JP2006077633A - 圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧縮機のように酸素量が厳しく管理されている動作環境でも、鉄系コーティング層を用いてFeOと潤滑油の相互作用によって摺動面に潤滑油を確保して信頼性の高い圧縮機を実現する。
【解決手段】少なくとも摺動部にFeOが分散している鉄系コーティング層を設けた摺動部材と、ポリアルキレングリコール、エステル、エーテルなどの極性を有する潤滑油を用いたものである。これによって、鉄系コーティング層の活性なFeOは酸化されずにそのまま摺動面に露出し、極性を有する潤滑油を吸着して摺動部材の摺動面に潤滑油が確保される。
【選択図】図1

Description

本発明は、業務用および家庭用の主として空気調和装置に使用される圧縮機に関するものである。
摺動部材のコーティングとして、燃焼機関のエンジンブロックのシリンダー摺動面として機能する基板に、プラズマ溶射操作により設けられた、1〜4重量%の含量の結合酸素を有している第1鉄コーティングが開示されている(特許文献1参照)。
特開2000−212717号公報
しかしながら、前記従来の構成では、燃焼機関の様に動作環境に十分空気がある場合は、第1鉄コーティング中のFeOが酸化されてFe3O4に移行できるため、摺動面におけるFe3O4が増し、その固体潤滑作用が発揮されて高い耐久性が得られている。しかし、空気調和装置に使用される圧縮機の様に酸素量が厳しく管理されている動作環境では、酸素不足のためFeOはFe3O4に移行できず、第1鉄コーティングはその効果を発揮できない。すなわち、表面改質は部分的な改質による耐久性を向上できる重要な技術ではあるが、圧縮機の信頼性向上に向けて摺動部材に対してはより効果的な新たな表面改質が求められている。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、鉄系コーティング層を用いた信頼性の高い圧縮機を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の圧縮機は、少なくとも摺動部にFeOが分散している鉄系コーティング層を設けた摺動部材と、ポリアルキレングリコール、エステル、エーテルなどの極性を有する潤滑油を用いたものである。
これによって、酸素量が厳しく管理された動作環境おいて、鉄系コーティング層のFeOは酸化されずにそのまま摺動面に露出されるが、FeOは構造的に不安定であり、活性であるがため、極性を有する潤滑油を吸着し、摺動部材の摺動面に潤滑油が確保されることになる。
本発明の圧縮機は、一時的な潤滑油不足が発生する場合がある過渡運転時における耐久性を大幅に向上できるものである。
第1の発明は、少なくとも摺動部にFeOが分散している鉄系コーティング層を設けた摺動部材と、ポリアルキレングリコール、エステル、エーテルなどの極性を有する潤滑油を用いたことにより、FeOと潤滑油が相互に作用することになり摺動部材の摺動面に潤滑油を吸着することができる。
第2の発明は、特に、第1の発明の鉄系コーティング層にFeOが5〜30wt%分散していることにより、摺動部材の摺動面に吸着される潤滑油量を確保することになり圧縮機の信頼性を大幅に向上することができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の鉄系コーティング層に10〜50μm径の鉄系粒子が混在していることにより、鉄系粒子が鉄系コーティング層の層内剥離に対する強度を高めることになり鉄系コーティング層の機械強度および信頼性を向上することができる。
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の鉄系コーティング層にMo粒子が混在していることにより、摺動部材の摩擦摩耗特性が高くなり相手材料に対する攻撃性を抑制することができる。
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の潤滑油に油性剤や極圧添加剤などの極性を有する摩耗防止剤が添加されていることにより、FeOと摩耗防止剤が相互に作用することになり摺動部材の耐焼付き性を向上することができる。
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の圧縮機はスライディングベーン型ロータリ圧縮機であり、摺動部材はアルミニウム系材料を基材とするシリンダまたはベーンであることにより、摺動部材の機械強度が向上することになり圧縮機を軽量化することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1及び図2は、本発明の第1の実施の形態におけるスライディングベーン型ロータリ圧縮機の断面図を示すものである。
図に示すように、圧縮機1は、シリンダ2と、ロータ3と、ベーン4と、前部側板5と、後部側板6と、駆動軸7で構成されている。シリンダ2は内周面を摺接面とした筒状に形成されている。このシリンダ2は前部側板5と後部側板6との間にボルトで固定されている。駆動軸6は前部側板5の軸受8と後部側板6の軸受9によって支持されている。この駆動軸7には円柱状のロータ3が軸着されている。ロータ3にはベーン溝10が形成され、ベーン溝10には、ベーン4が摺動自在に収納されている。背圧室11の圧力によってベーン4はベーン溝10から突出する方向に付勢されている。そして、ベーン4の先端はシリンダ2の内周面に摺接しながらロータ3とともに回転し、隣り合うベーン4の間に吸入室12と圧縮室13が形成される。吸入室12は、シリンダ2に設けられた吸入口14に連通し、上記圧縮室13はシリンダ2に設けられた吐出口15に連通している。吐出口15はリアケース16に通じ、高圧となっているリアケース16内の下部には潤滑油17が貯留されている。
上記実施例の圧縮機で圧縮する冷媒は、HFC系冷媒、HC系冷媒のような塩素を含まない冷媒である。なおCO2を用いてもよい。また本実施例の圧縮機内の潤滑油17としては、ポリアルキレングリコール、エステル、エーテル、カーボネイトなどの極性を有する合成油を用いる。潤滑油17には極性を有する、多価アルコールなどの油性剤やりん酸エステルなどの極圧添加剤が摩耗防止剤として添加されている。
またシリンダ2、ロータ3、前部側板5、後部側板6及びベーン4をアルミニウム合金で構成する。アルミニウム合金として焼結材を用いることもできる。シリンダ2の内周面には鉄系コーティング層18が形成されている。Mo粒子を含む鉄系粉末材料をアルミニウム合金20の上に溶射したものである。
図3にこの鉄系コーティング層18の断面図を示す。20はFeOであり層状なって分散し、5〜15wt%含まれている。21は鉄系粒子であり、10〜50μm径の大きさのものが混在している。また22はMo粒子であり、微細な粒子で混在している。鉄系コーティング層の厚さは30〜300μm、表面粗さはRmax8μm以下とすることが好ましい。
以下に本実施例による圧縮機の動作について説明する。
エンジンからベルトを介して圧縮機1の駆動軸7に動力が伝達されロータ3が回転する。この回転による遠心力と背圧室11の圧力によってベーン4はベーン溝10から突出し、ベーン4の先端はシリンダ2の内周面に摺接しながらロータ3とともに回転する。ロータ3の回転に伴って、冷媒は吸入口14から吸入室12に吸入され、その後圧縮室13で圧縮されて吐出口15そしてリアケース16を経て外部に吐出される。
一方、潤滑油17は、その一部がシリンダ2に供給され、前部側板5、後部側板6とロータ3との隙間やシリンダ2内周面の潤滑が行われる。
上記のように、シリンダ2の内周面に形成された鉄系コーティング層18の表面ではFeO20が露出しているが、酸素量が厳しく管理されているので酸化されることなくFeO20のままで表面に分散している。その結果、シリンダ2の内周面に供給された潤滑油17はその極性のため活性なFeO20に吸着され、シリンダ2の内周面は潤滑油17が確保されることになり、圧縮機の耐久性を大幅に向上できる。更に、空気調和装置の始動や除霜などの過渡運転では圧縮機内部で潤滑油不足が発生する場合があり、そのため圧縮機保護の制御がなされているが、その制御を大幅に緩和でき、立ち上がり性能を向上できる。
また鉄系粒子21により鉄系コーティング層18は層内剥離に対する強度が高くなり、鉄系コーティング層18の機械強度および信頼性を向上できる。
またMo粒子22によりシリンダ2の内周面の摩擦摩耗特性が高くなり、シリンダ2の耐摩耗性を向上できるだけでなく、ベーン4に対する攻撃性も抑制することができる。
また摩耗防止剤によりシリンダ2内周面やベーン4先端の温度が高い条件で摩耗防止剤との反応が起きることになり、高負荷におけるシリンダやベーンの耐焼付き性を向上できる。
また鉄系コーティング層によってシリンダ2の機械強度が向上することになり、その分シンダを薄くでき圧縮機を軽量化できる。
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態のスライディングベーン型ロータリ圧縮機におけるベーンの断面図を示すものである。
ベーン4をアルミニウム合金で構成する。アルミニウム合金として焼結材を用いることもできる。ベーン4の先端には鉄系コーティング層18aが形成されている。
鉄系コーティング層18aは、Mo粒子を含む鉄系粉末材料をアルミニウム合金20の上に溶射したものである。鉄系コーティング層18a内に、FeOが層状で分散し、5〜15wt%含まれている。また鉄系粒子は10〜50μm径の大きさのものが混在している。更にMo粒子は微細な粒子で混在している。なお、鉄系コーティング層の厚さは30〜300μm、表面粗さはRmax8μm以下とすることが好ましい。
実施の形態1と同様の作用効果が得られるが、更にベーン4先端のみに鉄系コーティング層を形成しているので、低価格で信頼性の高い圧縮機を得ることができる。
以上のように、本発明にかかる圧縮機は、FeOと潤滑油の相互作用によって摺動面に潤滑油を確保して高い信頼性を得るものであり、冷凍設備または給湯設備並びに自動車用空調機にも適用できる。
本発明の実施の形態1におけるスライディングベーン型ロータリ圧縮機の断面図 同実施例におけるスライディングベーン型ロータリ圧縮機の圧縮機構部の断面図 本発明の実施の形態1におけるシリンダの断面組織図 本発明の実施の形態2におけるスライディングベーン型ロータリ圧縮機におけるベーンの断面図
符号の説明
1 圧縮機
2 シリンダ
4 ベーン
17 潤滑油
18 鉄系コーティング層
18a 鉄系コーティング層
20 FeO
21 鉄系粒子
22 Mo粒子

Claims (6)

  1. 少なくとも摺動部にFeOが分散している鉄系コーティング層を設けた摺動部材と、ポリアルキレングリコール、エステル、エーテルなどの極性を有する潤滑油を用いた圧縮機。
  2. 鉄系コーティング層にFeOが5〜30wt%分散している請求項1に記載の圧縮機。
  3. 鉄系コーティング層に10〜50μm径の鉄系粒子が混在している請求項1または2に記載の圧縮機。
  4. 鉄系コーティング層にMo粒子が混在している請求項1乃至3記載の圧縮機。
  5. 潤滑油に油性剤や極圧添加剤などの極性を有する摩耗防止剤が添加されている請求項1乃至4記載の圧縮機。
  6. 圧縮機はスライディングベーン型ロータリ圧縮機であり、摺動部材はアルミニウム系材料を基材とするシリンダまたはベーンである請求項1乃至5記載の圧縮機。
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