JP2006122839A - 嫌気性アンモニア酸化装置及びその運転方法 - Google Patents

嫌気性アンモニア酸化装置及びその運転方法 Download PDF

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Abstract

【課題】嫌気性アンモニア酸化槽における嫌気性アンモニア酸化細菌の失活の兆候をリアルタイムに検知することができるので、嫌気性アンモニア酸化細菌の失活を未然に防止して安定した運転を行うことができる。
【解決手段】原水中のアンモニアと亜硝酸とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒して窒素ガスに変換する嫌気性アンモニア酸化槽18を備えた嫌気性アンモニア酸化装置10の運転方法において、窒素ガスのガス発生量の経時的な変動をガス発生量測定器52で測定し、該測定結果から嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度の変動を監視する。
【選択図】 図2

Description

本発明は嫌気性アンモニア酸化装置及びその運転方法に係り、特に原水中のアンモニアと亜硝酸とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒して窒素ガスに変換する嫌気性アンモニア酸化槽を備えた嫌気性アンモニア酸化装置及びその運転方法に関する。
下水や産業廃水に含有する窒素成分は、湖沼の富栄養化の原因になること、河川の溶存酸素の低下原因になること等の理由から、窒素成分を除去する必要がある。下水や産業廃水に含有する窒素成分は、アンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素、有機性窒素が主たる窒素成分である。
従来、この種の廃水は、窒素濃度が低濃度であれば、イオン交換法での除去や塩素、オゾンによる酸化も用いられているが、中高濃度の場合には生物処理が採用されており、一般的には以下の条件で運転される硝化・脱窒法による生物処理が行われている。
硝化・脱窒法による生物処理装置は、好気硝化と嫌気脱窒による硝化・脱窒処理が行われており、好気硝化では、アンモニア酸化細菌(Nitrosomonas,Nitrosococcus,Nitrosospira,Nitrosolobusなど)と亜硝酸酸化細菌(Nitrobactor,Nitrospina,Nitrococcus,Nitrospira など)によるアンモニア性窒素や亜硝酸性窒素の酸化が行われる一方、嫌気脱窒では、従属栄養細菌(Pseudomonas denitrificans など)による脱窒が行われる。
また、好気硝化を行う硝化槽は負荷0.2〜0.3kg−N/m3 /日の範囲で運転され、嫌気脱窒の脱窒槽は負荷0.2〜0.4kg−N/m3 /日の範囲で運転される。下水の総窒素濃度30〜40mg/Lを処理するには、硝化槽で6〜8時間の滞留時間、脱窒槽で5〜8時間が必要であり、大規模な処理槽が必要であった。また無機質だけを含有する産業廃水では、硝化槽や脱窒槽は先と同様の負荷で設計されるが、脱窒に有機物が必要で、窒素濃度の3〜4倍濃度のメタノールを添加していた。このためイニシャルコストばかりでなく、多大なランニングコストを要するという問題もある。
これに対し、最近、嫌気性アンモニア酸化法により窒素を除去する嫌気性アンモニア酸化装置が注目されている(例えば特許文献1)。この嫌気性アンモニア酸化法は、アンモニアを水素供与体とし、亜硝酸を水素受容体として、嫌気性アンモニア酸化細菌によりアンモニアと亜硝酸とを以下の反応式により同時脱窒する方法である。
(化1)
1.0 NH4 +1.32NO 2 +0.066HCO 3 +0.13H+ →1.02N 2 +0.26NO 3 +0.066CH2 O 0.5 N 0.15+2.03H2 O
この方法によれば、アンモニアを水素供与体とするため、脱窒で使用するメタノール等の使用量を大幅に削減できることや、汚泥の発生量を削減できる等のメリットがあり,今後の窒素除去方法として有効な方法であると考えられている。
しかし、嫌気性アンモニア酸化細菌は亜硝酸を基質とする反面、嫌気性アンモニア酸化槽内における亜硝酸濃度が高濃度(例えば200mg/L以上)になると、亜硝酸による阻害が生じ、嫌気性アンモニア酸化細菌が失活して十分な処理性能が得られなくなる。
また、嫌気性アンモニア酸化細菌が一旦失活すると、嫌気性アンモニア酸化装置を再度立ち上げようとしても、嫌気性アンモニア酸化細菌は増殖速度が約11日(倍化時間)と極めて遅いために、その間の処理水質が悪化するだけでなく再立ち上げに多大な労力と時間を要する。
更には、従来の硝化・脱窒処理は、有機物等から水素供与体を得て脱窒反応を行う場合、脱窒速度は高くて0.3kg−N/m3 /日であるが、嫌気性アンモニア酸化法での脱窒速度では8.9kg−N/m3 /日が得られるとの報告があり、極めて高速処理することができる。しかし、高速処理することができるがゆえに亜硝酸濃度の増加や酸素(空気)の混入等により嫌気性アンモニア酸化細菌が急速に失活する危険性を有している。
従って、亜硝酸濃度の増加や酸素(空気)の混入等による嫌気性アンモニア酸化細菌の失活を如何に未然に防止できるかが嫌気性アンモニア酸化法による生物処理装置を実用化する上で重要な課題となる。この課題を解決する方法としては、例えば特許文献2のように、嫌気性アンモニア酸化細菌の作用で生物脱窒する脱窒槽に流入する亜硝酸イオン濃度を測定し、測定結果に基づいて原水の流入量や希釈水の供給量を制御することが提案されている。また、特許文献3には、アンモニアを亜硝酸に酸化する亜硝酸化槽の後段に、嫌気性アンモニア酸化細菌の脱窒槽と、脱窒菌の脱窒槽とを順番に配置し、嫌気性アンモニア酸化細菌が失活したら、亜硝酸化槽からの流出液を脱窒菌の脱窒槽にバイパスさせて、その間に活性を戻すことを提案している。
特開2001−37467号公報 特開2003−47990号公報 特開2002−361285号公報
しかしながら、特許文献2のように、亜硝酸イオン濃度を測定するには、サンプリング、前処理分析、データ解析に至るまでに数十分の時間を要する。従って、嫌気性アンモニア酸化細菌の失活の兆候をリアルタイムに検知することができず、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性復帰を行うときには既に失活が進んで手遅れになることがあるという欠点がある。また、未だ手遅れになっていない場合でも、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を復帰させるための運転制御を迅速に行わなければ、活性が復帰するまでに長期間を要する。
また、特許文献3のように嫌気性アンモニア酸化細菌と脱窒菌の2つの脱窒槽を設けることは、それだけ装置自体が大型化する欠点がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、嫌気性アンモニア酸化槽における嫌気性アンモニア酸化細菌の失活の兆候をリアルタイムに検知することができるので、嫌気性アンモニア酸化細菌の失活を未然に防止して安定した運転を行うことができ、装置としても大型化することのない嫌気性アンモニア酸化装置及びその運転方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、原水中のアンモニアと亜硝酸とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒して窒素ガスに変換する嫌気性アンモニア酸化槽を備えた嫌気性アンモニア酸化装置の運転方法において、前記窒素ガスのガス発生量の経時的な変動を測定し、該測定結果から前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度の変動を監視することを特徴とする。
嫌気性アンモニア酸化槽では、アンモニアと亜硝酸とが嫌気性アンモニア酸化細菌で同時脱窒されることにより窒素ガスを発生するが、この窒素ガス発生量は嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度と密接な関係がある。即ち、亜硝酸濃度が上昇すれば窒素ガスの発生量も上昇し、亜硝酸濃度が低減すれば窒素ガスの発生量も低減する。また、嫌気性アンモニア酸化法は、高負荷運転が可能であることから、窒素ガスのガス発生量も多く、ガス発生量の経時的な変動を正確に測定することができる。従って、この窒素ガス発生量を経時的に測定してその変動を監視すれば、嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度の変動をリアルタイムに把握することができる。更には、このガス発生量の変動から嫌気性アンモニア酸化細菌の失活の兆候も監視できる。これにより、嫌気性アンモニア酸化細菌が失活する前に、適切な対処を行うことができるので、安定した運転を行うことができる。
本発明の請求項1は、窒素ガスのガス発生量の経時的な変動の測定結果から嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度の変動を監視するようにしたものである。これにより、嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度の変動をリアルタイムに把握することができるので、嫌気性アンモニア酸化細菌が失活しないための対処を迅速に行うことができる。従って、嫌気性アンモニア酸化細菌の失活を未然に防止し、安定した運転を行うことができる。
請求項2は請求項1において、ガス発生量の測定結果から前記嫌気性アンモニア酸化細菌の活性状態を監視することを特徴とする。
請求項2は、窒素ガスのガス発生量と亜硝酸濃度との密接な関係、更には亜硝酸濃度と嫌気性アンモニア酸化細菌の活性状態との密接な関係を利用して、窒素ガスのガス発生量の経時的な変動の測定結果から嫌気性アンモニア酸化細菌の活性状態を監視するようにしたものである。これにより、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性状態をリアルタイムに把握することができるので、嫌気性アンモニア酸化細菌が失活しないための対処を迅速に行うことができる。従って、嫌気性アンモニア酸化細菌の失活を未然に防止し、安定した運転を行うことができる。
請求項3は請求項1又は2において、前記ガス発生量の測定結果に基づいて前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度を制御することを特徴とする。
請求項3は、ガス発生量から嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度の情況や嫌気性アンモニア酸化細菌の活性状態をリアルタイムに把握することができ、その監視結果に基づいて嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度を制御すれば、迅速且つ適切な制御を行うことができる。
請求項4は請求項3において、前記ガス発生量の測定結果に基づいて、前記原水の原水流量及び/又は前記嫌気性アンモニア酸化槽での処理水を該嫌気性アンモニア酸化槽の入口に戻す循環量を調整することにより前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度を制御することを特徴とする。
請求項4は、嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度をどのようにして制御するかの好ましい一例を示したもので、原水の原水流量及び/又は前記嫌気性アンモニア酸化槽での処理水を該嫌気性アンモニア酸化槽の入口に戻す循環量を調整するようにしたものである。
例えば、嫌気性アンモニア酸化槽内から発生する窒素ガスのガス発生量が定常運転時(良好な処理水が得られる安定した運転時)に比べて異常に上昇した場合には、嫌気性アンモニア酸化槽内に流入する原水流量を減らし、亜硝酸が略ゼロな嫌気性アンモニア酸化槽での処理水の循環量を増加するように運転する。これにより、嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸が希釈され亜硝酸濃度が低下するので、定常運転時の亜硝酸濃度に戻るまで続ける。しかし、原水流量を減らし且つ処理水の循環量を増加してもガス発生量の増加が止まらない場合には、嫌気性アンモニア酸化細菌の失活がかなり進行している懸念があるので、原水流量をゼロにして処理水の循環だけで運転する。これにより、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性状態を復帰させたら、原水流量を徐々に増加すると共に、処理水循環量を徐々に減少させて、定常運転時の原水流量まで戻す。尚、ガス発生量が異常に増加した場合や異常に減少した場合の判断基準であるが、例えば定常運転時のガス発生量を基準とし、その基準に対して単位時間当たりの増加度又は減少度の閾値を設定し、その閾値を超えたらガス発生量の異常変動と判断するとよい。
請求項5は請求項3又は4において、前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度が200mg/Lを超えないように制御することを特徴とする。
嫌気性アンモニア酸化細菌の活性は一時的であれば亜硝酸濃度が200mg/Lを超えても活性は速やかに復帰するが、長い時間200mg/Lを超えると、完全に失活してしまうからである。従って、本発明のように、ガス発生量の異常な変動を監視することで、嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度の変動をリアルタイムに把握できることが極めて重要になる。
請求項6は請求項1〜5の何れか1において、前記原水の原水流量の経時的な変動を測定し、前記ガス発生量の変動が原水流量の容積負荷変動によるものか亜硝酸の濃度負荷変動によるものかを監視することを特徴とする。
ガス発生量の変動は、嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸の濃度負荷変動の他に、嫌気性アンモニア酸化槽へ流入する原水の容積負荷変動によっても変動する。例えば、嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度は一定であっても、嫌気性アンモニア酸化槽に流入する原水流量(容積負荷)が増加すれば、ガス発生量は増加する。従って、原水の原水流量の経時的な変動を測定することにより、嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度をより的確に制御することができる。
請求項7は請求項1〜6の何れか1において、前記原水中の溶存酸素の経時的な変動を測定し、前記嫌気性アンモニア酸化槽への溶存酸素の持ち込みを監視することを特徴とする。
これは、ガス発生量が減少する主たる要因として、亜硝酸の濃度負荷の減少や原水流量の容積負荷の減少等の他に、酸素(空気)が嫌気性アンモニア酸化槽内に持ち込まれることによる嫌気性アンモニア酸化細菌の活性低下がある。従って、原水中の溶存酸素の経時的な変動を測定し、嫌気性アンモニア酸化槽への溶存酸素の持ち込みを監視することにより、嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度をより的確に制御することができる。
本発明の請求項8は前記目的を達成するために、原水中のアンモニアと亜硝酸とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒して窒素ガスに変換する嫌気性アンモニア酸化槽を備えた嫌気性アンモニア酸化装置において、前記嫌気性アンモニア酸化槽内で発生する窒素ガスを収集するガス収集管と、前記ガス収集管に設けられたガス発生量測定器と、前記ガス発生量測定器で測定された測定結果に基づいて前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とする。
請求項8によれば、嫌気性アンモニア酸化槽内で発生した窒素ガスはガス収集管に収集され、ガス収集管を流れるガス量、即ち嫌気性アンモニア酸化槽でのガス発生量がガス発生量測定器で測定される。ガス発生量は嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度と密接な関係があるので、コントローラは、測定されたガス発生量に基づいて嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度を的確に制御することができる。
請求項9は請求項8において、前記原水の原水流量を測定する原水流量測定器と、前記原水中の溶存酸素を測定するDO測定器とを備え、前記コントローラは前記ガス発生量の測定結果に加えて前記原水流量と溶存酸素との測定結果に基づいて前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度を制御することを特徴とする。
ガス発生量の変動は上記したように、嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸の濃度負荷変動の他に、嫌気性アンモニア酸化槽内に流入する原水の容積負荷、更には嫌気性アンモニア酸化槽内に持ち込まれる溶存酸素(DO)がある。従って、ガス発生量測定器の他に原水流量測定器とDO測定器を備え、その測定結果をも嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度の制御に考慮することで、コントローラはより的確な制御を行うことができる。
請求項10は請求項8又は9において、前記ガス発生量を監視する表示手段を設けたことを特徴とする。
ガス発生量を監視する表示手段を設けて常にモニタリングできるようにすれば、作業者はガス発生量の異常変動を監視し易くなる。
以上説明したように本発明の嫌気性アンモニア酸化装置及びその運転方法によれば、嫌気性アンモニア酸化槽における嫌気性アンモニア酸化細菌の失活の兆候をリアルタイムに検知することができるので、嫌気性アンモニア酸化細菌の失活を未然に防止して安定した運転を行うことができる。また装置としても大型化することがない。
以下添付図面に従って本発明に係る嫌気性アンモニア酸化装置及びその運転方法における好ましい実施の形態について詳説する。
図1は本発明の嫌気性アンモニア酸化装置の全体構成図である。
図1の如く、嫌気性アンモニア酸化装置10は、主として、分配器12と、亜硝酸型の硝化槽14と、調整タンク16と、嫌気性アンモニア酸化槽18と、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度を制御する亜硝酸濃度制御機構50(詳細は図2、図5参照)とから構成される。
原水配管20を流れるアンモニア性廃水は、分配器12により所定の分配比で2方向へ分配される。分配された一方の廃水は第1配管24を介して亜硝酸型の硝化槽14に送られると共に、分配された他方の廃水は第2配管26を介して嫌気性アンモニア酸化槽18へ送られる。亜硝酸型の硝化槽14で処理された第1の処理水は、第3配管28を介して第2配管26に分配された他方の廃水と合流する。この合流により、アンモニアと亜硝酸を含有し、嫌気性アンモニア酸化槽18で処理するための原水が形成される。
この原水は、合流配管29により調整タンク16を介して嫌気性アンモニア酸化槽18へ送られ、嫌気性アンモニア酸化槽18で処理される。尚、調整タンク16は、硝化槽14により生成した亜硝酸と、第2配管26により運ばれたアンモニアを混合し、局所的な亜硝酸濃度の上昇による活性定価を防止するものであるが、必ずしも必要ではない。
嫌気性アンモニア酸化槽18で原水を処理して得られた処理水の一部は、処理水配管30を介して系外へ排出されると共に、処理水の残りは処理水配管30の途中に設けられた分流器32により分流されて、循環ポンプ36の駆動により第4配管34を介して再び嫌気性アンモニア酸化槽18の入口に返送される。これにより、嫌気性アンモニア酸化槽18内へ流入する原水を希釈するための処理水の循環ルートが形成される。
亜硝酸型の硝化槽14内には、アンモニアを亜硝酸に酸化するアンモニア酸化細菌が保持されると共に、槽底部にはブロアー38から圧送されるエアを曝気する曝気管40が設けられる。これにより、亜硝酸型の硝化槽14に分配されたアンモニア性廃水中のアンモニアの略全量が、アンモニア酸化細菌により亜硝酸に酸化される。
亜硝酸型の硝化槽14内にアンモニア酸化細菌を保持する方法としては、担体や固定床を好適に使用することが挙げられる。担体の材料としては、ポリビニルアルコールやアルギン酸、ポリエチレングリコール系のゲルや、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル等のプラスチック担体等が挙げられるが、特に限定するものではない。また、アンモニア酸化細菌を担体内部に包括固定化する方法や担体表面に付着固定化する方法があるが、どちらの方法を使用してもよい。例えばアンモニア酸化細菌を包括固定化した担体を製造するには、アンモニア酸化細菌や亜硝酸酸化細菌等を含む複合微生物汚泥を包括固定化した担体を加熱処理して、複合微生物汚泥中の亜硝酸酸化細菌を失活する方法がある。この場合の加熱処理温度は、50〜90°Cの範囲が好ましく、60〜80°Cの範囲がより好ましい。担体の形状については、球形や円筒形、多孔質、立方体、スポンジ状、ハニカム状等の整形を行ったものを使用することが好ましい。尚、固定床については後記する嫌気性アンモニア酸化細菌を嫌気性アンモニア酸化槽18内に保持する方法において詳説するので、ここでは省略する。
嫌気性アンモニア酸化槽18内には、嫌気性アンモニア酸化細菌が保持され、以下の反応式により、アンモニアを水素供与体とすると共に亜硝酸を水素受容体として、アンモニアと亜硝酸とが同時脱窒される。
(化2)
1.0 NH4 +1.32NO 2 +0.066HCO 3 +0.13H+ →1.02N 2 +0.26NO 3 +0.066CH2 O 0.5 N 0.15+2.03H2 O
嫌気性アンモニア酸化法は、上記の反応式から分かるように、アンモニアと亜硝酸とが1:1.32の比率で反応するとされている。従って、亜硝酸型の硝化槽14における硝化率を100%と仮定すると、分配器12では、廃水原水中のアンモニアの約57%を亜硝酸型の硝化槽14に送り、残りの43%のアンモニアを第2配管26へ送るように分配することで、嫌気性アンモニア酸化槽18に流入する原水中のアンモニアと亜硝酸との比率を1:1.32に調整することができる。尚、本実施の形態では、分配器12を使用したが、原水の全量を亜硝酸型の硝化槽14に流入させて、亜硝酸型の硝化率を制御することで上記比率を得るようにしてもよい。
嫌気性アンモニア酸化槽18内には嫌気性アンモニア酸化細菌が保持されるが、保持する方法は、亜硝酸型の硝化槽14におけるアンモニア酸化細菌の保持方法と同様に担体や固定床を好適に使用することができる。担体を利用した方法は上記に示したので省略し、ここでは固定床について説明する。固定床を用いる場合の材料としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル等のプラスチック素材や、活性炭ファイバー等を用いることができるが、特にこれらに限定するものではない。固定床の形状としては、繊維状、菊花状に整形したものや、ハニカム状に整形したものがあるが特に限定しない。嫌気性アンモニア酸化槽18内に充填する固定床のみかけ容積としては、30〜80%の範囲が良く、好ましくは40〜80%の範囲である。また、空隙率としては、80%以上のものを好適に使用することができる。担体や固定床以外にも、微生物の自己造粒を利用したグラニュールも、本発明に利用できる。
次に、嫌気性アンモニア酸化槽18に組み込まれ、嫌気性アンモニア酸化槽18内で発生する窒素ガスのガス発生量に基づいて嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度を制御する亜硝酸濃度制御機構50について説明する。
図2は、上述した図1の合流配管29から後を示した図であり、嫌気性アンモニア酸化槽18を縦型の槽で示してある。尚、図1に対応する各部材は同じ符号を付して説明する。
図2に示すように、亜硝酸濃度制御機構50は、主として、嫌気性アンモニア酸化槽18で発生するガス発生量を経時的に測定するガス発生量測定器52と、ガス発生量測定器52での測定結果に基づいて原水ポンプ22と循環ポンプ36を制御するコントローラ54とで構成される。
嫌気性アンモニア酸化槽18は、密閉式の槽として形成され、槽内には攪拌機19が設けられる。また、槽18底部には合流配管29が接続され、合流配管29に原水ポンプ22が設けられる。また、嫌気性アンモニア酸化槽18の天板には、嫌気性アンモニア酸化槽18内でアンモニアと亜硝酸とが反応することにより発生する窒素ガスを収集するガス収集管56が接続される。そして、嫌気性アンモニア酸化槽18の上部側面には処理水を取り出す処理水配管30が接続されると共に、処理水配管30の接続部には嫌気性アンモニア酸化槽18内で発生した窒素ガスが処理水と一緒に処理水配管30から漏洩しないための水封機構58が設けられる。水封機構58としては、例えば水封U字管のような公知のものを使用することができる。
ガス収集管56の途中には、ガス収集管56を流れるガス量を測定することで、嫌気性アンモニア酸化槽内で発生する窒素ガスのガス発生量を測定するガス発生量測定器52が設けられ、このガス発生量測定器52により嫌気性アンモニア酸化槽18内で発生する窒素ガスのガス発生量(L/分)が経時的に測定される。尚、厳密には、ガス収集管56で収集されるガス中には、原水から持ち込まれる空気成分等も考えられるが、極く微量であるので無視し、ここでは窒素ガスのガス発生量と称することにする。ガス発生量測定器52としては、例えば渦式流量計、フロート式流量計、積算流量計等を好ましく使用することができる。
ガス発生量測定器52で測定される測定データは、コントローラ54に逐次入力されると共に、コントローラ54には図3に示すガス発生量と亜硝酸濃度との関係を表す検量線に基づいてガス発生量を亜硝酸濃度に変換するための演算式が予め入力されている。図3から分かるように、亜硝酸濃度と窒素ガスのガス発生量とは直線的な関係にあり、嫌気性アンモニア酸化槽18内のガス発生量の変動を経時的に測定することで、嫌気性アンモニア酸化槽18内における亜硝酸濃度の変動を正確に把握することができる。これにより、コントローラ54は、ガス発生量測定器52で測定されたガス発生量に基づいて嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度を制御する。
ところで、嫌気性アンモニア酸化槽18内に流入する原水流量は基本的に原水ポンプ22によって決定されるので大きな変動はないが、原水流量(容積負荷)が変動した場合にも嫌気性アンモニア酸化槽18内で発生する窒素ガスのガス発生量は変動する。即ち、嫌気性アンモニア酸化槽18内におけるガス発生量の変動は、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸の濃度変動(濃度負荷変動)の他に、図4に示すように、嫌気性アンモニア酸化槽18へ流入する原水の原水流量の変動(容積負荷変動)によっても変動する。図4の詳細は実施例で説明する。
従って、ガス発生量によって嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度の変動を正確に検知するには、容積負荷の変動を考慮する必要がある。従って、図2に示すように、合流配管29に原水流量測定器60を設けて原水流量の経時的な変動を測定し、測定結果からガス発生量の変動が容積負荷の変動によるものかそうでないかを判断することが好ましい。これにより、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度をより的確に制御することができる。ガス発生量の変動が容積負荷の変動か否かの判断基準としては、予め嫌気性アンモニア酸化槽18の容積負荷変動のパターンをコントローラ54に記録しておき、そのパターンを基準として判断することができる。また、容積負荷変動のパターンから変動範囲の上限と下限を設定し、それを超えたら容積負荷以外の要因を含むと判断してもよい。尚、原水ポンプ22がインバータ制御の場合、予め測定したインバータの周波数と、実流量を測定した数値から原水流量が判断できるので、この場合には原水流量測定器60を設けなくてもよい。
また、ガス発生量が減少する主たる原因として、高濃度な亜硝酸による嫌気性アンモニア酸化細菌の失活、亜硝酸の濃度負荷の減少、原水流量の容積負荷の減少等の他に、酸素(空気)が嫌気性アンモニア酸化槽18内に持ち込まれることにより、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性低下が原因になる。高濃度な亜硝酸による嫌気性アンモニア酸化細菌の失活の場合には、通常、失活する前に亜硝酸濃度が上昇し、ガス発生量が異常に上昇するので、事前に対処可能である。また、原水中の亜硝酸濃度が低減した場合も、処理能率は落ちるが、嫌気性アンモニア酸化細菌が失活することはない。しかし、DOの上昇が原因により嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が落ちた場合には、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸を脱窒処理しきれなくなり、嫌気性アンモニア酸化槽18に亜硝酸が蓄積される。この結果、ガス発生量が低下しているにも係わらず嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度が上昇し、嫌気性アンモニア酸化細菌が失活してしまう。
従って、合流配管29に溶存酸素測定器62(以下、DO測定器62という)を設けて原水中のDOの経時的な変動を測定し、ガス発生量の変動がDOの上昇によるものかを判断することが好ましい。これにより、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度をより的確に制御することができる。ガス発生量の変動がDOの上昇によるか否かの判断基準としては、嫌気性アンモニア酸化細菌の反応が阻害される阻害DOレベルを基準として判断するとよい。また、このDO供給源となっているものは、前段の硝化槽14からの持ち込みである。硝化槽14のDOの上昇は、嫌気性アンモニア酸化槽18に運ばれる原水中のDOの上昇を意味する。従って、DO測定器62の代わりに、硝化槽14にDO検知器を設置し、この値をモニタリングすることで、異常なDOの上昇がないかを判断してもよい。
また、コントローラ54に入力されるガス発生量、原水流量、DOのそれぞれの変動、及びガス発生量から演算した亜硝酸濃度は、表示手段55に表示することが好ましい。これにより、コントローラ54による嫌気性アンモニア酸化槽18内の自動制御と並行して、表示手段55を監視する作業者自らが手動で嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度を制御することもできるので、より精度の高い制御を行うことができる。また、ガス発生量、原水流量、DOが異常に変動したときに警報を発する警報手段(図示せず)を設けるようにしてもよい。
図5は、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度を制御する亜硝酸濃度制御機構50の別態様であり、図2の亜硝酸濃度制御機構50に処理水槽64と処理水ポンプ66を増設したものである。
即ち、嫌気性アンモニア酸化槽18で処理された処理水は処理水配管30を通って処理水槽64に貯留される。処理水槽64からは戻し配管68が第4配管34の途中に接続され、戻し配管68に処理水ポンプ66が設けられる。この処理水ポンプ66はコントローラ54により制御される。
図2の場合には、循環ポンプ36の循環量を多くし過ぎると、嫌気性アンモニア酸化槽18で完全に脱窒処理されていない処理水が循環される懸念があり、希釈効果が小さくなるおそれがある。これに対し、図5の亜硝酸濃度制御機構50では、嫌気性アンモニア酸化槽18で処理が終了した処理水を処理水槽64に十分に貯留しておくことができるので、亜硝酸濃度が略ゼロとなった処理水を嫌気性アンモニア酸化槽18に確実に戻すことができ、希釈効率を上げることができる。
次に、上記の如く構成された亜硝酸濃度制御機構50により嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度をコントローラ54で自動制御する一例を説明する。
(1)コントローラ54が原水流量が略一定に係わらず、ガス発生量が異常に増加したことを検知した場合。
コントローラ54は嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度及びアンモニア濃度の増加が原因であると判断し、原水ポンプ22を制御して原水流量を減らすと共に、循環ポンプ36を制御して循環量を増加する。図5の亜硝酸濃度制御機構50では、処理水ポンプ66を駆動してもよい。これにより、嫌気性アンモニア酸化槽18内に流入する亜硝酸濃度が低減するので、嫌気性アンモニア酸化細菌の失活を未然に防止することができる。また、原水流量を減らし、処理水の循環量を増加してもガス発生量の異常増加が止まらない場合には、コントローラ54は原水流量をゼロにし、処理水の循環だけを行う。
発明者の研究から、亜硝酸濃度の異常増加があっても、一時的であれば嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が急激に落ちたり失活することがないが、異常増加が継続されると失活してしまう。従って、本発明のように、ガス発生量の異常な変動を監視することで、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度の変動をリアルタイムに把握できることが極めて重要になる。
ガス発生量が異常に増加した場合や異常に減少した場合の判断基準であるが、例えば定常運転時のガス発生量を基準とし、その基準に対して単位時間当たりのガス発生量の増加率又は減少率の閾値を設定し、コントローラに予め入力しておく。そして、コントローラ54は、その閾値を超えたらガス発生量が異常変動したと判断する。また、亜硝酸濃度が200mg/Lを超えると嫌気性アンモニア酸化細菌が失活するので、前記した単位時間当たりの増加率や減少率による閾値以外に、亜硝酸濃度200mg/L以下の絶対上限値をコントローラ54に入力しておき、亜硝酸濃度200mg/Lを超えたら警報を発するようにするとよい。
(2)コントローラ54が原水流量が略一定に係わらず、ガス発生量が異常に減少したことを検知した場合。
この場合の原因として、次のことが考えられる。
A.循環ポンプ36の故障により、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度が上昇し、嫌気性アンモニア酸化細菌が失活してしまった場合。
B.嫌気性アンモニア酸化槽18内に流入する原水のアンモニア濃度と亜硝酸濃度とのバランスが崩れ、亜硝酸を脱窒できずに蓄積されて亜硝酸濃度が上昇し、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が落ちている場合。
C.亜硝酸型の硝化槽14からのDOの持ち込みにより嫌気性アンモニア酸化槽18内のDOが阻害DOレベルを超えたために、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が落ちている場合。
D.嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸の濃度負荷が減少した場合。
上記Aの場合には、循環ポンプ36の状況は、インバータの周波数などを監視しており、故障は検知でき、対応できる。
上記Bの場合には、ガス発生量が異常に増加せずに嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度が高くなる。このようにガス発生量の増加が事前になく異常な減少がある場合には、コントローラ54は装置の運転を停止する。そして、作業者は、DO測定器62で測定される原水中のDO上昇がないかを確認し、DO上昇があれば亜硝酸型の硝化槽14の曝気量を減らす。また、簡易測定キット(例えばパックテスト(株)共立理化学研究所)などで、処理水の亜硝酸濃度を測定し、嫌気性アンモニア酸化槽18内での亜硝酸濃度の上昇がない場合には、原因が上記Dと判断して運転を再開する。簡易測定キットでの検査結果から嫌気性アンモニア酸化槽18内での亜硝酸濃度の顕著な上昇が認められ、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を復帰させてから運転を開始した方が良い場合には、循環ポンプ36(及び処理水ポンプ66)のみを駆動して馴養する。
尚、本実施の形態では、コントローラ54を設けて嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度を自動制御するようにしたが、表示手段55に表示されるガス発生量、原水流量、DOのそれぞれの変動、及びガス発生量を作業者が監視し、その監視結果に基づいて作業者が手動で制御するようにしてもよい。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図2の亜硝酸濃度制御機構50を備えた嫌気性アンモニア酸化槽18を使用し、表1の組成の模擬原水を用いて、ガス発生量と容積負荷との関係を調べた。
Figure 2006122839
備考)T.EllementS1:EDTA:5g/L,FeSO4 :5g/L
T.EllementS2:EDTA:15g/L,ZnSO 4 ・7H2 O:0.43g/L,CoCl2 ・6H2 O:0.24g/L,MnCl2 ・4H2 O:0.99g/L,CuSO4 ・5H2 O:0.25g/L,NaMoO 4 ・2H2 O:0.22g/L,NiCl2 ・6H2 O:0.19g/L
嫌気性アンモニア酸化槽18内には、予め嫌気性アンモニア酸化細菌の培養を行っていた別の嫌気性アンモニア酸化槽から採取した汚泥を包括固定化した担体を充填した。固定化にはポリエチレングルコール系のゲルを用い、汚泥量がSSとして1重量%になるように固定化した。
原水流量は1.7L/分〜0.85L/分の範囲とした。嫌気性アンモニア酸化槽18の有効容積を700Lとし、容積負荷は4.2〜2.1kg−N/m3 /日とした。また、嫌気性アンモニア酸化槽18内を攪拌機19で攪拌した。
そして、馴養後1カ月の安定運転を行った後、原水ポンプ22による流量を絞って容積負荷を減少させた。そのときのガス発生量と原水流量との関係を図4に示す。尚、ガス発生量及び原水流量は一日の平均値をプロットした。
図4から分かるように、原水流量を低下させて容積負荷を下げることにより、ガス発生量も減少し、ガス発生量と原水流量(容積負荷)には密接な関係があることが分かる。
(実施例2)
次に、図5の装置を使用してショック試験を行った。ショック試験は、表1の模擬原水で運転を行った後、表1の模擬原水よりも亜硝酸濃度とアンモニア濃度とが300mg/L過剰な表2の模擬原水に切り換える方法で行った。
Figure 2006122839
(備考)T.EllementS1:EDTA:5g/L,FeSO4 :5g/L
T.EllementS2:EDTA:15g/L,ZnSO 4 ・7H2 O:0.43g/L,CoCl2 ・6H2 O:0.24g/L,MnCl2 ・4H2 O:0.99g/L,CuSO4 ・5H2 O:0.25g/L,NaMoO 4 ・2H2 O:0.22g/L,NiCl2 ・6H2 O:0.19g/L
図5の装置も基本的な容量などは図2と同様であるが、嫌気性アンモニア酸化槽18内には不織布を見かけ容積として80%充填した。そして、予め嫌気性アンモニア酸化細菌の培養を行っていた別の嫌気性アンモニア酸化槽から採取した汚泥を200mg/Lになるように添加した。また、処理水槽64の容積を300Lとした。
原水流量は1.7L/分とし、処理水ポンプ66による嫌気性アンモニア酸化槽18への処理水の供給量は原水流量の1.2倍になるようにした。嫌気性アンモニア酸化槽18の有効容積は図2と同じ700Lとし、容積負荷は4.2kg−N/m3 /日とした。
上記条件の嫌気性アンモニア酸化槽18内に先ず表1の模擬原水を流入させて馴養し、嫌気性アンモニア酸化槽18の処理水が安定したところで、表1の模擬原水から表2の模擬原水に切り換えた。
ショック試験におけるガス発生量と運転時間との関係を図6に示す。図6における◆でプロットした線が実施例であり、プロットが途中で途切れているのは装置の運転を停止したことを意味する。
表1の模擬原水から表2の模擬原水に切り換えてから60分でガス発生量の異常増加を確認した。この為、嫌気性アンモニア酸化槽18の運転を停止した。そして、原水ポンプ22を制御して原水流量を1/2まで低減すると共に、処理水ポンプ66を制御して処理水槽64に貯留されている処理水(亜硝酸濃度が略ゼロ)を嫌気性アンモニア酸化槽18の入口に戻し、運転を再開した。この結果、嫌気性アンモニア酸化槽18内の嫌気性アンモニア酸化細菌は失活することなく、安定な運転を再開できた。
尚、嫌気性アンモニア酸化槽18にDOを持ち込むことは好ましくないため、水道水などのDOの高い希釈水で嫌気性アンモニア酸化槽18内を希釈することは避けるべきである。
上記結果から分かるように、嫌気性アンモニア酸化槽18は定常時の亜硝酸の濃度負荷より、過剰な濃度負荷が与えられた場合、一時的であれば、その濃度負荷に対して失活することなく対応できる。即ち、規定の濃度負荷を超えても、一時的であれば、それを超えることは可能であり、その場合には亜硝酸濃度の異常な増加がある。従って、その亜硝酸濃度の異常な増加を如何にリアルタイムに検知できるかが重要であり、本発明のようにガス発生量を監視することで達成することができる。これにより、亜硝酸濃度を下げる対策を迅速に講じることができるので、嫌気性アンモニア酸化細菌の失活を未然に防止して安定した運転を行うことができる。
(比較例)
図5の装置から亜硝酸濃度制御機構50を除いた従来の装置を別に用意し、実施例2と同様のショック試験を行った。実線で示した部分が比較例の線である。
その結果、表1の模擬原水を処理している運転時では、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度は常に10mg/L以下であった。しかし、表1の模擬原水を表2の模擬原水に切り換えてショック試験を行った際、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度の異常増加を検知できない為、亜硝酸濃度は図6の実線で示すように増加し続け、ショック試験開始から300分後には亜硝酸濃度が350mg/Lまで上昇した。このように、表1の模擬原水と表2の模擬原水の差である亜硝酸濃度300mg/Lよりも高くなったことは、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が落ちていることを意味する。即ち、急激な亜硝酸の濃度負荷の上昇により、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度が増加し、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下した。
そこで、その後、嫌気性アンモニア酸化槽18内の亜硝酸濃度を、処理水の循環により希釈しようとしたが、処理水槽64の処理水の亜硝酸濃度が220mg/Lとなっており、希釈に使用できなかった。DOの高い水道水での希釈はできないことから、装置の運転を停止せざるを得なかった。装置を停止したあと、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性状態が元に復帰するまでに約4週間の期間を要した。
本発明の嫌気性アンモニア酸化装置の全体構成図 亜硝酸濃度制御機構を備えた嫌気性アンモニア酸化槽を説明する説明図 ガス発生量と亜硝酸濃度との関係を検量線で示したグラフ ガス発生量と原水流量(容積負荷)との関係を説明するグラフ 亜硝酸濃度制御機構を備えた嫌気性アンモニア酸化槽の別態様を説明する説明図 実施例におけるショック試験結果を説明するグラフ
符号の説明
10…嫌気性アンモニア酸化装置、12…分配器、14…亜硝酸型の硝化槽、16…調整タンク、18…嫌気性アンモニア酸化槽、19…攪拌機、20…原水配管、22…原水ポンプ、24…第1配管、26…第2配管、28…第3配管、29…合流配管、30…処理水配管、32…分流器、34…第4配管、36…循環ポンプ、38…ブロアー、40…曝気管、50…亜硝酸濃度制御機構、52…ガス発生量測定器、54…コントローラ、55…表示手段、56…ガス収集管、58…水封機構、60…原水流量測定器、62…DO測定器、64…処理水槽、66…処理水ポンプ、68…戻し配管

Claims (10)

  1. 原水中のアンモニアと亜硝酸とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒して窒素ガスに変換する嫌気性アンモニア酸化槽を備えた嫌気性アンモニア酸化装置の運転方法において、
    前記窒素ガスのガス発生量の経時的な変動を測定し、該測定結果から前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度の変動を監視することを特徴とする嫌気性アンモニア酸化装置の運転方法。
  2. 前記ガス発生量の測定結果から前記嫌気性アンモニア酸化細菌の活性状態を監視することを特徴とする請求項1の嫌気性アンモニア酸化装置の運転方法。
  3. 前記ガス発生量の測定結果に基づいて前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度を制御することを特徴とする請求項1又は2の嫌気性アンモニア酸化装置の運転方法。
  4. 前記ガス発生量の測定結果に基づいて、前記原水の原水流量及び/又は前記嫌気性アンモニア酸化槽での処理水を該嫌気性アンモニア酸化槽の入口に戻す循環量を調整することにより前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度を制御することを特徴とする請求項3の嫌気性アンモニア酸化装置の運転方法。
  5. 前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度が200mg/Lを超えないように制御することを特徴とする請求項3又は4の嫌気性アンモニア酸化装置の運転方法。
  6. 前記原水の原水流量の経時的な変動を測定し、前記ガス発生量の変動が原水流量の容積負荷変動によるものか亜硝酸の濃度負荷変動によるものかを監視することを特徴とする請求項1〜5の何れか1の嫌気性アンモニア酸化装置の運転方法。
  7. 前記原水中の溶存酸素の経時的な変動を測定し、前記嫌気性アンモニア酸化槽への溶存酸素の持ち込みを監視することを特徴とする請求項1〜6の何れか1の嫌気性アンモニア酸化装置の運転方法。
  8. 原水中のアンモニアと亜硝酸とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒して窒素ガスに変換する嫌気性アンモニア酸化槽を備えた嫌気性アンモニア酸化装置において、
    前記嫌気性アンモニア酸化槽内で発生する窒素ガスを収集するガス収集管と、
    前記ガス収集管に設けられたガス発生量測定器と、
    前記ガス発生量測定器で測定された測定結果に基づいて前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とする嫌気性アンモニア酸化装置。
  9. 前記原水の原水流量を測定する原水流量測定器と、
    前記原水中の溶存酸素を測定するDO測定器とを備え、前記コントローラは前記ガス発生量の測定結果に加えて前記原水流量と溶存酸素との測定結果に基づいて前記嫌気性アンモニア酸化槽内の亜硝酸濃度を制御することを特徴とする請求項8の嫌気性アンモニア酸化装置。
  10. 前記ガス発生量を監視する表示手段を設けたことを特徴とする請求項8又は9の嫌気性アンモニア酸化装置。
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