JP2005529949A - 被覆粒子、製造方法および使用 - Google Patents

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Abstract

非ラメラ物質、たとえば非ラメラ結晶質物質、非ラメラ非晶質物質、または非ラメラ半結晶質物質で被覆された粒子が、少なくとも1種のナノ構造の液相、または少なくとも1種のナノ構造の液晶相、またはこれら2種の組み合わせを含む内部マトリックスのコアを含んでおり、この粒子は、活性物質、たとえば薬剤、栄養分、殺菌剤などを送達する際に使用することができる。この被覆粒子は、各種の多岐にわたる方法で製造することができ、ここで、外部被膜は、非ラメラ物質、たとえば、非ラメラ物質結晶質物質、非ラメラ物質非晶質物質、または非ラメラ物質半結晶質物質である。

Description

本発明は、被覆粒子、ならびにこの被覆粒子の製造および使用方法に関するものである。これらの被覆粒子は、1種以上の物質を選択された環境にターゲティングおよび放出したり、選択された環境に由来する1種以上の物質を吸収したり、選択された環境に由来する1種以上の物質を吸着したりするうえで有用である。
関連技術
ポリマー被覆粒子とリポソームという2つの粒子技術は、一般的重要性を有するものである。
ポリマー被覆粒子は、有用なミクロ粒子の開発や制御放出性の賦形剤を開発するうえで、常に極めて重要な役目を果たしてきた。ポリマーは、環境によっては、各種のマトリックスを良好に封入しうる被覆および延展特性を示し、また、ポリマーは、多種多様な化学的性質および分子量を持つものが入手可能である。ポリマー被膜は、種類によっては有用性が高く、また毒性も低いので、特にポリ乳酸−グリコール酸共重合体などは、製薬業界では、注射用製品への使用についても承認されており、ポリマー被膜の経口製品での有用性は、オイドラギット、ゼラチンをはじめとするいくつかの天然ガム類のように十分に確率されている。実際、多くの状況で、暗黙のうちにミクロ粒子の被膜はポリマーとされてきた。
しかし、ポリマー被覆粒子には、化学的刺激や物理的刺激に対してポリマー被膜が単調かつ散漫な応答を示すことからも示唆されるように、いくつかの限界がある。これは、2つの要因によるものである。第一に、ポリマーは、分子量が高いので、拡散係数が低く、可溶化に際しての運動性も悪くなる。第二に、隣接基効果のために、刺激、特にpH、塩分、酸化、還元、イオン化などに対する化学的応答を示す曲線がブロードになる(隣接基効果とは、ポリマー中の1つのモノマー単位の化学的変化によって、隣接する各モノマー単位の化学トランジションを支配するパラメータに有意な変化が生じることを称するものである。)さらに、大抵のポリマーは、広い分子量分布を有する複数の化学種の集合体である。また、ポリマー被覆粒子の所定の用途では、適当なポリマーは限られた数しかないことも多い。こうした状況は、さまざまな要因によるものであるが、実質的な問題としては、被覆過程では、往々にして厳しい化学的および/または物理的条件、たとえば溶剤、フリーラジカル、高温、デシケーション、乾燥が必要とされ、および/または粒子の形成にも巨視的な剪断力が必要とされること、工業的に利用するには、ポリマー被膜の機械的および熱的安定性に制限があること、ポリマー被覆粒子を、農業で利用する場合のように大規模に使用すると環境に悪影響がおよぶことなどが挙げられる。
リポソームにも、いくつもの制限があり、こうした制限の一つは、物理的、化学的な不安定性である。リポソーム内に配置された物質の放出は、通常、リポソームの構造の不安定化に依拠している。特に、孔が不在であるために、リポソーム内の物質の放出を孔によって制御することができない。1)一方で、放出時まではリポソームが物理的に安定であること望ましく、2)その一方で、放出に際しては、二重層の不安定化による物質の放出が望まれるという二重の要件には問題がある。(リポソームという用語は、小胞という用語と互換的に使用されることが多く、リポソームは、グリセロ燐脂質または他の天然脂質の小胞のみに使用される。小胞は、水性の内容物を封止する数千個の脂質分子(両親媒性物質)からなる自立的な閉じた二重層組立体である。脂質二重層は、脂質から構成される二次元の流体で、脂質の疎水性の頭部の基が水溶液と接触し、疎水性の尾部が凝集して水を排除している。二重層構造は高度に秩序だってはいるが、二重層の各半分の平面内で脂質が水平方向に迅速に動いているので、動的である。)Mark−Bikales−Overberger−Mengesの「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(ポリマー化学および工学事典)」17巻、John Wiley & Inc.編、108ページのD.F.O’BrienおよびV.Rarnaswami(1989)を参照されたい。
本発明の目的は、物理的、化学的、または生物学的な分解に対して感受性の物質をはじめとする多岐にわたる各種の物質を可溶化または内包するのに適した被覆粒子を提供することにある。
本発明の目的は、内部コアのマトリックス内に配置されている1種以上の物質を、マトリックスを不安定化することなく放出する被覆粒子を提供することにある。
本発明の目的は、多岐にわたる物理的および化学的特性をカバーしており、特に、被膜を選択するにあたって多岐にわたる物理的および化学的特性をカバーしているので、ユーザーが実質的に被覆および放出特性を予め選択できる被覆粒子を提供することにある。
本発明の目的は、1以上の物理的または化学的刺激に応答して、選択された環境への1種以上の物質の放出、または選択された環境からの1種以上の物質の吸収を迅速に開始する被覆粒子を提供することにある。
本発明の目的は、意図している用途で必要とされる特定の物理的、化学的、生物学的要件、たとえば、被覆粒子の工業的利用に際しての機械的、熱的な安定性、または、被覆粒子を農業向けの用途で大規模に利用した場合に、環境に対して悪影響を及ぼさないことなどに合致させることのできる多岐にわたる各種の被覆粒子システムを提供することにある。
本発明の別の目的は、多孔質被膜内に配置された物質の孔による制御放出や、多孔質被膜外に配置された物質の孔による制御吸収を行いうるような多孔質被膜を、必要に応じて有することもできる被覆粒子を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、粒子を特定の部位にターゲティングするためのターゲティング部分、たとえば、抗体、レクチン、受容体、相補的な核酸を、被膜が放出を行う前または後に、他の生体活性物質、たとえば、吸着促進物質、アジュバント、吸収阻害物質、または製剤活性物質自体とともに包含しうる被覆粒子を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、フレキシブルで、多岐にわたる活性物質、被膜、およびマトリックスに適応させることのできるプロセスによって製造することのできる被覆粒子を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、重合した内部マトリックスを有する被覆粒子であって、この重合内部マトリックスが、未重合のものと比べて、化学的、熱力学的、構造的に、恒久性に優れているものを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、単純なプロセス、好ましくは、厳しい物理的および/または化学的条件を必要としない単純なプロセスで製造しうる被覆粒子を提供することにある。
以上の目的をはじめとする各種の目的は、マトリックスからなる内部コアと、外部被膜とを備えた被覆粒子によって達成される。マトリックスは、少なくとも1種のナノ構造の液相、または少なくとも1種のナノ構造の液晶相、またはこれら2つの組み合わせから本質的に構成され、外部被膜は、非ラメラ液晶物質、非ラメラ非晶質物質、または非ラメラ半結晶質物質である非ラメラ物質を含むものである。
好適な態様では、被覆粒子は、以下の工程、すなわち、
1.第二部分との反応時に非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含む上記マトリックスをある量用意し、
2.上記のある量のマトリックスを、上記第二部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体と、非ラメラの固形物質が形成されるような条件下で接触させて、上記第一部分を上記第二部分と反応させ、同時に、上記のある量のマトリックスにエネルギーを加えることによって、マトリックスを粒子に細分化するか、この粒子への細分化を、化学反応の前および/または後に行う、
工程によって製造することができる。
また、被覆粒子は、以下のプロセスの1種、すなわち、
マトリックスに対して不溶性の非ラメラ物質を形成しうる物質が溶存しているマトリックスを、ある量用意し、上記物質がマトリックスに不溶性となるようにし、上記のある量のマトリックスにエネルギーを加えることによって、マトリックスを細分化して粒子とするプロセス、
上記マトリックスの粒子を、第二部分との反応または会合時に非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体に分散し、この分散液に、上記第二部分を有する少なくとも一種の化学種を加えて、上記第一部分を上記第二部分と反応させるプロセス、
上記マトリックスの粒子を、第二部分との反応または会合時に非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体に分散し、この分散液に、上記第二部分を有する少なくとも一種の化学種を加えて、上記第一部分を上記第二部分と反応させ、得られた物質にエネルギーを加えることによって、この物質を細分化するプロセス、
ある量の上記マトリックスを、液化状態、溶液、流体前駆物質よりなる群から選ばれる状態の上記非ラメラ物質に分散し、上記非ラメラ物質を、冷却、揮発性溶剤の蒸発、化学反応の実施よりなる群から選ばれる技術によって凝固させるプロセス、
上記非ラメラ物質が溶存または分散しており、揮発性溶剤も含んでいる液体に、上記マトリックスのある量を分散または溶解し、上記溶液または分散液を噴霧乾燥するプロセス
の1種によって製造することもできる。
また、これらの方法を組み合わせて実施することもできる。
好適な態様の説明
図1および2に示すように、本発明で使用する被覆粒子1は、内部コア10と、その外部の被膜20(以下では、「外部被膜20」と称する)を含むものである。内部コア10は、
a)少なくとも1種のナノ構造の液相、
b)少なくとも1種のナノ構造の液晶相、および
c)i)少なくとも1種のナノ構造の液相と
ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶相
の組み合わせ。
よりなる群から選ばれたナノ構造の物質から本質的になるマトリックスを含んでいる。また、内部は、水または他の水性の流体との接触時に、これらの相のいずれかを生じるような組成物とすることもできる。
液相物質および液晶相物質は、溶剤を含有していても(リオトロピック)、溶剤を含有していなくても(サーモトロピック)よい。外部被膜20は、非ラメラ物質を含んでいる。「外部被膜」という用語は、本発明で使用する場合には、被膜20が内部コア10の外側に位置していることを示すものであり、外部被膜20が被覆粒子1の最も外側の被膜である意味に限定されるものではない。たとえば、本明細書に記載する実施例の多くでは、非ラメラ外部被膜の外面に、界面活性剤含量の高い層が存在している。本明細書の別の態様では、抗体または他の生物活性物質が、この非ラメラの外部被膜に吸着しているか、この非ラメラ外部被膜から外側に向かって延在している。
ナノ構造の液相およびナノ構造の液晶相は、独特の特性を備えており、それらの特性は、本発明での粒子の簡単な製造を可能とするうえで重要であるばかりでなく、本発明の最終的に被覆された粒子で高度に望ましい可溶化、安定性、呈示特性をはじめとする各種の性能を得るうえでも重要である。
外部被膜20については、本発明では、結合および/または充填による剛性が3次元すべてに延在する非ラメラの構造が、ラメラ状の物質と比べて極めて好ましい。これは、ラメラ、そしてさらに一般的には層状構造には、周知のとおり、物理的、化学的制限や不安定性があるためである。こうした制限や不安定性としては、たとえば、(a)ラメラ状の液晶層で被覆された小滴を有するエマルションが有する不安定性(静止状態を含む)、(b)特定のウェルナー錯体で、ゲスト分子を除去した場合の化学的不安定性、(c)黒鉛をダイアモンドと比較した場合にみられる、著しく低い堅さと剪断弾性率が挙げられる。
本発明で使用する被覆粒子1は、平均接線粒径を、0.1ミクロン〜30ミクロンまたはそれ以上、好ましくは、約0.2ミクロン〜約5ミクロンとすることができる。巨視的な粒子、すなわち、ミリメートルまたはそれ以上のオーダーで測定される粒子(たとえば、実施例39および40に例示するような粒子)を製造することも可能であり、こうした大型の粒子も製造しうることで、本発明を、たとえば、移植時に物質を徐放するデポ送達系のような用途に用いることも可能となる。使用する被覆粒子1に、必要に応じて外側、すなわち外部被膜20のさらに外側に安定化用の層、たとえば高分子電解質または界面活性剤の一重層を設けて、被覆粒子1の凝集を防止することもできる。
本発明で使用する被覆粒子1には、さまざまな使用形態の用途がある。被覆粒子1は、外部被膜20の放出時に、1種以上の物質を選択した環境から吸収することも、1種以上の物質を選択した環境から吸着することも、また、マトリックス中に含有させておいた1種以上の活性物質のような物質を、選択した環境に放出することも、および/または、特定部位をターゲティングして、意図する放出または吸着/吸収を行うこともできる。また、包接化合物やゼオライトのような多孔質の外部被膜を用いると、目的物質をマトリックスに吸収したり、マトリックスから放出したりする際に、外部被膜の放出が不要となり、そうしたケースでは、適正に調節した孔を使用することで極めて高い選択性を実現できる場合もある。目的とする1以上の化合物を吸着する目的で粒子を使用する場合には、外部被膜20を多孔質としたり、外部被膜20が放出されるようにすることは不要であるものの、外部被膜20を多孔質にしておくと、吸着物質がマトリックス中に拡散し、外部被膜20中の吸着部位が、新たな物質の吸着用に使用可能となることで、吸着能力が大幅に上昇する。好適な態様では、さらに別の物質、たとえば活性物質をマトリックス中に含有させておいて、選択された環境への放出させることもできる。
被膜:本発明の粒子に関する文脈では、「被膜」は、「固体」という用語についての常識的な意味、そして工学的観点からしても固体としてふるまう物質から構成されており、すなわち、この被膜は、低粘度の液体とはまったく対照的な剛性と永続性を示し、したがって、この物質を横断する化合物の通過に対して、低粘度液体の層が提供しうる保護とは直感的に異なったかたちで、有意な拡散障壁となる。こうした一般常識による「液体」および「固体」という用語の理解内容は、長距離秩序の存在または不在のみについて言及する厳密な科学的定義とは、根本的に異なるものである。したがって、PMMA(プレクシグラス)や通常のガラス(この物質の粒子が、釉薬として公知の日常的な被膜を構成している)のような非晶質物質は、技術的には液体であるかもしれないが、本発明の文脈においては命名を単純化するために、これらの物質についても、物理学の研究施設以外の日常生活での呼称と同様に、固体と称するものとする。
マトリックスは、
a.熱力学的に安定であり、
b.ナノ構造であり、そして
c.液相または液晶相、またはそれらの組み合わせである。
ナノ構造(の):本明細書で、物質の構造についての文脈で使用する場合には、「ナノ構造」または「ナノ構造の」という用語は、ナノメーター(10−9メートル)またはナノメーターで2桁(10x10−9メートル)のオーダーのサイズを有する構成単位から構成されている物質のことについて称するものである。一般に、さしわたし1〜100nm(ナノメーター)のドメインまたは粒子、または同様の厚さの層または繊維を含む物質は、すべて、ナノ構造の物質であると考えることができる(Dagani,R.,「Nanostructured Materials Promise to Advance Range of Technologies(ナノ構造の物質は、テクノロジーの範囲を広げることを約束する)」、1992年11月23日 C&E News 18(1992)も参照のこと)。この用語には、いわゆる「セラミックガラス」、すなわち、結晶質物質であるが、結晶子のサイズが小さいために広角X線回折ではピークが観察されず、物理学者によっては、ナノ構造の物質と称することもある物質は含まれない。すなわち、本明細書で定義されるナノ構造の液相および液晶相は、隣接するドメインとは、局所的な化学組成が大きく異なることによって明確に区別されるナノスケールのドメインを有していることを特徴としており、隣接するドメイン同士が本質的に同じ局所的化学組成を有しており、格子の向きのみが異なるような物質は包含しない。このように、「ドメイン」という用語は、本明細書で使用する場合には、隣接するドメインとは、明らかに区別可能な特定の化学的構成を有することを特徴とする空間的領域のことを意味するものであり、こうしたドメインが親水性(疎水性)で、隣接ドメイン疎水性(親水性)と対照的であることも多い。本発明の文脈では、こうしたドメインに特徴的なサイズは、ナノメーターの範囲である。(「ミクロドメイン」という用語は、サイズ範囲が、ミクロンまたはナノメーターのスケールであるようなドメインを称することが多い。)
ナノ構造の液体および液晶:本発明で、被覆粒子1の内部コア10のマトリックスとなるナノ構造の液相および液晶相は、各種の特性を独特なかたちで併せ持っており、それらの特性は、本発明の粒子の製造を可能とするうえで必須であるばかりではなく、それらの特性ゆえに、高度に望ましい可溶化特性、安定性、提示特性および性能を有する被覆粒子が最終的に得られるものである。粒子製造プロセスについての説明でさらに詳述するように、この物質が、本明細書に記載するプロセスの1つで迅速な分散性を示すためには、この物質の水への溶解度を極めて低くするのが望ましく(さもなければ、この物質は、分散過程の最中に溶けてしまいがちで、分散性が限定されてしまう)、しかも同時に、この物質に水を含有させることにより、分散に使用する水溶性反応物質を可溶化し、しかも、広範な活性化合物を可溶化することを可能とするために、水を含む必要がある。
特に、親水性(特に帯電)化合物や両親媒性の化合物を可溶化し、そして、可溶化するだけでなく、タンパク質のような生物由来の感受性化合物の適正なコンホメーションおよび活性を保つためには、内部マトリックスは、実質的な濃度の水または他の極性溶剤を含む必要がある。被膜の選択の汎用性を確立するうえでは、本発明で有用な被膜であるとして列挙した化合物の大半(おそらく半数以上)が、極性溶剤にのみ可溶な反応物質を必要としている。さらに、可溶化のために有機溶剤を使用することは、大抵の場合、本発明のマトリックスおよび/または活性の生体化合物、たとえばタンパク質(本発明では、活性物質またはターゲティング物質として使用)とは合致せず、いずれの場合にも、制御、環境および健康上の事由できわめて不都合である。水への不溶性と、水溶性化合物の可溶化というこれらの2つの要求は、当然のこととして矛盾した作用であり、単一の安価かつ安全な物質で解決することは困難である。
可溶化に対するこうした要求を満たす極めて有効な系が、脂質/水系によって提供され、この系では、水分含量が極めて高いミクロドメインが存在し、同時に、疎水性ドメインが水性ドメインと極めて近接して接触している。水性ドメインが存在することで、高含量の共溶剤または共溶質が存在することで水の構造が妨害されている系にみられる沈殿形成傾向が回避される。同時に、疎水性ドメインが近接していることで、両親媒性化合物(および疎水性化合物)の効果的な可溶化が実現している。
ナノ構造の液相および液晶相は、こうした可溶化特性を有する合成または半合成の物質で、純粋で、特性が十分解析されており、製造が容易で、通常は安価で、以下の望ましい特性も有するマトリックスとなる。
a)ナノ構造の液相およびナノ構造の液晶相を形成している化学系が多岐にわたっており、生体分子に理想的な生物由来の脂質から、頑強なフルオロ界面活性剤、細菌結合性の糖脂質、イオン性の基や反応基を備えた界面活性剤などに至る多様性を有するので、多種多様な条件および使途に適応可能である。
b)ナノ構造の液相およびナノ構造の液晶相の比類なき性能。i)パクリタキセルや各種の生物製剤のように従来は可溶化が困難であった化合物をはじめとして、多岐にわたる活性化合物を可溶化することができ、毒性で、規制の強まりつつある有機溶剤の必要性を回避することができ、ii)安定性を犠牲にすることなく活性物質を高濃度で含有させることができ、iii)構造および機能を温存しうる生化学的環境を実現できる。
c)真の熱力学的安定性を有するため、他のベヒクルに一般的に見られる活性物質の沈殿、エマルションの崩壊、液胞の融合などの不安定性を大幅に低減できる。
d)予め選択可能なナノメータースケールの孔径を有する空孔が存在するので、そのため、被膜の放出のトリガー後であっても、放出動態の制御が可能であり、特に、タンパク質や他の生体マクロ分子の放出が制御できる。
内部コア10のナノ構造の物質についての所望の特性は、物質に関するいくつかの関連した概念から導出されるものであり、それらの概念は、以下で説明するように、界面活性剤に関しては、「極性」、「非極性」、「両親媒性物質」、「界面活性剤」、および「極性/非極性界面」といった用語を使用することにより記載することができ、同様に、ブロック共重合体系についても使用しうるものである。
極性:極性化合物(たとえば水)および極性部分(たとえば、イオン界面活性剤または脂質上の帯電したヘッド基)は、水に親和性があり、すなわち親水性である。「極性」と「親水性」は、本発明の文脈では、本質的に同義的である。溶剤ということでは、水が唯一の極性溶剤ということはない。本発明の文脈で、水以外の重要な極性溶剤としては、グリセロール、エチレングリコール、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、硝酸エチルアンモニウム、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルシドノン、ポリエチレングリコールがある。これらの1種(ポリエチレングリコール)が、実際には、ポリマーであることに留意されたい。このことからもわかるように、極性溶剤として使用しうる物質は多岐にわたっている。分子量が十分低いものとしては、ポリエチレングリコール(PEG)は液体であり、PEGは、界面活性剤とともに使用する極性溶剤としては十分に研究されていないものの、PEGは、たとえばPEGヘッド基がエーテルによってアルカン鎖に結合されている非イオン界面活性剤であるBRIJ型界面活性剤のような界面活性剤と組み合わせた場合には、ナノ構造の液相および液晶相を形成することがわかっている。より一般的に、親水性および両親媒性の分子(極性溶剤および界面活性剤を含むものであるがそれらに限定されるものではない)中の極性基ということでは、以下に、どの極性基が界面活性剤のヘッド基として作用し、どれが作用しないかという議論で多数の極性基を列挙する。
非極性:非極性化合物は、支配的な極性基を持たない化合物である。非極性(または疎水性、あるいは「親油性」)の化合物としては、界面活性剤のパラフィン系/炭化水素/アルカン鎖だけでなく、それらの改変体、たとえば、過フッ化アルカンや他の疎水基も含まれ、たとえば、胆汁酸塩界面活性剤にみられるコール酸の融合環構造、トリトン型界面活性剤中の非極性基の一部のフェニル基、ポリエチレン(長いアルカン鎖を示す)から疎水性ポリマーに至るまでのオリゴマーおよびポリマー鎖、たとえば研究中の新規なペプチド系界面活性剤中の疎水性ポリペプチド鎖も含まれるものである。非極性の基および化合物のリストについては、ナノ構造相の内部で有用な成分についての説明の部分で示すことになる。非極性化合物は、極性基(本明細書にリストを記載)を持たず、オクタノール/水隔離係数が、通常、約100を超え、大抵は、約1,000を超えている。
両親媒性物質:両親媒性物質は、親水基と親油基の双方を含む化合物であるとして定義することができる。D.H.Everett.Pure and Applied Chemistry,vol.31.no.6,p.611,1972を参照されたい。ただし、すべての両親媒性物質が界面活性剤であるわけではない。たとえば、ブタノールは、ブチル基が親油性で、ヒドロキシル基も親水性なので両親媒性物質であるが、以下に示す定義を満たさないので界面活性剤ではない。高度に極性の官能基を有し、測定可能な程度に水和されているが、界面活性剤としての挙動は示さない両親媒性分子は、多数存在する。R.Laughlin,Advances in liquid crystals,vol.3.p.41,1978を参照されたい。
界面活性剤:界面活性剤は、両親媒性物質であって、さらに以下の2特性を有する物質である。第一に、界面活性剤は、非界面活性剤と比べると著しい低濃度で、水相の界面(空気/水の界面ばかりでなく、油/水および固体/水の界面も含む)の物理的性質を有意に改変する。第二に、界面活性剤分子は、相互に(そして数多くの他の分子と)可逆的に過大な程度まで会合して、凝集物、すなわちミセルの、巨視的に1相の熱力学的に安定な溶液を形成する。ミセルは、通常、多くの(何十から何千の)界面活性剤分子から構成されており、コロイドのサイズを有している。R.Laughlin,Advances in liquid crystals,vol.3,p.41,1978を参照されたい。脂質、特に極性の脂質は、本明細書での説明のうえでは、界面活性剤と考えることが多いものの、「脂質」という用語は、通常は、通常の日常会話で界面活性剤と称される化合物が有する性質とはわずかに異なった性質を有する界面活性剤の下位分類群に属することを示すために使用される。脂質が有する性質として、常にというわけではないものの、想定されることが多い2つの性質は、第一に、生物由来であることが多いこと、そして第二に、水よりは油や脂肪に可溶である傾向があるということである。実際、脂質と称される多くの化合物は、水への溶解度が極めて低く、実際問題として界面活性剤である脂質に関して、界面張力低減特性および可逆的な自己会合を、はっきりと裏付けるためには、疎水性溶剤の存在が必要である。たとえば、こうした化合物は、低濃度で油と水の間の界面張力を強力に低減するが、こうした過程については、水への溶解度が極度に低いために、水系での表面張力の減少が観察しにくい可能性がある。同様に、脂質/水系に疎水性溶剤を添加すると、自己会合によってナノ構造の液相およびナノ構造の液晶相が形成される過程を、はるかに簡単に測定できる可能性がある一方、高温には各種の困難が伴うので、こうした測定は、脂質/水系では困難な可能性がある。
実際、ナノ構造の液晶構造の研究では、従来本質的に異なるものと考えられていた存在である「脂質」と「界面活性剤」の間の共通性が前提とされ、すべての界面活性剤と同様に、脂質でも同じナノ構造のが観察されるようになるにしたがって研究の2つの潮流(生物学の側からの脂質と、より産業的な側からの界面活性剤)が合流しつつある。また、同時に前提とされてきているのは、臭化ジヘキサデシルジメチルアンモニウムのようなある種の合成界面活性剤が、まったくの合成された非生物由来の物質であるのに、界面活性作用を好都合なかたちで示すためには疎水性の溶剤が必要であるという「脂質様」の挙動を示し、その一方で、リン脂質のようなある種の脂質が、明らかに生物由来であるのに、どちらかといえば水溶性の界面活性剤に典型的な相挙動を示すといった点である。最終的にはっきりしてきたのは、自己会合と界面張力低減特性について論じたり比較したりするうえでは、シングルテール化合物とダブルテール化合物の区別の方が意味のあるという点であり、ここで、シングルテールであることは、一般に水溶性であることを、そしてダブルテールであることは、一般に油溶性であることを意味している。
このように、本発明の文脈では、極めて低濃度で、水と疎水性物質の間の界面張力を、疎水物質が水であっても、油であっても低減させ、水または油またはその双方の中で、可逆的自己会合によってナノ構造のミセル、逆ミセル、または両連続形態となるような両親媒性物質は、すべて界面活性剤である。脂質という分類は、単に、生物由来界面活性剤からなる下位分類を含むものである。
極性/非極性界面:界面活性剤分子では、分子中に、分子の極性部分を、非極性部分から分割する分割点(1点とは限らず、場合によって、極性基が各端部に存在している場合であれば2点、そして、7本のアシル鎖を有し、したがって1分子あたり7つの分割点を有する脂質Aのようなケースであれば3点以上)を見いだすことができる。すべてのナノ構造の液相またはナノ構造の液晶相では、界面活性剤は一重層または二重層の膜を形成しており、こうした膜では、分子の分割点の位置によって、極性ドメインと非極性ドメインとを分割する表面が描かれることになり、この面を、「極性/非極性界面」または「極性/非極性分割面」と呼ぶ。たとえば、球状のミセルの場合には、この面は、ミセル外面の内側に存在する球となり、界面活性剤分子の極性基が面の外側、非極性鎖がその内側にくるような球によって近似される。この微視的な界面を、2つのバルク層を隔てる肉眼で観察可能な巨視的な界面と混同することのないよう留意する必要がある。
両連続:両連続構造では、幾何形状は、2つの異なった、複数箇所で連結して絡み合った、それぞれが、全三次元に連続しているサブ空間によって記載され、したがって、この空間の全体的な広がりは、経路が2つのサブ空間のいずれかに限定されていても、全方向についてトラバースすることができる。両連続構造では、サブ空間のそれぞれが、1種の物質または部分を高含量で含有しており、2種のサブ空間は、2種のそうした物質または部分で専有されており、それぞれの物質が、空間全体に三次元のすべてに延在している。海綿、砂岩、リンゴ、および多くの焼結体が、物質界における、カオティックではあるが、比較的永続的な両連続構造の例である。これらの特定の事例では、サブ空間の一方が、どちらかといえば変形可能な固体によって占有されており、他方のサブ空間(空隙として称することも可能である)が、流体によって占有されている。ある種のリオトロピック液晶の状態も、両連続構造の例であり、この場合、一方のサブ空間は、両親媒性物質の分子によって占有され、これらの分子は、配向、凝集して、幾何学的秩序のあるシート状のアレイとなっており、他方のサブ空間は、溶剤分子によって占有されている。2種の互いに非相溶性であるような種類の溶剤分子、たとえば、炭化水素と水を含む関連した液晶状態も、一方のサブ空間が第一の溶剤を高含量で含有し、他方のサブ空間が第二の溶剤を高含量で含有し、双方の界面が、配向した界面活性剤分子を高含量で含有し、複数箇所で連結された層内に延在しているような状態についてのさらなる可能性を提示している。同程度の量の炭化水素および水ならびに両親媒性界面活性剤を含むある種の平衡マイクロエマルション相も、熱的運動によって、変化する無秩序という永続的状態に保たれたカオティック両連続構造といえる。というのも、この相については、幾何学的秩序の根拠がみられない一方で、複数箇所での連続性を確実に示す根拠があるからである。両連続形態は、ある種の相分離ブロック共重合体でも生じる。Anderson.D.M.,Davis.H.T.,Nitsche.J.C.C.およびScriven.L.E.(1900)Advances in Chemical Physics,77:337を参照されたい。
化学的規準:所定の極性基が界面活性剤のヘッド基として機能するかどうかについて判定するいくつかの規準が、ラフリン(Robert Laughlin)によって整理され、詳細に記載されている。なお、ここでは、界面活性剤の定義は、低めの濃度での水中でのナノ構造相の形成までを包含している(R.Laughlin,Advances in Liquid Crystals,pp.3−41,1978)。
ラフリンによる以下のリストは、界面活性剤のヘッド基として作用しない極性基の一部である。したがって、たとえば、これらの極性基の一つに結合したアルカン鎖は、ナノ構造の液相または液晶相を形成することはないものと予測される。アルデヒド、ケトン、カルボン酸エステル、カルボン酸、イソシアネート、アミド、アシルシアノグアニジン、アシルグアニル尿素、アシルビューレット、N,N−ジメチルアミド、ニトロソアルカン、ニトロアルカン、硝酸エステル、ニトリルエステル、ニトロン、ニトロソアミン、ピリジンN−オキシド、ニトリル、イソニトリル、アミンボラン、アミンハロボラン、スルホン、ホスフィンスルフィド、アルシンスルフィド、スルホンアミド、スルホンアミドメチルイミン、アルコール(一官能基)、エステル(一官能基)、第二アミン、第三アミン、メルカプタン、チオエーテル、第一ホスフィン、第二ホスフィン、および第三ホスフィン。
界面活性剤のヘッド基として作用する極性基の一部は、以下のとおりである。したがって、たとえば、これらの極性基の一つに結合したアルカン鎖は、ナノ構造の液相または液晶相を形成するものと予測される。
a.陰イオン性:カルボキシレート(石鹸)、スルフェート、スルファメート、スルフォネート、チオスルフェート、スルフィネート、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネートホスフィネート、ニトロアミド、トリス(アルキルスルフォニル)メチド、キサンテート。
b.陽イオン性:アンモニウム、ピリジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、スルホキシニウム;
c.双性イオン:アンモニオアセテート、硫酸ホスホニオプロパン、硫酸ピリジニオエチル。
d.半極性:アミンオキシド、ホスホニル、ホスフィンオキシド、アルシンオキシド、スルホキシド、スルホキシイミン、スルホンジイミン、アンモニオアミデート。
ラフリンは、一般原則として、所定の極性基のフェノール(水素結合の供与体)との1:1の会合錯体が形成される際のエンタルピーが5kcal未満の場合には、極性基は、界面活性剤のヘッド基としては作用しないであろうことについても示している。
極性のヘッド基に加えて、界面活性剤は、非極性基も必要としており、この場合も、有効な非極性基についての指針が存在する。最も一般的なアルカン鎖については、nが炭素の数である場合には、界面活性剤の会合挙動をとるためには、nが少なくとも6である必要があり、少なくとも8または10というのが通常のケースである。興味深いことに、n=8で、ヘッド基として有効であるための最低限の極性を有するアミンヘッド基を有するオクチルアミンは、ナノ構造のL2相だけでなく、周囲温度で、水とともにラメラ相を示す(Warnhelm.T.,Bergenstahl.B.,Henriksson.U.,Malmvik.A.−C.およびNilsson.P.(1987)J.of Colloid and Interface Sci.118:233)。枝分かれ炭化水素は、nがもっと小さくても基本的に同じ要件を満たす。たとえば、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウムは、全範囲で液晶相を示す。(Winsor,P.A.(1968)Chem.Rev.68:1)しかし、nがもっと大きい場合には、2つの直鎖および枝分かれ炭化水素の事例は、極めて異なっている。直鎖飽和アルカン鎖の結晶化傾向は、nが約18を超えると、クラフト温度が高くなり、ナノ構造の液相および液晶相の温度範囲が高温となり、100℃付近または100℃超となる。そのため、本発明の文脈では、これらの界面活性剤は、大抵の用途で、8〜18の界面活性剤より有用性が劣ることとなる。一方、鎖に不飽和または枝分かれを導入すると、nの範囲を、劇的に増大させることができる。不飽和のケースについては、魚油由来の脂質のケースによって例示することができ、この場合、モノグリセリド、石けんなどを含むドコサヘキサジエン酸およびその誘導体のように、炭素数22の鎖が、二重結合が多い場合には6個も存在するために、極めて低い融点を有することもある。また、分子量が極めて高いポリブタジエンは、周囲温度で弾性ポリマーであり、ポリブタジエンブロックを含むブロック共重合体は、ナノ構造の液晶を生じることが周知である。同様に、枝分かれを導入すると、プルロニック系界面活性剤のような重要な両親媒性ブロック共重合体界面活性剤のいくつかで疎水性ブロックの役目を果たすポリプロピレンオキシド(PPO)のような炭化水素ポリマーを製造することができる。水素をフッ素で置換すると、特に、界面活性剤で過フッ化鎖を使用すると、一般に、最低値nに対する要求が低くなり、その例としては、界面活性剤系ではかなり稀な中間相を含め、全範囲の液晶相を示すペルフルオロリチウム(n=8)がある。他でも記載されているように、他の疎水基、たとえばコール酸石けん(胆汁酸塩)中の融合環構造も、有効な非極性基となるが、こうしたケースについては、一般に、ケースバイケースで、特定の疎水基ゆえに界面活性剤の挙動が生じるのかどうかを判断する必要がある。
単一成分のブロック共重合体については、比較的単純な平均場統計理論で、どのような場合にナノ構造の液相および液晶相物質が生じるのかを十分予測することができ、この理論は、広範なブロック共重合体に一般的に適用できる。χが、ポリマーブロックAおよびBの間のフローリー・ハギンズ相互作用変数であり、Nが、ブロック共重合体の相互作用変数の定義と合致するかたちで、ポリマー鎖中の統計単位またはモノマー単位の数であるとして定義される重合の全体係数である場合、積χNが10.5を超えると、ナノ構造が液相および液晶相であることが予測される(Leibler,L.(1980)Macromolecules 13:1602)。この臨界値10.5に相当するか、またはこの値を超える値に関しては、両連続キュービック相をはじめとして、秩序だったナノ構造の(液晶)相が生じるものである。(Hajduk,.D.A.,Harper,P.E.,Gruner,S.M.,Honeker,C.C.,Kim,G.,Thomas,E.L.およびFetters,L.J.(1994)Macromolecules 27:4063)。
ナノ構造の液相として有用な相
マトリックスのナノ構造の物質として適当なナノ構造の液相物質は、
a.ナノ構造のL1相物質、
b.ナノ構造のL2相物質、
c.ナノ構造のマイクロエマルション、または
d.ナノ構造のL3相物質
である。ナノ構造の液相は、少なくとも第一のタイプと第二のタイプ(そして場合によっては第三のタイプ、そしてさらに別のタイプ)を含むドメイン構造を特徴としており、これらのドメインは、以下の特性を有している。
a)第一タイプのドメインの化学的部分は、第二タイプドメインの化学的部分と非相溶性であり、(そして一般に、異なったドメインタイプの各ペアーは、それぞれに非相溶性であり、)所定の条件でも混じり合わず、別々のドメインのままでいる。たとえば、第一タイプのドメインは、極性部分、たとえば水と脂質ヘッド基から実質的に構成することができ、一方、第二タイプのドメインは、炭化水素鎖のような非極性部分から実質的に構成することができる。あるいは、第一タイプのドメインをポリスチレンを高含量で含むものとし、一方、第二タイプのドメインをポリイソプレンを高含量で含むものとし、第三タイプのドメインを、ポリビニルピロリドンを高含量で含むものとすることができる。
b)各ドメイン内の原子秩序は、固体様ではなく液体様であり、すなわち、原子の格子秩序を欠いている。このことは、広角X線回折でブラッグ反射の急峻なピークを示さないことによって例証される。
c)実質的にすべてのドメインの最小寸法(たとえば、層の場合には厚さ、円柱様ドメインまたは球様ドメインの場合には直径)は、ナノメーターのオーダー(すなわち、約1〜約100nm)である。
d)ドメインの編成は、長距離秩序を示さず、どの周期的格子とも合致しない。このことは、この相をX線小角散乱法で調べた場合に急峻なブラッグ反射が見られないことによって例証される。さらに、以下に示すように、高粘度と複屈折の両方を欠いている場合、このことは、液晶相ではなく液相であることの強力な証左となる。
各液相については、界面活性剤を主成分とし、ナノ構造の液体中の2タイプのドメインが「極性」および「非極性」である系について、まず説明する。多くの液相については、その後、ブロック共重合体を主成分とする系について説明する。これらの系では、「極性」および「非極性」という用語は、適用可能である場合も、そうでない場合もあるが、ドメインタイプ「A」、「B」などは存在しており、上記に(ナノ構造の液体の定義において)定義したように、ドメインタイプ「A」と「B」は、相互に不混和性である。
L1相
界面活性剤を主成分とする系で生じるL1相では、極性−非極性界面の湾曲は、非極性(無極性)領域の方を向いており、総じて、水が連続相であるような媒質中に存在する粒子、すなわち通常のミセルを生じている。(ここでは、「水」は、任意の極性溶剤のことを称する)。これらのミセルが、条件または組成の変化に応じて球状から円柱状に変化すると、これらのミセルは互いに融合しはじめ、両連続状態を生じることができる。水が連続であるだけでなく、疎水性ドメインも互いに連結して、サンプル貫通型のネットワークを形成することができ、この場合もL1相である。さらに、何のミクロ構造も持たないことの証左を示すL1相の例もある。すなわち、ミセルも、十分に画定されたドメインもなく、単に、界面活性剤分子が無構造で単相の液体溶液に混ざっているのみであり、したがって、こうした例は、ナノ構造の物質でない。こうした「無構造溶液」であっても、場合によっては、単に組成を変えることによって、途中での相変化なしに、ナノ構造相に変化させることができる。すなわち、熱力学では、無構造溶液とナノ構造相の間の相界を予測することはできない。こうしたことは、もちろん、長距離秩序を持つ相(液晶または結晶)と、長距離秩序を持たない相(液体)との間の遷移のように、相の境目が熱力学によって要請されるケースとは対照的である。
ブロック共重合体を主成分とする系で生じるL1相については、「極性」および非極性という用語が該当しない可能性もあるものの、いずれにしても、2つの(または場合によっては、それ以上の)ドメインタイプが存在しており、本発明では、A/B界面の湾曲はAドメインに向かっており、典型的なナノ構造では、連続するBドメイン中に粒子(球状であることが多い)が位置している。例を挙げると、ポリスチレン/ポリイソプレンジブロック共重合体の場合、ポリスチレンブロックの容積分率が極めて低く、たとえば10%であったとすれば、通常のミクロ構造は、ポリスチレン含量の多い球が、連続ポリイソプレンマトリックス中に位置しているというものとなる。逆に、ポリイソプレン含量の多い球が、ポリスチレン連続マトリックス中に位置している構造は、ポリイソプレンが10%のPS/PIジブロック共重合体がとる可能性が大きい構造ということになる。
ナノ構造のL1相の特定
L1相は液相なので、ナノ構造のLl相を、無構造溶液の液相から区別する技術が開発されている。後述する実験的プローブの他にも、周知の知識体系に基づいた規準によって、所定の系が、単純な無構造の溶液ではなく、ナノ構造相を形成することが予測されるかどうかを事前に判断することが可能である。
ナノ構造の液相およびナノ構造の液晶相を形成することは、界面活性剤を定義するうえでの一つの要件であるので、ナノ構造の液体を無構造の溶液から区別するにあたっては、所定の化合物が、実際に界面活性剤なのかどうかを判定する基準を持つことが極めて重要であり、こうした規準を用いることにより、問題の液体を直接分析する後述する方法だけでなく、表面活性性についてのいくつもの試験が可能となるものである。ラフリン(Robert Laughlin)は、Advances in Liquid Crystals,3:41,1978において、いくつかの規準について論じている。まず、ラフリンは、所定の化合物が界面活性剤となるかどうかについて事前に判断するための化学的規準を列挙しており、この点については、すでに詳述した。ある化合物が、これらの規準に基づいて、真の界面活性剤であると予測される場合には、この化合物は、水中でナノ構造相を形成することが予測される。また、水と疎水物質の存在下に、こうした化合物が存在する場合には、通常は、存在する疎水物質の少なくとも一部を取り込んで、ナノ構造相が形成されることが予測される。
非界面活性剤の両親媒性物質をそうした系に加えた場合、具体的には、両親媒性有機溶剤、たとえば短鎖アルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドなどを加えた場合には、有機溶剤の作用は、一般的には、コロイド凝集体を破壊して、全成分を同時に可溶化するというものであるので、無構造の液体が形成される可能性がある。
ラフリンは、物理的観察にもとづいたいくつかの規準についても記載している。周知の規準の1つは、表面張力の測定で観察される臨界ミセル濃度(CMC)である。ある特定の化合物の水溶液の表面張力を濃度の関数としてプロットすると、極めて低い濃度では、加えた化合物が本当に界面活性剤であった場合には、表面張力の急峻な低下が観察される。その後、臨界ミセル濃度(CMC)として知られる特定の濃度で、このプロットに急激な変化が見られ、CMCの右側で線の勾配が一挙に減って、界面活性剤を添加しても、表面張力があまり低下しなくなる。その理由としては、CMCを超えると、添加した界面活性剤のほぼ全量がミセルの形成に使用され、気水界面には使用されないことが挙げられる。
ラフリンが整理した第二の規準は、液晶についての規準であり、化合物が高濃度で液晶を形成するのであれば、その化合物は界面活性剤に相違なく、その化合物は液晶となる濃度より低濃度で液晶相を形成するはずだというものである。具体的には、L1相は、正ヘキサゴナルまたは、場合によっては、正非両連続キュービック相の液晶を形成する界面活性剤濃度よりごくわずかに低い濃度で見られる。
ラフリンが論じているもう一つの規準は、クラフト境界のプラトーの上限と無水化合物の融点との間の温度差である。クラフト境界は、化合物と水の二元系の相ダイヤグラムでの曲線で、クラフト線の下側では化合物は結晶であり、クラフト線の上側では結晶が融け、すなわち、クラフト線に沿った極めて狭い温度範囲を超えると、溶解度が一挙に上昇している。真の界面活性剤の場合には、この温度差が実質的なものであり、パルミチン酸ナトリウムでは、無水化合物の融点が288℃、クラフト線のプラトーが69℃なので、219℃の差がある。ラフリンは、ドデシルアミンのケースについても論じており、この場合の温度差は14℃で、相図での液晶の領域は小さく、ある程度の会合コロイドの挙動を示す。これとは対照的に、ドデシルメチルアミンもドデカノールも界面活性剤型の会合挙動は示さず、いずれも、温度差はゼロである。
本明細書で説明する液晶の場合と同じく、所定の物質については、その物質(この場合は液体)がナノ構造をとっているかどうかを判定するために使用することのできるいくつかの実験プローブがあり、これらのプローブは、適当な変更を加えれば、すべてのナノ構造の液体に適用可能であるが、ここではL1相の文脈で説明する。こうした判定では、使用可能な特性決定手段をなるべく多く組み合わせて使用することが好ましい。
他のすべての液相と同じく、L1相は、流れが存在しない場合には、光学的に等方性である。L1相は、重水素化した界面活性剤を用いたH NMRのバンド形で、スプリッティングを示さない。
また、交叉偏向フィルターを用いた観察では、界面活性剤系のL1相は、穏やかな流れ条件下でも、一般に複屈折を示さない。ブロック共重合体を主成分とする系の場合の複屈折に関する状況は、ひずみ複屈折の可能性があるので複雑であり、そうした場合には、腹屈折の観察は信頼できる方法とはいえない。
界面活性剤を主成分とするL1相に戻ると、この相の粘度は、一般に極めて低く、同じ系の液晶より相当低い。
パルス磁場勾配NMRを使用して、各種成分の有効自己拡散係数を測定すると、界面活性剤も、すべての添加疎水物質も、自己拡散が極めて低く、通常、10−13/秒以下のオーダーであることがわかる(相が両連続でない場合、以下参照)。これは、界面活性剤および疎水物質の主たる拡散手段が、ミセル全体の拡散によるものであるためである。また、同じ理由で、界面活性剤と疎水物質の拡散速度もほぼ同一のはずである。
X線小角散乱法(SAXS)では、ナノメーターの範囲には(すべての範囲でも)、急峻なブラッグピークはもちろん示されない。しかし、全曲線を、文献記載のいくつかの方法で分析すると、ナノ構造の長さスケールが得られる。低波数(ただし、界面活性剤の分子長の逆数と比較して低すぎることのない波数)での強度の減衰を分析することにより、見かけの回転半径を判定することができ、すなわち、強度を、波数の二乗に対してプロットし、勾配からRgを推定し(いわゆるギニエ・プロット)、次に、この回転半径を、標準的な周知の式によって、ミセル単位のサイズと関連づける。この半径は、ナノメーターのオーダーとなる。また、強度と波数の二乗の積を、波数に対してプロットすることにより、つまり、いわゆる「ホーゼマン・プロット」によっても、ミセルのサイズと関連づけうるピークが示され、この方法には、回転半径よりミセル間の相互作用に対して、感受性が低いという利点がある。
両連続である界面活性剤を主成分とするL1相の場合には、以上の状況は、以下のように変化する。まず、粘度は、両連続が生じた場合には、連続した界面活性剤の膜の剛性ゆえに相当上昇しうる。また、界面活性剤の自己拡散速度、および場合によっては添加疎水物質(二元系にマーカーとして故意に添加することができる)の自己拡散速度が劇的に上昇し、同じ系のラメラ相の値に近づくか、場合によっては、この値を超える。そして、SAXS分析、すなわち回転半径およびホーゼマン・プロットの双方では、ナノメーター範囲の結果が示されるものの、これらの結果は、離散した粒子のサイズではなく、両連続ドメイン構造に特徴的な長さのスケールであると解釈されるべきである。モデルによっては、たとえば、著者のテーゼである相互連結円筒モデル、またはタルモン・プラガーのモデルでは、両連続ドメイン構造は、一見「粒子」であるが、実際には、単に、両連続幾何形状モデルを構成する構成ブロックであるような単位から構成されるものとして表される。
ブロック共重合体を主成分とする系のL1相については、この同じSAXS分析が適用できる。これに対して、NMRのバンド形および自己拡散の測定値については、一般に、そのままでは適用できず、表面張力の測定値についても適用できない。しかし、従来より、NMRの自己拡散のかわりに蒸気輸送の測定が使用されてきており、具体的には、ドメインの一方のタイプに選択的に溶解し、それ以外には溶解しない気体を見つけることができた場合には、この気体のサンプルを通しての輸送を測定することにより、これらのドメインの連続性を調べることができる。こうした測定が可能な場合、ミセル相中の連続ドメイン(B型)を通しての輸送は、純粋なBポリマー中の輸送よりわずかに遅いだけであるのに対し、Aドメインに封入された気体の輸送は極めて遅いはずである。
ブロック共重合体を主成分とするミセル相の剪断弾性率は、主に、連続ドメインを形成しているポリマーブロック(本発明のポリマーB)の剪断弾性率によって決定される。したがって、たとえば、PSが10%で、連続したPIのマトリックス中にPSのミセルが形成されるPS/PIジブロック共重合体では、剪断弾性率は、ポリイソプレンに近い値となり、PSミセルが存在する分だけわずかに高めとなる。興味深いことに、これとは逆に90%がPSであり、連続したPSのマトリックス中にPIのミセルが形成されるケースでは、弾性のPIミセルが衝撃吸収性成分となって、破壊特性が、純粋なガラス状ポリスチレンより改善される。
L2相
この相は、極性領域と非極性領域の役割が逆であるという点以外は、L1相と同じである。極性・非極性界面の湾曲は、極性ドメインの方を向いており、ミセル(存在する場合)の内部は、水および/または他の極性部分であり、非極性ドメイン(代表的には、脂質のアルカン鎖)が連続マトリックスを形成している。とはいえ、極性ドメイン同士も連結して、両連続L2相を形成することが可能である。上述の場合と同じく、この相は、ナノ構造の場合も、無構造の場合もある。
ナノ構造のL2相の特定
ナノ構造のL2相について相を特定する際の指針は、上記でL1相について記載した内容と同様であるが、以下の点で異なる。説明が必要なのは、界面活性剤を主成分とするL2相のみであり、これは、ブロック共重合体を主成分とする系では、2タイプのミセル相(B中AおよびA中B)が同等であり、ブロック共重合体系中のミセル相の特定についてはすでに記載したからである。
まず、L2相は、一般に、HLBが低い場合、たとえば、少数のエチレンオキシド基(典型的なアルキル鎖長のものを、5以下)を有するエトキシル化アルコール界面活性剤、または、二重鎖界面活性剤などでに顕著である。相挙動に関しては、L2相は、一般に、逆液晶相よりもさらに界面活性剤の濃度が高い場合に生じ、L2相の極めて一般的な位置は、逆ヘキサゴナル相より界面活性剤濃度の高い側である。両連続でないL1相については、極めて低いのは水の自己拡散の方であり、拡散係数を(たとえばパルス勾配NMRで)測定すると、10−11/秒以下の数が得られるはずである。また、ホーゼマン・プロットからは、逆ミセルのサイズがわかり、このサイズは、実質的に水ドメインのサイズとなるはずである。
マイクロエマルション
マイクロエマルションは、油(非極性の液体)、水(極性の液体)、界面活性剤を含み、熱力学的に安定で、低粘度で、光学的に等方的な液相であるとして定義することができる。Danielsson.I.およびLindman.B.(1981)Colloids and Surfaces,3:391も参照されたい。界面活性剤、水、油の熱力学的に安定な液体混合物は、通常、マイクロエマルションと称される。巨視的には、均質に見えるものの、マイクロエマルションは、微視的な長さスケール(10〜1,000 オングストローム)の構造を有しており、水性のミクロドメインと油性のミクロドメインが、活性剤含量の高い膜によって隔てられている。Skurtveit,R.およびOlsson,U.(1991)J.Phys.Chem.95:5353を参照されたい。マイクロエマルションの基本的な特徴は、マイクロエマルションは、水および界面活性剤に加えて「油」(非極性の溶剤または液体)を含有しており、定義からして必然的にミクロ構造を有しているという点である。一般に、油と水は相分離する傾向が強いため、油と水を同時に可溶化しうる有機溶剤(エタノール、THF、ジオキサン、DMF、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドをはじめとするいくつかの溶剤)が不在の場合には、水と界面活性剤を含む透明な単相の液体は、マイクロエマルションとなっているはずなので、この基本だけで、その相がナノ構造であるという結論を安心して出すことができる。マイクロエマルションは、特に十分に画定されたミセルを含有する場合には、LlまたはL2相ともなりうる点に注意が必要であるが、L1相の場合には、ミセルは必然的に油で膨潤している。マイクロエマルションは、ナノ構造の液相である。「油」、水、および界面活性剤を含む液体の特徴的なドメインサイズが、ナノメーター範囲より大きい場合、すなわちミクロンの範囲の場合には、この液体は、もはやマイクロエマルションではなく、「ミニエマルション」または普通のエマルションであり、これらは、いずれも、非平衡状態である。L1相およびL2相が油を含有することがあり、両連続である場合さえあるにもかかわらず、マイクロエマルションという用語が導入されたのは、3成分の油/水/界面活性剤・脂質系が、間に相間の境界なく水が連続している状態から両連続状態を経て油が連続している状態となることが比較的一般的だからである。このケースでは、相図の「L1」領域と「L2」領域の間に分岐点を設定しようとすることに意味はないので、そのかわり、全領域を「マイクロエマルション」と称して、この領域の水含量の多い側では、油で膨潤したL1相の構造をとり、この領域の油含量の多い側では、L2相の構造をとることを認めるわけである。(ベン図では、マイクロエマルションと、L1およびL2相との間には重複部分があるが、L1相とL2相の間には重複部分がない)。以下で説明するように、マイクロエマルションのミクロ構造は、油含量の高いドメインを水含量の高いドメインから隔てる界面活性剤の一重層膜で、極めて一般的に記載可能である。この界面活性剤/脂質含量の高い膜は、閉じてミセルを形成する場合も、連結してネットワーク構造を構成して両連続マイクロエマルションを形成する場合もある。
エマルションは、本明細書で用語の用法からすると、ナノ構造の液体ではないことを指摘しておく必要があるだろう。まず、エマルションに特徴的な長さのスケール、つまり、必然的にエマルション小滴の平均粒径ということになるわけであるが、この長さスケールは、ナノ構造の液体に特徴的な長さのスケールよりは、一般にはるかに長く、ナノメータの範囲ではなく、ミクロンの範囲である。近年、小滴の粒径がサブミクロンのエマルションを製造する努力がなされ、より小型の小滴のエマルションが開発されて「ミニエマルション」という用語も出てきているものの、本発明で称するナノ構造の液相の領域にエマルションおよびミニエマルションが含まれないだけの本質的なちがいがまだ残っている。本明細書で記載するナノ構造の液相は、マイクロエマルションも含め、熱力学的平衡状態で存在しており、この点は、平衡相ではなく、準安定な物質でしかないエマルションとは対照的である。また、静止状態にあり、十分に平衡化されているナノ構造の液体が、光学的に透明であるのに対し、エマルションは、一般に不透明であり、ちなみに、たとえば、通常のミルクはエマルションである。また、通常のエマルションの構造についてのフライバーグのモデルを信じた場合、また、このモデルは当技術分野では認められいるのだが、その場合には、分子のスケールによる区別は劇的なものであるとみなすことができる。このモデルでは、エマルション小滴は、一般に、界面膜によって安定化される存在であると見なされており、この界面膜は、通常、微視的にはナノ構造の液晶相物質の膜であると証明されるものである。つまり、こうしたエマルションは、階層的な構造を持ち、この構造では、ナノ構造相が、エマルションの小滴と連続した溶媒という主要構成ブロックの間の安定化相として機能していることになる。我々の「ミクロ構造の」という用語ではなく「ナノ構造の」という用語の使用は、「ナノ構造の」という用語の持つもっと厳密かつ限定された性状、そして、エマルションのようなまったく異なる領域に属する他の液相は、この用語には含まれないという理解に基づくものである。単純に幾何学的な面から考えても、小滴の粒径が10ミクロン程度で、液晶層であることもある安定化膜を持つようなエマルションは、通常の粒径が1ミクロンのオーダーであるような本発明のミクロ粒子の内部としては不適であることが明らかである。
ナノ構造のマイクロエマルションの特定
ナノ構造のL1相について上述した方法および指針は、ナノ構造のマイクロエマルション相を特定する際にも、以下の変更点以外については、そのまま適用できる。
マイクロエマルションは、L1相の記載にも、L2相の記載にも明確には当てはまらない相であり、本明細書でまだ扱っていない。このマイクロエマルションについては、マイクロエマルションの大半とはいえないまでも、多くが両連続であることを記載しておく。また、油、水、および界面活性剤を含む単一の液相の文脈では、両連続性は、この相がナノ構造であることの強力な証左となり、これは、エマルションや他の一般的な液体は、決して両連続となることがないためである。この問題については、「On the demonstration of bicontinuous structures in microemulsions(マイクロエマルションでの両連続構造の例証について)」Lindman.B.,Shinoda,K.,Olsson,U.,Anderson,D.M.,Karlstrom,G.およびWennerstrom,H.(1989)Colloids and Surfaces 38:205で扱われている。両連続性を示すにあたって有用性が実証済みの方法としては、パルス勾配NMRを使用し、油と水の両方の有効自己拡散係数を別々に測定する方法があり、この場合、一般に、界面活性剤の自己拡散も測定しておくことが好ましい。水の連続性を示す際には、導電性を使用することもできるが、この方法は、「ホッピング」法に伴う問題を生じやすい。連続性の判定には、蛍光クエンチングも使用されている(Sanchez−Rubio,M.,Santos−Vidals,L.M.,Rushforth,D.S.およびPuig,J.E.(1985)J.Phys.Chem.89:411)。両連続性を調べる際には、小角中性子線およびX線散乱が使用されている(Auvray,L.,Cotton,L R.,Ober,R.およびTaupin.J.(1984)J.Phys.Chem.88:4586)。界面の存在を推定し、ナノ構造の存在を証明する際には、SAXS曲線のポロド分析が使用されている(Martino,A.およびKaler,E.W.(1990)J.Phys.Chem.94:1627)。マイクロエマルションを調べる際には、フリーズフラクチャー電子顕微鏡観察が、凍結速度を極めて速くして使用されるが、この方法は、ナノ構造の液体の固定方法が何十年にもわたって開発されてきた結果実現したものである。方法および結果の信頼性について論じた必読のレビューも公刊されている(Talmon,Y.in K.L.MirtalおよびP.Bothorel (Eds),Vol.6.Plenum Press,New York,1986,p.1581)。
油/水/界面活性剤の液相が、明らかにL1相またはL2相であるわけでもなく、また両連続性の強い証左が示されるわけでもない場合には、この相が、ナノ構造であることを証明する分析には相当の手間がかかり、単一の方法ではすまなくなる。一般に、このセクションで説明した測定方法、たとえば、SANSまたはSAXS、NMR自己拡散、cryo EMなどを適用して、モデルナノ構造の文脈内でのデータの合理化を試みることになる。
L3相
相図のL2相領域は、場合によっては、そこから突き出た「舌状領域」を示し、この「舌状領域」は、単純なL2相領域の通常の様相とは異なる長くて細い突起である。この「舌状領域」は、場合によっては、後述するように、L1領域とともに出現する。この領域を詳しく調べると、特にX線および中性子散乱で調べた場合には、この領域は、L2相とは根本的に異なっている。L2相では、界面活性剤の膜は一般に一重層となっており、片方の側に油(非極性溶剤)が、もう片方の側に水(極性溶剤)が位置している。これとは対照的に、「L3相」という名称のこの相では、界面活性剤は、二重層となっており、両側に水(極性溶剤)が位置している。L3相は、一般に、両連続であると考えられており、実際、この相は、キュービック相と、別の特性、すなわち、2つの異なる水性のネットワークが交酪しているが、それらは二重層によって隔てられているという特性を共有している。このように、L3相は、実際にキュービック相と極めて似ているが、キュービック相のような長距離秩序は持たない。L2相から分かれたL3相と、L1相から分かれたL3相には、異なる名称がついている。「L3相」は、L2相に伴う相について使用され、「L3*相」が、L1相に伴う相に使用される。
ナノ構造のL3相の判定。
L3相を判定し、本明細書で説明した他の液相と区別する作業は、緻密な過程を要し、いくつかの分析を組み合わせて使用する必要がある。ここでは、こうした方法のうちで最も重要なものについて説明する。L3相が静止状態では光学的に等方性であり、また、L3相が液体であるという事実にも関わらず、L3相は、流動複屈折を示しうるという興味深い特性を有している。L3相は、比較的高い粘度を有することが多く、この粘度は、L1およびL2相で観察される粘度より相当高く、ラメラ相と同等またはそれ以上である。こうした特性は、もちろん、連続二重層膜であることによって生じる結果であり、ナノ構造の位相的、幾何学的性状は、この連続二重層膜によって大きく制約されている。したがって、剪断力が加わった場合には、二重層膜の大部分が協調して変形し(その結果、配列し)、こうした変化は、たとえば、剪断力が加わると独立したミセル単位が単純に移動するミセル状態のL1相とは対照的であり、また、ケースを問わず、一重層は、一般に二重層よりはるかに剪断力印加時の変形性が高い。この解釈の裏付けとしては、L3相の粘度が、通常、界面活性剤の体積分率の一次関数であることが挙げられる(Snabre.P.およびPorte.G.(1990)Europhys.Len.13:641)。
ナノ構造のL3相の判定に関しては、優れた光線、中性子線、およびX線散乱法が開発されている(Safinya,C.R.,Roux,D.,Smith,.G.S.,Sinha,S.K.,Dimon,P.,Clark,N.A.およびBellocq,A.M.(1986)Phys.Rev.Lett.57:2718、Roux,D.およびSafinya,C.R.(1988)J.Phys.France 49:307、Nallet,F.,Roux,D.およびProst,J.(1989)J.Phys.France 50:3147)。Rouxらの分析法(Roux,D.,Cates,M.E.,Olsson,U.,Ball,R.C.,Nallet,F.およびBellocq,A.M.,Europhys.Lett.)は、このナノ構造が、界面活性剤の二重層によって隔てられた2つの水性のネットワークを有しており、この2つのネットワークが対等であるために、このナノ構造がある程度の対称性を有していることを判定しうるとされている。
幸運なことに、相挙動にもとづいてL3相のナノ構造の性質を判定する作業は、代表的なL1相、L2相、またさらにはマイクロエマルション相の場合より確実である。これは、まず、L3相は、少量(数パーセント)の油または他の化合物をラメラまたは両連続キュービック相に加えたり、また、この同じ相の温度をわずかに上昇させたりすることによって得られることが多いからである。これらの液晶相は、ナノ構造であることを示すことが容易なので(特に、X線でのブラッグピーク)、液相がナノ構造も有することを、その液相の組成が液晶相と極めて近い場合でも自信をもって示すことができる。要するに、数パーセントの油をナノ構造の液晶相に加えたことで、液晶が無構造の液体に転化されるという事態は極めて想定しにくいわけである。実際、エアロゾルOT/食塩水系中でのパルス勾配NMRによる自己拡散の測定では、L3相中の自己拡散挙動からは、近接した逆両連続キュービック相の自己拡散挙動が極めて明瞭に外挿されることが示される。この同じL3相は、SANS、自己拡散、フリーズフラクチャー電子顕微鏡観察を組み合わせた研究の対象となっている(Strey,R.,Jahn,W.,Skouri,M.,Porte,G.,Marisman,J.およびOlsson,U.in 「Structure and Dynamics of Supramolecular Aggregates(超分子凝集体の構造と動態)」S.H.Chen,J.S.HuangおよびP.Tartaglia編,Kluwer Academic Publishers,The Netherlands)。実際、L3相のSANSおよびSAXS散乱分析では、相図で近接する両連続キュービック相と同程度のオーダーのdスペーシングに対応する波ベクターで、ブロードな干渉ピークが頻繁に観察され、本明細書の執筆者は、両連続キュービック相について公知の構造を外挿したL3相ナノ構造についてのモデルを開発している(Anderson,D.M.,Wennerstrom,H.およびOlsson,U.(1989)J.Phys.Chem.93:4532)。
ナノ構造の液晶相として有用な相
被覆粒子の構成部分として使用するナノ構造の液晶相物質は、
a.ナノ構造の正または逆キュービック相物質、
b.ナノ構造の正または逆ヘキサゴナル相物質、
c.ナノ構造の正または逆中間相物質、または
d.ナノ構造のラメラ相物質
とすることができる。
ナノ構造の液晶相は、少なくとも第一のタイプと第二のタイプ(そして場合によっては第三のタイプ、そしてさらに別のドメインタイプ)を含むドメイン構造を特徴としており、これらのドメインは、以下の特性を有している。
a)第一タイプのドメインの化学的部分は、第二タイプドメインの化学的部分と非相溶性であり、(そして一般に、異なったドメインタイプの各ペアーは、それぞれに非相溶性であり、)所定の条件でも混じり合わず、別々のドメインのままでいる。(たとえば、第一タイプのドメインは、極性部分、たとえば水と脂質ヘッド基から実質的に構成することができ、一方、第二タイプのドメインは、炭化水素鎖のような非極性部分から実質的に構成することができる。あるいは、第一タイプのドメインをポリスチレンを高含量で含むものとし、一方、第二タイプのドメインをポリイソプレンを高含量で含むものとし、第三タイプのドメインを、ポリビニルピロリドンを高含量で含むものとすることができる。)
b)各ドメイン内の原子秩序は、固体様ではなく液体様であり、原子の格子秩序を欠いている。(このことは、広角X線回折でブラッグ反射の急峻なピークを示さないことによって例証される。)
c)実質的にすべてのドメインの最小寸法(たとえば、層の場合には厚さ、円柱または球の場合には直径)は、ナノメーターのオーダー(すなわち、約1〜約100nm)である。
d)ドメインの編成は、一次元、二次元、または三次元で、ナノメーターの範囲の格子パラメータ(または単位格子のサイズ)(すなわち、約5〜約200nmのサイズ)を有する格子と合致し、したがって、ドメインの編成は、国際結晶表(International Tables of Crystallography)に整理された230の空間群のいずれかと合致し、きちんと設計されたX線小角散乱(SAXS)の測定において、急峻なブラッグ反射が存在し、最低レベルの反射のd−スペーシングが3〜200nmの範囲であることによって裏付けられる。
これらの液晶相を、重水素NMRまたは自己拡散の測定を利用して特定する作業について説明する際には、液晶は重合されていないものと仮定する。液晶が重合されている場合には、これらの測定値は、重合によって大きく影響され、非重合液晶にあてはまる規則には合致しない可能性がある。具体的には、界面活性剤の自己拡散係数が劇的に低減することがあり、この点については、本明細書の執筆者によって、Strom,P.およびAnderson,D.M.(1992)Langmuir 8:691に報告されている。重合キュービック相についてのNMRスペクトルは、特定の条件について、本明細書の執筆者によって計算されている(Anderson、D.M.(1990)Supplement to J.de Phys.C7−1)。
ラメラ相:
ラメラ相は、以下の特徴を有するものである。
1.小角X線は、波数で、1:2:3:4:5…にインデクシングされるピークを示す。
2.裸眼では、この相は、透明に見えるか、または、わずか〜中程度の濁度を示す。
3.偏向光学顕微鏡では、この相は、複屈折を示し、周知の組織については、Rosevear およびWinsorによって詳しく記載されている(たとえば、Chem.Rev.1968,p.1)。もっとも顕著な3組織としては、「マルタ十字」、「モザイク」パターン、および「油状の縞」のパターンが挙げられる。マルタ十字は、互いにほぼ直角の2本の暗いバンド(干渉縞)が、ほぼ円形の光のパッチ(複屈折)に重なって、第一次世界大戦のドイツの軍事シンボルを思わせる明瞭なパターンを形成しているものである。この組織の変形例や、そのソースについては、J.Bellare,Ph.D.Thesis,Univ.of Minnesota,1987に詳しく記載されている。「モザイク」状の組織は、密に配列された形状の崩れたマルタ十字が、きっちり圧縮された結果、明色と暗色のパッチがランダムな模様となったものと考えることができる。「油状の縞」のパターンは、通常、(低粘度の)ラメラ相がスライドガラスとカバーガラスの間を流れた場合に見られ、このパターンでは、倍率400倍で綿密に観察すると、複数の長い湾曲した線が、この曲線の線に対してほぼ垂直に延在する細かな横紋から構成され、あたかも枕木が鉄道の軌道を構成しているようになっているのが見られる(このパターンは後述するヘキサゴナル組織とは対照的である)。場合によっては、特に、スライドガラスとカバーガラスの間でラメラ相を一定時間こすりつけた場合には、ラメラ相の光軸が顕微鏡の視線と整列し、複屈折が消失する。
界面活性剤/水系のラメラ相については、
1.粘度が十分低いので、(たとえば、この相の入ったチューブを上下逆向きにすると)この物質は流れる。
2.どの成分の自己拡散速度も、その成分がバルクの場合の値と同等であり、たとえば、ラメラ相中の水の有効自己拡散係数は、純粋な水中での有効自己拡散係数と同等である。液晶を形成する界面活性剤は、通常、周囲温度では液体ではないので、界面活性剤の自己拡散係数の基準点は明瞭ではなく、実際、ラメラ相中の界面活性剤の有効(測定)自己拡散係数が、他の相の測定値を解釈する際の基準点として使用されることも多い。
3.界面活性剤のヘッド基を重水素化し、H NMRのバンド形を測定した場合には、2つのピークが見られ、その間のスプリッティングは、ヘキサゴナル相の場合の2倍である。
4.相挙動については、ラメラ相は、シングルテール界面活性剤/水系では、一般に、界面活性剤濃度が高い場合に、たとえば、界面活性剤が70%を超える場合に生じる。ダブルテール界面活性剤では、ラメラ相は、もっと低い濃度で生じることが多く、50%よりかなり低い濃度で生じることも多い。ラメラ相は、一般に、相図で生じることのある他のいずれの液晶相よりも、相当程度高温まで存在する。
一成分ブロック共重合体系のラメラ相については、
1.剛性率は、一般に、同じ系の他の液晶相より低い。
2.相挙動については、ラメラ相は、一般に、2種のブロックの体積分率が50:50程度である場合に生じる。
正ヘキサゴナル相:
正ヘキサゴナル相は、以下の特徴を有するものである。
1.小角X線は、1:√3:2:√7:3…にインデクシングされるピークを示し、一般に、√(h+hk−k)(式中のhおよびkは整数)は、二次元で対称な空間のミラー指数である。
2.裸眼では、この相は、一般に、十分平衡化された状態である場合に透明であり、したがって、近傍のラメラ相より相当透明性が高い場合が多い。
3.偏向光学顕微鏡では、この相は複屈折性を示し、周知の組織については、RosevearとWinsorによって詳細に記載されている(たとえば、Chem.Rev.1968,p.1)。そのうち最も明瞭なのが「扇状」組織である。この組織は、腹屈折のパッチから構成されているように見え、所定のパッチ内では、細い条線が扇状に広がって、東洋の扇を彷彿とさせる。隣接するパッチの扇の方向は、相互にランダムな向きとなっている。ラメラとヘキサゴナルパターンを区別する重要な違いは、ヘキサゴナル相中の条線は、高倍率で詳細に検討すると、ラメラ相のように、より太い条線の方向に対して垂直に延在するより細い条線から構成されているわけではないことがわかるという点にある。
界面活性剤/水系中の正ヘキサゴナル相については、
1.粘度は中程度であり、ラメラ相より粘稠であるが、通常のキュービック相(粘度は百万センチポアズ程度)より、はるかに低粘度である。
2.界面活性剤自己拡散係数は、ラメラ相中の自己拡散係数と比較すると遅く、水の自己拡散係数は、バルクの水の自己拡散係数に匹敵する。
3.重水素化した界面活性剤を用いたH NMRのバンド形で、スプリッティングを示し、このスプリッティングは、ラメラ相で観察されるスプリッティングの半分である。
4.相挙動については、正ヘキサゴナル相は、シングルテール界面活性剤/水系では、一般に、界面活性剤濃度が中程度の場合に、たとえば、界面活性剤が50%程度の場合に生じる。通常、正ヘキサゴナル相の領域は、ミセル(L1)相の領域に隣接しているが、場合によっては、非両連続キュービック相がその間に生じることもある。ダブルテール界面活性剤では、正ヘキサゴナル相は、二元の界面活性剤/水系の場合には一般に全く生じない。
一成分ブロック共重合体系のヘキサゴナル相については、「正」および「逆」という用語は、一般的には適用されない(ただし、一方のブロックが極性で、他方のブロックが非極性であるような場合には、こうした修飾子も一般に適用可能である)。こうしたヘキサゴナル相の剛性率は、一般に、同じ系のラメラ相より高く、両連続キュービック相より低い。相挙動については、ヘキサゴナル相は、一般に、2種のブロックの体積分率が35:65程度である場合に生じる。通常、2つのヘキサゴナル相がラメラ相を挟んでおり、いずれの場合にも、含量の少ない方の成分が、円柱の内側を構成している(この記載は、界面活性剤系の「正/逆」の命名法にかわるものである)。
逆ヘキサゴナル相
界面活性剤/水系では、逆ヘキサゴナル相の特定は、以下の2点のみが、上述の正ヘキサゴナル相の特定の場合と異なっている。
1.逆ヘキサゴナル相の粘度は、一般に極めて高く、通常の正ヘキサゴナル相より高く、逆キュービック相の粘度に近い。
2.相挙動については、逆ヘキサゴナル相は、一般に、ダブルテール界面活性剤/水系では、界面活性剤濃度が高い場合に生じ、界面活性剤が100%またはほぼ100%であることも多い。通常、逆ヘキサゴナル相の領域は、界面活性剤がより低い濃度で生じるラメラ相領域に隣接しているが、両連続逆キュービック相が、その間に生じることも多い。逆ヘキサゴナル相は、ある意味予想外なことであるが、シングルテール界面活性剤の二元系、たとえば多くのモノグリセリド(たとえば、モノオレイン酸グリセロール)の二元系のいくつか、およびHLBの低い非イオン性のPEGを主成分とする界面活性剤のいくつかで、実際に見いだされる。
正ヘキサゴナル相について説明する際に述べたように、正ヘキサゴナル相と「逆」ヘキサゴナル相の区別は、界面活性剤系についてのみ意味を持つものであり、1成分ブロック共重合体のヘキサゴナル相では、一般に意味を持たない。
正両連続キュービック相:
正両連続キュービック相は、以下の特徴を有するものである。すなわち、
1.小角X線では、キュービックな様相を有する三次元空間群にインデクシングされるピークが観察される。最もよく見られる空間群とインデクシングは、la3d (#230)(インデクシングは、√6:√8:√14:4…)、Pn3m(#224)(インデクシングは√2:√3:2:√6:√8:)、および1m3m(#229)(インデクシングは√2:√4:√6:√8:√10…)である。
2.裸眼では、この相は、一般に、十分に平衡化された状態である場合に透明であり、したがって、近傍のラメラ相より相当透明性が高い場合が多い。
3.偏向光学顕微鏡では、この相は複屈折を示さず、したがって、この相には、光学的組織はない。
界面活性剤/水系中の正両連続キュービック相については、
1.粘度は高く、ラメラ相よりはるかに粘稠で、通常の正ヘキサゴナル相よりもさらに粘稠である。大抵のキュービック相の粘度は、離散であるか両連続であるかを問わず、百万センチポアズのオーダーである。
2.NMRのバンド形にスプリッティングが見られず、等方性の動きに対応する単一のピークのみが見られる。
3.相挙動については、正両連続キュービック相は、シングルテール界面活性剤/水系では、一般に、界面活性剤濃度が比較的高い場合に、たとえばイオン界面活性剤では、界面活性剤が70%程度の場合に生じる。正両連続キュービック相の領域は、通常、ラメラ領域と正ヘキサゴナル相の領域の間に存在しており、この領域は、高粘度で複屈折を示さないので、比較的単純に判定が可能である。ダブルテール界面活性剤中では、正両連続キュービック相は、二元の界面活性剤/水系の場合には一般に全く生じない。
一成分ブロック共重合体系の両連続キュービック相については、「正」および「逆」という用語は、一般的には適用されない(ただし、一方のブロックが極性で、他方のブロックが非極性であるような場合には、こうした修飾子も一般に適用可能である)。こうした両連続キュービック相での剛性率は、一般に、同じ相中のラメラ相よりはるかに高く、ヘキサゴナル相より有意に高い。相挙動については、両連続キュービック相は、一般に、2種のブロックの体積分率が26:74程度である場合に生じる。場合によっては、2つの両連続キュービック相がラメラ相を挟んでおり、いずれの場合にも、少ない方の成分が、円柱の内側となっており(この記載は、界面活性剤系の「正/逆」の命名法にかわるものである)、ヘキサゴナル相が、キュービック/ラメラ/キュービックの遷移部分を挟んでいる。
逆両連続キュービック相:
逆両連続キュービック相は、以下の特徴を有するものである。すなわち、
界面活性剤/水系では、逆両連続キュービック相の特徴は、上述の正両連続キュービック相の特徴と、以下の1点のみで異なっている。相挙動については、逆両連続キュービック相は、ラメラ相と逆ヘキサゴナル相との間に見いだされ、一方正両連続キュービック相は、ラメラ相と正ヘキサゴナル相の間に見いだされる。したがって、正ヘキサゴナル相を逆ヘキサゴナル相から区別するうえでは、上述の議論に言及する必要がある。一つのよいやり方は、キュービック相が、ラメラ相より水分濃度が高い側に存在する場合には、この相は正ヘキサゴナル相であり、ラメラ相より界面活性剤濃度が高い側に存在する場合には、この相は逆ヘキサゴナル相であるというものである。逆キュービック相は、一般に、ダブルテール界面活性剤/水系では、界面活性剤濃度が高い場合に生じるが、このことは、逆キュービック相が、疎水物質(「油」)または両親媒性物質の添加時にのみ見いだされることがあるという事実によって複雑となることが多い。逆両連続キュービック相は、シングルテール界面活性剤の二元系、たとえば多くのモノグリセリド(たとえば、モノオレイン酸グリセロール)の二元系のいくつか、およびHLBの低い非イオン性のPEGを主成分とする界面活性剤のいくつかで、実際に見いだされる。
なお、逆両連続キュービック相では、正両連続キュービック相とは異なり、空間群#212が観察された。この相は、空間群#230に由来する。正両連続キュービック相について説明する際に述べたように、「正」両連続キュービック相と「逆」両連続キュービック相の区別は、界面活性剤系についてのみ意味を持つものであり、1成分ブロック共重合体の両連続キュービック相では、一般に意味を持たない。
正離散(非両連続)キュービック相:
正非両連続キュービック相は、以下の特徴を有するものである。すなわち、
1.小角X線では、キュービックな様相を有する三次元空間群にインデクシングされるピークが観察される。界面活性剤系で最もよく見られる空間群はPm3n(#223)で、インデクシングは、√2:√4:√5:…である。単一成分ブロック共重合体では、よく見られる空間群はIm3mで、体心的な球の充填にインデクシングし、インデクシングは、√2:√4:√6:√8:…である。
2.裸眼では、この相は、一般に、十分平衡化された状態である場合に透明であり、したがって、付随するラメラ相より相当透明性が高い場合が多い。
3.偏向光学顕微鏡では、この相は複屈折を示さず、したがって、この相には、光学的組織はない。
界面活性剤/水系中の正離散キュービック相については、
1.粘度は高く、ラメラ相よりはるかに粘稠で、通常の正ヘキサゴナル相よりもさらに粘稠である。大抵のキュービック相の粘度は、離散か両連続であるかにかかわらず、百万センチポアズのオーダーである。
2.これも両連続キュービック相と共通している点であるが、NMRのバンド形にスプリッティングが見られず、単一の等方性ピークのみが見られる。
3.相挙動については、正離散キュービック相は、シングルテール界面活性剤/水系では、一般に、界面活性剤濃度が比較的低い場合に、たとえばイオン界面活性剤では、界面活性剤が40%程度の場合に生じる。正離散キュービック相の領域は、通常、正ミセルの領域と正ヘキサゴナル相の領域の間に存在しており、この領域は、高粘度で複屈折を示さないので、比較的単純に判定が可能である。ダブルテール界面活性剤中では、正離散キュービック相は、二元の界面活性剤/水系の場合には一般に全く生じない。一成分ブロック共重合体系の離散キュービック相については、「正」および「逆」という用語は、一般的には適用されない(ただし、一方のブロックが極性で、他方のブロックが非極性であるような場合には、こうした修飾子も一般に適用可能である)。こうした離散キュービック相での剛性率は、一般に、連続相でブロックを形成しているポリマーの剛性率にほぼ全面的に依存する。相挙動に関しては、離散キュービック相は、一般に、2種のブロックのいずれかが20%以下の程度の極めて低い体積分率である場合に生じる。
逆離散キュービック相:
逆離散キュービック相は、以下の特徴を有するものである。すなわち、
界面活性剤/水系では、逆離散キュービック相の特徴は、上述の正離散キュービック相の特徴とは、以下の3点で異なっている。
1.相挙動については、逆離散キュービック相は、ラメラ相と逆ヘキサゴナル相との間に見いだされ、一方正離散キュービック相は、ラメラ相と正ヘキサゴナル相の間に見いだされる。したがって、正ヘキサゴナル相を逆ヘキサゴナル相から区別するうえでは、上述の議論に言及する必要がある。一つのよいやり方は、キュービック相が、ラメラ相より水分濃度が高い側に存在する場合には、この相は正ヘキサゴナル相であり、ラメラ相より界面活性剤濃度が高い側に存在する場合には、この相は逆ヘキサゴナル相であるというものである。逆キュービック相は、一般に、ダブルテール界面活性剤/水系では、高い界面活性剤濃度で生じるが、このことは、逆キュービック相が、疎水物質(「油」)または両親媒性物質の添加時にのみ見いだされることがあるという事実によって複雑となることが多い。逆離散キュービック相は、シングルテール界面活性剤の二元系、たとえば多くのモノグリセリド(たとえば、モノオレイン酸グリセロール)の二元系のいくつか、およびHLBの低い非イオン性のPEGを主成分とする界面活性剤のいくつかで、実際に見いだされる。
2.観察される空間群は、Fd3m#227である。
3.水の自己拡散は極めて低く、一方、相中に存在する疎水物質は、いずれも、自己拡散が高く、界面活性剤の自己拡散は、一般に相当高く、ラメラ相の自己拡散に匹敵する。正離散キュービック相に関しての説明で述べたように、「正」離散キュービック相と「逆」離散キュービック相の区別は、界面活性剤系についてのみ意味を持つものであり、1成分ブロック共重合体の離散キュービック相では、一般に意味を持たない。
中間相:
中間相は、以下の特徴を有するものである。すなわち、
中間相は、極めて稀に生じ、中間相が観察される場合、これらの相は一般に相図中の極めて狭い領域を占める。現在のところ、中間相の多くのものについては、構造がわかっていないか、議論中である。中間相は、以下のように分類することができる。
正中間(1)相:正中間(l)相は、ヘキサゴナル相に隣接して、正両連続キュービック相より低い界面活性剤濃度で見いだされる。粘度は、一般に低いか、やや低く、正ヘキサゴナル相以下である。相は、複屈折性で、通常、ヘキサゴナル相の組織に似た組織を持つ。成分の自己拡散は、ヘキサゴナル相と極めて似ている。小角X線分析では、キュービック相より対称性の低い空間群が示され、通常、単斜の空間群が示される。相当緻密なNMRのバンド形およびSAXS分析を使用すると、この相を正ヘキサゴナル相から区別することができる。Henriksson,U.,Blackmore,E.S.,Tiddy,G.J.T.およびSoderman,O.-(1992)J.Phys.Chem.96:3894を参照されたい。通常、バンド形のスプリッティングは、ヘキサゴナル相のスプリッティングと、等方相のスプリッティング不在の場合との中間となり、このことは、中間相の良好な証左となる。
正中間(2)相:正中間(2)相は、ラメラ相に隣接して、正両連続キュービック相より高い濃度で見いだされる。これらの相は、特性の点でも、そしておそらく構造の点でも、複屈折を示す点、そしてNMRのバンド形およびSAXSでの分析結果にちがいがある点以外は、正両連続キュービック相に極めて似ている。光学的構造は、やや異例で、場合によっては、ラメラ構造に似ており、また、場合によっては、ヘキサゴナル構造に似ているが、これらのより一般的な相のいずれの場合よりも相当粗い場合がある。正中間(l)相の場合と同じく、空間群は対称性が低く、通常菱面体または正方であり、特性解析に2種の単位格子パラメータが必要で、SAXSでの分析が困難である。一般に、d−スペーシング比の二乗を単純な一体の式にあてはめられない場合には、中間相構造が疑われる。
逆中間(2)相:逆中間(2)相は、ラメラ相に隣接して、逆両連続キュービック相より低いい濃度で見いだされる。これらの相は、複屈折を示し、NMRのバンド形およびSAXSが異例である。正中間(l)相および正中間(2)相の場合と同じく、空間群は対称性が低く、通常菱面体または正方であり、特性解析に2種の単位格子パラメータが必要で、SAXSスペクトル中に、(格子パラメータを1つのみ有する)立方または六方格子とは対応しないブラッグピークが存在することが、光学的複屈折とともに、中間相を示しているにもかかわらず、SAXSでの分析が困難となっている。両連続中間相にあてはまる可能性の高い空間群については、本明細書の執筆者による刊行物(D.M.Anderson,Supplement to J.Physique,Proceedings of Workshop on Geometry,and Interfaces,Aussois,France,1990年9月.C7−1−C7−18)に記載されている。
被覆粒子10が形成中で、外部被膜20がまだ形成されていない時点では、ナノ構造の液相物質またはナノ構造の液晶相物質またはその組み合わせは、水(極性溶剤)、より具体的には、希水溶液と平衡状態となるようなものであるのが、極めて望ましい。被覆粒子10が外部被膜20を有するようになれば、以上のナノ構造の物質は、水と平衡状態となるものである必要はなくなる。水と平衡状態となりうる液相としては、
L2相(別名、逆ミセル)、
マイクロエマルション、および
L3相(L3*相でないもの)
がある。さらに、水と平衡状態となりうる液晶相としては、
逆キュービック相、
逆ヘキサゴナル相、
逆中間相、および
ラメラ相
がある。水と平衡状態をとりうる相は、本発明の被覆粒子を製造する観点から好ましい。本明細書に記載したプロセスを、所定の相をマトリックスとして分散する際に使用するには、この相は、粒子を分散する水等の溶剤に不溶であることが好ましい。また、内相が、粒子形成の間に、過剰の水溶液と平衡であるという特性をさらに有している場合には、相変化の懸念が低減する。同様に、粒子被膜の放出中または放出後に遭遇するような条件下で、内相が過剰の水溶液と平衡であれば、相変化の懸念が、この場合も低減し、用途によっては、このことが有利となる。
マトリックスは、粒子形成の際に、そして往々にして適用の際にも、水(外部溶剤一般)に不溶であることが好ましいものの、用途によっては、適用時に水に可溶であることが有利であり、本発明では、そうした態様とすることも可能である。たとえば、20%のC12E5(ペンタエチレングリコールドデシルエーテル)が水中に存在するマトリックスを考えてみると、75℃では、この組成物は、過剰の水(希溶液)と平衡状態のL3相を生成し、したがって、この組成は、75℃では、容易に分散する。しかし、適用温度が0〜25℃の範囲の場合には、この内部組成物は、水に可溶であり、実際、C12E5は、室温では、通常の水溶性界面活性剤として作用する。このことは、粒子の被膜放出後に生じるのが、脂っぽくない面皰非形成性の(場合によっては、クレンジング性のある)最終生成物であることが望ましい場合には有利となる可能性がある。
ナノ構造の液相物質は、
a.極性溶剤と界面活性剤、または
b.極性溶剤と、界面活性剤と、両親媒性物質または疎水物質、または
c.ブロック共重合体、または
d.ブロック共重合体と溶剤
から形成することができる。
ナノ構造の液晶相物質は、
a.極性溶剤と界面活性剤、
b.極性溶剤と、界面活性剤と、両親媒性物質または疎水物質、または
c.ブロック共重合体、または
d.ブロック共重合体と溶剤。
から形成することができる。
上記では、化学的規準の見出しのもとで、有効な界面活性剤を製造するうえで有効な極性および非極性基を選択する際に、どれを使用できるかについて論じた。すなわち、適当な界面活性剤としては、一方が、極性基について論じた部分で記載した基から選ばれた有効な極性基であり、もう一方が、非極性基について論じた部分で記載した基から選ばれた有効な非極性基であるような、2つの化学部分を含む化合物を挙げることができる。
有用な界面活性剤
適当な界面活性剤またはブロック共重合体成分(またはその混合物)としては、
a.陽イオン界面活性剤、
b.陰イオン界面活性剤、
c.半極性界面活性剤、
d.両性イオン界面活性剤、
i.特にリン脂質、
ii.生体膜の物理化学的性質に合うように設計された、リン脂質を含む脂質混合物、
e.モノグリセリド、
f.PEG化界面活性剤、
g.以上の1種で芳香環を有するもの、
h.ブロック共重合体、
i.双方のブロックが疎水性であるが、互いに不混和性であるもの、
ii.双方のブロックが親水性であるが、互いに不混和性であるもの、
iii.一方のブロックが親水性であり、他方が疎水性、すなわち両親媒性であるもの、
i.以上の2種以上の混合物
を挙げられることができる。
適当な脂質としては、リン脂質(たとえば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン)、または糖脂質(たとえば、MGDG、ジアシルグルコピラノシルグリセロール、脂質A)を挙げることができる。他の適当な脂質としては、リン脂質(たとえば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミンなど)、スフィンゴ脂質(たとえばスフィンゴミエリン)、糖脂質(たとえばガラクトリピド、たとえばMGDGおよびDGDG、ジアシルグルコピラノシルグリセロール、脂質A)、コール酸および関連した酸、たとえばデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸などの塩、ゲンチオビオシル、イソプレノイド、セラミド、プラスミノーゲン、セレブロシド(たとえばスルファチド)、ガングリオシド、シクロペンタトリオール脂質、ジメチルアミノプロパン脂質、リゾレシチン、アシル鎖1本を除去することによって以上のものから誘導した他のリン脂質を挙げることができる。
他の適当な種類の界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、半極性界面活性剤、PEG化界面活性剤、アミンオキシド系界面活性剤およびアミノ脂質系界面活性剤がある。好適な界面活性剤としては、以下のものがある。
陰イオン界面活性剤:オレイン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム、スルホコハク酸ジメチルヘキシルナトリウム、ジ−2−エチル酢酸ナトリウム、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、ウンデカン−3−硫酸ナトリウム、エチルフェニルウンデカン酸ナトリウム、カルボキシレート石鹸(ICの形態で、式中の鎖長nが、8〜20、Iが1価の対イオン、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムなどのもの)、
陽イオン界面活性剤:鎖長8〜20で、塩化物、臭化物、または硫酸対イオンを有するジメチルアンモニウムおよびトリメチルアンモニウム界面活性剤、塩化ミリスチル−γピコリニウムおよびアルキル鎖長が8〜18の関連物質、安息香酸ベンゾアルコニウム、鎖長が炭素数8〜18で、臭化物、塩化物、または硫酸対イオンを有するダブルテール第四アンモニウム界面活性剤、
非イオン性PEG化界面活性剤(Cの形態で、アルカンの鎖長nが炭素数6〜20で、エチレンオキシド基数の平均mが2〜80のもの)、エトキシル化コレステロール、
両性イオンおよび半極性界面活性剤:N,N,N−トリメチルアミノデカノイミド、アルキル鎖長が炭素数8〜18のアミンオキシド界面活性剤、ドデシルジメチルアンモニオプロパン−l−硫酸塩、ドデシルジメチルアンモニウムブチレート、ドデシルトリメチレンジ(塩化アンモニウム)、デシルメチルスルホンジイミン、ジメチルエイコシルアンモニオキサノエート、これらの両性および半極性界面活性剤の関連物質で、アルキル鎖長が8〜20のもの。
好適なFDAに注射剤として認可されている界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、デオキシコール酸ナトリウム、塩化ミリスチル−γ−ピコリニウム、ポロキサマー188、ひまし油ポリオキシルおよび関連PEG化ヒマシ油誘導体、たとえばクレモフォアEL、アルラトンG、モノパルミチン酸ソルビタン、プルロニック123、2−エチルヘキサン酸ナトリウムがある。他の低毒性の界面活性剤および脂質で、少なくとも水への溶解度が比較的く、本発明で、いくつもの投与経路に用いる製品について好適なものとしては、アセチル化モノグリセリド、モノステアリン酸アルミニウム、アスコルビン酸パルミテート遊離酸および二価の塩、ステアリル乳酸カルシウム、セテス−2、コレス、デオキシコール酸および二価の塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、ドキュセートカルシウム、ステアリン酸グリセリル、ステアラミドエチルジエチルアミン、アンモニア化グリシリジン、ラノリンの非イオン性誘導体、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸マグネシウム、ジオレイン酸メチルグルセス−120、クエン酸モノグリセリド、オクトキシノール−1、オレス−2、オレス−5、PEG植物油、オレイン酸ペグリコール5、ステアリン酸ペグオキシル7、ポロキサマー331、テトラリノール酸ポリグリセリル10、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ひまし油ポリオキシル、ジステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸グリセリルポリオキシル、ラノリンポリオキシル、ステアリン酸ポリオキシル8、ジステアリン酸ポリオキシル150、ステアリン酸ポリオキシル2、ひまし油ポリオキシル35、ステアリン酸ポリオキシル8、ひまし油ポリオキシル60、ひまし油ポリオキシル75、ポリソルベート85、ステアロイル乳酸、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ステア−o−ウェットc、ステア−o−ウェットm、塩化ステアラルコニウム、ステアラミドエチルジエチルアミン(経膣用)、ステアレス−2、ステアレス−10、ステアリン酸、クエン酸ステアリル、ステアリン酸フマル酸ナトリウムまたは二価の塩、トリデセス10、トリラネス−4ホスフェート、デタインPB、JBR−99ラムノ脂質(Jeneil Biosurfactantより入手)、グリココール酸およびその塩、タウロケノデオキシコール酸(特に、ビタミンEとの組み合わせ)、トコフェリルジメチルアミノアセテートヒドロクロリド、リン酸トコフェリル、トコフェリルpeg1000スクシネート、サイトフェクチンgs、1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−トリメチルアンモニウム−プロパン、リシンアミドまたはオルニシンアミドに結合したコレステロール、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、1,2−ジオレイル−sn−3−エチルホスホコリンおよび他のリンまたはヒ素原子によって陽イオン電荷が担持されている二本鎖脂質、ヨウ化トリメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール、リポ酸、塩化O,O’−ジテトラデカノイル−N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノースアミン(DC−6−14)、塩化N−[(1−(2,3−ジオレイロキシ)プロピル)]−N−N−N−トリメチルアンモニウム、塩化N−メチル−4−(ジオレイル)メチルピリジニウム(saint−2)、アミノアルキル側基を有する脂質グリコシド、臭化1,2−ジミリスチロキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、臭化ビス[2−(11−フェノキシウンデカノエート)エチル]−ジメチルアンモニウム、臭化N−ヘキサデシル−N−10−[O−(4−アセトキシ)−フェニルウンデカノエート]エチル−ジメチルアンモニウム、臭化ビス[2−(11−ブチロキシウンデカノエート)エチル]ジメチルアンモニウム、3−β−[N−(N’、N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール、バクスフェクチン、カルジオリピン、ドデシル−N,N−ジメチルグリシン、肺サーファクタント(エクソサーフ、スルバンタ)がある。
ブロック共重合体として好適なのは、以下の群のポリマー、すなわち、ポリジエン、ポリアレン、ポリアクリルおよびポリメタクリル(たとえば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリジ置換エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなど)、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスチレン、ポリフェニレン、ポリオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ無水物、ポリウレタン、ポリスルホネート、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリアミド、ポリヒドラジド、ポリウレア、ポリカルボジイミド、ポリホスファゼン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリベンゾキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリオキアジアゾリジン、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリピロメリチミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリピペラジン、セルロース誘導体、アルギニン酸およびその塩、キチン、キトサン、グリコゲン、ヘパリン、ペクチン、ポリ燐ニトリルクロリド、ポリ塩化トリ−n−ブチルスズ、ポリホスホリルジメチルアミド、ポリ−2,5−セレニエニレン、ポリ臭化(4−n−ブチルピリジニウム)、ポリヨウ化(2−N−メチルピリジニウム)、ポリ塩化アリルアンモニウム、およびポリナトリウム−スルホネート−トリメチレンオキシエチレンから選ばれる2以上の互いに不混和性のブロックから構成されるものである。好適なポリマーブロックは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、ポリアセチレン、ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリ−N−ビニルカルバゾー、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリサクサンビニル、ポリカプリル酸ビニル、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレンスルホン酸およびその塩、ポリブロモスチレン、ポリブチレンオキシド、ポリアクロレイン、ポリジメチルシロキサン、ポリニビルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリオキシテトラメチレン、ポリジメチルフルベン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリシクロペンタジエニレンビニレン、ポリアルキルリオフェン、ポリアルキル−p−フェニレン、ポリエチレン−アルトプロピレン、ポリノルボルナン、ポリ−5−((トリメチルシロキシ)メチル)ノルボルナン、ポリチオフェニレン、ヘパリン、ペクチン、キチン、キトサン、アルギニン酸およびその塩である。特に好適なブロック共重合体は、ポリスチレン−b−ブタジエン、ポリスチレン−b−イソプレン、ポリスチレン−b−スチレンスルホン酸、ポリエチレンオキシド−b−プロピレンオキシド、ポリスチレン−b−ジメチルシロキサン、ポリエチレンオキシド−b−スチレン、ポリノルボルナン−b−5−((トリメチルシロキシ)メチル)ノルボルナン、ポリアセチレン−b−5((トリメチルシロキシ)メチル)ノルボルナン、ポリアセチレン−b−ノルボルナン、ポリエチレンオキシド−b−ノルボルナン、ポリブチレンオキシド−b−エチレンオキシド、ポリエチレンオキシド−b−シロキサン、およびトリブロック共重合体であるポリイソプレン−b−スチレン−b−2−ビニルピリジンである。
第三成分:疎水物質または、非界面活性剤である両親媒性物質
この成分は、本発明のマトリックスで、相挙動の調節、孔径の調整、活性物質の可溶化、放出特性の調節など、複数の役割を果たすことができる。本発明で適切な選択肢としては、
a.アルカンまたはアルケン、他の長鎖脂肪族化合物、
b.芳香族化合物、たとえばトルエン、
c.長鎖アルコール、
d.グリセリド(ジグリセリドまたはトリグリセリド)、
e.アシル化ソルビタン、たとえば、ソルビタントリエステル(たとえば、トリオレイン酸ソルビタン)、またはセスキオレイン酸エステル、またはソルビタンと2〜6の範囲の各種の数のアシル鎖との混合物、
f.他の疎水物質、または非界面活性剤両親媒性物質、または上記の1種以上との混合物、
g.使用せず
がある。
適当な第三成分(疎水物質または非界面活性剤両親媒性物質)としては、nが6〜20のn−アルカン、たとえば枝分かれ、不飽和、および置換されたアルカン(アルケン、クロロアルカン等)、コレステロールおよび関連化合物、テルペン、ジテルペン、トリテルペン、脂肪アルコール、脂肪酸、芳香族化合物、シクロヘキサン、二環化合物、たとえばナフタレンおよびナフトール、キノリンおよびベンゾキノリンなど、三環化合物、たとえばカルバゾール、フェノチアジンなど、顔料、クロロフィル、ステロール、トリグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル(たとえばオレストラ(登録商標))、天然抽出油(たとえば丁字油、アニス油、けい皮油、コリアンダー油、ユーカリ油、はっか油)、ワックス、ビリルビン、臭素、ヨウ素、疎水性および両親媒性のタンパク質およびポリペプチド(たとえばグラミシジン、カゼイン、受容体タンパク質、脂質アンカー型タンパク質など)、局所麻酔剤(たとえば、ブタカイン、エクゴニン、プロカインなど)、低分子量疎水性ポリマー(上記のポリマーリストを参照のこと)を挙げることができる。特に好ましい第三成分としては、アニス油、丁字油、コリアンダー油、けい皮油、ユーカリ油、はっか油、蜜ろう、安息香、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ナフトール、カプサイシン、セテアリルアルコール、セチルアルコール、桂皮アルデヒド、カカオバター、ココナッツ油、綿実油(水添)、シクロヘキサン、シクロメチコーン、フタルサンジブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、DIPAC、フタル酸エチル、エチルバニリン、オイゲノール、フマル酸、ジステアリン酸グリセリル、メントール、アクリル酸メチル、サリチル酸メチル、ミリスチルアルコール、オレイン酸、オレイルアルコール、塩化ベンジル、パラフィン、落花生油、ピペロナール、ナタネ油、ロジン、ゴマ油、ソルビタン脂肪酸エステル、スクアラン、スクアレン、ステアリン酸、トリアセチン、トリミリスチン、バニリン、ビタミンEを挙げることができる。
極性溶剤
極性溶剤(または、ブロック共重合体の場合には、選択的溶剤)も、同様に、複数の機能、たとえば、相挙動の調節(実際問題として、多くの界面活性剤系でナノ構造相の製造を可能とする)、活性物質の可溶化、タンパク質の極性領域などのような活性分子の一部に対する極性環境の提供などの機能を果たすことができる。グリセロールのような非揮発性極性溶剤を選択することは、噴霧乾燥のようなプロセスでは重要である。極性溶剤は、
a.水、
b.グリセロール、
c.ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、またはジメチルホルムアミド、
d.エチレングリコール、または他の多価アルコール、
e.硝酸エチルアンモニウム、
f.他の非水性極性溶剤、たとえばN−メチルシドノン、N−メチルアセトアミド、塩化ピリジニウムじなど、
g.以上の2種以上の混合物、
とすることができる。
望ましい極性溶剤は、水、グリセロール、エチレングリコール、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、硝酸エチルアンモニウム、およびポリエチレングリコールである。
特定の環境では、内部マトリックスとして、水(または稀には他の極性溶剤)との接触時にナノ構造の液体または液晶相を生じるような組成物を使用することが、この脱水組成物それ自体がナノ構造の液体または液晶相であるかどうかにかかわらず有利であることがある。具体的には、この水または水含有混合物との接触は、再構成の間に生じるものとすることも、より好ましくは、粒子を適用する間に生じるものとすることも、そして特に好ましくは、被膜が放出され、被膜の除去された粒子が水性溶液、たとえば血液、細胞外流体、細胞内流体、粘液、消化液などと接触した後に生じるものとすることもできる。こうした構成が有利となりうる理由としてはいくつかあり、たとえば、加水分解に対して不安定な活性物質または賦形剤が保護されること、水溶性活性物質の時期尚早な放出が制限されること、噴霧乾燥や凍結乾燥のような脱水を生じうる製造プロセスの自然な帰結としてそうなることなどが挙げられる。ナノ構造の液体または液晶相から水の大半またはすべてを除去した場合には、別のナノ構造の液体または液晶相が生じることが多いものの、場合によっては、無構造の溶液、沈殿物、またはこれらと1種以上のナノ構造の液体または液晶相の混合物が得られることもある。いずれの場合についても、多くの用途では、粒子を適用するうえで重要なのは含水形態なので、こうした含水形態がナノ構造の液体または液晶相なのであれば、この組成物は本発明の範囲内である。
被膜
上述したように、外部被膜20は、非ラメラ物質から形成することができる。「非ラメラ」という用語は、本発明の結晶構造に適用する場合には、以下の文脈で理解すべきである。ラメラ結晶質物質は、ラメラ液晶相とは区別され、有機化合物(通常は極性の脂質)、無機化合物、および有機金属で生じる。これらの物質は、真の結晶質物質となり、空間中で構成原子(または、有機結晶質物質の場合は分子)が長距離三次元格子秩序を示しうるものの、原子間の力および相互作用(共有結合、イオン結合、水素結合、立体相互作用、疎水性相互作用、分散力など)は、ラメラ平面内の構成原子または分子同士の方が、異なるラメラの構成原子または分子同士よりはるかに強い。たとえば、黒鉛の層状構造の場合、層内の原子が互いに共有結合して二次元ネットワークを形成しているのに対し、異なる層間には結合はなく、より弱い分散力と空間相互作用のみが存在する。ラメラ間の強力かつ局所的な相互作用がこのように不在であることの結果として、いくつもの物理化学的特性が生じているので、ラメラ状物質は、本発明の被膜物質としては望ましくない。
まず、ラメラ結晶の物理的一体性は、層間の相互作用が弱く、局所的であるために、本質的に損なわれている。このことは、黒鉛(炭素の層状結晶)とダイアモンド(三次元的結合を有する炭素の結晶形態)を比較すると、はっきり例証される。すなわち、黒鉛は、層間の褶動が生じやすいので、ある種の潤滑剤で重要な成分となっているのに対し、ダイアモンドは研磨剤であるという事実は、層状結晶質構造が、剪断力に対する応答に関して有する「液体様」(または「液晶様」)の性質を例示している。この同じ層間褶動効果は、実際、他の液晶相、特に、両連続キュービック相の極めて高い粘弾性と比べた場合に、ラメラ液晶相が示すはるかに低い粘度を生じているのと同じ効果である。この液体様の性質を示す別の例としては、ダイアモンドのモース硬度が10であるのに対し、黒鉛のモース硬度が1.0であることが挙げられる。黒鉛の場合に剪断力によって一体性が失われることは、日常生活では、黒鉛の「鉛」筆で見ることができる。
層状結晶質構造に付随する有害な作用は、日常生活で、巨視的な剪断作用が関与していない場合であっても見られる。Stig Fribergが発展させたエマルションの構造についての広く受け入れられているモデルによれば、K.LarssonおよびS.Friberag編「Food Emulsions(食品エマルション)(第2版)」1990,Marcel Dekker,Inc.,NYでレビューされているように、ラメラ液晶、または一般的にはラメラ結晶質被膜は、水中油型エマルション中の油滴および油中水型エマルション中の水滴を安定化させる。一般によく遭遇するミルク、アイスクリーム、マヨネーズなどのエマルションでは、一般の人々にも周知の不安定性(当該分野ではエマルションの「破壊」と称される)、こうした層状被膜物質の流動性に起因することが多い。静止状態のエマルションでも、こうした層状被膜は、連続的な破壊、流動、融合を生じ、時間の経過とともに、どのようなエマルションであっても、最終的には、こうした破壊による不安定化作用に屈することになる。
しかし、層状結晶質物質は、もっと別のレベルで、本発明の各種の態様での被膜としての利用を阻むようなタイプの化学的不安定性を呈する。ゲスト分子を内部に含むホスト格子を有するクラスレート化合物を形成するニッケルジチオシアネートテトラ(4−メチルピリジン)と同形のウェルナー錯体のケースについて考えると、このケースでは、大抵、ゲストの除去時には永続的な孔が得られる。こうしたウェルナー錯体の1種を、実施例22の粒子の被膜に使用し、固定された、サイズが制御された高選択性の孔が形成された被膜を有する粒子を製造するにあたっての、本発明の使用例を例示した。Lipkowskiの「Inclusion Compounds 1(包摂化合物1)」(Academic Press,London (1984),p.59)によると、「Ni(NCS)(4−MePy)の層状構造は、ゲスト分子の存在時のみ安定であり、一方β相では、ゲスト分の不在時も孔が保持される」。β相の三次元非層状構造については、同じ刊行物に詳述されており、たとえば、「…β相は、分子サイズのチャネルによって相互連結された空隙からなる三次元系を有する」と記載されている。
非ラメラの非晶質および半結晶質物質は、非結晶質ドメインを含む(または結晶性を全く欠いた)、三次元すべてに強力な原子相互作用が存在する物質である。たとえば実施例40で被膜を構成している非晶質トレハロースの場合、これらの糖分子が充填され、個々の分子が複数の水素結合に関与している結果、三次元のすべてに強力な相互作用を示す化合物が生じており(そして非晶質の特性によって、すべてのラメラ型構造が排除されている)。同様に、非晶質のPLGAの場合には、この物質は光学的に等方性であって、二次元に限定されていないので、隣接したポリマー鎖を超えてカルボキシル基の間の強力な相互作用を有している。PLGA被覆粒子での被膜の放出は、当技術分野において周知のとおり、ラメラ状被膜被覆粒子で生じがちな機械的剪断や変形によってではなく、体内での加水分解速度によって選択される。工業または製薬の現場で使用されている製造プロトコールの大半では剪断力が加わるので、ラメラ被覆粒子系へのそうした剪断速度の印加による放出は、そうした製造プロセスの文脈では、有害または致命的可能性がある。
当技術分野においては周知のように、ポリマーの場合には、ポリマーは必ず非晶質ドメインを有している。すなわちポリマーが100%結晶質となることはありえず、高結晶性ポリマーであっても半結晶質であり、有限の非晶質ドメインを含んでいる。この非晶質ドメインは、約1〜50%の範囲であることが多い。こうした非晶質ドメインのガラス転移温度は、通常、熱力学的な(たとえば、DSCのような)技術や流体力学的な測定方法によって検出することができるが、ある種の極めて結晶性の高いポリマー(約98%を超えるもの)では、こうした測定を実施することは難しい。しかし、そうした結晶性の高いケースにおいても、非晶質ドメインは重要な役割を果たしうるものであり、非晶質ドメインは、微結晶界に伴う構造的な問題を緩和し、微結晶ポリマーの均一性と粘着性を増大させ、その結果として、分散バリヤとしての流体力学的特性および挙動に大きく影響し、また、房状ミセルのモデルによると、非晶質ドメインは、単一鎖が数個の微結晶子を貫いて延在して物理的な架橋(熱可塑性エラストマーで生じている物理的な架橋と類似した架橋)を生じることができるような媒質を提供することができ、そして、非晶質ドメインの存在は、非晶質ドメインが、鎖の折れ曲がりの必然的結果であるような高分子量ポリマーにおいて、実際に結晶性を付与している可能性がある。これらのドメインは非晶質であるため、ポリマー中では結晶質領域とは区別される非ラメラ領域を構成しているものの、実際には、ポリマーの結晶化およびポリマーの全体的特性を決定するうえで必須の役割を果たしている。微結晶子を貫いて延在して物理的な架橋(熱可塑性エラストマーで生じている物理的な架橋と類似した架橋)を生じることができるような媒質を提供することができ、そして、非晶質ドメインの存在は、非晶質ドメインが、鎖の折れ曲がりの必然的結果であるような高分子量ポリマーにおいて、実際に結晶性を付与している可能性がある。これらのドメインは非晶質であるため、ポリマー中では結晶質領域とは区別される非ラメラ領域を構成しているものの、実際には、ポリマーの結晶化およびポリマーの全体的特性を決定するうえで必須の役割を果たしている。
外部被膜20は、内部コア10と、内部コアに含有させた任意の活性物質または成分を、たとえば、酸化、加水分解、時期尚早な放出、沈殿、剪断力、真空、酵素による攻撃、製剤の他の成分による分解、および/または製造時などの被覆粒子外部の条件、たとえば、pH、イオン強度、またはプロテアーゼやヌクレアーゼなどの生物活性不純物から保護することができる。これらのそれぞれの例としては、以下のものがある。
酸化:たとえば、その性質上酸化に対して感受性であるビタミンCのような抗酸化剤、あるいは不飽和の脂質について。
加水分解:たとえば、不安定なエステル結合を含む薬物について。
時期尚早な放出:保管中。
沈殿:たとえば、プロトン化された(ヒドロクロリド)形態の薬物で、体内のpHでは脱プロトン化され、不溶性となるものについて。
剪断力:たとえば、封入後の処理が、タンパク質など、剪断力に対して感受性の化合物にとって悪影響を及ぼす場合。
真空:たとえば、製造過程が真空乾燥を含む場合。
酵素による攻撃:通常は体内で酵素によって速やかに消化されるペプチドホルモン、たとえば、ソマトスタチンを、放出・作用部位に達するまで、循環中も活性のまま保持することができる。
他の成分による分解:たとえば、内部コア中に含有させた成分と、外部の成分との間にわずかでも反応性があると、何ヶ月または何年の単位の保管期間では問題になる。
外部のpH:たとえば、プロトン化された形態の薬物は、低い内部pHで封入して可溶性を確保でき、胃を痛めるような低pHの外部液体を必要としない。
外部のイオン強度:塩析や変性を防止するためにタンパク質をカプセルに封入する場合。
プロテアーゼ、ヌクレアーゼなどの外部の不純物:たとえば、外部環境が、バイオリアクター由来の生成物を含み、その生成物からのプロテアーゼの除去が高価で無理な場合。
適当な非ラメラ被膜物質、すなわち、有用な温度範囲で非ラメラ状態であり、大抵は毒性が低く、環境に与えるインパクトも低い化合物の例としては、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、アスパラギン酸、安息香、β−ナフトール、次炭酸ビスマス、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチルパラベン、酢酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、水酸化カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、カーミン、セテアリルアルコールアルコール、セチルアルコール、桂皮アルデヒド、クエン酸、塩酸システイン、セバシン酸ジブチル、エスクリン、酸化第二鉄、クエン酸第二鉄、酸化四酸化三鉄、ゲンチシン酸、グルタミン酸、クリシン、金、ヒスチジン、ヒドロクロロチアジド、ヨウ素、酸化鉄、ラウリル硫酸鉛、ロイシン、マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、トリケイ酸マグネシウム、マレイン酸、リンゴ酸、DL−サリチル酸メチル、メチルパラベン、グルタミン酸一ナトリウム、没食子酸プロピル、プロピルパラベン、シリカ、ケイ素、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸ナトリウム、アミノ安息香酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、スズ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、コハク酸、タルク、タルク倍散剤、酒石酸、酒石酸、DL−タートラジン、テルリウム、二酸化チタン、トリアセチン、クエン酸トリエチル、トリクロロモノフルオロエタン、トロメタミン、および2−ヒドロキシ−n−シクロプロピルメチルモルフィナンヒドロクロリド、酸化亜鉛を挙げることができる。
リン酸カルシウムの被膜は、リン酸カルシウムは、骨や歯をはじめとする構造的構成部分の主要成分であるので、生物医学および製薬の用途で重要である。たとえば、骨粗鬆症の治療では、適当な製剤化合物の放出を、骨の溶解(したがって粒子の被膜の溶解)が生じるような生理学的条件によって開始させることができる。
硝酸カリウムの被膜は、被膜が植物の肥料としても作用するので、農業用途で重要である。
ヨウ素、アスパラギン酸、安息香酸、ブチル化ヒドロキシトルエン、エデト酸二ナトリウムカルシウム、ゲンチシン酸、ヒスチジン、没食子酸プロピル、酸化亜鉛は、水への溶解度が比較的低く(一般に5%未満)、FDAの承認済み注射剤用不活性成分のリストに載っているので、製薬の用途に用いる可能性のある被膜として特に有用となる可能性がある。
被膜物質として特に重要なのは、クラスレートである。この種の物質の例は、以下の通りである。
1.クラスレートおよび包摂化合物(このうち一部は、ゲスト分子の除去時に、永続的な孔が残る):MXの形態のウェルナー錯体。式中のMは、二価の陽イオン(Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Mn、Hg、Cr)、Xは、陰イオン性リガンド(NCS−、NCO−、CN−、NO−、Cl−、Br−、I−)、Aは、電気的に中性のリガンド置換ピリジン、α−アリールアルキルアミン、またはイソキノリン。Aの例としては、4−メチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、4−フェニルピリジン、4−ビニルピリジンがある。これらの錯体には、多岐にわたるゲスト分子を含有させることができ、その例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン、ニトロトルエン、メタノール、クロロメタン、アルゴン、クリプトン、キセノン、酸素、窒素、二酸化炭素、二硫化炭素などがある。
可逆酸素担持キレート、たとえばビスサリチルアルデヒド−エチレンジイミンコバルトをはじめとするビスサリチルアルデヒドイミンコバルト誘導体、コバルト(II)ジヒスチジンおよび関連したコバルト(II)アミノ酸錯体、鉄(II)ジメチルグリオキシムおよびニッケル(II)ジメチルグリオキシムなど。
Zn[Fe(CN).xHOの形態の錯体。変数xの値によっては、水の除去時に、錯体に永続的な孔が残る。
2.ゼオライト:
フォージャサイト型NaXゼオライト、
フォージャサイト型NaYゼオライト、および
VPI−5ゼオライト。
非晶質および半結晶質の非ラメラ物質
本発明の一部の態様では、本発明の粒子の外部被膜は、完全に結晶質状態とはなっていない非ラメラ物質を含んでいる。こうした非結晶質物質は、非晶質または半結晶質とすることができる。当技術分野においては、物質に適用した場合の「非晶質」という用語は、長距離秩序のないことを意味しており、この点は、原子の位置に長距離秩序があり、原子の位置が、格子やその規則性に対応している結晶質物質とは、まったく対照的である。非晶質物質のX線回折パターンには、ブラッグ反射がまったくなく、近距離相関があったとしても、せいぜい、回折パターンにブロードな最大値がみられる程度で、この最大値が、真のブラッグ反射の場合のようなシャープさや機能的形状を示すことはない。「半結晶質」は、結晶質ドメインと非晶質ドメインが混在している物質を意味するものである。
当業者であれば、多くの物質は、その物質の製造過程に応じて、結晶質、非晶質、または半結晶状態で存在しうることがわかるはずである。たとえば、通常であれば結晶質の状態をとる多くの物質が、食品、化粧品、薬品業界では特段の重要性を有する噴霧乾燥、凍結乾燥(例としては、後述する実施例40)、あるいは他の方法で製造した場合には、非晶質の状態となる。
非晶質物質は、本発明の特定の態様で有利となるような特性をいくつか有している。たとえば、非晶質物質の特性の一つとして、対応する(または相当する)結晶質状態の物質より迅速に溶解する点を挙げることができ、この点は、外部被膜が迅速に溶解することが望まれている場合には有利である。また、非晶質物質は、特定の物性で、対応する結晶質状態の物質より優れている場合がある。たとえば、非晶質物質は、延性が高めで、そのために、亀裂を生じることなしにストレスを吸収できる傾向がある。
一般に、小型分子の非晶質物質は、対応する結晶質の物質より、経時的安定性に劣る傾向がある。具体的には、小型分子の非晶質物質は、製品の保管や使用期間に関わるタイムスケールと同じ、あるいは、それより早く結晶状態に戻ろうとすることが多い。高分子量ポリマーの場合には、真の平衡条件が結晶である場合でも、分子の再配置の動態がゆっくりとしており、この平衡状態を維持することが求められているタイムスケールからすれば永久的ともいえるものであるので、物質を、非晶質または半結晶質状態に固定することができ、用途によっては、そうすることが極めて望ましい場合もある。たとえば、周知のエラストマーやプラスチックの多く、たとえば天然ゴム(エラストマーの例)やポリメチルメタクリレート(PMMA、プレクシグラスとしても公知、熱可塑性樹脂の例)は、非晶質の物質である。
半結晶質の物質も、場合によっては、有意な利点を有するものの、半結晶質の状態が長期にわたって保たれるのは、概して高分子量のポリマーに限定されている。結晶性を有する半結晶質のポリマーは、結晶質ドメインが優勢であることから、高いモジュラスを示す一方で、亀裂を生じることなく応力を吸収することのできる非晶質ドメインが存在することで、ある程度の延性も示す。通常のプラスチックおよびエンジニアリング・プラスチックの双方で重要性の特に高いポリマーのいくつかは、半結晶質である。
本発明を実施する際に利用することのできる非晶質または半結晶質状態の物質の例としては、ポリジエン、ポリアレン、ポリアクリルおよびポリメタクリル(たとえば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリジ置換エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなど)、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスチレン、ポリフェニレン、ポリオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ無水物、ポリウレタン、ポリスルホネート、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリアミド、ポリヒドラジド、ポリウレア、ポリカルボジイミド、ポリホスファゼン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリベンゾキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリオキサジアゾリジン、ポリチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリピロメリチミド、ポリキノキサリン、ポリベンズイミダゾール、ポリピペラジン、セルロース誘導体、アルギニン酸およびその塩、アラビアゴムおよびその塩、ゼラチン、PVP、トラガント、寒天、アガロース、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、アラビノガラクタン、カルボポール、キチン、キトサン、オイドラギット、グリコゲン、ヘパリン、ペクチン、糖(たとえば、トレハロース、ラクトース、マルトース、およびショ糖、または糖とアルブミンとの混合物)、より複雑な炭水化物、ならびに結晶質の被膜物質に関して上述した被膜物質で、噴霧乾燥、ガラス化などのように結晶化が抑制されるようなプロセスによって得られた非晶質状態のものを挙げることができる。
いずれにせよ、巨視的な立場からは、非晶質、半結晶質、結晶質物質の全範囲のものを使用できることは、ナノ構造の液体および液晶の内部を有する粒子を製造する技術からすると大きな利点であり、自由度も高まる。ラクチド/グリコシド共重合体のケースは特に適切な例であり、これらの共重合体の場合、ラクチド:グリコシドの比がある範囲では非晶質であり、別の範囲では結晶質となる。この比を調整することで、物質の状態、ひいては特性を変化させることができるので、被膜物質の加水分解速度を「調節」することができる。その結果、被膜または粒子内部に含有させた活性物質の放出速度を「調節」することも可能となる。
タンパク質、そして、ある程度まではポリペプチドも、有利な特性を備えた非晶質および半結晶質の被膜物質となる。タンパク質と脂質マトリックスの間の相互作用は周知のとおり緊密なので、タンパク質が、ナノ構造の液体または液晶粒子、好ましくは、逆両連続キュービック相粒子の水性分散液中で結晶化すると、被膜が半結晶質タンパク質から構成される本発明の粒子が得られる。一方、タンパク質が、ナノ構造の液体または液晶粒子の表面でゲル化または沈殿すると、被膜が非晶質タンパク質から構成される本発明の粒子が得られる。この種の粒子被膜中にタンパク質が存在することは、1種以上の役割、すなわち、ターゲティングの役割(すなわち、被膜自体が、ターゲティング化合物として二重の役割をはたしうる)、好ましくないタンパク質の吸着(たとえば、アルブミンの結合)を抑制する役割、生体適合性の粒子表面を呈示して、生体の防御作用(たとえば、RES)による摂取を低減し、循環時間を長期化する役割、送達された部位で代謝機能を実行し、その結果、吸収の増大、薬物の分解/代謝の低減、および/または薬物の作用と協調した細胞プロセスの調節を行いうる機能性タンパク質の役割をはじめとする役割をはたしうる。さらに、被膜の放出は、酵素(たとえば、プロテアーゼ)による分解に呼応して生じる場合もあるので、被膜中のタンパク質は、代謝が高進した部位で徐放またはターゲティングされた放出を行う手段ともなりうるものである。
発明の用途
本発明の被覆粒子1は、各種の分野で利用することができる。被覆粒子1は、選択された環境から、1種以上の物質を吸収したり、選択された環境から1種以上の物質を吸着したり、マトリックス中の活性物質などの1種以上の物質を放出したりすることができる。吸収に関しては、被覆粒子は、例をあげると、生物学的反応や化学的反応プロセスの生成物の回収や廃棄物の回収、そうしたプロセスでの触媒の担持、医療用途での毒素、抗原、または廃棄物の除去などをはじめとする各種の用途に使用することができる。
吸着に関しては、被覆粒子は、クロマトグラフィーの媒体や吸着剤として使用することができる。
放出に関しては、被覆粒子は、抗癌剤や光線力学療法用薬物のような製剤、または化粧品、化粧品材料などの制御放出に使用することができる。活性物質は、放出をうながされた際に放出されるようにマトリックス中に含有させておく。たとえば、製剤または生物活性物質を、マトリックスに含有させておくことができ、その際には、物質は、溶解または分散させたり、場合によっては、一部を溶解し、残部を分散させておくことができる。
こうしたミクロ粒子を薬物の送達、すなわち内部に含有させたタンパク質またはポリペプチド(特に、受容体タンパク質)の送達に利用するにあたっては、合成または半合成とはいえ、生きた細胞の天然の生体膜の物理化学的性質をなるべく模倣するかたちで設計した内部マトリックスを含むようにすることが極めて有利である。このことは、たとえば、受容体タンパク質や他の膜成分が適切に機能したり、薬物の送達、特に、ミクロ粒子のターゲティングで、内部マトリックスの天然の生体膜への同化を促進したりするうえで重要である可能性がある。こうした文脈で重要な可能性のある物理化学的な特性としては、二重層の剛性(曲げに対する抵抗の尺度)、二重層の流動性(二重層内部のミクロ粘度の尺度)、アシル鎖の長さと二重層の厚み、脂質のアシル鎖上の位置の関数としてのオーダー変数、表面電荷密度、二重層内の各種組成物中の隔離された脂質ドメインの存否、二重層の曲率と一重層の曲率(これらの2つの曲率の関係をめぐる議論については、H.T.DavisおよびJ.C.C.Nitsche編の「Statistical Thermodynamics and Differential Geometry of Microstructured Materials(ミクロ構造物質の統計学的熱力学および示差的幾何学)」(Springer−Verlag,1992)に所収のH.Wennerstrom およびD.M.Anderson,p.137を参照のこと)、コレステロール含量、炭水化物含量、および脂質:タンパク質の比がある。組成を適切に選択することで、人工の系、すなわちナノ構造の液相または液晶相であっても、これらのパラメータをかなりの程度まで調節することが可能である。たとえば、二重層の剛性は、両親媒性物質、特に脂肪族アルコールを添加することによって低減させることができ、二重層の電荷は、帯電していない脂質(たとえばホスファチジルコリン)と帯電した脂質(たとえば、ホスファチジン酸)の比を調節することによって調節することができる。また、コレステロールを添加しておくことは、いくつもの膜タンパク質の機能にとって重要である。ラメラ相、逆両連続キュービック相、L3相、そして、これらほどではないが、逆ヘキサゴナル相は、こうしたアプローチに特に適している。したがって、内部マトリックスが、含有させたタンパク質をはじめとする各種の生体分子が機能するように物理化学的な性質が調整された相となっている本発明の粒子は、製薬、臨床検査、生化学の研究用の製品で極めて価値が高いはずである。
膜タンパク質は、一般に、二重層という環境に依存することによって、適正に機能し、さらには、適正なコンホメーションを保持している。こうしたタンパク質にとって、本発明、特に、二重層の特性が上述のように調節されている本発明は、極めて有用なマトリックスとなる可能性がある。膜タンパク質の例としては、受容体タンパク質の他にも、プロテイナーゼA、アミログルコシダー、エンケファリナーゼ、ジペプチジルカルボキシペプチダーゼIV、ガンマグルタミル転移酵素、ガラクトシダーゼ、ノイラミニダーゼ、α−マンノシダーゼ、コリンエステラーゼ、アリールアミダーゼ、サーファクチン、フェロケラターゼ、スピラリン、ペニシリン結合性タンパク質、ミクロソーム糖転移酵素、キナーゼ、細菌外膜タンパク質、組織適合抗原といったタンパク質がある。
癌治療において薬剤送達に求められる数々の厳しい要求からしても、数々の利点や柔軟性を有する本発明は、抗悪性腫瘍薬、たとえば以下の薬剤を送達、放出させるにあたり、特段の魅力を有するはずである。
・アルキル化薬:
スルホン酸アルキル:ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン。
アジリジン:ベンゾデパ、カルボコン、メツレデパ、ウレデパ。
エチレンイミンおよびメチルメラミン:アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、トリメチロールメラミン,
ナイトロジェンマスタード:クロラムブシル、クロラムファジン、シクロフォスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドミニムスチン、トロフォルファミド、ウラシル、マスタード。
ニトロソ尿素:カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン。
その他:ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン。
・抗生物質
アクタシノマイシン:アクチノマイシンFI、アンスラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−ロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ユベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン。
・代謝拮抗物質
葉酸類似体:デノプテリン、メトトレキセート、テロプテリン、トリメトレキセート。
プリン類似体:フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミピリン、チオグアニン。
ピリミジン類似体:アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、テガフル。
・酵素:L−アスパラギナーゼなど。
・その他:アセグラトン、アムサクリン、ベストラブシル、ビスアントレン、カルボプラチン、シスプラチン、デフォスファミド、デメコルシン、ジアジコン、エフロルニチン、酢酸エリプチニウム、エトグルシド、エトポシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、インターフェロン−ot、インターフェロン−P、インターフェロン−y、インターロイキン−2、レンチナン、ロニダミン、トグアゾン、ミトキサントロン、モピダモル、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK09、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、タキソール、テニポシド、テヌアゾン酸A、トリアジコン、2,2’,2,1,1−トリクロロトリエチルアミン、ウレサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン。
・アンドロジェン:カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン。
・抗アドレナリン:アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン。
・抗アンドロゲン:フルタミド、ニルタミド。
・抗エストロゲン:タモキシフェン、トレミフェン。
・エストロゲン:ホスフェストロール、ヘキセストロール、リン酸ポリエストラジオール。
・LH−RH類似体:ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、トリプトレリン。
・プロゲストゲン:酢酸クロルマジン、メドロキシプロゲステロン、酢酸メレンゲストロール、メレンゲストロール。
・抗悪性腫瘍薬(放射線原)アメリシウム、コバルト、131I−エチオダイズ油、金(放射性、コロイド)、ラジウム、ラドン、ヨウ化ナトリウム(放射性)、リン酸ナトリウム(放射性)。
・抗悪性腫瘍薬補助剤
フォリン酸補液:フォリン酸,
・泌尿器保護薬:メスナ。
本発明での封入に特によく適合しており、しかも現在上市されている剤形では問題または制限がある他の製剤化合物としては、以下のもの、すなわち、ダカルバジン、イホスファミド、ストレプトゾシン、チオテパ、ナンドロロンデカノエート、クエン酸フェンタニル、テストステロン、アルベンダゾール、エスモロール、硫酸ブレオマイシン、ダクチノマイシン、硫酸アミカシン、ゲンタマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、バシトラシン、コリスチンメタ塩、オキシブチニン、ヒト抗トロンビンIII、ヘパリン、レピルジン、アデノシン燐酸、アンホテリシンB、エナラプリラート、クラドリビン、シタラビン、リン酸フルダラビン、ゲムシタビン、ペントスタチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、バチマスタット、リツキシマブ、トラスタズマブ、アブシキシマブ、エプチフフィバチド、チロフィバン、ドロペリドール、金チオグルコース、二硫化カプレオマイシン、アシクロビル、シドフォビル、ペンタフシド、サキナビル、ガンシクロビル、クロモリン、アルデスロイキン、デニリューキン、エドロフォニウム、インフリキシマブ、ドキサプラム、SN−38(イリノテカン)、トポテカン、ヘミン、ダウノルビシン、テニポシド、トリメトレキセート、オクトレオチド、酢酸ガニレリックス、酢酸ヒストレリン、ソマトロピン、エポエチン、フィルグラスチム、オプレルベキン、ロイプロリド、バシリキシマブ、ダクリズマブ、酢酸グラチラマー、インターフェロン、ムロモナブCD3、シクロスポリンA、乳酸ミルリノン、ププレノルフィン、ナルブフィン、ウロフォィトロピン、デスモプレッシン、カルボプラチン、シスプラチン、ミトキサントロン、エストラジオール、ヒドロキシプロゲステロン、L−チロキシン、エタネルセプト、ネオスチグミン、エポプロステノール、メトキサミン、ベルセド、ブピバカイン、ヘパリン、インスリン、アンチセンス化合物、イブプロフェン、ケトプロフェン、アレンドロネート、エチドロネート、ゾレドロネート、イバンドロネート、リセドロネート、およびパミドロン酸がある。これらの化合物は、以下の分類、すなわち、アルキル化剤、アナボリックステロイド、鎮痛剤、アンドロジェン、駆虫剤、抗アドレナリン剤、抗生物質、抗生物質、アミノグリコシド、抗生物質、抗悪性腫瘍薬、抗生物質、ポリペプチド、抗コリン薬、抗凝固剤、抗痙攣薬、抗菌剤、抗高血圧剤、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害剤、抗悪性腫瘍薬、抗血小板薬、向精神薬、麻酔薬、抗リウマチ薬、抗結核薬、抗ウイルス剤、抗ウイルス剤(HIV)、喘息抗炎症薬、生体応答調整物質、コリン作動性筋肉刺激薬、中枢神経系刺激薬、DNAトポイソメラーゼ阻害物質、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、葉酸代謝拮抗薬、胃腸抗分泌薬、遺伝子治療薬、ゴナドトロピン放出薬、成長ホルモン、造血剤、ホルモン、免疫剤、免疫抑制剤、変カ作用物質、局所麻酔剤、麻酔アゴニスト/アンタゴニスト、排卵誘発剤、下垂体ホルモン、白金錯体、性ホルモン、甲状腺ホルモン、TNF阻害剤(関節炎)、泌尿器コリン作動薬、血管拡張剤、および血管収縮剤に分類される薬物である。本発明は、吸収性の悪い薬物の吸収を、薬剤流出性タンパク質の阻害などによって改善する機能性の賦形剤、たとえばガム安息香または精油を含有させる用途にも極めて適していることを記載しておく。本明細書の他の箇所で詳細に記載するように、粒子内部および表面には、活性物質、賦形剤、および機能性の賦形剤を本発明の文脈に沿って局在化させうる数多くの部位がある。
本発明の被覆粒子の他の使用例としては、以下のものがある。
1.ペンキおよびインキ。たとえば、顔料のミクロ封入、顔料の陽イオンによる帯電(pH依存性が重要な場合)、非水系塗料の充填材およびテキスチャー付与剤。
2.紙。たとえば、マイクロカプセル状の不透明化剤(ペンキ中にも使用可)、ノンカーボンコピー紙用の感圧性インキのマイクロカプセル。
3.不織布。たとえば、加工を通じて繊維に付着する添加剤。
4.農業用途。たとえば、昆虫をコントロールするためのフェロモン(一部は、通常は揮発性であるか非封入時には環境条件下で不安定)の制御放出、昆虫不妊化剤および成長調節物質(これらの多くは、通常は環境条件では不安定)の制御放出、殺虫剤の制御放出(温度非依存性が重要)、除草剤の制御放出、植物成長調節剤であるエチレンおよびアセチレン(通常は揮発性)の封入、害獣忌避用の食味調節剤(たとえば、カプサイシン)、滋養剤と肥料の放出。
5.環境および林業。たとえば、雑草をコントロールするための水草除草剤の制御放出、他の除草剤の制御放出、農業における滋養剤の制御放出、土壌処理と滋養剤の放出、キレート剤(たとえば、重金属汚染物質用)の封入と放出、活性物質の堆積と環境でのその後の動向のコントロール(すなわち、結晶質被膜によるターゲティングおよび放出、および/またはキュービック相の接着特性を利用したコントロール)、気象制御用吸湿剤など(たとえば、尿素および塩化ナトリウム)の「核形成」剤の封入。
6.ワクチン。たとえば、HIVgag(細胞のgag−polトランスフェクションなど)、抗原または抗体を適性に呈示させるためのアジュバント。
7.核医学。たとえば、癌の治療目的での2種の(通常は相互に破壊性の)放射性核種の別粒子への分離。
8.化粧品。たとえば、抗酸化剤、老化防止用スキンクリーム、ニキビ防止用薬剤の2成分の分離、プロスタグランジンおよびビタミンを封入した日焼けローション、脂溶性ビタミンの封入、酸化に対して感受性のビタミン、ビタミン配合剤、揮発性の香水および他の芳香剤の封入;スクラッチ・アンド・スニフ広告用の揮発性香水の封入、揮発性の化粧落としまたは他のシート形成用化粧品の封入;マニキュア除光液用封入溶剤(またはマニキュアそのもの)、封入髪用染料を含むエアロゾル粒子、封入消臭剤を含む衛生ナプキン。
9.獣医学。たとえば、揮発性殺ノミ化合物の制御放出、反芻動物用飼料の添加剤の封入、畜産業における抗菌剤および殺虫剤の封入。
10.歯科。たとえば、歯磨剤成分、特に、加水分解に対して不安定な抗歯石化合物の抑制制御、経口抗癌化合物(フォトフィリン)の送達。
11.ワンポット(単一梱包)樹脂系の重合触媒。
12.家庭用製品。たとえば、エアフレッシュナーや香料の制御抑制、昆虫忌避剤の制御抑制、洗濯用洗剤(たとえば、プロテアーゼの封入)、他の清浄の用途、柔軟剤、蛍光増白剤。
13.産業。たとえば、貯蔵製品薫蒸用のホスフィン、二臭化エチレンなどの揮発物質の封入、触媒粒子、吸着および精製用の活性炭ミクロ粒子。
14.ポリマー添加剤。たとえば、齧歯類からワイヤー、紙箱などを保護するためのポリマー添加剤、耐衝撃性改良剤、着色剤および不透明化剤、難燃剤および煙抑制剤、安定剤、螢光発光剤。現行のポリマーベースの添加剤の封入に際しての制限としては、低融点(処理時)、ポリマー間の非相溶性、粒径の制限、光学的透明性などがある。ポリマーの潤滑化を目的として使用するポリマー添加剤の一部は、ワックス(特定の高価な合成ワックスを除いては低融点であるという欠点がある)を主成分としている。
15.食品および飲料の加工。たとえば、(揮発性の)香味料、風味料、オイル(たとえば、ココナッツ、ペパーミント)の封入、牛の飼料用の植物性脂肪の封入、発酵および精製用の酵素(たとえば、ビール醸造用に用いるジアセチル還元酵素)の封入、冷凍食品の賞味期間を延ばす目的でのブランチングの代替策としての封入、タバコの添加剤(風味)のミクロ封入、pHによってトリガーされる緩衝剤、多孔質材に封入した活性炭を使用した不純物の除去と脱色。
16.写真。たとえば、サブミクロンの光反応性粒子を分散させた微粒子フィルム、サブミクロン分散液の光学的透明性(したがって透過度)が増し、拡散時間が短縮されたことによるより迅速なフィルム、写真処理剤のミクロ封入。
17.爆発物および推進薬。たとえば、液体および固体双方の推進薬および爆発物を封入形態で使用でき、また、水も、固体推進薬での温度調節剤として封入形態で使用できる。
18.研究。たとえば、抽出および分離用のマイクロカプセル充填カラム、生化学アッセイ、特に製薬研究およびスクリーニング。
19.診断。たとえば、環境条件に対して感受性のタンパク質および糖脂質の使用を含む血管造影およびX線撮影ならびに臨床アッセイ用の封入マーカー、特定の放射線不透過性または光学的に密な物質を含有させた粒子自体を、映像化に使用することももちろん可能であり、本明細書で記載するようなターゲティング化合物と組み合わせた場合には、生体中の特異的な部位をターゲティングして、可視化することができる。
活性物質の放出、あるいは吸収を開始させるトリガーとして望ましいものとしては、以下がある。
I.被膜の溶解または破壊による放出
A.示強変数
1.pH
2.イオン強度
3.圧度
4.温度
B.示量変数など
1.希釈
2.界面活性剤の作用
3.酵素活性
4.化学反応(非酵素反応)
5.標的化合物との錯体生成
6.電流
7.照射
8.時間(すなわち、緩慢な溶解)
9.剪断力(臨界有効剪断速度)
II.被膜中の孔を介した放出または吸収(被膜溶解・破壊の必要性の回避)
1.孔径対化合物の寸法による選択
2.抗壁の極性対化合物の極性による選択
3.抗壁のイオン性対化合物のイオン性による選択
4.孔の形状対化合物の形状による選択
5.化合物やイオンによっては、被膜と多孔質包接化合物を形成するのに対し、他の化合物やイオンは形成しないことを利用した選択(ただし、この方法は、一般に、上記の4つの組み合わせである)。
本発明の粒子の製造方法
好適な態様では、被覆粒子は、以下の工程、すなわち、
1.第二部分との反応時に非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含む上記マトリックスをある量用意し、
2.上記のある量のマトリックスを、上記第二部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体と、非ラメラの固形物質が形成されるような条件下で接触させて、上記第一部分を上記第二部分と反応させ、同時に、上記のある量のマトリックスにエネルギーを加えることによって、マトリックスを粒子に細分化するか、この粒子への細分化を、化学反応の前および/または後に行う、
工程によって製造することができる。
また、被覆粒子は、以下のプロセスの1種、すなわち、
マトリックスに対して不溶性の非ラメラ物質を形成しうる物質が溶存しているマトリックスをある量用意し、上記物質がマトリックスに不溶性となるようにし、上記のある量のマトリックスにエネルギーを加えることによって、マトリックスを細分化して粒子とするプロセス、
上記マトリックスの粒子を、第二部分との反応または会合時に非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体に分散し、この分散液に、上記第二部分を有する少なくとも一種の化学種を加えて、上記第一部分を上記第二部分と反応させるプロセス、
上記マトリックスの粒子を、第二部分との反応または会合時に非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体に分散し、この分散液に、上記第二部分を有する少なくとも一種の化学種を加えて、上記第一部分を上記第二部分と反応させ、得られた物質にエネルギーを加えることによって、この物質を細分化するプロセス、
ある量の上記マトリックスを、液化状態、溶液、流体前駆物質よりなる群から選ばれる状態の上記非ラメラ物質に分散し、上記非ラメラ物質を、冷却、揮発性溶剤の蒸発、化学反応の実施よりなる群から選ばれる技術によって凝固させるプロセス、
上記非ラメラ物質が溶存または分散しており、揮発性溶剤も含んでいる液体に、上記マトリックスのある量を分散または溶解し、上記溶液または分散液を噴霧乾燥するプロセス、または
マトリックスと被膜の双方の成分を含む溶液または分散液に、噴霧乾燥、電界紡糸、またはそれらに相当する他のプロセスを適用するプロセス、
の1種によって製造することもできる。また、これらのプロセスの組合わせを使用することもできる。
一般的方法としては、マトリックスのある量に、化合物Bとの反応時に非ラメラ物質を形成しうる化合物Aを含有させ、化合物Bを含有する流体(通常は水溶液で、「上層溶液」と称することも多い)をその上に載置すると、化合物Aと化合物Bが接触することによって内側/外側の界面で沈殿が生じ、この沈殿生成に、超音波処理などによるエネルギーの適用を組合わせると、非ラメラ物質で被覆された粒子が流体中に離脱する。本発明のこの方法は、水への溶解度が低く、好ましくは水1リットルあたり約20グラム未満、さらに好ましくは水1リットルあたり約10グラム未満であるような物質からなる被膜を有する被覆粒子の水への分散液を製造するのに、特に適している。こうしたプロセスで、最終的にミクロ粒子が均一に分散した分散液を得るには、成分Aを、Bとの接触および超音波処理にさきだって、マトリックスに(単に分散や懸濁させるのではなく)溶解させておくと著しく有利である。上述したように、この点は、(活性物質、特に生物薬剤活性物質のマトリックスへの可溶性を最適化しておくことが必要であるばかりでなく)極性溶剤のみに可溶であることも多い化合物Aを可溶とするうえで、水性のミクロドメインを有するナノ構造のマトリックスが重要である一つの理由である。具体的には、非ラメラの有機沈殿物を形成する反応は、一般に、水性溶媒中で実施するのが最も好都合かつ効果的であり、可溶化した前駆物質から非ラメラの有機沈殿物を形成する反応としては、可溶性の塩とした所望の非ラメラ状外部被膜物質のpH誘導性のプロトン化または脱プロトン化反応を選択するのが最も好都合かつ効果的であることが多く、この場合、明らかに、溶媒は、水(または水性のミクロドメイン)とすることになる。
沈殿生成に際しては、低温、結晶化促進物質、または電流を使用することもできる。
エネルギーの投入には、超音波処理だけでなく、他の標準的な乳化法も使用することができる。こうした方法としては、ミクロ流体化、バルブ・ホモジナイゼーション[Thornberg,E.およびLundh,G.,1978,J.Food Sci.43:1553] およびブレード撹拌などがある。水溶液には、水溶性の界面活性剤(好ましくは、プルロニックF68のような分子量が数千ダルトンの両親媒性ブロック共重合体)を加えて、被覆粒子が形成されるにしたがって被覆粒子の凝集が生じることのないよう安定化する。粒子の形成に超音波処理を使用する場合には、この界面活性剤は、超音波処理の効果を増大する役目もはたす。
実施例に記載した非ラメラ物質被覆粒子の多くは、2種以上の反応物質が反応することにより外部溶液とナノ構造の液体または液晶相の間の界面で沈殿を生じて、その沈殿が外部被膜を形成するようなプロセスで製造した。この方法といくつかの重要な点で類似しつつ、いくつかの重要な点で相違もある別の方法としては、被膜を形成することになる物質(物質Aと称する)を液相物質または液晶相物質に溶解し、この溶解を物質の1種以上の条件の変化、たとえば、温度上昇(この変化は、別の事例では圧力の低下、揮発性溶剤の添加などとすることもできる)によって促進するという一般的な方法がある。この変化は可逆性のものとし、条件を逆転させた場合(温度の低下、圧力の上昇、溶剤の蒸発など)には、系が、ナノ構造の液体または液晶相物質と非ラメラ物質Aとの2相混合物に戻るようにする必要がある。エネルギーの印加は、場合によっては、非ラメラ物質Aが粗大化して大型の沈殿物となる時間的余裕がない時点で行うこともでき、超音波の適用または他の乳化方法によって行うことができる。その結果、非ラメラ物質Aで被覆された粒子の離脱が生じる。
温度を使用する場合には、化合物Aのナノ構造の液相物質またはナノ構造の液晶相物質への溶解度が温度によって変化する必要があり、溶解度対温度曲線の傾斜が大きいほど、この方法に用いる温度変化が小さくてすむ。たとえば、硝酸カリウムの水への溶解度は、温度によって大きく変化する。沈殿反応法と、この種の方法との根本的なちがいは、この種の方法では、ナノ構造の内部マトリックスの他に必要とされるのが、化合物(A)一種のみであるという点である。沈殿反応法では、少なくとも2種の化合物、すなわち、ナノ構造相である成分Aと、外相の出所であり、ナノ構造相上に載置される成分B(「上層溶液」)とが必要となる。こうした場合の成分Bは、単に、適切なかたちで選択された酸性または塩基性の成分であることも多い。この点からは、これら2種の方法の類似点を看取することもでき、つまり、外相に成分Bが存在することは、(特に、酸/塩基のケースでのpHのように、)Aの沈殿を生じるための「条件」であるというふうに、すなわち、Aは塩基性のpHを使用することによって可溶化することができ、この過程は、酸性のpH条件を使用することにより可逆性であり、こうしたpH条件は、外相の存在によって生じるというふうに考えることもできる。これら2種の方法の最も重要なちがいは、おそらく、Aの沈殿を生じるような条件の変化が、A/B沈殿反応のように、外側の相(「上層溶液」)がナノ構造相に接触した時点および地点のみで生じるか、それとも、こうした変化が、温度誘導性の沈殿の場合のように、ナノ構造相のバルク全体で同時に生じるかという点にある。
上述のA/B反応プロセスと温度プロセスを組み合わせたプロセスを使用することもできる。こうしたスキームでは、通常、粒子の被膜として望ましい化合物を、2種の化学的状態で、マトリックスに加える。第一の状態は、最終的被膜の化学的状態で、通常、これは、その化合物の遊離酸(遊離塩基)の状態であり、高温時のみマトリックスに可溶で、粒子形成温度ではマトリックスに不溶である。第二の状態は、前駆物質の状態で、通常、遊離酸を塩基(たとえば水酸化ナトリウム)と反応させることによって、(あるいは、遊離塩基を、酸、たとえば塩酸と反応させることによって、)製造した塩の状態であり、この前駆物質の状態は、粒子形成温度でもマトリックスに可溶である。たとえば、安息香酸の粒子被膜の場合には、安息香酸と安息香酸ナトリウムの双方をマトリックスに加え、ここで、マトリックスは、周囲温度では安息香酸を溶解しないものの、高温ではマトリックスを溶解するものとする。上層溶液は、前駆物質の状態を最終的な被覆の状態に転化するうえで必要な成分、たとえば、安息香酸ナトリウムの場合であれば塩酸を含有している。加熱を行い(双方の状態のものを実質的に溶解させ)、その後冷却し、上層溶液をその上に載置し、超音波処理等で系にエネルギーを加えると、被覆粒子の形成が、冷却誘導沈殿と反応媒介形成の2つの方法で生じ、被膜が沈殿する。このことは、被膜物質のソースが2種存在することにより、粒子の被覆が、それぞれの方法を別々に使用するより早い段階で生じ、粒子の融合がより効果的に防止され、(おそらくは、より均一な粒径分布が得られ、)より効率的で、エネルギーの投入量も少なくてすむ粒子形成が可能になるという利点につながる可能性がある。本発明の被覆粒子を製造する際に使用できる他の方法としては、A)結晶電析、B)シーディング(マトリックスに過飽和溶液、外相にシード)、C)促進(一方の相に過飽和溶液、他の相に結晶化促進物質)、D)妨害の除去(一方の相に過飽和溶液、他の相にシード)、またはE)時間法(沈殿は、内相の過飽和溶液から徐々に成長)がある。
無機被膜のほとんどすべてをはじめとして、所望の外部被膜の多くを形成するうえでは、反応物質の一方(そして大抵は両方)を、水または他の極性溶剤のみに溶解するものとする必要がある。具体的には、こうした沈殿反応に使用される塩の大半は、高度に極性の溶剤のみに溶解する。同時に、本発明において、マトリックス物質が水に分散可能であるためには、内相物質が水への可溶性を実質的に有さないことが、絶対的というわけではないにせよ、極めて望ましい条件であり、さもなければ、内相物質の一部または全部が、上層溶液に分散するのではなく、上層溶液に溶解してしまうことになる。したがって、こうした被膜を形成するうえでは、マトリックスは、以下の2条件を満たす必要がある。
条件l:マトリックスは、水性の(または他の極性溶剤の)ドメインを含む必要がある。そして
条件2:マトリックスは、水へ溶解度が低く、すなわち、水へ溶解度が十分低く(溶解が十分ゆっくり進行し)、相の実質的な溶解が、相から粒子を製造するプロセスの間には生じないものとする(全物質を粒子に分散するには通常5〜100分を要するものとする)必要がある。溶解が生じると、収量効率が実質的に低下し、この方法全体の魅力が失われるからである。
これらの2条件は、ほぼ逆方向に作用するものであり、この両方の条件を満たすような系は、ごく少数である。逆型またはラメラ型のナノ構造液相物質および液晶相物質は、こうしたごく少数の系の例である。場合によっては、ナノ構造の液相または液晶相に含まれる1種以上の成分を、上層溶液に、それも相当量含有させておくことが有利なこともある。実際、上層溶液として、ナノ構造の界面活性剤の含有量の高い液相を使用することが有利となる状況もある。具体的には、こうした状況が生じるのは、マトリックス相が水(または希水溶液)と平衡関係になく、他の液体または液晶相、たとえばミセル相、または場合によっては、低粘度のラメラ相と平衡関係にある場合である。したがって、上述のプロセスについての一般的記載で言及した「流体」としては、こうした相や、こうした相に、さらに別の成分、たとえば、反応物質Bおよび/または両親媒性ブロック共重合体安定化剤を加えたものを使用することができる。この場合、この上部相がミクロ粒子に含有されることになっても、上部相は、マトリックス相と平衡になるように選ぶことができるので(通常は、そのように選ぶ)ので、特に問題が生じることはない(2種の物質の間での活性成分が交換され、何らかの結果が生じる可能性もあるものの、こうした結果は相対的に重要度が低いものである)。被覆粒子の形成時には、被覆粒子は、この上部「溶液」に分散しているものの、その後、濾過または透析によって、連続相である外相を、この溶媒から別溶媒、たとえば水、塩類溶液、緩衝液などに交換することができる。
本発明の他の態様では、被膜物質の前駆物質であって、ナノ構造の液体または液晶マトリックスの粒子表面に選択的に局在化する物質を利用し、この前駆物質が実際の被膜物質に転化する前に、場合によっては、この表面に局在化した前駆物質を利用するかたちで、このナノ構造の液相または液晶相を分散させることによって、粒子を有利に製造するものである。この方法は、表面に対して活性を示す前駆物質を見つけることができた場合や、前駆物質を分散粒子の表面近傍に実質的に局在化させることが、別の方法、たとえば、他成分との有利な相互作用(イオン対の形成、水素結合など)、疎水効果等の非特異的効果、適切な表面エネルギーを有する前駆物質または前駆物質含有溶液の選択などを利用することによって可能な場合には、極めて好ましい方法である。後述する実施例41のように、こうしたことが可能な場合には、前駆物質が粒子表面に局在化した状態を、被膜への転化の間を通じて維持することが可能となり、その結果、粒子と被膜が緊密な関係となり、被膜物質を効率的に使用することができる。実施例41では、表面活性化合物であるN−アセチルトリプトファンのナトリウム塩(表面活性は、N−アセチルトリプトファンの疎水性による、疎水性は、一端に存在するイオン化されたカルボキシレート基の極性によって増強されている)を使用して、キュービック相をミクロ粒子に分散しており、このミクロ粒子の粒子表面には、この最終被膜物質(この場合はN−アセチルトリプトファンの亜鉛塩)の前駆物質が高密度で存在している。このアプローチは、極めて一般性のあるアプローチである。というのも、たとえば、被膜物質として最も有用な物質は、当然のこととして、水への溶解度が低く、それぞれ、少なくとも1つの優勢な疎水基持ちつつも、なんらかの前駆物質の状態では、水に十分溶解したり、水と相互作用を生じたりすることを可能とする少なくとも1つの極性基を有しているからである。つまり、このことは、この物質が、こうした前駆物質状態では、両親媒性物質、または表面活性化合物である(または、こうした状態を見いだすことができる)というのにも等しい。前駆物質を粒子表面に局在化させる別の方法としては、前駆物質と、キュービック相を強力に形成する、前駆物質とは逆に帯電させた分子との間にイオン対を形成させる方法、溶融または可溶化状態の前駆物質を使用し、その溶融前駆物質または前駆物質溶液の表面エネルギーゆえに、これらが、ナノ構造相と、ナノ構造相が分散している外相との間に自然に位置するようにする方法、ナノ構造相表面との間に、広く水素結合のような有利な相互作用を有する前駆物質を選択する方法(この方法は、特に、前駆物質(および被膜)がポリマーである場合には、ポリマー前駆物質が、高分子量であるがゆえに、ナノ構造相の粒子の内部から排除されるので好ましい)、抗体−抗原相互作用や受容体−リガンド相互作用のような特異的な相互作用を生じさせる方法、ナノ構造相に実質的に不溶である一方で、ナノ構造相を形成する疎水性のアンカー基を含有している前駆物質(好ましくは、ポリマー、またはタンパク質、核酸、多糖などの生体マクロ分子)を使用する方法(なお、こうした疎水性アンカーは、当技術分野では公知であり、通常、ポリマーまたは生体マクロ分子にグラフトされたアルカンまたはコレステロール誘導体である)などがある。
実施例42に例示するように、関連したアプローチとしては、マトリックスを前駆物質自体に分散するというアプローチがある。つまり、前駆物質が、マトリックスのミクロ粒子の分散液で、連続(外)相を形成するようにし、その後、この前駆物質を、被膜物質に転化し、ミクロ粒子(それらが、ナノ構造の液体または液晶体のままで存在する場合)を、被膜物質内に捕捉するわけである。
こうしたアプローチでは、マトリックス物質を分散する第一工程を行い(多くの場合、前駆物質が、分散剤または母液として主たる役割を果たす)、その後、前駆物質を被膜物質に転化する工程を、化学反応(酸/塩基反応、または多価イオンの導入による錯体の形成のような単純な反応であることが多い。例、実施例41)、冷却、揮発性溶剤の蒸発、などによって実施する。この一連の作用の結果、被覆ミクロ粒子の分散液が得られる場合も、そうした粒子の集塊が生じる場合もあり、後者の場合、第二の分散工程によって集塊を分離することが要請される場合もある(集塊とミクロ粒子の分散物との組み合わせが得られる場合もある)。実施例41および42では、これらの2工程を実施した結果として、巨視的な粒子が生じており、得られた連続固形物をミクロ粒子に粉砕するのであれば、実施例41で実施しているように、第二の分散工程が必要となり、本実施例では、最終的に、サブミクロンサイズの被覆ミクロ粒子の分散液を得ている。
上述したように、本発明の特定の態様では、内部マトリックスを、水を含有する流体と接触すると所望のナノ構造の液相または液晶相を形成する所望の相の脱水物から形成した。そうした粒子を製造しうる一般的な方法は3種ある。一つは、実施例42で使用したのと類似したプロセスを使う方法で、この方法では、マトリックス、またはこの場合であれば脱水したマトリックスを、被膜物質の前駆物質である、または被膜物質の前駆物質を含む非水性溶液または溶融物に分散し、冷却または他の方法で前駆物質を被膜に転化すると、脱水マトリックスがすべて封入される。第二の一般的方法では、粒子の水分含有分散液で、被膜物質(またはその前駆物質)を溶解または極めて細かく分散させておいた液に、乾燥プロセス、たとえば、凍結乾燥、電界紡糸、または好ましくは噴霧乾燥を適用する。そして第三の一般的方法は、被膜の全成分とマトリックスの全成分を、水を含むものも含まないものも全て、揮発性の溶剤に溶解または分散し、その後乾燥プロセス(好ましくは噴霧乾燥)を適用するというものである。これらの方法のいくつかでは、水を完全に使用しないことも可能であり、製造中であっても水と接触してはならない活性物質(または特殊な賦形剤)を用いる場合には、このことは重要である。
ターゲティング基および生物活性化合物の組込み。
本発明において、外部被膜として非晶質や半結晶質物質を利用すると、粒子を時間的、空間的にターゲティングさせるよう、たとえば、生体内の特定部位に粒子をターゲティングさせるよう誘導することのできる化学物質や化学基を、数多くの異なる方法によって組み込むことが、ますます実際的になる。同様に、被膜上または被膜中に組み込まれる他の生物活性化合物に、重要な機能を担わせることもでき、たとえば、メントールのような吸収促進物質を存在させて、吸収バリヤ(脂質二重層、ギャップ結合)の透過性を、薬物の放出の前、または薬物の放出と同時に増大させたり、タンパク質または他の吸着調整物質を含有させて、内在性タンパク質、たとえばアルブミンの望ましくない結合を阻害したり、アジュバントを組み込んで、ワクチン成分をはじめとする各種の免疫調整物質の作用を増強したりすることができる。一般に、非晶質または半結晶質の物質は、分子やサブミクロンの固形物などを、結晶質の物質より容易かつ効率的に包埋物質として含有することができ、これは、結晶質の物質の場合、特に、結晶化を、製薬産業に一般的にみられる厳しい規制にしたがって実施した場合には、結晶化の間に、他の物質は排除される傾向があるからである。また、共有結合やイオン結合によって有機基をポリマー表面に結合することも、よく研究された技術である。米国特許第6,344,050号および米国特許第5,484,584号(ここで言及することによって、全体を本明細書に組み込むものである)は、分子標的を、ポリマーや、具体的にはミクロ粒子の被膜に結合させる際に使用することが当技術分野で周知の方法の例である。抗体、ステロイド、ホルモン、オリゴ糖または多糖、核酸、ビタミン、免疫原、そして場合によってはナノプローブは、いずれも、非晶質、半結晶質、あるいは場合によっては結晶質の物質からなる外相を有する本発明の粒子に結合させることのできる多岐にわたる物質の例である。
製剤活性物質自体を、被膜として、以下のいくつかの役割の1種以上を担うナノ構造の内部、すなわち、生体膜との界面活性作用および/または相互作用によって吸収を増大させる役割、吸収促進物質(たとえば、ガム安息香)、酸、塩基、緩衝液、特異的イオン(たとえば、レクチンの結合が重要である場合のマンガン)、タンパク質の結合またはタンパク質の活性のモジュレータ、または他の生物活性物質を可溶化し、その後放出する役割、そして分子の認識部位を確実に適切なかたちで呈示するマトリックスを提供する役割の1種以上を担うナノ構造の内部とともに使用することも、本発明の範囲内である。
標的部位が、粒子内または粒子に付随して正確にどこに局在化しているのか(あるいは、より詳細には、分布の空間的確率)を知ることは、所定の用途について必ずしも必須ではないものの、この点は、粒子−ターゲティング部分の組み合わせを設計するうえで、重要な考慮事項である可能性があり、本発明は、この点では、自在かつ高性能の設計が可能である。具体的には、ターゲティング部分は、被覆ミクロ粒子の以下の部位の1カ所以上に実質的に局在化させることができる。
1)粒子の内部、すなわち、ナノ構造の液体または液晶相の内部に溶解または分散(この位置には、ターゲティング部分に対して、「生体模倣」的環境、すなわち脂質二重層および親水性ドメインからなる環境を提供するという明確な利点があり、この脂質二重層および親水性ドメインのそれぞれを調整して環境を最適化することができる)。
2)内部の外面、特に内相と外部被膜の間にはっきりとした相、たとえば水性層がある場合の内部の外面(この位置は、外部被膜の放出後に、ターゲティング部分を新たな外面に提示するような粒子では特に有利である)。
3)外部被膜の内面に吸着(この位置でも、ここに列挙する他の位置でも、固体のシェルとターゲティング部分が相乗効果を生じることがあり、その場合には、特定の固体物質(たとえばアルミニウム系化合物)が場合によってはアジュバントとして作用して、特に、その固体物質が生体の免疫システムとの相互作用を意図している場合には、生体中の分子の効果を増大させることがある)。
4)外部被膜に包埋(上述したように、被膜が非晶質、あるいは少なくとも半結晶質の場合に可能であることが多い)。
5)外部被膜の表面に、たとえば、共有結合、イオン結合、水素結合、および/または疎水性相互作用によって吸着または結合。
6)外部被膜の表面に、間隔をおいて、可撓性のスペーサ、たとえば、一端が粒子(内側または外側)の成分に、もう一端がターゲティング部分に(たとえば、共有結合によって)結合しているポリマーを介して結合。(当技術分野における他のタイプのミクロ粒子での経験からは、このアプローチが、良好なターゲティングを実現する上で一般的にすぐれたアプローチであることがわかる。というのも、このアプローチでは、ターゲティング部分が受容体または標的に良好にドッキングするうえで必要とされることのあるコンホメーションおよび拡散上重要な自由度が保存されるからである)。
なお、ターゲティング部分と内部のナノ構造相との間に可撓性のスペーサが延在しているという重要なケースでは、双方の位置に固有の利点を生かすことが可能なこともあり、すなわち、被覆が溶解する前には、ターゲティング部分は、ナノ構造の内相によって提供される生体模倣的環境に位置し、被覆の溶解後は、ターゲティング部分が(この段階では非被覆の)ナノ構造相につながれ、したがって、受容体との相互作用時には、比較的障害をうけにくいようにすることもできる。
本発明の内相が、タンパク質、ペプチド、核酸、多糖などのようなターゲティング部分を可溶化し、なおかつそれらのコンホメーションを保持するのに極めて適しているという事実に加えて、本発明の態様の多くにおいて主成分である脂質、界面活性剤、ブロック共重合体の多くが、極めて自然な形で、これらのターゲティング部分の特性や、生体中でのこれらのターゲティング部分と受容体との相互作用を調整していることも重要である。たとえば、当技術分野においては、ポリエチレングリコール(PEG)鎖とタンパク質またはペプチドが密に会合している場合には、これらのペプチドを安定化したり、生体中の酵素によるこれらのペプチドの分解を低減したりするうえで劇的な効果が生じ、その多くの場合、これらのペプチドが受容体と相互作用を生じる能力は損なわれないことが公知である。米国特許第6,214,966号(ここに言及することをもって、本明細書にその内容を組み込むものである)には、ポリペプチドのPEG化によって、生体中でのポリペプチドの性能が増強され、免疫原性が低下したり、クリアランスが緩慢になったりする例が開示されている。また、この効果は、ペプチドが、PEG鎖とともに、疎水鎖(またはコレステロール様基)にも結合していると、さらに顕著になることがある。米国特許第6,309,633号(ここに言及することをもって、本明細書にその内容を組み込むものである)には、PEG化疎水鎖または環系との結合時に、安定性、酵素に対する抵抗性、経口吸収が大幅に改善されるペプチドの例が開示されている。本明細書で言及する界面活性剤および脂質の多くは、本明細書に示唆するように、PEG化されているか、生体内での薬物の帰趨、またはターゲティング部分の帰趨を実質的に改変しうる他のオリゴマーまたはポリマー鎖を含んでいる。
本発明の粒子を製薬の用途で使用する際には、数多くの化合物をターゲティング部分として使用することができる。たとえば、ある種の脂質、たとえば脂質Aは、免疫系の成分などと極めて特異的な相互作用を示し、この物質は、内相に含有させることも、被膜に不随させることもできる。同様に、ブロックの一つがターゲティング能力を潜在的に有することのできるブロック共重合体、たとえば、グリコゲンおよびヘパリンを利用することもできる。内部または外部に存在して、ある程度のターゲティングを実現することのできる小型分子としては、ステロール、脂肪酸、グラミシジン、適当なタンパク質のエピトープの断片または類似物、アスパラギン酸、システイン、トリプトファン、ロイシンなどのアミノ酸が挙げられる。ロイシンは、生体中の特異的タンパク質(枝分かれ鎖アミノ酸トランスポーター)によって認識され、結合される化合物の一例である。以下のいくつかの実施例には、ロイシンで被覆した粒子の製造が記載されている。
本発明の内相が、ここで注目しているターゲティング部分のような生体分子を可溶化および安定化しうることについては、膜タンパク質のいくつかの例を挙げた部分(受容体タンパク質、タンパク質、たとえばプロテイナーゼA、アミログルコシダー、エンケファリナーゼ、ジペプチジルカルボキシペプチダーゼIV、ガンマグルタミル転移酵素、ガラクトシダーゼ、ノイラミニダーゼ、α−マンノシダーゼ、コリンエステラーゼ、アリールアミダーゼ、サーファクチン、フェロケラターゼ、スピラリン、ペニシリン結合性タンパク質、ミクロソームの糖転移酵素、キナーゼ、細菌外膜タンパク質、および組織適合性抗原)で、すでに説明したとおりであり、その多くは、本発明の粒子に含有させた場合には、ターゲティングの役割を果たすことができる。外部被膜に吸着可能なポリマー成分で、ターゲティング部分の結合点としての役目を果たす可能性のあるものの例としては、たとえば、外部、すなわち、外部被膜20の外側に設けた安定化層、たとえば、(上述したような)高分子電解質または界面活性剤の一重層を挙げることができる。いくつかの実施例で使用したプルロニックF−68は、そうしたポリマー界面活性剤の一種である。
本発明の別の態様では、被覆粒子の「外部から誘導したターゲティング」を行うこともできる。こうしたターゲティングは、上述したような特定の磁気応答性物質(たとえば、酸化第二鉄)で被覆した粒子を、磁界を印加して誘導することによって行うことができる。
抗体は、生体内または他の各種の環境で特異的な部位または分子へのターゲティングを行うにあたって広く有用であり、上述の粒子の各種の部位に含有させることができる。特に、疎水性が相対的に高いFcフラグメントを有する無傷の抗体は、本発明で使用するようなタイプのマトリックスに含有させるのに適しており、また、抗体を、結合性や結合特異性を保持したまま、固体表面に吸着または付着(共有結合によるものを含む)させることができることも周知である。以下の物質をはじめとする各種物質に対する抗体が、供給業者より商業的に入手可能である。
8−ヒドロキシ−グアノシン、AAV(アデノウイルス)、ACHE(アセチルコリンエステラーゼ)、ACHER(アセチルコリンおよびNMDA受容体)、酸性ホスファターゼ、ACTH、アクチン(心筋、平滑筋、骨格筋)、アクチニン、アデノ関連ウイルス、アデノシン脱アミノ酵素、アジポフィリン(脂肪細胞分化関連ペプチド)、アドレノモジュリン1−6、最終糖化産物(AGE)、アラニントランスアミナーゼ、アルブミン、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、アルドラーゼ、アルフェンタニルAB、アルカリホスファターゼ、αアクチニン、α−1−アンチ−キモトリプシン、α−1−アンチトリプシン、α−2−マクログロブリン、α−カテニン、β−カテニンおよびγ−カテニン、α−フェトプロテイン、α−フェトプロテイン受容体、α−シヌクレイン、アルツハイマー前駆体タンパク質643−695(Jonas)、Alz−90、前駆体タンパク質A4、アミノ酸オキシダーゼ、アンフェタミン、アンフィフィシン、アミラーゼ、アミリン、アミリンペプチド、アミロイドAおよびP、アミロイド前駆体タンパク質、ANCA(プロテイナーゼPR3)、アンドロジェン受容体、アンジオゲニン、アンジオポエチン−1およびアンジオポエチン−2(ang−1/Ang−2)、アンジオテンシン転化酵素、アンギオテンシンII受容体At1およびAt2、アンキリン、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、アルギナーゼI、βアレスチン1およびβアレスチン2、アスコルビン酸酸化酵素、アスパラギナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、ATPアーゼ(p97)、心房性ナトリウム利尿ペプチド、AU1およびAU5、炭疽菌(炭疽)および桿菌、アントラシス致死因子、Bad、BAFF、Bag−1、BAX、bcl−2、BCL−Xl、β神経成長因子、βカテニン、ベンゾイルコグニン(コカイン)、β−2−ミクログロブリン、βアミロイド、ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、血液型抗原(RhoD、A1、A2A1、A2、A3、B、A、Rh(0)D、RhoC、BM、N)、血液型H抗原、ボンベシンおよびボンベシン/ガストリン放出ペプチド、骨形成タンパク質(BMP)、骨髄間質細胞抗原、BST−3、ボレリア・ブルグドルフェリ(ガルニイ)、ボレリア・ブルグドルフェリ(狭義)、ウシ血清、ブラジキニン受容体B2、脳由来神経栄養因子、ブロモデオキシウリジン、CA19−9、CA125、CA242、CA15−3、CEA、Ca+ATPase、カルビンジンD−28K(カルシウム結合性タンパク質)、カルグラニュリンA、カドヘリン、CD144、カルシニュリン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、カルシウムチャネル、カルデスモン、カルモジュリン、カルネキシン、カルパクチン軽鎖、カルパイン、カルパスタチン、カルレティキュリン、カルレチニン、カルセクエストリン、CamキナーゼII、イヌジステンパーウイルス、炭酸脱水酵素IおよびII、カルボキシペプチダーゼA、B、およびE、カルボキシペプチダーゼY、Cardi、トロポニンCおよびT、カルディオトロフィン−1、カスパーゼ3(CPP32)、カタラーゼ、カテニン、カベオリン1、2aおよび3、CCR、CD44(HCAM)、CD56(NCAM)、CDK2、CDK4(サイクリン依存性C)、癌胎児抗原、細胞抗原、CFTR(嚢胞性線維症膜コンダクタンスタンパク質)、ケモカイン受容体、クラミジア、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)タンパク質、コレラ毒素、コリンオキシダーゼ、コンドロイチン、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、クロモグラニンA、B、およびC(セクレオグラニンIII)、コレステロールオキシダーゼ、キモトリプシン、Cingulin、クエン酸シンターゼ、C−kit/幹細胞因子受容体、CK−MB、クラスリン抗原、ボツリヌス菌Dトキソイド、クラステリン、C−MYC、CNS糖タンパク質130kD、コラーゲンIV型およびVII型、補体5bネオエピトープ、補体C3a、C3b、C5、およびC9、コンプレキシン2、コルチコリベリン(CRF)、C−ペプチド、CRF(コルチコトロピン放出因子)、コルチコトロピン放出因子受容体、COX−1およびCox−2、CPP32(カスパーゼ3、アポパインまたはYamaとしても公知)、クレアチニントランスポーター、C−反応性タンパク質(CRP)、)クリプトスポリジウム、CXCR−5、サイクリンA、サイクリンD1、D2、およびD3、シクロスポリンA、サイクリンI、チトクロムB5、チトクロムC、チトクロムオキシダーゼ、チトクロムP450、サイトケラチンI型およびII型、サイトメガロウイルス、DAPキナーゼ、樹状細胞、デスミン、デスモコリン1、2、および3、デスモグレイン1、2、および3、デスモプラキン1および2、デキストラナーゼ、DHT(ジヒドロテストステロン)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ジフテリア毒素、ジステンパー、DJ−1、一本鎖DNA、二本鎖DNA、DNAトポイソメラーゼIIおよびホスホ−トポイソメラーゼIIa+IIα/β、ドーパミン、ドーパミンベータ水酸化酵素、ドーパミン受容体、ドーパミントランスポーター、ドレブリン、フィブリリン、ジストロブレビン、大腸菌発現プラスミド、エラスターゼ、エラスチン、内分泌顆粒成分(EGC)、エンドルフィン、内皮細胞、エンドセリン、エンドセリン受容体、エンケファリン、黄色ブドウ球菌エンテロトキシン、好酸球ペルオキシダーゼ、好酸球由来神経毒(EDN)、エオタキシン、エオタキシン−2、上皮細胞成長因子、上皮細胞成長因子2、上皮細胞成長因子受容体、テストストステロン、上皮増殖抗原、上皮特異抗原、c−MYC、HA.1、VSV−G Tag、Glu−Glu、EEEYMPME、チオレドキシン(trx)、エプスタイン・バーウイルスおよびエプスタイン・バーウイルス・カプシド抗原gp120、ERK(ERK1、ERK2、ERK3、pan ERK、MAPキナーゼとも称される)、赤血球、エリトロポエチン(EPO)、エステラーゼ、エストラジオール、エストリオール、エストロゲン受容体、エストロン、Ets−1転写因子、ペスト菌F1抗原、第V因子、第VII因子、VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、FAK(焦点接着キナーゼ)、FAS(CD95)、FAS−L(CD178)、ファシン、脂肪酸結合性タンパク質、フェリチン、胎児ヘモグロビン、フィブリリン−1、フィブリノーゲン、線維芽細胞、線維芽細胞成長因子、FGF−9、フィブロネクチン、フィラミン、FKBP51、FKBP65、FK506、FLK1、flt−1 FLt−4およびFLT−3/FLK−2、FLT3リガンド、フルオレセイン(FITC)、ホドリン、葉酸、葉酸結合タンパク質、フラクタルキン、フリクエニン、フリズルド、フルクトース−6−p−キナ、FSH、Fusin(CXCR4)、GABA AおよびGABA B受容体、ガレクチン、ガラニン、ガストリン、GAP−43、G−CSF、G−CSF受容体、ゲルソリン、GIP(胃抑制ペプチド)、G0−タンパク質(ウシ)、GDNF、GDNF−受容体、ランブル鞭毛虫、グリア繊維性酸性タンパク質、グリア繊維性タンパク質、グルカゴン/グリセンチン、グルコース酸化酵素、グルコース−6−燐酸脱水素酵素、Gluco、トランスポーターGLUT1−4、GLUT1−5、グルタミン酸脱水素酵素、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、グルタチオン、グリセルアルデヒド3‐リン酸デヒドロゲナーゼGAPDH、グリセロール3‐リン酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールキナーゼ、クリシントランスポーター(GLYT1、GLYT2)、グリコゲンホスホリラーゼアイソザイムBB(GPBB)、グリコホリンA(CD235a)、GM−CSF、C受容体α、ゴルジ複合体、ゴナドトロピン放出性ホルモン受容体(GnRHR)、GP130、グランザイム、GRB2、GRB1、緑色蛍光タンパク質タンパク質(GFP)、成長ホルモン、成長ホルモン受容体、成長ホルモン放出因子、GRP78、ハンタウイルス、HCG、HDL(高密度リポタンパク質)、熱ショックタンパク質HSP−27、HeK293宿主細胞タンパク質、ヘロデルミン、ヘロスペクチン、ヘムオキシゲナーゼ、ヘモグロビン、ヘパリン、A型肝炎、B型肝炎コア抗原、B型肝炎ウイルス表面抗原、C型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、肝細胞成長因子、ヘレグリン(Neu分化因子/ニューレグリン)、単純ヘルペスウイルス、ヘキソキナーゼ、ヒスタミン、His Tag、6−Hisベクター・タグ、HIV−1 p24、p55/17、gp41、gp120、tat、nef、rev、HIV逆転写酵素、HLAのクラスI、HLAクラスII、HLA−DM、HLA DQw1、HLA DRw 52、ペルオキシダーゼ、HPV16晩発性L1タンパク質、ヒト遊離κ軽鎖、ヒトλ軽鎖、ヒトIgA、ヒトI重鎖、ヒトIgA1、ヒトIgD、ヒトIgE、ヒトIgG重鎖、ヒトIgG1、ヒトIgG3、ヒトIgG4、ヒトIgM、ヒトIgM重鎖、ヒトJ鎖、ヒトκ軽鎖、ヒトλ軽鎖、ヒト血清アミロイドP、ヒト血清アミロイドP、インターロイキン−1β変換酵素、ICH−1(インヒビンカスパーゼ2)、インドハリネズミタンパク質(IHH)、インフルエンザウイルス、インヒビン、インスリン、インスリン様成長因子II、インスリン成長因子結合タンパク質1、2、3、4、または5、インスリンン様成長因子、インスリンン様成長因子I受容体、インスリン受容体、インスリン/プロインスリン、インターフェロンα、インターフェロンα受容体、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンγ受容体αおよびβ、インターロイキン1α、インターロイキン受容体αII型、インターロイキン1−β、インターロイキン10、インターロイキン10受容体、インターロイキン11、インターロイキン12、インターロイキン12受容体、インターロイキン13、インターロイキン15、インターロイキン16、インターロイキン17、インターロイキン18、インターロイキン2、インターロイキン2受容体α、インターロイキン受容体α鎖(CD25)、インターロイキン2受容体β、インターロイキン2受容体β鎖(CD122)、インターロイキン2受容体γ、インターロイキン3、インターロイキン3/インターロイキン5/GM−CSF受容体の共通鎖、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン6受容体α鎖、インターロイキン7、インターロイキン7受容体α、インターロイキン8、インターロイキン8受容体、インターロイキン9、インベルターゼ、インボルクリン、IP−10、ケラチン、KGF、Ki67、KOR−SA3544、Kt3エピトープ・タグ、乳酸脱水素酵素、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、ラミン、ラミニン、La(SS−B)、LCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)、レジオネラ・ニューモフィラ血清型、レジオネラ−ニューモフィラ菌LPS、レプチンおよびレプチン受容体、ルイスA抗原、LH(黄体形成ホルモン)、LHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)、L(白血病阻止因子)、リポキシゲナーゼ、LPS野兎病菌、ルシフェラーゼ、癌マーカー(MOC−1、MOC−21、MOC−32、Moc−52)、リンパ球、リンホタクチン、リゾチーム、M13、F1繊維状ファージ、マクロファージ/単球、マクロファージスカベンジャー、受容体、マトリックスメタロプロテアーゼ、M−CSF、主要塩基性タンパク質、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、マルトース結合タンパク質、マンノース受容体(マクロファージ)、マンノース‐6‐リン酸受容体、MAPキナーゼ抗体(ERK、ERK、ERK2、ERK3)、MASH1(哺乳動物のachaete scuteホモログ1および2)、MCL−1、Mcm3、M、(MCAF)、MCP−2、MCP−3、メラノコルチン受容体(1〜5)、
Met(c−met)、鉱質コルチコイド受容体(MR/MCR)、黒色腫関連抗原、MGMT(メチルグアニンDNAメチル基転移酵素)、MHC抗体(HLAデータパック等)、ミルクF、球被膜、ミルクムチンコア抗原、MIP−1α、MIP−1β、ミトコンドリアマーカー、マイトシン、MMP−1、MM、MMP3、MMP7、MMP8、MMP−9、およびMMP13(マトリックスメタロプロテアーゼ)、MMP−14(MT1−MM、MMP15(MT2−MMP)、MMP16(MT3−MMP)、およびMMP19、モルヒネ、motili、ムチン関連抗体(Muc−1、muc−2、muc−3、muc−5ac)、ムチン−6糖タンパク質、ムチン様糖タンパク質、結核菌、ミエリン、ミエリン塩基性タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、MyoD、ミオグロビン、ミオシン、NaCa交換タンパク質、Na+/K+/ATPase、Na/K/ATPa、NCAM(CD56)、pan N−Cam、(神経細胞接着マーカー)、神経成長因子、Neu癌遺伝子(c−erb B2)、神経原線維変化、ニューロフィラメント70+200kD、ニューロフィラメント145Kd、ニューロフィラメント160kd、ニューロフィラメント68Kd、ニューロフィラメント200kd、ニューロフィラメント200kd、ニューロキニン、A/サブスタンスK、ニューロメジンU−8(NMU−8)、ニューロモジュリン、神経細胞ペントラキシン、神経特異的エノラーゼ、神経ペプチドY(NPY)、ニューロフィジンI(オキシトシン前駆体)、ニューロフィジン、(バソプレッシン前駆体)、ニューロプシン、ニューロテンシン、NFKB、ニコチンアセチルコリ受容体、(β2およびα4)、NMDA受容体、N−MYC、ノルエピネフリントランスポーター(NET)、N、(酸化窒素シンターゼ)eNos、iNos、NT−3、NT、(ニューロトロフ、4)、核小体ヘリカーゼ、核小体タンパク質N038、核タンパク質xNopp180、核質、タンパク質AND−1、核小体形成域(NOR)、ヌクレオリン、オクルディン、オンコスタチンM、ORC、オルニチンデカルボキシラーゼ、オボアルブミン、卵巣癌、オキシトシン、P15、P16、P2、P27、P53腫瘍性タンパク質、p62タンパク質、p97ATPアーゼ、膜関連および細胞質42kDaイノシトール(1,3,4,5)テトラキスリン酸受容体、PP44有足細胞タンパク質(シナプトポジン)、PAH(ポリ芳香族炭化水素)、PACAP(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド)、膵臓ポリペプチド(PP)、パンクレアスタチン、膵島細胞、パパイン、パピローマウイルス(HPV)、パラインフルエンザ2型ウイルス、パラチオン、Parkin、PARP(ポリAリボースポリメラーゼ)PARP−1およびPARP−2、Patched−1、Patched−2、パキシリン、ポリ塩化ビフェニル、尋常性天疱瘡(デスモグレイン3)、ペニシリン、ペニシリナーゼ、PEP−カルボキシラーゼ、ペプシン、ペプチドYY、パーフォリンおよびポリクローナル抗体、ペリリピン、ペリフェリン、パールカン、石油、炭化水素(total)、PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)、糖タンパク質(多剤抵抗性)、PGP9.5、フェナントレン、フェンシクリジン(PCP)、フェニルエタノールアミン、メチルトランスフェラーゼ(PNMT)、ホスホランバン、ホスホリパーゼA2、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、Pホスホトレオニン−プロリン、ホスホトレオニン−リジン、ホスホチロシン、ホスホチロシンキナーゼ、ピキア・パストリス、胎盤アルカリホスファターゼ、プラコグロビン、プラコフィリン1、プラコフィリン2、プラコフィリン3、プラスミノーゲン、血小板由来成長因子AAおよびBBおよびAB、プレクチン、PM、ATPアーゼ(原形質膜Caポンプ)、ニューモシスチス・カリニ、ニューモリシン、ポリクロロビフェニル(PCB)、PP17/TIP47、PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)、プレドニゾン、プレドニゾロン、妊娠関連プラズマタンパク質A(PAPP−A)、プレグネノロン、Prepro NPY68−97、プレセニリン−1、プレセニリン−2、プリオンタンパク質、プロゲステロン、プロゲステロン受容体、プロヒビチン、プロインシュリン、プロラクチン、増殖Ce、核抗原、プロリントランスポーター、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異抗原(PSA)、プロテアソーム26S、タンパク質4.1M腹水、Gタンパク質、Cプロテインキナーゼ、シュードモナス・マレイ、PTH、肺胞界面活性物質関連タンパク質、ピューロマイシン、Pyruva、キナーゼ、狂犬病ウイルス、RAC−1およびRac−2、RAGE(AGEの受容体)、RANTES、RDX、RecA、後期反応生成物受容体(RAGE)、赤血球、調節サブユニット、RELMαおよびβ(レジスチン様分子)、レニン、レンニン、反復タンパク質A(RPAp32およびp70)、レジスチン、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、網膜芽細胞腫(Rb)、リン酸化部位特異的RB(ser780)、リボヌクレアーゼA、RNAポリメラーゼ、Arna3、RNP(70KdaU1)、Aタンパク質、Bタンパク質、RO(RO52、Ro60)、ロタウイルス特異抗原、風疹ウイルス構造糖タンパク質E1、リアノジン受容体、S−100タンパク質、酵母、サルモネラO抗原、ネズミチフス菌、サルコシン酸化酵素、SDF−1αおよびSDF−1β、セクレチン、セレン含有タンパク質P、セロトニン、セロトニン受容体、セロトニントランスポーター、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)、SFRP5(分泌フリズルド関連タンパク質5)、SF21およびSF9、SIV gp120、SIV p28、平滑筋アクチン、ソマトスタチン、黄色ブドウ球、黄色ブドウ球エンテロトキシン、STAT1、Stat2、Stat、Stat4、Stat5、Stat6、幹細胞因子(SCF)およびSCFR/C−kit、ストレプトアビジン、B群レンサ球菌B、ストロマ細胞由来因子−1(SDF−1αおよびβ)、サブスタンスP、スフェンタニルAB、スーパーオキシドジスムターゼ、界面活性剤関連タンパク質(A、B、C、D)、シンプレキン、シナプシンI、シナプシンIIa、シナプトフィジン、シナプトポジン(有足細胞タンパク質)、シンデカン1、シンフィリン−1、シンフィリン(α)、SV40大型T抗原および小型T抗原、タリン、TARC、TAU、タウリントランスポーター、テネイシン、テストステロン、TGF−α、TGF−β、TGFβ受容体(エンドグリン)、THC、トムゼン・フリーデンライヒ抗原(TF)、THY−1 25kd脳(CDw90)、胸腺細胞、トロンビンおよびトロンビン受容体、チログロブリン(24TG/5E6および24Tg/5F9)、甲状腺結合グロブリン、甲状腺ホルモン受容体、甲状腺ペルオキシダーゼ、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、チロシン水酸化酵素、サイロトロピン放出ホルモン、チロキシン(T4)、TIe−1およびTIe−2、TIMP−1、TIMP−2、TIMP−3(組織インヒビター、メタロプロテイナーゼ)、タイチン、TNF受容体関連因子1および2、TNF受容体、TNF受容体II、TNF−Α、TNF−Α、TNF−β、トキソプラズマ・ゴンジp30抗原、TPO(トロンボポチエン)、TRAF、Traf2、Traf3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、悪性化増殖因子A、トランスフォルミ、成長因子β、トランスポーチン、トレポン、パリジウム、トリヨードチロニン(T3)、トリニトロトルエン(TNT)、TRK A、TRK B、TRK C、トロポン(心臓)、トロポニンTI、トロポニンT、トリプシン、トリプシン阻害物質、トリプシノゲン、TSH、TUB遺伝子、αおよびβチューブリン、チューブリンβ特異性腫瘍マーカー関連抗体、腫瘍壊死因子α、チロシナーゼ、Tweak、(カスパーゼ−4)、ユビキチン、ユビキチン−L1、脱共役タンパク質(UCP1、UCP2、UCP3、UCP4、およびUCP5)、ウレアーゼ、ウリカーゼ、ウロコルチン、ウロプラキン、バソプレッシン、バソプレッシン受容体、VEGF、小胞アセチルコリントランスポーター、(VACht)、V小胞モノアミントランスポーター(VMAT2)、ビリン、ビメンチン、ビンキュリン、VIP(血管作用性小腸ペプチド)、ビタミンB12、ビタミンB12、ビタミンD代謝産物、ビタミンD3受容体、フォン・ウィルブランド因子、VSV−GエピトープTag、ウィルムス腫瘍タンパク質X、オキシダ、酵母、ヘキソキナーゼ、SOD、チトクロムオキシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、およびエルシニア・エテロコロチカ。
また、上述した物質の多く(たとえば、葉酸塩、PGP、チトクロムP450、およびEGF)も、それ自体が独自にターゲティング物質として有用であり、本発明の粒子に含有させることが可能である。さらに、他の化学物質、たとえばPEGも、ターゲティングの目的で使用し、本発明の粒子に含有させることができる。
なお、ターゲティング化合物そのものだけでなく、本明細書に記載した物質のリストから拾い出した活性化合物、機能性賦形剤、たとえば吸収促進物質、および他の生物活性物質を、こうした局在化部位のいずれかに含有させることができることを指摘しておくことも重要である。
上述したように、特定の部位に粒子をターゲティングして薬物を放出させるだけでなく、放射線不透過性または光学的に密な物質を含有させた粒子は、それ自体、画像化に利用することができ、本明細書に記載したターゲティング化合物と組み合わせた場合には、生体中の特定の部位をターゲティングし、その部位を可視化することができる。例を挙げると、ソマトスタチン受容体は、特定の腫瘍部位に局在化することが知られており、ソマトスタチン受容体に選択的に結合する本発明の被覆粒子を、標的に結合させることによって、腫瘍をターゲティングして、X線、MR画像診断、放射線画像診断などによって可視化することが可能となる。この概念を拡張すると、同様にターゲティングさせた粒子に、腫瘍の壊死を誘導させるための放射線を発するような放射性物質を担持させることもできる。
内相としての重合液晶
米国特許第5,244,799号(ここで言及することによって、全体を本明細書に組み込むものである)には、ナノ構造のキュービックおよびヘキサゴナル相の液晶を、そのナノ構造を保ったまま重合することが報告されている。構造が保持されていることは、X線小角散乱法(SAXS)および透過型電子顕微鏡での観察(TEM)によって実証された。
本発明の粒子内部でキュービック相を重合しうるという可能性は、いくつもの可能性、特に、内相の安定性を増し、生体、特に細胞膜との相互作用を調節するうえで、いくつもの可能性を開くものである。後者の例としては、非重合キュービック相の場合には、生体膜との接触時には分子に分散することが推定されるのに対し、同じ内部マトリックスを重合させた場合には、同じ生体膜との相互作用の間を通じてその崩壊することのない粒子内部を形成できる可能性があり、この場合には、粒子や粒子内部の薬物が劇的に異なる結果がもたらされる可能性があることが挙げられる。また、二重層構造に結合させた薬物(疎水性小型分子、膜タンパク質など)の保持率は、重合によって大幅に上昇する可能性があり、その場合には、徐放性製剤が得られる。さらにまた、正確に調節可能な孔径を有する、より恒久的で正確に画定された孔構造を用いると、薬物の制御送達をさらに改善したり、および/または、重合マトリックスの孔からの寸法制限的排除によって分解性の酵素や他の酵素から薬物を隔離したりすることを実現できる可能性もある。
以下の実施例は、本発明を例示するものであるが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
実施例
以下の実施例では、実施例14、15、16、および34は、物理的に強固な無機物質、たとえば、フェロシアン化第二銅およびリン酸カルシウムからなる被膜を有する系を例示する。これらの態様では、粒子が物理的に強固な無機物質から構成されているので、無傷の被覆粒子は、被覆粒子の分散液を再使用や輸送などのためにポンプでくみ上げる間のような剪断条件下でも安定である。これらの無機物質は、水溶液に対する溶解度も低いので、強い剪断力を加えると粒子の被膜が放出されるものの、単に水で希釈しただけで被膜が放出されることのようなことがあってはならない用途で有用な可能性がある。こうした用途の例としては、カプサイシンのような齧歯類の抑制物質や齧歯類に対する毒物を本発明の被覆粒子に封入し、この粒子を電線、段ボール箱をはじめとする齧歯類がひっかいては困る製品に含浸させておいて、齧歯類がひっかいた場合には、活性の抑制物質または毒物が放出されるようにするというものがある。こうした場合、水への溶解度が低いため、湿った条件などによって時期尚早な放出が生じることが防止される。
水溶液に対する溶解度がやはり低い被覆が得られる強固な有機物質としては、実施例17および33で使用したようなエチルヒドロクプレインがある。この化合物には、さらに、極めて苦い味を有するという特徴もあり、この点も、齧歯類の抑制という用途では、抑制効果に寄与するものである。
実施例1、2、3、6、7、8、9、10、17、18、19、20、23、および33は、中性のpHでは水への溶解度が低いものの、化合物の種類に応じて、pHが酸性または塩基性となるにつれて溶解度が実質的に増大する被覆の例である。こうした特徴があるので、これらの被覆粒子は、たとえば腸での放出のように特定pH範囲で選択的に放出を生じる被覆が望まれる薬物送達の用途などで有用である可能性がある。また、この種の被膜は、細菌の活動する、通常pHが酸性であるような部位で放出を生じ、抗菌化合物を放出することもできる。さらに、特定のpHで被膜を放出できれば、pH安定剤化合物またはバッファー系、たとえば、スイミングプールの水のpHを制御すべく設計されたミクロ粒子を特定のpHで放出させることも可能となる。
実施例4は、雲用の核形成剤として極めて有用な特性を示しうる、ヨウ化銀の被膜を有する粒子の例を示す。周知のとおり、ヨウ化銀の被膜は核形成効果が高く、また、粒子の形状や寸法によって表面積や表面形状を最適化できるので、ヨウ化銀の効果をさらに高めることができる。銀化合物は高価であるため、この態様は、商業的に重要である可能性がある。というのも、この態様では、内部を構成する安価な液晶が、単にヨウ化銀を用いた場合の何分の一かの価格で、同等またはそれ以上の核形成効果をも示しうる充填剤の役目をはたしているからである。表面積の増大によって効果を上昇させることは、粒子を粘膜の局所麻酔剤として使用する場合にも、有用である可能性があり、粒子内部で、脂質と活性麻酔性疎水物質(たとえばリドカイン)との適正なバランスをとることによって、この効果をさらに増大させることができる。
実施例5は、硫化物や酸化物のような化合物が、これらの化合物が被膜形成にガス状の反応物質を必要とする場合であっても、本発明の被覆粒子の被膜として使用可能であることを示す。この種の化合物は、剛性が高い材料であるばかりでなく耐薬品性も極めて高いことが周知であり、そのため、こうした被覆粒子は、粒子をポリマーの添加剤として使用する場合や、染料含有粒子を不織布材料などに含浸させる場合のように高い剪断力が加わる処理などで想定されるように粒子が厳しい化学的、物理的条件のもとに置かれるような用途で有用な可能性がある。
実施例12および13は、水への溶解度の高い化合物を、被膜に使用する事例を示す。これらは、単に水で希釈するだけで被膜が迅速かつ簡単に放出されることが必要とされる用途で重要となる可能性のある事例である。たとえば、分散液を含む流れと、水を含む流れの2つの流れを合流させるようなスプレー装置を用いると、エアロゾル中で、スプレー以前は凝集を防ぐ上で有用であった被膜が、スプレー後に粒子がエアロゾル化してから、つまり、飛行中に溶解するようなエアロゾルを得ることができる。このように被膜が溶解することによって、たとえば、内側の高度に粘着性のナノ構造のキュービック相が露出するので、粒子を、作物や、気管支のライニングなどに付着させる際に使用することができる。齧歯類は、一般に、極めて低い濃度であってもカプサイシンの風味によって強度に忌避されるので、実施例12および13で内部に組み込まれたカプサイシンは、たとえば、粘着性のエアロゾル化された粒子を作物に付着させた場合には、作物に齧歯類抵抗性を付与することになり、この製品は潜在的重要性を有することになる。
実施例39および40は、本発明の粒子の外部被膜として、非晶質物質を利用した事例を示す。実施例39では、非晶質ポリマー(PLGA)を使用し、実施例40では、小型分子(糖トレハロース)を使用する。
実施例41および42は、粒子の生成に使用する方法の変形例を示すものであり、具体的には、これらの方法では、粉砕または粒径減少を、被膜物質の形成後に、場合によっては、被膜物質を析出させる前に行う超音波処理またはミクロ流動化に加えて行う方法を示すものである。
実施例1(実施例1E)、27、28、および43は、受容体、レクチン、および抗体などの活性の標的を本発明の粒子に組み込み、その結合能力を維持することを例示する。
以下の実施例で用いるパーセントは、特記しない限り、いずれも重量パーセントである。以下の実施例で使用する成分の量は、相対量が実施例のままであれば、必要に応じて変更することができる。したがって、これらの量は、所望の量に比例するかたちで増減させることができるが、量を増やした場合には、それに応じて処理に使用する装置が大型化するのはいうまでもない。
以下の実施例では、特記しない限り、各被覆粒子の外部被膜は、非ラメラ物質を含み、各内部コアは、少なくとも1種のナノ構造の液相、少なくとも1種のナノ構造の液晶相、または少なくとも1種のナノ構造の液相と少なくとも1種のナノ構造の液晶相の組み合わせから本質的になるマトリックスを含む。
実施例1
本実施例は、製薬およびバイオテクノロジーで重要な化合物をはじめとする多岐にわたる各種の活性化合物を、本発明の非ラメラ物質で被覆した粒子に組み込むことができることを示す。
0.266グラムの水酸化ナトリウムを、20mlのグリセロールに溶解し、加熱および撹拌によって溶解を促進した。次に、等モル量、すなわち1.01グラムのメチルパラベンを、やはり加熱しながら溶解した。この溶液から0.616グラムを採取し、試験管中で、0.436グラムのレシチンおよび0.173グラムのオレイルアルコールと混合した。後述する活性成分(または物質)を、この時点で加え、溶液を十分にかきまぜて、活性成分を含むナノ構造の液晶相物質を形成した。0.062グラムのプルロニックF−68(BASFから市販されているポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロック共重合体界面活性剤)と0.0132グラムの酢酸を一緒に溶解し、これらを、活性物質を含む以前からの溶液の上に、溶液の層ができるように試験管に加えることによって「上層溶液」を得た。液晶混合物と上層溶液の入った試験管を、ただちに激しく振盪し、小型の卓上超音波処理装置(Fisher Scientific製のFS6型)で3時間の超音波処理を行った。得られた分散液には、メチルパラベンで被覆された粒子が多量に含まれており、光学顕微鏡で調べたところ、粒子の粒径は1ミクロンのオーダーであった。
実施例1A 活性物質として、(液晶相物質からなる内部コアの重量にもとづいて)2.0重量%のサリチル酸を包含させた。
実施例1B 活性物質として、(液晶相物質からなる内部コアの重量にもとづいて)2.0重量%の硫酸ビンブラスチンを包含させた。
実施例1C 活性物質として、(液晶相物質からなる内部コアの重量にもとづいて)2.4重量%のチミジンを包含させた。
実施例1D 活性物質として、(液晶相物質からなる内部コアの重量にもとづいて)1.6重量%の甲状腺刺激ホルモンを包含させた。
実施例1E 活性物質として、(液晶相物質からなる内部コアの重量にもとづいて)2.9重量%の抗3’,5’環状AMP抗体を包含させた。
実施例1F 活性物質として、(液晶相物質からなる内部コアの重量にもとづいて)2.0重量%のL−チロキシンを包含させた。
pHの上昇につれて溶解度も実質的にに上昇する被膜を有するこうした粒子は、消化管を胃から腸に向かって移動する際のpHの上昇を利用して下部消化管への効果的な送達を行うような薬物の送達で有用であり、その結果、経時的な送達速度がより均一となる。
実施例2
本実施例は、本発明の粒子の分散液が長期間にわたって安定であることを示す。
0.132グラムの量のアミノ酸D,L−ロイシンを、2.514グラムの1M塩酸に溶解したところ、塩酸ロイシンの溶液が形成された。この溶液を、高温プレート上で空気流中にて乾燥したが、完全には乾燥させず、乾燥は、重量が0.1666グラムとなり、ロイシンに対して1モル当量のHClを加えたことと対応することとなった時点で停止した。この化合物0.130グラムを、ヒマワリ油モノグリセリドと水を混合し、遠心し、過剰な水を除去することによって調製したナノ構造の逆両連続キュービック相物質0.879グラムに加えた。1.0グラムの1M水酸化ナトリウムを3グラムの水と混合することにより、上層溶液をを調製した。使用した水は、すべて、3回蒸留を行ったものである。上層溶液を、キュービック相の上に載置し、試験管を密封して超音波処理を行ったところ、ロイシンで被覆されたミクロ粒子の乳白色の分散液が形成された。
同様の分散液を、プルロニックF−68を安定剤として使用することにより調製した。0.152グラムの塩酸ロイシンを、上記と同様のナノ構造の逆両連続キュービック相物質0.852グラムに加え、0.08グラムのF−68、1.0グラムの1M水酸化ナトリウム、3.0グラムの水からなる上層溶液を、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質の上に載置し、超音波処理を行った。この場合も、ロイシンで被覆されたミクロ粒子の乳白色の分散液が形成されたが、今回は、F−68両親媒性のブロック共重合体界面活性剤が、粒子の外面(主にロイシン)を被覆していた。
結晶被覆粒子の形成にロイシンが必要なことを示すための対照実験として、1.107グラムのディモダン(Dimodan)LS(以下では、「ヒマワリモノグリセリド」と称する)を1.000グラムの水と混合して、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を形成した。0.08グラムのプルロニックF−68を4.00グラムの水に加えることによって上層溶液を調製した。ロイシンを使用して上述の分散液を調製したのと同じ手順で、上層溶液を、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質上に載置し、試験管を密閉して超音波処理を行った。この事例では、ミクロ粒子は実質的に形成されず、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質は、ロイシンを使用した実験と同じ条件で数時間超音波処理した後も、目に見える塊のままであった。
本発明の被覆粒子のこの分散液は、12ヶ月間にわたって定期的に観察しても、不可逆的な凝集の徴候を示さなかった。わずかな撹拌のみを行った場合も、数週間のタイムスケールでは、不可逆的な凝集の徴候はみられなかった。撹拌を行わなかった場合には、凝集の徴候がみられたものの、5秒以上おだやかに振盪すると、凝集はすべて回復した。この分散液の小滴を顕微鏡(Edge Scientific R400 3−D)で1,000倍の倍率(100倍の対物レンズ、油浸、透過光)で調べたところ、サブミクロン粒子が極めて多量に含まれていた。
相対的に弱い有機被膜を有するこの種の粒子は、たとえば、にきび用のクリームに使用することができ、その場合には、活性物質、たとえばトリクロサンをクリーム中に含有させて、物質を皮膚に塗る際に加わる剪断力によって、被膜が放出されるようにすることができる。
実施例3
本実施例では、パクリタキセルを、内部コアの0.5%のレベルで含有させた。粒子の被膜は、ロイシンとしたが、ロイシンを用いると長期安定性をが得られることが、本明細書の他の実施例で示されている。
パクリタキセルを含有するナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、2mlのt−ブタノールに溶解した4mgのパクリタキセルを、0.280グラムのレシチン、0.091グラムのオレイルアルコール、0.390グラムのグリセロールを含むナノ構造の逆両連続キュービック相物質に混合することによって製造した。この過程では、このアルゴン中でブタノールを蒸発させたところ、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質が形成され、この物質は、粘稠で、光学的に等方性であった。サンプルを1時間遠心しても、その間に沈殿が生じることはなかった。光学的等方性は、偏向光学顕微鏡で確認した。一方、塩酸ロイシンのグリセロールへの溶液を、0.241グラムのロイシン、2.573グラムの1MのHCl、0.970グラムのグリセロールを混合し、その後、水と過剰のHClを50℃の高温プレート上で空気流中にて3時間乾燥させて留去することによって製造した。次に、0.882グラムのこのロイシン−HClのグリセロール溶液を、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質に加えた。その後、0.102グラムのプルロニックF−68を4.42グラムの水系緩衝液(pH5.0)に加えることによって上層溶液を調製した。この上層溶液をナノ構造の逆両連続キュービック相物質上に載置した後、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を2時間超音波処理することにより分散させて、ミクロ粒子を形成した。
この種の粒子は、抗悪性腫瘍薬であるパクリタキセルの制御放出に使用することができる。
実施例4
本実施例では、被膜をヨウ化銀としたので、この粒子は、写真プロセスで使用できる可能性がある。ヨウ化銀は、(一価のイオンのみを有する)単純な塩であるにもかかわらず、水への溶解度が極めて低いという点で、ある意味独特である。ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.509グラムのディモダンLS(Grinstedt ABなどから市販、本明細書では、「ヒマワリモノグリセリド」と称する)、0.563グラムの3回蒸留を行った蒸留水、0.060グラムのヨウ化ナトリウムを混合することにより調製した。上層溶液は、0.220グラムの硝酸銀、0.094グラムのプルロニックF−68、0.008グラムの塩化セチルピリジニウムを、3.01グラムの水に加えることにより、調製した。次に、この上層溶液を、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質上に載置し、1時間超音波処理することにより、ミクロ粒子の分散液を製造した。粒子の被膜は、水への溶解度の低いヨウ化銀であった。
実施例5
本実施例では、被膜として硫化カドミウムを使用した。硫化カドミウムは、他のイオンを少量ドープすると物性が大きく変化する非ラメラ結晶質化合物である。本実施例は、本発明では、気体、たとえば硫化水素ガスを使用することにより、結晶化および粒子の形成を誘導できることも示す。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.641グラムのディモダンLSを0.412グラムの水と十分に混合することによって調製し、さらに、0.058グラムの硫化カドミウム水和物を加えた。その後、0.039グラムの硫化カルシウムを、この混合物上に載置し、試験管をアルゴンガスで置換し、キャッピングした。0.088グラムのプルロニックF−68と1.53グラムのグリセロールを1.51グラムの1MのHClに加えることによって上層溶液を調製し、その後、この溶液をアルゴンで置換した。上層溶液を注射器に採取し、第一試験管に加えた。添加時には、試験管中で硫化水素ガスの匂いが検出され、黄色がかった沈殿の形成が認められ、硫酸カドミウムから硫化カドミウム(CdS)が形成される際に硫化水素ガスが作用したことが示唆される。この系を超音波処理したところ、硫化カドミウム被膜を有するミクロ粒子の分散液が得られた。
実施例6
本実施例は、粒子内部が、結晶質被膜によって、粒子外部の諸条件との接触から実質的に保護されていることを示す。本実施例で用いた被膜は、ロイシンである。亜鉛ダストとの何らかの接触があった場合、メチレンブルーは、1秒以内に無色となるが、本実施例では、亜鉛を加えても、24時間程度にわたって、無色となることはなかった。最終的には無となったものの、この無色化は、ロイシン被膜上の亜鉛によって生じた作用であると考えられる。
塩酸ロイシン水溶液を、0.122グラムのロイシンを1.179グラムのlMのHClと混合し、溶液の残量が約1グラムとなるまで溶液を留去することによって製造した。この水溶液に、0.922グラムのヒマワリモノグリセリドと、濃色のメチレンブルー水溶液10滴を加えた。上層溶液を、0.497グラムの1MのNaOHと0.037グラムのプルロニックF−68を、3.00グラムのpH5の緩衝液に加えることによって製造した。この上層溶液を、上記溶液上に載置し、系を超音波処理して、ミクロ粒子の分散液を形成した。この分散液の一部を濾過して、分散しなかった液晶を除去し、0.1グラムの100メッシュの亜鉛ダストを加えた。(亜鉛ダストをメチレンブルーの溶液とともに振盪した場合、亜鉛の還元作用によって、青色が、通常1秒程度、あるいはほぼ瞬時に消失する。)しかし、この方法で製造されたミクロ封入メチレンブルーの場合、色が消失して最終的に白色の分散液となるまでに24時間程度を要した。このように、亜鉛とロイシンの間には、これらの粒子の被膜を破壊しうるような相互作用が生じているにも関わらず、被膜はメチレンブルーを亜鉛の作用から保護し、亜鉛が染料を還元するのに要する時間を4〜5桁程度も増大させた。
こうした粒子を、2種の活性成分(たとえば、酸化に対して感受性の抗菌化合物であるトリクロサンと、強度の酸化作用を持つ洗浄剤である過酸化ベンゾイル)が互いに接触することを防止することが必要とされるような製品に用いるのだとすれば、この実験は、封入化合物と粒子外部の環境との接触を防止するためにロイシン被覆粒子を使用することの妥当性を示していることになる。
実施例7
本実施例では、ロイシン被膜は、粒子内部のメチレンブルー染料が、塩化第一鉄と接触することを防止する。接触が生じなかったことは、塩化第一鉄を分散液に加えた際に、予測される色の変化が生じなかったことから明らかである。このことから、この被膜が、イオンに対しても実質的に不透過性であることが示唆された。
塩酸ロイシンのグリセロール溶液を、0.242グラムのロイシン、2.60グラムの1MのHCl、1.04グラムのグリセロールを混合し、その後、この溶液を50℃の高温プレート上で空気流中で1.5時間乾燥させることによって製造した。ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、このロイシン−HCl溶液、0.291グラムのレシチン(Lucas−Meyerから購入したエピキュロン200)、0.116グラムのオレイルアルコール、0.873グラムのグリセロールを混合することによって調製し、少量のメチレンブルーを加えることによって、この物質を着色した。上層溶液を、0.042グラムのプルロニックF−68界面活性剤を4.36グラムのpH5の緩衝液に加えることにより調製し、この上層溶液を、上記のナノ構造の逆両連続キュービック相物質上に載置し、系を超音波処理して、ミクロ粒子の分散液を製造した。この分散液の一部に、0.19グラムの塩化第一鉄を還元剤として加えた。塩化第一鉄をメチレンブルー溶液に加えた場合、通常であれば、色が青緑(ターコイズ色)に変化するにもかかわらず、この場合には色の変化が生じなかったことから、ロイシン被覆粒子中にメチレンブルーを封入することによって、メチレンブルーと第一鉄化合物との接触が防止されたことが示唆された。
実施例6と同じく、この実験は、封入化合物、たとえば、この場合であれば還元剤に対して感受性であるメチレンブルーのような化合物が、被膜が放出されるまでは、粒子外部の還元条件から保護されうることを示している。このことは、たとえば、電気化学分野での、電流印加作用を、被膜の化学的放出によってゲート制御するような用途で有用な可能性がある。
実施例8
本実施例は、実施例1Aおよび実施例10と組み合わせて考慮すると、メチルパラベンで被覆した本発明の粒子を、2つの全く異なる方法、すなわち、加熱・冷却法のような熱的な方法と、酸・塩基法のような化学反応のいずれかによって製造しうることを示すものである。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.426グラムのヒマワリモノグリセリド(ディモダンLS)を0.206グラムの酸性の水(pH3)と混合することによって製造し、この物質に、0.051グラムのメチルパラベンと、痕跡量のメチレンブルー染料を加えた。この混合物を110℃に加熱し、振盪し、ビブロ(vibro)ミキサーに載置し、23℃の水に5分間投入した。HClでpH3の酸性とした2%プルロニックF−68溶液2mlを、その上に載置し、試験管をネジ蓋で密封し、振盪し、その後30分間超音波で処理したところ、メチルパラベンで被覆されたミクロ粒子の分散液が得られた。
この実験と実施例10のみからも示されるように、同じ化合物(この場合であればメチルパラベン)で被覆した粒子を、熱的な方法によっても、化学的な方法によっても製造することが可能である。このように汎用性が改善されていることは、ミクロ封入薬物を製薬目的で大量に製造する際などに、製造効率を最適化し、価格を低減するするうえで重要である。
実施例9
本実施例のナノ構造の逆両連続キュービック相物質は、薬物製剤への使用が一般的に承認されている複数の非イオン性界面活性剤を主成分としており、本実施例で使用する非イオン性界面活性剤は、わずかな温度変化で特性を調節できる液晶相物質が得られるものである。たとえば、にきび用クリームに用いた場合には、塗布時の温度では洗剤(洗浄剤)として特性を示し、処方時の温度では不溶性を示すようにすることができる。また、この物質は、調整された2種の界面活性剤の混合物を主成分とし、物質の相や特性が、2種の界面活性剤の比に敏感に左右されるので、この物質を用いると、内部コアの特性を容易かつ的確に制御することができる。さらにまた、本実施例では、透明な分散液が得られ、このことは、粒径約0.5ミクロンを超える粒子がほんの一部でも混ざった場合には、分散液が不透明となってしまうことからすると、特記に値する。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.276グラムの「OE2」(CPC International、Inc.の一部門であるAmercholから、「アメロキソール(Ameroxol)OE−2」として市販されているエトキシ化アルコール界面活性剤)と0.238グラムの「OE5」(CPC International、Inc.の一部門であるAmercholから、「アメロキソール」として市販されているエトキシ化アルコール界面活性剤である「アメロキソールOE−2」)を混合し、0.250グラムの水(過剰量の水を含む)を加えることによって製造した。この物質に、0.054グラムのメチルパラベンと痕跡量のメチレンブルー染料を加えた。混合物を110℃に加熱し、振盪し、ビブロミキサーに載置し、23℃の水に5分間にわたって投入した。HClでpH3の酸性としておいた2%プルロニックF−68溶液2mlを、その上に載置し、試験管をネジ蓋で密封し、振盪し、超音波で30分間処理したところ、メチルパラベンで被覆されたミクロ粒子の分散液が得られた。サブミクロン粒径の粒子が得られた結果、分散液が透明となったことは、重要である。
実施例10
本実施例は、上記のような酸・塩基法だけでなく、加熱・冷却法によってもメチルパラベン被覆した粒子を製造できることを示す。本実施例では、2つの相の混合物を分散させうることも示す。
レシチン(エピキュロン200、0.418グラム)を0.234グラムのオレイルアルコールおよび0.461グラムの酸性の水(pH3)と混合したところ、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質とナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質の混合物が得られた。この混合物から0.50グラムをとりわけ、0.049グラムのメチルパラベンを加えて、十分に混合した。この混合物を120℃に加熱し、高温状態のまま撹拌し、さらに、120℃に再加熱した。試験管を炉からとりだし、冷水に5分間投入した。その後、ネジ蓋をとりはずし、HClでpH3の酸性としておいた2%プルロニックF−68溶液2mlをその上に載置し、サンプルを撹拌、振盪し、最終的に超音波処理したところ、メチルパラベンで被覆されたミクロ粒子の乳白色の分散液が得られた。光学顕微鏡で調べると、2〜10ミクロンの粒径範囲のミクロ粒子が観察された。過剰のメチルパラベンの結晶質物質も観察された。
本実施例は、ナノ構造相が2種共存する混合物が、ミクロ粒子の内部を構成しうることを示すものである。このことは、制御放出によって薬物を送達し、その際に、それぞれ薬物を含有させた2種の相の混合物を使用して所望の薬物動態を実現する場合に重要となる可能性がある。たとえば、逆ヘキサゴナル相とキュービック相の混合物の場合、孔の空間幾何形状が異なるために、これらの相からの放出された薬物は異なった動態をとることになり、その結果生じる薬物の動態は、これらの2種のプロファイルの組み合わせとなる。
実施例11
本実施例は、水に対して感受性の化合物を保護する等の目的で、水を含まない粒子内部を製造できることを示す。
水のかわりにグリセロール(過剰に存在)を使用してナノ構造の両連続逆キュービック相液晶物質を製造した以外は、実施例10の製造で使用したのと同じ手順を使用した。量は、レシチンを0.418グラム、オレイルアルコールを0.152グラム、グリセロールを0.458グラム、メチルパラベンを0.052グラムとした。その結果、メチルパラベン被覆ミクロ粒子の乳白色の分散液が得られた。
水に対して感受性の活性化合物を保護することは、加水分解に対して不安定な活性物質を含む口腔衛生関連の製品などでは重要である。
実施例12
本実施例では、硝酸カリウム被覆粒子にカプサイシンを含有させ、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質の主成分は、極めて安価な界面活性剤とした。この被膜は、水を加えるだけで容易に除去され、たとえば作物スプレー・ガンのように、分散液の流れと水の流れを合流させつつ液体を小滴にエアロゾル化させる装置中でも、水を加えるだけで被膜が容易に除去される。この場合、硝酸カリウムが、肥料としての役目も兼ねることに注意されたい。
非イオン系界面活性剤「OE2」(0.597グラム)および「OE5」(0.402グラム)を、硝酸カリウムで飽和させた水0.624グラムと混合した。この混合物に、活性化合物であるカプサイシン(Snyder Seed Corporationから入手した純粋の結晶状態のもの)を0.045グラム加えた。次に、この混合物の0.552グラムを取り出し、0.135グラムの硝酸カリウムを加え、全混合物を、80℃で5分間加熱した。上層溶液を、プルロニックF−68の2%水溶液を分取し、硝酸カリウムで飽和させることによって製造した。溶融混合物を振盪して混合し、80℃の炉に2分間戻した。試験管を、20℃の水に5分間投入し、この時点で、上層溶液を、載置し、全配合物をスパチュラでかきまぜ、キャップで覆い、振盪し、超音波処理を行ったところ、硝酸カリウムで被覆したミクロ粒子の分散液が得られ、この粒子は、活性成分のカプサイシンを内部に含有していた。
この分散液を、等容積の水で希釈したところ、(硝酸カリウムは、室温で水への溶解度が高いので、)被膜が溶解した。被膜が溶解したことは、粒子が急速に凝集、融合して、大型の塊となったことによって示された。各粒子の内部は粘着性の液晶なので、被膜が不在の場合には、凝集と融合が生じる。
ここに記載する実施例は、装飾植物および/または農作物に使用して、動物による葉の摂食を抑制するスプレーの実施例である。我々は、(赤ピーマンおよび唐辛子に含まれる)非毒性化合物で、数ppm程度の濃度で口内に焼け付くような感覚を生じる化合物であるカプサイシンを封入することに成功した。カプサイシンは、齧歯類および他の動物の抑制剤としての商業的利用されてきた物質である。
純粋なカプサイシンを、結晶質の硝酸カリウム(硝石)の被膜を有する粒子内部のキュービック相に封入した。粒子外部の外液は、硝酸カリウムの飽和水溶液とした。この溶液は、希釈を受けるまでは被膜の溶解を防止するが、分散液を、約1:1の水で希釈すると、粒子の被膜はほぼ完全に溶解する。(この溶解はビデオテープ上で確認し、テープを見ると、被膜が溶解し、その後粒子内部の融着が生じていることが明らかであった。)
希釈後に被膜の溶解が生じると、粒子内部が露出する。粒子内部は、キュービック相であり、このキュービック相は以下特性、すなわち
A)水への不溶性、
B)極めて高度の粘着性および付着性、
C)非常に高い粘度、
を、必須の特性として備えている。これらの3特性を同時に備えているので、被膜除去後のキュービック相粒子は植物の葉に付着し、また、特性Aを備えているので、雨が葉にかかった場合も溶解することがない。
この同じ3特性は、口腔癌治療用の光線力学療法(PDT)用薬物を送達する際に用いる制御放出用のペーストとして使用するキュービック相のバルクが、動物実験で良好な結果を得るうえでも必須であった。
得られたキュービック相粒子中のカプサイシンの濃度は、関節炎の治療に使用されている製剤の濃度より2桁高かった。含有量は、おそらく、20%程度まで増大させることができるはずである。
商業化の立場からすると、この分散液中の成分は極めて安価であり、また、いずれも、食品、局所適用などへの使用が承認済みの成分である。また、硝酸カリウムは、肥料として周知の物質である。
実施例13
本実施例でも、前実施例と同じく、カプサイシン/硝酸カリウムを使用したが、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質の主成分は、植物および動物の生命において必須の化合物であり、なおかつ安価に入手しうるレシチンとした。このナノ構造の逆両連続キュービック相物質は、また、少なくとも、通常の天候条件で遭遇する可能性のある40℃までの範囲であれば、広範囲の温度で安定である。
1.150グラムの大豆レシチン(エピキュロン200)を、0.300グラムのオレイルアルコール、1.236グラムのグリセロール、0.407グラムの硝酸カリウムと混合した。0.150グラムの活性カプサイシンをさらに加え、混合物を十分に混合した。次に、0.50グラムの硝酸カリウムを加え、混合物全体を120℃に5分間加熱した。上層溶液を、プルロニックF−68の2%水溶液を分取し、硝酸カリウムで飽和させることによって製造した。溶融した混合物を撹拌し、120℃の炉に3分間戻した。試験管を、冷水に5分間投入し、この時点で、上層溶液をその上に載置し、配合物全体をスパチュラでかきまぜ、キャップをかぶせ、振盪し、超音波処理を行い、さらに、振盪と超音波処理を交互に30サイクル実施した。その結果、硝酸カリウム被覆ミクロ粒子の分散液が得られ、この粒子は、活性成分であるカプサイシンを約5%のレベルで内部に含有していた。過剰な硝酸カリウムの結晶も存在していた。
用途は、実施例12の用途と同様であるが、内部にレシチンを使用しているので、粒子内部が植物の細胞膜にさらにしっかりと付着し、より良好な送達が実現する可能性がある。
実施例14
本実施例では、フェロシアン化第二銅−被覆粒子が剪断に対して抵抗性であることが示された。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.296グラムのヒマワリモノグリセリド(ディモダンLS)と0.263グラムのフェロシアン化カリウムの10%水溶液を混合することによって製造した。上層溶液を、0.021グラムの硫酸第二銅および0.063グラムのプルロニックF−68を、4.44グラムの水に加えることによって製造した。上層溶液をナノ構造の逆両連続キュービック相物質上に載置し、試験管をネジ蓋で密封し、系を45分間超音波処理した。その結果、粒径が3ミクロンのオーダーのフェロシアン化第二銅被覆ミクロ粒子が高濃度で得られた。この方法では、超音波処理に伴う温度変化を除いては、特に温度を変化させることなくミクロ粒子を製造することができ、乳化をもっと別のかたちで行えば、そうした温度変化を回避することもできる。また、pHの変化も不要である。
顕微鏡のスライドガラスとカバーガラスの間に小滴を載置して顕微鏡で観察したところ、フェロシアン化第二銅被覆粒子は、剪断力に対して比較的抵抗性であることが見いだされ、カバーガラスを分散液にこすりつけるように移動しても、指で僅かな圧力をかけただけでは、粒子の形状が失われたり粒子同士が融合したりする様子は観察されなかった。この点は、ヒドロキシ炭酸マグネシウム被覆した粒子などで、僅かな圧力によって粒子の形状が大きく失われ、著しい粒子の融合が生じたのとは対照的であった。これらの観察結果は、フェロシアン化第二銅の高度の剛性と符合するものである。
剪断力に対して抵抗性の被覆を有する粒子は、ポンプによって粒子を移動させる必要があるような用途で重要となる可能性がある。こうした用途では、従来から使用されているポリマー被覆粒子では、剪断力による被膜の劣化ゆえに寿命の限界があることがわかっている。
実施例15
本実施例では、本発明の結晶被覆粒子の内部に、カプサイシンを、比較的高含量、すなわち9重量%で含有させた。ナノ構造の逆両連続キュービック相を、0.329グラムのレシチン、0.109グラムのオレイルアルコール、0.611グラムのグリセロール、0.105グラムのカプサイシン(ニューヨーク州バッファローのSnyder Seed Corp.から、結晶状態のものを贈呈されたもの)を混合することによって製造した。このキュービック相に、0.046グラムの硫酸第二銅を加えた。上層溶液を、0.563グラムのフェロシアン化カリウムの10%水溶液と、2.54グラムの水を混合することによって製造した。この上層溶液を、キュービック相−硫酸第二銅混合物上に載置し、試験管を2時間超音波処理した。フェロシアン化第二銅を生じる反応は、化合物が深い赤褐色を呈することによって容易に確認された。ここまでの過程で、キュービック相が、フェロシアン化第二銅被覆粒子内に分散していた。被膜は、フェロシアン化第二銅から形成されており、このフェロシアン化第二銅は、強力な物質であるとともに、硫酸イオンに対してある程度の選択的透過性を有している。実施例14からもわかるように、この被膜物質は強固な結晶であり、カプサイシンは齧歯類の嗜好からすると極度に不快な物質であるので、こうした粒子は、段ボール箱や農業作物などに対する損害を防止するための齧歯類の抑制剤として有用な可能性があり、特に、齧歯類のかじる動作によってミクロ粒子が開放され、カプサイシンが動物の味蕾に接触するまでは、粒子が(粒子を添加した箱の製造や、粒子の植物への堆積の間などに生じる)弱い剪断力に対しては抵抗性である必要のある場合に有用な可能性がある。
実施例16
本実施例では、活性物質として抗体を含有させた以外は実施例14と同じ手順を用いることによって、フェロシアン化第二銅被覆ミクロ粒子を製造した。具体的には、抗3’,5’環状アデノシン一リン酸(AMP)抗体を、内部の1重量%の含量で、活性物質として含有させた。キュービック相を、0.501グラムのヒマワリモノグリセリドを0.523グラムの水と混合することによって製造した。このキュービック相に、0.048グラムのフェロシアン化カリウムを、約0.010グラムの抗体とともに加えた。遠心後、過剰の水溶液を除去した。上層溶液を、0.032グラムの硝酸銅と0.06グラムのプルロニックF−68を、3.0グラムの水に加えることによって製造した。上層溶液を載置し、超音波処理したところ、フェロシアン化第二銅被覆ミクロ粒子の乳白色の分散液が得られた。こうした粒子は、バイオリアクターのようなバイオテクノロジー分野で有用である可能性があり、すなわち、所望の時点で被覆が放出されて生物活性抗体が露出する前に(たとえば、加圧された投入口で)遭遇するような穏やかな剪断条件で生物活性抗体が放出されてしまうことを制限するうえで、剛性のフェロシアン化第二銅被膜が有用である可能性がある用途で有用である可能性がある。
実施例17
本実施例では、エチルヒドロクプレインが、極めて硬いシェルを形成する。本実施例では、酸・塩基法を使用した。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.648グラムのヒマワリモノグリセリド(ディモダンLS)と0.704グラムの水を混合することによって製造し、さらに、0.084グラムの塩酸エチルヒドロクプレインと痕跡量のメチレンブルーを加えた。上層溶液を、1.01グラムの0.1Mの水酸化ナトリウムと0.052グラムのプルロニックF−68を3.0グラムの水に加えることによって製造した。上層溶液を、液晶上に載置した後に、系を超音波処理したところ、エチルヒドロクプレイン(遊離塩基)被覆ミクロ粒子の分散液が得られた。光学顕微鏡で調べたところ、粒子の大半は、粒径が1ミクロン未満であった。
乾燥時にも崩壊することのない粒子は、乾燥した天候条件によって低耐性粒子の時期尚早な放出が生じがちな、農業用活性物質(除草剤、フェロモン、殺虫剤、等)の徐放などに際して有用な可能性がある。
実施例18
本実施例では、ロイシン被覆粒子を、加熱・冷却法で製造した。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、1.51グラムのヒマワリモノグリセリド(ディモダンLS)と0.723グラムの水を混合することによって製造した。分取したナノ構造の逆両連続キュービック相物質0.52グラムに、0.048グラムのDL−ロイシンを加えた。混合物をよくかきまぜ、80℃に加熱し、水に投入することによって室温に冷却した。ただちに、プルロニックF−68の2%水溶液をその上に載置し、混合物を振盪し、超音波処理したところ、、ロイシン被覆ミクロ粒子の乳状分散液が得られた。
同じ被膜(この場合はロイシンの被膜)を、熱を利用した方法と酸・塩基法のいずれでも製造できることは、製造にあたっての自由度の点から重要である。というのも、たとえば、ある種の活性物質(たとえばタンパク質)が、温度によっては極めて容易に変性するものの、pHに対しては抵抗性であるのに対し、別の化合物は、温度に対しては抵抗性であるものの、酸性または塩基性のpHでは加水分解を生じることもあるからである。
実施例19
本実施例は、外部の媒体(この場合は水)に酸素を通気した場合でも、内部の成分が酸素と接触することを防止できることを示す。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質(過剰の水を含有)を、2.542グラムのヒマワリモノグリセリドと2.667グラムの水を混合することによって製造し、ここから0.60グラムのナノ構造の逆両連続キュービック相物質を分取した。次に、0.037グラムのDL−ロイシンと0.497グラムの1MのHClを混合して乾燥し、0.102グラムの水を加えて、塩酸ロイシンの溶液を得た。この溶液を、0.60グラムのナノ構造の逆両連続キュービック相物質に、痕跡量のメチルレッド染料とともに加えた。ナノ構造の逆両連続キュービック相物質は、鮮明な黄色の物質であるが、フィルム状に広げると、酸化のために、約3分間でクリムソンレッドに変化した。上層溶液を、0.511グラムの1Mの水酸化ナトリウム、0.013グラムのプルロニックF−68、2.435グラムの水を混合することによって製造した。上層溶液を液晶上に載置し、超音波処理を行うことによって、ロイシン被覆メチルレッド含有ミクロ粒子の分散液を、製造した。F−68含有、または非含有のメチルレッド水溶液に通気した際に、メチルレッドの水溶液が黄色からクリムゾンレッドに迅速に変化することをまずチェックし、次に、メチルレッド含有ミクロ粒子の分散液に空気を吹きこんだところ、色が黄色から変化することはなく、メチルレッドをミクロ粒子の内部に封入することによって、メチルレッドが酸化作用から保護されることが示された。
活性化合物の酸素との接触が防止されたこうした粒子は、酸素に対して感受性の化合物、たとえば食物サプリメントとしての鉄を長期にわたって保存する際に有用な可能性がある。
実施例20
本実施例では、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質の内部と外部(連続)被膜の双方に、水の代替物質としてグリセロールを使用することにより、分散液から水を実質的に排除した。
水のかわりにグリセロールを使用することによって、ミクロ粒子の分散液を製造し、その際には、大豆レシチンおよびオレイルアルコールを、2.4:1の比で混合してから、過剰のグリセロールを加え、混合、遠心した。0.70グラムのこのナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.081グラムのメチルパラベンと混合した。上層溶液を、臭化セチルピリジニウムをグリセロールに2%のレベルで加えることによって製造した。ナノ構造の逆両連続キュービック相物質とメチルパラベンの混合物を密封して120℃に加熱し、十分に混合し、再度120℃に加熱してから、冷水に投入し、この時点で、上層溶液をその上に載置し、試験管を(ネジ蓋で)再度密封し、超音波処理を行ったところ、メチルパラベン被覆ミクロ粒子のグリセロール連続相への分散液が得られた。こうしたグリセロール系の分散液は、水に対して感受性であるような活性物質をミクロ封入するうえで重要である。
こうしたミクロ粒子の分散液を使用すると、各種の用途で遭遇する加水分解に対して不安定な活性物質を、被覆の放出後に関しても、水との接触から保護することが可能となる。
実施例21
封入したメチレンブルーとの接触に亜鉛を使用した実施例6と同様に、硝酸カリウムの被膜を使用して、粒子を製造した。また、同じ分散液について、二クロム酸カリウムによる接触を試みた。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.667グラムの大豆レシチン、0.343グラムのオレイルアルコール、0.738グラムのグリセロール、痕跡量のメチレンブルーを混合することによって製造した。0.469グラムの平衡相に、0.225グラムの硝酸カリウムを加えた。上層溶液を、2%プルロニックF−68を硝酸カリウムの飽和水溶液に加えることによって製造した。この上層溶液を、液晶上に載置し、硝酸カリウムで被覆されたミクロ粒子中に液晶が分散されるまで、系の超音波処理を行った。分散液の色は、淡青色であった。メチレンブルーをミクロ粒子に封入することによって、メチレンブルーが保護されていることを、2種の試験を使用して示した。すなわち、この分散液約1mlに、約0.1グラムの亜鉛微粉(亜鉛粉は、溶液中でメチレンブルーと接触すると、色の消失を生じる)を加えた。振盪後、遠心分離器でごく短時間遠心することによって、すなわち、合計約10秒間程度となるように、遠心分離器に載置し、遠心し、遠心分離器から取り出すことによって、メチレンブルー含有粒子の色の判定が、亜鉛によって妨害されないようにした。亜鉛による処理を行ったことで青色が減じることはほとんどなく、ミクロ粒子で被覆することによって、メチレンブルーの亜鉛との接触が防止されることが示された。次に、分取しておいた淡青色の分散液に二クロム酸カリウムを加えたところ、液色が緑系に変化し、溶液中のメチレンブルーが二クロム酸カリウムと接触した場合に生じるような紫褐色の色はまったく見られなかった。
本実施例の被覆粒子では、費用対効果の極めて高い被覆材料である硝酸カリウムを使用したが、活性化合物は、外部条件による化学的分解から保護された。このことからもわかるように、本被覆粒子は、農業用途での徐放などで重要となる可能性がある。
実施例22
本実施例は、包接化合物からなる選択透過性被膜を有するミクロ粒子の実施例である。この特定の包接化合物、すなわちいわゆるウェルナー錯体には、ゲスト分子の除去後に多孔形状が残存するという特性がある。クラスレートおよび包接化合物からなる被覆は、分子のサイズ、形状、および/または極性に応じて、放出するか、吸収するかの選択が行われるような選択的空孔性を有する被膜として重要である。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、まず、0.525グラムのヒマワリモノグリセリドと0.400グラムの水を混合することによって製造し、さらに、0.039グラムの塩化マンガン(MnCl)と0.032グラムのチオシアン化ナトリウムを加えた。上層溶液を、0.147グラムの4−ピコリン(4−メチルピリジン)を3.0mlのプルロニックF−68の2%水溶液に加えることによって製造した。この上層溶液を、液晶混合物上に載置し、試験管を密封し、超音波処理を行ったところ、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質が分散してミクロ粒子が得られ、この粒子は、マンガンのウェルナー錯体、すなわちMn(NCS)(4−MePy)で被覆されていた。
本実施例の被膜は、産業廃棄物の流れから重金属を除去する際に利用できる可能性がある。すなわち、本実施例では、被膜を、多孔質結晶(クラスレートとして公知の物質)から形成することができ(クラスレートを用いると、原子イオンが被膜を通過してキュービック相の内部に侵入することができる)、内部を、極めて高性能なイオン吸収剤としておくことができる(イオン吸収性能が高いのは、表面電荷密度が高いためであり、こうした高い表面電荷密度は、陰イオン界面活性剤、またはもっと選択性の高いキレート形成基、たとえばビピリジニウム基などを使用することにより達成できる)。孔は、永久的なものとするのが最良である可能性が高い。クラスレートの被膜が選択性を有することにより、従来の吸着剤(たとえば活性炭および巨大網状ポリマー)では不可避であった吸収力の低下という問題、すなわち、利用可能な吸着部位が標的重金属イオンと競合してしまう大型化合物が存在するために吸着力が低下してしまうという問題が解決される。吸着剤の再生は、イオン交換によって行うことができ、その場合には、粒子および被膜を傷つけることなく処理することができる(この後者の工程は、期せずしてではあるが、放出の実施例に該当することになる)。
実施例23
本実施例では、メチルパラベンを含む外側被膜を有し、特別の染料をナノ構造の逆両連続キュービック相物質に含有させた被覆粒子を、この染料との接触時には色の変化を生じるシアン化物化合物で評価した。シアン化物イオンは極めて小型であるため、この試験が成功すれば、被膜が、極めて小型のイオンに対しても不透過性であることが示されたことになる。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.424グラムのヒマワリモノグリセリドと0.272グラムの水を混合することによって製造し、さらに、0.061グラムのメチルパラベンと痕跡量の染料である1,2−ピリジルアゾ−2−ナフトールを加えた。1%臭化セチルピリジニウムからなる上層溶液を調製した。液晶を、120℃の炉中で5分間加熱し、激しくかきまぜ、再加熱し、冷水に投入し、この時点で、上層溶液を液晶上に載置し、試験管を密封し、超音波処理装置に搭載したところ、平均粒径が1ミクロンのオーダーのメチルパラベン被覆ミクロ粒子の分散液が得られた。次に、シアン化第一銅を使用して、染料が外部の相との接触から保護されていることを例証した。シアン化第一銅は、1,2−ピリジルアゾ−2−ナフトール溶液に加えた場合には(F−68の存否にかかわらず)、色がオレンジ色から鮮明な紫色へと変化する。しかし、分取した染料含有粒子分散液にシアン化第一銅を加えても、色の変化は生じず、メチルパラベンの被膜によって、染料が、シアン化第一銅との接触から保護されていることが示された。第一銅イオンが、1ミクロンの粒子の中心まで拡散するのに要する時間は、計算上、数秒以下のオーダーであり、粒子が被膜によって封止されていたのでなければ、色が変化していたはずである。
活性化合物が、外部環境に由来するイオンと接触することを防止することは、薬物の送達などで有用な可能性があり、特に、多価イオンと接触することによって錯体を形成して活性を失う可能性のある高分子電解質を送達する場合には、こうした保護が有用である可能性が高い。
実施例24
本実施例では、上記実施例のシアン化物イオン試験を、硝酸カリウム被覆粒子について実施した。
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.434グラムのヒマワリモノグリセリドと0.215グラムの水を混合することによって製造した。この物質に、0.158グラムの硝酸カリウムと痕跡量の染料である1,2−ピリジルアゾ−2−ナフトールを加えた。1%臭化セチルピリジニウムの硝酸カリウムの飽和水溶液への溶液からなる上層溶液を調製した。液晶を120℃の炉中で5分間加熱し、激しくかきまぜ、再加熱し、冷水に投入し、この時点で、上層溶液を液晶上に載置し、試験管を密封し、超音波装置に入れて処理したところ、硝酸カリウム被覆ミクロ粒子の分散液が得られた。分取した染料含有粒子分散液にシアン化第一銅を加えたところ、色の変化がわずかにのみ生じ、硝酸カリウム被膜によって、染料のシアン化第一銅との接触が実質的に防止されることが示された。
こうした粒子の有用性は、実施例23の場合と類似しているが、本実施例で使用したのは、対費用効果の大きい硝酸カリウム被膜である。
実施例25
ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.913グラムの大豆レシチン(エピキュロン200)、0.430グラムのオレイルアルコール、0.90グラムのグリセロール(過剰のグリセロール)を混合することによって調製した。十分に混合し、遠心した後、0.50グラムのナノ構造の逆両連続キュービック相物質を取り出し、0.050グラムの第二リン酸ナトリウムを加えた。上層溶液を、0.10グラムの塩化カルシウムを、2%プルロニックF−68および1%臭化セチルピリジニウムを含む水溶液3mlに加えることによって製造した。この上層溶液を、液晶とリン酸ナトリウムの混合物上に載置した後、試験管を密封し、超音波処理した。その結果、リン酸カルシウム被覆ミクロ粒子の分散液が得られた。リン酸カルシウムは、骨や歯をはじめとする各種の構造成分の主成分であるので、リン酸カルシウムの被膜は、生物学分野ならではの有用性を有している。
実施例26
本実施例は、乾燥時、すなわち、外部の水相の乾燥時にも、本実施例の炭酸マグネシウム被覆粒子は崩壊しないことを示す。したがって、内部を、水分含量の高い液晶相物質として保ったまま、乾燥粉末を製造することが可能となる。
「桐−ソルビトール化合物」の製造。まず、「桐−ソルビトール化合物」を以下のようにして製造した。
反応フラスコ中で、110グラムの桐油(Alnor Oilから、中国産桐油として入手)を11.50グラムのソルビトールと混合した。フラスコをアルゴンで置換し、密封し、170℃に加熱し、磁気を利用して撹拌した。炭酸ナトリウム(3.6グラム)を加え、混合物を170℃で1時間撹拌した。この時点で、3.4グラムの3−クロロ−1,2−プロパンジオールを加え、混合物を室温に冷却した。この反応で得られた油相のうちの75mlを、300mlのアセトンと混合し、遠心後に白色沈殿物を除去した。次に、18グラムの水と100mlのアセトンを加え、混合物を遠心し、底に残留した油分を除去した。その後、44グラムの水を加え、底にたまった相を再度採取し、廃棄した。最後に、20グラムの水を加え、今回は、底に残留した油分を採取し、アルゴン気流中で乾燥したところ、ソルビトールの桐脂肪酸エステル約50mlが得られた。この生成物を、以下では「桐−ソルビトール生成物」と称する。
実施例26A ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.110グラムの「桐−ソルビトール生成物」、0.315グラムの大豆レシチン、0.248グラムの水を十分に混合し、遠心することによって製造し、さらに、0.085グラムの炭酸カリウムを加えた。次に、上層溶液を、0.118グラムのプルロニックF−68と0.147グラムの硫酸マグネシウムを5.34グラムの水に加えることによって製造した。この上層溶液を、液晶上に載置し、試験管を密封し、振盪し、2時間超音波処理し、最後に再度よく振盪したところ、ヒドロキシ炭酸マグネシウム被覆ミクロ粒子の乳白色分散液が得られた。2倍量の水をこの分散液に加えることによって、この分散液を希釈し、過剰な無機結晶質物質を溶解させた。分散液1滴分を顕微鏡のスライドガラス表面に静かに広げ、乾燥させた。10分間乾燥させたところ、粒子外部の水が、ほぼ完全に蒸発した。顕微鏡で調べたところ、水分乾燥後も粒子は形状を保持しており、非被覆の粒子を同様に乾燥した場合に観察されるように(乾燥液晶混合物が液体となる場合)非晶質塊となることはないことが示された。
実施例26B 実施例26Aで製造した分散液を40℃に加熱した。相挙動を調べたところ、この温度では、内部の相は、ナノ構造の液体L2相物質であった。分散液は、乳白色のままであり、顕微鏡で観察したところ、ミクロ粒子が保持されていることが示された。このL2相は、油、水、界面活性剤(すなわちレシチン)を含むので、この相もナノ構造のマイクロエマルションであった。
実施例27
本実施例では、炭酸マグネシウム被覆粒子の内部コアのナノ構造の逆両連続キュービック相物質のマトリックス中に、受容体タンパク質が配置されており、この被覆粒子が、さらに、ヒドロゲル中に包埋されている。粒子の被膜は、輸送および貯蔵の間にこの受容体タンパク質を保護するために利用することができ、その後は、使用直前に洗浄するだけで容易に除去することができる。本実施例と実施例28では、本発明の被覆粒子が内部に包埋されたヒドロゲルビーズを使用することによって、本発明の被覆粒子を、アフィニティ・クロマトグラフィーなどに使用することを想定している。
0.470グラムの大豆レシチン(エピキュロン200)を0.183グラムの「桐−ソルビトール製品」(上述)および0.359グラムの水と混合し、さらに、0.112グラムの炭酸カリウムを加え、数時間遠心し、過剰の水相を除去した。シビレエイのニコチンアセチルコリン受容体の調製物を、L.L.PradierおよびM.G.McNameeのStructure and Function of Membranes(膜の構造および機能)(P.Yeagle編,1992,pp.1047−1106)に記載されたプロトコールにしたがって製造した。この調製物では、50マイクロリットルの脂質あたり50マイクログラムの受容体タンパク質が含有されており、脂質の大半は、オレオイルホスファチジルコリン(DOPC)であった(残部は、他の膜脂質成分、たとえば、他のリン脂質、コレステロールなどであった)。この量の調整物を、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質と炭酸カリウムの混合物に加え、全混合物を静かに、かつ、複屈折が不在であることで十分混合されていることが確認されるまで十分な時間かきまぜた。上層溶液を、0.328グラムの硫酸マグネシウム、0.324グラムのプルロニックF−68、0.0722グラムの臭化セチルピリジニウムを、20.02グラムの水に加えることによって製造した。この上層溶液をの5グラムを、受容体を含有させたナノ構造の逆両連続キュービック相物質の入った試験管に載置し、試験管を密封し、浸透し、2時間超音波処理したところ、ヒドロキシ炭酸マグネシウムで被覆された受容体含有ミクロ粒子の分散液が得られ、粒子の実質的な部分は、粒径が、0.5〜1ミクロンであった。
その後、ミクロ粒子をポリアクリルアミドヒドロゲル中に固定した。すなわち、分散液に、アクリルアミド(0.296グラム)、メチレン−ビス−アクリルアミド(0.024グラム、架橋剤)、過硫酸アンモニウム(0.005グラム、開始剤)、テトラメチルエチレンジアミン(TMED、0.019グラム、共開開始剤)を加えたところ、30分未満で、アクリルアミドが重合して、架橋ヒドロゲルとなった。このヒドロゲルの薄片を顕微鏡で調べたところ、もとの分散液と同様、高濃度のミクロ粒子が観察された。
このヒドロゲルを、サイズが約30ミクロンとなるまでさらに断片化した。この作業は、ヒドロゲルを、メッシュサイズが40ミクロンのワイヤーメッシュを通して押し出すことによって行った。
実施例28
本実施例では、本発明の被覆粒子の内部コア中に受容体タンパク質を配置した。被膜は、硝酸カリウムとし、被覆粒子は、さらに、ヒドロゲルビーズ中に固定化した。受容体担持ビーズについては、カリフォルニア大学デイビス校で実施した放射能測定試験で、結合活性を有するとの結果が得られた。
0.470グラムの大豆レシチン(エピキュロン200)を、0.185グラムの「桐−ソルビトール製品」(上述)および0.368グラムの水と混合し、さらに、0.198グラムの硝酸カリウムを加え、十分に混合した。シビレエイのニコチンアセチルコリン受容体の調製物を、上述の実施例に記載したようにして調製した。この調製物では、50マイクロリットルの脂質あたり50マイクログラムの受容体タンパク質が含有されており、脂質の大半は、オレオイルホスファチジルコリン(DOPC)であった。55ミリグラムの調製物を、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質と炭酸カリウムの混合物に加え、全混合物を静かに、かつ、十分混合されていることが確認されるまで十分な時間かきまぜた。上層溶液を、0.128グラムのプルロニックF−68および0.015グラムの臭化セチルピリジニウムを、6.05グラムの硝酸カリウムの飽和水溶液に加えることによって製造した。ナノ構造の逆両連続キュービック相物質と硝酸カリウムの調製物を40℃に加熱して硝酸カリウムを溶解し、10℃の水に10分間投入した。上層溶液を、試験管中の受容体を含有させたナノ構造の逆両連続キュービック相物質上に載置し、試験管を密封し、浸透し、2時間超音波処理したところ、硝酸カリウムで被覆された受容体含有ミクロ粒子の分散液が得られ、粒子の実質的な部分は、粒径が、0.3〜1ミクロンであった。
このミクロ粒子を、その後、ポリアクリルアミドヒドロゲル中に固定した。すなわち、分散液に、アクリルアミド(0.365グラム)、メチレン−ビス−アクリルアミド(0.049グラム、架橋剤)、過硫酸アンモニウム(0.072グラム、開始剤)、テトラメチルエチレンジアミン(TMED、00.011グラム、共開開始剤)を加えたところ、数時間以内で、アクリルアミドが重合して、架橋ヒドロゲルとなった。このヒドロゲルの薄片を顕微鏡で調べたところ、もとの分散液と同様、高濃度のミクロ粒子が観察された。
ヒドロゲルを、サイズが約30ミクロンとなるまでさらに断片化した。この作業は、ヒドロゲルを、メッシュサイズが40ミクロンのワイヤーメッシュを通して押し出すことによって行った。ヒドロゲル小片のサイズが40ミクロンである場合、小型分子がヒドロゲル小片の中心まで拡散するのに要する時間は数秒程度以下であると予測され、以下に記載する受容体のテストに対して有意な影響を及ぼすものではない。
125Iで標識したブンガロトキシンをリガンドとして使用し、上述のナノ構造の逆両連続キュービック相物質のミクロ粒子に固定化したアセチルコリン受容体系を使用して、受容体に対する結合についての検定を行った。結合についての標準的な検定法については、Mark McNamee博士のグループの刊行物に記載されている。結果から、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質のミクロ粒子に固定化したアセチルコリン受容体系は、標準受容体調製物で測定されたレベルの約70%で、ブンガロトキシンとの結合を示し、また、このタンパク質結合特性が、固定化の過程を通じて保持されるのみなず、サンプルの調製日からサンプルの試験日までに経過した期間(2ヶ月を超える期間)を通じて保持されていることもわかった。
以上の実施例26〜28は、体内の特定部位をターゲティングしうる受容体タンパク質を含有させた本発明の粒子の製造について示すばかりでなく、こうした粒子を生化学的検定に利用して、一般的に使用されているリポソームと比べて安定性を大幅に改善することについても示すものである。リポソームは、本質的に不安定なので、生化学的検定に用いるのに好都合とはいえない。こうした検定は、臨床診断でも、また、薬物のスクリーニングでも重要である。
実施例29
上述の実施例22と同じく、本実施例でもクラスレート被覆粒子を製造した。本実施例では、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質の内部を、被膜を通過することのできる酸素の作用を利用して重合する(水の通過は、被膜によって防止される)。
クリルエビから抽出したレシチンを、クリルエビホスファチジルコリンとして、アラバマ州バーミンガムのAvanti Polar Lipidsから入手した。0.220グラムのこのレシチンを、0.110グラムの「桐−ソルビトール製品」、0.220グラムの水、0.005グラムのコバルトナフタレン含有コバルト・ドライヤー(美術材料供給業者であるGrumbacherから入手)、0.30グラムのチオシアン化カリウムと混合したところ、緑色のナノ構造逆両連続キュービック相物質が形成された。上層溶液を、0.309グラムの塩化マンガン、0.105グラムの4−ピコリン(4−メチルピリジン)、0.113グラムのプルロニックF−68、0.021グラムの臭化セチルピリジニウムを、5.10グラムの水に加えることによって製造した。この上層溶液を、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質上に載置し、試験管を密封し、振盪し、超音波浴に氷水を入れることにより超音波処理した。緑色のナノ構造逆両連続キュービック相物質が分散してミクロ粒子となるにつれて、反応によって色が褐色に変化した。2時間後、実質的にすべてのナノ構造の逆両連続キュービック相物質が分散して粒子となり、その大半は粒径がサブミクロンであった。被膜は、ウェルナー化合物から形成されており、このウェルナー化合物は、文献的には、分子状態の酸素の吸収(または通過)を許容するチャネルを多数有している。クリルエビ・レシチンの不飽和度が高く、桐−ソルビトール生成物の不飽和度も高く、さらに、コバルトドライヤーが触媒作用を有しているので、このミクロ封入ナノ構造の逆両連続キュービック相物質は、大気中の酸素と接触することによって重合可能となっている。
なお、本実施例で記載したクラスレートについては、すでに記載済みである(実施例22)。
実施例30
本実施例では、ナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質を分散させた。
ナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質を、0.369グラムの大豆レシチン(エピキュロン200)、0.110グラムのトリオレイン酸ソルビタン、0.370グラムのグリセロールを混合することによって製造した。このナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質に、0.054グラムの硫酸マグネシウムを加えた。上層溶液を、0.10グラムの炭酸カリウム、0.10グラムのプルロニックF−68、0.02グラムの臭化セチルピリジニウムを5グラムの水に加えることによって製造した。この上層溶液をナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質上に載置し、試験管を密封し、振盪し、1時間超音波処理したところ、ナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質の大半が分散し、ヒドロキシ炭酸マグネシウム被覆ミクロ粒子が形成された。
逆ヘキサゴナル相中の孔(円柱状)の寸法に応じて独特の放出動態プロファイルが生成するので、そうした放出動態プロファイルを、薬物の制御送達などで利用できる可能性がある。
実施例31
以上の実施例の大半とは異なり、本実施例で分散させたナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質は、水に不溶であるにもかかわらず、過剰の水と平衡状態にはなかった。
大豆レシチン(0.412グラム)、あまに油(0.159グラム)、グリセロール(0.458グラム)を十分に混合して、室温にて、ナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質を製造した。このナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質に、0.059グラムの硫酸マグネシウムを加えた。上層溶液を、0.10グラムの炭酸カリウム、0.10グラムのプルロニックF−68、0.02グラムの臭化セチルピリジニウムを、5グラムの水に加えることによって製造した。この上層溶液を、ナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質上に載置し、試験管を密封し、振盪し、30分間超音波処理したところ、ナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質の大半が分散して、ヒドロキシ炭酸マグネシウム被覆ミクロ粒子が形成された。
ナノ構造相を、過剰の水と平衡状態にない状態で分散させることができれば、本発明で使用しうる化学反応の範囲が拡大する。こうした汎用性は、薬物の送達のように、製品に関しての多数の規準を同時に満足せねばならない、要求レベルの高い用途で特に重要である。
実施例32
本実施例では、ナノ構造のラメラ相物質を、化学反応法を使用して分散させた。
ナノ構造のラメラ相物質を、0.832グラムの大豆レシチン(エピキュロン200)と0.666グラムの水を混合することによって製造した。約0.80グラムのこのナノ構造のラメラ相物質に、0.057グラムの硫酸マグネシウムを加えた。上層溶液を、0.10グラムの炭酸カリウム、0.10グラムのプルロニックF−68、0.02グラムの臭化セチルピリジニウムを、5グラムの水に加えることによって製造した。この上層溶液をナノ構造の逆ヘキサゴナル相物質上に載置し、試験管を密封し、振盪し、5分間超音波処理したところ、ナノ構造のラメラ相物質の大半が分散され、ヒドロキシ炭酸マグネシウム被覆ミクロ粒子が形成された。
本実施例の粒子は、ポリマー封入リポソームと構造的に関連しているが、ポリマー封入リポソームを製造する際に使用されるような厳しい化学的条件を使用する必要がない。多岐にわたる結晶質被膜で被覆された内部がラメラ相の粒子を、このように、単一工程で、しかも穏やかな条件で製造できるので、本発明は、薬物の制御送達で重要となる可能性がある。
実施例33
遊離塩基の製造
エチルヒドロクプレインと、ニュートラルレッドを、双方とも、プロトン化したヒドロクロリドの形態で購入した。いずれの場合も、この塩を水に溶解し、さらに、水酸化ナトリウム水溶液を1:1のモル比で加えた。2種の水溶液の混合物は、沈殿を生成し、この沈殿を水で洗浄して(NaClと、未反応のNaOHを除去し)、遠心し、遊離塩基の融点以上の温度で乾燥した。
ナノ構造の逆両連続キュービック相の分散液の製造
分散液の形成を、以下の混合物、すなわち
0.417グラムのモノオレイン酸グリセロール(GMO)、
0.191グラムのグリセロール、および
0.044グラムのエチルヒドロクプレイン(または、場合によってはニュートラルレッド、いずれも遊離塩基状態)
の混合物から開始した。通常のモノグリセリド/水のナノ構造逆両連続キュービック相物質のかわりに、本実施例では、モノグリセリド/グリセロールのナノ構造逆両連続キュービック相物質を使用した。
上層溶液を、プルロニックF−68を水に2%のレベルで溶解することによって製造した。
各成分を秤量して試験管に入れ、スパチュラで混合した後、(ネジ蓋で)密封した試験管を140℃の炉に少なくとも20分間入れ、エチルヒドロクプレイン(またはニュートラルレッドの遊離塩基)が溶融したことを確認した。次に、この試験管を水に投入した。水温は、室温未満(約10℃)とすることも、室温とすることもあったが、これらの2つの場合については、分散液に差はみられなかった。
サンプルを冷却水中に約5分間投入した後に粘度を調べたところ、粘度は極めて高く、ナノ構造の逆両連続キュービック相が存在していることが示差された。そのため、いくつかのケースに関しては、サンプルを直交ポーラーを通して観察して光学的等方性を調べた(結晶質被膜のドメインは、光の波長よりはるかに小さく、光学的特性に影響するには小さすぎる)。プルロニック上層溶液を、試験管に半分程度まで満たした。試験管を手動、ならびに機械ミキサーを使用して振盪した。溶液は、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質のバルクが消失し、分散液となるにつれて、不透明さを増した。
SEMによる特性解析
走査型電子顕微鏡(SEM)の準備に際しては、固定化のテクニックは一切使用しなかった。スライドガラス上に、分散液1滴を載置し、水を蒸発させ、炭素薄膜(2nm)をスパッタリングして帯電作用を防止した。スパッタリング装置では、スパッタリングを開始する前に、サンプルを故意に5×10−4トルの真空に約5分間保持した。この操作を行ったのは、粒子被膜の頑強さを調べるためである。使用したSEMは、日立のS−800型電界放出SEMで、25kVにて運転した。
図3は、エチルヒドロクプレイン分散液の走査型電子顕微鏡写真で、粒径範囲が約0.5〜2ミクロンの粒子が見える(下半分は、上半分に囲った領域の倍率の10倍であり、したがって、上半分の倍率は500倍、下半分の倍率は5,000倍である)。粒子の多くが、はっきりとした多面体形状であることが識別される。
このサンプルについて測定された粒径分布(次のセクション参照)からは、粒径が0.5〜2ミクロン程度の粒子がこの分散物の主要部分を構成していることが示され、この結果は、顕微鏡写真中の粒子とよく符合する。粒径0.5ミクロンの粒子のエチルヒドロクプレイン被膜の厚さは、約10nmであると推測でき、この厚さは、粒子内部の液体成分が、0.5ミリトルの真空での蒸発させた際に保護されたという点からしても、明らかに十分であった。
この分散液では、分散を行う前に、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質に、マーカーとして硫酸リチウムを担持させておいたが、この分散液の粒子のEDXスペクトルでも、硫黄のピークが実際に見られた。使用したEDXでは、リチウムは検出できず、スペクトル中の他のピークは、ガラス基体由来のものであった。
図4は、ニュートラルレッドの分散液の走査型電子顕微鏡写真である。実質的に全粒子の粒径が0.3〜1ミクロンの範囲である。
粒径分布
マルバーンの3600Eレーザ回折粒径測定装置を使用して、分布を測定した。調べた各分散液ごとに、数滴を担持流体(水)に加えて濃度を大幅に希釈し、多重散乱を防止した。粒径は、同一容積の球の直径として計算したが、粒子が多面体形状を有していることにかんがみても、この規準のとりかたは妥当である(下記参照)。機器は、粒子を、少なくとも0.5ミクロンまでは測定可能であり、分布に関するデータは、少なくとも0.5ミクロンまでの粒子のものを含んでいる。
GMO:エチルヒドロクプレインを13:1の比で用いて製造した分散液の粒径分布を、図5に示す。一般に、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質対結晶質被膜物質の比が増加するにつれて、粒径も増大する。この分散液についてのデータからは、容積平均基準で、粒子の10%が粒径が0.6ミクロン未満であることがわかり、このことは、等式:D(v,0.1)=0.6ミクロンによって示される。分布の狭さは、2つの方法で示される。第一にD(v,0.9)およびD(v,0.1)は、それぞれ、(体積加重)平均であるD(v,0.5)=1.2ミクロンの2倍および1/2である。そして第二に、分布の幅を
スパン=[D(v,0.9)−D(v,0.1)]/D(v,0.5)
で与える「スパン」は、計算の結果1.4であった。これらの結果から、凝集率がかなり低いことが示された。
GMO:ニュートラルレッドが10:1である分散液については、さらに狭い分布が示された。スパンは1.1となり、(示差)粒径分布は、一見して極めて急峻で、2ミクロンを超えたところで急激に落ち込んでいた。
GMO:エチルヒドロクプレインの比をさらに低くして製造した分散液については、小さい粒径が測定され、分布の平均が0.8ミクロン、スパンが1.2であった。このように、粒径は、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質対結晶質の被膜物質の比を利用することよって制御することができ、比を低減させると、粒径も低減する。
X線小角散乱法(SAXS)
X線小角散乱法は、エチルヒドロクプレイン分散液中の粒子内部が、ナノ構造の逆両連続キュービック相物質であることを証明するために使用した。(粒子の濃縮物でなく)分散液そのものを、1.5mmのX線キャピラリーに入れ、このキャピラリーをRoswell Park Cancer Center Biophysics DepartmentのStephen Hui博士の研究室に搬送した。SAXSカメラには、回転陽極が搭載されており、測定は、100kV、40mVの出力(4kW)で実施した。データは、核マルチチャネルアナライザに電子装置を経て接続されたリニア位置敏感検出器を使用することによって集めた。マルチチャネルアナライザは、8,192チャネルの能力を有しているが、2,048の解像度のみを使用することにより、各チャネルのカウント数を増大させた。分散液中のナノ構造の逆両連続キュービック相物質の容積分率(粒子の容積の約85%)が、10%のオーダーであったので、1時間のオーダーの計数時間を使用した。データの解析には、ソフトウェア・パッケージ「PCA」を使用した。
図6は、測定されたSAXS強度を、波数ベクトルqのプロットに対して示す。波数ベクトルqは、X線の回折角θおよび波長λと式:
q=4π(sinθ)/λ
で関連している。d−スペーシングは、ブラッグ反射のq値から、
d=2π/q
によって計算される。
図6では、縦線が、空間群Pn3mおよび格子パラメータ7.47nmを有する格子についての正確な計算上のブラッグピークの位置を示す。この空間群は、モノオレイン/水系、特に、過剰の水と平衡状態にある系でのナノ構造の逆キュービック相について十分確認済みの空間群である。(実際、過剰の水と平衡状態にあるナノ構造の逆キュービック相では、空間群Pn3mはほぼ排他的に出現する)。空間群Pn3mを有するモノオレイン/水のナノ構造の逆キュービック相についての格子パラメータは、8nmにも近いが、それ以上の正確な比較は、このケースでは水をグリセロールで置換しているので不可能である。いずれにしても、SAXSでの走査によって推定された格子の種類およびサイズは、モノグリセリドのナノ構造逆キュービック相の文献データと正確に合致している。
空間群Pn3mでは、許容されるピーク位置とh+k+lの値のミラー指数(hkl)は、(110)が2、(111)が3、(200)が4、(211)が6、(220)が8、(221)9、(222)12、およびそれ以上である。データと予測されるピーク位置を見ると、(110)および(222)の位置のピークは、明らかに、データによって強固に裏付けられている。(111)のピークは、スキャンの右側では、(110)ピークの肩のようであり、スキャンの左側では、小さいものの識別可能なピークであるように見える。(200)のピークは、少なくともスキャンの右側は、データによって裏付けられており、このピークは、モノグリセリドのPn3m相、およびPn3m相一般では、常に、(110)および(111)のピークよりはるかに低強度の測定値を示し、このことは、理論的な増幅度の計算値と一致することが見いだされた[Strom,P.およびAnderson,D.M.(1992)Langmuir,8:691]。(211)のピークは、スキャンの左側で、データによって裏付けられ、(221)も、右側では、データによって裏付けられている。(211)および(222)の間のピークが不在ないし低強度であることは、分散液中でナノ構造の逆両連続キュービック相が低濃度(10%)であることの結果であり、これは、回折X線の強度が、容積濃度の二乗で変化するためである。それにもかかわらず、(110)および(222)の位置にはっきりとしたピークがあること、そして、推定された格子および格子パラメータが、文献中の関連した系と完全に一致することは、SAXSのデータが、粒子内部がナノ構造の逆両連続キュービック相の秩序を有することを示しているという結論を強力に裏付けている。
こうした粒子は、口腔リンス剤での消毒剤の制御放出の場合のように、細菌の活動部位への選択的送達を行ううえで、2種の被膜がやや低めのpH(pH5程度)で可溶であることが適正であるような用途で有用な可能性がある。
実施例34
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、2種の分散液に剪断力および圧力をかけたときの崩壊しにくさを調べた。2種の分散液は、一方は、剛固な被覆(フェロシアン化第二銅)を有するものを、他方は、柔らかく、容易に破壊される被膜を有するものを選んだが、後者は、剛固な方の被膜に圧力をかけたときの放出を定量化するための対照の役目を実質的に果たすものである。すなわち、2種の分散液中のマーカーの濃度がほぼ同じで、剛固な系でのマーカーの放出が、柔らかい方の系でのマーカーの放出量の一部、たとえば、x%(xは、実質的に100未満)であったとすれば、剛固な系の粒子のx%のみが圧力によって破壊され、残りの(100−x)%は、HPLCの間に無傷のままであったと結論づけることができる。実際、この(100−x)という率は、最低限の数字であり、対照中の柔らかい粒子の一部が実際には無傷で残っていることがわかったとすれば(その可能性は低いものの)、無傷の剛固な粒子の実際の割合については、もっと高い計算結果がでるはずである。いずれにしても、計算は、対照粒子がすべて破壊すると仮定した最悪のケースを想定したものである。
分散液の製造
実施例34A ナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.499グラムの大豆レシチン、0.163グラムのオレイルアルコール、0.900グラムのグリセロール、0.1.24グラムのカプサイシンを混合することによって製造した。この系のナノ構造逆両連続キュービック相物質0.842グラムに、0.043グラムのコール酸ナトリウムを加えた。上層溶液を、1MのHCl1滴を3.00グラムのpH5のリン酸緩衝液に加えることによって製造した。この上層溶液を液晶物質上に載置し、試験管を密封し、超音波処理を行ったところ、乳白色のミクロ粒子の分散液が得られた。
実施例34B Aナノ構造の逆両連続キュービック相物質を、0.329グラムの大豆レシチン、0.108グラムのオレイルアルコール、0.611グラムのグリセロール、0.105グラムのカプサイシンを混合することによって製造し、さらに、0.046グラムの硫酸第二銅を加えた。上層溶液を、0.563グラムの10%フェロシアン化カリウム溶液を2.54グラムの水に加えることによって製造した。この上層溶液を液晶上に載置し、試験管を密封し、超音波処理を行ったところ、フェロシアン化第二銅被覆ミクロ粒子の乳白色の分散液が得られた。
マーカー、すなわちカプサイシンの濃度は、2種のサンプルで比較可能であった。最終濃度は、フェロシアン化第二銅分散液では2.44%であったのに対し、実施例34Bでは3.19%であり、30%の差が見られた。この差は、以下の計算でも反映されていた。
精製カプサイシンをHPLCに適用したところ、精製カプサイシンの溶出時間は22分であることがわかった(データ示さず)。同一の条件で、上記のようにして製造した2種の分散液をHPLCに適用した。実施例34Bの粒子についてのデータを図7に、フェロシアン化第二銅粒子についてのデータを図8に示す。表1および2は、それぞれ、図7および8に対応するピークの積分値を、HPLCのコンピュータからの出力として示すものである。サンプリング速度は、5Hzとした。
図7では、22分の溶出時間のところに(コンピュータで、ピーク13の番号が付されているところに)明らかに、強いピークがあり、表1に示すように、このピークの積分強度は、3,939,401である。図8では、22分のところ(コンピュータで、ピーク10の番号が付されているところ)に、これよりはるかに小型のピークが見られ、表2に示すように、その強度は、304.29であった。
これらのピークの積分値を、2種のサンプル中の濃度に応じて標準化すると、すなわち、実施例34Bのケースは3,939,401/0.0319、フェロシアン化第二銅のケースは304,929/0.0244とすると、フェロシアン化第二銅のケース対実施例34Bのケースでの標準化ピーク強度の比は0.101となり、すなわち、最大でフェロシアン化第二銅粒子の10.1%が、HPLC条件下でカプサイシンマーカーを放出したことになる。
これらの粒子は、水への溶解度が低い無機物質の被膜を有しているので、強い剪断力が加わったときには粒子の被膜が放出され、同時に、水で希釈しただけで被膜が放出されるようなことは防止することが必要とされる用途で、有用となる可能性がある。こうした用途の一例としては、カプサイシンのような齧歯類抑制剤または齧歯類用の毒素を粒子に含有させ、その粒子を、齧歯類によってかじられては困る電線、段ボール箱などの製品に含浸させ、齧歯類が製品をかじると、活性成分または毒素が放出されるようにするケースが挙げられる。水への溶解度が低いので、抑制剤が、湿った条件に置かれたせいで、意図した放出のタイミングより前に放出されてしまうような事態は防止される。
表1:実施例34Bのカプサイシン含有粒子のHPLC分析についての図7に対応するピーク強度の積分値。ピーク番号13が、カプサイシンの主ピークである。
ピーク 面積
1 2914
2 8096
3 2848
4 29466
5 11304
6 2254
7 12871
8 4955
9 124833
10 113828
11 19334
12 7302
13 3939401
14 39153
15 255278
16 755868
17 52623
18 19395
19 4899
20 10519
21 5101
22 1481
23 344230
24 9971
25 194442
26 89831
27 80603
28 105163
29 186224
30 194020
31 36805
32 2115
33 23296
34 4327
35 5166
36 90236
37 62606
38 44523
39 110347
40 4391
41 1275597
42 1353000
43 238187
表2:実施例34Bのフェロシアン化第二銅で被覆したカプサイシン含有粒子のHPLC分析についての図8に対応するピーク強度の積分値。ピーク番号10が、カプサイシンの主ピークである。
ピーク面積
1 1681172
2 3011240
3 106006
4 2760
5 59059
6 38727
7 163539
8 44134
9 6757
10 304929
11 10466
12 141800
13 332742
14 14442
15 6996
16 15008
17 11940
19 91446
20 250214
21 251902
22 203000
23 44658
24 110901
25 24296
26 19633
27 25527
28 15593
29 75442
30 40245
31 421437
実施例35
ナノ構造のキュービック相液晶を、0.77グラムの大豆レシチン(Lucas−Meyerから購入したエピキュロン200)、0.285グラムのオレイルアルコール、0.84グラムのグリセロールを混合することによって製造し、さらに、0.11グラムの塩化第二金を加えた。この混合物の平衡化には熱を使用せず、スパチュラでの撹拌のみを行った。0.595グラムのこの混合物を分取し、試験管下半分の内面に沿って塗りつけた。上層溶液を、0.14グラムの塩化第一鉄および0.04グラムのプルロニックF−68を、1.74グラムの蒸留水に溶解することによって製造した。この上層溶液を、キュービック相の入った試験管に載置し、超音波処理したところ、金被膜被覆ミクロ粒子の分散液が得られた。上層溶液がF−68は含有するものの、塩化第一鉄は含有していない対照サンプルを、第一のサンプルと一緒に超音波処理したが、ミクロ粒子の分散液は得られなかった。塩化第一鉄と塩化第二金が反応した結果、原子状態で非ラメラの結晶質の金が沈殿し、第一のサンプルの場合、金で被覆され、内部がキュービック相であるミクロ粒子が得られた。次に、密度約1.2グラム/ccのグリセロールと水の混合物を、0.62グラムのグリセロールを0.205グラムの水と混合することによって製造し、この混合物に約0.1グラムの分散液を加え、この新たな分散液を遠心した。3時間の遠心後に、ミクロ粒子の実質的な部分が試験管底部に遠心され、これらの粒子の密度が、1.2よりは有意に高いことが示された。キュービック相の密度は1.2未満なので、この密度は、金被膜の存在する結果である。実際、超音波処理の間に分散されなかったキュービック相の一部が、もとの分散液から、低密度帯として遠心分離によって分離され、この液体は、もとの分散液よりさらに密度が低いものであることが示された。
金は、化学的に不活性であり、また、極めて薄いフィルムとした場合に良好な機械的特性を示すことが周知であり、さらにまた、金については、FDAによって数多くの投与経路が承認されているので、金被覆粒子は、化学的・物理的に安定な被膜を要し、安全かつ環境適合性の製品とした場合に有用である可能性がある。さらに、こうした粒子は、他のコロイド形状に比べて金がはるかに広い表面積を提供するので、関節炎の治療で効果がある可能性がある。
実施例36
抗悪性腫瘍薬であるパクリタキセルを含有するナノ構造の液相を、0.045グラムのパクリタキセル、0.57グラムのオイゲノール、15グラムの大豆レシチン(エピキュロン200)、0.33グラムのグリセロール、0.06グラムの硝酸銅を、0.61グラムのメタノールに溶解し、その後、蒸発皿中でメタノールを蒸発させ、蒸発の間にはかきまぜることによって製造した。グリセロールを多量に含有する上層溶液を、0.09グラムのヨウ化カリウム、0.05グラムのプルロニックF−68、0.44グラムの水、1.96グラムのグリセロールを溶解することによって製造した。上層溶液を載置した後に、系を超音波処理したところ、パクリタキセル含有ナノ構造の液相が分散され、結晶質のヨウ素で被覆された被覆ミクロ粒子中が形成された。これらの成分は、(パクリタキセル自体を除いては、)製剤中で安全で不活性な賦形剤であると一般に認められているという理由で選択したものであるので、この組成または、この組成を改変したものは、パクリタキセルを癌治療目的で送達する際に重要となる可能性がある。この粒子内部へのパクリタキセルの担持量は3重量%程度と極めて高く、このケースでは、このキュービック相中でのパクリタキセルの可溶化は準安定状態であるので、各粒子内部でのパクリタキセルの一部が沈殿する可能性もあった。しかし、調べたところでは、沈殿は極めて緩慢に生じ、この担持量では何時間ないし何日もかかり、粒子の製造過程の間については、実質的に全量のパクリタキセルが溶液のままであることがわかった。製造後は、パクリタキセルが被覆粒子に封入されるので、大型結晶(1ミクロン以上)の形成は防止される。この系でのパクリタキセルの濃度を0.7%以下まで下げた場合には、パクリタキセルが真に安定な平衡化(熱力学的平衡)状態で可溶化されることとなり、沈殿が完全に防止され、非ラメラの結晶質ヨウ素で被覆したミクロ粒子を、本実施例に記載したようにして製造することが可能となる。このように、この系は、癌治療のためにパクリタキセルを使用するにあたってのいくつものシナリオを提供するものである。
実施例37
パクリタキセル含有キュービック相液晶を、0.345グラムの大豆レシチン(エピキュロン200)、0.357グラムのアニソール、0.26グラムの水、0.02グラムのパクリタキセル(LKT Laboratoriesより入手)を混合することによって製造した。平衡化を促進するために、混合物の入った試験管を、激しくかきまぜた後に、沸騰水中に1分間投入し、その後室温に冷却した。被膜物質を得るために、0.07グラムの没食子酸プロピルをかきまぜながら試験管に加え、試験管を再度沸騰水中で加熱した。没食子酸プロピルは、室温では、このキュービック相に、測定可能な程度まで溶解することはないものの、ほぼ100℃では溶解度が上昇することを予め確認しておいた。上層溶液は、2.25グラムのプルロニックF−68の2%溶液とした。このキュービック相と没食子酸プロピル混合物を100℃に加熱し、約80℃に冷却し、高温でスパチュラでかきまぜ、さらに100℃に再加熱した。混合物を約30秒間冷却した後、この混合物上に上層溶液を載置し、試験管を超音波処理浴に1時間入れた。パクリタキセルを内部に含み、没食子酸プロピルで被覆されたミクロ粒子の分散液が得られた。分散液は、極めて微細なミクロ粒子(推定粒径、0.4ミクロン未満)を高濃度で含有しており、この粒子は、光学顕微鏡で1000倍にて、ブラウン運動ゆえに観察可能であった。全体としての粒径分布は、かなりブロードで、粒子の一部は、1〜2ミクロンと大型であった。沈殿した針状のパクリタキセルが、極めて少量のみ観察されたので、ほとんど全量のパリタキセルは、ミクロ粒子の内部に存在しているはずである。本実施例でのパクリタキセルの濃度は十分に高く、可溶化が準安定で、このことは、前実施例で記載した意味を有するものである。これらの粒子内部での抗悪性腫瘍薬であるパクリタキセルの濃度が約2%であり、組成中の各成分が、FDAの承認された経口送達用の不活性な賦形剤のリストに載っているもの、(そして、それらのほぼすべてが、注射剤用リストに載っているものでも)であるので、この組成は、癌の治療での薬物送達用組成として極めて重要となる可能性がある。
実施例38
1.655グラムの両親媒性ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドブロック共重合体であるプルロニックF−68(ポロキサマー188とも称される)を、0.705グラムのオイゲノールおよび2.06グラムの水と混合した。遠心を行ったところ2相が生じ、下側の相がナノ構造の液相、上側の相が、ナノ構造のキュービック相となった。この液晶相の0.68グラムを分取し、0.05グラムのヨウ化ナトリウムを加えた。2.48グラムの下側の相にオイゲノールを1滴加えて、低粘度であることを確認し、このナノ構造の液相に0.14グラムの硝酸銀を加えて、液晶相を分散する際の「上層溶液」とした。このようにして、液相を、ヨウ化物を含む液晶相上に載置して、混合物を1.5時間超音波処理したところ、ヨウ化銀被覆粒子が、外部媒体であるナノ構造の液相中に分散した分散液が得られた。
本実施例は、ブロック共重合体を主成分とするナノ構造の液晶相を、本発明の粒子の内部マトリックスとして使用することを例示する。この事例では、ブロック共重合体のポリエチレンオキシドブロックの優先的な溶剤として水を、そして、ブロック共重合体のポリプロピレンオキシドブロック(水に不溶)の優先的な溶剤としてオイゲノールを使用した。
本実施例は、また、上述した一般的アプローチの使用、すなわち、ナノ構造相を、内部相中の部分Aと反応する部分Bを提供する「上層溶液」の役目をはたす混合物として使用して、結晶質の被膜物質の沈殿を生じさせること開示するものである。この場合、Bは、硝酸銀であり、ヨウ化ナトリウムを含む内部マトリックスA(キュービック相)との接触時にヨウ化銀の沈殿を生じる。上述したように、この上層溶液は、内部マトリックスとの平衡となるように、または、この場合のように、平衡と極めて近くなるように(この場合に真の平衡状態からはずれるのは、単に、1滴分約0.01グラム、つまり0.5%未満のオイゲノールを上層溶液に加えたためである)選択することが一般的に望ましい。この方法のように、内部マトリックスは粘稠な物質を選択し、すなわち、相対的に低い粘度を有する必要のある上層溶液よりはるかに粘稠な物質を選択することが一般に有用である。
実施例39
ラクチド:グリコシド比が59:41、固有粘度が0.51dl/gmのポリ(乳酸-グリコール酸)ポリマー(PLGA)を、Purac Biochem(オランダ)から入手した。この共重合体は、非晶質であることが公知であり、この点については、複屈折がないことで確認した。0.307グラムのこのポリマーを、3.002グラムの酢酸エチルに溶解した。キュービック相を、0.042グラムのプロ血栓形成性化合物であるメナジオン、0.272グラムのショウガ油、0.224グラムの水、0.540グラムのエトキシル化水添ヒマシ油界面活性剤アルラトンG(Uniquemaより入手)を混合することによって製造し、50℃に加熱して、メナジオンを溶解した。0.302グラムのこのキュービック相を、第二の16mlのガラス管に加え、その上に9.707mlの水を載置し、振盪によって水に分散させた。PLGA溶液をキュービック相の分散液に加え、混合物を直ちに振盪し、10分間超音波処理した。その後、内容物を丸底フラスコに移し、ロトバップ(rotovap)装置に搭載し、最終容積が約9.7mlとなるまで蒸発させた。
その結果2種のPLGA被覆粒子が得られた。まず、水相中で、約2容積%を構成しているのが、PLGAで被覆されたキュービック相のミクロ粒子であった。このミクロ粒子の有意な部分は、位相差光学顕微鏡で構造を詳しく観察するうえで十分な大きさであった。光学顕微鏡写真を図9に示す。大きめの粒子については、シェルが見える。このシェル層の不規則な厚さは、この層が光学的人工物ではないことの証左である。この点は、顕微鏡の焦点を合わせる際にも明らかであり、すなわち、もし、このシェルが人工物であったとすれば、焦点の変化とともに厚みも変わるはずであるが、こうしたことは生じなかった。
上記プロセスで得られた第二のタイプの粒子は、粒径がミリメートル単位の大型の粒子で、この粒子は、明らかに固体被覆粒子としての挙動を示した。一つの実験では、水にも酢酸エチルにも溶けにくい赤橙色の染料であるメチルレッドを、分散の前に、キュービック相に溶解しておいた。顕微鏡で、ミクロ粒子が赤橙色を示したのみならず、ミリメートル単位のサイズの粒子も、鮮明な赤橙色であり、キュービック相がPLGAの内側に封入されていることが示された。このタイプの粒径がミリメートル単位の粒子は、たとえば、流れることなく、針の先端で刺すことができ、この点は、こうしたかたちでは刺すことができなかった未被覆のキュービック相とは対照的であった。
こうした大型粒子の一つを、キュービック相の溶剤であるが、PLGAの溶剤ではないリナロール中に載置した。この粒子が、1週間後もこの溶剤に溶解しなかったのに対し、PLGA被膜なしのキュービック相は、5分未満で溶解した。図10は、リナロールに浸漬したPLGA被覆キュービック相(左側)と、非被覆キュービック相(右側)を並べて比較した図である。図からわかるように、被覆キュービック相は明らかに不溶性である。もとのカラー写真には、PLGA被覆サンプルでは、リナロールがほとんど着色していないのに対し、非被覆キュービック相を含むリナロールは、鮮明な赤橙色であることが示されている。この実験から、キュービック相が実際にPLGAに封入されていることがわかる。
実施例40
可溶化されたメチルレッドを含むキュービック相を、まず、2.118グラムのアルラトンG、0.904グラムの水、1.064グラムのショウガ油、0.012グラムのメチルレッドを混合し、十分にかきまぜることによって製造した。トレハロース溶液を、2.00グラムのトレハロースを10.005グラムの水に溶解することによって製造した。その後、1.002グラムのキュービック相を、振盪と穏やかな超音波処理を組み合わせて行うことにより、トレハロース溶液に分散した。この分散液を、凍結乾燥装置中で凍結乾燥した。トレハロース溶液は、凍結乾燥すると非晶質の固形物を生じることが公知である。得られた物質は、自由に流動し、油っぽかったり、粘着性であったりすることはなく、非被覆キュービック相に特徴的な挙動を示すこともなかった。物質は、見た目にも均一であり、鮮明で均一な赤橙色をしており、第2の相は存在していなかった。この物質の大型の粒子を、画鋲の先で突き刺して、図11に示すように写真を撮影した。非被覆キュービック相は、こうしたかたちで長期間突き刺すことはできなかったはずである。
位相差光学顕微鏡では、この物質の薄片が、細かい鱗片構造を含むことが容易に見て取れ、この構造は、トレハロース固形マトリックス中にキュービック相ミクロ粒子(粒径は、サブミクロン〜5ミクロン)が存在していることと符合する。この物質は、脆く、したがって、たやすく小型粒子に破砕された。この物質を、水と、たとえば1:10の比で混合したところ、ただちに分散液が得られ、この分散液は、光学顕微鏡では、このキュービック相の水への分散液と区別がつかなかった。
実施例41
本実施例は、水への溶解時に表面活性を有する被膜物質前駆物質を使用してキュービック相を粒子に分散させ、この前駆物質を反応させて固形の被膜に転化した後に、エネルギーを再度加えて粒径をサブミクロンまで落とす被覆ミクロ粒子の製造方法を示す。上述したように、この方法の一つの利点としては、この方法では被膜前駆物質を粒子表面に局在化させるので、この前駆物質を被膜に転化した際にキュービック相が容易に封入されることが挙げられる。本実施例での活性化合物はトリクロサンである。
キュービック相を、0.886グラムのリナロール、0.960グラムのプルロニックP123(BASF)、0.104グラムのトリクロサン、0.189グラムの2−エチルヘキサン酸、0.879グラムの蒸留水を混合し、十分かきまぜることによって製造した。このキュービック相を、試験管の側面に塗りつけ、3.33グラムのナトリウムN−アセチルトリプトファン(Na−NAT)溶液(NAT換算で6重量%)をその上に載置し、混合物を振盪し、短時間超音波処理して、キュービック相を分散させた。このように、Na−NATは、この工程では、分散剤または界面活性剤として作用している。次に、この分散液に、0.37グラムの30%酢酸亜鉛溶液を加え、混合し、さらに、0.52グラムの2NのNaOHを加えた。反応開始に5分間の猶予をみて、その後、物質をさらに超音波処理した。その後、クレモフォアEL(9%)およびプルロニックF−68(12.5%)を含む界面活性剤溶液(0.10グラム)を加え、混合物を15分間超音波処理した。位相差顕微鏡による観察では、得られたミクロ粒子が固形物で被覆された性状を示すことが明らか示され、スライドガラスとカバーガラスの間で分散液に剪断力を加えると、ミクロ粒子は、被膜を設けなかった場合に得られるような、変形容易なキュービック相の粒子ではなく、固形の被覆粒子としての挙動を示した。
実施例42
本実施例では、被膜物質を溶融し、その内部にキュービック相を分散し、その後温度を下げて被膜を凝固させてから、エネルギーを加えて粒子を形成する方法を報告する。こうした方法は、結晶質の被膜物質ならびに非晶質または半結晶質の被膜物質に適用することができ、非晶質物質の場合には、冷却によって非晶質の物質が生じる(つまり、本当の意味での「冷却」というよりは、むしろガラス化が起こる)可能性がある。
栄養補給食用化合物であるコエンザイムQ10を、エトキシル化水添ヒマシ油界面活性剤アルラトンG(from Uniquema)を主成分とするキュービック相に含有させた。コエンザイムQ10(10mg)を、0.302グラムの精製ショウガ油、0.201グラムの水、0.606グラムのアルラトンGの混合物に可溶化した。このキュービック相を試験管に入れ、2.994グラムの水添綿実油を加え、全内容物を90℃に加熱して、油分を溶融した。サンプルをただちに超音波処理し、その際には、熱水浴中で、3分間にわたって30秒ごとに激しく振盪した。次に、試験管を氷浴中に載置して、油分を凝固させ、粒子がトリグリセリド全体に分散するようにした。その後、得られた固形物を、機械的エネルギーを加えることによって平均粒径が数百ミクロンとなるまで破砕したが、当技術分野において周知の破砕法を使用すれば、粒径をさらに落とすことは容易である。
実施例43
本実施例は、キュービック相のミクロ粒子(すなわち、実施例41で製造したタイプの粒子の亜鉛N−アセチルトリプトファン被膜が溶解した後に生じるようなミクロ粒子)に含有させたレクチンが、オリゴ糖との結合性を保持していることを示す。
まず、キュービック相を、0.752グラムのプルロニックP123(不溶性界面活性剤)、0.705グラムのリナロール、0.703グラムの水を混合することによって製造した。1.005グラムのこのキュービック相を、ラムノリピド界面活性剤JBR−99(Jeneil Biosurfactant、Inc.)0.054グラムと、4mMのMnClおよび4mMのCaClを含有するpH4.5の酢酸緩衝液35mlとともにガラス製フラスコに入れた。次に、このフラスコを超音波処理して、キュービック相を分散させた。その後、分散液を、110S型のマイクロフルイダイザー(Microfluidics、Inc.)でミクロ流動化して、粒径が十分に小型化し、Ultrospec 3000 UV−Vis分光計で波長620nmにて測定した吸収が約0.2吸収単位となるようにした。
次に、以下の物質を、2mlのキュービック相分散液に加えた。
抗コンカナバリンA、ベクターAS−2004、ロット0321、1mg/mlの原液を調製、作業溶液は、1:10で希釈して0.1mg/mlとしたもの、51マイクロリットルを添加。コンカナバリンA、シグマC−5275、ロット60K8934、1mg/mlの原液として調製、作業溶液は、1:10で希釈して0.1mg/mlとしたもの、16マイクロリットルを添加。ビオチニル化マンノトリオース、V−labs、NGB1336、1mg/mlの原液を調製、作業溶液は、1:100で希釈して0.01mg/mlとしたもの。20マイクロリットルを添加。HRP/アビジン。0.28mg/mlの原液。90マイクロリットルを添加。
抗体およびConA溶液の添加後、15分間にわたって分散および平衡化を進行させた。ビオチニル化マンノトリオースおよびHRP/アビジンの添加後、さらに15分間、反応を進行させた。デキストランブルーの3.9mg/mlの溶液10滴に、ファストレッドTR塩6滴、2.4mg/mlの3%H1滴、4mMのMnClおよび4mMのCaClを含む50mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)800μlを加えた。この溶液は、HRPまたは、抗体−ConA−ビオチニル化マンノトリオースアビジン/HRPの全体を加えると、620nmでの吸収が消失することがわかっている。これらすべてを加えた後、キュベット中の合計容積は、3.0mlであった。
デキストランブルー系の検出系を加えた後、620nmでの吸収測定値を連続的に監視した。測定値が0.40吸収単位で落ち着いた後、500マイクロリットルの置換溶液を加えた。この溶液は、4mMのMnClおよび4mMのCaClを含有する、飽和αメチルマンノトリオシドの50mMの酢酸ナトリウム溶液(pH4.5)であった。
αメチルマンノトリオシド(分析対象物質)を添加すると、吸収が、0.40吸収単位から0.26吸収単位に低下した。この35%という低下は、3.0から3.5mlの容積への希釈にもとづいて予測される14%より、はるかに大幅な低下であり、また、何回か反復した場合にも見られ、再現性があった。吸収の低下は、主に、置換したHRPのデキストランブルーに対する酵素反応によるものであった。
なお、本発明は、その発明の精神や範囲から逸脱することなく、数多くの変更や改良を加えうるものである。また、本発明は、本発明に記載した特定の構成や配置に限定されるものであはなく、付随した請求の範囲内で改良を加えた態様も含むものであると理解されたい。本明細書に記載した特定の態様は、発明を例示する目的にみで挙げたものであり、本発明は、付随する請求の範囲によってのみ限定されるものである。
図1は、2×2×2の単位格子のマトリックスからなる内部コアと、外部被膜とを含む本発明の被覆粒子を図示する縦断面図である。 図2は、本発明の被覆粒子を図示する断面図である。 図3は、本発明の被覆粒子の走査電子顕微鏡写真である。 図4は、本発明の別の被覆粒子の走査電子顕微鏡写真である。 図5は、本発明の被覆粒子についての測定された体積加重累積粒径分布を示すグラフであり、体積加重粒径を、累積粒径に対して示す。 図6は、本発明の被覆粒子について、測定されたX線小角散乱強度を、波数ベクトルqに対して示すグラフである。 図7は、対照について、、高圧液体クロマトグラフィーを使用した際の検出装置でのカウント数を、溶出時間(分)に対して示すグラフである。 図8は、本発明の被覆粒子について、高圧液体クロマトグラフィーを使用した際の検出装置でのカウント数を、溶出時間(分)に対して示すグラフである。 図9は、水に分散したPLGA被覆ミクロ粒子の位相差光学顕微鏡写真であり、コア・シェル構造が示されている。 図10は、左側は、本発明にしたがって製造したPLGA被覆キュービック相を、PLGAに対しては非溶剤であるが、キュービック相に対しては溶剤であるリナロールに浸漬したものである。右側は、同じキュービック相を、同一条件でリナロールに浸漬したものであり、非被覆時には、このキュービック相がリナロールに溶解することを示している。 図11は、被膜が非晶質トレハロースである被覆キュービック相の大型(5mm)の粒子である。この粒子は、アルラトンGを主成分とするキュービック相のトレハロース溶液への分散液を凍結乾燥することによって得たものである。

Claims (107)

  1. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相またはその脱水物、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層またはその脱水物、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相またはその脱水物と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層またはその脱水物
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラドメイン(複数)を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子。
  2. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)ナノ構造のL1相物質、
    b)ナノ構造のL2相物質、
    c)ナノ構造のマイクロエマルション、または
    d)ナノ構造のL3相物質
    を含む請求項1記載の被覆粒子。
  3. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)ナノ構造の正または逆キュービック相物質、
    b)ナノ構造の正または逆ヘキサゴナル相物質、
    c)ナノ構造の正または逆中間相物質、または
    d)ナノ構造のラメラ相物質
    を含む請求項1記載の被覆粒子。
  4. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)極性溶剤と、
    b)界面活性剤または脂質と
    を含む請求項1記載の被覆粒子。
  5. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)極性溶剤と、
    b)界面活性剤または脂質と、
    c)両親媒性物質または疎水物質と
    を含む請求項1記載の被覆粒子。
  6. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)ブロック共重合体
    を含む請求項1記載の被覆粒子。
  7. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)ブロック共重合体と、
    b)溶剤と
    を含む請求項1記載の被覆粒子。
  8. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)極性溶剤と、
    b)界面活性剤と
    を含む請求項1記載の被覆粒子。
  9. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)極性溶剤と、
    b)界面活性剤と、
    c)両親媒性物質または疎水物質と
    を含む請求項1記載の被覆粒子。
  10. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)ブロック共重合体
    を含む請求項1記載の被覆粒子。
  11. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)ブロック共重合体と、
    b)溶剤と
    を含む請求項1記載の被覆粒子。
  12. 上記内部コアが、上記マトリックス中に配置された活性物質を含む請求項1記載の被覆粒子。
  13. 上記活性物質がパクリタキセルを含む請求項12記載の被覆粒子。
  14. 上記活性物質がカプサイシンを含む請求項12記載の被覆粒子。
  15. 上記活性物質が光力学性の治療物質を含む請求項12記載の被覆粒子。
  16. 上記活性物質が造影剤を含む請求項12記載の被覆粒子。
  17. 上記活性物質が受容体タンパク質を含む請求項12記載の被覆粒子。
  18. 上記内部コアが、逆キュービック相物質を含む請求項1記載の被覆粒子。
  19. 上記内部コアが、上記マトリックス中に配置された活性物質を含む請求項18の被覆粒子。
  20. 上記活性物質がパクリタキセルを含む請求項19の被覆粒子。
  21. 上記活性物質がカプサイシンを含む請求項19記載の被覆粒子。
  22. 上記活性物質が光力学性の治療物質を含む請求項19記載の被覆粒子。
  23. 上記活性物質が核酸を含む請求項19記載の被覆粒子。
  24. 上記活性物質が糖脂質を含む請求項19記載の被覆粒子。
  25. 上記活性物質がアミノ酸を含む請求項19記載の被覆粒子。
  26. 上記活性物質がポリペプチドを含む請求項19記載の被覆粒子。
  27. 上記活性物質がタンパク質を含む請求項19記載の被覆粒子。
  28. 上記活性物質が抗新生物治療剤を含む請求項19記載の被覆粒子。
  29. 上記活性物質が抗高血圧物質を含む請求項19記載の被覆粒子。
  30. 上記活性物質が齧歯類の抑制物質を含む請求項19記載の被覆粒子。
  31. 上記活性物質がフェロモンを含む請求項19記載の被覆粒子。
  32. 上記活性物質が受容体タンパク質を含む請求項19記載の被覆粒子。
  33. 上記マトリックスが、生体膜の物理化学的特性を有する物質を含む請求項1記載の被覆粒子。
  34. 上記生体膜物質が、生物学的に活性なポリペプチド物質を含む請求項33記載の被覆粒子。
  35. 上記マトリックスが、生体膜物質中に固定化されたポリペプチドまたはタンパク質を含む請求項33記載の被覆粒子。
  36. 上記非ラメラドメインが非晶質である請求項1記載の被覆粒子。
  37. 上記非ラメラドメインがポリマーである請求項1記載の被覆粒子。
  38. 上記ポリマーがPLGAである請求項37記載の被覆粒子。
  39. 上記非ラメラドメインが糖を含む請求項36記載の被覆粒子。
  40. 上記糖がトレハロースである請求項39記載の被覆粒子。
  41. 上記外部被膜が、半結晶質非ラメラ物質を含む請求項1記載の被覆粒子。
  42. 上記外部被膜が、造影剤を含む請求項1記載の被覆粒子。
  43. 上記外部被膜が、タンパク質を含む請求項1記載の被覆粒子。
  44. 上記外部被膜が、少なくとも2%の非ラメラドメインを含む請求項1記載の被覆粒子。
  45. 上記外部被膜が、少なくとも10%の非ラメラドメインを含む請求項1記載の被覆粒子。
  46. 上記外部被膜が、少なくとも50%の非ラメラドメインを含む請求項1記載の被覆粒子。
  47. 上記外部被膜が、製剤活性物質を含む請求項1記載の被覆粒子。
  48. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラドメイン(複数)を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子。
  49. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子。
  50. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を製造する方法であって、
    第二部分との反応時に非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含む上記マトリックスをある量用意し、
    上記のある量のマトリックスを、上記第二部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体と接触させて、上記第一部分を上記第二部分と反応させ、同時に、上記のある量のマトリックスにエネルギーを加えることによって、マトリックスを粒子に細分化する
    工程を含む方法。
  51. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を製造する方法であって、
    上記非ラメラ物質が溶存している上記マトリックスをある量用意し、
    記非ラメラ物質が上記マトリックスに不溶となるようにし、同時に、上記のある量のマトリックスにエネルギーを加えることによって、マトリックスを粒子に細分化する
    工程を含む方法。
  52. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を製造する方法であって、
    上記非ラメラ物質が溶存しており、第二部分との反応時に上記非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含んでいる上記マトリックスをある量用意し、
    上記のある量のマトリックスを、上記第二部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体と接触させて、上記第一部分を上記第二部分と反応させ、同時に、上記非ラメラ物質が上記マトリックスに不溶となるようにし、そして上記のある量のマトリックスにエネルギーを加えることによって、マトリックスを粒子に細分化する
    工程を含む方法。
  53. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)第一非ラメラ物質と第二非ラメラ物質とを含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を製造する方法であって、
    上記第一非ラメラ物質が溶存しており、第二部分との反応時に上記第二非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含んでいる上記マトリックスをある量用意し、
    上記のある量のマトリックスを、上記第二部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体と接触させて、上記第一部分を上記第二部分と反応させ、同時に、上記第一非ラメラ物質が上記マトリックスに不溶となるようにし、そして上記のある量のマトリックスにエネルギーを加えることによって、マトリックスを粒子に細分化する
    工程を含む方法。
  54. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を製造する方法であって、
    ある量の上記マトリックスを、液化状態、溶液、流体前駆物質よりなる群から選ばれる状態の上記非ラメラ物質に分散し、
    上記非ラメラ物質を、冷却、揮発性溶剤の蒸発、化学反応の実行よりなる群から選ばれる技術によって凝固させる
    工程を含む方法。
  55. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を製造する方法であって、
    上記マトリックスの粒子を、第二部分との反応または会合時に非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体に分散し、
    上記分散液に、上記第二部分を有する少なくとも1種の化学種を加えて、上記第一部分を上記第二部分と反応させる
    工程を含む方法。
  56. 上記第二部分を有する化学種を加える時点で、上記第一部分を有する上記化学種を、上記マトリックスの粒子と選択的に会合させる請求項55記載の被覆粒子。
  57. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を製造する方法であって、
    上記マトリックスの粒子を、第二部分との反応または会合時に非ラメラ物質を形成しうる部分を有する少なくとも1種の化学種を含む流体に分散し、
    上記分散液に、上記第二部分を有する少なくとも1種の化学種を加えて、上記第一部分を上記第二部分と反応させ、
    得られた物質に、エネルギーを加えることによって、この物質を粒子に細分化する
    工程を含む方法。
  58. 上記第二部分を有する化学種を加える時点で、上記第一部分を有する上記化学種を、上記マトリックスの粒子と選択的に会合させる請求項57記載の被覆粒子。
  59. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を製造する方法であって、
    上記非ラメラ物質が溶存または分散しており、揮発性溶剤も含んでいる液体に、上記マトリックスのある量を分散または溶解し、
    上記溶液または分散液を噴霧乾燥する
    工程を含む方法。
  60. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を使用する方法であって、
    上記粒子を、吸着性物質を含む流体媒体中に配置し、この吸着性物質を、上記外部被膜上に吸着させる
    工程を含む方法。
  61. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を使用する方法であって、
    上記粒子を、吸収性物質を含む流体媒体中に配置し、この吸収性物質を、上記内部コア中に吸収させる
    工程を含む方法。
  62. 上記吸収が、上記流体媒体によって上記外部被膜が溶解することによって始動する請求項61記載の方法。
  63. 上記吸収が、上記外部被膜が破壊されることによって始動する請求項61記載の方法。
  64. 上記吸収が、上記外部被膜の孔を通じて生じる請求項61記載の方法。
  65. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を使用する方法であって、
    上記粒子を、吸収性物質を含む流体媒体中に配置し、この吸収性物質を、上記外部被膜中に吸収させる
    工程を含む方法。
  66. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を使用する方法であって、
    上記粒子を、吸収性物質を含む流体媒体中に配置し、この吸収性物質を、上記内部コアと外部被膜中に吸収させる
    工程を含む方法。
  67. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアであって、
    上記マトリックスが、マトリックス中に配置された活性物質を含む内部コアと
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を使用する方法であって、
    上記粒子を流体媒体中に配置し、
    上記活性物質を、この流体媒体中に放出させる
    工程を含む方法。
  68. 上記放出が、上記流体媒体によって上記外部被膜が溶解することによって始動する請求項67記載の方法。
  69. 上記放出が、上記外部被膜が破壊されることによって始動する請求項67記載の方法。
  70. 上記放出が、上記外部被膜の孔を通じて生じる請求項67記載の方法。
  71. a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアであって、
    上記マトリックスが、マトリックス中に配置された活性物質を含む内部コアと
    b)非ラメラ物質を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子を使用する方法であって、
    上記活性物質を放出させる
    工程を含む方法。
  72. 上記放出が、上記外部被膜が溶解することによって始動する請求項71記載の方法。
  73. 上記放出が、上記外部被膜が破壊されることによって始動する請求項71記載の方法。
  74. 上記放出が、上記外部被膜の孔を通じて生じる請求項71記載の方法。
  75. 被覆粒子であって、
    a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラドメイン(複数)を含む外部被膜と、
    c)上記被覆粒子に付随するターゲティング部分と
    を含む被覆粒子。
  76. 上記非ラメラドメインが、非ラメラ結晶質物質、非ラメラ非晶質物質、非ラメラ半結晶質物質よりなる群から選ばれる物質を含む請求項75記載の被覆粒子。
  77. 上記ターゲティング部分が、タンパク質、核酸、多糖、磁気応答性物質よりなる群から選ばれる請求項75記載の被覆粒子。
  78. 上記ターゲティング部分が、上記被覆粒子の上記外部被膜に付随している請求項75記載の被覆粒子。
  79. 上記ターゲティング部分が、上記被覆粒子の上記外部被膜の内面に吸着されている請求項78記載の被覆粒子。
  80. 上記ターゲティング部分が、上記被覆粒子の上記外部被膜に包埋されている請求項78記載の被覆粒子。
  81. 上記ターゲティング部分が、上記被覆粒子の上記外部被膜の外面に付随している請求項78記載の被覆粒子。
  82. 上記ターゲティング部分が、吸着、共有結合、イオン結合、水素結合、疎水性相互作用よりなる群より選ばれる手段によって上記被覆粒子の上記外部被膜の外面に付随している請求項81記載の被覆粒子。
  83. 上記ターゲティング部分が、上記被覆粒子の上記内部コアに付随している請求項75記載の被覆粒子。
  84. 上記ターゲティング部分が、上記外部被膜と上記内部コアの間に存在する相に付随している請求項75記載の被覆粒子。
  85. 上記ターゲティング部分が、共有結合、イオン結合、吸着、吸収、水素結合、疎水性相互作用よりなる群より選ばれる手段によって付随している請求項75記載の被覆粒子。
  86. 上記ターゲティング部分が、可撓性のスペーサ分子を介して上記被覆粒子に付随している請求項75記載の被覆粒子。
  87. 上記外部被膜が、少なくとも2%の非ラメラドメインを含んでいる請求項75記載の被覆粒子。
  88. 上記外部被膜が、少なくとも10%の非ラメラドメインを含んでいる請求項75記載の被覆粒子。
  89. 上記外部被膜が、少なくとも50%の非ラメラドメインを含んでいる請求項75記載の被覆粒子。
  90. 被覆粒子であって、
    a)i)少なくとも1種のナノ構造の液相、
    ii)少なくとも1種のナノ構造の液晶層、または
    iii)(1)少なくとも1種のナノ構造の液相と、
    (2)少なくとも1種のナノ構造の液晶層
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラドメイン(複数)を含む外部被膜と、
    c)上記被覆粒子に付随する生物活性物質と
    を含む被覆粒子。
  91. 上記非ラメラドメインが、非ラメラ結晶質物質、非ラメラ非晶質物質、非ラメラ半結晶質物質よりなる群から選ばれる物質を含む請求項90記載の被覆粒子。
  92. 上記生物活性物質が、吸着促進物質、吸着調整物質、ワクチンのアジュバント、抗体、ステロイド、ホルモン、オリゴ糖、多糖、タンパク質結合活性の調整物質、レクチン、受容体、核酸、タンパク質なる群から選ばれる物質を含む請求項90記載の被覆粒子。
  93. 上記生物活性物質が、上記被覆粒子の上記外部被膜に付随している請求項90記載の被覆粒子。
  94. 上記生物活性物質が、上記被覆粒子の上記外部被膜の内面に吸着されている請求項90記載の被覆粒子。
  95. 上記生物活性物質が、上記被覆粒子の上記外部被膜に包埋されている請求項90記載の被覆粒子。
  96. 上記生物活性物質が、上記被覆粒子の上記外部被膜の外面に付随している請求項90記載の被覆粒子。
  97. 上記生物活性物質が、吸着、共有結合、イオン結合、水素結合、疎水性相互作用よりなる群より選ばれる手段によって上記被覆粒子の上記外部被膜の外面に付随している請求項90記載の被覆粒子。
  98. 上記生物活性物質が、上記被覆粒子の上記内部コアに付随している請求項90記載の被覆粒子。
  99. 上記生物活性物質が、上記外部被膜と上記内部コアの間に存在する相に付随している請求項90記載の被覆粒子。
  100. 上記生物活性物質が、共有結合、イオン結合、吸着、吸収、水素結合、疎水性相互作用よりなる群より選ばれる手段によって付随している請求項90記載の被覆粒子。
  101. 上記生物活性物質が、可撓性のスペーサ分子を介して上記被覆粒子に付随している請求項90記載の被覆粒子。
  102. 上記外部被膜が、少なくとも2%の非ラメラドメインを含んでいる請求項90記載の被覆粒子。
  103. 上記外部被膜が、少なくとも10%の非ラメラドメインを含んでいる請求項90記載の被覆粒子。
  104. 上記外部被膜が、少なくとも50%の非ラメラドメインを含んでいる請求項90記載の被覆粒子。
  105. a)i)少なくとも1種の重合ナノ構造の液相またはその脱水物、
    ii)少なくとも1種の重合ナノ構造の液晶層またはその脱水物、または
    iii)(1)少なくとも1種の重合ナノ構造の液相またはその脱水物と、
    (2)少なくとも1種の重合ナノ構造の液晶層またはその脱水物
    との組み合わせ
    から本質的になるマトリックスを含む内部コアと、
    b)非ラメラドメイン(複数)を含む外部被膜と
    を含む被覆粒子。
  106. 上記ナノ構造の液相物質が、
    a)重合ナノ構造の正または逆キュービック相物質、
    b)重合ナノ構造の正または逆ヘキサゴナル相物質、
    c)重合ナノ構造の正または逆中間相物質、または
    d)重合ナノ構造のラメラ相物質
    を含む請求項105記載の被覆粒子。
  107. 上記重合ナノ構造の液相物質が、
    a)重合ナノ構造の正または逆キュービック相物質、または
    b)重合ナノ構造の正または逆ヘキサゴナル相物質
    を含む請求項105記載の被覆粒子。
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