JP2006089468A - タンパク質分画デバイス用緩衝液およびそれを用いるタンパク質の分画方法 - Google Patents

タンパク質分画デバイス用緩衝液およびそれを用いるタンパク質の分画方法 Download PDF

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Abstract

【課題】血清、血漿等をはじめとする2種以上のタンパク質を含有する溶液から高分子量のタンパク質を除去し、低分子量タンパク質画分を簡便で短時間に高回収率で得るデバイス用緩衝液及びそれを用いるタンパク質の分画方法の提供。
【解決手段】有機溶媒を含有するタンパク質分画デバイス用緩衝液であって、中空糸膜が充填されたモジュールを具備したタンパク質分画デバイスに使用する、有機溶媒の含有量が1容量%以上30容量%未満であるタンパク質分画デバイス用緩衝液を用いたタンパク質の分画方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、少なくとも2種以上のタンパク質を含有する溶液を分画する際に用いるタンパク質分画デバイス用緩衝液、およびそれを用いて少なくとも2種以上のタンパク質を含有する溶液を分画する方法に関する。
近年、ポストゲノム研究として、プロテオーム解析研究(プロテオミクス)が注目されている。遺伝子産物であるタンパク質は、疾患の病態に直接リンクしていると考えられることから、タンパク質を網羅的に調べるプロテオーム解析の研究成果は診断と治療に広く応用できると期待されている。しかも、ゲノム解析では発見できなかった病因タンパク質や疾患関連因子を多く発見できる可能性が高いとみられている。
プロテオーム解析が急速に進展したのは、技術的には質量分析装置(mass spectrometer:MS)による高速構造分析が可能となってきたことが大きい。MALDI−TOF−MS(matrix assisted laser desorption ionization time−of−flight mass spectrometry)等の実用化によって、ポリペプチドのハイスルースループット超微量分析が可能となり、従来検出し得なかった微量タンパク質までが同定可能となり、疾患関連因子の探索に強力なツールとなってきている。
プロテオーム解析を臨床へと応用する第一の目的は、疾患によって誘導される、あるいは消失するバイオマーカータンパク質を発見することである。バイオマーカーは病態に関連して挙動するため、診断のマーカーとなり得るほか、創薬ターゲットとなる可能性も高い。すなわち、プロテオーム解析の成果は、特定遺伝子よりも診断マーカーや創薬ターゲットとなる可能性が高いため、ポストゲノム時代の診断と治療の切り札(エビデンス)技術となり、同定されたバイオマーカーは患者の薬剤応答性評価や副作用発現予測という直接的に患者が享受しうる利益につながることから、いわゆるテーラーメード医療(オーダーメード医療)の推進に大きな役割を果たすといえる。
臨床研究にプロテオーム解析を導入する場合(臨床プロテオミクス)、大量の検体を迅速、確実に解析することが求められており、しかも臨床検体は微量で貴重なため、高分解能・高感度・高機能測定を迅速に行う必要がある。この大きな推進力となったのは質量分析(mass spectrometry)であり、質量分析装置のもつ超高感度でハイスループットであるという特性の貢献するところが大きい。しかしながら、その手法や機器が急速に改良されてきてはいるものの、現在のところプロテオーム解析が臨床現場で簡便かつ迅速に実施できる状況にはないのが実状である。
その原因のひとつに、臨床検体の前処理が必要となることが挙げられる。質量分析にかける前の処理として、臨床検体のタンパク質を分画し精製する必要があるが、この処理には数日かかるのが実態であり、さらには前処理の操作が煩雑かつ経験を要することが、臨床への応用の大きな障害となっている。少量の血液や体液から全身の疾患の診断や病態管理ができるならば、その有用性は極めて大きいものの、血清、血漿中に含まれるタンパク質の多様性のために、多くの課題を生じているのが現状である。
ヒトタンパク質は10万種以上あるとも推定されているが、血清中に含まれるタンパク質だけでも約1万種類にものぼるといわれ、それらすべてを合わせた血清中濃度は約60〜80mg/mLである。血清中の高含量タンパク質は、アルブミン(分子量66kDa)、免疫グロブリン(150〜190kDa)、トランスフェリン(80kDa)、ハプトグロビン(>85kDa)、リポタンパク質((数100kDa)等であり、いずれも大量(>mg/mL)に存在する。一方、病態のバイオマーカーや病因関連因子と考えられているペプチドホルモン、インターロイキン、サイトカイン等の生理活性タンパク質の多くは、極微量(<ng/mL)しか存在せず、その含有量は高分子量の高含量成分に比べると、実にナノ〜ピコレベルである。タンパク質の大きさという観点では、タンパク質全種類の70%以下は分子量60kDa以下であり、上記の極微量なバイオマーカータンパク質はいずれもこの領域に含まれる場合がほとんどである(例えば非特許文献1)。これらのタンパク質は、腎臓を通過して尿中に一部排泄されるため、血液のみならず尿を検体として測定することも可能である。
一般的な血清学的検査でプロテオーム解析を行うには、病因関連の微量成分検出の妨害となるアルブミン、IgGといった高含量、高分子量の成分を除外することが必須となる。これらのタンパク質を分離する手段として、現状では高速液体クロマトグラフィー(liquid chromatography:LC)や二次元電気泳動(Two−dimensional polyacrylamide gel electrophoresis:2D PAGE)が用いられているが、これらの作業だけでも1〜2日を要する。この所要時間は、MALDI−TOF−MSやESI−MS(electrospray ionization mass spectrometry)等の数分という分析時間に比べて非常に長く、MSのハイスループットという大きな利点が臨床プロテオーム解析では十分発揮できずにいる。このため、医療現場で診断や治療のためにできるだけ短時間に分析結果がほしいという目的には、現時点では実用性に極めて乏しいと言わざるを得ず、日常の臨床検査にMSを利用しにくいひとつの大きな原因になっている。
この点を解決すれば、臨床プロテオーム解析による臨床検査の診断の迅速性は飛躍的に向上できると期待できる。具体的には、LCや2D−PAGEの代替となるような、微量の検体で高速に目的タンパク質群を分画・分離できるデバイスがあればよい。
アルブミンを対象物質として、すでに実用化されている製品あるいは開示されている技術としては、ブルー色素などのアフィニティーリガンドを固定化した担体(例えば、日本ミリポア社:“Montage Albumin Deplete Kit(登録商標)”、日本バイオ・ラッド社:Affi−Gel Blue(登録商標)ゲル)、高分子量成分を遠心分離ろ過によって分画する遠心管形式の濾過濃縮ユニット(例えば、日本ミリポア社:“アミコンウルトラ(登録商標)”、ザルトリウス社:“ビバスピン”)、電気泳動原理によって分画する方法(例えば、グラディポア社:“Gradiflow(登録商標)”システム)、Cohnのエタノール沈殿などの沈殿法やクロマトグラフィーによって分画する方法(例えば非特許文献2)などがある。また、アルブミンと免疫グロブリンG(IgG)を同時に除去する製品も上市されている(アマシャムバイオサイエンス社:Albumin and IgG Removal kit)。しかしながら、これらはいずれも分離分画性能が不十分であったり、微量サンプルには不適当であったり、サンプルが希釈されてしまったり、固定化抗体の溶出がみられたり、あるいは質量分析等に障害となる成分が混入したりするなどの問題点があるのが実状である。
液体を循環可能な濾過装置としては、らせん状に巻かれた平膜をハウジングに装填したろ過装置が開示されている(例えば特許文献1)。
タンパク質を変性させ、タンパク質間の相互作用を解離させる目的で、20容量%アセトニトリルを含むpH8.2の緩衝液50mLで希釈した10μLのヒト血清を、分画分子量30,000の平膜を具備した遠心式のフィルターユニットを用いて3,000×gで遠心し、回収される濾液が処理前の90%以上になるまで濾過処理を行った結果、濾液に低分子量タンパク質が回収され、その質量分析を行うと340個以上のタンパク質が含まれていたという報告がある(非特許文献3)。しかしながら、遠心式フィルターユニットに装填された平膜は、一般的に分画分子量の分布が非常にブロードであり、分画分子量以上の物質が多量透過することがある上に、遠心式フィルターユニットは個々の製品のばらつきが大きく、非特許文献3で示されるデータにおいても、同一条件で得られる結果にばらつきがみられていることから、この方法によって微量タンパク質の発現量を比較する網羅的プロテオーム解析を行うのは困難といえる。
サンプル中のタンパク質が基材へ吸着するのを抑制するために、タンパク質を含有する溶液を用いて、予め基材表面を被覆しておく方法がある。一般的には、ウシ血清アルブミン(BSA)溶液や大日本製薬(株)の“ブロックエース(登録商標)”が用いられる。しかしながら、タンパク質を解析する場合、被覆に用いたタンパク質がサンプル中に混入することがあるため、この方法は好ましくない。
アンダーソン・NL(Anderson NL),アンダーソン・NG(Anderson NG)著,「ザ・ヒューマン・プラズマ・プロテオーム:ヒストリー・キャラクター・アンド・ダイアグノスティック・プロスペクツ(The human plasma proteome:history,character,and diagnostic prospects)」,モレキュラー・アンド・セルラー・プロテオミクス(Molecular & Cellular Proteomics),(米国),ジ・アメリカン・ソサエティー・フォー・バイオケミストリー・アンド・モレキュラー・バイオロジー・インコーポレーテッド(The American Society for Biochemistry and Molecular Biology,Inc.),2002年,第1巻,p845−867. 日本生化学会編,「新生化学実験講座(第1巻)タンパク質(1)分離・精製・性質」,東京化学同人,1990年 ラダークリシュナ エス ティルマライ(Radhakrishna S. Tirumalai)ら著,「キャラクタリゼーション オブ ザ ロー モレキュラー ウェイト ヒューマン シーラム プロテオーム(Characterization of the Low Molecular Weight Human Serum Proteome)」,モレキュラー・アンド・セルラー・プロテオミクス(Molecular & Cellular Proteomics),(米国),ジ・アメリカン・ソサエティー・フォー・バイオケミストリー・アンド・モレキュラー・バイオロジー・インコーポレーテッド(The American Society for Biochemistry and Molecular Biology,Inc.),2003年,第2巻,p1096−1103. 特開平04−330921号公報
上述のとおり、臨床プロテオーム解析を行う際には、妨害となる過剰量の高分子量タンパク質を除去する必要がある。2D−PAGEや液体クロマトグラフィーなどの高分離能ではあるが煩雑で時間がかかる手法よりも、簡便で短時間に高い分離能を有するデバイスが求められている。また、濾過による分画処理を行う際に、分画試料中に高分子量タンパク質の混入を避けるために、シャープな孔径を有する膜を装填したデバイスを使用することが求められている。さらに、分画された微量タンパク質がデバイスに吸着することを防ぐために、吸着によるタンパク質のロスを最小限にする方策が求められている。
しかしながら、ごく最近でも、Affi−Gel Blueゲルを用いた方法(N.Ahmed et al.,Proteomics,On−line版,2003/06/23)や“Gradiflow”システムを用いた方法(D.L.Rothemund et al.(2003),Proteomics,vol.3,pp279−287)などが有効なアルブミン除去法として発表されているだけで、簡便かつ高分離能を有する新規な手法は報告されていない。
血清中からのアルブミンの除去を指標として求められる手法の条件としては、血清成分を高速で流せること、高機能化のための微細加工がなされていること、著しく高価でないこと等である。これらの課題を解決する装置やデバイスは現在のところ見当たらず、まさに本発明が解決しようとする課題である。
本発明に係る水溶液中タンパク質成分を分離する方法およびタンパク質分画装置は以下のような構成をとる。
「(1)有機溶媒を含有するタンパク質分画デバイス用緩衝液であって、中空糸膜が充填されたモジュールを具備したタンパク質分画デバイスに使用するタンパク質分画デバイス用緩衝液。」
「(2)タンパク質を含有する溶液を分画する際に、予めタンパク質分画デバイスの回路に充填しておく(1)に記載のタンパク質分画デバイス用緩衝液。
「(3)有機溶媒の含有量が1容量%以上30容量%未満である(1)または(2)に記載のタンパク質分画デバイス用緩衝液。」
「(4)タンパク質を含有する溶液を分画する際に、該溶液を希釈する用途で使用する(1)〜(3)のいずれかに記載のタンパク質分画デバイス用緩衝液。」
「(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のタンパク質分画デバイス用緩衝液を用いて、タンパク質を含有する溶液をタンパク質の分子量の大きさで分画するタンパク質の分画方法。」
「(6)低温で操作する(5)に記載のタンパク質の分画方法。」
本発明によると、少なくとも2種以上のタンパク質を含有する溶液からタンパク質を分画する際に、有機溶媒を添加した緩衝液を用い、モジュール、送液装置、およびそれらを接続するチューブから構成される循環回路を有するタンパク質分画デバイスを使用することで、高い回収率で目的のタンパク質を得ることができる。
本発明は、有機溶媒を含有するタンパク質分画デバイス用緩衝液であって、中空糸膜が充填されたモジュールを具備したタンパク質分画デバイスに使用するタンパク質分画デバイス用緩衝液である。
本発明でいうタンパク質分画とは、何らかの分離操作を行うことにより、少なくとも2種以上のタンパク質を含有する溶液からタンパク質を組成の異なる2群あるいはそれ以上の群に分別することを示す。このとき、分離操作の手法は特に限定されないが、例えば膜による分離、吸着による分離等が好ましく用いられる。特に、血清中の微量タンパク質発現量を比較する網羅的プロテオーム解析においては、前処理によるばらつきができるだけ少ない方法が求められることから、平膜と比べて細孔の孔径分布がシャープな中空糸膜を用いてタンパク質分画を行うことが好ましい。
本発明でいうタンパク質分画デバイスとは、モジュール、送液装置、およびそれらを接続するチューブから構成される循環回路を有するものを指す。少なくとも2種以上のタンパク質を該タンパク質分画デバイスの回路に循環させ、分画された溶液を回収することで、効率よくタンパク質を分画することができる。ここでいう循環とは、モジュールから出た液をチューブ回路を介して分離膜モジュールに戻す送液方法のことを示す。
本発明でいうモジュールとは、少なくとも2種以上のタンパク質を含有する溶液を処理すると、ある分子量以上のタンパク質は捕捉され、それ以下の分子量のタンパク質は通過させるもののことを指し、ハウジング内に分離手段となる物質を装填してなるものである。このハウジングには、分離される溶液が流入する入口および流出する出口と分離された溶液が流出する分離液流出口が備えられている。上記ハウジングの素材は特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルペンテン等のプラスチックあるいはガラス類が好適に利用される。
本発明では、モジュールに中空糸膜が充填される。血清中の微量タンパク質の発現量を比較する網羅的プロテオーム解析においては、サンプル間のばらつきができるだけ少ない方法が求められることから、平膜と比べて細孔の孔径分布がシャープな中空糸膜を用いる。さらに、中空糸膜は平膜と比べて単位容積あたりの表面積が大きいため、モジュールを小型化できる利点もある。ここでモジュールのハウジングに充填する中空糸膜は、充填した際に脱離が起きないこと、また充填物由来の溶出物がないことが必須である。
本発明では、モジュールに中空糸膜を充填する。以下、モジュールに中空糸膜を充填する方法を説明するが、これに限定されない。
ガラス製あるいはプラスチック製の筒状のモジュールケースの内筒部分に束ねた中空糸膜を収め、モジュールケースの両端をエポキシ系、ウレタン系、シリコーン系の接着剤あるいはポッティング剤により固定する。このとき、中空糸膜の中空部分が閉塞しないように固定する。また、束ねた中空糸膜どうしが密着している場合、その隙間から液体が漏出する可能性があることから、中空糸膜どうしが密着しないように固定することが好ましい。
本発明でいうタンパク質分画デバイス用緩衝液は、緩衝液に水溶性有機溶媒を添加したものを指す。ここでいう緩衝液とは、緩衝作用、すなわちタンパク質溶液と混合したときに急激なpH変動を来さない溶液のことを指す。
本発明における緩衝液の組成は、炭酸塩緩衝液、炭酸水素塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液等が好適に用いられる。タンパク質を分画した後、質量分析で解析する場合、凍結乾燥機やエバポレーターを用いて溶媒成分を除去することにより、サンプルを濃縮する場合を考慮すると、本発明における緩衝液は、サンプル中に塩類が残留しない点から揮発性であることが好ましい。その条件を満たすものとしては、アンモニウム塩を用いて調製した緩衝液が挙げられ、その組成は例えば炭酸水素アンモニウム−炭酸アンモニウム、酢酸−酢酸アンモニウム、ギ酸−ギ酸アンモニウム等が挙げられる。例えば炭酸水素アンモニウム緩衝液を用いて分画し、得られたサンプルを凍結乾燥すると、アンモニウム塩はアンモニアと二酸化炭素、水となり揮発する。
本発明におけるタンパク質分画デバイス用緩衝液には、有機溶媒が添加されていることが必須である。有機溶媒を添加することで、中空糸膜、チューブ等の回路や分画した溶液を回収する容器へタンパク質が吸着する現象を著しく抑制することができる。
有機溶媒を添加した緩衝液を用いて、少なくとも2種以上のタンパク質を含有する溶液をタンパク質分画デバイスにより分画すると、モジュールやチューブ、分画した溶液の回収容器にタンパク質が吸着するのを抑制し、分画効率および回収率が向上できる。また、有機溶媒を添加した緩衝液を用いて、該循環回路により少なくとも2種以上のタンパク質を含有する溶液を分画することで、処理によるばらつきを格段に小さくすることが可能となり、例えばタンパク質の発現量を比較する網羅的プロテオーム解析に利用できる。さらに、中空糸膜が充填されたモジュールを具備したタンパク質分画デバイスに有機溶媒を添加した緩衝液を使用することで、中空糸膜のシャープな分画特性により、タンパク質の高い分画効率および回収率が得られる上、分画されたタンパク質がモジュールや中空糸膜、チューブ、回収容器に吸着することが抑制できる。
本発明で用いられる有機溶媒は、水系緩衝液に溶解可能であり、例えばアセトニトリル、ピリジン等の含窒素化合物、1,4−ジオキサン、プロピレンオキシド等の環状エーテル化合物、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の一価アルコール類、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロゾルブ)などのセロソルブ類、2−アミノエタノール(モノエタノールアミン)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類が利用できるが、このうち非アルコール系の有機溶媒を用いることがより好ましい。また、緩衝液中に含まれる有機溶媒は1種類でもよく、2種類以上でもよい。
本発明におけるタンパク質分画デバイス用緩衝液には、さらに、少なくとも2種以上のタンパク質を含有する溶液を分画する前に、タンパク質分画デバイス用緩衝液を予めタンパク質分画デバイスの回路内に充填しておくことにより、回路内へのタンパク質の吸着を未然に防ぐことができるため好ましい。
有機溶媒を添加した緩衝液をタンパク質分画デバイスの回路に予め充填しておくことで、分画する試料中のタンパク質がモジュールや中空糸膜、チューブ、回収容器に吸着するのを抑制し、分画効率および回収率を向上できる。
本発明におけるタンパク質分画デバイス用緩衝液に含まれる有機溶媒濃度は1容量%以上30容量%未満が好ましく、3容量%以上25容量%以下がより好ましい。いっそう好ましくは、5容量%以上20容量%以下である。濃厚なタンパク質溶液を有機溶媒を添加した緩衝液で希釈する場合、緩衝液に過剰量の有機溶媒が混入すると、その影響でタンパク質溶液が凝集することがあるため、適度な有機溶媒濃度であることが好ましい。
緩衝液に添加する有機溶媒の濃度を1容量%以上30容量%未満とすることで、タンパク質の凝集、変性を最小限に抑えつつ、タンパク質がモジュール、中空糸膜、チューブ、回収容器へ吸着するのを抑制し、分画効率および回収率を向上できる。
さらに、血清タンパク質のプロテオーム解析の前処理用途で本発明におけるタンパク質分画デバイス用緩衝液を用いて中空糸膜でタンパク質分画を行う場合、有機溶媒が過剰量混入するとタンパクが凝集することがあり、それらは濾過されないため、結果的に分画処理液に含まれるタンパク質の数が減少する可能性がある。したがって、タンパク質が凝集しない程度に有機溶媒を添加することが好ましい。タンパク質が凝集しない程度に有機溶媒を添加することで、中空糸膜、回路、回収容器等へタンパク質が吸着するのを抑制しつつ、タンパク質の回収率を格段に向上させることがさらに可能となる。
本発明のタンパク質分画デバイス用緩衝液は、タンパク質を含有する溶液を分画する際に、該溶液を希釈する用途で使用することが好ましい。
少なくとも2種以上のタンパク質を含有する溶液を希釈する場合に、有機溶媒を添加した緩衝液を用いることで、分画する試料中のタンパク質がモジュールや中空糸膜、チューブ、回収容器に吸着するのを抑制し、分画効率および回収率を向上できる。
タンパク質分画デバイスによりタンパク質溶液を処理する場合、モジュールを多段組み合わせて使用することも好ましい。そうすることで、1本のモジュールで除去しきれなかった高分子量タンパク質を次の段のモジュールで除去することができ、分画処理後のサンプルのS/N比を向上させることが可能となる。ここでタンパク質分画デバイスに装填するモジュールの数は特に限定されないが、1〜100本が好ましく、2〜10本がより好ましい。また、これらのモジュールは直列に接続されていてもよく、並列に接続されていてもよい。
本発明のタンパク質の分画方法では、タンパク質を含有する溶液をタンパク質の分子量の大きさで分画する。
タンパク質分画デバイス用緩衝液を用いて、少なくとも2種以上のタンパク質を含有する溶液を分子量の大きさで分画することで、高い分画効率および回収率が得られる。さらに、分画処理によるばらつきを格段に小さくすることが可能となり、例えばタンパク質の発現量を比較する網羅的プロテオーム解析に利用できる。
分画したタンパク質溶液を回路内で濃縮する目的で、タンパク質分画デバイスの回路に濃縮膜を設置することも好ましい。このとき、濃縮膜の分画分子量は、回収対象となるタンパク質の分子量に応じて選択する。膜の孔径には分布があり、実際は分画分子量より大きな分子が通過できる場合が多いため、使用する膜の分画分子量は回収対象となるタンパク質群の中で最も小さい分子量の1/2〜1/4であることが好ましい。膜の分画分子量が大きすぎると回収対象のタンパク質が漏洩する可能性が高いため、逆に小さすぎると透過性能が低くなり圧力上昇や処理速度低下の原因となるため、それぞれ好ましくない。濃縮膜の形態は特に限定されないが、平膜と比べて孔径分布がシャープであり、濃縮効率が高いことから中空糸膜を用いるのが好ましい。なお、平膜を用いて遠心操作によりタンパク質を分離する方法は、本発明におけるタンパク質分画デバイスの概念に含まれない。
本発明におけるタンパク質分画デバイス用緩衝液の塩濃度は、特に限定されないが、1mM〜1Mが好ましく、10mM〜500mMがより好ましい。なお、本発明におけるタンパク質分画デバイス用緩衝液の水素イオン濃度(pH)は4.0〜8.0が好ましい。pHが4.0未満、あるいは8.0を超えると、タンパク質の変性作用が強くなるため好ましくない。
本発明におけるタンパク質分画デバイス用緩衝液の沸点は、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。いっそう好ましくは60℃以下である。沸点が低いほど、凍結乾燥やエバポレーターによる濃縮が容易であり、さらには溶媒除去時に低温で操作できればタンパク質の変性を最小限に抑えることができるため好ましい。
本発明におけるタンパク質分画デバイスに具備する循環回路用の送液装置は、一定速度での送液が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ローラーポンプ(ATTO(株)製“ペリスタポンプ”(登録商標)、東京理化器械(株)製マイクロチューブポンプなど)、ダイヤフラム式ポンプ、高速液体クロマトグラフィー等で用いられる送液ユニット、シリンジポンプなどのポンプを用いることができる。
本発明におけるタンパク質分画デバイスを用いる場合、循環回路の流速は、0.1〜100mL/minが好ましく、1〜20mL/minがより好ましい。いっそう好ましくは、2〜10mL/minである。一方、分画処理する試料をタンパク質分画デバイスに注入する際の流速は、0.01〜10mL/minが好ましく、0.05〜1mL/minがより好ましい。いっそう好ましくは、0.1〜0,8mL/minである。
本発明におけるタンパク質分画デバイスの回路を構成するチューブは特に限定されないが、例えば、シリコンチューブ、タイゴンチューブ、テフロン(登録商標)チューブ、ファーメド(登録商標)チューブ、バイトン(登録商標)チューブ、ポリエチレンチューブ、ポリプロピレンチューブ、ポリ塩化ビニルチューブなどが挙げられる。ローラーポンプを用いる場合、ローラーとの接触部分はフレキシブルかつ強度の高いチューブを用いることが好ましい。タンパク質の吸着を抑制するために、チューブの内表面に親水化あるいは疎水化処理を施すことも好ましい。揮発性の溶媒を使用する場合には、分画処理中に溶媒が揮発して回路内に気泡が発生するのを防ぐために、ガス透過性の低いチューブを用いることが好ましく、表面をコーティング等で加工することにより、ガス透過性を低下させたチューブを使用することも好ましい。
本発明におけるタンパク質分画デバイス用緩衝液を用いて、上記のタンパク質分画デバイスでタンパク質溶液を分画する場合、低温で処理することが好ましい。ここでいう低温とは、タンパク質溶液中のプロテアーゼの活性が低下する温度のことを指す。よって、分画時の処理温度は0〜20℃が好ましく、2〜10℃がより好ましい。
低温で処理することで、例えば血清、血漿中に含まれるプロテアーゼの活性を抑制し、その結果回収液中への高分子量タンパク質の断片の混入を抑制することが可能となり、低分子量タンパク質の分画効率および回収率が向上できることを示す。一方、室温以上の高温で処理すると、プロテアーゼ活性が高くなりタンパク質の分解が進行する場合があるため、分画処理液に高分子量タンパク質の断片ペプチドが混入し、質量分析においてノイズになることがあり、分画処理中に血清タンパク質の変性等が生じることがあるので、好ましくない。
以下、実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
東レ株式会社製血液透析器(TS1.6ML)の両端の樹脂接着部分を切り、ポリスルホン製中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の寸法は、内直径200μm、膜厚40μmであり、非対称構造を有していた。この中空糸膜を100本束ね、中空糸膜の中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をガラス管モジュールケースに固定し、ミニモジュールを作製した。ミニモジュールの直径は約7mm、長さは約17cmであり、一般的な中空糸膜型透析器同様に透析液ポートを2個有している。作製したミニモジュールの中空糸膜およびモジュール内部を蒸留水にて洗浄した。
炭酸水素アンモニウム(シグマアルドリッチジャパン)および炭酸アンモニウム(シグマ)をそれぞれミリQ水に溶解させて50mMに調製し、両者を混合してpHを8.0に合わせ、50mM炭酸水素アンモニウム緩衝液(pH8.0)(以下、緩衝液A)を調製した。その溶液に、アセトニトリル濃度が10容量%となるようにアセトニトリル(シグマアルドリッチジャパン、高速液体クロマトグラフィー用)を添加しよく混和し、本発明のタンパク質分画デバイス用緩衝液として用いた(以下、10%アセトニトリル添加緩衝液A)。以下の操作は4℃に設定された低温室にて行った。2カ所にT字管を組み込んだ回路(全長65cm)をシリコンチューブ(アズワン、内径2mm、外径4mm)を用いて作製し、1つのT字管に圧力計を接続し、もう1つのT字管には、1カ所の液体の注入口を設置し、端部に10%アセトニトリル添加緩衝液Aを充填したシリンジを取り付けたシリコンチューブ(全長15cm、内径2mm、外径4mm)を接続した。シリンジをマイクロシリンジポンプ(KD Scientific)に、シリコンチューブを送液ポンプ(東京理化器械(株)マイクロチューブポンプ)にそれぞれセットした。圧力計との接続チューブおよびシリンジとの接続チューブを鉗子で止めてから、シリコンチューブの一端を10%アセトニトリル添加緩衝液Aの入った容器につけ、送液ポンプを作動させてシリコンチューブ内を10%アセトニトリル添加緩衝液Aで満たし、流速を5mL/minに調整した。モジュールの一端をシリコンチューブと接続し、送液ポンプを作動させて10%アセトニトリル添加緩衝液Aを中空糸膜内側に送液し、中空部分の気泡を取り除いた。送液ポンプを停止させてから、もう片方のシリコンチューブの端部をモジュールの端部と接続し、循環回路を形成した。10%アセトニトリル添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4.5mLをシリンジ(テルモ(株))に取り、シリンジの先に翼付静注針(テルモ(株))を取り付けて、マイクロシリンジポンプにセットした。希釈血清を針の先まで充填し、気泡がないことを確認した後、針先を回路に設けた液体の注入口に刺して回路と接続し、タンパク質分画デバイスを完成した。送液ポンプを作動させて5mL/minで循環回路に10%アセトニトリル添加緩衝液Aを循環させてから、シリンジポンプを作動させて0.2mL/minで希釈血清を押し出して分画処理を開始した。このとき、モジュールから濾過された処理液を50mLのポリプロピレン製チューブに回収した。20分後、4mLの希釈血清を押し出した時点でシリンジポンプを止め、すぐに10%アセトニトリル添加緩衝液Aを充填したシリンジを取り付けたシリンジポンプを0.2mL/minで作動させ、処理を続けた。分画開始から120分後、シリンジポンプ、送液ポンプをともに停止させた。このとき、回収液の容量は約24mLであった。回収液を凍結乾燥し、緩衝液Aに再溶解させた。この溶液のヒト血清アルブミン(HSA)、β2ミクログロブリン(β2MG)、インターロイキン−8(IL−8)の各濃度を酵素免疫測定法(ELISA)で定量した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.009%と非常に低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ51.2%、17.4%回収された。
実施例2
緩衝液Aにアセトニトリル濃度が12.5容量%となるようにアセトニトリル(シグマアルドリッチジャパン、高速液体クロマトグラフィー用)を添加しよく混和後、脱気し、本発明のタンパク質分画デバイス用緩衝液として用いた(以下、12.5%アセトニトリル添加緩衝液A)。12.5%アセトニトリル添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法によりモジュールで処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.012%と非常に低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ52.3%、19.7%回収された。
実施例3
緩衝液Aにアセトニトリル濃度が15容量%となるようにアセトニトリル(シグマアルドリッチジャパン、高速液体クロマトグラフィー用)を添加しよく混和後、脱気し、本発明のタンパク質分画デバイス用緩衝液として用いた(以下、15%アセトニトリル添加緩衝液A)。15%アセトニトリル添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法で処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.028%と非常に低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ54.3%、24.3%回収された。
実施例4
緩衝液Aにアセトニトリル濃度が17.5容量%となるようにアセトニトリル(シグマアルドリッチジャパン、高速液体クロマトグラフィー用)を添加しよく混和後、脱気し、本発明のタンパク質分画デバイス用緩衝液として用いた(以下、17.5%アセトニトリル添加緩衝液A)。17.5%アセトニトリル添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法で処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.039%と低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ55.9%、25.1%回収された。
実施例5
緩衝液Aにアセトニトリル濃度が20容量%となるようにアセトニトリル(シグマアルドリッチジャパン、高速液体クロマトグラフィー用)を添加しよく混和後、脱気し、本発明のタンパク質分画デバイス用緩衝液として用いた(以下、20%アセトニトリル添加緩衝液A)。20%アセトニトリル添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法で処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0046%と低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ59.4%、28.8%回収された。 実施例6
緩衝液Aにアセトニトリル濃度が7.5容量%となるようにアセトニトリル(シグマアルドリッチジャパン、高速液体クロマトグラフィー用)を添加しよく混和後、脱気し、本発明のタンパク質分画デバイス用緩衝液として用いた(以下、7.5%アセトニトリル添加緩衝液A)。7.5%アセトニトリル添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法で処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.008%と非常に低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ41.9%、17.1%回収された。
実施例7
緩衝液Aにアセトニトリル濃度が5.0容量%となるようにアセトニトリル(シグマアルドリッチジャパン、高速液体クロマトグラフィー用)を添加しよく混和後、脱気し、本発明のタンパク質分画デバイス用緩衝液として用いた(以下、5.0%アセトニトリル添加緩衝液A)。5.0%アセトニトリル添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法で処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.007%と非常に低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ34.1%、16.2%回収された。
実施例8
緩衝液Aにアセトニトリル濃度が2.5容量%となるようにアセトニトリル(シグマアルドリッチジャパン、高速液体クロマトグラフィー用)を添加しよく混和後、脱気し、本発明のタンパク質分画デバイス用緩衝液として用いた(以下、2.5%アセトニトリル添加緩衝液A)。2.5%アセトニトリル添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法で処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.004%と非常に低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ20.5%、11.7%回収された。
実施例9
50mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)(以下、緩衝液B)を調製し、アセトニトリル濃度が10容量%となるようにアセトニトリル(シグマアルドリッチジャパン、高速液体クロマトグラフィー用)を添加しよく混和後、脱気し、本発明のタンパク質分画デバイス用緩衝液として用いた(以下、アセトニトリル添加緩衝液B)。アセトニトリル添加緩衝液Bで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法で処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.035%と非常に低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ9.4、13.2%回収された。
実施例10
緩衝液Aに濃度が10容量%となるように1,4−ジオキサン(シグマアルドリッチジャパン)を添加しよく混和した(以下、ジオキサン添加緩衝液A)。ジオキサン添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法で処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.022%と非常に低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ58.7%、20.5%回収された。
実施例11
緩衝液Aに濃度が10容量%となるようにアセトン(シグマアルドリッチジャパン)を添加しよく混和した(以下、アセトン添加緩衝液A)。アセトン添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法で処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.037%と非常に低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ57.5%、21.2%回収された。
実施例12
緩衝液Aに濃度が10容量%となるようにエタノール(シグマアルドリッチジャパン)を添加しよく混和した(以下、エタノール添加緩衝液A)。エタノール添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを実施例2と同様の方法で処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は0.023%と非常に低かったのに対し、回収対象であるβ2MG、IL−8はそれぞれ46.8%、18.9%回収された。
比較例1
緩衝液Aを回路内に充填し、緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清4mLを0.2mL/minで回路内に注入して実施例2と同様にして分画処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は検出限界以下と非常に低かったが、回収対象であるβ2MG、IL−8もそれぞれ5.90%、検出限界以下であり、低回収率であった。
比較例2
緩衝液Bを回路内に充填し、緩衝液Bで4倍希釈したヒト血清4mLを0.2mL/minで回路内に注入して実施例2と同様にして分画処理した。その結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率は検出限界以下と非常に低かったが、回収対象であるβ2MG、IL−8もそれぞれ検出限界以下、1.83%であり、低回収率であった。
比較例3
実施例5と同様にして調製した20%アセトニトリル添加緩衝液Aで4倍希釈したヒト血清(シグマ)4mLを、平膜を装填した遠心濃縮ユニット(ザルトリウス社ビバスピン20)にのせ、3,000×gで膜上に残った液が0.4mL程度となるまで遠心した。濾液に含まれるHSA、β2MG、IL−8の各濃度をELISAにより測定した結果、表1の通り除去対象であるHSAの回収率が3.8%と高く、回収対象であるβ2MG、IL−8の回収率もそれぞれ21.8%、10.5%と低く、十分な分画性能を示さなかった。
Figure 2006089468
本発明におけるタンパク質分画デバイス用緩衝液を用いて、タンパク質分画デバイスにより血清、血漿等をはじめとするタンパク質溶液を分画することで、高分子量のタンパク質を除去し、低分子量のタンパク質を効率よく回収することができる。したがって、本発明におけるタンパク質分画デバイス用緩衝液は、プロテオーム解析を行う際の前処理工程において非常に有用なものである。

Claims (6)

  1. 有機溶媒を含有するタンパク質分画デバイス用緩衝液であって、中空糸膜が充填されたモジュールを具備したタンパク質分画デバイスに使用するタンパク質分画デバイス用緩衝液。
  2. タンパク質を含有する溶液を分画する際に、予めタンパク質分画デバイスの回路に充填しておく請求項1に記載のタンパク質分画デバイス用緩衝液。
  3. 有機溶媒の含有量が1容量%以上30容量%未満である請求項1または2に記載のタンパク質分画デバイス用緩衝液。
  4. タンパク質を含有する溶液を分画する際に、該溶液を希釈する用途で使用する請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質分画デバイス用緩衝液。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質分画デバイス用緩衝液を用いて、タンパク質を含有する溶液をタンパク質の分子量の大きさで分画するタンパク質の分画方法。
  6. 低温で操作する請求項5に記載のタンパク質の分画方法。
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