JP2006013167A - 有機双安定性素子およびこれを用いた不揮発性メモリ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 単純が構造な双安定性素子であって、かつ、長時間不揮発性メモリ効果が維持できる有機双安定性素子を提供する。
【解決手段】 第一電極と第二電極との間に、有機薄膜層が狭持されてなる有機双安定性素子であって、前記有機薄膜が、永久双極子モーメント7.13debye以上を有する有機化合物を含んでなり、前記第一電極と第二電極との間に正または負のバイアス電圧を印加して高導電状態とし、前記バイアス電圧とは逆のバイアス電圧を前記電極間に印加して低導電状態とすることにより、低導電性状態と高導電性状態との間で可逆的に転換できるものである。
【選択図】 図1
【解決手段】 第一電極と第二電極との間に、有機薄膜層が狭持されてなる有機双安定性素子であって、前記有機薄膜が、永久双極子モーメント7.13debye以上を有する有機化合物を含んでなり、前記第一電極と第二電極との間に正または負のバイアス電圧を印加して高導電状態とし、前記バイアス電圧とは逆のバイアス電圧を前記電極間に印加して低導電状態とすることにより、低導電性状態と高導電性状態との間で可逆的に転換できるものである。
【選択図】 図1
Description
本発明は、不揮発性効果を有する有機双安定性素子、およびこれを用いた不揮発性メモリ装置に関する。
有機物を用いた電子デバイスは、有機物の多様性により新規な特性を持つ素子が期待されることや分子素子の実現が可能であること等から盛んに研究されており、既に有機太陽電池、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスターなどの様々なデバイスの作製が試みられている。
これら有機電子デバイスのなかでも、近年、双安定性素子として有機材料を用いたメモリ装置の研究が進められている。有機材料を用いた双安定性素子としては、有機物を含む強誘電体層を一対の電極の間に狭持した積層構造のものが知られている。強誘電体層を構成する有機物質としては、アンスラセンやTTF−CA(テトラチアフルバレンとテトラクロロ−p−ベンゾキノンからなる交互積層型電荷移動錯体)等が検討されている。(例えば、特開2001−345431号公報:特許文献1)。
また、強誘電体層の代りに、低導電性の有機薄膜の間に導電性薄膜を介して低導電性の有機薄膜を設けたような三層構造の積層体を用い、この積層対を一対の電極の間に挟んだ有機双安定性素子も提案されている。特表2004−513513号公報(特許文献2)には、低導電性の有機薄膜材料として、2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾールを用い、これを金属等の高導電性薄膜を介して積層した構造体の両端に一対の電極を設けた構造の双安定メモリ素子が開示されている。
上記の三層構造を有する積層体を用いた双安定性メモリ素子は、異なる電圧で二つの伝導状態(双安定性)を有し、低電圧で電流値を測定することにより読み出しが行えるという、メモリ効果を有するものである。この双安定性メモリ素子は、強誘電体層のみ電極間に挟んだものに比較すると、スイッチング電圧を低くすることができるという利点有するものの、一対の電極間に挟んだ積層対が三層構造を有するため、構造が複雑なため製造工程が増加するという欠点があった。
特開2001−345431号公報
特表2004−513513号公報
本発明者らは、今般、所定の永久双極子モーメントを有する有機材料からなる薄膜を電極間に狭持することにより、単純な構造であっても双安定性を有し、かつ、長時間不揮発性メモリ効果が維持できる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
したがって、本発明は、単純が構造な双安定性素子であって、かつ、長時間不揮発性メモリ効果が維持できる有機双安定性素子を提供することにある。
そして、本発明による有機双安定性素子は、第一電極と第二電極との間に、有機薄膜層が狭持されてなる双安定性素子であって、前記有機薄膜が、永久双極子モーメント7.13debye以上を有する有機化合物を含んでなり、前記第一電極と第二電極との間に正または負のバイアス電圧を印加して高導電状態とし、前記バイアス電圧とは逆のバイアス電圧を前記電極間に印加して低導電状態とすることにより、低導電性状態と高導電性状態との間で可逆的に転換できることを特徴とする。
また、本発明の別の態様としての有機双安定性素子は、第一電極と第二電極との間に、有機薄膜層が狭持されてなる有機双安定性素子であって、前記有機薄膜が、永久双極子モーメント7.13debye以上を有する有機化合物を含んでなり、前記第一電極または第二電極の少なくとも一方の電極と前記有機薄膜層との間に、酸化物層が設けられてなるものである。
このような高い永久双極子モーメントを有する有機化合物を用いて有機薄膜層を形成することにより、電極/有機薄膜層/電極という、単純な構造の双安定性素子であっても長時間不揮発性メモリ効果が維持できる。
本発明による有機双安定性素子は、図1に示すように、第一電極1と第二電極2との間に有機薄膜層3が狭持された構造を有する。素子の使用適性から、第一電極1の下面に基材4を設けても良い。なお、電気信号印加手段5は、第1電極と第2電極との間に電気信号を印加するためのものであり、第1電極と第2電極との間が供給電源を介して電気的に導通されている。
有機薄膜層3は、第一電極1上に設けることにより形成される。この有機薄膜層は、有機化合物を含んでなる。本発明にあっては、有機化合物の永久双極子モーメントが7.13debye以上、好ましくは、9.35debye以上である。このような高い永久双極子モーメントを有する有機化合物を用いることにより、単純な構造の双安定性素子であっても長時間不揮発性メモリ効果が維持できる。すなわち、本発明による双安定性素子は、図2に示すように、正バイアスの電圧を印加すると、一定値上の印加電圧で急激に電流値が上昇し、高導電性状態となる。この状態は、印加電圧をOFFにしても持続し、不揮発性メモリ効果を有する。また、負バイアスの電圧を印加すると、一定値以上で低導電性状態となり、この低導電性状態は、再度、正バイアス電圧を印加するまで持続され、電圧印加に応じて、可逆的に低導電性状態と高導電性状態との間で変換することができる。
なお、本明細書中において、「永久双極子モーメント」とは、密度汎関数法により算出される値を意味し、Becke's three-parameter formulation(B3LYP)を使用して、基底関数6-31G*とした、いわゆるB3LPY/6−31G法を用いて数値計算された値である。また、本発明による有機双安定性素子は、バイアス電圧をOFFの状態にした後、高導電性状態を少なくとも2週間維持できる。
有機薄膜を構成する有機化合物としては、下記式(I)〜(V)で表される、2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾール(以下、AIDCNという)、4,5−ジシアノイミダゾール(以下、DCNという)、4−ニトロイミダゾール(以下、imd−4NO2という)、2−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール(以下、imd−MeNO2という)、および、1−メチル−4−ニトロ−5−クロロイミダゾール(以下imd−MeClNO2という)から選択される化合物が好ましい。
シアノ基等の電子受容基を有するイミダゾール環は、高い永久双極子モーメントを有する。例えば、B3LPY/6−31G法により算出された上記式(I)〜(V)の各化合物の永久双極子モーメントは、上記式(I)のAIDCNが9.35debyeであり、式(II)のDCNが7.13debyeであり、式(III)のが、8.07debyeであり、式(VI)のimd−MeNO2が8.43debyeであり、式(V)のimd−MeClNO2が8.63debyeである。
上記のような有機化合物を含んでなる有機薄膜層は、真空蒸着法等の気相法により形成したり、または、これらの有機化合物を適当な溶剤により溶解して得られた溶液を、スピンナーコーティング等の塗布方法により、電極上に塗布することにより形成することができる。有機薄膜層の厚みとしては、5nm〜1000nmが好ましい。
本発明の有機双安定性素子に用いる電極としては、第一電極および第二電極ともに、双安定性層である有機薄膜層との接合が適切に得られるよう、金属薄膜、比較的導電性の高い有機薄膜、もしくは導電性ペロブスカイト型酸化物薄膜、透明電極等からなることが好ましいが、特に金属薄膜からなることが好ましい。金属薄膜は、Al、Pt、Au、Ag、Fe、Ni、Cr、Cu、Ti、Hf、Zn、Zr、Mo、またはTa等の導電性の高い金属を用いて形成することができる。
金属電極としての高導電性の有機薄膜としては、PEDOT(3、4−ポリエチレンジオキシチオフェニレン/ポリスチレンサルフェイト)、または、適切にドープされた、ポリアニリン、ポリアセチレン、フラーレン、カーボンナノチューブ、もしくはカーボンナノワイヤー等が挙げられる。また、導電性ペロブスカイト型酸化物薄膜により電極を形成することもでき、導電性ペロブスカイト型酸化物としては、IrOx、MnOx、NiOx、CuOx、もしくはRuOx等、またはそれらが適切にドーピングされたものが好適に使用できる。透明電極としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等が使用できる。
第一電極および第二電極の各厚みは、素材の導電性にもよるが、概ね0.5nm〜5μm程度であることが好ましい。
本発明の有機双安定性素子にあっては、第一電極または第二電極の少なくともいずれか一方の電極と、前記有機薄膜層との間に、酸化物層が設けられてなることが好ましい。より好ましくは、該酸化物層は、電極を構成する材料が酸化された化合物を含んでなるものである。有機薄膜層は、一旦基材上に第一電極を設けた後、その電極上に形成される。したがって、第一電極を形成してから有機薄膜層を形成するまでの間に、第一電極が空気中に曝されることとなる。このような工程を経て双安定性素子を作製した場合、第一電極を構成する材料が、空気中の酸素によって酸化される。例えば、第一電極の構成材料として金属を用いた場合、その金属が酸化されて第一電極表面に金属酸化物が形成され、その金属酸化物層の上に有機薄膜層が形成される。通常、異なる材質が接触する界面においては真空準位が変動する。電極と有機薄膜層との間の界面においても真空準位が変動して、有機薄膜層のLUMO値が決定される。本発明にあっては、第一電極と有機薄膜層との間に酸化物からなる層が形成されることにより真空準位の変動量が大きくなり、それによって電荷注入障壁が小さくなるものと考えられる。
本発明にあっては、前記電極の仕事関数値と、前記有機薄膜の最低空分子軌道値(以下、LUMOという)との差が、0.16eV以下であることが好ましい。このような電子構造を有する場合、金属電極の仕事関数値、すなわちフェルミ準位とLUMOとの差が0.16eVであれば、容易に電荷注入が起こるため、電荷注入障壁が小さい素子を実現できる。なお、本明細書中において、電極の仕事関数は、紫外光電子分光法により算出された値を示し、また、LUMO値は、HOMOエネルギーから光学吸収スペクトル吸収端のエネルギーを差し引いた値にエキシトン効果分の0.6eVを足し合わせた値を示す。なお、光学吸収スペクトル吸収端のエネルギーは、吸光度測定(例えば、島津製作所製UV-3100を用いる)により算出することができる。
上記のように、本発明の有機双安定性素子は、不揮発性メモリ装置に好適に使用できる。メモリとして使用する際には、微小時間、双安定性素子に正もしくは負のパルス電圧を印加して書き込み(ON状態)または消去(OFF状態)とした後、微小時間、書き込みまたは消去のパルス電圧の絶対値よりも小さい定電圧を印加することにより、双安定性素子がON状態にあるか、もしくはOFF状態にあるかを判定できる。ON状態またはOFF状態は、電圧を印加するまで持続するため、不揮発性のメモリ装置として使用できる。素子特性は、第一電極と第二電極との間に、正もしくは負の電圧を印加することにより、両電極間に流れる電流を測定するか、もしくは両電極間に、正もしくは負の電流を流し、両電極間の電圧を測定することにより確かめることができる。
また、双安定性素子に情報を書込む際に、正バイアス、または負バイアス側のいずれか一方に流れる電流が、所定値以上に流れないように制限することが好ましい。このように双安定素子に一定値以上の電流が流れないようにすることにより、ON/OFFのスイッチングを確実に行うことができ、誤作動の少ない不揮発性メモリ装置を実現できる。正バイアス、または負バイアス側の電流は、測定器で電流制御したり、定電流ダイオードを用いることにより所定値以上に流れないように電流を制限することができる。
また、本発明にあっては、有機薄膜の価電子帯と伝導帯との間に不純物準位が存在し、その不純物準位のギャップエネルギーが、室温エネルギー(25.2meV)以下であることが好ましい。より好ましくは、素子の高導電性状態での活性化エネルギーから算出されたギャップエネルギー以下である。このようなギャップエネルギーとすることにより、69K以上という広い温度範囲での素子動作が可能となる。不純物準位のギャップエネルギーが、25.2meVを超えると、室温付近での動作が不可能となる。なお、不純物準位のギャップエネルギー(Eg)は、Eg≒2Eaから算出される値であり、ここで、Eaは、双安定性素子が高伝導状態にある場合の電気伝導度の温度依存性から下記のアレーニウス式
σ=σnexp(−Ea/kT)
により算出された導電活性化エネルギーを意味するものである。なお、電気伝導度の温度依存性は、直流二端子法伝導度測定により求めることができる。
σ=σnexp(−Ea/kT)
により算出された導電活性化エネルギーを意味するものである。なお、電気伝導度の温度依存性は、直流二端子法伝導度測定により求めることができる。
本発明の有機双安定性素子に好適に用いられる基材は、その基材上に、第一電極、有機薄膜層、および第二電極を順次積層するために用いられるものである。
基材は、ガラス、シリコン、もしくは、石英等の無機基材か、または、以下に例示する有機基材からなることが好ましい。基材はその上に設けられる各層を支持するためものであり省略することもできるが、基材を有する方が、双安定性素子に剛性が付与されるため使用し易く、また、多数の素子を基材上に配列して不揮発性メモリ装置とすることが容易である。
有機基材としては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シンジオタクティック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、ポリノルボルネン系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、一般的なプラスチックも使用可能である。特に基材が有機基材である場合、厚みが5μm〜300μm程度の薄いフィルム状のものを使用すれば、得られる双安定性素子をフレキシブルなものとすることもできる。
以下、本発明の有機双安定性素子について、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
1.有機双安定性素子の作製
金属電極としてアルミニウムを用い、清浄なガラス基板上に金属マスクを通して0.3nm/sの蒸着速度にてアルミニウムを堆積させ、下部電極(第一電極)を形成した。蒸着の際の基礎圧は、8×10−6Torrとした。次に、有機薄膜材料として、市販の2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾール(東京化成製)を精製しないで用いた。上記の下部電極上に金属マスクを通して0.02nm/sの蒸着速度にて2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾールを堆積させた。蒸着の際の基礎圧は、2×10−6Torrとした。さらに、その有機薄膜層上に金属マスクを通して、0.02nm/sの蒸着速度にてアルミニウムを堆積させて、上部電極(第二電極)を形成した。蒸着の際の基礎圧は、8×10−6Torrとした。各層の厚みは、水晶膜厚モニター(CRTM6000:ULVAC社製)および触針式膜厚計(Dektak:Sloan社製)を用いて測定した。上下の各電極のアルミニウム薄膜の厚みは50nmであり、有機薄膜層の厚みは60nmであった。
金属電極としてアルミニウムを用い、清浄なガラス基板上に金属マスクを通して0.3nm/sの蒸着速度にてアルミニウムを堆積させ、下部電極(第一電極)を形成した。蒸着の際の基礎圧は、8×10−6Torrとした。次に、有機薄膜材料として、市販の2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾール(東京化成製)を精製しないで用いた。上記の下部電極上に金属マスクを通して0.02nm/sの蒸着速度にて2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾールを堆積させた。蒸着の際の基礎圧は、2×10−6Torrとした。さらに、その有機薄膜層上に金属マスクを通して、0.02nm/sの蒸着速度にてアルミニウムを堆積させて、上部電極(第二電極)を形成した。蒸着の際の基礎圧は、8×10−6Torrとした。各層の厚みは、水晶膜厚モニター(CRTM6000:ULVAC社製)および触針式膜厚計(Dektak:Sloan社製)を用いて測定した。上下の各電極のアルミニウム薄膜の厚みは50nmであり、有機薄膜層の厚みは60nmであった。
2.I−V特性の測定
このようにして作製されたアルミニウム/2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾール/アルミニウム(以下、Al/AIDCN/Alという)の積層構造を有する双安定性素子のI−V特性を測定した。I−V特性の測定には、キースレー2400ソースメーターを用いた。また、測定は、1atmの窒素環境下で室温にて行った。印加電圧のスイープ速度は、0.025〜0.1V/secとした。過大電流により素子が破壊されるのを避けるため、電流リミッター値を、正バイアス領域において8×10−6Aに設定した。得られた結果は図3に示される通りであった。
このようにして作製されたアルミニウム/2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾール/アルミニウム(以下、Al/AIDCN/Alという)の積層構造を有する双安定性素子のI−V特性を測定した。I−V特性の測定には、キースレー2400ソースメーターを用いた。また、測定は、1atmの窒素環境下で室温にて行った。印加電圧のスイープ速度は、0.025〜0.1V/secとした。過大電流により素子が破壊されるのを避けるため、電流リミッター値を、正バイアス領域において8×10−6Aに設定した。得られた結果は図3に示される通りであった。
正バイアスを0Vから徐々に増加させた場合、素子のI−V特性は低電圧領域ではオームの法則(0〜0.5V)に従い、高電圧領域(0.5V〜2.5V)ではオームの法則から外れるように電流値が除々に増加し、2.6Vにおいて急激に電流値が三桁程度増加して高導電性状態となった(図中の1の方向)。
この高導電性状態はバイアス電圧をOFFにしても維持され、再度バイアス電圧を印加しても、二週間程度の高導電性状態を維持し、不揮発性メモリとして実現し得ることが判明した(図中の2の方向)。
高導電性状態にある素子に負のバイアス電圧を印加すると−1.5Vにおいて急激に電流値が減少し低導電性状態に切り替わり(図中の3の方向)、この低伝導性状態から印加電圧を下げるともとの状態に戻った(図中の4)。このような低導電性状態と高導電性状態との切り替わりのサイクルは、同様の実験を複数回行った場合でも観測された。
3.電気伝導度の温度依存性
次に、得られた双安定素子の電気伝導度の温依存性を測定するために、素子を液体窒素クライオスタット中に配置し、直流二端子法にて80〜295Kの温度範囲での素子の電気伝導度を測定した。測定には、キースレー487ピコアンメーターおよびアドバンテストR6551供給電源を用いた。各温度での伝導度σはI−V曲線における抵抗領域によって決定した。得られた結果は、図4に示される通りであった。
次に、得られた双安定素子の電気伝導度の温依存性を測定するために、素子を液体窒素クライオスタット中に配置し、直流二端子法にて80〜295Kの温度範囲での素子の電気伝導度を測定した。測定には、キースレー487ピコアンメーターおよびアドバンテストR6551供給電源を用いた。各温度での伝導度σはI−V曲線における抵抗領域によって決定した。得られた結果は、図4に示される通りであった。
高伝導性状態にあるAl/AIDCN/Al構造の素子の電気伝導度の温度依存性は、図4に示されるように下記のアレーニウス式
σ=σnexp(−Ea/kT)
により近似され、この近似から算出された活性化エネルギー(Ea)は、おおよそ3meVであった。この活性化エネルギーの値から、Al/AIDCN/Al構造の双安定性素子は熱的に活性化された半導体としての振る舞いを示すことがわかる。
σ=σnexp(−Ea/kT)
により近似され、この近似から算出された活性化エネルギー(Ea)は、おおよそ3meVであった。この活性化エネルギーの値から、Al/AIDCN/Al構造の双安定性素子は熱的に活性化された半導体としての振る舞いを示すことがわかる。
4.電子構造の評価
上記で得られたAl/AIDCN/Al構造の双安定性素子の各界面での電子構造を調べるため、二種類の試料を作製した。すなわち、Al/AIDCN界面での電子構造を調べるため、以下のような層構成を有する試料1を作製した。まず、おおよそ10−9Torr程度にしたチャンバー内で銅基板上にアルミニウムを蒸着して10nm厚のアルミニウム薄膜を形成し、それを一旦空気中に10分間放置することにより、アルミニウム薄膜の表面を酸化させて酸化アルミニウム被膜を形成した。次に、その酸化アルミにニウム被膜上に、上記と同様にして2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾールを堆積させて、AIDCN有機薄膜層を形成した。
上記で得られたAl/AIDCN/Al構造の双安定性素子の各界面での電子構造を調べるため、二種類の試料を作製した。すなわち、Al/AIDCN界面での電子構造を調べるため、以下のような層構成を有する試料1を作製した。まず、おおよそ10−9Torr程度にしたチャンバー内で銅基板上にアルミニウムを蒸着して10nm厚のアルミニウム薄膜を形成し、それを一旦空気中に10分間放置することにより、アルミニウム薄膜の表面を酸化させて酸化アルミニウム被膜を形成した。次に、その酸化アルミにニウム被膜上に、上記と同様にして2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾールを堆積させて、AIDCN有機薄膜層を形成した。
また、AIDCN/Al界面での電子構造を調べるため、以下のような層構成を有する試料2を作製した。まず、清浄な熱分解グラファイト(HOPG)基板上に2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾールを真空蒸着により堆積させてAIDCN有機薄膜層を形成し、その上に上記と同様にしてアルミニウムを蒸着により堆積させて0.8nm厚のアルミニウム薄膜層を形成した。試料1および2については、上記と同様にして水晶膜厚計にて各層の厚みを測定した。
得られた試料1および2について、超高真空光電子スペクトルメータを用いて測定することにより、He I UPSスペクトルを得た。なお、試料の真空準位を明確にするため、試料に4Vのバイアス電圧をかけてスペクトル測定を行った。得られたスペクトルから、基材のフェルミ準位を基準として各層の結合エネルギーを求めた。ここで、基材のフェルミ準位は、金蒸着した試料のUPSスペクトルから算出した。これらの結果から、試料1(Al/Al2O3/AIDCN)および試料2(AIDCN/Al)のエネルギーダイアグラムを算出した。結果は図5に示される通りであった。
図5の(a)において、AIDCN層のHOMOバンドは、3.84eVであった。また、Al2O3の真空レベルは、AIDCNの堆積により0.78eVまで上昇した。これは、負電荷真空側で電気二重層が形成されていることを意味するものと考えられる。
一方、図5(b)において、HOPG上に形成されたAIDCN有機薄膜層のHOMOバンドは2.58eVを示し、0.8nm厚のアルミニウムを蒸着することにより3.2eVまで増加した。HOPGの真空レベルは、AIDCNの堆積により0.62eVまで増加し、AIDCN有機薄膜層上に0.8nm厚のアルミニウムを蒸着した場合は1.56eVまで減少した。これらの結果は、Alq3上に蒸着したマグネシウムの場合と類似していることを示した。酸化されたAl(Al2O3)やHOPG上に蒸着したAIDCN有機薄膜による真空レベルのシフトは、AIDCNの高い永久双極子モーメントから誘導されるものと考えられる。
また、図5(a)において、LUMOレベルはフェルミ準位に非常に近接しており、アルミニウム基板から容易に電荷注入が起こり得ることを示している。AIDCN/Al界面では、AIDCNのHOMOレベルが3.20eVと見積もられ、レベルベンディングが示唆される。これはAIDCN中にドープされたアルミニウムの深さに依存しているものと考えられる。
以上の結果から、もし、Al/AIDCN界面領域にてHOMO−LUMOギャップが変化しないのであれば、電荷注入の障壁も低いことが期待される。これは、外部電圧により、上下両端のアルミニウム電極からAIDCN有機薄膜層への電荷注入が可能であることを示唆するものである。そして、AI/AIDCN/Al構造の有機材料のエネルギーレベルが、高速スイッチングの不揮発性メモリ効果に強く関係しているものと考えられる。
1 第一電極
2 第二電極
3 有機薄膜層
4 基材
5 電気信号印可手段
2 第二電極
3 有機薄膜層
4 基材
5 電気信号印可手段
Claims (9)
- 第一電極と第二電極との間に、有機薄膜層が狭持されてなる有機双安定性素子であって、
前記有機薄膜が、永久双極子モーメント7.13debye以上を有する有機化合物を含んでなり、
前記第一電極と第二電極との間に正または負のバイアス電圧を印加して高導電状態とし、前記バイアス電圧とは逆のバイアス電圧を前記電極間に印加して低導電状態とすることにより、低導電性状態と高導電性状態との間で可逆的に転換できることを特徴とする、有機双安定性素子。 - 前記第一電極または第二電極の少なくとも一方の電極と前記有機薄膜層との間に、酸化物層が設けられてなる、請求項1に記載の有機双安定性素子。
- 第一電極と第二電極との間に、有機薄膜層が狭持されてなる有機双安定性素子であって、
前記有機薄膜が、永久双極子モーメント7.13debye以上を有する有機化合物を含んでなり、前記第一電極または第二電極の少なくとも一方の電極と前記有機薄膜層との間に、酸化物層が設けられてなる、有機双安定性素子。 - 前記酸化物層が、前記電極を構成する材料が酸化された化合物を含んでなる、請求項2または3に記載の有機双安定性素子。
- 前記有機薄膜の価電子帯と伝導帯との間に不純物準位が存在し、その不純物準位のギャップエネルギーが、室温エネルギー以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機双安定性素子。
- 前記不純物準位のギャップエネルギーが、素子の高導電性状態での活性化エネルギーから算出されたギャップエネルギー以下である、請求項5に記載の有機双安定性素子。
- 前記有機薄膜が、2−アミノ−4,5−ジシアノイミダゾール、4,5−ジシアノイミダゾール、4−ニトロイミダゾール、2−メチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1−メチル−4−ニトロ−5−クロロイミダゾール、および、1,2−ジメチル−5−イミダゾールから選択される有機化合物を含んでなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機双安定性素子。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機双安定性素子を用いた不揮発性メモリ装置。
- 前記有機双安定性素子に情報を書込む際、正バイアス、または負バイアス側のいずれか一方に流れる電流を一定値に制限するリミッターを備えてなる、請求項8に記載の不揮発性メモリ装置。
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JP2004188729A JP2006013167A (ja) | 2004-06-25 | 2004-06-25 | 有機双安定性素子およびこれを用いた不揮発性メモリ装置 |
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