JP2006112690A - スターリング機関用再生器及びこれを用いるスターリング機関 - Google Patents

スターリング機関用再生器及びこれを用いるスターリング機関 Download PDF

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Abstract

【課題】 フィルムを巻回して構成され、フィルムにエンボス加工して形成した突起により作動ガスの流動する間隙を形成するスターリング機関用再生器において、突起同士の重なり合いを積極的に防止し、再生器の効率を向上させる。
【解決手段】 スターリング機関1はピストン12及びディスプレーサ13により圧縮空間45と膨脹空間46の間で作動ガスを行き来させる。圧縮空間45と膨脹空間46の間に配置される再生器70は、エンボス加工により形成した突起72を片面に点在させてなるフィルム71a、71bを2枚重ねにして円筒形に巻回し、作動ガスの流動する間隙を多層にわたって形成したものである。フィルム71a、71bの突起72は、隣接間隙層の突起72に重なることがないように互いに位置をずらして配置されている。
【選択図】 図2

Description

本発明はスターリング機関用再生器及びこれを用いるスターリング機関に関する。
スターリング機関は、フロンでなくヘリウム、水素、窒素などを作動ガスとして用いるので、オゾン層の破壊を招くことのない熱機関として注目を集めている。冷凍機として用いるスターリング機関では、リニアモータなどの動力源によりピストンを往復運動させ、このピストンに対しディスプレーサを、所定の位相差をもって同期往復運動させる。ピストンとディスプレーサは圧縮空間と膨脹空間の間で作動ガスを行き来させ、スターリングサイクルを形成する。圧縮空間では等温圧縮変化に基いて作動ガスの温度が上昇し、膨脹空間では等温膨脹変化に基づいて作動ガスの温度が低下する。これにより、圧縮空間の温度は上昇し、膨張空間の温度は下降する。圧縮空間(高温空間)の温度を高温伝熱ヘッドを通じて放熱すれば、低温伝熱ヘッドを通じて外部の熱を膨脹空間(低温空間)に吸収することが可能になる。
スターリング機関では、圧縮空間と膨脹空間の間に配置された再生器が重要な役割を果たす。再生器は、圧縮空間から流れ出た高温の作動ガスから熱を受け取り、膨脹空間から流れ出た低温の作動ガスにその熱を伝えるという、蓄熱手段としての役割を担うものである。再生器には、蓄熱量が大きいことの他、作動ガスとの間で熱を素速く授受できることと、作動ガスの流動を極力妨げないことが求められる。
上記要件を満たすものとして、特許文献1、2にはフィルムを円筒形に巻回して形成する再生器構造が開示されている。この構造によれば、薄いフィルムを何重にも巻くため、体積に対する伝熱面積の比率が高まる。作動ガスの通り道を確保するため、フィルムの片面に微小な突起を多数点在させ、フィルム間に突起の高さ分の間隙を形成している。
特開2003−21412号公報(第4頁、図2、3) 特開2003−65620号公報(第3、4頁、図1、2)
片面に多数の突起を点在させたフィルムを巻回してスターリング機関用再生器とするにあたっては、まずフィルムに突起を形成する必要がある。薄いフィルムに突起を形成する手法としては、特許文献1に開示され、また特許文献2にも一部触れられているように、ニードルプレスなどによるエンボス加工が現実的である。しかしながらエンボス加工で突起を形成したフィルムを巻回して再生器を製作する場合、突起の裏側に生じた窪みが問題を引き起こすことがある。
図9に、特許文献1に開示された従来の再生器を製作する手法の一例を示す。まず、円筒形の治具100を用意する。この治具100を芯として帯状のフィルム101を巻回する。フィルム101の片面にはエンボス加工により形成した突起102がマトリックス状に点在している。
円筒形に巻回されたフィルム101の断面の一部を図10の拡大断面図に示す。突起102はフィルム101にニードルピンを押し当て、フィルム101を塑性変型させて形成したものであり、円錐形をなしている。突起102の裏側にはニードルピンの先端形状を写した円錐形の窪み103が形成されている。フィルム101を巻いて行くと、図10に破線で円囲みして示すように、突起102の上に窪み103が重なる箇所が生じることがある。
突起102に窪み103が重なると、窪み103の中に突起102が入り込む。円錐形の突起102に円錐形の窪み103というのは成形しやすい形状ではあるが、反面、互いに重なりやすい形状でもある。窪み103の中に突起102が入り込むと、フィルム101の下になった部分と上になった部分が接近し、間隙が非常に狭いものになってしまう。このような箇所は作動ガスが通りにくく、伝熱量が低下する。この現象が多数の箇所で発生すると、再生器の蓄熱量が低下するばかりか、作動ガスの流動も妨げられ、スターリング機関の能力あるいは運転効率が大きく損なわれる。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、フィルムを巻回して構成され、フィルムにエンボス加工して形成した突起により作動ガスの流動する間隙を形成するスターリング機関用再生器において、突起同士の重なり合いを極力防止し、再生器の効率を向上させることを目的とする。
(1)上記目的を達成するために本発明は、圧縮空間と膨脹空間を行き来する作動ガスから熱を回収するスターリング機関用再生器において、エンボス加工により形成した突起を片面に点在させてなるフィルムを2枚重ねにして円筒形に巻回し、作動ガスの流動する間隙を多層にわたって形成するとともに、前記2枚のフィルムの突起は、隣接間隙層の突起に重なることがないように互いに位置をずらして配置したことを特徴としている。
この構成によると、2枚のフィルムの間で突起の重なりが生じないので、その突起がエンボス加工により形成され、裏面に窪みを有するものであるにも関わらず、突起が窪みに入り込むことがない。従ってフィルム間の間隙が狭くなった箇所が生じず、間隙の幅はどこでも均一になる。これにより、作動ガスの流動性、また作動ガスと再生器の間の伝熱能力が設計通りに確保し、再生器の効率を向上させることができる。
(2)また本発明では、上記構成のスターリング機関用再生器において、前記フィルムに突起をマトリックス状に形成するとともに、2枚のフィルムの間で突起マトリックスを円筒形の軸線方向にずらすことを特徴としている。
この構成によると、2枚のフィルムの間で突起マトリックスがずれているという関係はその箇所での再生器中心からの半径に関わらず一定である。従って、フィルムの巻き数、フィルムの厚さ、突起の高さ、あるいは再生器の内外径の値などの条件がどのようであろうとも、突起が窪みに入り込むという現象を常に防止できる。
(3)また本発明は、圧縮空間と膨脹空間を行き来する作動ガスから熱を回収するスターリング機関用再生器において、エンボス加工により形成した突起を両面に点在させてなるフィルムと、突起のないフィルムとを重ねて円筒形に巻回し、作動ガスの流動する間隙を多層にわたって形成することを特徴としている。
この構成によると、突起を両面に有するフィルムの間に突起も窪みもないフィルムが挟まる形になるので、突起が窪みに入り込むという現象を常に防止できる。
(4)また本発明は、圧縮空間と膨脹空間を行き来する作動ガスから熱を回収するスターリング機関用再生器において、エンボス加工により形成した突起を片面に点在させてなる1枚のフィルムを円筒形に巻回し、作動ガスの流動する間隙を多層にわたって形成するとともに、前記突起をマトリックス状に配置し、且つこの突起マトリックスはフィルムの長さ方向に対しスキュー角を持たせて、隣接間隙層同士の突起の重なりを回避することを特徴としている。
この構成によると、突起マトリックスに持たせたスキュー角により、フィルムを1回巻く毎に突起の位置がずれて行く。従って突起が窪みに入り込む現象を防止できる。また、1本のフィルムを巻いて行くだけで良いので、巻き取り装置の構成を簡略化できるとともに、原材料であるフィルムの調達及び巻き取り装置へのセッティングが楽である。
(5)また本発明は、上記のいずれかの再生器を用いて圧縮空間と膨脹空間を行き来する作動ガスから熱を回収するスターリング機関であることを特徴としている。
この構成によると、効率の良い再生器を使用することにより、スターリング機関の能力あるいは運転効率を向上させることができる。
本発明によると、エンボス加工により多数の突起を形成したフィルムを巻回して再生器を製作するに際し、突起と、その裏側に形成された窪みとの重なりが防止され、フィルム間の間隙が狭くなった箇所が生じず、間隙の幅はどこでも均一になる。これにより、作動ガスの流動性、また作動ガスと再生器の間の伝熱能力が設計通りに確保され、再生器の効率を向上させることができる。
最初に、本発明再生器の使用対象であるスターリング機関の構造を図1に基づき説明する。図1はスターリング機関の断面図である。
スターリング機関1の組立の中心となるのはシリンダ10、11である。シリンダ10、11の軸線は同一直線上に並ぶ。シリンダ10にはピストン12が挿入され、シリンダ11にはディスプレーサ13が挿入される。ピストン12及びディスプレーサ13は、スターリング機関1の運転中、ガスベアリングの仕組みによりシリンダ10、11の内壁に接触することなく往復運動する。ピストン12とディスプレーサ13は所定の位相差を備えて動く。
ピストン12の一方の端にはカップ状のマグネットホルダ14が固定される。ディスプレーサ13の一方の端からはディスプレーサ軸15が突出する。ディスプレーサ軸15はピストン12及びマグネットホルダ14を軸線方向に自由にスライドできるように貫通する。
シリンダ10はピストン12の動作領域にあたる部分の外側にリニアモータ20を保持する。リニアモータ20は、コイル21を備えた外側ヨーク22と、シリンダ10の外周面に接するように設けられた内側ヨーク23と、外側ヨーク22と内側ヨーク23の間の環状空間に挿入されたリング状のマグネット24と、外側ヨーク22を囲む管体25と、外側ヨーク22、内側ヨーク23、及び管体25を所定の位置関係に保持する合成樹脂製エンドブラケット26、27とを備える。マグネット24はマグネットホルダ14に固定されている。
マグネットホルダ14のハブの部分にはスプリング30の中心部が固定される。ディスプレーサ軸15にはスプリング31の中心部が固定される。スプリング30、31の外周部はエンドブラケット27に固定される。スプリング30、31の外周部同士の間にはスペーサ32が配置されており、これによりスプリング30、31は一定の距離を保つ。スプリング30、31は円板形の素材にスパイラル状の切り込みを入れたものであり、ディスプレーサ13をピストン12に対し所定の位相差(一般的には約90゜の位相差)をもたせて共振させる役割を果たす。
シリンダ11のうち、ディスプレーサ13の動作領域にあたる部分の外側には伝熱ヘッド40、41が配置される。伝熱ヘッド40はリング状、伝熱ヘッド41はキャップ状であって、いずれも銅や銅合金など熱伝導の良い金属からなる。伝熱ヘッド40、41は各々リング状の内部熱交換器42、43を介在させた形でシリンダ11の外側に支持される。内部熱交換器42、43はそれぞれ通気性を有し、内部を通り抜ける作動ガスの熱を伝熱ヘッド40、41に伝える。伝熱ヘッド40にはシリンダ10及び圧力容器50が連結される。
伝熱ヘッド40、シリンダ10、11、ピストン12、ディスプレーサ13、ディスプレーサ軸15、及び内部熱交換器42で囲まれる環状の空間は圧縮空間45となる。伝熱ヘッド41、シリンダ11、ディスプレーサ13、及び内部熱交換器43で囲まれる空間は膨張空間46となる。
内部熱交換器42、43の間には再生器70が配置される。再生器70の構造は後で詳述する。再生器70の外側を再生器チューブ48が包み、伝熱ヘッド40、41の間に気密通路を構成する。
リニアモータ20、シリンダ10、及びピストン12を覆う筒状の圧力容器が胴体部50を形成する。胴体部50の内部はバウンス空間51となる。
胴体部50の構造は次のようになっている。すなわち胴体部50は、伝熱ヘッド40に接合されるリング状部52と、このリング状部52に接合されるキャップ状部53とに2分割されている。リング状部52、キャップ状部53ともステンレス鋼製である。リング状部52の一端はテーパ状に絞り込まれ、伝熱ヘッド40にロウ付けされる。キャップ状部53はパイプの内面に鏡板53aを溶接した構造である。
リング状部52の他端と、これに向かい合うキャップ状部53の開口端には、フランジ形状部54、55が設けられる。フランジ形状部54、55はいずれもステンレス鋼製のリングをリング状部52とキャップ状部53に溶接して形成されるものであり、最終的にはフランジ形状部54、55を溶接して密閉状態の胴体部50を形成する。
胴体部50には、リニアモータ20に電力を供給するための端子部28と、内部に作動ガスを封入するためのパイプ50aが配置される。これらはいずれもキャップ状部53の外周面から放射方向に突出するように設けられる。
胴体部50には振動抑制装置60が取り付けられる。振動抑制装置60は、胴体部50に固定されるベース61と、ベース61に支持される板状のスプリング62と、スプリング62に支持されるマス(質量)63とから成る。
スターリング機関1は次のように動作する。リニアモータ20のコイル21に交流電流を供給すると外側ヨーク22と内側ヨーク23の間にマグネット24を貫通する磁界が発生し、マグネット24は軸方向に往復する。ピストン系(ピストン12、マグネットホルダ14、マグネット24、及びスプリング30)の総質量と、スプリング30のバネ定数とにより定まる共振周波数に一致する周波数の電力を供給することにより、ピストン系は滑らかな正弦波状の往復運動を開始する。
ディスプレーサ系(ディスプレーサ13、ディスプレーサ軸15、及びスプリング31)にあっては、その総質量と、スプリング31のバネ定数とにより定まる共振周波数がピストン12の駆動周波数に共振するよう設定する。
ピストン12の往復運動により、圧縮空間45では圧縮、膨脹が繰り返される。この圧力の変化に伴って、ディスプレーサ13も往復運動を行う。このとき、圧縮空間45と膨脹空間46との間の流動抵抗等により、ディスプレーサ13とピストン12との間には位相差が生じる。このようにしてフリーピストン構造のディスプレーサ13はピストン12と所定の位相差を有して同期して振動する。
上記の動作により、圧縮空間45と膨脹空間46との間にスターリングサイクルが形成される。圧縮空間では等温圧縮変化に基いて作動ガスの温度が上昇し、膨脹空間46では等温膨脹変化に基づいて作動ガスの温度が低下する。このため、圧縮空間45の温度は上昇し、膨張空間46の温度は下降する。
運転中に圧縮空間45と膨張空間46の間を行き来する作動ガスは、内部熱交換器42、43を通過する際に、その有する熱を内部熱交換器42、43を通じて伝熱ヘッド40、41に伝える。圧縮空間45から再生器70へ流れ込む作動ガスは高温であるため伝熱ヘッド40は加熱され、伝熱ヘッド40はウォームヘッドとなる。膨張空間46から再生器70へ流れ込む作動ガスは低温であるため伝熱ヘッド41は冷却され、伝熱ヘッド41はコールドヘッドとなる。伝熱ヘッド40より熱を大気へ放散し、伝熱ヘッド41で特定空間の温度を下げることにより、スターリング機関1は冷凍機関としての機能を果たす。
再生器70は、圧縮空間45と膨張空間46の熱を相手側の空間には伝えず、作動ガスだけを通す働きをする。圧縮空間45から内部熱交換器42を経て再生器70に入った高温の作動ガスは、再生器70を通過するときにその熱を再生器70に与え、温度が下がった状態で膨張空間46に流入する。膨張空間46から内部熱交換器43を経て再生器70に入った低温の作動ガスは、再生器70を通過するときに再生器70から熱を回収し、温度が上がった状態で圧縮空間45に流入する。すなわち再生器70は蓄熱手段としての役割を果たす。
ピストン12とディスプレーサ13が往復運動し、作動ガスが移動すると、スターリング機関1に振動が生じる。振動抑制装置60がこの振動を抑える。
続いて再生器70の構成を説明する。図2〜4に示すのはその第1実施形態である。図2はフィルム巻回手法を示す斜視図、図3はフィルムの平面図、図4は再生器の部分拡大断面図である。
第1実施形態の再生器70は、図9の従来例と同じように円筒形の治具100を芯として、エンボス加工により形成した微小な突起を片面に多数点在させたフィルムを円筒形に巻回することにより製作される。スターリング機関1は冷凍機なので、フィルムは樹脂フィルムである。ここでは、従来例のように1枚のフィルムを巻くのでなく、2枚のフィルム71a、71bを用意し、これらを2枚重ねにして巻き付け、作動ガスの流動する間隙を多層にわたって形成する。さらに、フィルム71a、71bにおける突起72の配置には次のような工夫がある。
フィルム71a、71bの幅は等しく、その片面には従来例と同様に円錐形をした突起72がマトリックス状に配置されている。マトリックスの形状は両フィルムにおいて等しく、隣接する突起72同士の間隔は、円筒形の円周方向においては間隔D1、軸線方向においては間隔D2となっている。
フィルム71a、71bにおける突起72のマトリックスは、形状は互いに等しいものの、配置は同じではない。図3に見られるように、フィルム71bにおいては、突起72の列のうち中央のものがフィルムの中心線に一致する。これに対しフィルム71aにおいては、突起72の列と列の中間部がフィルムの中心線に一致する。このため、フィルム71aと71bとでは、突起72のマトリックスが円筒形の軸線方向に間隔D2の2分の1だけずれることになる。
フィルム71a、71bを2枚重ねにして円筒形に巻回した再生器70を軸線方向に切断すると、その断面には、図4に示すように、突起72の位置がフィルム71a、71bの間の間隙層毎に規則正しくずれた構造が現れることになる。このようにフィルム71a、71bの突起72は、ある間隙層に位置する突起72が隣接する間隙層の突起72に重なるということがない。
フィルム71a、71bの間で突起72のマトリックスがずれているという関係は、再生器70の中心からの半径に関わらず一定である。従って、フィルム71a、71bの巻き数あるいは厚さ、突起72の高さ、再生器70の内外径の値などの条件がどのようであれ、突起72の裏側の円錐形の窪み73に突起72が入り込むという現象を常に防止できる。
再生器70の第2実施形態を図5、6に示す。図5はフィルム巻回手法を示す斜視図、図6は再生器の部分拡大断面図である。
第2実施形態も2枚のフィルムを重ねて巻回するのであるが、そのフィルムの構成が第1実施形態と異なる。1枚目のフィルム71cは、両面に突起72を備えている。突起72はエンボス加工により円錐形に成形されたものであり、裏面に円錐形の窪み73を備えている。この突起72を1個おきに表裏反転させる形でマトリックスを構成する。図5に黒丸で示されているのが突起72、白丸で示されているのが窪み73である。2枚目のフィルム71dはエンボス加工を施さない素材のままのフィルムであり、表面には突起も窪みもない。
フィルム71c、71dを2枚重ねにして円筒形に巻回すると、再生器70の断面は図6のようになる。突起72を有するフィルム71cの間に突起も窪みもないフィルム71dが挟まっているので、窪み73に突起72が入り込むという現象は起こり得ない。
再生器70の第3実施形態を図7、8に示す。図7はフィルムの平面図、図8は再生器の部分拡大断面図である。
第3実施形態では、エンボス加工により円錐形に成形した突起72を片面に点在させたフィルム71eを1枚だけ用い、これを円筒形に巻回する。つまり図9の従来例と同じ巻き方になる。但しこのフィルム71eは突起72の配置に特徴を有する。すなわち突起72のマトリックスは、その列方向がフィルム71eの長さ方向に対しスキュー角θを持つように配置されている。
このように突起72のマトリックスに持たせたスキュー角θにより、フィルム71eを1回巻く毎に突起の位置が円筒形の軸線方向にずれて行くことになる。従って突起72が窪み73に入り込む現象を防止できる。また、1本のフィルム71eを巻いて行くだけで良いので、巻き取り装置の構成を簡略化できるとともに、原材料であるフィルムの調達及び巻き取り装置へのセッティングが楽である。
円筒形軸線方向の特定位置にある一つの突起72から、同じ位置に来る次の突起72までの距離をLとする。この時点で再生器70の半径がrであるとき、L>2πrであるならば、上記2つの突起72が重なることにはならない。ただし距離Lだけ離れた箇所における突起72同士の円筒形軸線方向のずれΔdはΔd=D2/(L/D1)で表されるが、距離Lと比較して間隔D1、D2が小さいため、Δdは突起72の直径より小さくなる。そのため、不完全ながら突起72同士の重なりが生じる(図8の破線の円囲み)。しかしながらこの重なりは、図10のような完全な重なりではないので、フィルムの間隔が狭くなる度合いは小さい。
なお図7の例では突起72のマトリックスの行方向はフィルム71eの長さ方向に対し直角をなしている。すなわちマトリックスの単位格子は内角が直角でない平行四辺形になっている。このようなマトリックス形状に代え、行方向と列方向が直角をなし、単位格子が直角四辺形であるマトリックス形状としてもよい。
スターリング機関1は、上記のような再生器70を使用することにより、能力あるいは運転効率を向上させることができる。なおスターリング機関1は冷凍機として構成したものであるためフィルムを樹脂フィルムとしたが、動力発生機関として構成するときは樹脂フィルムを金属フィルムに置き換えて本発明の構成を適用することができる。
以上本発明の実施形態につき説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することができる。
本発明は、スターリング機関全般に利用可能である。
スターリング機関の断面図 第1実施形態の再生器のフィルム巻回手法を示す斜視図 第1実施形態の再生器のフィルムの平面図 第1実施形態の再生器の部分拡大断面図 第2実施形態の再生器のフィルム巻回手法を示す斜視図 第2実施形態の再生器の部分拡大断面図 第3実施形態の再生器のフィルムの平面図 第3実施形態の再生器の部分拡大断面図 従来の再生器のフィルム巻回手法を示す斜視図 従来の再生器の部分拡大断面図
符号の説明
1 スターリング機関
12 ピストン
13 ディスプレーサ
20 リニアモータ
45 圧縮空間
46 膨脹空間
70 再生器
71a、71b、71c、71d、71e フィルム
72 突起
73 窪み

Claims (5)

  1. 圧縮空間と膨脹空間を行き来する作動ガスから熱を回収するスターリング機関用再生器において、
    エンボス加工により形成した突起を片面に点在させてなるフィルムを2枚重ねにして円筒形に巻回し、作動ガスの流動する間隙を多層にわたって形成するとともに、前記2枚のフィルムの突起は、隣接間隙層の突起に重なることがないように互いに位置をずらして配置したことを特徴とするスターリング機関用再生器。
  2. 前記フィルムに突起をマトリックス状に形成するとともに、2枚のフィルムの間で突起マトリックスを円筒形の軸線方向にずらすことを特徴とする請求項1に記載のスターリング機関用再生器。
  3. 圧縮空間と膨脹空間を行き来する作動ガスから熱を回収するスターリング機関用再生器において、
    エンボス加工により形成した突起を両面に点在させてなるフィルムと、突起のないフィルムとを重ねて円筒形に巻回し、作動ガスの流動する間隙を多層にわたって形成することを特徴とするスターリング機関用再生器。
  4. 圧縮空間と膨脹空間を行き来する作動ガスから熱を回収するスターリング機関用再生器において、
    エンボス加工により形成した突起を片面に点在させてなる1枚のフィルムを円筒形に巻回し、作動ガスの流動する間隙を多層にわたって形成するとともに、前記突起をマトリックス状に配置し、且つこの突起マトリックスはフィルムの長さ方向に対しスキュー角を持たせて、隣接間隙層同士の突起の重なりを回避することを特徴とするスターリング機関用再生器。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の再生器を用いて圧縮空間と膨脹空間を行き来する作動ガスから熱を回収することを特徴とするスターリング機関。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112050491A (zh) * 2020-09-08 2020-12-08 中国矿业大学 一种耦合微小型热管的回热器及工作方法

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