JP2006069992A - 2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法 - Google Patents

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剛志 松下
Masahiro Kinoshita
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Abstract

【課題】多量の硫酸を使用しなくとも、効率的に2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を製造しうる方法を提供する。
【解決手段】温度200℃以上及び圧力10MPa以上の条件下に、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを水性媒体中で加水分解反応させることにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を製造する。この加水分解反応は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド及び水性媒体を反応系内に導入しながら、連続的に行うのがよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、飼料添加物等として有用な2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法に関するものである。
従来、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を製造する方法の1つとして、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル乃至その水和物である2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを、硫酸存在下に加水分解反応させる方法が知られている。この加水分解反応は通常100℃前後の加熱条件下に行われ、例えば、特公平5−1787号公報(特許文献1)には、70〜120℃、好ましくは85〜95℃で加水分解反応を行うことが開示されている。また、米国特許第4912257号明細書(特許文献2)には、60〜140℃、好ましくは90℃で加水分解反応を行うことが開示されている。
特公平5−1787号公報 米国特許第4912257号明細書
しかしながら、上記従来の方法では、加水分解反応の進行に多量の硫酸を必要とするため、そのコストがかかるのみならず、硫酸アンモニウム乃至硫酸水素アンモニウムが大量に副生するという問題、さらには硫酸により装置が腐食するという問題が生じることがある。そこで、本発明の目的は、多量の硫酸を使用しなくとも、効率的に2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を製造しうる方法を提供することにある。
本発明者等は鋭意研究を行った結果、超臨界水を包含する所定の高温高圧水を反応場として、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの加水分解反応を行うことにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、温度200℃以上及び圧力10MPa以上の条件下に、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを水性媒体中で加水分解反応させることにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を製造する方法を提供するものである。
本発明によれば、2−ヒドロキシ−4−メチルブタンアミドから効率的に2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を製造することができる。
本発明では、原料として2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを用い、これを加水分解反応させることにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を製造する。原料の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドは、例えば、アクロレインをメチルメルカプタンと反応させて3−メチルチオプロピオンアルデヒドとし、これをシアン化水素と反応させて2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルとし、さらにこれを水和反応させることにより、調製することができる。
この2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの加水分解反応を、温度200℃以上及び圧力10MPa以上の条件下に、水性媒体中で実施する。このように、所定の高温高圧水を加水分解の反応場として採用することにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの加水分解反応を、円滑に進行させることができる。
加水分解反応の温度は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの転化率と2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の選択率とのバランスの点から、好ましくは200〜500℃であり、さらに好ましくは300〜350℃である。また、圧力は好ましくは10〜50MPa、さらに好ましくは30〜50MPaである。なお、水の臨界温度は374℃、臨界圧力は22MPaであることから、かかる臨界温度及び臨界圧力を超える条件を設定すれば、超臨界水の反応場を形成しうることになる。
加水分解反応に用いる水性媒体は、水を必須とし、必要により有機溶媒が含まれてもよいが、有機溶媒を含む場合、その含量は20重量%程度までとするのがよい。加水分解反応における水性媒体の使用量は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドに対し、通常1〜10000重量倍、好ましくは100〜2000重量倍である。
加水分解反応は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド及び水性媒体を反応系内に導入しながら行うのが好ましく、その際、反応混合物の抜き出しを併せて行うことにより、連続式で反応を行うことができる。2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドと水性媒体は、別々に導入してもよいし、予め混合してから導入してもよい。また、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを水性媒体の一部で希釈して、この希釈物と水性媒体の残部とを別々に導入することもできる。
加水分解反応には、酸やアンモニウム塩等の触媒として機能しうる化合物を存在させてもよい。かかる化合物を存在させることにより、反応をさらに円滑に進行させることができる。
酸は鉱酸であってもよいし、有機酸であってもよく、鉱酸の例としては、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、ホウ酸のようなオキソ酸や、塩化水素のようなハロゲン化水素等が挙げられる。有機酸の例としては、p−トルエンスルホン酸のようなスルホン酸や、酢酸、シュウ酸、安息香酸のようなカルボン酸等が挙げられる。中でも、硫酸やスルホン酸が好ましい。
また、アンモニウム塩としては、例えば、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、酢酸アンモニウム等が挙げられ、中でも、硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウムが好ましい。
なお、酸を使用すると、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの加水分解反応により生成するアンモニアで中和され、系内でアンモニウム塩が生成することになる。また、アンモニウム塩のうち、例えば硫酸水素アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等、多塩基酸の酸性塩(部分中和塩)は、酸性プロトンを有することから、酸の1種と見ることもできる。
これら酸乃至アンモニウム塩の使用量は、併用する場合はその合計として、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド1モルに対して、通常0.01〜0.5モル、好ましくは0.05〜0.3モルである。
加水分解反応を酸乃至アンモニウム塩の存在下に行う場合、該加水分解反応は酸乃至アンモニウム塩を反応系内に導入しながら行うのが好ましい。その際、酸乃至アンモニウム塩は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド及び水性媒体の一方又は両方と予め混合してから導入してもよいし、これらとは別個に導入してもよい。
本発明の方法を連続式で行う場合に用いることができる反応装置の例を、図1に基づいて説明する。水タンク1内の水性媒体は、高圧定量ポンプ3により加圧されて、水導入ライン5を通って送液される。一方、原料タンク2内の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド又はその溶液は、高圧定流量ポンプ4により加圧されて、原料導入ライン6を通って送液される。水導入ライン5と原料導入ライン6とは、反応管7の手前で合流しており、この合流部で水性媒体と2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド又はその溶液とが混合された後、反応管7に導入される。そして、この混合後の温度が設定した反応温度と等しくなるように、水性媒体は、予熱槽11により所定の温度に予め加熱される。なお、この図には示されていないが、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド又はその溶液を予め加熱するための予熱槽を設けることもできる。
反応管7は、恒温槽12内に設置されており、この恒温槽12の温度調整により、反応管7内の温度が、設定した反応温度に保たれている。生成した2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む加水分解反応液は、反応液抜出ライン8を通って、冷却槽13で冷却された後、圧力調整弁9を介して抜き出され、反応液タンク10に回収される。反応管7内の圧力は、この圧力調整弁9の調整により、設定した反応圧力に保たれている。
以上のようにして加水分解反応を行った後の分離精製操作は、適宜選択することができるが、例えば、得られた加水分解反応液を濃縮して、水性媒体を留去すれば、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む液体を得ることができる。加水分解反応に酸乃至アンモニウム塩を使用した場合は、これらを濾過、洗浄等により除去すればよい。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、各例で使用した反応装置は、図1に概略で示されるとおりである。また、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの転化率及び2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の選択率は、供給した2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドのモル数をX、未反応の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドのモル数をY、生成した2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸のモル数をZとして、それぞれ以下の式により算出した。
・2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの転化率(%)=[(X−Y)/X]×100
・2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の選択率(%)=[Z/(X−Y)]×100
実施例1
水を室温にて4.2ml/minの流量で40MPaに加圧して送液し、375℃に予熱した。一方、1重量%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド水溶液を室温にて0.5ml/minの流量で40MPaに加圧して送液した。両者を混合して、内容積3.84mlの反応管に導入し、反応温度350℃、反応圧力40MPaにて、33秒間滞留させて反応を行った。回収した反応液を液体クロマトグラフィーにより分析した結果、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの転化率は18.1%、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の選択率は66.5%であった。
実施例2
水を4.2ml/minの流量で送液する代わりに、0.0011mol/Lの硫酸水溶液を4.2ml/minの流量で送液した以外は、実施例1と同様に反応を行った。2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドに対する硫酸のモル比は0.13である。回収した反応液を液体クロマトグラフィーにより分析した結果、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの転化率は35.7%、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の選択率は79.9%であった。
実施例3
水を4.2ml/minの流量で送液して375℃に予熱する代わりに、0.0011mol/Lの硫酸水溶液を4.1ml/minの流量で送液して315℃に予熱し、反応温度を300℃とし、滞留時間を38秒とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドに対する硫酸のモル比は0.13である。回収した反応液を液体クロマトグラフィーにより分析した結果、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの転化率は17.7%、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の選択率は95.7%であった。
実施例4
水を4.2ml/minの流量で送液して375℃に予熱する代わりに、0.0011mol/Lの硫酸水溶液を4.1ml/minの流量で送液して425℃に予熱し、反応温度を400℃とし、滞留時間を26秒とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドに対する硫酸のモル比は0.13である。回収した反応液を液体クロマトグラフィーにより分析した結果、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの転化率は56.1%、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の選択率は35.0%であった。
実施例5
水を4.2ml/minの流量で送液する代わりに、0.0011mol/Lの硫酸アンモニウム水溶液を4.0ml/minの流量で送液し、滞留時間を34秒とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドに対する硫酸アンモニウムのモル比は0.12である。回収した反応液を液体クロマトグラフィーにより分析した結果、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの転化率は23.4%、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の選択率は99.9%であった。
以上の実施例1〜5の反応条件及び反応成績をまとめて下の表1に示す。
Figure 2006069992
反応装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
1・・・水タンク、
2・・・原料タンク、
3,4・・・高圧定流量ポンプ、
5・・・水導入ライン、
6・・・原料導入ライン、
7・・・反応管、
8・・・反応液抜出ライン、
9・・・圧力調整弁、
10・・・反応液タンク、
11・・・予熱槽
12・・・恒温槽
13・・・冷却槽

Claims (7)

  1. 温度200℃以上及び圧力10MPa以上の条件下に、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを水性媒体中で加水分解反応させることを特徴とする2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法。
  2. 2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド及び水性媒体を反応系内に導入しながら反応を行う請求項1に記載の方法。
  3. 温度250〜450℃及び圧力30〜50MPaの条件下に反応を行う請求項1又は2に記載の方法。
  4. 酸及びアンモニウム塩から選ばれる化合物の存在下に反応を行う請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記化合物を反応系内に導入しながら反応を行う請求項4に記載の方法。
  6. 前記化合物が硫酸及び/又はスルホン酸である請求項4又は5に記載の方法。
  7. 前記化合物が硫酸アンモニウム及び/又は硫酸水素アンモニウムである請求項4又は5に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009046147A (ja) * 2007-08-20 2009-03-05 Sumitomo Chemical Co Ltd 高粘度液体の取り扱い方法

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