JP2005529892A - 鎮痛剤としてのデカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸のエステルプロドラッグ - Google Patents

鎮痛剤としてのデカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸のエステルプロドラッグ Download PDF

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Abstract

本発明は式(I):
【化1】
Figure 2005529892

で表される化合物を提供する。本発明はさらに、神経疾患の治療用医薬の製造のための式(I)の化合物の使用を提供する。本発明はさらに、疼痛または片頭痛の治療用医薬の製造のための式(I)の化合物の使用を提供する。

Description

発明の詳細な説明
発明の分野
本発明は新規なプロドラッグ形の(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、プロドラッグ形を含む医薬組成物、このプロドラッグ形を用いる方法に関する。
発明の背景
米国特許番号第5,670,516号は、特定のデカヒドロイソキノリン誘導体がAMPA受容体アンタゴニストであること、およびそれら自体が多数の異なる状態(疼痛および片頭痛を含む)の治療に有用であることを開示する。さらに、WO01/02367 A3(2001年1月11日発行)は、選択的GluRアンタゴニストである3S,4aR,6S,8aR−6−(((4−カルボキシ)フェニル)メチル)−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸のジエステルプロドラッグ形態を開示する。
本発明の目的は、患者体内で親化合物(モノ酸)のバイオアベイラビリティの改善を生じる(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸のモノエステルを提供することである。さらに、本発明の目的は、患者体内でモノ酸親化合物に実質的に変換される(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸のモノエステルを提供することである。
発明の要旨
今回、(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(モノ酸)の新規なモノエステルは、モノ酸自体の投与により提供されるバイオアベイラビリティと比較して顕著に改善されたモノ酸のバイオアベイラビリティを提供することを見出した。さらに、モノエステルは患者体内でモノ酸へと実質的に変換される。モノ酸は米国特許番号5,670,516(1997年9月23日発行)に開示されている。
従って、本発明は式I:
Figure 2005529892
[式中、RはC−C20アルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキル−アリール、C−Cアルキル−(C−C10)シクロアルキル、C−Cアルキル−N,N−C−Cジアルキルアミン、C−Cアルキル−ピロリジン、C−Cアルキル−ピペリジン、C−Cアルキル−モルホリンを表す]
で示される化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。
本発明はさらに、AMPAまたはGluR受容体をアンタゴナイズする方法を提供し、この方法は患者に式Iの化合物を有効量で投与することを含む。
さらに、本発明は神経疾患の治療方法を提供し、これはそのような治療を必要とする患者に式Iの化合物を有効量で投与することを含む。
本発明はさらに、疼痛または片頭痛の治療方法を提供し、この方法はそのような治療を必要とする患者に式Iの化合物を有効量で投与することを含む。
本発明はさらに、神経疾患の治療のための薬の製造における式Iの化合物の使用を提供する。
本発明はさらに、疼痛または片頭痛の治療用の薬の製造における式Iの化合物の使用を提供する。
発明の詳細な説明
本明細書中で用いる用語「プロドラッグ」は、カルボン酸官能性薬物のモノエステル誘導体を意味し、この誘導体は患者に投与された場合にモノ酸(薬物)へと変換される。本発明の化合物の酵素および/または化学的加水分解での切断は、親化合物であるモノカルボン酸(薬物)が遊離するような様式で生じる。
本明細書中で用いる用語「化合物A」は、(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸を意味する。
本明細書中で用いる用語「化合物B」は、6−[2−(2H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステルを意味する。
本明細書中で用いる用語「化合物C」は、6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸2−エチル−ブチルエステルを意味する。
本明細書中で用いる用語「化合物D」は、6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸イソブチルエステルを意味する。
本明細書中で用いる用語「化合物E」は、6−[2−(2H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸3−メチル−ブチルエステルを意味する。
本明細書中で用いる用語「化合物F」は、6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸デシルエステルを意味する。
本明細書中で用いる用語「C−Cアルキル」は、炭素数1〜4個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖を意味し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル等を含むがこれらに限定されない。
本明細書中で用いる用語「C−Cアルキル」は、炭素数1〜6個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖を意味し、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等を含むがこれらに限定されない。用語「C−Cアルキル」は「C−Cアルキル」の定義内に含まれることが理解される。
本明細書中で用いる用語「C−C10アルキル」は、炭素数1〜10個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖を意味し、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、3級ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、2,3−ジメチル−2−ブチル、ヘプチル、2,2−ジメチル−3−ペンチル、2−メチル−2−ヘキシル、オクチル、4−メチル−3−ヘプチル等を含むがこれらに限定されない。用語「C−Cアルキル」および「C−Cアルキル」は、「C−C10アルキル」の定義内に含まれることが理解される。
本明細書中で用いる用語「C−C20アルキル」は、炭素数1〜20個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖を意味し、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、3−メチルペンチル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−ノナデシル、n−エイコシル等を含むがこれらに限定されない。用語「C−Cアルキル」、「C−Cアルキル」および「C−C10アルキル」は、「C−C20アルキル」の定義内に含まれることが理解される。
本明細書中で用いる用語「Me」、「Et」、「Pr」、「iPr」、「Bu」および「t−Bu」は、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびtert−ブチルを意味する。
本明細書中で用いる用語「C−Cアルケニル」は、炭素数2〜6個の1価の直鎖または分枝鎖の不飽和脂肪族鎖を意味する。代表的なC−Cアルケニル基としては、エテニル(ビニルとしても公知)、1−メチルエテニル、1−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、1−ヘキセニル、2−メチル−2−プロペニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−ブテニル、2−ペンテニルなどが挙げられる。
本明細書中で用いる用語「アリール」は、1つ以上の縮合または非縮合フェニル環を含む1価の炭素環式基を意味し、例えば、フェニル、1−または2−ナフチル、1,2−ジヒドロナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチルなどが挙げられる。
本明細書中で用いる用語「C−Cアルキル−アリール」は、脂肪族鎖に結合したアリール基を有する炭素数1〜6個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖を意味する。用語「(C−C)アルキルアリール」には、以下:
Figure 2005529892
により表されるもの、などが含まれる。
本明細書中で用いる用語「(C−C10)シクロアルキル」は、炭素数3〜10個の飽和炭化水素環構造を意味する。代表的なC−C10シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。「(C−C)シクロアルキル」および「(C−C)シクロアルキル」は「(C−C10)シクロアルキル」の定義内に含まれることが理解される。
本明細書中で用いる用語「C−Cアルキル−(C−C10)シクロアルキル」は、脂肪族鎖に結合した(C−C10)シクロアルキルを有する炭素数1〜6個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖を意味する。用語「(C−C)アルキル−(C−C10)シクロアルキル」には、以下の式:
Figure 2005529892
により表されるもの、などが含まれる。
本明細書中で用いる用語「N,N−C−Cジアルキルアミン」は、炭素数1〜6個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖2個で置換されている窒素原子を意味する。用語「N,N−C−Cジアルキルアミン」には、−N(CH、−N(CHCH、−N(CHCHCH、−N(CHCHCHCHなどが含まれる。
本明細書中で用いる用語「C−Cアルキル−N,N−C−Cジアルキルアミン」は炭素数1〜6個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖を意味し、これは脂肪族鎖に結合したN,N−(C−C)ジアルキルアミンを有する。用語「(C−C)アルキル−N,N−(C−C)ジアルキルアミン」には以下の式:
Figure 2005529892
により表されるもの、などが含まれる。
本明細書中で用いる用語「C−Cアルキル−ピロリジン」は、脂肪族鎖に結合したピロリジンを有する炭素数1〜6個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖を意味する。用語「C−Cアルキル−ピロリジン」の範囲内には以下の式:
Figure 2005529892
により表されるもの、などが含まれる。
本明細書中で用いる用語「C−Cアルキル−ピペリジン」は、脂肪族鎖に結合したピペリジンを有する炭素数1〜6個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖を意味する。用語「C−Cアルキル−ピペリジン」の範囲内には以下の式:
Figure 2005529892
により表されるもの、などが含まれる。
本明細書中で用いる用語「C−Cアルキル−モルホリン」は、脂肪族鎖に結合したモルホリンを有する炭素数1〜6個の1価の直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族鎖を意味する。用語「C−Cアルキル−モルホリン」の範囲内には以下の式:
Figure 2005529892
により表されるもの、などが含まれる。
本発明の化合物はテトラゾール環を含み、互変体構造として存在することが知られている。1位の窒素原子上に二重結合を有し、2位の窒素原子上に水素を有するテトラゾールは、2H テトラゾールと命名され、以下の構造:
Figure 2005529892
により表される。1位の窒素原子に水素が存在し、4位の窒素原子に二重結合が存在する対応する互変形体は1H−テトラゾールと命名される。1H−テトラゾールは以下の式:
Figure 2005529892
により表される。本明細書中、2つの互変体の混合物を1(2)H−テトラゾールと称する。本発明は両方の互変体形態および2個の互変体の組合せに関する。
以下の記号
Figure 2005529892
は、紙面から前方に突出している結合を意味する。
以下の記号
Figure 2005529892
は、紙面から後方に突出している結合を意味する。
本発明は式Iの化合物の水和物および製薬上許容される塩を含む。本発明の化合物は、多数の任意の無機または有機の酸と反応し得る十分に塩基性の官能基を有して製薬上許容される塩を形成しうる。
本明細書中で用いる用語「製薬上許容される塩」は、式Iの化合物の塩を意味し、これは生存する生物に対して実質的に非毒性である。典型的な製薬上許容される塩としては、本発明の化合物と製薬上許容される鉱酸または有機酸との反応により製造される塩が挙げられる。このような塩は酸付加塩としてもまた公知である。
酸付加塩を形成するために通常用いられる酸は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸など)および有機酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、トリフルオロ酢酸など)である。このような製薬上許容される塩の例は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、塩酸塩、二塩酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、α−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩などである。好ましい製薬上許容される塩付加塩は、塩酸および臭化水素酸のような鉱酸を用いて形成される塩およびマレイン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸およびメタンスルホン酸のような有機酸を用いて形成される塩である。
本発明の任意の塩の一部を形成する特定の対イオンは、塩が全体として薬理学的に許容される限り、そして対イオンが塩に全体として望ましくない性質を与えない限り、重要な性質の物ではないことが認められる。このような塩は水和物として存在し得ることがさらに理解される。
本明細書中で用いる用語「立体異性体」は、同じ結合により結合した同じ原子から構成されているが、相互交換できない異なる三次元構造を有する化合物を意味する。三次元構造は立体配置と称される。本明細書中で用いる用語「エナンチオマー」は、分子が互いに重なり合うことができない鏡像である2つの立体異性体を意味する。用語「キラル中心」とは、4つの異なる基が結合している炭素原子を意味する。本明細書中で用いる用語「ジアステレオマー」とは、エナンチオマーではない立体異性体を意味する。さらに、1つのキラル中心のみで異なる立体配座を有する2つのジアステレオマーは、本明細書中で「エピマー」と称する。用語「ラセミ体」、「ラセミ混合物」または「ラセミ変形」は、エナンチオマーの等部の混合物を意味する。
本明細書で用いる用語「エナンチオマー濃縮(enantiomeric enrichment)」は一方のエナンチオマーの量が他方と比較して増加していることを意味する。達成されたエナンチオマー濃縮を表わす便利な方法は、以下の等式:
Figure 2005529892
(式中、Eは第1エナンチオマーの量であり、Eは第2エナンチオマーの量である)
を用いて見出されるエナンチオマー過剰、または「ee」の概念である。従って、2つのエナンチオマーの最初の比が50:50(例えば、ラセミ混合物として存在する)で、最終的に50:30の比を生じるために充分なエナンチオマー濃縮が達成される場合には、第1のエナンチオマーについてのeeは25%である。しかしながら、最終的な比が90:10である場合には、第1のエナンチマーについてのeeは80%である。90%を超えるeeが好ましく、95%を超えるeeが最も好ましく、99%を超えるeeが特に最も好ましい。エナンチオマー濃縮は、通常の技術および方法、例えば、キラルカラムを用いるガスクロマトグラフィー法または高速液体クロマトグラフィー法を用いて当業者によって容易に決定される。エナンチオマー対の分離をもたらすために必要な適当なキラルカラム、溶離液および条件の選択は、十分、当業者の技術範囲内である。さらに、式Iの化合物のエナンチオマーは、当該分野で周知の一般的な技術、例えばJ.Jacquesら、「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」、John WileyおよびSons,Inc.,1981に記載のものを用いて当業者により分割されうる。
本発明の化合物は1以上のキラル中心を有しており、それゆえ種々の立体異性配置で存在し得る。これらのキラル中心の結果として、本発明の化合物は、ラセミ体、エナンチマー混合物および個々のエナンチオマーとして、ならびにジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物として生じ得る。このようなラセミ体、エナンチオマーおよびジアステレオマーは全て本発明の範囲内にある。
キラル中心の特定の立体配置を示すために有機化学で通常使用するように、用語「R」および「S」を本明細書で使用する。用語「R」(rectus/右)とは、優先順位の最も低い基に向かう結合に沿って見た場合に、基の優先順位(最も高いものから、2番目に低いものまで)が時計周りの関係を有する、キラル中心の立体配置を意味する。用語「S」(sinister/左)とは、優先順位の最も低い基に向かう結合に沿って見た場合に、基の優先順位(最も高いものから2番目に低いものまで)が反時計周りの関係を有する、キラル中心の立体配置を意味する。基の優先順位は、それらの原子番号を(原子番号が減少する順番で)基準にする。優先順位の部分的な表および立体化学に関する議論は、「Nomenclature of Organic Compounds:Principles and Practice」(J.H.Fletcherら編、1974)の103〜120頁に含まれている。
式(I)の化合物の特定の立体異性体およびエナンチオマーは、ElielおよびWilen、「Stereochemistry of Organic Compounds」、John Wiley&Sons,Inc.,1994,Chapter 7、Separation of Stereoisomers.Resolution.Racemization,ならびにColletおよびWilen、「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」、John Wiley&Sons,Inc.,1981に開示されるような周知の技術および方法を利用して当業者により製造され得る。例えば、特定の立体異性体およびエナンチオマーは、鏡像的および幾何学的に純粋な、または鏡像的または幾何学的に濃縮された出発物質を用いて立体特異的合成により製造され得る。さらに、特定の立体異性体およびエナンチオマーは、この目的のために用いられる試薬により形成された付加塩のキラル固定相でのクロマトグラフィー、酵素的分割または分別再結晶化のような技術により分割および回収することができる。
式Iの化合物は、当業者が利用可能な技術および方法により製造することができる。より具体的には、式Iの化合物は、以下の反応式に記載の合成経路などにより化学的に製造することができる。しかし、以下の議論はいかなる様式においても本発明の範囲を制限することは意図しない。例えば、本明細書中に記載の経路に関する具体的な合成工程を異なる様式で組み合わせて式Iの化合物を製造することができる。特記しないかぎり、全ての置換基は先の定義に従う。試薬および出発物質は当業者であれば簡単に入手することができる。例えば、当業者であれば特定の出発物質を米国特許番号5,356,902(1994年10月18日発行)および同5,446,051(1995年8月29日発行)および同5,670,516(1997年9月23日発行)(これらの全内容は全て、本明細書中に参照して組み込む)に開示の方法に従って製造することができる。以下の方法に関する他の必須の試薬および出発物質は、有機化学および複素環化学の標準的な技術から選択される方法、公知の構造的に類似の化合物の合成に相同である技術および実施例に記載の方法(任意の新規な方法を含む)により製造することができる。
Figure 2005529892
反応式Iでは、当業者に周知の標準的な条件下で化合物Aをエステル化して式Iのモノエステルを得る。例えば、化合物Aを適切な有機溶媒に溶解し、適切な酸(例えば、塩酸)で処理する。適切な有機溶媒の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、3−メチルペンチルアルコール、2−エチルブチルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、デシルアルコールなどが挙げられる。反応系を約40℃〜約60℃で約4時間〜約16時間加熱する。次いで、当業者に周知に技術(例えば、抽出技術およびクロマトグラフィー)を用いて生成物を単離および精製する。
例えば、上記の反応系を冷却し、適切な有機溶媒(例えば、酢酸エチル)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して式Iの化合物を得る。この物質を、酢酸エチル/ヘキサンのような適切な溶離液を用いるシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによりさらに精製することができる。
あるいは、化合物Aを適切な有機溶媒に溶解し、過剰な塩化チオニルで処理する。適切な有機溶媒の例は無水メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、3−メチルペンチルアルコール、2−エチルブチルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、デシルアルコール等である。溶液を還流しながら約1〜3時間、そして室温で約8〜16時間、攪拌する。次いで、混合物を減圧濃縮し、残渣を上記の方法と同様の方法で精製して式Iのプロドラッグモノエステルを得る。
式Iの製薬上許容される塩は標準的な技術および方法を用いて当業者により容易に製造される。例えば、上記の生成物をジエチルエーテルに懸濁し、これをHClガスで飽和させる。混合物を約1〜3時間攪拌する。次いで析出物をろ過し、減圧下、ジエチルエーテルで洗浄して式Iのプロドラッグモノエステルの製薬上許容される塩を得る。
以下の実施例は、上に概説した式Iの化合物の代表的な合成例を示す。これらの実施例は単なる例示であり、いかなる意味においても本発明を制限することは意図しない。試薬および出発物質を当業者は簡単に入手することができる。本明細書中で用いる以下の用語は次に示す意味を有する;「eq」または「equiv.」は当量を意味し;「g」はグラムを意味し;「mg」はミリグラムを意味し;「L」はリットルを意味し;「mL」はミリリットルを意味し;「μL」はマイクロリットルを意味し;「mol」はモルを意味し;「mmol」はミリモルを意味し;「psi」はポンド/平方インチを意味し;「min」は分を意味し;「h」は時間を意味し;「℃」は摂氏度を意味し;「TLC]は薄層クロマトグラフィーを意味し;「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを意味し;「δ」は、テトラメチルシランからの低磁場ppmを意味し;「THF」とはテトラヒドロフランを意味し;「DMF」は、N,N−ジメチルホルムアミドを意味し;「DMSO」は、メチルスルホキシドを意味し;「aq」とは水溶液を意味し;「EtOAc」は酢酸エチルを意味し;「iPrOAc」は、酢酸イソプロピルを意味し;「MeOH」はメタノールを意味し;「MTBE」はtert−ブチルメチルエーテルを意味し;「RT」は室温を意味する。
実施例1
6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸 2−エチル−ブチルエステル
Figure 2005529892
6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸一水和物(2.5g,8.4mmol、J.Med.Chem.,39(11),2232−2244頁,(1996)または米国特許番号5,670,516(1997年9月23日発行)に記載の通りに製造)の2−エチル−1−ブタノール(20ml)溶液に、塩化チオニル(6.8ml,92.8mmol)を添加する。溶液を120℃で3時間、攪拌する。混合物を減圧下で濃縮し、残渣をエチルエーテルで洗浄する。残渣をSPE(Oasis HLB)により精製して表題化合物を得る。
エレクトロスプレー質量分析:M+1=364。
実施例2
6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸イソブチルエステル
Figure 2005529892
2−メチル−1−プロパノール(20mL)を用いて、基本的には上記実施例1の方法に従って製造して表題化合物を得る。
エレクトロスプレー質量分析:M+1=336。
実施例3
6−[2−(2H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸 3−メチル−ブチルエステル
Figure 2005529892
3−メチル−1−ブタノール(20mL)を用いて、基本的には上記実施例1の方法に従って製造して表題化合物を得る。
エレクトロスプレー質量分析:M+1=350。
実施例4
6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸デシルエステル
Figure 2005529892
塩化水素(g)を飽和させた6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸一水和物(2.5g,8.4mmol)のデシルアルコール(50ml)溶液を、一晩120℃で加熱する。混合物を減圧下で濃縮し、残渣をSPE(Oasis HLB)により精製して表題化合物を得る。
エレクトロスプレー質量分析:M+1=420。
実施例5
6−[2−(2H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル
Figure 2005529892
塩化水素(g)を飽和させた6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸一水和物(6.0g,21.5mmol)のエタノール(70mL)溶液を一晩加熱還流する。混合物を減圧下で濃縮し、ジエチルエーテル中で懸濁し、再度、減圧下で濃縮する。残渣をジエチルエーテル中で懸濁し、3時間、加熱還流する。固体をろ過し、ジエチルエーテルでリンスして表題化合物を得る(7.4g,100%)。
エレクトロスプレー質量分析:M+1=308。
式Iの化合物の具体的な局面:
以下のリストは、式Iの化合物に関する特定の置換基を幾つかの群に分けて記載したものである。このような特定の置換基を有する式Iの化合物は、本発明の特定の局面を表すことが理解される。これらの群の各々を他に提供される分類と組み合わせて本発明のさらなる特定の局面を創出し得ることも理解される。
それゆえ、式Iの新規な化合物の特定の局面は、式中、以下の通り定義されるものである。
(a)RはC−C10アルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキル−アリール、C−Cアルキル−(C−C10)シクロアルキル、C−Cアルキル−N,N−C−Cジアルキルアミン、C−Cアルキル−ピロリジン、C−Cアルキル−ピペリジン、C−Cアルキル−モルホリンを表し、
(b)RはC−C10アルキルまたはC−Cアルケニルを表し、
(c)RはC−C10アルキルまたはC−Cアルキル−アリールを表し、
(d)RはC−C10アルキルまたはC−Cアルキル−(C−C10)シクロアルキルを表し、
(e)RはC−C10アルキルまたはC−Cアルキル−N,N−C−Cジアルキルアミンを表し、
(f)RはC−C10アルキルまたはC−Cアルキル−ピロリジンを表し、
(g)RはC−C10アルキルまたはC−Cアルキル−ピペリジンを表し、
(h)RはC−C10アルキルまたはC−Cアルキル−モルホリンを表し、
(i)RはC−C10アルキルを表し、
(j)Rは2−エチルブチル、イソブチル、3−メチルブチル、デシルまたはエチルを表し、または、
(k)Rはエチルを表す。
薬理結果
以下のラット、イヌおよびサルにおけるインビボデータは、(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸のモノ酸を超える本発明のモノエステルプロドラッグのバイオアベイラビリティの改善を例示する。
バイオアベイラビリティの割合は以下の等式を用いて決定する。
Figure 2005529892
[式中、AUCは曲線下面積を表し、p.o.は経口投薬を表し、i.v.は静脈内投薬を表す]。
イヌにおけるバイオアベイラビリティ
ビーグル犬(雄2匹および雌1匹)に(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(10mg/Kg p.o;1mg/Kg i.v.)を経口投与した後、iv投与して経口アベイラビリティを測定した。続いて、同じ3匹のイヌにエステルプロドラッグ(例えば、(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル,HCL塩)を10mg/kgで経口投与し、親化合物(酸)のバイオアベイラビリティをプロドラッグが上昇させるかどうかを決定する。(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸の血漿濃度をLC/MS/MSにより決定する。
試験方法
生体相(Live Phase):(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(HCl塩)を経口投与のために希水酸化ナトリウム(30mg/ml)、iv投与のために10%エタノール/水(10mg/ml)に溶解する。(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル,HCL塩を経口投与のために水に溶解する(30mg/ml)。イヌは体重測定すると12〜15kgの間であった。
結果:
(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸の経口バイオアベイラビリティはイヌで18%であると決定した。(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(HCL塩)を投与すると、バイオアベイラビリティは33.1%まで上昇した。プロドラッグ形(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(HCL塩)の使用により、親化合物(酸)を約2倍超えるバイオアベイラビリティの上昇を得る。
以下の表1に、化合物AおよびBについて見出されたビーグル犬への1mg/kg投与(i.v.)または10mg/kg投与(p.o.)の後の薬力学的パラメーターをまとめる。
表1.ビーグル犬での化合物A(i.v.)(1mg/kg)および化合物A(10mg/kg用量)またはエチルエステルプロドラッグである化合物B(p.o.)の投薬後の薬力学的パラメーター
Figure 2005529892
ラットにおけるバイオアベイラビリティ
雄性Fischerラットに、(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(30mg/Kg p.o;10mg/Kg i.v.)を経口投薬またはiv投薬のいずれかで投与して経口バイオアベイラビリティを決定する。ラットの別の群にエステルプロドラッグ(例えば、(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル,HCL塩)を10mg/kg用量で経口投与してプロドラッグが親化合物(酸)のバイオアベイラビリティを上昇させるかどうかを決定する。(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸の血漿濃度はLC/MS/MSにより決定する。
試験方法:
生体相:(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(HCl塩)を、経口投与のために希水酸化ナトリウムに溶解(15mg/ml)し、iv投与のために10%エタノール/水に溶解する(10mg/ml)。(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル,HCL塩を経口投与用に水に溶解する(15mg/ml)。体重218〜244gの間のFischer雄性344ラットを利用する。血漿サンプルを0.5、1、2、4、6、8、10および24時間目(1つの時点当たりラット3匹)に回収する。
結果:
(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸に対する経口バイオアベイラビリティはラットにおいて3.6%であると決定した。(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(HCL塩)を投与した場合、バイオアベイラビリティは17.7%まで上昇した。プロドラッグ形(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(HCL塩)の使用により、親化合物(酸)よりも約5倍高いバイオアベイラビリティの上昇を得た。
以下の表2に、化合物AおよびBについて見出されたFischerラットへの10mg/kgでの投与(i.v.)または30mg/kgでの投与(p.o.)後の薬物動力学的パラメーターをまとめる。
表2.Fischerラットにおける化合物Aまたはエステルプロドラッグである化合物Bの10mg/kgでの投薬後の化合物Aの薬物動力学的パラメーター*
Figure 2005529892
カニクイザルにおけるバイオアベイラビリティ
雄性のサル2匹および雌性のサル2匹に、(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸を経口投与し、後にivで投与して(経口:3mg/kg;iv:0.3mg/kg)、経口バイオアベイラビリティを決定する。また、続いて同じ動物に(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステルを3mg/kgで投与して、エステルプロドラッグ形が親化合物(酸)のバイオアベイラビリティを上昇させるかどうかを決定する。親化合物(酸)の血漿濃度はLC/MS/MSにより測定する。
研究デザイン
カニクイザル4匹(2匹/性)に、(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(3mg/kg)を0日目に1回経口投薬し、(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(0.3mg/kg)を4日目に1回iv投薬し、そして(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(3mg/kg)を8日目に1回経口投薬する。経口投薬の0.5、1、2、3、4、5、6および8時間後、およびiv投薬の0.167、0.33、0.67、1、1.5、2、3および4時間後に、血液サンプルを回収する。酸およびエステル両方の投薬液剤は、0.9%塩化ナトリウム中で製造する。
結果:
サルでの(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸の経口バイオアベイラビリティは4.5%と決定した。(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(HCL塩)を投与すると、バイオアベイラビリティは11.4%まで上昇した。プロドラッグ形(3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1(2)H−テトラゾール−5−イル)エチル−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロイソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(HCL塩)の使用により、親化合物(酸)よりも約2.5倍高いバイオアベイラビリティの上昇を得た。
以下の表3に、化合物AおよびBについて見出されるカニクイザルへのi.v.または経口投与の後の薬物動力学的パラメーターをまとめる。
表3.カニクイザルにおける化合物Aまたはエステルプロドラッグである化合物Bのi.v.およびp.o.投薬後の化合物Aの薬物動力学的パラメーター
Figure 2005529892
本発明はさらに、より大きいクラスの興奮性アミノ酸受容体のAMPAまたはGluR受容体をアンタゴナイズする方法を提供し、この方法は式Iの化合物を有効量で患者に投与することを含む。興奮性アミノ酸受容体の過剰または不適切な刺激は、神経細胞の損傷または興奮毒性として公知のメカニズムによる脱落を導く。このプロセスは、種々の神経疾患および状態における神経変性を媒介すると示唆されている。このような神経変性の医学的結果のため、これらの変性性の神経学的プロセスの軽減は重要な治療目的となる。例えば、興奮性アミノ酸受容体の興奮毒性は多数の神経疾患の病態生理学(心臓バイパス手術および移植の後の大脳欠損、卒中(stroke)、脳虚血、外傷または炎症から生じる脊髄損傷、周生期低酸素症、心停止および低血糖神経損傷の病因を含む)に関与している。さらに、興奮毒性は、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、遺伝性運動失調、AIDS−誘発痴呆、筋萎縮性側索硬化症、特発性および薬物誘発性パーキンソン病、ならびに目の損傷および網膜症を含む慢性神経変性状態に関与している。興奮毒性および/またはグルタミン酸機能不全に関与している他の神経疾患としては、振戦を含む筋痙直、薬物耐性および退薬、脳浮腫、てんかんを含む痙攣性障害、うつ病、不安障害および心的外傷後ストレス症候群のような不安関連障害、遅発性ジスキネジー、およびうつ病、統合失調症、双極性障害、躁病および薬物中毒または依存症に関連する精神病が挙げられる(通常、米国特許番号5,446,051および5,670,516を参照のこと)。興奮性アミノ酸受容体アンタゴニストはまた、鎮痛剤として、および種々の形態の頭痛(群発頭痛、緊張型頭痛および慢性日常性頭痛を含む)の治療または予防に有用であり得る。さらに、公開されている国際特許出願WO98/45720は、興奮性アミノ酸受容体興奮毒性が、急性および慢性の疼痛状態(激痛、難治性疼痛、神経因性疼痛、外傷後疼痛を含む)の病因に寄与することを報告している。
三叉神経節およびそれに関連する神経経路が、頭および顔の痛みの感覚(例えば、頭痛および特に片頭痛)と関連していることもまた公知である。Moskowitz(Cephalalgia,12,5−7,(1992))は、未知の要因が三叉神経節を刺激し、これは次いで頭部組織内の脈管構造を刺激し、軸索から脈管構造を刺激する血管作用性神経ペプチドを遊離させることを提案した。これらの神経ペプチドは、髄膜の神経性炎症を導く一連の事象を開始し、この結果が疼痛である。この神経性炎症は、スマトリプタンにより、ヒトにおいて急性片頭痛を治療するために必要とされる用量と類似する用量で防止される。しかしながら、このようなスマトリプタンの用量は、スマトリプタンに付随する血管収縮特性の結果としての禁忌と関連している(MacIntyre,P.D.ら、British Journal of Clinical Pharmacology,34,541−546(1992);Chester,A.H.ら、Cardiovascular Research,24,932−937(1990);Conner,H.E.ら、European Journal of Pharmacology,161,91−94(1990)を参照)。近年、イオン作用性グルタミン酸受容体のカイニン酸サブタイプの5個のメンバー全てがラット三叉神経節ニューロンで発現されていることが報告された(特に、GluRおよびKA2が高レベルで観察された)(Saharaら、The Journal of Neuroscience,17(17),6611(1997))。このようなものとして、グルタミン酸受容体興奮毒性に関与しているかもしれない片頭痛はさらに別の神経疾患を示す。
神経保護性薬剤(例えば、興奮性アミノ酸受容体アンタゴニスト)の使用は上記の障害全ての治療または予防および/またはこれらの障害と関連する神経学的障害の量の減少に有用であると考えられる。例えば、研究はAMPA受容体アンタゴニストが局所的(focal)および一過性全脳虚血(global ischmia)モデルにおいて神経保護的であることが示された。競合的AMPA受容体アンタゴニストNBQX(2,3−ジヒドロキシ−6−ニトロ−7−スルファモイルベンゾ[f]キノキサリン)は全脳的および局所的な虚血損傷の予防に有効であると報告されている。Sheardownら、Science,247,571(1900);Buchanら、Neuroreport,2,473(1991);LePeilletら、Brain Research,571,115(1992)。非競合的AMPA受容体アンタゴニストGKYI 52466はラット一過性全脳虚血モデルにおいて有効な神経保護剤であることが示されている。LaPeilletら、Brain Research,571,115(1992)。欧州特許出願公開番号590789A1および米国特許番号5,446,051および同5,670,516は、特定のデカヒドロイソキノリン誘導体化合物がAMPA受容体アンタゴニストであり、そのもの自体が多数の障害状態(疼痛および片頭痛を含む)の治療に有用であることを開示している。WO98/45270は、特定のデカヒドロイソキノリン誘導体化合物がiGluR受容体の選択的アンタゴニストであり、種々のタイプの疼痛(激痛、慢性疼痛、難治性疼痛および神経因性疼痛を含む)の治療に有用であることを開示する。
このように、本発明の化合物は、上記考察のように、神経疾患を治療する方法に有用であると考えられる。このような化合物は、神経学的障害に関する安全かつ有効な、副作用を伴わない治療に対して長期間求められてきた要求を解決する。それゆえ、本発明はさらに神経疾患の治療方法を提供し、この方法はそのような治療を必要とする患者に式Iの化合物を有効量で投与することを含む。より具体的には、本発明はさらに、疼痛または片頭痛の治療方法を提供し、この方法はそのような治療を必要とする患者に式Iの化合物を有効量で投与することを含む。本発明により、神経疾患および神経変性性疾患の治療が、促進される。
本明細書中で用いる用語「患者」は、哺乳動物、例えば、マウス、モルモット、ラット、イヌ、サルまたはヒトを意味する。好ましい患者はヒトであると理解される。
本明細書中で用いる用語「処置(治療)」(または「処置(治療)する」)は、生じた症状の進行、重症度の予防、防止、制止および遅延、停止または逆転を含む一般的に許容されている意味を含む。したがって、本発明の方法は治療的および予防的投与の両方を含む。
本明細書で用いる用語「有効量」は、診断または治療下にある患者に望ましい効果を提供する、患者に1回または複数回の投薬投与の際の化合物の量または用量を意味する。
有効量は、当業者としての主治医によって、既知の技術を用いることにより、および類似の状況で得られた結果を観察することにより容易に決定され得る。投与する化合物の有効量または用量の決定に際して、専門の主治医によって多数の因子(例えば、哺乳動物の種、その大きさ、年齢および全体的な健康状態、関与する具体的な疾患、その疾患が関与する関与の程度または疾患の重症度、個々の患者の反応、投与する特定の化合物、投与態様、投与する製剤のバイオアベイラビリティ特性、選択した投与レジメ、併用薬物の使用、および他の関連する状況が含まれるが、これらに限定されない)が考慮される。
典型的な1日用量は、本発明の活性化合物を約0.01mg〜約100mg含有する。好ましくは、1日用量は約0.05mg/kg〜約50mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kg〜約25mg/kgである。
上記の状態、疾患または障害に罹患した患者の処置をもたらす際に、式(I)の化合物は、生体利用可能なモノ酸親化合物を有効量で生じる任意の形態または態様(経口投与および非経口経路を含む)で投与されうる。例えば、式(I)の化合物は、経口的、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、経鼻、経直腸、経頬粘膜などにより投与することができる。あるいは、化合物は持続注入により投与することができる。通常、経口投与が好ましい。製剤製造の当業者であれば、選択した化合物に特異的な特性、治療する疾患状態、疾患の段階および他の関連する状況に応じて、適切な形態および投与態様を容易に選択することができる。
本発明で用いる化合物は全て塩を形成し得、塩形態の医薬は遊離塩基よりも簡単に結晶化されるか、または簡単に精製される場合が多いことを当業者は理解する。全ての場合において、上記の医薬の塩としての使用は、本明細書中の記載において意図されており、好ましいことが多く、全ての化合物の製薬上許容される塩は本明細書に記載した名称に含まれる。
別の局面に従って、本発明は式Iの化合物または本明細書中上記の製薬上許容される塩、および製薬上許容される希釈剤又はキャリアを含有する医薬組成物を提供する。
医薬組成物は、周知かつ容易に利用可能な成分を用いる公知の方法により製造される。本発明の組成物を作製する際に、通常、活性成分はキャリアと混合するか、またはキャリアにより希釈するか、またはキャリア内に封入し得、そしてカプセル、サシェ、紙もしくは他の容器の形態であり得る。キャリアが希釈剤として働く場合、これは、活性成分のためのビヒクル、賦形剤または媒体として働く固体、半固体または液体物質であり得る。組成物は、錠剤、ピル、散剤、ロゼンジ、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアゾール剤、例えば最高10重量%の活性化合物を含有する軟膏剤、ゼラチン軟および硬カプセル剤、坐剤、滅菌注射液剤および滅菌パックされた散剤の形態であり得る。
適切なキャリア、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、ガム、アカシア、リン酸カルシウム、アルギナート、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油が挙げられる。さらに、製剤は滑沢剤、湿潤化剤、乳化剤および懸濁剤、保存剤、甘味料または香料を含有し得る。本発明の組成物は、当該分野で周知の方法を利用することにより、患者への投与後に活性成分の即時放出、徐放、または遅延放出を提供するように製剤化することができる。
好ましくは、組成物は単位投薬形態で処方され、各投薬は活性成分を約1〜約500mg、より好ましくは約5〜約300mg(例えば、25mg)で含有する。用語「単位投薬形態」は、ヒト被検体および他の哺乳動物に対し単一の投薬として適した物理的に別個の単位を意味し、各単位は所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を、適切な医薬キャリア、希釈剤または賦形剤と関連して含有している。以下の製剤例は、単なる例示であり、本発明の範囲を限定する意図ではない。
製剤例1
以下の成分を用いてゼラチン硬カプセルを製造する。
Figure 2005529892
上記成分を混合し、ゼラチン硬カプセルに460mgの量で充填する。
製剤例2
活性成分を各々60mg含有する錠剤を以下の通りに製造する。
Figure 2005529892
活性成分、デンプンおよびセルロースを45番メッシュU.S.ふるいに通し、徹底的に混合する。ポリビニルピロリドン溶液を得られた粉末と混合し、次いで14番メッシュU.S.ふるいに通す。そのようにして製造した顆粒を50℃で乾燥させ、18番メッシュU.S.ふるいに通す。次いで、予め60番メッシュU.S.ふるいにかけたカルボキシメチルデンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクを顆粒に加え、混合後に打錠機で圧縮して各々重量150mgの錠剤を得る。

Claims (25)

  1. 式:
    Figure 2005529892
    [式中、RはC−C20アルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキルアリール、C−Cアルキル(C−C10)シクロアルキル、C−Cアルキル−N,N−C−Cジアルキルアミン、C−Cアルキル−ピロリジン、C−Cアルキル−ピペリジン、C−Cアルキル−モルホリンを表す]
    で示される化合物またはその製薬上許容される塩。
  2. RがC−C10アルキルを表す、請求項1に記載の化合物。
  3. Rが2−エチルブチル、イソブチル、3−メチルブチル、デシルまたはエチルを表す、請求項2に記載の化合物。
  4. Rが2−エチルブチルを表す、請求項3に記載の化合物。
  5. Rがイソブチルを表す、請求項3に記載の化合物。
  6. Rが3−メチルブチルを表す、請求項3に記載の化合物。
  7. Rがデシルを表す、請求項3に記載の化合物。
  8. Rがエチルを表す、請求項3に記載の化合物。
  9. (3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸 2−エチル−ブチルエステルまたはその製薬上許容される塩である化合物。
  10. 製薬上許容される塩がトリフルオロ酢酸塩である、請求項9に記載の化合物。
  11. (3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸イソブチルエステルまたはその製薬上許容される塩である化合物。
  12. 製薬上許容される塩がトリフルオロ酢酸塩である、請求項11に記載の化合物。
  13. (3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸 3−メチルブチルエステルまたは製薬上許容される塩である化合物。
  14. 製薬上許容される塩がトリフルオロ酢酸塩である、請求項13に記載の化合物。
  15. (3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸デシルエステルまたはその製薬上許容される塩である化合物。
  16. 製薬上許容される塩がトリフルオロ酢酸塩である、請求項15に記載の化合物。
  17. (3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステルまたはその製薬上許容される塩である化合物。
  18. 製薬上許容される塩が塩酸塩である、請求項15に記載の化合物。
  19. (3S,4aR,6R,8aR)−6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−1,2,3,4,4a,5,6,7,8,8a−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル塩酸塩一水和物である化合物。
  20. 請求項1に記載の化合物と、製薬上許容される希釈剤またはキャリアとを含有する医薬組成物。
  21. 請求項1に記載の化合物と、製薬上許容される希釈剤またはキャリアとを含有する、疼痛または片頭痛の治療のための医薬組成物。
  22. 式:
    Figure 2005529892
    [式中、RはC−C20アルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキルアリール、C−Cアルキル(C−C10)シクロアルキル、C−Cアルキル−N,N−C−Cジアルキルアミン、C−Cアルキル−ピロリジン、C−Cアルキル−ピペリジン、C−Cアルキル−モルホリンを表す]
    で示される化合物またはその製薬上許容される塩を有効量で患者に投与することを含む、疼痛の治療方法。
  23. 式:
    Figure 2005529892
    [式中、RはC−C20アルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキルアリール、C−Cアルキル(C−C10)シクロアルキル、C−Cアルキル−N,N−C−Cジアルキルアミン、C−Cアルキル−ピロリジン、C−Cアルキル−ピペリジン、C−Cアルキル−モルホリンを表す]
    で示される化合物またはその製薬上許容される塩を有効量で患者に投与することを含む、片頭痛の治療方法。
  24. 疼痛の治療のための医薬の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
  25. 片頭痛の治療のための医薬の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。

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