本発明によれば、補助スイッチにおける電力損失の抑制を図ると共に、動作条件や回路条件が異なる場合でも確実にソフトスイッチング動作を行うことができる。
以下、本発明のDC−DCコンバータについて具体化した実施形態を図1乃至図4に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、実施形態のDC−DCコンバータの回路図である。主トランジスタの導通に先行して補助トランジスタを導通させることにより、主トランジスタのコレクタ端子−エミッタ端子間の電位差が僅少な状態で、主トランジスタを導通させることにより、導通時のスイッチング損失の低減を図る、いわゆるソフトスイッチング機能を有して構成される、昇降圧DC−DCコンバータである。
昇降圧DC−DCコンバータは、低圧電源端子TLに電圧源VLが接続され、低圧電圧VLを昇圧して高圧電源端子TUに接続されている電圧源VUに供給すると共に、高圧電源端子TUに電圧源VUが接続され、高圧電圧VUを降圧して低圧電源端子TLに接続されている電圧源VLに供給する。高圧電源端子TUに負荷としてモータを接続する場合、モータの駆動電圧である高圧電圧VUを、低圧電圧VLを昇圧して供給すると共に、モータによる回生エネルギを電圧源VLに再充電する等の用途においても使用することができる。図1に示す昇降圧DC−DCコンバータは、電圧源VLおよびVUの基準電圧端子TSが共通に接続された、いわゆる非絶縁型のDC−DCコンバータである。
主トランジスタQ1、Q2は、主トランジスタQ1のエミッタ端子と主トランジスタQ2のコレクタ端子とが接続点Xで接続されると共に、主トランジスタQ1のコレクタ端子が高圧電源端子TUに、主トランジスタQ2のエミッタ端子が基準電圧端子TSに接続され、高圧電源端子TUと基準電圧端子TSとの間に直列に接続されている。尚、主トランジスタQ1、Q2のベース端子は、各々、降圧スイッチング調整回路1、および昇圧スイッチング調整回路2に接続されている。主トランジスタQ1、Q2には、エミッタ端子からコレクタ端子に向かって順方向となるように、逆並列ダイオードD1、D2が接続されている。また、主トランジスタQ1、Q2のコレクタ端子とエミッタ端子との端子間には、各々、コンデンサC1、C2が接続されている。接続点Xと低圧電源端子TLとの間には、インダクタL1が接続されている。また、低圧電源端子TLおよび高圧電源端子TUと、基準電圧端子TSとの間には、電圧源VL、VUに並列にコンデンサCL、CUが接続されている。
ここで、高圧電源端子TUに接続される負荷とは、例えば、インバータ回路等を介して駆動されるインダクションモータ等が考えられる。ガソリンエンジンとモータ駆動との切り替えにより走行するハイブリッド自動車や、モータ駆動のみによって走行する電気自動車等に適用する場合が一例である。
低圧電圧VLを高圧電圧VUに昇圧する昇圧コンバータとして動作する場合は、主トランジスタQ2の導通によりインダクタL1に蓄積された電磁エネルギを、主トランジスタQ1および逆並列ダイオードD1を介して高圧電源端子TUに供給することにより行われる。また、高圧電圧VUを低圧電圧VLに降圧する降圧コンバータとして動作する場合は、主トランジスタQ1の導通によりインダクタL1に蓄積された電磁エネルギを、主トランジスタQ2および逆並列ダイオードD2を介して低圧電源端子TLに供給することにより行われる。
ここで、コンデンサCL、CUは平滑用のコンデンサである。また、主トランジスタQ1、Q2は、IGBT、MOS、バイポーラ等のトランジスタを使用することができる。この場合、逆並列ダイオードD1、D2は、各主トランジスタQ1、Q2に内蔵されている場合の他、別途ダイオード素子を接続することもできる。
補助トランジスタQ3、Q4は、インダクタL3、L4を経て、主トランジスタQ1、Q2の各々のコレクタ・エミッタ端子間に接続されている。主トランジスタQ1、Q2の接続点Xは、インダクタL3を介して補助トランジスタQ3のエミッタ端子と接続され、インダクタL4を介して補助トランジスタQ4のコレクタ端子と接続されている。補助トランジスタQ3のコレクタ端子、および補助トランジスタQ4のエミッタ端子は、各々、高圧電源端子TUおよび基準電圧端子TSに接続されている。
インダクタL3と補助トランジスタQ3との接続点には、基準電圧端子TSからダイオードD5およびD3が順方向に接続されており、ダイオードD5とダイオードD3の接続点と接続点Xとの間には、コンデンサC3が接続されている。また、インダクタL4と補助トランジスタQ4との接続点から高圧電源端子TUに向けて、ダイオードD4およびD6が順方向に接続されており、ダイオードD4とダイオードD6の接続点と接続点Xとの間には、コンデンサC4が接続されている。
ここで、コンデンサC3、ダイオードD3、D5、およびコンデンサC4、ダイオードD4、D6で構成される回路部分は、後述するソフトスイッチング動作に起因して導通する補助トランジスタQ3、Q4によってインダクタL3、L4に蓄積された電磁エネルギを、出力側に放出することを目的として備えられている。補助トランジスタQ3、Q4の導通によりインダクタL3、L4に電磁エネルギが蓄積されていく。ソフトスイッチングの後、補助トランジスタQ3、Q4は非導通とされる。このとき、インダクタL3、L4に蓄積されている電磁エネルギが、ダイオードD3、D4を介してコンデンサC3、C4に移動する。その後、コンデンサC3、C4からダイオードD5、D6を介して、各々、低圧電源端子TL、高圧電源端子TUに放出する。尚、補助トランジスタQ3、Q4が補助スイッチの一例である。
降圧スイッチング調整回路1、および昇圧スイッチング調整回路2は、高圧電源端子TUから高圧電圧VUを受けると共に、降圧PWM制御回路3、および昇圧PWM制御回路4から出力されるPWM制御信号を受け、主トランジスタQ2、補助トランジスタQ4、および主トランジスタQ1、補助トランジスタQ3のベース端子に、トランジスタの駆動信号を出力する。
ここで、PWM制御信号とは、DC−DCコンバータにおいて、入出力電圧値に応じて略定まる、主トランジスタQ2、またはQ1のスイッチングデューティに応じて出力される信号である。ソフトスイッチング動作が行われるDC−DCコンバータでは、昇圧型、または降圧型のDC−DCコンバータにおいて各々定まる入出力電圧関係により、入力電圧に対する、主トランジスタQ2と補助トランジスタQ4、または主トランジスタQ1と補助トランジスタQ3とのスイッチングデューティが設定され、出力電圧が維持されることとなる。図1では、昇圧PWM制御回路4から出力されるPWM制御信号のうち、主トランジスタQ2のPWM制御信号をVQ2PWMで表記し、補助トランジスタQ4のPWM制御信号をVQ4PWMで表記している。また、昇圧スイッチング調整回路2から出力されるトランジスタの駆動信号のうち、主トランジスタQ2の駆動信号をVGQ2で表記し、補助トランジスタQ4の駆動信号をVGQ4で表記している。
図1の実施形態における昇降圧DC−DCコンバータの基本動作を説明する。先ず、昇圧動作を例にとり説明する。ソフトスイッチング機能を備えた基本的なスイッチング制御の説明として、ここでは、主トランジスタQ2、補助トランジスタQ4の駆動制御は、昇圧PWM制御回路4から出力されるPWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMにより行われるものとして説明する。昇圧スイッチング調整回路2によるPWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMの調整については、図2以降に説明する。
主トランジスタQ2が導通すると、低圧電源端子TLからインダクタL1および主トランジスタQ2を介して基準電圧端子TSに至る電流径路が確立される。インダクタL1の端子間には低圧電圧VLが印加され、低圧電源端子TLから接続点Xに向う方向(この方向を正方向とする。)に、dIL1/dt=VL/L1(インダクタL1のインダクタンス値をL1とする。)で略定められる正の時間傾きを有するインダクタ電流IL1が流れる。インダクタL1にはインダクタ電流IL1に応じた電磁エネルギが蓄積される。
昇圧PWM制御回路4で定められるスイッチングデューティの経過後、主トランジスタQ2が非導通となる。このときの接続点Xの電圧VXは、直前まで主トランジスタQ2が導通しているため、基準電圧端子TSの電圧である基準電圧に略等しい電圧値となっている。このためコンデンサC1は充電状態にありコンデンサC2は放電状態にある。主トランジスタQ2の非導通後、インダクタ電流IL1は、コンデンサC1の放電、およびC2の充電に費やされる。このため、電圧VXの電圧値上昇は、主トランジスタQ2の非導通に遅れて行われる。このため、主トランジスタQ2の非導通状態へのスイッチングは、コレクタ・エミッタ間に僅かな電圧が印加された状態で行われることとなる。主トランジスタQ2の非導通状態へのスイッチングはゼロボルトスイッチング(ZVS)であり、スイッチング損失の低減を図ることができる。
主トランジスタQ2の非導通に伴い、インダクタL1に蓄積されている電磁エネルギは、逆並列ダイオードD1を介して、インダクタL1から高圧電源端子TUに向かって放出される。インダクタ電流IL1が高圧電源端子TUに向かって流れる。これにより、電磁エネルギが高圧電源端子TUに放出されて高圧電源端子TUに昇圧された高圧電圧VUが供給される。接続点Xは高圧電圧VUに略等しい電圧となり、インダクタL1の端子間には高圧電圧VUと低圧電圧VLとの差電圧が、接続点Xから低圧電源端子TLに向う方向(この方向を負方向とする。)に印加され、インダクタL1には、dIL1/dt=−(VU−VL)/L1(インダクタL1のインダクタンス値をL1とする。)で略定められる負の時間傾きを有するインダクタ電流IL1が流れる。
尚、昇圧動作においては、主トランジスタQ1は導通制御される必要はないが、逆並列ダイオードD1にインダクタ電流IL1が流れるタイミングで導通状態に遷移させる制御も可能である。いわゆる同期整流動作である。このときの導通状態への遷移は、コンデンサC1は放電状態、コンデンサC2は充電状態となっているため、主トランジスタQ1のコレクタ・エミッタ間に僅かな電圧が印加された状態で、ゼロボルトスイッチング(ZVS)が行われる。主トランジスタQ1の導通状態へのスイッチング損失の低減を図ることができる。この場合、主トランジスタQ1は同期整流素子として動作する。並列に逆並列ダイオードD1が接続されているので、逆並列ダイオードD1により整流作用を奏することも可能であり、昇圧動作においては主トランジスタQ1を非導通に維持しておくことも可能である。
上記の状態が維持され、インダクタL1に蓄積された電磁エネルギは、順次、高圧電源端子TUに向かって放出される。その後、昇圧PWM制御回路4により定められるタイミングで、再び、インダクタL1に電磁エネルギを蓄積する期間が開始する。インダクタL1への電磁エネルギの蓄積は、主として主トランジスタQ2で行われるのであるが、主トランジスタQ2の導通遷移時のソフトスイッチングを可能とするため、主トランジスタQ2の導通遷移に先立ち、補助トランジスタQ4が導通する。接続点Xから、インダクタL4を介して基準電圧端子TSへの電流径路が形成される。逆並列ダイオードD1等に流れていたインダクタ電流IL1が、形成された電流経路にバイパスされると共に、コンデンサC2等の容量成分に蓄積されている電磁エネルギが放出される。
ここで、インダクタL1のインダクタンス値(L1)に比して、インダクタL4のインダクタンス値(L4)を、充分に小さい値とすれば(L4<<L1)、補助トランジスタQ4の導通前の電圧VXが略高圧電圧VUであることと相俟って、補助トランジスタQ4の導通に伴い流れるインダクタ電流IL4の時間傾きは、d(IL4)/dt=VX/L4の計算式において、VXが大きく、L4が小さいことより、インダクタ電流IL1に比して、急峻な傾きを有することとなる。短時間で、インダクタ電流IL1の全量がインダクタL4にバイパスされると共に、コンデンサC2等の容量成分に蓄積されている電磁エネルギが放出されて電圧VXが基準電圧に近づく。電圧VXが基準電圧に近づいたタイミングで主トランジスタQ2を導通すれば、主トランジスタQ2の導通状態へのスイッチングをゼロボルトスイッチング(ZVS)とすることができ、スイッチング損失の低減を図ることができる。
以下、上記の動作を繰り返すことにより、図1に示す昇降圧DC−DCコンバータにおいて、ソフトスイッチング動作により昇圧動作を行うことができる。
次に、降圧動作について説明する。主トランジスタQ1が導通すると、高圧電源端子TUから主トランジスタQ1およびインダクタL1を介して低圧電源端子TLに至る電流径路が確立される。インダクタL1の端子間には高圧電圧VUと低圧電圧VLとの差電圧が印加され、接続点Xから低圧電源端子TLに向う方向(この方向を正方向とする。)に、dIL1/dt=(VU−VL)/L1(インダクタL1のインダクタンス値をL1とする。)で略定められる正の時間傾きを有するインダクタ電流IL1が流れる。インダクタL1にはインダクタ電流IL1に応じた電磁エネルギが蓄積される。
降圧PWM制御回路3で定められるスイッチングデューティの経過後、主トランジスタQ1が非導通となる。このときの接続点Xの電圧VXは、直前まで主トランジスタQ1が導通しているため、高圧電源端子TUの電圧である高圧電圧VUに略等しい電圧値となっている。このためコンデンサC1は放電状態にありコンデンサC2は充電状態にある。主トランジスタQ1の非導通後、インダクタ電流IL1は、コンデンサC1の充電、およびC2の放電に費やされる。このため、電圧VXの電圧値下降は、主トランジスタQ1の非導通に遅れて行われる。このため、主トランジスタQ1の非導通状態へのスイッチングは、コレクタ・エミッタ間に僅かな電圧が印加された状態で行われることとなる。主トランジスタQ1の非導通状態へのスイッチングはゼロボルトスイッチング(ZVS)であり、スイッチング損失の低減を図ることができる。
主トランジスタQ1の非導通後、インダクタL1に蓄積されている電磁エネルギは、逆並列ダイオードD2を介して電流径路が確保されることにより、インダクタL1から低圧電源端子TLに向かって放出される。インダクタ電流IL1が低圧電源端子TLに向かって流れる。これにより、電磁エネルギが低圧電源端子TLに放出されて低圧電源端子TLに降圧された低圧電圧VLが供給される。接続点Xは基準電圧に略等しい電圧となり、インダクタL1の端子間には低圧電圧VLに略等しい電圧が、低圧電源端子TLから接続点Xに向う方向(この方向を負方向とする。)に印加され、インダクタL1には、dIL1/dt=−VL/L1(インダクタL1のインダクタンス値をL1とする。)で略定められる負の時間傾きを有するインダクタ電流IL1が流れる。
尚、降圧動作においては、主トランジスタQ2は導通制御される必要はないが、逆並列ダイオードD2にインダクタ電流IL1が流れるタイミングで導通状態に遷移させる制御も可能である。いわゆる同期整流動作である。このときの導通状態への遷移は、コンデンサC1は充電状態、コンデンサC2は放電状態となっているため、主トランジスタQ2のコレクタ・エミッタ間に僅かな電圧が印加された状態で、ゼロボルトスイッチング(ZVS)が行われる。主トランジスタQ1の導通状態へのスイッチング損失の低減を図ることができる。この場合、主トランジスタQ2は同期整流素子として動作する。並列に逆並列ダイオードD2が接続されているので、逆並列ダイオードD2により整流作用を奏することも可能であり、降圧動作においては主トランジスタQ2を非導通に維持しておくことも可能である。
上記の状態が維持され、インダクタL1に蓄積された電磁エネルギは、順次、低圧電源端子TLに向かって放出される。その後、降圧PWM制御回路3により定められるタイミングで、再び、インダクタL1に電磁エネルギを蓄積する期間が開始する。インダクタL1への電磁エネルギの蓄積は、主として主トランジスタQ1で行われるのであるが、主トランジスタQ1の導通遷移時のソフトスイッチングを可能とするため、主トランジスタQ1の導通遷移に先立ち、補助トランジスタQ3が導通する。高圧電源端子TUから、補助トランジスタQ3およびインダクタL3を介して接続点Xへの電流径路が形成される。逆並列ダイオードD2等に流れていたインダクタ電流IL1が、形成された電流経路にバイパスされると共に、コンデンサC1等の容量成分に蓄積されている電磁エネルギが放出される。
ここで、インダクタL1のインダクタンス値(L1)に比して、インダクタL3のインダクタンス値(L3)を、充分に小さい値とすれば(L3<<L1)、補助トランジスタQ3の導通前の電圧VXが略基準電圧であることと相俟って、補助トランジスタQ3の導通に伴い流れるインダクタ電流IL3の時間傾きは、d(IL3)/dt=VU/L3の計算式において、VUが大きく、L3が小さいことより、インダクタ電流IL1に比して、急峻な傾きを有することとなる。短時間で、インダクタ電流IL1の全量がインダクタL3にバイパスされると共に、コンデンサC1等の容量成分に蓄積されている電磁エネルギが放出されて電圧VXが高圧電圧VUに近づく。電圧VXが高圧電圧VUに近づいたタイミングで主トランジスタQ1を導通すれば、主トランジスタQ1の導通状態へのスイッチングをゼロボルトスイッチング(ZVS)とすることができ、スイッチング損失の低減を図ることができる。
以下、上記の動作を繰り返すことにより、図1に示す昇降圧DC−DCコンバータにおいて、ソフトスイッチング動作により降圧動作を行うことができる。
次に、図2に示す、昇圧スイッチング調整回路2について説明をする。上記の昇圧制御についての基本動作においては、主トランジスタQ2の導通に先立ち導通する補助トランジスタQ4により、接続点Xの電圧VXは、電圧低下して基準電圧に近づくものではある。接続点Xの電圧VXが充分に低下した後に主トランジスタQ2を導通してやれば、主トランジスタQ2の導通に際し、コレクタ・エミッタ端子間の印加電圧は充分に低い電圧値となっており、有効にゼロボルトスイッチング(ZVS)が行われ、スイッチング損失が充分に低減されたソフトスイッチング動作を実現することができるものではある。
しかしながら、電圧VXの電圧降下における時間傾きは、インダクタL4の特性、コンデンサC2等の容量成分の違い、補助トランジスタQ4の特性等の回路定数により、また、高圧電圧VU、低圧電圧VLの電圧値に応じて、様々に異なるものである。更に、素子個体間のばらつきや、その他の素子や実装上の配線に伴う寄生負荷成分の違いに応じて、異なることも考えられる。このため、補助トランジスタQ4の導通から主トランジスタQ2の導通までの時間間隔が固定された、昇圧PWM制御回路4からのPWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMでは、主トランジスタQ2の導通の際、最適なソフトスイッチングのタイミングを実現することが困難な場合がある。
そこで、図2に示す昇圧スイッチング調整回路2を備えて、昇圧PWM制御回路4から出力されるPWM制御信号VQ2PWMによる主トランジスタQ2の導通、およびPWM制御信号VQ4PWMによる補助トランジスタQ4の非導通のタイミングを調整することが有効である。
昇圧スイッチング調整回路2は、分圧回路21、電圧比較回路22、およびタイミング調整回路23を備えて構成されている。接続点Xの電圧VXと、参照電圧として高圧電源端子TUに供給される高圧電圧VUとが入力される。また、昇圧PWM制御回路4(図1)から出力されるPWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMが入力される。出力信号として、主トランジスタQ2を駆動制御する駆動信号VGQ2、および補助トランジスタQ4を駆動制御する駆動信号VGQ4が、出力される。
分圧回路21は、高圧電圧VU、および電圧VXの各々に対して抵抗分圧回路を備えて構成されている。高圧電圧VUは、抵抗素子R1の一端子に入力され、抵抗素子R2との間で抵抗分圧される。分圧点は、電圧比較回路22の反転入力端子に接続されている。電圧VXは、抵抗素子R3の一端子に入力され、抵抗素子R4との間で抵抗分圧される。分圧点は、電圧比較回路22の非反転入力端子に接続されている。抵抗素子R1、R2、および抵抗素子R3、R4を備えて構成される各々の抵抗分圧回路における分圧比は、高圧電圧VUの電圧値、および分圧回路21から電圧比較回路22、タイミング調整回路23を介して出力される駆動信号VGQ2、VGQ4の伝播遅延、および駆動される主トランジスタQ2および補助トランジスタQ4の導通状態が遷移する際の遅延等を加味して設定される。
電圧比較回路22は、高圧電圧VUおよび電圧VXが、分圧回路21において抵抗分圧された上で電圧比較される。電圧VXの分圧電圧値が、高圧電圧VUの分圧電圧値を下回ることにより、出力信号COがローレベルに反転して出力される。
タイミング調整回路23は、電圧比較回路22の出力信号COとPWM制御信号VQ4PWMとが入力されるアンドゲートA1を備え、駆動信号VGQ4が出力される。また、PWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMが入力されるオアゲートO1を備えている。オアゲートO1の出力信号は、駆動信号VGQ4が入力されるインバータゲートI1の出力信号と共に、アンドゲートA2に入力され、アンドゲートA2から駆動信号VGQ2が出力される。タイミング調整回路23においては、昇圧PWM制御回路4から出力されるPWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMと共に、電圧比較回路22の出力信号COが入力されている。
PWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMで定められる、主トランジスタQ2および補助トランジスタQ4の導通期間を基本として、電圧比較回路22からの出力信号COに応じて、主トランジスタQ2の導通タイミングと、補助トランジスタQ4の非導通タイミングとが調整される。接続点Xの電圧VXと高圧電圧VUとが、分圧回路21において抵抗分圧され、接続点Xの電圧VXの分圧値が高圧電圧VUの分圧値に比して、低下したことに応じて、出力信号COがローレベルに反転するところ、ローレベルの出力信号COにより駆動信号VGQ4がローレベルになると共に、インバータゲートI1を介して駆動信号VGQ2がハイレベルになる。PWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMの何れか一方はハイレベルであり、オアゲートO1の出力信号がハイレベルであるからである。ローレベルの駆動信号VGQ4に応じて補助トランジスタQ4が非導通となると共に、ハイレベルの駆動信号VGQ2に応じて主トランジスタQ2が導通する。
ここで、ソフトスイッチング動作の要請からは、主トランジスタQ2が導通したことに応じて補助トランジスタQ4が非導通となることが好ましいところ、タイミング調整回路23において、駆動信号VGQ4がローレベルに遷移した後、ゲート回路2段分の遅延を経て、駆動信号VGQ2がハイレベルに遷移する。これは、主トランジスタQ2および補助トランジスタQ4の状態遷移における遅延を加味したことによるタイミング調整の結果である。すなわち、導通状態にある補助トランジスタQ4を非導通状態に遷移する際の遅延が、非導通状態にある主トランジスタQ2を導通状態に遷移する際の遅延に比して長い場合である。例えば、主トランジスタQ2、補助トランジスタQ4をバイポーラトランジスタで構成する場合、非導通状態のトランジスタを導通する際の遅延に比して、導通状態のトランジスタを非導通とする際の遅延が長いことは、導通状態におけるキャリアの蓄積現象等から説明することができる。
タイミング調整回路23において出力される駆動信号VGQ2、VGQ4の出力タイミングは、回路定数や素子特性等に応じて、適宜に遅延を調整することにより調整することができる。これにより、補助トランジスタQ4が導通した後、主トランジスタQ2が確実なソフトスイッチング動作により導通するまでの時間を、必要最小限の時間にすることが可能である。
図3は、図2の昇圧スイッチング調整回路2において、PWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWM、および電圧VXに対して、出力される駆動信号VGQ2、VGQ4の関係を示す真理値表である。図3では、主トランジスタQ2がソフトスイッチングにより導通するタイミングに関する真理値表を示しており、主トランジスタQ2の導通に先立ち補助トランジスタQ4を導通させるため、PWM制御信号VQ4PWMがハイレベルの状態にある場合について示している。接続点Xの電圧VXが低い電圧レベル(Lo)であれば、電圧比較回路22の出力信号COはローレベルであり、PWM制御信号VQ2PWMの論理レベルに関わらず、駆動信号VGQ2がハイレベル、駆動信号VGQ4がローレベルとなる。電圧VXが高い電圧レベル(Hi)であれば、電圧比較回路22の出力信号COはハイレベルであり、PWM制御信号VQ2PWMの論理レベルに関わらず、駆動信号VGQ2がローレベル、駆動信号VGQ4がハイレベルとなる。
図4には実施形態の動作波形の一例を示す。実施形態では、図1のDC−DCコンバータにおいて昇圧制御が行われる場合を例に説明をしている。インダクタL1への電磁エネルギの蓄積は主トランジスタQ2の導通により行われるところ、主トランジスタQ2の導通に先立ち補助トランジスタQ4が導通状態におかれる。主トランジスタQ2の導通状態へのスイッチングをソフトスイッチングにて行うためである。昇圧PWM制御回路4から出力されるPWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMは、PWM制御信号VQ2PWMのハイレベル遷移に先立ちPWM制御信号VQ4PWMがハイレベルに遷移し、予め定められている所定時間T0の経過後、PWM制御信号VQ2PWMがハイレベルに反転し、PWM制御信号VQ4PWMがローレベルに反転する信号として出力される。予め定められている所定時間T0は固定時間として制御される。
PWM制御信号VQ4PWMがハイレベルに遷移すると、駆動信号VGQ4がハイレベルに反転して補助トランジスタQ4が導通する。この時点では、接続点Xの電圧VXは略高圧電圧VUに等しい高い電圧の状態であり、図2における出力信号COがハイレベルにあるからである。補助トランジスタQ4の導通により、インダクタL4および補助トランジスタQ4を介して基準電圧に向かって、インダクタ電流IL1がバイパスされると共に、コンデンサC2等の容量成分に蓄積されている蓄積電荷が基準電圧に放出される。このときの電流の時間傾きは、インダクタL4のインダクタンス値(L4)および電圧VXの電圧値に依存することは前述のとおりである。
コンデンサC2等の蓄積電荷が放出されてしまうことに応じて、電圧VXは降下する。電圧VXの降下が高圧電圧VUに基づく参照電圧を下回ることにより、電圧比較回路22(図2)の出力電圧COがローレベルに反転する。ローレベルの出力信号COに応じて、駆動信号VGQ2、VGQ4が反転する。
インダクタンス値(L4)および電圧VXの電圧値で決定される電流の時間傾きと、コンデンサC2等の容量成分の容量値等により、電圧VXが低下して電圧比較回路22の出力信号COがローレベルに反転するまでの時間Tは様々に異なる場合がある。しかしながら、この場合でも、分圧回路21における抵抗分圧比や論理ゲートによる信号遅延、および回路素子特性に伴う動作遅延等に応じて、遷移タイミングを適宜に調整することができ、所望のタイミングで、主トランジスタQ2の導通遷移と、補助トランジスタQ4の非導通遷移を行うことができる。
これにより、補助トランジスタQ4の導通期間である時間Tを必要最小限の時間に短縮することができ、補助トランジスタQ4の導通損失を低減することができる。
ここで、主トランジスタQ2、および補助トランジスタQ4は、主スイッチ、および補助スイッチの一例である。また、昇圧スイッチング調整回路2における、分圧回路21が分圧部の、電圧比較回路22が電圧比較部の、タイミング調整回路23がタイミング調整部の一例である。このとき、分圧回路21と電圧比較回路22とを備えて電圧検出部の一例となっている。更に、高圧電圧VUが出力電圧の一例であり、PWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMが導通制御信号の一例である。
図2乃至図4においては、図1のDC−DCコンバータのうち、昇圧制御において機能する昇圧スイッチング調整回路2に関して、回路図を提示して説明したが、降圧制御において機能する降圧スイッチング調整回路1に関しても、同様な回路構成とすることができる。降圧制御の場合では、主トランジスタQ1に対して補助トランジスタQ3が備えられている。主トランジスタQ1の導通に先立ち補助トランジスタQ3を導通させることにより、主トランジスタQ1のコレクタ・エミッタ端子間の印加電圧を低減することが行なわれる。補助トランジスタQ3の導通により、接続点Xの電圧VXは高圧電圧VUに近づいていく。
従って、降圧スイッチング調整回路1は、昇圧スイッチング調整回路2(図2)における電圧比較回路22の入力端子を逆転させればよい。すなわち、高圧電圧VUの抵抗分圧電圧を非反転入力端子に入力し、電圧VXの抵抗分圧電圧を反転入力端子に入力する。PWM制御信号VQ2PWM、VQ4PWMに代えて、降圧PWM制御回路3から出力されるPWM制御信号VQ1PWM、VQ3PWMを入力してやれば、駆動信号VGQ2、VGQ4に代えて、駆動信号VGQ1、VGQ3が出力されて、主トランジスタQ1、補助トランジスタQ3が駆動制御される。
以上詳細に説明したとおり、本実施形態に係るDC−DCコンバータによれば、分圧回路21を経て電圧比較回路22により、主トランジスタQ2の電流径路端子間であるコレクタ・エミッタ端子間の印加電圧を、接続点Xの電圧VXとして検出することができる。主トランジスタQ2の導通に先立ち、電圧VXを低下させることを目的として、補助トランジスタQ4が導通する。補助トランジスタQ4の導通により電圧低下する電圧VXの電圧値を検出して、主トランジスタQ2の端子間電圧が充分に小さくなるタイミングを的確に把握することができる。このタイミングに応じて主トランジスタQ2を導通してやれば、確実なゼロボルトスイッチング動作により主トランジスタQ2のソフトスイッチングを行い、スイッチング損失の低減を図ることができる。
補助トランジスタQ4の導通により主トランジスタQ2のコレクタ端子電圧である電圧VXを低下させる際、DC−DCコンバータにおける、回路定数や動作条件、更に、回路素子のばらつきや実装に伴う寄生負荷成分等により、電圧VXの電圧低下時間割合が異なる場合にも、電圧VXが基準電圧端子TSの電圧に充分に近づくタイミングを確実に検出することができる。主トランジスタQ2の導通を確実にソフトスイッチング動作により行うことができ、スイッチング損失を充分に低減することができる。
主トランジスタQ2のコレクタ端子の電圧である電圧VXが基準電圧端子TSの電圧値に充分に近づく電圧値になることを検出して主トランジスタQ2のソフトスイッチングを行うことができるので、主トランジスタQ2のソフトスイッチングのために電圧VXを僅少な電圧値に維持しておく補助トランジスタQ4の導通期間を必要最小限の時間に留めることができる。補助トランジスタQ4の導通損失を低減することができる。
固定された高圧電圧VUを参照電圧としてソフトスイッチングを行う場合に、降圧PWM制御回路3や昇圧PWM制御回路4において予め定められる条件で、スイッチングのタイミングが最適化されたとしても、各種の条件が異なってしまう場合に、主トランジスタQ2のコレクタ端子の電圧VXが略基準電圧に至る以前にスイッチング動作が行われてしまったり、基準電圧に至った後においてもスイッチングが行なわれず、補助トランジスタQ4の導通が継続したりする事態を回避することができる。
また、昇圧スイッチング調整回路2から出力される駆動信号VGQ2、VGQ4の出力タイミングは、回路定数や素子特性等に応じて、分圧回路21において電圧VXまたは/および高圧電圧VUの分圧日を調整することにより、または/およびタイミング調整回路23において適宜に遅延を付加することにより、調整することができる。これにより、補助トランジスタQ4が導通した後、主トランジスタQ2が確実なソフトスイッチング動作により導通するまでの時間を、必要最小限の時間にすることが可能である。
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、本実施形態においては、電圧比較回路22に入力するために、分圧回路21を備えており、接続点Xの電圧VX、および高圧電圧VUを、共に抵抗分圧する場合を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。少なくとも何れか一方については、抵抗分圧を行うことなく、そのまま電圧比較回路22に入力する構成とすることも可能である。
また、本実施形態においては、電圧比較回路22における参照電圧として、高圧電圧VUを使用する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。高圧電圧VUに代えて、低圧電圧VLや、その他のコンバータ内の電流径路の電圧を使用することも可能である。
また、本実施形態では、昇降圧DC−DCコンバータに適用する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。降圧型DC−DCコンバータ、昇圧型DC−DCコンバータにも適用可能であることは言うまでもない。更に、昇降圧DC−DCコンバータに適用する場合、本実施形態とは制御方式の異なるタイプのコンバータに対しても同様に適用可能である。