JP2006070146A - 発酵豆科植物由来の抗酸化組成物 - Google Patents

発酵豆科植物由来の抗酸化組成物 Download PDF

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部 実 武
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Abstract

【課題】 発酵させた豆科植物由来の抗酸化性を高めた抗酸化組成物の提供を課題とする。【解決手段】 発酵させた豆科植物より得られる、抗酸化組成物であって、前記発酵させた豆科植物を極性溶媒で抽出し、得られた抽出物から前記極性溶媒を除去し濃縮乾固し、前記濃縮乾固抽出物を極性溶媒で溶解し、さらに加水希釈した後に分離して不溶性物質を得え、前記不溶性物質を乳化することにより得られる抗酸化組成物により達成される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、発酵豆科植物由来の抗酸化組成物に関する。
豆科植物に含まれるサポニン等は、抗酸化作用、エストロゲン作用等、様々な生理活性を有するとされている。このため、豆科植物から抗酸化作用を有する組成物の抽出およびその方法が提案されている。例えば、特許文献1(特開2002−309251号)の提案によれば、醤油粕を原料とし、これを溶媒抽出し、特定の合成吸着剤を用いて吸着分離することにより抗酸化組成物が得れるとされている。しかしながら、今尚、抗酸化性の作用が著しい、豆科植物由来の抽出物を見出すことが要求されている。
特開2002−309251号
発明の概要
本発明者等は、本発明時において、発酵させた豆科植物から抗酸化組成物を抽出する際に、乳化剤を用いることで、従来の抗酸化組成物より抗酸化性が著しく向上された抽出組成物が得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。従って、本発明は、発酵させた豆科植物由来の抗酸化性を高めた抗酸化組成物の提供をその目的とするものである。
よって、本発明による発酵させた豆科植物より得られる抗酸化組成物は、
前記発酵させた豆科植物を極性溶媒で抽出し、
得られた抽出物から前記極性溶媒を除去し濃縮乾固し、
前記濃縮乾固抽出物を極性溶媒で溶解し、さらに加水希釈した後に分離して不溶性物質を得え、
前記不溶性物質を乳化することにより得られるものである。
1.抗酸化組成物
原料
発酵された豆科植物が原料として使用され、その具体例としては、大豆、小豆等を発酵させたもの、好ましくは発酵させた大豆胚芽が挙げられる。大豆は種類、形態、加工の有無を問わず利用することができ、例えば、脱皮大豆、抽出大豆、分離大豆、脱脂大豆、大豆タンパク質を発酵させたものが挙げられ、または、醤油粕、たまり粕、味噌、豆味噌、納豆、発酵大豆、大豆絞り粕、またはこれらの混合物等が挙げられる。発酵は、麹菌などの微生物を用いて行われることが好ましい。本発明の好ましい態様によれば、原料は、抽出溶媒による影響を受けないように十分に乾燥し、水分を除去したものを使用することが好ましい。
脱脂
本発明において、下記する極性溶媒抽出を行う前に、発酵させた豆科植物を脱脂することが好ましい。脱脂は溶媒抽出法を用いて行う。溶媒抽出法によれば、製造工程において不要な油脂等を十分に除去できるので好ましい。抽出溶媒は、非極性溶媒が好ましく、その具体例としては、低級炭化水素(好ましくは炭素数10以下)、石油系エーテル類、およびその他の有機溶媒が挙げられるが、食品、医薬品等としての安全性配慮から、好ましくは、n−ヘキサンが好ましい。
溶媒抽出は、溶媒の沸点(n−ヘキサンの場合約69℃の沸点)付近で行うことが好ましく、脱脂時間は原料の量にもよるが典型的には約2〜5時間で行う。本発明においては、脱脂効率を高めるために還流抽出を行うことが好ましい。
脱脂後は、脱脂生成物を乾燥することが好ましく、その方法としては、天日乾燥、(熱)風乾燥、真空乾燥、通気乾燥、流動乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、高周波乾燥、およびその他の乾燥法、またはこれらの混合方法が用いられるが、好ましくは、(熱)風乾燥である。
抽出
発酵された豆科植物を極性溶媒により抽出する。極性溶媒による抽出は、タンパク質、糖質、繊維、等の不要な成分を除去するのに好ましい。極性溶媒の具体例としては、低級炭化水素(好ましくは炭素数10以下)、低級エステル、水、低級アルコール、低級アセトン、低級脂肪酸が挙げられ、好ましくは、酢酸エチル、酢酸メチル、水、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸、およびその他の溶媒が挙げられ、より好ましくは、食品、医薬品としての安全性から酢酸エチルが好ましい。
溶媒抽出は、溶媒の沸点(酢酸エチルの場合約約77.1℃の沸点)付近で行うことが好ましく、抽出時間は原料の量にもよるが典型的には約2〜5時間で行う。本発明においては、溶媒抽出後、先の脱脂工程をさらに行うことができる。
溶媒除去
溶媒の除去は、脱脂の乾燥の項で説明したのと同様であって良い。
乳化
本発明にあっては、不溶性物質を乳化するが、この乳化は乳化剤を用いて行われるものである。乳化剤としては、陰イオン性、非イオン性等の界面活性剤、蛋白質等の高分子化合物、脂肪酸エステル、リン脂質等の乳化剤が挙げられるが、この中でも界面活性剤(より好ましくは非イオン性界面活性剤)、リン脂質(好ましくは大豆レシチン)が好ましくは挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノエートが挙げられ、例えば、商品名Tween20、40、60、80(Atras powder社製)として入手可能である。乳化剤の添加量は、不溶性物質を乳化させるのに適した量を適宜定めることができる。本発明による抗酸化組成物は、不溶性物質に水、乳化剤、その他の剤を添加して、高速度ミキサー(ホモジナイザー)で撹拌することにより乳化して得ることができる。
2.用途
本発明による抗酸化組成物は、イソフラボンアグリコン、サポニンアグリコン(ソヤサポゲノール)、リン脂質、脂肪酸等が混合して含有されていることから、優れた複数の薬理作用(例えば、抗酸化作用、エストロゲン作用、抗アレルギー作用等)を有し、これらが相俟って相乗効果として発揮される。また、本発明による抗酸化組成物は、それを有効成分として含有する、抗酸化剤(退色防止剤)、飲食物、化粧品、皮膚医薬物、医薬物として利用することができる。本発明による抗酸化組成物の添加量は、各種用途に適宜合致させて定めて良い。
抗酸化剤、退色防止剤
本発明による抗酸化組成物を有効成分として含有してなる、抗酸化剤は、酸化防止、酸化低減効果を発揮するものである。本発明による抗酸化剤は、例えば、畜獣肉、魚介類の肉質、これらの卵の肉質および性質を安定化させることができる。また、本発明による抗酸化組成物を有効成分として含有してなる、退色防止剤は、畜獣肉、魚介類の肉の色を保持し、また魚卵または着色した魚卵の退色を防止することが可能である。
飲食物
本発明による抗酸化組成物を有効成分として含有してなる、飲食物の例としては、清涼飲料水、嗜好飲料、乳製品、畜肉魚貝類加工食品、和洋菓子、調味料、香辛料、インスタント食品、冷凍食品等が挙げられる。
化粧品
本発明による抗酸化組成物は、強力な抗酸化活性を有することから、化粧品の有効成分として利用される。本発明による化粧品は、皮膚の老化の防止、肌荒れ防止、皮膚癌の予防、日除け防止、美白効果等の効果が期待される。本発明にあっては、化粧品は後記する医学的に許容される添加剤または賦携剤が添加されてよい。化粧品の具体例としては、ファンデーション、マスカラ、アイライン、マニキュア、化粧水、乳液、保湿クリーム、ジェル、理髪剤、洗顔クリーム(フォーム)、パック、口紅等が挙げられる。
皮膚外用組成物
皮膚外用組成物の具体例としては、化粧品が挙げられるが、それ以外に、シャンプー、リンス、トリートメント、育毛剤、ヘアトニック等が挙げられる。化粧品の項で説明した通り、皮膚外用組成物は後記する医学的に許容される添加剤または賦形剤が添加されてよい。
医薬組成物
本発明による抗酸化組成物を有効成分として含有してなる、医薬組成物の例としては、皮膚荒れ防止剤または治療剤、アレルギー性皮膚疾患(アトピー性皮膚炎)の治療剤または予防剤が挙げられる。本発明による医薬組成物は利用経口および非経口(例えば、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与経路で、人を含む動物に投与することができる。
本発明による医薬組成物は、投与経路に応じた適切な剤形として提供されることが好ましい。例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠等の経口剤、直腸投与剤等の種々に調製することが好ましい。
医薬組成物としての効果をより確実なものとするために、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤等、の薬学上許容される担体または添加剤を適宜選択し、組み合わせることによって製造することが望ましい。使用可能な無毒性の上記添加剤は、例えば乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、ゼラチン、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、シロップワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明による乳酸菌製剤の投与量は、症状や年齢、性別等を考慮し、個々の場合に応じて適宜決定することが好ましい。
実施例
抗酸化組成物前駆体の調製
発酵させた大豆胚芽を極性溶媒で抽出し、得られた抽出物から前記極性溶媒を除去し濃縮乾固し、前記濃縮乾固抽出物を極性溶媒で溶解し、さらに加水希釈した後に分離して不溶性物質を得え抗酸化組成物前駆物質とした。この抗酸化組成物前駆物質に乳化剤を添加してホモジナイザーにより混合分散させ乳化させたものを、本発明による抗酸化組成物とした。
イソフラボンの調製
大豆から抽出した、イソフラボングリコシド(ダイジン、グリシチン、ゲニスチン)と、イソフラボンアグリコン(ダイゼイン、グリシティン、ゲニスティン)を用意した。
評価試験
評価1:SOD活性評価試験
1.試料溶液の調製
検体は、抗酸化組成物前駆物質およびイソフラボンを約1 g精密に量り、Tween80(乳化剤)約1 gを加えた物と加えなかったものとの二種を用意した。これらをホモジナイザーで撹拌し、0.1 mol/L リン酸塩緩衝液(pH7.8)で100 mlに定容し、適宜希釈した液を試験溶液とした。
2.操作
反応系
9.2 mol/L DMPO (5,5-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide)
5.5 mmol/L DETAPAC (diethylenetriaminepentaacetic acid)
リン酸塩緩衝液
2 mmol/L ヒポキサンチン−リン酸塩緩衝液
試験溶液またはSOD(スーパーオキシドジスミューターゼ)標準溶液
0,4 units/ml キサンチンオキシダーゼ−リン酸塩緩衝液
ESR測定条件
混合後特殊偏平セル(約160 μl)に吸い取り、ESR装置にセットし、60秒後に掃引を開始した。Mn2+(内標準)のピーク高と測定シグナルのピーク高の比を求めた。
温度 室温
マイクロ波出力 8 mW
磁場 335.5 mT ± 5 mT
変調 100 kHz、0.79 × 0.1 mT
増幅率 2 × 100
応答時間 0.1 秒
掃引時間 2分
評価方法
SOD標準溶液(0〜25 単位/ml)で検量線を作成し、試験溶液で得た値を内挿し検体のスーパーオキシド消去活性を算出した。その結果は、下記表1に記載した通りであった。
表1
SOD様活性(U/g)
乳化剤無し 乳化剤有り
抗酸化組成物前駆体 2600 −
抗酸化組成物 − 310000
ダイジン 300以下 300以下
グリシチン 300以下 300以下
ゲニスチン 300以下 300以下
ダイゼイン 300以下 300以下
グリシティン 300以下 300以下
ゲニスティン 300以下 300以下
評価試験2:脂質過酸化評価
ラット肝臓を用いた脂質過酸化に対する試験を下記に従って行った。
試験方法
評価1で調製した本発明による抗酸化組成物を用いて、ラット肝臓ホモジネートにおけるラジカル開始剤:AAPH(2,2’-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)による脂質の過酸化抑制を下記のように調べた。比較対照としてビタミンE(αトコフェロール)及び緑茶抽出物(95%ポリフェノール含量品)をそれぞれ抗酸化組成物と同濃度に5%とし、最終濃度を0.05g/mlに調整して使用した。
測定方法
1. 1.15%塩化カリウム液を用いてラット肝臓をホモジナイズした。
2. 細胞浮遊液を1mg/蛋白/mlになるように1.15%塩化カリウム液で調製した。
3. 1mg/蛋白/ml細胞浮遊液1mlと各種被試験物質溶液を1ml混合し、37℃恒温槽で10分間インキュベートした。
4. 最終濃度50mMになるようにAAPHを加えて、37℃で60分間インキュベートした。
5. TBA*(thiobarbituric acid:チオバルビツール酸)試薬にインキュベート前処理したラット肝臓を加えて反応させ、産生したTBARS(TBA reactive substances:チオバルビツール産反応生成物)を532nmでの吸光度を測定した。
評価方法
測定結果から、各被験物質におけるTBARSの濃度は、下記表2の通りであった。TBARS濃度の値が小さいものほど、抗脂質過酸化であることを示す。
表2
被験物質 TBARS濃度(nmol/mg タンパク)
抗酸化組成物(リン酸塩緩衝液抽出+乳化剤) 10.06
抗酸化組成物前駆体物質(リン酸塩緩衝液抽出のみ) 51.48
ビタミンE 13.77
緑茶抽出物 3.34

Claims (13)

  1. 発酵させた豆科植物より得られる、抗酸化組成物であって、
    前記発酵させた豆科植物を極性溶媒で抽出し、
    得られた抽出物から前記極性溶媒を除去し濃縮乾固し、
    前記濃縮乾固抽出物を極性溶媒で溶解し、さらに加水希釈した後に分離して不溶性物質を得え、
    前記不溶性物質を乳化することにより得られる、抗酸化組成物。
  2. 前記発酵させた豆科植物を極性溶媒で抽出する前に、非極性溶媒を用いて脱脂することをさらに含んでなる、請求項1に記載の抗酸化組成物。
  3. 前記乳化が、乳化剤を用いて行われるものである、請求項1または2に記載の抗酸化組成物。
  4. 前記乳化剤が、界面活性剤である、請求項3に記載の抗酸化組成物。
  5. 前記非極性溶媒が炭素数10以下の低級炭化水素であり、前記極性溶媒が炭素数10以下の低級炭化水素である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗酸化組成物。
  6. 前記極性溶媒が酢酸エチルであり、前記非極性溶媒がn−ヘキサンである、請求項5に記載の抗酸化組成物。
  7. 前記豆科植物が、大豆または大豆胚芽である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗酸化組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗酸化組成物を有効成分として含有してなる、飲食物。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗酸化組成物を有効成分として含有してなる、抗酸化剤。
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗酸化組成物を有効成分として含有してなる、退色防止剤。
  11. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗酸化組成物を有効成分として含有してなる、化粧品。
  12. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗酸化組成物を有効成分として含有してなる、皮膚外用組成物。
  13. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗酸化組成物を有効成分として含有してなる、医薬組成物。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008239522A (ja) * 2007-03-26 2008-10-09 Kaneka Corp 抗アレルギー剤
JP2010150217A (ja) * 2008-12-26 2010-07-08 Toyo Shinyaku Co Ltd 美白用組成物。
JP2010235484A (ja) * 2009-03-31 2010-10-21 Kose Corp 一重項酸素消去剤ならびにこれを含有する皮膚外用剤および化粧料
JP2011529874A (ja) * 2008-08-01 2011-12-15 株式會社アモーレパシフィック 天然物の塩漬け発酵抽出物を含有する化粧料組成物

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