JP2006070885A - 内燃機関の制御装置および失火判定方法 - Google Patents

内燃機関の制御装置および失火判定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 筒内における失火状態を低負荷で精度よく検出可能とする実用的な内燃機関の制御装置および失火判定方法の提供。
【解決手段】 燃料および空気の混合気を燃焼室3内で燃焼させて動力を発生する内燃機関1は、筒内圧力を検出する筒内圧センサ15およびECU20を備える。ECU20は、筒内圧センサ15によって検出された筒内圧力と、当該筒内圧力の検出時における筒内容積を所定の指数で累乗した値との積である制御パラメータPVκを複数算出すると共に、算出した複数の制御パラメータPVκ同士の差分ΔPVκを求めた上で、複数の差分ΔPVκの積算値Sに基づいて筒内における失火状態を判定することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料および空気の混合気を筒内で燃焼させて動力を発生する内燃機関の制御装置および失火判定方法に関する。
従来から、内燃機関の燃焼状態を検出する装置として、筒内圧検出手段によって検出された各燃焼室の筒内圧信号を重畳させ、重畳された筒内圧信号に基づいて算出される失火判定指標を用いて失火状態を判定するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このように、複数の燃焼室それぞれの筒内圧力を重畳させれば、失火の有無により、上死点前後の信号波形の対称性に顕著な変化が認められることになるため、内燃機関の燃焼の全域において失火判定を実行することができる。
特開平11−82150号公報
しかしながら、上述の従来の内燃機関の燃焼状態検出装置では、基本的に、筒内圧検出手段より検出された筒内圧を微小な単位クランク角ごとに積分処理することによって失火判定指標が算出される。このため、従来の燃焼状態検出装置における演算負荷は多大なものとなっており、従来の装置を例えば車両用内燃機関等に適用するのは実際上容易なことではなかった。
そこで、本発明は、筒内における失火状態を低負荷で精度よく判定可能とする実用的な内燃機関の制御装置および失火判定方法の提供を目的とする。
本発明による内燃機関の制御装置は、燃料および空気の混合気を筒内で燃焼させて動力を発生する内燃機関の制御装置において、筒内圧力を検出する筒内圧検出手段と、筒内圧検出手段によって検出された筒内圧力と、当該筒内圧力の検出時における筒内容積を所定の指数で累乗した値との積である制御パラメータを算出する制御パラメータ算出手段と、制御パラメータ算出手段によって算出される複数の制御パラメータ同士の差分を求める差分算出手段と、差分算出手段によって算出される複数の差分を積算する積算手段と、積算手段によって算出された積算値に基づいて筒内における失火状態を判定可能な失火判定手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明による内燃機関の制御装置は、内燃機関が所定の運転状態にあるか否か判定する運転状態判定手段を更に備え、失火判定手段は、運転状態判定手段によって内燃機関が所定の運転状態にあると判断された場合に、積算手段によって算出された積算値に基づいて筒内における失火状態を判定すると好ましい。
本発明による内燃機関の失火判定方法は、燃料および空気の混合気を筒内で燃焼させて動力を発生する内燃機関の失火判定方法において、
(a)少なくとも3つの計測点について筒内圧力を検出するステップと、
(b)計測点ごとに、ステップ(a)で検出した筒内圧力と、当該筒内圧力の検出時における筒内容積を所定の指数で累乗した値との積である制御パラメータを算出するステップと、
(c)ステップ(b)で算出した制御パラメータ同士間の差分を求めるステップと、
(d)ステップ(c)で算出した複数の差分を積算するステップと、
(e)ステップ(d)で算出した積算値に基づいて筒内における失火状態を判定するステップとを備えることを特徴とする。
この場合、少なくともステップ(e)の前に、(f)内燃機関が所定の運転状態にあるか否か判定するステップを更に備え、ステップ(f)で内燃機関が所定の運転状態にあると判断された場合に、ステップ(e)で積算値に基づいて筒内における失火状態を判定すると好ましい。
本発明によれば、筒内における失火状態を低負荷で精度よく判定可能とする実用的な内燃機関の制御装置および失火判定方法の実現が可能となる。
本発明者らは、演算負荷の低減化を図りつつ高精度な内燃機関の制御を可能にするために鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者らは、筒内圧検出手段によって検出された筒内圧力と、当該筒内圧力の検出時における筒内容積とに基づいて算出される制御パラメータに着目するに至った。より詳細には、本発明者らは、クランク角がθである際に筒内圧検出手段によって検出される筒内圧力をP(θ)とし、クランク角がθである際の筒内容積をV(θ)とし、比熱比をκとした場合に、筒内圧力P(θ)と、筒内容積V(θ)を比熱比(所定の指数)κで累乗した値Vκ(θ)との積として得られる制御パラメータP(θ)・Vκ(θ)(以下、適宜「PVκ」と記す)に着目した。そして、本発明者らは、クランク角に対する内燃機関の筒内における熱発生量Qの変化パターンと、クランク角に対する制御パラメータPVκの変化パターンとが、図1に示されるような相関を有することを見出した。ただし、図1において、−360°,0°および360°は、上死点に、−180°および180°は、下死点に対応する。
図1において、実線は、所定のモデル気筒において所定の微小クランク角おきに検出された筒内圧力と、当該筒内圧力の検出時における筒内容積を所定の比熱比κで累乗した値との積である制御パラメータPVκをプロットしたものである。また、図1において、破線は、上記モデル気筒における熱発生量Qを次の(1)式に基づいて、Q=∫dQとして算出・プロットしたものである。なお、何れの場合も、簡単のために、κ=1.32とした。
Figure 2006070885
図1に示される結果からわかるように、クランク角に対する熱発生量Qの変化パターンと、クランク角に対する制御パラメータPVκの変化パターンとは、概ね一致(相似)しており、特に、筒内の混合気の燃焼開始(ガソリンエンジンでは火花点火時、ディーゼルエンジンでは圧縮着火時)の前後(例えば、図1における約−180°から約135°までの範囲)では、熱発生量Qの変化パターンと、制御パラメータPVκの変化パターンとは極めて良好に一致することがわかる。
すなわち、本発明者らが着目した制御パラメータPVκは、上述のように、内燃機関の筒内における熱発生量を反映する。従って、ある2点間における筒内での熱発生量∫dQ(dQを例えばθからθ〔ただし、θ<θ〕まで積分した値、以下同じ)は、当該2点間における制御パラメータPVκの差分
ΔPVκ=P(θ)・Vκ(θ)−P(θ)・Vκ(θ
として得ることができる。そして、この差分ΔPVκは、極めて低負荷で算出され得るものであり、その算出に、微小な単位クランク角ごとの積分処理といった負荷の大きい演算処理は必要とされない。
一方、ある気筒において失火が発生した場合、その気筒では、失火が発生していない気筒に比べて、熱発生量が小さくなる。従って、このような筒内における熱発生量と失火状態との関係と、本発明者らによって見出された筒内における熱発生量と制御パラメータPVκとの相関とを利用することにより、筒内圧検出手段によって検出される筒内圧力と当該筒内圧力の検出時における筒内容積とに基づいて算出される制御パラメータPVκの差分ΔPVκに基づいて筒内における失火状態を低負荷で判定可能となる。ただし、例えば筒内圧力が相対的に低い運転状態のもとでは、制御パラメータPVκの値も小さくなる。そして、このような場合、通常状態と失火状態との間で、制御パラメータPVκ同士の差分ΔPVκに顕著な差が認められなくなり、筒内における失火状態を精度よく判定し得なくなるおそれもある。
このような点に鑑みて、本発明では、ある2点間における熱発生量を示す差分ΔPVκを複数積算して得られる積算値に基づいて筒内における失火状態が判定される。すなわち、本発明では、例えば燃焼開始(火花点火または圧縮着火)前のあるタイミングから燃焼開始後のあるタイミングまでの間において、少なくとも3つの計測点について筒内圧力が検出され、計測点ごとに、筒内圧力と当該筒内圧力の検出時における筒内容積を所定の指数で累乗した値との積である制御パラメータPVκが算出される。更に、このようにして算出された複数の制御パラメータPVκ同士間の差分ΔPVκが求められ、得られた複数の差分ΔPVκが積算される。そして、得られた差分ΔPVκの積算値が例えば所定の閾値を下回っている場合には、筒内が失火状態にあると判断される。これにより、本発明によれば、演算負荷を大幅に低減させつつ、筒内における失火状態を精度よく判定することが可能となる。
ところで、制御パラメータPVκ同士の差分ΔPVκに顕著な差が認められなくなるおそれがあるのは、アイドル時や点火プラグの燻りの発生時といった筒内圧力が相対的に低い場合である。そして、筒内圧力がある程度高い場合には、一般に、通常の燃焼時と失火時との間で、ある2点間における制御パラメータPVκの差分ΔPVκに顕著な差が認められることから、このような場合には、当該差分ΔPVκに基づいて筒内における失火状態を判定可能となる。従って、内燃機関が所定の運転状態にあるか否か判定し、内燃機関が例えば筒内圧力が低い所定の運転状態にあると判断された場合に(のみ)、差分ΔPVκの積算値に基づいた失火状態の判定が実行されてもよい。これにより、内燃機関が所定の運転状態にある場合にのみ、上記差分ΔPVκの積算処理を実行すればよいことから、内燃機関の失火判定に要する演算負荷をより一層低減することが可能となる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。
図2は、本発明による内燃機関を示す概略構成図である。同図に示される内燃機関1は、シリンダブロック2に形成された燃焼室3の内部で燃料および空気の混合気を燃焼させ、燃焼室3内でピストン4を往復移動させることにより動力を発生するものである。内燃機関1は多気筒エンジンとして構成されると好ましく、本実施形態の内燃機関1は、例えば4気筒エンジンとして構成される。
各燃焼室3の吸気ポートは、吸気管(吸気マニホールド)5にそれぞれ接続され、各燃焼室3の排気ポートは、排気管6(排気マニホールド)にそれぞれ接続されている。また、内燃機関1のシリンダヘッドには、吸気弁Viおよび排気弁Veが燃焼室3ごとに配設されている。各吸気弁Viは、対応する吸気ポートを開閉し、各排気弁Veは、対応する排気ポートを開閉する。各吸気弁Viおよび各排気弁Veは、例えば、可変バルブタイミング機能を有する動弁機構(図示省略)によって動作させられる。更に、内燃機関1は、気筒数に応じた数の点火プラグ7を有し、点火プラグ7は、対応する燃焼室3内に臨むようにシリンダヘッドに配設されている。
吸気管5は、図2に示されるように、サージタンク8に接続されている。サージタンク8には、給気ラインL1が接続されており、給気ラインL1は、エアクリーナ9を介して図示されない空気取入口に接続されている。そして、給気ラインL1の中途(サージタンク8とエアクリーナ9との間)には、スロットルバルブ(本実施形態では、電子制御式スロットルバルブ)10が組み込まれている。一方、排気管6には、図2に示されるように、例えば三元触媒を含む前段触媒装置11aおよび例えばNOx吸蔵還元触媒を含む後段触媒装置11bが接続されている。
更に、内燃機関1は、複数のインジェクタ12を有し、各インジェクタ12は、図2に示されるように、対応する燃焼室3内に臨むようにシリンダヘッドに配置されている。また、内燃機関1の各ピストン4は、いわゆる深皿頂面型に構成されており、その上面に、凹部4aを有している。そして、内燃機関1では、各燃焼室3内に空気を吸入させた状態で、各インジェクタ12から各燃焼室3内のピストン4の凹部4aに向けてガソリン等の燃料が直接噴射される。これにより、内燃機関1では、点火プラグ7の近傍に燃料と空気との混合気の層が周囲の空気層と分離された状態で形成(成層化)されるので、極めて希薄な混合気を用いて安定した成層燃焼を実行することが可能となる。なお、本実施形態の内燃機関1は、いわゆる直噴エンジンとして説明されるが、これに限られるものではなく、本発明が吸気管(吸気ポート)噴射式の内燃機関に適用され得ることはいうまでもない。
上述の各点火プラグ7、スロットルバルブ10、各インジェクタ12および動弁機構等は、内燃機関1の制御装置として機能するECU20に電気的に接続されている。ECU20は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポート、および、記憶装置等を含むものである。ECU20には、図2に示されるように、内燃機関1のクランク角センサ14を始めとした各種センサが電気的に接続されている。ECU20は、記憶装置に記憶されている各種マップ等を用いると共に各種センサの検出値等に基づいて、所望の出力が得られるように、点火プラグ7、スロットルバルブ10、インジェクタ12、動弁機構等を制御する。
また、内燃機関1は、半導体素子、圧電素子、磁歪素子あるいは光ファイバ検出素子等を含む筒内圧センサ(筒内圧検出手段)15を気筒数に応じた数だけ有している。各筒内圧センサ15は、対応する燃焼室3内に受圧面が臨むようにシリンダヘッドに配設されており、図示されないA/D変換器等を介してECU20に電気的に接続されている。各筒内圧センサ15は、燃焼室3内でその受圧面に加わる圧力(筒内圧力)に応じた電圧信号(検出値を示す信号)をECU20に与える。クランク角センサ14や各筒内圧センサ15の検出値は、微小時間おきにECU20に順次与えられ、ECU20の所定の記憶領域(バッファ)に所定量ずつ格納保持される。
次に、図3を参照しながら、上述の内燃機関1における失火判定処理の手順について説明する。
内燃機関1が始動されると、ECU20によって図3に示される失火判定ルーチンが微小時間おきに繰り返し実行される。この場合、ECU20は、まず、クランク角センサ14からの信号に基づいて内燃機関1の回転数を取得すると共に、取得した回転数に基づいて内燃機関1のアイドル運転が実行されているか否か判定する(S10)。ECU20は、S10にてアイドル運転が実行されていると判断すると、所定のフラグを「0」とした上で(S12)、燃焼室3ごとに、燃焼開始(火花点火または圧縮着火)前のあるタイミングから燃焼開始後のあるタイミングまでの間に定められた複数の計測点(クランク角=θ,θ,θ,θ)における筒内圧力P(θ),P(θ),P(θ)およびP(θ)を所定の記憶領域から読み出す(S14)。本実施形態において、複数の計測点は、例えば、θ=−60°(上死点前60°),θ=60°(上死点後60°),θ=90°(上死点後90°),θ=120°(上死点後120°)とされる。
ECU20は、燃焼室3ごとに筒内圧力P(θ),P(θ),P(θ)およびP(θ)を取得すると、S16にて、筒内圧力P(θ)と、当該筒内圧力P(θ)の検出時、すなわち、クランク角がθとなる時の筒内容積V(θ)を比熱比κ(本実施形態では、κ=1.32)で累乗した値との積である制御パラメータPVκ を各計測点について燃焼室3ごとに算出する(ただし、i=1,2,3,4である)。すなわち、ECU20は、燃焼室3ごとに、筒内圧力P(θ)と、筒内容積V(θ)を比熱比κで累乗した値との積である制御パラメータPVκ と、筒内圧力P(θ)と、筒内容積V(θ)を比熱比κで累乗した値との積である制御パラメータPVκ と、筒内圧力P(θ)と、筒内容積V(θ)を比熱比κで累乗した値との積である制御パラメータPVκ と、筒内圧力P(θ)と、筒内容積V(θ)を比熱比κで累乗した値との積である制御パラメータPVκ とを算出する。ここで用いられるVκ(θ=−60°),Vκ(θ=60°),Vκ(θ=90°)およびVκ(θ=120°)の値は、予め算出された上で記憶装置に記憶されている。
上述のようにして、制御パラメータPVκ ,PVκ ,PVκ およびPVκ を求めると、ECU20は、燃焼室3ごとに、複数の制御パラメータPVκ同士間の差分ΔPVκ 2−1,ΔPVκ 3−2およびΔPVκ 4−3を算出する(S18)。すなわち、ECU20は、S16において、差分ΔPVκ 2−1,ΔPVκ 3−2およびΔPVκ 4−3を、
ΔPVκ 2−1=ΔPVκ −ΔPVκ
ΔPVκ 3−2=ΔPVκ −ΔPVκ
ΔPVκ 4−3=ΔPVκ −ΔPVκ
として算出する。
差分ΔPVκ 2−1は、クランク角θ=θとなるタイミングと、θ=θとなるタイミングとの間における各燃焼室3での熱発生量を示し、差分ΔPVκ 3−2は、クランク角θ=θとなるタイミングと、θ=θとなるタイミングとの間における各燃焼室3での熱発生量を示し、差分ΔPVκ 4−3は、クランク角θ=θとなるタイミングと、θ=θとなるタイミングとの間における各燃焼室3での熱発生量を示す。このように、S12からS16までの処理により、複数の計測点間における熱発生量を良好に反映した制御パラメータPVκの差分ΔPVκが燃焼室3ごとに簡易かつ速やかに算出される。この結果、筒内圧力を微小な単位クランク角ごとに積分処理して各燃焼室3における失火状態を判定する場合と比較して、ECU20における演算負荷を大幅に低減させることができる。
ここで、ある2点間における何れかの燃焼室3での熱発生量を示す差分ΔPVκは、当該燃焼室3内における失火の程度に応じて変化し、例えば当該燃焼室3内が半失火状態にあるような場合、差分ΔPVκは、所定の閾値よりも小さくなる。また、当該燃焼室3内が完全失火状態にある場合、差分ΔPVκは、上記閾値よりも更に小さく(理論的にはゼロ以下)になる。従って、このような差分ΔPVκと失火状態との関係を利用することにより、制御パラメータPVκの差分ΔPVκに基づいて筒内における失火状態を低負荷で判定可能となる。
ただし、アイドル時のように筒内圧力が相対的に低い運転状態のもとでは、制御パラメータPVκの値も小さくなることから、通常の燃焼時と失火時との間で、制御パラメータPVκ同士の差分ΔPVκに顕著な差が認められなくなり、筒内における失火状態を精度よく判定し得なくなるおそれもある。すなわち、本発明者らの実験によれば、アイドル時のように筒内圧力が相対的に低い運転状態のもとでは、失火時(半失火状態を含む)に取得されるある2点間における差分ΔPVκの分布と、燃焼時に取得される当該2点間における差分ΔPVκの分布とは、図4に示されるように、オーバーラップするおそれがあると判明した。
これに対して、アイドル時のように筒内圧力が相対的に低い運転状態のもとであっても、所定範囲内で求められる複数の差分ΔPVκを積算すれば、失火時(半失火状態を含む)に取得される差分ΔPVκの積算値と、燃焼時に取得される当該積算値とは、図5に示されるように、明確に分離された形で分布する。このような点に鑑みて、本実施形態の内燃機関1では、S18にて差分ΔPVκ 2−1,ΔPVκ 3−2およびΔPVκ 4−3が求められると、燃焼室3ごとに、これらの差分ΔPVκ 2−1,ΔPVκ 3−2およびΔPVκ 4−3が積算され、得られた積算値SがRAMの所定の記憶領域に記憶される(S20)。そして、内燃機関1では、これらの差分ΔPVκを複数積算して得られる積算値Sに基づいて筒内における失火状態が判定される。
S20にて差分ΔPVκの積算値Sを求めると、ECU20は、燃焼室3ごとに、積算値Sが予め定められている第1の閾値αを下回っているか否か判定する(S22)。ECU20は、S22にて、全燃焼室3についての差分ΔPVκの積算値Sが第1の閾値αを下回っていないと判断した場合、何れの燃焼室3においても失火が発生していないとみなし、S10に戻ってそれ以降の一連の処理を繰り返す。
また、S22にて、少なくとも何れかの燃焼室3について差分ΔPVκの積算値Sが第1の閾値αを下回っていると判断した場合、ECU20は、その燃焼室3の内部が半失火状態にあるとみなし、その燃焼室に対応する図示されないカウンタを1だけインクリメントする(S24)。更に、ECU20は、当該カウンタのカウント値が予め定められている閾値を下回っているか否か判定する(S26)。ECU20は、S26にてカウンタのカウント値が当該閾値を下回っていると判断した場合、所定のマップ等を用いて、スロットルバルブ10の開度、インジェクタ12からの燃料噴射量、吸気弁Viおよび/または排気弁Veの開閉タイミング、更には、排ガス還流系統を備えた内燃機関にあっては排ガス還流率の少なくとも何れか一つを例えばS20にて求めた差分ΔPVκの積算値Sに応じて補正する(S28)。
すなわち、内燃機関1では、制御パラメータPVκの差分ΔPVκの積算値Sが第1の閾値αを下回っても、積算値Sが第1の閾値αを下回る頻度が少ない場合、その燃焼室3で発生した失火は一時的なものであるとみなされる。そして、このような場合には、スロットル開度、燃料噴射量、バルブ開閉タイミング等が適宜補正され(S28)、これにより、その燃焼室3におけるそれ以後の失火が抑制されていくことになる。
また、ECU20は、S26にてカウンタのカウント値が上記閾値以上であると判断した場合、すなわち、その燃焼室3における失火の発生回数が当該閾値以上になった判断した場合、そのカウンタをリセットする(S30)。更に、ECU20は、上記フラグが「0」であるか否か判定し(S32)、フラグが「0」であると判断すると、S20にて求めた差分ΔPVκの積算値Sが第2の閾値β(ただし、β<αである)を下回っているか否か判定する(S34)。そして、S34にて差分ΔPVκの積算値Sが第2の閾値βを下回っていると判断した場合、ECU20は、例えば点火プラグ7のトラブル等により、その燃焼室3の内部が完全失火状態にあるとみなし、所定の警告表示を行う(S36)。
また、S34にて差分ΔPVκの積算値Sが第2の閾値βを下回っていないと判断した場合、ECU20は、所定のマップ等を用いて、スロットルバルブ10の開度、インジェクタ12からの燃料噴射量、吸気弁Viおよび/または排気弁Veの開閉タイミング、更には、排ガス還流系統を備えた内燃機関にあっては排ガス還流率の少なくとも何れか一つを例えばS20にて求められた差分ΔPVκの積算値Sに応じて補正する(S28)。すなわち、内燃機関1では、ある燃焼室3における失火の発生回数が上記閾値を超えた場合であっても、差分ΔPVκの積算値Sが第2の閾値βを下回っていない場合には、スロットル開度、燃料噴射量、バルブ開閉タイミング等が適宜補正され(S28)、これにより、その燃焼室3におけるそれ以後の失火が抑制されていくことになる。S28またはS36の処理後、ECU20は、S10に戻ってそれ以降の一連の処理を繰り返す。
このように、内燃機関1では、アイドル時のように筒内圧力が相対的に低い場合に、筒内圧センサ15によって検出される筒内圧力P(θ)と、当該筒内圧力P(θ)の検出時における筒内容積V(θ)を所定の指数κで累乗した値との積である制御パラメータPVκの差分ΔPVκを複数積算した積算値Sに基づいて燃焼室3内における失火状態が低負荷で精度よく判定される。そして、内燃機関1では、燃焼室3内が失火状態(半失火状態)にあると判断された場合、失火を解消するように、スロットル開度、燃料噴射量、バルブ開閉タイミング、排ガス還流率等の少なくとも何れかが補正される。これにより、内燃機関1によれば、回転速度を良好に維持して常に所望の出力を得ることが可能となる。
一方、S10にて内燃機関1のアイドル運転が実行されていないと判断した場合、ECU20は、上記フラグを「1」とした上で(S38)、燃焼室3ごとに、クランク角がθとなる第1のタイミングと、クランク角がθとなる第2のタイミングとにおける筒内圧力P(θ)およびP(θ)を所定の記憶領域から読み出す(S40)。
ここで、第1のタイミングは、各吸気弁Viの開弁後であって、かつ、各点火プラグ7による点火前に設定され、各燃焼室3内において燃焼が開始される時点(点火時)よりも十分に前のタイミングに設定されると好ましい。本実施形態において、第1のタイミングは、例えば、クランク角センサ14からの信号に示されるクランク角が−60°となるタイミング(θ=−60°、すなわち、上死点前60°)とされている。また、第2のタイミングは、各点火プラグ7による点火後であって、各排気弁Veの開弁前に設定され、燃焼室3内における混合気の燃焼が概ね完了したタイミングに設定されると好ましい。本実施形態では、第2のタイミングが、例えば、クランク角センサ14からの信号に示されるクランク角が90°となるタイミング(θ=90°、すなわち、上死点後90°)とされている。
ECU20は、燃焼室3ごとに筒内圧力P(θ)およびP(θ)を取得すると、S42にて、筒内圧力P(θ)と、筒内容積V(θ)を比熱比κで累乗した値との積である制御パラメータPVκ と、筒内圧力P(θ)と、筒内容積V(θ)を比熱比κで累乗した値との積である制御パラメータPVκ とを算出する。ここで用いられるVκ(θ=−60°)およびVκ(θ=90°)の値は、予め算出された上で記憶装置に記憶されている。上述のようにして、制御パラメータPVκ およびPVκ を求めると、ECU20は、燃焼室3ごとに、第1および第2のタイミングの間における制御パラメータPVκの差分を、
ΔPVκ b−a=PVκ −PVκ
として算出し、RAMの所定の記憶領域に記憶させる(S44)。
この差分ΔPVκ b−aは、第1のタイミングと第2のタイミングとの間(所定の2点間)における各燃焼室3での熱発生量、すなわち、第1のタイミングから第2のタイミングまでの間に燃焼室3で発生した熱量を示す。このように、S40からS44までの処理により、第1のタイミングと第2タイミングとの間における熱発生量を良好に反映した制御パラメータPVκの差分ΔPVκ b−aが燃焼室3ごとに簡易かつ速やかに算出される。これにより、筒内圧力を微小な単位クランク角ごとに積分処理して各燃焼室3における失火状態を判定する場合と比較して、ECU20における演算負荷を大幅に低減させることができる。
ここで、制御パラメータPVκ同士の差分ΔPVκに顕著な差が認められなくなるおそれがあるのは、アイドル時等の筒内圧力が相対的に低い場合である。そして、筒内圧力がある程度高い場合には、一般に、通常の燃焼時と失火時との間で、ある2点間における制御パラメータPVκの差分ΔPVκに顕著な差が認められることから、このような場合には、上記差分ΔPVκ b−aに基づいて筒内における失火状態を判定可能となる。このため、ECU20は、S44にて差分ΔPVκ b−aを求めると、燃焼室3ごとに、差分ΔPVκ b−aが予め定められている閾値γを下回っているか否か判定する(S46)。これにより、内燃機関1がアイドル以外の運転状態にある場合には、上記差分ΔPVκの積算処理が省略されるので、内燃機関1の失火判定に要する演算負荷をより一層低減することができる。
S46にて、全燃焼室3の差分ΔPVκ b−aが上記閾値γを下回っていないと判断した場合、ECU20は、何れの燃焼室3においても失火が発生していないとみなし、S10に戻ってそれ以降の一連の処理を繰り返す。また、S46にて、少なくとも何れかの燃焼室3について差分ΔPVκ b−aが上記閾値γを下回っていると判断された場合には、上述のS24以降の処理が実行される。ここで、S10にて内燃機関1のアイドル運転が実行されていないと判断された場合、S38にて上記フラグが「1」とされることから、S32では否定判断がなされる。そして、この場合、ECU20は、S44にて求めた差分ΔPVκ b−aが予め定められている閾値ε(ただし、ε<γである)を下回っているか否か判定する(S48)。
そして、S48にて差分ΔPVκ b−aが上記閾値εを下回っていると判断した場合、ECU20は、例えば点火プラグ7のトラブル等により、その燃焼室3の内部が完全失火状態にあるとみなし、所定の警告表示を行う(S36)。また、S34にて差分ΔPVκ b−aが上記閾値εを下回っていないと判断した場合、ECU20は、所定のマップ等を用いて、スロットルバルブ10の開度、インジェクタ12からの燃料噴射量、吸気弁Viおよび/または排気弁Veの開閉タイミング、更には、排ガス還流系統を備えた内燃機関にあっては排ガス還流率の少なくとも何れか一つをS20にて求められた差分ΔPVκ b−aに応じて補正する(S28)。
なお、本実施形態では、内燃機関1のアイドル運転が実行されている場合にのみ、制御パラメータPVκの差分ΔPVκの積算値Sに基づいて失火判定が行われるが、これに限られるものではない。すなわち、積算値Sを用いた失火判定は、内燃機関1において筒内圧力が相対的に低下していると判断される場合に行われるとよい。筒内圧力が相対的に低下する運転状態としては、例えば、点火プラグ7の燻りが発生している場合が挙げられる。点火プラグ7の燻りが発生している場合に積算値Sを用いた失火判定を行うためには、例えば、図3のS10にて否定判断がなされた後に、所定の手法により点火プラグ7の燻りが発生しているか否か判定を行い、肯定判断がなされた場合に、S12以降の処理が実行されるようにするとよい。
また、上述の内燃機関1は、ガソリンエンジンであるものとして説明されたが、これに限られるものではなく、本発明がディーゼルエンジンに適用され得ることはいうまでもない。特に、本発明は、ディーゼルエンジンにおいてリッチ運転を実行する際のリッチ失火の判定や、各種内燃機関においていわゆるリーンリミット運転を実行する際の失火判定に適用されると有効である。
本発明において用いられる制御パラメータPVκと、燃焼室内における熱発生量との相関を示すグラフである。 本発明による内燃機関を示す概略構成図である。 図2の内燃機関における失火判定処理を説明するためのフローチャートである。 ある2点間における制御パラメータPVκの差分ΔPVκの頻度分布図である。 所定範囲内で求められる複数の制御パラメータPVκ同士の差分ΔPVκを積算した積算値の頻度分布図である。
符号の説明
1 内燃機関
3 燃焼室
4 ピストン
7 点火プラグ
10 スロットルバルブ
12 インジェクタ
14 クランク角センサ
15 筒内圧センサ
Ve 排気弁
Vi 吸気弁

Claims (4)

  1. 燃料および空気の混合気を筒内で燃焼させて動力を発生する内燃機関の制御装置において、
    筒内圧力を検出する筒内圧検出手段と、
    前記筒内圧検出手段によって検出された筒内圧力と、当該筒内圧力の検出時における筒内容積を所定の指数で累乗した値との積である制御パラメータを算出する制御パラメータ算出手段と、
    前記制御パラメータ算出手段によって算出される複数の制御パラメータ同士の差分を求める差分算出手段と、
    前記差分算出手段によって算出される複数の前記差分を積算する積算手段と、
    前記積算手段によって算出された積算値に基づいて前記筒内における失火状態を判定可能な失火判定手段とを備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記内燃機関が所定の運転状態にあるか否か判定する運転状態判定手段を更に備え、前記失火判定手段は、前記運転状態判定手段によって前記内燃機関が所定の運転状態にあると判断された場合に、前記積算手段によって算出された積算値に基づいて前記筒内における失火状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 燃料および空気の混合気を筒内で燃焼させて動力を発生する内燃機関の失火判定方法において、
    (a)少なくとも3つの計測点について筒内圧力を検出するステップと、
    (b)前記計測点ごとに、ステップ(a)で検出した筒内圧力と、当該筒内圧力の検出時における筒内容積を所定の指数で累乗した値との積である制御パラメータを算出するステップと、
    (c)ステップ(b)で算出した制御パラメータ同士間の差分を求めるステップと、
    (d)ステップ(c)で算出した複数の前記差分を積算するステップと、
    (e)ステップ(d)で算出した積算値に基づいて前記筒内における失火状態を判定するステップとを備えることを特徴とする内燃機関の失火判定方法。
  4. 少なくともステップ(e)の前に、(f)前記内燃機関が所定の運転状態にあるか否か判定するステップを更に備え、ステップ(f)で前記内燃機関が所定の運転状態にあると判断された場合に、ステップ(e)で前記積算値に基づいて前記筒内における失火状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の失火判定方法。
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JP2010203403A (ja) * 2009-03-05 2010-09-16 Toyota Motor Corp 点火プラグ劣化判定方法
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