JP2006116620A - 潤滑性非晶質炭素系被膜がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製超硬ブローチ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】オージェ分光分析装置で測定して、W:5〜20原子%、Ti:5〜20原子%、窒素:0.5〜18原子%、を含有し、残りが炭素と不可避不純物からなる組成を有すると共に、透過型電子顕微鏡による観察で、炭素系非晶質体の素地に、結晶質炭窒化チタン系化合物の微粒が分散分布した組織を示し、かつ1〜3μmの平均層厚を有する潤滑性非晶質炭素系被膜を蒸着形成してなる表面被覆超硬合金製ブローチ。
【選択図】図1
Description
上記のブローチ工法は、図3に示される通りブローチの中央部に形成された、下方の荒刃から上方の仕上げ刃へ順次変化する切刃部が、ブローチの下方動作により工作物を少しづつ切削して所定寸法に仕上げるものである。
(a)図2(a)および(b)にそれぞれ概略平面図および概略正面図で示される蒸着装置、すなわち装置中央部に設けた回転テーブルを挟んで、一方側にカソード電極(蒸発源)としてTiターゲットを設けたスパッタリング装置、他方側にカソード電極(蒸発源)としてWCターゲットを設けたスパッタリング装置を備え、かつ前記スパッタリング装置のそれぞれに、電磁コイルを設けてマグネトロンスパッタリング装置とした蒸着装置を用い、前記装置内の回転テーブル上に、これの中心軸から半径方向に所定距離離れた位置にリング状に上記の従来超硬ブローチ(以下、超硬ブローチ本体という)を装着し、前記電磁コイルにより磁場を形成して、装置中央部の超硬ブローチ本体装着部における磁束密度を100〜300G(ガウス)とし、前記装置内の加熱温度を300〜500℃とした状態で、かつ装置内に反応ガスとして、例えばC2H2などの炭化水素と窒素とArを、望ましくはC2H2流量:25〜100sccm、窒素流量:200〜300sccm、Ar流量:150〜250sccmの割合で導入して、反応雰囲気を、例えば1PaのC2H2の分解ガスと窒素とArの混合ガスとすると共に、前記両マグネトロンスパッタリング装置のWCターゲットのカソード電極(蒸発源)には、例えば出力:1〜3kW(周波数:40kHz)のスパッタ電力、同Tiターゲットには、例えば出力:3〜8kW(周波数:40kHz)のスパッタ電力を同時に印加した条件で、前記超硬ブローチ本体の表面に非晶質炭素系被膜を形成すると、この結果形成された非晶質炭素系被膜は、これの透過型電子顕微鏡による組織観察結果(倍率:250万倍)が図1(実施例の本発明被覆超硬ブローチ3の非晶質炭素系被膜を示す)に模式図で例示される通り、炭素系非晶質体の素地に、最大径で10nm(ナノメーター)以下の結晶質炭窒化チタン系化合物の微粒[以下、「結晶質Ti(C,N)系化合物微粒」で示す]が分散分布した組織をもつようになること。
W:5〜20原子%、
Ti:5〜20原子%、
窒素:0.5〜18原子%、
を含有し、残りが炭素と不可避不純物からなる組成を有するようにすると、この結果形成された非晶質炭素系被膜は、素地の炭素系非晶質体によってすぐれた潤滑性を具備し、かつ前記炭素系非晶質体からなる素地における結晶質Ti(C,N)系微粒の分散分布効果、および前記電磁コイルによる磁場成膜に際しての細粒化効果で、硬さが著しく向上すると共に、W成分の含有によって被膜強度も一段と向上するようになり、したがって、この非晶質炭素系被膜(以下、潤滑性非晶質炭素系被膜という)を形成してなる被覆超硬ブローチは、高速加工でも切刃部にチッピング(微少欠け)の発生なく、一段とすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
(a)マグネトロンスパッタリング装置にて、カソード電極(蒸発源)としてTiターゲットを用い、窒素とArの混合ガス、または炭化水素の分解ガスと窒素とArの混合ガスからなる反応雰囲気で磁場中成膜された、TiN層およびTiCN層のいずれか、または両方の積層からなり、かつ0.1〜3μmの平均層厚を有する密着接合層を介して、
(b)同じくマグネトロンスパッタリング装置にて、カソード電極(蒸発源)として、WCターゲットとTiターゲットを用い、炭化水素の分解ガスと窒素とArの混合ガスからなる反応雰囲気で磁場中成膜され、オージェ分光分析装置で測定して、
W:5〜20原子%、
Ti:5〜20原子%、
窒素:0.5〜18原子%、
を含有し、残りが炭素と不可避不純物からなる組成を有すると共に、透過型電子顕微鏡による観察で、炭素系非晶質体の素地に、結晶質Ti(C,N)系化合物微粒が分散分布した組織を示し、かつ1〜3μmの平均層厚を有する潤滑性非晶質炭素系被膜を蒸着形成してなる、特に高速ブローチ加工で潤滑性非晶質炭素系被膜がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬ブローチに特徴を有するものである。
(a)密着接合層の平均層厚
TiN層およびTiCN層のいずれか、または両方の積層からなる密着接合層は、超硬ブローチ本体と潤滑性非晶質炭素系被膜の間にあって、これら両者と強固に密着接合し、さらに前記超硬ブローチ本体に対する密着接合性は磁場中成膜によって一層向上したものになるが、その平均層厚が0.1μm未満では、所望のすぐれた密着接合性を確保することができず、一方その平均層厚が3μmを越えると、特に高速ブローチ加工で熱塑性変形を起こし易くなり、これが潤滑性非晶質炭素系被膜におけるチッピング発生の原因となることから、その平均層厚が0.1〜3μmと定めた。
W成分は、上記の潤滑性非晶質炭素系被膜の素地を形成して、被膜の強度を向上させる作用があるが、その含有量が5原子%未満では所望の高強度を確保することができず、これが摩耗促進の原因となり、一方その含有量が20原子%を越えると潤滑性が急激に低下し、切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その含有量を5〜20原子%と定めた。
Ti成分とN成分、さらにC(炭素)成分は磁場成膜下で結合して、被膜中に結晶質のTi(C,N)系化合物微粒として存在し、被膜の硬さを著しく向上させ、耐摩耗性を向上させる作用があるが、その含有量がTi成分が5原子%未満、およびN成分が0.5原子%未満になると、被膜中にTi(C,N)系微粒として存在する割合が少なくなり過ぎて、所望の高硬度を確保することができず、一方その含有量がTi成分が20原子%、およびN成分が18原子%を越えると強度および潤滑性が急激に低下し、切刃部にチッピングが発生するようになることから、その含有量をそれぞれTi:5〜20原子%、N:0.5〜18原子%と定めた。
その平均層厚が1μm未満では、所望の潤滑性および耐摩耗性効果を確保することができず、一方その平均層厚が3μmを越えると、切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜3μmと定めた。
(a)まず、装置内を真空排気して0.01Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を200℃に加熱した後、Arガスを装置内に導入して0.5Paの圧力のAr雰囲気とし、この状態で前記回転テーブル上で自転しながら回転する前記超硬ブローチ本体に−800Vのバイアス電圧を印加して前記超硬ブローチ本体表面を20分間Arガスボンバード洗浄し、
(b)ついで、前記蒸着装置の対向配置の両マグネトロンスパッタリング装置の電磁コイルに、いずれも電圧:50V、電流:10Aの条件で印加して、前記超硬ブローチ本体の装着部における磁束密度を140G(ガウス)とした磁場を形成すると共に、前記蒸着装置内の加熱温度を400℃とした状態で、反応ガスとして窒素とArを、窒素流量:300sccm、Ar流量:200sccmの割合で導入して、1Paの窒素とArの混合ガスからなる反応雰囲気、または反応ガスとしてC2H2と窒素とArを、C2H2流量:50sccm、窒素流量:300sccm、Ar流量:230sccmの割合で導入して、1PaのC2H2の分解ガスと窒素とArの混合ガスからなる反応雰囲気とし、Tiターゲットのカソード電極(蒸発源)には出力:12kW(周波数:40kHz)のスパッタ電力を印加し、一方上記超硬ブローチ本体には、−100Vのバイアス電圧を印加した条件でグロー放電を発生させることにより、前記超硬ブローチ本体の表面に表3,4に示される目標層厚のTiN層およびTiCN層のいずれか、または両方の積層からなる密着接合層を形成し、
(c)さらに、前記電磁コイルに印加する条件を、電圧:50〜100V、電流:10〜20Aの範囲内の所定の値として、上記超硬ブローチ本体の装着部における磁束密度を100〜300G(ガウス)の範囲内の所定の値とし、前記蒸着装置内の加熱温度は400℃、上記超硬ブローチ本体のバイアス電圧は−100Vとしたままで、前記蒸着装置内に反応ガスとして、C2H2(炭化水素)と窒素とArを、C2H2流量:25〜100sccm、窒素流量:200〜300sccm、Ar流量:150〜250sccmの範囲内の所定の流量で導入して、反応雰囲気を、1PaのC2H2の分解ガスと窒素とArの混合ガスとすると共に、前記両マグネトロンスパッタリング装置のWCターゲットのカソード電極(蒸発源)には、例えば出力:0.5〜3.5kW(周波数:40kHz)の範囲内の所定のスパッタ電力、同Tiターゲットには、出力:2.5〜8.5kW(周波数:40kHz)の範囲内の所定のスパッタ電力を同時に印加した条件で、同じく表2,3に示される目標組成および目標層厚の潤滑性非晶質炭素系被膜を蒸着形成することにより、本発明被覆超硬ブローチ1〜10および比較被覆超硬ブローチ1〜12をそれぞれ製造した。
なお、比較被覆超硬ブローチ1〜12は、構成成分のうちの少なくともいずれかの成分含有量がこの発明の範囲から外れた潤滑性非晶質炭素系被膜を形成したものである。
(a)工作物の材質:質量%で、Ti−0.15%Pbの組成を有するTi合金(JIS・TB340PbH)、
引き抜き速度:40m/min.
加工数:5000個
の条件(引き抜き条件Aという)での工作物中心孔の高速穴加工(通常の引き抜き速度は25m/min.)、
(b)工作物の材質:純Al(JIS・A1050)、
引き抜き速度:90m/min.
加工数:15000個、
の条件(引き抜き条件Bという)での工作物中心孔の高速穴加工(通常の引き抜き速度は70m/min.)、
を行い、加工後の荒刃および仕上げ刃における最大逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表2,3に示した。
上述のように、この発明の被覆超硬ブローチは、通常の条件でのブローチ加工は勿論のこと、特に各種の工作物のブローチ加工を、高速条件で行なった場合にも、すぐれた耐摩耗性を発揮するものであるから、ブローチ加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金で構成されたブローチ本体の表面に、
(a)マグネトロンスパッタリング装置にて、カソード電極(蒸発源)としてTiターゲットを用い、窒素とArの混合ガス、または炭化水素の分解ガスと窒素とArの混合ガスからなる反応雰囲気で磁場中成膜された、窒化チタン層および炭窒化チタン層のいずれか、または両方の積層からなり、かつ0.1〜3μmの平均層厚を有する密着接合層を介して、
(b)マグネトロンスパッタリング装置にて、カソード電極(蒸発源)として、炭化タングステンターゲットとTiターゲットを用い、炭化水素の分解ガスと窒素とArの混合ガスからなる反応雰囲気で磁場中成膜され、オージェ分光分析装置で測定して、
W:5〜20原子%、
Ti:5〜20原子%、
窒素:0.5〜18原子%、
を含有し、残りが炭素と不可避不純物からなる組成を有すると共に、透過型電子顕微鏡による観察で、炭素系非晶質体の素地に、結晶質炭窒化チタン系化合物の微粒が分散分布した組織を示し、かつ1〜3μmの平均層厚を有する潤滑性非晶質炭素系被膜を蒸着形成してなる、潤滑性非晶質炭素系被膜がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製ブローチ。
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