本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、増水の程度に応じた多段の積重ねが可能で段数に係らず安定に固定され易い管状可撓膜製膨張堤体の固定装置(堤構造体の支持ないし構築装置)及び該固定装置を用いた管状可撓膜製膨張堤構造体の敷設方法(構築方法)を提供することにある。
なお、この明細書において、「堤」とは、湖沼や池や川などの水が溢れないように構築されるものをいう。従って、水路などを横断するように水をせき止めることによりその上を水が溢れて流れる「堰」とは原則的には異なる。但し、上記の特許文献1のように「堰」と称されつつ実体が「堤」であるものを含む。また、本発明により構築される堤構造体は、基本的には、多少の越流が生じる条件下においても、堤として機能するものであり、多少の越流を許容するという意味では、堰としても機能する。なお、堤体ないし包堤構造体は、典型的には、事前に所望の箇所に構築されて、河川や湖沼の堤防の高さを高めるために用いられるだけでなく、豪雨や洪水の際の水を誘導する臨時の道水路や迂回水路の側壁や架設擁壁の構築にも用いられ得、都市部の建物や地下街等への水の侵入等を防ぐためにも用いられ得る。
また、この明細書において、水側とは、「堤体」が堤防として働く河川や湖沼や海などの水のある側を指し、陸側とは、水側の反対側を指す。
本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置は、前記目的を達成すべく、管状可撓膜製膨張堤体の基本固定具と該膨張堤体の増設用固定具と該膨張堤体の固定用ベルトとを備え、複数の管状可撓膜製膨張堤体を複数段に積重ね固定するための管状可撓膜製膨張堤体固定装置であって、基本固定具が、管状可撓膜製膨張堤体の固定用ベルトの取付部を水側の端部に備え管状可撓膜製膨張堤体の底部を支える基本底壁部と、該基本底壁部のうち陸側の端部において該基本底壁部から上方に立上がり、立上り端部にベルト取付部を備えた側壁部と、基本側壁部の陸側において該基本側壁部の下部に形成された上向きの連結用係合部とを有し、増設用固定具が、上向きの連結用係合部に係合可能な下向きの連結用被係合部を水側の端部に備え、管状可撓膜製膨張堤体の底部を支える増設底壁部と、該増設底壁部のうち陸側の端部において該増設底壁部から上方に立上がり、該立上り端部にベルト取付部を備えた増設側壁部と、増設側壁部の陸側において該増設側壁部の下部に形成され、前記連結用係合部と同一形状を有する上向きの連結用係合部とを有し、固定用ベルトが、その被取付部を両端部に備えると共に、長手方向の中間部に、別の固定用ベルトのためのベルト取付部を有する。
本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、「基本固定具が、管状可撓膜製膨張堤体の固定用ベルトの取付部を水側の端部に備え管状可撓膜製膨張堤体の底部を支える基本底壁部と、該基本底壁部のうち陸側の端部において該基本底壁部から上方に立上がり、立上り端部にベルト取付部を備えた側壁部と、基本側壁部の陸側において該基本側壁部の下部に形成された上向きの連結用係合部とを有する」ので、管状可撓膜製堤体が水側端部と基本側壁部との間において基本固定具の基本底壁部を横断するように該基本底壁部上に載置されることにより、管状可撓膜製堤体が基本固定具で支えられる。また、基本固定具の基本底壁部には、管状可撓膜製堤体の重量の一部が荷重としてかかるので、基本底壁部が土手等の堤防部分等の上に安定に位置決めされ易い。水位が比較的上がった場合には、基本底壁部のうち堤体よりも水側に突出した水側端部で水圧を受けることにより基本底壁部が安定化される。更に、本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、「基本固定具が、管状可撓膜製膨張堤体の固定用ベルトの取付部を基本底壁部の水側の端部に備え、該基本底壁部のうち陸側の端部において該基本底壁部から上方に立上がった側壁部の立上り端部にベルト取付部を備え」且つ「固定用ベルトが、その被取付部を両端部に備える」ので、水側端部と基本側壁部との間に基本底壁部上に載置された管状可撓膜製堤体を跨ぐように固定用ベルトを掛け渡し、該ベルトの両端部を側壁部のベルト取付部と基本底壁部の水側端部のベルト取付部に取付けることにより、管状可撓膜製堤体を基本固定具に固定し得る。ここで、環状可撓膜製堤体は、その外周の大半の部分が基本固定具の基本底壁部及び基本側壁部並びにベルトに接触して支持されるので、該堤体に転動が生じる虞れも少ない。また、水位に応じた水圧を受けて安定化された基本底壁部を備えた基本固定具が堤体を保持することにより堤体を安定化させ得る。従って、本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、基本固定具を確実に固定するだけで、管状可撓膜製膨張堤体を固定し得、また、水圧で安定化され易い底壁部を備えた基本固定具により堤体を保持するので、基本固定具の固定が最小限であっても、堤体の固定が行われ易い。なお、基本固定具は、典型的には、堤体の長手方向に間隔をおいて地上に配設され、典型的には、アンカー杭やアンカーボルト等で地上に固定されれる。
更に、本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、「増設用固定具が、上向きの連結用係合部に係合可能な下向きの連結用被係合部を増設用底壁部の水側の端部に備える」ので、増設用固定具をその水側端部が基本固定具の基本側壁部の下部(連結用係合部のある部分)に載るように増設用固定具を基本固定具に対して載置するだけで、増設用固定具を基本固定具の陸側において基本固定具に連結し得る。ここで、基本側壁部の下部は、典型的には、基本底壁部の陸側端部であるけれども、基本側壁部の下部のうち基本底壁部よりも少し上に位置する部分であってもよい。また、本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、「増設用固定具が、基本固定具の連結用係合部と同一形状を有する上向きの連結用係合部を増設側壁部の陸側において該増設側壁部の下部に備える」ので、別の増設用固定具をその水側端部が既設の増設用固定具の増設側壁部の下部(連結用係合部のある部分)に載るように該別の増設用固定具を既設の増設用固定具に対して載置するだけで、別の増設用固定具を既設の増設用固定具の陸側において該既設の増設用固定具に連結し得る。その結果、所望の数だけ、増設用固定具を順次陸側に増設し得、これにより所望の段数だけ堤体を積重ねることが可能になる。この場合にも、既設の増設用側壁部の下部は、典型的には、該既設の増設用底壁部の陸側端部であるけれども、該既設の増設用側壁部の下部のうち既設の増設用固定具の増設用底壁部よりも少し上に位置する部分であってもよい。
固定具間のジョイントとして働く係合部について、上向きとは、係合部に対して下向きに被係合部を移動させることにより該被係合部を係合部に対して係合させ得るような形状ないし構造であることをいい、典型的には、係合部が上向きに突出した突起からなり、被係合部は該突起が嵌合可能な孔からなるけれども、具体的な形状や構造は所望に応じて選択され得る。特に、例えば、係合部を構成する突起をアンカー杭の軸部が挿通可能な挿入・支持孔(貫通孔)を備えた筒状体の形態の中空突起で形成することにより、係合部及び被係合部の係合部分にアンカー杭が挿入されて打込み可能になっていてもよい。その場合、連結と同時に土手等への強固な固定を行い得る。
なお、基本固定具の基本底壁部には、典型的には、アンカー杭の打込みができない場合(地面が例えばコンクリート等からなる場合)に、ドリル等で穿設した穴にねじ込まれるべきアンカーボルトの挿入・支持孔が形成され、アンカー杭の代わりにアンカーボルトで基本固定具の底壁部などが固定されてもよい。所望ならば、アンカー杭の挿入・支持孔とアンカーボルトの挿入・支持孔とは、併用されてもよい。その場合、アンカー杭の挿入・支持孔は、アンカーボルトの挿入・支持孔であるともみなしてもよい。
更に、本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、「増設用固定具が、管状可撓膜製膨張堤体の底部を支える増設底壁部と、該増設底壁部のうち陸側の端部において該増設底壁部から上方に立上がり、該立上り端部にベルト取付部を備えた増設側壁部とを有する」ので、管状可撓膜製堤体が水側端部の被係合部で連結された基本固定具又は既設の増設用固定具の側壁部の陸側面と該増設用固定具の増設側壁部との間において、増設用固定具の増設底壁部を横断するように該増設底壁部上に載置されることにより、別の管状可撓膜製堤体が増設用固定具で支えられる。すなわち、増設用固定具を一台陸側に連結配置する毎に、該増設用固定具上に別の管状可撓膜製膨張堤体を載置して、堤構造体を構築し得る。このとき、該増設用固定具の増設底壁部には、管状可撓膜製堤体の重量の一部が荷重としてかかるので、増設底壁部が土手等の堤防部分等の上に安定に位置決めされ易い。しかも、この増設底壁部上に載置された管状可撓膜製膨張堤体は、被係合部と係合部との連結を介して、水側に位置する固定具(基本固定具又は水側に位置する別の増設用固定具)を押えるので、水側の固定具を安定化させ易い。更に、「増設用固定具が増設側壁部の立上り端部にベルト取付部を備える」ので、既設の固定具(基本固定具又は既設の増設用固定具)の側壁部の立上り端部にあるベルト取付部と該増設用固定具の立上り端部のベルト取付け部との間に、前記別の管状可撓膜製堤体を跨いで固定用ベルトを掛け渡すことにより、増設用固定具毎に、該別の管状可撓膜製堤体を該固定具に強固に取付けることが可能になる。ここで、環状可撓膜製堤体は、その外周の大半の部分が増設用固定具の増設底壁部、増設側壁部及び既設の側壁部並びにベルトに接触して支持されるので、該堤体に転動が生じる虞れも少ない。従って、この場合にも、増設用固定具を固定するだけで、管状可撓膜製堤体を確実に固定し得、安定で且つ自立した堤構造体を構築し得る。
なお、基本固定具や増設用固定具の側壁部のベルト取付け部に関して、立上り端部とは、典型的には、側壁部の上端近傍であるけれども、上端よりも下方に位置する部分であってもよい。
更に、本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、「固定用ベルトが、その被取付部を両端部に備えるだけでなく、長手方向の中間部に、別の固定用ベルトのためのベルト取付部を有する」ので、隣接して並設された二本の管状可撓膜製膨張堤体の中間部で且つ該二本の膨張堤体の上に、上段の可撓膜製膨張堤体を載置すると共に、該上段の膨張堤体のまわりにかけたベルトの両端部を下段にある二本の膨張堤体のうちの水側に位置する膨張堤体用の固定ベルトのベルト取付部に取付けることによって上段の膨張堤体を容易且つ確実に固定して、堤構造体を構築し得る。
以上のように、本発明の環状可撓膜製膨張堤構造体固定装置では、該構造体を構成する個々の環状可撓膜製膨張堤体が夫々別々に固定されるので、所望高さに応じた堤構造体の構築が容易且つ確実に行われ得るだけでなく、堤構造体の安定性が高められ得る。また、基本固定具及び増設用固定具が堤体を強固に保持し得ることから、堤体の長手方向における基本固定具の配設間隔を比較的長くして、堤体の固定に要する基本固定具等の数を最低限に抑え得る。
ベルトの中間位置は、典型的には、後述のように、下段の膨張堤体と該下段の膨張堤体の両側においてその上に位置する上段の二本の膨張堤体とにより形成される間隙内に位置するように選択され、これによって、膨張堤体を一つづつ固定しているにもかかわらず、載置安定性を高めると共に漏水の虞れを最低限に抑え得る。
なお、複数のバンドが重なることによる漏水の虞れがある場合には、奇数段目と偶数段目とで、管状可撓膜製膨張堤体の長手方向に関するベルトの位置をずらすようにしてもよい。その場合、例えば、奇数段目または偶数段目のうちのいずれか一方では、二本のベルト素体を幅方向に間隔をおいて配置し、奇数段目または偶数段目のうちの他方では、該二本のベルト素体の間において延在するベルトを用いるようにしてもよい。なお、水に直接接触する各段の最も水側の堤体の固定用ベルトについて、この条件が満たされればよく、より陸側に位置するものについては、このような考慮はしなくてもよい。但し、安全のためには、最も水側に位置する堤体よりも陸側に位置する堤体に対しても、同様な条件が満たされるようにしておくことにより、万一の場合でも、水漏れの虞れを最低限に抑え得る。
本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、複数個の堤体をバンド等で束ねて固定するのではなくて、個々の堤体を該堤体の位置に応じて個別に固定すると共に、一段目にあっては固定具相互の連結を確保することにより、二段目以上については固定用バンドの取付けを水漏れなく確実に行い得るようにすることにより、堤構造体を安定に固定するものであり、それによって、堤構造体の支持の安定性が高められるだけでなく、対処されるべき水の水位の程度や変動に応じて、堤構造体の段数を容易且つ確実に短時間のうちに変更することを可能にしている。例えば、出水の虞れがある場合、一段だけでもよいから緊急に堤構造体を構築する必要がある反面、水位が大きく上がる場合には、二段でも足りなくなる虞れがあることから、本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、必要に応じて、一段の構築でも、二段の積重ねでも、また三段以上の積重ねでも短い設置・構築時間のうちに実現し得るようにしている。
なお、以上において、管状可撓膜製膨張堤体を固定する基本及び増設用固定具並びに固定用ベルトは、管状可撓膜製膨張堤体の長手方向に間隔をおいて複数組または多数組、配置される。
また、基本固定具や増設用固定具の底壁部の厚みに起因して、該底壁部を横断して延びる管状可撓膜製膨張堤体の下縁に、該底壁部の横断縁部のところで水漏れの原因になる隙間が生じる虞れがある場合には、底壁部をウレタンやゴムの如き弾力性のある材料層で被覆しても、底壁部の下側又は上側の一方又は両方に、同様な弾性材よりなるマットを敷いてもよい。そのマットは、固定具のところだけにあっても、管状可撓膜製膨張堤体の全長にわたって延びていてもよい。後者の場合、該マット自体が、水圧による膨張堤体の位置ズレを防ぐ役割をする。
本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、二段目以上に積重ねられる管状可撓膜製膨張堤体の段数と同一又はそれ以上の数だけ、増設用固定具を、順次陸側に連結・配設してなる。
従って、本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、水側の水位の上昇又はその見込みに応じて、段数を一段増加させる必要が生じる毎に、増設用固定具の数すなわち水側から陸側に並設される列数を増やし、該増設列に応じて段数を増加させることができる。なお、増設用固定具の数を最小限にする場合には、二段目以上に積重ねられる管状可撓膜製膨張堤体の段数と同一でよいけれども、事前に、多段に積重ねる準備をしておきたい場合には、該段数より多い数の増設用固定具を事前に並設しておいてもよい。
本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、管状可撓膜製膨張堤体を多段に積重ねる際、上段に位置する膨張堤体が下段に位置する一対の膨張堤体の中間に載置され、該上段の膨張堤体が、下段の一対の膨張堤体のうち水側に位置する膨張堤体を固定する固定用ベルトの中間部のベルト取付部に両端の被取付部で取り付けられるベルトによって、固定される。この場合、各堤体が夫々別々にベルトで保持されるので、堤体が水圧などで転動したり回転し始めるおそれが少なく、水位が上がっても段数を増やすだけで高い堤防が構築され得る。
本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、管状可撓膜製膨張堤体が三段以上の高さに積重ねられる場合、前記下段の水側の膨張堤体を固定する固定用ベルトの中間のベルト取付部が、前記上段の膨張堤体と、該膨張堤体の水側において該膨張堤体に隣接し該膨張堤体と同じ段に位置する膨張堤体と、前記下段の水側の膨張堤体とにより形成される間隙内に位置する。
この場合、個々の堤体がベルトで保持されるにもかかわらず、該ベルトの保持に要するベルト取付部のところの隙間が活用されて堤体の載置安定性が損なわれることなく且つ水漏れの虞れが低減され得るから、多段の積重ねが容易且つ効果的に行われ得る。
本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、基本固定具の基本底壁部が水側端部にアンカー杭の挿通・支持孔を備え、該挿通・支持孔にアンカー杭が挿通されて基本底壁部のうち該孔の周囲の部分で支持される。
すなわち、本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置が載置される土手等が土やアスファルトなどでできていて、アンカー杭の打込みが可能な場合、基本固定具自体をアンカー杭で土手等に直接固定することにより、管状可撓膜製膨張堤構造体の固定がより確実に行われ得る。また、この基本固定具では、アンカー杭が基本底壁部の水側端部に打設されるので、水圧によって基本固定具に働く転動モーメントに対して、基本底壁部の横断方向長さ(堤体の横断方向ないし直径方向の基本底壁部の長さ)分の腕の長さでアンカー杭が基本固定具を支えるから、基本固定具が安定に支持され得る。アンカー杭の向きは抜け難いように適宜選択される。なお、本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、土手や堤防等がコンクリートや岩等で出来ていてアンカー杭の打ち込みが出来ない場合でも、基本固定具の基本底壁部等が地面に広範囲に接触することにより、摩擦の確保を確実にし、比較的確実に堤構造体の固定を確保し易い。
なお、本発明の本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置は、典型的には、基本固定具の基本底壁部が水側端部にアンカー杭の挿通・支持孔に加えて、アンカーボルトの挿通・支持孔を備え、アンカー杭の打込みができないコンクリートの如き硬い地面に対しては、ドリル等で穿設した穴にアンカーボルトがねじ込まれて固定される。なお、例えば、都市部の建物又は地下街や地下鉄の入口付近のような場所では、予めアンカーボルトのねじ込用のねじ穴を所定の場所に予め形成しておいて、該ねじ穴にアンカーボルトを螺着するようにしてもよい。
本発明の管状可撓膜製膨張堤体固定装置では、また、前記連結用係合部及び前記連結用被係合部が係合状態にある際に、該係合部及び被係合部にアンカー杭の挿通が可能なアンカー杭挿通孔を前記係合部が備える。なお、孔は、アンカー杭の代わりにアンカーボルトの挿通を許容するものでも、併用可能なものでもよい。
基本固定具の基本底壁部に関する固定のためのアンカー杭やアンカーボルトの適用について、上述したことは、そのまま、増設用固定具の増設底壁部にもあてはまる。基本固定具の基本底壁部をアンカー杭やアンカーボルトで地面に固定すれば、増設用固定具の増設用底壁部を別途固定しなくてもよいけれども、所望ならば、更に、増設用固定具の増設用底壁部をアンカー杭やアンカーボルトで別途地面に固定してもよい。勿論、基本固定具とこれに隣接する増設用固定具とはその重なり部で同時に共通のアンカー杭やアンカーボルトで地面に固定されてもよく、同様に、隣接する二つの増設用固定具はその重なり部で同時に共通のアンカー杭やアンカーボルトで地面に固定されてもよい。
なお、基本固定具に増設用固定具が連結されているだけでも、全体の摩擦などにより、地面に対する固定の効果は増す。また、所望ならば、すべての基本固定具や全ての増設用固定具をアンカー杭やアンカーボルトで地面に固定する代わりに、一部の基本固定具や全ての増設用固定具をアンカー杭やアンカーボルトで地面に固定するようにしてもよい。
本発明による管状可撓膜製膨張堤構造体の敷設方法は、前記目的を達成すべく、水側端部にベルト取付部を備え陸側端部に連結用係合部を備えた基本底壁部及び該底壁部の陸側端部近傍において該底壁部から立設され立設端部にベルト取付部を備えた基本側壁部を有する基本固定具と両端に被取付部を備え中間部に別のベルトの取付部を備えた固定用ベルトとによって第一段目で第一列目の管状可撓膜製膨張堤を固定し、水側端部に連結用被係合部を備え陸側端部に前記連結用係合部と同一形状の連結用係合部を備えた増設底壁部及び該底壁部の陸側端部近傍において該底壁部から立設され立設端部にベルト取付部を備えた増設側壁部を有する増設用固定具について、その水側の連結用被係合部を該固定具よりも水側に位置する固定具の陸側の係合部に係合させて増設用固定具を水側の固定具に連結すると共に、両端に被取付部を備え中間部に別のベルトの取付部を備えた固定用ベルトによって第二列目以降の第一段目の管状可撓膜製膨張堤を固定し、管状可撓膜製膨張堤体を多段に積重ねる際、下段に位置する一対の膨張堤体の中間に上段に位置する膨張堤体を載置し、下段の一対の膨張堤体のうち水側に位置する膨張堤体の固定用ベルトの中間部のベルト取付部にベルトの両端の被取付部を取付けて、該上段の膨張堤体を固定することからなる。
図1から図5示した本発明による好ましい一実施例の管状可撓膜製膨張堤体固定装置ないしホースバインダ1は、管状可撓膜製膨張堤体2の基本固定具3と、該膨張堤体2の増設用固定具4と、該膨張堤体2の固定用ベルト5とを有し、複数の管状可撓膜製膨張堤体2を以下に説明するように夫々固定しつつ図2に示したように複数段に積重ねて堤構造体10を構築することを可能にするものである。
以下では、説明の簡明化のために、鉛直方向上向きをZ方向、陸側から水側への水平方向の向きをX方向とし、環状可撓膜製膨張堤体2が延在すべき方向をY方向とするXYZ直交座標系(右手系)を採る。
管状可撓膜製膨張堤体2は、図1において想像線で示したように、円筒11の形態を採る可撓膜製のホースないしチューブ12であって、チューブ12の内部に水が充填されると膨らんで円筒11の形態を採り、チューブ12の内部から水が排出されると、消防のホースのように萎んで折畳み可能である。可撓膜は例えばポリエステル製の外層とウレタン製の内層との二層構造からなるけれども、他の任意の材料からなっていてもよい。この管状可撓膜製膨張堤体2としては、特許文献1において開示されている「可搬式膨張堰」がそのまま用いられ得る。従って、可撓膜製膨張堤体2は、例えば、直径が20cm〜50cm程度(典型的には25cm程度)で長さが20m〜100m程度の円筒体であり得、図8の(a)に示したように、長手方向の一端に給水口13を備え、長手方向の他端に排水口14及び空気抜き孔(図示せず)を備える。直径や長さはより大きくてもより小さくてもよい。給水口13や排水口14や空気抜き孔(図示せず)には、弁(図示せず)が配置され得る。給水口13や空気抜き孔(図示せず)の弁は一方向弁であり得る。また、可撓膜製膨張堤体2は、長手方向の端部連結部15,16において、一列に連結され得、この連結に際しては、水平に延びた状態の既設チューブ12の端部連結部15に対して、水平に配設した状態の別のチューブ12の端部連結部16が連結・係合されるべく、一列になる位置まで上方から押下げられる。なお、各チューブ12は、別のチューブ12に連結された状態でも、該チューブ12に対して独立に給排水し得るように、給水口13や排水口14は、好ましくは、分岐して端部連結部15,16の側壁(周壁)にも開口する。
基本固定具3は、図3及び図1に示したように、長方形の平板状の基本底壁部21と、該基本底壁部21から直角に立上った基本側壁部22とを有する。23は側壁部22の補強板部であり、補強板部23は、溶接により基本底壁部21及び側壁部22に固定されている。基本固定具3は、例えば、亜鉛又はクロムなどでメッキされて防錆処理を施された鋼板等からなるけれども、機械的強度を備えていれば他のどのような材料でできていてもよい。底壁部21や側壁部22は、典型的には、図示の通り平板状であるけれども、所望ならば、底壁部21の上面が平面状の代わりに堤体2を受容する部分円筒面状部分を有していたり、側壁部22が−Z方向に底壁部21に近接する程厚くなっている等、所望に応じて、平板状とは異なる形状を有していてもよい。側壁部22が大きな機械的強度で底壁部21に連結されている場合には、補強板部23はなくてもよく、例えば、補強板部23が側壁部22の一体的な一部分をなしていてもよい。また、側壁部22の水側(+Xの側)に補強板部23を設ける代わりに又は設けると共に、側壁部22の陸側(−Xの側)に補強板部を設けてもよい。その場合、後述の増設用固定具4の接続用端部46の載置を許容するように、両方に相互に嵌り合う相補的形状の突部や切欠部を適宜形成しておく。
基本底壁部21は、水側に位置するX方向端部すなわち水側端部24に、一対の突起部25a,25aと該突起部25a,25aの孔25b,25bに両端が挿入されたピン25cとからなるベルト取付部25を有すると共に、アンカー杭又はアンカーボルト差込支持用孔形成部26を有する。孔形成部26は、この例では、堤体2の延在方向(Y方向)の中央部に位置する大径孔26aと該延在方向の両端部に位置する一対の小径孔26b,26bとを有する。大径孔26aは、例えば、アンカー杭92(図2参照)を挿設するためのアンカー杭挿入・支持孔であり、小径孔26bは、例えば、アンカーボルト(図示せず)を挿設するためのアンカーボルト挿入・支持孔である。ベルト取付部25のピン25cは、突起部25a,25aに予め固定されていても、該突起部25a,25aに対して回転可能且つ離脱不能に該突起部25a,25aに装着されていてもよい。
基本底壁部21は、更に、陸側ないし土手側に位置する−X方向端部すなわち陸側端部27に、上向きに立上った円筒28aの形態の係合部ないしジョイント突起部28と、孔部29とを有する。係合部28の円筒ないし中空突起部28a内には、太いアンカー杭の本体部(軸部)が挿入可能であり、係合部28自体がアンカー杭差込・支持用孔形成部として働き得る。孔部29は、アンカーボルト(図示せず)を挿設するための一対の小径のアンカーボルト挿入・支持孔部29a,29aからなる。係合部としての中空突起部28は、後述の増設用固定具4が上側から載置され孔部47において該係合部28に嵌合されて該増設用固定具4と基本固定具3との安定な連結を可能にする限り、その形状や構造は図示のものとは異なっていてもよい。また、係合部28は、一箇所だけに設けられる代わりに、複数箇所に形成されてもよい。また、係合部28は、側壁部22の下部に位置し、被係合部が上方から係合される限り、底壁部21の陸側端部27に形成される代わりに、例えば、側壁部22の陸側の下縁近傍を−X方向に厚くして該厚みのある下縁近傍部分に上向きに形成されてもよい。
側壁部22は、土手側端部27又はその近傍(端部27のうちの水側部分とみなし得る部分)で且つ係合部28よりも水側において、基本底壁部21から上方に立上っており、その立上り端部31に、ベルト取付部32を有する。ベルト取付部32は、側壁部22の上部に形成される限り、端部31の端縁からある程度離れていてもよい。この例では、ベルト取付部32は、側壁部22の上端近傍に形成された開口部33と、開口部33の上縁の壁部を規定するロッド状部34とからなる。ベルト取付部32の形状や構造は、後述のベルト5の被取付部64,65の形状や構造に応じて、該被取付部64,65の取付を可能にする限り、その形状や構造は図示のものとは異なっていてもよい。
以上において、基本固定具3の側壁部22とベルト取付部25との間のX方向の間隔は、堤体2のチューブ12の円筒11の直径と同程度であり、側壁部22のZ方向の高さは、チューブ12の円筒11の半径よりも大きく直径よりも少し小さい(例えば、直径の2/3〜3/4程度)である。また、補強板部23は、図2からわかるように、堤体2の配設を実際上妨げない範囲にあればよく、堤体2の外周に丁度接するような位置でもよい。一方、底壁部21や側壁部22のY方向の長さは、この例では、側壁部22の高さよりも少し短く、チューブ12の円筒11の半径と同程度であるけれども、水圧等の外力を受けた状態での載置安定性や機械的強度や重量を考慮して適宜選択され得る。図示の例では、底壁部21と側壁部22とは同程度の厚さであるけれども、一方が他方より厚くてもよく、また、その全体が一様な厚さである代わりに、応力が集中しやすい部分の厚みを厚くしておいてもよい。
増設用固定具4は、典型的には基本固定具3と同一の材料からなり、図4及び図1に示したように、長方形でほぼ平板状の増設底壁部41と、該増設底壁部41から直角に立上った増設側壁部42とを有する。43は側壁部42の補強板部であり、補強板部43は、溶接により増設底壁部41及び側壁部42に固定されている。
増設底壁部41は、平板状の底壁本体部44と、該底壁本体部44の水側の端部において基本底壁部21の厚さ分だけ斜めに立ち上がった傾斜底壁部45と、傾斜底壁部45の立上り端部から本体部44に平行に延びた平板状の増設接続部46とを有する。増設接続部46のX方向の長さは、基本固定具3の基本底壁部21の陸側端部27のうち側壁部22よりも陸側ないし土手側の部分27aのX方向の長さと実質的に等しい。但し、より短くてもよい。
増設底壁部41の水側端部に位置する増設接続部46には、基本底壁部21の円筒状係合部28が係合可能な被係合部としての円形孔47と、孔部48とを有する。孔部48は、孔部29a,29aと同一径の一対の小径のアンカーボルト挿入・支持孔部48a,48aからなり、増設接続部46の円形孔47が基本底壁部21の円筒状係合部28に嵌合された際に、丁度孔部29a,29aと一列に並ぶ位置にある。従って、コンクリート等の硬い地面の場合でも、該地面にドリル等で穿設しておくこと等により、孔部29a,48a及び孔部29b,48aに、アンカーボルト(図示せず)が挿設可能である。
増設底壁部41は、更に、陸側ないし土手側に位置する−X方向端部すなわち陸側端部49に、上向きに立上った円筒51aの形態の係合部ないしジョイント突起部51と、孔部52とを有する。端部49のうち側壁部42よりも陸側の部分49aの形状及びサイズは、基本底壁部21の陸側端部27の部分27aの形状及びサイズと同一であり、増設底壁部41の端部49の係合部51は基本底壁部21の係合部28の外周と同一形状、増設底壁部41の孔部52は基本底壁部21の孔部29と同一形状である。従って、係合部51の円筒ないし中空突起部51a内には、太いアンカー杭の軸部が挿入可能であり、係合部51自体がアンカー杭差込・支持用孔形成部として働き得る。また、孔部52は、一対の小径のアンカーボルト挿入・支持孔部52a,52aからなる。
係合部51についても係合部28と同様に各種変形が可能である。例えば、係合部としての中空突起部51は、別の増設用固定具4が上側から載置され孔部47において該係合部51に嵌合されて当該増設用固定具4と前記別の増設用固定具4との安定な連結を可能にする限り、その形状や構造は図示のものとは異なっていてもよい。また、係合部51は、一箇所だけに設けられる代わりに、複数箇所に形成されてもよい。更に、係合部51は、側壁部42の下部に位置し、被係合部が上方から係合される限り、底壁部41の陸側端部49に形成される代わりに、例えば、側壁部42の陸側の下縁近傍を−X方向に厚くして該厚みのある下縁近傍部分に上向きに形成されてもよい。
なお、増設用固定具4,4同士の連結部の構造や形状を増設用固定具4と基本固定具3との連結部の構造や形状と異ならせてもよいけれども、部品の種類を最低限にするためには、連結部の構造や形状を同一にすることになる。
側壁部42は、基本固定具3の側壁部22と実質的に同一形状及びサイズである。すなわち、側壁部42は、土手側端部49又はその近傍(端部49のうちの水側部分とみなし得る部分)で且つ係合部51よりも水側において、増設底壁部41から上方に立上っており、その立上り端部55に、ベルト取付部56を有する。ベルト取付部56は、側壁部42の上部に形成される限り、端部55の端縁からある程度離れていてもよい。この例では、ベルト取付部56は、側壁部42の上端近傍に形成された開口部57と、開口部57の上側壁部を規定するロッド状部58とからなる。ベルト取付部56の形状や構造は、後述のベルト5の被取付部64,65の形状や構造に応じて、該被取付部64,65の取付を可能にする限り、その形状や構造は図示のものとは異なっていてもよい。
従って、増設接続部46の被係合孔47が基本固定具3の端部27の部分27aにある係合部ないし連結円筒部28に係合されるように増設用固定具4の増設底壁部41を基本固定具3の基本底壁部21に重ねると、増設用固定具4が基本固定具3に対して位置決め連結される。
同様に、別の増設用固定具4の増設接続部46の被係合孔47が水側において位置決めされて既に配置された増設用固定具4の陸側端部49の部分49aにある係合部ないし連結円筒部51に係合されるように該別の増設用固定具4の増設底壁部41を水側に配置済みの増設用固定具4の増設底壁部41に重ねると、該別の増設用固定具4が配設済みの増設用固定具4に対して位置決め連結される。従って、必要に応じて、同様な手順で、増設用固定具4を二つ以上順次陸側に(−X方向に)増設配置することが可能である。
以上においては、側壁部22や42の水側に、補強板部23や43を設けた例について説明したけれども、側壁部22や42が水圧に起因する−X方向の横向きを力を支え得る限り、補強板部23や43はなくてもよく、また、係合部28や51と被係合部47との係合を可能にする限り、側壁部22や42の陸側(土手側)に補強板部23や43が形成されていてもよい。後者の場合、補強板部23や43に係合部28や51が形成されてもよく、被係合部47を含む増設接続部46は、チューブ12の長手方向Yの一部(被係合部47を含む領域)において水側に突出していてもよい。
底壁部41の本体部44や側壁部42は、典型的には、図示の通り平板状であるけれども、所望ならば、底壁部本体部44の上面が平面上の代わりに堤体2を受容する部分円筒面状部分を有していたり、側壁部42が−Z方向に底壁部41に近接する程厚くなっている等、所望に応じて、平板状とは異なる形状を有していてもよい。側壁部42が大きな機械的強度で底壁部41に連結されている場合には、例えば、補強板部43が側壁部42の一体的な一部分をなしていてもよい。
以上において、増設用固定具4の側壁部42と増設接続部46の端縁46aとの間のX方向の間隔は、堤体2のチューブ12の円筒11の直径と同程度であり、側壁部42のZ方向の高さは、チューブ12の円筒11の半径よりも大きく直径よりも少し小さい(例えば、直径の2/3〜3/4程度)である。また、補強板部43は、図2からわかるように、堤体2の配設を実際上妨げない範囲にあればよく、堤体2の外周に丁度接するような位置でもよい。一方、底壁部41や側壁部42のY方向の長さは、この例では、側壁部42の高さよりも少し短くチューブ12の円筒11の半径と同程度であるけれども、水圧等の外力を受けた状態での載置安定性や機械的強度や重量を考慮して適宜選択され得る。図示の例では、底壁部41と側壁部42とは同程度の厚さであるけれども、一方が他方より厚くてもよく、また、その全体が一様な厚さである代わりに、応力が集中しやすい部分の厚みを厚くしておいてもよい。
管状可撓膜製膨張堤体2の固定用ベルト5は、図5の(a)に示したように、帯状体の形態のベルト本体61と、ベルト本体61の両端部62,63の夫々に形成された被取付部64,65と、ベルト本体61の中間部66に形成されたベルト取付部67とを有する。ベルト本体61等は、自動車のシートベルトのように機械的強度が高く且つ耐水性が高いものであればどのような可撓性素材でできていてもよく、例えば、エンジニアリングプラスチックの繊維を帯状に織ったもの等が用いられる。
ベルト本体61としては、例えば、図2からわかるように、一段目の水側端部において基本固定具3に固定されて支持される管状可撓膜製膨張堤体2すなわち2Aを固定する中程度の長さのベルト本体61Aと、一段目において増設用固定具4の増設底壁部41に載置され隣接側壁部42,22間又は42,42間で固定されて支持される管状可撓膜製膨張堤体2すなわち2B1や2C1等を固定する最短長さのベルト本体61Bと、二段目以上に載置される管状可撓膜製膨張堤体2すなわち2B2や2C2等を取巻くように配置され、下段に位置する別のベルト本体61の中間のベルト取付部67に固定される最長長さのベルト本体61Cとの三種類のベルト本体61A,61B,61Cがある。従って、ベルト5にも、三種類のベルト本体61A,61B,61Cの夫々を備えたベルト5A,5B,5Cがある。
ベルト取付部67は、図2や図6からわかるように、管状可撓膜製膨張堤体2が順次積重ねられる場合に、断面が円形の三個の隣接する管状可撓膜製膨張堤体2,2,2の間に形成される間隙Gのところに該ベルト取付部67が位置するように、ベルト本体61に対して取付けられている。従って、ベルト取付部67の長手方向位置は、ベルト本体61A,61B,61Cの種類に応じて異なる。
ベルト取付部67は、開口68を備えた取付枠体69と該取付枠体69をベルト本体61に取付ける可撓性の保持ベルト部71とを含む。取付枠体69の構造や形状は、ベルト被取付部64,65の構造や形状に応じた任意のものであり得る。保持ベルト部71の構造や形状もベルト取付部67を間隙G内に位置決めし得、所望の強度などを備える限りどのようなものでもよい。
ベルト被取付部64及び65は、一つのベルト取付部に一対のベルト被取付部64,65が取付けられ得るようにベルト本体61の幅方向(Y方向)の間隔が異なる点を除いて、同様な形状を有する。ベルト被取付部64は、例えば、基板部72と、基板部72の両端に基端で溶接・固定されたフック状の被係合部73,73と、基板部72をベルト本体61の端部に取付ける保持ベルト部74とを有する。ベルト被取付部65は、例えば、基板部72よりも幅方向(Y方向)長さの長い基板部75と、基板部75の両端に基端で溶接・固定されたフック状の被係合部76,76と、基板部75をベルト本体61の端部に取付ける保持ベルト部77とを有する。なお、この例では、保持ベルト部74,77は、ベルト本体61の両端部分自体からなる。
ここで、広幅のベルト被取付部65のフック状被係合部76,76の外縁部間の長さは、基本固定具3のベルト取付部25の突起部25a,25a間のY方向の間隔や、側壁部22のベルト取付部32の開口部33のY方向の長さや、増設用固定具4のベルト取付部56の開口部57のY方向の長さや、ベルト5の中間部66のベルト取付部67の開口部68のY方向の長さよりも少し小さい。一方、狭幅のベルト取付部64のフック状被係合部73,73の外縁部間のY方向の長さは、広幅のベルト被取付部65のフック状被係合部76,76の内縁部間のY方向の間隔よりも少し小さい。
ベルト5の端部の被取付部64や65は、例えば、図1や図7や図6に示したように、基本固定具3の側壁部22のベルト取付部32やベルト5の中間部66のベルト取付部67に同時に取付られ得る。但し、所望ならば、ベルト取付部32や67等が、個々のベルト被取付部64や65と係合される取付部分を個別に備えていてもよい。
次に、以上の如き構成を有する管状可撓膜製膨張堤体固定装置1を用いた管状可撓膜製膨張堤構造体10の構築ないし敷設について、河川等の土手の堤防を構築することを想定して、図1〜図8に基づいて、説明する。
構築に際しては、図1や図8の(b)に示したように、まず、土手6のうち管状可撓膜製膨張堤体2を配設すべき部分にマット91を敷く。このマット91は、土手6の表面すなわち地表面7と基本固定具3の底壁部21の下面21d及び管状可撓膜製膨張堤体2の底面構成部分17との間を、水密にシールするためのものであり、例えば、前記特開2003−176525号公報に開示されているものと同様に、ウレタンやゴム材のような弾性材からなり得る。従って、マット91は、典型的には、基本固定具3のX方向長さと同程度の幅と可撓膜製膨張堤体2の長さ(例えば、数10m〜100m程度)に一致するY方向長さとを備えた細長い長方形状である。但し、所望ならば、幅は、可撓膜製膨張堤体2の直径と同程度又はそれより短くてもよい。なお、土手表面7と固定装置1や管状可撓膜製膨張堤2の下面との間における水漏れが実際上無視し得る場合には、このマット91は、不要である。
次に、図8の(b)に示したように、マット91上において、Y方向に所望間隔(例えば、約5m程度、但し例えば2〜3m程度のようにより短くても、場合によっては10m程度又はそれ以上のようにより長くてもよい)で、基本固定具3を配置する。各基本固定具3は、図1や図2に示したように、端部24が水側(例えば、河川や湖沼の側)に、側壁22のある端部27が陸側に位置し、側壁22がマット91の長手方向Yに平行になるように配置される。基本固定具3は、典型的には、マット91の両端近傍に一つづつ配置されると共にその中間において上記間隔で配置されるけれども、所望ならば、マット91の両端近傍から離れたところだけに配置されても、マット91の端部位置とは無関係にほぼ等間隔に配置されてもよい。
なお、土手6が土やアスファルト等のようにアンカー杭の打込みが可能である場合には、所望ならば、孔26aにアンカー杭92(例えば、図2参照)を打込んで、基本固定具3を土手6に固定する。場合によっては、複数の基本固定具3のうち、一部の基本固定具3のみをアンカー杭92で固定してもよい。
一方、土手6がコンクリートや岩盤の如く杭92の打込みに適さない場合には、典型的には、土手6の所定部位にドリルで穴を穿設しておいて、アンカーボルト挿入・支持孔26b,26bを介して該穴にアンカーボルト(図示せず)をねじ込んで、基本固定具3を固定する。
例えば、基本固定具3の底壁部21が、その下面21dに長手方向に延びる凸部を備え載置安定性を高め且つシールを確実にするゴム材等のシール補助層を備えているだけで、基本固定具3の土手6の表面7に対する固定やシールが確保されるような場合には、マット91はなくてもよい。
次に、所望ならば、図1に想像線で示したように、マット91と同様な別の小さいマット93を、各基本固定具3の底壁部21のうち補強板部23とベルト取付部25との間の堤体載置領域21fの上に敷く。このマット93は、基本固定具3の底壁部21のY方向の両端面21b,21c及び該端面近傍21b,21cのマット91の表面部分94と可撓性膨張堤体2の底部ないし下面の下縁部17との間の領域(隙間)から水漏れが生じるのを避けるために配置されるもので、この領域からの水漏れの虞れがない場合には、マット93は敷かなくてもよい。
なお、基本固定具3の底壁部21の両端面21b,21cの近傍からの水漏れを避けるためには、例えば、図9の(a)に示したように、基本固定具3の底壁部21をゴムの如く弾力性のある材料層21eで被覆し、(b)に示したように堤体2の重量による材料層21eの変形により間隙を実際上なくすようにしても、図9の(c)に示したように、底壁部21の上面21aを両端に近づくほど薄くなるように滑らかに面取りすることにより、端面21b,21cが面取り面になるようにしておいてもよい。
次に、マット91及び基本固定具3上(マット93を敷いた場合には更にマット93上)において、両端がマット91の両端に実際上一致するように、可撓性膨張堤体2が消防用のホースの如く細長く展開・載置され、更に、該膨張堤体2の一端の給水口13(図8の(a))から給水が行われて可撓膜製膨張堤体2に水が充填される。この充填により、可撓膜製膨張堤体2は、細長い円筒状体ないし円柱状体11の形態になる。なお、可撓膜製膨張堤体2の排水口14の近傍には、空気抜き孔があり、水の充填に伴い可撓膜内の残存空気が放出されて、水の内部への最大限の充填が行われる。このようにして、円柱状体11の形態に膨らんだ可撓膜製堤体2は、図1の想像線2Aや図2の符号2Aで示したように、基本固定具3の側壁22と取付具25との間において、基本固定具3の底壁部21を横断してY方向に延びる。
なお、長い堤を形成する場合には、マット91を長手方向につなぐように並べておくと共に、可撓膜製膨張堤体2を二本以上つないで該マット91上に配置し、可撓膜製膨張堤体2の全体に給水する点を除いて、上記と同様である。但し、所望ならば、一本の可撓膜製膨張堤体2を配置し水の充填を行った後、別の可撓膜製膨張堤体2をつないで、該繋いだ可撓膜製膨張堤体2に別途、給水して水の充填をしてもよい。
次に、固定用ベルト5を装着する。なお、ベルト5は、堤体2の展開・載置後で水の充填前に又は充填の途中で堤体2の円筒11が比較的軟らかいうちに、装着してもよい。
ベルト5は、図1に示したように、例えば、一端の狭幅の被取付部64の一対のフック部73,73で基本固定具3の側壁部22の上端のベルト取付部32の開口33に挿入されてロッド34に掛止めされ、他端の広幅の被取付部65の一対のフック部76,76で基本固定具3の底壁部21の水側端部のベルト取付部25のロッド25cに掛止めされる。なお、固定用ベルト5としては、緊張した掛止め状態において、可撓膜製膨張堤体2を基本固定具3に丁度強く固定する中程度の長さの本体部61Aを備えたもの5Aが用いられる。換言すれば、固定用ベルト5Aは、ベルト取付部32,25間に掛渡された際に、水が最大限充填された可撓膜製膨張堤体2Aを緊張状態で跨いで、基本固定具3の側壁部22及び底壁部21に、強く押付ける長さに丁度設定されている。この状態において、ベルト5Aの中間部にあるベルト取付部67は、図2に示したように、堤体2Aの頂部近傍に位置する。
このようにして、可撓膜製膨張堤体2を、該堤体2の長手方向Yに沿って間隔をおいて取付けられた各ベルト5Aにより夫々の基本固定具3に固定した状態では、可撓膜製膨張堤体2は、その自重により、底壁部21を土手6に押付けると共に、該堤体2の底縁17をその下にあるマット93(ある場合)や、底壁部21や、マット91に沿わせる。一方、マット91のように弾力性のある材料部分は、堤体2の下縁部の形状に沿うように変形される。従って、堤体2の下縁と土手6との間で水漏れが生じる虞れが少ない。なお、図9の(a)に示したように底壁部21が弾力性被覆層21eを含む場合には、堤体2は、図9の(b)に示したように弾力性被覆層21eを押潰して該堤体2の下縁に沿わせるので、堤体2と土手6との間から水漏れが生じる虞れが少なくなる。
このように、一本ないし一列の可撓膜製膨張堤体2が基本固定具3により固定された状態では、図2からわかるように、一段の可撓膜製膨張堤構造体10Aが形成されることになる。この一段の可撓膜製膨張堤構造体10Aでは、仮に、水側の水位が上がって、土手6の上面7を越えると、基本固定具3で支持された堤体2を含む堤構造体10Aが堤防として働き、水Lの溢出は堤体2Aによって防止される。例えば、図2において、想像線L1で示したように堤体2の高さの範囲内の水位L1にある場合、堤体2に働く下向きの力V(自重Gと浮力Bとの差)並びに水圧による力Dは、各基本固定具3の底壁部21及び基本固定具3のない部分のマット部91並びに基本固定具3の側壁部22によって支えられる。各基本固定具3の底壁部21は、おおまかには、堤体2に働く下向きの力Vのうち該基本固定具3の上及びその近傍にある堤体2Aの部分の長さ割合に応じた力V1を堤体2の関連部分から受ける。一方、基本固定具3の側壁部22は、堤体2のうち各基本固定具3が分担する長さ範囲に応じて該長さ範囲にかかる水Lの水圧による横方向−Xの力D1を堤体2の関連部分から受ける。
アンカー杭92やアンカーボルト(図示せず)が挿設されている場合には、各基本固定具3は、典型的には、主としてアンカー杭92やアンカーボルト(図示せず)によって支えられる。なお、堤体2は相当の長さを有することから、長手方向Yの任意の箇所におけるアンカー杭92の打込みができない場合でも、長手方向Yの所々でアンカー杭92の打込み可能な場所があれば、その場所に優先的に基本固定具3を配設してアンカー杭92で止めるようにしてもよい。アンカー杭92やアンカーボルト(図示せず)がない場合には、各基本固定具3は、大まかには、垂直抗力V1に応じた摩擦力及び端部27が受ける抗力で力V1,Dを支えると共に、ベルト5Aと協働して堤体2Aの回転等を規制する。(なお、後述のように、堤体2を二段以上に積重ねて一段目の堤体2Aの高さを越える水位L2等に達すると、堤体2Aと二段目の堤体2B2との接触部Sよりも水側の領域の全体の水圧を基本底壁部21で受けることになるから、基本固定具3及び堤体2Aの一体化物が底壁部21の面積分に応じた水圧で安定化されることになる。)従って、基本固定具3がなくて堤体2が単にベルト5Aと同様なベルトで止められている場合と比較して、堤体2の安定的な支持が基本固定具3によって与えられる。また、ベルト5Aと同様なベルトが土手6に打ち込まれたアンカー杭等で直接支持される場合と比較して、底壁部21及び側壁部22を備えた基本固定具3とベルト5A及び底壁部21の水側端部に挿設されるアンカー杭92やアンカーボルト(図示せず)との組合せにより、堤体2の支持がより安定化され易い。
一方、水位Lが堤体2の直径に近づくか直径を越える虞れがある場合、基本固定具3及びベルト5Aに加えて、増設用固定具4及びベルト5B,5Cを用いて図2において符号2B1及び2B2で示した堤体を更に配設・固定することにより、二段の管状可撓膜製堤構造体10Bを構築する。
そのためには、まず、二列目の堤体2B1を配設するためのマット91Bを、土手6のうちマット91の陸側(−X側)の表面7に並べて敷く。このマット91Bは、典型的には、マット91よりも幅が狭くマット91と同じ長さを有する。
次に、各基本固定具3毎に増設用固定具4を取付ける。この増設用固定具4の取付に際しては、増設用固定具4の下向きの被係合部としての被係合孔47を基本固定具3の上向き係合部としての円筒状突起部28に嵌込みつつ増設底壁部41の増設接続部46を基本固定具3の基本底壁部21の陸側端部27の部分27a上に載せる(図1及び図2等)。
なお、土手6にアンカー杭92の打込み可能性に応じてアンカー杭又はアンカーボルトを円筒状部28の孔又は孔48,29に挿設する。その場合、基本固定具3及び増設用固定具4が、陸方向にズレる虞れをより確実に防ぎ得る。なお、例えば、基本固定具3の水側端部24は土手6ののり面等を形成するコンクリートの延長部上に位置してアンカー杭92の打設が出来ない場合でも、基本固定具3の陸側ではアンカー杭92よる固定が可能なこともある。
次に、所望ならば、マット93と同様なマット93Bを各増設用固定具4の増設底壁部41上に載せる。なお、第一の可撓膜製膨張堤体2Aよりも陸側には通常は水は実際上侵入しないことから、このマット93Bはなくてもよい。
次に、基本固定具3に応じて間隔をおいて配置した増設用固定具4に沿って二列目の可撓膜製膨張堤体2B1を展開・配置し、該堤体2B1に水を充填して、円筒状の堤体を形成する。このようにして形成された堤体2B1は、水側において、基本固定具3の側壁22の外面(陸側面)に実際上当接する点を除いて、最初の堤体2Aと同様に支持される。より詳しくは、第二列目で最下段の堤体2B1は、下縁部が増設用固定具4の底壁41で支えられ、陸側の側部が増設用固定具4の側壁42で支えられる。可撓膜製膨張堤2B1が底壁41上に載ることによって、増設用固定具4の被係合孔47と基本固定具3との係合突起部28との係合連結を確実にすると共に可撓膜製膨張堤2B1が基本固定具3の側壁22を外側から支えることにより、側壁22の陸側へのE1方向への転倒ないし回動を確実に禁止する。また、当然ながら、堤体2A等の−X方向への位置ズレをもより確実に規制する。
次に、長さの短いベルト5Cの被取付部64,65を、堤体2B1を緊張状態で跨ぐように、増設用固定具4の側壁42のベルト取付部56及び基本固定具3のベルト取付部32に取付けて、ベルト5Cにより、可撓膜製膨張堤2B1の動きを規制する。この状態において、ベルト5Cの中間部にあるベルト取付部67は、図2からわかるように、堤体2B1の頂部近傍に位置する。ベルト5Cの取付けは、堤体2B1への水の充填の途中(最中)でもよい。
次に、各ベルト5Aのベルト取付部67に最大長のベルト5Bの一端62の被取付部64を引掛けた状態で、ベルト5Bの他端63側を陸側に位置する堤体2B1の上に載せておき、二段目の可撓膜製膨張堤体2B2を、第一列の堤体2A及び第二列の一段目の堤体2B1の中間部分に沿ってY方向に展開・配置し、更に、各ベルト5Bの他端63の被取付部65を二段目の堤体2B2の上から対応するベルト5Aのベルト取付部67に係合させる。中間の支持部71に向きがない場合には、二段目の堤体2B2の下側で被取付部65を取付けておいて二段目の堤体2B2の上側で被取付部64を取付けてもよい。
次に、二段目の堤体2B2に水を充填し該堤体2B2を膨張させて円筒状体11B2にする。これによって、図2からわかるように、二段目の堤体2B2は、ベルト5Cが丁度一巻きされた状態で、該ベルト5Cにより、且つベルト取付部67で支持される。この状態では、ベルト取付部67は、第一列の堤体2Aの頂部近傍で該頂部よりも若干水側のところに位置する。この位置は、典型的には、ベルト5Cによる他の堤体の支持位置と実質的に同じ位置で、結束・支持されるべき堤体2B2と水側において該堤体2B2を支える一段目の堤体2Aとの接触部Sよりも水側に位置する。
なお、この状態において、下側のベルト5Aと上側のベルト5Cとが接触部S近傍で部分的に重なるけれども、本発明者が三段の積重体(後述の堤体構造体10C)について試験した範囲では、当該ベルト重合部の近傍からの水漏れは観察されなかった。
但し、所望ならば、水に接触する部分においてベルト5が重なるのを避けるべく、例えば、図5の(b)に示したようにベルト5の本体部61の幅よりも少し大きい間隔をおいて二本の若干細いベルト素体61w1,61w2を並設したベルト構造体5wを準備しておいて、水に接する虞れがある各段の一列目の堤体2A,2B2,2C3,・・・については、奇数段目の堤体2A,2C3,・・・は一本のベルト5すなわちベルト5A又は5Cで固定し、偶数段目の堤体2B2,・・・は二本の素体61w1,61w2を備えたベルト5w(但し、長さは夫々に応じたもの)を巻きつけて固定するようにしてもよい。勿論、逆でもよい。なお、二列目以降の陸側(−X側)に位置する堤体2は、本来、直接的には水Lに接触しないので、ベルト5の重なりを実際上無視し得る。但し、二列目以降も、奇数段目と偶数段目とでベルトを交互に用いることにより、安全のために、各列において、確実なシールを与え得るようにしておいてもよい。逆に、二列目以降では、万一水が浸入した場合には、容易に排水され易いように、ベルトが相互に重なるように配置してもよい。
このようにして、三本の堤体2A,2B1,2B2を、基本固定具3と増設用固定具4とベルト5A,5B,5Cとからなる固定装置1によって二段に積重ね固定してなる可撓膜製膨張堤構造体10Bでは、堤体2A,2B1及び2B2が夫々独立に、基本固定具3及びベルト5A,基本及び増設用固定具3,4及びベルト5C,並びにベルト5Bによって、保持される。従って、堤構造体10Bは水位Li(iは段数に対応する数)に応じて容易に高く構築され得るだけなく、例えば、水Lが水位L2に達しても、全体として二段の堤構造体からなる堤防として、水が溢れるのを防ぎ得る。
一方、三段の堤構造体10Cを構築する場合、図2に示したように、二列目の堤体2B1を支える増設用固定具4Bと同様な増設用固定具4Cを、該二列目の増設用固定具4Bの係合部51に被係合部47で係合させ、所望に応じてアンカー杭を円筒51の孔に打込み(又は、アンカーボルト(図示せず)を関連する孔48a,52aを介して地面の(アンカーボルトねじ込み用)穴にねじ込み)、二列目の堤体2B1と同様にして三列目の堤体2C1を増設用固定具4C上に配設し、堤体2B1と同様にしてベルト5Bで堤体2C1を側壁部42,42間において増設用固定具4Cの底壁部41上に固定し、更に、二段目の堤体2B2と同様にして二段目の堤体2C2をベルト5Cで二列目の堤体2B1の固定用ベルト5Bの中間の取付部67に固定し、更に、同様にして、三段目の堤体2C3を二段目の堤体2B2と同様にして、その下に位置し水側にある堤体2B2の固定用ベルト5Cの中間の取付部67に固定する。
ここで、二段目の堤体2C2を固定するベルト5Cの両端の被取付部64,65が取付けられるべき、堤体2B1の取付用ベルト5Bの中間の取付部67は、図2及び図6の拡大図からわかるように、丁度、三本の円筒状堤体2B1,2B2,2C2の間に形成されるほぼ三角形状の間隙G内に位置する。従って、該間隙Gを利用して、被取付部64,65がベルト取付部67に取付けられ得る。なお、この被取付部64,65の取付は、当然ながら、堤体2C2に水を充填する前で、堤体2C2が実際上折りたたまれた状態にあるときに行われ、その後で、堤体2C2への水の充填が行われる。ここで、ベルト取付部67が間隙G内に位置するので、ベルト取付部67の存在が上段の円筒状筒体2B2,2C2等の載置安定性を損なうことがないから、堤構造体10Cが安定に保たれ易いだけでなく、水漏れの虞れを最低限に抑えるのに役立つ。
ここで、全ての作業は、実際上、人が、構築中の堤構造体10A,10B,10C等よりも陸側にいる状態で、行われ得るので、水位の上昇に応じた高さの堤構造体10A,10B,10C等の構築が安全に且つ容易に行われ得る。
このようにして形成された三段の堤構造体10Cは、例えば、水位がL3に達しても、全体として三段分の高さの堤防として、水が溢れるのを防ぎ得る。
四段以上に積み重ねる場合には、以上に説明したのと全く同様な手順で行われ得ることは、明らかであろう。
なお、以上においては、安全のために、水Lの水位が堤構造体10A,10B,10C等の高さよりも低いうちに堤構造体を高く積上げることを説明したけれども、この堤構造体10A,10B,10C等の堤体の載置安定性が高いので、堤構造体10A,10B,10C等の越流によりその陸側における水位が水側の水位と同程度になるような異常な事態が生じない限り、堤構造体10A,10B,10C等を多少上回って多少の越流等が生じても、堤構造体10A,10B,10C等は、堤防として有効に機能し得る。
本発明者は、三段の堤体構造体10Cにおいて、越流が生じる水位になっても、構造体10Cが堤防として機能し得ることを、実験的に、確認・検証した。