JP2006116807A - 音響材料およびその製造方法 - Google Patents

音響材料およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2006116807A
JP2006116807A JP2004306922A JP2004306922A JP2006116807A JP 2006116807 A JP2006116807 A JP 2006116807A JP 2004306922 A JP2004306922 A JP 2004306922A JP 2004306922 A JP2004306922 A JP 2004306922A JP 2006116807 A JP2006116807 A JP 2006116807A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lignin
derivative
acoustic
acoustic material
phenol compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004306922A
Other languages
English (en)
Inventor
Tomohiro Hasegawa
智宏 長谷川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KINOUSEI MOKUSHITSU SHINSOZAI
KINOUSEI MOKUSHITSU SHINSOZAI GIJUTSU KENKYU KUMIAI
Original Assignee
KINOUSEI MOKUSHITSU SHINSOZAI
KINOUSEI MOKUSHITSU SHINSOZAI GIJUTSU KENKYU KUMIAI
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KINOUSEI MOKUSHITSU SHINSOZAI, KINOUSEI MOKUSHITSU SHINSOZAI GIJUTSU KENKYU KUMIAI filed Critical KINOUSEI MOKUSHITSU SHINSOZAI
Priority to JP2004306922A priority Critical patent/JP2006116807A/ja
Publication of JP2006116807A publication Critical patent/JP2006116807A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Chemical And Physical Treatments For Wood And The Like (AREA)
  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Stringed Musical Instruments (AREA)
  • Diaphragms For Electromechanical Transducers (AREA)

Abstract

【課題】木材に代替できる優れた音響特性を有する音響材料を提供する。
【解決手段】セルロース系材料に、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合したビスアリールプロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体を複合化して音響材料とする。こうすることで、優れた音響特性を有する音響材料が得られる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、音響材料、音響装置および音響材料の製造方法に関する。
従来、例えば、楽器の響板などの音響材料としては木材が使用されてきており、また、スピーカーにおける振動板などの音響材料としてはパルプ材などの繊維材料が使用されてきている。さらに、近年においては、これらに替わる材料として、木材に熱処理を施したものやウレタンフォームと繊維材料との複合材料や木質材料に対する樹脂の添加が試みられている(特許文献1,2,3)。
特開2003−145510号公報 特開2001−306062号公報 特開2001−225302号公報
楽器などに用いられる響板は、楽器の種類などに応じて木材の樹種が限定されているなど、厳しい音響特性が要求されている。また、スピーカーなどにおける振動板についてもより高い性能が求められるようになってきている。さらに、防音や吸音などにあってはまた異なる音響特性が要求される。このように音響材料は広い範囲で異なる音響特性が求められている。しかしながら、木材は、その樹種などによってこれらの各種の音響特性を充足しうるものである。一方、天然木材は、天然ゆえに不均一であるとともに湿度などの影響を受けやすく加工や保存などに困難性を伴うことがあった。
そこで、本発明では、木材に代替できる優れた音響特性を有する音響材料を提供することを目的の1つとする。また、本発明では、形状加工が容易な音響材料を提供することを他の目的の1つとする。さらに、本発明では、音響特性を調整可能な音響材料を提供することを他の目的の1つとする。さらに、本発明では、音響材料の製造方法を提供することを他の1つの目的とし、さらに、音響材料用組成物を提供することをさらに他の1つの目的とする。
本発明者らは、リグニンからフェノール化合物によって誘導されるリグニンのフェノール誘導体とセルロース系材料とを複合化した材料が優れた音響特性を有することを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
本発明の1つの形態によれば、
音響材料であって、
セルロースおよび/またはヘミセルロースからなるセルロース系材料を含有するセルロース系材料と、
該基材に複合化された、以下の(a)〜(d);
(a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体、
(b)(a)のリグニン誘導体の前記1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体、
(c)(a)のリグニン誘導体のフェノール性水酸基のオルト位および/またはパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体
(d)(c)の架橋性誘導体の前記架橋性反応基が架橋された架橋体
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と、
を備える、音響材料が提供される。この形態においては、前記リグニン誘導体は前記(a)のリグノフェノール誘導体であることが好ましく、また、前記セルロース系材料は、その集合体、その交絡体およびその緻密体のいずれかであることも好ましい態様である。さらに、前記セルロース系材料は、シート状あるいはシート状以外の三次元形状を有する成形体であることも好ましい態様である。
また、これらの音響材料においては、前記リグニン誘導体は、前記音響材料の全体にほぼ均一に含まれていてもよいし、前記音響材料の主として表面側に含まれていてもよい。また、上記いずれかの音響材料は、響板あるいは振動材であることが好ましい態様であり、また、吸音材であることも好ましい態様である。
また、本発明の他の1つの形態によれば、上記のいずれかの音響材料を少なくとも一部に備える、楽器が提供され、さらに、上記のいずれかに記載の音響材料を少なくとも一部に備える、スピーカー用音響部材が提供される。
さらに、本発明の他の1つの形態によれば、
音響材料用組成物であって、
以下の(a)〜(c);
(a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体、
(b)(a)のリグニン誘導体の前記1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体、
(c)(a)のリグニン誘導体のフェノール性水酸基のオルト位および/またはパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体を含有する、組成物が提供される。この組成物は、フェノール化合物を含有することが好ましく、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含有することが好ましく、さらに酸を含有することも好ましい。
さらにまた、本発明の他の1つの形態によれば、音響材料成形用組成物であって、
セルロース系材料と、
以下の(a)〜(c);
(a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体、
(b)(a)のリグニン誘導体の前記1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体、
(c)(a)のリグニン誘導体のフェノール性水酸基のオルト位および/またはパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と、
を含有する、組成物が提供される。
さらに、本発明のほかの1つの形態によれば、
音響材料の製造方法であって、
セルロースおよび/またはヘミセルロースを含有するセルロース系材料に、
以下の(a)〜(c);
(a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体、
(d)(a)のリグニン誘導体の前記1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体、
(c)(a)のリグニン誘導体のフェノール性水酸基のオルト位および/またはパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体
からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体を供給して、該リグニン誘導体と前記セルロース系材料とを複合化する工程を備える、
音響材料の製造方法が提供される。この製造方法においては、前記複合化工程で用いる前記セルロース系材料は、シート状あるいはシート状以外の三次元形状を有する成形体であることが好ましく、また、非分散状の前記セルロース系材料と前記リグニン誘導体とを複合化するとともにこれらの所定の形状を付与する工程であることも好ましい。
本発明の音響材料は、セルロース系材料と、該セルロース系材料に複合化されたリグニン誘導体とを含有している。リグニン誘導体は、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグニンのフェノールの誘導体(以下、リグノフェノール誘導体ともいう。)であり、さらに、このリグノフェノール誘導体のアシル誘導体、カルボニル誘導体、クマラン誘導体、および架橋性誘導体である。本発明の音響材料は、典型的なリグノセルロース系材料である木材と組成的に類似しているのみならず、その音響特性も優れており、しかも木材に類似した音響特性を有している。従来、木材の音響特性は、その物理的構造、すなわち、多孔質でかつ樹幹方向に長く伸びる細胞壁を備える異方性の大きな構造に由来するものとされているが、天然リグニンから誘導したリグニン誘導体をセルロース系材料と複合化したものであっても、木材に類似した音響特性を発現することおよび優れた音響特性を発現することは当業者の予想を越えたものであった。本音響材料は、このようにセルロース系材料とリグニン誘導体とから構成されるため、加工性に優れるとともに、その組成の調製や基材の選択により音響特性を調整することも容易である。
以下、本発明の各種の形態について、本発明の音響材料について説明するとともに、本音響材料の製造方法、音響材料用組成物、および本音響材料を備えるスピーカー装置や楽器等について説明する。
(セルロース系材料)
本発明の音響材料の一構成成分であるセルロース系材料、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含有するセルロース系材料を含有している。セルロース系材料としては特に限定しないが、樹木や草本あるいは廃棄物としてのリグノセルロース系材料から得られる繊維材料、粉末材料、不定形材料等を挙げることができる。また、セルロース系材料として、リグノセルロース系材料を含んでいてもよく、木質ファイバーやチップなども用いることができる。すなわち、リグノセルロース系材料にさらにリグニン誘導体を複合化してもよい。
セルロース系材料は、音響材料において、それ自体で二次元あるいは三次元構築物を構成するセルロース系基材として用いることもできる。特に、繊維状等のセルロース系材料は、交絡体または積層体や集合体などの緻密質体として、粒子状のセルロース系材料は、緻密質体として二次元あるいは三次元構築物を構成できる。ここで、緻密質体とは熱圧等により緻密化されたものの他、天然のリグノセルロース構造を有するものを包含している。セルロース系基材は、人工的なものでも天然に存在するものであってもよい。セルロース系基材の具体的な形態としては、例えば、いわゆるパルプ紙などのシート状体(交絡体)のほか、各種チップやファイバーからなるボード、草本類の交絡体や編成体などの人工的な構築物を用いることもできる。また、木材のシート状体や板状体、その他の三次元形状を有する切削加工体など天然の構築物を用いることができる。
このようなセルロース系基材は、セルロース系繊維の交絡体や集合体など表面あるいは内部に空隙を有する多孔質体であると、リグニン誘導体をこれらの空隙に保持しやすい。なお、セルロース系基材の形態は、用途に応じて選択され、スピーカーユニットのコーン等には交絡体や緻密質体を用いることができ、楽器の響板等には、緻密体や、緻密体と交絡体との複合体などを用いることができる。
なお、このような各種セルロース系材料は、その形態にかかわらず加圧処理や加熱処理などを施したものを用いることができる。
なお、音響材料には、セルロース系材料とともに、レーヨンなどのセルロース系高分子材料、乳酸系高分子材料、アルコール系高分子材料、アクリル系高分子材料など、天然由来あるいは人工的に得られた高分子材料を含めることもできる。これらの高分子材料にも、廃棄物由来の材料を包含している。ガラス系材料としては、各種ガラス、強化ガラスなどを材料とすることができる。
(リグニン誘導体)
本音響材料のもう一方の構成成分であるリグニン誘導体は、リグノフェノール誘導体およびその二次誘導体である。まず、リグノフェノール誘導体について説明する。リグノフェノール誘導体は、リグノセルロース系材料などのリグニン含有材料からフェノール化合物によって誘導される誘導体であって、以下の(a)及び(b)のユニットの双方あるいはいずれかを有する化合物である。
(a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位の炭素原子が結合した第1の1,1−ビスアリールプロパンユニット(第1のユニット)
(b)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してパラ位の炭素原子が結合した第2の1,1−ビスアリールプロパンユニット(第2のユニット)
リグノフェノール誘導体は、この他、フェノール化合物が導入されていないアリールプロパンユニットも備えることができる。以下、リグノフェノール誘導体を得るのに好ましい製造プロセスについて説明し、次いで、化学的物理的特性について説明する。
リグノフェノール誘導体は、通常、所定のフェノール化合物により親和(溶媒和)されたリグニン含有材料、好ましくはリグノセルロース系材料を酸に接触させることにより得ることができる。なお、リグノフェノール誘導体に関するより一般的な記載及びその製造プロセスについては、既に、特開平2−23701号公報、特開平9−278904号公報及び国際公開WO99/14223号公報、2001−64494号公報、2001−261839号公報、2001−131201号公報、2001−34233号公報において記載されている(これらの特許文献に記載の内容は全て引用により本明細書中に取り込まれるものである。)。
リグノフェノール誘導体の製造プロセスは、リグノセルロース系材料を予めフェノール化合物で溶媒和、あるいはフェノール化合物をリグノセルロース系材料に収着させた上で、フェノール化合物で溶媒和されたリグノセルロース系材料を酸と接触させることにより、リグノセルロースの複合状態を緩和させ、同時に、天然リグニンのアリールプロパンユニットのC1位(ベンジル位)に選択的に前記フェノール化合物をグラフティングさせて、リグノフェノール誘導体を生成させ、同時にリグノセルロース系材料をセルロースとリグノフェノール誘導体とに分離できる方法でもある。リグノフェノール誘導体は、それ自体、リグノセルロース系材料などのリグニン含有材料から反応、分離して得られるリグニン由来のポリマーの混合物であり、天然のあるいは天然由来の(天然のリグニンに加工を施したもの)リグニン含有材料から取得される場合には、得られるポリマーにおける導入フェノール化合物の分子量やフェノール化合物の導入量は、反応条件のほか原料となるリグニンの種類等によっても変動する。
(リグニン含有材料)
本発明で用いる「リグニン含有材料」は、アリールプロパンユニットを有するリグニン由来の構造を維持していればよい。具体的には、木質化した材料、主として木材である各種材料、例えば、木粉、チップなどのリグノセルロース系材料の他、廃材、端材、古紙などの木材資源に付随する農産廃棄物や工業廃棄物を挙げることができる。また用いる木材の種類としては、針葉樹、広葉樹など任意の種類のものを使用するこができる。さらに、リグニン含有材料としては、各種草本植物、それに関連する農産廃棄物や工業廃棄物なども使用できる。また、パルプ製造の過程で副生するリグニンの変性物も用いることができる。
(フェノール化合物)
フェノール化合物としては、1価のフェノール化合物、2価のフェノール化合物、または3価のフェノール化合物などを用いることができる。
1価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいフェノール、1以上の置換基を有していてもよいナフトール、1以上の置換基を有していてもよいアントロール、1以上の置換基を有していてもよいアントロキノンオールなどが挙げられる。2価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいカテコール、1以上の置換基を有していてもよいレゾルシノール、1以上の置換基を有していてもよいヒドロキノンなどが挙げられる。3価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいピロガロールなどが挙げられる。
本発明においては1価のフェノール化合物、2価のフェノール化合物及び3価のフェノール化合物のうち、1種あるいは2種以上を用いることができるが、好ましくは1価のフェノールを用いる。1価から3価のフェノール化合物が有していてもよい置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは、電子吸引性の基(ハロゲン原子など)以外の基であり、例えば、炭素数が1〜4、好ましくは炭素数が1〜3の低級アルキル基含有置換基である。低級アルキル基含有置換基としては、例えば、低級アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、低級アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)である。また、アリール基(フェニル基など)の芳香族系の置換基を有していてもよい。また、水酸基含有置換基であってもよい。
これらのフェノール化合物が、そのフェノール性水酸基に対してオルト位あるいはパラ位の炭素原子においてリグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素に結合することにより、1,1−ビス(アリール)プロパンユニットが形成されることになる。したがって、少なくとも1つの導入サイトを確保するには、オルト位及びパラ位のうち、少なくともひとつの位置に置換基を有していないことが好ましい。フェノール化合物のフェノール性水酸基のオルト位炭素原子が前記C1位に結合して形成されたユニットが前記第1のユニットであり、フェノール化合物のフェノール性水酸基のパラ位炭素原子が前記C1位に結合して形成されたユニットを前記第2のユニットである。
以上のことから、本発明では、無置換フェノール誘導体の他、少なくとも一つの無置換のオルト位あるいはパラ位を有する各種置換形態のフェノール化合物の1種あるいは2種以上を適宜選択して用いることができる。第1のユニットと第2のユニットとは、例えば、後述するアルカリ処理工程において異なる機能を発現する。オルト位結合ユニットは、緩和なアルカリ処理により導入されたフェノール化合物におけるフェノール性水酸基を消失させるとともにアリールクマラン構造を当該ユニットにおいて生成し、強いアルカリ処理によりアリール基移動に伴って分子形態が変動する。いずれにおいても、オルト位結合ユニットは、アルカリ処理による効率的なリグノフェノール誘導体の低分子化に寄与する。
一方、第2のユニットは、アルカリ処理によりリグニン誘導体におけるアリールクマラン構造やその後の分子形態変動を生じず、当該ユニット部位における低分子化には寄与しない。したがって、アルカリ処理耐性を付与する機能を有するといえる。また、リグノフェノール誘導体において、使用するフェノール化合物の種類を選択することにより、得られるリグノフェノール誘導体への後段の二次誘導体化工程での架橋性官能基の導入頻度を調節し、結果として架橋性体(プレポリマー)の架橋反応性を制御することができる。
後述するが、架橋性基の導入部位は、フェノール性水酸基に対してオルト及びパラ位である。また、導入フェノール化合物のリグニンのフェニルプロパン単位への導入サイトもフェノール性水酸基に対してオルト位あるいはパラ位である。したがって、導入フェノール化合物における、フェノール性水酸基に対するオルト位及びパラ位(最大3サイト)への置換基の導入態様により、導入フェノール化合物への架橋性官能基の導入サイトや導入量を制御し、ひいてはリグニン母体側への導入量も制御できる。
このように、反応性の異なる架橋性基導入部位を有するフェノール化合物や、導入部位数がないか、あるいは異なるフェノール化合物を1種あるいは2種以上組み合わせてリグニンに導入することにより、後で架橋性基の導入時に、架橋性基の導入部位や数を制御することができ、結果として、架橋性体を架橋して得られる架橋体の架橋密度も制御することができる。
また、第1のユニットを有するリグノフェノール誘導体を得るには、少なくとも一つのオルト位(好ましくは全てのオルト位)に置換基を有していないフェノール化合物を用いる。また、少なくとも一つのオルト位(2位あるいは6位)が置換基を有さず、パラ位(4位)に置換基を有するフェノール化合物(典型的には、2,4位置換1価フェノール誘導体)が好ましい。最も好ましくは、全てのオルト位が置換基を有さず、パラ位に置換基を有するフェノール化合物(典型的には、4位置換1価フェノール化合物)である。したがって、4位置換フェノール化合物及び2,4位置換フェノール化合物を1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
第2のユニットを有するリグノフェノール誘導体を得るには、パラ位に置換基を有していないフェノール化合物(典型的には、2位(あるいは6位)置換1価フェノール化合物)が好ましく、より好ましくは、同時に、オルト位(好ましくは、全てのオルト位)に置換基を有するフェノール化合物(典型的には2,6位置換1価フェノール化合物)を用いる。すなわち、2位(あるいは6位)置換フェノール化合物及び2、6位置換フェノールのうち1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
フェノール誘導体の好ましい具体例としては、o−クレゾール、p−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2−メトキシフェノール(Guaiacol)、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールなどが挙げられる。p−クレゾールを用いることにより、高い導入効率を得ることができる。
なお、本プロセスにおいて使用するフェノール化合物の種類を選択することにより、得られるリグノフェノール誘導体の特性を制御でき、ひいては、これをさらに二次的に加工して得られる二次誘導体の特性を制御できる。例えば、フェノール化合物の種類を選択することにより、フェノール化合物の導入量、水酸基当量などを調整することができる。これらを調整することで、例えば、架橋性体における架橋性部位、架橋体における架橋密度等が調整することができる。また、フェノール性水酸基の量や位置により、リグノフェノール誘導体の架橋性体を用いて架橋させたときの架橋構造が異なるため、フェノール化合物の種類や導入量によって架橋構造等を調整することができる。したがって、リグノフェノール誘導体およびその二次誘導体を含むリグニン誘導体を用いることで、音響材料の機械的強度、耐水性、音響特性等各種の特性を制御できる。
なお、フェノール化合物の導入頻度は、導入しようとするフェノール化合物の置換基の有無、位置、大きさ等によって変動する。したがって、導入頻度を調節することができる。特に、置換基の大きさによる立体障害によって導入頻度を容易に調節することができる。置換基を利用して導入位置などを制御しようとする場合、置換基として低級アルキル基を利用すると、炭素数や分枝形態によって容易に導入頻度を調節できる。置換基をメチル基とすると、導入頻度を高く維持して導入位置を制御できる。
(酸)
本プロセスにおいて、リグニン含有材料に添加する酸としては、特に限定しないが、セルロースを膨潤させる作用を有していることが好ましい。例えば、65重量%以上の硫酸(好ましくは、72重量%の硫酸)、85重量%以上のリン酸、38重量%以上の塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを挙げることができる。好ましい酸は、65重量%以上(より好ましくは72重量%以上)の硫酸、85重量%以上(より好ましくは95重量%以上)のリン酸、トリフルオロ酢酸、又はギ酸である。
(リグノフェノール誘導体の製造プロセス)
リグニン含有材料中のリグニンを、リグノフェノール誘導体に変換し、分離する方法としては以下の3つの方法を挙げることができる。なお、これらの方法に限定されるものではなく、また、これらの方法を適宜変更して用いることもできる。また、以下に示すリグノフェノール誘導体の製造プロセスにおいては、リグノセルロース系材料を原料として用いて説明するが、セルロースなど多く含まないあるいはほとんど含まないリグニン含有材料一般に適用することができる。なお、以下に示す各種の粗精製画分における炭水化物は、原料としてリグノセルロース系材料を主体とする場合において含まれるものである。
第1の方法は、特開平2−233701号公報に記載されている方法である。例えば、木粉等のリグノセルロース系材料に液体状のフェノール化合物(クレゾール等)を浸透させ、リグニンをフェノール誘導体により溶媒和させ、次に、リグノセルロース系材料に濃酸(一例として72%硫酸や濃リン酸など)を添加して、セルロース成分を溶解する。この方法によると、リグニンを溶媒和したフェノール化合物と、セルロース成分を溶解した濃酸とが2相分離系を形成する。フェノール化合物により溶媒和されたリグニンは、フェノール化合物相が濃酸相と接触する界面においてのみ、酸と接触され、この際生じたリグニンの高反応サイト(α位)のカチオンが、フェノール誘導体により攻撃される。この結果、リグニンの芳香族環のα位炭素にフェノール誘導体が導入されたリグノフェノール誘導体がフェノール化合物相に生成される。
リグノフェノール誘導体は、このフェノール化合物相から抽出することができる。リグノフェノール誘導体の抽出は、例えば、フェノール化合物相を、大過剰のエチルエーテルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解し、アセトン不溶画分を遠心分離により除去し、アセトン可溶画分を濃縮し、さらにこのアセトン可溶画分を、大過剰のジエチルエーテルに滴下し、沈殿を集めうえ、この沈殿から溶媒留去した後、五酸化リン入りデシケータ中で乾燥することにより行う。
なお、こうして得られたリグノフェノール誘導体の精製物のほか、この第1の方法において得られるリグノフェノール誘導体を含有する各種の画分を、リグノフェノール誘導体に替えて用いることもできる。例えば、上記工程におけるフェノール化合物相(液相)、このフェノール化合物相(フェノール化合物相と水相との双方(全反応液)であってもよい。)に過剰の水を投入して得られる不溶画分、この不溶画分の水洗浄後(脱酸)、その乾燥画分(これらの不溶画分を第1の粗精製画分という。)などである。さらに、この第1の粗精製画分に、アセトンあるいはアルコールなどのリグノフェノール親和性溶媒を加えてリグノフェノール誘導体をこれらの溶媒に抽出することもでき、このときの不溶画分に、リグノフェノール誘導体が炭水化物などと共に含まれることもある(このような不溶画分を、第2の粗精製画分という)。したがって、このような不溶画分も、リグノフェノール誘導体に替えて用いることができる。これらの各種の不溶画分には、リグノフェノール誘導体とともに炭水化物や完全に洗浄しない限り酸が含まれうる。
第2の方法は、リグノセルロース系材料に、固体状あるいは液体状のフェノール化合物を溶解した溶媒(例えば、エタノールあるいはアセトン)を浸透させた後、その溶媒を留去することによってリグノセルロース系材料にフェノール化合物を収着させる(フェノール化合物の収着工程)。次に、このリグノセルロース系材料に濃酸を添加してセルロース成分を溶解する。この結果、第1の方法と同様、フェノール化合物により溶媒和されたリグニンは、フェノール化合物と濃酸とが接触する界面において、酸と接触し、フェノール化合物により攻撃されて、リグノフェノール誘導体が生成される。リグノフェノール誘導体は、この濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入して得られる不溶画分に含まれており、この不溶画分をリグノフェノール誘導体を上記したようにアセトンやアルコールなどのリグノフェノール誘導体親和性溶媒やエーテルを用いて分画し精製することでリグノフェノール誘導体の生成物を得ることができる。
第1の方法と同様、こうして得られたリグノフェノール誘導体の精製物のほか、上記の水不溶画分、あるいはこの不溶画分の水洗浄後(脱酸)画分および/または乾燥画分(以下、これらの各種画分を第3の粗精製画分という。)をリグノフェノール誘導体に替えて用いることができる。さらに、上記水不溶画分をリグノフェノール誘導体親和性溶媒に抽出したときの不溶画分にもリグノフェノール誘導体が含まれうるため、該不溶区分(以下、第4の粗精製画分という。)をリグノフェノール誘導体に替えて用いることもできる。
なお、第2の方法の別法として、濃酸処理によって生成したリグノフェノール誘導体を液体フェノール化合物にて抽出することができる。このようなリグノフェノール誘導体のフェノール化合物液は、第1の方法において得られる液体フェノール化合物相と同様にして取り扱うことができる。
また、第3の方法として、特開2001−131201号公報に記載されるリグノフェノール誘導体の製造方法がある。この方法は、フェノール誘導体とリグノセルロース系物質及び酸を含む混合物と不活性低沸点疎水性有機溶媒とを混合し、得られた混合物を遠心分離により3層に分離し、3層のうちの中間層を回収する工程を含むことを特徴とするものである。また、予め、前記疎水性有機溶媒に溶解させたフェノール誘導体とリグノセルロース系物質とを混合して、過剰量の有機溶媒とフェノール誘導体とを除去し、残存した混合物と酸とを混合することによって、リグノセルロース系物質と酸とを反応させ、遠心分離して得られる中間層を回収する工程を含むことを特徴としている。このような中間層は、リグノフェノールを高濃度に有している。この中間層を、水で洗浄して、水不溶画分を回収することを適数回繰り返して脱酸することができる。得られた水不溶画分は、乾燥後、アセトンでリグノフェノール誘導体を抽出することができる。アセトン相は、濃縮乾固し、大過剰のジエチルエーテルに滴下し、不溶画分をさらにジエチルエーテルで洗浄し、溶媒を留去することにより、精製することができる。
こうしてリグニン含有材料から得られるリグノフェノール誘導体は、上記したように第1および/または第2のユニットを備えるほか、以下の性質を有することができる。ただし、本発明におけるリグノフェノール誘導体を、以下の性質を有するものに限定する趣旨ではない。
(1)重量平均分子量が約2000〜約20000程度である。重量平均分子量は、カラムクロマトグラフィー法によりポリスチレン換算にて測定することができる。
(2)分子内に共役系をほとんど有さずその色調は極めて淡色である。典型的には淡いピンク系白色粉末である。
(3)針葉樹由来で約150℃〜180℃、広葉樹由来で約130℃〜160℃に固−液相転移点を有する。
(4)メタノール、エタノール、アセトン、ジオキサン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(以下、これらを、リグノフェノール誘導体親和性溶媒ともいう。)、アルカリ水溶液などに容易に溶解する。
なお、リグノフェノール誘導体として、リグノフェノール誘導体が含まれたリグノフェノール系成形体から回収されたリグノフェノール誘導体を用いることもできる。かかるリグノフェノール系成形体から、アセトン、エタノール、メタノール、ジオキサン等上記のリグノフェノール誘導体親和性溶媒、これらそれぞれと水の混合液、アルカリ溶液(アルカリ水溶液を含む)から選ばれた1種類以上の溶媒に浸すことにより、この溶媒中に、リグノフェノール誘導体は回収される。このリグノフェノール誘導体は、再利用可能である。この方法によると、リグノフェノール誘導体が繰り返し再利用することができ、資源の有効利用につながる。
(二次誘導体)
また、本発明において用いるリグニン誘導体は、このリグノフェノール誘導体に対してさらに化学的な修飾を行って得られる二次誘導体を含んでいる。二次誘導体としては、リグノフェノール誘導体の架橋性誘導体およびクマラン誘導体が挙げられる。
架橋性誘導体は、リグニン誘導体のフェノール性水酸基のオルト位および/またはパラ位に架橋性反応基を有する誘導体である。架橋性基を導入する反応は、例えば、リグノフェノール誘導体を、アルカリ条件下で架橋性基形成化合物と反応させて、リグノフェノール誘導体中のフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性基を導入することにより実施することができる。すなわち、本誘導体は、用いるリグノフェノール誘導体のフェノール性水酸基を解離しうる状態下において、リグノフェノール誘導体に架橋性基形成化合物を混合して反応させることによって得られる。リグノフェノール誘導体のフェノール性水酸基が解離しうる状態は、通常、適当なアルカリ溶液中において形成される。使用するアルカリの種類、濃度及び溶媒はリグノフェノール誘導体のフェノール性水酸基が解離するものであれば、特に限定されない。例えば、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を使用できる。
このような条件下において、架橋性基はフェノール性水酸基のオルト位又はパラ位に導入されるので、用いたフェノール化合物の種類や組み合わせによって、架橋性基の導入位置がおおよそ決定される。すなわち、オルト位及びパラ位において2置換されている場合には、導入フェノール核には架橋性基は導入されず、リグニン母体側のフェノール性芳香核に導入されることになる。リグニン母体側のフェノール性芳香核は、主としてリグノフェノール誘導体のポリマー末端に存在するため、主としてポリマー末端に架橋性基が導入されたプレポリマーが得られる。また、オルト位及びパラ位において1置換以下の場合には、導入フェノール核とリグニン母体のフェノール性芳香核に架橋性基が導入されることになる。したがって、ポリマー鎖の端末の他、その長さにわたって架橋性基が導入され、多官能性のプレポリマーが得られる。
リグノフェノール誘導体に導入する架橋性基の種類は特に限定されない。リグニン母体側の芳香核、あるいは、導入フェノール化合物の芳香核に導入可能なものであればよい。架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシバレルアルデヒド基等を挙げることができる。架橋性基形成化合物としては、求電子性化合物であって、結合後に架橋性基を形成するかあるいは保持する化合物である。たとえば、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、グルタルアルデヒド類などを挙げることができる。導入効率等を考慮すると、ホルムアルデヒドを用いることが好ましい。
リグノフェノール誘導体と架橋性基形成化合物とを反応させるのに際して、架橋性基を効率よく導入する観点からは、架橋性基形成化合物をリグノフェノール誘導体中のリグニンのアリールプロパン単位の芳香核及び/又は導入フェノール核の1モル倍以上添加することが好ましい。より好ましくは、10モル倍以上であり、さらに好ましくは20モル倍以上である。
次に、アルカリ液中にリグノフェノール誘導体と架橋性基形成化合物が存在する状態で、必要によりこの液を加熱することにより、架橋性基がフェノール核に導入される。加熱条件は、架橋性基が導入される限り、特に限定されないが、40〜100℃が好ましい。40℃未満では架橋性基形成化合物の反応率が非常に低く好ましくなく、100℃より高いと架橋性基形成化合物自身の反応などリグニンへの架橋性基導入以外の副反応が活発化するので好ましくない。より好ましくは、50〜80℃であり、例えば約60℃が特に好ましい。反応は、反応液を冷却等することにより停止し、適当な濃度の塩酸等により酸性化(pH2程度)し、洗浄、透析などにより酸、未反応の架橋性基形成化合物を除去する。透析後凍結乾燥などにより試料を回収する。必要であれば、五酸化二リン上で減圧乾燥する。
こうして得られる架橋性の二次誘導体は、リグノフェノール誘導体中のフェノール性水酸基に対するオルト位および/またはパラ位に架橋性基を有している。また、架橋性基の導入量は通常、0.01〜1.5モル/C9単位程度であることが多い。架橋性誘導体は、フェノール性水酸基とともに架橋性基を有するため、本複合材料の製造に際して架橋させることができ、加工性を向上させることができる。
(クマラン誘導体)
クマラン誘導体は、図1に示すように、リグノフェノール誘導体のビスアリールプロパンユニットの導入フェノール化合物をクマラン化したクマランユニットを有する誘導体である。このような誘導体は、第1のユニットを有するリグノフェノール誘導体を、アルカリと接触させることにより得ることができる。好ましくは同時に加熱する。例えば、導入したフェノール化合物のフェノール性水酸基のオルト位がC1位に導入された第1のユニットを有するリグノフェノール誘導体においては、アルカリ処理により、導入フェノール化合物のフェノキシドイオンによるC2位炭素の攻撃が生じる。すなわち、緩和なアルカリ処理では、当該導入フェノール化合物の当該フェノール性水酸基が解離し、生じたフェノキシドイオンが、C2アリールエーテル結合を構成するC2位を分子内求核反応的にアタックしてC2アリールエーテル結合を開裂させて導入フェノール核が、それが導入されたフェニルプロパン単位の一部とクマラン骨格を形成する。同時に、この分子内求核反応によりリグノフェノール誘導体は低分子化されるとともに、C2アリールエーテル結合の開裂により、当該エーテル結合により結合されていた隣のリグニンの母核にフェノール性水酸基が生成される。
当該アルカリ処理は、具体的には、リグノフェノール誘導体をアルカリ溶液に溶解し、一定時間反応させ、必要であれば、加熱することにより行う。この処理に用いることのできるアルカリ溶液は、リグノフェノール誘導体中の導入フェノール化合物のフェノール性水酸基を解離させることができるものであればよく、特に、アルカリの種類及び濃度、溶媒の種類等は限定されない。アルカリ下において前記フェノール性水酸基の解離が生じれば、隣接基関与効果により、クマラン構造が形成されるからである。例えば、p−クレゾールを導入したリグノフェノール誘導体では、水酸化ナトリウム溶液を用いることができる。例えば、アルカリ溶液のアルカリ濃度範囲は0.5〜2Nとし、処理時間は1〜5時間程度とすることができる。また、アルカリ溶液中のリグノフェノール誘導体は、加熱されることにより、容易にクマラン構造を発現する。加熱に際しての、温度、圧力等の条件は、特に限定することなく設定することができる。例えば、アルカリ溶液を100℃以上(例えば、140℃程度)に加熱することによりリグノフェノール誘導体の低分子化を達成することができる。さらに、アルカリ溶液を加圧下においてその沸点以上に加熱してリグノフェノール誘導体の架橋体の低分子化を行ってもよい。
同じアルカリ溶液で同濃度においては、加熱温度が120℃〜140℃の範囲では、加熱温度が高い程、C2−アリールエーテル結合の開裂による低分子化が促進されることがわかっている。アルカリ処理における加熱温度は、特に限定されないが、必要に応じて80℃以上200℃以下で行うことができる。80℃を大きく下回ると、反応が十分に進行せず、200℃を大きく越えると好ましくない副反応が派生しやすくなるからである。
クラマン構造の形成とそれに伴う低分子化のための処理の好ましい一例としては、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ溶液として用い、オートクレーブ内140℃で加熱時間60分という条件を挙げることができる。特に、この処理条件は、p−クレゾール又は2,4−ジメチルフェノールで誘導体化したリグノフェノール誘導体に好ましく用いられる。
なお、リグノフェノール誘導体に上記した架橋性基の導入とクマラン化とを施して、架橋性基とクマランユニットを有する誘導体も製造でき、該誘導体も二次誘導体に包含される。また、リグノフェノール誘導体のほか架橋性誘導体、クマラン誘導体等の各種の二次誘導体には、アシル基やカルボキシル基などの各種官能基を置換基等として導入することができ、このような官能基が導入された誘導体も二次誘導体に包含される。音響材料においては、これらの二次誘導体は、単独あるいはこれらを組み合わせて用いることができる。
(音響材料)
本音響材料は、セルロース系材料とリグニン誘導体とが複合化されて形成されている。複合化形態は特に限定しないが、リグニン誘導体のマトリックスにセルロース系材料が分散状に存在している形態や、セルロース系材料のマトリックスにリグニン誘導体が分散状に存在している形態や、両者がともに連続相を形成している形態であってもよいが、典型的には、二次元あるいは三次元構造を有するセルロース系基材にリグニン誘導体が担持された複合形態を有している。
セルロース系材料とリグニン誘導体とを複合化するには、各種の方法を採用することができるが、(1)シート状やシート状以外の三次元形状などの所定形状を有し非分散状のセルロース系材料にリグニン誘導体を供給して複合化させる方法と、(2)分散状のセルロース系材料とリグニン誘導体とを複合化してこれらの所定の形状を付与する方法と、がある。
(1)所定形状のセルロース系材料にリグニン誘導体を複合化する場合
セルロース系材料が交絡状態や集合状態などを構成することで所定形状を有するセルロース系基材に対してリグニン誘導体を付与するには、リグニン誘導体を溶解したリグニン誘導体溶液にセルロース系基材を浸漬して含浸させ、あるいは該溶液をセルロース系基材にスプレーや刷毛により塗布して含浸させた後、リグニン誘導体溶液の溶媒を留去する方法を採用できる。溶媒留去することで、リグニン誘導体がセルロース系基材に担持される。また、溶媒留去に伴ってあるいは溶媒留去後に、必要に応じて加熱および/または加圧することができる。また、リグニン誘導体を一旦担持したセルロース系基材を加熱および/または加圧して最終形状を付与することもできる。リグニン誘導体は、溶媒留去に伴い、セルロース系基材表面に移行する傾向がある。したがって、たとえば、ジクロロメタン(沸点39.8℃、20℃蒸気圧356mmHg)、アセトン(沸点56.5℃、20℃蒸気圧180mmHg)、テトラヒドロフラン(沸点66.0℃、20℃蒸気圧176mmHg)等沸点が100℃以下の低沸点のリグニン誘導体の溶解溶剤を用いると、セルロース系基材の表面側に高濃度のリグニン誘導体を担持する音響材料を得ることができる。また、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124.3℃、20℃蒸気圧6.2mmHg)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点134.8℃、20℃蒸気圧3.8mmHg)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171.2℃、20℃蒸気圧0.6mmHg)、エチレングリコール(沸点197.6℃)等沸点が100℃超の高沸点の溶解溶媒を用いると、セルロース系基材の全体にリグニン誘導体がおおよそ均一に担持された音響材料を得ることができる。このような高沸点溶媒としては、沸点が120℃以上であることが好ましい。また、溶解性の観点からは、グリコールあるいはリコールモノアルキルエーテルを用いることが好ましい。なお、高沸点溶媒を用いた場合の基材に対するリグニン誘導体の担持効果は、セルロース系基材だけでなく、これらのリグニン誘導体の溶解溶媒に溶解しない基材であれば特に限定されることなく発揮される。
また、例えば、シート状あるいは板状のセルロース系基材を、リグニン誘導体を介して積層することもできる。具体的には、セルロース系基材の全体あるいはその表層側にリグニン誘導体を担持させたものを積層して熱圧してもよいし、さらにこれらの間にリグニン誘導体のコーティング層を形成したうえで積層してもよい。
このような方法によれば、セルロース系材料を主体とする二次元あるいは三次元構造物であるセルロース系基材に対してリグニン誘導体が担持された形態を容易に構築できる。
(2)分散状のセルロース系材料とリグニン誘導体とを複合化する場合
粉末状等など分散状のセルロース系材料に対してリグニン誘導体を付与するには、乾式法と湿式法との2種類がある。乾式法としては、セルロース系繊維などを含む分散状のセルロース系材料と粉状のリグニン誘導体とを乾式にて混合し、この混合物をそのまま加熱および/または加圧して成形するか、あるいは、一旦仮成形して、その後、加熱および/または加圧して成形する方法を採ることができる。仮成形は、加熱および/または加圧によることもできるし、セルロース系材料の形状(繊維状等)によってはニードルパンチングやエアフェルティングを採用することができる。
また、湿式法としては、分散状のセルロース系材料をリグニン誘導体とを適当な溶媒中で混合し、この混合物から溶媒を留去して分散状のセルロース系材料にリグニン誘導体を付着させ、溶媒留去に伴ってあるいはその後、リグニン誘導体と分散状のセルロース系材料を加熱および/または加圧して成形する方法を採ることができる。また、分散状のセルロース系材料とリグニン誘導体とを溶媒中で混合する際、抄造により該混合物をシート状などとしたうえで溶媒を留去して、リグニン誘導体を付着させたシート状等の音響材料を得ることもできる。さらに、こうして得られたシート状体を加熱および/または加圧して強固な成形体とすることもできるし、該シート状体を積層した状態で加熱および/または加圧してもよい。
なお、上記製造方法(2)において、分散状のセルロース系材料を用いる場合、形状付与のための成形方法としては、型成形、圧縮成形、抄造等、従来分散状セルロース系材料の成形に用いられている各種の成形方法を用いることができる。また、湿式法においては、リグニン誘導体は、溶媒に溶解する形態であっても、また溶媒に不溶な粒子状の形態であってもいずれであってもよい。
これらの音響材料の製造方法(1)および(2)において、リグニン誘導体を懸濁あるいは溶解した溶媒の留去にあたっては、加圧を伴わせることにより、溶媒留去の過程で水分が可塑剤として作用し、同時にリグニン誘導体とセルロース系材料との間の水素結合やセルロース系材料間の水素結合による結合力を発生させることができる。
また、これらの音響材料の製造方法(1)および(2)において、形状付与のために行う加熱は、リグニン誘導体の軟化温度以上に加熱することが好ましい。この結果、耐水性が向上された成形体を得ることができる。また、切削加工などの後加工が容易に実施できる強度および一体性に優れた成形体を得ることができる。
また、加熱および/または加圧は、セルロース系材料とリグニン誘導体とに水蒸気を伴って実施することもできる。加熱工程で、水蒸気が発生すれば、当該水蒸気が成形体内における水素結合のさらなる発現に寄与することができ、強固な成形体を得ることができる。なお、水は、加熱および/または加圧前のセルロース系材料とリグニン誘導体とのにおいても本来的に存在するため、密閉された空間内において熱圧して水蒸気を発生させるか、あるいは外部から水蒸気を供給するようにする。好ましくは、外部から水蒸気がされた密閉空間内において熱圧する。
リグニン誘導体として、第1のユニットを有するリグノフェノール誘導体を用いた場合には、音響材料をリグノフェノール誘導体が親和性を有する溶媒を供給することで、音響材料におけるリグニン誘導体とセルロース系材料との複合構造を分解し、それぞれの材料を回収できる。また、アルカリ処理することで、音響材料中のリグノフェノール誘導体をクマラン誘導体化するとともに低分子化してリグニン成分を回収することができる。
また、リグニン誘導体として架橋性誘導体を用いた場合には、架橋反応を生じさせるように加熱する工程を設けることで、音響材料内においてリグニン誘導体の三次元架橋構造が形成されて、耐水性、強度および寸法安定性に優れる音響材料を得ることができる。このような架橋のための加熱工程は、形状付与工程に付随して行ってもよいし、独立して行ってもよい。
リグニン誘導体として、リグニン誘導体の他、フェノール化合物、酸、及び炭水化物のいずれか1つ以上を含有する粗精製画分を用いる場合には、それぞれ得られる音響材料の強度が一層向上されることになる。リグニン誘導体とフェノール化合物とを含有する粗精製画分を用いる場合には、加熱によって、リグニンとフェノール化合物との間で縮合反応が生じ、成形体内で3次元高次構造体が形成されることによるものと推測される。さらに、リグニン誘導体とフェノール化合物と酸とを含有する粗精製画分を用いる場合には、リグニン誘導体と、フェノール化合物と酸との共存により、リグニンがリグノフェノール誘導体様化合物に変換されて、これにより、成形体の強度が向上されるようになる。さらに、リグニン誘導体と炭水化物とを含有する粗精製画分を用いる場合には、特にセルロースやリグノセルロースなどの親水性高分子を含有するセルロース系材料との親和性が向上される点において強度が向上されるようになる。
なお、こうした音響材料の製造に用いられるリグニン誘導体は、音響材料製造用として、あるいは音響効果を向上させるための材料として有用である。したがって、リグニン誘導体やリグニン誘導体を含む粗精製画分を含有する組成物、あるいはリグニン誘導体や粗精製画分を溶媒に懸濁させあるいは溶解した液剤組成物は、セルロース系材料に対してその音響材料製造用剤、音響特性向上剤として用いることができる。また、これらの組成物は、必要に応じ、浸漬用、塗布あるいはスプレーなどによる含浸用、リグニン誘導体を含有するコーティング層を形成するコーティング用として用いることができる。
また、上記各種の製法において用いられるリグニン誘導体や粗精製画分と分散状のセルロース系材料とを含有する混合物(組成物)は、音響材料成形用組成物、音響材料の補修用組成物あるいは音響特性の良好な表層や内層を形成するするコーティング層形成用組成物として用いることもできる。
音響材料においては、セルロース系材料に対するリグニン誘導体の重量比は、セルロース系材料100重量部に対してリグニン誘導体が0.1重量部以上50重量部以下であることが好ましい。この範囲であるとリグニン誘導体による結合力と音響特性の向上効果との双方が得られるからである。
こうして得られた音響材料は、セルロース系材料とリグニン誘導体とが複合化されることによって、セルロース系材料の音響特性が向上され、内部損失や伝播速度が速いという木材の音響特性に近似化される。また、本音響材料は、良好な成形性、加工性を有するとともに、セルロース系材料とリグニン誘導体との組成等を調整することで音響特性を調整することも可能な新たな材料となっている。
したがって、本音響材料は、コーン、センターキャップ、サブコーンなどのスピーカー用音響部材として用いることができるとともに、平板型スピーカーの音響板、他の音源を減衰する消音板、特定波長の音響を透過又遮断する音響フィルタなどに用いることができる。
さらに、バイオリン、ビオラ、チェロ、ダブルベース等の擦弦楽器の響板や部材、アコースティックギター、エレキギター、ハープ、琴、大正琴、チェンバロ等の撥弦楽器の響板や部材、ピアノ等の打弦楽器の響板や部材、マリンバやシロホン等の音板、ドラムや和太鼓等の胴部、部材、ウッドブロックや拍子木等の本体、木管楽器等の本体や部材、さらにすべての楽器を構成する木製製品にすべて本音響材料を用いることができる。
さらに、本音響材料は、外内壁等を構成する壁材やパネル、天井材の一部あるいは全体を構成する遮音材、防音材、吸音材に用いることができる。
なお、リグニン誘導体や粗精製画分を含有する組成物は、セルロース系材料と複合化されて音響特性に優れた表層や内層を形成することができるため、このようにセルロース系材料に対して部分的に音響材料相を備える音響材料も上記した各種用途に用いることができる。
さらに、リグニン誘導体や粗精製画分とともにセルロース系材料とを含有する組成物によれば、セルロース系材料の他異種材料からなる基材表面や内部にセルロース系材料とリグニン誘導体とを複合化した音響材料相を形成することができ、このような音響材料も上記した各種用途に用いることができる。
以下、本発明を具体的に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(リグノフェノール誘導体の調製)
アセトン脱脂したスギ木粉1kgをp−クレゾール500gをアセトン7Lに溶解して調製した液を浸透させ、その後、溶媒を留去することによってp−クレゾール収着(3mol/C9ユニット)を調製した。この収着木粉全量1.5kg(木粉1kg+クレゾール0.5kg)に対して72%硫酸5Lを加えて、30℃で1時間攪拌後、硫酸量の10倍量の水に分散させ、以降、水による洗浄を繰り返して、上澄み液が中性になるまで洗浄した。得られた沈殿物を40℃で乾燥し、粗リグノフェノール誘導体(ここでは、粗リグノクレゾール)を得た。粗リグノクレゾールは、さらに、真空乾燥(50mmHg、72時間)することにより乾燥した。
乾燥後の粗リグノクレゾール500gを、アセトン3Lにて2時間攪拌抽出し、さらにラジオライト#900 250gを加えて1時間攪拌した。ポリプロピレン製ろ布(保留粒子径役5μm)にラジオライト#900 300gを敷きつめて、このろ過助材を含んだアセトン抽出液をろ過した。ろ過助材を含むろ布上の残渣物にアセトンを加えて攪拌し、ろ過することを2回繰り返し、ろ液を合わせ、最終的に5Lにした。濃縮したアセトン抽出液を、50Lのジイソプロピルエーテル(IPE)に滴下し、生じた沈殿物を前記ポリプロピレン製ろ布にてろ過して沈殿物をろ取した。ろ布上の沈殿物をIPE:水混液(1:1=vol:vol)1.8Lにてろ過し、次いで沈殿物をさらに水で洗浄するという一連の洗浄操作を、3回繰り返した。洗浄した固形物を40℃にて210時間減圧乾燥し、精製物を得た。
(リグノフェノール誘導体を担持させたセルロース系基材をコーンに用いたスピーカーの作製)
FOSTEX社10cmフルレンジスピーカー(FE103E)のコーン紙(バナナコーンパルプ製)に対して、調製したリグノフェノール誘導体20wt%エチレングリコールモノメチルエーテル溶液をスプレーにて全体的に供給して含浸させるとともに、部分的に刷毛を利用して塗布して含浸させた。なお、コーン紙にリグノフェノール誘導体溶液を供給するのにあたり、コーン紙以外の部分にはマスキングを行った。コーン紙に対するリグノフェノール誘導体溶液の全供給量は約2mlであった。その後、一晩ドラフト内にて風乾し、さらに、40℃で24時間送風乾燥機を用いて溶媒を留去することで音響材料を作製した。この音響材料においては、セルロース系材料100重量部に対してリグノフェノール誘導体は約25重量部担持されていた。なお、対照として、同量の溶媒を同様の方法にて同様のコーン紙に供給して風乾した。コーン紙に対してこれらの処理を行ったスピーカーユニットを、FOSTEX社のバスレフ式スピーカーボックス(E102)に納めてスピーカーを完成させた。
(音響官能試験)
音響官能試験は、上記で作製した実施例のスピーカーユニット(スピーカー2個)と対照例のスピーカーユニット(スピーカー2個)にそれぞれ切り替え可能に接続したアンプ(ARCAM製A65Plus)およびCDプレーヤー(ARCAM製CD62T)を準備した。19名の被験者に対して、これらのシステムを用いてクラシック音楽5曲の各冒頭から30秒程度を、実施例のスピーカーか対照例のスピーカーかを判別不能な状態で実施例のスピーカーセットおよび対照例のスピーカーセットのそれぞれ同等の条件で視聴してもらい、いずれのスピーカーユニットでの音が好ましいかを試験した。結果を表1に示す。
Figure 2006116807
表1に示すように、実施例のスピーカーユニットによる音響を好ましいと感じた被験者は5曲の平均で87.4%であった。また、多くの被験者が、実施例のスピーカーユニットについて、臨場感(広がり感)がある、音響が三次元的である、残響が長いなどの効果を感じるとともに、より音が小さいと感じた。以上のことから、リグノフェノール誘導体を担持させたセルロース系基材をコーンとして有する実施例のスピーカーユニットは音の伝搬速度が速く内部損失が大きいという木材特有の音響特性を反映していることがわかった。
クマラン誘導体が備えるクマランユニットを示す図である。

Claims (18)

  1. 音響材料であって、
    セルロースおよび/またはヘミセルロースを含有するセルロース系材料と、
    該セルロース系材料と複合化された、以下の(a)〜(d);
    (a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体、
    (b)(a)のリグニン誘導体の前記1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体、
    (c)(a)のリグニン誘導体のフェノール性水酸基のオルト位および/またはパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体
    (d)(c)の架橋性誘導体の前記架橋性反応基が架橋された架橋体
    からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と、
    を備える、音響材料。
  2. 前記リグニン誘導体は前記(a)のリグニン誘導体である、請求項1に記載の音響材料。
  3. 前記セルロース系材料は、その集合体、その交絡体およびその緻密体のいずれかである、請求項1または2に記載の音響材料。
  4. 前記セルロース系材料は、シート状あるいはシート状以外の三次元形状を有する成形体である、請求項1〜3のいずれかに記載の音響材料。
  5. 前記リグニン誘導体は、前記音響材料に対して均一に存在されている、請求項1〜4のいずれかに記載の音響材料。
  6. 前記リグニン誘導体は、前記音響材料の主として表面側に存在されている、請求項1〜4のいずれかに記載の音響材料。
  7. 音響振動材である、請求項1〜6のいずれかに記載の音響材料。
  8. 遮音材である、請求項1〜6のいずれかに記載の音響材料。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の音響材料を少なくとも一部に備える、楽器。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載の音響材料を少なくとも一部に備える、スピーカー用音響部材。
  11. 音響材料用組成物であって、
    以下の(a)〜(c);
    (a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体、
    (b)(a)のリグニン誘導体の前記1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体、
    (c)(a)のリグニン誘導体のフェノール性水酸基のオルト位および/またはパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体
    からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体を含有する、組成物。
  12. さらに、フェノール化合物を含有する、請求項11に記載の組成物。
  13. さらに、セルロースおよび/またはヘミセルロースを含有する、請求項11または12に記載の組成物。
  14. さらに、酸を含有する、請求項11〜13のいずれかに記載の組成物。
  15. 音響材料成形用組成物であって、
    セルロース系材料と、
    以下の(a)〜(c);
    (a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体、
    (b)(a)のリグニン誘導体の前記1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体、
    (c)(a)のリグニン誘導体のフェノール性水酸基のオルト位および/またはパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体
    からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体と、
    を含有する、組成物。
  16. 音響材料の製造方法であって、
    セルロースおよび/またはヘミセルロースからなるセルロース系材料に、
    以下の(a)〜(c);
    (a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグニンのフェノール誘導体、
    (d)(a)のリグニン誘導体の前記1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体、
    (c)(a)のリグニン誘導体のフェノール性水酸基のオルト位および/またはパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体
    からなる群から選択される1種あるいは2種以上のリグニン誘導体を供給して、該リグニン誘導体と前記セルロース系材料とを複合化する工程を備える、
    音響材料の製造方法。
  17. 前記複合化工程で用いる前記セルロース系材料は、シート状あるいはシート状以外の三次元形状を有する成形体である、請求項16に記載の音響材料の製造方法。
  18. 前記複合化工程は、非分散状の前記セルロース系材料と前記リグニン誘導体とを複合化するとともにこれらの所定の形状を付与する工程である、請求項16に記載の音響材料の製造方法。
JP2004306922A 2004-10-21 2004-10-21 音響材料およびその製造方法 Pending JP2006116807A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004306922A JP2006116807A (ja) 2004-10-21 2004-10-21 音響材料およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004306922A JP2006116807A (ja) 2004-10-21 2004-10-21 音響材料およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2006116807A true JP2006116807A (ja) 2006-05-11

Family

ID=36535154

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004306922A Pending JP2006116807A (ja) 2004-10-21 2004-10-21 音響材料およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2006116807A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008153923A (ja) * 2006-12-18 2008-07-03 Matsushita Electric Ind Co Ltd スピーカ用振動板およびこれを用いたスピーカならびにこのスピーカを用いた電子機器および装置
JP2009278309A (ja) * 2008-05-14 2009-11-26 Panasonic Corp スピーカ用振動板およびこれを用いたスピーカ
JP2016521301A (ja) * 2013-04-09 2016-07-21 ウーペーエム−キュンメネ コーポレイションUPM−Kymmene Corporation 音響特性を有する複合体、複合体の製造、複合体を含む部品、部品の製造、およびそれらの使用

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008153923A (ja) * 2006-12-18 2008-07-03 Matsushita Electric Ind Co Ltd スピーカ用振動板およびこれを用いたスピーカならびにこのスピーカを用いた電子機器および装置
JP2009278309A (ja) * 2008-05-14 2009-11-26 Panasonic Corp スピーカ用振動板およびこれを用いたスピーカ
JP2016521301A (ja) * 2013-04-09 2016-07-21 ウーペーエム−キュンメネ コーポレイションUPM−Kymmene Corporation 音響特性を有する複合体、複合体の製造、複合体を含む部品、部品の製造、およびそれらの使用
US9928821B2 (en) 2013-04-09 2018-03-27 Upm-Kymmene Corporation Composite having acoustic properties, manufacturing the composite, a component comprising a composite, manufacturing the component and uses thereof

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Nasir et al. Recent development in binderless fiber-board fabrication from agricultural residues: A review
JP4177553B2 (ja) 新規なリグニン誘導体、そのリグニン誘導体を用いた成形体及びその製造方法
Rashid et al. Enhanced lignin extraction from different species of oil palm biomass: Kinetics and optimization of extraction conditions
Faruk et al. Lignin in polymer composites
Evtuguin et al. Comprehensive study on the chemical structure of dioxane lignin from plantation Eucalyptus globulus wood
JP4015035B2 (ja) 吸水材料及びその製造方法
NO20081463L (no) Silan inneholdende bindere for komposittmaterialer
Mingliu et al. Characterization of lignins isolated from alkali treated prehydrolysate of corn stover
JP2006116807A (ja) 音響材料およびその製造方法
CN1753573A (zh) 扬声器用振动板及其形成方法
JP3299110B2 (ja) リグノフェノール系成形体、その製造方法、リグノフェノール系成形体の処理方法
Huzyan et al. Ecofriendly Wood Adhesives from Date Palm Fronds Lignin for Plywood.
Huang et al. Lignin-enhanced wet strength of cellulose-based materials: a sustainable approach
JP2001342353A (ja) リグノフェノール誘導体とセルロース成分とから成るリグノセルロース系組成物
JP5155501B2 (ja) リグニン系リサイクル材料
Wu et al. Plasma treatment induced chemical changes of alkali lignin to enhance the performances of lignin-phenol-formaldehyde resin adhesive
CN111844306A (zh) 改质木材、改质木材的制造方法以及乐器
Zahari et al. Enhanced performance of cellulose from palm oil empty fruit bunch (EFB) via acetylation and silylation
Chen et al. Demethylation of lignin with mild conditions and preparation of green adhesives to reduce formaldehyde emissions and health risks
Jang et al. All-Lignin-Based Thermoset Foams via Azide–Alkyne Cycloaddition and Their Fire Resistance after Oxidation
Yu et al. Modification with carboxymethylation-activated alkali lignin/glutaraldehyde hybrid modifier to improve physical and mechanical properties of fast-growing wood
CN111117274B (zh) 可吸附烟气的汽车遮物帘用纤维板及其制备方法
JP2003276005A (ja) リグノフェノール誘導体で処理した成形圧縮外皮構造繊維パネル
JP4465433B2 (ja) リグニン系マトリックスを有するガラス複合材料
JP3749688B2 (ja) リグノフェノール誘導体と成形材料との複合化

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20061120

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20061127

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070106

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070919

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071016

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080318