以下、図面を参照しながら本発明の組織分析評価装置、および組織分析評価方法、並びにコンピュータ・プログラムの詳細について説明する。なお、説明は、以下の項目に従って行う。
1.本発明の背景
2.本発明の具体的実施形態
2.1.ネットワークシステム
2.2.ハードウェア構成
2.3.クライアントプログラム
2.4.サーバプログラム
2.5.分析・評価プログラム
2.5.(a)ログ処理部
2.5.(b)アンケート処理部
2.5.(c)ギャップ分析通知部
[1.本発明の背景]
本発明の理解を容易にするため、本発明の具体的な実施形態の説明に先立ち、まず、本発明がなされるに至った背景を説明する。これまでは、組織(会社の部署など実体を伴う組織であるか、メーリングリストなど、仮想的な組織であるかを問わない)の価値は、ある組織の外部との公式な取引およびサービス提供、あるいは、外部に対する売上などにより評価されてきた。
例えば企業は、階層的に整理された解決すべき問題に対して機能分化された組織が階層的に配置されており、このような組織に対する命令を伝達することにより問題を解決する。このような企業の体制内では、組織の価値の評価は、例えば、純粋に組織に対して投入された人、物および金などのリソースのインプットと、その結果もたらされた経済的価値およびサービスなどのアウトプットとの差分および比率として評価されてきた。しかしながら、組織の価値は、インプットとアウトプットの差分および比率という観点からだけでは評価しきれないことが、学術的側面からも、実際のビジネスの側面からも指摘されている。
また、経営学などの分野においても、このような階層的組織による問題解決方法では、顧客の多種多様な要望に迅速に応えることができなくなってきている旨の指摘がある。このような問題の指摘に対して、IT(Information Technology)を導入し、企業内の組織をフラットな構造とし、各組織に自律分散的な活動を推奨し、問題解決のために、リソースの配分を柔軟に変更して最適化する解決策が提案されている。
しかし、このように、組織の構造をフラットにすると、組織およびその成員の価値を、インプットとアウトプットとの差分および比率に基づいて評価することが極めて困難になる。なぜならば、上述のように、フラットな構成の組織においては、その構造が柔軟に変化するので、何らかの問題解決を最初から目指して組織が設けられることはなく、また、組織の成員が常に変化していたり、1人の成員が、複数の組織に公式あるいは非公式に所属することがあり、さらに、問題解決の後には、組織自体が解散してしまうなどの理由から、組織に対してどのようなインプットがなされ、どのようなアウトプットがあったかを評価することが難しいからである。
本発明は、組織の価値を評価するために、公式であるか非公式であるかを問わず、組織内および組織間におけるコミュニケーション(組織コミュニケーション)に着目する。具体的には、本発明は、ある組織内で発生する(伝達される)コミュニケーションのいかなる内容が、他の組織において、どのような範囲・規模で使われているかということに着目して、組織の価値を評価する。
このような点に着目すると、ある組織に対して公式に課されていない情報・サービスの提供など、直接の経済価値を生じなかったり、あるいは、評価が困難であった組織および組織コミュニケーションの価値を、代替的に評価することができる。より具体的には、ある組織が問題を解決しているときに、この組織におけるコミュニケーションの内容を分析することにより、ある組織内の情報が、他の組織およびその成員に対して伝達されたり、他の組織およびその成員の活動に利用されたりすることに着目すると、客観的に、その組織の価値評価と組織コミュニケーションの価値評価は何が違うのかを評価することができる。
例えば、企業において、実際の収益をあげている部署の価値だけでなく、一見、収益を上げていないので価値が低そうに見えるが、実際には、会社の多くの部署にとって有益であり、間接的に大きな収益に結びついている部署の価値を正確かつ客観的に評価できるので、このような観点からの組織の価値の把握は、投資や予算の適切な配分など行うために有益であり、企業業績に貢献しうる。
本出願人は、日常的に行われている組織コミュニケーションについての様々な分析を支援する発明を、既に、特願2001−275808(組織コミュニケーション分析装置及び方法)として出願している。上記出願にかかる発明は、メーリングリスト・電子掲示板などの組織コミュニケーションに対して定量的な分析を行い、その分析結果と定性的な情報とを関連付けることにより、組織コミュニケーションを活性化あるいは不活性化させる要因を探索的に分析し、その分析結果を踏まえた組織コミュニケーションの運用を実現する。本発明は、この出願にかかる発明を、これまでに述べた観点から、さらに発展させたものであって、組織コミュニケーションに対する分析を行うことにより、組織の客観的な価値評価を実現する。
組織コミュニケーションの手段(メディア)の例としては、口頭、電話、ビデオ電話システム、および、コンピュータネットワーク(電子メール・電子掲示板・チャット・インスタントメッセージなど)を挙げることができる。本発明の実現のためには、これらのメディアを介して行われたコミュニケーションを調査し、集計することが前提となる。
このような調査、分析のための手法としては、いくつかの方法がある。本発明では、2つの異なる分析手法を統合した組織分析評価手法を実現する。第1の分析手法はアンケート分析であり、他方はログ分析である。
アンケート分析手法の実行方法には、全組織にアンケート用紙を配布し、これに記入された回答を手作業あるいはOCRにより分析・評価用装置に入力する方法、あるいは、ウェブページを利用して分析・評価用装置が、組織の各成員にオンラインで質問を出し、これに対する回答を集める方法がある。
ウェブページを利用したアンケート調査は、例えば、ウェブサーバからコンピュータ上のブラウザに表示された質問に対し、各成員が、回答を文章の形式で書き込んだり、あるいは、予め用意された選択肢を選択することにより行われる。この際、ウェブサーバなどが、応答の分析・評価に必要とされる成員の識別情報および応答日時などを、自動的に応答に付すことができ、あるいは、各成員が、ブラウザに対する明示的な操作を行って、これらの情報を応答に付すことができる。
ログ分析は、例えば企業内の電子メールのログに基づく調査、集計に基づく分析である。電子メールがコミュニケーションのために用いられる場合には、一般的に、電子メールに含まれる自然言語のメッセージと、電子メールの発信者および受信者、および、電子メールが伝送された日時などが、メッセージログに記録されうる。
インターネットにおける電子メールの配信は、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバと呼ばれる送信サーバを介して行われる。従って、企業内においては、SMTPサーバで電子メールのメッセージログを一元的に記録することにより、企業内の全社員について、いつ、誰が、誰に対して、どのような内容のコミュニケーションを行ったのかを把握することができる。本発明におけるログ分析は、例えば、企業内において電子メールを配信するSMTPサーバのメッセージログを分析して、企業内の組織の価値評価を行う。
[2.本発明の具体的実施形態]
以下、本発明の実施形態を説明する。
(2.1.ネットワークシステム)
図1は、本発明にかかる組織分析としての組織評価が実行されるネットワークシステム1の構成を例示する図である。ネットワークシステム1は、例えば、同一企業内の複数の事業所にまたがって構築された広域ネットワーク(WAN)であって、図1に示すように、評価の対象となりうる複数の組織1〜nそれぞれの組織別システム2−1〜2−n(n≧2)と、分析装置3とが、ネットワーク100を介して接続された構成をとる。
なお、以下、組織別システム2−1〜2−nなど、複数ある構成部分のいずれかを特定せずに示す場合には、単に組織別システム2と略記する。組織別システム2のそれぞれは、例えば、各組織のm人の成員がそれぞれ用いるクライアントコンピュータ20−1〜20−m(m≧1)と、サーバ24とが、組織別LAN200を介して接続された構成をとる。
(2.2.ハードウェア構成)
図2は、図1に示したクライアントコンピュータ20、サーバ24および分析・評価装置3のハードウェア構成を示す図である。クライアントコンピュータ20、サーバ24および分析装置3は、図2に示すように、CPU202およびメモリ204などを含むデータ処理部200、LCDディスプレイ、キーボードおよびマウス(図示せず)を含む表示・入力部206、HDD・CD装置などのデータ記録部208、および、ネットワーク100および組織別LAN200との間で通信を行う通信部212から構成される。つまり、クライアントコンピュータ20、サーバ24および分析装置3は、ネットワークを介した通信が可能な一般的なコンピュータとしての構成部分を含んでいる。
(2.3.クライアントプログラム)
図3は、図1,図2に示したクライアントコンピュータ20上で動作するクライアントプログラム22の構成を示す図である。図3に示すように、クライアントプログラム22は、ユーザインターフェース部(UI部)220、メールプログラム222、ウェブブラウザ224およびLAN通信制御部226から構成される。クライアントプログラム22は、例えば、記録媒体210を介してクライアントコンピュータ20のデータ記録部208に供給され、メモリ204にロードされて実行される。クライアントプログラム22は、これらの構成要素により、クライアントコンピュータ20を利用する組織の成員(ユーザ)に対して、メール送受信機能と、WWW閲覧機能とを提供する。
クライアントプログラム22において、UI部220は、表示・入力部206(図2)に対するユーザの操作を受け入れて、クライアントプログラム22の各構成部分の処理を制御する。また、UI部220は、メールプログラム222が受けた電子メール、および、ウェブブラウザ224が受けたWWWからのデータを、ユーザに対して表示する。
メールプログラム222は、クライアントコンピュータ20のユーザに対して、電子メールの送受信の機能を提供する。LAN通信制御部226は、組織別LAN200(図1)およびネットワーク100を介した、同一組織内の他のクライアントコンピュータ20あるいはサーバ24(通信の主体となる構成部分を総称して通信ノードとも記す)との間の通信、および、他の組織の通信ノードとの間の通信を制御する。
ウェブブラウザ224は、クライアントコンピュータ20のユーザに対して、WWW閲覧機能を提供する。組織コミュニケーションのアンケート調査が行われる場合、ウェブブラウザ224は、サーバ24のウェブサーバ266(図4を参照して後述)からから受けた組織コミュニケーションのアンケート調査に必要な質問事項を、表示・入力装置206に表示し、ユーザ(成員1〜m)それぞれに示す。ブラウザ上に表示された質問事項に対して、成員1〜mそれぞれが、表示・入力部206を用いて回答を入力すると、ウェブブラウザ224は、回答を受け入れ、分析・評価装置3に対して送信する。
(2.4.サーバプログラム)
図4は、図1,図2に示したサーバ24上で動作するサーバプログラム26の構成を示す図である。図4に示すように、サーバプログラム26は、LAN通信制御部260、ネットワーク通信制御部262、メールサーバプログラム264、ウェブサーバ266、ログ管理部268およびログデータベース(ログDB)270から構成される。サーバプログラム26は、クライアントプログラム22(図3)と同様に、記録媒体210(図1)を介してサーバ24のデータ記録部208(図2)に供給され、メモリ204にロードされて実行される。
サーバプログラム26は、これらの構成部分により、同じ組織別システム2(組織)に属するクライアントコンピュータ20(成員)に対して、メールサーバ機能を提供し、また、同一または異なる組織別システム2(組織)のクライアントコンピュータ20(成員)に対して、WWWサーバ機能を提供する。
サーバプログラム26において、LAN通信制御部260は、組織別LAN102(図1)との間の通信制御を行う。ネットワーク通信制御部262は、ネットワーク100との間の通信制御を行う。メールサーバプログラム264は、メールサーバ機能を実現する。
ウェブサーバ266は、WWWサーバ機能を実現する。組織コミュニケーションのアンケート調査が行われる場合、ウェブサーバ266は、クライアントコンピュータ20上で動作するウェブブラウザ224(図3)を介して、表示・入力部206(図2)に、分析・評価装置3(図1)から受けた組織コミュニケーションのアンケート調査に必要な質問事項を表示する。さらに、ブラウザ上に表示された質問事項に対して、成員1〜mが、表示・入力装置206を用いて回答を入力すると、ウェブサーバ266は、回答の内容を示す応答を(後述)、分析・評価装置3に対して送信する。
ログ管理部268は、ネットワーク通信制御部262を介して分析・評価装置3から入力される制御データに従って、メールサーバプログラム264およびウェブサーバ266が行ったコミュニケーション(通信)を、ログDB270にメッセージログとして記録する。また、ログ管理部268は、必要に応じて、分析・ログDB270に記録したメッセージログを、分析・評価装置3などに対して送信する。
図5は、図4に示したログDB270に記録される電子メールのメッセージログを例示する図である。ログ管理部268は、ネットワーク通信制御部262を介して分析・評価装置3から入力される制御データに従って、メールサーバプログラム264およびウェブサーバ266が行ったコミュニケーション(通信)を、ログDB270にメッセージログとして記録する。
また、ログ管理部268は、分析・評価装置3の制御に従って、ログDB270に記録したメッセージログを、分析・評価装置3に対して、ネットワーク通信制御部262およびネットワーク100を介して送信する。
ログ管理部268が記録するメッセージログには、図5に示すように、電子メールそれぞれに付されたID(通信ID)、電子メールを発信した側、および、受信する側の識別データ(ID)、電子メールのメッセージの内容(通信内容)、および、電子メールが伝達された日時などが含まれる。
(2.5.分析・評価プログラム)
図6は、図1,図2に示した分析・評価装置3上で動作する分析・評価プログラム35の機能を中心として説明する機能構成図である。図に示す各データベースは、データ記録部(図2におけるデータ記録部208)が適用され、その他のブロックに示すデータ処理は、主に図2におけるデータ処理部200において実行される処理である。分析・評価プログラム35は、クライアントプログラム22(図3)およびサーバプログラム26(図4)と同様に、記録媒体210などを介して分析・評価装置3のデータ記録部208に供給され、メモリ204にロードされて実行される。
図6に示す分析・評価プログラム35は、以下の3つのデータ処理機能を有する。
(a)ログ処理部301
(b)アンケート処理部341
(c)ギャップ分析通知部350
の各データ処理部である。
(a)ログ処理部301は、部門別システム2−1〜2−nそれぞれのサーバ24(図1)から、電子メールのメッセージログおよびWWW閲覧のログなどを収集し、収集したメッセージログなどを分析し、組織の価値評価を行う。さらに、ログ処理部301は、電子写真の用紙の計数値などのログについても取得して記憶し、ログ分析評価においては、メッセージログのみならず、電子写真の用紙の計数値を含むログを分析して、評価対象の単位が他の単位に与える影響を評価する。例えば、コピー機、ファクシミリ、プリンタなどにおいて計数される使用枚数などの計数値に基づいて、利用度、利用率、満足度を把握可能となり、アンケート処理部341において実施すべきアンケートなどの判定を効率的に行うことができる。
(b)アンケート処理部341は、組織別システム2それぞれのクライアントコンピュータ20(図1)上で動作するクライアントプログラム22(図3)のウェブブラウザ224に、組織コミュニケーションに関するアンケート調査のための質問を表示して示し、この質問に対する組織別システム2それぞれの成員の応答を受け、応答を分析・評価して、ある組織や個人が、他の組織や個人にどのような影響を与えているかを分析し、その価値を評価する。
(c)ギャップ分析通知部350は、ログ処理部401と、アンケート処理部341の評価結果を適用し、現在から見た過去の認識と過去の事実との差(ギャップ)、現在から見た将来への認識と事実との差(ギャップ)を分析する。ギャップ分析通知部350は、現在から見た過去や将来を想定した場合の認識の差(ギャップ)を算出する。このような、過去や将来にさかのぼっての現実と認識の差(ギャップ)は、組織のメンバがどのようなメンタルモデルで業務を遂行しているかを反映している。つまり、本発明は、現時点からみて、過去や将来の時点で「そうであった」「そうありたい」という期待を特定し、その時点での現実とつきあわせることにより、主観的な認識の補正や、そのような差(ギャップ)が生まれた文脈を捉える上で重要な指針を、定期的に、形式的に調査・提示することを可能とする。また、他の組織や組織間で期待・想定していた情報のやりとりがあった場合に通知する処理も実行し、機会損失や組織の影響力から見たマネジメント判断に対する指針の提供も可能とする。
その他の構成としては、部門別システム2−1〜2−nを用いている組織1〜n(図1)それぞれの組織情報、および、組織1〜組織nの成員1〜mそれぞれの個人情報を記憶する組織・個人DB310、
ネットワーク100との間の通信制御を行うネットワーク通信部300、
表示・入力装置206に対するユーザの操作を受け入れ、分析・評価プログラム35の各構成部分の処理を制御するUI部312を有する。
UI部312は、ユーザの操作に応じて、ログ情報、アンケート情報、および、分析・評価結果データなどを、表示・入力装置206に表示する。
組織・個人DB310に格納されるデータについて、図7〜図10を参照して説明する。
図7は、図6に示した組織・個人DB310が記憶する組織情報を示す図である。
図8は、図7に示した組織情報の具体例を示す図である。
図9は、図6に示した組織・個人DB310が記憶する個人情報を示す図である。
図10は、図9に示した個人情報の具体例を示す図である。
組織・個人DB310は、部門別システム2−1〜2−nを用いている組織1〜n(図1)それぞれの組織情報(図7,図8)、および、組織1〜組織nの成員1〜mそれぞれの個人情報(図9,図10)を記憶する。
図7,図8に示すように、組織・個人DB310は、組織1〜nそれぞれの組織情報として、組織1〜nの識別子(組織ID)、組織名、組織形態、組織が存在する期間(存在期間)、および、組織1〜nに上位組織が存在する場合には、その上位組織を記憶する。
また、図9,図10に示すように、組織・個人DB310は、組織1〜nの成員1〜mそれぞれの個人情報として、成員1〜mの識別子(個人ID・社員ID)、名前、メールアドレス、および、成員1〜mが所属する組織の組織ID(図7)を記憶する。
図7,図8に示した組織情報の組織形態の項目においては、既存の組織図に現れる組織は、フォーマルと表される。
また、組織図に現れない井戸端会議やメーリングリスト等による情報交換等を組織横断的に行うために結成された組織はインフォーマルと表される。
また、横断的な活動を時間を切って遂行する組織は、プロジェクトと表されている。
組織IDは、各組織に一意に対応づけられ、上位組織との対応を示すのに使われる。
組織名は、組織上あるいは、インフォーマル組織やプロジェクト組織の名称である。
組織の存続期間としては、いつから、いつまで存続しているのかが代入されている。
なお、図7,図8に示した組織形態の部分には、企業の組織図に記載しているような公式組織、ある目的を達成するために複数の公式組織が横断的に結集するプロジェクト組織、自発的な参加に基づくコミュニティのような組織、興味関心を同じくする情報共有等のグループなどの組織の属性(通常組織・プロジェクト・コミュニティなど)が格納される。
以下、
(a)ログ処理部301
(b)アンケート処理部341
(c)ギャップ分析通知部350
の各データ処理部の処理の詳細について説明する。
(2.5.(a)ログ処理部)
まず、ログ処理部301の処理について説明する。ログ処理部301は、ログ収集・管理部302、ログDB304、分析・評価部306、分析・評価結果DB308を有し、ネットワーク通信部300を介して部門別システム2−1〜2−nそれぞれのサーバ24(図1)から、電子メールのメッセージログおよびWWW閲覧のログなどを収集し、収集したメッセージログなどを分析し、組織の価値評価を行う。なお、評価単位としては、個人構成員からなる組織、該組織の構成員としての個人のいずれをも設定可能である。
なお、WWWのログを分析しても、本発明にかかる組織の価値評価を実現することができるが、本発明の実施形態の説明においては、電子メールのメッセージログに対する分析をおこなって、組織の価値を評価する方法を具体例とする。
図11は、ログ収集・管理部302が、ログDB304に記憶する組織コミュニケーション情報(組織通信情報)を示す図である。組織コミュニケーション情報(組織通信情報)において、組織コミュニケーションIDは、コミュニケーションにそれぞれに一意に付される。発信側IDおよび受信側IDは、図9などに示した個人情報と対応し、この個人情報に対応づけられている組織情報との対応関係により、発信側組織IDと、受信側組織IDとが得られる。また、通信内容の項目には、発信側IDと受信側IDとの間で行われた会話等の情報が記録され、さらに、この通信が行われた日時が対応づけられる。
なお、図11には、発信者と受信者とが1人ずつである場合が示されているが、図11に示したデータ構造を適切に変更することにより、メーリングリストによる1対多の電子メールの組織通信情報も、ログDB304に記憶することができる。ログ収集・管理部302は、部門別システム2−1〜2−nのサーバ24それぞれから、ネットワーク100を介して、図5に示したメッセージログを収集し、ログDB304に記憶する。
ログ収集・管理部302による組織通信情報作成処理において、ログ収集・管理部302は、組織・個人DB310を参照し、サーバ24から得たメッセージログと、図7,図8に示した組織情報および図9,図10に示した個人情報とを対応付け、組織通信情報を作成し、ログDB304に記憶する。
例えば、通常の電子メールによる通信に対する処理では、ログ収集・管理部302は、電子メールの発信側メールアドレスおよび受信側メールアドレスを用いて、組織・個人DB310に記憶された個人情報(図9)を検索し、電子メールを発信した成員iの個人ID(社員ID)、および、電子メールを受信した成員j(i,j=1〜m)の個人ID(社員ID)を得て、電子メールを発信した成員iの個人ID(社員ID)を、発信側IDとし、電子メールを受信した成員jの個人ID(社員ID)を、受信側IDとする。
さらに、ログ収集・管理部302は、発信側IDと送信側IDを用いて、組織・個人DB310に記憶されている組織情報(図7)を検索し、電子メールを発信した成員iが属する組織pの組織IDを発信側組織IDとし、電子メールを受信した成員jが属する組織q(p、q=1〜n)の組織IDを受信側組織IDとする。さらに、ログ収集・管理部302は、以上の検索の結果として得られた各情報に、識別子(組織通信ID)を付加し、電子メールのメッセージ内容を通信内容として付加し、さらに、電子メールが送られた日時および組織形態を付加し、図11に示す組織通信情報を作成し、ログDB304に記憶する。
組織通信情報は、図11に示すように、組織通信ID、発信側ID、受信側ID、発信側組織ID、受信側組織ID、通信内容、通信日時を含むデータ構成である。
次に、ログ分析・評価部306において行われる分析処理および評価処理を説明する。
<共通単語、概念などの影響媒体の分析>
ログ分析・評価部306は、ログDB304に記憶された組織通信情報(図11)の内、発信側組織IDと受信側組織IDとが同じ組織通信情報を取り出す。つまり、分析・評価部306は、組織p(部門別システム2−1〜2−m)それぞれにおいて、内部の成員i,j(クライアントコンピュータ20−i,j)同士の間で伝達された電子メッセージの組織通信情報(組織内通信情報)を取り出す。
さらに、ログ分析・評価部306は、組織内通信情報に含まれる送信側(ID)と受信者側(ID)の所属する組織(送信側組織IDおよび受信側組織IDに、図7,図8に示した組織情報によって対応づけられた組織)の通信内容を分析し、組織内通信情報に含まれる全ての組織(送信者側組織ID)について、その組織内で使われている共通単語、共通概念を共通影響媒体として抽出・集計する。
この組織の共通影響媒体(単語、概念)としては、組織内通信情報の通信内容を、自然言語処理等で単位として一般に扱われている、単語、文章、共通単語の同義語、共通単語および同義語による意味ネットワーク、および、オントロジ(組織p内で使用されている共通概念セット)その他を用いることができる。
ログ分析・評価部306は、例えば通信に共通に使われている単語(共通単語)を共通概念として抽出・集計する処理を実行する。ログ分析・評価部306は、例えば、組織通信情報を、最初から順に1行ずつ処理対象とし、個別集計処理を行い、個別集計の結果として得られた単語を、発信側組織(ID)の共通単語の候補として、その頻度と種類をリストとして設定する。
ログ分析・評価部306は、各組織における頻出単語の内、例えば上位5つを共通単語とする。リストは、膨大な数の単語を含みうるが、この選択処理により、単語数を制限することができる。
ログ分析・評価部306は、処理の対象とされている組織通信情報の行から通信内容を抽出し、単語単位に分割する。分析・評価部306は、例えば、通信内容を形態素解析によって品詞に分割し、その中から名詞を表現要素として取り出す。なお、分析・評価部306は、名詞だけではなく動詞など他の品詞を表現要素として用いることもでき、いくつかの品詞を組み合わせて表現要素として用いることもでき、あるいは、品詞ではなく文節などを表現要素として用いることもできる。
さらに、ログ分析・評価部306は、得られた表現要素から、単語の種類の数を集計し、単語の種類ごとに、単語の出現数を集計する。なお、ログ分析・評価部306は、個別集計処理において、単なる単語の出現頻度に限らず、固有名詞を抽出したり、固有名詞の頻度を集計の対象としてもよい。
図12(a)は、図6に示した分析・評価部306が、ログ分析・評価結果DB308に記憶する組織内通信共通影響媒体(単語,概念)情報を例示する第1の図である。例えば、ログ分析・評価部306は、共通単語として、組織pの組織内通信情報の通信内容に含まれている頻度が高い単語、例えば、使用頻度が多い方から3個の単語x、y、zを選択し、図12に示すように、単語x、y、zそれぞれに組織pの組織IDを付加して共通単語情報(属性)を作成し、ログ分析・評価結果DB308に記憶する。なお、共通単語情報は、組織IDと対応づけられて、リスト化されて保存されている。
図12(b)は、図6に示したログ分析・評価部306が、ログ分析・評価結果DB308に記憶する組織内通信共通影響媒体情報として共通概念を例示する第2の例である。前述したように例えば、ログ分析・評価部306は、組織内通信情報の通信内容に含まれる文章、共通単語の同義語、共通単語および同義語による意味ネットワーク、および、オントロジ(組織p内で使用されている共通概念セット)など、共通単語のその他の概念を示す情報をさらに抽出する。
ログ分析・評価部306は、抽出した単語を、その他の概念と関連づけて記録する。共通概念としては、例えば共通同義語が適用される。共通同義語は、市販されている一般的な類義語辞典等を用いて、同じ意味を持つ単語をひとかたまりとして、ログ分析・評価部306が、共通単語と同様の処理(但し、マッチングする対象として、類義語辞典の該当する単語全てとマッチするステップが入る)を、組織通信情報に対して行うことにより、抽出・集計することができる。なお、ここでいうマッチングは、データベースの分野の用語でいうと「検索」に該当し、具体的には、例えば、単語Aとうい共通概念を、ある通信単位群から検索することをいう。
図13(a),(b)は、ログ分析・評価部306により生成される組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報を例示する第1および第2の図である。ログ分析・評価部306は、図13に示すように、抽出した共通単語に、発信側および受信側の組織ID(発信側組織ID,受信側組織ID)を付して組織間通信共通単語情報を作成し、ログ分析・評価結果DB308に記憶する。ログ分析・評価部306は、ログ分析・評価結果DB308に、異なる2つの組織p、q(ここではp≠q)の間で交わされた(送受信された;伝達された)組織通信情報の共通概念を抽出し、登録する。
ログ分析・評価部306は、さらに、組織通信情報の共通概念を抽出するマッチング(matching)処理を実行する。ログ分析・評価部306は、例えば、組織通信情報に含まれる発信側組織IDと受信側組織IDとが異なるか否かを判断し、発信側組織IDと受信側組織IDとが異なり、かつ、受信側組織と送信側組織との間で送信側組織の単語(共通概念)が含まれていることをもって、送信側組織が受信者側組織に通信を行った(影響を与えた)とみなし、組織通信情報に含まれる発信側組織ID(=受信側組織ID)の共通単語リストを読み込み、マッチング処理対象とする共通単語iを設定する。
さらに、処理対象とされた共通単語iが、処理対象とされている組織通信情報の行に含まれるときに、処理対象とされた共通単語iを、図13に示す組織間情報として記録する。マッチング処理を要約すると、まず、ログ分析・評価部306は、組織通信情報を1行ずつ読み込み、該当する通信内容を抽出し、発信者側組織IDの共通単語と、読み込んだ行に含まれる通信内容とのマッチングを行う。このマッチング処理は、組織通信情報の処理対象とされた行に含まれる発信側組織IDと、受信側組織IDとが異なる場合に実行される。
このマッチング処理の結果、発信側組織IDの共通単語が通信内容に含まれているときには、発信側組織でやりとりされた組織内情報が、受信者側組織に影響を与えたとし、図13に示した組織間通信共通単語情報として記録される。マッチング処理は、処理対象とされている組織通信情報の行に含まれる発信側組織IDに対応づけられた共通単語リストに含まれる共通単語、全てについて実行される。
以上のマッチング処理が、全ての組織通信情報について行われることにより、どの組織がどの組織へ、どのような共通単語を介して影響を与えているのか(影響度)を示す組織間通信共通影響媒体(単語)情報(図13(a))が作成される。なお、共通単語ではなく、概念(文章、共通単語の同義語、共通単語および同義語による意味ネットワーク、および、オントロジ)について、同様のマッチング処理が行われると、2つの組織のいずれからいずれへ、どのような影響が与えられるのかを示す組織間通信共通影響媒体(概念)情報(図13(b))が作成される。
なお、2つ以上の組織の間で交わされた組織通信情報に関しても、共通影響媒体(単語,概念)の抽出・集計処理、および、マッチング処理を適応することにより、いずれの組織からいずれの組織に、どのような共通影響媒体(単語,概念)を介して影響が与えられるかを知ることができる。
例えば、発信側組織pから、受信側組織q、rに情報が発信された場合は、発信側組織IDを組織pの組織IDとし、受信側組織IDを組織qの組織IDとするものと、受信側の組織IDを組織rの組織IDとして、それぞれ別個に共通影響媒体(単語,概念)の抽出・集計処理、および、マッチング処理を行うと、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報を得ることができる。
また、ログ分析・評価部306は、個人についても、組織内および組織間の共通影響媒体(単語,概念)情報と同様に、成員間で交わされた電子メールの組織通信情報の共通単語および概念を抽出することができる。ログ分析・評価部306は、図14(a),(b)に示すように、抽出した共通単語および概念に、発信側および受信側の個人ID(発信側個人ID,受信側個人ID)を付して個人通信共通影響媒体(単語,概念)情報を作成し、ログ分析・評価結果DB308に記憶する。
<組織の影響評価>
ログ分析・評価部306は、上述のように生成された組織内通信共通共通影響媒体(単語,概念)情報(図12)、個人共通影響媒体(単語,概念)情報(図14)の内、評価対象となる組織pの組織内共通影響媒体(単語,概念)情報または個人iの個人共通影響媒体(単語,概念)情報と、組織q(q=1〜n;q≠p)それぞれの組織内通信共通影響媒体(単語,概念)情報(図12)、および、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報(図13)とを比較する。
さらに、ログ分析・評価部306は、評価対象の組織・個人の共通単語・概念(図12,図14)を、その組織内通信共通影響媒体(単語,概念)情報に共通単語・概念として含む組織、および、評価対象の組織・個人の共通単語・概念を、その組織を発信側または受信側とする組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報に共通単語・概念として含む組織を、評価対象の組織・個人が影響を与えた組織であると判定する。
図15(a),(b)は、図6に示したログ分析・評価部306が、ログ分析・評価結果DB308に記憶する影響評価結果を例示する第1および第2の図である。なお、影響は、影響範囲と影響度に分けて集計することが可能である。影響範囲とは、ある組織で共通で使われた概念(共通概念)が、他のいくつの組織で使われているかを数えることによって計算される。影響度とは、ある組織で共通で使われた概念が、他の組織でどれだけ出現するかを数えることによって計算される。
以下、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報(図13)に基づく影響範囲の集計処理について説明する。ログ分析・評価部306は、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報(図13)を1行ずつ読み込む。次に、分析・評価部306は、この組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報より、受信側組織の数を重複なしに数える。重複なしに受信側組織の数を数えるために、ログ分析・評価部306は、一度数えた受信側組織IDそれぞれにフラグを付し、フラグが付された受信側組織を数えない。ログ分析・評価部306は、このような計数を、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報の全ての行それぞれについて行い、集計値を、ある組織(発信側組織)の全ての組織に対する影響範囲とする。
次に、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報(図13)に基づく影響度の集計処理について説明する。ログ分析・評価部306は、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報(図13)を1行ずつ読み込み、発信側組織それぞれについて、ある共通単語が受信側組織で何回使われたかを累積集計する。ログ分析・評価部306は、このような計数を、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報の全ての行それぞれについて行い、集計値を、ある組織(発信側組織)の全ての組織に対する影響度とする。なお、ログ分析・評価部306は、発信側組織内での共通単語の頻出度合いの累積値を集計することにより、ある組織でより多く共通に使われた単語が、他の組織で使われたときに、その影響度を高く見積もって、影響度を算出してもよい。
図16(a)は、概念ごとに求められた影響範囲の具体例、図16(b)は、概念ごとに求められた影響度の具体例を示す図である。影響範囲および影響度は、図15に示したように、組織IDごとに集計値を求めることも、図16に示すように、概念ごとに集計値を求めることもできる。
なお、共通単語xの出現回数を、ネットワークシステム1(企業)全体ではなく、組織pの社員iと通信(コミュニケーション)する社員jのいる組織qだけに注目して分析してもよい。同じ単語が、単なる偶然で、組織p以外の組織qで使われていただけという場合に、組織pが、組織qから影響を受けていると判断することは誤りであるが、このような手当により、ある組織が他の影響に与える影響範囲及び影響度から、このような誤りの、影響範囲及び影響度を取り除くことができる。
さらに、組織pと組織qとが直接的に組織通信(組織コミュニケーション)していなくても、他の組織rを介して間接的にコミュニケーション(通信など)をしているなどの関係にあるときには、連鎖的に影響範囲及び影響度の評価を実施し、その合計値を、組織qに対する組織pの影響として評価することもできる。例えば、組織A〜Dそれぞれが、組織内外のコミュニケーションで単語xを使っており、組織通信情報から計算された、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報(図13)において、組織A―B間,及びB―C間が、共通単語xを含む組織通信(コミュニケーション)でつながっていているときには、組織Cでの共通単語xの出現は、組織Aが組織Cに与える影響範囲及び影響度として数えるようにすることができる。
なお、このような連鎖的な評価のためには、評価に含める連鎖の数をあらかじめ設定するとよい。例えば、連鎖の数を2とすると、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報(図13)の中に、単語yが、組織A−組織B間、組織B―組織C間、組織C−組織D間の通信内容に含まれているときには、組織Aの影響範囲と影響力は組織C−D間についてはカウントしない。また、組織Aから組織B、組織Bから組織Aのようなループが発生した場合は、その時点で処理を終了する。
また、さらに、このような連鎖的な影響範囲と影響度の評価については、連鎖の数に依存した重み付けを行ってもよい。例えば、組織Aから組織B、組織Bから組織D、さらに、組織Dから組織Eへの共通単語xを含む通信(コミュニケーション)が連鎖的に行われているときに、組織Aの影響範囲と影響度を評価するために、組織Bに対する影響度として組織数に1を加え、組織Bを経由する組織Dへの影響範囲と影響度を数える際には、組織数に1/2を加え、更に、組織Bを経由し更に組織Dを経由する組織Eへの影響範囲と影響度を数える際には、組織数に1/4を加えるなどして評価すればよい。
<その他の分析・評価>
ログ分析・評価部306は、図12〜図14に示した組織間通信共通単語情報、組織内通信共通影響媒体(単語,概念)情報および個人通信共通影響媒体(単語,概念)情報の数、頻度、組織形態(業務)およびいずれの組織・個人の共通単語・概念が、いずれの組織に対して発信されているかなどから、評価対象の組織・個人が、いずれの組織においてどのように活用されているかを分析することができる。
組織通信情報(図11)には、発信側の組織ID、受信側の組織ID、および、電子メールが交わされた日時の情報が含まれており、ログ分析・評価部306は、これらを追跡することにより、評価対象の組織・個人の共通単語・概念が、どのような時間経過で、どのような経路で広まったかを分析することができる。ログ分析・評価部306は、以上の各分析・評価結果を、必要に応じて組み合わせて総合的な分析結果とし、ログ分析・評価結果DB308に記憶する。
図17は、ログ分析・評価部306(図6参照)の分析・評価処理の処理手順を説明するフロー図である。ログ分析・評価部306は、このフローに従った処理により分析・評価を行い、その結果をログ分析・評価結果DB308に記憶する。UI部312は、分析・評価結果を、表示・入力部206の表示装置に表示し、あるいは、データ記録部208を介して記録媒体210に記録する。
図17に示すフローの各ステップについて説明する。ログ分析・評価部306は、ステップS200において、組織内で伝送される電子メール、メッセージなどの通信内容を分析し、組織ごとの共通影響媒体(単語,概念)を抽出する。この処理により図12に示す組織内通信共通影響媒体(単語,概念)情報が生成される。
ステップS202において、ログ分析・評価部306は、組織の間で伝送される電子メールの通信内容を分析し、組織間で伝送される電子メールの共通単語(属性)を抽出する。この処理により図13に示す組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報が生成される。
ステップS204において、ログ分析・評価部306は、個人に関する電子メールの通信内容を分析し、個人に関する電子メールの共通単語(属性)を抽出する。この処理により図14に示す個人通信共通影響媒体(単語,概念)情報が生成される。
ステップS206において、ログ分析・評価部306は、評価対象となる組織・個人の共通単語・概念と、他の組織の共通単語・概念とを比較する。この処理は、ステップS200〜S204で生成した各通信情報に基づいて実行される。
ステップS208において、ログ分析・評価部306は、評価対象となる組織・個人の他の組織への影響を評価する。この処理により、図15、図16を参照して説明した影響評価結果データが生成される。すなわち、前述したように、組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報(図13)を1行ずつ読み込み、発信側組織それぞれについて、ある共通単語が受信側組織で何回使われたかの累積集計を行ない、図15、図16を参照して説明した影響評価結果データを生成する。
ステップS210において、ログ分析・評価部306は、評価対象となる組織・個人の活用度を分析し、ステップS212において、評価対象となる組織・個人が影響を与える組織数および活用度などから、評価対象となる組織・個人の価値を評価する。すなわち、図12〜図14に示した組織間通信共通影響媒体(単語,概念)情報、組織内通信共通影響媒体(単語,概念)情報および個人通信共通影響媒体(単語,概念)情報の数、頻度、組織形態(業務)や、組織・個人の共通単語・概念の他組織に対する発信状況などから、評価対象の組織・個人が、いずれの組織においてどのように活用されているかを分析し、評価対象となる組織・個人の価値を評価する。
なお、ログ分析・評価部306は、組織通信情報(図11)の存在期間および通信の日時を参照することにより、任意の時間的範囲の組織コミュニケーションの評価も可能である。
ステップS214において、ログ分析・評価部306は、評価対象となる組織・個人の影響が経時的にどのように変化したかを分析する。
ステップS216において、ログ分析・評価部306は、以上の処理に得られた評価対象となる組織の総合的な分析・評価結果を、分析・評価結果DB308に記憶する。
[2.5.(b)アンケート処理部]
次に、図6に示すアンケート処理部341の実行する処理について説明する。
アンケート処理部341は、アンケート調査部342、アンケート調査結果DB344、アンケート分析・評価部346、アンケートアンケート分析・評価結果DB348を有する。
アンケート処理部341は、組織別システム2それぞれのクライアントコンピュータ20(図1)上で動作するクライアントプログラム22(図3)のウェブブラウザ224に、組織コミュニケーションに関するアンケート調査のための質問を表示して示し、この質問に対する組織別システム2それぞれの成員の応答を受け、応答を分析・評価して、ある組織や個人が、他の組織や個人にどのような影響を与えているかを分析し、その価値を評価する。なお、評価単位としては、個人構成員からなる組織、該組織の構成員としての個人のいずれをも設定可能である。また、アンケートの手法は、ブラウザを適用する場合のみならず、アンケート用紙配布、回収などの手法を適用してもよい。
さらに、応答の分析・評価により、ある言葉やその概念(概念として、単語、文章、意味ネットワークおよびオントロジがあり、単語はその中の一例)が、組織やその成員に、どのような影響を与えるかを分析し、その価値を評価する。なお、電子メールなどを用いても、本発明にかかる評価方法を実現することができるが、上述のように、実施形態の説明においては、ウェブページを利用したアンケート調査に基づいて、組織の価値評価を行う場合を具体例とする。
以下、アンケート処理部341の各構成要素の詳細について説明する。
<アンケート調査部342>
図18(a)は、アンケート調査部342が、アンケート調査結果DB344に記憶する「活動」に関する調査結果情報を例示する図である。
図18(b)は、アンケート調査部342が、アンケート調査結果DB344に記憶する「情報伝達」に関する調査結果情報を例示する図である。
図18(c)は、アンケート調査部342が、アンケート調査結果DB344に記憶する「心理変化」に関する調査結果情報を例示する図である。
アンケート調査部342は、サーバプログラム26(図4)のウェブサーバ266と同様な機能を有しており、クライアントコンピュータ20−1〜20−m上で動作するウェブブラウザ224に、組織コミュニケーションのアンケート調査のための質問を表示し、組織別システム2の成員に示す。組織別システム2の成員が、クライアントコンピュータ20上で動作するウェブブラウザ224に表示された質問に答え、応答を送信すると、アンケート調査部342(図6)は、応答を受けて集計し、図18(a)〜(c)に示す調査結果情報を、応答内容および質問内容に応じて作成し、アンケート調査結果DB344に記憶する。
例えば、アンケート調査部342は、メーリングリストから得られた組織の情報が、個人の活動に、いかに活用されているかをアンケート調査する場合には、「メーリングリスト(ML)の存在や話題が、何らかの形であなたの仕事や活動に役立ったことがありましたか?」という質問を、組織別システム2の成員それぞれに出す。
この質問への成員の応答と、個人・組織DB310に記憶された個人情報および組織情報(図7〜図10)とを対応づけて、アンケート調査部342は、回答者を識別するために用いられる識別子(回答者ID;個人ID)、この回答を識別するための識別子(回答ID、後述する)、活動主体の組織を示す識別子(組織ID)、活動内容、活動の関係者の識別子(個人ID)、活動の時期および頻度などを含む調査結果情報を、図18(a)に示すような形式(「活動」に関する調査結果)として作成し、アンケート調査結果DB344に記憶する。
また、例えば、アンケート調査部342は、メーリングリストから得られた組織の情報が、どのように伝達されたかをアンケート調査する場合には、「あなたは、MLの存在や議論されている内容を、周りの人に伝えたことがありますか?」という質問を、組織別システム2の成員それぞれに出す。
この質問への成員の応答と、個人・組織DB310に記憶された個人情報および組織情報(図7〜図10)とを対応づけて、アンケート調査部342は、上記回答者ID(個人ID)、上記回答ID、情報の伝達相手を示す伝達相手(個人ID)、伝達した情報の内容(伝達内容)、情報伝達の時期および頻度などを含む調査結果情報を、図18(b)に示すような形式(「情報伝達」に関する調査結果)で作成し、アンケート調査結果DB344に記憶する。
また、例えば、各組織において成員に、どのような意識変化が生じたかをアンケート調査する場合には、「MLの存在や話題が、会社や仕事に対するあなたの意識や心境の変化につながったことがありますか?」という質問を、組織別システム2の成員それぞれに出す。
この質問への成員の応答と、個人・組織DB310に記憶された個人情報および組織情報(図7〜図10)とを対応づけて、アンケート調査部342は、上記回答者ID(個人ID)、上記回答ID、回答者に心理的な影響を与えた成員の識別子(個人ID)、心理的影響の内容、心理的影響が与えられた時期および頻度などを含む調査結果情報を、図18(c)に示すような形式(心理変化」に関する調査結果)で作成し、アンケート調査結果DB344に記憶する。
なお、例えば、回答者に心理的影響を与えた人を示す情報などについては、回答者自身が直接、回答する他に、例えば、回答者の回答に含まれる文章に対して、テキスト解析を行うことにより、アンケート調査部342が、自動的に求めることも可能である。
なお、図18(a)〜(c)に示した例においては、調査結果情報に、適宜、個人IDあるいは組織IDが用いられているが、図7〜図10に示した個人・組織DB310に記憶された情報を用いて、個人IDを組織IDに変換することができる。
従って、例えば、ある個人が他の個人に対してどのような影響を与えているかを求めるために集められた調査結果を、ある組織が、他の個人および組織に対してどのような影響を与えているかを示す調査結果に変換することもできる。
さらに、アンケート調査部342は、図18(a)〜(c)を参照して説明したようなアンケート調査の他、回答者の個人や、回答者が所属する組織の属性、回答者を取り巻く外部環境、および、回答者個人の認識などをアンケート調査することもできる。
これらのアンケート調査の内、回答者を取り巻く外部環境のアンケート調査を行う場合には、アンケート調査部342は、組織別システム2の成員それぞれに対して、「あなたのオフィスには、非公式に集まって雑談するスペースがどの程度ありますか?」、「あなたのオフィスには、関連する他組織との情報交換がしやすい場所にあると思いますか?」などの質問をする。
また、回答者個人の認識のアンケート調査を行う場合には、アンケート調査部342は、組織別システム2の成員それぞれに対して、情報の共有・活用に関する組織の資質について、「あなたの所属する部門は、何かわからないことがあればお互いに助け合う雰囲気がある」「あなたの所属する部門は、情報共有に関してはあなたの個人の成果とは別に評価される仕組みがある」などの質問をする。
なお、1つのアンケート調査について、図18(a)〜(c)それぞれに示した調査結果情報が、組織別システム2の成員の内、質問に答えた回答者それぞれについていくつ作成されるかは、質問について、いくつの回答を許したかによって決まる。
例えば、あるアンケート調査において、質問に対して3つまで回答を許した場合には、一人の回答者(回答者ID)それぞれについて、1〜3つの調査結果情報が作成される。
図19は、図18(a)〜(c)に示した回答結果情報に対して定義される組織コミュニケーションIDを示す図である。このように、1人の回答者につき複数の調査結果情報が作成されうる場合には、アンケート調査部342は、同じ回答者IDを含む複数の調査結果情報(図18(a)〜(c))に、ユニークな回答IDを付して、これら複数の調査結果情報を区別して管理する。
さらに、アンケート調査部342は、図19に示すように、組織コミュニケーションIDを、ここまでに述べた回答者IDと回答IDの組み合わせそれぞれについてユニークに定義し、この組織コミュニケーションIDを用いて、図18(a)〜(c)に示した調査結果情報それぞれを管理する。
図20は、図18(a)〜(c)に示した調査結果情報と、回答者との対応付けを示す図である。さらに、アンケート調査部342は、同じ回答者が複数の質問に回答したために、一人の回答者に対して複数の調査結果情報(図18(a)〜(c))が作成された場合には、図20に示すように、回答者IDと、各質問を示す識別子(例えば、回答ID)とを対応付け、回答者それぞれが複数の質問に対して、どのような回答をしたかを管理する。
<アンケート分析・評価部346>
以下、アンケート分析・評価部346において行われる分析処理および評価処理を説明する。
<共通影響媒体(単語,概念)などの分析>
アンケート分析・評価部346は、組織・個人DB310を参照し、アンケート調査結果DB344に記憶された調査結果情報(図18(a)〜(c))の回答者IDを、この回答者が属する組織ごとに分類する。
さらに、アンケート分析・評価部346は、分類の結果として得られた組織ごとの調査結果情報に含まれる活動内容、伝達内容あるいは影響内容など、活動、情報伝達あるいは心理的影響の具体的・実体的な内容(内容情報)に含まれる共通影響媒体(単語,概念)を抽出する。
図21は、図6に示したアンケート分析・評価部346が、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する組織内の共通影響媒体(単語,概念)情報を例示する図である。例えば、アンケート分析・評価部346は、組織pの成員が回答者となった調査結果情報に含まれる内容情報に含まれている頻度が高い単語、例えば、使用頻度が多い方から3個の単語x、y、zを選択し、図21(a)に示すように、単語x、y、zそれぞれに組織pの組織IDを付加して組織内共通影響媒体(単語)情報(属性)を作成し、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する。共通影響媒体(単語)情報は、組織IDと対応づけられて、リスト化されて保存される。
図21(b)は、図6に示したアンケート分析・評価部346が、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する組織内の共通概念を例示する図である。例えば、アンケート分析・評価部346は、組織内通信共通単語情報の通信内容に含まれる文章、共通単語の同義語、共通単語および同義語による意味ネットワーク、および、オントロジ(組織p内で使用されている共通概念セット)など、共通単語のその他の概念を示す情報を共通影響媒体として抽出する。
アンケート分析・評価部346は、抽出した単語を、その他の概念、例えば共通単語情報と関連づけて記録する。共通概念としては、共通同義語が適用可能である。共通同義語は、市販されている一般的な類義語辞典等を用いて、同じ意味を持つ単語をひとかたまりとして、アンケート分析・評価部346が、共通単語の抽出と同様の処理を、組織通信情報に対して行うことにより、抽出・集計することができる。
図22は、図6に示したアンケート分析・評価部346が、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する概念を含む組織間の共通影響媒体(単語,概念)情報を例示する第1および第2の図である。アンケート分析・評価結果DB348は、個人・組織DB310を参照して、調査結果情報(図18(a)〜(c))それぞれについて、回答者と、その相手(活動主体、活動関係者、伝達相手、影響を与えた人など)とがそれぞれ属する組織を識別する。
さらに、アンケート分析・評価結果DB348は、回答者と、回答者に影響などを与えた相手とが異なる組織p、q(ここではp≠q)に属している調査結果情報の内容情報から、共通単語および概念を抽出する。
アンケート分析・評価部346は、図22に示すように、抽出した共通単語およびその概念に、回答者または回答者が属する組織の識別子(個人ID,組織ID)と、影響を与えた人が属する組織の識別子(組織ID)を付して、組織間共通影響媒体(単語,概念)情報を作成し、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する。
アンケート分析・評価部346は、調査結果情報(図18(a)〜(c))の共通概念を抽出するマッチング(matching)処理を実行する。まず、アンケート分析・評価部346は、調査結果情報を1行ずつ読み込み、該当する通信内容を抽出し、回答者が属する組織(発信者側組織ID)の共通単語と、読み込んだ行に含まれる通信内容とのマッチングを行う。このマッチング処理は、調査結果情報の処理対象とされた行に含まれる回答者が属する組織のID(発信側組織ID)と、影響を受けた組織のID(受信側組織ID)とが異なる場合に実行される。
このマッチング処理の結果、回答者が属する組織のID(発信側組織ID)の共通単語が通信内容に含まれているときには、回答者が属する組織の(発信側組織)でやりとりされた組織内情報が、受信者側組織に影響を与えたとし、図22に示した共通単語情報として記録される。マッチング処理は、処理対象とされている調査結果情報の行に含まれる回答者が属する組織のID(発信側組織ID)に対応づけられた共通単語リストに含まれる共通単語、全てについて実行される。
以上のマッチング処理が、全ての調査結果情報について行われることにより、どの組織がどの組織へ、どのような共通単語を介して影響を与えているのか(影響度)を示す共通単語情報(図22(a))が作成される。
なお、共通単語ではなく、概念(文章、共通単語の同義語、共通単語および同義語による意味ネットワーク、および、オントロジ)について、マッチング処理が行われると、2つの組織のいずれからいずれへ、どのような影響が与えられるのかを示す共通単語情報(図22(b))が作成される。
なお、2つ以上の組織の間で交わされた調査結果情報に関しても、共通概念(単語)の抽出・集計処理、および、マッチング処理を適応することにより、いずれの組織からいずれの組織に、どのような共通単語を介して影響が与えられるかを知ることができる。
例えば、回答者が属する組織p(発信側組織p)から、影響を受けた組織q、r(受信側組織q,r)に情報が発信された場合は、回答者が属する組織のID(発信側組織ID)を組織pの組織IDとし、影響を受けた組織のID(受信側組織ID)を組織qの組織IDとするものと、受信側の組織IDを組織rの組織IDとして、それぞれ別個に、共通単語の抽出処理とマッチング処理とを行うと、共通単語情報を得ることができる。
図23は、図6に示したアンケート分析・評価部346が、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する個人の共通影響媒体(単語,概念)情報を例示する第1および第2の図である。アンケート分析・評価部346は、図23(a),(b)に示すように、抽出した共通単語およびその概念に、回答者または回答者が属する組織の識別子(個人ID,組織ID)と、影響を与えた人の識別子(個人ID)を付して、個人共通影響媒体(単語,概念)情報を作成し、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する。
<組織・個人の影響評価>
アンケート分析・評価部346は、上述のように生成された組織内共通影響媒体(単語,概念)情報(図21)、個人共通影響媒体(単語,概念)情報(図23)の内、評価対象となる組織pの組織内通信情報、または、個人iが影響を与えた人とされている個人共通影響媒体(単語,概念)情報と、組織q(q=1〜n;q≠p)それぞれの組織内共通影響媒体(単語,概念)情報(図21)、および、組織間共通影響媒体(単語,概念)情報(図22)とを比較する。
さらに、アンケート分析・評価部346は、評価対象の組織・個人の共通単語・概念(図21、図23)を、その組織・個人の内共通影響媒体(単語,概念)情報に共通単語・概念として含み、評価対象の組織・個人を、その組織・個人に対して影響を与えた人・組織として含む組織を、評価対象の組織・個人が影響を与えた組織であると判定する。
なお、ここで述べた組織・個人の影響評価を、組織・個人のすべてについて行うと、いずれの組織・個人が、いずれの組織・個人に対して影響を与えたかを、順次、トレースすることが可能であり、このトレースの結果により、いずれの組織・個人が、他の組織にどのような影響を与えたかを連鎖的に評価することもできる。
このような連鎖的な評価を行う場合には、アンケート調査部342は、連鎖の数に依存した重み付けを行ってもよい。例えば、組織Aから組織B、組織Bから組織D、さらに、組織Dから組織Eへの共通単語xを含む通信(コミュニケーション)が連鎖的に行われているときに、アンケート調査部342は、組織Aの影響度を評価するために、組織Bに対する影響度として組織数に1を加え、組織Bを経由する組織Dへの影響度として組織数に1/2を加え、組織Bを経由し更に組織Dを経由する組織Eへの影響度として組織数に1/4を加えるなどして評価すればよい。
影響範囲の定義は、純粋に組織αの回答者Aが「情報xを組織βへ伝えた」の「組織β」を他の回答者について重複無しにカウントした数になる。
つまり、質問票を調査対象となる組織αの成員だけでなく、「組織β」の成員に対して、連鎖的に質問票を調査することも可能であり、このような調査方法は、社会調査の専門用語でスノウボウル・サンプリングとも呼ばれる。
この場合は、連鎖をどこまで調査するかという閾値を決めることができる。
また、連鎖が循環しないように、適切な制約条件を設ける必要がある。
また、連鎖的に配布する質問票の質問内容は、組織αの回答者Aが回答した「情報xを、あなたはどこに伝えましたか?」というようにカスタマイズし、これだけを連鎖的に質問する必要がある。
なお、影響範囲の評価値としては、このように概念IDごとに集計してもよいし、組織Aの影響範囲としては、全ての概念IDの影響範囲を合計してもよい。ここで、影響範囲については、組織Aの情報が組織Aおよび組織A以外の活動で活用された場合には、その情報が活用された組織の数を影響範囲とする。心理的な変化をもたらした情報についてのこの集計・評価は実施されない。
図24は、図6に示したアンケート分析・評価部346が、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する影響評価結果を例示する第1および第2の図である。
アンケート分析・評価部346は、判定の結果として得られた影響を与えた組織の数を、評価対象の組織・個人の影響度を示す評価指標とする。なお、単純な影響を与えた組織の数ではなく、例えば5段階評価のアンケートの結果であれば、各選択肢に4,3,2,1,0という重みを付けて足し合わせた結果を、評価対象の組織・個人の影響度を示す評価指標としてもよい。
アンケート分析・評価部346の実行する影響範囲算出処理について説明する。まず、アンケート分析・評価部346は、共通単語情報(図23)を1行ずつ読み込む。次に、アンケート分析・評価部346は、この共通単語情報より、影響を受けた組織(受信側組織)の数を重複なしに数える。
重複なしに影響を受けた組織(受信側組織)の数を数えるために、アンケート分析・評価部346は、一度数えた受信側組織IDそれぞれにフラグを付し、フラグが付された影響を受けた組織(受信側組織)を数えない。アンケート分析・評価部346は、このような計数を、共通単語情報の全ての行それぞれについて行い、集計値を、ある組織(影響を受けた組織;発信側組織)の全ての組織に対する影響範囲とする。
次に、アンケート分析・評価部346の実行する影響度算出処理について説明する。アンケート分析・評価部346は、共通単語情報(図23)を1行ずつ読み込み、発信側組織それぞれについて、ある共通影響媒体(単語,概念)が影響を受けた組織(受信側組織)で何回使われたかを累積集計する。アンケート分析・評価部346は、このような計数を、共通単語情報の全ての行それぞれについて行い、集計値を、ある組織(影響を受けた組織;発信側組織)の全ての組織に対する影響度とする。
なお、アンケート分析・評価部346は、影響を受けた組織(発信側組織)内での共通単語の頻出度合いの累積値を集計することにより、ある組織でより多く共通に使われた単語が、他の組織で使われたときに、その影響度を高く見積もって、影響度を算出してもよい。
図25(a)は、概念ごとに求められた影響範囲の具体例を示す図である。
図25(b)は、概念ごとに求められた影響度の具体例を示す図である。
アンケート分析・評価部346は、影響を受けた組織数・範囲に、評価対象の組織・個人の識別子(組織ID,個人ID)に、共通単語および概念を付加し、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する。なお、アンケート分析・評価部346の処理を、組織ごとの影響範囲および影響度の代わりに、図25に示す概念ごとの影響範囲および影響度を求めるように変更することも可能である。
なお、共通単語xの出現回数を、ネットワークシステム1(企業)全体ではなく、組織pの社員iと通信(コミュニケーション)する社員jのいる組織qだけに注目して分析してもよい。同じ単語が、単なる偶然で、組織p以外の組織qで使われていただけという場合に、組織qを、組織pから影響を受けいていると判断することは誤りであるが、このような手当により、ある組織が他の影響に与える影響から、このような誤りの影響を取り除くことができる。
さらに、組織pと組織qとが直接的に組織通信(組織コミュニケーション)していなくても、他の組織sを介して間接的に通信などをしているなどの関係にあるときには、連鎖的に上記影響の評価を実施し、その合計値を、組織qに対する組織pの影響として評価することもできる。例えば、組織A〜Dそれぞれが、組織内外のコミュニケーションで単語xを使っており、組織A,B,Dは、共通単語xを含む組織通信(コミュニケーション)でつながっていているが、組織Cはどの組織とも単語xを含む通信を行っていない場合には、組織Cでの共通単語xの出現は、組織Aが組織Cに与える影響度から取り除かれる。
<共通影響媒体(単語,概念)の評価>
アンケート分析・評価部346は、評価対象の個人・組織が、他の個人・組織に与えた影響を評価することと同様に、評価対象の個人・組織について、抽出された共通単語およびその概念(概念として、単語、文章、意味ネットワークおよびオントロジなどがあり、単語はこれらの中の一例)が、個人・組織に与えた影響を評価する。
つまり、評価対象の個人・組織について抽出された共通単語・概念を含む共通影響媒体(単語,概念)情報(組織内共通影響媒体(単語,概念)情報・組織間共通影響媒体(単語,概念)情報・個人共通影響媒体(単語,概念)情報)に対応する組織・個人を抽出することにより、アンケート分析・評価部346は、評価対象の個人・組織について抽出された共通単語・概念自体が、組織・個人に与える影響を評価することができる。
図26は、概念が組織・個人に与える影響の評価結果を例示する第1〜第3の図である。つまり、例えば、アンケート分析・評価部346は、評価対象の個人・組織について抽出された共通影響媒体(単語,概念)(図21,図22,図23)を比較することにより、評価対象の個人・組織について抽出された概念を含む共通影響媒体(単語,概念)情報(図21(a)など)を抽出し、抽出された共通影響媒体(単語,概念)に対応する組織・個人を、評価対象の概念の影響を受けた組織・個人であると判定する。
アンケート分析・評価部346は、概念それぞれに識別子(概念ID)と、この概念に対応する組織・個人の識別子(組織ID/個人ID)を付し、さらに、影響を受けたと判定された組織・個人の数を影響度として付して、図26(a)に示すような形式で、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する。
また、アンケート分析・評価部346に、既存の方法により、評価対象の概念とその他の概念との間の同一性を数値評価し、一定以上の数値評価が与えられた概念を、評価対象の概念に近似する概念として抽出する機能を付加すると、図26(b)に示すように、アンケート調査部342は、評価対象の概念およびこれに近似する概念を含む共通影響媒体(単語,概念)に対応する組織・個人を、影響を受けた組織・個人であると判定する。
また、アンケート分析・評価部346は、組織・個人と関係なく、概念自体を評価の対象として、図26(c)に示すように、評価対象の概念を含む共通単語情報に対応する組織・個人を、評価対象の概念が影響を与えた組織・個人の範囲であると判定し、アンケート分析・評価結果DB348に記憶してもよい。
また、アンケート分析・評価部346は、図26に例示した共通単語・概念の影響度の総和を、各組織・個人について求め、各組織・個人の影響度の判定に用いてもよい。
<統計的分析>
アンケート分析・評価部346は、さらに、アンケート分析・評価結果DB348に記録された情報を、単純な回帰分析、主成分分析および因子分析など一般的な方法により統計処理し、情報間の相関関係などを分析し、その結果をアンケート分析・評価結果DB348に記憶する。
この統計処理により、回答者が属する組織と、回答者が属する組織が影響を与える他の組織や個人と、これらの組織や個人の属性と、これら組織や個人が影響を受けた情報との間の関係などが明らかにされる。この統計分析は、組織・個人の価値を評価するものではないが、いずれの組織・個人が、情報を活用した回答者群、情報を伝達した回答者群および情報から心理的変化を受けた回答者群のいずれかに対して影響を与え、その価値を高めたかを理解するために役に立つ。このような関係の理解は、例えば、高い価値を生み出しうる組織を創り出すための指針として用いられたり、低い価値しか生み出さなかった組織・個人を、高い価値を生み出す組織・個人に改善するためのマネジメントの重要な参考資料となる。
例えば、統計分析により、価値が高い情報を伝達する側の回答者群と、その回答者群が所属する組織についての「あなたの所属する部門は、何かわからないことがあればお互いに助け合う雰囲気がある」、「あなたの所属する部門は、情報共有に関してはあなたの個人の成果とは別に評価される仕組みがある」との認識を持っていることとが高い相関を有するという結果が出た場合には、組織に高い価値を生ませるためには、その組織の雰囲気を、「何かわからないことがあればお互いに助け合う」といった方向に持ってゆけばよいことがわかり、このような知識は、企業のマネジメントにおいて有効に活用されうる。
<経時的分析>
アンケートの調査結果情報(図18)には、活動、情報伝達および心理的な影響が与えられた時期を示す情報が含まれているので、アンケート分析・評価部346は、必要に応じて、図26に点線で示すように、評価結果情報に、評価の対象とされた調査結果情報の時期的情報を付加することができる。このように、評価結果情報に時期的情報を含めた場合には、アンケート分析・評価部346は、評価結果情報を、時系列的に分析し、分析結果をアンケート分析・評価結果DB348に記憶する。
また、同様に、アンケート分析・評価部346は、時系列的な分析により、評価結果が経時的にどのように変化するか、例えば、ある概念が、企業内の組織にどのように広まっていったかを分析し、その分析結果をアンケート分析・評価結果DB348に記憶する。また、アンケート分析・評価部346は、ある1つの組織Aに着目し、組織A自体、および、組織Aの中で用いられていた概念の価値が、どのように変化したかを分析し、分析結果をアンケート分析・評価結果DB348に記憶する。
<総合的評価など>
なお、アンケート分析・評価部346による各組織・個人の評価結果は、UI部352を介して、様々な形式で表示されうる。例えば、経時的な分析により得られた分析結果は、例えば折れ線グラフの形式で、表示・入力部206(図2)に表示される。例えば、アンケート分析・評価部346は、ユーザの操作に応じて、ある組織が他の組織に影響を与えた度合いを、ランキングの形式で表示したり、あるいは、組織間の距離の情報の入力を受けて、影響度と組織間の距離との相関を表示したりする。
また、アンケート分析・評価部346は、1つの組織・個人それぞれについての評価を行うだけでなく、複数の組織・個人の評価を合算し、複数の組織・個人の総合的な評価を行う。例えば、アンケート分析・評価部346は、組織A〜Fそれぞれを単独に評価し、評価結果を表示・出力する他に、例えば、組織A〜Dの評価を合算し、また、組織E,Fの評価を合算して、組織A〜Dの総合評価と、組織E,Fの総合評価とを、アンケート分析・評価結果DB348に記憶し、あるいは、UI部352を介してユーザに表示する。
さらに、アンケート分析・評価部346は、例えば、2つの組織A,Bの評価情報の比較を行うことにより、これら組織A,Bそれぞれの中で行われているコミュニケーションの違い、影響範囲の違い、および、それぞれの価値の経時的変化の相違などを組織横断的に分析し、アンケート分析・評価結果DB348に記憶する。
図27は、アンケート分析・評価部346の分析・評価処理の処理手順を説明するフロー図である。アンケート分析・評価部346は、このフローに従った処理により分析・評価を行い、その結果をアンケート分析・評価結果DB348に記憶する。UI部312は、分析・評価結果を、表示・入力部206の表示装置に表示し、あるいは、データ記録部208を介して記録媒体210に記録する。
図27に示すフローの各ステップについて説明する。ステップS400において、アンケート分析・評価部346は、クライアントコンピュータ20(図1)から返された応答から、図18(a)〜(c),図20に示した調査結果情報を生成する。アンケート分析・評価部346は、さらに、生成した調査結果情報を分析し、図21〜図23などを参照して説明したように、組織・個人ごとの共通単語・概念(属性)を抽出する。
ステップS402において、アンケート分析・評価部346は、得られた評価対象の組織・個人に関する共通影響媒体(単語,概念)と、調査結果情報とを比較する。すなわち、図18(a)〜(c),図20に示した調査結果情報と、図21〜図23などを参照して説明した組織・個人ごとの共通影響媒体(単語,概念)との比較を行う。
ステップS404において、アンケート分析・評価部346は、ユーザの指定に応じて、S402の処理における比較結果に基づいて、評価の対象となった組織・個人が、他の組織・個人に与えた影響などを評価する。例えば図24に示す単位の影響範囲、影響度を求め、この影響範囲、影響度に基づく評価がなされる。
ステップS406において、アンケート分析・評価部346は、ユーザの指定に応じて、評価対象となる組織・個人の共通単語・概念が、組織・個人に与えた影響などを評価する。例えば図25に示す概念(単語)単位の影響範囲、影響度を求め、この影響範囲、影響度に基づく評価がなされる。
ステップS408において、アンケート分析・評価部346は、ユーザの指定に応じて、S404.S406の処理における評価結果に対して、統計的な分析を行う。ステップS410において、アンケート分析・評価部346は、ユーザの指定に応じて、S404.S406の処理における評価結果に対して、経時的な分析を行う。
ステップS412において、アンケート分析・評価部346は、ユーザの指定に応じて、S404.S406の処理における評価結果に対して、総合的な評価を行う。
ステップS416において、アンケート分析・評価部346は、以上の処理により得られた分析・評価結果を、アンケート分析・評価結果DB348に記憶し、ユーザの操作に応じて、記憶した各種分析・評価結果を、UI部352を介して、表示・入力装置206(図2)に表示する(S310)。
[2.5.(c)ギャップ分析通知部]
次に、図6に示すギャップ分析通知部350の処理について説明する。ギャップ分析通知部350は、ギャップ分析部351、ギャップ分析結果DB352、ギャップ分析結果通知部353を有する。
ギャップ分析部351は、アンケート処理部341においてアンケートに基づいて実行された分析・評価結果と、ログ処理部301によってログに基づいて実施された分析・評価結果をそれぞれ格納したアンケート分析・評価結果DB348と、ログ分析・評価結果DB308の評価結果を比較し、ギャップ分析結果を生成し、生成した結果をギャップ分析結果DB352に記録する。
具体的には、ギャップ分析部351は、現在から見た過去の認識と過去の事実との差(ギャップ)、現在から見た将来への認識と事実との差(ギャップ)を分析する。ギャップ分析通知部350は、現在から見た過去や将来を想定した場合の認識の差(ギャップ)を算出する。このような、過去や将来にさかのぼっての現実と認識の差(ギャップ)は、組織のメンバがどのようなメンタルモデルで業務を遂行しているかを反映している。つまり、本発明は、現時点からみて、過去や将来の時点で「そうであった」「そうありたい」という期待を特定し、その時点での現実とつきあわせることにより、主観的な認識の補正や、そのような差(ギャップ)が生まれた文脈を捉える上で重要な指針を、定期的に、形式的に調査・提示することを可能とする。また、他の組織や組織間で期待・想定していた情報のやりとりがあった場合に通知する処理も実行し、機会損失や組織の影響力から見たマネジメント判断に対する指針の提供も可能とする。
ギャップ分析結果通知部353は、ギャップ分析結果DB352に記録された結果や、ギャップ分析結果統合部354の生成した統合結果データを組織、または個人に通知する。通知処理は、後述する通知条件が満足された場合に実行される。なお、分析、評価単位としては、個人構成員からなる組織、該組織の構成員としての個人のいずれをも設定可能である。
図28を参照して、ギャップ分析部351の処理について説明する。ギャップ分析部351は、アンケート処理部341において実行されるアンケートと、ログ処理部301によって取得されるログとに基づくギャップ分析を実行する。
アンケート処理部341において実行されるアンケートによって、ある組織(例えば組織B)のメンバが、別の組織(例えば組織A)から得られると「過去のある時点で期待していた情報」を調査する。図28に示すアンケート実施時点(Z)において、過去(α時点)での期待情報の調査を実行する。
質問項目としては、例えば、下記の質問が設定される。
例)「あなたは(組織Bのメンバ)、α時点で、どのような情報(情報X)を、どのような行為(影響の種類)に使いましたか」
「また、あなたはα時点で、その情報Xを組織Aより得られると期待していましたか?」
全ての個人に対してこのような質問をして、質問に対するアンケート分析結果501を取得し、さらに、α時点でログ処理部301の取得、分析したログ分析結果との対比により、現在(Z)から見た過去(α時点)を想定した場合の認識の差(ギャップ)を算出する。なお、この例では、過去を想定した認識の差(ギャップ)算出処理を説明するが、ギャップ分析部351は、将来を想定した認識の差(ギャップ)算出処理も実行する。
図29を参照して、上記質問に対するアンケート分析データの例について説明する。
図29(a−1)は、各組織に属する個人に対して、
「あなたはα時点で、その情報Xを組織Aより得られると期待していましたか?」
の質問に対する答えのリストである。
*質問に対する答えを提供した個人ID、
*影響媒体(情報X)を得た組織、
*取得した影響媒体(情報X)、
の各項目が対応付けられたリストが生成される。
さらに、このリストについて、組織単位で集計することで、図29(a−2)に示す組織対応リストを生成する。図29(a−2)に示す組織対応リストは、
*質問に対する答えを提供した個人の属する組織の組織ID、
*影響媒体(情報X)を得た組織、
*取得した影響媒体(情報X)、
*度数(同じ答えを提供した個人の数)
の各項目が対応付けられたリストである。
度数は、過去(α時点)で、リストに示される影響媒体(情報X)をリストに示される組織から得られると期待していた度数(個人数)を示している。
この図29に示す結果は、アンケート実施時点(Z)において過去(α時点)を想定した場合の認識を調査した結果である。一方、実際に過去(α時点)の時点でログ処理部301において実行された通信ログに基づくログ分析結果をログ分析・評価結果DB308から取得し、アンケート分析結果との比較、ギャップ算出を実行する。この処理について図30を参照して説明する。
図30(a)は、図29(a−2)と同じリストであり、アンケート結果に基づいて、過去(α時点)での、組織単位での影響媒体への期待度数をまとめたリストである。
図30(b)は、過去(α時点)でのログ分析結果である。すなわち、過去(α時点)の通信メッセージに基づいて取得されたログからの分析結果である。図30(b)に示すログ分析結果も、図30(a)に示すアンケート分析結果の組織対応リストと同様のデータ構成を有し、
*組織ID、
*影響媒体(情報X)を得た組織、
*取得した影響媒体(情報X)、
*度数(同じ答えを提供した個人の数)
の各項目が対応付けられたリストである。
度数は、過去(α時点)で、リストに示される影響媒体(情報X)をリストに示される組織から得た実績度数(通信ログ数)を示している。
ギャップ分析部351は、これらの2つのデータ、すなわち、図30(a)アンケート分析結果と、(b)ログ分析結果とを対比して、その差分(ギャップ)を算出して、図30(c)に示すギャップ分析結果を生成する。
図30(c)に示すギャップ分析結果は、
*組織ID、
*影響媒体(情報X)を得た組織、
*取得した影響媒体(情報X)、
*度数差分
の各項目が対応付けられたリストとして構成される。
度数差分は、図30(a)アンケート分析結果に設定された度数と、(b)ログ分析結果に設定された度数との差分を示している。なお、度数のスケールが異なる場合は、正規化処理によって双方のリスト(a),(b)のスケールを整合させて差分を算出する。例えば、各表の度数の合計値のうち何割を占めているかという割合で示せばよい。また、割合は全組織の合計値を基準にしても良いし、各組織の合計値を基準にしても良い。
たとえば、(a)アンケート分析結果に設定された度数の総数をΣAとした場合、リスト(a)のあるリスト項目の度数の値がaである場合、
a'=(a/ΣA)を算出し、
(b)ログ分析結果に設定された度数の総数をΣBとし、リスト(b)のあるリスト項目の度数の値がbである場合、
b'=(b/ΣB)を算出し、
差分度数=a'−b'
として、各リストの項目についての差分度数を算出する処理が可能である。
この差分度数の差が小さければ認識と現実のギャップが小さいと判断され、差分度数の差が大きければ認識と現実のギャップが大きいと判断される。このように、ギャップ分析部351は、現在から見た過去や将来を想定した場合の認識の差(ギャップ)を算出し、算出した結果(例えば図30(c)のリスト)をギャップ分析結果DB352に格納する。
ギャップ分析結果通知部353は、これらのギャップ分析結果を所定の通知条件に基づいて、各組織、個人などに通知する処理を実行する。通知条件については後述する。通知する情報は、例えば、
「あなたがα時点で、組織Aより得られると期待していた情報Xは{流れていました|流れていませんでした}」
「あなたがα時点で、組織Aより得られると期待していた情報Yは、組織Aから組織Bに流れている情報の○割です」
等の情報である。
さらに、他の組織や組織間で、組織Bのメンバが組織Aから得られると期待していた情報が流れている場合は、それを通知する。例えば、
「あなたがα時点で、組織Aより得られると期待していた情報Xは、組織Aから組織Cに流れていました」
「あなたがα時点で、組織Aより得られると期待していた情報Yは、組織C内で流れていました」
などの情報である。
上述した処理例は、過去の時点(α)の認識と現実の差分(ギャップ)の分析、通知処理例であるが、前述したように、ギャップ分析部351は、将来を想定した認識の差(ギャップ)算出処理も実行する。図31を参照して将来を想定した場合の現実と認識の差(ギャップ)の算出の場合の処理について説明する。
図31において、現時点(Z時点)がギャップ分析のためのアンケートを実行するタイミングである。ギャップ分析のためのアンケートとしては、過去(α時点)についての認識、すなわち様々な影響媒体に対する期待度を質問し、この答えと、過去(α時点)のログ分析結果とに基づいて、過去の時点(α)の認識と現実の差分(ギャップ)の分析が実行される。
さらに、ギャップ分析のためのアンケートとして、将来(β時点)における期待、すなわち将来(β時点)において、様々な影響媒体を他の組織から取得できるであろうと期待する期待度を質問する。このアンケートに対する答えと、将来(β時点)のログ分析結果とに基づいて、将来の時点(β)の認識と現実の差分(ギャップ)の分析が実行される。
将来のある時点で期待する情報に関するギャップ分析は、現在(質問するタイミングZ時点)において将来の情報に関する期待を質問し、将来のβ時点になった際に、質問するタイミングZ時点からβ時点までのログを対象としてギャップ分析を実施する。
アンケートによる質問は、例えば、
質問例)「あなたは(組織Bのメンバ)、将来(βの時点で)、組織Aより得られるどのような情報(情報X)を、どのような行為に使うと考えていますか?」
との質問として設定される。
この質問に対するアンケート結果と、Z時点からβ時点までのログを対象としてギャップ分析が実施されることで、例えば以下のような情報が通知される。
例)「あなたが、将来(β時点で)、組織Aより得られると期待していた情報Xは、{流れていました|流れていませんでした}」
例)「あなたが、将来(β時点で)、組織Aより得られると期待していた情報Xは、組織Aから組織Bに流れている情報の○割です」
なお、他の組織や組織間で、組織Bのメンバが組織Aから得られると期待していた情報が流れている場合は、それを通知する
例)「あなたが、将来(β時点で)、組織Aより得られると期待していた情報Xは、組織Aから組織Cに流れていました」
例)「あなたが、将来(β時点で)、組織Aより得られると期待していた情報Xは、組織C内で流れていました」
このように、ギャップ分析通知部350は、過去や将来にさかのぼっての現実と認識の差(ギャップ)を分析し、分析結果の通知処理を実行する。過去や将来にさかのぼっての現実と認識の差(ギャップ)は、組織のメンバがどのようなメンタルモデルで業務を遂行しているかを反映している。つまり、本発明は、現時点からみて、過去や将来の時点で「そうであった」「そうありたい」という期待を特定し、その時点での現実とつきあわせることにより、主観的な認識の補正や、そのような差(ギャップ)が生まれた文脈を捉える上で重要な指針を、定期的に、形式的に調査・提示することを可能とする。また、他の組織や組織間で期待・想定していた情報のやりとりがあった場合に通知する処理も実行し、機会損失や組織の影響力から見たマネジメント判断に対する指針を提供する。
なお、ギャップ分析のためのアンケート処理実行タイミングは、様々なタイミング設定が可能である。
図32は、複数のタイミング設定例を示すリストである。
[ID1]は、アンケート分析、ログ分析とも毎月実行する例であり、同月のアンケート分析、ログ分析結果を用いて比較、統合処理を実行するタイミング設定例である。
[ID2]は、アンケート分析は3ヶ月毎、ログ分析は毎月実行する例であり、各月のログ分析結果と3ヶ月毎のアンケート分析結果を用いて比較、統合処理を実行するタイミング設定例である。
[ID3]は、アンケート分析は1年毎、ログ分析は毎月実行する例であり、各月のログ分析結果と1年毎のアンケート分析結果を用いて比較、統合処理を実行するタイミング設定例である。
[ID4]は、アンケート分析、ログ分析とも毎月実行するが、アンケート分析結果は、ログ分析結果の3ヶ月前の結果を用いて比較、統合処理を実行するタイミング設定例である。
図32に示す様々なタイミングをID選択により設定し、設定IDに基づいてアンケート分析、ログ分析タイミングを決定して、処理を実行する。なお、タイミングはいくつでも指定可能であり、アンケート調査については、ここで設定した指定時期に自動的に実施する(組織メンバにWebアンケートを実施し、調査データを記録する等)ことも可能である。
タイミング設定を実行しない場合は、デフォルト値(例えば、アンケート分析を実施したタイミングでもよいし、アンケートは半年に1回、ログ分析は半年前にさかのぼったデータを分析する等をあらかじめデフォルト値として設定しておいてもよい)に従う。
次に、ギャップ分析結果通知部353の処理について説明する。ギャップ分析結果通知部353は、ギャップ分析結果DB352に記録された結果、すなわち、図30を参照して説明したアンケート分析結果とログ分析結果とに基づくギャップ分析結果データに基づく情報通知を組織、または個人、評価組織などに対して実行する。
ギャップ分析結果通知部353による通知処理は、所定の通知条件が満足された場合に実行される。通知条件について図33を参照して説明する。図33には、5種類の通知条件を例として示してある。
[ID1]は、組織Aの影響度に5%以上の差が見られたときに通知処理を実行するという通知条件であり、具体的な条件式は下記の式である。
IF(|(組織Aのアンケート分析結果の影響度の度数の割合)-(組織Aのログ分析の影響度の度数の割合)|>0.05)THEN 通知
[ID2]は、組織B影響範囲に3%以上の差が見られたときに通知処理を実行するという通知条件であり、具体的な条件式は下記の式である。
IF(|(組織Bのアンケート分析結果の影響範囲の度数の割合)-(組織Bのログ分析の影響範囲の度数の割合)|>0.03)THEN 通知
[ID3]は、組織Aの影響度に2%以上、組織Bの影響範囲は10%以上の差が見られたときに通知処理を実行するという通知条件であり、具体的な条件式は下記の式である。
IF((|(組織Bのアンケート分析結果の影響範囲の度数の割合)-(組織Bのログ分析の影響範囲の度数の割合)|>0.1)且つ(|(組織Aのアンケート分析結果の影響度の度数の割合)-(組織Aのログ分析の影響度の度数の割合)|>0.02))THEN 通知
[ID4]は、組織Aの影響内容"顧客"に関する影響度が5%以上の差が見られたときに通知処理を実行するという通知条件であり、具体的な条件式は下記の式である。
IF(|(組織Aのアンケート分析結果の影響内容"顧客"に関する影響度の度数の割合)-(組織Aのログ分析の影響内容"顧客"に関する影響度の度数の割合)|>0.05)THEN 通知
ここに示す通知条件は一例であり、この他にも様々な通知条件が設定可能である。ギャップ分析結果通知部353は、予め定めた所定の通知条件、例えば図33に示すID1〜ID4のいずれかに設定された通知条件が満足された場合に、ギャップ分析結果DB352に記録された結果に基づく情報などを組織、または個人、評価組織などに通知する。
なお、通知条件は任意の数設定でき、通知方法はUIに単に表示するだけでもいいし、メールやインスタントメッセージ、電話などによって実行可能である。なお、通知条件としては自然言語を含んでもよいし、通知条件に、時間的変化に関する記述を含んでも良い。
次に、ギャップ分析通知部350において実行する処理シーケンスについて、図34のフローを参照して説明する。
ステップS600において通知条件を設定する。通知条件は、先に図33を参照して説明したように、様々な条件設定が可能であり、図33に示すIDのいずれかを選択して、通知条件を決定する。なお、複数のID選択によって選択した複数の条件いずれかに該当する場合にすべて通知を行う設定としてもよい。
ステップS602において、ログ分析結果とアンケート分析結果との対応設定が自動設定とされているか否かを判定する。ログおよびアンケート分析の分析結果の自動設定とは、例えば、過去の認識と現実のギャップを分析する場合は、ギャップ分析のためのアンケート結果と、過去ログとが対応付けられ、将来の認識と現実のギャップを分析する場合は、ギャップ分析のためのアンケート結果と、将来のログとが対応付けられることになる。これらの対応付けがあらかじめ設定された情報によって自動実行される場合と、マニュアル設定を行う場合がある。
自動設定である場合は、ステップS604に進み、ログ分析結果とアンケート分析結果との対応を自動計算する。自動設定でない場合は、ステップS606に進み、オペレータによるマニュアル操作としてログ分析結果とアンケート分析結果との対応付けを行う。
次に、ステップS608において、アンケートが過去についての認識と現実のギャップを分析するためのアンケート処理か、将来についての認識と現実のギャップを分析するアンケート処理であるかを判定し、過去についての認識と現実のギャップを分析するものである場合は、ステップS612に進みアンケートを実行し、将来についての認識と現実のギャップを分析するアンケート実施である場合は、アンケート実施タイミング(図32参照)になったことを条件としてアンケートを実施する。
次に、ステップS614において、アンケート結果に基づく分析、評価処理を実行し、ステップS616において、ログ結果に基づく分析、評価処理を実行する。これらの分析、評価処理は、それぞれアンケート処理部341、ログ処理部301において実行される。これらの分析結果として、例えば、図30(a)アンケート分析結果と、図30(b)ログ分析結果が得られる。
ステップS618では、アンケート処理部341の実行したアンケート分析・評価結果と、ログ処理部301の実行したアンケート分析・評価結果との対比処理を実行する。この対比処理は、ステップS610、S612において実行したアンケート結果に基づく分析、評価処理と、ログ結果に基づく分析、評価処理との処理タイミングが、ステップS604の自動設定、あるいはステップS606のマニュアル設定タイミングに対応するタイミングのデータであるかの判定処理として実行される。
これらの設定タイミングに対応するデータでない場合は、ステップS614に戻り、新規アンケート結果の入力待ちとする。ステップS618において、ステップS614、S616において実行したアンケート結果に基づく分析、評価処理と、ログ結果に基づく分析、評価処理との処理タイミングが、ステップS604の自動設定、あるいはステップS606のマニュアル設定タイミングに対応するタイミングのデータであると判定した場合は、ステップS620に進む。
ステップS620では、ステップS614、S616において実行したアンケート結果に基づく分析、評価処理と、ログ結果に基づく分析、評価処理のそれぞれの結果データに基づく比較分析、評価処理を実行する。この処理は、図30を参照して説明したように、アンケート分析・評価結果と、ログ分析・評価結果とに基づいて、例えば度数差分(ギャップ)を算出し、図30(c)に示すギャップ分析結果を取得する処理であり、例えば図30(c)に示すように
*組織ID、
*影響媒体(情報X)を得た組織、
*取得した影響媒体(情報X)、
*度数差分
の各項目が対応付けられたリストを生成して、ギャップ分析結果DB352に格納する処理として実行される。
次に、ステップS622において、通知条件と一致するか否かの判定処理が実行される。この処理は、ギャップ分析結果通知部353の処理であり、先に図33を参照して説明した通知条件中、ステップS600において設定した通知条件を満足するか否かを判定し、設定通知条件を満足する場合は、ステップS622に進み通知処理を実行する。設定通知条件を満足していない場合は、ステップS614に戻り、新規アンケート結果の入力待ちとする。
これらの処理によって、所定の設定通知条件を満足した場合に、ギャップ分析結果DB352に記録された結果に基づく情報などが組織、または個人、評価組織などに通知される。例えば、
「あなたがα時点で、組織Aより得られると期待していた情報Xは{流れていました|流れていませんでした}」
「あなたがα時点で、組織Aより得られると期待していた情報Yは、組織Aから組織Bに流れている情報の○割です」
等の情報、さらに、他の組織や組織間で、組織Bのメンバが組織Aから得られると期待していた情報が流れている場合は、例えば、
「あなたがα時点で、組織Aより得られると期待していた情報Xは、組織Aから組織Cに流れていました」
「あなたがα時点で、組織Aより得られると期待していた情報Yは、組織C内で流れていました」
などの情報が通知される。
このように、ギャップ分析通知部350は、過去にさかのぼったり、将来にわたっての現実と認識の差(ギャップ)を分析し、分析結果の通知処理を実行する。過去にさかのぼったり、将来にわたっての現実と認識の差(ギャップ)は、組織のメンバがどのようなメンタルモデルで業務を遂行しているかを反映している。つまり、本発明は、現時点からみて、過去や将来の時点で「そうであった」「そうありたい」という期待を特定し、その時点での現実とつきあわせることにより、主観的な認識の補正や、そのような差(ギャップ)が生まれた文脈を捉える上で重要な指針を、定期的に、形式的に調査・提示することを可能とする。また、他の組織や組織間で期待・想定していた情報のやりとりがあった場合に通知する処理も実行し、機会損失や組織の影響力から見たマネジメント判断に対する指針を提供する。
以上、特定の実施例を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、限定的に解釈されるべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
なお、明細書中において説明した一連の処理はハードウェア、またはソフトウェア、あるいは両者の複合構成によって実行することが可能である。ソフトウェアによる処理を実行する場合は、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ内のメモリにインストールして実行させるか、あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。
例えば、プログラムは記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことができる。あるいは、プログラムはフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory),MO(Magneto optical)ディスク,DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送したり、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送し、コンピュータでは、そのようにして転送されてくるプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることができる。
なお、明細書に記載された各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。また、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。