JP2005522188A - バクテリア内での遺伝子組み換え体蛋白質の分泌を促進するためのリーダー・ペプチド及びその単離方法 - Google Patents

バクテリア内での遺伝子組み換え体蛋白質の分泌を促進するためのリーダー・ペプチド及びその単離方法 Download PDF

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Abstract

本発明はバクテリア細胞質から異種蛋白質を直接排出させることができるリーダー・ペプチドを単離する方法を提供する。この方法は急速な排出を行い、従って寿命の短いレポーター蛋白質が細胞質内で分解するのを防ぐことができる配列に関して、リーダー・ペプチドと推定されるもの、あるいはリーダー・ペプチド突然変異体のライブラリーをスクリーニングする手順を含んでいる。この手順で確認された突然変異体リーダー・ペプチドは寿命の短いレポータ蛋白質だけではなく、その他の安定した寿命の長い蛋白質についてもかなり高い安定状態レベルの排出をもたらすことが示されている。これらのリーダー・ペプチドは蛋白質分泌を指示し強化させるために用いることができる。本発明はさらに、Tat経路を介して、細胞質によって折りたたまれた蛋白質を排出させるための方法を開示している。ジスルフィド結合を有する蛋白質は最初、適切な酸化性突然変異体株の細胞質内で折りたたまれる。こうした細胞質によって事前に折りたたまれたジスルフィド結合を有する蛋白質はTat経路を介して排出される。

Description

本発明は一般的には遺伝子組み換え技術及び蛋白質分泌の分野に関するものである。より具体的には、本発明はバクテリア内での遺伝子組み換え体蛋白質の分泌を促進するためのリーダー・ペプチドの技術に関するものである。
本願は、George Georgiou及びMatthew DeLisaの名義で『バクテリア内での遺伝子組み換え体蛋白質の分泌を促進するためのリーダー・ペプチドの技術』と題され、2001年11月5日に申請された米国仮特許出願第60/337,452及び2002年8月21日に申請された米国仮特許出願第60/---,---の優先権を主張するものである。上記開示の両方が全体として引用によって本明細書に具体的に組み込まれる。
(関連技術の説明)
細胞質から分泌されるための蛋白質は、リーダー・ペプチドとして知られる通常15個から30個の間のアミノ酸のN末端ペプチド伸長によって合成される。リーダー・ペプチドは、細胞質外位置への排出と同時または直後のいずれかで成熟蛋白質から蛋白質分解的に除去される。
最近の研究結果により、グラム陰性菌内には実質的には4つの蛋白質排出経路があることがわかった(Stuart and Neupert, 2000)。すなわち、一般分泌(Sec)経路(Danese and Silhavy, 1998; Pugsley, 1993)、シグナル認識粒子(SRP)依存経路(Meyer et al., 1982)、最近発見されたYidC依存性経路(Samuelson et al., 2000)、及びツイン・アルギニン転座(Tat)システム(Berks, 1996)である。これら経路のうちの最初の3つを用いて、ポリペプチドは『スレッディング』メカニズムを介して膜を通り抜ける、すなわち、折りたたまれていないポリペプチドは、蛋白質SecY、SecE及びSecGで形成される孔状構造へ挿入され、ATPの加水分解を必要とするプロセスを介して膜を通って引き出される(Schatz and Dobberstein, 1996)。
対照的に、Tat経路を通じて排出された蛋白質は、部分的、または恐らくは完全に折りたたまれた形態で膜を通り抜ける。バクテリアのTatシステムは、植物の葉緑体チラコイド膜の『ΔpH依存』蛋白質取込み経路と密接に関係している(Settles et al., 1997)。Tat経路を通じた排出はATPの加水分解を必要とせず、SecY/E/G孔を通じた通路も関与しない。多くの例で、この経路のための天然の基質は、FeS中心またはモリブドプテリンのような一連の補助因子を得るため、細胞質内で折りたたまれなければならない蛋白質である。しかし、補助因子を含んでいないものの、その他の経路を介して排出されるには余りに迅速に、または余りに緊密に折りたたまれる蛋白質は、それらをTat特異的リーダー・ペプチドと融合することによって細胞質から分泌させることが可能である(Berks, 1996; Berks et al., 2000)。
膜蛋白質TatA、TatB及びTatCは、大腸菌(E. coli)のTatトランスロカーゼにとって不可欠な構成要素である(Sargent et al., 1998; Weiner et al., 1998)。さらに、TatA相同物であるTatEも、不可欠ではないが、転座において役割を有し、他の補助因子の関与も除外することはできない。TatA、TatB及びTatCのすべてが、内膜を細胞質と向かい合うC末端領域と一旦つなぐと予想されている不可欠な膜蛋白質である。TatA及びB蛋白質は単一スパンの蛋白質であるが、TatCは6個の膜貫通セグメントを持ち、プレ蛋白のための転座チャネル及びレセプタとして機能するという見解が提案されている(Berks et al., 2000; Bogsch et al., 1998; Chanal et al., 1998)。TatBまたはCのいずれかの突然変異生成は、排出を完全になくす(Bogsch et al., 1998; Sargent et al., 1998; Weiner et al., 1998)。可溶化された大腸菌細胞膜から精製されたTat複合体は、TatABCだけを含んでいた(Bolhuis et al., 2001)。転座複合体のin vitroでの再構成によって、TatABCに対する最小限の必要条件及び損なわれていない膜電位が示された(Yahr and Wickner, 2001)。
リーダー・ペプチドの選択は、従って、特定の蛋白質の排出に用いられる経路が、正しく折りたたまれた機能性蛋白質が産生されるかどうかを決定することができる(Bowden and Georgiou, 1990; Thomas et al., 2001)。Feilmeierら(2000)は、緑色蛍光蛋白質(GFP)をSec特異的リーダー・ペプチドまたはマルトース結合蛋白質(MBP、やはりSec経路を介して排出される)のC末端と融合すると、緑色蛍光蛋白質及びMBP-GFPが細胞膜周辺質(ペリプラズム)へ排出されることを示した。しかし、ペリプラズム内の緑色蛍光蛋白質は非蛍光性であり、分泌された蛋白質は誤って折りたたまれ、従って、緑色蛍光蛋白質の発色団が形成されなかったことを示した。Sec経路を介して排出された蛋白質は折りたたまれずに膜を通り抜けるため、バクテリアの分泌コンパートメント(ペリプラズムのスペース)内の環境は、緑色蛍光蛋白質の折りたたみに有利ではない(Feilmeiner et al., 2000)。対照的に、Tat特異的リーダー・ペプチドを緑色蛍光蛋白質と融合すると、ペリプラズムのスペース内に緑色蛍光蛋白質が集積した。この場合、Tat-GFPプロペプチドは先ず細胞質内で折りたたみが可能であり、その後完全に折りたたまれた蛋白質としてペリプラズムのスペース内に排出された(Santini et al., 2001; Thomas et al., 2001)。しかし、TorA以外のリーダー・ペプチドを用いて、異種蛋白質を大腸菌のペリプラズムのスペースに排出することができるという証拠はない。
蛋白質の折りたたみが行われる細胞コンパートメントは、生物学的に活性な蛋白質の産生に劇的な効果をもたらすことができる。バクテリアの細胞質は、シャペロンのような蛋白質折りたたみ補助因子を数多く含んでおり、新たに合成されるポリペプチドの折りたたみを促進するその蛋白質折りたたみ補助因子の機能と能力は、ATP加水分解によって制御される。対照的に、バクテリアのペリプラズムは比較的少数のシャペロンしか含んでおらず、ATPがそのコンパートメントに存在するという証拠はない。従って、多くの蛋白質はペリプラズム内で折りたたまれることができず、細胞質環境内のみでそれらの生来の状態に到達することができる。細胞質からの折りたたまれた蛋白質の分泌を可能にする唯一の周知の方法は、Tat特異的リーダー・ペプチドとの融合を介するものである。しかし、Tatの排出システムを通った蛋白質の流入は、より広範に用いられているSec経路のそれよりも著しく少ない。結果として、Tat経路を介して排出される蛋白質の集積及び定常産生量は少ない。
従って、先行技術は折りたたまれた蛋白質の細胞質からの効果的な排出を指示する方法が不十分である。本発明は本技術分野における長年のニーズと願望を成就するものである。
(発明の概要)
本発明は、異種蛋白質の排出を指示するリーダー・ペプチドとしてはたらくことができる配列の単離のための方法を提供する。本発明の1つの態様により、蛋白質にTat分泌経路を指示することができるリーダー・ペプチドの単離が可能になる。さらに、本発明は、より一層の蛋白質排出を可能にするリーダー・ペプチドの突然変異体を識別するための方法を開示する。
従って、本発明は1つの態様で、バクテリア内でより一層の蛋白質分泌を指示するリーダー・ペプチドを識別する方法を提供する。1つの実施の形態で、本明細書で開示される方法は、迅速な排出を可能にして、その結果寿命の短いレポータ蛋白質が細胞質内で分解するのを防ぐことができる配列のための突然変異されたリーダー・ペプチドのライブラリをスクリーニングするステップを含んでいる。大腸菌ツイン・アルギニン転座(Tat)経路を通じた分泌を仲介するリーダー・ペプチド、そして、バクテリア内のsec経路のようなその他の分泌経路を指示するリーダー・ペプチドは、本明細書に開示される方法によって単離することができる。より一層の排出を可能にする突然変異リーダー・ペプチド配列も開示される。突然変異リーダー・ペプチドは、寿命の短いレポータ蛋白質だけでなく、その他の安定した長命な蛋白質に対しても、著しく高い定常レベルの排出を付与することが示される。
本発明の1つの態様で、それだけに限られるものではないが、ツイン・アルギニン転座(TAT)経路及びsec経路などの経路を通じた蛋白質排出の増大を指示するリーダー・ペプチドを識別する方法が提供される。そのような方法は、突然変異されたリーダー・ペプチドを、短命のレポータ蛋白質をコードする遺伝子の上流に位置させる発現カセットを構築するステップを含んでもよい。上記短命のレポータ蛋白質は、細胞質分解配列に、レポータ蛋白質をコードする遺伝子を取り付けることによって産生することができる。得られた発現カセットを次にバクテリア内で発現させ、そのバクテリア内でのレポータ蛋白質発現を測定することができる。変異されたリーダー・ペプチドは、バクテリア内で蛋白質排出の増大を指示するリーダー・ペプチドで構成されるレポータ蛋白質発現の増大を示す細胞内で発現した。上記方法から識別された代表的なリーダー・ペプチドは配列識別番号120−136などである。
本発明の別の態様で、それだけに限られるものではないが、Tat経路及びsec経路などの経路を通じたポリペプチド排出を増大させる方法が提供される。この方法には、本明細書で開示される方法で識別された変異されたリーダー・ペプチドを、対象となる異種ポリペプチドをコードする遺伝子の上流に位置させる発現カセットを発現させるステップを含んでいる。
本発明のさらに別の態様で、それだけに限られるものではないが、Tat経路及びsec経路などの経路を通じた蛋白質排出を抑制または増強する化合物をスクリーニングする方法が提供される。この方法は、本明細書で開示される方法で識別された変異されたリーダー・ペプチドを、短命のレポータ蛋白質をコードする遺伝子の上流に位置させる発現カセットを最初に構築するステップを含んでいてもよい。上記短命のレポータ蛋白質は、細胞質分解配列を、レポータ蛋白質をコードする遺伝子に取り付けることによって産生することができる。得られた発現カセットを次にバクテリア内で発現させ、そのバクテリア内でのレポータ蛋白質発現が、候補となる化合物の存在下または存在しない状態で測定される。候補となる化合物の存在下で測定されたレポータ蛋白質発現が増大すれば、その候補化合物は蛋白質排出を増強することを示し、一方、候補化合物の存在下で測定されたレポータ蛋白質発現が減少すれば、その候補化合物は蛋白質排出を抑制することを示す。
本発明のさらに別の態様で、バクテリア細胞内で多数のジスルフィド結合を含んでいる溶解性で生物学的に活性な異種ポリペプチドを産生するための方法が提供される。その方法は、ツイン・アルギニン転座経路を通じた蛋白質排出を指示するリーダー・ペプチドを、異種ポリペプチドをコードする遺伝子の上流に位置させる発現カセットを構成するステップを含んでもよい。次にその異種ポリペプチドは、酸化性細胞質を有するバクテリア内で発現する。
本発明のその他及び別の形態、特徴及び利点は現段階で好ましい本発明の実施の形態に関する以下の説明から明らかになるであろう。これらの実施の形態は開示の目的で提供されるものである。
本発明は、バクテリア内で増強された蛋白質分泌を指定するリーダー・ペプチドを識別、利用する方法を提供する。商業的利益をもたらす多くの蛋白質が、バクテリア内での分泌という形で産生されている。しかしながら、真核生物由来の多くの抗体断片及びいくつかの酵素など多くの蛋白質は、バクテリアの主要な分泌経路であるsec経路を通って効果的に排出されることができない。
バクテリア細胞質からの蛋白質の転座のための別の経路は『TAT』(ツイン・アルギニン転座)経路と呼ばれる。蛋白質がsec機構あるいはTAT経路を指示されるかどうかは、ポリペプチド鎖の最初の部分に位置する通常15−30残基のアミノ酸伸長であるリーダー・ペプチドの性質のみに依存する。リーダー・ペプチドは3つの別個の領域:(1)アミノ末端n領域、(2)疎水性コアまたはh領域、及び(3)C末端領域から成る。
植物及び原核生物TAT特異的リーダー・ペプチドの両方のホールマークは、特徴的で、保存される(S/T)-R-R-x-F-L-K(配列識別番号:1)配列モチーフの存在である。この配列モチーフは、周知で予想されているTAT基質のリーダー・ペプチド内のn領域/h境界に位置する(Berks, 1996)。シグナル・ペプチド内のいずれのアルギニン残基の突然変異も、蛋白質転座の効率を著しく減少させる(Cristobal et al., 1999)。
圧倒的に最も広く用いられるバクテリア内排出経路であるSec経路に特異的なリーダー・ペプチドと比較すると、TAT特異的リーダー・ペプチドは、n領域が伸長されて、c領域により多くの塩基性残基を持つため、平均して14アミノ酸長くなっている(Cristobal et al., 1999)。しかし、TAT特異的リーダー・ペプチドの疎水性h領域は、グリシン及びスレオニン残基の出現がより多いために著しく短い。
コムギpre-23K及びpre-Hcf136のツイン・アルギニン(RR)モチーフは、チラコイドTat経路による向標に不可欠であり、このモチーフが恐らくはTATシグナルの中心的な特性である。ツイン・アルギニン・モチーフは、TAT特異的向標シグナルにおける唯一の重要な決定基ではなく、このモチーフの2または3残基後の別の疎水性残基もきわめて重要であると考えられる。
バクテリアのツイン・アルギニン・シグナル・ペプチドはチラコイドTATシグナルと類似しており、植物チラコイドへのTAT依存性向標を高い効率で指示することができる。しかし、バクテリアのシグナル・ペプチドの大部分は、特別な機能を含んでいるツイン・アルギニン・モチーフに加えて、保存配列要素を含んでいる。ツイン・アルギニン・モチーフ後の第2位置のフェニルアラニンに対しては重いバイアスがあり、シグナルの多くは第4位置にリジンを含んでいる。周知のチラコイド・ツイン・アルギニン・シグナルのうち、この位置にフェニルアラニンを含むものはなく、1つだけ(アラビドプシス P29)がツイン・アルギニン・モチーフ後の第4残基としてリジンを含んでいる。これら高度に保存された特性の正確な役割は不明であり、フェニルアラニン残基はロイシンによって置換可能であるが、アラニンによる置換は過度の効果を引き起こす。これは、フェニルアラニンの側鎖ではなく、疎水性が重要な決定基であり得ることを示す。同様に、リジン残基の置換は排出を妨げない(Robinson and Bolhuis, 2001)。
TATシステムを通じて排出される蛋白質は先ず細胞質内でその天然の形態に折りたたまれ、その後細胞膜を通って排出される。細胞質内で既に折りたたまれている蛋白質を排出する能力は、いくつかの理由から蛋白質の商業生産にとってきわめて望ましい。第1に、合成完了後にきわめて迅速に折りたたまれる蛋白質は、より一般的なsec排出経路から分泌されることがない。第2に、バクテリアの細胞質は、新生ポリペプチドがその天然の形態を得るのを支援できる折りたたみ補助因子の完全な補体を含んでいる。対照的に、バクテリアの分泌コンパートメントは、シャペロンやフォルダーゼのような折りたたみ補助因子を殆ど含んでいない。従って、多くの蛋白質の産生にとって、先ず折りたたみが細胞質内で行われ、次にTATシステムを通じてペリプラズムのスペースへ排出されることが好ましい。第3に、補助因子の獲得は、細胞質内で折りたたみと同時に起きなければならない。結果として、補助因子を含んでいる蛋白質は、TAT経路を通じて分泌されなければならない。
蛋白質分泌、特にTAT排出経路を用いる上での蛋白質の商業生産に関する制限は、この方法で排出することができる蛋白質の量が少ないことである。すなわち、TATシステムを通じた蛋白質の全流量は、sec経路のそれよりも大幅に少ない。
現在のところ、遺伝子組み換え蛋白質のペリプラズム分泌の増大をスクリーニングするために用いることができる信頼性の高い技術はなく、最適化されたTAT特異的リーダー・ペプチドもない。しかし、本明細書で開示される方法から得られる結果は、野生型または天然のツイン・アルギニン・リーダー配列で通常見られるゆっくりした通過速度を回避することが可能な最適化されたリーダー・ペプチドの特徴づけにつながるであろう。本発明は、TAT経路を通じた適切で効果的な排出のためのリーダー配列の最小必要条件に関する完全で体系的な判定も可能にする。さらに、本明細書で開示される方法によって、sec経路のようなその他の経路を通じた蛋白質分泌の増強を仲介するリーダー・ペプチドを識別することもできる。
従って、本発明は1つの態様で、突然変異させたTAT特異的リーダー・ペプチドの候補を、寿命の短いレポータ蛋白質をコードする遺伝子の上流に置く発現カセットを構成することによって、ツイン・アルギニン転座またはTAT経路を通じた蛋白質排出の増大を指示するリーダー・ペプチドを識別する方法を提供する。そのような短命レポータ蛋白質は、細胞質から排出されたレポータ蛋白質分子と比較すると、細胞質内で半減期の減少を示す。その短命レポータ蛋白質は、例えば、細胞質分解配列を、レポータ蛋白質をコードする遺伝子に取り付けることによって産生可能である。一般に、突然変異させたリーダー・ペプチドは、ランダム突然変異生成、変異性PCR(エラー・プローンPCR)及び/又はサイト指定突然変異生成によって生成することができる。その後、得られた発現カセットをバクテリア内で発現し、レポータ蛋白質の発現を測定することができる。レポータ蛋白質発現の増加を示す細胞内で発現する突然変異させたTAT特異的リーダー・ペプチドは、TAT経路を通じた蛋白質排出の増加を指示するようなリーダー・ペプチドである。
当業者に十分周知の方法を用いて、適切な転写及び翻訳制御シグナルを含んでいる発現カセットまたはベクターを構成することができる。例えば、Sambrook et al., 200, Molecular Cloning; A Laboratory Manual (2nd Ed.), Cold Spring Harbor Press, N.Y.に述べられている技術を参照されたい。本発明によるベクターは、それだけに限られるものではないが、プラスミド・ベクター及びウイルス・ベクターなどである。
本明細書で開示されるスクリーニングの方法の1つの実施の形態で、緑色蛍光蛋白質(GFP)をレポータ蛋白質として用いることができる。上記方法は、機能性で蛍光性の緑色蛍光蛋白質がTAT特異的リーダー・ペプチドを用いてのみ分泌が可能であるという事実を利用している。しかし、TAT特異的リーダー・ペプチドを介する緑色蛍光蛋白質の排出は効率が低く、かなりの量の前駆体蛋白質(TAT特異的リーダーを有する緑色蛍光蛋白質)の集積が細胞質中で起きる。細胞質緑色蛍光蛋白質の前駆体蛋白質は正しく折りたたまれ、蛍光性である。その結果、細胞は強い蛍光発光を示すが、それは一部には細胞質前駆体によるものであり、一部はペリプラズム中の分泌された成熟緑色蛍光蛋白質によるものである。これら細胞の強い蛍光発光全体が、排出される緑色蛍光蛋白質のより大きな流量を引き起こすリーダー・ペプチド突然変異体の単離を困難にする高いバックグラウンド・シグナルの原因となる。
この問題を回避するため、緑色蛍光レポータ蛋白質の寿命の短い変種を用いることができる。この寿命の短い変種は、バクテリアの細胞質内で急速に分解される。SsrA配列AANDENYALAA(配列識別番号:119)の、例えば、緑色蛍光蛋白質のC末端との融合は、その蛋白質をClpXAPプロテアーゼ・システムによる分解に向標させる(Karzai et al., 2000)。その結果、細胞質中の緑色蛍光蛋白質の半減期は数時間であったのが、10分未満に減少し、細胞の蛍光発光全体が著しく減少する。
短命な緑色蛍光蛋白質が野生型TAT特異的リーダー・ペプチドと融合された場合、その蛋白質の大半が細胞質から排出される前に分解するため、細胞の蛍光発光は低レベルであることが示された。TAT特異的リーダー・ペプチド内の突然変異は、短命緑色蛍光蛋白質が細胞質内で分解することを防ぐ、より迅速でより効果的な排出を引き起こすことができると考えられた。その結果、折りたたまれた緑色蛍光蛋白質がペリプラズムに集積し、より強い細胞蛍光発光につながるであろう。従って、突然変異体TAT特異的リーダー・ペプチドのライブラリは、ランダム突然変異生成(変異性PCR)またはヌクレオチド指定突然変異生成のいずれかによって構成された。その後、これらの突然変異体リーダー・ペプチドは、蛋白質分泌の増強を仲介し、短命緑色蛍光蛋白質の細胞質内での分解を防ぎ、それによってバクテリアの蛍光発光増大につながる能力をスクリーニングされた。その後、より強い蛍光発光を示すクローンがフロー・サイトメトリーによって単離された。
本発明の1つの具体的な特徴は、本明細書に述べられる遺伝子スクリーニングによって、活性なレポータ蛋白質がペリプラズムにのみ集積することである。突然変異させたリーダー・ペプチドは、折りたたまれた緑色蛍光蛋白質を、蛍光蛋白質が活性を保っているペリプラズムへ導く。しかし、SsrA C末端分解ペプチドが存在するために、実質的にすべての細胞質緑色蛍光蛋白質が分解する。得られる細胞は、ペリプラズムのみに存在する緑色蛍光蛋白質のためにハロー型の形状で緑色に発光する。対照的に、SsrA配列を欠失する緑色蛍光蛋白質のTAT依存排出は、細胞質とペリプラズムの両方で緑色蛍光蛋白質の集積を引き起こし、GFP蛍光発光の細胞に基づくスクリーニングを不可能にするかなりの量のバックグラウンド・シグナルを生じさせる。
緑色蛍光蛋白質に加えて、その他種々のレポータ蛋白質を本発明による方法で用いることができる。本技術分野の通常の技能を有する当業者であれば、ペリプラズムでの高レベルのレポータ蛋白質発現を生じさせる突然変異体リーダー・ペプチドを容易に多くの方法で単離することができるであろう。1つの例で、そのレポータが抗生物質抵抗酵素(例えば、β-ラクタマーゼ)である場合、突然変異体リーダー・ペプチドは抗生物質の濃度を上げて選択することによって単離することができる。別の例で、そのレポータが毒素に対する免疫蛋白質である場合(例えば、コリシン)、突然変異体リーダー・ペプチドは毒素に対する抵抗性を選択することによって単離することができる。別の例で、そのレポータ蛋白質がマルトース結合蛋白質のような運搬体蛋白質である場合、運搬体蛋白質の排出は、染色体突然変異体を補完するために用いられる。別の実施例で、レポータ酵素(例えば、アルカリ・ホスファターゼ)の染色体または蛍光発生的な基質が用いられ、バクテリアのペリプラズム内で高レベルの酵素を産生するコロニーを記録することができる。
ここに述べられたスクリーニング・システムに関する数多くの研究や産業的利用がある。これらの研究や産業的利用の例には、必ずしもそれだけに限定されるものではないが、以下のものがある。
(1)蛋白質のバイオ生成:TAT経路を介したいくつかの蛋白質の分泌は、比較的低速で非効率なプロセスであると報告されている。従って、TAT経路を高価値な組み換え体蛋白質生成物の高レベル産生のための実現可能なプラットフォームにするために、改良された排出のニーズを認識しなければならない。本明細書に概要が述べられている遺伝子スクリーニングを用いて、最適化されたTATリーダー・ペプチドが単離され、対象となる組み換え体蛋白質を迅速に排出する能力がテストされている。従って、その組み換え体蛋白質は、機能性及び溶解性の形状でペリプラズムのスペースまたは成長媒体へ分泌され、封入体に関連する問題を緩和し、再生を単純化する。さらに、蛋白質が折りたたまれ、TAT依存排出の前に細胞質内に集積するため、この排出システムによって、ホスト細胞内での活性生成物の高レベルな集積が生じやすく、従って、組み換え体発現システムの効率を最大限にする。
(2)高生産性スクリーニング・プラットフォーム:本発明は、組み合わせライブラリ・スクリーニング及び蛋白質工学の用途のためのTAT依存排出を利用する技術の開発に適用することができる。例えば、ジスルフィド結合を含んでいる蛋白質(例えば、抗体、真核生物酵素)の改良された細胞質折りたたみは、ペリプラズムがFACS系またはファージ系スクリーニング・プロトコルによって容易にアクセス可能な位置で、そのペリプラズムに対象となる折りたたまれた蛋白質を排出する最適化されたリーダー・ペプチドと融合することによって評価が可能である。ペリプラズムで検出される活性蛋白質の量は、細胞質内での折りたたみ効率の量的指標になるであろう。
(3)薬剤探索プログラム:いくつかのTAT蛋白質の相同物が、結核マイコバクテリウム及びヘリコバクター・ピロリ、そしてシュードモナスspのような病原菌で特定されている。これは、この転座システムに属するいくつかの蛋白質が、抗菌剤として可能性のある新しい標的になり得ることを示している。本明細書に概要が述べられているプロセスを用いて、多くの化合物をTAT依存分泌の抑制のためにスクリーニングすることが容易に可能である。さらに、ゲノム・ライブラリまたはゲノムからの遺伝子の無作為欠失に由来する多コピーにおけるいくつかの蛋白質の存在が、このプロセスを用いてテストされ、バクテリア内のTAT分泌プロセスの新規なエンハンサ/サプレッサを識別して、それによって、抗菌薬開発のためのより一般的な方法を提供することができる。
バクテリア内で蛋白質分泌の増強を指示するリーダー・ペプチドを識別、利用する本発明は、TAT経路に限られるものではない。本明細書で開示される方法は、上に述べられたその他の分泌経路を通じた蛋白質分泌の増強を指示するリーダー・ペプチドを識別するために同様に適用される。グラム陰性バクテリアのペリプラズムのスペースへの蛋白質転座を促進するシグナル配列は、当業者に十分周知である。例えば、大腸菌Omp A、Lpp、LamB、MalE、PelB及びStIIリーダー・ペプチド配列は、本明細書で用いられるようなバクテリア細胞内での蛋白質分泌を促進するためのシグナル配列として多くの用途に用いられて成果を挙げており、すべてが本発明による方法を実施する上で有用であると考えられる。本技術分野の通常の技能を有する当業者であれば、本技術分野で十分周知の手順を容易に用いて、突然変異させたリーダー配列、及びこれら突然変異させたリーダー・ペプチドを組み込んだ発現カセットのライブラリを構成して、これらのリーダー・ペプチドを本明細書で述べられる方法に従ってスクリーニングすることができる。
本発明は、ジスルフィド結合を有する部分的または完全に折りたたまれた細胞質蛋白質の分泌にも関するものである。ジスルフィド結合の形成は、医薬及び応用生物学産業において重要な多くの真核生物蛋白質の正しい折りたたみと安定性にとって不可欠である。正しい折りたたみは、システイン−システイン連鎖の形成、及びその蛋白質の酵素的に活性な構造への引き続いての安定化に依存する。しかし、多くの研究によって、複数のジスルフィド結合を含んでいる蛋白質は、バクテリア内で活性状態で発現できないことが示されている。ジスルフィド結合の形成は、チオレドキシン・レダクターゼの存在または還元されたグルタチオンによって細胞質の還元環境下で阻害される。
従って、4個以上のジスルフィド結合を持つ技術的に重要な蛋白質の産生は高コストで複雑であり、ジスルフィド結合の形成に好都合な環境を提供するより高等な真核生物での発現、または封入体からの再折りたたみのいずれかに依存しなければならない(Hockney, 1994, Georgiou and Valax, 1996)。例えば、組織プラスミノゲン・アクチベータ(tPA)は、バクテリアの封入体で現在産生されている。通常の手順では、その蛋白質は種々のカオトロピック剤を用いて封入体から放出され、その後還元剤を用いて単離され、再び折りたたまれる。一般に、再折りたたみによって生物学的に活性な物質の産生量は少なくなる。
本明細書で開示される分泌プロセスは、複数のジスルフィド結合を持つ複雑な真核生物蛋白質を産生する効率的な方法を提供する。これらのジスルフィド結合は、特定の配向から生じ、天然蛋白質の正しい折りたたみを促進する。細胞内で新生された不適切な配向から生じる複数のジスルフィド結合は、誤った折りたたみ及び生物活性の喪失または欠如につながる。対照的に、本発明によって産生される生物学的に活性なポリペプチドを含んでいる複数のジスルフィド結合は、正しく折りたたまれる。そして、ジスルフィド結合が形成されて、基質及び/又は酵素特性に関して天然の機能的活性を持つ分子につながる三次、及び適切な場合には四次構造が提供される。本明細書で開示される方法によって産生される蛋白質は、ホスト細胞から一旦単離されると、再活性化またはそれに続く処理の必要なしに正しく折りたたまれ、生物学的に活性である。
本明細書で開示される方法によって解決される最も当面の問題は、複数のジスルフィド結合を持つ蛋白質が完全に折りたたまれ、従って、活性な形態でペリプラズムへの排出が現在可能になったことである。複数のジスルフィド結合を含んでいる複雑な蛋白質は、新生ポリペプチドがその天然の構造を得ることを容易にする折りたたみ補助因子の完全な補体の支援を用いて細胞質内に折りたたまれることが可能である。その後、折りたたまれた蛋白質は、機能性及び溶解性の形状でペリプラズムのスペースまたは成長媒体へ分泌され、従って、封入体に関連する問題を緩和し、再生を単純化する。さらに、活性な組み換え体蛋白質が2つのバクテリアのコンパートメント(細胞質及びペリプラズム)に同時に集積し、従来は2つのコンパートメントに同時には集積することができなかった多くの複雑な蛋白質の全産生量がより多くなる。
従って、本発明は、少なくとも1つの生物学的に活性な異種ポリペプチドを細胞内で産生する方法を提供する。ツイン・アルギニン転座経路を通じた蛋白質排出を指示するリーダー・ペプチドは、発現カセット内の異種ポリペプチドをコードする遺伝子の上流に置かれることができる。その発現カセットは細胞内で発現することが可能であり、その細胞内で異種ポリペプチドが生物学的に活性な形状で産生される。一般に、その異種ポリペプチドはバクテリアの細胞から分泌されるか、バクテリアの細胞のペリプラズムまたは培養上澄みから単離可能であるか、あるいは内在性膜蛋白質である。この方法によって産生される異種ポリペプチドは、組織プラスミノゲン・アクチベータ、膵臓トリプシン・インヒビタ、抗体、抗体断片または毒素免疫蛋白質のような哺乳動物のポリペプチドである。異種ポリペプチドは、天然の形態のポリペプチド、突然変異させたポリペプチドまたは切断されたポリペプチドでもよい。
酸化性細胞質を有する細胞を使って、上記の方法によって約2個から約17個のジスルフィド結合を含んでいる異種ポリペプチドを産生することができる。この方法によって、少なくとも1つのジスルフィド結合によって連結されている2個の異種ポリペプチドを産生することもできる。好ましくは、そのリーダー・ペプチドは、配列識別番号:25-46、120-128の配列、または配列識別番号:25-46、120-128のペプチド相同物で構成される。この方法で有用である代表的な細胞は、大腸菌株FA113または大腸菌株DR473のような大腸菌trxB突然変異体、大腸菌gor突然変異体、または、大腸菌trxB gor二重突然変異体などである。
本発明は、機能的活性のためにクローニングされ、調べられた大腸菌からのバイオインフォマティクス的探索によって識別が可能な一連の推定されるTAT特異的リーダー・ペプチドも提供される。従って、本発明は、ツイン・アルギニン転座経路を通じた蛋白質の分泌及び排出を指示する単離されたリーダー・ペプチドも含んでいる。代表的なリーダー・ペプチドは、配列識別番号:25-46、120-128の配列で構成される。さらに、本発明は、配列識別番号:25-46、120-128と相同な単離されたTATリーダー・ペプチドを含んでいる。
本発明は、突然変異させたリーダー・ペプチドを、寿命の短いレポータ蛋白質をコードする遺伝子の上流に置く発現カセットを構成することによって蛋白質排出の増大を指示するリーダー・ペプチドを識別する方法も提供する。その短命レポータ蛋白質は、細胞質分解配列を、そのレポータ蛋白質をコードする遺伝子に取り付けることによって産生可能である。代表的な細胞質分解配列には、配列識別番号:119、PEST、またはLON、clPAP、clPXP、Stsh及びHslUVによって認識される配列などがある。細胞質分解配列はレポータ蛋白質のN末端またはC末端のいずれかに取り付けられる。一般に、用いることができるレポータ蛋白質には、蛍光蛋白質、酵素、運搬体蛋白質、抗生物質抵抗酵素、毒素免疫蛋白質、バクテリオファージ・レセプタ蛋白質、及び抗体などがある。
突然変異させたリーダー・ペプチドは、例えば、ランダム突然変異生成、変異性PCRまたはサイト指定突然変異生成、そして、当業者に周知のその他の方法によって産生することが可能である。その後、得られた発現カセットをバクテリア内で発現させ、レポータ蛋白質の発現を測定することができる。レポータ蛋白質の発現増大を示す細胞内で発現する突然変異させたリーダー・ペプチドは、バクテリア内で蛋白質排出の増大を指示するリーダー・ペプチドを含んでいる。このスクリーニングの方法は、一般分泌(Sec)経路、シグナル認識粒子(SRP)依存性経路、YidC依存性経路またはツイン・アルギニン転座(Tat)経路を通じた蛋白質分泌を指示するリーダー・ペプチドを識別することができる。
本発明の別の態様で、バクテリア内で異種ポリペプチド排出を増大させる方法が提供される。本発明の方法によって識別される変異させたリーダー・ペプチドを、対象となる異種ポリペプチドをコードするコード配列の上流に置く発現カセットが構成される。その後、これらの発現カセットはバクテリア内で発現することができる。
本発明は、バクテリア内で蛋白質排出を抑制または増強する化合物をスクリーニングする方法も提供する。バクテリア内での蛋白質排出を指示するリーダー・ペプチドを、発現カセット内の短命なレポータ蛋白質をコードする遺伝子の上流に位置させることができる。その後、その発現カセットは、バクテリア内でテスト用化合物の存在下または存在しない状態で発現することができる。テスト用化合物の存在下で測定されたレポータ蛋白質発現が増大すれば、その化合物は蛋白質排出を増強することを示し、一方、その化合物の存在下で測定されたレポータ蛋白質発現が減少すれば、その化合物は蛋白質排出を抑制することを示す。短命なレポータ蛋白質の構成及び例は上に述べられている。
本発明は、ツイン・アルギニン転座経路に特異的な突然変異させたリーダー・ペプチドを、短命なレポータ蛋白質をコードするコード配列の上流に置く発現カセットを構成することによってツイン・アルギニン転座経路を通じた蛋白質排出の増大を指示するリーダー・ペプチドを識別する方法も提供する。短命なレポータ蛋白質の構成及び例は上に述べられている。突然変異させたリーダー・ペプチドは、ランダム突然変異生成、変異性PCR又はサイト指定突然変異生成によって生成することができる。その後、得られた発現カセットをバクテリア内で発現させ、レポータ蛋白質の発現を測定することができる。レポータ蛋白質発現の増加を示す細胞内で発現する突然変異させたリーダー・ペプチドは、ツイン・アルギニン転座経路を通じた蛋白質排出の増加を指示するリーダー・ペプチドで構成される。突然変異させたリーダー・ペプチドの例は、配列識別番号:120-128の配列を含んでいる。
本発明の別の態様で、ツイン・アルギニン転座経路を通じた異種ポリペプチド排出を増大させる方法が提供される。本明細書で開示される方法によって識別される変異させたリーダー・ペプチドを、対象となる異種ポリペプチドをコードする遺伝子の上流に置く発現カセットを構成することができる。その後、これらの発現カセットはバクテリア内で発現することができる。突然変異させたリーダー・ペプチドの例は、配列識別番号:120-128の配列を含んでいる。
本発明は、ツイン・アルギニン転座経路を通じて排出を抑制または増強する化合物をスクリーニングする方法も提供する。ツイン・アルギニン転座経路に特異的なリーダー・ペプチドは、発現カセット内で短命なレポータ蛋白質をコードする遺伝子の上流に置かれることができる。その後、その発現カセットは、バクテリア内でテスト用化合物の存在下または存在しない状態で発現することができる。テスト用化合物の存在下で測定されたレポータ蛋白質発現が増大すれば、その化合物は蛋白質排出を増強することを示し、一方、その化合物の存在下で測定されたレポータ蛋白質発現が減少すれば、その化合物はツイン・アルギニン転座経路を通じた蛋白質排出を抑制することを示す。短命なレポータ蛋白質の構成及び例は上に述べられている。
本明細書で用いられるように、『ポリペプチド』または『対象となるポリペプチド』とは、一般に約10個以上のアミノ酸を有するペプチドまたは蛋白質を称する。ポリペプチドが『異種』であるとは、それらが用いられるホスト細胞と異質であることを意味し、例えば、CHO細胞によって産生されるヒト蛋白質、哺乳動物細胞によって産生される酵母菌ポリペプチド、あるいはポリペプチドの本来の供給源ではないヒト細胞株から産生されるヒト・ポリペプチドなどである。対象となるポリペプチドの例には、それだけに限られるものではないが、レニンのような分子、成長ホルモン(ヒト成長ホルモンを含む)、ウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、リポ蛋白質、α1-抗トリプシン、インスリンA鎖、インスリンβ鎖、プロインスリン、トロンボポエチン、卵胞刺激ホルモン、カルシトニン、黄体形成ホルモン、グルカゴン、凝固因子(因子VIIIC、因子IX、組織因子及びフォン・ヴィレブランド因子など)、抗凝固因子(蛋白質C、心房性ナトリウム利尿因子、肺表面活性剤など)、プラスミノゲン活性化因子(ヒトhPAまたはウロキナーゼなど)、哺乳動物トリプシン・インヒビター、脳由来神経栄養成長因子、カリクレイン、CTNF、gp120、抗HER-2、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、哺乳動物膵臓トリプシン・インヒビター、抗体、抗体断片、プロテアーゼ・インヒビター、治療用酵素、リンフォカイン、サイトカイン、成長因子、神経栄養因子、インスリン鎖またはプロインスリン、免疫毒素、ボンベシン、トロンビン、腫瘍壊死因子αまたはβ、エンケファリナーゼ、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)、ミューラー阻害物質、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、マウス・ゴナドトロピン関連ペプチド、微生物蛋白(βラクタマーゼ)、DNA分解酵素、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子(VEGF)、ホルモンまたは成長因子のレセプタ、インテグリン、蛋白質AまたはD、リウマチ因子、神経栄養因子(ニューロトロフィン−3、−4、−5、または−6)、または神経成長因子(NGF-αなど)、カージオトロフィン(心臓肥大因子)(カージオトロフィン−1など)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(αFGF及びβFGFなど)、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子(TGF)(TGF-α、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4またはTGF-β5)、インスリン様成長因子−I及び−II、des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合蛋白質、CD蛋白質(CD-3、CD-4、CD-8及びCD-19)、赤血球生成促進因子、骨誘導因子、骨形成蛋白質(BMP)、インターフェロン(インターフェロンα、β及びγ)、コロニー刺激因子(CSF)(例えば、M-CSF、GM-CSF及びG-CSF)、インターロイキン(IL)(IL-1からIL-10など)、スーパーオキシド・ジスムターゼ、T細胞レセプタ、表面膜蛋白質、崩壊促進因子、AIDSエンベロープの一部のようなウイルス抗原、運搬体蛋白質、ホーミング・レセプタ、アドレシン、調節蛋白質、gp120(IIIb)のような抗原、または上に挙げられた任意のペプチドの誘導体または活性断片などである。ポリペプチドは、天然または突然変異させたポリペプチドでもよく、そのような哺乳動物ポリペプチドの好ましい供給源には、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、オオカミ及び齧歯動物などがあり、ヒト蛋白質が特に好ましい。
以下の実施例は、本発明の種々の実施の形態を説明する目的で提供されるものであり、いかなる意味でも本発明を限定する意図はない。
TAT特異的リーダー・ペプチドのバイオインフォマティクス的探索
推定されるTATリーダー・ペプチドを、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトから入手可能な検索エンジン、Protein-Protein "Blast"を使って見つけた。以下の検索文字列を入力した:SRRRFLK(配列識別番号:2)、SRRXFLX(配列識別番号:3)、TRRXFLX(配列識別番号:4)、SRRXXLK(配列識別番号:5)、SRRXXLA(配列識別番号:6)、TRRXXLK(配列識別番号:7)、TRRXXLA(配列識別番号:8)、SRRXXLT(配列識別番号:9)、SRRXXIK(配列識別番号:10)、SRRXXIA(配列識別番号:11)、SRRXFIX(配列識別番号:12)、SRRXFMK(配列識別番号:13)、SRRXFVK(配列識別番号:14)、SRRXFVA(配列識別番号:15)、SRRQFLK(配列識別番号:16)、RRXFLA(配列識別番号:17)、及びRRXFLK(配列識別番号:18)。短くて、ほぼ正確に一致するものを検索し、その後、ツイン・アルギニンを維持しつつ、蛋白質の最初の50残基以内にそれらの一致が起きているもののみをスクリーニングした。次に、各リーダー・ペプチドの最初の100残基を、Sec経路リーダー・ペプチド及び切断サイトを検出するためのプログラム、『SignalP』によって調べた(Nielsen et al., 1997)。推定されるTATリーダー・ペプチドの最終的なリストを表1に示す。これらのペプチドをクローニングし、TAT経路を通じて、レポータ蛋白質であるGFP-SsrAの分泌を指示するそれらの能力を調べた。
バクテリア菌株及び成長条件:
細胞を常に37℃で、適切な抗生物質を有する固体LB寒天または液体LB培地のいずれかで培養した。クロラムフェニコール(Cm)を50μg/mlの濃度で用いた。菌株XL1-Blue(recA1 endA1 gyrA96 thi-1 hsdR17 supE44 relA1 lac [F'proAB laclqZΔM15 Tn10 (Tet')])(Staratagene)をクローニングの目的のために用いた。発現のため、ハイ・コピーpBAD18-Cmコンストラクトを菌株MC4100-P(MC4100 pcnB1)及びB1LK0-P(MC4100ΔtatC pcnB1)へ形質転換した。
プラスミド及びオリゴヌクレオチド:
初めに、推定される各リーダー・ペプチドDNA配列を、ロー・コピーpBAD33プラスミド(Guzman et al., 1995)に基づいたpKKGS(DeLisa et al., 2002)へサブクローニングした。標準的な方法を用いてDNAを増幅し、Qiagen社のキットをすべてのDNA精製ステップに用いた。各リーダー・ペプチド遺伝子を、Sacl切断サイトに含まれているフォワード・プライマ及びXbal切断サイトに含まれているフォワード・プライマを用いてXL1-BlueゲノムDNAから先ずPCR増幅した。フォワード・プライマは、リーダー・ペプチドの少なくとも最初の18ヌクレオチドを組み込むように設計した。すべてのフォワード・プライマは配列(5'-GCGATGGAGCTCTTAAAGAGGAGAAAGGTC-3'、 配列識別番号:19)を含んでおり、その後望まれる遺伝子からの開始コドン及びリーダー・ペプチド配列が続いた。同様に、すべてのリバース・プライマは配列(5'-GCGATGTCTAGA-3'、配列識別番号:20)を含んでいた。リバース・プライマを、予測されるリーダー・ペプチド切断サイトを越えて厳密に6個のアミノ酸残基がプラスミドに組み込まれるように設計した。その結果生じた58個のプライマを図2及び図3に示す。すべてのPCR生成物をSacI及びXbaIを用いてゲル精製、消化し、最後にpKKGSのSacI及びXbaIサイトへクローニングした。すべてのプラスミド・コンストラクトをシーケンシングによって確認した。
同様のコンストラクトをハイ・コピー・プラスミドpBAD18-Cm(Guzman et al., 1995)を使ってつくった。簡単に述べると、シグナル配列GFP-SsrA融合コンストラクトをSacl及びHindIIIを使ってpBAD33から消化し、pBAD18-Cmの同一のサイトへクローニングした。HybOリーダー・ペプチドの場合、HybO-GFP-SsrAの融合をSacI及びSphIで切断し、pBAD18-Cmへクローニングした。先に述べたように、すべてのプラスミド・コンストラクトをシーケンシングによって確認した。
蛋白質の亜細胞成分の局在化
細胞を5000 x gでの遠心分離によってペレット化し、1mlの細胞分留緩衝液(30 mM Tris-HCl, pH 8.0, 20% (w/v)スクロース、1 mM Na2EDTA)に再懸濁し、そして、25℃で10分間培養した。細胞を再び5000 x gで遠心分離にかけ、上澄みを捨て、そして、そのペレットを133 μlの氷冷5 ml MgSO4に再懸濁した。氷上に10分間置いた後、その細胞を最高速度で遠心分離にかけ、上澄みをペリプラズムのフラクションとして保持した。そのペレットを250μlのPBSに再懸濁し、30秒間超音波処理した。その細胞を最高速度で遠心分離にかけ、上澄みを細胞質のフラクションとして保持した。
ウェスタン・ブロット分析
ウェスタン・ブロット法はChenらによるものとした。一次抗体として以下を用いた:モノクローナル・マウス抗GFP(Clotech)1:5000希釈、モノクローナル・ウサギ抗DsbC(John Joly, Genentechより寄贈)1:10,000希釈、及びモノクローナル・ウサギ抗GroEL(Sigma)1:10,000希釈。二次抗体は、1:10,000ヤギ抗マウスHRP複合体及びヤギ抗ウサギHRP複合体であった。先ず膜を抗GFP及び抗DsbC抗体でプローブし、展開後、TBS/2% SDS/0.7 M βメルカプトエタノールで揮散した。揮散した膜を再ブロックし、抗GroEL抗体でプローブした。
推定されるリーダー・ペプチドのFACSスクリーニング
リーダー・ペプチドGFP-SsrAコンストラクトを発現させるため、それぞれ30個のプラスミドを含んでいるMC4100-P及びB1LK0-Pの1晩(o/n)培養物をLB培地で上に述べたように培養した。単一のコロニーを2mlの培地で一晩培養した。500 mlの各o/n培養物を使って10 mlの培地に播種した。37℃で1時間振盪した後、細胞をアラビノースで最終濃度0.02%へ誘導した。37℃でさらに4時間培養した後、1mlのサンプルを採取し、2500 x gで5分間遠心分離にかけた。細胞ペレットを1mlのPBSに再懸濁した。そのうちの5μlを1mlの新たなPBSに添加し、ベクトン-ディキンソンFACSortによって分析した。
30個の推定リーダー・ペプチドを先に述べたような遺伝子学的スクリーニングでスクリーニングした(Delisa et al., 2002)。この遺伝子学的スクリーニングによって、TAT経路を通じてGFPを指示するリーダー・ペプチドは、tatC細胞(MC4100-P)内で蛍光を発するが、tatC細胞(B1LK0-P)内では蛍光を発しない。それは、tatCがTAT排出に絶対的に必要なためである。対照的に、Sec経路を通じてペリプラズムへのGFPを指示するリーダー・ペプチドは、両方のタイプの細胞で蛍光を発しないだろう。注目すべきは、pBR322レプリコンを含んでいるプラスミド(pBAD18-Cmなど)のコピー数を減少させるpcnB1内での突然変異を含んでいる大腸菌株の利用である。従って、通常はハイ・コピーであるpBAD18-Cmは、ponB1突然変異体で1細胞ごとにおよそ5−10コピーのみ存在する。このシステムは、TAT経路遺伝子学的スクリーニングの利用に最適であることが実証された。
pBAD18-CmコンストラクトのFACS分析を表4に示す(相加平均蛍光値のリスト)。ここで重要なことは、pBAD18-CmコンストラクトのFACSデータによれば、6個のリーダー・ペプチド(BisZ、NapA、NapG、Yael、YgfA及びYggJ)がTAT経路を通じた不確定なGFP排出を提供したのに対して(wt及びtatC突然変異体細胞の両方での低いシグナル)、少なくとも17個(AmiC、DmsA、FdnG、FdoG、FhuD、HyaA、HybA、NrfC、SufI、TorA、WcaM、YacK、YahJ、YdcG、YdhX、YfhG及びYnfE)はTAT経路を通じてGFPを排出可能なことである。5個のコンストラクト(YagT、YcbK、YcdB、YedY及びYnfE)はMC4100-P及びB1LK0-Pの両方できわめて強い蛍光発光の平均値を示した。tatC突然変異体(B1LK0-P)で一部のコンストラクトに見られた、より強い平均蛍光発光シグナルは、高度に蛍光性である細胞の1つの小群からのみの発光を反映しており、その細胞群の大半は非蛍光性であることも注目すべきである。対照的に、tatC細胞(MC4100-P)の高い平均蛍光発光は、細胞群全体にわたる蛍光発光の変化を示したものである。
(表1は大腸菌TAT特異的リーダー・ペプチドを示す。)
Figure 2005522188
*灰色で強調表示されているアミノ酸は、ツイン・アルギニン・コンセンサス・モチーフを構成する。
(表2は29個の各TAT特異的リーダー・ペプチドのforwardプライマ及びその融点を示す。)
Figure 2005522188

Figure 2005522188
(表3は29個のTAT特異的リーダー・ペプチドのリバース・プライマ及びそれらの融点を示す。)
Figure 2005522188

Figure 2005522188
(表4は推定されるリーダー・ペプチドのFACSスクリーニングを示す。)
Figure 2005522188
MC4100-P及びB1LK0-P細胞内のpBAD18-Cmリーダー・ペプチドGFP-SsrAコンストラクトのFACSデータから得た蛍光相加平均値。B1LK0-P細胞のデータは、高度蛍光性細胞の小群を除いたすべての細胞(%細胞で示す)から計算した。
バクテリア菌株及びプラスミドの構成
以下の実施例で用いるすべての菌株及びプラスミドを表5に挙げる。特に断りのない限り、大腸菌株XL1-Blue(recA1 endA1 gyrA96 thi-1 hsdR17 supE44 relA1 lac [F'proAB laclqZΔM15 Tn10 (Tet')])をすべての実験に用いた。大腸菌XL1-Blue tatB及びXL1-Blue tatCをpFAT24(Sargent et al., 1999)及びpFAT166(Bogsch et al., 1998)を用いて、それぞれ確立された手順に従ってつくった(Bogsch et al., 1998)。菌株を好気的に37℃でルリア-ベルターニ(LB)培地で規定どおりに培養し、抗生物質サプリメントを以下の濃度にした:アンピシリン;100 μg ml-1、クロラムフェニコール;25 μg ml-1
以下の実施例で構成されるプラスミドはpBAD33に基づいており(Guzman et al., 1995)、標準的なプロトコルを用いてつくった(Sambrook et al., 2000)。プラスミドpGFPを、GFPmut2変異体(Crameri et al., 2000)をクローニングすることによって、プライマGFPXbaI(5'-GCGATGTCTAGAAGTAAAGGAGAAGAACTTTTCACT-3'、 配列識別番号:112)及びGFPHindIII(5'-GCGATGAAGCTTCTATTTGTATAGTTCATCCAT-3'、配列識別番号:113)を用いて構成した。それによって、716塩基対gfpmut2遺伝子のそれぞれの5'末端及び3'末端にXbal及びHindIIIの独特な制限酵素認識サイトが導入され、この配列をXbal-HindIII消化し、プラスミドDNAへクローニングすることが可能になった。プラスミドpGFPSsrAも同様にプライマGFPXbal及びGFPSsrA(5'-GCGATGAAGCTTGCATGCTTAAGCTGCTAAAGCGTAGTTTTCGTCGTTTGCTGCGTCGACTTTGTATAGTTCATCCATGCC-3'、配列識別番号:114)を用いてつくり、独特なSsrA認識配列を導入した。プラスミドpTorAGFP及びpTorAGFPSsrAは、プライマTorASac1(5'-GCGATGGAATTCGAGCTCTTAAAGAGGAGAAAGGTCATGAACAATAACGATCTCTTTCAG-3'、配列識別番号:115)及びTorAXba1(5'-GCGATGTCTAGAAGCGTCAGTCGCCGCTTGCGCCGC-3'、配列識別番号:116)を用いて大腸菌ゲノムDNAのPCR増幅によってつくり、それぞれ5'末端及び3'末端に独特なSac1及びXba1制限酵素認識サイトを有する138塩基対torA cDNAを生成した。その後、この配列をSac1-Xba1消化し、pGFPまたはpGFP SsrAプラスミドDNAに挿入した。この研究で構成されたすべてのプラスミドをシーケンシングによって確認した。
(表5はバクテリア菌株及びプラスミドを示す。)
Figure 2005522188
フロー・サイトメトリー分析
GFPに基づいたプラスミドを有するXL1-Blue細胞の1晩培養体をクロラムフェニコールを有する新しいLB培地で二次培養し、指数増殖期成長中に0.2%のアラビノースで誘導した。6時間後、細胞を1度PBSで洗浄し、5μlの洗浄した細胞を1mlのPBSで希釈し、その後ベクトン-ディキンソンFACSortを用いて分析した。
torA組み合わせライブラリの生成
ランダム突然変異体のライブラリを、torA遺伝子配列の変異性PCRによって、3.32または4.82 mM Mg2+(Fromant et al., 1995)、XL1-BlueゲノムDNA、及び以下のプライマを用いて構成した:torASacI(5'-GCGATGGAATTCGAGCTCTTAAAGAGGAGAAAGGTCATGAACAATAACGATCTCTTTCAG-3')(配列識別番号:117)及びtorAXbaI(5'-GCGATGTCTAGAAGCGTCAGTCGCCGCTTGCGCCGC-3')(配列識別番号:118)。0.5%の誤差率でライブラリを構成するため、0.22 mM dATP、0.20 mM dCTP、0.34 mM dGTP及び2.36 mM dTTPを用い、一方、1.5%の誤差率でライブラリを構成するため、0.12 mM dATP、0.1 mM dCTP、0.55 mM dGTP及び3.85 mM dTTPを用いた。ライブラリをSacI-XbaIで消化し、SacI-XbaIの間のpGFPssrAへライゲーションし、そのライブラリをgfpssrA配列の上流へ置いた。反応混合物をエレクトロコンピテントXL1-Blue細胞(Stratagene)へ電気穿孔し、段階希釈物を選択プレート上で培養して、独立的な形質転換細胞の数を測定した。
ライブラリ・スクリーニング
形質転換細胞を37℃でクロラムフェニコールを有するLB培地で培養し、0.2%アラビノースで6時間誘導し、1mlのPBSで200倍に希釈した。FACSゲートをPSC/SSC及びFL1/FL2に基づいてセットした。ソーティングの前に、ライブラリ細胞群を、生存能力のない細胞を優先的に標識付けするためにプロピジウム・ヨウ化物で標識付けした。約3 x 106個の細胞をフロー・サイトメトリーによって分析し、350個の生存能力のある細胞を回収した。その回収した溶液を濾過し、その濾過材をクロラムフェニコールを有するLBプレート上に置いた。37℃で12時間培養した後、個々のコロニーを、3つ組96ウェル・プレート内のクロラムフェニコールを有するLB培地へ播種した。37℃で12時間の培養後、細胞を同様にクロラムフェニコール及び0.2%アラビノースを有するLBを有する3つ組96ウェル・プレートで二次培養し、37℃で6時間培養した。個々のクローンを、FACS及び蛍光プレート・リーダー(Bio-Tek FL600, Bio-Tek Instrument, Winooski, VT)を介して、蛍光表現型の検証のためにスクリーニングした。
細胞の分画化(フラクション化)
Kabackの手法(1971)に従って、等張条件の下でリゾチーム-EDTA処理を用いて細菌をスフェロプラスト化することにより、ペリプラスム蛋白質の分画を得た。端的には、遠心分離法で細胞を採取し、Tris-CI (pH 8.0) 100mM、スクロース0.5M、及びNa-EDTA 1mMを含む緩衝液の中で10 OD600になるまで再縣濁させた。リゾチーム(シグマ)を50μg/ml加え、細胞を室温で1時間培養してスフェロプラストを得た。3000xgで15分間遠心分離にかけてスフェロプラストをペレット化し、電気泳動解析をするためにペリプラスム蛋白質を含む上澄みを採取した。スフェロプラストを含むペレットを10mlのTE (10mM Tris-Cl [pH7.5], 2.5mM Na-EDTA)内に再縣濁させ、フレンチプレスセル(Carver)内で2000lb/in2で均質化した。未処理細胞全体の蛋白質を解析するため、10mlのTE内で再放置し、続いてフレンチプレス均質化を実施した。
排出表現型改良のための信号ペプチド・ライブラリのスクリーニング
プラスミドpTorAGFPは、TAT固有のリーダー・ペプチド及びFACSに最適化されたGFPmut2遺伝子と融合した大腸菌トリメチルアミン酸化窒素レダクターゼ (TorA)の最初の8つのアミノ酸をコードする遺伝子を持っている (Crameri et al., 1996)。TorA-GFP遺伝子をアラビノース誘発プロモータpBADの下流に配置した。アラビノースを6時間誘発され、FACSで解析された細胞は、500任意単位を超える平均蛍光強度 (MFL1)を示した(図1C)。先の報告 (Santini et al., 2001)によれば、浸透圧衝撃による細胞分画によって、蛍光全体の約40-50%が野生型細胞のペリプラスム内に存在する一方、細胞質GFPが蛍光全体の残り50-60%を占めることが明らかになった。TAT経路が遮断されたtatB及びtatC変異株では、蛍光全体の95%以上が細胞質に残り、これによってTorA-GFPがTAT経路を通って排出されることが実証された。
C末端SsrA分解ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、TorA-GFP遺伝子と融合した。その結果得られた遺伝子pTorA-GFP-SsrAもまたベクトルpTorAGFPSsrA内でpBADの下流に配置した。負の制御として、リーダー・ペプチドを持たないGFPは、SsrA標識とコンストラクトが融合され、プラスミドpGFPSsrAから発現した。GFP-SsrA発現細胞は、実質的に明らかな蛍光強度を示さず、細胞質SsrA標識GFPがほぼ完全に分解していることを示唆した(図1a)。TorA-GFP-SsrAを発現させた細胞は、GFP-SsrA発現細胞と比較して、約8倍以上の蛍光性であった(図1b)。tatB及びtatC変異細胞内におけるTorA-Gfp-SsrAの発現の結果は、背景蛍光のみであった。
変異性PCR(Fromant et al., 1995)を使用して、TorAリーダー・ペプチドの任意の突然変異のライブラリを作成した。0.5%、1.5%または3.5%のヌクレオチド置換の期待された突然変異頻度における、3つのライブラリが構成された。変異したTorAリーダー・ペプチドを、pGFPSrA内のGFP-SsrA配列の上流にライゲートした。大腸菌の形質転換の結果、ライブラリは106から107の独立形質転換細胞から構成された。任意に選択した20個のクローンを期間分析し、TorAリーダー・ペプチド内に任意に分布した突然変異の存在を確認した。
FACSに基づいて3つのライブラリをスクリーニングすると、合計6つのクローンが単離され、そのうち2つは変異率の高いライブラリのもので、4つは変異率の低いライブラリのものであった。6つのクローンはすべて親であるTorA-Gfp-SsrAコンストラクトと比較してより高い蛍光性を呈した(図2)。蛍光レベルの上昇は、野生型リーダー・ペプチドで得られたものに従って、3倍から6倍の間だった。これらのクローンがXL1-Blue又はDHB4株に再変異して蛍光レベルが得られ、従って、各プラスミドによって蛍光性が上昇し、宿主細胞内の無関係な突然変異によるものではないことが、示唆された。TAT排出システムに依存するプロセスに期待されたように、プラスミドがtatB又はtatCに変異するとき、細胞の蛍光性は消失する。
代表的なウェスタン・ブロットは、B6及びE2クローンを発現させる細胞によるペリプラスムGFPの累積が、野生型コンストラクトを発現させるものと比較して著しく増加したことを示唆した(1-3列、図3)。更に、実質的に細胞質分画内で検出可能なGFPはなかった。これは、SsrA標識が存在したために蛋白質が分解したためである。更に図3に示されているのは、2つの分画マーカー蛋白質、細胞質マーカーGroEL、及びペリプラスムマーカーDsbAのウェスタン・バンドである。ペリプラスム分画内にGroELが存在しないことと、ペリプラスム分画内のDsbAレベルが高いことから、細胞分画が成功したことが確認できる。
2つの突然変異TorAリーダー・ペプチドの細胞質及びペリプラスム分画内の蛍光分布データを図3bに示す。他の4つのクローン(B7、F1、F11及びH2)においてもほぼ同じ結果が観察された。6つのクローンの配列が決定され、いかなる場合でも、観察された排出力学を変更するには1つ又は2つの単体残基突然変異で十分であることを示唆した。一般的には、これらの突然変異は、保存されたS/T-R-R-x-F-L-K (配列識別番号1)コンセンサス・モチーフとの近接又はその範囲内で発生する(表6)。
蛋白質にSsrA標識が付いている時だけではなく、標識されていない、蛋白質分解において安定したGFPでも、6つの突然変異TorAリーダー・ペプチドのGFP排出が増加することが確認された(図4)。蛍光性におけるこの増加は、折りたたまれたGFP蛋白質のペリプラスムの流量が増加したことによる。GFPと融合した残りのクローンでも、同様の結果が見られた。
野生型TorA-GfpとTorAB7-Gfpを比較する代表的なウェスタン・ブロットは、両方のコンストラクトを発現させる細胞が、細胞質GFPとほぼ同じレベルに蓄積したことを示唆した(図5、3及び4列)。しかし、排出したGFPの量は、ToAB7-GFPクローンを発現させる細胞内に置いて著しく多かった(図5、1及び2列)。これに対する更なる裏付けが、全体の細胞溶解物に見られた。成熟(M)GFPとして表示されるこの集中バンドは、信号ペプチダーゼIによって処理された可能性が高いTorA-Gfpキメラ蛋白質に相当する (Berks, et al., 2000)。従って、TorAB7-Gfpコンストラクトによって蓄積された成熟GFPに対応する集中バンドは、実質的には野生型TorAGFP細胞よりもペリプラスム的な処理を意味する(図5、5及び6列)。残った5つの全てのクローンについても、同様の結果が観察された。上で述べたように、GroEL及びDsbAマーカー蛋白質によって細胞分画の成功が確認できた。
(表6はTAT依存分泌物の増加を示す6つのクローンの配列を示す。)
Figure 2005522188
ツイン・アルギニン・コンセンサス・モチーフは下線のアミノ酸で示す;成熟TorA蛋白質の最初の8つの残基はイタリック文字で示す;TorAリーダー・ペプチド内の変異株は太字で示す。
ツイン・アルギニン転座排出経路を通っての多重ジスルフィド結合を含む折りたたまれた組み換え蛋白質の分泌
本明細書に開示される方法の1つの実施の形態は、TAT固有リーダー・ペプチドと当該異種ポリペプチドの間の融合の利用からなる。例えば、TAT固有リーダー・ペプチドTorAは、アルカリ・フォスファターゼと融合する場合がある(TorA-PhoA融合)。アルカリ・フォスファターゼ(PhoA)は1次配列内で連続した2つのジスルフィド結合を含み、通常、還元環境のある大腸菌株の細胞質を形成することができないようになっている(例えばDHB4株)。TAT経路は、折りたたまれた、又は少なくとも部分的に折りたたまれた基質を要するので、DHB4細胞内のPhoAのTATに依存した分泌は、細胞室の折りたたまれていないPhoAの蓄積によって遮断される。
従って、TAT経路を通る分泌のために細胞質を酸化状態に変える必要がある。通常、蛋白質のジスルフィド結合の形成を強力に阻害するグルタチオンやチオレドキシンなどの還元要素の存在により、バクテリア細胞質は還元状態に保たれる。先のBessetteらの研究の結果、ジスルフィド結合の効率的な形成を可能にする、高度酸化細胞質を持つバクテリア株の設計が可能になった(Bessette et al., 1999)。Bessetteらが示したように、大腸菌は、2つの主要なチオール還元システム、すなわちチオレドキシンとグルタチオン-グルタレドキシン経路のいずれかの存在下における好気的成長に依存する。チオレドキシン及びグルタレドキシンのいずれも、チオレドキシン・レダクターゼ(TrxB)とグルタチオンの個々の作用によって、還元状態に保たれる。グルタチオンは、gshA及びgshB遺伝子産物によって合成される。酸化グルタチオンを還元し、グルタチオン-グルタレドキシン・システムの触媒回路を完成するには、gor遺伝子の産物である酵素グルタチオン・オキシドレダクターゼが必要とされる。
trxBヌル突然変異では、信号配列を伴わない細胞質内に発現した時、アルカリ・フォスファターゼなどの正常に分泌された蛋白質内で安定したジスルフィド結合が形成可能である。2つのチオレドキシンがtrxB突然変異において酸化され、ジスルフィド結合を形成するための触媒として働く。ジスルフィド結合の形成は、チオレドキシン(trxB)とグルタチオン(gor又はgshA)の両方の経路内で欠陥のある二重突然変異において更に有効であることがわかった。trxB gor又はtrxB gshAのどちらでも、二重突然変異は、DTTなどの外因性還元剤が存在しないと成長が非常に遅く(倍増時間〜300分)、アルキル水酸化物(ahpC)遺伝子内にサプレッサ突然変異体を蓄積する。その結果得られるahpC*対立遺伝子が、細胞質内のジスルフィド結合の形成を妨害することなく正常に(非還元媒体において)効率的な成長を可能にする。このように、trxB、gor ahpC*突然変異株(大腸菌DR473又はFA113など)は、細胞質内でジスルフィド結合の形成を助ける能力を示し、豊富な媒体と最小限の媒体の両方において、対応する野生型株DHB4と同様に成長することもできる。
本実施例において、TorA-PhoA を発現させるDR473細胞が非常に高いPhoA活性レベルを示していても、TorA-PhoAを発現させるDHB4細胞はほとんど検出不可能なアルカリ・フォスファターゼ活性レベルしか示さないことがわかった。分画実験により、細胞溶解物内で測定されたPhoAの50%もの量がペリプラスムの蓄積に起因することが確認された。
ジスルフィド結合形成の主要な触媒はペリプラスム蛋白質であるDsbAであり、これが新しく合成され転座した蛋白質内でチオールを酸化するので、次にジスルフィド結合が細胞質内で形成され、ペリプラスムを損なわずに分泌されるかどうかが判断された。大腸菌dsbA突然変異であるDR473 dsbA::kanにTorA-PhoAが発現された。dsbA突然変異におけるPhoA活性の、同遺伝子型DR473親株との比較により、細胞溶解物全体の中ではほぼ同一の活性レベルであることが明らかになった。この結果は、PhoA蛋白質が細胞質内で完成し、蛋白質が細胞質からペリプラスム空間に導かれる時に、安定したジスルフィド結合が内膜を横断することができることを実証している(表9)。
TAT分泌経路との基質互換性に必要な折りたたみのレベルを測定するため、ジスルフィド結合形成のますます複雑化するパターンを持つ真核モデル蛋白質がテストされた。TorAリーダー・ペプチドは、合計9つのジスルフィド(TorA-vtPA)を持つ、クリングル2とプロテアーゼのドメインで構成される組織プラスミノゲン活性化物質の欠損変異体(vtPA)と、又は鎖間ジスルフィド連鎖(TorA-Fab)を含む5つのジスルフィド結合を持つ、ヘテロ二量体2610抗ジゴキシン抗体断片と、融合した。TorA-vtPAとTorA-Fabを発現させるDR473は、同一のコンストラクトを発現させるDHB4に関連して発現した各々の蛋白質としては、細胞溶解物内で著しく高いレベルの活性を示した。DHB4溶解物内の活性は、vtPA以外の全てのケースにおいて実質的に検出不可能であった。分画実験は更に、各蛋白質の全体的な活性のかなりの割合(30-50%)がペリプラスム分画で見られるということも確認した。
結論として、これらの結果は、ジスルフィド結合した蛋白質の効果的な分泌はTat経路を経由して発生し得るが、これらの蛋白質を折りたたんで未変形コンフォメーションにすることができる宿主細胞内でのみ発生することを示している。DHB4細胞のペリプラスム内の活性tPAの背景濃度の低さは、この蛋白質が還元細胞室内で少なくとも部分的に折りたたむことができることを示唆している。結果として得られる多重ジスルフィド結合を伴って折りたたまれた蛋白質は、次に活性ホモ-(アルカリ・フォスファターゼ)又はヘテロ二量体(2610抗体断片)としてペリプラスム内に分泌される。
バクテリア性ツイン・アルギニン転座因子による多重ジスルフィド蛋白質排出の実証
trxB gor aphC突然変異体の細胞質中でのジスルフィド結合生成物がTat経路を経た蛋白質成分の排出に十分に寄与するか否かの決定をする試験を行った。この実験は、PhoAおよびジゴキシン(Fab)に対して生じるFabフラグメントの2種の蛋白質モデルについて示された。PhoAは、折りたたまれて酵素の働きを示す全部で2つのジスルフィド結合を持った2つのポリペプチド鎖からなり、一方Fabは分子内ジスルフィド結合により相互に結合した2つの非配列鎖(それぞれ2つの分子内ジスルフィド結合を有する)から成る。通常、これらの蛋白質中のジスルフィド結合生成物は酸化雰囲気でのペリプラズムのスペース中に引き続いて排出される。しかし、分析では多数のジスルフィドを持った蛋白質は酸化された細胞質内でまず折りたたまれた後Tat系(システム)を経て排出され、運搬体は機械的に基質が局在するペリプラズムに対して適切に折りたたまれることを必要とすることが実証された。
A.方法
バクテリア菌株、成長および誘発条件:
使用されたバクテリア株およびプラスミドを表7に記載した。株DHBAおよびDRAは、JCB571(MC1000 phoR zih12::Tn10 dsbA::kan)からそれぞれE. coli株DHB4 DR473へのdsbA::kan1対立遺伝子のホスファチジルイノシトール(PI)形質導入により得られた。株DODは、MCMTA(MC4100 tatB::kan)からE. coli株 DR473へのtatB::kan対立遺伝子のPI形質導入により得られた。株FUDDYは、BUDDY(MC4100tatC::spec)からE. coli株FA113へのtatC::spec対立遺伝子のPI形質導入により得られた。E. coli株XLI-Blue(recAI endAI gyrA96 thi-I hsdR17 supE44 relAI lac[F probAB laclqZDM15 Tn10(Tet')] が、クローン化とプラスミド増殖のために用いられた。フォスファターゼ検定のために細胞は、100倍希釈の最少のM9媒体[0.2%グルコース、1μg/mlのビタミンB1, 1mMのMgSO4、50μg/mlの18アミノ酸(メチオニンとシステインを除く)を有するM9]、溶媒中に一晩培養し、次いで37℃で保温することで継続培養を行った。Fab試験では、細胞は新鮮なLB媒体(5% v/v)中で一晩培養し、次いで30℃に培養することで継続培養を行った。成長は、ミッド−ログ相(OD600〜0.5)で行われ、アルカリ性フォスファターゼとFabの両者の発生は最終濃度0.1mMのITPGの添加によって達成された。DsbC共発現は、0.2%アラビノーゼの使用によって生じた。抗生物質の選択では以下の濃度;アンピシリン100μg/ml、スペクチノマイシン100μg/ml、およびクロラムフェニコール25g/mlでのプラスミドにおける全てのマーカーに対して維持された。
プラスミドの形成:
プラスミドp33RRは上記のTorASaclおよびTorAXbalプライマーを使用しE. coliゲノムDNAからのE. coli torAのシグナル配列のPCR増幅により形成される。増幅されたDNAは、SaclおよびXbalを使用して消化され、pBAD33の同位置に挿入される。プラスミドp33KKは突然変異を起こさせるプライマーTorAkk-(5'-gcgatggagctcttaaagaggagaaaggtcatgaacaataacgatctctttcaggcatcaaagaaacgttttctggcacaactc-3')(SEQ ID NO:129)がtorAシグナル配列をPCR増幅するために用いられることを除きp33RRと同様に発生する。シグナル配列の少ないPhoA(PhoA △2-22)をエンコードしているDNAはプライマーPhofor(5'-gcgatgtctagacggacaccagaaatgcctgt-3')(SEQ ID NO:130) およびPhorev(5'-gcgatgaagcttttatttcagccccagagcggctt-3')(SEQ ID NO:131)を用いたE. coliゲノムDNAからのPCR増幅により発生する。増幅したPhoA DNAは、XbalおよびHindIIIで消化され、p33RRおよびp33KKの同一部位に挿入され、それぞれプラスミドp33KKP及びp33KKPになる。PhoAの組織中に融合されtorAシグナル配列(またはtorA(R11K;R12K)シグナル配列)をコードするDNAフラグメントは、プライマーTorASacI(またはTorAKK)およびPhorevを用いてプラスミドp33RRP(またはp33KKP)から増幅された。PCR増幅DNAはBspHIおよびHindIIIで消化され、pTrc99のNcol-HindIII部位に挿入され、プラスミドpRRP(またはpKKP)と成る。異なるシグナル配列(例えばssFdnG、ssFdoG)へのアルカリ・フォスフファタ−ゼ融合体の形成物はpTorA-APで記述したと同様に実施される。プラスミドpTorA-FabはプライマーFabfor(5'-gctgctagcgaagttcaactgcaacag-3')(SEQ ID NO:132)およびFabrev(5'-gcgatgcccgggggctttgttagcagccggatctca-3')(SEQ ID NO:133)を用いてpTrc99-Fab(Levy et al., 2001)中にコード化された抗ジゴキシン・ジシストロンFab遺伝子のPCR増幅により形成され、そしてtorAシグナル配列の増幅はプライマーTorASaclおよびTorAover(5'-gcgctgttgcagttgaacttcgctagcagcgtcagtcgccgcttg-3')(SEQ ID NO:134)で成された。2つのPCR生成物はプライマーTorASaclおよびFabrevを用いてオーバーラップ伸長によるPCRを介して融合された。オーバーラップ生成物はBspHIおよびXmalで消化され、pTrc99AのNcolおよびXmal部位に挿入された。全プラスミドは配列決定された。
細胞分画化(フラクション化):
ぺリプラズム蛋白質フラクションが氷温浸透圧ショックにより得られた(Sargent et al.,1998)。特に細胞は遠心分離により回収され、アルカリ性フォスファタ−ゼの自然活性化を防止するために30mMのTris-Hcl(pH8.0)、0.5Mのショ糖、1mMのNa-EDTAおよび20mMのヨードアセトアミドを含む緩衝液中に再懸濁させた。細胞は25℃で10分間培養され、5000 x gおよび4℃で10分間の遠心分離を行った。次にペレットを氷温で5mMのMgSO4中に再懸濁させ、氷中に10分間保持した。細胞を前と同様に遠心分離し、ぺリプラズム蛋白質を含む上澄み液を電気泳動分析によって回収した。ペレットを10mlのTE(10mMのTris-Cl[pH7.5]、2.5mMのNa-EDTA)および20mMのヨ−ドアセトアミド中に再懸濁し、そして2,000lb/inのフレンチプレスセルにより均質化させた。未処理細胞の全蛋白質を分析するために10mlのTEおよび20mMのヨ−ドアセトアミド中に直接再懸濁し、次いでフレンチプレス均質化が実施された。
酵素の活性度測定:
アルカリ性フォスファタ−ゼを表す細胞は6時間で生じた。試料を収得後20mMのヨ−ドアセトアミドで処理し、遠心分離によりペレットを得た。回収した細胞は上記のようにして細片化し、溶解性の蛋白質は標準法のようにBSAを使用したBio-Rad蛋白質定量法により定量した。アルカリ性フォスファターゼの活性度を前述したようにして定量した。概略すると、等量の蛋白質を200μlのp-ニトロフェニル・フォスフェイスト(pNPP;Sigma)溶液(100mMのTris-HCl,pH7.4中に1錠)中で保温し、各サンプル中のアルカリ性フォスファターゼによる加水分解速度を定量してΔA405を測定した。細分化効率はβ−ガラクトシダ−ゼを細胞質マーカー酵素として使用して、前述したように定量しモニターした。細分化からの唯一のデータでは、分析の結果はマーカー酵素活性度≧95%で適切に分散化されていた。
ELISA(酵素連結免疫吸着剤測定):
測定は以下のようにして行われた。96ウェル高度結合の測定板(コーニング−コスター)に4ugml-1BSA-ジゴキシン共役体または4ugml-1BSA(100ul/well)を被覆した。被覆した板をPBS中5%の無脂肪乾燥ミルクにより4℃で一晩ブロックした。1:2000に希釈したラビット抗マウスIgG((Fab')2軽鎖に特化したもの)を使用し、次いでさらに1:1000に希釈したホース・ラディッシュ・パーオキシダ−ゼと共役したゴート抗ラビットIgG(H+L)を使用して抗ジゴキシンscFvおよびFab抗体の存在を調べた。展開物にOPD基板(Sigma)を付加し、反応物に4.5NのH2SO4を添加して急冷した。板をBiO-Tek装置ミクロプレート・リーダーにより490nmで読み取った。
ウエスタン・ブロッティング分析
ウエステタン・ブロッティングをChen et al.,2001に従って行った。以下の一次抗体を使用した。1:5,000に希釈したラビット抗アルカリ性フォスファターゼ、1:5,000に希釈したラビット抗tPA,ラビット抗マウスIgG((Fab')軽鎖に特化したもの、Piercc),1:10,000に希釈したモノクローナル・ラビット抗DsbAおよび抗DsbC(John Joly, Genentech社からの寄贈品)および1:10,000に希釈したモノクローナル・ラビット抗GroEL(Sigma)。二次抗体は1:10,000のゴート抗マウス・HRPおよびゴート抗ラビット・HRPであった。一次抗体により始めに膜が調査され、そして続く展開で、TBS/2%、SDS/0.7Mβ−メルカプトエタノール中で剥離された。剥離された膜は再ブロックされ、抗DsbA、抗DsbCおよびGroEL中で調査された。
B.E. coli における多重ジスルフィド蛋白質のTat依存排出のための方策
バクテリア内で、分泌蛋白質の酸化折りたたみはインテグラル膜蛋白質DsbBにより再循環されるペリプラズム酵素DsbAにより触媒された。それとは対照的に、チオレドキシンとグルタレドキシン経路は高い還元環境(雰囲気)として細胞質を維持し、それは蛋白質中のシステイン酸化物を嫌忌(疎外)する。このため、ジスルフィド結合を要求するホスト蛋白質はペリプラズムのコンパートメントへ排出され、その工程はほぼ独占的にE. coli におけるSec経路により促進される。Tat経路によるそのような蛋白質の排出は問題を多く含んでいるが、それはTat経路が通常既に折りたたまれている基質蛋白質として容認されているからである。自然(生得)状態ではジスルフィド結合を含む蛋白質は細胞質中で折りたたむことはできないので、これらの蛋白質はTat排出のための基質としては恐らく容認できないであろう。実際には、いくつかの以前行われた研究では、折りたたみのためにジスルフィド結合を要求する蛋白質はTat経路を介して排出されないことが実証されている。
以前に確立され確認されていることだが、トリメチルアミンN-オキシド還元酵素A(TorA)リーダー・ペプチドに融合されたPhoA、あるいはさらに言えば他のTat特定リーダー・ペプチドは、極僅かなアルカリ性フォスファターゼ活性を結果として生じ、排出がないことを示す。従って、排出に先立つ細胞質中のジスルフィド結合の形成を含む適切な折りたたみはTat経路を介する排出を可能にする、ということが結論付けられた。これを分析するために、自然シグナル配列のないN末端E. coliアルカリ性フォスファターゼ(AP)のtorAシグナル配列が融合された。プラスミドpTorA-APを有しIPTG(0.1mM)で誘導された野生型E. coli細胞(DHB4)は、ウエスタン・ブロッティングで検出されるような大量の細胞質APを生成した。しかし、DHB4細胞のペリプラズムのフラクションにおいて検出可能なAPはない。同じペリプラズムのフラクションの活性測定では余剰細胞質APがないことが確認されている。推測されるように、DHB4細胞の細胞質のフラクションでのAP活性は、この株の細胞質中ではジスルフィド結合が得られないためにほとんど全てが不活性であった。酸化状態のAPがTat依存排出に重要であるかどうかを決定するために、E. coli (DR473株)のa trxB gor ahpC 三段階突然変異がssTrorA-AP融合蛋白質の発現のために使われる。ssTrorA-APがDR473株中のプラスミドpTorA-AP(0.1mM IPTG)から発現される場合には、酵素活性の合計のおよそ25%がペリプラズムのスペースで発見された。ウエスタン・ブロッティングはAPの分離が生じることを確認した。DR473細胞の細胞質中のAPの量はDHB4細胞中よりも非常に多いことに注意すべきであり、それは誤って折りたたまれたAPが細胞質蛋白質分解にさらに多くの影響を受けやすいことを示唆している。
この概念を支持して、アルカリ性フォスファターゼの細胞内安定がどちらかあるいは両方のジスルフィド結合がない場合には減少することが報告されている。重要なことには、亜細胞のフラクション中のβ−ガラクトシターゼ(LacZ)活性は測定され(上記参照のこと)、ペリプラズムの5%を越える(<5%)LacZ活性を使った試料のみがここでは分析された。第2番目のコントロール法として、亜細胞のフラクションのコントロールのために特定の抗血清を使った細胞質シャペロンGroELの交叉反応が用いられた。概して、APの折りたたみ状態はTat経路でこの蛋白質を排出するための能力を決定するために重要なものであることが明らかであった。
C.PhoAの排出が特定Tatである例
特定Tatシグナルにおいて、APは排出され得ることが近年明らかになった。従って、DR473内のAPの排出はTat経路へ特定されることを確認するために、R11KとR12アルギニン残基がリジン(R11K;R12K)と置換される欠陥TorAシグナル・ペプチド突然変異体はプラスミドpKK-APを生成するためにフレーム中でシグナル非配列APに融合された。Tat共通(コンセンサス)モチーフ(S/T-R-R-x-F-L-K)内に一対のリジンを有する2つの保存アルギニンの置換は、効果的に転座を取りやめることがよく実証されている(Critstobal,et al., 1999)。予想されるように、ssTorA(R11K;R12K)-AP融合蛋白質を発現するDHB4とDR473細胞は、ペリプラズムAPを集積することは出来なかった。重要なことには、DR473細胞内の細胞質APの量は、RR又はKKがリーダー・ペプチド内に存在するかどうかには同様に関係がなかった。注目すべきことには、ssTorA(R11K;R12K) -APは、同じ細胞内のssTorA-APよりもDHB4細胞の細胞質内のかなり小さな範囲に集積された。1つの考えられる説明としては、適切なTatシグナル(Arg-Arg)は内膜の細胞質側へ誤って折りたたまれたAPさえも標的とすることである。言い換えると、膜局在性は幾つかの誤って折りたたまれた酵素を蛋白質分解から隔離する。それとは対照的に、欠陥Lys-Lysリーダー・ペプチドは、Tat機構に適切に反応せず、結果として非標的APは細胞質蛋白質分解の影響をより受けやすい。同様な現象は、大きくかさのあるアビジン結合前駆体上のN末端前配列(プリシークエンス)が膜結合と運搬機構による初期認識のために可能となる植物チラコイド内で見られるが、結び付いているアビジンはその機構に、前駆体は誤って構成された基質であるので排出は中断される、というシグナルを出す。従ってMuserとThegはΔpH/Tat機構の校正構造は、前駆体認識の後でかつ運搬において約束されたステップの前に操作されるはずであることを提示している。
排出はTat依存であるという独立の確認として、MCMTA株から、tatB::kan allele (対立遺伝子)を有するDR473のP1形質導入は、DOD株(DR473 tatB::kan)を生成するために行われた。予想されるように、プラスミドpTorA-APからssTorA-AP融合蛋白質を発現するDOD細胞は、ウエスタン・ブロッティングと亜細胞のフラクションの活性測定の証明としてペリプラズム内でAPを集積することは出来なかった。さらに、蟻酸脱水素酵素−N(FDH-N)サブユニットG(ssFdnG)およびFDH-OサブユニットG(ssFdoG)から2つの異なるシグナル配列が融合される場合に、APはTat依存方式内で排出された。総じて、これらの結果はペリプラズム内のAPの出現がTat経路を介した排出に完全に依存することと、転座は幾つかの異なるTatリーダー・ペプチドにより達成され得ることを確認するものである。
D.排出前に細胞質内で生じる折りたたみと酸化
PhoA酸化は細胞質内で転座に先行して生じるかどうかを決定するために、ssTorA-AP融合蛋白質はF.coli dsbA ヌル突然変異体(DHBA株とDRA株)内で製造された。DsbAは、通常Sec経路で分泌される新たな合成蛋白質内に形成されるジスルフィド結合を触媒するのに使用される主要なペリプラズム酵素である。結果として、dsbAのヌル突然変異によりDHBAとDRAの両方の突然変異体株は、全くペリプラズム蛋白質を酸化することは出来なかった。意外なことに、DRA株内のプラスミドpTorA-AP(0.1mM IPTG)からのssTorA-APの発現は、DR473 dsbA+株を使用して得られる物と比較して、ペリプラズムのAP集積と活性がほぼ同一であるという結果を得た。従って、ペリプラズムのコンパートメント内の活性APの集積は、ほぼ全てが既に細胞質内で折りたたまれ酸化されているAPの排出によるものであった。
この現象がTorA前配列に特定のものであるかどうか、あるいはTat排出システムの一般的な特徴であるのかを決定するために、10個の周知で想定されるTatリーダー・ペプチドが分析される(表8)。この10個のシグナル配列は無配列APに信号を送るためにフレーム内に融合され、6個の異なるが遺伝子的に関係の生育環境内で発現し、ペリプラズムAPを測定した。残留ペリプラズムAPの活性のための境界線を得るために、構成体は全てDHA株(DHB dsbA::kan)で示したAPの酸化は細胞質およびペリプラズムの両者において禁止されているから、DHA中で測定される全AP活性度は、全てのリーダー・ペプチド−AP融合体では無視し得るものであることが分かった(表9)。残りの5株において測定されたペリプラズムAPの活性度はこの境界線に対して正常である。比較のために同じ株中に排出されたシグナル-非配列AP(Δ2−22)の量が測定され、6個全ての履歴において無視し得るものであることが分かった。
次に、野生型細胞(DHB4)における構成物の発生は、2種のことなる発生物となる:1)細胞質が減少するときは、TatリーダーAmiA、FdnG、FdoG、HyaA、HybAおよびTorAは、APを排出することができなかった。しかし、2)他のある種のTatリーダー・ペプチド(DmsA、SufI、YacKおよびYcbK)はたとえ細胞質内でジスルフィド結合が形成されないとしてもAPをペリプラズムに排出できた。これはAPのsec依存排出によるものらしい。予想されるように、ほぼ全てのリーダー・ペプチドは、部分的にはより一層の酸化細胞質の存在のためにDR473株のペリプラズムへのAPの排出が可能であった。明らかな例外として、ssAmiAおよびssHybAは試験された全ての株のペリプラズムにおいて、APを集積することができなかった。DR473対DRA(DRA473dsbA::kan)のペリプラズムにおいて見られるAP活性度の比較では、ssFdnG、ssFdoG、ssHyaAおよびssTorAの場合において、APの排出は折りたたみと酸化後に細胞質中で完結した。株における発生構成物は酸化細胞質を持つが、欠陥Tatアパラタス(DODおよびDUDDY)はssFdnG、ssFdoGおよびssTorAはTatの特定の様式ではペリプラズムへのAPの排出が検証された。対照的にssSufI、ssYacKおよびssYcbKによるAPの排出は先のDHB4で確認されたtatBおよびtatC突然変異体において起こすことができ、よってSec経路の使用が可能となる。興味深いことには、ssHyaAによるAPの排出はtatC突然変異体で阻止されるが、tatB株においては阻止されず、このリーダー・ペプチド−AP融合体の構造においてはTat排出はTatB蛋白質の存在なしに起こすことができることを示唆している。CoIVの排出はssTorAに融合したとき、tatC−依存およびtatB−非依存様式においても起こることが観察されたことに注意すべきである。表9に記載された全てのサンプルについての細胞細分化物の品質は、lacZ活性度測定および蛋白質ドット・ブロッティングにより確認された。
最終的に、ウエスタン・ブロット分析およびAP活性度測定がペリプラズムのフラクションおよび細胞質のフラクションの両者について、6個全ての遺伝的背景で発現したssFdnG-APの場合に対してなされた(図7)。DR473/pFdnG-APにおいて見られる全AP活性(細胞質的およびペリプラズム的)は、プラスミドpAID135からAPのシグナル配列で発現したDR473の細胞質で測定されたAPの量にほほ同様であることは注目すべきである。このデータから明らかなことは、ssFdnGリーダー・ペプチドの構造においては、Tat機構による転座の前にAPを折りたたみ、かつ酸化させるべきであることである。発明者の見解では、細胞質中に形成された新規なジスルフィド結合Tat依存膜転座の間に安定的に維持されていることが第一の証明である。PhoAが、自然に二量体を含む状態で速やかに折りたたむことで高度に安定化することは知られているが、PhoAが単量体(〜48kDa)として転座するか、活性化ホモ二量体(〜96kDa)として転座するかはまだ明らかではない。大量のアルカリ性フォスファターゼ二量体がTat機構に適合することは、E. coli型デヒドロゲナーゼ−Nのサブコンプレックス142kDa FdnGHがTatシステムにより運搬されるという先に行われた研究により支持されている。
E. coliの細胞質からの折りたたまれた抗ジゴキシン抗体フラグメントのTat媒介排出のための「ヒッチハイカー」方式
Tat経路で排出される蛋白質のかなりの割合は排出前に細胞質内で補助因子を必要とし、通常は呼吸器系あるいは電子移送プロセスで機能する酵素(例えば、E. coliトリメトラミンNオキシド・リダクターゼ)である。細胞質内で補助因子を獲得するためには、折りたたみがほぼ完了した後にだけ起きる三次構造接触を必要とする。こうしたラインに沿って、E. coliヒドロゲナーゼ2の大きなサブユニットであるHybCによる細胞膜への移動及びニッケルの獲得はTat固有リーダー・ペプチドを含んでいる小さなサブユニットHybOの排出に決定的に依存している。好ましいモデルは、ヒドロゲナーゼ2の上記大型及び小型のサブユニットが細胞質内で複合体を形成して、その複合体が小型サブユニットのリーダー・ペプチドのおかげで細胞膜の方向に移動させられることである。こうした自然発生の複合体と同様に、非生理的異種二量体が細胞質内で適切に折りたたまれた場合にTat転座因子を介して排出されるかどうかについてのテストを行った。驚くべきことに、Tat経路も1つのポリペプチド鎖だけがTorAリーダー・ペプチドに融合されているジスルフィド結合異種二量体を排出することが分かった(図6参照)。
ジスルフィド結合を介して結合されている上記の重鎖及び軽鎖の2つのポリペプチド鎖で構成された心臓グリコシド・ジゴキシンに固有なFab抗体フラグメントを用いた。さらに、上記重鎖及び軽鎖はそれぞれ2つの分子内ジスルフィド結合を含んでいた。TorAリーダー・ペプチドはジシストロン性オペロンから上記軽鎖(V1-C1) と共に共発現される重鎖(VH-CH1)にだけ融合された。この融合で、TorA重鎖は、転座前に細胞質内で鎖内ジスルフィド・ブリッジが最初に形成された場合だけ、軽鎖を「肩車」方式でペリプラズム内に運び込む。
酸化性細胞質(株DRA)を有し、dshAを欠いている突然変異体株内で、完全なFab蛋白質がTat経路で排出されたが、Fabの小さなフラクションだけがウェスタン・ブロッティングで確認して浸透圧ショックフラクション内で(約15−20%)局所化された。それより前に、細胞質内の抗ジゴキシンFabの折りたたみ形成がペルプラズム性ジスルフィド・イソメラーゼDsbC(ΔssDsbC)あるいはGroELの信号配列バージョンを共発現することによって大幅に増大することが報告されている。この分析では、ΔssDsbCの共発現がペリプラズム内でのFabのかなりの増大(浸透圧ショックフラクションでの約50%)をもたらした。これは細胞質内でのシャペロンの共発現によって、恐らくはそれは折りたたまれた蛋白質の発生を増強させることによって排出の能力を有する蛋白質が増えたことによることが原因している可能性がある。
Fabは免疫学的にマウス軽鎖配列を認識する第一の抗体を用いて精査される。従って、認められたバンドは、その軽鎖が分子内ジスルフィド結合形成を介して重鎖によって適切にリクルートされ、その後でペリプラズマ性空間に伝達されることを確認した。細胞質マーカー蛋白質GroEL及びペリプラズマ性マーカー蛋白質DsbCの局所化はこれらの細胞サイズ以下での分画がうまくいったことを示している。DRA細胞のペリプラズマのフラクション内でのFab蛋白質がELISAアッセイ内でその抗原、ジゴキシンと結合する能力によって示されるように、適切に折りたたまれ、機能性を示した。
ssTorA-AP融合の場合と同様、浸透圧ショックフラクション内でのFabの出現が、TorAリーダー内でのRRジペプチドがKKに突然変異された場合、あるいは還元性細胞質を有するDHB4細胞内にある場合、tatB突然変異体内で完全になくなった。さらに、外部細胞膜透過性を増大させる条件下で培養された場合(Chen et al., 2001)、Tat経路を介してのペリプラズム内に排出されるFab抗体を発現する完全な細胞を蛍光抗原ジゴキシン−ボジピーで特異的にラベルすることができた。これらの細胞の蛍光はDHAあるいはDODコントロール細胞内で観察される背景蛍光より5倍高かった。全体として、これらの結果は、(i) Tat経路が細胞膜を通じて、十分に酸化されたFabを排出することができること、そして(ii)そのプロセスが軽鎖及び重鎖の集合及び排出前の細胞質内での分子内ジスルフィドの形成に依存していることを示している。酸化され、十分に折りたたまれていると思われるFab分子をペリプラズム内に排出することは、これまでに示唆されているヒッチハイカー・モードでの排出によって、Tatリーダー・ペプチドを含むポリペプチドが細胞質内で結合する第2のリーダーなしのポリペプチドの転座を媒介することの決定的な証拠である。
(表7は本研究で用いられたバクテリア株及びプラスミドを示す。)
Figure 2005522188
(表8はアルカリ性ホスファターゼのTat依存排出のリーダー・ペプチドのアミノ酸配列を示す。)
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(表9はE. coliの推定Tat信号ペプチドとリーダーなしE. coliアルカリ性ホスファターゼ間の融合によって得られたペリプラスマ・アルカリ性ホスファターゼ(AP)活性を示す。)
Figure 2005522188

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*:サンプル内での活性をDHA比較対照株で測定された活性に標準化して計算された相対アルカリ性ホスファターゼ活性。アルカリ性ホスファターゼ活性に関して報告されている値は2回のそれぞれ独立して行われた実験(n=6)からの3つの個別測定値の平均である。すべての報告されているデータにおいて標準誤差は10%以下。( )内の値はDHA比較対照株で測定された実際の活性を値召している。
a:信号配列なしAP構成物
b:DHA/asHyaA-AP内で測定された活性に標準化された値
c:信号配列がc領域正電荷を有している。
nd=検出不能
*:AmidAとHyaAは比較対照リーダー・ペプチドである。両方ともこの研究で用いられた条件下ではアルカリ性ホスファターゼを排出することはできない。
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上に述べられた本発明の特徴、利点及び目的、及び以下に明らかになるその他の特徴、利点及び目的が達成され、詳細に理解されるために、上に簡単に要約された本発明についてより具体的な説明といくつかの実施の形態が添付された図面で示される。これらの図面は本明細書の一部を形成する。上記図面は本発明のいくつかの実施の形態を説明するものであり、それらの範囲を限定するものとは見なされない。
種々のプラスミド・コンストラクト内での緑色蛍光蛋白質の発現を示す。図1aは、pGFPSsrAを発現させる細胞内の最小限の緑色蛍光蛋白質の蛍光発光を示し、細胞質SsrA標識緑色蛍光蛋白質がほぼ完全に分解されることを表す。図1bは、pTorAGFPSsrAを発現させる細胞内での増強された緑色蛍光蛋白質の蛍光発光を示し、TorAリーダー・ペプチドによって指示された緑色蛍光蛋白質排出が増強されることを表す。図1cは、pTorAGFPを発現させる細胞内の緑色蛍光蛋白質の蛍光発光を示す。緑色蛍光蛋白質は細胞質とペリプラズムの両方で発現した。 突然変異されたTorAリーダー・ペプチドによるTat依存排出の増加を示す6個の異なるクローン内での緑色蛍光蛋白質の蛍光発光を示す。 B6及びE2クローン内でのペリプラズム緑色蛍光蛋白質の集積を示す。図3aは、野生型コンストラクト(1−4列)、B6クローン(2及び5列)及びE2(3及び6列)を発現させる細胞のペリプラズム(1−3列)及び細胞質(4−6列)での緑色蛍光蛋白質のウェスタン・ブロットを示す。GroELは細胞質マーカーであり、DsbAはペリプラズムマーカーである。図3bは、野生型コンストラクト、B6クローン及びE2クローンを発現させる細胞内の緑色蛍光蛋白質のペリプラズム及び細胞質での分布を示す。 無標識で、蛋白質分解的に安定な緑色蛍光蛋白質と融合された野生型コンストラクト、B6、B7あるいはE2コンストラクトを発現させる細胞内での緑色蛍光蛋白質の蛍光発光の増加を示す。 野生型コンストラクト(1、3、5列)またはB7クローン(2、4、6列)を発現させる細胞のペリプラズム(1−2列)、細胞質(3−4列)及び細胞溶菌液全体(5−6列)での緑色蛍光蛋白質のウェスタン・ブロットを示す。GroELは細胞質マーカーであり、DsbAはペリプラズムマーカーである。 ただ1つのポリペプチド鎖がリーダー・ペプチドと融合されたジスルフィド連鎖ヘテロ二量体排出の概要を示す。 6個の遺伝子背景でペリプラズム及び細胞質のフラクションの両方に対するウェスタン・ブロット分析及びAP活性測定を示す。
【配列表】
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Claims (54)

  1. バクテリア内での蛋白質排出を指示するリーダー・ペプチドを識別する方法において、
    a)突然変異されたリーダー・ペプチドをコードする核酸配列のライブラリを得るステップと、
    b)寿命の短いレポータ蛋白質をコードする核酸配列の上流で突然変異されたリーダー・ペプチドをコードする核酸配列を含む複数の発現カセットを構成するステップであって、前記寿命の短い蛋白質がバクテリアの細胞質内で分解されるものであるステップと、
    c)バクテリア内で前記複数の発現カセットを発現させるステップと、
    d)前記バクテリア内での前記レポータ蛋白質の発現を測定するステップと、そして
    e)前記寿命の短いレポータ蛋白質の蛋白質排出を指示するペプチド・リーダー・ペプチドを発現しないバクテリアと比較して、前記レポータ蛋白質の発現が増大したバクテリア細胞を回収するステップと
    を含み、前記レポータ蛋白質の発現が増大した前記細胞内で発現された上記突然変異されたリーダー・ペプチドが細胞質からの排出を指示するリーダー・ペプチドであり、それによって前記排出が前記寿命の短いレポータ蛋白質が細胞質内で分解するのを防ぐことを特徴とする方法。
  2. 寿命の短いレポータ蛋白質が、細胞質分解配列を前記レポータ蛋白質をコードする核酸と操作可能に結合させることで構成されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 細胞質分解配列がSsrA、PEST、LONで認識される配列、ClpAPで認識される配列、ClpXPで認識される配列、Stshで認識される配列、及びHslUVで認識される配列で構成される群から選択されることを特徴とする請求項2記載の方法。
  4. 細胞質分解配列がレポータ蛋白質のN末端あるいはC末端に取り付けられることを特徴とする請求項2記載の方法。
  5. レポータ蛋白質が蛍光蛋白質、酵素、運搬体蛋白質、抗生物質抵抗酵素、毒素免疫蛋白質、バクテリオファージ・レセプタ蛋白質、及び抗体で構成される群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  6. 蛍光蛋白質が緑色蛍光蛋白質であることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. 突然変異されたリーダー・ペプチドをコードする核酸配列が、ランダム突然変異生成、エラー・プローン(変異性)PCR、サイト指定突然変異生成、及びランダムDNAフラグメントの生成で構成される群から選択される方法で発生されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  8. リーダー・ペプチドが一般分泌(Sec)経路、信号認識粒子(SRP)依存経路、YidC依存経路及びツイン・アルギニン転座(Tat)経路で構成される群から選択される経路を通じて蛋白質分泌を媒介することを特徴とする請求項1記載の方法。
  9. 請求項1記載の方法において、さらに、
    f)野生タイプのリーダー・ペプチドを発現するバクテリア細胞と比較して、レポータ蛋白質の発現が増大した回収バクテリア細胞から突然変異されたリーダー・ペプチドをコードする選択された核酸配列をクローンするステップと、そして
    g)関心の対象となる異種ポリペプチドをコードする核酸配列の上流で、前記突然変異された選択リーダー・ペプチドをコードする核酸配列を含む発現カセットを構成するステップと
    を含んでいることを特徴とする方法。
  10. さらに、リーダー・ペプチドがバクテリア内で異種ポリペプチドの排出の増大を指示するようにバクテリア内の発現カセットを発現させるステップを含んでいることを特徴とする請求項9記載の方法。
  11. バクテリアがグラム陰性菌であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  12. バクテリア内での蛋白質排出を抑制あるいは増大させる化合物をスクリーニングする方法において、
    a)寿命の短いレポータ蛋白質をコードする核酸配列の上流で、バクテリアでの蛋白質排出を指示する突然変異されたリーダー・ペプチドをコードする核酸配列を含む発現カセットを構成するステップであって、上記寿命の短いレポータ蛋白質がバクテリアの細胞質で分解されるものであるステップと、
    b)前記化合物の存在下あるいは存在しない状態でバクテリア内で前記発現カセットを発現させるステップと、そして
    c)前記バクテリア内での前記レポータ蛋白質の発現を測定するステップと
    を含んでおり、前記化合物が存在している状態で測定された前記蛋白質の発現の増大が前記化合物が蛋白質排出を増大させることを示し、そして、前記化合物が存在する状態で測定された前記レポータ蛋白質の発現の減少が前記化合物が蛋白質排出を抑制することを示し、それによって蛋白質排出が前記寿命の短いレポータ蛋白質の上記細胞質内での分解を防ぐことを特徴とする方法。
  13. 寿命の短いレポータ蛋白質がレポータ蛋白質をコードする核酸配列に細胞質分解配列を操作可能に結合させることによって構成されることを特徴とする請求項12記載の方法。
  14. 細胞質分解配列が、SsrA、PEST、LONで認識される配列、ClpAPで認識される配列、ClpXPで認識される配列、Stshで認識される配列、及びHslUVで認識される配列で構成される群から選択されることを特徴とする請求項13記載の方法。
  15. 細胞質分解配列がレポータ蛋白質のN末端あるいはC末端に取り付けられることを特徴とする請求項13記載の方法。
  16. レポータ蛋白質が蛍光蛋白質、酵素、運搬体蛋白質、抗生物質抵抗酵素、毒素免疫蛋白質、バクテリオファージ・レセプタ蛋白質、及び抗体で構成される群から選択されることを特徴とする請求項12記載の方法。
  17. 蛍光蛋白質が緑色蛍光蛋白質であることを特徴とする請求項16記載の方法。
  18. バクテリアがグラム陰性菌であることを特徴とする請求項12記載の方法。
  19. ツイン・アルギニン転座経路を通じての蛋白質排出の増大を指示するリーダー・ペプチドを識別する方法において、
    a)ツイン・アルギニン転座経路に固有な突然変異されたリーダー・ペプチドをコードする核酸配列のライブラリを作成するステップと、
    b)寿命の短いレポータ蛋白質をコードする核酸配列の上流で突然変異されたリーダー・ペプチドをコードする核酸配列を含む複数の発現カセットを構成するステップであって、前記寿命の短いレポータ蛋白質がバクテリアの細胞質内で分解されるものであるステップと、
    c)前記バクテリア内で前記発現カセットを発現させるステップと、
    d)前記バクテリア内での前記レポータ蛋白質の発現を測定するステップと、そして
    e)前記寿命の短いレポータ蛋白質の蛋白質排出を指示するペプチド・リーダーペプチドを発現しないバクテリアと比較して、前記レポータ蛋白質の発現を増大させたバクテリア細胞を回収するステップと
    で構成され、前記レポータ蛋白質の発現の増大を示す前記細胞内で発現された突然変異されたリーダー・ペプチドが、ツイン・アルギニン経路を通じての細胞質からの蛋白質排出の増大を指示するリーダー・ペプチドであり、それによって前記排出が細胞質内での前記寿命の短いレポータ蛋白質の分解を防ぐことを特徴とする方法。
  20. 寿命の短いレポータ蛋白質が細胞質分解配列をレポータ蛋白質をコードする核酸配列に操作可能に結合させることによって構成されることを特徴とする請求項19記載の方法。
  21. 細胞分解配列がSsrA、PEST、LONで認識される配列、ClpAPで認識される配列、ClpXPで認識される配列、Stshで認識される配列、及びHslUVで認識される配列で構成される群から選択されることを特徴とする請求項20記載の方法。
  22. 細胞質分解配列が前記レポータ蛋白質のN末端あるいはC末端に取り付けられることを特徴とする請求項20記載の方法。
  23. レポータ蛋白質が蛍光蛋白質、酵素、運搬体蛋白質、抗生物質抵抗酵素、毒素免疫蛋白質、バクテリオファージ・レセプタ蛋白質、及び抗体で構成される群から選択されることを特徴とする請求項19記載の方法。
  24. 蛍光蛋白質が緑色蛍光蛋白質であることを特徴とする請求項23記載の方法。
  25. バクテリアがグラム陰性菌であることを特徴とする請求項19記載の方法。
  26. ツイン・アルギニン転座経路に固有な突然変異されたリーダー・ペプチドをコードする核酸配列がランダム突然変異生成、エラー・プローンPCR、サイト指定突然変異生成、及びランダムDNAフラグメントの生成で構成される群から選択される方法によって生成されることを特徴とする請求項19記載の方法。
  27. リーダー・ペプチドが配列識別番号120−128、あるいはそれらから突然変異される配列で構成される群から選択される配列を含むことを特徴とする請求項19記載の方法。
  28. 請求項19記載の方法によってつくられたツイン・アルギニン転座経路を通じての蛋白質排出の増大を指示するリーダー・ペプチド。
  29. 請求項28のリーダー・ペプチドをコードする単離された核酸配列。
  30. ツイン・アルギニン転座経路を通じて異種ポリペプチドの排出を増大させる方法において、
    a)関心の対象となる異種ポリペプチドをコードする核酸配列の上流で、ツイン・アルギニン転座経路を通じてのポリペプチド排出を指示するリーダー・ペプチドをコードする核酸配列を含む発現カセットを構成するステップと、そして
    b)前記リーダー・ペプチドが上記ツイン・アルギニン転座経路を通じての前記異種ポリペプチドの排出の増大を指示するように、バクテリア内で前記発現カセットを発現するステップと
    で構成される方法。
  31. リーダー・ペプチドが配列識別番号120−128で構成される群から選択される配列を含んでいることを特徴とする請求項30記載の方法。
  32. ツイン・アルギニン転座経路を通じての蛋白質排出を抑制、あるいは増大させる化合物をスクリーニングする方法において、
    a)寿命の短いレポータ蛋白質をコードする核酸配列の上流でリーダー・ペプチドをコードする核酸配列を含む発現カセットを構成し、上記寿命の短いレポータ蛋白質がバクテリアの細胞質内で分解され、そして前記リーダー・ペプチドが上記ツイン・アルギニン転座経路を通じての蛋白質排出を指示するステップと、
    b)前記化合物が存在している状態あるいは存在していない状態で前記バクテリア内で前記発現カセットを発現させるステップと、そして
    c)前記バクテリア内での前記レポータ蛋白質の発現を測定するステップと
    を含んでおり、前記化合物が存在する状態で測定された前記レポータ蛋白質の発現の増大は、前記化合物が上記ツイン・アルギニン転座経路を通じての蛋白質排出を増大させることを示し、前記化合物が存在する状態で測定した前記レポータ蛋白質の発現の減少は前記化合物が上記ツイン・アルギニン転座経路を通じての蛋白質排出を減少させることを示すことを特徴とする方法。
  33. 寿命の短いレポータ蛋白質が、細胞質分解配列をレポータ蛋白質をコードする核酸配列に操作可能に結合させることによって構成されることを特徴とする請求項32記載の方法。
  34. 細胞質分解配列が、SsrA、PEST、LONで認識される配列、ClpAPで認識される配列、ClpXPで認識される配列、Stshで認識される配列、及びHslUVで認識される配列で構成される群から選択されることを特徴とする請求項33記載の方法。
  35. 細胞質分解配列がレポータ蛋白質のN末端あるいはC末端に取り付けられることを特徴とする請求項33記載の方法。
  36. レポータ蛋白質が蛍光蛋白質、酵素、運搬体蛋白質、抗生物質抵抗酵素、毒素免疫蛋白質、バクテリオファージ・レセプタ蛋白質、及び抗体で構成される群から選択されることを特徴とする請求項32記載の方法。
  37. 蛍光蛋白質が緑色蛍光蛋白質であることを特徴とする請求項36記載の方法。
  38. 細胞内で生物学的に活性のある異種ポリペプチドをつくりだす方法において、
    a)異種ポリペプチドをコードする核酸配列の上流で、ツイン・アルギニン転座経路を通じての蛋白質排出を指示するリーダー・ペプチドをコードする核酸配列を含む発現カセットを構成するステップと、そして
    b)バクテリア細胞内で前記発現カセットを発現させるステップと
    で構成され、前記異種ポリペプチドが生物学的活性のある形態でつくられることを特徴とする方法。
  39. 異種ポリペプチドが抗体フラグメントを含んでいることを特徴とする請求項38記載の方法。
  40. リーダー・ペプチドが配列識別番号25−46及び120−128で構成される群から選択される配列を含んでいることを特徴とする請求項38記載の方法。
  41. 異種ポリペプチドがバクテリア細胞から分泌されるポリペプチド、前記バクテリア細胞の細胞膜周辺質(ペリプラズム)から単離できるポリペプチド、一体膜蛋白質、及び前記バクテリア細胞の培養体上澄み液から単離可能なポリペプチドから構成される群から選択されることを特徴とする請求項38記載の方法。
  42. 異種ポリペプチドが哺乳動物のポリペプチドであることを特徴とする請求項38記載の方法。
  43. 哺乳動物のポリペプチドが、組織プラスミノゲン・アクチベータ、膵臓トリプシン抑制因子、抗体、抗体フラグメント、そして毒素免疫蛋白質で構成される群から選択されることを特徴とする請求項42記載の方法。
  44. 異種ポリペプチドが天然の形態のポリペプチド、突然変異されたポリペプチド、及び切断されたポリペプチドで構成される群から選択されることを特徴とする請求項38記載の方法。
  45. バクテリア細胞が酸化性細胞質を有していることを特徴とする請求項38記載の方法。
  46. 異種ポリペプチドがバクテリア細胞の細胞質内でジスルフィド結合を形成していることを特徴とする請求項38記載の方法。
  47. バクテリアの細胞質で第2の異種ポリペプチドが発現されて、前記細胞質内で異種ポリペプチドと結合し、上記第2のポリペプチドがリーダー・ペプチドを有しておらず、さらに前記リーダー・ペプチドがツイン・アルギニン転座経路を通じての蛋白質排出による前記異種ポリペプチドと結合した前記第2の異種ポリペプチドの排出を指示することを特徴とする請求項38記載の方法。
  48. バクテリア細胞がグラム陰性菌であることを特徴とする請求項45記載の方法。
  49. バクテリア細胞が大腸菌trxB突然変異体、大腸菌gor突然変異体、及び大腸菌trxB gor二重突然変異体で構成される群から選択されることを特徴とする請求項45記載の方法。
  50. 細胞が、生物学的に活性があり、約2−約17のジスルフィド結合を含む異種ポリペプチドを少なくとも1つ分泌することを特徴とする請求項45記載の方法。
  51. 異種ポリペプチドの2つが少なくとも1つのジスルフィド結合によって結合されていることを特徴とする請求項50記載の方法。
  52. ツイン・アルギニン転座経路を通じての蛋白質分泌及び排出を指示する単離されたリーダー・ペプチド。
  53. リーダー・ペプチドが配列識別番号25−46及び120−128で形成される配列を含んでいることを特徴とする請求項52記載の単離されたリーダー・ペプチド。
  54. 配列識別番号25−46及び120−128で構成される群から選択されるリーダー・ペプチドをコードする遺伝子組み換え体核酸配列。
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