JP2006101760A - 育苗培土及び育苗方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アレロパシー物質の吸着性能の有無を迅速に判断できる評価方法によって、アレロパシー物質の吸着性能を有する活性炭を用いた育苗培土を提供する。
【解決手段】ピートモスを主成分とする培土と活性炭とが混合された育苗培土であって、前記活性炭として、下記のアレロパシー物質吸着性能評価方法によって、前記育苗培土に播種し育苗する植物体から分泌されるアレロパシー物質の吸着除去機能を有すると判断された活性炭を用いることを特徴とする。
アレロパシー物質吸着性能評価方法
寒天26を活性炭層24によって二分割して、その一方側の寒天26でアレロパシー物質を分泌する育苗植物体20を生育すると共に、他方側の寒天26でアレロパシー物質の作用を受けるレタス28,28・・を播種し、レタス28,28・・の生育状況が活性炭層24からの距離に関わらず一様である場合、活性炭層24を形成する活性炭にアレロパシー物質の吸着除去機能を有するものと判断する。
【選択図】 図1

Description

本発明は育苗培土又は育苗方法に関し、更に詳細にはアレロパシー物質を分泌する育苗植物体を播種し育苗する育苗培土及び育苗方法に関する。
畑等の同一耕地に同種又は近縁の作物を連続して栽培すると、徐々に生育が悪くなり収量が低下したり、病害が発生し易くなる、いわゆる連作障害と称される現象が発生することが古くから知られている。
従来、経験的に、所定年数の間は、先に栽培した作物と異種の作物を栽培した後、先に栽培した作物と同種又は近縁の作物を栽培する輪作栽培が為されていた。
しかし、近年、温室栽培等の施設栽培が農業の主流になりつつある。この様な施設栽培では、特定種類の作物を栽培されており、輪作栽培を行うことは困難になってきた。このため、連作障害の防止は極めて重要である。
ところで、かかる連作障害には、植物の根等から分泌されるアレロパシー物質が関与している場合がある。このアレロパシー物質については、現在までのところ化学構造等が特定されていないが、その存在は、例えば下記の非特許文献1に記載されているプラントボックス法によって証明されている。
かかるプラントボックス法の概要を図6に示す。このプラントボックス法では、まず、連作障害が発生し易いことが知られている植物体としてのアスパラガス10の根をセルロース透析膜又はナイロン製網を張った筒体100に入れ、この筒体100を組織培養用の透明なプラントボックス12内の隅に置く。次いで、筒体100内及びプラントボックス12内に寒天を満たして冷却固化し寒天培地14とした後、筒体100の外側に位置する寒天培地14の表面に所定間隔に指標植物としてのコーティング処理されていないレタス16,16・・を穿刺播種する。その後、寒天培地14の部分に相当するプラントボックス12の外側面を黒紙で覆い、所定温度の環境下(インキューベータ)に5日程度静置した後、プラントボックス12の外側面を覆う黒紙を取り外して、播種したレタスの幼根長や下胚軸長を測定する。
その結果、図6に示す様に、アスパラガス10の根からの距離が近いレタス16ほど、その幼根の長さが短くなり、レタス16の成長を抑制する物質(アレロパシー物質)がアスパラガス10の根から分泌されていることが判る。
また、このアレロパシー物質に因る連作障害を防止すべく、下記特許文献1には、活性炭を水中に分散した分散液を、アレロパシー物質によって汚染された土壌に散布することが提案されている。
藤井義晴著「アレロパシー」(社)農産漁村文化協会発行 別章「アレロパシーの証明、検定方法」中第179〜189頁 特開2001−19958号公報(実施例1)
特許文献1の様に、アレロパシー物質によって汚染された土壌に活性炭を散布して、アレロパシー物質が活性炭に吸着されたならば、アレロパシー物質に因る連作障害を防止できる。
しかし、本発明者等の検討によれば、活性炭には、アレロパシー物質を吸着する吸着性能を有しないものが存在し、活性炭の外観や成分等からは、アレロパシー物質の吸着性能の有無を判断することは極めて困難である。
このため、アレロパシー物質によって汚染された土壌に活性炭を散布した後、作物を栽培してみなければ、当該活性炭がアレロパシー物質の吸着性能を有するか否かを判断できず、判断するまでに要する期間が極めて長期間となり、実用性に欠ける。
また、本発明者等の検討によれば、アレロパシー物質を分泌する植物であっても、健全に育苗された苗を、アレロパシー物質によって汚染された土壌に植えても充分に育成可能であることが判明した。
そこで、本発明の課題は、アレロパシー物質の吸着性能の有無を迅速に判断できる評価方法によって、アレロパシー物質の吸着性能を有する活性炭を用いた育苗培土及び育苗方法を提供することにある。
本発明者等は、アレロパシー物質の吸着性能の有無を迅速に判断できる評価方法としては、前述した非特許文献1に記載されているプラントボックス法を応用することが有効であると考え検討したところ、図6に示す筒体100に代えて、評価対象の活性炭から成る活性炭層を形成し、レタス16,16・・の幼根長を測定することによって、活性炭層を形成する活性炭がアレロパシーの吸着性能を有するか否かを容易に判断可能であることを見出した。
更に、この評価方法によってアレロパシーの吸着性能を有することが判明した活性炭を培土に混合した育苗培土によれば、アレロパシー物質を分泌して育苗が困難であったアスパラガスやトルコギキョウ等の植物体を容易に育苗できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、培土と活性炭とが混合された育苗培土であって、前記活性炭として、下記のアレロパシー物質吸着性能評価方法によって、前記育苗培土に播種し育苗する植物体から分泌されるアレロパシー物質の吸着除去機能を有すると判断された活性炭を用いることを特徴とする育苗培土にある。
アレロパシー物質吸着性能評価方法
アレロパシー物質の浸透可能な媒体を、被試験体としての活性炭層によって二分割し て、その一方側の媒体でアレロパシー物質を分泌する育苗植物体を生育すると共に、他 方側の媒体でアレロパシー物質の作用を受ける指標植物を播種し、前記指標植物の生育 状況が前記活性炭層からの距離に関わらず一様である場合、前記活性炭にアレロパシー 物質の吸着除去機能を有するものと判断する。
また、本発明は、前述した育苗培土に、アレロパシー物質を分泌する育苗植物体を播種して育苗することを特徴とする育苗方法でもある。
かかる本発明においては、培土と活性炭との混合を、育苗植物体の播種直前に行うことが好ましく、育苗培土としては、ピートモスを主成分とする培土と活性炭とを混合した育苗培土を好適に用いることができる。
本発明に係る育苗培土によれば、育苗植物体から分泌されるアレロパシー物質は、育苗培土中に混合された活性炭に確実に吸着される。
このため、育苗培土中にアレロパシー物質が蓄積することを防止でき、育苗中の植物体の根等に損傷を与えることを防止できる結果、健全な植物体を育苗できる。
かかる本発明に係る育苗培土によって育苗された苗を、アレロパシー物質によって汚染された土壌中に移植しても、充分に育成できる。
本発明に係る育苗培土は、培土と活性炭とが混合された育苗培土である。この培土としては、ピートモスを主成分とする培土が好ましい。
かかるピートモスを主成分とする培土としては、市販されているものを用いることができるが、ピートモスとしては、ホワイトピートモス又はブラックピートモス、或いは両者の混合物を好適に用いることができる。このホワイトピートモスは、掘り上げたレンガ状のホワイトピートモスを湿度約55%の状態で、粉砕し、微粉末を取り除いた微粒状のものである。一方、ブラックピートモスは、羊羹状に掘り上げたブラックピートモスを、冬季間冷気に晒して凍上させることによって空隙率を向上させた後、湿度約60%の状態で、粉砕し、微粉末を取り除いた細粒状のものである。ブラックピートモスは、ホワイトピートモスに比較して、親水性保肥性に富む。このため、育苗培土中のブラックピートモスとホワイトピートモスとの混合比率は、育苗する植物体の種類等で変更することが好ましい。
かかるピートモスは、培土中に主成分として配合されており、その配合量は培土重量に対して70〜100重量%とすることが好ましい。
この様な培土中に含有されている活性炭は、育苗培土に播種し育苗する植物体から分泌されるアレロパシー物質の吸着除去機能を有する活性炭であることが肝要である。
ここで、アレロパシー物質を分泌する植物体としては、図6に示すプラントボックス法によって調査でき、本発明者等が調査したところ、アスパラガスの他に下記に示す種々の植物を上げることができる。
例えば、ムクナ、ソラマメ、エンドウ、ダイズ、ヘアリーベッチ、ベニバナインゲン、ライマビーン、レンゲ等の豆類、ライムギ、エンバク、コムギ、ケンタッキーブルーグラス等のイネ科、ソバ等のタデ科、トマト、ナス、スイカ、サトイモ、キュウリ、イチゴ等の野菜、キンセンカ、シンテッポウユリ、トルコギキョウ、チドリソウ、カーネーション、ストック、ポピー、ゴテチャ、トリテリア、キンギョソウ、ホワイトレースフラワー等の花き、クルミ、モモ、リンゴ、サクラ、イチジク、ウメ等の果樹、その他に牧草、薬草、雑草、地衣類等である。
かかるアレロパシー物質を分泌する植物体を播種し育苗する際に、育苗する植物体から分泌されるアレロパシー物質の吸着除去機能を有する活性炭であるか否かの判断は、図1に示すアレロパシー物質吸着性能評価方法で評価して判断する。
図1に示すアレロパシー物質吸着性能評価方法では、まず、透明なプラントボックス22内を、評価対象の活性炭Aから成る活性炭層24によって二分割する。この活性炭層24は、細かな網目のナイロン製の網体24a,24b(セルロース透析膜であってもよい)の間に、評価対象の活性炭Aを充填することによって形成できる。
二分割したプラントボックス22の一方側に、アレロパシー物質を分泌する育苗予定の植物体20を静置する。更に、固化してもアレロパシー物質の浸透可能な媒体26を活性炭層24を含むプラントボックス22内に充填する。この媒体26としては、寒天、ゼラチン、粘土、デキストラン等を挙げることができるが、植物に対する生育障害がなく透明で且つ低濃度でゲル化するため、寒天を好適に用いることができる。
次いで、植物体20側の媒体26の表面及び活性炭層24によって分割された他方側の媒体26の表面に、所定間隔で指標植物28,28・・を穿刺播種する。この指標植物28としては、レタス、シロクロバー、カラシナ、チモシー、アオゲイトウ等を好適に用いることができる。
その後、媒体26が充填された部分に相当するプラントボックス22の外側面を黒紙で覆い、所定温度の環境下(インキュベータ)に5日程度静置した後、プラントボックス22の外側面を覆う黒紙を取り外して、播種した指標植物28の幼根長や下胚軸長を測定する。
図1では、植物体20側の媒体26の表面に播種された指標植物28,28・・からの幼根長は極めて短く、アレロパシー物質の影響を受けている。
しかし、活性炭層24によって分割された他方側の媒体26の表面に播種された指標植物28,28・・からの幼根長は、活性炭層24からの距離に関わらず一様に成長している。このため、図1に示す活性炭層24を形成する活性炭Aは、植物体20から分泌されるアレロパシー物質を充分に吸着する吸着性能を有することが判断できる。
一方、図2に示す様に、活性炭層24を形成する活性炭として、活性炭Bを用いた場合、活性炭層24によって分割された他方側の媒体26の表面に播種された指標植物28,28・・からの幼根長が、活性炭層24に近い指標植物28ほど短くなるときは、植物体20から分泌されるアレロパシー物質を活性炭層24で吸着できないか或いは吸着しきれずに洩れ出ていることを示す。このため、図2に示す活性炭層24を形成する活性炭Bは、植物体20から分泌されるアレロパシー物質の吸着性能を有しないと判断できる。
本発明の育苗培土には、図1に示す様に、育苗予定の植物体20から分泌されるアレロパシー物質を吸着する吸着性能を有すると判断された活性炭を配合する。かかる活性炭の配合量は、培土重量に対して0.5〜32重量%とすることが好ましい。
尚、本発明に係る育苗培土には、従来の育苗培土に用いられているバーミキュライトやパーライト等の細粒から成り、ピートモスが配合されていない培土も用いることができる。
本発明に係る育苗培土は、所定量の培土(好ましくはピートモスを主成分とする培土)と、育苗培土に播種し育苗する植物体から分泌されるアレロパシー物質の吸着除去機能を有する所定量の活性炭とを混合することによって得ることができる。
この混合は、育苗培土に育苗する植物体を播種する直前に行うことが好ましい。予め培土と活性炭とを混合して貯蔵しておいた育苗培土は、播種して育苗した植物体の成長が、両者を混合した直後に播種して育苗した植物体に比較して劣る傾向がある。培土と活性炭とを接触状態で保持しておくことによって、培土中に含まれている物質或いは添加素材が活性炭に吸着され、活性炭の吸着性能が低下するものと推察される。
かかる混合は、活性炭が混合されていない培土に、活性炭を分散した分散液を散布すること、或いは活性炭が混合されていない培土を充填した育苗容器を、活性炭を分散した分散液に浸して、栽培容器の底面側から培土中に活性炭を吸い上げて混合してもよい。
本発明に係る育苗培土を用いて植物体を播種し育苗する際には、本発明に係る育苗培土をセルトレイ等の育苗容器に充填し、育苗する植物体を播種して育苗する。かかる植物体としては、育苗期間が20日以上と長く且つアレロパシー物質に影響を受け易い植物体、例えばアスパラガス、キュウリ或いはトルコギキョウに好適に適用できる。
これらの植物体の育苗には、育苗する植物体に適した育苗方法を採用できる。例えば、アスパラガスの場合は、セルトレイに充填した育苗培土に播種した後、定期的に散水することによって育苗し、所定の大きさに成長した苗を圃場に移植して栽培できる。
キュウリでは、セルトレイに充填した育苗培土に播種して育苗した台木に、別のセルトレイに充填した育苗培土で播種したキュウリの苗(穂木)を接ぎ木する。順化後に接ぎ木した苗をポリ鉢に充填した育苗培土に移植して更に育苗し、所定の大きさに成長した苗を圃場に移植して栽培できる。
トルコギキョウでは、セルトレイに充填した育苗培土に播種した後、このセルトレイを容器内の水に浸し、セルトレイの底面側から給水する底面給水方式によって育苗し、所定の大きさに成長した苗を圃場に移植して栽培できる。この様に、育苗容器の底面側から給水する場合には、育苗容器に充填した培土内に活性炭を混合する際に、培土を充填して播種した育苗容器を、活性炭を水に分散した分散液に浸し、育苗容器の底面側から培土内に水と共に活性炭を吸い上げることによって、培土と活性炭との混合を行ってもよい。
1.活性炭のアレロパシー物質の吸着性能評価方法
透明なアクリル製のプラントボックス22内を、評価対象の活性炭から成る活性炭層24によって二分割する。この活性炭層24は、細かな網目のナイロン製の網体24a,24bの間に、評価対象の活性炭を充填することによって形成した。
二分割したプラントボックス22の一方側に、水洗したアスパラガス20の根を静置する。更に、40〜50℃の寒天[0.5%(W/V)を活性炭層24を含むプラントボックス22内に充填し、氷水で急冷してゲル化した。この寒天の充填量は、アスパラガス20の根全体が浸る程度とした。
次いで、アスパラガス20側の寒天26の表面及び活性炭層24によって分割された他方側の寒天26の表面に、所定間隔で指標植物としてのコーティング処理されていないレタス28,28・・(品種;「Great Lakes 366」)を穿刺播種した。
その後、寒天26が充填された部分に相当するプラントボックス22の外側面を黒紙で覆い、インキュベータ25/20℃(12/12h)で5日間生育して、黒紙を取り外してレタス28,28・・の幼根長や下胚軸長を測定した。
2.評価対象の活性炭及びその評価結果
(1)評価対象の活性炭
1)「HJA−40Y」(味の素ファインテクノ(株)製)
2)「活性炭フロアブル剤」(大塚化学(株)製)
3)NORIT社製活性炭
4)木質針葉樹活性炭(GS−A 味の素ファインテクノ(株)製)
5)木質針葉樹活性炭(GS−B 味の素ファインテクノ(株)製)
(2)評価結果
1)〜3)の活性炭は、図1に示す様に、活性炭層24によって分割された他方側の寒天26の表面に播種されたレタス28,28・・からの幼根長は、活性炭層24からの距離に関わらず一様に成長している。このため、この 1)〜3)の活性炭は、アスパラガス20から分泌されるアレロパシー物質を充分に吸着する吸着性能を有すると判断できる。
一方、4)及び5)の活性炭は、図2に示す様に、活性炭層24によって分割された他方側の媒体26の表面に播種されたレタス28,28・・からの幼根長が、活性炭層24に近いレタス28ほど短くなっており、アスパラガス20から分泌されるアレロパシー物質を活性炭層24で吸着できないか或いは吸着しきれずに洩れ出ていることを示す。このため、4)及び5)の活性炭は、アスパラガス20から分泌されるアレロパシー物質の吸着性能を有しないと判断できる。
実施例1において、アスパラガス20から分泌されるアレロパシー物質を充分に吸着する吸着性能を有すると判断された、1)〜3)の活性炭をピートモスを主成分とする培土に混合して得た育苗培土にアスパラガスを播種して育苗した。
かかるピートモスを主成分とする培土としては、クラスマンーダイルマン社製の播種用トレーサブストレート(以下、クラスマン培地と称する)を用いた。このクラスマン培地は、ホワイトピートモス25重量%、ブラックピートモス45重量%、バーミキュライト25重量%、パーライト5重量%(細粒;0.6〜2.5mm)から成る。水分は約60%、pH6程度であり、窒素(N):リン(P):カリ(K)=110:130:150(単位mg/L)である。
かかるクラスマン培地の所定量と、1)〜3)のいずれかの所定量の活性炭とをセルトレイで混合して育苗培土とした。この活性炭の配合量は2重量%となるように調整した。
ここで、クラスマン培地に1)「HJA−40Y」(味の素ファインテクノ(株)製)を混合した育苗培土をハ水準とし、クラスマン培地に2)「活性炭フロアブル剤」(大塚化学(株)製)を混合した育苗培土をニ水準とした。ニ水準の場合、2)「活性炭フロアブル剤」(大塚化学(株)製)は、活性炭の分散液であるため、25倍液に希釈して相当量をクラスマン培地に散布した。
更に、クラスマン培地に3)NORIT社製活性炭を混合した育苗培土をロ水準とし、クラスマン培地として、予め3)NORIT社製活性炭が所定量混合された活性炭入りクラスマン培地を用い、追加の活性炭を混合しなかった育苗培土をイ水準とする。
尚、クラスマン培地のみの育苗培土をホ水準(参照例)とした。
かかる各水準の育苗培地に、アスパラガスを2003年12月2日に播種して育苗し、2004年3月1日に苗の地上部及び地下部の乾燥重量を各水準の40株について調査し、その結果を図3に示す。、
図3から明らかな様に、クラスマン培地のみの参照例であるホ水準の育苗培土に比較して、クラスマン培置に1)〜3)のいずれかの活性炭を混合したイ〜ニ水準の育苗培土では、いずれもアスパラガラスの生育は良好である。特に、クラスマン培地に3)NORIT社製活性炭を播種直前に混合したロ水準の育苗培土では、予め3)NORIT社製活性炭が所定量混合された活性炭入りクラスマン培地のみをを用いたイ水準の育苗培土よりも、アスパラガラスの生育は良好である。予め活性炭が所定量混合された活性炭入りクラスマン培地では、混合された活性炭にピートモスや添加素材等が保持する物質を吸着して吸着性能が低下したことによるものと推察される。
比較例1
実施例1において、アスパラガス20から分泌されるアレロパシー物質の吸着性能を有しないと判断された、4)及び5)の活性炭を実施例2と同様にしてピートモスを主成分とする培土に混合して得た育苗培土にアスパラガスを播種して育苗し、苗の地上部及び地下部の乾燥重量を各水準の40株について調査した。
その結果、4)及び5)の活性炭を用いた育苗培土で育苗した苗の地上部及び地下部の乾燥重量は、クラスマン培地のみの参照例であるホ水準と同程度であった。
長野県野菜花き試験場の露地長期どり圃場で栽培しているアスパラガスの9年株圃場において、欠株部分に実施例2で育苗した水準ロの苗を移植して栽培したところ、移植した苗は順調に生育して、アスパラガスを収穫できるようになった。
一方、この欠株部分に比較例1で育苗した4)の活性炭を実施例2と同様にしてピートモスを主成分とする培土に混合して得た育苗培土で育苗した苗を移植して栽培したところ、移植した苗の生長は、実施例2で育苗した水準ロの苗を移植した場合に比較して遅く、しかもアスパラガスの収量も少なかった。
実施例2で用いたクラスマン培地に1)「HJA−40Y」(味の素ファインテクノ(株)製)を混合した育苗培土(ハ水準)を用い、キュウリの穂木(品種名「新北星1号」)と台木(品種名「光パワーゴールド」)とを別々のセルトレイに、2004年5月7日に播種して育苗した。
更に、5月19日にセルトレイの一方で育苗してきた台木に、他方のセルトレイで育苗してきた穂木を接ぎ木して順化した後、5月28日に黒ポリ鉢に充填した育苗培土に接ぎ木した台木を移植して更に育苗した。
この黒ポリ鉢に充填した育苗培土は、クラスマンーダイルマン社製の鉢用ポッティング(以下、ポット用育苗培土と称する)と、活性炭として1)「HJA−40Y」(味の素ファインテクノ(株)製)とを混合した育苗培土を用いた。このポット用育苗培土は、ホワイトピートモス60重量%、ブラックピートモス20重量%、バーミキュライト10重量%(細粒;2〜3mm)、パーライト10重量%(細粒;1〜7.5mm)から成る。水分は約60%、pH6程度であり、窒素(N):リン(P):カリ(K)=210:240:270(単位mg/L)である。
黒ポリ鉢に充填した育苗培土で育苗したキュウリについて、2004年6月18日に地上部及び地下部の生重量及び乾燥重量を測定し、その結果を図4に実施例として示す。
併せてクラスマン培土のみを育苗培土として充填したセルトレイでの穂木及び台木の育苗と、この穂木を接ぎ木した台木をポット用育苗培土のみを充填した黒ポリ鉢での育苗をした参照例の結果も併せて図4に参照例として示す。
図4(a)は地上部及び地下部の生重量について示し、図4(b)は地上部及び地下部の乾燥重量について示す。図4から明らかなように、実施例が参照例よりも生育が良好であった。
実施例2で用いたクラスマン培地に1)「HJA−40Y」(味の素ファインテクノ(株)製)を混合した育苗培土(ハ水準)、クラスマン培地に2)「活性炭フロアブル剤」(大塚化学(株)製)を混合した育苗培土(ニ水準)及びクラスマン培地のみの育苗培土(参照例)を用いて、トルコギキョウを育苗した。
先ず、各水準の育苗培土を充填したセルトレイにトルコギキョウ(品種名「長花交28号」)を2004年4月20日に播種した後、この各セルトレイを水を張った容器に浸して底面給水方式によって管理した。
2004年6月18日に各水準の発芽率を調査したところ、いずれも85%以上となり問題なかった。
更に、各水準の20株について、その地上部及び地下部の生重量及び幼根長について測定した結果を図5に示す。図5において、図5(a)は各水準20株の地上部及び地下部の生重量について測定した平均値を示し、図5(b)は各水準20株の幼根長について測定した平均値を示す。
図5から明らかなように、水準ハ及び水準ニの育苗培土を用いて育苗したトルコギキョウの苗は、参照例の育苗培土を用いて育苗したものに比較して、良好な苗であることが判る。
アレロパシー物質吸着性能が良好な活性炭を用いた場合を説明する説明図である。 アレロパシー物質吸着性能が不良な活性炭を用いた場合を説明する説明図である。 各種の活性炭を混合した育苗培土を用いて育苗したアスパラガスの苗の生長程度を示すグラフである。 各種の活性炭を混合した育苗培土を用いて育苗したキュウリの苗の生長程度を示すグラフである。 各種の活性炭を混合した育苗培土を用いて育苗したトルコギキョウの苗の生長程度を示すグラフである。 プラントボックス法の概要を示す概略図である。
符号の説明
20 アスパラガス
22 プラントボックス
24 活性炭層
26 媒体(寒天)
28 指標植物(レタス)
24a,24b 網体

Claims (4)

  1. 培土と活性炭とが混合された育苗培土であって、前記活性炭として、下記のアレロパシー物質吸着性能評価方法によって、前記育苗培土に播種し育苗する植物体から分泌されるアレロパシー物質の吸着除去機能を有すると判断された活性炭を用いることを特徴とする育苗培土。
    アレロパシー物質吸着性能評価方法
    アレロパシー物質の浸透可能な媒体を、被試験体としての活性炭層によって二分割し て、その一方側の媒体でアレロパシー物質を分泌する育苗植物体を生育すると共に、他 方側の媒体でアレロパシー物質の作用を受ける指標植物を播種し、前記指標植物の生育 状況が前記活性炭層からの距離に関わらず一様である場合、前記活性炭にアレロパシー 物質の吸着除去機能を有するものと判断する。
  2. 培土と活性炭との混合が、育苗植物体の播種直前になされた育苗培土である請求項1記載の育苗培土。
  3. 育苗培土が、ピートモスを主成分とする培土と活性炭とが混合された育苗培土である請求項1又は請求項2記載の育苗培土。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項記載の育苗培土に、アレロパシー物質を分泌する育苗植物を播種して育苗することを特徴とする育苗方法。
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