JP2006077732A - スクロール圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡単な構成にてスクロールの強度が確保されたスクロール圧縮機を提供する。
【解決手段】 スクロール圧縮機は、各々が端板及び端板と一体の渦巻き壁を有した固定スクロール及び可動スクロールを備え、両スクロール間での渦巻き壁及び端板がその渦巻き壁に設けたチップシールを介して互いに摺接する。固定及び可動スクロールのうち少なくとも一方のスクロールの渦巻き壁30bは、その端板30a側の根元の厚みを厚くした厚肉部60を有し、他方のスクロールの渦巻き壁32b及びチップシール34は一方のスクロールの渦巻き壁30bに相対的に最接近したとき、互いに協働して厚肉部60に対する逃げを形成する。
【選択図】 図2

Description

本発明はスクロール圧縮機に関する。
この種のスクロール圧縮機は、ハウジング内に収容された固定スクロール及び可動スクロールを備え、各スクロールは、端板及び端板と一体の渦巻き壁を有する。これらスクロールは、端壁間にて渦巻き壁同士が噛み合うように配置され、渦巻き壁同士が摺接するとともに、渦巻き壁に設けられたチップシールを介して、端板と渦巻き壁とが相互に摺接する。このような配置により、固定スクロールと可動スクロールとの間には圧力室が形成され、圧力室は可動スクロールの旋回に伴いその容積が減少し、作動流体の圧縮工程を実施する。
ところで近年、スクロール圧縮機の小型化や高容量化の要求に応じて、渦巻き壁の壁厚の薄肉化や壁高の増大化が行われているが、壁厚の薄肉化や壁高の増大化は、渦巻き壁における端板側の根元に強度不足をもたらす。そこで、このような強度不足を補ってスクロールの強度を確保すべく、渦巻き壁の根元の補強も併せて実施されており、具体的には、渦巻き壁の根元に、その厚みを増大する厚肉部が形成されている(例えば特許文献1)。
特開平10-141255号公報
上述した従来技術のスクロール圧縮機の場合、可動スクロールの旋回中、一方の渦巻き壁の根元つまり厚肉部と、他方の渦巻き壁の先端とが互いに干渉しないよう、他方の渦巻き壁の先端には面取り加工が施されている。しかしながら、渦巻き壁先端の面取りは高い形状精度が求められ、その加工に高い精度が必要になることから、スクロール圧縮機の生産工程が煩雑になり、生産コスト上昇を招くので好ましくない。
本発明は上述の事情に基づいてなされもので、その目的とするところは、簡単な構成にてスクロールの強度が確保されたスクロール圧縮機を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明によれば、各々が端板及び該端板と一体の渦巻き壁を有した固定スクロール及び可動スクロールを備え、前記両スクロール間での前記渦巻き壁及び前記端板がその渦巻き壁に設けたチップシールを介して互いに摺接する、スクロール圧縮機において、少なくとも一方のスクロールの渦巻き壁はその端板側の根元の厚みを厚くした厚肉部を有し、他方のスクロールの渦巻き壁及びチップシールは前記一方のスクロールの渦巻き壁に相対的に最接近したとき、互いに協働して前記厚肉部に対する逃げを形成することを特徴とするスクロール圧縮機が提供される(請求項1)。具体的には、前記渦巻き壁の厚みをBとし、前記チップシールの幅をLとし、前記チップシールの前記渦巻き壁からの突出長をHとし、前記チップシールの突出方向でみた前記厚肉部の長さをδbとし、前記厚肉部の厚みをδaとしたときに、((B−L)/2)>δa及びH>δbで示される関係が満たされる(請求項2)。そして、前記厚肉部は前記渦巻き壁の両壁面の根元にそれぞれ凹状の円弧面にて形成され、前記円弧面の曲率半径をRとしたときに、((B−L)/2)>R及びH>Rで示される関係が満たされる(請求項3)。
上記した構成によれば、渦巻き壁の根元にその強度を高めるべく厚肉部が形成されているので、圧縮機の作動中に根元に加わる応力集中が緩和され、スクロールの強度が確保される。一方、この構成によれば、渦巻き壁が相対的に最接近したときに、チップシール及び渦巻き壁が互いに協働して厚肉部に対する逃げを形成するので、渦巻き壁の先端に高い加工精度にて面取り加工を施さずとも、可動スクロールの円滑な旋回運動が阻害されることはない。
請求項1〜3のスクロール圧縮機は、簡単な構成にてスクロールの強度が確保され、低コストにて生産可能である。
図1は一実施例のスクロール圧縮機を示している。
圧縮機のハウジング2は駆動側ケーシング4及び圧縮側ケーシング6から形成され、これらケーシング4,6は連結ボルト8を介して互いに結合されている。駆動側ケーシング4内には駆動軸10が配置され、この駆動軸10は圧縮側ケーシング6側に位置した大径端部12と、駆動側ケーシング4から突出した小径軸部14とを有する。大径端部12はニードル軸受16を介して駆動側ケーシング4に回転自在に支持され、小径軸部14はボール軸受18を介して駆動側ケーシング4に回転自在に支持されている。更に、小径軸部14にはリップシール20が配置されている。このリップシール20はボール軸受18と大径端部12との間に位置付けられ、駆動側ケーシング4内を気密に区画する。
また、駆動側ケーシング4の外側には、軸受22を介して駆動プーリ24が回転自在に支持されており、駆動プーリ24と一体に設けられた電磁クラッチ26が小径軸部14の突出端に取付けられている。駆動プーリ24には、例えば車両のエンジンの動力が駆動ベルトを介して伝達され、そして、駆動プーリ24の回転は電磁クラッチ26を介して駆動軸10に断続的に伝達可能である。従って、エンジンの駆動中、電磁クラッチ26がオン作動されると、駆動軸10は駆動プーリ24と一体的に回転する。
一方、圧縮側ケーシング6内にはスクロールユニットが収容され、このスクロールユニットは、固定スクロール30及び可動スクロール32から構成されている。固定及び可動スクロール30,32は、互いに噛み合うように配置され、相対的に旋回可能である。より詳しくは、固定及び可動スクロール30,32は、夫々が端板30a,32a及び端板30a,32aの内面に一体に設けられた渦巻き壁30b,32bからなり、渦巻き壁30b,32bは、端板30a,32aの軸線回りに渦巻き状をなす空所を形成している。固定及び可動スクロール30,32は、渦巻き壁30b,32bが互いの空所内に配置され、端板30a,32aが渦巻き壁30b,32bを間に挟んで互いに離間している。
この配置下で、渦巻き壁30b,32b同士は、その内壁面及び外壁面にて局所的に摺接する。また、端板30a,32aの軸線方向、つまり渦巻き壁30b,32bの渦巻き方向と直交する方向でみて、端板30a,32aと反対側に位置した渦巻き壁30b,32bの先端には、例えばPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)製のチップシール34がそれぞれ設けられており、これらチップシール34を介して、固定及び可動スクロール30,32間での渦巻き壁30b32b及び端板30a,32aが相互に摺接している。
そして、この配置下で、固定及び可動スクロール30,32間には、渦巻き方向に延びる圧力室36がチップシール34を介して形成される。圧力室36は、可動スクロール32の旋回運動に伴い渦巻き方向外側から中心に向けて移動するが、この移動過程にて、渦巻き方向の長さが減少し、その容積が縮小する。
上述した可動スクロール32に旋回運動を付与するため、可動スクロール32と駆動軸10の大径端部12とは、クランクピン40、偏心ブッシュ42及びニードル軸受44を介して互いに連結され、そして、可動スクロール32の自転が可動スクロール32と駆動側ケーシング4との間に配置されたボール型の旋回スラストベアリング46により阻止されている。なお、図1中の参照符号48はカウンタウエイトを示し、このカウンタウエイト48は偏心ブッシュ42に取付けられている。
一方、固定スクロール30は圧縮側ケーシング6内にて複数の固定ボルト(図示せず)を介して固定され、固定スクロール30の端板30aと圧縮側ケーシング6の端壁6aとの間に吐出室50が形成されている。そして、固定スクロール30は、端板30aの略中央を貫通して圧力室36と吐出室50を互いに連通させる吐出孔52を有し、吐出孔52は吐出弁54により開閉される。吐出弁54はリード弁体54aと、リード弁体54aの開度を規制するストッパプレート54bからなり、これらリード弁体54a及びストッパプレート54bは共に取付けねじ56を介して端板30aに取付けられている。
また、固定及び可動スクロール30,32、つまりスクロールユニットと圧縮側ケーシングの周壁6bとの間は吸入室58として確保され、図示しないけれども、周壁6bには、吐出室50及び吸入室58のそれぞれを圧縮機の外部と連通させるための吸入ポート及び吐出ポートが形成されている。
上述の圧縮機は、固定及び可動スクロール30,32の夫々の渦巻き壁30b,32bにおける端板30a,32a側の根元に、図2に示したように、端板30a,32a側に近付くに連れて根元の厚みを厚くするテーパ状の厚肉部60が形成されている。厚肉部60は渦巻き壁30b,32bの内壁面側及び外壁面側の双方に設けられ、且つ、渦巻き方向でみて渦巻き壁30b,32bの内端から外端に亘り延びている。
一方、チップシール34は、渦巻き壁30b,32bの先端中央に設けられた溝に嵌め込まれ、渦巻き壁30b,32bの厚みよりも小さな幅を有し、渦巻き壁30b,32bの先端から端板30a,32aの軸線方向に所定の長さにて突出している。また、チップシール34は、渦巻き方向でみて、渦巻き壁30b,32bの内端近傍から外端の略半周手前に亘り延びている。
ここで、渦巻き壁30b,32bの根元以外での厚みをBとし、チップシール34の幅をLとし、チップシール34の渦巻き壁30b,32bからの突出長をHとし、チップシールの突出方向でみた前記厚肉部の長さをδbとし、厚肉部の厚みをδaとしたとき(図2参照)、これらの値は、((B−L)/2)>δa及びH>δbで示される関係を満たす。
以下、上述したスクロール圧縮機の動作を説明する。
この圧縮機は、電磁クラッチ26を介して例えばエンジンからの動力供給を受けて作動し、その作動中、駆動軸10の回転に伴って可動スクロール32が自転することなく旋回運動する。可動スクロール32の旋回運動は、圧力室46を渦巻き壁30b,32bの渦巻き方向でみて外側から内側に向けて移動させ、これにより吸入室58から圧力室36内への作動流体、例えばガス冷媒の吸入工程、吸入したガス冷媒の圧縮工程、及び圧力室36から吐出弁54を通じた吐出室50内への高圧ガス冷媒の吐出工程をもたらす。そして、これら一連の工程の結果、圧縮機外部から吸入ポートを介して圧縮機内部に冷媒が流入し、高圧冷媒が吐出ポートから圧縮機外部へと送出される。
そして、上述した圧縮機では、固定及び可動スクロール30,32の夫々の渦巻き壁30b,32bの根元に厚肉部60が設けられているので、根元への応力集中が緩和され、根元周辺の強度が向上している。このため、圧力室36での作動流体の圧縮工程中、圧縮反力が渦巻き壁30b,32bに加わっても、その根元における亀裂や割れの発生が防止される。
一方、上述した圧縮機では、((B−L)/2)>δa及びH>δbで示される関係が成立しており、可動スクロール32の旋回運動中、渦巻き壁30b,32bが互いに摺接するよう相対的に最接近したときに、渦巻き壁30b,32bの先端及びチップシール34が協働して厚肉部60に対する逃げを形成する。つまり、渦巻き壁30b,32bが相対的に最接近したときでも、渦巻き壁30b,32bの厚み方向及び端板30a,32bの軸線方向でみて、渦巻き壁30bの先端及びチップシール34と厚肉部60との間には隙間が確保される。このため、この圧縮機では、厚肉部60と、厚肉部60に対して接離するチップシール34及び渦巻き壁30b,32bとが干渉せず、可動スクロール32の円滑な旋回運動も確保される。
以上説明したように、上述のスクロール圧縮機では、渦巻き壁30b,32bの先端に対して高精度にて面取り加工を施さなくても、渦巻き壁30b,32b及びチップシール34が協働して厚肉部60に対する逃げを形成するので、簡単な構成にて固定及び可動スクロール30,32の強度が確保される。
本発明は上述の一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能であり、例えば、一実施例の場合、固定及び可動スクロール30,32の双方の渦巻き壁30b,32bの根元に厚肉部60を形成したけれども、いずれか一方のスクロールにのみ厚肉部60を形成してもよい。
一実施例では、渦巻き壁30b,32bの根元にテーパ形状の厚肉部60を形成したけれども、厚肉部の形状は特に限定されることはなく、R形状であってもよい。この場合、厚肉部は渦巻き壁30b,32bの両壁面の根元をそれぞれ凹状の円弧面に形成して得られ、円弧面の曲率半径をRとしたときに、((B−L)/2)>R及びH>Rで示される関係が満たされる。
一実施例では、渦巻き方向でみて、渦巻き壁30b,32bの内端から外端に亘り厚肉部60を形成したけれども、圧力室36内の圧力が低い外端近傍には形成しなくてもよい。
一実施例のスクロール圧縮機を示した縦断面図である。 図1中、領域IIの拡大図である。
符号の説明
30 固定スクロール
32 可動スクロール
30a,32a 端板
30b,32b 渦巻き壁
34 チップシール
60 厚肉部

Claims (3)

  1. 各々が端板及び該端板と一体の渦巻き壁を有した固定スクロール及び可動スクロールを備え、前記両スクロール間での前記渦巻き壁及び前記端板がその渦巻き壁に設けたチップシールを介して互いに摺接する、スクロール圧縮機において、
    少なくとも一方のスクロールの渦巻き壁はその端板側の根元の厚みを厚くした厚肉部を有し、他方のスクロールの渦巻き壁及びチップシールは前記一方のスクロールの渦巻き壁に相対的に最接近したとき、互いに協働して前記厚肉部に対する逃げを形成する
    ことを特徴とするスクロール圧縮機。
  2. 前記渦巻き壁の厚みをBとし、
    前記チップシールの幅をLとし、
    前記チップシールの前記渦巻き壁からの突出長をHとし、
    前記チップシールの突出方向でみた前記厚肉部の長さをδbとし、
    前記厚肉部の厚みをδaとしたときに、
    ((B−L)/2)>δa及びH>δbで示される関係が満たされる
    ことを特徴とする請求項1記載のスクロール圧縮機。
  3. 前記厚肉部は前記渦巻き壁の両壁面の根元にそれぞれ凹状の円弧面にて形成され、
    前記円弧面の曲率半径をRとしたときに、
    ((B−L)/2)>R及びH>Rで示される関係が満たされる
    ことを特徴とする請求項2記載のスクロール圧縮機。
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