JP2006084869A - 硬化性組成物及びそれを用いた画像形成材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 感度に優れ、アルカリ現像液中で現像カス(不溶物)が発生しない画像形成材料、及びそのような画像形成材料の記録層として有用な硬化性組成物を提供する
【解決手段】 (A)芳香環を隣接して有する複素環構造をメチン鎖で結合した構造を有するシアニン色素であって、CO2H、SO3H、及びPO3Hから選ばれる酸性基を少なくとも1つ有し、且つ原子数9個以上の原子団を含む直鎖状連結部分を有する置換基を、両末端の複素環構造及び/又はメチン鎖上に少なくとも2つ有する赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤、又は酸発生剤と、(C)ラジカル重合性化合物、又は酸架橋剤と、を含有する硬化性組成物、及び、該硬化性組成物を含有する記録層を有する画像形成材料。
【選択図】 なし

Description

本発明は、3次元光造形やホログラフィー、平版印刷用版材、フレキソ印刷に用いられる合成樹脂凸版、カラープルーフ、フォトレジスト、及びカラーフィルター等の画像形成材料、インク、塗料、並びに、接着剤等に用いられる光・熱などのエネルギー付与により硬化する硬化性組成物に関し、特に、コンピュータ等のデジタル信号から赤外線レーザを用いて直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能なネガ型平版印刷版原版の記録層として好適に用いられる硬化性組成物、及びそれを用いた画像形成材料に関する。
近年におけるレーザの発展は目ざましく、特に波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザ(以下、「赤外線レーザ」という場合がある。)は、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっており、平版印刷の分野においても、コンピュータ等のデジタルデータにより直接印刷版を製版する際の記録光源として非常に有用である。それに伴い、これら各種レーザ光に感応する画像形成材料についても種々研究がなされている。
通常、赤外線の露光により記録可能なネガ型の画像形成材料としては、赤外光のエネルギーを吸収して熱に変換する赤外線吸収剤と、赤外線吸収剤から得られた熱によりラジカルを発生するラジカル発生剤と、発生したラジカルを開始剤として重合しうるラジカル重合性化合物と、を含有する重合性組成物からなる記録層を有し、露光部においてラジカル重合性化合物の重合反応が生起・進行することにより記録層が硬化され、画像を形成する重合系の画像形成材料や、赤外光のエネルギーを吸収して熱に変換する赤外線吸収剤と、赤外線吸収剤から得られた熱により酸を発生する酸発生剤と、発生した酸を開始剤として架橋しうる酸架橋剤と、を含有する酸架橋性組成物からなる記録層を有し、露光部において酸架橋剤の架橋反応が生起・進行することにより記録層が硬化され、画像を形成する酸架橋系の画像形成材料などが知られている。
このようなネガ型の画像形成材料は、赤外光のエネルギーにより記録層の可溶化を起こさせるポジ型の画像形成材料に比較して感度が低い傾向があり、その結果、露光部における記録層の硬化反応が不充分となり、耐刷性にも問題が生じていた。従って、このような赤外線記録光源に対し、感応性の高い組成物、即ち、赤外線の露光により現像液に対する溶解性が大きく低下するネガ型の硬化性組成物が求められている。
感度向上を目的とした重合系の硬化性組成物としては、例えば、エチレン性不飽和化合物の重合反応を利用した感材において、還元型添加剤を添加した感材(例えば、特許文献1参照。)、ジチオ化合物等を添加した感材(例えば、特許文献2参照。)などが知られている。しかしながら、これらいずれの感材においても実用上の感度を満足させるものではない。
一方、赤外線吸収剤の構造を制御することで、上記問題点を解決しようとする試みもなされており、そのような感材としては、例えば、両末端の芳香環の少なくとも一方に、電子吸引性基又は重原子含有置換基を持つシアニン色素を使用した感材(例えば、特許文献3参照。)や、両末端の窒素原子上に特定の置換基を有するシアニン色素を用いた感材(例えば、特許文献4参照。)等が知られている。これにより、一定の特性向上は見られるものの、前記特定のすべてを考慮すれば、さらなる改良の余地があった。
特開2002−82429公報 特開2002−90985公報 特開2002−278057公報 特開2003−270781公報
上記従来の技術の欠点を考慮してなされた本発明の目的は、感度に優れ、アルカリ現像液中で現像カス(不溶物)が発生しない画像形成材料、及びそのような画像形成材料の記録層として有用な硬化性組成物を提供することにある。
本発明者等は鋭意検討の結果、硬化性組成物の成分の一つとして用いられる赤外線吸収剤として、特定の置換基を特定の部位に有するシアニン色素を用いることで、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、請求項1に係る本発明の硬化性組成物は、(A)芳香環を隣接して有する複素環構造をメチン鎖で結合した構造を有するシアニン色素であって、CO2H、SO3H、及びPO3Hから選ばれる酸性基を少なくとも1つ有し、且つ原子数9個以上の原子団を含む直鎖状連結部分を有する置換基を、両末端の複素環構造及び/又はメチン鎖上に少なくとも2つ有する赤外線吸収剤と、、(B)ラジカル発生剤、又は酸発生剤と、(C)ラジカル重合性化合物、又は酸架橋剤と、を含有することを特徴とする。
また、請求項2に係る本発明の画像形成材料は、アルミニウム支持体上に、(A)芳香環を隣接して有する複素環構造をメチン鎖で結合した構造を有するシアニン色素であって、CO2H、SO3H、及びPO3Hから選ばれる酸性基を少なくとも1つ有し、且つ原子数9個以上の原子団を含む直鎖状連結部分を有する置換基を、両末端の複素環構造及び/又はメチン鎖上に少なくとも2つ有する赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤、又は酸発生剤と、(C)ラジカル重合性化合物、又は酸架橋剤と、を含有する記録層を有することを特徴とする。
なお、以下においては、上記(A)成分である赤外線吸収剤を、適宜「特定赤外線吸収剤」と称して説明する場合がある。
本発明においては、上記シアニン色素の構造が、下記一般式(I)で表される構造であることが好ましい。
Figure 2006084869
一般式(I)中、R1、R2は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、Ar1、Ar2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族基、又はヘテロ環基を表し、Y1、Y2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基、又は−CH=CH−基を表し、Qは、ペンタメチン基、又はヘプタメチン基を表し、X-は、アニオンを表す。
なお、R1又はR2として、或いは、Ar1、Ar2、又はQ上に、CO2H、SO3H、及びPO3Hから選ばれる酸性基を少なくとも1つ有し、且つ原子数9個以上の原子団を含む直鎖状連結部分を有する置換基(以下、適宜「特定置換基」と称する。)を、少なくとも2つ有する。
さらに、上記シアニン色素が、下記一般式(II)で表される構造であることがより好ましい。
Figure 2006084869
一般式(II)中、R1、R2、Ar1、Ar2、Y1、Y2、X-は、前記一般式(I)と同義である。R3、R4、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、R5、R6は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、互いに結合して環構造を形成してもよい。R9、R10は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、互いに結合して環構造を形成してもよい。
なお、R1〜R10として、或いは、Ar1又はAr2上に、特定置換基を少なくとも2つ有する。
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推測される。
本発明に用いられる特定赤外線吸収剤は、i)両末端の複素環構造及び/又はメチン鎖上に、特定置換基を少なくとも2つ有しているため、特定置換基に含まれるCO2H、SO3H、又はPO3H(酸性基)により、特定赤外線吸収剤がアルミニウム支持体に強く吸着される性質を持つ。また、ii)特定置換基は、上記記酸性基を有し、且つ原子数9個以上の原子団を含む直鎖状連結部分を有する長い構造であるため、特定赤外線吸収剤中に少なくとも2つ存在する当該構造同士が相互作用することにより、支持体に吸着した色素を特定方向に配向させ、会合状態を形成するのではないかと考えられる。
本発明の画像形成材料においては、上記2点に起因して、下記ごとく「支持体界面の色素濃度の向上」及び「会合による励起寿命の向上」が発揮されることで、高感度化したものと考えられる。
<支持体界面の色素濃度の向上>
支持体界面へ色素(特定赤外線吸収剤)が多く吸着することで、感光層(記録層)上部での色素濃度が低下する。このため露光時に膜底部まで充分に光が到達するため、界面がアルカリ現像液に溶出されない強い硬化膜を与うるものと考えられる。
<会合による励起寿命の向上>
色素(特定赤外線吸収剤)を配向させたことで、会合による高発光化(励起寿命の延長)が成されたものと考えられる。
一般に、色素は配向して会合することにより、吸収長波化かつ高発光化するか、若しくは、吸収短波化かつ低発光化することが知られている。これは色素同士が配向時に織り成す角度、更には分子構造や膜形成時の温湿度に依存するものである。
本発明における特定赤外線吸収剤は、酸性基により支持体界面にランダム方向で吸着された色素を、原子数9個以上の長い直鎖状の原子団(特定置換基)同士の間に働く相互作用により、界面上部で一定方向に配向させる機能を持つものである。(なお、これはアルミニウム基板やPET等色素が吸着不可能な基板に対し該シアニン色素を用いて後述の方法で記録層を形成し、その吸収スペクトルを比較することで会合しているかどうかを確認することができる。)
このため、特定赤外線吸収剤は、励起状態の寿命が延長され(高発光化)、開始系の高感度化が実現し、それに伴うラジカル重合性化合物の重合反応、又は酸架橋剤の架橋反応が速やかに進行、強固な硬化膜が得られるものと考えられる。
したがって、このような特定積が線吸収剤を含有する硬化性組成物を、記録層に用いた本発明の画像形成材料は、感度、及び耐刷性に優れるものと考えられる。
また、特定置換基は、極性が高く、水との親和性に優れるため、アルカリ現像液に対して溶解又は分散されやすく、現像中の現像カスの発生が抑制されるものと考えられる。
本発明によれば、感度に優れ、アルカリ現像液中で現像カス(不溶物)が発生しない画像形成材料、及びそのような画像形成材料の記録層として有用な硬化性組成物を提供することができる。
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、(A)芳香環を隣接して有する複素環構造をメチン鎖で結合した構造を有するシアニン色素であって、CO2H、SO3H、及びPO3Hから選ばれる酸性基を少なくとも1つ有し、且つ炭素数6以上の直鎖状の連結基を含む置換基を、両末端の複素環構造及び/又はメチン鎖上に少なくとも2つ有する赤外線吸収剤(特定赤外線吸収剤)と、(B)ラジカル発生剤、又は酸発生剤と、(C)ラジカル重合性化合物、又は酸架橋剤と、を含有することを特徴とする。
本発明の硬化性組成物は、(A)特定赤外線吸収剤、(B1)ラジカル発生剤、及び(C1)ラジカル重合性化合物、を含有する重合性組成物と、(A)特定赤外線吸収剤、(B2)酸発生剤、及び(C2)酸架橋剤、を含有する酸架橋性組成物と、に分けることができる。以下、これら重合性組成物、及び酸架橋性組成物の各成分について、順次詳細に説明する。
−重合性組成物−
本発明の硬化性組成物が重合性組成物には、(A)特定赤外線吸収剤、(B1)ラジカル発生剤、及び(C1)ラジカル重合性化合物、を必須成分とし、さらに、皮膜形成性向上などの目的で、(D1)バインダーポリマーを添加することが好ましい。このような重合性組成物は、赤外線吸収剤が吸収した赤外光のエネルギーによりラジカル発生剤が分解されてラジカルを発生し、発生したラジカルにより連鎖的にラジカル重合性化合物の重合反応が生起し、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像液に不溶となる。
〔(A)特定赤外線吸収剤〕
本発明の特徴的成分である(A)特定赤外線吸収剤は、芳香環を隣接して有する複素環構造をメチン鎖で結合した構造を持つシアニン色素であって、CO2H、SO3H、及びPO3Hから選ばれる酸性基を末端に少なくとも1つ有し、且つ原子数9個以上の原子団を含む直鎖状連結部分を有する置換基を、両末端の複素環構造及び/又はメチン鎖上に少なくとも2つ有することを特徴とする。
まず、特定置換基について説明する。
本発明に係る特定置換基とは、CO2H、SO3H、及びPO3Hから選ばれる酸性基を末端に少なくとも1つ有し、且つ原子数9個以上の原子団を含む直鎖状連結部分を有するものであれば特に制限はなく、さらにこれらの構造を複数有するものであってもよい。
なお、特定置換基における直鎖状連結部分とは、原子数9個以上の原子団を含んで構成され、シアニン色素構造と連結しうる部分を意味する。また、特定置換基における直鎖状連結部分としては、当該連結部分の一部に炭素数6以上の直鎖部分を少なくとも含んでいれば、当該直鎖部分の他に、脂肪族環、芳香環、複素環等の環構造や、分岐構造を含んでいてもよい。
特定置換基に含まれる直鎖状連結部分を構成する、原子数9個以上の原子団としては、非金属原子からなる多価の有機基であり、1から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものが好ましい。具体的には、置換若しくは非置換のアルキル、アルケニル、アラルキル、エーテル、アミド、ウレタン、ウレア、スルホンアミド、アリール、ヘテロアリール基を組み合わせたものが挙げられ、更に好ましくは下記の構造を1つ以上有するものを挙げることができる。
Figure 2006084869
また、上記原子団は置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホナト基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換オキシ基、置換スルホニル基、置換カルボニル基、置換スルフィニル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスホナト基、シリル基、ヘテロ環基が挙げられる。
特定置換基は、これらにより形成された置換基の末端に、前述酸性基を持つ構造が特定置換基の構造として好ましい。
特定置換基が有する酸性基は、CO2H、SO3H、及びPO3Hから選ばれ、好ましくはCO2H及びSO3Hであり、より好ましくはCO2Hである。
また、特定置換基としてじゃ、炭素数12以上の直鎖アルキル基、アミド基の末端とCO2H又はSO3Hと、の組み合わせが好ましく、直鎖アルキル基とCO2Hとの組み合わせが特に好ましい。
上記した特定置換基の直鎖状連結部分に含まれる原子団が9個以上必要な理由を説明する。本発明における特定赤外線吸収剤は、特定置換基の直鎖状連結部分に含まれる原子団が9個以上である際、該原子団同士に働く相互作用により特定置換基が平行に配列されるため、界面上部でシアニン色素部が平行配向し会合効果を得ていると推定される。しかし、原子団が8個以下であると、原子団同士に働く相互作用が充分でなく平行に配列する力が弱く、シアニン色素部が平行に配向しきれないため、会合効果が得られないと考えられる。
つまり特定赤外線吸収剤が平行に配向するのに充分な相互作用を得るために、特定置換基の直鎖状連結部分に含まれる原子団は9個以上で充分な長さが確保されることが好ましい。また、より好ましくは、該原子団が14個以上25個以下であり、更に好ましくは該原子団が直鎖アルキル基であるときである。
また、本発明における特定赤外線吸収剤が有する特定置換基の数は、2個以上であることが好ましい。この理由としては、上記した配向を起こすため特定赤外線吸収剤が、アルミニウム支持体界面に対し強く吸着する必要性があることが挙げられる。しかし、この数が多すぎると、現像処理後アルミニウム支持体界面に特定赤外線吸収剤が残存し、残色する問題が発生してしまう。よって、特定置換基の数として好ましくは2個以上、6個以下がより好ましく、更に好ましくは2個であるときである。
このような特定置換基を有する(A)特定赤外線吸収剤は、好ましくは、下記一般式(I)で表されるシアニン色素である。
Figure 2006084869
一般式(I)中、R1、R2は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、中でも、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基であることが好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族基、又はヘテロ環基を表し、好ましい芳香族基としては、ベンゼン環、及びナフタレン環が挙げられ、好ましいヘテロ環基としてはピリジン環、ピラジン環等が挙げられる。中でも、ベンゼン環又はナフタレン環が特に好ましい。
1、Y2は、それぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基、又は−CH=CH−基を表し、中でも、ジメチルメチレン基等のジアルキルメチレン基が好ましい。
Qは、ペンタメチン基、又はヘプタメチン基を表し、赤外線に対する波長適性と安定性の点からヘプタメチン基が好ましい。また、Qは、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、アリール基、オキシ基、及びイミニウム塩基より選択される基で置換されていても良く、好ましい置換基としてはジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基、フェニルチオ基等のアリールチオ基が挙げられる。
-は、アニオンを表す。好ましいX-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
なお、一般式(I)で表されるシアニン色素は、R1又はR2として、或いは、Ar1、Ar2、又はQ上に、前記特定置換基を少なくとも2つ有することを要する。
さらに、本発明においては、上記シアニン色素が、下記一般式(II)で表される構造であることが好ましい。
Figure 2006084869
一般式(II)中、R1、R2、Ar1、Ar2、Y1、Y2、X-は、前記一般式(I)と同義である。
3、R4、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、1価の有機基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基等が挙げられる。中でも、原料の入手性から、水素原子であることが好ましい。
5、R6は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、1価の有機基としては、炭素原子数1〜12の炭化水素基等が挙げられる。また、R5、R6は、互いに結合して環構造を形成しても良く、形成する環としては、5員環、又は6員環が好ましい。
9、R10は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、1価の有機基としては、置換基を有していても良い炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルキル基等が挙げられる。また、R9、R10は、互いに結合して環構造を形成しても良く、形成する環としては、フェニル基等の芳香族基が好ましい。
なお、一般式(II)で表される置換基は、R1〜R10として、或いは、Ar1又はAr2上に、特定置換基を少なくとも2つ有することを要する。
さらに、本発明において、最も好ましいシアニン色素の構造としては、下記一般式(III)、又は一般式(IV)で表されるものが挙げられる。
Figure 2006084869
一般式(III)又は一般式(IV)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、Ar1、Ar2、Y1、Y2、及びX-は、前記一般式(I)と同義である。
Ar5、Ar6は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族基を表す。
1、L2は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキレン基を表す。
11、R12、R13、R14は、それぞれ独立に特定置換基を表す。
また、本発明に係る特定赤外線吸収剤としては、一般式(I)〜(IV)で表される構造の、Ar1、Ar2上に、ハロゲン原子又はアルキル基を少なくとも1つ有し、且つ、R1及びR2、R11及びR12、或いは、R13及びR14のいずれかとして、特定置換基を2つ有するシアニン色素であることが最も好ましい。
以下に、本発明における(A)特定赤外線吸収剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2006084869
Figure 2006084869
Figure 2006084869
Figure 2006084869
Figure 2006084869
Figure 2006084869
Figure 2006084869
Figure 2006084869
Figure 2006084869
本発明に係る(A)特定赤外線吸収剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特定赤外線吸収剤の添加量としては、感度及び印刷時の非画像部への汚れを抑制する観点から、重合性組成物に含まれる全固形分に対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%の割合で添加することができる。
また、本発明の効果を損なわない範囲において、後述する汎用の赤外線吸収剤を併用することもできるが、その場合には、併用する汎用の赤外線吸収剤の含有量は全赤外線吸収剤全固形分中、40質量%以下であることが好ましい。
(併用可能な赤外線吸収剤)
前記(A)特定赤外線吸収剤と併用可能な赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収して熱エネルギーに変換する機能を有するものであれば、公知の分光増感色素又は染料、あるいは顔料を用いることができる。
<分光増感色素又は染料>
本発明に併用可能な赤外線吸収剤として好ましい分光増感色素又は染料は、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類、例えば(アントラキノン)、スクアリウム類、例えば(スクアリウム)、例えば、下記化合物等が挙げられる。
Figure 2006084869
より好ましい分光増感色素又は染料の例を以下に例示する。
特公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特公昭46−42363号公報記載のシアニン類。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特開平2−63053号記載のベンゾフラン色素。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特開平2−85858号公報、特開平2−216154号公報の共役ケトン色素。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特開昭57−10605号公報記載の色素、特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特開昭62−31844号公報、特開昭62−31848号公報、特開昭62−143043号公報記載のキサンテン系色素。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン。好ましい具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
また、増感色素として特に以下の赤外線吸収剤(染料或いは顔料)も好適に使用される。好ましい前記染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号公報等に記載されているシアニン染料、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
その他、本発明において好適に用いることのできるシアニン色素としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。また、具体例としては、以下に例示するものも挙げられる。
Figure 2006084869
Figure 2006084869
Figure 2006084869
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、さらに、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)公報に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号公報に記載のピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や、特公平5−13514号、同5−19702号公報に記載されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
また、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料、EP916513A2号明細書に記載のフタロシアニン系染料も好ましい染料として挙げることができる。
さらに、特願平10−79912号公報に記載のアニオン性赤外線吸収剤も、好適に使用することができる。アニオン性赤外線吸収剤とは、実質的に赤外線を吸収する色素の母核にカチオン構造がなく、アニオン構造を有するものを示す。例えば、(イ)アニオン性金属錯体、(ロ)アニオン性カーボンブラック、(ハ)アニオン性フタロシアニン、さらに(ニ)下記一般式(V)で表される化合物などが挙げられる。これらのアニオン性赤外線吸収剤の対カチオンは、プロトンを含む一価の陽イオン、あるいは多価の陽イオンである。
Figure 2006084869
ここで、(イ)アニオン性金属錯体とは、実質的に光を吸収する錯体部の中心金属及び配位子全体でアニオンとなるものを示す。
(ロ)アニオン性カーボンブラックは、置換基としてスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸基等のアニオン基が結合しているカーボンブラックが挙げられる。これらの基をカーボンブラックに導入するには、カーボンブラック便覧第三版(カーボンブラック協会編、1995年4月5日、カーボンブラック協会発行)第12頁に記載されるように、所定の酸でカーボンブラックを酸化する等の手段をとればよい。
(ハ)アニオン性フタロシアニンは、フタロシアニン骨格に、置換基として、先に(ロ)の説明において挙げたアニオン基が結合し、全体としてアニオンとなっているものを示す。
次に、前記(ニ)一般式(V)で表される化合物、について、詳細に説明する。前記一般式(V)中、G9はアニオン性置換基を表し、G10は中性の置換基を表す。(X10+は、プロトンを含む1〜m価のカチオンを表し、mは1ないし6の整数を表す。M5は共役鎖を表し、この共役鎖M5は置換基や環構造を有していてもよい。共役鎖M5は、下記式で表すことができる。
Figure 2006084869
式中、R80、R81、R82はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基を表し、これらは互いに連結して環構造を形成していてもよい。nは、1〜8の整数を表す。
前記一般式(V)で表されるアニオン性赤外線吸収剤のうち、以下のIRA−1〜IRA−5のものが、好ましく用いられる。
Figure 2006084869
また、以下のIRC−1〜IRC−44に示すカチオン性赤外線吸収剤も好ましく使用できる。
Figure 2006084869
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前記構造式中、T-は、1価の対アニオンを表し、好ましくは、ハロゲンアニオン(F-、Cl-、Br-、I-)、ルイス酸アニオン(BF4 -、PF6 -、SbCl6 -、ClO4 -)、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオンである。
前記アルキルスルホン酸のアルキルとは、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
また前記アリールスルホン酸のアリールとは、1個のベンゼン環からなるもの、2又は3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを表し、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基、を挙げることができ、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
また、以下のIRN−1〜IRN−9に示す非イオン性赤外線吸収剤も好ましく使用できる。
Figure 2006084869
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Figure 2006084869
前記例示化合物中、特に好ましいアニオン性赤外線吸収剤としてはIRA−1が、カチオン性赤外線吸収剤としてはIRC−7、IRC−30、IRC−40、及びIRC−42が、非イオン性赤外線吸収剤としてはIRN−9が挙げられる。
<顔料>
本発明に併用可能な顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
なお、本発明に係る重合性組成物の硬化反応を促進するために添加される赤外線吸収剤は、組成物中に他の成分とともに直接添加してもよいが、これに隣接する別の層を設けて、そこへ添加しても同様の効果を得ることができる。
特に、本発明に係る重合性組成物を平版印刷版原版のネガ型記録層の材料として使用する場合、該記録層と同一の層に添加してもよいし、別の層を設け、そこへ添加してもよいが、ネガ型平版印刷版原版を作製した際に、記録層の波長300nm〜1200nmの範囲における吸収極大での光学濃度が、0.1〜3.0の間にあることが、感度の観点から好ましい。光学濃度は赤外線吸収剤の添加量と記録層の厚みとにより決定されるため、所定の光学濃度は両者の条件を制御することにより得られる。記録層の光学濃度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの記録層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に記録層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
〔(B1)ラジカル発生剤〕
本発明に係る重合性組成物は、ラジカル発生剤を含有することを特徴とする。ラジカル発生剤とは、光及び/又は熱のエネルギーによってラジカルを発生し、後述の(C1)ラジカル重合性化合物の重合反応を開始、促進させる化合物を指す。
本発明において、好ましいラジカル発生剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(k)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(a)芳香族ケトン類
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格あるいはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
中でも、特に好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981記載のベンゾインエーテル化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特公昭47−22326記載のα−置換ベンゾイン化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特公昭47−23664記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483記載のジアルコキシベンゾフェノン、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特公昭60−26403、特開昭62−81345記載のベンゾインエーテル類、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特公平1−34242、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特開平2−211452記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特開昭61−194062記載のチオ置換芳香族ケトン、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特公平2−9597記載のアシルホスフィンスルフィド、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
特公平2−9596記載のアシルホスフィン、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
また、特公昭63−61950記載のチオキサントン類、特公昭59−42864記載のクマリン類等を挙げることもできる。
(b)オニウム塩化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(b)オニウム塩化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
一般式(1)中、Ar1とAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z2-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、カルボン酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
一般式(2)中、Ar3は、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z3-は(Z2-と同義の対イオンを表す。
式(3)中、R23、R24及びR25は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z4-は(Z2-と同義の対イオンを表す。
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、本願出願人が先に提案した特願平11−310623号明細書の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものや特願2000−160323号明細書の段落番号[0015]〜[0046]に記載されたもの、また、特願2000−266797号、特願2001−号177150号、特願2000−160323号、特願2000−184603号、特願2000−310808号、特願2002−265467号、特願2002−366539号記載の特定の芳香族スルホニウム塩化合物などを挙げることができる。
本発明において用いられるオニウム塩は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、さらに360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
(c)有機過酸化物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリイブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリイブチルパーオキサイド、ターシャリイブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリイブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリイブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−キサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ターシャリイブチルパーオキシアセテート、ターシャリイブチルパーオキシピバレート、ターシャリイブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリイブチルパーオキシオクタノエート、ターシャリイブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリイブチルパーオキシラウレート、ターシャリーカーボネート、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
中でも、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
(d)チオ化合物
本発明で用いられるラジカル発生剤として好ましい(d)チオ化合物としては、下記一般式(4)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
一般式(4)中、R26はアルキル基、アリール基又は置換アリール基を示し、R27は水素原子又はアルキル基を示す。また、R26とR27は、互いに結合して酸素、硫黄及び窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員ないし7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。
上記一般式(4)におけるアルキル基としては炭素原子数1〜4個のものが好ましい。またアリール基としてはフェニル、ナフチルのような炭素原子数6〜10個のものが好ましく、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に塩素原子のようなハロゲン原子、メチル基のようなアルキル基、メトシキ基、エトキシ基のようなアルコキシ基で置換されたものが含まれる。R27は、好ましくは炭素原子数1〜4個のアルキル基である。一般式(4)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記に示すR26及びR27を有する化合物が挙げられる。
Figure 2006084869
(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
(f)ケトオキシムエステル化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(f)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
(g)ボレート化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(g)ボレート化合物の例としては、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2006084869
一般式(5)中、R28、R29、R30及びR31は互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、又は置換もしくは非置換の複素環基を示し、R28、R29、R30及びR31はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R28、R29、R30及びR31のうち、少なくとも1つは置換もしくは非置換のアルキル基である。(Z5+はアルカリ金属カチオン又は第4級アンモニウムカチオンを示す。
上記R28〜R31のアルキル基としては、直鎖、分枝、環状のものが含まれ、炭素原子数1〜18のものが好ましい。具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。また置換アルキル基としては、上記のようなアルキル基に、ハロゲン原子(例えば−Cl、−Brなど)、シアノ基、ニトロ基、アリール基(好ましくはフェニル基)、ヒドロキシ基、−COOR32(ここでR32は水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、−OCOR33又は−OR34(ここでR33、R34は炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、及び下記式で表されるものを置換基として有するものが含まれる。
Figure 2006084869
ここでR35、R36は独立して水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す。
上記R28〜R31のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの1〜3環のアリール基が含まれ、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に前述の置換アルキル基の置換基又は、炭素数1〜14のアルキル基を有するものが含まれる。上記R28〜R31のアルケニル基としては、炭素数2〜18の直鎖、分枝、環状のものが含まれ。置換アルケニル基の置換基としては、前記の置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。上記R28〜R31のアルキニル基としては、炭素数2〜28の直鎖又は分枝のものが含まれ、置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。また、上記R28〜R31の複素環基としてはN、S及びOの少なくとも1つを含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられ、この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。更に置換基として前述の置換アリール基の置換基として挙げたものを有していてもよい。一般式(5)で示される化合物例としては具体的には米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物及び以下に示すものが挙げられる。
Figure 2006084869
(h)アジニウム化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(h)アジニウム塩化合物としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号記載のN−O結合を有する化合物群をあげることができる。
(i)メタロセン化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(i)メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号記載の鉄−アレーン錯体をあげることができる。
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン、
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチル−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ベンジル−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(2−エチルヘキシル)−4−トリル−スルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3−オキサヘプチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロメチルスルホニル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(トリフルオロアセチルアミノ)フェニル〕チタン、
ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(2−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(4−クロロベンゾイル)アミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,6−ジオキサデシル)−2,2−ジメチルペンタノイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−(3,7−ジメチル−7−メトキシオクチル)ベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−シクロヘキシルベンゾイルアミノ)フェニル〕チタン、等を挙げることができる。
(j)活性エステル化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(j)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号記載の活性スルホネート類をあげることができる。
(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(6)から(12)で示されるを挙げることができる。
Figure 2006084869
一般式(6)中、X2はハロゲン原子を表わし、Y1は−C(X23、−NH2、−NHR38、−NR38、−OR38を表わす。ここでR38はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表わす。またR37は−C(X23、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基、を表す。
Figure 2006084869
一般式(7)中、R39は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基又はシアノ基であり、X3はハロゲン原子であり、nは1〜3の整数である。
Figure 2006084869
一般式(8)中、、R40は、アリール基又は置換アリール基であり、R41は、以下に示す基又はハロゲンであり、Z6は−C(=O)−、−C(=S)−又は−SO2−であり、X3はハロゲン原子であり、mは1又は2である。
Figure 2006084869
(R42、R43はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基又は置換アリール基であり、R44は一般式(6)中のR38と同じである。)
Figure 2006084869
一般式(9)中、R45は置換されていてもよいアリール基又は複素環式基であり、R46は炭素原子1〜3個を有するトリハロアルキル基又はトリハロアルケニル基であり、pは1、2又は3である。
Figure 2006084869
一般式(10)は、トリハロゲノメチル基を有するカルボニルメチレン複素環式化合物を表す。L7は水素原子又は式:CO−(R47)q(C(X43)rの置換基であり、Q2はイオウ、セレン又は酸素原子、ジアルキルメチレン基、アルケン−1,2−イレン基、1,2−フェニレン基又はN−R基であり、M4は置換又は非置換のアルキレン基又はアルケニレン基であるか、又は1,2−アリーレン基であり、R48はアルキル基、アラルキル基又はアルコキシアルキル基であり、R47は、炭素環式又は複素環式の2価の芳香族基であり、X4は塩素、臭素又はヨウ素原子であり、q=0及びr=1であるか又はq=1及びr=1又は2である。
Figure 2006084869
一般式(11)は、4−ハロゲノ−5−(ハロゲノメチル−フェニル)−オキサゾール誘導体を表す。X5はハロゲン原子であり、tは1〜3の整数であり、sは1〜4の整数であり、R49は水素原子又はCH3-t5 t基であり、R50はs価の置換されていてもよい不飽和有機基である。
Figure 2006084869
一般式(12)は、2−(ハロゲノメチル−フェニル)−4−ハロゲノ−オキサゾール誘導体を表す。X6はハロゲン原子であり、vは1〜3の整数であり、uは1〜4の整数であり、R51は水素原子又はCH3-v6 v基であり、R52はu価の置換されていてもよい不飽和有機基である。
このような炭素−ハロゲン結合を有する化合物の具体例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、たとえば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2′,4′−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許1388492号明細書記載の化合物、たとえば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、たとえば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
Figure 2006084869
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、たとえば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。さらに特開昭62−58241号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
Figure 2006084869
更に特開平5−281728号記載の、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
Figure 2006084869
あるいはさらにM.P.Hutt、E.F.Elslager及びL.M.Herbel著「Journalof Heterocyclic chemistry」第7巻(No.3)、第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて、当業者が容易に合成することができる次のような化合物群、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
Figure 2006084869
(l)アゾ系化合物
本発明に用いられるラジカル発生剤として好ましい(i)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
本発明におけるラジカル発生剤のさらにより好ましい例としては、上述の(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)メタロセン化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、を挙げることができ、さらに最も好ましい例としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、チタノセン化合物、一般式(6)で表されるトリハロメチル−S−トリアジン化合物を挙げることができる。
これらのラジカル発生剤は、重合性組成物の全固形分に対し、0.1〜50質量%、好ましくは、0.5〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%の割合で重合性組成物中に添加することができる。
本発明におけるラジカル発生剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
〔(C1)ラジカル重合性化合物〕
本発明に係る重合性組成物に使用される、ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(13)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(RA)COOCH2CH(RB)OH ・・・一般式(13)
(ただし、RA及びRBは、H又はCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた重合性組成物を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらのラジカル重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、その利用目的、例えば、本発明に係る重合性組成物を平版印刷版原版の記録材料として用いる場合には、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定することができる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述のオーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。記録層中の重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましく無い相分離が生じたり、記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、ラジカル重合性化合物は、重合性組成物中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
〔(D1)バインダーポリマー〕
本発明に係る重合性組成物においては、皮膜特性向上などの目的で、必要に応じて、(D)バインダーポリマーを使用することができる。バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、画像記録層の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
特にこれらの中で、ベンジル基又はアリル基と、カルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂及び特開2000−187322号公報、特開2002−62648号、特願2001−253217号、特願2002−287920号、特開2002−62648号などに記載されている側鎖に二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
さらにこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
本発明で使用されるポリマーの重量平均分子量については好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、さらに好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
本発明で使用されるポリマーは従来公知の方法により合成できる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
本発明で使用されるポリマーを合成する際に用いられるラジカル発生剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等公知の化合物が使用できる。
本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても混合して用いてもよい。特に、本発明に係る重合性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合には、これらバインダーポリマーの添加量は、画像形成性及び画像部の強度の観点から、記録層全固形分に対し20〜95質量%、好ましくは30〜90質量%の割合で添加される。また前記エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物と線状有機ポリマーは、質量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
−酸架橋性組成物−
次に、本発明の硬化性組成物が酸架橋性組成物である場合について詳細に説明する。
本発明の硬化性組成物が酸架橋性組成物である場合、該酸架橋性組成物は、(A)特定赤外線吸収剤と、(B2)酸発生剤と、(C2)酸架橋剤とを必須成分とし、さらに、これらを含有する層を形成するための、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(D2)アルカリ可溶性ポリマーを添加することが好ましい。この酸架橋性組成物は、赤外線吸収剤が吸収した赤外光のエネルギーにより酸発生剤が分解されて酸を発生し、発生した酸が酸架橋剤の働きを促進し、酸架橋剤同士あるいは酸架橋剤とアルカリ可溶性ポリマーとの間で強固な架橋構造を形成し、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像液に不溶となる。
〔(A)特定赤外線吸収剤〕
本発明に係る酸架橋性組成物に用いられる特定赤外線吸収剤としては、前記重合性組成物で説明したものと同様のものを用いることができ、好ましい態様や好ましい添加量等についても同様である。また、本発明の効果を損なわない範囲において、汎用の赤外線吸収剤を併用してもよく、併用可能な赤外線吸収剤についても、前記したものと同様である。
〔(B2)酸発生剤〕
本発明に係る酸架橋性組成物に用いられる酸発生剤としては、前記特定赤外線吸収剤が吸収した赤外光のエネルギーにより酸を発生する化合物であれば制限はない。そのような酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いは、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、熱分解して酸を発生しうる、公知の化合物及びそれらの混合物、酸を発生する基又は化合物をポリマーの主鎖若しくは側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
本発明に用いられる酸発生剤としては、下記一般式(14)〜(18)で表される化合物が好ましい。
Figure 2006084869
前記一般式(14)〜(18)中、R1、R2、R4及びR5は、同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。R3は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数10以下の炭化水素基又は炭素数10以下のアルコキシ基を表す。Ar1、Ar2は、同一でも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。R6は、置換基を有していてもよい炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。nは、0〜4の整数を表す。
前記式中、R1、R2、R4及びR5は、炭素数1〜14の炭化水素基が好ましい。
前記一般式(14)〜(18)で表される酸発生剤の好ましい態様は、本発明者らが先に提案した特開2001−142230明細書段落番号[0197]〜[0222]に詳細に記載されている。これらの化合物は、例えば、特開平2−100054号、特開平2−100055号に記載の方法により合成することができる。
また、酸発生剤として、ハロゲン化物やスルホン酸等を対イオンとするオニウム塩も挙げることができ、中でも、下記一般式(19)〜(21)で表されるヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩のいずれかの構造式を有するものを好適に挙げることができる。
Figure 2006084869
前記一般式(19)〜(21)中、X-は、ハロゲン化物イオン、ClO4 -、PF6 -、SbF6 -、BF4 -又はR7SO3 -を表し、ここで、R7は、置換基を有していてもよい炭素数20以下の炭化水素基を表す。Ar3、Ar4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。R8、R9、R10は、置換基を有していてもよい炭素数18以下の炭化水素基を表す。
このようなオニウム塩は、特開平10−39509号公報段落番号[0010]〜[0035]に一般式(I)〜(III)の化合物として記載されている。
酸発生剤の添加量としては、画像形成性、及び該酸架橋性組成物を平版印刷版原版の記録層として用いた場合の非画像部への汚れを抑制する観点から、酸架橋性組成物の全固形分質量に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜25質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が最も好ましい。
上述の酸発生剤は単独で使用してもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
〔(C2)酸架橋剤〕
本発明に係る酸架橋性組成物に用いられる酸架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
(i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物
(iii)エポキシ化合物
以下、前記(i)〜(iii)の化合物について詳述する。
前記(i)ヒドロキシメチル基若しくはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基若しくはアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香族化合物又は複素環化合物が挙げられる。但し、レゾール樹脂として知られるフェノール類とアルデヒド類とを塩基性条件下で縮重合させた樹脂状の化合物も含まれる。
ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物又は複素環化合物のうち、中でも、ヒドロキシ基に隣接する位置にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する化合物が好ましい。
また、アルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物又は複素環化合物では、中でも、アルコキシメチル基が炭素数18以下の化合物が好ましく、下記一般式(22)〜(25)で表される化合物がより好ましい。
Figure 2006084869
Figure 2006084869
前記一般式(22)〜(25)中、L1〜L8は、それぞれ独立に、メトキシメチル、エトキシメチル等の、炭素数18以下のアルコキシ基で置換されたヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を表す。
これらの酸架橋剤は、架橋効率が高く、耐刷性を向上できる点で好ましい。
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有する化合物としては、欧州特許公開(以下、「EP−A」と示す。)第0,133,216号、西独特許第3,634,671号、同第3,711,264号に記載の、単量体及びオリゴマー−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物並びに尿素−ホルムアルデヒド縮合物、EP−A第0,212,482号明細書に記載のアルコキシ置換化合物等が挙げられる。
なかでも、例えば、少なくとも2個の遊離N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基若しくはN−アシルオキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、N−アルコキシメチル誘導体が最も好ましい。
(iii)エポキシ化合物としては、1以上のエポキシ基を有する、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー状のエポキシ化合物が挙げられ、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応生成物、低分子量フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とエピクロルヒドリンとの反応生成物等が挙げられる。
その他、米国特許第4,026,705号、英国特許第1,539,192号の各明細書に記載され、使用されているエポキシ樹脂を挙げることができる。
酸架橋剤として、前記(i)〜(iii)の化合物を用いる場合の添加量としては、形成された皮膜の耐久性、及び保存安定性の観点から、酸架橋性組成物の全固形分質量に対し5〜80質量%が好ましく、10〜75質量%がより好ましく、20〜70質量%が最も好ましい。
本発明においては、酸架橋剤として、(iv)下記一般式(26)で表されるフェノール誘導体も好適に使用することができる。
Figure 2006084869
前記一般式(26)中、Ar5は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、R11、R12及びR13は水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を表す。mは2〜4の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。
原料の入手性の点で、前記芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましい。また、その置換基としては、ハロゲン原子、炭素数12以下の炭化水素基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基等が好ましい。
上記のうち、高感度化が可能である点で、Ar5としては、置換基を有していないベンゼン環、ナフタレン環、或いは、ハロゲン原子、炭素数6以下の炭化水素基、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数6以下のアルキルチオ基、炭素数12以下のアルキルカルバモイル基、又はニトロ基等を置換基として有するベンゼン環、又はナフタレン環がより好ましい。
上記R11、R12で表される炭化水素基としては、合成が容易であるという理由から、メチル基が好ましい。R13で表される炭化水素基としては、感度が高いという理由から、メチル基、ベンジル基等の炭素数7以下の炭化水素基であることが好ましい。さらに、合成の容易さから、mは、2又は3であることが好ましく、nは1又は2であることが好ましい。
酸架橋剤として、前記(iv)の化合物を用いる場合の添加量としては、酸架橋性組成物の全固形分質量に対し3〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、15〜50質量%が最も好ましい。
〔(D2)アルカリ可溶性ポリマー〕
本発明に係る酸架橋性組成物に使用可能なアルカリ可溶性ポリマーとしては、ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。前記ノボラック樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂が挙げられる。
中でも、例えば、フェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−又はm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂や、フェノールとパラホルムアルデヒドとを原料とし、触媒を使用せず密閉状態で高圧下、反応させて得られるオルソ結合率の高い高分子量ノボラック樹脂等が好ましい。
前記ノボラック樹脂は、質量平均分子量が800〜300,000で、数平均分子量が400〜60,000のものの中から、目的に応じて好適なものを選択して用いればよい。
また、前記側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーも好ましく、該ポリマー中のヒドロキシアリール基としては、OH基が1以上結合したアリール基が挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられ、中でも、入手の容易性及び物性の観点から、フェニル基又はナフチル基が好ましい。
本実施の形態に使用可能な、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーとしては、例えば、下記一般式(27)〜(30)で表される構成単位のうちのいずれか1種を含むポリマーを挙げることができる。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
Figure 2006084869
一般式(27)〜(30)中、R14は、水素原子又はメチル基を表す。R15及びR16は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数10以下の炭化水素基、炭素数10以下のアルコキシ基又は炭素数10以下のアリールオキシ基を表す。また、R15とR16が結合、縮環してベンゼン環やシクロヘキサン環を形成していてもよい。R17は、単結合又は炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R18は、単結合又は炭素数20以下の2価の炭化水素基を表す。R19は、単結合又は炭素数10以下の2価の炭化水素基を表す。Yは、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を表す。pは、1〜4の整数を表す。q及びrは、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。
これらのアルカリ可溶性ポリマーとしては、本願出願人らが先に提案した特開2001−142230明細書段落番号[0130]〜[0163]に詳細に記載されている。
本実施の形態に使用可能なアルカリ可溶性ポリマーは、1種類のみで使用してもよいし、2種類以上を組合わせて使用してもよい。
アルカリ可溶性ポリマーの添加量としては、形成された皮膜の耐久性、及び画像形成性の観点から、酸架橋性組成物の全固形分に対し5〜95質量%が好ましく、10〜95質量%がより好ましく、20〜90質量%が最も好ましい。
以上のようにして得られた硬化性組成物(重合性組成物及び酸架橋性組成物)は、感度、硬化後の皮膜の耐久性、及び保存安定性に優れ、また、アルカリ現像液への溶解性も良好であることから、3次元光造形やホログラフィー、平版印刷版原版、フレキソ印刷に用いられる合成樹脂凸版、カラープルーフ、フォトレジスト及びカラーフィルター等の画像形成材料の記録層として好適に用いられる。特に、平版印刷版原版の記録層として用いることが最も好適である。
以下、本発明の硬化性組成物の好ましい用途である、画像形成材料について詳細に述べる。
[画像形成材料]
本発明の画像形成材料は、支持体上に、本発明の硬化性組成物を含む記録層を有することを特徴とする。
(支持体)
本発明の画像形成材料に使用される支持体としてはアルミニウム支持体が用いられる。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。
前記アルミニウム板の厚みは、およそ0.1〜0.6mm程度、好ましくは0.15〜0.4mm、特に好ましくは0.2〜0.3mmである。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
このように粗面化されたアルミニウム板は、所望により、アルカリエッチング処理、中和処理を経て、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施すことができる。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2の範囲である。陽極酸化被膜が1.0g/m2未満であると耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
尚、このような陽極酸化処理は平板印刷版の支持体の印刷に用いる面に施されるが、電気力線の裏回りにより、裏面にも0.01〜3g/m2の陽極酸化被膜が形成されるのが一般的である。
支持体表面の親水化処理は、上記陽極酸化処理の後に施されるものであり、従来より知られている処理法が用いられる。このような親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号公報に開示されているようなアルカリ金属珪酸塩(例えば、珪酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体が珪酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか、又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号公報に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
これらの中で、本発明において特に好ましい親水化処理は珪酸塩処理である。珪酸塩処理について、以下に説明する。
上述の如き処理を施したアルミニウム板の陽極酸化皮膜を、アルカリ金属珪酸塩が0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜10質量%であり、25℃でのpHが10〜13である水溶液に、例えば15〜80℃で0.5〜120秒浸漬する。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHが10より低いと液はゲル化し13.0より高いと酸化皮膜が溶解されてしまう。本発明に用いられるアルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属珪酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩もしくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、燐酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩として、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、蓚酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。アルカリ土類金属塩もしくは、第IVB族金属塩は単独又は2以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。
珪酸塩処理により、アルミニウム板表面上の親水性が一層改善されるため、印刷の際、インクが非画像部に付着しにくくなり、汚れ性能が向上する。
(記録層の形成)
上記支持体上に記録層を設ける方法としては、前述の硬化性組成物を溶媒に溶かして記録層塗布液とし、支持体上に塗布することにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独又は混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、記録層の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
本発明に係る記録層塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全記録層の材料固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
さらに、本発明の画像形成材料をネガ型平版印刷版原版と使用する場合には、後述するバックコート層、中間層、保護層なども記録層と同様にして形成することができる。
以下、本発明の画像形成材料の最も好ましい用途である平版印刷版原版について説明する。
(種々の添加剤)
本発明に係る平版印刷版原版の記録層には、以下に挙げる種々の添加剤を加えてもよい。
例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、記録層塗布液全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
また、記録層として前記重合性組成物を用いる場合には、調製中あるいは保存中において重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1質量%〜約10質量%が好ましい。
また、記録層の現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の記録層塗布液中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
さらに、本発明における記録層塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
(バックコート層)
本発明の平版印刷版原版の支持体の裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから与られる金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
(中間層)
本発明の平版印刷版原版には、記録層と基板との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特願平8−225335号、特願平8−270098号、特願平9−195863号、特願平9−195864号、特願平9−89646号、特願平9−106068号、特願平9−183834号、特願平9−264311号、特願平9−127232号、特願平9−245419号、特願平10−127602号、特願平10−170202号、特願平11−36377号、特願平11−165861号、特願平11−284091号、特願2000−14697号等に記載のものを挙げることができる。
(保護層)
本発明の平版印刷版原版には、通常、露光を大気中で行うため、前述の記録層の上に、更に、保護層を設けることが好ましい。保護層は、記録層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の記録層への混入を防止し、大気中での露光を可能とする。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号、特開昭55−49729号に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られているが、これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。特に、ポリビニルアルコールに対しポリビニルピロリドンを15〜50質量%の範囲で置き換えた混合物が保存安定性の観点から好ましい。
ポリビニルアルコールの具体例としては、71〜100%加水分解され、分子量が300から2400の範囲のものを挙げることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の記録層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改善すべく種々の提案がなされている。たとえば米国特許第292,501号、米国特許第44,563号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、記録層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。
本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,311号、特開昭55−49729号に詳しく記載されている。
(露光、現像及び印刷)
本発明の平版印刷版原版は、赤外線レーザで記録することができる。また、紫外線ランプやサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。本発明においては、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。
赤外線レーザにより露光した後、平版印刷版原版は、好ましくは、水又はアルカリ性水溶液にて現像される。
現像液として、アルカリ性水溶液を用いる場合、本発明の平版印刷版原版の現像液及び補充液としては、従来公知のアルカリ性水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
さらに、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液と同じもの又は、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤等を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。好ましい有機溶剤としてはベンジルアルコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール若しくはその誘導体、又はポリプロピレングリコール若しくはその誘導体等の添加も好ましい。また、アラビット、ソルビット、マンニット等の非還元糖を添加することもできる。
さらに、現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸又は亜硫酸水素酸のナトリウム塩及びカリウム塩等の無機塩系還元剤、さらに有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
以上記述した現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の硬化性組成物を印刷用版材として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、電気伝導度をセンサーにて感知し、自動的に補充することもできる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布等が適用される。また、塗布した後でスキージ又はスキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。
整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:BP−1300)等で高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引き等の従来行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
このような処理によって、本発明の硬化性組成物より得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例においては、本発明の硬化性組成物及び画像形成材料の最も好ましい用途である平版印刷版原版についての試験を行い、硬化性組成物及び画像形成材料の評価とする。
(支持体の作製)
99.5%以上のアルミニウムと、Fe 0.30%、Si 0.10%、Ti 0.02%、Cu 0.013%を含むJIS A1050合金の溶湯を清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。
次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。
まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
次いで支持体と記録層との密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1%の硝酸と0.5%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を形成した。
−重合性組成物−
〔実施例1〜11、比較例1〜5〕
(記録層の形成)
下記組成の記録層塗布液1を調製し、上記のようにして得られたアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して記録層を形成した。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。さらに、下記組成のオーバーコート層塗布液をスライドホッパーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて120℃で75秒間乾燥して、実施例1〜11、及び比較例1〜5の各平版印刷版原版を得た。オーバーコート層の塗布量は2.3g/m2であった。
<記録層塗布液1>
・(A)成分:赤外線吸収剤(表1に記載の化合物・量)
・(B1)成分:ラジカル発生剤(表1に記載の化合物) 0.40g
・(C1)成分:重合性化合物「M−1」(下記に示す構造) 2.00g
・(D1)成分:バインダーポリマー(表1に記載の化合物) 2.0g
・共増感剤(化合物「J−1」) 0.13g
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.01g
(メガファックF−176、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 9.0g
・メタノール 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
<オーバーコート層塗布液>
・ポリビニルアルコール 2.3g
(ケン化度98.5モル%、重合度500)
・ポリビニルピロリドン 0.7g
(K30、東京化成工業(株)製 分子量4万)
・非イオン性界面活性剤 0.05g
(EMAREX NP−10 日本エマルジョン社(株)製)
・イオン交換水 96.95g
(露光)
得られたネガ型平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter 3244VFSにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DV−2の1:4水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液(pH=10.8)を用いた。
〔吸収波長の評価〕
上記記載の方法で調製された記録層塗布液1をPETフイルムに塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で35秒間乾燥して、実施例記載の吸収スペクトルを測定するPET膜を形成した。その後、Al支持体上に塗布された膜と共に、Varian社製 UV−VIS−NIR Spectrometer Cary5Gで吸収波長の測定を実施した。
〔感度の評価〕
上記露光(波長830〜850nm程度の赤外線レーザによる)及び現像により得られた画像の線幅とレーザー出力、光学系でのロス及び走査速度を基に、記録に必要なエネルギー量を算出した。数値が小さいほど高感度であることを表す。結果を表1に併記する。
〔現像カス発生の評価〕
上記記載の方法にて露光、現像し、製版された平版印刷版について、版上に残存する現像カスの有無を目視にて確認した。評価は、目視確認できるレベルで現像カスがある場合を「有り」とし、目視では現像カスを確認できない場合を「無し」とした。現像カスの発生しない場合、即ち「無し」である場合に良好な現像性を示すことになる。結果を表1に併記する。
Figure 2006084869
上記表1の結果によれば、本発明の特徴的成分である(A)特定赤外線吸収剤を用いた実施例1〜11の平版印刷版原版は、(A)特定赤外線吸収剤を用いなかった比較例1〜4と比べ極大吸収波長が長波シフトしているため会合していることが判断でき、かつ感度に優れていることが確認された。また、実施例1〜15の平版印刷版原版は、現像液中の析出物の発生も見られなかった。
なお、実施例で用いた赤外線吸収剤は本文中に記載の特定赤外線吸収剤であり、比較例で用いた赤外線吸収剤(IR−1)〜(IR−3)の構造は以下に示すものである。
Figure 2006084869
また、実施例及び比較例で用いた、ラジカル発生剤(S−1)〜(S−5)、ラジカル重合性化合物(M−1)〜(M−2)、バインダーポリマー(P−1)〜(P−3)、化合物(J−1)の構造を以下に示す。
Figure 2006084869
Figure 2006084869
Figure 2006084869
−酸架橋性組成物−
〔実施例34〜39、比較例10、11〕
(支持体の作製)
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン−水懸濁液を用いその表面を砂目立てし、よく水で洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い水洗後、さらに2%HNO3に20秒間浸漬して水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。次にこの板を7%H2SO4を電解液として電流密度15A/dm2で3g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗乾燥した。次にこのアルミニウム板に下記下塗り液を塗布し、80℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg/m2であった。
<下塗り液>
・β−アラニン 0.1g
・フェニルホスホン酸 0.05g
・メタノール 40g
・純水 60g
(記録層の形成)
次に、下記記録層塗布液2を調整し、上記の下塗り済みのアルミニウム板にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて100℃で1分間乾燥して記録層を形成した。乾燥後の被覆量は1.4g/m2であった。
<記録層塗布液5>
・(A)成分:赤外線吸収剤(表2に記載の化合物・量)
・(B2)成分:酸発生剤「SX−1」(以下に示す構造) 0.2g
・(C2)成分:酸架橋剤 0.6g
(下記構造のC2−1/C2−2の質量比50/50混合物)
・(D2)成分:以下に記載のバインダーポリマー「BX−1」 1.4g
・着色剤(VPB−Naps:保土ヶ谷化学(株)製) 0.04g
・ケイ素系界面活性剤 0.03g
(TEGO GLIDE100(商品名)
テゴケミーサービス社(Tego Chemie Service GmbH)製)
・メチルエチルケトン 1.2g
・メタノール 15.8g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10.0g
なお、記録層塗布液2に使用したバインダーポリマー「BX−1」は、ポリ−p−ヒドロキシスチレン(商品名:マルカリンカーMH2P、丸善石油化学(株)製)を示す。また、酸発生剤「SX−1」、架橋剤「C2−1」、「C2−2」の構造は以下に示す通りである。
Figure 2006084869
(露光・現像処理)
得られた型平版印刷版原版を、前記実施例1と同様にして赤外線レーザ露光を行った。
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理し、平版印刷版を得た。現像液は、仕込み液に富士写真フイルム(株)製現像液、DP−4(1:8の水希釈液)、補充液に富士写真フイルム(株)製、DP−4RW(1:4の水希釈液)を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
〔感度評価〕
得られた平版印刷版を前記実施例1と同様の方法により、感度評価を行った。結果を下記表2に示す。
〔現像カス発生の評価〕
得られた平版印刷版を実施例1と同様の方法により、現像カス発生の評価を行った。結果を下記表2に示す。
Figure 2006084869
上記表2の結果によれば、本発明の特徴的成分である(A)特定赤外線吸収剤を用いた実施例12〜25の平版印刷版原版は、(A)特定赤外線吸収剤を用いなかった比較例5〜8と比べ極大吸収波長が長波シフトしているため会合ため会合していることが判断でき、かつ、感度に優れていることが確認された。これは酸架橋系においても同様に高感度化されうることを示している。また、実施例12〜25の平版印刷版原版は、現像液中の析出物の発生も見られなかった。

Claims (2)

  1. (A)芳香環を隣接して有する複素環構造をメチン鎖で結合した構造を有するシアニン色素であって、CO2H、SO3H、及びPO3Hから選ばれる酸性基を少なくとも1つ有し、且つ原子数9個以上の原子団を含む直鎖状連結部分を有する置換基を、両末端の複素環構造及び/又はメチン鎖上に少なくとも2つ有する赤外線吸収剤と、
    (B)ラジカル発生剤、又は酸発生剤と、
    (C)ラジカル重合性化合物、又は酸架橋剤と、
    を含有する硬化性組成物。
  2. アルミニウム支持体上に、(A)芳香環を隣接して有する複素環構造をメチン鎖で結合した構造を有するシアニン色素であって、CO2H、SO3H、及びPO3Hから選ばれる酸性基を少なくとも1つ有し、且つ原子数9個以上の原子団からなる直鎖状連結部分を含む置換基を、両末端の複素環構造及び/又はメチン鎖上に少なくとも2つ有する赤外線吸収剤と、
    (B)ラジカル発生剤、又は酸発生剤と、
    (C)ラジカル重合性化合物、又は酸架橋剤と、
    を含有する記録層を有する画像形成材料。
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