JP2006019675A - 金属パターン形成方法及び導電膜形成方法 - Google Patents

金属パターン形成方法及び導電膜形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基板界面の凹凸が少ない場合であって基板と金属膜との密着性に優れた金属パターン、金属膜を形成可能な、金属パターン形成方法及び導電膜形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明の金属パターン形成方法は、(a)好ましくは表面凹凸が500nm以下の平滑な基板上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成する工程と、(b)該重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成する工程と、(c)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)無電解メッキを行い、パターン状の金属膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、基板表面にパターン状に金属膜を有する金属パターン形成方法及び基板表面全域に金属膜を有する導電膜形成方法に関し、特に、金属配線板、プリント配線基板として有用な金属パターン形成方法及び導電膜形成方法に関する。
従来の金属パターン形成方法としては、主に「サブトラクティブ法」、「セミアディティブ法」、「フルアディティブ法」が知られている。
サブトラクティブ法とは、基板上に形成された金属の層に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層に像様露光し、現像してレジスト像を形成し、ついで、金属をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。この手法で使用される金属基板は、基板と金属層との密着性を持たせるために基板界面を凹凸処理してアンカー効果により密着性を発現させていた。その結果、出来上がる金属パターンの基板界面部が凹凸になってしまい、電気配線として使用する際、高周波特性が悪くなるという問題点があった。更に、金属基板を形成する際、基板を凹凸処理するため、クロム酸などの強酸で基板を処理するという煩雑な工程が必要であるいという問題点があった。
この問題を解決するために、基板表面を表面グラフト処理することで、基板の処理工程を簡易し、ある程度の密着性を実現する方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。しかし、この手法で作製した金属基板をサブトラクティブ法によりパターン化しても、サブトラクティブ法に特有の問題点がある。即ち、サブトラクティブ法により高細線幅の金属パターンを形成するためには、レジストパターンの線幅よりもエッチング後の線幅が細くなる、いわゆるオーバーエッチング法が有効である。しかしながら、オーバーエッチング法により、微細金属パターンを直接形成しようとすると、線のにじみやかすれ、断線等が発生しやすくなり、良好な微細金属パターンを形成するという観点からは、30μm以下の金属パターンの形成は難しいという問題があった。また、パターンが形成されたエリア以外のエリアに存在する金属膜をエッチング処理によって除去するため無駄が多く、また、そのエッチング処理によって生じる金属廃液の処理に費用がかかるなど、環境、価格面でも問題があった。
この問題を解決するために、セミアディティブ法と呼ばれる金属パターン形成手法が提案されている。セミアディティブ法とは、基板上にメッキ等により薄くCr等の下地基板層を形成し、該下地金属層上にレジストパターンを形成し、続いて、レジストパターン以外の領域の下地金属層上にメッキによりCu等の金属層を形成した後、レジストパターンを除去する事により配線パターンを形成し、更に、該配線パターンをマスクとして下地金属層をエッチングし、レジストパターン以外の領域に金属パターンを形成する方法である。この手法は、エッチングする層が薄いために30μm以下の細線パターンの形成が容易である。また、メッキにより必要な部分にのみ金属を析出させるため、環境、価格面でも有効である。しかしながら、この手法では、基板と金属パターンの密着性を持たせるために基板表面を凹凸処理する必要があり、その結果、出来上がる金属パターンの基板界面部が凹凸になってしまい、電気配線として使用する際、高周波特性が悪くなるという問題点があった。
また、フルアディティブ法と呼ばれる金属パターン形成方法についても提案がなされている。フルアディティブ法とは、基板上にレジストパターンを形成し、レジストパターン以外の領域にメッキにより金属を析出させ、その後にレジストパターンを除去する方法である。エッチングレスの手法であるために、この手法も30μm以下の細線パターンの形成が容易であるが、セミアディティブ法と同様に基板界面部が凹凸になってしまい、電気配線として使用する際、高周波特性が悪くなる、という問題点を有している。
以上述べたのように、細線パターンが形成でき、基板界面の凹凸が少なく、エッチング廃液の少ない、金属パターン形成方法は未だ提供されておらず、新たな金属パターン形成方法が望まれていた。
特開昭58−196238号公報 「Advanced Materials」,2000年,第20号,p.1481−1494
上記従来の技術的問題点を考慮してなされた本発明の目的は、基板との密着性に優れ、基板との界面における凹凸が小さい金属パターン或いは金属膜(導電膜)を形成しうる金属パターン形成方法及び導電膜形成方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、基板と金属膜との密着性に優れた微細な金属パターンを、エッチング工程を行うことなく形成が可能である金属パターンの形成方法を提供することにある。
本発明者等は、鋭意検討の結果、基板上に特定の重合開始層を形成し、該層上に無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成して、当該領域に対して無電解メッキを行うこと、或いは、該重合開始層上に無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを全面わたり直接化学結合させ、当該領域に対して無電解メッキを行うことで、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の請求項1に係る金属パターン形成方法は、(a)基板上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成する工程と、(b)該重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成する工程と、(c)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)無電解メッキを行い、パターン状の金属膜を形成する工程と、を順次有することを特徴とする。
本発明における(a)工程、即ち、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化して重合開始層を形成する工程において、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーの架橋反応による固定化が、架橋剤を用いた架橋反応により行なわれることが好ましい。
また、前記架橋剤を用いた架橋反応は、50℃以上300℃以下の温度条件下で行なわれることが好ましい。
本発明における(b)工程、即ち、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成する工程としては、以下に示す(b1)〜(b3)の態様が挙げられる。
(b1)(b1−1)前記重合開始層上に、熱、酸、又は輻射線により、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する構造へと変化する官能基、若しくは、該相互作用を失う官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、(b−1−2)該ポリマー層に、熱、酸、又は輻射線をパターン状に付与して、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程、とを有する態様。
(b2)前記重合開始層上に、重合性基、及び、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、輻射線をパターン状に照射し、該化合物を該重合開始層に直接化学結合させて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程を有する態様。
(b3)(b3−1)前記重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、(b3−2)該ポリマー層に輻射線をパターン状に照射し、該重合開始層をアブレーションさせて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程、とを有する態様。
本発明の金属パターン形成方法においては、前記(d)工程後、(e)電気メッキを行う工程を有することができ、これにより任意の膜厚を有する金属パターンを容易に形成することができる。
また、本発明の請求項6に係る導電膜形成方法は、(a)基板上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成する工程と、(b’)該重合開始層表面全面に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを直接化学結合させてグラフトポリマーを形成する工程と、(c)該グラフトポリマーに無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)無電解メッキを行い、金属膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
ここで、前記(b’)工程において、重合開始層にエネルギーを付与して活性点を発生させ、該活性点を起点として該基板表面と直接結合し且つ無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するグラフトポリマーを生成させることが好ましく、この時のエネルギー付与方法としては活性光線を照射する方法が好ましい。
本発明の導電膜形成方法においては、前記(d)工程後、(e)電気メッキを行う工程を有することができ、これにより任意の膜厚を有する導電膜を容易に形成することができる。
前記本発明の金属パターン形成方法或いは導電膜形成方法は、基板界面の凹凸が少ない場合であって基板と金属膜との密着性に優れた金属パターン或いは金属膜(導電膜)を形成しうることを特徴とするが、ここで用いられる基板の平滑性の目安としては、表面の凹凸が500nm以下の基板であることが挙げられる。即ち、前記本発明の方法によれば、表面の凹凸が500nm以下である平滑な基板上に、密着性の良好な、例えば、基板との密着性が0.2kN/m以上であるような金属パターンを形成しうる。
ここで、表面の凹凸が500nm以下の基板を用いることで、その上にポリマーパターンを形成した場合、ポリマーパターンの表面凹凸もまた500nm以下になる。このようなパターンに無電解メッキ触媒またはその前駆体を付与し、無電解メッキすることにより、概パターン中にもメッキ触媒、メッキ金属が入り込んだ状態(コンポジット状態)で、かつ、そのパターン上に金属メッキ膜が形成された状態となる。かくして形成された金属パターンの基板界面部(金属と有機成分の界面)の粗さは、メッキ触媒、メッキ金属がポリマーパターン入り込んだ分、ポリマーパターン表面の粗さに比較して若干は粗くなるが、その程度は低いため、金属パターンにおけるメッキ及びメッキ触媒層(無機成分)とポリマー層(有機成分)との界面における凹凸は、形成される金属膜(金属パターン)の高周波特性が低下しない程度に押さえることができる。このために、金属パターンを電気配線として使用する際、優れた高周波特性が得られる。高周波特性とは、高周波送電時の伝送損失が低くなる特性であり、伝送損失の中でも特に導体損失が低くなる特性である。
ここで、基板表面の凹凸を小さくすると、金属パターンの基板界面部の粗さをより抑えることができ、得られる金属パターンの高周波特性が向上するため、表面の凹凸が100nm以下の基板を使用することが好ましい。
本発明においては、この表面凹凸(表面粗さ)の目安として、JIS B0601におけるRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値の差」を用いている。
また、本発明における基板とは、支持体基材の表面に重合開始層(中間層)が形成されたものを指し、表面凹凸は重合開始層(中間層)表面の凹凸を表している。重合開始層表面凹凸は、重合開始層が形成される支持体基材の表面凹凸を反映するため、重合開始層形成前の基材も、その表面凹凸が500nm以下であるものを選択することが好ましい。
本発明の方法により得られる金属パターン、導電膜を、電気配線などに用いる場合、形成された導電部(メッキ触媒、メッキ金属膜)と有機材料(グラフトポリマー)との界面の凹凸が小さくなるほど高周波送電時の電気損失(送電損失)が少なくなる。
本発明における作用は明確ではないが、以下のように推測される。
本発明における特定重合開始層は、光重合開始基がポリマーにペンダントされており、かつ、そのポリマーが架橋反応により硬化していることから、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状もしくは全面に直接化学結合した領域を形成するために、特定重合開始層をモノマー溶液に浸漬、又は、該層上にモノマー溶液を塗布する際において、モノマー溶液に開始剤成分が溶け出すことがなく、基板表面からのみ重合反応が開始すると推測される。一方、表面グラフト化手法において一般的に知られている光重合開始層は、架橋されたバインダー中に開始剤を分散しているものだが、このような光重合開始層では、開始剤の固定化能が低いために、モノマー溶液中に溶け出してしまい、表面からだけでなくモノマー溶液中でも重合反応が開始してしまい、基板表面と直接結合をしていないホモポリマーが副生する。
上述のように、本発明では、開始剤成分の溶け出しが極めて少ない結果、基板表面だけにラジカルが発生し、重合するので、基板表面と直接結合をしていないホモポリマーの副生が抑えられ、メッキにより形成された金属膜が磨耗などによりポリマーごと剥離してしまうことがなくなり、金属膜の密着性が向上したものと推測される。
また、本発明における特定重合開始層は光重合開始基がポリマーにペンダントされていることで、プラズマやγ線などの超活性光線を用いることなく、UVなどの活性光線により簡便に活性種を発生させることができるため、装置上も大掛かりな設備が必要ないという利点を有する。
また、本発明においては、前記態様(b1)〜(b3)において形成された、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域に、選択的に無電解メッキ又はその前駆体を付与し、続いて無電解メッキを行うため、従来のレジストパターンを用いたエッチング処理によるパターン形成方法と比較して、高解像度の金属パターンを容易に得ることができたものと推測される。また、エッチング廃液がでないといった利点をも有する。
本発明の金属パターン形成方法では、基板が表面グラフト処理(詳細は後述する。)されており、その表面グラフト層に無電解メッキ触媒、又は、その前駆体を作用させ、無電解メッキをすると、表面グラフトポリマー鎖は基板界面からの重合により形成されるためその運動性が高く、無電解メッキ触媒、又は、その前駆体と作用しやすい。また、その高い運動性により無電解メッキ液が膜内部に浸透しやすく、無電解メッキが表面グラフト層内部や上部で進行する。その結果、金属パターン部分の基板界面が、基板に直接結合しているポリマーとのハイブリッド状態になる。このため、表面グラフトにより表面改質することで金属パターン部分の基板界面の凹凸が最小限に留められ、且つ、前記ハイブリッド状態により、このような平滑な基板界面上に、密着性に優れた金属膜が形成されるものと推定している。また、特定重合開始層に対して表面グラフト重合することで、基板と結合していないホモポリマーの副生を抑えられ、形成された金属膜と基板との密着性が極めて高くなったものと考えている。
同様に、本発明の導電膜形成方法を用いて作成された導電膜の基板表面は、金属パターンの形成方法の場合と同様、表面グラフト処理が行われることで、無電解メッキが表面グラフト層内部や上部で進行する。その結果、金属膜部分の基板界面が、基板に直接結合しているポリマーとのハイブリッド状態になる。このため、金属パターン部分の基板界面の凹凸が最小限にとどめられ、且つ、このような平滑な基板と金属膜との優れた密着性が発現していると予想している。また、特定重合開始層に対して表面グラフト重合することで、基板と結合していないホモポリマーの副生を抑えられ、形成された金属膜と基板との密着性が極めて高くなったものと考えている。
その結果、このようにして得られた導電膜を形成した基板を用いて、従来のセミアディティブ法やサブトラクティブ法を適用してパターン形成することで、基板界面の凹凸が少ない金属パターンが形成できる。
本発明によれば、平滑性に優れた基板を用いても、基板と金属膜との密着性に優れた金属パターン及び導電膜を形成しうる形成方法を提供することができる。また、本発明の金属パターン形成方法によれば、基板と金属膜との密着性に優れた微細な金属パターンを、エッチング工程を行うことなく形成することができる。
以下、本発明の金属パターン形成方法、導電膜(以下、金属膜と呼ぶ場合もある)形成方法について詳細に説明する。
[金属パターン形成方法]
本発明の金属パターン形成方法は、(a)基板上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成する工程(以下、適宜「重合開始層形成工程」と称する。)と、(b)該重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成する工程(以下、適宜、「パターン形成工程」と称する。)と、(c)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)無電解メッキを行い、パターン状の金属膜を形成する工程と、を順次有することを特徴とする。
即ち、本発明の金属パターン形成方法は、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を設け、該領域に、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与させた後、無電解メッキを行うことと特徴とする。なお、本発明においては、上記無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するポリマーが存在する領域を、適宜「相互作用性領域」と称する。
以下、本発明における各工程について順次説明する。
《(a)重合開始層形成工程》
本工程では、基板上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成する。
まず、本工程において用いられる側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマー(以下、適宜、特定重合開始ポリマー)について説明する。
この特定重合開始ポリマーは、ポリマーの構造中に、重合開始能を有する官能基(以下、適宜、「重合開始基」と称する。)と、架橋性基と、を有するポリマーであり、重合開始基を有する共重合成分と、架橋性基を有する共重合性分と、を含む共重合体であることが好ましい。
本発明において形成される重合開始層は、上記のごとく、特定重合開始ポリマーを含んで構成され、該特定重合開始ポリマーは、重合開始基がポリマー鎖に結合しており、かつ、そのポリマー鎖が架橋反応により固定化された態様を有していることを特徴とする。
本発明においては、このような重合開始層の表面に、後述のごとくグラフトポリマーを生成させるものであるが、上述のような特定重合開始層を設けることにより、重合性基を有する化合物を含有する溶液を接触、又は、塗布する際に、その溶液中に重合開始層中の開始剤成分(重合開始能を有する成分)が溶出することを防止することができる。また、特定重合開始層の形成に際しては、通常のラジカルによる架橋反応のみならず、極性基間の縮合反応や付加反応を使用することも可能であるため、より強固な架橋構造を得ることができる。その結果、重合開始層中の開始剤成分が溶出することをより効率良く防止することができ、重合開始層表面と直接結合をしていないホモポリマーの副生が抑えられることにより、重合開始層表面には直接結合したグラフトポリマーが優先的に生成されることになる。
以下、特定重合開始層ポリマーを構成する各成分について詳細に説明する。
〔重合開始能を有する官能基を有する共重合成分〕
特定重合開始ポリマーを構成する重合開始基を有する共重合成分としては、以下の重合開始能を有する構造がペンダントされた、ラジカル、アニオン、又はカチオン重合可能な重合性基からなることが好ましい。即ち、この共重合成分は、分子内に、重合可能な重合性基と、重合開始能を有する官能基と、が共に存在する構造を有する。
重合開始能を有する構造としては、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(k)ピリジウム類化合物等が挙げられる。以下に、上記(a)〜(k)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(a)芳香族ケトン類
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
中でも、特に好ましい(a)芳香族ケトン類の例を以下に列記する。
特公昭47−6416号に記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号に記載のベンゾインエーテル化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
特公昭47−22326号に記載のα−置換ベンゾイン化合物、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
特公昭47−23664号に記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号に記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号に記載のジアルコキシベンゾフェノン、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
特公昭60−26403号、特開昭62−81345号に記載のベンゾインエーテル類、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
特公平1−34242号、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号に記載のα−アミノベンゾフェノン類、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
特開平2−211452号に記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
特開昭61−194062号に記載のチオ置換芳香族ケトン、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
特公平2−9597号に記載のアシルホスフィンスルフィド、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
特公平2−9596号に記載のアシルホスフィン、例えば、下記化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
また、特公昭63−61950号に記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号に記載のクマリン類等を挙げることもできる。
(b)オニウム塩化合物
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい(b)オニウム塩化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
一般式(1)中、Ar1とAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z2-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
一般式(2)中、Ar3は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z3-は(Z2-と同義の対イオンを表す。
一般式(3)中、R23、R24及びR25は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z4-は(Z2-と同義の対イオンを表す。
本発明において、好適に用いることのできる(b)オニウム塩化合物の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0030]〜[0033]、特開2001−305734号公報の段落番号[0048]〜[0052]、及び、特開2001−343742公報の段落番号[0015]〜[0046]に記載されたものなどを挙げることができる。
(c)有機過酸化物
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれる。その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシラウレート、ターシャリーブチルパーオキシカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
(d)チオ化合物
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい、(d)チオ化合物としては、下記一般式(4)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
一般式(4)中、R26はアルキル基、アリール基又は置換アリール基を示し、R27は水素原子又はアルキル基を示す。また、R26とR27は、互いに結合して酸素、硫黄及び窒素原子から選ばれたヘテロ原子を含んでもよい5員ないし7員環を形成するのに必要な非金属原子群を示す。
一般式(4)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記に示すような化合物が挙げられる。
Figure 2006019675
(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号に記載のロフィンダイマー類、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5
,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,
4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフ
ェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−
クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾー
ル、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェ
ニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テ
トラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,
5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−
4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
(f)ケトオキシムエステル化合物
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい、(f)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
(g)ボレート化合物
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい、(g)ボレート化合物の例としては、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2006019675
一般式(5)中、R28、R29、R30及びR31は、互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、又は置換若しくは非置換の複素環基を示し、R28、R29、R30及びR31はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R28、R29、R30及びR31のうち、少なくとも1つは置換若しくは非置換のアルキル基である。(Z5+はアルカリ金属カチオン又は第4級アンモニウムカチオンを示す。
一般式(5)において、R28〜R31で表されるアルキル基としては、直鎖、分枝、環状のものが含まれ、炭素原子数1〜18のものが好ましい。具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。また、置換アルキル基としては、上記のようなアルキル基に、ハロゲン原子(例えば、−Cl、−Brなど)、シアノ基、ニトロ基、アリール基(好ましくは、フェニル基)、ヒドロキシ基、−COOR32(ここで、R32は、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、−OCOR33又は−OR34(ここで、R33、R34は、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す)、及び下記式で表されるものを置換基として有するものが含まれる。
Figure 2006019675
式中、R35及びR36は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、又はアリール基を示す。
一般式(5)で示される化合物例としては、具体的には、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物、及び以下に示すものが挙げられる。
Figure 2006019675
(h)アジニウム化合物
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい、(h)アジニウム塩化合物としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、及び特公昭46−42363号に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
(i)活性エステル化合物
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい、(i)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223号に記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号に記載の活性スルホネート類を挙げることができる。
(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(6)及び(7)に記載の化合物を挙げることができる。
Figure 2006019675
一般式(6)中、X2はハロゲン原子を表し、Y1は−C(X23、−NH2、−NHR38、−NR38、−OR38を表す。ここで、R38は、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、又は置換アリール基を表す。R37は、−C(X23、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、又は置換アルケニル基を表す。
Figure 2006019675
一般式(7)中、R39は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシル基、ニトロ基、又はシアノ基を表す。X3は、ハロゲン原子を表す。nは、1〜3の整数を表す。
上記一般式(6)及び(7)で表される化合物として、具体的には、下記化合物を上げることができる。
Figure 2006019675
Figure 2006019675
(k)ピリジウム類化合物
本発明において、重合開始能を有する構造として好ましい(k)ピリジウム類化合物の例としては、下記一般式(8)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2006019675
一般式(8)中、好ましくは、R5は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、又は置換アルキニル基を表し、R6、R7、R8、R9、R10は同一であっても異なるものであってもよく、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機残基を表し、少なくとも一つは、下記一般式(9)で表される構造の基を有する。また、R5とR6、R5とR10、R6とR7、R7とR8、R8とR9、R9とR10が互いに結合して環を形成してもよい。更に、Xは対アニオンを表す。mは1〜4の整数を表す。
Figure 2006019675
一般式(9)中、R12、R13はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基又は置換アルキニル基を表し、R11は水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、アミノ基又は置換アミノ基を表す。また、R12とR13、R11とR12、R11とR13が互いに結合して環を形成してもよい。Lはヘテロ原子を含む2価の連結基を表す。
これらの重合開始能を有する構造の中でも、下記に示す構造を有する芳香族ケトン類やトリアジン類が重合性基にペンダントされていることが好ましい。また、好ましい芳香族ケトン類としては、イルガキュア184などの市販品も使用することができる。
Figure 2006019675
また、このような重合開始能を有する構造は、1種のみが重合性基にペンダントされていてもよいし、2種以上がペンダントされていてもよい。
これらの重合開始能を有する構造をペンダントする重合性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基などラジカル、アニオン、カチオン重合できる重合性基があげられる。中でも、特に好ましいのは合成のしやすさよりアクリル基、メタクリル基が好ましい。
本発明における重合開始能を有する官能基を有する共重合成分の具体例としては、以下に示す構造のモノマーが挙げられる。
Figure 2006019675
〔架橋性基を有する共重合成分〕
本発明における特定重合開始ポリマーを構成する架橋性基を有する共重合成分としては、例えば、山下信二編「架橋剤ハンドブック」に掲載されているような従来公知の架橋性基(架橋反応に用いられる構造を有する官能基)がペンダントされた、ラジカル、アニオン、又はカチオン重合可能な重合性基からなることが好ましい。即ち、この共重合成分は、分子内に、重合可能な重合性基と、架橋性基と、が共に存在する構造を有する。
これら従来公知の架橋性基の中でも、カルボン酸基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH2)、イソシアネート基(−NCO)などの、極性基間の縮合反応を起こす架橋性基が好ましい。
また、このような架橋性基は、1種のみが重合性基にペンダントされていてもよいし、2種以上がペンダントされていてもよい。
これらの架橋性基をペンダントする重合性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニル基などラジカル、アニオン、カチオン重合できる重合性基があげられる。中でも、特に好ましいのは合成のしやすさよりアクリル基、メタクリル基が好ましい。
本発明における架橋性基を有する共重合成分の具体例としては、以下に示す構造のモノマーが挙げられる。
Figure 2006019675
〔その他の共重合成分〕
本発明における特定重合開始ポリマーには、皮膜形成性、親/疎水性、溶媒溶解性、重合開始性などを調整するために、以下に示すような第3の共重合成分を用いてもよい。
この第3の共重合成分としては、ラジカル、アニオン、又はカチオン重合可能な化合物ならいかなる化合物も用いることができる。重合性などを考慮すれば、好ましいのは、炭素数が1〜20までのアルキル基がペンダントされた、アクリル、メタクリルモノマーが好ましい。また、この際、アルキル基としては、UV露光により、より多くの活性種を発生させるために、第3級水素を有するアルキル基が好ましい。また、アルキル基は、いかなる置換基で置換されていてもよいが、重合開始層のモノマー溶液への溶け出しを防ぐ観点からは、4級アンモニウム塩構造を有する置換基で置換されていることが好ましい。なお、これらの成分は2種類以上共重合してもよい。
本発明における特定重合開始ポリマーにおいて、重合開始基を有する共重合成分(A)と、架橋性基を有する共重合成分(B)と、の共重合モル比としては、(A)が1〜40モル%、かつ、(B)が20〜70モル%であることが好ましい。グラフト重合反応や架橋反応後の重合開始層の膜性が良好であるという観点からは、(A)が5〜30モル%、かつ、(B)30〜60モル%であることがより好ましい。
本発明における特定重合開始ポリマーの重量平均分子量は、1万〜1000万であることが好ましく、1万〜500万であることがより好ましく、10万〜100万であることが更に好ましい。本発明における特定重合開始ポリマーの重量平均分子量が1万より小さいと、重合開始層がモノマー溶液に溶解しやすくなる場合がある。
これら上述の共重合成分を、共重合させることで本発明における特定重合開始ポリマーを合成することができる。また、共重合体を合成するには、いかなる重合方法をも用いることができるが、重合反応の簡便さの観点からは、ラジカル重合反応を利用することが好ましい。この際、ラジカル重合反応を引き起こすためのラジカル発生剤としては、熱でラジカルを発生させる化合物が好ましい。
以上、本発明における特定重合開始ポリマーについて説明したが、特定重合開始ポリマーが共重合により合成されることに限定されるわけではなく、例えば、側鎖に重合開始基を有するポリマーを合成し、その後、そのポリマー内に、適量の架橋性基を導入することで、本発明における特定重合開始ポリマーを合成してもよいし、はじめに架橋性基を導入しておき、後に重合性基を導入してもよい。また、重合開始基と架橋性基とを共に有する1つのモノマーユニットを重合して、本発明における特定重合開始ポリマーを合成してもよい。
なお、モノマーの入手し易さ等を考慮すると、本発明における特定重合開始ポリマーとしては、重合開始基と架橋性基とを、それぞれ異なるモノマーユニット中に含むものを共重合する態様であることが好ましい。
〔特定重合開始ポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層〕
重合開始層形成工程において、特定重合開始ポリマーを架橋反応により固定化する方法としては、特定重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用する方法、及び架橋剤を併用する方法があり、架橋剤を用いることが好ましい。特定重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用する方法としては、例えば、架橋性基が−NCOである場合、熱をかけることにより自己縮合反応が進行する性質を利用したものである。この自己縮合反応が進行することにより、架橋構造を形成することができる。
また、架橋剤を併用する方法に用いられる架橋剤としては、山下信二編「架橋剤ハンドブック」に掲載されているような従来公知のものを用いることができる。
特定重合開始ポリマー中の架橋性基と架橋剤との好ましい組み合わせとしては、(架橋性基,架橋剤)=(−COOH,多価アミン)、(−COOH,多価アジリジン)、(−COOH,多価イソシアネート)、(−COOH,多価エポキシ)、(−NH2,多価イソシアネート)、(−NH2,アルデヒド類)、(−NCO,多価アミン)、(−NCO,多価イソシアネート)、(−NCO,多価アルコール)、(−NCO,多価エポキシ)、(−OH,多価アルコール)、(−OH,多価ハロゲン化化合物)、(−OH,多価アミン)、(−OH,酸無水物)が挙げられる。中でも、架橋の後にウレタン結合が生成し、高い強度の架橋が形成可能であるという点で、(官能基,架橋剤)=(−OH,多価イソシアネート)が、更に好ましい組み合わせである。
本発明における架橋剤の具体例としては、以下に示す構造のものが挙げられる。
Figure 2006019675
このような架橋剤は、重合開始層の成膜の際、上述の特定重合開始ポリマーを含有する塗布液に添加される。その後、塗膜の加熱乾燥時の熱により、架橋反応が進行し、強固な架橋構造を形成することができる。より詳細には、下記のex1.で示される脱水反応やex2.で示される付加反応により架橋反応が進行し、架橋構造が形成される。これらの反応における温度条件としては、50℃以上300℃以下が好ましく、更に好ましくは80℃以上200℃以下である。
Figure 2006019675
また、塗布液中の架橋剤の添加量としては、特定重合開始ポリマー中に導入されている架橋性基の量により変化するが、通常、架橋性基のモル数に対して0.01〜50当量であることが好ましく、0.01〜10当量であることがより好ましく、0.5〜3当量であることが更に好ましい。架橋剤の添加量がこの上限値より少ない場合、架橋度合が低くなり、重合開始層がモノマー溶液に溶解しやすくなる。また、架橋剤の添加量がこの上限値より多い場合、未反応の架橋剤成分が重合開始層中に残留し、モノマー溶液に溶出するなどして重合反応に悪影響を与える場合がある。
〔重合開始層の成膜〕
本工程においては、上述の特定重合開始ポリマーを適当な溶剤に溶解し、塗布液を調製し、その塗布液を基板(支持体)上に塗布などにより配置し、溶剤を除去し、架橋反応が進行することにより重合開始層を成膜する。この工程は基板の片面のみを行ってもよいし、両面行ってもよい。基板の両面に重合開始層を形成することにより、グラフトパターン形成、金属パターン形成工程を両面に実施することができる。また、同様に、グラフトポリマー形成、導電膜形成も両面に実施することができる。このような態様をとることで、1つの基板でより多くの電気配線を形成できることから、目的に応じて、例えば、これらをFPC用途として使用する場合には、両面に重合開始層を成膜するのが好ましい。
(溶媒)
重合開始層を塗布する際に用いる溶媒は、上述の特定重合開始ポリマーが溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
重合開始層の塗布量は、乾燥後の重量で、0.1〜20g/m2が好ましく、更に、0.1〜15g/m2が好ましい。塗布量0.lg/m2未満では充分な重合開始能を発現できず、グラフト重合が不充分となり、所望の強固なグラフト構造が得られない懸念があり、塗布量が20g/m2を超えると膜性が低下する傾向になり、膜剥がれを起こしやすくなるため、いずれも好ましくない。
〔基材〕
本発明の金属パターン材料の形成方法に適用される基板を形成するための支持体となる基板としては、表面が平滑で、好ましくは表面凹凸が500nm以下であり、且つ、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ樹脂、等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルム等が含まれる。本発明において基板に使用される基材としては、ポリエステルフィルム又はポリイミドフィルムが好ましい。
基材上に重合開始層を形成してなる基板はその表面平滑性に優れていることが、得られる配線の高周波特性の観点から好ましく、具体的には、表面の凹凸が500nm以下の基板を選択することが好ましく、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下である。下限値には特に制限はないが、製造の容易性などの実用上の観点からは5nm程度であると考えられる。なお、本発明の金属膜及び金属パターンを金属配線として用いる場合、表面凹凸が小さくなるほど高周波送電時の電気損失がすくなくなり、好ましい。
先に述べた、JIS B0601の規定に準じた10点平均粗さ(Rz)の値によれば、基板表面の凹凸が500nm以下であり、好ましくは300nm以下、更に好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下であるものが選択される。
基板の表面凹凸が500nm以下となるようにするためには、このような基材として、樹脂基板など、それ自体が平滑なものを選択してもよく、また、表面凹凸が比較的大きなものを用いても、前記した重合開始層を設ける際に、その表面凹凸を好ましい範囲に調製することも可能である。即ち、重合開始層の形成に際しては、その重合開始層表面の凹凸が500nm以下となるよう形成されることが好ましく、この条件は、例えば、皮膜形成時の表面平滑性、塗膜の均一性に留意することで実現することができる。
以上のように、本発明の重合開始層形成工程により、前記基材上に特定重合開始層が形成される。なお、前記の如く以下の説明においては、基材上に特定重合開始層を形成したものを「基板」と称する。
《(b)パターン形成工程》
本工程では、特定重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーが、パターン状に直接化学結合してなる領域(相互作用性領域)を形成する。
相互作用性領域を形成する態様としては、前述した(b1)〜(b3)の態様が挙げられる。以下に(b1)〜(b3)の態様について詳細に説明する。
<態様(b1)>
態様(b1)は、(b1−1)特定重合開始層上に、熱、酸、又は輻射線により、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する構造へと変化する官能基、若しくは、該相互作用を失う官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、
(b1−2)該ポリマー層に、熱、酸、又は輻射線をパターン状に付与して、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程、とを含む態様である。
なお、以下においては、適宜、「熱、酸、又は輻射線により、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する構造へと変化する官能基、若しくは、該相互作用を失う官能基」を、極性変換基と称する。
先ず、態様(b1)における(b1−1)工程について説明する。
〔表面グラフト重合〕
上記(b1−1)工程におけるポリマー層は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて作製される。グラフト重合とは高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法で、特に、活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。本発明においては、この固体表面が前記特定重合開始層となる。また、活性種を与える手段としては、UV光等の幅射線を照射などの手段が挙げられ、これによりエネルギーが付与され、活性種が発生する。
なお、本発明における表面グラフト重合から得られたポリマー層は、特定合開始層表面に対し、極性変換基を有するポリマー鎖の末端がグラフト鎖として直接結合しているグラフトポリマーであってもよいし、極性変換基を有するポリマー鎖が幹高分子化合物を介して結合しているグラフトポリマーであってもよい。
本態様を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、p135や、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。この中でも光グラフト重合法が好ましい。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
次に、本態様に用いられる、極性変換基について説明する。本態様における極性変換基は、(A)熱又は酸により極性が変化するタイプと、(B)輻射線(光)により極性が変化するタイプと、がある。
なお、本発明において「無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基」とは、後述する無電解メッキ触媒又はその前駆体が付着しうる官能基であれば特に制限はないが、一般的には親水性基が挙げられる。
〔(A)熱又は酸により極性が変化する官能基〕
まず、(A)熱又は酸により極性が変化する官能基について説明する。
(A)熱又は酸により極性が変化するタイプの官能基としては、熱又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基と、熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基との2種類がある。
((A−1)熱又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基)
(A−1)熱又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基としては、文献記載の公知の官能基を挙げることができる。
以下に、(A−1)熱又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基、及び該官能基を有する化合物の例を挙げる。
例えば、特開平10−282672号公報に記載のアルキルスルホン酸エステル、ジスルホン、スルホンイミド、EP0652483、WO92/9934記載のアルコキシアルキルエステル、H.Itoら著、Macromolecules,vol.21,pp.1477記載のt−ブチルエステル、その他、シリルエステル、ビニルエステルなどの文献記載の酸分解性基で保護されたカルボン酸エステルなどを挙げることができる。
また、角岡正弘著、「表面」vol.133(1995),p.374記載のイミノスルホネート基、角岡正弘著、Polymer preprints,Japan vol.46(1997),p.2045記載のβケトンスルホン酸エステル類、山岡亜夫著、特開昭63−257750号のニトロベンジルスルホネート化合物も挙げることができるが、これらの官能基に限定される訳ではない。
また、特開2001−117223公報記載の官能基も好適である。該公報に記載された官能基の中でも、特に好ましくは、一般式(1)で表される2級のアルキルスルホン酸エステル基、3級のカルボン酸エステル基、及び、一般式(2)で表されるアルコキシアルキルエステル基が挙げられ、中でも、一般式(1)で表される2級のアルキルスルホン酸エステル基が最も好ましい。以下、特に好ましい官能基の具体例を示す。
Figure 2006019675
((A−2)熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基)
本発明において、(A−2)熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基としては、公知の官能基を挙げることができる。
以下に、(A−2)熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基、及び該官能基を有する化合物の例を挙げる。
例えば、特開平10−296895号及び米国特許第6,190,830号に記載のオニウム塩基を含むポリマー、特にアンモニウム塩を含むポリマーを挙げることができる。具体的なものとしては、(メタ)アクリロルオキシアルキルトリメチルアンモニウムなどを挙げることができる。
また、特開2001−117223公報記載の官能基も好適にである。該公報に記載された官能基の中でも、特に好ましくは、一般式(3)で示されるカルボン酸基及びカルボン酸塩基が好適なものとして挙げられるが、これらの例示に特に限定されるものではない。以下、特に好ましい官能基の具体例を示す。
Figure 2006019675
本発明における極性変換基を有するグラフトポリマーは、上記のような官能基を有するモノマー1種の単独重合体であっても、2種以上の共重合体であってもよい。また、本発明の効果を損なわない限り、他のモノマーとの共重合体であってもよい。
(A−1)熱又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有するモノマーの具体例を以下に示す。
Figure 2006019675
(A−2)熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基を有するモノマーの具体例を以下に示す。
Figure 2006019675
(光熱変換物質)
上述の表面グラフト重合により基板上に形成されたポリマー層に対し、極性変換させるために付与するエネルギーがIRレーザなどの光エネルギーである場合には、該光エネルギーを熱エネルギーに変換するための光熱変換物質を、ポリマー層、基材、及び中間層のどこかに含有させておくことが好ましい。また、重合開始層と基板との間に光熱変換物質層を設け、そこに添加してもよい。
ここで用いられる光熱変換物質としては、紫外線、可視光線、赤外線、白色光線等の光を吸収して熱に変換し得る物質ならば全て使用でき、例えば、カーボンブラック、カーボングラファイト、染料、顔料、フタロシアニン系顔料、鉄粉、黒鉛粉末、酸化鉄粉、酸化鉛、酸化銀、酸化クロム、硫化鉄、硫化クロム等の金属微粒子、等が挙げられる。特に好ましいのは、エネルギー付与に使用する赤外線レーザの露光波長である760nmから1200nmに極大吸収波長を有する染料、顔料又は金属微粒子である。
使用される金属微粒子としては、Au、Ag、Pt、Cu,Ni、Zn、Pd、Cr、Fe、Pb等からなる微粒子、また、それらの金属の酸化物や硫化物からなる微粒子が用いられ、具体的には、鉄粉、黒鉛粉末、酸化鉄粉、酸化鉛、酸化銀、酸化クロム、硫化鉄、硫化クロム等が挙げられる。
光熱変換物質を用いる場合、その含有量としては、感度及び光熱変換物質含有層の膜強度の観点から、光熱変換物質含有層全固形分の0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは3.1〜10質量%の割合で使用することができる。また、金属微粒子の場合は好ましくは、0.01〜50質量%、特に好ましくは、0.1〜30質量%の割合で使用することができる。
(酸発生物質)
上述の表面グラフト重合により基板上に形成されたポリマー層に対し、極性変換させるために酸を付与するためには、酸発生物質を、ポリマー層、ポリマー層の上部、及び中間層のどこかに含有させておくことが好ましい。
酸発生物質としては、熱若しくは光により酸を発生する化合物であり、一般的には、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている公知の光により酸を発生する化合物及びそれらの混合物等を挙げることができ、これらを適宜選択して使用することができる。
例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al.,Polymer,21,423(1980)等に記載のジアゾニウム塩、特開平3−140140号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書等に記載のホスホニウム塩、特開平2−150848号公報、特開平2−296514号公報等に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al.,Polymer J.17,73(1985)、米国特許第3,902,114号明細書、欧州特許第233,567号明細書、同297,443号明細書、同297,442号明細書、米国特許第4,933,377号明細書、同4,491,628号明細書、同5,041,358号明細書、同4,760,013号明細書、同4,734,444号明細書、同2,833,827号明細書、独国特許第2,904,626号明細書、同3,604,580号明細書、同3,604,581号明細書等に記載のスルホニウム塩、
J.V.Crivello et al.,Macromolecules,10(6),1307(1977)等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al.,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478,Tokyo,Oct(1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、特開昭63−298339号公報等に記載の有機ハロゲン化合物、特開平2−161445号公報等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、S.Hayase et al.,J.Polymer Sci.,25,753(1987)、特開昭60−198538号公報、特開昭53−133022号公報等に記載のo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、特開昭64−18143号公報、特開平2−245756号公報、特開平3−140109号公報等に記載のイミノスルホネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号公報等に記載のジスルホン化合物を挙げることができる。
これらの酸発生物質は、感度及び酸発生物質含有層の膜強度の観点から、酸発生物質含有層全固形分の0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%の割合で使用することができる。
〔(B)光により極性が変化する官能基〕
極性が変化する官能基の中でも、700nm以下の光照射により、その極性を変化させるものがある。このような(B)光により極性が変化する官能基(極性変換基:700nm以下の光に感応する極性変換基)は、赤外線などの長波長露光や熱によらず、所定の波長の光照射により直接に、分解、開環或いは二量化反応が生じることで、高感度で極性が変化することを特徴とする。以下、700nm以下の光照射により、極性が変化する官能基について説明する。
(B)光により極性が変化するタイプの官能基については、(B−1)光により疎水性
から親水性に変化する官能基と、(B−2)光により親水性から疎水性に変化する官能基との2種類がある。
((B−1)光により疎水性から親水性に変化する官能基)
(B−1)光により疎水性から親水性に変化する官能基としては、例えば、特開2003−222972号公報に記載の一般式(1)〜(4)、及び、(7)〜(9)で表される官能基を用いることができる。
((B−2)光により親水性から疎水性に変化する官能基)
(B−2)光により親水性から疎水性に変化する官能基としては、例えば、ビスピリジニオエチレン基が挙げられる。
本発明における極性変換基を有するグラフトポリマーは、上記のような官能基を有するモノマー1種の単独重合体であっても、2種以上の共重合体であってもよい。また、本発明の効果を損なわない限り、他のモノマーとの共重合体であってもよい。
次に、態様(b1)おける(b1−2)工程について説明する。
(b1−2)工程は、上記(b1−1)工程にて形成されたポリマー層に対し、加熱、酸の付与、又は光などの輻射線の照射を行い、パターン状に極性変換させて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する領域のパターンを形成する工程である。
態様(b1)におけるパターンの形成は、光などの輻射線の照射或いは加熱により行われる。また、光照射の一態様として、前記光熱変換物質を併用するタイプであれば、赤外線領域のレーザー光等の走査露光による加熱により、パターンを形成することも可能である。
パターン状に極性変換させる方法としては、例えば、加熱や、露光等の輻射線照射による書き込みを用いることができる。例えば、赤外線レーザ、紫外線ランプ、可視光線などによる光照射、γ線などの電子線照射、サーマルヘッドによる熱的な書き込みなどが可能である。これらの光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接書き込み、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
また、光照射の一態様として、ポリマー層が光熱変換物質を含有するタイプであれば、赤外線領域のレーザー光等の走査露光による加熱により、パターン状に極性変換させることも可能である。
一方、700nm以下の光に感応する極性変換基を用いて得られたポリマー層の場合には、パターン状に極性変換させる手段としては、極性変換基を分解、開環或いは二量化させて、親疎水性を変化させることの可能なものであれば、いずれの光照射の手段も使用できる。例えば、紫外線ランプ、可視光線などによる光照射を使用することが可能である。これらの光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等が挙げられる。
コンピュータのデジタルデータによるダイレクトパターン形成を行うためには、レーザ露光により極性変換させる方法が好ましい。レーザとしては、炭酸ガスレーザ、窒素レーザ、Arレーザ、He/Neレーザ、He/Cdレーザ、Krレーザ等の気体レーザ、液体(色素)レーザ、ルビーレーザ、Nd/YAGレーザ等の固体レーザ、GaAs/GaAlAs、InGaAsレーザ等の半導体レーザ、KrFレーザ、XeClレーザ、XeFレーザ、Ar2等のエキシマレーザ等を使用することができる。
<態様(b2)>
態様(b2)は、特定重合開始層上に、重合性基、及び、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、輻射線をパターン状に照射し、該化合物を該特定重合開始層に直接化学結合させて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域(相互作用性領域)を形成する工程である。
なお、以下の説明において、「重合性基、及び、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物」は、適宜、相互作用性基含有重合性化合物と称する。
このように、特定重合開始層上に、相互作用性基含有重合性化合物を接触させ、輻射線をパターン状に照射することで、そのパターン状に、該相互作用性基含有重合性化合物の重合性基と特定重合開始層とが化学結合を生成するため、強固で耐久性に優れた無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する領域(相互作用性領域)を形成することができる。
このような相互作用性基含有重合性化合物の重合性基と特定重合開始層との化学結合を生成する方法としては、表面グラフト重合法を用いることができる。この表面グラフト重合法により、活性種を有する表面に対し、相互作用性基含有重合性化合物鎖が末端が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合し、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成することができる。
なお、態様(b2)に係る表面グラフトは、前記態様(b1)で説明した表面グラフト重合と同様にして形成することができる。
また、特定重合開始層上に、相互作用性基含有重合性化合物を接触させる方法としては、基板を、該相互作用性基含有重合性化合物を含有する液状の組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、該相互作用性基含有重合性化合物を含有する組成物を主成分とする層を、特定重合開始層表面に塗布法により形成することが好ましい。
(相互作用性基含有重合性化合物)
本態様に用いられる相互作用性基含有重合性化合物とは、後述の相互作用性基を有するモノマー、該相互作用性基を有するモノマーから選ばれる少なくとも一種を用いて得られるホモポリマー、コポリマーに、重合性基として、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーを指し、このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、特に末端に重合性基を有するものが好ましく、更に、末端及び側鎖に重合性基を有するものが好ましい。
<相互作用性基を有するモノマーの例>
使用できるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が用いられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが使用できる。
Figure 2006019675
このような相互作用性基含有重合性化合物は以下のように合成できる。
合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
上記相互作用性基含有重合性化合物の合成に用いられるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)等が用いられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、及びエーテル基などの官能基(塩構造を形成しうる場合にはそれらの塩)を有するモノマーが用いられる。
Figure 2006019675
上記相互作用性基を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、二重結合前駆体を有するモノマーとしては2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
Figure 2006019675
更に、相互作用性基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、不飽和基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
次に、iii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により二重結合を導入する方法について詳しく述べる。
本合成手法に関しては、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
−脱離反応に用いられる塩基−
塩基などの処理により二重結合を導入する際に使用される塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミン化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1、8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。
金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。
これらの塩基は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
使用される塩基の量は、化合物中の二重結合前駆体の量に対して、当量以下であってもよく、また当量以上であってもよい。
脱離反応における、温度条件は、室温、冷却、過熱いずれの条件であってもよい。好ましい温度条件としては、−20〜100℃の範囲である。
相互作用性基含有重合性化合物の例として、マクロモノマーも使用することができる。本態様に用いられるマクロモノマーの製造方法としては、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。本態様で用いられるマクロモノマーで特に有用なものとしては、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレー卜、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。また、ポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するマクロモノマーも本態様に用いられるマクロモノマーとして有用に使用することができる。
これらのマクロモノマーのうち有用な分子量は250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
このような相互作用性基含有重合性化合物を含有する組成物に使用する溶剤は、主成分である相互作用性基含有重合性化合物が溶解可能ならば特に制限はない。溶剤には、更に界面活性剤を添加してもよい。
使用しうる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
組成物を液状のまま接触させる場合には、任意に行うことができる。塗布法により相互作用性領域を形成する場合の塗布量としては、メッキ触媒又はその前駆体との相互作用性を充分に発揮し、及び、均一な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
〔輻射線のパターン状の照射〕
態様(b2)において、輻射線をパターン状に照射する際、その輻射線に関しては特に制限はなく、特定重合開始層表面に活性点を生じさせ、相互作用性基含有重合性化合物の重合性基と、特定重合開始層表面と、が結合し得るエネルギーを付与できるものであれば、いずれも使用できるが、コスト、装置の簡易性の観点からは活性光線を照射する方法が好ましい。
活性光線を照射する場合、デジタルデータに基づく走査露光、リスフィルムを用いたパターン露光のいずれも使用することができる。
また、パターンの書き込み方法としては、先に態様(b1)において挙げた各種の書き込み方法が本態様においても同様に好ましく適用できる。
このように輻射線の照射を行うことで特定重合開始層表面に発生した活性点に対し、相互作用性基含有重合性化合物が重合して、運動性の高いグラフト鎖が形成される。また、好ましい態様として、末端及び側鎖に重合性基を有する相互作用性基含有重合性化合物を用いることで、特定重合開始層と結合したグラフト鎖の側鎖の重合性基に更に、グラフト鎖が結合することで、枝分かれを有するグラフト鎖構造が形成され、グラフトの形成密度、運動性ともに飛躍的に向上し、無電解メッキ触媒又はその前駆体とのさらなる高い相互作用が発現するものである。
<態様(b3)>
態様(b3)は、(b3−1)特定重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、(b3−2)該ポリマー層に輻射線をパターン状に照射し、特定重合開始層をアブレーションさせて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程、とを含む態様である。
本態様においては、照射されたレーザ光等の輻射線が、特定重合開始層中の光熱変換物質に吸収され熱に変換されることにより、特定重合開始層がアブレーションを起こし、これにより特定重合開始層が除去(溶融、分解、揮発、燃焼、等)されることに伴って、ポリマー層も除去され、その結果、相互作用性領域が基板表面に選択的に形成されるものである。
以下、本発明の態様(b3)における(b3−1)及び(b3−2)工程についてそれぞれ説明する。
態様(b3)における(b3−1)工程について説明する。
態様(b3)の(b3−1)工程は、特定重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層が形成する工程である。
〔ポリマー層の形成〕
態様(b3−1)におけるポリマー層の形成方法としては、表面グラフト重合法を用いることができる。この表面グラフト重合法により、活性種を有する特定重合開始層表面に対し、相互作用性基を有するポリマー鎖の末端が直接又は幹高分子を介して化学的に結合し、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域(相互作用性領域)を形成することができる。
なお、態様(b3−1)における表面グラフト重合法は、前記態様(b1)で説明した「表面グラフト重合」と同様である。
(光熱変換物質)
態様(b3)が適用される場合に、特定重合開始層に添加される光熱変換物質としては、紫外線、可視光線、赤外線、白色光線等の光を吸収して熱に変換し得る物質であれば全て使用できる。より詳細には、前記態様(b1)に記載されている光熱変換物質と同様の染料、顔料、及び金属微粒子を用いることができる。
本態様に用いられる染料又は顔料は、感度及び光熱変換物質含有層(特定重合開始層)の膜強度の観点からは、特定重合開始層の全固形分の0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。染料が用いられる場合特に好ましくは、0.5〜10質量%、顔料が用いられる場合特に好ましくは、3.1〜10質量%の割合で使用することができる。また、金属微粒子の場合は、感度及び感光層の膜強度の観点からは、感光層全固形分の0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で使用することができる。
(その他の添加剤)
本態様において、アブレーション効果を向上させる目的で、ニトロセルロースを重合開始層中に更に含有させることが好ましい。ニトロセルロースは、近赤外レーザー光を光吸収剤が吸収し発生した熱により分解し、効率よく低分子のガスを発生することにより、重合開始層の除去を促進する。
(相互作用性基含有重合性化合物)
本態様に好適に用いられる相互作用性基含有重合性化合物としては、前記態様(b2)において用いた相互作用性基含有重合性化合物と同様のものを用いることができる。また、相互作用性基含有重合性化合物を含有する組成物に使用する溶剤、添加剤、等についても、前記態様(2)と同様のものを用いることができる。
態様(b3)における(b3−2)工程について説明する。
本工程においては、照射されたレーザ光等の輻射線が、特定重合開始層をアブレーションさせ、これにより特定重合開始層が除去されることに伴って、特定重合開始層上に形成されたポリマー層をも除去され、その結果、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域(相互作用性領域)が形成される。また、これにより、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用しない基板が露出することになる。
本工程における輻射線のパターン状の照射については、前記態様(b2)と同様の態様が、同様に好ましく適用できる。
《(c)相互作用性領域に、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程》
本工程においては、前記相互作用性領域領域上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する。
<無電解メッキ触媒>
本工程において用いられる無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性領域に固定する手法としては、例えば、相互作用性領域中の上の相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、相互作用性領域に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、グラフトパターンが有する相互作用性基と相互作用させることで、グラフトパターン上に選択的に金属コロイド(無電解メッキ触媒)を吸着させることができる。
<無電解メッキ触媒前駆体>
本工程において用いられる無電解メッキ触媒前駆体とは、化学反応により無電解メッキ触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解メッキ触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解メッキ触媒である0価金属になる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、前記(b)工程において基板へ付与した後、無電解メッキ浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解メッキ触媒としてもよいし、無電解メッキ触媒前駆体のまま無電解メッキ浴に浸漬し、無電解メッキ浴中の還元剤により金属(無電解メッキ触媒)に変化させてもよい。
実際には、無電解メッキ前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でグラフトパターン上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
無電解メッキ触媒である金属コロイド、或いは、無電解メッキ前駆体である金属塩をグラフトパターン上に付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をグラフトパターンが存在する基板表面に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトパターンを有する基板を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、相互作用性領域上の相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを吸着させること、或いは、相互作用性領域に金属イオンを含浸させることができる。このような吸着又は含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
《(d)無電解メッキを行い、パターン状に金属膜を形成する工程》
本工程では、前記(c)工程により得られた基板上に、無電解メッキを行うことで、パターン状に金属膜が形成される。即ち、本工程における無電解メッキを行うことで、前記工程により得られたグラフトパターンの内部やその上に該パターンに従った高密度の金属膜(金属パターン)が形成される。形成された金属パターンは、優れた導電性、密着性を有する。
<無電解メッキ>
無電解メッキとは、メッキとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいい、金属を析出させることで導電性を高めることができる。
本工程における無電解メッキは、例えば、前記(c)工程で得られた、無電解メッキ触媒がパターン状に付与された基板を、水洗して余分な無電解メッキ触媒(金属)を除去した後、無電解メッキ浴に浸漬して行なう。使用される無電解メッキ浴としては一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
また、無電解メッキ触媒前駆体がパターン状に付与された基板を、無電解メッキ触媒前駆体がクラフトパターンに吸着又は含浸した状態で無電解メッキ浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解メッキ浴中へ浸漬される。この場合には、無電解メッキ浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解メッキが行われる。ここ使用される無電解メッキ浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
一般的な無電解メッキ浴の組成としては、1.メッキ用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このメッキ浴には、これらに加えて、メッキ浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解メッキ浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解メッキの浴は、銅塩としてCu(SO42、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解メッキに使用されるメッキ浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解メッキ浴は、金属イオンとして(Pd(NH34)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのメッキ浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
このようにして形成される金属膜の膜厚は、メッキ浴の金属塩又は金属イオン濃度、メッキ浴への浸漬時間、或いは、メッキ浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、メッキ浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
以上のようにして得られる金属パターンの金属膜部は、SEMによる断面観察により、表面グラフト膜中に無電解メッキ触媒やメッキ金属の微粒子がぎっしりと分散しており、更にその上に比較的大きな粒子が析出していることが確認された。界面はグラフトポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(無電解メッキ触媒又はメッキ金属)との界面の凹凸差が500nm以下であっても密着性が良好であった。
《(e)電気メッキ工程》
本発明の金属パターン形成方法においては、前記(d)工程後、(e)電気メッキを行う工程(電気メッキ工程)を有することもできる。本工程では、前記(d)工程における無電解メッキの後、この工程により形成された金属膜を電極とし、さらに電気メッキを行うことができる。これにより基板との密着性に優れた金属パターンをベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、パターン状の金属膜を目的に応じた厚みに形成することができ、本発明の金属パターンを配線パターンなど種々の応用に適用するのに好適である。
本発明における電気メッキの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気メッキに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
電気メッキにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、メッキ浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
[金属パターン]
本発明の金属パターン形成方法により得られる金属パターンについて説明する。
本発明により形成される金属パターンは、基板上に、局所的に金属膜を析出させた金属パターンであって、該基板と該金属膜との間の密着性が良好である事を特徴とする。即ち、基板表面が平滑なもの、具体的には、表面の凹凸が500nm以下のもの、好ましくは100nm以下のものを用いた場合でも、基板と金属膜との密着性に優れることを特徴とする。
なお、基板表面の凹凸は、基板又は形成後の金属パターンを基板平面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値を用いてもよいが、より定量的な目安として、先に述べた、JIS B0601の規定に準じた10点平均粗さ(Rz)の値を採用することができ、以下の本明細書の測定値はこの値を用いている。
また、基板と金属膜との密着性の値は、同様にして作製した金属パターン(幅:5mm)の表面に、ポリイミドフィルム(厚み:50μm)をエポキシ系接着剤(商品名:アラルダイト、チバガイギー社製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JIS C6481(1994年度版)に基づき90度剥離実験により得られた値である。本発明においては、この測定方法による基板と金属膜との密着性が0.2kN/m以上であることが好ましい。
一般的な金属パターンにおいては、基板と金属との界面の凹凸を500nm以下とすることで、高周波特性に優れた金属パターンを得ることができる。ところが、従来の金属パターンは、基板表面の凹凸を減らすと、基板と金属膜との密着性が低下してしまうため、やむを得ず基板表面を種々の方法により粗面化し、その上に金属膜を設けるといった手法が取られていた。そのため、従来の金属パターンにおける界面の凹凸は、1000nm以上であることが一般的であった。
しかし、本発明により形成される金属パターンは、金属膜と、基板に直接化学結合しているポリマーとが、ハイブリッド状態であるために、平滑な基板と金属膜との密着性を維持することが可能となったものである。
本発明により形成される金属パターンにおいては、用いられる基板の表面凹凸に関しては、好ましくは300nm以下、更に好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下である。下限値には特に制限はないが、製造の容易性などの実用上の観点からは5nm程度であると考えられる。
先に述べた、JIS B0601の規定に準じた10点平均粗さ(Rz)の値によれば、基板表面の凹凸が500nm以下であり、好ましくは300nm以下、更に好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下のものが選択される。
本発明の方法により形成された金属パターンを金属配線として用いる場合、表面凹凸が小さくなるほど高周波送電時の電気損失(送電損失)が少なくなり、好ましい。
このように、本発明により形成される金属パターンは、基板界面の凹凸を最小限に留めながらも、基板と金属膜との密着性に優れたものである。
[導電膜形成方法]
また、本発明の導電膜形成方法は、(a)基板上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成する工程(「重合開始層形成工程」)と、(b’)該重合開始層表面全面に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを直接化学結合させてグラフトポリマーを形成する工程(以下、適宜、「グラフト膜形成工程」と称する)と、(c)該グラフトポリマーに無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、(d)無電解メッキを行い、金属膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。
即ち、本発明の金属膜形成方法は、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、該重合開始層表面と直接結合し、且つ、無電界メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するグラフトポリマー膜を形成し、該グラフトポリマーに、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与させた後、無電解メッキを行うことと特徴とする。
《(a)重合開始層形成工程》
本発明の第2の態様である導電膜形成方法においても、本発明の第1
2の態様である金属パターン形成方法におけるのと同様に、本工程では、基板上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成する。
まず、本工程において用いられる側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマー(以下、適宜、特定重合開始ポリマー)について説明する。
この特定重合開始ポリマーは、ポリマーの構造中に、重合開始能を有する官能基(以下、適宜、「重合開始基」と称する。)と、架橋性基と、を有するポリマーであり、重合開始基を有する共重合成分と、架橋性基を有する共重合性分と、を含む共重合体であることが好ましい。
本発明において形成される重合開始層は、上記のごとく、特定重合開始ポリマーを含んで構成され、該特定重合開始ポリマーは、重合開始基がポリマー鎖に結合しており、かつ、そのポリマー鎖が架橋反応により固定化された態様を有していることを特徴とする。
本発明においては、このような重合開始層の表面に、後述のごとくグラフトポリマーを生成させるものであるが、上述のような特定重合開始層を設けることにより、重合性基を有する化合物を含有する溶液を接触、又は、塗布する際に、その溶液中に重合開始層中の開始剤成分(重合開始能を有する成分)が溶出することを防止することができる。また、特定重合開始層の形成に際しては、通常のラジカルによる架橋反応のみならず、極性基間の縮合反応や付加反応を使用することも可能であるため、より強固な架橋構造を得ることができる。その結果、重合開始層中の開始剤成分が溶出することをより効率良く防止することができ、重合開始層表面と直接結合をしていないホモポリマーの副生が抑えられることにより、重合開始層表面には直接結合したグラフトポリマーが優先的に生成されることになる。
本発明で使用される、特定重合開始層ポリマーに関しては、「金属パターン形成方法」で説明をした特定重合開始層ポリマーと同じものを使用することができる。また、特定重合開始ポリマーを架橋反応により固定化する方法、成膜方法、基板も「金属パターン形成方法」で説明と同じものを使用することができる。
《(b’)グラフト膜形成工程》
本工程では、特定重合開始層の全面に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(相互作用性官能基)を有するポリマーを直接化学結合してなる領域(相互作用性領域)を形成する。(「グラフト膜形成」)
本発明に係るグラフト膜の形成方法においては、以上のようにして得られた重合開始層表面に、エネルギーを付与して、該重合開始層表面に活性点を発生させ、該活性点を起点として該基板表面と直接結合し、且つ、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するグラフトポリマーを生成させる(表面グラフト重合)。
〔表面グラフト重合〕
本発明の表面グラフト形成方法において、基板表面に生成されるグラフトポリマ−(表面グラフトポリマー)は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて作製される。
グラフト重合とは高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法で、特に活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。
本発明では、上記で説明した重合開始層表面に、重合性基及び相互作用性官能基を有する化合物(以下、適宜、相互作用性基含有重合性化合物と称する)を接触させ、エネルギーを付与することで、該重合開始層上に活性点を発生させ、この活性点と該化合物の重合性基とが反応し、表面グラフト重合反応が引き起こされる。
この接触は、重合開始層を有する基材を、該相互作用性基含有重合性化合物を含有する液状の組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、該相互作用基含有重合性化合物を有する化合物を含有する組成物を主成分とする層を基板表面に、塗布法により形成することが好ましい。
(相互作用性基含有重合性化合物)
本態様に用いられる相互作用性基含有重合性化合物とは、先に本発明の第1の態様で述べた相互作用性基を有するモノマー、該相互作用性基を有するモノマーから選ばれる少なくとも一種を用いて得られるホモポリマー、コポリマーに、重合性基として、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーを指し、このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、特に末端に重合性基を有するものが好ましく、更に、末端及び側鎖に重合性基を有するものが好ましい。
相互作用性基を有するモノマーは、前記本発明の第1の態様の(b)工程において述べた「相互作用性基を有するモノマー」と同様のものを用いることができる。
本発明の第2の態様に用いられる相互作用性基含有重合性ポリマーは、前記第1の態様の(b)工程において述べた「相互作用性基含有重合性化合物」と同様にして合成できる。また、そこで述べたマクロモノマーその他の相互作用性基含有重合性化合物も、本態様における(b’)工程に同様に用いることができる。
基材上の重合性開始層表面に組成物を液状のまま接触させてグラフトポリマー生成を行う場合には、任意に行うことができるが、塗布法によって重合開始層表面に組成物を適用する場合の塗布量としては、充分な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
形成されるグラフト膜は、膜厚が0.1〜2.0g/m2 の範囲であることが好ましく、さらに0.3〜1.0g/m2 が好ましく、最も好ましくは、0.5〜1.0g/m2 である。この範囲において、無電解メッキ触媒、及びその前駆体などを十分吸着することができ、好ましい導電性を有する金属膜を得ることができるとともに、グラフトポリマー鎖の運動性の高さに起因して、エッチング工程における優れた導電性成分のエッチング除去性を達成できる。
−エネルギー付与−
基材表面に存在する重合開始層の重合開始部位に活性点を発生させるためのエネルギー付与方法としては、例えば、加熱や、露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱等が可能である。
光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。また、g線、i線、Deep−UV光も使用される。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
このエネルギー付与は、基板表面の全域にわたってなされ、その結果、重合開始層表面の全面に相互作用性基を有するグラフトポリマー層が形成される。
《(c)グラフトポリマーに無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程》
本工程においては、前記グラフトポリマー領域上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する。本態様において使用される、無電解メッキ触媒、無電解メッキ触媒前駆体に関しては、本発明の第1の態様である「金属パターン形成方法」で説明したのと同じ工程で行うことができる。
《(d)無電解メッキを行い全面に金属膜を形成する工程》
本工程においては、前記(c)工程により得られた基板上に、無電解メッキを行うことで、全面に金属膜が形成される。即ち、本工程における無電解メッキを行うことで、前記工程により得られたグラフトポリマーの内部やその上に高密度の金属膜(導電膜)が形成される。形成された金属膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本態様で行われる、無電解メッキに関しては、本発明の第1の態様である「金属パターン形成方法」で説明したのと同じ工程で行うことができる。
以上のようにして得られる金属膜は、SEMによる断面観察により、表面グラフト膜中に無電解メッキ触媒やメッキ金属の微粒子がぎっしりと分散しており、更にその上に比較的大きな粒子が析出していることが確認された。界面はグラフトポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(無電解メッキ触媒又はメッキ金属)との界面の凹凸差が100nm以下であっても密着性が良好であった。
《(e)電気メッキ工程》
本発明の導電膜形成方法においては、前記(d)工程後、(e)電気メッキを行う工程(電気メッキ工程)を実施することもできる。本工程は、前記(d)工程における無電解メッキの後、この工程により形成された金属膜を電極とし、さらに電気メッキを行うものである。これにより基板との密着性に優れた金属膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、得られた導電膜(金属膜)を目的に応じた厚みに形成することができ、本発明により得られた導電膜(金属膜)を金属配線材料など種々の応用に適用するのに好適である。
本発明で行われる、電気メッキに関しては、本発明の第1の態様である「金属パターン形成方法」で説明したのと同じ工程で行うことができる。
[金属膜]
本発明の導電膜形成方法により得られる導電膜(金属膜)について説明する。
本発明により形成される金属膜は、表面の凹凸が500nm以下の基板上に全面にわたり設けられた金属膜であって、基板上に設けられた重合開始層と金属膜との間の密着性が良好であることを特徴とする。即ち、本発明の方法によれば基板として表面が平滑なものを用いた場合であってもで、基板との密着性に優れた金属膜を形成しうることを特徴とする。
なお、表面の凹凸、基板と金属膜との密着性の値は前記「金属パターン形成方法」においいて述べたのと同様にして測定できる。
本発明により形成される金属膜は、金属膜と、基板に直接化学結合しているポリマーとが、ハイブリッド状態であるために、基板と金属膜との密着性を維持することが可能となったものである。
本態様により形成される金属膜は、表面の凹凸が500nm以下の基板を選択することを特徴とし、好ましくは300nm以下、更に好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下である。下限値には特に制限はないが、製造の容易性などの実用上の観点からは5nm程度であると考えられる。
先に述べた、JIS B0601の規定に準じた10点平均粗さ(Rz)の値によれば、基板表面の凹凸が500nm以下であり、好ましくは300nm以下、更に好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下のものが選択される。なお、本発明の導電膜形成方法で得られた金属膜をパターニングして金属配線として用いる場合、表面凹凸が小さくなるほど高周波送電時の電気損失が少なくなり、好ましい。
このように、本態様により形成される金属膜は、基板界面の凹凸を最小限に留めながらも、基板と金属膜との密着性に優れたものである。
<金属膜(導電膜)の利用方法>
本発明の方法により得られた導電膜は、公知の導電膜として用いうるのみならず、金属パターンの形成に用いられるセミアディティブ用の金属基板や、サブトラクティブ用の金属基板としても用いることができる。即ち、本態様により得られた平滑な基板上に強固に密着した金属膜をセミアディティブ法やサブトラクティブ法によりパターン形成することで、基板との密着性に優れ、凹凸の少ない、任意の金属パターンを得ることが可能となる。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[合成例1]
(特定重合開始ポリマーAの合成)
300mlの三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを加え75度に加熱した。そこに、〔2−(アクリロイロキシ)エチル〕(4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミド8.1gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9.9gと、イソプロピルメタクリレート13.5gと、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.43gと、MFG30gと、の溶液を2.5時間かけて滴下した。その後、反応温度を80度に上げ、更に2時間反応させ、下記特定重合開始ポリマーAを得た。
Figure 2006019675
〔合成例2〕
(特定重合開始ポリマーBの合成)
300mlの三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを加え75度に加熱した。そこに、4−メタクリロイロキシ−ベンゾフェノン5.1gと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9.9gと、イソプロピルメタクリレート9.8gと、〔2−(メタクリロイロキシ)エチル〕トリメチルアンモニウム ブロミド3.97gと、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.43gと
、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gと、の溶液を2.5時間かけて滴下した。その後、反応温度を80度に上げ、更に2時間反応させ、下記特定重合開始ポリマーBを得た。
Figure 2006019675
〔合成例3〕
(特定重合開始ポリマーCの合成)
300mlの三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを加え75度に加熱した。そこに、〔2−(アクリロイロキシ)エチル〕(4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミド8.1gと、2−アミノエチルメタクリレート9.9gと、イソプロピルメタクリレート13.5gと、、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.43gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gと、の溶液を2.5時間かけて滴下した。その後、反応温度を80度に上げ、更に2時間反応させ、下記更に2時間反応させ、下記特定重合開始ポリマーCを得た。
Figure 2006019675
[実施例1]
〔(a)工程〕
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基板として用い、その表面に下記の重合開始層塗布液1をロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させた。得られた重合開始層の膜厚は9.3μmであった。
ここで、基材であるポリイミドフィルムをNanopics1000(セイコーインスツルメンツ製)を用いて40μm×40μmの範囲で測定した値により、JIS B 0601に準じて求めたRzは15nmであった。また、このポリイミドフィルム上に重合開始層を形成したその表面も同様に測定したところ、Rzは10nmであり、実施例1に用いた重合開始層の表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることがわかった。
<重合開始層塗布液1>
・前記特定重合開始ポリマーA 0.4g
・TDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート) 0.16g
・赤外線吸収剤(IR125 和光純薬剤) 0.04g
・メチルエチルケトン(MEK) 1.6g
〔(b)工程〕
重合開始層が形成された基板を、10wt%のα(スチレン−4−スルホニル)酢酸Na塩水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で、1.5kWの高圧水銀灯を使用し、5分間光照射した。光照射後、支持体を水で良く洗浄し、α(スチレン−4−スルホニル)酢酸Na塩がグラフト重合されたポリマー層が形成されたパターン形成材料Aを得た。
得られたパターン形成材料Aを波長830nmの赤外光を発する赤外線レーザ(ビーム径15μm)にて像様に露光し、相互作用性領域が形成されたグラフトパターン材料Aを作製した。グラフトパターン材料Aのパターン部分についても、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは13nmであった。
〔(c)及び(d)工程〕
(金属パターンの形成)
グラフトパターン材料Aを、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記組成の無電解メッキ浴に20分間浸漬し、金属パターンAを作製した。
<無電解メッキ浴成分>
・OPCカッパ−H T1(奥野製薬(株)製) 6mL
・OPCカッパ−H T2(奥野製薬(株)製) 1.2mL
・OPCカッパ−H T3(奥野製薬(株)製) 10mL
・水 83mL
[実施例2]
〔(a)工程〕
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基板として用い、その表面に下記の重合開始層塗布液2をロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させた。得られた重合開始層の膜厚は8.9μmであった。
重合開始層塗布液2により形成された重合開始層の表面のRzを実施例1と同様に測定したところ、Rzは8nmであり、実施例2に用いた重合開始層の表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることがわかった。
<重合開始層塗布液2>
・前記特定重合開始ポリマーA 0.4g
・TDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート) 0.16g
・メチルエチルケトン(MEK) 1.6g
〔(b)工程〕
重合開始層が形成されたポリイミドフィルムを、アクリル酸(10質量%)及び過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4、0.01質量%)を含む水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で、上記の1.5kWの高圧水銀灯を使用し、10分間光照射した。光照射後、得られたフィルムをイオン交換水でよく洗浄し、アクリル酸がグラフトされた基板を得た。
次に、水1リットルと、N−エチル−N’(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩40gと、N−ヒドロキシスクシンイミド6gと、からなる水溶液を調製し、そこにアクリル酸がグラフトされた基板を1時間浸漬し、エステル変換を行った。その後、更に、2−ニトロベンジルフェノール6gを加え、反応させて、光分解性官能基を有するポリマーを含むポリマー層が形成されたパターン形成材料Bを得た。
得られたパターン形成材料Bを波長400nmの青色光を発するレーザ(ビーム径15μm)にて像様に露光し、相互作用性領域が形成されたグラフトパターン材料Bを作製した。グラフトパターン材料Bのパターン部分についても、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは10nmであった。
〔(c)及び(d)工程〕
グラフトパターン材料Bを、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンBを作製した。
[実施例3]
〔(a)工程〕
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基板として用い、その表面に下記の重合開始層塗布液3をロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させた。得られた重合開始層の膜厚は8.7μmであった。
重合開始層塗布液3により形成された重合開始層の表面のRzを実施例1と同様に測定したところ、Rzは9nmであり、実施例2に用いた重合開始層の表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることがわかった。
<重合開始層塗布液3>
・前記特定重合開始ポリマーB 0.4g
・TDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート) 0.16g
・メチルエチルケトン(MEK) 1.6g
〔(b)工程〕
重合開始層が形成されたポリイミドフィルムに、アクリル酸をロッドバー#6を用いて塗布し、塗布面を厚さ25μmのPETフィルムでラミネートした。
さらにその上にクロムを蒸着したマスクパターンを重ね、上から1.5kWの高圧水銀灯を使用し、5分間光照射した。光照射後、マスクとラミネートフィルムを取り除き、水洗することにより、ポリアクリル酸がパターン状にグラフトされた領域(相互作用性領域)が形成されたグラフトパターン材料Cを得た。グラフトパターン材料Cのパターン部分についても、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは15nmであった。
〔(c)及び(d)工程〕
グラフトパターン形成材料Cを、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、0.2M NaBH4水溶液に20分浸漬し、0価パラジウムに還元した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンCを作製した。
[実施例4]
〔(a)工程〕
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基板として用い、その表面に下記の重合開始層塗布液4をロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させた。得られた重合開始層の膜厚は8.7μmであった。
重合開始層塗布液4により形成された重合開始層の表面のRzを実施例1と同様に測定したところ、Rzは10nmであり、実施例4に用いた重合開始層の表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることがわかった。
<重合開始層塗布液4>
・前記特定重合開始ポリマーA 0.4g
・TDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート) 0.16g
・メチルエチルケトン(MEK) 1.6g
〔(b)工程〕
重合開始層が形成されたポリイミドフィルムに、下記組成からなる塗布液をロッドバー#18を用いて塗布した。なお、得られた膜の膜厚は0.8μmだった。
<塗布液の組成形成>
・重合性基含有ポリマー(合成方法は下記に示す) 0.25g
・シクロヘキサノン 8.0g
<上記重合性基含有ポリマーの合成方法>
(モノマーAの合成)
500mlの三口フラスコに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート58.6gを入れ、アセトン250mlを加え、撹拌した。ピリジン39.2g、p−メトキシフェノール0.1gを添加した後に、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、2−ブロモイソブタン酸ブロミド114.9gを滴下ロートにて3時間かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに3時間撹拌した。反応混合液を水750mlに投入し、1時間撹拌した。水混合液を分液ロートを用いて、酢酸エチル500mlで3回抽出した。有機層を1M塩酸500ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液500ml、飽和食塩水500mlで順次洗浄した。有機層に硫酸マグネシウム100gを入れ、脱水乾燥した後、濾過した。溶媒を減圧留去し、モノマーAを120.3gを得た。
次に、1000ml三口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド40gを入れ、窒素気流下、70℃まで加熱した。モノマーA12.58g、メタクリル酸27.52g、V−601(和光純薬製)0.921gのN,N−ジメチルアセトアミド40g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃まで加熱し、更に2時間撹拌した。室温まで、反応溶液を冷却した後、水3.5Lに投入し、高分子化合物を析出させた。析出した高分子化合物を濾取、水で洗浄、乾燥し高分子化合物を30.5g得た。得られた高分子化合物をポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均分子量を測定した結果、124,000であった。
200ml三口フラスコに得られた高分子化合物26.0g、p−メトキシフェノール0.1gを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド60g、アセトン60gに溶解し、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、1、8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(DBU)60.4gを滴下ロート用いて、1時間かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに8時間撹拌した。反応液を濃塩酸17mlを溶解させた水2Lに投入し重合性基含有ポリマーを析出させた。析出した重合性基含有ポリマーを濾取、水で洗浄、乾燥し15.6g得た。
得られた膜に、クロムを蒸着したマスクパターンを用いて、1.5kW高圧水銀灯を使用し1分間パターン露光を行った。その後に得られた膜を飽和重曹水にて洗浄し、露光部が親水性に変化したグラフトパターン材料Dを得た。グラフトパターン材料Dのパターン部分についても、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは20nmであった。
〔(c)及び(d)工程〕
得られたグラフトパターン材料Dを、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンDを作製した。
[実施例5]
実施例4で作製された金属パターンを、更に、下記組成の電気メッキ浴にて15分間電気メッキし〔(e)工程〕、金属パターンEを作製した。
<電気メッキ浴の組成>
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
[実施例6]
〔(a)工程〕
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基板として用い、その表面に下記の重合開始層塗布液5をロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させた。得られた重合開始層の膜厚は8.9μmであった。
重合開始層塗布液5により形成された重合開始層の表面のRzを実施例1と同様に測定したところ、Rzは15nmであり、実施例6に用いた重合開始層の表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることがわかった。
<重合開始層塗布液5>
・前記特定重合開始ポリマーC 0.4g
・TDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート) 0.16g
・カーボンブラック(MA100、三菱化学(株)製) 0.05g
・メチルエチルケトン(MEK) 1.6g
〔(b)工程〕
重合開始層が形成されたポリイミド基板表面に、スチレンスルホン酸ナトリウムの水溶液(30質量%)をロッドバー#12を用いて塗布し、乾燥させることなく塗布面を25μmのPETフィルムでラミネートした。そして、この上から1.5kW高圧水銀灯を使用し1分間パターンUV光を照射した。光照射後、ラミネートフィルムを取り除き、水洗することによりスルホン酸ナトリウムがグラフトされたポリマー層を有するパターン形成材料Fを得た。
得られたパターン形成材料Fを波長830nmの赤外光を発する赤外線レーザ(ビーム径20μm)にて像様に露光した。このレーザー露光により、レーザー光を吸収した感光層はアブレーションを起こし、吸着性層とともに除去され、相互作用性領域を有するグラフトパターン材料Fが形成された。グラフトパターン材料Fのパターン部分についても、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは25nmであった。
〔(c)及び(d)工程〕
形成されたグラフトパターン材料Fを、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンFを作製した。
[実施例7]
〔(b)工程〕
実施例2と同様にして作製した重合開始層が形成されたポリイミド基板を、t−ブチルアクリレート溶液(30質量%、溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG))に浸漬し、アルゴン雰囲気下で1.5kW高圧水銀灯を使用し15分間露光をした。
光照射後に得られたフィルムをプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)で良く洗浄し、ポリ−t−ブチルアクリレートがグラフトされたポリマー層を有するパターン形成材料Gを得た。
得られたパターン形成材料Gの上に下記組成の溶液を塗布した。なお、得られた膜の膜厚は0.5μmだった。
・トリフェニルスルホニウムトリフラート 0.05g
・メチルエチルケトン(MEK) 1g
次に、得られた膜に1.5kW高圧水銀灯を使用し1分間パターン露光をし、90℃、2分間後加熱を行った。その後に得られた膜をメチルエチルケトン(MEK)にて洗浄し、露光部の官能基が吸着性基に変換した、相互作用性領域が形成されたグラフトパターン材料Gが形成された。グラフトパターン材料Gのパターン部分についても、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは22nmであった。
〔(c)及び(d)工程〕
形成されたグラフトパターン材料Gを下記手法で作製した正電荷を有するAg粒子が分散した液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンGを作製した。
<正電荷を有するAg粒子の合成手法>
過塩素酸銀のエタノール溶液(5mM)50mlにビス(1,1−トリメチルアンモニウムデカノイルアミノエチル)ジスルフィド3gを加え、激しく攪拌しながら水素化ホウ素ナトリウム溶液(0.4M)30mlをゆっくり滴下してイオンを還元し、4級アンモニウムで被覆された銀粒子の分散液を得た。
[実施例8]
〔ポリイミド基板の作成〕
(ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の合成)
窒素下にてN−メチルピロリドン(30ml)中にジアミン化合物として、4,4’-―ジアミノジフェニルエーテル(28.7mmol)を溶解させ室温にて約30分間撹拌した。この溶液に3,3’,4,4’’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(28.7mmol)を0℃にて加え5時間撹拌した。反応液を再沈して、ポリイミド前駆体1を得た。生成物は1H−NMR、FT−IRによりその構造を確認した。
上記手法で合成したポリアミック酸(ポリイミド前駆体1)をDMAc(和光純薬(株)社製)に溶かし30wt%の溶液とした。該溶液をガラス基板にロッドバー#36を用いて塗布、100℃で5分間乾燥、250℃で30分間加熱して固化させ、ガラス基板から剥がすことでポリイミド基材を得た。
このポリイミド基材について、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは450nmであり、表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることが分かった。
〔(a)工程〕
得られたポリイミド基材に実施例2と同様にして重合開始層(中間層)を設けた。
この中間層を形成した基板について、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは400nmであり、表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることが分かった。
〔(b)工程〕
次に、上記手法で作成した中間層の上に実施例4で用いた塗布液をロッドバー#18を用いて塗布した。なお、得られた膜の膜厚は0.8μmだった。得られた膜に1.5kW高圧水銀灯を使用し1分間パターン露光を行った。その後に得られた膜を水にて洗浄し、露光部が親水性に変化したグラフトパターン材料Hを得た。グラフトパターンHのパターン部を、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは420nmであった。
〔(c)及び(d)工程〕
得られたグラフトパターン材料Hを、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンHを作製した。
<評価>
(金属パターンの細線幅の測定)
実施例1〜8で得られた金属パターンを、光学顕微鏡(商品名:OPTI PHOTO−2、(株)ニコン製)を用いて細線幅を測定した。測定結果を下記表2に示す。
(金属膜厚の測定)
実施例1〜8で得られた金属パターンを、ミクロトームを用いて基板平面に対して垂直に切断し、断面をSEMにより観察し、形成された金属膜の厚みを測定した。測定は、1つのサンプルにつき、3点を測定した平均を表す。測定結果を下記表2に示す。
(基板界面の凹凸の評価)
実施例1〜8で得られた金属パターンを、ミクロトームを用いて基板平面に対して垂直に切断し、断面をSEMにより観察することにより、メッキ膜及びメッキ触媒層と、基板層(有機材料)との界面の凹凸を確認することができる。この基板界面において、1つのサンプルについてランダムな観測点を3点とり、それぞれの観測点における最大山高さと最低谷深さとの差を凹凸の大きさとし、3点の平均値を求めた。測定結果を下記表2に示す。
(密着性の評価)
実施例1〜8で得られた金属パターン(幅5mmのパターン部)の表面にポリイミドフィルム(厚さ:50μm)をエポキシ系接着剤(商品名:アラルダイト、チバガイギー社製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JIS C6481(1994年度版)に基づき90度剥離実験を行った。測定結果を下記表2に示す。
Figure 2006019675
表2の結果によれば、本発明の金属パターン形成方法により得られた金属パターンでは、そのいずれもが、表面凹凸が少ない基板上に、従来の技術では困難であった幅30μm以下の細線が密着性よく形成されることがわかった。また、これらの細線幅は、グラフトパターン(相互作用性領域)の形成方法、露光条件により制御可能であることが確認された。例えば、アブレーションにより得られたグラフトパターン(相互作用性領域)を基に作製した金属パターン(実施例6)では、細線幅が27μm程度であり、実用上充分な細線幅が得られることが確認された。さらに、パターン露光によりパターン状にグラフト化反応を行って得られたグラフトパターンを基に作製した金属パターン(実施例3〜5、7、8)では、細線幅が10〜15μm程度であり、非常に細かい金属パターンを得ることができた。
このように、本発明によれば、目的に応じた所望の細線幅を有する金属パターンを得ることが可能になる。
[実施例9]
(導電膜の形成1)
〔(a)工程〕
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基板として用い、その表面に実施例2で使用した重合開始層塗布液2を、ロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させ、重合開始層を形成した。得られた重合開始層の膜厚は8.9μmであった。
〔(b’)工程〕
重合開始層が形成されたポリイミドフィルムを、アクリル酸(10質量%)及び過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4、0.01質量%)を含む水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で、上記の1.5kWの高圧水銀灯を使用し、10分間光照射した。光照射後、得られたフィルムをイオン交換水でよく洗浄し、アクリル酸がグラフト化されたグラフト基板Iを得た。このようにして得られたグラフト基板I上のグラフトポリマー(グラフトポリマー層)表面について、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは15nmであった。
〔(c)工程及び(d)工程〕
全面にグラフトポリマー層が形成されたグラフト基板Iを、硝酸銀(和光純薬製)10質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同様の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、導電膜(金属膜)Iを作製した。
[実施例10]
(導電膜の形成2)
〔(a)工程〕
ポリイミドフィルム(製品名:カプトン、東レデュポン社製)を基板として用い、その表面に実施例2で使用した重合開始層塗布液2を、ロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させて重合開始層を形成した。この操作をフィルムの両面に行った。得られた重合開始層の膜厚はいずれも8.9μmであった。
〔(b’)工程〕
重合開始層が形成されたポリイミドフィルムの両面に、実施例4で使用した重合性基含有ポリマーの塗布液を、ロッドバー#18を用いて両面に塗布した。なお、得られた膜の膜厚はそれぞれ0.8μmだった。
得られた膜表面(両面)に、1.5kW高圧水銀灯を使用して10分間露光を行った。その後に得られた膜を飽和重曹水にて洗浄し、基板両面の全面にわたりグラフトポリマー層を形成したグラフト基板Jを得た。このようにして得られたグラフト基板J上のグラフトポリマー(グラフトポリマー層)表面について、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは16nmであった。
〔(c)、(d)、(e)工程〕
得られたグラフト材料Jを、硝酸銀(和光純薬製)10質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、実施例1と同一の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、実施例5と同一の電気メッキ浴にて15分間電気メッキし、導電膜(金属膜)Jを作製した。
[実施例11]
(導電膜の形成3)
〔(a)工程〕
実施例8で作成したポリイミド基材に実施例2と同様にして重合開始層(中間層)を設けた。この中間層を有する基板について、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは400nmであり、表面凹凸は本発明の好ましい範囲内であることが分かった。
〔(b')工程〕
実施例9の手法と同様にアクリル酸をグラフト化し、グラフト基板Kを得た。グラフト基板Kのグラフトポリマー表面についても、前記ポリイミドフィルム基材と同様にRzを測定したところ、Rzは430nmであった。
〔(c)工程および(d)工程〕
実施例9の手法と同様にして導電膜(金属膜)Kを作製した。
<導電膜の評価>
(金属膜厚の測定)
実施例9〜11で得られた導電膜を、ミクロトームを用いて基板平面に対して垂直に切断し、断面をSEMにより観察し、形成された金属膜の厚みを測定した。測定は、1つのサンプルにつき、3点を測定した平均を表す。測定結果を下記表3に示す。
(基板界面の凹凸の評価)
実施例9〜11で得られた導電膜について、ミクロトームを用いて基板平面に対して垂直に切断し、断面をSEMにより観察することで、メッキ及びメッキ触媒層(金属層)と基板層(有機材料層)との界面の凹凸を確認することができる。このメッキ及びメッキ触媒層と基板層との界面において、1つのサンプルについてランダムな観測点を3点とり、それぞれの観測点における最大山高さと最低谷深さとの差を凹凸の大きさとし、3点の平均値を求めた。測定結果を下記表3に示す。
(密着性の評価)
実施例9〜11で得られた導電膜について、カッターにて幅5mmに切り込みを入れ、実施例1〜8の金属パターンの評価と同様にして、90度剥離実験を行った。測定結果を下記表3に示す。
Figure 2006019675
表3の結果より、本発明の方法で得られた導電膜は、所望の厚みを有し、膜界面の凹凸が少ない基板上に形成されながら、金属膜の密着性に優れていることがわかった。
また、実施例1〜11の結果より、本発明の金属パターン形成方法及び導電膜形成方法により得られた金属パターン、金属膜(導電膜)は、いずれも、三菱化学製、LORESTA−FPを使用して測定した表面抵抗が0.1Ω/□以下であり、その導電性を充分達成しうる金属膜厚を有していることがわかった。特に、実施例5及び実施例10に示されるように、さらに電解メッキを行うことで、所望される導電性や膜厚に応じて、パターン状、或いは全面にわたる金属膜の形成を制御しうることが確認された。
さらに、本発明の実施例により得られた金属パターン及び導電膜は、そのいずれもが、Rz:500nm以下の基板表面に形成されており、該基板上でグラフト膜又はグラフトパターンを形成する結果、グラフト膜又グラフトパターン表面の凹凸もまたRz:500nm以下となり、該パターン状にメッキにより形成された金属膜又は金属パターンは、メッキ膜(金属膜)及びメッキ触媒層と、基板層(有機材料)との界面の凹凸がすべて好ましい範囲である500nm以下となる。このとき、メッキ金属やメッキ触媒は、グラフトポリマーパターン表面のみならず、内部にも入り込んでハイブリット化していることから、金属膜と有機材料との界面の平滑性に優れるとともに、基板と金属膜との密着性にも優れることがわかった。

Claims (10)

  1. (a)基板上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成する工程と、
    (b)該重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成する工程と、
    (c)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
    (d)無電解メッキを行い、パターン状の金属膜を形成する工程と、
    を有することを特徴とする金属パターン形成方法。
  2. 前記(b)工程が、(b1−1)前記重合開始層上に、熱、酸、又は輻射線により、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する構造へと変化する官能基、若しくは、該相互作用を失う官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、(b1−2)該ポリマー層に、熱、酸、又は輻射線をパターン状に付与して、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程、とを有することを特徴とする請求項1に記載の金属パターン形成方法。
  3. 前記(b)工程が、(b2)前記重合開始層上に、重合性基、及び、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、輻射線をパターン状に照射し、該化合物を該重合開始層に直接化学結合させて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の金属パターン形成方法。
  4. 前記(b)工程が、(b3−1)前記重合開始層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、(b3−2)該ポリマー層に輻射線をパターン状に照射し、該重合開始層をアブレーションさせて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程、とを有することを特徴とする請求項1に記載の金属パターン形成方法。
  5. 前記(d)工程後、(e)電気メッキを行う工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
  6. 前記基板が、表面の凹凸が500nm以下の基板である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の金属パターン形成方法。
  7. (a)基板上に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成する工程と、
    (b’)該重合開始層表面全面に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを直接化学結合させてグラフトポリマーを形成する工程と、
    (c)該グラフトポリマーに無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
    (d)無電解メッキを行い、金属膜を形成する工程と、
    を有することを特徴とする導電膜形成方法。
  8. 前記(b’)工程が、(b’4)前記重合開始層上に、重合性基、及び、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、該重合開始層表面にエネルギーを付与して活性点を発生させ、該活性点を起点として、該重合開始層表面と直接結合し、且つ、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するグラフトポリマーを生成させる工程を有すること特徴とする請求項7に記載の導電膜形成方法。
  9. 前記(d)工程後、(e)電気メッキを行う工程を有することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の導電膜形成方法。
  10. 前記基板が、表面の凹凸が500nm以下の基板である請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の導電膜形成方法。
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