本発明の詳細な説明および好ましい実施形態
定義
さらに詳細に本発明を説明する前に、本明細書中で本発明を説明するために使用される用語の意味および範囲を解説かつ定義するために、以下の定義を示す。
本明細書で使用される「GENSET遺伝子」という用語は、GENSETポリペプチドをコードするゲノム、mRNAおよびcDNA配列、例えば前記配列の5’および3’非翻訳領域などを包含する。
「GENSETポリペプチド生物活性」または「GENSET生物活性」という用語は、本発明のGENSETポリペプチドの活性と必ずしも同一ではないが、同様な活性を示すポリペプチドに対するものである。所定のポリペプチドのGENSETポリペプチド生物活性は、その多くが当業者に公知の、適切な生物学的アッセイをも用いて評価される。その一方、「生物活性」という用語は、いずれかのポリペプチドが有する可能性のある、いずれかの活性を意味する。
「相当する(対応する))mRNA」という用語は、本発明のcDNAを作製するcDNA合成のための鋳型であった、またはあり得るmRNAを意味する。
「相当する(対応する)ゲノムDNA」という用語は、例えば本発明のcDNAに相当する、対象のmRNAをコードするゲノムDNAを意味し、そのゲノムDNAはmRNAの鎖の一方の配列を含み、ゲノムDNA(またはcDNA)の配列におけるチミジン残基はmRNA中のウラシル残基によって置換される。
本明細書で使用される「寄託クローン・プール」という用語は、ATCCまたは他の寄託機関に寄託されたクローンのプールを意味する。
本明細書でポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して使用される場合、「異種」という用語は、それぞれ特定のGENSETポリヌクレオチドまたは本発明のGENSETポリペプチド以外のいずれかのポリヌクレオチドまたはポリペプチドを示すことが意図される。
例えば生体試料、細胞集団等に関して、「提供する」とは、試料、細胞集団等がある方法または手順においてなんらかの形で使用されることを示す。注目すべきことは、生体試料または細胞集団を「提供する」には、試料または細胞を本発明の目的のために、特に単離または入手することは必要ではないが、その代わりに、例えば別の目的のために別の個体によって得られた生体試料の使用を指すことができる。
「増幅産物」とは、いずれかの増幅反応、PCR、RT−PCR、LCR等の産物を意味する。
タンパク質または他の化合物の「修飾因子」とは、タンパク質への物理的結合、タンパク質の発現量または質の改変、タンパク質の測定可能または検出可能ないずれかの活性、性質または挙動の変更を含む、タンパク質に対する機能効果を有する、またはいずれにしても、タンパク質または化合物と相互作用する、いずれかの作用物質(agent)を意味する。
「試験化合物」とは、タンパク質または他の化合物を調節するその能力について評価されるいずれかの分子であり得る。
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに特異的に結合する抗体または他の化合物は、そのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを「選択的に認識」するとも言われる。
分子に関して、「単離(された)」という用語は、その分子がその元の環境(例えば、それが天然に存在する場合には自然環境)から取り出されることを必要とする。例えば、生体動物に存在する天然ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、自然体系において共存する物質の一部またはすべてから区別される同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離される。かかるポリヌクレオチドはベクターの一部であることが可能であり、かつ/またはかかるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であることが可能であり、さらにベクターまたは組成物がその自然環境の一部ではないという点から単離することが可能である。具体的には、「単離(された)」の定義から:天然の染色体(染色体拡散など)、人工染色体ライブラリー、ゲノムライブラリー、および核酸のin vitro標本として、あるいはその宿主細胞が異質in vitro標本であるか、または単一コロニーの異質集団としてプレーティングされた、トランスフェクト/形質転換された宿主細胞標本(preparation)として存在するcDNAライブラリーは除外される。具体的には、指定のポリヌクレオチドがベクター分子中の核酸インサート数の5%未満を占める(0%、25%、50%、または75%と指定されることもある)上記のライブラリーも除外される。さらに具体的には、全細胞のゲノムDNAまたは全細胞のRNA標本(機械的に切断または酵素で消化される前記全細胞標本を含む)は除外される。さらに具体的には、in vitro標本としての、または電気泳動(それのブロットトランスファーを含む)によって分離された異種混合物としての上記全細胞標本は除外され、その電気泳動において、本発明のポリヌクレオチドは、電気泳動媒体中の異種ポリヌクレオチドからさらに分離されていない(例えば、アガロースゲルまたはナイロンブロットにおいて異種バンド集合から単一バンドを切り出すことによる更なる分離)。
「精製(された)」」という用語は、完全な精製を必要とするわけではなく;むしろ、それらは相対的な定義として意図される。少なくとも1桁、好ましくは2桁または3桁、さらに好ましくは4桁または5桁のオーダーに、出発物質または天然物質を精製することが特に企図される。「精製(された)」という用語はさらに、限定されないが、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド、炭水化物、脂質等を含む他の化合物から分離された本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを説明するために本明細書において使用される。「精製(された)」という用語は、ホモもしくはヘテロ−二量体、三量体等のオリゴマー型からの本発明の単一ポリペプチドの分離を示すのに使用する場合がある。「精製(された)」という用語はまた、共有結合で閉環した(つまり、環状)ポリヌクレオチドの、線状ポリヌクレオチドからの分離を説明するために使用される場合がある。実質的に純粋なポリペプチドまたはポリヌクレオチドは通常、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド試料それぞれを約50%(重量/重量)、好ましくは60〜90%含み、さらに一般的には約95%、好ましくは約99%を超える純度であるが、50〜100%のいずれかの整数で示される。ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの純度、または均一性は、サンプルのアガロースゲルもしくはポリアクリルアミドゲル電気泳動などの当技術分野で公知の数多くの手段によって、またはHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて示される。代替の実施形態として、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドの精製は、異種ポリペプチドおよびポリヌクレオチド(DNA、RNA、または両方)に対する「最低」純度%として表される。好ましい実施形態として、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、異種ポリペプチドおよびポリヌクレオチドに対してそれぞれ、少なくとも;純度10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、96%、98%、99%、または100%である。さらに好ましい実施形態として、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、異種ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに対して、または担体に存在するもの以外のすべての化合物および分子に対する重量/重量比として、任意の位〜小数点以下第3位の範囲の純度、90%〜100%を有する(例えば、少なくとも99.995%の純度のポリペプチドまたはポリヌクレオチド)。純度%を表す小数点以下第3位までの各数字は、純度の個々の種類として主張することが可能である。
本明細書において同義で使用される「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、および「ポリヌクレオチド」には、RNAまたはDNA(一本鎖または二本鎖、コード、相補的またはアンチセンス)、または単鎖または二重鎖状の複数のヌクレオチドのRNA/DNAハイブリッド配列が含まれる(上記の種類それぞれが特に詳しく指定されているが)。「ヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二重鎖状の任意の長さのRNA、DNA、またはRNA/DNAハイブリッド配列を含む分子を説明するために、本明細書において形容詞として使用される。さらに正確には、「ヌクレオチド配列」という表現は、核酸物質(nucleic material)を包含し、したがって、特定のDNAまたはRNA分子を生物化学的に特徴付ける配列情報(つまり、4つの塩基文字中で選択されるひと続きの文字)に限定されない。「ヌクレオチド」という用語は、プリンまたはピリミジン、リボースまたはデオキシリボースの糖部位、およびリン酸基、あるいはオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド中のヌクレオチドの場合にはリン酸ジエステル結合を含む、分子または大きな核酸分子における個々のユニットを意味する、個々のヌクレオチドまたは種々のヌクレオチドを示すために名詞としても使用される。「ヌクレオチド」という用語はまた、少なくとも1つの修飾、例えば(a)交互(alternative)結合基、(b)プリンの類似体、(c)ピリミジンの類似体、または(d)例えば類似糖(例えば、WO95/04064参照)を含む「修飾ヌクレオチド」を包含するために本明細書において使用される。本発明の好ましい修飾には、限定されないが、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−Dマンノシルクエノシン(queosine)、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)yブトキソシン、擬似ウラシル、クエノシン(queosine)、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、および2,6−ジアミノプリンが含まれる。本発明のポリヌクレオチド配列は、合成、、組換え、ex vivo作製、またはそれらの組み合わせを含む公知の方法によって、ならびに当技術分野で公知の精製方法を用いて作製することができる(修飾オリゴおよびヌクレオチドの作製に関する教示については、例えば、米国特許第5,378,825号;同第5,386,023号;同第5,489,677号;同第5,602,240号;および同第5,610,289号、米国特許第5,264,562号および同第5,264,564号、米国特許第5,223,618号、米国特許第5,508,270号、米国特許第4,469,863号、米国特許第5,610,289号または同第5,625,050号、米国特許第5,256,775号または米国特許第5,366,878号、国際公開番号:WO94/17093およびWO94/02499,米国特許第5,476,925号、米国特許第5,023,243号、米国特許第5,130,302号および同第5,177,198号を参照のこと)。
本明細書において使用される「上流」という用語は、特定の基準点からポリヌクレオチドの5’末端方向にある位置を意味する。
本明細書において使用される「相補的」または「その補体」という用語は、相補領域全体を通して指定の他のポリヌクレオチドとワトソン−クリック型塩基対を形成することができる、ポリヌクレオチドの配列を意味する。本発明の趣旨では、第1ポリヌクレオチド中の各塩基がその相補的塩基と対を形成する場合、第1ポリヌクレオチドは第2ポリヌクレオチドに相補的であると考えられる。相補的塩基は一般に、AとT(またはAとU)、またはCとGである。本明細書において「補体」は、「相補的ポリヌクレオチド」、「相補的核酸」および「相補的ヌクレオチド配列」からの同義語として使用される。これらの用語は、2つのポリヌクレオチドが実際に結合すると考えられる条件の特定のセットにではなく、単にそれらの配列に基づくポリヌクレオチドの対に適用される。別段の指定がない限り、すべての相補的ポリヌクレオチが、検討されるポリヌクレオチドの全長で完全に相補的である。
本明細書において同義で使用される「ポリペプチド」および「タンパク質」は、ポリマーの長さに無関係に、アミノ酸のポリマーを意味し;したがって、ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質がポリペプチドの定義内に含まれる。この用語はまた、本発明のポリペプチドの化学的または発現後の修飾を指定しない、または除外するが、これらのポリペプチドの化学的または発現後の修飾は特定の実施形態として包含または除外される。したがって、例えばグリコシル基、アセチル基、リン酸基、脂質基等の共有結合を含むポリペプチドへの修飾は、「ポリペプチド」という用語によって特別に包含される。さらに、これらの修飾を有するポリペプチドは個々の種類として指定されて、本発明に包含または本発明から除外される。上記の実施例で列挙されるような、天然または他の化学修飾は、ポリペプチドにおけるどこかで、例えばペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノもしくはカルボキシル末端などで起こり得り、所定のポリペプチドにおけるいくつかの部位にて同じ程度または異なる程度で存在する。また、所定のポリペプチドは、多くの種類の修飾を含有する場合がある。ポリペプチドは、例えばユビキチン結合の結果として分枝鎖である場合があり、それらは、分枝を含むまたは含まない環状であってもよい。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部位の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイレーション(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化およびユビキチン結合など、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA仲介付加が挙げられる(例えば、Creighton, (1993), Posttranslational Covalent Modification of Proteins, W. H. Freeman and Company, New York B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York 1-12 ; Seifter, et al., (1990) Meth Enzymol 182: 626-646; Rattan et al., (1992) Ann NY Acad Sci 663: 48-62を参照)。アミノ酸の1種または複数種の類似体を含有するポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸、無関係の生体系に天然にのみ存在するアミノ酸、哺乳類系からの修飾アミノ酸等)、置換結合ならびに当技術分野で公知の他の修飾を有するポリペプチドも(天然と非天然のどちらも)定義内に含まれる。
本明細書で使用される「組換えポリヌクレオチド」および「ポリヌクレオチドコンストラクト」という用語は、人工的に設計され、かつそれらの最初の自然環境において隣接ヌクレオチド配列として見出されない少なくとも2つのヌクレオチド配列を含有する、直鎖または環状の、精製または単離ポリヌクレオチドを示すために本明細書において同義で用いられる。特に、ポリヌクレオチドまたはcDNAが、それがその自然環境では隣接しない「主鎖」核酸に隣接することを意味する。さらに、濃縮されたcDNAとは、核酸主鎖分子の集団における核酸インサート数の5%以上に相当するだろう。本発明による主鎖分子には、核酸、例えば発現ベクター、自己複製する核酸、ウイルス、組込み(integrating)核酸、および他のベクターまたは対象の核酸インサートを保持または操作するために使用される核酸が含まれる。濃縮されたcDNAは、組換え主鎖分子の集団における核酸インサート数の15%以上に相当することが好ましい。さらに好ましくは、濃縮されたcDNAは、組換え主鎖分子の集団における核酸インサート数の50%以上に相当する。大変好ましい実施形態では、濃縮されたcDNAは、組換え主鎖分子の集団における核酸インサート数の90%以上(例えば、小数第3位までの90〜100%の任意の数、例えば99.5%)に相当する。
本明細書において「組換えポリペプチド」という用語は、人工的に設計されたポリペプチド、およびそれらの元の自然環境において隣接するポリペプチド配列として見出されない少なくとも2つのポリペプチド配列を含むポリペプチドを指すか、または組換えポリヌクレオチドから発現したポリペプチドを指すために使用される。
本明細書で使用される「作動可能に連結される(された)」という用語は、機能上の関係におけるポリヌクレオチド要素の連結を意味する。プロモーターなどの調節配列に「作動可能に連結される」配列とは、RNAポリメラーゼ開始および対象の核酸の発現を調節するために、前記調節因子が核酸に対して正しい位置および向きにあることを意味する。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結される。
「ドメイン」という用語は、特定の生物学的性質を有するアミノ酸断片を意味する。この用語は、公知のすべての構造および線状の生物学的モチーフを包含する。かかるモチーフの例としては、限定されないが、ロイシンジッパー、ヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフ、グリコシル化部位、ユビキチン結合部位、αヘリックス、およびβシート、タンパク質の分泌を指示するシグナルペプチド、翻訳後修飾の部位、酵素活性部位、基質結合部位、酵素切断部位が挙げられる。
これらの用語のそれぞれは明確な意味を有するが、「を含む」、「からなる」、および「から本質的になる」という用語は、本出願全体を通して互いに区別なく用いられる。「有する」という用語は「含む」と同じ意味を持ち、「からなる」という用語または「から本質的になる」という用語で置き換えることが可能である。
明細書において別段の指定がない限り、本発明のヌクレオチドおよびポリヌクレオチドのアミノ酸およびポリペプチドはそれぞれ隣接し、異種配列によって分断されない。
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、悪性であろうと良性であろうと、過剰な細胞分裂から生じる異常細胞塊または細胞集団、およびすべての前癌および癌細胞および組織を意味する。「腫瘍」はさらに、2種類以上の物理的に関連する新生細胞として定義される。「形質転換細胞」、「悪性細胞」または「癌」は同義で用いられ、悪性転換を起こした細胞を意味し、芽球化現象を起こしたリンパ球も含まれる。形質転換細胞は、動物に注入した場合に腫瘍を引き起こす大きな能力を有し、通常、基層に接着する必要なく、増殖することができ、また接触阻害を欠いている。「癌」または「腫瘍性疾患」は、任意の組織における任意のタイプの癌を包含し、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病が含まれる。
細胞のプロセス、例えばアポトーシスに関して、「誘導」または「誘発」という用語は、所定の細胞集団において、そのプロセスを受ける細胞数、または細胞がそのプロセスを受ける速度を増加または低下することを意味する。その増加または低下は、正常の未処理またはネガティブコントロール細胞と比較して、少なくとも1.25、1.5、2、5、10、50、100、500または1000倍の増加または低下であることが好ましい。
疾患または病状の治療に関して、「治療有効量」とは、疾患または病状のいずれかの徴候、外観、または特徴に、いずれかの検出可能な正の効果を有することが可能である化合物の量を意味する。
本明細書で使用される「死滅させる」または「細胞傷害性を誘導する」という用語は、アポトーシスおよび/またはネクローシスのいずれかによって細胞死を誘導することを意味し、それによって、本発明の実施形態は、アポトーシスのみ、ネクローシスのみ、およびアポトーシスとネクローシスの両方を含む。
本明細書で使用される「防ぐ」および「抑制する」という用語は、疾患または病状の物理的発現を防ぐために、疾患または病状の臨床症状が現れる前に、化合物を投与することを意味する。「予防」という用語は、「治療」とは異なり、「防ぐ」および「抑制する」を包含する。本明細書において、「防御」は、「予防」を含む。防御は、絶対的に有用である必要はない。
本明細書で使用される「治療(処置)する」という用語は、臨床症状が現れた後に化合物を投与することを意味する。本明細書で使用される「治療(処置)の必要がある」という用語は、個体または動物が治療を必要とする、または治療から恩恵を受けるだろうと介護人により下される判断を意味する。この判断は、介護人の知識の範囲にある様々な因子に基づいて下されるが、本発明による化合物による治療が可能な病状の結果として、個体または動物が病気である、または病気であるだろうという認識を含む。
本明細書で使用される「個体」または「患者」という用語は、任意の動物、例えば哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、最も好ましくはヒトを意味する。この用語は、雄または雌または両方を示すか、または雄または雌が考慮されない。
本明細書で使用される「非ヒト動物」という用語は、任意の非ヒト動物、例えば昆虫、鳥類、げっ歯類、さらに一般的には哺乳動物などを意味する。好ましい非ヒト動物には:霊長類;ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ウシ、ウマ、ニワトリ、ウサギなどの家畜;げっ歯類、好ましくはラットまたはマウスが含まれる。本明細書で使用される「動物」という用語は、動物界における任意の種、好ましくは脊椎動物、例えば鳥類および魚類、さらに好ましくは哺乳動物を指すために使用される。「動物」および「哺乳動物」の両方の用語は明確に、「非ヒト」という言葉が前に置かれていない限り、ヒト対象を含む。
本明細書で使用される「生理学的に許容される」、「薬学的に許容される」、および「薬学的な」という用語は、同義で使用される。
核酸またはポリペプチド間の同一性
「配列同一性のパーセンテージ」および「相同性パーセンテージ」という用語は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド間の比較を示すために本明細書において同義で使用されており、比較ウィンドウ上で最適にアラインメントされた2つの配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の一部は、2つの配列の最適アラインメントに対して参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して、付加または欠失(つまり、ギャップ)を含む。そのパーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列で生じる位置の数を決定して、マッチ位置の数を得て、比較ウィンドウにおける位置の総数でマッチ位置数を割り、その結果を100倍することによって計算され、配列同一性のパーセンテージが得られる。同一性または類似性は、当技術分野で公知の様々な配列比較アルゴリズムまたはプログラムのいずれかを用いて評価される。かかるアルゴリズムおよびプログラムには、決して限定されないが、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA、CLUSTALW、FASTDBが含まれる(Pearson and Lipman, (1988), PNAS 85 (8): 24442448; Altschul et al., (1990), J. Mol. Biol. 215 (3): 403-410 ; Thompson et al. (1994), Nucleic Acids Res. 22 (2): 4673-4680; Higgins et al., (1996), Meth. Enzymol. 266: 383-402 ; Altschul et al., (1993), Nature Genetics 3: 266-272; Brutlag et al. (1990) Comp. App. Biosci. 6: 237-24)。
特に好ましい実施形態において、当技術分野でよく知られているベーシック・ローカル・アラインメント検索ツール(「BLAST」) を用いて、タンパク質および核酸配列同一性が評価される(例えば、Karlin and Altschul, (1990), PNAS 87: 2267-2268; Altschul et al., (1997), Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402を参照のこと)。特定の5つのBLASTプログラムを使用して、特に以下のタスクを実行する:
(1)BLASTPおよびBLAST3により、アミノ酸問い合わせ配列をタンパク質配列データベースと比較する;
(2)BLASTNにより、ヌクレオチド問い合わせ配列をヌクレオチド配列データベースと比較する;
(3)BLASTXにより、問い合わせヌクレオチド配列(両方の鎖)の6つの枠の概念上の翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較する;
(4)BLASTNにより、問い合わせタンパク質配列を、6つすべての読み枠において翻訳されたヌクレオチド配列(両方の鎖)データベースと比較する;
(5)BLASTXにより、ヌクレオチド問い合わせ配列の6つの枠の翻訳を、ヌクレオチド配列データベースの6つの枠の翻訳と比較する。
BLASTプログラムは、問い合わせアミノ酸もしくは核酸配列と、タンパク質もしくは核酸配列データベースから得られることが好ましい試験配列との間の、本明細書において「高スコアのセグメント対」と呼ばれる類似セグメントを同定することによって相同配列を同定する。その多くが当技術分野で公知であるスコアリングマトリックスを用いることによって、高スコアのセグメント対を同定(つまり、アラインメント)することが好ましい。使用するスコアマトリックスは、BLOSUM62マトリックス(Gonnet et al., (1992), Science 256: 1443-1445; Henikoff and Henikoff, (1993), Proteins 17: 49-61)であることが好ましい。好ましさは低いが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用することができる(例えば、Schwartz and Dayhoff, (1978), eds., Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure, Washington: National Biomedical Research Foundation参照)。BLASTプログラムは、同定された高スコアのすべてのセグメント対の統計的有意性を評価し、好ましくはユーザーによって指定された相同性%など、ユーザーによって指定された有意性の閾値を満たすそれらのセグメントを選択する。高スコアのセグメント対の統計的有意性は、カーリンの統計的有意性の式(例えば、Karlin and Altschul, 1990参照)を用いて評価することが好ましい。BLASTプログラムは、ユーザーによって提供されるデフォルトパラメーターを用いて、または変更されたパラメーターを用いて使用することが可能である。
大域的配列アラインメントとも呼ばれる、ヌクレオチドもしくはアミノ酸配列(本発明の配列)と対象の配列との最高の全体的マッチを決定する他の好ましい方法は、Brutlag et al. (1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピューター・プログラムを用いて決定することができる。配列アラインメントにおいて、問い合わせ配列および対象配列はどちらもDNAまたはアミノ酸配列である。RNA配列もまた、UをTに変換することによって比較することができる。前記大域的配列アラインメントの結果は、同一性%で示される。同一性%を計算するために、DNA配列のFASTDBアラインメントに使用される好ましいパラメーターは:マトリックス=ユニタリー、k−タプル=4、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ(Joining Penalty)=30、無作為化群長さ=0、カットオフ・スコア=1、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ=0.05、ウィンドウサイズ=500または対象ヌクレオチド配列の長さのいずれか短いほう。内部の欠失のためではなく、5’もしくは3’欠失(ヌクレオチド配列に関して)またはNもしくはC末端欠失(アミノ酸配列に関して)のために、対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合には、手作業でその結果に訂正を加えなければならない。というのは、FASTDBプログラムは、同一性%を計算する場合に対象配列の末端切断を計算に入れていないからである。手作業での訂正は、対象配列における切断のためにアラインされていない全問い合わせ配列のパーセントを決定することと、FASTDBプログラムにより計算された同一性パーセントからこのパーセントを減算することを含む。この訂正されたスコアは、本発明の目的のために使用される。本発明の目的のために、他の手作業での訂正は加えられない。
本発明のポリヌクレオチド
本明細書に記載の方法の多くは、一般的な分子生物学的技術の使用に依拠する。いくつかのかかる技術が、一般に"Molecular Cloning; A Laboratory Manual", 2d ed., Cole Spring Harbor Laboratory Press, Sambrook, et al., eds. , 1989、および"Methods in Enzymology; Guide to Molecular Cloning Techniques", Academic Press, Berger and Kimmel eds., 1987で教示されている。
本発明は、GENSETゲノムおよびcDNA配列に関する。本発明は、GENSET遺伝子、GENSETゲノムおよびcDNA配列を含むポリヌクレオチド、ならびにその断片および変異体を包含する。これらのポリヌクレオチドは、精製、単離、または組換えポリヌクレオチドであることが可能である。
GENSET遺伝子の対立遺伝子変異体、オルソロガス、スプライシングバリアント、および/または相同分子種もまた包含される。当技術分野で公知の手順を用い、本明細書に開示の配列およびATCCに寄託されたクローン・プールからの情報を利用して配列番号:1〜23の奇数番号の配列および寄託クローン・プールのクローンインサートの配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列に相当する遺伝子およびcDNAの、完全長遺伝子およびcDNA、対立遺伝子変異体、スプライシングバリアント、完全長コード部分、オルソログオ、および/または相同分子種が得られる。例えば、対立遺伝子変異体、オルソログおよび/または相同分子種は、当業者に公知のいずれかの技術、例えば「類似配列を見つけるために」というタイトルのセクションに記述されている技術などを用いて、本明細書に記載される配列から適切なプローブまたはプライマーを作製し、対立遺伝子変異体および/または目的の相同体に対して適切な核酸ソースをスクリーニングすることによって単離および同定することが可能である。
特定の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、少なくとも5、30、50、100、125、500、または1000個の隣接ヌクレオチドである。その他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、300kb、200kb、100kb、50kb、10kb、7.5kb、5kb、2.5kb、2kb、1.5kb、またはlkb以下の長さである。更なる実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、いずれかのイントロンのすべてまたは一部を含まないが、本明細書に開示されるコード配列の一部を含む。別の実施形態では、コード配列を含むポリヌクレオチドは、ゲノムフランキング遺伝子(genomic flanking gene)(つまり、ゲノムにおける対象の遺伝子に対して5’または3’)のコード配列を含有しない。他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、1000、500、250、100、75、50、25、20、15、10、5、4、3、2または1個を超える天然ゲノムフランキング遺伝子のコード配列を含有しない。
本発明の寄託クローン・プール
GENSET遺伝子の発現は、そのcDNA配列が添付の配列表に配列番号:1〜23の奇数番号で示される、GENSET遺伝子1個当たり少なくとも1つのmRNA種の産生をもたらすことが示されている。これらのGENSET mRNA種に相当するcDNAを、pBluescriptII SK-(Stratagene社)ベクターまたはpPTと呼ばれるベクター中でクローニングした。本発明のクローン化cDNAを含有する細胞が、Genset, S. A. , 24 Rue Royale, 75008 Paris, Franceにて、発明者らによって永久寄託で保存された。表Iには、各配列番号に割り当てられるGensetの内部指定番号を提供し、その配列が核酸配列(DNA)かタンパク質(PRT)配列かを示している。そのcDNA配列はその配列内に相当する制限部位のいずれも含有しないという条件で、各cDNAは、NotI Pst I二重消化を行うことによって、挿入されたBluescriptベクターから、またはMunI HindIII二重消化を行うことによってpPTベクターから除去し、各クローンに対して適切な断片を生成することができる。代替方法としては、ベクターのマルチクローニング部位の他の制限酵素を用いて、製造元により指示されるように目的のインサートを回収することができる。
特定のポリヌクレオチドを含有する細胞がそれから得られる、配列表に記載のGENSET遺伝子を含有する細胞のプールは、米国菌株保存機関(ATCC)(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209, United States)に寄託された、または寄託されるだろう。各cDNAクローンは、これらの複合寄託のために、個々の細菌細胞(大腸菌)にトランスフェクトされている。
特定のクローンを含有する細菌細胞は、標準法を用いて、例えば複合寄託の培養物をプレーティングし、溶解されたコロニーをフィルターに移し、そのフィルターを標識プローブ、例えば対象のクローンに特異的なオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせることによって、複合寄託から得られる。代替方法としては、cDNA挿入の両端で設計されたプライマー、例えばベクターのマルチクローニング部位で設計されたプライマーを用いたPCRを利用して、細菌のプールから個々のcDNAインサートを回収することができる。
本発明のcDNA配列
本発明のcDNAのそれぞれの構造パラメーターは、添付の配列表に示されている。それに応じて、本発明の各cDNAのコード配列(CDS)またはオープンリーディングフレーム(ORF)は、開始コドンの最初のヌクレオチドで始まり、終止コドンの最初のヌクレオチドのすぐ5’側のヌクレオチドで終わるヌクレオチド配列を意味する。同様に、本発明の各cDNAの5'非翻訳領域(または5'UTR)は、1番目のヌクレオチドで始まり、開始コドンの最初のヌクレオチドのすぐ5’側のヌクレオチドで終わるヌクレオチド配列を意味する。本発明の各cDNAの3'非翻訳領域(または3'UTR)は、終止コドンの最初のヌクレオチドで始まり、そのcDNAの最後のヌクレオチドで終わるヌクレオチド配列を意味する。
コード配列
本発明のその他の目的は、添付の配列表のポリヌクレオチド配列、寄託クローン・プールのヒトcDNAクローンインサートおよびその変異体のポリヌクレオチド配列からなる群から選択される配列のコード配列を含む、単離、精製または組換えポリヌクレオチドである。
コード配列の範囲は、シーケンシングのエラー、逆転写または増幅のエラー、mRNAスプライシング、コードされるタンパク質の翻訳後修飾、コードされるタンパク質の酵素切断、または他の生物学的因子の結果として、添付の配列表に示される配列と異なるであろうことは理解されよう。当業者であれば、配列表のポリヌクレオチド配列、寄託クローン・プールのヒトcDNAインサートおよびその対立遺伝子変異体のポリヌクレオチド配列におけるコード配列の範囲を容易に同定することができるだろう。したがって、配列表のポリヌクレオチド配列および寄託クローン・プールのcDNAインサートのポリヌクレオチド配列のうちの1つのコード配列を含有する核酸に関する、本明細書中のいずれかの請求の範囲は、添付の配列表に記載のコード配列から容易に特定できる変形形態または記載のコード配列の等価物を除外するものではない。以下に定義されるように、等価物は、ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドにおける、アミノ酸変化をもたらさないまたは保存的アミノ酸置換をもたらすヌクレオチドコード配列のいずれかの変更を含む。同様に、ポリペプチドの範囲は、上記の因子のいずれかの結果として、添付の配列表に示されるものと異なるだろう。添付の配列表のポリペプチド配列のアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する請求の範囲は、添付の配列表に記載の配列から容易に特定できる変形形態または記載の配列の等価物を除外するものではない。
GENSET遺伝子のコード配列を含有する上記のポリヌクレオチドは、このポリヌクレオチドを適切な発現シグナルの制御下に置いた場合に、目的の宿主細胞または目的の宿主生物中で発現させることが可能である。発現シグナルは、本発明のGENSET遺伝子における調節領域に含まれるシグナルであるか、またはそれと異なり、外因性核酸調節配列であるシグナルのいずれかである。かかるポリヌクレオチドは、適切な発現シグナル下に置かれた場合、その発現および/または増幅のためにベクター中に挿入することも可能である。
更なる異種アミノ酸配列のコード配列に枠内で融合される、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがさらに本発明に包含される。更なる非コード配列、限定されないが、例えば非コード5’および3’配列、ベクター配列、精製、プロービング、プライミングに使用される配列と共に、本発明のポリペプチドをコードする核酸もまた、本発明に包含される。例えば、異種配列には、リボゾーム結合およびmRNAの安定性など、転写およびmRNAプロセッシングにおいて役割を果たす、転写、非翻訳配列が含まれる。代わりに、異種配列は、更なる機能性、例えばヘキサヒスチジン(His6)またはHAタグを提供する更なるコード配列を含む場合がある。
本発明の調節配列
上述のように、GENSET遺伝子のゲノム配列は、これらの遺伝子のエクソンを含有するGENSETポリペプチドコード領域に隣接する、非コード5’−フランキング領域において、おそらく、非コード3'-フランキング領域において、調節配列を含有する。
GENSETポリヌクレオチドの5'および3'調節領域から誘導されるポリヌクレオチドは、試験試料におけるENSET遺伝子のゲノムヌクレオチド配列またはその断片の少なくとも複製の存在を検出するのに有用である。
好ましい調節配列
ENSETポリペプチドコード領域の5’末端および3’末端に位置する調節因子を有するポリヌクレオチドは、対象の異種ポリヌクレオチドのプロセッシング、局在化、安定性、成熟および転写および翻訳活性を制御するのに有利に使用され、例えば:調節ポリヌクレオチドは、目的の宿主細胞または目的の宿主生物においてコード配列を発現させるのに使用することができる組換え発現ベクターの一部である(UTRの再検討に関しては、Decker and Parker, (1995) Curr. Opin. Cell. Biol. 7 (3): 36892, Derrigo et al., (2000) Int. J. Mol. Med. 5 (2): 111-23を参照のこと)。特に、3’UTRは、Makrides (1999) Protein Expr Purif 1999 Nov; 17 (2): 183-202、米国特許第5,925,564号;同第5,807,707号および同第5,756,264号を含む当業者に公知のいずれかの方法を用いて、組換えベクターにおいて異種mRANの安定性を制御するために使用される。
本発明は、5’および3’GENSETポリヌクレオチド調節領域、それに相補な配列、調節活性断片およびその変異体からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む、精製または単離核酸、および厳密なハイブリダイゼーション条件下でそれとハイブリダイズする核酸にも関する。寄託クローン・プールのヒトcDNAクローンインサート、それに相補的な配列、調節活性断片およびその対立遺伝子変異体の、本明細書に記載のGENSET 5'または3'調節配列、ならびに添付のポリヌクレオチド配列の5’−または3’−UTRのいずれかと少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸もさらに包含される。5'および3'調節領域の断片は、20から20,000のうちいずれか1つの整数個のヌクレオチドに相当する長さを有する。
本発明の目的では、核酸またはポリヌクレオチドは、前記調節ポリヌクレオチドが転写および翻訳調節情報を含むヌクレオチド配列を含有する場合、組換えポリペプチドまたは組換えポリヌクレオチドの発現に「調節領域」として「機能的」であり、かかる配列は、目的のポリペプチドまたは目的のポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列に「作動可能に連結される」。
本発明は、目的のポリペプチドをコードする核酸分子または対象の核酸分子も含み、前記核酸分子は、本明細書に記載の調節配列のいずれかに作動可能に連結される。その目的のポリペプチドは、原核生物ウイルスまたは真核生物由来のタンパク質を包含する、様々な性質または起源のポリペプチドであることが可能である。細胞内タンパク質などの真核生物タンパク質、例えば「ハウスキーピング」タンパク質、膜結合型タンパク質、例えばミトコンドリア膜結合タンパク質および細胞表面受容体、および分泌タンパク質、例えばサイトカインなどの内因性メディエーターも包含される。その目的のポリペプチドは、異種ポリペプチドまたはGENSETポリペプチドであることが可能である。
ポリヌクレオチド変異体
本発明はまた、本明細書に記載のポリヌクレオチドの変異体およびその断片に関する。本明細書で用語として用いられるポリヌクレオチドの「変異体(variant)」とは、参照ポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドである。一般に、参照と変異体のヌクレオチド配列が全体的に非常に類似しており、多くの領域においては、同一であるように、差異は限定されている。本発明は、対立遺伝子変異体と縮退変異体のどちらも包含する。
対立遺伝子変異体
ポリヌクレオチドの変異体は、天然に発生する対立遺伝子の変異体などの天然変異体であるか、または天然に発生することが分かっていない変異体である。「対立遺伝子変異体」によって、生物体の染色体上の所定の遺伝子座を占有する遺伝子のいくつかの代わりの形のうちの1つが意図される(Lewin, (1989), PNAS 86: 9832-8935参照)。2倍体生物は、対立遺伝子型に関してホモ接合性またはヘテロ接合性である。ポリヌクレオチド、細胞または生物に適用される技術を含む、当技術分野で公知の変異生成技術によって、非天然のポリヌクレオチド変異体を作製することができる。
縮重変異体
本発明の単離ポリヌクレオチド、およびその断片の他に、本発明はさらに、遺伝暗号の縮重により本発明のGENSETポリペプチドを引き続きコードする、上述の配列と実質的に異なる配列を含むポリヌクレオチドを含む。これらのポリヌクレオチド変異体は、本出願全体を通して「縮重変異体」と呼ばれる。つまり、本発明のGENSETポリペプチドをコードする可能性のあるすべてのポリヌクレオチド配列が企図される。これは、遺伝暗号および当技術分野で公知の種特異的コドン選択を含む。
変異ポリヌクレオチドに存在するヌクレオチドの変化はサイレントである場合があり、それは、ポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸は変化しないことを意味する。しかしながら、ヌクレオチドの変化によって、参照配列によりコードされるポリペプチド中のアミノ酸置換、付加、欠失、融合および切断もまた生じる場合がある。置換、欠失または付加には、1つまたは複数のヌクレオチドが関与する。変異体は、コードもしくは非コード領域またはその両方において変化する。コード領域における変化によって、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失または付加が引き起こされる。本発明のコンテクストにおいて、ポリヌクレオチド変異体が、GENSETタンパク質と実質的に同じ生物学的性質または活性を保持するポリペプチドをコードすることを特徴とする実施形態が、好ましい実施形態である。保存的置換を含有するものが、さらに好ましいポリヌクレオチド変異体である。
類似ポリヌクレオチド
本発明の他の実施形態は、本発明のポリヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である、精製、単離または組換えポリヌクレオチドを提供する。GENSET生物活性を有するポリペプチドをコードする類似ポリヌクレオチドが好ましいが、特定の核酸分子が活性を有するポリペプチドをコードしない場合でさえ、当業者であれば、例えばハイブリダイゼーション用プローブまたはプライマーとしてその核酸分子をどのように使用するかを知っているであろうことから、コードされるタンパク質におけるGENSET生物活性の存在は必須ではない。GENSET活性を有するポリペプチドをコードしない本発明の核酸分子の使用には、特に、DNAライブラリーからのGENSET遺伝子またはその対立遺伝子変異体の単離、およびGENSET mRNAまたはDNAを含有すると考えられる生体試料中のGENSET mRNA発現の、例えばノーザンブロット法またはPCR分析による検出が含まれる。
ハイブリダイズするポリヌクレオチド
その他の態様において、本発明は、厳密なハイブリダイゼーション条件下にて、本発明のいずれかのポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む単離または精製核酸分子を提供する。かかるハイブリダイズするポリヌクレオチドは、10から10,000の少なくともいずれか1つの整数個のヌクレオチドの長さであることが可能である。
当然、ポリA+配列(例えば、配列表に示されるcDNAのいずれかの3’末端ポリA+域(tract))のみにハイブリダイズする、またはT(もしくはU)残基の5’相補的ストレッチとハイブリダイズするポリヌクレオチドは、「ポリヌクレオチド」の定義に含まれないだろう。というのは、かかるポリヌクレオチドが、ポリ(A)ストレッチまたはその補体(例えば、プライマーとしてオリゴdTを用いて産生される実質的にいずれかの二本鎖cDNAクローン)を含有するいずれかの核酸分子とハイブリダイズすると考えられるためである。
相補的ポリヌクレオチド
本発明はさらに、本発明のいずれかのポリヌクレオチドに完全に相補的なヌクレオチド配列を有する単離核酸分子を提供する。
ポリヌクレオチド断片
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドの一部または断片に関する。本発明のポリヌクレオチド断片の使用には、プローブ、プライマー、分子量マーカー、および本発明のポリペプチド断片を発現するための使用が含まれる。断片は、a)配列表のポリヌクレオチド配列、b)ゲノムGENSET配列、c)本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、d)寄託クローン・プールのヒトcDNAクローンインサートの配列、e)寄託クローン・プールのヒトcDNAクローンインサートによってコードされるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、からなる群から選択されるポリヌクレオチドの一部を含む。特に、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも8、10、12、15、18、20、25、28、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400、500、800、1000、1500、または2000個の連続するヌクレオチドを含む精製または単離ポリヌクレオチドが、本発明に包含される。さらに、少なくともXヌクレオチドを含むポリヌクレオチドが提供され、その「X」は、整数8と、配列表または本明細書の他で示される3’最高ヌクレオチド位置を表す整数との間のいずれかの整数として定義される。
好ましい本発明のポリヌクレオチドとして、それらの5'および3'位置に関して指定されるポリヌクレオチド断片がさらに包含される。特定の配列番号に関して5’最高ヌクレオチドが1番目であり、かつ3’最高ヌクレオチドが最後のヌクレオチドである、添付の配列表で示される位置番号によって5'および3'位置が表される場合、少なくとも8個の連続するヌクレオチド長さの本発明のポリヌクレオチド断片が本発明のポリヌクレオチド上を占めることが可能な、5'および3'ヌクレオチド位置のあらゆる組み合わせ相当するすべてのポリヌクレオチド断片が特に考えられる。ポリヌクレオチド断片のこれらの種類は、代わりに、式「a〜b」によって示される;「a」はポリヌクレオチドの5’最高ヌクレオチド位置に等しく、「b」は3’最高ヌクレオチド位置に等しく;さらに、「a」は1から、本発明のポリヌクレオチド配列のヌクレオチドの数−8の間の整数に等しく、「b」は9から、本発明のポリヌクレオチド配列のヌクレオチドの数の間の整数に等しく;「a」は「b」よりも少なくとも8小さい整数である。これらの方法のいずれかで示されるポリヌクレオチド断片のすべてはすぐに認識することができ、したがって、不必要に明細書を長くするためだけにそれぞれに列挙しない。これらのポリヌクレオチド断片のいずれかは、本発明から具体的に除外される場合がある。上述のように、ヌクレオチドの5'および3'位置によって、またはヌクレオチドのサイズによって、指定される任意の数の断片が除外される。好ましい、除外される断片は、反復配列との、例えばAlu、LI、THEおよびMER反復配列、SSTR配列またはサテライト、マイクロサテライト、およびテロメア反復配列とのかなりの相同性を有する断片を含む。
本発明の他の好ましい断片は、ポリペプチドのドメインをコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。かかる断片を使用し、類似ドメインを有するポリペプチドをコードする他のポリヌクレオチドがハイブリダイゼーションまたはRT−PCR技術を用いて得られる。代替方法としては、これらの断片を使用し、特異的な生物学的性質を有するポリペプチドドメインを発現させることが可能である。
本発明の別の目的は、少なくとも(5から1,000の間のいずれかの整数個の長さの連続アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも)5、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、50、60、75、100、150または200個の連続するアミノ酸の隣接スパンからなる、から本質的になる、を含む、ポリペプチドをコードする精製、単離または組換えポリヌクレオチドである。本発明はさらに、このセクションに示されるポリヌクレオチド断片の任意の組み合わせを包含する。
オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブ
本発明は、プライマーおよびプローブとして使用されるGENSETポリヌクレオチドの断片もまた包含する。GENSETゲノムおよびcDNA配列から誘導されるポリヌクレオチドは、試験試料におけるGENSETポリヌクレオチドまたはその断片、補体、または変異体の少なくとも複製の存在を検出するのに有用である。
構造上の定義
本発明のいずれかのポリヌクレオチドをプライマーおよびプローブとして使用することができる。本発明の特に好ましいプローブおよびプライマーは、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、500、または1000ヌクレオチドの隣接スパンを含む、単離、精製、または組換えポリヌクレオチドを含む。
増幅の目的のために、およそ同じTmを有するプライマー対が好ましい。プライマーは当技術分野で公知の方法を用いて設計することが可能である。本発明のコンテクストにおいて使用できる増幅技術には、限定されないが、EP-A-320 308、WO9320227およびEP-A-439 182に記載のリガーゼ連鎖反応 (LCR)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、RT-PCR)およびGuatelli et al., (1990) PNAS 35: 273-286およびCompton (1991) Nature 350 (6313) 91-92に記載の核酸配列に基づく増幅法(NASBA)、欧州特許出願第4544610号に記載のQ−β増幅、Walker, et al. (1996), Clin. Chem. 42: 9-13およびEP A 684 315に記載の鎖置換増幅、WO9322461に記載の標的仲介増幅(target mediated amplification)が含まれる。
本発明のプローブは、多くの目的に、例えばゲノムDNAとのサザンハイブリダイゼーション、PCR増幅産物の検出、GENSET遺伝子またはmRNA中のミスマッチの検出、およびin situハイブリダイゼーションに有用である。本発明のポリヌクレオチド、プライマーおよびプローブのいずれも好都合なことに、ラテックス粒子、微粒子、磁気ビーズ、非磁気ビーズ(例えばポリスチレンビーズなど)、膜(例えば、ニトロセルロースストリップなど)、プラスチックチューブ、マイクロタイターウェルの壁、ガラスもしくはシリコンチップ、ヒツジ(または他の適切な動物の)赤血球およびduracyteなど、どの種類の固体担体にも固定化することができる。固体相に核酸を固定化するための適切な方法としては、イオン性、疎水性、共有結合性相互作用等が挙げられる。本明細書で使用される固体担体とは、可溶性であるか、またはその後の反応によって可溶性にすることができる任意の材料を意味する。固体担体は、捕捉剤(capture agent)を引き付け、かつ固定化するその固有の能力に関して選択することが可能であり、またはその代わりに、捕捉剤を引き付け、かつ固定化する能力を有する更なるアクセプターを保持することができる。本発明のポリヌクレオチドは、固体担体上に個々に、または1つの固体担体に対して少なくとも2、5、8、10、12、15、20または25個の別個の本発明のポリヌクレオチドのグループで引き付けるか、または固定化することができる。さらに、本発明のポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドを、1つまたは複数の本発明のポリヌクレオチドと同じ固体担体に引き付けることが可能である。
オリゴヌクレオチドアレイ
複数種の本発明のオリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを含む基質を、GENSET遺伝子における標的配列を検出または増幅するのに使用することが可能であり、GENSET遺伝子のコードもしくは非コード配列中の変異を検出するのに使用することが可能であり、異なる組織中で、プロセスの異なる段階(胚の発生、疾患の治療)にて、本明細書の他の箇所で記載されている患者対健常な個体において、ENSET遺伝子発現を決定するのに使用することも可能である。
本明細書で使用される「アレイ」という用語は、遺伝子発現を特異的に検出するのに十分な長さの核酸の1次元、2次元、または多次元の配列を意味する。例えば、アレイは、本明細書に記載のGENSETゲノムDNA、GENSET cDNA、それに相補的な配列またはその断片のいずれかを含む。好ましくは、その断片は、少なくとも12、15、18、20、25、30、35、40、50、または100ヌクレオチドの長さである。
本明細書で提供されるいずれのポリヌクレオチドも、固体担体上に重複領域において、またはランダムな位置にて付着させることが可能である。代替方法としては、本発明のポリヌクレオチドは、順序付きアレイにおいて付着させることが可能であり、そのアレイでは、各ポリヌクレオチドは、他のいずれかのポリヌクレオチドの付着部位と重複しない固体担体の別の領域に付着される。好ましくは、ポリヌクレオチドのかかる順序付きアレイは、その別個の位置が記録される「アドレス指定可能」であるように設計され、アッセイ手順の一部として評価することができる。アドレス指定可能なポリヌクレオチドアレイは通常、異なる既知の位置において基質表面に結合する、複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含む。各ポリヌクレオチド位置の正確な位置の知識によって、これらの「アドレス指定可能な」アレイはハイブリダイゼーションアッセイにおいて特に有用となる。当技術分野で公知のいずれかのアドレス指定可能なアレイ技術、例えばGenechips(登録商標)(例えば、米国特許第5,143,854号;国際公開番号:WO90/15070およびWO92/10092、Fodor et al., (1991) Science 251: 767-777を参照)などを、本発明のポリヌクレオチドと共に使用することができる。固体担体上へのオリゴヌクレオチドアレイの固定化は、「非常に大きなスケールの固定化ポリマー合成(Very Large Scale Immobilized Polymer Synthesis)」(VLSIPS(登録商標))として一般的に認められている技術を開発することによって可能となり、その技術では通常プローブが、高密度アレイにおいてチップの固体表面に固定化される(例えば、米国特許第5,143,854号および同第5,412,087号、国際公開番号:WO90/15070、WO92/10092およびWO95/11995を参照のこと)。WO94/12305、WO94/11530、WO97/29212およびWO97/31256に開示の方法など、当技術分野で公知のの更なる作製法を用いることが可能である。
したがって、本発明は、少なくとも1つ、2つ、または5つの本発明のポリヌクレオチド、特に本明細書に記載のプローブまたはプライマーを含む核酸分子のアレイに関する。
本発明のポリヌクレオチドを作製する方法
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを作製する方法も含む。本発明のポリヌクレオチドは、当業者によく知られている技術、例えば本明細書に記載の増幅またはハイブリダイゼーションに基づく方法を用いて、酵素的に、または化学的に合成することができる。
核酸を合成する様々な化学的方法が当業者には知られている。これらの方法の多くでは、固体担体上で合成が行われる。代替方法としては、米国特許第5,049号に記載のように、ポリヌクレオチドを作製することができる。一部の実施形態において、上述のように作製したいくつかのポリヌクレオチドを共にライゲートして、目的の配列を有するより長いポリヌクレオチドが生成される。
本発明のポリペプチド
「GENSETポリペプチド」という用語は、本発明のタンパク質およびポリペプチドのすべてを含めるために、本明細書において使用される。本発明は、(a)配列番号:2〜24の偶数番号の完全長ポリペプチド;(b)寄託クローン・プールのクローンインサートによってコードされる完全長ポリペプチド;(c)配列番号:2〜24の偶数番号の、エピトープを有する断片;(d)寄託クローン・プールに含まれるクローンインサートによってコードされるポリペプチドの、エピトープを有する断片;(e)配列番号:2〜24の偶数番号のポリペプチドのドメイン;(f)寄託クローン・プールに含まれるクローンインサートによってコードされるポリペプチドのドメイン;(g)配列番号:2〜24の偶数番号の、または寄託クローン・プールのヒトcDNAによってコードされるポリペプチドのシグナルペプチド;(h)配列番号:2〜24の偶数番号の、または寄託クローン・プールのヒトcDNAによってコードされる成熟ポリペプチド;および(i)(a)〜(f)のポリペプチドのいずれかの対立遺伝子変異ポリペプチド;からなる組換え、単離または精製GENSETポリペプチドを含む、GENSETポリペプチドを包含する。本発明の他の目的は、本発明のポリペプチドによってコードされるポリペプチドならびにかかるポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。
ポリペプチド変異体
本発明はさらに、対立遺伝子によってコードされるGENSETポリペプチドおよびスプライシングバリアント、オルソログ、および/または相同分子種を提供する。当技術分野で公知の手順を用いて、配列表のポリペプチドおよび寄託クローン・プールのクローンインサートによりコードされるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体、スプライシングバリアント、オルソログ、および/または相同分子種を、本明細書に開示の配列またはATCCに寄託されたクローンからの情報を用いて得ることができる。
本発明のポリペプチドは、本発明のポリペプチドと少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも60%、またさらに好ましくは70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。本発明の問い合わせアミノ酸配列と、例えば少なくとも95%「同一の」アミノ酸配列を有するポリペプチドというのは、対象ポリペプチド配列が問い合わせアミノ酸配列のアミノ酸100個それぞれにつき5個までのアミノ酸の変更を含み得ることを除いては、対象ポリペプチドのアミノ酸配列が、問い合わせ配列と同一であることを意味する。言い換えれば、問い合わせアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、対象配列中のアミノ酸残基の5%(100個のうち5個)までが挿入、欠失(インデル)されるか、または別のアミノ酸で置換される。
本発明の更なるペプチドには、上述のポリペプチドと、少なくとも90%の類似性、好ましくは少なくとも95%の類似性、さらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%の類似性を有するポリペプチドが含まれる。計算することを目的として、一致するアミノ酸が同一であるか、または以下に定義される「同等な」変化を表すアミノ酸であり得ることを除いては、「類似性」は、「同一性」について上述されるのと全く同様に計算される。
参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノもしくはカルボキシ末端位置またはこれらの末端位置間のどこかで生じ、参照配列中の残基間に個々に、または参照配列内の1つまたは複数の隣接基中に散在する。当業者であれば、生物活性を欠く変異ポリペプチドが依然として、例えばワクチンとして、抗体を作製するのに、エピトープマッピングにおいてエピトープ標識として、SDS-PAGEゲルまたは分子ふるいゲル濾過カラム上の分子量マーカーとして有用であることを認識されるように、本明細書に記載の変異ポリペプチドは、それらが正常な生物活性を有するかどうかにかかわらず本発明に包含される。
本発明のポリペプチドの作製
本発明のポリペプチドは、当技術分野で公知のいずれかの適切な手法で作製することができる。かかるポリペプチドには、単離天然ポリペプチド、組換えにより作製されたポリペプチド、合成的に作製されたポリペプチオド、またはこれらの方法の組み合わせによって作製されたポリペプチドが含まれる。本発明のポリペプチドは、単離状態で提供されることが好ましく、一部または好ましくはほとんど完全に精製することが可能である。
自然源からの単離
本発明のGENSETタンパク質は、ヒトまたは非ヒト動物の直接単離された細胞だろうと、または培養細胞だろうと、自然源、例えば体液、組織および細胞から単離することができる。天然タンパク質を抽出かつ精製する方法は当技術分野で公知であり、洗浄剤またはカオトロピック剤を使用して粒子を乱し、続いてポリペプチドの差次的抽出(differential extraction)およびイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーによる分離を行い、密度によって沈降させ、ゲル電気泳動を行うことを含む。例えば、タンパク質の様々な精製方法に関しては「Methods in Enzymology, Academic Press, 1993」を参照のこと。本発明のポリペプチドはまた、本発明のポリペプチドに対して作られる抗体を用いて、標準法により自然源から精製することができる。
組換え源からの単離
本発明のGENSETポリペプチドは、当技術分野で公知の通常の発現方法を用いて組換えにより作製することが好ましい。目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、いずれかの簡便な宿主に適した発現ベクター中で、プロモーターに作動可能に連結される。真核生物および原核生物の宿主系のどちらも、組換えポリペプチドの形成に使用される。次いで、そのポリペプチドを溶解細胞または培地から単離し、その目的の用途に必要とされる程度まで精製される。いずれかの本発明のポリヌクレオチドを使用して、GENSETポリペプチドを発現させることができる。
その結果、本発明の更なる実施形態は、本発明のポリペプチドを作製する方法であり、前記方法は、GENSETポリヌクレオチド(例えば、GENSETポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)を提供する段階と、cDNAがプロモーターに作動可能に連結されるように、発現ベクター中にそのポリヌクレオチドを挿入する段階と、宿主細胞中にその発現ベクターを導入し、それによって、前記宿主細胞が前記ポリペプチドを生成する段階と、を含む。この実施形態の一態様において、この方法はさらに、ポリペプチドを単離する段階を含む。いずれかの適切な発現ベクターおよび発現系(例えば、3T3細胞などの細胞ベース系)を当技術分野でよく知られている方法に従って使用してもよい。
一実施形態において、GENSET cDNAの全コード配列およびそのcDNAの3'UTRからポリAシグナルが発現ベクター中でプロモーターに作動可能に連結される。
別の実施形態において、分泌またはリーダー配列、プロ配列、複数のヒスチジン残基など、精製の助けとなる配列、または組換え体作製中に安定性を得るためのその他の配列をコードする、更なるヌクレオチド配列が包含される。
代替方法としては、発現させるGENSETポリペプチドは、遺伝子導入動物の産物、つまり、対象のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有する体細胞または胚細胞によって特徴付けられる遺伝子導入雌ウシ、ヤギ、ブタまたはヒツジの乳の成分としての産物であることも可能である。
差次的抽出、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、抗体に基づく方法、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、HPLC、免疫クロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含むこれらの方法を用いて、発現したGENSETポリペプチドを回収するために、いずれかの標準法が用いられる。
組換え体作製手順で用いられる宿主に応じて、本発明のポリペプチドはグリコシル化されてもよいし、グリコシル化されなくてもよく、宿主仲介プロセスの結果として場合によっては、最初の修飾メチオニン残基を含んでもよい。さらに、本発明のポリペプチドは、アミノ末端メチオニンを含有してもよいし、または含有しなくてもよい。
化学合成からの単離
さらに、本発明のポリペプチド、特に短いタンパク質断片は、当技術分野で公知の技術(例えば、Creighton (1983), Proteins: Structures and Molecular Principles, W. H. Freeman & Co. 2nd Ed. , T. E. , New York; and Hunkapiller etal., (1984) Nature. 310 (5973): 105-11参照)を用いて化学的に合成することができる。例えば、本発明のポリペプチド 配列の断片に相当するポリペプチドは、ペプチド合成装置を使用して合成することができる。代替方法としては、米国特許第5,049,656号に記載の方法を使用することができる。 さらに、所望の場合には、非古典的アミノ酸または化学アミノ酸類自体を、ポリペプチド配列中に置換または付加で導入することができる。非古典的アミノ酸には、限定されないが、一般的アミノ酸のD−異性体、2,4−ジアミノ酪酸、a−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、g−Abu、e−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、b−アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナー・アミノ酸、例えばb−メチルアミノ酸、Ca−メチルアミノ酸、Na−メチルアミノ酸、およびアミノ酸類似体全般が含まれる。さらに、そのアミノ酸はD(右旋性)またはL(左旋性)であることが可能である。
修飾
本発明は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク分解性切断、抗体分子または他の細胞リガンドへの結合により、翻訳中または翻訳後に差次的に修飾されるポリペプチドを包含する。数多くの化学修飾のいずれも、公知の技術、限定されないが例えば、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的な化学的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝合成等によって行うことができる。
本発明により包含されるその他の翻訳後修飾には、例えば、N−結合型またはO−結合型糖鎖、N−末端またはC-末端の処理、アミノ酸主鎖への化学部位の結合、N−結合型またはO−結合型糖鎖の化学修飾、および原核生物宿主細胞の発現の結果としてのN−末端メチオニン残基の付加または欠失が含まれる。タンパク質を検出および単離することできるように、ポリペプチドを検出可能な標識、例えば酵素標識、蛍光標識、同位体標識または親和性標識で修飾してもよい。
更なる利点、例えばポリペプチドの増大した溶解性、安定性および循環時間、または減少した免疫原性を提供する、本発明のポリペプチドの化学修飾された誘導体も本発明によって提供される(例えば、米国特許第4,179,337号参照)。誘導体化のための化学部位は、ポリエチレングリコール(好ましくは、1〜100kD)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマー(分枝鎖または枝なし鎖)から選択することができる。ポリペプチドは、分子内のランダムな位置で、または分子内の所定の位置で修飾され、1つ、2つ、3つ以上の結合化学部位を含む。その化学部位は、いずれかの方法、例えば遊離アミノ、カルボキシルまたはスルフヒドリル基を介して結合される(例えば、EP 0 401 384、またはMalik et al., (1992), Exp. Hematol. 20: 1028-1035参照)。
多量体化
本発明のポリペプチドは、単量体または多量体(つまり、二量体、三量体、四量体以上の)形であることが可能である。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドの単量体または多量体、それらの製造、およびそれらを含有する組成物に関する。
本発明によって包含される多量体は、ホモマーまたはヘテロマーであることが可能である。本明細書で使用される「ホモマー」という用語は、同じアミノ酸配列を有するポリペプチドのみを含有する多量体を意味し、「ヘテロマー」という用語は、1つまたは複数の異種ポリペプチドを含有する多量体を意味する。
本発明の多量体は、疎水、親水、イオンおよび/または共有結合の結果であり、かつ/または間接的に連結される。このように、一実施形態において、本発明の多量体、例えばホモ二量体またはホモ三量体などは、本発明のポリペプチドが溶液中で互いに接触すると形成される。別の実施形態では、本発明のヘテロ多量体、例えばヘテロ三量体またはヘテロ四量体などは、本発明のポリペプチドが溶液中で本発明のポリペプチドに対する抗体(本発明の融合タンパク質における異種ポリペプチド配列に対する抗体を含む)と接触すると形成される。他の実施形態では、本発明の多量体は、ポリペプチド配列内に位置するシステイン残基間の架橋によって形成される。これらの結合のいずれにも、配列表に示される、あるいは融合タンパク質、例えば、Fc融合タンパク質、破骨細胞形成阻害因子(osteoprotegerin)融合タンパク質、ペプチドリンカー融合タンパク質、Flag(登録商標)融合タンパク質、または本発明のロイシンジッパー融合タンパク質の異種ポリペプチド配列に示される、アミノ酸に含有される1つまたは複数のアミノ酸残基が関与する(例えば、米国特許第5,478,925号、WO98/49305、または米国特許第5,073,627号、Landschulz et al., (1988), Science. 240: 1759、WO 94/10308、Hoppe et al., (1994), FEBS Letters. 344: 191 および米国特許出願第08/446,922号参照)。多量体を生成する他の方法としては、当技術分野で公知の技術を用いて、または本発明の多量体に含まれることが望まれるポリペプチド成分を含有するリポソームを生成することによって、システインまたはビオチンをポリペプチドのC末端またはN末端に付加する方法が挙げられる(例えば、多量体化の多数の方法については、米国特許第5,478,925号を参照のこと)。
本発明の多量体は、当技術分野で公知の化学的または遺伝子工学技術を用いて生成することができる。
突然変異したポリペプチド
本発明のGENSETポリペプチドの特性を改善または変更するために、組換えDNA技術を用いて、単一または複数のアミノ酸の置換、欠失、付加を含む新規な変異タンパク質または突然変異タンパク質(ムテイン)を生成することができる。かかる修飾ポリペプチドは、例えば増大した/減少した生物活性または増大した/減少した安定性を示し得る。さらに、少なくとも特定の精製および貯蔵条件下にて、相当する天然ポリペプチドよりも、それらを高い収量で精製することが可能であり、かつ相当する天然ポリペプチドよりも、それらは優れた溶解性を示し得る。
NおよびC末端の欠失
生物学的機能を実質上損失することなく、1つまたは複数のアミノ酸をN末端またはC末端から欠失させることが可能であることは、当技術分野で公知である(例えば、Ron et al., (1993), Biol Chem. , 268 2984-2988; Dobeli, et al. 1988を参照のこと)。したがって、本発明は、アミノおよび/またはカルボキシ末端から欠失された1つまたは複数の残基を有するポリペプチドを提供する。
他の突然変異
本発明は、かなりのGENSETポリペプチド活性を示すGENSETポリペプチドの多数の変異を含む。かかる突然変異は、活性にほとんど影響を及ぼさないように、当技術分野で公知の規則に従って選択される欠失、挿入、転化、反復および置換を含む。
変化させるアミノ酸配列の耐性を研究するための主な2つのアプローチがある(Bowie et al., (1994), Science. 247: 1306-1310参照)。第1の方法は、突然変異が自然淘汰によって受け入れられるか、または拒絶される、進化のプロセスに依拠する。第2のアプローチでは、クローン化遺伝子の特定の位置でアミノ酸変化を導入するための遺伝子操作、および機能性を保持する配列を同定するための選択またはスクリーニングを用いる。この例としては、特定部位の突然変異またはアラニンスキャン突然変異誘発が挙げられる(例えば、Cunningham et al. (1989), Science 244: 1081-1085参照)。これらの研究は、タンパク質がアミノ酸置換に対して驚くほど耐性であることを明らかにした。
通常、脂肪族アミノ酸、Ala、Val、LeuおよびPhe間での互いの置き換え、ヒドロキシ残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnとGlnとの間での置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、および芳香族残基Phe、Tyr間での置き換えは、保存的置換として考えられる。このように、本発明のポリペプチドは例えば、アミノ酸残基のうちの1つまたは複数が保存または非保存アミノ酸残基(好ましくは、保存アミノ酸残基)で置換されるポリペプチドである。かかる置換アミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるものであってもよいし、またはそうでなくてもよく、かつ置換基を含むことができる。
示されるように、タンパク質の折り畳みまたは活性に著しく影響を及ぼさない、保存的アミノ酸置換などの変化が軽微なものであることが好ましい。以下のアミノ酸の群が同等の変化を表す:(1)Ala、Pro、Gly、Glu、Asp、Gln、Asn、Ser、Thr;(2)Cys、Ser、Tyr、Thr;(3)Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;(4)Lys、Arg、His;(5)Phe、Tyr、Trp、His。
さらに、本発明のGENSETポリペプチドは、修飾アミノ酸を模倣する1つまたは複数のアミノ酸置換を含むことができる。この種類の置換の例としては、リン酸化アミノ酸(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸)の負電荷に類似する負に帯電したアミノ酸で、リン酸化することができるアミノ酸(例えば、セリン、トレオニンまたはチロシン)を置換することが挙げられる。疎水基(例えば、アルギニン)により修飾することができるアミノ酸を、トリプトファンまたはフェニルアラニンなどのバルキーな疎水性側鎖を有するアミノ酸で置換することもまた包含される。したがって、本発明の特定の実施形態は、修飾することができるアミノ酸が通常位置する位置で、修飾アミノ酸を模倣する1つまたは複数のアミノ酸の置換を含むGENSETポリペプチドを包含する。さらに、修飾することができるいずれかのGENSETポリペプチドアミノ酸は、修飾−模倣アミノ酸での置換から除外されてもよい。
本発明による対象の修飾GENSETペプチド分子の特定の実施形態には、限定されないが、タンパク分解に耐性があり、その−CONH−ペプチド結合が、(CH2NH)還元結合、(NHCO)レトロインベルソ(retro inverso)結合、(CH2−O)メチレン−オキシ結合、(CH2S)チオメチレン結合、(CH2CH2)カルバ結合、(CO−CH2)ケトメチレン結合、(CHOHCH2)ヒドロキシエチレン結合、(N−N)結合、E−アルケン結合またはまたは−CH=CH−結合によって修飾または置換されるペプチドである、ペプチド分子が含まれる。
凝集が少ないなど、非常に望ましい改善された特性を有するタンパク質を生成することができる他の荷電アミノ酸または天然アミノ酸での荷電アミノ酸の置換は、特別に関心のある対象である。凝集は活性を減少させるだけではなく、凝集塊が免疫原性であり得るために、製剤を製造する場合に問題となる(例えば、Pinckard et al., (1967), Clin. Exp. Immunol 2: 331-340; Robbins et al., (1987), Diabetes. 36: 838845; および Cleland et al., (1993) Crit. Rev. Ther. Drug Carr. Syst. 10: 307-377参照)。
本発明の更なる実施形態は、1〜50のうちの少なくともいずれか1つの整数個の保存的アミノ酸置換を含有するアミノ酸配列を有する、GENSETポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。いずれかの保存的置換または置換の組み合わせもま除外され得る。
ポリペプチド断片
構造上の定義
本発明はさらに、本発明のポリペプチドの断片に関する。さらに具体的には、本発明は、6〜100の間の少なくともいずれか1つの整数個(または、その長さが1000未満である場合、ポリペプチドアミノ酸残基−1の長さ)の連続アミノ酸残基を含む、精製、単離、および組換えポリペプチドを具体化する。その断片は、本発明のポリペプチドの少なくとも6、好ましくは少なくとも8〜10、さらに好ましくは12、15、20、25、30、35、40、50、60、75、100、125、150、175,200、225、250、275、または300個の連続アミノ酸であることが好ましい。
上記のポリペプチド断片の他に、ポリペプチドのさらに好ましい亜属は、少なくともX個のアミノ酸を含み、その「X」は、整数6と、以下の配列表のポリペプチド配列を含む本発明のポリペプチドのC末端アミノ酸を表す整数との間のいずれかの整数として定義される。さらに、N末端およびC末端位置の点からさらに指定される、上述のような少なくとも6アミノ酸長さのポリペプチド断片の種類が含まれる。しかしながら、上述のように少なくとも6アミノ酸長さのすべてのポリペプチド断片が個々の種類として本発明に包含され、N末端およびC末端位置によって個々に指定される。つまり、少なくとも6隣接アミノ酸残基長さの断片が、配列表のまたは本発明の所定のいずれかのアミノ酸配列を占有することがあり得る、N末端およびC末端位置のどの組み合わせも、本発明に包含される。
配列表の偶数配列番号の配列のアミノ酸を含む好ましいポリペプチド断片、およびそれをコードするポリヌクレオチドは、1位で始まり、かつ6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699、700、701、702、703、704、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、729、730、731、732、733、734、735、736、737、738、739、740、741、742、743、744、745、746、747、748、749、750、751、752、753、754、755、756、757、758、759、760、761、762、763、764、765、766、767、768、769、770、771、772、773、774、775、776、777、778、779、780、781、782、783、784、785、および786からなる群から選択されるいずれかの位置まで連続する、アミノ酸配列からなる群から選択され、いずれか1つの断片を含むアミノ酸配列の番号付けは、配列表のいずれか1つの偶数配列番号のポリペプチド配列と一致している。
配列表の偶数配列番号の配列のアミノ酸を含むさらに好ましいポリペプチド断片、およびそれをコードするポリヌクレオチドは、そのタンパク質の末端アミノ酸(例えば、787位)で終わり、かつ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699、700、701、702、703、704、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、729、730、731、732、733、734、735、736、737、738、739、740、741、742、743、744、745、746、747、748、749、750、751、752、753、754、755、756、757、758、759、760、761、762、763、764、765、766、767、768、769、770、771、772、773、774、775、776、777、778、779、780、781、および782からなる群から選択されるいずれかの位置で始まる、アミノ酸からなる群から選択され、いずれか1つの断片を含むアミノ酸配列の番号付けは、配列表のいずれか1つの偶数配列番号のポリペプチド配列と一致する。
配列表の偶数配列番号のさらに好ましいポリペプチド断片、およびそれをコードするポリヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699、700、701、702、703、704、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、729、730、731、732、733、734、735、736、737、および738からなる群から選択されるアミノ酸位置から始まる、いずれかの50または100連続アミノ酸を含む断片からなる群から選択され、いずれか1つの断片を含むアミノ酸配列の番号付けは、配列表のいずれか1つの偶数配列番号のポリペプチド配列と一致する。
これらの特定の実施形態、および本明細書に記載の他のポリペプチドおよびポリヌクレオチド断片の実施形態は、「少なくとも」、「等しい」、「以下」、「未満」、「少なくとも_だが_を超えない」または「_から_まで」の指定のサイズまたは指定のN末端および/またはC末端位置であるように修飾される得る。本発明のいずれかの実施形態を説明するのに使用されるすべての範囲は、別段の指定がない限り包含的であることに留意のこと。
代わりに、本発明の上記の種類のポリペプチド断片は、式「a〜b」によって示される;式中、「a」はポリヌクレオチドのN末端最高アミノ酸位置に等しく、「b」はポリヌクレオチドのC末端最高アミノ酸位置に等しく;さらに「a」は、1から、本発明のポリペプチド配列のアミノ酸番号−6の間の整数に等しく、かつ「b」は、7から、本発明のポリペプチド配列のアミノ酸番号の間の整数に等しく;「a」は、「b」よりも少なくとも6小さい整数である。
本発明の上記のポリペプチド断片は、上記の説明を用いてすぐに認識することができ、したがって、不必要に明細書を長くするためだけにそれぞれ列挙しない。これらのポリヌクレオチド断片のいずれかは、本発明から具体的に除外される場合がある。さらに、GENSET生物活性を有するポリペプチドが本発明の好ましい実施形態ではあるが、不活性断片でさえ、例えばイムノアッセイ、エピトープマッピング、エピトープタギングにおいて、ワクチン、分子量マーカーとして、ポリペプチドの特定部分に対する抗体を作製するのに有用であることから、上記の断片はGENSET生物活性を有する必要はない。
機能的定義
ドメイン
本発明の好ましいポリヌクレオチド 断片は、本発明のポリペプチドのドメインを含む。かかるドメインは最終的に、限定されないが、ロイシンジッパー、ヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフ、翻訳後修飾部位、例えばグリコシル化部位、ユビキチン結合部位、αヘリックス、βシート、コードされるタンパク質の分泌を指示するシグナルペプチドをコードするシグナル配列、転写調節に関係する配列、例えばホメオボックス、酸性ストレッチ、酵素活性部位、基質結合部位、および酵素切断部位を含む、線状または構造モチーフおよびシグネチャー(signature)を含み得る。かかるドメインは、特定の生物活性、例えばDNAもしくはRNA結合、タンパク質分泌、転写調節、酵素活性、基質結合活性等を示す。
好ましい実施形態において、ドメインは、6〜100の間のいずれかの整数個の、いくつかのアミノ酸を含む。ドメインは、本明細書に開示の方法を含む、当業者に公知のいずれかの方法を用いて合成することができる。特定の生物活性を有するドメインを構成するアミノ酸を決定する方法としては、試験すべき生物活性を決定する突然変異誘発研究およびアッセイ、ならびに例えばProsite(Hofmann et al., (1999) Nucl. Acids Res. 27: 215-219; Bucher and Bairoch (1994) Proceedings 2nd International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology. Altman et al, Eds. , pp53-61, AAAIPress, Menlo Park)、Pfam(Sonnhammer, et al., (1997) Proteins. 28 (3): 405-20; Henikoff et al., (2000) Electrophoresis 21 (9): 1700-6; Bateman etal., (2000) Nucleic Acids Res. 28 (1) : 263-6)、Blocks、Print、Prodom、Sbase、Smart、Dali/FSSP、HSSP、CATH、SCOP、COGなどのデータベースで、ドメイン、モチーフ、またはシグネチャーを識別するバイオインフォマティクス的方法が挙げられる。利用可能なデータベースの説明については、Nucleic Acid Research (2000)の28巻,1号を参照のこと。
エピトープおよび抗体融合:
本発明の好ましい実施形態は、エピトープを有するポリペプチドおよびエピトープを有するポリペプチド断片に関する。これらのエピトープは、「抗原エピトープ」または「抗原エピトープ」と「免疫原性エピトープ」の両方である。「免疫原性エピトープ」は、ポリペプチドが免疫原である場合、in vivoで抗体応答を誘導するタンパク質の一部として定義される。一方、抗体が結合するポリペプチドの領域は、「抗原決定基」または「抗原エピトープ」として定義される。タンパク質の免疫原性エピトープの数は一般に、抗原エピトープの数よりも少ない(例えば、Geysen et al., (1984), PNAS 81: 3998-4002参照)。特定のエピトープは免疫原性ではないが、それにもかかわらず、抗体を免疫原性および抗原エピトープの両方にすることができることから、それは有用であることを特に留意のこと。本発明のエピトープは、線状(つまり、ポリペプチド鎖に沿って繰り返すアミノ酸の隣接配列で構成される)または非線状(「高次構造的」とも呼ばれる、つまり、ポリペプチド鎖の折り畳みの結果として近接するようになるアミノ酸で構成される)であり得る。
エピトープは、エピトープに固有な空間的コンフォメーションにおいて3個と少ないアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも6個のかかるアミノ酸、およびさらにしばしば、少なくとも8〜10個のかかるアミノ酸からなる。好ましい実施形態では、抗原エピトープは、3〜50の間のいずれかの整数個の、いくつかのアミノ酸を含む。エピトープとして機能する断片は、いずれかの従来の手段(例えば、Houghten (1985), PNAS 82: 5131-5135)、さらに米国特許第4,631,21号にも記載されている手段を参照)によって作製することが可能である。エピトープを構成するアミノ酸を決定する方法としては、X線結晶学、2次元核磁気共鳴、およびエピトープマッピング、例えばGeysen, et al. (1984);WO84/03564;およびWO84/03506に記載のペプスカン(Pepscan)法などが挙げられる。非線状エピトープは、タンパク質のフットプリンティング法(米国特許第5,691,448号)などの方法によって決定される。その他の例としては、Jameson and Wolf, (1988), Comp. Appl. Biosci. 4: 181-186のアルゴリズムが挙げられる。Jameson−Wolf抗原分析は例えば、PROTEANコンピューター・プログラムを使用して、デフォルトパラメーター(Windows(登録商標) 4.0,DNASTAR社(ウィスコンシン州マディソン,サウスパークストリート1228))を用いて行われる。標準法を用いた抗原応答についての試験によって、in vivoでエピトープもまた同定される。
少なくとも6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、50、60、75、100、125、150、175、200、225、250、275、または300アミノ酸残基の長さの、本発明のすべての断片は、線状抗原エピトープとして有用であることから本発明に含まれる。免疫原性として具体的に説明されていない本発明のポリペプチドは、それらがin vivoで抗原性であることから、非抗原性とは見なされない。本発明のエピトープを有する断片は、本発明のポリペプチドの6〜50(つまり、6から50までの間のいずれかの整数)個のアミノ酸を含むことが好ましい。また、本発明のエピトープを有する任意の数の断片は除外される。
非線状エピトープは、少なくとも1つのアミノ酸それぞれの、1つを超える非隣接ポリペプチド配列を含む。かかるエピトープは、二次、三次、または四次構造の特徴によって近接するようになる非隣接ポリペプチドから生じる。非線状エピトープを提供する好ましいポリペプチドは、負に折り畳まれたタンパク質の隣接表面によって形成され、したがって、本発明のポリペプチドの少なくとも10アミノ酸、さらに好ましくは12、15、20、25、30、35、40、50、60、75、100、125、150、175、200、225、250、275、または300アミノ酸の長さである。さらに、非線状エピトープは、負のコンフォメーションにおいてタンパク質上に正常に提示される抗原部位または隣接表面を模倣する合成ペプチドによって形成される。
免疫原性エピトープは、動物系(ウサギまたはマウスなど)に、アルブミンなどの担体タンパク質と共に提示されるか、またはそれが十分長い場合(少なくとも約25個のアミノ酸)には、担体なしで提示される。しかしながら、8〜10個と少ないアミノ酸を含む免疫原性エピトープが、最低限でも、変性ポリペプチドにおける線状エピトープに結合することができる抗体を産生するのに十分であることが示されている(例えば、ウエスタンブロット法において)。
本発明のエピトープを有するポリペプチドを使用して、当技術分野でよく知られている方法、限定されないが、例えばin vivoでの免疫化、in vitroでの免疫化、ファージディスプレイ法(例えば、上記のSutcliffe, et al.; 上記のWilson, et al.および上記のBittle, et al.参照)などに従って、抗体が誘導される。in vivo免疫化を用いる場合、動物を遊離ペプチドで免疫することができる;しかしながら、抗ペプチドの抗体価は、スカシガイヘモシアニン(KLH)または破傷風トキソイドなどの標準法を用いて、巨大分子担体にペプチドを結合することによって高められる。例えば、ペプチドまたは担体タンパク質およびフロイントアジュバント約100μgを含有するエマルションを腹腔内および/または皮内注射することによって、ウサギ、ラットおよびマウスなどの動物が、遊離もしくは担体結合ペプチドのいずれかで免疫される。例えばELISAアッセイによって固体表面に吸着された遊離ペプチドを用いて検出することができる、抗ペプチド抗体の有用な抗体価を得るために、例えば約2週間間隔に数回のブースター注射が必要とされる場合がある。免疫動物由来の血清中の抗ペプチド抗体の抗体価は、当技術分野でよく知られている方法に従って、抗ペプチド抗体の選択によって、例えば、固体担体上のペプチドへの吸着および選択された抗体の溶離によって高められる。
当業者であれば、免疫原性または抗原エピトープを含む、上述される本発明のポリペプチドを、異種ポリペプチド配列に融合することができることは理解されよう。例えば、本発明のポリペプチドは、免疫グロブリンの定常ドメイン(IgA、IgE、IgG、IgM)、またはその一部(CH1、CH2、CH3、全ドメインおよびその一部の両方を含むそのいずれかの組み合わせ)と融合することが可能であり、その結果キメラポリペプチドが生じる。これらの融合タンパク質は精製を容易にし、かつin vivoで半減期の増加を示す(例えば、EPA0,394,827;およびTraunecker et al., (1988), Nature. 331: 84-86;Fountoulakis et al., (1995) Biochem. 270: 3958-3964参照)。本発明のその他の融合タンパク質は、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリング、エクソンシャッフリング、またはコドンシャッフリングの技術によって作製することが可能である(総称して「DNAシャッフリング」と呼ばれる;例えば、米国特許第:5,605,793号;同第5,811,238号;同第5,834,252号;同第5,837,458号;およびPatten, et al. (1997), Curr Opinion Biotechnol.8: 724-733 ; Harayama (1998), Trends Biotechnol. 16 (2): 76-82; Hansson et al., (1999), J. Mol.Biol. 287: 265-276;およびLorenzo and Blasco (1998) Biotechniques. 24 (2): 308-313を参照のこと)。本発明はさらに、このセクションに示されるポリペプチド断片のいずれかの組み合わせも包含する。
抗体
定義
本発明はさらに、本発明のポリペプチドに特異的に結合する、さらに具体的には、本発明のポリペプチドのエピトープに特異的に結合する、抗体およびT細胞抗原受容体(TCR)に関する。本発明の抗体には、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む)、IgA(IgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、またはIgM、およびIgYが含まれる。「抗体」(Ab)という用語は、少なくとも1つの結合ドメインで構成されるポリペプチドまたはポリペプチドの群を意味し、結合ドメインは抗体分子の可変ドメインの折り畳みから形成されて、抗原の抗原決定基の特徴に相補的な内部表面形状および電荷分布を有する三次元結合空間が形成され、それによって抗原との免疫反応が可能となる。本明細書に使用される「抗体」という用語は、単鎖全抗体を含む全抗体、およびその抗原結合断片を包含することを意味するものである。好ましい実施形態において、抗体は本発明のヒト抗原結合抗体断片であり、限定されないが、Fab、Fab'F(ab)2およびF(ab')2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、およびVLもしくはVHドメインのいずれかを含む断片が含まれる。抗体は、鳥類および哺乳動物を含むいずれかの動物起源に由来する抗体であることが可能である。その抗体は、ヒト、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリ由来のものであることが好ましい。
単鎖抗体を含む、抗原結合抗体断片は、単独で、または以下の:ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインの全体または一部との組み合わせで、可変領域(1つまたは複数)を含み得る。可変領域(1つまたは複数)およびヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインのいずれかの組み合わせも、本発明に包含される。本発明はさらに、本発明のポリペプチドに特異的に結合するキメラ、ヒト化およびヒトモノクローナルおよびポリクローナル抗体を含む。本発明はさらに、本発明の抗体に対して抗イディオタイプの抗体を含む。
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、および三重特異性であるか、またはそれ以上の多重特異性を有することが可能である。多重特異性抗体は、本発明のポリペプチドの異なるエピトープに特異的であるか、または本発明のポリペプチドならびに異種組成物、例えば異種ポリペプチドまたは固体担体材料のどちらにも特異的である。例えば、WO93/17715;WO92/08802;WO91/00360;WO92/05793;Tutt, et al., (1991), J. Immunol. 147: 60-69;米国特許第5,573,920号、同第4,474,893号、同第5,601,819号、同第4,714,681号、同第4,925,648号;Kostelny et al., (1992), J. Immunol. 148: 1547-1553を参照のこと。
本発明の抗体は、抗体によって認識されるまたは特異的に結合される、本発明のポリペプチドのエピトープ(1つまたは複数)またはエピトープを有する部分に関して説明されるか、または指定される。その抗体は、本発明の核酸によりコードされる完全タンパク質またはその断片に特異的に結合し得る。また、本発明のいずれかのエピトープまたはポリペプチドに特異的に結合する抗体は、個々の種として除外され得る。
このように、本発明の他の実施形態は、本発明のポリペプチドのいずれかに特異的に結合することができる精製または単離抗体である。この実施形態の一態様では、その抗体は、本発明のポリペプチドの、少なくとも6連続アミノ酸、好ましくは少なくとも8〜10連続アミノ酸、さらに好ましくは少なくとも12、15、20、25、30、40、50、または100連続アミノ酸を含む、線状エピトープ含有ポリペプチドに結合することができる。この実施形態の別の態様では、その抗体は、長さで、本発明のポリペプチドの10アミノ酸、さらに好ましくは12、15、20、25、30、35、40、50、60、75、または100アミノ酸を含む非線状エピトープ含有ポリペプチドに、さらに好ましくは本発明のポリペプチドの天然コンフォメーションの隣接表面に、結合することができる。
本発明の抗体はまた、それらの交叉反応性の面から説明または指定される。本発明のポリペプチドの他のいずれかの類似体、オルソログ、またはホモログに特異的に結合しない抗体が包含される。本発明のポリペプチドと95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満の同一性(当技術分野で公知かつ本明細書の記載の方法を用いて、例えば、FASTDBおよび本明細書に示されるパラメーターを用いて計算された)を有するポリペプチドに結合しない抗体もまた、本発明に包含される。厳密なハイブリダイゼーション条件(本明細書に記載の)下にて本発明のポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに単に結合する抗体が、さらに本発明に包含される。本発明の抗体はまた、それらの結合親和性に関して説明または指定される。好ましい結合親和性としては、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-1lM、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-l3M、10-13M、5×10-14M、10-l4M、5×10-15M、および10-15M未満の解離定数またはKdを有するものが挙げられる。
本発明は、突然変異GENSETタンパク質に、または突然変異GENSETタンパク質のエピトープを含む、その断片または変異体に、特異的に結合することができる精製または単離抗体にも関する。
抗体の作製
本発明の抗体は、当技術分野で公知の適切な方法によって作製することができる。例えば、本発明のポリペプチドまたはその抗原断片は、「ポリクローナル抗体」を含有する血清の生成を誘導するために、動物に投与することができる。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により作製された抗体に限定されず、むしろ、真核生物の、原核生物のクローン、またはファージクローンを含む単一クローンから誘導される抗体を意味し、それが作製される方法を意味するものではない。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術の使用を含む、当技術分野で公知の多種多様な技術を用いて作製することができる。
ハイブリドーマ技術には、当技術分野で公知の技術が含まれる(例えば、Harlow and Lane, (1988) Antibodies A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory. pp. 53-242; Hammering (1981), Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, Elsevier, N. Y. 563-681; Kohler and Milstein, (1975) Nature 256: 495; Davis, et al., Basic Methods in Molecular Biology, ed., Elsevier Press, NY (1986), Section 21-2参照)。
簡単に言えば、GENSETタンパク質またはその一部の数マイクログラムを、数週間にわたってマウスに繰り返し接種する。次いで、そのマウスを殺し、脾臓の抗体産生細胞を単離する。ポリエチレングリコールを用いて、その脾臓細胞をマウス骨髄腫細胞と融合させ、抗体産生クローンを同定する(例えば、Engvall, (1980) Meth. Enzymol. 70: 419参照)。選択されたポジティブクローンを増殖させ、使用のために、それらのモノクローナル抗体産物を収集する。
さらに、例えばハイブリドーマにより産生された抗体から、パパイン(Fab断片の作製のため)またはペプシン(F(ab’)2断片の作製のため)などの酵素を用いて、タンパク分解切断により、FabおよびF(ab’)2断片を作製することができる。
GENSETタンパク質またはその一部における異質エピトープに対する抗体を含有するポリクローナル抗血清は、未修飾であるか、または免疫原性を高めるために修飾することができるGENSETタンパク質またはその一部で適切な非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、またはウマ)を免疫することによって作製することができる(例えば、Vaitukaitis et al., (1971) J. Clin. Endocrinol. Metab. 33 : 988-991 ; Ouchterlony et al., (1973) Chap. 19 in: Handbook of Experimental Immunology D. Wier (ed) Blackwell参照)。このタンパク質または断片は通常、適切なアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、RIBI等)の存在下で非ヒト哺乳動物に導入される。免疫された動物由来の血清は、公知の手順に従って回収され、処理され、試験される。血清が、不要なエピトープに対するポリクローナル抗体を含有する場合、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーによって、ポリクローナル抗体を精製することができる。抗原に対する抗血清の親和性が標準法を用いて決定される。
代替方法としては、当技術分野で公知の方法を用いて、組換えDNA技術の適用によって、または合成化学によって、本発明の抗体を作製することができる。ファージディスプレイ法において、例えば、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保持するファージ粒子表面上に、機能性抗体ドメインを提示させ、抗原、通常固体表面またはビーズに結合または捕捉された抗原で直接選択することによって、目的の結合特性を有するファージが、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から選択される(例えば、Brinkman et al., (1995) J. Immunol Methods, 182: 41-50 ; Ames et al., (1995), J. Immunol. Meth. , 184: 177-186.; Kettleborough et al., (1994), Eur. L Immunol. , 24: 952958; Persic et al., (1997), Gene, 1879-81; Burton et al. (1994), Adv. Immunol., 57: 191-280;PCT/GB91/01134;WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;および米国特許第5,698,426,同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047,5号、同第571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号および同第5,733,743号参照)。ファージ選択後、ファージから抗体コード領域を単離し、それを用いて、ヒト抗体を含む全抗体、または他のいずれかの目的の抗原結合断片を作製することが可能であり、いずれかの目的の宿主、例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌などにおいて発現させることができる(例えば、WO92/22324; Mullinax et al., (1992), BioTechniques. 12 (6): 864-869; and Sawai et al., (1995), AJRI 34: 26-34; and Better et al., (1988), Science. 240: 1041-1043参照)。
単鎖Fvsおよび抗体の作製に関する更なる教示は、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号; Huston etal., (1991), Meth. Enymol. 203: 46_88 ; Shu, et al., (1993), PNAS 90: 7995-7999;およびSkerra, et al., (1988),およびScience 240: 1038-1040に提供されている。ヒトにおける抗体のin vivoでの使用およびin vitro検出アッセイを含む、いくつかの用途については、キメラ、混合(shuffled)、ヒト化、またはヒト抗体を使用することが好ましい(例えば、Morrison, (1985); Oi et al., (1986), BioTechniques 4: 214; Gillies et al., (1989), J. Immunol Methods. 125: 191-202;米国特許第5,807,715号;EP 0 239 400;WO91/09967;米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号、EP 0 592 106;EP 0 519 596;Padlan (1991), Molec. Immunol. 28 (4/5): 489-498; Studnicka et al., (1994), Protein Engineering. 7 (6): 805-814; Roguska et al., (1994), PNAS 91: 969-973、米国特許第5,565,332号、米国特許第4,444,887号、同第4,716,111号、同第5,545,806号および同第5,814,318号;WO98/46645;WO98/50433;WO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;およびWO91/10741参照)。
いずれかの異種分子、例えば本発明のポリペプチド、その他のポリペプチド、検出アッセイに有用な標識、または薬物または毒素などのエフェクター分子に組換え融合された、または化学結合(共有結合および非共有結合のどちらも含む)された抗体が、さらに本発明に包含される(例えば、WO92/08495;WO91/14438;WO89/12624;米国特許第5,314,995号;およびEP 0 396 387参照)。融合された抗体を使用して、特定の細胞表面受容体に特異的な抗体に本発明のポリペプチドを融合または結合させることによって、in vitroまたはin vivoで特定の細胞型に対して本発明のポリペプチドを標的にすることも可能であり、かつ当技術分野で公知の方法を用いて、in vitroイムノアッセイおよび精製法において使用することもできる(例えば、上記のHarbor, et al. ;WO93/21232;EP 0 439 095; Naramura et al., (1994), Immunol. Lett. 39: 91-99;米国特許第5,474,981号; Gillies et al., (1992), PNAS 89: 14281432; Fell et al., (1991), J. Immunol. 146: 2446-2452参照)。
本発明はさらに、可変領域以外の抗体ドメインに融合または結合された本発明のポリペプチドを含む組成物を包含する。例えば、本発明のポリペプチドは、抗体Fc領域、またはその一部、および/またはヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、またはCH3ドメインまたはその一部に、ならびにIgAまたはIgMの部分に融合または結合させることができる。抗体部分に本発明のポリペプチドを融合または結合させる方法は当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,336,603号、米国特許第5,622,929号、米国特許第5,359,046号、米国特許第5,349,053号、米国特許第5,447,851号、米国特許第5,112,946号;EP 0 307 434、EP 0 367 166;WO96/04388、WO91/06570; Ashkenazi et al., (1991), PNAS 88: 10535-10539; Zheng, et al. (1995), J. Immunol. 154: 5590-5600; and Vil, et al. (1992), PNAS 89: 11337-11341を参照のこと。
野生型であろうと遺伝子導入動物であろうと、抗体結合が望まれるものと異なる種類のGENSETポリペプチドを発現する非ヒト動物または哺乳動物、およびGENSETポリペプチドを発現しない動物(つまり、本明細書に記載のGENSETノックアウト動物)は、かかる動物がGENSETタンパク質の露出領域のすべてまたは大部分を外来抗原として認識し、したがってGENSETエピトープのより広いアレイを有する抗体を産生するであろうことから、抗体の作製に特に有用である。さらに、わずか10〜30個のアミノ酸を有する小さなポリペプチドが、GENSETタンパク質のいずれか1つへの特異的な結合を得るのに有用である。さらに、抗原配列に類似するGENSETの種を産生する、動物の体液性免疫系は、動物の天然GENSET種と抗原配列との間の差異を選択的に認識し、抗原配列におけるこれらの固有の部位に対する抗体を産生するだろう。かかる技術は、GENSETタンパク質のいずれか1つに特異的に結合する抗体を得るのに、特に有用であるだろう。 本発明の好ましい実施形態は、抗体または抗体断片をGENSETポリペプチドに特異的に結合させる方法である。この方法は、抗体結合条件下にて、GENSETポリペプチド特異的抗体またはその断片をGENSETポリペプチドと接触させる段階を含む。さらに、GENSETポリペプチドのエピトープ、ドメインまたは断片に抗体または抗体断片を特異的に結合させる方法が包含される。この方法を用いて、例えば、本明細書に記載のようにGENSETポリペプチドの活性を検出、精製、または修飾することができる。
本発明の抗体を使用して、当業者に公知の方法を用いて試験試料または生体試料中のタンパク質のレベルをアッセイすることができる。タンパク質を検出するのに有用な、抗体に基づく方法には、酵素免疫測定法(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)などのイムノアッセイが含まれる。適切な抗体アッセイの標識は、当技術分野で公知であり、グルコース、オキシターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、およびルカリホスファターゼなどの酵素標識;ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)、およびテクネチウム(99Tc)などのラジオアイソトープ;ルミノール、イソルミノール、セロマチック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステル、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンなどの発光標識;蛍光標識、例えばフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド、およびフルオレスカミンが挙げられる。
ポリヌクレオチドの使用
試薬としてのポリヌクレオチドの使用
本発明のポリヌクレオチドは、単離手順、診断アッセイ、および法医学的手順において試薬として使用することができる。例えば、本発明のGENSETポリヌクレオチドからの配列を検出可能に標識し、プローブとして用いて、それらとハイブリダイズすることができる他の配列を単離することが可能である。さらに、本発明のGENSETポリヌクレオチドからの配列を使用して、単離、診断、または法医学的手順に用いられるPCRプライマーを設計することができる。
相当するゲノムDNA配列を見出すために
本発明のGENSET cDNAを使用して、相当するゲノムDNA上の本発明のcDNAの近くに、好ましくは上流に位置する配列をクローニングすることも可能である。プロモーター配列、エンハンサー配列、および転写または翻訳レベルに影響を及ぼす他の配列を含む、かかる配列は、遺伝子発現を調節することができる。
ゲノムDNA由来の上流配列をクローニングするためのcDNAまたはその断片の使用
本発明のポリヌクレオチド由来の配列を使用して、染色体歩行技術を用いて(例えば、クロンテック社製のGenome Walker kitを用いて)、相当する遺伝子のプロモーターを単離することができる。上流のゲノム配列をクローニングし、シーケンスすると、公知の転写開始部位、転写因子結合部位、またはプロモーター配列を含有するデータベースと、本発明のポリヌクレオチドの上流の配列を比較することによって、上流配列内の予定プロモーターおよび転写開始部位が同定される。
さらに、プロモーターレポーターベクターを用いて、例えばレポーター遺伝子(例えば、分泌、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、または緑色蛍光タンパク質)を、GENSET遺伝子の最初のエクソンの上流に位置するGENSETプロモーター領域の調節活性ポリヌクレオチド断片または変異体の制御下に置くことによって、上流配列におけるプロモーターが同定される。多数の適切なプロモーターレポーターベクターが当技術分野で公知である。本発明のポリヌクレオチドの上流に位置するプロモーターおよび他の調節配列を用いて、所望の空間的、時間的、発生的、または定量的手法において挿入遺伝子の発現を検出することができる発現ベクターを設計することができる。
類似配列を見い出すために
本発明のポリヌクレオチドを使用して、このセクションに記述されるハイブリダイゼーションまたは増幅に基づく技術を含む当業者によく知られているいずれかの方法を用いて、それに類似の核酸を単離および/または精製することができる。これらの方法を使用して、GENSET cDNAがそれに由来するmRNA、GENSET cDNAに相当するmRNA、またはGENSET cDNAもしくはその断片に相同的な核酸、例えば変異体、相同分子種またはオルソログをコードするゲノムDNAが得られる。
ハイブリダイゼーションに基づく方法
所定のプローブ配列とハイブリダイズする、cDNAライブラリーにおいてcDNAクローンを同定する技術が、Sambrook et al., (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual. (2ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York),およびHames and Higgins (1985) Nucleic Acid Hybridization : A Practical Approach (Hames and Higgins Ed., IRL Press, Oxford)に開示されている。同じ技術を用いて、ゲノムDNAを単離することができる。
GENSET cDNAまたはその断片からの少なくとも10連続ヌクレオチドを含むプローブは、ラジオアイソトープまたは蛍光分子などの検出可能な標識で標準法を用いて標識される。ライブラリー中のcDNAまたはゲノムDNAは、ニトロセルロースまたはナイロンフィルターに移され、変性される。非特異的部位をブロックした後、それにハイブリダイズすることができる配列を含有するcDNAまたはゲノムDNAにプローブを結合させるのに十分な時間、そのフィルターを標識プローブと共にインキュベートする。
検出可能なプローブとハイブリダイズするcDNAまたはゲノムDNAを同定するために用いられるハイブリダイゼーション条件の厳密性を変えることによって、以下に記載のように、プローブと異なるレベルの同一性を有するcDNAまたはゲノムDNAを同定かつ単離することができる。
厳密な条件
「厳密なハイブリダイゼーション条件」は、プローブとの高レベルの同一性を有する核酸のみが前記プローブとハイブリダイズすることができる条件として定義される。これらの条件は、以下のように計算することができる:長さ14〜70ヌクレオチドのプローブについては、融解温度(Tm)は、式:Tm=81.5+16.6(log(Na+))+0.41(G+C分率)−(600/N)(式中、Nはプローブの長さである)を用いて計算される。
ホルムアミドを含有する溶液中でハイブリダイゼーションが行われる場合には、融解温度は、式:Tm=81.5+16.6(log(Na+))+0.41(G+C分率)−(0.63%ホルムアミド)−(600/N)(式中、Nはプローブの長さである)を用いて計算される。
ハイブリダイゼーションは、6×SSC、5×デンハルト試薬(Denhardt's reagent)、0.5%SDS、変性断片化サケ精子DNA100μg、50%ホルムアミド中で行われる(例えば、Sambrook et al., 1986参照)。
ハイブリダイゼーションは標準法に従って行われる。長さ200ヌクレオチドを超えるプローブについては、ハイブリダイゼーションは、Tmより低い15〜25℃で行われる。オリゴヌクレオチドプローブなど短いプローブでは、ハイブリダイゼーションはTmより低い15〜25℃で行われる。好ましくは、6×SSC中でのハイブリダイゼーションに関しては、ハイブリダイゼーションは約68℃で行われる。好ましくは、50%ホルムアミド含有溶液中でのハイブリダイゼーションに関しては、ハイブリダイゼーションは約42℃で行われる。
ハイブリダイゼーションに続いて、室温にて2×SSC、0.1%SDS中でフィルターを15分間洗浄する。次いで、フィルターを室温にて0.1×SSC、0.5%SDS中で30分〜1時間洗浄する。その後、その溶液を0.1×SSC、0.5%SDS中にて、ハイブリダイゼーション温度で洗浄する。最終洗浄は、室温にて0.1×SSC中で行われる。
プローブとハイブリダイズした核酸は、オートラジオグラフィまたは他の従来の技術によって同定される。
低程度および中程度の条件
ハイブリダイゼーションおよびシグナル検出の厳密性の変更は主に、ホルムアミド濃度(ホルムアミドのパーセンテージを低くすると、厳密性が低くなる);塩濃度または温度の操作によって達成される。上記の手順をこのように変更して、プローブ配列との同一性レベルが低い核酸を同定することができる。例えば、ハイブリダイゼーション温度は、約1Mのナトリウム濃度を有するハイブリダイゼーションバッファーにおいて68℃〜42℃の5分単位で下げられる。ハイブリダイゼーションに続いて、ハイブリダイゼーション温度にて2×SSC、0.5%SDSでフィルターを洗浄する。これらの条件は、「中程度」条件は50℃を超え、「低程度」条件は50℃未満であると見なされる。代替方法としては、ハイブリダイゼーションは、ホルムアミドを含有する6×SSCなどのバッファー中、温度42℃で行うことができる。この場合には、ハイブリダイゼーションバッファー中のホルムアミドの濃度を50%〜0%の5%単位で低減し、プローブとの同一性レベルが低いクローンを同定することができる。ハイブリダイゼーションに続いて、50℃にて、6×SSC、0.5%SDSでフィルターが洗浄される。これらの条件は、「中程度」条件はホルムアミドが25%を超え、「低程度」条件はホルムアミドが25%未満であると見なされる。プローブとハイブリダイズしたcDNAまたはゲノムDNAは、オートラジオグラフィまたは他の従来の方法によって同定される。
上記の条件の変化は、ハイブリダイゼーション実験においてバックグラウンドを抑制するのに使用される、代わりのブロッキング試薬(例えば、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA等)の包含または置き換えによって達成されることに留意のこと。
PCRに基づく方法
上述の方法の他に、以下に記載のように、本発明のGENSET cDNAまたはその断片を用いて、相同的cDNAを得るために、他のプロトコールを利用することができる。
ポリA選択手順または当業者に公知の他の技術を利用したmRNA作製手順を用いて、対象の組織、細胞、または生物体由来のmRNAを得ることによって、cDNAが作製される。mRNAのポリAテールとハイブリダイズすることができる第1プライマー(例えば、オリゴ(T)プライマー)を、mRNAとハイブリダイズさせ、逆転写反応を行って、第1cDNA鎖を作製する(例えば、 Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. 1997 and Sambrook, et al., 1989参照)。通常、かかるオリゴ(T)プライマーは、制限部位含有配列など、DNAのその後の操作を容易にする、ポリ(dT)ストレッチ上流の更なる配列を含む。
次いで、第1cDNA鎖を、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも10連続ヌクレオチドを含有する第2プライマーとハイブリダイズさせる。使用される第2プライマーは、翻訳開始部位の上流に位置する配列を含有する場合が多い。第2プライマーを伸長させて、第1cDNA鎖に相補的な第2cDNA鎖を作製する。代替方法としては、得るべきcDNAの両端からのプライマーを用いて、上述のようにRT-PCRが行われる。例えば、 Current Protocol in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. 1997 and Sambrook, et al., 1989参照のこと。
他のプロトコール
代替方法としては、相同的cDNAを得るために、他の手順を用いてもよい。一アプローチにおいて、cDNAをmRNAから作製し、標準法を用いて二本鎖ファージミド中にクローニングする。次いで、二本鎖ファージミド中のcDNAライブラリーを一本鎖にし、公知のGENSET cDNA、GENSET cDNAもしくはその断片の断片の配列を含むビオチン化オリゴヌクレオチドを、その一本鎖ファージミドとハイブリダイズさせる。ビオチン化オリゴヌクレオチドとファージミドとのハイブリッドを単離し、相当するファージミドをビーズから放出し、ビオチン化オリゴヌクレオチドを設計するのに使用されるGENSET cDNAまたは断片に特異的なプライマーを用いて、二本鎖DNAに転換する。代替方法としては、Gene Trapper kit(Gibco BRL社製)などのプロトコールを使用することができる。
染色体マーカーとして
当技術分野で公知のいずれかの方法または技術、例えば放射線ハイブリッド(RH)マッピング(例えば、Benham et al. (1989) Genomics 4: 509-517 and Cox et al., (1990) Science 250: 245-250; and Schuler et al., (1996) Science 274: 540-546参照)、PCRに基づくマッピング、および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)マッピングなどを用いて、以下に記載のように、GENSET ポリヌクレオチドをそれらの染色体位置にマッピングすることが可能である。
PCR技術を用いた、ヒト染色体へのcDNAのマッピング
GENSET cDNAおよびゲノムDNAは、PCRに基づく方法論を用いてヒト染色体に割り当てることができる。かかるアプローチにおいて、オリゴヌクレオチドプライマー対をcDNA配列から設計し、PCRを用いて、ヒト染色体の定義されたセットを含有する一連の体細胞雑種細胞系をスクリーニングする。GENSET cDNAまたはゲノムDNAに相当するヒト遺伝子を含有する染色体との体細胞雑種のみが増幅された断片を生成し、増幅断片を生じるすべての細胞雑種に存在するただ1つのヒト染色体が、そのGENSET cDNAまたはゲノムDNAを含有する染色体である(例えば、Ledbetter et al., (1990) Genomics 6: 475-481参照)。
蛍光in situハイブリダイゼーションを用いた、染色体へのcDNAのマッピング
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によって、GENSET cDNAまたはゲノムDNAを所定の染色体上の特定の位置にマッピングすることができる。蛍光in situハイブリダイゼーション技術に使用される染色体は、細胞培養、組織、または全血を含む様々な源から得ることができる(例えば、Cherif et al., (1990) PNAS 87: 6639-6643参照)。
染色体マップを構築または拡大するためのcDNAの使用
GENSET cDNAまたはゲノムDNAが特定の染色体に割り当てられたら、それらを利用して、それらが位置する染色体の高分解能マップを構築するか、または試料中の染色体を同定することができる。
染色体マッピングは、上述のように、特定の染色体に所定の固有の配列を割り当てることを含む。固有の配列が所定の染色体にマッピングされたら、それは、同じ染色体上に位置する他の固有の配列に関連して順序付けられる(例えば、Nagaraja et al., (1997) Genome Res. 1997 Mar; 7 (3): 210-22参照)。
遺伝病または薬物応答と関連する遺伝子の同定
他の実施形態では、特定のいずれかのENSET cDNAまたはゲノムDNAを試験用プローブとして使用し、そのGENSET cDNAまたはゲノムDNAを特定の表現型特性と関連付けることができる。
一実施形態において、標準技術を用いて、GENSET cDNAまたはゲノムDNAをヒト染色体上の特定の位置にマッピングし、その位置をMendelian Inheritance in Manで検索する(ビクトル・マキュージック(V.McKusick)のMendelian Inheritance in Man(OMIM));Johns Hopkins University Welch Medical Libraryを通してオンラインで利用可能)。この検索から、GENSET cDNAまたはゲノムDNAを含有するヒト染色体の領域が、数種の既知の遺伝子および遺伝子がまだ同定されていない数種の疾患または表現型を含有する非常に遺伝子豊富な領域(gene rich region)であることが明らかとなる。したがって、このGENSET cDNAまたはゲノムDNAに相当する遺伝子は、これらの遺伝病それぞれの直接の候補となる。
次いで、例えば、GENSET cDNAまたはゲノムDNAからのPCRプライマーを用いて、または疾患を持たない個体に対して、患者におけるGENSET cDNAまたはゲノムDNAの発現、サイズ、または配列の差異についてシークエンスすることによって、これらの疾患または表現型を有する患者由来のゲノムDNA、mRNAまたはcDNAがスクリーニングされる。検出された差異によって、疾患または表現型におけるGENSET遺伝子の役割が示される。
組換えベクターにおけるポリヌクレオチドの使用
本発明は、本発明の単離ポリヌクレオチドを含む組換えベクター、および上記のベクターなどの本発明のポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体、ならびにかかるベクターおよび宿主細胞を作製し、かつ組換え技術によってGENSETポリペプチドを作製するために、それらを使用する方法ににも関する。
組換えベクター
「ベクター」という用語は、二本鎖または一本鎖であり、かつ細胞宿主中でまたは単細胞もしくは多細胞宿主生物中に導入されることが求められる対象の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、環状もしくは線状DNAまたはRNA分子を指すために本明細書で使用される。
好ましい一実施形態において、本発明は、本発明の調節ポリヌクレオチドまたはコード核酸、またはその両方を含む発現ベクターを提供する。発現ベクターを用いて、精製のための、ならびに遺伝子導入動物を作製するための、また遺伝子治療(in vivoおよびex vivoでの方法を含む)のための、GENSETポリペプチドを発現させることができる。そのコードされるタンパク質は、宿主生物または細胞において一過性に発現されるか、または宿主生物または細胞において安定的に発現される。コードされるタンパク質は、本明細書に記述する活性のいずれかを有する。そのコードされるタンパク質は、宿主生物に欠けているタンパク質であるか、または一方、コードされるタンパク質は、宿主生物中のタンパク質の既存のレベルを高める場合がある。
本発明のベクターに見出される因子の一部は、以下のセクションでさらに詳細に記述される。
本発明の発現ベクターの一般的な特徴
本発明の通常の発現ベクターは、遺伝因子または遺伝子発現において調節的役割を有する因子、例えばプロモーター、およびmRNAに転写され、最終的にポリペプチドに翻訳される構造またはコード配列であって、上述の調節因子に作動可能に連結される構造またはコード配列、および適切な転写開始および終結配列、のアセンブリーを含む転写単位を含有する。その他の特徴としては、エンハンサー、宿主細胞による翻訳タンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列、複製の起点、宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー、リボゾーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終結配列、および5’−フランキング非転写配列が挙げられる。
調節因子
本発明に従って発現ベクターにおいて使用される適切なプロモーター領域は、異種遺伝子を発現させなければならない細胞宿主を考慮に入れて選択される。
適切なプロモーターは、それが発現を制御する核酸に対して異種であってもよいし、またはその代わりに、発現させるコード配列を含有する天然ポリヌクレオチドに内因性であることが可能である。プロモーター領域は、例えば、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクター、さらに好ましくはpKK232-8およびpCM7ベクターを用いて、いずれかの目的の遺伝子から選択することができる。好ましい細菌プロモーターとしては、LacI、LacZ、T3またはT7バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター、gpt、λPR、PLおよびtrpプロモーター(EP 0036776)、ポリヘドリンプロモーター、またはバキュロウイルス由来のP10タンパク質プロモーター(Kit Novagen)(Smith et al., (1983) Mol. Cell. Biol. 3: 2156-2165; O'Reilly et al. (1992), 「Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual」, W. H. Freeman and Co. , New York)、λPRプロモーター、またはtrcプロモータも挙げられる。
真核生物プロモーターとしては、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウイルス由来のTR、およびマウスメタロチオネイン−Lが挙げられる。簡便なベクターおよびプロモーターの選択は、当業者のレベル内に十分ある。
選択マーカー
選択マーカーは、同定可能な変化を細胞に与え、その結果、発現コンストラクトを含有する細胞を容易に同定することができる。形質転換宿主細胞を選択するための選択マーカー遺伝子は、真核細胞培養に対してジヒドロ葉酸還元酵素またはオマイシン耐性、S.cerevisiaeに対してTRP1または大腸菌においてテトラサイクリン、リファンピシンまたはアンピシリン耐性、ミコバクテリアに対してレバンスクラーゼ(levan saccharase)であることが好ましく、この後者のマーカーは天然選択マーカーである。
好ましいベクター
本発明の組換えベクターは、限定されないが、YAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)、ファージ、ファージミド、コスミド、プラスミド、および線状DNAを含むいずれかの種類のベクターである。
細菌ベクター
限定されないが、代表的なものとして、細菌の用途に有用な発現ベクターは、選択マーカーおよびpBR322(ATCC37017)の遺伝因子を含む市販のプラスミドから誘導される細菌複製起点を含み得る。かかる市販のベクターとしては、例えばpKK223-3(Pharmacia社(スウェーデン、ウプサラ))、pGEMI(Promega Biotec社(米国ウィスコンシン州マディソン))、pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen社)、pbs、pD10、phagescript、psiX174、pbluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46A(Stratagene社);ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia社);pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTI、pSG(Stratagene社);pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia社);pQE-30(QIAexpress社)が挙げられる。
バクテリオファージベクター
PIバクテリオファージベクターは、範囲約80〜約100kbの大きなインサートを含有し得る。PIバクテリオファージベクターの作製は、当技術分野でよく知られている(例えば、Sternberg (1992) Trends Genet. 8: 1-16, Sternberg (1994) Mamm. Genome. 5: 397-404, Linton et al., (1993) J. Clin. Invest. 92: 3029-3037, McCormick et al., (1994) Genet. Anal. Tech. Appl. 11: 158-164参照)
ウイルスベクター
いずれかのウイルスベクターを用いて、本明細書に記載の方法を実施することができる。特定の一実施形態において、そのベクターは、アデノウイルス、例えばヒトアデノウイルス2型または5型に由来する(例えば , Feldman et al. (1996) Medecine/Sciences, 12: 47-55, Ohno et al., (1994) Science 265: 781-784、仏国特許出願番号FR−93.05954参照)。
アデノ随伴ウイルスのベクターもまた、本明細書に記載の方法に対して好ましい。
本発明のレトロウイルスのin vitroまたはin vivo遺伝子送達媒体の作製または構築に特に好ましいレトロウイルスには、ミンク細胞増殖巣誘導ウイルス(Mink-Cell Focus Inducing Virus)、マウス肉腫ウイルス、細網内皮症ウイルスおよびラウス肉腫ウイルスからなる群から選択されるレトロウイルスが含まれる。特に好ましいマウス白血病ウイルスとしては、4070Aおよび1504Aウイルス、Abelson(ATCC番号VR-999)、Friend(ATCC番号VR-245)、Gross(ATCC番号VR-590)、Rauscher(ATCC番号VR-998)およびモロニーマウス白血病ウイルス(ATCC番号VR-190;国際公開番号:WO94/24298)が挙げられる。特に好ましいラウス肉腫ウイルスとしては、ブライアン(Bryan)高力価ウイルス(ATCC番号VR-334、VR-657、VR-726、VR-659およびVR-728)が挙げられる。他の好ましいレトロウイルスベクターは、Roth et al., (1996) Nature Medicine, 2 (9): 985-991、WO93/25234、WO94/06920, Roux et al. (1989), PNAS 86: 9079-9083, Julan et al. (1992), J. Gen. Virol. 73: 3251-3255, and Neda et al. (1991), J. Biol. Chem. 266: 14143-14146に記載されているベクターである。
BACベクター
大腸菌においてゲノムDNAの大きな断片(100〜300kb)を安定に維持するために、細菌人工染色体(BAC)クローニング系(Shizuya et al. (1992), PNAS 89: 8794-8797)が開発された。好ましいBACベクターは、Kim U-J. et al. (1996), Genomics 34: 213-218によって記載されているpBeIoBAC11ベクターを含む。BACベクター、およびその作製は、当技術分野でよく知られており、いずれかの適切な
バキュロウイルス
他の特定の適切な宿主ベクター系は、Spodoptera frugiperda由来のSF9細胞系(ATCC番号CRL 1711)をトランスフェクトするために使用される、pVL1392/1393バキュロウイルス導入ベクター(Pharmingen社)である。バキュロウイルス発現系において本発明のGENSETポリペプチドを発現するのに適切な他のベクターとしては、Chai et al. (1993), Biotechnol. Appl. Biochem. 18: 259-273; Vlasak, et al. (1983), Eur. J. Biochem. 135: 123-126, and Lenhard et al., (1996) Gene. 169: 187-190に記載されているベクターが挙げられる。
組換えベクターの送達
本発明のポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドコンストラクトの発現を生じさせるために、そのコンストラクトは細胞中に送達されなければならない。この送達は、細胞系を形質転換する実験手順の場合と同様にin vitroで、または特定の疾患状態の治療の場合と同様にin vivoまたはex vivoで達成される。 発現コンストラクトが感染性ウイルス粒子中に封入されるあるメカニズムは、ウイルス感染である(米国特許第5,968,821号参照)。その発現コンストラクト、好ましくは本明細書に記述される組換えウイルスベクターは、次いで発現コンストラクトを含む感染性ウイルス粒子を産生する、パッケージング細胞に形質導入するために使用される。次いで、その粒子を使用して、真核細胞に形質導入する(Miller, A. D. (1990) Blood 76: 271;米国特許第6,228,844号参照)。
GENSETポリヌクレオチドを含む複製欠損レトロウイルスがビリオン中にパッケージングされ、次いでそれを使用して、標準技術によってヘルパーウイルスを用いて標的細胞を感染させることができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. M. et al. (eds.) Greene Publishing Associates, (1989)参照)。多数のレトロウイルスのいずれかを使用することが可能であり、当技術分野でよく知られている(例えば、Eglitis, et al. (1985) Science 230: 1395-1398; Danos and Mulligan (1988) PNAS 85: 6460-6464; Wilson, et al. (1988) PNAS 85: 3014-3018; Armentano, et al. (1990) PNAS 87: 6141-6145; Huber, et al. (1991) PNAS 88: 8039-8043; Ferry, et al. (1991) PNAS 88: 8377-8381; Chowdhury, et al. (1991) Science 254: 1802-1805; van Beusechem, et al. (1992) PNAS 89: 7640-7644; Kay, et al. (1992) Human Gene Therapy 3: 641-647; Dai, et al. (1992) PNAS 89: 10892-10895; Hwu, et al. (1993) J. Immunol. 150: 4104-4115参照)。
本発明において有用な他のウイルスの遺伝子送達系では、アデノウイルス由来ベクターが用いられる。アデノウイルスのゲノムは、それが対象の遺伝子産物をコードするように操作することができるが、正常な溶菌性ウイルス生活環において複製するその能力面に関して不活化される(例えば、Berkner, et al. (1988) BioTechniques 6: 616; Rosenfeld, et al. (1991) Science 252: 431-434; and Rosenfeld, et al. (1992) Cell 68: 143-155参照)。いずれかの標準アデノウイルスベクターを本発明で使用することができる(例えば、Jones, et al. (1979) Cell 16: 683; Graham, et al. in Methods in Molecular Biology, E. J. Murray, Ed. (Humana, Clifton, N. J., 1991) vol. 7. pp. 109-127参照)。
ポリヌクレオチドの送達に有用なさらに他のウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。アデノ随伴ウイルスは、効率的な複製および増殖的生活環のためのヘルパーウイルスとして、その他のウイルス、例えばアデノウイルスまたはヘルペスウイルスを必要とする天然の欠損ウイルスである(Muzyczka, et al., Curr. Top. Micro. Immunol. (1992) 158: 97-129参照)。いずれかの標準AAVベクターを本発明で使用することができる(例えば、Flotte et al., (1992) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 7: 349-356; Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 7: 349-356;Samulski et al. (1989) J. Virol. 63: 3822-3828; and McLaughlin et al. (1989) J. Virol. 62: 19631973, Tratschin, et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 5: 3251-3260, Hermonat, et al. (1984) PNAS 81: 6466-6470; Tratschin, et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 4: 2072-2081; Wondisford, et al. (1988) Mol. Endocrinol. 2: 32-39; Tratschin, et al. (1984) J. Virol. 51: 611-619; and Flotte, et al. (1993) J.Biol. Chem. 268: 3781-3790参照)。
遺伝子治療における用途を有する他のウイルスベクター系は、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、および数種のRNAウイルスに由来するものである。特に、ヘルペスウイルスベクターは、中枢神経系および眼球組織の細胞における挿入遺伝子発現の存続に、固有の戦略を提供し得る(Pepose, et al. (1994) Invest Ophthalmol Vis Sci 35 : 2662-2666)。
細胞、例えば哺乳動物細胞中にポリヌクレオチドを導入するための数種類の非ウイルス的方法もまた本発明によって企図され、その方法としては、限定されないが、リン酸カルシウム沈殿法が挙げられる(Graham et al., (1973) Virol. 52: 456457; Chen et al. (1987) Mol. Cell. Biol. 7: 2745-2752); DEAE-dextran (Gopal (1985) Mol. Cell. Biol. , 5: 1188-1190); electroporation (Tur-Kaspa et al. (1986) Mol. Cell. Biol. 6: 716-718; Potter et al., (1984) PNAS 81 (22): 7161-7165); direct microinjection (Harland et al., (1985) J. Cell. Biol. 101 : 1094-1095); DNA-loaded liposomes (Nicolau et al., (1982) Biochim. Biophys. Acta. 721: 185190; Fraley et al., (1979) PNAS 76: 3348-3352); and receptor-mediated transfection. (Wu and Wu (1987), J. Biol. Chem. 262: 4429-4432; and Wu and Wu (1988), Biochemistry 27: 887-892)。
in vivoまたはin vitroで脊椎動物細胞の内部にタンパク質またはペプチドを送達する方法の特定の実施形態は、生理学的に許容される担体と、対象のポリペプチドを作動可能にコードする裸のポリヌクレオチドとを含む製剤(preparation)を、細胞を含有する組織の間質空間中に導入し、それによって、その裸のポリヌクレオチドが細胞の内部に取り込まれる段階を含む(例えば、WO90/11092、WO95/11307、Tascon et al. (1996), Nature Medicine 2 (8): 888-892, and Huygen et al., (1996) Nature Medicine 2 (8): 893-898参照)。本発明の裸のポリヌクレオチドは、微粒子銃(遺伝子銃)、例えばそれらが細胞膜を突き抜け、それらを殺すことなく細胞に入ることができる高速度に加速されるDNA被覆微粒子を用いて、細胞中に導入することもできる (Klein et al., (1987) Nature 327: 70-73)。
本発明において使用されるリポソーム製剤としては、カチオン性(正に帯電した)、アニオン性(負に帯電した)および中性製剤が挙げられる。しかしながら、カチオン性リポソームとポリアニオン性核酸との間に密な電荷の複合体が形成されるため、カチオン性リポソームが特に好ましい。カチオン性リポソームは、機能的な形で、プラスミドDNA(Felgner, et al., PNAS (1987) 84: 7413-7416); mRNA (Malone, et al., PNAS (1989) 86: 6077-6081);および精製転写因子(Debs et al., J. Biol. Chem. (1990) 265: 10189-10192)の細胞内送達を仲介することが示されている。非常に多くのカチオン性リポソームのうちのいずれかを使用することができる。N [1−2,3−ジオレイルオキシ)ぷろぴる−N,N,N−トリエチルアンモニウム(DOTMA) リポソームが特に有用であり、GIBCO BRL社(ニューヨーク州グランドアイランド)から商標名Lipofectinで市販されている。他の市販のリポソームとしては、transfectace (DDAB/DOPE)およびDOTAP/DOPE (Boehringer社)が挙げられる。
同様に、アニオン性および中性リポソームは、AvantiPolar Lipids社(アラバマ州バーミンガム)などから容易に入手することができるし、あるいは、容易に入手できる物質を用いて用意に作製することができる。かかる物質としては、特にホスファチジル、コリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)が挙げられる。これらの物質を、適切な割合でDOTMAおよびDOTAP出発物質と混合することもできる。リポソームの様々な組み合わせと同様に、これらの物質を用いてリポソームを製造する方法は、当技術分野でよく知られている。
そのリポソームは、多重小胞(MLV)、小さな単層小胞(SUV)、または大きな単層小胞 (LUV)を含むことが可能であり、SUVが好ましい。様々なリポソーム核酸複合体が、当技術分野でよく知られている方法を用いて作製される(Straubinger, et al., Methods of Immunology (1983), 101: 512-527; 米国特許第5,965,421号)。一般に、DNAとリポソームとの比は、約10:1〜約1:10(約5:1〜約1:5または約3:1〜約1:3が好ましい)であるだろう。さらに、受容体−受容体リガンド対のメンバーなどの標的化部位を小胞の脂質エンベロープ中に埋め込むことによって、リポソームを特定の細胞型に標的化することが可能である(例えば、米国特許第6177433号、米国特許第6110490号、および国際公開番号W09704748参照)。
目的の宿主生物に注入されるベクターの量は、注入部位に応じて異なる。指示用量としては、動物の体内、好ましくは哺乳動物の体内、例えばマウス体内にベクター0.1〜100μgが注入されるだろう。
分泌ベクター
ベクターに挿入される遺伝子によってコードされるタンパク質の分泌を指示することができる分泌ベクターを作製するために、本発明のGENSET cDNAまたはゲノムDNの一部を使用することもできる。目的のタンパク質をそれから精製または濃縮しなければならないバックグラウンドのタンパク質の数を減らすことによって、かかる分泌ベクターは、それに挿入される遺伝子によりコードされるタンパク質の精製または濃縮を容易にすることができる。例示的な分泌ベクターを以下に示す。
本発明の分泌ベクターは、宿主細胞、組織、または対象の生物体における遺伝子発現を指示することができるプロモーターと、コード配列、およびプロモーターから転写されたmRNAがシグナルペプチドの翻訳を指示するように、作動可能にプロモーターに連結される本発明のポリヌクレオチドからのシグナル配列と、を含む。宿主細胞、組織、または生物体は、GENSET cDNAまたはゲノムDNAにおけるシグナル配列によってコードされるシグナルペプチドを認識する、いずれかの細胞、組織、または生物体であることが可能である。適切な宿主としては、哺乳動物細胞、組織または生物体、鳥類の細胞、組織、または生物体、または酵母が挙げられる。そのシグナル配列は、遺伝子治療のために設計されたベクター中に挿入することもできる。
分泌ベクターはDNAまたはRNAであり、宿主の染色体に組み込み、宿主中の染色体外のレプリコンとして安定に保持することが可能であり、人工染色体であるか、または宿主に一過的に存在することができる。その分泌ベクターは、各宿主細胞における多重コピーにおいて保持されることが好ましい。
細胞宿主
本発明のその他の目的は、本明細書に記載のポリヌクレオチドのうちの1つ、特にGENSETポリペプチド−コードポリヌクレオチド調節配列またはGENSETポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドで形質転換されている、またはポリヌクレオチドをトランスフェクトされている宿主細胞を含む。上記のベクターのうちの1つなどの組換えベクターで形質転換された(原核細胞)、それをトランスフェクトされた(真核細胞)、またはそれを形質導入された宿主細胞もまた包含される。本発明の発現ベクターのレシピエントとして使用される好ましい宿主細胞としては、原核生物の宿主細胞、例えば大腸菌株(I.E.DH5-α株)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、およびシュードモナス属、ストレプトマイセス属およびブドウ球菌属などの種からの株、ならびに真核生物の宿主細胞、例えばヒーラ細胞、Cv 1細胞、COS細胞、Sf-9細胞、C127細胞、3T3、CHO、ヒト腎細胞293、およびBHK細胞が挙げられる。
本明細書に記載のベクターコンストラクトを含有する宿主細胞を包含することに加えて、本発明は、内因性遺伝物質(例えば、コード配列)を欠失または置換するために、かつ/または、本発明のポリヌクレオチドと作動可能に関連付けられ、かつ内因性ポリヌクレオチドを活性化、変更および/または増幅する遺伝物質を含ませるために操作された、脊椎動物起源、特に哺乳動物起源の一次、二次、および不死化宿主細胞も包含する(例えば、米国特許第5,641,670号;WO96/29411;WO94/12650; Koller, et al., (1989); および Zijlstra, et al. (1989);米国特許第6,054,288号;同第6,048,729号;同第6,048,724号;同第6,048,524号;同第5,994,127号;同第5,968,502号;同第5,965,125号;同第5,869,239号;同第5,817,789号;同第5,783,385号;同第5,733,761号;同第5,641,670号;同第5,580,734号;およびW096/29411、WO94/12650;およびKoller, et al., (1994)参照)
哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞におけるGENSET遺伝子の発現を不完全にすることが可能であり、または一方、動物細胞のゲノム中の内因性GENSETポリペプチド−コード遺伝子を本発明によるGENSETポリペプチド−コードポリヌクレオチドで置換することによって改変することが可能である。これらの遺伝的改変は、先に記載の特定のポリヌクレオチドコンストラクトを用いた相同的組換えによって行われる。
マウス接合体などの哺乳類の接合体を細胞宿主として使用してもよい。例えば、マウス接合体に、対象の精製DNA分子を微量注入する。さらに、本発明のポリヌクレオチドのいずれか1つが、胚幹(ES)細胞系、好ましくはマウスES細胞系に導入される。ES細胞、およびそれらの単離および維持方法は当技術分野でよく知られており、特に、Abbondanzo et al., (1993), Meth. Enzymol., Academic Press, New York, pp 803-823, Robertson, (1987), Embryo-derived stem cell lines; E.J. Robertson Ed. Teratocarcinomas and embrionic stem cell lines: a practical approach. IRL Press, Oxford, pp. 71,およびPease and William, (1990), Exp. Cell. Res. 190: 209-211に記述されている。
遺伝子導入動物
「遺伝子導入動物」または「宿主動物」という用語は、本発明による核酸のうちの1つを含むように遺伝学的かつ人工的に操作されたそれらのゲノムを有する動物を指すために、本明細書において使用される。影響を受ける細胞は、体細胞、胚細胞、またはその両方であることが可能である。好ましい動物は非ヒトの哺乳動物であり、ハツカネズミ属(例えば、マウス)、クマネズミ属(例えば、ラット)およびアナウサギ属(例えば、ウサギ)から選択される属に属する動物が含まれる。一実施形態において、本発明は、本発明の組換えベクターまたはノックアウトベクターとの相同的組換えによって破壊されたGENSET遺伝子を含む、非ヒトの宿主哺乳動物を包含する。このように、本発明は、本発明による核酸、組換え発現ベクター、または組換え宿主細胞を含有する遺伝子導入動物にも関する。本発明の更なる目的は、本明細書に記載の遺伝子導入動物から得られる組換え宿主細胞を含む。
かかる遺伝子導入動物は、所定のGENSET遺伝子の発現の増加または減少に関する多様な病理を研究するための優れた実験モデルである。遺伝子導入動物は、GENSET遺伝子の調節ポリヌクレオチドの制御下で対象の目的ポリペプチドを発現させるのに使用することも可能であり、対象のこのタンパク質の合成で高い収量が得られ、または遺伝子の組織特異的な発現が生じる。
一実施形態では、本発明の遺伝子導入動物は、胚細胞系またはES幹細胞系中に本発明の組換えポリヌクレオチドを挿入し(例えば、Thomas, et al. (1987) Cell 51: 503-512; Mansour et al., (1988) Nature 336: 348-352参照)、ポジティブ細胞を単離し、クローニングし、かつその次にメスの宿主に挿入し、臨月まで育てられる胚盤胞に注入することによって作製される。遺伝子導入動物、および特異的遺伝子導入マウスの作製に関する更なる詳細については、米国特許第4,873,191号;同第5,464,764号;同第5,789,215号, Bradley (1987; In : E. J. Robertson (Ed.), Teratocarcinomas and embryonic stem cells: A practical approach. IRL Press, Oxford, pp. 113, Wood, et al. (1993), PNAS, 90: 4582-4585, Nagy et al., (1993), PNAS 90: 8424-8428を参照のこと。
他の実施形態において、遺伝子導入動物は、受精卵母細胞にポリヌクレオチドを微量注入するすることによって作製される。着床前の段階に対して受精卵母細胞を培養する方法は、例えばGordon, et al. ((1984) Methods in Enzymology, 101, 414); Hogan, et al. ((1986) in Manipulating the mouse embryo, A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y (マウス胚について)) ; Hammer, et al. ((1985) Nature, 315,680 (ウサギおよびブタの胚について)) ; Gandolfi, et al. ((1987) J. Reprod. Fert. 81,23-28) ; Rexroad, et al. ((1988) J. Anim. Sci. 66,947-953) (ヒツジの胚について)) ;およびEyestone, et al. ((1989) J. Reprod. Fert. 85,715-720) ; Camous et al. ((1984) J. Reprod. Fert. 72, 779-785); およびHeyman, et al. ((1987) Theriogenology 27,5968 (ウシの胚について))に記述されている。次いで、標準法によって着床前胚を適切なメスに導入し、導入遺伝子が導入される際の発育段階に応じて、遺伝子導入またはキメラ動物を誕生させることが可能となる。
本発明の好ましい実施形態において、それらの乳中に組換えGENSETポリペプチドを分泌する遺伝子導入哺乳動物が作製される。乳腺中での発現は、GENSETポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを乳腺特異的なプロモーター(例えば、カゼインまたはラクトグロブリン遺伝子からの)に、任意に他の調節因子に作動可能に連結することによって達成されることが好ましい。プロモーターおよび他の調節配列、ベクター、および他の関連する教示は、例えばClark (1998) J Mammary Gland Biol Neoplasia 3: 337-50 ; Jost, et al. (1999) Nat. Biotechnol 17: 160-4; 米国特許第5,994,616号;同第6,140,552号;同第6,013,857号; Sohn, et al. (1999) DNA Cell Biol. 18: 845-52; Kim, et al. (1999) J. Biochem. (Japan) 126: 320-5; Soulier, et al. (1999) Euro. J. Biochem. 260: 533-9; Zhang, et al. (1997) Chin. J. Biotech. 13: 271-6; Rijnkels, et al. (1998) Transgen. Res. 7: 5-14; Korhonen, et al. (1997) Euro. J. Biochem. 245: 482-9; Uusi Oukari, et al. (1997) Transgen. Res. 6: 75-84; Hitchin, et al. (1996) Prot. Expr. Purif. 7: 247-52; Platenburg, et al. (1994) Transgen. Res. 3: 99-108; Heng-Cherl, et al. (1993) Animal Biotech. 4: 89107;および Christa, et al. (2000) Euro. J. Biochem. 267: 1665-71によって記述されている。
その他の実施形態では、本発明のポリペプチドは、そのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをin vivoで乳腺の体細胞中に、例えば乳腺分泌上皮細胞中に導入することによって、乳中に生成することができる。例えば、プラスミドDNAは、例えば、DEAE−デキストランと結合して(例えば、Hens, et al. (2000) Biochim. Biophys. Acta 1523: 161-171参照)、コンストラクトの受容体仲介エンドサイトーシスを導くことができるリガンドと結合して(例えば、Sobolev, et al. (1998) 273: 7928-33参照)、またはレトロウイルスベクターなどのウイルスベクター、例えばテナガザル白血病ウイルス中で(例えば、 Archer, et al. (1994) PNAS 91: 6840-684参照)、乳頭管を通して注入することができる。これらの実施形態のいずれかにおいて、ポリヌクレオチドは、上述のように乳腺特異的なプロモーターに作動可能に連結するか、または一方、CMVまたはMoMLV LTRなどの強く発現するいずれかのプロモーターに作動可能に連結することができる。
かかる実施形態で使用されるポリヌクレオチドは、完全長GENSETタンパク質またはGENSET断片をコードし得る。通常、コードされるポリペプチドは、タンパク質の乳中への分泌を確実にするためにシグナル配列を含む。
本発明のポリペプチドの使用
配列番号:2のタンパク質(内部指定クローン243525 116−119−1−0−G6−F)
クローン243525−116−119−1−0−G6−FのcDNA(配列番号:1)は、アミノ酸配列:MPSGEFARICRDLSHIGDAVVISCAKDGVKFSASGELGNGNIKLSQTSNVDKEEEAVTIEMNEPVQLTFALRYLNFFTKATPLSSTVTLSMSADVPLWEYKIADMGHLKYYLAPKIEDEEGSを含む、配列番号:2のタンパク質PCNAltをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:2のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン243525_116-119-1-0-G6-F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。本明細書全体にわたり記載されている配列番号:1のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン243525_116-119-1-0-G6-F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:1、配列番号:2、およびクローン243525_116-119-1-0-G6-Fの組成物に対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド 断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:1のcDNAは、PCNAItと呼ばれる配列番号:2の123アミノ酸のタンパク質をコードする、ヒト増殖細胞核抗原 (PCNA)のスプライシングバリアントである。配列番号:2のタンパク質は、PCNAのC末端ドメインを含む。
哺乳類のPCNAも、細胞周期依存性抗原としてそれが最初に発見されたため、そのように呼ばれる(Miyachi et al, 1978)。PCNAは、異なると思われるいくつかの生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たすが、DNA代謝においては共通の役割を有する。PCNAItは、DNA複製機構の高度に保存された必須成分である。PCNAltの細胞内分布は、細胞周期を通して変化し、細胞周期のS期においてDNA複製部位に局在化する。PCNAItは、DNA複製の必須経路部分である、DNAポリメラーゼδによるリーディング鎖DNA合成に必要とされる核タンパク質である。DNA複製におけるその必須の役割と一致する場合、PCNAltの発現は、静止および老化細胞中では非常に低いが、血清または様々な成長因子による刺激後に増加する。さらに、PCNAltおよびポリメラーゼδはまた、損傷DNAの修復においても必須の役割を果たす。PCNAltレベルは、in vivoでDNA損傷に応じて上昇し、タンパク質は損傷後のDNA修復部位に再局在化する。ヌクレオチド除去修復におけるPCNAltの直接的な役割が実証されている。このように、PCNAltのこれら2つの役割の協調は、遺伝的完全性の維持に必須である。さらに、PCNAItは、サイクリンおよびサイクリン依存性キナーゼなど、チェックポイント制御および細胞周期の調節に関与する様々な細胞のタンパク質と相互作用し得る。
一実施形態において、本発明のタンパク質またはその一部を用いて、生体試料中の細胞増殖の量をin vitroで定量化する。PCNAItはこのように、組織切片などの組織サンプル中または細胞培養物中での細胞増殖を定量化するためのアッセイおよび診断用キットで使用される。この方法は、PCNAIt ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに選択的に結合することができる標識化合物と生体試料を接触させる段階を含む。例えば、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、そのPCNAlt結合断片、または核酸プローブを使用することができる。この実施形態で使用される抗体は、PCNAItの非線状エピトープに対して作られることが好ましい。この実施形態で使用される抗体は、PCNAItポリペプチドに特異的に結合し、PCNAポリペプチドには特異的に結合しないことが好ましい。公知の免疫組織学的または免疫蛍光技術を用いて、直接的または間接的に検出を行うことができる。本発明によるキットに含まれる試薬は、一般に知られている分子、限定されないが、アルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼなどの酵素およびFITC、ローダミン、およびテキサスレッド(Texas-Red)などの蛍光染料で直接に標識することができる。しかしながら、標識化は、二次試薬でその後に検出される、ビオチンまたはジゴキシゲニンなどの分子で標識した一次抗体を使用することによって間接的に行うこともできる。
その他の実施形態において、本発明は、in vivoまたはin vitroにて、有効に細胞の増殖をブロックする、または細胞の成長を抑制する方法を提供する。本発明を用いて、抑制されていない細胞増殖を停止し、できる限り多くの腫瘍細胞を除去することができることが好ましい。それを用いて、Gadd45およびp21の制御と無関係の細胞増殖を抑制することがさらに好ましい。その方法は、PCNAlt対して向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞中に投与することによって行われるだろう。かかる方法は、PCNAlt対して向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチドコンストラクトを細胞に導入する段階を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドを標的細胞に送達する、ある戦略は、カチオン性リポソームなどのリポソーム中に治療学的生理活性分子を封入または取り込むことを含む。これらのリポソームは、in vivoでヌクレオチド分解に対するシールドを提供することが知られており、体の特定の領域に標的化することができ、そのポイントで、それらは内容物をゆっくりと放出する。一方、アンチセンスオリゴヌクレオチドに作動可能に連結されるプラスミドDNAを含む、ポリヌクレオチドコンストラクトを使用することができる。そのヌクレオチド配列は、当業者に公知の適切なバッファーまたは担体溶液中にてin vivoで投与される。
PCNAItポリペプチドの発現を抑制、または著しく低減するいずれかの化合物を用いて、試料の1つまたは複数の細胞内の複製を抑制することもできる。かかる化合物は、PCNAltの発現を低減する試験物質をスクリーニングすることによって同定することができる。このスクリーニング方法は、試験物質を細胞と接触させ、試験化合物に暴露後の細胞におけるPCNAltの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する段階を含む。さらに、PCNAltポリペプチドの活性を抑制または著しく低減するいずれかの化合物を用いて、試料の1つまたは複数の細胞内の複製を抑制することもできる。かかる化合物は、PCNAlt活性を低減する試験化合物をスクリーニングすることによって同定することができ、このスクリーニングは、試験物質を細胞と接触させ、試験化合物に暴露した後の細胞におけるPCNAlt活性を、非暴露対照細胞と比較する段階を含む。例えば、抑制化合物は、PCNAltと、細胞の進行に関与するそれらの細胞標的との間の相互作用を乱す分子に相当し得る。
代替方法としては、他の実施形態において、本発明は、細胞におけるDNA複製を有効に刺激する方法を提供する。細胞においてPCNAItのレベルまたは活性を増加し、DNA複製を刺激し、それによって細胞増殖を誘導することができる。PCNAItを使用して、Gadd45およびp21の制御と無関係の細胞増殖を高めることが好ましい。試料中の1つまたは複数の細胞のDNA複製を特異的に刺激するのに十分な量で、PCNAltポリヌクレオチドまたはポリペプチドを細胞中に導入することによって、PCNAItレベルが高められる。好ましくは、かかる方法はin vitroで行われ、培養中の細胞の増殖を増加することができる。例えば、それを用いて、一部のin vitro実験に必要とされる血清飢餓条件下で細胞増殖を維持することができる。一方、増大したレベルのPCNAltを用いて、Gadd45またはp21の制御に特異的に依存している細胞増殖も低減される。どのような場合でも、PCNAltのレベルは、多数の方法のいずれかにおいて細胞中で高めることができる。例えば、微量注入によって、またはリポソームまたはミセル仲介輸送によって、精製PCNAltタンパク質を細胞に導入することができる。かかるリポソームまたはミセルのマイクロカプセルは任意に、抗体または受容体リガンドなどの細胞型特異的標的と組み合わせることができる。代替方法としては、トランスフェクト、電気穿孔法、またはウイルス形質導入などの当技術分野で一般的な方法によって、PCNAltポリヌクレオチドを細胞に導入してもよい。上記のベクターもまた、PCNAltポリヌクレオチドを細胞に導入するために使用することができる。
本発明は、動物の1種または複数種の組織中に存在するタンパク質の発現または活性を調節することによって作製される動物モデルも提供する。PCNAltの発現は、従来の発現系を用いて特定の細胞型において選択的に活性化または不活化できることが好ましい。これらの動物は、PCNAltの不活化を標的化するいずれかの誘導方法で作製することができる。本明細書に列挙する癌を含む過剰の細胞増殖に特異的に関連する疾患の様々な病態生理学的側面の治療に潜在的に有用な候補戦略として、PCNAlt不活化の有効性を試験するin vivoアッセイ方法を意味することから、かかる動物は多くの目的に有用である。かかるモデルは、併用治療の評価、つまり対象の1つまたは他の化合物の他にPCNAltの不活化の評価にも非常に有用である。試験すべき悪性条件は、当技術分野でよく知られているいずれかの方法、化学薬品、遺伝子導入による様々な発癌遺伝子の発現、遺伝毒性因子(紫外線、γ線照射)等によって誘導することができる。
その他の実施形態では、本発明は、抑制されていない細胞増殖に関連する、特に様々な癌における疾患または障害を診断するために用いられる。異常なPCNAlt発現または局在化は有意な予後指標であり、好ましくは、様々な癌の臨床過程に予後因子として使用される。さらに好ましくは、p53の不活化に関連する腫瘍のケースでそれを測定することができる。かかる一実施形態において、本発明は、ある形態の化学療法に対する有効性または応答性を推定するのに適した指標もまた提供することができる。その検出方法は、試料切片上で直接行うことが好ましい。試料物質は、例えば生検材料、組織ホモジネート、細針吸引液または腫瘍切除として存在するか、またはフローサイトメトリーによって行うことができる。その方法は、疾患または病状を有する疑いのある、または疾患または病状を発生する危険性のある個体から採取した組織試料を、PCNAltポリペプチドまたは核酸に特異的に結合することができる検出可能に標識された化合物と接触させる段階を含む。例えば、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはそのPCNAlt結合断片または核酸プローブを使用してもよい。好ましくは、かかる実施形態で使用される抗体は、PCNAltの非線状エピトープに対して作られる。好ましくは、その抗体は、PCNAltポリペプチドに特異的に結合し、PCNAポリペプチドには特異的に結合しない。公知の免疫組織学的および免疫蛍光技術を用いて、直接的または間接的に検出を行うことができる。本発明によるキットに含まれる試薬は、一般に知られている分子、限定されないが例えば、アルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼなどの酵素、およびFITC、ローダミン、テキサスレッドなどの蛍光染料などで直接、標識することができる。しかしながら、二次試薬でその後に検出される、ビオチンまたはジゴキシゲニン等の分子で標識した二次抗体を使用することによって間接的に、標識化を行うこともできる。PCNAltの免疫反応性は、好ましくは少なくとも1つの他のマーカーを用いてではあるが、新形成を示すものとして見なすことができる。検出される第2マーカー指標は、形質転換細胞のマーカー、新生細胞に過剰発現するタンパク質、または細胞中に通常存在しない形で発現するタンパク質を含む群から選択される。例えば、その手順は、α−アクチン、ブロモデオキシウリジン、ケラチン、IV型コラーゲンおよびビメンチンと共にPCNAltを二重免疫染色するために適応させることができる。さらに、第2マーカーに相当するタンパク質は、組織特異的マーカーであることが好ましい。したがって、キットは、PCNAltに対して作られる抗体および上記のマーカーの1つまたは複数に対して作られる抗体を含み得る。個体の病状は継続的にモニターすることができ、病理試料で測定されるこの特定のタンパク質の定量化された量を、正常な個体の生体試料中でまたは同じ個体からの以前の試料で定量化された量と比較することができる。上記のすべての指標の決定は、同時に、続けて、または互いの後に行うことができる。
他の一実施形態において、本発明は、過剰量のPCNAltを有する患者を診断し、かかる病状におけるPCNAlt発現をモニターするのに有用である。好ましくは、本発明は、全身性エリテマトーデス疾患および悪性リンパ腫などの疾患を診断かつモニターする方法を提供する。その方法は、疾患または病状を有する疑いのある、または疾患または病状を発生する危険性のある個体から採取した組織試料を、PCNAltポリペプチドまたは核酸に特異的に結合することができる検出可能に標識された化合物と接触させる段階を含む。例えば、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはそのPCNAlt結合断片または核酸プローブを使用してもよい。好ましくは、かかる実施形態で使用される抗体は、PCNAltの非線状エピトープに対して作られる。好ましくは、その抗体は、PCNAltポリペプチドに特異的に結合し、PCNAポリペプチドにはそうではない。したがって、PCNAltの量は、病理試料
中の対象においてモニターかつ定量化し、正常な個体の生体試料において定量化された量と比較することができる。
本発明の更なる実施形態は、過剰細胞増殖に関連する、好ましくは悪性症状を有する疾患および病状を治療または予防するのに有用な、新規な方法および組成物を提供することである。かかる方法は、疾患または病状を有する哺乳動物に、治療有効量のアンチセンスPCNAltオリゴヌクレオチドを投与することを含み、「有効量」とは、細胞増殖を有意に減少させることができるアンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度を意味する。本発明の組成物は、生理食塩水溶液または患者への投与に適した他の生理的バッファーなどの薬学的に許容される担体中にて個体に投与することが好ましい。いずれかの特定の病状に対して哺乳動物に投与されるであろう本発明の組成物の特定の量は、患者の臨床症状、および体重、年齢、投与経路などの他の因子によって異なるだろう。かかる組成物は、適切な経路によって投与することができる。治療のために、カチオン性リポソームなどのリポソーム中に、その組成物を組み込んで、標的細胞に治療的生理活性分子を送達することもできる。これらの組成物は、PCNAltに対して作られるアンチセンスオリゴヌクレオチド、および任意に対象の1種または複数種の他の化合物を含有し得る。この同時投与は、同時に投与することによる、または別々に投与もしくは逐次投与することによるものである。これらの更なる成分のすべては、天然源から得られるか、または組換え遺伝子操作技術および/または化学修飾によって生成することができる。
配列番号:4のタンパク質(内部指定クローン643144 181-17-2-0-A12-F)
クローン643144−181−17−2−0−A12−FのcDNA(配列番号:3)は、アミノ酸配列:MQDEDGYITLNIKTRKPALVSVGSASSSWWRVMALILLILCVGMVVGLVALGIWSVMQRNYLQDENENRTGTLQQLAKRFCQYWKQSELKGTFKGHKCSPCDTNWRYYGDSCYGFFRHNLTWEESKQYCTDMNATLLKIDNRNIVEYIKARTHLIRWVGLSRQKSNEVWKWEDGSVISENMFEFLEDGKGNMNCAYFHNGKMHPTFCENKHYLMCERKAGMTKVDQLPを含む、配列番号4のLectirをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:4のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン643144_181-17-2-0-A12-F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:3のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン643144_181-17-2-0-A12-F中にヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:4、配列番号:3、およびクローン643144_181-17-2-0-A12-Fの組成物に対して向けられている。
Lectirは、C型レクチン様受容体2の多型変異体である(GenBankアクセッション番号AAF36777)。Lectirは、アンカーシグナル、膜貫通ドメイン(VMALILLILCVGMVVGLVALGIW)、レクチンC型ドメイン(QYCTDMNATLLKIDNRNIVEYIKARTHLIRWVGLSRQKSNEVWKWEDGSVISENMFEFLEDGKGNMNCAYFHNGKMHPTFCENKHYLMCE)および細胞外結合ドメイン(RHNLTWEESKQYCTDMNATL)を有する。Lectirは、酸化LDL受容体(LOX-1)と相同性である。Lectirは、単球、樹状細胞および顆粒球などの骨髄性細胞において発現する。
Lectirは、抗原捕捉およびアポトーシス小体の食細胞活動に関与する。老化およびアポトーシス細胞の食細胞活動は、死にかけの細胞の有害な内容物および壊死組織片から正常細胞を保護するための必須プロセスである。アポトーシスは、選択的に切断およびリン酸化される細胞内自己抗原のクラスター形成によって、およびホスファチジルセリンなどのアニオン性リン脂質の暴露によって達成される。修飾リポタンパク質(例えば、酸化リポタンパク質)は、アポトーシスシグナル伝達で重大な役割を担う。レクチンおよびC型レクチン様受容体は、アポトーシスを受ける細胞および食細胞のどちらによっても発現する。Lectirは、リン脂質に結合し、アポトーシス小体を細くし、それらを細胞外空間から骨髄性細胞の特殊プロセシングコンパートメント(specialized processing compartment)に方向付ける、食細胞の受容体である。
本発明の実施形態は、Lectirポリペプチドに対して、またはLectirポリペプチド断片に対して作られた抗体を含有する組成物に関する。好ましくは、その抗体は、Lectirポリペプチドに特異的に結合し、C型レクチン様受容体−2ポリペプチドには特異的に結合しない。本発明の好ましい更なる実施形態は、LeclirポリペプチドをLeclir特異的抗体またはそのLeclir結合断片と結合させる方法である。この方法は、結合を可能にする条件下にて、LeclirポリペプチドをLeclir結合抗体またはそのLeclir結合断片と接触させる段階を含む。この方法は、Leclirの検出および精製、ならびにLeclirを発現する細胞の標的化に適用することができる。これらの態様は、本明細書で詳細に説明する。
本発明の好ましい態様は、Leclirポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、Leclirの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。好ましくは、Leclirの発現を指示することができるポリヌクレオチドは、Leclir遺伝子の5'調節領域に位置する。さらに好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、Leclirコード領域の500塩基対以内に位置する。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。
本発明の実施形態は、Lectirポリペプチを精製する方法を含む。この方法は、i)Lectirポリペプチドを発現することができる細胞を得る段階;ii)前記ポリペプチドを生成するのに適切な条件下にて前記細胞を成長させる段階;iii)前記ポリペプチドを精製する段階;を含む。この方法の一例は、i)哺乳動物の宿主細胞に、本発明のポリヌクレオチを含有する組換え発現ベクターをトランスフェクトする段階;ii)生成されたタンパク質を精製する段階;を含む。そのタンパク質のLeclir精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、Leclir結合抗体またはその抗原結合断片をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーを形成する。その抗体は上述の抗体であることが好ましい。
本発明の実施形態は、蓄積するアポトーシス細胞の食細胞活動を高めるために、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを使用する方法に関する。例えば、Lectirポリペプチドまたはその一部、そのタンパク質をコードするポリヌクレオチド、またはLectirの発現または活性を増大する化合物を含有する、いずれかの組成物および方法を使用することができる。
好ましい実施形態では、Lectirポリペプチドが、アポトーシス細胞の食細胞活動を高めるための方法において使用される。この方法は、Lectirポリペプチドを細胞に導入する段階を含む。好ましい細胞は、樹状細胞およびマクロファージなどの食細胞である。Lectirポリペプチドは、Lectirポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドコンストラクトを細胞に導入することによって導入される。この方法は、培養すべき細胞の試料からアポトーシス細胞を除去することに向けられる。さらに、この方法は、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、乾癬性関節炎、喘息、気管支炎、サルコイドーシス、および肺線維症などの細胞の蓄積から生じる疾患の重症度を低減するために適用することができる。この方法は、アポトーシス細胞の細胞の蓄積を低減するために、例えばシスプラチンおよびカルボプラチンなどのアポトーシス誘導薬物で患者を治療する場合にも適用することができる。特に、アポトーシス誘導薬物は、腫瘍増殖を処置するために広く使用されている。
他の実施形態では、本発明の方法は、アポトーシス細胞の蓄積に関連する疾患を患う患者に、本発明のポリヌクレオチドのうちの1つを含む組換え発現ベクターを投与することに関する。好ましい発現ベクターとしては、ウイルスベクター、特にアデノウイルスおよびレンチウイルスベクターが挙げられる。
さらに他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドのうちの1つを含むベクターでの細胞の遺伝子修飾は、遺伝子治療分野でよく知られている1つまたは複数の技術を用いて達成される。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Mulligan (Mulligan, Science, 260: 926-32 (1993))に記載の方法のうちの1つを使用することができる。
さらに他の実施形態において、本発明の組成物は、Lectirの発現を増加する物質を含む。さらに、本発明の方法は、Lectirの発現を増加する試験物質をスクリーニングする方法に関する。これらの方法は、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のLectir発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。好ましくは、その試験物質が、他の細胞型においてではなく、単球、樹状細胞および/または顆粒球におけるLectirの発現を修飾する。
本発明の他の実施形態は、Lectir食細胞活性を高める物質を含有する組成物に向けられている。さらに、本発明の方法は、Lectir発現を増加する試験物質をスクリーニングする方法に関する。これらの方法は、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるLectir活性を、非暴露対照細胞における活性と比較する段階;を含む。好ましくは、試験物質は、単球、樹状細胞および/または顆粒球におけるLectir活性を修飾するが、他の細胞型ではそうではない。限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Simpson et al. (J Immunol Methods 29: 221-6 (1979))によって記述されている方法を含む、いくつかの方法が、食細胞活性を定量化するのに利用可能である。かかる方法は、食細胞活動を高める本発明の組成物のin vitro有効性および方法を検証するのに使用することもできる。
好ましい実施形態では、LectirポリペプチドまたはLectir発現もしくはLectir活性を高める試験物質を、薬学の従来の方法に従って処理し、患者に投与するための医薬品を製造することができる。このように、Lectirまたはその一部またはLectirの発現を高める物質を含む薬剤組成物は、固形(例えば、経口投与用の顆粒剤、吸入用の散剤)または液状(例えば、経口投与または注入用の液剤)で製造される。アポトーシス細胞の蓄積に関連する疾患を有する患者を治療するための本発明の組成物の有効用量は、関連する技術に従って決定することができる。
本発明の他の実施形態は、骨髄性細胞を精製するために、Lectirポリペプチドに対して作られる抗体を使用する方法である、好ましい抗体は上述の抗体である。骨髄性細胞のためのかかる方法は、i)検出可能なシグナルを提供するために使用できる分子でLectir特異的抗体を標識する段階;ii)選別装置(例えば、標識抗Lectir抗体を含有する、蛍光活性化細胞選別装置(fluorescence-activated cell sorter)または磁気活性化細胞選別装置)を通して体液を流す段階;を含む。異物の存在のために、単球、顆粒球、および巨核球モニターを含む骨髄性細胞は、新生細胞に対する保護を提供し、異物を除去し、血小板を産生する。高度に精製された骨髄性細胞集団は、様々なin vitro実験およびin vivo指標に必要である。例えば、骨髄性細胞は、i)いずれかの分類の骨髄性細胞に欠乏している宿主の造血系の強化;ii)骨髄性細胞機能不全に関連する疾患の検出;での使用が見出されている。
配列番号:6のタンパク質(内部指定クローン212950.cREC 116−075−2−0−Hl−F)
クローン212950.cREC_116−075−2−0−H1−FのcDNA(配列番号:5)は、アミノ酸配列:
MVQLHQDTDPQIPKGQPCTLNSSEGGARPAVPHTLFSSALDRWLHNDSFIMAVGEPLVHIRVTLLLLWFGMFLSISGHSQARPSQYFTSPEVVIPLKVISRGRGAKAPGWLSYSLRFGGQRYIVHMRVNKLLFAAHLPVFTYTEQHALLQDQPFIQDDCYYHGYVEGVPESLVALSTCSGGFLGMLQINDLVYEIKPISVSATFEHLVYKIDSDDTQFPPMRCGLTEEKIAHQMELQLSYNFT LKQSSFVGWWTHQRFVELVWVDNIRYLFSQSNATTVQHEVFNVVNIVDSFYHPLEVDVILTGIDIWTASNPLPTSGDLDNVLEDFSIWKNYNLNNRLQHDVAHLFIKDTQGMKLGVAYVKGICQNPFNTGVDVFEDNRLWFAITLGHELGHNLGMQHDTQWCVCELQWCIMHAYRKVTTKFSNCSYAQYWDSTISSGLCIQPPPYPGNIFRLKYCGNLVVEEGEECDCGTIRQCAKDPCCLLNCTLHPGAACAFGICCKDCKFLPSGTLCRQQVGECDLPEWCNGTSHQCPDDVYVQDGISCNVNAFCYEKTCNNHDIQCKEIFGQDARSASQSCYQEINTQGNRFGHCGIVGTTYVKCWTPDIMCGRVQCENVGVIPNLEHSTVQQFHLNDTTCWGTDYHLGMAIPDIGEVKDGTVCGPEKICIRKKCASMVHLSQACQPKTCNMRGICNNKQHCHCNHEWAPPYCKDKGYGGSADSGPPPKNNMEGLNVMGKLRYLSLLCLLPLVAFLLFCLHVLFKKRTKSKEDEEGを含む、配列番号:6のvIADAM20をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:6のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン212950.cREC_116−075−2−0−H1−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:5のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン212950.cREC_116−075−2−0−H1−F中にヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:6、配列番号:5、およびクローン212950.cREC_116−075−2−0−H1−Fの組成物に関する。
以下に記述する方法において使用される好ましいvlADAM20ポリペプチドとしては、アミノ酸配列:MVQLHQDTDPQIPKGQPCTLNSSEGGARPAVPHTLFSSALDRWLHNDSFIを含むポリペプチドが挙げられる。
精子表面タンパク質をタンパク分解処理する生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
vIADAM20は、ADAMファミリーのメンバーであり、かつこのファミリーに特有のすべての構造因子を示す精子タンパク質である。特に、vIADAM20は、活性Zn2+-金属プロテアーゼ(HELGHNLGMQHD)の触媒部位を示し、1つのディスインテグリンコンセンサス配列(EEGEECDCG)および1つの膜貫通ドメインである。タンパク質のADAMファミリーは、ディスインテグリおよび金属プロテアーゼドメインを含有する、このファミリーのメンバーは、潜在的な接着ドメインおよびプロテアーゼドメインの両方を処理する固有の構造を有する細胞表面タンパク質である。すべてのADAMは、同じドメイン機構を有するが、ADAMのメンバーがすべて、同じ機能を示すわけではない。ADAMファミリーのメンバーにより示される機能は、選択的スプライシング、差次的遺伝子発現、二量体化、およびタンパク分解処理を含むプロセスによって調節される。ADAMは、精子形成、受精、筋芽細胞融合および神経細胞の増殖などの多様な生物学的プロセスに関与する(Wolfsberg et al, Dev Biol. 180: 389-401 (1996))。
vIADAM20は、精子形成に関与する、新規な膜結合型精子表面プロテアーゼである。vIADAM20は、発達中の精子表面を再構築するのに、つまり他の精子表面タンパク質をタンパク分解処理するのに関与する。
本発明の実施形態は、配列番号:6のvIADAM20ポリペプチド配列を含む組成物に向けられている。
本発明の更なる実施形態は、精子表面タンパク質をタンパク分解処理する生物活性を有するvIADAM20ポリペプチド断片を含む組成物に向けられている。
本発明の更なる実施形態は、vIADAM20ポリペプチドをコードする配列番号:5のポリヌクレオチド配列を含む組成物に向けられている。
本発明の更なる実施形態は、精子表面タンパク質をタンパク分解処理する生物活性を有するvIADAM20ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に向けられている。
本発明の更なる実施形態は、vIADAM20ポリペプチドに結合する、またはvIADAM20ポリペプチド断片に対する、抗体または抗原結合断片に向けられている。好ましくは、その抗体は、vIADAM20ポリペプチドに特異的に結合し、ADAM20ポリペプチドには特異的に結合しない。好ましくは、その抗体または抗原結合断片は、ADAM20のアミノ末端に位置する50アミノ酸のうちの1つまたは複数を含むエピトープを認識し、これらのアミノ酸の1つまたは複数は抗体の結合に必要とされる。さらに好ましくは、その抗体は、アミノ酸配列:QLHQDTDPQIPKGQPCTまたはアミノ酸配列:LNSSEGGARを認識する。本明細書で使用される抗vlADAM20抗体という用語は、インタクトな分子ならびにその活性断片の両方、例えば抗原に結合することができるものなどを含む。
本発明は、抗vIADAM20抗体をvIADAM20ポリペプチドに結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、vIADAM20ポリペプチドを前記抗体またはその抗原結合断片と接触させる段階を含む方法にも関する。かかる条件は当業者によく知られている。さらに、本発明は、vIADAM20ポリペプチドまたはその断片を発現する細胞に抗vIADAM20抗体または抗原結合断片を結合させる方法であって、結合を生じさせる条件下にて、ADAM20ポリペプチドまたはその断片を発現する細胞を前記抗体または抗原結合断片と接触させる段階を含む方法にも関する。使用される抗体または断片は、上述のようにvIADAM20特異的であることが好ましい。かかる方法は例えば、本明細書にさらに記述されるように精巣細胞を精製するのに有用である。
本発明のその他の実施形態は、精巣細胞を精製するための、vIADAM20ポリペプチド対して作られた抗体を含む組成物を使用する方法に関する。かかる組成物は、上述の好ましい抗体を含むことが好ましい。精巣細胞を精製するためのかかる方法は、i)検出可能なシグナルを提供するのに使用することができる分子で、抗vIADAM20抗体を標準法によって標識する段階;ii)選別装置、例えば、標識化抗vIADAM20抗体を含有する、蛍光活性化細胞選別装置または磁気活性化細胞選別装置を通して、生検精巣試料または哺乳動物細胞を流す段階;を含む。精巣細胞の精製は、精巣に関連する様々な疾患、限定されないが、例えば精巣癌、精巣の上皮内新形成、精巣の微石症および不稔などのin vitro分析および診断に有用である。
本発明の実施形態は、i)本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする段階;任意に、ii)その生成されたタンパク質を精製する段階を含む、vIADAM20ポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、vIADAM20またはその一部に対して作られる抗体は、クロマトグラフィー担体に結合されて、アフィニティークロマトグラフィーが形成される。さらに好ましくは、その抗体は、vIADAM20のアミノ末端側50個のアミノ酸を認識する。代替方法としては、vIADAM20ポリペプチドは、i)vIADAM20の発現を検出することができるポリヌクレオチドを宿主細胞にトランスフェクトする段階を含む方法によって作製することができる。好ましくは、vIADAM20の発現を検出することができるポリヌクレオチドは、vIADAM20遺伝子の5’調節領域に位置する。さらに好ましくは、これらのポリヌクレオチドは、vIADAM20コード領域の500塩基対内に位置する。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含有することが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記載されている。
一実施形態において、vIADAM20ポリペプチドまたはその生物活性断片は、広範囲のタンパク質を消化することができるプロテアーゼの「カクテル」に使用することができる。かかるプロテアーゼのカクテルは、試料中の好ましくないタンパク質を分解する実験アッセイにおいて、例えば、DNA作製におけるタンパク質の除去または酵素反応後の酵素の除去に有用である。
他の実施形態では、vIADAM20またはその生物活性断片を、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,599,400号に記載のプロテアーゼの使用と同様に、タンパク質成分を有する染色を除去するために、洗浄剤と組み合わせて使用することができる。その組成物は、例えば、界面活性剤、起泡剤(foam enhancer)および充填剤などの公知の洗浄剤成分を含有し得る。その洗浄剤は、vIADAM20ポリペプチドを0.001%〜10%含有することが好ましい。vIADAM20ポリペプチドは、洗浄剤組成物中に含まれるか、または添加剤としての使用時に他の成分と組み合わせることができる。洗浄剤の添加剤は、液状、粉末状、顆粒状またはスラリー状で配合することができる。
さらに他の実施形態は、避妊の免疫原としてのvIADAM20ポリペプチドを使用する組成物および方法に関する。自然発生的に抗精子抗体を産生するオスおよびメスは、その他の点では健康であるが、不妊であることが示された(Bronson et al, Fertil Steril. 42: 171-83 (1984))。かかる方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,197,940号に記載のように、ADAM20に対する抗体の産生によって、その個体の受精率を低減するのに有効な量で、vIADAM20ポリペプチドを個体に投与する段階を含む。免疫原性vIADAM20ポリペプチドがかかる組成物中に使用されることが好ましい。免疫原性vIADAM20ポリペプチドの投与量は、投与経路、種類、およびブースター投与の使用などの因子に応じて異なる。例えば、体重1kg当たりvIADAM20ポリペプチド約0.1〜100マイクログラムの用量が用いられる。本発明の組成物は、ヒトおよび家畜の両方のワクチン製剤として製造することが可能である。避妊用ワクチンは、薬学的に適切な担体と、および例えば百日咳菌(Bordatella pertussis)の免疫原性断片などの免疫系の非特異的シミュレータ(simulator)を含有するアジュバントと、vIADAM20ポリペプチドを合わせることによって製造することができる。
本発明の組成物は、固形(例えば、経口投与用の顆粒剤)または液状(例えば、経口投与または注入用の液剤)で製造される。本発明の組成物は、処置される対象の受精率を低減するのに有効な量で担体中に含有される。本発明の組成物は、他の避妊分子を含んでもよい。例えば、vIADAM20ポリペプチドを含む女性避妊用ワクチンは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,693,496号に記載のPH30β鎖タンパク質も含むことが可能であり、男性避妊用ワクチンは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,197,940号に記載のSP-22ポリペプチドも含むことが可能である。
本発明の更なる実施形態は、vIADAM20の発現を低減する物質と、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)暴露細胞中のvIADAM20の発現を非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;iii)前記発現レベルを定量化する段階;iv)非暴露細胞中の発現に対する、暴露細胞中のvIADAM20発現の比を決定する段階;を含む、かかる物質をスクリーニングする方法と、に関する。vIADAM20の発現は精巣細胞において研究されることが好ましい。vIADAM20の発現を低減する物質を含む組成物は、避妊目的のためにオス個体に投与することができることが好ましい。
本発明の更なる実施形態は、vIADAM20活性を低減する物質と、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)暴露細胞中のvIADAM20タンパク分解活性を非暴露対照細胞の活性と比較する段階;iii)前記発現レベルを定量化する段階;iv)非暴露細胞における発現に対する、暴露細胞におけるvIADAM20活性の比を決定する段階;を含む、かかる物質をスクリーニングする方法と、に関する。vIADAM20の発現は精巣細胞において研究されることが好ましい。vIADAM20のタンパク分解活性は例えば、Frosty Loechel et al (J Biol Chem 273: 16993-7 (1998))によって記述されているα2M複合体形成アッセイによって測定することができる。vIADAM20の発現を低減する物質を含む組成物は、避妊の目的でオス個体に投与することができることが好ましい。
本明細書で使用されるアンタゴニストという用語には、vIADAM20の発現を低減する物質、vIADAM20活性を低減する物質、およびADAM20の活性を抑制する抗体または抗原結合断片を含む。
本発明のその他の実施形態は、vIADAM20タンパク分解活性をブロックするために、vIADAM20アンタゴニストを含む組成物を使用する方法に関する。そのアンタゴニストは、上述の好ましい抗体のうちの1つであることが好ましい。かかる組成物は、細胞、組織試料または個体に投与することができる。かかる組成物は、避妊の目的において精子形成をブロックするために、オス個体に投与されることが好ましい。
本発明のさらに他の実施形態は、精子を凝集および不動化するための、抗vIADAM20抗体を含有する組成物の使用方法に関する。かかる組成物は、上述の好ましい抗体を含むことが好ましい。かかる組成物は、細胞、組織試料または患者に投与することができる。かかる組成物は、避妊の目的において受精をブロックするために、メス個体に投与されることが好ましい。
配列番号:8のタンパク質(内部指定クローン1000849866 181−44−3−0−A9−F)
クローン1000849866−181−44−3−0−A9−Fの配列番号:7のcDNAは、配列:MRSLGALLLLLSACLAVSAGPVPTPPDNIQVQENFNISRIYGKWYNLAIGSTCPWLKKIMDRMTVSTLVLGEGATEAEISMTSTRWRKGVCEETSGAYEKTDTDGKFLYHKSKWNITMESYWHTNYDEYAIFLTKKFSRHHGPTITAKLYGRAPQLRETLLQDFRWAQGVGIPEDSIFTMADRGECVPGEQEPEPILIPRVRRAATPRRGRIRGWATGNを含む、配列番号:8のLipoglobulinをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:8のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン1000849866_181−44−3−0−A9−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:7のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン1000849866_181−44−3−0−A9−F中にヒトcDNAを含む核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。好ましい実施形態は、配列番号:7、配列番号:8、およびクローン1000849866_181−44−3−0−A9−Fの組成物にも関する。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた、好ましい。
配列番号:8のタンパク質は、αミクログロブリンの配列(swissprotアクセッション番号P02760)のスプライシングバリアントである。221アミノ酸のLipoglobulinタンパク質は、リポカリンモチーフを示し、リポカリンスーパーファミリーに属する。これらの細胞外タンパク質は、ステロイド、ビリン、レチノイド、および脂質などの小さな疎水性リガンドに結合し、輸送する。リポカリンは、栄養輸送、細胞増殖制御、免疫応答およびプロスタグランジン合成を含む様々なプロセスにおいて機能する。
Lipoglobulinは、血漿糖タンパク質である。そのタンパク質は、黄褐色および非常に不均一な電荷をタンパク質に付与する一組の発色団を保持する。Lipoglobulinは、多くの血漿タンパク質様因子IX Zutphen、因子XII Tenriおよびいくつかのタンパク質C突然変異体と共有結合し得る。Lipoglobulinは肝臓細胞において翻訳され、血液に分泌される。Lipoglobulinは、血漿、尿、および脳脊髄液を含む多くの生理学的体液に見出される。そのタンパク質は、遊離モノマーとしてだけではなく、IgAおよびアルブミンとの複合体で現れる。Lipoglobulinは、抗炎症性および免疫抑制活性にも関与する。ストレスおよび炎症性刺激に応答してLipoglobulinの循環レベルが増大する点から、Lipoglobulinは、ポジティブな急性期タンパク質の1つである。Lipoglobulinは、それが血小板および好中球の活性化を抑制し、食細胞活動を抑制する、炎症部位に蓄積する。Lipoglobulinの免疫調節性はグリコシル化によるものである。Lipoglobulinは、40%炭水化物であり、それによって著しく酸性および可溶性となる。Lipoglobulinのグリコシル化パターンは、急性期反応時に変化し、脱グリコシル化されたLipoglobulinは免疫抑制活性を持たない。リポカリンが、様々な疾患状態に診断および予後マーカーとして使用される。妊娠中および癌化学療法、腎機能不全、心筋梗塞、関節炎、および多発性硬化症を含む病状の診断および予後にLipoglobulinの血漿レベルをモニターすることができる。
本発明のその他の好ましい実施形態は、LipoglobulinポリペプチドをLipoglobulin特異的抗体またはそのLipoglobulin結合断片と結合させる方法である。この方法は、結合を可能にする条件下で、LipoglobulinポリペプチドLipoglobulin特異的抗体またはそのLipoglobulin結合断片と接触させる段階を含む。この方法は、Lipoglobulinの検出および精製に適用することができる。これらの態様は本明細書で詳細に説明する。
本発明の実施形態は、Lipoglobulinポリペプチドを含む組成物に関する。Lipoglobulinポリペプチドを作製する方法は、i)本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする段階と、ii)その作製されたタンパク質を精製する段階と、を含む。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、Lipoglobulinまたはその断片に対して作られる抗体、好ましくは、LipoglobulinポリペプチドのC末端配列に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。
別の実施形態において、本発明は、LipoglobulinのmRNA発現レベルを検出するための方法および組成物を提供する。LipoglobulinのmRNAレベルの定量化は、本発明のタンパク質の変化した発現に関連する疾患の診断または予後に有用である。変化した発現に関連する病状、疾患または障害としては、限定されないが、特定の癌、嚢胞性線維症、潰瘍、血友病などの凝固障害、炎症および免疫に基づく障害、後天性免疫不全症候群(AIDS)、関節炎などの自己免疫疾患、受精障害、および甲状腺機能低下症が挙げられる。
本発明のタンパク質のmRNAの検出および定量化するためのアッセイは、当技術分野でよく知られている(例えば、Maniatis, Fitsch and Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual (1982),またはCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. M. et al. (Eds), Wiley & Sons, Inc. 参照)。例えば、核酸分子またはプローブは標準法によって標識され、ハイブリダイゼーション複合体の形成条件下にて患者からの生体試料に添加される。インキュベーション期間後、その試料を洗浄し、ハイブリダイゼーションに関連する標識(またはシグナル)の量を定量化し、標準値と比較する。患者試料中の標識の量が標準値と比較して著しく変化している場合には、関連する条件、疾患または障害の存在が示されている。かかるアッセイを用いて、動物研究および臨床試験において特定の治療的処置療法の有効性を評価し、個々の患者の治療をモニターすることもできる。病状の存在が証明され、治療プロトコールが開始されると、診断アッセイを定型的に繰り返して、患者における発現レベルが、正常な対象において観察される発現レベルに近似し始めるかどうかを決定することができる。連続的なアッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の範囲の期間にわたる治療の有効性を示すことができる。
他の実施形態では、Lipoglobulinポリペプチドまたはその断片を用いて、基質、例えば第IX因子Zutphen、第XII因子Tenriおよびいくつかのタンパク質Cの突然変異体の存在によって特徴付けられる障害を診断することができる。かかる障害には、限定されないが、第XII因子欠損および血友病Bが挙げられる。かかる方法では、Lipoglobulinポリペプチドまたはその断片が、生体試料における第IX因子Zutphen、第XII因子Tenri、およびタンパク質Cの突然変異体などの基質の同定および/または定量化用のアッセイおよび診断キットに使用される。
他の実施形態では、本発明は、特定の生体試料中に存在する本発明のタンパク質のレベルを検出かつ定量化するための方法および組成物に関する。これらの方法は、本発明のタンパク質の変化したレベルと関連する疾患の診断または予後に有用である。本発明のタンパク質を検出するための診断アッセイは、器官または組織切片からの細胞の、または腫瘍または正常組織からの細胞の吸引液の生検、in situアッセイを含み得る。さらに、アッセイは、器官、組織、細胞、尿からの細胞抽出物、または血清または血液または他のいずれかの体液または抽出物で行われる。
特異的ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を用いた、Lipoglobulinポリペプチドの検出および定量化は、当技術分野で公知である。かかる技術の例としては、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。抗体の例は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,153,192号に記載されている。
一実施形態において、Lipoglobulinまたは好ましい断片を対象に投与して、本発明のタンパク質の変化した発現または活性と関連する病状を治療または予防することが可能である。かかる病状の例としては、限定されないが、上述のものが挙げられる。
他の実施形態では、薬剤担体と共に実質的に精製されたLipoglobulinポリペプチドを含む薬剤組成物を対象に投与して、内因性タンパク質、限定されないが例えば上述のような変化した発現または活性と関連する病状を処置または防ぐことができる。
他の実施形態において、Lipoglobulinの活性を調節する物質を対象に投与して、Lipoglobulinポリペプチド、限定されないが例えば上記のものなどの変化した半減期、発現または活性と関連する病状を処置または防ぐことができる。一態様において、Lipoglobulinに特異的に結合する抗体を、Lipoglobulinを発現する細胞(つまり肝細胞)に薬剤を運ぶための、標的化機構および送達機構として使用することができる。更なる実施形態において、Lipoglobulinまたは好ましい断片を発現することができるベクターを対象に投与して、限定されないが上記のものを含む本発明のタンパク質の変化した半減期、発現または活性と関連する病状を治療または予防することができる。
更なる実施形態において、Lipoglobulinまたはその断片をコードするポリヌクレオチドを発現するベクターを投与して、限定されないが上記のものを含む本発明のタンパク質の変化した半減期、発現または活性と関連する病状を治療または予防することができる。
他の実施形態において、本発明は、Lipoglobulinポリペプチドまたはその断片に結合する化合物をスクリーニングする方法に関する。かかる方法は、蛍光標識、放射性標識、もしくは酵素標識などの検出可能な標識で、試験するリガンド分子を標識する段階と、特異的結合を生じさせる条件下で、Lipoglobulinポリペプチドまたはその断片と接触させて、試験するリガンド分子を置く段階と、非特異的に結合した分子を除去する段階と、適切な手段を用いて、結合分子を検出する段階と、を含む。好ましい実施形態において、本発明のタンパク質またはその一部を使用して、当業者に公知のいずれかの技術を用いて基質を同定かつ/または定量化することができる。基質を見つけるために、本発明のタンパク質、またはその一部、またはその誘導体は、様々な薬物スクリーニング技術のいずれかにおいて化合物ライブラリーをスクリーニングするために使用される。かかるスクリーニングで用いられる断片は、溶液中で遊離しており、固体担体に固定化され、細胞表面上に保持され、または細胞内に位置し得る。本発明のタンパク質、またはその一部、またはその誘導体と、試験される作用物質との間の結合性複合体の形成は、BIAcore(スウェーデン、ウプサラ)などの当業者に公知の方法によって測定することができる。本発明のアンタゴニストまたは阻害剤は、本発明のタンパク質に特異的に結合するものを同定するための薬物ライブラリーのスクリーニングを含む、当技術分野で一般的に知られている方法を用いて作製することができる。使用することができる薬物スクリーニングの他の技術によって、本発明のタンパク質に対する適切な結合親和性を有する化合物のハイスループットスクリーニングを提供する。例えば、Lipoglobulinポリペプチドのアンタゴニストは、Lipoglobulinポリペプチドによる血小板および好中球の抑制を防ぐだろう。
配列番号:10のタンパク質(内部指定クローン164341 117−001−5−0−E2−F)
クローン164341_117−001−5−0−E2−FのcDNA(配列番号:9)は、アミノ酸配列:MQRLQWLGHLRGPADSGWMPQAAPCLSGAPQASAADVVWHGRRTAICRAGRGGFKDTTPDELLSAVMTAVLKDVNLRPEQLGDICVGNVLQPGAGAIMARIAQFLSDIPETVPLSTVNRQCSSGLQAVASIAGWSPCPWLTEGTLEILLRAを含む、配列番号:10のペルオキシソームβケトチオラーゼ(PBK)をコードする。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:10のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン164341_117−001−5−0−E2−F中に含まれるヒトcDNAよってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:9のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン164341_117−001−5−0−E2−F中にヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:9、配列番号:10、およびクローン164341_117−001−5−0−E2−Fの組成物にも関する。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:10のタンパク質、PBKは、3-ケトアシル−CoAチオラーゼタンパク質の配列(swissprotアクセッション番号P09110)のスプライスバリアントである。PBKの153アミノ酸のタンパク質は、1つの膜貫通セグメント:CSSGLQAVASIAGWSPCPWLTを示す。したがって、本発明の一部の実施形態は、膜貫通ドメインを含有するポリペプチドに関する。最終的には、本発明のタンパク質は、以下の配列:APQASAADVVVVHGRRTAICRAGRGGFKDTTPDELLSAVMTAVLKDVNLRPEQLGDICVGNVLQPGAGAIMARIAQFLSDIPETVPLSTVNRQCSSGLQAVASIAGWSPCPWLTEGTLEILに及ぶチオラーゼドメイン示す。したがって、本発明の好ましい実施形態は、チオラーゼドメインおよびそれをコードするポリヌクレオチドを含む。
内因性合成により、または外因性の源から生じる多くの異なる脂肪酸およびそれらの様々な誘導体に生体が暴露される。これらの疎水性化合物は、CO2への代謝、またはそれらの排出を可能にするより高い極性の脂質代謝産物への代謝を含み得る、排出前に、特定の代謝、構造または内分泌機能を有し得る。定量的には、脂肪酸を代謝する主要経路の1つは、β−酸化であり、PKBはこの経路に関与する。
PBKは、アシル酵素中間体の形成に関与し、それ自体では、脂肪酸代謝、細胞の小胞の輸送および細胞構築、細胞のタンパク分解、エンドサイトーシス、シグナルトランスダクション、リソソーム蓄積、細胞増殖および細胞分化、免疫応答および炎症反応における役割を果たす。その酵素の基質は、エステル結合、好ましくはチオールエステル結合、さらに好ましくはアシルチオエステル結合を含有することが好ましい化合物である。
PBKは、肝臓などの標的器官、脂肪組織における脂質のホメオスタシスを仲介し、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPARαおよびPPARγ)によって制御される。PBKの欠損によって、ペルオキシソームβ−酸化活性が非常に低くなり、かつ胆汁酸生合成において極長鎖脂肪酸および中間体が蓄積される。かかるペルオキシソーム異常は、ペルオキシソーム欠損ツェルウェガー症候群および斑状軟骨形成不全症(Rhizomelic Chondrodysplasia Punctata)である。
本発明の好ましい更なる実施形態は、PBKポリペプチドをPBK特異的抗体またはそのPBK結合断片と結合させる方法である。この方法は、結合を可能にする条件下にて、PBKポリペプチドをPBK特異的抗体またはそのPBK結合断片と接触させる段階を含む。この方法は、PBKの検出および精製、ならびにPBK機能の修飾に適用することができる。これらの態様は本明細書で詳細に説明する。
本発明の好ましい態様は、PBKポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。更なる好ましい態様は、PBKの発現を検出できるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。PBKの発現を検出できるポリヌクレオチドは、PBK遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、PBKコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記載されている。前記宿主細胞によって作製されるPBKタンパク質は、in vitroの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用することができる。
一実施形態において、本発明のタンパク質またはその一部の加水分解活性は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,445,942号に記載の方法を含む、当業者に公知のアッセイのいずれかを用いて、アッセイすることができる。
本発明の他の実施形態は、例えば、β−酸化ペルオキシソーム異常、例えば限定されないが、ツェルウェガー症候群、偽性ツェルウェガー(Pseudo Zellweger)、斑状軟骨形成不全症、X染色体性副腎白質ジストロフィー(ALD)、新生児副腎白質ジストロフィー、偽性新生児(pseudoneonatal)副腎白質ジストロフィー、アシル−coA欠損、二機能性酵素、レフサム症候群、DHAPアシルトランスフェラーゼ欠損、高ピペコール酸血(hyperpipecolatemia)および無カタラーゼ血症に関連する、この細胞器官の変化、トポロジーまたはモフォロジーを数値で視覚化するために、本発明のタンパク質またはその一部を使用する組成物および方法に関する。
例えば、そのタンパク質を、タグ配列をコードする配列を有する枠内で本発明のタンパク質をコードするcDNAを真核細胞発現ベクターに挿入することによって容易に検出可能にすることができる。本発明のタグ付きタンパク質を発現する真核細胞は、β−酸化ペルオキシソーム障害を治療することができる薬物または遺伝子をin vitroスクリーニングするために使用することもできる。
本発明の実施形態は、PBK発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)試験物質を暴露した後の細胞におけるPBK発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する段階;を含む。PBKの発現は、当技術分野で一般的な、または本明細書に包含される方法によって、PBKポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することにより決定される。この方法の一例は、i)2つの同じ細胞試料を培養する段階;ii)その培養物のうちの一方に試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)指定の時間にどちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からのmRNAを精製する段階;v)各サンプルにおけるPBKのmRNAレベルを、ノーザンブロット、RTPCR、または当技術分野で一般的な他の方法によって比較する段階;を含む。本発明は、本明細書に記述されるような特異的ポリヌクレオチドプローブおよびプライマーの設計および使用を提供する。更なる例は、i)細胞の2つの同じ培養物を得る段階;ii)その培養物のうちの一方に試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からのタンパク質を精製する段階;v)各サンプルにおけるPBKポリペプチドのレベルを、ウェスタンブロット、免疫組織化学、または当技術分野で一般的な他の方法により比較する段階;を含む。本発明は、本明細書に記載ような特異的抗体および抗体断片の設計および使用を提供する。
主題の発明のPBKの発現または活性を調節する作用物質には、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、薬物、および抗体が含まれる。これらの作用物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造および使用される。また、PBKの発現を高める作用物質は、脂質低下性化合物である、さらに、本発明のタンパク質またはその生物活性断片は、治療化合物についてのスクリーニングアッセイで使用することができる。様々な薬物スクリーニング技術が用いられる。本発明のこの態様では、このタンパク質またはその生物活性断片は、溶液中で遊離であり、固体担体に固定化され、細胞表面上に組換え発現されるか、または細胞表面に化学的に結合されるか、または細胞内に位置する。本発明のタンパク質またはその生物活性断片と、試験される化合物との間の結合性複合体の形成は、当技術分野でよく知られる方法、限定されないが例えば、BIAcore(スウェーデン、ウプサラ)などによって測定することができる。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号:W084/03564に記載のように、使用することができる薬物スクリーニングの他の技術は、本発明のタンパク質に対して適切な結合親和性を有する化合物のハイスループットスクリーニングを提供する。
主題の本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質の活性を選択的に高める組成物および方法を提供する。PBKを活性化することによって、PBK活性に関連する疾患または生化学的異常をうまく処置し、かつ/または取り扱うことができる。本発明のタンパク質の発現または活性を高めることができるアゴニストは、脂肪酸のペルオキシソームの減少したβ酸化に関連する疾患、例えば偽性ツェルウェガー症候群および斑状軟骨形成不全症(RCDP)の治療に有用である。好ましいアゴニストには、脂質低下性化合物が含まれる。各脂質低下性化合物はさらに、個々にまたはグループとして除外され得る。
他の実施形態において、本発明は、個体における病状を治療または改善するための、PBKポリペプチド、または目的の生物活性を有する断片の使用を包含する。例えば、その病状は、偽性ツェルウェガー症候群および斑状軟骨形成不全症(RCDP)である。かかる実施形態では、PBKポリペプチドまたはその断片は、PBKの活性のうちのいずれかを高めることが望まれる個体に投与される。PBKポリペプチドまたはその断片を個体に直接投与してもよいし、あるいは代わりに、PBKポリペプチドまたはその断片をコードする核酸を個体に投与してもよい。例えば、PBKポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチドは、偽性ツェルウェガー症候群および斑状軟骨形成不全症(RCDP)を有する患者に投与することができる組換え発現ベクター中に含まれる。好ましい発現ベクターとしては、ウイルスベクター、特にアデノウイルスおよびレンチウイルスベクターが挙げられる。代替方法としては、PBKポリペプチドの活性を高める作用物質を個体に投与してもよい。好ましいアゴニストは、脂質低下性化合物である。さらに、特定の脂質低下性化合物は、個々にまたはグループとして除外され得る。
かかる方法において、PBK活性を高める作用物質を薬学の従来の方法に従って処理し、患者に投与するための医薬品を製造することができる。このように、PBK活性を高める作用物質を含有する薬剤組成物は、固形(例えば、経口投与用の顆粒剤、吸入用の散剤)または液状(例えば、経口投与または注入用の液剤)で製造される。限定されないが偽性ツェルウェガー症候群および斑状軟骨形成不全症(RCDP)などの疾患を患う患者を治療するための本発明の組成物の有効用量は、関連技術に従って決定することができる。更なる作用物質は、PBKポリペプチドまたはPBKポリペプチドを含有する細胞もしくはプレパラートを作用物質と接触させ、試験作用物質がタンパク質の活性を高めるかどうかをアッセイすることによって同定される。例えば、試験作用物質は、化学化合物またはポリペプチドまたはペプチドであり得る。
一実施形態において、主題の方法では、PBKポリペプチドまたはその生物活性断片を発現する組換え核酸で安定的に形質転換される、真核生物または原核生物の宿主細胞を用いる。その形質転換細胞は生細胞または固定細胞である。本発明のタンパク質、またはその生物活性断片を活性化する候補である薬物または化合物は、当業者によく知られている結合アッセイにおいて、かかる形質転換細胞に対してスクリーニングされる。代替方法としては、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、1984年9月13日公開のGeysen H. N.による国際特許出願公開第84/03564号に教示されているアッセイなどを用いて、PBKポリペプチドまたはその生物活性断片に対する結合親和性またはPBKポリペプチドまたはその生物活性断片を活性化する能力を示すペプチド化合物についてスクリーニングすることができる。
本発明の他の実施形態は、当業者に知られているいずれかの方法によって、遺伝子導入モデル動物(キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)、ハツカネズミ(M. musculus))を確立するための、本発明のタンパク質またはその断片をコードするポリヌクレオチドを用いた組成物および方法に関する。薬物または変更遺伝子(活性化または抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をin vivoで調節することによって、ツェルウェガー症候群、斑状軟骨形成不全症、X染色体性副腎白質ジストロフィー(ALD)、アシル−coA欠損、二機能性酵素、レフサム症候群、DHAPアシルトランスフェラーゼ欠損、高ピペコール酸血(hyperpipecolatemia)および無カタラーゼ血症になどのヒトペルオキシソーム関連疾患を模倣する動物モデルを作製することができる。このように、これらの動物モデルによって、疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となる。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにex vivoで使用することができる。
他の実施形態において、本発明は、特定の生体試料中に存在する本発明のタンパク質のレベルを検出かつ定量化する方法および組成物に関する。これらの方法は、限定されないが偽性ツェルウェガー症候群などの、本発明のタンパク質の変化したレベルに関連する疾患の診断または予後に有用である。本発明のタンパク質を検出するための診断アッセイは、器官または組織切片からの細胞の、または腫瘍または正常組織からの細胞の吸引液の生検、in situアッセイを含み得る。さらに、アッセイは、器官、組織、細胞、尿からの細胞抽出物、または血清または血液または他のいずれかの体液または抽出物で行われる。
タンパク質PBKを定量化するアッセイは、当技術分野でよく知られている方法に従って行われる。通常、これらのアッセイは、本発明のタンパク質のリガンドまたは本発明のタンパク質もしくはその断片を認識する抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)と試料を接触させる段階と、試料中に存在する本発明のタンパク質とリガンドまたは抗体との間に形成される複合体を検出する段階と、を含む。リガンドおよび抗体の断片もまた、これらの断片が主題の発明のタンパク質と特異的に相互作用することができるという条件で、結合アッセイにおいて使用することができる。さらに、本発明のタンパク質に結合するリガンドおよび抗体は、当技術分野で公知の方法に従って標識することができる。主題の発明において有用な標識としては、限定されないが、酵素標識、放射性標識、常磁性標識、化学発光標識が挙げられる。一般的な技術は、その開示時内容全体が本明細書に組み込まれるJ. H., et al. (1976) Clin. Chim. Acta 70: 1-31;その開示内容全体が本明細書に組み込まれるSchurs, A. H. et al. (1977) Clin. Chim. Acta 81: 1-40に記述されている。例えばPBKは、イムノブロット法により、対照個体の線維芽細胞で検出されるが、ツェルウェガー症患者の線維芽細胞では検出されないだろう。
他の実施形態では、PBKポリペプチドまたはその断片をコードするヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築し、例えば遺伝的突然変異の効率的なスクリーニングを行うことができる。マイクロアレイを使用して、多数の遺伝子の発現レベルを同時にモニターし、かつ遺伝的変異体、突然変異体、および遺伝的多型を同定することができる。遺伝子機能を決定し、障害の遺伝的根拠を理解し、障害を診断し、治療薬の活性を発生させ、かつモニターするために、この情報が用いられる(例えば:その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるChee, M. et al., Science, 274: 610-614 (1996)参照)。PBKの遺伝的変異体、突然変異体、および多型は、斑状軟骨形成不全症などのペルオキシソームβ−酸化障害に関係がある。
配列番号:12のタンパク質(内部指定クローン1000837037 228−43−2−0−C3−F)
クローン1000837037_228−43−2−0−C3−FのcDNA(配列番号:11)は、アミノ酸配列:MPFSHLSTYSLVWVMAAWLCTAQVQWTQDEREQLYTTASLKCSLQNAQEALIVTWQKKKAVSPENMVTFSENHGVVIQPAYKDKINITQLGLQNSTITFWNITLEDEGCYMCLFNTFGFGKISGTACLTVYVQPIVSLHYKFSEDHLNITCSATARPAPMVFWKVPRSGIENSTVTLSHPNGTTSVTSILHIKDPKNQVGKEVICQVLHLGTVTDFKQTVNKGYWFSVPLLLSIVSLVILLVLISILLYWKRHRNQDREPを含む、配列番号:12のmyeloidinをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:12のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン1000837037_228−43−2−0−C3−F中に含まれるヒトcDNAよってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:11のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン1000837037_228−43−2−0−C3−F中に含まれるヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:12、配列番号:11、およびクローン1000837037_228−43−2−0−C3−Fの組成物にも関する。以下で示す方法において使用するのに好ましいmyeloidinポリペプチドとしては、以下のアミノ配列:QVQWTQDEREQLYTTASLKCSLQNAQEALIVTWQKKKAVSPENMVTFSENHGWIQPAYKDKINITQLGLQNSTITFWNITLEDEGCYMCLFNTFGFGKISGTACLTVYVQPIVSLHYKFSEDHLNITCSATARPAPMVFWKVPRSGIENSTVTLSHPNGTTSVTSILHIKDPKNQVGKEVICQVLHLGTVTDFKQTVNKGYWFSVPLLLSIVSLVILLVLISILLYWKRHRNQDREPを含むポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、myeloidinは、脳のOX−2タンパク質(Genbankアクセッション番号P41217)の新規なスプライシングバリアントである。Myeloidinは、262アミノ酸の長さである。OX-2は、274アミノ酸の長さであり、アミノ末端とカルボキシル末端のどちらにおいてもmyeloidinと異なる。OX-2の他の既知のスプライシングバリアント、my033は、269アミノ酸の長さであり、アミノ末端においてmyeloidinと異なる。Myeloidinは、シグナルペプチド(MPFSHLSTYSLVWVMAAVVLCTA)、1つの膜貫通のドメイン(VPLLLSIVSLVILLVLISILLYW)、2つの免疫グロブリン(Ig)ドメイン(TASLKCSLQNAQEALIVTWQKKKAVSPENMVTFSENHGWIQPAYKDKINITQLGLQNSTITFWNITLEDEGCYMCLFおよびEDHLNITCSATARPAPMVFWKVPRSGIENSTVTLSHPNGTTSVTSILHIKDPKNQVGKEVICQV)を示す。Myeloidinは、中枢神経系(CNS)の細胞を含む、多種多様な細胞によって発現される。
Myeloidinは、骨髄性系統細胞に抑制シグナルを送達する細胞表面タンパク質である。Myeloidinは、骨髄性系統細胞に特異的に位置する受容体に結合する。特に、myeloidinは、脳の小膠細胞に抑制シグナルを送達する。小膠細胞は、活性化されると様々な細胞傷害性および神経栄養性分子を生成することによって、脳の再生状態およびリモデリングを調節する。さらに一般的には、myeloidinは、細胞傷害性細胞を抑制することによって免疫抑制に関与する。
本発明の実施形態は、配列番号:12のmyeloidinポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、骨髄性系統細胞に抑制シグナルを送達する、生物活性を有するmyeloidinポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、myeloidinポリペプチドをコードする配列番号:11のポリヌクレオチド 配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、骨髄性系統細胞に対して抑制シグナルを送達する、生物活性を有するmyeloidinポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、配列番号:12のmyeloidinポリペプチド配列または同じ生物活性を有するmyeloidinポリペプチド断片を認識する抗体を含む組成物に関する。その抗体は、myeloidinには結合するが、OX-2またはmy033には結合しないことが好ましい。本明細書でさらに使用される、抗myeloidin抗体とは、myeloidinポリペプチドまたは同じ生物活性を有するmyeloidinポリペプチド断片に特異的に結合する抗体を意味する。抗myeloidin抗体は、全分子またはその抗原結合断片であり得る。
本発明は、myeloidinポリペプチドに抗myeloidin抗体を結合する方法であって、結合が生じる条件下にて、myeloidinポリペプチドを前記抗体と接触させる段階を含む方法にも関する。かかる条件は、当業者によく知られている。さらに、本発明は、myeloidinポリペプチドまたはその断片を発現する細胞に抗myeloidin抗体を結合させる方法であって、結合が生じる条件下にて、myeloidinポリペプチドまたはその一部を発現する細胞を前記抗体と接触させる段階を含む方法にも関する。抗myeloidin抗体をmyeloidinポリペプチドに結合させるかかる方法は、例えば、myeloidinポリペプチドを精製するのに有用である。
本発明の他の実施形態は、i)本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを、宿主細胞にトランスフェクトする段階;任意にii)作製されたタンパク質を精製する段階;を含む、myeloidinポリペプチドを作製する方法に関する。タンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、抗myeloidinをクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムが形成される。代替方法としては、myeloidinポリペプチドは、i)myeloidinの発現を検出することができるポリヌクレオチドを宿主細胞にトランスフェクトする段階を含む方法によって作製することができる。myeloidinの発現を検出することができるポリヌクレオチドは、myeloidin遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、myeloidinコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記載されている。
先の実施形態の更なる態様は、哺乳動物においてin vivoでmyeloidinを作製する方法に関する。好ましいかかる方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,762,926号に記載のように、中枢神経に細胞を移植するためにmyeloidinポリヌクレオチドを遺伝子導入することによって、ドナー細胞を遺伝子改変する方法である。ドナー細胞は、神経細胞または線維芽細胞であることが好ましい。かかる方法は、神経変性疾患を有する哺乳動物に適用することが最も好ましい。好ましい哺乳動物はマウスまたはヒトである。
本発明の一実施形態は、myeloidinポリペプチドを用いて、小膠細胞を単離または精製する方法に関する。単離小膠細胞および精製小膠細胞集団の研究および使用(例えば、薬物および薬物候補と、in vitroまたはin vivoでこれらの細胞との相互作用を特徴付けることを含む)は、神経疾患の治療に有用な情報を提供する。小膠細胞中で濃縮された細胞集団を得るための一方法は、i)小膠細胞を含むプレパラートをmyeloidinポリペプチドと接触させる段階であって、接触前または後に、myeloidinがマトリックス上に固定化される段階;ii)非付着細胞を除去し、それによって、小膠細胞中で濃縮された細胞集団が作製される段階;を含む。例えば、そのマトリックスはプラスチックであり、myeloidinポリペプチドは吸着によって固定化される。myeloidinポリペプチドを含む組成物を用いて、小膠細胞集団を単離または精製する他の方法は、i)検出可能なシグナルを提供するために使用することができる分子で、標準法によりmyeloidinポリペプチドを標識する段階;ii)タンパク質の結合を可能にする条件下にて、標識myeloidinポリペプチドを細胞と接触させる段階;iii)検出可能なシグナルの有無に基づいて細胞を選別する段階;を含む。選別および検出は、選別装置、例えば蛍光活性化細胞選別装置または磁気活性化細胞選別装置によって行うことが好ましい。好ましくは、小膠細胞を含むプレパラートは、脳から(例えば、ラットまたはマウスの脳から)作製され、正常な哺乳動物または神経疾患を有する哺乳動物由来のものであることが可能である。小膠細胞を含有する組織の細胞浮遊液の調製は、当業者によく知られているいずれかの方法、例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号:WO01/51618に記載の方法に従って行うことができる。
他の好ましい実施形態は、myeloidinの発現を増加または低減する物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞におけるyeloidin発現を、非暴露細胞における発現と比較する段階;を含む方法に関する。好ましくは、試験物質は、特定の細胞型におけるmyeloidinの発現を修飾するが、他の細胞では修飾しない。試験物質は、神経細胞において特異的にmyeloidinの発現を修飾することが最も好ましい。
本発明の更なる実施形態は、myeloidin活性を増加または減少させる物質と、かかる物質をスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)myeloidin活性を決定する段階;iii)試験物質に暴露した後の細胞におけるyeloidin活性を、非暴露細胞における活性と比較する段階;iv)暴露細胞におけるmyeloidin活性と、非暴露細胞における活性との比を決定する段階;を含む方法と、に関する。myeloidin活性は、神経細胞において研究されることが好ましい。Myeloidin活性は、星状膠細胞の小膠細胞仲介活性化を研究することによって、つまり培養中の反応性星状膠細胞モフォロジーを妨げるその能力を決定することにより決定することができる。myeloidin活性は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号:WO99/24565に記載のようにサイトカイン生成を測定することによって決定することもできる。
本明細書でさらに使用される、myeloidinの発現またはmyeloidinの活性を増加する物質は、myeloidinアゴニストとして定義される。本明細書でさらに使用される、myeloidinの発現またはmyeloidinの活性を減少させる物質は、myeloidinアンタゴニストとして定義される。アンタゴニストという用語は、myeloidinポリペプチドの生物活性を抑制する抗myeloidin抗体を含む。
本発明の実施形態は、骨髄性系統細胞の活性化を誘導するか、または高めるために、本発明のmyeloidinアンタゴニストを使用する方法に関する。かかる方法は、細胞、組織、または個体を、myeloidinアンタゴニストおよび任意に薬剤担体を含有する組成物と接触させる段階を含む。好ましい実施形態において、骨髄性系統細胞を活性化するかかる方法は、脳の小膠細胞に対して向けられている。かかる方法を用いて、侵入微生物を破壊し、神経再生を促進し、または潜在的に有害な壊死組織片を除去し、かつ脳損傷に続いて組織修復を促進することができる。小膠細胞を活性化することにより、治療するか、または重症度を低減することができる感染症には、限定されないが、例えばアスペルギルスCNS感染による脳膿瘍、クリプトコックスCNS感染による髄膜炎、連鎖球菌感染に関連する神経精神障害(PANDAS)およびインフルエンザウイルス関連脳症が含まれる。
本発明の他の実施形態は、骨髄性系統細胞の活性化を防ぐまたは低減するための、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを使用する方法に関する。かかる方法は、myeloidinポリペプチドまたはmyeloidinアゴニスト、任意に薬剤担体を含む組成物と、細胞、組織、または個体を接触させる段階を含む。好ましい実施形態において、骨髄性系統細胞の活性化を防ぐまたは低減するためのかかる方法は、脳の小膠細胞に対して向けられている。かかる方法を用いて、神経炎症、さらに詳細には特異的神経変性疾患、および脳損傷に続く病理学的炎症を治療または重症度を低減することができる。神経炎症と関連する神経変性疾患としては、限定されないが、脳卒中、パーキンソン病、アルツハイマー病、小脳型のクロイツフェルト・ヤコブ病およびハンチントン病が挙げられる。
他の好ましい実施形態では、骨髄性系統細胞の活性化を防ぐまたは低減するためのかかる方法は、自己免疫疾患と関連する炎症を予防または治療することに向けられている。本発明に従って治療または予防することができる自己免疫疾患としては、限定されないが、多発性硬化症、1型インスリン依存性糖尿病、および慢性関節リウマチが挙げられる。
小膠細胞活性を調節するための本発明の組成物および方法の有効性は、星状膠細胞のモフォロジーに対する本名発明の組成物の効果を研究することによってin vitroで検証することができる。小膠細胞の活性化と関連する所定の疾患を治療するための本発明の組成物および方法の有効性は、治療される疾患に応じたモデルを用いて検証することができる。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,191,154号に記載のモデルを、神経系の外傷に続く現象の続発に対する組織モデルとして使用することができる。
上述の疾患を患う患者を治療するために投与される、myeloidinポリペプチド、抗myeloidin抗体、myeloidinアゴニストまたはmyeloidinアンタゴニストの量は、特定の用途および活性成分の効力に応じて決定することができる。本発明の化合物から薬剤組成物を調製するために、薬学的に許容される担体は、いずれかの適切な形状(例えば、固体、液体、ゲル)であり得る。本発明は、治療用組成物を投与するための様々な技術を企図する。適切な経路としては、限定されないが、経口、直腸、もしくは経皮投与、および皮内、皮下もしくは静脈内注入が挙げられる。実際は、本発明は、特定の投与経路に限定されることを意図しない。個々の患者に対する適切な治療法の臨床的特徴の評価および設計は、最終的に処方する医師の責任である。さらに、本発明の組成物は、単独で、または上記で治療される疾患を治療するための他の公知の薬剤と組み合わせて投与することができる。
配列番号:14のタンパク質(内部指定クローン101005 105−020−4−0−Hll−F)
クローン101005_105−020−4−0−H11−FのcDNA(配列番号:13)は、アミノ酸配列:MERMLPLLTLGLLAAGFCPAVLCHPNSPLDEENLTQENQDRGTHVDLGLASANVDFALSLYKQLVLKAPDKNVIFSPLSISTALAFLSLGAHNTTLTELKGLKFNLTETSEAEIHQSFQHLLRTLNQSSDELQLSMGNAMFVKEQLSLLDRFTEDAKRLYGSEAFATDFQDSAAAKKLINDYVKNGTRGKITDLIKDLDSQTMMVLVNYIFFKAKWEMPFDPQDTHQSRFYLSKKKWVMVPMMSLHHLTIPYFRDEELSCTVVELKYTGNASALFILPDQDKMEEVEAMLLPETLKRWRDSLEFREIGELYLPKFSISRDYNLNDILLQLGIEEAFTSKADLSGITGARNLAVSQWHKAVLDVFEEGTEASAATAVKITLLSALVETRTIVRFNRPFLMIIVPTDTQNIFFMSKVTNPKQAを含む、配列番号:14のタンパク質vACTをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:14のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン101005_105−020−4−0−H11−F中のヒトcDNAよってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:13のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン101005_105−020−4−0−H11−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:13、配列番号:14、およびクローン101005_105−020−4−0−H11−Fの組成物に対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:13のcDNAは、14番染色体上、特に14q31〜q32.3の位置に位置する遺伝子によってコードされる、vACTと呼ばれるヒトα1抗キモトリプシン(ACT)タンパク質の新規な多型変異体である。配列番号:13のcDNAは、配列番号:14の423アミノ酸のタンパク質をコードする。プロテアーゼは、広範囲の生物学的経路のキー成分であり、それらの触媒機構に従って4つのグループ:セリン、システイン(チオール)、アスパラギン酸(カルボキシル)、および金属プロテアーゼに分類することができる。キモトリプシンは、それらの活性部位に異常に反応性のセリン残基を有することからそう呼ばれるセリンプロテアーゼとして知られる酵素ファミリーのメンバーである。vACTは、セルピン(セリンプロテアーゼ阻害剤)ファミリーに属する。セルピンは、血液凝固、線維素溶解、補体活性化、血管形成、アポトーシス、炎症、新形成およびウイルス病原性などの多様な生理学的プロセスにおけるタンパク分解の調節に中心的役割を果たすプロテアーゼの不可逆的自殺阻害剤である。vACTは、その活性部位に結合し、安定な複合体を形成することによってキモトリプシンを中和する。vACTは主に肝臓中で合成され、好中球のカテプシンG、マスト細胞のキマーゼおよび膵キモトリプシンを特異的に不活化する。vACTの血漿濃度は炎症反応中数時間以内で上昇するため、vACTは急性期タンパク質でもある。vACTの合成は、炎症/組織損傷部位で好中球のカテプシンGとvACTとのネットバランスによって厳しく制御される。その機能レベルに影響を及ぼすセルピンが変化した結果、病態が生じ、特定の臨床的症候群が引き起こされる。例えば、vACTが欠乏している個体は、肺および肝臓疾患を早く発生しやすい。さらに、セリンプロテアーゼとvACTのバランスが変化すると、アルツハイマー病などの一部の神経変性疾患と関連する病状と同様の病的状態が引き起こされる。
本発明の実施形態は、配列番号:14のvACTポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するvACTポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、vACTポリペプチドをコードする配列番号:13のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するvACTポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
一実施形態において、vACTポリペプチドまたはその断片を用いて、試料中の混入プロテアーゼを阻害することができる。この方法は、タンパク質試料の分解を防ぐために、vACT活性を与える条件下にて、生体試料にプロテアーゼ阻害量のvACTポリペプチドを添加する段階を含む。好ましい生体試料は細胞培養物である。かかる組成物は、単独で、または他のプロテアーゼ阻害剤との「カクテル」として使用することができる。プロテアーゼ阻害剤のカクテルを使用する利点は、どのプロテアーゼの特異性も理解することなく、広範囲のプロテアーゼを阻害することができるということである。プロテアーゼ阻害剤のカクテルを使用することによって、膨大な数の源からのタンパク質試料を今後に汚染する可能性がある広範囲のプロテアーゼから、タンパク質試料を保護することもできる。例えば、vACTポリペプチドまたはその断片が、混入プロテアーゼによるタンパク分解が望ましくない試料に添加される。かかるプロテアーゼ阻害剤カクテルは、アッセイが行われる対象のタンパク質を分解しやすいプロテアーゼを阻害するためにアッセイにおいて広く用いられる。代替方法としては、vACTまたはその一部を、当技術分野でよく知られている技術を用いて、単独で、または他のプロテアーゼ阻害剤と組み合わせてクロマトグラフィー担体に結合させ、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。望ましくないプロテアーゼを含有する試料をカラムに通し、そのプロテアーゼを除去する。代替方法としては、同じ方法を用いて、vACTの新規な標的プロテアーゼを同定することができる。
他の好ましい実施形態では、vACTポリペプチドまたはその断片を、多くの感染症、限定されないが、例えば細菌性感染および寄生体媒介感染などに関係する外来性プロテアーゼを阻害するのに有用な抗菌剤として使用することができる。例えば、vACTは、抗生物質耐性株を含むA群連鎖球菌のすべての株の成長を阻害する。したがって、本発明を用いて、in vitroまたはin vivoで特定の微生物の成長を遅らせるか、または阻害することができる。かかる方法は、例えば精製タンパク質を投与するか、またはそのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクトすることによって、セリンプロテアーゼを阻害することができる、ある量のvACTポリペプチドを送達する段階を含む。in vitroにて、この方法は、有効量のvACTポリペプチドを生体試料と接触させる段階を含む。好ましい生体試料は細胞培養物である。in vivoでは、この方法は、有効量のvACTポリペプチドを、個体の目的部位と接触させる段階を含む。好ましい個体は、微生物感染のリスクを有する個体である。
更なる実施形態において、本発明は、セリンプロテアーゼを有効に調節することができる組換えセルピンを作製する方法を提供する。血清由来のヒトα1抗キモトリプシンおよびvACTの有用性にもかかわらず、主にヒト血清の有効性が限定されているために、治療用途に十分な大量な量は入手できない。従って、治療用途で生じる必要性を満たす、ヒトα1抗キモトリプシンおよびvACTの他の供給源が大いに必要とされている。好ましい一実施形態において、哺乳動物を用いてその乳中でvACTを産生し、それによって精製後にこの特定タンパク質がかなりの量で得られる。本発明のタンパク質は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,268,487号に開示の技術を含む、当業者に公知のいずれかの技術を用いて精製することができる。十分な乳を産生するいずれかの種類の動物、例えば限定されないが、ヒツジ、ヤギ、および雌ウシをこの目的に使用することができる。これらの動物は、乳中のvACTの過剰発現を標的化するいずれかの方法で作製することができる。この実施形態においても、本発明のタンパク質は、vACTをコードする核酸配列を含む適切な発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞において作製することができる。その宿主細胞は、それによってこの特定のタンパク質をコードする核酸配列が発現する条件下で培養される。その生成物が蓄積するのに適切な時間の後、タンパク質を宿主細胞またはその細胞を取り囲む培地から精製する。vACTをコードする核酸配列を組み込む発現ベクターの宿主細胞への導入は、限定されないが、塩化カルシウムまたは塩化リチウム処理、電気穿孔法、およびリポフェクションなどの様々な方法で実施することができる。
本発明は、動物の1種または複数種の組織中の本発明のタンパク質の発現または活性を調節することによって作製される動物モデルもまた提供する。かかる動物は、vACTの活性に特異的に関連する疾患の様々な病態生理学的側面の治療に潜在的に有用な候補分子を試験するためのin vivoアッセイ法を象徴することから、多くの目的に有用である。かかるモデルの表現型の研究によって、vACT欠乏によって引き起こされるまたはvACT欠乏と関連する、その他の同等のヒト疾患を同定することもできる。これらの動物は、vACTの過剰発現または不活性化を標的化するためのいずれかの方法で作製することができる。かかるモデルは、例えば、炎症性疾患および病状の治療に用いられる候補治療法および薬物の評価に非常に有用である。
本発明の更なる実施形態は、セリンプロテアーゼおよび好ましくはキモトリプシンの過剰な活性を示す疾患および病状の治療に有用な、新規な方法および組成物を提供することである。vACTまたはその一部を用いて、細胞のタンパク分解が起こる数多くの疾患に関係するプロテアーゼを阻害することができる。組織の分解によって特徴付けられるかかる疾患としては、限定されないが、血液凝固関連疾患、腫瘍浸潤、感染症、および炎症などが挙げられる。さらに好ましくは、本発明は、過剰レベルのカテプシンG、マスト細胞のキマーゼまたは膵キモトリプシンと関連する疾患、限定されないが、例えば、慢性肺気腫、肝臓疾患、膵炎、循環器疾患、およびアレルギー反応などの治療に適用される。この方法および組成物は、アルツハイマー病およびパーキンソン病の治療にも有用である。かかる方法は、疾患または病状を有する哺乳動物に治療有効量のvACTを投与することを含み、「有効量」とは、セリンプロテアーゼの活性を有意に低減することができるvACTの濃度を意味する。本発明の組成物は、生理食塩水溶液などの生理学的に許容される担体または患者に投与するのに生理学的に適切な他のバッファーと組み合わせて、個体に送達されることが好ましい。皮膚炎の治療では、本発明の組成物は、生理学的に許容される軟膏またはクリームと組み合わせて、患部に塗られる。特定の病状に対して哺乳動物に投与されるであろう本発明の組成物の特定量は、患者の臨床症状、および体重、年齢、および投与経路などの他の因子に応じて異なるだろう。かかる組成物は、限定されないが、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下経路を含む、いずれかの適切な経路によって、かつ局所的に皮膚の患部に、または鼻、膣、直腸などの上皮もしくは粘膜皮膚の内面からの吸収によって投与することができる。治療目的のために、本発明の組成物は、標的細胞に治療的生理活性分子を送達するために、当技術分野で公知の遺伝子治療法のいずれかを用いて投与される。これらの組成物は、本発明のタンパク質、および任意に1種または複数種のプロテアーゼ阻害剤、または対象の他のいずれかの化合物を含有する。この同時投与は、同時に投与することによる、または別々に投与もしくは逐次投与することによるものである。これらの更なる成分のすべては、天然源から得られるか、または組換え遺伝子操作技術および/または化学修飾によって生成することができる。
本発明のその他の好ましい実施形態は、vACT特異的抗体またはそのvACT結合断片とvACTポリペプチドを結合させる方法である。この方法は、結合を生じさせる条件下にて、vACTポリペプチドをvACT結合抗体またはそのvACT結合断片と接触させる段階を含む。この方法は、vACTの検出および精製、ならびにvACT機能の修飾に適用される。これらの態様は本明細書に詳細に記述される。
他の実施形態では、本発明は、本発明のタンパク質の変化した発現または活性と関連する疾患または障害を診断するために使用される。特に、標的プロテアーゼの制御されていない活性をもたらす、異常に低いレベルのvACT発現を有する患者を診断するのに有用である。かかる疾患および障害の例としては、限定されないが、肺および肝臓疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、過剰レベルのカテプシンGと関連する炎症性疾患、およびアルツハイマー病およびパーキンソン病などが挙げられる。その方法は、i)vACTポリペプチドまたは核酸に選択的に結合することができる化合物を、体液または組織試料と接触させる段階;ii)試料におけるvACTのレベル、または他のいずれかの検出可能な特性を検出する段階;を含む。好ましくは、対照試料に対する、その試料におけるレベルまたは他の特性の差異によって、疾患もしくは障害の存在、または疾患もしくは障害を発生する性質が示される。その体液または組織試料は、疾患または病状を有する疑いのある、または疾患または病状を発生するリスクのある個体から採取することが好ましい。例えばポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはその免疫学的活性断片または核酸プローブを使用することができる。好ましくは、かかる実施形態で使用される抗体は、変異vACTポリペプチドに対して特異的に作られ、α1抗キモトリプシンポリペプチドを認識しない。検出は、公知の免疫組織学的および免疫蛍光プロセスを用いて、直接または間接的に行うことができる。これに対して、本発明によるキットに含まれる試薬は、一般的に既知の分子、限定されないが、アルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼなどの酵素、FITC、ローダミン、およびテキサスレッド(Texas-Red)などの蛍光染料で直接標識することができる。しかしながら、標識は、ビオチン、ジゴキシゲニン等の分子で標識した二次抗体を使用することによって間接的に行うこともでき、次いで二次試薬で検出される。この実施形態においても、かかる病状の診断は、公知のPCRまたはRT-PCR技術を用いて、特に「リアルタイム」PCRシステムで変異vACTを同定することにより容易となる。一方、かかる技術を用いて、本発明は、vACTの発現における調節(modulation)を特定の病状と関係付けるツールを提供する。このように、本発明は、かかる病状の新規な候補遺伝子を提供する。
セリンプロテアーゼのそれらの阻害剤による調節は、上述の疾患における組織破壊の制御に重要であることから、更なる実施形態において、本発明のタンパク質またはその一部は、疾患状態の特徴付けのために、in vivoでマーカーをモニターするアッセイを提供する。このように、本発明は、生体試料中のvACTの量を定量化するのに有用な試験キットを包含する。そのキットは、少なくとも1種類の免疫結合性パートナー、例えばvACTに特異的かつ検出可能なマーカーに結合されたモノクローナルまたはポリクローナル抗体を含む。かかる一実施形態において使用される抗体は、vACTポリペプチドに特異的に結合するが、α1抗キモトリプシンポリペプチには特異的に結合しない。この実施形態では、これらのまたは他の病状を治療するために施される治療経過をモニターするため、かかるアッセイを適用することができる。さらに、このアッセイは、毒性の測定法として、または組織分解への影響を評価するための新規な薬物の臨床試験中に使用することができる。このように、病状、治療の指標、または対象に直接投与される、または対象が環境においてそれに暴露される物質の効果の指標として、本発明を用いることができる、いずれかの状況において、このアッセイを適用することができる。したがって、患者の病状を連続的にモニターし、病理試料中で測定されるかかるタンパク質の定量化された量を、健康な個体の生体試料中で定量された量または同じ患者の前の分析と比較することができる。この実施形態では、イムノアッセイを含むいずれかの適切な方法によって、このマーカーを血漿、血清または血液中で有効に測定することができる。それはまた、好ましくは、炎症部位から採取した組織および体液において測定することもできる。
配列番号:16のタンパク質(内部指定番号500743419 188−281−3−0−H5−F)
500743419_188−281−3−0−H5−FのcDNA(配列番号:15)は、アミノ酸配列:MGSAALEILGLVLCLVGWGGLILACGLPMWQVTAFLDHNIVTAQTTWKGLWMSCWQSTGHMQCKVYDSVLALSTEVQAARALTVSAVLLAFVALFVTLAGAQCTTCVAPGPAKARVALTGGVLYLFCGLLALVPLCWFANIVVREFYDPSVPVSQKYELGAALYIGWAATALLMVGGCLLCCGAWVCTGRPDLSFPVKYSAPRRPTATGDNDKKNYVを含む、配列番号:16のタンパク質claudinyn−5をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:16のポリペプチドのすべての特性および使用は、500743419_188−281−3−0−H5−F中に含まれる核酸によりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:15のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、500743419_188−281−3−0−H5−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:15、配列番号:16、および500743419_188−281−3−0−H5−Fの組成物に対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:15のcDNAは、4つの膜貫通セグメントによって特徴付けられるタンパク質のPMP22-Claudinファミリーに属するヒトclaudin−5タンパク質の多型変異体である。Claudinyn−5は、18アミノ酸の長さであり、かつ4つの膜貫通セグメントを含有する。Claudinyn−5は、Claudinファミリーシグナチャー(signature)を含有し、22番染色体上、特に22q11.2位置に位置する遺伝子によってコードされる。タンパク質のClaudinファミリーは、予測される4つの膜貫通ドメインを有する20種類を超える小さな糖タンパク質を含む。Claudinyn−5は、細胞透過性および極性の調節において役割を担うタイトジャンクション(TJ)鎖の成分である。極性化した上皮および内皮細胞は、生物学的コンパートメントを分離し、ホメオスタシスを調節するバリアを形成する。TJは、細胞を囲む連続的な封止を構成する、極性化した上皮および内皮細胞の大部分の頂端領域にある特殊な膜ドメインである。これらの封止は、溶質および水が傍細胞空間を自由に透過するのを防ぐ物理的なバリアとしての役割を果たす。TJはまた、細胞の極性を維持するために膜脂質およびタンパク質の側方拡散を制限する。次に、細胞バリア透過性の変化によってマークされる多くの疾患は、TJ機能の変化に関連する。例えば、臨床的に重篤な病状の原因となる、腫瘍における微小血管の透過性の上昇は、ジャンクションタンパク質の調節不全の結果であると思われる。上皮のTJ透過性の上昇、およびその結果としての上皮バリア機能の減少は、癌腫および脂腺腫を含むいくつかの腫瘍の発生の前に起こる。肺上皮は、アレルゲンが感作を起こし得る前に通過しなければならないバリアを形成する。アレルゲンによる細胞間TJの非特異的破壊は、上皮の透過性を増大し、その結果上皮バリアをアレルゲンが通過できる。最終的に、TJ透過性もまた、異なる細菌毒素、サイトカイン、ホルモンおよび薬物によって変化させることができる。
本発明の実施形態は、配列番号:16のclaudinyn−5ポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するclaudinyn−5ポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、claudinyn−5ポリペプチドをコードする配列番号:15のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するclaudinyn−5ポリペプチド断片をコードするポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、配列番号:16のclaudinyn−5ポリペプチド配列または生物活性を有するclaudinyn-5ポリペプチド断片を認識する抗体を含む組成物に関する。その抗体は、非線状エピトープを認識し、かつclaudinyn−5には結合するが、claudin−5には結合しないことが好ましい。
本発明の好ましい態様は、claudinyn−5ポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、claudinyn−5の発現を検出することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。claudinyn−5の発現を検出することができるポリヌクレオチドは、claudinyn−5遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、claudinyn−5コード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドはプロモーター配列を含むことが好ましい。ポリヌクレオチド配列を内因性配列に導入するための当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記載されている。前記宿主細胞により産生されるclaudinyn−5タンパク質は、in vitroの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用される。
他の実施形態は、哺乳動物宿主細胞に、本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターをトランスフェクトする段階;ii)作製されたタンパク質を精製する段階;を含む、claudinyn−5ポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、claudinyn−5またはその一部に対して作られた抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムが形成される。またさらに好ましくは、その抗体は、claudinyn−5には結合するが、claudin-5には結合しない。
他の実施形態では、本発明は、in vitroまたはin vivoでの前記薬物の傍細胞透過性を増大することによって、親水性薬物の腸管吸収を高める方法を提供する。実際に、腸管上皮は、親水性薬物の吸収に対する主要なバリアである。細胞間の接着複合体(junctional complex)および特にTJの存在は、細胞膜の脂質二重層を通って細胞全体に拡散することができない親水性薬物に対して上皮を不透過性にする。claudinyn−5の発現は、前記タンパク質の発現を減少させるために、例えばclaudinyn−5に対応するアンチセンスポリヌクレオチドを用いて抑制または低減することができる。前記アンチセンスポリヌクレオチドの設計、合成、および使用方法は当業者にはよく知られており、本明細書に記述されている。TJ複合体におけるclaudinyn−5の機能もまた、直接的もしくは間接的阻害剤分子または本発明のタンパク質に対して作られるアンタゴニスト抗体を用いて、さらに特異的に抑制することができる。claudinyn−5ポリペプチドの活性を抑制するか、または著しく低減する化合物を、claudinyn−5の活性を低減する試験物質をスクリーニングすることによって同定することが可能であり、そのスクリーニングは、細胞を試験物質と接触させる段階と、暴露後の細胞中のclaudinyn−5活性を、非暴露細胞中の活性と比較する段階と、を含む。claudinyn−5活性は、例えばその開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,110,747号に開示の方法を用いて、TJの透過性を測定することにより決定されることが好ましい。好ましくは、かかる方法は、限定されないが、薬物送達の効率を高めることを含む治療の目的で、上皮透過性を一時的に高めるために使用される。さらに好ましくは、in vivo目的では、製剤は、経口投与と適合する前記組成物を含む製剤である。
更なる実施形態において、claudinyn−5ポリペプチド特異的抗体またはその断片を、コロイドもしくはリポソームなどの薬物送達媒体の成分として使用して、上皮細胞に治療薬を特異的に標的化することができる。かかる方法は、リポソームにより運ばれる治療薬を上皮細胞に特異的に標的化するために使用されるリポソーム中に、claudinyn−5ポリペプチド特異的抗体またはその断片を組み込む段階を含む。かかる薬物送達システムは、当業者に公知のいずれかの技術を用いて設計することができる。かかる一実施形態において、claudinyn−5特異的抗体またはその断片を、化学療法薬、ラジオアイソトープ、またはプロドラッグに直接、結合させることが可能であり(組換えにより、または化学的に活性な作用物質を用いることにより)、その後前記コンジュゲートは治療措置において使用することができる。
TJタンパク質の崩壊を考慮して、移植される臓器における上皮および内皮透過性に対する通常の保存溶液の負の影響は一般的に知られている。これは、観察される組織損傷および浮腫の原因である。他の実施形態において、claudinyn−5発現のアゴニストを用いて、移植される臓器におけるTJの含有量および完全性を保持することができる。さらに好ましい実施形態は、移植される前記臓器の質を改善するために、保存溶液の成分としてかかるアゴニストを使用する方法である。claudinyn−5ポリペプチドの発現を刺激する、または著しく増加する化合物が、かかる一実施形態において使用される。かかる化合物は、claudinyn−5の発現を増加させる試験物質についてスクリーニングすることによって同定することが可能であり、そのスクリーニングは、細胞を試験物質と接触させる段階と、試験物質に暴露した後の細胞中のclaudinyn−5の発現を、非暴露細胞中の発現と比較する段階と、を含む。この実施形態において、claudinyn−5ポリペプチドの活性も、タンパク質の活性を高める化合物を投与することにより、TJ機能を保持するために、高めることができる。かかる化合物は、claudinyn−5活性を高める試験物質についてスクリーニングすることによって同定することが可能であり、そのスクリーニングは、細胞を試験物質と接触させる段階と、試験物質に暴露した後の細胞中のclaudinyn−5活性を、非暴露細胞中の活性と比較する段階と、を含む。好ましくは、claudinyn−5活性は、上記の方法を用いて、TJの透過性を測定することにより決定される。
本発明は、1種または複数種の組織中の本発明のタンパク質の発現を調節することによって作製される動物モデルもまた提供する。かかる動物は、claudinyn−5の機能に特異的に関連する疾患の様々な病態生理学的側面の治療に潜在的に有用な候補分子を試験するためのin vivoアッセイ法を表すことから、多くの目的に有用である。かかるモデルの表現型の研究によって、claudinyn−5の欠乏によって引き起こされるまたはclaudinyn−5の欠乏と関連する、その他の同等のヒト疾患を同定することもできる。これらの動物は、claudinyn−5の過剰発現または不活性化を標的化するいずれかの方法で作製することができる。かかるモデルは、例えば、炎症性疾患および病状の治療に用いられる候補治療法および薬物の評価に非常に有用である。
他の実施形態において、本発明は、claudinyn−5の変化した発現と関連する疾患または障害を診断するために使用される。特に、制御されていない細胞透過性をもたらす、欠乏量のclaudinyn−5を有する患者を診断するのに有用である。かかる疾患および障害の例としては、限定されないが、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸症候群、アレルギー性喘息、膠芽腫、および腺腫性ポリープなどが挙げられる。この方法は、i)claudinyn−5ポリペプチドまたは核酸に選択的に結合することができる化合物を、生体試料と接触させる段階;ii)試料におけるclaudinyn−5のレベル、または他のいずれかの検出可能な特性を検出する段階;を含む。好ましくは、対照試料に対する、その試料におけるレベルまたは他の特性の差異によって、疾患もしくは障害の存在、または疾患もしくは障害を発生する性質が示される。その生体試料は、疾患または病状を有する疑いのある、または疾患または病状を発症するリスクのある個体から採取することが好ましい。好ましくは、生体試料は上皮細胞試料を含む。claudinyn−5に特異的なポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはその免疫学的活性断片を使用して、そのタンパク質のレベルを検出することができる。その抗体またはその断片は、例えば、蛍光性化合物、放射性化合物、もしくはその他の検出可能な化合物で検出可能に標識されることが好ましい。検出は、公知の免疫組織学的および免疫蛍光プロセスを用いて、直接または間接的に行うことができる。このために、本発明によるキットに含まれる試薬は、一般的に既知の分子、限定されないが、例えばアルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼなどの酵素、FITC、ローダミン、およびテキサスレッド(Texas-Red)などの蛍光染料で直接標識することができる。しかしながら、標識は、ビオチン、ジゴキシゲニン等の分子で標識した二次抗体を使用することによって間接的に行うこともでき、次いで二次試薬で検出される。claudinyn−5に相当する核酸プローブを使用する方法を用いて、例えば、公知のPCRまたはRT−PCR技術を用いて、特に「リアルタイム」PCRシステムで、claudinyn−5の発現を決定することもできる。
一方、本発明は、claudinyn−5の発現における調節(modulation)を特定の病状と関係付けるツールを提供する。このように、本発明は、かかる病状の新規な候補遺伝子を提供する。この実施形態においても、生体試料中のclaudinyn−5の発現レベルの決定によって、疾患状態を分類かつ/または特徴付けるためのin vivoマーカーについてのアッセイが提供される。かかる方法は、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸症候群、アレルギー性喘息、膠芽腫、結腸直腸腫および腺腫性ポリープなどの病状を診断または分類するために適用されることが好ましい。このように、本発明は、生体試料中のclaudinyn−5の量を定量化するのに有用な試験キットを包含する。そのキットは、少なくとも1種類の免疫結合性パートナー、例えばclaudinyn−5に特異的かつ検出可能なマーカーに結合されたモノクローナルまたはポリクローナル抗体を備える。これらのまたは他の病状を治療するために施される治療経過をモニターするため、かかるアッセイを適用することができる。このように、claudinyn−5の発現レベルを、病状、治療の指標、あるいは対象に直接投与されるまたは対象が環境でそれに暴露される物質の効果の指標として使用することができるいずれかの状況において、このアッセイを適用することができる。したがって、患者の病状を連続的にモニターし、病理試料中で測定されるclaudinyn−5ポリペプチドの定量化された量を、健康な個体の生体試料中で定量された量または同じ患者の前の分析と比較することができる。この実施形態では、このマーカーをイムノアッセイを含むいずれかの適切な方法によって測定することができる。それはまた、好ましくは、炎症部位から採取した組織および体液において測定することもできる。
本発明の更なる実施形態は、損なわれたTJ機能と関連する疾患および病状の治療に有用な新規な方法および組成物を提供することである。さらに好ましくは、claudinyn−5ポリペプチドまたはその断片は、損なわれたclaudinyn−5関連機能と関係する疾患、例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸症候群、アレルギー性喘息、膠芽腫、結腸直腸腫および腺腫性ポリープなどを治療するために使用することができる。かかる方法は、疾患または病状を有する哺乳動物に治療有効量のclaudinyn−5を投与することを含み、「有効量」とは、生理学的TJ機能を著しく回復させることができるclaudinyn−5の濃度を意味する。その組成物は、claudinyn−5ポリヌクレオチドを細胞に送達するために、本明細書に記載の当技術分野で公知の方法のいずれかを用いて投与することができる。上述のように同定されるclaudinyn−5ポリペプチドの発現または活性のいずれかのアゴニストもまた、この実施形態で使用することができる。かかる組成物は、生理食塩水溶液などの生理学的に許容される担体または患者に投与するのに生理学的に適切な他のバッファーと組み合わせて、個体に送達されることが好ましい。特定の病状に対して哺乳動物に投与されるであろう本発明の組成物の特定量は、患者の臨床症状、および体重、年齢、および投与経路などの他の因子に応じて異なるだろう。これらの組成物は任意に、1種または複数種の対象の化合物を含み得る。この同時投与は、同時に投与することによる、または別々に投与もしくは逐次投与することによるものである。これらの更なる成分のすべては、天然源から得られるか、または組換え遺伝子操作技術および/または化学修飾によって生成することができる。
更なる実施形態において、本発明は、非上皮細胞から「バイオ人工」上皮を作製する方法を提供する。本発明に従って作成される「バイオ人工」上皮は、それら自体で修復または再生することができない上皮の作製に様々な臨床用途を提供する。それは、例えば再建外科処置に、上皮損失に関する障害(遺伝的、外傷的または腫瘍学的理由のため)の治療に、または他の治療目的(例えば、火傷治療)に用いることができる。claudinyn−5に相当する核酸を使用する方法であって、「バイオ人工」上皮細胞が、前記核酸のトランスフェクト、その結果としての、上記の病状のいずれによっても冒されていない患者の自己細胞の再構築によって得られる方法がさらに好ましい。上皮細胞の損失と関連する障害、病状、または疾患の治療方法における、本発明の「バイオ人工」上皮細胞の作製での自己細胞の使用は、移植方法体系で通常観察される組織の拒絶反応のリスクを低減するか、または解消する。バイオ人工組織工学の方法は、一般的に当業者に知られている(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Machens H. G. et al., Cells Tissues Organs 167: 88-94 (2000))。
配列番号:18のタンパク質(内部指定クローン645730 181−16−1−0−G9−F)
クローン645730_181−16−1−0−G9−FのcDNA(配列番号:17)は、アミノ酸配列:MRLQGAIFVLLPHLGPILVWLFTRDHMSGWCEGPRMLSWCPFYKVLLLVQTAIYSWGYASYLVWKDLGGGLGWPLALPLGLYADQLTISWTVLVLFFTVHNPGLALLHLLLLYGLWSTALIWHPINKLAALLLLPYLAWLTVTSALTYHLWRDSLCPVHQPQPTEKSDを含む、配列番号:18のベンゾジアゼピン受容体3(BZRP−R3)タンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:18のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン645730_181−16−1−0−G9−F中に含まれる核酸によりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:17のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン645730_181−16−1−0−G9−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:17、配列番号:18、およびクローン645730_181−16−1−0−G9−Fの組成物に対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:18のタンパク質、BZRP−R3は、ヒト末梢性ベンゾジアゼピン受容体/イソキノリン結合タンパク質(PBR/IBP)(アクセッション番号Q9Y531)の新規な多型変異体である。BZRP-R3は、5つの膜貫通セグメント:LQGAIFVLLPHLGPILVWLFT、VLLLVQTAIYSVVGYASYLVW、GLYADQLTISWTVLVLFFTVH、GLALLHLLLLYGLVVSTALIW、およびLAALLLLPYLAWLTVTSALTYを表す。したがって、本発明の一部の実施形態は、膜貫通ドメインを含むポリペプチドに関する。さらに、BZRP-R3は、コレステロールに結合する11アミノ酸(VTSALTYHLWR)のストレッチを示す。したがって、本発明の好ましい実施形態は、コレステロール認識/相互作用ドメインのアミノ酸およびそれをコードするポリヌクレオチドを含む。
BZRP-R3は、ベンゾジアゼピンおよびイミダゾピリジン誘導体に結合することができるが、GABA神経伝達物質受容体とは異なる。BZRP-R3ポリペプチドはステロイド産生細胞に最も豊富に存在し、ミトコンドリア外膜上で主に見出される。BZRP-R3は、ミトコンドリア外膜/内膜接触部位に位置する、34-kDa孔形成(pore-forming)電圧依存性アニオンチャネルタンパク質と関連する。受容体に結合すると、BZRP-R3のリガンドは、in vitroおよびin vivoでステロイド産生細胞におけるステロイド合成を刺激する。BZRP-R3は、ミトコンドリア外膜から内膜へのコレステロールの輸送速度を増大することによってステロイドの形成を刺激する。
膜間のコレステロールの移動を仲介するその役割に加えて、BZRP-R3は、他のいくつかの生理学的機能、例えば細胞増殖および分化、走化性、ミトコンドリア生理機能、ポルフィリンおよびヘムの生合成、免疫応答、およびアニオン輸送などに関与している。さらに、BZRP-R3アゴニストは、強力な抗アポトーシス化合物である。
BZRP−R3は、ストレスおよび不安障害と関連する。BZRP-R3は、視床下部−脳下垂体−副腎系(HPA axis)、交感神経系、レニン-アンギオテンシン系、および神経内分泌系などのいくつかのストレス系の調節で役割を果たす。これらの系では、急性ストレスによって通常、BZRP-R3密度が増大し、一方、慢性ストレスによって通常、BZRP-R3密度が減少する。例えば、全般性不安障害(GAD)、恐慌性障害(PD)、全般性対人恐怖(GSP)、および心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、通常BZRP-R3密度が減少する。BZRP-R3は、脳において発現したグリア細胞である。さらに、BZRP-R3の発現は、神経変性疾患において、かつ神経毒性および外傷性−虚血性脳損傷後に増加する。BZRP-R3の発現は、慢性分裂病者において減少し、脳におけるBZRP-R3密度の減少が精神分裂病の病態生理に関与している可能性があることが示唆されている。しかしながら、BZRP-R3は、PSE患者(門脈‐大循環性脳症患者)由来の解剖された脳の組織において通常よりも高い。
BZRP-R3はミトコンドリアの活性を高め、アポトーシスを防ぎ、従って、腫瘍細胞増殖に関係する。BZRP-R3は優先的に、肝臓癌および乳癌で発現する。さらに、BZRP-R3は、癌の検出、診断、予後および治療に用いるツール/マーカーとして有用である。
様々な親和性を有するBZRP-R3に結合する多くのリガンドが記述されている。いくつかのベンゾジアゼピン、Ro 5-4864[4-クロロジアゼパム]、ジアゼパムおよび構造的に関連のある化合物は、強力かつ選択的なPBRリガンドである。外来性リガンドには、2-フェニルキノリンカルボキサミド(PK 11195系列)、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−アセトアミド(Alpidem系列)、ピリダジン、およびイソキノリン誘導体も含まれる。ポルフィリンおよびジアゼパム結合阻害剤(DBI)を含む、いくつかの内因性化合物は、BZRP-R3に結合する。
本発明の好ましい態様は、BZRP−R3ポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、ZRP−R3の発現を指示できるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。ZRP−R3の発現を指示できるポリヌクレオチドは、BZRP-R3遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、BZRP-R3コード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記載されている。前記宿主細胞により産生されるBZRP-R3タンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用される。
本発明の好ましい実施形態は、例えば、遺伝性痙性対麻痺、悪性症候群(NMS)、レット症候群、アルパース病、またはミトコンドリア脳筋症などのミトコンドリア関連ヒト疾患に関連して、この細胞器官の変化、トポロジーまたはモフォロジーを数値で視覚化するために、ミトコンドリアを標識するための、本発明のタンパク質またはその断片を用いた組成物および方法に関する。例えば、そのタンパク質は、タグ配列をコードする配列を有する枠内で真核細胞発現ベクター中に、本発明のタンパク質をコードするcDNAを挿入することによって容易に検出可能にすることができる。本発明のタグ付きタンパク質を発現する真核細胞は、ミトコンドリア関連疾患または病状を治療することができる薬物または遺伝子をin vitroでスクリーニングするために使用することもできる。
本発明の好ましい実施形態は、BZRP-R3に特異的な抗体を細胞と接触させる段階を含む、ミトコンドリアを検出する方法である。その細胞は固定化されるか、またはそうでなければ抗体に透過性であることが好ましい。その抗体は、限定されないが、蛍光標識、放射性原子、常磁性イオン、ビオチン、化学発光標識、または二次酵素もしくは結合段階によって検出できる標識を含む、検出可能ないずれかの成分で標識することが好ましい。本発明はさらに、上記に列挙した疾患などの、ミトコンドリア関連疾患を診断し、これらを他の疾患と区別する方法を提供する。
その他の実施形態において、本発明のタンパク質は、ステロイド産生細胞および/またはミトコンドリアに異種化合物を標的化するために使用される。かかる組換えcDNAは、例えばいずれかのベクター、ウイルスまたは非ウイルスベクターを用いて導入することができ、ウイルスベクターは、限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクターであることが可能である。例えば、これらの異種ポリヌクレオチドを用いて、ミトコンドリア遺伝子治療で核酸を送達すること、つまり欠損ミトコンドリア遺伝子を交換し、かつ/またはミトコンドリア遺伝子の有害な発現を抑制することができる。
本発明の他の好ましい実施形態は、BZRP-R3の発現を調節する化合物をスクリーニングする方法である。この方法は、i)細胞を試験化合物と接触させる段階;ii)試験化合物に暴露した後の細胞におけるBZRP-R3ポリペプチドのレベルを、非暴露対照細胞におけるレベルと比較する段階;を含む。BZRP-R3ポリペプチドのレベルは、ノーザンブロット法またはRT−PCRなどの当技術分野で一般的な方法によって、BZRP−R3のmRNAを検出することによって推測される。BZRP−R3ポリペプチドのレベルは、ウエスタンブロット法または免疫蛍光などの当技術分野で一般的な、抗体に基づく方法によっても検出することができる。BZRP−R3の発現を増加させる試験化合物は、本明細書に記載のようにアゴニストとして有用である。BZRP−R3の発現を減少させる試験化合物は、本明細書に記載のようにアンタゴニストとして有用である。BZRP−R3のアンタゴニストには、配列番号:18のタンパク質をコードするmRNAの発現レベルを減少させる作用物質が含まれる。これらには、限定されないが、RNAi、本発明のタンパク質を消化することができる1種または複数種のリボザイム、またはBZRP−R3をコードするmRNAとハイブリダイズすることができるアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA、RNAとして、ウイルスエンベロープ受容体タンパク質を含有するプロテオリポソーム中に閉じ込められたDNA[その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる Kanoda, Y. et al. (1989) Science 243: 375]として、または標的細胞において発現して、アンチセンスDNAもしくはRNAを提供することができるベクターの一部として、投与することができる。特定の細胞型で発現されるベクターは、当技術分野で公知である。代替方法としては、DNAは担体と共に注入することができる。担体としては、サイトカインなどのタンパク質、例えばインターロイキン2またはポリリジン−糖タンパク質担体が挙げられる。担体タンパク質、ベクター、およびポリリジン担体系を製造かつ使用する方法は当技術分野で公知である。代替方法としては、アンチセンス分子をコードする核酸を金ビーズ上にコーティングし、例えば遺伝子銃で皮膚に導入することができる[その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるUlmer, J. B. et al. (1993) Science 259: 1745]。
本発明の好ましい実施形態は、BZRP−R3 ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングする方法である。かかる方法は、BZRP−R3活性のアゴニストおよびアンタゴニストを発生させるのに有用である。この方法は、i)結合を生じさせる条件下で、BZRP−R3ポリペプチドまたはその断片を、試験化合物と接触させる段階;ii)前記試験化合物の結合を検出する段階;を含む。BZRP−R3に特異的な標識抗体との競合など、当技術分野で一般的ないずれかの方法によって、または各試験物質を直接標識することによって、結合を検出することができる。かかる方法の一実施例において、BZRP−R3ポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドが、真核生物または原核生物宿主細胞に形質転換される。その形質転換細胞は生細胞または固定化細胞であることが可能である。BZRP−R3ポリペプチドに結合する候補である薬物または化合物は、当業者によく知られている結合アッセイにおいて、かかる形質転換細胞に対してスクリーニングされる。代替方法としては、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる1984年9月13日公開のGeysen H. N.による国際特許出願公開第84/03564号に教示されているアッセイを用いて、BZRP−R3ポリペプチドまたはその断片に結合親和性を示すペプチド化合物をスクリーニングすることができる。他の実施形態では、中和抗体を用いた競合薬物スクリーニングアッセイは、BZRP−R3ポリペプチドまたはその断片に結合する試験化合物と競合する。好ましい試験化合物は、ベンゾジアゼピン類、例えばジアゼパム(つまり、バリウム)、トリアゾロベンゾジアゼピン、およびアジナゾラム(adinazolam)ならびにその修飾型に含まれる化合物である。さらに好ましい試験化合物は、イミダゾピリジン類およびイソキノリン類にある。各試験化合物はさらに、個々にまたは分類として除外され得る。
様々な薬物スクリーニング技術を用いることができる。本発明のこの態様では、BZRP−R3ポリペプチドまたはその断片は、溶液中で遊離しており、固体担体に固定化され、細胞表面上で組換え発現されるか、または細胞表面に化学的に結合されるか、または細胞内に位置する。次いで、BZRP−R3ポリペプチドまたはその生物活性断片と、試験される化合物との間の結合性複合体の形成は、記載のように測定することができる。主題の本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質の活性を選択的に調節する組成物および方法を提供する。BZRP−R3を調節することによって、BZRP−R3に関連する疾患または生化学的異常を上手く防ぎ、処置し、または管理することができる。アゴニスト化合物は、細胞中でBZRP−R3ポリペプチドの量を増加させるか、またはBZRP−R3の生物活性を高める化合物である。本発明の好ましい実施形態は、i)上述のように、BZRP−R3に結合する試験物質をスクリーニングする段階;ii)BZRP−R3の生物活性を検出する段階;を含む、BZRP−R3に結合するアゴニストをスクリーニングする方法である。この方法は、インタクトな細胞において行われることが好ましい。その細胞は、精巣または卵巣細胞などのステロイド産生細胞であることがさらに好ましい。好ましくは、BZRP−R3の生物活性は、試験物質に暴露する前および後の細胞から放出されるステロイドホルモンの濃度を測定することにより決定される。BZRP−R3のアゴニストは、細胞からのステロイドホルモンの放出を増加させるだろう。アンタゴニスト化合物は、細胞中のBZRP−R3ポリペプチドの量を減少させる、またはBZRP−R3の生物活性を減少させる化合物である。本発明のその他の好ましい実施形態は、i)上述のように、BZRP−R3に結合する試験物質をスクリーニングする段階;ii)BZRP−R3の生物活性を検出する段階;を含む、BZRP−R3に結合するアンタゴニストをスクリーニングする方法である。この方法はインタクトな細胞において行われることが好ましい。その細胞は、精巣または卵巣細胞などのステロイド産生細胞であることがさらに好ましい。好ましくは、BZRP−R3の生物活性は、試験物質に暴露する前および後の細胞から放出されるステロイドホルモンの濃度を測定することにより決定される。BZRP−R3のアンタゴニストは、細胞からのステロイドホルモンの放出を減少させるだろう。
本発明のタンパク質の発現または活性を低減または抑制することができるアンタゴニストは、高レベルのBZRP−R3、増加した細胞増殖または減少したアポトーシス、および増加したコレステロール輸送に関連する疾患の治療に有用である。このように、主題の発明は、限定されないが、癌、特に肝臓癌および乳癌、および門脈‐大循環性脳症を含む、様々な疾患または障害を治療するための方法を提供する。ステロイド産生細胞のミトコンドリアへのコレステロール輸送が増加すると、プロゲステロン、テストステロン、およびエストロゲンなどのステロイドホルモンの産生が通常よりも高くなる。ステロイドホルモンのレベルが異常に高いと、副腎皮質フィードバックメカニズムの乱れ、および視床下部および下垂体からの刺激ホルモンの産生不足が引き起こされる。BZRP−R3およびステロイド遺伝子を抑制することによってゴナドトロピン放出ホルモンなどの刺激ホルモンのレベルが高められる。
代替方法としては、主題の発明は、BZRP−R3ポリペプチドのレベルの減少およびステロイドホルモン放出の減少に関連する疾患または障害をそのアゴニストを用いて治療する方法を提供する。かかる方法は、細胞をBZRP−R3アゴニストと接触させる段階を含む。この方法は、細胞をBZRP−R3のアゴニストと接触させる段階を含む。このように、主題の発明は、限定されないが、精神分裂病、慢性ストレス、GAD、PD、GSPおよびPTSDを含む障害を治療する方法を提供する。BZRP−R3のアゴニストによって治療される他の障害としては、細胞増殖の減少に関連する疾患、例えば発達遅延が挙げられる。さらに、BZRP−R3が細胞中にコレステロールを輸送できることから、BZRP−R3アゴニストを用いて、細胞中へのコレステロール輸送を増加させることもできる。コレステロール輸送の不足に関連する疾患としては、類脂質副腎皮質過形成、卵巣嚢胞、ステロイド産生細胞における異常脂質沈着が挙げられる。ミエリンおよびミエリン形成に対するコレステロールの必要性を反映する障害としては、アルツハイマー病、多発性硬化症、脊椎損傷、および脳発達神経障害(brain development neuropathy)が挙げられる。BZRP−R3レベルの減少と関連する障害を治療する方法は、BZRP−R3の発現または活性を刺激するアゴニストを導入することによって実施される。
さらに、ミトコンドリア活性の欠損から生じる障害は、BZRP−R3に対するアゴニストで治療することができる。ミトコンドリア活性の欠損によって代わりに、またはさらに、細胞および組織を損傷する可能性を有する高反応性フリーラジカルが生成される可能性がある。これらのフリーラジカルには、スーパーオキシド、パーオキシナイトライトおよびヒドロキシルラジカルなどの反応性酸素種(ROS))、および細胞に対する毒性があり、かつアポトーシスを生じさせる他の反応性種が含まれる。例えば、酸素フリーラジカルを誘導する脂質過酸化反応は、数多くの変性疾患、および虚血(つまり、脳卒中)で見られるような中枢神経系(CNS)損傷において十分に確立された病原性メカニズムである。変化したミトコンドリアの機能およびアポトーシスに関連する疾患には:アルツハイマー病、糖尿病、パーキンソン病、ハンチントン病、ジストニー、レーバー遺伝性視神経症、精神分裂病、ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中が含まれる。
さらに好ましい実施形態は、培養中の細胞のアポトーシスを抑制する方法を包含する。この方法は、BZRP−R3に対するアゴニストと培養中の細胞と接触させる段階を含む。かかる方法は、1次ニューロンおよびリンパ球など、周知であるがアポトーシスを受ける細胞を培養するのに有用である。
一実施形態において、細胞中のBZRP−R3のレベルは、BZRP−R3ポリペプチドまたはその生物活性断片をコードする核酸を標的細胞型に導入することによって増加される。かかる方法において有用なベクターは、かかる核酸を標的組織に導入する方法と同様に当業者に公知である。
BZRP−R3の活性を低減または抑制することができる抗体または他のポリペプチドは、単離され、続いて精製された状態で得られる。代替方法としては、BZRP−R3の活性を抑制または低減することができる抗体または他のポリペプチドを、標的細胞中で組換えにより発現させて、調節効果を提供することができる。さらに、BZRP−R3の活性を抑制または低減する化合物は、薬物送達が望まれる付近に植込まれた生分解性ポリマー中に組み込まれる。例えば、生分解性ポリマーは腫瘍部位に植込まれるか、または一方、アンタゴニスト/アゴニストを含有する生分解性ポリマーが植込まれ、化合物を全身的にゆっくりと放出することができる。生分解性ポリマー、およびそれらの使用は当業者に公知である(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるBrem et al. (1991) J. Neurosurg. 74: 441-446参照)。
他の実施形態において、本発明は、本発明のタンパク質をコードするmRNAの発現レベルを検出するための方法および組成物を提供する。BZRP−R3のmRNAレベルの定量化は、本発明のタンパク質の変化した発現に関連する疾患の診断または予後に有用である。BZRP−R3をコードするmRNAの検出および定量化のアッセイは、当技術分野でよく知られている(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるManiatis, Fitsch and Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual (1982),またはCurrent Procotols in Molecular Biology, Ausubel, F. M. et al. (Eds), Wiley & Sons, Inc.参照)。
BZRP−R3のmRNAを検出するためのポリヌクレオチドプローブまたはプライマーは、配列番号:17のcDNAから設計することができる。プローブおよびプライマーを設計する方法は、当技術分野で公知である。その他の実施形態では、主題の発明は、細胞中での本発明のタンパク質のmRNAを検出するための診断キットを提供する。そのキットは、PCRアッセイにおいて本発明のポリヌクレオチドを検出するためのオリゴヌクレオチドプライマーの1つまたは複数の容器と、in situハイブリダイゼーションもしくはノーザン分析NによりBZRP−R3のmRNAを検出するためのポリヌクレオチドプローブの1つまたは複数の容器とを有するパッケージを備える。キットは任意に、様々なハイブリダイゼーションアッセイで使用される様々な試薬の容器を含み得る。そのキットはまた、任意に、以下のアイテム:重合酵素、バッファー、説明書、対照、または検出標識のうちの1つまたは複数を含み得る。キットは任意に、本発明に従ってハイブリダイゼーションアッセイ法を実施するための、適切な割合で共に混合された試薬の容器もまた含み得る。試薬容器は、主題の方法を実施する際に、測定段階が不要となる単位量で試薬を含有することが好ましい。
他の実施形態において、本発明は、特定の生体試料中に存在する本発明のタンパク質のレベルを検出かつ定量化するための方法および組成物に関する。これらの方法は、本発明のタンパク質の変化したレベルに関連する疾患の診断または予後に有用である。本発明のタンパク質を検出する診断アッセイは、器官または組織切片からの細胞の、または腫瘍または正常組織からの細胞の吸引液の生検、in situアッセイを含み得る。さらに、アッセイは、器官、組織、細胞、尿からの細胞抽出物、または血清または血液または他のいずれかの体液または抽出物で行われる。
BZRP−R3ポリペプチドを定量化するアッセイは、当技術分野でよく知られている方法に従って行われる。通常、これらのアッセイは、本発明のタンパク質のリガンドまたは本発明のタンパク質もしくはその断片を特異的に認識する抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)と試料を接触させる段階と、試料中に存在する本発明のタンパク質とリガンドまたは抗体との間に形成される複合体を検出する段階と、を含む。リガンドおよび抗体の断片もまた、これらの断片がBZRP−R3ポリペプチドと特異的に相互作用することができるという条件で、結合アッセイにおいて使用することができる。さらに、BZRP−R3に結合するリガンドおよび抗体は、当技術分野で公知の方法に従って標識することができる。主題の発明において有用な標識としては、限定されないが、酵素標識、放射性標識、常磁性標識、化学発光標識が挙げられる。一般的な技術は、その開示内容全体が本明細書に組み込まれるKennedy, J. H., et al. (1976) Clin. Chim. Acta 70: 1-31;およびSchurs, A. H. et al. (1977) Clin. Chim. Acta 81: 1-40に記述されている。
主題の発明は、転移性腫瘍塊を同定するための方法および組成物もまた提供する。本発明のこの態様において、BZRP−R3ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合するポリペプチドまたは抗体を、転移性腫瘍塊を同定するためのマーカーとして使用することができる。胸または肝臓から生じる転移性腫瘍は、BZRP−R3ポリペプチドを過剰発現するのに対して、新たに形成する腫瘍、または他の組織から生じる腫瘍は、BZRP−R3を保持しないと推測される。
配列番号:20のタンパク質(内部指定クローン646762 181−21−2−0−A3−F)
クローン646762_181−21−2−0−A3−FのcDNA(配列番号:19)は、アミノ酸配列:MRLQGAIFVLLPHLGPILVWLFTRDHMSGLCEGPRMLSWCPFYKVLLLVQTAIYSWGYASYLVWKDLGGGLGWPLALPLGLYAVQLTISWTVLVLFFTVHNPGLALLHLLLLYGLWSTALIWHPINKLAALLLLPYLAWLTVTSALTYHLWRDSLCPVHQPQPTEKSDを含む、配列番号:20のベンゾジアゼピン受容体4(BZRP-R4)タンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:20のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローンクローン646762_181−21−2−0−A3−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:17のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン646762_181− 21−2−0−A3−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:19、配列番号:20、およびクローン646762_181−21−2−0−A3−Fの組成物に対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:20のタンパク質、BZRP−R4は、ヒト末梢性ベンゾジアゼピン受容体/イソキノリン結合タンパク質(PBR/IBP)(アクセッション番号Q9Y531)の新規な多型変異体である。BZRP−R4は、5つの膜貫通セグメント:LQGAIFVLLPHLGPILVWLFT、VLLLVQTAIYSWGYASYLVW、LYAVQLTISWTVLVLFFTVHN、LALLHLLLLYGLVVSTALIWH、およびLAALLLLPYLAWLTVTSALTYを表す。したがって、本発明の一部の実施形態は、膜貫通ドメインを含むポリペプチドに関する。さらに、BZRP−R4は、コレステロールに結合する11アミノ酸(VTSALTYHLWR)のストレッチを示す。したがって、本発明の好ましい実施形態は、コレステロール認識/相互作用ドメインのアミノ酸およびそれをコードするポリヌクレオチドを含む。
BZRP−R4は、ベンゾジアゼピンおよびイミダゾピリジン誘導体に結合することができるが、GABA神経伝達物質受容体とは異なる。BZRP−R4ポリペプチドはステロイド産生細胞に最も豊富に存在し、ミトコンドリア外膜上で主に見出される。BZRP−R4は、ミトコンドリア外膜/内膜接触部位に位置する、34-kDa孔形成(pore-forming)電圧依存性アニオンチャネルタンパク質と関連する。受容体に結合すると、BZRP−R4のリガンドは、in vitroおよびin vivoでステロイド産生細胞におけるステロイド合成を刺激する。BZRP−R4は、ミトコンドリア外膜から内膜へのコレステロールの輸送速度を増大することによってステロイドの形成を刺激する。
膜間のコレステロールの移動を仲介するその役割に加えて、BZRP−R4は、他のいくつかの生理学的機能、例えば細胞増殖および分化、走化性、ミトコンドリア生理機能、ポルフィリンおよびヘムの生合成、免疫応答、およびアニオン輸送などに関与している。さらに、BZRP−R4アゴニストは、強力な抗アポトーシス化合物である。
BZRP−R4は、ストレスおよび不安障害と関連する。BZRP−R4は、視床下部-脳下垂体-副腎系(HPA axis)、交感神経系、レニン-アンギオテンシン系、および神経内分泌系などのいくつかのストレス系の調節において役割を果たす。これらの系では、急性ストレスによって通常、BZRP−R4密度が増大し、一方、慢性ストレスによって通常、BZRP−R4密度が減少する。例えば、全般性不安障害(GAD)、恐慌性障害(PD)、全般性対人恐怖(GSP)、および心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、通常BZRP−R4密度が減少する。BZRP−R4は、脳において発現したグリア細胞である。さらに、BZRP−R4の発現は、神経変性疾患において、かつ神経毒性および外傷性−虚血性脳損傷後に増加する。BZRP−R4の発現は、慢性分裂病者において減少し、脳におけるBZRP−R4密度の減少が精神分裂病の病態生理に関与している可能性があることが示唆されている。しかしながら、BZRP−R4は、PSE患者(門脈‐大循環性脳症患者)由来の解剖された脳の組織において通常よりも高い。
BZRP−R4はミトコンドリアのミトコンドリアの活性を高め、アポトーシスを防ぎ、従って、腫瘍細胞増殖に関係する。BZRP−R4は優先的に、肝臓癌および乳癌で発現する。さらに、BZRP−R4は、癌の検出、診断、予後および治療に用いるツール/マーカーとして有用である。
様々な親和性を有するBZRP−R4に結合する多くのリガンドが記述されている。いくつかのベンゾジアゼピン、Ro 5-4864[4-クロロジアゼパム]、ジアゼパムおよび構造的に関連のある化合物は、強力かつ選択的なPBRリガンドである。外来性リガンドには、2-フェニルキノリンカルボキサミド(PK 11195系列)、イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−アセトアミド(Alpidem系列)、ピリダジン、およびイソキノリン誘導体も含まれる。ポルフィリンおよびジアゼパム結合阻害剤(DBI)を含む、いくつかの内因性化合物は、BZRP−R4に結合する。
本発明の好ましい態様は、BZRP−R4ポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、ZRP-R4の発現を指示できるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。ZRP-R4の発現を指示できるポリヌクレオチドは、BZRP−R4遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、BZRP−R4コード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記載されている。前記宿主細胞により産生されるBZRP−R4タンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用される。
本発明の好ましい実施形態は、例えば、遺伝性痙性対麻痺、悪性症候群(NMS)、レット症候群、アルパース病、またはミトコンドリア脳筋症などのミトコンドリア関連ヒト疾患に関連して、この細胞器官の変化、トポロジーまたはモフォロジーを数値で視覚化するために、ミトコンドリアを標識するための本発明のタンパク質またはその断片を用いた組成物および方法に関する。例えば、そのタンパク質は、タグ配列をコードする配列を有する枠内で真核細胞発現ベクター中に、本発明のタンパク質をコードするcDNAを挿入することによって容易に検出可能にすることができる。本発明のタグ付きタンパク質を発現する真核細胞は、ミトコンドリア関連疾患または病状を治療することができる薬物または遺伝子をin vitroスクリーニングするために使用することもできる。
本発明の好ましい実施形態は、BZRP−R4に特異的な抗体を細胞と接触させる段階を含む、ミトコンドリアを検出する方法である。その細胞は固定化されるか、またはそうでなければ抗体に透過性であることが好ましい。その抗体は、限定されないが、蛍光標識、放射性原子、常磁性イオン、ビオチン、化学発光標識、または二次酵素もしくは結合段階によって検出できる標識を含む、検出可能ないずれかの成分で標識することが好ましい。本発明はさらに、限定されないが、例えば上記に列挙した疾患などのミトコンドリア関連疾患を診断し、かかる疾患を他の疾患と区別する方法を提供する。
その他の実施形態において、本発明のタンパク質は、ステロイド産生細胞および/またはミトコンドリアに異種化合物(ポリヌクレオチド)を標的化するために使用される。かかる組換えcDNAは、例えばいずれかのベクター、ウイルスまたは非ウイルスベクターを用いて導入することができ、ウイルスベクターは、限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクターであることが可能である。例えば、これらの異種ポリヌクレオチドを用いて、ミトコンドリア遺伝子治療で核酸を送達すること、つまり欠損ミトコンドリア遺伝子を交換し、かつ/またはミトコンドリア遺伝子の有害な発現を抑制することができる。
本発明の他の好ましい実施形態は、BZRP−R4の発現を調節する化合物をスクリーニングする方法である。この方法は、i)細胞を試験化合物と接触させる段階;ii)試験化合物に暴露した後の細胞中のBZRP−R4ポリペプチドのレベルを、非暴露対照細胞中のレベルと比較する段階;を含む。ZRP-R4ポリペプチドのレベルは、ノーザンブロット法またはRT-PCRなどの当技術分野で一般的な方法によって、BZRP−R4のmRNAを検出することによって推測される。BZRP−R4ポリペプチドのレベルは、ウエスタンブロット法または免疫蛍光などの当技術分野で一般的な、抗体に基づく方法によっても検出することができる。BZRP−R4の発現を増加させる試験化合物は、本明細書で述べているようにアゴニストとして有用である。BZRP−R4の発現を減少させる試験化合物は、本明細書で述べているようにアンタゴニストとして有用である。
BZRP−R4のアンタゴニストには、配列番号:20のタンパク質をコードするmRNAの発現レベルを減少させる作用物質が含まれる。これらには、限定されないが、RNAi、本発明のタンパク質を消化することができる1種または複数種のリボザイム、またはBZRP−R4をコードするmRNAとハイブリダイズすることができるアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA、RNAとして、ウイルスエンベロープ受容体タンパク質を含有するプロテオリポソーム中に閉じ込められたDNA[その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kanoda, Y. et al. (1989) Science 243: 375]として、または標的細胞において発現して、アンチセンスDNAもしくはRNAを提供することができるベクターの一部として、投与することができる。特定の細胞型で発現されるベクターは、当技術分野で公知である。代替方法としては、DNAは担体と共に注入することができる。担体としては、サイトカインなどのタンパク質、例えばインターロイキン2またはポリリジン−糖タンパク質担体が挙げられる。担体タンパク質、ベクター、およびポリリジン担体系を製造かつ使用する方法は当技術分野で公知である。代替方法としては、アンチセンス分子をコードする核酸を金ビーズ上にコーティングし、例えば遺伝子銃で皮膚に導入することができる[その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Ulmer, J. B. et al. (1993) Science 259: 1745]。
本発明の好ましい実施形態は、BZRP−R4ポリペプチドに結合する化合物をスクリーニングする方法である。かかる方法は、BZRP−R4活性のアゴニストおよびアンタゴニストを発生させるのに有用である。この方法は、i)結合を生じさせる条件下で、BZRP−R4ポリペプチドまたはその断片を、試験化合物と接触させる段階;ii)前記試験化合物の結合を検出する段階;を含む。BZRP−R4に特異的な標識抗体との競合など、当技術分野で一般的ないずれかの方法によって、または各試験物質を直接標識することによって、結合を検出することができる。かかる方法の一実施例において、BZRP−R4ポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドが真核生物または原核生物宿主細胞に形質転換される。その形質転換細胞は生細胞または固定化細胞であることが可能である。BBZRP−R4ポリペプチドに結合する候補である薬物または化合物は、当業者によく知られている結合アッセイにおいてかかる形質転換細胞対してスクリーニングされる。代替方法としては、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる1984年9月13日公開のGeysen H. N.による国際特許出願公開第84/03564号に教示されているアッセイを用いて、BZRP−R4ポリペプチドまたはその断片に結合親和性を示すペプチド化合物をスクリーニングすることができる。他の実施形態では、中和抗体を用いた競合薬物スクリーニングアッセイは、BZRP−R4ポリペプチドまたはその断片に結合する試験化合物と競合する。好ましい試験化合物は、ベンゾジアゼピン類、例えばジアゼパム(つまり、バリウム)、トリアゾロベンゾジアゼピン、およびアジナゾラム(adinazolam)ならびにその修飾型に含まれる化合物である。さらに好ましい試験化合物は、イミダゾピリジン類およびイソキノリン類である。各試験化合物はさらに、個々にまたは分類として除外され得る。
様々な薬物スクリーニング技術を用いることができる。本発明のこの態様では、BZRP−R4ポリペプチドまたはその断片は、溶液中で遊離しており、固体担体に固定化され、細胞表面上で組換えで発現されるか、または細胞表面に化学的に結合されるか、または細胞内に位置する。次いで、BZRP−R4ポリペプチドまたはその生物活性断片と、試験される化合物との間の結合性複合体の形成は、記述されるように測定することができる。
主題の本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質の活性を選択的に調節する組成物および方法を提供する。BZRP−R4を調節することによって、BZRP−R4に関連する疾患または生化学的異常を上手く防ぎ、処置し、または管理することが可能となる。アゴニスト化合物は、細胞中でBZRP−R4ポリペプチドの量を増加させるか、またはBZRP−R4の生物活性を高める化合物である。本発明の好ましい実施形態は、i)上述のように、BZRP−R4に結合する試験物質をスクリーニングする段階;ii)BZRP−R4の生物活性を検出する段階;を含む、BZRP−R4に結合するアゴニストをスクリーニングする方法である。この方法は、インタクトな細胞において行われることが好ましい。その細胞は、精巣または卵巣細胞などのステロイド産生細胞であることがさらに好ましい。好ましくは、BZRP−R4の生物活性は、試験物質に暴露する前および後の細胞から放出されるステロイドホルモンの濃度を測定することにより決定される。BZRP−R4のアゴニストは、細胞からのステロイドホルモンの放出を増加させるだろう。アンタゴニスト化合物は、細胞中のBZRP−R4ポリペプチドの量を減少させる、またはBZRP−R4の生物活性を減少させる化合物である。本発明のその他の好ましい実施形態は、i)上述のように、BZRP−R4に結合する試験物質をスクリーニングする段階;ii)BZRP−R4の生物活性を検出する段階;を含む、BZRP−R4に結合するアンタゴニストをスクリーニングする方法である。この方法はインタクトな細胞において行われることが好ましい。その細胞は、精巣または卵巣細胞などのステロイド産生細胞であることがさらに好ましい。好ましくは、BZRP−R4の生物活性は、試験物質に暴露する前および後の細胞から放出されるステロイドホルモンの濃度を測定することにより決定される。BZRP−R4のアンタゴニストは、細胞からのステロイドホルモンの放出を減少させるだろう。 本発明のタンパク質の発現または活性を低減または抑制することができるアンタゴニストは、高レベルのBZRP−R4、増加した細胞増殖または減少したアポトーシス、および増加したコレステロール輸送に関連する疾患の治療に有用である。このように、主題の発明は、限定されないが、癌、特に肝臓癌および乳癌、および門脈‐大循環性脳症を含む、様々な疾患または障害を治療するための方法を提供する。ステロイド産生細胞のミトコンドリアへのコレステロール輸送が増加すると、プロゲステロン、テストステロン、およびエストロゲンなどのステロイドホルモンの産生が通常よりも高くなる。ステロイドホルモンのレベルが異常に高いと、副腎皮質フィードバックメカニズムの乱れ、および視床下部および下垂体からの刺激ホルモンの産生不足が引き起こされる。BZRP−R4およびステロイド遺伝子を抑制することによって、ゴナドトロピン放出ホルモンなどの刺激ホルモンのレベルが高められる。
代替方法としては、主題の発明は、BZRP−R4ポリペプチドのレベルの減少およびステロイドホルモン放出の減少に関連する疾患または障害をそのアゴニストを用いて治療する方法を提供する。かかる方法は、細胞をBZRP−R4アゴニストと接触させる段階を含む。この方法は、細胞をBZRP−R4のアゴニストと接触させる段階を含む。このように、主題の発明は、限定されないが、精神分裂病、慢性ストレス、GAD、PD、GSPおよびPTSDを含む障害を治療する方法を提供する。BZRP−R4のアゴニストによって治療される他の障害としては、細胞増殖の減少に関連する疾患、例えば発達遅延が挙げられる。さらに、BZRP−R4が細胞中にコレステロールを輸送できることから、BZRP−R4アゴニストを用いて、細胞中へのコレステロール輸送を増加させることもできる。コレステロール輸送の不足に関連する疾患としては、類脂質副腎皮質過形成、卵巣嚢胞、ステロイド産生細胞における異常脂質沈着が挙げられる。ミエリンおよびミエリン形成に対するコレステロールの必要性を反映する障害としては、アルツハイマー病、多発性硬化症、脊椎損傷、および脳発達神経障害(brain development neuropathy)が挙げられる。BZRP−R4レベルの減少と関連する障害を治療する方法は、BZRP−R4の発現または活性を刺激するアゴニストを導入することによって実施される。
さらに、ミトコンドリア活性の欠損から生じる障害は、BZRP−R4に対するアゴニストで治療することができる。ミトコンドリア活性の欠損によって代わりに、またはさらに、細胞および組織を損傷する可能性を有する高反応性フリーラジカルが生成され得る。これらのフリーラジカルには、スーパーオキシド、パーオキシナイトライトおよびヒドロキシルラジカルなどの反応性酸素種(ROS)、および細胞に対する毒性があり、かつアポトーシスを生じさせる他の反応性種が含まれる。例えば、酸素フリーラジカルを誘導する脂質過酸化反応は、数多くの変性疾患、および虚血(つまり、脳卒中)で見られるような中枢神経系(CNS)損傷において十分に確立された病原性メカニズムである。変化したミトコンドリアの機能およびアポトーシスに関連する疾患には:アルツハイマー病、糖尿病、パーキンソン病、ハンチントン病、ジストニー、レーバー遺伝性視神経症、精神分裂病、ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中が含まれる。
さらに好ましい実施形態は、培養中の細胞のアポトーシスを抑制する方法を包含する。この方法は、BZRP−R4に対するアゴニストと培養中の細胞を接触させる段階を含む。かかる方法は、1次ニューロンおよびリンパ球など、周知であるがアポトーシスを受ける細胞を培養するのに有用である。
一実施形態において、細胞中のBZRP−R4のレベルは、BZRP−R4ポリペプチドまたはその生物活性断片をコードする核酸を標的細胞型に導入することによって増加される。かかる方法において有用なベクターは、かかる核酸を標的組織に導入する方法と同様に当業者には公知である。
BZRP−R4の活性を低減または抑制することができる抗体または他のポリペプチドは、単離され、続いて精製された状態で得られる。代替方法としては、BZRP−R4の活性を抑制または低減することができる抗体または他のポリペプチドを、標的細胞中にて組換えにより発現させて、調節効果を提供することができる。さらに、BZRP−R4の活性を抑制または低減する化合物は、薬物送達が望まれる付近に植込まれる生分解性ポリマー中に組み込まれる。例えば、生分解性ポリマーは腫瘍部位に植込まれるか、または一方、アンタゴニスト/アゴニストを含有する生分解性ポリマーが植込まれ、化合物を全身にゆっくりと放出することができる。生分解性ポリマー、およびそれらの使用は当業者に公知である(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるBrem et al. (1991) J. Neurosurg. 74: 441-446参照)。
他の実施形態において、本発明は、本発明のタンパク質をコードするmRNAの発現レベルを検出するための方法および組成物を提供する。BZRP−R4のmRNAレベルの定量化は、本発明のタンパク質の変化した発現に関連する疾患の診断または予後に有用である。BZRP−R4をコードするmRNAの検出および定量化のアッセイは、当技術分野でよく知られている(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるManiatis, Fitsch and Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual (1982), or Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. M. et al. (Eds), Wiley & Sons, Inc.参照)。
BZRP−R4のmRNAを検出するためのポリヌクレオチドプローブまたはプライマーは、配列番号:19のcDNAから設計することができる。プローブおよびプライマーを設計する方法は、当技術分野で公知である。その他の実施形態では、主題の発明は、細胞中の本発明のタンパク質のmRNAを検出するための診断キットを提供する。そのキットは、PCRアッセイにおいて本発明のポリヌクレオチドを検出するためのオリゴヌクレオチドプライマーの1つまたは複数の容器と、in situハイブリダイゼーションもしくはノーザン分析NによりBZRP−R4のmRNAを検出するためのポリヌクレオチドプローブの1つまたは複数の容器とを有するパッケージを備える。キットは任意に、様々なハイブリダイゼーションアッセイで使用される様々な試薬の容器を含み得る。そのキットはまた、任意に、以下のアイテム:重合酵素、バッファー、説明書、対照、または検出標識のうちの1つまたは複数を含み得る。キットは任意に、本発明に従ってハイブリダイゼーションアッセイ法を実施するための、適切な割合で共に混合された試薬の容器もまた含み得る。試薬容器は、主題の方法を実施する際に、測定段階が不要となる単位量で試薬を含有することが好ましい。
他の実施形態において、本発明は、特定の生体試料中に存在する本発明のタンパク質のレベルを検出かつ定量化するための方法および組成物に関する。これらの方法は、本発明のタンパク質の変化したレベルに関連する疾患の診断または予後に有用である。本発明のタンパク質を検出する診断アッセイは、器官または組織切片からの細胞の、または腫瘍または正常組織からの細胞の吸引液の生検、in situアッセイを含み得る。さらに、アッセイは、器官、組織、細胞、尿からの細胞抽出物、または血清または血液または他のいずれかの体液または抽出物で行われる。
BZRP−R4ポリペプチドを定量化するアッセイは、当技術分野でよく知られている方法に従って行われる。通常、これらのアッセイは、本発明のタンパク質のリガンドまたは本発明のタンパク質もしくはその断片を特異的に認識する抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)と試料を接触させる段階と、試料中に存在する本発明のタンパク質とリガンドまたは抗体との間に形成される複合体を検出する段階と、を含む。リガンドおよび抗体の断片もまた、これらの断片がBZRP−R4ポリペプチドと特異的に相互作用することができるという条件で、結合アッセイにおいて使用することができる。さらに、BZRP−R4に結合するリガンドおよび抗体は、当技術分野で公知の方法に従って標識することができる。主題の発明において有用な標識としては、限定されないが、酵素標識、放射性標識、常磁性標識、化学発光標識が挙げられる。一般的な技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるKennedy, J. H., et al. (1976) Clin. Chim. Acta 70: 1-31;およびSchurs, A. H. et al. (1977) Clin. Chim. Acta 81: 1-40に記述されている。
主題の発明は、転移性腫瘍塊を同定するための方法および組成物もまた提供する。本発明のこの態様において、BZRP−R4ポリペプチドまたはその断片に特異的に結合するポリペプチドまたは抗体を、転移性腫瘍塊を同定するためのマーカーとして使用することができる。胸または肝臓から生じる転移性腫瘍は、BZRP−R4ポリペプチドを過剰発現するのに対して、新たに形成する腫瘍、または他の組織から生じる腫瘍は、BZRP−R4を保持しないと考えられる。
配列番号:22のタンパク質(内部指定クローン420594 145−19−4−0−E7−F)
クローン420594 145−19−4−0−E7−FのcDNA(配列番号:21)は、アミノ酸配列:MPFLDIQKRFGLNIDRWLTIQSCEQPYKMAGRCHAFEKEWIECAHGIGYTRAEKECKIEYDDFVECLLRQKTMRRAGTIRKQRDKLIKEGKYTPPPHHIGKGEPWPを含む、配列番号:22の106アミノ酸Scolakinタンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:22のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン420594 145-19-4-0-E7-F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:21のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン420594 145-194-0-E7-F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本明細書に記載の生物活性を有する断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
Scolakin、配列番号:22のタンパク質は、15キロダルトンのNADHデヒドロゲナーゼサブユニットNDUFS5(Genbankエントリー名:AF020352)の新規な変異型である。
NADHデヒドロゲナーゼ(NADH:ユビキノンオキシドレダクターゼ、複合体I)は、ミトコンドリアの電子伝達鎖を構成する3つの複合体の鎖における最初の多サブユニット内膜タンパク質複合体である。ミトコンドリアの電子伝達系は、NADHから酸素への電子の伝達、およびエネルギーを必要とする細胞の多くの反応を操作するためのエネルギー源を提供するATP合成(酸化的リン酸化)とこの酸化との共役を担っている。NADHデヒドロゲナーゼは、NADHから2つの電子を受け取り、フラビン分子からユビキノンにその電子を渡すことによって、このプロセスにおける第1段階を達成し、鎖中の第2酵素複合体に電子を移行する。それは、電子の移行に関与する多数の補欠分子族、つまりフラビンモノヌクレオチド(FMN)および少なくとも6つの鉄‐硫黄クラスター(二核および四核)を含有する。NADHデヒドロゲナーゼは、多種多様なサイズおよび組成の約41ポリペプチドを含む、推定質量800kDaを有する3つの複合体の中で最も大きい複合体である。これらの複合体Iポリペプチドのうちの7つは、ミトコンドリアのDNAによってコードされ、残りは、ミトコンドリア中にトランスフェクトされる核遺伝子産物である。NADHデヒドロゲナーゼのポリペプチド組成物は、様々な哺乳動物種、例えばラット、ウサギ、雌ウシ、およびヒトにおいて非常に類似している。ヒトでは、NADHデヒドロゲナーゼの欠損は、ヒト脳筋症の最も多い原因の1つである。この酵素の欠損および変化した発現もまた、他の疾患病状、つまり神経変性疾患および癌に関連することが報告されている。さらに、ドキソルビシンなどの化学療法薬におけるキノン部位のNADHデヒドロゲナーゼ還元は、これらの薬物の抗腫瘍活性および/または変異原性に寄与すると考えられる。複合体Iのミトコンドリアにコードされるサブユニットにおける欠損が記述されている。しかしながら、比較的低いパーセンテージのヒト複合体欠損が、ミトコンドリアDNAの突然変異と関連し、それによって、相当する突然変異の大部分が、複合体Iの核コードのサブユニットの発現または活性に影響を及ぼすことが示唆されている。
本発明のタンパク質、Scolakinは、複合体Iの核コードのサブユニットの分類に属する。このサブユニットは、複合体Iの精製中に鉄−硫黄タンパク質画分(IP)の一部であり、この複合体の鉄−硫黄中心によって触媒される酸化還元反応に関与すると考えられる。NDUFS5は、電子伝達で機能する鉄−硫黄中心の1つを形成する、システイン残基4個を含有する。興味深いことに、Scolakinは、配列番号:22の23位でのグリシンからシステインへの置換のために5番目のシステインを含有する。Scolakinは、心臓、脳、骨格筋、肝臓、腎臓、および胎児心臓および脳、高い代謝活性を有するすべての組織において比較的高い発現率で広く発現し、複合体I欠損患者において臨床的に影響を及ぼす場合が多い。さらに、Scolakin発現は、高い代謝必要量も有する癌組織および不死化細胞株において高い。Scolakinは、筋障害、神経変性疾患および癌において役割を果たす。
本発明の実施形態は、配列番号:22のScolakinポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するScolakinポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、Scolakinポリペプチドをコードする配列番号:21のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するScolakinポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、Scolakin発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)試験する物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のScolakin発現を非暴露対照細胞の発現と比較する段階;を含む方法に関する。
一実施形態において、23位および105位に相当する配列番号:21のヌクレオチド位152および398におけるGからTへの置換およびCからTへの置換を有し、その結果として、グリシン残基がシステインによって23位で、アルギニン残基がトリプトファンによって105位でそれぞれ置換される、配列番号:22をコードする配列を、DNAゲノタイピングに用いることができる。この遺伝子座をゲノタイピングすることは、例えば親子鑑定または法医学分析に用いられるDNAフィンガープリント法において対象となり得る。それはまた、好ましくはミトコンドリアの障害に関連する病状、特に複合体I単独欠損を有する病状における遺伝的関連研究に使用することができる。
その他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチド配列を、患者の病状もしくは疾患の治療のための、理想的な薬物(例えば、Scolakinのアゴニストまたはアンタゴニスト)の選択または薬物用量の選択を助けるために、薬理ゲノミクス用途に使用することができる。例えば、一実施形態において、本発明は、患者をゲノタイピングし、Scolakinの23位および105位のアミノ酸をコードするヌクレオチドの同一性を決定し、23位および105位それぞれにシステイン残基およびトリプトファン残基を有するものにおいて優先的に有効であることが証明されている(例えば、これらの位置にシステインおよびトリプトファンを有するタンパク質のアイソフォームに、その薬物が優先的に結合することから)、薬物または投薬量の薬物を患者に投与する方法を提供する。その他の実施形態において、例えば、23位および105位に、それぞれシステインおよびトリプトファンを有する個体に、その薬物の投与した場合に伴う副作用が知られているため、アミノ酸23位および105位をコードするヌクレオチドについて、患者は遺伝子型を判定され、薬物は投与されない。
本発明の好ましい態様は、Scolakinポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、Scolakinの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。Scolakinの発現を指示することができるポリヌクレオチドは、Scolakin遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、Scolakinコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記載されている。前記宿主細胞により産生されるScolkinタンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用される。
他の実施形態は、Scolkinポリペプチドを作製する方法に関する。本発明のタンパク質は、本発明のタンパク質をコードする核酸配列を含む適切な発現ベクターをトランスフェクトされた宿主細胞において作製することができる。Scolakinのかかる発現ベクターの宿主細胞への導入は、限定されないが、塩化カルシウムまたは塩化リチウム処理、電気穿孔法、およびリポフェクションなどの様々な方法で実施することができる。多種多様な発現系のいずれかを用いて、組換えタンパク質を提供することができる。適切な発現媒体には、限定されないが、プラスミド、ウイルス粒子または昆虫細胞のバキュロウイルスが含まれる。発現媒体は宿主細胞ゲノムに組み込むことができる。任意に、誘導性発現ベクターを用いて、宿主細胞中の遺伝子の厳密に制御された発現を達成することができる。組換えタンパク質は宿主細胞から回収し、当業者によく知られているいずれかの技術によって精製することができる。好ましくは、本発明のタンパク質またはその断片に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。代替方法としては、固相技術を用いてScolakinを化学的に合成することができる。
更なる実施形態において、本発明は、ミトコンドリア脳筋症、アルパース病、遺伝性痙性対麻痺、悪性症候群(NMS)もしくはレット症候群などのミトコンドリア関連ヒト疾患に関連する、この細胞器官の変化、トポロジーまたはモフォロジーを数値で視覚化するために、ミトコンドリアを標識するためのScolakinまたはその断片を用いた組成物および方法を提供する。例えば、そのタンパク質は、タグ配列をコードする配列を有する枠内で真核細胞発現ベクター中に、本発明のタンパク質をコードするcDNAを挿入することによって容易に検出可能にすることができる。本発明の好ましい実施形態は、Scolakinに特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体を細胞と接触させる段階を含む、ミトコンドリアを検出する方法である。その細胞は固定化されるか、またはそうでなければ抗体に透過性であることが好ましい。その抗体は、蛍光化合物、放射性化合物、またはそうでなければ検出可能な化合物に一次的または二次的に結合されることが好ましい。
他の実施形態では、配列番号:21のポリヌクレオチドまたはその断片が、ミトコンドリアに組換えDNA分子分子を標的化するために用いられる。例えば、キメラポリヌクレオチドは、治療対象のポリヌクレオチドに、組換えによりまたは化学的に融合された本発明のポリヌクレオチド配列で構成されるキメラポリヌクレオチドによって、ミトコンドリアに特異的に治療用ポリヌクレオチドを送達することが可能となる。かかるキメラ分子はおそらく、限定されないが上記の障害を含むミトコンドリア機能障害が原因の疾患を治療かつ/または予防するための、ミトコンドリア活性を回復または調節する遺伝子治療において特別に興味深いだろう。
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける本発明のタンパク質をコードするmRNAの発現レベルを検出する組成物および方法を提供する。ScolakinのmRNAレベルの定量化は、タンパク質の異常発現と関連する疾患または病状の診断に、または本明細書で述べたように治療的介入中にScolakinの調節をモニターするのに有用である。mRNAの検出および定量化のアッセイは当技術分野でよく知られている。好ましい方法は、対象の生体試料からRNAを単離する段階と、定量的RT−PCRによりScolakinのmRNAレベルを測定する段階と、対象試料中の発現を対照試料の発現と比較する段階と、を含む。ハイブリダイゼーションまたはPCR増幅によるScolakinのmRNAの検出に使用されるポリヌクレオチドプローブまたはプライマーは、当技術分野でよく知られている方法によって、配列番号:21のポリヌクレオチドから設計することができる。
他の実施形態では、本発明は、Scolakinを検出し、生体試料中のその発現レベルを定量化するための方法および組成物に関する。これらの方法は、本発明のタンパク質の変化した発現または異常発現によって特徴付けられる病状または疾患の診断に、またはScolakin、アゴニストまたはアンタゴニストで治療される対象をモニターするアッセイにおいて有用である。好ましい方法は、哺乳動物の対象、好ましくはヒトからの生体試料と、Scolakinに特異的に結合する抗体とを接触させる段階と、健康な対象の代表的な対照レベルと比較して、対象試料中のScolakinのレベルを決定する段階とを含み、対照レベルに対する、対象試料中のScolakinのレベルが変化しているかまたは異常な場合には、その対象が疾患を有すること、または疾患を発症するリスクが高いことを示している。使用される抗体はモノクローナルまたはポリクローナル抗体のいずれかであることが可能であり、当業者によく知られている方法、例えばELISAまたはラジオイムノアッセイによって免疫複合体を定量化するために、直接または間接的に標識することができる。本発明のタンパク質を検出するための診断アッセイは、器官または組織切片からの細胞の、または腫瘍または正常組織からの細胞の吸引液の生検、in situアッセイを含み得る。さらに、アッセイは、器官、組織、細胞、尿からの細胞抽出物、または血清または血液または他のいずれかの体液または抽出物で行われる。
本発明の他の実施形態は、哺乳動物、好ましくはヒトのミトコンドリア複合体Iの欠損を治療または予防する方法であって、前記哺乳動物に本発明のタンパク質またはその断片または本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを投与することを含む方法に関する。標的器官、組織または細胞集団に本発明のポリヌクレオチド配列を送達するのに、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペス、またはワクシニアウイルスに由来する発現ベクターを使用することができる。細胞または組織にベクターを導入するための多くの方法を利用することができ、in vivoまたはex vivoでの使用に同様に適している。ex vivoでの治療の場合、対象から採取した幹細胞にベクターを導入し、同じ対象に再び自家移植するためにクローン増殖させる。トランスフェクションおよびリポソーム注入は、当技術分野でよく知られている方法を用いて達成される。Scolakinポリペプチドを含む薬剤組成物は、単独で、または無菌生体適合性担体中で投与される少なくとも1種類の他の薬剤、例えば安定化化合物と組み合わせて、投与することができる。それらは、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、皮下、鼻腔内、経腸または経直腸手段を含む多くの経路によって投与される。その組成物は、単独で、または他の作用物質、薬物もしくはホルモンと組み合わせて、対象に投与される。好ましくは、本発明の方法を用いて治療または予防される欠損複合体I活性と関連する疾患には、限定されないが、致死的新生児乳酸アシドーシス、運動不耐性および乳酸アシドーシを伴う筋障害、MELAS(ミトコンドリアミオパシー、脳障害脳障害、乳酸アシドーシス、および脳卒中様発作)、MERFF(ミオクローヌスてんかん、および赤色ぼろ線維)、小児期および成人期の脳筋症、リー症候群、アルパース病およびパーキンソン病が含まれる。
本発明の実施形態は、Scolakin発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)試験する物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のScolakin発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。Scolakinの発現は、当技術分野で一般的な方法または本明細書に含まれる方法によって、Scolakinポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することによって決定される。この方法の一例は、i)2つの同等の細胞試料を培養する段階;ii)その培養物のうちの一方に試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)指定の時間にどちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からのmRNAを精製する段階;v)各サンプルにおけるScolakinのmRNAレベルを、ノーザンブロット、RT−PCR、または当技術分野で一般的な他の方法によって比較する段階;を含む。本発明は、本明細書に記述されるような特異的ポリヌクレオチドプローブおよびプライマーの設計および使用を提供する。その他の例は、i)細胞の2つの同等の培養物を得る段階;ii)その培養物のうちの一方に試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からタンパク質を精製する段階;v)各試料におけるScolakinポリペプチドのレベルを、酵素免疫測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または当技術分野で一般的な他の方法により比較する段階;を含む。本発明は、本明細書で述べるような特異的抗体および抗体断片の設計および使用を提供する。Scolakin発現を増加する物質(アゴニストまたは活性化剤)を用いて、複合体Iの活性を高めることができる。Scolakinの発現を減少させる物質(アンタゴニストまたは阻害剤)を用いて、癌を治療または防ぐことができる。Scolakinアゴニストおよびアンタゴニストを利用する方法は本明細書に包含される。
本発明の好ましい実施形態は、Scolakinポリペプチドに結合する試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、結合を生じさせる条件下にて、Scolakinポリペプチドまたはその断片を試験物質と接触させる段階;ii)当技術分野で一般的な方法(例えば、免疫共沈降およびウエスタンブロット法などの競合的な抗体に基づく方法)によって、試験物質の結合を検出する段階;を含む。この方法には、抗体、抗体断片、細胞型特異的リガンドまたはその一部と結合する試験物質が含まれる。
本発明のさらに好ましい実施形態は、Scolakin活性のアゴニストについて、Scolakinに結合する試験物質をスクリーニングする方法であって、i)試験される物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後のScolakin生物活性を、非暴露対照細胞中の生物活性と比較する段階;を含む方法を提供する。Scolakin生物活性の測定は、Loeffenら(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、1999, J. Inher. Metab. Dis. Vol. 22, pp 19-28 )によって述べられているように、複合体Iの酵素活性を測定することによって間接的に評価することが可能であり、対照試料と比較して、試験試料における複合体I活性の増加は、試験物質のScolakinに対する活性化効果を示している。
本発明のさらに好ましい実施形態は、Scolakin活性のアンタゴニストについて、Scolakinに結合する試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)試験物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後のScolakin生物活性を、非暴露対照細胞中の生物活性と比較する段階;を含む。Scolakin生物活性の測定は、上述のように複合体Iの活性を測定することによって決定することが可能であり、対照試料と比較して、試験試料における複合体I活性の減少は、試験物質のScolakinに対する抑制効果を示している。
本発明のさらに他の目的は、複合体I活性の増加と関連する癌を治療または予防する方法を提供する。抗体、リボザイムまたはアンチセンスベクターまたはオリゴヌクレオチドを用いて、Scolakin発現または活性をin vivoで減少させることによって、これを達成することができる。代替方法としては、上述のように単離された、Scolakin発現または活性のアンタゴニストを使用することができ、かかる方法は、Scolakin発現または活性のアンタゴニストを対象に投与する段階を含む。生理学的に許容される溶液中のScolakinアンタゴニストは、当技術分野で一般的な方法によって、例えば経口的または非経口的に投与される。好ましくは、Scolakinアンタゴニストは、例えばアンタゴニストを細胞型特異的標的部位(例えば、リガンドまたは抗体断片)に結合させることによって、特定の細胞型に送達される。この方法は、限定されないが、心臓、卵巣,結腸、腎臓、膀胱、前立腺、膵臓、脳、胃、胸、肺、肝臓の癌および白血病を含む癌の予防および治療に有用である。
配列番号:24のタンパク質(内部指定クローン119658 105−067−2−0−H4−F−1)
クローン119658 105−067−2−0−H4−F−1のcDNA(配列番号:23)は、アミノ酸配列:MASRSSDKDGDSVHTASEVPLTPRTNSPDGRRSSSDTSKSTYSLTRRISSLESRRPSSPLIDIKPIEFGVLSAKKEPIQPSVLRRTYNPDDYFRKFEPHLYSLDSNSDDVDSLTDEEILSKYQLGMQHFSTQYDLLHNHLTVRVIEARDLPPPISHDGSRQDMAHSNPYVKICLLPDQKNSKQTGVKRKTQKPVFEERYTFEIPFLEAQRRTLLLTVVDFDKFSRHCVIGKVSVPLCEVDLVKGGHWWKALIPSSQNEVELGELLLSLNYLPSAGRLNVDVIRAKQLLQTDVSQGSDPFVKIQLVHGLKLVKTKKTSFLRGTIDPFYNESFSFKVPQEELENASLVFTVFGHNMKSSNDFIGRIVIGQYSSGPSETNHWRRMLNTHRTAVEQWHSLRSRAECDRVSPASLEVTを含む、配列番号:24の小胞ドッキング(Docking Of Vesicles)(DOV)タンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:24のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン119658 105−067−2−0−H4−F−1中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:23のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン119658 105−067−2−0−H4−F−1中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:23、配列番号:24、およびクローン119658 105−067−2−0−H4−F−1の組成物に対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
DOVの配列は、シナプトタグミンファミリーのタンパク質との類似性を含む。シナプトタグミンのように、DOVは、小胞のドッキングおよび融合に関与する小胞の膜貫通タンパク質である。カルシウム依存性の高次構造変化によって、DOVの細胞質部分を原形質膜上の特定のタンパク質とドッキングすることが可能となる。小胞がドッキングした結果、細胞外空間に小胞成分が放出される。DOVポリペプチドは、その細胞における興奮性カルシウム流入に応答する、シナプス前ニューロンからの神経伝達物質放出に必要とされる。
本発明の好ましい実施形態は、配列番号:24のDOVポリペプチド配列を含む組成物を包含する。
本発明の好ましい実施形態は、生物活性を有するDOVポリペプチド断片を含む組成物を包含する。
本発明の好ましい実施形態は、DOVポリペプチドをコードする配列番号:23のポリヌクレオチド配列を含む組成物を包含する。
本発明の好ましい実施形態は、生物活性を有するDOVポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物を包含する。
本発明の好ましい実施形態は、興奮分泌非連関(excitation-secretion uncoupling)ペプチド(ESUP)を包含する。
好ましいDOV ESUPは、以下のペプチド配列:LLHNHLTVRVIEARDLPPPISHDGSRQDMAHSNPYVKICLLPDQKNSKQTGVKRKTQKPVFEERYTFEIPFLEAQRRTLLLTVVDFDKFSRHCVIGKVS;GRLNVDVIRAKQLLQTDVSQGSDPFVKIQLVHGLKLVKTKKTSFLRGTIDPFYNESFSFKVPQEELENASLVFTVFGHNMKSSNDFIGRIVIG;および前記ペプチドの有効なESUP断片を含む。
本発明の好ましい実施形態は、DOVポリペプチドの阻害剤についてスクリーニングする方法であって、試験物質を細胞と接触させる段階と、非暴露対照細胞中の生物活性に対して、暴露細胞中のDOV生物活性を検出する段階と、を含む方法を提供する。好ましい細胞はニューロンである。好ましいアンタゴニストとしては、DOV特異的抗体およびその断片、ESUP、および小分子が挙げられる。
本発明の好ましい実施形態は、抗痙攣薬として、かつ痛みを防ぐために、DOVポリペプチドの阻害剤を使用する方法を提供する。これらの方法は、生理学的に許容される組成物中の有効量のDOV阻害剤を治療が必要な個体に投与する段階を含む。
好ましい実施形態は、i)抗体結合を生じさせる条件下にて、DOVポリペプチドの細胞質部分に特異的な抗体を生体試料と接触させる段階と、ii)抗体に結合していない混入物質を除去する段階とを含む、小胞を精製する方法を提供する。かかる抗体は、精製を可能にするために不溶性マトリックスに一次的または二次的に結合されることが好ましい。
好ましい実施形態は、i)結合を生じさせる条件下にて、DOVポリペプチドに特異的な抗体を生体試料と接触させる段階と、ii)その抗体を検出する段階とを含む、小胞を検出する方法を提供する。好ましい抗体は、蛍光化合物、放射性化合物、またはそうでなければ検出可能な化合物で共有結合的に標識される。
好ましい実施形態は、DOVの小胞部分に特異的な抗体を細胞と接触させる段階を含む、小胞の排出(extrusion)を検出する方法を提供する。好ましい抗体は、蛍光化合物、放射性化合物、またはそうでなければ検出可能な化合物で共有結合的に標識される。好ましい細胞はニューロンである。
本発明の好ましい実施形態は、生体試験試料を個体から採取する段階;試験試料におけるDOVの発現レベルを検出する段階;試験試料におけるDOVの発現レベルを対照試料のレベルと比較する段階;を含む、神経疾患を診断する方法を提供する。この方法によって示される神経疾患としては、発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ(PKC)、麻痺(部分または完全)および気分障害(鬱病、双極性障害、および精神分裂病)が挙げられる。
好ましい実施形態は、細胞に対する小胞のドッキングおよび融合能力を回復する方法であって、DOVポリペプチドを細胞に導入する段階を含む方法である。好ましくはこの方法は、PKC、部分および完全麻痺、鬱病、双極性障害および精神分裂病などの気分障害の治療および予防に適用される。DOVポリペプチドは、DOVポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される発現制御因子を含むポリヌクレオチドコンストラクトを導入することによって細胞に送達されることが好ましい。
本発明の好ましい態様は、DOVポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、DOVの発現を検出することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。DOVの発現を検出することができるポリヌクレオチドは、DOV遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、DOVコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記載されている。前記宿主細胞により産生されるDOVタンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用される。
一態様において、本発明は、第2組成物、好ましくは核酸、ポリペプチドまたは小分子を治療薬として、in vitroまたはin vivoのいずれかで標的生体細胞に送達するのに使用されるDOVポリペプチド組成物を包含する。この第2組成物は、所望の場合には、DOVポリペプチドに共有結合的または非共有結合的に結合または融合してもよい。そのDOVポリペプチド組成物はさらに、リポソームまたは脂質小胞による第2分子の送達を促進するための人工脂質または小胞成分を含有し得る。これらの方法においてDOVポリペプチドを使用する方法は、当技術分野で公知であり、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,074,844号および同第6,099,857号を包含する。好ましい実施形態では、培養中の細胞、好ましくはニューロン細胞への、第2組成物の送達、例えばリポソームにより仲介されるDNAランスフェクションを促進するために、DOVポリペプチドが使用される。
DOVポリペプチドは、シナプス前膜にシナプス前小胞がドッキングおよび/または融合するのを防ぐことによって、神経伝達物質の放出を抑制する方法においても有用である。これらのポリペプチドは、興奮分泌非連関ペプチド(ESUP)と呼ばれる。遮断活性を有するDOVの断片は、当技術分野で公知の方法(例えば、その開示内容全体が参照により組み込まれる米国特許第6,090,631号および同第6,169,074号参照)を用いて同定することができる。本発明のESUPは、神経伝達物質分泌前に細胞の原形質膜とドッキングする神経細胞の小胞にとって重要であるタンパク質三元複合体(「ドッキング複合体」)の集合の結合ドメインとしての役割を果たすペプチドに一次構造において相当する、合成および精製DOVペプチド断片を含む。最適な活性については、本発明のESUPは、約20アミノ酸の最低長さと、約100アミノ酸の最大長さを有するが、それより大きくても、または小さくてもよい。神経伝達物質放出の抑制に使用するのに好ましいDOV ESUPとしては、以下の配列:LLHNHLTVRVIEARDLPPPISHDGSRQDMAHSNPYVKICLLPDQKNSKQTGVKRKTQKPVFEERYTFEIPFLEAQRRTLLLTWDFDKFSRHCVIGKVS;GRLNVDVIRAKQLLQTDVSQGSDPFVKIQLVHGLKLVKTKKTSFLRGTIDPFYNESFSFKVPQEELENASLVFTVFGHNMKSSNDFIGRIVIG;および前記ペプチドの有効なESUP断片を含むものが挙げられる。DOV ESUPは、標的部位に共有結合されることが好ましい。好ましい標的部位は、結合部位と機能上相互作用することができる特定の細胞型(例えば、ニューロン)上に存在する細胞表面結合部位に対するリガンドを含む。好ましい標的部位は、神経成長因子およびその機能性誘導体である。代替方法としては、DOV ESUPをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することによって、DOV ESUPを細胞中で発現させることができる。ポリヌクレオチドを細胞に導入する方法は、本明細書およびその開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6117454号および同第6180602号に述べられているように、当業者に公知である。
本発明の他の実施形態は、DOVポリペプチドのアンタゴニストについてスクリーニングする方法を提供する。この方法は、試験物質を細胞と接触させる段階と、非暴露対照細胞中の生物活性に対して、暴露細胞中のDOV生物活性を検出する段階と、を含む。好ましい細胞はニューロンである。DOVポリペプチドは、効率的な神経伝達物質放出に必要とされる。このように、DOV活性は、非暴露細胞と比較して暴露細胞から放出される神経伝達物質のレベルを検出することによって決定することができる。かかるアッセイは、当技術分野で一般的であり、例えば抗体に基づくアッセイ(例えば、ELISA)、結合競合アッセイ(例えば、特定の神経伝達物質受容体に対して)およびカラーメトリックアッセイが挙げられる。好ましいアンタゴニストとしては、DOV特異的抗体およびその断片、ESUPおよび小分子が挙げられる。
DOVアンタゴニストは、痛みを抑えるか、または治療するために使用することができる。米国特許第5,989,545号(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、特にペプチドアンタゴニストが、神経毒の代わりに本発明のポリペプチドを使用することによって用いられる。さらに、本発明のDOVアンタゴニスを抗痙攣薬として使用してもよい。抗痙攣薬は有効に、脳卒中のケースの梗塞サイズを低減し、癲癇または神経毒に対する暴露から生じる発作などの有効な治療法である。これらの方法は、生理学的に許容される組成物中の有効量のDOVアンタゴニストを、治療が必要な個体に投与する段階を含む。
DOVは小胞の成分であり、このため、DOVに対する抗体は、小胞、好ましくは神経伝達物質を輸送する神経細胞小胞の検出に有用である。DOV特異的抗体は小胞の精製時に使用することができる。この方法は、i)抗体結合を生じさせる条件下にて、DOVポリペプチドの細胞質部分に特異的な抗体を生体試料と接触させる段階と、ii)抗体に結合していない混入物質を除去する段階と、を含む。好ましくは、かかる抗体は、精製を可能にするために不溶性マトリックスに一次的または二次的に結合されることが好ましい。DOV特異的抗体は、小胞に対するマーカーとして使用することもできる。例えば、小胞は、免疫組織化学などのアッセイにおいて検出することができる。DOVの小胞部分は、原形質膜で小胞内容物が排出された後で、細胞の表面に現れる。このように、DOVの小胞部分に特異的な抗体は、小胞の排出を検出およびモニターするのに有用である。この方法は、DOVの小胞部分に特異的な抗体を細胞と接触させる段階を含む。好ましい抗体は、例えば蛍光化合物、発光化合物、または放射標識化合物で検出可能に標識される。
DOVの発現(mRNAまたはタンパク質)レベルまたはDOVの突然変異型の検出はさらに、ある人が発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ(PKC)、麻痺(部分または完全)および気分障害(鬱病、双極性障害、および精神分裂病)などの神経疾患を発症するリスクがあるか、またはそれを有するかどうかを決定または診断するのに有用である。この方法は、生体試験試料を個体から採取する段階;試験試料におけるDOVの発現レベルを検出する段階;試験試料におけるDOVの発現レベルを対照試料(1つまたは複数)のレベルと比較する段階;を含む。神経疾患を持たない個体と比較して、DOV、mRNAまたはタンパク質の発現レベルの低下によって、個体が疾患を有すること、または疾患を発症するリスクがあることが示される。
DOVポリペプチドはさらに、小胞のドッキングおよび融合において欠陥のある細胞に導入される。この方法は、小胞のドッキングおよび融合が可能となるように、細胞にDOVポリペプチドを導入する段階を含む。本明細書に記載の方法により、DOVのコード配列に作動可能に連結される発現調節因子を含むポリヌクレオチドコンストラクトを細胞に導入することによって、DOVポリペプチドを細胞に導入することができる。好ましい細胞はニューロンである。DOVポリペプチドは好ましくは、PKC、麻痺(部分または完全)または気分障害(鬱病、双極性障害、精神分裂病)の治療に適用される。
配列番号:26のタンパク質(内部指定クローン500706437 204−5−2−0−C9−F)
クローン500706437_204−5−2−0−C9−FのcDNA(配列番号:25)は、アミノ酸配列:MDPARPLGLSILLLFLTEAALGDAAQEPTGNNAEICLLPLDYGPCRALLLRYYYDRYTQSCRQFLYGGCEGNANNFYTWEACDDLAGGを含む、配列番号:26のplacentalinをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:26のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン500706437_204−5−2−0−C9−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:25のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン500706437_204−5−2−0−C9−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:26、配列番号:25、およびクローン500706437_204−5−2−0−C9−Fの組成物に対して向けられている。以下に述べる方法で使用するのに好ましいplacentalinポリペプチドは、AQEPTGNNAEICLLPLDYGPCRALLLRYYYDRYTQSCRQFLYGGCEGNANNFYTWEACDDLAGGのアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質placentalinは、組織因子経路インヒビター2(TFPI-2、GenBankアクセッション番号P48307)の変異体である。アミノ末端側84個のアミノ酸はTFPI-2とplacentalinとの間で同一であり、カルボキシル末端側4個のアミノ酸は、placentalinに固有である。placentalinは、1つのシグナルペプチド(MDPARPLGLSILLLFLTEAALGDA)および1つのKunitzインヒビタードメイン(CLLPLDYGPCRALLLRYYYDRYTQSCRQFLYGGCEGNANNFYTWEACDDLA)を示す。Placentalinは、TFPI-2のカルボキシル末端に位置する、主要なヘパリン結合部位を欠いている。内皮細胞、ケラチン生成細胞および線維芽細胞を含む多種多様な細胞型が、正常な条件下でplacentalinを合成かつ分泌する。さらに、placentalinは臍静脈内皮細胞において高度に発現し、その発現レベルは。腫瘍の悪性度と負に相関する。
Placentalinは、プラスミン、トリプシン、血漿カリクレイン、第XIa因子、組織因子−第VIIa因子複合体、キモトリプシン、第IXa因子−ポリリジンおよびカテプシンGを阻害する広域セリンプロテアーゼ阻害剤である。Placentalinは、細胞外マトリックス(ECM)分解の調節、および血液凝固経路の調節のどちらにおいても主要な役割を果たす。特に、placentalinは、組織因子−第VIIa因子複合体、外因性凝固経路の細胞のイニシエーター、およびプラスミンを強力に阻害し、それによって、ECMの分解を担うpro-MMP(マトリックス金属プロテアーゼ)のプロセシングが阻害される。TFPI-2と異なり、placentalinは、ECMのヘパリン分子に結合していない循環変異体(circulating variant)である。
本発明の実施形態は、配列番号:26のplacentalinポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、セリンプロテアーゼに結合するまたはセリンプロテアーゼを阻害する生物活性を有するplacentalinポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、placentalinポリペプチドをコードする配列番号:25のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するplacentalinポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、配列番号:26のplacentalinポリペプチド配列または生物活性を有するplacentalinポリペプチド断片を認識する抗体を含む組成物に関する。好ましくは、その抗体は、placentalinのC末端側4個のアミノ酸の1つまたは複数のエピトープを認識し、TFPI-2には結合しないがplacentalinには結合する。
本発明の好ましい態様は、placentalinポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、placentalinの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。placentalinの発現を指示できるポリヌクレオチドは、placentalin遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、placentalinコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記載されている。前記宿主細胞により産生されるplacentalinタンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用される。
他の実施形態は、i)哺乳動物宿主細胞に、本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターをトランスフェクトする段階と、ii)その作製されたタンパク質を精製する段階;を含む、placentalinポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、placentalinまたはその一部に対して作られた抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムが形成される。またさらに好ましくは、その抗体は、placentalinには結合するが、TFPI-2には結合しない。
本発明の好ましい実施形態は、セリンプロテアーゼを結合させるためにplacentalinを使用する方法である。この方法は、placentalinの結合を可能にする条件下にて、placentalinポリペプチドまたはその活性断片をセリンプロテアーゼと接触させて、それによって、結合が前記セリンプロテアーゼの活性を抑制する段階を含む。好ましいセリンプロテアーゼとしては、プラスミン、トリプシン、血漿カリクレイン、第XIa因子、組織因子−第VIIa因子複合体、キモトリプシン、第IXa因子ポリリジンまたはカテプシンGが挙げられる。この方法は、in vitroでの使用(例えば、プロテアーゼの精製および検出およびタンパク分解の防止)ならびにin vivoでの方法(例えば、血液凝固および転移などの標的プロテアーゼ依存性病態の抑制)に適用することができる。
本発明の好ましい実施形態は、セリンプロテアーゼを精製する方法である。この方法は、結合を生じさせる条件下にて、placentalinポリペプチドまたはそのプロテアーゼ結合断片をセリンプロテアーゼと接触させる段階;混入物を除去する段階;セリンプロテアーゼをさらに厳密な条件を用いて溶出する段階;を含む。placentalinペプチドを固体または半固体マトリックス上に固定化して、試料の洗浄を容易にし、混入物を除去することが好ましい。好ましいセリンプロテアーゼとしては、プラスミン、トリプシン、血漿カリクレイン、第XIa因子、組織因子−第VIIa因子複合体、キモトリプシン、第IXa因子ポリリジンまたはカテプシンGが挙げられる。これらは、一般的な生物学的液体、例えば細胞培養液および体液(例えば、血清、血液、リンパ液、または脳脊髄液)から精製することができる。精製されたプロテアーゼは、生物学的アッセイ、および培養皿からの付着細胞の除去および部位特異的ペプチドの設計などの技術において有用である。
本発明の更なる実施形態は、試料から混入プロテアーゼを除去するために、placentalinまたはそのプロテアーゼ結合断片を使用する方法であって:i)placentalinまたはその一部を、単独または他のプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて、クロマトグラフィー担体に結合させる段階と、ii)不要なプロテアーゼを含有する試料をカラムに通す段階と、を含む方法に関する。その試料は例えば、タンパク質の試料または体液から作製された試料である。
本発明の一実施形態は、試料中の混入プロテアーゼを阻害するために、placentalinまたはその一部を使用する方法に関する。かかる方法は、placentalin活性を可能にする条件下にて、プロテアーゼ阻害量のplacentalinポリペプチドを溶液に添加する段階を含む。placentalinポリペプチドは、どのプロテアーゼの特異性も理解することなく、広範囲のプロテアーゼを阻害することができるプロテアーゼ阻害剤の「カクテル」に含まれることが好ましい。かかるプロテアーゼ阻害剤カクテルは、混入プロテアーゼによるタンパク質試料の分解を防ぐために、実験アッセイにおいて広く使用されている。
本発明の好ましい実施形態は、セリンプロテアーゼを検出する方法である。この方法は、placentalinポリペプチドまたはその活性断片をセリンプロテアーゼと接触させる段階と、placentalinを検出することによって、前記セリンプロテアーゼの存在を検出する段階と、を含む。placentalinポリペプチドは、例えば蛍光化合物、発光化合物、放射性化合物で検出可能に標識することが好ましい。この方法によって検出される好ましいセリンプロテアーゼとしては、プラスミン、トリプシン、血漿カリクレイン、第XIa因子、組織因子−第VIIa因子複合体、キモトリプシン、第IXa因子ポリリジンまたはカテプシンGが挙げられる。好ましくは、セリンプロテアーゼは、一般的な生物学的液体、例えば細胞培養液および体液において検出される。この方法は、細胞試料または個体におけるセリンプロテアーゼの発現レベルの定量化に適用することができる。この情報は、腫瘍の悪性度の決定または血液凝固疾患の診断に有用であり得る。
本発明のその他の好ましい実施形態は、placentalinポリペプチドをplacentalin特異的抗体またはそのplacentalin結合断片と結合させる方法である。この方法は、結合を生じさせる条件下にて、placentalinポリペプチドをplacentalin結合抗体またはそのplacentalin結合断片と接触させる段階を含む。この方法は、placentalinの検出および精製、ならびにplacentalin機能の修飾に適用することができる。これらの態様は本明細書において詳細に述べられている。
本発明の他の実施形態は、i)placentalinポリペプチドまたは核酸に特異的に結合する化合物と生体試料を接触させる段階と、ii)試料におけるplacentalinのレベル、または他の検出可能ないずれかの特性を検出する段階と、iii)良性腫瘍、低度、中度、高度の悪性腫瘍を示す、対照試料から得られたシグナルと、結果として得られたシグナルを比較する段階と、を含む、腫瘍の悪性度を診断する方法に関する。そのシグナルのレベルは、腫瘍の悪性度と負に相関する。この方法は、例えば神経膠腫、メラニン欠乏性黒色腫、前立腺腫瘍および肺腫瘍などの腫瘍の悪性度を診断することに向けられることが好ましい。
本発明のさらに他の実施形態は、i)placentalinポリペプチドまたは核酸に特異的に結合する化合物と生体試料を接触させる段階と、ii)試料におけるplacentalinのレベル、または他の検出可能ないずれかの特性を検出する段階と、iii)血栓付着のリスクを示さない患者を示す、対照試料から得られたシグナルと、結果として得られたシグナルを比較する段階と、を含む、血栓付着のリスクを診断する方法に関する。かかる方法は、過凝固症候群、例えばアテローム性動脈硬化症、虚血、脳卒中、心筋梗塞、冠動脈疾患を診断することに向けられることが好ましい。
その生体試料は、検出を容易にするために精製されている、または一部精製されている体液または組織試料のいずれかであることが好ましい。placentalinポリペプチドに特異的に結合する特に好ましい化合物は、上述の抗体である。好ましくは、その抗体は標識され、そのシグナルの検出は、当業者によく知られている免疫組織学的および免疫蛍光プロセスを用いて行われる。代替方法としては、placentalinポリペプチドに特異的に結合する抗体は標識されず、シグナルの検出は、標識された二次抗体を使用することによって間接的に行われる。placentalinポリヌクレオチドに特異的に結合する特に好ましい化合物は、配列番号:25に相補的なポリヌクレオチド配列またはその一部である。シグナルの検出は、PCR、RT-PCR技術、または定量的RT−PCR技術を用いて行うことができる。
さらに他の実施形態は、腫瘍の悪性度または血栓付着のリスクを決定するためのキットに関する。かかるキットは、検出可能なマーカーに結合されるplacentalinポリペプチドまたは核酸に特異的な少なくとも1つの結合パートナーと、対照試料と、マーカーを検出するための反応を行うための試薬とを含む。好ましくは、このキットは、特定の腫瘍、例えば神経膠腫、メラニン欠乏性黒色腫、前立腺腫瘍および肺腫瘍の悪性度を診断することに向けられる。代替方法としては、このキットは、悪性腫瘍を治療するために施される治療の経過をモニターすることに向けられる。
他の好ましい実施形態は、placentalinの発現を増加する物質、およびplacentalinの発現を増加する物質についてスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のplacentalin発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む方法に関する。その試験物質は、他の細胞型ではそうではないが、特定の細胞型におけるplacentalinの発現を修飾することが好ましい。試験物質は、内皮細胞または新生細胞において、特異的にplacentalin発現を修飾することが最も好ましい。
本発明の更なる実施形態は、placentalin活性を増加する物質、およびかかる物質についてスクリーニングする方法に向けられている。この方法は、i)placentalinポリペプチドを試験物質と接触させる段階と、ii)placentalin活性を決定する段階と、ii)非暴露対照試料中の活性と、暴露後のplacentalin活性を比較する段階と、を含む。placentalin活性は、内皮細胞または新生細胞において研究されることが好ましい。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRao et al. (Biochem Biophys Res Commun. 276: 1286-94 (2000))に記載のように、プラスミンの阻害および/または放射標識マトリックスの分解を研究することによって、Placentalin活性をモニターすることができる。placentalinの発現または活性を増加させる物質は、placentalinアゴニストとして定義される。
本発明の実施形態は、哺乳動物における血液凝固を低減するために、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを使用する方法に関する。placentalinポリペプチドまたはplacentalinアゴニストを含むいずれかの組成物および方法を用いることができる。好ましくは、血液凝固を低減するかかる方法は、血栓付着のリスクを示す患者を治療することに向けられる。かかる方法は、血栓疾患および/または過凝固症候群、例えばアテローム性動脈硬化症、急性虚血、脳卒中、心筋梗塞、冠動脈疾患、および移植に伴う血栓性合併症を患う患者の治療に向けられることが最も好ましい。好ましい実施形態は、生理学的に許容される組成物中のplacentalinポリペプチドまたはそのプロテアーゼ阻害断片を個体の血流に導入する段階を含む、血液凝固を低減する方法である。本明細書で詳細に述べるように、血流への送達は、直接的(例えば、静脈または動脈への注入)または間接的(例えば、吸入または経口送達)であることが可能である。
更なる実施形態において、本発明は、placentalinポリペプチドまたはplacentalinアゴニストを含む組成物を用いて、組織の蓄積を防ぐことによって、創傷治癒を促進する方法を提供する。かかる方法は、placentalinポリペプチドまたはplacentalinアゴニストを含む有効量の組成物と前記創傷を接触させる段階であって、その創傷には、限定されないが、心筋梗塞、皮膚創傷、動脈壁の傷、ステントおよび縫合が含まれる段階を含む。
本発明の他の実施形態は、哺乳動物におけるECM分解を予防または低減するために、本発明のポリペプチドおよびアゴニストを使用する方法に関する。好ましくは、ECM分解を予防または低減するためのかかる方法は、悪性細胞による分解からECMを保護し、したがって、悪性腫瘍の浸潤および広がりをブロックすることに向けられる。placentalinポリペプチドを含む組成物は、例えば、腫瘍成長、内皮細胞増殖などの異常または望ましくない細胞増殖、および腫瘍成長に関連する血管形成を有する個体に投与されることが最も好ましい。本発明の組成物で治療することができる腫瘍には、限定されないが、神経膠腫、メラニン欠乏性黒色腫、前立腺腫瘍および肺腫瘍が含まれる。
本発明のさらに他の実施形態は、病原微生物によって産生されるプロテアーゼの阻害および/または減弱に関する。この実施形態は、placentalinまたはその生物活性断片、またはplacentalinの発現もしくは活性を増加させる化合物を含む組成物を、寄生虫感染症を予防および/または治療するために、個体に投与する段階を含む方法に関する。Placentalinポリペプチド、またはplacentalinの発現もしくは活性を増加させる化合物は、単独で、または他の薬剤と組み合わせて、投与することができる。代替方法としては、この方法は、哺乳動物細胞培養の寄生虫感染を防ぐことに向けることが可能である。プロテアーゼ阻害剤は、宿主生物におけるウイルス、原生動物、細菌または菌類の播種を防ぐことができることが示されている。したがって、本発明のポリペプチドは、例えばコクシジウム症、ブドウ球菌感染症、インフルエンザウイルス、P.gingivalisまたはT.denticolaによる感染症、および侵襲性肺アスペルギルス症を予防または治療するのに使用することができる。
一実施形態において、ECM分解の予防、または血液凝固の抑制に使用される薬剤組成物は、有効量のplacentalinポリペプチド、placentalinポリヌクレオチド、またはplacentalinの発現もしくは活性を増加させる物質を、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体との混合物で含む。有効量の本発明の組成物は、疾患、哺乳動物の疾患の状態、年齢、性別、および体重などの因子に応じて異なる。用法は、最適な治療反応が得られるように調整される。好ましい実施形態では、placentalinの発現もしくは活性を増加させる物質および生理学的に許容される担体を含む組成物は、注射によって個体の血流に直接的に導入される。
好ましい実施形態において、placentalinポリペプチドは、対象の組織に特異的な標的化分子に融合される。好ましくは、標的placentalinポリペプチドは、腫瘍成長に伴うECM分解を防ぐために使用される薬剤組成物に含まれることが好ましい。placentalinポリペプチドは、当業者によく知られているいずれかの技術によって、腫瘍細胞上に特異的に発現する受容体または抗原を認識するリガンドまたは抗体に結合されることが最も好ましい。多数の腫瘍関連抗原が、科学文献に記述されている。例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Wikstrand et al (Cancer Metastasis Rev 18: 451-64 (1999))により述べられている抗原および技術を用いることができる。代替方法としては、placentalinポリペプチドは、腫瘍の脈管構造を認識するリガンドに結合される。固形腫瘍の脈管構造にplacentalinポリペプチドを標的化するのに好ましい方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,004,554号に記述されている。
他の実施形態は、血液凝固を低減するためにplacentalinポリヌクレオチドを使用する方法であって、i)所定の生理学的条件下にてplacentalinまたはその一部の発現を可能にする、placentalinポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え分子を構築する段階と、ii)この組換え分子を細胞、哺乳動物またはヒトに導入する段階と、を含む方法に関する。placentalinポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え分子を、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびDNAウイルスベクターなどの送達媒体を用いて、in vivoで細胞または組織中に直接導入することが可能である。それらは、生理学的技術、例えば微量注入および電気穿孔法、または共沈およびDNAのリポソームへの取り込みなどの化学的方法を用いて、in vivoで細胞に導入することもできる。組換え分子は、エアロゾル状で、または潅注(lavage)によって送達することもできる。placentalinポリヌクレオチドは、細胞への直接的な注入などによって細胞内で適用することもできる。placentalinポリヌクレオチドは、内皮細胞中に、または血管細胞に導入されることが好ましい。最も好ましくは、placentalinポリヌクレオチドが、血栓付着のリスクを示す患者の治療に向けられる場合、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号:WO99/02171に記載の方法を用いることができる。
配列番号:28のタンパク質(内部指定クローン176355 117−005−2−0−Hll−F)
クローン176355_117−005−2−0−H11−FのcDNA(配列番号:27)は、アミノ酸配列:MASMAAVLTWALALLSAFSATQARKGFWDYFSQTSGDKGRVEQIHQQKMAREPATLKDSLEQDLNNMNKFLEKLRPLSGSEAPRLPQDPVGMRRQLQEELEEVKARLQPYMAEAHELVGWNLEGLRQQLKPYTMDLMEQVALRVQELQEQLRVVGEDTKAQLLGGVDEAWALLQGLQSRWHHTGRFKELFHPYAESLVSGIGRHVQELHRSVAPHAPASPARLSRCVQVLSRKLTLKAKALHARIQQNLDQLREELSRAFAGTGTEEGAGPDPQMLSEEVRQRLQAFRQDTYLQIAAFTRAIDQETEEVQQQLAPPPPGHSAFAPEFQQTDSGKVLSKLQARLDDLWEDITHSLHDQGHSHLGDPを含む、配列番号:28のNAARタンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:28のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン176355_117-005−2−0−H11−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:27のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン176355_117−005−2−0−H11−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:27、配列番号:28、およびクローン176355_117−005−2−0−H11−Fの組成物に対して向けられている。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質は、アポリポタンパク質モチーフ:MAAVLTWALALLSAFSATQARKGFWDYFSQTSGDKGRVEQIHQQKMAREPATLKDSLEQDLNNMNKFLEKLRPLSGSEAPRLPQDPVGMRRQLQEELEEVKARLQPYMAEAHELVGWNLEGLRQQLKPYTMDLMEQVALRVQELQEQLRWGEDTKAQLLGGVDEAWALLQGLQSRWHHTGRFKELFHPYAESLVSGIGRHVQELHRSVAPHAPASPARLSRCVQVLSRKLTLKAKALHARIQQNLDを表す。したがって、本発明の実施形態は、アポリポタンパク質モチーフおよびそれをコードするポリヌクレオチドのアミノ酸を含む。
HDLおよびLDLなどのリポタンパク質粒子は、特定の組織にそれらを標的化し、かつリポタンパク質の脂質画分、例えばコレステロールなどの輸送に必要とされる酵素を活性化する役割を担う、特有のアポリポタンパク質を含有する。NAARは、アポリポタンパク質ファミリーのメンバーである。
アポリポタンパク質は、リポタンパク質粒子のタンパク質成分であり、細胞膜上の受容体に結合し、リポタンパク質粒子を代謝の目的部位に向ける役割を担っている。これらの高分子量粒子が主に、血漿を通じた脂質の輸送(トリグリセリドおよびコレステロールエステル型のコレステロール)を担っている。リポタンパク質粒子としては、キロミクロンおよびキロミクロンレムナント粒子、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中間密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、および高密度リポタンパク質(HDL)が挙げられる。高レベルのリポタンパク質粒子が、アテローム性動脈硬化症と正に相関しており、血漿リポタンパク質濃度の減少は、アテローム性動脈硬化症のリスクの減少と相関する。さらに、個々のアポリポタンパク質は、異なる種類のリポタンパク質粒子との特定の会合の形成などの特有の機能を有する。一部のアポリポタンパク質は、リポタンパク質と細胞表面受容体との相互作用を制御するリガンドとしての役割を果たすのに対し、他のアポリポタンパク質は、脂質代謝に必須の酵素のコファクターとして機能する。
NAARは、血液のキロミクロンおよびHDL画分と関連する。小腸によるNAARの合成は、脂質の摂取後に顕著に増加し、その結果、腸間膜リンパ液中のNAARの生産が著しく増加する。小腸の上皮細胞からの分泌中、pre−NAARシグナルペプチドが切断される。成熟NAARポリペプチドは、新たに合成されたトリグリセリド−リッチリポタンパク質ならびに血液のHDL画分の主な成分としてリンパ液中に分泌される。NAARは、腸のトリグリセリド−リッチリポタンパク質の生合成および/または代謝に関与する。小腸によるNAARの生合成および分泌の増加は、腸のキロミクロンの形成および分泌によって引き起こされる。NAARレベルは、食事によって制御され、高脂肪食によってアップレギュレートされ、レプチンによってダウンレギュレートされる。脂質食後の腸間膜リンパ液中のNAARは、食物摂取を抑制し、そのことから、NAARが脂肪の摂食後に血液中で循環する満腹因子としての役割も果たすことが示唆される。
NAARは、トリグリセリドリッチなリポタンパク質代謝、コレステロール逆輸送、およびCETP(コレステロールエステル転送タンパク)活性において役割を果たす。結果として、NAARは、食事脂肪/コレステロール摂取の変化に対する血中コレステロール反応の個人間変動の一部を担う。さらに、アテローム性動脈硬化症の発症を予防するために、HDL粒子の代わりに、NAARを有効に使用することができる。また、NAARは、糖尿病の病態生理において重要な役割を担う。NAARのレベルは、若年性I型糖尿病(IDDM)患者およびインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)患者における血糖コントロールと関連がある。
NAARは脂質代謝およびそれに関連する疾患において主要な役割を担う。脂質代謝に関係する疾患には、限定されないが、肥満症、アテローム性動脈硬化症などの肥満関連疾患、冠動脈心疾患などの循環器病、アルツハイマーまたは痴呆などの神経変性疾患、冠動脈疾患、ミトコンドリア細胞変性(mitochondriocytopathies)、高脂質血症、家族性混合型高脂血症(FCHL)、高コレステロール血症、肥満関連動脈硬化症、肥満関連インスリン抵抗性、肥満関連高血圧症、肥満関連II型糖尿病から生じる微小血管障害(microangiopathic lesions)、II型糖尿病の肥満個体において微小血管障害により生じる眼球障害、およびII型糖尿病の肥満個体において微小血管障害により生じる腎臓障害が含まれる。
本発明の実施形態は、配列番号:28のNAARポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するNAARポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、NAARポリペプチドをコードする配列番号:27のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するNAARポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
NAARポリペプチドは、アテローム性動脈硬化症および脂質代謝関連疾患と関連する、遊離脂肪酸(FFA)、トリグリセリド、およびコレステロールに結合する。本発明の好ましい実施形態は、NAARポリペプチドまたはその断片を、FFA、トリグリセリド、またはコレステロール分子と、前記分子へのNAARポリペプチドの結合を可能にする条件下にて結合させる段階を含む方法である。好ましい実施形態において、NAARポリペプチドは、FFA、トリグリセリドおよびコレステロールを精製するために使用される。かかる方法において、NAARポリペプチドは好ましくは、固体マトリックスに共有結合または非共有結合で結合され、当技術分野でよく知られている技術を用いて、FFA、トリグリセリドおよびコレステロールに結合することが可能となる。この方法は、i)混入物を取り除くために固体マトリックスを洗浄する段階と、ii)さらに厳密な条件を用いて、対象の粒子を溶出する段階と、を含む。
この実施形態のその他の態様は、当技術分野で一般的な技術を用いて、FFA、トリグリセリドおよびコレステロールを検出かつ定量化するために、NAARポリペプチドを使用する方法を包含する。この方法は、当技術分野でよく知られている技術を用いて、FFA、トリグリセリド、またはコレステロールを含有すると思われる生体試料を得る段階;ii)NAARの結合に適した条件下にて、NAARポリペプチドまたはその断片を前記試料と接触させる段階;NAARを検出することによって、FFA、トリグリセリド、およびコレステロールの有無を検出する段階;を含む。NAARポリペプチドまたはその断片は、検出可能な化合物に共有結合で結合されることが好ましい。代替方法としては、検出可能なNAAR特異的抗体またはその断片を用いて、NAARを検出することができる。この実施形態は、例えば、FFA、トリグリセリド、およびコレステロールの血漿中レベルを検出するための診断ツールとして有用である。
他の実施形態では、本発明は、生体試料中のNAARポリペプチドの検出方法に関し、前記方法は、i)生体試料を、NAARポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片と接触させる段階;ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する段階;を含む。その抗体または抗体断片は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であり得る。さらに、その抗体または抗体断片は、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性、蛍光、発光、または酵素化合物)によって一次的または二次的に標識することができる。
一部の実施形態において、本発明は、NAARポリペプチドの存在をin vitroで検出するための診断キットにも関する。このキットは、NAARポリペプチドに特異的に結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体またはその断片;任意にii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を含む。好ましくは、その抗体または抗体断片は、検出可能に標識される。かかる標識としては、蛍光、発光、および放射性化合物、ならびに酵素基質が挙げられる。任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し、かつ抗体に結合するか、またはかかる抗体上の標識と反応することができる。NAAR抗体は、肝臓関連疾患(例えば、肝炎、肝硬変、肝癌、およびFHP)、脂質代謝関連疾患、例えば糖尿病、およびアテローム性動脈硬化症を診断するために用いることができる。かかる疾患を検出するために、適切な生体試料(例えば、血清)を試験して、産生されたNAARのレベルを決定することができる(その開示内容全体が参照により組み込まれる米国特許第6,027,935号)。(その開示内容全体が参照により組み込まれる米国特許第6,027,935号)。
本発明の実施形態は、NAARの発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のNAAR発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。NAARの発現は、当技術分野で一般的な、または本明細書に包含される方法によって、NAARポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することにより決定される。この方法の一例は、i)同等な2つの細胞試料を培養する段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)指定の時間にどちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からのmRNAを精製する段階;v)各試料におけるNAAR mRNAのレベルを、ノーザンブロット、RTPCR、または当技術分野で一般的な他の方法によって比較する段階;を含む。本発明は、本明細書で述べるような特異的ポリヌクレオチドプローブおよびプライマーの設計および使用を提供する。その他の例は、i)同等な2つの培養物を得る段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からのmRNAを精製する段階;v)各試料におけるNAARポリペプチドのレベルを、ウェスタンブロット、免疫組織化学、または技術分野で一般的な他の方法によって比較する段階;を含む。本発明は、本明細書に述べるような特異的抗体および抗体断片の設計および使用を提供する。
他の実施形態では、NAARポリペプチドまたはその断片を用いて、NAAR活性を活性化または抑制する化合物についてスクリーニングすることができる。この方法は、i)NAARポリペプチドまたはその断片を試験物質と接触させる段階と、ii)NAAR活性をモニターする段階を含む。NAARは、FFA、トリグリセリド、およびコレステロールに結合する。したがって、NAAR活性は、試験物質を添加すると同時に、FFA、トリグリセリド、またはコレステロールとの競合的結合アッセイによってモニターすることができる。本発明のこの態様では、NAARポリペプチドまたはその断片は溶液中で遊離であり、固体担体に固定化され、細胞表面上で組換えで発現されるか、または細胞表面に化学的に結合されるか、または細胞内に位置する。NAARポリペプチドと試験される化合物との間の結合性複合体の形成は、BIAcore(スウェーデン、ウプサラ)などの当業者によく知られている方法によって測定することができる。他の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号:W084/03564に記載のように、本発明のタンパク質に対して適切な結合親和性を有する化合物のハイスループットスクリーニングを提供する。NAARの発現または活性を低減する試験物質は、NAARの阻害剤またはアンタゴニストとして定義される。NAARの発現または活性を増加させる試験物質は、活性化剤またはアゴニストとして定義される。主題の発明のNAARの発現または活性を調節する作用物質には、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチ、リボザイム、および抗体が含まれる。これらの作用物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造かつ使用される。
本発明の他の実施形態では、NAARポリペプチドを使用して、FFA、トリグリセリド、およびコレステロールをin vivoで結合させて、これらの分子を血流から除去する。この方法は、有効量のNAARポリペプチドまたはその断片を個体の血流に導入する段階を含む。この実施形態では、NAARポリペプチドはさらに、体からの排出を特定化するポリペプチドシグナルを有する融合タンパク質として発現させることができる。NAARポリペプチドまたはその生物活性断片を個体に送達するのに好ましい方法は、生理学的に許容される溶液(例えば、pH緩衝生理食塩液、グリセロールなどの粘性成分を添加することにより改変されたpH緩衝生理食塩水)中の前記ポリペプチドまたは断片を直接注入、静脈内注入することを含む。代替方法としては、NAARポリヌクレオチドを導入して、血流中でNAARポリペプチドを発現させることができる。この方法は、i)本発明のヌクレオチド配列およびその発現を指示する調節配列に作動可能に連結される、細胞を感染させることができるアデノウイルスのゲノムの一部に相当する組換えウイルスベクターを構築する段階;ii)アテローム性動脈硬化症、糖尿病、または他の脂質代謝異常を有する、またはそのリスクのある個体に、有効量の組換えアデノウイルスベクターを送達する段階;を含む。
これらの疾患について個体の家族性素因の決定または個体における血清リポタンパク質レベルの実際の分析など、一般的な医療技術により決定される、アテローム性動脈硬化症またはFFA、トリグリセリド、およびコレステロールの動脈リポタンパク質沈着を予防または治療するために、NAARポリペプチド、その断片、またはNAARアゴニストを使用することができる。代替方法としては、NAARポリペプチド、その断片、またはNAARアゴニストを、糖尿病または他の脂質代謝異常のリスクのある、またはそれを有する個体に送達することができる。
他の実施形態では、敗血症性ショックまたはリポ多糖類の高い血清中レベルと関連する病状を治療するために、NAARポリペプチド、その断片またはNAARアゴニストが、生理学的に許容される組成物中で使用される(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,932,536号および同第5,948,756号)。
他の実施形態において、NAARペプチドは食欲抑制活性を有するために、NAARポリペプチド、その断片またはNAARアゴニストは、肥満症を治療および予防するために適用される(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5840688号)。この方法は、生理学的に許容される溶液中のNAARポリペプチド、その断片、またはNAARアゴニストを個体に導入する段階を含む。好ましくは、その個体は過体重であるか、または肥満度指数(BMI)25以上を有する。
主題の発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質の活性を選択的に調節する組成物および方法を提供する。NAAR活性を調節することによって、肝臓関連および脂質代謝関連疾患をうまく治療および管理することが可能となるだろう。
本発明の他の実施形態は、当業者によく知られているいずれかの方法によって、遺伝子導入モデル動物(キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)、ハツカネズミ(M. musculus))を確立するために、本発明のタンパク質またはその断片をコードするポリヌクレオチドを用いた組成物および方法に関する。薬物または変更遺伝子(活性化または抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をin vivoで調節することによって、癌などのヒトホルモン依存性疾患を模倣する動物モデルを作製することができる。したがって、これらの動物モデルによって、疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となる。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにex vivoで使用することができる。
配列番号:30のタンパク質(内部指定クローン222588 116-094-1-0-H2-F)
クローン222588_116−094−1−0−H2−FのcDNA(配列番号:29)は、アミノ酸配列:MTSGSKCPSTDSGKEEYIATFKGSEYFCYDLSQNPIQSSSDEITLSFKTLQRNGLMLHTGKSADYVNLALKNGAVSLVINLGSGAFEALVEPVNGKFNDNAWHDVKVTRNLRQVTISVDGILTTTGYTQEDYTMLGSDDFFYVGGSPSTADLPGSPIQHESTFAEDPMFQSQTAQLを含む、配列番号:30のNeurexinalタンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:30のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン222588_116−094−1−0−H2−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:29のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン222588_116−094−1−0−H2−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:29、配列番号:30、およびクローン222588_116−094−1−0−H2−Fの組成物に対して向けられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:29のタンパク質、Neurexinalは、ニューレキシンI−αタンパク質(Genbankアクセッション番号AB035356)のスプライシングバリアントである。本発明のタンパク質は、G−ラミニンモチーフ:FKTLQRNGLMLHTGKSADYVNLALKNGAVSLVINLGSGAFEALVEPVNGKFNDNAWHDVKVTRNLRQVTISVDGILTTTGYTQEDYTMLGSDDFFYVGGSPSTADLPを示す。したがって、本発明の一部の実施形態は、G−ラミニンモチーフおよびそれをコードするポリヌクレオチドのアミノ酸を含む。
ニューレキシンは、神経細胞表面タンパク質である。細胞接着分子としての機能の他に、ニューレキシンは、シグナル伝達受容体としての役割を果たす。Neuroxophilinと呼ばれるα−ニューレキシンのリガンドは、ペプチドホルモンに類似している。ニューレキシンは、ラトロトキシンの受容体としての役割も果たし得る。ニューレキシンのスプライシングバリアントは、標的神経支配および神経突起の成長からシナプス形成への移行、またはシナプス可塑性および再生時に寄与する。ニューレキシンは、仲介神経プロセス、およびシグナル伝達エキソサイトーシスと関連する。このように、これらのタンパク質は、神経発達、神経異常(例えば、発作)、および癌において役割を担う。Neurexinal、1つのニューレキシンアイソフォームは、標的神経支配中の交感神経細胞において発現し、スプライシングバリアントの相対的な発現レベルは、個々の神経細胞の分化中に変化する。Neurexinalは、神経細胞のみで検出可能な膜タンパク質である。Neurexinalの発現は出生後に、最高に達する。Neurexinalは、細胞接着分子およびシグナル伝達受容体としての役割を果たす。
シグナル伝達および細胞接着において推定される機能を有する、Neurexinalに対するいくつかのリガンドが同定されている。Neurexinalは、Ca2+の存在下のみで高親和性を有するα−ラトロトキシンに結合する。α−ラトロトキシンは、神経末端に適用すると、大量の神経伝達物質放出が起こる、クロゴケグモ毒由来の大きなペプチドの神経毒である。α−ラトロトキシンは膜に挿入され、その神経末端受容体のいずれかに固定された後、膜貫通イオン孔を形成する。さらに、NeurexophilinはNeurexinalおよびα−ニューレキシンに密に結合するが、β−ニューレキシンには密に結合しない。Neurexophilinは、抑制性介在ニューロンにおいてのみ高いレベルで合成され、シグナル伝達分子として機能する。ジストログリカンは、Neurexinalの他の生理学的リガンドであり、脳細胞間の細胞接着を仲介する。細胞表面タンパク質のジストログリカンは、細胞内の細胞骨格を細胞外マトリックスに結合させる。この結合の障害は、筋ジストロフィーの発生の一因となる。
本発明の実施形態は、配列番号:30の新規なNeurexinalポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、α−ラトロトキシン、Neurexophilin、またはジストログリカンに結合する生物活性を有する、Neurexinalポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、Neurexinalポリペプチドをコードする配列番号:29のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、α−ラトロトキシン、neurexophilin、またはジストログリカンに結合する生物活性を有する、Neurexinalポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の好ましい態様は、Neurexinalポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換体え体である。その他の好ましい態様は、Neurexinalの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換体え体である。Neurexinalの発現を指示できるポリヌクレオチドは、Neurexinal遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、Neurexinalコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。前記宿主細胞により産生されるNeurexinalタンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用される。
Neurexinalポリペプチドは、α−ラトロトキシン、Neurexophilinおよびジストログリカンに結合する。本発明の好ましい実施形態は、Neurexinalポリペプチドまたはその断片をα−ラトロトキシン、Neurexophilinおよびジストログリカン分子と、Neurexinalポリペプチドの前記分子への結合を可能にする条件下で結合させる段階を含む方法である。好ましい実施形態において、Neurexinalポリペプチドは、α−ラトロトキシン、Neurexophilinおよびジストログリカンを精製するために使用される。かかる方法において、Neurexinalポリペプチドは好ましくは、固体マトリックスに共有結合または非共有結合で結合され、当技術分野でよく知られている技術を用いて、α−ラトロトキシン、Neurexophilinまたはジストログリカンに結合される。この方法は、i)固体マトリックスを洗浄して、混入物を取り除く段階と、ii)さらに厳密な条件を用いて、対象の粒子を溶出する段階と、を含む。この実施形態のその他の態様は、当技術分野で一般的な技術を用いて、α−ラトロトキシン、Neurexophilinおよびジストログリカンを検出かつ定量化するために、Neurexinalポリペプチドを使用する方法を包含する。この方法は、α−ラトロトキシン、Neurexophilinおよびジストログリカンを含有すると思われる生体試料を得る段階;ii)Neurexinalの結合に適した条件下にて、Neurexinalポリペプチドまたはその断片を前記試料と接触させる段階;Neurexinalを検出することによって、α−ラトロトキシン、Neurexophilinおよびジストログリカンの有無を検出する段階;を含む。Neurexinalポリペプチドまたはその断片は、検出可能な化合物に共有結合で結合されることが好ましい。代替方法としては、検出可能なNeurexinal特異的抗体またはその断片を用いて、Neurexinalを検出することができる。この実施形態は、例えば、α−ラトロトキシン、Neurexophilinおよびジストログリカンの神経細胞中のレベルを検出するための診断ツールとして有用である。本発明の更なる態様は、Neurexinalの単離、精製および特徴付けを含む。特に、本発明は、神経伝達物質放出の制御因子であり、したがって、カルシウムの存在下でα−ラトロトキシン毒性を仲介する、新規な神経細胞受容体に及ぶ。
本発明の実施形態は、Neurexinalポリペプチドを含む組成物に関する。Neurexinalポリペプチドを作製する方法は、i)哺乳動物宿主細胞に、本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターをトランスフェクトする段階と、ii)その作製されたタンパク質を精製する段階;を含む。Neurexinalは、当技術分野で公知の、または本明細書に開示されるいずれかの技術に従って単離することができる。好ましくは、Neurexinalまたはその断片に対して作られた抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムが形成される。
他の実施形態において、本発明のタンパク質は、神経細胞に対して異種化合物(ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を標的化するために用いることができる。例えば、対象の化合物、タンパク質、またはポリヌクレオチドに、組換えによりまたは化学的に融合された、Neurexinalまたはその断片で構成されるキメラタンパク質によって、ジストログリカンなど、Neurexinalのリガンドを発現する細胞へ特異的に送達することが可能となる。ジストログリカンは、大脳皮質、海馬、嗅球、大脳基底核、視床、および視床下部の神経細胞において発現する。これらの細胞集団を標的化する方法は、数多くの神経および気分障害、例えば癲癇、ストレス障害、精神分裂病、ハンチントン病、アルツハイマー病およびパーキンソン病の治療に有用であると考えられる。さらに、肥満の個体の視床下部では、正常レベルよりも低いレベルでレプチン受容体を発現する場合が多い。したがって、異種Neurexinalを有する視床下部へ、レプチン受容体コンストラクトまたはアゴニストを導入することは、肥満症に有効な治療である可能性がある。
本発明の好ましい実施形態は、トポロジーまたはモフォロジーを数値で視覚化するために、神経細胞を標識するため、本発明のタンパク質またはその断片を使用する組成物および方法に関する。かかる方法を用いて、脳卒中;神経変性疾患、例えば精神分裂病、アルツハイマー病、癲癇、ストレス障害、ハンチントン病、およびパーキンソン病;および末梢性神経筋疾患、例えば重症筋無力症およびAIDS関連複合症;と関連する神経組織損傷をマッピングすることができる。例えば、本発明のタンパク質またはその断片を用いて、当業者によく知られている方法によって、神経細胞の可視化を可能にするであろう特異的抗体を産生することができる。その抗体は、限定されないが、蛍光標識、放射性原子、常磁性イオン、ビオチン、化学発光標識、または二次酵素もしくは結合段階によって検出できる標識を含む、検出可能ないずれかの成分で標識することが好ましい。同様の方法において、Neurexinalは神経細胞においてのみ特異的に発現することから、Neurexinal対して産生された抗体を用いて、特定の細胞型を同定することができる。代替方法としては、本発明のタンパク質またはNeurexinalをコードする核酸の定量分析または検出を、当業者に公知の他の技術によって行うことができる。本発明はさらに。限定されないが、上記の疾患または病状を含む神経疾患または病状を診断する方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、Neurexinalポリペプチドまたはその断片に結合する化合物を使用する方法に関する。かかる方法は、精神分裂病、アルツハイマー病、癲癇、ストレス障害、ハンチントン病、およびパーキンソン病などの神経変性病状を含む、異常なNeurexinalレベルに関連する疾患の診断に向けられる。この方法は、Neurexinalに特異的に結合する化合物と生体試料を接触させる段階を含む。好ましい化合物には、Neurexinal特異的抗体およびその抗原結合断片が含まれる。さらに好ましい化合物としては、蛍光、放射性、または酵素標識などの検出可能な標識で標識された化合物が挙げられる。この方法は、イムノアッセイを含む様々な診断技術に依拠し得る。
他の実施形態において、本発明は、Neurexinalの存在の範囲を定量分析するための、またはその活性を模倣またはブロックする化合物を同定するための、試験キットの形で製造されるアッセイシステムを包含する。そのシステムまたは試験キットは:Neurexinalに特異的に結合する成分と、任意に前記成分を検出する手段と、を備える。好ましい成分は、Neurexinal特異的抗体およびその抗原結合断片である。その抗体または断片は、例えば蛍光化合物、発光化合物、または放射性化合物で標識されることが好ましい。代替方法としては、Neurexinal結合成分を検出可能な酵素基質で標識してもよく、任意の手段は、検出に必要とされる酵素である。
本発明の更なる目的は、その活性を模倣するのに有効な、または哺乳動物におけるNeurexinalの有害作用を抑制するのに有効な物質をスクリーニングする方法およびそれに関連するアッセイシステムを提供することである。
本発明の好ましい実施形態は、Neurexinalの発現を増加または減少させる試験化合物についてスクリーニングする方法である。この方法は、i)細胞を試験物質と接触させる段階と、ii)Neurexinalの発現レベルを検出かつ定量化する段階と、iii)暴露細胞におけるNeurexinalの発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する段階と、を含む。Neurexinalの発現は神経細胞において研究されることが好ましい。Neurexinalの発現を検出する方法は、Neurexinal転写物(例えば、ノーザンブロット法、in situハイブリダイゼーション、および他のヌクレオチド検出法)またはNeurexinalポリペプチド(例えば、ウエスタンブロット法または免疫組織学的方法)のいずれかに向けることが可能である。Neurexinalの発現レベルは、例えばアンチセンス分子を用いて、生体試料中で低減することができる。
本発明の好ましい実施形態は、Neurexinalの活性を増加または減少させる化合物についてスクリーニングする方法である。この方法は、i)細胞を試験物質と接触させる段階と、ii)Neurexinalの活性レベルを検出かつ定量化する段階と、iii)暴露細胞におけるNeurexinalの活性を、非暴露対照細胞における活性と比較する段階と、を含む。Neurexinalの活性は、Neurexinalのα−ラトロトキシン、Neurexophilinまたはジストログリカンへの結合を決定することにより検出されることが好ましい。結合は、上記に列挙される検出可能に標識されたタンパク質を用いた競合的結合アッセイによって試験される。
Neurexinal活性化剤またはアゴニストは、Neurexinal活性または発現を増加する化合物として定義される。Neurexinal阻害剤またはアンタゴニストは、Neurexinal活性または発現を減少させる化合物として定義される。
さらに他の実施形態では、本発明は、Neurexinalの活性のアンタゴニストに関する。例えば、そのアンタゴニストは、α−ラトロトキシンを中和するために使用することが可能であり、クロゴケグモ刺咬に用いる抗毒素として使用することができる。Neurexinalアンタゴニストはさらに、異常に高いノルエピネフリンレベルに関連する疾患、例えば褐色細胞腫、注意欠陥多動障害(ADHD)、特発性捻転ジストニア、およびモノアミンオキシダーゼA欠損症を治療するのに使用することができる。Neurexinal阻害剤を使用する方法は、生理学的に許容される組成物中のNeurexinal阻害剤を個体に投与する段階を含む。生理学的に許容される組成物および担体は本明細書に記述されている。適切な処置は、個体の状態に応じて異なり、当業者によって決定される。
Neurexinal活性化剤は、神経終末の分解を調節および/または逆方向にするために、シナプス伝達を調節するために、またはNeurexinalの異常に低い発現レベルに関連する他の病状を治療するために使用される。Neurexinal活性化剤を使用する方法は、生理学的に許容される溶液中のNeurexinal活性化剤を個体に投与する段階を含む。生理学的に許容される組成物および担体は本明細書に記述されている。適切な処置は、個体の状況に応じて異なり、当業者によって決定される。
配列番号:32のタンパク質(内部指定クローン119033 105-066-4-0-F10-F)
クローン119033−105−066−4−0−F10−FのcDNA(配列番号:31)は、アミノ酸配列:MAAELVEAKNMVMSFRVSDLQMLLGFVGRSKSGLKHELVTRALQLVQFDCTPELFKKIKELYETRYAKKNSEPAPQPHRPLDPLTMHSTYDRAGAVPRTPLAGPNIDYPVLYGKYLNGLGRLPAKTLKPEVRLVKLPFFNMLDELLKPTELVPQNNEKLQESPCIFALTPRQVELIRNSRELQPGVKAVQWLRICYSDTSCPQEDQYPPNIAVKVNHSYCSVPGYYPSNKPGVEPKRPCRPINLTHLMYLSSATNRITVTWGNYGKSYSVALYLVRQLTSSELLQRLKTIGVKHPELCKALVKEKLRLDPDSEIATTGVRVSLICPLVKMRLSVPCRAETCAHLQCFDAVFYLQMNEKKPTWMCPVCDKPAPYDQLIIDGLLSKILSECEDADEIEYLVDGSWCPIRAEKELSCSPQGAILVLGPSDANGLLPAPSVNGSGALGSTGGGGPVGSMENGKPGADVVDLTLDSSSSSEDEEEEEEEEEDEDEEGPRPKRRCPFQKGLVPACを含む、配列番号:32のNPIASYタンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:32のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン119033_105−066−4−0−F10−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:31のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン119033_105−066−4−0−F10−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:31、配列番号:32、およびクローン119033−105−066−4−0−F10−Fの組成物に対して向けられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:32のタンパク質NPIASYは、活性化STATタンパク質(PIASY)のタンパク質阻害剤(アクセッション番号075926)の新規な多型変異体である。本発明のタンパク質は、SAPドメイン:VMSFRVSDLQMLLGFVGRSKSGLKHELVTRALQLVを示す。さらに、NPIASYは、MIZジンクフィンガーモチーフ:VSLICPLVKMRLSVPCRAETCAHLQCFDAVFYLQMNEKETCAHLQCFDAVFYLQMNEKを示す。インターフェロン(IFN)および他のサイトカインによる初期応答遺伝子の活性化には、転写(STAT)タンパク質のシグナル伝達因子および活性化因子と呼ばれる転写因子のファミリーのチロシンリン酸化が必要である。STATタンパク質は、活性化細胞表面受容体からのシグナルを直接核に中継し、様々な造血サイトカインおよびホルモン、例えばサイトカインのインターロイキン6(IL6)ファミリー、上皮成長因子、およびレプチンによる遺伝子誘導において重要な役割を担う。すべてのSTATタンパク質が、DNA結合ドメイン、Src相同ドメイン2および標的遺伝子発現の転写活性化に必要な転写活性化ドメインを含有する。Janusキナーゼ(JAK)は、サイトカインシグナル伝達と同時に、特定のチロシン残基上のSTATタンパク質をリン酸化する細胞質タンパク質キナーゼである。チロシンリン酸化STATタンパク質は、互いの特定のSH2−ホスホチロシン相互作用によって二量体化し、細胞質から核へと移行する。核に入ると、STATタンパク質は、それらのプロモーターにおける応答因子に結合することによって、特定の標的遺伝子の転写を刺激する。
活性化STAT(PAIS)ファミリーのタンパク質阻害剤からのタンパク質の結合は、STATシグナル伝達経路を阻害する。PIAS-STAT相互作用は、STATタンパク質のチロシンリン酸化に依存する。
NPIASYは核に局在している。インターフェロン刺激と同時に、NPIASYは、STAT1と会合するようになる。NPIASY−STAT1相互作用に関与しないが、NPIASYのNH2末端におけるLXXLLコレギュレーター(coregulator)配列が、STAT1仲介遺伝子活性化の抑制に必要とされる。NPIASYは、STAT1の転写コリプレッサーである。また、NPIASYは、前立腺癌細胞においてアンドロゲン受容体の転写活性の強力な阻害剤として働く。NPIASYはアンドロゲン受容体に結合するが、アンドロゲン受容体のDNA結合活性に影響を及ぼさない。NPIASY−アンドロゲン受容体相互作用に必要とされないが、NH2末端LXXLLシグナチャー(signature)モチーフは、NPIASYの抑制活性に必須である。さらに、NPIASYはp53に結合し、p53仲介転写活性化を抑制する。しかしながら、NPIASYは、p53仲介アポトーシスに影響を及ぼさない。NPIASYはp53仲介機能を制御し、p53をアポトーシスの転写活性化非依存型に向ける。
本発明の実施形態は、配列番号:32のNPIASYポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、STAT、p53、またはアンドロゲン受容体に結合する生物活性を有するNPIASYポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、NPIASYポリペプチドをコードする配列番号:31のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、STAT、p53、またはアンドロゲン受容体に結合する生物活性を有するNPIASY断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
NPIASYポリペプチドは、T細胞白血病、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膵癌、肺癌、および食道癌を含む癌にしばしば関連する、STAT、アンドロゲン受容体、およびp53に結合する。本発明の好ましい実施形態は、NPIASYポリペプチドまたはその断片を、STAT、アンドロゲン受容体またはp53分子と、NPIASYポリペプチドが前記分子に結合するのを可能にする条件下にて結合させる段階を含む。この方法は、in vitro精製および検出方法、ならびにin vivo方法に向けられ、STAT、p53、またはアンドロゲン受容体を抑制することができる。かかる方法は本明細書に述べられている。
好ましい実施形態において、STAT、アンドロゲン受容体またはp53を精製するためにNPIASYポリペプチドを使用する。かかる方法では、NPIASYポリペプチドは好ましくは、固体マトリックスに共有結合または非共有結合で結合され、当技術分野でよく知られている技術を用いて、STAT、アンドロゲン受容体またはp53に結合させることが可能となる。この方法は、i)固体マトリックスを洗浄し、混入物を取り除く段階と、ii)より厳密な条件を用いて、対象の粒子を溶出する段階と、を含む。この実施形態のその他の態様は、当技術分野で一般的な技術を用いて、STAT、アンドロゲン受容体またはp53を検出かつ定量化するために、NPIASYポリペプチドを使用する方法を包含する。この方法は、STAT、アンドロゲン受容体またはp53を含有すると考えられる生体試料を得る段階;ii)NPIASYの結合に適した条件下にて、前記試料をNPIASYポリペプチドまたはその断片と接触させる段階;iii)NPIASYを検出することによって、STAT、アンドロゲン受容体またはp53の存在を検出する段階;を含む。NPIASYポリペプチドまたはその断片は、検出可能な化合物に共有結合で結合されることが好ましい。代替方法としては、検出可能なNPIASY特異的抗体またはその断片を用いて、NPIASYを検出することもできる。この実施形態は、例えば、p53、STAT、またはアンドロゲン受容体に関連する癌、例えばT細胞白血病、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膵癌、肺癌、および食道癌のリスクを検出するための診断ツールとして有用である。さらに、この方法は、筋萎縮および性発達障害を含む、低レベルの上記のタンパク質と関連する障害を診断するために使用することができる。
本発明の好ましい態様は、NPIASYポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、NPIASY発現を検出することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。NPIASYの発現を指示できるポリヌクレオチドは、NPIASY遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、LIRIONコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。前記宿主細胞により産生されるNPIASYタンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断方法およびin vivo用途に使用することができる。
本発明の実施形態は、NPIASYポリペプチドを含む組成物を製造する方法に関する。PIASYポリペプチドを作製する方法は、i)本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする段階と、ii)産生されたタンパク質を精製する段階と、を含む。NPIASYは、当技術分野で公知のまたは本明細書に開示されている技術によって精製することができる。NPIASYまたはその一部に対して作られる抗体、好ましくはNPIASYポリペプチドのC末端配列に対して作られる抗体が、クロマトグラフィー担体に結合され、アフィニティークロマトグラフィーカラムが形成されることが好ましい。代替方法としては、NPIASYポリペプチドは、i)PIASYの発現を検出することができるポリヌクレオチドを宿主細胞にトランスフェクトする段階を含む方法によって作製される。NPIASYの発現を指示できるポリヌクレオチドは、NPIASY遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、NPIASYコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、上述のようにプロモーター配列を含むことが好ましい。
その他の実施形態において、本発明は、生体試料中のNPIASYポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)NPIASY ポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片と生体試料を接触させる段階;ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する段階;を含む。その抗体または抗体断片は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であり得る。さらに、その抗体または抗体断片は、当技術分野で一般的な検出可能な化合物によって一次的または二次的に標識することができる(例えば、放射性、蛍光、発光、または酵素標識)。この方法は、NPIASY関連疾患の診断に適用することができる。例えば、異常に低いレベルのNPIASYは、p53、STAT、またはアンドロゲン受容体に関連する癌、例えばT細胞白血病、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、膵癌、肺癌、および食道癌のリスクが高いことをを示す。異常に高いレベルのNPIASYは、不完全な性発達および筋萎縮などの上記のタンパク質に関連する成長および細胞増殖のリスクを示す。
一部の実施形態では、本発明は、NPIASYポリペプチドの存在を検出する、診断キットにも関する。このキットは、i)NPISAYポリペプチドに特異的に結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体またはその断片;任意にii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。その抗体または抗体断片は検出可能に標識することが好ましい。かかる標識としては、蛍光、発光、および放射性化合物、ならびに酵素基質が挙げられる。任意の試薬は、抗体に結合するか、または抗体上の標識と反応する、検出可能なシグナルを提供することができる。NPIASY抗体を用いて、上記の疾患のいずれかを診断することができる。かかる疾患を診断するために、適切な生体試料を試験して、産生されるNPIASYのレベルを決定することができる。
他の実施形態において、本発明は、STATによって仲介されるIFN関連免疫応答を制御する方法を提供する。その免疫応答には、B細胞および/またはT細胞により分泌されるIFNによって仲介される抗ウイルスまたは抗腫瘍応答が含まれる。この方法は、NPIASYポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドコンストラクトをIFN応答性細胞に導入する段階を含む。ポリヌクレオチドコンストラクトは、NPIASYコードポリヌクレオチドに作動可能に連結される発現制御因子を含むことが好ましい。本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの適切な組成物は、炎症などのIFNに関連する病態の治療方法として有用である。
本発明の実施形態は、NPIASY発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)NPIASYの発現を検出かつ定量化する段階;iii)試験物質に暴露した後の細胞中のNPIASY発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。NPIASYの発現は、当技術分野で一般的な、または本明細書に包含される方法によって、NPIASYポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することにより決定される。この方法の一例は、i)同等な2つの細胞試料を培養する段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も指定の時間に収集する段階;iv)細胞の各試料からのmRNAを精製する段階;v)各試料におけるNPIASYのmRNAレベルを、ノーザンブロット、RTPCR、または当技術分野で一般的な他の方法によって比較する段階;を含む。本発明は、本明細書で述べるような、特異的なポリヌクレオチドプローブおよびプライマーの設計および使用を提供する。その他の例は、i)同等な2つの細胞培養物を得る段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からmRNAを精製する段階;v)各試料におけるNPIASYポリペプチドのレベルを、ウェスタンブロット、免疫組織化学、または当技術分野で一般的な他の方法によって比較する段階;を含む。本発明は、本明細書で述べるような、特異的な抗体および抗体断片の設計および使用を提供する。
他の実施形態では、NPIASYポリペプチドまたはその断片は、NPIASY活性を活性化または抑制する化合部についてスクリーニングするために使用される。この方法は、i)NPIASYポリペプチドまたはその断片を試験物質と接触させる段階と、ii)NPIASY活性をモニターする段階を含む。NPIASYは、STAT、アンドロゲン受容体、およびp53に結合する。したがって、NPIASY活性は、試験物質を添加すると同時に、STAT、アンドロゲン受容体、およびp53での競合的結合アッセイによってモニターすることができる。本発明のこの態様では、NPIASYポリペプチドまたはその断片は溶液中で遊離であり、固体担体に固定化され、細胞表面上で組換えで発現されるか、または細胞表面に化学的に結合されるか、または細胞内に位置する。NPIASYポリペプチドと試験される化合物との間の結合性複合体の形成は、BIAcore(スウェーデン、ウプサラ)などの当業者によく知られている方法によって測定することができる。他の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号:W084/03564に記載のように、本発明のタンパク質に対して適切な結合親和性を有する化合物のハイスループットスクリーニングを提供する。NPIASYの発現または活性を低減する試験物質は、NPIASYの阻害剤またはアンタゴニストとして定義される。NPIASYの発現または活性を増加させる試験物質は、活性化剤またはアゴニストとして定義される。本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのアンタゴニストは、最終分化した心筋細胞または組織、例えば横紋筋細胞の細胞再生などにおいて、細胞周期を通して進行を刺激、促進または助長するために使用される。例えば、これは、心外傷、心筋梗塞、心筋炎、心筋症、心臓手術の結果としての外傷等の後の損傷を受けた心筋層の回復、または筋ジストロフィーによって疲労した横紋筋の過多の回復を可能にし得る。本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのアゴニストは、限定されないが、癌などの過剰増殖性疾患(例えば、白血病、リンパ腫、乳癌、結腸癌、前立腺癌)、冠動脈疾患、肺血管疾患、原発性アイゼンメンゲル症候群またはアイゼンメンゲル症候群の特徴としての閉塞性疾患、および異常細胞増殖の他の疾患などの病状を治療するのに有用である。NPIASYの発現または活性を調節する作用物質としては、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、および抗体が挙げられる。これらの作用物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造され、使用される。
更なる実施形態において、核酸によってコードされるポリペプチドの発現は、宿主細胞の細胞周期欠損を防ぐ、回復させる、または減らす、あるいは宿主細胞の正常細胞周期の進行を回復させると期待される。細胞に直接送達される核酸またはポリペプチドによって提供されるかどうかにかかわらず、本発明の治療製剤は、他の形式の治療法、限定されないが、化学療法および放射線療法などに、補助剤として使用することもできる。
他の好ましい実施形態において、本発明のタンパク質を用いて、例えば、不妊症の治療または診断および避妊のために、受精能を調節および/または特徴付けることができる。NPIASYは、精子形成に必須の遺伝子の活性化に必要とされるアンドロゲン受容体を不活性化する。したがって、NPIASYの過剰発現または活性化を利用して、アンドロゲン受容体の転写活性を抑制し、それによって受精能を阻害することができる。例えば、避妊のために、例えば、そのタンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いて、そのタンパク質自体を用いて、またはタンパク質の発現または活性の活性化剤を用いて、タンパク質のレベルを増加することによって、精子形成の遺伝子の発現を人工的に乱すことができる。代替方法として、不妊症に対しては、阻害剤、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、そのタンパク質のドミナントネガティブ型を用いて、タンパク質の発現または活性を抑制する異種化合物を用いて、そのタンパク質レベルを低減することができる。同様に、本発明のタンパク質の発現レベルを検出することによって、多くの患者における不妊症の原因を見つけることができる。タンパク質の活性または発現レベルが異常な場合には、不妊症の原因がNPIASYの抑制に関わることが示されている。かかる診断は、例えば、本発明のタンパク質の発現または活性化を増加または低減することによって、不妊症を治療する方法にも向けられるだろう。
本発明の他の実施形態は、当業者に知られているいずれかの方法によって、遺伝子導入モデル動物(キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)、ハツカネズミ(M. musculus))を確立するために、本発明のタンパク質またはその断片をコードするポリヌクレオチドを用いた組成物および方法に関する。薬物または変更遺伝子(活性化または抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をin vivoで調節することによって、癌などのヒトホルモン依存性疾患を模倣する動物モデルを作製することができる。したがって、これらの動物モデルによって、疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となる。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにex vivoで使用することができる。薬物または変更遺伝子(活性化または抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をin vivoで調節することによって、癌などのヒトホルモン依存性疾患を模倣する動物モデルを作製することができる。したがって、これらの動物モデルによって、疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となる。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにex vivoで使用することができる。
配列番号:34のタンパク質(内部指定番号125402 105−074−4−0−F3−F)
125402_105−074−4−0−F3−FのcDNA(配列番号:33)は、アミノ酸配列:MLLLSLTLSLVLLGSSWGCGIPAIKPALSFSQRIVNGENAVLGSWPWQVSLQDSSDFHFCGGSLISQSWVVTAAHCNVSPGRHFWLGEYDRSSNAEPLQVLSVSRAITHPSWNSTTMNNDVTLLKLASPAQYTTRISPVCLASSNEALTEGLTCVTTGWGRLSGVGNVTPARLQQVALPLVTVNQCRQYWGSSITDSMICAGGAGASSCQGDSGGPLVCQKGNTWVLIGIVSWGTKNCNVRAPAVYTRVSKFSTWINQVIAYNを含む、配列番号:34のタンパク質vCRTL−1をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:34のポリペプチドのすべての特性および使用は、125402_105−074−4−0−F3−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:33のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、125402_105−074−4−0−F3−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:33、配列番号:34、および125402_105−074−4−0−F3−Fの組成物に対して向けられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:33のcDNAは、16番染色体上、特に16q22.1位に位置する遺伝子によってコードされるヒトキモトリプシン様プロテアーゼCTRL-1の新規な多型変異体である。vCRTL−1の264アミノ酸のタンパク質は、シグナルペプチド(MLLLSLTLSLVLLGSSWG)およびセリンプロテアーゼドメインを含有し、かつセリンプロテアーゼファミリーに属する。プロテアーゼは、広範囲の生物学的経路のキー成分であり、それらの触媒機構に従って4つのグループ:セリン、システイン(チオール)、アスパラギン酸(カルボキシル)、および金属プロテアーゼに分類することができる。キモトリプシンは、特定のペプチド結合の加水分解を触媒するために、それらの基質結合部位において活性セリン残基を利用することから、そう呼ばれるセリンプロテアーゼとして知られる酵素ファミリーのメンバーである。膵臓由来のプロテアーゼのサブファミリーは、トリプシン、キモトリプシン、カリクレイン、およびエラスターゼを含む。キモトリプシンは膵臓由来プロテアーゼの中で最も豊富であり、膵外分泌により合成される全タンパク質の10〜20%に相当し得る。vCRTL−1は、活性プロテアーゼを形成するために切断しなければならない不活性な酵素前駆体として膵臓腺房細胞によって発現かつ合成される消化酵素である。vCRTL−1は、キモトリプシン−およびエラスターゼ2様活性を表し、PI位置にチロシン、フェニルアラニン、またはロイシン残基、好ましくはP2位置にプロリンを有する基質のアミド結合を加水分解する。vCRTL−1の分泌は、膵液または腸液中に(特定の十二指腸液中に)、プロテアーゼ阻害剤が存在することによって誘導され得る。
本発明の実施形態は、配列番号:34のvCRTL−1ポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、タンパク質基質に結合する生物活性またはセリンプロテアーゼ活性を有するvCRTL−1ポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、vCRTL−1ポリペプチドをコードする配列番号:33のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、タンパク質基質に結合する生物活性またはセリンプロテアーゼ活性を有するvCRTL−1ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、配列番号:34のvCRTL−1ポリペプチド配列に対して作られる抗体、またはタンパク質基質に結合する生物活性もしくはセリンプロテアーゼ活性を有するvCRTL−1ポリペプチド断片を含む組成物に関する。その抗体は、特異的にvCRTL−1に結合するが、CTRL−1には結合しないことが好ましい。その抗体はアミノ酸配列:SLQDSSDFHFを認識することがさらに好ましい。
本発明のその他の好ましい実施形態は、vCRTL−1ポリペプチドをvCRTL−1特異的抗体またはそのvCRTL−1結合断片と結合させる方法である。この方法は、vCRTL−1ポリペプチドを、vCRTL−1結合抗体またはそのvCRTL−1結合断片と、結合が生じる条件下にて接触させる段階を含む。この方法は、vCRTL−1の検出および精製に適用することができる。これらの態様は、本明細書で詳細に記述される。
他の実施形態は、i)vCRTL−1をコードするポリヌクレオチドを含む適切な発現ベクターを、宿主細胞にトランスフェクトする段階と、ii)産生されたタンパク質を精製する段階とを含む、組換えvCRTL−1ポリペプチドを作製する方法に関する。その宿主細胞は、それによってこの特定のタンパク質をコードする核酸配列が発現される条件下にて培養される。産物が蓄積するのに適切な長さの時間後、タンパク質は、宿主細胞またはその細胞を取り囲む培地から精製される。vCRTL−1をコードする核酸配列を組み込む発現ベクターの宿主細胞への導入は、限定されないが、塩化カルシウムまたは塩化リチウム処理、電気穿孔法、およびリポフェクションなどの様々な方法で実施することができる。この実施形態においても、哺乳動物を用いて、乳中でvCRTL−1を産生し、それによって、精製後にかなりの量のこの特定のタンパク質を作製することができる。十分な乳を生産する任意の種類の動物、例えば限定されないが、ヒツジ、ヤギ、および雌ウシなどをこの目的に使用することができる。これらの動物は、乳におけるvCRTL−1の過剰発現を標的化するいずれかの方法で作製することができる。本発明のタンパク質は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,268,487号に開示の方法を含む、当業者によく知られているいずれかの技術を用いて精製することができる。好ましくは、vCRTL−1またはその断片に対して作られる抗体または抗原結合断片をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムが形成される。さらに好ましくは、その抗体はvCRTL−1に特異的に結合するが、CTRL-1には特異的に結合しない。
本発明の好ましい実施形態は、基質タンパク質をタンパク分解で切断するために、vCRTL−1ポリペプチドまたはその生物活性断片を使用する方法である。この方法は、vCRTL−1プロテアーゼ活性を可能にする条件下にて、vCRTL−1をタンパク質基質と接触させる段階を含む。この方法は、生化学的用途ならびに慢性および急性膵炎および嚢胞性線維症などのvCRTL−1関連疾患の予防および治療を含む、タンパク質のin vitroおよびin vivo用途のどちらにも向けられている。
その他の実施形態では、本発明は、生体試料中の広範囲のタンパク質を消化するために、vCRTL−1タンパク分解活性を有効に誘導する方法を提供することである。この方法は、in vitroまたはin vivoのいずれかで行うことができ、vCRTL−1タンパク分解活性を可能にする条件下にて、有効量のvCRTL−1ポリペプチドまたはその生物活性断片を生体試料と接触させる段階を含む。例えば、かかる方法は、DNA作製においてタンパク質を除去するために、またはいずれかの酵素反応後に酵素を除去するために、in vitroで用いることができる。かかる組成物は、単独で、または他のプロテアーゼとの「カクテル」として使用することができる。かかるプロテアーゼのカクテルは、行われるアッセイを妨げると考えられるタンパク質を分解するために、アッセイにおいて広く用いられている。
他の実施形態において、vCRTL−1またはその断片は、その開示内容全体が参照により組み込まれる米国特許第5,599,400号に記載のプロテアーゼの使用と同様に、タンパク質成分を有する染色を除去するために、洗浄剤と組み合わせて使用することができる。その組成物は、界面活性剤、起泡剤(foam enhancer)および充填剤などの公知の洗浄剤成分を含有し得る。vCRTL−1ポリペプチドは、洗浄剤組成物中に含まれるか、または添加剤としての使用時に他の成分と組み合わせることができる。その洗浄剤添加剤は、液状、粉末状、顆粒状またはスラリー状で配合することができる。
本発明の更なる実施形態は、vCRTL−1の発現の発現を増加または低減する物質、およびi)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)vCRTL−1の発現レベルを定量化かつ検出する段階;iii)暴露細胞におけるvCRTL−1の発現を、非暴露対照細胞における発現と比較する段階;を含む、かかる物質についてスクリーニングする方法に関する。vCRTL−1の発現は、当技術分野で一般的な、いずれかの特異的ヌクレオチドまたはタンパク質検出技術(例えば、ノーザンブロット法またはウエスタンブロット法)によって決定することが可能である。vCRTL−1の発現は、膵臓細胞において研究されることが好ましい。vCRTL−1の発現レベルは、例えばアンチセンス分子を用いて、生体試料中で減少させることができる。
本発明の更なる実施形態は、vCRTL−1の活性を増加または減少させる物質と、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)vCRTL−1活性を検出する段階;iii)暴露細胞におけるvCRTL−1タンパク分解活性を、非暴露対照細胞における活性と比較する段階;を含む、かかる物質についてスクリーニングする方法と、に関する。vCRTL−1の発現は、膵臓細胞において研究されることが好ましい。vCRTL−1の活性は、直接的もしくは間接的に阻害剤分子またはアンタゴニスト抗体を用いて、抑制することができる。
vCRTL−1の活性化剤またはアゴニストは、vCRTL−1の活性または発現を増加させる物質である。vCRTL−1の阻害剤またはアンタゴニストは、活性または発現を低減する物質である。
本発明は、動物の1種または複数種の組織、好ましくは脾臓における本発明のタンパク質の発現または活性を調節することによって作製される動物モデルもまた提供する。かかる動物は、急性もしくは慢性膵炎などのvCRTL−1の活性に特異的に関連する疾患の様々な病態生理学的側面の治療に潜在的に有用な候補分子を試験するためのin vivoアッセイ法を表すことから、多くの目的に有用である。かかるモデルの表現型の研究によって、vCRTL−1の欠乏により引き起こされるまたはvCRTL−1の欠乏と関連する、その他の同等のヒト疾患を同定することも可能となる。vCRTL−1の過剰発現または不活性化を標的化する、いずれかの方法で、これらの動物を作製することができる。かかるモデルは、例えば、かかる疾患および病状の治療に用いられる候補治療法および薬物の評価に非常に有用である。
その他の実施形態において、本発明は、異常なvCRTL活性に関連する疾患または障害を診断するために用いられる。特に、結果としてvCRTL−1活性の著しい減少が起こる、膵外分泌機能不全を有する患者の診断に有用である。かかる疾患および障害の例としては、限定されないが、慢性または急性膵炎および嚢胞性線維症が挙げられる。さらに、vCRTLは、転移性腫瘍活性、特に膵臓腫瘍活性と関連する。したがって、vCRTLレベルが通常より高いと、転移活性を示し得る。この方法は、i)vCRTL−1ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに選択的に結合できる化合物と、体液または組織試料を接触させる段階と、ii)試料中のvCRTL−1ポリペプチドまたはポリヌクレオチドのレベルを検出する段階と、を含む。好ましくは、対照試料に対するその試料におけるレベルまたは他の特性の差異によって、障害の存在または障害を発症する性質が示される。好ましくは、分析される試料としては、限定されないが、腸液および特に十二指腸液、膵臓組織のホモジネート、尿および血漿が挙げられる。体液または組織試料は、疾患を有する疑いのある、または疾患を発症するリスクがある個体から採取されることがさらに好ましい。例えば、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体またはその抗原結合活性断片または核酸プローブが用いられる。好ましくは、この実施形態で使用される抗体は、変異vCRTL−1ポリペプチドに対して特異的に作られ、CRTL−1ポリペプチドを認識しない。検出は、公知の免疫組織学的および免疫蛍光プロセスを用いて、直接または間接的に行うことができる。vCRTL−1結合性分子は、限定されないが、アルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼなどの酵素、FITC、ローダミン、およびテキサスレッド(Texas-Red)などの蛍光染料など、一般的に公知の化合物で直接標識することができる。しかしながら、標識は、二次試薬を使用することによって間接的に行うこともできる。この実施形態においても、公知のPCRまたはRT−PCR技術を用いて、特に「リアルタイム」PCRシステムで変異CRTL−1を同定することにより、診断が容易となる。代替方法としては、かかる方法を用いて、本発明は、CRTL−1の発現における調節(modulation)を特定の病状と関係付けるツールを提供する。本発明は、かかる病状の新規な候補遺伝子を提供する。
更なる実施形態では、本発明は、生体試料中のvCRTL−1の量を定量化するのに有用な試験キットを包含する。vCRTL−1ポリペプチドのレベルは、臨床的に確認されている膵臓疾患の重症度の評価に有用であり、急性膵炎の動物モデルにおける病態生理および可能な治療法を調べるのに有用なマーカーでもある。さらに、vCRTL−1レベルは、好ましくは膵臓癌のケースにおける、腫瘍の侵襲性および拡散転移能力の推定に有用である可能性がある。この実施形態では、これらのまたは他の病状を治療するために施される治療経過をモニターするため、かかるアッセイを適用することができる。さらに、例えば組織分解への影響を評価するための新規な薬物の臨床試験中に、毒性の測定法として、そのアッセイを用いることができる。このように、vCRTL−1が、病状、治療の指標、または対象に直接投与された物質の効果の指標として使用されるいずれかの状況において、このアッセイを適用することができる。したがって、患者の病状を連続的にモニターし、病理試料におけるvCRTL−1の定量化された量を、健康な個体の生体試料中で定量された量または同じ患者の前の分析と比較することができる。この実施形態では、イムノアッセイを含むいずれかの適切な方法によって、腸液、特に十二指腸液、膵臓組織のホモジネート、尿および血漿中で、このマーカーを有効に測定することができる。そのキットは、少なくとも1つの免疫学的結合パートナー(例えば、vCRTL−1に特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体)および任意に、検出可能な二次マーカーを備える。好ましくは、キットで使用される抗体またはその抗原結合断片は、変異vCRTL−1ポリペプチドに対して特異的に作られ、CTRL−1ポリペプチドにはそうではない。
本発明の更なる実施形態は、vCRTL−1の不十分な分泌と関連する疾患を発症するリスクがある、または疾患を有する個体を治療するのに有用である、新規な方法および組成物を提供することである。これらの方法および組成物は、慢性または急性膵炎および嚢胞性線維症など、脂肪便によって特徴付けられる膵外分泌機能不全の治療に有用である。この方法は、上記の病状の1つを有する、またはリスクのある個体に、有効量のvCRTL−1ポリペプチド、その生物活性断片、またはアゴニストを投与する段階を含む。vCRTL−1またはアゴニスト組成物は、生理食塩水溶液または他の生理学的なバッファーなどの生理学的に許容される担体と組み合わせて送達されることが好ましい。いずれかの特定の病状に対して個体に投与されるであろう本発明の組成物の特定量は、患者の臨床症状、および体重、年齢、および送達経路などの他の因子によって異なるだろう。かかる組成物は、限定されないが、経口、エアロゾル、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下経路などの適切な経路によって投与される。これらの組成物は、本発明のタンパク質、および任意に、1種または複数種の他の種類のプロテアーゼ、または対象の他のいずれかの化合物を含有し得る。この同時投与は、同時に投与することによる、または別々に投与もしくは逐次投与することによるものである。これらの更なる成分のすべては、天然源から得られるか、または組換え遺伝子操作技術および/または化学修飾によって生成することができる。
本発明の更なる実施形態は、正常レベルよりも高いレベルのvCRTL−1と関連する疾患を発症するリスクがある、またはその疾患を有する個体を治療するのに有用である、新規な方法および組成物を提供することである。この方法は、転移性細胞増殖、特に膵臓癌の治療に有用である。この方法は、転移性細胞増殖を有する、または発症するリスクがある個体に、有効量のvCRTL−1アンタゴニストを投与する段階を含む。vCRTL−1アンタゴニスト組成物は、生理食塩水溶液または他の生理学的なバッファーなどの生理学的に許容される担体と組み合わせて送達されることが好ましい。いずれかの特定の病状に対して個体に投与されるであろう本発明の組成物の特定量は、患者の臨床症状、および体重、年齢、および送達経路などの他の因子によって異なるだろう。かかる組成物は、限定されないが、経口、エアロゾル、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下経路などの適切な経路によって投与される。
配列番号:36のタンパク質(内部指定クローン107640 105−036−2−0−H3−F)
クローン107640 105−036−2−0−H3−FのcDNA(配列番号:35)は、アミノ酸配列:MIPTFTALLCLGLSLGPRTHMQAGPLPKPTLWAEPGSVISWGNSVTIWCQGTLEAREYRLDKEESPAPWDRQNPLEPKNKARFSIPSMTEDYAGRYRCYYRSPVGWSQPSDPLELVMTGAYSKPTLSALPSPLVTSEKSVTLLCQSRSPMDTFLLIKERAAHPLLHLRSEHGAQQHQAEFPMSPVTSVHGGTYRCFSSHGFSHYLLSHPSDPLELIVSGSLEDPRPSPTRSVSTAAGPEDQPLMPTGSVPHSGLRRHWEVLIGVLWSILLLSLLLFLLLQHWRQGKHRTLAQRQADFQRPPGAAEPEPKDGGLQRRSSPAADVQGENFCAAVKDTQPEDGVEMDTRSPHDEDPQAVTYAKVKHSRPRREMASPPSPLSGEFLDTKDRQAEEDRQMDTEAAASEAPQDVTYAQLHSFTLRQKATEPPPSQEGASPAEPSVYATLAIHを含む、配列番号:36の447アミノ酸のLIRIONタンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:36のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン107640 105−036−2−0−H3−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:35のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン107640 105−036−2−0−H3−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本明細書に記載の生物活性を有する断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
LIRION、配列番号:36のタンパク質は、ペプチドシグナル配列(MIPTFTALLCLGLSLGPRTHMQA)および2つのC2型免疫グロブリン様ドメイン、続いて膜貫通領域(VLIGVLWSILLLSLLLFLLL)を含む259アミノ酸長さの細胞外ドメイン、および3つの免疫受容体チロシンベース抑制性モチーフ(Immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)(ITIM)を含有する167アミノ酸長さの細胞内ドメインを始めとする、ILT-3受容体前駆体(Genbankアクセッション番号U82979)の新規な変異型である。
免疫系細胞活性は、細胞表面相互作用および関連するシグナル伝達プロセスの複雑なネットワークによって制御される。受容体が結合すると、活性化シグナルおよび抑制シグナルとの間のバランスによって、細胞活性が調節される。正のシグナル伝達を仲介する多くの受容体は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)として知られるチロシンリン酸化部位を含有する細胞質側末端(cytoplasmic tail)を有する。抑制経路は、タンパク質チロシンホスファターゼに結合部位を提供する、ITIMを有する受容体を要する。
ナチュラルキラー細胞(NK)細胞の細胞溶解活性は、細胞機能を惹起する正のシグナルと細胞活性を防ぐ抑制シグナルとの間のバランスによって調節される。正常細胞は、NK細胞上の抑制性受容体により認識される、MHCクラスIタンパク質の細胞表面発現によってNK細胞から保護される。キラー細胞抑制性受容体(Killer Inhibitory Receptor)(KIR)として知られるこれらの受容体は、会合と同時に細胞に負のシグナルを送り、NK細胞の細胞傷害性活性をダウンレギュレートする。MHCクラスIの発現は、ウイルス感染した細胞において、および腫瘍細胞においてダウンレギュレートされる場合が多く、それによって、これらの細胞はNK細胞の攻撃を受けやすくなる。KIRは、2つのITIMを有する免疫グロブリンスーパーファミリー受容体である。これらのリン酸化されたITIMは、シグナル伝達経路において分子を脱リン酸化し、かつ細胞の活性化を防ぐ、チロシンホスファターゼを補充する。
本発明のタンパク質であるLIRIONは、免疫グロブリン様転写物(ILT)抑制性受容体である。この種類の受容体は、KIRと密接に関連し、同じ様式で機能する。LIRIONは、骨髄性抗原提示細胞(APC)、つまり樹状細胞、単球およびマクロファージ上で選択的に発現され、刺激性受容体によって引き起こされるAPCの機能応答を負に制御する。その抑制機能の他に、LIRIONは、抗原取り込みおよびプロセシングに関与する。
以下に記載の方法において使用するのに好ましいLIRIONポリペプチドとしては、以下のアミノ配列:GPLPKPTLWAEPGSVISWGNSVTIWCQGTLEAREYRLDKEESPAPWDRQNPLEPKNKARFSIPSMTEDYAGRYRCYYRSPVGWSQPSDPLELVMTGAYSKPTLSALPSPLVTSEKSVTLLCQSRSPMDTFLLIKERAAHPLLHLRSEHGAQQHQAEFPMSPVTSVHGGTYRCFSSHGFSHYLLSHPSDPLELIVSGSLEDPRPSPTRSVSTAAGPEDQPLMPTGSVPHSGLRRHWEVLIGVLVVSILLLSLLLFLLLQHWRQGKHRTLAQRQADFQRPPGAAEPEPKDGGLQRRSSPAADVQGENFCAAVKDTQPEDGVEMDTRSPHDEDPQAVTYAKVKHSRPRREMASPPSPLSGEFLDTKDRQAEEDRQMDTEAAASEAPQDVTYAQLHSFTLRQKATEPPPSQEGASPAEPSVYATLAIHを含むポリペプチド;
以下のアミノ酸配列:GPLPKPTLWAEPGSVISWGNSVTIWCQGTLEAREYRLDKEESPAPWDRQNPLEPKNKARFSIPSMTEDYAGRYRCYYRSPVGWSQPSDPLELVMTGAYSKPTLSALPSPLVTSEKSVTLLCQSRSPMDTFLLIKERAAHPLLHLRSEHGAQQHQAEFPMSPVTSVHGGTYRCFSSHGFSHYLLSHPSDPLELIVSGSLEDPRPSPTRSVSTAAGPEDQPLMPTGSVPHSGLRRHWEを含むポリペプチド;
以下のアミノ酸配列:QHWRQGKHRTLAQRQADFQRPPGAAEPEPKDGGLQRRSSPAADVQGENFCAAVKDTQPEDGVEMDTRSPHDEDPQAVTYAKVKHSRPRREMASPPSPLSGEFLDTKDRQAEEDRQMDTEAAASEAPQDVTYAQLHSFTLRQKATEPPPSQEGASPAEPSVYATLAIHを含むポリペプチド;が含まれる。
本発明の実施形態は、配列番号:36のLIRIONポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、SHP-1、MHC I、MHC I様分子(CDI、MRI、MICなど)、MHCII、および補体成分(Cl、C2、C3,C4、C5、および因子B)と相互作用する生物活性を有するLIRIONポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、LIRIONポリペプチドをコードする配列番号:35のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、SHP-1、MHC I、MHC I様分子(CDI、MRI、MICなど)、MHCII、および補体成分(Cl、C2、C3、C4、C5、および因子B)と相互作用する生物活性を有するLIRIONポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、LIRION発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)試験される物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のLIRION発現を、未処置の対照細胞中の発現と比較する段階;を含む方法に関する。
好ましい実施形態は、LIRIONポリペプチドに特異的に結合する抗体に関する。さらに、LIRION結合抗体断片が包含される。LIRION特異的抗体またはそのLIRION結合断片はLIRIONには結合するが、ILT3には結合しないことが好ましい。モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、異種抗体、および検出可能に標識された抗体および抗原結合断片が本発明に包含される。かかる抗体およびその断片を作製する方法は、当技術分野で一般的であり、かつ本明細書に包含される。
本発明のその他の好ましい実施形態は、LIRION特異的抗体またはそのLIRION結合断片とLIRIONポリペプチドを結合させる方法である。この方法は、結合を生じさせる条件下にて、LIRION結合抗体またはそのLIRION結合断片とLIRIONポリペプチドを接触させる段階を含む。この方法は、LIRIONの検出および精製、ならびにLIRIONを発現する細胞の標的化に適用することができる。これらの態様は、本明細書で詳細に説明される。
一実施形態において、137、223、および335位に相当する配列番号:35のヌクレオチド位447、705および1040におけるGからAへの置換、GからAおよびAからGへの置換を有し、その結果として、グリシン残基がグルタミン酸によって137位で置換され、グリシンがアスパラギン酸によって223位で置換され、アスパラギン残基がアスパラギン酸によって335位で置換される、配列番号:36をコードする配列をDNAゲノタイピングに用いることができる。この遺伝子座のゲノタイピングは、例えば親子鑑定または法医学分析に用いられるDNAフィンガープリント法において対象となり得る。それはまた、特に、B細胞自己免疫障害(例えば、慢性関節リウマチおよび潰瘍性大腸炎)および抗原提示障害(bare lymphocyte syndrome)に関連する病状の遺伝的関連研究に用いることができる。
その他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチド配列は、患者の病状もしくは疾患の治療のための、理想的な薬物(例えば、LIRIONのアゴニストまたはアンタゴニスト)の選択または薬物用量の選択を助けるために、薬理ゲノミクス用途に使用することができる。例えば、一実施形態において、本発明は、患者をゲノタイピングして、LIRIONの137位、223位および335位のアミノ酸をコードするヌクレオチドの同一性を決定し、137位、223位および335位それぞれにグルタミン酸、アスパラギン酸およびアスパラギン酸残基を有するものにおいて優先的に有効であることが証明されている(例えば、これらの位置にグルタミン酸、アスパラギン酸およびアスパラギン酸を有するタンパク質のアイソフォームに、その薬物が優先的に結合することから)、薬物または投薬量の薬物を患者に投与する方法を提供する。その他の実施形態において、例えば、137位、223位および335位それぞれにグルタミン酸、アスパラギン酸およびアスパラギン酸を有する個体にその薬物の投与した場合に伴う副作用が知られていることから、アミノ酸の137位、223位および335位をコードするヌクレオチドに対して患者は遺伝子型を判定され、薬物は投与されない。
本発明の好ましい態様は、LIRIONポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、LIRION発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。LIRIONの発現を指示できるポリヌクレオチドは、LIRION遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、LIRIONコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。
他の実施形態は、LIRIONポリペプチドを作製する方法に関する。本発明のタンパク質は、LIRIONをコードする核酸配列を含む適切な発現ベクターをトランスフェクトされた宿主細胞において作製することができる。かかる発現ベクターの宿主への導入は、限定されないが、塩化カルシウムまたは塩化リチウム処理、電気穿孔法、およびリポフェクションなどの様々な方法で実施することができる。多種多様な発現系のいずれかを用いて、組換えタンパク質を提供することができる。適切な発現媒体には、限定されないが、プラスミド、ウイルス粒子または昆虫細胞のバキュロウイルスが含まれる。発現媒体は宿主細胞ゲノムに組み込むことができる。任意に、誘導性発現ベクターを用いて、宿主細胞中の厳密に制御された遺伝子の発現を達成することができる。組換えタンパク質を宿主細胞から回収し、当業者によく知られているいずれかの技術によって精製することができる。好ましくは、本発明のタンパク質またはその断片に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムが形成される。代替方法としては、固相技術を用いて、LIRIONまたはその断片を化学的に合成することができる。
他の実施形態において、本発明のタンパク質を用いて、生体試料またはin vitroで成長させた細胞から骨髄性APCを精製することができる。かかる実施形態において、本発明のタンパク質対して作られるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて、その細胞を免疫精製することができる。細胞を免疫精製するために用いられる方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、セファロースカラムに固定化するか、または固体担体に結合させることができる。代替方法としては、抗体を蛍光標識し、FACSによって細胞を精製する。
他の実施形態では、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける本発明のタンパク質をコードするmRNAの発現レベルを検出するための組成物および方法を提供する。LIRIONのmRNAレベルの定量化は、タンパク質の異常発現と関連する疾患または病状の診断に、または本明細書で述べたように治療的介入中にLIRIONの調節をモニターするのに有用である。mRNAの検出および定量化のアッセイは当技術分野でよく知られている。好ましい方法は、生体試料からRNAを単離する段階と、定量的RT−PCRによりLIRIONのmRNAレベルを測定する段階と、対象試料における発現を対照試料における発現と比較する段階と、を含む。ハイブリダイゼーションまたはPCR増幅によるLIRION mRNAの検出に使用されるポリヌクレオチドプローブまたはプライマーは、当技術分野でよく知られている方法によって、配列番号:35のポリヌクレオチドから設計することができる。
他の実施形態では、本発明は、LIRIONを検出し、生体試料中のその発現レベルを定量化するための方法および組成物に関する。これらの方法は、変化したまたは異常なLIRION発現によって特徴付けられる病状、例えば自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、およびウイルスにより誘導される自己免疫)、代謝性疾患(例えば、肥満症、高コレステロール血症、インスリン関連疾患)、および神経疾患(例えば、精神分裂病)などの診断に有用である。LIRIONタンパク質の発現を定量化する方法は、LIRION特異的抗体またはそのLIRION特異的断片を、抗体−抗原を結合を生じさせる条件下にて生体試料と接触させる段階を含む。その抗体または断片は、検出可能に標識されることが好ましい。好ましい標識としては、蛍光標識(例えば、GFP、FITC、およびローダミン)および二次標識(例えば、ビオチンおよび酵素基質)が挙げられる。好ましい方法は、LIRIONに特異的に結合する抗体を、哺乳動物対象からの生体試料と接触させる段階と、健康な対象の対照レベルと比較して、対象試料におけるLIRIONレベルを決定する段階とを含み、対象試料におけるLIRIONのレベルが異常な場合には、対象が疾患を有すること、または疾患を発症するリスクが高いことが示される。使用される抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であることが可能であり、当技術分野でよく知られている方法によって、例えばELISAまたはラジオイムノアッセイによって、免疫複合体を定量化するために、直接または間接的に標識することができる。LIRIONに対して作られる好ましい特異的抗体は、上記のポリペプチド断片を用いて作製される。本発明のタンパク質を検出する診断アッセイは、器官または組織切片由来の細胞の、生検の生体試料またはin situアッセイに依拠する。好ましい生体試料には、器官、組織、または血液からの全細胞および細胞抽出物が含まれる。
本発明の実施形態は、LIRION発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)試験物質と細胞を接触させる段階;ii)LIRIONの発現を検出する段階;iii)試験物質に暴露した後の細胞中のLIRION発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。LIRIONの発現は、当技術分野で一般的な、または本明細書に包含される方法によって、LIRIONポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することによって決定される。この方法の一例は、i)同等な2つの細胞試料を培養する段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)指定の時間にどちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からmRNAを精製する段階;v)各試料におけるLIRION mRNAのレベルを検出する段階;を含む。LIRION mRNAは、ノーザンブロット、RT−PCR、または当技術分野で一般的な他の方法によって検出することができる。本発明は、本明細書に記載されるような、特異的なポリヌクレオチドプローブおよびプライマーの設計および使用を提供する。その他の例は、i)同等な2つの細胞培養物を得る段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からタンパク質を精製する段階;v)各試料におけるLIRIONポリペプチドのレベルを検出する段階;を含む。酵素免疫測定法 (ELISA)、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または当技術分野で一般的な他の方法によって、LIRIONを検出することができる。本発明は、本明細書に述べるような、特異的抗体および抗体断片の設計および使用を提供する。
本発明の好ましい実施形態は、LIRIONポリペプチドに結合する試験物質についてスクリーニングする方法を提供する。この方法は、結合を生じさせる条件下にて、試験物質をLIRIONポリペプチドまたはその断片と接触させる段階;ii)当技術分野で一般的な方法(例えば、免疫共沈降およびウエスタンブロット法などの競合的な抗体に基づく方法)によって、試験物質の結合を検出する段階;を含む。この方法には、抗体、抗体断片、細胞型特異的リガンドまたはその一部と結合する試験物質が含まれる。LIRIONに特異的に結合する物質を用いて、タンパク質を検出および精製、ならびにその活性を抑制または活性化することができる。
本発明の更なる好ましい実施形態は、LIRION活性のアゴニストについて、LIRIONに結合する試験物質をスクリーニングする方法であって、i)試験する物質を細胞と接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後のLIRION生物活性を、非暴露対照細胞における生物活性と比較する段階;を含む方法を提供する。LIRION生物活性の測定値は、活性化受容体との会合(co-engagement)に続いてシグナル伝達をモニターすることによって間接的に評価することが可能である。LIRION活性化を測定するためのアッセイの一例は、単球をin vitroで培養する段階と、その細胞を試験物質、抗LIRION抗体および抗HLA−DR抗体と接触させる段階と、架橋結合抗体を添加する段階と、その細胞を収集する段階と、SDS−PAGEによって細胞抽出物を分離する段階と、特異的な抗ホスホチロシン抗体を用いて、タンパク質のチロシンリン酸化を検出する段階を含む。対照試料と比較して、試験試料中のチロシンタンパク質リン酸化の減少は、LIRIONに対する試験物質の活性化効果を示している。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるCella et al. (1997, Journal of Experimental Medicine ; Vol. 185, pp 1743-1751)に記載のように、受容体の連結(coligation)と同時に誘導される細胞内Ca++動員を測定することによって、LIRIONの活性化も評価することができる。
本発明の更なる好ましい実施形態は、LIRION活性のアンタゴニストについて、LIRIONに結合する試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後のLIRION生物活性を、非暴露対照細胞における生物活性と比較する段階;を含む。LIRION生物活性の検出は、上述のLIRION刺激に続く、タンパク質の脱リン酸化を測定することによって検出される。この場合には、対照試料と比較して、試験試料におけるタンパク質リン酸化の増加が、LIRION活性に対する試験物質の抑制効果を表す。
LIRIONの発現または活性を増加する物質(アゴニストまたは活性化剤)を用いて、APC活性を低減するか、または骨髄性癌を治療することができる。LIRIONの発現または活性を減少させる物質(アンタゴニストまたは阻害剤)を用いて、感染症を治療または予防することができる。
本発明の他の実施形態は、病原体感染症などの抑制された免疫機能と関連する疾患を治療または予防する方法にも関する。この方法は、LIRIONアンタゴニストを細胞に導入する段階を含む。好ましい細胞は、APCなど、LIRIONを発現する細胞である。
本発明の好ましい実施形態は、LIRIONアゴニストまたはLIRIONをコードするポリペプチドを細胞に投与することによって、LIRIONの発現または活性を増加させる方法を包含する。これらの方法は、LIRION関連疾患、例えば自己免疫(例えば、変形性関節症、クローン病、グレーヴス病、自己免疫性甲状腺炎、エリテマトーデス、自己免疫性溶血性貧血、血小板減少症、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、喘息、重症筋無力症、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、およびウイルス誘導自己免疫)、代謝性疾患(例えば、肥満症、高コレステロール血症、インスリン関連疾患)、および神経疾患(例えば、精神分裂病)ならびに骨髄性癌などに適用される。かかる一方法は、細胞をLIRIONアゴニストと接触させる段階を含む。好ましいアゴニストには、異種プロモーター配列など、LIRION発現に影響を及ぼすアゴニストが含まれる。その他の方法は、LIRIONポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入する段階を含む。この方法の一例は、i)個体のAPC細胞の試料を除去する段階;ii)LIRIONポリヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチド配列をこれらの細胞にex vivoで導入する段階;iii)その組換え細胞を個体に再注入する段階;を含む。APCには、単球、マクロファージおよび樹状細胞が含まれる。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペス、またはワクシニアウイルスに由来する発現ベクターが、本発明のポリヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチド配列を標的細胞集団に送達するために用いられる。細胞または組織にベクターを導入する多くの方法を利用することが可能であり、in vivoまたはex vivoでの使用に同等に適している。トランスフェクションおよびリポソーム注入による送達は、当技術分野でよく知られている方法を用いて達成される。LIRIONアゴニスト、アンタゴニスト、またはオリゴヌクレオチドを含む薬剤組成物は、単独で、または無菌生体適合性担体中で投与することができる、少なくとも1種類の他の薬剤、例えば安定化化合物と組み合わせて、投与することができる。それらは、限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、皮下、鼻腔内、経腸または経直腸手段を含む多くの経路によって投与することができる。その組成物は、単独で、または他の薬剤または薬物と組み合わせて、対象に投与される。
本発明の更なる目的は、LIRIONを発現する細胞を、LIRION抗体に連結された分子と接触させる段階を含む、対象の分子を細胞中に送達するための組成物および方法を提供することである。これらの方法はin vivoで適用されることが好ましい。好ましい方法は、LIRIONの細胞外部分に特異的に結合する化合物と、対象の分子を連結する段階;LIRIONのインターナリゼーションを引き起こす条件下にて発現する細胞とそのキメラ分子を接触させる段階;を含む。その標的細胞集団は、本発明のタンパク質をそれらの細胞表面で自然に発現するか、またはキメラ抗体の添加前に、LIRIONコード配列によってトランスフェクトすることができる。かかる方法で使用される抗体は、エピトープVTSEKSVTまたはそのLIRION特異的断片を含むことが好ましい成熟タンパク質の細胞外ドメインに対して作られる。細胞中に送達される分子は、蛍光または放射性染料または治療的に活性な分子、限定されないが、化学薬品、放射性化合物、ペプチドまたは核酸などであり得る。抗体部位を第2分子に連結する方法は、当業者にはよく知られている。代替方法としては、LIRION抗体を有するキメラタンパク質は、in vivoで合成によって得ることもできる。これらの方法の使用は、APCなどの特異的なLIRION発現細胞型の遺伝子治療、放射免疫シンチグラフィー(radioimmunoscintigraphy)(RIS)および放射免疫治療(RIT)において特別に興味深いだろう。
配列番号:38のタンパク質(内部指定クローン588394 160−105−4−0−A11−F)
クローン588394 160−105−4−0−A11−FのcDNA(配列番号:37)は、アミノ酸配列:MRTYWLHSVWVLGFFLSLFSLQGLPVRSVDFNRGTDNITVRQGDTAILRCVVEDKNSKVAWLNRSGIIFAGHDKWSLDPRVELEKRHSLEYSLRIQKVDVYDEGSYTCSVQTQHEPKTSQVYLIVQVPPKISNISSDVTVNEGSNVTLVCMANGRPEPVITWRHLTPTGREFEGEEEYLEILGITREQSGKYECKAANEVSSADVKQVKVTVNYPPTITESKSNEATTGRQASLKCEASAVPAPDFEWYRDDTRINSANGLEIKSTEGQSSLTVTNVTEEHYGNYTCVAANKLGVTNASLVLFKRVLPTIPHPIQEIGTTVHFKQKGIFLSESQRGETTKITLNCGNLFLRNLHPTSDQEPQRLWTLCCLLPRKGQHRIYGQCを含む、配列番号:38の383アミノ酸のSLAMPタンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:38のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン588394 160−105−4−0−A11−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:37のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン588394 160−105−4−0−A11−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本明細書に記載の生物活性を有する断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:38のタンパク質、SLAMPは、大脳辺縁系関連膜タンパク質(LAMP;Swissprotエントリー名Q13449)の新規なスプライシングバリアントである。SLAMPは、22アミノ酸のシグナル配列(MRTYWLHSVWVLGFFLSLFSLQ)、3つのC2型免疫グロブリン様ドメイン、および固有の80アミノ酸のカルボキシ-末端を有する。そのタンパク質は、IgLONファミリー、ニワトリ、ラットおよびヒトから単離されている神経糖タンパク質のグループに属する。これらには、LAMPタンパク質、Neurotrimin/CEPU−1、OBCAMおよびkilon/Neurotractinポリペプチドが含まれる。このファミリーの公知のメンバーの大部分は、神経細胞原形質膜にそれらをつなぐ、C末端のグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーを有する細胞表面接着分子である。しかしながら、SLAMPは、GPIアンカーを欠いており、したがって、大脳辺縁系の皮質領域および皮質下領域において神経細胞により分泌される。SLAMPはそれ自体および他のIgLONタンパク質と相互作用し、細胞間認識、脳の発達中の神経細胞の特定のサブセットの神経突起伸長および軸索ガイダンスの接触依存性制御に関与する。SLAMPは、LAMP、NeurotriminおよびOBCAMと相互作用し、in vivoおよびin vitroの両方で辺縁系神経細胞の神経突起成長を促進し、かつ非辺縁系神経細胞の神経突起伸長を抑制する。
以下に述べる方法で使用するのに好ましいSLAMPポリペプチドは、以下のアミノ配列:GLPVRSVDFNRGTDNITVRQGDTAILRCVVEDKNSKVAWLNRSGIIFAGHDKWSLDPRVELEKRHSLEYSLRIQKVDVYDEGSYTCSVQTQHEPKTSQVYLIVQVPPKISNISSDVTVNEGSNVTLVCMANGRPEPVITWRHLTPTGREFEGEEEYLEILGITREQSGKYECKAANEVSSADVKQVKVTVNYPPTITESKSNEATTGRQASLKCEASAVPAPDFEWYRDDTRINSANGLEIKSTEGQSSLTVTNVTEEHYGNYTCVAANKLGVTNASLVLFKRVLPTIPHPIQEIGTTVHFKQKGIFLSESQRGETTKITLNCGNLFLRNLHPTSDQEPQRLWTLCCLLPRKGQHRIYGQCを含むポリペプチド;
以下のアミノ 配列:GLPVRSVDFNRGTDNITVRQGDTAILRCWEDKNSKVAWLNRSGIIFAGHDKWSLDPRVELEKRHSLEYSLRIQKVDVYDEGSYTCSVQTQHEPKTSQVYLIVQVPPKISNISSDVTVNEGSNVTLVCMANGRPEPVITWRHLTPTGREFEGEEEYLEILGITREQSGKYECKAANEVSSADVKQVKVTVNYPPTITESKSNEATTGRQASLKCEASAVPAPDFEWYRDDTRINSANGLEIKST EGQSSLTVTNVTEEHYGNYTCVAANKLGVTNASLVLFを含むポリペプチド;
以下のアミノ酸配列:KRVLPTIPHPIQEIGTTVHFKQKGIFLSESQRGETTKITLNCGNLFLRNLHPTSDQEPQRLWTLCCLLPRKGQHRIYGQCを含むポリペプチド;を含む。
本発明の実施形態は、配列番号:38のSLAMPポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、LAMP、Neurotrimin、CEPU−1、CEPU−1−Se、OBCAM、kilon、Neurotractin、およびGP55−Aからなる群のうちのいずれか1つに結合する生物活性を有するSLAMPポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、SLAMPポリペプチドをコードする配列番号:37のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、LAMP、Neurotrimin、CEPU−1、CEPU−1−Se、OBCAM、kilon、Neurotractin、およびGP55−Aからなる群のうちのいずれか1つに結合する生物活性を有するSLAMPポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。 本発明の更なる実施形態は、SLAMP発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法であって、i)試験する物質を細胞と接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のSLAMP発現を、未処理の対照細胞における発現と比較する段階;を含む方法に関する。
本発明の好ましい態様は、SLAMPポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、SLAMP発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。SLAMPの発現を指示できるポリヌクレオチドは、SLAMP遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、SLAMPコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。 本発明の一実施形態は、SLAMPポリペプチドを作製する方法に関する。本発明のタンパク質は、本発明のタンパク質をコードする核酸配列を含む、適切な発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞において作製することができる。かかる発現ベクターの宿主への導入は、限定されないが、塩化カルシウムまたは塩化リチウム処理、電気穿孔法、およびリポフェクションなどの様々な方法で実施することができる。多種多様な発現系のいずれかを用いて、組換えタンパク質を提供することができる。適切な発現媒体には、限定されないが、プラスミド、ウイルス粒子または昆虫細胞のバキュロウイルスが含まれる。発現媒体は宿主細胞ゲノムに組み込むことができる。任意に、誘導性発現ベクターを用いて、宿主細胞において厳密に制御された遺伝子の発現を達成することができる。宿主細胞または細胞培地から組換えタンパク質を回収し、当業者によく知られているいずれかの技術によって精製することができる。好ましくは、SLAMP特異的抗体またはそのSLAMP特異的断片をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。代替方法としては、固相技術を用いて、SLAMPまたはその断片を化学的に合成することができる。
更なる実施形態において、本発明は、これらの細胞のトポロジーまたはモフォロジーを数値で視覚化するために、神経細胞を標識するため、SLAMPまたはその断片を使用する組成物および方法を提供する。好ましい神経細胞は、LAMP、Neurotrimin、CEPU−1、CEPU−1−Se、OBCAM、kilon、Neurotractin、およびGP55−Aを発現する細胞である。これらの変化は、中枢神経系疾患と関連する場合がある。検出可能な分子または抗体で標識するか、または検出可能な分子または抗体と結合させることによって、SLAMPを容易に検出可能にすることができる。
他の実施形態において、本発明のタンパク質を用いて、in vitroで成長させた細胞などの生体試料から神経細胞を精製することができる。この方法は、i)細胞試料をSLAMPまたはその生物活性断片と接触させる段階;ii)非結合性混入物を除去する段階;iii)残りの細胞を溶出する段階;を含む。好ましい細胞試料は、神経細胞を含む試料である。LAMP、Neurotrimin、CEPU−1、CEPU−1−Se、OBCAM、kilon、Neurotractin、およびGP55−Aを発現する細胞がさらに好ましい。SLAMPはセファロースカラム上に固定化されるか、または固体担体に共有結合もしくは非共有結合で結合されることが好ましい。代替方法としては、神経細胞をSLAMPと共にインキュベートし、次いでSLAMPに対して作られるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて、例えばカラム上で細胞を免疫精製することができる。代替方法としては、SLAMP特異的抗体を蛍光標識し、FACSによって細胞を精製する。 他の実施形態では、本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける本発明のタンパク質をコードするmRNAの発現レベルを検出するための組成物および方法を提供する。この方法は、結合を生じさせる条件下にて、SLAMP mRNAまたはcDNA分子を検出可能な化合物と接触させる段階を含む。検出可能な化合物は、SLAMP mRNAに相補的なヌクレオチド配列であることが好ましい。SLAMP mRNAは細胞試料から精製されることが好ましい、SLAMP cDNAは、かかるRNA試料から作製されることが好ましい。SLAMPのmRNAレベルの定量化は、タンパク質の異常発現と関連する疾患または病状の診断に、または本明細書で述べたように治療的介入中にSLAMPの調節をモニターするのに有用である。mRNAの検出および定量化のアッセイは当技術分野でよく知られている。この方法の一例は、対照の脳試料からRNAを単離する段階と、定量的RT−PCRによりSLAMP mRNAレベルを測定する段階と、対象試料における発現を対照試料における発現と比較する段階と、を含む。ハイブリダイゼーションまたはPCR増幅によるSLAMP mRNAの検出に使用されるポリヌクレオチドプローブまたはプライマーは、当技術分野でよく知られている方法によって、配列番号:37のポリヌクレオチドから設計することができる。
他の実施形態では、本発明は、SLAMPを検出し、生体試料中のその発現レベルを定量化するための方法および組成物に関する。これらの方法は、本発明のタンパク質の変化したまたは異常な発現によって特徴付けられる病状または疾患の診断に、あるいはSLAMP、アゴニストまたはアンタゴニストで治療される対象をモニターするためのアッセイにおいて、有用である。好ましい方法は、SLAMPに特異的に結合する抗体を、哺乳動物対象、好ましくはヒト由来の脳試料と接触させる段階と、対象試料中のSLAMPレベルを、健康な対象の示す対照レベルと比較して決定する段階と、を含み、対照レベルに対して、対象試料中のSLAMPのレベルが変化しているか、または異常な場合には、その対象が疾患を有すること、または疾患を発症するリスクが高いことが示される。使用される抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であることが可能であり、当技術分野でよく知られている方法によって、例えばELISAまたはラジオイムノアッセイによって、免疫複合体を定量化するために、直接または間接的に標識することができる。SLAMPに対して作られる好ましい特異的抗体は、上記のポリペプチド断片を用いて作製される。本発明のタンパク質を検出する診断アッセイは、細胞の生検、in situアッセイを含む。アッセイはさらに、細胞抽出物で行うことができる。
本発明の実施形態は、SLAMP発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)試験物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のSLAMP発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。SLAMPの発現は、当技術分野で一般的な、または本明細書に包含される方法によって、SLAMPポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することによって決定される。この方法の一例は、i)同等な2つの細胞試料を培養する段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)指定の時間にどちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からmRNAを精製する段階;v)各試料におけるSLAMP mRNAのレベルを検出する段階;を含む。検出は、ノーザンブロット、RT−PCR、または当技術分野で一般的な他の方法によって行うことができる。本発明は、本明細書に記載されるような、特異的なポリヌクレオチドプローブおよびプライマーの設計および使用を提供する。その他の例は、i)同等な2つの細胞培養物を得る段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からタンパク質を精製する段階;v)各試料におけるSLAMPポリペプチドのレベルを検出する段階;を含む。酵素免疫測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または当技術分野で一般的な他の方法によって、検出を行ってもよい。本発明は、本明細書に述べるような、特異的抗体および抗体断片の設計および使用を提供する。SLAMPの発現または活性を増加させる物質(アゴニストまたは活性化剤)は、大脳辺縁系を冒す神経変性疾患、または非辺縁系領域における異常細胞増殖を治療または予防するために使用することができる。SLAMPの発現または活性を減少させる物質(アンタゴニストまたは阻害剤)は、大脳辺縁系領域における異常細胞増殖に関連する病状、または主に非辺縁系領域を冒す神経変性疾患を治療または予防するために使用することができる。SLAMPアゴニストおよびアンタゴニストを利用する方法は本明細書に包含される。
本発明の好ましい実施形態は、SLAMPポリペプチドに結合する試験物質についてスクリーニングする方法を提供する。この方法は、結合を生じさせる条件下にて、試験物質をSLAMPポリペプチドまたはその断片と接触させる段階;ii)当技術分野で一般的な方法(例えば、免疫共沈降およびウエスタンブロット法などの競合的な抗体に基づく方法)によって、試験物質の結合を検出する段階;を含む。この方法には、抗体、抗体断片、細胞型特異的リガンドまたはその一部と結合する試験物質が含まれる。この方法は、SLAMPポリペプチドの精製および検出、ならびに以下に記述するスクリーニング法に使用することが可能である。
本発明の更なる好ましい実施形態は、SLAMP活性のアゴニストについて、SLAMPに結合する試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)SLAMPおよび試験する物質を細胞と接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後のSLAMP生物活性を、SLAMPのみに暴露した対照における生物活性と比較する段階;を含む。SLAMP生物活性の測定値は、神経突起伸長をモニターすることによって評価することが可能である。SLAMP活性化を測定するためのin vitroアッセイの一例は、海馬神経細胞をin vitroで培養する段階と、その細胞をSLAMPおよび試験物質と接触させる段階と、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるMarg et al. (1999; Journal of Cell Biology, vol. 145, pp 865-876)に記載のように神経突起数/細胞または神経突起伸長を測定する段階とを含み、対照試料と比較される試験試料における増加が、SLAMPに対する試験物質の活性化効果を示す。
本発明の更なる好ましい実施形態は、SLAMP活性のアンタゴニストについて、SLAMPに結合する試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、SLAMPおよび試験する物質を細胞と接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後のSLAMP生物活性を、非暴露対照における生物活性と比較する段階;を含む。SLAMP活性は、上述のように測定され、試験試料におけるSLAMP活性の減少は、SLAMPに対する試験物質の抑制効果を示す。
本発明のその他の実施形態は、辺縁系領域の過剰な神経成長と関連する、哺乳動物、好ましくはヒトの疾患状態を治療または予防する方法であって、アンタゴニスト抗体、リボザイムまたはアンチセンスベクターまたはオリゴヌクレオチドを前記哺乳動物に投与することを含む方法にも向けられている。かかる方法によって治療される疾患状態は脳腫瘍であることが好ましい。好ましい方法は、SLAMP対して作られる、アンタゴニスト抗体を個体に注入することを含む。SLAMPポリヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド配列もまた、辺縁系神経細胞によるSLAMPの発現を低減または抑制するために使用することができる。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペス、またはワクシニアウイルスに由来する発現ベクターが、本発明のポリヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチド配列を標的細胞集団に送達するために用いられる。細胞または組織にベクターを導入する多くの方法を利用することが可能であり、in vivoまたはex vivoでの使用に同等に適している。トランスフェクションおよびリポソーム注入による送達は、当技術分野でよく知られている方法を用いて達成される。代替方法としては、上述のように単離されたSLAMP発現または活性のアンタゴニストを使用することが可能であり、かかる方法は、SLAMPの発現または活性のアンタゴニストを対象に投与する段階を含む。そのアンタゴニストは、例えばアンタゴニストを細胞特異的な標的化部位(例えば、抗体断片)に結合させることによって、対象の辺縁系神経細胞に送達されることが好ましい。SLAMPアゴニスト、アンチセンスベクターまたはオリゴヌクレオチドを含む薬剤組成物は、単独で、または無菌生体適合性担体中で投与することが可能である、少なくとも1種類の他の薬剤、例えば安定化化合物と組み合わせて、投与することができる。それらは、限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、皮下、鼻腔内、経腸または経直腸手段を含む多くの経路によって投与することができる。その組成物は、単独で、または他の薬剤または薬物と組み合わせて、対象に投与される。
本発明の他の目的は、大脳辺縁系と関係する、哺乳動物、好ましくはヒトにおける神経障害を治療または予防する方法を提供することである。これは、本発明のタンパク質またはその断片または本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いて、SLAMPの発現または活性をin vivoで増加させることによって達成することができる。好ましい方法は、薬学的に許容される担体を用いて有効量のSLAMPポリペプチドを対象にin vivoで導入する段階を含む。本発明のタンパク質の発現の増加は、本発明のタンパク質をコードする配列を対象の細胞中に導入することによっても達成することが可能である。ex vivoでの好ましい方法は、i)SLAMPをコードするポリヌクレオチド配列を神経幹細胞に導入する段階と、ii)組換え細胞を個体に注入する段階を含む。代替方法としては、上述のように単離されたSLAMP発現または活性のアゴニストを使用することが可能であり、かかる方法は、SLAMP発現または活性のアゴニストを対象に投与する段階を含む。生理学的に許容される溶液中のSLAMPアゴニストを、当技術分野で一般的な方法によって送達することができる。SLAMPアゴニストは、対象の辺縁系神経細胞にin vivoで送達されることが好ましい。これらの方法は、神経変性疾患および神経障害、限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脳虚血、辺縁系脳炎、小脳性運動失調症、精神分裂病、およびトゥーレット症候群などの予防および治療に有用である。
配列番号:40のタンパク質(内部指定クローン495718 160−26−2−0−E12−F)
クローン495718_160−26−2−0−E12−FのcDNA(配列番号:39)は、アミノ酸配列:MYALFLLASLLGAALAGPVLGLKECTRGSAVWCQNVKTASDCGAVKHCLQTVWNKPTVKSLPCDICKDVVTAAGDMLKDNATEEEILVYLEKTCDWLPKPNMSASCKEIVDSYLPVILDIIKGEMSRPGEVCSALNLCESLQKHLAELNHQKQLESNKIPELDMTEWAPFMANIPLLLYPQDGPRSKPQPKDNGDVCQDCIQMVTDIQTAVRTNSTFVQALVEHVKEECDRLGPGMADICKNYISQYSEIAIQMMMHMQDQQPKEICALVGFCDEVKEMPMQTLVPAKVASKNVIPALELVEPIKKHEVPAKSDVYCEVCEFLVKEVTKLIDNNKTEKEILDAFDKMCSKLPKSLSEECQEVVDTYGSSILSILLEEVSPELVCSMLHLCSGTRLPALTVHVTQPKDGGFCEVCKKLVGYLDRNLEKNSTKQEILAALEKGCSFLPDPYQKQCDQFVAEYEPVLIEILVEVWILPSCAを含む、配列番号:40のSAP−MU−10をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:40のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン495718_160−26−2−0−E12−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:39のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン495718_160−26−2−0−E12−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本明細書に記載の生物活性を有する断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:40、配列番号:39、およびクローン495718_160−26−2−0−E12−Fの組成物に対して向けられる。以下に述べる方法で使用するのに好ましいSAP−MU−10ポリペプチド断片としては、アミノ配列:DGGFCEVCKKLVGYLDRNLEKNSTKQEILAALEKGCSFLPDPYQKQCDQFVAEYEPVLIEILVEVWILPSCAを含む、Sap−D10ポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するC末端側7個のアミノ酸を含むポリペプチド断片、およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質SAP−MU−10は、サポシン(Saposin)(GenBankアクセッション番号P07602)の新規なアイソフォームである。サポシンの3つの異なるアイソフォームが記載されている。SAP−MU−10のアミノ末端側472個のアミノ酸は、SAP−MU−9アイソフォームと同一であり、カルボキシル末端側7個のアミノ酸はSAP−MU−10に固有のものである。
SAP−MU−10は4種の異なるタンパク質の前駆体であり、SAP−MU10のタンパク分解切断によって、Sap−A10、Sap−B10、Sap−C10およびSap−D10タンパク質が生じる。SAP−MU−10前駆体のプロセッシングを受けていないSAPMU−10前駆体は、スフィンゴ脂質に結合し、リポソームから膜へのガングリオシド輸送を促進する。プロセッシングされたタンパク質は、スフィンゴ脂質の加水分解の非酵素的活性化剤である。スフィンゴ脂質は、神経繊維を保護し、かつ絶縁する構造である、ミエリン鞘の重要な成分である。SAP−MU−10およびSap−D10は、神経細胞のミエリン形成およびスフィンゴ脂質の蓄積のどちらにおいても主要な役割を果たす。SAP−MU−10は様々な組織において発現およびプロセッシングされ、神経系において特に高レベルで発現する。さらに、プロセッシングを受けていないSAP−MU−10前駆体は、脳脊髄血漿中で分泌される。SAP−MU−10タンパク質は、スフィンゴ脂質およびガングリオシドに結合し、神経栄養性を示す。SAP−MU−10タンパク質は、スフィンゴミエリンおよびセラミドに結合し、スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ活性化剤活性を示す。
本明細書で用いられる、SAP−MU−10とは、配列番号:40のポリペプチド配列を意味する。本明細書で用いられる、SAP−MU−10ポリペプチドとは、スフィンゴ脂質またはガングリオシド結合活性のいずれか、または神経栄養性を有する配列番号:40のポリペプチド配列の断片を意味する。本明細書で用いられる、Sap−D10ポリペプチドとは、上述のSap−D10ポリペプチドを含み、かつスフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ活性化剤活性を有するポリペプチドを意味する。
本発明の実施形態は、配列番号:40のSAP−MU−10ポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するSAP−MU−10ポリペプチド断片を含む組成物に関する。 本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するSap−D10ポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、SAP−MU−10ポリペプチドをコードする配列番号:39のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、Sap−D10ポリペプチドをコードする配列番号:39のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、SAP−MU−10ポリペプチドを特異的に認識する抗体を含む組成物に関する。その抗体は、SAP−MU−10およびSap−D10のC末端側7個のアミノ酸の1つまたは複数を含むエピトープを認識することが好ましく、C末端側7個のアミノ酸の1つまたは複数が抗体結合に必要とされる。好ましくは、その抗体は、特異的にSAP−MU−10およびSap−D10には結合するが、他のサポシンアイソフォームには結合しない。一方、その抗体は、特異的にSAP−MU−10に結合するが、Sap−D10および他のアイソフォームには結合しない。一方、その抗体は、特異的にSap−D10には結合するが、SAPMU−10および他のアイソフォームには結合しない。
本発明の好ましい態様は、SAP−MU−10ポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、SAP−MU−10の発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。SAP−MU−10の発現を指示できるポリヌクレオチドは、SAP−MU−10遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、SAP−MU−10コード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。前記宿主細胞によって産生されたSAP−MU−10タンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用することができる。 その他の実施形態は、i)本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを、哺乳動物宿主細胞にトランスフェクトする段階と、ii)産生されたタンパク質を精製する段階とを含む、SAP−MU−10ポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者に公知のいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、SAP−MU−10またはその一部に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。
本発明の実施形態は、SAP−MU−10ポリペプチドをスフィンゴ脂質またはガングリオシド分子と、SAP−MU−10ポリペプチドの前記分子への結合を可能にする条件下で、結合させる段階を含む方法である。好ましい実施形態において、スフィンゴ脂質またはガングリオシド分子を精製するために、SAP−MU−10ポリペプチドが用いられる。かかる方法において、SAP−MU−10ポリペプチドは好ましくは、固体マトリックスに共有結合または非共有結合で結合され、当技術分野でよく知られている技術を用いて、スフィンゴ脂質およびガングリオシドに結合させることが可能となる。この方法は、溶液中のスフィンゴ脂質またはガングリオシド分子とSPA−MU−10を接触させる段階;ii)固体マトリックスを洗浄して、非結合性混入物を除去する段階;iii)さらに厳密な条件を用いて、スフィンゴ脂質またはガングリオシドを溶出する段階;を含む。スフィンゴ脂質およびガングリオシドの精製は、ガングリオシドの分解に影響を及ぼすリソソーム酵素活性の欠損を確認するのに、またはガングリオシドを添加された培養線維芽細胞におけるガングリオシド異化作用をモニターするのに有用であり得る。
この実施形態のその他の態様は、当技術分野で一般的な技術を用いて、スフィンゴ脂質およびガングリオシドを検出かつ精製するために、SAP−MU−10ポリペプチドを使用する方法を包含する。かかる方法は、i)スフィンゴ脂質またはガングリオシドを含有すると思われる生体試料を得る段階;ii)SAP−MU−10の結合を生じさせる条件下にて、かかる試料をSAP−MU−10ポリペプチドと接触させる段階;iii)SAP−MU−10を検出することによって、スフィンゴ脂質およびガングリオシドの有無を検出する段階;を含む。SAP−MU−10ポリペプチドは、検出可能な化合物(例えば、酵素基質、または蛍光化合物、発光化合物、および放射性化合物)(E.G....)に共有結合で結合されることが好ましい。代替方法としては、検出可能なSAP−MU−10特異的抗体を用いて、SAP−MU−10を検出することが可能である。この実施形態は、例えば、脳脊髄血漿中のスフィンゴ脂質の量を定量化するための診断ツールとして有用である。かかる診断ツールは、スフィンゴリピド症および様々なリソソーム蓄積症(LSD)、例えばシスチン蓄積症、ゴーシェ病、多種スルファターゼ欠損症(multiple sulfatase deficiency)、ニーマン・ピック病、ポンペ病およびウォルマン病などを診断するのに有用である可能性がある。
その他の実施形態では、本発明は、生体試料中のSAP−MU−10ポリペプチドを検出する方法に向けられており、前記方法は、i)SAP−MU−10ポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗原結合抗体断片と生体試料を接触させる段階;ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する段階;を含む。その抗体または抗原結合抗体断片は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗体または抗原結合抗体断片は一次的または二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、および酵素化合物)によって標識することができる。
一部の実施形態において、本発明は、SAP−MU−10ポリペプチドの存在をin vitroで検出するための診断キットにも関する。かかるキットは、i)SAP−MU−10ポリペプチドに特異的に結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体またはその断片;任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。抗体または抗体断片は検出可能に標識されることが好ましい。かかる標識としては、蛍光化合物、発光化合物、および放射性化合物、ならびに酵素基質が挙げられる。任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し、抗体に結合するか、またはかかる抗体上の標識と反応することができる。SAP−MU−10に対する抗体を含有するキットは、本明細書に記載されるようなLSDを診断するのに使用されることが好ましい。一方、本発明のキットは、LSDの治療を受ける患者の状態をモニターするのに使用される。かかる疾患を検出するために、適切な生体試料(血液または、例えば脳脊髄血漿)を試験し、産生されるSAP−MU−10のレベルを決定することができる。抗SAP−MU−10抗体を含むLSCを検出するキットは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開番号:WO00/55632に記載の抗体などの他の抗体もまた含み得る。代替方法としては、かかる方法において抗Sap−D10抗体を使用してもよい。
本発明の実施形態は、SAP−MU−10発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)試験物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のSAP−MU−10発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。SAP−MU−10の発現は、当技術分野で一般的な、または本明細書に包含される方法によって、SAP−MU−10ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することによって決定される。この方法の一例は、i)同等な2つの細胞試料を培養する段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)指定の時間にどちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からmRNAを精製する段階;v)ノーザンブロット、RT−PCR、または当技術分野で一般的な他の方法によって、各試料におけるSAP−MU−10 mRNAのレベルを比較する段階;を含む。本発明は、本明細書に述べるような、特異的ポリヌクレオチドプローブおよびプライマーの設計および使用を提供する。その他の例は、i)同等な2つの細胞培養物を得る段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からタンパク質を精製する段階;v)ウェスタンブロット、免疫組織化学、または当技術分野で一般的な他の方法によって、各試料におけるSAP−MU−10ポリペプチドのレベルを比較する段階;を含む。本発明は、本明細書に述べるような、特異的抗体および抗体断片の設計および使用を提供する。
他の実施形態において、SAP−MU−10ポリペプチドまたはその断片は、SAP−MU−10活性を活性化または抑制する化合物についてスクリーニングするために使用される。この方法は、SAP−MU−10ポリペプチドまたはその断片を試験物質と接触させる段階と、ii)SAP−MU−10活性をモニターする段階と、を含む。その開示内容全体が参照により組み込まれるHiraiwa et al. (Proc Natl Acad Sci U S A. 89: 11254-8 (1992))により記載されている、ガングリオシドを用いた結合アッセイによって、SAP−MU−10活性をモニターすることができる。
他の実施形態では、Sap−D10活性を活性化または抑制する化合物についてスクリーニングするために、Sap−D10ポリペプチドを使用する。この方法は、Sap−D10ポリペプチドまたはその断片を試験物質と接触させる段階と、ii)Sap−D10活性をモニターする段階と、を含む。Sap−D10活性は例えば、その開示内容全体が参照により組み込まれるMorimoto et al. (Biochem Biophys Res Commun 156: 403-10 (1988))によって記載されているスフィンゴミエリナーゼ活性をモニターすることによって決定することができる。
SAP−MU−10の発現または活性を減少させる試験物質は、SAP−MU−10の阻害剤またはアンタゴニストとして定義される。Sap−D10の活性を減少させる試験物質は、Sap−D10の阻害剤またはアンタゴニストとして定義される。SAP−MU−10の発現または活性は増加させる試験物質は、SAP−MU−10の活性化剤またはアゴニストとして定義される。主題の発明のSAP−MU−10またはSap−D10活性の発現または活性を調節する作用物質には、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、および抗体が含まれる。これらの作用物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造かつ使用することができる。
本発明の一実施形態は、ミエリン形成を増加させ、経細胞の伸長を刺激し、または脱髄および神経変性プロセスを遅くする方法に関する。この方法は、SAP−MU−10ポリペプチドまたはそのアゴニストを含む組成物と細胞を接触させる段階を含む。好ましい細胞は、神経細胞および乏突起膠細胞である。その細胞は、組成物を細胞に直接投与することによって、in vitroまたはin vivoで処置することができる。好ましい実施形態において、SAP−MU−10ポリペプチドまたはそのアゴニストを含む組成物は、脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、ウイルス誘導炎症性脱髄、白質脳症および白質ジストロフィー、例えばクラッベ病、異染性白質ジストロフィー、ALD、カナバン病およびアレキサンダー病)を患う個体に導入される。使用されるアゴニストまたはポリペプチドの量は、個体におけるミエリン形成を増加するのに有効な量であることが好ましい。他の好ましい実施形態では、SAP−MU−10ポリペプチドまたはそのアゴニストを含む組成物は、神経変性疾患(例えば、網膜神経障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、ポリオ後症候群および筋萎縮性側索硬化症)を患う個体に導入される。使用されるアゴニストまたはポリペプチドの量は、個体における神経細胞伸長を刺激するのに有効な量であることが好ましい。
他の実施形態において、Sap−D10ポリペプチドまたはSap−D10アゴニストは、in vitroまたはin vivoでスフィンゴミエリナーゼジホスホエステラーゼを活性化するために使用される。好ましい実施形態は、スフィンゴミエリナーゼジホスホエステラーゼを、Sap−D10ポリペプチドまたはSap−D10アゴニストと接触させる段階を含む方法に関する。他の好ましい実施形態は、Sap−D10ポリペプチドまたはそのアゴニストを含む組成物と細胞を接触させる段階を含む方法に関する。さらに他の好ましい実施形態は、生理学的に許容される組成物中でSap−D10ポリペプチドまたはSap−D10アゴニストを含む組成物を個体に投与する段階を含む方法に関する。かかる方法は、サポシンD欠損と関連するテイ・サックス病を患う個体の治療に向けられることが好ましい。使用されるSap−D10アゴニストまたはポリペプチドの量は、テイ・サックス病を患う個体におけるスフィンゴミエリナーゼジホスホエステラーゼ活性を増加させるのに有効な量であることが好ましい。
本発明の組成物は、本明細書に記載の担体など、薬学的に許容される担体を含むことが可能であり、当技術分野で公知のいずれかの技術によって、個体に投与することができる。その組成物は、注入(例えば、直接的な頭蓋内注入、脳脊髄液への注入、末梢神経組織への局所注入または全身注入)によって導入することが好ましい。その組成物は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,714,459号および米国特許第4,902,505号に記載の方法のうちの1つによって、患者に導入されることがさらに好ましい。
その他の実施形態は、i)適切な生理学的条件下にて、SAP−MU−10またはその断片の発現を可能にするSAP−MU−10ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え分子を構築する段階;ii)この組換え分子を、細胞、哺乳動物またはヒトに導入する段階;を含む、SAP−MU−10ポリヌクレオチドを使用する方法に関する。組換え分子は神経細胞に導入されることが好ましい。
SAP−MU−10ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え分子は、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびDNAウイルスベクターなどの送達媒体を用いて、in vitroで細胞または組織中に直接導入することができる。それらは、生理学的技術、例えば微量注入および電気穿孔法、または共沈およびDNAのリポソームへの取り込みなどの化学的方法を用いて、in vivoで細胞に導入することもできる。組換え分子は、エアロゾル状で、または潅注(lavage)によって送達することもできる。SAP−MU−10ポリヌクレオチドは、細胞への直接的な注入などによって細胞外で適用することもできる。細胞へのSAP−MU−10の導入を行い、脳に移植する方法が、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,762,926号に記載されている。かかる方法は、例えば多発性硬化症、白質脳症および白質ジストロフィーの治療に用いることができる。
本発明の他の実施形態は、当業者に公知のいずれかの方法によって、遺伝子導入動物および遺伝子導入モデル動物(キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)、ハツカネズミ(M. musculus))を確立するために、SAP−MU−10ポリヌクレオチド配列またはその一部を使用する方法に関する。薬物または変更遺伝子(活性化または抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をin vivoで調節することによって、LSDなどのヒトの疾患を模倣する動物モデルを作製することができる。したがって、これらの動物モデルによって、疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となる。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにex vivoで使用することができる。
配列番号:42のタンパク質(内部指定クローン612386 187−9−4−0−B2−F)
クローン612386−187−9−4−0−B2−FのcDNA(配列番号:41)は、アミノ酸配列:
MELCRSLALLGGSLGLMFCLIALSTDFWFEAVGPTHSAHSGLWPTGHGDIISGHGPLVSTTAAFAAGKDSGLDWGIASQRIPAEELSHLSCPCPQPSPWWWPWRCTPASGGTSLHTPRSRPSSPGPSTWAGSQLSSCSVQVPを含む、配列番号:42のcytogramをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:42のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン612386_187−9−4−0−B2−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:41のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン612386−187−9−4−0−B2−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:42、配列番号:41、およびクローン612386_187−9−4−0−B2−Fの組成物に対して向けられる。以下に記述する方法において使用される好ましいcytogramポリペプチドとしては、以下のアミノ酸配列:AHSGLWPTGHGDIISGHGPLVSTTAAFAAGKDSGLDWGIASQRIPAEELSHLSCPCPQPSPWWWPWRCTPASGGTSLHTPRSRPSSPGPSTWAGSQLSSCSVQVPを含むポリペプチドが挙げられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質のcytogramは、GMP−17(またはNKG7、GenBankアクセッション番号Q16617)のスプライシングバリアントである。Cytogram cDNAは、GMP−17 cDNAの2番目のエクソンを欠失している。Cytogramは、142アミノ酸の長さのタンパク質であり、GMP−17は、165アミノ酸の長さである。アミノ末端側53個のアミノ酸は、2種類のタンパク質間で同一であり、カルボキシル末端側89個のアミノ酸は、cytogramに固有のものである。Cytogramは、シグナルペプチド(MELCRSLALLGGSLGLMFCLIALSTDFWFEAVGPTHS)、膜貫通ドメイン(GDIISGHGPLVSTTAAFAAGK)、および亜鉛イオンに結合する、PECファミリーメタロチオネインドメイン(SCPCPQPSPWWWPWRCTPASGGTSLHTPRSRPSSPGPSTWAGSQLSSCSV)を示す。
Cytogramは、NK細胞(NK)および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)において恒常的かつ特異的に発現する細胞傷害性顆粒膜タンパク質である。NKおよびCTLの脱顆粒によって、cytogramが顆粒膜から原形質膜へ移行する。Cytogramは、効果細胞と標的細胞との間の結合の形成、それに続いてエキソサイトーシスをもたらす。さらに、原形質膜上に一旦位置すると、cytogramは、NKおよびCTLの細胞毒性に必要なイオンチャネルを制御し、細胞溶解性のエフェクター機能を促進する。
本発明の実施形態は、配列番号:42のcytogramポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、NKおよびCTL細胞毒性を促進する生物活性を有するcytogramポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、cytogramポリペプチドをコードする配列番号:41のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、生物活性を有するcytogramポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、配列番号:42のcytogramポリペプチド配列または生物活性を有するcytogramポリペプチド断片を認識する抗体を含む組成物に関する。その抗体は、非線状エピトープまたはcytogramのC末端側89個のアミノ酸内に位置するエピトープを認識することが好ましい。その抗体は、cytogramには結合するが、GMP−17には結合しないことが好ましい。その抗体は、アミノ酸配列:AGKDSGLDを認識することが好ましい。
本発明の更なる実施形態は、活性化NKおよびCTLを、cytogramポリペプチドに特異的に結合する抗体と、cytogramポリペプチドを抗体に結合させる条件下にて接触させる段階を含む、活性化NKおよびCTLを結合させる方法に関する。好ましい実施形態において、cytogramポリペプチドに特異的に結合する抗体は、活性化NKおよびCTLを精製するために用いることができる。かかる方法では、その抗体は、固体マトリックスに共有結合または非共有結合で結合され、当技術分野でよく知られている技術を用いて、cytogramポリペプチドに結合させることができる。この方法は、i)活性化NKおよびCTLを、cytogramポリペプチドに特異的に結合する抗体と、cytogramポリペプチドを抗体に結合させる条件下にて接触させる段階と、ii)その固体マトリックスを洗浄して、混入物を取り除く段階;iii)さらに厳密な条件を用いて、対象の細胞を溶出する段階;を含む。かかる方法は例えば、in vitroでの増殖前に癌患者からNKおよびCTLを精製するのに有用であり得る。
本発明の好ましい態様は、cytogramポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、cytogramの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。cytogramの発現を指示できるポリヌクレオチドは、cytogram遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、cytogramコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。前記宿主細胞によって産生されたcytogramタンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用することができる。
本発明の一実施形態は、i)体液、組織試料、または哺乳動物細胞培養物を、cytogramポリペプチドに特異的に結合する抗体と接触させる段階と、ii)いずれかの検出可能なシグナルを用いて、試料中のその抗体を検出する段階と、を含む、活性化NKおよびCTLを検出または精製する方法に関する。例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、FITC、ローダミン、テキサスレッド(Texas-Red)、ビオチンおよびジゴキシゲニンなどの化合物を用いて、検出可能なシグナルを提供することができる。そのシグナルの検出は、当業者によく知られている免疫組織学的または免疫蛍光プロセスを用いて実施することができる。cytogramポリペプチドに特異的に結合する抗体を、検出可能なシグナルを与える化合物で直接標識することができる。代替方法としては、cytogramポリペプチドに特異的に結合する抗体は標識されず、シグナルの検出は、標識された二次抗体を使用して間接的に行われる。好ましい実施形態では、活性化NKおよびCTLの検出を用いて、哺乳動物細胞培養物におけるCTLまたはNK活性への試験化合物の効果を測定することができる。他の好ましい実施形態では、かかる方法を用いて、患者におけるCTLまたはNK活性を増加または減少することを目的とする治療の効果をモニターすること、または患者における移植拒絶反応の開始を検出することができる。
本発明の実施形態は、細胞毒性顆粒のマーカーとしてcytogramまたはその断片を使用する方法であって、i)体液、組織試料、または哺乳動物細胞培養物を、cytogramポリペプチドに特異的に結合する抗体と接触させる段階と、いずれかの検出可能なシグナルを用いて、試料における抗体の局在を検出する段階と、を含む方法に関する。例えば、FITC、ローダミン、テキサスレッド(Texas-Red)、[35S]メチオニン、[35S]システインおよびビスベンズイミドなどの化合物を用いて、検出可能なシグナルを提供することができる。そのシグナルの検出は、免疫電子顕微鏡法または蛍光顕微鏡法を用いて行われる。cytogramポリペプチドに特異的に結合する抗体は、検出可能なシグナルを与える化合物で直接標識することができる。代替方法としては、cytogramポリペプチドに特異的に結合する抗体は標識されず、シグナルの検出は、標識された二次抗体を使用して間接的に行われる。細胞毒性顆粒のマーカーとしてcytogramまたはその一部を使用する、かかる方法には、その開示内容全体が参照により組み込まれる、Medley et al. (Proc Natl Acad Sci U S A. 93: 685-9 (1996))によって記載の方法が含まれる。CTLおよびNKは、ウイルス感染および形質転換細胞に対する高等生物の主要な防御を形成し、CTLの主要な機能は、潜在的に有害な細胞を検出かつ溶解により除去することである。したがって、NKおよびCTLの脱顆粒を検出するためのマーカーは、例えば、細胞内病原体の感染、移植片対宿主疾患、移植可能および自然発生悪性腫瘍に対する感受性、リンパのホメオスタシス、自己免疫疾患に対する傾向の、状態または進行を処置またはモニターするための薬物についてスクリーニングする際、あるいはこれらの疾患を研究する際に、非常に有用である。
その他の実施形態は、i)cytogramポリペプチドを発現することができる細胞を得る段階;ii)前記ポリペプチドを産生するのに適した条件下にて、前記細胞を成長させる段階;iii)前記ポリペプチドを精製する段階;を含む、cytogramポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者に公知のいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、cytogramまたはその一部に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。その抗体は、cytogramには結合するが、GMP−17には結合しないことがさらに好ましい。cytogramポリペプチドを発現することができる細胞は、当業者によく知られている技術のいずれかによって得ることが可能である。本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトすることができる。その代わりに、異種プロモーターを用いてもよい。その宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞であることが好ましい。
他の好ましい実施形態は、cytogram発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法に関する。この方法は、i)試験物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のcytogram発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。cytogramの発現は、当技術分野で一般的な、または本明細書に包含される方法によって決定される。cytogramの発現を決定する方法としては、限定されないが、cytogramポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ノーザンブロットまたはRT−PCRによるcytogram mRNAの検出)またはcytogramポリヌクレオチドを定量化する方法(例えば、ウェスタンブロットまたは免疫化学によるcytogramタンパク質の検出)が挙げられる。試験物質は、特定の細胞型におけるcytogramの発現を修飾するが、他の細胞型においてはそうではないことが好ましい。試験物質は、特にNKおよびCTLにおいてcytogramの発現を修飾することが最も好ましい。
本発明の更なる実施形態は、cytogram活性の修飾因子の試験物質と、かかる試験物質についてスクリーニングする方法であって、i)細胞を試験物質と接触させる段階;ii)cytogram活性を決定する段階;iii)暴露後の細胞におけるcytogram活性を非暴露対照細胞における活性と比較する段階;を含む方法と、に関する。Cytogram活性は例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,229,494号に記載の細胞毒性アッセイを用いて、NKの細胞毒性活性を研究することによってモニターすることができる。cytogram活性はNKおよびCTLにおいて研究されることが好ましい。cytogram活性を調節する物質は、NKおよびCTL細胞毒性の調節に、個体に投与されることが最も好ましい。
cytogramの発現または活性を減少させる試験物質は、cytogramの阻害剤またはアンタゴニストとして定義される。cytogramの発現または活性を増加させる試験物質は、cytogramの活性化剤またはアゴニストとして定義される。cytogramの発現または活性を調節する試験物質としては、限定されないが、化学化合物、オリゴヌクレオチド、リボザイムおよび抗体が挙げられる。これらの物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造かつ使用される。
本発明の実施形態は、NKまたはCTL細胞毒性の結果として生じる疾患を予防するため、またはその重症度を低減するために、本発明の組成物を使用する方法に関する。好ましい実施形態において、かかる方法は、生理学的に許容される組成物中のcytogramアンタゴニストを個体に投与する段階を含む。NKおよびCTL活性化を低減するためのかかる方法は、アレルギーおよび喘息を治療すること、かつ進行中の免疫応答を防ぐことに向けられることが好ましい。特に、移植拒絶反応、移植片対宿主疾患および自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、肝炎、慢性関節リウマチ、グレーブス病)を予防するため、またはその重症度を低減するため、および移植片の移植(例えば、細胞、骨髄、組織、固体の器官、骨の移植)に対する抵抗性(tolerance)を誘導するために、かかる方法を用いることができる。かかる方法で使用される好ましいcytogramアンタゴニストは、cytogramポリペプチドに特異的に結合する抗体である。
他の好ましい実施形態において、抗cytogram抗体は、活性化NKおよびCTLに薬剤を運ぶ、標的化および送達メカニズムとして使用される。かかる方法は、i)抗cytogram抗体を薬剤に結合させる段階;ii)前記コンジュゲートおよび薬学的に許容される担体を含む組成物を、NKまたはCTL細胞毒性の結果として生じる疾患を有する個体に投与する段階;を含む。抗cytogram抗体は、酵素に対する抗体のプロドラッグ治療法(antibody-directed enzyme-produrug therapy)であって、i)比較的非毒性の化合物をそれよりかなり毒性の高い化合物に転換する酵素に、抗cytogram 抗体を結合させる段階;ii)残りの酵素抗体コンジュゲートを血液から除去することができるように遅らせた後、前記の比較的非毒性の化合物を患者に投与する段階;を含む治療法で使用されることが好ましい。かかる方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるMelton et al. (J. Natl. Cancer Inst. 1996 88: 153-65 (1996))に記載のように実施することができる。
本発明の実施形態は、NKまたはCTL細胞毒性を高めるために、本発明の組成物を使用する方法に関する。NKまたはCTL細胞毒性を高めることに向けられる好ましい方法は、免疫系への追加免疫が望まれる疾患および障害を有する個体に、生理学的に許容される担体中のcytogramポリペプチドまたはcytogramアゴニストを導入する段階を含む。特に、かかる処置は、癌を治療する場合には、放射線療法または化学療法と組み合わせて用いることが可能であり、腫瘍疾患(例えば、多発性骨髄腫、結腸癌、肝癌)、ウイルス感染(例えば、HIV、HBV、HCV、肝炎、麻疹およびヘルペスウイルス感染)、および様々な免疫不全を治療するために用いることができる。これらの免疫不全は、遺伝的(例えば、重症複合免疫不全症(SCID))であるか、または様々な細菌もしくは真菌感染(例えば、マイコバクテリア、リーシュマニア属、マラリアおよびカンジダによる感染)によって引き起こされる。
生理学的に許容される担体は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。生理学的に許容される担体としては、限定されないが、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, Easton, USA 1985)に記載の担体が挙げられる。薬剤組成物は例えば、静脈内、表面、直腸、局所、吸入または皮下、皮内、筋肉内、経口および脳内投与に対する組成物であることが可能である。その組成物は、液状(例えば、液剤、懸濁剤)、固形(例えば、丸剤、錠剤、坐剤)または半固形(例えば、クリーム剤、ゲル剤)であることが可能である。投与量は、それぞれの必要性、望まれる効果、および選択される投与経路に応じて異なる。
他の実施形態は、i)所定の生理学的条件下にて、cytogramまたはその一部の発現を可能にする、cytogramポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え分子を構築する段階;ii)細胞、哺乳動物またはヒトに、この組換え分子を導入する段階;を含む、cytogramポリヌクレオチドを使用する方法に向けられる。例えば上記の遺伝性免疫不全および腫瘍性疾患を治療するために、かかる方法を使用することができる。組換え分子はNKまたはCTLに導入されることが好ましい。
さらに他の実施形態は、i)cytogramポリヌクレオチドに相補的なcDMAをコードする核酸配列を含む組換え分子を構築する段階;ii)細胞、哺乳動物またはヒトに、この組換え分子を導入する段階;を含む、アンチセンスcytogramポリヌクレオチドを使用する方法に向けられる。かかる方法は、自己免疫疾患を治療するのに使用することができる。代替方法としては、かかる方法は、臓器を移植する場合に、上述の自己免疫疾患、移植片対宿主疾患または移植拒絶反応を防ぐために使用することができる。その組換え分子は、NK、CTL、または移植片細胞に導入される。
cytogramポリペプチドをコードする核酸配列またはcytogramポリヌクレオチドに相補的なcDNAをコードする核酸配列を含む組換え分子は、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびDNAウイルスベクターなどの送達媒体を用いて、in vitroで細胞または組織中に直接導入することができる。それらは、生理学的技術、例えば微量注入および電気穿孔法、または共沈およびDNAのリポソームへの取り込みなどの化学的方法を用いて、in vivoで細胞に導入することもできる。組換え分子は、エアロゾル状で、または潅注(lavage)によって送達することもできる。cytogramポリヌクレオチドは、細胞への直接注入などによって細胞外で適用することもできる。cytogramポリヌクレオチドは、NKまたはCTLに導入されることが好ましい。
配列番号:44のタンパク質(内部指定クローン1000838982 220−20−4−0−C2−F)
クローン1000838982220−20−4−0−C2−FのcDNA(配列番号:43)は、アミノ酸配列:MSAQESCLSLIKYFLFVFNLFFFVLGSLIFCFGIWILIDKTSFVSFVGLAFVPLQIWSKVLAISGIFTMGIALLGCVGALKELRCLLGLYFGMLLLLFATQITLGILISTQRASWSEACGTSを含む、配列番号:44のTetranabをコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:44のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン1000838982220−20−4−0−C2−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:43のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン1000838982220−20−4−0−C2−F中に含まれるヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:44、配列番号:43、およびクローン1000838982220−20−4−0−C2−Fの組成物に対して向けられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
本発明のタンパク質、Tetranabは、CD37(GenBankアクセッション番号P11049)の変異体である。CD37は、T細胞依存性のB細胞応答に必要な分子複合体をまとめる分子ファシリテーター(facilitator)である。CD37は分子の相互作用を安定化し、その結果、応答がより効率的となる。Tetranabは、1つのシグナルアンカー(FNLFFFVLGSLIFCFGIWILI)、2つの膜貫通ドメイン(VLAISGIFTMGIALLGCVGALおよびLYFGMLLLLFATQITLGILIS)を示す、Tetraspaninファミリーの分岐したメンバーである。Tetranabは、成熟B細胞で特異的に発現される。Tetranabは、B細胞の分化中には発現されないが、その発現は、B細胞の活性化でダウンレギュレートされる。Tetranabは、B細胞表面で機能複合体のCD37促進アセンブリーのドミナントネガティブな阻害剤として作用する。したがって、Tetranabは、B細胞のCD37依存性活性化を防ぐ。
本発明の実施形態は、配列番号:44のTetranabポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、T細胞依存性のB細胞応答を防ぐ生物活性を有するTetranabポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、Tetranabポリペプチドをコードする配列番号:43のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、T細胞依存性のB細胞応答を防ぐ生物活性を有するTetranabポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、Tetranabポリペプチドを認識する抗体を含む組成物に関する。その抗体は、TetranabのC末端側9個のアミノ酸の1つまたは複数を含むエピトープを認識することが好ましく、その末端側9個のアミノ酸の1つまたは複数は抗体結合に必要とされる。その抗体はTetranabに特異的に結合するが、CD37には特異的に結合しないことが好ましい。本明細書で使用される、抗Tetranab抗体は、Tetranab特異的抗体またはその抗原結合断片を意味する。
本発明は、結合を生じさせる条件下にて、前記抗体または抗原結合断片とTetranabポリペプチドを接触させる段階を含む、Tetranabポリペプチドにかかる抗体を結合させる方法にも関する。かかる条件は、当業者にはよく知られている。かかる方法は、本明細書に述べられているように、Tetranabポリペプチドを検出するのに、またはB細胞を精製するのに有用である。
本発明の実施形態は、生体試料においてTetranabポリペプチドを検出する方法に関し、前記方法は、i)生体試料を抗Tetranab抗体と接触させる段階;ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する段階;を含む。その抗体または抗体断片は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗体または抗体断片は一次的または二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、および酵素化合物)によって標識することができる。B細胞によるTetranab発現のフローサイトメトリー分析において前記抗Tetranab抗体または抗原結合断片を使用する方法がさらに好ましい。かかる方法は、本明細書においてさらに述べられるように、Tetranabポリペプチドの存在を検出するための診断キットとして使用することができる。
本発明の他の実施形態は、Tetranabポリペプチドの存在をin vitroで検出するための診断キットに関する。かかるキットは、i)特異的にTetranabポリペプチドに結合するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体またはその断片;任意に、ii)形成された抗原-抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。その抗体または抗体断片は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し、抗体に結合するか、または前記抗体上の標識と反応することができる。抗Tetranab抗体または抗原結合断片を含むキットは、非ホジキンリンパ腫を診断するのに、または非ホジキンリンパ腫の治療を受けている患者の状態をモニターするのに有用である。任意に、非ホジキンリンパ腫を診断するための前記キットは、リンパ腫を有する個体の試料、ならびに正常な個体からの対照試料を含む。
他の好ましい実施形態は、抗Tetranab抗体を用いて、Tetranabポリペプチドの存在をin vivoで検出する方法に関する。かかる方法は、腫瘍関与部位のイメージングに、特に非ホジキンリンパ腫のイメージングに非常に有用である。その開示内容全体が参照により組み込まれるBunn et al (Lancet 2: 1219-21 (1894))によって記述されているように、抗Tetranab抗体に結合された111Inまたは131Iを用いて、イメージングを行うことが好ましい。この実施形態は、上述のキットなど、腫瘍イメージングに使用されるキットにも関する。
本発明のさらに他の実施形態は、薬学的に許容される担体中の治療量の放射標識化抗Tetranab抗体を投与する段階を含む、免疫療法の目的で抗Tetranab抗体を使用する方法に関する。かかる方法は、非ホジキンリンパ腫および移植後のリンパ増殖性疾患を治療するために適用することができる。かかる方法では、90Yまたは131Iで標識することが好ましい。ラジオアイソトープは、当業者に公知の数多くの方法によって、例えばヨウ素同位体を抗体に直接に共有結合することによって、またはキレート化部位を抗体に共有結合し、キレート剤が金属同位体に配位できるようにすることによって、抗Tetranab抗体に結合することができる。投与経路は多種多様である。好ましい投与方法は、静脈内注入およびリンパ内投与経路、例えば皮下および筋肉内注入、またはリンパ管のカテーテル挿入である。適用される放射線量はかなりばらつきがある。リンパ腫を治療するための投与方法および投与計画は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,595,721号に記述されるように決定することができる。
本発明の好ましい態様は、Tetranabポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、Tetranabの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。Tetranabの発現を指示できるポリヌクレオチドは、Tetranab遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、Tetranabコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。前記宿主細胞によって産生されたTetranabタンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用することができる。
本発明の実施形態は、Tetranab発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)試験物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のTetranab発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。Tetranabの発現は、当技術分野で一般的な、または本明細書に包含される方法によって、Tetranabポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することによって決定される。この方法の一例は、i)同等な2つの細胞試料を培養する段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)指定の時間にどちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からmRNAを精製する段階;v)ノーザンブロット、RT−PCR、または当技術分野で一般的な他の方法によって、各試料におけるTetranab mRNAのレベルを比較する段階;を含む。その他の例は、i)同等な2つの細胞培養物を得る段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からタンパク質を精製する段階;v)ウェスタンブロット、免疫組織化学、または当技術分野で一般的な他の方法によって、各試料におけるTetranabポリペプチドのレベルを比較する段階;を含む。Tetranabの発現は、B細胞において測定されることが好ましい。
その他の実施形態において、Tetranabポリペプチドまたはその断片は、Tetranab活性を調節する化合物についてスクリーニングするために使用される。この方法は、i)Tetranabポリペプチドまたはその断片を試験物質と接触させる段階と、ii)Tetranab活性をモニターする段階と、を含む。Tetranab活性は、B細胞の活性化をモニターすることによって決定することができる。例えば、その開示内容全体が参照により組み込まれる米国特許第4,987,084号に記載のように、膜を横切るカルシウムイオン流入を測定することにより、B細胞の機能を決定することができる。
Tetranabの発現または活性を低減する試験物質は、Tetranabの阻害剤またはアンタゴニストとして定義される。Tetranabの発現または活性を増加させる試験物質は、活性化剤またはアゴニストとして定義される。主題の発明のTetranab活性の発現または活性を調節する作用物質には、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、および抗体が含まれる。これらの作用物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造かつ使用することができる。
本発明の更なる実施形態は、CD37の作用を拮抗する方法であって、このためT細胞依存性B細胞活性化が予防される方法に関する。かかる方法は、Tetranabアゴニストを含む組成物とB細胞を接触させる段階を含む。本発明の組成物を細胞に直接投与することによって、B細胞をin vitroまたはin vivoで処置することができる。好ましい実施形態では、本発明は、Tetranabアゴニストおよび薬学的に許容される担体を含む、有効な抑制量の薬剤組成物を個体に投与する段階を含む、個体におけるB細胞の活性化を抑制する方法を提供する。B細胞の活性化を抑制する方法は、個体の免疫応答を抑制するのに有用な方法である。本発明の方法を用いた免疫応答の抑制は、移植拒絶反応を抑制すること、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、糖尿病、および薬剤誘発ループスなどの薬剤誘発自己免疫疾患)を有する個体を治療すること、またはアレルギー反応(例えば、喘息、枯草熱およびペニシリンアレルギーに対するアレルギー)を低減することに向けられることが好ましい。
本発明の他の実施形態は、CD37の作用を有利にする方法であって、このためT細胞依存性B細胞活性化に必要な分子複合体が安定化される方法に関する。かかる方法は、Tetranabアンタゴニストを含む組成物とB細胞を接触させる段階を含む。本発明のこの態様では、Tetranabアンタゴニストおよび薬学的に許容される担体を含む、有効な抑制量の薬剤組成物が、B細胞の活性化を高めるために個体に投与される。かかる方法は、免疫系の追加免疫が望まれる疾患、例えば免疫不全(例えば、重症複合免疫不全症)、様々な細菌もしくは真菌感染(例えばHIV、HBV、HCV、肝炎、麻疹およびヘルペスウイルス感染、マイコバクテリア、リーシュマニア属、マラリアおよびカンジダ感染)の治療に有用であり、かつ放射線治療または化学療法と関連する。
TetranabアゴニストまたはTetranabアンタゴニストを含む組成物は、当技術分野で公知の様々な許容可能な賦形剤を使用して調製することができる。通常、その組成物は、局所的、経口的に、または注入によって、静脈内に、または腹腔内に投与される。この投与を達成し、かつ投与計画を決定する方法は、当業者には公知である。
その他の実施形態は、i)本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする段階;ii)産生されたタンパク質を精製する段階;を含む、Tetranabポリペプチドを作製する方法に関する。そのタンパク質の精製は、当業者に公知のいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、Tetranabまたはその一部に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。精製された、かかるTetranabポリペプチドは例えば、上述の薬剤組成物を製造するのに有用である。本発明の好ましい態様は、Tetranabポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、Tetranabの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。Tetranabの発現を指示できるポリヌクレオチドは、Tetranab遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、Tetranabコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。好ましい実施形態では、その組換え分子は、大腸菌細胞に、またはヒトB細胞に導入される。一方、その組換え分子は、ヒト細胞に導入される、Tetranab発現を増加させる異種プロモーターを含むベクターである。好ましい実施形態において、前記組換え分子は、動物、特に哺乳動物に導入される。前記組換え分子は、数種類の方法で動物に導入することが可能である。組換え分子を動物に導入する好ましい方法は、当技術分野で公知の手段、例えば形質転換、リポフェクション、微量注入、およびレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびDNAウイルスベクターの使用を含む形質導入によって、宿主細胞に組換え分子を導入する段階;動物に組換え細胞を投与する段階;を含む。例えば、その細胞は注入によって投与することができる。かかる方法は、例えば自己免疫疾患の治療に向けられる。代替方法としては、組換え分子は、配列番号:43に相補的なcDNAまたはその一部をコードすることが可能であり、その方法は、例えば免疫不全の治療に用いることができる。
他の好ましい実施形態では、前記組換え分子は、当業者に公知のいずれかの方法によって遺伝子導入モデル動物を確立するために使用される。例えば、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれるHogan et al. ("Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory)によって述べられているように、遺伝子導入マウスを確立することが可能である。薬物または変更遺伝子(活性化または抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をin vivoで調節することによって、上述の疾患などのヒト疾患を模倣する動物モデルを作製することができる。したがって、これらの動物モデルによって、疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となる。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにex vivoで使用することができる。
配列番号:46のタンパク質(内部指定クローン500720840 205−20−1−0−B7−F)
クローン500720840205−20−1−0−B7−FのcDNA(配列番号:45)は、アミノ酸配列:MRLRRLALFPGVALLLAAARLAAASDVLELTDDNFESRISDTGSAGLMLVEFFAPWCGHCKRLAPEYEAAATRLKGIVPLAKVDCTANTNTCNKYGVSGYPTLKIFRDGEEAGAYDGPRTADGIVSHLKKQAGPASVPLRTEEEFKKFISDKDASIVGFFDDSFSEAHSEFLKAASNLRDNYRFAHTNVESLVNEYDDNGEGIILFRPSHLTNKFEDKTVAYTEQKMTSGKIKKFIQENIFGICPHMTEDNKDLIQGKDLLIAYYDVDYEKNAKGSNYRRNRVMMVAKKFLDAGHKLNFAVASRKTFSHELSDFGLESTAGEIPWAIRTAKGEKFVMQEEFSRDGKALERFLQDYFDGNLKRYLKSEPIPESNDGPVKVVVAENFDEIVNNENKDVLIEFYAPWCGHCKNLEPKYKELGEKLSKDPNIIAKMDATANDVPSPYEVRGFPTIYFSPANKKLNPKKYEGGRELSDFISYLQREATIPPVIQEEKPKKKKKAQEDLを含む、配列番号:46のPDIタンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:46のポリペプチドのすべての特性および使用は、クローン500720840205−20−10−B7−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:45のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン500720840205−20−10−B7−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:45、配列番号:46、およびクローン500720840205−20−10−B7−Fの組成物に対して向けられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号46のタンパク質、PDIは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼA3前駆体(アクセッション番号U42068)の多型変異体である。本発明のタンパク質は、2つのチオレドキシンドメイン:ASDVLELTDDNFESRISDTGSAGLMLVEFFAPWCGHCKRLAPEYEAAATRLKGIVPLAKVDCTANTNTCNKYGVSGYPTLKIFRDGEEAGAYDGPRTADGIVSHLKKQAG;およびDGPVKVVVAENFDEIVNNENKDVLIEFYAPWCGHCKNLEPKYKELGEKLSKDPNIVIAKMDATANDVPSPYEVRGFPTIYFSPANKKLNPKKYEGGRELSDFISYLQREATを示す。また、PDIの505アミノ酸のタンパク質は、1つの膜貫通セグメント:SDTGSAGLMLVEFFAPWCGHCを示す。
チオレドキシンファミリーの活性部位タンパク質は、酸化還元反応に関与するタンパク質のスーパーファミリーであり、広範囲の生物の間に分布する。チオレドキシンの還元型は、それらの活性を制御するジスルフィド架橋を還元することによって、いくつかの酵素を活性化することが知られている。さらに、チオレドキシンは、リボヌクレオチドレダクターゼによって触媒される、リボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドに還元する反応配列における電子供与体である。ヒトにおいて、チオレドキシンおよびチオレドキシンによって修飾される細胞の酸化還元状態は、アテローム性動脈硬化症における動脈の新内膜(arterial neointima)の形成で重要な役割を担うことが報告されている。チオレドキシンは、酸化的損傷に対する細胞の防御機構に関与する。チオレドキシンは、細胞の酸化的ストレス応答経路に対するグルココルチコイド応答性の制御にもまた関与している。特に、チオレドキシンは、細胞の酸化還元状態を感知し、受容体のリガンド結合ドメインおよびDNA結合ドメインの両方を標的化することによって、グルココルチコイド受容体にその酸化還元状態を伝達することができる。ヒトチオレドキシンは、ラジカル補足剤として働くことが示唆されており、再潅流障害の程度を抑えることが示されている。チオレドキシンに対する多くのin vitro基質が同定されており、例えば、リボヌクレアーゼ、絨毛性ゴナドトロピン、凝固因子、グルココルチコイド受容体、およびインスリンが挙げられる。
PDIは、反応状態に応じて、チオールの酸化、ジスルフィド結合の還元およびジスルフィドの異性化を触媒する、チオレドキシンファミリー活性部位含有タンパク質のタンパク質ジスルフィドイソメラーゼのクラスに属する。PDIは、新生タンパク質での正確なジスルフィド対の形成を触媒する。PDIは優先的に、システイン残基を含有するペプチドと相互作用するが、その他は区別しない。PDIの広範な基質特異性から、多様なジスルフィド含有タンパク質の折り畳みを速くすることが可能となる。ジスルフィド結合をシャッフリングすることによって、PDIによって、タンパク質は、利用可能なシステイン残基の中で最も熱力学的安定性が高い対をすぐに見つけることができる。その結果、PDIは、タンパク質のプロセシング、タンパク質の折り畳み、およびタンパク質分泌に関与する。PDIは、コラーゲンおよびコラーゲン様タンパク質生合成に関与し、PDIの突然変異はエーラース・ダンロス症候群を引き起こす。
本発明の実施形態は、配列番号:46のPDIポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、システイン残基を有するペプチドに結合する生物活性を有するPDIポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、PDIポリペプチドをコードする配列番号:45のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、システイン残基を有するペプチドに結合する生物活性を有するPDIポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の好ましい態様は、PDIポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、PDIの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。PDIの発現を指示できるポリヌクレオチドは、PDI遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、PDIコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。前記宿主細胞によって産生されたPDIタンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用することができる。
チオール種を酸化する方法は、PDIポリペプチドを、還元されたシステイン残基を有するペプチドと接触させる段階を含む。チオールは、ジスルフィド結合に酸化されることが好ましい。そのジスルフィド結合は正確に異性化されることがさらに好ましい。この方法は、コラーゲン/コラーゲン様タンパク質配列を含有するタンパク質配列の組換え体の作製に適用することができる。
本発明の好ましい態様は、PDIポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、PDIの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。PDIの発現を指示できるポリヌクレオチドは、PDI遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、PDIコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。
本発明の実施形態は、PDIポリペプチドを含む組成物に関する。PDIポリペプチドを作製する方法は、i)本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトする段階;ii)産生されたタンパク質を精製する段階;を含む。そのタンパク質の精製は、当業者に公知のいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、PDIまたはその一部に対して作られる抗体、好ましくは、そのポリペプチドのチオレドキシンドメインに対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムが形成される。
本発明の他の実施形態は、タンパク質分子内ジスルフィド結合を還元するために、単独で、または還元剤もしくは還元系と組み合わせて、PDIを使用する方法を提供する。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,113,951号にさらに記載されるように、生地の強度、およびパン粉の質、柔らかさ、より高いパンの体積など、パンの特性を改善するために、穀粉または種子中に存在するグルテニンまたはグリアジンと組み合わせて、PDIを使用することができる。
1つまたは複数の分子内シスチンを有する毒性タンパク質を還元する方法であって、そのタンパク質を還元するのに有効な量のPDIと毒性タンパク質を接触させる段階と、1つまたは複数のジスルフィド架橋を還元し、かつ毒性タンパク質を変性させるのに十分な時間、接触を維持する段階と、を含む方法がさらに好ましい(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,113,951号にさらに記述されている)。
一実施形態において、PDIは、1種または複数種の目的のタンパク質を作製するために使用される宿主細胞において1種または複数種の目的のタンパク質と共発現することができる。PDIの共発現により、宿主細胞から得られる、正確に折り畳まれたタンパク質の量が増加する。この方法において、PDIを発現する第1ベクターおよび目的タンパク質を発現する第2ベクターが、従来の方法を用いて宿主細胞に導入され、発現に続いて、目的タンパク質が収集される。
その他の実施形態において、プロセシング中にPDIをタンパク質試料に添加して、タンパク質のプロセシング効率を高めることが可能である。タンパク質のプロセシングは、宿主細胞における少なくとも1種類の目的タンパク質の発現に続いて行われ、精製、再生、可溶化段階、または目的タンパク質を純粋な状態および活性状態で得るために用いられる他のいずれかの段階を含み得る。この実施形態では、これらの段階中にPDIを添加して、例えば、タンパク質の酸化、凝集、または不適当な折り畳みから結果として生じるタンパク質の損失を最小限にすることができる。添加されるPDIの量は通常の方法を用いて、当業者によって決定することが可能であり、タンパク質の損失を低減するのに十分な量となるだろう。
他の実施形態では、本発明は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6190723号に記載のように、PDIによって食物アレルゲンを中和する方法を提供する。アレルゲンの食物タンパク質のアレルゲン性を減少させる方法は、タンパク質のアレルゲン性を減少させるのに有効な、ある量のPDI、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド−ホスフェートチオレドキシンレダクターゼおよびNADPH、またはある量のPDIおよびジチオスレイトールと、そのタンパク質を接触させる段階を含む。
その他の実施形態では、本発明は、食物タンパク質の消化性を高める方法を提供する。この方法は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,952,034号に記載のように行うことができる。食物タンパク質の消化性を高める方法は、食物の消化性を高めるのに有効な、ある量のPDI、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート−チオレドキシンレダクターゼ(NTR)およびNADPHで食物を処理する段階を含む。
本発明の実施形態は、PDI発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)試験物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のPDI発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。PDIの発現は、当技術分野で一般的な、または本明細書に包含される方法によって、PDIポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することによって決定される。この方法の一例は、i)同等な2つの細胞試料を培養する段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)指定の時間にどちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からmRNAを精製する段階;v)ノーザンブロット、RT−PCR、または当技術分野で一般的な他の方法によって、各試料におけるPDI mRNAのレベルを比較する段階;を含む。本発明は、本明細書で述べるように特異的なポリヌクレオチドプローブおよびプライマーの設計および使用を提供する。その他の例は、i)同等な2つの細胞培養物を得る段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からタンパク質を精製する段階;v)ウェスタンブロット、免疫組織化学、または当技術分野で一般的な他の方法によって、各試料におけるPDIポリペプチドのレベルを比較する段階;を含む。PDIの発現は、B細胞において測定されることが好ましい。本発明は、本明細書に述べるように、特異的抗体および抗体断片の設計および使用を提供する。この方法は、PDIに関連する疾患の診断に適用することができる。例えば、異常に高いレベルのPDIは、肺癌、結腸癌、子宮頚癌および肝細胞癌などの原発腫瘍が存在することを表す。
PDIの過剰発現は、疾患の疾患の発生において役割を担う。PDIの過剰発現の増加は、シェーグレン症候群、白血病細胞およびリンパ腫細胞の増殖の増加、およびウイルス形質転換細胞の増殖と関連する。PDIの欠損は、限定されないが、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、喘息、アレルギー、クローン病、潰瘍性大腸炎、糖尿病、ヘルマンスキー・パドラック症候群、アルツハイマー病、および外傷、虚血、低酸素、放射線暴露および紫外線暴露によって生じる組織への損傷を含む、免疫疾患と関連する。
他の実施形態において、PDIポリペプチドまたはその断片を用いて、PDI活性を活性化または抑制する化合物についてスクリーニングすることができる。この方法は、i)PDIポリペプチドまたはその断片を試験物質と接触させる段階と、ii)PDI活性をモニターする段階と、を含む。
PDIの発現または活性を低減する試験物質は、PDIの阻害剤またはアンタゴニストとして定義される。PDIの発現または活性を増加させる試験物質は、活性化剤またはアゴニストとして定義される。PDIの阻害剤には、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、および抗体が含まれる。これらの作用物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造かつ使用することができる。異常なPDIの発現によって特徴付けられる疾患は、心血管障害、例えばアテローム性動脈硬化症、虚血再潅流障害、心肥大、高血圧、冠動脈疾患、心筋梗塞、不整脈、心筋症、およびうっ血性心不全;結合組織障害、例えばエーラース・ダンロス症候群;肝障害、例えばアルコール性肝疾患、肝硬変および肝癌である。
他の実施形態では、スクリーニングアッセイによって同定されるPDI活性に対して刺激もしくは抑制効果を有する本発明のタンパク質ならびに作用物質、または修飾因子を個体に投与して、異常なPDI活性と関連する、本明細書に記載の疾患を(予防的または治療的に)治療することができる。
本発明の他の実施形態において、様々な薬物スクリーニング技術のいずれかにおいて化合物ライブラリーをスクリーニングするために、PDI、その触媒断片またはその免疫原性断片またはそのオリゴペプチドを使用することができる。かかるスクリーニングで用いられる断片は、溶液中で遊離であり、固体担体に固定化され、細胞表面上に位置するか、または細胞内に位置し得る。PDIと試験される作用物質との間の結合性複合体の形成を測定することが可能である。用いられる薬物スクリーニングのその他の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開番号:W084/03564に記載のように、対象のタンパク質に対して適切な結合親和性を有する化合物のハイスループットスクリーニングを提供する。この方法では、PDIに適用されるように、非常に多くの小さな異なる試験化合物が、プラスチックピンなどの固体基質または一部の他の表面上に合成される。その試験化合物を、PDI、またはその断片と反応させ、洗浄する。次いで、当技術分野でよく知られている方法によって、結合したPDIを検出する。精製されたPDIもまた、上述の薬物スクリーニングに使用するためにプレート上に直接コーティングされる。代替方法としては、非中和抗体を用いて、ペプチドを捕捉し、固体担体上にそれを固定化することができる。
他の実施形態において、PCIに結合することができる中和抗体がPDIに結合する試験化合物と競合する、競合薬物スクリーニングアッセイが用いられる。この手法では、1つまたは複数の抗原決定基をPDIと共有するいずれかのペプチドの存在を検出するために、その抗体を使用することができる。
一実施形態では、PDIまたはその生物活性断片が、PDIの欠損と関連する病状または疾患の治療のために対象に投与される。これらの疾患としては、限定されないが、脳癌、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、および甲状腺癌、および限定されないが、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、喘息、アレルギー、クローン病、潰瘍性大腸炎、糖尿病、ヘルマンスキー・パドラック症候群、アルツハイマー病、および外傷、虚血、低酸素、放射線暴露および紫外線暴露によって生じる組織への損傷などの免疫疾患および感染症が挙げられる。
他の実施形態では、PDIまたはその断片もしくは誘導体を発現することができるベクターもまた、上述の疾患または病状を治療または予防するために投与される。
一実施形態において、PDIのアゴニストが、上述の疾患または病状を治療または予防するために投与される。
他の実施形態では、PDIをコードするポリヌクレオチドのアンチセンスを発現するベクターが、PDIの過剰発現と関連する病状または疾患を治療または予防するために、対象に投与される。かかる病状または疾患としては、白血病、シェーグレン症候群、ヒトTリンパ球好性ウイルス、エプスタインバーウイルス(EBウイルス)、ヒト免疫不全ウイルスが挙げられる。その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開番号:WO99/38963に、一例が記載されている。
本発明の他の実施形態は、当業者に公知のいずれかの方法によって、遺伝子導入動物(キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)、ハツカネズミ(M. musculus))を確立するために、本発明のタンパク質またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を用いた組成物および方法に関する。薬物または変更遺伝子(活性化または抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をin vivoで調節することによって、癌などのヒトホルモン依存性疾患を模倣する動物モデルを作製することができる。したがって、これらの動物モデルによって、疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となると考えられる。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにex vivoで使用することができる。
他の実施形態において、PDIのヌクレオチド配列またはその断片を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、例えば遺伝的突然変異または欠失の効率的なスクリーニングを行うことができる。そのマイクロアレイを使用して、非常に多くの遺伝子の発現レベルを同時にモニターし、遺伝的変異体(variant)、突然変異(mutation)、および多型を同定することができる。この情報を用いて、遺伝子機能を決定すること、疾患の遺伝的基礎を理解すること、疾患を診断すること、および治療薬の活性を発生させ、かつモニターすることが可能である(例えば、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる Chee, M. et al., Science, 274: 610-614 (1996)参照)。例えば、PDIの突然変異は、エーラース・ダンロス症候群の原因となる。
配列番号:48のタンパク質(内部指定クローン146821 106−020−1−0−G3−F)
クローン146821_106−020−1−0−G3−FのcDNA(配列番号:47)は、アミノ酸配列:MLVMYLLAALFGYLTFYGEVEDELLHAYSKVYTLDIPLLMVRLAVLVAVTLTVPIVLFPIRTSVITLLFPKRPFSWIRHFLIAAVLIALNNVLVILVPTIKYIFGFIGASSATMLIFILPAVFYLKLVKKETFRSPQKVGALIFLVVGIFFMIGSMALIIIDWIYDPPNSKHHを含む、配列番号:48のNBARTタンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:48のポリペプチドのすべての特性および使用は、146821_106−020−1−0−G3−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:47のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン46821_106−020−1−0−G3−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:47、配列番号:48、およびクローン46821_106−020−1−0−G3−Fの組成物に対して向けられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
ADP−リボシル化因子(ARF)およびARF様(ARL)タンパク質は、調節GTPアーゼのRasスーパーファミリー内のARFファミリーを含む。このスーパーファミリーのメンバーは、1種または複数種の酵素活性を直接活性化することができる、またはさらに複雑な多サブユニット複合体の動員および構築をコーディネートすることができるシグナル伝達において分子ノード(molecular node)として機能する。ARL2は、ARF様遺伝子の機能的に異なるグループのメンバーである。ARL2は、GTPに迅速に結合し、それを加水分解する。GDP結合型において、ARL2は、チューブリン特異的シャペロン補助因子Dと相互作用する。この相互作用は、過剰発現した補助因子Dによるチューブリンおよび微小管の破壊を防ぐ。補助因子DのチューブリンGTPアーゼ活性化タンパク質の活性もまた、ARL2の結合によって抑制される。この相互作用は、微小管動力学の調節にARL2が寄与するのを防ぐ。NBARTは、高親和性を有するARL2−GTPに特異的に結合するが、ARL2−GDPとは相互作用しない。
本発明の実施形態は、配列番号:48のNBARTポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、ARL2に結合する生物活性を有するNBARTポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、NBARTポリペプチドをコードする配列番号:47のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、ARL2に結合する生物活性を有するNBARTポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の好ましい態様は、NBARTポリペプチドまたはその生物活性断片をコードする宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、NBARTの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。NBARTの発現を指示できるポリヌクレオチドは、NBART遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、NBARTコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。前記宿主細胞によって産生されたNBARTタンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用することができる。
本発明の好ましい実施形態は、ARL2に結合させるためにNBARTを使用する方法である。この方法は、NBARTの結合を生じさせる条件下にて、NBARTポリペプチドまたはその活性断片をARL2タンパク質と接触させる段階を含み、結合によってARL2の活性が抑制される。
本発明の好ましい実施形態は、ARL2を精製する方法である。この方法は、結合を生じさせる条件下にて、NBARTポリペプチドまたはその活性断片をARL2と接触させる段階;混入物を除去する段階;さらに厳密な条件を用いてARL2を溶出する段階;を含む。NBARTペプチドを固体または半固体マトリックス上に固定化して、試料の洗浄を容易にし、混入物を除去することが好ましい。
本発明の好ましい実施形態は、ARL2を検出する方法である。この方法は、NBARTポリペプチドまたはその活性断片をARL2と接触させる段階と、NBARTを検出することによって前記ARL2の存在を検出する段階と、を含む。NBARTポリペプチドは、例えば蛍光化合物、発光化合物、または放射性化合物で標識されることが好ましい。ARL2は、細胞培地および体液などの生物体液において検出されることが好ましい。この方法は、細胞試料または個体におけるARL2の発現レベルを定量化するために適用することが可能である。この情報は、限定されないが、癌、ヒト多発性嚢胞腎、ダウン症候群などの微小管関連疾患の決定に有用であり得る。
その他の好ましい態様は、NBARTの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。NBARTの発現を指示できるポリヌクレオチドは、NBART遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、NBARTコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。
本発明の更なる態様は、NBARTの単離および精製を含む。本発明の実施形態は、NBARTポリペプチドを含む組成物に関する。NBARTポリペプチドを作製する方法は、i)本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを、哺乳動物宿主細胞にトランスフェクトする段階;ii)産生されたタンパク質を精製する段階;を含む。NBARTは、当業者に公知の、または本明細書に開示されるいずれかの技術に従って単離することができる。NBARTまたはその断片に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することが好ましい。
配列番号:50のタンパク質(内部指定クローン644724 181−21−1−0−A12−F)
クローン644724_181−21−1−0−A12−FのcDNA(配列番号:49)は、アミノ酸配列:MHPFYTRAATMIGEIAAAVSFISKFLRTKGLTSERQLQTFSQSLQELLAEHYKHHWFPEKPCKGSGYRCIRINHKMDPLIGQAAQRIGLSSQELFRLLPSELTLWVDPYEVSYRIGEDGSICVLYEASPAGGSTQNSTNVQMVDSRISCKEELLLGRTSPSKNYNMMTVSSを含む、配列番号:50のNBTGタンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:50のポリペプチドのすべての特性および使用は、644724_181−21−1−0−A12−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:49のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン644724_181−21−1−0−A12−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:49、配列番号:50、およびクローン644724_181−21−1−0−A12−Fの組成物に対して向けられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
NBTGは、B細胞転座遺伝子1タンパク質(アクセッション番号P31607)の多型変異体である。本発明のタンパク質は、抗増殖性ドメイン:IGEIAAAVSFISKFLRTKGLTSERQLQTFSQSLQELLAEHYKHHWFPEKPCKGSGYRCIRINHKMDPLIGQAAQRIGLSSQELFRLLPSELTLWVDPYEVSYRIGEDGSICVLYEASPAGGSTQNSTNVQMVDSRISCKEELLLGRTSPSKNYNMMTVSSを示す。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、抗増殖性ドメインを含むポリペプチドに関する。
細胞増殖を負に制御する能力は、すべての生物に必要である。単細胞生物は、適切な栄養素および他の環境要因が存在する時まで、それらの複製を制限しなければならず、多細胞生物は正確に形をとり、かつそれらの構成組織の構造を維持しなければならない。多細胞生物において、発達期間中の成長の適切な負の制御が失敗すると、その結果、致命的な奇形が生じ得る。発達後の期間においては、かかる失敗によって、新形成が起こり得る。負の制御は非常に重要であることから、その役割が活発に増殖を抑制する、特定の遺伝子が進化した。
NBTGは、抗増殖性遺伝子のファミリーのメンバーである。NBTGは、成長誘発因子に対抗するのに重要であり、細胞分裂の制御においてプロトオンコジーンと同じ重要性を有する。NBTGの減少は、不規則な細胞分化および増殖と、または胚の発達の変化と関連する。NBTGは、過剰発現した場合にN1H3T3細胞増殖をダウンレギュレートする。NBTG遺伝子は、B細胞慢性リンパ性白血病における染色体転座に関与する。NBTGは、刺激を受けると細胞周期に再び入る可能性がある非分裂細胞を含有する組織(リンパ組織、肝臓、血漿)において発現する。しかしながら、脳および筋肉などの完全に分化した組織中では、NBTGをほとんど検出することができない。
本発明の実施形態は、配列番号:50のNBTGポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、細胞増殖を抑制する生物活性を有するNBTGポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、NBTGポリペプチドをコードする配列番号:49のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、細胞増殖を抑制する生物活性を有するNBTGポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、NBTGポリペプチドまたは生物活性を有するNBTGポリペプチド断片に対して作られる抗体を含む組成物に関する。その抗体は、非線状エピトープを認識し、NBTGのC末端配列に特異的に結合することが好ましい。
本発明の好ましい態様は、NBTGポリペプチドまたはその生物活性断片をコードするポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。その他の好ましい態様は、NBTGの発現を指示することができるポリヌクレオチドの宿主細胞組換え体である。NBTGの発現を指示できるポリヌクレオチドは、NBTG遺伝子の5’調節領域に位置することが好ましい。これらのポリヌクレオチドは、NBTGコード領域の500塩基対内に位置することがさらに好ましい。これらのポリヌクレオチドは、プロモーター配列を含むことが好ましい。内因性配列にポリヌクレオチド配列を導入するための、当技術分野で公知の技術は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5641670号および国際公開番号:W09629411に記述されている。前記宿主細胞によって産生されたNBTGタンパク質は、in vitroでの検出および精製方法ならびに診断およびin vivo用途に使用することができる。
本発明の実施形態は、NBTGポリペプチドを含む組成物に関する。NBTGポリペプチドを作製する方法は、i)本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを、哺乳動物宿主細胞にトランスフェクトする段階;ii)産生されたタンパク質を精製する段階;を含む。このタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。NBTGまたはその断片に対して作られる抗体、さらに好ましくはNBTGポリペプチドのC末端配列に対して作られる抗体をクロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することが好ましい。
他の実施形態において、本発明は、NBTG mRNAの発現レベルを検出するための方法および組成物を提供する。NBTGポリペプチドのmRNAレベルの定量化は、本発明のタンパク質の変化した発現と関連する疾患の診断または予後に有用である。変化した発現と関連する病状、疾患または障害としては、限定されないが、異常細胞増殖、例えば癌、乾癬、血管増殖性疾患、線維性疾患、および光線性病変が挙げられる。本発明のタンパク質のmRNAを検出かつ定量化するためのアッセイは、当技術分野でよく知られている(例えば、Maniatis, Fitsch and Sambrook, Molecular Cloning; A Laboratory Manual (1982), またはCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. M. et al. (Eds), Wiley & Sons, Inc. 参照)。例えば、その核酸分子またはプローブを標準法によって標識し、ハイブリダイゼーション複合体形成の条件下にて、患者由来の生体試料に添加することができる。インキュベーション期間の後、試料を洗浄し、ハイブリダイゼーションと関連する標識(またはシグナル)の量を定量化し、標準値と比較する。患者試料における標識の量が標準値と比較して著しく変化している場合には、次いで、関連する病状、疾患または障害が存在することが示される。動物の研究および臨床試験において特定の治療的処置の有効性を評価するために、かつ個々の患者の治療をモニターするために、かかるアッセイを用いることもできる。病状の存在が確立され、治療プロトコールが開始されたら、かかるアッセイを定期的に繰り返し行い、患者における発現レベルが、正常な対象において観察されるレベルに近似し始めるかどうかを決定することが可能である。連続的なアッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の範囲の期間にわたる治療の有効性を示すことができる。
他の実施形態では、本発明は、特定の生体試料中に存在するNBTGのレベルを検出かつ定量化する方法および組成物に関する。これらの方法は、本発明のタンパク質の変化したレベルと関連する疾患または予後に有用である。NBTGを検出するための診断アッセイには、器官または組織切片からの細胞の、腫瘍または正常組織からの細胞の吸引液の生検、in situアッセイが必要である。さらに、アッセイは、器官、組織、細胞、尿からの細胞抽出物、または血清または血液または他のいずれかの体液または抽出物で行われる。特異的ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を用いた、NBTGポリペプチドの検出および定量化は、当技術分野で公知である。かかる技術の例としては、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が挙げられる。
NBTGは増殖抑制能力を有し、したがって、異常細胞増殖および悪性病状と関連する疾患または病理的病状の治療に利用することができる。このポリペプチドを用いて、腫瘍成長および細胞増殖を抑制することが可能である。創傷治癒部位に傷跡がつくのを防ぐために、NBTGを利用することもできる。バルーン血管形成術後の動脈壁の再狭窄、または再閉塞もまた、細胞増殖によって動脈が再閉塞した場合と同様に、NBTGで処置することが可能である。同様に、腫瘍への血管形成が抑制される。
一実施形態において、NBTGまたはその生物活性断片が、変化したNBTG発現または活性と関連する病状を治療または予防するために投与される。かかる病状の例には、限定されないが、上述の病状が含まれる。NBTGポリペプチドを含む組成物は、例えば腫瘍成長、内皮細胞増殖、および腫瘍成長に関連する血管形成などの異常な、または望ましくない細胞増殖を有する個体に投与されることが最も好ましい。本発明の組成物で治療することができる腫瘍としては、限定されないが、神経膠腫、メラニン欠乏性黒色腫、前立腺腫瘍および肺腫瘍が挙げられる。
他の実施形態では、薬剤担体と共に、実質上精製されたNBTGポリペプチドを含む薬剤組成物を対象に投与して、限定されないが上述の病状など、内因性タンパク質の変化した発現または活性と関連する病状を治療または予防することができる。
その他の実施形態では、NBTGの活性を調節する物質を対象に投与して、限定されないが上述の病状など、NBTGポリペプチドの変化した寿命、発現または活性と関連する病状を治療または予防することができる。一実施形態では、NBTGに特異的に結合する抗体が、限定されないが肝臓細胞などの、NBTGを発現する細胞または組織に薬剤を運ぶ、標的化および送達メカニズムとして使用される。
主題の本発明の他の実施形態は、本発明のタンパク質の活性を選択的に増加させる組成物および方法を提供する。NBTGが活性化されることによって、NBTG活性と関連する疾患または生化学的異常を上手く治療し、かつ/または管理することが可能となる。本発明のタンパク質の発現または活性を増加させることができるアゴニストは、限定されないが癌、乾癬、血管増殖性疾患、線維性疾患、および光線性病変などの細胞増殖に関連する疾患の治療において有用である。一方、NBTGの発現または活性を低減することができるアンタゴニストは、不十分な細胞増殖によって特徴付けられる病状の治療において有用である。治療される病状としては、例えば骨粗鬆症、脆弱な皮膚および不十分な創傷治癒が挙げられる。
その他の実施形態において、NBTGまたは好ましい断片を発現することができるベクターを対象に投与して、限定されないが上述の病状などの、本発明のタンパク質の変化した寿命、発現または活性と関連する病状を治療または予防することができる。NBTG遺伝子および遺伝子産物もまた、細胞成長の調節に用いることが可能である。その増殖抑制効果のために、それらを選択的に投与すること、あるいは、特定の細胞が増殖することが望まれる場合には、もしかするとそれらを抑制することができる可能性がある。一例としては、特定の細胞の生産不足に関連する疾患が挙げられ、れらの細胞の増殖および分化は、上記の疾患を治療する助けとなるだろう。 一部の実施形態において、本発明は、NBTGポリペプチドの存在をin vitroで検出するための診断キットにも関する。このキットは、NBTGポリペプチドに特異的に結合するポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体またはその断片;任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。その抗体または抗体断片は、上述のように検出可能に標識されることが好ましい。かかる標識としては、蛍光化合物、発光化合物、および放射性化合物、ならびに酵素基質が挙げられる。任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し、抗体に結合するか、または抗体上の標識と反応することができる。NBTG抗体は、骨粗鬆症、脆弱な皮膚および不十分な創傷治癒などの低増殖性疾患を診断するために用いることができる。かかる疾患を診断するために、適切な生体試料を試験して、産生されるNBTGのレベルを決定することができる。
その他の実施形態において、本発明は、in vivoまたはin vitroで細胞の増殖を有効にブロックする方法、または細胞の成長を有効に抑制する方法を提供する。好ましくは、本発明を用いて、抑制されていない細胞増殖を阻止すること、およびできる限り多くの腫瘍細胞を取り除くことができる。その方法は、NBTGに対して作られるアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞に投与することによって行われるだろう。アンチセンスオリゴヌクレオチドを標的細胞に送達するための1つの戦略は、カチオン性リポソームなどのリポソーム中に治療学的生理活性分子を封入するか、または取り込むことを含む。これらのリポソームは、in vivoでヌクレオチド分解に対するシールドを提供することが知られており、体の特定の領域に標的化することができ、そのポイントで、それらは内容物をゆっくりと放出する。一方、アンチセンスオリゴヌクレオチドに作動可能に連結されるプラスミドDNAを含む、ポリヌクレオチドコンストラクトを使用することができる。そのヌクレオチド配列は、当業者に公知の適切なバッファーまたは担体溶液中にてin vivoで投与される。
本発明の他の実施形態は、当業者に公知のいずれかの方法によって、遺伝子導入動物(キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)、ハツカネズミ(M. musculus))を確立するために、本発明のタンパク質またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を用いた組成物および方法に関する。薬物または変更遺伝子(活性化または抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をin vivoで調節することによって、癌などのヒトホルモン依存性疾患を模倣する動物モデルを作製することができる。したがって、これらの動物モデルによって、疾患の治療に用いられる潜在的な治療薬を同定することが可能となると考えられる。さらに、これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにex vivoで使用することができる。
配列番号:52のタンパク質(内部指定583702 181−8−4−0−C8−F)
583702_181−8−4−0−C8−FのcDNA(配列番号:51)は、アミノ酸配列:MPLPLPSAFVLSALQPSPTHSSSNTQRLPDRVTGGFSVNGQLIGNKARSPGQHDGTYFGRLGIANPATDFQLEVTPQNITLNPGFGGPVFSWRDQAVLRQDGVWTINKKRNLWSVDDGGTFEWLHRVWKGSSVHQDFLGFYVLDSHRMSARTHGLLGQFFHPIGFEVSDIHPGSDPTKPDATMVVRNRRLTVTRGLQKDYSKDPWHGAEVSCWFIHNNGAGLIDGAYTDYIVPDIFを含む、配列番号:52のvITH1タンパク質をコードする。したがって、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:52のポリペプチドのすべての特性および使用は、583702_181−8−4−0−C8−F中に含まれるヒトcDNAによりコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。さらに、本明細書全体にわたり記載されている配列番号:51のポリヌクレオチドのすべての特性および使用は、クローン583702_181−8−4−0−C8−F中のヒトcDNAを含む核酸にも関係することは理解されよう。本発明の好ましい実施形態は、配列番号:51、配列番号:52、およびクローン583702_181−8−4−0−C8−Fの組成物に対して向けられる。本明細書に記載の生物活性を有するポリペプチド断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
配列番号:51のcDNAは、vITH1と呼ばれる配列番号:52の239アミノ酸のタンパク質をコードする、ヒトインターα−トリプシン阻害剤(ITH1)の重鎖1のスプライスバリアントである。インターα−トリプシンインヒビターは、哺乳動物におけるるKunitz型セリンプロテアーゼインヒビターのスーパーファミリーに属する。軽鎖(ビクニン)に共有結合で連結された2本の重鎖(HC1およびHC2)で構成されるポリペプチド鎖状構造を有するグリコシル化プロテアーゼ阻害剤である。ビクニンは、プロテアーゼ阻害剤として機能する。vITH1ポリペプチドは、ビクニン結合部位を欠く、重鎖1の新規なスプライシングバリアントである。しかしながら、ITH1はヒアルロン酸(HA)タンパク質に結合する。結合組織は、HAの主要な哺乳類源であるが、細胞外マトリックス、軟骨、滑液においても見出される。エンドサイトーシス後、肝臓におけるヒアルロニダーゼ消化によって、HAは正常に異化される。
本発明の実施形態は、配列番号:52のvITH1ポリペプチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、HA結合タンパク質生物活性を有するvITH1ポリペプチド断片を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、vITH1ポリペプチドをコードする配列番号:51のポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、HA結合タンパク質生物活性を有するvITH1ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物に関する。
本発明の更なる実施形態は、配列番号:52のvITH1ポリペプチド配列またはHA結合タンパク質生物活性を有するvITH1ポリペプチド断片に対して作られる抗体を含む組成物に関する。その抗体は、vITH1に特異的に結合するが、ITH1に対しては特異的に結合しないことが好ましい。その抗体は、アミノ酸:VTGG、TGGF、GGFS、VTGGFS、MPLP、PLPL、PLPS、LPSA、またはMPLPLPSAを含むエピトープを認識することが好ましい。
本発明の実施形態は、vITH1ポリペプチドを含む組成物に関する。vITH1ポリペプチドを作製する方法は、i)本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを、哺乳動物宿主細胞にトランスフェクトする段階;ii)産生されたタンパク質を精製する段階;を含む。このタンパク質の精製は、当業者によく知られているいずれかの技術に従って行うことができる。好ましくは、vITH1またはその断片に対して作られる抗体を、クロマトグラフィー担体に結合させて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを形成することができる。
他の実施形態において、本発明は、生体試料中のvITH1ポリペプチドを検出する方法に向けられ、前記方法は、i)vITH1ポリペプチドに特異的に結合する抗体または抗体断片と生体試料を接触させる段階;ii)形成された抗原−抗体複合体を検出する段階;を含む。その抗体または抗体断片は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることが可能である。さらに、その抗体または抗体断片は一次的または二次的に、当技術分野で一般的な検出可能な化合物(例えば、放射性化合物、蛍光化合物、発光化合物、および酵素化合物)によって標識することができる。
更なる実施形態では、vITH1ポリペプチドはHAを精製するために使用される。かかる方法において、vITH1ポリペプチドは、固体マトリックスに共有結合または非共有結合で結合され、当技術分野でよく知られている技術を用いて、HAに結合させることができる。この方法は、i)その固体マトリックスを洗浄して、混入物を取り除く段階;ii)さらに厳密な条件を用いて、対象の粒子を溶出する段階;を含む。この実施形態のその他の態様は、当技術分野で一般的な技術を用いて、HAを検出かつ精製するために、vITH1ポリペプチドを使用する方法を包含する。この方法は、HAを含有すると思われる生体試料を得る段階と、ii)vITH1の結合に適した条件下にて、vITH1ポリペプチドまたはその断片と前記試料を接触させて、vITHを検出することにより、HAの有無を検出する段階;を含む。vITH1ポリペプチドまたはその断片は、検出可能な化合物に共有結合で結合することが好ましい。代替方法としては、vITH1を検出するために、検出可能なvITH1特異的抗体またはその断片を使用することができる。この実施形態は、例えば、HAの異常蓄積と関連する広範な疾患のリスクがある、またはその疾患を有する個体に関してHAの存在を検出するための診断ツールとして有用である。例えば、限定されないが、ムコ多糖症IX型で知られるヒアルロニダーゼ欠損症、Ramsden CA et al, J Pediatr 2000 Jan; 136 (1) : 62-68)に記載されている、皮膚の全身性のひだ(folding)および肥厚と関連するHA代謝障害、硬変などの肝臓疾患、腎不全および一部の肺疾患、慢性関節リウマチおよび変形性関節症などの関節炎疾患、および中皮腫およびウィルムス腫瘍などの特定の癌などの疾患の診断にそれを適用することができる。かかる方法は、このような疾患の重症度を評価するのにも有用である。このキットは、vITH1ポリペプチドに特異的に結合するポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体またはその断片;任意に、ii)形成された抗原−抗体複合体の検出を可能にする試薬;を備える。その抗体または抗体断片は、検出可能に標識されることが好ましい。かかる標識としては、蛍光化合物、発光化合物、および放射性化合物、ならびに酵素基質が挙げられる。任意の試薬は、検出可能なシグナルを提供し、抗体に結合するか、または抗体上の標識と反応することができる。HAレベルを決定するため、およびかかる疾患を診断または管理するために、好ましい、適切な生体試料は、関節炎疾患の場合には血清、尿および滑液である。
本発明の実施形態は、vITH1発現の修飾因子について試験物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、i)試験物質と細胞を接触させる段階;ii)試験物質に暴露した後の細胞中のvITH1発現を、非暴露対照細胞中の発現と比較する段階;を含む。vITH1の発現は、当技術分野で一般的な、または本明細書に包含される方法によって、vITH1ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを検出することによって決定される。この方法の一例は、i)同等な2つの細胞試料を培養する段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)指定の時間にどちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からmRNAを精製する段階;v)ノーザンブロット、RT−PCR、または当技術分野で一般的な他の方法によって、各試料におけるvITH1 mRNAのレベルを比較する段階;を含む。本発明は、本明細書で述べるように特異的なポリヌクレオチドプローブおよびプライマーの設計および使用を提供する。その他の例は、i)同等な2つの細胞培養物を得る段階;ii)その培養物の一方には試験物質を添加し、もう一方には添加しない段階;iii)どちらの培養物も収集する段階;iv)細胞の各試料からタンパク質を精製する段階;v)ウェスタンブロット、免疫組織化学、または当技術分野で一般的な他の方法によって、各試料におけるvITH1ポリペプチドのレベルを比較する段階;を含む。本発明は、本明細書に述べるように、特異的抗体および抗体断片の設計および使用を提供する。
その他の実施形態において、vITH1ポリペプチドまたはその断片を用いて、vITH1活性を活性化または抑制する化合物についてスクリーニングすることができる。この方法は、i)vITH1ポリペプチドまたはその断片を試験物質と接触させる段階;ii)vITH1活性をモニターする段階;を含む。vITH1はHAに結合する。したがって、試験物質を添加すると同時に、HAでの競合的結合アッセイによって、vITH1活性をモニターすることができる。本発明のこの態様では、vITH1ポリペプチドまたはその断片は、溶液中で遊離であり、固体担体に固定化され、細胞表面上に組換えで発現されるか、または細胞表面に化学的に結合されるか、または細胞内に位置する。vITHポリペプチドと試験される化合物との間の結合性複合体の形成は、BIAcore(スウェーデン、ウプサラ)などの当技術分野でよく知られる方法によって測定することができる。その他の技術は、本発明のタンパク質に対して適切な結合親和性を有する化合物のハイスループットスクリーニングを提供する。vITH1の発現または活性を低減する試験物質は、vITH1の阻害剤またはアンタゴニストとして定義される。vITH1の発現または活性を増加させる試験物質は、活性化剤またはアゴニストとして定義される。主題の発明のvITH1の発現または活性を調節する作用物質としては、限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、および抗体が挙げられる。これらの作用物質は、当技術分野でよく知られている方法に従って製造かつ使用することができる。
本発明の他の実施形態において、vITH1ポリペプチド、その断片、またはvITHアゴニストを用いて、HAにin vivoで結合させ、血流からこの分子を除去する。この方法を用いて、肝クリアランスの減少、過剰合成またはヒアルロニダーゼ活性の増加が原因の疾患を含む、HAの異常蓄積と関連する疾患を予防または治療することができる。例えば、vITH1ポリペプチド、その断片、またはvITHアゴニストは、限定されないが、ムコ多糖症IX型でも知られるヒアルロニダーゼ欠損症、Ramsden CA et al, J Pediatr 2000 Jan; 136 (1) : 62-68)に記載されている、皮膚の全身性のひだ(folding)および肥厚と関連するHA代謝障害、硬変などの肝臓疾患、腎不全および一部の肺疾患のリスクがある、またはその疾患を有する個体に送達される組成物中に使用することができる。この実施形態において、かかる組成物は、慢性関節リウマチおよび変形性関節症などの関節炎疾患、および限定されないが中皮腫およびウィルムス腫瘍などの特定の癌など、HAの高い血清中レベルと関連する他のいずれかの病状においても使用することができる。この方法は、有効量のvITH1ポリペプチドまたはその断片またはvITH1アゴニストを個体の血流に導入する段階を含む。この実施形態では、vITH1ポリペプチドはさらに、体からの排出を特定化するポリペプチドシグナルを有する融合タンパク質として発現させることができる。vITH1ポリペプチドまたはその生物活性断片を個体に送達するのに好ましい方法は、生理学的に許容される溶液(例えば、pH緩衝生理食塩液、グリセロールなどの粘性成分を添加することにより改変されたpH緩衝生理食塩水)中の前記ポリペプチドまたは断片を直接注入、静脈内注入することを含む。代替方法としては、vITH1ポリヌクレオチドを導入して、血流中でvITH1ポリペプチドを発現させることができる。この方法は、i)本発明のヌクレオチド配列およびその発現を指示する調節配列に作動可能に連結された、細胞を感染させることができるアデノウイルスのゲノムの一部に相当する、組換えウイルスベクターを構築する段階;ii)上述の疾患または病状を有する、またはそのリスクのある個体に、有効量の組換えアデノウイルスベクターを送達する段階;を含む。
本発明の他の実施形態は、動物の1種または複数種の組織における本発明のタンパク質の発現または活性を調節することによって作製された動物モデルに関する。これらの動物は、vITH1の過剰発現または不活性化を標的化するいずれかの方法で、または薬物または変更遺伝子(活性化または抑制遺伝子)で導入遺伝子の発現をin vivoで調節することによって、作製することができる。かかるモデルは、vITHlの活性に特異的に関連する様々な病態生理学的側面の治療に潜在的に有用な候補分子を試験するためのin vivoアッセイ法を表すことから、多くの目的に有用である。これらの遺伝子導入動物に由来する組換え細胞系は、同様のアプローチにex vivoで使用することができる。
関連するタンパク質Acru30R1LおよびAcrp30R1のネスト(nested)N末端断片
以下のヌクレオチド配列:ggaaaactatgcctggggccgacgctctgcccggctgctgccgctgaggaaagccgggacgcggagccccgccgagagcttctttgctccggacgcccctggacgtggcgggcagccgcgagggtaaccaccatgatcccctgggtgctcctggcctgtgccctcccctgtgctgctgacccactgcttggcgcctttgctcgcagggacttccggaaaggctcccctcaactggtctgcagcctgcctggcccccagggcccacccggccccccaggagccccagggccctcaggaatgatgggacgaatgggctttcctggcaaagacggccaagatggacacgacggcgaccggggggacagcggagaggaaggtccacctggccggacaggtaaccggggaaagccaggaccaaagggcaaagccggggccattgggcgggctggcccccgtggccccaagggggtcaacggtacccccgggaagcatggcacaccaggcaagaaggggcccaagggcaagaaaggggagccaggcctcccaggcccctgcagctgtggcagtggccataccaagtcagctttctcggtggcagtgaccaagagctacccacgggagcggctgcccatcaagtttgacaagattctgatgaacgagggtggccactacaatgcttccagcggcaagttcgtctgcggcgtgcctgggatctactacttcacctacgacatcacgctggccaacaagcacctggccatcggcctggtgcacaacggccagtaccgcatccggacctttgatgccaacaccggcaaccacgatgtggcctcaggctccaccatcctggctctcaagcagggtgacgaagtttggctgcagatcttctactcagagcagaacgggctcttctatgacccttactggacagacagcctctttacgggcttcctaatctatgccgaccaggatgaccccaacgaggtatagacatgccacggcggtcctccaggcagggaacaagcttctggacttgggcttacagagcaagaccccacaactgtaggctgggggtggggggtcgagtgagcggttctagcctcaggctcacctcctccgcctctttttttccccttcattaaatccaaacctttttattcaを含む、アクセッション番号AAB30232のcDNAは、アミノ酸配列:MIPWVLLACALPCAADPLLGAFARRDFRKGSPQLVCSLPGPQGPPGPPGAPGPSGMMGRMGFPGKDGQDGHDGDRGDSGEEGPPGRTGNRGKPGPKGKAGAIGRAGPRGPKGVNGTPGKHGTPGKKGPKGKKGEPGLPGPCSCGSGHTKSAFSVAVTKSYPRERLPIKFDKILMNEGGHYNASSGKFVCGVPGIYYFTYDITLANKHLAIGLVHNGQYRIRTFDANTGNHDVASGSTILALKQGDEVWLQIFYSEQNGLFYDPYWTDSLFTGFLIYADQDDPNEVを含む、タンパク質Acrp30R1Lをコードする。
したがって、本明細書全体にわたり記載されている前記Acrp30R1Lアミノ酸配列のポリペプチドのすべての特性および使用は、前記Acrp30R1Lヌクレオチド配列に含まれる核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。本明細書に記載の生物活性を有する断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
Acrp30R1Lは:
1.アミノ酸1〜20位付近のN末端の推定のシグナル配列;
2.アミノ酸21〜39位付近の非反復(unique)領域;
3.アミノ酸40〜141位付近のコラーゲン様領域;
4.アミノ酸149〜285位付近のC1q相同性の球状領域;を含む、少なくとも3つの領域で構成される。
Acrp30R1Lは:
1.アミノ酸46〜47位間のコラゲナーゼマトリックスメタロプロテイナーゼ-1(MMP−1);
2.アミノ酸125〜126位、126〜127位、131〜132位、および132〜133位間のプラスミン;
3.アミノ酸133〜134位間のprecerebellinプロセシングプロテアーゼ;を含むタンパク分解切断に対する、いくつかの注目すべき推定部位で構成される。
以下のヌクレオチド配列:gaattcggcacgagggccgcgagggtaaccaccatgatcccctgggtgctcctggcctgtgccctcccctgtgctgctgacccactgcttggcgcctttgctcgcagggacttccggaaaggctcccctcaactggtctgcagcctgcctggcccccagggcccacccggccccccaggagccccagggccctcaggaatgatgggacgaatgggctttcctggcaaagacggccaagatggacacgacggcgaccggggggacagcggagaggaaggtccacctggccggacagtgaccaagagctacccacgggagcggctgcccatcaagtttgacaagattctgatgaacgagggtggccactacaatgcttccagcggcaagttcgtctgcggcgtgcctgggatctactacttcacctacgacatcacgctggccaacaagcacctggccatcggcctggtgcacaacggccagtaccgcatccggacctttgatgccaacaccggcaaccacgatgtggcctcaggctccaccatcctggctctcaagcagggtgacgaagtttggctgcagatcttctactcagagcagaacgggctcttctatgacccttactggacagacagcctctttacgggcttcctaatctatgccgaccaggatgaccccaacgaggtatagacatgccacggcggtcctccaggcagggaacaagcttctggacttgggcttacagagcaagaccccacaactgtaggctgggggtggggggtcgagtgagcggttctagcctcaggctcacctcctctgcctctttttttccccttcattaaatccaaacctttttattcaaaaaaaaaaaaaaaaaaagatgcggccgを含む、アクセッション番号AAZ45688のcDNAは、アミノ酸配列:MIPWVLLACALPCAADPLLGAFARRDFRKGSPQLVCSLPGPQGPPGPPGAPGPSGMMGRMGFPGKDGQDGHDGDRGDSGEEGPPGRTVTKSYPRERLPIKFDKILMNEGGHYNASSGKFVCGVPGIYYFTYDITLANKHLAIGLVHNGQYRIRTFDANTGNHDVASGSTILALKQGDEVWLQIFYSEQNGLFYDPYWTDSLFTGFLIYADQDDPNEVを含む、タンパク質Acrp30R1をコードする。
したがって、本明細書全体にわたり記載されている前記Acrp30R1アミノ酸配列のポリペプチドのすべての特性および使用は、前記Acrp30R1ヌクレオチド配列に含まれる核酸によってコードされるポリペプチドにも関係することは理解されよう。本明細書に記載の生物活性を有する断片およびその断片をコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
Acrp30R1は、
1.アミノ酸1〜20位付近のN末端の推定シグナル配列;
2.アミノ酸21〜39位付近の非反復(unique)領域;
3.アミノ酸40〜87位付近のコラーゲン様領域;
4.アミノ酸88〜217位付近のC1q相同性の球状領域;を含む、少なくとも3つの領域で構成される。Acrp30R1は、Acrp30R1L中に存在するMMP−1切断に対する推定部位を保持する。Acrp30R1LおよびAcrp30R1は、単一遺伝子の選択的スプライシング(differential splicing)から生成される関連タンパク質である。Acrp30R1LおよびAcrp30R1はコラーゲンドメインおよびC1q相同性ドメインで構成される。Acrp30R1は、Acrp30R1L中に存在する内部の68アミノ酸のセグメントを欠いている。完全長タンパク質のタンパク分解切断によってin vivoで産生されるAcrp30R1LおよびAcrp30R1のN末端断片は、以下に述べるような、予想外かつ新規な機能を有する。
ケモカインは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)を介してシグナル伝達する走化性サイトカインである。二次リンパ組織ケモカイン(SLC)は、23アミノ酸の推定シグナル配列を含む、134アミノ酸のポリペプチドである(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Nagira, M et al., J Biol Chem 272: 1951824 (1997参照)。SLCは、高内皮細静脈、血液からリンパ節およびパイエル板へのリンパ球のホーミングに関与する特殊血管によって高度に発現される(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Murphy, PM et al., Pharmacological Reviews 52: 145-176 (2000); Dieu-Nosjean, MC et al., J Leukoc Biol 66: 252-62 (1999))。SLCはT細胞、B細胞、および成熟樹状細胞に対して走化性である。SLCは、in vivoにて生理学的なリンパ球再循環の重要なメディエーターとして機能する(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gunn, MD et al, Proc Natl Acad Sci USA 95: 258-63 (1998); Gunn, MD et al., J Exp Med 189: 451-60 (1999))。最近、神経変性ストレスがSLCのニューロン発現を誘発し、SLCが小膠細胞に働きかけることが示された(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれるBiber, K et al., Glia 34: 121-33 (2001))。
SLCは、ケモカイン受容体CCR7に結合する(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、(Yoshida, R et al., J Biol Chem 273: 7118-22 (1998))。EBII-リガンドケモカイン(ELC)もまた、CCR7に結合する。最近、SLCは、最近同定されたケモカイン受容体CCR10にも結合することが示された(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gosling, J et al., J Immunol 164: 2851-6 (2000))。SLCおよびELCは競合的に、かつCCR7およびCCR10のみに結合する。
SLCは、慢性炎症、例えば慢性関節リウマチ(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Patel, DD et al., Clin Immunol 99: 43-52 (2001))および前糖尿病のNODマウス (その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hjelmstrom, P et al., Am J Pathol 156: 1133-8 (2000))に関係している。SLC(およびELC)は、二次リンパ組織におけるHIV−1の複製を高める (その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Nagira, M et al., Virology 264: 422-6 (1999))。SLCは、骨髄性始原細胞の増殖を抑制することが示されている(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kim, CH et al., J Leukoc Biol 66: 455-61 (1999))。ELCは(SLCはそうではない)、ヒトアテローム性動脈硬化症に関係している(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Reape, TJ et al., Am J Pathol 154: 365-74 (1999))。
SLCおよびELCは、in vivoで抗腫瘍反応を促進することが発見されている。SLCは、数匹のマウスモデルにおいて抗腫瘍反応を高めることが見出された(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kirk, CJ et al., Cancer Res 61: 206270 (2001) ; Nomura, T et al., Int J Cancer 91: 597-606 (2001) ; Sharma, S et al., J Immunol 164: 4558-63 (2000))。ELCは、マウス乳癌細胞の腫瘍拒絶を仲介することが見出された(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Braun, SE et al., J Immunol 164: 4025-31 (2000))。
Acrp30R1LおよびAcrp30R1は、公開タンパク質データベースのBLAST解析によって決定される、それ以外ではケモカインSLCに特異的であるアミノ酸モチーフによって特徴付けられる。SLCに対するこのモチーフの特異性は、種全体に及ぶ。Acrp30R1LおよびAcrp30R1の21位〜46位のアミノ酸(および、したがって、N末端から、Acrp30R1LおよびAcrp30R1内の推定上のプロテアーゼ切断部位)を包含するモチーフは:RxxRKxxPxLxCSxP(「x」は、割り当てられていないアミノ酸である)である。この特異的なモチーフは、ヒト(アクセッション番号:AAY12316、000585、AAG03773、AAW87589)、マウス(009006、AAG45834)およびブタ(AAW50886)SLC(SLCの46位〜60位のアミノ酸を包含する)の間で保存されている。このモチーフは、SLCの機能に、つまりケモカイン受容体CCR7およびCCR10への結合に、および結果として、前記受容体に対するケモカインELCとのその競合的結合に重要であると推測される。前記モチーフを含む、Acrp30R1LおよびAcrp30RのN末端ポリペプチド断片は、CCR7およびCCR10に非生産的に結合し、そうすることで、CCR7およびCCR10を介してSLCおよびELCを拮抗する。
本発明は、前記モチーフを含む完全長Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチドのN末端ポリペプチド断片が、SLCおよびELCケモカイン機能の拮抗作用に関する予想外の効果を有するという発見に基づく。完全長Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチドが通常、効果を表さないか、または著しく減少した効果を表すと仮定すると、これらの効果は予想外かつ驚くべきことである。いずれかの効果が完全長Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチドによって示される限り、効果に必要とされる完全長ポリペプチドのレベルから、ほとんどの場合に、この時点でヒトに対する潜在的な治療として実行不可能となる。それに対して、前記モチーフを含む、完全長Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチドのN末端ポリペプチド断片は根本的にさらに有効であり、したがって、ヒトにおける治療に可能なレベルで提供することができる。
このように、本発明は、Acrp30R1LおよびAcrp30R1ポリペプチド断片、前記crp30R1LおよびAcrp30R1ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド、前記Acrp30R1LおよびAcrp30R1ポリヌクレオチドを含むベクター、および前記Acrp30R1LおよびAcrp30R1ポリヌクレオチドの細胞組換え体、ならびに前記Acrp30R1LおよびAcrp30R1ポリペプチド断片を含む薬剤および生理学的に許容される組成物、および慢性炎症を低減するため、アテローム性動脈硬化症を低減するため、二次リンパ組織におけるHIV複製を低減するため、骨髄造血を増加させるため、またはSLCまたはELC関連疾患または障害を治療するために、前記Acrp30R1LおよびAcrp30R1の薬剤および生理学的に許容される組成物を投与する方法に関する。前記SLCまたはELC関連活性のアンタゴニストを同定するためのアッセイもまた、本発明の一部である。
第1の態様において、本発明は、完全長Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチドよりも著しく高い活性を有する、精製、単離、もしくは組換えAcrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片を特徴とし、前記活性は、限定されないが、SLC機能の拮抗作用およびELC機能の拮抗作用から選択される。好ましい実施形態において、予想外の活性を有するAcrp30R1Lポリペプチド断片は、前記Acrp30R1Lアミノ酸配列の21〜46、21〜47、21〜48、21〜49、21〜50、21〜51、21〜52、21〜53、21〜54、21〜55、21〜56、21〜57、21〜58、21〜59、2160、21〜61、21〜62、21〜63、21〜64、21〜65、21〜66、21〜67、21〜68、21〜69、21〜70、21〜71、21〜72、21〜73、2174、21〜75、21〜76、21〜77、21〜78、21〜79、21〜80、21〜81、21〜82、21〜83、21〜84、21〜85、21〜86、21〜87、2188、21〜89、21〜90、21〜91、21〜92、21〜93、21〜94、21〜95、21〜96、21〜97、21〜98、21〜99、21〜100、21〜101、21〜102、21〜103、21〜104、21〜105、21〜106、21〜107、21〜108、21〜109、21〜110、21〜111、21〜112、21〜113、21〜114、21〜115、21〜116、21〜117、21〜118、21〜119、21〜120、21〜121、21〜122、21〜123、21〜124、21〜125、21〜126、21〜127、21〜128、21〜129、21〜130、21〜131、21〜132、または21〜133位のアミノ酸から選択され、21位のアミノ酸は、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1LポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。
他の好ましい実施形態において、予想外の活性を有するAcrp30R1ポリペプチド断片は、前記Acrp30R1アミノ酸配列の21〜46、21〜47、21〜48、21〜49、21〜50、21〜51、21〜52、21〜53、21〜54、21〜55、21〜56、21〜57、21〜58、21〜59、21〜60、21〜61、21〜62、21〜63、21〜64、21〜65、21〜66、21〜67、21〜68、21〜69、21〜70、21〜71、21〜72、21〜73、21〜74、21〜75、21〜76、21〜77、21〜78、21〜79、21〜80、21〜81、21〜82、21〜83、21〜84、21〜85、21〜86、または21〜87位のアミノ酸から選択され、21位のアミノ酸は、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1ポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。
さらに他の好ましい実施形態では、予想外の活性を有するAcrp30R1Lポリペプチド断片は、前記Acrp30R1Lアミノ酸配列の21〜46、21〜125、21〜126、21〜131、21〜132、および21〜133位のアミノ酸から選択され、21位のアミノ酸は、完全長成熟Acrp30R1LポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるようにとられる。さらに他の好ましい実施形態では、予想外の活性を有するAcrp30R1ポリペプチド断片は、前記Acrp30R1アミノ酸配列の21〜46位および21〜87位のアミノ酸から選択され、21位のアミノ酸は、完全長成熟Acrp30R1ポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。
さらに好ましい他の実施形態において、前記ポリペプチド断片は、前記Acrp30R1Lアミノ酸配列または前記Acrp30R1アミノ酸配列の相当する連続アミノ酸と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。
他の好ましい実施形態では、前記Acrp30R1Lポリペプチド断片は、組換え手段によって、または完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドのタンパク分解切断によって作製される。他の好ましい実施形態では、前記Acrp30R1ポリペプチド断片は、組換え手段によって、またはシグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1ポリペプチドのタンパク分解切断によって作製される。
シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドの特に好ましいタンパク分解性断片(proteolytic fragment)は、46位付近での前記Acrp30R1Lアミノ酸配列のコラゲナーゼ切断によって作製されるおよそ21〜46位のアミノ酸であり、21位のアミノ酸は、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1LポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドの特に好ましい他のタンパク分解性断片は、46位付近での前記Acrp30R1Lアミノ酸配列のMMP−1切断によって作製されるおよそ21〜46位のアミノ酸であり、21位のアミノ酸は、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1LポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドの特に好ましい他のタンパク分解性断片は、125位付近での前記Acrp30R1Lアミノ酸配列のプラスミン切断によって作製される、およそ21〜125位のアミノ酸であり、21位のアミノ酸は、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1LポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドの特に好ましい他のタンパク分解性断片は、126位付近での前記Acrp30R1Lアミノ酸配列のプラスミン切断によって作製されるおよそ21〜126位のアミノ酸であり、21位のアミノ酸は、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1LポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドの他の特に好ましいタンパク分解性断片は、131位付近での前記Acrp30R1Lアミノ酸配列のプラスミン切断によって作製される、およそ21〜131位のアミノ酸である。シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドの他の特に好ましいタンパク分解性断片は、132位付近での前記Acrp30R1Lアミノ酸配列のプラスミン切断によって作製される、およそ21〜132位のアミノ酸であり、21位のアミノ酸は、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1LポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドの他の特に好ましいタンパク分解性断片は、133位付近での前記Acrp30R1Lアミノ酸配列のprecerebellinプロセシングプロテアーゼ切断によって作製される、およそ21〜133位のアミノ酸であり、21位のアミノ酸は、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1LポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。
シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1ポリペプチドの他の特に好ましいタンパク分解性断片は、46位付近での前記Acrp30R1アミノ酸配列のコラゲナーゼ切断によって作製される、およそ21〜46位のアミノ酸であり、21位のアミノ酸は、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1ポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1ポリペプチドの他の特に好ましいタンパク分解性断片は、46位付近での前記Acrp30R1アミノ酸配列のMMP−1切断によって作製される、およそ21〜46位のアミノ酸であり、21位のアミノ酸は、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1ポリペプチドのN末端アミノ酸を示すと理解されるとする。
第2の態様では、本発明は、第1の態様で述べた前記Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片を含む、から本質的になる、からなる、薬学的または生理学的に許容される組成物、およびその代わりとしては、薬学的または生理学的に許容される希釈剤を特徴とする。
第3の態様において、本発明は、第2の態様で述べられている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、免疫関連疾患を予防または治療する方法を特徴とする。前記免疫関連疾患は、限定されないが、同種移植拒絶または遅延型過敏症から選択されることが好ましい。
第4の態様において、本発明は、第2の態様で述べられている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、アテローム性動脈硬化症を予防または治療する方法を特徴とする。
第5の態様では、本発明は、第2の態様で述べられている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、脳組織における虚血性神経変性に関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第6の態様において、本発明は、第2の態様で述べられている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、脳卒中に関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第7の態様において、本発明は、第2の態様で述べられている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、心筋梗塞に関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第8の態様において、本発明は、第2の態様で述べられている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、再潅流障害に関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第9の態様において、本発明は、第2の態様で述べられている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、HIV感染症を予防または治療する方法を特徴とする。
第10の態様において、本発明は、第2の態様で述べられている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、炎症関連疾患を予防または治療する方法を特徴とする。前記炎症関連疾患は、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病(1型糖尿病)、全身性エリテマトーデス、乾癬、アレルギー性喘息、または敗血症性ショックから選択されることが好ましい。
第11の態様では、本発明は、第2の態様で述べられている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、注入された造血幹細胞または骨髄性始原細胞の移植および増殖を促進する方法を特徴とする。
第12の態様において、本発明は、ヒトリンパ性白血病および骨髄性白血病の異種in vivoモデルを含む、プレコンディショニング(preconditioning)療法に関連する、注入されたヒト造血幹細胞または骨髄性始原細胞のNOD/SCIDマウス内の移植および増殖を促進する方法を特徴とする(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Dialynas, DP et al., Blood 97: 3218-25 (2001))。
第13の態様において、本発明は、インタクトなCCR7またはCCR10の機能に対する内部コントロールとして、in vitro細胞移動アッセイにおいて、第1の態様に記載の前記Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片を使用する方法を特徴とする。
本発明はさらに、インタクトなT細胞、B細胞、または成熟樹状細胞走化性応答に対する内部コントロールとして、in vitro細胞移動アッセイにおいて、第1の態様に記載の前記Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片を使用する方法を特徴とする(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Patel, DD et al., Clin Immunol 99: 43-52 (2001))。
第14の態様において、本発明は、シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片に特異的に結合するが、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドには特異的に結合しない抗体を提供する。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片の非高次構造的または高次構造的エピトープを認識する前記抗体がさらに好ましい。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を中和する、前記抗体がさらに好ましい。
シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片でマウスが免疫される方法がさらに好ましい。前記マウス由来のモノクローナル抗体が、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドに対してではなく、シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片に対する結合についてスクリーニングされる方法がさらに好ましい。前記マウス由来のモノクローナル抗体が、シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lポリペプチドに対してではなく、成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片に対する結合について、酵素免疫測定法(ELISA)によってスクリーニングされる方法がさらに好ましい。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を立体的またはアロステリックに中和する能力について、前記抗体がスクリーニングされる方法がさらに好ましい。前記モノクローナル抗体をヒト化する方法がさらに好ましい。前記モノクローナル抗体を産生する方法およびELISAを含む方法によって特異性を確立する方法は、当業者にはよく知られている。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を立体的またはアロステリックに中和する能力の中和について、前記抗体をスクリーニングする方法は当業者にはよく知られており、限定されないが:シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片と抗体を接触させる段階;CCR7またはCCR10ケモカイン受容体の存在下にて、放射標識したSLCまたはELCと共に、前記の接触させたAcrp30R1Lポリペプチド断片をインキュベーションする段階;および前記抗体の接触により、CCR7またはCCR10への結合に関して、シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCと競合する能力がブロックされるかどうかを決定する段階;を含む(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gosling, J et al., J Immunol 164: 2851-6 (2000))。前記モノクローナル抗体をヒト化する方法は、当業者によく知られている。
第15の態様では、本発明は、Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片には特異的に結合するが、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1ポリペプチドには特異的に結合しない抗体を提供する。Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片の非高次構造的または高次構造的エピトープを認識する前記抗体がさらに好ましい。前記の好ましいAcrp30R1ポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を中和する前記抗体がさらに好ましい。
シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片でマウスが免疫される方法がさらに好ましい。シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1ポリペプチドに対してではなく、シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片に対する結合について、前記マウス由来のモノクローナル抗体がスクリーニングされる方法がさらに好ましい。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1ポリペプチドに対してではなく、成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片に対する結合について、前記マウス由来のモノクローナル抗体が、酵素免疫測定法(ELISA)によってスクリーニングされる方法がさらに好ましい。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を立体的またはアロステリックに中和する能力について、前記抗体がスクリーニングされる方法がさらに好ましい。前記モノクローナル抗体をヒト化する方法がさらに好ましい。前記モノクローナル抗体を産生する方法およびELISAを含む方法によって特異性を確立する方法は、当業者にはよく知られている。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力の中和について、前記抗体をスクリーニングする方法は当業者にはよく知られており、限定されないが:シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片と抗体を接触させる段階;CCR7またはCCR10ケモカイン受容体の存在下にて、放射標識したSLCまたはELCと共に、前記の接触させたAcrp30R1ポリペプチド断片をインキュベーションする段階;およびCCR7またはCCR10への結合に関して、シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCと競合する能力が、前記抗体との接触により、ブロックされるかどうかを決定する段階;を含む(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gosling, J et al., J Immunol 164: 2851-6 (2000))。前記モノクローナル抗体をヒト化する方法は、当業者によく知られている。
第16の態様では、本発明は、前記の好ましいAcrp30R1Lポリペプチド断片に対して作られる第14の態様の前記抗体を含む、から本質的になる、またはからなる、薬学的または生理学的に許容される組成物、およびその代わりとしては、薬学的または生理学的に許容される希釈剤を特徴とする。
第17の態様では、本発明は、前記の好ましいAcrp30R1ポリペプチド断片に対して作られる第15の態様の前記抗体を含む、から本質的になる、またはからなる、薬学的または生理学的に許容される組成物、およびその代わりとしては、薬学的または生理学的に許容される希釈剤を特徴とする。
第18の態様において、本発明は、免疫不全症の診断のために、臨床試料における前記Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片の量を測定する方法において、第14または第16の態様に記載されている前記の好ましいAcrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片に特異的な前記抗体を使用する方法を特徴とする。前記臨床試料は、血液、血清、血漿、尿、および唾液からなる群から選択されることが好ましい。前記免疫不全は、限定されないが、反復性感染症、先天的免疫不全症、または後天性免疫不全症から選択される。高いレベルの前記Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片が、免疫不全の一因であると考えられる。
第19の態様において、本発明は、癌の分類のために、臨床試料における前記Acrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片の量を測定する方法において、第14または第16の態様に記載されている前記の好ましいAcrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片に特異的な前記抗体を使用する方法を特徴とする。前記臨床試料は、血液、血清、血漿、尿、および唾液からなる群から選択されることが好ましい。前記癌は、限定されないが、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、乳癌、肺小細胞癌、結腸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、骨肉腫、子宮癌、卵巣癌、軟骨肉腫、子宮内膜癌、精巣癌、腎癌、肝癌、肺小細胞癌、T細胞急性リンパ性白血病、B細胞急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、または多発性骨髄腫から選択されることが好ましい。高いレベルの前記Acrp30R1LまたはAcrp30R1が、抗腫瘍応答の低下の一因であると考えられる。
第20の態様において、本発明は、第16または第17の態様に記載されている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、診断で決定された高レベルの前記の好ましいAcrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片によって特徴付けられる癌を治療する方法であって、前記組成物を含む抗体が、前記の好ましいAcrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を中和する方法を特徴とする。前記中和は、in vivoの抗腫瘍応答を促進すると考えられる。前記癌は、限定されないが、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、乳癌、肺小細胞癌、結腸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、骨肉腫、子宮癌、卵巣癌、軟骨肉腫、子宮内膜癌、精巣癌、腎癌、肝癌、肺小細胞癌、T細胞急性リンパ性白血病、B細胞急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、または多発性骨髄腫から選択されることが好ましい。
第21の態様において、本発明は、シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片には特異的に結合するが、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1Lポリペプチドには特異的に結合しない非抗体化合物を提供する。好ましい前記化合物は、限定されないが、低分子量の有機もしくは無機化合物、タンパク質、ペプチド、炭水化物、または脂質から選択される。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片の非高次構造的または高次構造的エピトープを認識する前記抗体がさらに好ましい。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を中和する前記抗体がさらに好ましい。
シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を中和することができる1種または複数種の化合物についてスクリーニングする方法がさらに好ましい。前記方法は当業者にはよく知られており、限定されないが:シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片と化合物を接触させる段階;CCR7またはCCR10ケモカイン受容体の存在下にて、放射標識したSLCまたはELCと共に、前記の接触させたAcrp30R1Lポリペプチド断片をインキュベーションする段階;およびCCR7またはCCR10への結合に関して、シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCと競合する能力が、化合物との前記接触により、ブロックされるかどうかを決定する段階;を含む(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gosling, J et al., J Immunol 164: 2851-6 (2000))。
第22の態様において、本発明は、シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片には特異的に結合するが、シグナルペプチドを欠く完全長成熟Acrp30R1ポリペプチドには特異的に結合しない非抗体化合物を提供する。好ましい前記化合物は、限定されないが、低分子量の有機もしくは無機化合物、タンパク質、ペプチド、炭水化物、または脂質から選択される。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片の非高次構造的または高次構造的エピトープを認識する前記抗体がさらに好ましい。シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を中和する前記抗体がさらに好ましい。
シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を中和することができる1種または複数種の化合物についてスクリーニングする方法がさらに好ましい。前記方法は当業者にはよく知られており、限定されないが:シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1の前記の好ましいポリペプチド断片と化合物を接触させる段階;CCR7またはCCR10ケモカイン受容体の存在下にて、放射標識したSLCまたはELCと共に、前記の接触させたAcrp30R1Lポリペプチド断片をインキュベーションする段階;およびCCR7またはCCR10への結合に関して、シグナルペプチドを欠く成熟Acrp30R1Lの前記の好ましいポリペプチド断片の、SLCまたはELCと競合する能力が、化合物との前記接触により、ブロックされるかどうかを決定する段階;を含む(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gosling, J et al., J Immunol 164: 2851-6 (2000))。
第23の態様において、本発明は、前記の好ましいAcrp30R1Lポリペプチド断片に対して作られる、第21の態様の前記化合物を含む、から本質的になる、またはからなる、薬学的または生理学的に許容される組成物、およびその代わりとしては、薬学的または生理学的に許容される希釈剤を特徴とする。
第24の態様において、本発明は、前記の好ましいAcrp30R1ポリペプチド断片に対して作られる、第22の態様の前記抗体を含む、から本質的になる、またはからなる、薬学的または生理学的に許容される組成物、およびその代わりとしては、薬学的または生理学的に許容される希釈剤を特徴とする。
第25の態様において、本発明は、第23または第24の態様に記載されている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、診断で決定された高レベルの前記の好ましいAcrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片によって特徴付けられる癌を治療する方法であって、前記組成物を含む化合物が、前記の好ましいAcrp30R1LまたはAcrp30R1ポリペプチド断片の、SLCまたはELCケモカイン機能に拮抗する能力を中和する方法を特徴とする。前記中和は、in vivoでの抗腫瘍応答を促進すると考えられる。前記癌は、限定されないが、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、乳癌、肺小細胞癌、結腸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、骨肉腫、子宮癌、卵巣癌、軟骨肉腫、子宮内膜癌、精巣癌、腎癌、肝癌、肺小細胞癌、T細胞急性リンパ性白血病、B細胞急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、または多発性骨髄腫から選択されることが好ましい。
CRPFポリペプチドCRPF−1、CRPF−2A、CRPF−2B、CRPF−2C、およびCRPF−3
CRPFポリペプチドCRPF−1は、アミノ酸配列:SHHHを含む。CRPFポリペプチドCRPF−2Aは、アミノ酸配列:AANSKVAFSAVRSTNHを含む。CRPFポリペプチドCRPF−2Bは、アミノ酸配列:AANSKVAFSAVRを含む。CRPFポリペプチドCRPF−2Cは、アミノ酸配列:STNHを含む。CRPFポリペプチドCRPF−3は、アミノ酸配列:SGSAKVAFSATRSTNHを含む。CRPFポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた好ましい。
CRPFポリペプチドは、Cerebellinに関連する。CRPFポリペプチドは、以下に述べる予想外かつ新規な機能を有する。
Cerebellinは、特異的なタンパク分解切断によって前駆体ポリペプチド、precerebellinから遊離された16アミノ酸のポリペプチドである(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Urade, Y et al., Proc Natl Acad Sci USA 88: 1069-1073 (1991))。Cerebellinは、ヒトないしニワトリの配列に保存される。Cerebellinは、小脳において高度に発現し、脳の他の領域においては弱く発現し、副腎髄質組織でもおそらく発現する(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Satoh, F et al., Journal of Endocrinology 154: 27-34 (1997))。Cerebellinは、副腎腫瘍、神経節芽細胞腫、および神経芽細胞腫の腫瘍組織によっても発現される(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Satoh, F et al., Journal of Endocrinology 154: 27-34 (1997))。Cerebellinは、ヒト副腎髄質細胞によるアドレナリンおよびノルエピネフリンの放出を誘発する(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Albertin, G et al., Neuropeptides 34: 7-11 (2000))。ノルエピネフリンは、CD4+Tリンパ球のTh1サブセットによる炎症性サイトカインインターフェロン−γの発現をアップレギュレートすることが示されている(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Swanson, MA et al., J Immunol 166: 232-240 (2001))。インターフェロン−γは、細胞溶解性Tリンパ球(CTL)の発生において重要な役割を果たす。最近、precerebellin様タンパク質は、ニジマスにおける急性期反応に関与することが示された(その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gerwick, L et al., Developmental and Comparative Immunology 24: 597-600 (2000))。
本発明は、CRPFポリペプチドがcerebellinの炎症性作用に対抗するという発見に基づく。
このように、本発明は、CRPFポリペプチド、前記CRPFポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、前記CRPFポリヌクレオチドを含むベクター、および前記CRPFポリヌクレオチドの細胞組換え体、ならびに前記CRPFポリペプチドを含有する薬剤および生理学的に許容される組成物、および炎症を低減するため、または炎症関連疾患を治療するために、前記CRPF薬剤および生理学的に許容される組成物を投与する方法に関する。CRPFポリペプチドのアンタゴニストを同定するためのアッセイもまた、本発明の一部である。
第1の態様において、本発明は、抗炎症活性を有する、精製、単離された、人工的に合成された、または組換えCRPFポリペプチドを特徴とする。好ましい実施形態において、CRPFポリペプチドは、アミノ酸配列:SHHHを含むCRPF−1ポリペプチドである。他の好ましい実施形態では、CRPFポリペプチドは、アミノ酸 配列:AANSKVAFSAVRSTNHを含むCRPF-2Aポリペプチドである。他の好ましい実施形態では、CRPFポリペプチドは、アミノ酸配列:AANSKVAFSAVRを含むCRPF−2Bポリペプチドである。他の好ましい実施形態では、CRPFポリペプチドは、アミノ酸配列:STNHを含むCRPF−2Cポリペプチドである。他の好ましい実施形態では、CRPFポリペプチドは、アミノ酸配列:SGSAKVAFSATRSTNHを含むCRPF−3である。
第2の実施形態において、本発明は、第1の態様に記載されている前記CRPFポリペプチドを含む、から本質的になる、またはからなる、薬学的または生理学的に許容される組成物、およびその代わりとしては、薬学的または生理学的に許容される希釈剤を特徴とする。
第3の実施形態において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、炎症を低減する必要がある個体に提供または投与することを含む、炎症を低減する方法を特徴とする。好ましい実施形態において、前記薬学的または生理学的に許容される組成物の前記投与は、全身投与または局所投与である。
第4の実施形態では、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、乾癬を予防または治療する方法を特徴とする。
第5の態様では、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、アテローム性動脈硬化症を予防または治療する方法を特徴とする。
第6の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、脳組織における虚血性神経変性に関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第7の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、脳卒中に関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第8の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、心筋梗塞に関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第9の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、再潅流障害に関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第10の態様において、本発明は、第2の態様で述べられている前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、慢性関節リウマチと関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第11の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、炎症性腸疾患と関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第12の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、全身性エリテマトーデスと関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第13の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、アレルギー性喘息と関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第14の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、インスリン依存性糖尿病(1型糖尿病)と関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第15の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、敗血症性ショックと関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第16の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、多発性硬化症と関連する炎症を予防または治療する方法を特徴とする。
第17の態様において、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、炎症部位で局所的に、もしくは血液中で高いcerebellinレベルと関連する炎症または本明細書に記載の他の疾患を予防または治療する方法を特徴とする。前記の高いcerebellinレベルの程度が、少なくとも10%、20%、30%、35%、40%、50%、75%、100%、または500%であることが好ましい。cerebellinレベルは、前記CRPFポリペプチドが投与される部位で高いことが好ましい。
第18の態様では、本発明は、第2の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、炎症性病態(inflammopathology)または免疫不全の動物モデルにおけるin vivoのThl免疫応答を抑制する方法を特徴とする。前記動物は哺乳動物であることが好ましい。前記動物はげっ歯類であることが好ましい。
第19の態様において、本発明は、第1に態様に記載の前記CRPFポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。前記CRPFポリペプチドの、炎症を低減する能力を中和する前記抗体がさらに好ましい。前記CRPFポリペプチドの、リガンドに結合する能力を中和する前記抗体がさらに好ましい。前記CRPFポリペプチドの、その受容体に結合する能力を中和する前記抗体がさらに好ましい。
第20の態様において、本発明は、第1の態様に記載の前記CRPFポリペプチドに特異的な、第19の態様に記載の前記中和抗体を含む、から本質的になる、またはからなる、薬学的または生理学的に許容される組成物、およびその代わりとしては、薬学的または生理学的に許容される希釈剤を特徴とする。
第21の態様では、本発明は、炎症関連疾患を診断または分類するため、臨床試料における前記CRPFポリペプチドの量を測定するために、第1の態様に記載の前記CRPFポリペプチドに特異的な、第19の態様に記載の前記抗体を使用する方法を特徴とする。前記 臨床試料は、血液、血清、血漿、尿、唾液、およびリンパ組織からなる群から選択されることが好ましい。前記炎症関連疾患は、限定されないが、本明細書に記載の疾患から選択されることが好ましい。前記CRPFポリペプチドの低下したレベルは、前記炎症関連疾患の一因であると考えられる。
第22の態様では、本発明は、前記癌を特徴付ける目的のため、癌患者から採取した臨床試料における前記CRPFポリペプチドの量を測定するために、第1の態様に記載の前記CRPFポリペプチドに特異的な、第19の態様に記載の前記抗体を使用する方法を特徴とする。前記臨床試料は、血液、血清、血漿、尿、唾液、および癌組織から選択されることが好ましい。前記方法は、限定されないが、ELISAまたは免疫組織化学から選択されることが好ましい。前記癌は、限定されないが、副腎腫瘍、神経節芽細胞腫、神経芽腫、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、乳癌、肺小細胞癌、結腸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、骨肉腫、子宮癌、卵巣癌、軟骨肉腫、子宮内膜癌、精巣癌、腎癌、肝癌、肺小細胞癌、T細胞急性リンパ性白血病、B細胞急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、または多発性骨髄腫から選択されることが好ましい。高レベルの前記CRPFポリペプチド(例えば、腫瘍細胞によって放出される)は、抗腫瘍応答の低下の一因であると考えられる。
第23の態様において、本発明は、第20の態様に記載の前記薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む、第1の態様に記載の高レベルの前記CRPFポリペプチドによって特徴付けられる癌を治療する方法。前記CRPFポリペプチドの、炎症反応を抑制する能力を中和することによって、in vivoの抗腫瘍応答が促進されると考えられる。前記癌は、限定されないが、副腎腫瘍、神経節芽細胞腫、神経芽腫、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、乳癌、肺小細胞癌、結腸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、骨肉腫、子宮癌、卵巣癌、軟骨肉腫、子宮内膜癌、精巣癌、腎癌、肝癌、肺小細胞癌、T細胞急性リンパ性白血病、B細胞急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、または多発性骨髄腫から選択されることが好ましい。
第24の態様において、本発明は、第1の態様に記載の前記CRPFポリペプチドに特異的に結合するが、無関係のポリペプチドには特異的に結合しない非抗体化合物を提供する。好ましい前記化合物は、低分子量の有機もしくは無機化合物、タンパク質、ペプチド、炭水化物、または脂質から選択される。前記CRPFポリペプチドの、炎症を低減する能力を中和する前記化合物がさらに好ましい。
前記CRPFポリペプチド断片の、炎症を低減する能力を中和することができる1種または複数種の化合物についてスクリーニングする方法がさらに好ましい。前記方法は当業者にはよく知られており、限定されないが:前記抗体の存在下にて、前記CRPFポリペプチドを、炎症性病態のマウスモデルに投与する段階;前記抗体の非存在下にて、前記CRPFポリペプチドを前記マウスモデルに投与する段階;前記抗体が、前記マウスモデルにおいて、前記CRPFポリペプチドの、炎症を低減する能力を抑制するかどうかを決定する段階;を含む。
第25の態様において、本発明は、第24の態様の前記中和化合物を含む、から本質的になる、またはからなる、薬学的または生理学的に許容される組成物、およびその代わりとして、薬学的または生理学的に許容される希釈剤を特徴とする。
第26の態様では、本発明は、第1の態様に記載の高レベルの前記CRPFポリペプチドを有する癌患者を治療する方法であって、第25の態様に記載の薬学的または生理学的に許容される組成物を、かかる治療が必要な個体に提供または投与することを含む方法を特徴とする。前記CRPFポリペプチド断片の量を測定する方法には、限定されないが、第22の態様に記載の方法が含まれる。前記CRPFポリペプチドの、炎症反応を抑制する能力を中和することによって、in vivoの抗腫瘍応答が促進されると考えられる。前記腫瘍は、限定されないが、副腎腫瘍、神経節芽細胞腫、神経芽腫、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、乳癌、肺小細胞癌、結腸癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、膵臓癌、骨肉腫、子宮癌、卵巣癌、軟骨肉腫、子宮内膜癌、精巣癌、腎癌、肝癌、肺小細胞癌、T細胞急性リンパ性白血病、B細胞急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、または多発性骨髄腫から選択されることが好ましい。
抗体の使用
本発明の抗体は、限定されないが、本発明のポリペプチドを精製、検出、および標的化するための当技術分野で公知の方法、例えばin vitroおよびin vivo両方の診断および治療方法を含む用途を有する。例えば、その抗体は、生体試料において、抗原保有物質、例えば本発明のポリペプチドなどのレベルを定性的かつ定量的に測定するイムノアッセイでの用途を有する(例えば、Harlow et al., 1988参照)。そのタンパク質を発現する細胞を死滅させる、または体内のタンパク質のレベルを低減するための治療用組成物に、その抗体を使用することも可能である。
本発明はさらに、本発明のポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストとして働く抗体に関する。例えば、本発明は、本発明のポリペプチドとの受容体/リガンド相互作用を一部または完全に乱す抗体を包含する。これらの抗体は、リガンド仲介受容体の活性化によって影響を受ける、すべてまたはすべてではない生物活性に対するアゴニストとして作用し得る。その抗体は、本明細書に開示される特異的活性を含む生物活性に対するアゴニストまたはアンタゴニストとして指定される。上記の抗体アゴニストは、当技術分野で公知の方法を用いて作製することができる。例えば、WO96/40281;米国特許第5,811,097号;Deng et al., (1998) Blood. 92 (6): 1981-1988; Chen et al., (1998), Cancer Res. 58 (16): 3668-3678;Harrop et al., (1998), J. Immunol. 161 (4): 1786-1794; Zhu, et al. (1998), Cancer Res. 58 (15): 3209-3214;Yoon, et al. (1998), J. Immunol. 160 (7): 3170-3179; Prat et al., (1998), J. Cell. Sci. 11 l (Pt2): 237-247; Pitard et al., (1997), J. Immunol. Methods. 205 (2): 177-190; Liautard et al., (1997), cytokine. 9 (4): 233-241; Carlson et al., (1997), J. Biol. Chem. 272 (17): 11295-11301;Taryman, et al., (1995), Neuron. 14 (4): 755-762; Mulleretal., (1998), Structure. 6 (9): 1153-1167;Bartunek et al., (1996), cytokine. 8 (1) : 14-20を参照のこと。
上述のように、次に、本発明のポリペプチドの抗体は、当業者に公知の技術を用いて、本発明のポリペプチドを「模倣する」抗イディオタイプ抗体を作製するために使用することができる(例えば、Greenspan and Bona (1989), FASEB J. 7 (5): 437444 and Nissinoff, (1991), J. Immunol. 147 (8): 2429-2438参照)。例えば、本発明のポリペプチドに結合し、かつ本発明のポリペプチドのポリペプチド多量体化または結合を競合的に阻害する抗体を使用して、ポリペプチドの多量体化または結合ドメインを「模倣し」、結果として、ポリペプチドまたはそのリガンドに結合し、かつ中和する抗イディオタイプを作製することができる。かかる中和抗イディオタイプ抗体を用いて、本発明のポリペプチドに結合させるか、またはそのリガンド/受容体に結合させ、それによって、その生物活性をブロックすることができる。
イムノアフィニティー・クロマトグラフィー
本明細書に記載の抗体を担体に結合させる。その抗体はモノクローナル抗体であることが好ましいが、ポリクローナル抗体を用いてもよい。担体は、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーで通常使用される担体のいずれかであり、いずれかの標準試薬を用いて、担体に結合させることができる。抗体を担体に結合させた後、単離、精製または濃縮することが望まれる、標的ポリペプチドを含有する試料と、その担体を接触させる。
その後、適切な洗浄液で担体を洗浄し、イムノアフィニティー・クロマトグラフィーで通常使用される高pHまたは低pHの溶出液を使用して、特異的に結合した標的ポリペプチドを担体から溶出する。
GENSET遺伝子産物の発現
GENSETポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルおよびパターンの評価
GENSETポリペプチドをコードするmRNAの空間的および時間的発現パターン、ならびにそれらの発現レベルは、いずれかの適切な方法を用いて決定することができる。
一実施形態において、GENSETポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルおよびパターンは、プローブとの溶液ハイブリダイゼーションによって分析される(例えば、WO97/05277参照)。簡単に言えば、対象のmRNAに相補的なRNAが標識され、捕捉可能な成分、例えばビオチンで誘導体化される。対象の細胞または組織から単離されたmRNAと溶液中でハイブリダイゼーションした後、ハイブリダイズしていないプローブが消化によって除去され、残っているハイブリダイズしたRNAは、例えばマイクロタイタープレート上に捕捉され、定量化される。
他の実施形態では、網羅的遺伝子発現解析(SAGE)のために、GENSETポリペプチドをコードするcDNA、またはその断片を、ヌクレオチド配列でタグ付けすることも可能である(例えば、英国特許出願番号:2 305 241 A参照)。
GENSET遺伝子発現の定量分析もまた、アレイを用いて行うことができる。例えば、遺伝子発現の定量分析は、Schena et al. (1995) Science 270: 467-470 and Schena et al. (1996), PNAS, 93 (20): 10614-10619, Pietu et al., (1996) Genome Research 6: 492-503)によって記述されているように相補的DNAマイクロアレイにおいてGENSETポリヌクレオチドまたはその断片を用いて、または他のマイクロアレイ技術を用いて行うことが可能である。簡単に言うと、GENSETポリペプチドをコードするcDNAまたはその断片はスライド上にアレイされ、そのアレイは、対象の細胞または組織のmRNAに由来するプローブとハイブリダイズされる。洗浄した後、特定用途用フィルターセットを備えたレーザー走査蛍光装置を用いて、そのアレイを走査する。2回の独立したハイブリダイゼーションの比の平均値を取ることによって、正確に差次的発現が測定される。
代替方法としては、GENSET遺伝子の発現解析は、Lockhart et al., (1996) Nature Biotechnology 14: 1675-1680およびSosnowski, et al., (1997) PNAS 94: 1119-1123によって記述されているように高密度ヌクレオチドアレイによって行うことができる。GENSETポリヌクレオチドまたはその断片の配列に相当する、15〜50ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドをチップ上に直接合成するか、または合成し、次いでそのチップにアドレス指定する。標識cDNAプローブは、適切なmRNA集団から合成され、次いで50〜100ヌクレオチドの平均サイズにランダムに断片化される。次いで、そのプローブはチップにハイブリダイズされる。洗浄後、標識を検出し、定量化する。異なるcDNA試料中の同じ標的オリゴヌクレオチドに対して、cDNAプローブから生じるシグナルの強度を比較分析することによって、GENSETポリペプチドをコードするmRNAの差次的発現が示される。
GENSET遺伝子発現データの使用
GENSETポリペプチドをコードするmRNAの発現レベルおよびパターンが決定されたら、この情報を用いて、検出、同定、スクリーニングおよび診断の目的のためにGENSET遺伝子特異的マーカーを設計すること、ならびにGENSET遺伝子発現パターンに類似の発現パターンを有するDNAコンストラクトを設計することが可能である。
GENSETポリペプチドの発現および/生物活性の検出
本発明は、本明細書に記載のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列を用いて、生体試料におけるGENSETポリペプチドの発現および/生物活性を検出する方法に関する。かかる方法は、例えば、正常または異常なGENSETポリペプチドの発現および/生物活性のスクリーンとして使用することができ、したがって診断的に使用することができる。
GENSETポリペプチドの検出
本発明はさらに、細胞または試料中のGENSETポリペプチドを検出する方法に関する。特定の実施形態において、細胞または試料におけるポリペプチドの存在は、ポリペプチドをコードするmRNAの存在を検出することによって間接的に検出される。例えば、GENSETポリペプチドを検出する方法において、標識ポリヌクレオチドプローブを用いることが可能であり、mRNAの存在は、GENSETポリペプチドをコードする遺伝子の発現を示す。
結果として、本発明は、試料中の本発明のポリヌクレオチドの存在を検出する方法を含み、その方法は、前記試料と、ポリヌクレオチドにハイブリダイズする1種または複数種の核酸プローブとを接触させる段階;前記の1種または複数種のプローブと、前記ポリヌクレオチドとの間に形成されたハイブリッド複合体を検出する段階;を含む。特定の実施形態において、1種または複数種のプローブが標識され、基質上に固定化される。
その他の実施形態では、ポリヌクレオチドは増幅反応を用いて検出され、その増幅反応では、試料を増幅反応試薬と接触させ、増幅反応を行って、前記の選択されたヌクレオチドの前記領域を含有する増幅産物を合成し;増幅産物が検出される。好ましい実施形態において、増幅されるポリヌクレオチドがRNA分子である場合、増幅されるDNA鋳型を提供するために、事前に第2cDNA鎖の逆転写および合成が最初に行われる。
代替方法としては、試験試料におけるGENSETポリペプチド発現を検出する方法は、本発明のGENSETポリペプチドまたはその一部に結合する、いずれかの産物を用いて達成することができる。かかる産物は、GENSETポリペプチドまたはその断片に特異的に結合することができる、抗体、抗体の結合断片、ポリペプチド、例えばGENSETポリペプチドアゴニストおよびアンタゴニストなどである。抗体への特異的結合の検出から、試料中にGENSETポリペプチドが存在することが示される(例えば、ELISA)。
結果として、本発明は、生体試料におけるGENSETポリペプチドの存在を特異的に検出する方法にも向けられており、前記方法は、本発明のポリペプチドまたはその断片に結合できる産物と、生体試料とを接触させる段階;産物をそのポリペプチドに結合させて、複合体を形成する段階;その複合体を検出する段階;を含む。好ましい実施形態では、その産物は、抗体、例えば、基質上に固定化される抗体である。
本発明は、例えば、容器手段内に配置される、GENSETポリペプチドに特異的に結合する化合物(例えば、結合タンパク質、抗体またはその結合断片(例えば、F(ab’)2断片))、またはGENSETポリペプチドをコードするmRNA(例えば、相補的なプローブまたはプライマー)を備える、GENSETポリペプチドをコードする遺伝子発現産物の検出で使用することができるキットにも関する。そのキットはさらに、バッファー等の補助的試薬を備え得る。
GENSETポリペプチド生物活性の検出
本発明はさらに、GENSETポリペプチド生物活性を特異的に検出し、かつGENSETポリペプチドの活性を調節することができる化合物を同定する方法を包含する。GENSETポリペプチド生物活性の評価は、本明細書に記載の技術など、様々な技術を用いて、GENSETポリペプチドと関連するいずれかの細胞特性の変化を検出することにより実施することが可能である。ポリペプチドの修飾因子を同定するために、対照を用いることが好ましい。例えば、対照試料としては、評価される化合物または作用物質は欠くが、同一試薬すべてを含み;試験試料と同じ手法で試験される。
本発明は、例えば、容器手段内に配置される、GENSETポリペプチドの基質、GENSET結合化合物、GENSETポリペプチドに対する抗体等を備える、GENSETポリペプチド生物活性の検出に使用できるキットにも関する。そのキットはさらに、バッファー等の補助的試薬を備え得る。
GENSETポリペプチドをコードする遺伝子発現の特定のコンテクストの同定
GENSETポリペプチドをコードするmRNAの発現パターンから、GENSETポリペプチドをコードする遺伝子が所定のコンテクストにおいて特異的に発現することが示される場合、次いで、この遺伝子に特異的なプローブおよびプライマー、ならびにGENSETポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに結合する抗体を、特定のコンテクストにマーカーとして使用することができる。特定のコンテクストの例としては:所定の組織/細胞または組織/細胞型における特異的発現、胎芽発生または疾患発症などのプロセスの所定の発生段階での発現、特定の化合物または薬物に応答した発現、または所定の細胞器官における特異的発現が挙げられる。かかるプライマー、プローブ、および抗体は、未知の起源の組織/細胞/細胞器官、例えば、法医学的試料、異物部位に転移した分化腫瘍組織を同定するのに、または組織断面における異なる組織型を区別するのに商業的に有用である。
組織/細胞/細胞器官の同一性の決定は、当技術分野でよく知られている方法(例えば、ハイブリダイゼーション、PCRに基づく方法、イムノアッセイ、免疫化学、ELISA)を用いて、組織/細胞試料におけるmRNA(または相当するcDNAまたはタンパク質)の有無を検出する方法に基づく。したがって、本発明は、組織マーカーとしての本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、および抗体の使用を包含する。
標識組織特異的抗体を用いた、組織型または細胞種の同定
特定の細胞の同定は、直接的(例えば、緑色蛍光タンパク質)もしくは間接的に検出可能なマーカーに結合される抗体プレパラートを用いた、組織特異的抗原の可視化によって達成される。選択された標識抗体種は、組織切片、細胞浮遊液、または組織試料からの可溶性タンパク質の抽出物中の、それらの特異的抗原結合パートナーに結合し、定性的または半定性的解釈のためのパターンを提供する。
A.免疫組織化学技術
上述のように作製された、精製された抗力価抗体は、例えばFudenberg, (1980) Chap. 26 in: Basic 503 Clinical Immunology, 3rd Ed. Lange, Los Altos, California or Rose et al., (1980) Chap. 12 in: Methods in Immunodiagnosis, 2d Ed. John Wiley 503 Sons, New Yorkによって記述されているように検出可能なマーカーに結合される。
抗体は、いずれかの適切な方法、例えば蛍光標識、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、フェリチン(EMを使用する検出のため)、または放射標識を用いて標識することができる。一実施形態において、未知組織および既知の対照のクリオスタット切片を作製し、各スライドは、抗体プレパラートの異なる希釈溶液でカバーされる。インキュベーションに続いて、余分な液体を除去し、マーカーを検出する。組織切片上の色および蛍光の強度を測定し、かつ適切な標準を用いて、そのシグナルを較正することによって、上記手順によって見出された抗原を定量化することができる。
B.組織特異的可溶性タンパク質の同定
組織特異的タンパク質の可視化およびその手順からの未知組織の同定は、免疫組織化学について述べられた標識抗体試薬および検出方法を用いて行われる;しかしながら、例えばウエスタンブロット法による検出のために、分子量に基づいて順序正しい配列で、組織から抽出されたタンパク質を分配する電気泳動技術に従って作製される。例えば、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, ed. , Elsevier Press, NY (1986), Section 19-3参照のこと。
異常なGENSETポリペプチド発現および/または生物活性のスクリーニングおよび診断
さらに、GENSETポリペプチド発現に特異的な抗体および/またはプライマーまたはプローブもまた、異常なGENSETポリペプチド発現および/または生物活性を同定し、続いて、異常なGENSETポリペプチド発現と関連する疾患をスクリーニングおよび/または診断するために使用することができる。例えば、特定の疾患は、GENSETポリペプチドをコードするmRNAの発現の欠如、過剰発現または過小発現から生じ得る。健康な個体から採取した試料におけるmRNAの発現パターンおよび量を、特定の疾患を有する個体からの試料と比較することによって、この疾患の原因である遺伝子が同定される。
特定の疾患のスクリーニング
本発明は、高いまたは低いレベルのGENSETポリペプチドを有する個体を同定するための、GENSETポリペプチドの方法および使用にも関し、その個体はおそらく、GENSETポリペプチドをコードする遺伝子の発現を抑制または高める治療から、それぞれ恩恵を受けるだろう。かかる方法および使用の一例は、生体試料におけるGENSETポリペプチドをコードする遺伝子産物(mRNAまたはタンパク質)の存在を検出する段階;前記試料に存在するGENSETポリペプチドをコードする遺伝子産物の量を、対照試料における量と比較する段階;その試料が、対照試料と比較して、低いまたは高いレベルのGENSET遺伝子発現を有するかどうかを決定する段階;を含む。
GENSETポリペプチドと関連するいずれかの疾患または病状に冒されている、または発症するリスクがある対象から採取された生体試料を、正常な集団(標準または対照)に対して、低いまたは高いレベルのGENSET遺伝子の存在についてスクリーニングすることが可能であり、正常な集団に対して低いまたは高いレベルのGENSETポリペプチドは、その疾患または病状の素因を示すか、あるいはその疾患もしくは病状、またはその疾患もしくは病状に関連するいずれかの症状の現在の指標となる。かかる個体は、治療の、例えばGENSETポリペプチド、GENSETポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、またはGENSETポリペプチドの発現または活性に影響を及ぼす他のいずれかの化合物を含有する薬剤組成物での処置の候補であると考えられる。一般的に、患者における高レベルのGENSETポリペプチドの同定から、GENSETポリペプチドの発現または活性を抑制する試薬での治療から恩恵を受けるであろう個体が示され、患者における低レベルのGENSETポリペプチドの同定からは、GENSETポリペプチドの発現または活性を誘発する作用物質から恩恵を受けるであろう個体が示されるだろう。
この方法で使用するのに適した生体試料としては、限定されないが、血液、唾液、乳、および尿などのいずれかの生物体液、ならびに生検材料などの組織試料が挙げられる。例えば、組織生検から得られる細胞培養物または細胞抽出物もまた使用することができる。好ましい実施形態では、生体試料は、GENSET遺伝子産物と関連する、いずれかの疾患または病状に伴う症状を呈する動物から採取される。この方法にしたがって、試料における変化した(例えば、増大または減少した)レベルのGENSET産物の存在から、対象がその疾患または病状に罹患しやすいことが示される。
本明細書に記載の診断方法論は、ヒト哺乳動物および非ヒト哺乳動物のどちらにも適用することができる。
GENSET遺伝子突然変異の検出
本発明は、本発明のポリヌクレオチドにおける突然変異を検出するための方法およびGENSETポリヌクレオチドの使用も包含する。突然変異がある疾患と関連することが証明された場合には、かかる突然変異の検出は、スクリーニングおよび診断の目的に使用することができる。
一実施形態において、GENSET遺伝子において、好ましくはそれらの調節領域において生じる突然変異を検出するために、オリゴヌクレオチドプローブマトリックスを有利に使用することが可能である。この特定の目的では、プローブは、既知の突然変異(1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、挿入、または置換のいずれかによる)を保持する遺伝子とのそれらのハイブリダイゼーションを可能にするヌクレオチド配列を有するように、特異的に設計される。既知の突然変異とは、例えば Huang et al., (1996) Cancer Res 56 (5): 1137-1141 or Samson et al., (1996) Nature, 382 (6593): 722-725によって使用される技術に従って同定された、GENSET遺伝子上の突然変異を意味する。
GENSET遺伝子における突然変異を検出するために使用される他の技術としては、高密度DNAアレイの使用が挙げられる。高密度DNAアレイの各オリゴヌクレオチドプローブのユニット要素を構成する各オリゴヌクレオチドプローブは、GENSETゲノムDNAまたはcDNAの特定の部分配列(subsequence)に一致するように設計される。このように、標的遺伝子配列の部分配列に相補的なオリゴヌクレオチドからなるアレイを用いて、標的配列の野生型遺伝子配列との同一性が決定され、その量が測定され、かつ標的配列とGENSET遺伝子の参照野生型遺伝子配列との差異が検出される。かかる一実施形態において、4Lタイルアレイ(tiled array)が使用される(例えば、Chee et al., (1996) Science. 274: 610-614参照)。
GENSET遺伝子発現パターンを有するDNAコンストラクトの構築
GENSETポリペプチドをコードするmRNAの空間的および時間的発現パターンおよび発現レベルの特徴付けもまた、以下に記述するように、望ましい空間的または時間的手法において、所望のレベルの遺伝子産物を作製することができる発現ベクターを構築するのに有用である。
組換え細胞宿主および遺伝子導入動物における時間的および空間的GENSET遺伝子発現を指示するDNAコンストラクト
細胞レベルおよび多細胞生物レベルの両方で、GENSETポリペプチドの合成欠損の生理学的および表現型的結果を研究するために、本発明は、GENSETポリペプチドをコードするゲノム配列またはcDNAの特異的対立遺伝子、例えば配列内の1つまたは複数の塩基の置換、欠失、または付加を含む対立遺伝子などの条件発現を可能にするDNAコンストラクトおよび組換えベクターもまた包含する。
一実施形態において、 Gossen et al., (1992) PNAS 89: 5547-5551 ; Gossen et al., (1995) Science 268: 17661769;および Furth P. A. et al. (1994) PNAS 91: 9302-9306にによって述べられているように、GENSET遺伝子発現を制御するために、大腸菌トランスポゾンTn10からのテトラサイクリン耐性オペロンに基づく、DNAコンストラクトが使用される。
その他の実施形態において、5’末端から3’末端に:GENSETポリペプチドをコードするゲノム配列で見出される第1ヌクレオチド配列;正の選択マーカー(例えば、ネオ(neo))を含むヌクレオチド配列;およびGENSETポリペプチドをコードするゲノム配列で見出され、かつ第1GENSETヌクレオチド配列の下流に位置する第2ヌクレオチド配列;を含む、DNAコンストラクトが使用される。好ましい実施形態において、そのコンストラクトは、第1GENSETヌクレオチド配列の下流または第2GENSETヌクレオチド配列から上流に位置する、負の選択マーカー(例えば、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンβ、hprt、ジフテリア毒素A断片)も含む(例えば、Thomas et al. (1986), Cell. 44: 419-428; Te Riele et al. (1990), Nature. 348: 649-651 ; Van der Lugt et al. (1991), Gene 105: 263-267; Reid et al., (1990) PNAS 87: 4299-4303; Nada et al., (1993) Cell 73: 1125-1135; Yagi, T., et al. (1990), PNAS 87: 9918-992; Thomas et al. (1986; 1987), Mansour et al. (1988) and Koller et al., (1992) Annu. Rev. Immunol. 10: 705-730)参照)。
他の実施形態において、Cre−loxPシステムの使用を含むベクターが使用される(Hoess et al., (1986) 核酸 Res. 14: 2287-2300)。相同的組換え技術と組み合わせて使用されるCre−loxPシステムは、Gu H. et aL, (1993) Cell 73: 1155-1164 and Gu H. et al., (1994) Science 265: 103-106に記述されている。簡単に言えば、ゲノムの標的位置に挿入される対象のヌクレオチド配列は、同じ向きに少なくとも2つのloxP部位を有し、組換えゲノムから除去されるヌクレオチド配列のそれぞれの末端に位置する。除去現象には、組換え細胞宿主の核内にリコンビナーゼ(Cre)酵素が存在する必要があり、数多くの方法のいずれかで、例えばこの酵素を含有する培地において組換え細胞宿主をインキュベートすることによって、Cre酵素を直接、目的細胞中に注入することによって、細胞中に酵素をリポフェクションすることによって、またはそうでなければ、適切なプロモーターの制御下にて、Creコード配列を細胞にトランスフェクトすることによって提供される(例えば、Baubonis et al (1993) Nucleic acids Res. 21 (9): 2025-9); Araki et al., (1995) PNAS 92 (1) : 160-4; Gu et al. (1993); Sauer et al., (1988) PNAS 85: 5166-5170; Gu et al. (1994); Zou, et al, (1994) Curr. Biol. 4: 1099-1103; Anton and Graham, (1995), J. Virol., 69: 4600-4606; and Kanegae et al., (1995) Nucl. Acids Res. 23: 3816-3821参照)。
上述のDNAコンストラクトを用いて、本発明の目的のヌクレオチド配列、好ましくはGENSETゲノム配列またはGENSET cDNA配列、最も好ましくはGENSETゲノムまたはcDNA配列の改変されたコピーを標的ゲノムの所定の位置に導入することが可能であり、その結果として、標的遺伝子の改変されたコピーが作製されるか(ノックアウト相同的組換え)、または相同的組換え現象を起こすのに十分に相同的な他のコピーにより標的遺伝子のコピーが置換される(ノックイン相同的組換え)。
GENSETポリペプチドの発現および/または生物活性の修飾
内因性GENSET発現および/または生物活性の修飾は特に、本発明によって企図される。
GENSETの発現および/または生物活性を調節することができる化合物についてのスクリーニング
本発明は、GENSETの発現および/または生物活性を調節することができる化合物、およびこれらの化合物を使用する方法に関する。かかる化合物は、GENSET遺伝子の調節配列と相互作用するか、またはGENSETポリペプチドと直接的または間接的に相互作用し得る。
GENSET調節配列と相互作用する化合物
本発明は、例えば、当業者に公知のいずれかの技術を用いて決定される、ゲノムDNAの非転写領域におけるプロモーターまたはエンハンサー配列など、またはGENSET mRNAの非翻訳領域に位置する調節配列など、GENSET遺伝子の調節配列と相互作用することができる物質または分子をスクリーニングする方法にも関する。
本発明のポリヌクレオチドの非転写または非翻訳領域内の配列は、転写開始部位、転写因子結合部位、プロモーター配列、エンハンサー配列、5’UTRおよび3’UTR要素などの、既知の調節配列を含有するデータベースと比較することによって同定することができる (Pesole et al., (2000) Nucleic Acids Res, 28 (1) : 193-196; http ://igs- server. cnrs-mrs. fr/-gauthere/UTR/index. html)。代替方法としては、レポータープラスミドの従来の突然変異誘発または欠失の解析によって、対象の調節配列を同定することができる。
潜在的なGENSET調節配列の同定に続いて、これらの調節配列と相互作用するタンパク質が、以下に述べるように同定される。
ゲルシフトアッセイ(gel retardation assay)などの数多くの方法のいずれかを用いて、GENSET遺伝子の調節配列と相互作用することができる分子を同定することができる (例えば、Fried and Crothers, (1981) Nucleic Acids Res. 9: 6505-6525; Garner and Revzin, (1981) Nucleic Acids Res 9: 3047-3060; and Dent and Latchman (1993) The DNA mobility shift assay. In: Transcription Factors: A Practical Approach (Latchman DS, ed. ) pp: 1-26, Oxford: IRL Press参照)。GENSET遺伝子のプロモーター配列と相互作用することができるタンパク質をコードする核酸もまた、1ハイブリッド系(one-hybrid system)(例えば、Clontech社のMatchmaker One−Hybrid System kit(カタログ参照番号K1603−1))を使用して同定することができる。
GENSETポリペプチドと相互作用するリガンド
本発明の目的では、リガンドは、分子、例えばタンパク質、ペプチド、抗体、あるいはGENSETタンパク質またはその断片または変異体の1つに結合することができる、またはGENSETまたはその断片または変異体をコードするポリヌクレオチドの発現を調節する、いずれかの合成化学化合物を意味する。
一実施形態において、このタンパク質と、試料の成分または定義される分子との間で複合体が形成されるかどうかを決定するために、生体試料、またはGENSETタンパク質の推定リガンドとして試験される定義された分子(例えば、コンビナトリアルケミストリーによって生成される分子)を、精製されたGENSETタンパク質と接触させる。かかる分子とタンパク質との相互作用は、いずれかの方法で、例えばHPLCに連結される微小透析を用いて、アフィニティーキャピラリー電気泳動等を用いて評価することができる(例えば、Wang, et al. (1997), Chromatographia, 44: 205-208; Bush et al., (1997), J. Chromatogr. , 777: 311-328参照)。
本発明の方法においてGENSETポリペプチドまたはポリヌクレオチドとの相互作用に関して、限定されないが、ペプチド、薬物、脂肪酸、リポタンパク質、もしくは小分子など、どの種類の化合物も試験することが可能であり、いずれかの源から得ることができる。例えば、試験される分子は、蛍光標識、放射標識、もしくは酵素標識などの検出可能な標識で標識され、特異的な結合を生じさせる条件下にて、固定化されたGENSETタンパク質またはその断片と接触して置かれる。非特異的に結合した分子を除去した後、結合分子を適切な手段を用いて検出する。
A.ランダムペプチドライブラリーから得られる候補リガンド
スクリーニング法の特定の実施形態において、推定リガンドは、例えば、長さ8〜20アミノ酸のペプチドを含むランダムペプチドファージライブラリーからのファージベクターに含まれるDNAインサートの発現産物である(Parmley and Smith (1988) Gene 73: 305-318; Oldenburg et al. (1992) PNAS 89: 5393-5397; Valadon et al. (1996) J. Mol. Biol., 261: 11-22; Lucas (1994) In: Development and Clinical Uses of Haempophilus b Conjugate; Westerink (1995) PNAS 92: 4021-4025; Felici (1991) J : Mol. Biol., 222: 301-310)。 組換えファージにおけるリガンドライブラリーが構築されたら、固定化されたGENSETタンパク質とファージ集団を接触させ、洗浄した後、GENSETタンパク質に特異的に結合するファージを、バッファー(酸性pH)によって溶出するか、またはGENSETタンパク質に特異的抗体を使用して免疫沈降する。続いて、単離されたファージを細菌(例えば、大腸菌)の過剰感染によって増幅する。さらに特異的な組換えファージクローンを選択するために、その選択段階は、数回、好ましくは2〜4回繰り返し行われる。
B.競合的実験により得られる候補リガンド
代替方法としては、本発明のポリペプチドに結合するペプチド、薬物または小分子は競合的実験において同定することができる。かかる一アッセイにおいて、GENSETタンパク質またはその断片を、プラスチックプレートなどの表面に固定化する。増加量のペプチド、薬物または小分子は、検出可能な既知のGENSETタンパク質リガンドの存在下にて、固定化されたGENSETタンパク質またはその断片と接触して置かれる。例えば、GENSETリガンドは、蛍光標識、放射標識、または酵素標識で検出可能に標識される。GENSETタンパク質、またはその断片に結合する試験分子の能力は、試験分子の存在下にて、結合した、検出可能に標識された既知のリガンドの量を測定することによって決定される。試験分子が存在する場合、GENSETタンパク質またはその断片に結合した既知のリガンドの量の減少から、試験分子はGENSETタンパク質、またはその断片に結合することができることが示された。
C.アフィニティークロマトグラフィーによって得られる候補リガンド
本発明のポリペプチドと相互作用するタンパク質または他の分子は、GENSETタンパク質またはその断片を含有するアフィニティーカラムを用いて見つけることもできる。適切なカラムマトリックス(例えば、アガロース、Affi Gel(登録商標)等)への化学結合を含む従来の技術を用いて、GENSETタンパク質またはその断片をカラムに付ける。この方法の一部の実施形態では、アフィニティーカラムはキメラタンパク質を含有し、GENSETタンパク質またはその断片はグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)に融合される。上述のように細胞タンパク質の混合物または発現したタンパク質のプールが、アフィニティーカラムに適用される。次いで、カラムに付けられた、GENSETタンパク質またはその断片と相互作用するタンパク質または他の分子を、Ramunsen et al., (1997), Electrophoresis, 18: 588-598に記載のように、例えば2次元ゲル電気泳動で単離し、解析する。代替方法としては、電気泳動に基づく方法によって、アフィニティーカラム上に保持されたタンパク質を精製し、シークエンスすることができる。同じ方法を用いて、抗体を単離すること、ファージディスプレイ産物をスクリーニングすること、またはファージディスプレイヒト抗体をスクリーニングすることができる。
D.光学バイオセンサー法によって得られる候補リガンド
本発明のポリペプチドと相互作用するタンパク質は、光学バイオセンサーを使用することによってスクリーニングすることもできる (例えば、Edwards and Leatherbarrow (1997) Anal. Bioch. 246: 1-6; Szabo et al., (1995) Curr Opin Struct Biol 5, 699-705参照)。この技術によって、標識分子の必要なく、リアルタイムで分子間の相互作用を検出することが可能となる。この技術は、表面プラズモン共鳴(SRP)現象に基づく。一実施形態において、アッセイされる候補分子がそれを通って流動する、細胞の一方の側を含む表面(カルボキシメチルデキストランマトリックスなど)に、GENSETポリペプチドまたはその断片を結合させる。試験される試料を含有しない表面の側に対して光線が向けられ、前記表面によって反射される。候補リガンド分子の結合は、表面の屈折率の変化によって起こり、その変化は、SPRシグナルの変化として検出される。内因性または組換え発現GENSETタンパク質をそれらの表面に示す、真核生物細胞または原核細胞または脂質ベシクルを固定化することによって、この技術を実施することもできる。
E.2ハイブリッド(two-hybrid)スクリーニングアッセイによって得られる候補リガンド
酵母2ハイブリッド系(yeast two-hybrid system)は、in vivoでタンパク質間相互作用を研究するために設計され(Fields and Song, 1989;米国特許第5,667,973号および同第5,283,173号)、酵母Gal4タンパク質のDNA結合ドメインへのベイト(bait)タンパク質の融合に依拠する。2ハイブリッドアッセイによるライブラリースクリーニングの一般的手順は、Harper et al., (1993), Cell 75 : 805-816; Cho et al., (1998) PNAS 95 (7): 3752-3757; Fromont-Racine et al., (1997) Nature Genetics 16 (3): 277-282 に記載のように実施することができる。通常の実施形態において、ベイトタンパク質は、本発明のポリペプチドを含み、「プレイ(prey)」は、ヒトcDNAインサートが、GAL4タンパク質の転写ドメインをコードするベクターにおいてヌクレオチド配列に融合するように構築されたヒトcDNAライブラリーを含む。他の実施形態において、GENSETポリペプチドまたはその断片または変異体と、細胞タンパク質との相互作用は、Matchmaker Two Hybrid System 2(カタログ番号:K1604-1、Clontech社)を用いて評価される。
GENSET生物活性を調節する化合物
GENSET発現および/または生物活性を調節する化合物についてスクリーニングする他の方法は、宿主細胞において、またはin vitroアッセイにおいて、特定の生物活性、例えばGENSET生物活性に対する試験化合物の効果を測定することによる方法である。GENSET生物活性は、いずれかのGENSETポリペプチドまたはポリヌクレオチドについて記載の活性、機能、または特性のいずれかを含み得る。一実施形態において、GENSETポリペプチドをコードする核酸コンストラクトが、宿主細胞に導入され、その宿主細胞は、コードされるGENSETポリペプチドの発現に適切な条件下で維持され、それによって、核酸が発現される。次いで、宿主細胞を試験作用物質と接触させ、作用物質の存在下でのGENSETポリペプチドに関連する特性の変化を検出することによって、その作用物質がGENSET生物活性を変化させることが示される。特定の実施形態において、本発明は、GENSET生物活性の活性化剤である作用物質を同定する方法に関し、その方法では、作用物質の存在下でのGENSETポリペプチドに関連する特性の増加を検出することによって、その作用物質がGENSET生物活性を活性化することが示される。他の特定の実施形態において、本発明は、GENSET生物活性の阻害剤である作用物質を同定する方法に関し、その方法では、作用物質の存在下でのGENSETポリペプチドに関連する特性の減少を検出することによって、その作用物質がGENSET生物活性を抑制することが示される。その他の特定の実施形態では、GENSET生物活性を活性化(高める)または抑制する作用物質を同定するために、ハイスループットスクリーニングが用いられる(例えば、WO98/45438参照)。
GENSET遺伝子の発現および/または活性を調節する化合物についてスクリーニングする方法
本発明は、GENSETポリペプチドおよびポリヌクレオチドの活性または発現を調節する(例えば、増加または抑制する)それらの能力について化合物をスクリーニングする方法にも関する。さらに詳細には、本発明は、GENSETポリペプチドおよびポリヌクレオチドの発現または活性を増加または減少させる、それらの能力について化合物を試験する方法に関する。そのアッセイは、in vitroまたはin vivoで行われる。in vitroでの方法
in vitroでは、GENSETポリペプチドを発現する、またはGENSETポリペプチドを発現することができる細胞を、試験化合物の存在下および非存在下にてインキュベートする。試験化合物の存在下でのGENSETの発現レベルまたは試験化合物の存在下でのGENSETの生物活性レベルを決定することによって、GENSET発現または活性を抑制する、または高める化合物を同定することができる。代替方法としては、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、LacZ、緑色蛍光タンパク質等)に作動可能に連結されるGENSET調節配列を含むコンストラクトを宿主細胞に導入し、レポーター遺伝子の発現に対する試験化合物の効果を検出することができる。結果として、本発明は、GENSET遺伝子の発現を調節する分子をスクリーニングする方法を包含し、前記スクリーニング法は、それ自体のプロモーターの制御下に置かれるGENSETポリペプチドまたはGENSET5’調節領域の制御下に置かれる検出可能なポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をトランスフェクトされた原核細胞または真核細胞を培養する段階;試験される分子とその培養細胞を接触させる段階;その分子の存在下にて、GENSETまたは検出可能なポリペプチドの発現を定量化する段階;を含む。その方法は、GENSETポリペプチドまたは5’調節領域のいずれかの断片、変異体、もしくは誘導体を用いて実施することもできる。
GENSETポリペプチドの発現の定量化は、mRNAのレベル(例えば、対象のGENSET mRNAに特異的なプライマーおよびプローブを用いたノーザンブロット、RT−PCR、好ましくは定量的RT−PCRによる)またはタンパク質のレベル(イムノアッセイ、例えばELISAまたはRIAアッセイ、ウェスタンブロットまたは免疫化学においてポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いた)で理解される。
更なる実施形態では、GENSET5’調節領域は、GENSETポリヌクレオチド配列、および/またはGENSET5'UTR配列に対して内因性または外来性であるプロモーター配列の5'UTR領域を含む。
本発明はさらに、本明細書に記載の方法のいずれかを用いて、GENSET遺伝子の発現を調節する分子を同定する段階と、生理学的に許容される担体とその同定された分子を組み合わせる段階と、を含む薬剤組成物を製造する方法に関する。
GENSET遺伝子の発現を調節する能力について候補物質をスクリーニングするためのキット。かかるキットは、検出可能なタンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結される、GENSET5’調節領域またはその調節活性断片または変異体、あるいはGENSETタンパク質またはその断片または変異体を含む組換えベクターを備えることが好ましい。
本発明の他の目的は、GENSETポリペプチド、その断片または変異体と相互作用する候補物質をスクリーニングする方法およびキットを含む。ENSETポリペプチド、その断片または変異体に共有結合または非共有結合で結合するそれらの能力によって、これらの物質または分子は、in vitroおよびin vivoのどちらでも有利に使用することができる。
in vitroにて、試料、好ましくは生体試料におけるGENSETタンパク質の存在を同定するために、前記の相互作用する分子を検出手段として使用することができる。
一実施形態において、候補物質をスクリーニングする方法であって、GENSETタンパク質を提供する段階;そのタンパク質を候補物質と接触させる段階;複合体がポリペプチドまたは断片と候補物質との間に形成されるかどうかを決定する段階;を含む方法を提供する。
本発明はさらに、本明細書に記載の方法のいずれかを用いて、GENSETポリペプチド、その断片または変異体と相互作用する物質を同定する段階と、さらに、同定された物質を生理学的に許容される担体と混合する段階と、を含む、薬剤組成物を製造する方法に関する。
本発明はさらに、GENSETポリペプチドと相互作用する候補物質をスクリーニングするためのキットに関し、前記キットは、GENSETポリペプチドと、任意に、ポリペプチドと候補物質との間に形成される複合体を検出する手段と、を備える。一実施形態において、検出手段は、前記GENSETタンパク質またはその断片または変異体に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む。
in vivoでの方法
GENSET遺伝子の発現を抑制する、または高める化合物もまた、in vivoスクリーニングを用いて同定することができる。通常のアッセイにおいて、試験化合物は、様々な投与量のレベルで動物に(例えば、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、経口的に、またはその他の経路で)投与され、その化合物のGENSET遺伝子発現に対する効果は、例えばノーザンブロット、イムノアッセイ、PCR等を用いて、対象の遺伝子を発現することが分かっている組織における、遺伝子によりコードされるmRNAまたはタンパク質のレベルを比較することによって決定される。適切な試験動物としては、限定されないが、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、霊長類、およびウサギが挙げられる。その内因性マウスタンパク質が切断されている(ノックアウトされている)ヒト化マウスを使用することも可能であり、相同的ヒトタンパク質が、標準的な遺伝子導入法を用いて導入される。したがって、かかるマウスは、タンパク質のヒト型タンパク質のみを発現する。ヒトGENSETポリペプチドのみを発現するヒト化マウスを用いて、GENSETタンパク質またはmRNAのレベルを調節する潜在的な作用物質に対するin vivoの応答を研究することができる。かかる遺伝子導入動物は、疾患の生化学的および生理学的段階を分析するのに有用であり、かつ疾患処置のための治療法の開発に有用である(例えば、Loring, et al, 1996参照)。
さらに、化合物を投与した後、動物のいずれかのGENSET遺伝子関連挙動または特性の変化の検出を、その化合物が遺伝子の発現または活性を調節するという指標として使用することもできる。
GENSETの発現および/または生物活性を調節する化合物の使用
系をin vivo(またはin vitro)で用いて、例えば副腎、骨髄、脳、小脳、結腸、胎児の脳、胎児の腎臓、心臓、肥大前立腺、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、リンパ球、筋肉、卵巣、膵臓、脳下垂体、胎盤、前立腺、唾液腺、脊髄、脾臓、胃、腸、黒質、精巣、甲状腺、臍帯もしくは子宮など、対象の1種または複数種の特定の組織におけるGENSETの発現または活性を増加させる組織特異的な効果を及ぼす化合物を同定することが可能である。上述の方法などのスクリーニング方法もまた、薬理学的介入方法におけるそれらの潜在的な使用に対して作用物質を同定するのに有用である。したがって、GENSET遺伝子の発現を高める、またはその活性を刺激する作用物質を使用して、GENSET遺伝子と関連するいずれかの表現型を誘導すること、またはGENSETポリペプチドの活性または発現の欠損から生じる疾患を治療することができる。GENSETポリペプチド発現を抑制する、またはその活性を阻害する化合物を使用して、増加した、または有害なGENSETポリペプチド活性または発現と関連する疾患または病状を治療することができる。
GENSET遺伝子またはポリペプチドと直接または間接的に相互作用し、かつGENSETポリペプチド発現および/または機能を高める作用物質もまた包含される。一実施形態において、その作用物質は、GENSETポリペプチドに、直接的(GENSETポリペプチドに結合することによって)または間接的に(例えば、GENSET生物活性を有する、GENSETポリペプチドの能力をブロックすることによって)干渉する阻害剤である。特定の実施形態において、GENSETタンパク質の阻害剤は、GENSETタンパク質またはGENSETタンパク質の機能的部分に特異的な抗体である。代わりに、その阻害剤は、GENSETポリペプチドに結合し、かつその活性をブロックする抗体以外の作用物質(例えば、有機小分子、タンパク質またはペプチド)であり得る。例えば、その阻害剤は、GENSETポリペプチドを構造的に模倣するが、その機能を欠く作用物質であり得る(例えば、そのタンパク質のドミナントネガティブ型)。一方、GENSETポリペプチドが通常それに結合する、または相互作用する、分子に結合するか、または分子と相互作用し、その結果、GENSETポリペプチドがそうするのをブロックし、通常示すであろう効果を示すのを防ぐ作用物質であり得る。
他の実施形態では、作用物質は、直接的または間接的の両方で、GENSETポリペプチドの活性を増加させる(所定の量またはレベルのGENSETポリペプチドの効果を高める)、それが有効である時間の長さを増大する(その分解を防ぐことによって、またはそうでなければ、それが活性な時間を延ばすことによって)GENSETポリペプチドのエンハンサー(活性化剤)である。例えば、GENSETポリヌクレオチドおよびポリペプチドを用いて、GENSET生物活性を誘導する、GENSETポリペプチドの能力を増加または減少させる薬物を同定することが可能であり、その薬物は、GENSET生物活性と関連する疾患または病状を治療または予防するのに有用である。
このように、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)におけるGENSET生物活性を(一部または完全に)抑制する方法であって、GENSETポリペプチドまたはポリヌクレオチドの有効量の阻害剤を哺乳動物に投与することを含む方法に関する。本発明は、哺乳動物におけるGENSET生物活性を高める方法であって、GENSETポリペプチドまたはポリヌクレオチドの有効量のエンハンサーを哺乳動物に投与することを含む方法に関する。
GENSET遺伝子発現の抑制
GENSET遺伝子発現は、多数の方法のいずれかにおいて、例えばアンチセンスツールまたは相当するGENSET遺伝子の発現を抑制する三重らせんツールを使用することなどによって、例えば治療用途で抑制することができる。
アンチセンスアプローチ
アンチセンスアプローチにおいて、mRNAに相補的なDNAおよび/またはRNA配列が、細胞内でmRNAとハイブリダイズされ、それによって、mRNAによりコードされるタンパク質の発現がブロックされる。本発明によるアンチセンスポリヌクレオチドを使用する好ましい方法は、Sczakiel et al., (1995) Trends Microbiol. 3 (6): 213-217; Green et al., (1986) Ann. Rev. Biochem. 55: 569-597; Izant and Weintraub, (1984) Cell 36 (4): 1007-15; Liu et al. (1994) PNAS 91: 4528-4262; Eckner et al., (1991) EMBO J. 10: 3513-3522に記述されている手順である。
そのアンチセンスツールは、GENSET mRNAに、さらに好ましくは5’末端(例えば、翻訳開始コドンATG)またはGENSET mRNAのスプライシングドナーもしくはアクセプター部位に相補的である、ポリヌクレオチド(長さ15〜200bp)の中で選択されることが好ましい。他の実施形態では、目的の標的遺伝子の異なる部分に相補的な異なるアンチセンスポリヌクレオチドの組み合わせが使用される。そのアンチセンス分子は、いずれかの方法において、例えば、細胞におけるGENSET遺伝子のコード領域の向きを逆にすることによって、またはin vitroでオリゴヌクレオチドを合成し、細胞にそれを投与することによって作製することができる。
本明細書に記載のポリヌクレオチドのうちのいずれかの部分に相補的な、いずれかのアンチセンス配列を使用することができ、その配列は、主鎖、結合または塩基への任意の数の修飾を含むことが可能であり、その多くは当技術分野で公知である。適切な修飾、アンチセンス分子の他の形態およびその作製は、特に、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. I. , ed. John Wiley & Sons, 1990; Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition (1991), 30,613 ; Sanghvi, et al., eds. , (1993) Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton;米国特許第6,242,590号;W094/23026、WO96/31523;WO92/18522;欧州特許出願番第0572 287 A2号;WO92/19732; Letsinger et al., PNAS (1989) 86: 6553-6556; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let. (1994) 4: 1053-1060; Manoharan et al., Ann. N. Y. Acad. Sci. (1992) 660: 306-309; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let. (1993) 3: 2765-2770; Oberhauser et al., Nucl. Acids Res. (1992) 20: 533-538; Saison-Behmoaras et al., EMBO J. (1991) 10: 1111-1118; Kabanov et al., FEBS Lett. (1990) 259: 327-330; Svinarchuk et al., Biochimie (1993) 75: 49-54; Manoharan et al., Tetrahedron Lett. (1995) 36,3651-3654 ; Shea et al., Nucl. Acids Res. (1990) 18: 3777-3783; Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides (1995) 14: 969-973; Manoharan et al., Tetrahedron Lett. (1995) 36: 3651-3654; Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta (1995) 1264: 229-237; Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. (1996) 277: 923-937;米国特許第6,242,590号に教示されている。
標的GENSETポリヌクレオチド配列もしくはその断片に結合する、アンチセンス核酸およびその修飾型のハイスループットスクリーニングの方法がさらに包含される(例えば、米国特許第6,022,691号参照)。
遺伝子の発現を抑制するのに必要とされるアンチセンス核酸の適切なレベルは、in vitroでの発現解析を用いて決定することができる。通常、アンチセンス分子は、多くの様々な濃度、好ましくは1×10-10M〜1×10-4Mで細胞試料上に導入される。遺伝子発現を適切に制御できる最低濃度が同定されたら、最適化された用量は言い換えると、in vivoまたはex vivoでの使用に適した投与量ということになる。例えば、1×10-7の培養物中の抑制濃度は、およそ0.6mg/体重kgの投与量ということになる。
本発明に従って使用されるアンチセンス技術の代替方法は、それらの相補的ポリヌクレオチドテールにより標的配列に結合するであろう、かつその標的部位を加水分解することにより、相当するRNAを切断するであろうリボザイムを使用することを含む(例えば、Rossi et al., (1991) Pharmacol. Ther. 50: 245-254 and Sczakiel et al. (1995) 参照)。
三重らせんアプローチ
細胞内の三重らせん形成に基づくGENSET遺伝子の発現を抑制するために、GENSETゲノムDNAを使用することもできる(例えば、Griffin et al., (1989) Science 245: 967-971参照)。三重らせんアプローチを用いた遺伝子治療法を行うために、通常、GENSETゲノムDNAの配列を最初にスキャンして、GENSET遺伝子発現を抑制するための、三重らせんに基づく方法で使用できる10mer〜20merのホモピリミジンまたはホモプリンストレッチが同定される。候補ホモピリミジンまたはホモプリンストレッチの同定に続いて、候補配列を含有する様々な量のオリゴヌクレオチドを、GENSET遺伝子を発現する組織培養細胞に導入することによって、GENSET遺伝子発現の抑制におけるそれらの効率が評価される。オリゴヌクレオチドは、当業者に公知の様々な方法を用いて細胞に導入され、変化した細胞機能または誘導されたGENSET遺伝子発現について、処理した細胞をモニターする。
次いで、組織培養細胞における遺伝子の発現を抑制するのに有効なオリゴヌクレオチドが、「アンチセンスアプローチ」というタイトルのセクションに記載のように、技術を用いて、in vitroの結果に基づいて算出された投与量で導入される。
GENSET遺伝子関連疾患の治療
本発明はさらに、GENSET遺伝子活性および/または発現を増加させる、または低減することによって、GENSET遺伝子と関連する疾患/障害を治療するための、GENSETポリペプチドおよびポリヌクレオチドの方法、使用、およびGENSETポリペプチドおよびポリヌクレオチドの修飾因子の使用に関する。これらの方法論は、本明細書に記載されるようなスクリーニングプロトコールを用いて、かつ/または当技術分野および本明細書で述べられる遺伝子治療およびアンチセンスアプローチを用いることによって選択される化合物を使用して行うことができる。遺伝子治療を用いて、いずれかの組織、例えば治療される疾患または病状と関連する組織における、GENSET遺伝子の標的発現を行うことができる。GENSETコード配列を適切な発現ベクター中にクローニングし、特定の細胞型(1種または複数種)に標的化して、効率的な、高レベルの発現を達成することができる。GENSETコード配列の標的細胞への導入は、例えば特定の粒子仲介DNA送達(Haynes et al., (1996) J Biotechnol. 44 (1-3) : 37-42 and Maurer et al., (1999) Mol Membr Biol. 16 (1) : 129-40)、裸のDNAの直接注入(Levy et al., (1996) Gene Ther. 3 (3): 201-11; and Felgner (1996) Hum Gene Ther. 7 (15): 1791-3)、またはviral vector mediated transport (Smith et al., (1996) Antiviral Res. 32 (2): 99-115, Stone et al., (2000) J Endocrinol. 164 (2): 103-18; Wu and Ataai (2000), Curr Opin Biotechnol. 11 (2): 205-8)を用いて達成することができる。例えば、組織特異的なウイルスベクターを使用することによって、または組織特異的なプロモーターを使用することによって、ウイルス仲介輸送のケースにおいて、組織特異的な効果を達成することができる。例えば、いずれかの組織特異的プロモーター、例えばアルブミンプロモーター(肝臓特異的プロモーター;Pinkert et al., 1987 Genes Dev. 1: 268-277)、リンパ系特異的プロモーター(Calame et al., 1988 Adv. Immunol. 43: 235-275)、T細胞受容体のプロモーター(Winoto et al., 1989 EMBO J. 8: 729-733)、および免疫グロブリン(Banerji et al., 1983 Cell 33: 729-740; Queen and Baltimore 1983 Cell 33: 741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrne et al., 1989 PNAS 86: 5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlunch et al., 1985 Science 230: 912-916)または乳腺特異的プロモーター(乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州特許出願公開第264,166号)を用いて、特異的発現を達成することができる。マウスホメオボックスプロモーター(Kessel et al., 1990 Science 249: 374-379)またはα−フェトプロテインプロモーター(Campes et al., 1989 Genes Dev. 3: 537-546)など、発生制御(developmentally-regulated)プロモーターも使用することができる。組み合わせのアプローチを用いて、標的組織においてGENSETコード配列が活性化されるのを確実にすることもできる(Butt and Karathanasis (1995) Gene Expr. 4 (6) : 319-36 ; Miller and Whelan, (1997) Hum Gene Ther. 8 (7): 803-15)。GENSET mRNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、タンパク質の発現を例えば炎症部位にて、選択的に減少または除去することができる(Wagner, et al. (1996), Nat Biotechnol. 14 (7): 840-4))。さらに詳細には、アンチセンスコンストラクトまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、例えば、転写の方向に対してアンチセンス方向に、GENSET遺伝子配列もしくはその一部を含有する発現ベクターを標的細胞にトランスフェクトすることによって、または標的細胞に直接、アンチセンスオリゴヌクレオチドを導入することによって、高発現細胞におけるGENSETの産生を抑制することができる。本明細書に述べられる治療学的方法論は、ヒト哺乳動物および非ヒト哺乳動物のどちらにも適用可能である。
薬学的および生理学的に許容される組成物
本発明は、活性物質として、本発明のポリペプチド、核酸または抗体を含む、薬学的および生理学的に許容される組成物にも関する。本発明は、活性物質として、上述のスクリーニングプロトコールを用いて選択される化合物を含む組成物にも関する。かかる組成物は、生理学的に許容される塩、エステル、もしくはかかるエステルの塩など、薬学的および生理学的に許容される担体と組み合わせて活性物質を含有する。裸のDNAの場合には、「担体」は金粒子であり得る。組成物中の活性物質の量は、作用物質、患者および求められる効果によって異なる。同様に、投与計画は、組成物および治療される疾患/障害によって異なる。
したがって、本発明は、本明細書に記載のスクリーニング法のいずれかを用いて、活性物質、化合物、物質または分子を選択し、さらに、同定された活性物質、化合物、物質または分子を生理学的に許容される担体と混合する方法を含む、薬剤組成物を製造する方法に関する。
「生理学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の生理学的および薬学的に許容される塩;つまり、親化合物の所望の生物活性を保持し、それに望ましくない毒性効果を与えない塩を意味する。生理学的に許容される塩基付加塩が、アルカリもしくはアルカリ土類金属または有機アミンなどの金属またはアミンで形成される。カチオンとして使用される金属の例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。適切なアミンの例としては、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、およびプロカインが挙げられる(例えば、Berge et al., Pharmaceutical Salts, J. of Pharma Sci. (1977) 66: 1-19参照)。前記酸性化合物の塩基付加塩は、従来の方法においてその遊離酸型を十分な量の望ましい塩基と接触させて、塩を製造することによって製造される。従来の方法においてその塩を酸と接触させ、その遊離酸を単離することによって、遊離酸型を再生することができる。遊離酸型は、極性溶媒における溶解性などの特定の物理的性質において、それらのそれぞれの塩とは幾分異なるが、他の点でその塩は、本発明の目的で、それらのそれぞれの遊離酸に相当する。本明細書において使用される「薬学的付加塩」には、本発明の組成物の成分のうちの1つの酸型の生理学的に許容される塩が含まれる。これらには、アミンの有機もしくは無機酸塩が含まれる。好ましい酸性塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩およびリン酸塩である。ほかの適切な、生理学的に許容される塩は当業者には公知であり、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、またはリン酸などの様々な無機および有機酸;有機カルボン酸、スルホン酸、スルホ(sulfo)もしくはホスホ酸(phospho acid)またはN−置換スルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸またはイソニコチン酸;およびアミノ酸、自然界でのタンパク質の合成に関与する20α−アミノ酸、例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸、およびまた、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、2−または3−ホスホグリセリン酸、グルコース−6−ホスフェート、N−シクロヘキシルスルファミン酸(シクラミン酸塩の形成で)、またはアスコルビン酸などの他の酸性有機化合物との塩基性塩が挙げられる。化合物の生理学的に許容される塩は、生理学的に許容されるカチオンで製造することも可能である。適切な生理学的に許容されるカチオンは当業者によく知られており、例えばアルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウムおよび第4級アンモニウムカチオンが挙げられる。炭酸塩または炭酸水素塩もまた可能である。オリゴヌクレオチドに関して、生理学的に許容される塩の好ましい例としては、限定されないが、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムなどのカチオン、スペルミンおよびスペルミジンなどのポリアミン等と形成される塩;(b)無機酸、例えば塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等と形成される酸付加塩;(c)有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸。p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等と形成される塩;(d)塩素、臭素およびヨウ素などの元素アニオンから形成される塩;が挙げられる。
本発明において用いられる薬剤組成物は、限定されないが:非経口的、頭蓋内、眼窩内、嚢内、髄腔内、槽内、肺内、経口的、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸的、局所的、舌下、直腸、皮内、脈管内などの多数の経路によって投与することができる。活性成分の他に、これらの薬剤組成物は、薬学的に使用できる製剤に、活性化合物を処理するのを容易にする賦形剤および補助剤(auxiliaries)を含む、適切な生理学的に許容される担体を含有し得る。調合および投与の技術についての更なる詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co. Easton、Pa)の最新版に記述されている。
経口投与用の薬剤組成物は、経口投与に適した用法において当技術分野でよく知られている生理学的に許容される担体を用いて製造することができる。かかる担体によって、患者による摂取に対して、薬剤組成物を粉剤、錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等として製造することが可能となる。適切な賦形剤は、糖などの炭水化物またはタンパク質充填剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールなど;トウモロコシ、コムギ、米、ジャガイモ、または他の植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース;アラビアゴムおよびトラガントゴムなどのゴム;ゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質である。所望の場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤を添加してもよい。
肺または呼吸器による送達に適した剤形としては、乾燥粉末、噴霧に適した液体溶液または懸濁液、および定量吸入器(MDI)で使用するのに適した噴射剤形態などが挙げられる。一般的な実施形態において、乾燥粉末剤形は、肺の肺胞領域内に付着させるために、好ましい範囲内の特定の粒径、通常0.5μM〜50μMを有するだろう。好ましい粒径範囲内の呼吸用粉剤は、ジェットミル、噴霧乾燥、溶媒沈殿法等の様々な従来技術によって製造することができる。次いで、粉剤を分散するために、その器具を通る患者の吸入時の呼吸を利用する従来のドライパウダー吸入器(DPI)で、またはエアロゾル雲中に粉剤を分散するために、外部粉末源を利用するエアアシスト(air-assisted)器具で、乾燥粉剤を患者に投与することができる(例えば、米国特許第5,458,135号参照)。
噴霧器システムに使用される液体製剤には、5mM〜50mMの濃度で、酢酸、アスコルビン酸、およびクエン酸などの、わずかに酸性のバッファー(pH4〜6)が用いられることが好ましい。これらのバッファーは、酸化防止剤としての役割を果たし得る。化学安定性を高める、または維持するための生理学的に許容される成分としては:酸化防止剤、キレート剤、プロテアーゼ阻害剤、等張性調節剤(isotonic modifier)、不活性ガス等が挙げられる。かかる液体製剤を送達するのに適した噴霧器の好ましい種類は、米国特許第5,458,135号に記載されている。
MDIにおいて使用するために、薬剤組成物は通常、乾燥粉末製剤について述べたように呼吸用粒子に加工され、次いで、適切なエアロゾル噴霧剤(CFCまたはHFCなど)中にその粒子を浮遊させ、通常、それらの分散性を高めるために界面活性剤でコーティングされる。かかるエアロゾル噴霧剤製剤はさらに、エタノールなどの低級アルコール(30重量%まで)および化学安定性および生理学的許容性を維持または高めるための他の添加剤を含み得る(例えば、米国特許第6,080,721号)。
局所または経鼻投与に対しては、透過される特定のバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。かかる浸透剤は一般に、当技術分野で公知である。
非経口投与に適した医薬製剤は、水性溶液中で、好ましくはハンクス液、リンゲル液などの生理学的に適合性のバッファー、または緩衝生理食塩水中で配合される。注入用水性懸濁剤は、カルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含有し得る。さらに、活性化合物の懸濁剤は、適切な注入用油性懸濁剤として調製される。適切な親油性溶媒または媒体としては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。任意に、懸濁剤は、高濃縮溶液の調製を可能にするために、安定剤、または化合物の溶解性を高める適切な薬剤を含有してもよい。
本発明の薬剤組成物は、当技術分野で公知の手法で、例えば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、閉じ込め(entrapping)または凍結乾燥プロセスを用いることによって製造することができる。
一実施形態では、その製剤は、以下の:1〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、2〜7%マンニトールのいずれか、またはすべてを、4.5〜5.5のpH範囲で含有し得る凍結乾燥粉剤であり、使用前にバッファーと合わせられる。
薬剤組成物を調製した後、それらを適切な容器に入れ、示される病状の治療のためにラベルが付けられる。GENSETポリペプチドの投与のために、かかるラベルには、例えば投与量、投与回数、および投与方法が含まれるだろう。本発明において使用するのに適した薬剤組成物には、その活性成分が意図する目的を達成するのに有効な量で含有される組成物が含まれる。有効用量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。いずれかの化合物については、治療有効用量を、例えば新生細胞の細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌ、もしくはブタにおいて、最初に推定することができる。その動物モデルを用いて、適切な濃度範囲および投与経路を決定することもできる。次いで、かかる情報を利用して、ヒトにおいて有用な投与量および投与経路を決定することができる。
治療有効用量とは、活性成分、例えばGENSETポリペプチドまたはその断片、GENSETポリペプチドに特異的な抗体、GENSETポリペプチドのアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤の、症状または病状を改善する量を意味する。治療有効性および毒性、例えば、50%有効量(ED50)(集団の50%において治療上有効な用量)および50%致死量(LD50)(集団の50%に致死的な量)は、細胞培養または実験動物において、製薬的標準手順によって決定することができる。治療効果と毒性効果との用量比が治療指数であり、それは、LD50/ED50比として示すことができる。大きな治療指数を示す薬剤組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトに使用するための投薬量の範囲を決定するのに使用される。かかる組成物に含まれる投薬量は、ほとんど、または全く毒性を持たないED50を含む循環濃度の範囲内であることが好ましい。その投薬量は、この範囲内で、用いられる剤形、患者の感受性、および投与経路によって異なる。
正確な投薬量は、治療を必要とする対象に関連する因子に照らして、医師によって決定されるだろう。投薬量および投与は、活性部分の十分なレベルが得られるように、または目的の効果を維持するように調節される。考慮に入れられる因子としては、疾患状態の重症度、対象の一般健康、対象の年齢、体重、および性別、食事、投与の時間および回数、薬物併用(1種または複数種)、反応感受性、および治療に対する耐性/応答が挙げられる。適切な投薬量を評価する際に、考慮される他の因子としては、送達されることになっている化合物の化学的性質、その化合物に関連する生物学的応答(意図する、および偶然の両方)および予測される禁忌が挙げられる。さらに、送達形式、投与期間および投与回数(例えば、n回投与/時、n回投与/日、n回投与/週、蓄積量/日、蓄積量/週)、血漿中濃度によって示される場合が多い、標的部位へ送達される生物学的に有効な用量、および体からの化合物のクリアランスの比または効率が考慮される。長時間作用型薬剤組成物は、特定の製剤の半減期およびクリアランス比に応じて、例えば3〜4日毎、毎週、または2週間に1回投与される。
通常の投薬量は、投与経路に応じて異なる。特定の投薬量および送達方法についての指導は、文献に記載されており、一般に当技術分野の医師に利用可能である。当業者は、タンパク質またはそれらの阻害剤と異なる剤形をヌクレオチドに対して用いるだろう。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、条件、位置等に特異的であるだろう。一般に、75kgの個体に関しては、通常の投薬量範囲は以下の通りである:小分子化合物では、有効用量は通常、0.3〜50mg/kgであり;組換えポリペプチドでは、有効用量は通常、0.25〜7.5mg/kgであり;体液性免疫応答を仲介するために使用される化合物(例えば、多価肺炎球菌ワクチン、Rho(D)免疫グロブリン、B型肝炎ワクチン、抗CD20抗原)では、有効量は通常、0.0015〜1.5mg/kgであり;ホルモン補助化合物(例えば、エストラジオール、ノルエチンドロン)では、有効用量は通常、用いられる送達システム(例えば、経皮的、経口的、局所的)に応じて、0.0005〜0.5mg/kgである。
経皮送達システム(例えば、エストラジオール経皮システム、スコポラミン経皮システム、経皮ニコチンパッチ)は、個体に対する経皮送達の効率、経皮システム接触の表面積(cm2)、経皮送達システムに組み込まれる化合物の量および形状および位置付けられる経皮システムの解剖学的位置に基づいて、ほんのわずかな送達量に関して較正しなければならない。この手法で投与される化合物の有効用量範囲は通常、0.005〜0.5mg/kgである。
GENSET配列の使用:コンピューターに関連する実施形態
本発明の核酸コードおよび本発明のポリペプチドコードを、コンピューターによって読み取りかつアクセスすることができるいずれかの媒体上に保存し、記録し、処理することができることは、当業者であれば理解されよう。本明細書で使用される「記録(する)」および「保存(する)」という用語は、コンピューター媒体上に情報を保存するプロセスを意味する。当業者であれば容易に、本発明の核酸コードのうちの1つまたは複数、または本発明のポリペプチドコードのうちの1つまたは複数を含む、コンピューター可読媒体上の情報を記録する現在公知の方法のいずれかを採用することができる。本発明の他の態様は、本発明の少なくとも1、2、5、10、15、20、25、30、または50の核酸コードまたはポリペプチドコードがそれに記録されているコンピューター可読媒体である。
コンピューター可読媒体としては、磁気読み取り可能媒体、光学読み取り可能媒体、電子読み取り可能媒体および磁気/光学媒体が挙げられる。例えば、コンピューター可読媒体は、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(Digital Versatile Disk)(DVD)、ランダムアクセスメモリー(Random Access Memory)(RAM)、読み出し専用メモリー(Read Only Memory)(ROM)である。
本発明の実施形態は、システム、特に本明細書に記載の配列情報を保存かつ処理するコンピューターシステムを包含する。本明細書で使用される「コンピューターシステム」という用語は、ハードウェア要素、ソフトウェア要素、および本発明の核酸コードのヌクレオチド配列または本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列を解析するために使用されるデータ保存要素を意味する。コンピューターシステムは、配列データを処理し、アクセスし、操作するためのプロセッサーを備えることが好ましい。そのプロセッサーは、Intel社製Pentium (登録商標)IIIなどの中央処理装置の公知の種類、またはSun社、Motorola社、Compaq社またはInternational Business Machines社製の同様のプロセッサーであり得る。そのコンピューターシステムは、プロセッサーと、データを保存するための1つまたは複数の内部データ保存要素と、データ保存要素上に保存されたデータを検索するための1つまたは複数のデータ検索デバイスと、を備える汎用システムであることが好ましい。当業者であれば、現在利用可能なコンピューターシステムのいずれかが適していることは容易に判断できる。
いくつかの実施形態において、コンピューターシステムは、コンピューター可読媒体上に保存された、上述の本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドコードを、コンピューター可読媒体上に保存された、またはデータベースに存在する参照ヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較するための配列比較子(comparer)を備え得る。「配列比較子」とは、ヌクレオチドまたはポリペプチド配列を、他のヌクレオチドまたはポリペプチド配列および/または化合物、限定されないが、データ保存手段内に保存された、ペプチド、ペプチド擬態、および化学薬品と比較するためにコンピューターシステムに実装される1つまたは複数のプログラムを意味する。例えば、配列比較子は、コンピューター可読媒体に保存された、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列または本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列を、コンピューター可読媒体に保存された参照配列と比較し、相同性、生物学的機能に関与するモチーフ、または構造モチーフを同定することができる。本明細書の他で確認される様々な配列比較子プログラムが特に、本発明のこの態様において使用するのに企図される。代替方法としては、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、その配列とデータベース中の配列との間の相同性を決定するために、配列のデータベースと比較される。配列のデータベースは、コンピューターシステム内に保存された民間データベースであってもよいし、または例えばインターネットを通じて利用可能なGENBANK、PIRまたはSWISSPROTなどの公共データベースであってもよい。
したがって、本発明の一態様は、プロセッサーと、本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドコードがそれに保存されているデータ保存デバイスと、本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドコードと比較される参照ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列がそれに検索可能に保存されているデータ保存デバイスと、比較を行うための配列比較子と、を備えるコンピューターシステムである。
その代わりに、そのコンピュータープログラムは、本発明の核酸が1つまたは複数の位置で参照核酸配列と異なるかどうかを決定するために、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列を、参照ヌクレオチド配列と比較するコンピュータープログラムであってもよい。任意に、かかるプログラムは、本発明の参照ポリヌクレオチドまたは核酸コードのいずれかの配列に関して、挿入、欠失または置換ヌクレオチドの長さおよび同一性を記録する。一実施形態において、そのコンピュータープログラムは、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列に対して1つまたは複数の単一ヌクレオチド多型(SNP)を含有するかどうかを決定するプログラムである。これらの単一ヌクレオチド多型はそれぞれ、一塩基置換、挿入、または欠失を含み得る。その方法は、コンピュータープログラムを使用して、本発明の核酸コードの少なくとも2、5、10、15、20、25、30、または50個および参照ヌクレオチド配列を読み取り、その核酸コードと参照ヌクレオチド配列との間の差異をコンピュータープログラムで同定することによって行うことも可能である。
他の実施形態において、コンピューターをベースとするシステムはさらに、本発明の核酸コードのヌクレオチド配列または本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列内の特徴を同定するための識別子を備え得る。「識別子」とは、上述の本発明の核酸コードのヌクレオチド配列または本発明のポリペプチドコードのアミノ酸配列内の特定の特徴を識別する1種または複数種のプログラムを意味する。一実施形態において、識別子は、本発明のcDNAコードにおけるオープンリーディングフレームを識別するプログラムを含み得る。
その他の実施形態では、多くのコンピュータープログラムのいずれかを用いて、本発明のアミノ酸配列を解析し、タンパク質の構造的特徴、例えば二次構造、三次構造、および四次構造などを同定すること、潜在的な結合パートナー等を同定することができる。次いで、分子モデリング解析の結果を、例えば合理的な薬物設計に用いて、本発明のポリペプチドコードの活性を調節する作用物質を同定することができる。
したがって、本発明の他の態様は、本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドコード内の特徴を同定する方法であって、その中の特徴を識別するコンピュータープログラムを使用することによって、核酸コード(1つまたは複数)またはポリペプチドコード(1つまたは複数)を読み取る段階と、コンピュータープログラムでその核酸コード(1つまたは複数)またはポリペプチドコード(1つまたは複数)内の特徴を識別する段階と、を含む方法である。単一配列または本発明の核酸コードまたは本発明のポリペプチドコードの少なくとも2、5、10、15、20、25、30、または50個を、コンピュータープログラムを使用することによって読み取り、その核酸コードまたはポリペプチドコード内の特徴をコンピュータープログラムで識別することによって、その方法が行われる。
上記のプログラムを用いて検出されるモチーフとしては、ロイシンジッパー、ヘリックス・ターン・ヘリックスモチーフ、グリコシル化部位、ユビキチン結合部位、αヘリックス、βシート、シグナル配列、転写制御に関与する配列、例えばホメオボックス、酸性ストレッチ、酵素活性部位、基質結合部位、および酵素切断部位が挙げられる。
本発明は特定の好ましい実施形態に関して記述されているが、本明細書における開示内容を考慮して、当業者には明白であるだろう他の実施形態もまた、本発明の範囲内である。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に照らしてのみ定義されることが意図される。
本出願全体にわたり、様々な出版物、キットのマニュアル、特許および公開特許出願が記載されている。本発明が関係する当技術分野の技術現状をさらに完全に説明するために、これらの出版物、特許、マニュアルおよび公開特許明細書の開示内容全体が、参照により本発明の開示内容に組み込まれる。