JP2006082095A - エンジン用ピストンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジン用ピストンの鋳造時,溶湯の滞留や合流に起因する湯紋がクラウン部に発生しないようにして,クラウン部の高温強度の増強を図る。
【解決手段】鋳型M内のピストン成形用キャビティ20に,その下部から重力注湯して,エンジン用ピストン10を鋳造する,エンジン用ピストンの製造方法において,ピストン10のクラウン部11の頂面11aに対応するキャビティ20の底面21aを水平面Hに対して15〜35°傾斜させた状態でキャビティ20への注湯を行う。
【選択図】 図4
【解決手段】鋳型M内のピストン成形用キャビティ20に,その下部から重力注湯して,エンジン用ピストン10を鋳造する,エンジン用ピストンの製造方法において,ピストン10のクラウン部11の頂面11aに対応するキャビティ20の底面21aを水平面Hに対して15〜35°傾斜させた状態でキャビティ20への注湯を行う。
【選択図】 図4
Description
本発明は,鋳型内のピストン成形用キャビティに,その下部から重力注湯して,エンジン用ピストンを鋳造する,エンジン用ピストンの製造方法の改良に関する。
従来,重力注湯によりエンジン用ピストンを鋳造する場合,ピストンのクラウン部が下向きとなるようにして鋳造する倒立鋳造法,又はピストンのクラウン部が上向きとなるようにして鋳造する正立鋳造法の何れかを採用するのが一般的である。
ところで,近年の環境改善の目的でエンジンの重量軽減を図るべく,ピストン自体の薄肉軽量化の要求がある。しかしながら,ピストンの薄肉軽量化を進めた場合には,熱負荷が増大し,特にエンジンの燃費低減のために希薄燃焼方式が採用される場合には,クラウン部が受ける熱量が著しく増加する。因みに,自動車用の2000ccエンジンにおけるピストンのクラウン部の頂面温度を調べてみると,2000年モデルのものでは240°程度であったのに対して,2003年モデルのものでは280〜290°であり,ピストンは300°近い頂面温度下で使用されているのが現状である。したがって,特にピストンのクラウン部には,高い高温強度が要求されるのである。
しかしながら,従来の倒立鋳造法又は正立鋳造法で鋳造されたピストンを調べてみると,高温強度のマイナス因子になると考えられるものがクラウン部に散見される。それは,注湯時,溶湯の滞留や合流に起因して生じた湯紋であり,この湯紋の発生部には,溶湯の酸化から生じた酸化膜や,溶湯が流動中に捕捉した異物等が溶湯の凝固により取り残されていることがあり,それらはクラウン部の高温強度を低下させる一因となる。
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,鋳造時,クラウン部には湯紋が発生しないようにして,クラウン部の高温強度の増強を図り,ピストンの薄肉軽量化に寄与し得る,エンジン用ピストンの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために,本発明は,鋳型内のピストン成形用キャビティに,その下部から重力注湯して,エンジン用ピストンを鋳造する,エンジン用ピストンの製造方法において,ピストンのクラウン部の頂面に対応する前記キャビティの底面を水平面に対して傾斜させた状態で,該キャビティに注湯することを第1の特徴とする。
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記キャビティの底面の水平面に対する傾斜角度を15〜35°としたことを第2の特徴とする。
さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,ピストンの鋳造後は,スカート部の 外周面及び端面を切削仕上げ加工することにより,スカート部の先端部に残存する湯紋を除去することを第3の特徴とする。
本発明の第1の特徴によれば,注湯時,キャビティでは,溶湯が傾斜した底面に沿って上昇していくため,溶湯は,キャビティ全体を満たすまで,キャビティの,クラウン部に対応する下部に留まることがないから,溶湯の滞留や合流に起因する湯紋がクラウン部に発生することを防ぐことができ,したがってピストンの薄肉軽量化を図りつゝ,クラウン部の高温強度を効果的に高めることができる。
また本発明の第2の特徴によれば,溶湯の滞留や合流に起因する湯紋のクラウン部での発生を,より確実に防ぐことができる。
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の好適な実施例に基づいて以下に説明する。
図1は本発明方法で鋳造されるエンジン用ピストンの縦断面図,図2は図1の2−2線断面図,図3は同ピストンの鋳造に使用される鋳型の縦断面図,図4は上記鋳型への注湯過程説明図である。
先ず,図1及び図2により,本発明方法により製造されるエンジン用ピストン10について説明する。
エンジン用ピストン10は,軽合金,例えばAl合金を素材として鋳造されるものであって,外周に複数条のリング溝12を備えるクラウン部11と,このクラウン部11から下方に延びる円筒状のスカート部13と,このスカート部13の上部に一体に連設され,クラウン部11の軸線と直交する方向に並ぶ一対のピンボス部14,14とからなっており,各ピンボス部14,14のピン孔15,15には,その外端寄りに位置する環状のクリップ溝16,16とが設けられる。但し,クラウン部11の外周面及びリング溝12,スカート部13の外周面及び端面,並びにピン孔15,15の内周面は,ピストン10の鋳造後,仕上げのために切削加工される。尚,符号11aは,エンジンの燃焼室に曝されるクラウン部11の頂面を示す。
次に図3により,上記ピストン10の鋳造に使用される鋳型Mについて説明する。
鋳型Mは,開閉自在に分割される複数の金型からなるもので,それら金型を閉じることにより,鋳型M内には,前記ピストン10のクラウン部11の頂面11aに対応する底面21aを有するピストン成形用キャビティ20と,このキャビティ20の下部に連通して,キャビティ20より上方に立ち上がる湯道25と,この湯道25の立ち上がり部とキャビティ20の間にあって,それらと連通する押し湯溜め26とが形成されるようになっており,湯道25の上端は拡張していて湯口25aとなっている。キャビティ20は,ピストン10のクラウン部11,スカート部13及びピンボス部14,14にそれぞれ対応するクラウン成形部21,スカート成形部23及びピンボス成形部24からなっている。
この鋳型Mは,また,ピストン10のピンボス部14,14に対応するピンボス成形部24の軸線と平行な水平枢軸27を介して図示しない固定機台に支持されていて,枢軸27周りに自由に揺動し得るようになっており,特に,キャビティ20への注湯時,湯道25の下端部を最下部にして,キャビティ20の底面21aが水平面Hに対して角度θ傾斜するように,鋳型Mに傾斜姿勢を与える点に本発明の特徴がある。その際,傾斜角度θは,15〜35°と設定することが望ましい。
次に,図4を参照しながら,この実施例の作用について説明する。
湯道25の下端部を最下部にして,キャビティ20の底面21aが水平面Hに対して15〜35°の角度で傾斜するように鋳型Mを傾けた状態では,キャビティ20の,スカート成形部23の一部分23aが突出した最上部となる。このような鋳型Mの傾斜状態で,例えばAl合金の略730°の溶湯28を湯口25aから湯道25に流し込むと,図4の(A)〜(D)に示すように,溶湯28は,キャビティ20及び押し湯溜め26を,それらの下部から満たしていき,先に注入された溶湯を押し上げることで,キャビティ20及び押し湯溜め26全体を満たす。
その際,特にキャビティ20では,注入された溶湯28は,傾斜した底面21aに沿って上昇していくため,キャビティ20全体を満たすまでは,キャビティ20の下部,即ちクラウン成形部21に留まることがないから,クラウン成形部21での溶湯28の滞留部の発生を防ぐことができる。そしてキャビティ20を上昇していく溶湯28は,最終的にはスカート成形部23の突出した最上部23aで合流する。この溶湯28の合流部は,ピストン10のスカート部13の下端部の一部分に当たるので,鋳造後,スカート部13の外周面及び端面を切削仕上げ加工するとき,その合流部は除去される。
かくして,注湯時,鋳型Mを傾斜させるという,極めて簡単な方法で,クラウン部11には,溶湯の滞留や合流に起因する湯紋が存在しないエンジン用ピストン10を鋳造することができ,ピストン10の薄肉軽量化を図るつゝ,クラウン部11の高温強度を効果的に高めることができる。
下表は,キャビティ20の底面21aの傾斜角度θを変えてピストン10を鋳造し,所定の切削加工を施した場合の湯紋の残存状況を調べた結果を示す。尚,各比較例の調査個数は50個である。
上表から明らかなように,本発明の方法により製造した比較例4〜9のピストン10のクラウン部11においては,湯紋の残存が皆無であり,また鋳型Mの傾斜角度θを15〜35°にした場合(比較例4〜7)には,スカート部13においても湯紋の残存が皆無であった。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
H・・・・・水平面
M・・・・・鋳型
10・・・・ピストン
11・・・・クラウン部
11a・・・クラウン部の頂面
13・・・・スカート部
20・・・・キャビティ
21a・・・キャビティの底面
M・・・・・鋳型
10・・・・ピストン
11・・・・クラウン部
11a・・・クラウン部の頂面
13・・・・スカート部
20・・・・キャビティ
21a・・・キャビティの底面
Claims (2)
- 鋳型(M)内のピストン成形用キャビティ(20)に,その下部から重力注湯して,エンジン用ピストン(10)を鋳造する,エンジン用ピストンの製造方法において,
ピストン(10)のクラウン部(11)の頂面(11a)に対応する前記キャビティ(20)の底面(21a)を水平面(H)に対して傾斜させた状態で,該キャビティ(20)に注湯することを特徴とする,エンジン用ピストンの製造方法。 - 請求項1記載のエンジン用ピストンの製造方法において,
前記キャビティ(20)の底面(21a)の水平面(H)に対する傾斜角度(θ)を15〜35°としたことを特徴とする,エンジン用ピストンの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004267157A JP2006082095A (ja) | 2004-09-14 | 2004-09-14 | エンジン用ピストンの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004267157A JP2006082095A (ja) | 2004-09-14 | 2004-09-14 | エンジン用ピストンの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2006082095A true JP2006082095A (ja) | 2006-03-30 |
Family
ID=36161016
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2006082095A (ja) |
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2004
- 2004-09-14 JP JP2004267157A patent/JP2006082095A/ja active Pending
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