JP2005508304A - モリンガ種子蛋白質 - Google Patents
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Abstract
本発明は、モリンガ種子から得られる蛋白質、又はモリンガ種子蛋白質に由来する蛋白質から成る新しい群に関する。これらの蛋白質は種々異なる目的で、例えば水処理のための凝固剤として且つ/又は抗生物質として使用することができる。この新しい蛋白質群は5以上のサブ群から成る。第1のサブ群は、組換えプロセスに従って得られる。他の全てのサブ群は特定の抽出プロセスに従って得られる。本発明の抽出プロセスに従って得られる蛋白質を、本明細書では「E蛋白質」と呼ぶ。
Description
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はモリンガ(Moringa)種子から得られる蛋白質、又はモリンガ種子蛋白質に由来する蛋白質に関する。
より正確には、本発明は、モリンガ種子から得られる蛋白質の群、又はモリンガ種子蛋白質に由来する蛋白質の群であって、種々異なる目的のために、例えば水処理のための凝固剤のために使用することができる蛋白質群に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
モリンガ属は、ほぼ14の植物種、具体的にはモリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera)を含む。
モリンガ種子は主として、食用油を得るために使用される。この食用油は、機械プレスを使用して抽出することができる。
【0003】
モリンガの種子は水溶性、低分子量、高塩基性の蛋白質を含有することが判っている。これらの蛋白質は汚染水処理において凝集剤として作用することができる。これらの活性化合物のいくつかの部分が分離され同定されている(Gassenschmidt, U., Jany, K.-D., Tauscher, B.,及びNiebergall, H.(1995), 「モリンガ・オレイフェラからの凝集蛋白質の分離及び特徴付け(Isolation and characterization of a flocculating protein from Moringa oleifera)」 Lam. Biochim. Biophys. Acta 1243,477-481)。1蛋白質成分MO2.1が決定されており、これが高含量のグルタミン、アルギニン及びプロリンを含む60のアミノ酸を含有することが判っている。
【0004】
国際公開第99/48512号パンフレット(LABORATOIRES SEROBIOLOGIQUES)は、モリンガ種子から抽出された1以上の蛋白質成分、例えばMO2.1の、美容分野又は皮膚科分野における使用を開示している。国際公開第00/46243号パンフレット(OPTIMA ENVIRONNEMENT SA)は、蛋白質、及び、これらの蛋白質の具体的な製造方法に関し、これらの蛋白質はモリンガ種子から抽出され、凝固剤として作用することができる。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、モリンガ種子から得られる蛋白質、又はモリンガ種子蛋白質に由来する蛋白質から成る新しい群に関する。これらの蛋白質は種々異なる目的で、例えば水処理のための凝固剤として且つ/又は抗生物質として使用することができる。具体的にはこれらの抗生物質は、抗生物質に対して耐性の臨床分離株を含むヒト病原体を効率的に死滅させる。
この新しい蛋白質群は5以上のサブ群から成る:
【0006】
第1のサブ群は、組換えプロセスに従って得られる。他の全てのサブ群は特定の抽出プロセスに従って得られる。本発明の抽出プロセスに従って得られる蛋白質を、本明細書では「E蛋白質」と呼ぶ。
【0007】
本明細書において、「抗生」という用語は、具体的には、静菌性、殺菌性、抗真菌性、又は任意のその他の細胞タイプに対する毒性、及び抗ウィルス性を意味する。
モリンガ蛋白質の組換え形を発現させ(Tauscher, B. (1994).「高等植物の凝集化合物による水処理(Water treatment by flocculant compounds of higher plants)」Plant Res. and Dev. 40, 56-70)、関連する凝固活性を実証しようという試みは成功しなかったことを述べておかなければならない。
本発明の発明者は、活性の細菌性生成型組換え型蛋白質を得るためのプロセスを開発した。
【0008】
E蛋白質は、従来技術において開示されたモリンガ蛋白質の構造とは異なる構造を有する。
本発明による蛋白質は、凝固剤として、水中だけでなく、その他の流体、例えば血液、乳、又は任意のその他の食用流体中でも作用することができる。これらの蛋白質は製薬分野及び美容分野において、具体的には国際公開99/48512号パンフレットにおいて引用されたすべての分野において使用することもできる。
本発明に関連するいくつかの実施例を、下記の図面と一緒に以下に議論する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
下記の実施例において、組換えプロセス、及びモリンガ種子からの特定のE蛋白質抽出プロセスと共に詳細に本発明を説明する。その結果得られた蛋白質を、モリンガ種子抽出物の商業的な調製物であるPHYTOFLOCと比較する。手短に云えば、PHYTOFLOCを得るために、モリンガの粉砕されたプレスケークを、1:5w/v比で塩水と混合する。抽出物を濾過し、75℃で加熱する。沈澱した固形物を遠心分離によって除去し、清澄化された液体を、5kDカットオフ膜を通した濾過によって濃縮する。
【0010】
材料及び方法
プラスミド
MO2.1ポリペプチド配列をコード化するように、DNA配列を設計した(Gassenschmidt他、1995、図1A参照)。このポリペプチドの組換え形を本明細書においてFloと呼ぶ。Horton他(1989)によって記載されているように、PCRアセンブリ戦略を用いて二本鎖オリゴヌクレオチドを合成した。このオリゴヌクレオチド配列を、そのコドンがE.coli発現のために最適化されるように、そして、SapI及びPstI制限部位がその先端に配置されるように設計した。IMPACT発現系(アフィニティ・キチン結合タグ系を用いたインテイン媒介性精製(Intein Mediated Purification with an Affinity Chitin-binding Tag system), New England Biolab, Inc.)を、モリンガ種子Flo蛋白質をE.coliにおいてクローニングして発現させるために選択した。このオリゴヌクレオチドを、SapI/PstIで消化されたpTYB11ベクターにリゲートし、これにより、標的蛋白質FloのN末端、内部蛋白質自己開裂部位(インテイン)、及びキチン結合ドメインをコード化する配列を融合した。陽性クローンを配列決定により検証した。
【0011】
蛋白質の発現及び精製
pTYBベクターはLacリプレッサー制御型T7プロモーター及びlacI遺伝子を使用し、これにより、融合遺伝子発現の緊縮調節を可能にする。T7プロモーターのすぐ下流側に配置されたlacオペレーター配列にlacリプレッサーを結合することにより、IPTG誘発なしで融合遺伝子の基礎発現が抑制される。E.coliはER2566であった。それというのもER2566は、lacプロモータの制御下でT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを担持するからである。融合蛋白質の発現を誘発するために、200rpmで撹拌しながら、27℃で2時間にわたってA6000.5〜0.6で指数的に成長する培養に0.3mM IPTGを添加した。細菌培養、抽出調製及び精製の条件、並びに、使用される緩衝液は、製造業者によって推奨される(New England Biolab)通りであった。手短に云えば、1.5リットルの細菌培養容積(A600=0.5〜0.6)を遠心分離し、細胞を超音波処理により溶解させる。抽出物を遠心分離により清澄化し、そして平衡キチン・ビード(50〜100μm粒度)カラム上にローディングした。洗浄後、50mM DTTを含有する緩衝液をカラムに充填し、これを室温で40時間にわたってカラム内でインキュベートすることにより、インテイン含有融合ペプチドの自己開裂を可能にする。Floを溶離し、ゲル電気泳動法によりその存在を確認した。最後に、前駆体蛋白質をストリッピング緩衝液で溶離し、カラムをリサイクリングした。
【0012】
細胞蛋白質抽出物全体を10%SDS-PAGEゲル(Laemmli, 1970)を用いて分析した。蛋白質定量化のために、シプロ-オレンジを使用してゲルを染色し、走査用ソフトウェア(STORM 840, Pharmacia Amersham Biotech)を使用して分析した。これにより、並列にローディングされたBSAの種々の量と直接的に比較することにより、総抽出物に対する融合蛋白質の比を評価することが可能になる。溶離されたFloポリペプチドは、そのサイズが小さいことにより、トリシン-ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動法(Schagger他、1987)を介して分析した。ゲルの固定及び染色に際しては、小型塩基性蛋白質に適したプロトコルに従った(Steck他1980)。
【0013】
化学合成された蛋白質
本発明のいくつかの組換え型の蛋白質及びE蛋白質を標準的な手順に従って合成した。
【実施例】
【0014】
E 蛋白質 - 実施例 1
モリンガ・オレイフェラ種子からの未精製油体蛋白質抽出物の調製:
モリンガの乾燥種子の殻を手で除去し、4容積の低温(4℃)均質化緩衝液(1mM EDTA, 10mM KCl, 1mM MgCl2, 2mM ジチオスレイトール及び0.6Mサクロースを含有する0.15Mトリシン緩衝液pH 7.5)中で、最大出力で40秒にわたってポリトロン(Polytron)を使用して均質化した。ホモジェネートをナイロン膜(20μm孔径)を通して濾過し、これにより大型粒子及び種子破片を除去した。清澄化されたホモジェネートを1容積の浮遊緩衝液(0.4Mサクロース, 1mM EDTA, 10mM KCl, 1mM MgCl2及び2mM ジチオスレイトールを含有する0.15Mトリシン pH 7.5)で希釈し、そして10,000gで30分間にわたって遠心分離した。遠心分離された懸濁液の表面から油体を捕集し、2M NaClを含有する0.5容積の均質化緩衝液に添加し、これにより再懸濁させた。2M NaClと、0.6Mサクロースの代わりに0.25Mサクロースとを含有する更なる0.5容積の均質化緩衝液を油体懸濁液表面に添加し、続いて30分間にわたって10,000gで遠心分離した。遠心分離された懸濁液の表面から油体を捕集し、0.5容積の均質化緩衝液中に再懸濁させ、続いて30分間にわたって10,000gで再遠心分離した。洗浄手順を繰り返し、油体を均質化緩衝液中で再懸濁させることにより、1リットル当たり100mgの最終濃度にし(一般に20容積の均質化緩衝液を油体に添加することにより達成される)、そして4℃で保存した。
こうして調製された未精製油体蛋白質抽出物を、SDSの添加後にSDSゲル電気泳動法により分析した。
【0015】
E 蛋白質 - 実施例 2
モリンガ・オレイフェラ種子からの精製油体蛋白質抽出物の調製:
最終遠心分離工程後に緩衝液表面から油体を回収し、続いて有機溶剤、例えばアセトン、ヘキサン又はその他を添加して、付随するトリアシルグリセリドを除去することにより、実施例1に従って調製された未精製油体蛋白質を精製した。次いで、2分間13,500gで遠心分離することにより、溶剤処理された油体蛋白質を回収した。遠心分離された試料の表面から油体蛋白質を回収し、これを有機溶剤(アセトン、ヘキサン又はその他)で洗浄し、そして同じ条件下で再遠心分離した。次いで、ジエチルエーテル中に油体蛋白質を再懸濁させることにより、第2の洗浄工程を行い、そして2分間にわたって13,500gでこれを再遠心分離した。油体蛋白質を最後の遠心分離工程から回収し、クロロホルムの2:1メタノール混合物1.5容積を含有する超高純度(UHP)水中に再懸濁させた。これを4分間にわたって10,000gで遠心分離し、精製された油体蛋白質を水・溶剤界面から分離した。分離された蛋白質を、次いで水/クロロホルム/メタノール溶液で2回洗浄し、4分間にわたって10,000gで遠心分離した。精製された油体蛋白質を次いで水・溶剤界面から回収し、窒素ガス雰囲気下で有機溶剤を蒸発させることにより、乾燥蛋白質調製物を形成した。こうして調製された精製油体蛋白質は4℃で無期限に保存することができた。
こうして調製された精製油体蛋白質抽出物を、SDSの添加後にSDSゲル電気泳動法により分析した。
【0016】
E 蛋白質 - 実施例 3
モリンガ・オレイフェラ種子からの未精製種子蛋白質抽出物の調製:
モリンガの乾燥種子の殻を手で除去し、4容積の低温(4℃)均質化緩衝液(1mM EDTA, 10mM KCl, 1mM MgCl2及び0.6Mサクロースを含有する0.15Mトリシン緩衝液pH 7.5)中で、最大出力で40秒にわたってポリトロンを使用して均質化した。ホモジェネートをナイロン膜(20μm孔径)を通して濾過し、これによりトリグリセリド及び油体を除去した。残りの固形物質を捕集し、これをプレスケークと称した。プレスケークを5容積の塩溶液中に再懸濁させ、続いて1時間にわたって撹拌することにより、種子蛋白質を抽出した。5分間にわたって1,500gで遠心分離し、続いて目の細かい綿布を通してデカントすることにより、抽出された種子蛋白質を回収した。デカントされた種子蛋白質抽出物を静かに撹拌しながら85℃に加熱し、続いて室温まで冷却した後、5分間にわたって1,500gで遠心分離した。上澄みを捕集し、室温で保存することができた。
こうして調製された未精製種子蛋白質抽出物を、SDSの添加後にSDSゲル電気泳動法により分析した。
【0017】
E 蛋白質 - 実施例 4
モリンガ・オレイフェラ種子からの精製種子蛋白質抽出物の調製:
実施例3に従って手順を続けた。但し実施例3とは異なり、この実施例4では、還元剤、例えば1%ジチオスレイトール(DTT)を抽出塩溶液に添加した。こうして、多くの多量体及び単量体蛋白質のコンフォメーションに関与するジスルフィド結合を低減し、このジスルフィド結合を、続く遠心分離工程及び濾過工程中に除去した。
こうして調製された種子蛋白質抽出物を、SDSの添加後にSDSゲル電気泳動法により分析した。
【0018】
E 蛋白質配列
E蛋白質のうちの1つを配列決定することにより、その末端の一方が配列RGPAFRRで始まることが判った。
【0019】
凝固試験
分光光度計セル(104QS/HELLMA)内で2ml容積で試験を行った。凝固活性を評価するために、3.5〜7μm直径のガラスビード(Sheriglass 5000, Potters-Ballotini)の100mg/ml懸濁液を50mMリン酸緩衝液,pH=7.0中に希釈して、擬似濁り水にした。800rpmで連続的に撹拌を維持し、OD 500nmを毎秒毎に、Perkin-Elmer 552分光光度計で測定した(LabVIEW software/National Instruments Corporation)。5分間の連続的な撹拌後、被験化合物を添加して最終濃度20μg/mlにし、そして撹拌を15分間続けた。試験前に活性化合物をリン酸緩衝液10mM, pH=7.0(E蛋白質、PHYTOFLOC及び細菌性生成型Flo)又は蒸留水(合成型Flo)中に希釈した。
【0020】
分析法
凝集効率を定量化するために、凝集性調製物の添加の4分前(基礎沈降)、及び凝集性調製物の添加から4分後(凝固媒介性沈降)に相当する時点で、線形回帰を実施した。分当たりのODを引き算したものに1000を掛算する(Δ勾配)ことにより、凝集性沈降と基礎沈降との差を計算した。
【0021】
抗生効果
E.coli ER2566を、上述のように37℃で、LB培地内で対数期(A600=0.5〜0.6)まで成長させた。培養を遠心分離し、同一容積の10nMリン酸緩衝液pH=7.0中で再懸濁させ、E蛋白質、PHYTOFLOC(2mg/ml)、合成型Flo(0.1mg/ml〜2mg/ml)、キャリヤ(緩衝液)又はBSA(2mg/ml)を添加した。2時間にわたり37℃でインキュベートしたあと、LBを細菌培養に添加し、これによりA600=0.1を得た。全ての培養を200rpmで37℃でインキュベートし、培養成長をA600測定を通して追跡した。
【0022】
多くのその他の微生物を試験した。これらの微生物はStaphylococcus aureus, Streptococcus pyrogenes, Enterococcus faecalis, Bacillus subtillis, Klebsiella oxytoca, Pseudomonas aeruginosaを含み、第2の試験グループにおいてはまた、Legionella pneumophillia, Mycobacterium abscessus/chelonae及びMycobacterium fortuitumを含む。
【0023】
Flo の構造
さらにFloの構造を分析した。
【0024】
結果
序文
他のモリンガ種子抽出物と関連する凝固活性についての従来の研究は、この活性が小分子量蛋白質と協働して浄化作用を発揮することを示した。これらの蛋白質のうちの1つの配列は、正電荷6kDaポリペプチドとして決定された(Tauscher, 1994)。しかし、この蛋白質の組換え形を発現させ、そして関連する凝固活性を実証しようとする従来の試みは成功には至らなかった。
【0025】
蛋白質のクローニング、発現及び精製
この蛋白質配列を使用して、合成遺伝子を再合成した。この合成遺伝子は組換え型モリンガ種子蛋白質の、E.coliにおける発現に最適となる。この蛋白質をFloと称した。Floがその性質上、高度に正の電荷を有することを考えて、融合蛋白質としての発現を選んだ。Flo蛋白質が、インテイン配列とキチン結合ドメインとから成る異種ポリペプチドとの融合体として発現されるように、発現ベクターを設計した(図1A)。キチン結合ドメインは、キチン含有クロマトグラフィ樹脂を使用して、細菌蛋白質の残余から融合蛋白質を容易に分離することを可能にする。インテインは、チオール化合物が添加されると、制御された自己触媒プロセスにおいて、前駆体蛋白質の翻訳後開裂を可能にするアミノ酸配列である(概説としてPerler, 2000参照、図1B)。
【0026】
IMPACT発現系のpTYBベクターは、lacリプレッサーで制御されるT7プロモーター駆動型系を使用し、これによりE.coliにおける高レベルの発現及び密な転写調節を達成する。lacリプレッサー・インヒビターを添加すると、lacリプレッサー系は抑制解除され、T7 RNAポリメラーゼの発現を可能にし、そしてT7 プロモーターの下流側のlacオペレーター配列を遊離させる。誘発条件下で成長させられた細菌の抽出物から、期待サイズの融合蛋白質の過剰発現を特異的に得た(図2A、レーン1、データは示していない)。全ての特異的な蛋白質の含量を定量化することにより、誘発された細胞の蛋白質含量のほぼ30%がFlo融合蛋白質から成ることが示された。キチン・ビーズ含有カラム上に調製物をローディングした。汚染性の細菌性蛋白質を洗浄除去し、そしてチオール含有還元性化合物と一緒にインキュベートすることにより、融合蛋白質を開裂した。このことは、クロマトグラフィ樹脂に付随したままの融合蛋白質のキチン結合部分から遊離された、細菌性発現型天然Floポリペプチドの溶離及び回収を可能にした(図2B)。最後に、インテイン配列及びキチン結合ドメインを含む前駆体蛋白質を溶離した(図2A、レーン3)。既知量の化学合成型Floポリペプチドと直接的に比較することにより、細菌性生成型Floポリペプチドをゲル上で直接的に定量化した。細菌培養1リットル当たりほぼ1mgの精製Flo蛋白質を得た。
【0027】
E 蛋白質
図5は、モリンガ・オレイフェラに由来する種子蛋白質、油体蛋白質及び合成ペプチドの抽出物のSDS-PAGE(ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)を示す図である。
レーン1:標準蛋白質(Sigma);
レーン2:還元条件下で抽出された種子蛋白質;
レーン3:還元条件下で抽出された全油体蛋白質(希釈せず);
レーン4:還元条件下で抽出された全油体蛋白質(10倍希釈);
レーン5:還元条件下で抽出された全油体蛋白質(100倍希釈);
レーン6:空
レーン7:非還元条件下で抽出された種子蛋白質;
レーン8:非還元条件下で抽出された全油体蛋白質(希釈せず);
レーン9:非還元条件下で抽出された全油体蛋白質(10倍希釈);
レーン10:非還元条件下で抽出された全油体蛋白質(100倍希釈)。
【0028】
モリンガ・オレイフェラから抽出された種子蛋白質抽出物及び油体蛋白質抽出物は類似の蛋白質を含有することを、ゲルが示す。非還元条件下で抽出された蛋白質は、分子量がほぼ17kダルトンの1つの主要蛋白質画分を含有するのに対し、還元条件下で抽出された蛋白質は、分子量がほぼ6.5kダルトン及び5.5kダルトンの2つの主要蛋白質画分を含有する。
【0029】
図6は、還元条件下で抽出されたモリンガ・オレイフェラに由来する種子蛋白質及び合成ペプチドの抽出物のSDS-PAGE(ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)を示す図である。
レーン1:脱脂種子(プレスケーク)からの種子蛋白質抽出物;
レーン2:合成ペプチド(Gassenschmidt他、1995に基づく配列);
レーン3:全破砕種子からの種子蛋白質抽出物;
レーン4:水に対する透析後の、脱脂種子(プレスケーク)からの種子蛋白質抽出物;
レーン5:超低分子量蛋白質標準(Sigma);
レーン6:脱脂種子(プレスケーク)からの種子蛋白質抽出物;
レーン7:合成ペプチド(Gassenschmidt他、1995に基づく配列);
レーン8:全破砕種子からの種子蛋白質抽出物;
レーン9:水に対する透析後の、脱脂種子(プレスケーク)からの種子蛋白質抽出物。全ての抽出物は2.5μg総蛋白質でゲル上にローディングされる。
【0030】
その結果が示すように、モリンガ・オレイフェラから抽出された報告済みの蛋白質配列(Gassenschmidt他、1995に基づく配列)で生成された合成ペプチドは、SDS-PAGEにおいて、ほぼ6.0kダルトンの分子量(レーン2及び7)に相当する位置で泳動し、この合成ペプチドは、本特許出願の範囲の抽出手順によって得られる画分のいずれにも相当しない。全ての抽出物からの全ての蛋白質画分は凝集活性を示した。
【0031】
凝固活性
Floの粒子凝固特性を評価するために、連続的に混ぜながらガラスビードの懸濁液を擬似濁り水として使用した。懸濁液中のビードによって光が散乱することから生じる光学濃度減少を追跡することにより、沈降を評価した。粒子沈降の基礎速度の5分間の記録後、被験化合物を添加し、勾配の変化を下記のように計算した:Δ勾配=(凝集剤添加後の勾配値−凝集剤添加前の勾配値)X1000。緩衝液の添加の前又は後では沈降はほとんど発生しなかった(図3A)。しかしPHYTOFLOCを使用すると効率的な凝固が認められた(図3B)。同様の量の化学合成型Flo(図3C)、細菌性生成型Flo(図3D)又はE蛋白質を使用すると、同様の沈降速度が観察された。
【0032】
興味深いことに、これらの試験条件下において、合成型又は組換え型のFlo又はE蛋白質の特異的な凝固活性は、PHYTOFLOCを使用して評価されたものよりも高い。PHYTOFLOCは幾つかの主要ポリペプチドを含有しているので、凝固効果に直接に関与する成分が、その他の蛋白質調製物と比較して、不足した状態で提示される可能性がある。別の説明においては、種子抽出物は凝固インヒビターを含有することがある。確かに、組換え型又は合成型のFloとPHYTOFLOCとの直接的なサイズ比較が示すように、FloはPHYTOFLOC中に検出されたポリペプチドとはマッチせず、Floは天然発生型ポリペプチドのフラグメントから成ると考えられる。いずれの場合にも、これらの結果は、Floが凝固アッセイにおいて高活性であることを示す。
【0033】
抗生効果
モリンガ種子抽出物は細菌を凝集させ、抗菌活性を有することが示されている(Eilert他、1981;Madsen他、1987)。凝集活性の活性原理は同定されず、これに対して抗菌活性は、植物により合成されたベンジルイソチオシアネート誘導体、つまり既知の抗菌性化合物に起因すると考えられた。それでもなお我々は、E.coliに対するFloポリペプチド及びE蛋白質の潜在的な効果を特徴付けする準備をした。これを行うために、指数的に成長する培養から得られた細菌を本発明のペプチドと一緒にインキュベートした。目視検査が明らかにしたのは、時間と共にサイズが成長する定義済みの粒子又はフロックが出現することにより示されるように、ペプチドが細菌を凝集させることである。撹拌せずに、ペプチドと一緒にインキュベートされた細菌は急速に沈降した。これは、緩衝液だけと一緒にインキュベートされた細菌が懸濁液中に残されたままとなるのとは異なる。固形成長培地上に本発明のペプチドと一緒にインキュベートされた培養を広げると、対照培養と比較して、産出されるコロニーの生存可能性は低くなった。これらの結果は、本発明のペプチドが、ちょうどガラスビードを凝集させるように、これらの細菌を凝集することができることを示す。
【0034】
FloがE.coliの成長又は生存可能性に対して効果を及ぼすか否かを見極めるために、ペプチドと一緒にインキュベートされた細菌細胞を培地内に置き、そして撹拌しながらインキュベートした。図4Aは、2mg/mlのPHYTOFLOC又はFloと共に、又はこれらなしでインキュベートされた培養の細菌成長を示す。これらの成分のいずれか一方の存在において、細菌培養成長の強力な阻害が認められた。合成型Floの潜在的な抗菌効果を図4Bにおいてより詳細に研究した。図4Bは、用量に依存する抗菌性成長応答を示す。ほぼ100μg/mlのIC50で、低Flo濃度で細菌をインキュベートしたときに既に阻害効果が検出可能である。負の対照として使用された高濃度のウシ胎仔アルブミンと共にインキュベートすることにより、抗菌効果はFlo蛋白質に対して特異的であることが示される。
【0035】
培養のインキュベーションを延長したあと、成長が再開した。このことは、少数の細菌がFloの殺菌活性に対する耐性を示したこと、及び、いくつかの細菌が結局のところ逃げたことを示唆する。これらの2つの可能性を区別するために、2サイクルでペプチドと共にインキュベートされた細菌の培養、及び、成長阻害効果から逃れた細菌の培養を捕集した。細菌の耐性状態に達しているかどうかについて対処するために、これらの細胞をFloの添加により再び攻撃した(図4C)。ここでもやはり、ペプチドは細胞成長を阻害し、そしてその効果は、ペプチドとのインキュベーションにより選択されたことがない細胞で観察された効果とは区別できなかった。このことは、Floの抗生効果に対する細菌耐性の形成が、検出可能なレベルにまで発生することはないことを示す。インキュベーション延長時の細胞成長は、Floに対する細菌の固有耐性からではなく、おそらく何らかの細菌の逃避から、例えばペプチドの分解が発生したために生じたものである。
【0036】
E.coli培養成長がFloによって本当に阻害されること、及び、観察された効果が単に凝集効果から生じるものではないことを確認するために、種々異なる時点に相当する細胞抽出物をSDS-PAGE電気泳動法によって分解した。ペプチド添加後E.coli蛋白質の量の僅かな減少が数回に認められた(図4D、データは示さず)。このことは、Floの抗菌効果を示している。しかし多くの細胞が、少なくともこれらのアッセイ条件において、細菌ペレット内に残っている蛋白質レベルによって示されるように、この処理を生き延びることができる。成長培地内でさらにインキュベートされると、Floで処理されている細菌は、より多くの蛋白質を合成しなかった。このことは、対照細胞において、培養の光学濃度の増大に合わせて、蛋白質含量が著しく増大するのとは対照的である(図4C及びD)。このことは、FloがE.coli代謝をブロックし、Floが静菌活性を有することを示している。総合的に見て、これらの結果はFloの抗生効果を実証する。
【0037】
我々が得た結果は、融合蛋白質としてE.coliから高収量のFlo蛋白質を得ることができることを示す。
【0038】
凝固試験の結果は、合成型及び細菌性生成型のFloポリペプチドの凝固活性が、PHYTOFLOCを使用して得られたものよりも一層効率的であることを示す。水清澄化、ガラスビードの凝固及びE.coli細胞の凝集に関して2つのモデルを使用して、この効果を観察した。これらの発見は、合成型又は組換え型のFloペプチドが効率的な水浄化の顕著な特徴を有する。
【0039】
Floポリペプチドの配列の検査は、この配列が著しく正の電荷を有することを示した。これは、いわゆるペプチド性抗生物質を連想させた。ペプチド性抗生物質は、静菌活性又は殺菌活性を示す動物及び植物に見出された正電荷ペプチドである(Schroeder, J.-M.(1999) Epithelial peptide antibiotics. Biochem. Pharmacol. 57, 121-134)。このことは、モリンガ種子抽出物の抗菌活性が従来より実証されていることも合わせて、Floの考えられ得る抗菌活性を試験することを我々に促した。合成Floポリペプチドが細菌を凝集するだけでなく、細菌培養成長の予防もすることを我々は見出した。このことはFloが静菌活性又は殺菌活性を及ぼすことを示唆する。
【0040】
既に述べたように、その他の微生物も試験した。この更なる研究をここに詳細に示す。この研究の目的は、代表的なグラム陽性及びグラム陰性の細菌のパネルに対するPHYTOFLOC及びFlo双方の抗菌効果を決定することであった。ほとんどの抗菌性アッセイは、所与の薬剤が液体培地における濁りを生じさせる細菌成長を防止する能力を測定する。慣例により、「可視」濁りを導く成長を阻害する最低薬剤濃度は、最小阻害濃度又はMICと呼ばれる(National Committee for Clinical Laboratory Standards, 2000)。この最小阻害濃度は、薬剤が細菌分裂をブロックする適性に関する情報を提供する。しかしPHYTOFLOC及びFloの両方は、可溶性マクロ分子及びおそらく微生物を沈澱させる付加的な能力を共有している。この能力は、可視凝集体の形成を引き起こし、その結果、細菌成長の不存在においても培地を濁らせる。従って、PHYTOFLOC及びFloの抗菌効果を試験する際には、別の戦略が必要となる。
【0041】
第2の選択肢は、液体培地において試験薬剤に細菌を暴露し、次いでこれらを栄養寒天プレート上に継代培養することにある。コロニーを生じさせる生物の数(コロニー形成ユニット又はCFU)は、生き残った生物を表し、その数を管内に接種された細菌の元の数と比べることができる。典型的には、栄養ブイヨンと、試験薬剤の2倍連続希釈物とを含有する一連の管に細菌(最終濃度105〜106CFU/ml)を接種し、24時間にわたってインキュベートし、次いで平板培養して、上述のように生き残った細菌の数を測定する。対照の薬剤非含有培地内の細菌はこの時間経過中に3〜4log 10 CFU/mlだけ成長していることになる。阻害濃度の薬剤を含有する管内では、細菌は成長を示さないか、又は可視カウントの若干の減少を示すと予期される。殺菌濃度の薬剤を含有する管内では、細菌は、元の接種材料に比較して可視カウントにおいて≧3 log10 CFUだけ損失したと予期される。このような殺菌効果をもたらす最低薬剤濃度は、最小殺菌濃度(MBC)と呼ばれる(National Committee for Clinical Laboratory Standards, 2000)。
【0042】
細菌を継代培養することによりMIC及びMBCを決定することは適正な選択肢ではあるものの、PHYTOFLOC及びFloに関しては、2つの落とし穴を考えなければならない。第1に、これらの化合物は細菌を凝集させ、ひいては、プレート上でコロニーを誤って低くカウントしてしまうおそれがある。確かに、単一細菌体が寒天プレート上に1コロニーを生じさせる一方、10〜100の細菌から成る凝集体もまた、1つの単一コロニーを生じさせることになる。このことは、抗菌効果の過大評価を招くおそれがある(可視細菌の数が多いにもかかわらずコロニーが少ない)が、しかし光学顕微鏡によって合理的に良好にモニターすることができる。
【0043】
第2に、培地からマクロ分子が沈澱すると、その結果、細菌に対する栄養制限が生じることがある。従って、抗菌効果が実際にはエネルギー不足の間接的な結果である場合に、その抗菌効果が誤って試験化合物に帰せしめられるおそれがある。このことは本発明の試験においてはおそらくあり得ない。なぜならば、実験用成長培地は、炭水化物及びNH4+を可溶性小分子(例えばグルコース及びアミノ酸)の形で提供し、これらの分子は明らかに、試験化合物によって凝集させられることはないからである。対照として、PHYTOFLOC及びFloの固有の効果を、化合物を補充された又は補充されない無栄養緩衝液中でも試験した。
【0044】
微生物、成長条件及び化学物質:試験細菌を表1に要約する。これらの細菌は、幾つかの代表的なグラム陽性及びグラム陰性の病原体を含む。これらの生物を、Mueller Hintonブイヨン(MHB; Difco Laboratories, Detroit, Mich.)中で、又は4%の血液を補充されたComumbia寒天プレート(Becton Dickinson Microbiology Systems, Cockeysville, Md.)上で37℃でエアレーションを施さずに成長させた。或る試験の場合、トリプシン大豆寒天(TSA;Difco)及び脳心臓輸液(BHI; Difco)を使用することにより、考えられ得る培地の効果を研究した。10%(vol/vol)のグリセロールを補充した培地内に、細菌ストックを-70℃で凍結して維持した。
【0045】
【表1】
【0046】
300mg/mlの蛋白質抽出物を含有するストック溶液中にPHYTOFLOCを提供した。製造業者によって推奨される通り、1つのストックを4℃で維持した。第2のストックをアリコートに分配し、これらのアリコートを-20℃で保存した。凍結ストックを利用前に解凍し、1回だけ使用した。これらのストックはPHYTOFLOC抗菌活性に関して安定的であった。Floを乾燥粉末として提供した。これを4℃で維持し、使用直前に滅菌H2O中に希釈した。その他の全ての化学物質は試薬等級の商業的に入手可能な製品であった。
【0047】
抗菌感受性試験:PHYTOFLOC又はFloの2倍連続希釈物を、適正な緩衝液又は栄養培地(PHYTOFLOCの場合には1ml、Floの場合には0.2ml)を含有するポリスチレン管内に分配した。1つの試験をポリプロピレン管内でも行った。これらの管に最終濃度約5 x 105 CFU/mlの試験細菌を接種し、そして37℃でこれらの管をインキュベートした。24時間のインキュベーション後、各管の0.01及び0.1容積を、上述のように栄養寒天上に広げ、そして、コロニーのカウント前にプレートをさらに24時間にわたって37℃でインキュベートした。元の接種材料と比較して、細菌成長を阻害するPHYTOFLOC又はFloの最低濃度としてMICを定義した。元の接種材料と比較して、≧99.9%だけ可視カウントを減少させる最低薬剤濃度としてMBCを定義した。薬剤を含有しない管及びMIC付近の管から採取した細菌を、細菌凝集及び総形態変化に関して位相差顕微鏡法によって試験した。
【0048】
時間 - 死滅試験:Floによる細菌死滅の動的特性を、上述の方法により(Entenza他,1997)によって、1つの代表的なStaphylococcus aureus及び1つのEscherichia coli(表1)に対して研究した。手短に云えば、一晩の培養から得られた細菌を、予加熱した新鮮培地を含有する10mlガラス管内に接種して、最終濃度を106CFU/mlにした。接種直後、Floをそれぞれ2mg/ml及び20mg/mlの濃度で添加した。これはS. aureusに関しては、MIC(2mg/ml)及び4xMBC(20mg/ml)に相当し、そして、E.coliに関しては、サブMIC(2mg/ml)及び2xMIC(20mg/ml)に相当した。薬剤添加の前及び後の種々の時点で、培養試料を取り出し、連続希釈し、そして上述のようにコロニーをカウントするために栄養寒天上で平板培養した。
【0049】
緩衝液中の細菌成長及び細菌生存に対するPHYTOFLOCの影響:PHYTOFLOCの効果が溶液中の栄養の存在に依存するか否かを見極めるために、pH6, 7又は8で50mM KPO4中に希釈された、増大する濃度のPHYTOFLOCに暴露した。管からの継代培養を上述のように24時間後に実施し、そして生存コロニーの数を測定した。図7は、pH7で得られた結果を示す。細菌はプレーン緩衝液中に懸濁されたので、細菌はPHYTOFLOCを含有しない対照管内では成長しなかった。PHYTOFLOCの存在において、微生物は、S. aureusに関しては濃度0.75mg/lまで、E.coliに関しては濃度50mg/lまで生き残り、そしてこれよりも高い濃度で死滅させられた(≧3 log10 CFU/mlの損失)。PHYTOFLOCはpH6で僅かに低い活性となり(図7において1希釈率分だけ右側に移動した曲線)、pH8で僅かに高い活性となった(図7において1希釈率分だけ左側に移動した曲線)。重要なことには、位相差顕微鏡法による細菌の試験は、細菌生存可能性の減少が凝集には起因せず(処理済管及び未処理管において細菌クラスターは同一であった)、むしろ、S. aureusにおいて観察可能な細菌膨潤の形の不連続的な形態変化と関連することを示した。
【0050】
従って、PHYTOFLOCは緩衝液中で真に殺菌性であることが明らかである、栄養依存的な技術であるとは考えられない。さらに、PHYTOFLOC感受性試験においてS. aureus及びE.coliに対してTSB又はBHIを使用したときには、明らかな培地効果はなかった。
【0051】
栄養ブイヨン中の細菌成長及び細菌生存に対するPHYTOFLOCの効果:図8は、KPO4緩衝液の代わりにMHB栄養ブイヨン中で実施された同様の試験の結果を示す。これから明らかなように、細菌は管のうちのほとんどで成長し、阻害及び死滅を達成するためには、より高い濃度のPHYTOFLOCが必要となる。S. aureusは12mg/mlのPHYTOFLOCによって阻害され且つ死滅させられた、対照的に、E.coliは100mg/mlもの高濃度によっても阻害されなかった。このことはグラム陽性細菌とグラム陰性細菌との間に感受性の差があり得ることを示唆しているので、付加的な生物を試験した。
【0052】
種々の細菌に対するPHYTOFLOC及びFloの抗菌活性:表2は多数のグラム陽性及びグラム陰性の生物に対する2つの試験化合物のMIC及びMBCを示す。PHYTOFLOCの抗菌活性は、S. aureus及びStreptococcus pyogenesの両方に対して再現可能に観察された。他方において、PHYTOFLOCは、Enterococcus faecalis, Bacillus subtilis及びグラム陰性細菌の欄に記載された細菌に対して(試験された濃度において)不活性であった。
【0053】
最も興味深いのは、FloがS. aureus及びS. pyogenesの両方に対してPHYTOFLOCよりも最大で10倍だけ強力であり、E.coliを10mg/lで首尾よく阻害したことである。このことはFlo又は潜在的な誘導体が、未精製PHYTOFLOC中で観察されたスペクトル制限を克服し得ることを示している。
【0054】
【表2】
【0055】
時間 - 死滅試験:図9は、50mMのpH7のKPO4中、又はMHB中で、2mg/ml及び20mg/mlのFloにS. aureus P8を暴露している間の死滅動的特性を示す。2mg/mlで、Floは辛うじて阻害性であった。他方において、20mg/mlで、Floは両試験条件において明らかに殺菌性であった。E.coliに対して用いられた同じ濃度は、この特定の試験において効果的ではなかった(データは示さず)。
【0056】
結論として、上記試験はPHYTOFLOC及びFlo双方の抗菌活性を明らかに同定する。抗菌スペクトルは制限されたものの、2つの主要な病原体、すなわちS. aureus及びS. pyogenesに対して静菌効果及び殺菌効果が再現可能に観察された。
【0057】
定義された状態を処理する一方、正常な細菌フローラを維持し、そして共生生物間の細菌多耐性の選択を回避するために、菌株特異性が有用であると云える。例えば、t-RNAシンテターゼ・インヒビター、ムピロシンは、制限された数のグラム陽性病原体(staphylococci及びS.pyogenesを含む)に対して主に活性であり、慢性保菌者から生じる厄介な多耐性ブドウ球菌を根絶するための主要薬となっており、また、表皮感染における主要薬にもなっている。同様の例が蛋白質インヒビター、フシジン酸と共に見出される。フシジン酸は、ほとんど専らブドウ球菌感染に向けられている。このような化合物は、メチシリン耐性ブドウ球菌並びに新生グリコペプチド耐性ブドウ球菌を含む多剤耐性生物の伝染を減少させるのに極めて有益である(本発明において試験したS. aureus P8がメチシリン耐性であることに注目されたい)。
【0058】
PHYTOFLOC及びFloの2つの付加的な側面を強調する必要がある。1つの側面は、活発に成長している(栄養ブイヨン中の)細菌及び成長していない(KPO4緩衝液中の)細菌の両方に対して観察されるこれらの殺菌効果である。細菌死滅は、免疫防御が制限されている(皮膚及び粘膜のコロニー化において典型的な状況である)解剖学的部位における抗菌剤の重大な特性である。しかし、成長が遅い細菌又は成長しない細菌(ほとんどのin vivo状況において主流を成す代謝状態である)を死滅させることができる薬剤は極めて少ない。ほとんどの既存の抗菌剤は、このような状況においてそれだけでは微生物を根絶することはできない。従って、このような状態におけるFloの独自の殺菌効果は注目に値する。
【0059】
第2の側面は、S. aureus及びE.coliの両方に対するFloの活性が未精製PHYTOFLOCの活性を上回るように改善されていることである。確かに、このペプチドをさらに純化すれば、これら第1のスクリーニング試験において研究されたものよりも多くの細菌に対する活性を改善し得る。この顕著な例がベータ-ラクタム形成により提供される。ペニシリンGは、グラム陽性生物に対して極めて活性であるが、しかし、E.coliに対してはさほど活性ではない。しかし、単一のNH2基を添加するだけでアンピリシンが生じる。アンピリシンは、多数のグラム陰性細菌に対して化合物を極めて効果的にする。
【0060】
結論として、PHYTOFLOC及びその誘導されたカチオン系Floは、S. aureus及びS. pyogenesを阻害して死滅させる能力を共有するが、しかし、グラム陰性細菌に対しては低活性であることが明らかになった。このような種制限は、試験化合物の作用様式に関連すると云える。生物医学的な観点からは、このスペクトル制限は臨床的な有用性を除外しない(例えば多耐性ブドウ球菌に対するムピロシン)。さらに、PHYTOFLOC及びFloは、成長しない生物に対する固有の殺菌活性を示した。このような活性は極めて重要な潜在的特性である。
【0061】
試験範囲をまた、グラム陰性レジオネラまで、さらにマイコバクテリアまで広げた。
レジオネラ及びマイコバクテリアのFloに対する感受性を下記の方法で見た:
【0062】
細菌源:細菌をティチーノの病院の飲料水から分離し、CHUVの微生物学研究所から患者菌株を得た。
【0063】
MIC( 最小阻害濃度 ) :それぞれ100μlを含有する96ウェルを有するミクロプラークを用いて、MICを測定した。成長培地はL.pneumophiliaに関してはBYEα、マイコバクテリアに関してはTSBであり、所定の濃度のペプチド又は抗生物質を含有していた。
次いで培地を2倍希釈した(濃度が5 * 108CFU/mlから5 * 106CFU/mlに希釈された細菌懸濁液1μl)。
【0064】
L.pneumophilia培養を35℃でインキュベートし、48時間後及び96時間後に結果を読み取った。マイコバクテリア培養を30℃で最大7日間にわたってインキュベートした。
MICは成長を伴う最初のウェルである。
【0065】
MBC( 最小殺菌濃度 ) :上記懸濁液50μlを固形培地BCYEα又は血液を有する寒天上に平板培養した。L.pneumophilia培養を35℃で48時間にわたってインキュベートし、マイコバクテリアに関しては最大7日間インキュベートした。
【0066】
MBC値は成長を伴わない最初のプレートである。
結果を表3及び4に示す。表3はL.pneumophiliaに関する結果を、表4はMycobacterium abscessus/chelonae及びfortuitumに関する結果を示す。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
L.pneumophiliaがFlo及びPHYTOFLOCに対して感受性であり、Flo及びPHYTOFLOCが比較的低濃度で阻害及び殺菌活性を示すことを結論することができる。
【0070】
表4の結果は、12.5mg/mlのFloのマイコバクテリアに対する阻害活性及び殺菌活性を示す。
【0071】
全体的にこれらの結果が示唆するように、水の清澄化並びに水の消毒を目的として、本発明によるペプチド(Flo、E蛋白質)を使用することができる。このことは、このようなアプローチが、一般に使用されている化学物質に代わる有益なものとなり得ることを示している。具体的には、本発明のペプチドが、化学的な水処理に付随する潜在的な毒性効果を有するとは考えられない。またモリンガ種子は現在、廃水の伝統的な処理のためだけでなく、種々の食品の調製にも使用されている。ポリペプチドによる水処理の別の利点は、例えばアルミニウム塩とは異なり、これらが良好な生物分解性を有することである。アルミニウム塩は、処理済水及び沈降された物質の汚染物質として残る。抗生作用物質として作用する本発明によるペプチドの用量は、約100μg/mlである。この用量は、一般的な抗生物質、例えばβ-ラクタムに対して使用されるのと類似の濃度範囲である。
【0072】
Flo の構造
バイオインフォマティック的なアプローチは、推定上のアルファ-ヘリックス構造の存在を予測した。円偏光二色性分光法は、コイル状二次構造を示した。それぞれH1、H2及びH3と呼ばれる配列は、Floの一次構造から差し引かれた3つのドメインを表す。
図10は、DNA及びH1, H2及びH3の対応ペプチド配列を示す。
【0073】
図面
図 1. Flo の発現及び精製の概略的な表示
A. Flo融合蛋白質発現ベクターの構造。Floコーディング配列(影をつけた四角)が、調節されたT7ファージ・プロモーターの制御下で、キチン結合ドメイン(CBD、点付きの四角)に融合された自己開裂インテイン蛋白質ドメイン(縞模様の四角)をコード化する配列の下流側に挿入された。自己開裂後にインテイン配列から解離されるFloポリペプチドの配列がその下に示されている。
【0074】
B. 精製プロセスのスキーム。融合蛋白質を含有する細菌抽出物が、キチンにリンクされた(閉じた楕円)ビードカラム上にローディングされ、融合蛋白質はそのキチン結合ドメインを介して保持される。次いでカラムはチオールと共にインキュベートされ、その結果、インテインの特異的自己開裂を引き起こし、インテインはFloポリペプチドを解離する。次いで、融合蛋白質の残りは、カラムをリサイクリングするために、洗剤緩衝液中で溶離される。
【0075】
図 2. Flo 蛋白質発現
A. 細菌抽出物のSDS PAGE分析。精製中間体の等価画分を下記のようにローディングした:IPTG誘発型細胞からの未精製抽出物(レーン1)、キチン・カラム貫流(レーン2)、自己開裂後の融合蛋白質の残存部分の溶出液(キチン結合ドメインを有するインテイン、レーン3)、蛋白質分子量マーカー(レーン4)。左側の、上側の矢印は融合蛋白質を示し(61.5kDa)、そして下側の矢印は、開裂及びFloの溶離の後の融合蛋白質を示す(55kDa)。
【0076】
B. Flo溶出液画分のトリス-トリシンPAGE分析。レーン1及び2:化学合成されたFloがそれぞれ1μg及び2μgだけローディングされた;レーン3〜8:Flo溶離の連続的な画分。右側に、MWマーカーの位置がkDaで示されている。矢印はFloポリペプチドの位置を示す。Floの二量体に相当するように泳動する微量のポリペプチドが、高濃縮画分において認められることがあった(レーン2〜6)。
【0077】
図 3. Flo の凝固活性に関するアッセイ
「材料及び方法」において説明した分光光度計セルにおいて、ガラスビード懸濁液の沈降アッセイを行った。5分間の撹拌後、PHYTOFLOC(図B)、合成Flo(パネルC)、又は細菌性発現・精製型Flo(図D)、をそれぞれ添加して、矢印によって示すように最終濃度を20μg/mlにした。図Aにおいては、同様の量の緩衝液だけを添加した。500nmにおける光学濃度測定を1秒のインターバルで行った。15分後、撹拌を停止した。被験化合物の添加前後の沈降曲線の勾配を、「材料及び方法」において説明した線状回帰計算によって評価し、そして直線として示した。
【0078】
図 4. E.coli 培養成長に対する Flo の効果
A. PHYTOFLOC種子抽出物及び細菌性Flo蛋白質の効果。対数期のE.coli培養を遠心分離し、2時間にわたって37℃でリン酸緩衝液中だけでインキュベートする(◆)か、或いは最終濃度2mg/mlのPHYTOFLOC抽出物(σ)又は合成Flo(ν)が補充されたリン酸緩衝液中でインキュベートした。次いで細菌をLB清澄培地内でA600=0.1に希釈し、撹拌しながら37℃でインキュベートした。次いで光学濃度測定値を600nmで記録した。
【0079】
B. (A)において示したように、指数的に成長するE.coli培養を処理した。但しBの場合、異なる濃度(mg/ml):0(ν), 0.1(σ), 0.25(O), 0.5(Σ), 1(λ)又は2(B)の合成Floと一緒に、細菌をインキュベートした。非特異的蛋白質対照(◆)として、2mg/mlのBSAを使用した。
【0080】
C. Floの抗生効果に対する耐性の獲得可能性に関するアッセイ。
E.coli培養は、細菌の新鮮な培養(未処理細菌)から成るか、又は、図Aのように2つの連続するラウンドで、ペプチドの存在において予めインキュベートされ、最終的に成長した細菌が捕集された培養(処理済細菌)から成った。次いで未処理細胞を緩衝液(0mg/mlFlo、◆)又はFlo(2mg/ml、λ)と一緒にインキュベートした。処理済細胞を第3サイクルに際して、緩衝液(σ)又は2mg/ml Flo(ν)と並行してインキュベートした。
【0081】
D. 合成Floと一緒に、又は合成Floを伴わずにインキュベートされた細菌による蛋白質合成。
緩衝液(マイナス記号)又は2mg/mlのFlo(プラス記号)と一緒にインキュベートされた、図Cに示された同様の容積の処理済み細胞培養を、これがインキュベートされた時点で捕集し、細菌を沈澱させ、総細胞蛋白質をSDS-PAGEによって分離し、そしてクーマシー・ブルーで染色した。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1A】Flo発現及び精製を概略的に示す図である。
【図1B】Flo発現及び精製を概略的に示す図である。
【図2A】Flo蛋白質発現を示す図である。
【図2B】Flo蛋白質発現を示す図である。
【図3A】Floの凝固活性のアッセイを示す図である。
【図3B】Floの凝固活性のアッセイを示す図である。
【図3C】Floの凝固活性のアッセイを示す図である。
【図3D】Floの凝固活性のアッセイを示す図である。
【図4A】E.coli培養成長に対するFloの効果を示す図である。
【図4B】E.coli培養成長に対するFloの効果を示す図である。
【図4C】E.coli培養成長に対するFloの効果を示す図である。
【図4D】E.coli培養成長に対するFloの効果を示す図である。
【図5】モリンガ・オレイフェラに由来する種子蛋白質、油体蛋白質及び合成ペプチドの抽出物のSDS-PAGE(ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)を示す図である。
【図6】還元条件下で抽出されたモリンガ・オレイフェラに由来する種子蛋白質及び合成ペプチドの抽出物のSDS-PAGE(ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)を示す図である。
【0083】
【図7A】50mM pH7 KPO4中の個体群分析プロフィールを示す図である。
【図7B】50mM pH7 KPO4中の個体群分析プロフィールを示す図である。
【図8A】MHB栄養ブイヨン中の個体群分析プロフィールを示す図である。
【図8B】MHB栄養ブイヨン中の個体群分析プロフィールを示す図である。
【図9A】MHB栄養ブイヨン中及びpH7, 50mM KPO4緩衝液中でのFloによるS. aureusの死滅を示す図である。
【図9B】MHB栄養ブイヨン中及びpH7, 50mM KPO4緩衝液中でのFloによるS. aureusの死滅を示す図である。
【図10】DNA配列、及びH1 H2及びH3の対応ペプチド配列を示す図である。
【0001】
発明の分野
本発明はモリンガ(Moringa)種子から得られる蛋白質、又はモリンガ種子蛋白質に由来する蛋白質に関する。
より正確には、本発明は、モリンガ種子から得られる蛋白質の群、又はモリンガ種子蛋白質に由来する蛋白質の群であって、種々異なる目的のために、例えば水処理のための凝固剤のために使用することができる蛋白質群に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
モリンガ属は、ほぼ14の植物種、具体的にはモリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera)を含む。
モリンガ種子は主として、食用油を得るために使用される。この食用油は、機械プレスを使用して抽出することができる。
【0003】
モリンガの種子は水溶性、低分子量、高塩基性の蛋白質を含有することが判っている。これらの蛋白質は汚染水処理において凝集剤として作用することができる。これらの活性化合物のいくつかの部分が分離され同定されている(Gassenschmidt, U., Jany, K.-D., Tauscher, B.,及びNiebergall, H.(1995), 「モリンガ・オレイフェラからの凝集蛋白質の分離及び特徴付け(Isolation and characterization of a flocculating protein from Moringa oleifera)」 Lam. Biochim. Biophys. Acta 1243,477-481)。1蛋白質成分MO2.1が決定されており、これが高含量のグルタミン、アルギニン及びプロリンを含む60のアミノ酸を含有することが判っている。
【0004】
国際公開第99/48512号パンフレット(LABORATOIRES SEROBIOLOGIQUES)は、モリンガ種子から抽出された1以上の蛋白質成分、例えばMO2.1の、美容分野又は皮膚科分野における使用を開示している。国際公開第00/46243号パンフレット(OPTIMA ENVIRONNEMENT SA)は、蛋白質、及び、これらの蛋白質の具体的な製造方法に関し、これらの蛋白質はモリンガ種子から抽出され、凝固剤として作用することができる。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、モリンガ種子から得られる蛋白質、又はモリンガ種子蛋白質に由来する蛋白質から成る新しい群に関する。これらの蛋白質は種々異なる目的で、例えば水処理のための凝固剤として且つ/又は抗生物質として使用することができる。具体的にはこれらの抗生物質は、抗生物質に対して耐性の臨床分離株を含むヒト病原体を効率的に死滅させる。
この新しい蛋白質群は5以上のサブ群から成る:
【0006】
第1のサブ群は、組換えプロセスに従って得られる。他の全てのサブ群は特定の抽出プロセスに従って得られる。本発明の抽出プロセスに従って得られる蛋白質を、本明細書では「E蛋白質」と呼ぶ。
【0007】
本明細書において、「抗生」という用語は、具体的には、静菌性、殺菌性、抗真菌性、又は任意のその他の細胞タイプに対する毒性、及び抗ウィルス性を意味する。
モリンガ蛋白質の組換え形を発現させ(Tauscher, B. (1994).「高等植物の凝集化合物による水処理(Water treatment by flocculant compounds of higher plants)」Plant Res. and Dev. 40, 56-70)、関連する凝固活性を実証しようという試みは成功しなかったことを述べておかなければならない。
本発明の発明者は、活性の細菌性生成型組換え型蛋白質を得るためのプロセスを開発した。
【0008】
E蛋白質は、従来技術において開示されたモリンガ蛋白質の構造とは異なる構造を有する。
本発明による蛋白質は、凝固剤として、水中だけでなく、その他の流体、例えば血液、乳、又は任意のその他の食用流体中でも作用することができる。これらの蛋白質は製薬分野及び美容分野において、具体的には国際公開99/48512号パンフレットにおいて引用されたすべての分野において使用することもできる。
本発明に関連するいくつかの実施例を、下記の図面と一緒に以下に議論する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
下記の実施例において、組換えプロセス、及びモリンガ種子からの特定のE蛋白質抽出プロセスと共に詳細に本発明を説明する。その結果得られた蛋白質を、モリンガ種子抽出物の商業的な調製物であるPHYTOFLOCと比較する。手短に云えば、PHYTOFLOCを得るために、モリンガの粉砕されたプレスケークを、1:5w/v比で塩水と混合する。抽出物を濾過し、75℃で加熱する。沈澱した固形物を遠心分離によって除去し、清澄化された液体を、5kDカットオフ膜を通した濾過によって濃縮する。
【0010】
材料及び方法
プラスミド
MO2.1ポリペプチド配列をコード化するように、DNA配列を設計した(Gassenschmidt他、1995、図1A参照)。このポリペプチドの組換え形を本明細書においてFloと呼ぶ。Horton他(1989)によって記載されているように、PCRアセンブリ戦略を用いて二本鎖オリゴヌクレオチドを合成した。このオリゴヌクレオチド配列を、そのコドンがE.coli発現のために最適化されるように、そして、SapI及びPstI制限部位がその先端に配置されるように設計した。IMPACT発現系(アフィニティ・キチン結合タグ系を用いたインテイン媒介性精製(Intein Mediated Purification with an Affinity Chitin-binding Tag system), New England Biolab, Inc.)を、モリンガ種子Flo蛋白質をE.coliにおいてクローニングして発現させるために選択した。このオリゴヌクレオチドを、SapI/PstIで消化されたpTYB11ベクターにリゲートし、これにより、標的蛋白質FloのN末端、内部蛋白質自己開裂部位(インテイン)、及びキチン結合ドメインをコード化する配列を融合した。陽性クローンを配列決定により検証した。
【0011】
蛋白質の発現及び精製
pTYBベクターはLacリプレッサー制御型T7プロモーター及びlacI遺伝子を使用し、これにより、融合遺伝子発現の緊縮調節を可能にする。T7プロモーターのすぐ下流側に配置されたlacオペレーター配列にlacリプレッサーを結合することにより、IPTG誘発なしで融合遺伝子の基礎発現が抑制される。E.coliはER2566であった。それというのもER2566は、lacプロモータの制御下でT7 RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを担持するからである。融合蛋白質の発現を誘発するために、200rpmで撹拌しながら、27℃で2時間にわたってA6000.5〜0.6で指数的に成長する培養に0.3mM IPTGを添加した。細菌培養、抽出調製及び精製の条件、並びに、使用される緩衝液は、製造業者によって推奨される(New England Biolab)通りであった。手短に云えば、1.5リットルの細菌培養容積(A600=0.5〜0.6)を遠心分離し、細胞を超音波処理により溶解させる。抽出物を遠心分離により清澄化し、そして平衡キチン・ビード(50〜100μm粒度)カラム上にローディングした。洗浄後、50mM DTTを含有する緩衝液をカラムに充填し、これを室温で40時間にわたってカラム内でインキュベートすることにより、インテイン含有融合ペプチドの自己開裂を可能にする。Floを溶離し、ゲル電気泳動法によりその存在を確認した。最後に、前駆体蛋白質をストリッピング緩衝液で溶離し、カラムをリサイクリングした。
【0012】
細胞蛋白質抽出物全体を10%SDS-PAGEゲル(Laemmli, 1970)を用いて分析した。蛋白質定量化のために、シプロ-オレンジを使用してゲルを染色し、走査用ソフトウェア(STORM 840, Pharmacia Amersham Biotech)を使用して分析した。これにより、並列にローディングされたBSAの種々の量と直接的に比較することにより、総抽出物に対する融合蛋白質の比を評価することが可能になる。溶離されたFloポリペプチドは、そのサイズが小さいことにより、トリシン-ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動法(Schagger他、1987)を介して分析した。ゲルの固定及び染色に際しては、小型塩基性蛋白質に適したプロトコルに従った(Steck他1980)。
【0013】
化学合成された蛋白質
本発明のいくつかの組換え型の蛋白質及びE蛋白質を標準的な手順に従って合成した。
【実施例】
【0014】
E 蛋白質 - 実施例 1
モリンガ・オレイフェラ種子からの未精製油体蛋白質抽出物の調製:
モリンガの乾燥種子の殻を手で除去し、4容積の低温(4℃)均質化緩衝液(1mM EDTA, 10mM KCl, 1mM MgCl2, 2mM ジチオスレイトール及び0.6Mサクロースを含有する0.15Mトリシン緩衝液pH 7.5)中で、最大出力で40秒にわたってポリトロン(Polytron)を使用して均質化した。ホモジェネートをナイロン膜(20μm孔径)を通して濾過し、これにより大型粒子及び種子破片を除去した。清澄化されたホモジェネートを1容積の浮遊緩衝液(0.4Mサクロース, 1mM EDTA, 10mM KCl, 1mM MgCl2及び2mM ジチオスレイトールを含有する0.15Mトリシン pH 7.5)で希釈し、そして10,000gで30分間にわたって遠心分離した。遠心分離された懸濁液の表面から油体を捕集し、2M NaClを含有する0.5容積の均質化緩衝液に添加し、これにより再懸濁させた。2M NaClと、0.6Mサクロースの代わりに0.25Mサクロースとを含有する更なる0.5容積の均質化緩衝液を油体懸濁液表面に添加し、続いて30分間にわたって10,000gで遠心分離した。遠心分離された懸濁液の表面から油体を捕集し、0.5容積の均質化緩衝液中に再懸濁させ、続いて30分間にわたって10,000gで再遠心分離した。洗浄手順を繰り返し、油体を均質化緩衝液中で再懸濁させることにより、1リットル当たり100mgの最終濃度にし(一般に20容積の均質化緩衝液を油体に添加することにより達成される)、そして4℃で保存した。
こうして調製された未精製油体蛋白質抽出物を、SDSの添加後にSDSゲル電気泳動法により分析した。
【0015】
E 蛋白質 - 実施例 2
モリンガ・オレイフェラ種子からの精製油体蛋白質抽出物の調製:
最終遠心分離工程後に緩衝液表面から油体を回収し、続いて有機溶剤、例えばアセトン、ヘキサン又はその他を添加して、付随するトリアシルグリセリドを除去することにより、実施例1に従って調製された未精製油体蛋白質を精製した。次いで、2分間13,500gで遠心分離することにより、溶剤処理された油体蛋白質を回収した。遠心分離された試料の表面から油体蛋白質を回収し、これを有機溶剤(アセトン、ヘキサン又はその他)で洗浄し、そして同じ条件下で再遠心分離した。次いで、ジエチルエーテル中に油体蛋白質を再懸濁させることにより、第2の洗浄工程を行い、そして2分間にわたって13,500gでこれを再遠心分離した。油体蛋白質を最後の遠心分離工程から回収し、クロロホルムの2:1メタノール混合物1.5容積を含有する超高純度(UHP)水中に再懸濁させた。これを4分間にわたって10,000gで遠心分離し、精製された油体蛋白質を水・溶剤界面から分離した。分離された蛋白質を、次いで水/クロロホルム/メタノール溶液で2回洗浄し、4分間にわたって10,000gで遠心分離した。精製された油体蛋白質を次いで水・溶剤界面から回収し、窒素ガス雰囲気下で有機溶剤を蒸発させることにより、乾燥蛋白質調製物を形成した。こうして調製された精製油体蛋白質は4℃で無期限に保存することができた。
こうして調製された精製油体蛋白質抽出物を、SDSの添加後にSDSゲル電気泳動法により分析した。
【0016】
E 蛋白質 - 実施例 3
モリンガ・オレイフェラ種子からの未精製種子蛋白質抽出物の調製:
モリンガの乾燥種子の殻を手で除去し、4容積の低温(4℃)均質化緩衝液(1mM EDTA, 10mM KCl, 1mM MgCl2及び0.6Mサクロースを含有する0.15Mトリシン緩衝液pH 7.5)中で、最大出力で40秒にわたってポリトロンを使用して均質化した。ホモジェネートをナイロン膜(20μm孔径)を通して濾過し、これによりトリグリセリド及び油体を除去した。残りの固形物質を捕集し、これをプレスケークと称した。プレスケークを5容積の塩溶液中に再懸濁させ、続いて1時間にわたって撹拌することにより、種子蛋白質を抽出した。5分間にわたって1,500gで遠心分離し、続いて目の細かい綿布を通してデカントすることにより、抽出された種子蛋白質を回収した。デカントされた種子蛋白質抽出物を静かに撹拌しながら85℃に加熱し、続いて室温まで冷却した後、5分間にわたって1,500gで遠心分離した。上澄みを捕集し、室温で保存することができた。
こうして調製された未精製種子蛋白質抽出物を、SDSの添加後にSDSゲル電気泳動法により分析した。
【0017】
E 蛋白質 - 実施例 4
モリンガ・オレイフェラ種子からの精製種子蛋白質抽出物の調製:
実施例3に従って手順を続けた。但し実施例3とは異なり、この実施例4では、還元剤、例えば1%ジチオスレイトール(DTT)を抽出塩溶液に添加した。こうして、多くの多量体及び単量体蛋白質のコンフォメーションに関与するジスルフィド結合を低減し、このジスルフィド結合を、続く遠心分離工程及び濾過工程中に除去した。
こうして調製された種子蛋白質抽出物を、SDSの添加後にSDSゲル電気泳動法により分析した。
【0018】
E 蛋白質配列
E蛋白質のうちの1つを配列決定することにより、その末端の一方が配列RGPAFRRで始まることが判った。
【0019】
凝固試験
分光光度計セル(104QS/HELLMA)内で2ml容積で試験を行った。凝固活性を評価するために、3.5〜7μm直径のガラスビード(Sheriglass 5000, Potters-Ballotini)の100mg/ml懸濁液を50mMリン酸緩衝液,pH=7.0中に希釈して、擬似濁り水にした。800rpmで連続的に撹拌を維持し、OD 500nmを毎秒毎に、Perkin-Elmer 552分光光度計で測定した(LabVIEW software/National Instruments Corporation)。5分間の連続的な撹拌後、被験化合物を添加して最終濃度20μg/mlにし、そして撹拌を15分間続けた。試験前に活性化合物をリン酸緩衝液10mM, pH=7.0(E蛋白質、PHYTOFLOC及び細菌性生成型Flo)又は蒸留水(合成型Flo)中に希釈した。
【0020】
分析法
凝集効率を定量化するために、凝集性調製物の添加の4分前(基礎沈降)、及び凝集性調製物の添加から4分後(凝固媒介性沈降)に相当する時点で、線形回帰を実施した。分当たりのODを引き算したものに1000を掛算する(Δ勾配)ことにより、凝集性沈降と基礎沈降との差を計算した。
【0021】
抗生効果
E.coli ER2566を、上述のように37℃で、LB培地内で対数期(A600=0.5〜0.6)まで成長させた。培養を遠心分離し、同一容積の10nMリン酸緩衝液pH=7.0中で再懸濁させ、E蛋白質、PHYTOFLOC(2mg/ml)、合成型Flo(0.1mg/ml〜2mg/ml)、キャリヤ(緩衝液)又はBSA(2mg/ml)を添加した。2時間にわたり37℃でインキュベートしたあと、LBを細菌培養に添加し、これによりA600=0.1を得た。全ての培養を200rpmで37℃でインキュベートし、培養成長をA600測定を通して追跡した。
【0022】
多くのその他の微生物を試験した。これらの微生物はStaphylococcus aureus, Streptococcus pyrogenes, Enterococcus faecalis, Bacillus subtillis, Klebsiella oxytoca, Pseudomonas aeruginosaを含み、第2の試験グループにおいてはまた、Legionella pneumophillia, Mycobacterium abscessus/chelonae及びMycobacterium fortuitumを含む。
【0023】
Flo の構造
さらにFloの構造を分析した。
【0024】
結果
序文
他のモリンガ種子抽出物と関連する凝固活性についての従来の研究は、この活性が小分子量蛋白質と協働して浄化作用を発揮することを示した。これらの蛋白質のうちの1つの配列は、正電荷6kDaポリペプチドとして決定された(Tauscher, 1994)。しかし、この蛋白質の組換え形を発現させ、そして関連する凝固活性を実証しようとする従来の試みは成功には至らなかった。
【0025】
蛋白質のクローニング、発現及び精製
この蛋白質配列を使用して、合成遺伝子を再合成した。この合成遺伝子は組換え型モリンガ種子蛋白質の、E.coliにおける発現に最適となる。この蛋白質をFloと称した。Floがその性質上、高度に正の電荷を有することを考えて、融合蛋白質としての発現を選んだ。Flo蛋白質が、インテイン配列とキチン結合ドメインとから成る異種ポリペプチドとの融合体として発現されるように、発現ベクターを設計した(図1A)。キチン結合ドメインは、キチン含有クロマトグラフィ樹脂を使用して、細菌蛋白質の残余から融合蛋白質を容易に分離することを可能にする。インテインは、チオール化合物が添加されると、制御された自己触媒プロセスにおいて、前駆体蛋白質の翻訳後開裂を可能にするアミノ酸配列である(概説としてPerler, 2000参照、図1B)。
【0026】
IMPACT発現系のpTYBベクターは、lacリプレッサーで制御されるT7プロモーター駆動型系を使用し、これによりE.coliにおける高レベルの発現及び密な転写調節を達成する。lacリプレッサー・インヒビターを添加すると、lacリプレッサー系は抑制解除され、T7 RNAポリメラーゼの発現を可能にし、そしてT7 プロモーターの下流側のlacオペレーター配列を遊離させる。誘発条件下で成長させられた細菌の抽出物から、期待サイズの融合蛋白質の過剰発現を特異的に得た(図2A、レーン1、データは示していない)。全ての特異的な蛋白質の含量を定量化することにより、誘発された細胞の蛋白質含量のほぼ30%がFlo融合蛋白質から成ることが示された。キチン・ビーズ含有カラム上に調製物をローディングした。汚染性の細菌性蛋白質を洗浄除去し、そしてチオール含有還元性化合物と一緒にインキュベートすることにより、融合蛋白質を開裂した。このことは、クロマトグラフィ樹脂に付随したままの融合蛋白質のキチン結合部分から遊離された、細菌性発現型天然Floポリペプチドの溶離及び回収を可能にした(図2B)。最後に、インテイン配列及びキチン結合ドメインを含む前駆体蛋白質を溶離した(図2A、レーン3)。既知量の化学合成型Floポリペプチドと直接的に比較することにより、細菌性生成型Floポリペプチドをゲル上で直接的に定量化した。細菌培養1リットル当たりほぼ1mgの精製Flo蛋白質を得た。
【0027】
E 蛋白質
図5は、モリンガ・オレイフェラに由来する種子蛋白質、油体蛋白質及び合成ペプチドの抽出物のSDS-PAGE(ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)を示す図である。
レーン1:標準蛋白質(Sigma);
レーン2:還元条件下で抽出された種子蛋白質;
レーン3:還元条件下で抽出された全油体蛋白質(希釈せず);
レーン4:還元条件下で抽出された全油体蛋白質(10倍希釈);
レーン5:還元条件下で抽出された全油体蛋白質(100倍希釈);
レーン6:空
レーン7:非還元条件下で抽出された種子蛋白質;
レーン8:非還元条件下で抽出された全油体蛋白質(希釈せず);
レーン9:非還元条件下で抽出された全油体蛋白質(10倍希釈);
レーン10:非還元条件下で抽出された全油体蛋白質(100倍希釈)。
【0028】
モリンガ・オレイフェラから抽出された種子蛋白質抽出物及び油体蛋白質抽出物は類似の蛋白質を含有することを、ゲルが示す。非還元条件下で抽出された蛋白質は、分子量がほぼ17kダルトンの1つの主要蛋白質画分を含有するのに対し、還元条件下で抽出された蛋白質は、分子量がほぼ6.5kダルトン及び5.5kダルトンの2つの主要蛋白質画分を含有する。
【0029】
図6は、還元条件下で抽出されたモリンガ・オレイフェラに由来する種子蛋白質及び合成ペプチドの抽出物のSDS-PAGE(ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)を示す図である。
レーン1:脱脂種子(プレスケーク)からの種子蛋白質抽出物;
レーン2:合成ペプチド(Gassenschmidt他、1995に基づく配列);
レーン3:全破砕種子からの種子蛋白質抽出物;
レーン4:水に対する透析後の、脱脂種子(プレスケーク)からの種子蛋白質抽出物;
レーン5:超低分子量蛋白質標準(Sigma);
レーン6:脱脂種子(プレスケーク)からの種子蛋白質抽出物;
レーン7:合成ペプチド(Gassenschmidt他、1995に基づく配列);
レーン8:全破砕種子からの種子蛋白質抽出物;
レーン9:水に対する透析後の、脱脂種子(プレスケーク)からの種子蛋白質抽出物。全ての抽出物は2.5μg総蛋白質でゲル上にローディングされる。
【0030】
その結果が示すように、モリンガ・オレイフェラから抽出された報告済みの蛋白質配列(Gassenschmidt他、1995に基づく配列)で生成された合成ペプチドは、SDS-PAGEにおいて、ほぼ6.0kダルトンの分子量(レーン2及び7)に相当する位置で泳動し、この合成ペプチドは、本特許出願の範囲の抽出手順によって得られる画分のいずれにも相当しない。全ての抽出物からの全ての蛋白質画分は凝集活性を示した。
【0031】
凝固活性
Floの粒子凝固特性を評価するために、連続的に混ぜながらガラスビードの懸濁液を擬似濁り水として使用した。懸濁液中のビードによって光が散乱することから生じる光学濃度減少を追跡することにより、沈降を評価した。粒子沈降の基礎速度の5分間の記録後、被験化合物を添加し、勾配の変化を下記のように計算した:Δ勾配=(凝集剤添加後の勾配値−凝集剤添加前の勾配値)X1000。緩衝液の添加の前又は後では沈降はほとんど発生しなかった(図3A)。しかしPHYTOFLOCを使用すると効率的な凝固が認められた(図3B)。同様の量の化学合成型Flo(図3C)、細菌性生成型Flo(図3D)又はE蛋白質を使用すると、同様の沈降速度が観察された。
【0032】
興味深いことに、これらの試験条件下において、合成型又は組換え型のFlo又はE蛋白質の特異的な凝固活性は、PHYTOFLOCを使用して評価されたものよりも高い。PHYTOFLOCは幾つかの主要ポリペプチドを含有しているので、凝固効果に直接に関与する成分が、その他の蛋白質調製物と比較して、不足した状態で提示される可能性がある。別の説明においては、種子抽出物は凝固インヒビターを含有することがある。確かに、組換え型又は合成型のFloとPHYTOFLOCとの直接的なサイズ比較が示すように、FloはPHYTOFLOC中に検出されたポリペプチドとはマッチせず、Floは天然発生型ポリペプチドのフラグメントから成ると考えられる。いずれの場合にも、これらの結果は、Floが凝固アッセイにおいて高活性であることを示す。
【0033】
抗生効果
モリンガ種子抽出物は細菌を凝集させ、抗菌活性を有することが示されている(Eilert他、1981;Madsen他、1987)。凝集活性の活性原理は同定されず、これに対して抗菌活性は、植物により合成されたベンジルイソチオシアネート誘導体、つまり既知の抗菌性化合物に起因すると考えられた。それでもなお我々は、E.coliに対するFloポリペプチド及びE蛋白質の潜在的な効果を特徴付けする準備をした。これを行うために、指数的に成長する培養から得られた細菌を本発明のペプチドと一緒にインキュベートした。目視検査が明らかにしたのは、時間と共にサイズが成長する定義済みの粒子又はフロックが出現することにより示されるように、ペプチドが細菌を凝集させることである。撹拌せずに、ペプチドと一緒にインキュベートされた細菌は急速に沈降した。これは、緩衝液だけと一緒にインキュベートされた細菌が懸濁液中に残されたままとなるのとは異なる。固形成長培地上に本発明のペプチドと一緒にインキュベートされた培養を広げると、対照培養と比較して、産出されるコロニーの生存可能性は低くなった。これらの結果は、本発明のペプチドが、ちょうどガラスビードを凝集させるように、これらの細菌を凝集することができることを示す。
【0034】
FloがE.coliの成長又は生存可能性に対して効果を及ぼすか否かを見極めるために、ペプチドと一緒にインキュベートされた細菌細胞を培地内に置き、そして撹拌しながらインキュベートした。図4Aは、2mg/mlのPHYTOFLOC又はFloと共に、又はこれらなしでインキュベートされた培養の細菌成長を示す。これらの成分のいずれか一方の存在において、細菌培養成長の強力な阻害が認められた。合成型Floの潜在的な抗菌効果を図4Bにおいてより詳細に研究した。図4Bは、用量に依存する抗菌性成長応答を示す。ほぼ100μg/mlのIC50で、低Flo濃度で細菌をインキュベートしたときに既に阻害効果が検出可能である。負の対照として使用された高濃度のウシ胎仔アルブミンと共にインキュベートすることにより、抗菌効果はFlo蛋白質に対して特異的であることが示される。
【0035】
培養のインキュベーションを延長したあと、成長が再開した。このことは、少数の細菌がFloの殺菌活性に対する耐性を示したこと、及び、いくつかの細菌が結局のところ逃げたことを示唆する。これらの2つの可能性を区別するために、2サイクルでペプチドと共にインキュベートされた細菌の培養、及び、成長阻害効果から逃れた細菌の培養を捕集した。細菌の耐性状態に達しているかどうかについて対処するために、これらの細胞をFloの添加により再び攻撃した(図4C)。ここでもやはり、ペプチドは細胞成長を阻害し、そしてその効果は、ペプチドとのインキュベーションにより選択されたことがない細胞で観察された効果とは区別できなかった。このことは、Floの抗生効果に対する細菌耐性の形成が、検出可能なレベルにまで発生することはないことを示す。インキュベーション延長時の細胞成長は、Floに対する細菌の固有耐性からではなく、おそらく何らかの細菌の逃避から、例えばペプチドの分解が発生したために生じたものである。
【0036】
E.coli培養成長がFloによって本当に阻害されること、及び、観察された効果が単に凝集効果から生じるものではないことを確認するために、種々異なる時点に相当する細胞抽出物をSDS-PAGE電気泳動法によって分解した。ペプチド添加後E.coli蛋白質の量の僅かな減少が数回に認められた(図4D、データは示さず)。このことは、Floの抗菌効果を示している。しかし多くの細胞が、少なくともこれらのアッセイ条件において、細菌ペレット内に残っている蛋白質レベルによって示されるように、この処理を生き延びることができる。成長培地内でさらにインキュベートされると、Floで処理されている細菌は、より多くの蛋白質を合成しなかった。このことは、対照細胞において、培養の光学濃度の増大に合わせて、蛋白質含量が著しく増大するのとは対照的である(図4C及びD)。このことは、FloがE.coli代謝をブロックし、Floが静菌活性を有することを示している。総合的に見て、これらの結果はFloの抗生効果を実証する。
【0037】
我々が得た結果は、融合蛋白質としてE.coliから高収量のFlo蛋白質を得ることができることを示す。
【0038】
凝固試験の結果は、合成型及び細菌性生成型のFloポリペプチドの凝固活性が、PHYTOFLOCを使用して得られたものよりも一層効率的であることを示す。水清澄化、ガラスビードの凝固及びE.coli細胞の凝集に関して2つのモデルを使用して、この効果を観察した。これらの発見は、合成型又は組換え型のFloペプチドが効率的な水浄化の顕著な特徴を有する。
【0039】
Floポリペプチドの配列の検査は、この配列が著しく正の電荷を有することを示した。これは、いわゆるペプチド性抗生物質を連想させた。ペプチド性抗生物質は、静菌活性又は殺菌活性を示す動物及び植物に見出された正電荷ペプチドである(Schroeder, J.-M.(1999) Epithelial peptide antibiotics. Biochem. Pharmacol. 57, 121-134)。このことは、モリンガ種子抽出物の抗菌活性が従来より実証されていることも合わせて、Floの考えられ得る抗菌活性を試験することを我々に促した。合成Floポリペプチドが細菌を凝集するだけでなく、細菌培養成長の予防もすることを我々は見出した。このことはFloが静菌活性又は殺菌活性を及ぼすことを示唆する。
【0040】
既に述べたように、その他の微生物も試験した。この更なる研究をここに詳細に示す。この研究の目的は、代表的なグラム陽性及びグラム陰性の細菌のパネルに対するPHYTOFLOC及びFlo双方の抗菌効果を決定することであった。ほとんどの抗菌性アッセイは、所与の薬剤が液体培地における濁りを生じさせる細菌成長を防止する能力を測定する。慣例により、「可視」濁りを導く成長を阻害する最低薬剤濃度は、最小阻害濃度又はMICと呼ばれる(National Committee for Clinical Laboratory Standards, 2000)。この最小阻害濃度は、薬剤が細菌分裂をブロックする適性に関する情報を提供する。しかしPHYTOFLOC及びFloの両方は、可溶性マクロ分子及びおそらく微生物を沈澱させる付加的な能力を共有している。この能力は、可視凝集体の形成を引き起こし、その結果、細菌成長の不存在においても培地を濁らせる。従って、PHYTOFLOC及びFloの抗菌効果を試験する際には、別の戦略が必要となる。
【0041】
第2の選択肢は、液体培地において試験薬剤に細菌を暴露し、次いでこれらを栄養寒天プレート上に継代培養することにある。コロニーを生じさせる生物の数(コロニー形成ユニット又はCFU)は、生き残った生物を表し、その数を管内に接種された細菌の元の数と比べることができる。典型的には、栄養ブイヨンと、試験薬剤の2倍連続希釈物とを含有する一連の管に細菌(最終濃度105〜106CFU/ml)を接種し、24時間にわたってインキュベートし、次いで平板培養して、上述のように生き残った細菌の数を測定する。対照の薬剤非含有培地内の細菌はこの時間経過中に3〜4log 10 CFU/mlだけ成長していることになる。阻害濃度の薬剤を含有する管内では、細菌は成長を示さないか、又は可視カウントの若干の減少を示すと予期される。殺菌濃度の薬剤を含有する管内では、細菌は、元の接種材料に比較して可視カウントにおいて≧3 log10 CFUだけ損失したと予期される。このような殺菌効果をもたらす最低薬剤濃度は、最小殺菌濃度(MBC)と呼ばれる(National Committee for Clinical Laboratory Standards, 2000)。
【0042】
細菌を継代培養することによりMIC及びMBCを決定することは適正な選択肢ではあるものの、PHYTOFLOC及びFloに関しては、2つの落とし穴を考えなければならない。第1に、これらの化合物は細菌を凝集させ、ひいては、プレート上でコロニーを誤って低くカウントしてしまうおそれがある。確かに、単一細菌体が寒天プレート上に1コロニーを生じさせる一方、10〜100の細菌から成る凝集体もまた、1つの単一コロニーを生じさせることになる。このことは、抗菌効果の過大評価を招くおそれがある(可視細菌の数が多いにもかかわらずコロニーが少ない)が、しかし光学顕微鏡によって合理的に良好にモニターすることができる。
【0043】
第2に、培地からマクロ分子が沈澱すると、その結果、細菌に対する栄養制限が生じることがある。従って、抗菌効果が実際にはエネルギー不足の間接的な結果である場合に、その抗菌効果が誤って試験化合物に帰せしめられるおそれがある。このことは本発明の試験においてはおそらくあり得ない。なぜならば、実験用成長培地は、炭水化物及びNH4+を可溶性小分子(例えばグルコース及びアミノ酸)の形で提供し、これらの分子は明らかに、試験化合物によって凝集させられることはないからである。対照として、PHYTOFLOC及びFloの固有の効果を、化合物を補充された又は補充されない無栄養緩衝液中でも試験した。
【0044】
微生物、成長条件及び化学物質:試験細菌を表1に要約する。これらの細菌は、幾つかの代表的なグラム陽性及びグラム陰性の病原体を含む。これらの生物を、Mueller Hintonブイヨン(MHB; Difco Laboratories, Detroit, Mich.)中で、又は4%の血液を補充されたComumbia寒天プレート(Becton Dickinson Microbiology Systems, Cockeysville, Md.)上で37℃でエアレーションを施さずに成長させた。或る試験の場合、トリプシン大豆寒天(TSA;Difco)及び脳心臓輸液(BHI; Difco)を使用することにより、考えられ得る培地の効果を研究した。10%(vol/vol)のグリセロールを補充した培地内に、細菌ストックを-70℃で凍結して維持した。
【0045】
【表1】
【0046】
300mg/mlの蛋白質抽出物を含有するストック溶液中にPHYTOFLOCを提供した。製造業者によって推奨される通り、1つのストックを4℃で維持した。第2のストックをアリコートに分配し、これらのアリコートを-20℃で保存した。凍結ストックを利用前に解凍し、1回だけ使用した。これらのストックはPHYTOFLOC抗菌活性に関して安定的であった。Floを乾燥粉末として提供した。これを4℃で維持し、使用直前に滅菌H2O中に希釈した。その他の全ての化学物質は試薬等級の商業的に入手可能な製品であった。
【0047】
抗菌感受性試験:PHYTOFLOC又はFloの2倍連続希釈物を、適正な緩衝液又は栄養培地(PHYTOFLOCの場合には1ml、Floの場合には0.2ml)を含有するポリスチレン管内に分配した。1つの試験をポリプロピレン管内でも行った。これらの管に最終濃度約5 x 105 CFU/mlの試験細菌を接種し、そして37℃でこれらの管をインキュベートした。24時間のインキュベーション後、各管の0.01及び0.1容積を、上述のように栄養寒天上に広げ、そして、コロニーのカウント前にプレートをさらに24時間にわたって37℃でインキュベートした。元の接種材料と比較して、細菌成長を阻害するPHYTOFLOC又はFloの最低濃度としてMICを定義した。元の接種材料と比較して、≧99.9%だけ可視カウントを減少させる最低薬剤濃度としてMBCを定義した。薬剤を含有しない管及びMIC付近の管から採取した細菌を、細菌凝集及び総形態変化に関して位相差顕微鏡法によって試験した。
【0048】
時間 - 死滅試験:Floによる細菌死滅の動的特性を、上述の方法により(Entenza他,1997)によって、1つの代表的なStaphylococcus aureus及び1つのEscherichia coli(表1)に対して研究した。手短に云えば、一晩の培養から得られた細菌を、予加熱した新鮮培地を含有する10mlガラス管内に接種して、最終濃度を106CFU/mlにした。接種直後、Floをそれぞれ2mg/ml及び20mg/mlの濃度で添加した。これはS. aureusに関しては、MIC(2mg/ml)及び4xMBC(20mg/ml)に相当し、そして、E.coliに関しては、サブMIC(2mg/ml)及び2xMIC(20mg/ml)に相当した。薬剤添加の前及び後の種々の時点で、培養試料を取り出し、連続希釈し、そして上述のようにコロニーをカウントするために栄養寒天上で平板培養した。
【0049】
緩衝液中の細菌成長及び細菌生存に対するPHYTOFLOCの影響:PHYTOFLOCの効果が溶液中の栄養の存在に依存するか否かを見極めるために、pH6, 7又は8で50mM KPO4中に希釈された、増大する濃度のPHYTOFLOCに暴露した。管からの継代培養を上述のように24時間後に実施し、そして生存コロニーの数を測定した。図7は、pH7で得られた結果を示す。細菌はプレーン緩衝液中に懸濁されたので、細菌はPHYTOFLOCを含有しない対照管内では成長しなかった。PHYTOFLOCの存在において、微生物は、S. aureusに関しては濃度0.75mg/lまで、E.coliに関しては濃度50mg/lまで生き残り、そしてこれよりも高い濃度で死滅させられた(≧3 log10 CFU/mlの損失)。PHYTOFLOCはpH6で僅かに低い活性となり(図7において1希釈率分だけ右側に移動した曲線)、pH8で僅かに高い活性となった(図7において1希釈率分だけ左側に移動した曲線)。重要なことには、位相差顕微鏡法による細菌の試験は、細菌生存可能性の減少が凝集には起因せず(処理済管及び未処理管において細菌クラスターは同一であった)、むしろ、S. aureusにおいて観察可能な細菌膨潤の形の不連続的な形態変化と関連することを示した。
【0050】
従って、PHYTOFLOCは緩衝液中で真に殺菌性であることが明らかである、栄養依存的な技術であるとは考えられない。さらに、PHYTOFLOC感受性試験においてS. aureus及びE.coliに対してTSB又はBHIを使用したときには、明らかな培地効果はなかった。
【0051】
栄養ブイヨン中の細菌成長及び細菌生存に対するPHYTOFLOCの効果:図8は、KPO4緩衝液の代わりにMHB栄養ブイヨン中で実施された同様の試験の結果を示す。これから明らかなように、細菌は管のうちのほとんどで成長し、阻害及び死滅を達成するためには、より高い濃度のPHYTOFLOCが必要となる。S. aureusは12mg/mlのPHYTOFLOCによって阻害され且つ死滅させられた、対照的に、E.coliは100mg/mlもの高濃度によっても阻害されなかった。このことはグラム陽性細菌とグラム陰性細菌との間に感受性の差があり得ることを示唆しているので、付加的な生物を試験した。
【0052】
種々の細菌に対するPHYTOFLOC及びFloの抗菌活性:表2は多数のグラム陽性及びグラム陰性の生物に対する2つの試験化合物のMIC及びMBCを示す。PHYTOFLOCの抗菌活性は、S. aureus及びStreptococcus pyogenesの両方に対して再現可能に観察された。他方において、PHYTOFLOCは、Enterococcus faecalis, Bacillus subtilis及びグラム陰性細菌の欄に記載された細菌に対して(試験された濃度において)不活性であった。
【0053】
最も興味深いのは、FloがS. aureus及びS. pyogenesの両方に対してPHYTOFLOCよりも最大で10倍だけ強力であり、E.coliを10mg/lで首尾よく阻害したことである。このことはFlo又は潜在的な誘導体が、未精製PHYTOFLOC中で観察されたスペクトル制限を克服し得ることを示している。
【0054】
【表2】
【0055】
時間 - 死滅試験:図9は、50mMのpH7のKPO4中、又はMHB中で、2mg/ml及び20mg/mlのFloにS. aureus P8を暴露している間の死滅動的特性を示す。2mg/mlで、Floは辛うじて阻害性であった。他方において、20mg/mlで、Floは両試験条件において明らかに殺菌性であった。E.coliに対して用いられた同じ濃度は、この特定の試験において効果的ではなかった(データは示さず)。
【0056】
結論として、上記試験はPHYTOFLOC及びFlo双方の抗菌活性を明らかに同定する。抗菌スペクトルは制限されたものの、2つの主要な病原体、すなわちS. aureus及びS. pyogenesに対して静菌効果及び殺菌効果が再現可能に観察された。
【0057】
定義された状態を処理する一方、正常な細菌フローラを維持し、そして共生生物間の細菌多耐性の選択を回避するために、菌株特異性が有用であると云える。例えば、t-RNAシンテターゼ・インヒビター、ムピロシンは、制限された数のグラム陽性病原体(staphylococci及びS.pyogenesを含む)に対して主に活性であり、慢性保菌者から生じる厄介な多耐性ブドウ球菌を根絶するための主要薬となっており、また、表皮感染における主要薬にもなっている。同様の例が蛋白質インヒビター、フシジン酸と共に見出される。フシジン酸は、ほとんど専らブドウ球菌感染に向けられている。このような化合物は、メチシリン耐性ブドウ球菌並びに新生グリコペプチド耐性ブドウ球菌を含む多剤耐性生物の伝染を減少させるのに極めて有益である(本発明において試験したS. aureus P8がメチシリン耐性であることに注目されたい)。
【0058】
PHYTOFLOC及びFloの2つの付加的な側面を強調する必要がある。1つの側面は、活発に成長している(栄養ブイヨン中の)細菌及び成長していない(KPO4緩衝液中の)細菌の両方に対して観察されるこれらの殺菌効果である。細菌死滅は、免疫防御が制限されている(皮膚及び粘膜のコロニー化において典型的な状況である)解剖学的部位における抗菌剤の重大な特性である。しかし、成長が遅い細菌又は成長しない細菌(ほとんどのin vivo状況において主流を成す代謝状態である)を死滅させることができる薬剤は極めて少ない。ほとんどの既存の抗菌剤は、このような状況においてそれだけでは微生物を根絶することはできない。従って、このような状態におけるFloの独自の殺菌効果は注目に値する。
【0059】
第2の側面は、S. aureus及びE.coliの両方に対するFloの活性が未精製PHYTOFLOCの活性を上回るように改善されていることである。確かに、このペプチドをさらに純化すれば、これら第1のスクリーニング試験において研究されたものよりも多くの細菌に対する活性を改善し得る。この顕著な例がベータ-ラクタム形成により提供される。ペニシリンGは、グラム陽性生物に対して極めて活性であるが、しかし、E.coliに対してはさほど活性ではない。しかし、単一のNH2基を添加するだけでアンピリシンが生じる。アンピリシンは、多数のグラム陰性細菌に対して化合物を極めて効果的にする。
【0060】
結論として、PHYTOFLOC及びその誘導されたカチオン系Floは、S. aureus及びS. pyogenesを阻害して死滅させる能力を共有するが、しかし、グラム陰性細菌に対しては低活性であることが明らかになった。このような種制限は、試験化合物の作用様式に関連すると云える。生物医学的な観点からは、このスペクトル制限は臨床的な有用性を除外しない(例えば多耐性ブドウ球菌に対するムピロシン)。さらに、PHYTOFLOC及びFloは、成長しない生物に対する固有の殺菌活性を示した。このような活性は極めて重要な潜在的特性である。
【0061】
試験範囲をまた、グラム陰性レジオネラまで、さらにマイコバクテリアまで広げた。
レジオネラ及びマイコバクテリアのFloに対する感受性を下記の方法で見た:
【0062】
細菌源:細菌をティチーノの病院の飲料水から分離し、CHUVの微生物学研究所から患者菌株を得た。
【0063】
MIC( 最小阻害濃度 ) :それぞれ100μlを含有する96ウェルを有するミクロプラークを用いて、MICを測定した。成長培地はL.pneumophiliaに関してはBYEα、マイコバクテリアに関してはTSBであり、所定の濃度のペプチド又は抗生物質を含有していた。
次いで培地を2倍希釈した(濃度が5 * 108CFU/mlから5 * 106CFU/mlに希釈された細菌懸濁液1μl)。
【0064】
L.pneumophilia培養を35℃でインキュベートし、48時間後及び96時間後に結果を読み取った。マイコバクテリア培養を30℃で最大7日間にわたってインキュベートした。
MICは成長を伴う最初のウェルである。
【0065】
MBC( 最小殺菌濃度 ) :上記懸濁液50μlを固形培地BCYEα又は血液を有する寒天上に平板培養した。L.pneumophilia培養を35℃で48時間にわたってインキュベートし、マイコバクテリアに関しては最大7日間インキュベートした。
【0066】
MBC値は成長を伴わない最初のプレートである。
結果を表3及び4に示す。表3はL.pneumophiliaに関する結果を、表4はMycobacterium abscessus/chelonae及びfortuitumに関する結果を示す。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
L.pneumophiliaがFlo及びPHYTOFLOCに対して感受性であり、Flo及びPHYTOFLOCが比較的低濃度で阻害及び殺菌活性を示すことを結論することができる。
【0070】
表4の結果は、12.5mg/mlのFloのマイコバクテリアに対する阻害活性及び殺菌活性を示す。
【0071】
全体的にこれらの結果が示唆するように、水の清澄化並びに水の消毒を目的として、本発明によるペプチド(Flo、E蛋白質)を使用することができる。このことは、このようなアプローチが、一般に使用されている化学物質に代わる有益なものとなり得ることを示している。具体的には、本発明のペプチドが、化学的な水処理に付随する潜在的な毒性効果を有するとは考えられない。またモリンガ種子は現在、廃水の伝統的な処理のためだけでなく、種々の食品の調製にも使用されている。ポリペプチドによる水処理の別の利点は、例えばアルミニウム塩とは異なり、これらが良好な生物分解性を有することである。アルミニウム塩は、処理済水及び沈降された物質の汚染物質として残る。抗生作用物質として作用する本発明によるペプチドの用量は、約100μg/mlである。この用量は、一般的な抗生物質、例えばβ-ラクタムに対して使用されるのと類似の濃度範囲である。
【0072】
Flo の構造
バイオインフォマティック的なアプローチは、推定上のアルファ-ヘリックス構造の存在を予測した。円偏光二色性分光法は、コイル状二次構造を示した。それぞれH1、H2及びH3と呼ばれる配列は、Floの一次構造から差し引かれた3つのドメインを表す。
図10は、DNA及びH1, H2及びH3の対応ペプチド配列を示す。
【0073】
図面
図 1. Flo の発現及び精製の概略的な表示
A. Flo融合蛋白質発現ベクターの構造。Floコーディング配列(影をつけた四角)が、調節されたT7ファージ・プロモーターの制御下で、キチン結合ドメイン(CBD、点付きの四角)に融合された自己開裂インテイン蛋白質ドメイン(縞模様の四角)をコード化する配列の下流側に挿入された。自己開裂後にインテイン配列から解離されるFloポリペプチドの配列がその下に示されている。
【0074】
B. 精製プロセスのスキーム。融合蛋白質を含有する細菌抽出物が、キチンにリンクされた(閉じた楕円)ビードカラム上にローディングされ、融合蛋白質はそのキチン結合ドメインを介して保持される。次いでカラムはチオールと共にインキュベートされ、その結果、インテインの特異的自己開裂を引き起こし、インテインはFloポリペプチドを解離する。次いで、融合蛋白質の残りは、カラムをリサイクリングするために、洗剤緩衝液中で溶離される。
【0075】
図 2. Flo 蛋白質発現
A. 細菌抽出物のSDS PAGE分析。精製中間体の等価画分を下記のようにローディングした:IPTG誘発型細胞からの未精製抽出物(レーン1)、キチン・カラム貫流(レーン2)、自己開裂後の融合蛋白質の残存部分の溶出液(キチン結合ドメインを有するインテイン、レーン3)、蛋白質分子量マーカー(レーン4)。左側の、上側の矢印は融合蛋白質を示し(61.5kDa)、そして下側の矢印は、開裂及びFloの溶離の後の融合蛋白質を示す(55kDa)。
【0076】
B. Flo溶出液画分のトリス-トリシンPAGE分析。レーン1及び2:化学合成されたFloがそれぞれ1μg及び2μgだけローディングされた;レーン3〜8:Flo溶離の連続的な画分。右側に、MWマーカーの位置がkDaで示されている。矢印はFloポリペプチドの位置を示す。Floの二量体に相当するように泳動する微量のポリペプチドが、高濃縮画分において認められることがあった(レーン2〜6)。
【0077】
図 3. Flo の凝固活性に関するアッセイ
「材料及び方法」において説明した分光光度計セルにおいて、ガラスビード懸濁液の沈降アッセイを行った。5分間の撹拌後、PHYTOFLOC(図B)、合成Flo(パネルC)、又は細菌性発現・精製型Flo(図D)、をそれぞれ添加して、矢印によって示すように最終濃度を20μg/mlにした。図Aにおいては、同様の量の緩衝液だけを添加した。500nmにおける光学濃度測定を1秒のインターバルで行った。15分後、撹拌を停止した。被験化合物の添加前後の沈降曲線の勾配を、「材料及び方法」において説明した線状回帰計算によって評価し、そして直線として示した。
【0078】
図 4. E.coli 培養成長に対する Flo の効果
A. PHYTOFLOC種子抽出物及び細菌性Flo蛋白質の効果。対数期のE.coli培養を遠心分離し、2時間にわたって37℃でリン酸緩衝液中だけでインキュベートする(◆)か、或いは最終濃度2mg/mlのPHYTOFLOC抽出物(σ)又は合成Flo(ν)が補充されたリン酸緩衝液中でインキュベートした。次いで細菌をLB清澄培地内でA600=0.1に希釈し、撹拌しながら37℃でインキュベートした。次いで光学濃度測定値を600nmで記録した。
【0079】
B. (A)において示したように、指数的に成長するE.coli培養を処理した。但しBの場合、異なる濃度(mg/ml):0(ν), 0.1(σ), 0.25(O), 0.5(Σ), 1(λ)又は2(B)の合成Floと一緒に、細菌をインキュベートした。非特異的蛋白質対照(◆)として、2mg/mlのBSAを使用した。
【0080】
C. Floの抗生効果に対する耐性の獲得可能性に関するアッセイ。
E.coli培養は、細菌の新鮮な培養(未処理細菌)から成るか、又は、図Aのように2つの連続するラウンドで、ペプチドの存在において予めインキュベートされ、最終的に成長した細菌が捕集された培養(処理済細菌)から成った。次いで未処理細胞を緩衝液(0mg/mlFlo、◆)又はFlo(2mg/ml、λ)と一緒にインキュベートした。処理済細胞を第3サイクルに際して、緩衝液(σ)又は2mg/ml Flo(ν)と並行してインキュベートした。
【0081】
D. 合成Floと一緒に、又は合成Floを伴わずにインキュベートされた細菌による蛋白質合成。
緩衝液(マイナス記号)又は2mg/mlのFlo(プラス記号)と一緒にインキュベートされた、図Cに示された同様の容積の処理済み細胞培養を、これがインキュベートされた時点で捕集し、細菌を沈澱させ、総細胞蛋白質をSDS-PAGEによって分離し、そしてクーマシー・ブルーで染色した。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1A】Flo発現及び精製を概略的に示す図である。
【図1B】Flo発現及び精製を概略的に示す図である。
【図2A】Flo蛋白質発現を示す図である。
【図2B】Flo蛋白質発現を示す図である。
【図3A】Floの凝固活性のアッセイを示す図である。
【図3B】Floの凝固活性のアッセイを示す図である。
【図3C】Floの凝固活性のアッセイを示す図である。
【図3D】Floの凝固活性のアッセイを示す図である。
【図4A】E.coli培養成長に対するFloの効果を示す図である。
【図4B】E.coli培養成長に対するFloの効果を示す図である。
【図4C】E.coli培養成長に対するFloの効果を示す図である。
【図4D】E.coli培養成長に対するFloの効果を示す図である。
【図5】モリンガ・オレイフェラに由来する種子蛋白質、油体蛋白質及び合成ペプチドの抽出物のSDS-PAGE(ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)を示す図である。
【図6】還元条件下で抽出されたモリンガ・オレイフェラに由来する種子蛋白質及び合成ペプチドの抽出物のSDS-PAGE(ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動)を示す図である。
【0083】
【図7A】50mM pH7 KPO4中の個体群分析プロフィールを示す図である。
【図7B】50mM pH7 KPO4中の個体群分析プロフィールを示す図である。
【図8A】MHB栄養ブイヨン中の個体群分析プロフィールを示す図である。
【図8B】MHB栄養ブイヨン中の個体群分析プロフィールを示す図である。
【図9A】MHB栄養ブイヨン中及びpH7, 50mM KPO4緩衝液中でのFloによるS. aureusの死滅を示す図である。
【図9B】MHB栄養ブイヨン中及びpH7, 50mM KPO4緩衝液中でのFloによるS. aureusの死滅を示す図である。
【図10】DNA配列、及びH1 H2及びH3の対応ペプチド配列を示す図である。
Claims (23)
- 蛋白質であって、下記の工程:
-既知のモリンガ蛋白質配列を使用し、
-E.coli中の発現に最適な合成遺伝子を再構成し、
-好ましくはインテイン配列とキチン結合ドメインとから成る異種ポリペプチドとの融合体として、該蛋白質を発現させるために発現ベクターを設計し、
-IPTGで発現を誘発し、
-カラム上に、好ましくはキチン・ビーズ含有カラム上に該調製物をローディングし、
-好ましくはチオールを含有する還元された化合物と一緒にインキュベートすることにより該融合蛋白質を開裂させたあと、天然の細菌性発現型蛋白質を溶離して回収すること
を含む組換えプロセスに従って得られることを特徴とする、蛋白質。 - 蛋白質群であって、E蛋白質-実施例1に開示されたプロセスに従って得られることを特徴とする、蛋白質群。
- 蛋白質群であって、E蛋白質-実施例2に開示されたプロセスに従って得られることを特徴とする、蛋白質群。
- 蛋白質群であって、E蛋白質-実施例3に開示されたプロセスに従って得られることを特徴とする、蛋白質群。
- 蛋白質群であって、E蛋白質-実施例4に開示されたプロセスに従って得られることを特徴とする、蛋白質群。
- モリンガ種子蛋白質群であって、該蛋白質の末端の一方が配列RGPAFRRで始まっていることを特徴とする、モリンガ種子蛋白質群。
- 蛋白質であって、図10に開示されているようなアルファ-ヘリックスH1によって部分的に定義されることを特徴とする蛋白質。
- 蛋白質であって、図10に開示されているようなアルファ-ヘリックスH2によって、又はアルファ-ヘリックスH1及びアルファ-ヘリックスH2によって部分的に定義されることを特徴とする蛋白質。
- 蛋白質であって、図10に開示されているようなアルファ-ヘリックスH3によって、又はH1及びH3によって、又はH2及びH3によって、又はH1及びH2及びH3によって部分的に定義されることを特徴とする蛋白質。
- 該蛋白質の末端の一方が配列RGPAFRRで始まっている、請求項2〜5のいずれか1項に記載の蛋白質群。
- 該蛋白質が化学合成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の蛋白質群。
- 蛋白質群を得る方法であって、下記工程:
-既知のモリンガ蛋白質配列を使用し、
-E.coli中の発現に最適な合成遺伝子を再構成し、
-好ましくはインテイン配列とキチン結合ドメインとから成る異種ポリペプチドとの融合体として、該蛋白質を発現させるために発現ベクターを設計し、
-IPTGで発現を誘発し、
-カラム上に、好ましくはキチン・ビーズ含有カラム上に該調製物をローディングし、
-好ましくはチオールを含有する還元された化合物と一緒にインキュベートすることにより該融合蛋白質を開裂させたあと、天然の細菌性発現型蛋白質を溶離して回収すること
を含むことを特徴とする、蛋白質群を得る方法。 - E蛋白質-実施例1に開示されている、蛋白質群を得る方法。
- E蛋白質-実施例2に開示されている、蛋白質群を得る方法。
- E蛋白質-実施例3に開示されている、蛋白質群を得る方法。
- E蛋白質-実施例4に開示されている、蛋白質群を得る方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の蛋白質又は蛋白質群の使用であって、流体中の凝固剤として使用することを特徴とする、蛋白質又は蛋白質群の使用。
- 該流体が水である、請求項17に記載の蛋白質又は蛋白質群の使用。
- 請求項1〜11のいずれか1項又は請求項17又は18に記載の蛋白質又は蛋白質群の使用であって、抗生物質の製造のために使用することを特徴とする、蛋白質又は蛋白質群の使用。
- モリンガ・オレイフェラ由来の組換え型又は合成型の蛋白質又は蛋白質群の使用であって、抗生物質の製造のために使用することを特徴とする、モリンガ・オレイフェラ由来の組換え型又は合成型の蛋白質又は蛋白質群の使用。
- モリンガ・オレイフェラ由来の天然蛋白質又は抽出物の使用であって、抗生物質の製造のために使用することを特徴とする、モリンガ・オレイフェラ由来の天然蛋白質又は抽出物の使用。
- 請求項20又は21に記載の蛋白質又は蛋白質群の経口使用。
- 請求項20又は21に記載の蛋白質又は蛋白質群の局所使用。
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2002
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009511466A (ja) * | 2005-10-05 | 2009-03-19 | リライアンス ライフ サイエンシーズ プライベイト リミテッド | 体液、細胞および組織中のリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを阻害するための因子およびそれを含む組成物 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
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