JP2005511089A - 所望のペプチド配列を提示するための構造 - Google Patents

所望のペプチド配列を提示するための構造 Download PDF

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Abstract

適切なコア領域と結合した結合ペプチドを創製するための手段と方法、それにより生成したタンパク様分子ならびにその用途が提供される。本発明は、結合分子の用途に関係する問題解決をその用途の全範囲にわたって提供する。異常温度またはpHのような、異常な使用条件に適応するために、結合分子を設計することができる。また、環境のきわめて微細な変化に応答する結合分子を設計することができる。

Description

発明の詳細な説明
本発明は、それが結合特性または他の特性であろうと、改良された特性を有する結合分子を提供する方法および手段ならびに、新規な結合分子そのものに関する。さらに、本発明は、これら分子をそれらの全ての多機能性に応用する方法に関する。
近年の生物工学において、最も目覚しいものの1つでありかつ多くの場合に証明された応用は、全ての種類の物質および/または標的のためのタンパク様分子の親和性に依存している。タンパク様の結合分子は、混合物からの物質の精製、広範な物質に関する診断分析ならびに医薬品の調製などに応用されてきた。通常、免疫グロブリン(または他の多数の免疫グロブリンスーパーファミリー)、受容体および酵素のような天然に生成するタンパク様分子が使用されてきた。また、このような分子から誘導されるペプチドもまた使用されてきた。現存する(修飾された)天然分子を使用するには、もちろん、これら分子が進化によって授かった特性に限界がある。これが、これら分子がそれらの用途が予想され得る全ての分野に応用されなかった理由の1つである。また、進化は、常に天然由来の結合分子の種々の機能間の妥協に帰着するので、これらの分子は、それらの予想される用途に最適化されなかった。通常、技術は、現存する(修飾された)結合分子の結合特性を変える方向に進展した。(一本鎖)抗体のファージディスプレイのような技術でほとんどのどんな結合特異性をも得ることができる。しかしながら、結合領域は全て同じコンテクスト(context)内にある。したがってその結合領域とそのコンテクストの組み合わせはしばしばまだ最適ではなく、タンパク様結合分子の用途がその技術では制限されている。
本発明は、所望の親和性領域を提示するための多機能性コンテクストを提供する。本発明は、多数の結合蛋白質に生じるとここで確認された(コア構造と呼ばれる)共通の構造エレメントに基づき設計される構造コンテクストを提供する。このいわゆる共通コアが、1種またはそれ以上の所望の親和性領域が付与され得る新規なタンパク様分子として産生された。このタンパク様構造はいかなるアミノ酸配列にも依存せず、共通の構造エレメントにのみ依存する。それは、意図する応用のために種々のアミノ酸配列および/または配列中のアミノ酸残基を提供することによって適応することができる。それは、表示される特異な親和性領域の要求に適応することができる。したがって、本発明は、所望の目的のために最適なタンパク様結合分子を得るために結合される構造コンテクストおよび親和性領域のライブラリをも提供する。
したがって、本発明は、結合ペプチドおよびコアを含む合成または組み換えタンパク様分子を提供するものであり、該コアは少なくとも5つのストランドを含むβ−バレルを含み、該β−バレルは少なくとも2つのβ−シートを含み、該β−シートの少なくとも1つは該ストランドの3つを含み、該結合ペプチドは、該β−バレル中の2つのストランドを結合するペプチドであり、そして該結合ペプチドは、その天然コンテクストの外側にあることを特徴とする。我々は、ガラクトシダーゼからヒト(およびたとえば、ラクダ)抗体までとその中間も含め全ての種類の分子の範囲までの多数の蛋白質中のこのコア構造を同定した。所望のペプチド配列を提示するために、自然界は明らかにこの構造エレメントを設計した。我々は、このコアを、単離された形で、ならびに、同一または類似の構造エレメントをまだ保有する多数のその変異形態で産生させた。この新規構造は、他の結合分子が使用される全ての応用に、およびここで説明されるようにそれらの応用を超えてさえも使用することができる。1つの親和性領域(所望のペプチド配列)および1つのバレルを形成している2つのβ−シートを含む構造は、発明されたタンパク様結合分子の最も基本的な形である。(タンパク様とは、それらは本質的にアミノ酸配列であるが、しかし側鎖および/または全ての種類の基が存在できることを意味する。もちろん、アミノ酸配列は構造に少しか関連していないので、空間で同じ配向を有しペプチド的な親和性領域を提示することのできる非タンパク様の他の分子を設計することは可能である。空間の配向は重要なパラメータである。本発明はまた、所望の目的に従い安定性の低いアミノ酸がもっと安定な残基(またはその反対)で置換された、最適化されたコア構造をも開示する。
再度述べるが、重要なパラメータは空間における分子の配向であるから、他の置換または完全に現状の構造に関連していないアミノ酸配列でさえも含まれている。結合特性と構造特性の両者はより好ましくかつ高い期待値をもつよう設計できるので、本発明に従い、基本構造よりももっと進歩したコア構造を利用するのが好ましい。
したがって、本発明は、好ましくは、上記β−バレルが少なくとも5ストランドを含み、少なくとも上記シートが該ストランドの3つを含むことを特徴とする、本発明のタンパク様分子を供するものであり、さらに好ましくは、該β−バレルが少なくとも6ストランドを含み、該シートの少なくとも2つが該ストランドの3つを含むことを特徴とする、本発明のタンパク様分子を提供する。上記シートの各々が少なくとも3ストランドを含んでいるβ−シートは、充分安定であり、一方、同時にコア/親和性領域(結合ペプチド)を特殊な目的に適用させる充分な変異可能性を提供する。そうは言うものの、1シート当りに少ないストランドを含むコアについて好適な特徴もまた見出すことができる。
したがって、1シートがわずかに2ストランドを含むことを特徴とする変異体は本発明の範囲内である。もう1つの実施形態で、本発明は、上記のβーバレルが少なくとも7ストランドを含み、上記シートの少なくとも1つが該ストランドの4つを含むことを特徴とする、本発明のタンパク様分子を提供する。あるいはまた、本発明は上記β−バレルが少なくとも8ストランドを含み、上記の少なくとも1つのシートが該ストランドの4つを含むことを特徴とする、本発明のタンパク様分子を提供する。もう1つの実施形態では、上記β−バレルが少なくとも9ストランドを含み、上記シートの少なくとも1つが該ストランドの4つを含むことを特徴とする、本発明のタンパク様分子が提供される。コア構造には、天然物が親和性領域を提示する比較的に開口した側面がありそして結合している配列が存在する比較的閉ざされた側面がある。好ましくは、少なくとも1つの親和性領域は、上記の比較的に開口した側面に位置する。
したがって、本発明は、上記結合ペプチドが、上記バレルの開口側面上の上記β−バレルの2つのストランドに連結することを特徴とする本発明のタンパク様分子を提供する。所望のペプチド配列の位置(親和性領域)は、2つのストランドのどこにでも位置することができるが、所望のペプチド配列は、バレルの2つのシートを連結することが好ましい。したがって、本発明は、上記結合ペプチドが上記バレルの少なくとも2つのβ−シートを連結することを特徴とする、本発明のタンパク様分子を提供する。1つの親和性領域でも充分であるが、より良い結合分子となるためにより多くの親和性領域が存在することが好ましい。好ましくは、これらの領域は、それらが結合に(たとえば、バレルの開口側の両側上で)協調できるように配置されている。したがって、本発明は少なくともさらにもう1つの結合ペプチドを含む本発明のタンパク様分子を提供する。全く成功したコアエレメントは、3つの親和性領域および3つの領域を有するものである。この単離された形でのコアは、本発明の好ましい実施形態である。しかしながら、本発明で発明された結合分子の多用途性ゆえに、バレルの比較的少ない開口側上の連結配列も親和性領域として使用され得る。このようにして、非常に小さい2特異性結合分子が得られる。したがって、本発明は、すくなくとも4つの結合ペプチドを含む本発明のタンパク様分子を提供する。ここで、2特異性とは、結合分子が(同一または異なる)2つの標的分子に結合する可能性を有するということを意味する。コア中の種々のストランドは、好ましくは、単一の転写解読枠によってコード化されるのが好ましい。種々のストランドを連結しているループは、いかなる形の立体配位をもとることができる。 コアの多機能性を過度に制限しないために、ループはコアの同一側上のストランドを連結していること、および、すなわち、ストランドのN−端が(b)コアの閉口側上または開口側上のどちらか一方の(a)ストランドのC−端に連結していることが好ましい。ループは、同一のβ−シート中でまたは反対側のβ−シートにまたがって連結することができる。コア中の種々のストランドを連結するための好ましい配列は、実施例および図、並びに詳細な図1で示されている。コア中のストランドは、互いにいかなる方向(並行または反対並行)であってもよい。好ましくは、ストランドは、図1に示される立体配置にある。
既述のとおり、本発明の目的は、結合特性および構造特性(種々の環境下での安定性(温度、pHなど)、抗原性など)の両者において結合分子を最適化することである。このことは、本発明に従い、本発明の少なくとも1つの(本発明のタンパク様分子をコード化している)核酸を取り、コード化された構造領域もしくは親和性領域のいずれかをまたはその両者を変異し、そして所望の結合特性と構造特性を有する分子が得られたかどうか試験することによって達成される。したがって、本発明は変換された結合特性を有するタンパク様分子を同定する方法であって、本発明のタンパク様分子のコアに改変を導入し、該タンパク様分子から改変された結合特性を有するタンパク様分子を選択することを含む方法、ならびに、改変された構造特性を有するタンパク様分子を同定するための方法であって、本発明のタンパク様分子のコアに改変を導入し、そして該タンパク様分子から改変された構造特性を有するタンパク様分子を選択することを含む方法を提供する。これら改変は種々の種類にわたってすることができ、1つの例は翻訳後修飾である。当業者は、他の適切な変異を設計することができる。
既に説明したとおり、変異は通常、コード化している核酸を変異することおよび該核酸を、微生物の、真核細胞の、または細胞なしの適切なシステムで発現させることによって、することができるであろう。いったん選択されると、もちろん選択システムと異なるシステムを使用することができる。
本発明は、また、少なくとも1つの所望のペプチドを提示する能力のあるタンパク様分子をコード化する核酸を産生する方法のごとき、本発明のタンパク様結合分子をコード化している核酸を産生するための方法であって、該所望のペプチド配列またはかかる配列が挿入され得る領域によって少なくとも第1および第2の構造領域が分離された少なくとも第1および第2の構造領域をコード化している核酸配列を提供すること、および、少なくとも1つの所望のペプチド配列を提示する能力のある該タンパク様分子をコード化している所望の核酸を得るために該第1および第2構造領域をコード化している該核酸を変異させることを含むことを特徴とする核酸を産生するための方法、および、好ましくは所望のペプチド配列を提示するための方法であって、β−バレルを形成しているβ−シートの少なくとも2つのβーシートをコード化しており、該所望のペプチド配列をコード化している配列を挿入するための領域を含んでいる核酸を提供し、所望のペプチド配列を含む核酸を挿入し、そして、該核酸を発現させ、該β−シートが上記の方法によって取得可能であることを特徴とする、所望のペプチド配列を提示するための方法を提供する。本発明はさらに、混合物、すなわち体液または分泌液のような、血液またはミルクのような、または血清および乳清のような、典型的な複雑な生物学的な混合物からの分離のように、今日まで結合分子が存在すると予想されてきた全ての分野における新規な結合分子の応用を提供する。もちろん、薬剤としておよび診断薬としての用途は、当業者にとって明らかである。診断薬の用途では、本発明の分子に標識を付けることができる。薬剤の用途では、本発明の分子に他のモイエティを結合することができる。両者の場合、このことは化学的にまたは組み換え融合によってすることができる。診断薬への応用および薬剤への応用は、通常の結合分子に関して当該技術分野で極めて詳細に述べられてきた。本発明の新規結合分子に関して、当業者にとってさらに詳細に説明することは不必要である。標的方式の遺伝子治療は、本発明の結合分子が遺伝子輸送担体(それは、ウイルス性(アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ関連ウイルスまたはレンチウイルスなど)または非ウイルス性(リポソームおよびそのようなもの)であることができる)に付与される多数の例のうちの1つである。輸送される遺伝子は当該技術で良く知られている。遺伝子輸送担体は、また、標的に輸送され、おそらく毒性モイエティに融合される本発明の結合分子をコード化することもできる。結合分子への毒性モイエティの複合も当該技術でよく知られており、本発明の新規結合分子のために参入される。
詳細な説明
本発明は、以下の記載でさらに詳細に説明されるであろう。本発明は、分子結合に関与することのできる1つまたはそれ以上の領域を含む蛋白質の設計、構築、生成、スクリーニングおよび使用に関する。本発明はまた人工の結合ドメインを付与された天然の蛋白質、特別の構造構成エレメントが付与され1つまたはそれ以上の人工結合部位が付与された再構築された天然蛋白質、1つまたはそれ以上の人工結合部位が付与された(構造的または他の)いくつかのエレメントを備えた再構築された天然蛋白質、1つまたはそれ以上の結合部位が付与された標準のコア構造モチーフを含む人工蛋白質に関する。かかる全ての蛋白質は、ここではVAPs(多機能親和性蛋白質)と称する。本発明はさらに、本発明の方法および類似コア構造を含有する天然蛋白質上の結合部位の転移によって同定された新規VAPsに関する。かかる天然蛋白質の3Dモデリングまたは変異は、選択されたVAP上に存在する親和性領域による抗原結合能を保持または確保するために転移する前にするのが望ましい。さらに、本発明は、本発明で記述されたように、選択されたVAP(s)により結合されることのできる選択されたリガンドの精製、除去、マスキング、遊離、阻害、刺激、捕捉などのために、選択されたVAPsを使用する方法に関する。
リガンド結合蛋白質
(推定)の分子結合部位を含む多数の天然蛋白質は、2つの機能的に異なる領域を含んでいる。現実に提示された結合部位および分子結合部位またはポケットの周りに包まれた領域は、本願明細書でスキャッフォールドと称される。これら2つの領域は、機能、構造、組成および物性が異なっている。スキャッフォールド構造は、蛋白質全体のために安定な3次元立体配位を確保し、事実上の認識領域のために踏み台として機能する。
リガンド結合蛋白質の2つの機能的に異なるクラスを区別することができる。
この区別は、遺伝子的に可変または不変リガンド結合領域の存在に基づいている。一般に、不変リガンド結合蛋白質は、一定数、一定組成および不変のアミノ酸配列をその種の細胞内の結合ポケットに含んでいる。かかる蛋白質の例は全て、たとえばN−CAMおよびV−CAMのような細胞接着分子、たとえばキナーゼおよびプロテアーゼのような酵素ファミリー、およびたとえばEGF−R、bEGF−Rのような成長因子受容体のファミリーである。これに対して、リガンド結合蛋白質の一般に可変クラスは、結合ポケット内およびおそらくその周辺で生物または細胞にアミノ酸の数、組成および配列を変化することを可能にしている、活性な遺伝子のシャフリング、変異または再配列機構の制御下にある。これらの例は、抗体の軽鎖および重鎖の全タイプ、B−細胞受容体の軽鎖および重鎖、およびT−細胞受容体アルファ、ベータ、ガンマおよびデルタ鎖である。野生型のスキャッフォールドの分子構成は大きな程度で変化することが出る。たとえば、両蛋白質は特異的標的に結合することができるが、ジンクフィンガーを含むDNA結合分子は、(アミノ酸組成および構造を見ると)抗体と全く異なるスキャッフォールドを含有している。
スキャッフォールドおよび結合領域
免疫化によって得られる抗体
可変(推定)抗体結合ドメイを発現するリガンド結合蛋白質のクラスは、リガンド結合蛋白質を探索するのに大きな価値があることが示された。リガンド結合蛋白質を生成するための通常の方法は、動物の免疫システムを利用する。このシステムには異物に対する生物の防御が関与している。かかる高度に多様な異物の有機体を認識し、結合し除去するための1つの方法は、これら分子に対する抗体を生成することである。免疫システムは、抗原を認識する抗体産生細胞を選択しそして増加させることができる。この工程はまた、活性免疫化の手段でまねることができる。一連の免疫の後に、抗原を認識し結合する抗体が、産生される。遺伝的再配列および変異によって産生され得る、異なる親和性領域を有する抗体の可能な数は、1040の数を超える。しかしながら実際には、少数の抗体タイプが、免疫オシステムによって篩いにかけられ最適化される。適正な抗体産生細胞の単離とこれに続くこれらの細胞の不朽化、または、この代わりに直接選択された抗体遺伝子、抗原−抗体対のクローニングは、将来の(商業的および非商業的)使用に、保存することができる。
このようにして得られた抗体の使用は、限られた数の応用にのみに限定される。
動物の抗体はヒトで見出された抗体と異なっている。動物起源の抗体のヒトへの導入、たとえば、医療への応用は、導入された抗体の効果に反してほとんど確実に免疫応答(たとえば、HAMA反応)を引き起こす。商業的目的でヒトを活発に免疫化することは許されていないので、この方法でヒト抗体を得ることは不可能かまたはほとんど可能ではない。これらの不都合のために、動物特異的抗体の産生を迂回する方法が開発された。1つの例は、マウス免疫システムの除去とかかるマウスへのヒト免疫システムの導入である。免疫化の後に得られる全ての抗体はヒト起源のものである。しかしながら動物の使用にもまた2つの不都合な点がある。第1に、行動生物学者、調査官、世論によって、動物愛護がだんだん注目を浴びるようになりつつある。免疫化には、苦痛でかつ緊張の多い操作を伴い、できるだけ避けなければならない。第2に、免疫化は抗体を必ずしも産生するわけでないか、または、結合力、抗体特異性などのような所望の特性を有する抗体を必ずしも産生しない。この理由は、多種多様であり得る。すなわち、免疫システムは、かかる推定抗体の同時発生によって免疫システムが失敗に終わる、最初に生成した抗体が毒性または有害である、最初に生成した抗体も動物特異的分子を認識する、その結果、かかる抗体を産生する細胞が破壊されるであろう、または、エピトープが免疫システムによってマップ化され得ない(これは、いくつかの理由がありえる)。
別の仕方で得られる抗体
上述のごとく、免疫化手法はリガンド結合蛋白質の生成をもたらすことができるが、それらの使用は限られ、柔軟性に欠けそして制御できない。抗体断片の細菌による産生方法の発明(Skerra and Pluckthun,1988 ; Better et al.,1988)は、動物の使用と免疫化手法を迂回するための新しい有力な手段である。クロー化された抗体断片、(フレームワーク、親和性領域およびこれらの組み合わせ)は、人工的なシステムで発現させることができ、インビボの(推定の)特異的標的を認識する抗体と誘導体(Fab,V,scFおよびVHH)の調節と産生を可能にすることが示された。新しい選別技術および改良された変性戦略は、膨大な人工の(とりわけヒトの)抗体断片ライブラリに向けられた。かかるライブラリは、本質的に選択された1つまたはそれ以上のリガンドに結合することができる抗体断片を含んでいる。これらの抗体特異的推定リガンドは、スクリーニングと選択手段によって回収することができる。したがって、特異標的のリガンド結合蛋白質は動物の免疫化をすることなく加工し、回収することができる。
他の免疫グロブリンスーパーファミリーから誘導されるスキャッフォールド
ほとんどのエネルギと努力が天然由来またはコピーされたヒト抗体由来のライブラリの開発と最適化に注がれたが、他のスキャッフォールドもまた1つまたはそれ以上のリガンド結合ドメインのために成功的なスキャッフォールドとして記載されてきた。天然抗体を基礎にしたスキャッフォールドの例には、ミニボディ(Pessi et al. , 1993)、カラクダ科VHH蛋白質(Davies and Riechmann, 1994; Hamers-Casterman et al.,1993)および可溶VH変異体(Davies and Riechmann,1994; Hamers-Casterman et al.,1993)が包含される。親和性領域挿入のために使用されている他の2つの天然蛋白質はもちろん免疫グロブリンスーパーファミリーの一員でもある。すなわち、T−細胞受容体鎖(Kranz et al., WO. Patent 0148145)およびフィブロネクチン ドメイン−3領域(Koide US Patent 6,462, 189 ; Koide et al. , 1998)である。フィブロンエクチンに関して研究者は2つの領域しか記載していないが、この2つのT−細胞受容体鎖はそれぞれ本発明にしたがい3つの親和性領域を保持することができる。
非免疫グロブリン由来スキャッフォールド
免疫グロブリン由来スキャッフォールドと共に、非免疫グロブリンドメイン含有スキャッフォールドが研究された。研究された全ての蛋白質は、ただ1つの蛋白質の鎖と1つから4つの親和性関連領域を含んでいる。スミス(Smith)とその同僚は(1998)、スキャッフォールドとしてノッティンス((knottins)小さなジスルフィドで結合された蛋白質のグループ)の使用についいて報告した。彼らは、7つの変異アミノ酸を有するノッティンス(knottins)に基づきライブラリの創製に成功した。蛋白質の長さと安定性は優れているが、ランダム化され得る低数のアミノ酸と親和性領域の単一性はノッティン蛋白質を非常に強力にはしない。クウとシュルツ(Ku and Schultz、1995)は、シトクロームb562の4−ヘリックス−バンドル構造に2つのランダム化された領域を導入することに成功した。しかしながら、選択されたバインダーは、所望のナノモルまたはそれより良い値のかわりにマイクロモルのKd値で結合することが示された。使用された他のその代わりのフレームワークは蛋白質のテンダミスタート(tendamistat)ファミリーに属する。マックコンネルとヘス(McConnell and Hoess、1955)はストレプトミセス テンダ(Streptomyces tendae)由来のアルファーアミラーゼ阻害剤(74アミノ酸 ベータ−シート 蛋白質)が、リガンド結合ライブラリのスキャッフォールドとして役立つことを証明した。2つのドメインが変性領域を受容し、リガンド結合で機能することが示された。バインダーの大きさと特性は、テンダミスタートがミメトープス(mimetopes)と呼ばれるリガンド模倣品としてよく機能することを示した。このオプションは今や開発された。リポカリン(Lipocalin)蛋白質もまた、最大の4つの親和性領域のための良好なスキャッフォールドであることが示された(Beste et al. , 1999; Skerra, 2000 BBA; Skerra, 2001 RMB)。リポカリンは、レチノイド、アラキドン酸および数種のステロイドのごとき小分子の結合に関与している。個々のリポカリンは、1つまたはそれ以上の特異的リガンドを認識し結合する特異な領域を有している。スケラ(Skerra(2001))は、リガンド結合ドメインの部位で可変領域を導入するためにリポカリンRBPおよびリポカリンBBPを使用した。ライブラリの構築とそれに続くスクリーニングの後に、研究者は選択されたリガンドにナノモルの特異性を有する数種の特異なバインダーを単離し特定した。どのようにして効率的なリポカリンが細菌またはカビの細胞内で産生できるのか、現在のところ知られていない。リポカリンの大きさ(約170アミノ酸)は、VHH鎖(約100アミノ酸)に関連してかなり大きく、工業的な応用には大きすぎるかもしれない。
コア構造の開発
商業的工業的応用において複数鎖のペプチドの替わりに単鎖ペプチドを使用することは、かかるペプチドの製造工程での低コストと高効率のゆえにきわめて興味あることである。工業的応用で使用しえる1つの例は、VHH抗体である。かかるペプチドは、非常に安定で高い選択性を有することができそして比較的小さいものである。しかしながら、スキャッフォールドは、工業的応用のためにではなく、免疫依存機能のために進化論的に最適化されてきた。これに加え、1つの抗体プールに存在するフレームワーク領域の高多様性プールが、モジュラー最適化法の使用の障害となる。したがって、新しいスキャッフォールドはVHH蛋白質の好適な安定性を基本にして設計された。3D−モデリングと比較モデリングソフトウエアは、多機能親和性蛋白質(VAPs)の必要要件を満足させるスキャッフォールドを設計するために使用された。しかしながら、現在のところ、全ての可能性のある蛋白質構造、蛋白質の安定性およびその他の特性を計算することは、何ヶ月ものコンピュータ計算容量を要するので、まだ可能ではない。したがって、我々は、ファージディスプレイまたはそれに類するもののようなディスプレイ技術を使用することによって、研究室でもっとも有望なコンピュータで設計されたスキャッフォールドを試験した。このようにして、比較的短時間内で多数のスキャッフォールドをスクリーニングすることが可能である。
免疫グロブリン様(ig−様)折りたたみ構造(folds)は、自然界のいたるところできわめて共通している。特に動物分野では、多数の蛋白質はこのクラスに属する蛋白質内で折りたたみ領域を有している。ig様折りたたみを含む蛋白質の機能を考察し、そしてその特異的蛋白質内のこのig様折りたたみの機能を考察すると、これらのほとんどのドメインは全てでないにしてもリガンド結合に関与していることが明らかである。ig様折りたたみ含有蛋白質のいくつかの例は、V−CAM、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン、免疫グロブリンの定常領域、T−細胞受容体、フィブロネクチン、レオウイルス外殻蛋白質、ベータ−ガラクトシダーゼ、インテグリン、EPO−受容体、CD58、リブロースカルボキシラーゼ、デスルホフェロドキシン、スーパーオキシド様物質、ビオチンデカルボキシダーゼおよびP53コアDNA結合蛋白質である。ほとんどのig様折りたたみ構造の分類は、SCOPデータベース(Murzin A. G et al, 1995; http://scop. mrc-lmb. cam. ac. uk/scop)およびCATH(Orengo et al, 1997; http://www. biochem. ucl. ac.uk/bsm/cathnew/index. html)から得ることができる。SCOPはこれらの折りたたみ構造を、免疫グロブリン様ベータ−サンドイッチを有する全ベータ蛋白質として分類し、折りたたみ構造を有するいくつかのメンバーはさらに追加のストランドを有しているが、このサンドイッチは2シート中に7ストランドを含んでいる。CATHは、主としてこれら折りたたみを、コード2.60.40で示された免疫グロブリン様折りたたみ中にサンドイッチ様の構造を有するベータ−蛋白質として分類している。CE(Shindyalov etal. 1998 ; http ://cl. sdsc. edu/ce. htm)、VAST(Gibrat et al., 1996; http://www. ncbi. nlm. nih. gov/Structure/VAST/vast. shtml) および FSSP(Holm et al, 1998; http://www. ebi. ac.uk/dali/fssp)のような構造データベースにおいて、同様な分類が使用されている。
Cn3D (NCBI; http://www. ncbi. nlm. nih. gov/Structure/CN3D/cn3d. shtml)、InsightII (MSI; http://www. accelrys.com/insight) およびその他の構造ビューアを使用して、種々の蛋白質由来のこれら折りたたみ構造の投影によって、ig様折りたたみ構造は種々のサブ−ドメインを有していることが示された。構造の図式投影図が図1に示されている。
最も保存された構造が、コアと呼ばれる折りたたみの中央部に観測された。コア構造は、長さにほとんど変化はなく比較的保存された空間的制約があるが、それらは配列とアミノ酸組成の両者において大きく異なっていることが見出された。コアの両側上にサブ−ドメインが存在する。これらは連結ループと呼ばれる。これら連結ループはアミノ酸含量、配列、長さおよび配位において変化することができるので、極めて可変的である。コア構造はそれゆえこれら蛋白質の内で際立って最も重要なドメインとして任じられている。コアを形成するベータ−エレメントの数は、6ストランドコア構造も重要であるが、7と9の間で変動する。コアの全てのベータ−エレメントは、2つのベータ−シート内に配置されている。
各ベータ−シートは反並行に向いたベータ−エレメントで構築されている。観察された1ベータ−シート中のベータ−エレメントの最小の数は3エレメントであった。観察された1ベータ−シート中のベータ−エレメントの最大数は5エレメントであったが、それ以上の数のベータ−エレメントが可能であることは排除することはできない。連結ループはバレルの片方上のベータ−エレメントに連結する。いくつかはベータ−シートに交差して連結し、一方、その他は1つのベータ−シート内に位置するベータ−エレメントに連結する。特に、L2、L4,L6およびL8として示されたループは、自然界ではリガンド結合のために使用され、それゆえ、結合蛋白質/親和性領域の導入または修飾に好適な部位である。L1,L3、L5およびL7の、長さ、構造、配列およびアミノ酸組成の高可変性は、これらループもまた少なくとも人工的な型でリガンド結合のために使用され得ることを明瞭に示している。コアの方向に突き出されておりそれゆえコアの中心で空間を埋めている現実のコアを形成するベータ−エレメント内のアミノ酸の鎖は互いに、水素結合(H結合)、共有結合(システイン架橋)およびその他の結合力を通じて相互作用することができ、そして折りたたみ構造の安定性を決定する。内部に結集するベータ−エレメント部分の残基のアミノ酸組成と配列は、極めて可変であることが見出されたので、多数の他の構成が形成され生成され得ると結論された。
このig様折りたたみを含む新しいタイプの蛋白質の設計のための出発点として、構造の基本概念を得るために、ig様折りたたみ構造を含むドメインの投影図が使用された。InsitII、Cn3DおよびModellerプログラムが最小のエレメントと長さを決定するために使用された。加えて、構造のC−アルファ原子のみが、これらが折りたたみ構造の最小の特徴を描いているので投影された。これらベータ−エレメントの空間位置(座標)の小さい差は、許容された。ig様折りたたみのコアのC−アルファ原子の座標を表示しているPDBファイルが、新規な9、8、7.6および5ベータ−エレメント含有構造の開発のために使用された。8ストランド構造に関して、ベータエレメント1または9は省略できるのみならずエレメント5または6も省略できる。
したがって8ストランドコアは、好ましくは、エレメント2〜8および1または9の一方を含む。もう1つの好ましい8ストランドコアは、エレメント1〜4、7〜9およびストランド5またはストランド6の一方を含む。7ストランド構造に関しては、中でもエレメント1と9、1と5、6と9、9と5、および4と5を組み合わせる2ベータ−エレメントは除去可能である。エレメント4と5の除去は、空間的拘束の故に好ましい。好ましくはエレメント1,4および5、または4,5および9ばかりでなく他の形を欠く6ストランド構造もまたInsightとModellerによって分析され、処理目的のために充分信頼できることが示された。
多数の基本スキャッフォールドが構築され、蓄えられた。
全てのコンピュータ設計蛋白質は単に見積推測である。基本スキャッフォールドにおける1つの変異または複数のアミノ酸の変化によって、それを成功のスキャッフォールドにするかまたは予測されたよりもより好ましくそれを機能するようにすることができる。
このことを達成するために、構築された基本スキャッフォールドは、反応混合物中での非等モルdNTP濃度、マンガンもしくは他の添加物の添加、またはdITP(Spee et al., 1993)もしくはdPTPの(Zaccolo et al., 1996)のようなヌクレオチド類似体の添加のごとき、エラープロンPCRを含むPCP増幅による穏やかな変異操作がなされ、このことによって最終的に基本スキャッフォールドのアミノ酸組成およびアミノ酸配列を変えることができる。このようにして新規(第2次の)スキャッフォールドが創製される。
スキャッフォールドの、要求されたまたは所望された機能性、安定性およびその他の特性を試験するために、リゾチームを結合するための1MELおよびRNアーゼを結合するための1BZQのような既知の1セットの親和性領域が、調節して構築された基本スキャッフォールドに挿入された。構築されたVAPsの機能性、熱および化学的安定性は折りたたみされない条件で測定される。化学的および熱的処理の後の機能性は、結合試験(ELISA)によって測定され、一方、非折りたたみを誘導した温度は円2色性(CD)偏光計によって測定された。ファージディスプレイ技術は所望のスキャッフォールドを選択するためにまたはスキャッフォールドの最適化のために使用された。
ライブラリ構築のための最初の親和性領域
本発明において新規かつ特異的な領域が必要である。親和性領域は天然資源、縮重プライマーまたは集積されたDNAトリップレットから得ることができる。
これら全ての資源は、上述のとおり、ある種の重要な制限を有している。我々の新規な設定において、我々は、制限が少なく、モジュラシステムに使用でき、極めて使用および最適化に柔軟性があり、生成および調製が迅速かつ容易であり、低いパーセントの終止コドンを有し、極めて低いパーセントのフレームシフトを有する、新規かつ強力に改良された親和性領域の源であって、重要な構造特性が新規に形成されたクローンの大部分で保存されしかも新規構造エレメントが導入され得ることを特徴とする親和性領域の源を設計した。
通常の抗体の軽鎖および重鎖両者中の主な重要親和性領域(CDR3)は、11(マウス)と13(ヒト)アミノ酸の間の平均長を有している。かかる抗体中で軽鎖および重鎖中のCDR3は、共同して抗原結合剤として機能するので、かかる結合の強さは、両領域相互の結果である。
これに反して、VHH抗体(ラクダ科)の結合は、軽鎖が存在していないので1つのCDR3の結果である。16のアミノ酸平均長が見積もられ、これらCDR3領域は通常のCDR3領域よりも顕著に長い(Mol. Immunol. Bang Vu et al. , 1997,34, 1121-1131)。
長いまたは多重のCDR3領域は、潜在的にリガンとのもっと多くの相互作用位置を有し、それゆえもっと特異的でありかつもっと強い力で結合できる、と強調することができる。
もう1つの例外は、雌ウシ(ボス タウラス)のCDR3領域で発見されている(Berens et al.,1997)CDR3領域である。雌ウシの抗体は軽鎖と重鎖から構成されているが、それらのCDR3領域はマウスおよびヒトで見出されたものよりもっと長く、長さはラクダ科CDR3領域で見出されたものに匹敵する。主要親和性領域の兵緊張は、好ましくは約16アミノ酸であるべきである。できるだけ多く機能的CDR領域の長さを含むために、主要親和性領域は、1と50の間のアミノ酸またはそれ以上のアミノ酸に変化させることができる。 CDR3領域の構造および構造上のクラスは(CDR1およびCDR2に関してと同様に)解明されておらずまた理解されていないので、決定的なアミノ酸の位置および特性が適正になるように長い親和性領域を設計することは不可能である。
したがってほとんどのライブラリは少なくともいくつかの正しい領域を見出すために完全に縮重した領域が供給される。
本発明において我々は、新規な親和性領域のための鋳型として天然のラクダ科VHHCDR3ならびにウシ由来VCDR3領域の使用を説明するが、もちろんその他のCDR領域(たとえばCDR1およびCDR2)ならびに長さがこれに一致するさまざまな配列も使用することができるであろう。CDR3領域は、ラクダ科の種々の動物または長いCDR3領域を含有しているその他の種々の動物由来のVHH抗体をコード化しているmRNAからPCR技術によって増幅される。次に、アミノ酸組成、アミノ酸配列、推定の構造上の分類および長さのコード化において異なる約10の異なるCDR領域のこの蓄積物が、上述したようにPCRによって変異工程にかけられる。その結果、ほとんどの生成物は、元来の鋳型とは異なり、したがって潜在的に異なる親和性領域を有するコード化領域を含むであろう。他の非常に重要な結果は、生成物はそれらの長さを保持し、蓄積物はそれらの長さの分布を保持し、重要部分は構造的に重要な情報を保持するであろうが、一方その他は構造の非天然クラスを形成し、生成物はフレームシフトを含まないかまたは非常にまれにしか含まず、生成物の大多数は終止コドンを欠くだろうということである。これらの新規な親和性領域は、モジュラー親和性とスキャッフォールド転移(Modular Affinity and Scaffold Transfer)技術(MAST)の手段で選択されたスキャッフォールドにクローン化することができる。この技術は、上述の設計されかつ構築された全てのスキャッフォールドは、モジュラー構造を有しているのでベータ−ストランドに結合している全てのループはVAPの全体の構造を変えることなく他のループで容易に置き換えることができるという事実に基づいている(図2参照)。新しく構築されたライブラリは、当該技術分野の経験のある使用者によって知られた通常のスクリーニングに類似のスクリーニング手法にかけることができる。したがって、人工の結合ペプチドを含むライブラリを産生する方法であって、種々の特異的結合ペプチドをコード化することを特徴とする少なくとも1つの核酸鋳型を提供し、該鋳型の核酸誘導体の変異によって該鋳型の核酸誘導体の収集物を産生し、そして該収集物またはその一部を人工の結合ペプチドを含む該ライブラリを産生するためにペプチド合成システムに提供することを含む、ライブラリを産生する方法がさらに提供される。
ライブラリの複雑さはライブラリを産生するために使用される種々の鋳型の数の増加に伴い増加する。このようにして増加する数の種々の異なる構造が使用される。
したがって、好ましくは少なくとも2つの核酸鋳型、より好ましくは少なくとも10核酸鋳型が提供される。変異は、種々の方法と手段を使用して導入することができる。
好ましくは、その方法は、核酸鋳型またはその誘導体の塩基を変えることによって変異を導入する。誘導体は、鋳型と比較して少なくとも1つの導入された変異を含む核酸を意味する。このようにして、親和性領域の大きさは影響を受けない。適した修飾戦略には、たとえば不均衡なdNTPsの濃度(Cadwell et al.,(1992); Leung et al.,(1989)1; Kuipers, (1996)、dITP(Xu et al (1999); Spee et al (1993; Kuipers, (1996)、dTPT (Zaccolo et al., 5 (1996))、8−オキソ−dG(Zaccolo et al., (1996) )、Mn2+ (Cadwell et al., (1992); Leung et al., (1989) 1, Xu et al., (1999))、高い取り込みミス濃度でのポリメラーゼ(Mutagene(登録商標)、 Stratagene)の添加、のようなPCR戦略を包含する増幅戦略が含まれる。変異を取り込むための部位特異なプロトコルはもちろん使用し得るが、しかしながら、かかる方法を使用してライブラリを生成するためにはかなりの時間と努力が必要なので、部位指向変異のみを基礎とする戦略が選ばれるであろう。ハイブリッド戦略ももちろん使用できる。初期ストランドの延長中にdITPおよび/またはdTPTの取り込みを含む変異戦略は、かかる戦略がそれぞれのサイクルで導入できる変異の数について制御が容易であるので、好ましい。この方法は、複雑性を導入するために縮重プライマーの使用に依存しない。したがって、1つの実施形態では、該増幅は非縮重プライマーを使用する。しかしながら、(部分的)縮重プライマーも使用可能であり、したがって少なくとも1つの非縮重プライマーがさらに縮重領域を含む方法もまた提供される。結合ペプチドのライブラリを生成するための方法は、上述の好適なもっと大きな親和性領域の生成のために特に適している。これで、類似構造の同一性質を保持しながら多数の変化が導入し得る。したがって少なくとも1つの鋳型は、少なくとも14アミノ酸、好ましくは16アミノ酸を含む親和性領域を有する特異的結合ペプチドをコード化する。
この本発明の実施形態で非連続領域も使用され得るが、その領域は少なくとも14の連続アミノ酸を含むのが好ましい。複数の鋳型が使用される場合、領域は24アミノ酸の平均長を含むことが好ましい。
結合ペプチドのライブラリを生成するための方法は、好ましくは本発明のコア領域とその生成のための方法と組み合わせることができる。たとえば、一旦適当な結合領域が選択されると、コアは期待する特別な使用に適用するために設計または選択することができる。しかしながら、結合ペプチドの意図する用途の理由で特異なコア領域を選択することもできる。続いてコアを有するライブラリと結合ペプチドの既述のライブラリとを創製することができる。かかるライブラリの用途はもちろん多種多様である。
あるいは、コアのライブラリを有する結合ペプチドのライブラリを創製するために、戦略を組み合わせて使用することが出飽きる。個々のライブラリの複雑さは、もちろん特別な用途に組合わせライブラリを適用するために制御することができる。したがって好ましい実施形態では少なくとも1つの該鋳型が本発明のタンパク様分子をコード化する。
既述のペプチド、コアおよび組み合わせライブラリは本発明のタンパク様分子を選択するために使用することが出来、したがってここでさらに、ペプチドのための潜在的な結合相手を人工ペプチドの該ライブラリ中に提供し、該結合相手に特異的に結合できるペプチドを該ライブラリから選択することを含む方法が提供される。該方法を使用して得られる選択されたタンパク様分子ももちろん提供される。 選択されたタンパク様分子の容易な産生と回収を可能にするために、少なくともコアと結合ペプチドは、提示されたコア/ペプチド タンパク様分子をコード化している核酸を含む複写パッケージ上に提示されることが好ましい。好ましくは、複写パッケージは、ファージディスプレイ戦略で使用されるようなファージを含む。したがって、本発明の少なくとも1つのタンパク様分子を含むファージディスプレイライブラリも提供される上述のとおり、結合ペプチドのライブラリを創製するための方法は、コア領域に有利に適用することができる。したがって、人工コアを含むライブラリを産生する方法であって、鋳型が種々の特異的コアをコード化することを特徴とする少なくとも1つの核酸鋳型を提供し、その変異を通じて該鋳型の核酸誘導体の収集物を産生し、そして人工コアの該ライブラリを産生するために、該収集物またはその部分をペプチド合成システムに提供することを含む、ライブラリを産生する方法もまた提供される。好ましい結合蛋白質ライブラリは、好ましくは、雌ウシ(ボス タウラス(Bos Taurus))またはラクダ科(ラマパコス(lama pacos)およびラマグラマ(lama glama))由来のCDR3領域を含む鋳型から誘導される。
親和性領域(AR‘S)
蛋白質−リガンド相互作用は生命の基本原理の1つである。
全ての蛋白質リガンドに仲介される蛋白質間、蛋白質と核酸間、蛋白質と糖間および蛋白質とその他の型の分子間のいずれかの自然の相互作用は、蛋白質表面に存在する境界とリガンド表面の分子特性を通して仲介される。蛋白質−リガンド相互作用に関与する蛋白質表面のほとんどは、生物のライフサイクルを通じて保存されている。これらのクラスに属する蛋白質はたとえば、受容体蛋白質、酵素および構造蛋白質である特異的リガンドのための双方向表面領域は、通常、一定である。しかしながら、いくつかの蛋白質のクラスは、たとえば変異、組み換えまたはその他の型の天然の遺伝子工学プログラムによって露出した表面領域のそれらの性質を調節することができる。この作用の理由は、それらのリガンドまたはリガンド型が極めて大きい程度に変化できるということである。かかるクラスに属する蛋白質はたとえば、抗体、B−細胞受容体およびT−細胞受容体蛋白質である。両クラスの蛋白質に原理的には差はないが、両クラスに関し表面変化の速度が異なる。最初のクラスは主として進化力(種の寿命)に敏感であり、一方、第2のクラスは(生物の寿命内における)変異力にもっと敏感である。
受容体とリガンドの間の結合特異性と親和性は、両分子の露出した境界面の間の相互作用によって仲介される。蛋白質表面はその位置に存在するアミノ酸の型によって支配される。自然界によくある20の異なるアミノ酸は、それぞれ、それら固有の化学的かつ物理的特性を有するそれ自身の側鎖を持っている。他の分子と相互作用する役割を担っているのは、一定の露出した表面の全てのアミノ酸の累積した効果である。静電気力、疎水性、水素結合、共有結合およびその他の型の特性が、リガンドとの結合特異性と結合力を決定する。
蛋白質−リガンド相互作用に関与する蛋白質の最も洗練された型は抗体のそれである。かかる蛋白質をコード化することのできる遺伝子内の、位置と変異レベル、組み換えとその他の遺伝子変化を制御する巧妙なシステムが発展された。遺伝子変化力は、推定リガンドの結合に関与する抗体の露出された表面域を形成するこれら領域に主として焦点が当てられている。(理論的に)形成され得る、莫大な数の種々の抗体は、抗体の力を示す。たとえば、もしリガンドと抗体の重鎖の両者の中でリガンド結合に直接関与しているアミノ酸数が各鎖につき8アミノ酸だと仮定すると(これは、確かに楽観的でない)、1020に近い102*8(20アミノ酸タイプ、2つの鎖、8残基)の異なる抗体が生成され得る。もし近くに位置するアミノ酸の間接的効果が、直接相互作用アミノ酸を含みそして/または増加させるならば、それは天文学的な多数に達する。1つの生物が、リガンドに対する抗体の選択において、これらの全てまたはこれら組み合わせの部分でさえも試験することは全く不可能である。
露出した表面領域に存在する全てのアミノ酸がリガンド結合に等しく関与しているわけではない。いくつかのアミノ酸は、リガンド結合特性に顕著な変化をすることなくまたは小さい変化だけで他のアミノ酸に変えることができる。また、蛋白質のほとんどの表面領域は非常に柔軟性があり、リガンド表面の影響の下に容易に変形し、リガンド表面との結合をするようになるが、これは非柔軟性リガンド−結合領域とは起こらない。
上述したような蛋白質とリガンド間の相互作用力は、このようにこの変形を導くかまたは触媒する。一般に、多数のしかし限られた数の遺伝子は、アミノ酸の代理機能性とともに変化し、そして、表面の柔軟な性質は結合力と一緒になって、有効なリガンド結合蛋白質の産生を導くことができる。
天然由来の抗体とその親和性領域は、免疫選択方法である程度最適化された。これらの選択は、免疫システムでのかかる分子の作用に基づいている。免疫システム外での抗体の応用は、免疫選択基準の性質と制限のために妨げられる可能性がある。したがって、工業的、美容的研究とその他の応用には、しばしばリガンド結合蛋白質の異なった特性が要求される。結合分子が応用できる環境は、たとえば極端なpH条件、塩条件、異常温度など、抗体構造のために極めて過酷である可能性がある。その応用によっては、CDRsは天然抗体からスキャッフォールドに移植されたりされなかったりする。少なくともいくつかの応用のために、異常な親和性領域が必要となるであろう。したがって、人工的に構築されて注意深く選択されたスキャッフォールドと親和性領域は、他の応用に必要であろう。
スキャッフォールド上の親和性領域は、いくつかの起源から得ることができる。まず第1に、天然の親和性領域を使用することができる。抗体フラグメントをコード化しているcDNAのCDRsは、PCRを使用して単離することができ、スキャッフォールドに適正な位置で挿入することができる。かかる領域の源は、免疫化されたまたは免疫化されない動物のものであることができる。第2に、全合成のAR‘sを縮重プライマーを使用して構築することができる。第3に、いくつかの領域のみが縮重している半合成AR‘sを構築することができる。第4に、選択されたアミノ酸のトリプレットコード(単一特異的または混合物)を、あらかじめ定められた形で融合することができる。第5に、(免疫されたまたは生まれつきの動物の)天然由来の親和性領域であって、(たとえばマンガンイオンのような)変異条件または(たとえばdITPのような)試薬を反応中に導入することによって(たとえばNASBAまたはPCRのような)増幅操作中に変異される。
前に述べた理由によって、免疫を基礎とするCDRsは成功させることができるが、リガンドまたはリガンド領域の大部分は、抗原性ではないであろう。強力な選択と最適化戦略を組み合わせて、人工親和性領域は、変えられないものでないなら、よりいっそう重要になってきている。高いレベルの終止コドン、フレームシフト、困難な配列、あまりも多いランダム化、比較的少ない数の変異終止(最大約8つの停止)および短いランダムストレッチ(8アミノ酸以下)のゆえに、鋳型を基礎とする戦略は非常に強力ではない。非天然由来AR‘sの力も、予想どおり正しく折り重なっている、すなわち問題のAR’sまたはスキャッフォールドを折りたたむことなくスキャッフォールド上に存在することのできるAR‘sのパーセントに依存する。現在、AR‘s中に存在する構造と領域についての情報はほとんど入手できない。したがって、正しく折りたたまれて提示されたランダム化で構築された人工のAR‘sのパーセント、特に長いAR’sのそれは、構築されたARsの長さに反比例するであろう。CDRとAR構造の知見は、将来ほとんど確実に入手できるであろうが、まだ入手できない。
高い親和性と高い特異性が必要な適用に使用される、単一のスッキャッフォールド蛋白質には、リガンドとの相互作用のための充分露出されたアミノ酸側鎖を持つために一般に少なくとも1つの長い親和性領域または複数の中間長のARsが必要である。鋳型またはトリプレット融合戦略を使用して合成で構築された高機能の長いARsは、上述の理由で非常に効果的ではないであろう。かかる合成ARsを含むライブラリは、機能が低いかまたは取り扱うにはあまりにも多すぎるであろう。長いARsのための唯一入手可能な資源は、(抗体の重鎖中のCDR3が最も頻繁な)動物資源から得ることのできるものである。特に、雌ウシとラクダ科由来のそれぞれVh鎖とVhh鎖のCDR3領域は、異常に長い。これら領域の長さは、平均で13アミノ酸以上であるが、30アミノ酸またはそれ以上も例外ではない。
免疫化された動物から得られるかかるARSで構築されたライブラリは、免疫学的に活性なこれらリガンドまたはリガンドドメインのために成功する。非免疫性リガンドまたはリガンドドメイン、およびほかの点で免疫応答(毒性、自己認識など)しないように見えるリガンドは、リガンド特異的な長いCDRsを産生するための免疫システムの引き金とはならないであろう。したがって、かかる標的の結合を仲介する長いCDRsはこの方法では得られないかほとんど得られず、したがってそれらは、単一スッキャッフォールド蛋白質に使用することのできる特異的な長いARsを提供する技術では、得られない。似たような結論が、ラマ Vhhスッキャッフォールド上の合成ARSの使用を分析したムイデルマンズ(Muidermans)によっても引き出されている(Reviews in Molecular Biotechnology 74 (2001) 277- 302)。
PCRの方法でのCDR領域、特にCDR3の単離によって、入手可能なCDR領域に存在する全ての長さの変異体の使用と全ての構造上の変異体が使用可能になる。たとえばPCRのような核酸増幅技術による、微小な、ゆるい、中間程度または高程度のランダムな変異の導入によって、新規な型の親和性領域が生じるであろう。かかるAR蓄積物の利点は、このように生成された領域の長さの分布が保存されるということである。また、もしランダム鋳型を基礎とする方法に比べると比較的低数の変異のゆえに、終止コドンの導入とフレームシフトが高程度で防止できるであろう。さらに、変異パーセントに依存して、産生物の重要部分または大部分でさえも、動物中に存在するそれらの原型の鋳型に同一または少なくとも部分的に同一な構造情報を提示するペプチド配列をコード化するであろう。これらの変異のゆえに、改変されたアミノ酸配列が、生成物の巨大部分によって生成し、その結果これらは新規な結合特性を有するであろう。結合特性は、原型の鋳型にくらべ、強さばかりではなく特異性および選択性においても改変することができる。
このようにして、長いAR領域のライブラリは、もし合成、半合成および天然で得られるARsと比較するならば、上述したように、技術的または物理的の問題を減少して創製することができる。
近年、新規でかつ強力なインビトロ変異化方法および試薬が開発された。変異化法の1つは、(位置指向変異化方法と反対に)位置に無関係に変異体を産生する。
PCR修飾戦略には、たとえば、不均衡なdNTPs濃度(Cadwell et al. , (1992); Leung et al.,(1989)1; Kuipers, (1996)、dITP(Xu et al (1999); Spee et al (1993; Kuipers, (1996)、dTPT (Zaccolo et al., 5 (1996) )、8−オキソ−dG(Zaccolo et al., (1996) )、Mn2+ (Cadwell et al. , (1992); Leung et al. , (1989) 1,, Xu et al. , (1999))、高い取り込みミス濃度でのポリメラーゼ(Mutagene(登録商標)、 Stratagene)の添加が含まれる。
親和性変異
1回またはそれ以上の選択操作の繰り返しののちに、選択されたリガンドを認識するVAPsに富んだ群が形成される。リガンドに対してより良い、異なった、またはそのほか変化されたVAPsを得るために、領域またはその1部分をコード化しているVAPを、そのモジュールの性質ゆえに上述のような変異プログラムの対象にすることができる。
いくつかの戦略が可能である。第1に、全VAPまたはVAPsを鋳型として使用することができる。第2に、唯一のまたはそれ以上の親和性領域を変異することができる。第3に、フレームワーク領域を変異することができる。第4に、VAPすべての断片を鋳型として使用することができる。もちろん、もっと多くの領域を変えるために繰り返し工程を適用することができる。変異体の平均数は、PCR条件を変えることによって変化させることができる。このようにして、全ての所望の領域を変異させることができ、また全ての所望のレベルの変異数を独立して適用することができる。変異操作の後に、リガンドに対して新規かつ改良されたVAPsを見出すために、VAPsの新しく生成した蓄積物を再スクリーニングおよび再選択することができる。変異操作は、再開始して必要に応じて多くの回数、適用することができる。この変異プログラムの効果は、所望の親和性と特異性を有する親和性領域1および2を得ることができるばかりでなく、選択された親和性領域3の微小変化を導入することができるということである。この主たる結合領域における変異プログラムはリガンド結合特性を強力に増大することができる。
結論として、ここに記載された発明は、変異段階できわめて強力である。
産業上の利用分野
本発明のVAPは、非常に多様な用途において、たとえば治療から抗体まで、検出試薬から精製モジュールまで多様な用途に使用可能である。各用途においては、リガンド結合蛋白質は、たとえば温度安定性、プロテアーゼ抵抗、標識などを有するべきであるという特徴を、環境と下流の用途が決定する。スキャッフォールドの選択が何であろうとも、いかなるものもすべからく自らの特異的特性を有するものである。いくつかの特性はある用途にとっては都合がよいが、また一方で、他の特性は受容できないものである。大量生産の商業用用途にとっては、スキャッフォールドが容易かつ速やかに領域の突然変異、除去、挿入、交換を可能とするためにモジュラーデザインを含むことは重要なことである。モジュール方式によって、標準化された手順を介して、必要な特性について最適化することが可能となり、ドメイン交換プログラム、すなわちプリメードカセットの交換が可能となる。最適なモジュラースキャッフォールド遺伝子は特異的特性を満たしているべきであることから、自然に得られる遺伝子がこのような特性を含むことはありそうにないことであり、それらをデザインして合成によって構築することが必要である。
モジュール性に加えて、スキャッフォールド遺伝子またはタンパクに存在すべき、または存在すべきでない他の特性がいくつかある。天然タンパクに存在するフレームワークに基づくすべてのスキャッフォールド系はそれらの自然特性も受け継いでいる。これらの特性は、この特異的タンパクが作用する系についての進化する力によって最適化されてきた。特異的特性とは,たとえばコドン使用、コドン出現頻度、発現レベル、折りたたみパターンおよびシステイン架橋形成などを包含する。しかしながら、かかるタンパクの商業生産は経済的利益の達成にとって最適な発現、翻訳および折りたたみを要求する。遺伝子情報が産生有機体にとって和合性を有し、受容可能であるべきであるだけでなく、タンパク特性もその用途のタイプに最適でなければならない。かかる特性とは、感熱性、pH感受性、塩濃度感受性、蛋白質感受性、安定性、精製可能性その他多くのものがある。このように、アフィニティプロセスにおいて実際に使用できるものであるためには、特異的結合能力のみでは十分ではない。特異的結合剤は、カラム中の担持物質、不溶性ビーズ、プラスチック、金属または紙の表面、または他の有用な表面などの固相に結合されることが可能なものでもなければならない。理論上、この結合は、特異的結合活性に対して悪影響なく達成することはできない。それ故この結合は好ましくは、特異的アフィニティ領域から比較的離れたVAP分子中の領域で達成される。
本発明の重要な実施の形態は、多孔性シリカなどの上に固定された特異的結合剤であって、VAP分子の選択を有する特異的結合剤を有する親和性吸収物質である。本発明の特に重要な実施の形態は、孔のサイズが少なくとも30Aであって、1000Aを超えない、シリカ、不活性硬質ポリマーなどの多孔性担持物質上に固定された特異的結合剤であって、VAP分子の選択を有する特異的結合剤を有する親和性吸収物質である。好ましくは、担持物質の孔サイズは少なくとも60Aである。好ましくは、孔のサイズは500Aを超えず、さらに好ましくは300Aを超えない。支持物質への蛋白質の結合は、研究および産業界で広く利用されている(Narayanan and Crane, bas(1990))。VAPの支持または担持物質としてのポリマーは、ナイロン、ビニルポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、セルロース、キチン、キトサン、アガロース、タンパクを含むが、これらに限られない。活性化された(すなわちタンパク結合の用意ができた)支持物質は市販されている。または当業者によって化学的に活性化することも可能である。
シリカ、不活性ポリマーなどの担持媒体の孔のサイズは、たとえば標準的なサイズ排除技術または他の公開された方法を使用して決定することが可能である。公称孔サイズは、しばしば平均孔径と呼ばれ、ホイーラー方程式によって計算されるように(MPD=(40,000×孔の体積)/孔表面積)、孔の体積および表面積の関数として表される。孔の体積および表面積は、標準窒素吸収法によって決定することができる。
VAPを最終製品まで、および、最終製品においてもVAPを存在させておく方法においてVAPを利用することが可能である製品の例としては、非常に広範な範囲のものがある。また、VAPが、固定され、好ましくは再利用のために再生産可能な方法においても、VAPの主たる利点が充分に利用されている。たとえば、比較的低コストのVAPは、大量の親和性体を使用する必要がある大量生産用途に特に適している。以下のリストは用途を示すものであるが、決してこれらに制限されるわけではない。製品または方法の例は以下のとおりであり、括弧内に可能な用途を挙げている;
(1)産業用食品加工、たとえば、乳清、トマトのしぼりかす、カンキツ類の果物などの加工、または、たとえば、ジャガイモ、コーン、コメ、コムギ、ダイズ、綿、ヒマワリ、テンサイ、サトウキビ、タピオカ、アブラナなど(これらに限られないが)の大量の作物から、デンプン、油脂、タンパク、繊維、糖などの抽出など、農産物の大量の原料に関連する加工。他の加工の例は、たとえばチーズ、バター製造における日誌関連産業にある。VAPは既存の加工工程のラインにおいて使用が可能であり、かつVAPは支持物質に不可逆的に固定化されている結果として最終製品にはならないので、それらは例外的に農作・食品加工産業において慣習となっている大規模工業環境に適している。
もっと詳細な例では、チーズ製造加工の結果物である乳清画分は、自然抗体、食品添加物などとして、たとえば新生児の発育において重要な生物学的機能を有する低存在量タンパクを比較的多く含む。かかるタンパクの例としては、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、リゾチーム、アンギオゲニン、インシュリン様成長因子(IGF)インシュリン受容体、IGF結合タンパク、トランスフォーミング成長因子(TGF)、結合および可溶性TGF受容体、表皮成長因子(EGF)、EGF受容体リガンドインターロイキンー1受容体アンタゴニストがある。乳清から回収されうる下位のクラスの他の有益な化合物は、乳汁または初乳中に存在する免疫調整ペプチドである。特異的VAPも乳清からホルモンを回収するために選択することが可能である。乳汁にあるホルモンの例としては、プロラクチン、ソマトスタチン、オキシトシン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、チロキシン、カルシトニン、エストロゲン、プロゲステロンがある。
(2)消費者向け食品、たとえば、アイスクリーム;油、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズなどの油脂ベース製品;スープ、ソース、調理済み食品、ソフトドリンク、ビール、ワインなどの他の加工済み食品
(直接的抗生物質活性または酵素の選択的阻害を介する腐敗の予防および防止;加工中の感受性モチーフの、たとえば、活性な形態で存在することによって最終製品の質に影響する酵素または化合物からの保護;香味およびにおいの放出の制御;ビール醸造工業における苦味成分の保護または除去など、香味およびにおいを保護するまたは強めるための分子模倣;殺虫剤または他の汚染物質の除去;加工中における感受性モチーフの保護、たとえば好ましくは、変性加工工程の下流で活性であることが必要である酵素の保護、それによって特異的VAPとの結合が変性される酵素の活性部位を保護するであろう。)
(3)パーソナルケア製品
粉末、ペースト、錠剤または液体などの異なる形態において適用される、シャンプー、毛染め液、洗浄液、洗濯用合成洗剤、ゲル(フケまたは皮膚に関連する他の微生物を抑制するための抗菌作用、練り歯磨きおよび口内洗剤用抗菌作用、合成洗剤中の汚れおとし酵素用強化特性、たとえば温度またはpH安定性などを高めるための石鹸または合成洗剤中の不安定な酵素の安定化、染毛製品用結合作用の増強、靴の中敷、化粧紙など、皮膚用途または衣料用途における、体臭の原因となる酵素の抑制。)
(4)非食品用途
印刷用インク、接着剤、塗料、紙、化粧紙など(たとえばプラスチックボトルまたは容器などの印刷が困難である表面のための、または、非常に特殊な結合が必要である表面、たとえば電子チップ製造におけるリソグラフ工程、有価証券証明用表面のための、表面−特定インク、接着剤、塗料など。
(5)環境保護処理
浄水、生物治療、浄化加工水、汚染物質の濃縮(微生物、ウイルス、水浄化プラントまたは温室の水循環システム中の有機汚染物質の除去、換気ダクトからの生物学的危険要因の除去)
(6)乾燥または湿式形式の動物飼料製品(ウシ飼育場および養魚場向け飼料成分においてしばしば起こる反栄養要因の影響の除去、マスキング、阻止、特に、プロテアーゼ阻害物質またはフィチン酸などの負の要因、抗菌剤としてのVAPの添加による、現在一般的な抗生物質のタンパクベースの抗生物質との置換)
本特許の好ましい実施の形態は産業用プロセスを含むけれども、親和性クロマトグラフィによるVAPの使用は、これらの用途に限られない。等級として“少量/高価値”の側おいては、古典的な免疫応答において抗体を生じさせることが困難であることが知られているリガンドに対してVAPを利用することが可能であるために、価格がそれほど重要ではない医薬、診断および研究目的では、種々の用途が考えられる。また、サイズが小さく安定性が高いため、“少量/高価値”の用途が提供され、VAPは、従来の抗体またはそれらのフラグメントよりも優れている。
(7)医薬用途
VAPは、治療薬そのものとして使用することが可能であり、特に、コアを天然蛋白質に似るようにデザインする、または治療薬のための適切な親和性領域および/またはコア領域を同定するようにデザインするときには、治療薬として使用がすることが可能である。
(8)診断用途
VAPは、通常使用されている抗体または抗体フラグメントとは本質的方法において異なる3次元構造の結果として、異なる種類の分子を検出することが可能である。たとえば、感染によって伝播するプリオンの検出。この場合は、感染した状態を引き起こす突然変異が生来の分子内に隠されている。従来の抗体は、変性した状態下での感染する形態を分別することが可能なだけであるが、小さくて暴露されているARまたはVAPはもっと内方に置かれたペプチドシーケンスを認識することが可能である。
(9)研究用途
VAPは、たとえば、プレート表面または組織などに結合し、検出レベルを高め、固定された表面に特定の化合物を配置し、トレーサ分子を適所に、または、特異的VAPについてコードする選択された遺伝子が、一時的に、持続的に、または制御された方法のいずれかで、細胞環境においてかかる遺伝子を翻訳することによって発現されるところであって、および、その標的とされた発現を介して、標的分子の機能的にノックアウトされるところに固定する。たとえば、受容体リガンドを模倣することは、正常なシグナル−導入経路と干渉することがあり得る、または酵素阻害物質として機能するVAPは代謝経路と干渉することがあり得る。
上記の例とは異なり、それらの用途との組合わせにおいてマトリックスを形成する以下のカテゴリによって示されるように、VAPを適用することが可能な方法には共通するものがある。
1. 親和性クロマトグラフィ
VAPを適切な支持体に、たとえば、一列に、または直列に、または完全に連続運転される回転式の構成において使用することが可能であるクロマトグラフカラムに固定する。また、パイプ、チューブ、ラインフィルタなどを固定されたVAPと一列に並べることも可能である。VAPを固定することが可能な支持物質は圧縮安定性、フロー特性、化学的不活性、温度安定性、pH安定性、溶剤安定性などについてのプロセス要件に合ったものを選択することが可能である。比較的圧縮ができない担持体が好ましく、特にシリカまたは硬質不活性ポリマーが好ましい。これらは産業用規模のクロマトグラフィにおいての使用に利点があるが、これは、アガロースなどの比較的柔らかい担持体に適用することが可能であるよりも、実質的に、より高圧で運転可能なカラムに詰めることが可能だからである。かかる種々の支持物質にタンパクを結合する結合手順はよく知られている。カラムに、選択したプロセス流を装填した後、pHまたは塩濃度の変化などの周知の手順を介して、結合リガンドを、固定されたVAPから放出させ、その後VAPを新たなサイクルのために再生することが可能である。選択されたVAPが高度に安定であるために、例外的に、それらを繰り返しサイクルに適したものとし、したがって、このような回収および精製手順のコスト効率を改善する。親和性クロマトグラフィの原理および汎用性は非常に数多くの用途において広く述べられている。
2.不溶性ビーズは、VAPが固定される支持物質が適所に固定されていない、異なる形式の親和性クロマトグラフィであるが、たとえば、シリカ、金属、磁性粒子、樹脂などのビーズとして利用可能である。これらは、プロセス流において混合し、特定のリガンドをたとえば流動床または攪拌タンクにおいて結合させ、その後ビーズを重力、磁力、フィルタなどを用いて、単純な手順でプロセス流から分離させることが可能である。
3.VAPと標的リガンドを架橋することによる、そのリガンドの凝結。それによってその溶解性を低下させ、沈殿によりリガンドを濃縮する。この目的のために、VAPは2価であるべきであり、すなわち少なくとも2つのARをスキャッフォールドのいずれか側に構築せねばならない。この2つのARは同じ分子標的を有し得るが、2つの異なる分子標的は架橋または凝集効果を与えるには好ましい。
4.加工工程中に感受性モチーフを保護するために特定の分子をマスキングする。これによって好ましくないpH、温度または溶媒条件に対する標的リガンドの安定性を高める、または、変質または劣化酵素に対する耐性を高める。分子マスキングの他の機能的効果は、揮発性分子のマスキングであり、これによってかかる分子のセンソリ認識力を変えることが可能である。それに対して、かかる分子のVAPからのゆっくりとした条件付の解放を、より下流のプロセス行程において、消費または消化中に、または、生物医薬または研究用途にとって適切な部位にVAPリガンド錯体を標的した後に、予想することが可能である。また、特異的受容体結合能力を備えたVAPを使用する揮発性化合物の模倣は、消費者用製品からの匂いのマスクに使用することが可能である。
5.不溶性物質をVAPで被覆することによって、高度に特異的表面親和性特性を付与する、または、VAPまたは可能性としてのフュージョン製品(すなわち、VAPに化学的に結合されている製品、またはタンパクの場合には、VAPの特異性が変わることなく残るような方法でVAPと共に共転化される製品)を特異的表面に結合する。たとえば、VAPを使用して、特異的分子をたとえば組織にプレート上で固定し、検出レベルを高め、固定された表面に特定の化合物を局在化し、トレーサ分子を適所に固定する。
自然スキャッフォールドがすべて商業的および/または工業的観点から興味深いわけではない。たとえば、全タンパクの安定性および感受性は、提案された用途に付随する要件を満足するものでなければならない。酸性環境におけるリガンド結合タンパクは、それ自体においては、高レベルの塩環境または高温の環境においては有用なものではない。すべてのスキャッフォールドにとっての1つのものとして機能する可能性のあるすべての特性を有する1つのスキャッフォールドをデザインすることはできない。たとえば、感受性の鈍い、蛋白質分解スキャッフォールドを必要とする用途がある一方で、他の用途はスキャッフォールド中に特異的プロテアーゼ切断部位を必要とする。これらの用途および多くの他の用途のために、すべての要件を満足させる1つのスキャッフォールドをデザインすることは不可能である。それゆえ、我々は異なるスキャッフォールドをデザインし、これらのスキャッフォールドを異なる要件を満たすように適合させた。本発明に示すように、熱安定性、広範なpH抵抗、および高い塩濃度においてすら結合するリガンドなどの特性を有するスキャッフォールドをデザインし構築することが可能である。さらにまた、これらのスキャッフォールドを、リガンド特異性を変えずに、たとえば、システインブリッジの導入または除去、または、可能性として存在するN−グリコシル化部位の除去など、コア中のアミノ酸、または内側または外側に向けられたアミノ酸のいずれかを変えることによって、必要な特性に適合させることが可能である。このことを心にとめ、リガンド結合ドメインの特性と空間的位置とを変えることなく、多種のリガンド結合環境において使用することが可能なスキャッフォールド構築することが可能である。以上に説明されたMAST技術によって、選択された親和性領域を1つのスキャッフォールドから別のスキャッフォールドにそれらのリガンド特異性を失うことなく交換することが可能であり、すなわち、一旦選択された親和性を、スキャッフォールドを変えるだけで、いくつかの異なる用途に使用することができるということを意味している。
本発明はさらにまた、タンパク様分子、それのための方法、それを使用した方法、またはその使用を提供し、かかるタンパク様分子は、表2,3,10,13,または16に挙げた分子を有する。
実施例
実施例1
コア座標の決定
免疫グロブリン様(ig様)折りたたみ構造は、自然全体に渡って大変普遍的である。多くの蛋白質は、特に動物界において、この分類に属する蛋白質内に折りたたみ構造領域を有する。ig様折りたたみ構造を含有する蛋白質の機能を調べるとともに、その特定の蛋白質内のこのig様折りたたみ構造の機能を調べると、全部ではないが、これらのドメインの多くがリガンド結合に関与していることが明らかである。蛋白質を含有するig様折りたたみ構造のいくつかの例は、V−CAM、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン、免疫グロブリン定常領域、T細胞受容体、フィブロネクチン、レオウイルス外殻蛋白質、ベータガラクトシダーゼ、インテグリン、EPO受容体、CD58、リブロースカルボキシラーゼ、デスルホフェロドキシ(desulphoferrodoxine)、スーパーオキシド様、ビオチンデカルボキシラーゼ、およびP53コアDNA結合蛋白質である。多くのig様折りたたみ構造の分類は、SCOPデータベース(Murzin A. G et al, 1995; http://scop.mrc-lmb.cam.ac.uk/scop)と、CATH(O rengo et al, 1995; http://www.biochem.ucl.ac.uk/bsm/cath_new/index.html)とから得ることができる。SCOPは、これらの折りたたみ構造を、免疫グロブリン様ベータサンドイッチを有する全てのベータ蛋白質として分類し、ここにおいて、折りたたみ構造を含有するいくつかのメンバーは追加のストランドを有するけれども、このサンドイッチは、2つのシート中に7本のストランドを含有する。CATHは、これらの折りたたみ構造を、主として、コード2.60.40で示された免疫グロブリン様折りたたみ構造におけるサンドイッチ様の構造を有するベータ蛋白質として分類する。CE(Shindyalov et al. 1998; http://cl.sdsc.edu/ce.htm)、VAST(Gibrat et al., 1996; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/VAST/vast.shtml)、およびFSSP(Holm et al, 1998; http://www.ebi.ac.uk/dali/fssp)のような構造データベースにおいて、類似の分類が用いられている。
Cn3D(NCBI; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/CN3D/cn3d.shtml)、インサイトII(MSI; http://www.accelrys.com/insight)およびその他の構造ビューアのソフトウェアを用いるこれらの折りたたみ構造の投影は、ig様折りたたみ構造が種々のサブドメインを有することを示した。構造の概略的な投影が図3のAに表される。最も保存された構造は、折りたたみ構造の中心部、すなわちコアにおいて観察された。コア構造は、長さにおいてほとんど異ならず、相対的な保存された空間的制約を有するが、これらは、配列およびアミノ酸組成の両方において、大きく異なることが発見された。コアの両側には、極めて可変的なサブドメインが存在し、これらは、連結ループと称される。これらの連結ループは、アミノ酸内容物、配列、長さおよび立体配置において異なり得る。したがって、コア構造は、これらの蛋白質内の最も重要なドメインとして指定される。コアを形成するベータエレメントの数は、6ストランドのコア構造は重要なものとなり得るけれども、7〜9の間で異なり得る。ベータエレメントは、2つのベータシートにおいて全て配置される。各ベータシートは、逆平行のベータエレメントの配向から構築される。観察された1つのベータシートにおける最も少ない数のベータエレメントは、3つのエレメントである。観察された1つのベータシートにおける最も多い数のベータエレメントは、5つのエレメントである。より多い数のベータエレメントが可能であろう。連結ループは、バレルの一方側にベータエレメントに連結する。いくつかの連結は、ベータシートを交差する一方で、その他は、1つのベータシート内に位置するベータエレメントに連結する。特に、L2、L4、L6よびL8と示されるループは、リガンド結合のために現実に用いられる。L1、L3、L5およびL7ループの長さ、構造、配列およびアミノ酸組成における相当な多様性は、これらのループが、少なくとも人工的な形式でリガンド結合にも用いられることを明らかに示す。
コアの内部に向かって突出し、コアの中心部でスペースを満たす、現実のコアを形成するベータエレメントにおけるアミノ酸の側鎖は、折りたたみ構造を安定化させるために、H結合、共有結合(システイン架橋)およびその他の力を介して互いに相互作用し得る。内部に並ぶベータエレメント部分の残基のアミノ酸組成および配列が極めて可変であると発見されたので、多くのその他の構成がまた形成され得るという結論が下された。
このig様折りたたみ構造を含有する新しいタイプの蛋白質の設計に関する出発点として、構造の基本概念を得るために、ig様折りたたみ構造を含有するドメインの投影が用いられた。インサイト(Insight)II、Cn3D、およびモデラー(modeller)プログラムを、最低限のエレメントおよび長さを測定するために用いた。加えて、アミノ酸の識別情報を全く重要性のないものとして決定したので、構造のCアルファ原子のみを投影した。なぜなら、これらは、折りたたみ構造の最低限の特性を表すからである。これらのベータエレメントの空間的位置(座標)のわずかの相違は許容された。9つのベータエレメントを含有するこのような構造の4つの例を測定し、PDB形式(座標描写、表1を参照のこと)に変換したが、構造内の多くのわずかの相違はまた、ig様折りたたみ構造の定義(たとえばCATHおよびSCOPを参照のこと)に従う折りたたみ構造である限り、重要なものと推測された。ig様折りたたみ構造のコアのCアルファ原子の座標を表すこれらのPDBファイルを、新しい9、8、7および6のベータエレメントを含有する構造の開発に用いた。8ストランド構造に関して、ベータエレメント1または9が除外されてもよいが、エレメント4または5が除外されてもよい。7ストランド構造に関しては、ベータエレメント1および9を除去し、または好ましくはエレメント4および5を除外した。エレメント4および5の除外は、空間的制約のために好ましい(図3)。6ストランド構造は、好ましくはエレメント1、4および5、または4、5および9を欠失するが、その他の形式もまた、インサイトおよびモデラーで分析されるとともに、工学目的のために十分信頼されるように示された(図3C)。
実施例2
9ストランド折りたたみ構造の設計
蛋白質の折りたたみは、アミノ酸バックボーン原子とアミノ酸の側鎖に存在する原子との間の相互作用に左右される。ベータシートが両方のタイプの相互作用に左右される一方で、2つのベータシート間、たとえば前述の構造間の相互作用は、主として、対向する残基のアミノ酸側鎖の相互作用を介して仲介される。アミノ酸側鎖の空間的制約、物理的かつ化学的な特性は、特異的構造および折りたたみ構造に関する可能性と、と、したがって、折りたたみ構造または構造における特定の位置で用いられ得るアミノ酸のタイプとを限定する。空間的制約を満たすアミノ酸配列と、前述の構造(実施例1)の3次元構造に適した特性とを得るために、3次元分析ソフトウェア(モデラー(Modeller)、プロサ(Prosa)、インサイトII、ホワットイフ(What if)、およびプロチェック(Procheck))を用いた。現在のコンピュータの計算力、ならびに限定されたモデルの正確度およびアルゴリズムの信頼性は、計算かつ評価され得る残基および推測上の構造の数を限定する。
前述のような9ベータストランド折りたたみ構造を形成し得るアミノ酸配列を得るために、異なるレベルの検査を必要とし、たとえばPDBファイル1に記載されるようにCアルファバックボーントレースで開始する。第1に、折りたたみ構造の内部が、設計され、かつ検査される必要がある。第2に、ベータエレメント連結ループが、付着され、かつ計算される必要がある。第3に、外部のアミノ酸、すなわち環境にアミノ酸側鎖を露出するアミノ酸が、得られた推定折りたたみ構造を妨げることなく適応することが必要とされる。加えて、外部アミノ酸側鎖は、好ましくは、可溶性のある産生物を生じさせなければならない。第4および最後の段階において、全体のモデルが、偶然に導入された空間的不調和に関して再計算される。不和合性を引き起こすアミノ酸残基は、より正確でかつ信頼性のある適応性を示すアミノ酸と置換される。第1段階において、前述および実施例1の基準を満たす、正確に折りたたまれた二重ベータシート構造の内部を並べるアミノ酸配列を、たとえばVAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Structure/VAST/vast.shtml)における構造配列に関してPDBファイルを提示することによって得た。PDBファイル1に示すようなPDBファイルの提示は、数千のヒットをすでに生じさせた。これらの蛋白質の大部分は、ここで意味する折りたたみ構造としてSCOPまたはCATH(前述を参照のこと)に従って分類される少なくとも1つのドメインを含有する蛋白質である。
提示された構造の内部を並べるいくつかのユニークな配列を、産生物例の産生のために用いた。この構造配列実験からの関心ある配列を、分類と、2乗平均平方根偏差(RMSD値)と、VASTスコア値(高い値ほど、より正確な適応を示す。)と、配列識別情報と、種の起源と、ヒットから提示された生物学的機能との基準で、選択した。フィブロネクチン様蛋白質、抗体関連蛋白質、細胞接着分子、ウイルスコア蛋白質、および多くのその他としての構造。Cアルファバックボーンによって表される構造は、コア構造と称される。
第2の段階において、ループを、得られた産生物に付着した。最終産生物の構造を解明するいくつかの分析方法が用いられてもよいが、最も魅力的な特徴は、完全な機能的リガンド結合特性を有するコア配列中の親和性領域の提示であろう。最終産生物の機能性を検査するために、既知のリガンドを認識する親和性ループを、コア構造に移植することができる。抗ニワトリリゾチーム(1MELとして知られている構造)がよく記録され、これらの親和性領域(抗体においてCDR’sと呼ばれる。)の特徴がはっきりと記載されるので、これらのループを、第1段階において記載した方法を介して得たコア配列中の正確な位置で挿入した。正確な位置を、構造配列、すなわち、1MELの3次元構造を記載しているファイル(PDBファイル、例)ですでに得られた折りたたみ構造の重複投影を介して決定した。類似の投影およびそれに続くループの移植を、1BZQ(PDB)によって記載された構造から抽出されたウシRNaseA結合親和性領域に関して実行した。移植された親和性ループは、ベータエレメントの一端をその他の端に連結する。親和性領域1は、ベータエレメント2と3とを結合し(L2)、AR2は、ベータエレメント4と5とを連結し(L4)、AR3は、ベータエレメント6と7とを連結し(L6)、AR4は、ベータエレメント8と9とを連結する(L8)。各ベータエレメントの他端部を、ループによって連結し、このループは、エレメント1および2(L1)、エレメント3および4(L3)、エレメント5および6(L5)、エレメント7および8(L7)をそれぞれ連結する(図3Aの概略的な投影を参照のこと)。もちろん、あらゆる種類のループが、ベータエレメントを連結するために用いられてもよい。ループ配列源およびループ長は、たとえば、ループモデリング(ソフトウェア)を介して得られたループと、SCOPおよびCATHなどの指示された分類に記載された自然発生的なループからの利用可能なデータから得られたループとを包含する。ループ1(L1)、ループ3(L3)、ループ5(L5)、およびループ7(L7、図3A)を表すループのCアルファバックボーンを、たとえば1NEU、1EPF−B、1QHP−A、1CWV−A、1EJ6−A、1E50−C、1MEL、1BZQおよび1F2Xのような構造から選択したが、類似の結果を有する多くのその他のものを用いてもよかった。たとえば構造1EPF、1NEU、1CWV、1F2X、1QHP、1E50および1EJ6のPDBファイルに存在する構造情報から得られたループ位置とともに、前述の第1段階で得られたコア構造の3次元配列は、強力なコンピュータと、Cn3D、モデラー、および/またはインサイトソフトウェアとを用いて、実現された。対応するループを、第1段階のモデル中の正確な位置に挿入した。ループは、ある程度のエネルギおよび/または空間的自由が存在し得るので、コアに正確に適合することを必要としない。実際にループを形成するアミノ酸のタイプ、およびループ内のこれらのアミノ酸の位置は、ループのこのエネルギの自由度を決定する。種々の源からのループが、ループ領域をシャッフルするために用いられてもよい。この特徴は、種々のループが、物理的特性、化学的特性、発現的特性、翻訳後修飾など、種々の特性を有するので、将来の蛋白質における新しい特徴を実現することができる。同様に、ベータエレメントの数が減少することに起因してより少ないループを含有する構造が、9つのベータエレメントおよびこれらに対応する数のループを有する蛋白質に変換されてもよい。ここで、たとえば1EPF、1QHP、1E50および1CWVのような7ストランド蛋白質のループのCアルファトレースバックボーンが、9ストランドコア鋳型のための鋳型として用いられ得ることが、実証される。この場合において、追加のループ(L3)を、9ストランド鋳型1F2Xから取り出したが、評価分析に従って信頼性を有するその他のループも用いることができた。蛋白質構造の内部を示すアミノ酸側鎖の性質は、空間的制限によって制限され、かつ決定された。したがって、いくつかの限定された構造が、モデリングソフトウエアを用いて3次元構造投影に従って可能であった。
第3段階において、外部に露出されるアミノ酸側鎖、すなわち環境において構造から突き出る側鎖の全ての可能性のある識別情報を、個別に各位置で計算した。最適な用途のために、非常に好ましい可溶性を有する蛋白質を用いることが好ましく、したがって、非疎水性のアミノ酸を選択した。このようなアミノ酸は、たとえばD、E、N、Q、R、SおよびTである。メチオニンに属するコドン(ATG)が、異常な翻訳開始に起因してもう一方の蛋白質産生物を生じさせ得るので、好ましくは、メチオニンを除外した。また、遊離システインがシステイン−システイン結合を生じさせ得るので、システイン残基を除外した。したがって、遊離システインは、遊離システインを含有する望まれない共有蛋白質−蛋白質相互作用を生じさせ得る。グリシン残基は、極度の空間的制約を有する位置で導入され得る。これらの残基は側鎖を有さず、したがって、活性中は多少中性である。しかしながら、グリシン残基の相互作用する側鎖の極度の柔軟性および欠損は、不安定化を招き、したがってグリシン残基は一般的に用いられなかった。
第4の段階において、モデルを、モデラーを用いて評価した。モデラーを、適切なときにシステイン−システイン架橋を受け入れるようにプログラムした。次いで、全ての予測された蛋白質構造を、プロサII(http://www.came.sbg.ac.at/Services/prosa.html)、プロチェック、およびホワットイフ(http://www.cmbi.kun.nl/What if)で評価した。−4.71未満のプロサIIzp−combスコアは、in vivoで所望のベータモチーフ(beta motif)に折り重なり得る蛋白質配列を示すと推測された。表1に示される7つの蛋白質配列は、前述の全ての基準を満たす許容可能な解決手段の収集を示す。プロチェックおよびホワットイフ評価はまた、これらの配列がモデルに適合し、信頼性を有することを示した(たとえば0.80よりも大きいpG値、Sanchez et al., 1998)。
実施例3
合成スキャッフォールドの組立て
合成VAPを、これらの予測された3次元構造に基づいて設計した。アミノ酸配列(表3)を、腸内細菌遺伝子発現(インフォマックス(Informax)社製、ベクターNti(Vector Nti))に関する好ましいコドン使用頻度を用いて、DNA配列(表4)に翻訳し戻した。得られたDNA配列を、将来のクローニングステップwp妨害するかもしれない望まれない制限部位に関して検査した。このような部位を、アミノ酸コドンを変化させることなくDNA配列を変化させることによって除去した。次いで、DNA配列は、ATG開始コドンを導入するために、5´末端においてはNdeI部位を、3´末端においてはSfiI部位を形成するように適合され、両方とも一方向クローニングの目的のために必要とされる。PCRの組立ては、次の4つのステップからなる。オリゴプライマー設計(オペロン(operon)社でオーダーされる)、遺伝子組立て、遺伝子増幅、およびクローニング。スキャッフォールドを、次の方法で組み立てた。第1に、DNA配列のプラスおよびマイナス鎖の両方を、約35bpのオリゴヌクレオチドプライマーに分割し、かつ対向するストランドをコード化するオリゴヌクレオチドプライマー対を、これらが約16〜17塩基の相補的な重複を有するようにして設計した。第2に、各合成スキャッフォールドについて全てのオリゴヌクレオチドプライマーを、等モル量で混合し、100pmolのこのプライマー混合物を、30秒92℃、30秒50℃および30秒72℃の35サイクルで、最終容量50μLの1unitTaqポリメラーゼ(ロシュ(Roche)社製)、1xPCR緩衝液+mgCl(ロシュ社製)および0.1mMのdNTP(ロシュ社製)を用いるPCR組立て反応に用いた。第3に、5μLのPCR組立て産生物を、合成スキャアフォールドの両方の外側プライマー、1UnitTaqポリメラーゼ、1xPCR緩衝液+mgCL2、および最終容量50μLの0.1mMのdNTPを用いる、30秒92℃、30秒55℃、1分72℃の25サイクルの標準的なPCR増幅反応で用いた。第4に、PCR産生物を、アガロースゲル電気泳動法で分析し、正確なサイズのPCR産生物を、NdeIおよびSfiIで消化するとともに、NdeIおよびSfiIで線状にされたベクターpCM126に連結反応させた。連結反応産生物を、100μg/mLのアンピシリンと2%のグルコースとを含有する2xTYプレートにおいて37℃で夜通し成長したTOP10感応細胞(インビトロジェン(InVitrogen)社製)に転換した。単一のコロニーを、100μgアンピシリンを含有する培養液中で成長させ、プラスミドDNAを、単離し、配列分析のために用いた。
実施例4
発現ベクターCM126の構築
pETAに基づく有効な蛋白質発現(CM126、図4Aを参照のこと)のためのベクターを構築した。好都合な制限部位、リンカー、VSVタグ、6倍Hisタグおよび停止コドンを含むダミーVAP、iMab100を挿入した(表4,3を参照のこと)。その結果、シグナルペプチドOmpTをpET−12aから削除した。iMab100を、5´NdeIオーバーハング配列を含有するフォワードプライマー129(表5を参照のこと)と、全てのリンカー、タグ配列およびBamHIオーバーハング配列を含有する非常に長いリバースオリゴヌクレオチドプライマー306(表5を参照のこと)とを用いてPCR増幅した。増幅後、PCR産生物およびpET−12aを、NdeIおよびBamHIで消化した。ゲル精製の後、産生物を製造手順に従ってキアゲン(Qiagen)ゲル溶出システムを介して精製した。ベクターとPCRフラグメントとを、連結反応させ、E.coliTOP10細胞に電気穿孔法で形質転換した。正確なクローンを選択し、配列によってこれらの配列を確認した。ダミーVAPを含むこのベクターは、その他のVAPの発現分析のための基本ベクターとして作用した。その他のVAPの挿入を、プライマー129および51(表5を参照のこと)による増幅と、NdeIおよびSfiIによる消化と、NdeIおよびSfiIで消化したCM126への連結反応とによって実行した。
実施例5
iMab100の発現
E.coliBL21(DE3)(ノバジェン(Novagen)社製)を、発現ベクターCM126−iMab100で形質転換した。細胞を、アンピシリン(200μg/mL)を補充された50mLの2TY培地(16g/Lのトリプトン,10g/Lの酵母エキス,5g/LのNaCl(メルク(Merck)社製))を含有する250mLのシェイカーフラスコ中で成長させ、かつ30℃で攪拌した。イソプロピルチオ−β−ガラクトシド(IPTG)を、蛋白質発現が開始するように、OD(600nm)が1に達したときに最終濃度0.2mMで加えた。これらの細胞を、IPTGの追加から4時間後に採集し、遠心分離し(4000g,15分、4℃)、ペレットを、使用されるまで−20℃で保存した。
蛋白質発現を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で分析した。これは、iMAb100を発現するE.coliBL21(CM126−iMab100)に関して、図Xレーン2において実証される。
実施例6
加熱による封入体からのiMab100蛋白質の精製
iMab100を、実施例5において記載されるようにE.coliBL21(CM126−iMab100)中で発現させた。多くの発現されたiMab100を、封入体に挿入した。これは、図Xレーン3において実証され、これは溶解(フレンチプレス(French press))およびそれに続く遠心分離(12,000g,15分)の後のE.coliBL21(CM126)の可溶性蛋白質を表す。封入体を次のように精製した。(50mLの培養液からの)細胞ペレットを、5mLのPBS(pH8)中で、20gcdw/Lまで再懸濁するとともに、冷たいフレンチプレス細胞破砕機(シム・アミンコ(Sim-Aminco)社製)に2回通過して溶解した。封入体を、遠心分離(12,000g,15分)によって収集するとともに、膜結合蛋白質を可溶性にし、かつ除去するために1%のTween−20(ICN)を含有するPBS中で再懸濁した。遠心分離(12,000g,15分)後、ペレット(封入体を含有する)を、PBSで2回洗浄した。単離された封入体を、PBS(pH8)+1%Tween−20中で再懸濁し、10分間60℃でインキュベーションした。これは、図5において実証されるようにiMab100のほぼ完全な可溶化を生じさせた。レーン1は、iMab100の単離された封入体を表す。レーン2は、10分間、60℃で、PBS(pH8)+1%Tween−20中で、単離された封入体のインキュベーション後の、可溶化されたiMab100を表す。上清を、ニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)スーパーフロー(superflow)カラムに搭載し、キアゲン社によって記載された標準プロトコルに従って精製した(QIAエクスプレッショニスト(商標),第5版,2001)。精製されたiMab100とニワトリリゾチームとの結合が、ELISAによって(実施例8に従って)分析され、表6にまとめられている。
実施例7
尿素およびマトリクス支援リホールディングを用いる、封入体からのiMab100蛋白質の精製
代替的に、iMab100を、8mの尿素を用いて封入体から可溶化するとともに、マトリクス支援リホールディングによって活性型に精製した。封入体を、実施例6に記載されたように準備し、1mLのPBS(pH8)+8mの尿素中で可溶化した。可溶化された蛋白質を、遠心分離(12,000g,30分)によって不溶性の材料から透明化し、続いて、PBS(pH8)+8Mの尿素で平衡化されたNi−NTAスーパーフローカラム(キアゲン社製)に搭載した。非特異的蛋白質を、4容量のPBS(pH6.2)+8Mの尿素によってカラムを洗浄することによって溶出した。結合されたHisタグされたiMab100を、室温でPBS(pH8)中の尿素濃度を段階的に低下させることによって、カラム中でリホールディングを可能にした。カラムを、2容量のPBS+4Mの尿素で洗浄し、続いて、2容量のPBS+2Mの尿素、2容量のPBS+1Mの尿素、および2容量の尿素無しのPBSで洗浄した。iMab100を、250mMのイミダゾールを含有するPBS(pH8)で溶出した。溶離されたiMab100が、PBS(pH8)(4℃)に対して夜通し透析し、凍結乾燥によって濃縮され、そして結合および構造測定のために特徴付けられた。
iMab100の精製された画分を、図6レーン13において実証されるように、SDS−PAGEによって分析した。
実施例8
iMab100蛋白質とニワトリリゾチームとの特異的結合(ELISA)
iMab蛋白質とターゲット分子との結合を、酵素結合免疫測定法(ELISA)を用いて検出した。ELISAを、所望の抗原(ニワトリリゾチームなど)でマイクロタイタープレート(Nunc)のウェルをコーティングするとともに、適切なブロッキング物質、たとえば3%スキムミルクパウダー溶液(ELK)でブロッキングすることによって実行した。単一のコロニー由来の精製されたiMab蛋白質または精製されたファージ(10〜10)を、各ウェルに加え、室温で1時間インキュベーションした。プレートを、プレートウォッシャー(バイオテック(Bio-Tek Instruments)社製)を用いて、0.1%Tween−20を含有するPBSで過度に洗浄した。結合されたiMab蛋白質またはファージを、抗VSV−hrp複合体(ロシュ社製)または抗M13−hrp複合体(ファーマシア(Pharmacia)社製)をそれぞれ用いて標準ELISAプロトコルによって検出した。比色分析アッセイを、基質としてTurbo−TMB(3,3´,5,5´―テトラメチルベンジジン,ピアース(Pierce)社製)を用いて実行した。iMab100とニワトリリゾチームとの結合を、次のとおり検定した。100μLにおける精製されたiMab100(〜50ng)を、ELK(対照)またはリゾチーム(+ELK(ブロッキング物質として))のいずれかで好ましくコーティングされたマイクロタイタープレートに加え、テーブルシェイカー(300rpm)上で室温1時間でインキュベーションした。マイクロタイタープレートを、PBS(3回)、PBS+0.1%Tween−20(3回)、およびPBS(3回)で過度に洗浄した。結合されたiMab100を、抗VSV−HRP複合体(ロシュ社製)を含有する100μLのELKとウェルを1時間室温でインキュベーションすることによって検出した。
PBS(3回)、PBS+0.1%Tween−20(3回)、およびPBS(3回)を用いて過度に洗浄した後、ウェルを100μLのTurbo−TMBと5分間インキュベーションした。反応を、100μL、2MのHSOで停止し、吸光度をマイクロタイターリーダ(バイオラッド(Biorad)社製)を用いて450nmで読み取った。
実施例6および実施例7に記載されたように調製された精製iMab100は、ニワトリリゾチームに強く特異的に結合するようであり、このことは表6に示されている。
実施例9
サイズ排除クロマトグラフィ
iMab100を実施例7に記載されたように精製した。精製されたiMab100について、移動相として40%アセトニトリル、60%ミリQ、および0.1%TFAを有するShodex803カラムを用いて分子量分布を分析した。90%の蛋白質は、分子量21.5kDに対応する14.7分の保持期間で溶出した。これは、コンピュータ計算された分子量(19.5kD)とよく一致しており、多くの蛋白質が単量型で存在することを示す。
実施例10
95℃でのiMab100の長期的な安定性
iMab100の安定性を、ELISAによって95℃で測定した。10μg/mLのiMab100を、10分〜2.5時間、95℃まで加熱し、非加熱のiMabを投入対照として用いた。
加熱後、試料を、20℃で配置し、検定されるまで維持した。
これらの試料のリゾチーム結合を、1:2000にPBS中で希釈した抗VSV−hrp(ロシュ社製)を用いてELISA測定によって試験した。TMB−ウルトラ(ピアース社製)を、hrp酵素レベルのために、基質として用いた(図7)。iMab100は、高温で非常に安定であった。活性の非常に緩やかな減少が検出された。
実施例11
20℃でのiMab100の長期的な安定性
iMab100の安定性を、20℃で50日の期間にわたって測定した。iMab10(0.1mg/mL)を、20℃で配置した。7日毎に、試料を採取し、各試料を、実験条件の機能停止および凍結を防止するために少なくとも2時間−20℃で保存した。試料を、PBSで200倍希釈した。これらの試料のリゾチーム結合を、1:2000にPBS中で希釈した抗VSV−hrp(ロシュ社製)を用いてELISA測定によって試験した。TMB−ウルトラ(ピアース)を、hrp酵素レベルのために基質として用いた(図8)。iMab100は、室温で非常に安定的であった。iMab100の活性は、長期にわたってほとんど減少せず、したがって、iMabスキャッフォールドおよびその親和性領域が極めて安定的であると結論付けることができる。
実施例12
iMab100のサイズ測定、pH4.8環境に対する抵抗性のゲルによる試験に、精製されたiMab100(図6に記載されたような)を、酢酸カリウムを用いて(最終濃度50mM)pH4.8にし、蛋白質の沈殿を生じさせた。沈殿物を、遠心分離(12000g,30分)によって採集し、pH7.7のPBS中で溶解し、続いて残りの沈殿物を除去するために0.45μmフィルタで濾過した。
pHショック前後の試料を、SDS−PAGE、ウエスタンブロッティングによって分析するとともに、ELISAを用いて結合を調べた(実施例8)。
全てのiMab100が、pH4.8で沈殿され、pH7.5のPBS中へ再溶解し濾過後に完全に回収し得ることが実証された。ELISA測定は、沈殿およびそれに続く可溶化が活性の損失を生じさせないことを実証した(表7)。VSVタグが精製および沈殿の期間中損なわれないこと、および分解産物が形成されないことが確認された。
実施例13
スキャッフォールドの構造分析
iMab100の構造を、円偏光二色性偏光計(CD)を用いて分析し、別の構造と比較した。参考として、Vhh分子である、Vhh10−2/271102(、Kuwaaitaal ワーヘニング大学からの親切な贈与)を含有する自然発生的な9ベータストランドを測定した。両方の蛋白質は、C末端に付着されたタグを有する。これらのタグのアミノ酸配列および長さは同一である。これらの2つの蛋白質間の構造的な相違のみが、CDR3(Vhh)対応親和性ループ4(iMab100)に存在する。システム設定は、感受性=標準(100mdeg)、開始=260nm、終了=205nm、インターバル=0.1nm、遅れ=1秒、速度=50nm/分、蓄積=10であった。
iMab100およびVhh10−2/271102を、pH7.5のPBSおよびCCD280 1.0において純度98%で準備した。試料を、0.1cmクオーツキュベットに搭載し、CDスペクトルを、コンピュータ制御されたJASCOコーポレーションJ−715分光偏光計ソフトウェア(スペクトルマネージャ、バージョン1.53.00、JASCOコーポレーション(日本分光株式会社)製)で測定した。ベースライン補正を、PBSのスペクトルを測定することによって得た。得られたPBS信号を、溶媒および塩効果を補正するために、全ての測定からの基礎とした。各試料による初めの測定を、最大の信号を測定するために行った。必要に応じて、試料を、光電子増倍管信号の最適の分解能のために、1倍PBSで希釈した。RNaseAのPBS溶液を、CD装置を検証するために用いた。観察されたRNaseAのスペクトルは、iMab100およびVhhスペクトルと比較すれば、完全に相違した。図9Lは、遠紫外線(far-UV)(205〜260nm)におけるiMab100およびVhh蛋白質のCDスペクトルを表す。大部分のスペクトルパターンは同一であった。スペクトルの相違が、220nm未満の波長で主として観察された。スペクトルの観察された相違は、おそらく、CDR3/AR4の構造的相違における相違に起因する。iMab100中のAR4の構造は、これは1MELから取り出されたが、ランダムコイル様として分類され得る。また、iMab100に存在するAR4は、Vhh蛋白質のCDR3よりも約10アミノ酸だけ長い。
iMab100蛋白質の温度安定性を、測定を行う温度が調節されることを除いては、CD−メーターを用いて類似の方法で測定した。
室温での測定に加えて、折りたたみおよびリホールディングを、20、50、80(図示しない)および95℃でアッセイした。希釈されたPBS中の新鮮なiMab100蛋白質溶液を、20℃で第一に測定した。次いで、上昇する温度でのスペクトルを、測定し、最後に、20℃のスペクトルを再測定した。ベースライン修正をPBSのスペクトルで適用した(図9A)。その結果は、上昇する温度での楕円率の漸増を示す。加熱後の20℃スペクトルの再出現は、スキャッフォールドの完全なリホールディングを力強く示す。この結論はまた、ELISAによる試料の後のリゾチーム結合能力検出によって、実証された(図示しない)。
実施例14
E.coliBL21(DE3)(ノバジェン社製)を、9βストランドを全て含有するiMab1302、iMab1602、iMab1202およびiMab122に関して、種々のVAP挿入物を含有する発現ベクターCM126で形質転換した。成長および発現は、実施例5において記載されたものと類似していた。
全ての9ストランドiMab蛋白質を、実施例7に記載されたものと類似するマトリクス支援リホールディングによって精製した。iMab1302、iMab1602、iMab1202およびiMab122の精製された画分を、図10レーン10、9、8および7にそれぞれ実証されるようにSDS−PAGEによって分析した。
実施例15
種々の9ストランドiMab蛋白質の、ニワトリリゾチームに対する特異的な結合(ELISA)
精製されたiMab1302(〜50ng)、iMab1602(〜50ng)、iMab1202(〜50ng)およびiMab122(〜50ng)を、実施例8に記載されるものと類似するELK(対照)またはリゾチーム(+ELK(ブロッキング物質として))のいずれかとの結合について分析した。ELISAは、表6に実証されるように、精製されたiMab1302、iMab1602、iMab1202およびiMab122の、ニワトリリゾチームとの特異的な結合を確認した。
実施例16
種々の9ストランドiMabのCDスペクトル
iMab100、iMab1202、iMab1302およびiMab1602を、実施例14に記載されるように精製し、実施例13に記載されるようにCDスペクトルについて分析した。iMab1202、iMab1302およびiMab1602のスペクトルを、スキャッフォールドの安定性とリホールディング特性とを試験するために、20℃、95℃で、および20℃に戻して測定した。対応するスペクトルを、それぞれ図9D、図9E、および図9Fにおいて実証する。20℃で測定されるスペクトルを、二次構造の類似性の程度を測定するために、20℃でのiMab100のスペクトルと比較した(図9Jを参照のこと)。全ての異なる9ストランドスキャッフォールドが、同一であることを結論付けることができる。これは、これらのスキャッフォールドの基本構造が同一であることを示す。連続20−95−20℃処理後得られたデータは、全てのスキャッフォールドがこれらの当初の配座に戻ることを明確に示す。
実施例17
7ストランドig様折りたたみ構造の設計
実施例2に記載されるような手順を、コアにおける7ベータエレメントおよび3+3連結ループからなるig様折りたたみ構造を含有する配列の開発に用いた。この手順は、実施例2に記載されたような工程と同一である、新しい配列の開発が導かれる4つの段階を伴う。段階1において、9ストランドコア構造についてPDB表1に示されるようなCアルファ原子の座標を、適合させた。ベータエレメント4および5を表すCアルファ原子PDBファイルから除去し、結果としてコアの7ストランドの見本を生じさせた(PDB表8)。ベータシートの内部に並ぶアミノ酸鎖を、実施例2に詳細に記載されるように得て、かつ挿入した。第2段階において、連結ループを加えた。1つの部位において、ベータエレメントを、構造1MELまたは1BZQの抗ニワトリリゾチーム結合領域(L2、L6およびL8)から得られた抗ニワトリリゾチーム結合領域から取り出された親和性領域によって互いに連結した。構造の他端において、ベータエレメントを、いくつかの異なる源(1E50、1CWV、1QHP、1NEU、1EPF、1F2xまたは1EJ6)から得られたCアルファバックボーントレースループと連結させた。ループの付着および適合に関する手順は、図2に詳細に記載される。第3段階において、コアおよびループ1,3,7に位置する蛋白質の溶解度を決定するアミノ酸側鎖を、図2に記載されるように決定した。最後の段階において、モデルを、インサイトを用いて構築した。インサイトを、適切なときにシステイン−システイン架橋を受け入れるようにプログラミングした。次いで、インサイトで構築された全ての予想される蛋白質構造を、プロサII、プロチェック、およびホワットイフで評価した。−4.71未満のプロサIIzp−combスコアは、in vivoで所望のig様ベータモチーフ折りたたみ構造に折り重なる蛋白質配列を示す(表9)と推測した。表10に示される多数の例の配列は、信頼性を有するであろう収集物を表す。プロチェックおよびホワットイフ評価はまた、これらの配列が、モデルに対し、信頼性を有するものとして適合することを示した(たとえば、pG値は、0.80よりも大きい。Sanchez et al., 1998)。
実施例18
E.coliBL21(DE3)(ノバジェン社製)を、7ベータストランドを全て含有するiMab1300、iMab1200、iMab101およびiMab900に関する種々のVAP挿入物を含有する発現ベクターCM126で形質転換した。成長および発現は、実施例5に記載されたものと類似であった。
全ての7ストランドiMabを、実施例7に記載したものと類似するマトリクス支援リホールディングによって精製した。iMab1300、iMab1200およびiMab900の精製された画分を、図10レーン2、3、5および6にそれぞれ実証されるようにSDS−PAGEによって分析した。
実施例19
精製されたiMab1300(〜50ng)、iMab1200(〜5ng)、iMab101(〜20ng)およびiMab900(〜10ng)を、実施例8に記載されるものと類似するELK(対照)またはリゾチーム(+ELK(ブロッキング物質として))のいずれかとの結合に関して分析した。ELISAは、表6において実証されるように、精製されたiMab1300、iMab1200、iMab101およびiMab900と、ニワトリリゾチームとの特異的な結合を確認した。
実施例20
種々の7ストランドiMab蛋白質のCDスペクトル
iMab1200およびiMab101を、実施例18に記載されるように精製し、実施例13に記載されるようにCDスペクトルに関して分析した。iMab1200およびiMab101のスペクトルを、スキャッフォールドの安定性とリホールディング特性とを試験するために、20℃、95℃、および20℃に戻して測定した。対応するスペクトルは、図9Hおよび図9Gにそれぞれ明示されている。20℃でiMab1200およびiMab101のスペクトルを、二次構造の類似性の程度を測定するために互いに比較した(図9Kを参照のこと)。異なる7ストランドスキャッフォールドが一致して挙動することを結論付けることができる。これは、これらのスキャッフォールドの基本構造が同一であることを示す。さらに、9ストランドスキャッフォールド(実施例16)から得られたシグナルは、ここで提示される7ストランドについて観察されたシグナルと類似しているので、両タイプのスキャッフォールドが同一の配座を有することも結論付けることができる。連続20−95−20℃処理の後に得られたデータは、全てのスキャッフォールドがこれらの当初の配座のままであることを明確に示す。
実施例21
6ストランドig様折りたたみ構造の設計
実施例2および3に記載されるような手順を、コアおよび3+3連結ループにおいて6ベータエレメントからなるig様折りたたみ構造を含有する配列の開発のために用いた。
この手順は、実施例2および3に記載されるような工程と同一の4つの段階を伴い、これらを通して新しい配列の開発を導く。段階1において、9ストランドコア構造に関してPDB表1に示されるようなCアルファ原子の座標を、適合させた。ベータエレメント1、4および5を表すCアルファ原子を、PDBファイルから除去し、その結果、コアの6ストランドの例を生じさせた(表11)。ベータシートの内部に並ぶアミノ酸側鎖を、実施例2および3に詳細に記載されるように得、そして挿入した。第2段階において、連結ループを加えた。1つの部位において、ベータエレメントを、構造1MEL、またはIBZQのウシRNaseA結合領域から得られた抗ニワトリリゾチーム結合領域(L2、L6およびL8)から取り出された親和性領域によって互いに連結した。構造の他端において、ベータエレメントを、いくつかの異なる源(1E50、1CWV、1QHP、1NEU、1EPF、1F2xまたは1EJ6)から得られたCアルファバックボーントレースループと連結した。ループの付着および適合のための手順は、実施例2および3に詳細に記載されている。第3段階において、コアおよびループL1,L3,L7に位置する蛋白質の溶解度を決定するアミノ酸側鎖を、実施例2および3に記載されるように決定した。最終段階において、モデルを、モデラーを用いて評価した。モデラーを、適切なときにシステイン−システイン架橋を受け入れるようにプログラミングした。次いで、全ての予想される蛋白質構造を、プロサII、プロチェックおよびホワットイフで評価した。プロサIIzp−combスコアを、形成された蛋白質配列が、in vivoで所望のig様ベータモチーフ折りたたみ構造に適合するかどうかを示すために測定する(表12)。プロチェックおよびホワットイフ評価を、配列がモデルに適合するかどうかを検査するために用いた(表13)。
実施例22
6ストランドiMab蛋白質の精製
E.coliBL21(DE3)(ノバジェン社製)を、6ベータストランドを含有するiMab701に関してVAP挿入物を含有する発現ベクターCM126で転換した。成長および発現は、実施例5に記載されるものと同様であった。
iMab701蛋白質を、実施例7に記載されるものと類似するマトリクス支援リホールディングによって精製した。iMab701の精製された画分を、図6レーン4に明示されているようなSDS−PAGEによって分析した。
実施例23
6ストランドiMab蛋白質とニワトリリゾチームとの特異的な結合(ELISA)
精製されたiMab701(〜10ng)を、実施例8の記載と同様にして、ELK(対照)およびリゾチーム(+ELK(ブロッキング物質として))のいずれかに対する結合について分析した。
ELISAによって、表6に明示されているように、精製されたiMab701とニワトリリゾチームとの特異的な結合が確認された。
実施例24
6ストランドiMab蛋白質のCDスペクトル
iMab701を、実施例22において記載されているように精製し、実施例13に記載されるようにしてCDスペクトルについて分析した。iMab701のスペクトルを、スキャッフォールドの安定性とリホールディング特性とを試験するために、20℃、95℃で、および再度20℃で測定した。対応するスペクトルは、図9Iにおいて明示されている。6ストランドスキャッフォールドは、実施例20に記載されるような7ストランドスキャッフォールドと同一の挙動をすると結論付けることができる。これは、このスキャッフォールドの基本構造が7ストランド含有スキャッフォールドの構造と同一であることを示す。さらに、9ストランドスキャッフォールド(実施例16)からえられたシグナルは、は、ここで提示されるような6ストランドスキャッフォールドについて観察されるシグナルと類似しているのっで、両タイプのスキャッフォールドは、類似の配座を有することも結論付けることができる。連続20−95−20℃の処理の後に得られたデータは、全てのスキャッフォールドがこれらの当初の配座のままであることを明確に示す。
実施例25
動物の主要なスキャッフォールドの設計
最低限のスキャッフォールドが、実施例1に記載されるような要件および特徴に従って、設計される。しかしながら、4つまたは5つのベータエレメントしか、スキャッフォールドにおいて用いられない(図1を参照のこと)。5ベータエレメントの場合、新しいスキャッフォールドのマントルを形成するベータエレメント2、3、6、7および8のアミノ酸側鎖は、水系の環境のために調節される必要がある。免疫グロブリンキラー受容体2dl2(VASTコード2DLI)を、5ベータエレメントからなる新しい小さいスキャッフォールドを設計するために、比較モデル用鋳型として用いる。
実施例26
表面残基の置換手順:リジン置換
リジン残基は、たとえばVAPの共有結合手順に便宜な、化学的に活性なアミノ基を含有している。共有結合は、表面の蛋白質の固定化またはその他の分子のターゲットに対する不可逆的結合のために用いられることができる。VAP内のリジン残基の空間位置は、固定化後、表面におけるVAPの位置決めを決定する。誤った位置決めは、VAPの表面に露出する、奇数の配置されたリジン残基によって、容易に生じる可能性がある。したがって、いくつかのVAP構造に関し、特定の位置、特に親和性領域の有効性の低下を生じさせ得るそれらの位置から、リジン残基を除去することが必要とされ得る。
外面に位置する残基の置換戦略の一例として、iMab100外面リジン残基を変化させた。3次元画像は、iMab100に存在する全てのリジン残基が外面に実際に位置することを示した。3次元モデリングおよび分析ソフトウェア(インサイトII)は、このような置換の空間的帰結を決定した。モデラーソフトウェアを、ベータシート間のシステイン架橋構成を考慮に入れるか、あるいはシステイン架橋を分析で無視するかのいずれかの方法でプログラミングした。全ての取り出されたモデルを、多少客観的な結果序列のために、プロサIIソフトウェアで構築した。プロサIIのzp−combパラメータは、モデルの信頼性を示した。結果は、実質的には、全てのタイプのアミノ酸がリジン残基を置換し得ることを示した。しかしながら、表面露出アミノ酸側鎖は、蛋白質の可溶性を決定する。したがって、蛋白質を可溶化するアミノ酸のみを、考慮に入れるとともに、Xと標識付けた(表14を参照のこと)。
iMab100の配列:下線を付けたリジン残基を置換した。
Figure 2005511089
実施例27
外部でのアミノ酸変化:グリコシル化部位の除去。
N−グリコシル化は、グリコシル化部位がたとえば推定リガンド結合部位に存在する場合、蛋白質機能と強く干渉し得る。iMab100蛋白質が、ピキア酵母(Pichia pastoris)細胞においてグリコシル化されること、およびリガンドに結合することができないことが示された。分析は、AR3において推定Nグリコシル化部位が存在することを示した。モデラーソフトウェアによる鋳型モデリング戦略を用いるiMab100構造の検査は、この部位が、グリコシル化による妨害に起因してリガンド結合を潜在的にブロッキングしていることを明らかにした。この部位は、2つの異なる方法、すなわち、グリコシル化される残基を除去することによって、またはN−グリコシル化のための認識モチーフを変化させることによって、除去され得る。ここでは、グリコシル化部位それ自体(…RDAS…)を除去した。全ての残基が、アミノ酸を置換するために用いられ、この後、プロサII、ホワットイフ、およびプロチェックを、各個別のアミノ酸の信頼性を検査するために用いた。しかしながら、いくつかのアミノ酸は、不都合な化学的または物理的特性を導入する可能性がある。システインは、たとえば、蛋白質を、遊離システイン基を担う蛋白質と共有二量化の影響を受けやすくする可能性がある。また、非親水性アミノ酸は、折りたたみ工程を妨げる可能性があり、除去された。他方、メチオニンは、ATGによってコード化され、DNAに異常な開始部位を導入し得る。ATG配列の導入の結果、潜在的な代替的開始部位に起因して、代替的な蛋白質産生物が生じるかもしれない。メチオニン残基は、その他のアミノ酸が適合しない場合に、評価されるのみであった。その他の全てのアミノ酸残基を、プロサII、ホワットイフおよびプロチェックによって評価した。NのQでの置換は、実現可能かつ信頼性を有すると考えられた。
グリコシル化部位を有するiMabからの蛋白質配列:
Figure 2005511089
グリコシル化部位なしのiMabからの蛋白質配列:
Figure 2005511089
ピキア酵母におけるiMab100の発現を、プライマス96(Primus 96)PCR装置(MWG)で、2ユニットTaqポリメラーゼ(ロシュ社製)、200μmolの各dNTP(ロシュ社製)緩衝液(ロシュTaq緩衝系)、2.5マイクロモルのプライマー107および108を含む100μLのPCR反応混合物中での100ngのCM114−iMab100DNAを次のプログラム25回(94℃20″,55℃25″,72℃30″)により増幅し、EcoRIおよびNotIによる消化し、EcoRIおよびNotIで消化したpPIC9(インビトロジェン(InVitrogen)社製)に連結して、実行した。構築物は、配列決定によって検査され、全ての正しいiMab100配列を示した。ピキア酵母の形質転換を、製造者のプロトコルに従って電気穿孔法によって実行した。メタノールによる蛋白質発現の成長および誘導を、製造者のプロトコルに従って実行した。iMab100の発現の結果、E.coliにおいて発現されるiMab100のサイズは21kDである一方で、SDS−PAGEにおいては、50kDのサイズを示す蛋白質の産生が生じた。この相違は、おそらく、前述したようなiMab100に存在する推定N−グリコシル部位のグリコシル化に起因している。したがって、このグリコシル化部位を、プライマー136(表5)を用いる点を除いては実施例26に記載したものと類似の方法で、アスパラギン(N)をグルタミン(Q)で置換によって除去した。この結果、iMab115が生じた。E.coliにおけるiMab115の発現の結果、21kDの蛋白質の産生が生じた。ELISA実験によって、リゾチームに対するこのiMabの特異性を確認された。したがって、iMab115におけるARを、正確に位置決めし、さらに具体的にいえば、AR3におけるアスパラギンのグルタミンでの置換は、AR3の特性を改変しなかった。
実施例28
コアの内部におけるアミノ酸変化:システイン残基の除去
ig様構造中で折り重なっている得られた配列は、異常なアミノ酸配列ではなく同様に折りたたまれた構造の修復に用いることができる。アミノ酸はその他のアミノ酸で置換することができ、これによって、鋳型蛋白質と比較して新しい蛋白質の物理的および化学的特性を推定上変化させることができる。蛋白質構造の外側における変化は、むしろ容易であることが示された。ここで、我々は、コアの内部で並ぶアミノ酸を変化させた。隣接するアミノ酸側鎖の空間的な制約、およびコア構造それ自体の空間的な制約は、これらの位置に存在し得る側鎖のタイプを決定かつ限定する。加えて、隣接する側鎖の化学的特性はまた、置換の結果に影響し得る。いくつかの置換研究において、適切な、かつ信頼性のある置換を得るためにターゲットの残基に近接している追加アミノ酸を置換する必要があった。ここで、コアにおいてシステイン架橋を形成する可能性を除去した。1つのシステインのみを除去すると、コアにおけるシステイン架橋を形成する可能性がすでに防止される。しかしながら、二重の置換はまた、in vivoまたはin vitroにおける折りたたみまたはリホールディングの期間中に遊離システインが他の遊離システインと相互作用することを防止するために実行されてもよい。まず、個別のシステイン残基を、その他の共通アミノ酸(合計で19)で置換した。このようにして、2回、19のモデルを取り出した。全てのモデルを、プロサII(zpスコア)、ホワットイフ(第二次世代パッキングクオリティ、バックボーン配座)およびプロチェック(外側許容領域の残基数)を用いて評価した。いくつかの信頼性のあるモデルを得た。表15は、96位におけるシステイン置換のzp複合プロサスコア(zp-combined Prosa scores)を示す。この方法を、実証するために、システインのうち1つをバリンで置換がin vivoで試験された。このクローンを、iMab116と特定し(表3を参照のこと)、実施例3に記載したような手順に従って構築した(表4)。このクローンの完全なiMab配列を、次のようにしてCM126に形質転換した。iMab配列、iMab116を、プライマーpr121およびpr129とともに、鋳型としてCys−min iMab116を用いて、PCRによって単離した。その結果生じたPCRフラグメントを、NdeIおよびSfiIで消化し、NdeIおよびSfiIで線形化されたCM126に結合した。CM126−iMab116と特定されたこのクローンを、更なる試験のために選択し、かつ用いた。
実施例29
iMab116の精製
E.coliBL21(DE3)(ノバジェン社製)を、9ベータストランドを含有し、かつコアにおいてシステイン架橋を潜在的に欠失するiMab116のためのVAP挿入物を含有する発現ベクターCM126によって、形質転換した(実施例27に記載)。成長および発現は、実施例5の記載同様であった。iMab116を、実施例7の記載と同様にマトリクス支援リホールディングによって精製した。iMab116の精製された画分を、図6レーン11に明示されているようにSDS−PAGEによって分析した。
実施例30
iMab116とニワトリリゾチームとの特異的な結合
精製されたiMab116(〜50ng)を、実施例8の記載と同様に、ELK(対照)およびリゾチーム(+ELK(ブロッキング物質として))のいずれかとの結合について分析した。
ELISAによって、表6に明示されているように、精製されたiMab116とニワトリリゾチームとの特異的な結合が確認された。
実施例31
iMab116蛋白質のCDスペクトル
iMab116を、実施例28に記載されているように精製し、実施例13に記載されているようにCDスペクトルについて分析した。iMab116のスペクトルを、スキャッフォールドの安定性およびリホールディングの特徴を試験するために、20℃、95℃、および再び20℃で測定した。対応するスペクトルは、図9Cに明示されている。20℃で測定されたスペクトルを、二次構造の類似性の程度を決定するために、20℃でのiMab100およびその他の9ストランドiMab蛋白質のスペクトルと比較した(図9Jを参照のこと)。得られたスペクトルは、iMab100のスペクトルを含む、その他の9ストランドスキャッフォールドから得られたスペクトルと同一であるので、内部コアからのシステイン残基の除去は、構造自体に影響を与えないと結論付けることができる。
実施例32
コアにおける付加的なシステイン架橋の導入
蛋白質構造における2つのシステイン残基の化学的結合(システイン架橋)は、70℃未満の温度で蛋白質構造を、劇的に安定化することができる。この温度より上では、システイン架橋は破壊される可能性がある。いくつかの適用例では、当初の蛋白質よりも安定な蛋白質が要求される。実施例1において言及されるようなベータストランド折りたたみ構造のコアの空間的制約は、システイン架橋を可能にする。この結論は、言及された折りたたみ構造を有するいくつかの自然発生的な蛋白質において、システイン架橋がコアの中心に存在するという観察に基づく(たとえば、抗体中の全ての重鎖可変ドメイン)。このようなシステインのCアルファバックボーン原子間の距離は、6.3〜7.4オングストロームであることがしばしば見出されている。コアモチーフにおいて架橋を推定上形成する新しいシステイン残基の導入を、測定によって分析した。PDBファイルに記載された蛋白質のCアルファ原子の座標は、潜在的なシステイン架橋を測定するために用いることができる。個別的な各Cアルファ原子と全てのその他のCアルファ原子との間の距離を、算定することができる。比較モデリングを介して得られたiMab100蛋白質のCアルファ原子の位置は、図BBB3に示す。インサイトソフトウェアは、Cアルファ原子間の距離を測定するために用いることができる。しかしながら、(PDB座標において表されるような)座標によって示される空間上の2つの位置の間の距離を測定する標準的な数学的アルゴリズムも、用いることができる。エクセルシートを、全ての可能性のある距離を測定するために用いることができた。6.3〜7.4オングストロームの間で現れる距離の値を、推定システイン位置として評価した。分析は、iMab100内の33の可能性のあるシステイン架橋位置を示した。cys−番号は、システインの挿入に用いられる構造中のCアルファ原子の位置を示す(表16A)。しかしながら、空間中の全ての位置が非常に有用であるのではなく、いくつかの架橋は、すでに有効なシステイン架橋に接近しており、互いに隣接する2つのシステインは、問題を有する可能性があり、同一のベータストランド間の2つのシステイン架橋は、あまり有用ではなく、すぐ隣に位置するその他のアミノ酸側鎖による空間的な制約となる。全ての33のモデルを、構築するとともに、モデラーにおける鋳型としてのiMab100によって評価した。プロサIIによって得られた評価モデルのzpスコアは、大部分のシステイン残基が問題を有することを示した。最適なシステイン位置は、表16Bに示される。太字で示される2つのモデルを、これらのシステイン残基および架橋の、その他の潜在的システイン架橋に対する空間的位置に基づいて選択した。また、いくつかのモデルを、zpスコアは優秀であったが、インサイト(MSI)によって検査された折りたたみ構造内でのそれらの位置を原因として拒絶した。
実施例33
コアに2つ付加的システインを含むiMab100誘導体の構築。
オリゴヌクレオチド部位指向の変異方法が、2つの付加的システイン残基を受領したiMab100誘導体、iMab111(表3)と称する、を構築するために用いられた。CM114−iMab100が、オリゴヌクレオチドプライマーpr33、pr35、pr82、pr83(表5参照)と共にPCR反応のための鋳型として用いられた。初めのPCR反応において、pr82およびpr83は401bp断片を発生させるのに用いられた。本PCR反応において、グルタミンおよびグリシンをコードしている残基が、システインをコードしている配列に変化された。このPCR断片は、2つの並行したPCR反応で鋳型として用いられる。一方の反応では、得られたPCR断片、CM114−iMab100鋳型とpr33が使用され、もう一方の反応では、得られたPCR断片、CM114−iMab100鋳型とpr35が使用された。前述の反応では584bp生成物が、後述の反応では531bp生成物が得られた。どちらのPCR断片もアガロースゲル分離と単離によって単離された(Qiagen ゲル抽出キット)。生成物は等モル比率で混合され、プライマーpr33およびpr35による断片重複PCR反応は、714bp断片をもたらした。このPCR断片はNotIおよびSfiIで消化された。生成した411bp断片は、アガロースゲルによって単離され、NotIおよびSfiIで線形化したCM114中に連結された。配列分析で、生成物、すなわちiMab111を確認した(表4および3)。
実施例34
iMab111の発現
iMab111の遺伝子は、実施例28に記載のようにCM126にサブクローンされた。CM126−iMab111で形質転換されたBL21(DE3)細胞は、IPTGで誘導され、実施例7に記載のように蛋白質が単離された。蛋白質抽出物は、15%SDS−PAGEゲル上で分析され、21KD蛋白質の著しい誘導が見られた。タグを含むiMab111の予想された長さも、約21kDでありこのクローンの高い生成レベルを示す。
実施例35
iMab111の精製
(実施例32および33記載のように)大腸菌(E. coli)BL21(DE3)(Novagen)は、特別なシステインブリッジを潜在的に含んでいる9ベータストランドを含むVAP挿入iMab111を持つ発現ベクターCM126によって形質転換された。成長と発現は実施例5および34と同じであった。iMab111は、実施例7に記載されているのと同じように、マトリクス援助リホールディングによって精製された。iMab111の精製画分は、図6のレーン12に示されているSDS−PAGEによって分析された。
実施例36
ニワトリリゾチーム(ELISA)へのiMab111の特異的結合
精製されたiMab111(〜50ng)が、実施例8と同様に、それぞれELK(対照)とリゾチーム(阻害剤としてELKを添加)への結合について分析された。ELISA分析における蛋白質抽出物の100倍希釈物は、バックグラウンドシグナルよりも約20倍高いシグナルをもたらした。ELISAの結果において、表6に示されているように、ニワトリリゾチームへの精製iMab111の特異的結合が確認された。
実施例37
iMab111のCDスペクトラ
iMab111は、実施例32に記載のように精製され、実施例13に記載のようにCDスペクトラについて分析された。iMab116のスペクトルは、スキャッフォールドの安定性とリホールディング特性を試すために、20℃、95℃、再び20℃で測定された。該当スペクトラは図9Cに示されている。20℃で測定されたスペクトラは、二次構造の類似度合いを測定するために、iMab100およびその他の9ストランドiMab蛋白質の20℃でのスペクトラと比較された(図9J参照)。得られたスペクトラは、iMab100を含むそのほかの9ストランドスキャッフォールドから得られたスペクトラと全く同じであったので、コアの中心にある追加されたシステイン残基は、その構造自身に何ら影響を与えないことが結論づけることができる。
実施例38
特定の用途のための、スキャッフォールド特性の改善
特定の用途のために、スキャッフォールドの特性は最適化される必要がある。例えば、良く機能するためには、一定の環境において、熱安定性、耐酸性または蛋白質分解の安定性が、有利であるかまたは必要であることさえある。変異や再選択プログラムは、同じ結合特性であるがより改善された特性を持つ新しいスキャッフォールドを作るのに適用できる。この実施例においては、選択された結合蛋白質が改善されており、蛋白質分解環境において蛋白質分解に抵抗する。新しいスキャッフォールドは、プロテアーゼの混合物処理または特定のプロテアーゼのカスケード処理によって、耐蛋白質分解について試験することができる。さらに、新しいスキャッフォールドは、スキャッフォールドを導入することによって将来の用途の環境における耐性を試験することができる。耐蛋白質分解スキャッフォールドを得るために、スキャッフォールドをコードする遺伝子は、変異方法によって変異される。次いで、ファージディスプレイライブラリが、変異PCR生成物から構築され、新しいスキャッフォールドが外殻蛋白質との融合蛋白質としてファージの外側に発現する。ファージは、目的とする温度で、ある一定時間の間、目的とする蛋白質分解の活性環境に添加される。もとのファージは、述べられているように、標準的なパンニング手順に用いることができる。良く洗浄した後、結合したファージは、溶出され、F−piliを担持する大腸菌細胞に感染され、適度な抗生物質を含む寒天培地上で一晩生育される。個々のクローンは、それらの新しい特性が再チェックされ、配列が測定される。変異の導入や選別の工程は、何回か繰り返すことができ、または他の選別条件をさらなる最適化過程に応用することができる。
実施例39
スキャッフォールド部分の無作為突然変異生成
目的部分(親和性部分、フレームワーク、ループまたはこれらの組合せ)のちょうど3プライムおよび5プライムをアニ―リングするプライマーは、記載のdITPまたはdPTPの存在下で、増幅のために用いられる。これらの変異された断片は、最初の反応で用いたプライマーの1組と同一の配列を持つが、今や、スキャッフォールド構造にその断片を再クローニングするための制限部位を今や含んでおり、その制限部位で互いにDNA配列が異なりしたがって蛋白質配列も異なることができるプライマーで第2のPCRで増幅される。ファージディスプレイ作業は、目的とする特性をもつクローンの検索のために用いることができる。
実施例40
ファージディスプレイベクターCM114−iMab100の構築
効果的なファージディスプレイのためのベクター(CM114−iMab100、図4B参照)は、pBAD(Vitrogen内)の基幹部分を用いて構築された。pBADの必要なベクター部分は、それぞれAscIとBamHI張り出し制限部位を含むプライマー4およびプライマー5を用いて増幅された。同時に、合成で構築された断片は、新しいプロモータ遺伝子、最適化g3分泌リーダー、NotI部位、ダミー挿入、SfiI部位、リンカー、VSV−tag、トリプシン特異的蛋白質分解部位、Strep−tagIIおよびAscI部位(表4B参照)を持っている表4に記載の配列を含めて作成された。消化された断片とPCR増幅したpBADとを結合させた後、それら13ファージg3コア蛋白質のコード部分は、プライマー(表5、プライマー6および7)に付けられたAscI張り出し部位を用いて増幅し、AscI消化後、挿入された。挿入された断片の適切な配列と適切な配向を含むベクターは、さらなる実験でも用いられた。
実施例41
ファージディスプレイベクターCM114−iMab113の構築
AR4と他の親和性領域(たとえばiMab100のAR1)との間のシステイン架橋は、システイン架橋形成なしではほぼあり得ないようなある種の構造および安定性に関与する。ある親和性領域4に存在するシステインに結合させるものとしてAR1を使用することができるばかりでなく、AR2およびAR3も、システイン架橋形成のための明らかに安定化部位である。AR2は、AR4とのシステイン形成のための魅力的なもう1つの位置であるので、AR2のシステインコドンの位置とAR1のシステインコドンの欠落を除いて、CM114−iMab100と100%全く同じ構造である発現ベクターが、構築される。
3次元モデリング分析(3D modeling analysis)により、AR2のシステインに最も適した位置は、元来、トレオニンとして決定していた位置であることが明らかになった(・VAIN・・から・・VAIN・・へ)。分析により、新しいシステイン位置(・・VAIN・・)に加え、AR2中のトレオニン残基の直前のアラニン残基がセリン残基(・・VCIN・・)に置換されたことが判った。AR1中の元来のシステインはセリンによって置換され、これは3次元モディング分析によって適した置換であることが判明した(表3)。
iMab113(表4)と命名された、新たに決定された配列は、前述の(実施例3)遺伝子構築手法によって構築され、iMab100を置換してCM114に挿入された。
実施例42
ファージディスプレイベクターCM114−iMab114の構築
分子間のシステイン架橋形成が折りたたみしている間に発現効率および適正に折りたたまれた蛋白質の割合に影響するかもしれないから、AR4と他の領域間のシステイン架橋は常に望ましい訳ではない。また、分解するような環境では、かかるARsは活性が弱くなったり、不活性になったりさえなる。したがって、システイン架橋なしのスキャッフォールドが望ましい。AR1、2および3中のシステイン欠落発現ベクターが構築された。このベクターは、AR1中のシステイン(・・PYMG・・)がセリンに変わっている(・・PMMG・・、表3)点を除いてCM114と100%同じである。iMab114と命名された新たに決定された配列(表4)が、前述の(実施例3)遺伝子構築手法によって構築され、iMab100を置換してCM114に挿入された。
実施例43
ラクダ科由来CDR3領域の増幅
ラマパコス(Lama pacos)とラマグラマ(Lama glama)血液のリンパ球は、スペネリ(Spinelli)等(Biochemistry39(2000)1217−1222)に記載されている標準手順により単離された。これらの細胞からのRNAは、生成プロトコルに従ってQiagen RNeasymethodsによって単離された。cDNAは、生成手順に従いmuMLvまたはAMV(New England Biolabs)を用いて創製された。VhhcDNAからのCDR3領域は、1μlのcDNA反応を用いて、2Taqポリメラーゼ(Roche)、200μMの各dNTP(Roche)、緩衝液(Roche Taq 緩衝システム)、2、5μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む100μlPCR反応混合液中で、Primus96PCR機器(MWG)で次のようなプログラムを35回(94℃で20分、50℃で25分、72℃で30分)行って、増幅した(図10参照)。少なくとも1つのシステインを含むCDR3領域を選ぶために、プライマー56(表5)がリバースプライマーとして使用され、システ含んでいないCDR領域を選ぶ場合には、プライマー76(表5)が最初のPCRラウンドに使用された。どちらの場合も、プライマー16(表5)がリバースプライマーとして使用された。生成物は1%アガロースゲル上で分離され、正しい長さ(〜250bp)の生成物が単離され、Quiagenゲル抽出キットを用いて精製された。5μlのこれらの生成物が、プライマー8(表5)およびプライマー9(表5)がCDR3領域を増幅するために用いられた上述と同様の次のPCR工程で用いられた。生成物は2%アガロースゲル上で分離され、正しい長さ(〜80〜150bp)の生成物が単離され、Quiagenゲル抽出キットを用いて精製された。ラクダ科CDR3領域の環境をスキャッフォールドiMab100に適応させるために、サイクル番号を15サイクルに減少させることを除いて最初のPCR方法と同様の2つの特別工程が5μlの生成物について遂行された。そこでは、プライマー73(表5)および75(表5)がリバースプライマーとして引き続き用いられ、プライマー49(表5)がリバースプライマーとして用いられた。
実施例44
雌ウシ由来のCDR3領域の増幅
雌ウシ(Bos taurus)血液リンパ球が、Spinelli等(Biochemistry39(2000)1217−1222)に記載されている標準手順に従って単離された。これらの細胞からのRNAは、生成プロトコルにし従い、Qiagen RNeasymethodsによって単離された。cDNAが、生成手順に従いmuMLvまたはAMV(New England Biolabs)を用いて創製された。VhhcDNAからのCDR3領域は、1μlのcDNA反応を用いて、2Taqポリメラーゼ(Roche)、200μMの各dNTP(Roche)、緩衝液(Roche Taq 緩衝システム)、2、5μMのプライマー299(表5)およびプライマー300(表5)を含む100μlPCR反応混合液中で、Primus96PCR機器(MWG)で次のようなプログラムを35回(94℃で20分、50℃で25分、72℃で30分)行って、増幅した(図10参照)。生成物は2%アガロースゲル上で分離され、正しい長さの生成物が単離され、Quiagenゲル抽出キットを用いて精製された。観察されたPCR生成物の長さの分布(図11参照)は、雌ウシCDR3領域の平均長を表している。プライマー299(21アミノ酸、表5)およびプライマー300(27アミノ酸、表5)中に存在するフレームワーク配列を補正することにより、雌ウシCDR3の平均長は、PCR生成物の平均長120塩基から48フレームワーク配列を引くと、72塩基、すなわち、24アミノ酸である、と結論づけることができる。この結果は、Spinelli等(Biochemistry39(2000)1217−1222)により観察された結果と非常に良く一致している。これらのCDR領域は、従って、ナイーブライブラリの構築に非常に有用である。
単離および精製された生成物は、ラマ由来のARs(実施例43参照)について記載されたと同様に、いくつかのPCR修正工程によってフレームワークのコード領域が徐々に変更された方法で、実際のCDR3/AR4位置の周辺の配列を変更するために使用することができる。
実施例45
増幅されたCDR3の挿入によってAR4にループの斑入りを含んでいるライブラリ
AR4中に斑入りを有する核酸ファージディスプレイライブラリは、以下の方法によって調製された。ラクトペルオキシダーゼとラクトフェリンで免疫化されたラマ由来の増幅されたCDR3領域は、実施例43に記載のように得られ、PstIおよびKpnIで消化されて、PstIとKpnIで消化され、アルカリホスファターゼ処理されたベクターCM114−iMab113またはCM114−iMab114中にT4DNAリガーゼで結合された。システイン含有CDR3は、CM114−iMab114にクローン化され、一方、システインを持たないCDR3はベクターCM114−iMab113にクローン化された。ライブラリは、電気せん孔法により、BTX電気細胞マニピュレータECM630を用いて大腸菌TG1エレクトロコンピテント細胞中に構築された。細胞は、SOB中に回収され、4%グルコース、2*TY−寒天中にmlあたり100μgアンピシリンを含む培地で育成された。37℃で一晩培養した後、細胞は2*TY培地に集菌し、濃縮された分散体として50%グリセロール中、80℃で貯蔵された。一般的に、5x10の形質転換細胞は、1μgDNAで得られ、ライブラリは約10の別個のクローンを含んでいた。
実施例46
無作為に選んだCDR3部分の挿入によってAR4に斑入りループをもつライブラリ
無作為に選んだCDR3部分の挿入によってAR4に斑入りをもつ核酸ファージディスプレイライブラリが、以下の方法によって調製された。免疫化されていないラマと免疫化されたラマからのCDR3部分は、2番目のPCRラウンドにおいて実施例35に記載のSpee等(1993)によるdITPまたはZaccolo等(1996)によるdPTPを含むことを除いて、実施例28に記載のように増幅された。ライブラリの作成は、実施例28のように行われた。dITPを用いた場合、変異率は2%に達し、PCRにdPTPを含む場合は20%以上の変異率が得られた。
実施例47
標的分子に結合したVAPsの濃縮
ライブラリストックの約50μlを、50ml2*TY/100μgアンピシリン/4%グルコースに播種し、OD600が0.5になるまで培養した。次に、1011VCSM13(Stratagene)ヘルパーファージが添加された。感染させるために、振とうさせずに37℃で45分間置いて培養した。細胞を遠心分離によりペレットにし、上澄みを廃棄した。ペレットを400ml2*TY/100μgアンピシリン中に懸濁させ、37℃で1時間培養し、その後、50μg/mlのカナマイシンを添加した。感染した培養液は、30℃で8時間、200rpm振とう台上で培養した。次に、30分間、4℃、5000gでペレットにすることによりバクテリアを取り除いた。上澄みは、0.45μmPVDFフィルタ膜に通して濾過した。ポリエチレングリコールと塩化ナトリウムを、最終濃度がそれぞれ4%と0.5Mになるよう添加した。このようにして、ファージは氷上に沈殿させられ、6000gで遠心分離して、ペレットにさせられた。ファージペレットは、50%グリセロール/50%PBSに溶かし、−20℃で貯蔵した。
ファージディスプレイされたVAPsの選択は以下のように行われた。約1μgの標的分子(抗原)は、4℃ o/nの0.1m炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.4)中でイムノチューブ(Nunc)またはマイクロタータープレート(Nunc)内に固定化された。この溶液の除去後、チューブはPBS中の3%スキムミルクパウダー溶液(ELK)また同様の阻害剤で、室温または4℃ o/nで少なくとも2時間、阻害された。阻害剤の除去後、室温で1時間阻害緩衝液であらかじめ阻害された、約1012−1013コロニー形成単位(cfu)を含むファージライブラリ溶液を阻害緩衝液に添加した。培養は、室温で1時間、低回転台上で実施された。チューブはPBSによって3回、0.1%Tweenを添加したPBSで2回そして再びPBSで4回洗浄された。固定されたファージは、それぞれpH2.2の0.1mグリシンPBS300μlまたは0.1%トリプシンPBS溶液500μlの適当な溶出緩衝液で溶出した。回収したファージは、グリシンで溶出したときは直ちにpH8.5の1mトリス−塩酸700μlで中和された。もう1つの方法として、固定されたファージは、抗原(1−10μM)を含むPBSで培養することによっても溶出した。回収したファージを、上記の方法で、大腸菌XLI−Blue(Stratagene)またはTop10F’ (Vitrogen内)細胞を宿主として増幅した。選択工程は、正のクローンを濃縮するために何度も繰返された。最終段階において、個々のクローンは選ばれ、それらの結合親和性とDNA配列が決定された。
VAPsの結合親和性は、実施例6に記載のELISAによって、またはファージ粒子上のgIII−融合蛋白質のようにもしくは例4に記載のCM126発現ベクターにNdeI−SfiIをサブクローニング後に決定された。
大腸菌BL21(DE3)またはOrigami(DE3)(Novagen)は、実施例5に記載の電気せん孔法によって形質転換され、形質転換細胞は、アンピシリン(100μg/ml)を補充した2xTY培地で培養された。細胞培養液のOD600が約1に達したとき、蛋白質発現がIPTG(0.2mM)を添加することにより誘導された。37℃で4時間経過後、細胞は遠心分離によって集められた。蛋白質は実施例5に記載のように単離された。
実施例48
VAPsに結合しているラクトフェリンの濃縮
精製されたラクトフェリン(LF)はDMV−Campinaにより供給された。実施例45に記載のAR4に斑入りを有するファージディスプレイライブラリは、LF結合VAPsを選別するのに用いられた。LF(1ml重炭酸ナトリウム緩衝液中に10μg(0.1m、pH9.4))が、以下のとおり、イムノチューブ(Nunc)中に固定化され、PBS中の3%ニワトリ血清によってブロッキングされた。パンニングは実施例32に記載のように行われた。1013ファージがインプットとして用いられた。第1回目のパンニングの後、約10000コロニーが形成された。第2回目のパンニングの後は、500〜1000コロニーが形成された。個々のクローンは培養され、VAPsが生成され、実施例6に記載のようにELISAで確認された。次のAR4を有するクローについて濃縮物が観察された。
CAAQTGGPPAPYYCTEYGSPDSW。
実施例49
VAPsに結合しているラクトペルオキシダーゼの濃縮
精製されたラクトペルオキシダーゼ(LP)はDMV−Campinaにより供給された。
実施例45に記載のAR4に斑入りを有するファージディスプレイライブラリは、LP結合VAPsを抽出するのに用いられた。LP(1ml重炭酸ナトリウム溶液中に10μg(0.1m、pH9.4))は、ノチューブ(Nunc)中に固定化され、続いてPBS中の3%ニワトリ血清でブロッキングされた。パンニングは実施例32に記載のように行われた。1013ファージがインプットとして用いられた。第1回目のパンニングの後、約5000コロニーが形成された。第2回目のパンニングの後は、500〜1000コロニーが形成された。個々のクローンは培養され、VAPsは生成され、実施例6に記載の大腸菌により確認された。陽性クローンは配列が決定された。次のAR4を有するクローについて濃縮が観察された。
CAAVLGCGYCDYDDGDVGSW
CAATENFRIAREGYEYDYW
CAATSDFRIAREDYEYDYW
実施例50
RNaseAの結合物、構造成熟およびパンニング
合成RNaseA結合iMab、iMab130は実施例3(表4、表3)に記載のように合成し、次にCM114−iMab130を形成するCM114中にクローン化された。g3外殻蛋白質との融合蛋白質としてのiMab130をもつキメラファージは、実施例32に記載のライブラリ増幅手順の条件下で生成された。RNase Aイムノチューブに対するこれらのキメラファージのパンニング(実施例32のパンニング手順参照)は、iMab130のRNase A特異的結合を示さなかった。RNase A結合領域の機能的な位置付けは、おそらく周囲のアミノ酸側鎖の軽微なゆがみにより、明らかに失敗した。スキャッフォールドの小さな修正は、ディスプレイARsを正しい位置に配置するのに役立つであろう。このことを達成するために、iMab130コーディング領域は、次の方法を用いて変異させた。ベクターCM114中に存在するiMab130は、dITPまたはdPTPを用いてプライマー120および121(表...)でのスキャッフォールドの増幅中に変異させられた。変異生成濃度は、1.7mMのdITPまたは300μMか75μMか10μMのdPTPが用いられた。その結果生じたPCR生成物は、作成手順にしたがって、Quiagenゲル抽出システムにより寒天培地から単離された。単離した生成物は、dITPやdPTPを含まない製品とするために、100μMのdNTPs(Roche)の存在下で増幅された。QuiagenPCR除去キットにより精製した後、これらのPCR断片は、NotIとSfiI(NEB)で消化され、NotIとSfiIで線形化したCM114に連結された。沈殿させ、70%エタノールで洗浄した連結生成物は、電気せん孔法によりTG1に形質転換し、100μg/mlのアンピシリンと2%グルコースを含んだ2xTY培地で培養し、続いて実施例32に記載のキメラファージ生成物のためのVCSM13ヘルパーファージ(Stratagene)で感染させられた。形質転換体の一部は、形質転換頻度を決定するために、100μg/mlのアンピシリンと2%グルコースを含んだ2xTYプレート上に薄くぬられた。これらのファージライブラリは、実施例32に記載のようにRNase Aパンニング試験に使用された。RNase Aは、イムノチューブに固定化され、パンニングが行なわれた。パンニングの後、ファージは溶出され、TOP10F’(InVitrogen)の感染に用いられ、2%グルコースと100μg/mlのアンピシリンと25μg/mlテトラサイクリンを含んだ2xTY培地で、37℃で一晩培養された。検索されたコロニーの数は、表17に示されている。
種々の変異生成レベルのiMab130に由来したファージライブラリでパンニング後に得られたコロニーの数から結論されるように、dITP(表17)による軽度の変異生成レベルにあるライブラリからバインダーの著しい増加が観察できる。
実施例51
固定手順
1gのエポキシ活性セファロース6B(製造者Amersham Biosciences)が、カラム中に詰められ、10ベッド量のカップリング緩衝液(200mMのリン酸カリウム、pH7)によって洗浄された。結合すべき蛋白質は、1mg/ml濃度でカップリング緩衝液中に溶解され、流速0.1ml/分でカラムを通過した。20ベッド量の蛋白質溶液を流した後、カラムをカップリング緩衝液で洗浄した。10ベッド量の0.2Mエタノールアミン/200mMリン酸カリウム、pH7を流すと、未反応のエポキシ基がブロックされた。それからレジンを20ベッド量の50mMリン酸カリウム、pH7で洗浄し、使用の準備が整った。
実施例52
リゾチームが固定化されたビーズによるiMab100の精製
リゾチームはRohm製の活性エポキシ−レジン、オイパーギット(Eupergit)、上に固定化され、カラム中で使用された。iMab100を含む溶液は、カラムに通され、その濃度はダイレクトバイパスおよびカラムからの流れ中で測定された(A280nm)。その差は、カラムに結合したiMab100の量を示した。結合したiMab100は、pH11のCAPS緩衝液で溶離させることができた。BSAでの対照実験により、固定化されたリゾチームへのiMab100の結合は特異的であることが示された。
実施例53
iMab100が固定化されたビーズによるリゾチームの精製
iMab100はオイパーギット(Eupergit)上に固定化され、カラム中で使用された。リゾチームを含む溶液は、カラムに通され、その濃度はダイレクトバイパスおよびカラムからの流れ中で測定された(A280nm)。その差は、カラムに結合したリゾチームの量を示した。
結合したリゾチームは、pH11のCAPS緩衝液で溶離させることができた。BSAでの対照実験により、固定化されたiMab100へのリゾチームの結合は特異的であることが示された。
実施例54
乳清画分中におけるiMab100の安定性
いくつかのミルク分画中におけるiMab100の安定性は、リゾチームがコートされたプレートによってELISA法(実施例8)で測定された。タグ、スキャッフォールド領域、または親和性領域が蛋白質分解的に分解されるなら、抗リゾチーム活性の減少がみられるだろう。iMab100は、次のような数種の種々の溶液に希釈された。すなわち、対照としての1xPBS、チーズ乳清からのイオン交換画分、ゴーダチーズ乳清、低殺菌牛乳であり、最終濃度が40μg/mlになるよう1,4μmフィルタ処理された。全ての画分は、8℃で保管され、サンプルは、0、2および5時間後および1,2,3,4,5,7日後に採取された。サンプルは、さらなる分解を防ぐため−20℃に置かれた。ELISA検出は、実施例8に記載のように行われ、図12に示された。iMab100の活性パターンは、実験をとおして類似性が保たれた。したがって、タグを含むiMab100は、検査された牛乳画分において安定であることが結論づけられた。
表と図面の簡単な説明
表1
PDB形式における9ストランド(ストランドのみ)の例。
表2
9ストランドiMab蛋白質として折り重なる可能性の高いアミノ酸配列例。
表3
VAPアミノ酸配列。
表4
iMabDNA配列。
表5
用いたプライマーのリスト。
表6
精製されたiMab変異体のリゾチームへの結合特性。
6、7、または9βシートのいずれかを含有する種々の精製されたiMabを、実施例8、15、19および23に記載されるように、ELK(対照)とリゾチームとの結合について分析した。
封入体の加熱誘導可溶化によって追加的に精製されたiMab100を除いて(実施例6)、全てのiMabを、尿素と、これに続くマトリクス支援リホールディングを用いて精製した(実施例7)。
表7
酢酸カリウムpH4.8による沈殿の前後にリゾチームに対してELISAで測定された、iMab100に対するpHショックの効果。
表8
空間的配座を示すPDB2.0形式における7ストランド(ストランドのみ)折りたたみ構造の4つの例。
表9
7ストランドiMab蛋白質のためのモデラーからの目的関数に関するプロサII結果(zp−comp)および値。値が低くなるほど、正確に折り重なる可能性の高いiMab蛋白質に対応する。
表10
7ストランドiMab蛋白質として折り重なる可能性の高くないアミノ酸配列例。
表11
空間的配座を示すPDB2.0形式における6ストランド(ストランドのみ)折りたたみ構造の4つの例。
表12
6ストランドiMab蛋白質のためのモデラーからの目的関数に関するプロサII結果(zp−comp)および値。値が低くなるほど、正確に折り重なる可能性の高いiMab蛋白質に対応する。
表13
6ストランドiMab蛋白質として折り重なる可能性の高いアミノ酸配列例。
表14
リジンを、その他全ての可能性のあるアミノ酸残基で3、7、19および65位それぞれにおいて置換したiMab誘導体からのプロサII結果(zp−comp)。天然システイン架橋を有するモデル、および天然システイン架橋を有しないモデルを形成した。比較的好都合な(親水性)誘導体は、Xで示す。
表15
96位におけるシステインをその他の全ての可能性のあるアミノ酸残基で置換したiMab100誘導体からのプロサII結果(zp−comp)。
表16
A)iMab100(参照)のアミノ酸配列、ならびに付加的システイン架橋形成について可能性のある候補物。システイン架橋が形成され得る位置が示される。
B)システイン架橋のための好適な位置、ならびにそれらに対応するプロサIIスコア(zp−comp)、および対応するiMab名。
表17
パンニング後のバインダーの数におけるdITPの変異頻度の効果。
表18
実施例40および実施例4において使用されたベクターの配列。
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スキャッフォールドドメインの概略的な3次元トポロジー。 抗原結合部位の提示に用いることのできる蛋白質構造の8つの例のトポロジーを示す。基礎コアベータエレメントは、例Aにおいて指名される。この基礎構造は、2つのプレートに配置された9ベータエレメントを含有する。1つのベータシートは、エレメント1、2、6および7を含有するとともに、エレメント3、4、5、8および9を含有する。ベータシートを連結するループも示されている。太線は、上端位置にあるベータエレメント間の連結ループである一方で、破線は下端位置に位置する連結ループを示す。破線を開始しそして実線を終える連結はベータエレメントの下端部および上端部の間の連結を示す。ダイアグラムに示されたベータエレメントの番号は、図1および図2において言及された番号および位置に対応する。 A:9ベータエレメントトポロジー。たとえば全ての抗体軽鎖および重鎖可変ドメイン、およびT細胞受容体可変ドメイン。 B:8ベータエレメントトポロジー。たとえば、インターロイキン−4アルファ受容体(1IAR) C:7aベータエレメントトポロジー。たとえば免疫グロブリンキラー受容体2dl2(2DLI) D:7bベータエレメントトポロジー。たとえばE−カドヘリンドメイン(1FF5) E:6aベータストランドトポロジー。 F:6bベータエレメントトポロジー。たとえばFcエプシロン受容体タイプアルファ(1J88) G:6cベータエレメントトポロジー。たとえばインターロイキン−1受容体タイプ1(1GOY) H:5ベータエレメントトポロジー。 モジュラー親和性およびスキャッフォールド転移(Modular Affinity & Scaffold Transfer)(MAST)技術。 ここで記載されるようなコア構造を含有する推定抗原結合蛋白質は、転移操作のために用いることができる。加えて、スキャッフォールドまたはコア構造の個々のまたは複数のエレメントまたは領域は、転移作用にも用いることができる。転移操作は、アミノ酸組成の異なる構造的に同一または類似のスキャッフォールドまたはコアの間で生じることができる。推定親和性領域は、たとえばPCR、制限消化、DNA合成またはその他の分子技術によって、あるスキャッフォールドまたはコアから、別のスキャッフォールドまたはコアまで、転移することができる。このような転移の結果は、概略的なダイアグラムでここに示されている。分子A(下端部、親和性領域)からの推定(コード化)結合領域、および分子B(下端部、フレームワーク領域)のスキャッフォールド(コイード化)領域は、分子手法によって単離することができる。両エレメントの組換え後、新しい分子は、分子Aの結合特性および分子Bのスキャッフォールド特性(ハイブリッド構造)を有するようである。 免疫グロブリン構造のドメイン通知。 ダイアグラムは、それぞれ9、7および6ベータエレメント(N末端からC末端まで1〜9を示す)からなる蛋白質構造のトポロジーを表す。ベータエレメント1、2、6および7とエレメント3、4、5、8および9は、2つのベータシートを形成する。 8つのループ(L1〜L8)は、全てのベータエレメントの連結に役割をはたす。ループ2、4、6および8は、ダイアグラムの上端部位に位置し、これは、実施例の蛋白質におけるこれらのループの物理的な位置を表す。軽鎖抗体可変ドメインにおけるループ2、4および8の機能は、抗原を結合することであり、CDR領域として知られる。L6の位置(パターン化した領域で標識付けられる)もまた、抗原の結合活性を可能とするが、結合領域として示されなかった。L2、L4、L6、L8をそれぞれ、親和性領域1(AR1)、AR2、AR3およびAR4として決定している。ループ1、3、5および7は、蛋白質の反対側の部位に位置する。 ベクターCM126の概略図 ベクターCM126の概略図 加熱(60℃)を用いるiMab100の封入体の可溶化 レーン:分子量マーカー(1)、iMab100の単離された封入体(2)、10分間60℃でPBS(pH8)+1%Tween−20中で封入体をインキュベーションしたときに可溶化されたiMab100。 6、7または9ベータシートのいずれかを含有する精製されたiMab変異体。 レーン:分子量マーカー(1)、iMab1300(2)、iMab1200(3)、iMab701(4)、iMab101(5)、iMab900(6)、iMab122(7)、iMab1202(8)、iMab1602(9)、iMab1302(10)、iMab116(11)、iMab111(12)、iMab100(13)。 95℃でのiMab100の安定性。 95℃で様々な時間でインキュベーションされた、精製iMab100を、ELK(四角)およびリゾチーム(円)への結合について分析した。 20℃でのiMab100の安定性。 20℃で様々な時間でインキュベーションされた、精製iMab100を、ELK(四角)またはニワトリリゾチーム(円)への結合について分析した。 20℃、95℃および再度20℃で測定したiMab100の遠紫外線CDスペクトル(205〜260nm)。iMab100を、1×PBS(pH7.5)中に溶解した。 20℃で、95℃で(部分的に)変性した後、および20℃でリホールディング後測定されたiMab111の遠紫外線スペクトル。20℃でのiMab100のスペクトルと比較した。 20℃で、95℃で(部分的に)変性した後、および20℃でリホールディング後測定されたiMab116の遠紫外線スペクトル。20℃でのiMab100のスペクトルと比較した。 20℃で、95℃で(部分的に)変性した後、および20℃でリホールディング後測定されたiMab1202の遠紫外線スペクトル。20℃でのiMab100のスペクトルと比較した。 20℃で、95℃で(部分的に)変性した後、および20℃でリホールディング後測定されたiMab1302の遠紫外線スペクトル。20℃でのiMab100のスペクトルと比較した。 20℃で、95℃で(部分的に)変性した後、および20℃でリホールディング後測定されたiMab1602の遠紫外線スペクトル。20℃でのiMab100のスペクトルと比較した。 20℃で、95℃で(部分的に)変性した後、および20℃でリホールディング後測定されたiMab101の遠紫外線スペクトル。 20℃で、95℃で(部分的に)変性した後、および20℃でリホールディング後測定されたiMab1200の遠紫外線スペクトル。 20℃で、95℃で(部分的に)変性した後、および20℃でリホールディング後測定されたiMab701の遠紫外線スペクトル。 天然(変性していない)9ストランドiMabスキャッフォールドのオーバーレイ。 天然(変性していない)7ストランドiMabスキャッフォールドのオーバーレイ。 iMab100およびVHH(Kwaaitaal M、ワーヘニンゲン大学および研究所、ワーヘニンゲン、オランダ国、の好意による)の遠紫外線CDスペクトル。 MASTのためのCDR3のPCR単離の概略図。
雌牛由来CDR3領域の増幅 2%アガロース−TBEゲル。 レーン1.プライマー8および9でPCR増幅した1μgのラマcDNAcyst+。 レーン2.プライマー8および9でPCR増幅した1μgのラマcDNAcyst−。 レーン3.25bpDNAステップラダー(step ladder)(プロメガ社製)。 レーン4.プライマー299および300でPCR増幅した0.75μgの雌ウシcDNA。 レーン5.プライマー299および300でPCR増幅した1.5μgの雌ウシcDNA。 レーン6.プライマー299および301でPCR増幅した0.75μgの雌ウシcDNA。 レーン7.プライマー299および301でPCR増幅した1.5μgのウシcDNA。 レーン8.50bpジーンルーラーDNAラダー(GeneRuler DNA ladder)(MBIフェルメンタス(MBI Fermentas)社製) iMab100についてELISAで測定されたリゾチーム結合活性。いくつかの異なる溶液を、iMab100蛋白質における蛋白質分解活性について、経時的に試験した。試験試料を、図Aおよび図Cにおいては100倍希釈し、一方、図Bおよび図Cにおいては1000倍希釈した。AおよびBは、リゾチーム活性を示す一方、CおよびDは、バックグラウンド活性を示す。

Claims (54)

  1. 結合ペプチドおよびコアを含む合成または組み換えタンパク様分子であって、該コアは少なくとも4つのストランドを含むb−バレルを含み、該b−バレルは少なくとも2つのb−シートを含み、該b−シートのそれぞれが該ストランドの2つを含み、該結合ペプチドは、該b−バレル中の2つのストランドを連結するペプチドであり、そして該結合ペプチドは、その天然コンテクストの外側にあることを特徴とする、タンパク様分子。
  2. 上記b−バレルが少なくとも5ストランドを含み、少なくとも上記シートが上記ストランドの3つを含むことを特徴とする、請求項1記載のタンパク様分子。
  3. 上記b−バレルが少なくとも6ストランドを含み、上記シートの少なくとも2つが上記ストランドの3つを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のタンパク様分子。
  4. 上記b−バレルが少なくとも7ストランドを含み、上記シートの少なくとも1つが上記ストランドの4つを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  5. 上記b−バレルが少なくとも8ストランドを含み、上記シートの少なくとも1つが上記ストランドの4つを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  6. 上記b−バレルが少なくとも9ストランドを含み、上記シートの少なくとも1つが上記ストランドの4つを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  7. 上記結合分子が、上記バレル上の開口側で上記バレルの2ストランドを連結し、上記シートの少なくとも1つが上記ストランドの4つを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  8. 上記結合分子が、上記バレルの上記の少なくとも2つのb−シートを連結することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  9. 少なくとも1つのさらなる結合ペプチドを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  10. 3つの結合ペプチドおよび3つの連結ペプチド配列を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  11. 少なくとも4つの結合ペプチドを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  12. 少なくとも1つの結合ペプチドが、少なくとも1つの他の結合ペプチド以外のもう1つの標的分子を認識することを特徴とする、請求項11記載のタンパク様分子。
  13. 改変された結合特性を有するタンパク様分子を同定する方法であって、請求項1〜12のいずれか1つに記載のタンパク様分子のコアに改変を導入し、該タンパク様分子から改変された結合特性を有するタンパク様分子を選択することを含むことを特徴とする、タンパク様分子を同定する方法。
  14. 改変された構造特性を有するタンパク様分子を同定する方法であって、請求項1〜12のいずれか1つに記載のタンパク様分子のコアに改変を導入し、そして該タンパク様分子から改変された結合特性を有するタンパク様分子を選択することを含むことを特徴とする、タンパク様分子を同定する方法。
  15. 上記改変が翻訳後修飾を含むことを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
  16. 上記改変が上記の少なくとも1つのタンパク様分子をコードしている核酸中に導入され、上記のタンパク様分子を産生することのできる発現システム中で該核酸を発現することをさらに含むことを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1つに記載の方法。
  17. 請求項13〜16のいずれか1つに記載の方法で得ることのできるタンパク様分子。
  18. 免疫グロブリンスーパーファミリーから誘導されることを特徴とする、請求項1〜12または17のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  19. タンパク様分子の外形が、その誘導元となった免疫グロブリンスーパーファミリー分子に免疫学的に類似していることを特徴とする請求項18に記載のタンパク様分子。
  20. 請求項1〜12、17〜19のいずれか1つに記載のタンパク様分子を含む細胞。
  21. 少なくとも1つの所望のペプチド配列を提示することのできるタンパク様分子をコード化している核酸を産生するための方法であって、該所望のペプチド配列またはかかる配列が挿入され得る領域によって少なくとも第1および第2の構造領域が分離された少なくとも第1および第2の構造領域をコード化している核酸配列を提供すること、および、少なくとも1つの所望のペプチド配列を提示する能力のある該タンパク様分子をコード化している所望の核酸を得るために、該第1および第2構造領域をコード化している該核酸を変異させることを含むことを特徴とする、核酸を産生するための方法。
  22. 所望のペプチド配列を提示するための方法であって、b−バレルを形成しているb−シートの少なくとも2つのbーシートをコード化し、該所望のペプチド配列をコード化している配列を挿入するための領域を含んでいる核酸を提供し、所望のペプチド配列を含む核酸を挿入し、そして、該核酸を発現させ、該b−シートが請求項21記載の方法によって取得可能であることを特徴とする、所望のペプチド配列を提示するための方法。
  23. 人工結合ペプチドを含むライブラリを産生する方法であって、種々の特異的結合ペプチドをコード化する少なくとも1つの核酸鋳型を提供し、該鋳型の核酸誘導体の変異によって該鋳型の核酸誘導体の収集物を産生し、そして、該収集物またはその一部を人工結合ペプチドを含む該ライブラリを産生するためにペプチド合成システムに提供することを含むことを特徴とする、ライブラリを産生する方法。
  24. 少なくとも2つの核酸鋳型を提供することを含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
  25. 少なくとも10の核酸鋳型を提供することを含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
  26. 上記変異が、上記鋳型の変異を起こし易い核酸増幅で導入されることを特徴とする、請求項23〜25のいずれか1つに記載の方法。
  27. 上記増幅が非縮重プライマーを使用することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
  28. 少なくとも1つの非縮重プライマーが、さらに縮重領域を含むことを特徴とする、請求項27に記載の方法。
  29. 上記核酸増幅が、dITP,dPTPの存在下の少なくとも1つの延長工程を含むことを特徴とする、請求項26〜28のいずれか1つに記載の方法。
  30. 少なくとも1つの鋳型が少なくとも14アミノ酸を含む親和性領域を有する特異的結合ペプチドをコード化することを特徴とする、請求項23〜29のいずれか1つに記載の方法。
  31. 上記親和性領域が少なくとも16アミノ酸を含むことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
  32. 上記親和性領域が24アミノ酸の平均長を含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
  33. 上記親和性領域が少なくとも14の連続したアミノ酸を含むことを特徴とする、請求項30〜32のいずれか1つに記載の方法。
  34. 上記鋳型の少なくとも1つが請求項1〜12、17〜19のいずれか1つに記載のタンパク様分子をコード化することを特徴とする、請求項23〜33のいずれか1つに記載の方法。
  35. 人工ペプチドの上記ライブラリ中のペプチドのための潜在的な結合相手を提供し、該結合相手に特異的に結合することのできるペプチドを該ライブラリから選択することを特徴とする、請求項23〜34のいずれか1つに記載の方法。
  36. 上記ライブラリがファージディスプレイライブラリとして提供されることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
  37. 請求項35もしくは36に記載の方法によって得られる請求項1〜12、17〜19のいずれか1つに記載のタンパク様分子、または、表2、3、10、13もしくは16に記載のタンパク様分子。
  38. 混合物から物質を分離するための、請求項1〜12または17〜19または37のいずれか1つに記載のタンパク様分子の使用方法。
  39. 上記混合物が、生物学的液体であることを特徴とする、請求項38に記載の使用方法。
  40. 上記生物学的液体が、生物の分泌産物であることを特徴とする、請求項39に記載の方法。
  41. 上記分泌産物が、ミルクまたはミルクの誘導体であることを特徴とする、請求項40に記載の方法。
  42. 上記混合物が、血液またはその誘導体であることを特徴とする、請求項39に記載の使用方法。
  43. 医薬として使用するための、請求項1〜12、17〜19または37のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  44. 望ましくない蛋白質、細胞または微生物が関与する病状の処置のための薬学的製剤の調製に、請求項1〜12、17〜19または37のいずれか1つに記載のタンパク様分子を使用する方法。
  45. 診断薬の調製に請求項1〜12、17〜19または37のいずれか1つに記載のタンパク様分子を使用する方法。
  46. 請求項1〜12、17〜19または37のいずれか1つに記載のタンパク様分子と目的の遺伝子とを含む遺伝子輸送担体。
  47. 請求項1〜12、17〜19または37のいずれか1つに記載のタンパク様分子をコード化する核酸と目的の遺伝子をコード化する核酸配列とを含む遺伝子輸送担体。
  48. 目的のモイエティにコンジュゲートされた、請求項1〜12、17〜19または37のいずれか1つに記載のタンパク様分子。
  49. 目的のモイエティが、毒性モイエティであることを特徴とする、請求項48に記載のタンパク様分子。
  50. 請求項1〜12、17〜19または37のいずれか1つに記載のタンパク様分子と充填材料とを含むクロマトグラフィーカラム。
  51. 請求項21に記載の方法で得られる核酸。
  52. 請求項51に記載の種々の核酸の収集物を含む核酸ライブラリ。
  53. 種々の親和性領域をコード化する核酸の収集物をさらに含むことを特徴とする、請求項52に記載の核酸ライブラリ。
  54. 発現ライブラリであることを特徴とする、請求項52または53に記載のライブラリ。
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