JP2006011334A - ハロゲン化銀乳剤とその製造方法、およびそれを用いたハロゲン化銀感光材料 - Google Patents

ハロゲン化銀乳剤とその製造方法、およびそれを用いたハロゲン化銀感光材料 Download PDF

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Abstract

【課題】 分光感度が大幅に改良されたハロゲン化銀写真乳剤及びこれを用いたハロゲン化銀写真感光材料を提供する。
【解決手段】 ハロゲン化銀粒子に隣接し、1種以上の分光増感色素を含む内色素層及び内色素層に隣接し、2種以上の色素を含む外色素層を含む2層の色素層を組み合わせて有する色素層被覆ハロゲン化銀粒子を含有し、外色素層の光吸収エネルギーが、内色素層の光吸収エネルギーと等しいかそれより高く、外色素層のエネルギー放出波長が、内色素層のエネルギー吸収波長と重なっており、内色素層を構成する分光増感色素がアニオン色素及び/またはベタイン色素であり、外色素層を構成する色素がアニオン色素とカチオン色素とを含み、且つその添加量及び/または吸着量において前記外色素層において、アニオン色素の量がカチオン色素の量よりも多いことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、少なくとも1種の光吸収の増大したハロゲン化銀乳剤、その製造方法、及びそれを含有せしめたハロゲン化銀感光材料、特に光吸収を増大させた結果、分光感度が大幅に改善され、且つ、保全性も向上したハロゲン化銀感光材料に関するものである。
ハロゲン化銀感光材料の高感度化の為に、従来から、多大の努力がなされている。ハロゲン化銀乳剤に於いては、感光材料に入射した光をハロゲン化銀粒子が吸収するか、該粒子表面に吸着した増感色素が吸収し、その光エネルギーをハロゲン化銀粒子に伝達されることによって感光性が得られる。
ハロゲン化銀粒子は青域光より短波長の光しか吸収できず、それよりも長波長の光に対して感光させるには前述の該粒子表面に吸着させた増感色素で吸収させ、その吸収した光エネルギーをハロゲン化銀粒子に伝達させる、所謂、分光増感技術がハロゲン化銀感光材料の高感度化の為には、必須、且つ重要な技術となっている。近年、汎用されている平板状ハロゲン化銀にあっては、固有吸収域であっても光の透過性が高く、吸収率が低いので固有域に於いても分光増感は重要な役割を担っている。
ハロゲン化銀粒子表面の分光増感色素による光吸収率を高める為には、分子吸光係数の高い色素を用い、単位粒子表面積当たりの該色素の吸着量を増加させればよい。
この為に、高い分子吸光係数を有し、最大数の色素分子を該粒子表面上に置くことを可能にする色素分子の「エッジ」面で吸着、充填していると信じられている、所謂、J凝集性シアニン色素が多くの写真システムで使用されてきた。
また、付着し得る増感色素量を増大させる方策として、平板状ハロゲン化銀も利用されてきた。粒子を平板状にすることで、粒子表面積を増大させ、その表面に、前述のJ凝集性シアニン色素を吸着させることで光吸収率を向上させる事が出来、多くの写真システムで使用されてきた。
しかしながら、このようにしても、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着量には限界がある。即ち、単層飽和吸着(即ち、1層吸着)よりも多くの色素を吸着させる事はできず、殆どの写真システムに於いて、全ての利用可能な光を捕集出来ていないのが実状である。
この問題点を解決する為の、より大きい光吸収を達成できる方法として提案された方法を以下に記述する。
一つの方法は、複数の色素をハロゲン化銀粒子に多層吸着させ、フェルスター(Forster)型励起エネルギー移動を起こさせるアプローチであり、その提案がG.R.バードによりなされている(非特許文献1)。もう一つの方法は、2個の色素発色団を共有結合で連結させた色素を用いるアプローチが提案されている(特許文献1〜5)。このバードの提案を改良する方法として、鵜飼らは、少なくとも2個のスルホ基及び/またはカルボキシ基を含む実質的に非吸着性のシアニン色素、メロシアニン色素及びヘミシアニン色素の内の少なくとも一つを、吸着性色素に結合させる方法を提示している(特許文献6)。この方法は、2種の色素が連結された時、期待に反し、お互いの性能を妨害し、適正にハロゲン化銀粒子上で凝集吸着できず思いの外感度の増大が得られぬばかりか、連結による色素分子容の大幅な増大を反映して、現像処理後の色素汚染(処理後に残留する増感色素に起因するD-minの望ましくない増加)に加えて、連結色素のコストが、製造が複雑になったことを反映して、大幅に高くなり、感光材料の製造コストをも押し上げてしまうと言う事実の欠点がある。
また、連結した色素を使用する方法としては、L.C.ビシュワカルマ(Vishwakarma)により、モノメチンシアニン色素とペンタメチンオキソノール色素とを共有結合で連結した色素を使用する方法が提示されている(特許文献7)。しかし、この場合には、オキソノール色素の発光とシアニン色素の吸収の重なりがなく、色素間でのフェルスター型励起エネルギー移動による分光増感は起こらず、連結したオキソノール色素の集光作用による高感度化は望みようもない。
別の一つの方法は、前述のように2個の色素発色団を連結させない方法である。
この方法として、杉本等は、ゼラチン中に配置されている非吸着性発光色素と組み合わせて使用される吸着性増感色素で増感した乳剤を用いての発光性色素からのエネルギー移動による分光増感を提示している(特許文献8〜9)。同様の方法として、R.スタイガー(Steiger)らは、ゼラチンに結合させた第二色素と組み合わせて使用する吸着性増感色素で分光増感したハロゲン化銀感光材料を提案している(特許文献10〜11、非特許文献2)。
しかしながら、この方法での問題は、お互いの色素は殆ど妨害しないようであるが、粒子に吸着しない色素が、粒子上に吸着した色素に非常に接近していないと(5nm以下)エネルギー移動が有効に生じない事である(非特許文献3)。非吸着性色素の大半は、エネルギー移動の為に必要な距離内にハロゲン化銀粒子に接近しておらず、感度損失をもたらすフィルター色素としてしか作用していない。この様な問題点の解析は、R.スタイガー(Steiger)らによってもなされている(非特許文献2)。
更によい方法としてハロゲン化銀粒子上に2層またはそれ以上の色素層を形成させる方法が提示されている。P.B.ギルマン(Gilman)はハロゲン化銀粒子に直接吸着する1層目にカチオン色素を吸着させ、2層目として、1層目色素よりも長波長の光を吸収するアニオン色素を使用する方法を開示している(非特許文献4)。しかし、この方法では2層目色素から1層目色素への前述のフェルスター型の効率の良い励起エネルギー移動は起こらない。
G.R.バード(Bird)らは、2層目以降(外色素層)の色素が、1層目(ハロゲン化銀粒子に直接吸着された内色素層)色素よりも短波長で光を吸収するようにした同様のシステムを提示している(特許文献6)。しかしながら、この提示された方法は、非常に波長域の広い増感領域が出来上がる物であり、同じハロゲン化銀粒子が、例えば、緑光と赤光との両方に感応してしまい、色再現を劣悪にするものであった。
山下らも、2種またはそれ以上のシアニン色素を使用して、上述のG.R.バードらが示した必要条件を満たした多層色素層をハロゲン化銀粒子上に形成させる方法を開示している。必要条件は芳香族基を持つ色素を用いることであり、好ましい必要条件は芳香族基を共に持つカチオン色素とアニオン色素とを使用する事であると開示している(特許文献12〜13)。しかしながら、この方法は色素が芳香族基を付与されたことにより、処理後の残留色素量が多くなり、D-minの大幅な増加をもたらす欠点がある。また、ハロゲン化銀カラー感光材料に於いては、現像処理で、現像主薬の酸化体とカップリングして発色するカプラーを乳化分散した乳化物をハロゲン化銀含有層に含有させているが、前述開示方法では、この乳化物を共存させると、該多層吸着層が損なわれる大きな欠点がある。
山下等は、上記の欠点を改良できる方法として、多価電荷を持つカチオン色素とアニオン色素とを組み合わせて多層色素層を形成させる方法を開示している(特許文献14)。これと全く同じ概念、方法がR.L.パートン(Parton)らにより開示されており(特許文献15〜16)、更に該色素の少なくとも一方に水素結合ドナー基を置換させる事でより好ましい多層色素層が形成できるとも提示している(特許文献17)。
これらの方法は、多層色素層を形成させる方法としては、従来提示された方法に比べ優れた方法であるが、十分な方法とはまだまだ言えない。即ち、改善されたとは言え、カラーカプラー乳化物を共存させると、形成させた多層吸着層は維持できず色素吸着量の減少を招いているのが実状である。
即ち、ハロゲン化銀粒子に直接吸着していない外層色素と該粒子に直接吸着している内層色素との相互作用がまだまだ弱く、乳剤を長時間溶解させた状態で放置したり、感光材料を高温、高湿下に保存されると外層色素が脱着し、吸収強度の減少をもたらし、それに伴い感度の減少をもたらしている。特にハロゲン化銀カラー写真感光材料に於いては、カラーカプラー等の様々な水不溶性写真有用化合物が高沸点有機溶剤中に溶解され、該有機溶剤が乳化された水性分散物と言う形態で添加されている。該分散物がハロゲンか化銀粒子に吸着した増感色素を脱着させ易い事は関係技術者間では周知の事であり、その脱着を抑える改良が様々なされてきた。しかしながら、かかる改良技術を持ってしても、前述したようにハロゲン化銀に直接吸着した増感色素に比べ、多層色素層での内層色素と外層色素間の相互作用がまだまだ弱いので、該水性分散物が添加された乳剤を長時間溶解させた状態で放置したり、感光材料を高温、高湿下に保存すると外層色素の著しい脱着が生じている。この為、外層色素層を形成させて吸収強度と感度を大幅に向上させても、それが殆ど失われてしまっているが実状である。製造工程に於いては、増感色素を吸着させた乳剤を塗布する前に、溶解させた状態で保存する必要がある。
これに対し、特定の界面活性剤、特定の高沸点有機溶剤を用いて調製したカラーカプラー等の水不溶性写真有用化合物の水性分散物を使用する技術も開示されている(特許文献18)。該改良技術により、改良されたとは言え、製造に供するにはまだまだ不十分である。
米国特許第2518731号公報 米国特許第3622316号公報 米国特許第3976493号公報 米国特許第3976640号公報 特開昭63−138341号公報 特開昭64−91134号公報 特開平6−57235号公報 特開昭63−138341号公報 特開昭64−84244号公報 米国特許第4040825号公報 米国特許第4138551号公報 特開平10−123650号公報 特開平10−239789号公報 特開平10−171058号公報 特開2000−89405号公報 特開2001−117192号公報 特開2001−117191号公報 特開2002−148767号公報 G.B.バード(Bird)、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング(Photographic Science and Enginiaring)、18巻、562頁(1974年発行) R.スタイガー(Steiger)、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング(Photographic Science and Enginiaring)、27巻(2)、59頁(1983年発行) T.フエルスター(Forster)、アンナーレン デル フィズックス(Annalen der Physiks)、6巻(2)55頁(1948年発行)。T.フエルスター(Forster)、ディスカッションズ ファラディー ソサイティー(Discussions Faraday Society)、27巻、7頁(1959年発行) P.B.ギルマン(Gilman)、フォトグラフィック サイエンス アンド エンジニアリング(Photographic Science and Enginiaring)、20巻(3)、97頁(1976年発行)
本発明の目的は、カラーカプラー乳化物等の写真有用性化合物共存下に於いても光吸収性能を大幅に向上させ、従来の多くの写真システムでは不可能であった、利用可能な光をすべて集めることに近づける方法を提供することであり、それにより、写真感度を効率的に高めたハロゲン化銀写真乳剤及びこれを用いたハロゲン化銀写真感光材料を提供する事にある。
本発明の上記課題は、下記の手段によって達成された。
(1)(a)ハロゲン化銀粒子に隣接し、ハロゲン化銀を分光増感させ得る少なくとも1種の分光増感色素を含む内色素層及び(b)この内色素層に隣接し、少なくとも2種の色素を含む外色素層を含んでなる、2層の色素層を組み合わせて有する色素層被覆ハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀乳剤において、前記外色素層の光吸収エネルギーが、前記内色素層の光吸収エネルギーと等しいかそれより高く、前記外色素層のエネルギー放出波長が、前記内色素層のエネルギー吸収波長と重なっており、前記内色素層を構成する分光増感色素がアニオン色素及び/またはベタイン色素であり、前記外色素層を構成する色素が少なくともアニオン色素とカチオン色素とを含み、且つその添加量及び/または吸着量において前記外色素層のアニオン色素の量がカチオン色素の量よりも多いことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
(2)前記内色素層を構成する分光増感色素がハロゲン化銀粒子上でJバンド型吸収を示すシアニン色素である上記(1)に記載のハロゲン化銀乳剤。
(3)前記外色素層を構成するカチオン色素とアニオン色素が、共にゼラチン水溶液中でJバンド型吸収を示す色素である上記(1)または(2)に記載のハロゲン化銀乳剤。
(4)前記外色素層を構成するカチオン色素とアニオン色素が、共にシアニン色素である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
(5)前記内色素層が形成された後、ハロゲン化銀に強く吸着する基を有する化合物であって、好ましくは後記の式(M)で表されるものを添加した後に、前記外色素層を形成する上記(1)〜(4)のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
(6)前記ハロゲン化銀粒子には、平板状ハロゲン化銀粒子が含まれることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
(7)前記平板状ハロゲン化銀粒子には、最大表面沃化物濃度領域をその縁に沿って有し、且つ、前記最大表面沃化物濃度領域の沃化物濃度よりも低い表面沃化物濃度領域をその角に有する平板状ハロゲン化銀粒子が含まれることを特徴とする上記(6)に記載のハロゲン化銀乳剤。
(8)(111)主平面を有する平板状ハロゲン化銀粒子が前記全ハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上含まれ、前記平板状ハロゲン化銀粒子が、エピタキシャル接合部を有し、且つ、前記平板状粒子の表面上に潜像形成性化学増感部位を有しており、前記潜像形成性化学増感部位が前記エピタキシャル接合部を形成する銀塩と同じ銀塩を少なくとも1種含み、更に前記潜像形成性化学増感部位が平板状粒子の(111)主平面の周囲縁に最も近く配置され、且つ、この主平面の面積の50%未満を占める部分に限定されていることを特徴とする上記(6)または(7)に記載のハロゲン化銀乳剤。
(9)(a)ハロゲン化銀粒子に隣接し、ハロゲン化銀を分光増感させ得る少なくとも1種の分光増感色素を含む内色素層及び(b)この内色素層に隣接し、少なくとも2種の色素を含む外色素層を含んでなる、2層の色素層を組み合わせて有する色素層被覆ハロゲン化銀粒子であって、前記外色素層の光吸収エネルギーが、前記内色素層の光吸収エネルギーと等しいかそれより高く、前記外色素層のエネルギー放出波長が、前記内色素層のエネルギー吸収波長と重なっているものであるハロゲン化銀粒子と、界面活性剤及び高沸点有機溶媒を含有した水不溶性写真有用化合物の親水性分散物とを混合して調製されるハロゲン化銀乳剤であり、前記高沸点有機溶媒量に対する前記界面活性剤量の比をγとした時、前記親水性分散物のγの値が、0.020以上0.390未満であることを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
(10)前記ハロゲン化銀乳剤中におけるγの値が0.020以上0.390未満であることを特徴とする上記(9)に記載のハロゲン化銀乳剤。
(11)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の特徴を更に有する上記(9)又は(10)に記載のハロゲン化銀乳剤。
(12)前記水不溶性写真有用化合物を前記高沸点有機溶媒に溶解し、得られた溶液と前記界面活性剤とを親水性コロイドに分散することにより前記水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を得る工程を有することを特徴とする上記(9)又は(10)に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法。
(13)前記水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を得る工程に於いて、限外濾過及び/またはイオン交換を行うことを特徴とする上記(12)に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法。
(14)上記(1)〜(11)のいずれかのハロゲン化銀乳剤、又は上記(12)若しくは(13)に記載の方法により製造されたハロゲン化銀乳剤を含有した乳剤層を少なくとも1層有するハロゲン化銀写真感光材料。
(15)該ハロゲン化銀乳剤を含有した乳剤層中おけるγの値が0.020以上0.390未満であることを特徴とする上記(14)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(16)前記感光材料中におけるγの値が0.020以上0.390未満であることを特徴とする上記(14)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
本発明によれば、高い分光感度と保存性に優れたハロゲン化銀乳剤、特に沃臭化銀乳剤、及びそのような乳剤の製造方法を提供する事が出来る。また、高感度で保存性に優れたハロゲン化銀写真感光材料、特に、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することが出来る。
以下に本発明を詳細に説明する。
上記のように、本発明の好ましい態様に於いて、ハロゲン化銀粒子は、非共役引力に因って一緒に保持されている色素層を有している。非共役引力の例には、静電引力、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、双極子・双極子相互作用、双極子誘導双極子相互作用、ロンドン分散力、カチオン・π相互作用及びこれらの任意の組み合わせが存在する。
本発明に於いては、ハロゲン化銀粒子表面は、これに隣接する(a)内色素層と、この内色素層の外に隣接する(b)外色素層とを含む、2層の色素層で覆われている。本発明では、(a)内色素層は、少なくとも1種の分光増感色素が飽和吸着量又はそれに近い量吸着して単分子層を形成している層をいい、(b)外色素層は、この内色素層よりも外側に位置する層をいう。内色素層が含有する色素量は、単層飽和吸着量に対しては、70%〜100%、好ましくは75%〜95%、より好ましくは80%〜90%である。
ハロゲン化銀粒子表面上を飽和被覆する分光増感色素の量は、色素濃度系列を調製し、ハロゲン化銀乳剤に吸着させた後、ハロゲン化銀粒子を遠心沈降し、ハロゲン化銀粒子に吸着した色素量を求め、非吸着色素濃度に対してプロットした色素吸着等温曲線から求める事ができる。ハロゲン化銀表面に吸着した色素が複数種類ある場合には、ハロゲン化銀粒子表面の色素占有面積が最も小さい色素によって到達する単位面積当たりの吸着量を飽和吸着量とする。色素占有面積は、遊離色素濃度と吸着色素量の関係を示す吸着等温線、および粒子表面積から求めることが出来る。吸着等温線は、例えばエー・ハーツ(A.Herz)らのアドソープション フロム アクエアス ソリューション(Adsorption from Aqueous Solution)アドバンシーズ イン ケミストリー シリーズ(Advances in Chemistry Series)No.17、173ページ(1968年)などの記載を参考にして求めることが出来る。
本発明の一つの好ましい態様に於いては、(a)内色素層は負の正味荷電を有するかまたは置換基の1個が負電荷を有し正味荷電がゼロである1種またはそれ以上の分光増感可能な色素の飽和もしくはそれに近い単分子層である。(b)外層色素は、必ずしも分光増感剤でなくともよく、正の正味荷電を有する色素とその色素量よりも多い負の正味荷電を有する少なくとも2種類の色素からなる。
(a)内色素層を構成する増感色素量と、(b)外色素層を構成する色素量の合計は、単層飽和吸着量の1.2倍以上であることがさらに好ましく、より好ましくは1.4倍以上、更に好ましくは1.6倍以上である。(a)内色素層を構成する増感色素量と(b)外色素層を構成する色素量の合計の上限に特に制限はないが、エネルギー移動効率及び現像処理後のステイン等の観点からは、2.6倍以下が好ましく、より好ましくは2.3倍以下、更に好ましくは2.0倍以下である。(a)内色素層を構成する増感色素量と、(b)外色素層を構成する色素量の合計が、2倍を超えるとき、飽和吸着量の観点からは、(b)外色素層は、複数のサブ外色素層(第一サブ外色素層、第二サブ外色素層、‥)から構成されることになる。この場合、第一サブ外色素層とそれ以降のサブ外色素層を構成する色素の種類は、同一であっても異なっていてもよい。
ハロゲン化銀乳剤に添加した分光増感色素の実際の吸着量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を併用した方法で容易に測定できる。
本発明の増感色素が添加されたハロゲン化銀乳剤を遮光下、遠心沈降させ、沈降した色素が吸着したハロゲン化銀粒子を凍結乾燥する。この色素が吸着したハロゲン化銀粒子の凍結乾燥ペレットの中央部を適当量採り、10%チオ硫酸ナトリウム水・ジメチルホルムアミド(DMF)・メタノールの2:1:1の混合溶液に溶かす。次いで、この溶解した液をHPLCの溶離液で2倍に稀釈した後、ガードカラムを装着したHPLCの注入口に注入し、25℃で分離定量測定した。HPLCの測定条件は次の通りである。カラムはCapcellPak C1 4.6mmφ×250mm(資生堂(株)製)、溶離液は、I液とII液の1:1混合液を使用した。I液は、塩酸グアニジン0.475gを水950ミリリットル(以下、ミリリットルを「mL」とも表記する。)に溶解し、PIC B8(米国Waters Corporation社製)25mLを加えた溶液に、アセトニトリル・メタノールの1:4の混合液を加えて1リットル(以下、リットルを「L」とも表記する。)に調製した溶液であり、II液は塩酸グアニジン0.475gと水50mL、PIC B8の25mL混合溶液にアセトニトリル・メタノールの1:4の混合液を加えて1Lに調製した溶液である。
外層色素に、内層色素の色素の正味電荷とは反対の正味荷電を持つ色素、及び正荷電を有する色素と負荷電を有する色素とを組み合わせた技術は既に開示されている(特許文献9等)。しかしながら、ハロゲン化銀感光材料の製造に於いては、支持体に該ハロゲン化銀乳剤を塗布する為に界面活性剤の使用が不可欠であり、カラー感光材料の製造にあっては、カプラー乳化物等の水不溶性写真有用化合物を高沸点有機溶剤に溶解し、その溶液を界面活性剤併用下に乳化分散した親水性分散物を共存させる。前述の外層色素を正荷電の色素としたものでは、この界面活性剤やカプラー乳化物が共存すると大半の外層色素が脱着してしまった。
外層色素に正荷電を有する色素と負荷電を有する色素とを用いた場合でも、此まで開示された技術は、上述特許文献も含め、内層色素に負またはゼロの正味荷電を持つ色素を用いる場合には、負電荷の色素は正電荷の色素に対して補足的に少量用いる技術しか開示されておらず、かかる場合に於いては、界面活性剤やカプラー乳化物が共存するとやはり外層色素の脱着が大きく、製造に供する技術には遠いものであった。
一方、外層色素に正荷電を有する色素と該色素より多い量の負の電荷を有する色素とを使用した例は全く知られていない。
内層色素を負荷電の色素とした場合、静電引力を利用した外層色素の固定には、外層色素を正荷電色素とするか、外層色素に正荷電色素を主に用いるのが一見理にかなっているように思われるだろう。しかしながら、それでは、前述したように界面活性剤やカプラー乳化物により脱着されてしまう脆弱な色素多層吸着しか形成できない。
本発明者は、外層色素に正荷電を有する色素と該色素より多い負の電荷を有する色素とを組み合わせて使用する事により、界面活性剤やカラーカプラー乳化物が共存しても、また、共存した液体乳剤の儘で長時間保存しても、更にまた、共存物を塗布した試料を高温、高湿下に保存しても色素が脱着される事による吸収及び感度の低下が殆ど起こらない事を見出した。そればかりか、驚くべき事に、該方法を用いれば、界面活性剤やカラーカプラー乳化物が共存すると吸収、吸着量が低下するどころか、増大した。界面活性剤やカラーカプラー乳化物が共存しないと、負荷電の色素は正荷電の色素以上には吸着し得なかったが、共存すると吸着出来なかった負電荷の色素が更に吸着できるようになった。
一方、内層色素に正電荷を有する色素を用いた例では、外層色素に負電荷の色素を用いた例、及び正電荷の色素と負電荷の色素とを用いた例も開示はされている。しかし、内層色素に正電荷を用いた場合には単層被覆以下でも被りを生じやすく、高感度ハロゲン化銀乳剤には全く適用できない。市販の高感度撮影ハロゲン化銀感光材料にあっては、使用した例は皆無である。従って、外層色素に負電荷の色素を使用しても、内層に正荷電の色素を用いていれば、同様に被りが生じ、それだけでとても実施に耐えうるものではない。
更にまた、本発明者は、ハロゲン化銀粒子に隣接し、ハロゲン化銀を分光増感させ得る少なくとも1種の分光増感色素を含む内色素層及びこの内色素層に隣接し、少なくとも2種の色素を含む外色素層を含んでなる、2層の色素層を組み合わせて有する色素層被覆ハロゲン化銀粒子を含有する乳剤のカラーカプラー等の乳化分散物による増感色素、特に外層色素の脱着が、該乳化分散物中及び/または該乳化分散物と分光増感色素を多層吸着させたハロゲン化銀粒子とを含む乳剤中及び/またはその乳剤を含む親水性コロイド層中の界面活性剤量と高沸点有機溶剤量を制御することにより、低減できることも見出した。
更にまた、前述した外層色素に正荷電を有する色素と該色素より多い負の電荷を有する色素とを組み合わせて使用する事に加え、この界面活性剤量と高沸点有機溶剤量との制御とを組み合わせ使用すると、カラーカプラー等の乳化分散物が共存した該ハロゲン化銀乳剤を液体状態で長時間放置しても、また該乳化分散物と該ハロゲン化銀乳剤を含有した層を少なくとも1層有する感光材料を高温、高湿度に放置しても、増感色素の脱着およびそれによる吸収強度低下、感度低下が実用に供し得る程度にまで、大幅に抑制できることも見出した。
本発明に於ける高沸点有機溶剤量に対する界面活性剤量の比とは、水不溶性写真有用化合物の親水性分散物及び該親水性分散物とハロゲン化銀粒子表面上に内色素層と外色素層の2層の色素層を被覆させたハロゲン化銀乳剤とを有する乳剤にあってはその単位質量当たりの、感光材料中の特定乳剤層及び感光材料中にあってはその単位面積当たりの、それぞれの界面活性剤量を「A」g、高沸点有機溶剤量を「B」mLと規定すると、
γ=A/B
で表される量である。
感光材料中の界面活性剤量と高沸点有機溶剤量は、支持体を除く塗布膜全体を、特定乳剤層中のそれらは、塗布膜から特定乳剤層のみを単位面積取り出し、乳剤中の及びカラーカプラー等の乳化分散物中のそれらは、それらから抽出・分離し、高速液体クロマトグラフィー等の方法で定量することができる。
ハロゲン化銀粒子表面の増感色素が安定的な吸着状態を保ち、感度粒状比或いは保存性を向上させる為には、γは0.020以上0.390未満の間に維持されることが好ましく、0.039以上0.293未満であることが更に好ましく、0.049以上0.234未満であることが特に好ましい。塗布故障に繋がりにくくするためには、γ値はあまり小さくないほうがよい。
本明細書に於ける水不溶性とは、写真有用化合物の必要量を写真要素中に添加する際、塗布用組成物を塗布可能な範囲の限界濃度まで稀釈しても水に対する溶解性不足の為、水溶液としてその塗布用組成物中に全量添加出来ないことを言う。通常、20℃の水100gに対する溶解度が10以下の物に対していう。本発明では、特に20℃の水100gに対する溶解度が5以下の物に対して優れた効果を奏することができる。
本発明で用いられる水不溶性写真有用化合物は、色素像形成カプラー、色素像供与レドックス化合物、ステイン防止剤、被り防止剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、混色防止剤、造核剤、ハロゲン化銀溶剤、漂白促進剤、フィルター用染料及びこれらの前駆体、染料、顔料、増感剤、硬膜剤、漂白剤、減感剤、帯電防止剤、酸化防止剤、現像主薬酸化体スカベンジャー、媒染剤、マット剤、現像促進剤、現像抑制剤、熱溶剤、色調調節剤、滑り剤及びこれらを分散する為の媒体として用いられる分散用ポリマーラテックス、水不溶性の無機塩(水酸化亜鉛など)、膜強度改良剤などが挙げられる。これらの水不溶性写真有用化合物は、一般に、水中油滴分散物(乳化物)や固体微粒子分散物の水または親水性コロイド分散物として、機械力により乳化または固体微粒子状に分散され、写真乳剤層またはその他の層に用いられる。上記水不溶性写真有用化合物の記載例としては、リサーチ・ディスクロージャー(R.D.)No.17643号、同No.18716号、同No.307105号、同No.40145号などが挙げられる。
親水性分散物の添加量に制限はないが、塗布量に換算して、0.01g/m2以上、500g/m2未満であることが好ましい。
水不溶性写真有用化合物の一例として、色素像形成カプラーが挙げられる。通常、写真用に用いる時は、色素像形成カプラー、高沸点有機溶剤(沸点80℃を越え、好ましくは175℃以上)及び溶解性を付与するための低沸点有機溶剤(沸点30〜160℃)を混合して溶液とし、この組成物と親水性コロイド溶液とを界面活性剤の共存下で乳化する。
色素像形成カプラーと高沸点有機溶剤は前者の後者への溶解度が高い方が好ましい。カプラーの融点は、1気圧下で155℃以下が好ましく、より好ましくは125℃以下、更に好ましくは100℃以下である。カプラーを複数用いて、融点降下効果を用いて融点を下げ、溶解性を向上する技術が好ましく用いられる。本発明に於いては、高沸点有機溶剤及び分散助剤を除く複数の水不溶性写真有用化合物の混合物の融点が、各化合物の融点の容積加重平均よりも2℃以上低いことが好ましく、より好ましくは4℃以上低いことである。
本発明の水不溶性写真有用化合物を含む組成物を分散する親水性バインダーは、水溶性保護コロイドを含むことが好ましい。保護コロイドとしては、公知の物を用いる事が出来るが、ポリビニールアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、多糖類、カゼイン、ゼラチンなどが挙げられる。特にゼラチンが好ましい。なお、親水性分散物の分散媒は、水を用いる。
本発明において用いる水不溶性写真有用化合物の親水性分散物に含まれる界面活性剤としては、公知の物を用いることが出来る。従来開示されてきた分散助剤としては、アルキルフェノキシエトキシエタンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナトリウムオレイルメチルタウライド、ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮重合物、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、マレイン酸アクリル酸共重合物、カルボキシメチルセルロース、硫酸セルロースなどのアニオン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン酸脂肪酸エステル、ポリアルキレンオキサイドのブロックポリマーなどのノニオン系分散剤、カチオン系分散剤やベタイン系分散剤などが挙げられる。これらは、従来の方法では分散される素材(高沸点有機溶剤を用いる時は、水不溶性写真有用化合物と高沸点有機溶剤との総和。また、これを用いない時は水不溶性写真有用化合物。)に対し、質量比で30%以下の割合で使用される。界面活性剤の使用量下限に制限はないが、0.01質量%以上が好ましい。
本発明に於ける高沸点有機溶剤とは、水不溶性写真有用化合物の分散剤となる常圧での沸点が凡そ175℃以上で、水と混和し難い(25℃での水への溶解度が5質量%以下、好ましくは1質量%以下)親油性の溶剤であり、目的に合致する限り常温・常圧での液体/固体の別、或いは低分子量/高分子量(またはポリマー状)の別を問わない。代表的な構造には、フタレート類、トリメテート類、ホスフェート類、ホスホネート類、ホスフィネート類、ホスフィンオキシド類、脂肪酸エステル類(一塩基脂肪酸エステル、二塩基脂肪酸エステル、三塩基脂肪酸エステル、ポリオールエステルなど)、ベンゾエート類、フェノール類、アルコール類、アミド類、アニリン類、ポリアクリレート類、ポリアクリルアミド類、縮合ポリエステル類などがあり、具体的な化合物は当業者に既知である。
本発明に於ける高沸点有機溶剤は、極性構造(カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、燐酸エステル、燐酸アミド、ホスホン酸エステル、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸エステル、ホスフィン酸アミド、ホスホリル、炭素原子に結合するヒドロキシ基、炭素原子に結合するハロゲン原子、両端で炭素原子に結合する酸素原子、または3つの炭素原子に結合する窒素原子)と疎水性基(アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アラルキレン、またはアリーレン)から構成されるが、前記以外の官能基は含まない。また、本発明に於ける高沸点有機溶剤は、ハイドロキノン、カテコール、ヒンダードフェノール、またはヒンダードアミンの構造を含まない。
本発明に於いて、高沸点有機溶剤には、以下に列挙されるような機能を主たる機能として有することが当業者に既知の化合物を除く。例えば、褪色防止剤(ラジカルスカベンジャー、エネルギー消光剤など)、紫外線吸収剤、現像主薬酸化体スカベンジャー(混色防止剤、足切り剤、競争化合物など)、現像主薬スカベンジャー、処理後画像増色防止剤、光・熱・湿度によるステインの防止剤、ブリーチステイン防止剤などは高沸点有機溶剤に含まれない。
高沸点有機溶剤の添加量に制限はないが、塗布量に換算して、0.001mL/m2以上200mL/m2未満であることが好ましい。
写真感光材料として水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を含有してなる層を設けるには、このようにして得た分散物を適当なバインダー中に分散させることによってほぼ均一な塗布用組成物にして調製した後、これを所望の支持体上に塗布することによって設けることが出来る。
上記バインダーは、感光性乳剤層や非感光性層に用いることが出来る親水性のコロイドであれば特に制限はないが、通常ゼラチンまたはポリビニルアルコールやポリアクリルアミド等の合成ポリマーが用いられる。
このような塗布組成物は、作成した分散物を他の塗布成分を速やかに混合し、混合後20分の滞留時間内に塗布することが好ましい。これにより、作成後、分散状態が不安定で、凝集や粒子サイズの変化を起こし易い分散物でも殆ど劣化無く膜に取り込むことが出来る。他の塗布成分との混合を早くするために、分散液の液出口から出た液流を貯蔵することなく他の塗布成分の液流とスタチックミキサーなどを用いてインラインで直接混合することは好ましい。混合は、分散物作成後10分以内、好ましくは5分以内、より好ましくは1分以内が良い。例えば、特開平3-223839号公報には塗布用組成物作成から塗布までの時間が規定されている。
次に本発明に於いて好ましい乳化方法について述べる。
乳化方法としては、スターラーでの撹拌、ホモミキサーを用いた高速剪断、コロイドミルなどを用いたミリングが一般的である。また超音波を用いた方法もある。また、マントリーホモジナイザーの如く、圧力を付加した液流を壁に激突させたり、液流同士を衝突させたりして、衝撃やシェアで微細化する方法もある。特開平6−308691号公報には高圧ホモジナイザーの使用が開示されている。その他、超音波ホモジナイザー、フロージェットミキサーによる方法もある。
また、米国特許第4,933,270号、同4,957,867号などの明細書に記載のように、均一系から分散物を析出させる方法も提案されている。また、多孔質ガラス膜による油滴を分割する方法や、電気毛管現象による乳化法も提案されている。
水不溶性写真有用化合物の親水性分散物中やハロゲン化銀写真感光材料中の界面活性剤量と高沸点有機溶剤量との比γを制御する工程として、塗布前に水不溶性写真有用化合物の親水性分散物に対し限外濾過を使用しても良い。本発明の限外濾過による脱水及び脱塩技術は、リサーチ・ディスクロージャー、102巻、10298項及び同131巻、13122項に記載されている。また、米国特許第4,334,012号、同5,164,092号、同5,242,597号、欧州特許第795455号、同843206号、特開平8−278580号、同11−231449号等の明細書及び公報に開示されている。
本発明の限外濾過膜に用いられる膜を容器に組み込んだ膜モジュールには、環状モジュール、中空糸モジュール、プリーツモジュール、スパイラルモジュール、平膜モジュール、プレート・フレームモジュールを用いることが出来る。この中で、中空糸モジュール及び平膜モジュールが好ましく用いられる。
本発明の限外濾過膜は、種々の素材の物を用いることが出来る。有用な限外濾過膜の主要な素材は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリスルフォン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、酸化アルミニウム等のセラミック等が好ましく用いられる。
本発明の限外濾過膜の性能を示すものとして、分画分子量がある。分画分子量は阻止率(供給液の濃度から透過液の濃度の差を供給液の濃度で割った百分率)90%以上になる分子量であり、水不溶性写真有用化合物を含む水不溶性成分は透過せず、必要としない界面活性剤は透過する分画分子量が好ましい。また、分画分子量を小さくすると、限外濾過膜を透過する液の流量は減少するので、最適な分画分子量を選ぶ必要がある。有用な分画分子量は1000〜1000000であり、好ましくは3000〜100000である。
本発明に於いて、水不溶性写真有用化合物の親水性分散物中の界面活性剤を限外濾過により除去する一例を示す概念図を図1に示す。図1に於いて、反応容器1中の水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を含む分散液は攪拌機2で撹拌され、液供給配管9,ポンプ10及び供給バルブ11を通り限外濾過膜13に送り込まれる。水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を含む分散液は限外濾過膜を通して、水や塩等の一部が液透過配管18,透過バルブ20及び透過流量計21を通って排出される。この時、逆止弁27は閉鎖されている。残りの水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を含む分散液は液還流配管14,還流バルブ16及び還流流量計17を通り、元の反応容器1に戻る。水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を含む分散液が限外濾過膜を通過する前後には圧力計12,15及び19を備える。また、限外濾過膜に残った水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を含む分散液を反応容器に戻すために、上記限外濾過を終了した後に透過液の一部を逆洗浄配管24から逆洗浄用ポンプ25,逆洗浄バルブ26,逆止弁27、透過バルブ20及び液透過配管18を通って限外濾過モジュールを通り、限外濾過膜に吸着した水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を含む分散液を液還流配管14,還流バルブ16及び還流流量計17を通して元の反応器に戻すことが出来る。また、逆洗浄用の水溶液は、透過液の代わりに水、透過液を水で稀釈した水溶液またはpBrを調整した水溶液で代用することも出来る。
本発明の限外濾過による透過液は、還流バルブ及び透過バルブを調整することにより還流及び透過流量を制御する事が出来る。透過流量を増やすためには、ポンプの流量を上げること、及び還流バルブを絞って還流流量を上げ、供給圧力を上げることで調整することが出来る。また、透過量を増加させる方法として、限外濾過モジュールを2個以上並列または直列に繋ぐことで膜面積を増やす方法が好ましい。
水不溶性写真有用化合物の親水性分散物中やハロゲン化銀写真感光材料中の界面活性剤量と高沸点有機溶剤量との比γを制御する工程として、塗布前に水不溶性写真有用化合物の親水性分散物に対しイオン交換を行っても良い。イオン交換の方法としては、水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を溶解させ、イオン交換樹脂と混ぜて混合撹拌し、静置後、該イオン交換樹脂を濾別などの方法で除去する方法を用いても良いし、カラムにイオン交換樹脂を充填して、水分散物を流通させる方法を用いても良い。使用されるイオン交換樹脂には陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が挙げられる。陽イオン交換樹脂としては、スチレン系樹脂、メタクリル酸系樹脂、アクリル酸系樹脂等が挙げられる。陰イオン交換樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂などが挙げられる。陰イオン交換樹脂の例としては、AMBERLITE IRA-900などが挙げられる。イオン交換樹脂はキレート樹脂、イオン交換繊維、合成吸着剤の形態で用いても良い。また、イオン交換樹脂の代わりに、ゼオライトなどの無機イオン交換体を用いても良い。
本発明の負の正味荷電を有するかまたは置換基の1個が負電荷を有し正味荷電がゼロである1種またはそれ以上の分光増感可能な色素を用いた内色素層に加えて、正の正味荷電を有する色素とそれより多い量の負の正味荷電を有する色素とを組み合わせて外色素層を形成する結果として、内色素層の色素又は色素群に伴う乳剤の総吸収に対して、外色素層の色素群を付加した結果得られた乳剤の総光吸収を知る事は必要である。
本発明で用いる(a)内色素層及び(b)外色素層の2層の色素層を組み合わせて有する色素層被覆ハロゲン化銀粒子においては、外色素層の光吸収エネルギーが、内色素層の光吸収エネルギーと等しいかそれより高い。
この吸収の測定は、当該技術分野で公知の種々の方法で容易に行う事ができる。特に簡易に適用できる方法は、写真感度等の評価に使われる試料、即ち、支持体上に平らに塗布された乳剤塗布膜を波長の関数としての吸収を測定する事である。本発明者は、積分球を設置した日立製作所(株)製自記分光光度計U-3500で、試料を積分球内に設置出来るように改造した装置で測定した。
写真感度測定時の露光に於いては、等エネルギー露光機を用いたが、適当なフィルターを介して露光する。従って、外色素層を付与した結果得られる吸収率の増加がそのまま感度に反映される訳ではない。感度に反映される分は、実際に照射される光量は波長で異なるので、1nm刻みにフィルターによる透過光量を補正した透過光量に対する吸収率の和となる。即ち、感度の増減は、単位時間、単位面積当たりのフィルターを介して照射した時の吸収された光子数に依存する。本発明の実施例に於いて記載した「相対吸収」は、単位時間、単位面積当たりの「内色素層単独を含む乳剤塗布膜の吸収光子数」を100とした時の「内色素層に加えて外色素層も付与した乳剤塗布膜の吸収光子数」の相対値で示した。この「相対吸収」の増加が、本発明の有効な光吸収効果の定量的尺度である。
本発明の内色素層形成に使用する増感色素は負の正味荷電を有する分光増感可能な色素及び/または置換基の1個が負電荷を有し正味荷電がゼロであるベタイン色素であるが、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラシアニン色素又はヘミシアニン色素等が好ましく、ハロゲン化銀粒子上でJバンド型吸収を示すシアニン色素又はメロシアニン色素がより好ましく、下記式(SI)で表されるハロゲン化銀粒子上でJバンド型吸収を示すシアニン色素が特に好ましい。
Figure 2006011334
(上式中、Z1及びZ2はそれぞれ独立してチアゾール核、セレナゾール核、オキサゾール核、イミダゾール核、インドール核、テルラゾール核またはキノリン核を完成するに必要な原子群を表し、置換されていても良く、2つの置換基同士が結合して縮合環(例えば、ベンゼン環)を形成してもよい事を表す。
R1及びR2は互いに独立して置換若しくは非置換の脂肪族基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は負の電荷を有し、X1は必要に応じて電荷を中和させる為のカチオン性対イオンを表す。
L1、L2及びL3は置換若しくは非置換のメチン基を表す。n1は0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0または1を表す。)。
負の電荷を有する置換基の例は、例えば、スルホ基、カボキシ基を含有した基で、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、4−スルホブチル基、3−スルホブチル基、カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基などが挙げられる。
かかる増感色素の具体例としては、例えば。リサーチ・ディスクロージャー誌(Reserch Disclousure)176巻アイテム17643(RD17643)、同187巻アイテム18716(RD18716)及び308巻アイテム308119(RD308119)に記載の特許明細書に記載されているようなシアニン色素が挙げられる。内色素層を形成させる増感色素は1種類でも複数を組み合わせても、増感色素に当技術分野で強色増感剤と称される化合物とを組み合わせて使用しても良い。特に、Eredが−1.3V vs SCEよりも貴の増感色素を主体的に使用する場合に於いては、強色増感技術を適用した方が好ましい。増感色素のEred及びEoxは、谷、大関、関 ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサイティー(T.Tani,K.Ohzeki,K.Seki,Journal of the Electrochemical Society)138巻 1411頁及びレナード、ジャーナル オブ イメージング サイエンス(J.Lenhard,Journal of Imaging Science)30巻 27頁に記載の位相弁別第二高調波交流ボルタンメトリー法により測定すればよい。
内色素層には、少なくとも1種の増感色素が含まれるが、使用する増感色素は、1種類のみであっても複数種であってもよい。
内色素層は、外色素層を付与しない場合での最適性能が得られる色素量で、飽和もしくは飽和に近い量である事が好ましい。特に飽和に近い量であることが好ましく、外色素層の色素を添加する前にメルカプト基又はチオカルボニル基のようなハロゲン化銀に強く吸着する基を含有する化合物が内色素層を構成する増感色素の添加終了後に添加されるのがより好ましい。特に、次式(M)で表されるメルカプト化合物が特に好ましい。
Figure 2006011334
(式中、Yは置換基を有していてもよい炭素総数10以下の低級アルキル基、低級アルケニル基又は置換基を有していても良い炭素総数12以下のアリール基を表し、Zは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又はアルカリ性若しくは酸性条件下で除去可能な保護基を表す。Xは窒素原子またはCHを表す。)。
式(M)で表される化合物は、ハロゲン化銀1モル当たり、0.05ミリモル〜1ミリモル、好ましくは0.1ミリモル〜0.6ミリモル添加することができる。
式(M)で表される化合物の添加方法は、後述する増感色素の添加方法に全く同じで、乳剤中に直接添加しても良いし、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドなどの水混和性溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して添加しても良いし、親水性コロイド中に微粒子状又は会合体状に微分散した分散物を乳剤に添加してもよい。
内色素層色素の添加後、式(M)の化合物を添加する迄の時間は30分以降90分迄が望ましい。なお、30分以降としたのは、内色素をしっかり吸着させるために好ましいからである。一方、90分迄としたのは、被りを生じさせない為に好ましいからである。内色素層色素の添加終了後、式(M)の化合物の添加を開始するまでの間に他の工程が介在してもよい。
一般式(M)で表される化合物の具体例を次に示すが、本発明はその具体例に限定される物ではない。
Figure 2006011334
本発明の外色素層は、内色素層と等しいかそれより高いエネルギーで光を吸収し、外色素層のエネルギー放出波長が、内色素層のエネルギー吸収波長と重なっており、外色素層を構成する色素が少なくとも負の正味電荷を有するアニオン色素と正の正味電荷を有するカチオン色素とを含み且つアニオン色素の量がカチオン色素の量よりも多ければこれらの色素は必ずしも分光増感剤でなくとも良い。好ましい色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アリーリデン色素、ヘミシアニン色素、ホロポーラシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素又はこれらの組み合わせであり、該カチオン色素とアニオン色素が、共にゼラチン溶液中でJバンド型吸収を示すシアニン色素またはメロシアニン色素で有ることがより好ましい。特に好ましくは、カチオン色素としては次式(SII)で表され、ゼラチン水溶液中でJバンド型吸収を示すシアニン色素あり、アニオン色素としては前述の色素(SI)で表されゼラチン水溶液中でJバンド型吸収を示すシアニン色素である。
Figure 2006011334
(上式中、Z21及びZ22は、Z1及びZ2と同意義を表し、R21及びR22は置換若しくは非置換の脂肪族基を表し、好ましくは、SIIの正味荷電が+2〜+5、更に好ましくは+3、+4であるように、R21及びR22の少なくとも一方は少なくとも1個の正の電荷を有し、X21は必要に応じて電荷を中和させる為の1個又はそれ以上のアニオン性対イオンを表す。
L21、L22及びL23は置換若しくは非置換のメチン基を表す。n2はn1と同義である。)。
正の荷電を有した置換基の例としては、例えば、3−(トリアルキルアンモニオ)プロピル基、4−(アルキルアンモニオ)ブチル基、3−(アルキルアンモニオ)ブチル基、3−グアジニノプロピル基、4−グアジニノブチル基であり、3−アミノプロピル基、3−アルキルアミノプロピル基、3−ジアルキルアミノプロピル基、4−ジアルキルアミノブチル基の様なプロトン化により正に帯電する置換基である。ここで、アルキルとはメチル、エチル、プロピルのような炭素数の小さいアルキルが好ましい。
J会合体は、吸光係数が高く、吸収も鋭いため前述したように内層用色素としても非常に好ましいが、一般に蛍光発光収率が高く、ストークスシフトも小さいため、光吸収波長の接近した内層色素へ外層色素の吸収した光エネルギーをフェルスター型エネルギー移動で伝足すのにも好ましい。
本発明で言うゼラチン水溶液中でJバンド型吸収を示す色素とは、1%の水性脱イオン化ゼラチン水中に1.0×10-4モル/L以下の濃度で溶解した時に、Jバンド吸収を一部でも示す色素であるが、Jバンド吸収の吸収ピーク強度が、モレキュラー吸収やダイマー吸収などの吸収ピーク波長での吸収強度以上である事がより好ましく、Jバンド吸収の吸収ピーク強度がモレキュラー吸収やダイマー吸収などの吸収ピーク波長に於ける吸収強度の倍以上である事が更に好ましい。
本発明明細書の記載に於いて、ヘテロ環核、置換基は置換されていても良い事を示しているが、一般的に、特に記載していない限り、写真有用性の為に必要な特性を破壊しない全ての基が含まれる。かかる基の例としては、ハロゲン、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード;アルコキシ、特に炭素数8以下が好ましく、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど;アルキルチオ、特に炭素数6以下が好ましく、例えば、メチルチオ、エチルチオなど;置換又は非置換のアリール、特に炭素数6〜16の物で、例えば、フェニル、アニシル、トリル、p−クロロフェニルなど、置換又は非置換のヘテロ環、特に炭素数2〜16で、N、O又はSから選択された1〜3個のヘテロ原子を含有する5、6員環を有する物、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、ピロリル、フルフリルなど;アシル、特に炭素数10以下が好ましく、例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、メシチル、ベンゼンスルホニルなど;アシルアミノ、特に炭素数10以下が好ましく、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ベンゾイルアミノ、メチルスルホニルアミノなど;アシルアミノカルボニル、特に炭素数10以下が好ましく、例えば、アセチルアミノカルボニル、プロピオニルアミノカルボニル、メチルスルホニルアミノカルボニルなど;が挙げられる。又、アルキル基の場合には、枝分かれしていても良い事も包含している。
外色素層形成に使用する色素量は内色素層の色素量の0.5倍以上が好ましく、より好ましくは0.7倍以上であり、更に好ましくは1.0倍以上である。光吸収を増加させる為には外色素層形成色素量を多くし、多層色素層を形成させた方が好ましいが、現実には色素層間のエネルギー移動効率を1にする事は至難で、余りに多層にすると写真感度への反映が目減りする。しかも、色素量が非常に多くなるので、現像処理後の残存色素量も多くなり、好ましくないDminの増加に繋がるので、外色素層形成に使用する色素量は内色素層の色素量の2倍以下に抑えるのが現実的である。
外色素層形成に使用するアニオン色素は−1価の正味荷電を有する色素がより好ましく、カチオン色素は+2価以上の正味荷電を有する色素がより好ましい。カチオン色素は+3価または+4価の正味荷電を有する色素が更に好ましい。
本発明での外色素層形成に使用するアニオン色素とカチオン色素の比率はモル比率でアニオン色素の方が多ければ良いが、アニオン色素がカチオン色素の1.1倍以上5倍以下であることがより好ましく、1.2倍以上3倍以下であることが更に好ましく、1.5倍以上2.5倍以下であることが特に好ましい。
外色素層には、それぞれ少なくとも1種類のアニオン色素とカチオン色素とが含まれるが、使用するアニオン色素は、1種のみであっても複数種あってもよい。同様に、使用するカチオン色素の種類も、1種のみであっても複数種であってもよい。
外色素層形成色素量を内色素層形成色素量と同量で外色素形成色素のアニオン色素とカチオン色素の比を2:1で使用した場合、即ち、外色素が全量吸着すれば色素2層系が形成される事になるが、その場合、界面活性剤やカラーカプラー乳化物が共存していないと、カチオン色素は内色素上に添加したほぼ全量が吸着したが、アニオン色素はカチオン色素が3価及び4価カチオン色素であってもカチオン色素量以上には吸着しなかった。即ち、添加したアニオン色素の半分しか吸着出来なかった。しかるに界面活性剤やカラーカプラー乳化物が共存するとカチオン色素の吸着量は僅かに減少したが添加量の90%以上が吸着し、アニオン色素も添加した量の80%以上も吸着できた。更に、液体乳剤の儘で長時間保存したり、支持体上にこの乳剤を塗布した試料を50℃、相対湿度80%の高温、高湿下に保存しても、色素による吸収の低下は非常に僅かで、内色素層だけの通常の市販感光材料に遜色のないものであった。
更に、カラーカプラー乳化物等の親水性分散物中の界面活性剤量と高沸点有機溶剤量との比γを本発明の範囲に制御すると、カチオン色素の吸着量の減少も生じずに、外層色素として添加したアニオン色素の80%以上も吸着でき、液体乳剤での保存及び塗布試料の高温、高湿下保存での吸収強度並びに感度の変化は更に僅かとなった。
一方、前述特許文献15を始めとした特許で開示されている外色素層形成にカチオン色素単独若しくはカチオン色素とカチオン色素に比べてかなり少ない量のアニオン色素とを組み合わせて使用する方法では、界面活性剤やカラーカプラー乳化物が共存してない場合には、カチオン色素、アニオン色素とも添加量の大半を吸着させる事が出来たが、そこに界面活性剤やカラーカプラー乳化物を添加すると短時間でカチオン色素の大半が脱着してしまうどころか、内層色素の一部迄脱着してしまった。荷電相互作用に加えて、水素結合が加味されるように工夫された色素など、一部の色素では、この段階での色素脱着が50%前後に抑えられたものもあったが、前述したような液体乳剤の儘での数時間の保存や支持体上にこの乳剤を塗布した試料を高温、高湿下の保存すると大きな吸収低下が生じ、製造に供するにはほど遠いものであった。
前述したように、本発明に於いては、外色素層が内色素層と等しいかそれよりも高いエネルギーで光を吸収し、外色素のエネルギー放出波長が内色素層のエネルギー吸収波長と重なっている。従って、外色素層の吸収極大波長は内色素層の吸収極大波長と同じか短波長である。両者の波長の間隔は0nmから50nmが好ましく、0nmから35nmがより好ましく、5nmから30nmが更に好ましい。
ここで、外色素層の光吸収エネルギーは、外色素層(を構成する)色素による光吸収エネルギーを指し、また、内色素層の光吸収エネルギーは、内色素層(を構成する)色素による光吸収エネルギーを指す。
本発明に於いて、内色素層の色素と外色素層の色素の還元電位及び酸化電位は如何なるものでも良いが、内色素層の色素の還元電位が外色素層の色素の還元電位の値から0.2V引いた値よりも貴で有ることが好ましく、更に好ましくは0.1V引いた値よりも貴であり、特に好ましくは内色素層の色素の還元電位が外色素層の色素の還元電位よりも貴で有ることである。
還元電位の測定には、種々の方法が可能であるが、前述した位相弁別式第二高調波交流ボルタンメトリーで行うのが正確な値を求めることが出来、好ましい。
また、外色素層用の色素は、ゼラチン膜中では発光性で有ることが好ましい。外色素層用色素のゼラチン膜中での発光収率は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、更に好ましくは0.2以上であり、0.5以上で有ることが特に好ましい。発光性色素の種類としては、色素レーザー用に使用される色素の骨格構造を持つ物が好ましい。これらの色素は、例えば、前田三男、レーザー研究、第8巻、694頁、803頁、958頁(1980年)、同第9巻、85頁(1981年)及び F. Sehaefer著、「Dye Lasers」、Springer(1973年)の中に整理されている。
非平衡励起エネルギー移動機構で外層色素から内層色素へのエネルギー伝達が起こる場合には、外層用色素のみのゼラチン乾燥膜中の励起寿命は長い方が好ましい。この場合には、外層用色素の発光収率は高くても低くても構わない。外層用色素のみのゼラチン乾燥膜中の発光寿命は、好ましくは10ps以上、より好ましくは40ps以上、更に好ましくは160ps以上である。該発光寿命には特に上限はないが、好ましくは1ms以下である。
外層色素の発光と内層色素の吸収の重なりは大きい事が好ましい。外層色素の390nmより長波長部分の発光スペクトルをS(ν)、内層色素の390nmより長波長部分の吸収スペクトルをA(ν)としたとき、それらの積S(ν)・A(ν)は好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.5以上である。ここでνは波数(cm-1)で、それぞれのスペクトルは390nmより長波長部分のスペクトル面積を1に規格化している。
外層色素の励起エネルギーの内層色素へのエネルギー移動効率は、好ましくは30%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは90%以上である。
ここで外層色素の励起エネルギーとは、外層色素が光エネルギーを吸収して生成した励起状態の色素が有するエネルギーを指す。或る分子の持つ励起エネルギーが他の分子に移動する場合には、励起電子移動機構、フェルスター型エネルギー移動機構(Forster Model)、デクスター型エネルギー移動機構(Dextor Model)等を経て移動すると考えられている。従って、本研究の多層吸着系に於いても、これらの機構から考えられる効率の良い励起エネルギー移動を起こすための条件を満たす事が好ましい。更に、フェルスター型エネルギー移動機構を起こす為の条件を満たすことが特に好ましい。フェルスター型エネルギー移動効率を高めるためには、乳剤粒子表面近傍の屈折率を低下させる事が有効である。
外層色素の蛍光減衰速度解析や内層色素の蛍光の立ち上がり速度等、光励起状態のダイナミクス解析によって、外層色素から内層色素へのエネルギー移動効率を求める事ができる。
また、外層色素から内層色素へのエネルギー移動効率は、外層色素励起時の分光増感効率/内層色素励起時の分光増感効率としても求める事ができる。
本発明に係わる増感色素をハロゲン化銀乳剤に添加せしめるには、関係技術者には周知の通常の方法で添加すればよい。即ち、直接乳剤中に添加しても良いし、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して添加しても良い。また、米国特許3,469,987号明細書等に記載の如き増感色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、該溶液を水または親水性コロイド中に微分散した液を乳剤中に添加する方法、特公昭46-23,389号、特公昭44-27,555号、特公昭57-22,091号等に記載されている如き、増感色素を酸に溶解し、その溶液を乳剤中に添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液とし、それを乳剤中に添加したり、親水性コロイド中に分散した分散液を乳剤中に添加する方法、米国特許3,822,135号、米国特許4,006,025号明細書等に記載の如き、海面活性剤を共存させて水溶液或いはコロイド微分散物とした物を乳剤中に添加する方法、特開昭53-102,733号、特開昭58-105,141号に記載の如き、水または親水性コロイド中に増感色素を直接微分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法などを用いる事も出来るが、水または親水性コロイド中に増感色素を直接微分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法が特に好ましい。
本発明に用いる増感色素をハロゲン化銀乳剤に添加する時期は、此まで有用であると認められている乳剤調製の如何なる工程中であっても良い。例えば、米国特許2,735,766号、米国特許3,628,960号、米国特許4,183,756号、米国特許4,225,666号、特開昭58-184,142号、特開昭60-196,749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/及び脱塩前の時期、脱塩工程中及び/または脱塩後から化学熟成開始までの時期、特開昭58-113,920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の開始直前またはその工程中の時期、化学熟成後塗布までの時期の乳剤が塗布される前なら如何なる時期、工程に於いて添加されてもよい。また、米国特許4,225,666号、特開昭58-7,629号等の明細書に開示されているように、同一増感色素を単独で、または異種構造の物と組み合わせて、例えば、同一工程中、または粒子形成工程中と化学熟成工程中や化学熟成完了後、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどの異種工程に分割して添加しても良く、分割して添加する化合物及び化合物の組み合わせの種類を変えて添加しても良い。
内色素層形成に使用する増感色素は化学熟成の開始迄に添加するのが特に好ましく、外色素層形成に使用する増感色素は化学熟成の後半以降、特に、化学熟成完了後に添加するのがより好ましい。更に、外色素層形成に使用するアニオン色素とカチオン色素の添加順序は任意で良いが、同時かカチオン色素を先に添加した方がより好ましく、カチオン色素を先行添加する場合にあっては、アニオン色素の添加時期はカチオン色素添加後10分以内、より好ましくは5分以内であり、1分以内に添加するのが更に好ましい。
また、短時間で所定量を添加しても良いし、長時間、例えば、内色素層形成用色素は粒子形成工程中の核形成後から粒子形成完了迄や化学熟成工程の、外色素層形成用色素にあっては、化学熟成後半以降塗布までの大半に亘って任意の工程に於いて、連続的または間欠的に添加しても良い。かかる場合の添加速度は、等速流量でも、流量を変更しても良いが、所定量の少なくとも一部を添加開始時に一気に添加するのがより好ましい。式(M)の化合物の添加時期は、内色素層色素の添加後であって、外色素層色素の添加前が好ましく、内色素層色素添加の30分以降がより好ましい。
更に又、内色素層形成時に、場合により添加する強色増感剤は、分光増感色素を添加した後、または同時に添加するのがより好ましい。
該増感色素を添加する温度は、任意で良いが、通常は20℃〜75℃が用いられる。一定温度で添加、熟成しても良いし、添加中に温度を変えても、添加時と添加後の熟成温度を変えてもよい。内色素層形成用色素は40℃以上、更に好ましくは50℃以上75℃以下で添加するのが好ましく、外色素層形成用色素は60℃以下、更に好ましくは50℃以下で添加、熟成するのが好ましい。
本発明に係わる増感色素の好ましい具体例を表(1)、表(2)及び表(3)に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2006011334
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本発明に於けるハロゲン化銀乳剤は、臭化銀、塩化銀、沃臭化銀、沃塩臭化銀、塩臭化銀、沃塩化銀等であるが、少なくとも沃化銀を含むものが好ましい。ハロゲン化銀粒子の形態としては、八面体、立方体、十四面体の如き正常晶でも良いが、平板状粒子がより好ましい。
本発明で用いる平板状ハロゲン化銀粒子は、好ましくは、最大表面沃化物濃度領域をその縁に沿って有し、且つ、前記最大表面沃化物濃度領域の沃化物濃度よりも低い表面沃化物濃度領域をその角に有する表面沃化物濃度の異なる領域を有するハロゲン化銀粒子が含まれる。
上記平板状ハロゲン化銀粒子において、最大表面沃化物濃度領域の沃化銀濃度は、0.6〜15モル%、より好ましくは1〜10モル%である。また、この最大表面沃化物濃度領域が存在する縁とは、外周部近傍を指し、該粒子投影部の外周から面積で20%以内である。また、角とは、粒子の中心と各頂点を結ぶ直線の中心から50%(より好ましくは75%)の位置の点から、各頂点を作る辺に垂線を下した時に、その垂線とその辺とで囲まれた三次元の部分のことである。縁の領域と角の領域における沃化物濃度は、縁領域の方が高いか同じであり、その差は0〜10モル%、好ましくは5モル%以下である。
また、本発明で用いる平板状ハロゲン化銀粒子は、(111)主平面を有する平板状ハロゲン化銀粒子が全ハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上含まれ、前記平板状ハロゲン化銀粒子が、エピタキシャル接合部を有し、且つ、前記平板状粒子の表面上に潜像形成性化学増感部位を有しており、前記潜像形成性化学増感部位が前記エピタキシャル接合部を形成する銀塩と同じ銀塩を少なくとも1種含み、更に前記潜像形成性化学増感部位が平板状粒子の(111)主平面の周囲縁に最も近く配置され、且つ、この主平面の面積の50%未満を占める部分に限定されている。
上記平板状ハロゲン化銀粒子において、エピタキシャル接合部は粒子のどの部分にあってもよいが、頂点(角)部、周辺部(縁)、主平面部が好ましい。エピタキシャル接合部は、1粒子当たり1個以上であり、そのハロゲン等の組成は、AgCl、AgBrCl、AgBrClI、AgI、AgSCNなどである。エピタキシャル接合部の銀量は、粒子全銀量に対し、2〜30%、より好ましくは5〜15%である。また、潜像形成性化学増感部位が周囲縁に最も近く配置されるとは、潜像形成性化学増感部位がエピタキシャル接合部との境界領域に存在することを指す。この潜像形成性化学増感部位は、1つの領域であっても、複数の領域に分かれていてもよい。潜像形成性化学増感部位は、エピタキシャル接合部との境界上(即ち線上)でも良いので、潜像形成性化学増感部位が主平面の面積に占める割合の下限値は、0%を超えればよい。潜像形成性化学増感部位が含む好ましい銀塩の種類は、AgBr、AgBrI、AgBrCl、AgBrClIである。なお、潜像形成性化学増感部位は、現像初期で現像を止めたり、抑制現像液で現像を行い黒化した現像開始点を観察して確認することができる。
本発明の乳剤は、上記条件を満足するハロゲン化銀粒子を含有することが好ましいが、以下に記載する第1〜第4の乳剤も用いることができる。これら第1〜第4の乳剤は、矛盾がない場合には、上述した表面沃化物濃度の条件及び/又は潜像形成化学増感部位等の条件を更に満足することができる。
先ず、本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀乳剤(第1の乳剤)である、ハロゲン化銀粒子が平行な主平面が(111)面であり、塩化銀含有率が10モル%未満の沃臭化銀または塩沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子について説明する。
この乳剤は、対向する(111)主平面と該主平面を連結する側面からなる。平板粒子乳剤は沃臭化銀または塩沃臭化銀よりなる。塩化銀を含んでも良いが、好ましくは塩化銀含有率は8モル%以下、より好ましくは3モル%以下、更に好ましくは0モル%である。沃化銀含有率については、40モル%以下、好ましくは20モル%以下である。沃化銀含有率に拘わらず、粒子間の沃化銀含量分布の変動係数は20%以下が好ましく、特に10%以下が好ましい。
平板状ハロゲン化銀粒子(単に「平板粒子」と表示することあり)とは、アスペクト比2以上の粒子を言う。粒子の投影面積と等しい面積の円の直径(円相当径)を粒子の厚みで割った値がアスペクト比である。ここで平板粒子の投影面積、厚み並びにアスペクト比は参照用のラテックス球と共にシャドーをかけたカーボンレプリカ法による電子顕微鏡写真から測定する事が出来る。平板粒子は上から見た時に、通常6角形、3角形もしくは円形状の形態をしている。平板粒子の形状は6角形の比率が高いほど好ましく、また、6角形の各隣接する辺の長さの非(長辺/短辺)は2以下であることが好ましい。
平板粒子は、平均円相当径0.1μm以上20.0μm以下が好ましく、0.2μm以上10.0μm以下が更に好ましい。また、平板粒子の平均厚みは、0.01μm以上0.5μm以下、好ましくは0.02μm以上0.4μm以下が好ましい。平均球相当径では0.1μm以上5.0μm以下が好ましく、0.2μm以上3.0μm以下が更に好ましい。旧相当径とは、個々の粒子の体積と等しい体積を有する球の直径である。また、平均アスペクト比は、2以上200以下が好ましく、2以上100以下が更に好ましい。
上記平板状粒子は、単分散性であることが好ましい。全ハロゲン化銀粒子の球相当径の変動係数は30%以下で在ることが好ましく、より好ましくは25%以下である。また、円相当径の変動係数も重要であり、全ハロゲン化銀粒子の円相当径の変動係数は30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下であり、更に好ましくは20%以下である。また、厚みの変動係数は、30%以下が好ましく、より好ましくは25%以下であり、更に好ましくは20%以下である。
平板粒子の双晶面間隔は米国特許第5219720号に記載のように0.012μm以下にしたり、特開平5−249585号に記載のように(111)主平面間距離/双晶面間隔が15以上となるようにしても良く、目的に応じて選んで良い。
アスペクト比が高い程、好ましい効果が得られるので、平板粒子乳剤は全投影面積の50%以上がアスペクト比2以上の粒子で占められるのが好ましく、より好ましくは5以上、更に好ましくはアスペクト比8以上である。アスペクト比が余り大きくなりすぎると、前述した粒子サイズ分布の変動係数が大きくなる方向になるために、通常アスペクト比は200以下が好ましい。
平板粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11、57、(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Japan,35、213、(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。すなわち乳剤から粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけないよう注意して取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しにくくなるので高圧型(0.25μmの厚さの粒子に対して200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法により得られた粒子の写真より、主平面に対して垂直方向から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数を求めることができる。
転位線の数は、好ましくは1粒子当り平均10本以上である。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに、数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。
転位線は、例えば平板粒子の外周近傍に導入することができる。この場合転位は外周にほぼ垂直であり、平板状粒子の中心から辺(外周)までの距離の長さのx%の位置から始まり外周に至るように転位線が発生している。このxの値は好ましくは10以上100未満であり、より好ましくは30以上99未満であり、最も好ましくは50以上98未満である。この時、この転位線の開始する位置を結んでつくられる形状は粒子形と相似に近いが、完全な相似形ではなく、ゆがむことがある。この型の転位数は粒子の中心領域には見られない。転位線の方向は結晶学的におおよそ(211)方向であるがしばしば蛇行しており、また互いに交わっていることもある。
また平板粒子の外周上の全域に渡ってほぼ均一に転位線を有していても、外周上の局所的な位置に転位線を有していてもよい。すなわち六角形平板ハロゲン化銀粒子を例にとると、6つの頂点の近傍のみに転位線が限定されていてもよいし、そのうちの1つの頂点近傍のみに転位線が限定されていてもよい。逆に6つの頂点近傍を除く辺のみに転位線が限定されていることも可能である。
また平板粒子の平行な2つの主平面の中心を含む領域に渡って転位線が形成されていてもよい。主平面の全域に渡って転位線が形成されている場合には転位線の方向は主平面に垂直な方向から見ると結晶学的におおよそ(211)方向の場合もあるが(110)方向またはランダムに形成されている場合もあり、さらに各転位線の長さもランダムであり、主平面上に短い線として観察される場合と、長い線として辺(外周)まで到達して観察される場合がある。この場合の転位線は直線のこともあれば蛇行していることも多い。また、多くの場合互いに交わっている。
転位線の位置は以上のように外周上または主平面上または局所的な位置に限定されていても良いし、これらが組み合わされて、形成されていても良い。すなわち、外周上と主平面上に同時に存在していても良い。
平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが望ましい。乳剤は1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀粒子が全粒子の100ないし50%(個数)を占めることが好ましく、より好ましくは100ないし70%を、特に好ましくは100ないし90%を占める。
この平板粒子乳剤の粒子表面のヨウ化銀含有量は、好ましくは10モル%以下で、特に好ましくは5モル%以下である。粒子表面のヨウ化銀含有量はXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて測定される。XPSの標準的な測定法は、励起X線としてMg−Kαを使用し、適当な試料形態としたハロゲン化銀から放出される沃素(I)と銀(Ag)の光電子(通常はI−3d5/2、Ag−3d5/2)の強度を観測する方法である。沃素の含量を求めるには、沃素の含量が既知である数種類の標準試料を用いて沃素(I)と銀(Ag)の光電子の強度比(強度(I)/強度(Ag))の検量線を作成し、この検量線からもとめることができる。ハロゲン化銀乳剤ではハロゲン化銀粒子表面に吸着したゼラチンを蛋白質分解酵素などで分解、除去した後にXPSの測定をおこなわなければならない。粒子表面のヨウ化銀含有量が10モル%以下の平板粒子乳剤とは、1つの乳剤に含まれる乳剤粒子を、XPSで分析したときにヨウ化銀含量が10モル%以下であるものをさす。この場合、明瞭に2種以上の乳剤が混合されているときには、遠心分離法、濾別法など適当な前処理を施した上で同一種類の乳剤につき分析を行なう必要がある。
沃化銀分布について粒子内で構造を有していることが好ましい。この場合、沃化銀分布の構造は2重構造、3重構造、4重構造さらにはそれ以上の構造があり得る。また、粒子内部で沃化銀含有量が連続的に変化していても良い。例えば臭化銀/沃臭化銀/臭化銀からなる3重構造粒子ならびにそれ以上の高次構造も好ましいが、内側の層の沃化銀含有率が表面の沃化銀含有率よりも高いことが好ましく、好ましくは5モル%以上、より好ましくは7モル%以上高い。構造間の沃化銀含有率の境界は明確なものであっても、連続的になだらかに変化しているものであっても、いずれでも良い。通常、粉末X線回折法を用いた沃化銀含有量の測定では沃化銀含有量の異なる明確な2山を示す様なことはなく、高沃化銀含有率の方向にすそをひいたようなX線回折プロフィールを示す。
次に、本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀乳剤(第2の乳剤)である平行な主平面が(111)面であり、最小の長さを有する辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比が2以下である六角形ハロゲン化銀粒子の頂点部、および/または側面部、および/または主平面部に1粒子当り少なくとも一個以上のエピタキシャル接合を有する粒子
について説明する。エピタキシャル接合した粒子とは、ハロゲン化銀粒子本体の他に該粒子と接合した結晶部(すなわち、エピタキシャル部)を持つ粒子であり、接合した結晶部は通常ハロゲン化銀粒子本体から突出している。接合した結晶部(エピタキシャル部)の粒子全銀量に対する割合は2%以上30%以下が好ましく、5%以上15%以下がより好ましい。エピタキシャル部は粒子本体のどの部分に存在しても良いが、粒子主平面部、粒子エッジ部、粒子コーナー部が好ましい。エピタキシャルの個数は、少なくとも一つ以上が好ましい。また、エピタキシャル部の組成は、AgCl、AgBrCl、AgBrClI、AgBrI、AgI、AgSCN等が好ましい。エピタキシャル部が存在する場合、粒子内部には転位線が存在しても良いが、存在しなくても良い。
次に、本発明に関する、第1の乳剤および第2の乳剤ハロゲン化銀粒子の調製方法について説明する。
本発明の調製工程としては、(a)基盤粒子形成工程と、それに引き続く(b)構造導入工程から成る。基本的に(a)工程に引き続き(b)工程を行うことがより好ましいが、(a)工程のみでもよい。(b)工程は、(b1)転位線導入工程、(b2)コーナー部転位線限定導入工程、または(b3)エピタキシャル接合工程、のいずれでも良く、少なくとも一つでもよければ、二つ以上組み合わせても良い。
まず、(a)基盤粒子形成工程について説明する。基盤部は、粒子形成に使用した全銀量に対して少なくとも50%以上が好ましく、さらに好ましくは60%以上である。また、基盤部の銀量に対するヨードの平均含有率は0mol%以上30%mol以下が好まし
く、0mol%以上15mol%以下がさらに好ましい。また、基盤部は必要に応じてコアシェル構造を取っても良い。この際、基盤部のコア部は基盤部の全銀量に対して50%
以上70%以下であることが好ましく、コア部の平均ヨード組成は0mol%以上30m
ol%以下が好ましく、0mol%以上15mol%以下が更に好ましい。シェル部のヨード組成は0mol%以上3mol%以下が好ましい。
(a)工程は、ハロゲン化銀核を形成した後、更にハロゲン化銀粒子を成長させて所望のサイズの粒子を得る方法が一般的であり、平板状粒子の形成のためには、少なくとも核形成、熟成、成長の工程が含まれる。この工程は、米国特許第4945037号に詳細に記載されている。
1.核形成
平板粒子の核形成は、一般にはゼラチンの水溶液を保持する反応容器に、銀塩水溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添加して行われるダブルジェット法、あるいはハロゲン化アルカリを含むゼラチン溶液に銀塩水溶液を添加するシングルジェット法が用いられる。また、必要に応じて銀塩を含むゼラチン溶液にハロゲン化アルカリ水溶液を添加する方法も用いることができる。さらに、必要に応じて特開昭2-44335号に開示されている混合器にゼラチン溶液と銀塩溶液とハロゲン化アルカリ水溶液を添加し、ただちにそれを反応容器に移すことによって平板粒子の核形成を行うこともできる。また、米国特許第5104786号
に開示されているように、ハロゲン化アルカリと保護コロイド溶液を含む水溶液をパイプに通しそこに銀塩水溶液を添加することにより核形成を行うこともできる。また、米国特許第6022681号記載の塩素含有量が核形成に使用した銀量に対して10モル%以上であるような核形成を用いても良い。
核形成は、ゼラチンを分散媒とし、pBrが1〜4の条件で分散媒形成することが好ましい。ゼラチンの種類としては、アルカリ処理ゼラチン、低分子量ゼラチン(分子量:3000〜4万)、米国特許第4,713,320号および同第4,942,120号に記載の酸化処理ゼラチン、および低分子量の酸化処理ゼラチンを用いても良い。特に低分子量の酸化処理ゼラチンを用いることは好ましい。
分散媒の濃度は、10質量%以下が好ましく、さらに1質量%以下がより好ましい。
核形成時の温度は、5〜60℃が好ましいが、平均粒径が0.5μm以下の微粒子平板粒子を作る場合は5〜48℃がより好ましい。
分散媒のpHは、1以上10以下が好ましいが、1.5以上9以下がさらに好ましい。
また、米国特許第5,147,771号、同第5,147,772号、同第5,147,773号、同第5,171,659号、同第5,210,013号、同第5,252,453号、および特許第3089578号に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を核形成工程、もしくは後の熟成工程、および成長工程で添加することが可能である。
2.熟成
1.における核形成では、平板粒子となりうる核以外の微粒子(特に、八面体および一重双晶粒子)も形成される。次に述べる成長過程に入る前に平板粒子以外の粒子を消滅せしめ、平板粒子となるべき形状でかつ単分散性の良い核を得る必要がある。これを可能とするために、核形成に引き続いてオストワルド熟成を行うことがよく知られている。
核形成後直ちにpBrを調節した後、温度を上昇させ六角平板粒子比率が最高となるまで熟成を行う。この時に、ゼラチン溶液を追添加しても良い。その際の分散媒溶液に対するゼラチンの濃度は、10質量%以下であることが好ましい。この時使用する追添加ゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンのような特開平11−143002号記載のアミノ基修飾ゼラチン、特開平11−143003号記載のイミダゾール基修飾ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンを用いることが好ましい。
熟成の温度は、40〜80℃、好ましくは50〜80℃であり、pBrは1.2〜3.0である。また、pHは1.5以上9以下が好ましい。
また、この時平板粒子以外の粒子を速やかに消失せしめるために、ハロゲン化銀溶剤を添加しても良い。この場合のハロゲン化銀溶剤の濃度としては、0.3mol/L以下が好ましく、0.2mol/L以下がより好ましい。直接反転用乳剤として用いる場合は、ハロゲン化銀溶剤として、アルカリ性側で用いられるNH3より、中性、酸性側で用いられるチオエーテル化合物等のハロゲン化銀溶剤の方が好ましい。
このように熟成して、ほぼ〜100%平板状粒子のみとする。
熟成が終わった後、次の成長過程でハロゲン化銀溶剤が不要の場合は次のようにしてハロゲン化銀溶剤を除去する。
(1)NH3のようなアルカリ性ハロゲン化銀溶剤の場合は、HNO3のようなAg+との溶解度積の大きな酸を加えて無効化する。
(2)チオエーテル系ハロゲン化銀溶剤の場合は、特開昭60-136736号に記載のごとくH22等の酸化剤を添加して無効化する。
3.成長
熟成過程に続く結晶成長期のpBrは1.4〜3.5に保つことが好ましい。成長過程に入る前の分散媒溶液中のゼラチン濃度が低い場合(1質量%以下)に、ゼラチンを追添加する場合がある。その際、分散媒溶液中のゼラチン濃度は、1〜10質量%にすることが好ましい。この時使用するゼラチンは、アルカリ処理ゼラチン、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチン、および酸化処理ゼラチンを用いる。特に、コハク化ゼラチンやトリメリット化ゼラチンを用いることが好ましい。
成長中のpHは、2以上10以下、好ましくは4以上8以下である。ただし、コハク化ゼラチンおよびトリメリット化ゼラチン存在時には5以上8以下が好ましい。結晶成長期におけるAg+、およびハロゲンイオンの添加速度は、結晶臨界成長速度の20〜100%、好ましくは30〜100%の結晶成長速度になるようにする事が好ましい。この場合、結晶成長とともに銀イオンおよびハロゲンイオンの添加速度を増加させていくが、その場合、特公昭48-36890号、同52-16364号記載のように、銀塩およびハロゲン塩水溶液の添加速度を上昇させても良く、水溶液の濃度を増加させても良い。銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液を同時に添加するダブルジェット法で行ってもよいが、米国特許第4,672,027号および同第4,693,964号に記載の硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液と沃化銀微粒子乳剤を同時に添加することが好ましい。この際、成長の温度は、50℃以上90℃以下が好ましく、60℃以上85℃以下が更に好ましい。また、添加するAgI微粒子乳剤は、あらかじめ調製したものでも良く、連続的に調製しながら添加しても良い。この際の調製方法は特開平10−43570号を参考に出来る。
添加するAgI乳剤の平均粒子サイズは0.005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.007μm以上0.08μm以下である。基盤粒子のヨード組成は、添加するAgI乳剤の量により変化させることが出来る。
さらに、銀塩水溶液とハロゲン塩水溶液の添加の代わりに、ヨウ臭化銀微粒子を添加することは好ましい。この際、微粒子のヨード量を所望する基盤粒子のヨード量と等しくすることで、所望のヨード組成の基盤粒子が得られる。ヨウ臭化銀微粒子はあらかじめ調製したものでも良いが、連続的に調製しながら添加する方が好ましい。添加するヨウ臭化銀微粒子サイズは、0.005μm以上0.1μm以下、好ましくは0.01μm以上0.08μm以下である。成長時の温度は50℃以上90℃以下、好ましくは60℃以上85℃以下である。
次に、(b)工程について説明する。
まず、(b1)工程について説明する。(b1)工程は第1シェル工程と第2シェル工程から成る。上述した基盤に第1シェルを設ける。第1シェルの比率は好ましくは全銀量に対して1%以上30%以下であって、その平均沃化銀含有率20モル%以上100モル%以下である。より好ましくは第1シェルの比率は全銀量に対して1%以上20%以下であって、その平均沃化銀含有率25モル%以上100モル%以下である。基盤への第1シェルの成長は基本的には硝酸銀水溶液と沃化物と臭化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もしくは硝酸銀水溶液と沃化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加する。もしくは沃化物を含むハロゲン水溶液をシングルジェット法で添加する。
以上のいずれの方法でも、それらの組み合わせでも良い。第1シェルの平均沃化銀含有率から明らかなように、第1シェル形成時には沃臭化銀混晶の他に沃化銀が析出しうる。いずれの場合でも通常は、次の第2シェルの形成時に、沃化銀は消失し、すべて沃臭化銀混晶に変化する。
第1シェルの形成の好ましい方法として沃臭化銀もしくは沃化銀微粒子乳剤を添加して熟成し溶解する方法がある。さらに、好ましい方法として沃化銀微粒子乳剤を添加して、その後硝酸銀水溶液の添加もしくは硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液を添加する方法がある。この場合、沃化銀微粒子乳剤の溶解は、硝酸銀水溶液の添加により促進されるが、添加した沃化銀微粒子乳剤の銀量を用いて第1シェルとし、沃化銀含有率100モル%とする。そして添加した硝酸銀水溶液を第2シェルの銀量として計算する。沃化銀微粒子乳剤は急激に添加されることが好ましい。
沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するとは、好ましくは10分以内にその全沃化銀微粒子乳剤を添加することをいう。より好ましくは7分以内に添加することをいう。この条件は添加する系の温度、pBr、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等により変化しうるが、上述したように短い方が好ましい。添加する時には実質的に硝酸銀等の銀塩水溶液の添加は行なわれない方が好ましい。添加時の系の温度は40℃以上90℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下が特に好ましい。
沃化銀微粒子乳剤は実質的に沃化銀であれば良く、混晶となり得る限りにおいて臭化銀および/または塩化銀を含有していても良い。好ましくは100%沃化銀である。沃化銀はその結晶構造においてβ体、γ体ならびに米国特許第4,672,026号に記載されているようにα体もしくはα体類似構造があり得る。本発明においては、その結晶構造の制限は特にはないが、β体とγ体の混合物さらに好ましくはβ体が用いられる。沃化銀微粒子乳剤は米国特許第5,004,679号等に記載の添加する直前に形成したものでも良いし、通常の水洗工程を経たものでもいずれでも良いが、本発明においては好ましくは通常の水洗工程を経たものが用いられる。沃化銀微粒子乳剤は、米国特許第4,672,026号等に記載の方法で容易に形成できうる。粒子形成時のpI値を一定にして粒子形成を行う、銀塩水溶液と沃化物塩水溶液のダブルジェット添加法が好ましい。ここでpIは系のI−イオン濃度の逆数の対数である。温度、pI、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等に特に制限はないが、粒子のサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.07μm以下が本発明に都合が良い。微粒子であるために粒子形状は完全には特定できないが粒子サイズの分布の変動係数は25%以下が好ましく、特に20%以下の場合には、本発明の効果が著しい。ここで沃化銀微粒子乳剤のサイズおよびサイズ分布は、沃化銀微粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、カーボンレプリカ法ではなく直接、透過法によって観察して求め、粒子サイズは観察された粒子と等しい投影面積を有する円の直径と定義する。本発明において最も有効な沃化銀微粒子は粒子サイズが0.06μm以下0.02μm以上であり、粒子サイズ分布の変動係数が18%以下である。
沃化銀微粒子乳剤は上述の粒子形成後、好ましくは米国特許第2,614,929号等に記載の通常の水洗およびpH、pI、ゼラチン等の保護コロイド剤の濃度調整ならびに含有沃化銀の濃度調整が行われる。pHは5以上7以下が好ましい。pI値は沃化銀の溶解度が最低になるpI値もしくはその値よりも高いpI値に設定することが好ましい。保護コロイド剤としては、平均分子量10万程度の通常のゼラチンが好ましく用いられる。平均分子量2万以下の低分子量ゼラチンも好ましく用いられる。また上記の分子量の異なるゼラチンを混合して用いると都合が良い場合がある。乳剤1kgあたりのゼラチン量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。乳剤1kgあたりの銀原子換算の銀量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。ゼラチン量および/または銀量は沃化銀微粒子乳剤を急激に添加するのに適した値を選択することが好ましい。
沃化銀微粒子乳剤を添加する際には、系の撹拌効率を十分に高める必要がある。好ましくは撹拌回転数は、通常よりも高めに設定される。撹拌時の泡の発生を防ぐために消泡剤の添加は効果的である。具体的には、米国特許第5,275,929号の実施例等に記述されている消泡剤が用いられる。
第1シェル形成のさらに好ましい方法として、従来の沃化物イオン供給法(フリーな沃化物イオンを添加する方法)のかわりに米国特許第5、496、694号に記載の沃化物イオン放出剤を用いて、沃化物イオンを急激に生成せしめながら沃化銀を含むハロゲン化銀相を形成することができる。
沃化物イオン放出剤は沃化物イオン放出調節剤(塩基および/または求核試薬)との反応により沃化物イオンを放出するが、この際に用いる求核試薬としては好ましくは以下の化学種が挙げられる。例えば、水酸化物イオン、亜硫酸イオン、ヒドロキシルアミン、チオ硫酸イオン、メタ重亜硫酸イオン、ヒドロキサム酸類、オキシム類、ジヒドムキシベンゼン類、メルカプタン類、スルフィン酸塩、カルボン酸塩、アンモニア、アミン類、アルコール類、尿素類、チオ尿素類、フェノール類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、セミカルバジド類、ホスフィン類、スルフィド類が挙げられる。
塩基や求核試薬の濃度、添加方法、また反応液の温度をコントロールすることにより沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールすることができる。塩基として好ましくは水酸化アルカリが挙げられる。
沃化物イオンを急激に生成せしめるのに用いる沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出調節剤の好ましい濃度範囲は1×10-7〜20Mであり、より好ましくは1×10-5〜10M、さらに好ましくは1×10-4〜5M、特に好ましくは1×10-3〜2Mである。
濃度が20Mを上回ると、分子量の大きい沃化物イオン放出剤及び沃化物イオン放出剤の添加量が粒子形成容器の容量に対して多くなり過ぎるため好ましくない。また、1×10-7Mを下回ると沃化物イオン放出反応速度が遅くなり、沃化物イオン放出剤を急激に生成せしめるのが困難になるため好ましくない。
好ましい温度範囲は30〜80℃であり、より好ましくは35〜75℃、特に好ましくは35〜60℃である。温度が80℃を上回る高温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極めて速くなり、また30℃を下回る低温では一般に沃化物イオン放出反応速度が極めて遅くなるため、それぞれ使用条件が限られ好ましくない。
沃化物イオンの放出の際に塩基を用いる場合、液pHの変化を用いても良い。この時、沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールするのに好ましいpHの範囲は2〜12であり、より好ましくは3〜11、特に好ましくは5〜10、最も好ましくは調節後のpHが7.5〜10.0である。pH7の中性条件下でも水のイオン積により定まる水酸化物イオンが調節剤として作用する。
また、求核試薬と塩基を併用しても良く、この時もpHを上記の範囲でコントロールし、沃化物イオンの放出速度、タイミングをコントロールしても良い。
上述した基盤および第1シェルを有する平板粒子上に第2シェルを設ける。第2シェルの比率は好ましくは全銀量に対して10モル%以上40モル%以下であって、その平均沃化銀含有率が0モル%以上5モル%以下である。より好ましくは第2シェルの比率は全銀量に対して15モル%以上30モル%以下であって、その平均沃化銀含有率が0モル%以上3モル%以下である。基盤および第1シェルを有する平板粒子上への第2シェルの成長は該平板粒子のアスペクト比を上げる方向でも下げる方向でも良い。基本的には硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液をダブルジェット法で添加することにより第2シェル
の成長は行なわれる。もしくは臭化物を含むハロゲン水溶液を添加した後、硝酸銀水溶液をシングルジェット法で添加しても良い。系の温度、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等は広範に変化しうる。pBrについては、本発明においては該層の形成終了時のpBrが該層の形成初期時のpBrよりも高くなることが好ましい。好ましくは該層の形成初期のpBrが2.9以下であり該層の形成終了時のpBrが1.7以上である。さらに好ましくは該層の形成初期のpBrが2.5以下であり該層の形成終了時のpBrが1.9以上である。最も好ましくは該層の形成初期のpBrが2.3以下1以上である。最も好ましくは該層の終了時のpBrが2.1以上4.5以下である。
(b1)工程で形成される部分には前述の転位線が存在することが好ましい。転位線は平板粒子のエッジ部近傍に存在することが好ましい。エッジ部近傍とは、平板粒子の六辺の外周部(エッジ部)とその内側部分、すなわち(b1)工程で成長させた部分のことである。
次に、(b2)工程について説明する。
一つ目の態様としては、頂点近傍のみをヨウ化物イオンにより溶解する方法、二つ目の態様としては、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を同時に添加する方法、三つ目の態様としては、ハロゲン化銀溶剤を用いて頂点近傍のみを実質的に溶解する方法、四つ目の態様としてはハロゲン変換を介する方法がある。
一つ目の態様であるヨウ化物イオンにより溶解する方法について説明する。
基盤粒子にヨウ化物イオンを添加することで基盤粒子の各頂点部近傍が溶解して丸みを帯びる。続けて、硝酸銀溶液と臭化物溶液、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加すると粒子は更に成長して頂点近傍に転位が導入される。この方法に関しては、特開平4−149541号、および特開平9−189974号を参考に出来る。
本態様において添加されるヨウ化物イオンの総量は、該ヨウ化物イオン総モル数を基盤粒子の総銀量モル数で除した値に100を掛けた値をI2(モル%)とした時、基盤粒子のヨウ化銀含有率I1(モル%)に対して、(I2−I1)が0以上8以下を満たすことが本発明に従う効果的な溶解を得る上で好ましく、より好ましくは0以上4以下である。本態様において添加される溶液のヨウ化物イオンの濃度は低い方が好ましく、具体的には0.2モル/L以下の濃度であることが好ましく、更に好ましくは0.1モル/L。また、ヨウ化物イオン添加時のpAgは8.0以上が好ましく、更に好ましくは8.5以上である。
ヨウ化物イオンの添加による基盤粒子の頂点部溶解に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物とヨウ化物の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ、頂点近傍に転位線を導入させることができる。
二つ目の態様である銀塩溶液とヨウ化物塩溶液との同時添加による方法について説明する。基盤粒子に対して銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を急速に添加することで粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀をエピタキシャル生成させることが出来る。この際、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液の好ましい添加速度は0.2分〜0.5分であり、更に好ましくは0.5分から2分である。この方法に関しては、特開平4−149541号に詳細に記載されているので、参考にすることが出来る。
上記基盤粒子の頂点部へのエピタキシャル生成に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ、頂点近傍に転位線を導入させることができる。
三つ目の態様であるハロゲン化銀溶剤を用いる方法について説明する。
基盤粒子を含む分散媒にハロゲン化銀溶剤を加えた後、銀塩溶液とヨウ化物塩溶液を同時添加すると、ハロゲン化銀溶剤により溶解した基盤粒子の頂点部にヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀が優先的に成長することになる。この際、銀塩溶液およびヨウ化物塩溶液は急速に添加する必要はない。この方法に関しては、特開平4−149541号に詳細に記載されているので、これを参考に出来る。
上記の基盤粒子の頂点部へのヨウ化銀成長に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ、頂点近傍に転位線を導入させることができる。
次に、四つ目の態様であるハロゲン変換を介する方法について説明する。
基盤粒子にエピタキシャル成長部位支持剤(以下、サイトダイレクターと呼ぶ)、例えば特開昭58−108526号記載の増感色素や、水溶性ヨウ化物の存在下で、硝酸銀溶液と塩化物溶液を添加することにより、基盤粒子の頂点部に塩化銀のエピタキシャルを形成した後、ヨウ化物イオンを添加することで塩化銀をヨウ化銀もしくはヨウ化銀含率の高いハロゲン化銀へハロゲン変換する方法である。サイトダイレクターは増感色素、水溶性チオシアン酸イオン、および水溶性ヨウ化物イオンが使用できるが、沃化物イオンが好ましい。ヨウ化物イオンの添加量は基盤粒子に対して0.0005〜1モル%、さらには0.001〜0.5モル%が好ましい。
ハロゲン変換については、例えば米国特許第4142900号に記載されており、基盤の頂点部にエピタキシャル成長した塩化銀をヨウ化物イオンにより選択的にハロゲン変換する詳細は、特開平4−149541号に記載されている。
上記の基盤粒子の頂点部のヨウ化銀相へのハロゲン変換に引き続き、硝酸銀溶液の単独添加、または、硝酸銀溶液と臭化物溶液、もしくは、硝酸銀溶液と臭化物溶液とヨウ化物溶液の混合液を同時に添加して粒子を更に成長させ、頂点近傍に転位線を導入することができる。
(b2)工程により導入した転位線は平板粒子のコーナー部近傍に存在することが好ましい。
次に、(b3)工程について説明する。
基盤粒子へのハロゲン化銀のエピタキシャル形成に関しては、米国特許第4435501号に記載されているように、基盤粒子表面に吸着したヨウ化物イオン、アミノアザインデン、もしくは分光増感色素等のサイトダイレクターによって銀塩エピタキシャルを選択された部位、例えば基盤粒子のエッジ、もしくはコーナーに形成することができる。また、特開平8−69069号では極薄平板粒子基盤の選択された部位に銀塩エピタキシャルを形成させ、このエピタキシャル相を最適な化学増感することで高感化を達成している。本発明においても、これらの方法を用いて本発明の基盤粒子を高感化することは非常に好ましい。サイトダイレクターは、アミノアザインデン、もしくは分光増感色素を用いても良いし、ヨウ化物イオン、もしくはチオシアン酸イオンを用いることができ、目的に応じて使い分けることも出来るし、組み合わせても良い。増感色素量、ヨウ化物イオン、およびチオシアン酸イオンの添加量を変化させることで、銀塩エピタキシャルの形成部位を、基盤粒子のエッジ、あるいはコーナーに限定させることが出来る。添加するヨウ化物イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して0.0005〜1.0モル%、好ましくは、0.001〜0.5モル%である。また、チオシアン酸イオンの量は、基盤粒子の銀量に対して、0.01〜0.2モル%、好ましくは、0.02〜0.1モル%である。これらサイトダイレクター添加後に、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を添加して銀塩エピタキシャルを形成する。この際の、温度は、40〜70℃が好ましく、45〜60℃が更に好ましい。また、この際のpAgは7.5以下が好ましく、6.5以下が更に好ましい。サイトダイレクターを用いることで、基盤粒子のコーナー部、もしくはエッジ部に銀塩のエピタキシャルが形成される。こうして得た乳剤を、特開平8−69069号のようにエピタキシャル相に選択的に化学増感を施して高感化させても良いが、銀塩エピタキシャル形成に引き続き、銀塩溶液とハロゲン塩溶液を同時添加して更に成長させても良い。この際添加するハロゲン塩水溶液は、臭化物塩溶液、もしくは、臭化物塩溶液とヨウ化物塩溶液との混合液が好ましい。またこの際の温度は、40〜80℃が好ましく、45〜70℃が更に好ましい。また、この際のpAgは5.5以上9.5以下が好ましく、6.0以上9.0以下が好ましい。
(b3)工程において形成されるエピタキシャルは、基本的に(a)工程で形成した基盤粒子の外部に基盤粒子とは異なる組成相が形成されていることを特徴とする。エピタキシャルの組成は、AgCl、AgBrCl、AgBrClI、AgBrI、AgI、AgSCN等が好ましい。また、エピタキシャル層に特開平8−69069号に記載されているような「ドーパント(金属錯体)」を導入することはさらに好ましい。エピタキシャル成長の位置は、基盤粒子のコーナー部、エッジ部、主平面部の少なくとも一部分でも良く、複数の個所にまたがっても良い。コーナー部のみ、もしくは、エッジ部のみ、もしくは、コーナー部とエッジ部の形態を取ることが好ましい。
(b3)工程で形成されるエピタキシャル部分には転位線が存在しなくても良いが、転位線が存在することはさらに好ましい。転位線は基盤粒子とエピタキシャル成長部との接合部、もしくはエピタキシャル部に存在することが好ましい。好ましい転位線の本数は、前述の通りである。
エピタキシャル部には6シアノ金属錯体がドープされているのが好ましい。6シアノ金属錯体のうち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム又はクロムを含有するものが好ましい。金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-9乃至10-2モルの範囲であることが好ましく、ハロゲン化銀1モル当たり10-8乃至10-4モルの範囲であることがさらに好ましい。金属錯体は、水または有機溶媒に溶かして添加することができる。有機溶媒は水と混和性を有することが好ましい。有機溶媒の例には、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、及びアミド類が含まれる。
金属錯体としては、下記式(A)で表される6シアノ金属錯体が特に好ましい。6シアノ金属錯体は、高感度の感光材料が得られ、しかも生感光材料を長期間保存したときでも被りの発生を抑制するという効果を有する。
(A)[M(CN)6n-
(式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウムまたはクロムであり、nは3または4である。)。
6シアノ金属錯体の具体例を以下に示す。
(A-1 ) [Fe(CN)64-
(A-2 ) [Fe(CN)63-
(A-3 ) [Ru(CN)64-
(A-4 ) [Os(CN)64-
(A-5 ) [Co(CN)63-
(A-6 ) [Rh(CN)63-
(A-7 ) [Ir(CN)63-
(A-8 ) [Cr(CN)64-
6シアノ錯体の対カチオンは、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈殿操作に適合しているイオンを用いることが好ましい。対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオン)、アンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンが含まれる。
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀乳剤(第3の乳剤)、すなわち平行な主平面が(100)面であり、塩化銀含有率が10モル%未満の沃臭化銀または塩沃臭化銀よりなる平板状ハロゲン化銀粒子について以下説明する。
第3の乳剤は全投影面積の50〜100%、好ましくは70〜100%、より好ましくは90〜100%が主平面が(100)面である平均アスペクト比が2以上の平板状粒子からなる。粒子厚みは0.01〜0.10μm、好ましくは0.02〜0.08μm、より好ましくは0.03〜0.07μmであり、アスペクト比は2〜100、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。粒子厚みの変動係数は30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下である。この変動係数が小さいほど、粒子厚みの単分散度が高いことを示している。また、乳剤粒子の平均球相当径は、好ましくは0.35μm未満である。
(100)平板状粒子の組成は塩化銀含有率10モル%未満の塩沃臭化銀あるいは沃臭化銀である。また、その他の銀塩、例えばロダン銀、硫化銀、セレン化銀、テルル化銀、炭酸銀、リン酸銀、有機酸銀等が別粒子として、あるいはハロゲン化銀粒子の一部分として含まれていても良い。
AgX結晶中のハロゲン組成を調べる方法としては、X線回折法が知られている。X線回折法については基礎分析化学講座24「X線回折」等に詳しく記載されている。標準的には、CuのKβ線を線源としてAgX(420)面の回折角度を粉末法により求める。
(100)平板状粒子のハロゲン組成構造は、どのようなものでも良い。例えばコアとシェルのハロゲン組成の異なる(コア/シェル)2構造を有する粒子やコアと2つ以上のシェルを有する多重構造の粒子が例として挙げられる。コアの組成としては臭化銀が好ましいがこれに限られるものではない。また、シェルの組成はコアよりも沃化銀含有率が高い方が好ましい。
(100)平板状粒子は、平均沃化銀含有率2.3モル%以上、かつ表面の平均沃化銀含有率は8モル%以上であることが好ましい。また、沃化銀含有率の粒子間の変動係数は20%未満であることがより好ましい。表面沃化銀含有率は先述したXPSを用いて測定することができる。
(100)平板状粒子は、一般的には主平面が長方形であるが、角が欠落していたり、丸みを帯びていてもよく、また粒子の側面が(111)面であってもよい。
(100)平板状粒子の表面の晶癖に占める(100)面比率は、80%以上、好ましくは90%以上であるが、それについては粒子の電子顕微鏡写真を用いて統計的に見積もることができる。乳剤中のAgX粒子における(100)平板比率が100%にほぼ近い場合には、日本化学会紙1984、No.6、p942に記載の方法にて上記見積もりを確認することもできる。
(100)平板状粒子は粒子形成中に多価金属イオンのドープにより電子捕獲ゾーンが導入されていることが好ましい。電子捕獲ゾーンは、多価金属イオン含有濃度が該多価金属イオンをドープした部分の銀に対して1×10-5モル/モルから1×10-3モル/モルで、粒子体積の5%以上30%以下を占める部分のことを言い、多価金属イオン含有濃度が5×10-5モル/モルから5×10-4モル/モルであるとより好ましい。
多価金属イオン含有濃度は均一であることが必要である。均一であるとは該金属イオンの粒子内への導入を単位銀量当たり一定量で行い、かつ粒子形成に用いる硝酸銀と同時期に多価金属イオンを粒子形成用反応容器に導入することをいう。このときハロゲン溶液も同時に添加されて良い。本発明の多価金属イオンを含む化合物を水溶液として添加しても良いし、多価金属イオンとなる化合物をドープまたは吸着させた微粒子を調製し添加しても良い。
電子捕獲ゾーンは粒子内のどの部分にあっても良い。また電子捕獲ゾーンが粒子内に2カ所以上あっても良い。
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀乳剤(第4の乳剤)、すなわちハロゲン化銀粒子が平行な主平面が(111)面あるいは(100)面であり、平均アスペクト比が2以上であって、少なくとも80モル%以上の塩化銀を含有する(高塩化銀と呼ぶ)平板状粒子について以下説明する。
高塩化銀で(111)粒子を製造するためには特別の工夫が必要である。Weyの米国特許第4399215号でアンモニアを用いて高塩化銀平板粒子を製造する方法を用いてもよい。Maskaskyの米国特許第5061617号明細書でチオシアン酸塩を用いて高塩化銀平板粒子を製造する方法を用いてもよい。さらには以下に示した添加剤(晶相制御剤)を添加する方法を用いてもよい。
特許番号 晶相制御剤 発明者
米国特許第4400463号 アザインデン類+ マスカスキー
チオエーテルペプタイザ−
米国特許第4783398号 2−4−ジチアゾリジノン 御舩等
米国特許第4713323号 アミノピラゾロピリミジン マスカスキー
米国特許第4983508号 ビスピリジニウム塩 石黒等
米国特許第5185239号 トリアミノピリミジン マスカスキー
米国特許第5178997号 7−アザインドール系化合物 マスカスキー
米国特許第5178998号 キサンチン マスカスキー
特開昭64−70741号 色素 西川等
特開平3−212639号 アミノチオエーテル 石黒
特開平4−283742号 チオ尿素誘導体 石黒
特開平4−335632号 トリアゾリウム塩 石黒
特開平2−32号 ビスピリジニウム塩 石黒等
特開平8−227117号 モノピリジニウム塩 大関等
(111)平板粒子形成に関しては、前記表中に記載されているように種々の晶相制御剤を用いることができるが、特開平2−32号に記載された化合物(化合物例1〜42)が好ましく、特開平8−227117号に記載されている晶相制御剤1〜29が特に好ましい。
高塩化銀(111)平板粒子は2つの平行な双晶面を形成することにより得られるが、双晶面の形成は温度、分散媒(ゼラチン)、ハロゲン濃度等により左右されるのでこれらの適当な条件を設定しなければならない。晶相制御剤を核形成時に存在させる場合にはゼラチン濃度は0.1〜10質量%が好ましい。塩化物濃度は0.01モル/L以上、好ましくは0.03モル/L以上である。
最初の核形成段階で平板粒子の核が形成されるが、核形成直後には反応容器内には平板粒子以外の核も多数含まれる。そのため、核形成後、熟成を行い、平板粒子のみを残存させ他を消滅させる技術が必要となる。通常のオストワルド熟成を行うと、平板粒子核も溶解消滅するため、平板粒子核が減少し、結果として得られる平板粒子のサイズが増大してしまう。これを防止するために、晶相制御剤を添加する。特にフタル化ゼラチンを併用することで、晶相制御剤の効果を高め、平板粒子の溶解を防止できる。熟成中のpAgは特に重要であり、銀塩化銀電極に対して60〜130mVが好ましい。
次に、形成した核を物理熟成及び銀塩とハロゲン化物の添加により、晶相制御剤存在下に成長させる。この際には、塩化物濃度は5モル/L以下、好ましくは0.05〜1モル/Lである。粒子成長時の温度は10℃〜90℃の範囲で選択できるが、30℃〜80℃の範囲が好ましい。
晶相制御剤の全使用量は完成乳剤中のハロゲン化銀1モルあたり、6×10-5モル以上、特に3×10-4モル〜6×10-2モルが好ましい。晶相制御剤は、ハロゲン化銀粒子の核形成時から物理熟成、粒子成長途中のどの時期に添加してもよい。添加後より(111)面が形成を開始する。晶相制御剤は予め反応容器内に添加してもよいが、小サイズ平板粒子形成する場合には、粒子成長とともに反応容器内に添加し、その濃度を増大させるのが好ましい。
核形成時に使用した分散媒量が成長にとって不足の場合には添加により補う必要がある。成長には10g/L〜100g/Lのゼラチンが存在するのが好ましい。補うゼラチンとしてはフタル化ゼラチンあるいはトリメリットゼラチンが好ましい。
次に高塩化銀(100)平板粒子について説明する。高塩化銀(100)平板粒子は(100)面を主平面とした平板状粒子であり、該主平面の形状は、角が欠落していても、丸みを帯びていてもよい。また、粒子側面は(111)面であってもよい。
(100)主平面を有する平板状高塩化銀乳剤粒子の形成法としては、ゼラチン水溶液のような分散媒中に銀塩水溶液とハロゲン化物塩水溶液を攪拌しながら添加、混合することにより行うが、この時、例えば、特開平6−301129号、同6−347929号、同9−34045号、同9−96881号では、ヨウ化銀またはヨウ化物イオンを、あるいは、臭化銀または臭化物イオンを存在させ、塩化銀との結晶格子の大きさの違いから核に歪みを生じさせ、螺旋転位の様な異方成長性を付与する結晶欠陥を導入する方法が開示されている。該螺旋転位が導入されると、低過飽和条件ではその面での2次元核の形成が律速ではなくなるため、この面での結晶化が進み、螺旋転位を導入することによって平板状の粒子が形成される。ここで低過飽和条件とは臨界添加時の好ましくは35%以下、より好ましくは2〜20%を示す。該結晶欠陥が螺旋転位であると確定されたわけでは無いが、転位の導入された方向、あるいは粒子に異方成長性が付与される事から螺旋転位である可能性が高いと考えられている。平板粒子をより薄くする為には、導入された該転位保持が好ましい事が特開平8−122954号、同9−189977号に開示されている。
また、特開平6−347928号ではイミダゾール類、3,5−ジアミノトリアゾール類を用いたり、特開平8−339044号ではポリビニルアルコール類を用いるなどして、(100)面形成促進剤を添加して(100)平板粒子を形成する方法が開示されている。
上記の(111)または(100)面を主平面とする高塩化銀粒子の塩化銀含有量は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上が塩化銀であることが好ましい。この型の粒子はコア部とコア部を取り巻くシェル部よりなる、いわゆるコア/シェル構造をしていることが好ましい。コア部は90モル%以上が塩化銀であることが好ましい。コア部はさらに、ハロゲン組成の異なる二つ以上の部分からなっていてもよい。シェル部は全粒子体積の50%以下であることが好ましく、20%以下であることが特に好ましい。シェル部はヨウ塩化銀もしくは沃臭塩化銀であることが好ましい。シェル部は0.5モル%から13モル%のヨードを含有することが好ましく、1モル%から13モル%で含有することが特に好ましい。ヨウ化銀の全粒子中の含有量は5モル%以下が好ましく、1モル%以下が特に好ましい。臭化銀含有率もコア部よりもシェル部が高いことが好ましい。臭化銀含有率は20モル%以下が好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
上記高塩化銀粒子の平均粒子サイズ(平均球相当直径)に特に制限はないが、好ましくは0.1μm〜0.8μm、特に好ましくは0.1μm〜0.6μmである。平均円相当直径は好ましくは0.2〜1.0μmである。また、平均厚みは0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.06μm以下である。全ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上が、平均アスペクト比2以上が好ましく、5以上20以下がより好ましい。
この型のハロゲン化銀粒子の粒子サイズの分布は、多分散でも単分散でもよいが、単分散であることがより好ましい。特に全投影面積の50%以上を占める平板粒子の円相当直径の変動係数が20%以下が好ましい。
晶相制御剤が粒子形成後も粒子表面に存在すると、増感色素の吸着や現像に影響を与える。そのため、晶相制御剤は粒子形成後に除去することが好ましい。ただし、晶相制御剤を除去した場合、高塩化銀(111)平板粒子は、通常の条件では(111)面を維持するのが困難である。したがって、増感色素等写真的に有用な化合物で置換して粒子形態を保持することが好ましい。この方法については、特開平9−80656号、特開平9−106026号、米国特許第5,221,602号明細書、同第5,286,452号、同第5,298,387号、同第5,298,388号、同第5,176,992号等に記載されている。
上記方法により晶相制御剤は粒子から脱着するが、脱着した晶相制御剤を水洗により乳剤外へ除去するのが好ましい。水洗温度としては、保護コロイドとして通常用いられるゼラチンが凝固しない温度で行うことができる。水洗方法としては、フロキュレーション法や限外ろ過法等の種々の公知技術を用いることができる。水洗温度は40℃以上が好ましい。また、晶相制御剤は低pHで粒子より脱着が促進される。従って、水洗工程のpHは粒子が過度に凝集しない限りの低いpHが好ましい。
上記高塩化銀粒子には周期律表VIII属金属、即ちオスミウム、イリジウム、ロジウム、白金、ルテニウム、パラジウム、コバルト、ニッケル、鉄から選ばれた金属のイオンまたはその錯イオンを単独または組み合わせて用いることができる。更にこれらの金属は、複数種用いてもよい。
上記金属イオン提供化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に分散媒になるゼラチン水溶液中、ハロゲン化物水溶液中、銀塩水溶液中、またはその他の水溶液中に添加するか、あるいは予め、金属イオンを含有させたハロゲン化銀微粒子の形でハロゲン化銀乳剤に添加し、この乳剤を溶解させる等の手段によって本発明のハロゲン化銀粒子に含有させることができる。また、金属イオンを該粒子中に含有させるには、粒子形成前、粒子形成、粒子形成直後のいずれかで行うことができるが、この添加時期は、金属イオンを粒子のどの位置にどれだけの量含有させるかによって変えることができる。好ましくは、用いる全金属イオンの提供化合物のうち50モル%以上、より好ましくは80モル%以上が、さらに好ましくは100モル%がハロゲン化銀粒子表面から粒子体積の50%以下に相当するまでの表面層に局在しているのが好ましい。この表面層の体積は好ましくは30%以下である。金属イオンを表面層に局在させることは、内部感度の上昇を抑制し、高感度を得るのに有利である。こうしたハロゲン化銀粒子の表面層に集中させて金属イオン提供化合物を含有せしめるには、例えば表面層を除いた部分のハロゲン化銀粒子(コア)を形成した後、表面層を形成するための水溶性銀塩溶液とハロゲン化物水溶液の添加にあわせて金属イオン提供化合物を供給することで行うことができる。
高塩化銀乳剤では、第VIII族金属以外に、その乳剤粒子形成もしくは物理熟成の過程において種々の多価金属イオン不純物を導入することができる。これらの化合物の添加量は目的に応じて広範囲にわたるが、ハロゲン化銀1モルに対して、10-9〜10-2モルが好ましい。
以下に、ハロゲン化銀乳剤全般に関わる内容について説明する。
本発明のハロゲン化銀乳剤中には、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有させることができる。
本発明の感光材料に含有される1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物とは以下のタイプ1、2から選ばれる化合物である。
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具
体例:28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9
−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(1)(特開2003-114487号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(2)(特開2003-114487号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(3)(特開2003-114488号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(4)(特開2003-114488号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(5)(特開2003-114488号に記載の一般式(3)と同義)、一般式(6)(特開2003-75950号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(7)(特開平2003-75950号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(8)(特願2003-25886号に記載の一般式(1)と同義)、または化学反応式(1)(特願2003-33446号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物のうち一般式(9)(特願2003-33446号に記載の一般式(3)と同義)で表される化合物が挙げられる。またこれらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
Figure 2006011334
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式中RED1、RED2は還元性基を表す。R1は炭素原子(C)とRED1とともに5員もしくは6員の芳香族環(芳香族複素環を含む)のテトラヒドロ体、もしくはオクタヒドロ体に相当する環状構造を形成しうる非金属原子団を表す。R2は水素原子または置換基を表す。同一分子内に複数のR2が存在する場合にはこれらは同じであっても異なっていても良い。L1は脱離基をあらわす。EDは電子供与性基をあらわす。Z1は窒素原子とベンゼン環の2つの炭素原子とともに6員環を形成しうる原子団を表す。X1は置換基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基)を表す。m1は0〜3の整数を表す。Z2は−CR11R12-、-NR13-、または−O−を表す。R11、R12はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。R13は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。L2はカルボキシ基もしくはその塩または水素原子を表す。X2はC=Cとともに5員のヘテロ環を形成する基を表す。Y2はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。X3およびY3は、C−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(10)(特開2003-140287号に記載の一般式(1)と同義)、化学反応式(1)(特願2003-33446号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物であって一般式(11)(特願2003-33446号に記載の一般式(2)と同義)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
Figure 2006011334
Figure 2006011334
上式中、Xは1電子酸化される還元性基をあらわす。YはXが1電子酸化されて生成する1電子酸化体と反応して、新たな結合を形成しうる炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環部位を含む反応性基を表す。L2はXとYを連結する連結基を表す。R2は水素原子または置換基を表す。同一分子内に複数のR2が存在する場合にはこれらは同じであっても異なっていても良い。X2はC=Cとともに5員のヘテロ環を形成する基を表す。Y2はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。X3およびY3は、C−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。
タイプ1、2の化合物のうち好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、または「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。ハロゲン化銀への吸着性基とは特開平2003-156823号明細書の16頁右1行
目〜17頁右12行目に記載の基が代表的なものである。分光増感色素の部分構造とは同明細書の17頁右34行目〜18頁左6行目に記載の構造である。
タイプ1、2の化合物として、より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を少なくとも1つ有する化合物」である。さらに好ましくは「同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物」である。吸着性基が単一分子内に2個以上存在する場合には、それらの吸着性基は同一であっても異なっても良い。
吸着性基として好ましくは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、およびベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、および5−メルカプトテトラゾール基である。
吸着性基として、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する場合もまた特に好ましい。ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素テロ環基など)の好ましい例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が挙げられる。
また窒素またはリンの4級塩構造も吸着性基として好ましく用いられる。窒素の4級塩構造としては具体的にはアンモニオ基(トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリール(またはヘテロアリール)アンモニオ基、アルキルジアリール(またはヘテロアリール)アンモニオ基など)または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。リンの4級塩構造としては、フォスフォニオ基(トリアルキルフォスフォニオ基、ジアルキルアリール(またはヘテロアリール)フォスフォニオ基、アルキルジアリール(またはヘテロアリール)フォスフォニオ基、トリアリール(またはヘテロアリール)フォスフォニオ基など)が挙げられる。より好ましくは窒素の4級塩構造が用いられ、さらに好ましくは4級化された窒素原子を含む5員環あるいは6員環の含窒素芳香族ヘテロ環基が用いられる。特に好ましくはピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基が用いられる。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよい。
4級塩の対アニオンの例としては、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、BF4 -、PF6 -、Ph4B-等が挙げられる。分子内にカルボキシレート基等に負電荷を有する基が存在する場合には、それとともに分子内塩を形成していても良い。分子内にない対アニオンとしては、塩素イオン、ブロモイオンまたはメタンスルホネートイオンが特に好ましい。
吸着性基として窒素またはリンの4級塩構造有するタイプ1、2で表される化合物の好ましい構造は一般式(X)で表される。
Figure 2006011334
一般式(X)においてP、Rはそれぞれ独立して増感色素の部分構造ではない窒素またはリンの4級塩構造を表す。Q1、Q2はそれぞれ独立して連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NRN−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、またはこれらの基の組み合わせからなる基を表す。ここにRNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。Sはタイプ(1)または(2)で表される化合物から原子を一つ取り除いた残基である。iとjは1以上の整数であり、i+jが2〜6になる範囲から選ばれるものである。好ましくはiが1〜3、jが1〜2の場合であり、より好ましくはiが1または2、jが1の場合であり、特に好ましくはiが1、jが1の場合である。一般式(X)で表される化合物はその総炭素数が10〜100の範囲のものが好ましい。より好ましくは10〜70、さらに好ましくは11〜60であり、特に好ましくは12〜50である。
本発明のタイプ1、タイプ2の化合物は乳剤調製時、感材製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することも出来る。添加位置として好ましくは、粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時、塗布前である。
タイプ1、タイプ2の化合物は水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高くまたは低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高くまたは低くして溶解し、これを添加しても良い。
タイプ1、タイプ2の化合物は乳剤層中に使用するのが好ましいが、乳剤層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。本発明の化合物の添加時期は増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10-9〜5×10-2モル、更に好ましくは1×10-8〜2×10-3モルの割合でハロゲン化銀乳剤層に含有する。
以上の本発明の乳剤の調製時に用いられる保護コロイドとして、及びその他の親水性コロイド層のバインターとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。
例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類のようなセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾールのような単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan.No.16.P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。好ましくは、アミノ基が95%以上修飾されたコハク化ゼラチン、およびトリメリット化ゼラチン、または酸化処理ゼラチンである、また低分子量ゼラチン、および低分子量酸化処理ゼラチンを用いることも好ましい。
さらに、分子量分布が28万以上の成分を30%以上、好ましくは35%以上含んでいるゼラチンを用いても良い。石灰処理ゼラチンは、その分子量に基づいてサブα(低分子量)、α(分子量約10万)、β(分子量約20万)、γ(分子量約30万)および大高分子部分(ボイド:分子量30万より大)からなる。それぞれの成分の比率、すなわち分子量分布は、国際的に定められたPAGI法により測定される。更に詳しい説明および製法は、特開平11−237704号に詳細に記載されている。
本発明の乳剤は脱塩のために水洗し、新しく用意した保護コロイド分散にすることが好ましい。この際の保護コロイドは上述した親水性コロイドおよびゼラチンを用いることができる。この際、分子量分布が28万以上の成分を30%以上、好ましくは35%以上含んでいるゼラチンを用いることは好ましい。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAg も目的に応じて選べるが5〜10の間で選ぶことが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
本発明で好ましく用いられうる還元増感とは、ハロゲン化銀に対して還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAg雰囲気下でハロゲン化銀粒子を成長あるいは熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気下で成長あるいは熟成させる方法のいずれかを選ぶこともできる。また、これらのうち2つ以上の方法を併用することもできる。これらの中では、特に、還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。
還元増感剤として第一錫塩、アスコルビン酸およびその誘導体、ハイドロキノンおよびその誘導体、カテコールおよびその誘導体、ヒドロキシルアミンおよびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジンおよびその誘導体、パラフェニレンジアミンおよびその誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸(二酸化チオ尿素)、シラン化合物、ボラン化合物を挙げることができる。還元増感にはこれら還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感の方法に関しては米国特許第2,518,698号、同第3,201,254号、同第3,411,917号、同第3,779,777号、同第3,930,867号に開示された方法や、還元剤の使用方法に関しては、特公昭57−33572、同58−1410、特開昭57−179835に開示された方法を使用することができる。還元増感剤としてカテコールおよびその誘導体、ヒドロキシルアミンおよびその誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸(二酸化チオ尿素)、が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-1モルの範囲が適当である。
還元増感剤は水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類などの溶媒に溶かし粒子成長中に添加される。
本発明で用いることができるハロゲン化銀溶剤としては、米国特許第3,271,157号、同第3,531,289号、同3,574,628号、特開昭54−1019号、同54−158917号等に記載された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−82408号、同55−77737号、同55−2982号等に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号に記載された(d)イミダゾール類、(e)アンモニア、(f)チオシアネート等があげられる。
特に好ましい溶剤としては、チオシアネート、アンモニアおよびテトラメチルチオ尿素がある。また用いられる溶剤の量は種類によっても異なるが、例えばチオシアネートの場合、好ましい量はハロゲン化銀1モル当り1×10-4モル以上1×10-2モル以下である。
本発明の乳剤調製時、例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前に金属イオンの塩を存在させることは目的に応じて好ましい。粒子にドープする場合には粒子形成時、粒子表面の修飾あるいは化学増感剤として用いる時は粒子形成後、化学増感終了前に添加することが好ましい。先述したように、粒子全体にドープする場合と粒子のコアー部のみ、あるいはシェル部のみ、あるいはエピタキシャル部のみにドープする方法も選べる。例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Y、La、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Cd、Hg、Tl、In、Sn、Pb、Biを用いることができる。これらの金属はアンモニウム塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、水酸塩あるいは6配位錯塩、4配位錯塩など粒子形成時に溶解させることができる塩の形であれば添加できる。例えば、CdBr2、CdCl2、Cd(NO32、Pb(NO32、Pb(CH3COO)2、K3[Fe(CN)6]、(NH44[Fe(CN)6]、K3IrCl6、(NH43RhCl6、K4Ru(CN)6があげられる。配位化合物のリガンドとしてハロ、アコ、シアノ、シアネート、チオシアネート、ニトロシル、チオニトロシル、オキソ、カルボニルのなかから選ぶことができる。これらは金属化合物を1種類のみ用いてもよいが2種あるいは3種以上を組み合せて用いてよい。
金属化合物は水またはメタノール、アセトンのような適当な有機溶媒に溶かして添加するのが好ましい。溶液を安定化するためにハロゲン化水素水溶液(例えば、HCl、HBr)あるいはハロゲン化アルカリ(例えば、KCl、NaCl、KBr、NaBr)を添加する方法を用いることができる。また必要に応じ酸・アルカリなどを加えてもよい。金属化合物は粒子形成前の反応容器に添加しても粒子形成の途中で加えることもできる。また水溶性銀塩(例えば、AgNO3)あるいはハロゲン化アルカリ水溶液(例えば、NaCl、KBr、KI)に添加しハロゲン化銀粒子形成中連続して添加することもできる。さらに水溶性銀塩、ハロゲン化アルカリとは独立の溶液を用意し、粒子形成中の適切な時期に連続して添加してもよい。さらに種々の添加方法を組み合せるのも好ましい。
米国特許第3,772,031号に記載されているようなカルコゲン化合物を乳剤調製中に添加する方法も有用な場合がある。S、Se、Te以外にもシアン塩、チオシアン塩、セレノシアン酸、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩を存在させてもよい。
本発明のハロゲン化銀粒子は硫黄増感、セレン増感、テルル増感、金増感、パラジウム増感又は貴金属増感、還元増感の少なくとも1つをハロゲン化銀乳剤の製造工程の任意の工程で施こすことができる。2種以上の増感法を組み合せることは好ましい。どの工程で化学増感するかによって種々のタイプの乳剤を調製することができる。粒子の内部に化学増感核をうめ込むタイプ、粒子表面から浅い位置にうめ込むタイプ、あるいは表面に化学増感核を作るタイプがある。本発明の乳剤は目的に応じて化学増感核の場所を選ぶことができるが、一般に好ましいのは表面近傍に少なくとも一種の化学増感核を作った場合である。
本発明で好ましく実施しうる化学増感の一つはカルコゲン増感と貴金属増感の単独又は組合せであり、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James、The Theory of the Photographic Process,4th ed,Macmillan,1977)67−76頁に記載されるように活性ゼラチンを用いて行うことができるし、またリサーチ・ディスクロージャー、120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号、同第3,297,446号、同第3,772,031号、同第3,857,711、同第3,901,714号、同第4,266,018号、および同第3,904,415号、並びに英国特許第1,315,755号に記載されるようにpAg 5〜10、pH5〜8および温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルル、金、白金、パラジウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組合せとすることができる。貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属塩を用いることができ、中でも特に金増感、パラジウム増感および両者の併用が好ましい。金増感の場合には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドのような公知の化合物を用いることができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、R2PdX6またはR2PdX4で表わされる。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表わす。Xはハロゲン原子を表わし塩素、臭素または沃素原子を表わす。
具体的には、K2PdCl4、(NH42PdCl6、Na2PdCl4、(NH42PdCl4、Li2PdCl4、Na2PdCl6またはK2PdBr4が好ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物および米国特許第3,857,711号、同第4,266,018号および同第4,054,457号に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号、同第3,411,914号、同第3,554,757号、特開昭58−126526号および前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
本発明の乳剤は金増感を併用することが好ましい。金増感剤の好ましい量としてハロゲン化銀1モル当り1×10-4〜1×10-7モルであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5×10-7モルである。パラジウム化合物の好ましい範囲は1×10-3から5×10-7である。チオシアン化合物あるいはセレノシアン化合物の好ましい範囲は5×10-2から1×10-6である。
本発明のハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1モル当り1×10-4〜1×10-7モルであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5×10-7モルである。
本発明の乳剤に対して好ましい増感法としてセレン増感がある。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素)、セレノケトン類、セレノアミド類のようなセレン化合物を用いることができる。セレン増感は硫黄増感あるいは貴金属増感あるいはその両方と組み合せて用いた方が好ましい場合がある。
本発明の乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、例えば、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のような水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のような水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、例えば、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO2・H22・3H2O、2NaCO3・3H22、Na427・2H22、2Na2SO4・H22・2H2O)、ペルオキシ酸塩(例えば、K228、K226、K228)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O2)C24]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C242]・6H2O)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、クロム酸塩(例えば、K2Cr27)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば、過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオスルフォン酸塩がある。
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
好ましい酸化剤は、オゾン、過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォン酸塩の無機酸化剤及びキノン類の有機酸化剤である。前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法のなかから選んで用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも選んで用いることができる。
本発明に用いられる写真乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類(例えば、ベンゾチアゾリウム塩)、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)、メルカプトピリミジン類、メルカプトトリアジン類、例えば、オキサドリンチオンのようなチオケト化合物、アザインデン類、例えば、トリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)チトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類のようなかぶり防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。例えば、米国特許第3,954,474号、同第3,982,947号、特公昭52−28660号に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号に記載された化合物がある。かぶり防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。乳剤調製中に添加して本来のかぶり防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。ハロゲン化銀吸着性化合物としては上記かぶり防止剤等が好ましい。
米国特許第5747235、同5747236、欧州特許第786692A1、同893731A1、同893732A1、およびWO99/05570に記載されたような、電子供与基と脱離基からなる有機電子供与化合物を用いて増感することも好ましい。
本発明の感光性層は、支持体上に一層もしくはそれ以上設けることができる。また、支持体の片側に限らず両面に設けることができる。本発明の感光性層は、黒白ハロゲン化銀写真感光材料(例えば、Xレイ感材、リス型感材、黒白撮影用ネガフィルムなど)やカラー写真感光材料(例えば、カラーネガフィルム、カラー反転フィルム、カラーペーパー等)に用いることができる。さらに、拡散転写用感光材料(例えば、カラー拡散転写要素、銀塩拡散転写要素)、熱現像感光材料(黒白、カラー)等にも用いることができる。
以下、カラー写真感光材料について詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
感光材料は、支持体上に青感色性層、緑感色性層、赤感色性層のハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が設けられていればよく、ハロゲン化銀乳剤層および非感光性層の層数および層順に特に制限はない。典型的な例としては、支持体上に、実質的に感色性は同じであるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成る感色性層を少なくとも1つ有するハロゲン化銀写真感光材料であり、該感光性層は青色光、緑色光、および赤色光の何れかに感色性を有する単位感光性層であり、多層ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、一般に単位感光性層の配列が、支持体側から順に赤感色性層、緑感色性層、青感色性層の順に設置される。しかし、目的に応じて上記設置順が逆であっても、また同一感色性層中に異なる感光性層が挾まれたような設置順をもとり得る。
上記のハロゲン化銀感光性層の間および最上層、最下層には各層の中間層等の非感光性層を設けてもよい。
該中間層には、特開昭61−43748号、同59−113438号、同59−113440号、同61−20037号、同61−20038号に記載されるようなカプラー、DIR化合物が含まれていてもよく、通常用いられるように混色防止剤を含んでいてもよい。
各単位感光性層を構成する複数のハロゲン化銀乳剤層は、西独特許第1,121,470号あるいは英国特許第923,045号に記載されるように高感度乳剤層、低感度乳剤層の2層構成を好ましく用いることができる。通常は、支持体に向かって順次感光度が低くなる様に配列するのが好ましく、また各ハロゲン乳剤層の間には非感光性層が設けられていてもよい。また、特開昭57−112751号、同62−200350号、同62−206541号、同62−206543号に記載されているように支持体より離れた側に低感度乳剤層、支持体に近い側に高感度乳剤層を設置してもよい。
具体例として支持体から最も遠い側から、例えば低感度青感光性層(BL)/高感度青感光性層(BH)/高感度緑感光性層(GH)/低感度緑感光性層(GL)/高感度赤感光性層(RH)/低感度赤感光性層(RL)の順、またはBH/BL/GL/GH/RH/RLの順、またはBH/BL/GH/GL/RL/RHの順等に設置することができる。
また特公昭55−34932号公報に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GH/RH/GL/RLの順に配列することもできる。また特開昭56−25738号、同62−63936号明細書に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GL/RL/GH/RHの順に設置することもできる。
また特公昭49−15495号に記載されているように上層を最も感光度の高いハロゲン化銀乳剤層、中層をそれよりも低い感光度のハロゲン化銀乳剤層、下層を中層よりも更に感光度の低いハロゲン化銀乳剤層を配置し、支持体に向かって感光度が順次低められた感光度の異なる3層から構成される配列が挙げられる。このような感光度の異なる3層から構成される場合でも、特開昭59−202464号に記載されているように、同一感色性層中において支持体より離れた側から中感度乳剤層/高感度乳剤層/低感度乳剤層の順に配置されてもよい。
その他、高感度乳剤層/低感度乳剤層/中感度乳剤層、あるいは低感度乳剤層/中感度乳剤層/高感度乳剤層などの順に配置されていてもよい。
また、4層以上の場合にも、上記の如く配列を変えてよい。
上記のように、それぞれの感光材料の目的に応じて種々の層構成、配列を選択することができる。
本発明に関する感光材料には、前記の種々の添加剤が用いられるが、それ以外にも目的に応じて種々の添加剤を用いることができる。
これらの添加剤は、より詳しくはリサーチ・ディスクロージャー Item17643(1978年12月)、同 Item 18716(1979年11月)および同 Item 308119(1989年12月)に記載されており、その該当個所を後掲の表にまとめて示した。
添加剤種類 RD17643 RD18716 RD308119
1 化学増感剤 23頁 648 頁右欄 996 頁
2 感度上昇剤 同 上
3 分光増感剤、 23〜24頁 648 頁右欄〜 996 右〜998 右
強色増感剤 649 頁右欄
4 増 白 剤 24頁 647 頁右欄 998 右
5 かぶり防止剤、 24〜25頁 649 頁右欄 998 右〜1000右
および安定剤
6 光吸収剤、 25〜26頁 649 頁右欄〜 1003左〜1003右
フィルター染料、 650 頁左欄
紫外線吸収剤
7 ステイン防止剤 25頁右欄 650 左〜右欄 1002右
8 色素画像安定剤 25頁 1002右
9 硬 膜 剤 26頁 651 頁左欄 1004右〜1005左
10 バインダー 26頁 同 上 1003右〜1004右
11 可塑剤、潤滑剤 27頁 650 頁右欄 1006左〜1006右
12 塗布助剤、 26〜27頁 同 上 1005左〜1006左
表面活性剤
13 スタチック 27頁 同 上 1006右〜1007左
防 止 剤
14 マット剤 1008左〜1009左
また、ホルムアルデヒドガスによる写真性能の劣化を防止するために、米国特許4,411,987号や同第4,435,503号に記載されたホルムアルデヒドと反応して、固定化できる化合物を感光材料に添加することが好ましい。
本発明には種々のカラーカプラーを使用することができ、その具体例は前出のリサーチ・ディスクロージャーNo.17643、VII−C〜G、および同No.307105、VII−C〜Gに記載された特許に記載されている。
イエローカプラーとしては、例えば米国特許第3,933,501号、同第4,022,620号、同第4,326,024号、同第4,401,752号、同第4,248,961号、特公昭58−10739号、英国特許第1,425,020号、同第1,476,760号、米国特許第3,973,968号、同第4,314,023号、同第4,511,649号、欧州特許第249,473A号、等に記載のものが好ましい。
マゼンタカプラーとしては5−ピラゾロン系及びピラゾロアゾール系の化合物が好ましく、米国特許第4,310,619号、同第4,351,897号、欧州特許第73,636号、米国特許第3,061,432号、同第3,725,067号、リサーチ・ディスクロージャーNo.24220(1984年6月)、特開昭60−33552号、リサーチ・ディスクロージャーNo.24230(1984年6月)、特開昭60−43659号、同61−72238号、同60−35730号、同55−118034号、同60−185951号、米国特許第4,500,630号、同第4,540,654号、同第4,556,630号、国際公開WO88/04795号に記載のものが特に好ましい。
シアンカプラーとしては、フェノール系及びナフトール系カプラーが挙げられ、米国特許第4,052,212号、同第4,146,396号、同第4,228,233号、同第4,296,200号、同第2,369,929号、同第2,801,171号、同第2,772,162号、同第2,895,826号、同第3,772,002号、同第3,758,308号、同第4,334,011号、同第4,327,173号、西独特許公開第3,329,729号、欧州特許第121,365A号、同第249,453A号、米国特許第3,446,622号、同第4,333,999号、同第4,775,616号、同第4,451,559号、同第4,427,767号、同第4,690,889号、同第4,254,212号、同第4,296,199号、特開昭61−42658号等に記載のものが好ましい。
ポリマー化された色素形成カプラーの典型例は、米国特許第3,451,820号、同第4,080,211号、同第4,367,282号、同第4,409,320号、同第4,576,910号、英国特許第2,102,137号、欧州特許第341,188A号に記載されている。
発色色素が適度な拡散性を有するカプラーとしては、米国特許第4,366,237号、英国特許第2,125,570号、欧州特許第96,570号、西独特許(公開)第3,234,533号に記載のものが好ましい。
発色色素の不要吸収を補正するためのカラード・カプラーは、リサーチ・ディスクロージャーNo.17643のVII−G項、同No.307105のVII−G項、米国特許第4,163,670号、特公昭57−39413号、米国特許第4,004,929号、同第4,138,258号、英国特許第1,146,368号に記載のものが好ましい。また、米国特許第4,774,181号に記載のカップリング時に放出された蛍光色素により発色色素の不要吸収を補正するカプラーや、米国特許第4,777,120号に記載の現像主薬と反応して色素を形成しうる色素プレカーサー基を離脱基として有するカプラーを用いることも好ましい。
カップリングに伴って写真的に有用な残基を放出する化合物もまた本発明で好ましく使用できる。現像抑制剤を放出するDIRカプラーは、前述のRD17643、VII−F項及び同No.307105、VII−F項に記載された特許、特開昭57−151944号、同57−154234号、同60−184248号、同63−37346号、同63−37350号、米国特許第4,248,962号、同第4,782,012号に記載されたものが好ましい。
現像時に画像状に造核剤もしくは現像促進剤を放出するカプラーとしては、英国特許第2,097,140号、同第2,131,188号、特開昭59−157638号、同59−170840号に記載のものが好ましい。また、特開昭60−107029号、同60−252340号、特開平1−44940号、同1−45687号に記載の現像主薬の酸化体との酸化還元反応により、かぶらせ剤、現像促進剤、ハロゲン化銀溶剤等を放出する化合物も好ましい。
その他、本発明の感光材料に用いることのできる化合物としては、米国特許第4,130,427号等に記載の競争カプラー、米国特許第4,283,472号、同第4,338,393号、同第4,310,618号等に記載の多当量カプラー、特開昭60−185950号、特開昭62−24252号等に記載のDIRレドックス化合物放出カプラー、DIRカプラー放出カプラー、DIRカプラー放出レドックス化合物もしくはDIRレドックス放出レドックス化合物、欧州特許第173,302A号、同第313,308A号に記載の離脱後復色する色素を放出するカプラー、RD.No.11449、同24241、特開昭61−201247号等に記載の漂白促進剤放出カプラー、米国特許第4,555,477号等に記載のリガンド放出カプラー、特開昭63−75747号に記載のロイコ色素を放出するカプラー、米国特許第4,774,181号に記載の蛍光色素を放出するカプラーが挙げられる。
本発明に使用するカプラーは、種々の公知の分散方法により感光材料に導入できる。
水中油滴分散法に用いられる高沸点溶媒の例は、例えば、米国特許第2,322,027号に記載されている。
水中油滴分散法に用いられる常圧での沸点が175℃以上の高沸点有機溶剤の具体例としては、フタル酸エステル類(例えば、ジブチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、デシルフタレート、ビス(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)フタレート、ビス(2,4−ジ−tert−アミルフェニル)イソフタレート、ビス(1,1−ジエチルプロピル)フタレート);リン酸またはホスホン酸のエステル類(例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロプロピルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルフェニルホスホネート);安息香酸エステル類(例えば、2−エチルヘキシルベンゾエート、ドデシルベンゾエート、2−エチルヘキシル−p−ヒドロキシベンゾエート);アミド類(例えば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジエチルラウリルアミド、N−テトラデシルピロリドン);アルコール類またはフェノール類(例えば、イソステアリルアルコール、2,4−ジ−tert−アミルフェノール);脂肪族カルボン酸エステル類(例えば、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルアゼレート、グリセロールトリブチレート、イソステアリルラクテート、トリオクチルシトレート);アニリン誘導体(例えば、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−tert−オクチルアニリン);炭化水素類(例えば、パラフィン、ドデシルベンゼン、ジイソプロピルナフタレン)を例示することができる。また補助溶剤としては、例えば、沸点が約30℃以上、好ましくは50℃以上かつ約160℃以下の有機溶剤が使用でき、典型例としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−エトキシエチルアセテート、ジメチルホルムアミドが挙げられる。
ラテックス分散法の工程、効果および含浸用ラテックスの具体例は、例えば、米国特許第4,199,363号、西独特許出願(OLS)第2,541,274号および、同第2,541,230号に記載されている。
カラー感光材料中には、フェネチルアルコールや特開昭63−257747号、同62−272248号、および特開平1−80941号に記載の、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、n−ブチル−p−ヒドロキシベンゾエート、フェノール、4−クロル−3,5−ジメチルフェノール、2−フェノキシエタノール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾールのような各種の防腐剤もしくは防黴剤を添加することが好ましい。
本発明は種々のカラー感光材料に適用することができる。例えば、一般用もしくは映画用のカラーネガフィルム、スライド用もしくはテレビ用のカラー反転フィルム、カラーペーパー、カラーポジフィルムおよびカラー反転ペーパーを代表例として挙げることができる。本発明は、カラーデュープ用フィルムにも特に好ましく使用できる。
本発明に使用できる適当な支持体は、例えば、前述のRD.No.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄、および同No.307105の879頁に記載されている。
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の全親水性コロイド層の膜厚の総和が28μm以下であることが好ましく、23μm以下がより好ましく、18μm以下が更に好ましく、16μm以下が特に好ましい。また膜膨潤速度T1/2が30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。ここでの膜厚は、25℃相対湿度55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味する。また、膜膨潤速度T1/2は当該技術分野において公知の手法に従って測定することができ、例えばエー・グリーン(A.Green)らによりフォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photogr.Sci.Eng.)、19巻、2号、124〜129頁に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用することにより測定できる。なお、T1/2は発色現像液で30℃、3分15秒処理した時に到達する最大膨潤膜厚の90%を飽和膜厚とし、飽和膜厚の1/2に到達するまでの時間と定義する。
膜膨潤速度T1/2は、バインダーとしてのゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時条件を変えることによって調整することができる。
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の反対側に、乾燥膜厚の総和が2μm〜20μmの親水性コロイド層(バック層と称す)を設けることが好ましい。このバック層には、例えば、前述の光吸収剤、フィルター染料、紫外線吸収剤、スタチック防止剤、硬膜剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、塗布助剤、表面活性剤を含有させることが好ましい。このバック層の膨潤率は150〜500%が好ましい。
本発明に従ったカラー写真感光材料は、前述のRD.No.17643の28〜29頁、同No.18716の651頁左欄〜右欄、および同No.307105の880〜881頁に記載された通常の方法によって現像処理することができる。
本発明の感光材料の現像処理に用いる発色現像液は、好ましくは芳香族第一級アミン系発色現像主薬を主成分とするアルカリ性水溶液である。この発色現像主薬としては、アミノフェノール系化合物も有用であるが、p−フェニレンジアミン系化合物が好ましく使用され、その代表例としては3−メチル−4−アミノ−N,Nジエチルアニリン、3−メチル−4−アミノ−N−エチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリン、3−メチル−4−アミノ−N−エチル−N−β−メタンスルホンアミドエチルアニリン、3−メチル−4−アミノ−N−エチル−β−メトキシエチルアニリン、及びこれらの硫酸塩、塩酸塩もしくはp−トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。これらの中で、特に、3−メチル−4−アミノ−N−エチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリンの硫酸塩が好ましい。これらの化合物は目的に応じ2種以上併用することもできる。
発色現像液は、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、ホウ酸塩もしくはリン酸塩のようなpH緩衝剤、塩化物塩、臭化物塩、沃化物塩、ベンズイミダゾール類、ベンゾチアゾール類もしくはメルカプト化合物のような現像抑制剤またはかぶり防止剤を含むのが一般的である。また必要に応じて、ヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、亜硫酸塩、N,N−ビスカルボキシメチルヒドラジンの如きヒドラジン類、フェニルセミカルバジド類、トリエタノールアミン、カテコールスルホン酸類の如き各種保恒剤;エチレングリコール、ジエチレングリコールのような有機溶剤;ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、四級アンモニウム塩、アミン類のような現像促進剤;色素形成カプラー、競争カプラー、1−フェニル−3−ピラゾリドンのような補助現像主薬;粘性付与剤;アミノポリカルボン酸、アミノポリホスホン酸、アルキルホスホン酸、ホスホノカルボン酸に代表されるような各種キレート剤を用いることができる。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ニトリル三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロ−N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N,N−テトラメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−ジ(o−ヒドロキシフェニル酢酸)及びそれらの塩を代表例として挙げることができる。
また、反転処理を実施する場合は、通常黒白現像を行なってから発色現像する。この黒白現像液には、例えば、ハイドロキノンのようなジヒドロキシベンゼン類、例えば、1−フェニル−3−ピラゾリドンのような3−ピラゾリドン類、または例えば、N−メチル−p−アミノフェノールのようなアミノフェノール類の公知の黒白現像主薬を単独であるいは組み合わせて用いることができる。これらの発色現像液及び黒白現像液のpHは、9〜12であることが一般的である。また、これらの現像液の補充量は、処理するカラー写真感光材料にもよるが、一般に感光材料1平方メートル当たり3L以下であり、補充液中の臭化物イオン濃度を低減させておくことにより500mL以下にすることもできる。補充量を低減する場合には、処理液の空気との接触面積を小さくすることによって液の蒸発、空気酸化を防止することが好ましい。
処理槽での写真処理液と空気との接触面積は、以下に定義する開口率で表わすことができる。即ち、
開口率=[処理液と空気との接触面積(cm2)]÷[処理液の容量(cm3)]
上記の開口率は0.1以下であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.05である。このように開口率を低減させる方法としては、処理槽の写真処理液面に、例えば浮き蓋のような遮蔽物を設ける方法に加えて、特開平1−82033号に記載された可動蓋を用いる方法、特開昭63−216050号に記載されたスリット現像処理方法を挙げることができる。開口率を低減させることは、発色現像及び黒白現像の両工程のみならず、後続の諸工程、例えば、漂白、漂白定着、定着、水洗、安定化の全ての工程において適用することが好ましい。また、現像液中の臭化物イオンの蓄積を抑える手段を用いることにより、補充量を低減することもできる。
発色現像処理の時間は通常2〜5分の間で設定されるが、高温高pHとし、かつ発色現像主薬を高濃度に使用することにより、更に処理時間の短縮を図ることもできる。
発色現像後の写真乳剤層は通常漂白処理される。漂白処理は定着処理と同時に行なわれてもよいし(漂白定着処理)、個別に行なわれてもよい。更に処理の迅速化を図るため、漂白処理後に漂白定着処理する処理方法でもよい。さらに、二槽の連続した漂白定着浴で処理すること、漂白定着処理の前に定着処理すること、又は漂白定着処理後に漂白処理することも目的に応じ任意に実施できる。漂白剤としては、例えば、鉄(III)のような多価金属の化合物、過酸類(特に、過硫酸ソーダは映画用カラーネガフィルムに適する)、キノン類、ニトロ化合物が用いられる。代表的漂白剤としては、鉄(III)の有機錯塩、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、メチルイミノ二酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸のようなアミノポリカルボン酸類との錯塩、または、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸との錯塩を用いることができる。これらのうち、エチレンジアミン四酢酸鉄(III)錯塩、及び1,3−ジアミノプロパン四酢酸鉄(III)錯塩をはじめとするアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩は、迅速処理と環境汚染防止の観点から好ましい。さらに、アミノボリカルボン酸鉄(III)錯塩は、漂白液においても、漂白定着液においても特に有用である。これらのアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩を用いた漂白液又は漂白定着液のpHは通常4.0〜8であるが、処理の迅速化のためにさらに低いpHで処理することもできる。
漂白液、漂白定着液及びそれらの前浴には、必要に応じて漂白促進剤を使用することができる。有用な漂白促進剤の具体例は、次の明細書に記載されている:例えば、米国特許第3,893,858号、西独特許第1,290,812号、同第2,059,988号、特開昭53−32736号、同53−57831号、同53−37418号、同53−72623号、同53−95630号、同53−95631号、同53−104232号、同53−124424号、同53−141623号、同53−18426号、リサーチ・ディスクロージャーNo.17129号(1978号7月)に記載のメルカプト基またはジスルフィド基を有する化合物;特開昭51−140129号に記載のチアゾリジン誘導体;特公昭45−8506号、特開昭52−20832号、同53−32735号、米国特許第3,706,561号に記載のチオ尿素誘導体、西独特許第1,127,715号、特開昭58−16235号に記載の沃化物塩;西独特許第966,410号、同第2,748,430号に記載のポリオキシエチレン化合物類;特公昭45−8836号に記載のポリアミン化合物;その他特開昭49−40943号、同49−59644号、同53−94927号、同54−35727号、同55−26506号、同58−163940号記載の化合物;臭化物イオン等が使用できる。なかでも、メルカプト基またはジスルフィド基を有する化合物が促進効果が大きい観点で好ましく、特に米国特許第3,893,858号、西独特許第1,290,812号、特開昭53−95630号に記載の化合物が好ましい。更に、米国特許第4,552,884号に記載の化合物も好ましい。これらの漂白促進剤は感材中に添加してもよい。撮影用のカラー感光材料を漂白定着するときに、これらの漂白促進剤は特に有効である。
漂白液や漂白定着液には上記の化合物の他に、漂白ステインを防止する目的で有機酸を含有させることが好ましい。特に好ましい有機酸は、酸解離定数(pKa)が2〜5である化合物で、具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸を挙げることができる。
定着液や漂白定着液に用いられる定着剤としては、例えば、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、チオエーテル系化合物、チオ尿素類、多量の沃化物塩を挙げることができる。このなかではチオ硫酸塩の使用が一般的であり、特にチオ硫酸アンモニウムが最も広範に使用できる。また、チオ硫酸塩と、例えば、チオシアン酸塩、チオエーテル系化合物、チオ尿素の併用も好ましい。定着液や漂白定着液の保恒剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、カルボニル重亜硫酸付加物あるいは欧州特許第294,769A号に記載のスルフィン酸化合物が好ましい。更に、定着液や漂白定着液には、液の安定化の目的で、各種アミノポリカルボン酸類や有機ホスホン酸類の添加が好ましい。
本発明において、定着液または漂白定着液には、pH調整のためにpKaが6.0〜9.0の化合物、好ましくはイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールの如きイミダゾール類を0.1〜10モル/L添加することが好ましい。
脱銀工程の時間の合計は、脱銀不良が生じない範囲で短い方が好ましい。好ましい時間は1分〜3分、更に好ましくは1分〜2分である。また、処理温度は25℃〜50℃、好ましくは35℃〜45℃である。好ましい温度範囲においては脱銀速度が向上し、かつ処理後のステイン発生が有効に防止される。
脱銀工程においては、撹拌ができるだけ強化されていることが好ましい。撹拌強化の具体的な方法としては、特開昭62−183460号に記載の感光材料の乳剤面に処理液の噴流を衝突させる方法や、特開昭62−183461号に回転手段を用いて撹拌効果を上げる方法が挙げられる。更には、液中に設けられたワイパーブレードと乳剤面を接触させながら感光材料を移動させ、乳剤表面を乱流化することによってより撹拌効果を向上させる方法や、処理液全体の循環流量を増加させる方法が挙げられる。このような撹拌向上手段は、漂白液、漂白定着液、定着液のいずれにおいても有効である。撹拌の向上は、乳剤膜中への漂白剤および、定着剤の供給を速め、結果として脱銀速度を高めるものと考えられる。また、前記の撹拌向上手段は漂白促進剤を使用した場合により有効であり、促進効果を著しく増加させたり、漂白促進剤により定着阻害作用を解消させることができる。
本発明の感光材料の現像に用いられる自動現像機は、特開昭60−191257号、同60−191258号、同60−191259号に記載の感光材料搬送手段を有していることが好ましい。前記の特開昭60−191257号に記載のとおり、このような搬送手段は前浴から後浴への処理液の持込みを著しく削減でき、処理液の性能劣化を防止する効果が高い。このような効果は、各工程における処理時間の短縮や処理液補充量の低減に特に有効である。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、脱銀処理後、水洗及び/又は安定工程を経るのが一般的である。水洗工程での水洗水量は、感光材料の特性(例えば、カプラーのような使用素材による)、用途、更には、例えば、水洗水温、水洗タンクの数(段数)、向流、順流のような補充方式、その他種々の条件に応じて広範囲に設定し得る。このうち、多段向流方式における水洗タンク数と水量の関係は、Journal of the Society of Motion Picture and Television Engineers 第64巻、P.248〜253(1955年5月号)に記載の方法で求めることができる。
前記文献に記載の多段向流方式によれば、水洗水量を大幅に減少し得るが、タンク内における水の滞留時間の増加によりバクテリアが繁殖し、生成した浮遊物が感光材料に付着するというような問題が生じる。本発明のカラー感光材料の処理おいては、このような問題の解決策として、特開昭62−288838号に記載のカルシウムイオン、マグネシウムイオンを低減させる方法を極めて有効に用いることができる。また、特開昭57−8542号に記載の、例えば、イソチアゾロン化合物やサイアベンダゾール類、塩素化イソシアヌール酸ナトリウムのような塩素系殺菌剤、その他、例えば、ベンゾトリアゾールのような、堀口博著「防菌防黴剤の化学」(1986年)三共出版、衛生技術会編「微生物の滅菌、殺菌、防黴技術」(1982年)工業技術会、日本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」(1986年)に記載の殺菌剤を用いることもできる。
本発明の感光材料の処理おける水洗水のpHは、4〜9、好ましくは5〜8である。水洗水温および水洗時間も、例えば感光材料の特性、用途に応じて種々設定し得るが、一般には、15〜45℃で20秒〜10分、好ましくは25〜40℃で30秒〜5分の範囲が選択される。更に、本発明の感光材料は、上記水洗に代えて、直接安定液によって処理することもできる。このような安定化処理においては、特開昭57−8543号、同58−14834号、同60−220345号に記載の公知の方法はすべて用いることができる。
また、前記水洗処理に続いて、更に安定化処理する場合もある。その例として、撮影用カラー感光材料の最終浴として使用される、色素安定化剤と界面活性剤を含有する安定浴を挙げることができる。色素安定化剤としては、例えば、ホルマリンやグルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、N−メチロール化合物、ヘキサメチレンテトラミンあるいはアルデヒド亜硫酸酸付加物を挙げることができる。この安定浴にも、各種キレート剤や防黴剤を加えることができる。
上記水洗及び/又は安定液の補充に伴うオーバーフロー液は脱銀工程のような他の工程において再利用することもできる。
例えば自動現像機を用いた処理において、上記の各処理液が蒸発により濃縮化する場合には、水を加えて濃縮補正することが好ましい。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料には、処理の簡略化及び迅速化の目的で発色現像主薬を内蔵させても良い。内蔵させるためには、発色現像主薬の各種プレカーサーを用いるのが好ましい。例えば、米国特許第3,342,597号記載のインドアニリン系化合物、例えば、同第3,342,599号、リサーチ・ディスクロージャーNo.14,850及び同No.15,159に記載のシッフ塩基型化合物、同No.13,924に記載のアルドール化合物、米国特許第3,719,492号に記載の金属塩錯体、特開昭53−135628号に記載のウレタン系化合物を挙げることができる。
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料は、必要に応じて、発色現像を促進する目的で、各種の1−フェニル−3−ピラゾリドン類を内蔵しても良い。典型的な化合物は、例えば、特開昭56−64339号、同57−144547号、および同58−115438号に記載されている。
本発明における各種処理液は、10℃〜50℃において使用される。通常は33℃〜38℃の温度が標準的であるが、より高温にして処理を促進し処理時間を短縮したり、逆により低温にして画質の向上や処理液の安定性の改良を達成することができる。
また、本発明のハロゲン化銀感光材料は、米国特許第4,500,626号、特開昭60−133449号、同59−218443号、同61−238056号、欧州特許第210,660A2号などに記載されている熱現像感光材料にも適用できる。
また、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、特公平2−32615号、実公平3−39784号等に記載されているレンズ付きフィルムユニットに適用した場合に、より効果を発現し易く有効である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
硫黄、セレン及び金増感した沃化物4.7mol%を含有する主平面投影面積相当円直径平均2.4μm、平均厚み0.12μmの平板状沃臭化銀粒子を含む乳剤を使用し、カラーフォーマットでの評価を行った。この乳剤の調製は、以下に記載した特許の本文及び/又は実施例記載の内容を基に適宜選択、組み合わせ、及び/又は変更して調製した。
乳剤の構造、化学増感については特に欧州特許第573,649B1,特許第2912768号、特開平11−249249号、特開平11−295832号、特開平11−72860、米国特許第5985534号、米国特許第5965343号、特許第3002715号、特許第3045624号、特許第3045623号、特開2000−275771号、米国特許第6172110号、特開2000−321702号、特開2000−321700号、特開2000−321698号、米国特許第6153370号、特開2001−92064号、特開2000−92059号、特開2001−147501号、米国特許第2001−0006768A1号、特開2001−228572号、特開2001−255613号、特開2001−264911号、米国特許第6280920B1号、特開2001−264912号、特開2001−281778号、米国特許第6287753B1号、米国特許第2002−0006590A1号、米国特許第5919611号、米国特許第2001−0031434A1号等の記載内容を基にした。
乳剤の製造法については、特に特許第2878903号、特開平11−143002号、特開平11−143003号、特開平11−174612号、米国特許第5925508号、米国特許第5955253号、特開平11−327072号、米国特許第5989800号、特許第3005382号、特許第3014235号、欧州特許第0431585B1号、米国特許第6040127A号、特許第3049647号、特登第3045622号、特登第3066692号、欧州特許第0563708B1号、特登第3091041号、特開2000−338620号、特開2001−83651号、特開2001−75213号、特開2001−100343号、米国特許第6251577B1号、欧州特許第0563701B1号、特開2001−281780号、米国特許第2001−0036606A1号等の記載内容を基にした。
この乳剤を50℃に加温し、第一増感色素及び存在する場合には第二増感色素(色素及びその添加量は表4参照)をゼラチンゾル中の個体微分散物として添加した。15分後に硝酸カリウム(8.3mmol/molAg)を添加し、更に塩化金酸(1.37mg/molAg)とチオシアン酸カリウム(2.13mmol/molAg)の混合物、チオ硫酸ナトリウム(1.73mg/molAg)、ペンタフルオルフェニルジフェニルフォスフィンセレニド(4.0×10-6mol/molAg)加えた後、2−ジエチルアミノ−4,6−ビス(ヒドロキシアミノ)−1,3,5-トリアゾール(0.26g/molAg)を添加した。更に10分後に、1−p−カルボキシフェニル−2−メルカプト−1,3,4−トリアゾール(8.2×10-6mol/molAg)を加え、60分熟成し最適に化学増感した後、1−p−カルボキシフェニル−2−メルカプトテトラゾール(0.37mmol/molAg)添加した。次いで、第三増感色素と第四増感色素(色素及びその添加量は表4参照)とを、この順序で添加し、15分間50℃に保持した。
このようにして調製した乳剤に沃化カリウム(0.53mmol/molAg)水、蒸留水、ゼラチンゲル及び7−ヒドロキシ−5−メチル−1,2,4−トリアザインドリジン(0.65mmol/molAg)を添加した。次いで、イエロー色素形成性カプラーである3−ベンジル−4−エトキシ−1−{1−p−メトキシベンゾイル−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルアニリノ)カルボニルメチル}ヒダントイン及び1−(ピヴァロイル−{2−クロロ−5−[4−(2,4−ジターシャリペンチルフェノキシ)ブチリルアミノ]アニリノカルボニル}メチル)フェノキシカルボニル置換ベンゾトリアゾールの酢酸エチル及びトリクレジルホスフェート溶液を界面活性剤(トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩)含有ゼラチン溶液中に乳化分散させた乳化物1−A(この乳化物のγは0.406であった)と平均分子量、約75万のp−スルホスチレンナトリウムホモポリマー(0.10g/molAg)の増粘剤とを加え(この塗布前の完成乳剤のγは0.423であった)、下塗りを施した酢酸セルローストリアセテートフィルム支持体の上に、界面活性剤、硬膜剤1,2−ビス(ビニルスルホニルアセチルアミノ)エタン及び前述増粘剤とゼラチンを含む保護層を上面に設け、同時塗布して(この塗布試料のγは0.446であった)、表4及び表5の試料1−1から1−10を調製した。
また、上記でのイエロー色素形成性カプラーを乳化分散させた乳化物を下記の乳化物1−Bまたは乳化物1−Cに変更した以外は全く同様にして塗布し、表4及び表5中の試料1−11と1−12を調製した。
(乳化物1−Bの調製)
乳化物1-Aに対し限外濾過を行った。即ち、乳化物1-A1kgに対し、透過水量が500mlになるたびに水を適宜加え、透過水量が10Lとなるまで限外濾過を行った。限外濾過中の温度は40℃に保った。限外濾過装置の限外濾過モジュールは、旭化成製中空糸膜SLP-1053(分画分子量:10000)を用いた。この時の還流流量は5L/分であり、供給圧力は0.03Mpa、還流圧力は0.01Mpa及び透過圧力は0Mpaであった。透過流量は40〜60mL/分で行った。以上のようにして乳化物1−Bを得たが、そのγは0.274であった。
(乳化物1−Cの調製)
乳化物1-A1kgに対し、イオン交換樹脂 AMBERLITE IRA-900 100gを40℃で撹拌しながら徐々に加えた。その後、120分40℃で撹拌を続けた後、イオン交換樹脂を濾別して除き、乳化物1−Cを得た。この乳化物のγは0.097であった。
また、塗布した乳剤の一部を採り、40℃、4000rpmで20分間遠心沈降した。上澄み液を捨て、約35℃の少量の湯で遠心沈降物を軽く洗浄した後、凍結乾燥した。得られた沃臭化銀ペレットの中央部を採取し、10%チオ硫酸ナトリウム・ジメチルフォルムアミド(DMF)・メタノールの2:1:1の混合溶液に溶かし、前述説明の如く、高速液体クロマトグラフィーを用いて、吸着色素を分離定量し、得られた結果を表4に示した。
調製した試料1-10〜1-12の塗布試料のγ値、完成乳剤のγ値及び使用した乳化物のγ値を表5に纏めた。
Figure 2006011334
Figure 2006011334
塗布した試料は、富士写真フイルム(株)製シャープカットフィルターSC39(390nmより長波長の光を透過する)と光楔フィルターとを介して、色温度4800Kのタングステン光源で0.01秒露光し、下記に示す現像処理方法で処理した。濃度測定及び特定写真感度の決定方法は、JIS K 7614−1981に準じたものであり、特開昭63−226650号に記載されているのと同様の方法である。
得られた感度は表6に示した。
(現像処理)
富士写真フイルム(株)製ネガプロセサーFP−350を用い、以下に記載の方法で(液の累積補充量がその母液タンク容量の3倍になるまで)処理した。
(処理方法)
工程 処理時間 処理温度 補充量
発色現像 2分45秒 38℃ 45mL
漂 白 1分00秒 38℃ 20mL
漂白液オーバーフローは漂白定着タンクに全量流入
漂白定着 3分15秒 38℃ 30mL
水洗(1) 40秒 35℃ (2)から(1)への向流配管方式
水洗(2) 1分00秒 35℃ 30mL
安 定 40秒 38℃ 20mL
乾 燥 1分15秒 55℃
*補充量は35mm幅1.1m長さ当たり(24Ex.1本相当)
処理液組成は次の通りである。
(発色現像液) タンク液(g) 補充液(g)
ジエチレントリアミン五酢酸 1.0 1.1
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 2.0 2.0
亜硫酸ナトリウム 4.0 4.4
炭酸カリウム 30.0 37.0
臭化カリウム 1.4 0.7
沃化カリウム 1.5mg −
ヒドロキシアミン硫酸塩 2.4 2.8
4−[N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ]
−2−メチルアニリン硫酸塩 4.5 5.5
水を加えて 1.0L 1.0L
pH(水酸化カリウムと硫酸にて調整) 10.05 10.10
(漂白液) タンク液、補充液共通(g)
エチレンジアミン四酢酸第二鉄アンモニウム二水塩 120.0
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 10.0
臭化アンモニウム 100.0
硝酸アンモニウム 10.0
漂白促進剤 (CH3)2N-CH2-CH2-S-S-CH2-CH2-N(CH3)2 0.005モル
アンモニア水(27%) 15.0mL
水を加えて 1.0L
pH(アンモニア水と硝酸にて調整) 6.3
(漂白定着液) タンク液(g) 補充液(g)
エチレンジアミン四酢酸第二鉄アンモニウム二水塩 50.0 −
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 5.0 5.0
亜硫酸ナトリウム 12.0 20.0
チオ硫酸アンモニウム水溶液(700g/L) 240.0mL 400.0mL
アンモニア水(27%) 6.0mL −
水を加えて 1.0L 1.0L
pH(アンモニア水と酢酸にて調整) 7.2 7.3
(水洗液) タンク液、補充液共通
水道水をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライト IR-120B)とOH型アニオン交換樹脂(同アンバーライト IR-400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウム及びマグネシウムイオン濃度を3mg/L以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリウム20mg/Lと硫酸ナトリウム0.15g/Lを充填した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
(安定液) タンク液、補充液共通(g)
p−トルエンスルフィン酸ナトリウム 0.03
ポリオキシエチレン−p−モノノニルフェニルエーテル(平均重合度10) 0.2
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.05
1,2,5−トリアゾール 1.3
1,4−ビス(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ピペラジン 0.75
水を加えて 1.0L
pH 8.5
また、試料を積分球内にセット出来るように改造した日立3500自記分光光度計で吸収を測定した。390nmより長波長部のハロゲン化銀による吸収も含めた390nmより長波長部の吸収面積強度相対値の結果は表6に示した。
Figure 2006011334
上記試料(本発明の試料及び比較試料)は、外色素層のλmaxは内色素層のλmaxよりも短波長で、外色素層の蛍光発光のλmaxは内色素層のλmaxの±25nmの範囲に入っており、外色素層の蛍光発光のスペクトルは内色素層の吸収スペクトルに充分重なっている。
表4及び表6に示した例から、カラー感光材料の製造に於いて必須であるカラーカプラー乳化物を共存させても、本発明が高い吸収率と感度をもたらす事が判ろう。
表からも、特に第三色素として添加したカチオン色素の吸着が本発明構成では高く、それが高い吸収率をもたらしているが、第四色素として添加したアニオン色素の吸着も従来のものに比べ高くなった。公開されているような外色素用としてカチオン色素をアニオン色素よりも多く添加した、従来のものでは、表には示さなかったが、カラーカプラー乳化物がないとカチオン色素も相応に吸着する。中には、本発明より良く吸着できた例も散見された。しかしながら、カラーカプラー乳化物が添加されると瞬時にしてカチオン色素が脱着され、それに伴い吸収も大きく減少し、吸収強度の高い安定な色素多層吸着系は望むべくもなかった。
本発明のように内色素用にアニオン色素を用いても、外色素用にはアニオン色素をカチオン色素よりも多く使用して、初めてカラーカプラー乳化物が共存しても安定な色素多層吸着が実現できるのである。
更に又、乳化物中および/または完成乳剤中及び/または塗布試料の単位質量中または単位面積中のγ値を制御するとさらに該色素多層吸着の完成度が上がり、それだけ効果(感度)も上がった。
(実施例2)
硫黄、セレン及び金増感した沃化物4.6mol%を含有する主平面投影面積相当円直径平均3.2μm、平均厚み0.10μmの平板状沃臭化銀粒子を含む乳剤を使用し、カラーフォーマットでの評価を行った。この乳剤の調製は、実施例1に記載した方法に準じて調製した。
この乳剤を51℃に加温し、第一増感色素及び存在する場合には第二増感色素(色素及びその添加量は表7参照)をゼラチンゾル中への個体微分散物で添加した。15分後に硝酸カリウム(8.5mmol/molAg)を添加し、更に塩化金酸(1.58mg/molAg)とチオシアン酸カリウム(2.45mmol/molAg)の混合物、チオ硫酸ナトリウム(1.99mg/molAg)、ペンタフルオルフェニルジフェニルフォスフィンセレニド(4.6×10-6mol/molAg)加えた後、2−ジエチルアミノ−4,6−ビス(ヒドロキシアミノ)−1,3,5-トリアゾール(0.29g/molAg)を添加した。更に10分後に、1−p−カルボキシフェニル−2−メルカプト−1,3,4−トリアゾール(9.4×10-6mol/molAg)を加え、60分熟成し最適に化学増感した後、1−p−カルボキシフェニル−2−メルカプトテトラゾール(0.43mmol/molAg)添加した。次いで、40℃に冷却した後、第三増感色素と第四増感色素(色素及びその添加量は表7参照)とを、この順序で添加し、15分間保持した。
このようにして調製した乳剤に、蒸留水、ゼラチンゲル及び臭化ナトリウム(0.93mmol/molAg)水、7−ヒドロキシ−5−メチル−1,2,4−トリアザインドリジン(1.10mmol/molAg)を添加した。次いで、増感色素による乳剤の最長波長部吸収ピーク波長が599nmより短い場合にはマゼンター色素形成性カプラーであるN−{1−(2,4,5−トリクロロフェニル)−4−ピラゾリルピラゾリン−4−オン−3−イル}メタアクリルアミドとブチルアクリレートとスチレンとの三元共重合ポリマーの酢酸エチル及びトリクレジルホスフェート溶液を界面活性剤含有ゼラチン溶液中に乳化分散させた乳化物(ここで使用した乳化物は前述実施例1で用いた乳化物1-Bの調製と同じく、限外濾過を施して調製した乳化物でそのγは0.244であった。)と平均分子量、約75万のp−スルホスチレンナトリウムホモポリマー(0.10g/molAg)の増粘剤とを、最長波長部吸収ピーク波長が600nmより長い場合にはシアン色素形成性カプラーである5−イソブトキシカルボニルアミノ−2−{3−(2,4−ジターシャリーペンチルフェノキシ)プロピルアミノカルボニル}−1−ナフトールと5−イソブトキシカルボニルアミノ−2−(3−ドデシルオキシプロピルアミノカルボニル)−1−ナフトールとの酢酸エチル及びトリクレジルホスフェート溶液を界面活性剤(トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩)含有ゼラチン溶液中に乳化分散させた乳化物(ここで使用した乳化物は前述実施例1で用いた乳化物1-Bの調製と同じく、限外濾過を施して調製した乳化物でそのγは0.195であった。)及び前述増粘剤を下塗りを施した酢酸セルローストリアセテートフィルム支持体の上に、実施例1と同様の保護層を上面に設け、同時塗布した。これらの塗布試料のγ値は、0.28〜0.29の間に入っていた。
添加した増感色素の吸着量は、実施例1記載の方法と同様にして求め、結果を表7に示した。
また、感度もシャープカットフィルターSC39を、富士写真フイルム(株)製シャープカットフィルターSC50(500nmより長波長の光を透過する)に変更した以外は、実施例1記載の方法と全く同様にして求めた。得られた感度は表8に示した。
吸収面積強度相対値も、実施例1記載の方法と全く同様にして測定し、500nmより長波長部の増感色素による吸収の吸収面積強度を求め、その相対値を表7に示した。更に、試料を50℃、80%RHで3日間保存した後の吸収強度も測定し、内色素による吸収を差し引いた外色素による吸収強度を、各試料のその間、零下25℃下に保存しておいた試料の外色素による吸収強度に対する相対強度も表8に示した。
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
内色素層にアニオン色素を使用した場合、内色素との静電引力相互作用を利用するとして外色素層にカチオン色素を主に使用している従来の構成に比べて、外色素層にアニオン色素をより多く添加した本発明の構成の方が優れている事は、上表に示した結果からも明らかである。
静電引力相互作用を利用するのであるから、内色素がアニオン色素なら外色素はカチオン色素と言った単純な考えでは、安定な色素多層吸着系は構成できない。カラーカプラー乳化物はハロゲン化銀に直接吸着した色素でも、その色素がカチオンシアニン色素である場合には、容易に該色素を脱着してしまう事は関係技術者には良く知られた事実である。色素多層吸着系に於いても同じであり、外色素層色素をカチオン色素のみにした場合には、カラーカプラー乳化物が添加されると短時間で殆どのカチオン色素が殆ど脱着されてしまった。ところが、外色素層をカチオン色素とアニオン色素と、それもアニオン色素比率を多くするとカラーカプラー乳化物に耐える安定な多層吸着が実現できる。斯かる構成では、カチオン色素が減った分、内層のアニオン色素との静電引力が弱くなり不安定な吸着系になるとの予想もされかねないが、全く逆で安定な吸着系が得られたのである。
表8に示したように、高温、高湿下に試料を保存しても、従来の構成の物に比べ、本発明構成の物は非常に安定で、優れていた。
(実施例3)
1)支持体
本実施例で用いた支持体は、下記の方法により作成した。
ポリエチレン−2,6−ナフタレートポリマー100質量部と紫外線吸収剤としてチヌヴィンP.326(Tinuvin P.326 チバ・ガイギー(Ciba-Geigy)社製)2質量部とを乾燥した後、300℃にて溶解後、T型ダイから押し出し、140℃で3.3倍の縦延伸を行い、続いて130℃で3.3倍の横延伸を行い、更に250℃で6秒間熱固定して暑さ90μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムを得た。尚、このPENフィルムにはブルー染料、マゼンタ染料及びイエロー染料(公開技法:公技番号94−6023号記載のI−1、I−4、I−6、I−24、I−26、I−27、II−5)を適当量添加した。更に、20cmのステンレス巻き芯に巻き付けて、110℃、48時間の熱履歴を与え、巻き癖のつきにくい支持体とした。
2)下塗り層の塗設
上記支持体は、その両面にコロナ放電処理、UV放電処理、更にグロー放電処理をした後、それぞれの面にゼラチン0.1g/m2、ナトリウム=α−スルホビス(2−エチルヘキシル)サクシネート0.01g/m2、サリチル酸0.04g/m2、p−クロロフェノール0.2g/m2、N,N’−ビス(2−ビニルスホニルエチル)マロンアミド0.012g/m2、ポリアミド・エピクロロヒドリン重縮合物0.02g/m2の下塗り液を塗布して(10mL/m2、バーコーター使用)下塗り層を延伸時高温面側に設けた。乾燥は115℃、6分実施した(乾燥ゾーンのローラーや搬送装置は全て115℃となっている)。
3)バック層
下塗り層の上記支持体の片面にバック層として下記組成の帯電防止層、磁気記録層更に滑り層を塗設した。
3−1)帯電防止層の塗設
平均粒径0.005μmの酸化錫・酸化アンチモン複合体の比抵抗5Ω・cmの微粒子の分散物(2次凝集粒子径約0.08μm)を0.2g/m2、ゼラチン0.05g/m2、N,N’−ビス(2−ビニルスホニルエチル)マロンアミド0.02g/m2、ポリオキシエチレン・p−ノニルフェノール(重合度10)0.005g/m2及びレゾルシンと塗布した。
3−2)磁気記録層の塗設
ポリオキシエチレン・プロピルオキシトリメトキシシラン(重合度15、15重量%)で被覆処理されたコバルト・γ−酸化鉄(比表面積43m2、長軸0.14μm、短軸0.03μm、飽和磁化89A・m2/kg、Fe+2/Fe+3=6/94、表面は酸化アルミ、酸化珪素で酸化鉄の2質量%で処理されている)0.06g/m2をジアセチルセルロース1.2g/m2(酸化鉄の分散はオープンニーダーとサンドミルで実施した)、硬化剤としてC25C(CH2OCONH−C63(CH3)NCO)30.3g/m2を、溶剤としてアセトン、メチルケトン、シクロヘキサノンを用いてバーコーターで塗布し、膜厚1.2μmの磁気記録層をえた。マット剤としてシリカ粒子(0.3μm)とポリオキシエチレン・プロピルオキシトリメトキシシラン(重合度15、15質量%)で処理被覆された研磨剤の酸化アルミ(0.15μm)をそれぞれ10mg/m2となるように添加した。乾燥は115℃、6分実施した(乾燥ゾーンのローラーや搬送装置は全て115℃)。X−ライト(ブルーフィルター)での磁気記録層のDBの色濃度増加分は約0.1、また磁気記録層の飽和磁化モーメントは4.2A・m2/kg、保磁力7.3×104A/m、角形比は65%であった。
3−3)滑り層の調製
ジアセチルセルロース(25mg/m2)、C6H13CH(OH)C10H20COOC40H81(6mg/m2)/C50H101O(CH2CH2O)16H(9mg/m2)混合物を塗布した。尚、この混合物は、キシレン/プロピレンモノメチルエーテル(1/1)中、105℃で溶融し、常温のプロピレンモノメチルエーテル(10倍量)に注加分散して作成した後、アセトン中で分散物(平均粒径0.01μm)にしてから添加した。マット剤としてシリカ粒子(0.3μm)と研磨剤の3−ポリオキシエチレンプロピルオキシトリメトキシシラン(重合度15,15重量%)で被覆された酸化アルミ(0.15μm)をそれぞれ15mg/m2となるように添加した。乾燥は115℃、6分行った(乾燥ゾーンのローラーや搬送装置はすべて115℃)。滑り層は、動摩擦係数0.06(5mmφのステンレス硬球、荷重100g、スピード6cm/分)、静摩擦係数0.07(クリップ法)、また後述する乳剤面と滑り層の動摩擦係数も0.12と優れた特性であった。
4)感光層の塗設
次に、前記で得られたバック層の反対側に、下記の組成の各層を重層塗布し、カラーネガ感光材料である試料3−1を得た。
(感光層の組成)
各層に使用する主な素材は、下記のように分類されている。
ExC:シアンカプラー UV :紫外線吸収剤
ExM:マゼンタカプラー HBS:高沸点有機溶剤
ExY:イエローカプラー H :ゼラチン硬化剤(硬膜剤)
(具体的な化合物は以下の記載で、記号の次に数値が付けられ、後に化学式が挙げられている。)
各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。
第1層(第1ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.10
ゼラチン 0.66
ExM−1 0.048
Cpd−2 0.001
F−8 0.001
HBS−1 0.090
HBS−2 0.010
第2層(第2ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.10
ゼラチン 0.80
ExM−1 0.057
ExF−1 0.002
F−8 0.001
HBS−1 0.090
HBS−2 0.010
第3層(中間層)
ExC−2 0.010
Cpd−1 0.086
UV−2 0.029
UV−3 0.052
UV−4 0.011
HBS−1 0.100
ゼラチン 0.60
第4層(低感度赤感乳剤層)
Em−M 銀 0.42
Em−N 銀 0.52
Em−O 銀 0.10
ExC−1 0.222
ExC−2 0.010
ExC−3 0.072
ExC−4 0.148
ExC−5 0.005
ExC−6 0.008
ExC−8 0.071
ExC−9 0.010
UV−2 0.036
UV−3 0.067
UV−4 0.014
Cpd−2 0.010
Cpd−4 0.012
HBS−1 0.240
HBS−5 0.010
ゼラチン 1.50
第5層(中感度赤感乳剤層)
Em−L 銀 0.38
Em−M 銀 0.28
ExC−1 0.111
ExC−2 0.039
ExC−3 0.018
ExC−4 0.074
ExC−5 0.019
ExC−6 0.024
ExC−8 0.010
ExC−9 0.021
Cpd−2 0.020
Cpd−4 0.021
HBS−1 0.129
ゼラチン 0.85
第6層(高感度赤感乳剤層)
Em−K 銀 1.40
ExC−1 0.122
ExC−6 0.032
ExC−8 0.110
ExC−9 0.005
ExC−10 0.159
Cpd−2 0.068
Cpd−4 0.015
HBS−1 0.440
ゼラチン 1.51
第7層(中間層)
Cpd−1 0.081
Cpd−6 0.002
固体分散染料ExF−4 0.015
HBS−1 0.049
ポリエチルアクリレートラテックス 0.088
ゼラチン 0.80
第8層(重層効果ドナー層(赤感層へ重層効果を与える層))
Em−E 銀 0.40
Cpd−4 0.010
ExM−2 0.082
ExM−3 0.006
ExM−4 0.026
ExY−1 0.010
ExY−4 0.040
ExC−7 0.007
HBS−1 0.203
HBS−3 0.003
HBS−5 0.010
ゼラチン 0.52
第9層(低感度緑感乳剤層)
Em−H 銀 0.15
Em−I 銀 0.23
Em−J 銀 0.26
ExM−2 0.388
ExM−3 0.040
ExY−1 0.003
ExY−3 0.002
ExC−7 0.009
HBS−1 0.337
HBS−3 0.018
HBS−4 0.260
HBS−5 0.110
Cpd−5 0.010
ゼラチン 1.45
第10層(中感度緑感乳剤層)
Em−G 銀 0.30
Em−H 銀 0.12
ExM−2 0.084
ExM−3 0.012
ExM−4 0.005
ExY−3 0.002
ExC−6 0.003
ExC−7 0.007
ExC−8 0.008
HBS−1 0.096
HBS−3 0.002
HBS−5 0.002
Cpd−5 0.004
ゼラチン 0.42
第11層(高感度緑感乳剤層)
Em−F 銀 1.200
ExC−6 0.003
ExC−8 0.010
ExM−1 0.014
ExM−2 0.023
ExM−3 0.023
ExM−4 0.005
ExM−5 0.040
ExY−3 0.003
DA−1 0.013
Cpd−3 0.004
Cpd−4 0.007
Cpd−5 0.010
HBS−1 0.259
HBS−5 0.020
ポリエチルアクリレートラテックス 0.099
ゼラチン 1.110
第12層(イエローフィルター層)
Cpd−1 0.088
固体分散染料ExF−2 0.051
固体分散染料ExF−8 0.010
HBS−1 0.049
ゼラチン 0.54
第13層(低感度青感乳剤層)
Em−B 銀 0.50
Em−C 銀 0.15
Em−D 銀 0.10
ExC−1 0.024
ExC−7 0.011
ExY−1 0.002
ExY−2 0.956
ExY−4 0.091
Cpd−2 0.037
Cpd−3 0.004
HBS−1 0.372
HBS−5 0.047
ゼラチン 2.00
第14層(高感度青感乳剤層)
Em−A 銀 1.22
ExY−2 0.235
ExY−4 0.018
Cpd−2 0.075
Cpd−3 0.001
HBS−1 0.087
ゼラチン 1.30
第15層(第1保護層)
0.07μmの沃化銀乳剤 銀 0.25
UV−1 0.358
UV−2 0.179
UV−3 0.254
UV−4 0.025
F−11 0.008
S−1 0.078
ExF−5 0.0024
固体分散染料ExF−6 0.0012
ExF−7 0.0010
HBS−1 0.175
HBS−4 0.050
ゼラチン 1.80
第16層(第2保護層)
H−1 0.400
B−1(直径1.7μm) 0.050
B−2(直径1.7μm) 0.150
B−3 0.050
S−1 0.200
ゼラチン 0.75
更に、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性及び塗布性を向上する目的で、W−1乃至W−6、B−4乃至B−6、F−1乃至F−17及び、鉄塩、鉛塩、金塩、白金塩、パラジウム塩、イリジウム塩、ルテニウム塩、ロジウム塩が含有されている。
ハロゲン化銀乳剤Em−A〜Oの特性を表9に示す。これらの乳剤は、以下に記載した特許の本文及び/又は実施例記載の内容を基に適宜選択、組み合わせ、及び/又は変更して調製した。
乳剤の構造、化学増感、分光増感については特に欧州特許第573,649B1,特許第2912768号、特開平11−249249号、特開平11−295832号、特開平11−72860、米国特許第5985534号、米国特許第5965343号、特許第3002715号、特許第3045624号、特許第3045623号、特開2000−275771号、米国特許第6172110号、特開2000−321702号、特開2000−321700号、特開2000−321698号、米国特許第6153370号、特開2001−92064号、特開2001−92064号、特開2000−92059号、特開2001−147501号、米国特許第2001−0006768A1号、特開2001−228572号、特開2001−255613号、特開2001−264911号、米国特許第6280920B1号、特開2001−264912号、特開2001−281778号、米国特許第6287753B1号、米国特許第2002−0006590A1号、米国特許第5919611号、米国特許第2001−0031434A1号等の記載内容を基にした。
乳剤の製造法については、特に特許第2878903号、特開平11−143002号、特開平11−143003号、特開平11−174612号、米国特許第5925508号、米国特許第5955253号、特開平11−327072号、米国特許第5989800号、特許第3005382号、特許第3014235号、欧州特許第0431585B1号、米国特許第6040127A号、特許第3049647号、特許第3045622号、特許第3066692号、欧州特許第0563708B1号、特許第3091041号、特開2000−338620号、特開2001−83651号、特開2001−75213号、特開2001−100343号、米国特許第6251577B1号、欧州特許第0563701B1号、特開2001−281780号、米国特許第2001−0036606A1号等の記載内容を基にした。
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
なお、上記乳剤のうち、乳剤A、B及びEは、出願当初の請求項6に規定する乳剤の要件を満足する。また、乳剤F〜Oは、出願当初の請求項7に規定する乳剤の要件を満足する。
有機固体分散染料の分散物の調製
下記、ExF-4を次の方法で分散した。即ち、水21.7mL及び5%水溶液のp−オクチルフェノキシエトキシエトキシエタンスルホン酸ナトリウム3mL並びに5%水溶液のp−オクチルフェノキシポリエチレンエーテル(重合度10)0.5gとを700mLのポットミルに入れ、染料ExF−4を5.0gと酸化ジルコニウムビーズ(直径1mm)500mLを添加して内容物を2時間分散した。この分散には中央工機製のBO型振動ボールミルを用いた。分散後、内容物を取り出し、12.5%のゼラチン素溶液8gに添加し、ビーズを濾過して除き、染料のゼラチン分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.44μmであった。
同様にして、ExF−8の固体分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.24μmであった。ExF−2は欧州特許出願公開(EP)第549,489A号明細書の実施例1に記載の微小析出(Microprecipitation)分散方法により分散した。平均粒径は0.06μmであった。
ExF−6の固体分散物は以下の方法で分散した。
水を18%含むExF−6のウエットケーキ2800gに4000gの水及びW−2の3%水溶液376g加えて撹拌し、ExF−6の濃度32%のスラリーとした。次にアイメックス(株)製ウルトラビスコミル(UVM−2)に平均粒径0.5mmのジルコニアビーズを1700mL充填し、スラリーを通して周速約10m/秒、吐出量0.5L/分で8時間粉砕した。平均粒径は0.45μmであった。
上記の各層の形成に用いた化合物は、以下に示す通りである。
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
Figure 2006011334
次いで、第6層(高感度赤感乳剤層)の乳剤Em−K、第11層(高感度緑感乳剤層)の乳剤Em−F及び第14層(高感度青感乳剤層)の乳剤Em−Aの調製に於いて、試料3−1で添加した増感色素{乳剤Em−KではSI-30(1.98mmol/molAg)とSI-38(0.49mmol/molAg)、乳剤Em−FではSI-12(1.52mmol/molAg)とSI-19(0.44mmol/molAg)とSI-21(0.80mmol/molAg)、乳剤Em-AではSI-1(0.70mmol/molAg)とSI-3(0.30mmol/molAg)}に加えて、表10に示した増感色素を実施例1及び2に記載したのと同様に外色素層増感色素として加え、試料3−2及び3−3を作成した。
このようにして作成した重層構成塗布試料3−1〜3−3を、下記に示した処理方法以外は、特開昭63−226650号に記載されている試験条件、露光、濃度測定、特定写真感度の決定方法と同様の方法で、処理し、得られた特定写真感度の相対値を表10に纏めた。
本発明に於ける特定写真感度の決定方法は、JIS K 7614−1981に準じたものであり、異なる点は、現像処理をセンシトメトリー用露光後30分以上6時間以内に完了させる点、及び現像処理を下記に示すフジカラー処理方法CN−16に因る点にある。その他は、実質的にJIS記載の測定方法と同一である。
現像は、富士写真フィルム(株)社製自動現像機FP−360Bを用いて、以下により行った。尚、漂白浴のオーバーフロー液を後浴へ流さず、全て廃液タンクへ排出するように改造を行った。このFP−360Bは発明協会公開技法94−4992号に記載の蒸発補正手段を搭載している。
処理工程及び処理液組成を以下に示す。尚、Lはリットルを表す。
(処理工程)
工程 処理時間 処理温度 補充量* タンク容量
発色現像 3分 5秒 37.8℃ 20mL 11.5L
漂 白 50秒 38.0℃ 5mL 5 L
定 着(1) 50秒 38.0℃ − 5 L
定 着(2) 50秒 38.0℃ 8mL 5 L
水 洗 30秒 38.0℃ 17mL 3 L
安 定(1) 20秒 38.0℃ − 3 L
安 定(2) 20秒 38.0℃ 15mL 3 L
乾 燥 1分30秒 60.0℃
補充量は感光材料35mm幅1.1m当たり(24Ex.1本相当)
安定液及び定着液は(2)から(1)への向流方式であり、水洗水のオーバーフロー液は全て定着浴(2)へ導入した。尚、現像液の漂白工程への持ち込み量、漂白液の定着工程への持ち込み量、及び定着液の水洗工程への持ち込み量は感光材料35mm幅1.1m当たり、それぞれ2.5mL、2.0mL、2.0mLであった。また、クロスオーバーの時間はいずれも6秒であり、この時間は前工程の処理時間に包含される。
上記処理機の開口面積は発色現像液100cm2、漂白液で120cm2、その他の処理液は約100cm2であった。
以下に処理液の組成をしめす。
(発色現像液) タンク液(g) 補充液(g)
ジエチレントリアミン五酢酸 3.0 3.0
カテコール−3,5−ジスルホン酸ジナトリウム 0.3 0.3
亜硫酸ナトリウム 3.9 5.3
炭酸カリウム 39.0 39.0
ジナトリウム N,N−ビス(2−スルホナトエチル)
ヒドロキシアミン 1.5 2.0
臭化カリウム 1.3 0.3
沃化カリウム 1.3mg −
4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a、7−
テトラザインデン 0.05 −
ヒドロキシアミン硫酸塩 2.4 3.3
2−メチル−4−[N−エチル−N−(β−ヒドロキシ
エチル)アミノ]アニリン硫酸塩 4.5 6.5
水を加えて 1.0L 1.0L
pH(水酸化カリウムと硫酸にて調整) 10.05 10.18
(漂白液) タンク液(g) 補充液(g)
1,3−ジアミノプロパン四酢酸第二鉄アンモニウム・一水塩 113 170
臭化アンモニウム 70 105
硝酸アンモニウム 14 21
コハク酸 34 51
マレイン酸 28 42
水を加えて 1.0L 1.0L
pH(アンモニア水で調整) 4.6 4.0
(定着(1)タンク液)
上記漂白タンク液と下記定着タンク液の5対95(容量比)混合液
(定着(2)) タンク液(g) 補充液(g)
チオ硫酸アンモニウム水溶液(750g/L) 240mL 720mL
イミダゾール 7 21
メタンチオスルホン酸アンモニウム 5 15
メタンスルフィン酸アンモニウム 10 30
エチレンジアミン四酢酸 13 39
水を加えて 1.0L 1.0L
pH(アンモニア水、酢酸で調整) 4.6 4.0
(水洗水)
水道水をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR−120B)とOH型強塩基性アニオン交換樹脂(同アンバーライトIR−400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウム及びマグネシウムイオン濃度を3mg/L以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌル酸ナトリウム20mg/Lと硫酸ナトリウム150mg/Lを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
(安定液) タンク液、補充液共通 (単位g)
p−トルエンスルフィン酸ナトリウム 0.03
ポリオキシエチレン-p-モノノニルフェニルエーテル(平均重合度10) 0.2
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン ナトリウム塩 0.10
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.05
1,2,4−トリアゾール 1.3
1,4−ビス(1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ピペラジン 0.75
水を加えて 1.0L
pH 8.5
また、この試料作成中に於いて、第6層、第11層及び第14層用として前記増感色素を添加した乳剤に前述記載のカプラーを始めとする他の化合物も添加した完成乳剤の一部を採り、実施例1及び実施例2記載の方法に準じて各添加増感色素の吸着量を測定した。
更に、別途、前述の該完成乳剤のみを第16層(第2保護層)に準じて調製した保護層と共に実施例1で用いたのと同じ無色透明支持体上に同時塗布し、実施例1及び実施例2記載の方法に準じて、吸収を測定した。第6層のものは600nmより長波長の、第11層のものは500nmより長波長の、そして第14層のものは390nmより長波長の吸収面積強度の試料3−1に対応した第6層、第11層、第14のものに対する相対値として表11に纏めた。
Figure 2006011334
Figure 2006011334
表10及び11に示した結果からも、一見してして判るように、本発明構成は、重層構成カラー感光材料に適用しても、外層色素の高い吸着率をもたらす結果、吸収強度の大幅な増加をもたらし、それに見合って高い感度をもたらす事を可能とした優れた技術である。
(実施例4)
前記実施例3で調製した試料3−3の調製に於いて、使用した全てのカラーカプラー乳化物の調製に於いて、実施例1に記載した乳化物1−Bの調製と同様にして限外濾過を施して調製した乳化物(γは0.157〜0.244の範囲に入っていた)を用いた以外は全く同様にして試料4−1を調製した。更に試料4−1の調製に於いて、第6層、第11層及び第14層に使用したカラーカプラー乳化物は実施例1での乳化物1−Cの調製と同様にしてイオン交換樹脂処理を施した物を用い、ハロゲン化銀が含有されない層に使用する界面活性剤の量も適当に減量して試料4−2を作成した。
試料3−3と共に作成した塗布試料のγ値を表12に纏めた。
Figure 2006011334
作成した塗布試料は、実施例3と全く同様にして、露光、現像、濃度測定を行った。得られた特定写真感度の相対値を表13に纏めたが、相対赤域感度、相対緑域感度及び相対青域感度共に、試料3−3の感度を100とした相対値で示した。また露光前に、50℃、相対湿度65%に14日間保存した試料についても同様の評価を行った。保存後の結果も表14に纏めたが、保存後の感度は、それぞれの試料の保存期間中、零下25℃で保存しておいた試料の感度を100とした相対値で示した。
Figure 2006011334
Figure 2006011334
実施例3で示したように、外層色素を本発明構成にした試料3−3は高い感度の向上をもたらしたが、それに加え、γ値を一定の範囲内に制御することにより、更に若干の感度上昇が得られた。得られた赤感度及び緑感度の感度増加幅が、一見小さい感を受けるかもしれないが、それは試料3−3の感度が理論的に得られる感度にかなり近い感度を示しており、更に感度が上がることは画期的とも言える現象である。
また、γ値を一定の範囲内に制御することによって、保存性が顕著に向上した。
(実施例5)
(5−1)本実施例で使用した増感色素の水性固体微分散物を得る方法について説明する。
(内色素層用の増感色素分散物5−aの調製)
増感色素SI-11を3.2g、SI-21を3.2g、SI-39を2.4g、ExS-3を15.1g、及びExS-4を1.6gを1000mLの水中にディゾルバー翼で撹拌しながら添加した。50℃で更に2時間高速撹拌を続けた後、ゼラチン100gと水を加えて全量を1500gとした。
(外色素層用の増感色素分散物5−bの調製)
1gの増感色素SII-11と硫酸ナトリウム2gを96mLの水中に添加した。そこに0.2mm径のジルコニアビーズを200g添加し、サンドグラインダーミルにて45℃で2時間分散を行った。ジルコニアビーズを分離し、色素分散物5−bを得た。
(外色素層用の増感色素分散物5−cの調製)
2gの増感色素SI-14を85mLの水中に添加した。55℃にてディゾルバー翼で1時
間高速撹拌した。その後、ゼラチン5gを添加し、更に20分間撹拌を行い増感色素分散物5−cを得た。
(5−2)本実施例の増感色素を多層吸着させたハロゲン化銀乳剤の調製法について説明する。
実施例3の表9でその特性を示した乳剤Em−Fと同じ乳剤を60℃で溶解し、前記増感色素分散物5−aを飽和色素量の80%添加した。チオ硫酸ナトリウム、N,N−ジメチルセレノ尿素、チオシアン酸カリウム及び塩化金酸を順次添加し、最適に金・硫黄・セレン増感を施した。次いで、M−2を被り防止剤として添加した後、温度を40℃に下げた。
40℃で増感色素分散物5−bを飽和吸着量の50%添加した。20分後に増感色素分散物5−cを飽和吸着量の55%添加した。このようにして調製した増感色素多層吸着乳剤を乳剤5−1とした。
(5−3)塗布試料の作成及びその評価について説明する。
(カプラーを含む乳化物の調製)
(乳化物5−aの調製)
10.6gのマゼンタ色素形成性カプラーである1−(2,4,6−トリクロロフェニル)−3−{3−[2−(2,4−ジ−tert−ペンチルフェノキシ)ブチリルアミノ]ベンゾイルアミノ}−2−ピラゾリン−5−オンを高沸点有機溶剤であるトリクレジルフォスフェート11mLと酢酸エチル30mL中に溶解し、5%のゼラチン水溶液と混合し、界面活性剤であるトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(W−3)を5.61g添加し、コロイドミルにて乳化分散を行い、乳化物5−aを得た。
(乳化物5−b及び乳化物5−cの調製)
上記乳化物5−aを実施例1記載の乳化物1−Bの調製と全く同様にして限外濾過をを行い乳化物5−bを得た。乳化物5−cは、実施例1記載の乳化物1−Cの調製と全く同様にして、前記乳化物5−aにイオン交換樹脂処理を施して得た。このようにして得た乳化物のγは、乳化物5−bが0.371、乳化物5−cが0.152であった。
(塗布試料の作成)
乳剤5−1と前記乳化物5−a〜5−cのそれぞれと混合し、40℃にて撹拌し、完成乳剤3種を得た。一方、比較の為に、乳剤5−1の調製に於いて、外色素層用の増感色素分散物5−bと5−cを共に添加しなかった乳剤5−2も調製し、この乳剤5−2と前記乳化物5−aとを同様に40℃で混合、撹拌した完成乳剤も得た。これら4種の完成乳剤を40℃で液体状態の儘、2時間経時させた物を下塗り層が設けてある三酢酸セルロースフィルム支持体に、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩を硬化剤として含むゼラチン水溶液を保護層として同時塗布し、試料5−1〜5−4を作製した。
これらの試料を40℃、相対湿度70%下で14時間硬膜処理を施した。その後、実施例2でも使用した富士フイルム(株)製ゼラチンフィルターSC−50と連続ウエッジを通して1/100秒間露光を行い、実施例1記載したのと全く同様にして現像処理した。現像処理を行った試料は、緑色フィルターで濃度測定することにより写真性能を評価した。
また、露光前に50℃、相対湿度60%の条件に14日保存した試料についても同様の評価を行い、保存性について評価した。写真性能の結果を下表15に示した。感度は被り濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表したが、表15では試料5−1の相対感度を100とした相対値で示した。
Figure 2006011334
試料5−2のようにγ0.510と此処まで大きいと、完成乳剤を溶液状態で長時間に亘って経時したり、塗布試料を高温、高湿下に保存すると、本発明でもその効果が減少してしまう(従来技術では、試料5−1のような外色素層のないレベル以下になってしまった。)が、γを調節すると、そのような感度減少も著しく抑制できた。
図1は、水不溶性写真有用化合物の親水性分散物の限外濾過概念図。
符号の説明
1・・・反応容器、 2・・・攪拌機、 9・・・液供給配管、 10・・・ポンプ、
11・・・供給バルブ 12,15及び19・・・圧力計、 13・・・限外濾過膜、
14・・・液還流配管、 16・・・還流バルブ、 17・・・還流流量計、 18・・・液透過配管、 20・・・透過バルブ、 21・・・透過流量計、 24・・・逆洗浄配管、
25・・・逆洗浄用バルブ、 27・・・逆止弁

Claims (15)

  1. (a)ハロゲン化銀粒子に隣接し、ハロゲン化銀を分光増感させ得る少なくとも1種の分光増感色素を含む内色素層及び(b)この内色素層に隣接し、少なくとも2種の色素を含む外色素層を含んでなる、2層の色素層を組み合わせて有する色素層被覆ハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀乳剤において、前記外色素層の光吸収エネルギーが、前記内色素層の光吸収エネルギーと等しいかそれより高く、前記外色素層のエネルギー放出波長が、前記内色素層のエネルギー吸収波長と重なっており、前記内色素層を構成する分光増感色素がアニオン色素及び/またはベタイン色素であり、前記外色素層を構成する色素が少なくともアニオン色素とカチオン色素とを含み、且つその添加量及び/または吸着量において外色素層のアニオン色素の量がカチオン色素の量よりも多いことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
  2. 前記内色素層を構成する分光増感色素がハロゲン化銀粒子上でJバンド型吸収を示すシアニン色素である請求項1に記載のハロゲン化銀乳剤。
  3. 前記外色素層を構成するカチオン色素とアニオン色素が、共にゼラチン水溶液中でJバンド型吸収を示す色素である請求項1または2に記載のハロゲン化銀乳剤。
  4. 前記外色素層を構成するカチオン色素とアニオン色素が、共にシアニン色素である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
  5. 前記ハロゲン化銀粒子には、平板状ハロゲン化銀粒子が含まれることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
  6. 前記平板状ハロゲン化銀粒子には、最大表面沃化物濃度領域をその縁に沿って有し、且つ、前記最大表面沃化物濃度領域の沃化物濃度よりも低い表面沃化物濃度領域をその角に有する平板状ハロゲン化銀粒子が含まれることを特徴とする請求項5に記載のハロゲン化銀乳剤。
  7. (111)主平面を有する平板状ハロゲン化銀粒子が前記全ハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上含まれ、前記平板状ハロゲン化銀粒子が、エピタキシャル接合部を有し、且つ、前記平板状粒子の表面上に潜像形成性化学増感部位を有しており、前記潜像形成性化学増感部位が前記エピタキシャル接合部を形成する銀塩と同じ銀塩を少なくとも1種含み、更に前記潜像形成性化学増感部位が平板状粒子の(111)主平面の周囲縁に最も近く配置され、且つ、この主平面の面積の50%未満を占める部分に限定されていることを特徴とする請求項5または6記載のハロゲン化銀乳剤。
  8. (a)ハロゲン化銀粒子に隣接し、ハロゲン化銀を分光増感させ得る少なくとも1種の分光増感色素を含む内色素層及び(b)この内色素層に隣接し、少なくとも2種の色素を含む外色素層を含んでなる、2層の色素層を組み合わせて有する色素層被覆ハロゲン化銀粒子であって、前記外色素層の光吸収エネルギーが、前記内色素層の光吸収エネルギーと等しいかそれより高く、前記外色素層のエネルギー放出波長が、前記内色素層のエネルギー吸収波長と重なっているものであるハロゲン化銀粒子と、界面活性剤及び高沸点有機溶媒を含有した水不溶性写真有用化合物の親水性分散物とを混合して調製されるハロゲン化銀乳剤であり、前記高沸点有機溶媒量に対する前記界面活性剤量の比をγとした時、前記親水性分散物のγの値が、0.020以上0.390未満であることを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
  9. 前記ハロゲン化銀乳剤におけるγの値が0.020以上0.390未満であることを特徴とする請求項8に記載のハロゲン化銀乳剤。
  10. 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の特徴を更に有する請求項8又は請求項9に記載のハロゲン化銀乳剤。
  11. 前記水不溶性写真有用化合物を前記高沸点有機溶媒に溶解し、得られた溶液と前記界面活性剤とを親水性コロイドに分散することにより前記水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を得る工程を有することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法。
  12. 前記水不溶性写真有用化合物の親水性分散物を得る工程に於いて、限外濾過及び/またはイオン交換を行うことを特徴とする請求項11に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法。
  13. 請求項1〜請求項10のいずれかのハロゲン化銀乳剤を含有した乳剤層を少なくとも1層有するハロゲン化銀写真感光材料。
  14. 該ハロゲン化銀乳剤を含有した乳剤層中におけるγの値が0.020以上0.390未満であることを特徴とする請求項13に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
  15. 前記感光材料中におけるγの値が0.020以上0.390未満であることを特徴とする請求項13に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN101983211B (zh) * 2008-04-08 2013-05-29 三井化学株式会社 乙烯聚合用固体状钛催化剂成分、乙烯聚合用催化剂以及乙烯的聚合方法

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