JP2006075235A - 細胞の足場材料の補強に用いる繊維材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 細胞の足場材料の補強に用いる繊維材料であって、繊維以外に用いる生体分解吸収性合成高分子の量を増加させることなく、より高い力学的強度を発現することができる繊維材料の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる繊維材料の製造方法は、第1の生体分解吸収性合成高分子からなる繊維に、95重量%以上がジオキサンおよび/または酢酸エチルからなる溶媒に第2の生体分解吸収性合成高分子を溶解させた溶液を用いて、第2の生体分解吸収性合成高分子をコーティングすることにより、前記繊維間に結合点を形成する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、細胞の足場材料の補強に用いる繊維材料の製造方法に関する。詳しくは、生体組織再生に用いる細胞の足場材料を作製する際に、その力学的強度を補強するために、例えばコラーゲン等のスポンジに組み込んで用いられる繊維材料の製造方法に関する。
生体組織再生に用いる細胞の足場材料としては、従来から、コラーゲン等の天然高分子を用いたスポンジ状成形体が知られているが、力学的強度が低いという欠点があり、実際に生体内に埋入した場合あるいは細胞接種のため細胞混濁液に浸漬した場合、その形状が維持できないといった問題があった。
前述した力学的強度の問題を解決する手段として、近年、コラーゲン等の天然高分子からなるスポンジに、繊維状の生体分解吸収性合成高分子を組み込み、その力学的強度を補強する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、生体分解吸収性合成高分子は、ある程度の細胞親和性を有するものの、コラーゲン等の天然高分子と比べるとその細胞親和性は低いため、配合量が多いと、その分解産物が局所的なpHの低下や炎症反応を惹起するといった問題を招く恐れがあった。したがって、前記スポンジに組み込む繊維材料(生体分解吸収性合成高分子からなる繊維)の量はできるだけ少なくすることが望まれている。
そこで、繊維材料自体の強度を向上させることにより、繊維材料の使用量(すなわち、足場材料に組み込む生体分解吸収性合成高分子の量)を低減しつつも充分な力学的強度を発現させるべく、前記スポンジに組み込む生体分解吸収性合成高分子の繊維間に結合点を形成し、繊維材料自体の強度を向上させる技術が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。詳しくは、生体分解吸収性合成高分子繊維を、該繊維を構成する生体分解吸収性合成高分子よりも融点が低い第2の生体分解吸収性合成高分子でコーティングした後、第2の生体分解吸収性合成高分子のみを溶融させ、該第2の生体分解吸収性合成高分子の再凝固により繊維間に結合点を形成する技術である。
国際公開第03/028782号パンフレット 米国特許第5512600号明細書
しかしながら、近年、in vivoでの組織再生が研究段階から実用段階に移行しつつあるなか、足場材料の細胞親和性はより重要視されるようになってきている。そのため、足場材料の力学的強度を向上させるためにコラーゲン等のスポンジに組み込む生体分解吸収性合成高分子の量はさらに低減することが求められており、より少ない量で充分な力学的強度を発現する繊維材料が要望されている。
前記特許文献1および2に記載の技術において、充分な力学的強度を発現させつつ繊維材料の使用量をさらに低減するためには、結合点をより多く形成して繊維材料自体の力学的強度をさらに向上させることが重要となる。ところが、結合点をより多く形成するには、第2の生体分解吸収性合成高分子の使用量を増やさなければならず、これは、生体分解吸収性合成高分子の量を低減するという前述した本来の目的に反することになる。したがって、前記特許文献1および2で開示されている繊維材料には、第2の生体分解吸収性合成高分子の使用量を増やすことなく、望ましくは第2の生体分解吸収性合成高分子の使用量をより少量に抑えながら、その力学的強度をさらに向上させる改良が求められている。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、細胞の足場材料の補強に用いる繊維材料であって、繊維以外に用いる生体分解吸収性合成高分子の量を増加させることなく、より高い力学的強度を発現することができる繊維材料の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、第1の生体分解吸収性合成高分子の繊維の繊維間に第2の生体分解吸収性合成高分子を用いて結合点を形成するにあたり、第2の生体分解吸収性合成高分子の使用量を増やすことなく結合点をより多く形成するには、第2の生体分解吸収性合成高分子をより均一にまんべんなく繊維表面にコーティングすること、言い換えれば、第2の生体分解吸収性合成高分子が、繊維表面で粒子状のだまにならず繊維表面全体を覆うように均一に付着し、かつ、絡まりあい塊となっている繊維の隙間にまで浸入し、繊維の1本1本に付着するようにすること、が重要であると考えた。すなわち、このように第2の生体分解吸収性合成高分子をより均一にまんべんなく繊維表面にコーティングすることにより、繊維の交点で第2の生体分解吸収性合成高分子によって確実に効率よく結合点を形成することができるとともに、第2の生体分解吸収性合成高分子自体も絡まりあった繊維と同様の広がった空間配置をとることになるので、第2の生体分解吸収性合成高分子の使用量を増やすことなく、逆に多少減らしたとしても、結合点をより多く形成することができ、その結果、繊維材料の力学的強度をより向上させることができる、と考えたのである。そして、第2の生体分解吸収性合成高分子を均一にまんべんなく繊維表面にコーティングさせるには、コーティングにあたり、第2の生体分解吸収性合成高分子を繊維表面に対する濡れ性が良い(繊維表面を濡らしやすい)溶媒に溶解させた溶液として用いればよいことを見出し、生体分解吸収性合成高分子繊維に対して良好な濡れ性を発現しうる溶媒について検討を重ねた結果、各種溶媒のうち95重量%以上がジオキサンおよび/または酢酸エチルからなる溶媒が最も良好な濡れ性を示しうること、しかも、このような溶媒であれば、コーティング後、溶媒のみが気化し第2の生体分解吸収性合成高分子は固化するので、第2の生体分解吸収性合成高分子を溶融させて再凝固させなくても繊維間に結合点を形成することができること、を見出した。この知見に基づき、95重量%以上がジオキサンおよび/または酢酸エチルからなる溶媒に第2の生体分解吸収性合成高分子を溶解させた溶液を用いて、第1の生体分解吸収性合成高分子繊維に第2の生体分解吸収性合成高分子をコーティングすることにより、繊維間に結合点を形成すれば、前記課題を一挙に解決しうることを確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかる細胞の足場材料の補強に用いる繊維材料の製造方法は、第1の生体分解吸収性合成高分子からなる繊維に、95重量%以上がジオキサンおよび/または酢酸エチルからなる溶媒に第2の生体分解吸収性合成高分子を溶解させた溶液を用いて、第2の生体分解吸収性合成高分子をコーティングすることにより、前記繊維間に結合点を形成する。
本発明によれば、細胞の足場材料の補強に用いる繊維材料であって、該繊維材料を構成する生体分解吸収性合成高分子の量を少なく抑えつつ、少量で極めて高い力学的強度を発現することができる繊維材料を得ることができ、該繊維材料を用いてなる足場材料は、良好な細胞親和性と高い力学的強度を兼ね備えたものとなる。
以下、本発明にかかる繊維材料の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明の製造方法は、第1の生体分解吸収性合成高分子からなる繊維に、95重量%以上がジオキサンおよび/または酢酸エチルからなる溶媒(以下、「コーティング溶媒」と称することもある。)に第2の生体分解吸収性合成高分子を溶解させた溶液を用いて、第2の生体分解吸収性合成高分子をコーティングすることにより、前記繊維間に結合点を形成するものである。
前記第1の生体分解吸収性合成高分子としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリβ−リンゴ酸、ポリオルソエステル、ポリジアミノホスファゼン、およびこれらの共重合体等が挙げられる。これらの中でも特に、一般的な組織再生の期間に適した生体分解吸収性を有する点からは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクトン、あるいはこれらの共重合体が好ましい。また、前記第1の生体分解吸収性合成高分子としては、後述するコーティング溶媒に溶解しないか、もしくは溶解しにくいものであることが好ましく、用いるコーティング溶媒に応じて選択することが望ましい。
前記第1の生体分解吸収性合成高分子からなる繊維は、長繊維であっても短繊維であってもよいが、充分に絡まりあった状態で所望する繊維材料の形態になっていることが、より高い力学的強度を発現しうる点から好ましい。具体的には、前記繊維は、例えば、前記第1の生体分解吸収性合成高分子からなる不織布を均一にほぐして充分に絡まりあった繊維状にし、所望の鋳型に入れて成形することにより、得ることができる。前記繊維の繊維径(直径)は、特に限定されないが、例えば1〜100μmであることが好ましい。なお、前記繊維は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記繊維は前記第1の生体分解吸収性合成高分子の1種のみからなるものであってもよいし、2種以上からなるものであってもよい。
前記第2の生体分解吸収性合成高分子は、後述するコーティング溶媒に溶解しうる生体分解吸収性合成高分子であれば、特に制限されるものではなく、第1の生体分解吸収性合成高分子の例として前述したものの中から、コーティング溶媒に対する溶解性などを考慮して、適宜選択すればよい。なお、前記第2の生体分解吸収性合成高分子は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記第1の生体分解吸収性合成高分子としてポリグリコール酸を用い、前記第2の生体分解吸収性合成高分子としてポリ乳酸やポリ乳酸とポリε−カプロラクトンとの共重合体などを用いる組み合わせが、良好な生体分解吸収性を発現しうる点で好ましい。
本発明の製造方法においては、95重量%以上がジオキサンおよび/または酢酸エチルからなる溶媒(コーティング溶媒)に前記第2の生体分解吸収性合成高分子を溶解させた溶液(以下、「コーティング溶液」と称することもある。)を用いて、前記繊維に第2の生体分解吸収性合成高分子をコーティングすることが重要である。このような特定の溶媒を選択して用いることにより、コーティング溶液は前記繊維に対して良好な濡れ性を示し、第2の生体分解吸収性合成高分子を、前記繊維表面で粒子状のだまにならず繊維表面全体を覆うように均一に付着し、かつ、絡まりあい塊となっている繊維の隙間にまで浸入して繊維の1本1本に付着するようにコーティングすることが可能となる。そして、コーティング後、前記コーティング溶媒のみが気化し第2の生体分解吸収性合成高分子が前記繊維の交点で固化することにより、第2の生体分解吸収性合成高分子の使用量を増やすことなく、逆に多少減らしたとしても、結合点をより多く形成することができ、その結果、極めて高い力学的強度を発現させることが可能となるのである。
前記コーティング溶媒は、95重量%以上がジオキサンおよび/または酢酸エチルからなるものであればよいのであるが、特に、ジオキサン単独溶媒または酢酸エチル単独溶媒が好ましく、酢酸エチル単独溶媒がより好ましい。前記コーティング溶媒がジオキサンと酢酸エチルの混合溶媒である場合、その比率は特に制限されるものではなく、任意の比率に設定することができる。なお、前記コーティング溶媒は、ジオキサンおよび酢酸エチル以外の有機溶媒を含むものであってもよいが、ジオキサンおよび酢酸エチル以外の有機溶媒をも含む場合、その含有量は5重量%未満、好ましくは1重量%未満となるようにすることが重要である。
前記コーティング溶液は、前記コーティング溶媒に前記第2の生体分解吸収性合成高分子を溶解させた溶液であるが、その濃度(コーティング溶液中に占める第2の生体分解吸収性合成高分子の量)は、第2の生体分解吸収性合成高分子の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に制限はない。例えば、第2の生体分解吸収性合成高分子としてポリ乳酸を選択する場合には、コーティング溶液の濃度(コーティング溶液中に占めるポリ乳酸の量)は0.1〜20重量%とすることが好ましく、1〜5重量%とすることがより好ましい。
前記繊維に前記第2の生体分解吸収性合成高分子をコーティングする際の具体的な方法は、特に制限されないが、例えば、前記コーティング溶液を噴霧器等を用いて前記繊維の表面に噴霧するなどの方法を採用すればよい。なお、コーティング後、前記コーティング溶媒は、例えば、常温常圧で放置しておくことにより気化させることもできるが、例えば、凍結乾燥するなどして積極的に気化させるようにしてもよい。
前記コーティングに際しては、前記コーティング溶液を、前記繊維に対して5〜30cmの距離を保って噴霧することが好ましく、より好ましくは15〜20cmの距離を保って噴霧するようにするのがよい。前記繊維からの距離が5cm未満である位置から噴霧すると、前記繊維全体に均一にコーティングすることが難しくなり、一方、前記繊維からの距離が30cmを超える位置から噴霧すると、コーティング量を制御しにくくなる。また、前記コーティングに際しては、前記繊維の表面全体に前記コーティング溶液を噴霧することが好ましく、前記繊維に対して1方向からだけでなく多方向から噴霧することが望ましい。前記繊維に対して多方向から噴霧する場合、前記繊維をメッシュ(金網など)の上に置いて行なうようにするとよい。なお、前記噴霧などののち前記コーティング溶媒を積極的に気化させるために行なう凍結乾燥などの条件については、特に制限はなく、適宜設定すればよい。
本発明の製造方法においては、前記繊維にコーティングする前記第2の生体分解吸収性合成高分子の量を、前記第1の生体分解吸収性合成高分子(前記繊維)に対して50重量%以下とすることが好ましく、30重量%以下とすることがより好ましく、20重量%以下とすることがさらに好ましく、15重量%以下とすることが最も好ましい。細胞親和性の観点からは、前記第2の生体分解吸収性合成高分子の量はできるだけ少ない方が望ましいのであるが、前述した従来の技術においては、該第2の生体分解吸収性合成高分子の量が少なすぎると、繊維間に結合点を形成させにくくなり、充分に力学的強度を向上させることができなかった。本発明においては、前記繊維にコーティングする前記第2の生体分解吸収性合成高分子の量を前記範囲のように少なくしても、効率よくより多くの結合点を形成することができ、充分な力学的強度の向上を図ることができるのである。なお、例えば、本発明で得られた繊維材料を細胞親和性が要求されないin vitroで用いる足場材料に使用する場合などには、前記範囲を超える量の第2の生体分解吸収性合成高分子の量を前記繊維にコーティングするようにしてもよく、これにより、さらに高い力学的強度を発現させることが可能になる。前記第1の生体分解吸収性合成高分子(前記繊維)に対する第2の生体分解吸収性合成高分子のコーティング量を前記範囲にするには、例えば、前記コーティング溶液の濃度や、前記コーティング溶液の噴霧量などを調整すればよい。
本発明の製造方法においては、前記第2の生体分解吸収性合成高分子として、前記第1の生体分解吸収性合成高分子よりも融点が低い生体分解吸収性合成高分子を用いるとともに、前記コーティングののち、第2の生体分解吸収性合成高分子のみが溶融するような条件で熱処理を施すことが好ましい。本発明の製造方法においては、前述したように、コーティング後、前記コーティング溶媒のみを気化させることのみによっても、第2の生体分解吸収性合成高分子を前記繊維の交点で固化させて繊維間に結合点を形成することができるのであるが、前記第2の生体分解吸収性合成高分子として前記第1の生体分解吸収性合成高分子よりも融点が低い生体分解吸収性合成高分子を用いるとともに、前記コーティングののち、第2の生体分解吸収性合成高分子のみが溶融するような条件で熱処理を施すことにより、さらに、溶融した第2の生体分解吸収性合成高分子が前記繊維の交点にて凝固することとなり、その結果、前記繊維間により強固な結合点を形成することができるのである。また、熱処理することにより、第1の生体分解吸収性合成高分子からなる繊維が延伸されることとなり、該第1の生体分解吸収性合成高分子の結晶化が進み、繊維自体の強度を向上させることができるという効果も期待できる。
前記熱処理を施す際の条件については、前記第2の生体分解吸収性合成高分子のみが溶融するような条件であればよく、特に制限されないが、例えば、0.1〜0.5トール未満の真空下、160〜250℃で5〜60分間とすればよい。
本発明の製造方法で得られた繊維材料は、細胞の足場材料の補強に用いる繊維材料であり、生体組織再生に用いる細胞の足場材料を作製する際に、その力学的強度を補強する目的で、例えばコラーゲン等の生体吸収性の天然高分子からなるスポンジに組み込んで用いられる。具体的には、例えば、本発明の製造方法で得られた繊維材料を天然高分子の溶液中に含浸させ、その状態で凍結乾燥を行うことにより、足場材料を得ることができる。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
ポリグリコール酸繊維(直径14μm)からなる不織布3.0mg分を切り出し、ピンセットで均一にほぐして繊維状にし、円柱状の鋳型(直径15mm、高さ3mm)に入れて成形した。次いで、成形したポリグリコール酸繊維を鋳型から取り出してアルミ製網の上に載せ、この円柱状のポリグリコール酸繊維に、ポリ乳酸(分子量2万、WAKO製)をジオキサンに溶解させた1%(w/v)ポリ乳酸溶液を噴霧したのち、0.1トール未満の真空下で24時間凍結乾燥することにより、ポリグリコール酸繊維にポリ乳酸をコーティングした。なお、噴霧に際しては、エアーブラシ(「YT−03」八重崎空圧(株)製)およびエアーコンプレッサー(「AC−100」(株)トゥマーカープロダクツ製)を用い、2.0kg/cmの圧力で、アルミ製網の上に載せた円柱状のポリグリコール酸繊維に対して2方向(円柱の上面側と底面側)から20cmの距離を保って噴霧するとともに、その噴霧時間によって噴霧量を制御して、凍結乾燥後においてポリグリコール酸繊維に対して20重量%のポリ乳酸がコーティングされるようにした。その後、195℃で30分間熱処理を施して、繊維材料を得た。
なお、ポリグリコール酸繊維にポリ乳酸をコーティングした後、熱処理を行なう前に、断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、繊維表面に粒子状のだまは認められず、ポリ乳酸が繊維に均一に付着していることが確認できた。この走査型電子顕微鏡による写真を図1に示す。
〔実施例2〕
ポリ乳酸溶液に用いる溶媒として、ジオキサンの代わりに酢酸エチルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維材料を得た。
なお、ポリグリコール酸繊維にポリ乳酸をコーティングした後、熱処理を行なう前に、断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、繊維表面に粒子状のだまは認められず、ポリ乳酸が繊維に均一に付着していることが確認できた。この走査型電子顕微鏡による写真を図2に示す。
〔比較例1〕
ポリ乳酸溶液に用いる溶媒として、ジオキサンの代わりにクロロホルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維材料を得た。
なお、ポリグリコール酸繊維にポリ乳酸をコーティングした後、熱処理を行なう前に、断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、繊維表面に粒子状のだまが認められ、ポリ乳酸は部分的に集中して繊維に付着していることが確認できた。この走査型電子顕微鏡による写真を図3に示す。
〔比較例2〕
実施例1において、ポリ乳酸をジオキサンに溶解させた1%(w/v)ポリ乳酸溶液の代わりにジオキサンのみを用い、ポリグリコール酸繊維にポリ乳酸はコーティングされないように(凍結乾燥後におけるポリグリコール酸繊維に対するポリ乳酸のコーティング量は0重量%)したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維材料を得た。
上記実施例1〜2および比較例1〜2で得られた繊維材料について下記の評価を行なった。
<走査型電子顕微鏡による観察>
繊維材料の断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。実施例1で得られた繊維材料の走査型電子顕微鏡による写真を図4に、実施例2で得られた繊維材料の走査型電子顕微鏡による写真を図5に、比較例1で得られた繊維材料の走査型電子顕微鏡による写真を図6に、比較例2で得られた繊維材料の走査型電子顕微鏡による写真を図7に、それぞれ示す。
図4〜図7から、実施例1および実施例2の繊維材料に認められる繊維間の結合点は、比較例1の繊維材料に認められる結合点よりも多いことが明らかである。また、比較例2の繊維材料については、繊維間に結合点が全く認められないことが明らかである。
<圧縮試験1>
圧縮試験機(「オートグラフAGS−10kND」島津製作所製)を用いて繊維材料を0.5mm/分で高さの50%を圧縮したときの応力−ひずみ曲線を得、該曲線から圧縮弾性率(kPa)および50%圧縮時の応力(kPa)を求めた。結果を表1に示す。
<圧縮試験2>
繊維材料の上にスライドガラスを載せ、さらに該スライドガラスの上に10gの分銅を載せた。そして、分銅を載せる前の繊維材料の高さ(Ha)と、分銅を載せてから1時間後の繊維材料の高さ(Hb)を測定し、下記式により圧縮率を求めた。結果を表1に示す。
圧縮率(%)=〔1−(Hb/Ha)〕×100
Figure 2006075235
本発明にかかる製造方法で得られた繊維材料は、生体組織再生に用いる細胞の足場材料を作製する際に、その力学的強度を補強する目的で好適に使用することができる。
実施例1において、コーティング後、熱処理前の繊維材料断面を観察したときの走査型電子顕微鏡による写真である。 実施例2において、コーティング後、熱処理前の繊維材料断面を観察したときの走査型電子顕微鏡による写真である。 比較例1において、コーティング後、熱処理前の繊維材料断面を観察したときの走査型電子顕微鏡による写真である。 実施例1で得られた繊維材料断面の走査型電子顕微鏡による写真である。 実施例2で得られた繊維材料断面の走査型電子顕微鏡による写真である。 比較例1で得られた繊維材料断面の走査型電子顕微鏡による写真である。 比較例2で得られた繊維材料断面の走査型電子顕微鏡による写真である。

Claims (3)

  1. 第1の生体分解吸収性合成高分子からなる繊維に、95重量%以上がジオキサンおよび/または酢酸エチルからなる溶媒に第2の生体分解吸収性合成高分子を溶解させた溶液を用いて、第2の生体分解吸収性合成高分子をコーティングすることにより、前記繊維間に結合点を形成する、細胞の足場材料の補強に用いる繊維材料の製造方法。
  2. 前記第2の生体分解吸収性合成高分子として、前記第1の生体分解吸収性合成高分子よりも融点が低い生体分解吸収性合成高分子を用いるとともに、前記コーティングののち、第2の生体分解吸収性合成高分子のみが溶融するような条件で熱処理を施す、請求項1に記載の繊維材料の製造方法。
  3. 前記繊維にコーティングする前記第2の生体分解吸収性合成高分子の量を、前記第1の生体分解吸収性合成高分子に対して50重量%以下とする、請求項1または2に記載の繊維材料の製造方法。
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