JP2006088201A - 金属ガラスと結晶金属との高エネルギービームによる溶接方法 - Google Patents

金属ガラスと結晶金属との高エネルギービームによる溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高エネルギー照射による金属ガラスと通常の結晶金属との間に強靭な接合を実現すること
【解決手段】金属ガラス1と結晶金属2との接合界面に高エネルギービーム3を走査して形成される溶融層4の組成をガラス形成能を有する組成比の範囲内の組成とする金属ガラスと結晶金属との溶接方法において、高エネルギービーム3の走査域を金属ガラス1と結晶金属2との突合せ面Fから金属ガラス1側へシフトし、金属ガラス1と結晶金属2との共融によって形成される溶融層4の成分組成をガラス形成能を有する組成比の範囲内に入るようにシフト量を調整する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ナノ結晶金属材料及びアモルファス金属(以下、金属ガラスと称する。)と通常の結晶構造を有する金属(以下、結晶金属と称する。)との接合、とくに、電子ビームあるいはレーザービームのような高エネルギービーム走査による溶接に関する。
金属材の溶接に際して、熱源として電子ビームあるいはレーザービームのような高エネルギービームの照射は、加熱域が限られ、加熱域の昇温は急速であり、熱影響域が少ないことから各種の金属材の突合せ精密溶接に利用されている。
先に、下記非特許文献1には、本願の発明者である河村その他によって、高エネルギービームが局部的な急速加熱と急速冷却に適していることから、溶接のための熱源として使用してZr基の金属ガラスとZr、Ti等の結晶金属との溶接に適用したことが報告されている。
そして、金属ガラスと結晶金属との溶接に際しては、接合界面に金属間化合物が形成し、これが良好な溶接接合を阻害していること、Zr基の金属ガラスと相手結晶材がZrの場合は、冷却速度の調整によっては良好な溶接界面が形成されるのに対して、相手結晶材がTiの場合は、接合界面に金属間化合物が形成して溶接が困難であるということが報告されている。
そしてさらに、その考察として、金属ガラスと結晶金属との間の溶接の可否は、その界面に形成される溶融層の組成が、接合基材である金属ガラスの形成能を有する組成比の範囲内にあるか否かに係っており、相手の結晶材がZrの場合には、その界面に形成される溶融層は、基材であるZr系金属ガラスのガラス相形成のために必要な組成範囲に入りやすいために良好な溶接部を形成しやすいこと、また、相手の結晶材がTiの場合には、ガラス相形成のために必要な範囲に入る組成の溶融層が得にくいことによるものであることが示されている。
その場合、例えば、金属ガラスがZr−Be−Ti−Cu−NiのようなZr系金属ガラスであり、接合相手側の結晶金属がZrのように金属ガラスと同じ系の金属であって金属ガラスを形成しやすいZrの場合には、Zrの溶解によって金属ガラスの溶融物が希釈されても「高いガラス形成組成領域」からずれることがなく、極端には突合せ面をビーム照射線としても双方の融点の関係から、金属ガラス側のみが優先的に溶融して接合されており、接合部での金属ガラスの結晶化は観察されず、高い靭性を有し、強固な接合部が形成できることが記載されている。
ところが、金属ガラスとTiのような金属ガラスを形成し難い結晶金属との突合せ溶接に電子ビーム溶接を適用すると、接合界面に結晶金属と金属ガラスとが共に融解し、脆い化合物相が形成し、強固な接合は得ることはできない。
また、下記特許文献1には、上記非特許文献1における考察の下で、金属ガラスと結晶金属との高エネルギービーム照射の走査速度を規定し、溶接のための溶融域をガラス化する冷却速度を得ることが記載されている。
Materials Transactions, Vol.42. No.12 (2001),p.2649-2651 特開2004−66294号公報
本発明の第1の課題は、高エネルギービーム照射による金属ガラスと通常の結晶金属との間に強靭な接合を実現することにある。
具体的には、高エネルギービーム照射による金属ガラス基材と通常の結晶金属との溶接に際して、溶接界面に形成される溶融層の組成を金属ガラス基材のガラス相形成のために必要な組成範囲とするための溶接条件を見出すことにある。
本発明は、上記課題を、金属ガラスと結晶金属との接合界面に高エネルギービームを走査して形成される溶融層の組成をガラス形成能を有する組成比の範囲内の組成とする金属ガラスと結晶金属との溶接方法において、高エネルギービームの走査域を金属ガラスと結晶金属との突合せ面から金属ガラス側へシフトし、金属ガラスと結晶金属との共融によって形成される溶融層の成分組成をガラス形成能を有する組成比の範囲内に入るようにシフト量を調整することによって達成した。
すなわち、図1は、金属ガラス1と結晶金属2との接合界面への高エネルギービーム3の照射による溶融層(ビード)4の形成状態を誇大化して示す。
同図に示すように、高エネルギービーム3を金属ガラス1と結晶金属2との突合せ面Fより金属ガラス1側へシフトし、金属ガラス1の溶解量を結晶金属2の溶解量よりも多くすることによって溶接界面における溶融層4の成分組成をガラス形成能を有する組成比の範囲内に入るようにする。
この状態を、図2に示す結晶化のTTT曲線によって説明する。同図において、縦軸は温度T(K)を、横軸は時間t(s)をlog によって示す。Aはガラス相(過冷却液相も含む)であり、Bは結晶相であり、tは結晶化開始曲線Cのノーズ時間である。
溶融層を、図2に示すTTT曲線において、融点Tm温度以上の溶融状態から冷却曲線Rに沿って急冷したとき、この際の冷却曲線Rが結晶化開始曲線Cのノーズ時間tより大きい方にある場合(冷却曲線Rが結晶化開始曲線Cと交差する場合)、結晶体としての金属間化合物が形成されることになる。
これに対して、本発明に基づいて、図1に示すように、高エネルギービーム3を金属ガラス1と結晶金属2との突合せ面Fより金属ガラス1側へシフトすることによって、溶融層4の成分組成がガラス形成能を有する組成比の範囲内に入り、結晶化開始曲線C'のノーズ時間t'も矢印に示すように大きい方にシフトし、冷却曲線Rは結晶化開始曲線C'と交差することはなくなり、溶接部に結晶金属が形成されることはない。
この結晶化開始曲線Cのノーズ時間tは、溶融層4の成分組成がガラス形成能を有する組成比の範囲内に安定的に入るようにするためには、2.0秒以上とすることが好ましい。
ここで、金属ガラスの結晶化のTTT曲線には、液体から冷却する場合のものと、ガラス固体を再加熱する場合のものがあり、後者は前者よりも約1桁短時間側にある。すなわち、溶接する場合には、溶融部よりも熱影響部(融点まで加熱されなかった部分)が結晶化しやすいと言うことである。溶接時に熱影響部が結晶化しないためには、金属ガラスは、ガラス固体を再加熱する場合のTTT曲線のノーズ時間tが0.2秒以上必要であり、これは液体から冷却する場合のTTT曲線のノーズ時間tが2.8秒以上というガラス形成能を持つ金属ガラスに相当する。
上述のように、溶融層の結晶化のノーズ時間tが2.0秒以上あれば、溶融層は再アモルファス化することになるが、金属ガラス側の熱影響部が結晶化してしまう事態も考えられる。金属ガラス側の熱影響部が結晶化しないためには、金属ガラスが、液体から冷却する場合のTTT曲線のノーズ時間tが2.8秒以上というガラス形成能を持つことが必要である。
本発明によって、接合部に形成される溶融層を高いガラス形成組成領域内の組成とすることができ、冷却後、接合界面に脆い金属間化合物相の形成を防止でき、両者間に強固な接合界面を形成できる。
以下、本発明の実施形態を実施例に基づいて説明する。
金属ガラス(BMG)としてZr系金属ガラス板を、結晶金属としてTi結晶金属板を使用し電子ビームによって突合せ溶接を行うに当たって、電子ビームの走査線を突合せ面から金属ガラス側へのシフトし、そのシフト量を0μmと200μmさらに400μmに変化して溶接状態を確認した。
Zr系の金属ガラスとしてat%で41Zr−23Be−14Ti−12Cu−10Niからなる組成を有する板厚が2.5mmの板材を、また、Ti結晶金属板として同一厚みの純Ti板を用いた。
電子ビームの照射は、加速電圧が60kV,ビーム電流値を16mA,溶接速度(電子ビームの走査速度)は66mm/s、溶接入熱量を18J/mmに設定した。
その結果、シフト量が、0μmと200μmの場合、外見的には、金属ガラス側に500μmの巾に金属間化合物の形成が確認され、溶接部のハンマーリングテストの結果も思わしいものではなかった。これに対して、溶接線を突合せ面から400μmシフトさせた場合には、溶接部はガラス相であり、金属間化合物の存在は確認されず、何らの溶接欠陥も観察されなかった。そして、接合部は高い靱性を有するものであった。
以下、このシフト量の変化によるそれぞれの接合部に形成されたガラス相と金属間化合物結晶体の形成過程についての考察結果を述べる。
図3は、その溶接の形態を模式的に示す図である。図3(a)において、アは金属ガラス(BMG)と結晶板Tiとの突合せ面を示す。この突合せ面アは、溶接に際しての電子ビームの走査位置のシフト量が0μmの場合に相当する。また、図3(b)において、イは電子ビームの走査位置の金属ガラス側へのシフト量が200μmの場合を示し、さらに、図3(c)において、ウはシフト量が400μmの場合を示す。Mは、電子ビームの照射によって形成した溶融層を示し、この溶融層Mの冷却によって固体化された溶接部を形成した。
図4は、使用したZr−Be−Ti−Cu−NiからなるZr系金属ガラスの組成を三元組織図として示す。同図において、ZrとTi以外の成分は総括してXとして示している。BMG域は、高ガラス形成能を有する組成範囲を示し、上記電子ビームの照射条件の下での急冷条件の下でアモルファス組成、すなわち、金属ガラスを形成する組成範囲を示す。
言い換えれば、シフトされた電子ビームの走査によって形成される突合せ面のZr系金属ガラスとTi結晶体の溶融混合体によって形成される溶融層Mの組成が、この三元組織図に示すBMG域内に入るときは冷却固化された溶接部はガラス相を形成することになる。ところが、溶融層Mの組成がこのBMG域から外れた場合には、金属間化合物を形成し良好な溶接は得られない。
同図において、ア点、イ点、ウ点は、それぞれ、シフト量が0μm、200μm、400μmの場合の組成を示す。その中、ア点とイ点における組成は高ガラス形成能を有するBMG域の範囲外にあり、その冷却固相は結晶体を形成する。これに対して、シフト量が400μmのウ点の組成は高ガラス形成能を有するBMG域内にあり、その冷却固相は金属ガラス基体と同じ高ガラス形成能を有し、したがって溶接部も基体と同様の優れた靱性を有する。
図5は、シフト量が0μm、200μm、400μmの場合のそれぞれア,イ,ウにおける結晶化のTTT図を示す。同図において、そのノーズ時間t(ア),t(イ),t(ウ)に示すように、冷却曲線Rは、t(ア)とt(イ)を横切り、固相組織は結晶体である金属間化合物体を形成する。これに対して、シフト量が400μmの場合には、そのノーズ時間t(ウ)は、矢印に示すように、大きい方に移動し、冷却曲線Rは、この場合のノーズ時間t(ウ)と交差することはなく、ガラス相を形成する。この場合のノーズ時間tの臨界点は2.0秒であることがわかった。
本発明の金属ガラスとしては、Zr系のみならず、Pt系,Pd系,Fe系等のアモルファス組織を有する金属が、また、溶接対象の結晶金属としては、単一組織のみならす合金体としての結晶金属が適用できる。金属ガラスは特殊な性質を持っているので、金属ガラスと結晶金属とを溶接接合することによって、組み合わせて、ある特殊な機能を持つ部品を製作することができる。また、金属ガラスの水素透過性を利用して、水素系(システム)用の部品の製作をすることができる。
金属ガラスと結晶金属との接合界面への高エネルギービームの照射による溶融層(ビード)の形成状態を誇大化して示す。 本発明を説明するための結晶化のTTT曲線を示す。 金属ガラス(BMG)と結晶金属(Ti)との溶接の形態を模式的に示す。 Zr−Ti−X系の金属ガラスの三元組織図を示す。 高エネルギービームの金属ガラス側へのシフト量が0μm、200μm、400μmの場合の結晶化のTTT曲線を示す。
符号の説明
1 金属ガラス
2 結晶金属
3 高エネルギービーム
4,M 溶融層
F,ア 突合せ面
A ガラス相
B 結晶相
C 結晶化開始曲線
結晶化開始曲線のノーズ時間
R 冷却曲線

Claims (3)

  1. 金属ガラスと結晶金属との接合界面に高エネルギービームを走査して形成される溶融層の組成をガラス形成能を有する組成比の範囲内の組成とする金属ガラスと結晶金属との溶接方法において、
    高エネルギービームの走査域を金属ガラスと結晶金属との突合せ面から金属ガラス側へシフトし、このシフト量を調整する金属ガラスと結晶金属との高エネルギービームによる溶接方法。
  2. 高エネルギービームの走査域の金属ガラスと結晶金属との突合せ面から金属ガラス側へのシフト量が、突合せ面に形成される溶融層の結晶化のTTT曲線のノーズ時間tが2.0秒以上になるガラス形成能を有する組成比の範囲内になる量である請求項1に記載の金属ガラスと結晶金属との高エネルギービームによる溶接方法。
  3. 金属ガラスが、液体から冷却する際の結晶化のTTT曲線のノーズ時間tが2.8秒以上のガラス形成能を持つものである請求項1又は2に記載の金属ガラスと結晶金属との高エネルギービームによる溶接方法。
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