JP2006045187A - 臓器不全治療剤 - Google Patents

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Takamasa Ozawa
高将 小澤
Osamu Sugiyama
理 杉山
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Abstract

【課題】 肝臓、腎臓、脳又は皮膚等の循環不全、臓器組織不全等の治療に適した臓器組織不全等の治療剤の提供。
【解決手段】 アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン等のアミノ酸及びこれらの薬理学的に許容できる塩、並びにキノン誘導体又はキノンを含有する急性又は慢性の臓器組織不全等の治療剤。剤型は、急性期には注射薬が良く、慢性期には散剤ないし水剤が良い。
【選択図】 なし

Description

本発明は、急性の循環不全による肝臓、腎臓、心臓、脳等の臓器不全の治療に適した治療剤、慢性の組織呼吸不全、細胞死による各臓器不全、痴呆又は皮膚潰瘍の進行防止に適した臓器組織不全、脳組織不全又は皮膚組織不全治療剤に関する。
高アンモニア血症の治療において、尿素サイクル賦活剤としてアルギニン塩酸塩を多量(〜20g)に点滴静脈注射する療法が行われているが、高クロール性アシドーシスになる
副作用のため、点滴中に血液pHを監視する必要がある。
また、アミノ酸を利用した先行技術としては、本発明者らによる非特許文献1があり、ヒト培養細胞を低酸素及び低栄養状態においたときに代謝系のスイッチが行われ、各種のアミノ酸が、それぞれ異なった効率で細胞の生存率を高める、即ち呼吸不全による細胞死から細胞を守ることを見出している。
しかし、血液循環不全、組織呼吸不全に起因する臓器不全、細胞死については、その機序に不明な点が多く、従って有効な原因療法はなく、非特許文献1に示されたアミノ酸の効果が療法の端緒といえよう。
最近、アルツハイマー病患者脳組織において、ベータアミロイド蛋白とアルコール脱水素酵素が結合し、細胞内ミトコンドリアに局在して呼吸を阻害し、細胞を窒息させ、死に至らしめることが報告された(非特許文献2)。
即ち、アルツハイマー型痴呆も血管障害型痴呆も組織呼吸不全による脳細胞死がその病因と考えられるに至った。
しかし、血液循環不全に起因する臓器不全については、有効な原因療法はないのが現状である。
J.Biol.Chem.Vol.277,32791−32798,2002 Science,Vol.304,448-452,2004
本発明は、血液循環不全、組織呼吸不全に起因する急性及び慢性の肝臓、腎臓、心臓、脳、皮膚等の組織不全、細胞死の進行防止に適した、臓器組織不全、脳組織不全又は皮膚組織不全治療剤の提供を課題とする。
本発明者らの未発表の知見として、低酸素及び低栄養状態におかれたヒト培養細胞中において、キノン(COQ)の増加が観察されている。これは、代謝の末端であるクエン酸サイクルの脱水素酵素によって基質から切り離された水素は、ミトコンドリア電子伝達系を介して酸素に渡され水を形成する、即ち細胞呼吸によって細胞生存のエネルギーが獲得される。しかし、臓器不全又は電子伝達系阻害によって呼吸が不可能な場合、代謝系がスイッチされ、水素はキノンを介してフマール酸に渡され、コハク酸、次いでプロピオン酸を形成する回路を働かせることによって、酸素なしで生存エネルギーを得ているものと考えられる。ミトコンドリア内のフマール酸、コハク酸濃度を高めるアミノ酸及び触媒のキノンは、呼吸不能な細胞の生存を助けると考えられる。
したがって、本発明者らは、非特許文献1及びこの未発表の知見に基づいて研究を重ねた結果、本発明を完成したものである。
本発明は、課題の解決手段として、
キノン誘導体若しくはキノン、又はアミノ酸及びこれらの薬理学的に許容できる塩、並びにキノン誘導体若しくはキノンを含有する急性及び慢性の臓器組織不全、脳組織不全又は皮膚組織不全治療剤(以下、臓器組織不全、脳組織不全又は皮膚組織不全治療剤を総称して「臓器組織不全等治療剤」という)を提供するものである。
本発明の急性及び慢性の臓器組織不全等治療剤は、血液循環不全、組織呼吸不全によって、低酸素及び低栄養状態に陥った細胞の代謝系スイッチを助け、細胞内エネルギー産生を保つことにより、臓器機能不全、細胞死や梗塞巣の拡大を防止して、臓器や皮膚の疾患を治療できる。本発明の急性及び慢性の臓器組織不全等治療剤は、急性期には注射薬として投与し、慢性期には錠剤、散剤ないし水剤として投与することで、より治療効果が高められる。
本発明の臓器組織不全等治療剤に含まれるアミノ酸は、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、セリン、システィン、ヒスチジン、トリプトファン、チロシン及びこれらの薬理学的に許容できる塩から選ばれる1種又は2種以上のものが好ましい。薬理学的に許容できる塩としては、塩酸、硫酸等の無機酸の塩、酢酸、フマル酸等の有機酸の塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩等を挙げることができる。
2種以上のアミノ酸を組み合わせて用いるときは、投与された組織細胞ミトコンドリア内のフマール酸、コハク酸濃度が高まるように代謝上の配慮をするとともに、アミノ酸が溶解した溶液の液性が中性になるようにすることが好ましく、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸を等モルずつ混合することがより好ましい。
本発明の臓器組織不全等治療剤に含まれるキノン誘導体又はキノンは、臓器不全等の症状に応じて含有させる成分である。例えば、脳虚血、脳梗塞に伴う虚血性ペナンブラの拡大、狭心症、心筋梗塞における細胞死、血行障害による褥瘡のような急性、亜急性症状の治療に用いるときは、キノン誘導体又はキノンを含有させ、慢性心不全、肝不全、腎不全、痴呆等の慢性疾患の治療に用いるときは、キノンを含有させる。
キノン誘導体は、下記一般式(I)又は(II):
Figure 2006045187
〔式中、Aは次式:
Figure 2006045187
又は
Figure 2006045187
で示される基であり、nは1〜9の整数である。〕
で表されるものが好ましい。
一般式(I)で表される化合物は特公平5−6533号公報に開示されているものであり、具体的には、次に挙げる前記公報の実施例1〜10に記載されたものを含めたものを用いることができる。その他、市販品である、CoQ10粉末(日清ファルマ社製又は鐘淵化学工業社製)を用いることもできる。
(キノン誘導体1)
5−(7−カルボキシ−3−メチル−2,6−オクタジエニル)−2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェノール
(キノン誘導体2)
5−(11−カルボキシ−3,7−ジメチル−2,6,10−ドデカトリエニル)−2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェノール
(キノン誘導体3)
5−(15−カルボキシ−3,7,11−トリメチル−2,6,10,14−ヘキサデカテトラエニル)−2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェノール
(キノン誘導体4)
5−(19−カルボキシ−3,7,11,15−テトラメチル−2,6,10,14,18−エイコサペンタエニル)−2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェノール
(キノン誘導体5)
5−(23−カルボキシ−3,7,11,15,19−ペンタメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエニル)−2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェノール
(キノン誘導体6)
6−(7−カルボキシ−3−メチル−2,6−オクタジエニル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン
(キノン誘導体7)
6−(11−カルボキシ−3,7−ジメチル−2,6,10−ドデカトリエニル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン
(キノン誘導体8)
6−(15−カルボキシ−3,7,11−トリメチル−2,6,10,14−ヘキサデカテトラエニル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン
(キノン誘導体9)
6−(19−カルボキシ−3,7,11,15−テトラメチル−2,6,10,14,18−エイコサペンタエニル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン
(キノン誘導体10)
6−(23−カルボキシ−3,7,11,15,19−ペンタメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエニル)−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン
(キノン誘導体11)
(2E,6E,10E,14E,18E,22E,26E,30E,34E,38E)-2-(3,7,11,15,19,23,27,31,35,39-デカメチルテトラコンタ-2,6,10,14,18,22,26,30,34,38-デカエン-1-イル)-5,6-ジメトキシ-3-メチル-1,4-ベンゾキノン
一般式(II)で表される化合物は、人体、微生物等において存在が報告されているものである(Lester,R.L. & Crane,F.L.:J.Biol.Chem.234,2169、1959)。
(キノン;ユビキノン10;コエンザイムQ10)
(2E,6E,10E,14E,18E,22E,26E,30E,34E,38E)-2-(3,7,11,15,19,23,27,31,35,39-Decamethyltetraconta-2,6,10,14,18,22,26,30,34,38-decaen-1-nyl)5,6-dimethoxy-3-methyl-1,4-benzoquinone
薬理学的に許容できる塩としては、塩酸、硫酸等の無機酸の塩、酢酸、フマル酸等の有機酸の塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩等を挙げることができる。
本発明の臓器組織不全等治療剤は、急性の臓器不全にあっては、生理食塩水又は5%ぶどう糖液に必要成分を溶解させ、注射薬(点滴注射薬も含む)の剤型にすることが好ましく、注射薬は、患者に投与する直前に調製することが好ましい。また、慢性の臓器不全にあっては、必要成分を散剤又は水剤として投与することが好ましい。
注射薬にするときは、注射薬100ml中に、アミノ酸を0.2〜4g含有させ、キノン誘導体又はキノンを0.5〜2mg含有させる。注射薬にしたときの投与量は1回200〜500mlであり、1日2〜4回投与する。
錠剤、水剤とするときは、一剤中にアミノ酸を0.2〜4g含有させ、キノン誘導体又はキノンを1〜20mg含有させる。散剤、水剤にしたときの投与量は1回1〜5錠を1日2〜4回投与する。
本発明の臓器組織不全等治療剤は、特に血液の循環不全による脳、肝臓、腎臓又は心臓の臓器組織不全等の治療や、循環不全による皮膚の細胞死の進行防止において、点滴静脈注射薬として使用する場合に適しており、更に慢性臓器組織不全等の場合は、内服薬、水剤として使用する場合に適している。
実施例1
表1に示すキノン誘導体及び3種のアミノ粉末(アルギニン、グルタミン、アスパラギン酸;味の素社製;いずれも5ml滅菌バイアル瓶入り)の表1に示す量を、生理食塩水(輸液)500mlに溶解し、剤型が注射薬の臓器組織不全等治療薬を得た。
この注射薬は、血液循環不全に起因する脳、肝臓、腎臓又は心臓の臓器不全を起こしている患者に対して、1日3回程度、1回500mlを1時間以上かけて点滴静脈注射することで、臓器組織不全等を治療できる。
Figure 2006045187
3種のアミノ酸の総量は、人が食肉100gを摂食して、100%吸収されたときの量に匹敵する。
3種のアミノ酸中、アルギニンは塩基性アミノ酸、グルタミンは中性アミノ酸、アスパラギン酸は酸性アミノ酸であるので、これらの等モル溶液の液性は中性に保たれている。
実施例2
表2に示すキノン及び3種のアミノ酸粉末を混合して散薬を得た。(1日分;分2服用)
Figure 2006045187



Claims (4)

  1. キノン誘導体若しくはキノン、又はアミノ酸及びこれらの薬理学的に許容できる塩、並びにキノン誘導体若しくはキノンを含有する急性及び慢性の臓器組織不全、脳組織不全又は皮膚組織不全治療剤。
  2. アミノ酸が、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、セリン、システィン、ヒスチジン、トリプトファン、チロシンから選ばれる1種又は2種以上のものであり、
    キノン誘導体が、下記一般式(I)又は(II):
    Figure 2006045187
    〔式中、Aは次式:
    Figure 2006045187
    又は
    Figure 2006045187
    で示される基であり、nは1〜9の整数である。〕
    で表されるものである、請求項1記載の臓器組織不全、脳組織不全又は皮膚組織不全治療剤。
  3. 注射薬、散剤又は水剤である、請求項1又は2記載の臓器組織不全、脳組織不全又は皮膚組織不全治療剤。
  4. 急性血液循環不全による肝臓、腎臓、心臓若しくは脳の梗塞の治療に使用するか、又は慢性組織呼吸不全、細胞死による各臓器不全、痴呆又は皮膚潰瘍の進行を防止するために使用する、請求項1〜3のいずれかに記載の臓器組織不全、脳組織不全又は皮膚組織不全治療剤。

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