JP2006001753A - ヒ化ガリウム結晶の製造方法 - Google Patents

ヒ化ガリウム結晶の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 るつぼ内に酸化ホウ素を充填した場合にも、ヒ化ガリウム結晶にへき開破壊が生じることを防止できるヒ化ガリウム結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】 るつぼ1内に、予備合成されたヒ化ガリウム原料4と酸化ホウ素5とが充填され、そのるつぼ1内のヒ化ガリウム原料4が加熱溶融され、ヒ化ガリウム原料4の融液中のガリウムの量をヒ素の量よりも多くした状態でその融液の固化を完了して、カーボンが添加されたヒ化ガリウム結晶を成長させることにより、ヒ化ガリウム結晶が製造される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ヒ化ガリウム(GaAs)結晶の製造方法に関するものであり、特に、カーボンが添加されたGaAs結晶の製造方法に関するものである。
カーボンが添加されたGaAs結晶の製造方法に関しては、従来より以下のような種々の先行技術があった。
たとえば以下の非特許文献1〜3には、カーボンが添加されたGaAs結晶を垂直温度勾配凝固法(VGF法)で製造する方法が開示されている。
図6は、非特許文献1に開示されたカーボン添加GaAs単結晶の製造方法を説明するための図である。図6を参照して、種結晶63、GaAs原料64および酸化ホウ素(B23)65を装填したるつぼ61と、蒸気圧制御用のAs(ヒ素)とがアンプル67内に封止される。このアンプル67が成長装置にセットされた後にヒータ69により昇温が行なわれる。種結晶63の上端をメルトバックすることによりシーディングが行なわれ、これによりGaAs単結晶が成長する。
この非特許文献1では、GaAs原料64中にカーボンが含まれていたことにより、GaAs単結晶中にカーボンが含まれることが記載されている。
図7は、非特許文献2に開示されたカーボン添加GaAs単結晶の製造方法を説明するための図である。図7を参照して、るつぼ71内に種結晶73と、GaAs原料74と、酸化ホウ素(図示せず)とが配置され、るつぼ71の上端が蓋72により覆われ、その蓋72の上方にカーボン源76が配置される。この状態でるつぼ71などが石英製アンプル77内に密封される。そして、GaAs原料74を加熱により溶融させた後、凝固させることにより、カーボンが添加されたGaAs単結晶が製造される。
図8は、非特許文献3に開示されたカーボン添加GaAs単結晶の製造方法を説明するための図である。図8を参照して、るつぼ81内に種結晶83と、GaAs原料84と、酸化ホウ素85とが配置され、るつぼ81がヒータ89を備える炉内に配置される。この状態で、炉の外部から一酸化炭素(CO)ガスを供給しながらヒータ89により加熱が行なわれる。これにより、カーボンが添加されたGaAs単結晶が製造される。
また、以下の特許文献1には、垂直温度勾配凝固法を用いて、種結晶と、予備合成されたGaAs原料と、酸化ホウ素と、カーボン源としてのグラファイト粉末とをるつぼ内に充填して加熱溶融することにより、カーボンが添加されたGaAs結晶を製造する方法が記載されている。
岡部 他、「VGF法による無添加半絶縁性GaAs単結晶」、日本結晶成長学会誌 Vol.18(1991)、pp.502−509 C. HANNIG et al., "Incorporation of Carbon by VGF-Growth of GaAs", Cryst. Res. Technol. 34 (1999) pp.189-195 T. Buenger et al., "Active Carbon Control During VGF Growth of Semiinsulating GaAs", 2003 GaAs MANTECH 米国特許第6,045,767号
上述したように非特許文献1〜3および特許文献1においては、酸化ホウ素がるつぼ内に充填されている。この場合、GaAs結晶の成長後に冷却する過程で、酸化ホウ素がGaAs結晶後端に固着したまま収縮するため、GaAs結晶にへき開破壊が生じるという問題があった。
本発明の目的は、るつぼ内に酸化ホウ素を充填した場合にも、ヒ化ガリウム結晶にへき開破壊が生じることを防止できるヒ化ガリウム結晶の製造方法を提供することである。
本発明のヒ化ガリウム結晶の製造方法は、カーボンが添加されたヒ化ガリウム結晶の製造方法であって、るつぼ内に予備合成されたヒ化ガリウム原料と酸化ホウ素とを充填するステップと、そのるつぼ内のヒ化ガリウム原料を加熱溶融するステップと、ヒ化ガリウム原料の融液中のガリウムの量をヒ素の量よりも多くした状態でその融液の固化を完了して、カーボンが添加されたヒ化ガリウム結晶を成長するステップとを備えている。
本発明のヒ化ガリウム結晶の製造方法によれば、ヒ化ガリウム原料の融液中のガリウムの量をヒ素の量よりも多くした状態でその融液の固化が完了する。このため、ヒ化ガリウム結晶の成長完了後には、酸化ホウ素と接する部分におけるヒ化ガリウム結晶中では、ヒ素の量に対してガリウムの量が極端に多くなり、液体状のガリウムが析出した状態になっている。このような場合、結晶成長後の冷却過程で酸化ホウ素がヒ化ガリウム結晶後端に固着したまま収縮しても、ガリウムが析出してもろくなった最後端部のみが剥離し、ヒ化ガリウム結晶が大きくへき開破壊することがないことを本発明者は見出した。これにより、ヒ化ガリウム原料融液中のガリウムの量をヒ素の量より多くなるように調整することで、るつぼ内に酸化ホウ素を充填した場合にも、ヒ化ガリウム結晶にへき開破壊が生じることを防止することが可能となる。
また、ヒ素サイトを占有したカーボン(CAS)は、ヒ化ガリウム結晶の半絶縁性化にとって有効なアクセプタである。カーボンはヒ化ガリウム結晶中に入っているだけではアクセプタにならず、ヒ素サイトを占有してCASとなって初めてアクセプタとして働く。また、ヒ化ガリウム原料の融液中に最初から含まれているカーボンの濃度は結晶成長の後半(つまりテールエンド側)で低下する。本発明者は、ヒ化ガリウム原料の融液中のガリウムの量をヒ素の量よりも多い状態でその融液の固化を完了させることにより、結晶成長の後半でヒ素サイトを占有しているカーボンの濃度(CAS濃度)が上昇することを見出した。これにより、結晶成長の後半(つまりテールエンド側)では、ヒ化ガリウム原料の融液中に最初から含まれているカーボンの濃度は低下するものの、Asサイトを占有しているカーボン(CAS)の比率が上昇するため、結晶成長の前半(つまりシードエンド側)から後半(つまりテールエンド側)にかけて、Asサイトを占有しているカーボンの濃度(CAS濃度)をより均一にすることが可能となる。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、ヒ化ガリウム原料はるつぼ内に充填される前にガリウムの量がヒ素の量よりも多くなるように準備される。
このようにしてヒ化ガリウム原料融液中のガリウムの量がヒ素の量より多くなるように調整されてもよい。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、るつぼ内にはヒ化ガリウム原料以外にガリウムを含む原料が充填される。
このようにしてヒ化ガリウム原料融液中のガリウムの量がヒ素の量より多くなるように調整されてもよい。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、ヒ化ガリウム原料を加熱溶融する前に、ヒ化ガリウム原料を充填されたるつぼを、ガス不透過性材料からなる気密性容器内に密封する工程がさらに備えられている。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、ヒ化ガリウム原料を加熱溶融する前に気密性容器内に酸化炭素ガスが予め封入されている。
これにより、ヒ化ガリウム結晶中にカーボンが添加されてもよい。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、ヒ化ガリウム原料を加熱溶融する前に気密性容器内に予め封入されている酸化炭素ガスの圧力は、室温25℃において13.3Pa(0.1Torr)以上13332Pa(100Torr)以下である。
酸化炭素ガスの圧力が室温25℃において13.3Pa(0.1Torr)未満では上記の効果が十分に得られず、13332Pa(100Torr)を超えるとヒ化ガリウム結晶の成長工程において気密性容器が異常膨張する可能性がある。上記の酸化炭素ガスの室温25℃における圧力は、より好ましくは66.7Pa(0.5Torr)以上8000Pa(60Torr)以下であり、さらに好ましくは133.3Pa(1Torr)以上4000Pa(30Torr)以下である。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、ヒ化ガリウム原料を加熱溶融する上記ステップは、るつぼを他の容器内に密封せずに圧力チャンバー内に配置して行なわれ、かつ圧力チャンバー内をヒ化ガリウム融液の平衡蒸気圧よりも圧力を減じた状態で行なわれるステップを含む。
圧力チャンバー内をヒ化ガリウム融液の平衡蒸気圧よりも圧力を減じた状態とすることにより、ヒ化ガリウム原料の融液中からヒ素が揮発し易くなる。これにより、ヒ化ガリウム原料の融液中におけるガリウムの量を相対的にヒ素の量よりも多くすることができる。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、ヒ化ガリウム原料にはるつぼ内に充填される前に予めカーボンが添加されている。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、るつぼ内に充填される前のヒ化ガリウム原料の平均カーボン濃度は、0.5×1015atms・cm-3以上30×1015atms・cm-3以下である。
ヒ化ガリウム原料に予め添加されたカーボンは酸化ホウ素と反応するため、成長するヒ化ガリウム結晶に取り込まれるカーボンの量は添加量の2分の1〜10分の1程度である。このため比較的カーボン濃度の高いヒ化ガリウム原料を使用する必要がある。よって、ヒ化ガリウム原料における平均カーボン濃度は、0.5×1015atms・cm-3以上30×1015atms・cm-3以下であることが好ましい。また上記のカーボン濃度は、より好ましくは1×1015atms・cm-3以上25×1015atms・cm-3以下であり、さらに好ましくは1.5×1015atms・cm-3以上20×1015atms・cm-3以下である。
これにより、カーボンが添加されたヒ化ガリウム結晶を得ることができる。また、上述したようにヒ化ガリウム原料の融液中のガリウムの量をヒ素の量よりも多い状態でその融液の固化を完了させることにより、結晶成長の後半(つまりテールエンド側)でAsサイトを占有しているカーボンの濃度(CAS濃度)が上昇するため、結晶成長の前半(つまりシードエンド側)から後半(つまりテールエンド側)にかけて、Asサイトを占有しているカーボンの濃度(CAS濃度)をより均一にすることが可能となる。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、るつぼ内にはヒ化ガリウム原料以外に固体カーボンが充填される。
これにより、ヒ化ガリウム結晶中にカーボンが添加されてもよい。なお、この固体カーボンとしては、グラファイト粉末、グラファイト繊維、グラファイトの焼結体などが好ましい。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、るつぼ外であってヒ化ガリウム原料を加熱溶融する際にヒ化ガリウム原料と流体連絡可能な位置に固体カーボンが配置される。
これにより、ヒ化ガリウム結晶中にカーボンが添加されてもよい。
上記のヒ化ガリウム結晶の製造方法において好ましくは、るつぼはpBN(熱分解窒化ホウ素)からなる。
るつぼの構成元素によっては、酸化ホウ素やカーボンとるつぼが反応し、原料融液が汚染される恐れがある。したがって、酸化ホウ素やカーボンと反応して原料融液を汚染しないpBNが、るつぼの材料として最適である。
本発明のヒ化ガリウム結晶の製造方法によれば、るつぼ内に酸化ホウ素を充填した場合にも、ヒ化ガリウム結晶にへき開破壊が生じることを防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるカーボン添加GaAs単結晶の製造方法の一例を説明するための図である。図1を参照して、まず、たとえばpBNよりなるるつぼ1内に、種結晶3と、GaAs原料4と、酸化ホウ素(B23)5とが充填される。種結晶3はるつぼ1の最下端部に収容され、GaAs原料4はカーボンを含み、かつGa(ガリウム)とAs(ヒ素)とが予備合成された多結晶体として準備される。
GaAs原料4中の平均カーボン濃度は0.5×1015atms・cm-3以上30×1015atms・cm-3以下であることが好ましく、1×1015atms・cm-3以上25×1015atms・cm-3以下であることがより好ましく、1.5×1015atms・cm-3以上20×1015atms・cm-3以下であることがさらに好ましい。
この状態でるつぼ1が石英製アンプル(気密性容器)7内に密封される。この時必要に応じて、石英製アンプル7内にヒ素の蒸気分圧を与えるための固体ヒ素(図示せず)が、るつぼ1とともに石英製アンプル7内に密封される。この石英製アンプル7が縦型炉の支持台8に設置されて、ヒータ9により加熱される。この加熱により、酸化ホウ素5とGaAs原料4と種結晶3の上部が溶融される。単結晶GaAsを成長させるために上部が高温域となり下部が低温域となるような温度勾配をヒータ9によって生じさせる。この状態で、GaAs原料4中の固−液界面を種結晶3の上端部(シードエンド)からGaAs原料4の上端部(テールエンド)へと移行させることにより、GaAs原料4が種結晶3側から凝固して固体単結晶が成長する。この際、GaAs原料の融液中のGaの量をAsの量よりも多くした状態でその融液の固化が完了する。
本実施の形態のようにリザーバーを持たない石英製アンプル7を用いる場合、GaAs原料の融液中のGaの量をAsの量よりも多くするためには、たとえば以下のような具体的な方法がある。
まず第1の方法は、予備合成されたGaAs多結晶よりなるGaAs原料4に加えてガリウムを含む原料を充填することによって、Gaを過剰にする方法である。
また第2の方法は、るつぼ1内に充填する前のGaAs原料4として、Gaの量がAsの量よりも多くなるようにGaを過剰に予備合成した多結晶を準備する方法である。
また第3の方法は、GaAs原料4の加熱溶解時にGaAs原料4中からAsを石英製アンプル7内空間に分解・揮発させて、GaAs原料の融液中のGaの量をAsの量よりも多くした状態でその融液の固化を完了させる方法である。この場合、るつぼ1とともに石英製アンプル7内に密封する固体ヒ素(図示せず)の量を調整してAsの分解・揮発量を調整することにより、GaAs原料融液中のGaの過剰量を調整することができる。
石英製アンプル7内に、予備合成されたGaAs原料とともに封入する固体ヒ素の量を石英製アンプル内を平衡蒸気圧にするために必要な量よりも少なくする方法である。この場合、石英製アンプル内を平衡蒸気圧にするための固体ヒ素の不足分が、予備合成されたGaAs原料から供給されるので、GaAsの原料融液がガリウム過剰になる。
予備合成されたGaAsの温度が上昇して融解する過程で、ヒ素が石英製アンプル7内に充満する。GaAsの平衡蒸気圧は約1atmであるため、石英製アンプル7内は約1atmのヒ素蒸気が充満された状態になる。予備合成されたGaAsだけを原料に用いる場合、石英製アンプル7内に充満されるヒ素蒸気は、全て予備合成されたGaAs原料から供給されるため、原料の組成はガリウム過剰になる。通常、GaAs融液がガリウム過剰になるのを防ぐため、石英製アンプル7内に固体ヒ素が配置される。この固体ヒ素の量は、結晶成長の際に石英製アンプル7内を1atmにするために必要な量とする。
GaAsの融点である1238℃付近では、ヒ素はAs原子4個As4とAs原子2個As2のガスが、約6:4の分圧比で存在するとされている。ヒ素の原子量は74.922であるため、例えば石英製アンプル7の空間容積(原料などがない部分)が1.5リットル、石英製アンプル7の温度を1250℃と仮定すると、3.1gの固体ヒ素を石英製アンプル7に入れることによって、約1atmのヒ素蒸気を供給することができる計算になる。これよりも少ない固体ヒ素を入れた場合、不足分は、予備合成された原料から供給されるため、その分だけ原料融液がガリウム過剰になる。
この場合、るつぼ1内の酸化ホウ素5はGaAs原料4の融液の表面全面を覆っていることが好ましい。これにより、GaAs原料4の融液から揮発したAsがその融液中に逆戻りすることを防止することができる。このため、GaAs結晶の最テールまで確実に、Gaの量をAsの量よりも多くすることができる。
これらの方法は、それぞれ単独で行なわれてもよく、またそれぞれ組合せて行なわれてもよい。
また、これらの第1〜第3の方法は後述する実施の形態3(図2)および実施の形態5(図4)においても適用できる。
以下、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、GaAs原料4の融液中のGaの量をAsの量よりも多い状態でその融液の固化が完了する。このため、GaAs結晶の成長完了後には、酸化ホウ素5と接する部分におけるGaAs結晶中では、Asの量に対してGaの量が極端に多くなり、液体状のGaが析出した状態となっている。このような場合、結晶成長後の冷却過程で酸化ホウ素5がGaAs結晶後端に固着したまま収縮しても、Gaが析出してもろくなった最後端部のみが剥離し、GaAs結晶本体がへき開破壊することがないことを本発明者は見出した。これにより、GaAs原料4の融液中のGaの量をAsの量より多くなるように調整することで、るつぼ1内に酸化ホウ素5を充填した場合にも、GaAs結晶にへき開破壊が生じることを防止することが可能となる。
また、Asサイトを占有したカーボン(CAS)は、GaAs結晶の半絶縁性化にとって有効なアクセプタである。カーボンはGaAs結晶中に入っているだけではアクセプタにならず、Asサイトを占有してCASとなって初めてアクセプタとして働く。また、GaAs原料4の融液中に最初から含まれているカーボンの濃度は結晶成長の後半(つまりテールエンド側)で低下する。本発明者は、GaAs原料4の融液中のGaの量をAsの量よりも多い状態でその融液の固化を完了させることにより、結晶成長の後半でAsサイトを占有しているカーボンの濃度(CAS濃度)が上昇することを見出した。これにより結晶成長の後半(つまりテールエンド側)では、GaAs原料4の融液中に最初から含まれているカーボンの濃度が低下するものの、Asサイトを占有しているカーボン(CAS)の比率が上昇するため、結晶成長の前半(つまりシードエンド側)から後半(つまりテールエンド側)にかけて、Asサイトを占有しているカーボンの濃度(CAS濃度)をより均一にすることが可能となる。
なお、酸化ホウ素5はGaAs原料4中の不純物をゲッタリング除去する効果を有し、不純物の除去に対して充分な効果が得られることがわかった。さらに、SiOガスなどの外部から侵入する不純物ガスに対して、融液上面の酸化ホウ素5が特に有効である。
(実施の形態2)
上述した実施の形態1においては、GaAs原料4中にカーボンを予めに添加した場合について説明したが、これ以外の方法によりGaAs結晶中にカーボンが添加されてもよい。
本実施の形態においては、図1を参照して、石英製アンプル7内に酸化炭素ガス(COガス、CO2ガスなど)を封入することで、GaAs結晶中にカーボンが添加される。この石英製アンプル7内の酸化炭素ガスの室温25℃における圧力は13.3Pa(0.1Torr)以上13332Pa(100Torr)以下であることが好ましく、66.7Pa(0.5Torr)以上8000Pa(60Torr)以下であることがより好ましく、133.3Pa(1Torr)以上4000Pa(30Torr)以下であることがさらに好ましい。
本実施の形態においては、GaAs原料4中にカーボンを予め添加する必要はないが、必要に応じてGaAs原料4中にカーボンが予め添加されていてもよい。
なお、本実施の形態の上記以外の方法については上述した実施の形態1の方法とほぼ同じであるため、その説明を省略する。
(実施の形態3)
図2は、本発明の実施の形態3におけるカーボン添加GaAs単結晶の製造方法の一例を説明するための図である。図2を参照して、本実施の形態の製造方法は、上述した実施の形態1の製造方法と比較して、GaAs融液にカーボンを添加するために固体カーボン6がるつぼ1内に充填されている点において異なる。固体カーボン6としては、たとえばグラファイト粉末を用いることができる。
このるつぼ1内に充填される固体カーボン6の量は、成長後のGaAs単結晶に添加すべきカーボンの総量よりも多いことが好ましい。これは、固体カーボン6の反応速度が非常に遅いため、過剰な量のカーボンを用いて反応を促進する必要があるからである。また、カーボン化合物のガス発生により、固体カーボン6の一部が消費されてしまうため、その分を補う必要があるからである。
なお、本実施の形態の上記以外の構成および方法については上述した実施の形態1の構成および方法とほぼ同じであるため、同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態4)
図3は、本発明の実施の形態4におけるカーボン添加GaAs単結晶の製造方法の一例を説明するための図である。図3を参照して、本実施の形態の製造方法は、上述した実施の形態1の製造方法と比較して、るつぼ1を石英製アンプル7内に密封せずに、そのまま圧力チャンバー10内に配置している点において異なる。このため、るつぼ1が圧力チャンバー10内の雰囲気に晒されることになる。
本実施の形態のように石英製アンプル7を用いない場合においても、実施の形態1の第1および第2の方法と同様にして、GaAs原料4の融液中のGaの量をAsの量よりも多くすることができる。
また第3の方法を用いる場合には、GaAs原料4の加熱溶融時にGaAs原料4中からAsを揮発させるために、圧力チャンバー10内を一度GaAs融液の平衡蒸気圧よりも圧力を減じた状態にしてAsを揮発させ、GaAs原料4をGa過剰に調整した後、再度圧力チャンバー10内をGaAs融液の平衡蒸気圧よりも高い圧力にした後、GaAs原料4を種結晶3側から凝固させて、単結晶を成長する。
なお、本実施の形態の上記以外の構成および方法については上述した実施の形態1の構成および方法とほぼ同じであるため、同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態5)
図4は、本発明の実施の形態5におけるカーボン添加GaAs単結晶の製造方法の一例を説明するための図である。図4を参照して、本実施の形態の製造方法は、上述した実施の形態1の製造方法と比較して、GaAs融液にカーボンを添加するために固体カーボン6がるつぼ1の外部に配置されている点において異なる。この固体カーボン6は、カーボン受け具1aによりるつぼ1に支持されている。
このように固体カーボン6をるつぼ1の外部に配置した場合、GaAs原料4の融液には以下のようにカーボンが添加される。
GaAs原料4の加熱溶融時には、るつぼ1内で酸化ホウ素5が蒸発することにより酸化ホウ素5に起因したガス状物質(水蒸気、酸化物のガス)が生じる。このガス状物質が固体カーボン6と反応して酸化炭素ガス(主に一酸化炭素ガス)が発生する。一酸化炭素ガスが生じる化学反応は、以下のようになっているものと思われる。
C+H2O→CO+H2
3C+B23→3CO+2B
これにより生じた酸化炭素ガスからGaAs原料4の融液にカーボンが供給されて、カーボンが添加されたGaAs単結晶が得られる。
なお、本実施の形態の上記以外の構成および方法については上述した実施の形態1の構成および方法とほぼ同じであるため、同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態6)
図5は、本発明の実施の形態6におけるカーボン添加GaAs単結晶の製造方法の一例を説明するための図である。図5を参照して、本実施の形態の製造方法は、上述した実施の形態1の製造方法と比較して、石英製アンプル7が下方に伸びるリザーバー12を有し、そのリザーバー12の最下部に固体ヒ素11が配置されている点において異なる。リザーバー12を加熱するために、リザーバー12の外周部にリザーバー加熱用ヒータ13が配置されている。
なお、本実施の形態の上記以外の構成および方法については上述した実施の形態1の構成および方法とほぼ同じであるため、同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態のようにリザーバー12を持つ石英製アンプル7を用いる場合、GaAs原料の融液中のGaの量をAsの量よりも多くするためには、たとえば以下のような具体的な方法がある。
まず第1の方法は、予備合成されたGaAs多結晶よりなるGaAs原料4に加えてガリウムを含む原料を充填することによって、Gaを過剰にする方法である。
また第2の方法は、るつぼ1内に充填する前のGaAs原料4として、Gaの量がAsの量よりも多くなるようにGaを過剰に予備合成した多結晶を準備する方法である。
また第3の方法は、リザーバー12の温度を下げて石英製アンプル7内のヒ素圧を、GaAs融液の平衡蒸気圧よりも低くして、GaAs融液からヒ素を分解・揮発させて、GaAs原料4の融液中のGaの量をAsの量よりも多くした状態でその融液の固化を完了させる方法である。この場合、リザーバー12の温度を低くするほど、GaAs融液から分解・揮発するAsの量が増加するため、リザーバー12の温度を調整することによって、GaAs原料融液中のGa過剰の度合いを調整することができる。また、るつぼ1内の酸化ホウ素5はGaAs原料4の融液の表面全面を覆っていることが好ましい。これにより、GaAs原料4の融液から揮発したAsがその融液中に逆戻りすることを防止することができる。このため、GaAs結晶の最テールまで確実に、Gaの量をAsの量よりも多くすることができる。
これらの方法は、それぞれ単独で行なわれてもよく、またそれぞれ組合せて行なわれてもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、図1に示すpBN製のるつぼ1内に、方位<100>のGaAs種結晶3と、25×1015atms・cm-3の濃度でカーボンを添加された20kgのGaAs原料4と、水分含有量100質量ppmの100gの酸化ホウ素5とを入れる。石英製アンプル7内にAsの蒸気圧を与えるための固体ヒ素は使用しない(石英製アンプル7内の空間に満たすために必要なAsは全て予備合成されたGaAs原料から供給され、原料融液はGa過剰になる)。この状態で、るつぼ1を石英製アンプル7内に気密封止する。この石英製アンプル7を支持台8上に載せ、チャンバー内に設けられたヒータ9内に設置し、種結晶3側の温度が低くなるように温度プロファイルを調整しながら、ヒータ9の温度を上昇させ、GaAs原料4と種結晶3上部とを融解する。
その後、ヒータ9の温度プロファイルを調整して種結晶3側から温度を降下させていき、GaAs原料4全体を固化させてカーボン添加GaAs単結晶を成長させる。そして室温まで温度を降下させた後、石英製アンプル7を切断開放して、るつぼ1からGaAs単結晶を分離する。
このようにして得られるGaAs結晶については、GaAs結晶の成長後に冷却する過程で、酸化ホウ素がGaAs結晶後端に固着したまま収縮して、GaAs単結晶にへき開破壊が生じるという問題は生じない。
また、このようにして得られるGaAs結晶中のC濃度をCPAA(Charged Particle Activation Analysis)法で測定すると、図9に示す結晶の肩部からテール部に向かってC濃度が下がっていることがわかる。これに対して、FTIR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)法で測定されるCAS濃度のテール部側での低下は、CPAA法で得られるC濃度の低下よりも小さく、結晶の長さ方向におけるCAS濃度の良好な均一性が得られる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、カーボンが添加されたヒ化ガリウム結晶の製造方法に特に有利に適用され得る。
本発明の実施の形態1におけるカーボン添加GaAs単結晶の製造方法の一例を説明するための図である。 本発明の実施の形態3におけるカーボン添加GaAs単結晶の製造方法の一例を説明するための図である。 本発明の実施の形態4におけるカーボン添加GaAs単結晶の製造方法の一例を説明するための図である。 本発明の実施の形態5におけるカーボン添加GaAs単結晶の製造方法の一例を説明するための図である。 本発明の実施の形態6におけるカーボン添加GaAs単結晶の製造方法の一例を説明するための図である。 非特許文献1に開示されたカーボン添加GaAs単結晶の製造方法を説明するための図である。 非特許文献2に開示されたカーボン添加GaAs単結晶の製造方法を説明するための図である。 非特許文献3に開示されたカーボン添加GaAs単結晶の製造方法を説明するための図である。 結晶の各部位を説明するための図である。
符号の説明
1 るつぼ、1a カーボン受け具、2 蓋、2a 開口部、3 種結晶、4 GaAs原料、5 酸化ホウ素、6 固体カーボン、7 石英製アンプル、8 支持台、9 ヒータ、10 圧力チャンバー、11 固体ヒ素、12 リザーバー、13 リザーバー加熱用ヒータ。

Claims (12)

  1. カーボンが添加されたヒ化ガリウム結晶の製造方法であって、
    るつぼ内に、予備合成されたヒ化ガリウム原料と酸化ホウ素とを充填するステップと、
    前記るつぼ内の前記ヒ化ガリウム原料を加熱溶融するステップと、
    前記ヒ化ガリウム原料の融液中のガリウムの量をヒ素の量よりも多くした状態で前記融液の固化を完了して、カーボンが添加されたヒ化ガリウム結晶を成長するステップとを備える、ヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  2. 前記ヒ化ガリウム原料は前記るつぼ内に充填される前にガリウムの量がヒ素の量よりも多くなるように準備されることを特徴とする、請求項1に記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  3. 前記るつぼ内には前記ヒ化ガリウム原料以外にガリウムを含む原料が充填されることを特徴とする、請求項1または2に記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  4. 前記ヒ化ガリウム原料を加熱溶融する前に、前記ヒ化ガリウム原料を充填された前記るつぼを、ガス不透過性材料からなる気密性容器内に密封する工程をさらに備えたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  5. 前記ヒ化ガリウム原料を加熱溶融する前に前記気密性容器内に酸化炭素ガスが予め封入されていることを特徴とする、請求項4に記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  6. 前記ヒ化ガリウム原料を加熱溶融する前に前記気密性容器内に予め封入されている前記酸化炭素ガスの圧力は、室温25℃において13.3Pa以上13332Pa以下であることを特徴とする、請求項5に記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  7. 前記ヒ化ガリウム原料を加熱溶融する前記ステップは、前記るつぼを他の容器内に密封せずにチャンバー内に配置して行なわれ、かつ前記チャンバー内をヒ化ガリウム融液の平衡蒸気圧よりも圧力を減じた状態で行なわれるステップを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  8. 前記ヒ化ガリウム原料には前記るつぼ内に充填される前に予めカーボンが添加されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  9. 前記るつぼ内に充填される前の前記ヒ化ガリウム原料の平均カーボン濃度は、0.5×1015atms・cm-3以上30×1015atms・cm-3以下であることを特徴とする、請求項8に記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  10. 前記るつぼ内には前記ヒ化ガリウム原料以外に固体カーボンが充填されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  11. 前記るつぼ外であって前記ヒ化ガリウム原料を加熱溶融する際に前記ヒ化ガリウム原料と流体連絡可能な位置に固体カーボンが配置されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
  12. 前記るつぼはpBNからなることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のヒ化ガリウム結晶の製造方法。
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WO2019053856A1 (ja) * 2017-09-14 2019-03-21 住友電気工業株式会社 ヒ化ガリウム系化合物半導体結晶およびウエハ群
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