JP2006117608A - イネ病害保護剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 イネ等の単子葉植物の効果的な病害防除法の開発、特にイネいもち病における農薬の低減化を図る方策を開発することを課題とする。
【解決手段】 単子葉植物においても、アブシジン酸(ABA)生合成量又は蓄積量を減少させる化合物及び抵抗性誘導剤を併用することにより、農薬の使用量を減らし、しかも効果的に植物病害を防ぐことができる。
【選択図】 なし
【解決手段】 単子葉植物においても、アブシジン酸(ABA)生合成量又は蓄積量を減少させる化合物及び抵抗性誘導剤を併用することにより、農薬の使用量を減らし、しかも効果的に植物病害を防ぐことができる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、単子葉植物の植物病防除、特に稲の植物病害防除、及び病害からの保護の技術分野に関する。より具体的には、稲をイネいもち病から防除する技術分野に関する。
我が国において稲は一番重要な作物であるが、植物病害による影響・被害を多く受けてきた。稲の病害として重要なものとしては、イネいもち病が挙げられる。いもち病は、糸状菌の一種で、不完全菌類に属するPyricularia属菌の寄生によりおこる植物の病気で、特に冷夏又は多雨などで、過去に大発生することがある。例えば、1993年の米不作の主要な原因として、天候不順とそれに伴ういもち病の発生が原因として挙げられている。
イネいもち病等のイネ病の病害防除剤としては、プロベナゾール(3−アリルオキシ−1,2,−ベンゾイソチアゾール−1,1,−ジオキシド:特許文献1)をはじめとして、その他の1,2,−ベンゾイソチアゾール−1,1,−ジオキシド誘導体(特許文献2、特許文献3、特許文献4)、オルトスルファモイル安息香酸(特許文献5)、ピラゾールカルボン酸誘導(特許文献6)、イソチアゾールカルボン酸誘導体(特許文献7)、カスガマイシン(非特許文献1:カスミン)など種々の農薬が知られている。
イネいもち病に対する対策は古くから行われており、他病に比較すれば、良く研究されているものの、消費者の求めにより作付けが増加しているコシヒカリなどの品種は、そもそもいもち病に弱く、開発された抵抗性品種も、すぐに変異いもち病菌が現れるため有効性が限られている。抗菌剤などの薬剤についても、薬剤抵抗性が生じており、1971年には、既にカスガノマイシン耐性が問題となっている。
また、最近では、農薬の使用をできるだけ控えることが消費者から求められており、できるだけ低農薬でのイネの植物病防除が求められている。
東北地方など、冷害にあいやすい地域では、いもち病が主要な病害であり、今後も冷害などの異常気象、天候不順は予想され、いもち病の大量発生が危惧されている。
また、双子葉植物と単子葉植物では、病害に対する防疫メカニズムに異なる点があると考えられている。
そこで本発明者らは、イネ等の単子葉植物の効果的な病害防除法の開発、特にイネいもち病における農薬の低減化を図る方策を開発することを課題として研究した。
本発明者らは、偶然にも、稲においても、特定の植物成長調整剤を双子葉植物でSARを誘導する事が知られている農薬と併用することにより、農薬の使用量を減らし、しかも効果的に植物病害を防ぐことができることを見出して、本発明を完成させた。
本願発明により、イネに効果的に抵抗性を与えられ、従来よりも農薬の使用量を減らしても、よりすぐれた耐病性を与えることが可能となった。
1.[植物の防衛メカニズム]
(はじめに)
植物の病害抵抗性に、種々の植物ホルモンのシグナル伝達が相互に作用し関与していることが最近明らかにされつつある。
(はじめに)
植物の病害抵抗性に、種々の植物ホルモンのシグナル伝達が相互に作用し関与していることが最近明らかにされつつある。
サリチル酸(salicylic acid; SA)、ジャスモン酸(jasmonic acid; JA)、エチレン等が自己防御機構の発動に重要な働きをしている。
例えば、双子葉植物においては、全身獲得抵抗性(systemic acquired resistance; SAR)に働くSAシグナルは、病傷害応答に働くJAシグナルとは互いに拮抗的に働くことが知られている。
全身獲得抵抗性の機構は、1次病原の感染により全身に誘導され、数週間にわたり継続する。全身獲得抵抗性によりバクテリア、ウイルス、糸状菌など他の病原による他の箇所における病害を予防できることが明らかにされている。感染病源によりサリチル酸が誘導され、サリチル酸により防御タンパク質(酸性PR:酸性protective protein又はpathogen-related protein)が発現されることによる、抵抗性であると考えられている。
ジャスモン酸による防御機構は、虫害などの傷害により誘導され、塩基性PRが発現されることによると考えられている。
1−1.[双子葉植物の防御機構]
シロイヌナズナ及びタバコにおける研究により、シロイヌナズナでは、SARにおけるPRタンパク質の発現には、制御タンパク質であるNPR1(NIM1とも呼ばれる)が必要であることが見出されている。SARの誘導により、NPR1は核内へ移送され、転写因子と相互作用し、SA依存性のPR遺伝子の活性化すると考えられている。
シロイヌナズナ及びタバコにおける研究により、シロイヌナズナでは、SARにおけるPRタンパク質の発現には、制御タンパク質であるNPR1(NIM1とも呼ばれる)が必要であることが見出されている。SARの誘導により、NPR1は核内へ移送され、転写因子と相互作用し、SA依存性のPR遺伝子の活性化すると考えられている。
さらに、抗イネいもち病農薬として用いられているプロベナゾール及びその活性代謝物BIT(benzisothiazole)は、双子葉植物内のSARにおいて、サリチル酸の蓄積をさせる過程(サリチル酸の上流)に作用し、SAを蓄積、SARマーカー遺伝子の発現を誘導することが知られている。また、BTH(benzo(1,2,3)thiadiazole-7-carbothioic acid S-methyl ester )、及びINA(2,6-dichloroisonicotinic acid)、NCI(N-cyanomethyl-2-chloroisonicotinamide )は、SAR誘導経路においてサリチル酸の下流に作用することが知られている。
ところで、乾燥・塩・低温などの環境ストレス応答して誘導される植物ホルモンとしてアブシジン酸がある。このアブシジン酸をSAR誘導剤と併用した場合の影響について、双子葉植物であるシロイヌナズナとタバコで調べたところ、サリチル酸の上流に作用するBITの作用及びサリチル酸の下流に作用するBTHの作用、両者の作用に対し抑制的に作用することを見出した。
また、最近では、アブシジン酸合成経路に関わる酵素の阻害剤が開発されている。例えば、エポキシカテロイド・ジオキシゲナーゼ阻害剤が開発され、植物成長活性が見出されている。
1−2.[単子葉植物、イネでの防御機構]
イネの様な単子葉植物におけるSARの誘導機構については必ずしも、十分解明されていない。サリチル酸が介在するSARが存在するかどうかも諸説入り乱れており、明らかでない。さらに、イネでは、そもそもの正常時での内生サリチル酸濃度が極めて高く、バクテリア又は真菌類をイネに接種してもサリチル酸の濃度が増加しないこと、植物体外からサリチル酸を適用しても何ら影響を与えないことが知られていた(Plant Physiology(1995) vol.108, 633-639)。
また、アブシジン酸合成経路が植物病害抵抗性と関係するとは考えられていなかった。
イネの様な単子葉植物におけるSARの誘導機構については必ずしも、十分解明されていない。サリチル酸が介在するSARが存在するかどうかも諸説入り乱れており、明らかでない。さらに、イネでは、そもそもの正常時での内生サリチル酸濃度が極めて高く、バクテリア又は真菌類をイネに接種してもサリチル酸の濃度が増加しないこと、植物体外からサリチル酸を適用しても何ら影響を与えないことが知られていた(Plant Physiology(1995) vol.108, 633-639)。
また、アブシジン酸合成経路が植物病害抵抗性と関係するとは考えられていなかった。
2.単子葉植物、特にイネにおける植物病害防除剤
そこで、本発明者らは、穀類など主要作物が含まれる単子葉植物、中でもイネの植物病害防除の効果を改善できないか鋭意検討した結果、驚くべきことに、(イ)アバミン〔[[3−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−アリル]−(4−フルオロ−ベンジル)−アミノ]−酢酸・メチルエステル〕
そこで、本発明者らは、穀類など主要作物が含まれる単子葉植物、中でもイネの植物病害防除の効果を改善できないか鋭意検討した結果、驚くべきことに、(イ)アバミン〔[[3−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−アリル]−(4−フルオロ−ベンジル)−アミノ]−酢酸・メチルエステル〕
なお、抵抗性を誘導する化合物の特徴としては、それ自体には全く、又は、ほとんど抗菌活性はないが、植物に処理すると病害を抑制するものである。
本発明の単子葉植物の病害防除において使用できる抵抗性誘導剤としては、双子葉植物にSARを誘導する種々の公知のSAR誘導剤並びにSARを誘導することが明らかになっていないが、単子葉(イネ等)に病害抵抗性を誘導する化合物を用いることができるが、例えば、サリチル酸誘導体、具体的には、プロベナゾール、BIT(benzisothiazole)、BTH(benzo(1,2,3)thiadiazole-7-carbothioic acid S-methyl ester)、INA(2,6-dichloroisonicotinic acid)、NCI(N-cyanomethyl-2-chloroisonicotinamide)、又はチアニジル(tiadinil)等を用いることができる。
本発明の単子葉植物の病害防除において使用できる抵抗性誘導剤としては、双子葉植物にSARを誘導する種々の公知のSAR誘導剤並びにSARを誘導することが明らかになっていないが、単子葉(イネ等)に病害抵抗性を誘導する化合物を用いることができるが、例えば、サリチル酸誘導体、具体的には、プロベナゾール、BIT(benzisothiazole)、BTH(benzo(1,2,3)thiadiazole-7-carbothioic acid S-methyl ester)、INA(2,6-dichloroisonicotinic acid)、NCI(N-cyanomethyl-2-chloroisonicotinamide)、又はチアニジル(tiadinil)等を用いることができる。
他方、前記抵抗性誘導剤と併用すべき薬剤としては、アバミン又はアバミン507以外にも、アバミン及びアバミン507に構造が類似する化合物又はその塩、例えば、特開2003―113148号に記載される下記一般式(1)で示される化合物又はその塩を用いることができる。これらは、アバミン及びアバミン507と同様に、エポキシカテロイド・ジオキシゲナーゼの阻害剤である(特開2003-113148号)。
一般式(1)
一般式(1)
ここで、R1が示すアルコキシ基としては、例えば炭素数1〜6個程度の直鎖状又は分枝鎖状のアルコキシ基を用いることができる。好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基などのアルコキシ基を用いることができ、さらに好ましくはメトキシ基を用いることができる。R1としては水素原子又はメトキシ基が好ましい。R2が示すアルコキシ基についても同様であり、好ましくはメトキシ基を用いることができる。R2が示すアルコキシ基が置換基を有する場合には、置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されないが、例えばアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、水酸基など酸素原子を含む置換基が好ましい。R2としては水酸基、メトキシ基、又はメトキシカルボニルメトキシ基が好ましい。
R3が示すアルキル基としては、例えば炭素数1〜6程度の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を用いることができる。好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基などのアルキル基を用いることができる。R3が示すアルキル基が置換基を有する場合には、置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されないが、例えばアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、水酸基など酸素原子を含む置換基が好ましい。R3としてはメトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルブチル基が好ましい。
Arが示すアリール基としては、例えばフェニル基又はナフチル基などを挙げることができ、好ましくはフェニル基を用いることができる。Arが示すヘテロアリール基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及びイオウ原子からなる群から選ばれる1又は2以上のヘテロ原子を環構成原子として含む5ないし10員のヘテロアリール基を用いることができる。より好ましくは窒素原子又は酸素原子を環構成原子として1個又は2個含む5又は6員のヘテロアリール基を用いることができ、さらに好ましくは窒素原子又は酸素原子を環構成原子として1個含む5又は6員のヘテロアリール基を用いることができる。より具体的には、ヘテロアリール基としてピリジル基又はフリル基などが好適である。Arが示すアリール基又はヘテロアリール基が置換基を有する場合には、置換基の種類、個数、及び置換位置は特に限定されないが、例えば水酸基、アルコキシ基(メトキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子など)を1個又は2個程度有することが好ましい。好ましい置換基は、フッ素原子である。Arがフェニル基である場合には3位及び/又は4位に置換基を有することが好ましい。
一般式(1)で表される化合物は置換基の種類に応じて1個又は2個以上の不斉炭素を有している場合がある。したがって、1個又は2個以上の不斉炭素に基づく光学的に純粋な形態の任意の光学異性体、光学異性体の任意の混合物、ラセミ体、純粋な形態のジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物なども包含される。また、一般式(1)で表される化合物はナトリウム塩、カリウム塩などの塩基付加塩、又は塩酸塩、硫酸塩、パラトルエンスルホン酸塩などの酸付加塩として存在する場合があるが、これらの任意の塩も包含される。遊離形態の化合物又は塩の形態の化合物は水和物や溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質も包含されることはいうまでもない。
さらに好適には、 前記一般式(1)において、R1がアルコキシ基で;R2は水酸基、置換基を有していてもよいアルコキシ基であり、;R3はエステル基を有するアルキル基であり;Yは−CH=CH−であり;nは1であり;Arはハロゲンで置換されていてもよいフェニル基である化合物又はその塩を用いることができる。
さらに,抵抗性誘導剤と併用すべき薬剤としては、上記したアバミン、アバミン507又は上記一般式(I)で表される化合物のみではなく、アブシジン酸(ABA)生合成を阻害する化合物であれば、同様に用いることができる。上記したエポキシカテロイド・ジオキシゲナーゼ阻害剤以外にも、ABA生合成またはABA蓄積量を減少させる化合物を含むことができる。これには、例えば、ノルフラゾン等のアブシジン酸生合成の合成中間体であるカロテノイドの合成を阻害する薬剤、パーオキシダーゼ阻害剤(例えば, NDGA〔4,4'-(2,3-ジメチル-1,4-ブタンジイル)ビス-1,2-ベンゼンジオール〕)、フルリドロン(日本生態学会第48回大会 植物の生理状態 吉岡俊人)などが包含され、さらにABA分解の活性化化合物も含まれる。なおこれらのアブシジン酸生合成又は蓄積量を減少させる化合物は、可能な限り植物に副作用を生じない化合物が望ましい。
アバミン、アバミン507、上記一般式(I)で表される化合物、又はABA生合成若しくはABA蓄積量を減少させる化合物(以下ABA生合成又はABA蓄積量を減少させる化合物という)を抵抗性誘導剤と併用する場合、(イ)ABA生合成又はABA蓄積量を減少させる化合物を投与してから抵抗性誘導剤を投与する方法、(ロ)抵抗性誘導剤を投与してからABA生合成又はABA蓄積量を減少させる化合物を投与する方法、(ハ)ABA生合成又はABA蓄積量を減少させる化合物と抵抗性誘導剤を同時に投与する方法、のいずれの方法を用いてもよい。
さらに、本願発明には、RNAiやアンチセンス法による遺伝子発現の抑制により、アブシジン酸(ABA)生合成量又は蓄積量を減少させることによる単子葉植物を植物病害から保護する方法が包含される。
また、本願発明には、RNAiやアンチセンス法による遺伝子発現の抑制により、アブシジン酸(ABA)生合成量又は蓄積量を減少させ、さらに、抵抗性誘導剤の投与を併用することによる単子葉植物の植物病害防除方法、も包含される。
より具体的には、例えば、周知の方法により、アブシジン酸合成系に関わる酵素遺伝子に対するRNAiのためのdsRNAは、例えば、当該酵素遺伝子のスタートコドンより50塩基以上下流のORFから21〜23塩基であって、好適にはAAから始まる19〜21塩基(19塩基が最も一般的)を選び出し、AA以降の19〜21塩基に2塩基のオーバーハング(dTdT、UU等)が付いたsiRNA及びそのアンチセンス鎖を合成し、アニーリングし、dsRNAとして合成することができる。合成した前記dsRNA又は、ヘアピン型としたdsRNAを発現できる発現ベクターを、周知の方法、例えば、ボンバードメント法又はエレクトロポレーション法により、単子葉植物に導入することにより、アブシジン酸(ABA)生合成量を減少させ、さらに、抵抗性誘導剤の投与を併用することによる単子葉植物の植物病害防除方法、も包含される。
以下の実施例1〜4は次のようにして行った。なお、実施例1〜4はそれぞれ異なる時期の実験である。
イネの品種としては「日本晴れ」を使用し抵抗性誘導剤とエポキシカテロイド・ジオキシゲナーゼの阻害剤との併用によるイネいもち病菌への防除効果を確認した。
イネいもち病が十分に発病するように調節した温室内で「日本晴れ」栽培した。栽培に使用したポットは内径28mm x 高さ115mmのものを使用し、5本/potのイネを生育させた。
イネいもち病菌Pyricularia oryzae胞子液は、オートミール培地プレートでイネいもち病菌が一面に生えるように生育させ(28℃)、気中菌糸を除去した後、BLBランプ照射下で生育を続けて胞子形成を行い、生育した胞子を減菌水に懸濁して調製した。調製した胞子液を、感染試験に用いた。
薬剤の処理: エポキシカテロイド・ジオキシゲナーゼ阻害剤としてはアバミン、及びアバミン507を用いた。抵抗性誘導剤としては、BIT(benzisothiazole)及びBTH(benzo(1,2,3)thiadiazole-7-carbothioic acid S-methyl ester)を用いた。
発病しやすいイネの第4葉が1-3cm程度まで生長した個体に対して、灌注処理又は灌注処理及び葉面への噴霧処理を同時に行ってアバミン処理又はアバミン507処理をした。
アバミン処理12時間後にBIT又はBTHの灌注処理し、温室内で生育を続け、BIT、又はBTH処理後5日後に、イネいもち病菌の接種試験を行った。
感染実験:防除価の算出
イネを接種箱(60 x 60 x 60cm)内に静置し、イネいもち病菌胞子液を噴霧接種した。イネは接種箱内で暗黒下、湿度100%の条件で24時間静置した後、接種箱から出し温室内で栽培を継続した。接種5日後に第4葉に出現した病斑の数を計測して発病の度合いを評価し、対照区に対して発病が抑制された割合を防除価として求めた。
イネを接種箱(60 x 60 x 60cm)内に静置し、イネいもち病菌胞子液を噴霧接種した。イネは接種箱内で暗黒下、湿度100%の条件で24時間静置した後、接種箱から出し温室内で栽培を継続した。接種5日後に第4葉に出現した病斑の数を計測して発病の度合いを評価し、対照区に対して発病が抑制された割合を防除価として求めた。
[実施例1]
BIT(0.8mM)、又はBTH(0.04mM)処理した際に、それぞれ病斑数が無処理の場合に比較して約20-30%減少して、イネいもち病抵抗性が誘導されていた。
BIT(0.8mM)、又はBTH(0.04mM)処理した際に、それぞれ病斑数が無処理の場合に比較して約20-30%減少して、イネいもち病抵抗性が誘導されていた。
アバミンを予め処理した実験区では、病斑数が約65-80%減少して、イネいもち病抵抗性が強く増強された。アバミンのみの処理でも病害抑制効果が認められたが、抵抗性誘導剤とアバミンとの併用処理は、アバミンの効果が加算されたものではなく、抵抗性誘導剤の効果を相乗的に増加させる結果であった。結果を表1に示す。
[実施例2]
BIT処理濃度を0.01、0.04、0.08、0.4、0.8 mMと変化させた結果、BITのみでは濃度依存的にイネいもち病抑制効果が認められ、病斑数の減少は最大で約50%であった。アバミン(0.1 mM)併用区では、さらにBIT処理区に対して約10-20%程度の病斑数の減少が見られた。0.08 mMのBIT処理区ではアバミン処理の効果が大きく、アバミン添加により0.4mMBIT濃度で同程度の病害抑制効果を得られた。0.4 mMBIT処理区においてもアバミン処理を併用することにより、0.8mMBIT濃度で同等の効果が見られた。結果を表2に示す。
BIT処理濃度を0.01、0.04、0.08、0.4、0.8 mMと変化させた結果、BITのみでは濃度依存的にイネいもち病抑制効果が認められ、病斑数の減少は最大で約50%であった。アバミン(0.1 mM)併用区では、さらにBIT処理区に対して約10-20%程度の病斑数の減少が見られた。0.08 mMのBIT処理区ではアバミン処理の効果が大きく、アバミン添加により0.4mMBIT濃度で同程度の病害抑制効果を得られた。0.4 mMBIT処理区においてもアバミン処理を併用することにより、0.8mMBIT濃度で同等の効果が見られた。結果を表2に示す。
[実施例3]
BIT処理濃度を0.16、0.8mMと変化させた結果、BITのみでは濃度依存的にイネいもち病抑制効果が認められ、病斑数の減少は最大で約80%であった。アバミン(0.1 mM)併用区では、BIT単独処理区に比較して病斑数の減少が見られ、抵抗性が増強されていた。0.16 mM BITと0.1 mMアバミンを併用処理した場合には、0.8 mM BITを単独処理した場合と同等のイネいもち病発病抑制効果が認められた。結果を表3に示す。
BIT処理濃度を0.16、0.8mMと変化させた結果、BITのみでは濃度依存的にイネいもち病抑制効果が認められ、病斑数の減少は最大で約80%であった。アバミン(0.1 mM)併用区では、BIT単独処理区に比較して病斑数の減少が見られ、抵抗性が増強されていた。0.16 mM BITと0.1 mMアバミンを併用処理した場合には、0.8 mM BITを単独処理した場合と同等のイネいもち病発病抑制効果が認められた。結果を表3に示す。
[実施例4]
BIT(0.1mM)処理した際には、無処理の場合に比較して病斑数が40%減少したが、アバミン507を併用して処理した実験区では、アバミン507濃度依存的に、さらに13-25%病斑数が減少した。このアバミン507の効果は濃度依存的で、アバミン507濃度1 nMにおいても十分な効果を確認できた。結果を表4に示す。
BIT(0.1mM)処理した際には、無処理の場合に比較して病斑数が40%減少したが、アバミン507を併用して処理した実験区では、アバミン507濃度依存的に、さらに13-25%病斑数が減少した。このアバミン507の効果は濃度依存的で、アバミン507濃度1 nMにおいても十分な効果を確認できた。結果を表4に示す。
本件発明は、単子葉植物の植物病害防除に利用可能である。
Claims (11)
- 前記1一般式(1)において、式中、R1はアルコキシ基;R2は置換基を有していてもよいアルコキシ基;R3はエステル基を有するアルキル基;Yは−CH=CH−;nは1;Arはハロゲンで置換されていてもよいフェニル基である、請求項1記載の単子葉植物用植物病害防除剤。
- 単子葉植物が稲であり、植物病がイネいもち病である請求項1〜3いずれか1項記載の植物病害防除剤。
- 更に抵抗性誘導剤を有効成分として含む請求項1〜4いずれか1項に記載の単子葉植物用植物病害防除剤。
- 抵抗性誘導剤が、プロベナゾール、BIT(benzisothiazole)、BTH(benzo(1,2,3)thiadiazole-7-carbothioic acid S-methyl ester)、INA(2,6-dichloroisonicotinic acid)、NCI(N-cyanomethyl-2-chloroisonicotinamide)、又はチアニジル(tiadinil)から選ばれる請求項5記載の単子葉植物用植物病害防除剤。
- 単子葉植物が稲であり、植物病がイネいもち病である請求項5又は6記載の植物病害防除剤。
- 単子葉植物のABA生合成又はABA蓄積量を減少させることによる単子葉植物を植物病害から保護する方法。
- ABA生合成又はABA蓄積量を減少させる化合物を用いてABA生合成又はABA蓄積量を減少させる請求項8記載の単子葉植物を植物病害から保護する方法。
- ABA生合成又はABA蓄積量を減少させる化合物がエポキシカテロイド・ジオキシゲナーゼ阻害剤である請求項9記載の単子葉植物を植物病害から保護する方法。
- 更に単子葉植物に抵抗性誘導剤を投与する請求項8〜10いずれか1項記載の単子葉植物を植物病害から保護する方法。
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