JP2005529857A - 治療効果のある血液組成物の調製のための方法及び手段 - Google Patents

治療効果のある血液組成物の調製のための方法及び手段 Download PDF

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Abstract

血球が治療上及び/又は診断上重要な1つ以上のタンパク質及び/又はエフェクター分子を一時的又は安定的に発現し、場合によっては分泌する誘導血液組成物を血液から調製するための方法。

Description

本発明は実質的に、血球が治療上又は診断上重要な1種以上のタンパク質及び/又はエフェクター分子を一時的又は安定的に発現し、場合によっては分泌する、血液から誘導血液組成物を調製する方法に関する。
真核組換えタンパク質の生産は手数がかかり、高価である。このようなタンパク質の正しいプロセシングも問題がある。タンパク質の治療効果の度合はこのタンパク質のプロセシングに大いに左右される。在来の組換えタンパク質は誤ったプロセシング、例えばグリコシル化の欠如により不十分な効果を示す。組換えタンパク質の正しいプロセシングは治療効果を何倍も高める。
不純物のない組換えタンパク質を調製するのは大変面倒である。しかし純度はその効果及び副作用の回避において大きな役割を果たす。在来の方法で調製された組換えタンパク質は不適合反応を引き起こすことがある。この反応は特にタンパク質製剤に含まれる不純物自体及びタンパク質及び/又は不純物に対して起こり得る生体反応、特に免疫反応に起因する。そこで動物又はヒトの身体の特に自家細胞から得られ、しかも容易に入手できる組換えタンパク質を調製しようと努める。
血球の種々の特異的断片のトランスフェクションは従来周知である。Van Tendelooら(Ge-ne Therapy(2000)7:1431-1437)はエレクトロポレーションによる一次ヒト血球への遺伝子転移システムを記述する。その場合血球として、それぞれ培養形態の活性化ヒトTリンパ球及び/又はCD34型成人骨髄細胞がエレクトロポレーションによりトランスフェクションされる。トランスフェクションの前にTリンパ球をPHA(受動血球凝集)の適用又はCD3「架橋」及びインターロイキン2により活性化する。またHarrisonら(Bio Techniques(1995)19:816-823)も陽イオン性脂質による細胞系又は一次ヒト細胞、特に末梢血の単核細胞及び/又はCD34強化造血細胞への遺伝子転移を記述する。
例えば一次的機械的負荷による真核細胞のトランスフェクションのための代替法が記述されている。Costanzo及びFox(Genetics(1988)120:667-670)はYPD培地でプラスミドDNAと小さなガラス球(「ガラスビーズ」)による酵母細胞の形質転換を記載する。その場合細胞を機械的に「摩擦し」、プラスミドDNAの酵母細胞への進入を容易にするためにガラス小球が使用される。
本発明の根底にある技術問題は、先行技術から出発して、血球、特に自家血球から治療上及び/又は診断上重要な真核タンパク質、特に自家タンパク質を得ることを可能にする方法、及びこの方法の実施のための手段を提供することである。
この技術問題は、おおむね血球の一時的な遺伝的形質転換を行い、好ましくは直ちに、引続き血球を血清中で培養し、血清中で生成されたタンパク質を特に精製せずに、好ましくは引続き適用することによって解決される。本発明によれば、誘導血液組成物を血液から調製する方法において、血液、特に全血、即ち未精製及び/又は未分画の血液に含まれる血球を一時的に、即ちある期間に限って、又は安定的、即ち持続的に少なくとも1つの核酸分子、特にDNA又はRNAで形質転換する方法によって、問題が解決される。本発明に基づき、少なくとも1つの核酸分子が少なくとも1つの遺伝子産物、好ましくはタンパク質、特に好ましくは治療上及び/診断上重要なタンパク質及び/又は少なくとも1つのエフェクター分子、例えばエフェクタータンパク質、又は好ましくは治療上又は診断上重要なタンパク質の血清濃度を調節し、好ましくは高める少なくとも1つの核酸分子、特にRNAをコードすることが好ましい。本発明の方法の別の手法では、少なくとも1つの形質転換血球を含む誘導血液組成物がこうして得られ、この血液組成物が少なくとも1つの遺伝子産物、特に治療上及び/又は診断上重要なタンパク質及び/又はエフェクター分子を一時的又は安定的に発現し、好ましくは場合によってはこれを放出、即ち分泌する。特に別の手法では、誘導血液組成物から少なくとも1つの遺伝子産物、好ましくは治療上及び/又は診断上重要なタンパク質及び/又はエフェクター分子及び/又は少なくとも1つのエフェクター分子調節性の治療上及び/又は診断上重要なタンパク質が得られる。
その場合特に有利なのは、一方では原料として、他方では少なくとも1つの遺伝子産物のための生産系としての血液の利用が、好ましくは特に血清中で優先的に生産される少なくとも1つのタンパク質の適用とともに、特に簡単かつ安価なことである。また真核血球がタンパク質を正しくプロセシングすることも明らかになっている。しかも本発明に基づく、好ましくは自家又は異種生産系では、遺伝子産物の受容体に不適合反応をもたらす不純物又はその他の免疫原性成分が現われないことが特に有利である。本発明に基づき得られるエフェクター分子、即ち特に治療上及び/又は診断上重要なタンパク質の血清濃度を調節し、好ましくは高める遺伝子産物を利用する場合は、血液組成物が自家の、即ち給血者に由来する治療上及び/又は診断上重要なタンパク質だけを含むことが特に好都合である。こうして調製された血液組成物の適用、好ましくは再適用の際の免疫反応は事実上あり得ない。
本発明に基づく形質転換のために、少なくとも1つのエフェクター分子、特にエフェクタータンパク質をコードする核酸分子、又は多数の、好ましくはあらゆるタンパク質の生産を促すエフェクター分子を利用するならば、血球で同時に複数の、好ましくは自家タンパク質の生産及び/又は放出が促されることが特に好都合である。特にその場合はタンパク質が自然の数量比で生産及び/又は放出される。このようなエフェクター分子の例は、転写因子、シグナル導入鎖の一部であるタンパク質、細胞外シグナル分子、例えばサイトカイン又はアンチセンスRNAである。多くの疾患は多因子の原因を有するから、複数の治療効果タンパク質を個別的生理的タンパク質比率で特に同時に生産することは、特に動物又はヒトの身体の治療のための医薬組成物の作用物質としてこのタンパク質を適用する上で特に好都合である。
本発明の方法の特殊な実施形態では、本発明に基づく誘導血液組成物が少なくとも1つの治療上及び/又は診断上重要なタンパク質を、形質転換しない血液組成物より高い濃度で有する。本発明における治療上及び/又は診断上重要なタンパク質は、好ましくはサイトカイン、例えば天然の又は改変されたインターロイキン−1受容体拮抗体、IL−1Ra(IRAP)である。
本発明によれば、本発明に基づく誘導血液組成物の少なくとも1つの血球で少なくとも1つのエフェクター分子、特にエフェクタータンパク質を発現することが好ましい。形質転換しない血球では、このエフェクター分子が全く発現されないか、又はエフェクター分子、特にエフェクタータンパク質が、本発明の誘導血液組成物の少なくとも1つの血球が生産する量より低い量で発現される。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、誘導血液組成物を調製するために生体、特にヒト又は動物の身体、患者又は被験者から少なくとも1種の採取装置(Entnahmesystem)、好ましくは注射器により血液を採取する。本発明によれば注射器の中で血液を、少なくとも1つの核酸分子で形質転換し、その際形質転換される血球を、採取された血液の他の血液成分から分離、即ち分画しないことが好ましい。本発明の方法の変法においては、血液を少なくとも1つの採取装置、好ましくは注射器により採取し、続いて少なくとも1つの別の容器に満たす。本発明によれば、採取した血液をこの少なくとも1つの別の容器の中で、好ましくは形質転換される血球を他の血液成分から分離せずに、即ち未分画の血液、特に全血として形質転換することが好ましい。一変法では、採取した血液から血球、特に核細胞、例えば単核細胞、PBMCを他の血液成分から分離し、血球を形質転換して、血清、特に自家血清、好ましくは上記の分離即ち分画の際に単離された血液成分として得られた自家血清を含む若しくは含まない培地で、又は純粋な、即ち未希釈の血清、特に純自家血清、好ましくは上記の分離の際に単離された血液成分として得られた純自家血清中でインキュベートする。
本発明によれば、少なくとも1つの形質転換される核酸分子はベクター、例えばプラスミド又はウイルスに含まれていることが好ましい。
本発明によれば、形質転換される少なくとも1つの核酸分子は、少なくとも1つの調整要素、例えばプロモーター、エンハンサー又はイントロン、特に少なくとも1つの血球特異的調整要素に機能的に結合されていることが好ましい。一変法では、形質転換される少なくとも1つの核酸分子が、細胞からのタンパク質分泌のためのシグナルペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド断片に機能的に結合されている。
本発明によれば、形質転換される核酸分子、特にDNA又はRNAを、場合によっては少なくとも1つの標識物質で標識することが好ましい。一変法では、形質転換操作の終了の後に過剰の、即ち形質転換されなかったDNAの除去のために、この標識物質を利用する。
本発明によれば、形質転換される核酸分子、特にDNA又はRNAを、形質転換される核酸分子のトランスフェクション率及び/又は発現率を調節し、好ましくは増加する別の物質とともに形質転換することが好ましい。本発明によれば、別の物質は下記の機能の少なくとも1つを遂行することが好ましい。a)特異的な細胞型の表面を識別して、この細胞を特異的に形質転換する。b)形質転換される核酸分子の、細胞への吸収効率を高める。c)形質転換される核酸分子の核移行を最適化する。d)形質転換細胞の導入遺伝子の転写効率を高める。
本発明の方法の特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの形質転換される核酸分子、特にDNA又はRNAを、少なくとも1種の固体担体、特に大きな又は小さな球、例えばガラス球、磁性小球、形質転換が行われる容器、特に注射器の壁面に固定化して、形質転換のために使用することが好ましい。
球、好ましくは微小ガラス球によるトランスフェクション(「ビーズ・トランスフェクション」)は、球、好ましくはガラス球を核酸分子、好ましくはプラスミドDNAで被覆(「コート」)するシステムである。本発明に関連して「微小ガラス球」又は「ガラス球」とは、ガラス材料からなるガラス球だけでなく、その機能がガラスと同等な、特に核酸分子と共有及び/又は非共有結合することができる別の材料、例えば重合プラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチロール、ポリ四フッ化エチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカルボネート、ポリイミド、ポリアセテート、ポリオレフィン、シリコーン、ポリシラン、ラテックス等及び/又はその混合物からなる球をも意味する。また球を本発明に基づき磁性球(「マグネチック・ビーズ」)として形成することが好ましい。球又は粒子の大きさは好ましくは直径2ないし4mmであるが、これより小さな粒子、特に100μm以上の粒子、例えばガラス粉も使用することができる。
細胞がこの球に付着している間に、核酸分子、特にDNA又はRNA、好ましくはプラスミドDNAが細胞に吸収され、細胞核に到達し、そこで発現される。本発明に基づき核酸分子を固体担体、例えば大小のガラス球及び/又は好ましくは注射器の形の採取装置の表面及び/又は採取された血液又は分離された血液画分と接触させられる別の容器に被着する。採取した血液の有核血球はこうした担体、例えば大きなガラス球に特異的に付着し、及び/又は小さな球の場合はこの担体を取り込む。
核酸分子による球の被覆は、共有又は非共有結合で行うことが好ましい。共有結合、特に酸に不安定な共有結合は、担体が食作用によって取り込まれる場合に好ましくは効果的である。非共有結合は、DNAが付着の後に吸収される場合に好ましくは効果的である。
代案及び/又は補助的形質転換方法として、エレクトロポレーションを行う。そこで本発明の方法の別の好ましい実施形態では、形質転換される血球のエレクトロポレーションによって、少なくとも1つの形質転換される核酸分子、特にDNA又はRNAを形質転換する。好ましい実施形態では、形質転換される核酸分子は、身体固有のタンパク質の発現を誘導、抑制及び/又は調節する核酸分子、例えば少なくとも1種のアンチセンス構築物、RNA要素、転位因子、転写因子を含み、特にこれからなる。
特定の電界を適用する場合、細胞は選ばれた電気的パラメーターに応じてある値からトランスフェクションされる。エレクトロポレーションによって、特に有核血球が形質転換される。これは特に血液から有核血球を事前に精製せずに行われる。即ち全血で有核血球を形質転換することが特に好都合である。エレクトロポレーションの際に「裸の」DNAを利用し、形質転換操作の終了の後に過剰の、即ち形質転換されなかったDNAを再び除去することができるように、このDNAを、場合によっては例えばビオチンで標識することが好ましい。
本発明の方法の特に好ましい実施形態では、形質転換を行い、少なくとも1つの形質転換遺伝子産物、特に治療上及び/又は診断上重要なタンパク質及び/又はエフェクターを少なくとも1つの形質転換血球で発現し、血球から血清に分泌した後、誘導血液組成物の少なくとも1つの血球及び場合によっては少なくとも1つの別の形質転換されなかった血球を血清から分離し、好ましくは無血球の誘導血清を得る。
本発明によれば、形質転換される核酸分子をリポソーム、ウイルスベクターにより、又は大きな及び/又は小さな球、特に微小ガラス球に結合して形質転換することが好ましい。場合によっては少なくとも1つの形質転換される核酸分子が大きな及び/又は小さな球に酸に不安定に結合される。
また本発明の主題は、特に血液中に存在する少なくとも1つの細胞、例えば血球の少なくとも1つの核酸分子による形質転換のための方法において、細胞及び/又は血球を核酸分子と接触させ、細胞及び/又は血液中に存在する血球を形質転換し、安定的又は一時的に形質転換された細胞及び/又は血球を得る方法である。その場合、本発明に基づき形質転換する核酸分子を、形質転換の前に大きな及び/又は小さな球、特に微小ガラス球に共有結合し、特に酸に不安定に結合することが好ましい。
本発明の別の主題は、ヒト又は動物の身体から好ましくは少なくとも1つの注射器により血液を採取し、上記の本発明の方法を実施して、特に誘導血液組成物を調製して行うヒト又は動物の身体の治療方法である。本発明によれば、誘導血液組成物を、好ましくは同じヒト又は動物の身体に再び適用し、好ましくは再適用する。特に血球及び/又はその他の血液成分、特に顆粒状成分、例えば赤血球及び/又はフィブリノーゲンを分離した後に、おおむね誘導血清だけをヒト又は動物の身体に適用することが好ましい。この方法の本発明に基づく変法においては、調製された誘導血液組成物、又は誘導血清を、同じ動物又はヒトの身体に適用するのではなく、むしろ別の動物又はヒトの身体に適用する。
本発明の別の主題は、核酸分子が共有結合された、特に酸に対し不安定に結合された大きな及び/又は小さな球、例えば微小ガラス球の、血液、好ましくは血液の核細胞の形質転換のための、特に全血での使用である。その場合本発明に基づき血液、特に血球でのタンパク質及び/又はエフェクターの発現及び分泌のために使用することが好ましい。また本発明の別の主題は、生体細胞、特に真核細胞、特に好ましくは植物、真菌又は動物、例えば哺乳動物細胞、特にヒト細胞の形質転換のための使用である。
最後に、本発明の別の主題は、治療、特に遺伝子治療の目的のため、好ましくは白血病の遺伝子治療及び/又は治療、神経系、運動器官又は各種の内臓の外傷性、変性性、慢性炎症性疾患の治療のために、少なくとも1つの治療上及び/又は診断上重要なタンパク質及び/又はエフェクター分子をコードする核酸を、血液、特に全血の少なくとも1つの血球に形質転換するために、血液、特に全血を使用することである。そこで本発明の別の主題は、特に本発明に基づき調製された誘導血液組成物及び/又は誘導血清から、上記の治療目的で医薬キットを調製するために血液、特に全血を使用することである。また本発明の別の主題は、上記の治療目的で血液、特に血液に含まれる少なくとも1つの血球の形質転換、並びに少なくとも1つの治療上及び/又は診断上重要なタンパク質及び/又はエフェクター分子の発現及び場合によっては分泌を行うために、特に治療上及び/又は診断上重要なタンパク質及び/又はエフェクター分子をコードする核酸分子を使用することである。また本発明の別の主題は、治療上及び/又は診断上重要なタンパク質及び/又はエフェクター分子をコードするこの核酸分子を、この形質転換のための医薬キットの調製に使用することである。
本発明によれば、患者自身の血球により少なくとも1つの治療上及び/又は診断上重要な好ましくは自家タンパク質の医薬生産を行い、続いて治療のために自家適用することが好ましい。あるいはまた、全血の採取の後に直ちに採取装置の中で血球の形質転換及びインキュベーションを行い、血清を精製して適用する。特に血液成分の分離又は単核末梢血、PBMC(pripheral blood mononuclear cells)の精製の後に形質転換を行う場合は、a)例えば分裂促進又は成長刺激物質、例えばインターロイキン2(IL−2)により成長を誘発せずに、又はb)分裂促進又は成長刺激物質、例えばIL−2で成長を誘発して、形質転換を行うことが好ましい。
成長を誘発し、好ましくはリポソーム又はエレクトロポレーションにより形質転換した後に、引続き成長を誘発し又はせずに細胞を引続き培養する。特にエレクトロポレーションの場合は特に電界の利用が細胞の成長及び/又は細胞の発育を刺激することが明らかになっている。従って、電気刺激は公知の成長刺激物質の代替策として行われる。
形質転換を行った後の形質転換されなかった核酸分子、特にDNA及びRNAの除去、特にインキュベーションの後のヒト血清からのDNAの除去のために、本発明に基づきおおむね次の方法が行われる。好ましい変法では、形質転換のための核酸分子を担体に結合し、インキュベーションの後に血清を遠心分離し、遠心分離の後に所望のタンパク質を含む血清を取り出して、最後の担体及び細胞残留物を除去するために濾過し、その際形質転換されなかった核酸分子は担体とともに除去される。別の変法では、標識核酸分子を使用し、インキュベーションの後に標識核酸分子に対してアフィニティーを有する添加物、特に担体を加える。本発明に基づき、好ましくはビオチンで標識した核酸分子の場合は、ビオチン標識分子を結合するストレプトアビジンで被覆した担体を使用する。続いて遠心分離により、及び/又は磁性担体の場合は磁気により、担体を血清から取り除き、形質転換されないで担体に結合されている核酸分子を血清から除去する。別の変法では、形質転換されなかった核酸分子を含む血清を、核酸分子に対してアフィニティーを有する少なくとも1個のフィルターで精製する。例えば、ビオチンで標識した核酸分子はストレプトアビジンで被覆されたフィルターに結合する。この変法では、細胞残留物も形質転換されなかった過剰の核酸分子も1段階で除去されることが特に有利である。
下記の実施例と図に基づき、本発明を詳述する。
DNA被覆微小ガラス球による血球培養物の形質転換(「ビーズ・トランスフェクション」)
a)血球培養物
血球培養物は主として研究及び開発のために使用される系である。血球培養は全血の培養のために使用される。この方法は「ビーズ・トランスフェクション」およびDNAの毒性試験のために利用される。
そのために研究プロトコルに従って48ウエル型細胞培養プレート(Nunc、ウィースバーデン)を準備し、「ビーズ・トランスフェクション」のため、又はDNAの毒性試験のために、微小ガラス球を用いる。続いて未凝固の全血を空洞部に入れる。48ウエル型プレートでは空洞部当り約1mlが使用される。全血の一部をゼロ試料として5000×gで約5分間遠心分離し、続いて上澄み液を取り出し、96ウエル型プレートの空洞部に入れる。ゼロ試料入りのプレートを密閉し、−80℃で冷凍保存する。48ウエル型細胞培養プレートも同じく密閉し、5%CO飽和及び飽和大気湿度のもとで約37℃で約24時間インキュベートする。インキュベーションの後に48ウエル型細胞培養プレートの試料の血清上澄み液を取り出し、同じく96ウエル型プレートに入れる。試料入りの96ウエル型プレートを分析まで−80℃で冷凍保存する。
毒性試験又は発熱原性試験ではインターロイキン−1β含量を決定し、トランスフェクション実験では発現したリポーター又は標的タンパク質の含量を決定する。
別の構成の試験では容積をそれぞれ適当に調整する。
b)プラスミドDNA、pcDNA-IL-1Raの生産
プラスミドpcDNA-IL-1Raはタンパク質をコードする少なくとも1つの配列(「コーディング領域」)及び真核細胞で有効な制御ユニット(「プロモーター」)を含む。それはpcDNA−1ベクター(Invitrogen社、カールスルーエ)中のコーディング領域、IL−1Ra−cDNAからなる。細菌懸濁液からのプラスミドDNAの単離は市販の系(Quiagen Maxiprep(商標) endofree-Kit(商標)、Quiagen社)により製造元の指示書に従って行う。製造元が提案するすべてのチェックを行う。単離されたプラスミドの品質管理は周知のように特異的PCR、制限消化(Restriktionsverdau)及び血液培養物の毒性試験又は発熱原性試験によってそれぞれ行われる。
c)プラスミドDNA、pcDNA-IL-1Raの発熱原性試験
使用するDNAは発熱原性がないことが必要である。発熱原性DNAを含む血球培養物(a)を参照)ではIL−1β含量が平均2500pg/mlである。潜在的発熱物質とともにインキュベートした後のIL−1β含量がIL−1β−ELISAテストの最低基準、即ち15.2pg/mlを超えなければ、DNAは発熱原性がない又は内毒素がないとみなされる。図1に発熱原性試験の結果を示す。
pcDNA-IL-1Raとともにインキュベートした場合、IL−1β含量の増加を検出することはできない。血球培養物でインキュベートしたpcDNA-IL-1Ra希釈系列の血清上澄み液のIL−1β濃度は15.2pg/ml未満であり、DNAは発熱原として作用しない。
d)ガラス球の被覆
プラスミドDNAを特定のpH及び塩条件のもとでガラス球の表面に結合する。すべての種類及び品質のガラスがDNAを非共有結合するわけでない。以下のようにして、担体がDNAを非共有結合するのに適しているか否かを確かめる。
まず、被覆されるガラス球からすべての残留物、例えばガラス粉や不純物を除去するのに、どれだけの数の洗浄処理が必要であるかを確かめる。球として通常、下記の性質を有するRoth社(カールスルーエ)のガラス球が使用される。
大きさ 2.85ないし3.3mm
化学組成
SiO 68%
CaO 3%
BaO 6%
O 8%
NaO 10%
Al 1%
2%
無鉛
そのために球を50ml小管に詰めて、pH5.5のリン酸緩衝液(1/15mol/lKHPO、1/15mol/lNaPO)を注ぎ足すことによって、球を順次何回も洗浄する。何回も反転して球を洗浄し、続いて液を再び注出する。
ガラス球の高い清浄度を得るために、まず極めて低いpH、即ち0.01ないし2、又は極めて高いpH、即ち10ないし14で、もしくは初めに高いpH、続いて低いpHで、もしくは初めに低いpH、続いて高いpHで予備洗浄することが好ましい。洗浄処理当りの洗浄時間は2分ないし1時間、好ましくは30分である。酸又はアルカリ溶液による処理時間は2分ないし1時間、好ましくは30分である。この酸またはアルカリ溶液処理と同時に、ガラス表面の修飾が行われる。この予備処理又は修飾は、慣用の有機及び/又は無機酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸又は酢酸等、及び好ましくはクロム硫酸、好ましくは50%クロム硫酸(例えばMerck(ダルムシュタット)、注文番号1.02499.2500、クロム硫酸をBiochrom超純水Ultra Pure Water No.L0040で所望の希釈度まで希釈する)又はアルカリ溶液例えばカ性ソーダ溶液、カリ溶液、アンモニア水等を使用して行う。
汚染度は200ないし800、好ましくは280nm(OD280)の1つ以上の波長で光学密度(OD)の測光測定によって決定する。
通常は4回の洗浄処理の後にOD280は一定である(表1を参照)。このことは除去可能な不純物粒子がガラス球から除去されたことを示す。
選択によっては、球をさらに純水(導電度最大約1μS)で、洗浄水の導電度が再び元の導電度に相当するまで洗浄する。次に洗浄処理をもう一度繰返す。この処置は、DNAの結合と臨床使用に悪影響を及ぼす恐れのある万一のイオン残留物を除去する。
結合緩衝液として、生理的溶液、例えばPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)を使用するのが理想的である。その場合は、細胞生理学的又は臨床的使用のために緩衝液のイオン強度と組成を調整しないでよいからである。5ないし7のpH値範囲のPBSでpH値勾配を整え、ガラス球へのDNAの結合をテストする。このために球を当該の緩衝液で1回ないし10回、好ましくは4回洗浄し、pcDNA-IL-1Ra(10μg/mlPBS)とともに90分インキュベートする。個々の処理の前後に260ないし280nmでOD測定により球の清浄度とDNAの結合を検査する。
表1はガラス球から不純物粒子を除去するために4回の洗浄処理を行った後のOD測定の代表的結果を示す。
Figure 2005529857
球のDNA被覆の検査のために、球をPBS(表に示したpH値)で4回洗浄して、球を緩衝液のイオンで飽和し、次にDNAを含む緩衝液とともに種々の期間(30、60、90、120、150及び180分)の間インキュベートする。個々の処理の前後に260及び280nmでOD測定を行なって、まず全ての粉末粒子が除去されたか、次いでどれだけのDNAが付着しているかをチェックする。最大量のDNAが球に結合する緩衝液のpH値はpH5.5である(図2を参照)。最大量のDNAが付着しているインキュベーション時間は1.5時間である(図3を参照)。
表2は洗浄工程の検査及び球被覆試料中のDNA含量決定のためのOD測定結果を示す。
Figure 2005529857
別の研究のためのガラス球を無菌の50ml小管に15mlまで詰め(約400球)、pH値5.5のPBSで4回洗浄し、個々の洗浄処理の際に入念に混合する。洗浄水中の不純物粒子を280nmのOD測定によりチェックする。次にpH値5.5のリン酸緩衝液(1/15mol/l KHPO,1/15mol/l NaHPO)にプラスミドDNAを混合し(15μg/ml)、10mlのこの溶液を洗浄した球に加える。1.5時間のインキュベーションの後にDNA溶液を取り除き、OD測定によって残留DNA量を決定する。未結合のDNAを除去するために、球をPBS(pH値5.5)で繰返し洗浄する。
e)球の滅菌
滅菌がDNA及び結合を損傷してはならない。従って蒸気殺菌(DNAの変性をもたらす)や放射(DNAに突然変異を誘発する)は使用しない。
DNAで被覆した球の滅菌は、滅菌装置で40mlの70%エタノールを加えて行う。24時間のインキュベーションの後にエタノールを除去し、球をPBS(PAA Laboratories社、ケルベ)で4回洗浄する。エタノ−ルと洗浄水を260及び280nmの測光吸収によりDNA分子について検査する。
f)PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による球上のDNAの検出
ガラス球を上記のように被覆し、滅菌する。ガラス球へのDNAの結合の一層明確な検出を行うために、敏感なPCR法を開発する。そのためにDNASTAR(商標)ソフトウエアによってプライマーを生じさせ、プライマーの反応条件(アニーリング温度、MgCl濃度、延長時間等)を最適化する。
被覆した球からDNAを解離するために、処理済の球と未処理の球を200μlのTE中で95℃に熱し、氷の上で10分間インキュベートする。次にプラスミドDNAの既知の濃度の希釈系列と比較することによって、球上のDNAが検出されるか否かを調べる(図4を参照)。シュウ化エチジウムでバンド染色を行う。球の上澄み液のPCRバンドの強さと既知のプラスミド濃度のバンドの強さを比較することによって、球の上澄み液のpcDNA-IL-1Ra含量を決定することができる。
未処理の球ではDNAを検出することができなかったが(図示せず)、被覆した球にはDNAが存在する。PCR及びゲル電気泳動(図4を参照)により検出した後、球の上澄み液中のDNA濃度が少なくとも1μg/mlであることを計算することができた。各球に0.2μgのDNAが付着している。
g)細胞のトランスフェクション
血球培養物中でトランスフェクションを行う。DNAで被覆したガラス球を48ウエル型細胞培養プレートMTP(Nunc社、ウィースバーデン)に入れ、1mlのヘパリン処理全血とともに37℃、5%CO中でインキュベートする。24時間のインキュベーションの後に血清上澄み液中の全タンパク質含量とリポーター又は標的タンパク質の含量を分析する。
h)トランスフェクション後のヒト血清中のプラスミドDNAのPCR検出限界の決定
臨床現場で本発明の方法を適用するためには、血清中にプラスミドDNAがないことを保証しなければならない。これをPCRにより検査する。
DNAポリメラーゼ(Taqポリメラーゼ)及びdNTPをQiagen社(ヒルデン)から「Supermix(商標)」として入手し、使用する。プライマーはInvitrogen(カールスルーエ)から入手する。その濃度を蒸留水で20μmol/lに調整する。
PCR増幅のために次のプライマー対、配列番号1/配列番号2を使用する。
(配列番号1)GCGCTTGTCCTGCTTTCTGTTCTC
(配列番号2)TGGAGTTCCGCGTTACATA
PCR増幅は、94℃の変性(30秒)、58℃のアニーリング(30秒)及び72℃の伸長(45秒)の30サイクルで行う。増幅の検査はアガロースゲル電気泳動で行う。
プラスミドDNA量の検出限界を決定するために、ヒト血清とプラスミドDNAの希釈系列を1:1で混合する。PCRにより検出された最小プラスミド濃度は10ng/mlである(図5を参照)。既知のプラスミド濃度の希釈系列でのPCRにより1μg/mlのPCR感度を決定することができる(図5のバンド2を参照)。
高い感度を得るために、「nested」PCRを行う。「nested」PCRを行うために別のプライマー対、配列番号3/配列番号4を使用する。
(配列番号3)GTCCTGCTTTCTGTTCTCGCTCAG
(配列番号4)AACTAGAGAACCCACTGCTTAC
PCRの検出限界を検出するために、血清とプラスミドDNA希釈系列を1:1で混合する。ヒト血清中のpcDNA-IL-1Raの検出可能な最終濃度は10pg/mlである(図6)。
i)被覆した球の使用後のヒト血清中のpcDNA-IL-1Raの検出
トランスフェクションしないヒト血清をプラスミドDNA、pcDNA-IL-1Raの希釈系列と混合し、トランスフェクション後のヒト血清とPCRで比較する。pcDNA-IL-1Raの希釈系列に基づきPCRの感度を確かめることができる。それは10pg/mlである。図7はトランスフェクション後のヒト血清のPCRによる分析を示す。トランスフェクション後のヒト血清では10pg/ml以上のDNA量を検出することができない。このことはトランスフェクション後に血清中にDNAが残留しないことを意味する。
k)導入遺伝子の発現
標的細胞を、あらかじめ被覆した球とともに24時間インキュベートし、続いてIL−1Ra及びIL−1β測定を行う。対照として下記を使用する。
1.試験開始時の血清上澄み液
2.同様に処理した未被覆の球とともにインキュベートした後の血清上澄み液
3.球なしでインキュベートした後の血清上澄み液
試料の分析によれば、被覆した球とともにインキュベートした試料では、未被覆の球とともにインキュベートした試料及び球なしでインキュベートした試料と比較してIL−1Ra含量の増加を検出することができる(図8を参照)。IL−1β測定によれば、増加を検出することはできず、測定値は8.32ないし11.51pg/mlの間であった(図示せず)。このことは、IL−1Ra生産が発熱原反応に起因せず、一時的形質転換の結果であるに違いないことを示す。
注射器内のDNA被覆ガラスビーズによる形質転換
a)注射器の準備
無菌のガラス球、例えばRoth社(カールスルーエ)の顆粒、注文番号17557.1又は下記のタイプの顆粒を使用する。
1)Roth
大きさ 2.85ないし3.3mm
化学組成(%)
SiO 68
CaO 3
BaO 6
O 8
NaO 10
Al

無鉛
2)SiLi 5506/89-6
大きさ 2.3ないし2.5mm
材料 硼珪ガラス
処理 1.研削法
2.研摩法
化学組成(%)
SiO 82
NaO 2
Al
14
比重(kg/dm) 223
モース硬さ 7
線膨張係数(20−300℃) 325
加水分解階級(DIN ISO 719) 1
酸階級(DIN 12116) 1
アルカリ溶液階級(DIN ISO 695) 2
変態温度(℃) 530
3)SiLi 5004/99-5
大きさ 2.5mm
材料 ソーダ石灰ガラス
処理 プレス法
化学組成(%)
SiO 67
NaO 16
CaO 7
Al

MgO 2
PbO なし
モース硬さ 6以上
4)Worf
大きさ 2ないし3.5mm
材料 ソーダ石灰ガラス
処理 研摩及び熱固化
化学組成(%)
SiO 65
NaO 16
CaO 7
Al

Mg 2
鉛含量 なし
密度(g/dm) 2.54
モース硬さ 6
加水分解階級 3
変形温度(℃) 530±10
5)Duran
大きさ 2ないし3.5mm
材料 硼珪ガラス
処理 1.研削法
2.研摩法
化学組成(%)
SiO 81
NaO,K0 4
Al
13
密度(g/dm) 2.23
線膨張係数(20−300℃) 3.25
加水分解階級(DIN ISO 719) 1
酸階級(DIN 12116) 1
アルカリ溶液階級(DIN ISO 695) 2
変態温度(℃) 525
顆粒の表面を通常、市販のクロム硫酸製剤により、実施例1で説明したようにバッチ法で修飾するが、実施例1に挙げた他の酸及び/又はアルカリ溶液も使用することができる。続いて酸/アルカリ溶液残留物を洗い流すために、顆粒を水で洗浄する。次に顆粒を滅菌し、水で飽和するために、顆粒を2バールの圧力のもとで121℃で少なくとも20分インキュベートする。続いて顆粒を80℃で20分間乾燥する。
最初の洗浄処理は無菌の50ml小管で行う。次に約150個のガラス球を例えばNo.00137型のプラスチック潅流注射器(Becton,Dickinson and Company、ハイデルベルク)に移し、注射器の中でDNAで被覆する。DNA溶液を放出し、球を洗浄する。その後のすべての処理は無菌室で行う。滅菌のために70%エタノールを注入し、注射器を閉鎖し、約24時間インキュベートする。次にPBS(PAA Laboratories、ケルベ)による洗浄処理が続き、その際PBSを上から注入し、再び流出させる。注射器の大きさに合わせて1、2、4又は10cm、場合によってはそれ以上又は以下の処理済の球を第2の無菌の注射器に詰め替える。場合によっては注射器に滅菌及び修飾した顆粒のほかに、十分な量の抗凝固物質例えばヘパリン(Liquemin(商標), Heparin-Natrium(商標) 2500 I.E.)又はクエン酸ナトリウムを充填する。この注射器を閉じて、溶封する。
b)注射器の一般的使用
利用者は包装から無菌の器具を取り出し、患者から血液を採取する。注射器はシールキャップの表面に隔膜を備えている。採血のために購入付属品即ちアダプターの針でこの隔膜を刺し通す。アダプターを取り除くと、隔膜が自動的に再び閉鎖される。採血の後、注射器のピストンを予定破断点で折る。図12はこの注射器の好ましい実施形態を示す。
次に血液入りの注射器を約37℃ないし41℃で24時間インキュベートする。インキュベーションは横置きで行う。血液を詰め替えて、遠心分離することが好ましい。遠心分離の後に例えば0.2μmの無菌の付属フィルターで血漿を取り除く。
c)臨床使用のための注射器の実験的適用
処理済の注射器で自発的給血者から血液を採取する。対照としてORTHOKIN(登録商標)注射器(ORTHOGEN社、ジュッセルドルフ)、ゼロ試料として球なしの潅流注射器及び10ml血清管(Sarstedt社、ニュンブレヒト)を購入する。ゼロ試料は購入の後直ちに4℃で4000×gで10分間遠心分離し、血清上澄み液を−20℃で冷凍保存する。注射器を37℃、5%COで24時間インキュベートする。インキュベーションの後に血清を取り出し、すべての血球を除去するために、4℃で4000×gで10分間遠心分離する。上澄み液を20ml注射器(Sas-tedt社、ニュンブレヒト)で吸引し、0.2μmフィルター(Minisart(商標)、Satorius社)で濾過除菌し、1.8ml小管に充填する。血清を−20℃で冷凍し、分析のために保存する。
系の臨床使用可能性を判断するために、得た血清を入念に分析する。輸血医療で慣用の血液製品の品質検査、例えばHCV、HBV、HIV及び梅毒のスクリーニングのほかに無菌性試験及び導入遺伝子活性の測定を行う。慣用の品質検査が実行可能であり、不利な影響を受けないことが保証されなければならない。
採取装置としての注射器の利用は臨床的適用を可能にする。輸血医療で慣用の血液製品の品質検査、例えばHCV、HBV、HIV及び梅毒のスクリーニングは、テストしたすべての系で同じ結果をもたらす。無菌性試験は、すべての系で血清の処理の後に細菌が現われないことを示した。
ゼロ試料及びORTHOKIN(登録商標)注射器(比較例)と比較して、本発明に基づく調合物のIL−1Ra含量の増加を確かめることができる(図9)。一方、IL−1β含量の増加を検出することはできず、測定値は7.2ないし10.9pg/mlである(図示せず)。このことは、IL−1Ra生産が発熱原反応に原因せず、一時的形質転換の結果であるに違いないことを示す。
d)臨床成績
患者集団で上記の系により18回の治療的適用を行い、臨床的に評価する。運動器官の変性性および炎症性疾患により膝又は踝関節の軟骨欠損がある患者を取り上げる。
効果及び副作用の判定は放射線で記録し、WOMAC評点、VAS評点及び既往歴データに基づいて判定した。
効果については、検査及び治療を受けたすべての患者の治療した関節で半年の観察期間中に顕著かつ意外な、極めて有意義な苦痛抑制、可動性の改善、一般所見の改善を観察することができる。重大な副作用は現われない。
単核血球(PBMC)の形質転換
a)PBMCの単離と培養
PBMC(単核血球)の単離のために密度勾配溶液を使用する。この目的のために未凝固の全血を等量部の培地又は生理的塩溶液(例えばダルベッコのPBS)で希釈する。50ml遠心分離管に12.5mlの分離液(密度1.077g/ml)を仕込み、希釈した全血を分離液上に入念に積層する(管当り約25mlまで)。15ないし25℃で管を400×gで30分間遠心分離する。遠心分離の後に単核細胞は血漿と勾配溶液の間に白色の境界層を形成する。赤血球と顆粒球は沈殿物中にあり、血小板は血清中にある。
まず血漿を、次いで単核細胞をピペットで入念に取り出し、別々に無菌の小管に移す。単核細胞(PBMC)を含む細胞懸濁液を等量部の培地又は生理的塩溶液(ダルベッコのPBS)と混合し、25℃で250×g、無制動で10分間遠心分離する。ペレットを再懸濁し、細胞を細胞培地RPMI 1640(L-グルタミンを含む)(Invitrogen、カールスルーエ、注文番号21875034)で2ないし3回洗浄する。
b)エレクトロポレーション
エレクトロポレーションではDNA溶液の存在下で細胞懸濁液に1回以上の電気パルスをかける。こうして細胞膜に穴が作られ、この穴を通ってDNAが細胞中に侵入することができる。穴の形成は様々な要因に左右され、エレクトロポレーションの後に穴が再び閉鎖されなければならない。このためには特に温度とエレクトロポレーション媒質が決定的である。DNAの取り込みの後、DNAは核内に移動し、核で転写される。パルスによって核内への移動が電気泳動的に促進される。通常、様々なパルスが使用される。最初の1以上のパルスは短くて強く、即ち高い電界強度を有し、後続のパルスは場合によってはより弱く、種々のパラメータ(下記を参照)を有することができる。
PBMCのエレクトロポレーションのために下記の条件が使用される。
細胞数 細胞10ないし1010個/ml、好ましくは細胞10個/ml
DNA量 1回当り1ないし100μg、好ましくは1回当り20μg
電界強度 10ないし2500V/cm、即ち4mmキュベットで4ないし1000V、好ましくは1500V/cm、即ち600V
パルス数 1ないし100、好ましくは10
パルス持続時間 1ないし1500μ秒、好ましくは0.1秒
パルス間隔 0.01ないし1秒、好ましくは1秒
容量 10ないし4000μF、好ましくは1050μF
エレクトロポレーション媒質 RPMI
RPMI+10-30%FCS
RPMI+10-30%AP, PBS
好ましくはRPMI+10%AP
c)成長刺激因子の影響
成長刺激因子を混合した培地でPBMCをインキュベートする。37℃、5%COで、好ましくは成長刺激物質、例えば10−30U/mlのIL−2(Roche、マンハイム)又は2−10μg/mlのPHA−M(Roche、マンハイム)を加えた10%自家血漿を含む、RPMI 1640中で培養を行う。
3日間のインキュベーションの後にエレクトロポレーションを行う。培地の組成はRPMI+10%AP+10U/ml IL−2である。エレクトロポレーションは下記の条件で行う。即ちml当りの細胞10個、DNA20μg、4mmキュベットで1500V/cm、パルス数10、パルス持続時間0.1秒、パルス間隔1秒、続いて氷上で15分インキュベーション。
図10はpVaxLacZでPBMCをエレクトロポレーションした後のβガラクトシダーゼ比活性を示す。DNAとともにエレクトロポレーションした試料のβガラクトシダーゼ比活性は、エレクトロポレーションしない、又はDNAなしでエレクトロポレーションした対照試料と比較して著しく増加することが明らかである。
顆粒入りガラス注射器の調製
注射器の調製のために新品の製造元包装の注射器の内部構造表面及び新品の製造元包装のガラス粒を実施例1に従って洗浄し、修飾する。そのために酸及び/又はアルカリ溶液を1回ないし10回、好ましくは3回完全に吸引及び射出することによって注射器を処理し、これにより清浄又は修飾される。最後の吸引の後に、密封した充填状態で注射器を酸及び/又はアルカリ溶液とともに5ないし30分インキュベートする。続いて注射器ピストンを取り除き、新しい超純水を完全に充填及び放出することにより注射器シリンダーを2回ないし10回、好ましくは4回よく洗浄する。その際洗浄水を完全に充填し、空にするように注意する。次に注射器ピストンを酸及び/又はアルカリ溶液にひたし、蒸留水でよく洗浄する。
注射器の迅速な乾燥を保証するために、注射器の中におそらくある残水はリュエル型コネクターを軽く叩いて毛管作用で吸い出す。互いに切り離されたピストンと、注射器及び場合によってその中に収容されたガラス粒を表示区画付きのMelagフィルム(Melag,Melafol 1502)に溶封する(Melag,Melaseal)。こうして包装した注射器を乾燥棚(Melag乾燥滅菌装置)で80℃で60分間乾燥する。乾燥した包装注射器を続いて132℃、2バールで30分高圧滅菌し、80℃で少なくとも60分間もう一度乾燥する。
顆粒は塩溶液/緩衝液で何回も洗浄し、プラスミド−塩溶液中で少なくとも2時間インキュベートする。このプラスミドは、タンパク質及び/又はエフェクター分子をコードする少なくとも1つの配列及び真核細胞で有効な少なくとも1つの調節要素、例えばプロモーター例えばpcDNA1-IL-1Raを含む。高いタンパク質及び/又はエフェクター生産のために決定的なのは、使用するDNAが発熱物質を含まないことである。被覆した球又は顆粒はインキュベーションの後に洗浄し、周知のように、好ましくは実施例1に示したようにエタノール又はガスで滅菌する。
ガラス注射器を使用する前に、その後収容される血液の凝固を防止するために、注射器にヘパリン(例えばLiquemin(商標) N2500、Heparin-Natrium(商標) 2500I.E.)又はクエン酸塩(例えばACDA)を入れる。IL−1Ra含有血清を処理するときに凝固剤の使用が好都合である。
プラスミドpcDNA-IL-1Raの発熱原性試験による血球培養中のIL−1β含量の図を示す。 ガラス球へのDNA結合と緩衝液のpH値との関係図を示す。 ガラス球へのDNA結合とDNA含有緩衝液中のインキュベーション時間との関係図を示す。 TE中のpcDNA-IL-1Raの希釈系列及び球洗浄水のPCRの後のアガロースゲル(2%)電気泳動の結果を示す(シュウ化エチジウム染色)。矢印は比較可能な希釈段階を示す。 ヒト血清中のpcDNA-IL-1Raの希釈系列のPCRの後のアガロースゲル(2%)電気泳動の結果を示す(シュウ化エチジウム染色)。対照は「鋳型」DNAを含まない(「水対照」)。 ヒト血清中のpcDNA-IL-1Raの「nested」PCRの後のアガロースゲル(2%)電気泳動の結果を示す(シュウ化エチジウム染色)。対照は「鋳型」DNAを含まない(「水対照」)。 ヒト血清中のpcDNA-IL-1Raの希釈系列のPCRの後のアガロースゲル(2%)電気泳動の結果を示す(本発明に基づく「ビーズ・トランスフェクション」注射器系及びORTHOKIN(登録商標)系の試料、シュウ化エチジウム染色)。 血球培養中での「ビーズ・トランスフェクション」の後のIL−1Ra含量の図を示す。 全血を24時間インキュベートした後の血清上澄み液中のIL−1Ra含量の図、即ち本発明に基づく「ビーズ・トランスフェクション」注射器系とORTHOKIN(登録商標)系、球なしの潅流注射器及びゼロ試料との比較を示す。 pVaxLacZによるPBMCのエレクトロポレーションの後のβガラクトシダーゼ比活性の図を示す。 ピストン(3)、任意のねじ戻し可能な蓋(5)、蓋突出部(13)及びその上に配置され、これを密閉する取外し可能な隔膜付きキャップ(7)を有するガラス又はプラスチック製の本発明に基づき使用される注射器の概略図である。ピストン(3)は予定破断点(15)を有することが好ましい。注射器の空洞の中に本発明に基づく被覆された顆粒(9)も示されている。

Claims (25)

  1. 血液から誘導血液組成物を調製する方法であって、血液に含まれる血球を少なくとも1つの核酸分子により、好ましくは少なくとも1つの治療上及び/又は診断上重要なタンパク質又はエフェクター分子をコードする核酸分子により一時的又は安定的に形質転換して、その血球が治療上及び/又は診断上重要なタンパク質及び/又はエフェクター分子を一時的又は安定的に発現し、場合によっては分泌する誘導血液組成物を得る、上記方法。
  2. 誘導血液組成物が、少なくとも1つの治療上及び/又は診断上重要なタンパク質、例えば天然の又は改変されたIL−1Ra(IRAP;インターロイキン1受容体アンタゴニスト)等のサイトカインを、形質転換しない血液組成物より高い濃度で含む血液組成物である、請求項1に記載の方法。
  3. 誘導血液組成物が、形質転換しない血球では全く発現されないか又はその量では発現されない少なくとも1つのエフェクター分子、好ましくはタンパク質又はRNAがその血球中で発現される血液組成物である、請求項1に記載の方法。
  4. 採血装置(Entnahmesystem)により患者から血液を採取し、形質転換する血球を他の血液成分からあらかじめ分離せずに、血液を採血装置の中で少なくとも1つの核酸分子によって形質転換する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 患者から血液を採取し、血球特に核細胞を他の血液成分から分離し、血球を形質転換して、血清を含む若しくは含まない培地又は純血清中でインキュベートする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 採血装置により患者から血液を採取し、別の容器に満たし、形質転換する血球を他の血液成分からあらかじめ分離せずにこの容器の中で形質転換する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  7. 核酸分子、特にDNA又はRNAを固体担体、例えば大きな又は小さなガラス等の球又は磁性小球又は注射器の壁面に固定化して形質転換のために使用する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 核酸分子、特にDNA又はRNAを場合によっては標識物質で標識して形質転換に使用する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 核酸分子、特にDNA又はRNAを、核酸分子のトランスフェクション及び/又は発現を高める添加物とともに形質転換する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 核酸分子をエレクトロポレーションによって形質転換する、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  11. 核酸分子が、身体固有のタンパク質の発現を誘導、抑制又は調節する分子、例えばアンチセンス構築物、RNA要素、転写因子又は輸送因子をコードする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 核酸分子がベクター、例えばプラスミド又はウイルスに含まれている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 核酸分子が少なくとも1つの調節要素、例えばプロモーター、エンハンサー又はイントロン、特に血球特異的調節要素に機能的に結合されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 核酸分子が細胞からのタンパク質分泌のためのシグナルペプチドをコードするヌクレオチド断片に機能的に結合されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 少なくとも1つの誘導された、治療上及び/又は診断上重要なタンパク質を形質転換及び発現し、形質転換細胞から血清中に分泌させた後に、細胞を血清から分離して、誘導血清を得る、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 少なくとも1つの核酸分子をリポソーム、ウイルスベクターによって、又は微小ガラス球に結合して形質転換する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 核酸分子による細胞、特に血液中に存在する細胞、例えば血球の形質転換のための方法であって、細胞又は血球を核酸分子と接触させ、細胞又は血液中に存在する血球を形質転換して、安定的又は一時的に形質転換された細胞又は血球を得る、上記方法。
  18. 形質転換の前に核酸分子を微小ガラス球に特に酸に不安定に共有結合する、請求項17に記載の方法。
  19. ヒト又は動物の身体の治療方法であって、ヒト又は動物の身体から血液を好ましくは注射器で採取し、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法を実施し、誘導血液組成物、場合によっては形質転換血球及びその他の血液成分を分離した血清だけをヒト又は動物の身体に再適用する、上記方法。
  20. 全血、特に全血中の核細胞の形質転換、特に血液特に血球中のタンパク質の発現及び分泌のための微小ガラス球、特に結合された核酸を有する微小ガラス球の使用。
  21. 生体細胞、特に動物、植物又はヒト細胞の形質転換のための微小ガラス球、特に結合された核酸を有する微小ガラス球の使用。
  22. 治療上及び/又は診断上重要なタンパク質又はエフェクター分子をコードする核酸分子を血液の血球に形質転換するため、特に白血病の遺伝子治療及び/又は治療、神経系、運動器官又は各種の内臓の外傷性、変性性、慢性炎症性疾患の治療のための血液、特に全血の使用。
  23. 白血病の遺伝子治療用及び/又は治療、神経系、運動器官又は各種の内臓の外傷性、変性性、慢性炎症性疾患の治療のための医薬キットの調製のための血液の使用。
  24. 血液又は血球の形質転換並びに治療上及び/又は診断上重要なタンパク質又はエフェクター分子の発現及び場合によっては分泌のため、例えば白血病治療、神経系、運動器官又は各種の内臓の外傷性、変性性、慢性炎症性疾患の治療のための、特に治療上及び/又は診断上重要なタンパク質又はエフェクター分子をコードするヌクレオチド分子の使用。
  25. 血液又は血球の形質転換並びに治療上及び/又は診断上重要なタンパク質又はエフェクター分子の発現及び場合によっては分泌のため、例えば神経系、運動器官又は各種の内臓の外傷性、変性性、慢性炎症性疾患の治療のための医薬キットの調製のための、特に治療上及び/又は診断上重要なタンパク質又はエフェクター分子をコードするヌクレオチド分子の使用。
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