JP2006054204A - 蛍光ランプ - Google Patents

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Abstract


【課題】 蛍光体ランプにおいて、その発光効率を向上させる。
【解決手段】 蛍光管40は、蛍光体層42とガラス管41との間に保護層43が介在されている。保護層43は、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、タリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムから選択される元素の酸化物が、保護層の母材となる金属酸化物に溶け込んだ粉末粒子を、塗布,焼成して形成した。蛍光体層42の厚みは20μm未満としている。
【選択図】図9

Description

本発明は、蛍光ランプに関する。
蛍光ランプやHIDは、高効率で発光するランプとして広く知られている。蛍光ランプは、水銀及び希ガスが封入され内面に蛍光体が被着された発光管を備えており、発光管内で放電させることによって水銀の励起放射による254nmを主体とする紫外線を発生し、その紫外線で蛍光体を励起して可視光を放射することによって発光光束を得る。この蛍光ランプのタイプとしては、従来から直管形や環形が一般的であるが、この他に電球形やコンパクト形等も近年普及してきている。
特開平11−167899号公報
このような蛍光ランプにおいて、基本的な性能として、消費電力が低く且つ高光束が得られ、寿命も長いことが求められており、そのための開発がなされている。例えば、蛍光ランプの長寿命化に関するものとして、特開平11−167899号公報において、従来のソーダガラスを用いた場合、蛍光ランプ製造時或は点灯時にガラスから溶出してくるナトリウムが水銀と反応することによって蛍光ランプの輝度低下が生じやすいという点に着目し、従来のソーダガラスよりもアルカリが溶出しにくいガラスを用いて蛍光ランプの輝度低下を抑える技術が開示されている。
また、蛍光ランプにおいて低消費電力で高光束を得るために、例えば、蛍光体の輝度をより高くするための研究がなされているし、発光管を細管化することによって放電長さを確保する開発もなされている。このような研究開発に伴って、蛍光ランプやHIDの性能も高まっているが、近年、これらの性能に対する要請が一層高まっており、その要求に応えるために、更に消費電力を低下させたり高光束を得ることを可能とする技術が望まれている。
本発明は、このような背景のもとでなされたものであって、蛍光体ランプにおいて、その発光効率を向上させることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、内面が金属酸化物を主体とする保護層で被覆され、当該保護層上に蛍光体層が被覆され、内部に水銀及び希ガスが封入された蛍光管と、当該蛍光管内に放電を生じさせる電極とを備える蛍光ランプにおいて、保護層を、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、タリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムから選択される元素の酸化物が当該保護層の母材となる金属酸化物に溶け込んだ粉末粒子を焼成して形成した。
保護層の厚みは、1μm以上30μm以下であることが望ましい。
蛍光体層の厚みは20μm未満であることが望ましい。
上記本発明の蛍光ランプによれば、蛍光管内における水銀蒸気中での放電に伴って発生するピーク波長254nmの励起紫外線が、保護層中の励起発光成分(Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Tl、Sn、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択される元素の酸化物)に照射されることによってより長波長の紫外線及び可視光が励起放射され、この紫外線により蛍光体層で2次的な可視光の励起放射がなされる。この作用によって、水銀の励起による紫外線が発光光束に利用される利用効率が向上される。そして、励起発光成分が含まれない従来品と比べて、発光光束を2%以上向上させることができる。ここで、励起発光成分が、保護層の母材となる金属酸化物に溶け込んでいるので、ガラス管や保護層の可視光透過率を高く維持する上で好ましい。
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の一実施形態に係るコンパクト形蛍光ランプの外観を示す図である。この蛍光ランプは、蛍光管10が口金20に固着されて構成されており、当該蛍光管10は、内面側が蛍光体層12で被覆された6本の直管状のガラス管(ガラスバルブ)10で形成されている。
この蛍光管10において、6本のガラス管11は、隣り合うものどうしが端部でブリッジ接合されることによって、内部に1本の放電空間が形成されるように連結され、当該放電空間内にアルゴンなどの希ガスと水銀とが封入されている。また、蛍光管10において、この放電空間の両端部に電極(不図示)が取り付けられている。
口金20内には、蛍光管10を点灯させるための点灯回路(不図示)が設けられている。図2は、蛍光管10を輪切りにした断面図である。ガラス管11は、ソーダガラスで形成されているが、ソーダガラスの組成中には、波長254nmの紫外線により励起して紫外並びに可視域に発光する成分(励起発光成分)が含まれている。
この励起発光成分としては、4A,5A,6A族に属する元素の酸化物、3B,4B,5B族に属する元素の酸化物、及びランタノイドに属する元素の酸化物が挙げられる。上記「4A,5A,6A族に属する元素」の具体例としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)が挙げられる。
上記「3B,4B,5B族に属する元素」の具体例としては、タリウム(Tl)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)が挙げられる。上記「ランタノイドに属する元素」の具体例としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が挙げられる。
このようなガラス管11は、通常のソーダガラス材料を溶解する前に、上記元素の酸化物の粉末を添加し、この混合物を溶解,成形することによって作製できる。蛍光体層12は、3波長域発光形蛍光体が、ガラス管11の内面に塗着されて形成された層である。
なお、ガラス管11の厚みや蛍光体層12の厚みの好ましい範囲については、後で説明する。
(作用・効果について)図3は、上記蛍光ランプの発光メカニズムを説明する図である。本実施形態の蛍光ランプにおいて、発光光束が生じる主なメカニズムは、従来の蛍光ランプと同様である。即ち、点灯回路によって蛍光管10の電極に電圧が印加されると、蛍光管10内部の放電空間で放電が生じ、その放電に伴って、蛍光管10の内部では、水銀および希ガスが励起されて紫外線UV1(主波長254nm)が発生する。そして、発生した紫外線UV1が蛍光体層12に照射されると、蛍光体が励起されて可視光V1(波長400nm程度以上)が発生する。この可視光V1がガラス管11を透過して外部に放射され、蛍光管10の主な発光光束となる。
本実施形態の蛍光ランプにおいては、この主な発光光束に加えて、以下のように2次的な発光光束(可視光V2及び可視光V3)も生じる。蛍光管10内で発生した紫外線UV1の一部は、蛍光体層12を透過してガラス管11に照射されるが、ガラス管11には上記励起発光成分が含まれているため、この励起発光成分が、上記紫外線UV1で励起されることによって、ガラス管11から近紫外線UV2(波長は254nmより大きい)並びに可視光V2が放射される。
更に、ガラス管11から放射された近紫外線UV2の一部は、蛍光体層12に照射され、蛍光体層12の蛍光体がこの近紫外線UV2によって励起されて可視光V3が放射される。なお、上記励起発光成分は、可視光を吸収する作用もほとんどなく、ガラス管11の材料であるガラスに均一に溶け込んでいるので、可視光の透過を妨げることがない。従って、可視光V1,V2,V3は、ガラス管11をほとんど減衰することなく透過して、蛍光ランプの発光光束を形成する。
このように、本実施形態の蛍光ランプにおいては、主要な発光光束(可視光V1)だけではなく、ガラス管11に含まれる励起発光成分に起因する2次的な発光光束(可視光V2,V3)も生じるので、その分、発光効率が向上することになる。また、ガラス管11では、励起発光成分がソーダガラス中に溶け込んでいるため、石英ガラスなどに溶け込んでいる場合と比べて、254nm付近の波長の紫外光を高効率で長波長の紫外線あるいは可視光に変換する作用を奏する。
ガラス管11に含まれる励起発光成分の濃度は、低すぎると励起発光量が少なく、高すぎると励起発光成分の自己吸収によって紫外線が吸収されてしまうので、発光効率を高くするのに適した範囲内で設定するのが好ましい。励起発光成分の好ましい濃度範囲は、励起発光成分の種類によって多少異なり、「4A,5A,6A族に属する元素」の酸化物の場合、並びに「ランタノイドに属する元素」の酸化物の場合は、0.01wt%以上,10wt%以下の範囲が好ましく、「3B,4B,5B族に属する元素」の酸化物の場合は、0.01wt%以上,0.5wt%以下の範囲内に設定することが好ましい。
後述する実験結果でも示されるように、ガラス管11に励起発光成分を適量含有させることによって、全発光光束(可視光V1,V2,V3を合せたもの)に対する2次的な発光光束(可視光V2,V3)の割合を2%以上とすることができる。ところで、上で列挙した各元素の酸化物は、固有の発光スペクトルを持ち、入手しやすさなどの条件も異なる。
例えば、ランタノイドに属する元素の酸化物の発光スペクトルは、比較的シャープな発光ピークを数多く有しており、その発光ピーク位置も紫外域から可視域まで幅広く分布している。一方、3B,4B,5B族に属する元素の酸化物の発光スペクトルは、300〜400nmの範囲にわたってブロードな発光ピークを有している。その中でも酸化タリウムは発光強度が強い。
従って、蛍光管のガラス組成を設定する際には、それらの条件を考慮して、上記元素の酸化物の中から適当な元素酸化物1種または2種以上選択して、励起発光成分として用いればよい。このように、励起発光成分として上記の多種材料から選択できることは、蛍光管におけるガラス組成を設計する上で自由度が大きく有利である。
また、上で励起発光成分として列挙した元素の酸化物の中で、発光効率の向上という点から見ると、ランタノイドに属する元素の酸化物、特に、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)は有望である。その理由として、これら元素の酸化物は、その発光スペクトルが、蛍光ランプに一般に使用される蛍光体を効率よく励起するのに適していることが挙げられる。
即ち、蛍光体ランプの蛍光体層に紫外線を照射するとき、照射する紫外線の波長によって可視光への変換効率は異なる。ここで、これらの元素の酸化物における発光スペクトルは、一般的な蛍光体ランプ用の蛍光体に対して、紫外線変換効率の良好な波長範囲260〜400nmにおける発光量が多い。また、これらの元素の酸化物の発光スペクトルは、人の目の比視感度(Sensibility of the human eye)が高い波長領域(550nm付近)における発光量が比較的多いことも、高発光効率が得られる理由として挙げられる。
〔実験1〕
Figure 2006054204
表1に示す試料No.1は比較例にかかるコンパクト形蛍光ランプであり、試料No.2〜6は実施例にかかるコンパクト形蛍光ランプである。これらの蛍光ランプは、いずれも全長145mm、ガラス管径12.5mm、定格電圧32Wである。
実施例にかかる蛍光ランプにおいて、ガラス管11の基本材料はソーダガラスであって、その組成は、SiO2が68wt%、Al23が1.5wt%、Na2Oが5wt%、K2Oが7wt%、MgOが5wt%、CaOが4.5wt%、SrOが5wt%、BaOが6wt%、Li2Oが1wt%である。そして、このソーダガラスに、励起発光成分としてTlO(酸化タリウム)が添加されている。ここで、ガラス管11におけるTlO濃度は、表1に示す各値(0.001wt%、0.01wt%、0.1wt%、0.3wt%、0.5wt%)になるように設定されている。
また、蛍光体層12は、色温度5000Kの3波長発光形蛍光体で形成されている。一方、比較例にかかる蛍光ランプは、ガラス管にTlOを添加していない点を除いて上記実施例の蛍光ランプと同様の構成である。このような実施例及び比較例にかかる各蛍光ランプについて、初期光束値、並びに光束維持率を測定した。
測定方法:初期光束値(100h,lm)は、蛍光ランプを、寿命試験を100時間行った時点で光束を測定した値である。光束維持率は、寿命試験(45分点灯した後15分消灯するというサイクルを繰り返す。)を4000時間行った時点で光束を測定し、上記初期光束値に対する比率で当該測定値を表したものである。
測定結果及び考察:各測定結果は、表1に示されている。表1に示されている各初期光束値を比較して見ると、TlOが0.001wt%しか含まれていない試料No.2では、TlOが含まれていない試料No.1と差が見られないが、TlOが0.01wt%〜0.5wt%含まれている試料No.3〜No.6では、試料No.1と比べて初期光束値が2%以上高い。一方、光束維持率については、試料No.1〜No.6の間においてほとんど差が見られない。
これより、ガラス管に適量の励起発光成分を含ませることによって、発光光束維持を低下させることなく初期発光光束を2%以上向上させることができること、並びに、ガラス管におけるTlOの含有量は、0.01wt%以上とするのが好ましいことがわかる。
〔実験2〕
上記実施例にかかる試料No.5に用いたTlO含有量0.3wt%のソーダガラスと、比較例にかかる試料No.1に用いたソーダガラスついて、以下のようにして、254nmの紫外光を照射したときの発光スペクトルを測定した。
測定方法:各ソーダガラスについて、厚さ2mm、一辺の長さ20mmの試験片を作製し、図4に示すように、この試験片31に対して、254nmの励起光32を入射放射強度0.4mW/cm2となるように照射しながら、試験片31からの発光スペクトルを瞬時分光器33によって測定した。
測定結果及び考察
図5は、この測定結果であって、図中、記号◇は試料No.1について、記号□は試料No.5についての測定結果を示している。図5の測定結果において、TlOを含有していない試料No.1では、254nmより長波長の領域ではほとんど発光を示さないのに対して、TlOを0.3wt%含有した試料No.5は、波長315nm付近をピークとして波長450nm付近の可視光域に到るまで幅広い波長で発光することが認められる。
この結果から、上記図3で説明したように、TlOを含むガラスに、波長254nmをピークとする紫外線UV1を照射することによって、紫外線励起光UV2及び可視域励起光V2が発生することが裏付けられる。なお、上記実験1,2においては、励起発光成分としてTlOを添加した場合について調べたが、上で列挙した各元素の酸化物を添加した場合についても調べたところ、上記実験1,2と同様の結果が得られた。
また、これら各元素の最適濃度範囲について調べたところ、「4A,5A,6A族に属する元素」の酸化物の場合、並びに「ランタノイドに属する元素」の酸化物の場合は、0.01〜10wt%、「3B,4B,5B族に属する元素」の酸化物の場合は、0.01〜0.5wt%の範囲が適当であった。
〔実験3〕
ガラス厚みについての実験と考察励起発光成分(TlO)を0.3wt%含有するソーダガラス板について、ガラス板の肉厚によって、可視光の透過率がどのように変わるかを調べた。
図6はその結果を示す特性図である。当図より、ガラス板の肉厚が小さいほど透過率が高いことがわかる。また、TlOを0.3wt%含有するガラス材料からなるガラス管において、ガラス管の径は一定値(12.5mm)に固定したまま肉厚を変化させて相対発光強度がどのように変わるかも調べた。
図7は、その結果に基づいて作成した特性図であって、図中、○はガラス管の肉厚を1mm,2mm及び3mmに設定したときの相対発光強度実測値であり、曲線は、この実測値に基づいて推測されるガラス管の肉厚と相対発光強度との関係を示すものである。当図より、ガラス管の厚みが比較的小さい範囲(1.5mm以下の範囲)では、厚みが小さいほど相対発光強度が高いことがわかる。
このように、励起発光成分が含有されたガラス管では、厚みを小さく設定すると透過率及び相対発光強度が高くなることを考慮すると、本実施形態における蛍光ランプでは、ガラス管11の肉厚を小さく設定する方が相対発光強度を高めるのに有利であると考えられる。従って、従来から一般的な蛍光ランプにおいては、肉厚が0.62mmより大きいガラス管が発光管に用いられているが、本実施形態の蛍光ランプでは、発光強度を高める上で、ガラス管11の肉厚を0.62mm以下に設定するのが有利であるということが言える。
〔実験4〕
蛍光体層の厚みについての実験と考察励起発光成分(TlO)を0.3wt%含有するガラスを用いた蛍光ランプ並びに発光成分を含有しない従来の一般的なソーダガラスを用いた蛍光ランプについて、蛍光体層の厚みを0〜40μmの範囲内で様々な値に設定して相対発光強度を測定した。
図8は、その結果を示すものであって、蛍光体層の厚みと相対発光強度との関係を示す特性図である。この図8において、相対発光強度が最高となる蛍光体層の厚みを比べると、一般的なソーダガラスを用いた場合においては蛍光体層が20μm以上のところで相対発光強度が最高となるのに対して、TlOを含有するソーダガラスを用いた場合においては、蛍光体層が20μm未満のところで相対発光強度が最高になることがわかる。
この結果から、一般的な蛍光ランプでは、発光強度を高める上で蛍光体層の厚みを20μm以上とするのが有利であるのに対して、本実施形態の蛍光ランプでは、発光強度を高める上で蛍光体層の厚みを20μm未満とするのが有利であるということが言える。
〔実施の形態2〕
図9は、本実施形態にかかる蛍光ランプの発光管の断面図である。
本実施形態の蛍光ランプは、上記実施形態1の蛍光ランプと同様であるが、蛍光管10の代りに蛍光管40が用いられている。この蛍光管40は、蛍光体層42とガラス管41との間に保護層43が介在されている。この保護層43は、酸
化亜鉛ZnO、酸化チタンTiO2、酸化珪素SiO2、酸化アルミニウムAl23から選択された金属酸化物を母材とし、励起発光成分が、母材中に溶解した状態で含有された材料からなる透明な層である。励起発光成分の具体例としては、上記実施の形態1で挙げた元素(Ti、Zr…)の酸化物から選択されたものであって、特に、ランタノイドに属する元素の酸化物、中でもガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)の酸化物は有望である。
蛍光体層42については、実施の形態1の蛍光体層12と同様のものである。また、ガラス管41には励起発光成分が含有されていないものとする。保護層43は、以下の方法によって形成することができる。保護層43の母材となる金属酸化物の粉末原料に、励起発光成分の粉末原料を添加して溶融し粉砕することによって複合酸化物の粉末を作製し、この粉末を、分散剤と共に、水或は有機溶媒(イソプロピルアルコール)といった溶媒に加え、これに分散させることによって塗布液を作製する。そして、この塗布液を、ガラス管41の内面に噴霧法などの方法を用いて塗布し、乾燥・焼成することによって保護層43を形成することができる。
このようにして励起発光成分が母材中に溶解されることによって、母材の金属酸化物(ZnO、TiO2、SiO2、Al23)と励起発光成分の金属酸化物とは複合酸化物を形成することになる。なお、混合粉末をガラス管41の内面に塗装する方法としては、上記のような湿式法の他に、静電塗装法、或は金属アルコキシドを有機溶媒に溶解した液を用いるゾルゲル法を用いることも考えられる。
上記のように励起発光成分が含有された保護層43を備えることによって、以下のように、保護層43中の母材による光束維持率を高める効果と、励起発光成分による発光効率向上効果と両方得ることができる。保護層43中の母材は、ガラス中から拡散してくるナトリウムを蛍光体層12へ透過させにくいので、蛍光体層12で水銀がガラス中のナトリウムと反応して黒化するのを抑制すると共に蛍光体の劣化を抑制することにより光束維持率を高める効果を奏する。一方、励起発光成分は発光効率向上効果を奏する。この発光効率向上効果は、上記実施の形態1と同様、254nm紫外線による蛍光体層42での可視光励起放射に基づく発光光束だけではなく、保護層43に含まれている励起発光成分に起因する発光光束が生じ、その分、発光効率が向上するという効果である。
即ち、蛍光管40内で放電に伴って発生した紫外線の一部は、蛍光体層42を透過して保護層43に照射され、この保護層43に含まれる励起発光成分が励起される。これによって、保護層43から近紫外線並びに可視光が励起放射され、更に、保護層43から放射された近紫外線の一部は、蛍光体層42に照射され、蛍光体層42は、この近紫外線によって可視光を励起放射する。
また、保護層43において、励起発光成分は母材中に溶解しているので、保護層43の可視光透過性が励起発光成分によって損なわることもない。なお、上記の励起発光成分による近紫外線並びに可視光が励起放射される作用は、上記のように励起発光成分が母材中に溶解して複合酸化物を形成しているため得られるのであって、母材の金属酸化物及び励起発光成分の金属酸化物が単に粒子のまま混合されているだけでは、このような作用は得られないものと考えられる。
保護層43における励起発光成分の含有量として適当な範囲は、上記実施の形態1で示したのと同様であって、「4A,5A,6A族に属する元素」の酸化物の場合、並びに「ランタノイドに属する元素」の酸化物の場合は、0.01〜10wt%、「3B,4B,5B族に属する元素」の酸化物の場合は、0.01〜0.5wt%の範囲が適当である。
保護層43の厚みとしては1〜30μmが適当である。なお、ここではガラス管41に励起発光成分は含有されていないこととしたが、変形例として、保護層43とガラス管41の両方に励起発光成分を含有させてもよい。また、TiO2のような材料は、水銀の透過防止作用と励起発光作用の両方を奏するので、これを単独で用いれば本実施形態と同様の効果を奏するとも考えられるが、単独成分では励起発光が自己吸収により極端に小さくなることに加えて、保護層の材料として極く限られた種類の材料しか使えず、保護層の製法も限られてしまう。これに対して、本実施の形態のように、母材と励起発光成分とを組み合わせて用いれば、励起発光の自己吸収を小さく抑えることができると共に、母材として選択できる材料の種類と励起発光成分として選択できる材料の種類との組み合わせが数多く存在するので、保護層の組成を設計する際に、材料の選択幅が広くなると共に保護層の製法もいろいろと選択できる点で有利である。
母材の種類と励起発光成分の種類との組み合わせについては、母材として、酸化珪素或は酸化アルミニウムを用い、これに、励起発光成分として、酸化ガドリニウム及び酸化テルビウムの一方または両方を組み合わせて用いることが好ましいと思われる。
〔参考例〕
本参考例では、High intensity discharge lamp(HID)に適用する場合について、蛍光水銀ランプ、メタルハライドランプ及び高圧ナトリウムランプを例にとって説明する。
図10は、蛍光水銀ランプの一例を示す図である。この蛍光水銀ランプは、高圧水銀ランプの1種であって、当図に示すように、発光管51、口金52、外管53などから構成されている。発光管51は、透明石英ガラスで形成され、両端に電極54を備え、内部に水銀とアルゴンガスが封入されている。
外管53は、発光管51を取り囲むように設けられたガラス管55の内面に、蛍光体層56が被着されて構成されている。そして、発光管51では、高圧(100〜1000kPa)の水銀蒸気中で放電することによって可視光を放射するが、これに加えて発光管51では紫外光も放射され、外管53の蛍光体層56がこの紫外光を受けて可視光を励起放射するようになっている。ここで、外管53のガラス管55は、上記実施の形態1で挙げたのと同様の励起発光成分(Ti、Zr…元素の酸化物)を溶け込ませたほうけい酸ガラスで形成されている。
これによって、当該外管53は、実施の形態1の図3で説明した蛍光管10と同様の作用効果を奏する。即ち、発光管51からの紫外光の一部が、蛍光体層56を透過してガラス管55に照射されるが、ガラス管55に含まれている励起発光成分が、この紫外線によって励起されて、長波長の紫外線及び可視光を放射する。そして、ガラス管55から放射された紫外線が蛍光体層56に照射されると可視光が励起放射される。
本参考例の蛍光水銀ランプは、このような作用によって、ガラス管に励起発光成分が添加されていない場合に比べると優れた発光効率を得ることができる。また、本実施形態では、励起発光成分を石英からなる発光管51ではなくガラスからなる外管53にガラスに含有させているが、この点も発光効率向上に寄与する。即ち、ガラスに励起発光成分を含有させると、石英ガラスに含有させる場合と比べて、水銀の励起紫外光(ピーク波長254nm)を、比較的高効率で長波長の紫外線あるいは可視光に変換することができる。更に、ほうけい酸ガラスには、酸化アルミニウムや酸化ホウ素などの成分が含まれているが、これらの成分はガラス中で励起発光成分の周囲を取り囲んで孤立化させることにより、励起発光の自己吸収を抑制する働きもある。
なお、ここでは、外管53に蛍光体層56が設けられた蛍光水銀ランプについて説明したが、外管に蛍光体層が設けられていない高圧水銀ランプにおいても、外管のガラスに上記と同様の励起発光成分(Ti、Zr…元素の酸化物)を溶け込ませることによって、発光効率をある程度向上させることができる。即ち、外管に蛍光体層が設けられていない場合でも、外管励起発光成分が、発光管からの紫外線によって励起されて可視光を放射するという作用効果があり、ガラス管に励起発光成分が添加されていない場合に比べると優れた発光効率を得ることができる。
次に、メタルハライドランプ及び高圧ナトリウムランプについて、図11を参照しながら説明する。図11(a)は、メタルハライドランプの一例を示す図である。このメタルハライドランプは、透明石英ガラスからなる発光管61、口金62、外管63などから構成されている点は上記蛍光水銀ランプと同様であるが、発光管61内には、発光物質としてのハロゲン化金属(例えば、スカンジウム(Sc)及びナトリウム(Na)のハロゲン化物)の他に、始動用として希ガス及び電気特性と最適温度のアーク放電を維持するための緩衝ガスとして水銀が封入されており、外管63には蛍光体層は設けられていない。
ここで、この外管63は、上記と同様の励起発光成分(Ti、Zr…元素の酸化物)が溶け込んだほうけい酸ガラスで形成されている。このようなメタルハライドランプにおいて、基本的には、発光管61内で放電するのに伴って、ハロゲン化金属が金属原子とハロゲン原子に解離し、金属原子が可視光を励起放射することによって発光光束が得られる。
但し、発光管61においては放電に伴って紫外光も放射されるので、外管63に含まれている励起発光成分が、この紫外線によって可視光を励起放射する。従って、この作用によって、励起発光成分が添加されていない場合と比べると全発光光束が増す。即ち、優れた発光効率が得られる。図11(b)は、高圧ナトリウムランプの一例を示す図である。
この高圧ナトリウムランプは、発光管71、口金72、外管73などから構成されている。そして、外観は上記蛍光水銀ランプに似ているが、発光管71には多結晶アルミナセラミックス管が用いられ、発光管71内には、発光物質としてのナトリウムとともに、始動ガスとしてのキセノンガスと緩衝ガスとしての水銀が封入されており、外管73には蛍光体層は設けられていない。
ここで、上記外管73は、上記と同様の励起発光成分(Ti、Zr…元素の酸化物)が溶け込んだソーダガラスで形成されている。このような高圧ナトリウムランプにおいて、基本的に、発光管71内でナトリウム蒸気中で放電するのに伴って可視光が励起放射されて発光光束が得られる。但し、発光管71からは紫外光も若干放射されるので、外管73に含まれている励起発光成分が、この紫外線によって励起されて可視光を励起放射する。この作用によって、励起発光成分が添加されていない場合と比べると全発光光束が増し、優れた発光効率を得ることができる。
本発明にかかる蛍光ランプは、直管形や環形の蛍光ランプ、あるいは電球形やコンパクト形の蛍光ランプなどに利用できる。
実施の形態に係るコンパクト形蛍光ランプの外観を示す図である。 上記蛍光ランプの蛍光管を輪切りにした断面図である。 上記蛍光ランプの発光メカニズムを説明する図である。 実験2における発光スペクトルの測定方法を示す図である。 実験2の測定結果である発光スペクトルを示す図である。 実験3の結果であってガラス板肉厚と可視光透過率との関係を示す特性図である。 実験3の結果であってガラス管の肉厚と相対発光強度との関係を示す特性図である。 実験4の結果であって、蛍光ランプにおける蛍光体層の厚みと相対発光強度との関係を示す特性図である。 実施の形態2にかかる蛍光ランプの発光管の断面図である。 参考例にかかる蛍光水銀ランプを示す図である。 参考例にかかるメタルハライドランプ及び高圧ナトリウムランプを示す図である。
符号の説明
10 蛍光管
11 ガラス管
12 蛍光体層
40 蛍光管
41 ガラス管
42 蛍光体層
43 保護層

Claims (4)

  1. 内面が金属酸化物を主体とする保護層で被覆され、当該保護層上に蛍光体層が被覆され、内部に水銀及び希ガスが封入された蛍光管と、当該蛍光管内に放電を生じさせる電極とを備える蛍光ランプにおいて、
    前記保護層は、
    チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、タリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムから選択される元素の酸化物が当該保護層の母材となる金属酸化物に溶け込んだ粉末粒子が焼成されてなることを特徴とする蛍光ランプ。
  2. 前記母材となる金属酸化物は、
    酸化亜鉛、酸化珪素、酸化アルミニウムから選択されることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。
  3. 前記保護層の厚みが、
    1μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の蛍光ランプ。
  4. 前記蛍光体層の厚みが20μm未満であることを特徴とする請求項1または2記載の蛍光ランプ。
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