JP2006122932A - ラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.1%以下、Mn:2.3%以下を含む帯鋼に、板厚方向平均で15%以下の歪を繰返し曲げ曲げ戻しにより付与する歪付与工程を施したのち、該帯鋼に連続的に成形を施しオープンパイプに造管する造管成形工程と、オープンパイプの円周方向端部同士を溶接する溶接工程と、さらに外径寸法を整えるサイジング工程と、を順次施す。なお、帯鋼を、C:0.02〜0.1%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.3%、P、S、Alを適正量とし、あるいはさらにCu、Niのうちから選ばれた1種又は2種、Cr、Moのうちから選ばれた1種又は2種、Nb、V、Tiのうちから選ばれた1種又は2種以上、およびCaのうちのいずれかを、炭素当量Ceqが0.44%未満を満足するように含み、残部が実質的にFeからなる組成としてもよい。
【選択図】図1
Description
(1)帯鋼に、連続的に成形を施し略円筒状のオープンパイプに造管する造管成形工程と、前記オープンパイプの円周方向端部同士を溶接する溶接工程と、あるいはさらに外径寸法を整えるサイジング工程と、を順次施して電縫管とする電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼を質量%で、C:0.1%以下、Mn:2.3%以下を含有する組成を有する帯鋼とし、前記造管成形工程に先立ち、板厚方向平均で15%以下の歪(繰返し歪)を付与する歪付与工程を施すことを特徴とするラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
(2)(1)において、前記歪が、曲げ−曲げ戻しの繰返しによる歪であることを特徴とするラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記組成が、質量%で、C:0.02〜0.1%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.6〜2.3%、P:0.01%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下を、次(1)式
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14) ………(1)
(ここで、Ceq:炭素当量(%)、C、Mn,Si,Ni,Cr,Mo,V:各元素の含有量(質量%))
で定義される炭素当量Ceqが0.44%未満を満足するように含み、残部が実質的にFeからなる組成であることを特徴とするラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
(4)(3)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下のうちから選ばれた1種又は2種を含有することを特徴とするラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
(5)(3)又は(4)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下のうちから選ばれた1種又は2種を含有することを特徴とするラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
(6)(3)ないし(5)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有することを特徴とするラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
(7)(3)ないし(6)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とするラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
まず、本発明で使用する帯鋼の化学組成限定理由について説明する。以下、組成における質量%は、単に%で記す。
C:0.1%以下
Cは、固溶あるいは炭化物として析出し、鋼管の強度増加に寄与する元素であるが、0.1%を超えて含有すると、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の第二相の組織分率が増加し、ラインパイプとして必要な優れた耐サワー性を確保できなる。このため、本発明では、0.1%以下に限定した。なお、C含有量が0.02%未満では、ラインパイプとして十分な強度が確保できなくなる。このため、Cは0.02%以上含有することが望ましい。なお、より好ましくは、Cは0.02〜0.07%である。
Mnは、強度および靭性を向上させる元素であるが、2.3%を超えて含有すると、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト等の第二相の組織分率が増加し、ラインパイプとして必要な優れた耐サワー性を確保できなくなる。このため、Mnは2.3%以下に限定した。なお、Mn含有量が0.6%未満では、ラインパイプとして必要な強度,靭性を確保できなくなる。このため、Mnは0.6%以上含有することが望ましい。なお、より好ましくは、Mnは0.6〜1.8%である。
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ………(1)
(ここで、Ceq:炭素当量(%)、C、Mn,Si,Ni,Cr,Mo,V:各元素の含有量(質量%))
で定義される炭素当量Ceqが0.44%未満を満足するように含むことが好ましい。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して鋼管強度を増加させる元素であるが、0.01%未満の含有では、このような効果が期待できなく、一方、0.5%を超えて含有すると電縫溶接性が劣化する。このため、Siは0.01〜0.5%とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.3%である。
Pは、電縫溶接性を劣化させる元素であり、本発明では不可避不純物としてできるだけ低減することが望ましいが、過度の低減は製造コストの高騰を招くため、本発明では0.01%を上限とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.005%以下である。
S:0.01%以下
Sは、鋼中においてはMnと結合しMnS系介在物として、水素誘起割れ(HIC)の起点となる。このため本発明ではできるだけ低減することが望ましいが、0.01%以下であれば問題ないため、Sは0.01%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.005%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、0.005%以上含有することが望ましいが、0.1%を超えて含有すると、鋼の清浄度が低下し靭性を劣化させる。このため、Alは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.005〜0.05%である。
炭素当量Ceq:0.44未満
炭素当量Ceqは、斜めy型割れ試験を実施して、溶接割れ性に及ぼす合金元素の影響を調査して決定されたものであり、溶接割れ性感受性の指標となる値であり、(1)式で定義される。なお、(1)式を計算するに当たっては、(1)式に含まれる元素のうち、含有しない元素については零として計算するものとする。電縫鋼管の各種溶接施工において溶接割れ等の欠陥発生を防止するという観点から、本発明では、Ceqを0.44未満に限定することが好ましい。
Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下のうちから選ばれた1種又は2種
Cu、Niはいずれも、靭性改善と強度上昇に有効に寄与する元素であり、必要に応じ選択して含有できる。
Niは、Cuと同様に、靭性改善と強度上昇に有効な元素であり、このような効果を得るためには、0.1%以上含有することが好ましいが、0.5%を超えて多量に含有すると、硬質な第二相を生成しやすくなる。このため、含有する場合、Niは0.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.4%である。
Cr、Moはいずれも、低C系組成で強度上昇に有効に寄与する元素であり、必要に応じ選択して含有できる。
Crは、上記した効果を得るために、0.1%以上含有することが好ましいが、0.5%を超えて多量に含有すると、第二相が生成しやすくなり耐サワー性が低下する。このため、含有する場合、Crは0.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.5%である。
Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下のうちから選ばれた1種又は2種以上
Nb、V、Tiはいずれも、炭窒化物の微細析出を介して強度上昇に寄与する元素であり、必要に応じ選択して含有できる。
Tiは、Nb、Vと同様に、炭窒化物の微細析出を介して強度上昇に寄与する元素であり、このような効果を得るためには0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.1%を超える含有は、Nb、Vと同様に硬質な第二相が生成しやすくなり、耐サワー性が著しく劣化する。このため、Tiは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.005〜0.03%である。
Caは、水素誘起割れの起点となりやすい伸長したMnS等の硫化物の形態制御に有効に寄与する元素であり、必要に応じ含有できる。このような効果は0.0005%以上の含有で顕著となるが、0.005%を超えて含有すると、Ca酸化物、Ca硫化物が多量に生成し、靭性劣化を招く。このため、Caは0.005%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0005〜0.003%である。
上記した組成を有する、コイル状に巻かれた帯鋼を、本発明ではまず、アンコイラーによって巻き戻し、帯鋼の平坦化や両サイドのトリミング、エッジ部端面の仕上加工などの前処理を行なうことが好ましい。
公知の電縫鋼管の造管成形方法としては、例えばブレークダウンロールフォーミング方式、ケージロールフォーミング方式等の成形方法がある。図1に一例を示すケージロールフォーミング方式の造管成形方法では、エッジフォーミングロール31、複数段のブレークダウンロール32、複数段のケージロール33、複数段のフィンパスロール34とを設置し、平板状の帯鋼1を連続的に成形し略円筒状のオープンパイプに成形する。
これら帯鋼に、図1に示す電縫鋼管製造設備を用いて、歪付与工程、造管成形工程、溶接工程、およびサイジング工程を順次施し、外径18インチの電縫鋼管とした。なお、造管成形工程、溶接工程、サイジング工程は同一条件とした。
溶接工程では、コンタクトチップを用いた溶接手段でオープンパイプの円周方向端部を加熱し、スクイズロールで端部同士を圧着接合した。また、サイジング工程では、2段以上のサイジングロールを用いて所定の寸法・形状に調整した。
JIS 5号全厚引張試験片を採取し、ASTM A370又はJIS Z2241の規定に準拠して引張試験を行って引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、降伏比YR)を調査した。また、得られた電縫鋼管について、ASTM A370に規定される全厚引張試験片を、又はJIS Z2201の規定に準拠してJIS 5号全厚引張試験片を採取し、ASTM A370の規定又はJIS Z2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、降伏比YR)を調査した。なお製造上のばらつきを考慮して、YRが88%以下である電縫鋼管を、目標の低降伏比(90%以下)を満足する鋼管として○とし、それ以外を×として評価した。
なお、総合評価は、電縫鋼管における降伏比と耐サワー性がともに○の場合を○、それ以外の場合を×とした。
得られた結果を表4に示す。
帯鋼組成のうちC含有量が本発明の範囲を高く外れる鋼管No.1〜No.5では、組織がフェライト+ベイナイトとなり、歪付与条件の如何にかかわらず、降伏比は低いものの、耐サワー性が劣化している。また、帯鋼組成のうちMn含有量が本発明の範囲を高く外れる鋼管No.6〜No.10では、素材帯鋼の降伏比が高いため、歪付与条件の如何にかかわらず降伏比が88%以下を満足せず、また耐サワー性も劣化している。また、帯鋼組成のうちNb含有量が本発明の範囲を高く外れる鋼管No.11〜No.15では、素材帯鋼の降伏比が極端に高いため、歪付与条件の如何にかかわらず降伏比が88%以下を満足せず、また耐サワー性も劣化している。帯鋼組成が本発明範囲内であり、歪付与量が本発明範囲である本発明例(鋼管No.17〜No.19、No.22〜No.24、No.27〜No.29、No.31〜No.36)では、歪付与工程後の帯鋼の降伏比が素材帯鋼に比べ低下し、しかも造管成形工程−溶接工程−サイジング工程後でもその効果は維持されて、電縫鋼管の降伏比が88%以下を満足している。
2 矯正機
3 造管成形用設備
31 エッジフォーミングロール
32 ブレークダウンロール
33 ケージロール
34 フィンパスロール
41 溶接手段
42 スクイズロール
5 内外ビード切削手段
6 サイジングロール
7 切断機
8 製品管(電縫管)
Claims (7)
- 帯鋼に、連続的に成形を施し略円筒状のオープンパイプに造管する造管成形工程と、前記オープンパイプの円周方向端部同士を溶接する溶接工程と、あるいはさらに外径寸法を整えるサイジング工程と、を順次施して電縫管とする電縫鋼管の製造方法において、前記帯鋼を質量%で、C:0.1%以下、Mn:2.3%以下を含有する組成を有する帯鋼とし、前記造管成形工程に先立ち、板厚方向平均で15%以下の歪を付与する歪付与工程を施すことを特徴とするラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
- 前記歪が、曲げ−曲げ戻しの繰返しによる歪であることを特徴とする請求項1に記載のラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
- 前記帯鋼が、質量%で、
C:0.02〜0.1%、 Si:0.01〜0.5%、
Mn:0.6〜2.3%、 P:0.01%以下、
S:0.01%以下、 Al:0.1%以下
を、下記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.44%未満を満足するように含み、残部が実質的にFeからなる組成を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
記
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ………(1)
ここで、Ceq:炭素当量(%)
C、Mn,Si,Ni,Cr,Mo,V:各元素の含有量(質量%) - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下のうちから選ばれた1種又は2種を含有することを特徴とする請求項3に記載のラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下のうちから選ばれた1種又は2種を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載のラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載のラインパイプ用低降伏比電縫鋼管の製造方法。
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