表面が保護されることとなる。また、素子表面を覆う膜としては、上記LOCOS酸化膜以外にも、適宜の酸化膜あるいは絶縁膜を用いることができる。さらに、こうして素子表面を保護することとすれば、同素子を形成した後に、例えばその周辺回路の製造工程としてイオン注入処理やプラズマ処理等が基板全面に施されたとしても、これによる当該ホール素子へのダメージは好適に軽減されるようになる。
・また、図28に示すように、所定の電位に固定された例えばアルミニウムや多結晶シリコン等からなる導体プレートGPが素子表面を覆うかたちで設けられた構造とすることとすれば、素子表面の電位は固定され、その周囲も安定した電位環境におかれることとなる。このため、上記可動イオンの動きは抑制され、この可動イオンに起因する上述の出力電圧のふらつき等も小さくなり、ホール素子としての検出精度を高く維持することができるようになる。さらに、この導体プレートGPは、素子上方からのノイズに対するシールドとしても機能するため、当該ホール素子のノイズ耐性を高めることもできるようになる。また、この導体プレートGPは、図29に示すように、先の図20に示したような拡散層16を割愛した縦型ホール素子に対して設けることもできる。
・また、図30に示すように、領域12a、並びに端子Gnd1側のコンタクト領域13a〜13g等を割愛した構造とすることもできる。こうした構造によれば、先の図1に示した縦型ホール素子と比較して約「1/3」の面積が縮小されることになり、大幅な小型化が図られるようになる。なお、こうしたホール素子の動作態様も、基本的には、図1に例示した先の縦型ホール素子と同様である。
・上記各実施の形態においては、磁気検出部HPに電流を供給する部分あるいは同磁気検出部HPから電流を取り出す部分、さらにはホール電圧を出力する部分に、半導体基板の表面の不純物濃度が選択的に高められたコンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14g、並びにコンタクト領域15a〜15cを設けるようにした。しかし、これは必須の構成ではなく、例えばこうしたコンタクト領域を設けずに半導体領域12の上に直に配線(電極)を設けるようにしてもよい。
・上記各実施の形態においては、上記コンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gを磁気検出部HPに電流を流すためのグランド電位に固定するようにした。しかし、これに限らず、例えばこれらコンタクト領域を上記磁気検出部HPに電流を流すための電源電位に固定した構成であっても、すなわちこれらコンタクト領域を磁気検出部HPに電流を供給する部分とする構成であっても、第1の実施の形態による上記(3)の効果と同様もしくはそれに準じた効果は得ることができる。また、これにも限られることなく、要は、これらコンタクト領域が、少なくとも一部を一時的もしくは永続的に断線可能にして配設される配線材を介して所定の電位に固定される構造であればこの発明は適用可能である。
・さらに、上記拡散層17aおよび17b等、上記領域12cを電気的に区画する分離壁も必須の構成要素ではない。すなわち、例えば磁気検出部HPに電流を流すための配線(電極)を基板の表裏に対向するかたちで設けた構造などにおいては、こうした分離壁を設けずとも、上記磁気検出部HPに対して基板表面(チップ面)に垂直な成分を含む電流を流すことができる。
・また、上記実施の形態においては、縦型ホール素子の駆動方法の一例として定電流駆動について説明したが、この縦型ホール素子の駆動方法は任意であり、例えば定電圧駆動によって駆動することもできる。
・また、上記実施の形態においては、当該ホール素子の周辺回路の一例としてCMOS回路を有して構成される回路を例示した。しかし、周辺回路の構成は任意であり、例えばバイポーラ回路からなるものを周辺回路として用いることもできる。
・上記各実施の形態においては、基板の材料としてシリコンを用いるようにしたが、製造工程や構造上の条件等に応じてその他の材料を適宜採用するようにしてもよい。例えば、GaAs、InSb、InAs、SiC等の化合物半導体材料やGe(ゲルマニウム)等の他の半導体材料も用いることができる。特に、GaAs、InAsは温度特性に優れた材料であり、当該ホール素子の高感度化を図る上で有効である。
・上記各実施の形態においては、上記コンタクト領域13a〜13gおよび14a〜14gのすべてをグランド電位に固定するようにした。しかし、これに限られることなく、例えばこれらコンタクト領域の1つを、少なくとも一部を一時的もしくは永続的に断線可能にして配設される配線材を介して所定の電位に固定した構造によっても、第1の実施の形態による上記(1)の効果に準じた効果は得ることができる。また、コンタクト領域15b(図1参照)の周りに1乃至複数の他のコンタクト領域を設けてそのコンタクト領域の少なくとも1つを、少なくとも一部を一時的もしくは永続的に断線可能にして配設される配線材を介して所定の電位に固定するようにした構造であっても、この発明は同様に適用することができる。要は、基板の表面に、磁気検出部に電流を供給する部分および磁気検出部から電流を取り出す部分の少なくとも一方を複数備え、その少なくとも1つが、少なくとも一部を一時的もしくは永続的に断線可能にして配設される配線材を介して所定の電位に固定される構造であれば足りる。
10、10a…縦型ホール素子、11…半導体層、12…半導体領域、12a〜12c…領域、13a〜13g、14a〜14g、15a〜15c…コンタクト領域、16、17a、17b…拡散層、18…絶縁膜、19a〜19c…配線(電極)、20…横型ホール素子、F3a〜F3g、F4a〜F4g…ヒューズ、HP…磁気検出部。