(発明の要旨)
本発明は、新規のHER−2sv核酸分子およびコードされるポリペプチドに関する。
本発明は、以下を含む単離された核酸分子を提供する:
(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、または配列番号9のいずれかに記載のヌクレオチド配列;
(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
(c)少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、(a)または(b)のいずれかのヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかにに記載のポリペプチドの活性を有する、ヌクレオチド配列;または
(d)(a)〜(c)のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列。
本発明はまた、以下を含む単離された核酸分子を提供する:
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドに対して、少なくとも約70%同一であるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、コードされるポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のコードされるポリペプチドの活性を有する、ヌクレオチド配列;
(b)少なくとも約25アミノ酸残基のポリペプチドフラグメントをコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、または配列番号9のいずれかに記載のヌクレオチド配列の領域であって、ここでこのポリペプチドフラグメントは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有するか、または抗原性であるヌクレオチド配列の領域;
(c)配列番号2の残基261〜残基262を含む、少なくとも約25アミノ酸残基のポリペプチドフラグメントをコードする、配列番号1に記載のヌクレオチド配列の領域であって、このポリペプチドフラグメントは、配列番号2に記載のポリペプチドの活性を有するか、または抗原性であるヌクレオチド配列の領域;
(d)配列番号4の残基383〜残基384を含む、少なくとも約25アミノ酸残基のポリペプチドフラグメントをコードする、配列番号3に記載のヌクレオチド配列の領域であって、このポリペプチドフラグメントは、配列番号4に記載のポリペプチドの活性を有するか、または抗原性であるヌクレオチド配列の領域;
(e)配列番号6の残基384〜残基422を含む、少なくとも約25アミノ酸残基のポリペプチドフラグメントをコードする、配列番号5に記載のヌクレオチド配列の領域であって、このポリペプチドフラグメントは、配列番号6に記載のポリペプチドの活性を有するか、または抗原性であるヌクレオチド配列の領域;
(f)配列番号10の残基580〜残基613を含む、少なくとも約25アミノ酸残基のポリペプチドフラグメントをコードする、配列番号9に記載のヌクレオチド配列の領域であって、このポリペプチドフラグメントは、配列番号10に記載のポリペプチドの活性を有するか、または抗原性であるヌクレオチド配列の領域;
(g)少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、(a)〜(f)のいずれかのヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有する、ヌクレオチド配列;または
(h)(a)〜(g)のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列。
本発明はさらに、以下を含む単離された核酸分子を提供する:
(a)少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有する、ヌクレオチド配列;
(b)C末端および/またはN末端の短縮を有する、配列番号2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号2に記載のポリペプチドの活性を有し、ここでポリペプチドは、配列番号2の残基261〜残基262を含む、ヌクレオチド配列;
(c)C末端および/またはN末端の短縮を有する、配列番号4に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号4に記載のポリペプチドの活性を有し、ここでポリペプチドは、配列番号4の残基383〜残基384を含む、ヌクレオチド配列;
(d)C末端および/またはN末端の短縮を有する、配列番号6に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号6に記載のポリペプチドの活性を有有し、ここでポリペプチドは、配列番号6の残基384〜残基422を含む、ヌクレオチド配列;
(e)C末端および/またはN末端の短縮を有する、配列番号10に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号10に記載のポリペプチドの活性を有し、ここでポリペプチドは、配列番号10の残基580〜残基613を含む、ヌクレオチド配列;
(e)アミノ酸置換、C末端およびN末端の短縮の少なくとも1つの改変を有する、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここでこのコードされるポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有し、このポリペプチドは配列番号2の残基261〜残基262、配列番号4の残基383〜残基384、配列番号6の残基384〜残基422、または配列番号10の残基580〜残基613を含む、ヌクレオチド配列;
(f)少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、(a)〜(e)のいずれかに記載のヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列であって、ここでコードされるポリペプチドは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有する、ヌクレオチド配列;または
(g)(a)〜(f)のいずれかのヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列。
本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸を含む単離されたポリペプチドを提供する。
本発明はまた、以下を含む単離されたポリペプチドを提供する:
(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかのオルソログ(ortholog)についてのアミノ酸配列;
(b)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかのアミノ酸配列に対して少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列;
(c)配列番号2の残基261〜残基262を含む、少なくとも約25アミノ酸残基を含む配列番号2に記載のアミノ酸配列のフラグメントであって、このポリペプチドフラグメントは、配列番号2に記載のポリペプチドの活性を有するか、または抗原性であるアミノ酸配列フラグメント;
(d)配列番号4の残基383〜残基384を含む、少なくとも約25アミノ酸残基を含む配列番号4に記載のアミノ酸配列のフラグメントであって、このポリペプチドフラグメントは、配列番号4に記載のポリペプチドの活性を有するか、または抗原性であるアミノ酸配列フラグメント;
(e)配列番号6の残基384〜残基422を含む、少なくとも約25アミノ酸残基を含む配列番号6に記載のアミノ酸配列のフラグメントであって、このポリペプチドフラグメントは、配列番号6に記載のポリペプチドの活性を有するか、または抗原性であるアミノ酸配列フラグメント;
(f)配列番号10の残基580〜残基613を含む、少なくとも約25アミノ酸残基を含む配列番号10に記載のアミノ酸配列のフラグメントであって、このポリペプチドフラグメントは、配列番号10に記載のポリペプチドの活性を有するか、または抗原性であるアミノ酸配列フラグメント。
本発明はまた、以下を含む単離されたポリペプチドを提供する:
(a)少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列であって、ここでポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有する、アミノ酸配列;
(b)C末端および/またはN末端の短縮を有する、配列番号2に記載のアミノ酸配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号2に記載のポリペプチドの活性を有し、ここでポリペプチドは、配列番号2の残基261〜残基262を含む、アミノ酸配列;
(c)C末端および/またはN末端の短縮を有する、配列番号4に記載のアミノ酸配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号4に記載のポリペプチドの活性を有し、ここでポリペプチドは、配列番号4の残基383〜残基384を含む、アミノ酸配列;
(d)C末端および/またはN末端の短縮を有する、配列番号6に記載のアミノ酸配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号6に記載のポリペプチドの活性を有有し、ここでポリペプチドは、配列番号6の残基384〜残基422を含む、アミノ酸配列;
(e)C末端および/またはN末端の短縮を有する、配列番号10に記載のアミノ酸配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号10に記載のポリペプチドの活性を有し、ここでポリペプチドは、配列番号10の残基580〜残基613を含む、アミノ酸配列;または
(f)アミノ酸置換、C末端短縮およびN末端短縮の少なくとも1つの改変を有する、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列であって、ここでコードされるポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有し、このポリペプチドは配列番号2の残基261〜残基262、配列番号4の残基383〜残基384、配列番号6の残基384〜残基422、または配列番号10の残基580〜残基613を含む、アミノ酸配列。
また、HER−2svアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドも提供される。
本発明はまた、本明細書中に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター、本明細書中に記載の組換え核酸分子を含む組換え宿主細胞、およびこの宿主細胞を培養する工程、および必要に応じてそのようにして産生されたポリペプチドを単離する工程を包含する、HER−2svポリペプチドを産生する方法を提供する。発現したポリペプチドの単離を、必要に応じてとして記載したのは、HER−2sv活性のアンタゴニストの同定のためのスクリーニング方法を使用するために細胞表面または細胞膜上でポリペプチドを発現することが望ましい場合があり得るからである。
HER−2svポリペプチドをコードする核酸分子を含むトランスジェニック非ヒト動物もまた、本発明によって包含される。HER−2sv核酸分子は、HER−2svポリペプチドの発現およびレベルの増加(これは、循環レベルの増加を含み得る)を可能にする様式で、動物中に導入される。あるいは、HER−2sv核酸分子は、内因性のHER−2svポリペプチドの発現を防ぐ様式で動物に導入される(すなわち、HER2−svポリペプチド遺伝子のノックアウトを有するトランスジェニック動物を作製する)。トランスジェニック非ヒト動物は、好ましくは哺乳動物であり、さらに好ましくは、ラットまたはマウスといったげっ歯類である。
また、本発明のHER−2svポリペプチドの誘導体が提供される。
さらに、本発明のHER−2svポリペプチドを特異的に結合し得る選択的結合因子(例えば、抗体およびペプチド)が提供される。
本発明のヌクレオチド、ポリペプチドまたは選択的結合因子、および1以上の薬学的に受容可能な処方剤を含む薬学的組成物もまた、本発明によって包含される。この薬学的組成物は、治療的有効量の本発明のヌクレオチドまたはポリペプチドを提供するように使用される。本発明はまた、このポリペプチド、核酸分子、および選択的結合因子を使用する方法に関する。
本発明のHER−2svポリペプチドおよび核酸分子は、本明細書中に列挙された疾患および障害を含む疾患および障害を処置、予防、改善、診断、および/または検出するために使用され得る。
本発明はまた、HER−2svポリペプチドに結合する試験分子を同定するために試験分子をアッセイする方法を提供する。この方法は、ポリペプチドへの試験分子の結合程度を決定するために、HER−2svポリペプチドを試験分子と接触させる工程を包含する。この方法はさらに、このような試験分子が、HER−2svポリペプチドのアンタゴニストであるか否かを決定する工程を包含する。本発明はさらに、HER−2svポリペプチドの発現に対する分子の影響、またはHER−2svポリペプチドの活性に対する分子の影響を試験する方法を提供する。
HER−2svポリペプチドの発現を調節する方法およびレベルを調整(すなわち、増加または減少)する方法もまた、本発明によって包含される。1つの方法は、HER−2svポリペプチドをコードする核酸分子を動物に投与する工程を包含する。別の方法は、HER−2svポリペプチドの発現を調節または調整するエレメントを含む核酸分子が投与され得る。これらの方法の例としては、本明細書中にさらに記載されるような、遺伝子治療、細胞療法、およびアンチセンス療法が挙げられる。
(発明の詳細な説明)
本明細書中で使用される節の見出しは、構成上の目的のためのみであり、そしてそこに記載される内容を限定するように解釈されるべきではない。本願において列挙される全ての参考文献が、明確に、本明細書中に参考として援用される。
(1.定義)
用語「HER−2sv遺伝子」もしくは「HER−2sv核酸分子」または「HER−2svポリヌクレオチド」は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、または配列番号9のいずれかに記載のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる核酸分子;配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;および本明細書中で定義される核酸分子をいう。
用語「HER−2svポリペプチド対立遺伝子改変体」は、生物体または生物体の集団の染色体上の所定の遺伝子座に存在する遺伝子のいくつかの可能な天然に存在する代替的形態の1つをいう。
用語「単離された核酸分子」とは、(1)総DNAが供給源細胞から単離される場合に、これが天然で一緒に見出されるタンパク質、脂質、炭水化物、または他の物質の少なくとも約50パーセントから分離された本発明の核酸分子、(2)「単離された核酸分子」が天然で連結しているポリヌクレオチドの全てまたは一部に連結していない本発明の核酸分子、(3)天然では連結しないポリヌクレオチドに作動可能に連結した本発明の核酸分子、または(4)より大きなポリヌクレオチド配列の一部として天然には存在しない、本発明の核酸分子をいう。好ましくは、本発明の単離された核酸分子は、任意の他の夾雑核酸分子、またはその天然の環境において見出される他の夾雑物(これらは、ポリペプチド産生におけるその用途、またはその治療的用途、診断的用途、予防的用途、または研究的用途を阻害する)を実質的に含まない。
「核酸配列」または「核酸分子」は、本明細書中で使用される場合、DNAまたはRNA配列をいう。この用語は、例えば、以下であるがこれらに限定されない、DNAおよびRNAの公知の塩基アナログのいずれかから形成される分子を含む:4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニル−シトシン、プソイドイソシトシン(pseudoisocytosine)、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシ−メチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソ−ペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチル−グアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−エチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボニル−メチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリン。
用語「ベクター」は、宿主細胞にコード情報を移入するために使用される任意の分子(例えば、核酸、プラスミド、またはウイルス)をいうために使用される。
用語「発現ベクター」は、宿主細胞の形質転換に適切であり、そして挿入された異種核酸配列の発現を、指向および/または制御する核酸配列を含むベクターをいう。発現としては、転写、翻訳、およびRNAスプライシング(イントロンが存在する場合)のようなプロセスが挙げられるがこれらに限定されない。
用語「作動可能に連結された」は、本明細書中で、隣接配列の配置をいうために使用され、ここで、このように記載される隣接配列は、その通常の機能を行うように構成またはアセンブルされる。従って、コード配列に作動可能に連結された隣接配列は、このコード配列の複製、転写および/または翻訳を行うことを可能にし得る。例えば、コード配列は、このプロモーターがコード配列の転写を指示し得る場合に、プロモーターに作動可能に連結される。隣接配列は、これが正確に機能する限り、コード配列と連続する必要はない。したがって、例えば、介在する翻訳されないが転写される配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、そしてこのプロモーター配列は、なおこのコード配列に「作動可能に連結」されているとみなされ得る。
用語「宿主細胞」は、核酸配列で形質転換されたか、または形質転換され得、次いで目的の選択された遺伝子を発現し得る細胞をいうように使用される。この用語には、選択された遺伝子が存在する限り、子孫が形態学または遺伝子構造において本来の親と同一であろうとなかろうと、親細胞の子孫を含む。
用語「HER−2svポリペプチド」は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸を含むポリペプチドポリペプチドおよび関連ポリペプチドをいう。関連ポリペプチドには、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性の少なくとも1つを有するHER−2svポリペプチドフラグメント、HER−2svオルソログ(ortholog),HER−2svポリペプチド改変体、およびHER−2sv誘導体が挙げられる。HER−2svポリペプチドは、本明細書中で記載されるように、成熟ポリペプチドであり得て、それらが調整された方法に依存して、アミノ末端メチオニン残基を有しても有さなくてもよい。
用語「HER−2svポリペプチドフラグメント」は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドのアミノ酸末端での短縮(リーダー配列を含むかまたは含まない)または/およびカルボキシ末端での短縮を含むポリペプチドをいう。用語「HER−2svポリペプチドフラグメント」はまた、HER−2svポリペプチドオルソログ、HER−2svポリペプチド誘導体、またはHER−2svポリペプチド改変体のアミノ末端での短縮および/またはカルボキシ末端での短縮、あるいはHER−2sv対立遺伝子改変体によってコードされているポリペプチドのアミノ末端での短縮および/またはカルボキシ末端での短縮をいう。HER−2svポリペプチドフラグメントは、インビボプロテアーゼ活性から生じ得る。HER−2svポリペプチドの膜結合形態もまた、本発明によって意図される。好ましい実施形態において、短縮化は、約10アミノ酸、または約20アミノ酸、または約50アミノ酸、または約75アミノ酸、または約100アミノ酸、または約100より多くのアミノ酸を含む。このように生成されるポリペプチドフラグメントは、約25個連続したアミノ酸、または約50アミノ酸、または約75アミノ酸、または約100アミノ酸、または約150アミノ酸、または約200アミノ酸、または約200より多くのアミノ酸を含む。このようなHER−2svポリペプチドフラグメントは、必要に応じて、アミノ末端メチオニン残基を含み得る。このようなフラグメントは、例えば、HER−2svポリペプチドに対する抗体を生成するために使用され得ることが理解される。
用語「HER−2svポリペプチドオルソログ」は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のHER−2svポリペプチドアミノ酸配列に対応する他の種由来のポリペプチドをいう。例えば、マウスHER−2svポリペプチとヒトHER−2svポリペプチは、互いにオルソログであると考えられる。
用語「HER−2svポリペプチド改変体」は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のHER−2svポリペプチドアミノ酸配列(リーダー配列を有するかまたは有さない)と比較して、1つ以上のアミノ酸配列の置換、欠失(例えば、内部の欠失および/またはHER−2svポリペプチドフラグメント)および/または付加(例えば、内部の付加および/またはHER−2sv融合ポリペプチド)を有するアミノ酸配列を含むHER−2svポリペプチドをいう。改変体は、天然に存在し得る(例えば、HER−2svポリペプチド対立遺伝子改変体およびHER−2svポリペプチドオルソログ)か、または、人工的に構築され得る。このようなHER−2svポリペプチド改変体は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、または配列番号9のいずれかに記載のDNA配列から変化するDNA配列を有する、対応する核酸分子から調製され得る。好ましい実施形態において、この改変体は、1〜3、または1〜5、または1〜10、または1〜15、または1〜20、または1〜25、または1〜50、または1〜75、または1〜100、または100より多くのアミノ酸の置換、を有し、ここで、この置換は、保存的、または非保存的、あるいはその任意の組み合わせであり得る。
用語「HER−2svポリペプチド誘導体」は、本明細書中で定義されたように、化学的に改変された配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10または配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、または配列番号9のいずれかに記載のポリペプチド、HER−2svポリペプチドフラグメント、HER−2svポリペプチドオルソログ)、またはHER−2svポリペプチド改変体をいう。用語「HER−2svポリペプチド誘導体」はまた、本明細書中で定義されたように、化学的に改変されるHER−2svポリペプチド対立遺伝子改変体によってコードされるポリペプチドをいう。
用語「成熟HER−2svポリペプチド」は、リーダー配列を欠いたHER−2svポリペプチドをいう。成熟HER−2svポリペプチドは、他の修飾(例えば、アミノ末端(リーダー配列を有するかまたは有さない)および/またはカルボキシ末端のタンパク分解性のプロセシング、より大きな前駆体からのより小さなポリペプチドの切断、N結合グリコシル化および/またはO結合グリコシル化など)もまた含み得る。
用語「HER−2sv融合ポリペプチド」は、本明細書中で、定義されたように、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチド、HER−2svポリペプチドフラグメント、HER−2svポリペプチドオルソログ)、またはHER−2svポリペプチド改変体、またはHER−2sv誘導体のアミノ末端またはカルボキシ末端での1つ以上のアミノ酸(例えば異種性のタンパク質またはペプチド)の融合をいう。用語「HER−2svポリペプチド融合ポリペプチド」はまた、本明細書中で定義されたように、HER−2svポリペプチド対立遺伝子改変体によってコードされるポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端での1つ以上のアミノ酸の融合をいう。
用語、「生物学的に活性なHER−2svポリペプチド」は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特徴的なの少なくとも1つの活性を有するHER−2svポリペプチドをいう。さらに、HER−2svポリペプチドは、免疫原として活性であり得る;すなわち、HER−2svポリペプチドは、抗体を惹起し得る少なくとも1つのエピトープを含む。
用語「単離されたポリペプチド」とは、(1)供給源細胞から単離される場合に、天然で一緒に見出されるポリペプチド、脂質、炭水化物、または他の物質の少なくとも約50%から単離された本発明のポリペプチド、(2)「単離されたポリペプチド」が天然で連結するポリペプチドの全てまたは一部に連結しない(共有結合的または非共有結合的相互作用によって)、本発明のポリペプチド、(3)天然には連結しないポリペプチドに作動可能に連結(共有結合的または非共有結合的相互作用によって)する、本発明のポリペプチド、または(4)天然には存在しない本発明のポリペプチドをいう。好ましくは、この単離されたポリペプチドは、任意の他の混入ポリペプチドまたは天然の環境において見出される他の混入物(これは、その治療的使用、診断的使用、予防的使用、または研究的使用に干渉する)を実質的に含まない。
用語「同一性」とは、当該分野で公知のように、配列の比較によって決定される、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の、配列間の関係をいう。当該分野において、「同一性」はまた、場合に応じて、一列の2つ以上のヌクレオチド配列間または2つ以上のアミノ酸配列間の一致によって決定されるように、核酸分子またはポリペプチド配列間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」は、2つ以上の配列のうち小さなものと、特定の数理的モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によってアドレス指定されるギャップ整列(存在する場合)との間の一致の同一パーセントを評価する。
用語「類似性」は、概念に関するが、「同一性」とは対照的に、「類似性」は、同一的一致および保存的置換の一致の両方を含む類似性の測定値をいう。2つのポリペプチド配列が、例えば10/20個同一のアミノ酸を有し、そして残りが全て非保存的置換である場合、パーセント同一性および類似性は、どちらも50%である。同じ例において、保存的置換であるさらに5つの位置が存在する場合、パーセント同一性は50%のままであるが、パーセント類似性は75%(15/20)である。したがって、保存的置換が存在する場合、2つのポリペプチド配列間のパーセント類似性は、これら2つのポリペプチド間のパーセント同一性よりも高い。
用語「天然に存在する」または「ネイティブの」は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などのような生物学的物質と関連して使用される場合、天然において見出され、そしてヒトによって操作されていない物質をいう。同様に、「天然に存在しない」または「ネイティブではない(非ネイティブ)」は、本明細書中で使用される場合、天然で見出されないか、またはヒトによって構造的に改変もしくは合成された物質をいう。
用語「有効量」および「治療有効量」は、本明細書中に示されるHER−2svポリペプチドの1つ以上の生物学的活性の観察可能なレベルを支持するために使用される、HER−2svポリペプチドまたはHER−2sv核酸分子の量をいう
本明細書において使用される用語「薬学的に受容可能なキャリア」または「生理的に受容可能なキャリア」とは、薬学的組成物としてのHER−2svポリペプチド、核酸分子または選択結合因子の送達を達成または増強するために適切な、1つ以上の処方物材料をいう。
用語「抗原」とは、選択的結合因子(例えば、抗体)により結合され得、そしてさらに動物において使用されて、その抗原のエピトープに結合し得る抗体を産生し得る分子または分子の一部をいう。抗原は、1つ以上のエピトープを有し得る。
用語「選択的結合因子」は、HER−2svポリペプチドに対して特異性を有する分子をいう。本明細書中で使用される場合、用語「特異的」および「特異性」とは、選択的結合因子の、ヒトHER−2svポリペプチドに結合し、かつヒト非HER−2svポリペプチドに結合しない能力をいう。しかし、選択的結合因子がまた、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドのHER−2svポリペプチドのオルソログ(すなわち、HER−2svポリペプチドの種間バージョン(例えば、マウスHER−2svポリペプチドおよびラットHER−2svポリペプチド))に結合し得ることが、理解される。
用語「形質導入」とは、通常はファージによる1つの細菌から別の細菌への遺伝子の伝達をいう。「形質導入」はまた、レトロウイルスによる真核生物細胞配列の獲得および伝達をいう。
用語「トランスフェクション」は、細胞による異種または外因性DNAの取り込みをいうために使用され、そして細胞は、外因性DNAが細胞膜内に導入された場合には「トランスフェクトされ」ている。多数のトランスフェクション技術は、当該分野で周知であり、そして本明細書中に開示される。例えば、Grahamら,1973,Virology 52:456;Sambrookら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratories,1989);Davisら,Basic Methods in Molecular Biology(Elsevier,1986);and Chuら,1981,Gene 13:197を参照のこと。このような技術を使用して、1つ以上の外因性DNA部分を適切な宿主細胞に導入し得る。
用語「形質転換」とは、本明細書中で使用される場合、細胞の遺伝子特性の変化をいい、そしてこの細胞が新たなDNAを含むように改変されている場合、この細胞は形質転換されている。例えば、細胞がそのネイティブの状態から遺伝子的に改変されている場合、この細胞は形質転換されている。トランスフェクションまたは形質転換の後、形質転換DNAは、細胞の染色体への物理的組込みによって、この細胞のDNAと組換えられ得るか、または複製されることなく、エピトープソームエレメントとして一過的に維持され得るか、またはプラスミドとして独立して複製し得る。DNAが細胞分裂によって複製される場合、この細胞は安定に形質転換されたとみなされる。
(2.核酸分子および/またはポリペプチドの関連性)
関連の核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、または配列番号9のいずれかに記載されている核酸分子の対立遺伝子改変体、および上のヌクレオチド配列のいずれかに相補的な配列も含むと理解される。関連の核酸分子はまた、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載されているポリペプチドと比べて、1つ以上のアミノ酸残基の置換、修飾、付加および/または欠損を主に含むかまたはそれらからなるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。このような関連したHER−2svポリペプチドは、例えば、1つ以上のN−グリコシル化またはO−グリコシル化位置の付加および/または欠損、もしくは1つ以上のシステイン残基の付加および/または欠損を含み得る。
関連の核酸分子はまた、HER−2sv核酸分子のフラグメントを含み、このフラグメントは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載されているHER−2svポリペプチドの少なくとも約25個の連続しアミノ酸、または約50個のアミノ酸、または約75個のアミノ酸、または約100個のアミノ酸、または約150個のアミノ酸、または約200個のアミノ酸、または200個より多くのアミノ酸のポリペプチドをコードする。
さらに、関連のHER−2sv核酸分子はまた、本明細書中に規定される中程度または高度にストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、または配列番号9のいずれかに記載されているHER−2sv核酸分子;または配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかで示されているアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする分子;あるいは本明細書中で定義される核酸フラグメント、または本明細書中で定義されるポリペプチドをコードする核酸フラグメントの、完全相補配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む分子を含む。ハイブリダイゼーションプローブは、本明細書中に提供されるHER−2sv配列を用いて、関連配列に関してcDNAライブラリ、ゲノムライブラリまたは合成DNAライブラリースクリーニングして調製され得る。既知配列に対して顕著な同一性を示すHER−2svポリペプチドのDNA配列および/またはアミノ酸配列の領域は、本明細書中に記載されるような配列アラインメントアルゴリズムを用いて容易に決定され、そしてこれらの領域を用いて、スクリーニングのためのプローブが設計され得る。
用語「高度にストリンジェントな条件」とは、配列が非常に相補的であるDNA鎖のハイブリダイゼーションを許容し、かつ顕著に不一致のDNAのハイブリダイゼーションを排除するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、温度、イオン強度および変性剤(例えば、ホルムアミド)の濃度によって主に決定される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄についての「高度にストリンジェントな条件」の例は、65〜68℃での0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムまたは42℃での0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび50%ホルムアミドである。Sambrook,FritschおよびManiatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,1989);Andersonら,Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach第4章(IRL Press Limited)を参照のこと。
よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミドまたは他の変性剤)もまた用いられ得るが、ハイブリダイゼーションの速度が影響される。他の薬剤は、非特異的および/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少させる目的のために、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液中に含まれ得る。例は、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、NaDodSO4、(SDS)、フィコール(ficoll)、デンハルト溶液、超音波処理サケ精子DNA(または別の非相補的DNA)およびデキストラン硫酸であるが、他の適切な薬剤もまた用いられ得る。これらの添加剤の濃度および種類は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は通常、pH6.8〜7.4で実施される;しかし、代表的なイオン強度の条件では、ハイブリダイゼーションの速度は、pHからほぼ独立する。Andersonら,Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach第4章(IRL Press Limited)を参照のこと。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基組成、長さおよび塩基対の不一致程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、これらの変動要因を適応させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にするために当業者によって調整され得る。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の方程式によって評価され得る:
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中でのナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中での(グアニン+シトシン)塩基の百分率である。不完全に一致したハイブリッドについては、融解温度は、1%の不一致毎に約1℃下げられる。
用語「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が形成され得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、50〜65℃での0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムまたは37〜50℃での0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび20%ホルムアミドである。例示として、0.015Mナトリウムイオン中での50℃という「中程度にストリンジェントな条件」は、約21%の不一致を可能にする。
「高度にストリンジェントな条件」と「中程度にストリンジェントな条件」との間に絶対的な区別が存在しないことが当業者によって認識される。例えば、0.015Mナトリウムイオン(ホルムアミドなし)では、完全に一致した長さのDNAの融解温度は、約71℃である。65℃で(同じイオン強度で)の洗浄を用いると、このことは、約6%の不一致を可能にする。より遠く関連した配列を捕獲するために、当業者は、単純に、温度を低くし得るかまたはイオン強度を高くし得る。
約20ntまでのオリゴヌクレオチドプローブについての1M NaCl*中での融解温度の良好な評価は、以下によって与えられる:
Tm=A−T塩基対あたり2℃ + G−C塩基対あたり4℃
*6×塩クエン酸ナトリウム(SSC)中でのナトリウムイオン濃度は、1Mである。Suggsら,Developmental Biology Using Purified Genes 683(BrownおよびFox編,1981)を参照のこと。
オリゴヌクレオチドについての高度ストリンジェンシー洗浄条件は通常、6×SSC、0.1% SDS中でのそのオリゴヌクレオチドのTmよりも0℃〜5℃低い温度においてである。
別の実施形態において、関連する核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、または配列番号9のいずれかで示されているヌクレオチド配列に少なくとも約70%同一であるヌクレオチド配列を含むか、もしくはこれらからなる。好ましい実施形態において、ヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、または配列番号9のいずれかで示されているヌクレオチド配列に約75%、もしくは約80%、もしくは約85%、もしくは約90%、もしくは約95、96、97、98、または99%同一である。関連する核酸分子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載されるポリペプチドの少なくとも1つの活性を有するポリペプチドをコードする。
核酸配列における違いは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかのアミノ酸配列に関して、アミノ酸配列の保存的または/および非保存的修飾を生じ得る。
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかのアミノ酸配列への保存的な修飾(およびコードヌクレオチドへの対応する修飾)は、HER−2svポリペプチドに類似した機能および化学的特徴を有するポリペプチドを生成する。対照的に、HER−2svポリペプチドの機能的特徴および/または化学的特長における実質的な修飾は、(a)置換領域内での分子の骨格構造(例えば、シート高次構造またはらせん状の高次構造)(b)標的部位における分子の電荷はまた疎水性、もしくは(c)側鎖のバルク、の維持における効果が有意に異なる、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかのアミノ酸配列における置換を選択することにより達成し得る。
例えば、「保存的なアミノ酸置換」は、結果として、その位置でのアミノ酸残基の極性または電荷においてほとんど、もしくは全く影響がない、非天然残基での天然のアミノ酸残基の置換を含み得る。さらに、ポリペプチドにおける任意の天然の残基はまた、以前に「アラニン走査突然変異」として記載されているように、アラニンで置換され得る。
保存的なアミノ酸置換はまた、代表的には、生物学的系での合成よりも化学ペプチド合成によって組み入れられている天然に存在しないアミノ酸残基を包含する。これらには、ペプチド擬態および他のアミノ酸部分の逆転形態または反転形態が挙げられる。
天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて、複数のクラスに分割され得る:
1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
3)酸性:Asp、Glu;
4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;および
6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
例えば、非保存的な置換には、他のクラス由来のメンバーに対するこれらクラスの1つのメンバーの交換が挙げられ得る。このような置換残基は、非ヒトHER−2svポリペプチドと相同なヒトHER−2svポリペプチド領域へ、もしくはその分子の非相同性領域へと導入され得る。
このような変化を行う際に、アミノ酸のヒドロパシー指数が考慮され得る。各アミノ酸は、その疎水性および電荷特性に基づいて、ヒドロパシー指数を割り当てられている。ヒドロパシー指数は、以下である:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)。
タンパク質に対する相互作用的な生物学的機能を確認する際の、ヒドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当該分野において一般的に理解されている(Kyteら、1982,J.Mol.Biol.157:105−31)。特定のアミノ酸が類似のヒドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸と置換され得、そして依然として類似の生物学的活性を維持し得ることが、公知である。ヒドロパシー指数に基づいて変化を起こす際に、ヒドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、そして±0.5以内であるものが、なおより特に好ましい。
類似のアミノ酸の置換が親水性に基づいて効果的になされ得る(特に、これによって作製された生物学的機能的に等価なタンパク質またはペプチドが、この場合においてと同様に、免疫学的実施形態における使用に関して考慮される場合)こともまた、当該分野において理解されている。近接するアミノ酸の親水性により支配されるように、タンパク質の最も大きな局所的な平均親水性は、免疫原性および抗原性(すなわち、タンパク質の生物学的特徴に)に関する。
以下の親水性の値が、これらのアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。類似の親水性の値に基づいて変化を行う際に、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、そして±0.5以内であるものが、なおより特に好ましい。一次アミノ酸配列から、エピトープをまた、親水性に基づいて同定し得る。これらの領域はまた、「エピトープコア領域」と呼ばれる。
所望のアミノ酸置換(保存的であれ非保存的であれ)は、当業者によって、このような置換が所望される時点で決定され得る。例えば、アミノ酸置換を使用して、HER−2svポリペプチドの重要な残基を同定し得るか、または本明細書中に記載されるHER−2svポリペプチドの親和性を増加もしくは減少させ得る。例示的なアミノ酸置換が表Iで記載されている。
(表I)
(アミノ酸置換)
当業者は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの適切な改変体を、周知の技術を使用して決定し得る。生物学的活性を破壊することなく変化され得る適切な分子領域の同定のために、当業者は、活性のために重要であるとは考えられていない領域を標的とし得る。例えば、同じ種由来かまたは他の種由来の、類似の活性を有する類似のポリペプチドが既知である場合には、当業者は、HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列を、このような類似のポリペプチドと比較し得る。このような比較を用いて、類似のポリペプチド間で保存される分子の残基および部分を同定し得る。このような類似のポリペプチドに対して保存されていない、HER−2svポリペプチドの領域における変化が、HER−2svポリペプチドの生物学的活性および/または構造にさほど不利に影響を与えるようではないことが理解される。当業者にはまた、比較的保存された領域においてさえ、化学的に類似のアミノ酸を、活性を維持しながら天然に存在する残基と置換し得ることが公知である(保存的アミノ酸残基置換)。従って、生物学的活性または構造のために重要であり得る領域でさえ、生物学的活性を破壊することなく、またはポリペプチド構造に不利に影響を与えることなく、保存的アミノ酸置換に供され得る。
さらに、当業者は、活性または構造に重要である、類似のポリペプチドにおける残基を同定する、構造−機能研究を再調査し得る。このような比較の観点において、類似のポリペプチドにおける活性または構造のために重要なアミノ酸残基に対応するHER−2svポリペプチドにおける、アミノ酸残基の重要性を予測し得る。当業者は、HER−2svポリペプチドのこのような予測された重要なアミノ酸残基に対する化学的に類似のアミノ酸置換を、選択し得る。
当業者はまた、類似のポリペプチドにおける三次元構造に関して、三次元構造およびアミノ酸配列を分析し得る。このような情報の観点において、当業者は、HER−2svポリペプチドのアミノ酸残基のアライメントを、その三次元構造に関して予測し得る。当業者は、そのタンパク質の表面に存在すると予測されるアミノ酸残基に対する急激な変化を起こさないように選択し得る。なぜなら、このような残基は、他の分子との重要な相互作用に関与し得るからである。さらに、当業者は、単一のアミノ酸置換を各アミノ酸残基に含む、試験改変体を生成し得る。これらの改変体は、当業者に公知の活性アッセイを使用して、スクリーニングされ得る。このような改変体は、適切な改変体に関する情報を集めるために使用され得る。例えば、特定のアミノ酸残基に対する変化が破壊を生じるか、所望でなく減少するか、または所望でない活性であることを発見した場合には、このような変化を有する改変体は、回避される。換言すれば、このような慣用的な実験から集めた情報に基づいて、当業者は、さらなる置換が、単独でかまたは他の変異と組み合わせてかのいずれかで回避されるべきであるアミノ酸を、容易に決定し得る。
多数の科学刊行物が、二次構造の推定に充てられてきた。Moult,1996 Curr.Opin.Biotechnol.7:422−27;Chouら、1974 Biochemistry 13(2):222−45;Chouら、1974 Biochemistry 113:211−22;Chouら、1978 Adv.Enzymol.Relat.Areas Mol.Biol.47:45−48;Chouら、1978 Ann.Rev.Biochem.47:251−276;およびChouら、1979 Biophys.J.26:367−84を参照のこと。さらに、2次構造を推定するのを補助するために、コンピュータプログラムが現在利用可能である。二次構造を推定する1つの方法は、相同性モデリングに基づく。例えば、30%より大きな配列同一性または40%より大きな類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質は、しばしば、類似の構造トポロジーを有する。タンパク質構造データベース(PDB)の近年の成長は、二次構造(ポリペプチドまたはタンパク質の構造における可能な折り畳みの数を含む)の増強された推定性を提供してきた。Holmら、1999,Nucleic Acids Res.27:244−47を参照のこと。所定のポリペプチドまたはタンパク質において制限された数の折り畳みが存在すること、および一旦、決定的な数の構造が解析されると、構造推定は劇的により正確となることが、示唆されている(Brennerら、1997,Curr.Opin.Struct.Biol.7:369−76)。
二次構造を推定するさらなる方法は、「スレッディング(threading)」(Jones,1997,Curr.Opin.Struct.Biol.7:377−87;Sipplら、1996,Structure 4:15−19)、「プロフィール分析」(Bowieら、1991,Science,253:164−70;Gribskovら、1990,Methods Enzymol.183:146−59;Gribskovら、1987,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.84:4355−58)、および「evolutionary linkage」(Holmら(前出)、およびBrennerら(前出)を参照のこと)を包含する。
好ましいHER−2svポリペプチド改変体としては、グリコシル化部位の数および/または型が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列と比較して変化しているグリコシル化改変体が挙げられる。1つの実施形態において、HER−2svポリペプチド改変体は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列に比べてより多いかまたはより少ない数のN結合グリコシル化部位を含む。N結合グリコシル化部位は、配列Asn−X−SerまたはAsn−X−Thrによって特徴付けられ、ここで、Xと印されるアミノ酸残基は、プロリン以外の任意のアミノ酸残基であり得る。この配列を作製するためのアミノ酸残基の置換は、N糖鎖の付加のための潜在的な新たな部位を提供する。あるいは、この配列を排除する置換は、存在するN結合糖鎖を除去する。1つ以上のN結合グリコシル化部位(代表的に、天然に存在するグリコシル化部位)が排除され、そして1つ以上の新たなN結合部位が作製される、N結合糖鎖の再配列もまた、提供される。さらなる好ましいHER−2sv改変体としては、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列と比較して、1つ以上のシステイン残基が、欠失しているか、または別のアミノ酸(例えば、セリン)で置換されているシステイン改変体が挙げられる。システイン改変体は、HER−2svポリペプチドが、例えば不溶性の封入体の単離の後に、生物学的に活性な立体配置に再折り畳みされなければならない場合に有用である。システイン改変体は、一般に、ネイティブタンパク質より少ないシステイン残基を有し、そして代表的には同数のシステイン残基を有し、対合していないシステインから生じる相互作用を最小にする。
別の実施形態において、HER−2svポリペプチド改変体は、少なくとも1つのアミノ酸の挿入を伴う配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸であって、そのポリペプチドが配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有するアミノ酸配列または、少なくとも1つのアミノ酸の欠失を伴う配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸であって、そのポリペプチドが配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有するアミノ酸配列を含む。HER−2svポリペプチド改変体はまた、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸を含み、そのポリペプチドが、カルボキシ末端の短縮および/またはアミノ末端の短縮を有し、さらにポリペプチドが配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有するアミノ酸配列を含む。HER−2svポリペプチド改変体はさらに、少なくとも1つの改変(すなわち、アミノ酸置換、アミノ酸挿入、アミノ酸欠失、カルボキシ末端の短縮、またはアミノ末端の短縮)を伴う配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸であって、ここで、ポリペプチドが配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの活性を有するアミノ酸配列を含む。
さらなる実施形態において、HER−2svポリペプチド改変体は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態において、HER−2svポリペプチド改変体は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列と少なくとも約75%、または約80%、または約85%、または約90%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%または約99%、同一のアミノ酸配列を含む。HER−2svポリペプチド改変体は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のポリペプチドの少なくとも1つの活性を保有する。
さらに、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、もしくは配列番号10のいずれかのアミノ酸配列または他のHER−2svポリペプチドを含むポリペプチドは、ホモ二量体を形成するために相同的なポリペプチドに融合、またはヘテロ二量体を形成するために異種的なポリペプチドに融合し得る。異種性のペプチドおよびポリペプチドとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:HER−2sv融合ポリペプチドの検出および/または単離を可能にするエピトープ;膜貫通レセプタータンパク質またはそれらの一部(例えば、細胞外ドメインまたは膜貫通ドメインおよび細胞内ドメイン);リガンドまたは膜貫通レセプタータンパク質に結合するリガンドの一部;酵素または触媒的に活性な酵素の一部;オリゴマー形成を促進するポリペプチドまたはペプチド(例えば、ロイシンジッパードメイン);安定性を高めるポリペプチドまたはペプチド(例えば、免疫グロブリン定常領域);および配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは他のHER−2svポリペプチドとは異なる治療的活性を有するポリペプチド。
融合は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端、または他のHER−2svポリペプチドで作製され得る。融合は、リンカーもアダプター分子も用いない直接的であっても、リンカーもしくはアダプター分子を介してであってもよい。リンカーまたはアダプター分子は、1つ以上のアミノ酸残基であり得、代表的に、約20〜約50アミノ酸残基である。リンカーまたはアダプター分子はまた、DNA制限エンドヌクレアーゼまたはプロテアーゼに対する切断部位を用いて設計されて、融合した部分の分離を可能にし得る。一旦構築されると、融合ポリペプチドは、本明細書中に記載の方法に従って誘導体化され得ることが、理解される。
本発明のさらなる実施形態において、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、もしくは配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、または他のHER−2svポリペプチドは、ヒトIgGのFc領域の1つ以上のドメインに融合される。抗体は、抗原を結合する「Fab」として公知の可変ドメイン、ならびに相補的活性化および食作用細胞による攻撃のようなエフェクター機能に関与する、「Fc」として公知の定常ドメインの2つの機能的に独立した部分を含む。Fcは、長い血清半減期を有し、一方でFabは、短寿命である。Caponら、1989,Nature 337:525−31。治療タンパク質と一緒に構築される場合には、Fcドメインは、より長い半減期を提供し得るか、またはこのような機能(Fcレセプター結合、プロテインA結合、補体結合、およびおそらく、胎盤移入さえも)を組み込み得る(同書)。表IIは、当該分野において公知の特定のFc融合物の使用を要約する。
(表II 治療的タンパク質とのFc融合)
一例において、ヒトIgGのヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域は、当業者に公知の方法を使用して、HER−2svポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかに融合され得る。別の例において、ヒトIgGのヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域が、HER−2svポリペプチドフラグメントのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれか(例えば、HER−2svポリペプチドの予想された細胞外部分)に融合され得る。
得られるHER−2sv融合ポリペプチドは、プロテインAアフィニティーカラムの使用によって、精製され得る。Fc領域に融合したペプチドおよびタンパク質は、融合していない対応物より実質的に長いインビボでの半減期を示すことが見出された。また、Fc領域への融合は、融合ポリペプチドの二量化/多量体化を可能にする。Fc領域は、天然に存在するFc領域であり得るか、または治療品質、循環時間、もしくは減少した凝集のような特定の品質を改善するよう変更され得る。
関連する核酸分子およびポリペプチドの同一性および類似性は、公知の方法によって容易に計算される。このような方法としては、Computational Molecular Biology(A.M.Lesk,編、Oxford University Press 1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(D.W.Smith,編、Academic Press 1993);Computer Analysis of Sequence Data(Part 1,A.M.Griffin,およびH.G.Griffin,編、Humana Press 1994);G.von Heinle,Sequence Analysis in Molecular Biology(Academic Press 1987);Sequence Analysis Primer(M.Gribskov,およびJ.Devereux,編、M.Stockton Press 1991);ならびにCarilloら、1988,SIAM J.Applied Math.,48:1073に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
同一性および/または類似性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間での最大の一致を与えるために、設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公共に利用可能なコンピュータプログラムにおいて記載されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための、好ましいコンピュータプログラム方法としては、GCGプログラムパッケージ(GAP(Devereuxら、1984,Nucl.Acid.Res.12:387;Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI)を含む)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschulら、1990,J.Mol.Biol.215:403−410)が挙げられるが、これらに限定されない。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)および他の供給源(Altschulら、BLAST Manual(NCB NLM NIH,Bethesda,MD);Altschulら、1990、前出)から公に利用可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムもまた、同一性を決定するために使用され得る。
2つのアミノ酸配列を整列させるための特定のアライメントスキームは、これら2つの配列の短い領域のみの適合を生じ得、そしてこの小さな整列領域は、2つの全長配列間に有意な関連がない場合でさえも、非常に高い配列同一性を有し得る。従って、好ましい実施形態において、選択された整列方法(GAPプログラム)は、特許請求の範囲のポリペプチドの少なくとも50の連続するアミノ酸にわたる整列を生じる。
例えば、コンピュータアルゴリズムGAP(Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,WI)を使用して、配列同一性の百分率が決定される2つのポリペプチドが、それらのそれぞれのアミノ酸の最適な適合(アルゴリズムによって決定される「適合したスパン」)のために、整列される。ギャップオープニングペナルティー(gap opening penalty)(これは、平均対角の3倍として計算される:「平均対角」とは、使用される比較行列(comparison matrix)の対角の平均である;「対角」とは、特定の比較行列によって各完全なアミノ酸適合に対して割り当てられたスコアまたは数である)およびギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalty)(これは通常、ギャップオープニングペナルティーの0.1倍である)、ならびにPAM 250またはBLOSUM 62のような比較行列が、このアルゴリズムと組み合わせて使用される。標準的な比較行列もまた、このアルゴリズムによって使用される(Dayhoffら、5 Atlas of Protein Sequence and Structure(補遺3、1978)(PAM250比較行列);Henikoffら、1992,Proc.Natl.Acad.Sci USA 89:10915−19(BLOSUM 62比較行列)を参照のこと)。
ポリペプチド配列比較のための好ましいパラメータは、以下を含む:
Algorithm:NeedlemanおよびWunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443−453;
Comparison matrix:BLOSUM 62(Henikoffら、前出);
Gap Penalty:12
Gap Length Penalty:4
Threshold of Similarity:0
このGAPプログラムは、上記パラメータを用いて有用である。上記パラメータは、GAPアルゴリズムを用いるポリペプチド比較(末端ギャップに対してはペナルティーがないこととともに)のためのデフォルトパラメータである。
核酸分子配列比較のための好ましいパラメータは、以下を含む:
Algorithm:NeedlemanおよびWunsch,前出;
Comparison matrix:matches=+10,mismatch=0
Gap Penalty:50
Gap Length Penalty:3
このGAPプログラムはまた、上記パラメータを用いて有用である。核酸分子比較のためのデフォルトパラメータである。
Program Manual,Wisconsin Package,Version 9,September,1997に記載されるものを含む、他の例示的なアルゴリズム、ギャップオープニングペナルティー、ギャップエクステンションペナルティー、比較行列、および類似性の閾値が使用され得る。なされるべき特定の選択は、当業者に明らかであり、そしてなされるべき特定の比較(例えば、DNA対DNA、タンパク質対タンパク質、タンパク質対DNA);ならびにさらに、その比較が所定の対の配列間(この場合には、GAPまたはBestFitが一般的に好ましい)であるか、1つの配列と大きなデータベースの配列との間(この場合には、FASTAまたはBLASTAが好ましい)であるかに依存する。
(3.核酸分子)
HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子は、種々の様式(化学合成、cDNAもしくはゲノムライブラリのスクリーニング、発現ライブラリースクリーニング、および/またはcDNAのPCR増幅が挙げられるが、これらに限定されない)で容易に得られ得る。
本明細書中において使用される組換えDNA法は、一般に、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)および/またはCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、Green Publishers Inc.およびWiley and Sons 1994)に記載されている。本発明は、本明細書中に記載されるような核酸分子、およびこのような分子を得るための方法を提供する。
HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子が、1つの種から同定された場合、その遺伝子の全てもしくは一部が、同じ種からのオルソログ(ortholog)または関連した遺伝子を同定するためのプローブとして使用され得る。プローブまたはプライマーは、HER−2svポリペプチドを発現すると考えられている種々の組織源からのcDNAライブラリをスクリーニングするために使用され得る。さらに、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、または配列番号9のいずれかに記載の配列を有する一部または全ての核酸分子を使用して、HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子を同定および単離するためのゲノムライブラリをスクリーニングし得る。代表的に、中程度または高いストリンジェンシーの条件が、スクリーニングに使用されて、このスクリーニングから得られる偽陽性の数を最小にする。
HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸分子もまた、発現されたタンパク質の特性に基づいて陽性クローンの検出を使用する発現クローニングによって、同定され得る。代表的に、核酸ライブラリは、抗体または他の結合パートナー(例えば、レセプターまたはリガンド)を、宿主細胞表面に発現され、そして提示されるクローンタンパク質に結合させることによって、スクリーニングされる。抗体または結合パートナーは、所望のクローンを発現する細胞を同定するために、検出可能な標識で改変される。
以下に記載される説明に従って実施される組換え発現技術に従って、これらのポリヌクレオチドを産生し得、そしてコードされたポリペプチドを発現し得る。例えば、HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸配列を適切なベクターに挿入することによって、当業者は、多量の所望のヌクレオチド配列を容易に生成し得る。次いで、これらの配列を使用して、検出プローブまたは増幅プライマーを生成し得る。あるいは、HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを、発現ベクターに挿入し得る。発現ベクターを適切な宿主に導入することによって、コードされたHER−2svポリペプチドが、多量に生成され得る。
適切な核酸配列を得るための別の方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。この方法において、cDNAは、酵素逆転写酵素を使用して、poly(A)+RNAまたは全RNAから調製される。次いで、2つのプライマー(代表的には、HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列をコードするcDNAの2つの別個の領域に対して相補的である)が、TaqポリメラーゼのようなポリメラーゼとともにこのcDNAに付加され、そしてこのポリメラーゼが、このcDNAのこれら2つのプライマー間の領域を増幅する。
HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸分子を調製する別の手段は、Engelsら、1989,Angew.Chem.Intl.Ed.28:716−34によって記載されるもののような、当業者に周知の方法を使用する、化学合成である。これらの方法としては、とりわけ、核酸合成のためのリン酸トリエステル、ホスホルアミダイト、およびH−ホスホネート方法が挙げられる。このような化学合成のために好ましい方法は、標準的なホスホルアミダイト化学を使用する、ポリマー支持される合成である。代表的に、HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列をコードするDNAは、数百ヌクレオチド長である。約100ヌクレオチドより長い核酸は、これらの方法を使用して、いくつかのフラグメントとして合成され得る。次いで、これらのフラグメントが一緒に連結されて、HER−2sv遺伝子の全長ヌクレオチド配列を形成し得る。通常、このポリペプチドのアミノ末端をコードするDNAフラグメントは、ATGを有し、これは、メチオニン残基をコードする。このメチオニンは、宿主細胞において産生されたポリペプチドがその細胞から分泌されるよう設計されるか否かに依存して、HER−2svポリペプチドの成熟形態で存在してもそうでなくてもよい。当業者に公知の他の方法が、同様に使用され得る。
特定の実施形態において、核酸改変体は、所定の宿主細胞におけるHER−2svポリペプチドの最適な発現のために変更されたコドンを含む。特定のコドン変更は、発現のために選択されるHER−2svポリペプチドおよび宿主細胞に依存する。このような「コドン最適化」は、種々の方法によって(例えば、所定の宿主細胞において高度に発現される遺伝子における使用に好ましいコドンを選択することによって)実施され得る。高度に発現された細菌遺伝子のコドン優先性のための「Eco_high.Cod」のようなコドン度数表を組み込むコンピュータアルゴリズムが使用され得、そしてUniversity of Wisconsin Package Version 9.0(Genetics Computer Group,Madison,WI)によって提供される。他の有用なコドン度数表としては、「Celegans_high.cod」、「Celegans_low.cod」、「Drosophila_high.cod」、「Human_high.cod」、「Maize_high.cod」、および「Yeast_high.cod.」が挙げられる。
いくつかの場合において、HER−2svポリペプチド改変体をコードする核酸分子を調製することが所望であり得る。改変体をコードする核酸分子は、プライマーが所望の点変異を有する、部位特異的変異誘発、PCR増幅、または他の適切な方法を使用して生成し得る(変異誘発技術の記載に関しては、Sambrookら、前出、およびAusubelら、前出を参照のこと)。Engelsら、前出によって記載される方法を使用する化学合成もまた、このような改変体を調製するために使用され得る。当業者に公知の他の方法が、同様に使用され得る。
(4.ベクターおよび宿主細胞)
HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸分子を、標準的な連結技術を使用して適切な発現ベクターに挿入する。ベクターは、代表的に、使用される特定の宿主細胞において機能的であるように選択される(すなわち、ベクターは、遺伝子の増幅および/または遺伝子の発現が生じ得るように、宿主細胞機構と適合性である)。HER−2svポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸分子は、原核生物宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫(バキュロウイルス系)宿主細胞および/または真核生物宿主細胞において増幅/発現され得る。宿主細胞の選択は、HER−2svポリペプチドが翻訳後修飾(例えば、グリコシル化および/またはホスホリル化)されるか否かに一部依存する。そうである場合、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞、または哺乳動物宿主細胞が好ましい。発現ベクターの総説について、Meth.Enz.,vol.185(D.V.Goeddel,編,Academic Press 1990)を参照のこと。
代表的に、任意の宿主細胞に使用される発現ベクターは、プラスミド維持のための配列ならびに外来性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含む。このような配列(集合的に、「隣接配列」と呼ばれる)は、特定の実施形態において、代表的に、以下のヌクレオチド配列の1つ以上を含む:プロモーター、1つ以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナーおよびアクセプタースプライス部位を含む完全なイントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択マーカーエレメント。これらの配列のそれぞれが、以下に議論される。
必要に応じて、ベクターは、「タグ」コード配列を含み得る。この「タグ」コード配列は、すなわち、HER−2svポリペプチドコード配列の5’末端または3’末端に配置されるオリゴヌクレオチド分子であって、このオリゴヌクレオチド配列は、polyHis(例えば、hexaHis)、別の「タグ」(例えば、FLAG、HA(赤血球凝集素インフルエンザウイルス))または市販の抗体が存在するmycをコードする。このタグは、代表的には、ポリペプチドの発現の際にポリペプチドに融合され、宿主細胞からの、HER−2svポリペプチドのアフィニティー精製のための手段として役立ち得る。アフィニティー精製は、例えば、アフィニティーマトリクスとしてタグに対して抗体を使用するカラムクロマトグラフィーによって達成され得る。必要に応じて、タグは、続いて、切断のために特定のペプチダーゼを使用するような種々の手段によって、精製されたHER−2svポリペプチドから除去され得る。
隣接配列は、同種隣接配列(すなわち、宿主細胞と同じ種および/または同じ系統由来)であり得るか、異種隣接配列(すなわち、宿主細胞種または系統以外の種由来)であり得るか、ハイブリッド隣接配列(すなわち、1つより多くの供給源由来の隣接配列の組み合わせ)であり得るか、または合成隣接配列であり得るか、あるいは隣接配列は、HER−2svポリペプチド発現を調節するために正常に機能するネイティブな配列であり得る。このように、隣接配列の供給源は、任意の原核生物または真核生物、任意の脊椎生物または無脊椎生物、あるいは任意の植物であり得、但し、隣接配列は、宿主細胞の機構において機能的であり、そして宿主細胞の機構によって活性化され得る。
本発明のベクターに有用な隣接配列は、当該分野において周知である任意のいくつかの方法によって得られ得る。代表的には、HER−2sv遺伝子隣接配列以外の、本明細書中で有用な隣接配列は、マッピングおよび/または制限エンドヌクレアーゼ消化によって以前に同定されており、従って、適切な制限エンドヌクレアーゼを使用して、適切な組織供給源から単離され得る。いくつかの場合において、隣接配列の全長ヌクレオチド配列は公知であり得る。ここで、隣接配列は、核酸合成または核酸クローニングのために本明細書中で記載される方法を使用して合成され得る。
隣接配列の全てまたは一部のみが公知である場合、PCRを使用して、そして/あるいは適切なオリゴヌクレオチドならびに/または同じもしくは別の種由来の隣接配列フラグメントを用いてゲノムライブラリをスクリーニングすることによって得られ得る。隣接配列が公知でない場合、隣接配列を含むDNAのフラグメントは、例えば、コード配列または別の遺伝子すらを含み得る大きな片のDNAから単離され得る。単離は、適切なDNAフラグメントを生成するための制限エンドヌクレアーゼ消化、続くアガロースゲル精製を使用する単離、Qiagen(登録商標)カラムクロマトグラフィー(Chatsworth、CA)、または当業者に公知の他の方法によって達成され得る。この目的を達成するための適切な酵素の選択は、当業者に容易に明らかである。
複製起点は、代表的に、購入された市販の原核生物発現ベクターの一部であり、この起点は、宿主細胞においてベクターの増幅に役立つ。特定のコピー数までのベクターの増幅は、いくつかの場合において、HER−2svポリペプチドの最適な発現に重要であり得る。選択されたベクターが複製起点部位を含まない場合、公知の配列に基づいて化学的に合成され得、そしてベクターに連結され得る。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs,Beverly,MA)からの複製起点は、大部分のグラム陰性細菌に適切であり、そして種々の起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、またはHPVまたはBPVのようなパピローマウイルス)は、哺乳動物細胞におけるベクターのクローニングのために有用である。一般的に、複製起点の成分は、哺乳動物発現ベクターに必要ではない(例えば、SV40起点は、初期プロモーターを含むためだけに、しばしば、使用される)。
転写終結配列は、代表的にポリペプチドコード領域の末端の3’側に配置され、そして転写を終結させるのに役立つ。通常、原核生物細胞における転写終結配列は、G−Cリッチフラグメント、続いてポリ−T配列である。この配列はライブラリから容易にクローン化されるか、またはベクターの一部として市販で購入すらされる一方、これはまた、本明細書中に記載されるような核酸合成のための方法を使用して容易に合成され得る。
選択マーカー遺伝子エレメントは、選択培養培地において増殖される宿主細胞の生存および増殖に必要なタンパク質をコードする。代表的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核生物細胞に対して、抗生物質または他の毒素(例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシン)に対する耐性を与えるか;細胞の栄養要求性の欠損を補うか;あるいは複合培地から入手不能な重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。好ましい選択マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子である。ネオマイシン耐性遺伝子もまた、原核生物宿主細胞および真核生物宿主細胞における選択のために使用され得る。
他の選択遺伝子は、発現される遺伝子を増幅するために使用され得る。増幅は、増殖に重要なタンパク質の産生により大きく要求される遺伝子が、組換え細胞の連続的に生成される染色体内でタンデムに反復されるプロセスである。哺乳動物細胞に対する適切な選択マーカーの例としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびチミジンキナーゼが挙げられる。哺乳動物細胞形質転換体は、選択圧下に置かれ、ここで、形質転換体のみが、ベクターに存在する選択遺伝子によって生存するように独特に適合される。選択圧は、培地中の選択因子の濃度が連続的に変化し、それによって選択遺伝子とHER−2svポリペプチドをコードするDNAとの両方の増幅を導く条件下で、形質転換された細胞を培養することによって課される。結果として、増加した量のHER−2svポリペプチドが、増幅されたDNAから合成される。
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始に必要であり、そしてShine−Dalgarno配列(原核性物)またはKozak配列(真核生物)によって特徴付けられる。このエレメントは、代表的に、発現されるHER−2svポリペプチドのプロモーターの3’側およびコード配列の5’側に配置される。Shine−Dalgarno配列は、可変であるが、代表的には、ポリプリンである(すなわち、高いA−G含有量を有する)。多くのShine−Dalgarno配列は、同定されており、それぞれが、本明細書中に記載の方法を使用して、原核生物ベクターを使用して容易に合成され得る。
リーダー配列、またはシグナル配列は、宿主細胞からHER−2svポリペプチドを指向させるために使用され得る。代表的には、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列は、HER−2sv核酸分子のコード領域に位置するか、または直接HER−2svポリペプチドコード領域の5’側に位置する。多くのシグナル配列が同定されており、選択された宿主細胞において機能性であるシグナル配列のいずれかが、HER−2sv核酸分子と組み合わせて使用され得る。従って、シグナル配列は、HER−2sv核酸分子に対して同種(天然に存在する)または異種であり得る。さらに、シグナル配列は、本明細書中に記載される方法を使用して化学的に合成され得る。大部分において、シグナルペプチドの存在を介した宿主細胞からのHER−2svポリペプチドの分泌は、分泌されたHER−2svポリペプチドからのシグナルペプチドの除去を生じる。シグナル配列は、ベクターの成分であり得るか、またはベクターに挿入されたHER−2sv核酸分子の一部であり得る。
HER−2svポリペプチドコード領域に結合されたネイティブなHER−2svポリペプチドシグナル配列をコードするヌクレオチド配列またはHER−2svポリペプチドコード領域に結合された異種シグナル配列をコードするヌクレオチド配列のいずれかの使用が、本発明の範囲内に含まれる。選択された異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識され、処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであるべきである。ネイティブなHER−2svポリペプチドシグナル配列を認識せず、処理しない原核生物宿主細胞について、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼリーダー、ペニシリナーゼリーダー、または熱安定エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列によって置換される。酵母分泌について、ネイティブなHER−2svポリペプチドシグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー、または酸ホスファターゼリーダーによって置換され得る。哺乳動物細胞発現において、ネイティブなシグナル配列が申し分ないが、他の哺乳動物シグナル配列が適切であり得る。
グリコシル化が真核生物宿主細胞発現系において望ましい、いくつかの場合において、グリコシル化または収量を改善するために種々のシグナルペプチド(presequence)が操作され得る。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を変更し得るかまたはプロ配列(pro−sequence)(これもまた、グリコシル化に影響し得る)を加え得る。最後のタンパク質産物は、−1位に(成熟タンパク質の最初のアミノ酸に対して)、発現に付随して1つ以上のさらなるアミノ酸を有し得、このアミノ酸は、完全に除去されていなくともよい。例えば、最終タンパク質産物は、アミノ末端に結合される、ペプチダーゼ切断部位において見出される1つまたは2つのアミノ酸残基を有し得る。あるいは、いくつかの酵素切断部位の使用は、酵素が成熟ポリペプチド内のこのような領域で切断する場合、所望のHER−2svポリペプチドの僅かに短縮した形態を生じ得る。
多くの場合において、核酸分子の転写は、ベクター内の1つ以上のイントロンの存在によって増加する;これは、ポリペプチドが真核生物宿主細胞(特に、哺乳動物宿主細胞)において産生される場合、特に当てはまる。使用されるイントロンは、特に使用される遺伝子が全長ゲノム配列またはそのフラグメントである場合、HER−2sv遺伝子内に天然に存在し得る。イントロンが天然で遺伝子内に(大部分のcDNAについて)存在しない場合、イントロンは、別の供給源から得られ得る。隣接配列およびHER−2sv遺伝子に関してイントロンの位置は、イントロンが効果的に転写されなければならないゆえに、一般的に重要である。従って、HER−2sv cDNA分子が転写される場合、イントロンの好ましい位置は、転写開始部位の3’側で、poly−A転写終止配列の5’側である。好ましくは、イントロンは、コード配列を妨害しないように、cDNAの1つの側面または他の側面(すなわち、5’側または3’側)に配置される。任意の供給源(ウイルス、原核生物および真核生物(植物または動物)を含む)由来の任意のイントロン(但し、このイントロンは、挿入される宿主細胞に適合性である)を使用して、本発明を実行し得る。合成イントロンもまた本明細書中に含まれる。必要に応じて、1つより多くのイントロンがベクター内で使用され得る。
本発明の発現ベクターおよびクローニングベクターは、代表的には、宿主生物によって認識され、HER−2svポリペプチドをコードする分子に作動可能に連結されたプロモーターを含む。プロモーターは、構造遺伝子の転写を制御する構造遺伝子(一般的に、約100〜1000bpの範囲内)の開始コドンに対して上流(すなわち、5’側)に配置される非転写配列である。プロモーターは、従来、2つのクラス(誘導プロモーターおよび構成プロモーター)の1つに分類される。誘導プロモーターは、培養条件におけるいくらかの変化(例えば、栄養の存在または非存在、あるいは温度の変化)に応答して、制御下で、DNAからの転写のレベルの上昇を開始する。他方、構成プロモーターは、連続的な遺伝子産物の産生を開始する;すなわち、遺伝子発現に対する制御がほとんど存在しないかまたは全く存在しない。多数のプロモーター(種々の潜在的な宿主細胞によって認識される)が周知である。適切なプロモーターは、供給源のDNAからプロモーターを制限酵素消化によって取り出し、そして所望のプロモーター配列をベクターに挿入することによって、HER−2svポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結される。ネイティブなHER−2svプロモーター配列は、HER−2sv核酸分子の増幅および/または発現に指向させるために使用され得る。しかし、ネイティブなプロモーターと比較して多量の転写および発現タンパク質のより高い収率を可能にし、そして使用のために選択されている宿主細胞系と適合性である場合、異種プロモーターが好ましい。
原核生物宿主との使用に適切なプロモーターとしては、β−ラクタマーゼプロモーター系およびラクトースプロモーター系;アルカリホスファターゼプロモーター系;トリプトファン(trp)プロモーター系;およびハイブリッドプロモーター(例えば、tacプロモーター)が挙げられる。他の公知の細菌プロモーターもまた、適切である。これらの配列は、公開されており、それにより、当業者は、任意の有用な制限部位を供給するのに必要とされるリンカーまたはアダプターを使用して、所望のDNAにそれらの配列を連結し得る。
酵母宿主との使用に適切なプロモーターもまた、当該分野において周知である。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターとの使用に有利に使用される。哺乳動物宿主細胞との使用に適切なプロモーターは周知であり、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えば、Adenovirus2)、ウシパピローマウイルス、鳥類肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよび最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られるプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な哺乳動物プロモーターとしては、異種哺乳動物プロモーター(例えば、熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモータ)が挙げられる。
HER−2sv遺伝子発現を制御する際に関心があり得るさらなるプロモーターとしては、限定しないが、以下が挙げられる:SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon,1981,Nature 290:304−10);CMVプロモーター;ラウス肉腫ウイルスの3’側の長い終末反復に含まれるプロモーター(Yamamoto,ら,1980,Cell 22 :787−97);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1444−45);メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら,1982,Nature 296:39−42);β−ラクタマーゼプロモーターのような原核生物発現ベクター(Villa−Kamaroffら,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,75:3727−31);またはtacプロモーター(DeBoerら,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:21−25)。組織特異性を示し、そしてトランスジェニック動物において利用されている以下の動物転写制御領域もまた興味深い:膵臓腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら,1984,Cell 38:639−46;Ornitzら,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399−409(1986);MacDonald,1987,Hepatology 7:425−515);膵臓β細胞において活性なインシュリン遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Nature 315:115−22);リンパ球において活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら,1984,Cell 38:647−58;Adamesら,1985,Nature 318:533−38;Alexanderら,1987,Mol.Cell.Biol.,7:1436−44);精巣細胞、乳房細胞、リンパ球、および肥満細胞において活性なマウス哺乳動物腫瘍ウイルス制御領域(Lederら,1986,Cell 45:485−95);肝臓において活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら,1987,Genes and Devel.1:268−76);肝臓において活性なα−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら,1985,Mol.Cell.Biol.,5:1639−48;Hammerら,1987,Science 235:53−58);肝臓において活性なα1−抗トリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら,1987,Genes and Devel.1:161−71);骨髄性細胞において活性なβ−グロビン遺伝子制御領域(Mogramら,1985,Nature 315:338−40;Kolliasら,1986,Cell 46:89−94);脳の稀突起神経膠細胞において活性なミエリンベースのタンパク質遺伝子制御領域(Readheadら,1987,Cell 48:703−12);骨格筋において活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Sani,1985,Nature 314:283−86);ならびに視床下部において活性なゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら,1986,Science 234:1372−78)。
エンハンサー配列は、より高等な真核生物によって本発明のHER−2svポリペプチドをコードするDNAの転写を増加するように、ベクターに挿入され得る。エンハンサーは、転写を増加させるためにプロモーターに作用する、通常約10〜300bpの長さのDNAのシス作用エレメントである。エンハンサーは、相対的な方向および位置に依存しない。これらは、転写ユニットに対して5’側および3’側に見出されている。哺乳動物遺伝子から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が公知である(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテインおよびインシュリン)。しかし、代表的には、ウイルス由来のエンハンサーが、使用される。SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化について例示的に増強するエレメントである。エンハンサーは、HER−2sv核酸分子に対して5’位または3’位でベクターにスプライシングされ得るが、代表的には、プロモーターから5’位側に配置される。
本発明の発現ベクターは、市販のベクターのような開始ベクターから構築され得る。このようなベクターは、全ての所望の隣接配列を含んでも良いし、含まなくても良い。本明細書中に記載される隣接配列の1つ以上がすでにベクター内にない場合、これらは、個々に得られ得、ベクター内に連結され得る。隣接配列のそれぞれを得るために使用される方法は、当業者に周知である。
本発明を実行するために好ましいベクターは、細菌宿主細胞、昆虫宿主細胞、および哺乳動物宿主細胞と適合性のベクターである。このようなベクターとしては、特に、pCRII、pCR3、およびpcDNA3.1(Invitrogen、San Diego、CA)、pBSII(Stratagene、La Jolla、CA)、pET15(Novagen、Madison、WI)、pGEX(Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)、pEGFP−N2(Clontech、Palo Alto、CA)、pETL(BlueBacII、Invitrogen)、pDSR−α(PCT公開番号WO 90/14363)ならびにpFastBacDual(Gibco−BRL、Grand Island、NY)が挙げられる。
さらなる適切なベクターとしては、コスミド、プラスミド、または改変ウイルスが挙げられるが、これらのベクター系は、選択された宿主細胞と適合性でなければならないことが理解される。このようなベクターとしては、Bluescript(登録商標)プラスミド誘導体(高コピー数ColEl−ベースのファージミド、Stratagene Cloning Systems,La Jolla CA)、Taq増幅PCR産物をクローニングするために設計されたPCRクローニングプラスミド(例えば、TOPOTM TA Cloning(登録商標)Kit、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体、Invitrogen)、ならびに哺乳動物ベクター、酵母ベクターまたはバキュロウイルス発現系のようなウイルスベクター(pBacPAKプラスミド誘導体、Clontech、Palo Alto、CA)が挙げられるが、これらに限定されない。
ベクターが構築され、そしてHER−2svポリペプチドをコードする核酸分子がベクターの適切な部位に挿入された後に、完全なベクターが増幅および/またはポリペプチド発現に適切な宿主細胞に挿入され得る。HER−2svポリペプチドに対する発現ベクターの選択された宿主細胞への形質転換は、トランスフェクション、感染、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE−デキストラン法、または他の公知の技術のような方法を含む周知の技術によって達成され得る。選択される方法は、一部、使用される宿主細胞の種類の機能である。これらの方法および他の適切な方法は、当業者に周知であり、例えば、Sambrookら、前出に記載される。
宿主細胞は、原核宿主細胞(例えば、E.coli)または真核宿主細胞(例えば、酵母細胞、昆虫細胞、脊椎動物細胞)であり得る。適切な条件下で培養された場合、宿主細胞は、後に培養培地から(宿主細胞が培地中にHER−2svポリペプチドを分泌する場合)、もしくはHER−2svポリペプチドを産生する宿主細胞から直接(分泌されない場合)収集され得るHER−2svポリペプチドを合成する。適切な宿主細胞の選択は、種々の因子(例えば、所望する発現レベル、活性のために所望されるかまたは必要なポリペプチドの改変(例えば、グリコシル化またはリン酸化)および生物学的に活性な分子への折り畳みの容易さ)に依存する。
多くの適切な宿主細胞が当該分野において公知であり、多くが、American Type Culture Collection(ATCC),Manassas,VAから入手可能である。例としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、CHO DHFR(−)細胞(Urlaubら,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.US.A.97:4216−20)、ヒト胚性腎臓(HEK)293細胞または293T細胞、あるいは3T3細胞のような哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。適切な哺乳動物宿主細胞の選択および形質転換、培養、増幅、スクリーニング、産物生成、および精製のための方法が当該分野において公知である。他の適切な哺乳動物細胞株は、サルのCOS−1細胞株およびCOS−7細胞株、およびCV−1細胞株である。さらなる例示的な哺乳動物宿主細胞としては、霊長動物細胞株およびゲッ歯類動物細胞株(形質転換細胞株を含む)が挙げられる。正常な二倍体細胞、初代組織のインビトロ培養物から誘導される細胞株、ならびに初代外植片もまた適切である。候補細胞は、選択遺伝子を遺伝子型として欠損し得るか、または優先的に作用する選択遺伝子を含み得る。他の適切な哺乳動物細胞株としては、マウス神経芽細胞腫N2A細胞、HeLa、マウスL−929細胞、Swissから誘導された3T3株、Balb−cマウス細胞株またはNIHマウス細胞株、BHKまたはHakハムスター細胞株が挙げられる(これらは、ATCCから入手可能である)が、これらに限定されない。これらの細胞株のそれぞれは、タンパク質発現の当業者によって公知であり入手可能である。
同様に、細菌細胞が、本発明に適切な宿主細胞として有用である。例えば、E.coli(例えば、HB101、DH5α、DH10、およびMC1061)の種々の菌株は、生物工学の分野において宿主細胞として周知である。B.subtilis、Pseudomonas spp.,他のBacillus spp.、Streptomyces spp.などの種々の菌株がまた、本方法において使用され得る。
当業者に公知の酵母細胞の多くの菌株はまた、本発明のポリペプチドの発現のため宿主細胞として入手可能である。好ましい酵母細胞としては、例えば、Saccharomyces cerivisaeおよびPichia pastorisが挙げられる。
さらに、所望される場合、昆虫細胞系が、本発明の方法において利用され得る。このような系は、例えば、Kittsら,1993,Biotechniques,14:810−17;Lucklow,1993,Curr.Opin.Biotechnol.4:564−72;およびLucklowら,1993,J.Virol.,67:4566−79に記載される。好ましい昆虫細胞は、Sf−9およびHi5(Invitrogen)である。
グリコシル化HER−2svポリペプチドを発現するために、トランスジェニック動物もまた使用し得る。例えば、トランスジェニック乳産生動物(例えば、雌ウシまたはヤギ)を使用し、本発明のグルコシル化ポリペプチドを動物の乳中に得られ得る。HER−2svポリペプチドを産生するために植物もまた使用し得るが、しかし、一般的に、植物において生じるグリコシル化は、哺乳動物細胞において産生されるものとは異なり、ヒトの治療的使用に適切ではないグリコシル化産物を生じ得る。
(5.ポリペプチド産生)
HER−2svポリペプチド発現ベクターを含む宿主細胞は、当業者に周知の標準的な培地を使用して培養され得る。この培地は、通常、細胞の増殖および生存に必要な全ての栄養分を含む。E.coli細胞を培養するための適切な培地としては、例えば、Luria Broth(LB)および/またはTerrific Broth(TB)が挙げられる。真核生物細胞を培養するための適切な培地としては、Roswell Park Memorial Institute medium 1640(RPMI 1640)、最小培地(MEM)および/またはダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)が挙げられ、これらの全ては、培養される特定の細胞株に必要な血清および/または増殖因子を補充され得る。昆虫細胞についての適切な培地は、必要に応じて、イーストレート(yeatolate)、ラクトアルブミン加水分解産物、および/または胎仔ウシ血清を補充したグレース培地である。
代表的に、トランスフェクトされた細胞または形質転換された細胞の選択的な増殖に有用な抗生物質または他の化合物が、培地に補充物質として加えられる。使用される化合物は、宿主細胞が形質転換されるプラスミドに存在する選択マーカーエレメントによって検出される。例えば、選択マーカーエレメントがカナマイシン耐性である場合、培養倍地に加えられる化合物は、カナマイシンである。選択的増殖のための他の化合物としては、アンピシリン、テトラサイクリン、およびネオマイシンが挙げられる。
宿主細胞によって産生されるHER−2svポリペプチドの量は、当該分野において公知の標準的な方法を使用して評価され得る。このような方法としては、限定しないが、ウェスタンブロット分析、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、非変性ゲル電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分離、免疫沈降、および/またはDNA結合ゲル移動アッセイのような活性アッセイが挙げられる。
HER−2svポリペプチドが宿主細胞から分泌されるように設計される場合、ポリペプチドの大部分は、細胞培養培地中で見出され得る。しかし、HER−2svポリペプチドが宿主細胞から分泌されない場合、細胞質および/または核(真核宿主細胞について)に、あるいは、細胞質ゾル(グラム陰性細菌宿主細胞について)に存在する。
宿主細胞の細胞質および/または核(真核生物宿主細胞について)に位置するかまたは細胞質ゾル(細菌宿主細胞について)に位置するHER−2svポリペプチドについて、細胞内物質(グラム陰性細菌についての封入体を含む)は、当業者に公知の任意の標準的な技術を使用して宿主細胞から抽出され得る。例えば、宿主細胞は、フレンチプレス、均質化、および/または超音波処理、続く遠心分離によって、ペリプラズム/細胞質の含有物を放出するように溶解され得る。
HER−2svポリペプチドが細胞質ゾル内に封入体を形成した場合、この封入体は、しばしば、内部および/または外部細胞膜に結合され得、従って、主に、遠心分離後にペレット材料において見出される。次いで、ペレット材料は、pH極限値で処理され得るか、あるいはジチオトレイトールのような還元剤の存在下アルカリ性のpHで、またはトリスカルボキシエチルホスフィンの存在下酸性のpHで、界面活性剤、グアニジン、グアニジン誘導体、尿素、または尿素誘導体のようなカオトロピック剤で処理して、封入体を放出させ、分断させ、そして溶解させ得る。次いで、可溶化されたHER−2svポリペプチドは、ゲル電気泳動、免疫沈降などを使用して分析され得る。HER−2svポリペプチドを単離することが望ましい場合、単離は、本明細書中およびMarstonら,1990,Meth.Enz.,182:264−75に記載される方法のような標準的な方法を使用して達成され得る。
いくつかの場合、HER−2svポリペプチドは、単離の際、生物学的に活性でなくても良い。「再折り畳みする」、つまり、ポリペプチドをその三次構造に変換し、ジスルフィド連結を生成するための種々の方法を使用して、生物学的活性を回複し得る。このような方法は、可溶化されたポリペプチドをあるpH(通常7より上)および特定の濃度のカオトロピック剤(chaotrope)の存在に曝露する工程を包含する。カオトロピック剤の選択は、封入体可溶化に使用される選択肢に非常に類似するが、通常、カオトロピック剤は低い濃度で使用され、溶解に使用されるカオトロピック剤と必ずしも同一ではない。多くの場合、再折り畳み/酸化溶液はまた、還元剤、または特定の比の還元剤およびその酸化形態を含んで、特定の酸化還元電位を生成し、タンパク質のシステイン架橋の形成を生じるジスルフィドシャフリングを可能にする。通常使用される酸化還元対のいくつかとしては、システイン/シスタミン、グルタチオン(GSH)/ジチオビスGSH、塩化銅(II)、ジチオトレイトール(DTT)/ジチアンDTT、および2,2−メルカプトエタノール(bME)/ジチオ−b(ME)が挙げられる。多くの場合において、共溶媒が使用され得るか、または再折り畳みの効率を増加するのに必要であり得、この目的のために使用されるより一般的な試薬としては、グリセロール、種々の分子量のポリエチレングリコール、アルギニンなどが挙げられる。
封入体がHER−2svポリペプチドの発現において有意な程度まで形成されない場合、ポリペプチドは、主に、細胞ホモジネートの遠心分離後に上清中に見出される。ポリペプチドは、さらに、本明細書中に記載されるような方法を使用して上清から単離され得る。
溶液からのHER−2svポリペプチドの精製は、種々の技術を使用して達成され得る。そのポリペプチドがそのカルボキシル末端もしくはアミノ末端のいずれかに、ヘキサヒスチジンのようなタグを含む(HER−2svポリペプチド/ヘキサHis)かまたはFLAG(Eastman Kodak Co.、New Haven、CT)もしくはmyc(Invitrogen)のような他の小さいペプチドを含むように合成されている場合、そのポリペプチドは、カラムマトリックスがそのタグにまたはそのポリペプチドに直接高い親和性を有するアフィニティーカラムにその溶液を通すことによって、1工程のプロセスで精製され得る。
例えば、ポリヒスチジンはニッケルに大きな親和性および特異性で結合し、従ってニッケルのアフィニティーカラム(例えば、Qiagen(登録商標)ニッケルカラム)が、HER−2SVポリペプチド/ポリHisの精製に使用され得る。例えば、Current Protocols in Molecular Biology、10.11.8節(Ausubelら編、Green Publishers Inc.およびWiley & Sons 1993)を参照のこと。
さらに、HER−2svポリペプチドは、HER−2svポリペプチドを特異的に認識し得そして結合し得るモノクローナル抗体の使用を介して、精製され得る。
精製のための他の適した方法には、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、HPLC、電気泳動(ネイティブゲル電気泳動を含む)と続くゲル溶出、ならびに調製的等電収束法(「Isoprime」マシーン/技術、Hoefer Scientific、San Francisco、CA)が挙げられるがこれら限定されない。いくつかの場合、2つ以上の精製技術が、純度の増加を達成するために組み合わされ得る。
HER−2svポリペプチドは、当該分野で公知の技術を使用して化学合成法(例えば、固相ペプチド合成)により調製され得、その公知技術は、Merrifieldら(J.Am.Chem.Soc.85:2149、1963)、Houghtenら(Proc Natl Acad.Sci.USA 82:5132、1985)、ならびにStewartおよびYoung(Solid Phase Peptide Synthesis、Pierce Chemical Co.、1984)に示される技術である。このようなポリペプチドは、アミノ末端にメチオニンを含んで合成され得るし、または含まずに合成され得る。化学合成されたHER−2svポリペプチドは、これらの参考文献に示される方法を使用して、ジスルフィド架橋を形成するように酸化され得る。化学合成されたHER−2svポリペプチドは、組換え産生されるかもしくは天然の供給源から精製された対応するHER−2svポリペプチドに匹敵する生物学的活性を有すると予測され、従って、組換えHER−2svポリペプチドもしくは天然のHER−2svポリペプチドと互換可能に使用され得る。
HER−2svポリペプチドを得る別の手段は、HER−2svポリペプチドが天然に見出される供給源の組織および/または流体のような生物学的サンプルからの精製による。このような精製は、本明細書中に記載されるようなタンパク質精製のための方法を使用して行われ得る。精製の間、HER−2svポリペプチドの存在が、例えば、組換え的に産生されたHER−2svポリペプチドまたはそのペプチドフラグメントに対して調製される抗体を使用してモニターされ得る。
核酸およびポリペプチドを産生するための多くのさらなる方法は、当該分野において公知であり、この方法は、HER−2svポリペプチドに対して特異性を有するポリペプチドを産生するために使用され得る。例えば、Robertsら,1997,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:12297−303を参照のこと。これは、mRNAとそのコードされるペプチドとの間の融合タンパク質の産生を記載する。Roberts,1999,Curr.Opin.Chem.Biol 3:268−73もまた参照のこと。さらに、米国特許第5,824,469号は、特定の生物学的機能を実行し得るオリゴヌクレオチドを得るための方法を記載する。この手順は、異種プールのオリゴヌクレオチドを生成する工程を包含し、それぞれが、5’無作為化配列、中心予備選択配列、および3’ランダム化配列を有する。得られる異種プールは、所望の生物学的活性を示さない細胞の集団に導入される。次いで、細胞の亜集団を、所定の生物学的機能を示すものについてスクリーニングする。その亜集団から、所望の生物学的機能を実行し得るオリゴヌクレオチドが単離される。
米国特許第5,763,192号;同第5,814,476号;同第5,723,323号;および同第5,817,483号は、ペプチドまたはポリペプチドを産生するためのプロセスを記載する。これは、確率論的遺伝子またはそのフラグメントを産生し、次いで、確率論的遺伝子によってコードされた1以上のタンパク質を産生する宿主細胞にこれらの遺伝子を導入することによって達成される。次いで、この宿主細胞は、所望の活性を有するペプチドまたはポリペプチドを産生する、これらのクローンを同定するためにスクリーニングされる。
ペプチドまたはポリペプチドの産生するための別の方法は、Athersys,Inc.によって出願されたWO99/15650に記載されている。「Random Activation of Gene Expression for Gene Discovery」(RAGE−GD)として知られている、このプロセスは、インサイチュ組換え方法によって、内因性遺伝子の発現または遺伝子の過剰発現の活性化を含む。例えば、内因性遺伝子の発現は、非相同性組換えまたは異常な組換えによって、遺伝子の発現を活性化し得る標的細胞中に、調節配列を組み込むことによって、活性化または増加される。この標的DNAは、まず、放射線に供せられ、そして遺伝子プロモーターに挿入される。このプロモーターは、遺伝子の前方に最終的に配置され、遺伝子の転写を開始する。これは、所望のペプチドまたはポリペプチドの発現を生じる。
これらの方法は、包括的なHER−2svポリペプチド発現ライブラリを作製するためにも使用され得、これは、続いて、種々のアッセイ(例えば、生化学的アッセイ、細胞アセイおよび全生物アッセイ(例えば、植物、マウスなど))において、ハイスループット表現型スクリーニングのために使用され得ると理解される。
(6.合成)
本明細書中で記載された核酸およびポリペプチド分子は、組換え方法および他の方法によって産生され得ると当業者によって理解される。
(7.選択的結合因子)
用語「選択的結合因子」は、1以上のHER−2svポリペプチドに対して特異性を有する分子を言及する。適切な選択的結合因子としては、抗体およびその誘導体、ポリペプチド、ならびに低分子が挙げられるが、これらに限定されない。適切な選択的結合因子は、当該分野で公知の方法を使用して調製され得る。本発明の例示的なHER−2SVポリペプチド選択的結合因子は、HER−2SVポリペプチドの特定の部分に結合し得、これにより、ポリペプチドのHER−2svレセプターへの結合を阻害する。
HER−2svポリペプチドと結合する抗体および抗体フラグメントのような選択的結合因子は、本発明の範囲内である。この抗体は、単一特異的なポリクローナルを含むポリクローナル;モノクローナル(MAb);組換え;キメラ;ヒト化(例えば、相補性決定領域(CDR)グラフト化);ヒト;単鎖;および/または二特異的;ならびにフラグメント;改変体;またはそれらの誘導体であり得る。抗体フラグメントとしては、HER−2SVポリペプチド上のエピトープに結合する抗体のこれらの一部を含む。このようなフラグメントの例としては、全長抗体の酵素学的切断によって産生されたFabおよびF(ab’)フラグメントが挙げられる。他の結合フラグメントとしては、組換えDNA技術(例えば、抗体可変領域をコードする核酸配列を含む、組換えプラスミドの発現)によって産生されたフラグメントが挙げられる。
HER−2svポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体は、一般に、HER−2SVポリペプチドおよびアジュバンドの複数回の皮下注射または腹腔内注射によって動物(例えば、ウサギまたはマウス)において産生される。HER−2SVポリペプチドをキャリアタンパク質に結合させることは、有用であり得、このタンパク質は、キーホールリンペットヘモシアニン、血清、アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシンインヒビターのように、免疫化される種において免疫原性である。また、ミョウバンのような凝集剤は、免疫応答を増強させるために使用される。免疫化後、この動物は採血され、そして血清を、HER−2svポリペプチド抗体力価についてアッセイする。
HER−2svポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体は、培地中の連続的細胞株によって抗体分子を産生するために提供される、任意の方法を使用して産生される。モノクローナル抗体を調製するために適切な方法の例は、Kohlerら、1975、Nature 256:495−97のハイブリドーマ法、およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor、1984、J.Immunol.133:3001;Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications 51−63(Marcel Dekker,Inc.,1987))が挙げられる。HER−2svポリペプチドと反応する、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株がまた、本発明によって提供される。
本発明のモノクローナル抗体は、治療剤として使用するために、改変され得る。1実施形態は、「キメラ」抗体であり、この重鎖(H)および/または軽鎖(L)の一部が、特定の種から誘導されるか、または特定の抗体のクラスもしくはサブクラスの属する抗体中の対応する配列と同一であるか、または相同性である一方で、この鎖の残りは、別の種から誘導されるか、または別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか、または相同性である。抗体のフラグメントが所望の生物学的活性を示す限り、これらの抗体のフラグメントも含まれる。米国特許第4,816,567号;Morrisonら、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851−55を参照のこと。
別の実施形態において、本発明のモノクローナル抗体は、「ヒト化」抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該分野で周知である。米国特許第5,585,089号および5,693,762号を参照のこと。一般に、ヒト化した抗体は、非ヒトである供給源から導入された1以上のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、例えば、当該分野で記載される方法(Jonesら、1986、Nature 321:522−25;Riechmannら、1998、Nature 332:323−27;Verhoeyenら、1988、Science 239:1534−36)を使用して、げっ歯類の相補性決定領域の少なくとも一部をヒトの抗体の対応する領域と置換することによって、実施される。
HER−2svポリペプチドと結合するヒト抗体がまた、本発明によって包含される。内因性の免疫グロブリンの産物の非存在下で、ヒト抗体のレパートリーを産生し得る、トランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用して、このような抗体は、HER−2svポリペプチド抗原(すなわち、少なくとも6個の連続アミノ酸を有する)を用いて免疫化することによって産生され、必要に応じて、キャリアに結合される。例えば、Jakobovitsら,1993,Proc.Natl.Acad Sci.90:2551−55;Jakobovitsら,1993,Nature 362:255−58;Bruggermannら,1993,Year in Immuno.7:33を参照のこと。1つの方法において、このようなトランスジェニック動物は、本明細書中の重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする内因性遺伝子座を無能にし、そしてヒトの重鎖および軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座をそのゲノムに挿入することによって産生される。次いで、部分的に改変された動物(この動物は、改変体の完全相補体未満を有する)は、所望の免疫系の改変体の全てを有する動物を得るためにクロスブレッドされる。免疫原が投与される場合、これらのトランスジェニック動物が、ヒト(例えば、マウスではない)アミノ酸配列(このアミノ酸配列は、これらの抗原に対して免疫特異性である改変領域を含む)を有する抗体を産生する。国際出願番号PCT/US96/05928およびPCT/US93/06926を参照のこと。さらなる方法は、米国特許第5,545,807、国際出願番号PCT/US91/245およびPCT/GB89/01207、ならびに欧州特許第546073B1および同第546073A1に記載される。ヒト抗体はまた、宿主細胞中の組換えDNAの発現または本明細書中に記載されるようなハイブリドーマ細胞中での発現によって産生され得る。
代替の実施形態において、ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリから産生され得る(Hoogenboomら,1991,J.Mol.Biol.227:381;Marksら,1991,J.Mol.Biol.222:581)。これらのプロセスは、糸状のバクテリオファージの表面上の抗体レパートリーのディスプレイを介した免疫選択を模倣し、選択した抗原への結合によってファージを続いて選択する。1つのこのような技術は、国際出願番号PCT/US98/17364に記載されており、これには、このようなアプローチを使用して、MPL−およびmsk−レセプターについて、高い親和性および機能的なアゴニスト抗体の単離が記載される。
キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、およびヒト化抗体は、代表的に組換え方法によって産生される。抗体をコードする核酸は、宿主細胞中に導入され、そして本明細書中に記載される物質および手順を使用して発現される。好ましい実施形態において、この抗体は、哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞)中で処理される。モノクローナル(例えば、ヒト)抗体は、本明細書中に記載されるように、宿主細胞中での組換えDNAの発現またはハイブリドーマ細胞中での発現によって産生され得る。
本発明の抗−HER−2svポリペプチド抗体は、HER−2svポリペプチドの検出および定量のために、任意の公知のアッセイ方法(例えば、競合結合アッセイ、直接的および間接的サンドイッチアッセイ、および免疫沈降アッセイ)において使用され得る(Sola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques 147−158(CRC Press,Inc.,1987))。この抗体は、使用されるアッセイ方法に対して、適切である親和性でHER−2svポリペプチドと結合する。
診断適用のために、特定の実施形態において、抗−HER−2sv抗体は、検出可能な部分で標識され得る。この検出可能な部分は、直接的または間接的のいずれかで、検出可能なシグナルを産生し得る任意の部分であり得る。例えば、検出可能な部分は、放射性同位体(例えば、3H、14C、32P、35S、125I、99Tc、111In、または67Ga);蛍光化合物または化学的蛍光化合物(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリン)、または酵素(アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、もしくはホースラディシュペルオキシダーゼ)であり得る(Bayerら,1990,Meth.Enz.184:138−63)。
競合結合アッセイは、標識した標準(例えば、HER−2svポリペプチド、またはその免疫学的に活性な部分)の、限定された量の抗−HER−2sv抗体との結合に関して、試験サンプル検体(HER−2svポリペプチド)と競合する能力に依存する。試験サンプル中のHER−2svポリペプチドの量は、抗体と結合する標準の量と反比例する。結合する標準の量を決定するのを容易にするために、この抗体は、競合前または後に、代表的に不溶化され、この抗体と結合する標準および検体は、結合しないままの標準および検体から好都合に分離され得る。
サンドイッチアッセイは、2つの抗体の使用に代表的に関連し、各々は、決定および/または定量されるべきタンパク質の異なる免疫部分またはエピトープに結合し得る。サンドイッチアッセイにおいて、この試験サンプル検体は、固体支持体上に固定される第1抗体によって代表的に結合され、その後、第2抗体が、この検体に結合され、不溶性の3部の複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110を参照のこと。第2抗体自体は、検出可能な部分で標識されるか(直接的なサンドイッチアッセイ)、または検出可能な部分で標識される抗−免疫グロブリン抗体を使用して測定され得る(間接的なサンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1つの型は、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)(この場合、検出可能な部分は、酵素である)である。
抗HER−2sv抗体を含む選択的結合因子はまた、インビボでの画像化に有用である。検出可能な部分で標識された抗体は、動物、好ましくは血流に投与され得、そして宿主中の標識された抗体の存在および位置は、アッセイされる。抗体は、核磁気共鳴、放射線医学、または当該分野において公知の他の検出手段によって、動物中において検出可能な部分のいずれかで標識され得る。
抗体を含む、本発明の選択的結合因子は、治療剤として使用され得る。好ましい実施形態において、選択的結合因子は、HER−2svポリペプチドに特異的に結合可能であり、その結果としてインビボまたはインビトロにおいてHER−2svポリペプチドの機能活性を阻害または排除するアンタゴニスト抗体である。好ましい実施形態において、選択的結合因子(例えば、アンタゴニスト抗体)は、少なくとも約50%、および好ましくは、少なくとも約80%によって、HER−2svポリペプチドの機能活性を阻害する。別の実施形態において、選択的結合因子は、HER−2svポリペプチド結合パートナー(リガンドまたはレセプター)と相互作用し得る抗−HER−2svポリペプチド抗体であり、これにより、インビトロまたはインビボにおいてHER−2svポリペプチド活性を阻害または排除する。アンタゴニスト抗HER−2svポリペプチド抗体を含む、選択的結合因子は、当該分野で周知であるスクリーニングアッセイによって同定される。
本発明はまた、生物学的サンプル中のHER−2sv選択可能な結合因子(例えば、抗体)およびHER−2svポリペプチドのレベルを検出するために有用な他の試薬を含むキットに関する。このような試薬は、検出可能な標識、ブロッキング血清、ポジティブコントロールサンプルおよびネガティブコントロールサンプル、ならびに検出試薬を含み得る。
(8.マイクロアレイ)
DNAマイクロアレイ技術が、本発明に従って利用され得ることは明らかである。DNAマイクロアレイは、固体支持体(例えば、ガラス)上に配置された、核酸の微小の高密度アレイである。このアレイ内の各セルまたはエレメントは、単一種の核酸の多くのコピーを有し、この核酸は、相補的な核酸配列(例えば、mRNA)とのハイブリダイゼーションのための標的として作用する。DNAマイクロアレイ技術を使用する発現プロファイリングにおいて、最初に、mRNAが、細胞または組織サンプルから抽出され、次いで、蛍光標識されたcDNAに酵素的に変換される。この材料を、マイクロアレイにハイブリダイズさせ、そして未結合cDNAを洗浄により除去する。次いで、アレイ上に提示される別々の遺伝子の発現を、各標的核酸分子に特異的に結合された標識cDNAの量を定量することによって可視化する。このようにして、数千の遺伝子の発現を、生物学的材料の単一のサンプルから、高スループットの並行様式で定量し得る。
この高スループット発現プロファイリングは、本発明のHER−2sv分子に関する広範な適用を有する。これらの適用としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:治療用標的としてのHER−2sv疾患関連遺伝子の同定および確証;関連HER−2sv分子およびそのインヒビターの分子毒性研究;集団の層別化および臨床試験用の代理マーカーの作製;ならびに高スループットスクリーニングにおける選択的な化合物の同定を補助することによるHER−2sv関連低分子薬物発見の増大。
(9.化学的誘導体)
HER−2svポリペプチドの化学的に改変された誘導体は、この開示が、本明細書中に記載された場合、当業者によって調製され得る。HER−2svポリペプチド誘導体は、このポリペプチドに天然で結合した分子の型または位置のいずれかで、異なる様式で改変される。誘導体は、1以上の天然で結合した化学的な基の除去によって形成される分子を含み得る。配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列または他のHER−2svポリペプチドを含むポリペプチドは、1以上のポリマーの共有結合によって改変され得る。例えば、選択されたポリマーは、代表的に水溶性であり、その結果、結合するタンパク質は、水環境(例えば、生理学的な環境)下で沈殿しない。ポリマーの混合物が、適切なポリマーの範囲内に含まれる。好ましくは、目的産物の調製の治療学的使用のために、このポリマーは、薬学的に受容可能である。
このポリマーの各々は、任意の分子量を有し得、そして分枝または非分枝であり得る。このポリマーの各々は、代表的に、約2kDaと約100kDaとの間の平均分子量を有する(この用語「約(およそ)」は、水溶性ポリマーの調製の際に、上記の分子量より多い、いくらか少ない重量を有することを示す)。各ポリマーの平均分子量は、好ましくは、約5kDaと約50kDaの間、より好ましくは、約12kDaと約40kDaとの間、そして最も好ましくは、約20kDaと約35Daとの間である。
適切な水溶性ポリマーまたはその混合物としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:N−連結またはO−連結炭水化物、糖、リン酸、ポリエチレングリコール(PEG)(これは、モノ−(C1−C10)、アルコキシ−、またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールを含む、タンパク質を誘導するために使用されるPEGの形態を含む)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン(例えば、低分子量(例えば、約6kD)のデキストラン)、セルロース、または他の炭水化物ベースのポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリジン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、およびポリビニルアルコール。共有結合したHER−2svポリペプチドマルチマーを調製するために使用され得る、二官能性架橋分子もまた、本発明に含まれる。
一般に、化学的誘導体化は、活性化したポリマー分子とタンパク質を反応させるために使用される任意の適切な条件下で、実施され得る。ポリペプチドの化学的誘導体を調製するための方法は、一般に、以下の工程を包含する:(a)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、または配列番号10のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは他のHER−2svポリペプチドが、1以上のポリマー分子に結合する条件下で、活性化したポリマー分子(例えば、ポリマー分子の反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)とポリペプチドを反応させる工程、ならびに(b)反応生成物を得る工程。最適の反応条件は、既知のパラメータおよび所望の結果に基づいて決定される。例えば、ポリマー分子のタンパク質に対する比が大きくなるほど、結合したポリマー分子の割合も大きくなる。1実施形態において、HER−2svポリペプチド誘導体は、アミノ末端の単一ポリマー分子部分を有する。例えば、米国特許第5,234,784号を参照のこと。
ポリペプチドのペグ化(pegylation)は、当該分野で公知の任意のペグ化反応を使用して特異的に実施され得る。このような反応は、例えば、以下の参考文献に記載されている:Francisら,1992,Focus on Growth Factors 3:4−10;欧州特許第0154316号および0401384号;ならびに米国特許第4,179,337号。例えば、ペグ化は、本明細書中に記載されるように、反応性ポリエチレングリコール分子(または、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して実施され得る。アシル化反応のためには、選択されるポリマーは、単一の反応性エステル基を有する。還元的アルキル化のためには、選択されるポリマーは、単一の反応性アルデヒド基を有する。例えば、反応性アルデヒドは、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド(これは、水溶性である)、またはそのモノC1−C10アルコキシ誘導体もしくはアリールオキシ誘導体である(米国特許第5,252,714号を参照のこと)。
別の実施形態において、HER−2svポリペプチドは、ビオチンに化学的に連結され得る。次いで、このビオチン/HER−2svポリペプチド分子は、アビジンに結合され得、その結果、4価のアビジン/ビオチン/HER−2svポリペプチド分子が得られる。HER−2svポリペプチドはまた、ジニトロフェノール(DNP)またはトリニトロフェノール(TNP)に共有結合され得、そして得られた結合体は、抗−DNPまたは抗−TNP−IgMと共に沈殿し、10価の十量体の結合体を形成する。
一般に、本発明のHER−2svポリペプチド誘導体の投与によって、緩和または調節され得る条件は、HER−2svポリペプチドについて本明細書中に記載されたものを含む。しかし、本明細書中に開示されるHER−2svポリペプチド誘導体は、非誘導体化分子と比較した場合、さらなる活性、増強または減少した生物学的活性、または他の特性(例えば、増加または減少した半減期)を有し得る。
(10.遺伝子操作された非ヒト動物)
非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、もしくは他のげっ歯類、ウサギ、ヤギ、またはヒツジ、あるいは、他の家畜動物)は、本明細書の範囲にさらに含まれる。これらの動物において、ネイティブなHER−2svポリペプチドをコードする遺伝子は、破壊されている(「ノックアウトされている」)ので、これらの遺伝子の発現レベルは、顕著に減少しているかまたは完全に除外されている。このような動物は、例えば、米国特許第5,557,032号に記載されるような技術および方法を使用して調製され得る。
本発明はさらに、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、もしくは他のげっ歯類、ウサギ、ヤギ、またはヒツジ、あるいは、他の家畜動物)を含み、これらの動物において、これらの動物に対してネイティブな形態のHER−2sv遺伝子または異種性HER−2sv遺伝子は、これらの動物によって過剰発現され、これにより、「トランスジェニック」動物が作製される。このようなトランスジェニック動物は、米国特許第5,489,743号およびPCT国際公開番号WO94/28122に記載されるような周知の方法を使用して調製され得る。
本発明はさらに、非ヒト動物を含み、これらの動物において、本発明の1つ以上のHER−2svポリペプチドについてのプロモーターは、活性化されるかまたは不活性化されるかのいずれか(例えば、相同組換え法を使用することによって)であり、1つ以上のネイティブなHER−2svポリペプチドの発現レベルを変更する。
これらの非ヒト動物は、薬物候補スクリーニングに用いられ得る。このようなスクリーニングにおいて、動物における薬物候補の影響は、測定され得る。例えば、薬物候補は、HER−2sv遺伝子の発現を減少または増加し得る。特定の実施形態において、産生されるHER−2svポリペプチドの量は、動物をその薬物候補に暴露した後に測定され得る。さらに、特定の実施形態において、動物に対する薬物候補の実際の影響を検出し得る。例えば、特定の遺伝子の過剰発現は、疾患または病理学的状態を生じ得るかあるいは疾患または病理学的状態に関し得る。このような場合において、この遺伝子の発現を減少するための薬物候補の能力、あるいは病理学的状態を予防または阻害するための能力を試験し得る。他の実施例において、特定の代謝産物(例えば、ポリペプチドのフラグメント)の産生は、疾患または病理学的状態を生じ得るか、あるいは疾患または病理学的状態に関連し得る。このような場合において、薬物候補がこのような代謝産物の産生を減少させる能力、またはその病理学的状態を予防もしくは阻害する能力が、試験され得る。
(11.HER−2svポリペプチド活性の他の調節因子についてのアッセイ)
いくつかの状況において、HER−2svポリペプチドの活性の調節因子(例えば、アンタゴニスト)である分子を同定することが所望され得る。HER−2svポリペプチドを調節する天然の分子または合成分子は、本明細書中に記載されるもののような1つ以上のスクリーニングアッセイを使用して同定され得る。このような分子は、エキソビボ様式でか、または注射によるインビボ様式でか、あるいは経口投与、移植デバイスなどによってのいずれかで投与され得る。
「試験分子」は、HER−2svポリペプチドの活性を調節(すなわち、増加または減少)する能力についての評価下である分子をいう。最も一般的には、試験分子は、HER−2svポリペプチドと直接相互作用する。しかし、試験分子はまたHER−2svポリペプチド活性を例えば、HER−2sv遺伝子発現に影響を与えることによってかまたはHER−2sv結合パートナー(例えば、レセプターまたはリガンド)に結合することによって、間接的に調節し得ることもまた意図される。1つの実施形態において、試験分子は、少なくとも約10−6M、好ましくは約10−8M、もっとも好ましくは約10−9M、そしてさらにもっとも好ましくは約10−10Mの親和性定数でHER−2svポリペプチドに結合する。
HER−2svポリペプチドと相互作用する化合物を同定するための方法は、本発明によって包含される。特定の実施形態において、試験分子のHER−2svポリペプチドとの相互作用を可能にする条件下で、HER−2svポリペプチドは、試験分子とインキュベートされ、そして相互作用の程度が測定され得る。試験分子は、実質的に精製された形態または粗製混合物においてスクリーニングされ得る。
特定の実施形態において、HER−2svアンタゴニストは、HER−2svポリペプチドの活性を調節するようHER−2svポリペプチドと相互作用するタンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、または低分子量分子であり得る。HER−2svポリペプチドの発現を調節する分子には、HER−2svポリペプチドをコードする核酸と相補的な核酸、またはHER−2svポリペプチドの発現を指示もしくは制御する核酸配列と相補的な核酸、ならびに発現のアンチセンス調節因子として働く核酸が挙げられる。
一旦、試験分子がHER−2svポリペプチドと相互作用するとして同定されると、この分子はさらに、HER−2svポリペプチド活性を増加または減少するその能力について評価され得る。試験分子のHER−2svポリペプチドとの相互作用の測定は、いくつかの型(細胞ベースの結合アッセイ、膜結合アッセイ、溶液相アッセイおよび免疫アッセイを含む)において実施され得る。一般には、試験分子は、HER−2svポリペプチドと特定の時間にわたってインキュベートされ、そして、HER−2svポリペプチド活性は、生物学的活性を測定するための1つ以上のアッセイによって決定される。
試験分子のHER−2svポリペプチドとの相互作用はまた、免疫アッセイにおいて、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を使用して直接的にアッセイされ得る。あるいは、本明細書中に記載されるエピトープタグを含有するHER−2svポリペプチドの改変形態は、溶液中および免疫アッセイにおいて使用され得る。
結合パートナー(例えば、レセプターまたはリガンド)との相互作用を介してHER−2svポリペプチドが生物学的活性を示す場合、種々のインビトロアッセイは、HER−2svポリペプチドのその対応する結合パートナー(例えば、選択的な結合因子、もしくはレセプターまたはリガンド)との結合を測定するために使用され得る。このようなアッセイは、HER−2svポリペプチドのその結合パートナーとの結合の割合および/または程度を増加または減少するこれらの能力について試験分子をスクリーニングするために使用され得る。1つのアッセイにおいて、HER−2svポリペプチドは、マイクロタイタープレートのウェルにおいて固定化される。次いで、放射標識されたHER−2svポリペプチド結合パートナー(例えば、ヨード化されたHER−2svポリペプチド結合パートナー)、および試験分子は、ウェルに一度に一方(どちらの順番でも)または同時にかのいずれかで添加され得る。インキュベート後ウェルを、洗浄し、そして、結合した結合パートナーがHER−2svポリペプチドに程度を決定するためにシンチレーションカウンターを使用して放射能について計数し得る。代表的には、これらの分子は、濃度の範囲にわたって試験され、そして、試験アッセイの1つ以上の要素を欠く一連のコントロールウェルは、これらの結果の評価における正確さについて使用され得る。本方法の代替は、タンパク質の「位置」を逆にする工程(すなわち、マイクロタイタープレートにHER−2svポリペプチド結合パートナーを固定化する工程)、試験分子を放射標識されたHER−2svポリペプチドとインキュベートする工程、ならびにHER−2svポリペプチド結合の程度を決定する工程を包含する。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,第18章、(Ausubelら編,Green Publishers Inc.およびWiley and Sons 1995)を参照のこと。
放射標識の代替として、HER−2svポリペプチドまたはその結合パートナーは、ビオチンと結合体化され得、次いで、ビオチン化タンパク質の存在は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP))に連結されたストレプトアビジンを使用して検出され得、これは、比色定量により(colorometrically)、またはストレプトアビジンの蛍光タグ化により、検出され得る。HER−2svポリペプチドまたはHER−2sv結合パートナーに対する、ビオチンに結合体化された抗体はまた、APまたはHRPと連結された酵素連結ストレプトアビジンとの複合体のインキュベート後に検出の目的で使用され得る。
HER−2svポリペプチドまたはHER−2sv結合パートナーはまた、アガロースビーズ、アクリルビーズまたはこのような不活性な固相基質の他の型への接着によって固定化され得る。基質−タンパク質複合体は、相補的タンパク質および試験化合物を含む溶液に入れられ得る。インキュベート後、ビーズは、遠心分離によって沈殿され得、そしてHER−2svポリペプチドとその結合パートナーとの間の結合の量は、本明細書中に記載される方法によって評価され得る。あるいは、基質−タンパク質複合体は、カラムに固定化され得、そして試験分子および相補的タンパク質は、このカラムを通過される。次いで、HER−2svポリペプチドとその結合パートナーとの複合体の形成は、本明細書中に記載の技術のいずれか(例えば、放射性標識、または抗体結合)を使用して評価され得る。
HER−2svポリペプチド結合タンパク質とHER−2svポリペプチド結合パートナーとの複合体の形成を増加または減少する試験分子を同定するために有用な、別のインビトロアッセイは、例えば、BIAcoreアッセイシステム(Pharmacia,Piscataway,NJ)のような表面プラズモン共鳴検出器システムである。BIAcoreシステムは、製造業者によって特定されるように利用され得る。このアッセイは、HER−2svポリペプチドまたはHER−2sv結合パートナーのいずれかの、検出器に位置するデキストランコートされたセンサーチップとの共有結合を必ず含む。次いで、試験化合物および他の相補的タンパク質は、センサーチップを含むチャンバーへと同時または順次いずれかで注入され得る。結合する相補的タンパク質の量は、センサーチップのデキストランコートされた側に物理的に結合する分子量における変化に基づいて評価され得、そして分子量における変化は、検出器システムによって測定され得る。
いくつかの場合において、HER−2svポリペプチドとHER−2svポリペプチド結合パートナーとの間の複合体の形成を増加または減少する能力について、2つ以上の試験化合物を一緒に評価することが所望され得る。これらの場合において、本明細書中に記載されるアッセイは、このようなさらなる試験化合物の添加(第一の試験化合物と同時に、または第一の試験化合物に引き続いてかのいずれか)によって容易に改変され得る。このアッセイにおけるこの工程の残りは、本明細書中に記載されるとおりである。
本明細書中に記載されるもののようなインビトロアッセイは、HER−2svポリペプチドとHER−2svポリペプチド結合パートナーとの間の複合体形成に対する影響について、多数の化合物をスクリーニングするために有利に使用され得る。これらのアッセイは、ファージディスプレイライブラリ、合成ペプチドライブラリー、および化学合成ライブラリにおいて作製される化合物をスクリーニングするために自動化され得る。
HER−2svポリペプチドとHER−2svポリペプチド結合パートナーとの間の複合体の形成を増加または減少する化合物はまた、HER−2svポリペプチドまたはHER−2svポリペプチド結合パートナーのいずれかを発現する細胞および細胞株を使用する細胞培養においてスクリーニングされ得る。細胞および細胞株は、任意の哺乳動物より取得され得るが、好ましくは、ヒトもしくは他の霊長類、イヌ、またはげっ歯類の供給源由来である。HER−2svポリペプチドの、表面でHER−2svポリペプチド結合パートナーを発現する細胞への結合は、試験分子の存在下または非存在下において評価され、そして結合の程度は、例えば、HER−2svポリペプチド結合パートナーに対するビオチン化抗体を使用するフローサイトメトリーによって測定され得る。細胞培養アッセイはさらに、本明細書中に記載されるタンパク質結合アッセイにおいてポジティブにスコアリングされる化合物を評価するために有利に使用され得る。
細胞培養物はまた、薬物候補の影響をスクリーニングするために使用され得る。例えば、薬物候補は、HER−2sv遺伝子の発現を減少または増加し得る。特定の実施形態において、産生されるHER−2svポリペプチドまたはHER−2svポリペプチドフラグメントの量は、細胞培養物を薬物候補に暴露した後に測定され得る。特定の実施形態において、細胞培養物に対する薬物候補の実際の影響を検出し得る。例えば、特定の遺伝子の過剰発現は、細胞培養物に対する特定の影響を有し得る。このような場合において、この遺伝子の発現を増加または減少する薬物候補の能力、または細胞培養物に対する特定の影響を予防または阻害する薬物候補の能力を試験し得る。他の例において、特定の代謝産物(例えば、ポリペプチドのフラグメント)の産生は、疾患または病理学的状態を生じ得るか、あるいは疾患または病理学的状態に関し得る。このような場合において、細胞培養物におけるこのような代謝産物の産生を減少する薬物候補の能力を試験し得る。
(12.内部移行(internalize)タンパク質)
tatタンパク質配列(HIV由来)は、細胞にタンパク質を内部移行するために使用され得る。例えば、Falwellら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、91:664−68(1994)を参照のこと。例えば、HIV tatタンパク質の11アミノ酸配列(Y−G−R−K−K−R−R−Q−R−R−R:配列番号12)(「タンパク質伝達ドメイン」、またはTAT PDTと呼ばれる)は、細胞の細胞膜および核膜を横切る送達を媒介するとして記載されている。Schwarzeら、Science,285:1569−1572(1999);およびNagaharaら、Nat.Med.4:1449−52(1998)を参照のこと。これらの手順において、FITC−構築物(FITC標識化G−G−G−G−Y−G−R−K−K−R−R−Q−R−R−R;配列番号13)(これらの構築物は、腹腔内投与後に組織を貫く)は、調製され、そしてこのような構築物の、細胞への結合は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析によって観察される。tat−βgal融合タンパク質で処理された細胞は、β−gal活性を示す。注入に続いて、このような構築物の発現は、多くの組織(肝臓、腎臓、肺、心臓、および脳組織を含む)は、において検出され得る。これらの構築は、細胞への侵入のためにある程度のアンフォールディングを受け;細胞への侵入後にリフォールディングが必要とされ得ると考えられる。
従って、tatタンパク質配列が所望のポリペプチドを細胞内へ内部移行するために使用され得ることは明白である。例えば、tatタンパク質配列を使用して、HER−2svアンタゴニスト(例えば、抗HER−2sv選択的な結合因子、小分子、可溶性レセプター、またはアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、細胞内へ投与されてHER−2sv分子の活性を阻害し得る。本明細書中で使用される場合、用語「HER−2sv分子」は、本明細書中で規定されるようなHER−2sv核酸分子およびHER−2svポリペプチドの両方をいう。所望の場合、HER−2svタンパク質自身はまた、これらの手順を使用して細胞内部に投与され得る。Straus,1999、Science,285:1466−67をまた参照のこと。
(13.HER−2svポリペプチドを使用する細胞供給源同定)
本発明の特定の実施形態に従って、HER−2svポリペプチドに結合する特定の細胞型の供給源を決定し得ることは有用であり得る。例えば、適切な治療を選択する補助として疾患または病理学的状態の起源を決定することは、有用であり得る。特定の実施形態において、HER−2svポリペプチドをコードする核酸は、プローブとして使用され得て、このようなプローブでの細胞の核酸のスクリーニングによって本明細書中で記載される細胞を同定するためのプローブである。別の実施形態において、細胞中でのHER−2svポリペプチドの存在について試験をするよう抗HER−2svポリペプチド抗体が使用され得る。従って、このような細胞が、本明細書中で記載された型であるか否かが決定され得る。
(14.HER−2svポリペプチド組成物および投与)
治療組成物は、本発明の範囲内にある。このようなHER−2svポリペプチドの薬学的組成物は、HER−2svポリペプチドまたはHER−2sv核酸分子の治療有効量を、投与の様式に適合するように選択された薬学的または生理的に受容可能な処方因子と混合して含み得る。薬学的組成物は、1つ以上のHER−2svポリペプチド選択的結合因子の治療有効量を、投与の様式に適合するように選択された薬学的または生理的に受容可能な処方因子と混合して含み得る。
受容可能な処方材料は、好ましくは、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して非毒性である。
薬学的組成物には、例えば、その組成物のpH、浸透圧、粘度、明澄度、色調、等張性、匂い、滅菌性、安定性、溶解速度または放出速度、吸収または浸透を改変、維持または保存のための、処方物材料を含み得る。適切な処方物材料には、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン)、抗菌剤、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウム)、緩衝薬(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris−HCl、クエン酸塩、リン酸塩、または他の有機酸)、充填剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、充填剤(filler)、単糖、二糖、および他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、またはデキストリン)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン)、着色剤、香料添加剤、および希釈剤(diluting agent)、乳化剤、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、または過酸化水素)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコール)糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、懸濁剤、界面活性剤もしくは湿潤剤(例えば、プルロニック;PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80);トリトン;トロメタミン;レシチン;コレステロールまたはチロキサポール)、安定性増強剤(例えば、スクロースまたはソルビトール)、張度増強剤(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物−好ましくは塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム−またはマンニトールソルビトール)、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤(excipient)、および/または薬学的アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版、A.R.Gennaro編,Mack Publishing Company 1990)を参照のこと。
最適な薬学的組成物は、例えば、投与の意図された経路、送達形式、および所望する投与量に依存して当業者によって決定される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、前出を参照のこと。このような組成物は、HER−2sv分子の物理的な状態、安定性、インビボでの放出速度、およびインビボでの排除の速度に影響し得る。
薬学的組成物中の主なビヒクルまたはキャリアはその性質が水性または非水性のいずれかであり得る。例えば、注射のために適切なビヒクルまたはキャリアは、水、生理的食塩水溶液または人工の脳脊髄液であり得、これらには、非経口投与のための組成物中に一般的な他の材料が補充されていてもよい。中性緩衝化生理食塩水または血清アルブミンと混合された生理食塩水は、さらなる例示的なビヒクルである。他の例示的な薬学的組成物は、約pH7.0−8.5のTris緩衝剤、または約pH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含む。これは、ソルビトールまたは適切なその代替物をさらに含み得る。本発明の1つの実施形態において、HER−2svポリペプチド組成物は、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で、任意の処方剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences、前出)で所望の程度の純度を有する選択された組成物と混合することによって、保存用に調製され得る。さらに、HER−2svのポリペプチド産物は、スクロースのような適切な賦形剤を用いた凍結乾燥物として処方され得る。
HER−2svポリペプチド薬学的組成物は、非経口的送達のために選択され得る。あるいは、その組成物は、吸入もしくは消化管を通じての送達(例えば、経口的)のために選択され得る。このような薬学的に受容可能な組成物の調製は、当業者の技術の範囲内にある。
この処方物成分は、投与部位に受容可能な濃度で存在する。例えば、緩衝剤は、生理的pHまたはわずかにより低いpH(代表的には約5と約8との間のpH範囲内)でその組成物を維持するために使用され得る。
非経口投与が検討される場合、本発明における使用のための治療的組成物は、発熱物質を含まない、非経口的に受容可能な水溶液(薬学的に受容可能なビヒクル中に所望のHER−2sv分子をふ組む)の形態であり得る。非経口注射に特に適切なビヒクルは、滅菌蒸留水である。この中に、所望するHER−2sv分子は、滅菌等張性溶液として、処方され、適切に保存される。さらに別の調製物は、その産物の制御されたまたは維持された放出を提供し、次いでデポー注射として送達され得る薬剤(例えば、注射可能なミクロスフェア、生体分解性粒子、ポリマー化合物(例えば、ポリ乳酸もしくはポリグリコール酸)、ビーズ、またはリポソーム)を用いた所望の分子の処方物を包含し得る。ヒアルロン酸もまた使用され得、これは、循環中でも持続時間を促進する効果を有し得る。所望される分子の導入のための他の適切な手段は、移植可能な薬物送達デバイスを包含する。ヒアルロン酸もまた、使用され得て、そしてこれは、血液循環の間維持される促進効果を有し得る。所望する分子導入のための他の適した方法は、移植可能な薬物送達デバイスが挙げられる。
1つの実施形態において、薬学的組成物は、吸入のために処方され得る。例えば、HER−2svポリペプチドは、吸入のための乾燥粉末として処方され得る。HER−2svポリペプチドまたは核酸分子の吸入溶液はまた、エアゾール送達のためのプロペラントを用いて、液化されたプロペラントを用いて処方され得る。さらに別の実施形態において、溶液は、噴霧され得る。肺投与は、国際公開WO94/20069にさらに記載され、これは、化学的に改変されたタンパク質の肺送達を記載する。
特定の処方物は、経口投与され得ることもまた企図される。本発明の一つに実施形態において、この様式で投与されるHER−2svポリペプチドは、錠剤およびカプセルのような固体投薬形態の処方において慣例的に使用されるそれらのキャリアとともにまたはそれを含まずに処方され得る。例えば、カプセルは、胃腸管において、バイオアベイラビリティーが最大化され、そして全身前分解が最小化される時点で処方物の活性部分が放出されるように設計され得る。さらなる薬剤が、HER−2svポリペプチドの吸収を容易にするように含まれ得る。希釈剤、矯味矯臭剤、低融点ろう、植物油、滑沢剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合因子もまた使用され得る。
別の薬学的組成物は、HER−2svポリペプチドの有効量を、錠剤の製造のために適切な非毒性賦形剤と混合して含み得る。滅菌水または他の適切なビヒクル中にその錠剤を溶解することによって、溶液が単位用量形態で調製され得る。適切な賦形剤としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ラクトース、またはリン酸カルシウム;あるいは結合因子(例えば、デンプン、ゼラチン、アラビアゴム);あるいは滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)。
さらなるHER−2svポリペプチド薬学的組成物は、当業者に明らかであり、これには、HER−2svポリペプチドを、徐放送達処方物または制御された送達処方物中のHER−2svポリペプチドを含む組成物が包含される。種々の他の徐放手段または制御された送達手段(例えば、リポソームキャリア、生体分解性微粒子または多孔性ビーズおよびデポー(depot)注射)を処方するための技術もまた、当業者に公知である。例えば、以下を参照のこと:国際出願PCT/US93/00829。これは、薬学的組成物の送達のための多孔性ポリマー微粒子の制御された放出を記載する。
徐放調製物のさらなる例としては、成型された物品の形態(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の半透過性ポリマーマトリクスを包含する。徐放マトリクスとしては以下が挙げられ得る:ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号、欧州特許第058,481号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートとのコポリマー(Sidmanら,1983,Biopolymers,22:547−556)、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langerら,1981,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277およびLanger,1982,Chem.Tech.,12:98−105)、エチレンビニルアセテート(Langerら,前出)またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133988号)。徐放組成物はまた、リポソームを含み得る。このリポソームは、当該分野において公知のいくつかの方法のいずれかにより調製され得る。例えば、以下を参照のこと:Eppsteinら,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688−92;欧州特許第036676号;欧州特許第088046号;欧州特許第143949号。
インビボ投与のために使用されるHER−2sv薬学的組成物は、代表的に無菌でなくてはならない。これは、滅菌ろ過膜を通してのろ過によって達成され得る。その組成物が凍結乾燥されている場合、この方法を用いた滅菌は、凍結乾燥および再構築の前またはその後のいずれかで行われ得る。非経口的投与のための組成物は、凍結乾燥形態または溶液で保存され得る。さらに、非経口的組成物は、一般的に、滅菌アクセス口を有する容器(例えば、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって穿孔可能なストッパーを有するバイアル)に配置される。
一旦薬学的組成物が処方されると、それは、滅菌バイアル中に溶液、懸濁液、ゲル、乳濁液、固体または脱水粉末もしくは凍結乾燥粉末として保存され得る。そのような処方物は、直ぐ使用可能な形態または投与前に再構成を必要とする形態(例えば、凍結乾燥)のいずれかで保存され得る。
特定の実施形態において、本発明は、単回用量投与単位を産生するためのキットに関する。このキットは、各々、乾燥タンパク質を有する第一の容器および水性処方物を有する第二の容器の両方を備え得る。本発明の範囲内に含まれるのはまた、単回および複数のチャンバーつきの予備充填されたシリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシジンジ(lyosyringe))を備えるキットである。
治療に使用される、有効量のHER−2sv薬学的組成物は、例えば、治療背景および治療対象に依存する。当業者は、治療のための適切な投与量のレベルは、このように、送達される分子、どのHER−2sv分子が使用されるかの指示、投与の経路および大きさ(体重、体表面、または器官の大きさ)ならびに患者の状態(年齢および一般的な健康状態)に部分的に依存して変化すると理解する。従って、臨床医は、投薬量を力価測定し、そして最適な治療効果を得るために投与経路を改変し得る。代表的な投薬量は、上述の因子に依存して、約0.1μg/kgから約100mg/kgの範囲、またはそれを超える範囲であり得る。別の実施形態において、投薬量は、0.1μg/kgから約100mg/kgまでの範囲であり得るか;または1μg/kgから約100mg/kgの範囲であり得るか;あるいは5μg/kgから約100mg/kgの範囲であり得る。
投与の頻度は、使用される処方物における、HER−2sv分子の薬物動態的パラメータに依存する。代表的には、臨床医は、投薬量が所望の効果を達成するに達するまで、その組成物を投与する。従って、その組成物は、単回用量として、または経時的な2もしくはそれを超える用量(これは、所望の分子の同じ量を含んでいても含んでいなくてもよい)として、あるいは移植可能なデバイスまたはカテーテルを介した連続注入として投与され得る。適切な投与量のさらなる精妙は、当業者により慣用的に作製され、当業者による慣用的に実施されている仕事の範囲である。適切な投与量は、適切な投与量−応答データの使用を通して確認され得る。
薬学的組成物の投与経路は、公知の方法に従って行われる(例えば、経口(静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内または創傷内経路への注射による);徐放系システムによる;または移植デバイスによる)。所望の場合、その組成物は、ボーラス注射により、または注入により連続的に、または移植デバイスにより投与され得る。
あるいはまたは加えて、その組成物は、所望の分子が吸収またはカプセル化された膜、スポンジまたは他の適切な材料の罹患領域への移植を介して局所的に投与され得る。移植デバイスが使用されるとき、そのデバイスは、任意の適切な組織または器官に移植され得、そして所望の分子の送達は、拡散、時間放出ボーラスによって、または連続投与によってであり得る。
いくつかの症例では、HER−2svポリペプチド薬学的組成物をエキソビボ様式で使用することも好ましくあり得る。そのような場合、患者から取り出された細胞、組織または器官は、HER−2svポリペプチド薬学的組成物に暴露され、その後、その細胞、組織および/または器官は、続いてその患者に移植して戻される。
他の症例において、HER−2svポリペプチドは、本明細書において記載されるもののような方法を用いて遺伝子操作された特定の細胞を移植してHER−2svポリペプチドを発現および分泌させることによって送達され得る。そのような細胞は、動物またはヒトの細胞であり得、そして自己、異種(heterologous)または異種(xenogeneic)であり得る。必要に応じて、その細胞は、不死化され得る。免疫学的応答の機会を減少するために、その細胞は、周囲の組織の浸潤を回避するようにカプセル化され得る。カプセル化された材料は、代表的に、生体適合性で、半透過性のポリマー封入物または膜であり、これは、タンパク質産物の放出を可能にするが、患者の免疫系によるかまたは周囲組織からの他の悪性因子による細胞の破壊を予防することを可能にする。
本明細書中で考察したように、単離された細胞集団(例えば、幹細胞、リンパ球、赤血球、軟骨細胞、ニューロンなど)を1種以上のHER−2svポリペプチドで処置することが所望され得る。これは、ポリペプチドが、細胞膜に対して透過性の形態である場合、単離された細胞を、ポリペプチドに直接暴露することにより達成され得る。
本発明のさらなる実施形態は、治療的ポリペプチドのインビトロ産生と遺伝子治療または細胞治療による治療ポリペプチドの産生および送達との両方のための細胞および方法(例えば、相同組換えおよび/または他の組換え産生方法)に関する。通常は転写的にサイレントなHER−2sv遺伝子または下方に発現する遺伝子を含む細胞を改変するよう、相同組換えまたは他の組換え方法が使用され得る。その結果、HER−2svポリペプチドの治療有効量を発現する細胞を産生し得る。
相同組み換えは、転写的に活性な遺伝子における変異を誘導または矯正するために遺伝子を標的化するためにもともと開発された技術である。Kucherlapati,1989,Prog.in Nucl.Acid Res.&Mol.Biol.36:301。基本的な技術は、哺乳動物ゲノムの特定の領域に特定の変異を導入するための方法として開発された(Thomasら,1986,Cell 44:419−28;ThomasおよびCapecchi,1987,Cell 51:503−12;Doetschmanら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci,U.S.A.85:8583−87)か、または欠損遺伝子内の特定の変異を矯正するための方法として開発された(Doetschmanら,1987,Nature,330:576−578)。例示的な相同組換え技術は、米国特許第5,272,071(欧州特許第9193051号,欧州特許第505500号;国際特許出願PCT/US90/07642、国際公開WO91/09955)に記載されている。
相同組換えにより、ゲノムに挿入されるべきDNA配列は、目的の遺伝子を標的化DNAに付着させることによって目的の遺伝子の特定の領域に指向され得る。標的化DNAは、ゲノムDNAの領域に相補的(相同)であるヌクレオチド配列である。標的化DNAの小片であって、ゲノムの特定の領域に相補的であるものは、DNA複製プロセスの間に親の鎖と接触するようにおかれる。これは、ハイブリダイズしてそれゆえ共通の相同領域を通じて内因性DNAの他の片と組換わるように細胞中に挿入されたDNAの一般的特性である。この相補的鎖が、変異あるいは異なる配列またはさらなるヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドに付着される場合、この相補的鎖もまた、組み換えの結果として、新たに合成される鎖へと組み込まれる。プルーフリーディング機能の結果として、DNAの新たな配列がテンプレートとして機能することが可能となる。従って、移入されたDNAがゲノムに組み込まれる。
標的化DNAのこれらの片に付着されるのは、HER−2svポリペプチドの発現と相互作用し得るかまたは制御し得るDNAの領域である(例えば、隣接配列)。例えば、プロモーター/エンハンサーのエレメント、サプレッサー、または外因性の転写調節エレメントは、意図される宿主細胞のゲノムに、所望のHER−2svポリペプチドをコードするDNAの転写に影響するに十分近位および方向において挿入される。制御エレメントは、宿主細胞ゲノムに存在するDNAの一部を制御する。従って、所望のHER−2svポリペプチドの発現は、HER−2sv遺伝子自身をコードするDNAのトランスフェクションによってではなく、むしろHER−2sv遺伝子の転写のために認識可能なシグナルを有する内因性遺伝子配列を提供するDNA調節セグメントと組み合わされた標的化DNA(目的の内因性遺伝子と相同性の領域を含む)の使用によって達成され得る。
例示方法において、細胞における所望される標的化遺伝子(すなわち、所望の内因性細胞遺伝子)の発現は、少なくとも制御配列、エキソンおよびスプライスドナー部位を含むDNAの、導入によって予備選択された部位において細胞ゲノム中への相同組換えを介して変更される。これらの成分は、染色体(ゲノム)DNAに、実際これが新たな転写単位の生産を生じるような様式で導入される(ここで、そのDNA構築物に存在する調節配列、エキソンおよびスプライスドナー部位は、内因性遺伝子に作動可能に連結されている)。これらの成分の染色体DNAへの成分の導入の結果として、所望の内因性遺伝子の発現が変更される。
本明細書において記載される変更された遺伝子発現は、得られた細胞において通常サイレント(発現されていない)な遺伝子を活性化すること(または発現されるように生じさせること)、ならびに得られる細胞において生理学的に有意なレベルで発現されない遺伝子の発現を増強することを包含する。この実施形態は、さらに、得られる細胞において生じる調節または導入のパターンとは異なるような調節または導入のパターンを変化させること、ならびに得られる細胞において発現される遺伝子の発現を減少させる(消去することを含む)ことを包含する。
相同組み換えを使用して、細胞の内因性HER−2sv遺伝子から、HER−2svポリペプチド生産を増強または生じさせ得る1つの方法は、第一に、相同組み換えを用いて部位特異的組換え系からの組換え配列(例えば、Cre/loxP,FLP/FRT)(Sauer,1994,Curr.Opin.Biotechnol.,5:521−527;Sauer,1993,Methods Enzymol.,225:890−900)を、細胞の内因性ゲノムHER−2svポリペプチドコード領域の上流(すなわち5’側)に配置することを包含する。ゲノムHER−2svポリペプチドコード領域のすぐ上流に配置された部位と相同な組換え部位を含むプラスミドは、適切なリコンビナーゼ酵素とともに改変された細胞株に導入される。このリコンビナーゼは、細胞株においてゲノムHER−2svポリペプチドコード領域のすぐ上流に配置される組換え部位に、プラスミドの組換え部位を介して、プラスミドが組み込まれるようにさせる(BaubonisおよびSauer,1993,Nucleic Acids Res.,21:2025−2029;O’Gormanら,1991,Science,251:1351−1355)。転写を増強することが知られる任意の隣接配列(例えば、エンハンサー/プロモーター、イントロン、翻訳エンハンサー)は、このプラスミドに適切に配置されるとき、細胞の内因性HER−2sv遺伝子から、デノボでまたは増強されたHER−2svポリペプチド産生を生じる新たなまたは改変された転写単位を作製するような様式で組み込まれる。
部位特異的組換え配列が細胞の内因性ゲノムHER−2svポリペプチドコード領域の直ぐ上流に配置された細胞株を使用するさらなる方法は、細胞株ゲノムにおいてその他の場所で第二の組換え部位に導入するように相同組み換えを用いることである。次いで、適切なリコンビナーゼ酵素は、2つの組換え部位の細胞株へと導入され、組換え事象が生じ(欠失、反転、トランスロケーション)(Sauer,1994,Curr.Opin.Biotechnol.,5:521−527;Sauer,1993,Methods Enzymol.,225:890−900)、これは、細胞の内因性のHER−2sv遺伝子からデノボのまたは増強されたHER−2svポリペプチド産生を生じる新たなまたは改変された転写単位を生じる。
細胞の内因性のHER−2sv遺伝子からのHER−2svポリペプチドの発現を増強させるためまたは生じるためのさらなるアプローチは、細胞の内因性HER−2sv遺伝子からデノボまたは増強されたHER−2svポリペプチド産生を生じるような様式で、遺伝子(単数または複数)(例えば、転写因子)の発現を増強または生じさせることおよび/または遺伝子(単数または複数)(例えば、転写リプレッサー)の発現を減少させることを包含する。この方法は、天然に存在しないポリペプチド(例えば、転写因子ドメインに融合された部位特異的DNA結合ドメインを含むポリペプチド)を、細胞に導入し、その結果、細胞の内因性のHER−2sv遺伝子からデノボまたは増強されたHER−2svポリペプチドの産生が、生じることを包含する。
本発明は、標的遺伝子の発現を変更する方法において有用なDNA構築物にさらに関する。特定の実施形態において、例示のDNA構築物は、(a)1つ以上の標的化配列;(b)調節配列;(c)エキソン;および(d)対でないスプライスドナー部位を含む。DNA構築物における標的化配列は、エレメント(a)−(d)を細胞内の標的遺伝子に組み込み、その結果、エレメント(b)−(d)が内因性標的遺伝子の配列に作動可能に連結されるようになることを指向する。別の実施形態において、このDNA構築物は、(a)1つ以上の標的化配列、(b)調節配列、(c)エキソン、(d)スプライス−ドナー部位、(e)イントロン、および(f)スプライスアクセプター部位を含む。ここで、標的配列は、エレメント(a)−(f)を組み込んで、その結果、(b)−(f)のエレメントが内因性遺伝子に作動可能に連結されるようになる。標的化配列は、相同組換え生じる細胞の染色体DNAにおいて予備選択される部位と相同である。この構築物において、そのエキソンは、概して調節配列の3’側にあり、そしてスプライスドナー部位は、エキソンの3’側にある。
特定の遺伝子の配列(例えば、本明細書において提示されるHER−2svポリペプチドの核酸配列)が知られている場合、その遺伝子の選択された領域に相補的なDNAの片を合成または他の方法で入手し得る(例えば、目的の領域と境界を接する特定の認識部位で、ネイティブDNAの適切な制限による)。この片は、その細胞への挿入の際に標的化配列として作用し、そしてそのゲノム内のその相同領域にハイブリダイズする。このハイブリダイゼーションがDNA複製の間に生じる場合、このDNAの片およびそれに付随する任意の他のさらなる配列は、Okazakiフラグメントとして作用し、そしてDNAの新たに合成された娘鎖中に取り込まれる。従って本発明は、HER−2svポリペプチドコードするヌクレオチドを含み、このヌクレオチドは、標的化配列として使用され得る。
HER−2svポリペプチド細胞治療(例えば、HER−2svポリペプチドを産生する細胞の移植)もまた、企図される。この実施形態は、HER−2svポリペプチドの生物学的に活性な形態を合成および分泌し得る細胞を移植する工程を包含する。そのようなHER−2svポリペプチド産生細胞は、HER−2svポリペプチドの天然のプロデューサーである細胞であり得るか、あるいはそれがHER−2svポリペプチドを産生する能力が、所望のHER−2svポリペプチドをコードする遺伝子またはHER−2svポリペプチドの発現を増強する遺伝子で形質転換されることによって増強された、組換え細胞であり得る。このような改変は、その遺伝子の送達のために、ならびにその遺伝子の発現および分泌を促進するために適切なベクターの手段により達成され得る。外来種のポリペプチドの投与とともに生じ得るような、HER−2svポリペプチドが投与される患者において可能な免疫学的反応を最小化するために、HER−2svポリペプチドを産生する天然の細胞がヒト起源のものであって、そしてヒトHER−2svポリペプチドを産生することが好ましい。同様に、HER−2svポリペプチドを産生する組換え細胞は、ヒトHER−2svポリペプチドをコードする遺伝子を含む発現ベクターで形質転換されることが好ましい。
移植された細胞は、周囲の組織の浸潤を回避するためにカプセル化され得る。ヒトまたは非ヒト動物の細胞は、HER−2svポリペプチドの放出を可能にするが患者の免疫系または周囲組織からの他の悪性因子による細胞の破壊を予防する生体適合性の半透過性ポリマー封入物または膜中で、患者に移植され得る。あるいは、HER−2svポリペプチドをエキソビボで産生するように形質転換された患者自身の細胞は、そのようなカプセルなしで患者に直接移植され得る。
生存細胞のカプセル化のための技術は、当該分野において公知であり、そして患者におけるカプセル化された細胞の調製およびそれらの移植は、慣用的に行われ得る。例えば、Baetgeら(国際公開WO95/05452;国際出願PCT/US94/09299)は、生物学的に活性な分子の有効な送達のために遺伝子操作された細胞を含む膜カプセルを記載する。カプセルは、生体適合性であり、そして容易に取り出し可能である。カプセルは、組換えDNA分子でトランスフェクトされた細胞をカプセル化する。この分子は、哺乳動物宿主中に移植される際にインビボで下方制御に供されないプロモーターに作動可能に連結された、生物学的に活性な分子をコードするDNA配列を含む。このデバイスは、レシピエント内の特定の部位に生存する細胞からの分子の送達を提供する。さらに、以下を参照のこと:米国特許第4,892,538号、同第5,011,472号および同第5,106,627号。生存する細胞をカプセル化するための系は、以下に記載される:国際公開WO91/10425(Aebischerら)。以下もまた参照のこと:国際公開WO91/10470(Aebischerら)、Winnら,Exper.Neurol.,113:322−29(1991)、Aebischerら,Exper.Neurol.,111:269−275(1991);およびTrescoら,ASAIO,38:17−23(1992)。
HER−2svポリペプチドのインビボおよびインビトロの遺伝子治療送達もまた、企図される。遺伝子治療技術の一つの例は、HER−2svポリペプチドをコードするHER−2sv遺伝子(ゲノムDNA、cDNAおよび/または合成DNAのいずれか)を使用することである。この遺伝子は、構成的または誘導性のプロモーターと作動可能に連結されて、「遺伝子治療DNA構築物」を形成し得る。このプロモーターは、構築物が挿入される細胞または組織の型においてそれが活性である限り、内因性HER−2sv遺伝子に対して同種であってもよく、異種であってもよい。遺伝子治療DNA構築物の他の成分は、必要に応じて、部位特異的組み込みのために設計されたDNA分子(例えば、相同組換えのために有用な内因性配列)、組織特異的プロモーター、エンハンサーまたはサイレンサー、親の細胞よりも選択的利点を提供し得るDNA分子、形質転換された細胞を同定するための標識として有用なDNA分子、ネガティブ選択系、細胞特異的結合因子(例えば、細胞標的化について)、細胞特異的インターナリゼーション因子、およびベクターによって発現を増強する転写因子、ならびにベクター製造を可能にする因子が挙げられる。
遺伝子治療DNA構築物は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを使用して、細胞(エキソビボまたはインビボのいずれかで)に導入され得る。遺伝子治療DNA構築物を導入するための一つの手段は、本明細書において記載されるウイルスベクターの手段による。特定のベクター(例えば、レトロウイルスベクター)は、細胞の染色体DNAに対してこの遺伝子治療DNA構築物を送達し、そしてその遺伝子は、染色体DNA中に組み込まれ得る。他のベクターは、エピソームとして機能し、そして遺伝子治療DNA構築物は、細胞質に残存する。
さらに他の実施形態において、調節エレメントは、標的細胞中にHER−2sv遺伝子の制御された発現のために包含され得る。そのようなエレメントは、適切なエフェクターに対する応答においてスイッチオンされる。このようにして、治療ポリペプチドは、所望の場合に発現され得る。1つの慣用される制御手段は、低分子結合ドメインおよび生物学的プロセスを開始し得るドメインを含むキメラタンパク質(例えば、DNA結合タンパク質または転写活性化タンパク質)をダイマー化するための低分子ダイマー化剤またはラパログ(rapalog)(国際公開WO96/41865、WO97/31898、およびWO97/31899を参照のこと)の使用を包含する。そのタンパク質のダイマー化を使用して、導入遺伝子の転写を開始し得る。
代替調節技術は、凝集物またはクラスターとして細胞内に目的の遺伝子から発現されるタンパク質を格納する方法を使用する。目的の遺伝子は、従来の凝集ドメインを含む誘導タンパク質として発現され、これは、小胞体内での凝集タンパク質の保持を生じる。格納されたタンパク質は、細胞内で安定かつ不活性である。しかし、そのタンパク質は、条件つき凝集ドメインを除き、それにより凝集物またはクラスターから離れて特異的に破壊する薬物(例えば、低分子リガンド)を投与し、その結果そのタンパク質がその細胞から分泌され得ることによって放出され得る。以下を参照のこと:Aridorら、2000,Science 287:816−817、およびRiveraら,2000,826−830。
他の適切な制御手段または遺伝子スイッチとしては、本明細書中に記載される系が挙げられるがそれらに限定されない。ミフェプリストン(RU486)は、プロゲステロンアンタゴニストとして使用される。改変されたプロゲステロンレセプターリガンド結合ドメインのプロゲステロンアンタゴニストへの結合が、2つの転写因子のダイマーを形成し、次いでこれが核に入りDNAに結合することによって、転写を活性化する。このリガンド結合ドメインは、天然のリガンドへそのレセプターが結合する能力を除去するように改変される。改変されたステロイドホルモンレセプター系は、さらに米国特許第5,364,791号、国際公開WO96/40911およびWO97/10337で記載される。
さらに別の制御系は、エクジソン(ショウジョウバエステロイドホルモン)を使用する。これは、エクジソンレセプター(細胞質レセプター)に結合し、活性化する。次いで、このレセプターは、核に移行し、特定のDNA応答エレメント(エクジソン応答遺伝子からのプロモーター)に結合する。エクジソンレセプターは、転写を開始するためのトランス活性化ドメイン、DNA結合ドメインおよびリガンド結合ドメインを含む。エクジソン系は、さらに、米国特許第5,514,578号、国際公開WO97/38117、WO96/37609、およびWO93/03162で記載される。
別の制御手段は、陽性のテトラサイクリン制御可能なトランスアクチベーターを使用する。この系は、転写を活性化するポリペプチドに連結された、変異されたtetリプレッサータンパク質DNA結合ドメイン(変異されたtet R−4アミノ酸変異を含み、これは、反転テトラサイクリン制御されたトランスアクチベータータンパク質を生じる。すなわち、これは、テトラサイクリンの存在下でtetオペレーターに結合する)を含む。そのような系は、米国特許第5,464,758号、同第5,650,298号および同第5,654,168号で記載されている。
さらなる発現制御系および核酸構築物は、Innovir Laboratories Incに対する米国特許第5,741,679号および同第5,834,186号で記載されている。
インビボ遺伝子治療は、HER−2svポリペプチドをコードする遺伝子を、HER−2sv核酸分子の局所注入または他の適切なウイルスもしくは非ウイルス送達ベクターによって、細胞中に導入することによって行われ得る。Hefti,Neurobiology,25:1418−1435。例えば、HER−2svポリペプチドをコードする核酸分子は、標的化された細胞に送達するためにアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)中に含まれ得る(例えば、Johnson,国際公開WO95/34670、国際出願PCT/US95/07178を参照)。組換えAAVゲノムは代表的に、機能的プロモーターおよびポリアデニル化配列に作動可能に連結された、HER−2svポリペプチドをコードするDNA配列に隣接するAAV反転末端反復を含む。
代替の適切なウイルスベクターは、以下が挙げられるがそれらに限定されない:レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス、肝炎ウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルスおよびパピローマウイルスのベクター。米国特許第5,672,344号は、組換え神経栄養性HSV−1ベクターを含むインビボウイルス媒介遺伝子移入系を記載する。米国特許第5,399,346号は、インビトロで治療タンパク質をコードするDNAセグメントが挿入されるように処理されたヒト細胞の送達によって治療タンパク質を患者に提供するためのプロセスの例を提供する。遺伝子治療の実施のためのさらなる方法および材料は、以下に記載されている:米国特許第5,631,236号(これは、アデノウイルスベクターを含む);米国特許第5,672,510号(これは、レトロウイルスを含む);および米国特許第5,635,399号(これは、サイトカインを発現するレトロウイルスベクターを含む)。
非ウイルス送達方法としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:リポソーム媒介性移入、裸のDNA送達(直接注射)、レセプター媒介性移入(リガンド−DNA複合体)、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、および微粒子ボンバードメント(例えば、遺伝子銃)。遺伝子治療材料および方法はまた、誘導性プロモーター、組織特異的エンハンサー−プロモーター、部位特異的組み込みのために設計されたDNA配列、親の細胞よりも選択的利点を提供し得るDNA配列、形質転換された細胞を同定するための標識、ネガティブ選択系および発現制御系(安全手段)、細胞特異的結合因子(細胞標的化のため)、細胞特異的インターナリゼーション因子、およびベクターによる発現を増強するための転写因子ならびにベクター製造の方法をも包含し得る。遺伝子治療技術の実施のためのそのようなさらなる方法および材料は、米国特許第4,970,154号(これは、エレクトロポレーション技術を含む)、米国特許第5,679,559号(これは、遺伝子送達のためのリポタンパク質含有系を記載する)、米国特許第5,676,954号(これは、リポソームキャリアを含む)、米国特許第5,593,875号(これは、リン酸カルシウムトランスフェクションのための方法を含む)、米国特許第4,945,050号(ここでは、生物学的に活性な粒子は、その粒子が細胞の表面に浸透し、そしてその細胞の内部へと取り込まれるようになる速度で細胞に噴霧される)、ならびに国際公開WO96/40958(核リガンドを含む)で記載される。
HER−2sv遺伝子治療または細胞治療は、さらに同じ細胞もしくは異なる細胞における1種以上のさらなるポリペプチドの送達を含むことが、企図される。そのような細胞は、患者に別々に導入され得るか、またはその細胞は、単一の移植可能なデバイス(例えば、上述のカプセル化膜)中に含まれ得るか、またはその細胞はウイルスベクター手段によって別個に改変され得る。
遺伝子治療を介した、細胞における内因性HER−2svポリペプチド発現を増強するための手段は、HER−2svポリペプチドプロモーター中に1つ以上のエンハンサーエレメントを挿入することである。ここで、このエンハンサーエレメントは、HER−2sv遺伝子の転写活性を増強するように働き得る。このエンハンサーエレメントは、その遺伝子を活性化することが所望される組織に基づいて選択される。その組織中でのプロモーター活性化を付与することが知られるエンハンサーエレメントが選択される。例えば、HER−2svポリペプチドをコードする遺伝子がT細胞において「スイッチオン」されるべき場合、lckプロモーターエンハンサーエレメントが使用され得る。ここで、加えられるべき転写エレメントの機能的部分は、標準的なクローニング技術を用いてHER−2svポリペプチドプロモーターを含むDNAフラグメント中に挿入され得る(そして、必要に応じて、ベクターならびに/または5’および/もしくは3’隣接配列など中に挿入される)。次いで、「相同組換え構築物」として知られるこの構築物は、エキソビボまたはインビボでのいずれかで所望の細胞中に導入され得る。
遺伝子治療は、内因性プロモーターのヌクレオチド配列を改変することによってHER−2svポリペプチド発現を減少するために使用され得る。そのような改変は、代表的に、相同組換え法を介して行われる。例えば、不活化することについて選択されたHER−2sv遺伝子のプロモーターのすべてまたは一部を含むDNA分子は、操作されて、転写を調節するプロモーターの片を除去および/または置き換えることができる。例えば、TATAボックスおよび/またはプロモーターの転写アクチベーターの結合部位は、標準的な分子生物学的技術を用いて欠失され得る。そのような欠失は、プロモーター活性を阻害し、それにより対応するHER−2sv遺伝子の転写を抑制することができる。プロモーターにおけるTATAボックスまたは転写アクチベーター結合部位の欠失は、HER−2svポリペプチドプロモーター(制御されるべきHER−2sv遺伝子と同じまたは関連する種からの)のすべてまたは関連する部分を含むDNA構築物を作製することによって達成され得る。ここでは、TATAボックスおよび/または転写アクチベーター結合部位のヌクレオチドの1つ以上が、1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入によって変異されている。結果として、TATAボックスおよび/またはアクチベーター結合部位は、活性が減少しているか、または完全に不活化されている。この構築物はまた、代表的に、改変されたプロモーターセグメントに隣接するネイティブの(内因性の)5’および3’のDNA配列に対応するDNAの少なくとも約500塩基を含み、この構築物は、直接または本明細書に記載されるウイルスベクターを介してのいずれかで、適切な細胞中に(エキソビボまたはインビボのいずれかで)導入され得る。代表的に、その構築物のその細胞のゲノムDNAへの組み込みは、相同組み換えを介する。ここで、プロモーター構築物における5’および3’のDNA配列は、内因性染色体DNAに対するハイブリダイゼーションを介して改変されたプロモーター領域への組み込みを補助するように働き得る。
(15.治療的使用)
HER−2sv核酸分子、ポリペプチド、それらのアンタゴニストは、本明細書中で記載されたものを含む、多数の疾患、障害または状態の処置、診断、改善または予防するために使用され得る。
HER−2svポリペプチドアンタゴニストは、HER−2svポリペプチドの成熟形態の少なくとも1つの活性を減少させることにより、HER−2svポリペプチド活性を調節する分子を含む。アンタゴニストは、Her−2svペプチドと相互作用し、その結果、Her−2svポリペプチドの活性を調節するコファクター(例えば、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、または低分子量分子)であり得る。潜在的なポリペプチドアンタゴニストは、所定のタンパク質の一部または全ての細胞外ドメインを含むHER−2svポリペプチドの可溶性形態または膜結合形態のいずれかと反応する抗体を含む。HER−2svポリペプチドの発現を調節する分子は、代表的には、発現のアンチセンスレギュレーターとして働き得るHER−2svポリペプチドをコードする核酸を含む。
異常なHER−2発現が、多数のヒトの癌(乳癌、卵巣癌、胃癌、肺癌および口腔癌を含む)において検出されたことから、HER−2sv核酸分子、ポリペプチド、およびそれらのアンタゴニストは、疾患(乳癌、卵巣癌、胃癌、肺癌および口腔癌を含む)の診断または処置において有用であり得る。HER−2svポリペプチドを含む他のヒト癌腫は、本発明の範囲内に含まれる。
HER−2svポリペプチド機能のアンタゴニストは、処置される状態に適合させて、1種以上のサイトカイン、増殖因子、抗生物質、抗炎症剤、または化学療法薬との組み合わせで使用され得る(同時にまたは順次に)。
HER−2svポリペプチドの望ましくないレベルに起因するまたは媒介される他の疾患または障害は、本発明の範囲内に含まれる。好ましくは、望ましくないレベルは、HER−2svポリペプチドの過剰なレベルを含む。
(16.HER−2sv核酸およびポリペプチドの使用)
本発明の核酸分子(それら自身は、生物学的に活性なポリペプチドをコードしないものを含む)は、染色体上のHER−2sv遺伝子および関連遺伝子の位置をマッピングするために使用され得る。マッピングは、当該分野において公知の技術(例えば、PCR増幅およびインサイチュハイブリダイゼーション)によって行われ得る。
HER−2sv核酸分子(それら自身は、生物学的に活性なポリペプチドをコードしないものを含む)は、哺乳動物の組織または体液のサンプル中でのHER−2sv核酸分子の存在を、定性的にもしくは定量的に、試験するための診断アッセイにおいてハイブリダイゼーションプローブとして有用であり得る。
1種以上のHER−2svポリペプチドの活性を阻害することが、所望される場合、他の方法もまた、使用され得る。そのような阻害は、発現制御配列(3重らせん構造)もしくはHER−2sv mRNAに対し相補的であり、ハイブリダイズする核酸分子によって、影響され得る。例えば、HER−2sv遺伝子の少なくとも1部と相補的な配列を有するアンチセンスDNA分子またはアンチセンスRNA分子は、細胞へ導入され得る。アンチセンスプローブは、本明細書中で開示されているHER−2sv遺伝子の配列を使用した利用可能な技術によって設計され得る。代表的に、そのようなアンチセンス分子各々は、選択されたHER−2sv遺伝子各々の出発部位(5’末端)に対して相補的である。次いで、アンチセンス分子が、対応するHER−2sv mRNAにハイブリダイズする場合、このmRNAの翻訳は、妨げられるもしくは減少させられる。アンチセンスインヒビターは、細胞または器官におけるHER−2svポリペプチドの減少または欠損に関する情報を提供する。
あるいは、遺伝子治療は、1種以上のHER−2svポリペプチドのドミナントネガティブなインヒビターを作製するために使用され得る。この場合、選択されたHER−2svポリペプチドの各々の変異体ポリペプチドをコードするDNAは、調製され、本明細書中で記載されるように、ウイルス方法または非ウイルス方法のいずれかを使用して、患者の細胞へと導入され得る。そのような変異体の各々は、代表的に生物学的役割において、内因性のポリペプチドと競合するように設計される。
さらに、生物学的に活性か活性でないかに関わらず、HER−2svポリペプチドは、免疫原(少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドであり、このエピトープに対して抗体は惹起させられ得る)として使用され得る。HER−2svポリペプチドに結合する選択的結合因子(本明細書中で記載するように)は、インビボおよびインビトロでの診断目的に使用され得る。これには、体液サンプルまたは細胞サンプル中のHER−2svポリペプチドの存在を検出するための標識化された形態での使用が挙げられるが、これに限定されない。本明細書中で列挙したものを含む、多くの疾患および障害を予防、処置または診断するために抗体もまた使用され得る。抗体は、HER−2svポリペプチドの少なくとも1つの活性の特徴を減少または妨げるために、HER−2svポリペプチドに結合し得る。もしくは、抗体は、HER−2svポリペプチドの少なくとも1つの活性の特徴を増加させるために(HER−2svポリペプチドの薬物動態を上昇させることが含まれる)、ポリペプチドに結合し得る。
本発明のヒトHER−2sv核酸はまた、対応する染色体HER−2svポリペプチド遺伝子を単離するために有用な道具である。ヒトHER−2svゲノムDNAは、遺伝性の組織変性疾患を同定するために、使用され得る。
以下の実施例は、説明目的のみを意図するのであって、本発明の範囲を制限するとしていかなるようにも解釈されるべきでない。
(実施例1:HER−2スプライス改変体のクローニング)
一般的に、Sambrookら、前出において記載されるような材料および方法を、ラットHER−2svポリペプチドをコードする遺伝子のクローニングおよび分析に使用した。
HER−2スプライス改変体cDNA配列を単離するために、アンプリマー2771−31(5’−C−G−G−T−C−G−A−C−G−A−G−C−T−C−G−A−G−G−G−T−C−3’;配列番号14)およびアンプリマー2771−33(5’−C−A−G−T−C−T−C−C−G−C−A−T−C−G−T−G−T−A−C−T−T−C−C−G−3’;配列番号15)を使用したPCRによって所有のヒト組織cDNAライブラリアレイをスクリーニングした。PCR増幅は、50μlの最終容量中で100ngのヒト組織cDNAテンプレート、10ngのClontech MarathonヒトcDNAテンプレート、または10ngのClontech Marathonヒト異種移植片cDNAテンプレートのいずれか;10pmolのアンプリマー;Advantage−HF2 PCRキット(Clontech);および2μlのGC−Melt(Clontech)を使用して調製された。反応は、94℃で2分間を1サイクル;94℃で30秒間、65℃で30秒間および72℃で3分間を40サイクル、次いで72℃で7分間を1サイクルで実行した。
この第1のPCRにより産生される生成物を第1のPCRからの生成物を1mlおよびアンプリマー2771−32(5’−G−A−G−C−C−G−C−A−G−T−G−A−G−C−A−C−C−A−T−G−G−A−G−3’;配列番号16)ならびにアンプリマー2771−34(5’−G−C−T−G−C−C−G−T−C−G−C−T−T−G−A−T−G−A−G−G−A−T−C−3’;配列番号17)、そして最初のPCRにおいて使用された同じ条件を使用したネスト化されたPCR増幅において再び増幅した。ネスト化されたPCR増幅において産生されたPCR生成物をゲル電気泳動により分析した。以下のcDNAライブラリにおいて種々の大きさの産物が検出された:胎児胃、胎児膵臓、胎児腎臓、胎児肺、胎児心臓、子宮、精巣、胎盤、胎児頭皮、胎児頭蓋冠、脊柱、気管、肺腫瘍、T1543乳腫瘍、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、前立腺腫瘍、胎児の小腸、および、単核循環リンパ球。これら、生成物を、ベクターpGEM−T EASYに結合し、E.coliを形質転換するために使用した。プラスミドDNAを各々の形質転換から単離された6個の個々のコロニーから単離し、その挿入物の配列を決定した。
PCRスクリーニングにおいて、HER−2レセプターチロシンキナーゼ遺伝子の細胞外ドメインの5種のスプライス改変体が、同定された。図6A〜6Cは、ヒトHER−2(配列番号11)の細胞外部分のアミノ酸配列アラインメントおよび5種のスプライス改変体によってコードされているポリペプチドを描写する。これら、スプライス改変体は、HER−2sv形態97(配列番号4)、HER−2sv184(配列番号10)、HER−2sv119(配列番号6)、HER−2sv68(配列番号2)、およびHER−2sv156(配列番号8)を含んでいた。
図7は、HER−2sv遺伝子およびヒトHER−2sv形態119、184、97、68、156の細胞外ドメインの公知の形態の構造の概略図を示す。HER−2sv細胞外ドメインの公知の形態は、17のエキソンからなる。構造的に、2つのLレセプタードメイン、フリン様ドメイン、および膜貫通ドメインを有する。レセプターLドメインはリガンド結合ドメインである。そのようなドメインの各々は、1本鎖右手βヘリックスからなる。フリン様ドメインは、シグナル伝達に関わる種々のタンパク質において見出されるシステインリッチ領域である。
HER−2sv形態119において、HER−2sv細胞外ドメインの公知の形態のエキソン9とエキソン10との間のさらなるエキソンは、さらなる39アミノ酸をコードする。このさらなる配列は、HER−2の第2のL−ドメインを妨害する。形態119の配列は、頭皮cDNAライブラリにおいて検出された。
HER−2sv形態184において、HER−2sv細胞外ドメインの公知の形態のエキソン14とエキソン15との間のさらなるエキソンは、さらなる34アミノ酸をコードする。このさらなる配列は、HER−2のL−ドメインまたはフリン様ドメインを妨害しない。形態184の配列は、気管cDNAライブラリにおいて検出された。
HER−2sv形態97は、HER−2sv細胞外ドメインの公知の形態のエキソン16を欠いている。エキソン16の欠損は、HER−2のL−ドメインまたはフリン様ドメインを妨害しない。形態97の配列は、頭蓋冠cDNAと気管cDNAライブラリとの両方で検出された。
HER−2sv形態68は、HER−2sv細胞外ドメインの公知の形態のエキソン7およびエキソン12内に異常なスプライシング部位を有し、187アミノ酸の欠損を生じる。HER−2のこの部分の欠損は、フリン様ドメインのほとんど、および第2のレセプターLドメインのほとんどを除去する。形態68の配列は、胎児腎臓のcDNAライブラリ、精巣のcDNAライブラリ、結腸腫瘍のcDNAライブラリ、およびT1543乳癌のcDNAライブラリにおいて検出された。
HER−2sv形態156は、HER−2細胞外ドメインの公知の形態のエキソン4およびエキソン15内に異常なスプライシング部位を有し、187アミノ酸の欠損を生じる。エキソン4における異常なスプライシング部位は、フレームシフトおよび成熟前終止コドンをもたらす。このスプライス改変体は、フリン様ドメインと第2のレセプターLドメインとの両方を欠く。形態156の配列は、T1543乳癌のcDNAライブラリにおいて検出された。
(実施例2:HER−2sv mRNA発現)
HER−2sv mRNAの発現は、ノーザンブロット分析によって検査された。多数のヒト組織ノーザンブロット(Colontech)をヒトHER−2svポリペプチドcDNAクローンから単離された適切な制限フラグメントで調べる。プローブを標準的な技術を使用して32P−dCTPで標識する。
ノーザンブロットを、42℃で2時間、ハイブリダイゼーション溶液中(5X SSC,50%脱イオン化ホルムアミド、5XDenhardt溶液、0.5%SDSおよび100mg/ml変性サケ精子DNA)でプレハイブリダイズし、水で、42℃で一晩、1ng/mlの標識されたプローブを含む新しいハイブリダイゼーション溶液中でハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション後、フィルターを室温で10分間、0.1%SDSを含む2×SSC中で2回洗浄し、次いで、65℃で30分間0.1%SDSを含む0.2×SSC中で2回洗浄した。そして、ブロットを、オートラジオグラフィーに暴露する。
HER−2sv mRNAの発現は、インサイチュハイブリダイゼーションによって局在化される。正常な胚組織およびマウスの成体組織のパネルを、4%のパラホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン中に包埋し、5μmで切り出す。切り出された組織は、0.2M HCl中で透過化処理され、プロテイナーゼKで切断し、トリエタノールアミンおよび無水酢酸でアセチル化する。切片を60℃で1時間、ハイブリダイゼーション溶液中(300mM HCl、20mM Tris−HCl(pH8.0)、5mM EDTA、1XDenhardt溶液、0.2% SDS、10mM DTT、0.25mg/ml tRNA、25μg/ml polyA、25μg/ml polyCおよび50%ホルムアミド)でプレハイブリダイズする。次いで、60℃で一晩、10%デキストランおよび2×104cpm/μlのヒトHER−2sv遺伝子に対して相補的な32P−標識化アンチセンスリボプローブを含む同じ溶液中でハイブリダイズする。リボプローブは、標準的な技術を使用した、ヒトHER−2sv cDNA配列を含むクローンのインビトロでの転写によって得る。
ハイブリダイゼーションの後、切片をハイブリダイゼーション溶液中でリンスし、ハイブリダイズしなかったプロ−ズを背一断するためにRNaseAで処理し、次いで、55℃で30分間、0.1X SSC中で洗浄する。そして、切片を、NTB−2エマルジョン(Kodak,Rochester,NY)中に浸し、4℃で3週間、露光し、現像し、そしてヘマトキシリンおよびエオシンで対比染色した。組織形態学およびハイブリダイゼーションシグナルを、脳(1つの矢状切片2つの冠状切片)、消化管(食道、胃、十二指腸、回腸、近位結腸および遠位結腸)、下垂体、肝臓、肺、心臓、脾臓、胸腺、リンパ節、腎臓、副腎、膀胱、膵臓、唾液腺、オスおよびメスの生殖器官(メスにおける卵巣、卵管および子宮;ならびにオスにおける精巣、精巣上体、前立腺、精嚢、および輸精管)、BATおよびWAT(皮下、表皮)、骨(大腿骨)、皮膚、乳、および骨格筋に対するダークフィールド(darkfield)および標準的なイルミネーション(illumination)によって同時に分析する。
(実施例3:HER−2svポリペプチドの産生)
(A.細菌におけるHER−2svポリペプチドの発現)
PCRを用いて、HER−2svポリペプチドをコードするテンプレートDNA配列を増幅する。このPCRには、この配列の5’および3’末端に対応するプライマーを用いる。増幅したDNA産物を改変して、発現ベクター内への挿入を可能にするために制限酵素部位を含むようにし得る。PCR産物をゲル精製し、そして標準的組み換えDNA方法論を用いて発現ベクター中に挿入する。luxプロモーターおよびカナマイシン耐性をコードする遺伝子を含むpAMG21(ATCC番号98113)のような代表的ベクターを、挿入したDNAの方向性クローニングのために、BamHIおよびNdeIを用いて消化する。連結した混合物を、エレクトロポレーションによってE.coli宿主株中に形質転換し、そして形質転換体をカナマイシン耐性について選択する。選択したコロニー由来のプラスミドDNAを、単離し、そしてDNA配列決定に供して挿入物の存在を確認する。
形質転換した宿主細胞を、誘導前に、30g/mLカナマイシンを含有する2×YT培地中、30℃でインキュベートする。N−(3−オキソヘキサノイル)−dl−ホモセリンラクトンの最終濃度の30ng/mLまでの添加、それに続く30℃かまたは37℃での6時間のインキュベーションによって、遺伝子発現を誘導する。HER−2svポリペプチドの発現を、細菌ペレットの培養物、再懸濁物および溶解物の遠心分離、ならびに、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動による宿主細胞タンパク質の分析によって評価する。
HER−2svポリペプチドを含有する封入体を、以下の通り精製する。細菌細胞を遠心分離によってペレットにし、そして水に再懸濁する。この細胞懸濁液を超音波処理によって溶解し、そして195,000×gでの5〜10分間の遠心分離によってペレット化する。上清を廃棄し、そしてペレットを洗浄してホモジナイザーに移す。このペレットを、均一に懸濁されるまで、5mLのPercoll溶液(75%液体Percoll、0.15M NaCl)中でホモジナイズし、次いで希釈して21,600×gで30分間遠心分離する。封入体を含む勾配画分を回収してプールする。単離した封入体をSDS−PAGEによって分析する。
E.coliが産生したHER−2svポリペプチドに相当する、SDSポリアクリルアミドゲル上の単一のバンドを、ゲルから切り出し、そしてN末端アミノ酸配列を、本質的にMatsudairaら、J.Biol.Chem.262:10〜35(1987)に記載のように決定する。
(B.哺乳動物細胞におけるHER−2svポリペプチドの発現)
PCRを用いて、HER−2svポリペプチドをコードするテンプレートDNA配列を増幅する。このPCRには、この配列の5’および3’末端に対応するプライマーを用いる。5’および3’末端に対応するプライマー配列は上述される。増幅したDNA産物を改変して、発現ベクター内への挿入を可能にするために制限酵素部位を含むようにし得る。PCR産物をゲル精製し、そして標準的組み換えDNA方法論を用いて発現ベクター中に挿入する。Epstein−Barrウイルス複製起点を含む代表的な発現ベクターであるpCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA)を、293−EBNA−1(Epstein−Barrウイルス核抗原)細胞におけるHER−2svの発現のために用い得る。増幅およびゲル精製したPCR産物を、pCEP4ベクターに連結し、そしてリポフェクチンによって293−EBNA細胞中に導入する。トランスフェクトした細胞を、100g/mLのハイグロマイシン中で選択し、そして得られた薬物耐性培養物をコンフルエンスになるまで増殖する。次いで、この細胞を無血清培地中で72時間培養する。馴化培地を取り出し、HER−2svポリペプチド発現をSDS−PAGEによって分析する。
HER−2svポリペプチド発現は、銀染色によって検出し得る。あるいは、HER−2svポリペプチドを、タグペプチドに対する抗体を用いるウエスタンブロット分析によって検出可能である、エピトープタグ(例えば、IgG定常ドメインまたはFLAGエピトープ)を有する融合タンパク質として生成する。
HER−2svポリペプチドを、SDS−ポリアクリルアミドゲルから切り出し得る、またはHER−2sv融合タンパク質を、エピトープタグに対するアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、そして本明細書に記載のようなN末端アミノ酸配列分析に供する。
(C.哺乳動物細胞におけるHER−2svポリペプチドの発現および精製)
HER−2svポリペプチド発現構築物は、リポフェクションプロトコルまたはリン酸カルシウムプロコルのいずれかを用いて293 EBNAまたはCHO細胞に導入される。
産生されるHER−2svポリペプチドでの機能的研究を実施するために、ハイグロマイシンで選択された293EBNAクローンのプールから大量の調製された条件培地が産生される。培地を収集する1週間前に血清を含まない培地へと変える以前に、細胞を500cm Nunc Triple Flask中で80%のコンフルーエンスになるまで培養する。条件培地は、収集され、精製まで−20℃で凍結される。
以下に記載するように、条件培地を親和性クロマトグラフィーによって精製する。培地を解凍し、次いで0.2μmフィルターに通す。タンパク質Gカラムを、PBS(pH7.0)で平衡化し、次いでろ過した培地で充填する。カラムをA280での吸収がベースラインに到達するまでPBSで洗浄する。HER−2svポリペプチドを0.1M Glycine−HCl(pH2.7)でカラムから溶出し、そして直ぐに1M Tris−HCl(pH8.5)で中性化する。HER−2svポリペプチドを含む画分を、プールし、PBS中で透析し、さらに−70℃で保存する。
ヒトHER−2svポリペプチド−Fc融合ポリペプチドの第Xa因子切断のために、アフィニティークロマトグラフィーで精製されたタンパク質を50mM Tris−HCl、100mM NaCl、2mM CaCl2(pH8.0)中で透析する。制限プロテアーゼ第Xa因子を透析されたタンパク質に1/100(重量/重量)で加え、室温で一晩、サンプルを消化する。
(実施例4:抗HER2−svポリペプチド抗体の産生)
Her−2svポリペプチドに対する抗体は、精製されたタンパク質または生物学的合成もしくは化学的合成により産生されたHER−2svタンパク質で免疫することによって得られ得る。抗体を産生するための適切な手順には、HudsonおよびBay,Paractical Immunology(第2版、Blackwell Scientific Publications)で記載されているものが挙げられる。
抗体産生の1つの手順では、動物(代表的には、マウスまたはウサギ)をHer−2sv抗原(例えば、Her−2svポリペプチド)で注射し、そしてELISAによって決定されるように十分は血清力価レベルを有する動物をハイブリドーマ産生のために選択する。免疫された動物の脾臓を収集し、単一細胞懸濁液として調製する。単一細胞懸濁液から、脾細胞を回収する。脾細胞を、マウスの骨髄細胞(例えば、Sp2/0−Ag14細胞)へと融合し、まず200U/mLペニシリン、200μg/mL硫酸ストレプトマイシン、および4mMグルタミンを含むDMEM中でインキュベートし、次いで、HAT選択培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン)中でインキュベートする。選択の後、各融合ウェルから組織培養懸濁液から取り出し、抗HER−2sv抗体産生のためにELISAによって試験をする。
抗HER−2sv抗体を得るための代替的な手順もまた使用され得る。例えば、ヒト抗体産生のためのヒトIg遺伝子座を有する遺伝子組換えマウスの免疫、および合成抗体ライブラリのスクリーニング(例えば、抗体可変ドメインの突然変異により産生されたもの)。
(実施例5:遺伝子組換えマウスでのHER−2svポリペプチドの発現)
HER−2svポリペプチドの生物学的活性を評価するために、肝臓特異的ApoEプロモーターの制御下にあるHER−2svポリペプチド/Fc融合タンパク質を含む構築物が調製される。この構築物の送達は、Her−2svポリペプチドの機能にとって有益な情報となる病理学的変化を生じると期待される。同様に、βアクチンプロモータの制御下にあるHER−2svポリペプチド全長を含む構築物が調製される。この構築物の送達により、普遍的発現が生じるものと考えられる。
これらの構築物を産生するために、HER−2svポリペプチドをコードするテンプレートDNA配列を増幅するようPCRを使用する。このPCRには、所望する配列の5’末端および3’末端に対応し、増幅された生成物を発現ベクターへと挿入することを可能にするよう制限酵素部位を組み入れたプライマーを使用する。増幅の後、PCR産物をゲル精製し、適切な制限酵素で消化し、標準的な組換えDNA技術を用いて発現ベクターに結合した。例えば、Grahamら,1997,Nature Genetics,17:272−74およびRayら,Genes Dev.5:2265−73で記載されているように、増幅されたHER2−svポリペプチド配列は、ヒトβアクチンプロモータの制御下でクローニングされ得る。
結合の後、反応混合物をエレクトロポレーションによる大腸菌の形質転換のために使用し、形質転換体を薬物抵抗性に対して選択する。選択されたコロニー由来のプラスミドベクターを単離し、適切な挿入断片の存在および変異が無いことを確認するためにDNA配列決定に供する。HER−2sv発現ベクターを2回のCsCl密度勾配遠心を介して精製し、適切な制限酵素で切断し、そしてHER−2svポリペプチド導入遺伝子を含む直線的なフラグメントをゲル電気泳動によって精製する。精製されたフラグメントを5mM Tris(pH7.4)および0.2mM EDTA に濃度2mg/mLで最懸濁する。
BDF1xBDF1支給マウス由来の単細胞胚を記載されているように(国際公開WO97/23614)注射する。CO2培養器において一晩、胚を培養し、15〜20個の2細胞胚を偽妊娠のCD1メスマウスの卵管へと移す。微量注入された胚の移植から得られた子孫を、以下に示すようにゲノムDNAサンプル中の組み込まれた導入遺伝子のPCR増幅によってスクリーニングする。耳の一部が、55℃で一晩、20mLの耳緩衝液(20mM Tris(pH8.0)、10mM EDTA、0.5%SDS、および500mg/mLプロテイナーゼK)中で消化する。次いで、サンプルを200mLのTEで希釈し、2mLの耳のサンプルを適切なプライマーを用いたPCR反応に使用する。
8週齢で、遺伝子組換え創始動物およびコントロール動物を、犬歯および病理学の分析のために屠殺する。脾臓の一部を除去し、Total RNA Extraction Kit(Qiagen)を用いて脾臓から総細胞RNAを単離し、そしてRT−PCRにより導入遺伝子の発現を決定する。以下に示すように、脾臓から回収されたRNAを、SuperScriptTM Preamplification System(Gibco−BRL)を用いてcDNAに変換する。発現ベクターの配列内およびHER−2svポリペプチド導入遺伝子の3’に位置する適切なプライマーを、導入遺伝子の転写物からcDNA合成を開始するために使用する。70℃で10分間、遺伝子組換え創始物およびコントロール由来の総脾臓RNAの10mgを1mMのプライマーと共にインキュベートする。次いで、反応に10mM Tris−Hcl(pH8.3)、50 mM KCl、2.5mM MgCl2、10mMの各dNTP、0.1mMDTT、および200UのSuperScriptII逆転写酵素を補う。42℃で50分間インキュベートした後、72℃で15分間、加熱することで反応を止め、さらに37℃で20分間、2UのRNAase Hで消化する。次いで、サンプルをHER−2svポリペプチドに対する特異的なプライマーを用いたPCRにより増幅する。
(実施例6:組換えマウスにおけるHER−2svポリペプチドの生物学的活性)
安楽死の前に、組換え動物の重さを量り、イソフルランにより麻酔をし、そして心臓穿刺により採血する。サンプルを血液学分析および血清化学分析に供する。全採血終了の後、X線撮影を行う。総解剖において、主な内臓器官は、重量分析に供される。
総解剖の後、組織(すなわち、肝臓、脾臓、膵臓、胃、全体的な消化管、腎臓、生殖器、皮膚および乳房、骨、脳、心臓、肺、胸腺、気管、食道、甲状腺、副腎、膀胱、リンパ球および骨格筋)を除去し、組織学的な分析のために10%緩衝化Znホルマリンで固定する。
組換えマウスとコントロールマウスとの両方の脾臓、リンパ球、およびバイエル板を、以下のように、B細胞およびT細胞特異的な抗体と共に免疫組織学の分析に供する。ホルマリン固定されたパラフィン包埋切片を、脱パラフィン化し、脱イオン水中で水分補給する。切片を3%過酸化水素でクエンチし、Protein Block(Lipshaw,Pittsburgh,PA)でブロックし、さらにラットモノクローナル抗マウスB220およびCD3(Harlan,Indianapolis,IN)中でインキュベートする。抗体結合をビオチン標識したラビットの抗ラット免疫グロブリンおよび色素であるDAB(BioTek,Santa Barbara,CA)を伴うペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(Biogenex,San Ramon,CA)により検出する。切片をヘマトキシリンで対比染色する。
検死の後、MLN、および組換え動物ならびにコントロールの同原仔の脾臓の切片ならびに胸腺の切片を除去する。単一細胞懸濁液を、100mmナイロン細胞ろ過器(Becton Dickinson,FranklinLakes,NJ)に対して、シリンジの平らな端で組織を優しく粉砕することにより調製する。細胞を2回洗浄し、数え、次いで各組織由来の約1x106細胞を10分間、20μLの容積中0.5μg CD16/32(FcγIII/II)Fcブロックと共にインキュベートする。次いで、2〜8℃で30分間、CD90.2(Thy−1.2)、CD45R(B220)、CD11b(Mac−1)、Gr−1、CD4またはCD((PharMingen,San Diego,CA)に対する0.5μgのFITCもしくはPE結合モノクローナル抗体の抗体を含む100μL容積のPBS(Ca+およびMg+を欠く)、0.1%ウシ血清アルブミン、および0.01%アジ化ナトリウム中でサンプルを染色する。抗体結合の後、細胞を洗浄し、次いで、FACScan(Becton Dickinson)でのフローサイトメトリーにより分析する。
本発明は好ましい実施形態の面から説明されたが、当業者により変更および改良が加えられることが理解される。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内で生じる全てのこのような等価な改良を網羅することを意図している。