JP2006125222A - 揺動支持機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐久性の高い揺動支持機構を提供する。
【解決手段】 回転規制揺動支持部14は、駆動軸106の中心線L0 と直交するL1 を中心線とする第一ピン部材18と、L1 周りに回転可能な第一回転部材15と、第一ピン部材18を介して第一回転部材15と連結されハウジング(101)に支持される支持部材17と、L0 と直交しかつL1 に対して交差するL2 を中心線とする第二ピン部材19と、揺動部材110に固定され第二ピン部材19を介してL2 周りに回転可能に第一回転部材15に連結された第二回転部材16と、をもち、
ピン部材18,19は第一回転部材15または第二回転部材16と摺動し旋回部材108から伝達されるL0 周りのトルクを受ける第一高面圧摺動面をもつ第一摺動部5および第二高面圧摺動面をもつ第二摺動部6を有し、第一摺動部5および第二摺動部6には、凹部1が形成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 回転規制揺動支持部14は、駆動軸106の中心線L0 と直交するL1 を中心線とする第一ピン部材18と、L1 周りに回転可能な第一回転部材15と、第一ピン部材18を介して第一回転部材15と連結されハウジング(101)に支持される支持部材17と、L0 と直交しかつL1 に対して交差するL2 を中心線とする第二ピン部材19と、揺動部材110に固定され第二ピン部材19を介してL2 周りに回転可能に第一回転部材15に連結された第二回転部材16と、をもち、
ピン部材18,19は第一回転部材15または第二回転部材16と摺動し旋回部材108から伝達されるL0 周りのトルクを受ける第一高面圧摺動面をもつ第一摺動部5および第二高面圧摺動面をもつ第二摺動部6を有し、第一摺動部5および第二摺動部6には、凹部1が形成されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、揺動する部材を揺動可能に支持する揺動支持機構に関するものであり、たとえば、圧縮機に用いられる揺動支持機構に関するものである。
各種構造部材の結合部分には、自在継ぎ手やそれに類似する構成が用いられている部分が少なくない。
たとえば、特許文献1には、自在継ぎ手状の揺動支持機構を用いたワッブル型可変容量式圧縮機が開示されている。特許文献1に記載のワッブル型可変容量式圧縮機は、ハウジング(101,102,105)と、ハウジングに回転可能に支持される駆動軸106と、ハウジング内に配設され駆動軸106と一体的に回転するとともに駆動軸106に対して傾いた傾斜面108aを有する旋回部材108と、傾斜面108aと摺接し旋回部材108の回転とともに揺動する揺動部材110と、揺動部材110が駆動軸106の中心線L0 周りに回転することを規制するとともに揺動部材110を揺動可能に支持する揺動支持機構114と、からなる(特許文献1の図2等参照)。揺動支持機構114は、揺動部材110が駆動軸106の中心線L0 周りに回転するのを規制することを一つの目的として用いられている。そのため、旋回部材108が高速回転する場合には、揺動支持機構114はL0 周りのトルクを受けるため、高負荷を受けやすい。高い負荷を受けると、揺動支持機構114が有する摺動部の潤滑が困難となり摺動特性が低下し、その結果、摺動部が高温となって局所凝着が発生する等の問題が生じる場合がある。
また、上記のような圧縮機は、各種空調装置の冷凍サイクルに適用される。この際、環境問題の観点からCO2 が冷媒として用いられるようになっている。しかしながら、CO2 はR−12やR−134aといった従来の冷媒に比べて作動圧が高い。そのため、CO2 を用いた場合には、揺動支持機構114が受ける負荷はさらに高まる。そのため、高負荷が生じる使用条件であっても、耐久性に優れた構成が求められている。
ところで、特許文献2には、コンプレッサ軸受に周溝を設けることにより圧縮室側端部に肉薄部を形成したロータリコンプレッサが開示されている。特許文献2のロータリコンプレッサでは、薄肉部が弾性変形し易いため、コンプレッサ軸受の軸受面はシャフトから逃げるように変形し、軸受面とシャフトとの隙間が広がる。そのため、コンプレッサ軸受とシャフトとの固体接触が防止され、摩耗や焼付きが低減される。
特開2002−332961号公報
伊藤安孝、服部仁志,「ロータリコンプレッサ用軸受けの混合潤滑解析」,社団法人日本トライボロジー学会トライボロジー会議予稿集,2003年11月,p.159
本発明者等は、摺動部において、互いの摺動面の接触面積を増加させることにより、摺動部に受ける負荷を低減することができる新規な構成を想到した。
本発明は、上記事情に鑑み、高い負荷を受けることによる摺動特性の低下を防止することができ、耐久性の高い揺動支持機構を提供することを目的とする。
本発明の揺動支持機構は、ハウジングと、該ハウジングに回転可能に支持される駆動軸と、該ハウジング内に配設され該駆動軸と一体的に回転するとともに該駆動軸に対して傾いた傾斜面を有する旋回部材と、該傾斜面と摺接し該旋回部材の回転とともに揺動する揺動部材と、該揺動部材が該駆動軸の中心線周りに回転することを規制するとともに該揺動部材を揺動可能に支持する回転規制揺動支持部と、からなり、
前記回転規制揺動支持部は、前記駆動軸の中心線と直交する第一軸線を中心線とする第一ピン部材と、該第一軸線周りに回転可能な第一回転部材と、前記第一ピン部材を介して前記第一回転部材と連結され前記ハウジングに支持される支持部材と、前記駆動軸の中心線と直交しかつ前記第一軸線に対して交差する第二軸線を中心線とする第二ピン部材と、前記揺動部材に固定され該第二ピン部材を介して該第二軸線周りに回転可能に前記第一回転部材に連結された第二回転部材と、をもつ揺動支持機構において、
前記第一ピン部材は前記第一回転部材および/または前記支持部材と摺動し前記旋回部材から伝達される前記駆動軸の中心線周りのトルクを受ける第一高面圧摺動面をもつ第一摺動部を有し、前記第二ピン部材は前記第一回転部材および/または前記第二回転部材と摺動し前記旋回部材から伝達される前記駆動軸の中心線周りのトルクを受ける第二高面圧摺動面をもつ第二摺動部を有し、該第一摺動部および該第二摺動部のうち少なくとも該第一高面圧摺動面または該第二高面圧摺動面をもつ部分の剛性が該第一ピン部材および該第二ピン部材の他の部分よりも低いことを特徴とする。
前記回転規制揺動支持部は、前記駆動軸の中心線と直交する第一軸線を中心線とする第一ピン部材と、該第一軸線周りに回転可能な第一回転部材と、前記第一ピン部材を介して前記第一回転部材と連結され前記ハウジングに支持される支持部材と、前記駆動軸の中心線と直交しかつ前記第一軸線に対して交差する第二軸線を中心線とする第二ピン部材と、前記揺動部材に固定され該第二ピン部材を介して該第二軸線周りに回転可能に前記第一回転部材に連結された第二回転部材と、をもつ揺動支持機構において、
前記第一ピン部材は前記第一回転部材および/または前記支持部材と摺動し前記旋回部材から伝達される前記駆動軸の中心線周りのトルクを受ける第一高面圧摺動面をもつ第一摺動部を有し、前記第二ピン部材は前記第一回転部材および/または前記第二回転部材と摺動し前記旋回部材から伝達される前記駆動軸の中心線周りのトルクを受ける第二高面圧摺動面をもつ第二摺動部を有し、該第一摺動部および該第二摺動部のうち少なくとも該第一高面圧摺動面または該第二高面圧摺動面をもつ部分の剛性が該第一ピン部材および該第二ピン部材の他の部分よりも低いことを特徴とする。
なお、本発明の「回転規制揺動支持部」は、[背景技術]の欄で説明した「揺動支持機構114」に相当する概念である。
また、前記ハウジングは、前記旋回部材および前記揺動部材を収納するクランク室と、吸入室と、吐出室と、これらと連通し該揺動部材の揺動により往復動されるピストンを収納するシリンダボアと、からなる圧縮機のハウジングであるのが好ましい。
本発明の揺動支持機構によれば、旋回部材から伝達される駆動軸の中心線周りのトルクを受ける第一高面圧摺動面または第二高面圧摺動面をもつ第一摺動部および第二摺動部のうち、少なくとも第一高面圧摺動面または第二高面圧摺動面をもつ部分の剛性が第一ピン部材および第二ピン部材の他の部分よりも低い。そのため、第一ピン部材および第二ピン部材は、トルクを受けると、剛性の低い部分が各ピン部材の中心方向へ弾性変形するので、摺動する相手部材との接触面積が増大する。その結果、第一高面圧摺動面および第二高面圧摺動面が受ける面圧が低減され、第一高面圧摺動面および第二高面圧摺動面の摺動特性が向上する。また、旋回部材が高速で回転しても各部材の耐久性が高い。
また、本発明の揺動支持機構は、各種圧縮機に好適に用いることができ、作動流体にCO2 を含む場合においても優れた効果を発揮する。
なお、上記の非特許文献1では、コンプレッサ軸受の肉薄部がシャフトから逃げるように遠心方向に変形するため、軸受面とシャフトとの隙間が広がるものである。すなわち、接触面積の増大により第一ピン部材および第二ピン部材が受ける面圧が低減される本発明とは異なる。
以下に、本発明の揺動支持機構を実施するための最良の形態を、図1〜図6を用いて説明する。
本発明の揺動支持機構は、主として、ハウジングと、駆動軸と、旋回部材と、揺動部材と、回転規制揺動支持部と、からなる。
ハウジングは、後述の駆動軸や支持部材を支持することができれば、その形状や材質に特に限定はない。ハウジングが圧縮機のハウジングであれば、本発明の揺動支持機構を圧縮機に適用することができる。
駆動軸は、ハウジングに回転可能に支持される。駆動軸は、動力源からの回転力を受けて回転するような通常の形式の駆動軸であれば、特に限定はない。また、駆動軸は、各種軸受け等を介してハウジングに回転可能に支持されていればよい。
旋回部材は、ハウジング内に配設され駆動軸と一体的に回転するとともに駆動軸に対して傾いた傾斜面を有する。なお、「駆動軸に対して傾いた傾斜面」とは、傾斜面が駆動軸の中心線(回転中心)と平行でないことを意味する。すなわち、傾斜面が駆動軸の中心線に対して垂直である場合(傾斜面が中心線と同一の方向を向いている場合)は含まれる。この際、旋回部材と駆動軸とは、一体的に形成されていてもよいし、別体で形成され旋回部材が駆動軸に対して回転しないように互いに固定されているものでもよい。別体で形成される場合には、駆動軸に対する傾斜面の傾き具合を変更できる固定部材を用いて両者を固定してもよい。また、旋回部材の形状に特に限定はないが、円板状であるのが好ましい。
揺動部材は、上記旋回部材の傾斜面と摺接し旋回部材の回転とともに揺動する。また、回転規制揺動支持部は、揺動部材が駆動軸の中心線周りに回転することを規制するとともに揺動部材を揺動可能に支持する。そのため、旋回部材の回転は揺動部材に伝達されず、揺動部材の或る一点に注目した場合、その点は駆動軸の中心線の或る一点を中心とする円弧上を揺動する。すなわち、駆動軸の回転運動は、揺動部材の揺動運動に変換される。なお、揺動部材は、旋回部材の傾斜面と摺接する部位を有し、互いに良好に摺接すれば、その形状に特に限定はないが、円板状であるのが好ましい。回転規制揺動支持部については、以下に図を用いて詳説する。
図1は、本発明の揺動支持機構の回転規制揺動支持部の一例を示す断面図である。また、図2は図1のX−X’方向の断面図であり、図3は図1のY−Y’方向の断面図である。
回転規制揺動支持部14は、第一回転部材15と、第二回転部材16と、支持部材17と、第一ピン部材18と、第二ピン部材19と、をもつ。
第一ピン部材18は、駆動軸の中心線L0 と直交する第一軸線L1 を中心線とする部材である。また、第一回転部材15は、第一軸線L1 周りに回転可能な部材である。そして、支持部材17は、第一ピン部材18を介して第一回転部材15と連結され、ハウジングに支持される。すなわち、第一回転部材15と第一ピン部材18および/または第一ピン部材18と支持部材17とが互いに摺動することで、第一回転部材15は第一軸線L1 周りに回転する。
また、第二ピン部材19は、駆動軸の中心線L0 と直交しかつ第一軸線L1 に対して交差する第二軸線L2 を中心線とする部材である。そして、第二回転部材16は、第二ピン部材19を介して第二軸線L2 周りに回転可能に第一回転部材15に連結される。すなわち、第一回転部材15と第二ピン部材19および/または第二ピン部材19と第二回転部材16とが互いに摺動することで、第二回転部材15は第二軸線L2 周りに回転する。さらに、第二回転部材16は、前述の揺動部材に固定される。
ここで、揺動部材は、駆動軸により回転される旋回部材の回転力(トルク)を傾斜面から受けるため、揺動部材に固定されている第二回転部材16も同様にトルクを受ける。そのため、第二回転部材16に連結されている第二ピン部材19、第二ピン部材19に連結されている第一回転部材15、第一回転部材15に連結されている第一ピン部材18、にトルクが伝達され、ハウジングに固定された支持部材17により回転を規制されるので、面圧を受けながら摺動する部位が第一ピン部材18および第二ピン部材19に存在する。したがって、上記構成の回転規制揺動支持部14では、第一ピン部材18は第一回転部材15および/または支持部材17と摺動し旋回部材から伝達される駆動軸の中心線周りのトルクを受ける第一高面圧摺動面をもつ第一摺動部を有し、第二ピン部材19は第一回転部材15および/または第二回転部材16と摺動し旋回部材から伝達される駆動軸の中心線周りのトルクを受ける第二高面圧摺動面をもつ第二摺動部を有する。以下に、図4を用いて面圧を受けながら摺動する部位を具体的に説明する。
図4は、本発明の揺動支持機構の回転規制揺動支持部の一例を示す断面図であって、第一高面圧摺動面および第二高面圧摺動面を示すための説明図である。図4において、仮に、第一ピン部材18が支持部材17に固定され、第二ピン部材19が第一回転部材15に固定されているとする。すなわち、第一ピン部材18と第一回転部材15とが互いに摺動することにより第一回転部材15が第一軸線L1 周りに回転し、第二ピン部材19と第二回転部材16とが互いに摺動することにより第二回転部材16が第二軸線L2 周りに回転する。この際、第二回転部材16が旋回部材から右回りのトルクを受けると、第二ピン部材19は第二回転部材16からの荷重で押圧されながら摺動する(図4の矢印I参照)。また、第二回転部材16に押圧される第二ピン部材19は第一回転部材15に固定されているため、第一ピン部材18は第一回転部材15からの荷重で押圧されながら摺動する(図4の矢印II参照)。すなわち、図4の矢印I,II方向にかかる荷重を受ける第一ピン部材18および第二ピン部材19の摺動面が第一高面圧摺動面および第二高面圧摺動面となる。
なお、第一高面圧摺動面および第二高面圧摺動面の領域は、第一回転部材15および第二回転部材16の回転角度により決定される。たとえば、支持部材17に固定された第一ピン部材18が円柱形状であり、第一回転部材15が第二軸線L2 周りに90°回転(すなわち第一回転部材15が図4の位置から前後45°の範囲で揺動)可能な場合には、少なくとも第一ピン部材18の外周面のうちの4分の1円弧を含むの外周面(図4の下図18’参照)が第一高面圧摺動面になり得る。
また、第二ピン部材19が第二回転部材16に固定され、第一回転部材15と互いに摺動する場合には、第二回転部材16がトルクを受けると、第二ピン部材19は第一回転部材15を押圧しながら摺動する。したがって、第二ピン部材19の摺動面は、図4の矢印III方向にかかる荷重を受ける。また、第二ピン部材19に対して、第一回転部材15も第二回転部材16も回転可能であれば、第二ピン部材19の摺動面は、図4の矢印I方向とIII方向にかかる荷重を受ける。
そして、第一摺動部は、第一回転部材15および/または支持部材17と互いに摺動し、上記第一高面圧摺動面を有する。また、第二摺動部は、第一回転部材15および/または第二回転部材16と互いに摺動し、上記第二高面圧摺動面を有する。第一摺動部および第二摺動部は、各ピン部材が円柱形状であれば、その端部に位置するのが好ましい。
なお、各部材の形状は、図1〜図4に記載されている形状に限定されるものではない。たとえば、図1等では、第一ピン部材は1つで構成されているが、2つであってもよい。また、第一ピン部材および第二ピン部材は円柱形状が好ましいが、少なくとも第一回転部材15、第二回転部材16および支持部材17のいずれかと摺動できる摺動面を有すればその形状に限定はない。
そして、第一摺動部および第二摺動部のうち少なくとも第一高面圧摺動面または第二高面圧摺動面をもつ部分の剛性が第一ピン部材および第二ピン部材の他の部分よりも低い。この構成により、第一ピン部材および第二ピン部材は、面圧を受けると、剛性の低い部分が各ピン部材の中心方向へ弾性変形するので、摺動する相手部材(第一回転部材15や第二回転部材16)との接触面積が増大する。接触面積が増大すると、受ける面圧が分散されるため、第一高面圧摺動面および第二高面圧摺動面が受ける面圧が低減される。その結果、摩擦係数が低下し、高面圧摺動面の温度上昇が抑制されるので、凝着などの発生を防止することができ、揺動支持機構の耐久性が向上する。また、旋回部材が高速で回転して第一高面圧摺動面および第二高面圧摺動面の面圧が高くなっても、摺動性に優れる。
上記したように、第一ピン部材および第二ピン部材は、円柱形状であるのが好ましいが、この際、第一摺動部および第二摺動部は、第一ピン部材または第二ピン部材の端部に位置し、かつ、軸方向に開口した凹部を有するとよい。剛性を低くする方法としては、所望の部分に剛性の低い材料を用いる、各ピン部材を細く形成する、等の方法が考えられるが、円柱形状をもつ第一ピン部材や第二ピン部材の端部に凹部を形成することにより、その部分の剛性を容易に低減することができる。また、各ピン部材の強度を低下させること無く、剛性を低減することができる。
第一ピン部材や第二ピン部材の端部に形成する凹部の形状に特に限定はなく、第一摺動部および第二摺動部のうち少なくとも第一高面圧摺動面または第二高面圧摺動面をもつ部分の剛性が第一ピン部材および第二ピン部材の他の部分よりも低くなるような形状であればよい。図5<A><B><C><D>および図6は、第一ピン部材または第二ピン部材の一例を示す平面図および軸方向断面図である。凹部としては、円柱形状に形成された円柱状凹部(図6および図5<A><B><C>)や、リング状に形成されたリング状溝部(図5<D>)であるのが好ましい。図6において、円柱状凹部は、断面が真円形状であるが、楕円形状であっても半円形状であってもよく、曲率の異なる円弧を有する形状(図5<B>参照)であってもよい。また、円柱状凹部やリング状溝部は、開口端へ向かうほど拡径された形状でもよい。なお、円柱状凹部やリング状溝部は、第一ピン部材や第二ピン部材と同軸的に形成されていてもよいし、偏芯されていてもよい(図5<A>参照)。偏芯されていると剛性も均一ではなくなるので、第一摺動部および第二摺動部のうち特に第一高面圧摺動面や第二高面圧摺動面をもつ部分の剛性を低くすることができる。さらに、凹部を形成することにより周縁部に残される摺動壁部の厚さ方向に細溝部を形成してもよい(図5<C>1C’参照)。以上の形状の凹部であれば、各摺動部が高面圧を受けた際に、各ピン部材の軸芯方向へ容易に弾性変形する。
この際、第一ピン部材や第二ピン部材の直径が8〜15mmであれば、摺動壁部の厚さは1〜3mmであるのがよい。なお、凹部の形成位置を偏芯させたり、凹部が円柱状でない場合には、摺動壁部の厚さが均一にはならないが、少なくとも第一高面圧摺動面や第二高面圧摺動面をもつ部分の摺動壁部の厚さが1〜3mmであればよい。
また、本発明の揺動支持機構が圧縮機に適用される場合には、ハウジングは、旋回部材および揺動部材を収納するクランク室と、吸入室と、吐出室と、これらと連通し揺動部材の揺動により往復動されるピストンを収納するシリンダボアと、からなる。この際、吸入室へ吸入されてピストンに圧縮されて吐出室から吐出される作動流体は、CO2 を含んでもよい。CO2 は、R−12やR−134aに比べて作動圧が高いが、本発明の揺動支持機構によれば、旋回部材が高速で回転して第一高面圧摺動面および第二高面圧摺動面の面圧が高くなっても摺動性に優れるため、好適に用いることができる。
本発明の揺動支持機構は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、第一摺動部や第二摺動部に潤滑油を供給する手段など、他の構成を追加してもよい。
以下に、本発明の揺動支持機構の実施例を、図1〜3および図6〜図8を用いて説明する。
(実施例1)
実施例1の揺動支持機構は、ワッブル型可変容量式圧縮機(以下、圧縮機100と略す)に適用した揺動支持機構である。以下に、本実施例の揺動支持機構を圧縮機の構成とともに、図1〜図3、図6および図7を用いて説明する。なお、図7は、圧縮機100の駆動軸の軸方向断面を示す。
実施例1の揺動支持機構は、ワッブル型可変容量式圧縮機(以下、圧縮機100と略す)に適用した揺動支持機構である。以下に、本実施例の揺動支持機構を圧縮機の構成とともに、図1〜図3、図6および図7を用いて説明する。なお、図7は、圧縮機100の駆動軸の軸方向断面を示す。
本実施例の揺動支持機構は、ハウジング(101,102,105)と、ハウジングに回転可能に支持される駆動軸106と、ハウジング内に配設される旋回部材108と、旋回部材108の回転とともに揺動する揺動部材110と、揺動部材110が駆動軸106の中心線L0 周りに回転することを規制するとともに揺動部材110を揺動可能に支持する回転規制揺動支持部14と、からなる。
ハウジングは、アルミニウム製で、主として、フロントハウジング101、ミドルハウジング102およびリアハウジング105からなる。フロントハウジング101は、後述する揺動部材110が収納される内部空間であるクランク室127をもつ。ミドルハウジング102は、円柱状の内部空間でありピストン112を収納する複数本(本実施例では9本)のシリンダボア103が形成されている。そして、リアハウジング105は、吸入室121および吐出室122をもつ。また、ミドルハウジング102とリアハウジング105との間には、シリンダボア103の一端側を閉塞するバルブプレート104が挟まれて固定されており、吸入室121とシリンダボア103とを連通させる吸入ポート123、およびシリンダボア103と吐出室122とを連通させる吐出ポート124が形成されている。
駆動軸106は、ラジアル軸受107を介してフロントハウジング101内に回転可能に保持される。圧縮機100が車両の空調装置に適用される場合には、駆動軸106は、車両走行用エンジンから駆動力を得て回転する。なお、駆動軸106とフロントハウジング101との間隙部分は、駆動軸シール126によりクランク室127内の気密性が保たれる。
旋回部材108は、駆動軸106に一体形成されたアーム106aの先端側に連結されて駆動軸106と一体的に回転するとともに、駆動軸106に対して傾いた傾斜面108aを有する。なお、109は、旋回部材108をアーム106aに対して揺動(回転)可能に連結するヒンジ機構を構成する連結ピンである。連結ピン109は、アーム106に楕円状に形成された長穴106bに挿入されている。このため、駆動軸106に対する傾斜面108aの傾き具合(傾斜角θ:傾斜面108aと駆動軸106の中心線L0 とのなす角θ)を変更できる。なお、θが90°のときに、圧縮機100は最小容量となる。
揺動部材110は、リング状であり、傾斜面108aとスラスト軸受111を介して摺接するように連結されている。この揺動部材110は、旋回部材108の回転と共に、その外周側が波打つように揺動する。なお、スラスト軸受111は、傾斜面108aに対して垂直な軸周りに旋回部材108が揺動部材110に対して回転することができるようにする軸受である。
ピストン112は、ロッド113により揺動部材110と連結される。このとき、ロッド113の一端側は揺動部材110の外周側に揺動可能に連結され、他端側はピストン112に揺動可能に連結されているので、駆動軸106の回転により揺動部材110が揺動すると、ピストン112がシリンダボア103内を往復運動する。
ところで、リアハウジング105において、吸入室121は、シリンダボア103、バルブプレート104およびピストン112によって形成される複数個の作動室Vに作動流体(CO2 冷媒と油分を含む)を分配供給する。そして、バルブプレート104の吸入ポート123は吸入室121と作動室Vとを連通させ、吐出ポート124は作動室Vと吐出室122とを連通させる。また、吸入ポート123には、作動流体が作動室Vから吸入室120へ逆流することを防止するリード弁状の吸入弁(図示せず)が設けられ、吐出ポート124には、作動流体が吐出室122から作動室Vへ逆流することを防止するリード弁状の吐出弁(図示せず)が設けられている。なお、吸入弁および吐出弁は、吐出弁の最大開度を規制する弁止板(ストッパ)125と共にミドルハウジング102およびリアハウジング105間に挟まれて固定されている。
なお、128はクランク室127と吸入室121および吐出室122との連通状態を調節することによりクランク室127内の圧力を制御する圧力制御弁である。
次に、回転規制揺動支持部14について、図を用いて説明する。なお、図1〜図3は、本実施例の揺動支持機構14の回転規制揺動支持部を示す断面図である。図1は回転規制揺動支持機構14を駆動軸106側から見た図であり、図2は図1のX−X’方向の断面図であり、図3は図1のY−Y’方向の断面図である。また、図6は、本実施例の揺動支持機構の回転規制揺動支持部を模式的に示す図であって、第一ピン部材18または第二ピン部材19の平面図(上図)および軸方向断面図(下図)である。
回転規制揺動支持部14は、第一回転部材15と、第二回転部材16と、支持部材17と、第一ピン部材18と、第二ピン部材19と、をもつ。
支持部材17は、図2および図3に示すように、球状で摺動面を有する球面摺動部17aと略円柱状の支持本体17bとを有する。そして、支持本体17bの外周面には、その軸方向に延びる多数本の溝部からなるスプライン17cが断面形状が歯車状に形成され(JIS B 1601等参照)、一方、ミドルハウジング102の略中央部には、支持本体17bの断面形状と相似形状の断面形状を有する穴部102aが形成されている(図7参照)。そして、支持部材17は、穴部102aに摺動可能に挿入される。そのため、支持部材17は、ミドルハウジング102に対して回転不可とした状態で、かつ、中心線L0 方向に摺動することができるようにミドルハウジング102に支持される。
なお、支持部材17(支持本体17b)内には、回転規制揺動支持部14を駆動軸106側に押圧する弾性力をもつコイルバネ120が配設されている。
第一ピン部材18は、駆動軸106の中心線L0 と直交する第一軸線L1 を中心線とする部材である。第一ピン部材18は直径11mmの円柱形状で、支持部17の球面摺動部17aの中心を貫通するように回転不可とした状態で固定されている。そして、第一ピン部材18の両端部(第一摺動部5)は、球面摺動部17aから突出している。
第一回転部材15は略環状で、その内周面は、支持部材17の球面摺動部17aと互いに摺接する。第一回転部材15には、第一ピン部材18の両端部が回転可能に挿通されている。したがって、第一回転部材15は、第一ピン部材18の端部を第一摺動部5として、第一軸線L1 周りに回転可能な状態で連結されている。
第二ピン部材19は、駆動軸106の中心線L0 と直交しかつ第一軸線L1 に対して交差する第二軸線L2 を中心線とする部材である。第二ピン部材19は直径11mmの円柱形状であって、2つの第二ピン部材19の一端部は、第一回転部材15において第一ピン部材18の挿通位置と90°の位置となるように、回転不可とした状態でそれぞれ固定されている。そして、第二ピン部材19の他端部は、第一回転部材15の外周面側に突出している。
第二回転部材16は略環状で、その内周面は、第一回転部材15の外周面と互いに摺接する。そして、第二回転部材16には、第二ピン部材19の他端部が回転可能に挿通されている。したがって、第二回転部材16は、第二ピン部材19の他端部を第二摺動部6として、第二軸線L2 周りに回転可能に第一回転部材15に連結されている。なお、揺動部材110は第2回転部材117に圧入された状態で固定されている。
また、第一ピン部材18の両端部に位置する第一摺動部5(第一回転部材15と摺動)および第二ピン部材19の他端部に位置する第二摺動部6(第二回転部材16と摺動)は、軸方向に開口する円柱状凹部1を有する(図6参照)。円柱状凹部1は、各ピン部材18,19の軸方向に延びる断面真円形状の凹部である。また、第一摺動部5および第二摺動部6は、円柱状凹部1を形成することにより、その周縁部に残された摺動壁部2を有する。この際、摺動壁部2の半径方向の幅(摺動壁部2の厚さ)は、1.5mmとした。また、円柱状凹部1の軸方向の深さは、第一ピン部材18および第二ピン部材19が第一回転部材15または第二回転部材16に挿通されている軸方向の長さとほぼ同じとした。
なお、本実施例の揺動支持機構では、第一回転部材15および第二回転部材16は、第一ピン部材18および第二ピン部材19に対して所定の角度φ揺動するように構成されている。そのため、駆動軸106の中心線L0 周りのトルクが旋回部材108から伝達されると、第一ピン部材18および第二ピン部材19は、図6に示すように、矢印イ〜ロ方向のいずれかの位置(いずれの位置であるかは、第一回転部材15および第二回転部材16の揺動角度に応じる)から第一回転部材15または第二回転部材16に押圧される。したがって、第一ピン部材18および第二ピン部材19の摺動壁部2の外周面において押圧される範囲(矢印イ〜ロで示す範囲)が、高い面圧を受ける第一高面圧摺動面または第二高面圧摺動面に相当する。そして、矢印イ〜ロ方向のいずれかの位置からの面圧により、摺動壁部2は軸芯方向へと弾性変形する。摺動壁部2が軸芯方向へ変形することにより、第一高面圧摺動面または第二高面圧摺動面が第一回転部材15または第二回転部材16と接触する面積が増大する。
(実施例2)
第一ピン部材18および第二ピン部材19の摺動壁部2の厚さを2mmとした他は、実施例1と同様である。
第一ピン部材18および第二ピン部材19の摺動壁部2の厚さを2mmとした他は、実施例1と同様である。
(比較例)
第一ピン部材18および第二ピン部材19に円柱状凹部1が形成されていない他は、実施例1と同様である。
第一ピン部材18および第二ピン部材19に円柱状凹部1が形成されていない他は、実施例1と同様である。
[評価]
実施例および比較例の揺動支持機構について、第一ピン部材に関して、第一高面圧摺動面が受ける面圧と、第一高面圧摺動面の近傍の温度(摺動部近傍温度)を測定した。測定結果を図8に示す。
実施例および比較例の揺動支持機構について、第一ピン部材に関して、第一高面圧摺動面が受ける面圧と、第一高面圧摺動面の近傍の温度(摺動部近傍温度)を測定した。測定結果を図8に示す。
なお、面圧と摺動部近傍温度は、(測定方法をお教え下さい)により測定した。この際、圧縮機の作動条件は、Pd/Ps=13.5/3.5[MPa]、容量:33cc(最大容量)とし、駆動軸106の回転数を1500rpm、2500rpmとした。
第一ピン部材18および第二ピン部材19に円柱状凹部1が形成された実施例の揺動支持機構では、比較例の揺動支持機構に比べ、面圧は100MPa以上、摺動部近傍温度は20℃程度低下した。また、摺動壁部2の厚さが薄い実施例1の方が、実施例2よりも効果的であった。
101,102,105:ハウジング
106:駆動軸
108:旋回部材 108a:傾斜面
110:揺動部材
14:回転規制揺動支持部
L0 :駆動軸の中心線
L1 :第一軸線 L2 :第二軸線
15:第一回転部材
16:第二回転部材
17:支持部材
18:第一ピン部材
19:第二ピン部材
1:円柱状凹部
2:摺動壁部
106:駆動軸
108:旋回部材 108a:傾斜面
110:揺動部材
14:回転規制揺動支持部
L0 :駆動軸の中心線
L1 :第一軸線 L2 :第二軸線
15:第一回転部材
16:第二回転部材
17:支持部材
18:第一ピン部材
19:第二ピン部材
1:円柱状凹部
2:摺動壁部
Claims (6)
- ハウジングと、該ハウジングに回転可能に支持される駆動軸と、該ハウジング内に配設され該駆動軸と一体的に回転するとともに該駆動軸に対して傾いた傾斜面を有する旋回部材と、該傾斜面と摺接し該旋回部材の回転とともに揺動する揺動部材と、該揺動部材が該駆動軸の中心線周りに回転することを規制するとともに該揺動部材を揺動可能に支持する回転規制揺動支持部と、からなり、
前記回転規制揺動支持部は、前記駆動軸の中心線と直交する第一軸線を中心線とする第一ピン部材と、該第一軸線周りに回転可能な第一回転部材と、前記第一ピン部材を介して前記第一回転部材と連結され前記ハウジングに支持される支持部材と、前記駆動軸の中心線と直交しかつ前記第一軸線に対して交差する第二軸線を中心線とする第二ピン部材と、前記揺動部材に固定され該第二ピン部材を介して該第二軸線周りに回転可能に前記第一回転部材に連結された第二回転部材と、をもつ揺動支持機構において、
前記第一ピン部材は前記第一回転部材および/または前記支持部材と摺動し前記旋回部材から伝達される前記駆動軸の中心線周りのトルクを受ける第一高面圧摺動面をもつ第一摺動部を有し、前記第二ピン部材は前記第一回転部材および/または前記第二回転部材と摺動し前記旋回部材から伝達される前記駆動軸の中心線周りのトルクを受ける第二高面圧摺動面をもつ第二摺動部を有し、該第一摺動部および該第二摺動部のうち少なくとも該第一高面圧摺動面または該第二高面圧摺動面をもつ部分の剛性が該第一ピン部材および該第二ピン部材の他の部分よりも低いことを特徴とする揺動支持機構。 - 前記第一ピン部材および前記第二ピン部材は、円柱形状であって、
前記第一摺動部および前記第二摺動部は、該第一ピン部材または該第二ピン部材の端部に位置し、かつ、軸方向に開口した凹部を有する請求項1記載の揺動支持機構。 - 前記凹部は、円柱形状に形成された円柱状凹部である請求項2記載の揺動支持機構。
- 前記凹部は、リング状に形成されたリング状溝部である請求項2記載の揺動支持機構。
- 前記ハウジングは、前記旋回部材および前記揺動部材を収納するクランク室と、吸入室と、吐出室と、これらと連通し該揺動部材の揺動により往復動されるピストンを収納するシリンダボアと、からなる圧縮機のハウジングである請求項1〜4のいずれかに記載の揺動支持機構。
- 前記吸入室へ吸入されて前記ピストンにより圧縮されて前記吐出室から吐出される作動流体は、CO2 を含む請求項5記載の揺動支持機構。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004311451A JP2006125222A (ja) | 2004-10-26 | 2004-10-26 | 揺動支持機構 |
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