JP2006019590A - 多層プリント回路基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】外部から侵入する電磁波に対する耐性の向上、及び基板内から発生する電磁波に対する放出の抑制とともに、シグナルインテグリティ特性の劣化を防止する。
【解決手段】信号用のライン配線5が設けられた信号層2と、最上層及び/又は最下層に積層され、磁性材料と絶縁材との複合材料からなる磁性層3,4とを備え、磁性層3,4には信号用のライン配線を設けない。
【選択図】図1
【解決手段】信号用のライン配線5が設けられた信号層2と、最上層及び/又は最下層に積層され、磁性材料と絶縁材との複合材料からなる磁性層3,4とを備え、磁性層3,4には信号用のライン配線を設けない。
【選択図】図1
Description
本発明は、多層プリント回路基板において、外部から侵入する電磁波に対する耐性の向上、及び基板内から発生する電磁波に対する放出の抑制の両機能を兼ね備えた多層プリント回路基板に関する。
近年にみられる高周波数の電磁波を利用した電子機器の増加に伴い、電磁波ノイズによる機器の誤作動といった問題や、脳をはじめ人体への悪影響等といった新たな環境問題が提起されている。例えば、免許不要で無線通信が利用可能な周波数帯の1つである2.45GHz帯に注目してみると、IEEE802.11b、Bluetooth、ISM(Industrial, Scientific and Medical)機器などの多数の利用があり、更には情報機器のクロック周波数の高速化、デジタル化に伴い、この帯域における高調波の発生も考えられる。このように、潜在的な電磁波発生源が指数関数的に増えているため、干渉被害の起こるリスクは飛躍的に増加している。
電磁干渉(EMI:Electromagnetic Interference)の問題に対処するためには、個々の機器が他の機器の正常な作動を妨害するような不要な電磁波を放射せず(放出抑制)、かつ外部から侵入する電磁波に対して何ら影響を受けない十分な耐力をもつこと(耐性の向上)が要求される。このような考え方は、電磁気的両立性(EMC:Electromagnetic Compatibility)と称され、電磁環境下で電子機器が電磁両立性を確立するために様々な規格が定められている。
回路設計におけるEMC対策を進める際、電子機器から発生する電磁妨害波を低減し、また電子機器に電磁妨害波が侵入するのを防ぐための回路素子として、主に妨害抑圧素子が用いられる。妨害抑制素子は、図13に示すように、コンデンサ、コイル、これらを組み合わせたLCフィルタ、バリスタなど様々なものがある。これらは、希望信号が素子を通過する際には損失が小さく、妨害波に対しては大きな反射損失や通過損失を持つように設計され、ほとんどの電子回路に適切な方法で組み合わされて使用されている。
しかしながら、回路素子の組み合わせによっては、特定の周波数で共振を起こし、電圧や電流波形が振動し、希望信号の波形が大きく歪むことがある。更には、GHz帯における電磁波の波長は電子回路の回路長に近く、回路自体が電磁波に対するアンテナとして作用するため誤作動を引き起こす可能性も生じる。
このような回路設計では補うことのできないEMC問題は、実装設計へと提起され、近年、その解決策として注目されているのが電磁波シールド材と電磁波吸収体である。これらを比較して図14に示す。電磁波シールド材は、電磁波発生源から干渉源方向へ透過する電磁波のエネルギーを小さくするものである。これは、回路から発生する不要放射ノイズを封じ込め、あるいは回路内に侵入してくる電磁波を反射させることにより、妨害電磁波の存在する空間と妨害を受けると障害を引き起こす空間とを電磁気的に遮断するという点で、非常に有効な手段である。ただし、外部にノイズが漏れないとしても、回路から放射されたノイズがシールド材により反射し、そのノイズによって回路自体が電磁干渉を生じる可能性は避けられない。このような問題の解決方法として、電磁波吸収体が不可欠であり、電磁波吸収体を装着して不要ノイズを吸収することが有効な手段であると報告されている。
電磁波吸収体は、入射した電磁波エネルギーのほとんどをその内部で熱エネルギーに変換するものである。このため電磁波吸収体では、前面に反射するエネルギーと後方へ透過するエネルギーの双方を小さくすることができる。熱エネルギーへの変換のメカニズムは、主に「導電損失」「誘電損失」「磁性損失」の3種に分類され、またこのときの単位体積あたりの電磁波吸収エネルギーP[W/m3]は、電界E、磁界H及び周波数fを用いて次のように表される。
上式は、それぞれ第1項が導電損失、第2項が誘電損失、第3項が磁性損失を表している。
理想的な電磁波吸収体は、入射電磁波が無反射で内部に入り、その波が吸収体内部を通過する際に短い行程でその振幅が急速に減衰するというものである。無反射であるための条件は、吸収体表面から終端を見込んだインピーダンス(入力インピーダンス:Zin)と自由空間を伝播する電磁波のインピーダンス(波動インピーダンス:Z)が一様に等しくなければ成立しない。自由空間を伝播する電磁波は、伝播距離や発生源により、その波動インピーダンスZが大きく異なる。波動インピーダンスZは、その電界強度ExとExに垂直な磁界強度Hyにより、次のように表される。
一般的に、電磁波発生源からの距離rがλ/2π(λ:電磁波の波長)よりも遠い空間では、電界強度Exと磁界強度Hyは一定の値となるため、この空間における波動インピーダンスZ0は一定値(376.7Ω)をとり、電磁波は平面波の性質を有する。このような空間を遠方電磁界と呼ぶ。一方、電磁波発生源からの距離rがλ/2πよりも近い空間では、波動インピーダンスZは発生源や発生源からの距離により変化し、電磁波は球面波の性質を有する。このような空間を近傍電磁界と呼ぶ。電磁波の発生源は、微小ダイポール(電気ダイポール)と微小ループ(磁気ダイポール)に大別できる。図15(a)に微小ダイポールによって作られる電磁界、図15(b)に微小ループによって作られる電磁界を示す。また、図16には、電磁波発生源からの距離rに対する波動インピーダンスZの関係を示す。ここで、微小ダイポールによって作られる電磁界を伝播する電磁波の波動インピーダンスをZD、微小ループによって作られる電磁界を伝播する電磁波の波動インピーダンスをZLと表している。微小ダイポールとは図15(a)に示すように、微小の長さl(m)の電線に、角周波数ω(Hz)の高周波電流I(A)が流れていると仮定したものである。電界をE、磁界をHとすると、微小ダイポールによって作られる電磁界は、Er、Eθ、及びHφ成分となる。このとき、距離rにおけるそれぞれの電磁界の関係は、マクスウェルの方程式を解いて導くと、次のように1/r、1/r2、1/r3の項により表される。
これより、近傍電磁界においては、電磁波発生源からの距離rが小さくなるに従い1/r3の項が優勢となり、磁界よりも電界が支配的となる。このときの微小ダイポールにおける波動インピーダンスの大きさは、次式で表される。
それゆえ、微小ダイポールでは、距離rが小さくなるに従い波動インピーダンスは大きくなる。一方、微小ループとは図15(b)に示すように、微小の面積s(m2)のループに、角周波数ω(Hz)の高周波電流I(A)が流れていると仮定したものである。電界をE、磁界をHとすると、微小ループによって作られる電磁界は、Hr、Hθ、及びEφ成分となる。このとき、距離rにおけるそれぞれの電磁界の関係は、マクスウェルの方程式を解いて導くと、微小ダイポールと同様に1/r、1/r2、1/r3の項により表される。
これより、近傍電磁界においては、電磁波発生源からの距離rが小さくなるに従い1/r3の項が優勢となり、電界よりも磁界が支配的となる。このときの微小ループにおける波動インピーダンスの大きさは、次式で表される。
それゆえ、微小ループでは、距離rが小さくなるに従い波動インピーダンスは小さくなる。しかしながら、微小ダイポール、微小ループのいずれの場合も十分に遠方では、1/r2、1/r3の項の影響を無視できるため、波動インピーダンスは一定値(376.7Ω)に収束する。
電磁波吸収体の研究開発において、空間とのインピーダンス整合を期する場合には、入力インピーダンスZinを考慮して材料設計する必要がある。しかしながら上述したように、近傍電磁界では、電磁波発生源や発生源からの距離rにより大きく空間の波動インピーダンスが異なってしまうことや、実際の複雑な回路を考えた際界における電界強度、磁界強度については、シミュレーションによ、電磁波発生源の確定が困難である。近傍電磁る解析や電波顕微鏡プローブによる三次元的可視化技術の研究が本格的に始まってはいるものの、未だ研究段階であり、近傍電磁界に対応した電磁波吸収材料の設計方法は確立されていないのが現状である。
磁性損失材料を用いた電磁波吸収の原理について簡単に記す。
磁性体を交流磁界で磁化した場合、まず外部磁界により磁壁移動が生じる。周波数が高くなっていくと、磁壁移動は次第に磁界の変化に追従できなくなり、ある周波数帯域の磁界の下で共鳴現象を起こす(磁壁共鳴)。さらに、周波数を高くしていくと、磁壁移動による磁化は抑制され、磁化は回転磁化によって進行するようになる。しかし、回転磁化過程においても、さらに高周波帯域に入ると遅れが生じ、新たな共鳴現象が発現する。この共鳴を自然共鳴という。自然共鳴は、ある周波数の交流磁界下において、磁気モーメントが異方性磁界HAによって容易軸に束縛されようとするとき、磁気モーメントの固有振動数と交流磁界のそれとが一致することによって、磁気モーメントが磁化容易軸のまわりでラーモア歳差運動を誘起し、その回転を減衰させることなく継続する現象である。これらの共鳴現象が生じる周波数帯域においてはμr’’の顕著な増大がみられる。自然共鳴の固有の角速度ωrは、異方性磁界HAとの間に以下の関係があることが知られている。
磁気モーメントがスピンの場合g=2であるから、自然共鳴周波数fr(=ω/2π)は、次のような異方性磁界HAとの関係が導かれる。
磁性損失材料を用いた電磁波吸収体は、磁壁共鳴や自然共鳴などにより増大した磁性損失を示す複素比透磁率の虚部μr’’を利用し、入射電磁波のエネルギーを熱として消滅させるというものである。そのため、近年の電子機器の小型、軽量化に伴った可及的に薄型の電磁波吸収体の要求に応えるためには、所期の周波数における大きい磁性損失(μr’’)が必要とされる。
従来から、テレビゴースト対策用などのMHz帯域における電磁波吸収体としては、立方晶系に属し、図17(a)(b)に示すような結晶構造を有する(Ni,Zn)O・Fe2O3、(Mn,Zn)O・Fe2O3等のスピネル型フェライトが用いられてきた。スピネル型フェライトは、磁壁共鳴と自然共鳴が近い周波数(数十〜数百MHz)帯域で現れ、比較的高い透磁率を有するために、上述の理由により、この周波数における優れた電磁波吸収効果を有する。
現在、電磁波吸収体は主にシートとして用いられ、基板上、パッケージ上又はフレキシブルプリント回路基板(FPC)上に貼り付けて利用されている。しかし、多層プリント回路基板におけるノイズの発生源が確立できないために有効なシート設置箇所を特定することが難しいことや、シート貼り付け作業に多大な時間を費やすこと、更には貼り付けたシートの分だけ機器の薄型化が難しくなるといった問題があり、これらを解決する方法が求められている。
また、多層プリント配線基板の各基板について磁性材料を用いて構成する場合には、シグナルインテグリティ(signal integrity)特性の劣化が懸念される。すなわち、各種デジタル機器に用いられる半導体装置の動作周波数の高速化に伴い、高速デジタル信号がプリント回路基板上の信号ラインを伝送されるようになってきたことから、信号ラインにおける信号波形の歪みが発生する。シグナルインテグリティとは、出力された信号の波形が信号ラインを伝送される過程でどれだけ影響を受けないで保たれるかという波形の信頼性を表し、このシグナルインテグリティの確保はデジタル機器の回路を正常に動作させるために不可欠となっている。
また基板に磁性材料を用いる際には、フェライト等の硬質の磁性材料を単層で用いることは作製上困難であり、磁性粒子と樹脂を複合して用いることが不可欠であるが、同体積で比較した際に磁性材料単体と比べて樹脂の混合量の分、磁性材料の充填率が減少するため磁気特性の減少は避けられない。
特開平10−242602号公報(特許文献1)では、磁性層を設けることで回路のインピーダンスをコントロールし、放射ノイズを低減させることを目的としたものであるが、選択的に磁性層を加えることは設計に制限を与えてしまい、また全層に磁性層を設けた場合はインピーダンスコントロールを必要としないラインまで磁性層で覆われてしまうためシグナルインテグリティ特性の劣化を生じる可能性がある。
また、特開2003−92475号公報(特許文献2)では磁気特性(透磁率特性)の良いFe−Al−Si粒子を用いているが、金属材料であるため絶縁性が小さく、基板にビアホールを通した際に接触しショートしてしまう危険性がある。またライン上にべた付けしてこの磁性層を形成すると、ラインと粒子が接触した場合におけるショートの危険や、信号ラインのインピーダンスを変化させてしまうことによるシグナルインテグリティ特性の劣化を生じる可能性がある。そのため絶縁層を信号ラインが形成された信号層と磁性層の間に介在させる必要があるが、ノイズ発生源となる信号ラインと磁性層の間隔が離れてしまうため、ノイズ吸収効果が激減してしまう。
そこで本発明は、上述した課題を解決するために、多層プリント回路基板において外部から侵入する電磁波に対する耐性の向上、及び基板内から発生する電磁波に対する放出の抑制の両機能を兼ね備えるとともに、シグナルインテグリティ特性の劣化を防止する多層プリント回路基板を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明にかかる多層プリント回路基板は、信号用のライン配線が設けられた信号層と、最上層及び/又は最下層に積層され、磁性材料と絶縁材との複合材料からなる磁性層とを備え、上記磁性層には信号用のライン配線が設けられていないことを特徴とするものである。
また、本発明にかかる多層プリント回路基板は、磁性材料と絶縁材との複合材料からなる磁性層と信号用のライン配線が設けられた信号層とを備える多層プリント回路基板において、上記磁性層の比誘電率は、上記信号層の比誘電率の±0.5以内とされていることを特徴とするものである。
このような多層プリント回路基板によれば、電磁波発生源の寄生アンテナとなる信号ライン配線を磁性層で囲むことにより、多層プリント回路基板は、電子機器の正常な動作を妨害する不要な電磁波の放出を抑制し、かつ外部から侵入する電磁波に対して何ら影響を受けない耐性を向上させることができる。
また、電磁波発生源であると同時に外部から侵入する電磁波に対する寄生アンテナとして作用する信号ライン配線に対して電磁波吸収材料を近距離に位置させることとなる。これは、内部から発生する電磁波の吸収効果をより大きくすることができ、かつ外部から侵入する電磁波をも吸収することができる。
さらに、本発明にかかる多層プリント回路基板は、磁性材料の誘電率が一定であるということに着目し、磁性層を磁性材料と絶縁樹脂との複合体とすることで、磁性層の比誘電率を信号層の比誘電率の±0.5以内とすることができ、シグナルインテグリティ特性を維持することができる。
以下、本発明が適用された多層プリント回路基板について図面を参照しながら詳細に説明する。この多層プリント回路基板1は、図1に示すように、信号ライン配線が形成された信号層2と、磁性材料を用いて形成され最上層及び最下層を構成する磁性層3,4とが積層されてなる。
信号層2は、例えばガラスエポキシ樹脂に銅箔を貼着して形成された銅張積層板や銅箔にBステージ状の熱硬化性樹脂を塗布した樹脂付き銅箔からなる基板であり、公知のフォトリソグラフィを用いたプリントエッチ法等によって、表面に貼着された銅箔がエッチングされることにより、一面又は両面に信号ライン配線5が形成されている。また信号層2には、他の信号層2に形成された信号ライン配線との導通を図るバイア6が形成されている。
複数積層された信号層2の最上層及び最下層に積層された磁性層3,4は、絶縁材に磁性材料が複合された絶縁基板であり、基板厚さが略60μm程度とされている。また、最上層を構成する磁性層3には、図1に示すように、LSI等の半導体パッケージ8が実装されている。
これら磁性層3,4を構成する磁性材料としては、フェライト等の絶縁性の高い磁性粒子が用いられている。特に、本発明が適用された多層プリント回路板1においては、磁性粒子には高い絶縁性を備えると共に、高い透磁性を有する(Ni,Zn)O・Fe2O3や(Mn,Zn)O・Fe2O3などのスピネル型フェライトが用いられる。磁性粒子の粒径は、磁性層3,4の基板厚さが60μm程度であることを考慮すると、50μm以下とされ、特に20μm以下であることが好ましい。また、磁性材料が複合される絶縁樹脂としては、エポキシ系の樹脂が好適に用いられるが、成形性を考慮した場合、エポキシ系樹脂の他にも液晶ポリマー、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン系樹脂等が好適に用いられる。そして、この磁性粒子を樹脂付き銅箔に例えば40vol%充填し、磁性層3,4を形成する。
ここで、スピネル型フェライトは、磁壁共鳴と自然共鳴が近い周波数(数十〜数百MHz)帯域で現れ、比較的高い透磁率を有するために、この周波数における優れた電磁波吸収効果を有する。また、多層プリント回路基板1は、最上層及び最下層を構成する磁性層3,4に信号用のライン配線が設けられておらず、この磁性層3,4によって信号層2に形成された信号ライン配線5を囲み込む構成とされている。このように電磁波発生源の寄生アンテナとなる信号ライン配線5を磁性層で囲むことにより、多層プリント回路基板1は、電子機器の正常な動作を妨害する不要な電磁波の放出を抑制し、かつ外部から侵入する電磁波に対して何ら影響を受けない耐性を向上させることができる。
また、絶縁基板に電磁波吸収特性を有する磁性材料を複合させた磁性層3,4に信号ライン配線を設けず、この磁性層3,4で信号ライン配線5が設けられた絶縁基板2を囲むことは、電磁波発生源であると同時に外部から侵入する電磁波に対する寄生アンテナとして作用する信号ライン配線5に対して電磁波吸収材料を近距離に位置させることとなる。これは、内部から発生する電磁波の吸収効果をより大きくすることができ、かつ外部から侵入する電磁波をも吸収することができる。
すなわち、上記(1)式より、ある特定の周波数における磁性損失を用いた材料の電磁波吸収量Q[W]は次式のような関係がある。
また、電磁波発生源として作用する寄生アンテナが信号層2の信号ライン配線5であり、微小ダイポールのときと同様に考えることができるので、磁界Hは発生源との距離rと次のような関係にある。
これら両式より、次式のような関係が導き出される。
以上より、電磁波吸収特性は電磁波発生源との距離rに大きく依存することが分かる。したがって、絶縁材に電磁波吸収特性を有する磁性材料を複合させた磁性層3,4を最上層及び最下層に積層させることで、磁性層3,4に囲まれた信号層2に形成された電磁波発生源に対し近距離の位置で吸収材料を配置することになり、より大きな電磁波吸収効果を備え、電磁波ノイズによる電磁干渉を抑制することができる。
さらに、多層プリント回路基板1は、全面に亘って磁性層3,4を積層させているため、電磁波発生源となり得る信号ライン配線5を全て覆っている。したがって、多層プリント回路基板1は、電磁波ノイズの発生源が絞り込めていない場合にも効果的に電磁波ノイズを吸収させることができる。また、最上層及び最下層には、LSIパッケージ等が接合される表面実装用のフットプリントのみが形成され、信号ライン配線5を形成しないことにより、信号ライン配線が外部から侵入された電磁波に曝されることが防止され、電磁波ノイズの発生を抑制することができる。
また、多層プリント回路基板1は、磁性材料の誘電率が一定であるということに着目し、磁性層3,4を磁性材料と絶縁樹脂との複合体とすることで、磁性層3,4の比誘電率が信号層2の比誘電率の±0.5以内とされている。これにより多層プリント回路基板1は、シグナルインテグリティ特性の劣化を抑制することができる。
これは、高周波信号からみた信号ラインのインピーダンスは、ライン周りの材料特性によって影響をうける。すなわち、ライン周りの材料特性値によって信号ラインの特性インピーダンスが決まる。磁性層が積層されたラインだけの特性インピーダンスが変化すると、インピーダンスの不整合が生じるため信号の反射などが生じてしまい、そのためシグナルインテグリティ特性が劣化してしまう。したがって、磁性層が積層されていない基板内のライン周りの材料特性と磁性層が積層されたライン周りの材料特性を大きく変化させないことがシグナルインテグリティ特性の劣化を抑制するために必要となるためである。
なお、磁性材料と絶縁樹脂とを複合させた磁性層3,4を積層した多層プリント回路基板1と、電磁波吸収シートを信号層に貼着させた積層板とを比較したとき、磁性層3,4の厚さ及びμr’’の積が電磁波吸収シートの厚さよりも小さい場合(例えば10分の1)であったとしても、上記(16)式より、距離を近づける(例えば10分の1の距離)ことによる電磁波吸収量の効果の方が大きい。したがって、電磁干渉の抑制において、電磁波吸収シートを用いた場合に比して、磁性材料を複合させた磁性層3,4を積層してなる多層プリント回路基板1が、電磁波吸収量や基板厚の薄型化のうえで優位となる。
また、寄生アンテナ源となり得るものは、上記信号ライン配線のみならず、例えばコネクタ接合部、信号ラインとバイアとの接合部、相対向するグランド間、及び半導体パッケージが実装された導体層の当該パッケージ下部がある。したがって、このような寄生アンテナ源の近傍に磁性層を設けることによっても、電磁波ノイズに対する耐性を向上させ、且つ電磁波ノイズの放出を抑制するとともに、シグナルインテグリティ特性を維持することができる。
次いで、多層プリント回路基板1の製造方法について説明する。先ず、ガラスエポキシ樹脂に銅箔を貼着させた銅張積層板や樹脂付き銅箔といったコア基板にエッチング等によって、一面又は両面側に信号ライン配線5を形成する。この絶縁基板の信号ライン配線5の形成面側には、レーザやドリル、フォトエッチング等によりバイア6が形成され、無電解銅メッキ、電解銅メッキ等のメッキ処理が施される。これにより一層の信号層2が完成される。さらに信号層2を積層させる場合にはこの上に樹脂付き銅箔を積層プレスによる加熱加圧処理によって積層し、同様のプロセスによって信号層2を形成していく。
次いで、図2に示すように、予めフェライトを含んだ樹脂付き銅箔10を、信号層2を構成する積層基板の最上層及び最下層に積層する。これにより磁性層3,4で積層基板全面を覆い、積層基板表面への信号ライン配線5の露出を防ぐことができる。
次に、図3に示すように、樹脂付き銅箔10の所定箇所に、半導体パッケージ8と信号層2に形成された信号ライン配線5との接続用に、レーザやドリル、フォトエッチング等により所要の位置にバイア11を設ける。バイア11は、図4に示すように、適宜デスミア処理が施された後、図5に示すように、電界又は無電解銅メッキ等のメッキ処理が施される。最後に、図6に示すように、エッチングによって半導体パッケージ8が接合されるフットプリントを残して周囲の銅箔を除去する。以上の工程により、積層基板の最上層及び最下層に磁性層3,4が形成された多層プリント回路基板1を形成することができる。
その後、多層プリント回路基板1は、フットプリントのパターンに応じた開口部が形成されたメタルマスクが密着された後、はんだペーストが印刷されることにより、適量の半田が塗布され、次いでLGAやCSP等の半導体パッケージ2が搭載される。そして多層プリント回路基板1のリフロー工程を経ることにより、フットプリント上に搭載された半導体パッケージ8のリードとはんだペーストとが接合され半導体パッケージ8が多層プリント回路基板1に実装される。
なお、磁性層は、寄生アンテナとなる信号ライン配線5が形成された信号層の位置に応じて、この寄生アンテナの直近となる積層基板の最上層又は最下層にのみ形成するようにしてもよい。
以上のように、本発明が適用された多層プリント回路基板1は、従来のビルドアッププロセスに、フェライト粒子が複合された樹脂付き銅箔の積層プレス、外装パターン形成というプロセスを組み合わせることにより製造される。したがって多層プリント回路基板1は、絶縁ペーストを印刷するなどの印刷工程や、電磁波吸収シート等を貼着する貼着工程を用いることがないため、既存のビルドアッププロセス用の製造設備を活用して製造することができ、また製造工程もビルドアッププロセスと一連した工程で製造可能で、製造工程が煩雑化することなく低コストで実現することができる。
図7に、(Ni,Zn)O・Fe2O3を磁性粒子として用い、エポキシ樹脂と複合して形成された磁性層の磁気特性を示す。この特性は、実際の磁性層における磁気特性をモデル化したものであり、磁性粒子を15μm以下の粒径に制御し、40vol%で充填した状態と一致している。図7よりMHzからGHz帯域にて共鳴現象が確認でき、μr’’の最高値は1.5GHz付近で1.25程度である。また、比誘電率は一定となっておりεr’≒3.8である。また、磁性層3,4以外の基板材料すなわち信号層2にはεr’≒4.1のFR−4(耐熱性ガラス基材エポキシ樹脂積層板)を使用しているため、磁性層3,4と信号層2との比誘電率の差は0.3であり、±0.5の範囲内に調整されている。
図8に、磁性層3,4の層厚及びノイズ発生源となる信号ライン配線5との距離に対するノイズ吸収特性についての計算結果を示す。この計算では「ノイズ吸収層(磁性層3,4)に入射するノイズ量は、ノイズ発生源(信号ライン配線5)とノイズ吸収層の距離に依存せずに一定」と仮定している。つまり、どのノイズ発生源との距離に対しても同じ大きさのノイズ量が吸収層に入射していると仮定している。磁性層3,4の形状は、50×50×tmm(0.05≦t≦0.35)とし、μr’’=1.25とした。これより、ノイズ発生源との距離が近づくに従い、より大きなノイズ吸収効果を有することが分かる。
図9に、本発明が適用された磁性材料(フェライト)を複合した磁性層3,4と同一の特性を有する磁性層材料(フェライト+樹脂)と、既存の電磁波吸収シートとの特性比較を示す。本発明が適用された磁性層材料の場合、電磁波吸収シートと比較して、μr’’(磁性損失)及び厚さにおいて低い値になり、また、ノイズ発生源との距離を近づけることが可能なために、期待されるノイズ吸収量は大きくなることが分かる。
続いて、シグナルインテグリティ特性について検証を行った。図10(a)(b)に、本解析で用いたシミュレーションモデルを示す。マイクロストリップをモデル化し、一面にグランド導体13が形成された絶縁基板12の他面上にストリップライン14を形成すると共に(図10(b))、本発明が適用された磁性層3,4と同一の特性を備える磁性層材料15(フェライト+樹脂)を配置した(図10(a))。磁性層材料15の形状は50.0×50.0×0.06mmである。この厚さは基板1層分の厚さに相当する。比較として、磁性金属粒子と樹脂を複合させて形成した既存の電磁波吸収シート(30.0×30.0×0.25mm、30.0×30.0×0.50mm)を同様にストリップライン14上に配置した場合についても解析した。この比較として本解析に用いた電磁波吸収シートの特性を図11に示す。
それぞれの場合におけるシグナルインテグリティ特性についての結果を図12に示す。図12は、本モデルにおけるマイクロストリップライン14の伝送特性を表している。つまりストリップライン14の一端部から信号を入射し、他端部で受け取る信号のレベルを表している。縦軸の単位は「dB」である。本発明の磁性層3,4の特性を有する磁性層材料15をライン上に配置した場合のシグナルインテグリティ特性を「フェライト+樹脂」、ストリップライン14上にシートなどを配置していない場合のシグナルインテグリティ特性を「ノーマル」で表してある。図12より、本発明が適用された磁性層材料15がストリップライン14上に配置されても「ノーマル」の結果と変わらず、信号の伝送特性は損失しないことが分かる。一方、電磁波吸収シートを配置した場合は、高周波になるに従い、信号の損失が生じていることが分かる。
これはフィルタ効果と呼ばれている現象であり、高調波などのノイズ成分をカットする際に必要となる。しかし、フィルタ効果は大きな効果を期待すると、透磁率、誘電率ともに大きい材料を用いるため、ストリップラインの特性インピーダンスが変化し、信号に反射などが生じる。これが、シグナルインテグリティ特性の劣化の原因となる。そのため、電磁波吸収シートを用いつつシグナルイテグリティ特性を保つためには、フィルタ効果を必要とするラインを選択して、フィルタ効果を応用した材料を配置する必要があるが、基板一面にかかる材料を配置することは難しい。また、図11に示したような特性を有する電磁波吸収シートの多くは、樹脂とともに磁性金属粉を混合しているが、この金属粉は低抵抗であることから基板内に用いるには作製の際には、信号ラインとのショートが無いよう細心の注意を払う必要がある。
以上より、多層プリント回路基板1は、最上層及び/又は最下層に位置する層にフェライト等の磁性材料を用いた磁性層3,4を積層させることで、シグナルインテグリティ特性に影響を与えずに、大きなノイズ吸収効果を有することができる。また、本発明は、ノイズ発生源となりうる可能性のある信号ライン配線5を全て覆っているため、ノイズ発生源が絞り込めていない多層基板の電磁干渉に対しても干渉被害を低減させることができる。
1 多層プリント回路基板、2 信号層、3,4 磁性層、5 信号ライン配線、6 バイア、8 半導体パッケージ、10 樹脂付き銅箔、11 バイア、12 絶縁基板、13 グランド導体、14 ストリップライン、15 磁性層材料
Claims (9)
- 信号用のライン配線が設けられた信号層と、
最上層及び/又は最下層に積層され、磁性材料と絶縁材との複合材料からなる磁性層とを備え、
上記磁性層には信号用のライン配線が設けられていないことを特徴とする多層プリント回路基板。 - 上記磁性層を構成する磁性材料には絶縁性の高い材料が用いられていることを特徴とする請求項1記載の多層プリント回路基板。
- 上記磁性層の比誘電率は、上記信号層の比誘電率の±0.5以内とされていることを特徴とする請求項1記載の多層プリント回路基板。
- 上記磁性層の近傍の層に寄生アンテナ源が存在することを特徴とした請求項1記載の多層プリント回路基板。
- 上記寄生アンテナ源は、信号ライン配線部、コネクタ接合部、ライン及びバイアの接合部、相対向するグランド間、及び半導体パッケージが実装された導体層の当該パッケージ下部であることを特徴とする請求項4記載の多層プリント回路基板。
- 磁性材料と絶縁材との複合材料からなる磁性層と信号用のライン配線が設けられた信号層とを備える多層プリント回路基板において、
上記磁性層の比誘電率は、上記信号層の比誘電率の±0.5以内とされていることを特徴とする多層プリント回路基板。 - 上記磁性層を構成する磁性材料には絶縁性の高い材料が用いられていることを特徴とする請求項6記載の多層プリント回路基板。
- 上記磁性層には寄生アンテナ源が存在することを特徴とする請求項6記載の多層プリント回路基板。
- 上記寄生アンテナ源は、信号ライン配線部、コネクタ接合部、ライン及びバイアの接合部、相対向するグランド間、及び半導体素子が組み込まれたパッケージ下部であることを特徴とする請求項8記載の多層プリント回路基板。
Priority Applications (1)
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JP2004197193A JP2006019590A (ja) | 2004-07-02 | 2004-07-02 | 多層プリント回路基板 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US8164001B2 (en) | 2006-11-22 | 2012-04-24 | Nec Tokin Corporation | Multilayer printed circuit board |
-
2004
- 2004-07-02 JP JP2004197193A patent/JP2006019590A/ja not_active Withdrawn
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