JP2006073579A - 結晶性酸化亜鉛(ZnO)薄膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 結晶性の良好なZnO薄膜を低温で、特に加熱することなく室温で、形成させる方法を提供すること。
【解決手段】 基板上に400℃未満の温度で結晶性酸化亜鉛薄膜を形成させる方法であって、該基板上に表面が主に(111)格子面となる結晶性緩衝層を設けた後、該緩衝層の上に酸化亜鉛薄膜を気相法により堆積させることを特徴とする方法。
【選択図】 図5
【解決手段】 基板上に400℃未満の温度で結晶性酸化亜鉛薄膜を形成させる方法であって、該基板上に表面が主に(111)格子面となる結晶性緩衝層を設けた後、該緩衝層の上に酸化亜鉛薄膜を気相法により堆積させることを特徴とする方法。
【選択図】 図5
Description
本発明は、結晶性酸化亜鉛(ZnO)薄膜の形成方法に関する。
最近、酸化亜鉛(ZnO)が、青色半導体レーザー材料である窒化ガリウム(GaN)と同様の結晶構造および電子構造を有している点で注目されている。特に、ZnOは、環境に優しい酸化物であることから、新規の短波長域発光材料や太陽光発電材料などの電子デバイス用薄膜材料として期待されている。
電子デバイス用薄膜は、その特性を高めるため、結晶性の向上が要求されることがある。特に、種々の用途において気相法による電子デバイス用薄膜の単結晶化が求められている。また、耐熱性の低い基板またはデバイスへの適用を可能にするため、電子デバイス用薄膜の成膜プロセスを低温化することも要求されている。特に、室温レベルで成膜できることにより、薄膜表面がナノレベルで平坦化され、ひいては電子デバイス用途において急峻な界面が得られることとなり、極めて有用となる。
ZnO薄膜を気相法で成膜する場合、該薄膜を結晶性(多結晶体を含む)に、さらには単結晶性(エピタキシャル成長膜)にするときは、通常、当該薄膜堆積基板を400℃〜800℃の高温に加熱する。このような加熱処理は、当該技術分野では、基板上での薄膜材料の拡散および結晶化のための原子配列移動を促進するために欠かせないものであると認識されている。
しかし、このような高温での加熱処理は、基板と薄膜の間の熱膨張率差や、界面熱拡散、等により電子デバイスを損傷させる原因となり得る。特に、有機薄膜をはじめとする耐熱性の低い薄膜と結晶性ZnO薄膜との複合化を考えた場合、気相法による成膜プロセスの低温化が避けられない課題となる。また、結晶性ZnO薄膜の膜表面をより平坦化することにより、電子デバイス用途における界面特性の向上を図ることも望まれる。
透明導電膜の技術、オーム社、1999年、第135〜144頁
したがって、本発明の目的は、結晶性の良好なZnO薄膜を低温で、特に加熱することなく室温で、形成させる方法を提供することにある。
上記の目的は、基板上に400℃未満の温度で結晶性酸化亜鉛薄膜を形成させる方法であって、該基板上に表面が主に(111)格子面となる結晶性緩衝層を設けた後、該緩衝層の上に酸化亜鉛薄膜を気相法により堆積させることを特徴とする方法によって達成される。
本発明によると、結晶性の良好な、特に単結晶形態の、ZnO薄膜を低温で、特に室温で、形成させることができる。このように低温で結晶性ZnO薄膜が得られるので、有機薄膜をはじめとする耐熱性の低い薄膜との複合化が容易となり、電子デバイス用途の幅が広がる。また、本発明によると、結晶性ZnO薄膜の膜表面の平坦性が向上するので、電子デバイス用途における界面特性の向上を図ることができる。
本発明による方法は、基板上に400℃未満の温度で結晶性ZnO薄膜を形成させるに際し、該基板上に表面が主に(111)格子面となる結晶性緩衝層を設けた後、該緩衝層の上にZnO薄膜を気相法により堆積させることを特徴とする。
ZnO薄膜は、気相法で成膜した場合、通常、当該薄膜堆積基板を400℃〜800℃の高温に加熱することにより結晶性、場合によってはエピタキシャル成長して単結晶性となる。これは、加熱によって、堆積されるZnOの基板上における拡散および結晶化のための原子配列移動が促進されるからである。しかし、本発明者は、ZnOの原子配列移動を促進させる独立した薄膜、すなわち緩衝層を基板上に極薄く堆積させ、その上にZnOを気相成長させることにより、低温で、場合によっては室温で、結晶性に優れたZnO薄膜が得られることを見出した。
本発明による緩衝層は、表面が主に(111)格子面となる結晶性のものである。当業者であれば、(111)格子面で結晶成長する結晶性化合物について理解をすることができる。特に、本発明による緩衝層は、岩塩型結晶構造、ウルツ鉱型結晶構造または蛍石型結晶構造を有する無機化合物薄膜であることが好ましい。岩塩型、ウルツ鉱型または蛍石型の結晶構造についても、当業者であれば理解をすることができる。具体的には、岩塩型結晶構造を有する薄膜として、酸化ニッケル(NiO)薄膜、窒化チタン(TiN)薄膜、等が、ウルツ鉱型結晶構造を有する薄膜として、窒化アルミニウム(AlN)薄膜、窒化ガリウム(GaN)薄膜、等が、また蛍石型結晶構造を有する薄膜として、酸化セリウム(CeO2)薄膜、等が挙げられる。また、表面が(111)格子面となる限り、該緩衝層を2以上の層を組み合わせることにより構成してもよい。
本発明による緩衝層は、気相法により、基板上に形成させることができる。基板は、目的に応じてセラミック、ガラス、プラスチック、シリコン、金属、等から選ぶことができる。特に、本発明によると、室温という低温で処理されることができるので、耐熱性の低い基板上、あるいは有機物層の上に、緩衝層を形成させることができる。気相法は常法によることができ、例えばマグネトロンスパッタリング、反応性スパッタリング、等のスパッタ法や、電子ビーム蒸着法のような蒸着法、レーザー分子線エピタキシー法のようなレーザーアブレーション法、化学的気相成長(CVD)法、等が好適に用いられる。
本発明による緩衝層の膜厚は、一般に1〜100nm、好ましくは2〜20nmの範囲内とすればよい。緩衝層が1nmより薄いと、結晶性ZnO薄膜の低温成膜という目的を十分に達成することができない。反対に100nmより厚くすると、緩衝層表面の凹凸が大きくなり、得られるZnO薄膜の平坦性が低下する。
本発明によると、上述の結晶性緩衝層を設けた後、その上にZnO薄膜を気相法により堆積させる。このように堆積されたZnO薄膜は結晶性、好ましくは単結晶性となる。ZnO薄膜を堆積させる際、上述の緩衝層を担持する基板を加熱する必要はない。加熱しない場合、堆積温度は室温、すなわち概ね20℃±5℃となる。もちろん、基板その他の要素の耐熱性が許す限りにおいて、当該基板を加熱することは可能である。その場合でも、従来考えられていた高温(400℃以上)に加熱する必要はなく、400℃未満の低温で、結晶性の、特に単結晶性のZnO薄膜を形成することができる。
本発明によると、酸化亜鉛にドーパントを含めることもできる。ZnOにドーパントを含めることにより、ZnO薄膜の導電性その他の特性を向上させることができる。ドーパントの含め方、すなわちドーピング法については、当業者であれば、採用する気相法に応じて適宜選定することができる。例えば、レーザー分子線エピタキシー法を採用した場合、所望の薄膜ドーパント濃度に対応する含有率でドーパントを予め含有するZnO焼結体をターゲットとして使用すればよい。
酸化亜鉛に対するドーパントとしては、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、ホウ素(B)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、等が挙げられる。ドーパント濃度は、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%の範囲内で、所期の用途に応じて具体的に決めることができる。
本発明によると、表面が主に(111)格子面となっている結晶性緩衝層の上に、ドーパントを含むかまたは含まないZnO薄膜を、気相法により堆積させる。気相法としては、先に緩衝層について説明した常法を、目的に応じて適宜採用すればよい。気相法による堆積速度としては、一般に10μm/時以下、好ましくは0.1μm/時以下とする。一般に堆積速度の遅い方が、堆積膜の結晶性は向上するが、工業生産性を考慮する場合、10μm/時程度の速度が要求されることがある。気相法による堆積速度については、当業者であれば、採用した具体的方法に応じて適宜調節制御を行うことができる。
本発明によると、堆積される酸化亜鉛は(0001)格子面で成長する配向を示す。このように低温で、特に室温で、成長したZnO薄膜の結晶性は、従来法により高温成長したZnO薄膜の結晶性と何ら変わらず、特に、光学特性に優れる+c極性成長であることがわかった。このような単結晶状で+c極性を有するZnO薄膜を室温で形成する技術は、発光素子の大量生産時において安価に生産するための有効な手段となる。また、有機薄膜等との複合化においても高温加熱による損傷が低減される点でも有利である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
緩衝層およびZnO薄膜の成膜には、波長248nmのKrFエキシマレーザーを具備するレーザー分子線エピタキシー(レーザーMBE)装置(ラムダフィジク社製、型式:LPX−100)を使用した。得られた薄膜の結晶性の評価には、反射高速電子線回折法(RHEED)およびX線回折法を使用した。得られた薄膜の平坦性の評価には、原子間力顕微鏡写真を使用した。得られた薄膜の表面構造(極性)の評価には、同軸型直衝突イオン散乱分光法(CAICISS)を使用した。
比較例1
極めて平坦なサファイア(単結晶アルミナ)(0001)基板の上に、上記レーザーMBE装置を用いて、室温(約20℃)で、表1に示した厚さのZnO膜を直接成膜した。ターゲットにはZnO焼結体を使用した。ターゲット上でのレーザーエネルギー密度、レーザー周波数および雰囲気圧を、下記表1に示したように設定した。
極めて平坦なサファイア(単結晶アルミナ)(0001)基板の上に、上記レーザーMBE装置を用いて、室温(約20℃)で、表1に示した厚さのZnO膜を直接成膜した。ターゲットにはZnO焼結体を使用した。ターゲット上でのレーザーエネルギー密度、レーザー周波数および雰囲気圧を、下記表1に示したように設定した。
得られたZnO薄膜の、2つの方向(<1120>、<1010>)からのRHEEDパターンを図1に示す。2つの方向からのRHEEDパターンは同一となり、単結晶膜に特有な異種パターンは得られなかった。このように方向を変えてもRHEEDパターンが変わらないのは、基板面内の結晶方向がランダムであることを意味する。したがって、得られたRHEEDパターンから、該薄膜は、基板面内ではランダムに配向し、基板垂直方向のみに配向した多結晶性配向膜であったことがわかる。また、得られたZnO薄膜のX線回折測定結果を図2に示す。この結果から、該薄膜は、(0001)方向に配向した多結晶性配向膜であったことがわかる。
得られたZnO薄膜の原子間力顕微鏡表面像を図3に示す。図中、RMSは、表面粗さ(平均二乗粗さ)を示す指数である。この結果から、該薄膜は、表面粗さが0.77nmという非常に荒れた膜であったことがわかる。また、得られた薄膜の表面構造(極性)は、CAICISS測定より、多結晶性配向膜であるため+c極性と−c極性とが混在した膜であったことが確認された。
実施例1〜4
極めて平坦なサファイア(単結晶アルミナ)(0001)基板の上に、上記レーザーMBE装置を用いて、室温(約20℃)で、緩衝層として、(a)TiN(実施例1)、(b)NiO(実施例2)、(c)AlN/TiN(実施例3)および(d)AlN/NiO(実施例4)を成膜した。各ターゲット上でのレーザーエネルギー密度、レーザー周波数および雰囲気圧を、表1に示したように設定した。さらに各緩衝層の厚さと表面配向を表1に示す。ここで、AlN/TiNおよびAlN/NiOの記述は、基板上に最初にTiNまたはNiOを堆積した後、その上にAlNを堆積したことを示す。
極めて平坦なサファイア(単結晶アルミナ)(0001)基板の上に、上記レーザーMBE装置を用いて、室温(約20℃)で、緩衝層として、(a)TiN(実施例1)、(b)NiO(実施例2)、(c)AlN/TiN(実施例3)および(d)AlN/NiO(実施例4)を成膜した。各ターゲット上でのレーザーエネルギー密度、レーザー周波数および雰囲気圧を、表1に示したように設定した。さらに各緩衝層の厚さと表面配向を表1に示す。ここで、AlN/TiNおよびAlN/NiOの記述は、基板上に最初にTiNまたはNiOを堆積した後、その上にAlNを堆積したことを示す。
得られた各緩衝層の上に、上記レーザーMBE装置を用いて、室温(約20℃)で、表1に示した厚さのZnO膜を成膜した。ターゲットにはZnO焼結体を使用した。ターゲット上でのレーザーエネルギー密度、レーザー周波数および雰囲気圧を、表1に示したように設定した。
得られた各ZnO薄膜のRHEEDパターンを図4に示す。(a)〜(d)のいずれの薄膜についても、線状(ストリーク状)のRHEEDパターンが得られ、その上2つの方向(<1120>、<1010>)のRHEEDパターンが異なっている。これは、基板面内で結晶方位がそろっており、これらの薄膜が単結晶的(エピタキシャル)に成長したことを示している。また、得られた各ZnO薄膜のX線回折測定結果を図5に示す。(a)〜(d)のいずれの薄膜についても、ZnO特有の(0002)回折ピークが確認され、参考用の比較例1のピークより強いものとなっている。すなわち、該薄膜が、緩衝層効果により(0001)配向し、基板面内で結晶方向がそろったエピタキシャル薄膜であったことがわかる。
得られた各ZnO薄膜の原子間力顕微鏡表面像を図6に示す。図中、RMSは、表面粗さ(平均二乗粗さ)を示す指数である。これらの表面像から、(a)〜(d)のいずれの薄膜も、サファイア基板の原子ステップ構造を残しながら成長していることがわかり、これらの表面が非常に平坦であることが確認された。また、得られた薄膜の表面構造(極性)は、CAICISS測定より、いずれも+c極性を有していることが確認された。
実施例5
シリコン(Si)(111)基板の上に、上記レーザーMBE装置を用いて、室温(約20℃)で、緩衝層として、CeO2(厚さ3nm)を成膜した。CeO2ターゲット上でのレーザーエネルギー密度、レーザー周波数および雰囲気圧を表1に示したように設定した。該緩衝層の表面配向は(111)であった。
シリコン(Si)(111)基板の上に、上記レーザーMBE装置を用いて、室温(約20℃)で、緩衝層として、CeO2(厚さ3nm)を成膜した。CeO2ターゲット上でのレーザーエネルギー密度、レーザー周波数および雰囲気圧を表1に示したように設定した。該緩衝層の表面配向は(111)であった。
得られた緩衝層の上に、上記レーザーMBE装置を用いて、室温(約20℃)で、アルミニウムを0.3質量%ドープした厚さ100nmのZnO:Al膜を成膜した。ターゲットには、Alを0.3質量%ドープしたZnO焼結体を使用した。ターゲット上でのレーザーエネルギー密度、レーザー周波数および雰囲気圧を表1に示したように設定した。
得られたZnO:Al薄膜のRHEEDパターンを図7に示す。線状(ストリーク状)のRHEEDパターンが得られ、その上2つの方向(<1120>、<1010>)のRHEEDパターンが異なっている。これは、基板面内で結晶方位がそろっており、これらの薄膜が単結晶的(エピタキシャル)に成長したことを示している。また、得られたZnO:Al薄膜のX線回折測定結果を図8に示す。ZnO特有の(0002)回折ピークが確認され、すなわち、該薄膜が、緩衝層効果により(0001)配向し、基板面内で結晶方向がそろったエピタキシャル薄膜であったことがわかる。
Claims (9)
- 基板上に400℃未満の温度で結晶性酸化亜鉛薄膜を形成させる方法であって、該基板上に表面が主に(111)格子面となる結晶性緩衝層を設けた後、該緩衝層の上に酸化亜鉛薄膜を気相法により堆積させることを特徴とする方法。
- 該緩衝層が岩塩型結晶構造、ウルツ鉱型結晶構造または蛍石型結晶構造を有する無機化合物薄膜である、請求項1に記載の方法。
- 該緩衝層がNiO薄膜、TiN薄膜、AlN薄膜、GaN薄膜もしくはCeO2薄膜またはこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
- 該緩衝層の膜厚が2〜20nmの範囲内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 該酸化亜鉛薄膜が単結晶性である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 該酸化亜鉛薄膜がドーパントを含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 該ドーパントがアルミニウムである、請求項6に記載の方法。
- 該温度が20℃±5℃である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 該気相法をレーザー分子線エピタキシー法で行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
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