請求項1に記載の発明は、複数の断熱区画を有する断熱箱体と前記断熱箱体の上部に圧縮機を備え、前記複数の断熱区画のうち冷凍温度帯に設定された最下段に配置されている冷凍室の背壁面を前記断熱箱体のほぼ底部まで平面状に形成し、前記冷凍室の背壁面に真空断熱材を備えたことを特徴とする。
これによって、圧縮機の配設スペースを引出し部として使える断熱箱体下方部に設けることがなく有効に空間を利用できるうえに、特に結露しやすい低温の背壁面が圧縮機の上部移設に伴ってほぼ平面状に拡大されても、断熱壁厚を増加させることなく断熱性能を向上させ、背面の温度低下を防止することができるので、背面の結露を防止できる。これにより内容積を減少させることもなく背面をぴったり壁押付け可能となり設置性を向上させることができる。
また、真空断熱材を用いることで低温の貯蔵室の壁厚を増加させることなく、省エネ性を向上させることが可能である。
これによって、最下段に配置されている為に結露した場合に床面へ水が滴下することによる腐食やかびなどに対する問題を防止することができる。
また、請求項2に記載の発明は、圧縮機と凝縮器と減圧器と蒸発器とを順に備えて一連の冷媒流路を形成した冷凍サイクルを有し、前記冷凍室の後方であって前記蒸発器を配設する冷却器室の背壁面に真空断熱材を備えたことを特徴とする。
これによって、冷凍室などに比べて最も低温となる冷却器の温度影響を低減し、壁厚を厚くし、内容積や庫内奥行寸法を低減することなく、結露防止が可能である。
請求項3に記載の発明は、断熱箱体の背壁面に冷凍サイクルの高圧パイプの一部を配設したことを特徴とするので、周囲温度より高温となる高圧パイプによる壁面加温が可能となるので、より厳しい周囲条件においても結露防止することが可能となる。
さらに真空断熱材と重ね合わせて配設することで、庫内への熱侵入を低減するとともに、背壁面表面の温度上昇を均一に行うことが可能である。
また、請求項4に記載の発明は、断熱箱体の背壁面に埋設した真空断熱材の下方に冷凍サイクルの高圧パイプの一部を配設したことを特徴とするので、高温の高圧パイプによる加熱効果が下方から上方への熱移動が行われるために効率的である。
また、請求項5に記載の発明は、断熱箱体下部に冷凍サイクルの高圧パイプの一部を配設したことを特徴とするので、高温の高圧パイプにより断熱箱体下方の温度を周囲温度に比べて高くすることができる。したがって下方の暖かい空気が冷たい上方の空気と対流促進されて、断熱箱体の外表面温度を効率的に加温することができる。
請求項6に記載の発明は、断熱箱体の背面側に熱伝導性の良い材料からなる背面パネルを備え、高圧パイプを背面パネルに接するように配置したことを特徴とするもので、これによって、銅パイプ50の発熱が背面パネル38に均一に伝えられることで、背面パネルの温度が上がり、背面パネルの結露が防止される。
請求項7に記載の発明は、請求項1から7に記載の冷蔵庫に加えて、真空断熱材はシート状無機繊維集合体をガスバリア性フィルムによって被覆し、内部を減圧したことを特徴とするので、薄く平面性のよい真空断熱材の構成が可能であり、比較的薄い断熱壁を有する断熱箱体への適用が可能であり、真空断熱材配置の自由度も高い。
また折り曲げや溝付けや異形形状などの加工性に優れるので、断熱箱体への配設自由度が高く、高圧パイプとの重ね貼りに対しても自由度が高い効果がある。
また、シート状であるので薄いシートを必要に応じて複数枚構成可能であり、必要に応じた厚みを対応可能であり、真空断熱材の体積を変化させるのに有効である。
また、無機繊維を用いるので真空断熱材内における経時的なガス発生が少なく、断熱箱体の長期信頼性が向上する。
また、特に庫外側への貼り付け面をアルミ箔によるガスバリア性フィルムとすることで表面の熱伝導が促進され、温度均一化により結露防止の効果をあげることができる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の概略断面図を示すものであり、図2は概略背面図を示すものである。また図3は真空断熱材の概略断面図を示す。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図1と図2及び図3において、断熱箱体1は鋼板でできた外郭パネル22と、ABS樹脂でできた内箱23と、外郭パネル22と内箱23との間に発泡充填してなる断熱材の例えば硬質発泡ウレタンフォーム24とで周囲と断熱して構成されており、さらに断熱バリヤ25で複数の断熱区画に区分されている。断熱区画は上から冷蔵室2、引出しタイプの野菜室4と冷凍室3の構成となっている。各断熱区画にはそれぞれ断熱扉がガスケット26を介して設けられている。上から冷蔵室回転扉5、野菜室引出し扉7、冷凍室引出し扉6である。
冷蔵室回転扉5には扉ポケット27が収納スペースとして設けられており、庫内には複数の収納棚8が設けられてある。また冷蔵室2の最下部には引出し可能な貯蔵ケース28が設けてある。
冷蔵室2は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1〜5℃で設定されている。また、貯蔵ケース28は肉魚などの保鮮性向上のため比較的低めの温度、例えば−3〜1℃で設定される。野菜室4は冷蔵室2と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃とすることが多い。低温にすれほど葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。
冷凍室3は冷凍保存のために冷凍温度帯である通常−22〜−18℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のためには、さらに低温の冷凍温度帯として例えば−30や−25℃で設定されることもある。
断熱箱体1の天部は背面奥部で中央部を凹ませて、前部の第一の天面部29と、後部の第二の天面部30とで構成されている。庫内側の収納棚8の最上段は第二の天面部30と下端面が同一面となるように設計されており、意匠性や使い勝手が向上してある。
冷凍サイクル31は圧縮機16と凝縮器17と減圧器であるキャピラリ32と水分除去を行うドライヤ(図示せず)と蒸発器20とを環状に接続して構成されている。凝縮器17と蒸発器20は機械室ファン18と冷却ファン21とで強制対流熱交換させている。
特に区画構成や温度設定の構成に応じて複数の蒸発器を使い分けたり、複数のキャピラリを切り替えたり、圧縮機16の停止中にガスカットをする場合など、電動三方弁などの流路制御手段を冷凍サイクル31に用いることがある。
また、凝縮器17は強制対流方式のものに加えて、断熱箱体1の外郭パネル22を利用して自然放熱するための配管や、各室断熱バリヤ25の前面に配設して結露防止を行うための配管を組み合わせてもよい。
冷凍サイクル31の構成機器である圧縮機16は第二の天面部30の上方に設けた強度補強のための圧縮機支持板33に弾性支持されている。
凝縮器17はワイヤータイプやフィンコイルタイプやスパイラルフィンタイプなどの薄型構成で第一の天面部29の上方空間に配設してある。
機械室ファン18は圧縮機16と並べて、圧縮機16の右側で防振配置してあり、風路(図示せず)により凝縮器17と圧縮機16を強制的に空冷する。このとき圧縮機16の熱影響を受けて凝縮器17の能力が低下しないように、風の流れが凝縮器17から圧縮機16へとなるように風路は構成されている。
またドライヤ(図示せず)や流路制御弁は第二の天面部30の上方に配設されている。
冷凍サイクル31を動作させる制御基板(図示せず)は第一の天面部29の上方や第二の天面部30の上方や背壁面34の冷蔵室2の後方上部にあたる位置に設けた窪みに配設するなどしてある。これにより背面下部に圧縮機やファンや基板などの電装品を設けることがなくて済む。
また、第一、第二の天面部29、30の上方と背面には機械室カバー35がビスなどで取外し可能に設けられている。機械室カバー35は背面と天面で分割したり、第一の天面部29上方と第二の天面部30とで分割するなど作業性やコストを考慮した形状を採るとよい。
また、冷凍サイクル31の構成機器である蒸発器20は冷却ファン18と共に、中段に位置する野菜室4の背面部に設けられた冷却器室36に備えられている。
冷却器室36は冷凍室3よりも低い冷凍温度帯である−40℃から−23℃程度に設定されている。この冷却器室36と冷蔵室3の温度帯は共に冷凍温度帯であり、冷凍温度帯とは−40℃〜−18℃の幅を持つ温度帯である。
真空断熱材37は、少なくとも最下段の断熱区画である冷凍室3の後方で背壁面34に埋設されており、外郭パネル22の一部である背面パネル38にホットメルトなどの接着部材で貼付けられている。
さらに、真空断熱材37は野菜室4の後方に位置する冷却器室36の後方も覆うように埋設されており、比較的低温の断熱区画をカバーしている。
また、真空断熱材37は内部をシート状の無機繊維集合体であるセラミックファイバー成形体39とその周囲を覆う複数の材料よりなるガスバリア性フィルム40で構成され、内部を減圧してなる平面状の断熱材であるので、厚みの変更が容易であり、薄板状の構成も容易である。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
まず、冷凍サイクル31の動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御基板(図示せず)からの信号により冷凍サイクル31が動作して冷却運転が行われる。圧縮機16の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器17にて放熱されて凝縮液化し、キャピラリ32に至る。その後、キャピラリ32ではサクションライン41と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって蒸発器20に至る。
冷却ファン21の動作により、庫内の空気と熱交換されて蒸発器20内の冷媒は蒸発気化する。低温の冷気をダンパ(図示せず)などで分配することで各室の冷却を行う。また複数の蒸発器や減圧器を用いる場合は流路制御手段(図示せず)により必要な蒸発器へ冷媒が供給される。蒸発器20を出た冷媒はサクションライン41を経て圧縮機16へと吸い込まれる。
低温の庫内各室の温度が十分に設定温度以下となったら、圧縮機16の運転は停止される。
このような運転を繰り返すと、圧縮機16や凝縮器17は高温となり、庫内各室や冷却器室36は低温となる。庫内各室温度や冷却器室36の温度低下により断熱箱体1の外郭パネル22の表面温度は低下してくる。このように断熱箱体の表面温度と外気温度の差が大きくなればなるほど断熱箱体表面に結露がしやすくまる。この時の温度低下度合いは断熱箱体1の断熱性能に大きく関わって決まる。一般的な冷蔵庫で使用されている硬質発泡ウレタンフォーム24と比べて真空断熱材37では断熱性能が5倍から10倍に向上する。つまり10ミリの厚みの真空断熱材37を用いると、50ミリから100ミリの硬質発泡ウレタンフォーム24を追加するのと同等の効果がある。したがって壁厚を増加させることなく、背面パネル38の表面温度低下を抑えることができる。
従来一般的であったように圧縮機16が最下部の貯蔵室である冷凍室の後方領域にないため、背壁面34の形状は圧縮機収容のための凹部形成による複雑な形状をとることなく、断熱箱体1のほぼ底部まで平面状に形成されてその面積も圧縮機収容の凹部がない分大きく拡大される。
このため、冷凍温度帯で低温の冷凍室の背壁面34の冷却面積が広がって室外との温度差と雰囲気条件による結露発生の領域がそのままでは拡大されてしまうが、このような広範囲の部位にしかも複雑な形状でなく平面状に揃えられた部位に高断熱性の真空断熱材34を配設することにより、非常に効果的に作業効率もよく断熱性を高め、断熱箱体の背壁面34やこの面に対向する設置環境の壁面の結露が発生して、腐食やかび発生などの問題となるのを防止することができる。
さらに真空断熱材37が薄く平板状で平面度が高く、シート状であるので必要に応じた厚みの対応が可能であり、薄壁断熱壁を有する断熱箱体1への適用が容易で内容積の拡大に対して有利である。
また、無機繊維集合体であるセラミックファイバー成形体39を用いるので真空断熱材37内における経時的なガス発生が少なく、断熱箱体1の長期断熱性能の信頼性が向上する。
また、特に外郭パネル22への貼り付け面をアルミ箔によるガスバリア性フィルム40とすることで表面の熱伝導が促進され、温度均一化により結露防止の効果を向上することができる。
またさらに、真空断熱材37は硬質発泡ウレタンフォーム24に比べて密度が高いので下部の冷凍室3後方に設けることで低重心化が可能であり転倒防止に対して有利である。
なお、真空断熱材37は背面パネル38に対して先に固定してから、組み付けることで作業性の向上及び真空断熱材37の取り付け位置精度を向上させることが可能である。
またなお、真空断熱材37は比較的低温の後方だけ配設することで、真空断熱材37の使用量を削減した上で、内容積や奥行きや省エネ性を確保することができるのでコストパフォーマンスが高い。
またなお、背面パネルに1枚の大きな真空断熱材37を用い、最下部にある冷凍室3から上部の冷蔵室2の第二の天面部30直下の背面まで覆うように貼り付けることで、硬質発泡ウレタンフォーム24の厚み変化を少なくできるので、流動性が確保されてボイドの発生のない一様な断熱性能が確保できる。
また、背面後方にあった圧縮機16などの電装品を上部へ移動させたために、背面パネル38が厳しい条件において結露した場合には電装品への結露水が滴下するといったことがなく、漏電保護が容易である。
またなお、冷凍室3と野菜室4は上下が逆の構成となっても問題ない。
(実施の形態2)
図4と図5は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図4と図5において、断熱箱体1は上から冷蔵室2、左右に並んだ独立製氷室42と切替室43、野菜室4、冷凍室3の構成としてある。冷蔵室2や切替室43などはダンパ(図示せず)と制御手段(図示せず)により、冷気の供給量が調整される。これにより切替室43は野菜室温度から冷凍室温度まで変更可能に設定されている。また製氷室42は冷凍室3から独立して構成されることで、使用頻度の高い氷を冷凍室3と区別して取り出し可能となるので冷凍室3の昇温が抑制される。さらに断熱箱体1の中央の位置に切替室43と製氷室42とを配置することで、かがまず取り出し可能な使い易さを提供できる。このような断熱区画の構成とすることで、断熱箱体1は複数の冷凍温度区画と複数の冷蔵温度区画を有することとなる。
また、圧縮機16は断熱箱体1の上部に配置されており、凝縮器(図示せず)と減圧器と蒸発器とを加えて冷凍サイクル31を構成している。
また、真空断熱材37は、背壁面34のなかで、最下段の断熱区画である冷凍室3の後方と製氷室42及び切替室43の後方とを十分覆うように複数枚埋設されている。真空断熱材37は背面パネル38にホットメルトなどの接着部材で貼付けられている。
以上のように構成された冷蔵庫について、圧縮機16が背面上部に配置されており、下方に配置した場合と比べて背面温度は低下する。特に冷凍室温度帯となる断熱区画に当たる背面温度は一層温度低下が大きくなる。
背壁面34に埋設した真空断熱材37は硬質発泡ウレタンフォームなどの断熱材と比べて5倍〜20倍の断熱性能を有しているので、熱の通過量が減少し、背面温度の低下を減少させることが可能である。特に庫内外の温度差の大きい箇所に真空断熱材37を貼りつけることで、断熱壁厚みを増加して庫内内容積を犠牲にすることなく、背面パネル38の温度低下を減少させることが可能である。
なお、図5に示すように冷却器室36を加えて引出し室下部をカバーするように真空断熱材37を配設すると、重心が低下して転倒防止に有利である。
なお、冷凍室3と野菜室4の位置を入れ替えて構成すると冷凍温度帯の断熱区画が近接し、真空断熱材37の使用枚数を減少させることができ、コスト面で有利である。
なお、蒸発器20は空冷式でも直冷式でもよいが、直冷式の場合は内箱23が直接低温となるために温度低下が大きくより効果大である。
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
冷凍室3の背面に第一の冷却器室44と、冷蔵室2の背面に第二の冷却器室45とを設け、第一の冷却器室44には第一の蒸発器46と第一のファン47を備え、第二の冷却器室45には第二の蒸発器48と第二のファン49を備えてある。各々蒸発器は三方弁(図示せず)などの流路制御手段によって回路が切り替えられつつ冷却運転が行われる。
切替室43や製氷室42は第一の冷却器室44より、ダンパ(図示せず)で冷気が制御されて温度調節が行われる。第二の蒸発器48のオフサイクル運転により霜を融解させて冷蔵室2庫内を加湿させることができる。
また、背壁面34のなかで、第一の冷却器室44の後方と、第二の冷却器室45の後方には真空断熱材37を埋設してある。
以上のように構成された冷蔵庫について、第一、第二の冷却器室44、45は各室を冷却するために、低温の第一、第二の蒸発器46、48を有し、さらに風路を構成するために、通過風速が庫内に比べて早く壁面への熱伝達率が大きくなるので、壁面への熱通過量が大きくなる。熱通過量が大きくなると背面パネル38の温度低下が顕著となるので一層壁面壁厚を増加させなければならなくなる。
背壁面34に埋設した真空断熱材37は硬質発泡ウレタンフォーム24と比べて5倍〜20倍の断熱性能を有しているので、熱の通過量が減少し、背面パネル34の温度低下を減少させることが可能である。特に庫内外の温度差の大きい箇所に真空断熱材37を貼りつけることで、断熱壁厚みを増加して庫内内容積を犠牲にすることなく、背面パネル38の温度低下を減少させることが可能である。
なお、切替室43や製氷室42は第二の冷却室45より、ダンパ(図示せず)で冷気が制御されて温度調節が行われるならば、隣接した冷却器室より風路を構成できるので、風路が簡素化でき、無効容積の削減と風路抵抗の減少による高効率化が可能である。
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態4における冷蔵庫の概略断面図を示すものであり、図8は概略背面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図7と図8において、断熱箱体1は上から冷蔵室2、並列配置の製氷室42と切替室43、野菜室4、冷凍室3の断熱区画構成となっている。切替室43は冷凍温度から野菜室温度まで切替可能である。また冷凍室3及び野菜室4の背面には冷却器室36が設けられており、冷却器室36内には蒸発器20と冷却ファン21が備えられている。
背壁面34は内箱23と金属鋼板からなる背面パネル38と、背面パネル38に貼り付けられた真空断熱材37とその間を充填させた硬質発泡ウレタンフォーム24とで構成された断熱壁である。さらに、背面パネル38には冷凍サイクル31の高圧パイプの一部である銅パイプ50が熱交換可能にアルミテープ51で貼り付けられている。
真空断熱材37には銅パイプ50の配設パターンにあわせた溝が背面パネル38への貼り付け面に形成されている。真空断熱材37は銅パイプ50を溝に当接させて、ホットメルトなどの接着部材によって背面パネル38に密着貼り付けされる。
銅パイプ50を貼り付けてあるアルミテープ51は上方にある第二の天面部30に向って外気連通するように位置している。これにより銅パイプ50とアルミテープ51の間に残った空気の膨張収縮により外観変形が生じるのを防止する。特に上方に位置する第二の天面部30に向って外気連通するので膨張した空気が逃げやすく、変形防止に効果が大きい。
以上のように構成された冷蔵庫について、冷凍サイクル31の高圧パイプは圧縮機16の吐出配管52が最も高い温度となり配管下流に向うに従い、熱交換して低温度となる。凝縮器17においては冷媒ガスと液の二相状態となり、単一冷媒においては一定の温度となる。
凝縮器17での温度は通常、機械室ファン18により外気との熱交換を行う空冷システムの場合、周囲温度との温度差が5℃〜15℃程度となる。すなわち高圧パイプの一部である銅パイプ50を背壁面34に用いることにより、背面パネル38の温度低下に対して、周囲温度よりも高い加熱手段を設けることが可能となる。
さらに加熱手段となる銅パイプ50と熱伝導性の良い材料である金属鋼板からなる背面パネル38とが密接していることにより、銅パイプ50の発熱が背面パネル38に均一に伝えられることで、背面パネルの温度が上がり、背面パネルの結露が防止される。また、背面パネルの温度が上がっても、背面パネルより庫内側に真空断熱材37を備えることで、庫内側への侵入熱量が低減されるので、庫内温度の上昇を防ぐことができる。
また、真空断熱材37のガスバリア性フィルム40を構成する熱伝導性のよいアルミ表面が溝で押さえられた銅パイプ50を介して背面パネル38に密着することで、伝熱の促進が図られ、真空断熱材の冷蔵庫外部側の表面温度が上昇する為、真空断熱材と背面パネル間の結露も防ぐことができる。
特に真空断熱材37の下方位置に銅パイプ50を配置するならば下方であたためられた周囲空気が自然対流により上方へと移動するために一層背面パネル38の表面温度を上昇させることができる。
以上のことから、圧縮機16を断熱箱体1上部に移動させたにも関わらず、背面パネル38の温度を上昇させて、結露を防止することができる。さらに庫内昇温を抑え省エネに寄与することができる。
(実施の形態5)
図9と図10は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の概略背面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図9において断熱箱体1は複数の断熱区画(図示せず)で構成され、冷凍温度など低温の断熱区画の後方に真空断熱材37が埋設されている。
また、背面パネル38には冷凍サイクル31の高圧パイプの一部である銅パイプ50が熱交換可能にアルミテープ51で貼り付けられている。銅パイプ50は上方が開口するコの字を90度回転させた3辺で構成される形状となっており、銅パイプ50の両端部は背面パネル上部から飛び出して第二の天面部30上方に配置される。銅パイプ50の垂直部53は背面パネル38の左右端部に配置されており、水平部54は真空断熱材37と重ねて配設されている。
また、真空断熱材37は銅パイプ50の水平部54にあわせた溝が背面パネル38への貼り付け面に形成されている。真空断熱材37は銅パイプ50の水平部54を溝に当接させて、ホットメルトなどの接着部材によって背面パネル38に密着貼り付けされる。
冷凍サイクル31は断熱箱体1の第二の天面部30に設けられた圧縮機16と、第一の天面部29に設けられた凝縮器17と、ドライヤとキャピラリ(図示せず)と蒸発器とを環状に接続してなり、背面パネル38に設けた銅パイプ50は一方の端部を凝縮器17出口と第二の天面部30上方で接合されて、もう一方の端部を別の高圧パイプの一部と接合されている。
以上のように構成された冷蔵庫について、冷凍サイクル31の高圧パイプは圧縮機16の吐出配管52が最も高い温度となり下流に向うに従い、熱交換して低温度となる。凝縮器17においては冷媒ガスと液の二相状態となり、単一冷媒においては一定の温度となる。
凝縮器17での温度は通常、外気との熱交換を行う空冷システムの場合、周囲温度との温度差が5℃〜15℃程度となる。すなわち高圧パイプの一部である銅パイプ50を背壁面34に用いることにより、背面パネル38の温度低下に対して、周囲温度よりも高い加熱手段を設けることが可能となる。
また、断熱層が厚いために庫内への熱侵入の影響が最も小さい背面コーナー近傍に銅パイプ50の垂直部53を設けることで庫内への熱侵入を低減し省エネ性が低下することを防いだ上で背面パネルの温度を上昇させ、結露を防止することができる。さらに水平部54は断熱性能の高い真空断熱材37と重ねることで庫内への熱侵入を低減し、省エネ性が低下することを防いだ上で、背面パネルの温度を上昇させ、結露を防止することができる。
また、真空断熱材37のガスバリア性フィルム40を構成する熱伝導性のよいアルミ表面が溝で押さえられた銅パイプ50を介して背面パネル38に密着することで、伝熱の促進が図られ、真空断熱材の冷蔵庫外部側の表面温度が上昇する為、真空断熱材と背面パネル間の結露も防ぐことができる。
さらにまた、真空断熱材37の溝部は直線状ですむこととなり、銅パイプ50との位置合わせに伴う組立性の向上が図られる。
特に真空断熱材37の下方位置に銅パイプ50の水平部54を配置するならば下方であたためられた周囲空気が自然対流により上方へと移動するために一層背面パネル38の表面温度を上昇させることができる。
以上のことから、圧縮機16を断熱箱体1の上部に移動させたにも関わらず、背面パネル38の温度を上昇させて、結露を防止することができる。さらに庫内昇温を抑え省エネに寄与することができる。
なお、アルミテープ51で熱交換可能に貼り付けとしたが、熱伝導性シーラーなどの流体状の接着剤で背面パネル38に形成した取り付け部(図示せず)に熱交換可能に固定すると、アルミテープ51の貼り付けより作業性が向上しコスト低減となるうえに、テープ貼り付け平面が必要無いのでコーナー部などでの密着性が向上され、貼り付け場所の自由度が高いという効果がある。
なお、図10のように垂直部53だけでなく水平部54も侵入熱の影響を浮けにくい背面パネル38の下端コーナー部に真空断熱材37と重ねることなく配設することで、真空断熱材37の溝付け加工が不必要となり、さらに溝に銅パイプ50を合わせないので組立性も向上し、コスト低減が図られる。
(実施の形態6)
図11は、本発明の実施の形態6における冷蔵庫の概略背面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図11において、断熱箱体1は複数の断熱区画(図示せず)で構成され、冷凍温度など低温の断熱区画の後方に真空断熱材37が埋設されている。
また、背面パネル38には冷凍サイクル31の高圧パイプの一部である銅パイプ50が熱交換可能にアルミテープ51で貼り付けられている。銅パイプ50は上方が開口するコの字を90度回転させた3辺で構成される形状となっており、銅パイプ50の両端部は背面パネル38の上部から飛び出して第二の天面部30の上方にある。銅パイプ50の垂直部53は真空断熱材37と重ねて配置されており、水平部54は、侵入熱の影響を受けにくい背面パネル38の下端コーナー部に真空断熱材37と重ねることなく配設してある。
また、真空断熱材37は銅パイプ50の垂直部53にあわせた溝が背面パネル38への貼り付け面に二本形成されている。真空断熱材37は銅パイプ50の垂直部53を溝に当接させて、ホットメルトなどの接着部材によって背面パネル38に密着貼り付けされる。
冷凍サイクル31は断熱箱体1の第二の天面部30に設けられた圧縮機16と、第一の天面部29に設けられた凝縮器17と、ドライヤ(図示せず)とキャピラリと蒸発器とを環状に接続してなり、背面パネル38に設けた銅パイプ50は一方の端部を凝縮器17出口と第二の天面部30上方で接合されて、もう一方の端部を別の高圧パイプの一部と接合されている。
以上のように構成された冷蔵庫について、冷凍サイクル31の高圧パイプは圧縮機16の吐出配管52が最も高い温度となり下流に向うに従い、熱交換して低温度となる。凝縮器17においては冷媒ガスと液の二相状態となり、単一冷媒においては一定の温度となる。
凝縮器17での温度は通常、機械室ファン18で外気との熱交換を行う空冷システムの場合、周囲温度との温度差が5℃〜15℃程度となる。すなわち高圧パイプの一部である銅パイプ50を背壁面34に用いることにより、背面パネル38の温度低下に対して、周囲温度よりも高い加熱手段を設けることが可能となる。
また、断熱層が厚いために庫内への熱侵入の影響が最も小さい背面下端コーナー近傍に銅パイプ50の水平部54を設けることで省エネ性が低下することを防いだ上で背面パネルの温度を上昇させ、結露を防止することができる。
また、真空断熱材37のガスバリア性フィルム40を構成する熱伝導性のよいアルミ表面が溝で押さえられた銅パイプ50を介して背面パネル38に密着することで、伝熱の促進が図られ、真空断熱材の冷蔵庫外部側の表面温度が上昇する為、真空断熱材と背面パネル間の結露も防ぐことができる。
さらにまた、真空断熱材37の溝部は直線状ですむこととなり、銅パイプ50との位置合わせに伴う組立性の向上が図られる。
特に真空断熱材37の下方位置に銅パイプ50を配置するならば下方であたためられた周囲空気が自然対流により上方へと移動するために一層背面パネル38の表面温度を上昇させることができる。
また、真空断熱材37には横方向の溝がないので、他部品の変更を伴わず、真空断熱材37の貼付け位置を上下させることができる。これにより断熱区画の温度構成が入れ替わった場合なども部品変更なしに対応が行え、材料管理コストの低減が行え、多品種少量生産に向けた効果がある。
以上のことから、圧縮機16を冷蔵庫上部に移動させたにも関わらず、背面パネル38の温度を上昇させて、結露を防止することができる。さらに庫内昇温を抑え省エネに寄与することができる。
なお、より悪い条件で結露した場合にも背面パネル38最下部に加熱手段となる銅パイプ50の水平部54を配置し、結露水の滴下の妨げとなるリブなどの保留手段を設けることで結露水を再度蒸発させることができ、床面への滴下防止の効果がある。
なお、銅パイプ50はアルミテープ51で熱交換可能に貼り付けとしたが、熱伝導性シーラーなどの流体状の接着部材で背面パネル38に形成した取り付け部に熱交換可能に固定するとテープ貼り付けより作業性が向上しコスト低減となるうえに、テープ貼り付け平面が必要無いのでコーナー部などでの密着性が向上され、貼り付け場所の自由度が高いという効果がある。
またなお、複数の真空断熱材37を背面パネル38に貼付ける場合など真空断熱材37を兼用して上下に貼りつけることも可能である。
(実施の形態7)
図12は、本発明の実施の形態7における冷蔵庫の概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図12において、断熱箱体1は上から冷蔵室2、左右に並んだ独立製氷室42と切替室43、野菜室4、冷凍室3の構成としてある。冷蔵室2や切替室43などはダンパ(図示せず)と制御手段(図示せず)により、冷気の供給量が調整される。これにより切替室43は野菜室温度から冷凍室温度まで変更可能に設定されている。
断熱箱体1の背壁面34の真空断熱材37は、最下段の断熱区画である冷凍室3の後方と製氷室42及び切替室43の後方とを十分覆うように埋設されている。
また、圧縮機16は断熱箱体1の上部に配置されており、凝縮器17は断熱箱体1の下部に配置されている。キャピラリ(図示せず)と野菜室4と冷凍室3の後方に配置された蒸発器20とを加えて環状に接続して冷凍サイクル31を構成している。
以上のように構成された冷蔵庫について、圧縮機16が背面上部に配置されており、下方に配置した場合と比べて背面温度は低下する。特に冷凍室温度帯となる断熱区画に当たる背面パネル38の表面温度は一層低下が大きくなる。
背壁面34に埋設した真空断熱材37は硬質発泡ウレタンフォーム24の断熱材と比べて5倍〜20倍の断熱性能を有しているので、熱の通過量が減少し、背面パネル38の温度低下を減少させることが可能である。特に庫内外の温度差の大きい箇所に真空断熱材37を貼りつけることで、断熱壁厚みを増加して庫内内容積を犠牲にすることなく、背面パネル38の温度低下を減少させることが可能である。
また、冷凍サイクルの高圧パイプは圧縮機16の吐出配管(図示せず)が最も高い温度となり下流に向うに従い、熱交換して低温度となる。凝縮器17においては冷媒ガスと液の二相状態となり、単一冷媒においては一定の温度となる。
凝縮器17での温度は通常、ファン(図示せず)を用いれば外気との熱交換を行う空冷システムの場合、周囲温度との温度差が5℃〜15℃程度となるので、下方部に凝縮器17を配置することで、断熱箱体1の下方空間の温度が上昇する。
これらによって背面パネル38の温度低下に対して、この温度上昇した空気を加熱手段として利用するものである。また、底面パネル55の熱伝導によっても背面パネル38の温度は上昇する。
なおファンなしの場合はさらに温度上昇する場合もある。また別にファン空冷式凝縮器(図示せず)を設けてもよい。
また、断熱箱体1の底面パネル55を背面方向に向かって上り傾斜をつけて、より有効に空気の対流を促進することができる。
また、背面パネル38の上下方向に溝を構成し、上下方向の空気の流れを促進するとさらに効果があがる。
また、さらに背面パネル38の一部を突起させて、室内壁に密着押し当てしたときの背面対流空間を確保するなら空気の上下対流が十分に確保される。
なお、断熱箱体1の下方部に高圧パイプの一部として凝縮器17を設けたが、除霜水を蒸発させるための蒸発パイプや底面パネル55に設けた結露防止パイプであってもよい。
(実施の形態8)
図13は、本発明の実施の形態8における冷蔵庫の概略断面図を示すものである。なお、背景技術と同一構成については同一符号を付す。
図13において、蒸発器20を配置する冷却器室36は断熱箱体1の下奥部に設けられている。
また、蒸発器20の下方部にはガラス管とヒータ線で構成された輻射熱を利用する除霜ヒータ56と除霜水が直接除霜ヒータ56に滴下することを防止するために、アルミ板で構成された傘状のヒータカバー57とが設けられている。除霜ヒータ56の下方は除霜水を受けるドレンパン58が備えてある。また、ドレンパン58は中央から端部にかけて傾斜させてあり、中央は除霜水を外部へ排出するパイプ形状の排水経路59となっている。このドレンパン58は断熱箱体1の底壁面に配設されており、パイプ形状の排水経路59は底面下方部の外部と連通してある。ドレンパン58下方には庫外で排出された除霜水を保留する蒸発皿60が設けてある。蒸発皿60は蒸発水の蒸発手段として高圧パイプの一部61が熱交換可能に配設されてある。
冷凍室3より低温となる蒸発器20の後方には真空断熱材37が埋設されている。背面パネル38の温度低下を防止するために、真空断熱材37を埋設すると硬質発泡ウレタンフォーム24を充填した部位の温度は真空断熱材37がない場合と比べて低下する。ドレンパン58から蒸発皿60へ排水する排水経路59をこの真空断熱材37と内箱23の間に配置すると温度低下により凍結し、排水不能となる可能性がある。
さらに真空断熱材37を埋設する場合には発泡充填する硬質発泡ウレタンフォーム24の流動性を確保することが重要となる。真空断熱材37を配設する背壁面34に流動阻害要因となる排水経路59をなくすことで璧圧寸法を増加させることなく庫内内容積を十分に確保することが可能である。
またさらに、ウレタン発泡中の発泡圧や発泡前に真空断熱材37と排水経路59の接触による真空断熱材37の破れなどによる性能劣化を防止することが容易であり、固定部材やテープなどによる保護が簡易ですむので低コストとなる。