JP2005532792A - 治療薬剤の抗炎症作用および抗酸化作用をモニターするための全身マーカー - Google Patents

治療薬剤の抗炎症作用および抗酸化作用をモニターするための全身マーカー Download PDF

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Abstract

治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターする診断方法であって、該方法は、基準値の被験体から、または、治療薬剤の投与後の被験体から採取した生体サンプル中の炎症または酸化を示す、少なくとも1つの全身マーカーのレベルを定量する工程を包含する。このマーカーは、少なくとも一つのMPO活性、MPO量、選択MPO生成酸化産物およびそれらの組み合わせを含む。全身マーカーのレベルを、所定値と比較して、治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターする。

Description

本発明は、抗炎症作用および抗酸化作用をモニターする診断方法に関する。さらに詳細には、本発明は、治療薬剤の抗炎症作用および抗酸化作用をモニターするのに使用され得る診断方法に関する。
生体分子(例えば、タンパク質、脂質および核酸)の酸化的な損傷は、アテローム性硬化症から癌に対する虚血性再還流損傷にわたる疾患に関連付けられている。例えば、アテローム硬化症性血管の動脈壁内に生じるオキシダントストレスが増強されることが豊富な証拠によって裏付けられている。ヒトのアテローム硬化症性プラーク内には、罹患したヒト大動脈または正常なヒト大動脈から回収された低比重リポ蛋白(LDL)ばかりでなく、多数の個々の酸化産物が豊富に存在する。
冠状動脈疾患(CAD)の病因における酸化の役割は、抗酸化サプリメント(例えば、αトコフェロール(ビタミンE))を用いた多数のプロスペクティブな介入試験の失敗のため、これまで疑問視されてきた。しかし、これまでに為された主要な抗酸化試験において、介入の標的とされた過程(すなわち、酸化)における効果を確かめるために、オキシダントストレスの全身マーカーを同時に測定した例は全く無かったということは注目しなければならない。このことは、ヒトのアテローム内に生じることが知られている酸化経路が、αトコフェロール(これは、これらの試験における主要な抗酸化サプリメントである)によってほとんど効果的には抑制されないことに鑑みると特に重要である。さらに、特定の条件下では、αトコフェロールおよびアスコルビン酸塩(ビタミンC)のような種においては、抗酸化作用というよりむしろ、プロオキシダント作用が報告されている。
アテローム硬化血管内の酸化的な損傷の原因となる経路に関して知られている多くは、酸化産物の生成の原因となる単一の酸化経路または複数の酸化経路に関する情報を担う、安定で、構造的に情報に富む酸化産物を検出することによって得られている。これらの経路は、LDLのアテローム発生性粒子への酸化的変換、脂質過酸化の開始、潜在的な酸化窒素の消費、内皮機能障害への誘導、ならびにマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloprotease)および代替的なプロテアーゼカスケード(潜在的に脆弱なプラークを誘導する)の活性に関係することを示している。顕著なことは、αトコフェロールは、これらの酸化経路を阻止するという点で比較的効果のないことである。
3-ヒドロキシメチル-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素阻害剤(スタチン)は、これらの脂質減少効果とは無関係な、様々な炎症性疾患および免疫疾患に対して、潜在的に有効であることが認められる。スタチンのこのようないわゆる多面的効果(pleiortopic effect)には、抗炎症作用および抗酸化作用も含まれると考えられている。スタチンの抗炎症作用をモニターするマーカーについて唯一公表されているものは、C-反応性蛋白(CRP)のような、炎症の非特異的マーカーである。CRPレベルは、スタチン療法に対してごくわずかしか変化せず、スタチンの抗炎症作用および抗酸化作用をモニターするための、代替的マーカーが必要とされることは広く認められている。
本発明のいくつかの態様の基本的な見解を提供するために、本発明の簡単な要旨を以下に示す。本要旨は、本発明の広範な概要ではない。これは、本発明の不可欠ないし最重要要素を特定することを意図するものでもなければ、本発明の範囲を限定することを意図するものでもない。その唯一の目的は、以下に示すさらなる詳細な説明の序文として、本発明のいくつかの概念を簡単な形態で提示することである。
本発明は一般的に、治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターする診断方法に関する。本方法は、基準値の被験体から、または治療薬剤の投与後の被験体から採取した生体サンプル中の炎症または酸化状態を示す、少なくとも1つの全身マーカーのレベルを定量する工程を包含する。このマーカーは、MPO活性、MPO量、選択MPO生成酸化産物およびそれらの組み合わせを含み得る。生体サンプル中のマーカーのレベルは、治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターするために、所定値と比較し得る。
一つの態様において、この所定値は、治療薬剤の投与前に被験体から採取した生体サンプルにおけるマーカーレベルから定量され得る。治療薬剤投与前に採取したサンプル中のマーカーレベルに比べて、治療薬剤投与後または投与中に採取したサンプル中のマーカーレベルにおける減少は、この治療薬剤が、治療された被験体において抗炎症作用および/または抗酸化作用を提供することを示す。
本方法は、炎症性の損傷および/または酸化的な損傷が疾患の病因に関連する障害を治療するために、個体に投与される治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターするのに特に有用であり得る。このような障害としては、炎症性疾患および自己免疫疾患(例えば、心血管疾患(CVD))、アルツハイマー病、多発性硬化症、自己免疫疾患(例えば、リウマチ性関節炎およびリウマチ性血管炎)、動脈狭窄症、高血圧、ならびに癌が挙げられるが、これらに限定されない。これらの障害はまた、臓器移植のような治療によってももたらされ得る。
別の態様において、本方法は、基準値の個体または試験被験体から、あるいは治療薬剤の投与後の個体または試験被験体から得られた生体サンプル中のMPO活性レベルを定量する工程を包含する。生体サンプルは、血液またはこれらの誘導体であり、白血球、好中球、単球、血清または血漿が挙げられるが、これらに限定されない。次いで、この被験体由来の生体サンプル中のMPO活性レベルを、この治療薬剤の投与前後に、この被験体から得られた生体サンプル中のMPO活性測定値から得られ得る所定値と比較し得る。
別の態様において、本方法は、基準値の試験被験体から、または治療薬剤の投与後の試験被験体から得られた生体サンプル中のMPO量レベルを定量する工程を包含する。この生体サンプルは、血液またはこれらの誘導体であり得、白血球、好中球、単球、血清または血漿が挙げられるが、これらに限定されない。次いで、この試験被験体由来の生体サンプル中のMPO量レベルを、この治療薬剤の投与前後に、この被験体から得られたMPO量測定値から得られ得る所定値と比較し得る。
別の態様において、本方法は、基準値の試験被験体から、または治療薬剤の投与後の試験被験体から得られた生体サンプル中の、1つ以上の選択MPO生成酸化産物のレベルを定量する工程を包含する。この選択MPO生成酸化産物は、クロロチロシン、ジチロシン、ニトロチロシン、メチオニンスルフォキシド、ホモシトルリン(すなわち、カルバミル-リシン)およびMPO生成脂質過酸化産物である。好ましいMPO脂質過酸化産物としては、ヒドロキシ-エイコサテトラエン酸(HETE);ヒドロキシオクタデカジエン酸(HODE);Fイソプロスタン;2-リソPCにおけるグルタールおよびノナン二酸のモノエステル(G-PCおよびND-PC各々);2-リソPCにおける9-ヒドロキシ-10-ドデセン二酸および5-ヒドロキシ-8-オキソ-6-オクテン二酸のエステル(HDdiA-PCおよびHOdiA-PC各々);2-リソPCにおける9-ヒドロキシ-12-オキソ-10-ドデセン酸および5-ヒドロキシ-8-オキソ-6-オクテンニ酸のエステル(HODA-PCおよびHOOA-PC各々);2-リソPCにおける9-ケト-12-オキソ-10-ドデセン酸および5-ケト-8-オキソ-6-オクテン酸のエステル(KODA-PCおよびKOOA-PC各々);2-リソPCにおける9-ケト-10-ドデセン二酸および5-ケト-6-オクテン二酸エステル(KDdiA-PCおよびKOdiA-PC各々);2-リソPCにおける5-オキソバレリン酸および9-オキソノナン酸エステル(OV-PCおよびON-PC各々);5-コレステン-5α,6α-エポキシ-3β-オル(コレステロールα-エポキシド);5-コレステン-5β,6β-エポキシ-3β-オル(コレステロールβ-エポキシド);5-コレステン-3β,7β-ジオール(7-OH-コレステロール);5-コレステン-3β,25-ジオール(25-OHコレステロール);、5-コレステン-3β-オル-7β-ヒドロペルオキシド(7-OOHコレステロール);ならびにコレステン-3β,5α,6β-トリオール(トリオール)を含み得る。この生体サンプルは、血液、尿または血液誘導体であり得、白血球、好中球、単球、血清または血漿が挙げられるが、これらに限定されない。次いで、この試験被験体から採取した生体サンプルにおける、前記選択MPO生成酸化産物のレベルを、その治療薬剤の投与前後に、この被験体から得られた同等の生体サンプルにおける選択MPO生成酸化産物の測定値から獲得され得る所定値と比較する。
さらに別の態様において、本方法は、炎症性の損傷および/または酸化的な損傷が、障害の病因に関連する疾患を治療する治療薬剤を選択する工程、その治療薬剤を被験体に投与する工程、ならびに、医学的に所望の結果を提供するのに効果的な治療薬剤の用量を定量するために、基準値の被験体、治療薬剤の投与中の被験体または治療薬剤の投与後の被験体の炎症および/または酸化を示す、少なくとも1つの全身マーカーのレベルをモニターする工程を包含する。このマーカーは、MPO活性、MPO量、選択MPO生成酸化産物およびこれらの組み合わせを含み得る。本方法は、この疾患が、アテローム硬化症のような心血管疾患であり、この治療薬剤が、ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素阻害剤のような脂質減少剤である場合に、特に有用であり得る。
本出願は、2002年4月17日に出願された米国暫定出願第60/373,113号に対する優先権を主張し、かつ、2002年1月2日に出願された米国特許出願第10/039,753号の一部の継続出願であり、両者は本明細書中においてその全体が参考として援用される。
本出願に記載される研究は、少なくとも一部は、米国国立衛生研究所からの研究助成金番号HL70621, HL62526, HL61878による援助を受けた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
また、本明細書で引用されるすべての参考文献は、参考によって本明細書中において具体的に援用される。
本発明は一般に、治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターする診断方法に関する。本診断方法は、被験体に投与される場合、特定の治療薬剤(例えばスタチン類)は、多数の異なった酸化経路の抑制を介して、in vivoで有力な全身性の抗炎症効果および抗酸化効果を促進し得るという発見に基づく。主要経路は、ミエロペルオキシダーゼおよび/または酸化窒素誘導性オキシダントの形成を含み得る。ミエロペルオキシダーゼおよびミエロペルオキシダーゼ触媒性酸化産物のレベルは、治療薬剤の抗炎症作用および抗酸化作用をモニターする全身マーカーとして利用し得る。
一つの態様において、本方法は、個体から得られた生体サンプルにおけるMPO活性のレベルを定量する工程を包含する。別の態様において、本方法は、個体から得られた生体サンプルにおけるMPO量のレベルを定量する工程を包含する。別の態様において、本方法は、個体または試験被験体から得られた生体サンプル中の1つ以上の選択MPO生成酸化産物のレベルを定量する工程を包含する。このようなMPO生成酸化産物は、少なくとも1つのクロロチロシン、ジチロシン、ニトロチロシン、メチオニンスルフォキシドおよび脂質過酸化産物を含み得る。さらに別の態様において、本方法は、個体から得られた生体サンプルにおいて、MPO活性レベルまたはMPO量レベル、または、その両方、あるいは1つ以上の選択MPO生成酸化産物のレベルを定量する工程を包含する。
次いで、個体の生体サンプルにおけるMPO活性レベル、または、MPO量レベル、または、選択MPO生成酸化産物レベルを、所定値と比較して、治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターし得る。
本発明はまた、MPO活性またはMPO量、あるいは選択MPO生成酸化産物についてのアッセイを包含するキットにも関する。このようなアッセイは、本診断試験に基づいて選択された所定値に関して、適切な感度を有する。本キットは、例えば、異なるカットオフを有すること、特定のカットオフで異なる感度を有すること、およびアッセイの結果を特徴付ける指示書または他の印刷物により、現在の市販のMPOキットとは異なる。
==治療薬剤==
本発明の一つの態様に従ってモニターされ得る治療薬剤は、ミエロペルオキシダーゼおよび酸化窒素誘導性オキシダントの形成に使用される多数の異なる酸化経路の抑制を介して、in vivoで抗炎症作用および/または抗酸化作用を呈する任意の薬力学的薬剤を含み得る。これらの抗炎症作用および/または抗酸化作用は全身性であり得、そして、ミエロペルオキシダーゼおよび/またはミエロペルオキシダーゼ生成酸化産物の全身レベルをモニターすることによってモニターされ得る。
本発明の一つの態様に従ってモニターされ得る抗炎症作用および/または抗酸化作用についての治療薬剤の例は、HMG CoA還元酵素阻害剤(3-ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素阻害剤)(すなわち、スタチン)である。HMG-CoA(3-ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A)還元酵素は、コレステロール生合成において律速反応を触媒するミクロソーム酵素(HMG-CoAメバロン酸塩)である。スタチンは、HMG-CoA還元酵素を抑制し、その結果コレステロールの合成を抑制する。本出願の実施例14および実施例15において、スタチンはまた、抗炎症作用および抗酸化作用を表すことも示される。これらの抗炎症作用および抗酸化作用は、RacおよびRhoのイソプレニル化の抑制によるものの考えられている。Racは、白血球および血管細胞両方のNAD(P)Hオキシダーゼ複合体の重要な成分である。スタチンによるRacのイソプレニル化の抑制は、Racの原形質膜への転位を防止し、細胞由来のスーパーオキシド形成を抑制するとさらに考えられている。Rhoは、細胞シグナルに関する小型のGTPアーゼである。Rhoのイソプレニル化の抑制は、内皮細胞由来の酸化窒素産生の増強を招き、これが全体の抗酸化作用をもたらすと考えられている。
本発明に従って他の薬剤を用いた投与または併用投与について有用であり得るスタチン類としては、シンバスタチン(米国特許第4,444,784号)、ロバスタチン(米国特許第4,231,938号)、プラバスタチンナトリウム(米国特許第4,346,227号)、フルバスタチン(米国特許第4,739,073号)、アトルバスタチン(米国特許第5,273,995号)、セリバスタチンならびに米国特許第5,622,985号、米国特許第5,135,935号、米国特許第5,356,896号、米国特許第4,920,109号、米国特許第5,286,895号、米国特許第5,262,435号、米国特許第5,260,332号、米国特許第5,317,031号、米国特許第5,283,256号、米国特許第5,256,689号、米国特許第5,182,298号、米国特許第5,369,125号、米国特許第5,302,604号、米国特許第5,166,171号、米国特許第5,202,327号、米国特許第5,276,021号、米国特許第5,196,440号、米国特許第5,091,386号、米国特許第5,091,378号、米国特許第4,904,646号、米国特許第5,385,932号、米国特許第5,250,435号、米国特許第5,132,312号、米国特許第5,130,306号、米国特許第5,116,870号、米国特許第5,112,857号、米国特許第5,102,911号、米国特許第5,098,931号、米国特許第5,081,136号、米国特許第5,025,000号、米国特許第5,021,453号、米国特許第5,017,716号、米国特許第5,001,144号、米国特許第5,001,128号、米国特許第4,997,837号、米国特許第4,996,234号、米国特許第4,994,494号、米国特許第4,992,429号、米国特許第4,970,231号、米国特許第4,968,693号、米国特許第4,963,538号、米国特許第4,957,940号、米国特許第4,950,675号、米国特許第4,946,864号、米国特許第4,946,860号、米国特許第4,940,800号、米国特許第4,940,727号、米国特許第4,939,143号、米国特許第4,929,620号、米国特許第4,923,861号、米国特許第4,906,657号、米国特許第4,906,624号および米国特許第4,897,402号に記載される他の多数のスタチンが挙げられるが、これらに限定されない(これらの特許の開示は、本明細書中において参考として援用される)。
この抗炎症作用および/または抗酸化作用が本発明の一つの態様に従ってモニターされ得る治療薬剤の別の例は、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤である。「シクロオキシゲナーゼ」とは、アラキドン酸から種々のプロスタグランジンおよびトロンボキサンを産生する、多くの組織に存在する酵素複合体である。Cox阻害剤は、シクロオキシゲナーゼ(プロスタグランジGH-1シンターゼおよび/またはプロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼとしても知られる)の抑制を介して、ほとんどの抗炎症作用、鎮痛作用および解熱作用を及ぼし、かつ、ホルモン誘導性子宮収縮および特定のタイプの癌増殖を抑制する。
本発明に従って他の薬剤を用いた投与または併用投与について有用であり得るCOX-2阻害剤としては、米国特許第5,747,995号の「cox-2阻害剤としてのフェニル複素環」;米国特許第5,521,213号の「シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤としてのジアリル複素2環」;米国特許第5,536,752号の「COX-2阻害剤としてのフェニル複素環」;米国特許第5,550,142号の「COX-2阻害剤としてのフェニル複素環」;米国特許第5,552,422号の「抗炎症剤としてのアリル置換5,5融合芳香族窒素化合物」;米国特許第5,604,253号の「シクロオキシゲナーゼ阻害剤としてのN-ベンジルインドリルプロパン酸誘導体」;米国特許第5,604,260号の「シクロオキシゲナーゼ-2の阻害剤としての5-メタンスルフォナミド-1-インダノン」;米国特許第5,639,780号の「シクロオキシゲナーゼ阻害剤としてのN-ベンジルインドリルブタン酸誘導体」;米国特許第5,677,318号の「抗炎症剤としてのジフェニル-1,2-チアジアゾール」;米国特許第5,691,374号の「COX-2阻害剤としてのジアリル酸素添加(SH)-フラノン」;米国特許第5,698,584号の「COX-2阻害剤のプロドラッグとしての3,4-ジアリルヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン」;米国特許第5,710,140号の「COX-2阻害剤としてのフェニル複素環」;米国特許第5,733,909号の「COX-2阻害剤のプロドラッグとしてのジフェニルスチルベン」;米国特許第5,789,413号の「COX-2阻害剤のプロドラッグとしてのアルキル化スチレン」;米国特許第5,817,700号の「シクロオキシゲナーゼ阻害剤としてのビスアリルシクロブテン誘導体」;米国特許第5,849,943号の「シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤として有用なスチルベン誘導体」;米国特許第5,861,419号の「選択的シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤としてのピリジン置換体」;米国特許第5,922,742号の「選択的シクロゲナーゼ-2阻害剤としてのピリジニルシクロペンテン-1-オン」;米国特許第5,925,631号の「COX-2阻害剤プロドラッグとしてのアルキル化スチレン」が挙げられるが、これらに限定されない(これらの全ては、共通してメルク社(Merck, Inc., Kirkland, CA)に付与されたものである)。
本発明に従って潜在的に使用され得る追加のCOX-2阻害剤はまた、ジー・ディー、サール社(G.D. Searle & Co., Skokie, IL)に付与された、名称「シクロゲナーゼ-2および5-hpオキシゲナーゼ阻害剤としてのスルフォニルフェニル複素環置換体」なる米国特許第5,643,933号にも記載される。上記で同定されたCOX-2阻害剤の多くは、選択的COX-2阻害剤のプロドラッグであり、活性COX-2阻害剤および選択的COX-2阻害剤にin vivoで変換されることによってその作用を発揮する。上記で同定されたCOX-2阻害剤プロドラッグから形成された、活性COX-2阻害剤および選択的COX-2阻害剤は、1995年1月5日に公開されたWO95/00501、1995年7月13日に公開されたWO95/18799および1995年12月12日に発行された米国特許第5,474,995号に詳細に記載される。「ヒトシクロオキシゲナーゼ2のcDNAおよびシクロオキシゲナーゼ-2活性を評価するためのアッセイ」という名称の米国特許第5,543,297号の教示が与えられたならば、当業者であれば、ある薬剤が、選択的COX-2阻害剤であるか、COX-2阻害剤のプロドラッグであるか、従って本発明の一部であるかどうかを定量され得る。
この抗炎症作用および/または抗酸化作用が本発明の一つの態様に従ってモニターされ得る治療薬剤のさらに別の例は、アンギオテンシン系阻害剤である。「アンギオテンシン系阻害剤」とは、アンギオテンシンIIの機能、合成または分解を妨害する薬剤をいう。これらの薬剤としては、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、アンギオテンシンレセプター遮断剤、アンギオテンシンIIの異化作用を活性化する薬剤およびアンギオテンシンIIが最終的に誘導されるアンギオテンシンIの合成を妨げる薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。レニン−アンギオテンシン系は、血行動態ならびに水および電解質バランスの調節に関わる。血液容量、腎還流圧または細胞原形質中のNa濃度を下げる因子は、この系を活性化する傾向を有するが、これらのパラメータを上昇させる因子は、この系の機能を抑制する傾向がある。
アンギオテンシンIおよびアンギオテンシンIIは、酵素的なレニン−アンギオテンシン経路を通じて合成される。合成過程は、酵素レニンが、血漿中の擬似グロブリンであるアンギオテンシンに作用してデカペプチドのアンギオテンシンIを産生する場合に開始される。アンギオテンシンIは、アンギオテンシン変換酵素(ACE)によってアンギオテンシンII(アンギオテンシン-[1-8]オクタペプチド)に変換される。後者は、種々の種哺乳動物(例えば、ヒト)においていくつかの高血圧の形態における原因因子と想定されている、活性昇圧物質である。
アンギオテンシン(レニン−アンギオテンシン)系阻害剤は、アンギオテンシンまたはアンギオテンシンIからアンギオテンシンIIへの産生を妨げるか、あるいはアンギオテンシンIIの活性を妨げるように作用する化合物である。このような阻害剤は、当業者によく知られており、レニンおよびACEを含む、アンギオテンシンIIの最終的な産生に関わる酵素を抑制するように作用する化合物を含む。阻害剤はまた、一旦産生されたアンギオテンシンIIの活性を妨げる化合物も含む。このような化合物クラスの例としては、抗体(レニンに対する)、アミノ酸およびそれらのアナログ(大型分子に結合するものも含む)、ペプチド(アンギオテンシンおよびアンギオテンシンIのペプチドアナログを含む)、プロレニン関連アナログなどが挙げられる。レニン−アンギオテンシン系阻害剤の間で最も有力でかつ有用なものは、レニン阻害剤、ACE阻害剤およびアンギオテンシンIIアンタゴニストである。
「アンギオテンシンレセプター遮断剤」とは、アンギオテンシンIIレセプターに結合してその活性を妨げることによってアンギオテンシンIIの活性を妨害する化合物である。アンギオテンシンレセプター遮断剤は周知であり、ペプチド化合物および非ペプチド化合物を含む。大部分のアンギオテンシンレセプター遮断剤は、わずかに修飾された併合化合物であり、すなわち、8位のフェニルアラニンを何か他のアミノ酸で置換することによってアゴニスト活性を減少させ、安定性は、in vivoでの変性を遅らせる他の置換によって増強され得る。
アンギオテンシンIレセプター遮断剤の例としては、以下が挙げられる:ペプチド化合物(例えば、サララシン、[(San’)(Val’)(Ala’)]アンギオテンシン-(1-8)オクタペプチドおよび関連アナログ)、N-置換イミダゾールオン(米国特許第5,087,634号);2N-ブチルクロロ-1-(2-クロロベンジル)イミダゾール酢酸を含むイミダゾールアセテート誘導体(ロングら(Long et al.)、J. Pharmacol. Exp. Ther. 247(1), 1-7(1988)を参照のこと);4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジンカルボン酸およびアナログ誘導体(米国特許第4,816,463号);N2-テトラゾールβグルクロニドアナログ(米国特許第5,085,992号);ピロール、ピラゾールおよびトリアゾール置換体(米国特許第5,081,127号);フェノールおよび1,3イミダゾールのような複素環誘導体(米国特許第5,073,566号);イミダゾ融合7員環複素環化合物(米国特許第5,064,825号);ペプチド(例えば、米国特許第4,772,684号);アンギオテンシンIIに対する抗体(例えば、米国特許第4,302,386号);ならびにビフェニル-メチル置換イミダゾールのようなアラルシルイミダゾール化合物(例えば、EP第253,310号、1988年1月20日);ES8891(N-モルフォリノアセチル-(-I-ナフチル)-L-アラニル-(4,チアゾリル)-L-アラニル(35,45)アミノヒドロキシシクロヘキサペンタノイル-N-ヘキシルアミド、Sanlcyb株式会社、東京、日本);SFK108566(E-α[2-ブチル-1-(カルボキシフェニル)メチル]1H-イミダゾリル[メチレン]チオフェンプロパン酸、Smith Kline Beecham Pharmaceutical,PA);ロサルタン(DUP753/MK954, DuPont Merck Pharmaceutical Company);レミルドリン(RO425 892, F. Hoffman LaRoche AG);A2アゴニスト(Marion Merrill Dow)ならびに特定の非ペプチド複素環(G.D. Searle and Company)。
「アンギオテンシン変換酵素」(ACE)とは、アンギオテンシンIからアンギオテンシンIIへの変換を触媒する酵素である。ACE阻害剤としては、ACEの活性を抑制し、それによって、昇圧性物質アンギオテンシンIIの形成を低下させるかまたは阻止することによって、レニン−アンギオテンシン系に介入するアミノ酸およびそれらの誘導体、ジペプチドおよびトリペプチドを含むペプチドならびにACEに対する抗体が挙げられる。ACE阻害剤は、高血圧、うっ血性心不全、心筋梗塞および腎疾患の治療のために医学的に使用されている。ACE阻害剤として有用であると知られている化合物のクラスとしては、アシルメルカプトおよびメルカプトアルカノイルプロリン(例えば、カプトプリル(米国特許第4,105,776号)およびゾフェノプリル(米国特許第4,316,906号))、カルボキシアルキルジペプチド(例えば、エナルアプリル(米国特許第4,374,829号)、リシノプリル(米国特許第4,374,829号)、キナプリル(米国特許第4,344,949号)、ラミプリル(米国特許第4,587,258号)およびペリンドプリル(米国特許第4,508,729号))、カルボキシアルキルジペプチド相似体(例えば、シラザプリル(米国特許第4,512,924号)およびベナザプリル(米国特許第4,410,520号))、フォスフィニルアルカノイルプロリン(例えば、フォシノプリル(米国特許第4,337,201号))ならびにトランドロプリルが挙げられる。
この抗炎症作用および/または抗酸化作用が本発明の一つの態様に従ってモニターされ得る治療薬剤のさらに他の例としては、抗炎症剤(例えば、サイトカイン阻害剤(例えば、IL-6レセプターアンタゴニスト))、腫瘍壊死因子-u(TNF-a)阻害剤、(例えば、エタネルセプト(ENBREL、Immunex, Seattle)およびインフリクシマブ(REMICADEO, Centecor, Malvern, PA))、抗高リポ蛋白血症剤、コレステロール生合成阻害剤(スタチン以外)、インスリン増感剤、抗高血圧症剤(例えば、βアドレナリンレセプター遮断剤)、抗血栓症剤、抗血小板剤、線維溶解剤、直接的トロンビン阻害剤、ACAT阻害剤、CETP阻害剤、V-CAM阻害剤(例えば、V-PROTECTANTS, Atherogenics, Inc., Alpharetta, GA、米国特許第6,147,250号)、免疫調節剤(例えば、臓器移植拒絶反応を軽減する薬剤)、チアゾリジンジオン(すなわち、PPARアゴニスト)(例えば、ロシグリタゾン(Avandia)およびピオグリタゾン(Actos))、ならびに糖蛋白IIb/IIIaレセプター阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
投与される場合、本発明の治療薬剤は、薬学的に受容可能な量で、かつ、薬学的に受容可能な組成で与えられ得る。このような製剤は、通例、塩、バッファー剤、防腐剤、適合性キャリアおよび必要に応じて他の治療薬剤を含み得る。薬剤において使用される場合、この塩は、薬学的に受容可能でなければならないが、薬学的に受容されない塩であっても、それらの薬学的に受容可能な塩を調製するのに使用され得るので、本発明の範囲から除外されない。このような薬理学的受容可能な塩および薬学的に受容可能な塩としては、以下の酸から調製されるものが挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、蟻酸、マロン酸、コハク酸など。さらに、薬学的受容可能な塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩(例えば、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩)として調製され得る。
本発明の治療薬剤は、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアと併用され得る。本出願で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、ヒトに投与するのに適する、1つ以上の適合性の固相または液相の充填物、希釈剤あるいは封入用物質を意味する。用語「キャリア」とは、この適用を促進するために活性成分が結合される、有機成分または無機成分(天然または合成)を示す。薬学組成成分はまた、所望の薬学的効力を実質的に損なう相互作用がない方法で、本発明の分子と相互に共存し得る。
この薬学組成は、適当なバッファー剤(例えば、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸および塩中のリン酸を含む)を含み得る。この薬学組成はまた、必要に応じて、適当な防腐剤(例えば、クロブタノール、パラベンスおよびチメロサル)を含み得る。
非経口投与に適する組成は、受容者の血液と好ましくは等張である、選択薬剤の滅菌水溶液製剤を小分けして含有する。この水溶液調製物は、適当な放散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて既知の方法によって処方され得る。この滅菌注射製剤はまた、非毒性で非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒に溶解させた滅菌注射液または懸濁液(例えば、1,3-ブタンジオール溶液)であり得る。
使用され得る受容可能な賦形剤および溶媒としては、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油も、溶媒または懸濁溶液として好適に使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の潤滑固定油が使用され得る。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注射液の調製に使用され得る。経口、皮下、静脈内、筋肉内などの投与に適したキャリアの処方は、レミントン(Remington)の製薬科学(”Pharmaceutical Sciences”)、Mack Publishing Co., Easton, PAに見出され得る。
種々の投与経路が利用可能である。選択される特定の投与方式は、もちろん、選択される特定の治療薬剤、治療される状態の重篤度および治療効果に要求される容量に依存する。本発明の方法は、一般的に言うと、医学的に受容可能である任意の投与方式(臨床的に受容しがたい副作用を引き起こさないで、活性化合物の有効レベルを産生する任意の方式)を用いて、実施され得る。このような投与方式としては、経口、直腸、局所、鼻腔内、皮内または非経口経路が挙げられる。用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内または輸液を含む。静脈内経路または筋肉内経路は、長期療法および予防に対して特に適するというわけではない。
この薬学組成は、都合よく単位用量形態で表され得、そして、製薬における当該分野において周知の任意の方法によって調製され得る。全ての方法は、1つ以上の補助成分を構成するキャリアと薬剤とを関連させる工程を包含する。一般に、この組成は、液性のキャリア、細かく分割された固相キャリアまたはその両方と治療薬剤とを均一かつに密に混ぜ合わせて調製され、次いで、必要ならば産物を成形することによって調製される。
経口投与に適する組成は、各々が既定量の抗炎症剤を含む不連続単位(例えば、カプセル、錠剤、トローチ剤)として表され得る。他の組成としては、水性液体または非水性液体における懸濁剤(例えば、シロップ、エリキシル剤または乳剤)が挙げられる。
他の送達系は、時間放出、遅延放出または持続放出送達系を含み得る。このような系は、本発明の薬剤の連続投与を回避し得、被験体にも、医師にも便利さを増すことになる。放出送達系の多くのタイプが利用可能であり、当業者に公知である。このような薬剤系は、ポリマーベースの系(例えば、ポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキザレート、ポリカプロラクトン、ポリエステラミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸およびポリアンヒドリド)を含む。薬剤を含む前記ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載される。送達系はまた、以下の非ポリマー系も含む:ステロールを含む脂質(例えば、コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸または中性脂肪(例えば、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリ-グリセリド);ヒドロゲル放出系;ペプチドベースの系;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤使用による圧縮錠剤;部分的な融合埋設剤など。特異的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(a)本発明の薬剤が、マトリックス内に一つの形として含まれる崩壊系(例えば、米国特許第4,452,775号、同第4,675,189号および同第5,736,152号に記載される)、ならびに(b)活性成分が、ポリマーから制御された速度で浸潤する拡散系(例えば、米国特許第3,854,480号、同第5,133,974号および同第5,407,686号に記載される)。さらに、ポンプによるハードウェア送達系が使用され得る(その内のあるものは埋め込みにも適応している)。
長期持続放出埋め込み体(インプラント)の使用は所望であり得る。本明細書で使用される場合、長期放出とは、インプラントが、活性成分の治療レベルを、少なくとも30日、好ましくは60日の間送達するように構築され配置されることを意味する。長期持続放出インプラントは当業者に周知であり、、上記に記載される放出系のいくつかを含む。特異的な例としては、米国特許第4,748,024号およびカナダ特許第1330939号に記載される長期持続放出インプラントが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の治療薬剤は、それ自体で投与してもよいし、本発明の他の薬剤と組み合わせて同時投与してもよい。本明細書で使用される場合、「同時投与」とは、本発明の2つ以上の化合物を同時に単一組成物の混合体としてか、または、連続的にそして時間的に十分接近させて、化合物同士が相加効果または相乗効果(すなわち、糖尿病または糖尿病合併症を発症するリスクを減少する)を発揮し得るように投与することをいう。
==生体サンプルの調製==
本診断方法における生体サンプルとしては、例えば、全血、血漿、血清、尿または生体組織もしくは細胞が挙げられる。この全血は、個体または被験体から、標準的な臨床手順によって獲得され得る。血漿は、全血サンプルから、抗凝固処理した血液を遠心することによって獲得され得る。このような過程は、白血球成分からなる血餅コートおよび血漿からなる上清を提供する。
血清は、抗凝固剤がないチューブにおいて回収される全血サンプルの遠心によって回収され得る。この血液は、遠心前に凝固させられる。遠心によって得られる黄赤色流体が血清である。
白血球は、以下の実施例に記載されるように、浮遊密度遠心を含む種々の任意の技術によって、全血から単離され得る。
==ミエロペルオキシダーゼおよびミエロペルオキシダーゼ生成酸化産物==
MPO(ドナー:過酸化水素、オキシド還元酵素、EC1.11.1.7)は、四量体で、グリコシル化を大量に含む、約150kDaの塩基性(PI. 10)ヘム蛋白である。これは、2個の同一のジスルフィド結合プロトマーから成り、これらの各々は、プロトプルフィン含有の59-64kDaの重サブユニットおよび14kDaの軽サブユニットを有する(Nauseef, W.M., et al., Blood 67:1504-1507, 1986)。
MPOは、好中球および単球に豊富であり、これらの細胞の乾燥重量の5%および1%から2%各々を占める(Nauseef, W.M., et al., Blood 67:1504-1507, 1986(Hurst, J.K., In: Everse J., Everse K., Grisham, M.B., eds., “Peroxidases in chemistry and biology,” 1st ed. Boca Raton, CRC Press, 1991:37-62)。このヘム蛋白は、白血球の原始アズール顆粒に保存され、種々のアゴニストによる食細胞の活性化に次いで、細胞外環境およびファゴリソソーム区画の両方に分泌される(Klebanoff, S.J., et al., “The neutrophil: functions and clinical disorders,” Amsterdam, Elesevier Scientific Publishing Co. 1978)。免疫組織化学的方法により、MPOはヒトのアテローム硬化症病変にも存在することが証明されている。しかし、MPOは、アテローム硬化症を患う個体由来の血液サンプルにおいて、高いレベルで存在することはまだ示されていない。
MPOに関して、最近提唱されている作業動態モデルを図1に示す。MPOは、多数の中間状態を持ち、しかもその各々が、O2-およびH2O2ならびに酸化窒素(NO、一酸化窒素)のような酸素の還元種の利用度に影響される(Abu-Soud, H.M. et al., J. Biol. Chem. 275:5425-5430, 2000)。基底状態では、MPOは、第2鉄(Fe(III))の形で存在する。H2O2の添加により、MOPのヘム基が酸化されて、2個のe-等価物が、化合物Iと呼ばれる反応性の高いフェリルπ陽イオンラジカル中間体を形成する。Cl-、Br-およびI-のようなハロゲン化物の存在下において、そして、擬似ハロゲン化物チオシヤネート(SCN-)の存在下において、化合物Iは、単一の2e-工程で容易に還元されて、MPO-Fe(III)および対応する低ハロゲン酸(HOX)を再生する。血漿におけるハロゲン化物とチオシヤネートレベル(100 mM Cl-, 100 mM Br-, 50 mM SCN-, 100 nM I-)は、塩化物が好ましい基質であり、有力な塩素化オキシダントである次亜塩素酸(HOCl)が形成される(Foote, C.S., et al., Nature 301:715-726, 1983; Weiss, S.J., et al., Clin. Invest. 70:598-607, 1982)。
化合物Iはまた、多数の有機基質を酸化し得るが、このヘムは、2回の連続的な1e還元工程を受け、化合物IIおよびMPO-Fe(III) 各々を生成する(図1)。主に、低分子量化合物は、MPOに対する基質の役目を果たし、拡散性のオキシダントおよび遊離ラジカル種を生成し、次いで、これらの種は、ヘムの酸化潜在性を遠隔の標的に運搬し得る。ハロゲン化物およびSCN-に加え、天然に生じるMPO基質のいくつかは、亜硝酸塩(NO2 -)(van der Vliet, A., et al., J. Biol. Chem. 272:7617-7625, 1997)、チロシン(van der Vliet, A., et al., J. Biol. Chem. 272:7617-7625, 1997)、アスコルビン酸塩(Marquez, L.A., et al., J. Biol. Chem. 265:5666-5670, 1990),(Maehly, H.C., Methods Enzymol. 2:798-801, 1955)、カテコーラミン(Metodiewa, D., et al., Eur. J. Biochem. 193:445-448, 1990)、エストロゲン(Klebanoff, S.J., J. Exp. Med. 145:983-998, 1977)およびセロトニン(Svensson, B.E. Chem. Biol. Interact. 70:305-321, 1989)が挙げられる。MPO-Fe(III)はまた、不活性第1鉄の形、MPO-Fe(II)に還元され得る(Hurst, J.K. In: Everse J., Everse K., Grisham, M.B. eds., Peroxidases in chemistry and biology, 1st ed. Boca Raton, CRC Press, 1991:37-62; Kettle, A.J., et al., Redox. Rep. 3:3-15, 1997)。MPO-Fe(III)およびMPO-Fe(II)は、O2 およびO2各々に結合して、第1鉄ジオキシ中間体(化合物III(MPO-Fe(II)-O2))を形成する(図1)。分光分析実験によって、H2O2を化合物IIIに加えると、最終的に、化合物IIが形成されることが証明されている。従って、化合物IIIは、間接的に1e酸化反応を促進し得る。
最近の研究により、酸化窒素シンターゼ(NOS)によって生成される比較的長く存在するフリーラジカルであるNOに対して、MPOペルオキシダーゼ活性修飾における役割が同定されている(Abu-Soud, H.M., et al., J. Biol. Chem. 275:5425-5430, 2000)。MPOおよびNOSの誘導性異性形は、白血球の原始顆粒に共に局在する。細菌の摂取時の場合のように食細胞活性化時には、MPOおよびNOSはファゴリソソームおよび細胞外区画に分泌されて、細菌蛋白のニトロ化が観察される(Evans, T.J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9553-9558, 1996)。高速反応速度実験によって、低レベルのNOでは、基質のMPO触媒酸化の開始速度が増強されることが示されている。この機構は、MPO触媒作用の律速段階、すなわち、化合物IIの還元によるMPO-Fe(III)への転移を加速することに基づく(図1)(Abu-Soud, H.M., et al., J. Biol. Chem. 275:5425-5430, 2000; Abu-Soud, H.M., et al., Nitric oxide is a physiological substrate for mammalian animal peroxidases, Submitted, 2000)。高レベルのNOでは、分光学的に区別が可能なニトロシル複合体、MPO-Fe(III)-NOの形成によりMPOの可逆的抑制が起こる(Abud-Soud, H.M., et al., J. Biol. Chem. 275:5425-5430, 2000)。NOはまた、MPO化合物Iの基質となり、還元されて化合物IIとなることもできる(Abu-Soud, H.M., et al., Nitric oxide is a physiological substrate for mammalian animal peroxidase, Submitted, 2000)。さらに、NOの存在下では、ペルオキシダーゼサイクルを介するMPOの全体転換速度は、ほぼ1000倍増強される(Abu-Soud, H.M., et al., Nitric oxide is a physiological substrate for mammalian animal peroxidase, Submitted, 2000)。最後に、NOはまた、MPO-Fe(II)に可逆的に結合して、対応するMPO-Fe(II)-NO中間体を形成し、これが、MPO-Fe(II)およびMPO-Fe(III)-NOと平衡する(図1)(Abu-Soud, H.M., et al., J. Biol. Chem. 275:5425-5430, 2000; Abu-Soud, H.M., et al., Nitric oxide is a physiological substrate for mammalian animal peroxidases, Submitted, 2000)。
前述のように、MPOは、様々の補基質をH2O2と共に利用して、反応性オキシダントを中間体として生成し得る。これらの分子種によって生成される、安定な最終産物の多くは、特徴が明らかにされ、かつ、ヒトアテローム硬化症病変から回収された、蛋白、脂質、および、LDLの中に濃縮されていることが示されている(Chisolm, G.M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11452-11456, 1994; Hazell, L.J., et al., J. Clin. Invest. 97:1535-1544, 1996; Hazen, S.L., et al., J. Clin. Invest. 99:2075-2081, 1997; Leeuwenburgh, C., et al., J. Biol. Chem. 272:1433-1436, 1997; Leeuwnburgh, C., et al., J. Biol. Chem. 272:3520-3526, 1997)。図2は、MPOにより形成された反応性中間産物および産物のいくつかをまとめたのであるが、これらのいずれも血管病変に濃縮されていることが知られている。
==MPO活性の定量法==
ミエロペルオキダーゼ活性は、当該分野で知られる任意の種々の種標準法を用いて定量され得る。このような一つの方法は比色定量法であり、この方法では、ペルオキシダーゼに対して基質となる発色団が、特徴的な波長を有する産物を生成し、この波長を、UV-可視光または蛍光検出を含む任意の種々の種分光光度法を用いて追跡する。比色定量法に関するさらに精しい詳細は、Kettle, A.J. and Winterboum, C.C. (1994) Methods in Enzymology, 233:502-512およびKlebanoff, S.J., Waltersdorph, A.N. and Rosen, H. (1984) Methods in Enzymology, 105:399-403に見出され得、これらの両文献は、本明細書中において参考として援用される。ガーバー、クラウディア・エフ等(Gerber, Claudia, E. et al.)によって、1996年、Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem. 34:901-908に発表された、「ミエロペルオキシダーゼ欠損症患者における顆粒球の食細胞活性と酸化バースト(Phagocytic Activity and Oxidative Burst of Granulocytes in Persons with Myeroperoxidase Deficiency”)」という題名の論文は、多形核白血球(すなわち、好中球)について、その単離法および、クロモゲン4-クロロ-1-ナフトールの酸化に基づく比色定量によるミエロペルオキシダーゼ活性の測定について記載する。
ペルオキシダーゼ活性は、MPO含有細胞を、フローサイトメトリーに基づく方法を用いてインサイチュでペルオキシダーゼ染色することによって定量され得る。このような方法は、白血球および白血球亜群におけるペルオキシダーゼ活性定量について高処理能力のスクリーングを実施させる。一つの例は、ペルオキシダーゼ染色法に基づく血液分析による、白血球数および白血球分画を生成するのに使用される細胞化学的ペルオキシダーゼ染色法である。例えば、BayerによるAdvia 120血液分析システムは、フローサイトメトリーによって全血を分析し、白血球に対してペルオキシダーゼ染色を実施して、全白血球数(CBC)を得て、各種白血球ブループの分画を定める。
このような方法によって、全血は装置に入り、赤血球は溶解チェンバーにて溶解される。次いで、残存する白血球は固定され、ペルオキシダーゼ活性についてインサイチュで染色される。この染色細胞はチャンネルを通じてフローサイトメータに通され、ペルオキシダーゼ染色の強度と、細胞の散乱光の量に反映される細胞の全体サイズに基づいて、細胞の性質が明らかにされる。これら二つのパラメータは、従来のフローサイトメトリーソフトウェアによって、x軸とy軸各々にプロットされ、個々の細胞集団のクラスターが容易に識別される。これらは、目に見えるペルオキシダーゼ染色を含む3つの主要な白血球集団、好中球、単球および好酸球が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの分析過程の間、白血球(例えば、単球、好中球、好酸球およびリンパ球)は、ペルオキシダーゼ染色の強度とその全体サイズによって同定される。従って、特定の細胞集団における全体ペルオキシダーゼ活性に関する情報は、個々の細胞クラスター(例えば、好中球、単球、好酸球クラスター)の位置に内在し、また、特定の細胞集団内のペルオキシダーゼレベルも定量され得る。この検出法におけるペルオキシダーゼ活性/染色は、ペルオキシダーゼ染色の参考文献または較正で例えられる。白血球あたりのペルオキシダーゼ活性レベルの高い個体は、サイトグラムのその位置が高レベルペルオキシダーゼ(すなわち、白血球あたりの平均ペルオキシダーゼ活性において)を示す細胞集団を有することから、あるいは、平均において、または、上位3分の1または4分の1のような上位亜群において、高レベルのペルオキシダーゼ活性を示す、一つの細胞クラスター内の細胞亜集団(例えば、好中球、単球、好酸球のクラスター)が実証されることから特定される。
==MPO量の定量法==
所定のの生体サンプルにおけるミエロペルオキシダーゼの量は、免疫法(例えばELISA)によって容易に定量される。ELISAによるMPO定量用の市販のキットは入手可能である。生体サンプルにおけるMPO量はまた、その生体サンプルのインサイチュのペルオキシダーゼ染色によって間接的に定量され得る。白血球ペルオキシダーゼ染色を分析する方法は、インサイチュのペルオキシダーゼ染色によって機能する血液分析器によるものと同様に、全血に対して実施され得る。他の研究者による以前の研究から、染色の全体の強度はペルオキシダーゼ量に比例することが証明されている(例えば、クラウディア・イー・ガーバー、セリム・クチ、マシアス・ジーフェル、ディトリック・ニートハマーおよびジェモット・ブルックフェルト(Claudia E. Gerber, Selim Kuci, Matthias Zipfel, Ditrich Niethammer and Gemot Bruchfelt,)、「ミエロペルオキシダーゼ欠損症患者における顆粒球の食細胞活性と酸化バースト(Phagocytic Activity and Oxidative Burst of Granulocytes in Persons with Myeroperoxidase Deficiency”)」Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem (1996) 34:901-908)。
血液分析器を介するフローサイトメトリーは、MPO活性または質量レベルを定量するために用いられるパラメータ、あるいは高レベルのMPO活性または質量を含む細胞数を定量するために用いられるパラメータを定量するための、高処理能力技術である。このような技術を用いる利点は、この使用の簡便と速度である。Advia 120は、1時間に120回の完全な血球数および分画血球数カウントを実施し得、しかも、1時間にわずか数マイクロリットルの血液しか使わない。ペルオキシダーゼ活性の定量に必要なデータは全て、最終的に全白血球数および分画白血球数を計数するのに用いられる、フローサイトメトリー細胞クラスター内部に保持される。この装置のソフトウェアに対してわずかな調整を施すことによって、読み取り値を、全体ペルオキシダーゼ活性に関する複数の別々の係数を含めるように修飾し得る。
==MPO活性レベルおよびMPO量レベル==
生体サンプル(例えば、体液)におけるMPO活性またはMPO量レベルは、その生体液におけるMPO活性またはMPO量を測定し、その値を正規化することによって定量され得、それによって血液1mlあたりの、血清1mlあたりの、血漿1mlあたりの、白血球1個(例えば、好中球または単球)あたりの、重量あたりの(例えば、全血中蛋白1mgあたりの)、白血球蛋白重量あたりの(好中球蛋白または単球蛋白重量あたりの)、MPO活性またはMPO量が得られる。あるいは、体液中のMPO活性またはMPO量のレベルは、試験被験体の血液または血液誘導体におけるMPO活性に基づく代表値であり得る。例えば、MPO活性のレベルは、高いレベルのMPO活性またはMPO量を含む、被験体の好中球または単球のパーセントであってもよいし、または、実際の数であってもよい。他の代表値の例としては、サイトグラムに基づくフローサイトメトリーから得られ得るパラメータの任意の単位(例えば、X軸およびY軸における好中球クラスターの位置、X軸およびY軸に対する好中球クラスターの主軸の角度)が挙げられるが、これらに限定されない。
==ミエルペルオキシダーゼ生成酸化産物==
==HETEおよびHODEならびに酸化コレステロールエステル生成におけるMPOの役割==
最近、LDLの酸化および脂質過酸化の起動におけるMPOの役割について、数人の研究者が疑問視している。ノグチと同僚達は、野生型マウスおよびMPOノックアウトマウスから単離した白血球の、エキソビボのモデル系におけるLDLの酸化促進能力を調べ、モニターした脂質過酸化のパラメータにおいてわずかな差しかないことを観察した(Noguchi N. et al. J. Biochem. (Tokyo) (2000)127:971-976)。また最近、MPO触媒によるLDLの酸化は、特に蛋白の酸化産物を問題にする場合は、NO2 の存在によって促進されず、むしろ抑制されることが示唆されている(Carr A.C., et al., J. Biol. Chem. (2001)276:1822-1828)。さらに、MPO-生成チロシン酸化産物およびLDL酸化においては、酸化促進機能ではなくむしろプロ酸化機能が提唱された(Santanam N., et al., J. Clin. Invest. (1995)95:2594-2600; Exner M., et al., FEBS Lett. (2001)490:28-31)。さらに、ある研究者達は、MPOによって生成されるHOClは、リポ蛋白の脂質の酸化および過酸化水素の形成を促進し得ることを示唆しているが(Panasenko, O.M., Biofactors (1997)6:181-190)、別の研究はこの見解を支持していない(Schmitt D., et al., Biochem. (1999)38:16904-16915; Hanzen S.L., et al., Circ. Res. (1999)85:950-958)。最後に、最近の研究は、MPOおよび高反応性オキシダント分子種の生成に関して、マウス白血球とヒト白血球との間の種間差に注目している(Xie Q.W., et al., Biological oxidants: generation and injurious consequences. San Diego, Calif., USA, Academic Press, 1992; Rausch P.G., et al., Blood (1975)46:913-919; Nauseef, W.M., J. Clin. Invest. (2001)107:401-403; Brennan, M.L., et al., J. Clin. Invest. (2001)107:419-430)。
血漿における脂質過酸化促進におけるMPOの役割を確定するために、本発明者らは、健康な被験体およびミエロペルオキシダーゼ欠損症被験体から得られた、全血漿(50%、v/v)と生理的レベルのCl-(最終的に100 mM)で活性化された好中球をインキュベートした。食細胞はPMAで活性化し、リノール酸およびアラキドン酸の特異的酸化産物の形成を、各々、LC/ESI/MS/MSにて定量した。
==MPOおよびリポ蛋白の単離==
MPO(ドナー:過酸化水素、オキシド還元酵素、EC1.11.1.7)を単離し、下記のようにその特徴を明らかにした。(Heinecke J.W., et al., J. Biol. Chem. (1993)268:4069-4077; Wu, W., et al., Biochemistry (1999)38:3538-3548)。単離されたMPOの純度は、R/Z≧0.85 (A430/A280)、クーマシーブルー染色によるSDS PAGE分析、および、好酸球ペルオキシダーゼ汚染のないことを確かめるために実施したインゲル・テトラメチルベンジジンペルオキシダーゼ染色により確定した。(Wu W., et al., Biochemistry (1999)38:3538-3548)。精製MPOを-20℃で50%グリセロール内に保存した。酵素濃度は分光光度計により定量した(ε430=170,000M-1cm-1)。(Odajima T., et al., Biochem. Biophys. Acta (1970):71-77)。LDLは、新鮮な血漿から、連続超遠心により、1.019<D<1.063 g/ml分画として単離し、アルゴン雰囲気下、密封容器において透析を実施した。(Hatch, F.T., Adv. Lipid Res. (1968)6:1-68)。最終調製物を、50 mMリン酸ナトリウム(pH 7.0)、100 μM DTPAに溶解し、N2下で使用時まで保存した。LDL濃度は、LDL蛋白のmg当りで表される。
==ヒト好中球調製物==
ヒト好中球は、正常被験体およびMPO欠損被験体から得た全血から前述のように単離した。(Hazen, S.L., et al., J. Biol. Chem. (1996)271:1861-1867)。好中球調製物は、HBSS(Mg2+-、Ca2+-、フェノール無添加および重炭酸塩無添加、pH 7.0)に懸濁し、直ちに実験に供した。
==脂質過酸化反応==
単離したヒト好中球(106/ml)は、100 μM DTPA添加HPSSに懸濁させて、空気中で、50%(v/v)正常ヒト血漿または単離したヒトLDL(0.2 mg/ml)と共に、37℃でインキュベートした。好中球は、200 nMフォルボール・ミリステート・アセテート(PMA)を加えて活性化し、5分ごとに穏やかに攪拌して懸濁状態に維持した。2時間後、氷/水浴に漬けて反応を停止させ、4℃で遠心し、直ちに、50 μMのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)および300 nMカタラーゼを上清に加えた。次いで、この上清における脂質過酸化産物を、下記のように速やかにアッセイした。
単離MPOによる反応は、代表的には、30 nM MPO, 1 mMグルコース(G)、20 ng/mlのグルコースオキシダーゼ(GO)を用い、100 μM DTPA添加リン酸ナトリウムバッファー(20 mM, pH 7.0)中で37℃で実施した。この条件下で、前記グルコース/グルコースオキシダーゼ(G/GO)システムによって、H2O2の定常流(0.18 μM/分)が生成された。別様に明言しない限り、反応は、氷/水浴に漬け、50 μMのBHTおよび300 nMカタラーゼ添加によって停止させた。
==脂質抽出およびサンプル調製==
脂質は、全ての工程においてアルゴンまたは窒素中で抽出し、質量分析用に調製した。まず、反応混合物中のヒドロ過酸化物を、SnCl2(最終濃度1 mM)を加えることによって対応する水酸化物に還元する。既知量の重水化内部標準、12(S)-ヒドロキシ-5,8,10,14-エイコサテトラエン-5,6,8,9,11,14,15-d8酸(12-HETE-d8、Cayman Chemical Company, Ann Arbor、ミシガン州)をサンプルに加え、次いで、血漿脂質を、1 M酢酸/2-イソプロパノール/ヘキサン(2/20/30, v/v/v)からなる混合物を、5 mlの有機溶媒混合液:1 ml血漿の割合で添加することによって抽出した。混合物をボルテックスした後、脂質をヘキサン層に抽出した。等容量のヘキサンを添加することによって血漿を再抽出し、その後ボルテックスし遠心した。コレステリルエステルヒドロ過酸化物(CE-H(P)ODE)を、ヘキサン混合抽出物をN2下で乾燥させ、サンプルを200 μlの2-イソプロパノール/アセトニトリル/水(44/54/2, v/v/v)にて再構築し、分析時までアルゴン下-80℃で保存することによって、安定なSnCl2-還元水酸化物形として分析した。遊離脂肪酸およびその酸化産物のアッセイのために、全脂質(リン脂質、コレステロールエステル、トリグリセリド)をN2下に乾燥し、1.5 mlの2-イソプロパノールに再懸濁し、次いで、脂肪酸を、アルゴン下60℃で30分、1.5 ml 1M NaOHによる塩基加水分解を実施することによって放出させた。この水酸化サンプルを、2M HClによってpH 3.0まで酸性とし、脂肪酸を、5 mlヘキサンによって2度抽出した。このヘキサン混合層を、N2下で乾燥させ、100 μlメタノールに再懸濁し、アルゴン下に-80℃で、下記のように(LC/ESI/MS/MS)による分析時まで保存した。
==血漿ろ過物のHPLC分画==
血漿中の低分子量化合物が、MPOの基質となることによって過酸化水素による脂質過酸化にどのような役割を果たしているかを調べるために、正常で健康なドナーから得た全血漿を、遠心による10 kDa分子量カットオフフィルター(Centriprep YM-10, Millipore-Corporation Bedford, マサチューセッツ州、米国)を通過させてろ過した。血漿のろ過物を、直接、または、HPLCによる分画後使用した。逆相HPLC分画を、Beckman C-18カラム(4.6×250 mm, 5 μm ODS, Beckman Instruments, Inc., Fullerton、カリフォルニア州)を用いて実施した。血漿ろ過物(0.5 ml)中の低分子量化合物の分離は、以下の勾配下で流速1.0 ml/分にて実施した:100%展開層A(0.1%酢酸含有水)で10分間、次いで、100%展開層B(0.1%酢酸含有メタノール)まで直線勾配で10分間、次いで、100%展開層Bで5分間。溶出液を1 ml分画液として採取し、N2下で乾燥させ、次いで、バッファー(0.1 ml)に再懸濁し分析に備えた。有力な陰イオン交換HPLC(SAX-HPLC)による血漿ろ過物(0.5 ml)の分画を、SPHERIS HPLC(4.6×250 mm, 5 μm SAX, Phase Separations Inc., Norwalk、コネティカット州)にて実施した。血漿ろ過物における低分子量の分離は、45 mM酢酸アンモニウムバッファー(pH 4.0)を展開層として用い、イソクラティック条件下流速0.9 ml/分で実施した。溶出液を1.0 ml分画液として採取し、N2下で乾燥させ、次いで、バッファー(0.1 ml)に再懸濁し分析に備えた。
==A.質量分析==
アラキドン酸(9-ヒドロキシ-5,7,11,14-エイコサテトラエン酸および9-ヒドロペルオキシ-5,7,11,14-エイコサテトラエン酸(9-H(P)ETE)、および、リノール酸(9-ヒドロキシ-10,12-オクタデカ二酸、および、9-ヒドロペルオキシ-10,12-オクタデカ二酸(9-H(P)ODE)のフリーラジカル依存性酸化産物を定量するのに、LC/ESI/MS/MSを用いた。分析の直前に、1容量のH2Oを、5容量のメタノール懸濁サンプルに加え、次いでそれを0.22 μmフィルター(Millipore Corporation, Bedford、マサチュセッツ州)に通過させた。サンプル(20 μl)をProdigy C-18カラム(1×250 mm, 5 μm ODS, 100A, Phoenomenex, Pancho Palos Verdes、カリフォルニア州)に流速50 μl/分で注入した。この分離は、95%メタノール水溶液を展開相として用いてアイソクラティック条件下に実施した。各分析において、HPLCカラム溶出液全体を、Quattro II3連4重極質量分析器(Micromass, Inc.)に導入した。分析は、陰イオンモードのエレクトロスプレーイオン化法を用いて、モニターする異性体に対して特異的な、親イオンおよび特徴的娘イオンの多数反応モニター(MRM)によって実施した。モニターされる転移は、9-HODEに対しては質量対電荷比(m/z)295 171であり、9-HETEではm/z319 151であり、12-HETE-d8ではm/z327 184であった。N2をエレクトロスプレーインターフェイスの噴霧ガスとして用いた。抽出効率(全ての分析において>80%であった)を計算するために内部標準12-HETESを用いた。真性標準によって構築された外部検量曲線を用いて9-HETEおよび9-HODEを定量した。
==B.CE-H(P)ODEのRP-HPLC定量==
メタノールで(塩基加水分解なし)再構築したサンプル(100 μl)を、ベックマンのC-18カラム(4.6×250 mm, 5 μm ODS, Beckman Instruments, Inc., Fullerton、カリフォルニア州)に注入した。脂質を、2-イソプロパノール/アセトニトリル/水(44/54/2, v/v/v)からなるイソクラティックシステムを用いて流速1.5 ml/分で分離した。CE-H(P)ODEを、これらの安定な水酸化物として、CE-9-HODE(Cayman Chemical Company, Ann Arobor、ミシガン州)を外部検量曲線生成のために用いて、234 nmでUV検出で定量した。
==結果==
正常好中球は、PMAによる細胞活性化後、血漿中に、有意に高レベルの9-H(P)ODEおよび9-(H)PETEを生成した(図4(A-B))。まったく対照的に、MPO-欠損好中球は、O2産生能力は高まっているにもかかわらず、PMAによる刺激後に、有意に高いレベルの脂質過酸化産物を生成しなかった。触媒量のMPOを加えると、MPO-欠損好中球は、内在性血漿脂質の酸化を起動する能力を回復した(図4(A-B))。
カタラーゼ(ただし、加熱して不活性化したカタラーゼではない)を細胞混合物に加えると、血漿中の脂質過酸化はほぼ完全に途絶した。これは、この細胞依存性反応においてH2O2が鍵となる役割であることを強く示唆する(図5(A-B))。反応混合物をスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)とインキュベートしても、血漿脂質の酸化は減衰しなかった(図5(A-B))。これと対照的に、ヘム毒(例えば、アジ化物、シアン化物)および水溶性抗酸化アスコルビン酸塩を加えると、血漿脂質の好中球依存性酸化は完全に抑制された。最後に、ジチオスレイトールおよびチオスレイトールメチオニンのようなHOClスカベンジャーを添加したが、9-H(P)ODEおよび9-H(P)ETEの定量で評価した場合、内在性血漿脂質の好中球依存性酸化は減衰しなかった(図5(A-B))。
これまでに示した結果から、好中球は、MPO-H2O2システムを用いて、血漿における脂質過酸化を起動するための一次オキシダントとして、塩素化中間体とは別の反応種を生成することが強く示唆される。MPOの生理学的役割を確めるために、次いで、本発明者らは、精製したヒトMPOおよびH2O2産生システム(グルコース/グルコースオキシダーゼ、G/GO)を血漿に加え、LC/ESI/MS/MS分析によって、特異的酸化産物の形成をモニターした。9-H(P)ODEおよび9-H(P)ETEの形成は容易に生じ、MPOおよびH2O2産生システムの両方の存在を絶対的に必要としていた(図6(A-B))。脂質過酸化は、再び、カタラーゼ、アジ化物またはアスコルビン酸塩によって抑制されたが、SODまたはメチオニンの添加によっては影響されなかった(図6(A-B))。まとめると、これらの結果は、白血球のMPO-H2O2システムが、血漿のような複雑な生物組織および流体において脂質過酸化を起動するための一次機構として中軸的役割をすることを強く示唆する。
==LDLのMPO酸化およびその酸化産物の動脈硬化症病変における存在==
==一般的な手順==
ヒトのミエロペルオキシダーゼ(ドナー:過酸化水素、オキシド還元酵素、EC1.11.1.7)およびLDLを単離し、下記のように定量した(Podrez, E.A., et al., 1999, J. Clin. Invest. 103:1547)。バッファーは全てChelex-100樹脂(Bio-Rad, Hercules、カリフォルニア州)で処理し、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)を添加して、インキュベーション中LDL酸化を触媒し得るトレースレベルの遷移金属イオンを除去した。LDLは、記載されるように(Hoppe, G., et al., 1994, J. Clin. Invest. 94:1506-12)、100と250 dpm/ng蛋白の間の特定の活性を有するように、Na[L125I]で標識した。細胞脂質の抽出および放射標識したコレステロールエステルの薄層クロマトグラフィー単離は、記載の通りに実施した(Podrez, E.A., et al., 1999, J. Clin. Invest. 103:1547)。標記のリポ蛋白とのインキュベーション後に細胞によってコレステロールエステルに取り込まれた[14C]オレイン酸塩は、記載の通りに定量した(Podrez, E.A., et al., 1999, J. Clin. Invest. 103:1547)。ウサギ胸部大動脈を、WHHLウサギから単離し、100 μMブチル化トルエン(BHT)および100 μM DTPAを添加したアルゴン吹きつけPBSでリンスし、アルゴンで被包し、液体窒素で吹きつけ凍結させ、分析まで-80℃で保存した。比較的脂質性病変の無い大動脈は、10-12週のWHHLウサギから得られたが、一方、病変で満たされる大動脈は、6ヶ月以上のWHHLウサギから回収された。
==リポ蛋白修飾==
MPO生成硝酸化中間体(NO2-LDL)によって修飾されるLDLは、別様に指定しない限り、LDL(0.2 mg蛋白/ml)を、50 mMリン酸ナトリウム、pH 7.0, 100 μM DTPA、30 nM MPO, 100 μg/mlグルコース、20 ng/mlのグルコースオキシダーゼ、および、0.5 mM NaNO2にて37℃で8時間インキュベートして形成した。この条件下で、H2O2(10 μM/時)の定常流が、Fe(II)酸化・Fe(III)形成−チオシヤネート複合体を用いて定量すると、グルコース/グルコースオキシダーゼシステムによって形成された(van der Vliet, A., et al., 1997, J. Biol. Chem. 272:7617)。酸化反応は、40 μM BHTおよび300 nMカタラーゼを反応混合物に添加することによって停止させた。LDLのアセチル化は、以前に記載されている通りに実施した(Podrez, E.A., et al., 1999, J. Clin. Invest. 103:1547)。
==リン脂質分離および質量分析==
脂質は、常に、不活性雰囲気(アルゴンまたは窒素)下に維持た。酸化PAPCまたはPLPC顆粒から、またはNO2-LDLからの脂質を、等量の飽和NaCl溶液(脂質抽出を増強するために)に添加直後に、BlighとDyerの方法(Bligh, 1959)によって連続して3回抽出した。合わせたクロロフォルム抽出物を窒素下に蒸発させ、次いで、脂質を、メタノール(約200 μg/0.1 ml)に再懸濁し、Acrodisc CR PTFEフィルターを通じてろ過し、逆相カラム(Luna C18, 250×10 mm, 5 μm, Phenomenex, Torrence、カリフォルニア州、米国)に適用した。脂質を、Waters 600E多溶媒輸送システムHPLC(Waters, Midford、マサチューセッツ、米国)によって生成される3重(アセトニトリル/メタノール/H2O)勾配を用いて流速3 mL/分で分解し、蒸発性光散乱検出器(Sedex 55, Sedere, Alfortville、フランス)を用いてモニターした。
さらに、生物活性脂質の分画化および精製を、N2下で乾燥し、BHTを添加したクロロフォルム(300 μl)に再懸濁し、アルゴン雰囲気下に維持しておいた3回の分離の結合脂質抽出物について実施した。分画(2/3)のアリコートを取り出し、窒素下で蒸発させ、逆相HPLCに注入する直前にHPLCバッファー(メタノール/水、85/15、v/v)に再懸濁した。
質量分析は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)プローブを備え、HP 1100 HPLC(Hewlett-Packard, Wilmington、デラウェア州)インターフェイスを有するQuatro II 3連4重質量分析器(Micromass, Inc., Altrincham、英国)を用いて実施した。脂質(遊離および誘導後の両方)をLuna C18, 250×4.6 mm, 5 μmカラム(Phenomenex, Torrance, カリフォルニア州)で、流速0.8 ml/分にて分解した。不連続勾配(勾配II)を、以下のように溶媒A(メタノール(MeOH):H2O, 85:15, v:v)と溶媒B(MeOH)と混合して用いた;0〜7分、溶媒Aによるイソクラティック溶出;7〜10分、88%の溶媒Bに増加;10〜34分、91%の溶媒Bに増加;次いで、34〜52分94%の溶媒Bに増加。カラム溶出液を二分し、45 μl/分は質量分析器に導入し、755 μl/分は集めて、生物活性について分析した。ある場合には、本物の標準の注入後に同じ勾配を用いて生物活性も定量した。質量分析は、多数反応モニター(MRM)モード(コーン電位60 eV/衝突エネルギー20-25 eV)を用いて陽イオンモードにおけるエレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(ESI/MS/MS)を用いてオンラインで実施した。各分画中の酸化リン脂質の存在を検出するのに使用されるMRM転移は、分子状陽イオン[MH]+に対する質量対電荷比(m/z)、および、娘イオンm/z184、フォスフォコリン群である(すなわち、[MH]+ --> m/z 184)。リン脂質のオキシム誘導体は、m/z[MH+29]+ --> m/z 184にてモニターした。
MRMを用い、陽イオンモードでLC/ESI/MS/MSにて、各種酸化PC分子種の定量を実施した。ギ酸(0.1%)を展開相に含めた。図2および図3に示されるように、各個体のリン脂質に特異的なプロトン付加親−娘転移におけるm/zおよびその保持時間を用いて、異なる酸化リン脂質分子種を特定した。OV-PCおよびND-PCは同様にして定量したが、さらに、各分析対象においてメタノールで形成されるヘミアセタール間の転移のm/z、および、極性頭位群(m/z 184)の消失をモニターすることによっても実施した。
脂質はまず、BHTの存在下においてリポ蛋白または組織から、BlighおよびDyerの方法(Bligh, E.G., et al., 1959, Canadian Journal of Biochemical Physiology, 37:911-917)によって3回抽出した。合わせたクロロフォルム抽出物を窒素下に急速に乾燥させ、メタノール:H2O(98:2、v:v)に再懸濁し、次いで、脂質抽出物中の中性脂質を18Cミニカラム(Supelclean LC-18 SPE管、3 ml;Supelco Inc., Bellefonte, ペンシルバニア州)に通過させて除去した。内部標準として、既知量のジミリスチジルフォスファチジルコリン(DMPC)を有極性溶媒に添加し、脂質を窒素下に乾燥し、アルゴン雰囲気下に-80℃で、24時間以内の分析まで保存した。一定量のDMPCおよび各合成酸化PC分子種のmol%を変えることによって検量曲線を構築し、異なる脂質間に観察されるイオン化反応係数の差を補正するために用いた。追加の予備実験として、用いた定量法を、標準添加法によって得られたものと同一の結果が得られることを実証することによって、各分析対象毎に独立にその有効性を検証した。
==結果==
天然のLDLおよび酸化形態のLDLにおける各種特異的酸化PC分子種のLC/ESI/MS/MS分析による定量化により、酸化フォスファチジルコリン種の含量が実質的に増加していることが明らかになった(図7A、天然のLDL、NO2-LDLのデータを示す)。酸化のどの時点で調べたかとは無関係に、HODA-PCおよびHOOA-PCが、MOPによるLDL酸化の主要な産物であった。合計mol %(残存する非酸化リン脂質に関する)およびNO2-LDLにて検出されたND-PC(図7A)は1.2 mol%に一致する。この内、NO2-LDL調製物(図7A)で定量された8種の酸化PC種の合計含量は0.73 mol%に一致する。
酸化PC種がin vivoでも形成されるのかどうかを決定するために、広範なアテローム性病変を有する胸部大動脈および広範なアテローム性病変がない胸部大動脈を、ワタナベの遺伝性高脂質血症(WHHL)ウサギから単離し、多数の異なる特異的酸化リン脂質のレベルを、LC/ESI/MS/MS分析にて定量した。oxPAPC(HOOA-PC, KOOA-PC, HOdiA-PC, KOdiA-PC)およびoxPLPC (HODA-PC, KODA-PC, HDdiA-PCおよびKDdiA-PC)由来の各酸化PCの含量における有意な増加が、病気の血管に認められた(図7B)。面白いことに、PLPC由来の酸化PC種のレベルは、比較的高度に酸化されたON-PCおよびND-PCにおいて観察されたものよりも低いのに、PAPC由来の酸化PC種のレベルは、OV-PCおよびG-PCで観察されたものとほぼ等しいことである(図7A)。
==ヒト被験体のアテローム硬化性病変におけるHETE、HODE、F2イソプロステンおよび酸化PC種の存在==
アンギオガードは、経皮的血管手術の間に使用のために最近発明された、血栓保護装置である。これは、血管成形のために、バルーン膨張の前に、標的病変の遠位において展開される。これは、一時的な保護として、不活性のふるい状メッシュを通じて、押し出された脂質に富むプラーク物質を捕捉する。メッシュの孔は大きく、顕微鏡によって、孔は、血球および血小板の流れを妨げないが、大きな脂質顆粒は捕捉する傾向のあることが確かめられる。手術時、アンギオガードによって捕捉された物質を分析し、プラーク物質の脂質種が決定される。図8は、アンギオガードから回収したプラーク物質においてLC/ESI/MS/MS法によって定量された、多数の異なる脂質過酸化産物のレベルを示す。比較のために、本発明者らはまた、心臓移植ドナーから臓器採取の時に回収した正常な大動脈内皮における、同じ酸化脂質のレベルも評価した。F2-イソプラステンを始め、モニターした各HETEにおいて目覚しい増加が観察された。アンギオガードに捕捉されたプラーク物質の分析はまた、多数の異なるoxPC種の検出を確定した(データ示さず)。
==選択ミエロペルオキシダーゼ生成酸化産物レベルの定量法==
==A.ジチロシンおよびニトロチロシン==
生体サンプルにおけるジチロシンおよびニトロチロシンレベルは、このようなチロシン分子種に対する反応性を有するモノクロナール抗体を用いて定量し得る。例えば、抗ニトロチロシン抗体は、標準的な手段を用いて作製し標識し得、次いで、サンプル中に存在する、遊離ニトロチロシンまたはペプチド結合のニトロチロシンの有無を検出するために、これをイムノアッセイに使用し得る。適当なイムノアッセイとしては、例として挙げるだけであるが、固相および液相の両方を含むラジオイムノアッセイ、蛍光結合アッセイまたは酵素結合性イムノソルベントが挙げられる。好ましくは、このイムノアッセイはまた、サンプル中に存在するチロシン分子種の量を定量するのに使用される。
ジチロシンおよびニトロチロシン種に対して作製されるモノクロナール抗体は、確立された手順に従って産生される。一般に、ジチロシンまたはニトロチロシン残基は、ハプテンとして知られているが、まずキャリア蛋白に結合され、そして宿主動物を免疫化するのに用いられる。好ましくは、ジチロシンおよびニトロチロシン残基は、異なる周囲の配列を有する合成ペプチドに挿入され、次いでキャリア蛋白に結合される。キャリアに結合されるこの蛋白内のジチロシンおよびニトロチロシン種を周囲の配列を増幅させることによって、その周囲の配列のコンテキストとは無関係に、ジチロシンおよびニトロチロシン種のみに対する抗体が作製される。同様の方策が他の種々の低分子量アミノ酸アナログを用いて、好結果を収めている。
適当な宿主動物としては、ウサギ、マウス、ラット、ヤギおよびモルモットが挙げられるが、これらに限定されない。宿主動物の免疫反応を増大させるために、各種のアジュバントを使用し得る。使用するアジュバントは、少なくとも一部は、宿主の動物種に依存する。ジチロシンおよびニトロチロシンに対して特異的なモノクロナール抗体が産生される確率を高めるために、ジチロシンおよびニトロチロシン各々の分子種を含むペプチドを、免疫化される動物に存在するキャリア蛋白に結合し得る。例えば、モルモットのアルブミンは、一般にモルモットを免疫化するためのキャリアとして用いられている。このような動物は、ポリクロナール抗体といい、免疫化動物の血清に由来し得る抗体分子の異種集団を産生する。
特定の抗原に結合する抗体からなる均一な集団であるモノクロナール抗体は、連続的な細胞株から得られる。モノクロナール抗体を産生するための従来の技法は、コーラーとミルスタイン(Kohler and Millstein)(Nature 356:495-497(1975))のハイブリドーマ技術およびコスバーら(Kosbor et al.)(Immunology Today 4:72(1983))のヒトB-細胞ハイブリドーマ技術である。このような抗体は、IgG, IgM, IgE, IgA, IgDを含む任意の免疫グロブリンクラスおよびこれらの任意のクラスであり得る。改変アミノ酸(例えば、3-ニトロチロシン)に対する抗体を調製する手順は、イェ・ワイズィー、エム・ストロング、ズィーキュー・フアンおよびジェイエス・ベックマン(Ye, Y.Z., M. Strong, Z.Q. Huang and J.S. Beckman)「ニトロチロシンを認識する抗体(”Antibodies that recognize nitrotyrosine”)」、(1996) Methods Enzymol., 269:201-209に記載されている。
一般に、体液由来の蛋白結合ジチロシンおよびニトロチロシン分子種の直接測定についての技術は、蛋白および脂質を除去して、遊離アミノ酸残基を含む流体抽出物を得ることを含む。組織および体液は前述のように、好ましくは、バッファー処理、キレート処理および抗酸化保護の溶液中で、好ましくは-80℃で保存される。次いで、この凍結組織および体液を解凍し、ホモジナイズし、前述のように、好ましくはメタノール:ジエチルエーテル:水の単一相混合物によって抽出して、脂質および塩を除去する。重同位元素標識内部標準をペレットに加え、好ましくは、真空下で乾燥し、加水分解し、次いでこのアミノ酸加水分解産物を、好ましくは、水:メタノール混合物に再懸濁し、ミニ固相C18抽出カラムの上を通過させ、前述のように、安定同位元素希釈ガスクロマトグラフィー−質量分析で分析する。生体サンプル中の遊離ジチロシンおよびニトロチロシン種の値は、前述のように、蛋白含量またはチロシンのようなアミノ酸に対して正規化し得る。
極めて好ましい手順では、蛋白は、H2O/メタノール/H2O-飽和ジエチルエーテル(1:3:8、v/v/v)からなる単一相混合物による2回連続抽出によって、脱脂質および脱塩を行う。酸化チロシン標準(各々2 pmol)および全体的に標識されたチロシン(2 nmol)を蛋白ペレットに添加する。アルゴン雰囲気下で24時間、1%フェノールを添加したガス抜きした6N HClと共に、この脱塩蛋白ペレットをインキュベートすることによって、タンパク質を加水分解する。アミノ酸加水分解産物は、chelex処理水に再懸濁し、あらかじめ0.1%トリフルオロ酢酸で平衡させたミニ固相C18抽出カラム(Supelclean LC-C18 SPEミニカラム、3 ml, Supelco Inc., Bellefonte, ペンシルバニア州)に適用する。2 mlの 0.1%トリフルオロ酢酸による連続洗浄後、複数の酸化チロシンおよび単一の酸化チロシンを、0.1%トリフルオロ酢酸に溶解させた2 ml の30%メタノールで溶出し、真空下で乾燥し、質量分析によって分析した。
タンデム質量分析を、エレクトロスプレーイオン化およびイオントラップ質量分析器(LCQ Deca, ThermoFinigann, San Jose、カリフォルニア州)による検出を用い、テルモSP4000高性能液体クロマトグラフ(HPLC)をインターフェイスとして実施する。サンプルを平衡溶媒(0.1%ギ酸を含むH2O)に懸濁し、ウルトラスフェアC18カラム(Phenominex, 5 μm, 2.0 mm×150 mm)に注入する。L-チロシンおよびその酸化産物を、第2展開相としてメタノールに溶解した0.1%ギ酸pH 2.5に対して作成した直線勾配を用い、200 μl/minの流速で溶出する。分析は、単位解像度において、フルスキャン産生イオンMS/MSを用いた陽イオンモードでモニターする。反応は、5 KVのスプレー電圧設定と、80 μAのスプレー電流にて最適化する。加熱毛細管電圧を10 Vに設定し、温度は350℃に設定する。窒素は、被履および補助ガスの両方として、70と30の各々の任意単位の流速で用いる。対応するイオントラップ産物イオンスペクトルに従って、フルスキャン全イオンクロマトグラムから抽出した選択産生イオンのクロマトグラフのピーク面積を測定することによって、多量の分析を評価する。各分析についてモニターしたイオンは、以下である:3-ニトロ[12C6]チロシン(質量対電荷比(m/z)227、181および210)、3-ニトロ[13C6]チロシン(m/z 233, 187および216)、3-ニトロ[13C9 15N1]チロシン(m/z 237, 190および219)、[12C9]チロシン(m/z 182, 136および165)、[13C9 15N1]チロシン(m/z 192, 145および174)。チロシンおよびニトロチロシンは、使用したHPLC下で基礎分解され、チロシンアイソトポマー検出のために、0〜7分間、および、7分以後は3-ニトロチロシンアイソトポマーの検出のために、LCQ Decaのプログラミングを可能とする。
遊離ニトロチロシンおよびジチロシンはサンプル中で同様に測定されるが、組織または体液は、まず、低分子量カットオフフィルターを通過させて、その低分子量成分をLC/ECS/MS/MSにて分析する。生体サンプル中の遊離のおよび蛋白結合ジチロシンおよびニトロチロシンの値は、後述のように、蛋白含量またはチロシン先駆物質のようなアミコン酸に対して正規化され得る。
上述の方法は、ジチロシンおよびニトロチロシンの検出に対してモノクロナール抗体を使用することに関わるものではあるが、この方法はまた、他のミエロペルオキシダーゼ生成産物の検出にも使用し得る。例えば、モノクロナール抗体はまた、クロロチロシンおよびホモシトルリンの検出に対して使用され得る。
==B.脂質酸化産物==
脂質酸化産物は、UV検出を備えたHPLC、または、オンライン質量分析によるHPLCにて測定され得る。GC/MSおよび免疫細胞化学的方法を含む他の分析法もまた、使用され得る。F2イソプロスタンは、当該分野で既知の種々の質量分析技術によって測定可能である。
MPO生成脂質酸化産物ヒドロキシ-エイコサテトラエン酸(HETE)、ヒドロキシ-オクタデカ二酸(HODE)、F2イソプロスタン;2-リソPCの5-オキソバレリン酸(OV-PC);5-コレステン-5α,6α-エポキシ-3β-オル(コレステロールα-エポキシド);5-コレステン-5β,6β-エポキシ-3β-オル(コレステロールβ-エポキシド);5-コレステン-3β,7β-ジオール(7-OH-コレステロール);5-コレステン-3β,25-ジオール(25-OHコレステロール)、5-コレステン-3β-オル-7β-ヒドロペルオキシド(7-OOHコレステロール);、および、コレスタン-3α,5α,6β-トリオール(トリオール)を抽出・定量する方法が、シュミットら(Schmitt, et al.)(1999) Biochemistry, Vol. 38, 16904-16915に記載される(本明細書中において参考として特に援用される)。9-H(P)ODE、9-H(P)ETEおよびF2-イソクプロスタンの定量には、反応混合物中のヒドロペルオキシドは、改変されたドール法(Savenkova, M.L., et al. (1994) J. Biol. Chem. 269, 20394-20400)(この方法では、還元剤トリフェニルフォスフィンが存在する)を用いて、抽出の間、対応するヒドロキシドに還元される。これらの条件はまた、イソプラスタンおよび酸化脂質の人工的な形成を抑制する。脂質はN2下で乾燥し、イソプロパノール(2 ml)に再懸濁し、次いで、脂肪酸を、室温N2下で90分間1N水酸化ナトリウム(2 ml)による塩基加水分解を通じて放出する。このサンプルは、2N HClにて酸性とし(pH 3.0)、既知量の内部標準を加え、遊離脂肪酸をヘキサン(5 ml)で2度抽出する。次いで、9-H(P)ODE、9-H(P)ETEおよびF2-イソプロスタンの含量を、以下の記載のようにLC/MS/MS分析にて定量する。
1-パルミトイル-2-オキソバレリル-sn-グリセロ-3-フォスファチジルコリン(POV-PC)は、上述のように9-H(P)ODE、9-H(P)ETEおよびF2イソプラスタン分析に用いたものと同じドールの変法で抽出するが、還元剤トリフェニルフォスフィンの添加は省略する。脂質はN2下で乾燥し、メタノールに再懸濁し、その後、後述するようなLC/MSにて分析するまで-70℃でアルゴン下で保存する。ステロール酸化産物は、4M NaCl(150 μl)およびアセトニトリル(500 μl)の添加によって抽出する。サンプルをボルテックスし、遠心し、上部の有機相を除去する。抽出物をN2下で乾燥し、メタノールに再懸濁し、オンライン質量分析を用いたHPLCにて分析するまで、-70℃でアルゴン下に保存する。
HP 1100 HPLCをインターフェイスとするQuatro II3連4重質量分析器で、質量分析を実施する。F2-イソプラスタンは、マラット(Mallat, Z., et al. (1999) J. Clin. Invest. 103, 421-427)に記載するように、8-エピ-[2H4]PGFを標準とし、オンライン逆相HPLCタンデム質量分析(LC/MS/MS)による安定同位元素希釈質量分析にて定量する。9-HODEおよび9-HETEの分析には、還元脂質(上述)の塩基性加水分解後に生成される脂質抽出物をN2下で乾燥し、メタノールで再構成する。次いで、この混合液のアリコートを、ウルトラスフェアODS C18カラムに注入した。カラムは、メタノール:H2O(85:15、v/v)を溶媒としてあらかじめ平衡させ、かつ、イソクラティック条件下に動作させる。カラムの溶出液は二分し(930 μl/分でUV検出器へ、および、70 μl/分で質量検出器へ)、質量分析によって分析する。カラム溶出液中の9-HODEと9-HETEおよびF2-イソプロスタンのLC/MS/MS分析は、多数反応モニター(MRM)を有する陰イオンモードのエレクトロスプレーイオン化法(ESI-MS)を用い、9-HODEに対しては転移m/z 295-->171を、9-HETEに対してはm/z 319-->151、F2-イソプロスタンに対してはm/z 353-->309、[2H4]PGFに対してはm/z 357-->313をモニターして実施する。
POV-PCの定量は、脂質抽出物に対して、陽イオンモードにおけるオンラインESI-MS分析を有するHPLCを利用して実施し、選択されたイオンモニターは、m/z 782およびm/z 594各々選択される。メタノールで再構成された(上述)脂質抽出物のアリコートを、メタノールに溶解した0.1%ギ酸(展開相B)と混合し、あらかじめ70%展開相Bと30%展開相A(水に溶解させた0.1%ギ酸)で平衡させたコロンブスC18カラム(1×250 mm, 5 μm, P.J. Cobert, St. Louis、ミズーリ州)に流速30 μl/分で負荷する。70%展開相Bによる3分間洗浄の後、100%展開相Bに対する直線勾配を用いてこのカラムを展開し、その後100%展開相Bを有するイソクラティック溶出を設定する。真正POV-PCによって構築された外部検量曲線を定量に用いるウルトラスフェアODS C18カラムに、7-OHコレステロール、7-ケトコレステロールおよび7-OOHコレステロールを溶解する。この溶出勾配は、91:9のアセトニトリル:水+0.1%ギ酸(v:v)からなり、このカラムを分析操作の間、アセトニトリル+0.1%ギ酸にて洗浄する。カラムの溶出液は二分し(900 μl/分でUV検出器へ、そして100 μl/分で質量検出器へ)、選択されたイオンモニターを有する陽イオンモードで、大気圧化学イオン化(APCI)によってイオン化する。7-OHコレステロールの同定は、m/z 385.3(M-H2O)およびm/z 367.3(M-2H2O)を有するイオンが、真正標準と同じ保持時間で共同移動することを実証することによって実施する。m/z 367.3でモニターされるピークにおけるイオン電流の積分面積を定量に用いる。7-OOHコレステロールの同定は、m/z 401.3(M-H2O)+、m/z 383.3(M-2H2O)+、m/z 367.3(M-H2O2)を有するイオンが、真正標準と同じ保持時間で共同移動することを実証することによって実施する。m/z 401.3でモニターされるピークにおけるイオン電流の積分面積を定量に用いる。7-ケトコレステロールの同定は、m/z 401.3(M+H)+およびm/z 383.3(M-H2O)+を有するイオンが、真正標準と同じ保持時間で共同移動することを実証することによって実施する。m/z 401.3でモニターされるピークにおけるイオン電流の積分面積を定量に用いる。真正の7-OHコレステロール、7-OOHコレステロールおよび7-ケトコレステロールによって構築された外部検量曲線を、標準添加法によって得られたものと同じ結果を実証する予備のAPCI LC/MSの後で、定量に用いる。25-OHコレステロール、5,6αエポキシドおよびβエポキシドならびにトリオールは、真正標準のLC/MS分析によって定量する。
==所定値==
試験被験体から得た生体サンプル中のMPO量、MPO活性または選択MPO生成酸化産物のレベルは、所定値と比較し得る。この所定値は、一般集団またはヒト被験体の選択された集団から得られた比較可能なサンプル中のMPO活性、MPO量または選択MPO生成酸化産物のレベルに基づき得る。例えば、選択された集団は、見かけ上健康な被験体から構成され得る。本明細書で使用される場合、「見かけ上健康」とは、例えば、アテローム硬化症、狭心症、急性循環器発作(例えば、心筋梗塞または発作)の既往歴ならびに像診断方法によるアテローム硬化症の証拠(冠状動脈造影法が挙げられるが、これに限定されない)のような疾患の存在を示す任意の前兆または症候を以前に有さない個体をいう。言い換えれば、医学専門家が調べたとしても、このような個体は健康で病気の症候が無いと特徴づけられる。
所定値は、試験被験体から得られた生体サンプル中のMPO活性またはMPO量レベルを特徴付けるために使用される値と関連され得る。従って、MPO活性のレベルが、1個の白血球あたりまたは血液1 mlあたりの単位MPO活性のような絶対値である場合は、所定値も、一般集団またはヒト被験体の選択された集団における、1個の白血球あたりまたは血液1 mlあたりの単位MPO活性に基づく。同様に、MPO活性またはMPO量レベルが、サイトグラムから得られた任意の単位のような代表値である場合には、所定値もまた、その代表値に基づく。
所定値は、様々の形態を取り得る。この所定値は、中央値または平均値のように、単一のカットオフ値であり得る。この所定値は、ある定義された群における全身マーカー(例えば、MPOレベル)が、別の定義された群における全身マーカーの2倍である場合のような、複数の比較群に基づいて確立され得る。この所定値は、例えば、一般集団を均等に(または不均等に)群に分割するかまたは4分の1ずつに分割し、最低の4分の1は、最低レベルの全身マーカーを有する個体の集合であり、最高の4分の1は、最高レベルの全身マーカーを有する個体の集合であるように、一つの範囲であり得る。
所定値は、一般集団におけるMPO活性またはMPO量のレベルを定量することによって導き出され得る。あるいは、所定値は、例えば、見かけ上健康な非喫煙集団のような選択された集団におけるMPO活性またはMPO量のレベルを定量することによって導き出され得る。例えば、見かけ上健康な非喫煙集団は、喫煙集団または以前に心血管疾患を患ったメンバーの集団とは異なる、正常範囲のMPO活性またはMPO量を有し得る。従って、選択された所定値は、個々の該当するカテゴリーを考慮に入れてもよい。適当な範囲およびカテゴリーは、当業者であれば、通例の実験手法だけで選択し得る。
MPO活性またはMPO量の所定値(例えば、平均レベル、中央値レベルまたは「カットオフ」レベル)は、一般集団または選択集団の中の個体の多数サンプルをアッセイし、統計モデルの使用によって確立し得る。そのような統計モデルとしては、例えば、クナップとミラー(Knapp, R.G., and Miller, M.C.)(1992)「臨床疫学と生物統計学(”Clinical Epidemiology and Biostatistics”)」、Williams and Wilkins, Harual Publishing Co., Malvern、ペンシルバニア州(本明細書中において参考として特に援用される)に記載されるように、陽性基準、至適特異性(真の陰性最高比)および感度(真の陽性最高比)を定義する受信者動作特性曲線を選択するための予測値法がある。「カットオフ」値は、アッセイされる各全身マーカー毎に決定され得る。以下の実施例1に使用された標準化法は、クレバーノフ、ウォルスタースドルフとローゼン(Klebanoff, S.J., Waltersdorph, A.N. and Rosen, H.)(1984)「ミエロペルオキシダーゼの抗菌活性(”Antimicrobial activity of myeloperoxidase”)」、Methods in Enzymology 105:399-403に記載される通りのグアヤコール酸化のアッセイを用いる。
==試験被験体由来の生体サンプル中のMPO活性およびMPO量レベルならびに選択MPO生成酸化産物レベルと所定値との比較==
個体の生体サンプル中の各全身マーカー(すなわち、MPO活性、MPO量および選択MPO生成酸化産物)のレベルは、単一の所定値またはある一定範囲の値と比較し得る。治療薬剤の投与後、被験体の生体サンプル中の全身マーカーのレベルが所定値または所定値範囲よりも低くなる場合、この治療薬剤は、その試験被験体に対して抗炎症効果および/または抗酸化効果を及ぼしたことになる。被験体の全身マーカーレベルと所定値との差の程度は、治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用の程度を明らかにするのにも有効であるから、その治療薬剤による効果的な治療方策を決定し、モニターするのにも使用され得る。
本診断方法は、炎症性の損傷および/または酸化的な損傷が障害の病因と結びつく障害を治療するのに標的とされる治療薬を、患者に処方すべきなのかどうか、処方するとすればいつがよいのかを決定するのに有用である。例えば、MPO活性値(U/mg PMN蛋白;またはU/ml血液)が特定のカットオフ値を上回るかまたは「正常範囲」の上位3分の1または4分の1に入る個体は、治療薬剤を用いたより積極的な介入を必要とする人々であると同定され得た。
本診断方法はまた、炎症性の損傷および/または酸化的な損傷が疾患の病因と関連する障害の治療にのために、治療薬剤の有効量を決定するのにさらに有用である。本方法では、治療薬剤を被験体に投与し得る。その治療薬剤の有効量を決定するために、治療薬剤の投与中または投与後における、被験体の炎症および/または酸化状態を示す少なくとも1つの全身マーカーのレベルをモニターし得る。このマーカーは、MPO活性、MPO量、選択MPO生成酸化産物およびそれらの組み合わせを含み得る。
有効量とは、医学的に所望の結果をもたらすのに十分な、治療薬剤の用量である。この有効量は、保健従事者の知識と専門内における、治療される特定の病態、治療される被験体の年齢および体調、状態の重篤度、治療期間、(もしあれば)併用療法の性質、特定の投与経路などの因子で変化する。例えば、個体が異常に上昇した全身情報に関するマーカーレベルを有する程度に、有効量は依存し得る。本発明の薬剤は、炎症性の損傷および/または酸化的な損傷を低減するのに使用され得ることを理解しなければらない。従って、有効量は、炎症性の損傷および/または酸化的な損傷を低減する量であり得る。急性状況下で薬剤を使用する場合、1つ以上の医学的に望ましくない結果(このような有害事象を代表的に生じ得る)を防ぐために使用され得ることが理解される。用量の範囲は投与法によることが予想される。被験体の応答が、適用される初回用量において不十分な場合は、患者の耐性が許容する程度で、より高用量(または、別の、より局所化された送達経路による実効的にはより高用量)が使用され得る。一日あたり複数回投与も、化合物の至適な全身レベルを達成するために考慮してもよい。
以下の実施例は例示だけの目的のものであり、本出願に添付する請求項の範囲を限定することを意図するものではない。
<実施例1>
==冠状動脈疾患を有する患者および冠状動脈疾患を有さない患者の血液サンプルにおけるMPO活性およびMPO量のレベル==
=方法=
=研究集団=
ロジスティック回帰パワー計算に基づいて(等しいサイズの群を仮定する)、高MPO(上位4分の1)に対して少なくとも2.0の統計的に有意なオッズ比を検出するために、80%パワー(α=0.05)を与えるのに326名の患者を必要とした。クリーブランド臨床ファウンデーション(Cleaveland Clinic Foundation)の心臓病学教室の二つの開業ユニットにおいて、被験体(n=333)を同定した。まず、心臓病予防クリニックから、85名の持続患者を登録した。同時に、カテーテル挿入検査室から、125名の持続患者を登録した。このシリーズの患者におけるCADの有病に基づいて、さらに116名の対照患者の必要性を決定した。過去6ヶ月間にわたってカテーテル導入の有意なCADを有さない患者全てを、カテーテル導入データベースから同定し、次いで、140名をランダムに選択し(地域コード/電話番号に基づく)、MPO測定に参加するよう呼びかけた。記録された心筋梗塞、以前に行われた冠状動脈血管再構築手術(CABGまたは経皮的冠状動脈治療術)、または心臓カテーテル導入時に同定された1つ以上の冠状動脈における≧50%の狭窄の存在の既往歴によって、CADを定義した。CAD群に対する排除基準は、登録前3ヶ月以内の急性冠状動脈の事象、末期腎疾患および骨髄移植であった。対照群は、診断用の冠状動脈造影術を受けたが、有意なCADの証拠を示さなかった被験体からなった。対照被験体の排除基準は、1つ以上の≧50%の狭窄を有する冠状血管、血管性心臓病、左心室機能障害、末期腎疾患、骨髄移植、または既往歴および診察により感染または活動性炎症性疾患の証拠を有することである。全ての患者は45歳以上で、線維症を有さなかった。既往歴は、糖尿病、過去および現在の喫煙歴、高血圧、および任意の第1等親族にCADに罹っているものがいるかどうか(50歳までの男性および60歳までの女性)について評価した。実験プロトールおよび同意書形式は、クリーブランド臨床ファンデーション検閲委員会によって承認され、かつ、書面による同意書を全ての被験体から得た。匿名性を確保するために、サンプルをコード化し、全ての分析を盲検方式で実施した。
=測定=
一晩絶食させた後、EDTA含有チューブに血液を引き込み、WBC、低密度リポ蛋白コレステロール(LDLc)、高密度リポ蛋白コレステロール(HDLc)、総コレステロール(TC)、および絶食下トリグリセリド(TG)を定量するのに血液を用いた。浮遊密度遠心により、好中球を単離した(Hazen, S.L., et al., J. Biol. Chem. 271:1861-1867)。細胞調製物は、目視では少なくとも98%均一であった。白血球調製物は、細胞溶解のために0.2%セチルトリメチルアンモニウムブロミドに加え、室温で10分インキュベートし、液体窒素で急激に凍結し、分析まで-80℃で保存した。
好中球溶解物のペルオキシダーゼ活性アッセイによって、機能性MPOを定量した。簡潔に、界面活性剤によって溶解させた細胞(104/ml、3連のサンプル)を、14.4 mMグアヤコール、0.34 mM H2O2および200 μM DTPAを含む20 mMリン酸バッファー(pH 7.0)に添加し、グアヤコール酸化産物の形成を、25℃でA470にてモニターした(Klebanoff, S.J., et al., Methods Enzymol. 105:399-403; Capeillere-Blandin, C., Biochem. J 36(Pt2):395-404)。ジグアヤコール酸化産物における26.6 mM-1cm-1のmM吸収係数を用いて、1ユニットのMPO活性が、25℃で1分あたり1 μmolのH2O2を消費する量と定義した場合のペルオキシダーゼ活性を計算した。報告されるMPO活性を、好中球蛋白(白血球-MPO)の1 mgまたは血液(血液-MPO)の1 mlのいずれかに対して正規化する。血液-MPO(血液1 mlあたりのMPO単位)は、好中球あたりのMPO活性単位を、絶対的な好中球数(1マイクロリットルの血液あたり)と掛け、1000倍して推定値を求めた。記載の通り、蛋白濃度を定量した(Markwell, M.A., et al., AnalBiochem. 87:206-210)。
ある個体の白血球-MPOレベルは、極めて再現性の高いことが見出された。すなわち、長期に渡る被験体の変動は±7%未満であることが示された(>2年間、1〜3ヶ月に1度、n=6名の男性を評価した結果)。連続的に複数回、サンプルの分析によって決定した白血球-MPO定量の変動係数は、4.2%であった。別々の3日間に10サンプルについて実施した白血球-MPO定量は4.6%の変動係数を示した。連続的に複数回、サンプルの分析によって決定した血液-MPO定量の変動係数は、4.2%であった。別々の3日間に10サンプルについて実施した血球-MPO定量は4.8%の変動係数を示した。1個の好中球あたりのMPO量を、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)にて定量した。捕捉プレートは、ヒトMPO(10 mM PBSに10 μg/ml, pH 7.2)の重鎖に対して惹起されたポリクロナール抗体(Dako, Glostrup、デンマーク)と96ウェルプレートとを一晩インキュベートして作製した。プレートを洗浄し、ヒトMPOに対してアルカリフォスファターゼ標識抗体を用い、白血球溶解物に対してサンドイッチELISAを実施した。記載の通りに(Hazen, S.L., et al., J. Biol. Chem. 271:1861-1867)、MPO量を、白血球から精製したヒトMPOの既知量によって作成した標準曲線に基づいて計算した。単離MPOの純度は、0.87(A430/A280)のRZを示すことによって、また、SDS PAGE分析およびインゲルテトラメチルベンジジンペルオキシダーゼ染色(Podrez, E.A., et al., J. Clin. Invest. 103:1547-1560)によって確定した。89,000M-1cm-1/ヘムの消滅係数を用いて分光光度測定によって、酵素濃度を定量した。
=統計学的分析=
表示特性は、連続測定値については平均±標準偏差、または、中央値(1/4値間差)で、カテゴリー測定値については数とパーセントで表す。CADと対照被験体との間の差を、ウィルコクソンの順位和テスト(Wilcoxon rank sum test)、または、カイ二乗テスト(chi-square test)によって評価した。白血球-MPO活性も血液-MPO活性もガウス分布に従わないので、分析のためにMPOレベルを4分位に分割した。MPO活性の増加につれてCAD率も増加するという未調整の傾向を、コクラン・アーミテージの傾向テスト(Cochran-Armitage tend test)によって評価した。修正されたフラミンガムの粗大危険度スコアを、カテーテル挿入時に記録された血圧というよりむしろ、記録された高血圧の既往歴を用いて確定した(Taylor, A.J., et al., Circulation 101:1243-1248)。
ロジスティック回帰モデル(SASシステム、SAS Institute, Cary、ニューコネチカット州)を、MPO活性の2番目と3番目合同4分位に関連する相対的危険度、および、最低4分位に対する最高4分位の相対的危険度を推定するオッズ比(OR)を計算するために策定した。従来から知られる、個別のCAD危険因子(年齢、性別、糖尿病、高血圧、喫煙(過去または現在)、家族歴、TC、LDLc、HDLc、TG、WBC)に関して調整した。ホスマー・レムショウ(Hosmer-Lemeshow goodness)の適合度テストを用いて、適当なモデルの適合度を評価した。連続変数間の関連を、スペアマン(Spearman)の順位相関係数を用いて評価した。カテゴリー変数の間の関連を、ウィルコクソン(Wilcoxon)の順位和テストを用いて評価した。
==結果==
=患者集団特徴=
本研究に参加した被験体の臨床的な特徴および生化学的な特徴を表1に示す。CAD患者は比較的高年齢で、男性である確率が高く、糖尿病、高血圧および喫煙の既往を有する確率が高い。CAD被験体はまた、絶食後トリグリセリドレベルが高く、脂質低減薬(主にスタチン類)、アスピリンおよびその他の心血管薬の使用度が高かった。他の研究と一致して、フラミンガムの総合危険度スコア、好中球絶対数およびWBCは、CAD被験体において有意に増加していた(各々p<0.001、表1)。
Figure 2005532792
==冠状動脈疾患発症率に対する白血球-MPO、血液-MPOおよび白血球数の層化==
高レベルのMPOを有する個体はCAD発症率も高いという仮説を試験するために、本発明者らは好中球を単離し、そのMPO含量を測定した。好中球蛋白1 mgあたりのMPO活性(白血球-MPO)は、対照患者の中央値13.4 U/mg対CAD患者の18.1 U/mg(傾向に対しても、差に対してもp<0.001、図1)で、CAD状態によって有意に違っていた。全調査集団に対する4分位による白血球-MPOの層化から、CAD状態と正の相関(傾向に対してp<0.001)、すなわち、最高4分位に属する個体は最高危険度(OR(CI), 8.8(4.4-17.5)、表2)を有することが明らかになった。白血球MPO含量をその触媒活性によって定量化すること(すなわち、機能的アッセイ)に加えて、本発明者らは、ELISAを用いて、ランダムな被験体のサブセット(n=111)について、好中球あたりのMPO量を独立して定量した。このアッセイ法で観察された結果は、活性測定値と有意に相関した(r=0.95)(データ示さず)。白血球-MPOの第2、第3の4分位におけるCAD率はほぼ等しく見える(表2)ので、これらは、以後の全ての分析においてまとめて用いられ、単一変動および多数変動モデルでは中央範囲レベルという。他の研究で見られているように、フラミンガムの総合危険度スコアとWBCは、CAD率と正の相関を有した(表2)。
Figure 2005532792
血中のMPOの全含量は、白血球あたりのMPOレベルと、白血球全数の両方に依存する。好中球は、血中MPO含量の>95%を所有しているので、本発明者らは、好中球あたりのMPO含量を、好中球絶対数と掛けることによって、血液1 mlあたりのMPOレベル(血液-MPO)を推定した。CAD率は、血液MPO4分位と正の相関を有した(傾向に対してp<0.001、図9、表2)。
==白血球-MPOは、従来の冠状動脈危険因子と有意に相関しない==
次いで、従来のCAD危険因子と白血球-MPOとの間の相関の可能性を評価した。白血球-MPOレベルは、年齢、性、糖尿病、高血圧、喫煙(過去または現在)、WBC、トリグリセリド、LDLc、および、フラミンガム総合危険度とは独立していた。白血球-MPOと総コレステロール(r=-0.15, p=0.005)およびHDLc(r=-0.14、p=-0.01)との間には弱い負の相関が見られた。白血球-MPOと好中球絶対カウント(r=0.20、p<0.001)およびCADの家族歴(家族歴を有する白血球-MPO中央値=15.9 対 家族歴を有さない白血球-MPO中央値14.1、p=0.05)との間には正の相関が見られた。同様の相関が血液-MPOにも認められた。
==単一および多数危険因子ついて調整した後では、白血球-MPOおよび血液-MPOは冠状動脈疾患状態と強く相関する==
白血球-MPOおよび血液-MPOが独立にCAD状態と相関するのかどうかを評価するために、白血球-MPOおよび血液-MPO4分位におけるオッズ比を、従来の個々のCAD危険因子について調整した。白血球-MPOおよび血液-MPOの両方において、最低(第1)4分位に対する、中央(第2プラス第3)4分位と最高(第4)4分位のオッズ比は、従来の個々のCAD危険因子、WBC、および、フラミンガム総合危険度スコアについて調整した後では(データ示さず)、CAD状態と一貫して高い相関を有した。すなわち、オッズ比は、HDLcに対する調整後の8.4(CI=4.2-16.9, p<0.001)から、喫煙、糖尿病、高血圧、喫煙に対する調整後の13.5(CI=6.3-29.1, p<0.001)の範囲に渡っており、また、それより程度は低いが、年齢、HDLc、フラミンガム総合危険度、および、WBCも、単一因子調整後には、CAD状態を予測する有意な相関を有する因子となった。同様の結果が、血液-MPOの場合にも、従来の個々のCAD危険度因子に対し単一因子調整後に観察された(データ示さず)。
次いで、いくつかのモデルを用いて、多変数回帰分析を実施した(表2、図10)。モデル1は、先行工程(すなわち、単一変数回帰)でCADと有意に相関した各単一危険因子について同時に調整した後、白血球-MPOおよび血液-MPOを調べた。白血球-MPOは、CAD状態の最も有力な予測パラメータであった。すなわち、調整したORは8.5(CI=3.7-19.7、中 対 低4分位)と20.3(CI=7.9-52.1、高 対 低4分位)であった。CAD(2;3;23-25)に対する増大危険度を予測するマーカーであるWBCの調整後オッズ比は、1.1(CI=1.02-1.21)であった。フラミンガム総合危険度スコアおよびWBCに対して調整された第2の回帰モデルは、モデル1で観察された大きなORと一致する、白血球-MPOのORを示した(中 対 低OR=4.2、高 対 低OR=11.9)。フラミンガム総合危険度スコアおよびWBCにおける調整後ORも有意であった。同様に、血液-MPOも、多変数調整後には、従来のCAD危険因子、フラミンガム総合危険度およびWBCと比較して、有力なCAD状態予測因子であった(表2)。
<実施例2>
==CADを有する被験体およびCADを有さない被験体由来の血液サンプルのフローサイトメトリー分析==
これらの白血球が、正常レベル以上のMPOまたは正常レベル以下のMPOを有する患者由来の血液サンプルを、フローサイトメトリーにて分析した。各患者由来の全血を、血液分析器に注入した。この分析器は、インサイチュで細胞化学的染色(バイエル社から入手のAdvia 120)によって白血球を同定する。装置において、全血をまず溶血し、インタクトなWBCを加熱し、フォルムアルデヒドで固定した。次いで、ペルオキシダーゼ基質(過酸化水素および発色団)を、この白血球とインキュベートし、得られた染色細胞をフローサイトメトリーで調べた(サンプルの注入からサイトグラムが得られるまでに20秒の総合時間を要する)。この結果を図11(A-B)に示す。異なる色で示される細胞のクラスターは、1)紫−好中球、2)緑−単球、3)濃青−リンパ球、4)黄−好酸球、5) 青緑色−大きな未染色細胞、6)白−RBC残渣/ノイズ。これらのデータに基づき、全白血球数(WBC)および分化(好中球、単球、好酸球およびリンパ球の%分布)を報告する。
サイトグラムにおける所定の細胞クラスターの位置は、その光吸収強度(Y軸は、ペルオキシダーゼ活性、従って、染色強度に関連する特性)、および、光散乱(X軸は、サイズと顆粒性/屈折率、すなわち、ペルオキシダーゼ活性と染色に関連する特性)に関連する。
左のパネル(すなわち、パネルA)は、好中球あたりのMPOレベル(aka白血球-MPO)が集団の平均よりも低い(例えば、底部25%)個体から得たサイトグラムを示す。右のパネル(すなわち、パネルB)は、好中球あたりのMPOレベル(aka白血球-MPO)が集団の平均よりも上回る(例えば、50番-75番%)個体から得たサイトグラムの位置関係を示す。X軸およびY軸における好中球クラスターの位置は異なり、一般に、MPOが高いと、右に変位することに注意されたい。さらに、好中球クラスターを含有する楕円の主軸の傾きが異なる。これらの変化は、細胞型内におけるMPO含量に関する情報を担う。
既知のペルオキシダーゼ含量を有するモデルおよび標準を用いることによって、本発明者らは、白血球あたりのペルオキシダーゼの相対的レベルを同定するために、この情報を用いて標準曲線を作成し得る。同種の分析を、MPOを有する血液中の、他の主要な細胞型である単球についても可能である。好酸球のペルオキシダーゼ染色は、MPOと関連の酵素ではあるが、異なる遺伝子産物であるエオジノフィルペルオキシダーゼによる。
<実施例3>
==CADを有するヒト被験体およびCADを有さないヒト被験体由来の血液中のジチロシンレベル==
蛋白結合ジチロシンのレベルを、CADを有する112名の個体および128名の見かけ上健康な対照被験体由来の血液サンプルで測定した。オンライン蛍光検出付きHPLCにてこのレベルを測定し、合成ジチロシンにて作製した外部検量曲線を用いて定量した。結果は、先駆アミノ酸、チロシン含量に対して正規化した。チロシンも、オンラインダイオードアレー検出付きHPLCによって同時に定量した。この結果から、CADを有する被験体は、その血清中に、健康で、年齢と性別で整合された被験体由来の血清で観察されたものよりも高レベルの(CAD被験体 対 健康被験体の比較において50%増加、p<0.001)ジチロシンを有することが明らかにされた。
<実施例4>
==CADを有するヒト被験体およびCADを有さないヒト被験体由来の血液中のニトロチロシンレベル==
蛋白結合3-ニトロチロシンのレベルを、実施例3と同じ被験体由来の血液サンプルで測定した。実施例3では、CADを有する112名の個体および128名の見かけ上健康な対照被験体を調べた。ニトロチロシンレベルは、オンラインエレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析器(LC/ESI/MS/MS)を付けたHPLCにより、安定な同位元素希釈法を用いて測定した。結果は、先駆アミノ酸、チロシン含量に対して正規化した。チロシンも、安定な同位元素希釈LC/ESI/MS/MSによって同時に定量した。この結果から、CADを有する被験体は、その血清中に、健康で、年齢と性別で整合された被験体よりも高レベルの(CAD被験体 対 健康被験体の比較において2.8倍増加、p<0.001)ニトロチロシンを有することが明らかにされた。
<実施例5>
==CADを有するヒト被験体およびCADを有さないヒト被験体におけるHETE、HODEおよびF2イソプロスタンの血中レベル==
HETE、HODEおよびF2イソプロスタンのレベルを、実施例3と同じ被験体由来の血液サンプルで測定した。実施例3では、CADを有する112名の個体および128名の見かけ上健康な対照被験体を調べた。脂質は、オンラインエレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析器(LC/ESI/MS/MS)を付けたHPLCによって測定した。結果は、先駆脂質(HETEおよびF2イソプロスタンの場合はアラキドン酸で、HODEの場合はリノール酸)に対して正規化した。先駆脂質も、LC/ESI/MS/MSによって同時に定量した。この結果から、CADを有する被験体は、その血漿中に、健康で、年齢と性別で整合された被験体よりも高レベルの酸化産物を有することが明らかにされた。F2イソプロスタンは、CADを有さない被験体に対して、CADを有する被験体の血清では80%高く(P<0.001)、HETEおよびHODEのレベルは、CADを有さない被験体に対して、CADを有する被験体では60%高かった(P<0.001)。
<実施例6>
==CADを有するヒト被験体およびCADを有さないヒト被験体におけるMPO-生成脂質酸化産物の血中レベル==
MPOによって生成されることが示されているリン脂質酸化産物(2-リソPCにおけるグルタールおよびノナン二酸のモノエステル(G-PCおよびND-PC)、2-リソPCにおける9-ヒドロキシ-10-ドデセン二酸および5-ヒドロキシ-8-オキソ-6-オクテン二酸のエステル(HDdiA-PCおよびHOdiA-PC)、2-リソPCにおける9-ヒドロキシ-12-オキソ-10-ドデセン酸および5-ヒドロキシ-8-オキソ-6-オクテン酸のエステル(HODA-PCおよびHOOA-PC)、2-リソPCにおける9-ケト-12-オキソ-10-ドデセン酸および5-ケト-8-オキソ-6-オクテン酸のエステル(KODA-PCおよびKOOA-PC)、2-リソPCにおける9-ケト-10-ドデセン二酸および5-ケト-6-オクテン二酸エステル(KDdiA-PCおよびKOdiA-PC)、2-リソPCにおける5-オキソバレリン酸および9-オキソノナン酸エステル(OV-PCおよびON-PC)のレベルを、CADを有する25名の被験体および12名の見かけ上健康な対照被験体由来の血液サンプルで測定した。さらに、5-コレステン-5α,6α-エポキシ-3β-オル(コレステロールα-エポキシド)、5-コレステン-5β,6β-エポキシ-3β-オル(コレステロールβ-エポキシド)、5-コレステン-3,7β-ジオール(7-OH-コレステロール)、5-コレステン-3β,25-ジオール(25-OHコレステロール)、5-コレステン-3β-オル-7β-ヒドロペルオキシド(7-OOHコレステロール)およびコレステン-3β,5α,6β-トリオール(トリオール)、のレベルを、CADを有する25名の被験体および見かけ上健康な12名の対照被験体由来の血液サンプルにおいて測定した。脂質は、確立した方法を用い、オンラインエレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析器(LC/ESI/MS/MS)を付けたHPLCによって測定した。結果は、先駆脂質(PAPCでは、1-ヘキサデカノイル-2-エイコサテトラ-5’,8’,11’,14’-エノイル-sn-グリセロ-3-フォスフォコリン、PLPCでは、1-ヘキサデカノイル-2-オクタドデカジ-9’,12’-エノイル-sn-グリセロ-3-フォスフォコリン、またはコレステロール)に対して正規化した。先駆脂質も、LC/ESI/MS/MSによって同時に定量した。この結果から、CADを有する被験体は、その血漿中に、健康で、年齢と性別で整合された被験体よりも、各リン脂質酸化産物について高レベル(脂質によって、50%から4倍)を有することが明らかにされた。
<実施例7>
==スタチン治療によって修飾されたニトロチロシンレベル==
=症例−対照研究=
この集団は、ボストン医学センター、心臓病学部にて評価された患者の一連のサンプルであった。症例患者は、心筋梗塞、冠状動脈バイパス移植手術、経皮冠状動脈介入手術、または冠状動脈造影法によって示された1つ以上な主要な冠状動脈において50%以上の狭窄症の既往歴として定義される、冠状動脈疾患(CAD)既往歴を有する人々であった。対照患者は、広告によって募集し、CADまたは狭心症もしくはうっ血性心不全を示す症候の臨床的な既往歴をゆうさなかった。
=プロスペクティブなインターベンション研究=
この集団は、クリーブランド臨床ファンデーションの心臓病予防外来において、2001年6月から2002年1月までに募集した患者の一連のサンプルである。患者は、本研究への参加資格を持ち、また、参加に同意した。21歳以上であり、CADの臨床証拠は無く、治療のため生活スタイルへの介入を少なくとも6-8週受けるにもかかわらず、低密度リポ蛋白コレステロール(LDL-C)レベル≧130 mg/dLを維持する患者が、本研究に参加資格ありとされた。簡潔に、初回のスクリーニングで、詳細な既往歴を入手し、徹底的な健康診断を実施し、絶食下リポ蛋白プロフィールを得た。本研究に参加資格ありと予想される患者は、栄養および運動介入に関するカウンセリングを受けた。6-8週後、LDL-Cが依然として≧130 mdLの場合、患者は本研究に登録の資格ありとされた。絶食後の朝の血漿サンプルを、治療開始前(基準値)と、アトルバスタチン治療(1日あたり10ミリグラム経口投与)の12週後にも収集した。活動性肝臓疾患または血清クレアチンレベルがデシリットルあたり1.8 mg以上と定義される腎機能不全を有する患者を除外した。本研究に含められた患者は、1日あたり経口で10ミリグラム用量のアトルバスタチンによる治療を受けた。全ての患者は、書面によるインフォームドコンセントを提出し、また、クリーブランド臨床ファンデーションの施設検閲委員会は本研究プロトコールを承認した。
=検査室分析=
一晩絶食患者から、血清単離チューブ(対照-症例研究)またはEDTAチューブ(インターベンション研究)に血液サンプルを収集した。サンプルを3500 rpmで10分遠心し、血清/血漿を回収し、かつ、アリコートを分析まで-80℃で保存した。臨床データに対して目隠しされた職員が全ての検査測定を実施した。リポ蛋白/脂質プロフィールおよび高感度C-反応性蛋白(CRP)測定を、CDC標準化アッセイを用いて実施した。
=ニトロチロシン=
蛋白結合ニトロチロシンレベルは、安定な同位元素希釈液体クロマトグラフィー−エレクトスプレーイオン化タンデム質量分析による方法によって定量した。この方法は、イオントラップ質量分析器を用いる(LCQ Deca, ThermoFinigann, San Jose、カリフォルニア州)。合成3-ニトロ-[13C6]チロシン(2 pmol)および[13C9 15N1]チロシン(2 nmol)を、内部標準として、また、同時に、分析中、ニトロチロシン、チロシンおよびニトロチロシンの人工的な形成をモニターするために添加された。サンプル中のニトロチロシン含量は、ニトロチロシンと先駆アミノ酸であるチロシンとの間のモル比として表す。
=統計学的分析=
=症例−対照研究=
ニトロチロシンおよびC-反応性蛋白は正常に分布しなかった(シャピロ−ウィルクテスト(Shapiro-Wilk test))。従って、4分位法を分析に用い、測定要約を中央値と4分位間範囲として提示した。症例と対照との比較は、カテゴリー測定値の場合はカイ二乗テスト(chi-square test)で、連続測定値の場合はウィルコクソン(Wilcoxon)の順位和テストで実施した。傾向は、コクラン・アーミテージ(Cochran-Armitage)テストで評価した。
最低4分位患者に対して最高4分位患者のCADに対する相対的危険度を、単一および多数の危険因子について調整しない場合と、調整した場合において推定するために、ロジスティック回帰モデル(SASシステム、SAS Institute, Cary、ニューコネチカット州)を使用した。年齢、性別、LDL-C、HDL-C、トリグリセリド、糖尿病の既往歴、高血圧の既往歴および現在の喫煙を含めた複数のモデルを比較するために、確率比カイ二乗テストを実施した。また、同じ比較を、上記の心臓危険因子プラス、ニトロチロシンまたはCRPのどちらか、および、上記の心臓危険因子プラス、ニトロチロシンおよびCRPの両方を含めて実施した。ニトロチロシン定量の臨床的な有用性をさらに精しく見積もるために、受容者・操作者特徴(ROC)曲線を、LDL-C+HDL-C単独、LDL-C+HDL-C+CRPの結合、およびLDL-C+HDL-C+CRP+ニトロチロシンの結合を含む、CAD危険度評価に対して用いられた、検査室測定値のためのロジスティック回帰手順から得た。
=インターベンション研究=
基礎状態の測定値および12週における測定値の違いを分析するに、ウィルコクソン(Wilcoxon)の順位和テストを用いた。ニトロチロシンレベル、リポ蛋白プロフィール測定およびCRPレベルにおける基礎値およびアトルバスタチン誘導による変化の相関を評価するために、スペアマン(Spearman)順位相関を用いた。フィッシャーのr対z変換を用いたところ、約95%信頼間隔が認められた。ニトロチロシンレベルの変化に関連する因子を決定するために、多数回帰分析を実施した。
==結果==
==症例−対照研究)==
=患者集団の特徴=
研究参加者の臨床的および検査結果特徴を表3に示す。CADを有する患者は、比較的高年齢で、男性であることが多く、高血圧、糖尿病またはCADの家族歴を有する確率が高かった。CADを有する患者はまた、絶食下においてトリグリセリドが高く、HDLレベルが低く、CRPが高く、かつ、脂質低減薬や、他の心血管薬を使用する可能性が高い。
=ニトロチロシンレベルとCAD=
ニトロチロシンレベルは、対照と比較して、CADを有する患者において有意に高かった(中央値が、各々、9.1 μmol/molチロシン 対 5.7 μmol/molチロシン、P<0.001)(図12)。さらに、CAD率は、ニトロチロシンの4分位と共に増加した(26% 対 58%、最低4分位 対 最高4分位、傾向についてはP<0.001)。ニトロチロシンの最高4分位の患者は、最低4分位の患者に比べてCAD危険度が増加していた(オッズ比、4.1、95%信頼間隔、1.9-8.5、傾向についてはP<0.001)。CAD率はまた、CRP分布を横切るにつれて増加した(25% 対 50%、最低 対 最高、傾向についてはP<0.001)。CRP最高4分位の患者は、最低4分位の患者と比べてCADの危険度が増加していた(オッズ比、3.0、95%信頼間隔、1.4-6.3、傾向についてはP<0.001)。ニトロチロシン4分位 対 他の既知の心血管障害危険度の予測因子の4分位による、患者間のCAD率を見てみると、CADを有する患者の比率は、ニトロチロシンの上位4分位を有し、高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の下位4分位を有する患者において、ニトロチロシンの下位4分位とHDL-Cレベルの上位4分位を有する患者と比べると最高であることが明らかになった(81% 対 14%、P<0.001)。このCADを有する患者の割合はまた、ニトロチロシンとCRPにおいて上位4分位を有する患者の方が、ニトロチロシンとCRPの両方において下位4分位にいる患者と比べて、また、両方の炎症マーカーにおいて下位4分位を有する患者と比べて、より高かった(67% 対 19%、P=0.002)。
=ニトロチロシンレベルとCAD危険因子=
ニトロチロシンレベルは、年齢(r=0.14、p=0.03)、絶食下トリグリセリド(r=0.14、p=0.03)およびCRP(r=0.15、p=0.02)と相関した。しかし、これらの相関値は、大きさが小さく、ニトロチロシンの観察された変動の5%未満であった。ニトロチロシンと、LDL-C、HDL-Cまたは総コレステロールとの間には有意な相関は無かった。面白いことに、糖尿病ではニトロチロシンレベルが、非糖尿病よりも高かった(中央値は各々、9.26 μmol/molチロシン 対 6.0 μmol/molチロシン、P<0.001)。CADを除いて、表3に示した因子はどれもニトロチロシンとは有意な相関を示さなかった。
=ニトロチロシンおよびCADについて調整したモデル=
単一変数および多変数分析の結果を図12に示す。ニトロチロシンレベルは、従来の個別のCAD危険因子(年齢、性、糖尿病既往歴、現在の喫煙、高血圧既往歴、HDL-C、LDL-C、トリグリセリド)およびCRPに対して単一因子調整をした後でも、CAD状態の有意な予測因子であった。すなわち、第4の4分位のオッズ比は、糖尿病について調整後の3.4(95%信頼間隔、1.7-7.3、P<0.002)から、HDL-Cについて調整後の4.2(95%信頼間隔、2.0-8.8、P<0.001)の範囲を有する。各単一のCAD危険因子について同時に調整を実施した多変数分析では、ニトロチロシンは、CAD危険度を独立に予測した(第4の4分位のオッズ比は3.16、95%信頼間隔1.35から7.37、P=0.001)。さらに、ニトロチロシンは、CRPを多変数モデルに加えると、CAD危険度に関する、有力な独立した予測因子となった(第4の4分位のオッズ比は3.0、95%信頼間隔=1.3から7.1、P=0.001)。
(ニトロチロシンレベルが独立してCADと相関するかどうかを評価するために、ニトロチロシン4分位に対するオッズ比を、従来のCAD危険因子に対して個別に調整し、次いで、まとめてフラミンガム総合危険スコアとした。ニトロチロシンレベルは、年齢、性、糖尿病既往歴、現在の喫煙、高血圧既往歴、HDL-C、LDL-C、トリグリセリドおよびCRPに対して個別に調整した後ではCADと高い相関を示した。ただし、調整済みオッズ比および信頼間隔にはごくわずかな変化しか観察されなかった(図示せず)。フラミンガム総合危険スコアに対して調整した後では、ニトロチロシンは、CAD危険度に対して有力な予測因子となった(表4、モデル1、調整済みニトロチロシン、第4の4分位オッズ比、((95% CI)=5.6(2.2-14.5)、P<0.001)。CRPをモデルに加えても、CAD状態の予測因子としてのニトロチロシンのオッズ比に対してほとんど影響を及ぼさなかった(表4、モデル2、調整済みニトロチロシンの第4の4分位OR(95%CI)=5.4(2.0-14.3), P<0.001)。確率比試験から、心血管疾患危険(例えば、モデル3、表4)の既成マーカーを含めた多変数予言モデルにニトロチロシンを導入することは、CADに対する危険予測を有意に増すことが確認された(カイ二乗=10.42, P<0.001)。
ニトロチロシンとCADとの相関はCAD群においては、脂質低減薬および、他の心血管疾患薬の使用が増大しているにも関わらず明白である。別の分析によって、ニトロチロシンレベルは、スタチンを含む各投薬処方を遮断した被験体においてもCAD状態を予測するための重要な因子であることが確認された。例えば、スタチンを投与していない被験体(N=201)において、CADを有する被験体における蛋白結合ニトロチロシンの中央値(μmol/molチロシン)は、対照よりも有意に大きかった(9.3 μmol/mol、4分位間範囲4.7-14.0 対、5.6 μmol/mol、4分位間範囲2.6-8.4、P<0.001)。さらに、スタチンを投与していない被験体の間では、ニトロチロシンは、CAD危険因子とCRPの有力で、独立した予測因子である(第4の4分位のオッズ比、3.6、95%信頼間隔1.2から10.4、P=0.02)。興味あることに、スタチンを投与した被験体(N=61)の間では、蛋白結合ニトロチロシンレベルは、CADを有さない被験体に対し、CADを有する被験体においてもはや有意に増加していない(P=0.52)。これは、スタチンがニトロチロシンレベルに影響を及ぼすことを示唆する。
=ニトロチロシン測定値の臨床的な有用性=
ニトロチロシンが、心血管疾患のリスクに関する既設のマーカーの予測値をさらに増すことを確かめるために、本発明者らは、ニトロチロシンの有無で、多変数ロジスティック回帰モデルに対して確率比テストを実施した。年齢、性、LDL-Cレベル、HDL-C、トリグリセリドならびに糖尿病、高血圧および現在の喫煙状態の既往を含む多変数予測モデルに対してニトロチロシンを導入すると、CADに対する危険予測を有意に高めた(カイ二乗=10.42、P<0.001)。さらに、CADに対する危険予測の有意な増加が、ニトロチロシンレベルを、上記CAD危険因子プラスCRPを含めた多変数予測モデルに加えた場合も認められた(カイ二乗=10.06、P<0.0002)
一般にCAD危険評価のためにモニターされる代替的な検査測定値に対して、ニトロチロシンレベルの潜在的な臨床的有用性をさらに精しく量るために、本発明者らは、受容者−操作者−特徴分析を実施した(表6)。LDL-C+HDL-C単独、LDL-C+HDL-CおよびCRPの結合、ならびにLDL-C+HDL-C+CRPおよびニトロチロシンの結合に基づく危険予測モデルの受容者・操作者特徴曲線下の面積について比較をおこなった。CRPをLDL-C+HDL-Cに加えると、ROC曲線下部の面積は0.60から0.66へと増加した(P<0.001)。LDL-C+HDL-C+CRPを含むモデルにニトロチロシンを加えると、受容者−操作者−特徴分析曲線下部の面積に、さらに有意な増加がもたらされた(0.66から0.714、P<0.001)(表6)。同様の結果(すなわち、ニトロチロシンを加えると有意な増加が起こること)が、脂質パラメータが、LDL-C:HDL-C比またはTC:HDL-C比としてモデル化された場合も得られた(データ示さず)。
==インターベンション研究==
==ニトロチロシンレベル 対 他のCAD危険因子および炎症マーカーにおけるスタチン誘導性変化==
蛋白結合チロシン 対 他のCAD危険因子および炎症マーカーに対するスタチン治療の影響を直接評価するために、予測的インターベンション研究を実施した。健康で、CADまたは糖尿病の臨床症候が無く、一次的予防治療(基準値においてLDL-C>130)に対して参加資格を有する患者を登録の資格ありとした。被験体(N=35、49%男性)は、平均年齢54±10歳であった。表5は、基準値および12週のアトルバスタチン治療(10 mg, PO, QHS)後における、総コレステロール、LDL-C、HDL-C、トリグリセリド、アポリポ蛋白B-100、CRPおよび蛋白結合ニトロチロシンのレベルを示す。アトルバスタチンによる治療により、総コレステロール、LDL-Cおよびアポリポ蛋白B-100の平均レベルに有意な減少がもたらされた(各々25%、39%および29%)。注目すべきことは、血漿ニトロチロシンレベルのスタチン誘導性減少(25%、P=0.017)は、総コレステロールおよびLDL粒子数(すなわち、アポリポ蛋白B100、表5)の減少と大きさが類似していた。CRPレベルにもスタチン誘導性の減少に、有意ではないが同様の傾向が観察された(11%減少、P=0.096)。
ニトロチロシン、脂質パラメータおよびCRPの基準値の間には、有意な相関が見られなかった。さらに、ニトロチロシンにおけるスタチン誘導性変化と、総コレステロールを含めたリポ蛋白と炎症マーカーとの間(95%信頼間隔、-0.23=ρ=0.43)、LDL-Cとの間(95%信頼間隔、-0.2=ρ=0.45)、HDL-Cとの間(95%信頼間隔、-0.18=ρ=0.47)またはCRPとの間(95%信頼間隔、-0.22=ρ=0.44)には有意な相関は見られなかった。最終的に、多変数回帰分析では、ニトロチロシンレベルと、総コレステロール、LDL-C、HDL-CおよびCRPとの間に有意な関連は無かった(F-ratio=0.71、P=0.6)。
本研究の結果は、酸化窒素由来オキシダントによる蛋白修飾に対して特異的なマーカーであるニトロチロシンは、CADに対する新規の炎症マーカーとして役立ち得ることを示唆する。蛋白結合ニトロチロシンの全身レベルは、従来のCAD危険因子およびCRPに対して多変数調整した後でもCAD危険度と相関する。重要なことに、スタチン治療は、ニトロチロシンレベルの有意な減少を促進し、しかも、この減少はその大きさが、総コレステロールおよびLDL粒子数の減少と類似していた。さらに、スタチン治療によって促進されたニトリチロシンの低下は、脂質パラメータおよびCRPの減少から独立していた。以上総合すると、この結果は、ニトロチロシン測定は、CAD危険度を評価するにも、また、スタチンの抗炎症作用をモニターするためにも有用であり得ることを示唆する。
本発明において比較的注目すべき所見の一つは、低容量のアトルバスタチンによる全身治療によってニトロチロシンの有意な減少が促進されることである。スタチンは、単にコレステロールレベルを下げるということを越えた全身作用を促進することが次第に明らかになっている。スーパーオキシド形成に対するスタチン誘導性の抑制は、培養した血管平滑筋細胞において示されている。スーパーオキシド形成の低下にあずかるメカニズムは、蛋白racのイソプレニル化の抑制を含むようである。racは、NAD(P)Hオキシダーゼの最重要成分であって、細胞刺激の間、形質膜表面に適当な転移を実施するために通常イソプレニル化を必要とする。従って、代表的には、リポ蛋白およびコレステロールレベルに観察されるものと比べられるCRPにおける軽微な変化とは対照的に、この結果は、低用量スタチン投与によるニトロチロシン低下は、総コレステロールまたはLDL粒子数について認められたものとその大きさがほぼ等しいことを明らかにした(表5)。スタチンの多面的効果に関する認識が増大しているが、それが、この広く使用されている薬剤クラスの抗炎症性を定量する新たな測定法に対する必要を強調する。本研究は、全身のニトロチロシンレベルが、スタチンの抗炎症作用の独立した測定値として役立つことを示唆する。
これらの所見から必然的に導かれるのは、低用量のアトルバスタチン治療は、酸化窒素由来オキシダントの形成を抑制することによって、有力な全身性抗酸化作用を促進するということである。抗酸化性ビタミン、特にαトコフェロールによる、最近のランダム化治験では、心血管疾患に対する効果を立証することができなかった。また、αトコフェロールは、酸化窒素由来オキシダントの作用を阻止する点において比較的無効であることは注目に値する。
糖尿病患者におけるニトロチロシンレベルの上昇が最近報告されている。これは、本発明者らの研究集団においても見られた所見である。高脂肪または高グルコース食の摂取後ニトロチロシンレベルの上昇があるが、これが、シンバスタチン治療後に減衰することが最近報告された。ヒトのアテローム硬化症病変にニトロチロシンが濃縮されるのは、免疫化学的研究および質量分析による研究の両方において周知であるが、本研究は、ニトロチロシンの全身レベルと、CAD危険度および治療に対する応答性と直接相関させた最初のものである。ニトロチロシンレベルは、CAD危険度を判定するための、新たな予測値を提供することができるが、このことは、ニトロチロシンが、最近用いられているスクリーニング法では特定されないで終わってしまう個体を同定するのに有用であり得ないことを示唆する。
Figure 2005532792
Figure 2005532792
Figure 2005532792
<実施例8>
==スタチンの抗酸化作用)==
==方法==
=研究プロトコール=
本発明者らは、プロスペクティブなオープンラベルの研究を実施した。研究対象集団は、クリーブランド臨床ファンデーションの心臓病予防外来において募集した患者の一連のサンプルである。患者は、21歳以上であり、冠状動脈疾患の臨床証拠は無く、治療のため生活スタイルへの介入を少なくとも6-8週受けるにもかかわらず、低密度リポ蛋白コレステロール(LDL-C)レベルは130 mg/dL以上を維持する患者が、本研究に参加資格ありとされた。簡潔に、初回のスクリーニングで、詳細な既往歴を入手し、徹底的な健康診断を実施し、絶食下リポ蛋白プロフィールを得た。本研究に参加資格ありと予想される患者は、栄養および運動介入に関するカウンセリングを受けた。6〜8週後、LDL-Cが依然として130 mdLを上回る場合、患者は本研究に登録の資格ありとされた。本研究に含まれた患者は、1日あたり10ミリグラム経口投与のアトルバスタチン治療を受けた。絶食後の朝の血漿サンプルを、治療開始前(基準値)と、12週の治療後に収集した。活動性肝臓疾患、あるいは、血清クレアチンレベルがデシリットルあたり1.8 mg以上と定義される腎機能不全を有する患者を除外した。アトルバスタチン治療の遵守の程度と副作用を評価するために、患者を、2、4、6、8、および12週に臨床診察によって追跡した。患者は全て書面によるインフォームドコンセントを提出し、また、クリーブランド臨床ファンデーションの施設検閲委員会は本研究プロトコールを承認した。
==血液サンプル==
絶食患者から、EDTAチューブに血液サンプルを収集した。サンプルを、3500 rpmにて4℃で10分遠心し、人工的酸化を極小にする条件下で保存した(すなわち、不活性雰囲気下で、抗酸化剤添加混合物として)。簡潔に、血漿を取り出し、アルゴンで被包し、ブチル化ヒドロキシトルエン(最終的に100 μM)とジエチレントリアミンペンタ酢酸(最終的に100 μM)を含むチューブに割り当て、分析まで-80℃で保存した。脂質レベルおよび高感度CRPの測定には、標準法を用いた。
=ニトロチロシン、ジチロシン、クロチロシンおよびオルトチロシンの分析=
蛋白結合ニトロチロシンは、前述の通り、安定な同位元素希釈液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析による方法によって定量した。この方法は、イオントラップ質量分析器を用いる(LCQ Deca, ThermoFinigann, San Jose、カリフォルニア州)。蛋白結合クロロチロシン、ジチロシンおよびo-チロシンの分析は、フィニガン(Finnigan)のVoyagerGC/MSを陰イオン化学的イオン化モードで用いて、ヘプタフルオリルブチリル誘導体について、アミノ酸を各々のn-プロピルに誘導化した後、ガスクロマトグラフィー/質量分析によって実施した。簡潔に、血漿内の蛋白は、有機/水溶媒からなる単一相混合物を用いて脱脂質し脱塩した。合成の[13C6]-標識標準(ニトロチロシン、クロロチロシン、o-チロシンの場合)、または、[13C12]-標識標準(ジチロシンの場合)を血漿蛋白ペレットに添加して、天然の豊富な分析対象の定量用内部標準として用いた。同zxs時に、普遍的に標識された先駆アミノ酸[13C9, 15N1]チロシン(ニトロチロシン、クロロチロシンおよびジチロシン用として)、または、[13C9, 15N1]フェニルアラニン(o-チロシン)を血漿蛋白ペレットに添加して、前述のように、同時に各オキシダント産物の人工的形成の有無をモニターした。メタンスルフォン酸中で、蛋白を、不活性アルゴン雰囲気下で加水分解し、次いで、質量分析前に、サンプルをミニ固相C18抽出カラム(Supelclean LC-18 SPE管、3 ml, Supelco Inc., Bellefonte, ペンシルバニア州)に通過させた。
全ての分析において、結果は、先駆アミノ酸、L-チロシン(ニトロチロシン、クロロチロシンもしくはジチロシンに対して)、または、フェニルアラニン(o-チロシンに対して)の含量に対して正規化された。これらは、各酸化アミノ酸と同一注入時にモニターされた。アミノ酸酸化産物は全て、通常、10 fmolオンカラム、信号・ノイズ比>10:1で検出された。先駆アミノ酸レベルに対して正規化された状態で示すと、酸化産物は全て、用いた条件下では、<1 μmol/mol先駆物質において検出可能であった。サンプル調製時におけるニトロ[13C9, 15N]チロシン、クロロ[13C9,15N]チロシン、ジ[13C18,15N2]チロシンおよびオルト[13C9,15N]チロシンの形成については、全ての分析を通じて通例としてモニターしたが、通常、用いたサンプル調製条件下では無視できるものであった(すなわち、観察された天然の増加産物の<<5%)。まれに、調製時酸化が、モニターされる天然の増加分析のレベルの5%を越えるということが起こった場合には、再度のサンプル調製と質量分析を実施した。
=統計学的分析=
データは平均±SDとして表し、有意差レベルをp<0.05に設定した。基準値および12週におけるNO2Tyr、diTyrおよびCRP間の差を分析するにはウィルコクソン(Wilcoxon)の順位和テストを用いた。脂質パラメータ、ClTyrおよびo-Tyrレベルについての、基準値と12週値間との差は、対合スチューデントのT-テストを用いて実施した。基準値のNO2Tyr, diTyR, ClTyr, o-Tyr, CRPおよび脂質パラメータ間の関連を評価するにはスペアマン(Spearman)の順位相関を用いた。NO2Tyr, diTyR,およびClTyrの変化に関連する因子を決定するために、多数回帰分析を実施した。全ての統計学的分析は、SPSSバージョン11.0(シカゴ、イリノイ州)を用いて実施した。
==結果==
患者らの基礎的特徴を表6に示す。35名の患者全員に対して12週時の追跡データを得た。一般に、高コレステロール血症を除いて、患者らは、任意の公知の冠状動脈疾患および糖尿病を持たない健康な集団であった。総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、HDLコレステロール(HDL-C)、トリグリセリド、CRP、ClTyr、diTyr、NO2Tyrおよびo-Tyrの基準値および12週測定値の絶対値とパーセント値変化を表7に示す。予期した通り、アトルバスタチンによる治療により、TC、LDL-CおよびapoB-100レベルには有意な減少が見られた(各々、25%、39%および29%)。アトルバスタチンは、ミエロペルオキシダーゼおよび酸化窒素由来オキシダントによって生成される酸化産物レベルに対しほぼ等しい有意の低下をもたらした(ClTyr, diTyr,およびNO2Tyrの低下は、各々、30%、32%および25%である、表7)。対照的に、o-TyrおよびCRPの低下はごくわずか(各々、9%および11%)で、統計的有意に達することができなかった(表7)
オキシダントマーカー(NO2Tyr, diTyr, ClTyr,およびo-Tyr)の基準値または観察された変化が、脂質パラメータまたはCRPの基準値または観察された変化と関連するかどうかを確定するために、さらなる分析を実施した。酸化窒素由来オキシダントによる蛋白改変を示す特異的分子フィンガープリントである基準値NO2Tyrは、絶食下トリグリセリドレベルと有意に相関した(r=-0.36, P=0.033、表8)。オキシダントマーカーと、脂質パラメータまたはCRPとの間には、他に有意な相関が見られなかった(表8)。ミエロペルオキシダーゼ触媒酸化の特異的分子フィンガープリントであるClTyrにおけるスタチン誘導性変化と、NO2TyrとHDL-Cレベルの両方における変化の間には有意な相関が認められた(各々、r=0.37、P=0.028およびr=0.36、P=0.036、表9)。金属触媒ヒドロキシルラジカル様分子種による蛋白酸化産物であるo-Tyrにおける変化は、絶食下トリグリセリドの変化と関連した(r=-0.38、P=0.026、表9)。脂質パラメータおよび酸化マーカーの変化を含めた多数回帰分析では、ClTyrの変化が、NO2Tyrレベルの変化を予測する唯一のパラメータであった(P=0.002)。
本研究は、12週のアトルバスタチン治療後、異なる酸化経路の特異的分子フットプリントのレベルに有意な低下がもたらされることを示した。ミエロペルオキシダーゼ由来オキシダントおよび酸化窒素由来オキシダントによる蛋白の酸化的な損傷に対して特異的な全身マーカーの著明な減少が観察されたが、これは、脂質パラメータおよびCRPにおけるスタチン誘導性の変化とはほとんど無関係であった。さらに、スタチン治療における酸化マーカーの減少の規模は、その大きさにおいて、絶食下TCおよびアポB100に観察された減少に匹敵した。全身性抗酸化効果全体に関わるメカニズムとしては、これら作用因子の共同作用が考えられる(すなわち、イソプレニル化の抑制)。
本研究に対して選択された酸化マーカーは、それらマーカーの形成に起因する経路に関する機械的な情報をもたらす。さらに、サンプル保存および整理中に容易に生成される脂質酸化産物と違って、モニターされた分子マーカーの多くは安定であり、また、保存中にも容易に形成されることはない。これらの特徴から、これらマーカーは、心血管疾患症候群で働く酸化経路を定義するためにも、また、抗酸化および抗炎症治療の効力を評価するためにも、有用かつ実際的なツールとなり得る。これらはまた、サンプル収集および保存時に、脂質酸化の予防または最小化のために相当な方策が取られていない場合には、これらのマーカーは、文献上のサンプルを臨床結果と相関させる分析を有意義なものとするためにも必要とされる。酸化マーカーの正確な定量のためには、洗練された、手間のかかる方法、代表的には質量分析を含む方法が必要とされ、このため臨床研究における普及が遅れていた。しかし、まさにその同じ方法が、このような技法の必要を示している。なぜなら、これらマーカーの、正確な定量的評価を実施するためには、分析のためのサンプル操作および処理時に酸化マーカーの、有意な人工的形成の無いことを確保しなければならないが、そのことを確かめるために複数のアッセイ法の同時モニターを実施することは、その正確な定量的評価の実施のためにもっとも重要だからである。
酸化窒素の酸化的消費は、スーパーオキシドとの相互作用によるものと同様、いずれも酸化窒素のバイオアベイラビリティを抑制し、有力な硝酸化オキシダント、過亜硝酸(ONOO、図13)を生成する。本研究は、多数の代替的な酸化経路、特にミエロペルオキシダーゼによって触媒されるものが、ほぼ等しい還元作用を示すことを明らかにした。
本研究における別の所見は、血漿中の蛋白結合ニトロチロシンおよびクロトチロシンレベルにおけるスタチン誘導性低下の間に、統計的に有意の相関のあることであった(r=0.37、P=0.028、表6)。この所見は、ヒトでは、ミエロペルオキシダーゼが、酸化窒素由来オキシダント形成に重要な役割を果たすということと一致する(図13)。あらかじめ緊縛した血管および気管リングを用いた器官チェンバー実験のみならず、ミエロペルオキシダーゼノックアウトマウスでも、ミエロペルオキシダーゼが酸化窒素のバイオアベイラビリティおよび機能を調整する役割をすることが支持されている。本研究結果は、ミエロペルオキシダーゼと酸化窒素由来オキシダントとの間には、多くの結合についてのさらなる支持を提供し、そして、このヘム蛋白が、in vivoの血管内皮の機能不全に一役買っていることを示唆する。
要約すると、特異的な酸化経路の分子フットプリントを用いて、本発明者らは、スタチンが、脂質、リポ蛋白およびCRPレベルに見られる変化とは独立して、有力な全身性抗酸化効果を促進することを示した。さらに、モニターしたアミノ酸酸化産物、ClTyr, diTyr, o-Tyrおよび NO2Tyrは、産物/前駆物質比として表しても、減少を示した。これは、アトルバスタチン治療後に、オキシダントストレスの真正の低下がもたらされることを示す。これらのデータから、スタチンは、有力な全身性抗炎症作用および抗酸化作用を引き起こすこと、また、この重要な薬剤クラスの、非脂質関連活性またはいわゆる多面的効果のモニターにおいて重要な意味を有することが示される。
Figure 2005532792
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<実施例10>
==MPO生成酸化産物は、スタチン治療によって目覚しく低減される==
本発明者らは、スタチン治療(アトルバスタチン、10 mg, PO QHS)の、in vivoの蛋白および脂質酸化のMPO-生成マーカーに及ぼす作用を調べるのに、オンラインエレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析付きのHPLCを用いた。LDLコレステロール≧130 mg/dLの被験体(n=35)を登録し、基準値および12週の治療後にモニターした。図14(A-B)は、ジチロシン(30%)、ニトロチロシン(24%)に有意な減少が観察されたが、hs-CRPはわずか11%しか減少しなかった。代替的な研究において、脂質酸化産物のレベルを、最近スタチン治療を受けた患者の基準値において、スタチン治療を停止させた4週間の休薬期間の後で、次いで、スタチン治療再開後(12週のアトルバスタチン、10 mg PO QHS)に、モニターした。図15から、12週のスタチン治療後に認められるCRPのわずかな減少(11%)は、公表されている研究とは一致したが、有意レベルには達していないことが示された。
<実施例11>
==シンバスタチン(ゾコール)の全身性抗酸化作用をモニターするのための特異的脂質酸化産物の使用==
MPOによって形成され得る多数の特異的な酸化産物の血漿レベルを、現在スタチン治療を受けている被験体(n=15)について、基準値、4週間の休薬期間後および12週のシンバスタチン治療後に、モニターした(基準値では、アトルバスタチン、n=9;シンバスタチン、n=5;プラバスタチン、n=1)。図16はアトルバスタチン投与後の脂質酸化産物の血漿レベルを示す。モニターしたHETE類およびHODE類のいずれも、スタチン治療を取り去った後では血漿の中で上昇するが、被験体をシンバスタチン治療に戻す場合、再び低下することに注意されたい。
<実施例12>}
==MPOおよびMPOによって形成される多数の異なる酸化産物でモニターした場合、COXII阻害剤治療は、全身性抗酸化/抗炎症作用を促進する==
COX IIは、エイコサノイド生成を介して炎症を促進する主要経路と見なされる。従って、COX II阻害剤の使用は炎症を抑制し、MPOおよびMPOが生成する産物のレベルの低下をもたらすことになる。このことをテストするために、本発明者らは、リウマチ性関節炎を有する被験体(n=10)について現在調査中である。基準値で、また、レフォコクシブ(すなわち、VIOXX、25 mg, PO QD)による16週の治療後に、血漿を抽出した。MPO、蛋白結合ニトロチロシン、クロロチロシン、ジチロシンならびに9-H(P)ETEおよびF2イソプロスタンの血漿レベルをモニターした。各被験体において臨床的改善が見られると共に、各マーカーに著明な減少が認められた(表10)。これらの結果は、MPOおよびその酸化産物が、このクラス(またはその他の全てのクラス)の薬剤の抗炎症作用および抗酸化作用をモニターするための、客観的で定量可能な示数となり得ることを示唆する。
Figure 2005532792
<実施例13>
==MPOおよびMPOによって形成される多数の異なる酸化産物でモニターした場合、ACEI治療は、全身性抗酸化/抗炎症作用を促進する==
アンギオテンシン変換酵素(ACE)は、血管細胞によるスーパーオキシド生成に密接に関わる。さらに、多数の研究において、ACE阻害剤(ACEI)は、血圧を下げるばかりでなく、動脈壁内のスーパーオキシド産生を低下させ、従って、オキシダントストレスを下げることが議論されている。この作用をモニターするために用いられた方法は、組織検査、代表的には、動物モデル系または細胞培養実験に限定される。このクラスの薬剤の、非血圧関連効果をモニターするための一つの方法として、オキシダントストレスまたは炎症の全身マーカーを調べたものは誰もいない。
被験体(n=9)は、基準値で、次いで、リシノプリル(ゼストリル、20 mg, PO QD)治療後16週に、血漿を抽出された。MPO、蛋白結合ニトロチロシン、クロロチロシン、ジチロシンならびに9-H(P)ETEおよびF2イソプロスタンの血漿レベルをモニターした。被験体において、各マーカーについて著明な低下が認められた(表11)。
従来から、ACEI治療は、心血管の異常発生率および糖尿病に関連する合併症の発生のリスクを、低下させることが示されている。これらの臨床効果の多くは、血管系における広範な抗炎症/抗酸化作用と結びついていると考えられている。本発明者らは、MPOおよびその酸化産物の全身レベルをモニターすることが、このクラスの、または、任意のクラスの薬剤の、抗炎症活性および抗酸化活性をモニターするための一つの方法を提供するものとなることを提案する。
Figure 2005532792
<実施例14>
==MPOおよびMPOによって形成される多数の異なる酸化産物でモニターした場〜〜、ARB治療は、全身性抗酸化/抗炎症作用を促進する==
アンギオテンシンレセプター遮断剤は、高血圧治療に使用される新しい治療薬である。これらは、ACEIと同じ生化学的軸に作用する。従って、これらも、血圧低下と関連するものを越えた臨床効果を−抗炎症作用および抗酸化作用と関連すると考えられる効果を促進する。しかし、これまで、これらの効果を客観的にモニターする手段が無かった。本発明者らは、MPOおよびその酸化産物のレベルをモニターすることは、ARBの抗炎症作用および抗酸化作用を定量化するための一つの方法となるかも知れないという仮説をたてた。被験体(n=16)は、基準値で、次いで、ロサルタン(コザール、25 mg, PO QD)治療後16週に、血漿を抽出された。MPO、蛋白結合ニトロチロシン、クロロチロシン、ジチロシンならびに9-H(P)ETEおよびF2イソプロスタンの血漿レベルをモニターした。被験体において、各マーカーについて著明な低下が認められた(表12)。これらの試験は、MPOおよびその酸化産物が、治療処置のもたらす全身性抗酸化作用および抗炎症作用をモニターするに当たって有用であり得ることを強調する。
Figure 2005532792
<実施例15
==チン治療はMPOの血漿レベルを減少させる)
被験体(n=27)は、基準値で、次いで、アトルバスタチン(リピトール、10 mg, PO QD)治療後16週に、血漿を抽出された。MPOの血漿レベルをモニターした。治療後、被験体に、MPOレベルの有意な減少が認められた(表13)。これらの試験は、MPOが、スタチンのような治療薬の全身性抗酸化作用および抗炎症作用をモニターするに当たって有用であり得ることを強調する。
Figure 2005532792
本発明の前述の説明から、当業者であれば、改良点、変更点および修正点に気づいたであろう。当該分野の範囲内にあるこのような改良点、変更点および修正点は、添付した特許請求の範囲によってカバーされることが意図される。
本発明のさらなる特徴は、本発明が、以下に添付する図面の参照と共に上記の本発明の詳細に関連するので、当業者に明らかである。
図1は、ミエロペルオキシダーゼの動的モデルの模式図である。 図2は、特定のミエロペルオキシダーゼ生成反応中間体およびMPO生成酸化産物の模式図である。 図3は、ジチロシンおよびニトロチロシンの化学構造を示す。 図4(A-B)は、健康な被験体およびMPO欠損被験体由来の好中球を有する血漿における脂質過酸化を示すグラフである。正常な個体およびMPO欠損個体から単離した好中球(1×106/ml)を、DTPA(100 μM, pH 7.0)および新鮮ヒト血漿(50% v/v)を添加したHBSSに37℃でインキュベートした。フォルボルミリステートアセテート(PMA、200 nM)の添加により細胞を活性化し、2時間インキュベートした(Complete System)。次いで、内在性血漿脂質内に形成された9-H(P)ODEおよび9-H(P)ETEの含量をLC/ESI/MS/MSにて定量した。指示ある場合は、ヒトMPO(30 nM)を反応混合物に添加した。データは、3回の測定の平均±SDで表す。所定の条件に対するクラスター内の各バーは、各々別のドナー由来の好中球調製物を用いて実施した独立した実験から得られた結果を表す。PMN(MPO+)は、正常被験体から単離した好中球であり、PMN(MPO-)は、MPO欠損被験体から単離した好中球である。 図5(A-B)は、内在性血漿脂質の脂質過酸化の好中球依存性起動の特徴を示すグラフである。正常な被験体(PMN)から単離した好中球(1×106/ml)を、DTPA(100 μM, pH 7.0)および新鮮ヒト血漿(50% v/v)を添加したHBSSに37℃でインキュベートした。フォルボルミリステートアセテート(PMA、200 nM)の添加により細胞を活性化し、次いで、2時間インキュベートした(Complete System)。次いで、内在性血漿脂質内に形成された9-H(P)ODEおよび9-H(P)ETEの含量をLC/ESI/MS/MSにて定量した。Complete Systemに対する添加または欠損を表示した。Complete Systemへの添加物の最終濃度は、30 nMヒトMPO、1 mM NaN3、300 nMカタラーゼ(Cat)、300 nM熱不活性化カタラーゼ(hiCat)、100 μMメチオニン(Met)、100 μMアスコルビン酸塩および10 μg/mlスーパーオキシドジムターゼ(SOD)であった。データは、3回の独立した実験の平均±SDを表す。 図6(A-B)は、内在性血漿脂質の脂質過酸化のMPO依存性起動の特徴を示すグラフである。DTPA(100 μM, pH 7.0)およびグルコース/グルコースオキシダーゼ(G/GO)からなるH2O2生成システムを添加したHBSSにて、新鮮ヒト血漿(50% v/v)を単離ヒトMPO(30 nM)と共に、37℃で12時間インキュベートした(Complete System)。この条件下で、H2O2の連続流は10 μM/時で形成される。次いで、内在性血漿脂質内に形成された9-H(P)ODEおよび9-H(P)ETEの含量をLC/ESI/MS/MSにて定量した。Complete Systemに対する添加または欠損を表示した。Complete Systemへの添加物の最終濃度は、1 mM NaN3、300 nMカタラーゼ(Cat)、300 nM熱不活性化カタラーゼ(hiCat)、200 nM SOD、100 μMメチオニン(Met)および100 μMアスコルビン酸塩であった。データは、3回の独立した実験の平均±SDを表す。 図7(A-B)は、アテローム硬化症病変に富化されるLDLのMPO酸化によって生成される、酸化フォスファチジルコリン種を示すグラフである。天然LDLおよびMPO-H2O2-NO2システム(NO2-LDL)によって酸化されるLDLにおいて定量される酸化PC種の含量を、LC/ESI/MS/MSにて定量した。データは、2回実施した代表的な実験の3回の定量値の平均±SDを表す。LDLおよびNO2-LDL調製物におけるPAPCの含量は、各々、0.122±0.0および0.008±0.001 μmol/mgアポ蛋白であった。LDLおよびNO2-LDL調製物におけるPLPCの含量は、各々、0.88±0.05および0.35±0.05 μmol/mgアポ蛋白であった。ワタナベの遺伝性高脂血症ウサギ(Watanabe Heritable Hyperlipidemic Rabbit)由来の胸部大動脈を単離し、100 μM BHTおよび100 μM DTPAを添加したアルゴンを吹きつけたPBS中でリンスし、同じバッファーに沈殿させ、アルゴンで被包し、液体窒素で瞬間冷凍し、次いで、分析まで-80℃で保存した。10-12週齢のWHHLウサギから脂質病変の比較的少ない大動脈を得る一方、>6月齢のWHHLウサギから融合性病変を有する大動脈を回収した。液体窒素下でステンレススチールの乳鉢および乳バーで個々の凍結大動脈を粉砕し、この粉末を、PTFEを裏張りしたキャップを備えたガラスネジキャップ試験管に移し、次いで、BHTの存在下アルゴン雰囲気でBligh法およびDyer法により脂質を抽出した。各群につき3つの大動脈を分析した。次いで、LC/ESI/MS/MSで脂質の定量を実施した。データを平均±SDで表す。 図8は、ヒト患者のアテローム硬化症性プラーク物質および心臓移植ドナーの正常大動脈内膜における、選択MPO生成酸化脂質の含量を示す。 図9(A-B)は、「方法」に記載されるように、333人の被験体(既知の冠状動脈疾患を有する158人および動脈造影的に有意なCADを有さない175人)において測定した、単離白血球におけるMPO含量(白血球MPO)および血液1 mlあたりのMPO含量(血液MPO)を示すグラフである。MPOレベル 対 CAD状態のボックス−ホイスカープロットを示す。ボックスは、25番目から75番目までの%を示す。ボックス内の線は中央値を表す。バーは2.5番目および97.5番目の%を表す。ANCは絶対的な好中球数であり;CADは冠状動脈疾患であり;PMNは多形核白血球である。 図10のモデル1は、単変量調整後の有意な危険因子(年齢、性、高血圧、喫煙歴、HDLc、WBC4分位およびMPO4分位)に対して調整されたオッズ比を示す。モデル2は、Framingham総合危険評価、WBC4分位およびMPO4分位に対して調整されたオッズ比を示す。黒丸は未調整オッズ比であり、黒三角はモデル1であり、黒四角はモデル2である。 図11(A-B)は、好中球1個あたりのMPOレベルが集団(A)の平均値を下回る個体由来、および、好中球1個あたりのMPOレベルが集団(B)の平均値を上回る個体由来のWBCのサイトグラムである。 図12は、ニトロチロシン4分位に対するCAD危険の未調整率を示す。 図13は、反応性オキシダントおよび拡散性ラジカル種、これらの経路間の相互作用、生成オキシダント、個別の経路を示すマーカーとなる安定な最終産物を生成する白血球に使用した酵素経路を示すスキームである。各酸化経路および表示の反応性オキシダント種はいずれも、インビトロのモデル系による実験に基づくと、脂質過酸化を開始する潜在性を有する。略号:H2O2、過酸化水素;HOCl、次亜塩素酸;eNOS、内皮性酸化窒素シンターゼ;iNOS、誘導性酸化窒素シンターゼ;L-Arg、L-アルギニン;M2+、酸化還元活性金属イオン;MPO、ミエロペルオキシダーゼ;NO、一酸化窒素(酸化窒素);NO2、二酸化窒素;NO2-、亜硝酸塩;NOX、血管内皮細胞のNADHオキシダーゼ;O2、分子酸素;O2-、スーパーオキシドアニオン;OH、ヒドロキシルラジカル;ONOO-、過酸化亜硝酸塩;Pr(M2+)、蛋白結合酸化還元活性金属イオン;Tyr、チロシルラジカル;チロシンアナログ;Cl-Tyr、3-クロロチロシン;di-Tyr、ジチロシン;m-Tyr、メタチロシン;o-Tyr、オルトチロシン;NO2-Tyr、3-ニトロチロシン。 図14(A-B)は、基準値での、また、アトルバスタチンによる治療12週後の、ジチロシン(A)およびニトロチロシン(B)の中央値および4分位間範囲を示すグラフである。被験体について、基準値で、また、アトルバスタチン治療(10 mg, PO QHS)の12週後にジチロシン(diTyr)ニトロチロシン(NO2Tyr)の絶食下の血漿レベルを定量した。データは、ボックス−ホイスカープロットでプロットする。ボックスは、25番目から75番目の%までを示す。ボックス内の線は中央値を表す。バーは2.5番目および97.5番目の%を表す。 図15は、基準値での、また、アトルバスタチンによる治療12週後の、C-反応性蛋白値の中央値および4分位間範囲を示すグラフである。被験体について、基準値で、また、アトルバスタチン治療(10 mg, PO QHS)の12週後に、C-反応性蛋白(hsCRP)の絶食下血漿レベルを定量した。データは、ボックス−ホイスカープロットでプロットする。ボックスは、25番目から75番目の%までを示す。ボックス内の線は中央値を表す。バーは2.5番目および97.5番目の%を表す。 図16は、シンバスタチン投与後の脂質過酸化産物の血漿レベルを示すグラフである。MPOによって形成される特異的脂質過酸化産物の血漿レベルをモニターするために、現在スタチン治療を受けている被験体を登録した。治療中(黒バー)にマーカーの基準値を定量した。次いで、4週間の休薬期間の間はスタチン治療を中止するよう患者に指示し、血漿レベルを定量した(白抜きバー)。次いで、患者にシンバスタチン(10 mg PO QHS)の治療を開始し、12週後、産物の血漿レベルを定量した(斜線バー)。

Claims (24)

  1. 治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターする診断方法であって、
    基準値の被験体から、または治療薬剤の投与後の被験体から採取した生体サンプル中の炎症または酸化状態を示す、少なくとも1つの全身マーカーのレベルを定量する工程と、
    治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターするために、全身マーカーのレベルを所定値と比較する工程と、
    を含み、
    該マーカーは、MPO活性、MPO量、選択MPO生成酸化産物およびそれらの組み合わせを少なくとも1つ含む方法。
  2. 前記所定値が、治療薬剤の投与前に、前記被験体から採取された生体サンプルにおける全身マーカーのレベルから定量される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記所定値が、標準化された一つの値または標準化された値の範囲である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記生体サンプルが、血液、血液誘導体または尿の少なくとも一つを含有する、請求項1に記載の方法。
  5. 前記治療薬剤が、障害を治療するために投与され、ここで炎症性の損傷および/または酸化的な損傷が該障害の病因に関連する、請求項1に記載の方法。
  6. 前記障害が、炎症性疾患または自己免疫疾患の少なくとも一つを含む、請求項5に記載の方法。
  7. 前記治療薬剤が、ミエロペルオキシダーゼおよび酸化窒素誘導性オキシダントの形成に使用される酸化経路の抑制を介して、in vivoにおいて、抗炎症作用および/または抗酸化作用を示す薬力学的作用薬を含有する、請求項1に記載の方法。
  8. 前記MPO酸化産物が、クロロチロシン、ジチロシン、ニトロチロシン、メチオニンスルフォキシド、ホモシトルリンおよびMPO生成脂質過酸化反応産物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記MPO生成脂質過酸化反応産物が、ヒドロキシエイコサテトラエン酸(HETE);ヒドロキシオクタデカジエン酸(HODE);Fイソプロスタン;2-リソPCにおけるグルタールおよびノナン二酸のモノエステル(G-PCおよびND-P C各々);2-リソPCにおける9-ヒドロキシ-10-ドデセン二酸および5-ヒドロキシ-8-オキソ-6-オクテン二酸のエステル(HDdiA-PCおよびHOdiA-PC各々);2-リソPCにおける9-ヒドロキシ-12-オキソ-10-ドデセン酸および5-ヒドロキシ-8-オキソ-6-オクテン二酸のエステル(HODA-PCおよびHOOA-PC各々);2-リソPCにおける9-ケト-12-オキソ-10-ドデセン酸および5-ケト-8-オキソ-6-オクテン酸のエステル(KODA-PCおよびKOOA-PC各々);2-リソPCにおける9-ケト-10-ドデセン二酸および5-ケト-6-オクテン二酸のエステル(KDdiA-PCおよびKOdiA-PC各々);2-リソPCにおける5-オキソバレリン酸および9-オキソノナン酸エステル(OV-PCおよびON-PC各々);5-コレステン-5α,6α-エポキシ-3β-オル(コレステロールα-エポキシド);5-コレステン-5β,6β-エポキシ-3β-オル(コレステロールβ-エポキシド);5-コレステン-3β,7β-ジオール(7-OH-コレステロール);5-コレステン-3β,25-ジオール(25-OHコレステロール);5-コレステン-3β-オル-7β-ヒドロペルオキシド(7-OOHコレステロール);ならびに、コレステン-3β,5α,6β-トリオール(トリオール)、からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記治療薬剤が、HMG CoA還元酵素阻害剤、COX-2阻害剤、アンギオテンシン系阻害剤、アンギオテンシンIIレセプター遮断剤、サイトカイン阻害剤、腫瘍壊死因子-u(TNF-α)阻害剤、抗高リポ蛋白血症剤(antihyperlioproteinemics)、コレステロール生合成阻害剤、インスリン増感剤、抗高血圧剤、抗血栓症剤、抗血小板剤、繊維素溶解剤、直接的トロンビン阻害剤、ACAT阻害剤、CETP阻害剤、V-CAM阻害剤、免疫調節剤、チアゾリジンジオンおよび糖蛋白レセプター阻害剤の少なくとも一つを含有する、請求項1に記載の方法。
  11. 前記治療薬剤が、HMG CoA還元酵素阻害剤を含有する、請求項9に記載の方法。
  12. 前記HMG CoA還元酵素阻害剤が、心血管疾患を治療するために投与される、請求項11に記載の方法。
  13. 治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターする診断方法であって、
    基準値の被験体から、または治療薬剤の投与後の被験体から採取した生体サンプル中の炎症または酸化状態を示す、少なくとも1つの全身マーカーのレベルを定量する工程と、
    全身マーカーのレベルを、所定値と比較して、治療薬剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターする工程と、
    を包含し、
    該マーカーは、MPO活性、MPO量、選択MPO生成酸化産物およびそれらの組み合わせの少なくとも1つを含み、
    該治療薬剤は、炎症性の損傷および/または酸化的な損傷が疾患の病因に関連する障害を治療するために投与される、診断方法。
  14. 前記所定値が、治療薬剤の投与前または投与中に、被験体から採取された生体サンプルにおける全身マーカーのレベルを含有する、請求項13に記載の方法。
  15. 前記治療薬剤が、ミエロペルオキシダーゼおよび酸化窒素誘導性オキシダントの形成に使用される酸化経路の抑制を介して、in vivoにおいて、抗炎症作用および/または抗酸化作用を示す薬力学的作用薬を含有する、請求項13に記載の方法。
  16. 前記治療薬剤が、HMG CoA還元酵素阻害剤、COX-2阻害剤、アンギオテンシン系阻害剤、アンギオテンシンIIレセプター遮断剤、サイトカイン阻害剤、腫瘍壊死因子-u(TNF-α)阻害剤、抗高リポ蛋白血症剤、コレステロール生合成阻害剤、インスリン増感剤、抗高血圧剤、抗血栓症剤、抗血小板剤、繊維素溶解剤、直接的トロンビン阻害剤、ACAT阻害剤、CETP阻害剤、V-CAM阻害剤、免疫調節剤、チアゾリジンジオンおよび糖蛋白レセプター阻害剤の少なくとも一つを含有する、請求項15に記載の方法。
  17. 前記治療薬剤がHMG CoA還元酵素阻害剤を含有し、ここで、該HMG CoA還元酵素阻害剤は、心血管疾患を治療するために投与される、請求項13に記載の方法。
  18. 医学的に所望の結果をもたらすのに効果的な治療薬剤の用量を定量するために、該治療薬剤の投与中または投与後に、全身マーカーのレベルをモニターする工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
  19. HMG CoA還元酵素阻害剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターする診断方法であって、
    基準値の被験体から、または、HMG CoA還元酵素阻害剤の投与後の被験体から採取した生体サンプル中の炎症または酸化状態を示す、少なくとも1つの全身マーカーのレベルを定量する工程と、
    全身マーカーのレベルを、所定値と比較して、HMG CoA還元酵素阻害剤の抗炎症作用および/または抗酸化作用をモニターする工程と、
    を含み、
    該マーカーは、MPO活性、MPO量、選択MPO生成酸化産物およびそれらの組み合わせを少なくとも1つ含む、診断方法。
  20. 前記所定値が、治療薬剤の投与前に、被験体から採取された生体サンプルにおけるマーカーのレベルから定量される、請求項19に記載の方法。
  21. 前記生体サンプルが、血液、血液誘導体または尿の少なくとも一つを含有する、請求項19に記載の方法。
  22. 前記HMG CoA還元酵素阻害剤が、炎症性の損傷および/または酸化的な損傷が疾患の病因に関連する障害を治療するために前記被験体に投与される、請求項19に記載の方法。
  23. 前記障害が心血管疾患を含む、請求項22に記載の方法。
  24. 医学的に所望の結果をもたらすのに効果的なHMC CoA還元酵素阻害剤の用量を定量するために、該HMG CoA還元酵素阻害剤の投与中または投与後に、全身マーカーのレベルをモニターする工程をさらに包含する、請求項19に記載の方法。

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