JP2006056759A - 照明用ガラス、およびそれを用いたステム管、白熱電球用バルブ、コンパクト蛍光灯用バルブ - Google Patents

照明用ガラス、およびそれを用いたステム管、白熱電球用バルブ、コンパクト蛍光灯用バルブ Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、鉛を実質的に含有しないガラスであって、充分な電気絶縁性と優れた熱加工性を有し、失透しにくいとともに分相しにくい照明用ガラスおよびそれを用いたステム管、白熱電球用バルブ、コンパクト蛍光灯用バルブを提供することである。
【解決手段】本発明の照明用ガラスは、実質的に鉛を含有せず、質量百分率で、SiO2 60〜80%、B23 0〜1.5%、SrO 2〜12%、BaO+ZnO 2〜11%、Li2O 0.5〜8%、Na2O+K2O+Li2O 10〜16%、P25 0.03〜1%を含有することを特徴とする。また、この照明用ガラスは、ステム管、白熱電球用バルブ、コンパクト蛍光灯用バルブに好適である。
【選択図】なし

Description

本発明は、実質的に鉛を含まない照明用ガラス、およびそれを用いたステム管、白熱電球用バルブおよびコンパクト蛍光灯用バルブに関するものである。
蛍光灯や、白熱電球の電極線が挿入、封止されるステム部分には、電流がリークしないように高い電気絶縁性が必要であり、電極線封止部を低温で封止できるように鉛を約20〜30質量%含むガラスが使用されてきた(例えば、特許文献1参照。)。ところが鉛のもつ有害性から、鉛を含まないガラスが要求されるようになり、開発されている。
また近年、省エネルギー化の観点からコンパクトで高出力なコンパクト蛍光灯が普及しつつある。この蛍光灯は、バルブが曲げられたり、繋げられたりするなど複雑なバルブ形状を有しており、このようなバルブの材質には加工性に優れることが求められる。このため、従来は加工性に優れた鉛ガラスが用いられてきたが、このガラスに関しても無鉛化が求められている。
また、よりコンパクトで、より高出力な蛍光灯が求められているため、バルブの形状がU字形状やスクリュー形状のようにさらに複雑な形状になり、加工しにくくなってきている。
さらに、高輝度化の要求からバルブの細径化が進んでおり、封止部にステム管を用いずにバルブ端部を加熱軟化させて押し潰し、直接電極線を封止するという簡略化した構造が採用され始めている。このため、バルブ用途においても、さらなる熱加工性の改善が必要となってきている。加えてこの構造の場合には、電極線を直接封止するために、従来のステム管と同様に高い電気絶縁性が要求される。
鉛を含有しない照明用ガラスとして、BaOを7〜11%含有するとともに、アルカリ金属酸化物(Li2O、Na2O、K2O)を含有する無鉛ガラス(例えば、特許文献2参照。)が提案されており、ステム管や蛍光灯のバルブに使用されている。この無鉛ガラスは、鉛ガラスほどではないものの、加工性に優れたものである。また、このガラスは、「アルカリ混合効果」を利用して鉛ガラスと同等の電気絶縁特性を達成している。
しかし、照明用のガラス管は、通常ダンナー法によって成形されるが、特許文献2に開示された無鉛ガラスはBaOの含有量が多いため、ダンナー法を用いてガラス管を成形する場合、スリーブ耐火物の成分とガラス中のBaOとが反応して異物が発生しやすい。異物が発生すると、異物とガラスとでは熱膨張係数が異なることから、冷却時に熱応力が生じ、異物の部分から割れが発生しやすくなるためガラス管を効率的に生産しにくい。
異物の発生を抑制するためにBaOの替わりにSrOの含有量を多くした組成が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、SrOも含有量を増加するに伴って失透が発生しやすくなる。失透が発生すると耐火物との反応異物が発生した場合と同様に冷却時に生じる熱応力によって割れが発生しやすくなるためガラス管を効率的に生産しにくい。
そこで、BaOおよびSrOの含有量を調整したガラス組成が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。このガラスを用いると、異物の発生や失透が低減されて効率的にガラス管を生産できるようになった。
特開平8−295531号公報 特開平6−206737号公報 特開平9−12332号公報 特開平10−324540号公報 特開2000−290038号公報 特開2000−315477号公報
近年、単位時間あたりのガラス流量を多くすることで、ガラス管の生産性を向上させようとしている。しかし、特許文献4のガラスを用いて従来と同じ操業条件で単位時間あたりのガラス流量だけを多くすると、成形時間がガラス流量の増加に反比例して短くなるため、成形中にガラスが充分に冷却されず、スリーブから引き出されたガラスは形状を維持することが難しい。また、スリーブに供給されるガラスの温度を予め低くしておけば、形状は維持できるものの失透しやすくなり、逆に生産性を下げる結果となる。
特許文献5、6には、失透性の改善にP25を添加すると効果があることが記載されているが、具体的にどのような結晶系に効果があるかについての記載がなく、示唆も無い。一方で、P25を添加するとガラスが分相して白濁しやすいことが記載されている。
照明用ガラスの場合、熱加工等によってガラスの分相が引き起こされ白濁すると、透過率が低下するため、光源の輝度が低下するおそれがある。
また、ガラスが分相した部分は、アルカリ金属が溶出しやすく、例えば蛍光灯の場合、封入された水銀と溶出したアルカリ金属(特にナトリウム)とが合金を形成することによって、水銀が消費されて輝度が低下するおそれがある。
本発明の目的は、生産性を向上でき、鉛を実質的に含有しないガラスであって、充分な電気絶縁性と優れた熱加工性を有し、失透しにくいとともに分相しにくい照明用ガラスおよびそれを用いたステム管、白熱電球用バルブ、コンパクト蛍光灯用バルブを提供することである。
本発明者等は、種々の実験を行った結果、SrOを含有する照明用ガラスにおいて、SrOを含有する結晶物が初相として晶出しやすいが、P25を添加することによって晶出温度(液相温度)を大幅に低下できる、つまり、SrOを含有する結晶の析出が抑制されて失透しにくくなることを見いだした。そこで、本発明としてP25を添加しても分相しにくいガラス組成範囲を見いだし提案するものである。
本発明の照明用ガラスは、実質的に鉛を含有せず、質量百分率で、SiO2 60〜80%、B23 0〜1.5%、SrO 2〜12%、BaO+ZnO 2〜11%、Li2O 0.5〜8%、Na2O+K2O+Li2O 10〜16%、P25 0.03〜1%を含有することを特徴とする。
また、本発明のステム管は、実質的に鉛を含有せず、質量百分率で、SiO2 60〜80%、B23 0〜1.5%、SrO 2〜12%、BaO+ZnO 2〜11%、Li2O 0.5〜8%、Na2O+K2O+Li2O 10〜16%、P25 0.03〜1%を含有する照明用ガラスからなることを特徴とする。
また、本発明の白熱電球用バルブは、実質的に鉛を含有せず、質量百分率で、SiO2 60〜80%、B23 0〜1.5%、SrO 2〜12%、BaO+ZnO 2〜11%、Li2O 0.5〜8%、Na2O+K2O+Li2O 10〜16%、P25 0.03〜1%を含有する照明用ガラスからなることを特徴とする。
さらに、本発明のコンパクト蛍光灯用バルブは、実質的に鉛を含有せず、質量百分率で、SiO2 60〜80%、B23 0〜1.5%、SrO 2〜12%、BaO+ZnO 2〜11%、Li2O 0.5〜8%、Na2O+K2O+Li2O 10〜16%、P25 0.03〜1%を含有する照明用ガラスからなることを特徴とする。
本発明の照明用ガラスは、充分な電気絶縁性や優れた熱加工性を有し、失透しにくいとともに分相しにくい。
また、スリーブに供給されるガラスの温度を低くしても失透しにくいため、単位時間あたりのガラス流量を多くすることが可能であり、ガラス管の生産性を向上させることができる。
SrOを含有する照明用ガラスにおいて、SrOを含有する結晶の晶出温度は、SrOの含有量によって左右されていたが、P25を添加することによってSrOを含有する結晶が析出しなくなり、晶出温度を大幅に低くすることができる。そのため、失透しにくい。
一方、P25の添加による分相を防止するために、分相を引き起こす傾向のあるB23とLi2Oの含有量を制限した。
25とB23は、ともにガラスネットワークを形成する成分であるが、本発明におけるガラスネットワークのほとんどはSiO2によって形成されている。Si、PおよびBは、それぞれ酸素原子との結合距離も、酸素原子との結合角も異なるため、SiO2のネットワークにP25やB23が加わると、ネットワークにひずみが生じ、それぞれの単独のネットワークに分離しやすくなる。その結果、分相が引き起こされるものと考えられる。そのため、P25とB23の含有量を上記のように制限した。
また、Li2Oについては、Li原子の半径が特に小さいため、Li原子(またはイオン)がガラス中を移動しやすいために分相を助長するものと考えられる。そのため、Li原子の移動を抑制するために、BaやZnのように原子半径の大きい成分を添加した。その結果、Li2OとBaO+ZnOの含有量を上記のように規定した。
以下に、ガラス組成の範囲を限定した理由を記載する。
SiO2は、ガラスのネットワークを形成する成分である。SiO2が60%より少ないとガラスネットワークが充分に形成されず、機械的強度、化学耐久性、体積抵抗率が低くなる。一方、SiO2が80%より多いとガラスの粘性が上昇し、溶融成形が困難になる。なおSiO2の含有量の好適な範囲は65〜75%であり、より好適な範囲は64〜74%である。
23は、化学耐久性を改善し、高温粘性を低下させる効果がある。B23が1.5%より多いと、溶融時の揮発量が多くなり、溶融炉を構成する耐火物と反応して溶融炉を傷めやすいため、ガラス中に異物が混入しやすくなるとともに、分相しやすい傾向がある。好ましい範囲は0〜1.3%である。また、分相しやすくする成分であるP25との合量を1.7%以下にとどめることが好ましい。
SrOは、加工性と高い電気絶縁性をガラスに与える効果が大きい成分であるため、本発明の必須の成分であるが、2%よりも少ないとその効果が無く、12%よりも多いとガラス管の成形時に失透しやすくなる傾向がある。失透性を考慮するとSrOの含有量は10%までにとどめておくことが好ましい。
25は、SrOを含有する本提案ガラスにおいて、失透を抑制する効果が大きいため、必須の成分であるが、分相を引き起こす成分でもある。P25の含有量が0.03%より少ないと失透を抑制する効果が得られにくい傾向があり、1%を超えるとガラスが分相しやすい傾向がある。好ましい範囲は0.05〜0.9%であり、さらに好ましくは0.05〜0.45%である。また、B23を含有するガラスに添加する場合は、ともに分相を引き起こす成分であるため、P25の含有量を0.8%以下にすると分相しにくい傾向があり好ましい。
また、P25を上記の範囲内で添加することによって、ガラス溶融炉の耐火物やガラス管の成形に用いられるスリーブ耐火物とガラスとの反応を抑制する効果も有する。
BaOやZnOは、鉛含有ガラスのような高い加工性と電気特性を得るための効果が特に顕著な酸化物であり、しかも原子半径が大きいため、ガラス中で移動しやすいアルカリ金属元素(特にLi)などの移動を妨げ、ガラスの分相を抑制する効果を有する。その合量が2%未満の場合、ガラスの分相を抑制しにくい傾向があり、11%を越えるとガラス管の成形時に失透しやすい傾向がある。好適な範囲は、3〜10%である。
BaOは、鉛含有ガラスのような優れた加工性と高い電気絶縁性をガラスに与える有用な成分であり、ガラスの分相を抑制する効果の大きい成分でもある。一方、BaOの含有量が11%を超えると、ガラス管の成形時にスリーブ耐火物との反応生成ブツ(異物)が発生しやすい。なお、BaOの好ましい範囲は2〜10%である。
ZnOは、耐侯性を向上させる効果を有する成分である。また、BaOやSrOと同様、ガラスに鉛含有ガラスのような優れた加工性と高い電気絶縁性を与える成分である。また、ガラスの分相抑制に対しても効果の大きい成分でもあるが、8%を越えるとガラスが失透しやすくなる傾向がある。なお、ZnOの好ましい範囲は0〜6%である。
Li2O、Na2O、K2Oといったアルカリ金属酸化物は、熱膨張係数を調整するとともに、ガラスの粘性を低下させて加工性を高めるための必須の成分である。また、Li2OとNa2Oおよび/またはK2Oとを共存させることが好ましく、「アルカリ混合効果」と呼ばれる化学耐久性や電気絶縁性を向上させる効果が得られる。
Li2O、Na2O、K2Oの合量が10%よりも少ないと、ステム管用途またはそれに準ずる使い方をした場合にジュメット電極線との熱膨張係数が整合しなくなる傾向がある。また、ガラスの粘性が上昇して、加工性が悪化する傾向がある。一方、Li2O、Na2O、K2Oの合量が16%よりも多いと、これらのアルカリ金属元素は、原子半径が小さいため、ガラス中で移動しやすく、熱加工時にガラスを分相させる傾向にあるため、バルブとして用いた場合、光の透過率が低くなるおそれがある。また。バルブ用途と同様にステム管用途に用いた場合でも、分相によりアルカリ溶出量が多く、水銀とアマルガムを生成しやすくなり、光出力の低下の原因となる。好適な範囲は11〜15%である。
Li2Oは、他のアルカリ金属酸化物に比べて含有量が熱膨張係数に与える影響が大きい成分であるため、少量の添加で熱膨張係数を調整することが可能であるとともに、粘性を低下させる効果が大きいことから鉛ガラスの加工特性へ近似させるための加工温度の低温化に特に有効な必須成分である。
Li2Oが0.5%よりも少ないと、アルカリ混合効果が得られにくいため、化学耐久性や電気絶縁性が悪化する傾向がある。一方、8%よりも多いと、ガラスが分相しやすくなる傾向があるとともに、Na2OやK2Oの含有量が少なくなるため、アルカリ混合効果が得られにくい傾向がある。好適な範囲は1〜5%である。
Na2Oが12%よりも多いと、アルカリ混合効果が得られにくく、化学耐久性や電気絶縁性が悪くなりやすいとともに、熱膨張係数が大きくなりやすい。K2OやLi2Oと共存させて、アルカリ混合効果を得るためには、Na2Oの含有量が0.5〜10%であることが望ましい。
2Oが15%よりも多いと、アルカリ混合効果が得られにくく、化学耐久性や電気絶縁性が悪くなるとともに、熱膨張係数が大きくなりやすい。Na2OやLi2Oと共存させて、アルカリ混合効果を効かせるために、含有量が0.5〜13%であることが望ましい。なお、Na2OおよびK2Oの合量が3%以上であることが好ましい。
本発明の照明用ガラスは、MgO、CaO、SrOおよびBaOのアルカリ土類金属酸化物やZnOを、高い電気絶縁性を得るために、また、鉛含有ガラスに近い加工性を得るために添加する。これらの成分の合量は8%よりも少ないと上記した効果が得られにくい傾向があり、16%よりも多いと、ガラス管の成形時にガラスが失透しやすい傾向がある。これらの成分の合量が、10〜15%であるとさらに好ましい。
CaOおよびMgOは優れた加工性と高い電気絶縁性をガラスに与えるとともに、化学的耐久性も付与するが、各々5%を超えると、ガラス管成形時にガラスが失透しやすくなる。なお、CaOおよびMgOの好ましい範囲は各々0〜4%である。
上記の成分以外にも種々の成分を添加することが可能である。
Al23は、SiO2と同様にネットワークを形成できる成分であり、また化学耐久性を向上させる作用がある。Al23が0.5%より少ないとその効果が得られにくい傾向があり、5%より多いと溶融が困難になる傾向がある。Al23の好適な範囲は1〜4%である。
CeO2は、ガラスに紫外線遮蔽効果を付与し、紫外線照射による透過率低下を小さくする効果があるため、蛍光灯用バルブとして用いる場合に有用な成分である。また清澄剤としても機能する。CeO2が1.5%より多いとガラスが黄色に着色する傾向がある。好ましくは、含有量を1%以下に留める方が良い。
TiO2は、ガラスに紫外線遮蔽効果を付与し、紫外線照射による透過率低下を小さくする効果があるため、蛍光灯用バルブとして用いる場合に有用な成分である。TiO2が2.5%より多いとガラスが失透しやすい傾向がある。含有量が2%以下であると好ましい。
ZrO2は、ガラスの耐候性を向上させる効果を有するが、粘性を上げる傾向があり、溶融が困難になるため、含有量を0.5%までとすることが好ましい。
Sb23は、清澄剤として有用な成分であるが、CeO2との共存下では、ガラスを黄色く着色させる傾向があるので、バルブ用途では共存させない方が良い。また、自動車用ウェッジ球のようにバルブの一端を電極線や排気管とともに熱加工封止する場合、熱加工により黒化する傾向があるため、含有量を1%までとすることが好ましい。
清澄剤としてClやSO3を使用することができる。なお不純物として、Fe23が含まれることが多いが、Feは紫外線遮蔽効果をガラスに与える反面、有色イオンであり、可視域の透過率を低下させる要因ともなるので、バルブ用途としては、0.8%以下に制限することが重要である。
As23は、清澄剤として有用な成分であるが、環境上の理由から使用は極力避けるべきであり、実質的に含まないことが好ましい。
上記した以外の成分を、本発明の特性が損なわれない範囲で添加することができる。
本発明の照明用ガラスは、液相温度が775℃以下であると単位時間あたりのガラス流量を多くしても、ガラス管成形時に失透が発生しにくいため生産性を向上することができる。好ましい液相温度は、765℃以下である。
本発明の照明用ガラスは、30〜380℃における平均線熱膨張係数が85〜105×10-7/℃であると、ジュメット電極線の熱膨張係数と整合するためジュメット電極線を直接封止することができ好ましい。好ましくは、90〜100×10-7/℃である。
本発明の照明用ガラスは、軟化点が700℃以下であると、加工性に優れるため好ましい。好ましい軟化点は、690℃以下である。
本発明の照明用ガラスは、作業温度が1050℃を越えると、封入される電極線であるジュメットの表層部の亜酸化銅膜が封着時に失われやすくなり、ガラスとの封着が困難となる。好ましい作業温度は、1030℃以下である。
本発明の照明用ガラスは、体積抵抗率が9logΩ・cm以上であると、電気絶縁性に優れ、特にステム管用とにおいて電流がリークしにくいため好ましく、10logΩ・cm以上であるとさらに好ましい。
本発明の照明用ガラスは、アルカリ溶出量が0.6mg以下であると、アルカリ金属と水銀とが反応して生成する合金(水銀アマルガム)の生成量が少なくなるため、蛍光ランプに封入されていた水銀の消費が抑制される。その結果、蛍光ランプの光束が低くならず、明るいランプを得ることができる。好ましいアルカリ溶出量は、0.5mg以下である。
本発明の照明用ガラスを用いて、蛍光灯を作製する方法を述べる。
まず、上記組成となるように原料を調合した後、溶融炉にてガラスを溶融する。
次に、溶融ガラスをダンナー法、ダウンドロー法、アップドロー法等の管引き法を用いてガラス管を作製する。
続いて、ガラス管を所定の寸法に切断し、ガラス管の内面に場合によってはアルミナを主体とする保護膜を形成した後、蛍光体の塗布し、焼結して蛍光灯用バルブを作製する。
最後に、ステムを溶封し、排気後、水銀やArガスの封入等を行ない、蛍光ランプを作製する。環状蛍光灯の場合は、ステムの溶封後、バルブを加熱し、環状にする曲げ加工の工程を付加する。
コンパクト蛍光灯の場合は、ガラス管を所定の寸法に切断した後、加熱して曲げたり、繋げたりして環形状、U字形状、スクリュー形状等のバルブを作製する。
次に、バルブの内面に保護膜を形成し、蛍光体を塗布し、焼結する。
続いて、フィラメント付き電極線や排気管を直接バルブの端部に挿入し、電極線や排気管を封着する以外は蛍光ランプと同様に作製する。
白熱電球用バルブの場合は、ガラス管の片端を溶封した後、溶封部分を加熱して型の中に挿入してから、ブローマシンを用いて空気をガラス管に吹き入れ、バルブを成形する。
次に、所定の寸法にガラス管を切断してバルブを得た後、ステムを溶封し、排気後、Arガスの封入等を行ない、蛍光ランプを作製する。
ステムの場合は、ガラス管を所定の寸法に切断した後、ガラス管の型端を加熱してフレアを形成後、フィラメント付き電極線や排気管を挿入し、挿入部のガラス管を加熱封着して作製することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、表における「ND」は、未測定であることを示している。
表1〜4は、試料1〜14を示す。
各試料は次のようにして調製した。
まず、表1〜4に示す組成となるようにガラス原料を調合し、ライカイ機と呼ばれる乳鉢式擂り潰し攪拌機で10分間攪拌し、300gの原料バッチを得た。
次に、原料バッチを容量300cm3の白金ロジウム合金製ルツボに投入し、箱型電気炉にて1500℃で4時間溶融した。なお、溶融開始後30分毎に白金攪拌棒を用いて計3回攪拌を行った。
続いて、溶融ガラスをカーボン製の成形板の上に流し出した後、560℃に保持された箱型カンタル式アニール炉に入れ、4℃/分の平均冷却速度で炉冷して試料を作製した。
熱膨張係数は、30〜380℃における平均線熱膨張係数を示すものであり、ディラトメーター(マックサイエンス社製)を用いて測定した。
密度は、アルキメデス法を用いて測定した。
軟化点は、107.6dPa・sの粘度を示す温度であり、ASTM C 338で規定されるファイバー引っ張り法を用いて測定した。
作業温度は、104dPa・sの粘度を示す温度であり、白金球引き上げ法を用いて測定した。
液相温度は、ASTM C 829に基づいて測定した。
液相温度での晶出結晶系は、偏光顕微鏡およびEPMAを用い特定し、結晶系の表現として、結晶を構成する酸化物をつないで表記した。
体積抵抗率は、ASTM C 657に基づき測定し、150℃での抵抗値を対数表示した。
アルカリ溶出量は、JIS R 3502に基づいて測定した。
分相性は、溶融ガラスを炉冷後、目視で観察し、分相が見えないものは、「○」、僅かに青みがかった乳白色を呈しているものは、「△」、明らかに分相がわかるものは、「×」とした。
表1、2から明らかなように、No.1〜8の試料は、熱膨張係数が、93.0〜97.0×10-7/℃であり、体積抵抗率が11.3〜11.7logΩ・cmであった。また、軟化点が667〜681℃、作業温度が970〜1012℃であり、従来から用いられている無鉛照明用ガラスの値と近似していた。液相温度も705〜764℃であり、しかも顕著な分相現象は認められなかった。特に、No.1〜7の試料は、全く分相現象は認められなかった。
一方、表3、4から明らかなように、No.9〜11の試料は、液相温度が778〜798℃と高く失透しやすい。また、No.12〜14の試料は、顕著な分相現象が認められた。
本発明の照明用ガラスは、ステム管やコンパクト蛍光灯等のバルブ材料用途だけでなく、液晶ディスプレイのバックライト用バルブ、平面ランプ用ガラスや、例えば着色剤を添加した橙色の方向指示器用ランプや赤色のストップランプなどのウェッジ球に代表される自動車用電球等の用途にも使用可能である。

Claims (5)

  1. 実質的に鉛を含有せず、質量百分率で、SiO2 60〜80%、B23 0〜1.5%、SrO 2〜12%、BaO+ZnO 2〜11%、Li2O 0.5〜8%、Na2O+K2O+Li2O 10〜16%、P25 0.03〜1%を含有することを特徴とする照明用ガラス。
  2. 質量百分率で、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 8〜16%を含有することを特徴とする請求項1に記載の照明用ガラス。
  3. 請求項1または2に記載の照明用ガラスからなることを特徴とするステム管。
  4. 請求項1または2に記載の照明用ガラスからなることを特徴とする白熱電球用バルブ。
  5. 請求項1または2に記載の照明用ガラスからなることを特徴とするコンパクト蛍光灯用バルブ。
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