JP2005528085A - 修飾された細菌表層タンパク質 - Google Patents

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Abstract

内部位置における異種ポリペプチド又は目的とするポリペプチドの挿入である修飾が施された修飾細菌表層(S層)タンパク質を開示する。該ポリペプチドは結合性又は標的タンパク質、例えば抗原もしくは抗体又はそれらの一部、特に細菌抗原(例えばクロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)由来のもの、例えばTTFC)である。したがって該修飾表層タンパク質は該細菌細胞の表面上で発現されることが可能であり、ワクチンにおいて使用されうる。異種表層タンパク質を発現するように修飾されているが野生型としてはS層を有さない細菌(例えばラクトバシラス・カゼイ(L. casei))、及び修飾された表層タンパク質のみを発現する(が野生型S層タンパク質を発現しない)修飾細菌も開示する。該修飾形態をコードするポリヌクレオチドが細菌ゲノム内に組込まれると、野生型S層は該修飾形態により完全に置換される。該修飾Sタンパク質は、機能分子(例えば受容体)をバイオセンサーの固体表面(Au、シリコンウェハー)に結合させるために使用されうる結晶性アレイ、シート又は層を形成しうる。

Description

本発明は、ワクチン(細胞の表面上で発現された場合)、分子ふるい及びセンサーにおいて使用されうる修飾された細菌表層(Sタンパク質)、ならびにそのようなSタンパク質を発現する細菌に関する。S層タンパク質には、その内部位置に1以上の異種(又は機能的)ポリペプチドが挿入されている。そのようなポリペプチドは抗原もしくは抗体又はそれらの一部でありうる。他の修飾には、断片を形成する、カルボキシ(C)又はアミノ(N)末端切断が含まれる。
細菌表層タンパク質は多種多様な細菌型に存在し、しばしば、細胞表面において結晶性層に集合することが公知である。これらのタンパク質は、他の細胞への細菌の付着において何らかの役割を果たしている又は酵素のスキャフォールド(足場)として作用すると考えられるが、これらのタンパク質の厳密な機能は必ずしも明らかではない。
ラクトバシラス(Lactobacillus)は、発酵食品及び発酵飲料の製造に使用されており概ね安全であるとみなされている乳酸菌(LAB)の群に属する属の1つである。ラクトバシラス(Lactobacillus)属の細菌は感染に対してヒトを防御することが可能であり、この特性(及びそれが粘膜表面に定着しうること)により、経口免疫化のためのワクチン運搬ビヒクルとしてラクトバシラス(Lactobacilli)は使用される。粘膜への付着は胃腸管(GIT)内での生存及び定着のための前提条件であると考えられている。表面に位置するいくつかの分子は、内部組織内の受容体部分と特異的に相互作用する付着分子として同定されている。
タンパク質の表層は多量体単位に自己集合して、最外エンベロープとして細胞全体を覆う配置を形成する。それらは単一のタンパク質分子であり、結晶性単層を形成する。しかし、S層の付着特性は、特にプロバイオティックラクトバシラス(Lactobacillus)においては、依然としてほとんど特徴づけされていない。
S層はいくつかのラクトバシラス(Lactobacillus)種において見出されており、これらのSタンパク質の機能は不明であるが、それらは細胞付着において何らかの役割を果たしていると考えられている。ラクトバシラス(Lactobacillus)のS層タンパク質は最も小さい公知Sタンパク質のうちの1つであり、それらは酸性タンパク質ではなく強塩基性(少なくとも9のpI)である点で他のほとんどの細菌Sタンパク質とは異なっている。
いくつかのS層タンパク質が配列決定されている。これらには、シー・クレセンツス(C. crescentus)rsaA遺伝子(米国特許第5500353号, Smitら)及びラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(Bootら, 1993及びSmitら, 2001)が含まれる。Sタンパク質の配列は記載されているが、そのアミノ酸配列がわかったとしても、該アミノ酸配列からそのタンパク質の二次及び三次構造を単純に予測することはできない。実際のところ、その刊行物からは、例えば、どのアミノ酸配列が表面に露出されうるのか及びどのアミノ酸がS層内に存在しうるのかを予測することは不可能である。
また、ラクトバシラス・クリスパツス(Lactobacillus crispatus)のコラーゲン結合性S層タンパク質をコードするcbsA遺伝子はラクトバシラス・カゼイ(L. casei)において発現されている(Martinezら, Journal of Bacteriology 182 (23): 6857-6861, December 2000)。
表層タンパク質の構造及び役割は十分には理解されていないため、野生型と比べて改良された特性を有する修飾された表層タンパク質の製造を可能にするためには、構造/機能関係を確認する必要がある。表層タンパク質は細胞内のタンパク質の(10〜12%もの)大きな比率を占め、したがって、大量の異種タンパク質を発現させるために使用することが可能である。また、より大量又はより高密度の抗原が細胞上に提示されうる又はより良好にそのような抗原が細胞表面に提示されうる、より効果的な(経口)ワクチン、特に、細菌(例えば、ラクトバシラス(Lactobacillus))に基づくものが必要とされている。
発明の概要
したがって、本発明の第1の態様は、(例えば、修飾された)細菌表層(S層)タンパク質に関する。該修飾は異種ポリペプチドの内部挿入を含む。そのようなポリペプチドは機能的なものでありうる。また、そのようなポリペプチドは、目的とする任意のポリペプチドでありうる。
該修飾は内部位置におけるポリペプチドの挿入である。すなわち、該挿入は内部配列内におけるものであり、これは勿論、カルボキシ(C)又はアミノ(N)末端におけるポリペプチドの付加(又は融合)とは異なる。該挿入は、少なくとも、該タンパク質のいずれかの末端から5、10、20、30又は40アミノ酸の位置で生じうる。
該ポリペプチドは、いずれかの残基を置換する(この場合、残基が欠失又は置換される)ことなく(それが2つの隣接アミノ酸残基間に割り込むという意味で)挿入されることが可能である。
挿入される異種ポリペプチドの位置
該ポリペプチドは、表層タンパク質が(細菌細胞の表面で)発現された場合に、該ポリペプチドが露出される位置、あるいは細胞表面から離れた位置に挿入されればよい。したがって、異種ポリペプチドは、それが標的化されるか、又は化合物もしくは他のポリペプチド(例えば、抗体)がそれに結合するという意味において、露出されればよい。これは、該ポリペプチドが、結晶化及び/又は集合に関与する或いは結晶化及び/又は集合を引き起こすS層タンパク質の一部(例えば、結晶化又は集合ドメインの一部)に存在する場合に可能であろう。
一方、別の可能性も考えられ、この場合、異種ポリペプチドは露出されず、例えば、それは(少なくとも部分的に)細胞表面内又はS層内に位置する。これは、細胞壁アンカー(anchor)もしくはその近傍又は付着もしくは結合ドメインの位置に異種ペプチドを挿入することにより可能となろう。該分子のこの部分はS層内に位置しうる。そのような場合、異種ペプチドは表層内に存在するか又は表層内に包埋されうる。したがって、それは外部環境から保護されることが可能であり、例えば、タンパク質分解プロセシングから遮蔽されうる。それは外部抗体によって結合も認識もされることもなく、タンパク質分解攻撃の外的分解から遮蔽されうる。これは、該タンパク質が細菌細胞壁上に位置することになり、それをヒトに投与しようとする場合には有利であろう。なぜなら、胃腸管(GIT)内の酵素による分解又はタンパク質分解プロセシングを軽減又は回避しうるからである。
ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)のS層タンパク質では、2つの主要ドメインが同定されている。該分子の約3分の2を構成する第1 N末端領域は結晶化及び集合に関与する(SANと称される)。それはアミノ酸1〜290を構成し、細胞壁上のS層を有効に形成する。第2主要ドメイン、すなわち、該分子の最後の3分の1の部分であるアミノ酸290〜412は、細胞壁アンカーに相当する(SACと称される)。該分子のこの部分はS層内に埋もれている。
N末端集合領域自体は3つの主要部分、すなわち、1〜114(二量体及び三量体の形成に関与する)、150〜290(二量体の形成に関与する)、これらに隣接する、露出し抗体により標的化されうるループ領域(又は表面(免疫優性)ループ)と思われる介在ドメイン(約115又は120から150又は160まで)に分けられうる。
したがって、異種ポリペプチドが露出するためには、挿入はアミノ酸1〜290、好ましくは115又は120から150又は160まで(なぜなら、これは表面露出ループ領域であるらしいからである)の位置に存在すればよい。N末端結晶化部分又は集合領域は、例えばラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)においては、主として疎水性である。これが、S層タンパク質が集合し層を形成するのに必要な、表面に露出し細菌外の環境中に存在する領域であると仮定すると、これは予想外のことであり、直観に反するものである。
該細胞壁アンカーは、S層内に存在するにもかかわらず主として親水性である点で同様に例外的である(細胞壁結合領域は、細胞壁内の負荷電基に結合するため、通常は親水性である)。いくつかのSタンパク質の細胞壁アンカー領域においては、親水性領域と疎水性領域とが交互に位置している。したがって、たとえ疎水性領域が通常は表面上に露出されないとしても、該タンパク質は(例えば、表面露出のために)疎水性領域内に挿入されうる。
前記の2つの段落は、主として、例えばラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)由来のラクトバシラス(Lactobacillus)タンパク質に関するものである。多数の他の(S層)タンパク質については逆も当てはまり、この場合、N末端ドメインは親水性であることが可能であり、一方、C末端は疎水性であることが可能である。
異種ポリペプチドが露出するためには、好ましくは、それは100から150又は160まで、例えば、110から140又は150まで、好ましくは、120から130又は140まで、最適には、125位の辺りの位置に位置する。好ましくは、該ポリペプチドは、露出している又は表面(もしくは免疫優性)ループ内に存在するS層タンパク質の領域内に位置する。
本明細書中の残基の番号付けは、(文脈と矛盾しない限り)元の(成熟)野生型タンパク質の番号付けに基づいている。異種タンパク質の露出のためのもう1つの領域としては、130〜180、例えば140〜170、好ましくは150〜160、最適には156位の辺りが挙げられる。より低い程度ではあるが、該ポリペプチドを露出させるための更なる位置としては、20〜80、例えば30〜70、好ましくは40〜50、最適には45位の辺りの位置の1つが挙げられる。
異種ポリペプチドを露出させない又は少なくとも部分的にS層の内部に存在させるためには、その挿入は未修飾S層タンパク質内の別の位置で行うことが可能である。これは1〜30、例えば3〜20、好ましくは5〜10位、最適には約7位でありうる。
適切には、異種ポリペプチドは、該タンパク質配列のいずれの部分をも置換することなく該タンパク質内に挿入される。そのようにして、(野生型又は元の)タンパク質のほとんど(例えば、少なくとも70、80、85、90又は更には95%)又は完全もしくは全配列が保有されうる。したがって、アミノ酸残基の欠失も置換も生じないことが可能である(あるいは生じたとしても、せいぜい5、10、15又は20個の欠失又は挿入が生じる)。これは、修飾タンパク質が元の分子の特性又は機能を可能な限り多く保有するのを助けうる。修飾タンパク質は、未修飾(野生型)タンパク質より長くなければ少なくともそれと同程度の長さでありうる。
修飾タンパク質
以下の説明は、文脈と矛盾しない限り、修飾タンパク質及び未修飾(野生型)タンパク質の両方に関するものである。該タンパク質は、好ましくは、30、40又は50kDaの最小サイズを有する。それは、70、80、100、150又は更には200もしくは300kDaの最大サイズを有しうる。好ましいタンパク質は、40から50、60、70又は80kDaまでのサイズを有する。該タンパク質は結晶化能を有することが可能であり、あるいは(例えば、in vitroで)他のタンパク質と共にシート又は結晶性単層を形成しうる。それらは、例えば多量体単位に自己集合する能力を有しうる。可能な場合には、該タンパク質は(他のタンパク質と共に)斜格子(oblique lattice)(例えば、p1又はp2対称のもの)を形成する能力を有しうる。
該タンパク質は少なくとも2つのドメイン又は機能領域を有しうる。1つは、結晶化もしくは集合に関与しうるか又は結晶化もしくは集合を引き起こしうる。この領域は露出され、細胞膜の反対側に位置しうる。したがって、該タンパク質は(例えば、表面に露出された)ループ領域を有しうる。該タンパク質は細胞壁アンカー又は細胞壁結合性領域を有しうる。これは全体的又は部分的にS層内に存在しうる。
好ましくは、修飾タンパク質は(例えば、S層)分泌シグナルを含まない(又は保有しない)(これはプロセシング又は発現中に切断されうる)。それは(C末端又は細胞壁)アンカー領域を有することが可能であり、これはS層タンパク質からの元の領域であることが可能であり、あるいはそれは(さらに)例えば別の種(好ましくは、修飾タンパク質が発現されることになる種)の別のS層タンパク質からのそのような領域でありうる。
(未修飾又は野生型)タンパク質は乳酸菌、例えばラクトバシラス(Lactobacillus)に由来するものでありうる。好ましくは、該タンパク質はラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)、ラクトバシラス・クリスパツス(L. crispatus)、ラクトバシラス・ヘルベチクス(L. helveticus)、ラクトバシラス・アミロボルス(L. amylovorus)、ラクトバシラス・ガリナルム(L. gallinarum)及び/又はラクトバシラス・ブレビス(L. brevis)に由来するものである。好ましくは、該タンパク質は主として塩基性である。適切には、該タンパク質は、グラム陰性細菌又は水生細菌、例えば、カウロバクター(Caulobacter)群の細菌、例えばカウロバクター・クレセンツス(C. crescentus)、あるいはカンピロバクター(Campylobacteraceae)科の細菌(例えば、カンピロバクター(Campylobacter)に属するもの)に由来するものではない。
該タンパク質は細菌宿主内で発現されうる。それがS層のような表面上で発現される場合には、細菌宿主細胞をワクチン中で使用することが可能である。異種ポリペプチドは例えば環境に露出されうる。しかし、該ポリペプチドを例えばGIT部分のような体内で生存させる(あるいは環境から又は分解もしくはタンパク質分解攻撃から遮蔽する)ためには、該異種ペプチドを部分的又は全体的にS層内に存在させるか又は包埋することが可能である。
好ましくは、該タンパク質は少なくとも6、7又は8のpIを有する。しかし、最適には、それは少なくとも9、例えば少なくとも9.4のpIを有する。
挿入部位
挿入されるポリペプチドの位置は結晶化に影響を及ぼしうる。結晶化する修飾ペプチド又は結晶化しない修飾ペプチドの両方を、本発明を用いて製造することができる。該ポリペプチドの挿入の位置は、(例えば、該タンパク質が結晶化しうることを望む場合には)1〜290、例えば以下の位置のいずれかでありうる:
(1)1〜20、例えば3〜15、好ましくは5〜10、最適には約7位、
(2)35〜55、例えば40〜50、最適には約45位、
(3)100〜130、例えば110〜120、最適には約114位、及び/又は
(4)110〜140、例えば120〜130、最適には約125位。
該異種ポリペプチドは、残基290を超える位置、例えば291から400、425又は450までの位置(例えば、約412)に挿入することが可能である。該タンパク質が結晶化しうるようにしない場合には、該挿入は以下の位置に位置しうる:
(1)20〜40、例えば25〜35、最適には約30位、
(2)50〜80、例えば60〜70、最適には約66位、
(3)70〜100、例えば80〜94、好ましくは85〜90、最適には約88位、及び/又は
(4)115〜150又は140〜180、例えば150〜170又は160〜180、好ましくは150〜160又は170〜180、最適には約156又は177位。
290位を超える位置での挿入は、表面又は露出位置ではないから、結晶化には影響を及ぼさないであろう(例えば、細胞壁アンカー領域内に存在しうる)。したがって、該挿入は、
(5)320〜410、例えば330〜370、好ましくは340〜360、適切には約349位に位置しうる。
1以上の異なる部位に1以上の異種ポリペプチドを挿入することができる。
センサー及び分子ふるい
該タンパク質又は細菌宿主細胞は、例えばコーティング中に含まれるセンサーにおいて使用することが可能である。それらは分子ふるいにおいても有用でありうる。例えば、修飾タンパク質を発現する複数の細菌を、穴を形成するよう又は孔の形を定めるよう配置することができる。異種ポリペプチドの位置及び性質を変化させることにより、タンパク質のサイズ及び特性だけでなく該タンパク質の形状をも変化させることができる。そしてこれは、例えばアフィニティー又は電荷のような或るパラメーターについて、該孔又は穴の特性を変化させうる。
多数のタンパク質が結晶化し或いは(例えば、固体)表面(例えば、シリコン、重合体又は金属を含む)上での二次元アレイ又は界面(インターフェイス)(例えば、リポソーム又は平面脂質フィルム)を形成することが可能である。S層は、例えばエレクトロニクス又は非線形光学における無機(例えば、ナノクリスタル(nanocrystal))格子(例えば、CdS、Au、Ni、Pt又はPdを含むもの)の形成の鋳型として使用することができる。
各Sタンパク質上の機能ドメインはS層格子の周期性で反復しうる。これは結合分子又は粒子の規則的なアレイの形成を可能にしうる。
本発明の(修飾)Sタンパク質は、お互いと、及び適当な場合には支持細胞エンベロープ層(例えば、細胞膜、外膜又はペプチドグリカン)と相互作用しうる。該タンパク質は高比率の無極性アミノ酸を有しうるため、疎水性相互作用が、集合において何らかの役割を果たしている。好ましくは、多数のSタンパク質が、例えば懸濁液中、液-気界面、固体表面もしくは浮遊脂質単層において又はリポソーム(の外部)上で再集合する能力を有する。したがって、Sタンパク質は表面又は界面において単層を形成することが可能であり、これは、それがナノバイオテクノロジーの用途において使用することを可能にする。
したがって、本発明のもう1つの態様は、細菌表層タンパク質の極性を含むシートもしくは(場合によっては結晶性の)単層又は二次元アレイに関する。そのようなタンパク質の少なくとも1つは、好ましくは、第1の態様の修飾タンパク質である。
したがって、本発明は、もう1つの態様において、前記態様のシート、単層又はアレイを含む固体表面、液-気界面、リポフィルム、リポソーム又は溶液に関する。
好ましくは、カオトロピック試薬により、pH値を低下又は上昇させることにより、あるいはキレート化剤の添加又は陽イオン置換により、多数のSタンパク質が分解されうる。好ましくは、該分解剤の除去後、該タンパク質は平らなシート、末端開口円筒形又は閉鎖小胞に再集合する。これらのアレイのいずれかは、例えば2つの構成単層が(それらの内面又は外面で)互いに面し合っている二重層、すなわち二分子層でありうる。二重層は、必要に応じて、極性基と相互作用する二価陽イオンを含有しうる。
Sタンパク質は、気-水界面において、又は固体支持体上で、又は脂質フィルム内で再集合する能力を有しうる。このため、(ランダムに整列した)単結晶性S層が形成されうる。液-固界面で形成が生じると、該固体はシリコンウェハーのようなシリコンを含みうる。該シリコンウェハーは天然酸化物層を有していてもよく、シラン化されていてもよく、あるいはフォトレジスト及び/又は炭素膜でコーティングされていてもよい。シリコーンニトリド、ヒ化ガリウム、貴金属(金又は白金)、ガラス、セルロース、黒鉛又は雲母のような他の固体を使用することができる。
好ましくは、濃紫外線(DUV)照射によりS層をパターン化してもよい。S層(例えば、シリコンウェハー上のもの)をフォトマスクと(直接的に)接触させ、DUV照射に露出させればよい。該露出領域におけるシリコンウェハー又は基体からS層を取り出すことができる。このようにして、フォトマスク上のパターンをS層中に移すことができる。
生物学的に活性な(巨大)分子を固定化するために、S層タンパク質(又はシートもしくはアレイ)を使用することができる。酵素、抗体、抗原及び/又はリガンドのような分子をSタンパク質(単)層上に共有的に固定化することができる。
したがって、Sタンパク質の層は表面連結層として作用しうる。Sタンパク質層は中間に位置してもよく、あるいは機能分子と固体表面又は支持体との間に挟まれていてもよい。該機能分子は酵素、抗体(又はそのフラグメント)もしくは他の結合性分子、受容体、抗原又はリガンドであり得、これらはいずれも、(例えば、サンプル中の標的に対する)生物受容体として機能しうる。S層タンパク質は自己集合することが可能であり、それは表面において再結晶化する能力を有しうる。したがって、それは固体表面と機能分子との間の連結層となりうる。このタイプの配置は(バイオ)センサーにおいて使用することが可能であり、したがって、本発明は、本発明のSタンパク質層を含むセンサー、分子ふるい及びイオントラップに関する。
表層タンパク質の断片
本発明は更に、細菌S層タンパク質の断片である修飾タンパク質に関する。該断片はN末端断片でありうる。その代わりに又はそれに加えて、該断片は例えば2つの他のそのような断片と三量体を形成する能力を有しうる。該断片は、異なる断片と又はそれどころか野生型分子とも多量体(例えば、三量体)を形成する能力を有しうる。これらの断片はC末端欠失体と考えられる。なぜなら、それらはN末端の一部を保有するが、実際には、C末端の全部又は一部を欠失又は除去することにより製造されうるからである。
該断片は、二量体を形成する能力、好ましくはもう1つのそのような断片と二量体を形成する能力を有しうる(もっとも、他の断片又は完全サイズの野生型との二量体の形成も可能であろう)。そのような断片は(免疫優性又は露出)ループ領域を含みうる。したがって、該断片は20〜200アミノ酸長でありうる。もう1つのタイプの断片は、全(免疫優性又は露出)ループ領域が除去されたものでありうる。これは、該ループ領域の少なくとも一部が存在することを可能にしうる。そのような断片は20、30又は40から100、130又は155までのアミノ酸長でありうる。
該ループ領域は、完全長の野生型分子においては、細菌の表面上で発現された場合に環境に露出される領域でありうる。それは、その領域に特異的な(外部)抗体によって結合又は標的化されうるという意味で露出されうる。N末端断片、又は三量体化しうる断片は、該ループ領域の一部又は全部を含みうる。したがって、該断片は10から30、40又は50までのアミノ酸長でありうる。ある細菌、例えばラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)では、この領域は20〜40アミノ酸長、例えば32〜38アミノ酸長でありうる。
好ましくは、該断片は少なくとも40、60、80、120、130又は少なくとも140アミノ酸長である。該断片は170、150又は120アミノ酸長まででありうる。
該断片がラクトバシラス(Lactobacillus)のS層タンパク質の断片である場合には、該断片は、適切には、当技術分野においてはSANとして公知の、集合又は結晶化領域の断片、すなわち、残基1-290である。特に好ましい断片は、(ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)S層タンパク質の残基の番号付けを用いると)、1-159、1-149、1-114、115-290、139-290及び150-290である。好ましくは、該断片は、SAC又は細胞壁アンカー領域のいずれの部分も含有しない。
新規(細菌)細胞
本発明の第2の態様は、異種表層(S層)タンパク質を発現するよう修飾されている(例えば、修飾)細菌又は細菌細胞に関する。好ましくは、該細菌はラクトバシラス・カゼイ(L. casei)細胞以外かつバシラス(Bacillus)(例えば、バシラス・スフェリカス(B. sphaericus)又はバシラス・ブレビス(B. brevis))細胞以外である。しかし、好ましくは、該細菌細胞は、ラクトバシラス(Lactobacillus)細胞であるか又はラクトバシラセエ(Lactobacillaceae)科のものである。S層タンパク質はそれ自身の(又は元の)細胞壁アンカーを有しうる。すなわち、該細胞壁アンカーはS層タンパク質と同種であるか、又は該タンパク質はその天然細胞壁アンカードメインもしくは領域を保有する。好ましくは、S層タンパク質は、該S層タンパク質と同じ細菌種に由来する細胞壁アンカーを有する。野生型又は未修飾形態としてのそのような細菌は、そのような表層を有していないかもしれない。
好ましくは、該(宿主)細胞は、(天然で、野生型として又は修飾形態として)1〜6個の異なる表層タンパク質をコードする遺伝子を発現又は含有する。
S層タンパク質は、好ましくは、第1態様の修飾細菌表層タンパク質の1つであるが、それである必要はない。例えば、該細菌細胞は、S層を(通常は)有しないもの(例えば、ラクトバシラス・リューテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバシラス・フェルメンツム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバシラス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバシラス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバシラス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバシラス・ムリヌス(Lactobacillus murinus)、ラクトバシラス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバシラス・クルバツス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバシラス・デルブリュッキイ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp bulgaricus)、ラクトバシラス・デルブリュッキイ亜種ラクチス(Lactobacillus delbrueckii subsp lactis)、ラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシラス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・ゼエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバシラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、又はラクトコッカス(Lactococcus)の細菌)でありうるが、修飾形態においては、S層を有する(か又はその表面に(例えば、修飾)Sタンパク質を少なくとも含有する)。したがって、S層は、該細菌にとって異種のものではあるが天然に存在する表層タンパク質を含みうる。例えば、該細菌はラクトバシラス・カゼイ(L. casei)であることが可能であり、これは、S層を有さないが、乳酸菌又はラクトバシラス(Lactobacillus)、例えばラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)のような別の細菌からの表層タンパク質を発現するように修飾されている。
第3の態様は、異種表層タンパク質を(例えば、細胞表面上に)発現するラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)細胞に関する。この場合、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)はS層を天然で有し、したがって、該Sタンパク質は、修飾されているもの、又はラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)以外の(細菌)種からのもの、又はそれらの両方でありうる。
したがって、表層タンパク質は、天然に存在する若しくは野生型のタンパク質、又は修飾された表層タンパク質、例えば第1の態様に記載の本発明のもの、又はそれらの両方の混合物でありうる。好ましくは、S層タンパク質は抗原性であり及び/又は免疫応答を誘導する。該タンパク質は、適切には、例えばラクトバシラス・クリスパツス(L. crispatus)の(例えばコラーゲン)結合性表層タンパク質の一部ではない。
好ましくは、S層タンパク質の数は、S層(好ましくは、細胞全体を覆うS層)を形成するのに十分なものである。したがって、細胞表面におけるSタンパク質の数は、少なくとも1、2又は5×105個のS層タンパク質(又は単量体)、好ましくは、少なくとも106個、最適には、少なくとも5×106個の単量体でありうる。
好ましくは、S層タンパク質は、たとえ修飾されていたとしても、未修飾又は野生型タンパク質の細胞壁アンカーを保有する。しかし、それは異種アンカー又は結合性領域もしくはドメインを有することが可能であり、したがって、融合タンパク質でありうる。これは、該タンパク質をS層、細胞壁、脂質二重層、細胞膜、ペプチドグリカン又は細胞壁成分に付着させうる。連結の形態が何であれ、該タンパク質は、好ましくは、宿主の表面又は表面内に位置する。
4つの異なるタイプの細胞壁結合ドメインが予想される。第1は、細胞壁のペプチドグリカン部分に(例えば、共有)結合しうる。適当なアンカーは、PrtP(Novarre, 1994)のようなプロテイナーゼに由来するものである。第2に、該結合は、例えば、(例えば、シグナル配列切断部位の直ぐC末端側に位置する(Pugsley, 1993))システイン残基のN-アシルジグリセリド修飾を介した脂質二重層への(例えば、共有)結合でありうる。第3に、細胞膜への非共有結合が存在しうる(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Lysteria monocytogenes)actA , Cocksら, 1992)。第4の可能性は、細胞壁成分に対するものでありうる陰イオン性相互作用(例えば、非共有相互作用)である。したがって、これは、ペプチドグリカン又は膜への連結とは異なる方法でありうる。
第1のタイプの連結では、該融合タンパク質は、ソーティングシグナル(例えば、プロテイナーゼ(PrtP)又はラクトバシラス・カゼイ(L. casei)由来のもの)を含みうる。好ましくは、該細菌は異種的に、S層タンパク質をコードする遺伝子を発現して、発現されたタンパク質を産生する。
本発明の第4の態様は、ラクトバシラス・クリスパツス(L. crispatus)由来ではない及び/又はコラーゲン結合性タンパク質ではない(細菌)表層タンパク質を発現するラクトバシラス・カゼイ(L. casei)細菌細胞に関する。S層タンパク質は、コラーゲンに結合しないものでありうる。例えば、それはコラーゲン結合性S層タンパク質ではない。好ましくは、S層タンパク質は抗原性であるか、又は免疫応答を誘導しうる。好ましくは、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)細胞は、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)そのものからの又はラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)に由来するS層タンパク質を発現する。しかし、S層タンパク質は、野生型の又は天然に存在するラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)タンパク質に由来するものであることが可能であり、例えば、それは、第1の態様に従い修飾されたS層タンパク質でありうる。Sタンパク質は細胞の表面上で発現されうる。これは、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)の細胞表面への結合を可能にする細胞壁アンカー、例えば、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)表層タンパク質からのアンカー領域をSタンパク質に付与することにより達成されうる。これは、プロテイナーゼ(例えば、PrtP)由来でありうる。
本発明の第5の態様は、異種もしくは修飾細菌表層(S層)タンパク質のみを発現する又は異種もしくは修飾細菌表層(S層)タンパク質を均一に発現する(修飾された)細菌に関する。該タンパク質は、該細菌が通常は又は未修飾形態においてはそのタンパク質を発現しないという意味で異種でありうる。したがって、該異種又は修飾タンパク質が、好ましくは完全に又は全体として、天然又は野生型タンパク質に取って代わりうる。したがって、該細菌は異種又は修飾S層タンパク質のみを発現することが可能であり、少なくともS層内では野生型S層タンパク質のいずれをも発現し得ない。(前記態様は、適当な場合には、野生型Sタンパク質と修飾Sタンパク質との両方を発現する細胞を含んでいた)。該細菌はカウロバクター(Caulobacter)以外のものでありうる。
したがって、第5の態様は、(細菌にとって)異種又は非野生型又は修飾S層タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する又は組込んでいるゲノムを有する細菌を含む。すなわち、そのようなポリヌクレオチドはゲノム内に組込まれていてもよい。好ましくは、野生型又は天然S層タンパク質をコードする遺伝子又はポリヌクレオチドは、発現されないようにサイレント状態になっているか、非作動化されている(スイッチが切られている)か、又は置換されている。したがって、実際にin vivoで野生型は突然変異体(対立遺伝子)に変換されうる。
好ましくは、該表層はアレイを形成し、細胞全体を覆いうる。したがって、それは最外エンベロープを形成しうる。該表層は結晶性単層であることが可能であり、あるいは(例えば、自己)集合S層タンパク質を含みうる。これらは単量体単位の形態でありうる。したがって、該S層は、単一のタンパク質単量体(Sタンパク質)のアレイを含みうる。
すべての態様において、適切には、S層タンパク質又は細菌細胞は乳酸細菌又はバシラス(Bacillus)/クロストリジウム(Clostridium)細菌群(例えば、低GCグラム陽性細菌)由来である。適切には、該タンパク質又は細胞はラクトバシラス(Lactobacillus)属のようなラクトバシラセエ(Lactobacillaceae)科由来である。
本発明の細菌細胞
該細胞は、例えば(GCリッチではなく)ATリッチの群(低GCクラスとも称される)のグラム陽性細菌でありうる。適切には、該細菌は、放線菌類(Actinomycetes)(これには、カルノバクテリウム(Carnobacterium)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、リューコノストク(Leuconstoc)、ペディオコッカス(Pediococcus)及びストレプトコッカス(Streptococcus)が含まれる)のものである。好ましくは、それは非水生菌である。それはラクトバシラス(Lactobacillus)細胞又は乳酸菌(LAB)でありうる。それは、好ましくは、ラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)(例えば、L. plantarum 80又は256)、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)、ラクトバシラス・ブレビス(L. brevis)、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)、ラクトバシラス・クリスパツス(L. crispatus)、ラクトバシラス・ヘルベチクス(L. helveticus)、ラクトバシラス・アミロボルス(L. amylovorus)、ラクトバシラス・ガリナルム(L. gallinarum)又はラクトバシラス・ラクチス(L. lactis)である。好ましくは、該宿主細胞は、組換え技術により、抗原性でありうる所望の修飾タンパク質を発現しうるものである。該宿主細胞は修飾S層タンパク質のみを発現しうる(そして前記の第3の態様のように、野生型S層タンパク質を発現しない)。あるいはそれは両方(修飾及び未修飾)のS層タンパク質を発現しうる。
ラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)株は、公知特性を用いて容易に確認することができる(例えば、Bergeys Manual of Determinative Bacteriology及びVescovoら, Ann. Microbiol. Enzymol. 43 261-284 (1993))。したがって、当業者は、ある乳酸菌がラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)であるかどうかを容易に確認することができる。多数のラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)株が種々の施設に寄託されており、容易に入手可能である。
細菌(宿主)細胞は、好ましくは、GRAS(安全であると概ねみなされている)状態を有するべきであり、より好ましくは、食物等級である。したがって、これは、土壌細菌又はバシラス(Bacillus)(例えば、食物腐敗生物、例えば、バシラス・テレウス(Bacillus terreus)又はスフェリカス(sphaericus))を除外しうる。そのような生物は(例えば、ワクチンとしての)ヒトへの投与には適していない。
また、使用する細菌宿主は、抗原をコードする適当な構築物での形質転換の後、該表面上での該修飾タンパク質の発現を可能にするものであるべきである。
好ましくは、例えば細胞内に分泌される及び/又は表面上に露出される該タンパク質の発現のレベルは(例えば、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はFACSにより測定した場合)、全細胞タンパク質の少なくとも0.1、0.5、1、3又は5、7、10又は15%(例えば、8、9又は10から12、13又は14%)であるべきである。
また、該細菌宿主は、好ましくは、胃腸管の少なくとも一部、例えば口腔、咽喉、喉頭、腸、小腸、大腸、回腸及び/又は結腸、膣あるいはそれらの組合せにおいて定着又は存続及び/又はコロニー形成しうる。好ましくは、該細菌宿主は主に、腸、より好ましくは、小腸又は盲腸に定着するものである。
該細菌は、好ましくは、(経口投与後及び糞便中の該株の存在により測定した場合)免疫される個体において、少なくとも5日間、好ましくは少なくとも9日間、適切には15日以上又は更には20日以上の存続を示す。後記の1以上の追加免疫の使用を含む投与計画の場合には、より長い存続は要求されないかもしれない。
ラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)株はLMG 9211(前記Mercenierにより記載されているNCIMB 8826)、DSM 4229 ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)393及び/又はラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)80でありうる。しかし、好ましくは、該細菌宿主は以下のラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)株のうちの1つである:256、LMG 1284、LMG 6907、LMG 8155、LMG 9205、LMG 9206、LMG 9208、LMG 9209、LMG 9210、LMG 9212、LMG 11405、LMG 11460、LMG 8095、LMG 8027、LMG 12167、LMG 13556、LMG 17552、LMG 18021、LMG 18023、LMG 18024、LMG 18027、LMG 18095;386、299、105又は275(Molinら, 1993. J. Appl. Bacteriol. 74:314を参照されたい)、299v(WO 96/29083を参照されたい);So5、36E、95、120又は44(Johannsonら 1995, Int. J. Syst. Bacteriol, Vol 45(4):670-675を参照されたい)、79、107、98、53、97、101又は125(Johanssonら 1995 Int. J. Food. Micro. 25:159を参照されたい)、CH、ATCC 8041、ATCC 10012、ATCC 10776、WCFS、DF66 IIIa、DF66spez.-Iva、及び/又はthe Japanese Collection of Micro-organismsから受託番号8341、8342、8343、8344、8345、8346、8347及び/又は8348で入手可能なラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)株。
好ましくは、使用する(例えば、ラクトバシラス(Lactobacillus))細菌は、それが投与(例えば、ワクチン接種)される個体(ヒト又は動物)にとって異物である。本発明の細菌は修飾され又は組換えられており、したがって、それは、適当な異物である野生型又は天然に存在する細菌、すなわち非組換え又は未修飾細菌である。したがって、異物とは、個体内に通常は存在しない(例えば、ラクトバシラス(Lactobacillus))株を意味する。すなわち、ヒト以外のものである(例えば、ラクトバシラス(Lactobacillus))株を使用することが好ましく、例えば、それはヒトにおいて見出されたり存在することはない。好ましくは、該株は、ヒト又は動物においては見出されないもの、例えば、腸(G.I.管)及び/又は膣内に存在しない株である。そのような株は、より顕著な又はより大きな免疫応答を誘発するであろう。従来の幾つかの研究においてはヒト由来ラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)(例えば、ヒト唾液単離物であるNCIMB 8826)が使用されているが、ヒトには存在しない又はヒトに由来しない株を使用することが好ましい。
したがって、本発明は、好ましくは、個体の粘膜には見出されない(非粘膜性)又はG.I.管には見出されない細菌株を使用する。例えば、それは(ワクチン接種されるヒト又は動物種において)内因性ではない。それどころか、最も好ましい株(例えば、ラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)256)はサイレージ中にも見出されない。そのような株は明らかにヒトにとって異物であり、したがって免疫応答の増強をもたらす。それにもかかわらず、好ましくは、該株は腸粘膜に付着する能力を有しうる。
また、該株は非食物由来のもの、例えば、(ヒト又は動物の)食物中に見出されないものでありうる。したがって、このため、いくつかのラクトバシラス・カゼイ(L. casei)株、例えば393は除外されうる。株393はチーズ中に見出され、したがって、好ましくは、乳製品又は発酵製品中に見出される株は除外される。このことは、個体が該株と接触(例えば、摂取)したことがない(又は接触したことがないかもしれない)ことを意味し、したがって、食物中に見出されない株を使用することにより、免疫応答が誘発される可能性が高くなる。これは、あるラクトバシラス(Lactobacillus)で認められる長い存続時間を説明しうるものである。それらの細菌は免疫系により認識されないため、それらはより遅く消失しうる。したがって、適切には、該株は動物由来、例えば動物飼料(例えば、サイレージ)由来である。一般に、より適した株は、食物(例えば、乳製品)中のものというよりは(腸内で)片利共生的なものである。
好ましくは、該細菌(例えば、ラクトバシラス(Lactobacillus))株は生存可能であり(又は生きており)、無傷である。適切には、それは個体において(粘膜内で)少なくとも7日間存続しうる。これは、当技術分野で公知の方法(例えば、糞便中の生物の存在に関する試験)を用いて容易に試験することができる。
したがって、該細胞は、修飾タンパク質を細胞内又は細胞表面上で発現するように修飾された非ヒト及び/又は非ヒト食物ラクトバシラス(Lactobacillus)細菌、例えばラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)でありうる。この細菌は、好ましくは、該細菌が投与された個体において免疫応答を惹起する能力を有する。したがって、天然に存在する又は未修飾のラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)は、好ましくは、その個体にとって異物であり、例えば、それは、それが投与されるヒト又は動物にとって内因性ではない。好ましくは、選択されるラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)株はヒト又は動物のその種のG.I.管又は粘膜には存在しない。
当業者は、以下の特性又は要因の1以上に基づき、他の適当な株を選択することができる:
・選択される細菌宿主における、該抗原をコードする構築物の安定性;選択される細菌宿主における抗原の発現のレベル;選択される細菌宿主における抗原の発現の調節;選択される細菌宿主における抗原の発現の部位;及び/又は産生される抗原の安定性;
・使用する株の生化学的特性、例えば、その糖発酵プロフィール(API)、細胞壁組成、LTAの構造、ペプチドグリカンの構造、16S RNA配列、酸抵抗性、胆汁酸抵抗性、凝集特性、アジュバント性、免疫調節特性、in vitro付着特性、マンノース特異的付着、タンパク質性付着因子の存在、mapA様付着因子の存在及び/又は反復アミノ酸配列を有する大きなタンパク質性付着因子の存在;及び/又は
・細菌宿主と、該宿主が(本発明のワクチンの一部として)投与される個体の細胞との相互作用、例えば、その存続、生存性、抗原のin vivo発現及び/又は組織特異的存続。
これらの特性の少なくとも幾つか、好ましくはほとんど、より好ましくは実質的にすべてにおいて、使用する株は、例えば、当技術分野において自体公知のこれらの特性に関する試験/アッセイに基づく判定で、前記の株と実質的に(少なくとも)同等であるべきであり、より好ましくは、ラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)256と同等であるべきである。適当な宿主を選択した後、それを、本明細書に記載の遺伝的構築物で形質転換し、ついで経口ワクチンとしてのその適合性を試験することができる。本明細書の記載に基づき、また、場合によっては確認のために本明細書に記載の試験を行った後、当業者であれば、本発明のワクチンとしての使用又は本発明のワクチンにおける使用に適した他のラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)株を同定しうるであろう。
好ましくは、ラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)は群(又はクラスター)1(これは株101、97、53、256、ATCC 14917、36E、95、98、299、299v、107、105、79、275、386、So5及びATCC 8014を含む)のものであり、適切には、亜群(又はサブクラスター)1c(これはヒト由来株を含む)ではなく亜群(又はサブクラスター)1b(これは256、ATCC 14917、36E、95及び98を含む)のものである。
ラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)株を分類するためには、染色体DNAの制限エンドヌクレアーゼ分析(REA)及びそれに続く該断片のアガロースゲル電気泳動分離を行うことによりラクトバシラス(Lactobacillus)株のゲノムが特徴づけられる方法を用いることができる(Stahlら, Int. J. Syst. Bacteriol. 40: 189-93 1990; Johanssonら, Int. J. Syst. Bacteriol. 45, 670-675 1995)。REA技術の威力は、それが各株の染色体DNAの特有のフィンガープリントを与えることにある。ラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)株を分類するためにREAを用い、その結果をクラスター分析により分析したところ、この種は2つのクラスターから構成されることが示された。クラスター1は、ヒトの腸及び発酵食品・食餌の両方に由来する株を含み、一方、クラスター2はナイジェリアン・オギ(Nigerian ogi)由来の2つの株のみを含む。クラスター1は3つの亜群(1a、1b及び1c)を含有する。すべてのヒトラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)株は群1bにおいて見出された。非ヒト由来のラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)株は3個すべての亜群において見出された。
クラスターIの3つの亜群のラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)間の更なる相違はAdlerberthら(Appl. Environm. Microbiol. 62, 2244-2251 1996)により記載されている。彼らは、亜群1a及び1bの株と比べて亜群1cの株がin vitroでヒト腺癌細胞に相当に強力に付着することを観察した。さらに、亜群1a、1b及び1cの株は、それらの赤血球凝集パターンに基づいて区別することができる。亜群1cの株はヒト、モルモット、ニワトリ、ネコ、イヌ、マウス、ウサギ、ラット、ウマ及びブタの赤血球を強力に凝集させたが、1a及び1bの株はかなり低い赤血球凝集特性を示すか又はそれを全く示さない。
前記の1以上の株の組合せを使用することも可能である。
好ましくは、該宿主細胞は、胃腸管において、3〜10日間、好ましくは4〜8日間、同様に5〜7日間のような限られた存続しか示さない。
ワクチン運搬の方法
好ましくは、これは粘膜又は経口又は鼻腔内ワクチンである。これは、前記の本発明の態様のいずれかの細菌細胞の1以上を含有しうる。該ワクチンは、例えば該修飾タンパク質の発現を補助するラクトースを含みうる。これは、粘膜運搬のために適合化、応用、意図及び/又は製剤化された任意のワクチンを意味しうる。
粘膜運搬は、(例えば、静脈内、筋肉内、皮下又は腹腔内投与の場合のようには)皮膚を貫通させる又は穿刺することを要しないヒト又は動物の身体への任意の投与経路を意味する。通常、これは、体腔の1つを介して身体に該ワクチンを投与してそれを粘膜と接触させることを意味する。したがって、粘膜投与は、特に、鼻腔内、経口及び/又は膣投与を意味する。
(ワクチンの)経口運搬は、該ワクチンが与えられうるヒト又は動物の身体胃腸(G.I.)管又はその任意の一部への任意の経路の運搬を意味する。通常、これは、G.I.管内に達する、口腔内への又は口腔を経由した投与を含む。また、これは、例えばチューブ又はカテーテルを使用する、G.I.管又はその任意(例えば、胃)の一部への直接投与を含む。
経口ワクチンは、前記の経口運搬のために適合化、応用、意図及び/又は製剤化されたワクチンである。
免疫応答
適切には、該ワクチンは(免疫)応答を惹起する。応答(例えば、抗体応答又は免疫応答)は、それがヒト又は動物における検出可能な変化又は応答、特に、検出可能な免疫学的変化又は応答、例えば抗体、サイトカイン、リンホカインなどの産生を招く場合に有意だとみなされる。応答が有意であるかどうかを判定するための試験は当技術分野で公知であり、ELISA技術を用いる生物学的サンプル中の抗体レベルの力価測定、ELISPOT技術及びin vitroリンパ球刺激アッセイを含むが、これらに限定されるものではない。そのような技術は、通常、ヒト又は動物から得た生物学的流体又は細胞サンプルのような生物学的サンプルに対して行う。
有意な応答はまた、後記の防御応答でありうるが、必ずしもそうである必要はない。応答(例えば、病原体又は抗原に対する免疫学的応答)は、それが、病原体に対する及び/又は抗原に関連した病原体に対する応答を有するヒト又は動物を防御する場合には、有意だとみなされる。
抗原は、それが細菌宿主の表面(例えば、細菌細胞壁又はエンベロープ)に存在する、該表面の一部を形成する、該表面に付着している及び/又は該表面に会合している若しくは(例えば、FACS又は免疫蛍光顕微鏡検査のような適当な免疫学的検出技術を用いて)該表面上で検出可能である場合に、細菌宿主上に露出されているとみなされる(抗原の(表面)露出とも称される)。
好ましくは、露出は、細菌が、免疫応答を媒介しうるヒト又は動物の細胞(例えば、後記のG.I.管の細胞)に、十分な時間及び十分な量で提示されている場合に、該抗原に対して十分な免疫応答を惹起しうることを意味する。
ワクチン
本発明の好ましい実施形態は、例えば修飾タンパク質(例えば、抗原)を、適切には細胞表面上(又は細胞内)で、細菌が発現しうる発現ベクターを含むワクチンである。したがって、該修飾タンパク質は内部又は外部で発現されうる。好ましくは、該タンパク質は(例えば、胃腸管内に存在する条件下)細胞表面上に露出されている。
該細菌は、粘膜定着病原体に特異的な又は粘膜(特に、経口経路)を介して体内に侵入する病原体に特異的な修飾タンパク質(例えば、異種ポリペプチド)を発現しうる。したがって、該異種ポリペプチド(例えば、抗原)は胃腸管定着病原体に特異的でありうる。TTFCのような破傷風(Clostridium tetanus)に特異的な異種ポリペプチドは特に適した候補体である。
好ましくは、該ワクチンは、1回量で十分なものとなるように製剤化される。しかし、例えばG.I.管内の細菌宿主の存続を考慮して或る期間にわたり複数の適用を行う実施形態も予想される。本発明のワクチン製剤での追加ワクチン接種の実施も予想される。
好ましい投与計画は、1以上の「初期」用量の投与又は第1日〜第4日のいずれかにおける投与、及びそれに続く第14日〜第21日のいずれかにおける1以上の追加投与、及び場合によっては第28日〜25日のいずれかにおける1以上の更なる追加投与を含む。一般には、単一の初期投与及びそれに続くこの期間内の単一の追加投与で十分であろう。
ワクチン接種される宿主又は該細胞の生存性を損なうことなく発現の度合を可能な限り高くすることが予想される。発現が高くなればなるほど、免疫に必要な頻度及び用量は低下しうる。もちろん、投与計画は、抗原の量だけではなく、抗原のタイプ及び該ワクチン中の他の免疫原性刺激因子の存在又は非存在にも左右されるであろう。
該ワクチン中の組換え細菌中に存在する発現ベクターでは、同種発現及び/又は分泌シグナルを使用してもよく、これにより、高発現が可能になる。実施例の構築物中に使用される発現調節シグナル及び他の発現シグナルが好適である。
異種ポリペプチド
そのようなポリペプチドは、結合性もしくは標的タンパク質、リンカー又は抗原もしくは抗体又はそれらの一部でありうる。これは、好ましくは、抗原であり、したがって免疫応答を惹起又は刺激する能力を有しうる。それは、免疫応答、より詳しくは有意な免疫応答及び/又は防御免疫応答を動物(好ましくは、ヒトのような哺乳動物)において惹起しうる任意の抗原でありうる。該ポリペプチド(又は抗原)は、該ワクチンが投与されるヒト又は動物の病原体、病的状態及び/又は障害に関連していることが可能である。好ましくは、該抗原は、例えばリンパ球上に又はそれから放出された抗体に存在する1以上の(例えば、特異的)受容体と相互作用しうる。
したがって、該ポリペプチドは免疫原を含みうる。該ポリペプチドは、免疫応答を惹起しうるものでありうるため、これからは、例えば、個体に既に存在する又は由来するタンパク質は除外されうる。したがって、抗原は、好ましくは、その個体にとって異物である。
宿主内で発現されうる自体公知の任意の抗原、抗原性成分又はエピトープを該ポリペプチドとして使用することが可能である。通常、これは、ペプチド、タンパク質又はその抗原性部分もしくは断片、例えばエピトープである。そのような場合、それは、天然抗原性ペプチド又はタンパク質(又はその一部、断片もしくはエピトープ)、又はそれらの抗原性類似体もしくは突然変異体、例えば、合成的に又は組換えDNA技術により得られるものでありうる。
種々の抗原に対する有意な免疫応答、好ましくは防御免疫応答を惹起するために使用しうる組換え細菌及び/又は細菌株、ならびにそれらに基づくワクチンが提供されうる。したがって、適当な(異種)ポリペプチドには以下のものが含まれる:
・ウイルス、細菌、真菌、酵母又は寄生生物(寄生虫)からの抗原又は抗原決定基;
・アレルゲン;
・ウイルス性及び/細菌性抗原、例えば、HIV-1又はHIV-2のようなHIVウイルス(の例えばgp160エンベロープタンパク質)、(リーシュマニア(Leishmania)寄生虫の)表面糖タンパク質、志賀毒素様毒素、シゲラ(Shigella)リポ多糖抗原、大腸菌(Escherichia coli)易熱性毒素Bサブユニット又はK88又はフィムブリア抗原、(腸管毒素原性大腸菌(Escherichia coli)株の)CFA抗原、炭疸毒素、百日咳毒素又はボルデテラ・ペルツッシス(Bordetella pertussis)由来毒素(例えば、P69)、破傷風毒素(又はその断片、例えばTTFC)に由来するもの;
・ヘルペスウイルス、風疹ウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、ポリオ(脊髄炎)ウイルス(1、2又は3型)、ロタウイルス、FMDV、呼吸器合胞体ウイルス、カンピロバクター(Campylobacter)種、クラミジア(Chlamydial)生物、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)属の種、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、アクチノマイセス(Actinomyces)種、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、アレナウイルス、アルボウイルス、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)、カンジダ(Candida)属の種、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholera)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、大腸菌(E. coli)O157:H7、O26:H11、O111:H8及びO104:H21のEHEC株、大腸菌(E. coli)のETEC株、腸管組織侵入性(EIEC)を有することが示されている大腸菌(E. coli)の株、大腸菌(E. coli)のEPEC株、大腸菌(E. coli)のEAggEC株、大腸菌(E. coli)のDAEC株、フィロウイルス科ウイルス、パルボウイルス、糸状虫上科生物(Filarioidea)、スタヒロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)属の種、クロストリジウム・テタニ(C. tetani)、ビブリオ・コレレ(V. cholera)、ナイセリア・メニンジティディス(N. meningitides)、クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、カリシウイルス、ランブル鞭毛虫(Giacardia lamblia)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、ハンタウイルス、A、B、C、D、E型肝炎ウイルス、レジオネラ株、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)属の種、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、シュードモナス・シュードマレイ(Pseudomonas pseudomallei)、エプスタインバーウイルス、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、ポックスウイルス、ボルデテラ・ペルツッシス(Bordetella pertussis)、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetti)、狂犬病ウイルス、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidium)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、サルモネラ・ティフィ(Salmonella typhi)、マラリアを引き起こす真核寄生虫、ニューモシスチス・ニューモニア(pneumocystis pneumonia)、トキソプラズマ症の原因因子のような病原体に由来する抗原。
好ましくは、該ポリペプチドは線毛型エピトープ(例えば、ピリン又はアドヘシントープ(adhesintope)、例えばシュードモナス・エルジノーサ(P. aeruginosa)由来のもの)を含まない。該ポリペプチドは、前記の2以上が(例えば共有)結合により又は融合タンパク質として組合わされたものでありうる。
好ましくは、該アレルゲンはヒトアレルゲン、又は該組成物が投与される個体のタイプ又は種においてアレルギー反応を誘発するアレルゲンである。それは、室内塵アレルゲン又は昆虫アレルゲン、例えば室内塵ダニ由来のもの、例えばDer p 1でありうる。
天然抗原及び抗原性成分(それらの抗原性部分、断片又はエピトープ)のほかに、合成的に又は組換えDNA技術により得られるそれらの抗原性突然変異体又は類似体も使用することができる。また、本発明のワクチンにおいては、2以上のそのような抗原の組合せが存在したり発現されることが可能である。これらの抗原は、単一の(型又は株)の細菌宿主により又はいくつかの異なる(型又は株)の細菌宿主により発現されうる。
前記のもののうち、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、ヒト免疫不全ウイルス、大腸菌(E. coli)、ビブリオ・コレレ(V. cholera)、連鎖球菌及びクラミジアに対する及び/又は特異的な抗原が、本発明のワクチンにおける抗原としての使用に特に好ましい。
該ポリペプチドは、発現されると、天然株と比較して減弱されうるものの、少なくとも或る程度は投与された組換え細菌宿主が胃腸管(の一部)において定着及び/又はコロニー形成しそこで存続することを可能にする。これは、抗原及び/又はそれに関連した病原体に対する有意な免疫応答をもたらすのに十分な時間でありうる。
好ましくは、該ポリペプチドは少なくとも5、10、15、20、30又は40アミノ酸長である。該ポリペプチドは、せいぜい50、70、100又は200アミノ酸長でありうる。
融合タンパク質
該異種ポリペプチドは単一のタンパク質である必要はなく、実際のところ、それは2以上のポリペプチドの組合せでありうる。しかし、該ポリペプチド(したがって修飾タンパク質もまた)、適切には、(S層)タンパク質が発現される細胞に対して異種である。したがって、該異種ポリペプチドは、ウイルスタンパク質に結合した抗原又は毒素、例えば、ウイルスタンパク質に共有結合又は融合した破傷風タンパク質(又は抗原)でありうる。好ましくは、該破傷風タンパク質はTTFCである。該ウイルスタンパク質は、好ましくは、例えばレオウイルス科群のロタウイルスに由来するものである。それはA、B又はC群のロタウイルスに由来するものでありうる。該ウイルスタンパク質はカプシドタンパク質、例えば内側カプシドタンパク質(例えば、VP6)又は外側カプシドタンパク質(例えば、VP4又はVP7)でありうる。該タンパク質はウイルスカプシドタンパク質及び/又はウイルス表面タンパク質でありうる。それは糖タンパク質でありうる。
好ましくは、該ウイルスタンパク質は少なくとも20、25、30、40又は50アミノ酸長である。好ましくは、それは、膜貫通タンパク質又はHIV由来タンパク質(例えば、GP41)ではない。
該修飾タンパク質は更に、それが細胞表面に結合又はつなぎ留められることを可能にするアンカー、又はアンカーもしくは結合性領域ドメインを有しうる。これは、該細菌細胞がS層タンパク質を通常は発現しない場合、例えば、それがS層を有しない場合に必要かもしれない。該アンカーはC末端に結合しうる。例えば、S層を有さないラクトバシラス・カゼイ(L. casei)又はラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)において発現を得るためには、細胞壁アンカー又は結合性領域もしくはドメイン(例えば、宿主表面における位置に関して既に記載されているもの)、必要に応じて、ソーティングシグナル、例えばラクトバシラス・カゼイ(L. casei)由来のもの、例えばPrtP(Martinezら, 前掲)を使用することができる。
ラクトバシラス又はLAB発現系
通常、発現系は、(修飾)ポリペプチド又は抗原(性成分)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む遺伝的構築物を含み、該ヌクレオチド配列は、好ましくは、該細菌宿主内での該配列の発現を指令しうるプロモーターに機能しうる形で連結されている。適切には、発現されるポリペプチドは、該細菌宿主の好ましいコドン使用頻度に適合化された核酸配列によりコードされうる。該構築物は更に、選択された細菌宿主において機能しうる、エンハンサー、転写開始配列、シグナル配列、レポーター遺伝子、転写終結配列などを含む(すべての)他の適当な要素を含有しうる。
該構築物は、好ましくは、細菌宿主の形質転換に適した形態、及び/又は細菌宿主内に安定に維持されうる形態、例えばベクター又はプラスミドである。より好ましくは、食物等級の構築物を使用する。
本発明の特に好ましい構築物は、該抗原をコードするヌクレオチド配列が組込まれた、WO-A-96/32487又はWO-A-0l/21200に記載の多コピー発現ベクターを含む。そのような構築物は、乳酸菌、特にラクトバシラス(Lactobacillus)における所望のタンパク質又はポリペプチドの高レベルの発現に特に適しており、発現産物を細菌細胞の表面に導くためにも有利に使用されうる。該構築物は、リボソーム認識及びRNA安定化に必要な最小配列を少なくとも含む5’非翻訳核酸配列が、該抗原をコードする核酸配列に先行することにより特徴づけられうる。この後に翻訳開始コドンが続くことが可能であり、この(直)後に乳酸菌の遺伝子の翻訳核酸配列の5'末端部分の少なくとも5コドンの断片又は該断片の構造的もしくは機能的等価体が続きうる。また、該断片はプロモーターにより制御されうる。それらに開示されている種々の実施形態を含むこれらの2つの国際公開の内容及び本明細書に記載のすべての他の刊行物の内容を、参照により本明細書に組入れることとする。
本発明のワクチンは、好ましくは経口ワクチンである。すなわち、それらは経口投与に適合化される。そのような経口ワクチン組成物は、通常は、アルカリ性である。なぜなら、胃内の酸を中和し、該細菌(又はその少なくともほとんど)を胃を経由して腸内に生きたまま通過させるためには、通常、アルカリが必要だからである。投与される細菌のほとんどが胃においても生存し、腸内に通過することが好ましい。細菌が死なないで生きている、すなわち生存可能である場合に、免疫応答の増強が達成可能でありうる。これは、それらが修飾タンパク質をin vivoで発現し続けうるからである。
該異種ポリペプチドを、それが露出されないか、又はS層内に少なくとも部分的に存在する位置に挿入すると、(GI管における)該ポリペプチドの望ましくない分解又はタンパク質分解プロセシングを軽減又は回避しうる。すべての医薬製剤がアルカリ性ではないが、アルカリ性でない医薬製剤(例えば、鼻腔内製剤)が経口投与には適さない場合もある。
該修飾タンパク質及び/又は異種ポリペプチド(例えば、抗原)をコードする配列は任意の天然源から得ることが可能であり、及び/又は、よく知られたDNA合成技術を用いて合成的に製造することが可能である。ついで、該抗原をコードする配列を(例えば)適当な発現ベクター内に組込んで本発明の遺伝的構築物を得、ついでそれを使用して、目的とする細菌宿主株を形質転換することが可能である。
ついで、このようにして得られた組換え細菌宿主を培養し、ついで、回収された細胞を使用して、所望により更なる精製及び/又は加工工程(例えば、散剤を得るための凍結乾燥)の後、ワクチンを製剤化することができる。
抗原コード化配列を含有する遺伝的構築物の作製、ならびに細菌宿主の形質転換、培養及び回収に必要な技術は、当技術分野でよく知られている。例えば、それらは、Sambrookら及びF.Ausubelら編, “Current protocols in molecular biology”, Green Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)などの標準的な手引書に記載されている。
該細菌宿主を含むワクチンは、例えば、ワクチンの製剤化のための及び/又は動物又はヒトへの経口投与用の生きた細菌の製剤の製剤化のための公知方法で製剤化することができる。例えば胃腸障害の治療のための、プロバイオティックスの投与のための製剤を参考にすることができる。
本発明のワクチンは、固体、半固体又は液体形態でありうる経口投与に適した形態であることが可能であり、該形態には該細菌の溶液及び/又は懸濁液が含まれ、これらが好ましいが、これらに限定されるものではない。
該ワクチン製剤はまた、使用前に例えば適当な液体を使用して再生されうる凍結乾燥粉末のような散剤の形態でありうる。それは、投与前に固体、半固体又は液体の食物と混合される(ことになる)固体又は液体製剤の形態でありうる。また、それは発酵製品の形態でありうる。
該ワクチンは、該細菌に加えて、1以上の製薬上許容される担体又は賦形剤、例えば水を含有しうる。該ワクチンはまた、経口投与に適した1以上のアジュバント(免疫アジュバントを含む)を含有しうる。これらは該細菌宿主に適合性であり、適切には、その所望の免疫原性を(過度には)阻害しない。1つの実施形態においては、該アジュバントは、乳酸菌、例えば該細菌宿主株自体、前記のその他のラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)株、別のラクトバシラス(Lactobacillus)株又は更にはラクトコッカス(Lactococcus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)もしくはプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種(ただし、ヒト又は動物への経口投与に適したもの)でありうる。
また、該ワクチンは、1以上の更なる治療用物質、及び/又はG.I.管(の一部)への該細菌の定着及び/又はG.I.管内での該細菌の増殖を促進及び/又は増強しうる1以上の物質を含有しうる。該製剤はまた、例えばチューブ又はカテーテルを介した胃又は腸内への(直接)投与に適した形態でありうる。好ましくは、該細菌宿主は、経口投与の後、胃腸管又は少なくともその一部、例えば口腔、腸、小腸(例えば、十二指腸、空腸又は回腸)、大腸(又はその一部、例えば盲腸)又は結腸、好ましくは小腸又は盲腸に定着し、ついでそこにコロニー形成しうる。
免疫原性
したがって、該細菌宿主により発現された修飾タンパク質及び所望により異種ポリペプチド(例えば、抗原)は、G.I.管の粘膜層、裏打ち層及び/又は壁(以下、「G.I.管壁」と総称される)、より詳しくは、この壁内の細胞と接触しうる。これは、例えば抗原提示細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞及び/又はBリンパ球)として、このようにして提示された抗原に対する免疫応答を媒介しうる。G.I.管壁内の細胞によるこの免疫応答は単独で、本明細書中で定義された有意な免疫応答に既に相当しうるものであり、及び/又は、それは、該ワクチンが投与されたヒト又は動物の体内で更なる免疫反応/応答を誘発することが可能であり、これもまた、本明細書中で定義された有意な免疫応答及び/又は防御応答でありうる。しかし、本発明は、該組換え細菌宿主がいずれかの免疫応答を惹起するいずれの特定のメカニズムにも限定されるものではない。例えば、該細菌宿主により発現された抗原により惹起される免疫応答は、抗原自体、例えば(遊離)可溶性タンパク質により惹起される応答より強力な又は増強された免疫応答となりうる。
該細菌宿主、又はその任意の一部もしくは断片及び/又はそれにより産生された任意の更なる化合物は、G.I.管壁及び/又はそれにおける特定の細胞、例えば、免疫応答を媒介する及び/又はそれに関与する細胞と相互作用しうる。これは、例えば遊離可溶性タンパク質としての該抗原の投与、発現及び/又は使用と比較して、該細菌宿主に関連した抗原に対する免疫応答を容易にし、促進し又は増強する。
該(修飾)タンパク質は、好ましくは、該抗原が細胞表面上に露出されるよう該細菌宿主により発現されるが、免疫応答を惹起するためには、例えば細菌細胞壁を透過性にし及び/又は該細胞又は該細菌細胞壁を破壊するメカニズムにより、該細菌宿主の細胞の内容物が該細菌細胞からin situ(すなわち、G.I.管壁において局所的)で遊離し及び/又は放出されることが除外されるわけではない。したがって、無傷細菌宿主によってだけでなく、その一部、断片、画分又は化合物、例えば抗原自体及び/又は該抗原を含む細胞もしくは細胞画分によっても、(G.I.管壁においてin situに)免疫応答が引き起こされ/惹起されうる可能性がある。したがって、該ワクチンは無傷、生存可能及び/又は生きた細菌を含むことが好ましいが、例えば、組換え細菌宿主の又はそれに由来する断片、画分、ライセートなどをも含有するワクチンが除外されるわけではない。
投与量
投与される細菌の量は決定的に重要ではないが、適切には、それは、該細菌がG.I.管(の所望の部分)に定着し及び/又はコロニー形成し、及び/又は有意な免疫応答を引き起こすのに十分な量である。適当な量は用量当り少なくとも108 cfu、好ましくは108 〜1010 cfuである。これは、十分な細菌の量が腸内を通過するのを可能にしうるものである。108 cfu未満の用量の経口投与は、所望の免疫原性を(少なくとも信頼しうる様態で)常に与えるというわけではなく、一方、5x1010 cfuを超える量は、経口投与が厄介な場合には、それほど好ましくない。細菌の前記の量(投与量)は、例えば、ヒト又は動物の体重1kg当り106〜108 cfuに対応しうる。該ワクチン(又は他の製剤)中の細菌の濃度は少なくとも5x109/ml、例えば少なくとも1010/mlでありうる。該製剤はほんの2、3日又は4日間まで投与すればよい。細菌は、最初又は最後の投与から少なくとも5日、7日又は9日後でも個体で検出可能でありうる。
ワクチン製剤
好ましくは、ワクチン接種される個体はヒト又は動物である。ヒトは免疫無防備状態の新生児、高齢者又は健常新生児、小児又は成人でありうる。
使用する細菌宿主の1つの利点は、それが、腸にコロニー形成するのに十分な量で腸で生存し/腸を通過しうることである。それでもやはり、コート化又はカプセル化製剤(例えば、徐放組成物又は腸溶組成物の形態)中で又は該製剤として該細菌を投与することは可能である。適当なカプセル化化合物には、キトサン、マルトデキストリン、脂質、オリゴ糖及び多糖が含まれるが、これらに限定されるものではない。カプセル化は該ワクチンの貯蔵寿命も改善しうる。該ワクチンはアジュバントを含まないものでありうるが、好ましくは、1以上のアジュバントを含有する。
他のラクトバシラス(Lactobacillus)種の株も、例えば本発明のワクチンにおける細菌宿主としての使用に適している可能性がある。これらには、ラクトバシラス・ペントサス(L. pentosus)、ラクトバシラス・リューテリ(L. reuteri)、ラクトバシラス・アニマリス(L. animalis)(=ラクトバシラス・ムリヌス(L. murinus))、ラクトバシラス・フェルメンツム(L. fermentum)、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)、ラクトバシラス・クリスパツス(L. crispatus)、ラクトバシラス・ガッセリ(L. gasseri)、ラクトバシラス・ジョンソニイ(L. johnsonii)、ラクトバシラス・サリバリウス(L. salivarius)、ラクトバシラス・ブレビス(L. brevis)、ラクトバシラス・ラムノサス(L. rhamnosis)、ラクトバシラス・ヘルベチクス(L. helveticus)及び/又はラクトバシラス・パラカゼイ(L. paracasei)の株が含まれうる。
本発明において有用な株は、好ましくは、GRAS状態を有し、より好ましくは、食物等級である。また、それらは、最も好ましくは、前記WO-96/32487の発現ベクター、又はこの好ましい発現ベクターに匹敵する(例えば、細胞内での及び/又は細菌宿主表面上に露出される)発現のレベルを与える別のベクターと組合せて使用される。
さらに、ラクトバシラス(Lactobacillus)属に属する株の使用が好ましいが、適当な株はおそらく、ビフィドバクテリア及びプロプリオバクテリア、例えば、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属及び/又はプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属からも選択されうると予想される。適当な株はラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)及び/又はラクトバシラス(Lactobacillus)と同様にして当業者により選択されうる。
例えば、選択した株が本発明の細菌宿主として適当であるかどうかを判定/確認するための適当な試験は、調節可能なプロモーターであるPamy及びPxyl又は構成的プロモーターであるPldh及びPslpAのようなプロモーター配列の制御下でpAMβ1、pNZ71、pLP323の複製領域を保持するプラスミドで該宿主を形質転換することである。そのようなベクターの具体例としては、(Pamyの制御下でのTTFC抗原の表面アンカー/表面露出発現のための)TTFC保持ベクターpPG421及び/又は(Pxylの制御下でのTTFC抗原の細胞内発現のための)TTFC保持ベクターpPG623が挙げられる。ついで、このようにして得られた組換え宿主を、好ましくは、実施例に記載の1回量の初回抗原投与及び追加投与の計画に従い、動物、好ましくは哺乳動物(例えば、マウス、例えば、BALB/c及び/又はC57bl/6マウス)に経口投与し、ついで、破傷風毒素を使用するELISAにより個々の血清中のIgGの終点力価を測定する。そのようなアッセイにおいては、選択した組換え宿主は、同一ベクターで形質転換され同一条件下で投与された場合には、好ましくは、ラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)NICMB 8826及び/又はラクトバシラス・プランタルム(L. plantarum)80より高い(すなわち、少なくとも1%高い)力価を与え、より好ましくは、少なくとも10%高い、より一層好ましくは少なくとも20%高い力価を与える。
法律が許容する場合には、本発明はまた、細菌又はワクチンを必要としているヒト又は動物(例えば、哺乳動物)のような個体(又は適切な場合には患者)への該細菌又はワクチンの投与に関する。該個体は、前記のとおり特定の疾患の治療又は予防を必要としているものでありうる。
更なる変異体及びホモログ
本発明の(修飾)タンパク質は、通常は組換え的に製造されるが、必要に応じて、合成手段により製造することが可能である。それは、例えば、その同定又は精製を補助するためのヒスチジン残基又はT7タグの付加により、あるいは細胞からのその分泌を促進するためのシグナル配列の付加により修飾することができる。
修飾は、元の又は野生型の配列に施すことが可能であるが、該タンパク質は尚もS層タンパク質でありうる。これは、該タンパク質の基本的な生物学的機能を該ペプチドが維持するようなタンパク質配列内の単一アミノ酸又はアミノ酸群の欠失、修飾又は付加を含みうる。
保存的置換を例えば以下の表に従い行うことが可能である。第2列の同じ枠の、好ましくは、第3列の同じ欄のアミノ酸が互いに置換されうる。好ましくは、置換は該ポリペプチドのフォールディング又は活性に影響を及ぼさない。

脂肪族 無極性 G A P
I L V
極性・非荷電 C S T M
N Q
極性・荷電 D E
K R
芳香族 H F W Y
改変
本発明のタンパク質は、例えば翻訳後に、化学的に改変されうる。例えば、それは(同じ又は異なる糖により1回以上)グリコシル化してもよく、あるいは修飾アミノ酸残基を含みうる。それはまた、(その精製を補助する)ヒスチジン残基の付加により又は(細胞膜内への挿入を促進する)シグナル配列の付加により修飾されてもよい。該タンパク質は、1以上の(N)アミノ又は(C)カルボキシル末端伸長、例えばアミノ末端メチオニン残基、約20〜25残基までの小さなリンカーペプチド、又は精製を促進する(小さな)伸長、例えばポリヒスチジンもしくはT7タグ、抗原エピトープ、又は(例えば、マルトース)結合性ドメイン(例えば、C末端におけるもの)を有していてもよい。これらの伸長は、リンカーを介して又は介さないで付加されてもよい。
ポリヌクレオチド
本発明は、本発明の(修飾)タンパク質をコードする(例えば、単離及び/又は精製された)ポリヌクレオチドを提供する。したがって、本発明は、該修飾タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。また、以下のものから選ばれるポリヌクレオチドも含まれる:
(a)該修飾タンパク質をコードするポリヌクレオチド又はその相補体、
(b)(a)に記載のヌクレオチド配列又はその断片に(例えば、選択的に)ハイブリダイズしうるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
(c)(a)に記載のヌクレオチド配列の相補体又はその断片に(例えば、選択的に)ハイブリダイズしうるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、及び/又は
(d)(a)、(b)又は(c)に定義されたポリヌクレオチドに対する遺伝暗号の縮重の結果として縮重したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
(b)及び(c)におけるポリヌクレオチドは、該タンパク質の修飾に対応した変化を含有しうる。
ハイブリダイズ可能な配列
「ハイブリダイズしうる」なる語は、本発明の標的ポリヌクレオチドが、プローブとして使用した核酸(例えば、該修飾タンパク質のヌクレオチド配列又はその断片又はそれらの相補体)に、バックグラウンドより有意に高いレベルでハイブリダイズしうることを意味する。該ヌクレオチド配列はRNA又はDNAであることが可能であり、したがって、ゲノムDNA、合成DNA又はcDNAを含む。好ましくは、該ヌクレオチド配列はDNA配列であり、最も好ましくは、cDNA配列である。本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野でよく知られた方法に従い合成することができる。
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1のコード配列又は該コード配列の相補体に、バックグラウンドより有意に高いレベルでハイブリダイズしうる。バックグラウンドハイブリダイゼーションは、例えば、cDNAライブラリー中に存在する他のcDNAにより生じうる。シグナルレベル(例えば、本発明のポリヌクレオチドと配列番号1のコード配列又は該コード配列の相補体との相互作用により生じたもの)は、典型的には、他のポリヌクレオチドと配列番号1のコード配列との相互作用の少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍強力である。相互作用の強度は、例えば、プローブを例えば32Pで放射能標識することにより測定することができる。選択的ハイブリダイゼーションは、典型的には、低いストリンジェンシー(0.3M 塩化ナトリウム及び0.03M クエン酸ナトリウム、約40℃)、中等度のストリンジェンシー(例えば、0.3M 塩化ナトリウム及び0.03M クエン酸ナトリウム、約50℃)又は高いストリンジェンシー(例えば、0.3M 塩化ナトリウム及び0.03M クエン酸ナトリウム、約60℃)の条件を用いて達成されうる。ハイブリダイゼーションは、当技術分野1で公知の任意の適当な条件下で行うことが可能であり、1つの指針としては、すべて0.5% SDSで、低いストリンジェンシーは55℃で2×SSC、中等度のストリンジェンシーは60℃で0.5〜1.0×SSC、高いストリンジェンシーは60℃以上(例えば、68℃)で0.1又は0.2×SSCでありうる。
改変
本発明のポリヌクレオチドはDNAでもRNAでもよい。それらは一本鎖でも二本鎖でもよい。それらはまた、1以上の合成又は修飾ヌクレオチドをそれらの中に含むポリヌクレオチドであってもよい。ポリヌクレオチドに対する多種多様な修飾が当技術分野において公知である。これらには、メチルホスホナート及びホスホロチオアートバックボーン、及び/又は該分子の3'及び/又は5'末端におけるアクリジンもしくはポリリシン鎖の付加が含まれる。本発明の目的においては、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、当技術分野において利用可能な任意の方法により修飾されうると理解されるべきである。
当業者は、例えば本発明のポリヌクレオチドが発現されることになる任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映するよう、本発明のポリヌクレオチドにコードされるタンパク質配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を、通常の技術を用いて行いうると理解されるべきである。
野生型タンパク質配列は、ヌクレオチドの置換、例えば1、2又は3個から10、25、50又は100個までの置換により修飾することができる。その代わりに又はそれに加えて、1以上の挿入及び/又は欠失により、及び/又は一方もしくは両方の末端における伸長により、該ポリヌクレオチドを修飾することが可能である。該修飾ポリヌクレオチドは、一般には、抗原性である又はS層タンパク質であるタンパク質をコードする。縮重置換を行うことが可能であり、及び/又は、例えばタンパク質に関して考察されているとおり、該修飾配列が翻訳される際に保存的アミノ酸置換をもたらす置換を行うことが可能である。
組換え態様
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、例えばクローニング及び発現ベクター、ならびにそのようなベクターを、適当な宿主細胞内で、例えば、本発明のポリペプチドの発現が生じる条件下、増殖させ、形質転換し、又はトランスフェクトするための方法を提供する。また、宿主細胞のゲノムにとって異種である本発明のポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞も提供する。「異種」なる語は、通常、宿主細胞に関する場合には、該ポリヌクレオチドが宿主細胞のゲノム内に天然では存在しないこと、又は該ポリペプチドがその細胞により天然では産生されないことを意味する。
本発明のポリヌクレオチドは、複製可能な組換えベクター、例えばクローニング又は発現ベクター内に組込むことができる。該ベクターは、適合する宿主細胞内で該核酸を複製させるために使用することができる。したがって、もう1つの実施形態においては、本発明は、複製可能なベクター内に本発明のポリヌクレオチドを導入し、適合する宿主細胞内に該ベクターを導入し、該ベクターの複製を引き起こす条件下、該宿主細胞を増殖させることによる、本発明のポリヌクレオチドの製造方法を提供する。該ベクターは該宿主細胞から回収されうる。適当な宿主細胞は、発現ベクターに関して後記で説明されている。
ベクター
本発明のポリヌクレオチドは発現カセット内に挿入することができる。本発明の発現カセット又はポリヌクレオチドベクターが挿入されるベクターは、組換えDNA法に簡便に付されうる任意のベクターであればよい。該ベクターの選択は、しばしば、それが導入されることになる宿主細胞に左右されるであろう。したがって、該ベクターは、自律的複製ベクター、すなわち、染色体外体として存在し染色体の複製には無関係に複製されるベクター、例えばプラスミドでありうる。あるいは、該ベクターは、宿主細胞内に導入されると宿主ゲノム内に組込まれて、それが組込まれた染色体と共に複製されるものであればよい。
好ましくは、ベクター内の本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現をもたらしうる調節配列に機能しうる形で連結されている。すなわち、該ベクターは発現ベクターである。「機能しうる形で連結されている」なる表現は、記載されている成分が、それらがそれらの意図される様態で機能しうる関係で配置されていることを意味する。コード配列に「機能しうる形で連結された」調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー又は他の発現調節シグナルは、該調節配列に適合した条件下で該コード配列の発現が達成されるよう位置している。
該ベクターは、例えば、複製起点、場合によっては該ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターならびに場合によっては該プロモーターのエンハンサー及び/又は調節因子を備えたプラスミド、コスミド、ウイルス又はファージベクターでありうる。ターミネーター配列が存在してもよく、同様に、ポリアデニル化配列も存在してもよい。該ベクターは、1以上の選択マーカー遺伝子、例えば、(細菌プラスミドの場合には)アンピシリン耐性遺伝子又は(哺乳類ベクターの場合には)ネオマイシン耐性遺伝子を含有しうる。ベクターは、例えばRNAの製造のためにin vitroで使用してもよく、あるいは宿主細胞をトランスフェクト又は形質転換するために使用してもよい。それらは、例えば過剰発現のための、本発明の2以上のポリヌクレオチドを含んでいてもよい。
該タンパク質をコードするDNA配列は、好ましくは、宿主細胞内での該DNA配列の発現を指令しうる発現シグナルに機能しうる形で該DNA配列が連結された発現カセット(又は構築物)の一部として、適当な宿主内に導入することができる。該発現構築物での適当な宿主の形質転換のためには、当業者によく知られた形質転換法が利用可能である。該発現構築物は、選択マーカーを保持するベクターの一部として、宿主の形質転換に使用してもく、あるいは該発現構築物を、選択マーカーを保持するベクターと共に、別々の分子として同時形質転換してもよい。該ベクターは1以上の選択マーカー遺伝子を含みうる。
ある与えられた宿主細胞のためのベクター又は発現構築物は、第1態様のポリペプチドをコードする配列のコード鎖に関して5'末端から3'末端への連続的な順序で互いに機能しうる形で連結された以下の要素を含みうる:
(1)与えられた宿主細胞において、該ポリペプチドをコードするDNA配列の転写を指令しうるプロモーター配列、
(2)場合によっては、与えられた宿主細胞から培地への該ポリペプチドの分泌を指令しうるシグナル配列、
(3)該ポリペプチドの成熟かつ好ましくは活性形態をコードするDNA配列、
(4)好ましくは、該ポリペプチドをコードするDNA配列の下流の転写を終結させうる転写終結領域(ターミネーター)、及び
(5)場合によっては、リプレッサー(例えば、XylR)。
該ポリペプチドをコードするDNA配列の下流には、1以上の転写終結部位(例えば、ターミネーター)を含有する3'非翻訳領域が存在しうる。ターミネーターの起源はそれほど重要ではない。ターミネーターは、例えば、該ポリペプチドをコードするDNA配列に固有のものでありうる。該ターミネーターは、(該ポリペプチドをコードするDNA配列が発現されることになる)宿主細胞にとって内因性のものでありうる。
本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現の増強は、発現宿主からの対象タンパク質の発現及び望ましい場合には分泌レベルを増強するように及び/又は本発明のポリペプチドの発現の誘導的制御をもたらすように働きうる異種調節領域、例えばプロモーター、分泌リーダー及び/又は終結領域の選択によっても達成されうる。好ましくは、これらの調節領域又は要素の少なくとも1つ及び有利には全ては、ラクトバシラス(Lactobacillus)細菌に由来するか又はそれに適合する。このためには、抗原コード配列以外に関しては、該ベクター及び/又は宿主細胞は食物等級(又はGRAS)となりうる。
本発明のポリペプチドの発現を指令するためには、本発明のタンパク質をコードする遺伝子に固有のプロモーターに加えて、他のプロモーターを使用することも可能である。該プロモーターは、所望の発現宿主内で本発明のポリペプチドの発現を指令するその効率に関して選択されうる。
プロモーター/エンハンサー及び他の発現調節シグナルは、該発現ベクターが意図する宿主細胞に適合するよう選択されうる。例えば、原核性プロモーター、特に、ラクトバシラス(Lactobacillus)又は大腸菌(E. coli)株における使用に適したものを使用することができる。
細菌プロモーターの具体例としては、キシロース、乳酸デヒドロゲナーゼ、αアミラーゼ及びSPo2プロモーターならびに細胞外プロテアーゼ遺伝子由来のプロモーターが挙げられる。
宿主細胞及び発現
もう1つの態様においては、本発明は、該タンパク質をコードするコード配列の(前記の発現ベクターによる)発現をもたらす条件下、宿主細胞(例えば、前記の発現ベクターで形質転換又はトランスフェクトされたもの)を培養し、所望により、発現されたタンパク質を回収することを含んでなる、本発明のポリペプチドの製造方法を提供する。本発明のポリヌクレオチドは、複製可能な組換えベクター、例えば発現ベクターに組込むことができる。該ベクターは、適合する宿主細胞内で該核酸を複製させるために使用することができる。したがって、もう1つの実施形態においては、本発明は、複製可能なベクター内に本発明のポリヌクレオチドを導入し、適合する宿主細胞内に該ベクターを導入し、該ベクターの複製を引き起こす条件下、該宿主細胞を増殖させることによる、本発明のポリヌクレオチドの製造方法を提供する。該ベクターは該宿主細胞から回収されうる。適当な宿主細胞には、細菌、例えばラクトバシラス(Lactobacillus)又は乳酸菌、大腸菌(E. coli)、酵母(例えば、クルイベロミセス(Kluyveromyces))、哺乳類細胞系及び他の真核細胞系、例えばSf9細胞のような昆虫細胞及び(例えば、糸状)真菌細胞が含まれる。
好ましくは、該ポリペプチドは分泌タンパク質として産生され、この場合、該発現構築物中のポリペプチドの成熟形態をコードするDNA配列は、シグナル配列をコードするDNA配列に機能しうる形で連結されている。好ましくは、該シグナル配列は、該タンパク質をコードするDNA配列にとって固有(同種)のものである。あるいは、該シグナル配列は、該タンパク質をコードするDNA配列にとって異物(異種)のものであり、この場合、該シグナル配列は、好ましくは、該DNA配列が発現される宿主細胞にとって内因性のものである。
該ベクターを、前記の適当な宿主細胞内に接合導入(transconjugated)、形質転換又はトランスフェクトして、発現を得ることが可能である。この方法は、前記の発現ベクターによる該タンパク質をコードするコード配列の発現をもたらす条件下、前記の発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することを含みうる。
したがって、本発明のもう1つの態様は、本発明のポリヌクレオチド又はベクターで接合導入、形質転換又はトランスフェクトされた又は本発明のポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞を提供する。好ましくは、該ポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドの複製及び発現のためのベクター内に保持される。該細胞は該ベクターに適合するように選択され、例えば、原核性(例えば、細菌)、真菌、酵母又は植物細胞でありうる。
本発明は、該タンパク質をコードするDNA配列の組換え発現による本発明のタンパク質の製造方法を含む。この目的においては、本発明のDNA配列は、適当な同種又は異種宿主細胞内での該タンパク質の経済的な製造が可能となるよう、遺伝子増幅及び/又は発現シグナル、例えばプロモーター、分泌シグナル配列の交換のために使用することができる。同種宿主細胞は、本明細書においては、該DNA配列が由来する種と同じ種である又は同じ種内の変異体である宿主細胞と定義される。
本発明の1つの態様の好ましい特徴及び特性は別の態様の必要な変更を加えて同等に適用可能である。
次に、図面を参照しながら以下の実施例により本発明を例示するが、これらは単なる例示目的として記載されているにすぎず、本発明は以下の実施例に限定されると解釈されるべきではない。
概要
ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)ATCC 4356のSA-タンパク質の結晶化ドメインSANの構造を、挿入及び欠失突然変異誘発により並びにタンパク質分解処理により分析した。SANのN末端付近又は配列変異領域内に7〜13アミノ酸の挿入(アミノ酸7、45、114、125、193位)を有する大腸菌(E. coli)内で合成された突然変異SA-タンパク質は結晶シートを形成することが可能であったが、保存領域内又は推定二次構造要素を有する領域内の挿入(30、66、88及び156位)はこの能力を破壊した。細胞壁結合ドメイン内の挿入(345位)は結晶化に影響を及ぼさなかった。3つの結晶性及び1つの非結晶性SA-タンパク質c-myc(19アミノ酸)の挿入突然変異体を合成するラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)のFACscan分析を、c-myc抗体を使用して行った。蛍光は125位及び156位の挿入で最も顕著であり、45位の挿入ではそれより低く、7位の挿入では著しく減少した。免疫蛍光顕微鏡検査は該細菌集団の画分において蛍光輪を示し、このことは、これらの細菌が突然変異SA-タンパク質のみを合成したことを示唆している。該集団のサブセットにおいて染色体slpA遺伝子が突然変異対立遺伝子により置換されたという知見はこの結論を裏付けるものである。SA-タンパク質のタンパク質分解処理は、切断可能な部位が分子全体に存在するにもかかわらず、SANの中央付近の部位のみが感受性であることを示した。SANの半分の2つをコードするDNA配列の大腸菌(E. coli)内での発現は、二量体化しうるペプチドを与えた。この結果は、SANが、表面露出ループにより連結された〜12kDaのN末端サブドメインと〜18kDaのC末端サブドメインとからなることを示している。ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)のSA-タンパク質が〜19アミノ酸長までのエピトープを細菌表面において提示しうること、及び野生型遺伝子がin vivoで突然変異対立遺伝子により交換されることは、該系を、経口運搬ビヒクルとしての用途に適したものにする。
緒言
表層又はS層は400個までの異なる種の真正細菌及び古細菌において見出されている。それらは、細胞表面において特徴的な二次元結晶層に集合する(糖)タンパク質であるSタンパク質の、1つの種よりなる。この集合は、エントロピーにより駆動される過程であり、この過程において、個々のSタンパク質単量体がお互いと及び下層細胞エンベロープと多数の相互作用を引き起こす(Beveridge, 1994; Sleytr & Messner, 1983)。ある細菌がS層を有する理由は必ずしも明らかでないが、それらは分子ふるい、細胞外酵素のための足場、保護外皮又はビルレンス因子として機能することが示されている(Egelseerら, 1995; Noonan & Trust, 1997; Sara & Sleytr, 1987)。
Sタンパク質の構造を原子レベルで決定するための適当な方法が無いため、Sタンパク質の構造-機能関係は依然として十分には理解されていない。疑いなく、Sタンパク質の構造について最も良く理解されている点は、細胞壁へのSタンパク質の会合である。いくつかの細胞壁会合ドメインが、バシラス(Bacillus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ラクトバシラス(Lactobacillus)及びテルモバクテリウム(Thermobacterium)のSタンパク質に関して記載されている。最近の研究は、多数のSタンパク質が、いわゆる表層相同性(Surface Layer Homology又はSLH)ドメインのコピーの1以上を含有することを示している(Egelseerら, 1998; Lemaireら, 1998; Mesnageら, 1999; Olabarriaら, 1996)。これとは対照的に、Sタンパク質の結晶形成における構造成分又はドメインの役割についてはほとんど知られていないが、少数の研究は、EM研究において観察されている形態学的ドメインに恐らく対応する明らかな結晶化ドメインが幾つかのSタンパク質において存在することを示している(Baumeisterら, 1989; Engelhardt & Peters, 1998; Jaroschら, 2001; Mesnageら, 2000; Smitら, 2001)。
ラクトバシラス(Lactobacillus)属の幾つかの種はS層を有する。ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)及び関連種のS層は約45kDaの単一のSタンパク質(SA-タンパク質)から構成される(Bootら, 1996)。ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)ATCC 4356のSA-タンパク質及びラクトバシラス・クリスパツス(L. crispatus)JCM 5810のCbsAが、構造及び機能に関して最も良く研究されている(Bootら, 1993; Sillanpaaら, 2000; Smitら, 2001)。これらの生物のS層の機能は不明であるが、ラクトバシラスのS層は腸上皮細胞及び細胞外マトリックス(ECM)成分への細菌付着に重要であろう(Schneitzら, 1993; Tobaら, 1995)。
ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)のSA-タンパク質は、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)のサイレントSタンパク質遺伝子にコードされるslpBの推定産物、ラクトバシラス・ヘルベチクス(L. helveticus)及びラクトバシラス・クリスパツス(L. crispatus)のSタンパク質、ならびにラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)の赤血球凝集タンパク質(HAP50)に対しては相当な類似性を示すが、他のSタンパク質に対しては類似性を示さない(Bootら, 1996; Bootら, 1995)。これらのタンパク質の一次アミノ酸配列の分析は、これらのタンパク質間の相同性がこれらのタンパク質のC末端側3分の1において最高であり(77〜99%の同一性)、N末端側3分の2においてはより低い(30〜72%の同一性)ことを示した。N末端領域は疎水性アミノ酸が優勢であるが、C末端領域は主として親水性残基から構成され、そのうちの大部分は、この領域を著しく正荷電にする塩基性アミノ酸よりなる。
SA-タンパク質のN末端部分及びC末端部分は、異なる構造的及び機能的ドメインを構成することが示されている。SA-タンパク質のN末端部分(アミノ酸1〜290)は結晶化ドメインSANを構成し、無傷SA-タンパク質により形成される結晶に類似した格子パラメーターを有するS層結晶を形成しうる。SA-タンパク質のC末端部分(アミノ酸291〜412)(SAC)は、S層を細胞壁に付着させるように作用する(Smitら, 2001)。
SA-タンパク質は、公知の最小Sタンパク質のうちの1つであり、したがって、SA-タンパク質はSタンパク質の構造-機能関係の研究のための理想的な候補物質である。挿入突然変異誘発は、タンパク質の構造-機能関係を確認するために広く用いられている方法である(Bingleら, 1997; Nortonら, 1998; van Geest & Lolkema, 2000; Wong & Hancock, 2000)。本発明においては、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)S層タンパク質、特にその結晶化ドメインSANの構造組織の更なる洞察を得るために、挿入突然変異誘発及びタンパク質分解処理を用いた。結果はSA-タンパク質に関する或る構造モデルを示唆しており、この構造モデルにおいては、SANは、環境に露出されるループ領域に隣接するそれぞれ約15kDaの2つのサブドメインから構成される。それらの2つの仮説的サブドメインをコードするDNA配列を大腸菌(E. coli)内で発現させ、得られたポリペプチドの特性を判定した。
これは、機能的SA-タンパク質突然変異体が、該系を経口ワクチン接種ビヒクルとしての用途に適したものとする選択されたエピトープの効率的な表面露出に使用されうることを示している。
結果
ラクトバシラス・アシドフィルスのS A -タンパク質内へのペプチドリンカーの挿入
リンカー挿入突然変異誘発法は、成熟SA-タンパク質のそれぞれアミノ酸45、125、156、177、30、66、88、114、193及び349の後にリンカーの挿入(NcNoX; 7又は8アミノ酸)を有する10個の異なるslpA挿入突然変異体slpA11、slpA12、slpA13、slpA14、slpA15、slpA16、slpA18、slpA19、slpA20及びslpA21を与えた。1つの追加的な突然変異体slpA9cは、アミノ酸7に、NcNoXリンカーの挿入の代わりにc-mycエピトープの挿入を含有していた。これらの突然変異遺伝子及び未修飾slpA(slpA10)を発現ベクターpQE30ΔXNに導入し、対応するタンパク質SHA9c、SHA11、SHA12、SHA13、SHA14、SHA15、SHA16、SHA18、SHA19、SHA20、SHA21及びSHA10を大腸菌(E. coli)内で合成し、金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製した(表1)。
Figure 2005528085
すべての突然変異遺伝子は大腸菌(E. coli)内で高レベルで発現された。SDS-PAGE分析は、該遺伝子産物が、野生型SA-タンパク質より若干大きい約46kDaの予想分子量(Mr)を有することを示した(結果は非表示)。突然変異体SHA14では約25kDaの末端切断型ペプチドが観察され、これは、配列決定において既に観察されているフレームシフト突然変異の結果である。突然変異体SHA9cは、より大きなインサートであるc-mycエピトープのため、約47kDaのMrを示した。
大腸菌(E. coli)内で合成されたS A -タンパク質突然変異体の機能分析
透析された突然変異SA-タンパク質の遠心分離は結晶化SA-タンパク質と可溶性SA-タンパク質との区別を可能にした。突然変異タンパク質SHA9c、SHA11、SHA12、SHA15、SHA16及びSHA20ならびに野生型タンパク質SHA10は、SA-タンパク質の結晶化を示す沈殿物を形成したが(Smitら, 2001)、突然変異体SHA21は、前記突然変異体より少量の沈殿物を形成し、一方、突然変異体SHA13、SHA18、SHA19及び末端切断型SHA14は沈殿物の形成を全く示さなかった。可溶性画分及び不溶性画分のSDS-PAGE分析は、Sタンパク質の相当部分がSHA9c、SHA10、SHA11、SHA12、SHA15、SHA16及びSHA20のペレット画分中に存在することを証明した。すべての他の突然変異体では、SA-タンパク質は上清画分中でのみ見出された(図2)。野生型(Hisタグ付き)SA-タンパク質(SHA10)と該沈殿性突然変異体とにより形成された沈殿物の電子顕微鏡分析は、SA-タンパク質のものに類似した斜対称(oblique symmetry)を有する結晶性シートを示した(データ非表示)。
c-mycエピトープリンカーによるNcNoXリンカーの置換のために、3つの挿入突然変異体slpA11、slpA12及びslpA13を選択した。これは、19アミノ酸のインサート及び約47kDaのMrを有する突然変異タンパク質SHA11c、SHA12c及びSHA13cを与えた。そのより大きなインサートの導入は該突然変異タンパク質の特性を変化させなかった。EMにより測定したところ、SHA11c及びSHA12cは尚もS層結晶を形成することが可能であったが、突然変異体SHA13cは結晶を形成することができなかった(データ非表示)。
ラクトバシラス用の発現ベクターの構築ならびにラクトバシラス・カゼイ及びラクトバシラス・アシドフィルスにおけるc-myc挿入を有するSA-タンパク質の合成
突然変異体SHA9c、SHA11c、SHA12c及びSHA13cにおけるc-mycエピトープがSA-タンパク質の内部に埋もれているのかS層表面上に露出しているのかどうかを確認するために、突然変異SA-タンパク質をラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)内で野生型SA-タンパク質と共に共発現させた。ラクトバシラス(Lactobacillus)内での突然変異Sタンパク質の遺伝子の発現のために、slpA9c、slpA11c、slpA12c及びslpA13c遺伝子が元のslpA発現シグナル(mRNAの安定化のための5'リーダー配列、リボソーム結合部位(RBS)、開始コドン及び分泌シグナル)と組合わされた新たなベクターを構築した(図1)。ついで完全なslpカセットを大腸菌(E. coli)-ラクトバシラス(Lactobacillus)シャトルベクターpLP401-Tに導入し、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)ATCC 393内に導入した。
ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)における突然変異slp遺伝子発現の分析は、該プロモーターと突然変異slp遺伝子との間にldhターミネーター配列が存在するか否かには無関係に、すべての形質転換体が突然変異SA-タンパク質を産生することを示した(結果は非表示)。該ターミネーターの非存在下において、ベクターからの誘導条件下での突然変異SA-タンパク質の産生は、該転写ターミネーターの存在下でのベクターからの場合と比べて僅かに増加したに過ぎなかった。ldh転写ターミネーターを有するベクターからの非誘導条件下のラクトバシラス・カゼイ(L. casei)における突然変異SA-タンパク質のこの構成的産生は、slp断片の5'領域における未だ検出されていないプロモーター配列の存在を示唆している。更なる実験において、本発明者らは、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)及びラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)における構成的突然変異SA-タンパク質産生のために、このプロモーター活性を利用した。正しい分子量の突然変異SA-タンパク質がラクトバシラス・カゼイ(L. casei)により合成され分泌されたこと及びc-mycエピトープが存在することをSDS-PAGE及びウエスタン分析により確認した後(データ非表示)、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)から得られたCsCl精製ベクターDNA(ldhターミネーターを含有しないもの)をラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)ATCC 4356に導入した。
ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)形質転換体はラクトバシラス・カゼイ(L. casei)の場合より少量の突然変異SA-タンパク質を産生した。SA9c、SA11c、SA12c及びSA13c突然変異タンパク質ならびに野生型株SA-タンパク質を産生する形質転換体を5M LiCl抽出によりラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)から完全に除去することができた。このことは、該細菌が、野生型タンパク質と突然変異タンパク質とから構成されるモザイクS層を含有することを示している。突然変異タンパク質は培地内では検出されなかった。SDS-PAGE及びウエスタン分析を用いて、それらの4つのラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)形質転換体の5M LiCl抽出物において、野生型SA-タンパク質のバンドより若干低い移動度を有する追加的なバンドが観察された。また、このバンドは抗c-myc抗体と反応するが野生型SA-タンパク質は反応しないことがウエスタン分析により示され、このことはc-mycエピトープの存在を証明するものである(結果は非表示)。また、突然変異体SA9c及びSA11cは等レベルで産生されるが、SA12cの産生レベルはより低く、SA13cの産生レベルはより一層低いことが観察された(図3)。
5M LiCl抽出物の透析及び遠心分離により得られた可溶性及び沈殿SA-タンパク質画分のSDS-PAGE分析は、全4個のSA-タンパク質突然変異体がペレット画分及び上清画分の両方に付随することを示したが、これは、完全に機能的な野生型SA-タンパク質で典型的に観察される挙動である。非結晶性突然変異体SA13cと該透析物上清画分との優先的な付随は観察されなかったが、これは、大腸菌(E. coli)から精製されたタンパク質では観察された(データ非表示)。
ラクトバシラス・アシドフィルスの細胞表面におけるc-mycエピトープの露出
c-mycエピトープの表面提示をフローサイトメトリー及び免疫蛍光顕微鏡検査により分析した。c-myc抗体でのFACScan分析は、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)形質転換体のそれぞれに関するシグナルを与えたが、重要な相違が観察された。検出された蛍光シグナルは以下の順序で増大した:SA9c、SA11c、SA13c、SA12c(図4)。興味深いことに、該サイトメトリーシグナルは該突然変異タンパク質の産生レベルには比例せず、該産生レベルは、最高の蛍光シグナルを有する突然変異体(SA12c及びSA13c)で最低であった。
フローサイトメトリー実験は、特に突然変異体SA12c及びSA13cにおいて、蛍光強度における大きな不均一性を示した。免疫蛍光顕微鏡検査を用いて、2つのタイプの蛍光性細胞が観察され、そのうちの一方は、該細胞上にランダムに分布する散在性蛍光スポットを有し、もう一方は、該細胞を完全に包囲する強力な蛍光輪を有していた(データ非表示)。
染色体slpA遺伝子座における組換えの検出
包囲蛍光輪を有する細胞のS層はおそらく、専ら突然変異体SA-タンパク質よりなるであろう。なぜなら、野生型細胞及び抗SA-タンパク質血清を使用して、類似した強度の輪が観察されたからである(Boot, 1996)。これらの細胞におけるslpA遺伝子の染色体コピーが、該発現ベクターにより保持される突然変異体のものにより不活性化又は置換されたかどうかを確認するために、PCR法を用いた。pLPslpA9c、pLPslpA11c、pLPslpA12c及びpLPslpA13cを保持するラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)形質転換体から単離されたゲノムDNA調製物を使用して、本発明者らは、全4個の形質転換体の組換え特異的断片を増幅することができた。このことは、染色体slpA遺伝子が突然変異対立遺伝子により置換されたことを示している。鋳型としての精製pLPslpA12cと混合された野生型ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)ゲノムDNAを使用する対照実験においては、PCR産物は全く見出されなかった(データ非表示)。
S A -タンパク質のタンパク質分解処理
種々のタンパク質分解酵素でのSA-タンパク質の限定消化は、SANに相当する36kDaの1つの主要産物及び幾つかのより小さな断片を与えた。これらの断片のN末端配列は既に決定されている。トリプシン消化後に得られた断片はN末端ATTIN及びVKLDQ(アミノ酸1-5及び140-144)を有し、キモトリプシン消化後に得られた断片はATTIN及びAINTT(アミノ酸1-5及び160-164)を有し、このことは、これらのペプチドがSANのN末端及びC末端領域に相当することを示している。どうやら、SANの中央付近の部位のみがタンパク質分解切断に感受性であるらしく、それらの2つのペプチド中には、トリプシン及びキモトリプシンによる多数の他の潜在的切断部位が存在するにもかかわらず、そのように言えるようである。
末端切断型SAN断片の特性
SANの構造における更なる洞察を得るために、C末端切断型ペプチド(最初の159、149及び113アミノ酸を保持するSAN2、4及び6)又はN末端切断型ペプチド(最後の177、151及び141アミノ酸を含むSAN7、3及び5)をコードするベクターを構築した。該末端切断型Hisタグ付き遺伝子を大腸菌(E. coli)内で発現させ、ペプチドSAN2、SAN4、SAN6及びSAN7をアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。ペプチドSAN3及びSAN5は非常に低いレベルで産生され、精製することができなかったが、これはおそらく、大腸菌(E. coli)プロテアーゼに対する感受性の上昇によるものであろう。SDS-PAGE及びウエスタン分析は、該末端切断型タンパク質が予想サイズを有することを示した。また、ウエスタンブロット法は、ペプチドSAN2、SAN4、SAN6及びSAN7の単量体の2倍のサイズを有する分子の存在を示した(図5)。タンパク質分解攻撃に対する該ペプチドの安定性及びそれらの二量体化能は、それらが機能的に活性な単位を構成していることを示唆している。
考察
伝統的に、S層は電子顕微鏡技術により研究されており、その結果、それらの超微細構造に関しては多くのことが知られている。しかし、Sタンパク質の構造-機能関係に関してはほとんど知られていない。近年、汎用的な組換えDNA技術の出現に伴い、Sタンパク質の構造組織を解明するための重要な新たな手掛かりが得られている。欠失分析、ドメインのサブクローニング、リンカー突然変異誘発及び「システイン・スキャニング」突然変異誘発のような方法がこの目的に用いられている(Jaroschら, 2001; Mesnageら, 1999; Smitら, 2001)。
本発明においては、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)SA-タンパク質の結晶化ドメインSANの構造組織を明らかにするために、リンカー挿入及び欠失突然変異誘発ならびにSタンパク質タンパク質分解を用いた。該分析は、SA-タンパク質の全体にわたりランダムに分布する11個の位置(そのうちの10個はSAN中に位置した)における7〜13個のアミノ酸残基の挿入を含むものであった。すべての突然変異タンパク質は追加的なN末端Hisタグ(13アミノ酸)を含有しており、これは、電子顕微鏡検査により既に確認されているとおり、SA-タンパク質の結晶化を妨げなかった。
SA-タンパク質の30、66、88及び156位における挿入の導入は(SHA13、SHA16、SHA18及びSHA19)、in vitroで結晶を形成する能力の完全な破壊を引き起こした。アミノ酸7、45、125、114の後に挿入を有する突然変異体(SHA9c、SHA11、SHA12及びSHA20)は、Hisタグ付き野生型タンパク質により形成されたものに類似した結晶を形成し、193位における挿入(SHA21)は、部分的に機能的な突然変異SA-タンパク質を与えた。細胞壁結合性ドメイン内の挿入(SHA15)は、予想どおり、集合には全く影響を及ぼさなかった。
これらの結果の解釈のために、マルチプルSタンパク質配列アライメント及び推定Sタンパク質配列モチーフ(Sillanpaaら, 2000; Smitら, 2001)を使用した。これらの分析から得たデータは、SA-タンパク質のSANドメインが、著しく低い変異を示す領域と交互に出現する、組成及び長さにおいて高い変異性を有する領域(ギャップ領域)からなることを示した。より保存性の高い領域が(分子内又は分子間相互作用を引き起こす)ドメイン構造-機能に重要であることを提示している(Sillanpaaら, 2000; Smitら, 2001)。これらの領域の破壊はドメイン機能の喪失を引き起こす可能性があり、一方、様々な長さの領域はタンパク質表面領域又はループに相当する可能性が高く(Miyazawa & Jernigan, 2000)、追加的なアミノ酸残基の挿入を受入れうる。
一般に、SA-タンパク質アライメントにおいて良く合致する又は推定二次構造要素を含む領域における挿入は許容されなかった。これは、S層形成を破壊することなく許容された、いずれの推定二次構造要素をも含まない可変性非保存的領域における挿入とは対照的である。2つの突然変異領域が重要である。第1は、SA-タンパク質のN末端領域である。該N末端自体は柔軟であり、SA-タンパク質の結晶化における直接的な役割は果たさない。なぜなら、それは、ドメインの機能の喪失を伴うことなく13アミノ酸の伸長を受入れるからである(Smitら, 2001)。7位における追加的アミノ酸の挿入(SHA9c)はおそらく、SA-タンパク質N末端への接近性が原因で受入れられたのであろう。該挿入がN末端から更に離れた位置(アミノ酸30; SHA16)に施された場合には、おそらく、該領域の不適切なフォールディング又はSA-タンパク質単量体間のタンパク質-タンパク質相互作用の遮断が原因で、タンパク質の機能が損なわれたのであろう。アミノ酸30〜47における有意な保存性の欠如にもかかわらず、この領域はSA-タンパク質の結晶化に重要であるらしい。
突然変異12及び20(それぞれ125位及び114位)が施された第2の領域は、それがSANドメインの中心部(この領域においては、19アミノ酸までの挿入はSA-タンパク質の結晶化に影響を及ぼさなかった)に位置している点で興味深い。この中央領域は、アライメントで観察された最も大きな可変性領域であり、タンパク質分解酵素が接近しうる部位を含有するSANにおける唯一の領域である。
結局、突然変異SA-タンパク質を産生するラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)のフローサイトメトリー及び免疫蛍光分析は、アミノ酸125及び156(SA12c及びSA13c)付近の領域は抗c-myc抗体と強く反応するが、アミノ酸9及び45(SA9c又はSA11c)付近の領域は反応しないことを示した。これらの結果から、本発明者らは、前者の領域は外界に面しているが、N末端領域は抗体に十分には接近することができず、したがってSAN内に埋もれているか又はS層孔もしくは細胞壁に面していると結論づけた。
興味深いことに、突然変異体(SA13c)は、in vitro分析では非機能的であるにもかかわらず、in vivoではS層の必須部分を形成している。なぜなら、該突然変異タンパク質は、5M LiClによりラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)形質転換体から抽出することができたからである。さらに、該FACS分析において強力な陽性シグナルが観察されたが、このことは、SA13c中のc-mycが細菌表面に位置することを示唆している。該形質転換体のS層は野生型SA-タンパク質及び突然変異SA-タンパク質から構成されるため、本発明者らは、SA13cが野生型SA-タンパク質と機能的に相互作用しうると結論づけた。
SA12c又はSA13cを産生するラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)形質転換体において最も明らかに検出可能である、該フローサイトメトリーシグナルの分布における相違は、細菌集団内の突然変異タンパク質の産生レベルにおける相違を示唆した。免疫蛍光顕微鏡検査及びPCR実験は、該細菌集団の一部においては、プラスミドコード化突然変異対立遺伝子による染色体slpA遺伝子の交換の結果として、野生型SA-タンパク質は突然変異タンパク質により完全に置き換えられることを示した。この現象はSA13cにおいても観察されたため、本発明者らは、SA13cが真のS層をin vivoで形成しうると推定している。SA13cがS層をin vivoでは形成するがin vitroでは形成しない理由は、SA-タンパク質と細胞壁との相互作用がSA13c単量体の相互作用を安定化し又は該単量体のコンホメーション変化を誘導してそれらの集合を促進するからだと説明されうるであろう。また、SA13c中のHisタグの非存在はその結晶化に正の影響を及ぼしうる。
タンパク質分解実験に基づき、該中央領域はSANドメインを、サブドメインを構成しうる2つの部分に分割すると推定された。この推定を確認するために、N末端切断型SANペプチド及びC末端切断型SANペプチドの特性を測定した。170個までのC末端残基又は120個までのN末端残基を欠失させた場合には、大腸菌(E. coli)内に存在するプロテアーゼに不感受性である12〜19kDaのサイズで、SANの末端切断形態を大腸菌(E. coli)内で産生させることが可能であった。C末端切断型及びN末端切断型の両方のペプチドは、1% SDSの存在下の煮沸に抵抗しうる二量体をin vitroで形成することが可能であった。どうやら、これらの断片は機能的に活性な単位に相当するらしい。なぜなら、それらは強変性条件下でタンパク質-タンパク質相互作用により二量体化しうるからである。C末端切断型ペプチドはその全3個がタンパク質分解に対して安定であり二量体化することが可能であり、一方、N末端切断型はその最大の形態(SAN7)のみがこの挙動を示したため、サブドメイン境界はアミノ酸114とアミノ酸140との間に位置すると結論づけることができる。
前記の2つのサブドメインは、SA-タンパク質及びSANの本発明者らの電子結晶学的研究において観察された2つの形態学的サブドメインに相当しうるであろう。各SAN単量体に関して、隣接単量体に対する4つの接触点が、それらのうちの3つは伸長サブドメインにおいて、1つは球状サブドメインにおいて観察されうるであろう(Smitら, 2001)。図6は、SANの結晶がそのサブドメインの二量体化及びオリゴマー化により如何にして形成されうるのかを図示するモデルを示す。
最後に、これらの実験は、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)のS層上にエピトープが如何にして表面露出されるのかを示している。この知見に基づき、S層を用いたラクトバシラスの表面上への他の抗原の提示を経口又は鼻腔内ワクチンにおいて利用することが可能である。ラクトバシラスは、それをそのような用途に非常に適したものにする幾つかの追加的な特性、すなわちそのGRAS(概ね安全とみなされる)状態、その免疫調節特性、ならびにそれが付随抗原に対する粘膜及び全身免疫応答を誘導する能力を有する(Maassenら, 1999; Shawら, 2000)。突然変異S層遺伝子が遺伝的組換えにより染色体野生型遺伝子に取って代わって該突然変異を遺伝的に安定にするという観察は、遺伝的に操作されたラクトバシラス(Lactobacillus)Sタンパク質の応用可能性を更に広げるものである。
材料及び方法
細菌株及び増殖条件
ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)ATCC 4356及びラクトバシラス・カゼイ(L. casei)ATCC 393をMRSブロス(Difco)内で37℃で嫌気的に培養した。ラクトバシラス・ラクチス(Lactobacillus lactis)MG1614をGM17培地内で30℃で嫌気的に培養した。大腸菌(Escherichia coli)M15(pREP4)(Qiagen)及び大腸菌(E. coli)DH5α(Phabagen, The Netherlands)をルリア(L)ブロス内で37℃で好気的に培養した。必要に応じて、培地を1,5%アガロース、5μg/ml(L. lactis)又は7.5μg/ml(L. casei及びL. acidophilus)クロラムフェニコール、100μg/ml アンピシリン及び/又は25μg/ml カナマイシン(E. coli)で補足した。
ラクトバシラス・アシドフィルスslpA遺伝子のリンカー挿入突然変異誘発
成熟SA-タンパク質をコードするBamHI-HindIII PCR断片を含有するpET5a(Promega)由来ベクターpTslpA10(旧称pTA10)(Smitら, 2001)を挿入突然変異誘発に使用した。二本鎖DNAリンカーを唯一の制限部位内、又はslpA遺伝子中の2ヶ所に存在する部位内に挿入した(図1a)。リンカーは、制限部位特異的5'及び3'付着末端に隣接したNcoI、NotI及びXhoI(NcNoX)部位よりなる。連結混合物を大腸菌(E. coli)DH5α内に導入し、所望のリンカーインサートと共にpTslpA10ベクターを保持するクローンをコロニーPCRにより同定し、DNA配列決定により分析した。得られたプラスミドは、表1に示すとおり、pTslpAの後に突然変異体番号を付して示されている(pTslpA11、pTslpA12など)。
大腸菌(E. coli)におけるS A -タンパク質挿入突然変異体の機能分析
突然変異SA-タンパク質遺伝子をpQE30ΔXN内にBamHI-HindIII断片としてクローニングしてN末端の6個のヒスチジンタグを導入した(プラスミドは、pHslpAの後に突然変異体番号を付して示されている)。突然変異SA-タンパク質遺伝子の発現及び金属アフィニティー精製を、既に記載されているとおりに行った(Smitら, 2001)。精製された突然変異SA-タンパク質(500μg/ml)を50 mM Tris-HCl(pH 7.5)に対して十分に透析し、沈殿(これはSA-タンパク質の結晶形成を示す(Smitら, 2001))に関して調べた。可溶性Sタンパク質画分及び沈殿Sタンパク質画分を遠心分離により分離し、SDS-PAGEにより分析した。また、沈殿物質を電子顕微鏡(EM)(Smitら, 2001)により分析した。3つの突然変異プラスミドpHslpA11、pHslpA12及びpHslpA13においては、NcNoXリンカーをNcoI及びXhoI消化により除去し、c-mycエピトープリンカー(NcoI-c-myc-XhoI)により置換した。該突然変異タンパク質は、その他の突然変異体に関して記載されているとおりに製造し分析した。
プラスミドpHslpA9cの構築
鋳型としてのベクターpBK1(Bootら, 1993)ならびにプライマー5'SLPA1(5’ GCGCGAATTCAGATCTATCGTGGTAAGTAATAGGACGTG 3’: 配列番号18)及びCMYCRE(5’CAGCGAATTCCTCGAGGTTTAAATCTTCTTCTGAAATTAACTTTTGTTCTGCGTTAATAGTAGTAGCAGCGC 3’: 配列番号19)を使用するPCRにより、もう1つの挿入突然変異体を構築して、5'slpA9cを得た。このPCR産物をベクターpTslpA16-3(アミノ酸7の後にSalI、BamHI及びXhoI部位を含有する)内にBglII-XhoI断片として導入してpT5'slpA9cを得た。大腸菌(E. coli)における突然変異SA-タンパク質の精製及び機能分析のために、プライマーCEAMYC1(5’GGGGGGATCCGGTACCGCTACTACTATTAACGCAGAAC 3’: 配列番号20)及びCEA2(5’CCCCGGATCCAAGCTTATCGAAGTATCAGAAGATCCTATT 3’: 配列番号21)を使用してpT5'slpA9cのslp領域を増幅し、BamHI-BstEII断片をpHslpA10に導入してpHslpA9cを得た。該精製突然変異タンパク質の機能分析は前記のとおりに行った。
突然変異体slpA11c、slpA12c及びslpA13c内への5'slpA発現シグナルの再導入
プライマー5'SLPA1(5’GCGCGAATTCAGATCTATCGTGGTAAGTAATAGGACGTG 3’: 配列番号22)及び5'SLPA2(5’GGGGAAGCTTCAGTAGTGCTACCAGCAGCAG 3’: 配列番号23)を使用するPCRにより、BglII(5')及びHindIII(3')部位に隣接したslpA遺伝子の5'発現シグナル(ATGに対してnt -190〜+ 150)を含む断片をプラスミドpBK1(Bootら, 1993)から増幅した。該PCR産物をpGEM-T内に挿入し、配列の確認の後、EcoRI及びHindIIIで切り出し、pUC19内に挿入してp5'slpAを得た。BstEII又はPstI-HindIII断片としてpTslpA11c、pTslpA12c及びpTslpA13cから単離された突然変異SA-タンパク質カセットをp5'slpA内にクローニングしてp5'slpA11c、p5'slpA12c及びp5'slpA13cを得た。完全なslpカセットを含有するクローンをコロニーPCR及び制限分析により同定した。
ラクトバシラス・カゼイ及びラクトバシラス・アシドフィルスにおける突然変異S A -タンパク質遺伝子用の発現ベクターの構築
ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)及びラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)における突然変異SA-タンパク質SA9c、SA11c、SA12c及びSA13cの合成を達成するために、多宿主域ベクターpLP401-Tを使用した。このベクターはラクトバシラス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus)αアミラーゼ遺伝子の誘導プロモーターを含有する(Pouwelsら, 2001)。完全なslpカセットをpT5'slpA9c、p5'slpA11c、p5'slpA12c及びp5'slpA13cからBglII-HindIII断片として単離し、BamHI/HindIIIで消化されたpLP401-T内にクローニングして、ベクターpLPslpA9c、pLPslpA11c、pLPslpA12c及びpLPslpA13cを得た。連結混合物をラクトバシラス・ラクチス(L. lactis)MG1614内に導入し、正しいクローンをコロニーPCRにより選択した。高度に精製されたプラスミドDNA単離物をCsCl勾配遠心分離により調製し、NotIで消化してldhターミネーターを除去し、連結し、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)ATCC 393内に導入した。コロニーPCRを用いて、該ターミネーター配列の非存在を確認した。
ラクトバシラス・カゼイ及びラクトバシラス・アシドフィルスにおける突然変異S A -タンパク質遺伝子の発現分析
pLPslpA9c、pLPslpA11c、pLPslpA12c及びpLPslpA13cを保持するラクトバシラス・カゼイ(L. casei)及びラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)形質転換体ならびに未形質転換ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)ATCC 393及びラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)ATCC 4356をON培養から50mlのMRS培地に1:100で接種し、37℃で16時間インキュベートした。細胞を遠心分離(25分、3,000×g、4℃)により集め、培養上清中のタンパク質をTCAで沈殿させた。記載されているとおりに(Smitら, 2001)、細胞ペレットを生理的塩で1回洗浄し、1M及び5M LiCl抽出に付して表面会合タンパク質を取り出した。該1M及び5M LiCl抽出物をADに対して4℃で透析した。
ラクトバシラス・アシドフィルス形質転換体のS層表面におけるc-mycの露出
ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)によるS層表面上のc-mycエピトープの露出をフローサイトメトリー及び免疫蛍光顕微鏡検査により判定した。pLPslpA9c、pLPslpA11c、pLPslpA12c及びpLPslpA13cを含有する形質転換体ならびに野生型ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)細胞を対数期の終了時に回収し、1%(w/v)ウシ胎児血清(FCS)で補足されたリン酸緩衝食塩水(PBS)で1回洗浄した。遠心分離後、該細胞ペレットを、抗SAタンパク質又は抗c-myc(それぞれ1:5000及び1:50希釈)抗体を含有する1% FCSで補足されたPBS-FCSに再懸濁させた。FITC標識ヤギ抗マウス抗体と共にインキュベートした後、細胞を、記載されているとおりに(Pouwelsら, 2001)FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson, San Jose, CA)で分析し、又は免疫蛍光顕微鏡で検査した。
染色体slp組換え体のPCR検出
発現ベクターpLPslpA9c、pLPslpA11c、pLPslpA12c及びpLPslpA13cを含有する形質転換体からゲノムDNAを単離した。プライマーA9(フォワード、slpプロモーター特異的: 5’-CTTGCTATTTCTTGAAGAG-3’: 配列番号24)及びプライマーCMYCINT(リバース、c-mycインサート特異的: 5’-GCGTTTAAATCTTCTTCTGAA-3’: 配列番号25)ならびに鋳型としての15ngの染色体DNAを使用して、標準的な方法に従いPCRを行った。また、プライマーのポリメラーゼ停止媒介連結(Polymerase Halt-mediated Linkage Of Primers、すなわちPHLOP)事象による、結果の誤解釈を避けるために、生理的に適切なモル比(染色体DNA:plDNAの比は1:0.3、1:3、1:30及び1:300)で精製pLPslpA12c DNAと混合された野生型ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)から得られた精製染色体DNAを使用してPCRを行った。
末端切断型SAN断片の構築、精製及び機能分析
C末端切断型SANペプチドをコードする3つのDNA断片を、鋳型としてpBK1(Bootら, 1993)を使用するPCRにより増幅した。プライマーCEA1(5’-GGGGGGATCCGGTACCGCTACTACTATTAACGCAAGTTC-3’, フォワード: 配列番号26)を、SAN2の増幅にはプライマーSANA1(5’-CCCCGAATTCAAGCTTTTATTAGT-ATACGTTTGCAATTGAAACATTAG-3’, リバース: 配列番号27)と共に、SAN4の増幅にはSANA2(5’-CCCCAAGCTTTTATTATGAAGCAACACCGTTTTGGTC-3’, リバース: 配列番号28)と共に、そしてSAN6の増幅にはSANA3(5’-CCCCAAGCTTTTATTAACCAAGGGTAACAGTCTTACC-3’, リバース: 配列番号29)と共に使用した。3つのN末端切断型ペプチドをコードする断片を、SAN3にはプライマーSANB1(5’-GGGGGGATCCGGTACCAAAGTTAAGT-TAGACCAAAACGGTG-3’: 配列番号30)を、SAN5にはSANB2(5’-GGGGGGATCCGGTACCC-TT-ACTAATGTTTCAATTGCAAACG-3’:配列番号31)を、そしてSAN7にはSANB3(5’-GGGGGG-ATCCGGTACCTCAGCTAACTCAAATGTAAAATT-3’: 配列番号32)をそれらの3つすべてについてプライマーSAN1(5’CCCCGAATTCAAGCTTTTATTAAATTC-TCTTGCTTAGCTGGGCTAC-3’, リバース: 配列番号33)と組合せて使用し同じ鋳型を使用して増幅した。該断片をpGEM-T内にクローニングし、配列決定した。SAN2、SAN3、SAN4、SAN5、SAN6及びSAN7をコードする断片をBamHI-HindIII断片として切り出し、N末端の6個のヒスチジンタグとインフレームでベクターpQE30ΔXN(Smitら, 2001)内に導入した。遺伝子断片の発現及び該遺伝子産物の精製を、記載されているとおり(Smitら, 2001)に行った。該末端切断型SANペプチドの機能分析は、50 mM Tris-HCl(pH 7.5)に対するサンプル(500μg/ml)の透析ならびにそれに続くSDS-PAGE及びウエスタン分析よりなるものであった。
DNA操作、タンパク質分析
DNA操作及びタンパク質分析を標準的な方法(Laemmli, 1970; Sambrookら, 1989)に従い行った。公表されている方法(Kokら, 1984; Posnoら, 1991)に従い、プラスミドDNAをラクトコッカス(Lactococcus)/ラクトバシラス(Lactobacillus)から単離した。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を使用して、ゲノムDNAをラクトバシラスから単離した(Towner, 1991)。ラクトバシラス・ラクチス(L. lactis)、ラクトバシラス・カゼイ(L. casei)及びラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)の形質転換を、公表されている方法(Kokら, 1984; Posnoら, 1991; Walkerら, 1996)に従い行った。SA-タンパク質のタンパク質分解処理を、既に記載されているとおり(Smitら, 2001)に行った。
ワクチンの製造及び免疫化
組換えラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)S層タンパク質が該挿入c-mycエピトープに対する免疫応答を誘導する能力を、c-mycが環境に露出している突然変異Sタンパク質SA12c、及びc-mycがS層内に埋もれている突然変異Sタンパク質SA9cに関して評価した。雌C57B1/6及びBalb/cマウスを3週の免疫間隔で週3回免疫した。リン酸緩衝食塩水(pH7)中又はフロイント不完全アジュバント(Difco Laboratores)中の精製突然変異Sタンパク質(25〜100g/用量の範囲)を腹腔内投与した。初回免疫の14及び28日後ならびに追加免疫の7及び14日後に血清サンプルを集めた。プローブとして精製SHA9c、SHA12c及びSHA10 タンパク質を、陽性対照として精製cmyc含有組換えタンパク質(CD81-cmyc)を使用するELISAにおいて、抗体の誘導を測定した。結果は、挿入された抗原を含有する組換えラクトバシラス・アシドフィルス(L.acidophilus)S層タンパク質が該タンパク質自体(表2、SA10に対するすべてのSHAタンパク質の陽性応答)及び該挿入抗原(表2、CD81-cmycに対する陽性応答)の両方に対する免疫応答を誘導しうることを示している。
Figure 2005528085
タンパク質(50μl)を0〜10μg/mlの濃度で4℃のプラスチックウェル上にコートし、脱脂乳での前処理の後、抗cmyc抗血清(Pharmingen)と共にインキュベートした。組換えタンパク質CD81-cmycは陽性対照として使用した。
もう1つの実験においては、SA12c又はSHA9cを発現するラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)がc-mycエピトープに対する抗体を誘導する能力を測定することが可能である。リン酸緩衝食塩水(pH7)中又はフロイント不完全アジュバント(Difco Laboratores)中の100gの死んだ組換えラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)を250lの容量で4週の免疫間隔で2回、腹腔内投与する。ついで初回免疫の14及び28日後ならびに追加免疫の7及び14日後に血清サンプルを集めた。プローブとして精製SHA9cタンパク質を、そして精製c-mycを使用するELISAにおいて、抗体の誘導を測定した。これは、挿入抗原と共にSタンパク質を含有する組換えラクトバシラスがワクチン運搬体として使用されうることを示しうる。
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配列の簡潔な説明
配列番号1は、本発明の表層タンパク質を与えるように修飾された(先行技術の)ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)(成熟)S層タンパク質をコードするDNA配列(slpA遺伝子)である。
配列番号2は配列番号1のアミノ酸配列である。
配列番号3〜17は、本発明の修飾タンパク質を製造するために使用した異種ポリペプチド(配列)の位置を示す(及び該ポリペプチドを含む)アミノ酸配列である。
配列番号18〜33は、本発明のタンパク質を構築するために使用したプライマーである。
図1.(A)リンカー挿入突然変異誘発及び大腸菌(E. coli)発現ベクター構築物。リンカー挿入のために選択される部位が、太い垂直の矢印で示されている。リンカー挿入位置についての詳細は表1を参照されたい。 図1. (B)ラクトバシラス(Lactobacillus)ベクター構築物。プロモーター配列が右向き矢印で示されており、ステムループは転写ターミネーター配列の存在を示す。黒色の棒線は、成熟SA-タンパク質をコードするslpA配列を示し、灰色の棒線はシグナル配列を示す。制限部位は以下のとおりに略称されている:B, BamHI; K, KpnI; P, PstI; Bs, BstEII; H, HindIII, Nc, NcoI; N, NotI; X, XhoI, S, SalI; Bg, BglII; E, EcoRI。 図2.大腸菌(E. coli)から精製されたSA-タンパク質突然変異体のSDS-PAGE分析。透析及び遠心分離により得られた全(T)画分、ペレット(P)画分及び上清(S)画分。各パネルの上方の番号は突然変異体の番号を表す。 図3.野生型ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)(レーン1)ならびに突然変異体SA-タンパク質SA9c、SA11c、SA12c及びSA13cを産生する形質転換体(レーン2〜5)から得られた表面タンパク質抽出物のSDS-PAGE及びウエスタン分析。上のパネルは、クーマシー染色されたSDS-PAAゲルを示し、中央パネルは抗SA-タンパク質でのウエスタン分析を示し、下のパネルは抗c-mycでのウエスタン分析を示す。矢印はSA-タンパク質(43kDa)を示し、対照タンパク質のMrが左端に記載されている。 図4.フローサイトメトリーを使用した、ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)形質転換体の細胞表面におけるc-mycの検出。細胞をマウスモノクローナル抗c-myc抗体でコートし、ついでヤギ抗マウスFITC結合抗体で蛍光標識した。SA9c、SA11c、SA12c及びSA13cを産生するラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)のフルオログラムがそれぞれ9c、11c、12c及び13cで示されている。インセットは陰性対照(野生型ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus))を示す。 図5.SAN及び4つのN又はC末端切断型SANペプチドのウエスタン分析。ペプチドをSDS-PAGEにより分離し、抗his抗体で検出した。SANのオリゴマー及びSAN2、SAN4、SAN6及びSAN7の二量体ペプチドが矢印で示されている(それぞれレーン1〜5)。対照タンパク質のMrが右端に示されている。 図6.SA-タンパク質単量体及びラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)S層の推定構造組織。(A)1つの反復単位と周囲の単位との接触点が矢印で示されており、2つの形態学的サブドメイン(それぞれ黒及び黒陰影)間の推定境界が点線で示されている。(B)S層構造を形成する反復単位の概観。反復単位及びサブドメインが(A)と同様に示されている。(C)SANドメイン及びSACドメインならびに2つの推定SANサブドメインを示す1つのSA-タンパク質単量体の概要図。(D)ラクトバシラス・アシドフィルス(L. acidophilus)の細胞壁及びS層の断面図。
【配列表】
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Claims (31)

  1. 異種ポリペプチドの内部挿入を含む修飾を有する修飾細菌表層(S層)タンパク質。
  2. (a)未修飾タンパク質が、グラム陽性もしくは非水生細菌、場合によっては乳酸菌もしくはLactobacillus属に由来する、及び/又は
    (b)異種ポリペプチドが機能的ポリペプチドもしくは目的とするポリペプチド、場合によっては結合性もしくは標的化タンパク質(例えば、抗原、抗体又はそれらの一部)である、請求項1記載のタンパク質。
  3. (c)タンパク質が未修飾S層タンパク質の完全長配列のほとんどを保有する、
    (d)ポリペプチドが、CもしくはN末端から少なくとも5アミノ酸の内部位置に挿入されている、及び/又は
    (e)修飾タンパク質が40〜70kDaのサイズを有する、請求項1又は2記載のタンパク質。
  4. (f)主として塩基性もしくは疎水性である結晶化もしくはC末端ドメインを有する、
    (g)主として親水性であるN末端ドメインを有する、又は
    (h)疎水性領域及び親水性領域を交互に有する、
    前記請求項のいずれか1項記載のタンパク質。
  5. 異種ポリペプチドが、
    (i)細胞表面上に露出又は存在するように、
    (j)表層又は細胞壁に存在するように、
    (k)外部タンパク質分解プロセシングから保護される又は外部抗体により認識も結合もされないように、タンパク質内の位置に挿入されている、前記請求項のいずれか1項記載のタンパク質。
  6. 修飾又は未修飾タンパク質が、
    (l)結晶化し、場合によっては斜格子(例えば、p1又はp2対称)に結晶化する、
    (m)細胞壁アンカードメインを有する、
    (n)少なくとも7のpIを有する、及び/又は
    (o)主として塩基性である、前記請求項のいずれか1項記載のタンパク質。
  7. ポリペプチドが、疾患を引き起こす抗原又は疾患に特異的である抗原を含み、場合によっては、抗体により認識されうる抗原である、又は嫌気性細菌、場合によってはClostridium属由来の抗原の全部もしくは一部である、前記請求項のいずれか1項記載のタンパク質。
  8. (未修飾形態においては)Lactobacillus acidophilus、crispatus、helveticus、amylovorus又はgallinarumに由来する、前記請求項のいずれか1項記載のタンパク質。
  9. 細菌表層(S層)タンパク質の断片であって、
    a)N末端断片、又は他のそのような断片と二量体を若しくは2つの他のそのような断片と三量体を形成しうる断片である、
    b)もう1つのそのような断片と二量体を形成する能力を有し、
    (i)免疫優性又は露出ループ領域を含み、20〜200アミノ酸長であるか、又は
    (ii)全免疫優性又は露出ループ領域を含まず、20〜155アミノ酸長である、前記断片。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  11. 請求項10記載のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
  12. 請求項11記載のベクターを含んでなる、又は請求項11記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
  13. 請求項1〜9のいずれか1項記載の表層タンパク質(又は断片)を発現する細菌。
  14. 乳酸菌、場合によってはLactobacillus属細菌、好ましくはL. plantarum、L. acidophilus又はL. caseiである、請求項13記載の細菌。
  15. 異種表層(S層)タンパク質を発現するように修飾された(L. casei又はBacillus属以外の)修飾細菌。
  16. 通常は、あるいは野生型又は未修飾形態では表層を有さない、請求項15記載の細菌。
  17. Lactobacillus属の細胞である、及び/又はS層がそれ自身の元の細胞壁アンカーを有する、請求項15又は16記載の修飾細菌。
  18. L. caseiのようなLactobacillus属細菌細胞である、及び/又はS層タンパク質がL. acidophilusのようなLactobacillus属細菌に由来する、請求項15〜17のいずれか1項記載の細菌。
  19. L. crispatus由来ではない、又はコラーゲン結合性タンパク質ではない細菌表層(S層)タンパク質を発現するL. casei細菌細胞。
  20. S層タンパク質がL. acidophilusからのものである、又はL. acidophilusに由来する、請求項19記載のL. casei細胞。
  21. 異種の又は修飾された表層(S層)タンパク質を唯一発現するか、あるいはそれを均一に発現する修飾細菌。
  22. 細菌が、異種S層タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有し、場合によっては、異種S層タンパク質をコードするポリヌクレオチドがゲノム内に組込まれている、及び/又は、通常の若しくは野生型のS層タンパク質をコードするポリヌクレオチドがサイレント状態にされているか、置換されているか、非作動化されているか、又は発現されないようにされている、請求項21記載の細菌。
  23. 異種又は修飾S層タンパク質が、細菌細胞により発現される唯一の又はたった1つのS層タンパク質である、及び/又は、細胞が野生型S層タンパク質を全く発現しない、請求項22又は23記載の細菌。
  24. S層タンパク質が細胞壁の表面に存在する、及び/又は、多数のS層タンパク質がS層を形成する、請求項22〜24のいずれか1項記載の細菌。
  25. 請求項13〜24のいずれか1項記載の細菌を含んでなるワクチン。
  26. 経口又は鼻腔内ワクチンである、及び/又は、さらにアジュバントを含む、請求項25記載のワクチン。
  27. 複数の細菌表層タンパク質を含んでなり、それらのうちの少なくとも1つが請求項1〜8のいずれか1項記載の修飾タンパク質であるシート又は(場合によっては結晶性)単層又は二次元アレイ。
  28. 請求項27記載のシート、単層又はアレイを含んでなる固体表面、液-気界面、脂質フィルム、リポソーム又は溶液。
  29. 1以上の(巨大)分子、例えば酵素、抗体もしくは他の結合性分子、受容体、抗原又はリガンドが結合する、請求項28記載の固体表面。
  30. Sタンパク質の層を含んでなる固体表面であって、Sタンパク質のうちの少なくとも複数が、表面と機能分子の層との間に挟まれた請求項1〜8のいずれか1項記載の修飾タンパク質である、前記固体表面。
  31. 請求項27記載のシート、層もしくはアレイ又は請求項28〜30のいずれか1項記載の表面を含んでなるセンサー、分子ふるい又はイオントラップ。
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