JP2006020510A - 塩基多型の同定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 迅速で容易に再現性の良い結果が得られる、塩基多型を明確にまた簡便に検出できる方法を提供。
【解決手段】 特定の核酸配列を含む試料溶液に第一のリガンドが結合した該特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドを用いて、増幅反応後、第二のリガンドが結合された結合体を接触させ、特定の核酸配列と結合した第二のリガンド結合体との複合体を検出することによって塩基多型を同定する方法において、上記第一のリガンドの補捉剤が結合された通液性フィルターに滴下して、該複合体の第一のリガンド部分を、該リガンド補捉剤に結合させる工程;該通液性フィルターの表面に、上記第二のリガンドに結合する、標識された生理活性物質の溶液を滴下して、この標識を持つ生理活性物質を、第一のリガンド補捉剤とリガンド部分とを介して通液性フィルターに結合している第二のリガンドに結合させる工程;通液性フィルターに結合した標識を測定する工程、からなる塩基多型の同定方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、固相担体として通液性フィルターを用いた塩基多型の同定方法に関するものである。本発明は、遺伝病の診断、塩基多型解析等に際して特に有用である。
本発明において、塩基多型とは野生型とは異なる塩基配列を有することをいう。遺伝子の塩基多型は薬物代謝において副作用および治療失敗の発生において個体間変動の原因として重要な役割を果たし、体質として知られる基礎代謝等の個人差の原因としても知られている。その上、これらは多数の疾患の遺伝マーカーとしての働きもする。それゆえ、これら突然変異の解明は臨床的に重要であり、ルーチンの表現型分類が臨床研究における精神医学患者および自発志願者にとって特に推奨される(GramおよびBrsen, European Consensus Conference on Pharmacogenetics. Commission of the European Communities, Luxembourg,第87〜96頁(1990年); Balantら、Eur. J. Clin. Pharmacol. 第36巻、第551〜554頁、(1989年))。また、原因となる変異型遺伝子の同定に続くそれぞれの遺伝子型の検出用の核酸配列分析法が所望される。
従来の核酸配列分析技術としては、例えば核酸配列決定法(シークエンシング法)がある。核酸配列決定法は核酸配列中に含まれる塩基多型を検出、同定することができるが、鋳型核酸の調製、DNAポリメラーゼ反応、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、核酸配列の解析等を行うため多大な労力と時間が必要である。また近年の自動シークエンサーを用いることで省力化は行うことができるが、高価な装置が必要であるという問題がある。
一方、遺伝子の点突然変異により引き起こされる遺伝病が種々知られており、それらの中には、遺伝子のどの部位がどのように点突然変異することにより遺伝病が引き起こされるかわかっているものも少なくない。
このような予想される点突然変異を検出する方法として、従来より、PCR(polymerase chain reaction)法(例えば、特許文献1及び2参照)などの遺伝子増幅法を利用した遺伝子の点突然変異の検出方法が知られている。増幅された遺伝子断片に対し、特定の核酸配列を切断する制限酵素により処理し、生じるフラグメントの大きさで判断する方法(PCR−RFLP)法が用いられている。同じくPCR法を用いた検出方法としては、使用するprimerの特異性を利用したAlelle specific amplification法が用いられる。この方法では、遺伝子増幅法に用いる一対のオリゴヌクレオチドのうちの一方のオリゴヌクレオチドとして、野生型遺伝子の増幅領域の端部領域に完全に相補的な野生型用オリゴヌクレオチドと、変異型遺伝子の増幅領域の端部領域に完全に相補的な変異型用オリゴヌクレオチドとを用いる。変異型のオリゴヌクレオチドは、その3’末端が予想される点突然変異を起こしたヌクレオチドに相補的なヌクレオチドになっている。このような野生型及び変異型用オリゴヌクレオチドをそれぞれ別個に用いて試料遺伝子を遺伝子増幅法に供する。
試料遺伝子が野生型であれば、野生型用オリゴヌクレオチドを用いた場合には核酸の増幅が起きるが、変異型用オリゴヌクレオチドを用いた場合には、オリゴヌクレオチドの3’末端が試料遺伝子の対応ヌクレオチドと相補的ではない(ミスマッチ)ので伸長反応が起きず、核酸の増幅は起きない。一方、試料遺伝子が変異型であれば、逆に、野生型用オリゴヌクレオチドを用いた場合には増幅が起きず、変異型用オリゴヌクレオチドを用いた場合に増幅が起きる。従って、各オリゴヌクレオチドを用いた場合に増幅が起きるか否かを調べることにより、試料遺伝子が野生型か変異型かを判別することができ、それによって試料遺伝子中の点突然変異を同定することができる。この時増幅がおきたか否かを調べる方法として、増幅産物をアガロースゲル電気泳動した後、エチジウムブロマイド等の核酸特異的結合蛍光試薬を用いて染色の後、UV照射して増幅核酸の有無を検出できる。またほかの様式として、ナイロン膜上に増幅核酸を固定し、標識プローブを用いて検出するサザンブロット法、個体担体上に固定した補足プローブで捕捉した後検出プローブを作用させて検出するサンドイッチハイブリダイゼーション法などが開発されてきた。
上記のような方法により増幅核酸を検出し、容易に多型を同定が行えるように思われるが、実際には、操作は煩雑であり、迅速かつ大量の試料を解析するためには、多大な労力を要するか大規模なラボオートメーションシステムを構築する必要がある。
たとえば電気泳動法によれば野生型及び多型型を別々に検出する必要がありまた泳動像から核酸量を正確に数値化することは困難である。またサザンブロット法やサンドイッチハイブリダイゼーション法ではプローブとのハイブリダイゼーション反応が必要であり、その条件を厳密に整える必要がある。更には過剰なプローブを除去する工程が必要であり、操作は非常に煩雑である。
また、過去においてガラス繊維で構成されたフィルターを用いて抗原−抗体反応などの生物学的特異反応を検出する試みがなされている(たとえば、特許文献3参照)が、塩基多型の道程方法への応用は開示はされていなかった。
特公平4−67960号公報 特公平4−67957号公報 特開平4−318462号公報
本発明の目的は、上記のような課題を解決して、明確にかつ再現性よく核酸配列中の多型を検出することができる方法及びそのための試薬を提供することである。
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意研究の結果、上記の従来法に対して、特定の核酸配列を含む試料溶液に第一のリガンドが結合した該特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドを用いて、増幅反応と同時およびまたは増幅反応後、該核酸配列の塩基多型部位に特異的に結合する第二のリガンドが結合された結合体を接触させ、特定の核酸配列と結合した第二のリガンド結合体との複合体を検出することによって試料溶液中に含まれる塩基多型を同定する方法において、上記第一のリガンドの補捉剤が結合された通液性フィルターの表面に滴下して、該複合体の第一のリガンド部分を、該リガンド補捉剤に結合させる工程;該通液性フィルターの表面に、該複合体の第一のリガンド部分を、該リガンド補捉剤に結合させる工程;該通液性フィルターの表面に、上記第二のリガンドに結合する、標識された生理活性物質の溶液を滴下して、この標識を持つ生理活性物質を、第一のリガンド補捉剤とリガンド部分とを介して通液性フィルターに結合している第二のリガンドに結合させる工程;必要により通液性フィルター を洗浄することにより未結合の標識生理活性物質を除去する工程;そして通液性フィルターに結合した標識を測定する工程からなることを特徴とする、通液性フィルター を用いる塩基多型の同定方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
[1]特定の核酸配列を含む試料溶液に第一のリガンドが結合した該特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドを用いて、増幅反応と同時およびまたは増幅反応後、該核酸配列の塩基多型部位に特異的に結合する第二のリガンドが結合された結合体を接触させ、特定の核酸配列と結合した第二のリガンド結合体との複合体を検出することによって試料溶液中に含まれる塩基多型を同定する方法において、上記第一のリガンドの補捉剤が結合された通液性フィルターの表面に滴下して、該複合体の第一のリガンド部分を、該リガンド補捉剤に結合させる工程;該通液性フィルターの表面に、上記第二のリガンドに結合する、標識された生理活性物質の溶液を滴下して、この標識を持つ生理活性物質を、第一のリガンド補捉剤とリガンド部分とを介して通液性フィルターに結合している第二のリガンドに結合させる工程;必要により通液性フィルター を洗浄することにより未結合の標識生理活性物質を除去する工程;そして通液性フィルターに結合した標識を測定する工程からなることを特徴とする、通液性フィルター を用いる塩基多型の同定方法 。
[2] 該特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドに結合されている第一のリガンドが抗原、抗体、蛍光物質、発光団および酵素よりなる群から選ばれたいずれかである塩基多型の同定方法。
[3]該核酸配列に特異的に結合する結合体に結合している第二のリガンドが標識が抗原、抗体、蛍光物質、発光団および酵素よりなる群から選ばれたいずれかである塩基多型の同定方法。
[4]増幅反応がPCR、NASBA、LCR、SDA、RCA、TMA、LAMPおよびICANよりなる群から選ばれたいずれかの方法であることを特徴とする塩基多型の同定方法。
[5]第一のリガンドの捕捉剤が抗体、オリゴヌクレオチド、レセプター、核酸特異的結合物質、アビジンよりなる群から選ばれたいずれかである塩基多型の同定方法
[6]第二のリガンドに結合する生理活性物質が抗体、オリゴヌクレオチド、レセプター、核酸特異的結合物質、アビジンよりなる群から選ばれたいずれかである塩基多型の同定方法
[7]生理活性物質に結合される標識が、蛍光化学物質、発光団、酵素、蛍光蛋白質、発光蛋白質、磁性体、導電性物質よりなる群から選ばれたいずれかである塩基多型の同定方法
[8]通液性フィルターとして、繊維質通液性フィルターを用いることを特徴とする塩基多型の同定方法
[9]少なくとも第一のリガンドが結合したオリゴヌクレオチド、第二のリガンドが結合した結合体、ポリメラーゼ、第一のリガンド捕捉剤結合通液性フィルター、標識された第二のリガンドと結合する生理活性物質を含む塩基多型同定キット。
[10]リガンド補捉剤がスペーサを介して結合している繊維質通液性フィルター を用いることを特徴とする塩基多型の同定方法 。
本発明により、試料核酸中の塩基多型を明確にまた簡便に検出できる方法が提供される。本発明の方法では、これまでの方法のように煩雑な操作を必要としないので、迅速で容易に再現性の良い結果が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。試料中に含まれる特定の塩基多型部位を含む染色体又はその断片は、目的の遺伝子の情報を担う塩基多型部位を含む標的核酸であれば、特に制限されない。該標的核酸の例としては、Alu配列、蛋白質をコードする遺伝子のエキソンやイントロン、プロモーターなどが例示できる。より具体的には、遺伝病を含む各種疾患、薬物代謝、生活習慣病(高血圧、糖尿病等)に関連する遺伝子が挙げられる。例えば、高血圧としてACE(Angiotensin IConverting Enzyme)遺伝子が挙げられる。
本発明において、核酸配列を単に核酸ということがある。変異型核酸とは、野生型核酸のうち少なくとも1つ、好ましくは1つのヌクレオチドが点突然変異して他のヌクレオチドに置換されているものや、野生型核酸の一部に挿入、欠失配列等を含む核酸のことであり、どの部位のヌクレオチドが変異しているかが解明されているものである。このような塩基多型により体質等が異なっていることが解明されてきており、本発明の方法は試料中の核酸がこのような予想される変異を有しているか否かを検査する方法である。
本発明において、特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドとは、対象となる塩基多型部位を含む染色体又はその断片に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドであって、既知の増幅方法であるPCR、NASBA、LCR、SDA、RCA、TMA、LAMPおよびICAN法に使用できるものであれば特に限定されるものではない。
本発明に用いられるリガンドが結合された多型部位と特異的に結合する結合体は、好適には各多型部位に相補的なオリゴヌクレオチドにリガンドが結合されたものを用いることができ、オリゴヌクレオチドにリガンドが結合する部位は特に限定されない。
本発明におけるオリゴヌクレオチドの長さとしては、9〜35塩基、好ましくは、11〜30塩基である。
本発明においては、第一のリガンドが結合した上記特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドと第二のリガンドが結合された多型部位と特異的に結合する結合体は、別々、又は同時に作用させることが可能である。
本発明において、第一のリガンドが結合した特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドの伸長方法は、基本的には、従来の方法を用いて行うことができる。通常、一本鎖に変性させた特定の塩基多型部位を含む染色体又はその断片に、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)及びDNAポリメラーゼを共に、作用させることで、標的核酸を鋳型としてオリゴヌクレオチドが伸長する。
該伸長反応は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Sambrookら、1989年)に記載の方法に従って行うことができる。また、該オリゴヌクレオチドが伸長されたか否かによって塩基多型を検出する方法において、標的核酸が検出するのに十分な量が含まれていない場合、予め前記多型配列を含む核酸断片を以下に示す増幅反応によって、増幅しておくことも可能である。
本発明において、特定の塩基多型部位を含む染色体又は断片の増幅方法も、基本的には、従来の方法を用いて行うことができ、通常、一本鎖に変性させた特定の塩基多型部位を含む染色体又はその断片に、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)及びDNAポリメラーゼ及び特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドを作用させることで、標的核酸を鋳型として用いたオリゴヌクレオチド間の配列が増幅される。
核酸増幅方法としては、PCR、NASBA(Nucleic acid sequence-basedamplification method;Nature 第350巻、第91頁(1991年))、LCR(国際公開89/12696号公報、特開平2−2934号公報)、SDA(Strand Displacement Amplification:Nucleic acid research 第20巻、第1691頁(1992年))、RCA(国際公開90/1069号公報)、TMA(Transcription mediated amplification method;J.Clin.Microbiol. 第31巻、第3270頁(1993年))、LAMP(loop-mediated isothermal amplification method:J Clin Microbiol. 第42巻:第1,956頁(2004年))、ICAN(isothermal and chimeric primer-initiated amplification of nucleic acids:Kekkaku. 第78巻、第533頁(2003年))などが挙げられる。
なかでもPCR法は、試料核酸、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸、一対のオリゴヌクレオチド及び耐熱性DNAポリメラーゼの存在下で、変性、アニーリング、伸長の3工程からなるサイクルを繰り返すことにより、上記一対のオリゴヌクレオチドで挟まれる試料核酸の領域を指数関数的に増幅させる方法である。すなわち、変性工程で試料の核酸を変性し、続くアニーリング工程において各オリゴヌクレオチドと、それぞれに相補的な一本鎖試料核酸上の領域とをハイブリダイズさせ、続く伸長工程で、各オリゴヌクレオチドを起点としてDNAポリメラーゼの働きにより鋳型となる各一本鎖試料核酸に相補的なDNA鎖を伸長させ、二本鎖DNAとする。この1サイクルにより、1本の二本鎖DNAが2本の二本鎖DNAに増幅される。従って、このサイクルをn回繰り返せば、理論上上記一対のオリゴヌクレオチドで挟まれた試料DNAの領域は2倍に増幅される。増幅されたDNA領域は大量に存在するので、電気泳動等の方法により容易に検出できる。よって、遺伝子増幅法を用いれば、従来では検出不可能であった、極めて微量(1分子でも可)の試料核酸をも検出することが可能であり、最近非常に広く用いられている技術である。
上記のような核酸増幅法を利用した方法では、反応後に、多型部位を含む遺伝子断片と第二のリガンドが結合した結合体との複合体が形成され、試料中に含まれる鋳型配列が野生型配列の場合、野生型配列と結合する第二のリガンドが結合した結合体との複合体を、試料中に含まれる鋳型配列が変異型配列の場合、変異型配列と結合する第二のリガンドが結合した結合体との複合体を形成する。
使用されるリガンドは核酸配列の検出を妨げるものでないのであれば、特に限定されるものではないが、好適には抗原、抗体、蛍光物質、発光団、および酵素アビジン、ビオチン、ジゴケシゲニンからなる群から選ぶことができる。
形成された複合体を、第一のリガンド捕捉剤が結合された通液性フィルターに滴下し通液性上に該複合体を捕捉する。リガンド捕捉剤としては、抗体、オリゴヌクレオチド、レセプター核酸特異的結合物質、アビジン、ビオチン、ジゴケシゲニンより適宜選択することが可能である。
通液性フィルター上に捕捉された複合体に対し、第二のリガンドと結合する標識された生理活性物質を滴下し、通液性フィルター上に複合体を介して標識生理活性物質を結合させる方法において、予め該複合体と混合させておくことも可能であり、該複合体を通液性フィルター上に捕捉した後、滴下することも可能である。
通液性フィルター上に添加することにより、余分な液はフィルターを通して下に落ち、被検出物はフィルター上およびフィルター上部の孔部分に結合され、検出感度も向上される。
用いられる生理活性物質は複合体に親和性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、好適には抗体、オリゴヌクレオチド、レセプター、核酸特異的結合物質、アビジン、ビオチン、ジゴケシゲニンよりなる群より選ぶことができる。
生理活性物質に結合される標識としては、蛍光化学物質、発光団、酵素、蛍光蛋白質、発光蛋白質、磁性体、導電性物質よりなる群より選ぶことができる。
通液性フィルター上に複合体を介して結合された標識と未反応の標識は、上部より洗浄液を滴下することによって、容易にさらに高精度で分離することが可能である。従来の方法では、ポリスチレンのプレートまたは粒子上に捕捉されるため、洗浄工程は、吐出および吸引を繰り返すか、遠心分離等の手段によって分離するため、複数の工程と、特別の機器を必要としていた。これらの作業が、単純に通液性フィルターを用い、必要によりに洗浄液を滴下することによってのみ解決されることは、従来の知見からは予想だにできないことであった。
通液性フィルターとしては、液をフィルターに滴下した際に、液がフィルター表層を通過していくものであればどのような形態でも良く、織布、不織布、多孔質体が挙げられる。フィルターの素材としては、ガラス、セラミック、金属、プラスチックなどが挙げられ、プラスチックとしては、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリパラメチルスチレン、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド、ポリ−p−ヒドロキシ安息香酸、ポリウレタン、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂およびユリア樹脂樹脂などが例示される。
具体的には、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、多孔質ガラス、多孔質セラミック(セラミック焼結体)、金属焼結体、独立気泡型の発泡樹脂、各種繊維の織布、不織布が挙げられる。
これらの中でも好ましくはガラス繊維フィルターであり、繊維の平均直径が0.3〜2.0μmのものが好ましく、平均繊維長は0.5〜2mmのものが好ましい。好ましいガラス繊維フィルターの具体例は特開平4−318462号公報に記載されており、これをそのまま用いることができる。また、用いられうるプラスチック製のフィルターの例としては特開2000−65832号公報に詳細が記載されており、この技術をそのまま用いることができる。
なお、フィルターは容器に収納して使用することができる。容器は、液体不透過性の材料で構成されており、試薬を適用する範囲を限定するための開口部を有している。多孔性担体は開口部の下部に設置される。そしてフィルターの下部に、フィルターを通過した試薬を吸収する吸収層が設けられている。必要に応じて、多孔性担体と吸収層の間に逆流防止層を設け、吸収層に収納された試薬が多孔性担体に逆流するのを防ぐ場合もある。液体不透過性の材料としては、液体を透過させない物質であればよく、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂が液体不透過性、成形の容易さ等の点で好ましい。吸収層としては、液体を吸収し得るものであれば特に限定されないが、例えば液体の吸収性が高いセルロース、またはセルロース誘導体を主成分とする紙の重層物などが挙げられる。また、上記逆流防止層としては、疎水性の不繊布シート、ウェーブ材などが例示される。なお、この技術は特開2004−156985号公報に具体的に記載されている。
また、このようなフィルターを使用することにより、自動検出にも容易に展開が可能である。
通液性フィルター上に複合体を介して結合された標識の検出は既知の方法であれば特に限定されるものではないが、標識が蛍光化学物質または蛍光蛋白質の場合、特定波長の光を照射し蛍光化学物質または蛍光蛋白質を励起させ、基底状態に変換される際に生じる特定波長の蛍光量を測定することが可能である。これらに用いられる蛍光化学物質としては、FITC、FAM、TAMRA、TexasRed、VIC、Cy3、Cy5、HEX等が挙げられ、蛍光蛋白質としては、GFP、YFP、RFP等を挙げることができる。標識が酵素である場合、酵素の基質を添加することによって生成される反応生成物を検出することによって測定が可能である。これらに用いられる酵素と基質の組み合わせとしては、アルカリフォスファターゼとパラニトロフェニルリン酸、CDP−star、AMPPD、DDAOphospate、BCIP−NBT等の組み合わせ、パーオキシダーゼとTMB、Lumi−Light(ロッシュ・ダイアグノスティックス)、SAT−1(同仁化学)等の組み合わせ、ジアホラーゼとNTB等の組み合わせ、各種オキシダーゼと基質、各種デヒドロゲナーゼと基質の組み合わせ等、反応性生物が検出されるものであれば、これらに限定されることはなく用いることが可能である。標識が磁性体の場合、磁気を検出することによって測定が可能である。標識が導電性物質、電流値を検出することによって測定が可能である。
試料中に含まれる核酸の配列が野生型である場合、野生型配列に特異的に結合する第二のリガンドが結合された結合体を用いることにより複合体が形成され、該複合体を通液性フィルター上で検出することによって、容易に野生型配列であると判定することが可能である。試料中に含まれる核酸配列が変異型である場合も同様に、変異型配列に特異的に結合する第二のリガンドが結合された結合体を用いて検出することが可能である。従って、一つの試料を二つに分け、一方は野生型配列と特異的に結合する第二のリガンドが結合された結合体を用いて反応を行い、他方は変異型配列と特異的に結合する第二のリガンドが結合された結合体を用いて反応を行い、検出することにより、試料核酸が野生型であるか変異型であるかを明確に知ることができる。特に、ヒトを始め、高等生物は、1種類の遺伝子について、父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子をそれぞれ1つずつ有しているが、この方法によれば、試料遺伝子が野生型のホモか、変異型のホモか、あるいは、両方のヘテロかを区別することもできる。すなわち、ヘテロの場合には、野生型遺伝子と変異型遺伝子が共に存在するから野生型と変異型の両方で検出される。
キット
本発明において、キットとしては、少なくとも第一のリガンドが結合したオリゴヌクレオチド、第二のリガンドが結合した結合体、ポリメラーゼ、第一のリガンド捕捉剤結合通液性フィルター、第二のリガンドと結合する標識生理活性物質を含むものである。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
Methylenetetrahydrofolatereductase(MTHFR)遺伝子の塩基多型 (677C→T)の検出
(1)Methylenetetrahydrofolatereductase遺伝子の677番目の多型を検出するオリゴヌクレオチドの合成
パーキンエルマー社製DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて、配列番号1〜4に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ1〜3と示す)を合成した。合成はマニュアルに従い、各種オリゴヌクレオチドの脱保護はアンモニア水で55℃、一夜実施した。オリゴヌクレオチドの精製はパーキンエルマー社OPCカラムにて実施した。もしくはDNA合成受託会社((株)日本バイオサービス、(株)サワディー、GENSET KK、アマシャムファルマシア バイオテク(株)等)に依頼した。
オリゴ1がセンス鎖であり、オリゴ2と組み合わせて増幅反応のオリゴヌクレオチドとして使用される。オリゴ3は野生型検出用オリゴヌクレオチドであり、オリゴ4は変異型検出用オリゴヌクレオチドである。オリゴ2は5’末端をビオチンにより標識され、オリゴ3、4は3’末端をFITCにより標識されている。
(2)PCR法によるMethylenetetrahydrofolatereductase遺伝子多型の解析
PCR法による増幅反応ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法により抽出したDNA溶液をサンプルとして使用して、下記試薬を添加して、下記条件によりヒトMethylenetetrahydrofolatereductase(MTHFR)遺伝子の塩基多型 (677C→T)を解析した。
試薬
以下の試薬を含む25μl溶液を調製した。
Taq DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ1および2(オリゴ2は5’末端をビオチンにより標識) 5pmol、
オリゴ3 またはオリゴ4(3’末端をFITCにより標識) 5pmol、
×10緩衝液 2.5μl、
2mM dNTP 2.5μl、
25mM MgCl 1.5μl、
Taq DNAポリメラーゼ 1.3U、
抽出DNA溶液 100ng
増幅条件
95℃・5分
95℃・30秒、
67℃・30秒、
72℃・30秒(40サイクル)
72℃・2分、
95℃・3分、
15℃・15分。
(3)通液性フィルターを用いた検出
増幅反応液20μlをPOD標識抗FITC抗体(DAKO Cytomation製)の溶液30μlに加えて、室温にて5分間反応させた。これによって、増幅されたMTHFR遺伝子断片と結合したFITC標識オリゴヌクレオチドとPOD標識抗FITC抗体が結合する。この反応液をアビジンの結合した通液性フィルターに添加するとフィルター上に増幅されたMTHFR遺伝子断片が捕捉される。次に、上部より洗浄液およびPOD基質液を順次添加後、フィルター表面の発色を目視によって確認した。なお、アビジンの結合したガラス繊維不織布フィルターは特開2004−156985号公報の実施例1に準じて行った。
Figure 2006020510
実施例2
Cytochrome P450 2C19(CYP2C19)遺伝子の塩基多型 (681G→A)の検出
(1)CYP2C19遺伝子の681番目の多型を検出するオリゴヌクレオチドの合成
パーキンエルマー社製DNAシンセサイザー392型を用いて、ホスホアミダイト法にて、配列番号5〜8に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、オリゴ5〜8と示す)を合成した。合成はマニュアルに従い、各種オリゴヌクレオチドの脱保護はアンモニア水で55℃、一夜実施した。オリゴヌクレオチドの精製はパーキンエルマー社OPCカラムにて実施した。もしくはDNA合成受託会社((株)日本バイオサービス、(株)サワディー、GENSET KK、アマシャムファルマシア バイオテク(株)等)に依頼した。
オリゴ5がセンス鎖であり、オリゴ6と組み合わせて増幅反応のオリゴヌクレオチドとして使用される。オリゴ7は野生型検出用オリゴヌクレオチドであり、オリゴ8は変異型検出用オリゴヌクレオチドである。オリゴ6は5’末端をビオチンにより標識され、オリゴ7、8は3’末端をFITCにより標識されている。
(2)PCR法によるCYP2C19遺伝子多型の解析
PCR法による増幅反応ヒト白血球からフェノール・クロロフォルム法により抽出したDNA溶液をサンプルとして使用して、下記試薬を添加して、下記条件によりヒトCYP2C19遺伝子の塩基多型 (681G→A)を解析した。
試薬
以下の試薬を含む25μl溶液を調製した。
Taq DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ5および6(オリゴ6は5’末端をビオチンにより標識) 5pmol、
オリゴ7またはオリゴ8(3’末端をFITCにより標識) 5pmol、
×10緩衝液 2.5μl、
2mM dNTP 2.5μl、
25mM MgCl 2μl、
Taq DNAポリメラーゼ 1.3U、
抽出DNA溶液 100ng
増幅条件
95℃・5分
95℃・30秒、
67℃・30秒、
72℃、30秒(40サイクル)
72℃・2分、
95℃・3分、
15℃・15分。
(3)通液性フィルターを用いた検出
増幅反応液20μlをPOD標識抗FITC抗体(DAKO Cytomation製)の溶液30μlに加えて、室温にて5分間反応させた。これによって、増幅されたCYP2C19遺伝子断片と結合したFITC標識オリゴヌクレオチドとPOD標識抗FITC抗体が結合する。この反応液をアビジンの結合した通液性フィルターに添加するとフィルター上に増幅されたCYP2C19遺伝子断片が捕捉される。次に、上部より洗浄液およびPOD基質液を順次添加後、フィルター表面の発色を目視によって確認した。
Figure 2006020510
上記のように、特定の核酸配列を含む試料溶液に第一のリガンドが結合した該特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドを用いて、増幅反応と同時およびまたは増幅反応後、該核酸配列の塩基多型部位に特異的に結合する第二のリガンドが結合された結合体を接触させ、特定の核酸配列と結合した第二のリガンドが結合した結合体との複合体を検出することによって試料溶液中に含まれる塩基多型を同定する方法において、上記第一のリガンド結合体の補捉剤が結合された通液性フィルターの表面に滴下して、該複合体のリガンド部分を、該リガンド補捉剤に結合させる工程;該通液性フィルターの表面に、上記第二のリガンドに結合する、標識された生理活性物質の溶液を滴下して、この標識を持つ生理活性物質を、第一のリガンド補捉剤とリガンド部分とを介して通液性フィルターに結合している第二のリガンドに結合させる工程;通液性フィルター を洗浄することにより未結合の標識生理活性物質を除去する工程;そして通液性フィルターに結合した標識を測定することで、容易にかつ迅速に遺伝子型を明確に判定することができた。
上述したように、本発明により、試料核酸中の塩基多型を明確にまた簡便に検出できる方法が提供される。本発明の方法では、これまでの方法のように煩雑な操作を必要としないので、迅速で容易に再現性の良い結果が得られた。

Claims (10)

  1. 特定の核酸配列を含む試料溶液に第一のリガンドが結合した該特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドを用いて、増幅反応と同時およびまたは増幅反応後、該核酸配列の塩基多型部位に特異的に結合する第二のリガンドが結合された結合体を接触させ、特定の核酸配列と結合した第二のリガンド結合体との複合体を検出することによって試料溶液中に含まれる塩基多型を同定する方法において、上記第一のリガンドの補捉剤が結合された通液性フィルターの表面に滴下して、該複合体の第一のリガンド部分を、該リガンド補捉剤に結合させる工程;該通液性フィルターの表面に、上記第二のリガンドに結合する、標識された生理活性物質の溶液を滴下して、この標識を持つ生理活性物質を、第一のリガンド補捉剤とリガンド部分とを介して通液性フィルターに結合している第二のリガンドに結合させる工程;通液性フィルターに結合した標識を測定する工程、からなることを特徴とする、通液性フィルター を用いる塩基多型の同定方法。
  2. 該特定核酸配列増幅用オリゴヌクレオチドに結合されている第一のリガンドが抗原、抗体、蛍光物質、発光団および酵素よりなる群から選ばれたいずれかである請求項1に記載の方法。
  3. 該核酸配列に特異的に結合する結合体に結合している第二のリガンドが標識が抗原、抗体、蛍光物質、発光団および酵素よりなる群から選ばれたいずれかである請求項1に記載の方法。
  4. 増幅反応がPCR、NASBA、LCR、SDA、RCA、TMA、LAMPおよびICANよりなる群から選ばれたいずれかの方法であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 第一のリガンドの捕捉剤が抗体、オリゴヌクレオチド、レセプター、核酸特異的結合物質、アビジンよりなる群から選ばれたいずれかである請求項1に記載の方法
  6. 第二のリガンドに結合する生理活性物質が抗体、オリゴヌクレオチド、レセプター、核酸特異的結合物質、アビジンよりなる群から選ばれたいずれかである請求項1に記載の方法
  7. 生理活性物質に結合される標識が、蛍光化学物質、発光団、酵素、蛍光蛋白質、発光蛋白質、磁性体、導電性物質よりなる群から選ばれたいずれかである請求項1に記載の方法
  8. 通液性フィルターとして、繊維質通液性フィルターを用いることを特徴とする請求項1に記載の方法
  9. 少なくとも第一のリガンドが結合したオリゴヌクレオチド、第二のリガンドが結合した結合体、ポリメラーゼ、第一のリガンド捕捉剤結合通液性フィルター、標識された第二のリガンドと結合する生理活性物質を含む塩基多型同定キット。
  10. リガンド補捉剤がスペーサを介して結合している繊維質通液性フィルター を用いることを特徴とする請求項1乃至9のうちのいずれかの項に記載の方法。
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