JP2006064982A - 粘土組成物、その製造方法、及び造形用キット - Google Patents

粘土組成物、その製造方法、及び造形用キット Download PDF

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Abstract

【課題】暗所で美しく発光する粘土組成物を提供する。強い発光輝度と長い発光持続時間を発揮し、長期保存によっても性能が劣化しない、蓄光剤含有粘土組成物を提供する。耐水性及び耐光性に優れ保存安定性が高い蓄光剤含有粘土組成物を提供する。
【解決手段】 式M・Al2SiO8(式中Mはストロンチウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を表す。)の化合物を母体結晶として含む蓄光剤を含有することを特徴とする粘土組成物;粘土組成物を構成する粉体成分と、特定の蓄光剤とを均一に混合し、得られた混合物に液体成分を加えて混練することを含む、粘土組成物の製造方法。

Description

本発明は、粘土組成物に関し、具体的には造形用粘土組成物に関する。本発明はより詳細には、暗所で美しく発光する粘土組成物、その製造方法及び造形用キットに関する。
小麦粉などの穀粉材料に樹脂系接着剤などを加えて混練して得られる粘土様組成物は、たとえば小麦粉粘土と称されて広く知られており、教材用、塑像用粘土などとして用いられている。その他、土粘土、ロウ粘土、紙粘土などの多様な粘土が知られている。
粘土組成物に蓄光剤を含ませて、装飾効果を高めることが提案されている。蓄光剤は、太陽光や蛍光燈あるいは白熱ランプなどの光エネルギーを受けると、これらの光源が遮断されて暗闇になっても、その暗闇の中で自ら蓄積したエネルギーを可視光として発光することができる物質である。蓄光剤として例えば自発光タイプの蓄光剤(トリウム、プロメチウムなどの放射性元素)、硫化亜鉛蓄光タイプの蓄光剤(ZnSにCuを添加したもの)、アルミナ蓄光タイプの蓄光剤(ストロンチウムアルミネートに希土類金属を結合させたもの)などがある。これらの蓄光剤の中で、自発光タイプのものは放射線を出すこと、硫化亜鉛蓄光タイプのものは輝度と発光持続時間が劣ることから、アルミナ蓄光タイプのものが好ましく用いられる。例えば、アルミナ蓄光タイプの蓄光剤、あるいはさらにそれを耐水性の無機材料又は有機材料で被覆して、粘土組成物に含めることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、アルミナ蓄光タイプの蓄光剤は耐水性がいまだ充分ではない。また、粘土組成物を作るための混捏によって蓄光剤の被覆材料が剥がれたり、時間経過によって蓄光剤の劣化が生じやすい。従って、安定性がより高く発光輝度や発光持続時間が優れた粘土組成物が求められている。
特開平10−319834号公報
本発明の目的は、暗所で美しく発光する粘土組成物を提供することである。
本発明の目的はまた、強い発光輝度と長い発光持続時間を発揮し、長期保存によっても性能が劣化しない、蓄光剤含有粘土組成物を提供することである。本発明の目的はまた、耐水性及び耐光性に優れ保存安定性が高い蓄光剤含有粘土組成物を提供することである。本発明の目的はさらに、強い発光輝度及び長い発光持続時間を発揮し、耐水性及び耐光性に優れ保存安定性が高い造形物を作ることができる、蓄光剤含有粘土組成物を提供することである。
本発明の目的はまた、製造過程で激しい混練工程を経ても蓄光剤の性能が劣化しない、蓄光剤含有粘土組成物の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の蓄光剤を粘土組成物に含ませることにより、優れた発光性粘土組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って本発明は、 式M・Al2SiO8(式中Mはストロンチウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムから選ばれる少なくとも1種の金属元素を表す。)の化合物を母体結晶として含む蓄光剤を含有することを特徴とする粘土組成物である。この蓄光剤は耐水性に優れたものである。
本発明はさらに、粘土組成物の製造方法に向けられていて、具体的には、粘土基材を構成する粉体成分と、式M・Al2SiO8(式中Mはストロンチウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムから選ばれる少なくとも1種の金属元素を表す。)の化合物を母体結晶として含む蓄光剤とを均一に混合し、得られた混合物に液体成分を加えて混練することを含む、粘土組成物の製造方法である。
本発明の好ましい実施態様では、粘土組成物において該蓄光剤の含有量は0.3〜3質量%である。本発明のより好ましい実施態様では、使用する該蓄光剤の平均粒子径が5〜35μmの範囲にある。
本発明の実施態様では、該粘土組成物が粘土基材原料として穀粉、澱粉、無機物粉末、ロウ、木粉、パルプ繊維、銀粉、石鹸、及び高分子ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有する。本発明の好ましい実施態様では、粘土組成物は水、液体油脂、合成樹脂エマルジョン系接着剤、潤滑剤、ワックス、蜜蝋、乳化剤、液糖及び糖アルコールから選ばれる少なくとも1種の液体成分を含み、それら液体成分の合計配合量が40〜80質量%である。本発明のより好ましい実施態様では、液体油脂を1〜10質量%含有する上記粘土組成物が挙げられる。
本発明はさらに、上記の粘土組成物を収容した造形用キットにも向けられる。
本発明の粘土組成物は、発光輝度が高く、また、光照射後、時間が経過した後の残光輝度も高く、すなわち、比較的長い発光持続時間を有する。本発明の粘土組成物はまた、保存した後も性能が高く、耐水性及び耐光性に優れ保存安定性が高い。
本発明の粘土組成物によって、発光輝度が高く、また、光照射後、時間が経過した後の残光輝度も高く、即ち残光特性が良好な、耐水性、耐光性及び保存安定性に優れた造形物を作ることができる。
本発明では、特定の蓄光剤を使用することから、粘土組成物の製造過程における混練で蓄光剤が劣化することがなく、また、比較的多量の液状成分を配合しても、安定性のよい粘土組成物が得られる。本発明の粘土組成物は、工作や造形をするの適した性状を有し、扱い易く、発光特性及び残光特性に優れている。
本発明の粘土組成物の製造方法によれば、製造過程で激しい混練工程を経ても蓄光剤の性能が劣化せず、発光輝度が高く残光特性も良好で、耐水性及び耐光性に優れ保存安定性の良い粘土組成物が得られる。
本発明の粘土組成物は、澱粉及び/又は穀粉を含み、式M・Al2SiO8(式中Mはストロンチウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を表す。)の化合物を母体結晶として含む蓄光剤を含有することを特徴とする。
本発明で使用する、式M・Al2SiO8(式中Mはストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)及びバリウム(Ba)から選ばれる少なくとも1種の金属元素を表す。)の化合物を母体結晶として含む蓄光剤は、珪素アルミン酸塩蓄光剤と称されているものである。珪素アルミン酸塩蓄光剤は、水中で化学変化を起こすことが少なく、耐水性に優れているほか、耐熱性、耐寒性、化学安定性に優れている。
このような蓄光剤は、人体、環境に対して無害である。その発光ピーク波長は440〜520μmの範囲で、紫〜青〜黄緑の色調バリエーションが見られる。通常、青緑色〜黄緑色が最も輝度が強い。
使用する蓄光剤の平均粒子径は、1〜50μmの範囲内が適当であって、好ましくは平均粒子径が5〜35μmの範囲内のものである。この平均粒子径が1μmよりも小さいと輝度が低くなる傾向があり、一方50μmよりも大きいと粘土基材中に均質に混ざりにくくなる。
本発明で使用する蓄光剤は、上記の母体結晶に、賦活剤としてユウロピウム(Eu)、共賦活剤としてイッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、錫(Sn)、セリウム(Ce)、テルビウム(Tb)、ビスマス(Bi)、プラセオジウム(Pr)、ホルミウム(Ho)、サマリウム(Sm)、マンガン(Mn)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)などを添加したものであってよい。
このような蓄光剤は、市販されていて一般に入手することができるものであり、本発明でも市販品を使用することができる。本発明で使用する蓄光剤の市販品の例として、例えばTDOグラフィック(株)製のTDOヒカリ☆マスTD−B401などがある。
本発明の粘土組成物において蓄光剤の含有量は、適当な輝度を示すことから、粘土組成物の全質量に対して0.3〜3質量%が適当であって、好ましくは0.5〜2質量%である。蓄光剤を3質量%を超えて含ませても輝度に向上が見られないので、経済的な観点から3質量%までが適当である。
本発明の粘土組成物は、粘土組成物を構成する慣用の粘土基材と上記の蓄光剤とを組合せて製造することができる。
本発明の粘土組成物の粘土基材原料として、穀粉、澱粉、無機物粉末、ロウ、木粉(粒度の細かい木くず)、パルプ繊維、銀粉、石鹸、及び高分子ポリマーから選ばれる粉体成分を少なくとも一種を使用することができる。本発明の粘土組成物には、上記のような粘土基材原料を一種単独で又は二種以上を組合せて含ませてもよい。
粘土基材原料として使用する澱粉や穀粉としては、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、甘薯澱粉、マイロ澱粉、これらの澱粉のα化物や化工澱粉などの澱粉、及び小麦粉、トウモロコシ粉、米粉、そば粉などの穀粉を挙げることができる。本発明の粘土組成物には澱粉を単独で、穀粉を単独で、又は澱粉と穀粉とを組合せて用いてもよく、2種以上の澱粉を用いてもよく、また、2種以上の穀粉を用いてもよい。中でも小麦粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及びそれらの組合せが好ましく用いられる。
本発明の粘土組成物において澱粉及び/又は穀粉を20〜60質量%程度の範囲内で配合することができる。
基材原料とする無機物粉末としては石英、カオリン、ゼオライト、珪藻土、タルク、ベントナイト、ホウ砂、岩石粉などが挙げられる。これらを一種単独で又は二種以上組合せて使用してもよい。粘土組成物において上記の無機物粉末を1〜60質量%程度の範囲内で配合することができる。
ロウとしては蜜蝋などがある。粘土組成物においてロウを5〜50質量%程度の範囲内で配合することができる。
木粉としては一般に木粉粘土に含められる粒度の細かい木くずを使用することができる。粘土組成物において木粉を5〜50質量%程度の範囲内で配合することができる。
パルプ繊維としては、セルロース粉末などが挙げられる。粘土組成物においてパルプ繊維を10〜60質量%程度の範囲内で配合することができる。
銀粉としては、従来、樹脂粘土や紙粘土に含められる純銀粉などを使用することができる。粘土組成物において銀粉を2〜20質量%程度の範囲内で配合することができる。
石鹸としては、石鹸、具体的には脂肪酸塩石鹸、及び石鹸製造工程中の中間品(ニートソープなど)などを使用することができる。粘土組成物において石鹸成分を10〜40質量%程度の範囲内で配合することができる。
また、高分子ポリマーとしては、ポリビニルアルコールなどの親水性合成高分子の粉体、ポリマー球体、高分子ポリマー主体の中空微小球体などを用いることができる。粘土組成物においてこのような高分子ポリマーを、10〜60質量%程度の範囲内で配合することができる。
上記のような粘土基材となる粉体原料の中で、白色又は透明度合いの高いものが特に好ましく使用でき、それらは、蓄光材の添加量がより少なくても粘土組成物として高い輝度を発揮できるいう利点を示す。従って、上記の粘土基材原料の中でも、穀粉、特に小麦粉、澱粉、石鹸、高分子ポリマー主体の中空微小球体などが好ましく使用される。
本発明の粘土組成物において、上記粉体成分を合計量で一般に約20〜60質量%配合するのが適当であり、好ましくは約25〜55質量%、より好ましくは約30〜50質量%の範囲内で配合する。
本発明の粘土組成物の製造にあたり、いわゆる穀粉粘土、澱粉粘土、樹脂粘土(澱粉、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤を主体とした粘土)、土粘土(天然の石英、カオリン、ゼオライトなどを主成分とした粘土)、ロウ粘土(ロウに水、乳化剤、合成油脂を混ぜて攪拌し、柔らかい手触り感を出した粘土)、木粉粘土(粒度の細かい木くずを粉体資材として、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤を含む粘土)、紙粘土(パルプ繊維と澱粉を粉体資材の主体として含み、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤や澱粉系糊を含む粘土)、銀粉含有粘土(樹脂粘土や紙粘土に銀の粉を含めた粘土)、石鹸粘土(石鹸成分を含む粘土)、高分子ポリマーを含む軽量粘土などを粘土基材として使用することもできる。
本発明の粘土組成物には液体成分を配合することが望ましい。そのような液体成分として水、液体油脂、合成樹脂エマルジョン系接着剤、潤滑剤、ワックス、蜜蝋、乳化剤、液糖及び糖アルコールなどが挙げられる。
粘土組成物において、通常、水を5〜50質量%程度の範囲内で配合する。
液体油脂としてはサラダ油、ショートニング、鉱物油などが挙げられる。粘土組成物において粘土として好ましい作業性を示すことと好ましい発光輝度及び残光輝度を示す観点から、液体油脂を1〜10質量%程度含有させることが適当であり、好ましくは2〜5質量%の範囲である。
合成樹脂エマルジョン系接着剤の例として望ましくは酢酸ビニルエマルジョン系接着剤が選ばれる。酢酸ビニルエマルジョン系接着剤として、水性又は水分散性酢酸ビニルエマルジョン系接着剤を用いることができる。例えば酢酸ビニル系樹脂30〜60質量%を水とエマルジョンして製造されたものがあり、通常、木工用ボンドと呼ばれる。
酢酸ビニルエマルジョン系接着剤の具体例としては酢酸ビニル樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン木材接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリル−酢酸ビニル共重合体エマルジョンなどがある。中でも酢酸ビニル樹脂エマルジョン木材接着剤を好ましく使用することができる。
これらの酢酸ビニルエマルジョン系接着剤は、市場で一般に入手できるものを使用することができる。市販品として、例えばエスダイン(セキスイ製)、木工用ボンド(コニシ製)、CH−14(コニシ製)、A−320(アイカアイボン製)などがある。本発明の粘土組成物には、2種以上の酢酸ビニルエマルジョン系接着剤を使用してもよい。
粘土組成物において合成樹脂エマルジョン系接着剤を40質量%程度まで配合することができる。
また、潤滑剤としてはグリセリン及びプロピレングリコールなどの多価アルコール、ノルマルパラフィン、流動パラフィン、液体シリコーンなどが挙げられる。粘土組成物においてこのような潤滑剤を10質量%程度まで配合することができる。
ワックスとしては植物系天然ワックスなどが挙げられる。粘土組成物において、ワックスを5質量%程度まで配合することができる。
蜜蝋としてはオーストラリア産ミツロウなどが挙げられる。粘土組成物において、蜜蝋を3質量%程度まで配合することができる。
乳化剤の具体例として例えばモノグリセライドのエマルジョンなどが挙げられる。粘土組成物において、このような乳化剤を1質量%程度まで配合することができる。
液糖としては果糖ブドウ糖液糖などが挙げられ、例えば水分を25%程度含む果糖ブドウ糖液糖がある。また、糖アルコールとしてはソルビトールなどがあり、例えばソルビトール50〜70%程度の溶液が使用できる。粘土組成物には液糖又は糖アルコールを10質量%程度まで配合することができる。
上記の液体成分の中でも、水、液体油脂、合成樹脂エマルジョン系接着剤及び潤滑剤(グリセリン、プロピレングリコールなど)がよく使用される。
本発明の粘土組成物は上記の液体成分を少なくとも一種含み、それら液体成分の合計配合量は、発光の強さの観点と粘土生地に適度な硬さを与えて作業性及び成形性を適当にする点から、40〜80質量%であることが適当であり、好ましくは50〜70質量%である。液体成分が少ないと、固形成分が光の乱反射や吸収によって光の内部浸透や、内部からの発光を阻害してしまうと考えられる。液体成分の存在は光の屈折率に関与していると考えられ、液体成分が一定量以上存在することによって粘土内への光の浸透、粘土内からの光の放出が促進されると考えられる。
本発明の粘土組成物には上記の成分のほか、結着剤を含めることができ、結着剤の例として、グアガム、キサンタンガム、エコーガム、ローストビーンガム、アラビアガム、及びジェランガムといった増粘多糖類、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、及びメチルセルロースなどが挙げられる。このような結着剤は、本発明の粘土組成物中に1質量%程度までの量で配合することができる。
本発明の粘土組成物にはその他、塩析収斂剤(硫酸アルミニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウムなど)、pH調節剤(例えば酒石酸などの有機酸)、防腐剤(ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸、食塩など)、酸化防止剤、着色剤、香料などを含めることができる。
本発明の粘土組成物の製造方法については、粘土組成物の製造において一般に用いられている方法に準じて製造することができる。
しかしながら、蓄光剤は単体では比重が重く、液体資材の中で均一に混ざることなく沈んでしまうため、本発明の粘土組成物の製造方法としては、先ず蓄光剤と粉体成分とを十分に混ぜて均一な状態にしてから、その粉体混合物へ液体成分を添加して混練することが望ましい。混合、混練には例えばジャケット付ミキサーを使用することができ、温度を40〜95℃程度に設定するのが適当である。
本発明の粘土組成物は、乾燥を防ぐように、及び遮光できるように包装されて造形用キットに収容することができる。該造形用キットには、粘土組成物の他に抜き型、カッター、押し型、ローラーなどを含ませてもよい。
以下実施例により本発明を説明する。
[実施例1]
以下の組成にて粘土組成物を製造した。
小麦粉(薄力粉) 30質量%
馬鈴薯澱粉 4質量%
食塩 7質量%
珪藻土 2質量%
蓄光剤 1質量%
湯(80℃) 45質量%
サラダ油 3質量%
プロピレングリコール 3質量%
グリセリン 5質量%
使用した蓄光剤は、TDOグラフィック(株)製のTDOヒカリ☆マスTD−B401(式M・Al2SiO8:L,X(M=Sr,Ca,Mg,Ba、L=鉱物材、X=輝度活性材、平均粒子径:5〜35μm)である。
製法:小麦粉、澱粉、食塩、珪藻土及び蓄光材を90℃に設定したジャケット付縦型ミキサーに入れて、5〜10分間ミキシングし、均一な粉体混合物とした。そこへプロピレングリコール、グリセリンを加え5分間ミキシングした後、最後に湯を加えて15分間もち状の生地ができあがるまでミキシングする。できあがった生地は水分が蒸発しないように包み込んで室温になるまで放置した。その後100gに分割成形して密封し1ヶ月間温室で保管し、自然光、自然温度(9〜32℃)下に置いた。
[実施例2]
実施例1と同様に実施し、但し、湯を加えた後のミキシング時間を30分間とした。
[比較例1]
実施例1と同様に実施し、但し使用する蓄光材を、式:式M・Al24(M=Sr,Ca,Mg,Ba)で表される蓄光材(根本特殊化学(株)製 N夜光G−300M)に変更した。
[比較例2]
比較例1と同様に実施し、但し、湯を加えた後のミキシング時間を30分間とした。
[比較例3]
実施例1と同様に実施し、但し使用する蓄光材を、比較例1で使用したのと同様の蓄光材を耐水性材料でコーティングした蓄光材(根本特殊化学(株)製 N夜光G−300M PS−1)に変更した。
[比較例4]
比較例3と同様に実施し、但し、湯を加えた後のミキシング時間を30分間とした。
ここで製造した各種粘土組成物について、光照射直後の発光状態及び残光輝度(光照射後、時間が経過した後の発光状態)を以下の試験にて調べた。
[試験方法]
各粘土組成物を50mm×50mm×5mmの試験片に調製する。暗室中で試験片を白色蛍光燈 ナショナル製 FL20S・W(20W)から30cmの距離を置き、20分間放置する。その後、コントロール片との相対評価により、光照射直後の発光状態(具体的には発光の強さ)を官能的に判定する。コントロール片は、実施例1で製造した粘土組成物から調製した試験片とする。
官能評価は10名のパネラーにより、コントロールを8点として相対評価を行い、10名の平均点を求めた。
経時後の残光輝度の評価は、光照射直後の評価を終えた後、一旦、暗黒ケース(200mm×200mm×200mm)に30分間、又は60分間しまっておいた試験片を暗室内で取り出し、上記と同様に光照射直後のコントロール片と比較して官能的に相対評価を行った。
実施例1及び2、比較例1〜4で製造した粘土組成物からの試験片により得られた結果を表1に示す。
Figure 2006064982
表1に示された結果から、実施例の粘土組成物は、自然光下で保管後でも比較例の粘土組成物と比べて顕著に発光が強く、且つ残光輝度が強いものであり、また、製造過程で比較的激しい混練を受けても性能が維持されていることが判る。
[実施例3]
実施例1の組成における液体成分(湯:45質量%、サラダ油:3質量%、プロピレングリコール:3質量%、グリセリン:5質量%)を、同じ配合比率で、組成物中40質量%を占めるように使用し、残りの粉体成分を同様に実施例1と同じ配合比率で、組成物中60%を占めるように使用して、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
[実施例4]
実施例1の組成における液体成分(湯:45質量%、サラダ油:3質量%、プロピレングリコール:3質量%、グリセリン:5質量%)を、同じ配合比率で、組成物中80質量%を占めるように使用し、残りの粉体成分を同様に実施例1と同じ配合比率で、組成物中20%を占めるように使用して、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
[実施例5]
実施例1の組成における液体成分(湯:45質量%、サラダ油:3質量%、プロピレングリコール:3質量%、グリセリン:5質量%)を、同じ配合比率で、組成物中35質量%を占めるように使用し、残りの粉体成分を同様に実施例1と同じ配合比率で、組成物中65%を占めるように使用して、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
[実施例6]
実施例1の組成における液体成分(湯:45質量%、サラダ油:3質量%、プロピレングリコール:3質量%、グリセリン:5質量%)を、同じ配合比率で、組成物中85質量%を占めるように使用し、残りの粉体成分を同様に実施例1と同じ配合比率で、組成物中15%を占めるように使用して、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
実施例3〜6で製造した粘土組成物から、上記と同様に試験片を作成し、試験した結果を表2に示す。
Figure 2006064982
上記結果から液体成分が多いほど発光が強いが、液体成分が80%を超えると粘土の性状がべたつく傾向があり、作業性が悪くなる。
[実施例7]
実施例1の組成において蓄光材を0.3%にして、小麦粉で総量調整し、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
[実施例8]
実施例1の組成において蓄光材を3%にして、小麦粉で総量調整し、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
[実施例9]
実施例1の組成において蓄光材を0.2%にして、小麦粉で総量調整し、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
[実施例10]
実施例1の組成において蓄光材を5%にして、小麦粉で総量調整し、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
実施例7〜10で製造した粘土組成物から、上記と同様に試験片を作成し、試験した結果を表3に示す。
Figure 2006064982
蓄光材の含有量が増えると発光も強くなるが、蓄光材の含有量が3%を超えても大差がない。
[実施例11]
実施例1の組成において蓄光材を平均粒子径0.1〜5μmのものに変更して、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
[実施例12]
実施例1の組成において蓄光材を平均粒子径35〜50μmのものに変更して、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
実施例11及び12で製造した粘土組成物から、上記と同様に試験片を作成し、試験した結果を表4に示す。
Figure 2006064982
[実施例13〜16]
実施例13〜16では、実施例1の組成におけるサラダ油の含有量を各々1、10、0.5、及び15%として、その他の成分は実施例1と同様の配合比率にてサラダ油の残余を占めるような量で使用して、実施例1と同様に粘土組成物を製造し、保管した。
これらの粘土組成物から試験片を調製し、試験片を24時間風乾後、上記と同様に試験した。結果を表5に示す。







Figure 2006064982
液体油脂が多くなると乾燥しても発光が強いことが判る。しかしながら液体油脂の含有量が10%を超えるとかなりべとべとして作業性に問題がある。

Claims (8)

  1. 式M・Al2SiO8(式中Mはストロンチウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムから選ばれる少なくとも1種の金属元素を表す。)の化合物を母体結晶として含む蓄光剤を含有することを特徴とする粘土組成物。
  2. 蓄光剤の添加量が0.3〜3質量%である請求項1記載の粘土組成物。
  3. 蓄光剤の平均粒子径が5〜35μmである請求項1又は2記載の粘土組成物。
  4. 粘土基材原料として穀粉、澱粉、無機物粉末、ロウ、木粉、パルプ繊維、銀粉、石鹸、及び高分子ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の粘土組成物。
  5. 水、液体油脂、合成樹脂エマルジョン系接着剤、潤滑剤、ワックス、蜜蝋、乳化剤、液糖及び糖アルコールから選ばれる少なくとも1種の液体成分を含み、それらの合計配合量が40〜80質量%である、請求項1〜4のいずれか1項記載の粘土組成物。
  6. 液体油脂を1〜10質量%含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の粘土組成物。
  7. 粘土組成物を構成する粉体成分と、式M・Al2SiO8(式中Mはストロンチウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムから選ばれる少なくとも1種の金属元素を表す。)の化合物を母体結晶として含む蓄光剤とを均一に混合し、得られた混合物に液体成分を加えて混練することを含む、粘土組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項記載の粘土組成物が収容された造形用キット。
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