JP2005520175A - 多重標的化合物の電気化学的検出方法 - Google Patents

多重標的化合物の電気化学的検出方法 Download PDF

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Abstract

(a)導電性の酸化還元反応検出電極を提供するステップと、(b)第1の標的分子及び第2の標的分子を含むと考えられるサンプルを、第1の標的分子及び第2の標的分子が電極上に付着する条件で、電極に接触させるステップであって、第1の標的分子が第1の標識を含み、第2の標的分子が第2の標識を含むステップと、(c)該電極に、第1の酸化還元反応で第1の予め選択された標識を酸化する第1の遷移金属錯体、及び第2の酸化還元反応で第1及び第2の標識を酸化する第2の遷移金属錯体を接触させるステップであって、第1の酸化還元反応と第2の酸化還元反応とが異なる検出可能なシグナルを生じさせるステップと、(d)第1の酸化還元反応を検出することにより、第1の標的分子の存在を検出するステップと、(e)第2の酸化還元反応を検出することにより、第2の標的分子の存在を検出するステップとによって、2つの異なる標的分子を1つの電極で検出する方法が実施される。本方法を実施するための装置も開示する。

Description

本発明は、特異的結合対のメンバーの電気化学的検出方法に関する。
異種DNAサンプル中の個々のDNA配列を検出することにより、遺伝子の同定、DNAプロファイリング、及び新規なDNA配列決定方法の基礎が得られる。1つのDNAハイブリダイゼーション検出方法は、表面結合オリゴマーの、異種サンプル中の配列へのハイブリダイゼーションを示す分析的応答を使用してアッセイすることができる、表面結合DNA配列の使用を含む。これらの従来の分析方法は、一般に、標的DNA鎖上に共有結合した標識から生じるレーザー誘導性蛍光を含み、その方法は、表面結合二重鎖における一塩基ミスマッチに敏感ではない。たとえば、ピラング(Pirrung)らに付与された米国特許第5,143,854号及び米国特許第5,405,783号;Fodorら、Nature 364:555(1993);Bains、Angew.Chem.107:356(1995);及びNoble,Analytical Chemistry 67(5):201A(1995)は、この用途のための表面又は「チップ」を提案している。Hallら、Biochem.and Molec.Bio.Inter.32(1):21(1994)により提案された代替方法では、DNAハイブリダイゼーションは、ダブルストランドDNAと比較した、シングルストランドDNAの酸化還元挙動の観察を含む電気化学的方法で検出される。この技術もやはりDNAサンプルにおける一塩基ミスマッチに敏感ではない。
ソープ(Thorp)らに付与された米国特許第5,871,918号及び及び米国特許第6,132,971号には、酸化還元反応における予め選択された塩基を検出することにより、標的分子を電気的に検出する方法及び装置について記載されている。同特許に開示されている方法及び装置は、DNA配列決定、診断用アッセイ、及び定量分析を含む様々な用途で使用することが可能である。この方法は、マルチウェル・プレートを含む様々な異なるアッセイ形式及びアッセイ構造で、各ウェルで実施される異なるアッセイにより、有利に実施することができる。しかし、これらの参考文献には、1つのウェルで多数のアッセイを実施する方法は記載されていない。
本発明の第1の態様は、1つの共通電極によって2つの異なる標的分子を検出する方法である。一般に、本方法は、
(a)導電性の酸化還元反応検出電極を提供するステップと、
(b)(以下でさらに論ずる通り)、第1の標的分子及び第2の標的分子を含有すると考えられるサンプルを、第1の標的分子及び第2の標的分子が電極上に付着する条件で、(たとえばアフィニティ結合、沈殿等により)、サンプルを該電極に接触させるステップであって、
第1の標的分子は、第1の予め選択された標識を含み、第2の標的分子は、第2の予め選択された標識を含み、かつ第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識は異なるステップと、
(c)該電極に、(i)第1の遷移金属錯体と第1の予め選択された標識との間に、第1の酸化還元反応を引き起こすための酸化還元反応で、第1の予め選択された標識を酸化する第1の遷移金属錯体、及び(ii)第2の遷移金属錯体と第2の予め選択された標識との間に、第2の酸化還元反応を引き起こすための酸化還元反応で、第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識を酸化する第2の遷移金属錯体を、同時に接触させるステップであって、これらの予め選択された標識から、対応する遷移金属錯体への電子移動があり、その結果、触媒回路の一部として、対応する遷移金属錯体の還元形が再生し、第1の酸化還元反応と第2の酸化還元反応とが異なる検出可能なシグナルを生じさせるステップと、
(d)第1の酸化還元反応を検出することにより、第1の標的分子の存在を検出するステップと、
(e)第2の酸化還元反応を検出することにより、第2の標的分子の存在を検出するステップとを含む。
この接触させるステップは、任意の適当な方法、たとえば、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、直接アッセイ、固定化標的物質用競合アッセイ、又は結合相互作用アッセイ(その全てを、以下のセクションHでより詳細に論じる)により実施することが可能である。
前述の一実施形態では、サンプルは、第3の標的分子を含有すると考えられ、この第3の標的分子は、第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識と異なる第3の予め選択された標識を含み、接触させるステップ(c)は、電極(iii)に、第3の遷移金属錯体と第3の予め選択された標識との間に、第3の酸化還元反応を引き起こすための酸化還元反応で、第1、第2及び第3の予め選択された標識を酸化する第3の遷移金属錯体を、接触させることをさらに含み、第1、第2及び第3の酸化還元反応は、異なる検出可能なシグナルを生じさせ、さらに、本方法は、(f)第3の酸化還元反応を検出することにより、第3の標的分子の存在を検出するステップをさらに含む。
前述の別の特別な実施形態では、サンプルは、第4の標的分子を含むと考えられ、この第4の標的分子は、第1、第2及び第3の予め選択された標識と異なる第4の予め選択された標識を含み、接触させるステップ(c)は、該電極(iv)に、第4の遷移金属錯体と第4の予め選択された標識との間に、第4の酸化還元反応を引き起こすための酸化還元反応で、第1、第2、第3及び第4の予め選択された標識を酸化する第4の遷移金属錯体を接触させることをさらに含み、第1、第2、第3及び第4の酸化還元反応が異なる検出可能なシグナルを生じさせ、本方法は、(g)第4の酸化還元反応を検出することにより、第4の標的分子の存在を検出するステップをさらに含む。
本発明の第2の態様は、少なくとも2種の異なる結合対の、少なくとも2つの異なるメンバーの電気化学的検出に有用な超小型電子装置である。本装置は、(a)超小型電子基材と、(b)該基材上の導電性酸化還元検出電極と、(c)非導電層上に固定化された第1の特異的結合対の第1のメンバー(たとえば、タンパク質、ペプチド又はオリゴヌクレオチドプローブ)であって、サンプル中に存在する第1の特異的結合対の第1のメンバーが第2のメンバーと結合し、検出電極に電位を印加したとき起こる酸化還元反応が検出可能であるように、第1の結合対の第1のメンバーが検出電極に隣接している(又は十分に近い)第1の特異的結合対の第1のメンバーと、(d)サンプル中に存在する第2の特異的結合対の第2のメンバーと結合する非導電層上に固定化された第2の特異的結合対の第1のメンバー(たとえば、タンパク質、ペプチド又はオリゴヌクレオチドプローブ)であって、検出電極に電位を印加したとき起こる酸化還元反応が検出可能であるように、検出電極に隣接している第2の結合対の第1のメンバーとを含み、第1の結合対の第1のメンバーと第2の結合対の第1のメンバーが異なる。
前述の特別な一実施形態では、本装置は、サンプル中に存在する第3の特異的結合対の第2のメンバーと結合する非導電層上に固定化された第3の特異的結合対の第1のメンバー(たとえば、タンパク質、ペプチド又はオリゴヌクレオチドプローブ)であって、検出電極に電位を印加したとき起こる酸化還元反応が検出可能であるように、検出電極に隣接している第3の結合対の第1のメンバーをさらに含み、第1の結合対の第1のメンバー、第2の結合対の第1のメンバー、及び第3の結合対の第1のメンバーが異なる。本装置は、他の結合対に関する記載と同様に検出電極に隣接した第4の結合対の第1のメンバーをさらに含んでもよい。
前述のある実施形態では、該超小型電子基材は、導電性酸化還元検出電極及び第1の結合対及び第2の結合対の固定化された第1のメンバーを含む、サンプル容器を含む。
ある実施形態では、該超小型電子基材は、複数の導電性酸化還元検出電極及び第1の結合対及び第2の結合対の、複数の固定化された第1のメンバーを含む、サンプル容器を含む。ある実施形態では、本装置は、導電性金属を含む導電性参照電極をさらに含む。ある実施形態では、本装置は、導電性金属を含む導電性補助電極をさらに含む。ある実施形態では、酸化還元反応は、各導電性酸化還元検出電極からの電気的接続により検出可能である。従って、ある実施形態では、本装置は、酸化還元反応検出器をさらに含む。
本発明の第3の態様は、
(a)上述の装置を提供するステップと、
(b)第1の結合対の第2のメンバー及び第2の結合対の第2のメンバーを含むと考えられるサンプルを接触させるステップと、
(c)基材に、(i)第1の遷移金属錯体と第1の予め選択された標識との間に、第1の酸化還元反応を引き起こす条件で、酸化還元反応において、第1の予め選択された標識を酸化する第1の遷移金属錯体、及び(ii)第2の遷移金属触媒と第2の予め選択された標識の間に、第2の酸化還元反応を引き起こす条件で、酸化還元反応において、第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識を酸化する、第2の遷移金属錯体を同時に接触させるステップであって、これらの予め選択された標識から遷移金属錯体への電子移動があり、その結果、触媒回路の一部として、対応する遷移金属錯体の還元形が再生し、第1の酸化還元反応と第2の酸化還元反応とが異なる検出可能なシグナルを生じさせるステップと、
(d)第1の酸化還元反応の検出から、第1の結合対の第2のメンバーの存在を検出するステップと、
及び(e)第2の酸化還元反応の検出から、第2の結合対の第2のメンバーの存在を検出するステップと
を含む、共通電極を介して、少なくとも2つの異なるハイブリダイゼーション事象を検出する方法である。
前述で好適な遷移金属錯体の例としては、Ru(bpy)3 2+、Ru(Me2−bpy)3 2+、Ru(Me2−phen)3 2+、Fe(bpy)3 2+、Fe(5−Cl−phen)3 2+、Os(5−Cl−phen)3 2+、Os(bpy)3 2+、Os(Me2−bpy)3 2+(これらの正式な名称は、後述する)、フェロセン、アミノフェロセン、及びReO2(py)4 1+などが挙げられるが、この限りではない。
本明細書に記載の方法及び装置で、核酸に適した予め選択された標識の例としては、アデニン、グアニン、及びそれらの類似体、たとえば、8−オキソグアニン、8−オキソアデニン、7−デアザグアニン、7−デアザアデニンなどが挙げられるが、この限りではない。
前述の幾つかの実施形態において、第1の結合対のプローブ/第1のメンバー、及び第2の結合対のプローブ/第1のメンバーは、オリゴヌクレオチドである。
前述の幾つかの実施形態において、第1の結合対のプローブ/第1のメンバー、及び第2の結合対の第1のメンバーは、ペプチド又はタンパク質である。
前述のさらに他の実施形態において、第1の結合対のプローブ/第1のメンバーはオリゴヌクレオチドであり、第2の結合対のプローブ/第1のメンバーはタンパク質又はペプチドである。
前述のある実施形態において、第1の結合対の標的分子/第2のメンバー、及び第2の結合対の第2のメンバーは、タンパク質又はペプチドである。
前述の他の実施形態において、第1の結合対の標的分子/第2のメンバー、及び第2の結合対の第2のメンバーは、オリゴヌクレオチドである。
前述のさらに他の実施形態において、第1の結合対の標的分子/第2のメンバーは、タンパク質又はペプチドであり、第2の結合対の標的分子/第2のメンバーは、オリゴヌクレオチドである。
本発明の幾つかの実施形態において、第1の結合対の第2のメンバー及び第2の結合対の第2のメンバーの少なくとも1つは、DNA又はRNA等の核酸である。このような方法は、接触させるステップの前に核酸を増幅するステップをさらに含んでもよい。
前述のある実施形態において、電極は、超小型電子基材(たとえばケイ素又はガラス)により支持されている。
前述のある実施形態において、電極は、インジウムスズ酸化物を含む。
前述のある実施形態において、検出ステップは、多段階のクロノアンペロメトリー又はサイクリックボルタンメトリーによって実施される。
本発明の前述及び他の目的及び態様を、以下に記載の明細書に詳細に説明する。
本明細書に使用される専門用語は、ある特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限することを意図しない。本発明及び添付の特許請求の範囲に使用される単数形は、明記されていない限り、複数形も含むものとする。
本明細書で使用される「標的分子」は、ペプチド類、タンパク質、核酸、多糖類、脂質、リポ蛋白質等を含むがこの限りではない、検出が望まれるあらゆるタイプの分子を指す。
「結合対」は、一方が標的分子であってもよい一対の分子であって、該分子対のメンバーが、特異的にかつ選択的に、互いに結合する分子対を指す。適当な結合対の例としては、核酸と核酸、タンパク質又はペプチドと核酸、タンパク質又はペプチドとタンパク質又はペプチド、抗原と抗体、受容体とリガンド、ハプテン、又は多糖類等が挙げられるがこの限りではない。結合対のメンバーは、本明細書で「バインダー」とも呼ばれる。
本明細書で使用される「核酸」は、DNA及びRNAの両者を含む、あらゆる核酸を指す。本発明の核酸は、一般に、ポリ核酸である。すなわち、3’,5’ホスホジエステル結合により共有結合されている個々のヌクレオチドのポリマーである。
本明細書で使用される用語「相補的核酸」は、別の核酸に特異的に結合して、ハイブリダイズされた核酸を形成するオリゴヌクレオチドプローブを含むあらゆる核酸を指す。
語句「有無を決定する」は、検出事象(たとえば、DNAハイブリダイゼーション、RNAハイブリダイゼーション、検出標的核酸等)の有無の定性的決定及び定量的決定を含むことを意図する。
用語「ハイブリダイズされたDNA」及び「ハイブリダイズされた核酸」は、ハイブリダイズされてダブルストランドDNA又は核酸を形成するシングルストランドDNA、又はハイブリダイズされてトリプルヘリックスDNA又は核酸を形成するダブルストランドDNA又は核酸を指す。
本明細書で使用される用語「プローブ」は、結合対として別の分子に特異的に結合する分子を指し、そのプローブ分子を使用して、他方の分子の有無を決定することが可能である。プローブは、結合対の任意のメンバーであってもよく、たとえば、タンパク質、ペプチド類、天然の核酸又は合成の核酸、たとえばDNA又はRNA等を含む。
本明細書で使用される用語「サンプル」は、電極に適用するか又は電極上に付着させるものを指し、そのサンプルは、1つのソースから誘導又は獲得されてもよく、複数のソースから誘導又は獲得されてもよい。本明細書で使用される用語「電極上に付着する」は、プローブにて、又はそのプローブにより捕捉された標的にて生じる酸化還元反応が、隣接する電極にて検出されるように、たとえば、サンプルが、(a)電極の表面上、又は(b)電極の非導電層上、又は(c)(i)電極表面、又は(ii)非導電層上、又は(iii)電極近隣及びそれに十分に近い、捕捉プローブ上に付着してもよいことを意味する。
本明細書で使用される語句「同時に接触させる」は、錯体が、電極に同時に添加されても順次添加されてもよいが、錯体が検出電極上又は検出電極に同時に存在することを意味する。
本明細書では、DNAに関して本発明の方法及び装置が時々説明されるが、これは明確にするためであり、当然のことながら、本発明の方法及び装置は、他の核酸、たとえばRNA、及び他の標的又は特異的結合対のメンバー、たとえばタンパク質にも応用できる。
本発明は、とりわけ、ソープ(Thorp)らに付与された米国特許第5,871,918号及び米国特許第6,132,971号(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載の技術を使用して実施することが可能である。
A.標識
一般に、本発明を実施するために使用される標識は、本発明を実施するのに適した電圧範囲内、たとえば約0又は0.2ボルトから約1.4又は1.6ボルトまでの範囲で酸化され得る化合物、部分又は基である。たとえば、本発明で使用される標識は、予め選択されたペプチド類及び予め選択されたヌクレオチド塩基からなる群より選択されてもよく、内因性標識であっても外因性標識であってもよい。本標識は、本発明で電子を導電性基材に移動させるためのメディエーターとして使用される遷移金属錯体を含まない。本標識は、遷移金属メディエーターの酸化電位とほぼ同じか又はそれより低い酸化電位を有する。
標的分子が核酸であるとき、標識は、その核酸上の予め選択された塩基であってもよい。適当な予め選択された塩基の例としては、グアニン、アデニン、8−オキソ−グアニン、及び8−オキソ−アデニン、8−ブロモ−グアニン、グアノシン、キサントシン、ワイオシン、プソイドウリジン、6−メルカプトグアニン、8−メルカプトグアニン、2−チオキサンチン、6−チオキサンチン、6−メルカプトプリン、2−アミノ−6−カルボキシメチル−メルカプトプリン、2−メルカプトプリン、6−メトキシプリン、2−アセチルアミノ−6−ヒドロキシプリン、6−メチルチオ−2−ヒドロキシプリン、2−ジメチルアミノ−6−ヒドロキシプリン、2−ヒドロキシプリン、2−アミノプリン、6−アミノ−2−ジメチルアリルプリン、2−チオアデニン、8−ヒドロキシアデニン、8−メトキシアデニン、5−アミノシトシン、5−アミノウリジン、及び6−アミノシトシンなどが挙げられるが、この限りではない。一般に、この予め選択された塩基は、グアニン、アデニン、8−オキソ−グアニン、8−オキソ−アデニン、7−デアザグアニン、7−デアザアデニン、5−アミノシトシン、5−アミノウリジン、及び6−アミノシトシンからなる群より選択され、グアニンが一般に好ましい天然の予め選択された塩基であり、7−デアザグアニンが一般に好ましい合成の予め選択された塩基である。容易に酸化又は還元される予め選択された塩基は、Baik,M.H.ら、J.Phys.Chem.B(2001)(近刊)に記載の理論的方法を使用してデザインすることができる。
本発明の方法を使用して、内因性標識、たとえば、特定のアミノ酸をタンパク質中に含む標的を電気化学的に検出することが可能である。内因性標識は、アッセイの結合メンバーのいずれかの中に生来含まれる部分である。電気化学的タンパク質検出のために、メディエーターを用いた触媒反応で、内因性標識を酸化又は還元する。タンパク質検出システムにおいて、これらの部分は、当該電位範囲(600−1200mV)でかつ水の酸化に必要な電位より低い電位で、触媒を介した電気化学により酸化されるアミノ酸を含む。この中には、システイン、チロシン、トリプトファン、及びヒスチジンが含まれる。他のアミノ酸も酸化され得るが、ここに記載されているアッセイ条件では酸化されない。
600〜1200mVの電位範囲で酸化可能なアミノ酸は、ほとんどのタンパク質分子(従って、標的分子)に存在するため、触媒を介した電気化学によって、タンパク質を直接検出することができる。このことは、特に巨大タンパク質及びトリプトファン又はチロシンに富むタンパク質について言える。
外因性標識は、合成手段、人工的手段、天然手段、又は他の手段によって、結合メンバー又は標的に付加される部分である。外因性標識の役割は、他の状況では電気化学的に不活性であろう分子に電気化学的活性を与えるか、又は既に活性な分子の電気化学的活性を高めることである。触媒が介在する電気化学的検出に使用される外因性標識の例としては、ペプチド類、修飾アミノ酸を含むペプチド、他のタンパク性電子供与体及び受容体化合物、及び介在電気化学により酸化還元を受ける予め選択されたヌクレオチド塩基を含むオリゴヌクレオチドなどが挙げられる。タンパク質に共有結合され得る他の電子供与体又は受容体化合物を、タンパク質標的及び他の物質の電気化学的検出用の標識として使用することが可能であり、当業者に明白であろう。特に、およそ、≦0.6V(対Ag/AgCl)の電位で酸化される供与体化合物は、アッセイ中に存在する核酸又はアミノ酸の酸化からのバックグラウンドシグナルが無い条件で、介在電気化学により酸化され得るため、標識として有用である。低電位標識の例としては、修飾アミノ酸である5−ヒドロキシトリプトファンを含むペプチド類、3−アミノチロシン、及び3,4−ジヒドロキシフェニルアラニンなどが挙げられる。これらの修飾アミノ酸は、それぞれ、およそ、≦0.47V(対Ag/AgCl)の酸化電位を有し、介在触媒酸化還元反応で、約0.47V(対Ag/AgCl)の酸化還元電位を有する遷移金属メディエーターOs(Me2−bpy)3 2+と反応するのに適している。
結合相互作用の検出に関して前述した多数の標識は、ここで使用するのに適さず、本出願に含まれない。たとえば、介在電気化学的検出用標識として除かれるものは、酵素触媒によって電気化学的シグナル又は光学シグナルを発生するために基材を必要とする遷移金属錯体及び酵素標識である。本発明の介在触媒電気化学的検出において、遷移金属錯体は、標識としてではなく、触媒としての役割を果たす。
B.酸化還元反応の遷移金属錯体メディエーター
本発明を実施するために使用されるメディエーターは、上述の通り、対応する標識への電子移動を可能にする化合物、一般に、遷移金属錯体である。一般に、異なるメディエーターが各標識に使用され、それに特定のメディエーターが対応する。メディエーターは、任意の分子、たとえば、固有の酸化電位で電気化学的標識と反応して、標識から電極に電子を移動させる陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、又は両イオン性分子であってもよい。本明細書の本発明で使用されるメディエーターは、検出しようとしている標識で観察されるものとほぼ同じ酸化電位又はそれより高い電位で可逆的な酸化還元対を示すように選択されることが重要である。従って、チロシン又はトリプトファンを標識として使用するためには、メディエーターは、Ag/AgC1に対して、それぞれ、約≧0.65V又は≧0.8Vの酸化電位を持たなければならない。適当なメディエーターは、それぞれ、Os(bpy)3 2+及びFe(bpy)3 2+であろう。同様に、グアニンを標識として使用するためには、メディエーターはAg/AgClに対して≧約1.1Vの酸化電位を持たなければならず、適切なメディエーターは、Ru(bpy)3 2+である。本発明の方法で使用するのに適したメディエーターの他の例は、たとえば、ルテニウム2+(2,2’−ビピリジン)3(「Ru(bpy)3 2+」)、ルテニウム2+(4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン)3(「Ru(Me2−bpy)3 2+」)、ルテニウム2+(5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン)3(「Ru(Me2−phen)3 2+」)、鉄2+(2,2’−ビピリジン)3(「Fe(bpy)3 2+」)、鉄2+(4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン)3(「Fe(Me2−bpy)3 2+」)、鉄2+(5−クロロフェナントロリン)3(「Fe(5−Cl−phen)3 2+」)、鉄2+(4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン)(ビピリジン)2(「Fe(Me2−bpy)(bpy)2 2+」)、鉄2+(4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン)2(ビピリジン)(「Fe(Me2−bpy)2(bpy)2+」)、オスミウム2+(2,2’−ビピリジン)3(「Os(bpy)3 2+」)、オスミウム2+(4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン)3(「Os(Me2−bpy)3 2+」)、オスミウム2+(5−クロロフェナントロリン)3(「Os(5−Cl−phen)3 2+」)、オスミウム2+(4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン)(ビピリジン)2(「Os(Me2−bpy)(bpy)2 2+」)、オスミウム2+(4,4’−ジメチル−2,2’ビピリジン)2(ビピリジン)(「Os(Me2−bpy)2(bpy)2+」)、ジオキソレニウム1+ホスフィン、及びジオキソレニウム1+ピリジン(「ReO2(py)4 1+」)を含む、遷移金属錯体である。メディエーターとして有用な陰イオン性錯体を以下に挙げる。Ru(bpy)((SO32−bpy)2 2-及びRu(bpy)((CO22−bpy)2 2-であり、メディエーターとして有用な両イオン性錯体は、Ru(bpy)2((SO32−bpy)及びRu(bpy)2((CO22−bpy)であり、ここで(SO32−bpy2-は4,4’−ジスルホナト−2,2’−ビピリジンであり、(CO22−bpy2-は4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンである。フェロセン分子の誘導体も、優れたメディエーターである。ピリジン、ビピリジン及びフェナントロリン基の好適な置換誘導体も、前述の金属のいずれかと共に錯体に使用することが可能である。適当な置換誘導体は、4−アミノピリジン、4−ジメチルピリジン、4−アセチルピリジン、4−ニトロピリジン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジアミノ−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジアミノ−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジエチレンジアミン−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジエチレンジアミン−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジエチレンジアミン−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジヒドロキシル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジヒドロキシル−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジヒドロキシル−2,2’−ビピリジン、4,4’,4″−トリアミノ−2,2’,2″−ターピリジン、4,4’,4″−トリエチレンジアミン−2,2’,2″−ターピリジン、4,4’,4″−トリヒドロキシ−2,2’,2″−ターピリジン、4,4’,4″−トリニトロ−2,2’,2″−ターピリジン、4,4’,4″−トリフェニル−2,2’,2″−ターピリジン、4,7−ジアミノ−1,10−フェナントロリン、3,8−ジアミノ−1,10−フェナントロリン、4,7−ジエチレンジアミン−1,10−フェナントロリン、3,8−ジエチレンジアミン−1,10−フェナントロリン、4,7−ジヒドロキシル−1,10−フェナントロリン、3,8−ジヒドロキシル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジニトロ−1,10−フェナントロリン、3,8−ジニトロ−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、3,8−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジスペラミン(disperamine)−1,10−フェナントロリン、3,8−ジスペラミン(disperamine)−1,10−フェナントロリン、ジピリド[3,2−a:2’,2’−c]フェナジン、4,4’−ジクロロ−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジクロロ−2,2’−ビピリジン、及び6,6’−ジクロロ−2,2’−ビピリジンなどがあるが、この限りではない。
C.酸化還元反応
メディエーターは、触媒反応により、標識とメディエーターの酸化還元反応を達成するのに十分な条件で、捕捉された標的、代理の標的、又はバインダーの中又は上の、標識と反応させることが可能である。酸化還元反応が中で起こる溶液は、アッセイの成分を可溶化するのに適した任意の溶液であってもよく、好ましくは水を含む。酸化還元反応を引き起こすのに適した条件は、当業者に周知である。
D.酸化還元反応の検出
当業者に周知の適当な方法により、本発明の酸化還元反応の発生を検出することが可能である。たとえば、酸化還元反応の発生は、酸化還元反応の発生を示す電気化学的シグナルの変化を観察するための検出(作用)電極を使用して検出することが可能である。本明細書に記載の方法による標識の検出に適した電極は、その表面に作用表面を有する導電性基材を含み、かつメディエーターと標識との間の電子の移動に敏感である。この導電性基材は、半導体基材を含む、金属性基材であっても非金属性基材であってもよい。好ましくは、電極は、スズドープ酸化インジウム(ITO)電極、酸化スズ電極又は酸化インジウム電極である。あるいは、電極は、金、炭素繊維、カーボンペースト、又はグラッシーカーボンであってもよい。ある特定の電極材料の適性は、選択された標識及びメディエーターを含むその材料の、それらの所要酸化還元電位における有用性に最終的に左右される。導電性基材は、任意の物理学的形態、たとえば、一端に形成された作用表面を有する細長い形状をした装置、又はたとえば微量滴定プレートのウェルにおいて、片面に作用表面を有するフラットシート等をとることが可能である。
固定化された生物学的結合実体による改良に適した電極を作製するためには、適当な非導電層を用いて電極を改良する。非導電層は、生体分子の共有結合を提供すること、電極への非特異的結合をブロックすること、及びメディエーターと電極および/またはメディエーターと標識との間の電子移動を可能にすることを含む、多数の機能の1つ以上を有することが可能である。非導電層は、下記の1つ以上であってもよい、たとえば自己集合した単分子層(たとえば、米国特許第6,127,127号)、架橋したポリマー層、アルキルシラン層、ホスホン酸アルキル、リン酸アルキル、カルボキシアルカン、アルケンチオ、又はアルキルアミンを主成分とする層、ポリマー膜(米国特許第5,968,745号における)および/または生体分子、たとえば、タンパク質、抗体、ビオチン結合性分子(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン)、タンパク質A、タンパク質G、受容体、又はオリゴヌクレオチド等の1つ以上の層。生体分子で構成される非導電層の場合、非導電層は、バインダー、標的タンパク質、代理標的、又はアフィニティリガンドに対する捕捉層の役割を果たすことができる。たとえば、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を検出するための電極では、非導電層は、抗hCG捕捉抗体であってもよく、リガンドを検出するための電極では、受容体分子が非導電層の役割を果たすこともあり得る。あるいは、非導電層は、捕捉抗体に関するタンパク質A又は、捕捉分子に対する抗体(すなわち捕捉分子としてストレプトアビジンを使用する結合アッセイの場合の抗ストレプトアビジン抗体、受容体に基づくアッセイの場合の抗受容体抗体)等の、捕捉分子を結合する生体分子であってもよい。非導電層の性質と関係なく、この層は最終的に、電気化学的検出前にメディエーターを含有する溶液と接触して配置される。
一般に、検出電極と併せて、参照電極及び補助電極も、メディエーター溶液と接触して配置される。適当な参照電極は当該技術で周知であり、たとえば、銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極、飽和カロメル電極(SCE)、及び銀擬似参照電極(silver pseudo reference electrode)などがある。適当な補助電極は白金電極である。
標識の触媒的酸化還元により生じる電気化学的シグナルを検出することにより、サンプル中に特定の物質が存在するか存在しないかを決定することが可能になる。本明細書で使用される、物質の「有無」を決定又は検出する等の用語は、本発明を説明するために使用されるとき、物質の計量も含む。本発明では、遷移金属メディエーターが電極により酸化される。次いで、このメディエーターは標識により還元され、次いで電極にて再酸化される。従って、触媒回路の一部として、遷移金属メディエーターの還元形が再生される結果となる、標識から遷移金属メディエーターへの電子移動が存在する。サンプル中の標的の有無を決定するステップは、一般に、(i)標的を特異的に結合することができる電極及び標的を特異的に結合することができない電極で、メディエーターの酸化還元反応により発生する電気化学的シグナルを測定することと、(ii)両電極で、遷移金属錯体から測定されるシグナルを比較することと、次いで(iii)標的を結合することができる電極で、メディエーターから発生する電気化学的シグナルが、標的を結合しない電極でメディエーターから発生する電気化学的シグナルと本質的に同じであるか、より大きいか、又はより小さいかを決定することとを含む。電気化学的シグナルを測定するステップは、適当な方法で実施することが可能である。例えば、同一走査速度、メディエーター濃度、緩衝液条件、温度、及び/又は電気化学的方法で、標的を結合することができる電極、及び結合することができない電極からの電気化学的シグナル(たとえば、電流又は電荷)を比較することにより、電気化学的シグナルの差を決定することが可能である。
酸化還元反応と関連した電気化学的シグナルは、検出電極と電気的に連絡している適当な装置を提供することにより測定することが可能である。適当な装置は、標識とメディエーターと間に反応が起こったか否かの指標となるように発生される電子シグナルを測定することができるポテンシオスタットである。この電子シグナルは、サイクリックボルタンメトリー、ノーマルパルスボルタンメトリー、クロノアンペロメトリー、及び矩形波ボルタンメトリーを含む電気化学的方法に特有のものであってもよく、クロノアンペロメトリー及びサイクリックボルタンメトリーが一般に好ましい形態である。
サイクリックボルタンメトリーでは、一定の走査速度で(0.01mV/s〜200V/s)、0〜800mVの初期電位から500〜1600mVの最終電位まで、電気化学システムの電位を直線的に変化させる。最終電位に到達したとき走査方向を逆にし、反対方向に同じ電位範囲を再度スイープする。Ru(bpy)3 2+に好適な走査速度は、初期電位0mV及び最終電位1400mVで、1〜20V/sである。各電位における電流を収集し、データを電位対電位走査としてプロットする。Os(bpy)3 2+及びOs(Me2−bpy)3 2+等の低電位メディエーターの場合、これらのメディエーターを酸化するのに必要な酸化還元電位が低いため、0〜800mVから500〜1600mVまでの走査の代わりに、約0〜100mVから300〜1000mV(Ag/AgCl参照電極に対して)まで走査することが好ましい。
本明細書の本発明で使用されるクロノアンペロメトリーでは、電気化学的システムを、0mV〜800mVの初期電位から、500〜1600mVの最終電位まで直ちに進め、そこで指定された時間(50μs〜10s)維持し、電流を時間の関数として収集する。必要に応じて、電位を初期電位に戻してもよく、及び初期電位における電流を時間の関数として収集してもよい。Ru(bpy)3 2+に好ましい電位ステップは、50〜1000msの収集時間で、0〜800mVから1300mV(対Ag/AgCl)までの間である。Os(bpy)3 2+及びOs(Me2−bpy)3 2+等の低電位メディエーターの場合、約0〜100mVから300−1000mV(対Ag/AgCl)まで進むことが好ましい。
クロノクーロメトリーでは、やはり電位ステップが適用される。本明細書に記載の本発明で使用するためには、初期電位(0mV〜800mV)で開始し、電気化学的システムを最終電位(50mV〜1600mV)まで直ちに進める。電気化学的システムを、指定された時間(50μs〜10s)、最終電位に保ち、電荷を時間の関数として収集する。現在は行われないが、必要に応じて、電位を初期電位に戻し、初期電位における電荷を時間の関数として収集することができる。
本明細書の本発明に使用されるであろう代表的な装置は、たとえば、流体サンプルを収容するためのサンプル容器、上述のような電極、及び電極表面と電気的に連絡しているポテンシオスタットを含んでもよい。さらに、本装置は、好ましくは、電極又は電極表面上の非導電層に付着した、結合対の第1のメンバー、たとえば捕捉抗体を含む。本発明は、第1及び第2の対向する面、第1の面上の導電性電極、及び第2の面上の酸化還元反応の検出を可能にするほど十分に第1面に近い第2面上の、標的物質のための固定化バインダーを有する超小型電子基材を含む超小型電子装置と共に使用することができる。酸化還元反応アッセイ形式は、1)固定化された第1のバインダーにより捕捉される標的物質が、標的物質用の第2の標識バインダーによって検出される、サンドイッチ形式、2)標的物質が固定化された第1のバインダーにより捕捉され、標的に結合した標識により直接検出される形式、3)固定化バインダーへの結合に関して、サンプル中の標的物質と競合する標識された標的又は標識された代理標的を使用した、競合形式、4)標識されたバインダーの結合に関して、サンプル中の標的物質が競合する標識されたバインダー及び固定化標的物質を使用した競合形式、又は5)固定化された第1のバインダー、第2の標識されたバインダー、及び2つのバインダー間の相互作用に影響を及ぼしても及ぼさなくてもよい被検サンプルを使用した、結合アッセイ形式のいずれであってもよい。
E.シグナルの解析
2種のメディエーターのサイクリックボルタモグラムが得られるとき、各メディエーターに対応する電位で、2つのピーク電流を測定することができる。サンプルが、今問題になっている2つのDNA配列の一方または両方を含むと考えられる場合、各配列に、予め選択された塩基を選択する。第1の予め選択された塩基は、第2の予め選択された塩基より高い電位で酸化される。たとえば、第1の予め選択された塩基は、7−デアザアデニンであってもよい。この塩基は、Ru(bpy)3 2+により還元され、そのため、第1のメディエーターはRu(bpy)3 2+である。次いで、第2の予め選択された塩基は、第1の予め選択された塩基より低い電位を有するよう選択される。第2のメディエーターは、第1のメディエーターより低いが、第2の予め選択された塩基を酸化できるほど十分に高い電位を有するように選択される。たとえば、この場合、第2の予め選択された塩基は、たとえば、7−デアザグアニンであってもよい。7−デアザグアニンを酸化するが7−デアザアデニンを酸化しない第2のメディエーターは、Ru(Me2bpy)3 2+であろう。第2の予め選択された塩基の電位は、第1の予め選択された塩基より低いため、第2の予め選択された塩基も第1のメディエーターにより酸化される。従って、第1のメディエーターからの電流は、第1又は第2の予め選択された塩基のいずれかの存在によって増加し、第2のメディエーターの電流は、第2の予め選択された塩基の存在によって増加する。最も簡単な分析で、第2のメディエーターに関する電流増強があれば、これを第2の予め選択された塩基の量を決定するために使用する。次いで、第1のメディエーターで観察された電流増強からこの量を減算する。第1のメディエーターに関する残りの電流増強は、第1の予め選択された塩基の存在に起因すると考えられる。
実際には、第1のメディエーターに関する電流への、第2の予め選択された塩基の貢献は、第2のメディエーターへの、第2の予め選択された塩基の貢献より低い可能性がある。これは、ボルタンメトリックスイープで、第1のメディエーターより先に第2のメディエーターが酸化される場合、第1のメディエーターが酸化される前に、第2の予め選択された塩基の一部が酸化され、多少の第2の予め選択された塩基は、第1のメディエーターにより酸化されないままであるために生じる。この作用は、標準検量線で決定することができ、これを使用して、第1のメディエーターからの電流増強を、適切な塩基濃度の組合せに割り当てることができる。
予め選択された塩基又は標識(たとえば第3、第4の)からのシグナルを用いた解析を、上述と同様の方法で実施することができる。
F.標的結合の計量
本明細書に記載の方法は、核酸及びタンパク質標的及び他の結合性物質の定量的検出に特に適している。本セクションに記載の事例では、メディエーターにより結合される標的と関連した標識の酸化に関する速度定数は、サイクリックボルタモグラムから、デジタル・シミュレーションによって決定することができる。ほとんどの条件で、この反応は、二次反応速度論に従い、したがって、速度=k[メディエーター][標識]で表される。ここで、kは、個々の標識に特有の速度定数であり、[メディエーター]はメディエーターの濃度であり、[標識]は標識の濃度である。k及び[メディエーター]が既知であれば、標識の量、及びしたがって標的の量を決定することができる。実際には、被検サンプルを加えた電極で観察される電気化学的シグナルの増強を使用して、電極に結合した標識(及び標的)の量が直接得られるように、標識を含有する標準溶液の異なる量で得られる電流増強に関する検量線を構築する。次いで、この量を、被検サンプル中に存在する標的の量に直接関係させる。
G.核酸増幅方法
本発明の方法は、ハイブリダイズされたDNAを生成するためにDNAサンプルをオリゴヌクレオチドプローブに接触させるステップを含むため、ある種の用途では、プローブと接触させる前にDNAを増幅することが望ましい場合がある。さらに、1つ以上の予め選択された塩基を、増幅ステップで使用されるプライマーに含めるか、又は予め選択された塩基の三リン酸塩を増幅混合物に使用する、すなわち、グアノシン−5’−三リン酸の代わりに7−デアザグアノシン−5’−三リン酸を増幅反応で使用するかのいずれかによって、合成の予め選択された塩基を標的に導入するために、増幅方法を使用することができる。
選択された、又は標的の核酸配列の増幅は、任意の適当な方法で実施することができる。一般に、D.Kwoh and T.Kwoh,Am.Biotechnol.Lab.8,14−25(1990)を参照されたい。適当な増幅技術の例としては、ポリメラーゼ連鎖反応(RNA増幅の場合、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応を含む)、リガーゼ連鎖反応、ストランド置換増幅、転写を基本とする増幅(D.Kwohら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,1173−1177(1989)参照)、自律的配列複製(self−sustained sequence replication、すなわち「3SR」)(J.Guatelliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,1874−1878(1990)参照)、Q.β.レプリカーゼシステム(P.Lizardiら、Biotechnology 6,1197−1202(1988)参照)、核酸配列に基づく増幅(すなわち「NASBA」)(R.Lewis,Genetic Engineering News 12(9),1(1992)参照)、修復連鎖反応(又は「RCR」)(R.Lewis、上掲参照)、及びブーメランDNA増幅(又は「BDA」)(R.Lewis、上掲参照)などが挙げられるが、この限りではない。増幅生成物に組み込まれる塩基は、天然の塩基であっても(増幅の前又は後に修飾される)修飾塩基であってもよく、この塩基は、後続の電気化学的検出ステップを最適化するように選択することが可能である。増幅のための技術は周知であり、とりわけ、米国特許第4,683,195号、米国特許第4,683,202号、米国特許第4,800,159号、及び米国特許第4,965,188号、G.Walkerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,392−396(1992);G.Walkerら、Nucleic Acids Res.20,1691−1696(1992),R.Weiss,Science 254,1292(1991)に記述されている。
H.アッセイ形式
本発明でサンプルを接触させ、次いで結合相互作用を検出する一般的な方法は、従来のサンドイッチアッセイ、競合アッセイ、又は直接標的検出によるアッセイを含むがその限りではない任意の適当なアッセイ形式で実施することができる。これらのアッセイは、免疫学的アフィニティ、又は受容体とリガンドとの相互作用、タンパク質とタンパク質との相互作用、核酸と核酸との相互作用、又は核酸とタンパク質との相互作用に基づくアフィニティをベースとしてもよい。本発明でバインダーとして使用することができるタンパク質に関する細胞受容体としては、輸送タンパク質に関する受容体(すなわち、トランスフェリン受容体)(Testa,U.ら、Crit.Rev.Oncog.,1993,4,241)、ホルモン/成長因子に関する受容体(すなわち、上皮成長因子、インスリン、神経成長因子)(Ullrich,A.ら、Cell,1990,61203;Baxter,R.C.,Am.J.Physiol.Endocrinol.Metabol.,2000,278,E967)、及び黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、及び甲状腺刺激ホルモン等のホルモン類に関するG−タンパク質結合受容体(Schoneberg,T.ら、Mol.Cell Endocrinolo.,1999,151181)などがあるが、この限りではない。細菌起源の受容体(Modun,B.J.ら、Microbiology,1998,144 1005;Schryvers,A.B.ら、Adv.Exp.Med.Biol.,1998,443 123)及びウイルス起源の受容体(Bella,J.ら、J:Struct.Biol,1999,128 69;Domingo,E.ら、Virus Res.,1999,62169)も本発明で使用することが可能である。細胞外マトリックスタンパク質(ECM)を使用して、ECM結合性タンパク質を検出することができる(Najjam,S.ら、Cytokne,1997,9 1013)。DNAを、DNA結合性タンパク質の結合メンバー、たとえば、転写因子(アクティベーター、レプレッサー、又はレギュレーター)として固定化することができる(McGown,L.B.ら、Anal.Chem.,1995,67 663A)。結合相互作用の介在電気化学的検出を使用して、タンパク質とタンパク質との相互作用及び他の生物学的相互作用に及ぼす影響に有望な薬剤を評価することも可能である。したがって、本明細書に記載の技術は、様々な薬物標的と薬物との相互作用に応用することができる創薬のための多用途の結合アッセイを提供する。本明細書で使用される用語「標的タンパク質」は、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、タンパク質フラグメント、ポリペプチド類、糖タンパク質フラグメント及びリポタンパク質フラグメントを含む。
1.サンドイッチ。簡単に記載すると、サンドイッチアッセイ形式の場合、手順は結合対の第1のメンバー(すなわち、抗体、受容体、又はDNA)で電極を修飾するステップと、標的タンパク質又は標的物質を含有しても含有しなくてもよいサンプルを加えるステップと、次いで第2の結合メンバーを加え、未結合の試薬を除去するために洗浄し、メディエーターを加えるステップとからなる。電気化学的反応測定を実施し、対照に比して増強されたサイクリックボルタンメトリー又はクロノアンペロメトリーシグナルは、標的タンパク質又は標的物質がサンプル中に存在することを示す。
この形式では、固相に固定化された第1のバインダー、たとえば、標的複合体を形成するための抗体、抗体フラグメント、受容体タンパク質又はDNAによる捕捉、続いて、3員標的複合体を形成するための、標識された第2のバインダーにより捕捉される標的の結合により、サンプル中の標的が検出される。好ましい実施形態では、第2のバインダーは、内因性標識(すなわち、電気化学的に活性なアミノ酸)のみを含み、またサンプル中に標的が存在することは、標的複合体によって生じる電流増加から明白である。対照的に、標的を含有しないサンプルでは、複合体形成が起こらない、したがって、専ら固相固定化バインダー中の内因性標識のみによって電流が発生するため、有意に低い電流が発生する。
サンドイッチアッセイの第2の好ましい実施形態では、第1の好ましい実施形態によって発生する電流は、標的複合体上の第2のバインダーを認識して4員複合体を作る第3のバインダーの付加により増強される。これは、古典的イムノアッセイにおける二次バインダーの使用に類似している。最初の2実施形態(上記)に好ましいメディエーターは、約1.05Vの電位を有するRu(bpy)3 2+又は0.65V(対Ag/AgCl)の電位を有するOs(bpy)3 2+である。
サンドイッチアッセイ形式の第3の好ましい実施形態では、第2のバインダー又は第3のバインダーは、オリゴヌクレオチド類、タンパク質、ペプチド類、又は低い酸化還元電位(Ag/AgClに対しておよそ<0.6V)を有する修飾アミノ酸を含有するペプチド類等の標識で共有結合的に標識されている。これらの低電位に適合するメディエーター、たとえばOs(Me2−bpy)3 2+は、低電位標識と共に使用される。加えて、第2のバインダー又は第3のバインダーは、やはり低電位を有するある種の電子供与体化合物で標識されていてもよい。各アッセイで、第2のバインダー又は第3の各バインダーに対して、異なる予め選択された塩基が選択される多様なアッセイを実施できるように、各検体用の第2のバインダー及び第3のバインダーは、ある特定の検体に対応する予め選択された塩基によって選択することができる。
本発明では、本検出方法の上記配列ステップの代替法は、固定化された第1のバインダーに標的が結合する前に第2のバインダーの結合が起こるように、固定化された第1のバインダーに混合物を暴露する前に、サンプルを第2のバインダーと混合することである。
2.競合。競合アッセイ形式では、標的は、固定化バインダーへの結合に関して、標識された標的と競合する。たとえば、ホルモンであるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)のβ鎖は、チロシンに富むペプチド又はグアニンを含有するオリゴヌクレオチドで標識することができ、また、hCGのβ鎖に特異的なウサギ抗体に結合することが証明されている。サンプル中のhCGの検出は、β鎖特異的抗体に関する、hCGと標識されたβ鎖との競合によって可能である。このシナリオでは、標的hCGが存在しなければ電気化学的シグナルが高く、固定化hCGβ鎖特異的抗体に関して、標的hCGが、標識されたβ鎖と競合すれば、電気化学的シグナルが減少する。同様の方法で、固定化バインダーに結合した標識された代理標的を、被検サンプル中に存在する標的で置き換え、結果として電気化学的シグナルを減少させることが可能である。競合形式は、薬物、ステロイド類及びビタミン類等の小分子の結合相互作用を検出するのに特に適する。
3.直接。直接標的検出アッセイでは、標識された第2のバインダーを加えないこと以外は、サンドイッチアッセイの場合と同じステップである。この場合、標的タンパク質そのものが、電気化学的に活性であるという特性を有し、標的の直接的な介在電気化学的検出を可能にするため、標識された第2のバインダーは必要ではない。このアプローチは、特に巨大タンパク質(すなわち、≧150kD)、たとえば、多くのアミノ酸を含有し、したがって、Ru(bpy)3 +2等のメディエーターとの触媒的酸化還元反応により単独でかなりの電気化学的電流を発生することができる、抗体又は他のグロブリン等に使用することができる。
4.固定化された標的物質のための競合アッセイ。この形式では、標的物質又は代理標的物質が電極表面上に固定化され、サンプル(標的物質を含んでも含まなくてもよい)及び標識されたバインダー(内因性又は外因性のいずれか)に暴露される。この技術分野、たとえば、創薬で通常に使用される通り、代理標的物質は、標識されたバインダーに対して、標的物質より低い結合親和性を有する。本発明のこの実施形態では、サンプル中に標的物質が存在しなければ、標識されたバインダーが固定化された代理標的物質に結合するため、電気化学的シグナルが高く、標識されたバインダーに関して、サンプル中に存在する標的物質が固定化代理標的物質と競合すれば、電気化学的シグナルが減少する。
5.結合相互作用アッセイ。この形式では、結合対のメンバーである第1のバインダーが電極表面上に固定化される。固定化されたバインダーは、第1のバインダーと第2のバインダーとの間の結合相互作用に及ぼす被検サンプルの影響を決定するために、被検サンプル及び結合対のメンバーである第2のバインダーに暴露される。被検サンプルは、2種のバインダーの結合を促進するか、阻害するか、又は結合に影響しない物質を含んでもよい。たとえば、被検サンプルが、2種のタンパク質が互いに結合するのを防ぐ薬物候補物質を含むこともあり、被検サンプルが、結合相互作用を増強する薬物候補物質を含むこともあり得る。したがって、結合相互作用に対して有する作用を決定するために、このアッセイ形式を使用して、潜在的な薬物化合物をスクリーニングすることができる。被検サンプルが結合相互作用に影響を及ぼす作用様式としては、バインダーの1つの結合のブロック又は増強及び結合部位の構造変化の誘導などがあるが、この限りではない。触媒を介した電気化学反応を使用して、物質の有無を検出することに意図がある上記アッセイ形式では、触媒を介した電気化学反応を使用して、結合対のメンバー間の結合相互作用に及ぼす物質の影響を検出するように、結合相互作用アッセイ形式がデザインされる。
I.電極構造及び装置。
上述の方法に従って、核酸中の予め選択された塩基を電気化学的に検出するのに有用な電極は、(a)上に形成された作用表面を有する導電性基材、及び(b)作用表面に接続された非導電性(たとえばポリマー)層を含む。ポリマー層は、第1の結合対、第2の結合対、第3の結合対、又は第4(等々)の結合対のメンバーを(たとえば、疎水性相互作用又は任意の他の適当な結合技術によって)結合するものであり、遷移金属錯体透過性である(すなわち、遷移金属錯体が、ポリマーに結合した核酸に移動できる)。既知の技術に従って、結合対のメンバー(たとえば、プローブ又は「バインダー」)を非導電層上に固定化することが可能である。導電性基材は、半導体基材を含む金属性基材であってもよく、非金属性基材であってもよい(たとえば、金、グラッシーカーボン、インジウムドープ酸化スズ等々)。導電性基材は、一端に形成された作用表面を有する細長い形状、片面に形成された作用表面を有するフラットシート等の、任意の物理的形態をとることができる。非導電層は、ポリマー層を作用表面に固定すること、電極上でポリマー溶液を蒸発させること、又は電子重合による等の任意の適当な方法で、作用表面に接続することが可能である。代表的な非導電性材料としては、ナイロン、ニトロセルロース、ポリスチレン、ポリ(ビニルピリジン)、シラン類又はポリシラン類等のポリマー、及び他の材料、たとえば、ストレプトアビジン、アビジン、タンパク質A、タンパク質G及び抗体などがある。非導電層の厚さは重要ではないが、100Åから1、10、又は100μmまでであってもよい。上述の方法の本質的に全てにおいて、この電極を使用することが可能である。
上述の技術の利点は、超小型電子装置で実施できることである。上述の方法における核酸種の電気化学的検出に有用な超小型電子装置は、対抗する第1の面及び第2の面、第1の面上の導電性電極(上述の通りに、それに接続された非導電層がある又はない)、及び導電性電極に隣接した第1の面上、又は電極上の非導電層上に固定化されたオリゴヌクレオチド捕捉プローブを有する超小型電子基材含む。さらに、捕捉プローブは、そのプローブで、又はそのプローブにハイブリダイズされた標的核酸で、起きている酸化還元反応が、隣接する電極で検出されるように、隣接する電極に十分近い距離(たとえば、約0.1、1、又は2muから、約50、100、500又はl000muまで)をあけて配置されていてもよい。
好ましい実施形態では、超小型電子装置は、第1の対向する面上の、複数の離れた電極、及び各離れた電極の近傍に固定化された複数の離れた捕捉プローブを有する。互いに異なる複数の離れたプローブが、それぞれ関連付けられた電極を備えることにより、様々な異なるハイブリダイゼーション事象を検出することができる、1つの小型装置が提供される。装置を接続することができるか、さもなければ、本明細書に記載の方法の検出ステップ及び決定ステップを実施するために必要な電子装置と作動可能に関連させることができるように、各電極は適当な接触子に電気的に接続されている。
プローブは、既知の技術によって、超小型電子基材上の適切な位置に選択的に固定化することが可能である。たとえば、ピラング(Pirrung)らに付与された米国特許第5,405,783号を参照されたい。超小型電子基材は、半導体材料(たとえば、ケイ素)であってもよく、従来の超小型電子技術を使用して加工することができる非半導体材料(たとえば、ガラス)であってもよい。電極は、金属であってもよく、多結晶ケイ素等の非金属導電性材料であってもよい。電極は、デポジションエッチング等の従来の超小型電子加工技術を使用して形成することができる。様々な適当な超小型電子構造及び製作技術は、当業者に周知である。たとえば、S.M.Sze,VLSI Technology(1983);S.K.Ghandhi,VLSI Fabrication Principles(1983)を参照されたい。
下記の実施例は、本発明を説明するために記載されており、本発明を制限するものと解釈すべきではない。以下の実施例において、bpは塩基対を意味し、cDNAはコピーDNAを意味し、μgはマイクログラムを意味し、ORFはオープン・リーディングフレームを意味し、minは分を意味する。
材料及び方法
材料。合成オリゴヌクレオチドプライマーは、チャペルヒル(Chapel Hill)にあるノースカロライナ大学ラインバーガー・コンプレヘンシブ・キャンサー・センター(Lineberger Comprehensive Cancer Center at the University of North Carolina)のヌクレイック・アシッド・コア・ファシリティ(Nucleic Acid Core Facility)から購入し、さらなる精製はされていなかった。水は、ミリキュー(MilliQ)精製システム(ミリポア(Millipore))で生成した。緩衝調合液用試薬は、ギブコ BRL(Gibco BRL)又はマリンクロット(Mallinckrodt)から購入した。シーケム LE アガロース(SeaKem LE agarose)は、FMC バイオプロダクツ(FMC BioProducts)から購入した。[Ru(bpy)3]Cl2は、アルドリッチ(Aldrich)から購入し、メタノールからの再結晶により精製した。[Ru(Me2bpy)3]Cl2(Me2bpy=4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン)及び[Fe(bpy)3]Cl2は、前述(DeSimone and Drago(1970)J.Am.Chem.Soc.92:2343−2352;Mabrouk and Wrighton(1986)Inorg.Chem.25:526−531)の通りに調製した。未修飾のdNTPは、ファルマシア(Pharmacia)から購入し、7−デアザ類似体は、ロシュ(Roche)から入手した。
器具類。溶液の濃度は全て、ヒューレット・パッカード HP(Hewlett−Packard HP)8452ダイオード・アレイ分光光度計を使用して、分光光度法で決定した。使用した吸光計数は、Ru(bpy)3 2+にはε452=14600M-1cm-1、Fe(bpy)3 2+にはε524=8400M-1cm-1、Ru(Me2bpy)3 2+にはε458=17000M-1cm-1であった(Ford−Smith and Sutin(1961)J.Am.Chem.Soc.83:1830−1834;Mabrouk and Wrighton(1986)Inorg. Chem. 25:526−531)。オリゴヌクレオチドに関する吸光計数は、ストランド濃度で核酸濃度を与える、最近傍式(nearest neighbor equation)を使用して算出した(Fasman(1976)CRC Handbook ofBiochemistry and Molecular Biology,Section B(Cleveland,OH:CRC Press))。
ポリメラーゼ連鎖反応。反応混合物各100μlは、鋳型1.2ng、dATP/7−デアザ−dATP、dCTP、dGTP/7−デアザ−dGTP及びdTTPを各200μM、プライマー(上流プライマー及び下流プライマー又は上流プライマー及び中間プライマー;プライマー配列については図6.2参照)各5400nM、MgCl2 2mM、5U Taqポリメラーゼ(ギブコ BRL(Gibco BRL))、及びTaqポリメラーゼを含む1×緩衝液を含んでいた。PCRSprintサーモサイクラー(ハイベイド(Hybaid))を用いて、初期変性ステップ94℃で3分間、続いて下記のプロフィールで40サイクル、94℃で1分間の変性、63℃で1分間のアニーリング、及び72℃で45〜60秒間の伸張で、増幅を実施した。72℃で5分間の最終伸張ステップを、増幅の最後に含めた。QIAquick PCR精製キット(キアゲン(Qiagen))を使用し、製造会社の説明書に従って、PCR産物を精製した。
制限消化。各制限酵素消化は、3〜8μlの精製PCR産物及び1×NEB緩衝液4を含んでいた。反応を、10UのSmaIの存在下、25℃で、又は2.5UのClaI又はNspIの存在下、37℃で、1時間インキュベートした。結果として生じたフラグメントを、2%のアガロースゲル上、100Vで1〜2時間、サイズ別に分けた。ゲルを臭化エチジウム(シグマ(Sigma))で染色し、CCDカメラ(スペクトロライン(Spectroline))を使用して可視化した。ΦX174/HaeIII DNAラダー(ギブコ BRL(Gibco BRL))との比較によって、DNAフラグメントのサイズを推定した。
DNA固定化。ITO電極を、2−プロパノール中で15分間超音波処理し、MilliQ水で2回洗浄した。100mMのNaOAc/HOAc、pH6.8中に所望の濃度のPCR産物3μlを含有する溶液を、ジメチルホルムアミド(DMF)27μlに加えた。結果として得られた溶液を電極の中心に移し、定湿度チャンバ内で1時間インキュベートした。次いで電極を、MilliQ水で2回、1MのNaC1で1回、及びMilliQ水で3回(各洗浄、3分)洗浄し、風乾した。
蛍光イメージ。T4ポリヌクレオチドキナーゼ(ギブコ BRL(Gibco BRL))及び5’−[γ−32P]−dATP(アマーシャム(Amersham))を使用して、DNA溶液の一部を5’−[32P]−標識したこと以外は、ボルタンメトリー実験の場合と同様に、蛍光イメージ用ITO電極を作製した(Sambrookら(1989)Molecular Cloning:Laboratory Manual(Plainview,NY:Cold Spring Harbor))。ProbeQuant G−50 Microcolumns(アマーシャム(Amersham))に続いてエタノール沈殿を使用して、未反応の5’−[γ−32P]−dATPを、標識されたオリゴヌクレオチドから除去した。G−50マイクロカラムにサンプルを加える前に、3Mの酢酸ナトリウム、pH7、300μlで1回洗浄し、続いて、300μlの水で2回洗浄することにより、酢酸ナトリウムを製造会社により供給された緩衝液と交換した。供給された緩衝液中の成分(150mM NaCl、10mM Tris−HCl、pH8、1mM EDTA、及び0.15%Kathon CG/ICP Biocide保存料)が固定化されたDNAの量を減少させるため、このステップは重要であった。放射標識−DNA−修飾電極を、蛍光イメージャー・スクリーン上で一晩露出し、Storm 840システム(モレキュラー・ダイナミックス(Molecular Dynamics))を使用して、走査した。電極の周りに集まった等積正方形の体積積分を実施することにより、ImageQuaNTソフトウェア(モレキュラー・ダイナミックス(Molecular Dynamics))で定量化を実施した。
ボルタンメトリー。0.32cm2の幾何学面積を有するスズドープ酸化インジウム(ITO)作用電極(デルタ・テクノロジーズ(Delta Technologies))、Ptワイヤー補助電極、及びAg/AgC1参照電極(サイプレス・システムズ(Cypress Systems))を備えた、1区画セル(Willis and Bowden(1990)J;Phys.Chem.94:8241−8246)を用いたEG&G Princeton Applied Research 273Aポテンシオスタット/ガルバノスタット使用して、サイクリックボルタモグラムを収集した。DNA修飾電極のボルタモグラムは、50mMのリン酸ナトリウム、pH7中、各金属錯体の25μM溶液の存在下、10V/秒で、0〜1.3Vまでとった。DNAを含まない、清浄なITO電極を用いた緩衝液のみのボルタモグラムを、バックグラウンド除去に使用した。
実験結果
ポリメラーゼ連鎖反応。ペニシリン結合性タンパク質5(PBP5)をコードするE.Coli dacA遺伝子(ジーンバンク(GenBank)受け入れ番号D90703)を、2組のプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応用の鋳型として使用した。上流プライマー及び中間プライマーを用いた増幅で、330bpのフラグメントが生じ、上流プライマー及び下流プライマーの組合せで、1200bpの生成物が生じた(図2)。この方法を使用して合成される8種のPCR産物を、表1に列挙する。PCR産物2、4、6、及び8では、天然のグアニン及びアデニンは、7−デアザと未置換プリンが3:1の比率で、それらの7−デアザ類似体で置き換えられている(表1)。この比率は、天然のプリンを用いた場合に匹敵する収率でPCR産物を与えることが、早期の研究で証明されている(McConlogueら(1988)Nucleic Acids Res.16:9869;Seela and Roling(1992)Nucleic Acids Res.20:55−61)。PCR産物3及び5の場合と同様(表1)、天然のグアニン又はアデニンの7−デアザ損傷部による完全置換は可能であったが、収率は大幅に損害を受けた。収率損失は、前報(McConlogueら(1988)Nucleic Acids Res.16:9869;Seela and Roling(1992)Nucleic Acids Res.20:55−61)と一致した。
Figure 2005520175
7−デアザグアニン又は7−デアザアデニンが認識配列に組み込まれているとき、大部分の制限エンドヌクレアーゼは、DNAバックボーンを切断しない(Grimeら、(1991)Nucleic Acids Res.19:2791;Seela and Roling(1992)Nucleic Acids Res.20:55−61)。この加水分解からの保護は、DNA二重鎖の修飾部位における局所立体構造の変化に起因すると仮定されてきた(Seela and Roling(1992)Nucleic Acids Res.20:55−61)。もう1つの可能性は、認識にはグアニン又はアデニンのN7との接触が重要であるため、酵素が、修飾された損傷部を含むDNAに対して、低下したアフィニティを有することである(Seela and Roling(1992)Nucleic Acids Res.20:55−61)。7−デアザプリン部位における加水分解からの保護を、修飾された損傷部の、PCR産物への組み込みを確認するための道具として使用することができる。
酵素SmaI、ClaI、及びNspIに関する制限部位のおおよその位置を、図2に図式的に示す。天然のプリン類を含有する、330bp及び1200bpの両PCR産物の消化は、修飾された損傷部を含むPCR産物の消化の場合に予測されるフルサイズ生成物からゲルで分離することができる、より短いフラグメントを生じる結果となる。3種のエンドヌクレアーゼの全てが、それらの認識配列中にグアニンを有するため(図3A)、7−デアザグアニンの場合に、DNAバックボーンが、全3種の酵素による切断から保護されることが予測された。他方では、アデニンはSmaIの認識配列中になく(図3A)、そのため、7−デアザアデニンを含むPCR産物は、このエンドヌクレアーゼによって切断されるが、ClaI及びNspIによる加水分解から保護されるはずである。
本研究で合成された全8種のPCR産物(表1)に制限消化を実施し、代表的な消化産物を図3B〜Eに示す。天然のグアニン及びアデニンを含むPCR産物1では、全3種の酵素による完全なDNA切断が見られた。(図3B)。予想通り、7−デアザグアニン含有PCR産物2は、全3種のエンドヌクレアーゼ(図3C)による消化から保護されたが、7−デアザアデニンを含有するPCR産物4は、SmaIのみで切断された(図3D)。最後に、PCR産物6は、両7−デアザプリンを含み、SmaIでわずかに加水分解されるに過ぎなかった(図3E)。従って、制限消化は、修飾された損傷部がPCR産物に組み込まれる、直接証拠を提供する。
DNA固定化。リン酸バックボーンと金属酸化物との相互作用により、核酸をITO表面に直接結合することによって、PCR産物の固定化が達成された(Armistead,P.M.;Thorp,H.H.Anal.Chem.2000,72,3764−3770.))。定湿度のチャンバ内で、管理された時間、インキュベーションすることにより、ジメチルホルムアミド(DMF)及び100mMの酢酸ナトリウム、pH6.8の9:1溶液からDNAを沈殿させた。水及び塩による徹底的な洗浄で、表面上に強く固定化されなかった過剰なDNAを除去する。オリゴヌクレオチド、及びDNAポリマー中のグアニンの酸化(Armistead,P.M.;Thorp,H.H.Anal Chem.2000,72,3764−3770)。
個々のPCR産物。ITO表面修飾の程度を、放射標識PCR産物に暴露された電極の蛍光イメージによって決定した。固定化された核酸の量と共に、電極表面に使用したDNAの量から決定される個々のPCR産物の固定化効率を、表2にまとめる。プリンヌクレオチド組成及びDNA長さに関係なく、1時間のインキュベーションにより、20〜30%の固定化効率が得られた。核酸鎖は、リン酸バックボーンを介して金属酸化物表面と相互に作用するため、修飾塩基の存在は、電極修飾の程度に影響を与えないと考えられた。この結果は、固定化核酸の量を標準化する必要なしに、異なる修飾DNA塩基の、サイクリックボルタンメトリーにおける電流増強の直接比較を可能にするため、特に重要である。
Figure 2005520175
比較的短いインキュベーション時間の場合、DNAの長さは、固定化効率に影響しないようであった。より長いフラグメントは、それぞれの個別の鎖上により多くのリン酸基を有し、従って、より高いアフィニティで金属酸化物に結合するはずである。他方では、より短いフラグメントは、電極表面上のより小さい面積を占拠するため、より多数のより短いフラグメントを固定化することが可能である。明らかに、これらの2つの対立する作用は、1時間インキュベーションの間に互いに相殺され、異なるサイズのDNA分子で、類似した程度の電極修飾が生じる結果となる。
インキュベーション時間が1時間から4時間に増加すると、330bpのDNAフラグメントでは、固定化効率が20〜30%から50%に上昇する結果となった(表2)。上昇は直線的ではなく、反応の時間的経過中に、固定化されたDNAの量の飽和を示すこの系の速度論的研究と一致していた(Armistead,P.M.;Thorp,H.H.Anal.Chem.2000,72,3764−3770)。より短いインキュベーション時間の場合と同様、PCR産物のプリンヌクレオチド組成は、ITO表面に結合される核酸の量に影響を及ぼさなかった。
PCR産物の混合物。330bp及び1200bpのPCR産物をITO表面上に共に固定化し、2成分のそれぞれによる電極修飾の程度を、蛍光イメージで決定した(表3)。同一のヌクレオチド濃度又はストランド濃度のいずれかで、2種のフラグメントの混合物に、電極を暴露した。1200bpのフラグメントは、各個別のDNA鎖上により多くのリン酸基が存在するため、330bpのPCR産物に比して、ITO表面に対して増強されたアフィニティを示した。電極に適用されるヌクレオチドの量が減少したとき、330bpのPCR産物1及び4の固定化効率が低下し、330bp及び1200bpのフラグメントのストランド濃度が等しくなった。ITO表面に付着したより短いフラグメントの量が減少することにより、電極表面上のより多くの結合部位が、より長いPCR産物に利用できるようになったため、同時に、PCR産物8の固定化効率が上昇した。
Figure 2005520175
ボルタンメトリー。PCR産物に組み込まれた7−デアザプリン損傷部の電気化学的検出は、介在サイクリックボルタンメトリーで達成された。高走査速度のDNA修飾ITO電極で、異なる酸化還元電位による金属錯体メディエーターの混合物のボルタモグラムを得た。他の文献で詳細に論じられている理由から、DNAが電極表面上に固定化され、触媒が溶液中にある場合、高走査速度は必須である(Armistead(2000)インジウムスズ酸化物に吸着されたグアニンの触媒的酸化。Chemistry(Chapel Hill,NC:University of NorthCarolina at Chapel Hill);Armistead and Thorp(2000)Anal.Chem.近刊)。
7−デアザグアニンを用いたPCR産物。グアニン(1)、3:1の7−デアザグアニン:グアニン(2)、及び7−デアザグアニン(3)を含有する、330bpのPCR産物で修飾したITO電極を、初期セットのボルタンメトリー研究で使用した。DNA修飾電極を用いた、Fe(bpy)3 3+/2+(Ag/AgClに対してE1/2=0.83V)及びRu(bpy)3 3+/2+(Ag/AgClに対してE1/2=1.05V)の等モル混合物の代表的なボルタモグラムを、図4Aに示す。予想通り、PCR産物1の存在下、金属錯体によるグアニンの触媒的酸化のため、Ru(bpy)3 2+波で、大きい電流増強が確認された。Fe(bpy)3 3+/2+ピークにおける僅かな電流増強は、低い酸化還元電位を有する錯体によるグアニンの酸化に関する、緩慢な速度定数を表す。
PCR産物2及び3中の、天然のグアニンを7−デアザ類似体で置き換えることにより、酸化波の僅かな増加を招いた。Fe(bpy)3 3+/2+は、かなりの程度まで7−デアザグアニン損傷部と反応するのに十分に強力な酸化剤であった(E1/2=0.75V)(Kelley and Barton(1998)Chem.Biol.5:413−425;Yang,I.V.;Thorp,H.H.Inorg Chem.2001,40,1690−1697.)。事実、Fe(bpy)3 3+/2+に類似した酸化還元電位(E1/2=0.86V)を有する、Ru(Me2bpy)3 3+/2+とオリゴヌクレオチドの7−デアザグアニンとの反応は、溶液中のオリゴヌクレオチドでも電極表面上に固定化されたオリゴヌクレオチドでも、速かった。電極表面上に固定化されたzG損傷部の数は、オリゴヌクレオチド及びPCR産物で類似しているため、オリゴヌクレオチドに比して、固定化DNAポリマーでは7−デアザグアニンの反応性が減少していたようである。本研究における、減少した電流増強は、触媒の分解にも原因があろう。酸化された鉄の錯体は、本質的にルテニウムの錯体より安定性が低く、核酸の存在によって自己酸化過程が触媒される可能性があり、ポリアニオンへの結合は、金属の局所濃度を上昇させ、分解を促進する可能性がある。ポリマーDNAの存在下で、RuOH2+錯体と、RuO2+形及びRuOH2+形との不均化が増強されることは、先に証明されている(Welchら(1997)Inorg.Chem.36:812−4821)。
グアニンが7−デアザグアニンで置き換えられるとき、鉄波(iron wave)における電流の増加は、Ru(bpy)3 3+/2+のピーク電流の大幅な減少を伴う。電流増強の減少は、グアニンが7−デアザ類似体で置き換えられるような、グアニン数の減少に起因する。天然のグアニンを含まないPCR産物で修飾された電極上のルテニウム波における残留電流増強は、一部のzG損傷部を、ルテニウムとの反応に利用できるままにしておく、鉄と7−デアザグアニンとの不完全反応に起因する公算が高い。この結果は、多数のzG塩基を含むオリゴヌクレオチドにおけるRu(Me2bpy)3 3+/2+との反応後の、7−デアザグアニンとRu(bpy)3 3+/2+との残留反応性に関する我々の観察結果に似ている。
3セットの独立した実験からの、2金属錯体に関する平均ピーク電流のヒストグラムを、図4Bにプロットする。より多いzG損傷部がPCR産物に組み込まれたとき、Fe(bpy)3 3+/2+波における電流増強はより顕著になったが、PCR産物1、2、及び3に関するピーク電流は、互いに誤差範囲内であった。再現性を高めるために、天然グアニン(7)又は75%の7−デアザグアニン(8)のいずれかを用いて、1200bpのPCR産物を合成した。全ての7−デアザ−dGTPが存在する条件下で、鋳型DNAの1200bp部分を増幅することは能率的であるため、全ての7−デアザグアニンを含むPCR産物は、この研究から除外した。より長いDNAポリマー中に、より多数のzG損傷部が存在することにより、より多い電流増強を招く可能性がある。触媒の分解に関連する問題を緩和するために、Fe(bpy)3 2+もRu(Me2bpy)3 2+と置き換えた。
PCR産物7又は8で修飾したITO電極でとった、Ru(Me2bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+の代表的なボルタモグラムを図5Aに示し、3セットの独立した実験からの、2金属錯体に関する平均ピーク電流のヒストグラムを図5Bにプロットする。Ru(Me2bpy)3 3+/2+及びRu(bpy)3 3+/2+の酸化波における電流増強の傾向は、330bpフラグメントのものと類似していた(図4)。しかし、ITO表面上のより高濃度の反応性ヌクレオチドのため、1200bpPCR産物で、より大きくかつより多い再現可能なピーク電流が確認された。従って、より長いDNAポリマーでは、Ru(Me2bpy)3 3+/2+によって、7−デアザグアニン損傷部を再現可能に検出することができる。生物学的に関係のある配列の大部分は少なくとも1kb長であるため、より大きいDNA分子で、総体的電流及び再現性が高まることは有利である。
7−デアザアデニンを含むPCR産物。Fe(bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+の等モル混合物のサイクリックボルタモグラムは、アデニン(1)、3:1 7−デアザアデニン:アデニン(4)、及び7−デアザアデニン(5)を含む330bpのPCRフラグメントで修飾したITO電極でとった(図6A)。PCR産物1で修飾した電極による、ルテニウムピークの電流増強は、グアニンの触媒的酸化が原因であった。Ru(bpy)3 3+/2+は、グアニンのほかにも7−デアザアデニンを酸化することができるため、zA損傷部をDNAポリマーに導入したとき、ルテニウム波における電流増強がより顕著になった(Baikら、J.Phys.Chem.B(2001)近刊)。Fe(bpy)3 3+/2+の酸化還元電位は、7−デアザアデニンの酸化を達成するほど十分に高くなく、鉄波における電流増強をきたさなかった。PCR産物4に比して、PCR産物5におけるより多数の7−デアザアデニン損傷部は、より多い電流につながらず、電流応答の飽和を示す。これは、固定化グアニンの濃度が上昇するにつれて電流が飽和する、天然のグアニンとRu(bpy)3 3+/2+との反応に似ている(Armistead and Thorp(2000)Anal.Chem.近刊))。
2つの因子が、G核酸塩基及びzA核酸塩基の両者を含むDNA分子の反応性増強に寄与する公算が高い。1つは、反応性部位数の増加であり、これは事実上、基材濃度の上昇である。もう1つの可能性がある一因は、反応性部位間の距離の減少である。グアニンの1電子酸化により生じるラジカル・カチオンが、DNA中で比較的短い距離を移動できることは、十分に証明されている(Bixtonら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:11713−11716;Hendersonら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.96:8353−8358)。DNA軸に沿った電荷移動による、反応性グアニンと7−デアザアデニン部位との間の増進した相互作用は、両損傷部を含むDNA分子で観察される、より顕著な電流増強をきたす可能性がある。
3セットの電極からの電流の、平均ピーク電流のヒストグラム(図6B)から、7−デアザアデニン損傷部は、天然のグアニン核酸塩基に起因する電流に比して、Ru(bpy)3 3+/2+波におけるより顕著な電流増強によって、再現可能に検出できることが明らかに分かる。電流増強はかなり大きく、また飽和に達すると考えられるため、ITO表面に使用されるDNA量減少の影響を調査した。210pmolのPCR産物1又は4で修飾したITO電極でとったRu(Me2bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+の代表的なボルタモグラムを図7Aに示し、3セットの独立した実験からの、2種の金属錯体に関する平均ピークのヒストグラムを図7Bにプロットする。予想通り、Ru(bpy)3 3+/2+ピークにおける電流増強は大きさが減少するが、さらに重要なことには、7−デアザアデニンを含まないPCR産物及び75%の7−デアザアデニンを含むPCR産物は、低い基材濃度でさえも、容易に区別することができる。
7−デアザアデニン及び7−デアザグアニンを含むPCR産物。7−デアザグアニン及び7−デアザアデニンの同時検出に関する初期の研究は、天然プリンの75%がそれらの7−デアザ類似体で置換されたPCR産物6で実施された。ITO電極と750pmolヌクレオチドDNAとの1時間のインキュベーションの結果、7−デアザアデニン及び天然のグアニンの酸化により、Ru(bpy)3 3+/2+波ではかなりの電流増強が確認されたが、Ru(Me2bpy)3 3+/2+ピークでは電流増強は確認されなかった(データ示さず)。この観察結果は、Fe(bpy)3 3+/2+ピークにおける電流増強が小さかった(図4)、7−デアザグアニンを含む330bpフラグメント(2及び3)に関する結果と一致していた。zG損傷部の濃度を高めるために、両7−デアザプリンを含む1200bpのPCR産物を作ろうとしたが、このフラグメントの合成は困難かつ非能率的であった。代わりに、PCR産物6のインキュベーション時間を1時間から4時間に増加することによって、固定化された7−デアザグアニンの濃度上昇が達成された。インキュベーション時間をより長くした結果として、固定化効率が20〜30%から50%に上昇し(表2)、これは、次には、より大きい電流増強につながるはずである。
PCR産物1、4、又は6で修飾したITO電極でとったRu(Me2bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+のサイクリックボルタモグラムの代表的なセット、及び3つの独立した測定からの平均ピーク電流のヒストグラムを図8に示す。より長いインキュベーション時間の結果として、より顕著な電流増強が生じ、330bpフラグメント6における7−デアザグアニン及び7デアザアデニンの同時検出が可能になった。修飾された損傷部の1つを含むPCR産物の場合と同様に、Ru(Me2bpy)3 3+/2+ピーク電流では、電流増強によって7−デアザグアニンの存在が検出されたが、天然のグアニンのみを含むPCR産物(1)に比して、Ru(bpy)3 3+/2+波では、7−デアザアデニンは、より顕著な電流増強をもたらした。これらの、グアニン及び7−デアザアデニン(PCR産物1及び4)のより高い濃度でさえも、Ru(Me2bpy)3 3+/2+ピークで、G及びzAの残留酸化による非常に僅かなバックグラウンド電流がみられた。
PCR産物の混合物。多数のDNA配列の同時検出は、図1Aに図式的に示す通り、グアニン及びアデニンの7−デアザ類似体を含むPCR産物の共固定化、及び、次のRu(Me2bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+の混合物を用いたボルタンメトリーによって達成された。75%のzG(8)を有する1200bpフラグメントを、修飾された塩基(1)を含まないか又は75%のzA(4)を含む330bpポリヌクレオチドと共固定化した。7−デアザグアニン及び7−デアザアデニンは、それぞれ、これらの2つのDNA分子において、良好な感度及び選択性で検出され得ることが既に証明されていたため、生産物8及び4が選択された(図5、6、及び7)。PCR産物1は、天然グアニンの酸化に起因するバックグラウンド電流のための対照として、本研究に含められた。
第1セットの実験では、同じヌクレオチド量(750pmol)の2つのDNA配列で、ITO表面を修飾した。これらの電極でとったRu(Me2bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+のサイクリックボルタモグラムから、zG及びzAをPCR産物に組み込むことにより、2つのDNA配列の同時検出が可能になることが明らかに分かった(図9)。1200bpフラグメント8は、組み込まれた7−デアザグアニン損傷部のRu(Me2bpy)3 3+/2+による選択的酸化によって検出された。330bpのPCR産物4は、天然のグアニンに加えて、組み込まれた7−デアザアデニン損傷部の酸化に起因するRu(bpy)3 3+/2+波によって検出された。
あるいは、1200bpフラグメントの720pmolヌクレオチド及び330bp PCR産物の200pmolヌクレオチドに相当する、30fmolという同一ストランド量のDNA分子の混合物で電極を修飾した。蛍光イメージ試験は、ITO表面に付着した、より長いPCR産物の量の増加を伴うより短いフラグメントでは、2つのフラグメントの相対的濃度の変化は、結果として固定化効率の低下をきたすことを示した(表3)。これらの結果を基に、より多い7−デアザグアニンが電極上に固定化されることによる、Ru(Me2bpy)3 3+/2+波におけるより多い電流増強、及び減少した数の7−デアザアデニンがITO表面上に存在することに起因する、Ru(bpy)3 3+/2+ピーク電流の減少が予想された。図10にプロットしたサイクリックボルタモグラム及びピーク電流のヒストグラムは、予測される傾向を示す。さらに重要なことには、2つのDNA配列は、同一ヌクレオチド濃度で、共固定化されるとき検出されるのと同様に、良好な再現性で検出され得る。
ミスマッチ検出
オリゴヌクレオチド1、そのワトソンクリック(Watson−Crick)相補鎖2、及びミスマッチ(3、4、5)を含む相補鎖は、UNC−CHのラインバーガー・キャンサー・センター(Lineberger Cancer Center)のヌクレイック・アシッズ・コア・ファシリティ(Nucleic Acids Core Facility)から入手した。オリゴヌクレオチド1は、第1のメディエーター、Fe(bpy)3 3+によって酸化される、第1の予め選択された塩基、8−オキソアデニン(8OA)を含む。オリゴヌクレオチド1は、第2のメディエーター、Os(bpy)3 3+、及び第1のメディエーター、Fe(bpy)3 3+によって酸化される、第2の予め選択された塩基、8−オキソグアニン(8OG)も含む。
Figure 2005520175
オリゴヌクレオチド1を、2回エタノール沈殿させ、全ての他のオリゴヌクレオチドを1回エタノール沈殿させてから、電気化学実験で使用した。オリゴヌクレオチドの原液の濃度は、ヒューレット・パッカード(Hewlett−Packard)8452Aダイオード・アレイ分光光度計を使用して、分光光度法で決定した。電気化学実験用に、95℃に5分間加熱し、続いて2時間にわたって室温まで冷却することにより、1当量のオリゴヌクレオチド1を、1.1当量のオリゴヌクレオチド2〜5にハイブリダイズした。電気化学用に使用した溶液は、50μM(ストランド)オリゴヌクレオチド1、50μM Os(bpy)3Cl2及びFe(bpy)3Cl2、及び800mM NaC1を含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)を含んでいた。25mV/sの走査速度でサイクリックボルタモグラムを収集した。新たに清浄にしたITO電極を各実験に使用した。800mMのNaClを含む50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7)を含む初期走査を、各実験のサイクリックボルタモグラムから除去した。ITO電極は、緩衝液中で少なくとも4サイクルにわたって調整してから、バックグラウンド・サイクリックボルタモグラムを収集した。各データ・ポイントごとに少なくとも3実験を実施した。Bioanalytical Systemsソフトウェア・パッケージDigisim(商標)を使用し、Johnston 1995に記載の通りに、デジタル・シミュレーションを実施した。
図11は、50μMのOs(bpy)3 2+、50mMのNaPi中、50μMのFe(bpy)3 2+、800mMのNaC1を含む緩衝液(pH7)を含むオリゴヌクレオチド1のサイクリックボルタモグラムを示す。80G(Os(bpy)3 3+による)及び80A(Fe(bpy)3 3+による)の酸化に関する速度定数を図12に示す。図に示す通り、シングルストランドの各塩基で大きい速度定数が確認される。80GがCと対合しているとき、速度定数は最低である。80GがAにハイブリダイズしているとき、速度定数は、Cの速度定数とシングルストランドの速度定数の間で確認される。同様に、80AがTと対合しているとき、最低の速度定数が確認され、80AがGと対合しているとき、より高い電流が確認される。ミスマッチに対する速度定数の感度は、他の予め選択された塩基が一致しているか又はミスマッチであるかに左右されない。
前述の実施例は、本発明を説明するものであり、本発明を限定するものと考えるべきではない。本発明は、特許請求の範囲及び中に含まれるべき均等物によって説明される。
多数のDNA配列を同時検出するための方法を示す図である。当該遺伝子を、修飾された塩基の存在下で増幅する。結果として得られるPCR産物をITO表面上に体積させ、修飾された塩基の酸化還元電位に匹敵する酸化還元電位を有する金属錯体のボルタンメトリーによって検出する。 7−デアザアデニン及び7−デアザグアニンの構造を示す図である。 鋳型としてE.coli dacA遺伝子を使用して、330塩基対及び1200塩基の対PCR産物を作成するために使用される方法の概略図である。プライマー配列:CAT GAA TAC CAT TTT TTC CGC TC(上流プライマー;塩基対242〜264)、CGG GTT ACC GGT GGC CCA T(中間プライマー;塩基対554〜572)、及びTTT AAC CAA ACC AGT GAT GGA ACA TT(下流プライマー;塩基対1430〜1455)。SmaI、ClaI、及びNspI制限部位のおおよその位置も示す。 制限エンドヌクレアーゼSmaI、ClaI、及びNspIの認識配列を示す図である。 PCR産物1の制限消化を示す図である。レーン1は、ΦX 174/HaeIII DNAラダーであり、レーン2は、制限酵素なしであり、レーン3は、SmaIであり、レーン4は、ClaIであり、レーン5は、NspIである。 PCR産物2の制限消化を示す図である。レーン1は、ΦX 174/HaeIII DNAラダーであり、レーン2は、制限酵素なしであり、レーン3は、SmaIであり、レーン4は、ClaIであり、レーン5は、NspIである。 PCR産物3の制限消化を示す図である。レーン1は、ΦX 174/HaeIII DNAラダーであり、レーン2は、制限酵素なしであり、レーン3は、SmaIであり、レーン4は、ClaIであり、レーン5は、NspIである。 PCR産物4の制限消化を示す図である。レーン1は、ΦX 174/HaeIII DNAラダーであり、レーン2は、制限酵素なしであり、レーン3は、SmaIであり、レーン4は、ClaIであり、レーン5は、NspIである。 50mMリン酸ナトリウム(pH7)中、10V/秒で収集した、未修飾のITO電極及びDNA修飾ITO電極による、25μM Fe(bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+のサイクリックボルタモグラムを示す図である。ITO表面は、750pmolのPCR産物1、2、又は3(標準名称については表1参照)で修飾されていた。 3つの独立した実験からの、2種の金属錯体に関する平均ピーク電流のヒストグラムである。エラーバーは、1標準偏差を示す。 DNAなし、又は750pmolのPCR産物7又は8(標準名称については表1参照)で修飾されたITO電極による、25μM Ru(Me2bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+のサイクリックボルタモグラムを示す図である。ボルタモグラムは、50mMリン酸ナトリウム(pH7)中、10V/秒でとった。 3つの独立した実験で決定された2つの金属錯体に関する平均ピーク電流と1標準偏差のヒストグラムを示す図である。 50mMリン酸ナトリウム(pH7)中、10V/秒で収集した、未修飾のITO電極及びDNA修飾ITO電極による、25μM Fe(bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+のサイクリックボルタモグラムを示す図である。ITO表面は、750pmolのPCR産物1、4、又は5(標準名称については表1参照)で修飾されていた。 3つの独立した実験からの、2つの金属錯体に関する平均ピーク電流のヒストグラムを示す図である。エラーバーは、1標準偏差を示す。 DNAなし、又は210pmol PCR産物1、又は4(標準名称については表1参照)で修飾されたITO電極による、25μM Ru(Me2bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+のサイクリックボルタモグラムを示す図である。ボルタモグラムは、50mMリン酸ナトリウム(pH7)中、10V/秒でとった。 3つの独立した実験で決定された2つの金属錯体に関する、平均ピーク電流と1標準偏差のヒストグラムを示す図である。 50mMリン酸ナトリウム(pH7)中、10V/秒で収集した、未修飾のITO電極及び修飾されたITO電極による、25μM Ru(Me2bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+のサイクリックボルタモグラムを示す図である。電極を、750pmolのPCR産物1、4、又は6(標準名称については表1参照)と共に4時間インキュベートした。 3つの独立した実験で決定された2つの金属錯体に関する平均ピーク電流と1標準偏差のヒストグラムを示す図である。 DNAなし、又はPCR産物の混合物で修飾されたITO電極による、25μMRu(Me2bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+のサイクリックボルタモグラムを示す図である。PCR産物8を、同ヌクレオチド量(750pmol)のPCR産物1又は4と共に共固定化した(PCR産物標準名称については、表1参照)。ボルタモグラムは、50mMリン酸ナトリウム(pH7)中、10V/秒でとった。 3セットの電極で決定された2つの金属錯体に関する平均ピーク電流と1標準偏差のヒストグラムを示す図である。 DNAなし、又はPCR産物の混合物で修飾されたITO電極による、25μMRu(Me2bpy)3 2+及びRu(bpy)3 2+の代表的なサイクリックボルタモグラムを示す図である。PCR産物8を、同ストランド量(30fmol)のPCR産物1又は4と共に共固定化した(PCR産物標準名称については、表1参照)。ボルタモグラムは、50mMのリン酸ナトリウム(pH7)中、10V/秒でとった。 3つの独立した実験で決定された2つの金属錯体に関する平均ピーク電流と1標準偏差のヒストグラムを示す図である。 点線は金属錯体のみの場合である。破線は、シングルストランド1の場合である。実線は、その厳密な相補鎖2にハイブリダイズした1の場合である。大きい破線は、8−オキソ−アデニン又は8−オキソ−グアニンに1つ又は2つのミスマッチの塩基を含む、オリゴヌクレオチド3〜5にハイブリダイズした1の場合である。全てのサイクリックボルタモグラムは全て、25mV/秒で収集した。 相補鎖における塩基対形成の関数として、1における8−オキソ−アデニン又は8−オキソ−グアニンの酸化の二次速度定数を示す図である。黒色のバーは、80Gに関し、灰色のバーは、80Aに関する。速度定数は、前述の通り、デジタル・シミュレーションで決定した。エラーバーは、3つの独立した実験から決定された標準偏差である。

Claims (49)

  1. (a)導電性の酸化還元反応検出電極を提供するステップと、
    (b)第1の標的分子及び第2の標的分子を含むと考えられるサンプルを、前記第1の標的分子及び第2の標的分子が前記検出電極上に付着する条件で、前記検出電極に接触させるステップであって、前記第1の標的分子が第1の予め選択された標識を含み、前記第2の標的分子が第2の予め選択された標識を含み、前記第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識が異なるステップと、
    (c)前記電極に、(i)前記第1の遷移金属錯体と前記第1の予め選択された標識との間に、第1の酸化還元反応を引き起こすための酸化還元反応で、前記第1の予め選択された標識を酸化する第1の遷移金属錯体と、(ii)前記第2の遷移金属錯体と前記第2の予め選択された標識との間に、第2の酸化還元反応を引き起こすための酸化還元反応で、前記第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識を酸化する第2の遷移金属錯体とを、同時に接触させるステップであって、これらの予め選択された標識から、対応する遷移金属錯体への電子移動があり、その結果、触媒回路の一部として、対応する遷移金属錯体の還元形が再生し、第1の酸化還元反応と第2の酸化還元反応が検出可能な異なるシグナルを生じさせるステップと、
    (d)前記第1の酸化還元反応を検出することにより、前記第1の標的分子の存在を検出するステップと、
    (e)前記第2の酸化還元反応を検出することにより、前記第2の標的分子の存在を検出するステップと
    を含む、2つの異なる標的分子を1つの共通電極で検出する方法。
  2. 前記サンプルが第3の標的分子を含むと考えられ、前記第3の標的分子が、前記第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識と異なる第3の予め選択された標識を含み、
    前記接触させるステップ(c)が、前記電極に、(iii)第3の遷移金属錯体と第3の予め選択された標識との間に、第3の酸化還元反応を引き起こすための酸化還元反応で、前記第1、第2及び第3の予め選択された標識を酸化する第3の遷移金属錯体を接触させることをさらに含み、前記第1、第2及び第3の酸化還元反応が異なる検出可能なシグナルを生じさせ、
    (f)前記第3の酸化還元反応を検出することによって、前記第3の標的分子の存在を検出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記サンプルが第4の標的分子を含むと考えられ、前記第4の標的分子が、前記第1、第2、及び第3の予め選択された標識と異なる第4の予め選択された標識を含み、
    前記接触させるステップ(c)が、前記電極に、(iv)第4の遷移金属錯体と第4の予め選択された標識との間に、第4の酸化還元反応を引き起こすための酸化還元反応で、前記第1、第2、第3及び第4の予め選択された標識を酸化する第4の遷移金属錯体を接触させることをさらに含み、前記第1、第2、第3及び第4の酸化還元反応が異なる検出可能なシグナルを生じさせ、
    (g)前記第4の酸化還元反応を検出することによって、前記第4の標的分子の存在を検出するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記接触させるステップ(b)が沈殿により実施される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記接触させるステップ(b)がアフィニティ結合により実施される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記遷移金属錯体が、Ru(bpy)3 2+、Ru(Me2−bpy)3 2+、Ru(Me2−phen)3 2+、Fe(bpy)3 2+、Fe(5−Cl−phen)3 2+、Os(5−Cl−phen)3 2+、及びReO2(py)4 1+からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  7. 前記第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識が、アデニン、グアニン、及びそれらの類似体からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識が、アデニン、7−デアザアデニン、グアニン、6−メルカプトグアニン、8−オキソグアニン、イソグアニン、7−デアザグアニン、1ヒドロキシイソグアニン、及び8ブロモグアニンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記電極が超小型電子基材により支持される、請求項1に記載の方法。
  10. 前記電極がインジウムスズ酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記標的分子のそれぞれが核酸である、請求項1に記載の方法。
  12. 前記核酸のそれぞれを増幅するステップが前記接触させるステップ(b)に先行する、請求項11に記載の方法。
  13. ポリメラーゼ連鎖反応、ストランド置換増幅、リガーゼ連鎖反応、及び核酸配列に基づく増幅からなる群より選択される増幅反応により前記核酸のそれぞれを増幅するステップが、前記接触させるステップ(b)に先行する、請求項11に記載の方法。
  14. 前記標的分子が、DNA及びRNAからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
  15. 前記標的分子がタンパク質又はペプチドである、請求項1に記載の方法。
  16. 前記標的分子の一方が核酸であり、前記標的分子の他方がタンパク質又はペプチドである、請求項1に記載の方法。
  17. 前記検出ステップが多段階のクロノアンペロメトリーにより実施される、請求項1に記載の方法。
  18. 前記接触させるステップがサンドイッチアッセイにより実施される、請求項1に記載の方法。
  19. 前記接触させるステップが競合アッセイにより実施される、請求項1に記載の方法。

  20. 前記接触させるステップが直接アッセイにより実施される、請求項1に記載の方法。
  21. 前記接触させるステップが固定化された標的物質に関する競合アッセイにより実施される、請求項1に記載の方法。
  22. 前記接触させるステップが結合相互作用アッセイにより実施される、請求項1に記載の方法。
  23. 少なくとも2種の異なる結合対の、少なくとも2つの異なるメンバーの電気化学的検出に有用な超小型電子装置であって、
    超小型電子基材と、
    前記基材上の導電性の酸化還元検出電極と、
    非導電層上に固定化された第1の特異的結合対の第1のメンバーであって、サンプル中に存在する第1の特異的結合対の第1のメンバーが第2のメンバーと結合し、検出電極に電位を印加したとき起こる酸化還元反応が検出可能であるように、前記第1の結合対の前記第1のメンバーが前記検出電極に隣接している前記第1の特異的結合対の前記第1のメンバーと、
    サンプル中に存在する第2の特異的結合対の第2のメンバーと結合する非導電層上に固定化された第2の特異的結合対の第1のメンバーであって、検出電極に電位を印加したとき起こる酸化還元反応が検出可能であるように、検出電極に隣接している前記第2の結合対の前記第1のメンバーと
    を含み、
    前記第1の結合対の前記第1のメンバーと前記第2の結合対の前記第1のメンバーが異なる装置。
  24. サンプル中に存在する第3の特異的結合対の第2のメンバーと結合する非導電層上に固定化された第3の特異的結合対の第1のメンバーであって、検出電極に電位を印加したとき起こる酸化還元反応が検出可能であるように、前記検出電極に隣接している前記第3の結合対の前記第1のメンバーをさらに含み、
    前記第1の結合対の前記第1のメンバー、前記第2の結合対の前記第1のメンバー、及び前記第3の結合対の前記第1のメンバーが異なる、請求項23に記載の装置。
  25. 前記第1の結合対の前記第1のメンバー及び前記第2の結合対の前記第1のメンバーがオリゴヌクレオチドである、請求項23に記載の装置。
  26. 前記第1の結合対の前記第1のメンバー及び前記第2の結合対の前記第1のメンバーがペプチド又はタンパク質である、請求項23に記載の装置。
  27. 前記第1の結合対の前記第1のメンバーがオリゴヌクレオチドであり、
    前記第2の結合対の前記第1のメンバーがタンパク質又はペプチドである、請求項23に記載の装置。
  28. 前記超小型電子基材が、前記導電性の酸化還元検出電極と、前記第1の結合対及び第2の結合対の前記固定化された第1のメンバーとを含むサンプル容器を含む、請求項23に記載の装置。
  29. 前記超小型電子基材が、複数の導電性の酸化還元検出電極と、前記第1の結合対及び第2の結合対の複数の固定化された第1のメンバーとを含む前記サンプル容器を含む、請求項28に記載の装置。
  30. 導電性金属を含む導電性参照電極をさらに含む、請求項29に記載の装置。
  31. 導電性金属を含む導電性補助電極をさらに含む、請求項29に記載の装置。
  32. 各導電性酸化還元検出電極からの電気的接続により、前記酸化還元反応が検出可能である、請求項29に記載の装置。
  33. 前記基材がケイ素である、請求項23に記載の装置。
  34. 前記基材がガラスである、請求項23に記載の装置。
  35. 酸化還元反応検出器をさらに含む、請求項23に記載の装置。
  36. 少なくとも2つの異なるハイブリダイゼーション事象を共通電極により検出する方法であって、
    (a)超小型電子基材と、
    前記基材上の導電性酸化還元検出電極と、
    サンプル中に存在する前記第1の特異的結合対の第2のメンバーと結合する非導電層上に固定化された第1の特異的結合対の第1のメンバーであって、検出電極に電位を印加したとき起こる酸化還元反応が検出可能であるように、前記検出電極に隣接している前記第1の結合対の前記第1のメンバーと、
    サンプル中に存在する第2の特異的結合対の第2のメンバーと結合する非導電層上に固定化された第2の特異的結合対の第1のメンバーであって、検出電極に電位を印加したとき起こる酸化還元反応が検出可能であるように、前記検出電極に隣接している前記第2の結合対の前記第1のメンバーと、
    を含む装置であって、
    前記第1の結合対の前記第1のメンバー及び前記第2の結合対の前記第1のメンバーが異なり、
    前記第1の結合対の前記第2のメンバーが第1の予め選択された標識を含み、及び前記第2の結合対の前記第2のメンバーが第2の予め選択された標識を含み、
    前記第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識が異なる装置を提供するステップと、
    (b)前記第1の結合対の前記第2のメンバー及び前記第2の結合対の前記第2のメンバーを含むと考えられるサンプルを接触させるステップと、
    (c)前記基材に、(i)第1の遷移金属錯体と第1の予め選択された標識との間に、第1の酸化還元反応を引き起こす条件で、酸化還元反応において、前記第1の予め選択された標識を酸化する第1の遷移金属錯体と、(ii)前記第2の遷移金属触媒と第2の予め選択された標識の間に、第2の酸化還元反応を引き起こす条件で、酸化還元反応において、前記第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識を酸化する、第2の遷移金属錯体とを同時に接触させるステップであって、これらの予め選択された標識から遷移金属錯体への電子移動があり、その結果、触媒回路の一部として、対応する遷移金属錯体の還元形が再生し、前記第1の酸化還元反応と第2の酸化還元反応とが異なる検出可能なシグナルを生じ、
    (d)前記第1の酸化還元反応の検出から、前記第1の結合対の前記第2のメンバーの存在を検出するステップと、
    (e)前記第2の酸化還元反応の検出から、前記第2の結合対の前記第2のメンバーの存在を検出するステップと
    を含む方法。
  37. 前記遷移金属錯体が、Ru(bpy)3 2+、Ru(Me2−bpy)3 2+、Ru(Me2−phen)3 2+、Fe(bpy)3 2+、Fe(5−Cl−phen)3 2+、Os(5−Cl−phen)3 2+、及びReO2(py)4 1+からなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
  38. 前記第1の予め選択された標識及び第2の予め選択された標識が、アデニン、グアニン、及び6−メルカプトグアニンからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
  39. 前記第1の結合対の前記第2のメンバー及び前記第2の結合対の前記第2のメンバーが、タンパク質又はペプチドである、請求項36に記載の方法。
  40. 前記第1の結合対の前記第2のメンバー及び前記第2の結合対の前記第2のメンバーがオリゴヌクレオチドである、請求項36に記載の方法。
  41. 前記第1の結合対の前記第2のメンバーがタンパク質又はペプチドであり、前記第2の結合対の前記第2のメンバーがオリゴヌクレオチドである、請求項36に記載の方法。
  42. 前記第1の結合対の前記第2のメンバー及び前記第2の結合対の前記第2のメンバーの少なくとも1つがDNAである、請求項36に記載の方法。
  43. 前記接触させるステップの前に前記DNAを増幅するステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
  44. 前記DNAサンプルを増幅する前記ステップが、ポリメラーゼ連鎖反応、ストランド置換増幅、リガーゼ連鎖反応、又は核酸配列に基づく増幅により実施される、請求項43に記載の方法。
  45. 前記接触させるステップがサンドイッチアッセイにより実施される、請求項36に記載の方法。
  46. 前記接触させるステップが競合アッセイにより実施される、請求項36に記載の方法。
  47. 前記接触させるステップが直接アッセイにより実施される、請求項36に記載の方法。
  48. 前記接触させるステップが固定化標的物質に関する競合アッセイにより実施される、請求項36に記載の方法。
  49. 前記接触させるステップが結合相互作用アッセイにより実施される、請求項36に記載の方法。
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